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1956-08-24 第24回国会 衆議院 農林水産委員会 第52号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年八月二十四日(金曜日)     午前十時五十五分開議  出席委員    委員長代理 理事 吉川 久衛君    理事 白浜 仁吉君 理事 田口長治郎君    理事 淡谷 悠藏君 理事 稲富 稜人君       安藤  覺君    五十嵐吉藏君       伊東 岩男君    石坂  繁君       大森 玉木君    川村善八郎君       小枝 一雄君    綱島 正興君       原  捨思君    本名  武君       松浦 東介君    松田 鐵藏君       足鹿  覺君    伊瀬幸太郎君       井手 以誠君    小川 豊明君       神田 大作君    小平  忠君       田中幾三郎君    平田 ヒデ君       柳田 秀一君    久保田 豊君  出席国務大臣         農 林 大 臣 河野 一郎君  委員外出席者         大蔵事務官         (主計官)   大村 筆雄君         農林事務次官  清井  正君         農林事務官         (大臣官房長) 永野 正二君         農林事務官         (農林経済局         長)      渡部 伍良君         農林事務官         (農地局管理部         長)      立川 宗保君         農 林 技 官         (農地局建設部         長)      清野  保君         農林事務官         (振興局長)  大坪 藤市君         食糧庁長官   小倉 武一君         水産庁長官   岡井 正男君         専  門  員 岩隈  博君     ————————————— 八月二十四日  委員加藤常太郎君、川俣清音君、成田知己君、  西村力弥君及び芳賀貢辞任につき、その補欠  として松田鐵藏君、井手以誠君柳田秀一君、  田中幾三郎君及び小平忠君が議長指名委員  に選任された。 同日  委員松田鐵藏辞任につき、その補欠として加  藤常太郎君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  第九号台風による被害調査のための委員派遣承  認申請に関する件  第九号台風による農林漁業災害に関する件  東北北陸地方水害による農林災害対策に関  する件  甜菜に関する件  北洋漁業に関する件  食糧の配給制度に関する件     —————————————
  2. 吉川久衛

    吉川(久)委員長代理 これより会議を開きます。  先般の台風第九号による農林漁業災害について調査を進めます。  この際お諮りいたします。第九号台風被害は、特に九州方面において甚大であったようでありますので、この地方委員を派遣して、その実情調査し、早急な対策の樹立に資したいと思います。つきましては派遣委員の選定、派遣期間委員長に御一任願うこととして、議長承認を求めることにいたしたいと思いますが一これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 吉川久衛

    吉川(久)委員長代理 御異議なしと認め、さよう決定いたしました。     —————————————
  4. 吉川久衛

    吉川(久)委員長代理 次に被害状況について農林当局において調査したところがあれば、その説明を願います。
  5. 大森玉木

    大森委員 九号台風に対して、今九州方面ということをおっしゃったが、石川県においても相当被害があった。それを私から報告し、承認を得たいと考えております。九州方面に対する被害のみをお諮りになられたので、私から説明申し上げて追加していただきたいと思います。
  6. 吉川久衛

    吉川(久)委員長代理 大森委員お答えいたします。九州については委員派遣のことで触れたのでございますが、その他の地区についても政府から報告があるそうでありますから、それの報告に対する御質疑の際にお述べをいただいたらいかがかと思います。そういうように御了承願います。渡部局長
  7. 渡部伍良

    渡部説明員 お手元に二つ資料が出ております。台風第九号による被害概況農林省統計調査部三十一年八月二十一日、それからもう一つ台風第九号被害状況昭和三十一年八月十七日から二十二日、その二つ資料が出ております。先に申し上げましたのは農作物被害状況でありまして、あと資料施設被害状況であります。詳細の調査は目下統計調査部及び関係機関におきまして調査をいたしておりますが、ここにまとめて提出いたしましたのは、主として府県から報告のあったものを取りまとめておるのであります。  まず農作物関係の方から申し上げますと、数字的に詳しくは出ておりませんが、あとの方に台風の通過の表がついております。それによると、一応九州から四国北陸東北、北海道、その部面に被害があります。日本海に出ましてからは、幸いに風速が衰えまして不幸中の幸いでありますが、主として西南部被害が多いことになっております。ちょうど水稲、陸稲の成育状況は、九州四国中国等では、わせの一部が穂を出し始めておった程度であります。中稲、晩稲はまだ穂が出ておりませんので、被害も作物としてはそうひどくありません。雑穀、果樹等につきましては、西の方では相当ありますが、たとえば青森のリンゴ等につきましては相当心配しましたけれども、幸いにして損害はそうひどくないようであります。数字的にまだはっきりしておりませんが、私の方でその後報告をまとめてみますと、農作物といたしましては大体三、四十万石の米の減収になるのじゃないか、そのほかのものを合せまして、十六、七億円の農作物損害になるのじゃないかと一応推定しております。農作物関係統計調査部被害状況は、もう十日ぐらいかからないと結果が出てきませんので、大体概略を申し上げた次第であります。  施設の方は、第二の紙に昭和三十一年発生台風九号による農林水産業施設関係被害額総括表というのをつけておりますが、これをごらん願いますと、農地局関係で六億五千九百万円、林野庁関係で二億、水産庁関係で三億九千万円、これは漁港施設だけであります。水産庁関係では、そのほかに漁船漁具その他の施設が出ておりますが、県からの報告そのままを集計しますと、水産庁関係はこのほかに約十四億ばかり被害があるようになっております。それらの詳細はその次からずっと今の内訳を書いておりますからごらん願いたいと思います。概略以上の通りであります。
  8. 吉川久衛

    吉川(久)委員長代理 政府報告に対して発言の通告があります。これを許します。大森玉木君。
  9. 大森玉木

    大森委員 私は今度の台風九号による石川県の被害状況を簡単に御報告申し上げておきたいと思います。そしてあとから要望事項を申し上げて、これまた御了解を願いたい、かように考えます。  今度の第九号台風による災害は、漁船において、動力船だけで大破、中破、小破、これを合せますと全体で百九十三隻ということになっておるのであります。そして動力船でない小さな漁船がやはり大破、中破を合せて百八十隻ということになっておる。でありますので、漁船損害だけでもこれを数字的に申しますると四千三百万円に達しておりまして、その他定置網十七統で三千七百万円、地曳網二統で百二十万円、漁具七百五十万円、しいらづけ二百万円でありまして、それを合計いたしますと九千七十万円ということになるのであります。そして海岸方面漁港におきましても、その損害額は大体二千万円をこえておるのであります。  さらに農業に対する損害は、ちょうどわせはもう実りかかっておる。しかし、なかての方はまだはっきりしておりません。それが全部倒れてしまっておる。おくてのごときはまだ穂が出ていない。それらも倒れておる。そして私はこれは冷害と申し上げていいと思うのですが、その後の私の地方気温は非常に低下いたしておりますので、一週間以上になりますともはや一割や二割の損害ではないと思う。これは大きな問題でありますので、ぜひとも委員を派遣してこの状況調査願いたい。現在の稲作に対するところの損害金額といたしましては、概略大体十一億四千八百九十四万円ということになるのであります。これは今技術者調査によって、概略でありますけれども、大体こういうふうに調査いたしたのであります。それで重ねて申し上げますると、今申しましたように、この気温関係から言いまして、台風による損害よりか、冷害がひどいということを考えますので、あわせてこれを申し上げてお願いいたしたい。  さらに要望事項といたしまして、これは政府のどなたかにお願いをいたしたいと思いますが、天災による被害農林漁業者等に対する資金融通に関する暫定措置法に基いて、低利営農資金の貸付を行なってもらいたい。これが一つ要望であります。さらに被災農家に対しまして、すみやかに農業共済保険金概算払いを行う処置を講じてもらいたい、これも一つ要望事項であります。さらに農作物減産防止に要した農薬病害虫防除の器具及び肥料等購入資金に対して、その額の二分の一に相当する国庫補助金を交付するよう、これも要望いたしたいのであります。さらに被害激甚農家に対しての転作用種子及び明年度種もみ安売措置を講じてもらいたい。さらに農林関係職員農業改良普及員蚕業技術指導員及び農業共済団体職員活動等に要する経費を交付することを要望いたします。被害農家にかかる米穀の事前売り渡し申込数量減額変更に伴う前渡金返納に要する資金希望農家に対し貸し付け得る措置を講じ、あわせ前渡金返納遅延による利子負担の軽減または免除をすること、これだけの要望事項石川県における災害の概要を申し上げて、先ほど申し上げた委員派遣方お願いをいたしたいと思います。
  10. 吉川久衛

    吉川(久)委員長代理 足鹿覺君。
  11. 足鹿覺

    足鹿委員 台風第九号につきましては、先ほど政府被害状況報告を聞いたのでありますが、この台風はこの地図で見ますと山陰沖を接近して通っておるようになっておりますが、私ども現地の感じから言いますと、よほど接近しておったように思います。米子測候所の調べたところによりますと、鳥取県の米子、島根県の東部方面においても、瞬間風速三十五メートルという相当強い風速のものでありまして、この中心が当日の十一時ごろから十二時ごろに襲ってくるであろうという警報が出まして、それぞれ対策を講じておったのでありますが、それが過ぎた夕刻の薄暗くなってから、雨を伴った非常に強度なものに変りまして、当初伝えられておったものよりもよほど激烈なものであったのであります。その結果、施設災害方面は私仄聞しておりませんが、農作物には近来まれな被害をもたらしておるのであります。たとえば鳥取県の事例を一つ申し上げますと、ちょうど御存じの二十世紀の成熟期に直面をしておりまして、一週間前後で出荷の初期が始まろうという一番大事な時であったのであります。そのために落果するものが非常に多く、また残ったものも風ずれ等によって商品価値を著しく損するというようなことで、鳥取県の果樹業者としては最近に見ざる大被害を受けて、その対策にぼう然自失をしておるというような実情になっておるのであります。こういうようなことはまだ県その他の報告がなくて詳細に判明いたしておらないと思いますが、特殊な被害ケースとして十分御調査を願いたい。  いま一つは、特に山間地あるいはその付近におきましては、わせ種水稲出穂期に当っておりました。最初台風は雨を伴わなかったために、入熟前後の水稲に非常な被害を及ぼしまして——まだその被害の結果は成熟を待ってみなければわかりませんが、これまた予想以上の被害をもたらしておるのではなかろうかというので心配をいたしておるのであります。  なおただいま同僚委員からも北陸方面実情が述べられましたが、富山県等においても冷害ぎみだというお話でございまして、台風の直後から非常に温度が下りまして、大体二十度を割るような日も相当続いたのであります。そのために風害を受けたわせ種ないしは中生種に至りましてはこの冷害影響等相当あるのではないかと案じられておる実情であります。  そういう実情でありますので、ただいま委員長におかせられては九州方面調査班を派遣するという方針を明らかにされましたが、でき得べくんば適当な措置を講ぜられまして、山陰あるいは北陸その他の方面に対しましても十分調査を進められるために調査班の編成、派遣等について十分御考慮をわずらわしておきますと同時に、当局においても、この特殊な被害ケースについて調査に遺憾なきを期し、被害対策が講ぜられる場合においては他の地域に対しても同等な取扱いをせられんことを要望かたがた実情報告申し上げて、御善処をわずらわしておきたいと思います。
  12. 吉川久衛

    吉川(久)委員長代理 足鹿委員の御発言はごもっともな点がございますので、本委員会理事会において九州への委員派遣を決定いたしまして先ほど御承認を願ったようなわけでございますが、なお理事会等において検討をいたしまして、何らかの措置をとるようにいたしたいと思います。  井手以誠君
  13. 井手以誠

