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1956-03-19 第24回国会 衆議院 文教委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年三月十九日(月曜日)     午前十時三十九分開議  出席委員    委員長 佐藤觀次郎君    理事 赤城 宗徳君 理事 加藤 精三君    理事 高村 坂彦君 理事 坂田 道太君    理事 米田 吉盛君 理事 辻原 弘市君    理事 山崎 始男君       阿左美廣治君    伊東 岩男君       稻葉  修君    小山 長規君       杉浦 武雄君    並木 芳雄君       野依 秀市君    古川 丈吉君       町村 金五君    松浦周太郎君       松岡 松平君    山口 好一君       山本 勝市君    河野  正君       木下  哲君    小牧 次生君       高津 正道君    野原  覺君       平田 ヒデ君    山本 幸一君       小林 信一君  出席国務大臣         文 部 大 臣 清瀬 一郎君  出席政府委員         文部政務次官  竹尾  弌君         文部事務官         (初等中等教育         局長)     緒方 信一君  委員外出席者         文部事務官         (大臣官房総務         課長)     斎藤  正君         専  門  員 石井つとむ君     ————————————— 三月十七日  委員池田勇人君及び八木一郎辞任につき、そ  の補欠として千葉三郎君及び伊藤郷一君が議長  の指名委員に選任された。 同月十九日  委員伊藤郷一君、北村徳太郎君、久野忠治君、  田中久雄君、塚原俊郎君及び山口好一辞任に  つき、その補欠として古川丈吉君、松岡松平君、  小山長規君、山本勝市君、松浦周太郎君及び阿  左美廣治君が議長指名委員に選任された。 同日  委員阿左美廣治君、小山長規君、古川丈吉君、  松浦周太郎君、松岡松平君及び山本勝市君辞任  につき、その補欠として山口好一君、久野忠治  君、伊藤郷一君、塚原俊郎君、北村徳太郎君及  び田中久雄君が議長指名委員に選任された。 同日  理事鈴木義男君同月十四日委員辞任につき、そ  の補欠として辻原弘市君が理事に当選した。     ————————————— 三月十六日  高山祭及び屋台の調査に関する請願坂田道太  君紹介)(第一三六七号)  史跡隼人塚保存費国庫補助に関する請願池田  清志君紹介)(第一三六八号)  地方教育委員会制度存続に関する請願竹谷源  太郎君紹介)(第一四〇四号)  同(足鹿覺紹介)(第一四〇五号)  同(淡谷悠藏紹介)(第一四〇六号)  同(安平鹿一君紹介)(第一四〇七号)  同(今澄勇紹介)(第一四〇八号)  教育委員公選制確立に関する請願堂森芳夫  君紹介)(第一四〇九号)  同(細田綱吉紹介)(第一四一〇号)  同(武藤運十郎紹介)(第一四一一号)  同(三鍋義三紹介)(第一四一二号)  同(井堀繁雄紹介)(第一四一三号)  同(長谷川保紹介)(第一四一四号)  同外二件(杉山元治郎紹介)(第一四一五  号)  同(杉山元治郎君外一名紹介)(第一四一六  号)  同(阿部五郎紹介)(第一四一七号)  同(横路節雄紹介)(第一四一八号)  同(岡良一紹介)(第一四一九号)  同外一件(松原喜之次紹介)(第一四二〇  号)  同外十件(久保田鶴松紹介)(第一四二一  号)  同(五島虎雄紹介)(第一四二二号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事の互選  地方教育行政組織及び運営に関する法律案(  内閣提出第一〇五号)  地方教育行政組織及び運営に関する法律の施  行に伴う関係法律整理に関する法律案内閣  提出第一〇六号)     —————————————
  2. 佐藤觀次郎

    佐藤委員長 これより会議を開きます。  地方教育行政組織及び運営に関する法律案並びに地方教育行政組織及び運営に関する法律の施行に伴う関係法律整理に関する法律案一括議題とし審査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。山崎始男君。
  3. 山崎始男

    山崎(始)委員 十三日の本会議におきまして私が文部大臣お尋ねいたしました事柄に対し、文部大臣から御答弁がなかったので、まずこの法律案に対する本格的審議に入りまする冒頭におきまして、本会議での関連事項としてごく簡単に一、二点お尋ねしたいと存じます。  その第一点は、御承知のように、この法律案提出をされましてから全国教育委員会が非常な騒ぎをやっておることは申し上げるまでもございません。いわゆる憂うべき教育行政として、もしこの法案通過の暁は、彼らは一斉総辞職をも辞せないという気がまえを示しておることは、御承知通りだと思いまするが、万一この一斉総辞職というような事態が起りましたならば、これはまた申し上げるまでもなく、日本教育行政一大混乱を起すことは火を見るより明らかでございます。この点に対して私本会議お尋ねをしたのでありまするが、文部大臣から御答弁がございません。速記録を見てみましても全然載っておりません。もしそういう事態が起ったときに、これは文部大臣責任であるということもこれまた論を待ちませんので、その責任の帰趨を明確にする意味におきまして、この際まず最初にこの一点を一つ明確に御答弁願いたいと思うのであります。
  4. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 全国教育委員の方方が教育に熱心のあまりいろいろと御研究になっておることは承知いたしておりまするけれども、これらの人が同盟して一斉に辞職なさるなどとは私は考えておりません。教育を愛護する者はさようなことには走るまいと考えておるのでございます。
  5. 山崎始男

    山崎(始)委員 私たちもそうありたいと実は願います。その気持は文部大臣もわれわれも同一でございまするが、御承知のごとく、神奈川県は、過日の新聞紙上を見ますると、もうすでに総辞職をやるようです。また聞くところによりますると、地方教育委員会の中にも、長野県でありましたか、出ておる。なおかつその傾向が全国的に広がらんとしておるこの趨勢というものは、あなた方の情報網にも私ははっきりと入っておると思うのであります。ただいまのあなたの御答弁は、そういうことがないことを望むということの御答弁でございまするが、私がお尋ねいたしておりますことは、先ほども申しますごとく、そういう事態が起ったときの文部大臣責任のとり方の御決意を私は聞いておるのであります。どうぞその点をお聞かせ願いたいと思います。
  6. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 そういうことが起らないことを望むというよりも、起らないとかたく信じておるのでございます。
  7. 山崎始男

    山崎(始)委員 どうもあなたの答弁は、私は答弁になってないと思います。現実にすでに起っているんですよ。この起っておる現象というものが拡大をされて、各都道府県において、先ほど申しますような教育行政が一時的にも麻痺するという事態が起きる可能性が十分あるから、私は心配して聞いておるのであります。それに対してあなたの今の御答弁は、答弁になっていないと私は思う。重ねてお伺いいたします。
  8. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 教育委員諸君にとりましても、われわれにとっても、一番大切なのは、教育自身でございます。全国教育委員方々が一人残らず委員やめてしまうといって、教育混乱に陥れ、教育関係者を困らせ、父兄に迷惑をかけるといったようなことは私はないことだと思っておるのです。
  9. 山崎始男

    山崎(始)委員 ないことだと思っておるという、そういうことを私はお尋ねしておるのじゃないのであります。私はこういう質問はおそらく小学校の一年生でも答弁できると思うのです。あなたはあえて私に対する答弁をそらしていらっしゃる。この点は私は重大でありますからお尋ねしておるのです。この教育法律案に対する本論に入りまする大前提として私はお尋ねしておるのであります。私はきょうは他に長くあなたにお尋ねする意思は持っておりませんので、本会議での質問に対する答弁がないのですから私は聞いておるのであります。私は非常に大切な問題だと思う。それをあなたは、期待するとか、望むとか、そういうことはピントがはずれておると思うのであります。
  10. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 今申す通り、期待ではなくして、ないと信じておるのです。あると思う人とか、あるかもしれないと思う人ならば、その場合の御答弁はできるのでありますけれども、そういうことはないと私は信じておるのです。
  11. 山崎始男

    山崎(始)委員 自民党皆さん方もいらっしゃるのですが、党派を超越しましても、今のあなたの御答弁は、私の質問に対する要点としてそれが明快なる答弁か、答弁でないか、これは私は人間の常識だと思うのであります。おそらく自民党皆さん方の中でもおかしな答弁をすると思って笑っていらっしゃると思う。重ねて一つお願いいたします。
  12. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 私も教育委員をしている人を知っております。私の親族にも教育委員をしている者が一人ございます。これら残らず全部の人が当てつけがましく教育委員会を辞してしもうて、日本教育委員会なき状態を作るなんということは、私は信じられないのです。もしそういうことがあるかわからぬと思うなら対策考えますし、またあると信じたら今明言しますけれども、ないと思っているのに対策を聞かれたところが、どうでしょうか。ほんとうに私はないと思っておりますから、私は考えておりません。
  13. 山崎始男

    山崎(始)委員 あなたの御親族にも教育委員をやっている者がおる、あるいはその人はおやめにならないかもしれない。私が聞いておりますことは、全国教育委員会で、非常にたくさんの人がおられますから、その中にはもとよりやめられない人もあるでしょうが、すでに現に神奈川県では辞表を預けるところまでいっておる、そういう事態がたくさんの教育委員会の中に起ってきたならば、教育行政混乱を来たすじゃないか、それに対する責任をあなたはどういうふうにお考えになっているかということです。イエスかノーかの二つに一つしかないと私は思うのです。
  14. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 それでわかりました。私は全国教育委員が全部一人残らずやめる、その場合どうするかと言うんで、そんなことはないと私は答えた。一部の人が、数は知らぬが、あるいはおやめになることもあるかもしらぬ。それは考え得ることです。多数の委員会で、血気にはやった人がおやめにならぬとも限らぬ。それはあり得ることです。そういう場合には、現在の法律の六十四条でそれを補正する道がありますから、それでいくことになります。
  15. 山崎始男

    山崎(始)委員 どうもあなたの御答弁は、過日われわれの委員会におきましても、三百代言式答弁であるという説が出たのであります。私は今あなたのお答えを聞いておりますると、全くその感を深くするのであります。私が聞いておりますことは、そういう事務的なことを聞いておるのじゃないんです。たびたび申し上げますように、現に神奈川県でも出ている。今日本の各都道府県の中で十件なり二十件あるいは三十件なり出てくる可能性があるのでありますが、そのときは、果して今大臣がおっしゃったような事務的な操作でもってそれの補充ができるのですか。一体どういう方法でもって事務的にそれを補充されようとするのですか。それは十人とか三十人とか、あるいは四十人とかいうものがやめるんならば、あるいは事務的の補充もできるでありましょう。私がお尋ねしておるのは、そうじゃない。現に教育委員会全国協議会では総辞職をする決意を表明しているんですから、今後起ってくるかもしれないという状態は、今あなたが事務的にその補充ができるとかいうような、そういう非常識な答弁をされるものじゃ私はないと思うんだ。重ねてお聞きいたします。
  16. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 そのような行政が行い得ないようなゼネストに類するようなことは、教育委員会に限って断じてないと思います。
  17. 山崎始男

    山崎(始)委員 それでは、私は、あなたの今のような御答弁を聞いて、これがほんとう日本文教行政の頂点にいらっしゃる人の答弁かといって、国民が泣くと思うのです。何ぼ私がお尋ねしても、あなたは同じ言葉を繰り返して御答弁されるばかりです。  私はそれなら、方向を変えてお尋ねいたします。過日、たしか今月の九日だったと記憶いたしまするが、全国都道府県協議会幹部の方があなたに電話で連絡をされたかと思うのでありますが、そのときにあなたはこの問題に対して責任をとるという言葉をおっしゃっておられると私は聞いておるのでありますが、そういう事実があったかないかお尋ねいたします。
  18. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 そんなことは申しません。どうしてまた自分の信念で一番国のために正しいと思って考えて出した案について、今責任をとるなんということを言いますか、それは間違っております。
  19. 山崎始男

    山崎(始)委員 私が聞いておりますのは、そういう私が今お尋ねしたような事態が起ったときには、文部大臣はどうされるか。そのときにあなたは責任をとるという答弁をされておる、こう私は聞いておるのであります。その事実があったかどうかということを聞いておる。
  20. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 それはございません。
  21. 山崎始男

    山崎(始)委員 重ねてお尋ねいたしますが、そういう問題に関連をして、あなたは教育委員会幹部諸君お話になったことは一ぺんもないのですね。もしあったらどうします。一ぺんもないのですか。
  22. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 教育委員会幹部に、私がこの問題で責任をとるなんと言ったことははございません。断じてありません。これは私は正しいと信じておるのです。
  23. 山崎始男

    山崎(始)委員 それじゃ私は何べん申し上げても御答弁がありませんですが、こういう簡単な質問に対して、まさか私が日本語が下手で、私の言うことがあなたにおわかりにならぬとは私は思えないのでありますが、この責任問題に対しては、あなたはあえて答弁を拒否されている、こう解釈してけっこうでありますか。
  24. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 先刻以来誠意を尽して答弁いたしているのです。私は良識ある教育委員方々が、全部とは言わないでも、あなたのおっしゃる非常に大量に相盟約してやめてしまう、教育に関する任務を放棄する、そんなことはなさらぬとかたく信じておりますから、ないことについての私の答えはできません。あると疑ったらそれは考えてみますけれども、そんなことはないのです。ありませんよ。見てごらんなさい。
  25. 山崎始男

    山崎(始)委員 そういう御答弁をされると、私はもう一ぺん言わなければならない。私は現在ある趨勢にあるからお聞きしているのでありますから、私から言わせれば、起ったらばどうされるかを聞いているのです。
  26. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 いやしくも答えれば責任ある答えをしなければならね。そういうケースはないと心から信じているのでありますから、もし答えれば作った答えになる。仮定の答えです。それはそのときの情勢によってやらなければならぬ。一番初め全部とおっしゃったけれども、一部分ということでありますが、しからばどれだけということで非常に違いますわね。百人やられる場合と二百人やられる場合とは、非常に違うのです。ですから、そういうまだ起っておらぬことを、しかして私が起らぬと信じていることについて答えを求められるというのは、それはあなた御無理というものですよ。
  27. 山崎始男

    山崎(始)委員 それではすでに起っている神奈川とか長野とか——局部的ではありますが、現在すでに起っている。これに対してどういうふうにお考えですか。
  28. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 それは辞表を出されたと私は聞いておりませんです。神奈川のことは新聞で見たのでありますが、日付を入れないで辞表委員長にお預けした、こういう記事が載っておりました。それも新聞ですから、真否は知りませんです。
  29. 山崎始男

    山崎(始)委員 それではこの問題はこれで保留いたしておきますが、次に一点だけお尋ねいたしておきます。この配付されました法律案の五十二条——文部大臣または都道府県委員会措置要求に関する第五十二条「文部大臣は、地方自治法第二百四十六条の二の規定にかかわらず、地方公共団体の長又は教育委員会教育に関する事務管理」云々というのであります。これは本会議でもちょっと触れたのですが、私自身も非常に素見をいたして恐縮でありますが、これは文部大臣の方で何かお考え違いをなさっておられるんじゃないか。何ぼ考えても私にはわからない。なぜかといいますと、地方自治法の二百四十六条の二という規定はないのであります。これは文部大臣に一応お教えを願いたい。
  30. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 それは政府がこの法律と相並んで提案いたしました地方自治法の一部を改正する法律案のうち、二百四十六条の二というものがありまして、これに内閣総理大臣措置要求のことが規定してあるのであります。その総理大臣名義措置要求のほかに、文部大臣もこういうことができるということを規定いたしたのでございます。
  31. 山崎始男

    山崎(始)委員 これは地方自治法の百四十六条の間違いとほ違いますか。
  32. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 これはやはりこの通り改正さるべきことを同時に提出しておるものですから、それと一致さすため、二百四十六条の二でございます。     〔「勉強が足らぬぞ」と呼ぶ者あり〕
  33. 山崎始男

    山崎(始)委員 まさしく私の勉強の足らない点かもわからないのですが、これは国の機関としての長に対する職務執行命令違反または違反に対する裁判なんかの手続の問題と違いますか。それを規定しておるのじゃないですか。
  34. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 ちょっとわかりかねますが、やはりここにありまする通りです。地方公共団体の長とかあるいは委員会のやることで、いかに地方分権あるいは自治と申しましても、教育本来の目的教育基本法の一条に書いてあるような本来の目的に反し、または違法なことがあった時分には、それは直せということを言うてやって、日本教育の筋道を立てよう、こういうことであります。これは必要な規定であります。
  35. 山崎始男

    山崎(始)委員 それは私いいのです。ただこれは事務的に、本会議のあとで十分これを読んでみても、ちょっと二百四十六条の二の規定というものがわからなかったものですから、お尋ねしたのですが、いろいろ関係法規をくってみると、百四十六条には二という規定旧法にはある。それがちょうど五十二条のこの職務執行命令に関する規定にやはりなっておりますので、私はこれは百四十六条のお間違いじゃないか、かように思ったわけであります。
  36. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 旧法、新法の関係について、局長からさらに詳しく説明させます。
  37. 緒方信一

    緒方政府委員 ただいま大臣からお答えがありましたように、現在提出されております地方自治法の一部を改正する法律案におきまして、二百四十六条の二という新しい規定ができておるわけでございます。内容は、これも大臣が今お述べになりましたが、内閣総理大臣は、普通地方公共団体事務の処理、またはその長の事務管理及び執行が法令の規定違反していると認めるとき、その他事務執行が適正を欠き、かつ明らかに公益を害している、こういうふうな場合を加えまして、その場合に、総理大臣違反の是正または改善のため必要な措置を講ずべきことを求めることができる。そのほかこの条文も四項ございますけれども、こういう条文一つ加わって改正案ができているわけでございます。この規定と合せるために、条文通り二百四十六条の二という規定を引用したわけでございます。
  38. 山崎始男

    山崎(始)委員 そういたしますと、これはこの関係法律整理に関する法律の中に載っておりますか。
  39. 緒方信一

    緒方政府委員 自治法改正法律が、ただいま御審議願っておりますこの法律よりも先に効力を発生することになりますので、それを見越しまして、ここには改正になった自治法改正法律案条文を引いておるわけでございます。これで歩調が合うわけであります。
  40. 山崎始男

    山崎(始)委員 いやいや、私が聞いておりますのは、この関係法律整理に関する法律案というのを配付されていらっしゃる、この中に載っておりますかと、こう聞いているのです。
  41. 緒方信一

    緒方政府委員 整理法の方は、地方教育行政組織及び運営に関する法律規定によりまして、それと抵触する部分等につきまして整理をした法律でございます。今お話になっております地方自治法改正法律はその関係がございませんので、整理法に入れる必要はないわけでございます。
  42. 佐藤觀次郎

  43. 高村坂彦

    高村委員 文部大臣に若干の点についてお尋ねをいたしたいと存じます。私は第二十二国会におきまして、教育基本方針についてお尋ねをいたしたのでございます。そのことは相当多岐にわたって御質問申し上げたのでありますが、その根本は、今日の日本教育制度というものが占領下初期に行われたものである、従って非常に日本の伝統というようなものも無視されておるし、また外国の制度を取り入れるにいたしましても、アメリカの制度を特に取り入れられておる。また占領政治の本質からいたしまして、やはり占領というものが日本に対する戦争目的を達成する手段であって、戦果の拡大確保目的である関係からいたしましても、その初期の、そういう目的のために行われる占領政治のもとにおいて、真の日本の再建のための教育制度が確立されるはずはないわけでございますから、従ってこういった教育制度については、全面的に一つ再検討される意思があるかどうかということをお尋ねいたしたのでございます。これに対して、当然それは再検討すべきであるという御答弁がございました。今回政府におかれましては、臨時教育制度審議会というものを内閣に設けられて、それによって日本のこれまでの占領下教育制度を全面的に根本的に再検討されることに相なっておるように伺っておりますが、この臨時教育制度審議会の設置を待たないで、この教育委員会制度を含む地方教育行政組織運営に関する法律案をお出しになりましたお考え一つ伺ってみたいと思うのであります。
  44. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 日本教育委員会根本は、現在は選挙でやっておりまするが、その選挙が本年の十月にほぼ一斉に行われまするから、もし選挙制度をやらないでいこうという根本に立っての改革であったら、選挙前にやりませんと、十分な目的を達しないのではないか、こう考えております。
  45. 高村坂彦

