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1956-05-30 第24回国会 衆議院 農林水産委員会 第46号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年五月三十日(水曜日)    午前十一時九分開議  出席委員    委員長 村松 久義君    理事 吉川 久衛君 理事 笹山茂太郎君    理事 白浜 仁吉君 理事 田口長治郎君    理事 中村 時雄君 理事 芳賀  貢君       足立 篤郎君    安藤  覺君       五十嵐吉藏君    伊東 岩男君       大野 市郎君    大森 玉木君       川村善八郎君    楠美 省吾君       小枝 一雄君    中馬 辰猪君       原  捨思君    本名  武君       松浦 東介君    松野 頼三君       横井 太郎君    赤路 友藏君       足鹿  覺君    淡谷 悠藏君       伊瀬幸太郎君    石田 宥全君       小川 豊明君    神田 大作君       田中幾三郎君    日野 吉夫君       久保田 豊君  出席政府委員         農林政務次官  大石 武一君         農林事務官         (農林経済局         長)      安田善一郎君  委員外出席者         農林事務官         (農林経済局肥         料課長)    桧垣徳太郎君         通商産業事務官         (軽工業局化学         肥料部長)   長尾  正君         専  門  員 岩隈  博君     ————————————— 五月二十九日  委員川俣清音辞任につき、その補欠として井  谷正吉君が議長指名委員に選任された。 同月三十日  委員石坂繁辞任につき、その補欠として横井  太郎君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  請願審査小委員及び小委員長選任  肥料取締法の一部を改正する法律案内閣提出  第一二四号)(参議院送付)  農産物価格安定法の一部を改正する法律案(芳  賀貢君外十三名提出、第二十三回国会衆法第四  号)の撤回許可に関する件     —————————————
  2. 村松久義

    村松委員長 これより会議を開きます。  肥料取締法の一部を改正する法律案を議題といたし、審査を進めます。質疑を続行いたします。芳賀貢君。
  3. 芳賀貢

    芳賀委員 肥料取締法の一部を改正する法律案について、これに関連する問題でありますが、実はかつて農林大臣が、ことしの春季闘争の場合に、合化労連賃上げ要求を押える意味において、肥料会社に対して警告を発した。あのときには当委員会においていささか問題になったのですが、その大臣意思というものは明らかにされていなかった。その後保守党の平野三郎君がことさらに本会議において緊急質問に名をかりて、この問題を取り上げたことがある。ですから、あのときの警告、あるいは本会議にそれを緊急事案として取り上げた真意をこの際明らかにしてもらう必要がある。これはいわゆる硫安製造を中心とした肥料会社における利潤が非常に高度なものであるからして、それを労働者の側からは労働生産性に寄与しておるのだからして、それに対する配分をすべきであるという主張、それから一方においては需要者側において、肥料需要国内においてだんだん高まっておるからして、これは肥料メーカーが相当多額の利潤を上げておるということで、肥料値段を下ぐべきであるという二つ要求が、当然なされると思うのです。ですから、あのときの大臣弁明を見ても、合化労連要求に対して応ずるよりも、むしろ肥料値下げにこれを持っていくべきであるという含みもあったようであります。しかし現実において何ら肥料値下げに対して具体的な措置が講ぜられていなかった。そうなると、労働者に対しても、賃金値上げをしてはならぬ。それから農民に対しても肥料価格を別に下げたことにもなっておらぬということになると、これは単に肥料メーカーの利益を温存するのみにとどめたことになると思うのです。ですからこの問題に対しましては、農林大臣が直接出席されて、その間の経韓を明らかにすべきであると思うのですが、きょうは予算委員会にくぎづけになっておるので、この点に対しては大石次官あるいは安田局長から、あのときの問題の経韓、あるいはどういう真意であったかということを御説明願いたいと思います。
  4. 大石武一