    井手委員 第九号の被害対策について若干お尋ねいたしたいと思います。幸い大臣もただいまお見えになりましたので、具体的な質問の前に大臣にお聞きしておきたいと思うのです。  私はかねて災害に対する調査並びに査定の一元化については、しばしば本委員会や他の機会において要望いたしておったのであります。調査については、農林省あるいは建設省、各関係省が各出先機関段階ごとに数次にわたって御調査をなさっておる。さらに査定におきましても、五つ六つのあらゆる機関が、それぞれ段階ごとにこれまた何回かにわたって査定を行なっておりますために、復旧に必死となっておる被害地におきましては、せっかく御調査、御査定見えたのに、接待を十分しなければならぬ気持はありますけれども、非常に困った場合もあるのでありまして、ぜひ御調査なり御査定政府において一元的に行なってもらいたいということをかねて要望いたしておりました。ところが今回の災害におきましても同様なことが言えるのであります。これは農林委員会直接の問題ではございませんが、先般九州馬場建設大臣がお見えになりました。非常にありがたいことではございましたけれども、災害のひどかった佐賀長崎などの調査において、佐賀県におきましては、農林省所管干拓地建設省所管となっておる干拓地についての御調査がありましたが、ほんの隣合せの堤防決壊について、建設省は自分の方はこちらだけだというので、一方だけしか御調査なさらないということがあった。毎日新聞にも、お役所式に怒りの声という大きな見出しでその内容が報道されておったのであります。この言葉がいいかどうかは別にいたしましても、ぜひ一つ調査の場合は一元的にやるように、閣議その他において——特に副総理格とも言われる河野農林大臣でもありますので、特にその点について御善処願いたいのであります。さらに建設省においてはいち早く大臣もお見えになりました。従って農林省においても、係官の方はお見えいただいておりますけれども、大臣お忙しゅうはございましょうが、ぜひ災害のひどいところに対しましては御視察をいただきたいということを最初に御要望申し上げておきます。  次いで具体的にお尋ね申し上げます。佐賀福岡熊本三県にわたる干拓被害であります。今度の災害については、台風の通過した関係府県においてはかなりの被害を受けております。しかし私は特に関係地方のものといたしまして、特異な被害といたしまして干拓地被害対策について御要望を兼ねて御質問をいたしたいと存じております。今回の風は、従来あまり例を見なかった西南の風がひどかったのであります。そのために、せっかく数十億円の国費を投じて完成しあるいは完成しつつある佐賀福岡熊本の三県にわたる干拓地堤防に大きな被害を受けました。一例を申しますならば、佐賀県においては六つ地区において約一千メートルの干拓地堤防決壊をいたしたのであります。ちょうどあいにく高潮でありましたために、海水がどんどんと入って参りました。そのために約二千町歩に及ぶ水田が塩田と化しました。しかもすでに入植をいたしております二、三の地区におきましては、入植者住宅の床上いな軒下まで海水が浸入して参りまして、約二百数十戸が被害を受けて、すでに住宅には用をなさないくらいに惨害を受けておるのであります。この干拓の問題について特に私が要望を兼ねてお願いしたいのは、来たる九月十七日がいわゆる八朔の大潮であります。私は先日現地をずっと視察して参りましたが、大きな決壊場所から今でも海水がとうとうと水田に入って参っておりまして、水田入植者住宅も今なお海水に洗われておる現状であります。従って、この復旧はきわめて急を要するものであります。今本省係官あるいは県当局などの考えによりますると、これが完成は早くて十一月ではないか、こういうことを言われておるのでありまして、被害者関係民は非常に困って、毎日陳情を繰り返しておりまするけれども、経費その他の関係で早急に潮どめ工事などの応急工事もできかねるような実態でございます。おそらくこのままに参りますならば、百数十戸の入植者住宅は全然だめになってしまうでございましょう。あるいは丹精を込めた水田もだめになってしまうでございましょう。その目の前に見えておる海水の流入、しかも高潮を控えておる今日において、この潮どめ工事復旧はきわめて急を要するのであります。ほかにも聞きたいことがございますが、この惨害の急を要する復旧に対して、本省ではどのような御対策をお考えになっておるのであるか、この点を特に私はお尋ねいたしておきたいと思うのであります。
  14. 吉川久衛

    吉川(久)委員長代理 井手委員の御質疑に対して農林大臣からお答えがございますが、それに先だって、去る東北北陸水害について本委員会において決議をいたしております。それに対する政府の所見を先に農林大臣からお伺いをして、そのあとお答えを願います。
  15. 河野一郎

    河野国務大臣 委員長の御示唆もございましたので、最初農林委員長からちょうだいいたしておりまする本委員会の御決議に対して、私の考えを申し上げたいと存じます。  六、七、八の各月にわたりまして、いろいろな種類の災害相当広範囲にわたって受けております。これが対策について委員会各位から熱心に御要望のございました点につきましては、私といたしましては十分係官を督励して、御要望に沿うように善処いたさなければならないと考えております。そのうちにおきましても、特に農薬関係補助の問題につきまして大蔵省とせっかく折衝をいたしておりまして、ぜひこれを御期待に沿うようにいたしたいと考えております。その他の点につきましても、いずれもごもっともなことでありまして、ぜひこれは実現をしなければならぬと考えております。  さらに、ただいま先般の有明湾干拓地堤防決壊の問題について具体的に御指摘を受けてお尋ねでございますが、これにつきましては御趣旨もっともでございます。農林省におきましても、これが調査に出ております者が二十八日には帰って参るそうであります。決してこの報告を受けなければどうということはございませんけれども、それも近日のうちに帰って参りますので、この報告も十分徴しまして、ただいま御指摘の点を十分尊重いたしまして善処いたさなければならぬと思っております。御趣旨通り考えます。御期待に沿うように、部下を督励いたしまして十分やりたいと考えております。
  16. 井手以誠

    井手委員 本日は他に多くの御予定があるようでございますので、私は簡単にあと一言だけ御要望いたしておきたいと思います。すみやかに今大臣がおっしゃったように応急対策を講じていただきますことを切にお願いいたしますとともに、幸いにして国営の直轄の干拓については被害がほとんどなかったのであります。ところが代行干拓がほとんどやられておる。しかもすでに入植までしておる地域において、従来ほとんど考えられていなかった方面からのいわゆる弱点をついての被害でございます。代行干拓については十分今後お考えを願いたいと思うのであります。この復旧については、応急並びに恒久対策については特に御善処下さいますように重ねてお願いをいたしまして、私の質問を終る次第であります。
  17. 稲富稜人

    稲富委員 議事進行について。私この際、幸いに農林大臣が御出席でありますので、希望を申し上げたいと思うのであります。前回の東北水害のときに小委員会が数回開かれております。その当時、もちろん農林大臣は御多忙の間でございましょうけれども、所管大臣としながら一回も御出席がなかったということは、実にわれわれは遺憾に思うと同時に、罹災者に対しましてもわれわれは申しわけないと思うのであります。今回第九号台風に対する小委員会等も行われると思いますが、きょうは次官もいないようでありますので、できるだけ所管大臣としてこれに対する審議に対しては御出席をなさるようにこの際お願いをしておきたい、このことを委員長から大臣に特に希望的に御要望していただきたいということを要望いたします。
  18. 吉川久衛

    吉川(久)委員長代理 稻富委員の御発言については、さきに委員長から大臣にその趣旨を伝えました。大臣はこれをごもっともといたしまして、万障繰り合せて出席をしたいというので、いろいろ御都合やりくりをされましたが、その都合がつかないので、本日は午後三十分くらい何とか都合がつくというのを、閣議やりくりがつきましたので、午後の時間を午前に繰り上げてここに御出席を願ったようなわけでございます。大臣の御誠意はわかるのでございますが、もう少し一つ委員会に一そうのお考えを願いたいと思います。
  19. 河野一郎

    河野国務大臣 了承いたしました。
  20. 吉川久衛

    吉川(久)委員長代理 次に田口長治郎君。
  21. 田口長治郎

    田口委員 今回の第九号の台風は実に猛烈でございまして、私長崎市におったのでございますが、瞬間風速四十五メートルというような状態でございました。そうして今回の被害の特徴といたしまして、各地ともに漁村が非常にひどくやられておるのでございます。一例を長崎県にとりますと、千九百そう程度漁船がそっくりやられておる、こういう状態になっておるのでございますが、この漁船漁具がやられた業態を調べてみますと、ほとんど零細漁民でございます。あすから仕事をしなければ飯が食えないというような連中が大部分でございます。こういう点から考えまして、私はこの台風対策がきまるまで、この連中仕事をしないということはとうてい生活上できないと思いますから、一応方針がきまりましたら、何とかつなぎ資金ででも漁船漁具の問題を解決していただく、こういうことができますれば、ほんとうに零細漁民が助かると思うのでございますが、まずこの一点についてお伺いいたしたいと思います。
  22. 河野一郎

    河野国務大臣 御承知の通り災害の問題でございますから、緊急処置をとらなければいけませんし、応急対策もとらなければいけませんことは申し上げるまでもございません。従って、ただいまお話になりました通りに、応急対策としてこれら漁夫に対する漁撈の漁船漁具等についてしかるべくその資金融通等をする必要があるだろうということは私も全く同感でございます。公庫等の金をなるべくあっせんいたしまして、さしあたりそれらの諸君が働けるようにしてあげることにしていかなければならぬだろうと思っております。せっかく地元におられます各位におきましてその連絡を十分とっていただきまして、われわれといたしましてもできるだけこれに協力することを期しますでございますから、どうぞよろしくお願いいたします。
  23. 田口長治郎

    田口委員 次に水産加工場の問題でございますが、これがほとんどやはり海岸にあります関係からいたしまして全滅状態でございます。しかるにこの扱いにつきまして、水産関係で扱われるか、あるいは一般食品工場として扱われるか、業者としては窓口に困っているような状態で、ございますが、これについてはどうお考えになっておられますか、お答え願いたいと思います。
  24. 河野一郎

    河野国務大臣 協同組合の施設でありますとかいうようなものならば、むろん農林省水産関係におきまして公庫でこれを扱う、それからこれが個人の中小企業者というような関係で見るべき人につきましては商工中金等で扱うということが妥当じゃないかと考えております。
  25. 田口長治郎

    田口委員 そういたしますと、農林省で扱われる工場と通産省で扱われる工場と二つに分れるということになりますか。
  26. 河野一郎

    河野国務大臣 通産省で扱うという意味ではございませんので、資金のあっせんを申し上げるのに、今申し上げた通り農林省関係の中小企業等がたくさんあるわけでございます。そういう意味で、水産加工等につきましてはこれを中小企業金融公庫、それから一方の人でありましたならば農林公庫というように、金の出場所は分れてあっせん申し上げることの方が妥当ではないか、こう申し上げたのであります。お申し出になりますことをごあっせん申し上げますことはむろん農林省でこれを扱います。
  27. 田口長治郎

    田口委員 それじゃ一般加工場、個人工場ともに農林省報告いたしまして、そして農林省資金をあっせんしていただく、こういう方針でおられる、そう了承してよろしゅうございますか。
  28. 河野一郎

    河野国務大臣 よろしゅうございます。
  29. 田口長治郎

    田口委員 次に開拓地の住宅問題でございます。これは各地の開墾地を見に行きましても、住宅が平素から非常にお粗末であったわけなんでございますが、今度の台風でどこの開拓地も住宅をひどくやられておるのでございます。この復旧はもちろんでございますが、将来この開拓地の住宅について、もうちょっとしっかりした住宅を建てさせるようなお考えがありませんかどうか。私が聞くところによりますと、大体住宅に対して二分の一補助をする、そのベースは二戸十八万円で、国で九万円程度持つというような話を聞いているのでございますが、これが基礎になって開拓地の住宅というものは非常なお粗末なものになっておりまして、何か馬小屋か豚小屋かというような、人間の住まうような住宅でないようでございますが、ああいう住宅ではせっかく開拓の念に燃えた青年がその地に居つくかどうかというような疑問もありますから、将来この問題をどんなふうにお考えになられますか、今回の台風で特に全滅状態にあるこの機会に、何とか少し考えていただいたらけっこうでないかと思うのでございますが、その点について一つ
  30. 河野一郎