    高村委員 そういたしますと、臨時教育制度審議会ができまして、その審議が進む過程におきましては、教育委員会制度はすでに確定したものとして、それには触れない、こういうふうなお考えでございましょうか。
  46. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 今度できまする臨時教育制度審議会は、教育行政全般について御審議を願うという一節があるのであります。日本の道徳のこと、教育行政、それから大学のこと、教育行政をもっと広い範囲で御審議なさる際に、やはり今こしらえたものについても論究されるということは、むろんあり得ることでございます。そうしてそれがそのときに国のために最善のことであったら、改むるにやぶさかではない、こういうふうに考えております。
  47. 高村坂彦

    高村委員 その点は了承いたしましたが、今度のこの法案につきまして、実は重大な点について、私は一般にも誤解があり、われわれもこの点は明確にいたしておきたいと考えておる点がございますので、お伺いいたしたいのであります。その一つは、政治的中立を今度の教育委員会制度はむしろそこなうのではないか、こういう意見があるのであります。私どもは必ずしもそう思わないのでありまして、御提案の理由を承わってみますと、その中で、むしろ教育的中立を確保するためにも、この法案が必要だというお言葉があるのでありますが、これはどういう理由政治的な中立を確保する上において、この法案が役立つというふうに見ておられますか、その点を一つ明らかにしていただきたいと存じます。
  48. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 わが国の政治情勢は、大体二大政党に進んでおりまするが、これが確立して、村々までも政党主義で浸潤徹底するということになると、直接選挙一本でやりますと、場合によれば一つ党派が全部の教育委員を占めることがあり得るのであります。全部占めないでも、それが半数以上を占めることがあり得るのであります。こういうことを考えますと、教育中立性は危なくなってくる。それゆえにこの案では、やはり民主主義を守るために、直接選挙で選ばれた市町村長が直接選挙で選ばれた議会の同意を得てやるということで、民主主義を貫きつつ、一党派が多数を占めないように、五人の委員の場合ならば、二人だけは同党派でよろしいが、三人以上はそういうことはいけないのだ、三人の場合は二人はいけないのだといったようなことにいたしまして、一党派が独占なりあるいは絶対多数を持たないような仕組みの方がいいだろう、選挙制度をとる以上はそれはできませんから、一方において民主主義を貫きつつ、中立を害さないようにする工夫をする、この方がいいだろう、かように考えておるのであります。
  49. 高村坂彦

    高村委員 そういたしますと、政治的な中立を確保する上におきまして、従来の公選制を採用するよりも、任命制を採用する方が妥当なんだ、さらにまた国家公安委員会のように同党派から多数が出ることを法律の上で制限をしていく、こういうことによって政治的な中立を保ち得る、こういう御所見のように伺ったのでありますが、一体政治的な中立ということはどういうことなんでございましょうか。実は明治時代におきましては、日本教育というものは、御承知のように政党政党政治のもとにおいても深く関与しないで、むしろ勅令等で、枢密院等がそれの制定に当って御批准に応じておったようでございます。そこで政友、民政といったような政党考えによって、教育制度あるいは教育内容というようなものが決定されることを排除するような態度に出ておったように私は思うのであります。戦後において日本教育中立ということが言われておりますけれども、これは一体どういうふうにあることが中立であるかということが、若干の疑問があるわけであります。私は世界の教育制度なんかを大ざっぱに見ますと、大体三つあるような気がするのであります。一つは、中共とかあるいはソ連のような一党独裁と申しますか、マルクス・レーニン主義で教育を貫いておるという国もございますし、また主として欧州大陸の国のような制度のもとでは、大体教育というものは国が責任を持つけれども、時の政治勢力がそれを壟断することがないような相当の権限を地方に委譲してやらしておるという考え方もあり、アメリカのごとく、むしろ教育の権限は州が持っておって、連邦としては教育の権限は持っておらない、その州がその権限を下の方に委譲しておる、こういうふうなかっこうになっておるような気がいたすのであります。私は教育制度考えます場合には、やはりそうした諸外国の諸制度といったようなものを十分に参考にし、さらに日本の伝統なり日本の国民性なり、あるいは日本の国情といったようなものを十分に考えて、いわゆる縦と横との日本の伝統と申しますか、沿革と申しますか、そういった日本の立場と外国の制度を参酌する、こういった縦横織りなす一つ制度というものが、ほんとう日本教育制度としては妥当ではないかと思うのであります。そういう点にかんがみまして、日本教育政治的中立ということは、一体根本的にどう考えたらいいのか。主義としては共産主義あり、社会民主主義あり、自由民主主義がございますが、さらにそのほかにファッショ的な思想もあるかもしれませんが、そういうふうなどの主義もいかぬというのか、あるいはそういったどの主義からも離れたものが中立というのか、あるいはどれかの考え方、あるいはどの二つくらいならいいのだというふうな具体的な考え方も一体なし得るのかどうか、その点御所見を伺ってみたいと思うのであります。
  50. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 明治時代の教育は、初期においては政治教育自身をむしろ避けておったように思います。末期、大正時代に至って、政治のことも教え、それから選挙のことも教えた課を挿入しております。太郎さんと道夫さんの話なども載っております。戦後の教育では公民教育として政治上の知識を養い、判断力をつけることはいいのであります。それゆえに各種の政治上の主張を均等に教えることはいいと思います。ただ特定の政党、国内に結成された特定の政党を支持するという下心で教えるということは非常な弊害を生ずるだろう、今の教育基本法第八条第二項にその意味のことが書いてあります。この基本法をたとい再検討するにしても、この主張はやっぱりいいことだと思います。それゆえに特定政党支持の目的をもってやるということがいけないのであります。そこで二つ主義があれば一方だけを教えて、一方を隠すということがあると自然そういったことになりますが、均等に自由主義も社会主義も教えるということならば差しつかえない、こう思っております。
  51. 高村坂彦

    高村委員 そういたしますと、政治的中立というのは、一つ政党に偏するような下心を持ってやることがいかぬのだ、自由主義も教え、社会民主主義も教え、共産主義のどういうものであるかということも教え、ファッショがどういうものであるかを教えても、それに片寄った下心を持って教えなければよろしい、こういうふうに解釈してよろしゅうございますか。
  52. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 大体それでいいと思います。だけれども、ためにというと人の心の中でありますから、結果においてそうなれば、やはりためにしたものと解さなければならない場合はあるのであります。
  53. 高村坂彦

    高村委員 若干私見にわたりますが、私はいやしくも国家が教育をなすに当りましては、ただそういった一つの主義主張というものを知識として批判的に教えるというだけでなしに、やはり一つの国是というものがあって、その国是に基いて国民を教育するということが当然ではないかと思うのであります。極端な例は、共産主義国家のごとく、共産主義を最善のものとして、終始一貫してそれを教えているというのがございますが、これはわれわれはとうてい賛成することができないものであります。おのずから幅はございますけれども、共産主義というものは、今日の日本の民主主義、議会政治を認めている上においてこれはとるべき主義ではないのだということを教え、またはファッショ的な独裁政治政治思想に対しては、これは間違っているんだということを教えることは、これは日本政治の上におきまして、必ずしも私は政治的中立を侵すものではないというふうに思うのでございますが、その点はどうでございましょうか。
  54. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 その点のあり方は、子供に頭からどの主義が悪い、いいということを教えるのじゃなくして、各主義を平等に解説してやって、おのずから正当に判断し得るように導いてやるのがいいのではないかと思っております。初めからドクトリンをこしらえてしまって、これだといってやりますると、真にわが国を持って立つ自由主義、——そう言うと私の方の政党の名前みたいに聞えまするけれども、やはり日本の国家は思想の自由、言論の自由、信仰の自由ということをもっていっておりますから、やはり自由主義国家といわなければなりません。それで政治上の主張など、これがいいのだといって前提して押しつけるということはいけませんが、教えてしまうということじゃ自由主義国家の政府のする教育ではなかろうと思います。ただ法律に定めた学校がそうなんで、法律に定めない、すなわち別のそういう学校を作られることはそれはいいのです。近い例をもって言えば、わが党が政治学校というものを作って教える、社会党さんがまた社会党の政治学校というものを作って教えるといったようなことは、これはかまわぬことでありますけれども、法律できめた学校では、初めから政治の主義をきめてかかって、これですよといって教えることは日本の憲法の根本精神に反しはせぬか、かように考えます。
  55. 高村坂彦

    高村委員 ただいまの御答弁には、私はどうもわからない点があるのであります。と申しますのは、今大臣お話にもございましたように、われわれは自由というものが一つの国の大きな基本の問題と相なっておるわけであります。その自由を奪わんとする考え方に対して、——これは一つの国本であると言っても間違いなかろうと思う。そういうものに対して一つの独裁を主張し、あるいは徹底した統制的な考え方を主張する、そういった独裁政治の理念というものが悪いということを言うことが、教育中立性に反するというふうな考え方では、これは私はゆゆしいことに相なると思います。やはりそういうものに対しては、自由を守るために戦っていかなければならぬというのが日本の国家としても必要でありはしないか、私はかように考えますが、大臣の御所見を伺いたい。
  56. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 それは初めにお答えしたことに含んでおるのであります。すなわち政治的中立というのは特定の政党を支持するためのものがいけないということで、わが国において自由主義を説くことはむろんいいことであります。それから共産理論の間違いなることを教えることは、むろんこれはいいことであります。しかし私も言葉が悪かったと思いますが、政治的中立というのは、特定の政党の支持のためにするのでないのですから、日本にも共産党という党派があるのです、ですから初めから日本共産党はいけないと、こういうふうに言うことが差しつかえるということなんです。しかしながらその主義主張について説明をしてやり、その矛盾を指摘するということは、教育一つとしてはむろん差しつかえないものであります。さっき私の説明も少し足りませんでしたけれども……。
  57. 高村坂彦

    高村委員 ちょっと質問の方向を変えてみたいと思います。政治的中立を確保するために任命制の方がよいということは私もそう思うのでありますが、これはこの法案審議の上におきまして、私は今日のいろいろな新聞論調等を見てみましても、非常に議論をされるところと思いますので、もう少し突っ込んでお伺いしてみたいと思うのであります。どういうわけで任命制の方が公選よりも中立を保ち得るといえるかということについて、私は私なりに考えてみますと、実は昭和二十六年に文部省に、文部大臣の諮問機関として設けられました教育委員会制度協議会というものがございました。たしか二十六年の二月にできたかと思いますが、約一カ年ばかり審議を進めてその報告がなされておるようでありますが、それによりますと、やはり公選がいいか任命がいいかということがずいぶん論議されている。その結果、結局この点はどちらがいいかという結論が出ておらないのであります。そして公選制がよろしいという長所としては、民意の反映が直接になし得るからいいとか、あるいは公選委員は力がある、あるいはこれは制度の建前の上から原則である、あるいは任命制は政党色がついて中立性に反するというような説も出ております。ところがこれに反して、その短所としては、任命制を主張する人の主張は、かえって公選制の方が政党色がつきやすい、任命制にする方が不偏不党の人が得られるのだ、また公選された者が選ぶのであるから、決して民意の尊重に欠くるところはないのだ、これは大臣もそういう御説明がございましたが、そう言っております。また、公選には実力のある政党をバックとしなければ出られない、あるいは大きな組織の力がなければ出られない、従ってそういうことは政治的な中立を保つゆえんでないのだ、また選挙が政争の具に使われて、かえって教育のごとき中立性を守らなければならぬものが害される結果になる、金もかかる、かえってよい人が選ばれない結果になる、そこで任命制の方がいいんだというふうな、いろんな意見がございまして、結局採決の結果は公選制を主張する者が六名で任命制を主張する者が七名、その他の人は他の意見を言って、結局過半数を得られなくて、結論を得られないままで答申がなされておるのでございますが、今回公選制をやめられて任命制をとられたというのは、その後の日本教育委員会運営の実情を見られまして、どういう点が根拠になって今回の任命制ということに相なったのか、その点を明らかにしていただきたいと存ずるのであります。
  58. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 さきにお答えいたしましたように、委員が一党に傾かぬようにということを考えたのに尽きるのでありますが、参考にいろいろ考えたことを申し上げますれば、あなたの今おっしゃった六と七との対立もありましたが、また占領中でありましたが、リッジウエーのときに、占領中の法規を改正してもいいということを言い出しまして、法令審議会というものができた。この法令審議会では、やはり委員会は任命制にしろという答申をいたしております。  今私もあなたも同様に属しておる党派は、各府県の連合会までしか十分できておりませんけれども、行く行くは町村にまで支部を作るのでございます。社会党の方は現によほど進んでおられますが、数年たたずしてやはり各市町村にもおのおの支部ができようと思います。そうすると、有力者は多数両党に属する、そのときに選挙をやるというと、やはり選挙のことでありますから、勝たなければならぬので、両派がしのぎを削るということになると、ある村では私の方が全勝することもある、他の村では社会党が全勝する、そうすると、教育に関して、社会党委員の全勝の村と、こちらの方の全勝する村とあるようなことが起りましたら、二大政党は非常にいいことでありますけれども、この分野ではまた非難を受けるような事態も起ってこないとも限らない。やはりそれよりもよく熟慮の上で、各市町村の議会が、品性が高潔で、教育、文化に対して識見を持っておる——抽象的の法律でありますけれども、そういう基準で選べというともかくも基準を作りまして、一党に偏せぬように中立性を保った委員会を持つ方が国のためにまじめなやり方で、このごろは選挙ばやり、民主主義ばやりで、選挙すればいいんだと一がいに新聞などはおっしゃいますけれども、もう一ぺん手をこまねいてよく考えるというと、この方が私はいいと心から信じておるのであります。
  59. 高村坂彦

    高村委員 任命制をとられたゆえんのことはわかりましたが、私ども教育委員会に属しております関係もございまして、この問題が表に出ましてから、賛否両論がいろいろな点でわれわれにも実は訴えられてきておるのであります。その中で、賛成の人もあり、反対の人もございますが、反対の人の中に、今回の教育委員会制度改正に当って、中央集権を目ざしておるんだ、こういうことで反対しておる人があるのであります。私はそのことはわかりませんけれども、この点もやはり明らかにしておく必要があると思いますので、私の所信を申し上げて、大臣の御所見を伺ってみたいと存じます。  日本教育委員会制度というものができました沿革から申しましても、必ずしもすっきりしたものではなかったことは御承知通りでありまして、経過から申しますと、この前の御説明にもございましたように、初めには昭和二十三年の十一月にこの法律が施行になって、その際は都道府県と五大市及び若干の市町村にできまして、その後また二十三年に十五の教育委員会ができて、計百十というもので昭和二十七年の十一月に全面実施になるまで来ておるわけです。この二十七年の全面実施になりました際には、われわれは実はまだ議席を持っておりませんでしたけれども、野党の立場にあって、市町村教育委員会の実施には反対で、社会党の諸君も御反対であったようでございます。しかしながらあのときのいわゆる抜き打ち解散によりまして、遂にこれが全面実施されることに相なってきたのでありまして、今日中央集権化ということが観念的に言われて、地方分権ということが日本教育一つの柱になっているように主張しておる人がございますけれども、これはどうも私には納得がいかないのであります。と申しますのは、やはり教育の民主化と申しますか、民主主義の進展のためにすべてのことをやらなければならぬということが大きな柱であったと思いますが、地方分権によって果して民主主義が健全に発達するかどうかというところにも大きな問題があると思うのであります。この点は、中央集権で民主主義がほんとうに進む場合もあると思います。たとえば占領下におきましては、もう占領政治でございますから、実質的には極端な中央集権である。形の上においては、なるほど非常な地方分権的な形を持っておりましたけれども、日本政府の上に強力な専制的な独裁的な占領軍司令官というものがおりまして、これが末端まで指導するような状況でございますから、私はこのくらいの中央集権はないと思います。そういうふうな制度のもとにおいて、日本の民主主義というものは非常に進展をいたして参っておると思います。ところがその後独立いたしましてから、そういった中央集権的な筋金といいますか、そういうものがなくなりましてからはどうなったかというと、私はかえって逆転している点もあるように考えます。地方で教育の点を見ましても、一面においては非常に行き過ぎた、偏した教育を行うようなところも出てきておると言われておる。これは左といわず右といわず、そういうことが現われているかと思います。教育委員の中には政治的な中立性を疑われるような人も出ておるところがないではなかろうと思います。非常に地方では、あるところでは左に片寄り過ぎ、あるところでは右に片寄り過ぎておる、こういうことが言われると思うのであります。ところが中央の政府はどうなっておるかというと、昔の日本の中央政府というものは、天皇が親任された者で政府ができておりましたから、従ってその当時の中央政府の性格というものと、今日全国民が選んだその政党によって選ばれている中央政権の本質というものは、非常に性格が私は違っておると思う。いわゆるほんとうの民主主義政府というものが、中央にできているといわなければならぬと思うのであります。そういうときに、中央の政府が若干の地方の教育等に対して行き過ぎ等を右といわず左といわず是正するということは、むしろ当然なさなければならぬところにきておると思いますが、これらについてどうも中央が少しでも地方に関係すると申しますか、権力を伸ばして参りますと、それは中央集権であって民主主義に反するのだと言いますが、私はこの地方分権というのはやはり民主主義の手段であって、もしも地方分権そのことが民主主義の健全なる発達に害があるような問題につきましては、中央がむしろそれをためていくことが、民主主義を健全に伸ばしていくゆえんだと考えるのでありますが、これらの点につきまして大臣の御所見を明らかにしていただきたいと存ずるのであります。
  60. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 今高村さんのおっしゃったと同様に考えております。抽象的に言えば、地方分権といい、または中央集権といい、政治上の主義はやはり限界があるのです。中央集権にも限界があります。地方分権にも限界があるので、どっちか一方をとったらもうそれでいいのだということなら政治は非常に容易なことですが、その限界の発見がむずかしいのです。一番地方分権の徹底したのは徳川幕府の各藩の制度でしょう。あれを倒して今度は明治政府は中央集権でやった。これも非常に徹底しておった。それで明治二十三年に至って地方分権で市町村に権限を与えた。それからあなたがおっしゃった、今度は戦争に負けた間は中央集権の進駐軍政治になって、それから今度は独立してわれわれはどこへいこうか、こういう幾多の経験を持っておりますが、教育については現在の教育委員会制度、それから市町村制、これは少しやはり行き過ぎた点もありはせぬか。民主主義、議会主義の政府を立てておきながら、文部大臣教育内容についてはちっとも発言権がないといったようなことはおかしなことなんです。教科書は文部大臣が検定しているのです。それを用いて全国何万の学校で教育をやっておりますが、それについてはどうもちっとも発言権がないようにするのが地方分権だというのが行き過ぎでありますから、それを少しやわらげるために全回の手段をとっているのであります。今回とっている手段は二つです。一つは県の教育長の任命について一つあらかじめ言うてきてくれ、大ていの場合同意を与えるから、それから町村のやつは県の委員会で同意を与える、この措置をとったことと、先刻山崎さんからお尋ねの五十二条の措置を行う、この二つの薬をちょっと入れてみた、この程度でうまく運用できるのではないか、かように考えております。それは甘過ぎる砂糖ばかりでは料理になりませんから、ちょっと塩を入れなければなりません。そこが政治のむずかしい点であります。私どもは千思万考の上このぐらいがいい、こう思ってやるのであります。
  61. 佐藤觀次郎