    大石(武)政府委員 芳賀委員のお説はごもっともでございまして、当時の大臣の心境をわれわれもよく聞いたのでありますが、お説の通り合化労連の待遇を上げることはけっこうである。それと同時に、肥料を下げることも忘れないように、ただ利潤の追求だけをしないで、肥料値段を下げることもしなければならぬという趣旨のものだとわれわれは解釈しております。  なおこれにつきましては、案文と申しますか、当時の文書などにつきまして、経済局長からお答えさしたいと思います。
  5. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 芳賀委員の御質問の点に関しますものは、昭和三十一年二月二十二日付をもちまして農林事務次官平川守から日本硫安工業協会会長石毛郁治氏に要望を出しました書類の問題だと思うのであります。当時社会党の井上良二氏からもこの点で御意見がありまして、大臣からも趣旨弁明その他がございまして、すでに御了解下さったと思っておるのでありますが、ただいまの御質問に即しまして私の理解をいたしておりますところを、お許しを願いまして申し上げますと、同要望書によりましても明らかなように、農林省としましては、労働者労働条件の適正な改善に反対するものでないという趣旨をはっきりいたしまして、他方政府基本政策として農産物価格安定に施策を集中しており、その一環とし、また前提として農業生産資材価格低下また広く言えば農業生産費低下をはかることを一つの大目標といたしておりますので、農業生産資材中に最も重要な地位を占める肥料価格については、関係法律もありまして肥料審議会の議を経まして、公定価格も作り、方針としては豊富にして低廉なる肥料を供給することを、法によりましても、また行政措置といたしましても目途としておるのでございますから、賃金の問題を取り扱う場合におきましては、一方労働条件の適正な改善をする際には、農民のことを考えまして、肥料価格引き下げ努力するように、文章にありますように、賃金上昇をもって直ちに肥料価格引き下げができないと言ってもらうのは困ることを申し入れる、あるいは労賃上昇が直接に肥料価格上昇の原因となるという取扱いをして主張してもらっては困る点をよく御留意願いたいということを申し入れたものであります。これは法律に定められております時期に、所要の手続をもって公的に肥料価格をきめておるのでありますが、常時原価構成要素につきましても留意を払っておるのでありまして、特に硫安価格原価構成上または硫安生産会社経理状況から見ますと、それぞれその業種に応じました特殊性は当然認めるべきものと思いますが、肥料会社経理状況一般製造工業経理状況に比して、利潤、配当、期末手当等において悪くなく、また労賃においても業種別労賃中において硫安工業労賃適正化されることは当然であろうと思いますが、また団体交渉に干渉する気は全然ないのでありますけれども、客観的には、常時調べておる上からいたしまして、比較的高水準にある、こういうことからいたしまして、念のための要請を出しまして、常時の指導監督上の措置実質上、事実問題のことでありますが、そういう措置に加え、将来の肥料価格においての適正化を期しただけにすぎないものでございます。
  6. 芳賀貢

    芳賀委員 この点は当時の委員会でも指摘した点なんですが、とにかく政府民間産業労働条件適正化等要求に対して介入するという事例はあまりないのです。特に肥料問題に対して農林大臣がそういう意思表示をしたというところに問題があると思う。しかしその場合においても、農林大臣がまじめに農業保護立場に立って、そうして労働者条件がよくなると同時に、一方においては実需要者である農家に対して肥料値下げをするということを意図してやられたのであれば、また考える余地もあるのですが、現実の問題としては肥料値下げ面に対してはその後、この肥料年度中において何らの努力を払っていないわけです。七月になると来肥料年度硫安等価格決定審議会を開いてやることになると思いますが、とにかく今肥料年度の中においてはそういう努力をしなかったということは事実なんですね。そうなると、これは来年に持ち越される問題でありますが、明年度政府は、硫安価格決定等に対して、現在の硫安価格よりもこれを引き下げ余地があるというふうに考えて作業を進めておられるかどうか、その点はいかがなんですか。
  7. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 今年度におきまして、肥料価格値下げ、または値上りの防止について何らの努力を払っていないじゃないかという点が、第一点にあったと思いますが、その点は相当努力をいたしておるつもりであります。たとえて申しますると、春肥に始まりまするカリにおきましては、従来外国国際カルテルないしはこれと連係もあるやに思われる東独カリ公団等が、日本CIFにおいて、日本における外国資本代弁者会社において初め売りまして、また独特の自分の支配下にある船を使って持って参りまして、彼らがきわめて有利な立場で、言いかえると、日本則が不利な立場で取引をしておりましたものを、大臣欧州へあるいはアメリカへ参られましてその糸口をつけられ、ついで肥料課長欧州に派遣いたしまして、第一にはカリ運賃諸掛りを除いた部分で去年より相当値下りを示すように、交渉は難航をきわめまして、ある程度でございますが、元の値段を安くすることには相当努力いたしました。たまたまもって船賃の高騰がございまして、トン当り前期においては十ドル前後、外国業者との交渉は十ドル半ぐらいのベースだったと思いますが、それがすでに十六ドルでは安い運賃、十八ドルが普通の運賃になるほどの状況でございましたので、元を下げても結果はよくは出ませんでしたが、それも日本郵船等の安い船を早期に、ほとんど全部余裕のあったものは獲得いたしまして、かつアメリカやその他からの輸入も手を加えまして増しまして、輸入業者マージンをたしか単位当り二十円、元卸以降の配給マージン硫安と匹敵するようにきめまして、指導措置を加えて、単位当り十五円、そういうふうに切り詰めて、相当値上りすべきところを上げない努力をいたしました。また過燐酸石灰についても、先般御質問が他の委員からありましたときにもお答え申し上げたように、同様の事情でありましたのを、輸入ワクをふやすこと、また買い方を上手にすること、企業の合理化をはかってもらってこれを原価に反映させること、また国内マージンを切り下げること等によりまして、これまた同様の措置をとったのであります。硫安につきましては、ただいま御質問がありました措置をもって、来月、再来月にわたって肥料審議会で御検討を願う。原価検討をいたします場合に、労賃が上りましたがゆえに、経営者製品の総原価がそれだけ上る結果、それを不必要に盛り込んで肥料価格をそれだけ上げてくれ、あるいは肥料価格合理化増産等のために下るべきところを、それだけ下げられない、こういうことは言わさないという建前で、手を打ちましたのがそれでありまして、それ以後引き続いて目下適期に原価の算定ができて、肥料値下げを可能ならしめるような方向に向いまして原価提出を求め、調査をし、検討をいたしておるのであります。硫安法律によりましてその時期に行うつもりでありまするが、そうでない、硫安とともに使っております、最近生産量が非常に多くなり消費も増進しております尿素については、複合生産物でありまして、ひとしく原価等についても関連があるのでありますが、これについては大幅の値下げを慫慂し、また硫安メーカーと同一のメーカーも多いのでありますが、これについては全購連を間に入れたりなどして指導的に相当の値下げをはかっておるつもりでございます。
  8. 芳賀貢