    河野国務大臣 現在の制度では、今お話通り十分でないことは御指摘通り考えます。しかし開拓、開墾に重点を置いて耕地の造成の方に専念いたしておりますからついそういうふうなことになっておったと思うのでありますが、この点につきましては至急一つこの機会に考えてみたいと思います。
  31. 田口長治郎

    田口委員 さしあたり被害をこうむった住宅に対して、具体的にはどういう処置をとっていただけますか。これは係の人にお願いしたい。
  32. 立川宗保

    ○立川説明員 当面の問題といたしましては、さっそく被害状況現地調査をいたしまして、被害状態を確認いたしまして、被害のはなはだしいものに対しましてはすみやかに復旧補助措置を講ずるということを政府の内部でさっそくにきめたいという工合に考えております。
  33. 田口長治郎

    田口委員 漁村の一般住宅の問題でございますが、各地を回ってみますと、ほとんどお盆になっておるちょうどその時でも、位はいの前に大きな石が固まっておる。その石すらも運び出し切らぬというような状態でございまして、跡形のない住宅もございますし、ほとんど住まわれない住宅もたくさんできておるのでございます。共同施設でもありませんし、あるいは公営住宅でもない、住宅公団から金を借りた家でもないわけでありますが非常にむずかしい問題でございまして、この問題もどうも放任しておけない問題だと思うのでございますが、これについて何か方法をお考えになっておりませんか、お伺いしたいと思います。
  34. 河野一郎

    河野国務大臣 ただいまお話の点はよく厚生大臣とも相談いたしまして、実情を伺いまして善処するということで、農林大臣としてはちょっと今はからいかねますから御了承願いたいと思います。
  35. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 関連して。今度の被害につきまして、米の予約売り渡しをしておりますところがだいぶあると思いますが、この予約売り渡しをしました農家が、予約の金を借りておいて、しかも実際の米の供出もできない、その金の返還もむずかしいという状態に陥っている例がたくさんございますようで、前会も質問しましたが、これは大臣のお考えを聞かなければ答弁できないというので保留しておりますが、何かそれにつきまして措置をとられるようなお考えがありますかどうか、聞きたいと思います。
  36. 河野一郎

    河野国務大臣 御承知の通り予約の前渡金を差し上げてありますけれども、実際これが政府に売り渡す米がない、もしくは非常に無理をしなければそれが得られないというような場合が出来秋に起って参りますれば、そのときには当然考えなければならぬと思っております。そのときにならぬでも今からわかっておるということもあるかもしれませんが、今さしあたっての問題ではございませんので、それまでの間に、こういう場合どうしたらよろしいかということを十分考えまして、決して無理のかからぬようにしていきたい。あまりルーズにしていきますと、これも弊害を伴う場合がありますから、こういう場合につきましては十分調査をいたしまして、親切に扱うということにしたいと考えております。  なお多少時間の余裕もありますので、その間に御趣旨の点も十分伺いまして、そして必ず無理のかからぬようにしていくということだけはこの際はっきり申し上げます。
  37. 大森玉木

    大森委員 小団地の問題でありますが、大体十万円以下の災害に対しましては補助がなく、さらにまた距離の問題等がかかっておるのであります。しかしこの問題に対しましてはいろいろ要望もあったようでありまするけれども、私どもの地方から見ますると、小団地によって農業を営んでおる人たちは、それによって皆無であるということになると、もう生活のできないものである。大体そういう人が多いのであります。それが今の法規によって、あるいはそれによってそれを縛られてどうにもできないということでありますると、これは大きな問題であります。これらに対しましてはそれぞれ県からも要望をいたしております。しかしながら、大体表の方では何とかしなければならぬというような話もあるようでありますが、しかし事務の方面に参りますると、そうはいかないということで、実効が乏しいということを聞いておるのであります。きょうは大臣がお見えになっておられまするが、私が、お願いとさらに御考慮をお願いいたしたいことは、今申し上げましたように、この農民こそはそれによって生活を営んでおるのでありますから、距離が何十メートル隔たることによって災害補助の適用を受けないというようなことがあり、また十万円以下ということによってその災害補助の適用を受けないということでありますると、非常に大きな問題で、零細農民は苦況に陥るのであります。この点に対して大臣の情ある御考慮とお答えお願いいたしたいと思います。
  38. 河野一郎

    河野国務大臣 ごもっともなお考えでございますけれども、何分政府が中央におきましてあまりこまかなところまで目が届きかねまして、いろいろとまたそこに逆にめんどうな問題が起ってくる。事業をしないのに補助金だけ取っていくというふうな逆な場合がありますので、せっかくぜひやらなければならぬことは実際問題としては実行がなかなか困難だというようなことがありまして、一たん三万円までの災害についてやるのを、半分金額を引き上げるとか、さらにまた時によれば、小団地の開墾等に至りましても、実際はそういうふうな山間僻地もしくはそういう小さな一番恩恵を深くしなければならぬところへ逆に行きにくくなっているというような実情で、実際の施策との間に矛盾がありますることは私全く同感でございます。そこで、こういうことを申し上げてはどうかと思いますけれども、私の考えといたしましては、農業基金制度、つまり、各県に、どの補助ということをきめずに、政府が半分出すから地元も半分出してくれということにして、基金を積み上げて、その基金を長期無利息で貸すとか、もしくはその土地々々の運用によって、そういうものに地方的に十分目を通してこれが運用に完璧を期していく。中央の金だということになりますと、地方が多少ルーズになったり、どうも無責任になりがちでございますが、これが地方の金だということになれば、地方の人がそれなりにみなで十分うまく使う、公平に使うということになるだろうと思うのでございまして、単に補助金の整理をしようというだけではなしに、実際こういうふうな適切なところに金が有効に使われるというような意味合いからいたしましても、政府資金の許す限りこういう制度を拡充して参りまして、それぞれの府県、それぞれの地方で有効なところにその金をお使いになるということが必要ではないかと思う。御承知の通り、相手が多数の、また千変万化のおのおのの事情でございますから、それを中央で一律に取り上げるといたしますと、どうしても最大公約数で大きなものだけに出すということになりがちで、ございます。いくら、どういうふうに書きましても、どう監督いたしましても、今お話のような点にはなかなか施策が回っていきにくいということがありますので、各地方にそういう基金の制度を作りまして、それによってやっていただくことがいいのではないかと思って、せっかくこの基金の拡充をして参りたい、明年度予算等につきましては、特にこの点に努力を尽してみたい、こう考えておるわけでございます。     —————————————
  39. 吉川久衛

    吉川(久)委員長代理 本日の議案第三、テンサイに関する件に関し、小早忠君から発言を求められております。これを許します。小平忠君。
  40. 小平忠

    小平(忠)委員 第九号台風によって、ただいまいろいろ御審議されましたように非常な被害を受けました。これが日本海に参りまして弱まり、北海道は比較的軽微に終ったのであります。ところが御承知のように北海道は、今年未曾有の冷害のために凶作というような決定版の現状でありますが、ただいま委員長から議題にされましたテンサイにつきましては、幸いに本年のごとき寒冷に見まわれておりますけれども、まあ何とか平年作にいくのじゃなかろうかというような状況であります。これは北方の特用作物でありまして、そういう見地から農林省が北海道におけるテンサイの増産とあわせてビート糖工場の増産を企図されておることは、まことに時宜に適したものと思うのであります。そこで大臣にお伺いいたしますが、このビート糖工場の設置問題につきましては昨年の暮れから相当問題が紛糾いたしまして、特に最近におきましては連日新聞やラジオをにぎわしておる現状でありますが、これについてはわが国の農政上、あるいは北方農業という見地から重大な関心を寄せておるのであります。そこでこの機会に農林大臣から、本年は北海道に何カ所の工場をどこにどういう経営主体でおやらせになるお考えでありますか、その点を明らかに願いたいと思うのであります。
  41. 河野一郎