    佐藤委員長 河野正君。
  62. 河野正

    ○河野(正)委員 大臣は御承知のように、本法の提案理由の説明の中で、あたかも現行教育委員会制度改正するというような説明を加えられておるわけでございますが、実際に見て参りますると、私どもの想像に反しまして、むしろ現行法の改正というようなことでなくて、表題も示しておりますように、全く文字通り地方教育行政組織及び運営に関する法律という表題に使われましたところの法律案でございます。そこで私どもお尋ね申し上げたいことは、これは大きな質問でございますが、お尋ね申し上げたいことは、実質から申し上げますると、ただいま申し上げますように現行教育委員会法を改正したというよりも、むしろ根本的に現行法を廃止して、そうして新しい教育行政制度を作った、かように説明いたした方がむしろ妥当ではなかろうかというふうに理解するわけでございます。そこで一応提案説明の中では現行法を改正するということでございますが、これは文字通り別な法律案であるというふうに私ども理解いたします。そこでこのように根本的に現行法を改正して、そうして別な法律を作られました、大きい質問でございますけれども、まずその根本的な理由、それを大臣から御説明を承わりたいと思います。
  63. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 それは非常にむずかしいお問いですが、やはり私は教育委員会制度を維持して、改良しておるものと見ておるのです。学校というものがあって、これは金を出すのは——小学校のことを言いますよ。町村です。それから建物も土地も町村の営造物なのです。しかし町村議会、町村長が学校の世話をしないで、別に合議制の執行機関である委員会を設けて、これで教員の服務なり教育の行き方をにらんでいこう、こういうのが教育委員会でありますから、この委員会制度は同じことなんです。この委員会は、外国でも選挙による委員会を持っておる州、村もありまするし、任命の委員会を持っておる州、村もあるのであります。なるほど任命と直接選挙とは相当大きな開きでありますけれども、委員会たることには相違ないのです。しかもその任命たるや、昔のような官僚的の任命じゃなくして、直接選挙による村長が直接選挙による議会の同意を得ての任命でありますから、やはり民意はくんでおるので、教育委員会改正だということで、同じことであると私は思っております。  それから、どういう趣意だとおっしゃると、私が過日つたなくはありましたが本会議でもこの議場でも述べましたのが、あれが全体でございます。なお一口に申しますれば、この法案の終りに理由と書いてあるところがございます。これがその要約であります。もう一つ要約するというと四つになるのです。長くなっていけませんが、一つは調和ということ、すなわち一般行政との間の調和、委員会と町村長の系統とがきしみ合わぬように、その調和が一つ。もう一つ中立ということであります。選挙の結果一つ党派が勝ってしまって困ったようなことができぬように中立、今高村さんにお答えしたのがそれであります。もう一つは安定であります。任期をかえて、ちょうど参議院の議員諸君と同じように、初め任期をかえますから、ずっと続いていきます。安定であります。それからもう一つはこれも高村君のお問いに答えましたが、教育地方分権とはいいながら国民全体のためにせいとありますから、そこで日本全国の国民の教育一つの連携するように、今言った五十二条なり、あるいは教育委員長の任命の承諾なり、日本全国教育一つの、たとえていえばマリモのまりの玉のようなふうに一つ連携していこう、この四つのことが大体おもな理由でございます。
  64. 河野正

    ○河野(正)委員 大臣はただいま、これはどこまでも現行法の改正だというふうな前提でいろいろ具体的な事実を説明されたわけでございますが、私どもそういった問題を申し上げておるのではなくて、法律的な問題を申し上げておるわけでございます。御承知のように少くとも現行法第一条には教育委員会の使命というものが明示されております。ところが今般提案されました改正法案では教育行政組織及び運営に関する基本を定めることを目的とするということだけでございまして、その教育委員会の使命というようなものは全く明らかにされておらないのでございます。その使命たるや全く不明確なものがございます。私どもはそういった立場から考えてみまして、法律的の立場から考えてみまして、むしろこの法律案というものは改正を加えたというようなことでなくて、根本的に別の法律を作ったのだというふうな解釈を行なっておるわけでございます。そこで、いろいろ御説明はございましたけれども、私どもはただいま申し上げますように法律的な立場から質問いたしておるわけでございますから、そのような立場からもう一度大臣の御説明を承わりたいと思います。
  65. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 今現行教育委員会法の一条の目的についてお話がありましたが、この目的はちっとも違わないのです。ただこれは教育基本法なりあるいは学校教育法なり社会教育法ですでにこの大眼目はきめてあるのだから、そこで今回はそれは構成法で行政組織規定するものでありますから、こういう大きな文字を使わないで、今回の一条のようにいたしたのでありまするけれども、教育はいかなる部面においても常に教育本来の大目的を達するためであるということはちっとも違いありません。それはちっとも改正しておりません。全然同一であります。
  66. 河野正

    ○河野(正)委員 ただいま大臣は、全然異なったものではないのだ、私が先ほど指摘いたしました教育委員会の使命というものは、それは言うまでもなく明らかな事実であるというふうなお話でございますけれども、いやしくも地方教育行政組織及び運営に関する法律という別な法律が出て参ったのでございますから、もし大臣がさようといたしますならば、当然その第一条に、教育委員会の使命というものをおのずから明らかにしなければならない問題ではないかと考えます。そういった当然やらなければならぬことをやらないというところに、私の疑問が生じてくるわけでございますので、私どもはただいまの答弁に対しましては、まことに不満と言わざるを得ません。これはただいまの責任問題に関連いたしました具体的な一例ではございまするが、たとえば今度の改正案によりまするというと、教育委員の公選制というものが廃止されまして、特定の政党を標榜いたしまする選挙で選ばれたところの、政党色の強い都道府県知事、あるいは市町村長の任命によって教育委員が選ばれるということでございます。ところが現行法の教育委員会法第一条によりますると、明らかに次のようなことが規定されております。「教育が不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負って行わるべきである」かように現行法の第一条におきまして、その基本的な柱というものが明示されておるわけでございます。ところが先ほど申し上げまするように、今日出て参りましたところの改正法というものは、なるほどその法文の中には、教育委員会というふうな名前は残っておるのでございまするけれども、教育委員会の使命というものは非常にぼかされておる。非常に不明確にされておる。ということになりますならば、教育委員会という名前は残っておりましても、その実態というものは、全くあいまいもこな性格を持ったものと言わざるを得ないと思うのでございます。その性格が、あるいは使命というものが非常にぼかされておる。これは後ほど私どもからいろいろ論及して参りたいと思いますけれども、どうも中央集権的な色彩が濃厚になる。しかも教育委員会そのものの使命が明らかにされておらないということになりますと、私はきわめて大きな問題を残して参るものと考えるわけでございます。そういった意味で、教育委員会という名前は残っておるけれども、その実態というものは、全く私どもが想像することのできない、きわめて不明確な教育委員会だというようなことになりますならば、先ほどから私どもがいろいろと御指摘申し上げまするように、今般出て参りましたところのいわゆる地方教育行政組織及び運営に関する法律案というものは、現行法と根本的に内容、本質を異にするというふうに考えるわけでございます。ただいまのは、そういった一例といたしまして私が御指摘申し上げたのでございます。従ってそういった実例に基きまして、さらに大臣の御所見を承わっておきたいと思います。
  67. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 現行の教育委員会法第一条は、教育基本法に書いてあることを大部分そのまま繰り返しておるのです。文字も同じ文字を使っております。しかし今日から見ると、教育基本法はあるんですから、もう一ぺん同じ日本法律で同じ文字を繰り返すのはどうか。これは私どもの関係することじゃなく、むしろ法制局の考えることなんです。すなわち、この教育委員会法の上に教育基本法をやはりかぶっているのです。第一条と同じことがかぶっているのですよ。その証拠を申し上げましょうか。その証拠には、五十二条を見て下さい。これで、教育本来の目的達成を阻害する場合は、措置命令ができるのです。第一条の本来の目的を阻害するなとは書いてありませんけれども、本来の目的を阻害するなということは、教育基本法でちゃんとかぶっているのです。そこで、教育本来の目的は何だということを読む人は、教育基本法をあけて読むのです。そうすると、人格を養えとか、労働をとうとべとか、あるいは真理を愛せ、自立精神を養え、それからまたあなたの御指摘の、国民全部のために教育はあるのだという教育のあり方、不当な勢力に支配されるなということもあるのです。それを繰り返す必要なしとして、この委員会法の執筆者が書いておりませんけれども、それらのことは、もう寸毫といえども変りません。教育本来の目的を達するために、不当な支配に屈ぜずやるということが、もう本来のことであります。それゆえに、もし変っているとすれば表題が変っております。表題が変ったのは、教育委員会内部のことじゃなくて、教育委員会外のことをだいぶ書いておりますから、教育委員会法じゃ不適当だと思って、名前を変えているのです。教育委員会文部大臣のことも書いてあるのです。それから学校の教員の任命のことも書いてあるし、恩給のことも書いてあるのです。だから教育委員会法といわないで——元の法律は雑則に書いてあるが、それはよくないので、地方教育行政組織運営という名前が適切でありますから——くろうとが見れば名前はどうでもいいけれども、多くの人が見るもので、適切な名前でないと人に誤解を与えますから、こういうふうにしたのであります。
  68. 河野正

    ○河野(正)委員 ただいま大臣答弁を承わりまして、私まことに意外な点が一点ございました。と申しますのは、法文にいろいろ疑問があるのは、あたかも法制局の責任であるというふうな御答弁があったと思いますが(「ノーノー」と呼ぶ者あり)そう言ったのです。(清瀬国務大臣「そうは言わない」と呼ぶ)少くとも本法案を提案されます以上は、これは大臣が全責任を持って提案をせらるべき問題だと考えます。ところが、ただいまのように私どもがいろいろ御指摘申し上げるのは、教育というものが今日の日本の国内においていかに重大なる比重を占めているか、この問題は、先ほど与党の高村委員からもいろいろ御指摘がございましたが、教育中立性、あるいは教育の中央集権化、こういったいろいろな問題につきまして、国民大衆が非常に大きな関心を持っております。そこで、そういった国民が非常に重大な関心を持っている事柄でございますから、でき得べくんば法案においてもきわめてすっきりしたもの、あるいは疑問や疑惑の生じない、そういったものか望ましいということは当然でございます。大臣もそういった立場から御提案なさっていると私も確信いたしますけれども、ただいまの御答弁の中では、何かそういった法文上の問題は、法制局の責任であるというふうな御答弁をなさったことは、私どもといたしましては全く納得がいきません。これは国民がきわめて重大な関心を持っております以上は、もう少し大臣も慎重に、あるいはまた法案を出されました以上は、法案に対して全責任を持っていただくという態度を堅持していただきたいと思うのでございます。  そこで、私はさらに質問を続けて参りたいと思いますが、ただいままで私がいろいろ御指摘申し上げ、大臣もいろいろ申されましたけれども——これは私ども非常に疑惑の点があるわけでございますから、質問あるいは御指摘するわけでございますが、それに対して大臣からいろいろ御説明はあっております。法案の不備な点につきましては、教育基本法その他の関連においていろいろ御説明になっておりまするけれども、私どもといたしましては、先ほどからいろいろ申し上げますように、この法案の中で非常に不明確なものがある、非常に疑惑を生ずるような点があるということは、これは全く否定することができないと思います。ところが結論的には、大臣はこの教育委員会は現行法と何ら本質的には相違するものではないというふうにおっしゃっておりまするけれども、私どもこの改正法案から受けまする印象というものは、これは教育委員会という名前だけを残して、その名前を残すことによって、どうも政治的な欺瞞性を糊塗されておるというふうに印象づけられるわけでございます。そこで重ねてでございますけれども、大臣の説明の中にもいろいろ疑問を含む点があったのでございますから、そのような政治的な意図があったのかなかったのか、そういった点につきましてもさらに御答弁をお願いしたいと思います。
  69. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 お問いの前段に、私が責任を法制局になすりつけて、責任を回避したとでも言わんばかりのことをおっしゃいますが、私は決してそんなことを言った覚えはありません。それは上にかぶっておる法律をここへもう一ぺん書くか、前に法律があるんだから、それを利用してその次だけを書くかということは、むしろ法律技術のことなんだという意味であります。決して責任は回避しません。また法律技術のことでも問うて下さい、何でもお答えいたします。ただあなたの前回のお問いは、現在の教育委員会と今度の教育委員会とはまるきり違うものじゃないか、こういうことなんです。二つのものが同一かいなや比較してのことは、非常にむずかしいことなんです。どこが違うものかということです。けれども大体おもな目標が合えば同じものとみていいじゃないか、こういうのです。人間でも、あなたと私と同じ人間だけれども、それはやっぱり違うのです。そこで本質論じゃなくして、あなたのおっしゃるのは、むしろ法律技術の方のことをおっしゃる。本質としてはやっぱり同じ使命を持っておるのだから、同じく合議機関で学校の世話をするという委員会だから、これは同じものじゃないか、こういうことを言うたのでございます。  それからあなたのお問いは、いろいろの言葉がありましたが、結局政治目的を持っておるかどうかということが最後のお含みでありました。その政治という言葉も、これも言葉のニュアンスがありまするが、これはわが日本民主党が政綱として立てたものでありまするから、(「自由民主党と言え」と呼ぶ者あり)これは取り消します。自由民主党です。(「怒られるぞ」「それはどういうことだ」「そういう政党があるのか」と呼ぶ者あり)ちょっと待って下さい。日本民主党の時分にやはり考えたことなんです。私は日本民主党の政務調査会長であった。そのときに考えたのです。そのときに日本民主党の政策の一つとして考え、自由党と合同をする際に、合同の政策の一つとして算えたものでございまするから、その意味においては政治的意味はあるのでございます。われわれの所属する党派の、または所属しておった党派の政策の一つであるということは、政治的意味があるのであります。しかしながら将来この教育委員会政治的に乗っ取ろうとか、政治的に弾圧しようとか、そういう意味の政治的であったら、ちっともございません。
  70. 河野正

    ○河野(正)委員 ただいまの御答弁をお聞きいたしますると、前後にきわめて矛盾した点がございます。と申しますのは、政治的な中立性を堅持しなければならぬということが非常に大きな柱として強調されておりまするけれども、ただいまの答弁を伺っておりますると、政党としてこの教育行政を支配するという意図はないけれども、しかしながら党として強く考えたというようなことは、少くとも大臣政治的な中立性を強調せらるる点とは非常に大きな矛盾があるものと私は思います。この点大臣はやはり矛盾はないと仰せられますか、一つその点をもう少し明らかにしていただきたいと思います。
  71. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 ちっともございません。
  72. 河野正

    ○河野(正)委員 ないということでございまするから、これはもうこれ以上伺いましてもいたし方がございませんが、私ども元ほどから、ここに出て参りました改正法は単にその表題が変っておるということでなくて、内容の上におきましていろいろ本質的な変革が行われておるということは、いろいろと申し上げた通りでございます。ところが大臣は繰り返し繰り返し、自分は改正を行う意思にほかならないというようなことを強調されております。また提案説明を見て参りましても、現行制度のとるべき点はとり、改むべき点は改め、加えるべき事項は加えたと言っておられます。もしそうだといたしますならば、今日まで現行法が数年の間実施されて参りましたその実施の中で、今日まで住民より選ばれましたところの地方教育委員の皆様方が、その運営につきましてはいろいろと御苦労なさったと思います。もし大臣が提案説明で申されましたように、改むべき点は改め、加えるべき事項は加えたといたしますならば、その改むべき点あるいは加えるべき点というようなことは、当然今日まで現行法の運営に努力し苦労して参られましたところの教育委員あるいは教育委員会の意見も十分尊重せらるべきであった、というよりも、むしろこれは道義的にも私は十分尊重せなければならない問題と思うのでございまするが、この点につきまして大臣はどのような態度をもって臨んで参られましたか、その点を一つ明快に御説明いただきたい。
  73. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 今までの、また現在の教育委員会並びにその委員諸君教育に関する努力には敬意を払っております。ことにわが国が敗戦で、もう住宅もなくて人が困っておる時分に、ともかくも六三制の学校をお作りになってここまで来たのは、並々ならぬことと思っております。その功労をミニマィズする考えは少しもございません。それゆえに地方教育委員会委員諸君、またこれらの人が寄って会を作っておられまするが、会の代表者の諸君が私のところへ来て御説明になったことは、一々敬意を表して聞いております。それからまた書面をちょうだいいたしております。これも敬意を表してみんな読んでおります。一通といえども没にしたものはございません。しかしながらいろいろなほかの人の意見も聞いておる。教育委員会諸君ばかりではなくして、町村長のおっしゃることも聞いております。また代議士諸君のおっしゃることはむろんであります。(「社会党の言うことは聞かぬ」と呼ぶ者あり)いろいろと御説を研究して、わが国のためにそれが一番正しいだろう——戦後これだけの年がたって日本の社会秩序も大へんよくなりました、また一方政党政治も発達して、二大政党になろうといたしておる、だんだん進めば、各町村も二大政党に分割されるという情勢も見えております。こういう情勢を見て、やはりこのままでいいというわけには参りませんです。あなたの方もある村に支部を置かれる、僕の方も支部を置く、そして有力者が半々になるという時分に、選挙をしてどうなりますか。そういうときのことを頭に描いてごらんなさい。公選制はいけませんよ。やはりこの方がよろしい。どうぞ一つよろしくお考え賜わりたいと存じます。
  74. 佐藤觀次郎

    佐藤委員長 午前中の質疑はこの程度にして、午後は一時三十分より引き続き質疑を続行いたします。  この際、休憩いたします。     午後零時二十二分休憩      ————◇—————     午後一時四十九分開議
  75. 佐藤觀次郎

