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小牧委員 授業料問題につきまして、
清瀬文部大臣と
大学学術局長に若干の
質問をいたしたいと思います。この問題につきましては、先般
同僚辻原議員から、
予算委員会において大要について
文部大臣に御
質問をいたしまして、
文部大臣の方から御
答弁があったことは御
承知の
通りでございます。しかしながら、時間の
関係もあったかと思いますが、十分なる御
意見も承わることができずに、私
どもといたしましては、今回の
授業料値上げ問題についてにわかに納得しがたいものがございますので、さらに具体的に
質問いたしまして、御
答弁をお願い申し上げたいと存ずるわけであります。この問題につきましては、
金額がそうたくさんになりませんし、またいろいろな客観的な
情勢などを
考えて、この
程度の
授業料の
値上げはやむを得ないではないか。あるいはまた
戦前に比べて安いから、このぐらいの五割の
値上げは妥当であるとか、いろいろ
意見も出ておるようでございます。しかし今日の
国立大学の
学生の
生活状態、
生活の
実態をいろいろな
資料によって調べてみますと、私
どもは、この
値上げ問題が、そういった
ほんとうの
実態を十分に把握しておらない結果出てきたのではないかということを
考えさせられるのであります。
文部省の
大学学術局の
学生課の方でいろいろ今日の
学生の
生活状態をお調べになった
調査の結果を拝見いたしてみますと、
自宅から
大学に通っておる
学生の
生活費でございますが、
東京におきましては、
国立大学の
学生は一月
生活費が四千七百円となっておるようであります。これに比べまして、
私立大学の
学生の
生計費は六千六百二十円、従いましてその
比率は約七一%、また
地方におきまして、同じく
国立大学の
学生の
生活費の
平均を見ますと、これは
東京よりも若干安くなっておりまして、約四千百二十円、これに比べまして、
私立大学の
学生の
生活費は五千三百七十円、その
比率は大体同じで七七%、また
下宿におって通学しておる
学生の
生活費を見ますと、
東京におきましては
国立大学が八千六百二十円、
私立大学の
学生が一万一千七百円、その
比率は七四%、
地方におきましては
国立大学が七千六百二十円、
私立大学が一万七百五十円、その
比率は七一%、こういうふうになっておりまして、
国立大学の
学生が
私立大学の
学生に比べまして約七割という低い
生活費で
生活をしておる、こういうことが大体言えると思うのでありまして、
国立大学の
学生がどういう
家庭から出ておるかということをいろいろ調べてみますと、当然こういうような低い
生計費でやっていかなければならないという結果になることが明らかであります。たとえばその
父兄は
会社員であるとかあるいは官公庁の吏員であるとか、あるいはまた教員、あるいは農村の方、漁村の方、こういう
父兄が苦しい中から
自分の
子弟に
仕送りをしておりますので、そうたくさんの
仕送りができない。そういう
子弟が
国立大学の
学生の大半を占めておるという結果であろうと私は
考えるわけであります。しかも今日の
学生——これは
国立も
私立も同様でございますが、今日の
学生の
生活状態を
戦前のそれと比較いたしてみますと、
昭和九年の
東大の
生徒の
資料がございます。ちょうどそのころ私も
東大におりましたので、よく知っておるわけでございますが、
昭和九年の
東大生の
生活費は、
調査資料によりますと間代を含んで、一月の
生活費はおよそ四十八円五十二銭という
数字が出ております。しかしながらこの
数字は、実際においてはおそらくまだ若干多いのではないか。四十八円五十二銭という金では、当時
学生の
生活といたしましては普通の
生活は困難ではなかったろうか、かように私は想像いたしております。この
昭和九年の
物価指数と現在のものと比べてみますと約三三〇・七、これは
昭和九年から十一年を
平均して
基準といたした
指数でございますが、三三〇・七という
数字になっております。従いまして前の四十八円五十二銭にこの
指数をかけてみますと、約一万六千円という
金額になるのであります。しかしながら四十八円幾らかが不十分な
生計費であるといたしますならば、この一万六千円という
金額は、実際にはまだこれ以上になるのではないか、こういうふうに
考えますが、
国立大学の
学生の
東京における
下宿の
生計費は、先ほど申し上げました
通り八千六百二十円、こういう
数字になっておりまして、ただいま申し上げました一万六千円に比べてみますと約五四%にしか当らないということが明らかになるのであります。
まず簡単に、このように今日の
学生の
自宅あるいは
下宿における
生活状態を瞥見してみますと、非常に少い
金額で苦しい中から
学業を学んでおるということは、これはもう否定できない
現実であろうと私は信じております。ちょうど
戦前の約半分の
生活水準である、しかもこのわずかな
生活費を
自分の親元の方から送ってくる金で全部まかっておる
学生というものは、これまた
資料の示すところによりますと全体の約半分にしか当らない。従いましてあとの不足する半分はあるいは
奨学資金なりあるいはまた
アルバイトをやりながらこれを補いましてそうして何とかかんとか
最低生活の営める
生活費を得てそうして
授業を受けておる。こういうことになると思うのであります。さらにもう少し突っ込んでその
内容を調べてみますと、そういった
学生の中で全然
内職をしないで済ますことができる者、これが
全国平均で約五〇%であります。この
傾向は
地方の
大学になりますとさらにひどいと
考えております。
九州大学の出されました
資料を見ますと三八%であります。また
内職せねばやっていけない者、これが三七・四%、これを
地方の
大学の例として
九州大学を調べてみますと四二%、さらに
内職をしなければ全然
学業の継続ができない者、これが一二・八%であり、
九州大学の
資料によりますと約二〇%、こういうような
数字が現われて参っておるわけでありまして、従いまして大
部分の
学生は
奨学資金なりあるいは今申し上げましたような
アルバイトをやっていかなければならないということで相当な疲労を感じながら
授業を受けておる、またあるいは病気を起しまして
療養も受けなければならない、そういう
療養の必要のあるような
学生も相当出て参っておるようであります。しかもこの
アルバイトの収入というものはごくわずかであります。これも
資料の示すところによりますと大
部分月千円から二千円あるいは二千五百円、
平均二千二百円というわずかな月収であります。御
承知のように私
どもが
戦前大学に学んでおりまするころは、
アルバイトということは決して
原則にはなっておらないので、たまたま
家庭教師あるいはその他の
アルバイトをやっておる方もおりましたが、そういった
方々はごく少数の
方々ではなかったかと
考えておりますが、今日は今申し上げました
通り、大
部分の
生徒が
アルバイトなり
奨学資金にたよらなければ
最低の一月の
生活費すら得ることができない。その中からようやく
学業を継続していくことができるという
状態であります。まずこのような今日の
学生の
生活の
実態というものを、今回の
授業料の
値上げの問題が出ました場合に
文部大臣はどのようにお
考えになったのか。それ以外のことは今御
答弁は必要でございません。この
実態をどのようにお
考えになったのか、まずこれから先にお伺いいたしてみたいと思います。