    河野国務大臣 小平さんのお尋ねでございますから、この機会にテンサイ糖工場設置の問題について、私の考えを具体的に率直に申し上げて御了解を得たいと思います。  御承知の通りテンサイ糖の増産計画をはかり、あわせて有畜農業の指導奨励をして参りたいというような意味から、各位から非常に御熱心な御要望もございましたので、政府におきましては昨年度より余剰農産物の見返り円資金のうちの一部をこれに充当して、この計画を進めることに準備をいたしたのでございます。準備をいたしましてだんだん調査いたしましたところが、将来の計画としては、少くとも全道にわたって畜産の奨励とあわせて十工場くらいのものはできていくのじゃなかろうか。——ある人によっては十五工場という計画を持っておいでの人もあるようでありますが、そこでこれらを全道にわたって畜産振興の拠点としてやっていく必要があるという考えのもとに、だんだん調査を進めたのでございます。さしあたり現在の日甜の工場とは別に、道南地区に一工場を建設いたしたいという考えを持っております。ところがその後政府のこの意のあるところが一般農民諸君にも非常な共鳴を得、またかたがた企業者方面からいたしましても、ぜひ自分もやってみたいというようなお申し出もだんだんあったわけでございます。その中の有力なる希望といたしまして、道南地区に台湾製糖会社から工場設置の申し出があり、道北と申しますか他の地区におきましては芝浦精糖から工場設置の申し出があったわけであります。その他にもむろんありましたけれども、この二会社が有力なものとして私は調査をしておったわけでございます。しかし最初におきましては、まず道南地区一つ作ることが妥当であろうということから、道南に申し出のあります台湾製糖をこれに充てることが妥当ではなかろうかということで、だんだん調査をいたして参りました。その当時道南におきましてこの工場誘致の運動も大分ございまして、たとえば倶知安、長万部、伊達というような地方からそれぞれぜひ工場を誘致したいという運動があったわけでございます。一方道北の方におきましても、ぜひやりたいという話がございまして、これについて具体的に当ってみますと——まず最初に私の考えといたしましては、このテンサイ糖の工場を作るのに大体十五億の資金が要るということを聞きました。そこでその半額の七億五千万円を融資しようというのが最初の案であったのであります。そこで七億五千万の融資をしようということでおりましたところが、私も実は不案内でありましたので、だんだん勉強しているうちにいろいろ考えたのでございますが、この工場は今年着手して来年の十月に完成するのだ、そして来年の秋から工場を操業するのだということでございますので、今申すように二カ年間にわたって工場が建設されそして動き出すのだということでございますから、それならば今年七億五千万円一ぺんに金を出す必要はない、二年かかるならば半額ずつ出せばよろしいじゃないかということで、一工場に対して三億五千万ずつ貸して、そしてどうせ計画を立てるならば、何も五年、十年かからぬでもすみやかにこれが増産をする方がよかろうという意味で、二工場誘致ということを考えたのでございます。そこで、それならば今申しました道南の台湾製糖それから北の方の芝浦精糖、この二つに作らしたらどうだというふうに考え、しかもその金は最初は一年に三億五千万ずつ七億出せば同じ結果になって、同じように二つ動き出すということでよかろうというふうに考えておりました。ところがそのときに、今度は北海道連の方から、ぜひ自分たちも道連として、農民のほんとうの代表として工場を建てたいという御要望がありました。ごもっともなこここ考えまして、それも一つおやりになったらいいでしょう。元来農民の側から申しますれば、畜産振興の拠点とし、あわせて国策としてテンサイ糖の増産をするということは、大へんけっこうなことでございますから、五年かかるものが三年でできれば、三年でできる方がけっこうだ、何もことし一つ、来年一つというより、スピードが早くかけられるならかけた方がよろしいんだ。そしてどんどんやりたいという希望があれば、そういう人たちが、どうせ政府が全額出すわけじゃありませんから、七億のものは五億で、あと自己資金でやるというならばけっこうだというふうに考えて、初めは一工場を二工場にし、さらに御要望があってぜひやりたいというならば三工場やることもけっこうじゃないか。資金の面においては七億五千万を二億五千万ずつ出すこともけっこうじゃないかというふうに考えて、それらの人たちにぜひおやりなさいということを申しておったわけでございます。ところが実はその後ここにまた中間として申し上げなければなりませんことは、日本甜菜製糖でございますが、この会社は長年にわたり御承知の通りテンサイ糖の仕事をやっていた会社でございます。むろん政府との間にも長年にわたっていろいろ関係のある会社でございますが、非常に業績もうまくいっておいでと私は考えております。この会社が、最初は私の知る限りにおきましては、政府のこの新設工場を設置することにはあまり協力的ではなかった。私たちのところに、自分が新工場を作ってやるというお申し出がなかったのでございます。ないときに他の会社はぜひ新工場を作ってやりたいということでございましたから、本来から申せば、こういう経験のある会社が、それぞれ基礎のある会社が、積極的に道南のようなむずかしいところでも、自分のところでやろうというふうに考えていただけば一番よかったと思うのであります。ところが今申しますように、本年のいつごろでありましたか、四、五月ごろでありましたか、三、四月ごろでありましたか知りませんが、そのころまではあまり自分のところでやるというお申し出がありませんでした。そこで他の会社、今申し上げたように、これらの会社がやろうということで、それを政府としては推進しようという考えになったのでございます。いよいよこれらの会社が具体的に話が進んで参りますと、今度は日甜の方でも、おれもそれならやるという申し出があったわけでございます。そこで私は、新会社が新しくやる場合にはこれは大いに奨励してやらせなければいかぬ、しかし従来経験のある相当業績をあげていらっしゃる会社は、なるべくならば自己の責任において、自己の計算でやっていただければ一番けっこうであって、新しい人に新しくやっていただくことの方がいいのじゃないか、独占企業になるよりも複数の企業体によって、農民の方からテンサイを勉強して買っていただく、そうして大いに奨励の面においても競争していただくことの方が、農民の立場、農林省の私の立場としてはけっこうじゃないかというような考えのもとに、日甜がやろうということについても自分でおやり下さい、政府の方の奨励の対象としてお金を差し上げるということは、ほかに会社がなければともかくも、ほかに新会社があれば新会社の方を奨励していった方がよかろうという考えで参ったわけでございます。ところがその後、どうしたことか、台湾製糖は今年は仕事を自分のところはやめたい、こういう申し出が現在はあるわけでありまして、ただいまの条件といたしましては、台湾製糖は先般会社の決議として、今年はせっかく願書を出していろいろ御配慮を願ったが、自分のところは手をつけたくないという申し出がありました。それで途中からはなはだ困ったことだとは思いましたが、何分会社の方でそう申しますので、これはやむを得ぬことだと考えております。それから道連の方は、またいろいろ準備の都合もあるから、自分のところはぜひやるけれども、今早急にということも無理と考えるから、準備はどんどん進めるから、政府もその心組みでおってもらいたい、こういうことでございますから、私といたしましては、それはぜひおやりなさい、その心組みでおりますからということになっております。一方芝浦の方は着々準備を進めまして、ぜひ早急に着手いたしたいということで進んでおるのが現在の進行状態でございます。これを最終的にどういうふうにいたすかということは、皆さん御承知の通り、各方面にいろいろ御意見もあるようでございますから、これらの御意見を十分承わった上で、私といたしましては最終的な決定をいたしたい、こう考えているのが現在までの進行の状態であり、現在私の考えておることでございます。
  42. 小平忠

    小平(忠)委員 きわめて詳細にわたる経過の御報告がありまして、その結論として大臣の所見を明確にされたわけでありますが、私は時間もないのに大臣に長々と経過をお伺いしようと思ったのではなくて、結論だけを伺ってそれに基いてお伺いしたいと思ったのであります。しかし大臣のただいまの経過報告は、いろいろな疑惑なり、またこの問題に関して詳細に知っていない方々についてはきわめて適切だと思う。私もただいまの大臣の経過説明は、私の承知する範囲においては大体的確であると思います。ただし日甜の工場建設に関します参加の意図のいきさつや、あるいはごく最近に至りまして、台糖が本年は中止したいという申入れ等につきましては、私が聞いております線と若干違う点があるのでありますが、問題は工場を設置したいという業者なりあるいは団体がありましても、無定見な工場設置は不可能なのでありまして、根本的にはビートの増産が伴って、その裏づけがあってこそ初めて工場設置ということが考えられるわけであります。ただここで問題なのは、すでに今年度の工場設置についてはおそらく時間を争う段階にまで来ていると思う。北海道の冬季間は、ほとんどそういう工事の進捗等は一時中止されるということから、時間的な制約がある。そういうことを考えてみますときに、問題は大臣が当初道南に台糖あるいは道北に芝浦、あるいは経済連、この二者をしてやってもよろしいという許可を与えたということは、すべての点から照合してあまりにも無定見であったのではなかろうか。そのことがその後の経過において台糖、芝浦は本年度、北連は来年度というふうに差別をしたわけで、こういう点から、最もビートの増産に精励している北見地方の農民同盟は、それはけしからぬ、なぜ北海道の農民の生産者団体である北連を除外したのか、あるいは来年度に回したのか、それも当初予定していた北見地方を斜網地区に追いやってしまって事実をごまかすようなことをしているじゃないか、そういうようなことから北海道農民同盟と北見地区農民同盟は一せいに決起して、そういう考え方をとるならば、最悪の事態には不耕作同盟を一つ結成して、絶対に芝浦にその原料を渡さない、こういう非常に強い意見さえも出ている。これはやはり当初そういう許可を与えて、いろいろ話があるからそれじゃ二つだけにして北連は来年回しにしたという点にあるのじゃないか。私の非常に憂えますことは、この問題について現に政府の与党である自民党内部におきましても、一社にするとか二社にするとか、あるいは生産の計画等につきましても対立いたしまして、非常に見苦しい状態にあることを私はたびたび耳にいたします。ただいま北海道総合開発第二次五カ年計画を総理官邸で毎日われわれは審議しておりますが、こういうようなことによって、このビートの増産計画ともにらみ合せまして非常に困っている問題なのであります。ですから当初三工場を設置するとかいうようなことをどういう考えのもとに推し進められたのか、三十一年度のビートの作付面積は一万六千町歩ないし一万七千町歩——当初一万七千町歩と言っておりましたけれども、昨年の雨害等によりまして若干減っている。ところが三十二年度につきましては、さらに増産計画も立てておりますし、本年の冷害によりましても、ビートについては何ら被害を受けていないというようなことから増産意欲が高まっておりますから、三十二年度は二万町歩を突破するということも可能であります。しかし来年度直ちに三工場を操業させるというような考え方はあまりにも軽率ではなかったろうか、こういう点についての今日の与党内部における対立や現地の混乱は、現内閣において最も重きをなしておられる河野農林大臣にしては、あまりにも不手ぎわなやり方ではなかったかと私は思うのであります。従いまして今日事ここに至った現状から見まして、特に主管をされる大蔵大臣農林大臣、あるいは与党内部の考え方をやはりすみやかに統一いたしまして世の疑惑を一掃すると同時に、すみやかに態勢を作らなければならぬのではなかろうかと私は思うのであります。この点はきわめて重要な問題でありますので大臣に明確に願っておきたいと思います。時間的にきわめて切迫いたしております今日ですが、大臣の今の御説明によりますと、本年度は道東地区に芝浦精糖だけを認める、台糖は本年はやらないという申し出があったからやらせないというように解釈してよろしいかどうか、その点をもう一応明確に伺っておきたいと思います。
  43. 河野一郎

    河野国務大臣 誤解があるといけませんからもう一度明確に申し上げておきますが、私が三工場をやることを許したのは軽率じゃないかというような御意見でございますけれども、私は軽率とは考えておりません。これは先ほども申しましたように、ビートの増産を計画し、そうしてこれによって畜産の振興をし、北海道農民の経済をよくするということはわれわれの眼目でございます。これは道の方で増産計画を立ていろいろ御奨励になりますことはよくわかりますけれども、元来申せば政府並びに道の計画、奨励も必要なことでございます。またそれに合わせて工場を作り、民間の企業がこれに協力して、そこに契約栽培の実をあげるとか、奨励の上においていろいろ示唆をするとかいうこと、官民相待って初めて私はほんとうのものが出てくると思うのでございます。でございますから、政府の計画がどうである、それに合わすだけの工場を許していく、これは一つ考え方でございますが、そうでなしに、もっと北海道の農業の実態から考えてみましても、雪印のような強力なものがあって、これが強く畜産を振興して、そうして北海道の酪農を今日の状態に持っていっておる。これは決して役所の考え方や役所の計画で進むものと私は考えておりません。でございますから、また工場を建てるにいたしましても、一工場で四千町歩要ると申しましても、初めの年から四千町歩あって工場がフルに動くようになっているから工場がいいのだということであっては、買いたたかれる農民の側はたまらないので、常に工場能力の方が農民生産よりも上まわるくらいに工場の設置を進めていくべきものと私は考えております。これがまた一面において農村に協力をして、そうして自己の原料の収集に努力するというようなこと——多少言葉が不適当でありましたらお許しを願いたいと思いますが、そういう感覚でもって行くことは私は悪くないというつもりなんであります。そうは申しましても、業者の方はやはり自分で原料がないのにやるというようなことはなかなか申しません。十分原料が出ていれば行って工場をやりましょうというようなことを申しておるのだと私は思います。しかしそれは、私の立場で、奨励の立場から申せば、今申すようなことで、それは両々相待って堅実なところにそろばんが出ていくんじゃないかと思うのでございます。  そこで、今申しますように、道南の方面におきましては、従来とかくビートの工場設置には適当であるとかないとかという議論がありました。これについては非常に研究調査も必要であるということも言われておりました。台湾製糖がぜひやってくれれば非常にけっこうだと思っておるのでありますが、今申し上げます通りに、会社側の方から願書を取り下げて、そうして今年はできませんという申し出でありますから、今はどうも道南の方については適当なものがないので、やらすことはできない実情にあるということを申し上げたのでありまして、これを私は許さぬという立場をとっておりません。  それからもう一つは道連の場合でございますが、これも一ぺん許すといってまたあと回しにしたじゃないか、ことしはやらさぬじゃないかということでありましたら、これは誤解でございます。私はそのために本年度引き当てております資金のうちから、道連に必要な資金が生じた場合にはこれを引き当てなければならぬというようなことで、一部これを留保するような用意を実はいたしておるわけでございます。決してこれをやらさぬとかあと回しにするというようなことは考えておりません。  それから場所の点については、私はよく存じ上げませんけれども、それはどっちが先にどこでやるというようなことでいろいろお話があったようでありますが、これについては深く勉強しておりませんから、現地でしかるべく片づけるように考えておるわけであります。
  44. 稲富稜人

    稲富委員 ただいまの小平委員質問に関連いたしまして一、二点お尋ねいたします。もちろんビート工場の設置はビートの栽培と不可分の関係があり、総合的な計画がなければならないことは当然であります。当初農林省は道南の方に工場を設置するというような御方針があったことはしばしば報道されております。その道南の方には今大臣の御報告のように台糖がその工場設置の出願をしておったことも事実であります。ところが台糖が自発的にやめたと大臣はおっしゃいますが、台糖が道南の方の工場設置を辞退したということになりますと、農林省としてのビート栽培に対する総合的な道南の計画に非常に影響すると思うのでありますが、この点はどういうお考えであるか承わっておきたい。
  45. 河野一郎