    佐藤委員長 休憩前に引き続き会議を再開いたします。  質疑を続行いたします。河野正君。
  76. 河野正

    ○河野(正)委員 先ほど私は大臣に対しまして、今度出て参りました改正法律について、大臣も御説明いたしましたように、現行法のいろいろな欠陥を改めあるいはまた加えるべき事項は加えて参った、そうであるならば今日まで数年間の長い間、いろいろと現行法の運営について努力され、また御苦労されました教育委員会なりあるいはまた教育委員方々の御意見なり御意思なりを尊重されたかどうかというような意味の御質問をいたしたのでございますが、これに対しまして大臣はもちろん全国のいろいろな意見を尊重もするし、あるいはいろいろ出て参った陳情に対しましても一々耳を通して、十二分に尊重したというふうな御答弁をなさったのでございます。ところがこれは新聞にも出ておることでございますが、先般、全国教育委員方々大臣に対していろいろ意見を具申しようというふうな強い要望があったにつきまして、大臣は、漁業の法律を変えるのに魚屋に相談する必要はない、刑法を変えるのに一々囚人に聞く必要はないというお話をなさったように承わっております。もちろんそれは後ほど取り消されたということでございまするけれども、しかしながらそういったお考えを持っておられますることは、私は今日まで生きておると考えまするが、そういたしますると、先ほど大臣は私の質問に対しまして、全国のいろんな人々の意見も尊重し、またいろいろの陳情に対しましても全面的に目を通して十二分に耳を傾けたということでございまするけれども、ただいまのように大臣はきわめて不穏当なお言葉を使われたのでございますが、その点につきまして今日大臣はいかがお考えになっておりまするか。また先ほどから申し上げて参りました私の質問に対しましても、多少矛盾があると思いますがいかがでございまするか、大臣の御答弁を承わりたい。
  77. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 私も長年国会に席を持たせてもらっておりまするが、法案など考えるときには専門家の御意見を十分に聞くべきものであります。同時にまた専門以外の一般の利害関係のない人の意見も聞くことが必要でございます。私の経験によると非常に直接そのことにはまり切っておる人の意見は、詳しくていいけれども、あんまり詳し過ぎて一方に偏しはせぬかと思われる場合もなきにしもあらずでございます。私はそういう感想を持っております。  今お示しの問答のことは実はこういうことなんです。あの相手の方は、かつて私と同じ政治主張を持たれ、親しい友人なんです。今までもこのことについてはいろいろと、十分に話を聞いておるのですが、夜電話をかけられまして再び繰り返して言われるので、こちらの感想では、夕食のあとでもありまするし、幾分酒気でも帯びていられるのではないかと感じたくらいでありましたが、そのときにあの問答がありました。向うからも元気な話、私も元気な話をしたのです。そのうちのたとえに、あまりおもしろくないたとえがあったことは事実です。翌日出合いがしらに、まず私は取り消したのですが、ばりをされたのです。私を罵倒されたのです。そこで私は居直って、それはどういう意味だと言って今度は私がさかねじを食わしたのです。そこで座が白けてしまいましたから、それではきのうの言葉もきょうの君の言葉も、どっちも相打ちでなかったことにしよう、昨晩言ったこともなかったこと、今君の言ったこともなかったことにして冷静に話を進めよう、こういう話で終ったのでありまするから、一たん男子がなかったことにするという約束をいたした以上は、その答えが私に有利であっても不利であっても、その内容を申し上げない方がいいし、日本人的であると思いまして、過日参議院でもお尋ねがありましたが、その答弁は拒んでおります。
  78. 河野正

    ○河野(正)委員 ただいま私の質問に対しまして大臣は、事実は認められますけれども、しかしそれは個人的な意味であるというふうな御答弁でございました。しかしながら私どもが黙過できないことは、たとい言葉のやりとりというものは、個人的な問題でございましても、刑法を改めるに一々囚人に聞く必要はないというようなことは、私は単に個人の言葉のやりとりというふうに考えるわけには参りません。やはりこれは今日現行法に基きます教育委員会あるいはまた教育委員の人々が非常に重大な関心を持っておるわけでございますが、そういった人々の立場あるいは権威を傷つけるもはなはだしい言辞ではなかろうかというふうに考えます。それで大臣は、ただいまのお言葉では、それはお互いに個人的にやりとりしたのだとおっしゃいますけれども、対象となるものはやはり今日の教育委員会であり、また教育委員の人々である、かように感ずるわけでございます。そういった点を考えまして、大臣はこのような、漁業の法律を作るのに魚屋さんに相談したり、刑法を改めるのに一々囚人に聞く必要はないというふうなお言葉を吐かれたということは、不穏当である、まことに不謹慎であった、というふうにはお考えになりませんか。
  79. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 この関係者が寄って、なかりしことにしたのですから、ないのですから、それについては何とも申し上げられません。
  80. 山崎始男

    山崎(始)委員 関連。今お話を承わっておりますと、おそらくそのことは全国都道府県教育委員会文部大臣との面会をさしてくれ、いや、しないというその間のいきさつだと思いますが、私も多少聞いておることがあるのであります。今のあなたが相打ちとしようというその相打ちの内容は、一体どういうことなんですか。
  81. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 それを申し上げれば御了解下さることじゃと思うのです。日本人同士、友人同士の話だから、あるいはかえってユーモアだと思って下さると思いますけれども、あのときに、お互いにないことにしようと約束したのですから、他人がふちで聞いておって、こんなことがあったというなら別ですけれども、私もあの人も、両方の口からはこれは言えません。傍聴者が聞いておって、かれこれ言えば別ですけれども、私は言わざる義務を持っております。
  82. 山崎始男

    山崎(始)委員 私がそういうことをあなたにお尋ねいたしますことは、かりにも日本教育が寝るか起きるかという大きな問題を中心にして会見を申し込んだ、その間のいきさつのことなんです。先ほどからお伺いしておりますと、あなたのお言葉の中に、そういう重大なる会見に対して、あなたの表現がまことにお上手なといいますか、どうも夕食のあとではあるし、酒気を帯びておったように思うというお言葉があったのであります。たしか今あなたはお言いになったのであります。こういう言葉は、何も知らない第三者が聞いておりますと、このくらい厳粛な問題を意図して会見を申し込んでおるという雰囲気が非常にぼやかされてくるのです。それで今あなたが言われた酒気を帯びておった云々という言葉は、これは私は重大な発言だと思うのであります。万一酒気を帯びておらなかったならば、あなたはどうされるのでしょうか。事柄が家を買うから、一つ文部大臣世話してくれというような問題じゃない。会見を申し込んだということはおそらく日本教育を憂えての会見なんです。しかもあなたのお仕事と最も関係のある全国都道府県教育委員会幹部の連中なんであります。その間の話のいきさつを文教委員会であなたが報告なさるのに、どうも酒気を帯びておったというような、夕食のあとで云々というような言葉が出るということは、本件に関する質問者の質問の要点というものに対して、あなたはお言葉が上手だと申し上げることはできるかとは思いますが、あまりに私は重大な発言だと思うのであります。果してもし酒気を帯びていなかったら、もしそういうことをこの委員会であなたがおっしゃったということを聞いたならば、また怒るのじゃないかと思うのです。どう思われますか、一体もし酒気を帯びていなかったらどうされますか、発言をお取り消しになりますか。どうなんですか。また事実上酒気を帯びておったような情勢であったのかどうか、一点お聞かせ願いたいと思います。
  83. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 私がこの委員会へ報告したとおっしゃるけれども、私が進んで報告するのじゃございませんので、今お聞きがあるからして答えができるぎりぎりまで答えておるのです。これ以上答えれば信義にそむきます。そのときには同じことを何べんでもおっしゃって、しかも言葉のろれつも少し回りにくかったのです。ほんとうに飲んでおられるかおらぬか、電話ですからわかりはしません。親しい人ですから、その人の言葉は私はよく知っておる。平生よりちょっとろれつが回らないじゃないかと思ったので、そう言っておるので、ほんとうに飲んでおらなかったら私の耳のあやまちであります。私は思うは思ったのであります。日本人は酒を飲んだら管を巻いたり同じことを言いますね。あれと同じことです。同じことを言ったのです。
  84. 河野正

    ○河野(正)委員 それは大臣言葉といたしまして、先ほどの山崎委員の全教委の辞職問題でございませんけれども、何か個人的な問題だということでごまかしておられますけれども、しかしながらそういった考え方で、そのような教育委員会を蔑視したようなお言葉をお使いになったことは否定することができないと思います。たといそれを取り消された、あるいは個人的な問題だからお互いに相殺した、もしそうだといたしましても、そういった考え方というものは依然として生きておるのではなかろうかというふうに考えております。そういたしますと、大臣が、もし心の底でそういったお考えを持っておられますことは、今日の教育委員会あるいはまた今日の教育委員方々を蔑視するまことに不穏当な、まことに不謹慎な態度ではないかと思いますが、その点いかがですか。
  85. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 午前中から終戦以後の教育委員会並びに委員方々教育のために熱心にやられたことについては深甚な敬意を表することを三たびも四たびも繰り返して申しております。私はこれらの人の過去における功労については敬意を表するのであります。しかしながら世の中は刻々変っていきまするからして、明日の日本のためにどういう法律が一番いいかはたとい委員の方に敬意を表しても法律改正はまた別途でございます。
  86. 河野正

    ○河野(正)委員 私が申し上げているのは、もしそういった現在の教育委員会あるいは今日教育委員の人々の立場を蔑視した考え方がもしありとして、そういう蔑視した態度によって法律改正をなさるといたしますならば、私どもとして当然了承するわけには参りません。そこで私が大臣にたびたびお尋ねしておるのは、今日なおそのような教育委員会なりあるいは教育委員方々を蔑視するような考え方を持っておられるかどうか。これは今日の改正案が出ます以上は、きわめて重大だと思います。そういう蔑視した考え方で改正案を出されるということは私ども了承できません。今日の大臣の御心境をお伺いしたいと思います。
  87. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 かつても蔑視したことはございませんし、今日も毛頭蔑視いたしておりません。
  88. 河野正

    ○河野(正)委員 そういたしますと、大臣は先ほど私が指摘いたしました言葉は使うべきでなかった、そういうことは誤まっておったというふうにお考えになっておるかどうか、お聞きしておきます。
  89. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 それはなかりしことですから、よい悪いの批判以外でございます。
  90. 河野正

    ○河野(正)委員 文部大臣は個人的な問題である、あるいは相殺したのだということでございましょうけれども、しかしそういった考え方というものは生きておると思うのです。だからそういった考え方を今日もやはり正しいと思っておられるかどうか、あるいは誤まっておると思われるかどうか、その点を明確に一つ答え願いたい。
  91. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 繰り返すようでありますが、あれは夢で、なかりしことなんですから、ないものについての価値判断はできません。
  92. 河野正

    ○河野(正)委員 あなたはそういうことはなかったということでございますけれども、言ったという事実は先ほどから認められておるわけです。それでその言葉をたとい言葉のやりとりで相殺したとはいいながらも、そういった言われたことは厳然たる事実でございますし、大臣も認められております。そこでそういった考え方というものは私は今日も生きておると考えます。そこでそのような考え方を今日も持っておられるかどうか。その点を答える必要はあると思います。
  93. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 失礼でございますが、同じことでございます。すなわち当夜のことはなかりしこと、私もあったように言わず、向うも言わない、両方とも約束ができておるので、ないものをつかんで価値判断はできません。
  94. 河野正

    ○河野(正)委員 大臣は、言われたということは認めておられるわけです。しかしそれは個人的な言葉のやりとりであるから相殺しようじゃないかということで、二人の間できめられたことなんです。しかしそういった考え自身は残っておると思いますので、その点は明確になされておいた方がいいと思います。
  95. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 あなた方の人生観はどうか知りませんけれども、私どもの人生観としては相盟約した友だちがあれはなかりしことにしようと言った以上は首が切れても言わないのが当りまえです。
  96. 河野正

    ○河野(正)委員 御承知のように大臣は本会議の席上におきまして、マッカーサー憲法云々についてお取り消しをなされました。しかしながら一方国会外におきましては、依然としてそういう考え方は間違いでないということで懲罪動議を出されましたことはつい二、三日前の事柄でございます。そこで私が一番心配いたしますのは、そういった大臣のいわゆる政治的な欺瞞性、こういったことを私どもは非常におそれますし、(「法案関係がないじゃないか」と呼ぶ者あり)もちろんこれは法案には十分関係がございます。そういった誤まった考え方に基きまして、私どもは法律改正されることを非常に心配するわけでございます。そこで何かこの問答は法案関係がないようなお考えのようでございますけれども、しかしそういった考え方というものは少くとも一国の法律改正いたします場合におきましてはきわめて私は重大な問題と確信いたします。そういった意味でお尋ねいたしておることでありますから、重ねてでございますけれども、もう少しはっきり御答弁を願いたいと思う。
  97. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 同じ問いを繰り返しておらるるようでありまするが、当夜のことはなかりしものとしようということを両人とも約束しておるのでございます。男子がこれだけの約束をした以上は、それをあのときは向うはこう言うた、おれはこう言うたという自慢話などは、すべきものじゃございません。断じてこれについては言及いたさないのが、男の男たるゆえんでございます。
  98. 河野正

    ○河野(正)委員 大臣はただいまの答弁につきましては、きわめて痛いところであると思ってごまかしておられるようでございまするが、今日までマッカーサー憲法におきましても、非常に物議をかもしておられます。またただいまのきわめて現在の教育委員会なりあるいはまた教育委員を蔑視するような言辞を吐かれましたこと、こういった物議をかもすようなことを言っておられますが、こういったまことに不謹慎な事柄というものは、これは今日の文教の最高の地位にあられます大臣といたしましては——教育基本法第一条には教育目的といたしまして、教育は人格の完成を目指すと書いてあります。これは教育基本法第一条でございます。ところが今日まで大臣がとって参られました態度あるいは言動というものは、大臣みずからが教育基本法第一条に示されました教育というものは人格の完成を目指すものである、こういった法文を踏みにじっておる、この法律を犯しておられるということを私どもは強く感ぜざるを得ないのでございます。これに対しまして大臣教育基本法第一条をいかがお考えになりますか。     〔発言する者多し〕
  99. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 ちょっと整理して下さい。不規則発言がだいぶ多いようでございます。  私の人格についてあなたはおっしゃいました。あなたも重大な御発言をなすっておられます。私がうそをついたんであったら、それは御非難下さい。私はマッカーサー憲法ということは、明治の憲法を明治憲法というのと同じ正しい称呼であるということを、昨年の七月私に向ってあなた方が懲罰をお出しになった時分にも説明しております。取り消しはしたが、言うたのはほんとうだ。そこでヤジがある。言うたのはほんとうだ。しかしながらこれは軽蔑の意味ではない。明治憲法に向って明治憲法と言い、マッカーサー時代の憲法をマッカーサー憲法と言うたんで、われわれ改正されるまでは、この憲法を尊重する。しかしながら国会の言論は自由だから、言論の自由ということも考えて私を罰するなり無罪にするなりして下さいと言ったら、そうしたら国会は無罪の判決をされた。それで今回また内閣委員会で私の信念いかんとおっしゃったから、私は同じ信念です。そのときにもしもあれが悪いことだといって降参すれば、私はうそつきです。結局信念いかんといったのに対して、正しい信念だ、これはすなわち人格を守るゆえんでございます。今あなたが私に質問をされるのでも、あのときにはこう言うたんだといって、ここでべらべら私が言ったら、私の友人に対する信義を裏切ります。信念に生き、信義を重んずるものは人格者じゃないとおっしゃるのですか。あなたは人格ということをどうお考えになっていますか。それを聞きたい。
  100. 河野正

    ○河野(正)委員 ただいま大臣答弁を承わりまするというと、まことに開き直ったお答えではございますけれども、しかしながら筋が通っておりません。マッカーサー憲法にいたしましても、大臣が自分の信念であるから、その所信を貫くというような態度をとって参られますれば別でございますけれども、しかしながら、本会議におきましては明らかに訂正されたではございませんか。あなたがこの言葉は正しいんだ、自分の信念だというようなことでお貫きになっておれば、これは別でございます。所信を貫徹されておられますれば別でございますけれども、本会議におきましては、ここに野原委員もおられますが、明らかに訂正されております。そうしてなお後ほどの委員会におきましては、認められておる。ここに問題があるわけでございます。そこで大臣がもちろん信念でございまして、その信念を貫いておられるならば、私は問題にいたしませんけれども、その信念が貫かれておらない。そこに私は問題があると思います。そういう意味で私はこの教育基本法第一条の精神に反する、かように指摘しておるわけでございますから、何も開き直られる必要はございません。大臣は自分の所信であったら所信であったように、はっきり一つ示していただきたい。
  101. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 お答えの必要も少いかと思いますが、去年七月のことは、私はマッカーサー憲法という名前が悪いと言って取り消したのではないのですよ。あのときに議場が騒然たるものがあった。そこで私の所属している党派の議事進行係が取り消せとおっしゃったので、議事を進行するために私は取り消したのであります。それで翌々日私に向って懲罰がありましたから、マッカーサー憲法という言葉は、決して悪いんじゃないんだ。議事進行の便をはかるために取り消したけれども、しかしながら明治時代の憲法を明治憲法といい、ドイツの憲法をワイマール憲法といった、それと同じ意味で、決して侮蔑の意味じゃないという私の信念を披瀝して、その上どうか皆さん自由に裁判して下さいと言ったら、それは無罪だとおっしゃった。どこが悪いんです。
  102. 辻原弘市

    辻原委員 関連して。今教育委員会の代表が大臣に会った問題に対して河野君がただしている中で、大臣から昨年の七月のマッカーサー憲法に対する大臣の失言取り消しの一幕を今伺ったのでありますが、(清瀬国務大臣「失言じゃない」と呼ぶ)あなたは旧憲法を称して明治憲法といい、またドイツの憲法を称してワイマール憲法という、それと同じような意味合いでマッカーサー憲法と言ったのである。ここマッカーサー憲法というのは、当時取り消しを要求されて、あなたが取り消しをせられた。そういった理由ではなしに、私は信念としてマッカーサー憲法という考え方は変えていないということを、今御答弁があったわけですね。ところがわれわれが本会議において取り消し要求をして、また当院自体としてその取り消しを当然であると認めたのは、今あなたの言うような、マッカーサー憲法というのはそういった明治憲法と同じような語意に基くものである、しかし議事進行の都合上取り消した、こういったような意味合いで要求したのではなかった。そのことは当時の本会議の経緯を見ても明らかである。従って今あなたの答弁から拝察すれば、マッカーサー憲法というものは、決して私は本会議において憲法に対する侮辱的な言辞として不穏当であったから取り消しをしたのではない、こういうふうにここであらためて断定せられますか。
  103. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 そのときの速記録をごらん下さい。私は取り消し要求によって取り消したのではございません。自発的に取り消したのでございます。しかしながら自発的に取り消したのは、議事をなめらかにするためだということは、懲罰のときに言うております。問題が起りましたから、きのうまで私は速記録を持っておりましたが、きょうは持っておりませんけれども、どうかあのときの速記録をごらん下さい。あなたの方が非常にお騒がしになって、さすがは憲法をお守りになる党派だと思って敬意を表した。がしゃがしゃがしゃがしゃ、これでは議事が進みませんから、大方マッカーサー憲法という言葉が気に食わぬだろうから、これに拘泥する必要はない、これは取り消す。それでもまだおっしゃったから、また取り消し、議長僕は取り消したんですよと言ったら、議長が自発的にお取り消しになりましたという宣言をして、それでずっと進んだ。翌日……。(発言する者あり)発言中ですよ。落ちついて聞いて下さい。私に対して懲罰の動議がありました。一身上の弁明をする権利がありまするから、私は一身上の弁明として、そのことを言っております。速記録をごらんになると、よくわかっておるのです。明治憲法とワイマール憲法を引いて、これと同じ意味でマッカーサー憲法と言うので、これを蔑視する意味はちっともない。ことにこの国会では言論が自由なんで、もちろん言論が自由だから、用語を非難するなんということはよくないという意味を含めた言論の自由なるこの国会においての判断として、御判断を願いたいということを私は申して降壇しております。そうして採決したところが、国会は私の言う弁明をお聞きになったのか、これは懲罰すべきものでなしということで、私は無罪になっております。それ以後においてはマッカーサー憲法ということは、よそは知らぬけれども、国会内では何ぼ言うてもいいのです。罪になりません。それゆえに、この間もあなたの方から言い出したのです。私が言ったのじゃない。マッカーサー憲法という言葉がタブーでありましたが、それを初めて言うた人はあなたの方です。私が言い出したのではないのです。
  104. 辻原弘市