    河野国務大臣 ただいま申し上げました通りに、道南の方は気候その他の点から相当に研究を要する点があるというようなことも一部私はあると思います。しかし台糖が道南へ工場を作ることは今年はやめます、こういうことでございまして、来年以後絶対にやらないという話ではないように私は承知しておりますから、十分調査検討の上で——今始めて来年の十月に間に合わすことはなかなか困難だという意味から、目下調査検討中と考えております。それができ次第来年は着手されるのじゃないか、来年希望が出てくればもちろんそれは許して、奨励してやらすべきだ、こう考えております。
  46. 稲富稜人

    稲富委員 その点はわれわれが情報を聞いておるところ、巷間伝えられるところと相当違うのでありまして、政府は道南において台糖が自発的に辞任したんだ、こういうことをしばしば新聞等でも発表いたされておりますが、これは台糖が自発的に工場設置を辞退しなければならないような状態に追い込んだ何かがあるのじゃないですか。
  47. 河野一郎

    河野国務大臣 了承しておりません。全然聞いておりません。全然考えていないです。
  48. 稲富稜人

    稲富委員 それではもしも台糖を自発的に辞任しなければならないような状態に追い込んだ何ものかがあったというような事実が現われてきた場合には、これに対して政府は何とか方法をとられるという御意思がありますか。
  49. 河野一郎

    河野国務大臣 私は台糖にぜひあそこでやってもらいたいと考えておりまして、やめてもらいたいと考えておりません。現に——こういうことを申し上げてどうかと思いますが、台糖がやめるということの決意を持って見えて、それを局長から私が聞きましたときに、どうしてそういう経過になったのだという経過を、十分取り調べて報告してもらいたいということを局長に言うておるくらいでありまして、今稲富さんのおっしゃることは、私の了承いたしておりますことと全然違います。
  50. 小平忠

    小平(忠)委員 ただいま稲富委員から御指摘の点、私もこれをぜひ伺いたいと思っておったのであります。やはり自発的に台糖が今年は辞退をするということは、これは自発的にそういう意思表示があったかないかということについては若干問題がある。私は昨日も与党の有力なる同僚議員からも、台糖は決してそのような意思表示をしてないということを承わっております。従いまして問題は、かりに自発的に意思表示があったにせよ、今日の段階では、もう今年度工場設置の準備に取りかかっても、北海道の積雪寒冷という現状から見てこれはまことに困難であるという一つの見通しに立っての考え方でなかろうかと思う。従って当初から何のトラブルも問題もなかった——台糖がそのような辞退をしなければならないような結果に陥ったことについては、これは私は必ず原因があると思う。これは明確に道東、道北地区におけるところの芝浦、北連あるいは日甜のこの三工場の設置をめぐって今日まで解決をしなかったことが大きな原因でありましょう。ですから、これは自発的に云々と言いますけれども、そういう窮地に追い込んだ政府の責任というものは——今年度はまことにこの押し迫った段階においていまだ決定を見ないということは、これは農林大臣としましても大きな責任があるのではなかろうかと思うわけでございます。そこで問題は、その台糖あるいは芝浦精糖の問題は問題として、農林大臣が常日ごろ力説されておりまする農民の立場、生産者が生産意欲を持って増産に精励できるように、食糧問題解決の一翼をになっておる農民というものを十分に考える、こういう見地から、私は北連を取り上げたことについても敬意を表しております。北海道は日甜が長い間その努力の結晶において今日三つの工場を経営いたしておりますが、特に独占企業については、日本だけでなくて、各国のよき例があります。従って営利会社である株式会社の経営方式と、と同時に農業協同組合の、いわゆる協同組合方式というものとの混合は私は非常に望ましいと思う。会社の問題も、現に日甜がやっておるとするならば、次に積極的に考えていただくのは、北海道であれだけの強固なる基礎と、また今日全国的にも経済力の基礎というものは決して劣っておりませんその経済連に、なぜ積極的にやらせるような方法を考えなかったか、これを当初は認めて、来年度回し、それも工場予定地は斜網地区の建設不可能であるようなところへ追いやるような形というものは、私は理解できないのであります。従って私は大臣にお伺いいたしたのでありますが、北見地区の農民同盟、北海道農民同盟は、たびたび執行委員会さらに拡大執行委員会を開き、全体の意思として、どんなことがあっても北連に——これは他の会社をやらせるなということはわれわれの関知すべき問題でないが、北連にどうしてもやらせるべきである。しかし北連を締め出して北見に芝浦精糖を強引に持ってくるならば、農民の自主的な考え方によって原料は出しません、こういう強い意思さえも表明されておるのであります。ですから、この問題については、やはり大臣は慎重に現状なりいろいろな事情をお考えいただきまして、そうして将来に禍根を残し、特用作物の増産に励む農民に一大支障を来すようなことをなさってはならないのではなかろうか。幸いにしてこの委員会は来月早々東北、北海道の水害あるいは冷害並びにこれらの問題に関しまして委員を派遣して現地調査されるということにもなっております。従ってこれは北海道選出の議員でない方、この問題に対しましてきわめて公平に物事を処理される立場の人々、こういう方々の手によってまず現地を詳細に調査願う、その結果の上に立って将来に禍根を残すようなことのないような適切なる処置を講ぜられることが、私は最も適切なりと考えるのであります。どうか一つ、今日いろいろな疑惑の目さえ向けられておりますこの問題に対して、何とぞ農林大臣におかれましては、適切なる処置を私は望むものであります。その点について大臣の所見を承わっておきたい。
  51. 河野一郎

    河野国務大臣 ここに台糖から私のところに出して参りました書類がございますから、これを参考に朗読いたします。台糖から出ている書類には今おっしゃっているように書いてない。「まことに遺憾ながら弊社は操業目標を三十三年度よりとし、一カ年間延期いたさざるを得ません、」こう言って来年からやりますというふうに書いてあります。その前に遺憾の理由、こういう理由でということを、ここに三つ理由をあげております。長くなるから簡単に申し上げますと、工事をやるのに今からやったのでは突貫工事をやっても来年の十月までにはちょっとできにくいということを第一にあげております。第二は鋼材の異常な不足のために、値上り並びに手当等によるところの予算にちょっと狂いがきているからできにくいということを第二にあげております。第三には、原料の処理によって生ずる歩どまりの低下並びに——これはよくわかりませんが、生産量の減滅その他によって生産原価が高くなるというようなことをあげております。この三つの理由によって来年に延ばしたい、こういう願書が台糖の社長から私のところに来ておるわけでありまして、これは先ほど稲富さんに申し上げた通りであります。ただしその他の点につきましては、稲富さんからなおお話がございましたが、私が現在承知しておるのはその程度でございます。  今小平さんのお話でございましたが、私は先ほどから申し上げますように、業界にもそれから組合にもどっちがどっちということは考えておりません。でありますから、どっちも一生懸命にこれに協力しようというものは、みなそれぞれ政府の方としては協力してやってもらわなければならぬ、こう考えているのでありまして、どっちだからやらせるとか、どっちだからやらせぬということは一ぺんも考えてみたことがございません。みなどうぞおやり下さいと言って、先ほどの皆さんのお考え通り、また私も考えております通り、早く北海道全島にわたってビートの生産を飛躍的に増大して、これを基礎にして畜産の振興をはかっていくことが北海道の農業を安定させるゆえんであると考えておりますから、可能な限りこれを早くやらせることがよろしいと考えておるのでありまして、それに対して協力してくれる者に対しては、われわれとしてもどんどん協力して参るということが妥当な考え方であると考えておるのであります。ただし御承知の通り最初に私が答えました通り、現在初年度のことでございますから、しかも事情もあり、御意見もございますから、それらの諸般の事情を勘案いたしまして、私といたしましては、今までの経過は経過でございますが、最後に決定するようなときには慎重に扱いたいというふうにお答えを申し上、けた通りでございます。その点御了承願いたいと思います。
  52. 稲富稜人

    稲富委員 ただいま農林大臣は、工場設置に対してはどの工場でも公平に取り扱いたいということで、これはごもっともだと思います。しかし台糖の問題も、農林大臣は表面上今お読み上げになったようなことで詳しくないようでございますが、何かの機会に時間がございましたら、私も具体的に問いただしたい材料もございます。私の察するところによりますと、おそらく台糖というものがそういうような書類を出さざるを得ないような因果を含められたということがなかったかという点でございます。さらにこの取扱い方が公平だとおっしゃいますけれども、たとえば芝浦精糖の問題でございますが、芝浦精糖には今日許可がない、ところが芝浦精糖にはあたかも許可があったようなことをいって、そして許可があったものとしていろいろな準備工作を進めておる。こういうような点を大臣は御存じであるかないかは知りませんけれども、その点の取扱い方が、果して三者が同等な取扱い方をされたかどうかという点については相当の疑惑があると思う。この点は、大臣は御存じないかどうか知りませんが、私たちの知っておる範囲においては、すでに芝浦の方は許可のあったものとして一切の準備を進めておる、こういう点は、私たちは決して公平な取扱いがあったとは思わない。その点大臣の御所見を承わりたい。
  53. 河野一郎

    河野国務大臣 それはこういうふうに御解釈願いたいと思います。ぜひどの工場もやってもらいたいという立場をとっております。やめるというものはしようがございませんが、もし今御指摘のように、台糖には何かやめるような示唆をしたというようなことがあれば、これについては私は厳重な態度をもって臨みますが、私は絶対に当局にそういう態度はあり得へからざるものと考えております。私は今申し上げましたように、なるべく工場をたくさん作った方がよろしいという考えで、それが逆に生産とマッチしないというお小言を受けるきらいはあるかもしれませんが、それについては先ほど申し上げた通り政府の方も増産計画を奨励し、協力する、しかし計画生産をして参ります工場としては、当然自分の原料を集める場合に、これは原料を集めてから工場ができるのではなしに、原料と工場が並行していくべきものだ、こう考えておりますから、これについての多少の手抜かりがあるかもしれませんが、どこまでも工場は早く、今からでも台糖がやりたいとおっしゃればどんどんやっていただくことを期待いたします。決して、それをあと回しに延ばせということは、私自身は少くとも考えておりません。しかし農林省内に、もしもそういうような私の意思に反するようなことがあれば、私は断固責任をとらせます。これははっきり申し上げておきます。そういうことがあるはずはないと考えております。従って芝浦もどんどんやればよろしい、台糖もやるというのなら、今からでもどんどんやっていただけばよろしい。一方先ほど小平さんがおっしゃいましたが、道連にも工場の設置の場所について御意見があるようでございますが、これは同じところに二つ並んでできるわけはございませんから、適当に距離を離して、周辺から原料を集めることが適切でありますから、それについてはいろいろお話があるかもしれませんが、私はそれは深く承知をしておりませんが、私の基本的な方針としては、なるべく早くどんどんいろいろな工場ができる方が北海道全体の畜産振興の上においても、農家経済安定の上においても非常に望ましい姿であるというふうに考えておりますから、その点はどうぞ御了承願いたいと思います。その基本方針の上に立って現実にこれをやって参ります上について、いろいろ各方面の御注意もございますし、御意見もございますから、それらの御注意、御意見を十分承わった上で善処して参りたい、これが私のテンサイ糖に対する考え方でございます。  なお御注意がありましたら、どうか一つ十分お聞かせ願いたい。きょうははなはだ相済みませんが、今委員長にも申し上げました通り、約束の時間になっておりますので、別の機会にどんどん御注意をいただけば十分その御注意、御意見を尊重いたしまして善処いたします。
  54. 小平忠