    辻原委員 まことにその大臣言葉を聞いて、一応論理は合ったといたしましても、大臣の発言としてまことにこれは不謹慎であるし、これはまた放言だと思う。それは一昨日あなたに対するわが党の懲罰動議が終ったから、にわかに強気でそういうことを言われておると私は思うのだけれども、当時あなたがマッカーサー憲法を発言されたときに、少くともその言葉を受け取った印象として、わが党のみならず、当時の自由党も、これは不謹慎であり不穏当であるというために、その取り消し要求を迫ったことは事実である。(「ノーノー」)少くともこれらあなたの発言したことによって議事進行がスムーズにいかないので、だから一つ取り消しをしてくれ、こういうふうに自由党なりあるいはわが党の議会運営の立場からそういうふうな要求があったとして取り消しておるのならば、あなたはそれを今ここで言われることは妨げないと思うのだけれども、われわれが取り消しを要求したのはそういう意味ではなかった。そうすると国会全体の意思を、あなたはごまかしたということになる。そのことは、議事進行を妨げるから私は取り消した、要求した方は、言葉として不穏当だからこれを取り消せ——少くとも議長はそういうような発言を私はしておると思う。不穏当だから取り消せ、何だかその発言があったときに、にわかにその議事の進行が妨げられたからそれを取り消せとは、決して議長は言っていないと私は思う。どうですか、その点は。
  105. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 今速記録をとりにやりましたから、論より証拠、それによってお答えします。
  106. 佐藤觀次郎

    佐藤委員長 大臣答弁速記録を必要だそうですから、しばらく休憩いたします。     午後二時二十四分休憩      ————◇—————     午後二時三十一分開議
  107. 佐藤觀次郎

    佐藤委員長 再開いたします。清瀬文部大臣の発言を許します。
  108. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 これが官報号外の昭和三十年七月五日の記事でございます。  ○清瀬一郎君(続) 訂正いたします。━━訂正いたします。━━訂正いたします。━━ただいまのヱ━━━━━━━━━という言葉を取り消します。 棒が引いてあるのは、これはそのときいったマッカーサー憲法という言葉です。   その次のお問いは……。(発言する者多く、議場騒然)先刻の言葉は取り消しました。  ○議長(益谷秀次君) ただいまの発言について、清瀬君から自発的に取り消しする旨の発言がありました。(発言する者多く、議場騒然)静粛に。 こうなっております。その次に、七日に私のそれに対する弁明があります。
  109. 佐藤觀次郎

    佐藤委員長 辻原君、簡単に願います。
  110. 辻原弘市

    辻原委員 この言葉は、さっきあなたが言われたように、議事進行のために取り消すのだ、こう言っておると思うのですが、あなたの取り消しをされた言葉の冒頭は「訂正いたします。」ということです。だからこの言葉を適当ならずと認めて、あなたは「訂正いたします。」と言ったのですか。
  111. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 文章全体から見ればそれは訂正、その言葉だけを見れば取り消しであります。
  112. 辻原弘市

    辻原委員 その「訂正いたします。」と言われた訂正の内容は、どういうふうに訂正をされようとせられたのですか。
  113. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 マッカーサー憲法という文字を除くことです。
  114. 辻原弘市

    辻原委員 除いたのですか。
  115. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 はい。
  116. 佐藤觀次郎

    佐藤委員長 辻原君、簡単に願います。
  117. 辻原弘市

    辻原委員 その文字を除かれたら、当然マッカーサー憲法に対する新しい言葉の概念というものを、あなたは考えられなければならぬと思います。マッカーサー憲法に表現されているいろいろな言葉の内容、それを取り消し、あるいは訂正されたのだから、別個な言葉で表現された言葉の方が適当であるとあなたは考えられているわけですか。どういうふうに表現されようとしたのですか。
  118. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 あまり一つの問題に長くなると思いますが、あのときの話はこうであったのです。やはりこの間と同じように、飛鳥田君から質問があったわけです。どういうふうな質問かというと、一体この憲法ができたら解散でもするのかということだった。それは同じ日本の憲法が二つですから、マッカーサー時代のものはマッカーサー憲法、それから今度委員会がこしらえた委員会憲法、この二つが現われたら、どっちがいいかを判断するために、解散をすることあるべしということを私は言おうとしたのです。同じ日本の憲法だから、——ちょうどあなた方社会党が二つあったと同じことです。マッカーサー時代の日本の憲法と委員会時代の憲法と、それを比較しようというのだから、やはりそれが必要な言葉であったのです。しかしながらマッカーサーという文字を除いても、憲法といえば日本憲法ですから、今の日本憲法と将来作るべき日本憲法との比較がそこでできる、それを抜いても了解ができますので、そう気にさわるのだったら、それは抜いて演説を続けようというので、そうしたのでございます。そのことは、私は言いのがれではありません。七日のところを見て下さい。七日の私に対する懲罰のときに、一身上の弁明としてその通りのことを言っております。これを悪いといってかぶとを脱いで降参したことは、いまだかつて一ぺんもないのです。
  119. 佐藤觀次郎

    佐藤委員長 関連して野原君、簡単に願います。
  120. 野原覺

    ○野原委員 私は本会議において懲罰の動議を提出いたしました際にも申し上げましたが、お尋ねしたいことは、あなたが訂正いたします、これは自発的に言われたということであります。しかも議事進行のためにおっしゃったそうでございますが、それはいずれといたしましても、訂正いたします、訂正いたしますというこのことは、清瀬一郎さんとしてはあなたの信念による言葉でない、こういうように私は受け取っておるのでございますが、その通りでよろしゅうございますか。
  121. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 それは少し違っております。訂正または取り消しを自発的にしたことは事実なんです。しかしながらあのときの情勢は、あなたの方はお聞きにならないのです。何といっても名札をとって、——日本の憲法は自由主義の憲法だから、私の言うことが悪ければ反駁は自由です。それを議長の許可を得ずして、総立ちになってがちゃがちゃと名札をやられる。これでは私の言うことは徹底しませんから、言葉ぐらいは取り消しても皆さんによう聞いてもらおうと思って、取り消したのでございます。これを不穏当と考えたことはいまだかつて一ぺんもありません。
  122. 野原覺

    ○野原委員 従ってマッカーサー憲法というのがあなたの信念であります。これは与党の諸君も聞いておる通りですね。ところがそれを訂正したのでございますから、あの議事進行のために訂正したということは、あなたの信念ではなかった、このように私は受け取っておるのでございますが、間違いないですか。
  123. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 訂正するということは、私の心から出たことでありますけれども、それが不穏当な言葉という意味で訂正したのではなくして、あなた方が怒号されておるのを静めて、よく聞いてもらおうというためなのであります。目的が違います。
  124. 野原覺

    ○野原委員 この点は委員長にも要望いたしますが、これは懲罰動議にもなって、内閣委員会でも相当問題を起した点でもあります。なお私どもはこういう点を解明されなければ、与党の諸君はいたずらに本論々々と言いますけれども、これはやはり文部大臣の信念ということにつながる問題でもありますから、私はもう少しこれを事態をはっきりさしていただきたい。この審議をスムーズにするためにも、お尋ねをしなければならぬと思うのであります。不穏当と考えて取り消したのではないということでございますが、訂正いたしますとあなたは十回近くも続けて言われましたが、それは一体どういう考えで言われたのか。
  125. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 これを読んでみましょうか。懲罰のときに私はこう言っております。これは昭和三十年七月七日の速記録の二ページでございます。
  126. 清瀬一郎

    清瀬一郎君 私が一昨日あの発言をなしたことにつき、私を懲罰委員会審査に付すべしとの動議につきまして、簡単に一身上の弁明をいたします。一昨日私がなした憲法調査会法案の趣旨説明に関係いたしまして、飛鳥田君の質問に対し私のいたしました答弁のうちに、わが現行の日本国憲法を、将来憲法調査会の審議を経て作成せらるべき日本国憲法案と、この二つを比較するに際しまして、前者をマッカーサー憲法と申したことは、速記録にはありませんけれども、これは事実でございます。(発言する者多し)これは、明治天皇欽定の憲法を明治憲法と申し、(発言する者多し)第一次世界戦争後のドイツ憲法をワイマール憲法と称すると同じく、(発言する者多し)今日一般の用語に従ったのであります。(発言する者多し)現行日本国憲法に対して侮蔑の意味を含んではおりません。(発言する者多し)しかし、当日……(発言する者多く、議場騒然、聴取不能)声が聞えましたから、即時議長の許しを得て取り消しました。これは議事進行を円滑にせんがためでございます。本院におかれましては、本院議員の議場内における言論自由の原則をも参照せられまして、公平なる御判断あらんことを切望いたします。終り。(拍手)
  127. 野原覺

    ○野原委員 議事進行を円滑にするために訂正しますと私は言ったのだということが、終始一貫したあなたの発言の内容であります。従って訂正しますというあの言葉は、依然としてあなたの信念ではなかったはずです。これははっきりしておる。この前の七月七日に懲罰動議が出されたときに、やはりあなたはマッカーサー憲法という主張をなさっておることも、ただいまの速記録で明確でもあるし、今日あなたはその信念を変えていないということでありまするから、七月五日の訂正しますという自発的なあなたのお言葉は、あなたの本意にあらずして、議場が非常に騒がしかったから、何とか議場の騒がしいのを切り抜けなければならないというので言われた言葉だと私は解釈しておりますが、間違いございませんか。
  128. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 大体その通りです。
  129. 米田吉盛

    ○米田委員 議事進行の動議を提出します。この問題は、他の委員会でもしばしば繰り返されて、もう非常に古くなった問題です。今こういうような重要な法案が出ておるのですから、もし必要があれば別の機会にこれは質疑応答せられることにして、本論にお入り願うように私は動議を提出いたします。
  130. 佐藤觀次郎

    佐藤委員長 それでは休憩して理事会を開きます。     午後二時四十五分休憩      ————◇—————     午後二時四十六分開議
  131. 佐藤觀次郎

    佐藤委員長 再開いたします。  野原覺君。
  132. 野原覺

    ○野原委員 ただいま大臣は、あなたの本意ではないのかと言ったら、その通りということであります。いかに議事進行のためといいながら、いやしくも本会議場で、しかも自発的に発言する限り、本心でないような発言は軽々にすべきでないと思います。大臣は私の本心でない発言であったのだ、こういうことでありますが、これは今日の文教行政をあずかる文部大臣政治家としての節操、信念にもつながることでありますから、ここで明確に記録に残すためにも重ねてお尋ねをいたしたいのでありますが、本心でない発言を本会議場でやって、あなたは今日遺憾と思っているのか、いないのか、このような問題を起したあなたは、その責任を一体どのように痛感していらっしゃるのか、承わりたいのであります。
  133. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 政治家としては、言葉の表現くらいは人の忠告によって改めるだけの寛容の態度がなければならぬと思います。
  134. 河野正

    ○河野(正)委員 大臣は今言葉巧みにごまかされたわけでありますが、私が申し添えておきたいのは、教育基本法第一条に示されました人格の完成というものは、そういうことではないということであります。  それでは議事進行もありますから本論に入りますが、文部大臣は、今日まで口を開けば、占領下においてできた制度であるからということをたびたび言明せられました。ところが今日の現行法が制定されたにつきましては、その以前の日本教育制度についていろいろな欠陥があり、いろいろな不備があるといったことで現行法ができたものと確信いたしますし、また当時の関係者もあるいはまた当時御審議願いました議員の方々も、そういった意味で現行法を制定されたものと信じますが、この点大臣はいかがでございますか。
  135. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 現行の教育法規は根本において相当進んだ法律でありまして、悪いとは思っておりません。しかしながら占領解除後いろいろと修正の希望なり世論がございました。これにも耳を傾けていかなければならぬと思います。
  136. 河野正

    ○河野(正)委員 もちろん現行法ができます以前において、いろいろ教育行政あるいは教育制度について欠陥があった、そういったことが前提となって現行法ができたということは大臣もお認めの通りでございます。そこでこれは自後の質問を継続するについて必要でございますから、さらにもう少し詳しく御答弁願いたいと思います。それにつきましては、今日列席になっております竹尾政務次官は教育制度に対しまするきわめて卓越せる識見を持っておられまするし、当時この現行法の審議におきましてはいろいろ御審議いただいておると思いますので、そういった建前で、一つ竹尾政務次官からもあわせて御答弁をわずらわしたいと思います。
  137. 竹尾弌

    ○竹尾政府委員 ただいま地教委設置の当時の状況がどうであるかというようなお尋ねだと理解しておりますが、市町村に教育委員会を設置いたしますことは、これは河野委員よく御承知のことと存じますが、昭和二十三年、教育委員会法の制定施行によりまして、市町村にも教育委員会を作らなければならぬ、こういう規定がきまっておったのでございます。しかし当時いろいろの事情がございまして、都道府県と五大都市に義務設置といたしまして、あと普通の都市並びに町村は任意設置でよろしい、こういうことになりましたのですが、そういう考え方は昭和二十五年までこれを延ばそう、そういうことにきめられました。ところが昭和二十五年になりますと、さらに昭和二十七年十月三十日でございましょうか、それまでこれを延ばすという臨時の措置が講じられました。昭和二十七年までこれは延ばすということに相なりましたところが、たまたま第十三国会だと記憶しておりますが、昭和二十七年の第十三通常国会におきましてさらにこれをもう一カ年、つまり昭和二十八年の十月の三十日までこれを延ばしてほしい、こういう意見も出ましたので、そこでこれは国会の内外に相当の議論がございまして、延ばしたらいいか、延ばさない方がよろしいかということで、実は私どもの当時の自由党の中でも賛否両論に分れました。それから社会党の皆さん方は、市町村の教委設置は二十七年では絶対いけない、一年延ばしたらよろしい、こういう非常に強い意見もございまして、これは国会の内外を問わず非常に大きな問題になったのでございます。ところが私どもといたしましては一年延期をせずに市町村にも義務設置をしたい、こういうつもりでございました。ところが昭和二十七年の八月の二十八日の午前十一時に国会が解散になりまして、自然に地教委は義務設置になった、こういうような事情でございます。一応お答え申し上げます。
  138. 河野正

    ○河野(正)委員 ただいま識見高い竹尾政務次官からいろいろ当時の状況を承わりまして、私ども今後の審議に非常に大きな参考になると思いますが、さらにあわせて次の質問を行いたいと思います。  それは現行法は、ただいま竹尾政務次官からもいろいろとお申し述べいただきましたように二十三年の七月から施行されて参りました。それで今日まで大体八年間になるわけでございまするが、この現行法が施行されました当時、これは当局も現行法というものが旧来のいろいろな制度の欠陥を是正して、あるいはいろいろな欠陥を除去して、今後教育の民主的な育成あるいは民主的な運営に稗益するところが非常に多いだろうというようなことがいろいろと強調されて参ったものと考えます。そこで今日は現行法が施行されまして大体八年、その間現行法のいろいろな利点と申しますか長所といいますか、そういったものが生かされて今日までずっと、あるいは着々と現行法の所期の目的を達してきたというふうに私ども考えるわけでございます。そういたしますると、もちろんこれは今度の改正案関連いたして参りまするからお伺いするわけでございます。私どもは少くとも現行法が今日までの八年間に稗益いたしてきたところの実績、あるいは功績というものは非常に甚大なものであったというふうに思うわけでございますが、このような法案改正されようといたします大臣は、私どものこのような見方に対しましてどのような考え方を持っておられまするか、持って参られましたか、もう一度御迷惑でございまするけれども、あわせて政務次官からも御所見を承わりたいと思うのであります。
  139. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 今竹尾政務次官のお話を受けて、あのときは私は改進党というのであったのです。私は改進党の幹事長でございました。あなたの方の野溝君とも相談をして、どうしようかという話をしている最中に解散を受けたのでございまして、改進党自身は延ばそうかあるいはやろうかということは決しないで済んだのであります。今ここに列席されておる町村さん、小川さんなど一緒であったと思います。わが党の態度は未定のうちに解散を受けてしまいました。そこで私は、しかしながらこれが実施されましても、同じ日本人で選挙しておるので絶対に悪いこととは考えませなんだのです。またあの後に、日本の財政非常に困難な際に六・三制の学校を作って、小さい村でも中学校を作る、村長諸君が非常に苦労されたことはほんとうに涙ぐましい状態でございました。けれども子供をたくさん学校にやるということに反対すべきものではなく、今から考えてみたらきわめてよかったことだと思います。けさからも申します通り、過去における教育委員会は地方委員会も県の委員会も、たいへんよくやって下すったと思います。ただしかしどんないいことでもやはり反面利と害は伴いますので、予算を二本建にしたがために、ある府においては委員会の方と府会の方と争いの起ったようなこともございます。それほど表面に立たないでも、同様の暗流はあったのでございます。それから国民の自発的研さん——昔のような詰め込み教育はよくないというので、自発教育が行われて子供は朗らかになったのです。しかしながら市町村の教育だけれども、教育は国民全体に責任を負えというのでありますが、いわんや日本国のような国にはやはり全体的の、全体に責任を負う教育をやらなければならぬ。ところが最近になってみると、公立学校であって暴力教室的の学校が現われたりしておるのですね、あるいは万引が大いにはやったとか、この間のは公立学校じゃございません。私立学校でございますけれども、卒業証書を握ったらもうこれでいいんだといって翻って先生を袋だたきにした、こういうふうな教育の弊害も現われておるのです。そこで教育根本教育制度、これは一つよく考えてみようという世論が生じたのは一時的の現象じゃないと思います。これをまじめに受け取って、一方においては教育制度審議会を作り、また教育委員会については今回提案したようなことがいいんだろうと思ってここに提案したわけでございます。この要点は、調和、中立、安定、連係、この四つを私はモットーとしておるのです。調和というのは市町村自身委員会との調和、中立というのは二つの政党の一方が委員会を独占しないように、また安定というのは一ぺんに任期が来てしまって、どかっとほかの者がなるというのではなく順々に変っていくというようなことで安定にしよう。日本全国的の教育について及ばずながら文部省がお世話をする、こういうふうな態勢にしたらなおよかろう、かように考えておるのでございます。
  140. 竹尾弌

    ○竹尾政府委員 大体大臣が御説明申し上げた程度で私からつけ加える必要もないかと思いますが、ただいま教育委員会で問題になっておるのは、御承知のように都道府県教育委員会も、もちろんこれに対し御意見があったでございましょうが、この委員会を廃止すべきかどうかというようなところまで問題になりましたのは、御承知のようにいわゆる地教委でございまして、この地教委をどうするかということで問題になりまして、その結果が今度御審議を願うような法案になった、こう私どもは考えております。  そこでまず第一に、ほとんど権限のないような地教委ならやめた方がよろしいんじゃないかというような御意見もございますが、ただいま大臣のおっしゃられた通り、各機関との調和——三年半でございましょうか、私ども地教委をずっと見ておりますと、いろいろの欠陥がここに生まれて参りまして、まず第一に市町村と教育委員会との財産の関係、予算の関係、そういう点で非常にいざこざが各地に起りました。それから一番因ったのは人事権の行使の点でございましょう。こういう点につきましては今度これを改めて、今御審議を願うような形になりましたが、しかし教育の仕事プロパー、それ自体の仕事につきましてはどうしてもこれは市町村にも執行機関としての教育委員会を存置いたしまして、これをやるべきなのが地域社会の教育に貢献するゆえんである、こういうように私ども考えてただいまのような形におきまする法案提出したような次第でございます。どうぞ御了承願います。
  141. 河野正

    ○河野(正)委員 ただいま大臣あるいは次官からそれぞれ御答弁をいただいたわけでございまするが、そういった答弁を受けて参りますと、大体において現行法の実績あるいは現行法の長所と申しますか、あるいはまた現行法のいろんな功績、こういうものは認めておられるようでございます。そういたしますと、そのような現行法においていろいろ美点なり長所なり実績があるんだ、しかしながら若干不備な点と申しますか、運営上欠陥があるのでその欠陥を是正していきたい。言葉をかえて申しますならば、基本的には今日の現行法の精神を尊重していくというふうな建前をとっておられまするのかどうか。その辺をお尋ね申し上げたいと思います。
  142. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 さようでございます。
  143. 河野正

    ○河野(正)委員 そこでさらにお尋ね申し上げたいと思いますが、現行の教育委員会法というものは教育基本法一つの基調として制定されたものというふうに私理解いたしております。そういたしますると、今回提案されました改正案というものは、今日の教育基本法を現状のまま守っていくという考え方に基きまして改正案が提案せられたのかどうか。あるいは将来教育基本法改正したいが、一応その前段としてワン・ステップとして教育委員会法を改正しようというふうにお考えになっておるのかどうか。その辺をお尋ね申し上げたいと思います。
  144. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 今回の法案地方教育行政組織また運営方法こういうことでございます。教育基本法の大原則にはちっとも変りはありません。これを尊重していくのでございます。ただ他の機会に臨時教育制度審議会の案を御審議願いますときに、教育基本法においても道徳法則ということについて世間に議論もあるから、こういう点については御審議願うことあるべしと言っております。しかしながらそれがどういう結果になりましてもその面からはこの行政法規には変更はありません。
  145. 河野正

    ○河野(正)委員 今大臣の御答弁を承わっておりますると、教育基本法の大原則には変りはない、教育基本法の大原則は尊重していきたいということでございまするけれども、後段になりますると道義あるいはまた道徳というようなものについてはいろいろ問題があるから、臨教審に諮問をしたいというふうな御答弁もあったようでございます。そういたしますると私が先ほど質問いたしましたように、今日の教育基本法をどこまでも守っていくということを前提としてこれの改正法を出されたか、あるいはまた将来基本法は考えるのだけれども、一応教育委員会法だけ改正していこうというふうに考えたのかというふうな質問につきましては、私が先ほども申しました教育基本法改正したいけれども、一応教育委員会法だけ改正したい、要するに一つのステップと申しますか、まず教育委員会法を改正してその後に教育基本法改正したいというふうな御意思のように承わるのでございまするが、さように理解してよろしゅうございますか。
  146. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 二つの法律には片一方がこうでなければ片一方がこうでないといったような連係はないのでございます。かねがね申しまする通り教育基本法の道徳の要点として八つあの通りきめております。あるいはこれが九つになりましても道徳の基準ということは同じで、それがために今回の法律改正を要することはないと思います。
  147. 河野正

    ○河野(正)委員 もちろん教育基本法教育委員会法というものは直接関連のある法律案ではございませんけれども、しかしこれは教育基本法あるいは教育委員会法にも明記されておりますように、その目的等につきましてはやはり関連があるものと私考えております。そういたしますると終局的にはやはり教育基本法教育委員会法とは当然関連をもって考えるべきものであるというふうに私ども考えるわけでございます。そういう意味でございますから先ほどからお尋ね申し上げておるのでございますが、大臣のいろいろな御答弁を承わって参りますと、どうも一応教育委員会法は教育委員会法として改正する、また道義あるいは道徳等の問題もあるので、教育基本法教育基本法として後ほど述べます臨教審等に諮問したいというふうに、私ども大臣答弁からは推察できるわけでございますが、そのようでよろしゅうございますか。
  148. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 大体それでいいと思うのです。これは行政法規ですから、行政法規として御審議願います。もっとも教育のことは何ぼ行政法規でも、その背後には教育基本法というものが横たわっておるのでありますが、私どもは教育基本法に幾らか手を入れられても、これに影響するような修正はないものだと考えております。
  149. 河野正

    ○河野(正)委員 そこでお尋ね申し上げたいと思いますが、直接関係ないけれども、先ほど申し上げましたように、教育基本法についても将来考慮したいというふうに理解してよろしいかというふうな質問に対しましては、大体さようだというふうなお話でございますが、そういたしますと、教育基本法に対しまして、先ほど大臣も御指摘になりましたように、やはり基本的な関係があるわけでありますから、そこで私はお尋ね申し上げたいと思うのでございますが、しからば教育基本法を将来大臣考え直してみようというようなお考えでありますならば、具体的にどのようなお考え、どのような御構想を持っておられるのか、その点をお尋ね申し上げたいと思います。
  150. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 これは臨時教育制度審議会の提案のときに私申したと思いますが、今の基本法の第一条に書いてあるだけでは、どうも日本国民と国に対する——私忠誠という言葉を使いますが、その関係、それから個人の尊重というようなことはいっておりますけれども、親と子との恩愛の関係ということについては、どうも及んでおらぬようだ。わが国の伝統のうちで尊敬すべき、保存すべき伝統は保存し、新たに進歩すべきところは遠慮なく進歩するというのが私どもの政治観でございますが、そういう方針で改正すべきところがないかどうかを臨教審に聞いてみようと思っておるのです。その結果によります。
  151. 河野正

    ○河野(正)委員 このことは教育の基本になるわけでございますから、きわめて重大な問題であると思います。そこで、これは先般臨教審を御提案なさいましたときに、私ども若干お伺いも申し上げましたが、しかし最終的には結論が出て参りませんので、この機会に一言お尋ね申し上げたいと思いますが、それは御承知のように臨教審というものは、特定の政党で構成いたします内閣に属する機関でございます。しかもまたその臨教審の構成メンバーには、すでに御承知のように政党人というものも国会から十分参加するというようなことでございますが、今日の教育委員会法の基本をなすものは教育基本法だというように私ども確信いたしますが、そういった点を考えて参りますと、どうも教育委員会法の基本をなす教育基本法といったものを臨教審に諮問するということは、教育政治的中立性という立場から考えますと、多少問題がありはしないか。そういった場合には、むしろ中立的な機関でございます中教審に、そういったものこそ十分に検討さすべき問題ではなかろうか。この点は先般臨教審が提案されました委員会におきましてもいろいろ論議されたのでございますけれども、たまたまこれに関連する問題が出て参りましたので、ここであらためて、御迷惑と思いますけれども、お答えを願っておきたいと思います。
  152. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 臨教審はあなたのおっしゃる通り会議員も入ってもらいます。それから学識経験者、これは必ずしも教育経験者ばかりと思っておるのではございませんので、広く国内の大家に入ってもらいまして、厳正公平な態度で、この民族の将来のために道徳基準なり学校のあり方なりそれをやってもらおうと思っておるのであります。中教審はなるほど説明等に根本的、基本的という文字を使ってはおりますけれども、やはり今の教育制度ができた時分に、この教育制度を作った教育刷新委員会においてこれで作る、それを運行してやるのに常設的な中教審を設けろということでできておるわけです。大体今までの経験でも、教育基本法なり学校教育法の根本について、改革的のことはあまりやっておらないのでございます。これは言葉が非常にむずかしいのですが、二つの性格は違っておりますから、やはり臨教審では教育の中心である道徳基準から日本の大学のあり方から根本となるものを一つ一ぺん立て直すということです。建物で言えば増改築のようなことをやってもらおう、中教審の方は修繕をやったり掃除をやったりすることをやってもらおう、そういうような考えで二つのものを区別して考えておるのです。
  153. 河野正

    ○河野(正)委員 大臣もただいま仰せられましたように、教育制度根本的な立て直しをやるのだ、やる機関が臨教審だというような御答弁でございますが、そういった根本的な立て直しをやる機関が臨教審であるということになりますと、先ほどから申し上げますように、国会からも政党色を名乗っております国会議員が十名も入るというようなことになりますと、むしろ臨教審にかけることの方が政治的な中立性を侵す危険性が多分に出てくる。根本的な改革をやるのだということになりますならば、むしろ中教審にこういった問題を検討さすべきではなかろうかというように私どもは考えるわけです。大臣が仰ぜられます根本的な立て直しならば、やはり中立的な機関である中教審ではなかろうかと考えるのでありますが、その点いかがでありますか。
  154. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 教育のことは非常に大切で民族的な問題であります。日本の次代の国民をどう養おうかということについては、あなたの御所属の社会党も、われわれの属しておる自由民主党も反発した意見はないじゃないか。あるいは進み、あるいは退くという程度においては幾分は違いますけれども、相反する二律背反のことはなかろう、私はかように思っておるのです。ことに委員の方には、むろんどの人もりっぱでありますけれども、ことに中正穏健なお考えを持っておる方をお願いしよう、こう考えております。
  155. 河野正

    ○河野(正)委員 ただいま大臣は、もちろん教育を愛し教育の発展を考えるから、国会議員が出て参っても、多少の尺度の差はあっても、大体において同一行動をとれるのではないかというふうなお考えもあるようでありますけれども、しかしながら少くとも今日の社会通念からいきますと、政党色を名乗っておる、政党色が濃厚であるということになりますと、やはり政治的な中立性が侵されやしないだろうかというふうな疑惑といいますか、危惧といいますか、そういったものが起ってくることは当然でございます。そこで、他の法律ならば別でございますけれども、いやしくも国の基本をなしまする教育でございますから、私は多少でもそういった危惧があるならば、多少でも疑惑があるならば、そういった点はやはり遠慮すべきではなかろうかというふうに考えるわけでございます。中教審にいたしましても、これは中立的なりっぱな、卓越した学識経験者が、日本教育制度審議していこうという意欲に燃えてたくさん集まっておられるわけでございますから、別にあえて臨教審に諮問しないでも、むしろ中教審に諮問した方が、しかもいろんな、私がただいま御指摘申し上げましたような疑惑やあるいは疑問もないわけでございますから、私はむしろそういった点から考えて参りましても、根本を建て直すようなきわめて重大な問題であるからこそ、そういった中教審に諮問を行うべきじゃなかろうかというふうに考えるわけです。これにつきましては、大臣と私の見解には相違がございますので、いろいろ議論いたしましても水かけ論でございますから、さらに質問を発展させていきたいと思います。  そこで私どもがただいま中教審であれ、あるいはまた臨教審でございましても、そのいずれを選ぶかは別といたしましても、いずれにいたしましても、今後日本の重大な教育制度というものにメスを入れていく、あるいは改革を加えていくということでございまして、そういった審議機関がせっかく設けられるのでございますから、そういう審議機関に十分慎重な審議をしてもらって、そして今日の教育委員会法の改正案が出てくるというふうになりますならば、私どもある程度納得もいきますけれども、しかしながら大臣は、今日までこれらの機関に諮ることなく、党議優先を唱えてこの法案を出されたわけでございます。このような考え自身が、私はすでに教育政治的な中立性を侵すものではなかろうかというふうに考えるわけでございますが、この点いかがでございますか。
  156. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 しかし、わが国がこういう民主主義をとっておる以上は、法律を作るところはやっぱり国会で、政党組織しておる国会の議にかけるよりほかに仕方がないのです。時間が許しましたら、なお中教審にももう一度——これは一ぺんかけたのです、もう一度かけてもよかったのでありましょうが、何分時間の関係上重ねて中教審にはかけませんでした。ただしかし、法令審議会には、政府は一ぺん問うております。そのほか私もできるだけ各方面の知識をと思いまして、いろんな人の面会にはことごとく応じて、まあこれが大体いいだろうという案を出しておるのです。採決はどうしたってこれは政党的にするより仕方がございません。
  157. 河野正

    ○河野(正)委員 ただいま私が御指摘申し上げますように、少くとも教育政治的な中立として守っていかなければならぬということになりますならば、もちろん法案そのものは国会で審議することでございますけれども、しかしながら国会審議に提案いたしまする法案の内容につきましては、私はやはり中教審なり、あるいは近く生まれます臨教審に諮問されまして、そしてより中正な原案というものを送付されることが最も妥当ではなかったろうかというふうに思うわけであります。     〔委員長退席、山崎(始)委員長代理着席〕 そこで私どもは、そういった臨教審なり中教審なりに御諮問にならずに、本法案というものが国会に出てきたということに、いろいろ大きな疑問を持っておる、疑問を持たざるを得ないというようなことを御指摘申し上げたわけでございます。そこで大臣もさようおっしゃるのでございますけれども、私どもこういった質問というものは、やはり教育というものが絶対に政治的な中立を守っていかなければならぬというような点を極力心配いたしまして、このような質問をやっておるわけでございますし、おそらく大臣もそのような気持で御答弁願っておると思いますけれども、なお私どもいろいろと納得のいかない点がございます。  そこでさらに伺いますが、今日の教育基本法第十条には、「教育は、不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負って行われるべきものである。」という明文が明記されております。こういった建前から、私ども先ほどからいろいろと大臣に御所見を承わっておるわけでございます。そこで私は重ねてでございますけれども、大臣に対しまして、この教育基本法第十条に対しまするところの御所見を承わっておきたいと思います。
  158. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 教育基本法第十条は、含蓄のある大きな原則であります。やはりこれは守りたいと思っております。
  159. 河野正

    ○河野(正)委員 守りたいということではなくして、守っていただかなければならぬことは当然でございますが、私どもいろいろ今日まで論議の中で心配いたしますことは、もちろん手続上の問題も含んでございますけれども、教育政治的な中立性が侵されるというようなことを心配していろいろ論議しておるわけでございますから、もちろん基本法第十条を守っていただかなければならぬということは当然でございますけれども、この十条の精神を大臣はどのようにお考えになっておるか、その所見をお聞きしたいと言っておるわけでございます。
  160. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 これは世間で教育憲章とも言うくらいで、どの法案も非常に含蓄の多い文字でございます。しかしながら第一項において、不当な支配に服せずに、国民全体に対して直接の責任を負えというので、不当な支配をするものができたり、あるいは一種の暴力主義を持っておるものとかいったような、わが憲法の自由主義に反する主張をする不当な支配者ができる、ちょうど、ドイツでヒトラーができたようなことを書く人は考えたのではないかと思います。そういう支配には服さないで、国民全体に対して直接責任を負うのが、これが教育である、教育全体であります。第二項の、教育行政はそういう目的を達するために公平な諸条件を整備すべきである。そこで今度のは、地方教育行政組織運営でありますから、わけても第二項のごときは十分にこれを守り、これと調和した法律を作らなければならぬと、かように考えております。
  161. 河野正

    ○河野(正)委員 ただいま大臣から教育基本法第十条の精神を承わったわけでございますが、それでは今日の日本教育の実態あるいは教育委員会運営と申しますか、そういったものはこの教育基本法第十条というものが、今日の教育制度の中で十二分に実践されておらないというふうにお考えになっておりまするかどうか、その辺のお答えをいただきたい。
  162. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 現在の教育行政は、ひとり十条のみならず教育基本法に反しておることをみながやっておるとは私は考えておりません。けれどもよりよきものをわれわれは得たいためにここに案を出したわけであります。
  163. 河野正

    ○河野(正)委員 今日の教育の実態というものが教育基本法違反はしておらぬ、しかしさらにその精神を一そう生かすために改正をやりたいというふうな御意見であろうというように考えます。ところが世間では、今日の日本教育というものは一種の偏向教育である——これは民主党時代だったと思いますがパンフレットも出ております。もちろん今日は自民党でございますからあれは民主党だというようなことで御解釈になるかもわかりませんけれども、しかしながら自民党でありましてもやはり教育政策につきましてはそういうものが多分に織り込まれておるだろうというように考えます。そういたしますると、今日の日本教育は多少偏向に陥っておるというようにお考えになりますかどうか。
  164. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 全体として偏向しておるという考えは持っておりませんけれども、偏向した事例がちょいちょい現われるのです。京都の旭ケ丘中学の事件、これは遠慮したいけれども偏向教育と私は認めざるを得ぬと思います。この間の大鉄高等学校の暴力ざた、これも暴力主義に偏向しておると私は言わざるを得ぬ。自分が教えてもらった先生をけ飛ばして頭をなぐって、出た鼻血を顔にぬったというのです。こんな残忍なことがあるものですか。やはりこれはどこかに欠陥があるのです。かように考えておる。しかしこれが日本教育全体の姿とは私は考えておりません。なかなかいい模範学校もたくさんあります。近時私は卒業式に行きますが、りっぱに大学を卒業して世の中に出ておる人はたくさんあるのです。
  165. 河野正

    ○河野(正)委員 ただいま大臣から、今日の教育の実情を見て参っておるといろいろと偏向に失した点がないでもないというふうな御指摘があったようでございまするが、しかしながら、たとい今日の教育制度教育委員会法そのものに若干の欠陥がある、あるいはまたそれが完璧なものであるというふうにいたしましても、やはりそういった法律運営する上におきましてはいろいろな問題が起ってくるだろうというふうに考えるわけでございます。言葉をかえて申し上げますると、たとい法律そのものはいかにりっぱなものができましても、やはり運営におきまして万遺憾なきを期するというわけには参らないだろうというふうに考えます。そこで大臣お尋ね申し上げたいのは、そういった部分的にいろいろな問題があるから、それで日本教育は多少偏向に失しておる、偏向に失しておるから法律改正しなければならぬというようなことにつきまして、私は多少行き過ぎではなかろうかというふうに考えるわけでございます。そこでどうしても今日の日本教育の実情から見て、これではどうにもならぬのだということで法律改正されるということになりますならば、これは私どもも了承するにやぶさかではございませんけれども、しかしながらほんの一、二の例をとらえて、これではどうにもならぬのだということで今日きわめて重大な法律改正されることにつきましては、私はきわめて大きな問題が残るだろうというふうに考えますが、その点いかがでございますか。
  166. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 今のお話の前段の、いかに法律を作っても運用が大切ということは全く同感です。いわんや行政組織及び運営法律でございまするから、一そうこの運営については注意しなければなりません。  二、三の例で全体を推すのは悪いとおっしゃいますが、二、三の例も、深刻によく考えますとどこかに原因はあるのです。その原因がわかれば——これではならぬということになって改めたのではもうおそいのです。方向がそこに行っておるということが二、三、四、五の例でわかりますれば、その原因を除いていい法律を作ることがわれわれの国に対する責任、こう思っておるのです。
  167. 河野正

    ○河野(正)委員 その点につきましては、これはおのおの見解の相違でございますから、論争いたしましてもいかがと思いますので、さらに私は教育政治的中立性ということに関連いたしまして質問を続行したいと思います。  今日までいろいろな理由が伝えられておるわけでございまするけれども、一体大臣ほどのようなお考え方で今日の教育委員の公選制を廃止して任命制とせられましたのか、その辺の理由をまずお伺いいたしておきたいと思います。
  168. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 それは先ほども高村さんに申し上げましたが、わが国のただいま及び将来の政治情勢の見込みに多分に影響があることなんです。わが国は今ようやく二大政党の仕組みができました。世間もこれをよいこととして賞讃しております。そうしますと、政党組織はだんだんと下部に浸透徹底しなければならぬ。私の方では全国一村に一つ支部を作るつもりです。あなたの方もおそらくはそうなると思います。そうすると、村単位に二大政党組織が浸漸していきまするから、そのときに、五人とも教育委員選挙にかけると、選挙は勝たなければならぬ、一たん候補に立った以上は全部当選させなければならぬ、こういうことで相互にいきまして、それが成功して——これは例外の場合ですけれども、五人とも私の党派でとる場合もありましょうし、五人ともあなたの方でおとりになる場合もある。ちょうど五人までいけないでも、三人くらいは一つ党派でとることはこれは通常です。それで教育委員会をやりましたら、その時分の決議はどうなりますか。いつも一党派に偏した決定ばかりすることになります。それよりも、民主主義は守らなければならぬから、民主主義で選挙しました町村長、町村会議員が寄って、お互いに欲を言うまい、同じ党派から二人母上はとらないぞということで、各党派按分であっても按分でなくても、五人のうち三人は同じ党派ではいけないのだといった制限を置いて、相談をして委員会を作ることになれば、その方が中立を保つのに便利だろう、合目的だろう、かような考えからして直接選挙徹底ということをやめてみたのでございます。
  169. 河野正