    小平(忠)委員 どうぞ一つ大臣、慎重にこの問題を処理していただきたいと思います。特にこの台糖が、ただいま大臣があげられた書面によりますと、来年操業ということは非常に困難であるということです。台糖は予定を伊達にいたしておりますけれども、伊達は雪の積らない所です。そういう条件からいって、台糖ができないものであるならば、北見の雪の積る寒い所に設置する芝浦は、なお困難なはずであります。それをなおかつやれるということについて、常識として疑惑を持たれるような面が出てくるのであります。どうぞ一つ大臣は、そういう問題について何回もおっしゃられたのでありますから、慎重にこの問題を処理していただきたい。  最後に、この問題はやはり生産の裏づけ、増産計画というものにマッチしない工場設置ということは、まことに不手ぎわであります。すでに昭和三十二年度の予算の編成期に入っておりまして、大蔵省はすでにその構想も発表されております。農林省は近く農林省全体としての二十二年度の予算要求を大蔵省に説明されるという段階でございます。そういう場合工場は工場としても、問題は北海道の特用作物、特にビートでなければ生産できない地帯が多くあるという現状から考えまして、ビートの増産については一つ全力を上げて、この計画について万遺憾なきを期し、最善の努力をされるように、私はこの機会に大臣お願いをしておきます。
  55. 吉川久衛

    吉川(久)委員長代理 農林大臣に申し上げますが、本件に関しましては、本委員会委員各位からいろいろの御発言がありましたが、その点を一つ十分考慮に入れられて御善処を願いたい。なお近く本委員会から北海道、東北の、この機械公団の進行状況並びにテンサイ糖に関しての国政調査を行います。その結果等につきましても、御参考に政府に送付をいたしたいと思いますので、将来の北海道のテンサイ事業について、十分適切な御措置をお考え願いたいと思います。
  56. 河野一郎

    河野国務大臣 ただいまの委員長の御意見とくと拝聴いたしました。ただ一点申し上げておきたいと思いますことは、先ほどの小平さんのお話の中にもあります通りに、早くしないから台糖はできなくなったのじゃないか、こういったお小言があります。また一方においてはぐずぐずしてちゃだめじゃないか、また慎重にやらなければだめじゃないか。急いでいいのか慎重にしていいのか、まあ急いで慎重にやれ、こういうことだろうと思いますが、といって今委員長お話のように時期を失したらばだめになってしまう。一方はことしの冷害の点からいっても来年は非常に増産されるだろう。増産されるときに新しい工場ができていなければこの処置は一体どういうことになるかということにもなります。そういう事情でございますから、私は別に何もないのでございますから、一つ率直に、端的にどうすれば一番いいのかということで——慎重にやれ、慎重にやれ、急がなければだめだでは、実は私伺っておって少しも意を尽しません。今申されますように、台糖でも私は決してそういうように了承していないのです。だからやるというならば今からでもやってもらえればけっこうだと思っている。それを何か知らぬが、台糖をやめさせたように言われる、実に何かくさいじゃないかというふうに言われる。一体そういうことのために役人を憶病にさせて、進めなければならぬものを進めないで1役人というものは元来ものを進めないということが一番得手であります。進めずにもらえれば気が楽だということで一とかく進みにくいものでありますから、そういう点について御注意は御注意としてどんどん言っていただきますれば、十分私も承わって、そして変えなければならぬものにして変えることは少しもやぶさかでございません。そういうことで、どうか一段と御協力を賜わりますように、私も言い過ぎたことがありましたらお許しを願いたいと思いますが、一つよろしく御協力をお願いします。
  57. 吉川久衛

    吉川(久)委員長代理 自余の質疑は午後に譲りまして、午前中はこれにて終了いたします。  暫時休憩いたします。    午後零時三十五分休憩      ————◇—————    午後三時十三分開議
  58. 吉川久衛

    吉川(久)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際お諮りいたします。午前中の委員会において足鹿委員大森委員より御希望のありました山陰北陸地方の第九号台風被害状況実情調査の問題につきましては、理事会での協議の結果、被害状況に関するさらに詳細な報告を待って、実地調査の必要があれば、委員長においてさらに議長承認を求めることにいたしたいと思いますから、委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  59. 吉川久衛

    吉川(久)委員長代理 御異議なしと認め、さように決しました。  なお派遣委員の選定等につきましては委員長に御一任願いたいと思いますので御了承願います。     —————————————
  60. 吉川久衛

    吉川(久)委員長代理 次に北洋漁業問題について調査を進めます。本年における北洋漁業漁獲高等について政府説明を求めます。岡井水産庁長官
  61. 岡井正男

    ○岡井説明員 出漁状況並びに結果を申し上げる前に、一応さかのぼって操業実施に当りますまでの経緯について簡単に概略申し上げたいと思います。  昨年の十一月に、本年度の出漁計画は、事務当局において従来の経緯にかんがみまして、アリューシャン海区は前年度の十二船団をふやさないでそれなり、西カムについては、資源的にも余裕があるというような関係から七船団、合せまして十九船団を出す、独航船は総計において五百隻、こういう決定をいたしまして、業者にも内示した結果、各関係業者におきましては鋭意準備を進めていったわけでございます。  ところで、こえて本年の三月二十一日にソ連の閣僚会議の決定が報ぜられたわけでございます。それは、大体抽象的にいうならば、日本が沖取り漁業、いわゆる従来の独航船を使う母船式経営をやる最も重要な漁場を包含したところに対して規制を加えるという閣僚会議の決定がなされたのであります。一部日本の業者におきましてソ連の鑑札をもらって出ようという動きが起ったのは、これから日をならずしてであったわけでありますが、われわれとしては絶対にそういうことは阻止するというような行政的な指導方針を堅持して参ったのであります。しかるところ、ちょうど松本全権がロンドンにおいて日ソの平和交渉をなさっておられたのが中絶されたという翌日に、ソ連の方から、さきに閣僚会議で決定したというものの詳細な発表が向うの漁業省からなされたのであります。それで関係業者としても驚きまして、何とか平和に——多くの漁業者を抱いておるのにこれがうまくいかぬということであれば大へんだというような非常な混乱の機運が見えたわけであります。それで河野大臣がモスクワの方にとにかく今年に関する漁業の暫定的な取りきめをしたいというので行かれたわけであります。四月二十九日からモスクワで交渉が開始され、五月十五日に至りまして、平和条約ができた場合にはこういうふうな漁業条約をするというような漁業条約の形で調印をなされ、あわせて本年についての暫定取りきめがなされたわけであります。暫定取りきめは、すでに先生方御承知のように、その前にソ連で発表せられました一定の区域内における鮭鱒の総漁獲量を五万トンと押えたのを、大臣が折衝の結果、本年度は六万五千トンというのでいこうということに話をつけて帰られたわけであります。それで全権団が五月二十六日に帰ったわけでございまするが、その間パリから——当時私は次長でありまして、塩見長官が随員で行かれたわけでありますが、塩見長官から私の方に、大急ぎでこれの船団再編成について内示があったわけでありまして、その内示に基きまして、事務当局といたしましては、西カムの方に対しての船団は、その前の年の二船団にとどめる、そうして三船団はとにかくやめる。残りの二船団はオリュトルスク岬の方、いわゆる従来日本が十二船団でやっておったところより大陸寄りでございますが、そのあいている地区へ回す、こういうことに船団の方は再編成をしたのでございます。ただし労働者から失業者を出すというようなことは避けたいという意味で、独航船は全船稼働さすという方針を堅持して参ったのでございます。かくいたしましてとにかく暫定とりきめで、東京において、ソ連から漁業代表者を派遣するから、細目についてはそれとよく折衝してやろうというようなことになっておりましたので、当時の長官の塩見さんが主として当初当られまして、なお引き続いて私当ったわけでございまするが、早くソ連が制限している区域へ入るべく交渉を始めたわけでございます。その際に若干向うの代表部の資格問題とか、あるいはまた許可証記入の問題とかいうようないろいろな問題がありまして、若干手間どったことは事実でございますが、とにかく六月十六日に至りまして、オホーツク海も二船団は本許可をもって出港させたのでございます。  それから四十八度以南の流し網の問題につきましても、これは小漁業であるから、なるべく早く希望を達成せしむるようにという意味で努力いたしまして、向うと話をまとめた順序といたしましては、どうしても制限区域以外でとることができないオホーツク海を第一。それから小漁業者が個々の経営でやっておる四十八度以南を二番目に、アリューシャン海区の方は、これは制限区域以外でも漁業ができますので、条件が悪くても働いているというような関係で、若干おくれてもそちらの方はいいだろう、こういう見通しをもって、ソ連と話し合いをそういう順序でつけて、話がつき次第に出したわけでございます。御承知のように、日本が許可をして出すものについて、ソ連の方がそれについてやはり許可証をこちらを通じて渡すという形をとったわけでございます。  かくいたしまして、全部滞りなく全船稼働するように相なりましたが、結局操業を打ち切ったのが八月十日でございまするが、その際に若干最初の約束の六万五千に達せないという見込みがありましたので、漁期の延長方を交渉したのであります。向うの方といたしましては、一たん決定したものの変更ということについては非常にむずかしいというようなことで、全然だめだというような言い方はいたしませんでありましたが、しかしわれわれはまた関係業者を集めまして、八月十日以後のとれ高及び一日二日交渉にひまどるのをしんぼうしてなお交渉して続けた場合の経済的な関係においてどうだろう、常に関係業者の意向をこちらの方がそんたくしながら折衝を続けたわけでございまするが、ちょうど本年は漁期の関係もありまして、八月五日ころまではとにかく相当な漁であった。ところが八月五日以降になりますと急激に魚がとれなくなってしまって、業者の方も、若干のとれ残りがあっても、この際八月十日程度で打ち切った方が経済的にいい。もう一つは、無理をして全船稼働のために、船の堅牢でないようなものも若干連れて、行っております。従って八月十日以降になりますと、毎年のように大しけが来ます。そういう場合の危険なことも考えわせるならば、この程度で切り上げようというような業者の方の意向もはっきりいたしましたので、私の方は遺憾ながら若干の取り残しがあったのでございまするが、八月十日で全船引き揚げるように手配いたしまして打ち切ったわけでございます。  それで結論的に申し上げて、しからばその結果どういうふうな漁獲量になり、かつ船団並びに一そう当りの形はどうなったかという点でございまするが、独航船の方から申し上げますと、西カムへ出漁した独航船は、一そう当りの漁獲金額は、平均いたしまして約千六百万円に該当いたします。これは金額の単位は今年の買魚契約によるものを基準にいたして勘定いたしましたので、本年は若干金額は上回るかもしれません、値上りの関係で。それからアリューシャン海区に出たものは、独航船一そう当りの水揚げを金額に直しまして千五百万円。ベーリング海区へ出たものは千二百五十万円程度になっております。それから転換船と俗に言っておりますが、六十三隻分。これは西カムの方へやる予定のものを途中で再編成をした際に、おくれてベーリングもしくばアリューシャンに出した船でございまするが、この船の六十三隻分は、約九百万円程度にしか上っておりません。従ってこの転換船はわれわれは非常に気の毒と考えております。  参考までに申し上げますと、これは業者の言う話でございますが、西カムは、独航船が大体に千三百万円程度とれば、泣き泣き手たたきになるだろう。プラス、マイナス、ゼロになるだろう。アリューシャンにおいては、まあ千六百万円くらいとれればいいのだ。ベーリングも同様でございましょうが、そういうことを業者は言っております。しかし、それは業者の方はそう言っておりますが、われわれ資料課あたりで研究さした他の許可漁業をやっているいろいろなコスト計算、そういうものから言えば、もう少し下回っても採算はとれるのではあるまいかというような考え方はいたしておりますが、しかしそういうふうな経済的な問題について、ここで私が口幅ったいことを申し上げることは、関係業者にも迷惑かもしれませんので差し控えたいと思います。母船の方は、船により違いまするが、一律にみな大体に赤字だと言っておりますし、われわれが見ましても大体赤字だろう。と言いますのは、当初の計画は、本年の出漁船団は一億二千万尾くらいをとるというような気持で資材も用意をし、それから設置もそれぞれ用意をしたわけでございます。従いまして、処理した総量が予定よりずっと下回るということは、それだけコストの点においては高くついているということは言えるだろうと思います。しかしこれも私らの方は十分にメスを入れたわけでございませんので、業者は全部赤字だというし、横にらみでは赤字だろう、こういうふうに見られる点があるわけでございます。ことに西カムの二船団及びこれについている独航船はいずれももうかっている、私はかように思っております。     —————————————
  62. 吉川久衛