    ○河野(正)委員 先ほどから大臣は今度の改正法についてはいろいろな人々の全国的な意見も承わって参った、あるいはまた十二分に国民の方々の意見も尊重してきたというふうなことをおっしゃったわけでございます。そこで私は、そういった民衆の声、国民の声を聞くということは、やはり選挙によって聞くことが一番民主的だと思うのでございます。もちろん大臣は、もし選挙をすると、極端に言えば特定の政党だけで全部の委員を占めるというふうなことも言われるわけでございますけれども、しかしながらそれは住民の声でございます。住民の結集した声であります。そこでそういった委員会の片寄った構成ができるというようなことで、民主主義の建前からいいますると、単にそういったことで割り切って考えるわけには参らぬと私は思います。民主主義というものは選挙によって成長していくんだ。特に国民ひとしく関心を持っております教育に関して、教育委員選挙を行うということは、これは民主主義の建前から申し上げましても、あるいは民主化という建前から申し上げましても、私どもはこの方法こそが最善の方策ではなかろうかというふうに考えて参っておるわけでございます。ところが大臣は、選挙すると、極端に言うならば一党一派に偏してしまうというふうなことでございまするけれども、しかしながら、たといそういったような現象が生まれて参りましても、それは住民の声で生まれて参りましたところの構成でございまするから、私は民主主義の原則には反しない、民主主義を侵すものではないというふうに考えるわけでございまするが、その点いかがでございますか。
  170. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 直接選挙が民主主義に反するとは私言ったんじゃないですよ。直接選挙の方が民主主義かもわからぬ。私の方は幾らか折衷で、選挙選挙というのが民主主義であれば、選挙した者が相談するのですから、こっちは間接になると思う。選挙は民主主義であっていいのです。ただあなたの御引用になった基本法第十条を見ますと、教育というのはたとい町村の教育であっても国民全体に対して責任を持たなければならぬ。国民全体に対して、町村の教育だから町村だけだ、社会党が八分通りの村だから社会主義で教育するというんでは、これは国民全体に責任を持つゆえんじゃないのです。この村は社会党の委員で社会主義に近いような教育をする、こっちの村は民主自由党の者が多数当選したから自由主義でやるといったようなまだらの教育ができたらよくないのであります。やはり中立と同時に国民全体に均斉を得た、全体に対して責任を持つ教育をやってみようといたしますると、情勢が進んだらやはり——昔政友、民政といった時代にはステーションまで二つ作ったことがある政友ステーションと民政ステーションの二つのステーションがあった。それが教育界に入ったらよくありませんから、一つそこにダムを設けて、一般の町村では、これは両派で争って議員をこしらえるけれども、できた議員が相談して教育委員会だけはわが党教育委員なんてものは作らないようにする、その工天がここにこらしてあるんです。私は非常にいい形にしたと思って自分で喜んでおります。
  171. 河野正

    ○河野(正)委員 ただいまの大臣答弁を承わっておりますと、これはかつて臨教審の質問お答えになったお言葉と非常に私は矛盾があると思うのです。と申しますのは、教育委員会におきましては、ただいま大臣が仰せられましたように、一党の委員がすべてのポストを占めると、あたかもそういった特定の政党教育というものがゆがめられるというふうにお話になりますけれども、私どもが臨教審の中で心配いたしました国会議員の十名につきましては、それはたとえ党色が濃厚であっても、やはり教育という立場を考えるので、中正な意見を出すのだという意見を述べられたわけであります。そうしますと、同じ選挙で選ばれました委員、それからまた国会議員、こういった委員の今後の態度というものを何か使い分けして大臣答弁をされている、こういうふうな印象を強くするわけです。この辺についてお言葉に矛盾はございませんか。
  172. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 私の考えには矛盾がございません。今度の臨教審を作るについても、失礼だが、私の方で今多数とっておりますから、臨教審の委員を自由民主党の国会議員だけで占めるという案も作ろうと思ったら作れるのです。ところがそれではいけませんから、国会議員を入れましても、あなたの党派からも入っていただく、こちらも入ります。しかもその国会議員は多数ではなくて少数なのです。一名入れましても、政党に属さぬ人にまだ三十名も入ってもらうということで、これも一党独裁にはならぬような考えを十分に入れております。今言った町村会で一党独裁にならぬようなふうに教育委員会を作ろうという考えと、今日の臨教審を私が立案した考えと、考えの底は同じことなんです。
  173. 河野正

    ○河野(正)委員 私ども考えますことは、やはり教育の育成あるいは発展ということを考えますならば、たとい特定の政党がすべての委員会のポストを占めたといたしましても、やはり一党一派に偏するような教育を阻止する、あるいは政治的な中立性を堅持していこうというふうな考え方でやろうといたしますならば、さっき大臣が仰せられましたように、臨教審における国会議員の十名も、やはりそういったことでやられるわけでございますから、何も教育委員会に関してはやれないというふうなことにはなるまいと思うのでございますが、いかがですか。
  174. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 先刻答えたうちに含んでいるかと思います。今度の臨教審について、党派に偏するなどという疑いを国民が持つと、いい案はできはしません。国会議員からとりましても党派には偏しないようなふうにやっていきたいと思います。中教審はあの当時、現在の教育制度をやっていくことについて、おもりのような役をしておる会議でございます。現在の教育制度をまず保持してよく運行する、そのうちに工合の悪いところがあったら修繕もしようということで成り立っておりますから、また教育界の大家をおもにわずらわしておるのでございますが、しかしながら今回の臨教審は全部変えるなどということは考えていはしませんけれども、やはり占領中にできました教育制度でありますから、ややこの根幹に関するもので日本人の好みに応じないところがあるのです。それを直そうとする場合、よほどこれはしっかりした考えでないといけない。わが国の今日の制度では、国会議員はこれはよろしく入れるべきだ、こういうことを考えておる。
  175. 河野正

    ○河野(正)委員 きわめて中正な清瀬大臣が市町村長になったり、あるいは都道府県知事になったということになると、問題はございませんけれども、しかしながら今日の実情というものは、やはり政党を基礎に選ばれたところの都道府県知事あるいは市町村長が大部分でございます。ところがそういった政党色の強い大臣やあるいは市長というものが、今後の教育委員を任命していくということになりますと、私はかえってこのこと自身が非常に教育委員会そのものに政治的な色彩を強めていくというふうな考え方を強く持つわけであります。そういたしますと、かえって教育中立性、あるいは大臣が仰せられます安定性を阻害することになりはせぬかというような印象を、大臣答弁を聞いておりますとかえって強くするわけでございますが、この点いかがでございますか。
  176. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 私は作為的に教育委員会中立性を傷つけようといったような考え一つもございません。どうかして中正な教育委員会ができればいいがと祈っておるのであります。しからばどうするか、今日の世の中で法律でも立ててやるというのには、これよりほかに道はなかろうか、選挙で一票でもたくさんというので、公職選挙法上のあらゆる限りを尽して、一つ党派が勝ってしまうといったようなものを持ってくるよりも——もっとも選ぶ人は町村会議員が選ぶのでありますけれども、一つ党派からは二人が限度で、三人はいけないのだという規則がある。この規則によって選べというので、言葉だけに終るかどうかしれませんが、人格が高潔で、教育文化に識見のある者ということが書いてありますから、その基準に照らしてやれば、これでやれるのじゃないか、これ以上いい工夫がありましたら、どうか一つお聞かせ願いたいと思います。これが私はいいと思っているのです。
  177. 河野正

    ○河野(正)委員 もちろん大臣のような中正な方が町村長であり、あるいは都道府県知事であれば問題はございませんけれども、しかしながら今日の実情から申し上げますと、大臣が仰せられますようにそんな甘い実情ではございません。都道府県知事にいたしましても、市町村長にいたしましても、血で血を洗うような選挙をして、それぞれ当選して参っております。そういった実情の中で、そういった人々が任命するわけでございますから、私はやはり選挙で出て参ります以上、政治的な支配というものが非常に強くなって参るということを心配するわけでございますが、その点は具体的にわれわれに案があるならということでございますので、今後われわれも十分この問題については検討して参りたいと考えます。  次にこれは先般の本会議におきましても、同僚であります山崎委員から御質問がございましたが、この教育委員の公選制を廃止いたしまして、そうして任命制に変更いたしましたことは、私がただいままで申し上げましたいろいろな理由、根拠、そういったことでいろいろ問題があるだけではなくて、これは憲法第九十三条第二項の精神にも反するというような、いろいろな論議もございます。御承知のように憲法第九十三条第二項には明らかに次のように明記しております。「地方公共団体の長、その議会の議員及び法律の定めるその他の吏員は、その地方公共団体の住民が、直接これを選挙する。」ということでございます。そういたしますると、公選制を任命制にしたことにつきましては、いろいろな問題があることは当然でございますけれども、さらに重大でありますのは、このような憲法第九十三条第二項の精神に反しはしないか、このことは憲法問題でございますから、きわめて重要でありますし、大臣も憲法につきましては非常に知識が明るいようでございますから、一つお示し願いたいと思います。
  178. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 この九十三条の二項は、私どもこう読んでおるのです。「地方公共団体の長」ですから、町村長、知事であります。それから「議会の議員」といえば町村会及び府県会議員であります。その他法律に定めたものというのは、法律で公選と定めたものでありまして、現在の教育委員会のようなものです。その選挙はいやしくも法律選挙ということを定めた時分には、住民が直接選挙をせい、こう書いてあるのであります。今回の地方教育行政組織及び運営に関する法律では、教育委員は公安委員とか、あるいは他の人事委員会委員とかいうものと同じように、選挙によらない委員としておりまするから、この憲法の規則は適用なかろう、かように考えて、過日鳩山総理もその旨の答えを国会でいたしております。
  179. 河野正

    ○河野(正)委員 ただいまの答弁では納得がいきませんので重ねてお伺いいたします。憲法九十三条二項の「法律の定めるその他の吏員」というものの中に教育委員が入っているのかおらないのか、私らは入っているというふうな考え方であるわけでございまするが、この点重ねて明確にお答え願いたい。
  180. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 現在の教育委員は入っております。しかし今度提案されましたこの法律が施行されると入らぬことになるのです。
  181. 河野正

    ○河野(正)委員 現在の教育委員が入っているということになりますと、この憲法が改正されない限りにおきましては、どうもこの条文というものが空文になるというふうに考えるわけでございますが、(「法律学校でも入って勉強したらどうかね」と呼ぶ者あり)わからぬから聞いているのです。わかったら聞きはしませんよ。
  182. 山崎始男

    山崎(始)委員長代理 お静かに願います。
  183. 河野正

    ○河野(正)委員 それで特に大臣は憲法にお詳しいのでお伺いするわけでありますが、そうなりますと、この九十三条の二項というものが空文になりはしないかという見方を持つわけでありますが、その点はいかがですか。
  184. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 この憲法はもともと英文であったのです。ですからこれを直しましても、日本文としては非常に悪文です。しかしながら地方団体の委員はどれでも全部公選にせいという意味で書いたんじゃないということがいろいろ研究の上わかりまして、おおむね日本中の憲法の本はそう解釈しております。そこで今の教育委員会は公職選挙法にもありまするし、これは法律に定めたる委員でございます。ゆえにこれは直接選挙をいたしております。そのほかにはたくさん委員がございますけれども、どれもやはり委員として任命して、それで合憲とみな認めてやっているのです。公安委員会もそうでございます。今度改正するようになりまするが、公平委員会というものがあるのです。こんな大切な委員選挙はいたしておりません。それでどの憲法学者も公安委員は無効、公平委員は無効と言っておりませんので、これは憲法の文字が少し悪いのです。先刻申したような由来でできた憲法で、遺憾でございます。
  185. 河野正

    ○河野(正)委員 これは憲法論議になりましてまことに恐縮でございまするが、しかしながらいずれにいたしましても、そういった明文というものが憲法に規定されているということは、否定することのできない事実でございます。たとえばそういった点がおかしい、不合理だといいながらも、やはりある以上はそれを守っていかなければならぬ。これはしょっちゅう大臣が仰せられまするように、法治国でありまする以上は当然のことであろうと思います。今日法律の中に不合理な法律改正してもらいたいような法律がたくさんございます。しかしながら現実に法律がございますならば、われわれはその法律に従っていく、これは当然のことであろうと思います。ことに法治国でございます日本におきましては当然の事柄であろうというふうに思います。ところがこれは英文を解釈したのでどうも工合が悪いんだ、そういった考え方でこのような事実を否定していくということが一体いいことでございましょうか、どうでございましょうか。
  186. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 とれよく読んで下さい。すべての公共団体の委員は全部公選にせいとは書いてないのです。法律に定めた委員はと言っておるのです。すなわち法律選挙せよということを定めた以上は、その選挙は直接選挙であるということに十分読めるのです。
  187. 河野正

    ○河野(正)委員 その点はまあ水かけ論でございますからさらに進めたいと思いまするが、いずれにいたしましても今日の改正法というものが公選制から任命制に切りかえられて、そうして私どもの立場から見て参りますると、教育の中央集権化というような心配を多分に生んで参っておるわけでございます。そういたしまして、たとえばこの任命制がとられましたために、任命する場合に一つの論功行賞的な事実が生まれたり、あるいは情実的な任命が生じたり、あるいはまた議会の勢力分野によって任命が行われますために、特定政党の独善的な任命に陥ったり、あるいはまた委員会が任命権者でございまするそれぞれの首長の、町村長あるいは都道府県知事、そういったそれぞれの首長の御用機関となる、こういったいろんな心配がたくさんあるわけです。そういったことが起ってきやせぬかというような具体的な事実がたくさん予想されるわけです。そういったことから私ども先ほどかう公選制が任命制になるということにつきましていろいろ大臣に御所見を承わって参ったわけでございますが、私のただいま申し上げましたようないろんな問題がございます。こういった問題が今日の改正法である程度規制ができるか、自信を持って規制ができるかどうかということにつきまして、大臣の御所見を承わっておきたいと思います。
  188. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 同じ党派に局する者は二人より選ばれない、それで一つチェックがあるのです。それからこれは政治情勢は年々変りまするけれども、今どこの県会でも知事と県会議員全部とが同党ということはございませんので、私どもの方が多い場合もあなたの方が多い場合もございまするが、やはり議会には両派もありまするしいたしまするので、おのおの牽制して、一方同じ党派には二人しか入れられぬぞというチェックがありまする以上は、相談の上適当な、私は教育委員会の中性を保ち得るようにできるだろう、こう思っております。人間界のことでありますから情実も行われることがありましょうけれども、やはり道徳的に人格の高潔で教育文化に識見のある者、こういうふうに、やっておりまするし、またその上に一ぺん文部省へ持ってこい、こういうのですから、あまりのものは批判をされ、事が教育でありますから、いい委員会ができると楽しんでおるのでございます。
  189. 河野正

    ○河野(正)委員 今度の改正法が実施されまするというんな問題が出て参ります。そういった場合に文部省その他においてある程度のめちゃなものについては規制ができる、規制をやる機会があるのだというふうに大臣が仰せられたわけでございます。ところがそういった場合に問題になりますのは規制の仕方でございます。それを強く発揮していただきますと、これこそ政党支配あるいは官僚支配というようなにおいが非常に強くなって参ります。そこでその考えというものは私はなかなかむずかしい問題ではなかろうかというふうに考えますが、大臣の御答弁もございましたから私お尋ね申し上げますが、市町村教育長を市町村教育委員会教育委員より選ぶということが今度の改正法の趣旨でございますが、まず市町村の教育長を市町村教育委員会委員の中から選ぶというふうになりました理由、それから都道府県教育長は文部大臣の承認を必要とするわけでありますが、そういった規定が生まれました理由、この点は、先ほど申し上げましたいろいろ規制する上におきまして、規制の仕方が強くなりますと政党支配あるいはまた官僚支配というにおいが非常に強くなって参りますので、その点と関連いたしまして、ただいまの二点を一つお伺い申し上げたいと思います。     〔山崎(始)委員長代理退席、委員長着席〕
  190. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 前段のこと、すなわち市町村の委員は五人でございますが、何しろ町村といえば小さいものでもございまするし、機構はなるべく簡単がいいのであります。そこで教育委員会委員会と申しまするけれども、これは執行機関なんですね。合議機関ではないのです。三人が寄って執行するのが当りまえでありますから、全部執行責任者だが、そのうち一人常勤者、担当者をきめてやればできるのではないか、こういうふうに考えておるのであります。それから承認を得るというのは、やはり中央で大体その人柄等も拝承しているということが教育の国家水準を保つ上において必要である、こういうことでございます。理由はそれだけです。
  191. 河野正

    ○河野(正)委員 ただいまの大臣の御答弁をそのまま受け入れますれば問題ございませんけれども、しかしながら先ほどから申し上げますように、ここで一番問題になりますのは、先ほどの問題でございまするが、政党支配あるいは官僚支配というものを私どもは非常におそれます。そういたしますと今日の民主的な教育制度というものが根本的に破壊されるわけでございますから、その点は私どもといたしましても十二分に監視しなければならない問題だろうというふうに考えます。  それから時間があまりございませんからさらに具体的に進んで参りますが、次は予算の面での問題でございます。御承知のように今日までの二本建制と申しますか、予算の送付権でございますが、これが今度の改正法ではなくなりました。そこで大臣も先ほどから調和、調整ですか、そういったことを強調されておりますが、私どもが地方自治に携わって参りました乏しい経験から申し上げましても、原案送付権を持っております今日の時代におきましても、非常に大きな問題を起して参っております。福岡県においても最近、目下予算県会を行なっておりますが、予算が二本建、教育委員会案と執行部案と二つ出て参りました。今日の事態におきましてもそういった実情でございます。ところがいよいよ教育委員会の送付権というものが剥奪される、廃止されるということになりますと、送付権を持っております二本建の今日におきましてもいろいろ問題を起しておりますが、こういった実情の中で今度予算の送付権が廃止されるということになりますと、私どもが一番心配いたしますことは、教育というものが今後非常に大きな不当な圧迫を受けてくるのではなかろうか。あるいはまた教育委員会の自主性というものがだんだん踏みにじられていくものではなかろうか。そういたしますと、おのずから教育中立性というものが侵されていく。これは大臣がいかにお考えになりましても、現実の問題といたしましては、今日の現行法のもとにおきましても、それぞれの府県におきましては非常に問題を起しておりますので、今度の改正案におきましては、私どもはさらに重大な問題が起ってくるということを非常に心配しておるわけでございます。そこでその点につきまして大臣の所感を承わっておきたいと思います。
  192. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 これはいろいろ考えなければならぬ点でありますが、予算条例はこれは町村議会で十分にやるのであります。町村議会はだれが選んだかといえば、やはり子供を持ち弟を持った有権者が選んでおるのでございます。教育委員選挙した同じ選挙民であります。その議会が議するのでありますから、自分の子供の行っておる学校に非常に悪い考えを持つことはございますまいと思います。ただしかし村全体のことを考えまするから、全体の村行政において教育の持つ重さということを考えのうちに置くでありましょう。教育委員会のように、馬車馬的に教育だけを見る人が見ないで、全体の重さで見るということはそれは幾らか違います。しかしながら教育委員会の方にはこの案の二十九条によって原案を作るときにはやはり意見を徴するのであります。そこで教育委員会の方の人は十分に町村長に意見を申し出る機会もあるのであります。一つの公法人でありながら二つの予算を出そうというのは不自然であったのです。これはアメリカでは村の議会よりも教育委員会の方が先にできたというところが州によってはあります。そういうところからきておるので、これを日本に移すのには、やはり議会は一つという方がいいんだという信念を私は持っておるのです。
  193. 河野正