    吉川(久)委員長代理 足鹿君より食糧問題について質疑をいたしたいとの申し出があります。これを許すに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  63. 吉川久衛

    吉川(久)委員長代理 御異議なしと認めます。足鹿覺君。
  64. 足鹿覺

    足鹿委員 実は午前中農林大臣がおいでになっておりましたので、午後も引き続き大臣がおいでになるものと予想しておったわけでありますが、午後は大臣は御都合はつきませんか。
  65. 吉川久衛

    吉川(久)委員長代理 昨日からの交渉の結果、きょうの午後はどうしても御都合がつかないということでございますので、御了承願います。
  66. 足鹿覺

    足鹿委員 非常に残念ですが、実は河野農林大臣が、去る八月十七日の閣議に、労務加配米の廃止ですか、とにかく米の配給制度の改善を伴う、いわゆるなしくずし統制撤廃の前提とも思われるような事項を御提案になったと聞いております。そのことについて私は、大臣の所信なり、その及ぼす事態がきわめて深刻かつ大でありますので、大臣にお尋ねをいたしたかったのであります。さような点で、食糧庁長官ではちょっとあるいはお答えにくい点があろうかと思いますが、大臣のかわりですから、そのつもりで一つある程度御答弁願いたいと思います。  最初に伺いますが、十七日の閣議において論議をされたという労務加配米の問題、あるいは二十三日に開かれた食糧懇談会、これには自民党の井出一太郎氏あたりも出ておられますが、その際にも労務加配米の問題をめぐって慎重論あるいは廃止論というものがあったが、河野農林大臣は、非常に熱心にその慎重論を押しのけて廃止論を主張されたと聞いておりますが、その間の真相はいかがな次第でありますか、承わりたい。
  67. 小倉武一

    ○小倉説明員 労務加配制度の問題でございますが、労務加配制度も含めまして配給制度につきまして、簡素化するないし合理化するという線で私ども事務的にも検討しておりますが、ただいまの御質問は主として大臣の御見解ということに関連しての御質問のようでございますので、私ども承知している限りを申し上げますと、十七日の閣議大臣が、労務加配米等につきましての制度について廃止方の発言をされたというように私ども聞いております。しかしそのときには、別段各閣僚からこれといった発言がなかったようでございます。これも私ども聞いている範囲でございまして、私どもが閣議の様子をみたようなことをここでお話をするのははなはだどうかと思うのでありますが、お尋ねでございますからお答えいたしますと、いわば事務的に閣議請議案を作っての閣議の提案ではなかったものでございますから、各大臣としては、おそらく突然だったので格別の御意見もなかったのではないかと推察されるのでございますが、その間の事情はそれ以上承知しておりません。その後昨日でございますが、配給制度の合理化全体につきまして数点につきまして御議論を願いました。その中にも労務加配米制度等の加配制度につきましての存廃についていろいろ御意見の交換がございました。今お話のような意見がございました。農林省といたしまして加配制度についてどうするかということにつきましては、きのうの懇談会の意見等もございますが、なお大臣閣議において発言された以後、各省あるいは各界からぼつぼついろいろの意見の具申もございまするし、あるいは中には陳情といったような形の意見もございます。そういうことも十分参照いたしますと同時に、これを実は労務加配制度だけ切り離して私どもが論ずることは、御承知のようになかなかむずかしいのでございまして、他の配給制度、配給のやり方と関連いたしまして、支障がなければ簡素化という趣旨に沿うて廃止できないものかどうかということについて研究を進めたい、かように今考えておるのであります。
  68. 足鹿覺

    足鹿委員 大臣の絶対廃止の御意向は動かぬようでありますが、といたしますと、実務を担当しておられる食糧庁としては、この加配米をやめるということの理由についていかようにお考えになっておりますか。昭和二十一年十一月二十九日の閣議によってこの加配米制度は発足して、今日まで十有余年の長い歴史を持っておることは御存じの通りでありますが、これはその当時の状況から見ましても、食管法の規定から見ましても、閣議決定に基く制度でありますから政令で廃止できると解釈しておりますが、しかしその及ぼす影響、事の重大性は、ただ一片の政令をもって廃止すべき性質のものではない重大な内容を持つものだと考えております。特になしくずし統制撤廃との関連において国民が非常に注視しておるところであります。また加配米自体も非常に重大な意義を持っておると私は思っておるのでありますが、その点は当委員会等において意見を徴せられる御用意がありますか。ただこれは法的には政令でやり得る。閣議できまったことは政令でやり得るということになっておりますか、かりにあなた方がやる決意になったとしても、私はそう簡単にやるべき筋のものではないと思います。その辺の取扱い方は長官はどのようなお考えをしておられますか。
  69. 小倉武一

    ○小倉説明員 お示しのように、形式的にはもちろん一種の行政措置に属するようにも思いますけれども、非常に重要なことでございますので、その取扱い方については、どういう形でやるかは今まだきめておりませんが、やるといたしますれば、お話のように、できるだけ慎重な態度、またやり方でいたして参りたい、こう思っております。
  70. 足鹿覺

    足鹿委員 長官まではさような御検討がまだ進んでおらないことは大体私もわかりますが、事務当局としては、この加配米の問題についてはいろいろ検討をしておられるように仄聞をいたしておるのであります。その点若干聞くところによりますと、今から十数年前の食糧事情と今日の現況とはその事情が著しく変っておるということを理由にしておられるようです。また私どもの見たところでは、これは実質賃金の引下げに通ずるものだというふうにも考えますが、いやそういうことはない。賃金との影響はあまりそう心配する必要がないというふうな考え方に立っておられるようです。また加配米をやめたって、これは食糧配給制度それ自体のことであって、他の関連はそうないというような見解を非公式の会合において、あなたの掌握しておられる内部の御意向があったように私は聞いておるのです。そうすると大体あなた方は、大臣の命を受けて、いわゆるこの加配米制度を打ち切るということについて、それを理由づけておられるの、でありますが、私どもの見たところでは、加配米というものは炭鉱労働者、あるいは病気療養者、あるいはその他の重労働に服しておる関係労働者五百六十八万人、延べ六千八百十七万人の今日の生活に、密接不可分の関係を持っておるものであると承知しております。またその数量においても百五十二万石、その配給を受けておる事業場は、全国で二十一万事業場に達しておる、こういうふうに私どもは承知しておるのであります。これによって政府が現在負担しておりますところの財政負担は約十四億、こういう負担を食管会計において負担しておるのであります。この際加配米を打ち切って、これを普通の希望配給制度に乗りかえたといたしますならば、実質上においては労働者なりあるいは長期療養者等は、結局において今まで受けておった加配量をやみ米に依存をしていくか、希望配給米に依存をしていかなければ、家計をまかなうようなことができぬようになるのであります。そういうことになりますとやみ米に依存するか、あるいは希望配給米に依存するかいずれを問わずして、約十七億円の実質労働者の負担増ということになる数字が出てきておるのであります。これは現在最低生活にあえいでおる炭鉱労働者を初め、あるいは結核その他による長期療養者、あるいは妊産婦というような人々にとっては重大事態であります。そう簡単な、あなたの部下の事務当局が非公式な立場から検討しておられるような性質のものでは私はないと見ております。加配米自体が労働者の日常生活につながるきわめて重大な生活の問題であると私は考えます。いわんやこれがなしくずし統制撤廃につながるにおきましては、ことさらにわれわれはこれを簡単に見のがすことはできないのであります。そういう点において、新しく長官としていろいろお仕事をなさっております小倉さんの、とらわれないほんとうに純粋な立場にあって、政治的な判断は別として、よく御判断をされる必要があると思っておりますが、長官みずからの労務加配米についてのいろいろなお考えは、それを存廃いずれの理由にせよ、あなたの御所信はどういう御所信でありますか、その点を御解明願えれば幸いだと思います。
  71. 小倉武一

    ○小倉説明員 お話のように、加配制度を存続するか廃止するかにつきましては、これは大きな政治的な決定を要すると言って過言でないような問題かと私も存じております。お尋ねでございますのでお答えしますが、私どもとしてのそれについての考え方も申し述べますと、率直にここで申し述べまして、加配制度は、先ほどお話のような大体の内容であると私どもも思います。ただ現在の状況から判断いたしますと、これがきめられましてから多少ずつ訂正はされてきておりますけれども、やはり当初の目標でありました、現在で申しますれば、終戦直後に傾斜生産ということが一時いわれましたけれども、あのときの傾斜生産の考え方がそのまま加配量になって現在まで残ってきている。それからまた当時加配米をやりました趣旨が、もちろんやみと比べれば安いものということでございますけれども、そういう価格の問題も、もちろん実質的にはございますが、どちらかと申しますれば、絶対的に不足するカロリーを十分供給しまして、重要な産業の労働力の再生産を確保する、こういったような意図が強かったのじゃないか、こう思うのであります。それからもう一つは、何しろ重要な基幹産業その他の産業につきましての賃金、これがやみ米に依存して賃金が上ってくるということでは、当時の悪性インフレにさらに拍車をかけるといったようなことでございますので、当時のインフレを収束させるということもやはり加味されまして、加配制度ということが始められたと思います。そして今日に至っているのでありますが、その間若干の、先ほど申しましたような訂正と申しますか、内容の変更あるいは追加がされてきておるのでございますが、現在のねらいも、どうもそういうところにあるようなふうに仕組まれておりまして、少し時代にそぐわないような点が見受けられるのであります。従いまして、存続するにいたしましても相当の改正をする必要があるのではないかというふうに見受けられます。それからもう一つ、その後食糧事情がだいぶ変って参りまして、希望配給といったようなことをどう判断するかは別問題でございますが、これも正規の配給には違いないのでありまして、そういう希望配給に依存すれば、いわゆる主要消費地では、やみ米に依存しなくてもいいような状態に、おかげさまでなって参りました。これももちろんことしの作柄いかんによりまして、そういう状態相当程度続くかどうかは保証の限りではございませんが、今のところはある程度そういう状態が持ち続け得られるようなことになって参りました。従いまして、実質的な家計への影響から申しますと、実効米価が最近とみに下って参っておりますので、そういう点をあわせ考えました場合に、なおかつ労務加配を廃止した場合に、賃金あるいは労働者の家計に悪影響を及ぼすかどうかということについては、十分検討をいたすべき段階になってきているように思うのであります。そういう意味で私どもも検討に値する問題でありますし、また検討しなければならぬ、実はかように考えております。もちろんこれを非常に——平面的にと申しましては語弊がございますが、静態的にながめますと、加配制度を廃止するのと廃止しないのとでは、それだけを比べますと、全体としての労働者層の経済に及ぼす金額的な影響は、先ほどお話がございましたような金額にあるいは達するかと思いますが、そういう点も十分考え処置をきめなくちゃならぬ、かように思うのであります。
  72. 足鹿覺

    足鹿委員 どうも御答弁を聞いておると、さっぱりわけがわからないようになるのですが、要するに検討の段階に達した、しかし断定的にこれを変えなければならぬということも言えない、こういうような御趣旨の答弁であったように思います。そこで大体私は、先ほど述べましたように、食管特別会計としては十四億円はマイナスを免れるということになる。なおその上に約四、五億円というものはプラスでもうかる。そういう今小倉さんが言われるような、年月が経過したためにいろいろな影響を考えて検討しなければならぬという、ごもっとものような御意見でありましたが、それもある程度あなた方としてはそうでしょうが、私ども一般国民なり利害関係を直接持っておる者の目から見ると、政府は百六十億円のインベントリーを食いつぶしてしまったし、今年は全然食管会計に余裕がない。そこで赤字の出るものは何でもとにかくみんな切ってしまえ。結局プラスになる面を考えなければ、一たん年が悪くなって農民から生産者価格引き上げの要求が出ても、実質食管会計には一文の余裕がない。といって大蔵省は新しい財政負担には応じない。といって配給価格を引き上げていくということは、今の情勢からいってはなかなかこれもできぬ。勢いそこで政府はいろいろな点を考えて、実質的には配給制度を骨抜きにし、米の配給制度を骨抜きにしていくためには、一つ一つ重要なこの配給制度の持っておる面を切り落していく、こういうような考え方でやっておるのではないかと疑われても弁明の余地は私はないと思う。今あなたが言われるような理由は、私は理由にならぬと思う。むしろ理由は食管会計十四億円をほしいから、これを切ってしまうというのが本音でしょう。一般から見ればそれが本音だと見ておるのです。それはなかなか小倉さんとしては言われますまい。言われますまいが、国民の眼をおおうことは私はできないと思います。そういう点において今すでに、先刻来北海道を初め冷害の危険信号が出、また全国的には第九号台風、続いて風水害、まだどういうふうな事態が起きるかもわからない、そういう警戒警報の赤信号が出ておる際に、そういう無謀な方針——国会においていろいろな点で論議を尽して、納得をしてやられることであるならば、これまたやむを得ますまい。しかし国会の閉会中に、いわゆる食糧懇談会という名のもとに、こういう重大問題を提案し、配給制度自体の根幹に触れるような労務加配米を閣議に諮ってこれを削ろうというような態度は、無謀もはなはだしいものだと申し上げて差しつかえないと思います。これは大臣がおいでになれば私はいろいろと大臣と論争してみたかった。ほんとうに大臣が、この問題について閣議で腹を割られるならば、この農林委員会を通じて国民に大臣の所信として大いに述べてもらいたい。われわれもこれに向って、非は非として大いに戦わしてほしかった。それがいろいろな御都合で出られないということでありますし、これ以上申し上げてみてもあなたの答弁の限界というものは大体わかっておると思います。この点についていろいろなそうした制度自体の要請、すなわち財政的要求からして軽率な態度をとるということは、食糧問題をやっておるあなた方自体の自殺行為でもありますし、その及ぼす影響はきわめて大きいと思います。そういう点について、今までの経過とかいろいろなことには直接タッチしておられません新長官でございますが、これは十分によくお考えになって、そして是非を明らかにして、大臣に対して誤まれる点は誤まれるとして指摘をして、あやまちなきを期するだけの決意と用意を私は要望したいと思いますが、いかがなものでしょうか。その点について何か御所信が承われれば非常にけっこうだと思います。
  73. 小倉武一

    ○小倉説明員 労務加配を切って、それによって食糧管理特別会計の赤字が出るのを防止すると申しますか、あるいはそれによって何か十数億のプラスを期待するということでこの問題を考えてはいけないことは、私もそのように思います。今度の加配制度全体を通じて、もちろん食糧管理のやり方が経済的にもより円滑にいくようにということは考えるべきだと思いますが、加配制度をやめまして、それによってそのままその利益を特別会計にプラスするのだというやり方は、私どもも必ずしもとりたくない、さように考えております。もちろん切ればそれだけ浮くじゃないかということは当然の論理でありますが、それは他の配給面に生かして、全体として消費者の実効価格をむしろ下げていく方にそれが使わるべきではないかというふうな方向で問題を考えておる。なお私新しく食糧庁に参ったことにつきまして御注意、御鞭撻を受けた次第でございますが、せっかく御期待に沿うように努力して参りたい、かように存じます。
  74. 足鹿覺

    足鹿委員 これ以上長官に追及しましても御迷惑なことだと思いますので、最後に一、二点だけ確認しておきたいと思います。先ほど私が申し上げましたように、この労務加配問題は労働者の生活に直接関係を持っておる非常に根深いものがあるということ、また妊産婦あるいは長期療養者、そういうような人たちに対して保健、療養の面からも大きな関係を持っておるということ、従ってそれを所管しておる労働省、労働者を対象にして行政を行なっておる労働省、また国民の保健衛生を所管しておる厚生省等々とは、すでにこの加配米問題をめぐって、事務当局同士としては御検討になった事実がございますかどうかということ、それから今長官の御答弁を聞いておりますと、十四億円内外の国の財政負担問題を理由としてこの加配問題を論じてはいけない、自分も同様の意見であるという御言明がありまして、私も非常に多とするのでありますが、といたしますと、これは事務当局では、まだ大臣命令を受けて御検討になっておるということではない、むしろ大臣の政治的構想から一応一つの方向を出してきまったもので、事務当局に天下ってくる、こういう段階と解釈してよろしゅうございますか。そういう問い方はちょっと御都合が悪いと思いますが、要するに事務当局としては、大臣の指示を受けて、すでにこの問題については関係各省とも連絡の上具体的な検討をしておられる段階であるかどうかということをお尋ね申し上げたいと思います。
  75. 小倉武一

    ○小倉説明員 事務的な交渉、打ち合せということはまだ進んでおりません。もちろん事実上問題が新聞等にも出ておりますし、話し合いは進めておりますが、私どもの実施案を携えての交渉ということはいたしておりません。いずれ近日中にそういう段取りになるかもしれませんが、まだそういう段取りにはなっておりません。  それから今回の問題の取り上げ方と申しますか、それの経過等についてのお尋ねがございましたが、その点につきましては、これは単に事務的に処理してどうこうするというだけのものでないことは、先ほどからのお話にもございますし、私もさように存じます。取り上げるということ自体、またそれをどう決定するということ自体も、政治的と申しますか、大臣の御判断に待たなければならぬ問題でございますので、単に事務的に処理するというだけではございません。しかしやるとすれば、また検討するということは、事務的な問題もございますので、大臣の御意図に沿うて検討を進める、こういうことでございます。  厚生省、労働省その他作業官庁との話し合いも、できてからでないと実施はもちろんできませんし、ぼつぼつ話はしておりますけれども、具体案を携えての交渉はまだいたしておりません。
  76. 足鹿覺

    足鹿委員 そうしますと、大臣閣議発言というものは、この制度について、ずっと数字的にどういうふうになるかということを関係各省とも相談をして積み上げたものを出しておるというのではなしに、一応ばんとやっておいて、そうしてあとから関係各省なり部内とも相談をして積み立てていこう、こういうふうな結果になると思うのです。そうですな。
  77. 小倉武一

    ○小倉説明員 これは今回の問題と申しますか、こういう労務加配の問題に限りませず、私からそういうことを申しますのはむしろおかしいのでございますが、重要な、特に政治的な決定を要するような問題につきましては、事務的に積み上げてからそれを一つ検討していただいて、最終的な政治的な判断を下されるということもございますが、逆に、まず政治的に方針を打ち出されまして、それを事務的にこなしていく、こういうやり方もございます。それのどちらに属するかということだと考えます。
  78. 足鹿覺

    足鹿委員 今後の見通しとして、二十三日に開かれました食糧懇談会ですが、これは先般来設けられた農林大臣の諮問機関ですか。それからほかにもう一つ食糧対策協議会というようなものもあったように思いますし、正規の機関としては直接食糧政策全般の検討機関でありませんが、米価を審議するという任務を持つが、事実は食糧政策の重要な役目を十数年来受け持ってきた米価審議会というものもあります。私は、行政機関の長がいろいろと意見を学識経験者に徴せられること自体まで否定するわけではありませんが、今の食糧行政に対するやり方を見ておりますと、正式な法律によってできた米価審議会はそっとしておく。そしてこの大臣が、あるいは内閣が、自分一存で任命をされた委員をもって作り上げた懇談会あるいは協議会というものを随時運営をされる。そして自分が思うように結論づけるような答申をせしめて、これが国民の総意だ、あるいはこれが国民の要望しておるものであるというふうに印象づけて、世論を指導しながら一つの方向へ持っていこう——今の食糧統廃の問題は、国民は、農民を初め、統制撤廃を望んでおりません。全く望んでおりません。現にあなたが農村へおいでになってもわかることですし、また労働者は労働者、消費者は消費者、特に家計を預かっておる主婦の人々は、双手をあげて反対しております。そういう段階にあってなお執拗に配給制度の改正をもくろみ、なしくずしにこれを行おう、そのために必要ないろいろな懇談会や協議会を運営されておるようにわれわれは見受けるのであります。若干ひがんでおるかもしれませんが、そう見えるのであります。なぜ米価審議会を堂々とお開きになって、そして——よかれあしかれ、各団体なり国民が納得した委員が出ておるわけであります。その機関にはかって、そしてまた、自分の思う御用機関は御用機関で運用なされたらよろしかろう。そういうやり方をやられると、ほかの少々のことではなくして、食糧問題のごとき、一国の盛衰なり、その国の経済を動かすような、あるいは社会不安を醸成するかしないかという非常に大きな問題を、こういう政府の恣意性によってやられては私は困ると思う。  ただいまの長官の御答弁を聞いておりますと、政治的に態度をきめて、そしてこれを具体的に事務当局に検討せしめていくという後者のケースを大体とっておられることは、長官の言明を待たなくても一応わかると思います。しかし政治的判断とは一体何でありますか。いわゆる国民の総意を無視して政治的判断などというものはあり得るはずがありません。国民の総意を受けて初めて政治的判断ができるのであって、一国家の財務当局の要求や政治家の一恣意性によってきまる筋合いのものでは断じてないと私は思います。政治的判断のその根本は何であるか、国民の声であり、国民大衆の要望しておるかいなかということが私は政治的判断の根源でなければならぬと思います。いずれにしても参議院選挙のあとにおいて突如として、また風のごとく出ました配給制度の問題については、政府の意図は別として、あらゆる国民の力を背景にして、とことんまでわれわれは戦っていきたいと思う。そう簡単にこの問題が押しつぶせるようなものではないということを十分御覚悟の上、安易な考え方ではなしに、真に国民を憂え、将来を考えて、真摯な態度をもって、事務当局は事務当局として、最後まで善処せられんことを希望いたします。これ以上質問を申し上げることは差し控えますが、委員長におかれましても、私は今まで意見も述べましたが、決して私は無理なことを言っておるとは思いません。現下の一番重大問題だと思う。きょうの新聞紙を見ましても、十段抜きくらいでこの問題を大きく取り扱っております。それだけの世論が起きておるときに、大臣は当然この委員会を通じて国民に所信を表明さるべき性質のものであると思います。しかし少し出おくれております。またでき得るならば、明日なりこの委員会を継続せられ、大臣出席を求めて、この問題について大臣の所信を大いに明らかにしてもらい、われわれも国民の声を伝えていきたいと考えております。もしでき得ることならば御善処をお願い申し上げまして、私の質問を終ります。
  79. 吉川久衛

    吉川(久)委員長代理 本件に関しましては、足鹿委員のおっしゃる通り農林大臣出席を求めてなお質疑をいたし、明らかにすべき問題であると考えます。従いまして、本日のところは一応この程度にとどめたいと思います。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時八分散会