    ○河野(正)委員 ただいま大臣答弁を承わって参りますと、少し現在の実情からは甘いと思います。これは後ほど事務当局から承わりたいと思いますが、今日の実情では、もちろん教育委員会が原案送付権を持っております。持っておりますけれども、大臣は先ほどから今後教育委員会の意見を聴取するんだというようにおっしゃいますが、今日原案送付権を持っておりましても、なかなか執行部と話がつかない。現実に福岡県でも今県会をやっておりますが、対立予算が出ております。そういう実情でございますから、もし原案送付権が廃止されるというようなことになりますと、勢い教育委員会の予算というものが不当に圧迫される、こういった心配が起ってくることは、今日の実情から見ても私は明らかに予想できると思います。あるいはそのために、教育委員会の自主性というものがはなはだしく阻害されるということは、今日の実情から見て参りましても私は明らかに予想できると思います。それはもちろん大臣のような方が地方におられれば別でございますが、しかし現実は非常にかけ離れております。ことに今日政府が地方財政再建整備法という法案を出して参りましたように、今日の地方財政というものは非常に圧迫を受けております。そういったわけでございますから、ただいま私がいろいろ御指摘申し上げますようないろいろな問題が、この原案送付権に基いてますます激化してくるということは当然予想されて参ります。それで、多少大臣は甘く見ておられますけれども、地方の現実というものはそう甘くはございません。そこに非常に大きな問題があると私は思います。もし大臣がそういった甘い考え方でこの法案を作られたといたしますならば、これは非常に重大でございます。そこでこれは大臣から御所見を承りましても、そのような答弁を繰り返されると思いますので、私は一、二の例につきまして御指摘申し上げましたが、今日の地方の実情がどうであるということを一つ事務当局から御説明を願います。
  194. 緒方信一

    緒方政府委員 お尋ねは、現在の地方財政の状況のもとにおきまして、いわゆる教育に関しまする予算の編成についてどういう実情になっているか、こういうことであろうと思いますが、これは御承知通りの地方財政の実情でございますので、いろいろと財政の点で問題のあることは御承知通りであります。特に給与費の予算等につきましては、これは教育費に限らず全般的にいろいろと問題がございまして、地方で非常な困難をしておられることは、今私が申し上げるまでもなく御承知のことだと存じます。そこで実情につきましてはそのように私どもも了承いたしておりますが、このたびの改正につきましては、先ほど大臣からお答えがございましたように、二十九条におきまして、予算を作る場合に、教育委員会関係におきます部分につきましては教育委員会の意見をあらかじめ聞く、こういう建前になっておりますので、この点につきましては、従来の制度と実情におきましてはさほど変らずに、教育委員会の意見を反映していくだろうと考えるわけであります。このたびの改正は、これも先ほどお話がございますように、執行機関でありまする地方公共団体委員会と、同じ地方公共団体執行機関であります長と十分調和をとって仕事を進めていこうという趣旨でございまして、この教育事務につきましても長に積極的な関与をしていってもらう、こういう態勢が今後とられているわけでありまして、対立的に考えないで一緒になって教育予算を進めていく、今後そういう態勢ができてきますことをこの法律は期待しておるわけでございます。
  195. 河野正

    ○河野(正)委員 ただいま大臣事務当局から答弁を承わって参りますると、調和ということを強調されております。調和でできることでございますならば私ども異論ございませんけれども、今日の実情を見て参りますと、話し合いをいたしましてもなかなか話が解決いたしません。そこで対立予算が出てくるというような現在の実情を今日まで見せつけられて参っております。話をしようと思いましてもなかなか話がつかないということで対立予算が出てくる。ところが今度はそういった対立予算を出す権限もなくすということになりますと、権限を持っておりましてもなかなか思うようにいかないのに、その権限がなくなりますると、調整ということを主張されまするけれども、なかなかその調整というものがうまくいかない、そこに不当な圧迫を受ける要素が生れてくるということを申し上げておるわけでございます。そこで現在地方の状況を見られて、現行法のもとにおいて具体的にどのような実情に置かれているか。今日各府県とも予算県会あるいは予算市町村会というものが開催されておると思いまするが、そういった議会主義の中でどのような実情にこの教育委員会というものが置かれているか、その辺の実情をもう少し詳しく事務当局から御説明願いたい。
  196. 緒方信一

    緒方政府委員 まだ私の方で具体的に各県あるいは各市町村等の教育予算がどのように組まれているかという点につきましては十分資料を持っておりません。ちょうど今地方におきましては審議されておる最中だと考えております。ただ先ほどから御指摘のように、現在の地方財政の実情から考えまして、各地方団体におきまして、教育予算といわず、地方の財政のやりくりにつきまして非常に困難がある、そのためにいろいろな問題が起っておる。特に人件費等につきまして非常な苦心をしておられるということがありまして、先ほどお話がございましたように、府県によりましては教育費につきましていろいろ対立的な状況が起っているだろうと存じます。しかしこれは何と申しましても、その地方団体の財政の実態のもとに解決しなければならぬ問題でございますので、先ほどから申しますように、長と教育委員会はおのおの執行機関は別でございますけれども、同じ地方公共団体執行機関として相提携して、その問題は解決しなければならない、かように考えております。
  197. 河野正

    ○河野(正)委員 そこで私どもが考えますことは、そういった今日の改正法案が遂行されまするというと、先ほどから私どもがいろいろ御指摘申し上げますように、いろいろな問題が残ってくるし、いろいろ心配を持たなければならぬわけでございます。その場合に私どもが考えますることは、要するに今日地方財政というものが非常に圧迫を受けてきた。地方財政の赤字がだんだん累積してきた。これは自治庁からおいででありますれば、一番いいと思いますけれども、きょうはおいででないと思いますから事務当局でけっこうでございまするが、地方財政が非常に困難な状態に置かれているので、そういった地方財政の赤字を克服するというふうな意図で、ただいまのような原案送付権を廃止する、あるいは自治庁あたりの要請で廃止するというふうなことになったのではなかろうかというふうな考え方も強く持つわけでございます。これは単に文部省独自の考え方でそのような改正をなされたものかどうか、これは私ども今日地方財政を一番心配しておりまするがゆえにお尋ねするわけでございまするが、その辺の実情を一つお聞かせ願いたいと思います。
  198. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 この二本立予算の廃止は、自治庁などの注文によったもんじゃございません。自由民主党で非常に考えて、これを公平だという判断を下しましたので、それを私が閣議に持っていって承認を得たものでございます。
  199. 緒方信一

    緒方政府委員 ただいま大臣から御答弁になった通りでありまして、文部省といたしまして検討しまして、こういうような案にいたしたわけであります。ただ先ほども申し上げましたように、二十九条という条文を設けまして、歳入歳出の予算のうち、教育に関する事務にかかる部分その他教育に関します事務について定める議会の議決を経るべき事件の議案、それを作成する場合には、あらかじめ教育委員会の意見を聞かなければならない、こういう規定を入れまして、教育委員会意思がそこに反映いたしまするように配慮をいたしたのでございます。
  200. 河野正

    ○河野(正)委員 私どもは地方の実情をある程度知っておりますので、ただいま大臣あるいは事務当局の答弁ではどうも納得いかないわけでございます。しかしながら、大臣なり事務当局はやれるというふうなお考えでございましょうが、私ども非常に心配をしておりますので、この法案執行して、ただいま申し上げますような調和というものが完全にできるものかどうか、私どもがいろいろ心配しておりますような事態が起らないというふうに、自信を持ってお考えになっておるかどうか、その点を一つ承わっておきたいと思います。
  201. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 これが通過すれば、また適当な施行政令を出すつもりでありますが、完全にできるものと思っております。少しも疑いを持っておりません。
  202. 河野正

    ○河野(正)委員 大臣ができるというふうにおっしゃいますから、私はそれを信じます。もしそういったいろいろな事態が起って参る暁におきましては、その責任は当局にあるというふうなことで理解いたします。  それから、だんだん大詰めになりましたが、最近の傾向を見て参りますと、どうも独立のために必要であるならばと、これは大臣もしょっちゅう使われている言葉でありますが、そういった考え方から、日本の民主制度というものが非常に犠牲にされつつあるというようなことが、多々見受けられるわけでございます。しかしながら、日本の真の独立というものは、これは日本の民主主義を維持し、そして発展せしめることによって、ほんとう日本の独立というものがあり得るというふうに私ども考えているわけでございます。今日まで、独立のために必要ならば、民主主義というものはある程度犠牲にしてもよろしい、あるいはある程度改革してもよろしいというような誤まった考え方から、こういった道を日本が歩いてきたために太平洋戦争を惹起せしめ、そして日本をついには破局に導いたということは、すでに御案内の通りでございます。そこで私どもは、大臣が仰せられますように、国を愛すればこそ、われわれはこのような愚をあえて再び行なってはならないと思うのでございます。そういった意味で私ども国の制度、あるいは教育については教育委員会法もそうでございますが、こういった民主的な教育制度というものをあらためて改正していく、修正していくというようなことにつきましては、私はきわめて慎重であらなければならないというふうに考えております。ところが、まことに残念でございますけれども、独立のために必要ならばというようなことで、次々と民主主義が破壊されていく、民主主義が侵されていくといわなければなりません。今回提案されましたところの教育委員会法、これについても、私が先ほどから長い時間をかけて申し上げたように、いろいろと不備あるいは欠陥というものがたくさんあったと思いますし、その一部につきましては、大臣も認められたところでございます。ところが今後——もちろん大臣は十月選挙ということも盛んに言っておられますし、急を要するということも盛んに強調されておりますが、近く中教審、臨教審——中教審は別といたしましても、臨教審が設定されようというふうな法案も提案されております。そこで私は、もちろん急は要するのでございましょうけれども、そういった重要な審議をいたす機関を設けられようとしている事態の中に、そう急いでこういった法案を提案しないでも、私ども一歩退きましても、臨教審ができましたならば、臨教審にまずすみやかに諮問を要請されまして、そうしてこういった法案を出される慎重さがあってよかったのではなかろうかというふうに考えます。ところがどうも早急に、ばたばたとこういった法案だけできましたことは、私どもはいささか意外な感がいたすわけでございまするが、そういった点につきまして、それは国際的でも国内的でもけっこうでございますけれども、政治的背景というものがなかったかどうか、その辺の事情を一つ大臣から承わっておきたいと思います。
  203. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 午前中もちょっと問題になりましたが、政治的背景とおっしゃるけれども、やはりこの法律案自身は、これは私の属する政党で十分に審議をしたことでございます。しかしながらわれわれの友人は、事いやしくも教育に関することを、党利党略できめようという考えはございません。みんな日本教育よかれかしと考えているのでございます。この背後に、何か政治のプレッシャー・グループ、圧迫団体があったというふうなことは、一つもございません。あるいは町村長会などのことをおっしゃるのかと思いますが、意見は聞きましたけれども、町村長におもねるためにやったものじゃございません。それと同じように、教育委員会の方の意見も聞きました。けさちょっと問題があったような友人同士のいきさつもありましたけれども、やはり委員会側の意見も十分に聞いております。そうして国のためにこれが一番よかろう、こういう考えのほかはありません。ほんとうに虚心たんかいであります。
  204. 河野正

    ○河野(正)委員 大臣は虚心たんかいであるというふうに御答弁なさったのでございまするが、これは朝ほどの質問に出て参っておりましたが、私ども仄聞するところによると、全教委が総辞職をするというふうなことも承わっておるわけであります。御承知通り大臣も先ほどから今日までの教育委員会あるいはまた教育委員の功績、実績というものにつきましては十分に認められて参りました。そういった長い間今日まで教育運営に当りました教育委員というものが、全面的に総辞職してまで反対しようという意思を表明いたしましたことは、私はやはり今日出されましたところの教育委員会法がいかにいろいろの欠陥なりあるいはまた不合理なり、そういったものを持っておる一つの証左ではなかろうかというふうに考えるわけでございます。そこで大臣と朝のうちの山崎委員の問答の中でも、そういった総辞職というような事態が生まれるかどうかというような論議が繰り返されたようでありますが、いずれにいたしましても、そういった総辞職が行われるということは別といたしましても、そういった動きがある、そういった空気があるということは、これは見のがしてならないだろうというふうに考えます。そこで私どもが一番心配いたしますのは、そういった長い間教育委員会運営に当り、あるいはまた今日まで非常に大きな実績を残し貢献をしてきた教育委員会なりあるいはまた教育委員の功績、実績を尊重するというふうな建前から申し上げますならば、このような法案をあえて提案されるということにつきましては、私は非常に問題があるのではなかろうかというふうに考えております。なおまた今日の現行法というものは、発足いたしましてまだまだ数年しかたっておりません。しかしながらその数年間にこの現行法というものが非常に大きな実績を残してきた、非常に大きな功績を残したというこのことは、大臣もお認めの通りでございます。ところがそういった制度が今後なお大きく日本教育の民主化あるいはまた民主的な教育制度に貢献をしていこう、そのやさきにこういった法案改正をされますることは、私どもといたしましても全く了承できません。俗に言う朝令暮改という言葉がございまするが、大臣といたしましてはそういった民衆の声、国民の声を尊重されまして、もう一度この法案考え直してみるというふうな御意思があるのかないのか、その点を伺っておきたいと思います。
  205. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 前申す通りでございまして、今この法案考え直そうということは思っておりません。
  206. 河野正

    ○河野(正)委員 そういたしますと、この法案を強行されるということになりますると不測の事態が起ってくる——くるかこぬかにつきましては、これは朝ほど論議されまして、水かけ論に終りましたが、不測の事態が起ってくる、あるいは局部的には起ってくるということが予想されましょう。この点は大臣も、一、二の個所においては云々というふうな言葉がございましたが、いずれにいたしましてもそういった不測の事態が起ってくるというようなことは、これは教育行政にとりましてきわめて重大な時期でございます今日でございまするから、たといそれが全国的でなくても——あるいは全教委の皆さんが全国的にやられるかどうかわかりません。その点は私どもがやるわけではありませんから、そういったことは別といたしましても、そういった事態が生まれてくるということは、今日のきわめて重大な段階におきましては非常に大きな問題だと考えます。しかしながらそういった意見をいろいろ申しましても、大臣は強行するのだというふうなことでございますが、もしそういった不測の事態が部分的にもせよ起るということになりましたならば、非常に大きな不幸といわなければなりません。それは仮定のことだというふうにおっしゃいますればそれまででございますけれども、しかしながら少くとも大臣は、日本教育を愛し、日本教育の発展を考えていただかなければならない最高の責任者でございます。たとい全国的でなくても、部分的であるにいたしましても、そういった事態が起ってくるということにつきましては、仮定の事実といたしましても、これは相当の責任考えていただかなければなりません。これは先ほどの山崎委員との論議の過程においてもいろいろ尽されたと思いまするけれども、私どもも教育を愛し、国を愛するために、あらためてその点につきまして大臣から御所見を承わっておきたいと思います。
  207. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 わが国の教育委員諸君が集団的に辞職されるなんていうことはないと私はかたく信じております。いわんや本朝来の皆さんの御質問によって、この案の趣意もだんだんとよくおわかりになってきたことと思います。これらのことは委員諸君もあるいは間接に御了承下さることと思うのであります。あなた方のお問いのうちには、委員諸君が疑念とせられることも多々あっただろうと思います。この弁明によって相当の御理解を賜わることと思いますから、かりにも学校をあずかっておる教育委員諸君が——これはほかの委員ではございませんよ、いやしくも教育に関する委員なのですから、そういう方々がゼネストをやるなんていうことはおそらくないと私は心から信じております。
  208. 河野正

    ○河野(正)委員 ただいま大臣から答弁を承わって参りましたが、私ども全く満足するわけには参りません。しかしながら全教委につきましても今後推移もあることでございますし、そういった動きを今後十二分にわれわれも監視いたしまして、それに対応いたしまして質疑を続行いたしたいと思います。いろいろ細部につきまして質疑したいこともたくさんございますけれども、時間の制約もございますから、残余の質問は留保いたしまして、一応今日の質問を終りたいと存じます。
  209. 佐藤觀次郎

    佐藤委員長 この際辻原委員より参考資料の要求について発言を求められております。これを許します。辻原弘市君。
  210. 辻原弘市

    辻原委員 非常に重要な法案でありまするので、審議の参考に相当量の参考資料を、委員長を通じて文部省に要求いたしたいと思いますが、さしあたって二つだけ早急に一つ提出を願いたいと思います。  一つは、教育委員会制度の発足以来今日に至るまで、この制度につきましては、それぞれ各界あるいは各種団体またはそれぞれの政党におきましても、そのときの事態の変遷の過程において、いろいろな意見が述べられておると思うのであります。そういった意見をわれわれ十分尊重していかなければならぬ点もありまするので、それらを網羅いたしまして、一つわかりやすく、しかも精細に比較対照いたしましたものを御提出願いたいと思います。大体私が求めたい意見を概括的に言いますると、対象は従来政府が作りました各種の諮問機関、これも相当数に上っておると思います。その各種の諮問機関、これには答申したのもあるし、また答申半ばにおいて一応案として取りまとめたのもあろうと思いますが、答申したもののみでなく、その過程にあった答申案、これについても一つ拾い上げて御提出を願いたいと思います。それから各政党、これも従来自民党が、それぞれ改進党あるいは自由党に別れておったときもそうでありまするし、さらにそれ以前の民主党当時の意見もありますし、またわれわれ社会党も左右に別れておった当時の意見もあります。そういったもの、また各種の団体、それから機関、こういうものを網羅いたしまして、一つ提出を願いたいと思います。  それからいま一つは、諸外国における教育委員会制度についてのそれぞれの内容、これは教育委員会をやっていないところもありますから、そういう場合は教育行政制度組織形態、権限、そういったものを含んで、これもわかりやすく、資料として解説をしたものを一つ提出願いたいと思います。  とりあえず以上の二つを早急に一つお出しを願いたいと思います。
  211. 佐藤觀次郎

    佐藤委員長 ただいま辻原委員より要求のありました参考資料につきましては、文部省当局においてすみやかに当委員会提出を、委員長よりお願いいたします。
  212. 緒方信一

    緒方政府委員 ただいま御要求のありました資料の中で、各政党の意見というお話がございましたが、これはいろいろ調べてみたいと存じますけれども、ちょっと正確を期しがたい点があるかもしれませんので、あらかじめ御了承を願っておきます。
  213. 佐藤觀次郎

    佐藤委員長 他に質疑の通告もございますがだいぶ時間も経過したようでございますので、本日の質疑はこの程度といたします。     —————————————
  214. 佐藤觀次郎

    佐藤委員長 この際お諮りいたします。理事でありました鈴木義男君が去る十四日委員辞任されましたので、理事が一名欠員となっております。つきましては、その補欠選挙を行わなければなりません。先例により、委員長においてその補欠指名するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  215. 佐藤觀次郎

    佐藤委員長 御異議なしと認め、辻原弘市君を理事指名いたします。  次会は公報をもってお知らせいたします。  これにて散会いたします。     午後四時四十三分散会