    芳賀委員 ただいま局長からカリ問題等が出ましたが、最近カリ輸入状態あるいは硫酸カリ塩化カリ種類別消費状態等を見ると、これは一昨日小川委員からも質問があったかもしれませんが、政府指導方針と申しますか、最近極端に硫化カリ使用量を規制して塩化カリにそれを転換させていくような傾向があるのですが、これは価格の面からいえばその方が有利かもしれませんが、実際に耕作上の使用条件等からいうと、硫酸カリには硫酸カリとしての独特の用途というものが当然あるわけです。塩化カリの場合においては、貯蔵しておるうちに湿度が非常に強くなって、そうして有効な使用にたえないような事態がときどき起きておる。ですからこれからはやはり、実際に肥料使用する農家希望にこたえ得るような輸入計画等を立てて、それを提供するようにしなければいけないと思う。何か極端に窮屈な考え方の上に立ってこれを扱っておられるように考えられるわけですが、その理由は一体どこにあるのですか。
  9. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 御承知のように、カリイスラエル等からも若干、数千トン来ますが、その他はドイツスペインフランス、このドイツ西独でありますが、それの国際カルテルが非常に強大でありまして、戦後東独共産圏と申しますか別れましたですが、会社としては相当まだつながりがあるようでございます。東独のものの値段の方が少しずつ安いのでありますが、従って東独買付量を多くする。また先ほどお答え申し上げました中で忘れましたが、日本輸入入手いたします場合に、品質の高いものを取り上げて、成分割合では農家に比較的安い肥料が供給できるように努力をいたしまして相当成功をいたしました。しかし他方売手輸出の側においては、その両者の採算を考えて、非常に強大な独占力を持って向って参りますので、おのずから交渉上において硫加塩加間に向うから強い要望があるのであります。国内農業上の用途といたしましては、タバコなんかには硫加が向くとかいろいろありますが、その点いつも日本農業事情に合うように、農民要望に合うように、またそれの代表者である全購連等の要望に合うように努めておりますが、必ずしも十分にいかない点が残っておる点が、御指摘の点だと思います。一そう努力をしようと思っておるのであります。
  10. 芳賀貢

    芳賀委員 私の尋ねているのは、どうして硫酸カリを押えてそれを塩化カリに転換しなければならぬかということです。家際農家では、塩加の方が得だとか、それでなければならぬというような強い期待をしているものは少いと思うのです。ただ、いかにも肥料値段を下げているんだという現象を糊塗するために、塩加にこれを転換しておるというふうにもわれわれには受け取れるのです。そういうのはインチキじゃないですか。
  11. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 そういう方針はとっておりませんで、需要者団体から要望を聞きまして、それを通じて農家要望を聞きましたような硫加塩加割合で入手をいたし、配給もしていくように努めておるのでございますが、カリであるならばできるだけ安いように入手したいという希望一つあり、また成分当りで安いようにしたいということが一つあります。他方、先ほど申し上げましたように、売手側がその種類ごとに、こっちは何トンで幾ら、こっちは何トンで幾ら、こっちが何トンで出してくればこっちは何トンでという交渉をいたしますので、日本希望を主張しながら、最終的には日本に一番有利な案で妥結するように努めております結果、ちょっと食い違いが出てきておるという沿革だと思います。
  12. 中村時雄

    中村(時)委員 関連して伺いますが、この肥料年度のあれで見てみますと、三十年度硫酸カリが七万五千トンで、塩化カリが七十六万五千トンになっていて、非常に相違があるわけです。そこで、あなたのお答えから推察すると、たとえばフランスとか、西独とか、スペインとかいうものがカリ輸出カルテルを作っているような傾向がはっきり出てきているわけです。たとえばカリ・トランスポートの問題が以前から問題になっておるわけですが、それに対してこういうふうな不均衡な線を是正するという努力をどのような方向でやっていかれるか。これは政治的な問題が大きく動くわけです。そういう点で交渉の結果非常に有利な点が出る、そういうような点がもしありましたら御指示を願いたいと思っております。
  13. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 本年度この春肥努力をいたしまして、直接交渉に当りました肥料課長をして御説明させていただきたいと思います。  肥料課長をしてそう交渉せしめましたもとの考えといたしましては、第一には、向うの言うがままに大日本加里とか、東独加里公団代表商社売手独占のような形で持ってきて、選択の自由を制限されないで、日本はばらばらの形で輸入業者が折衝をしたものをやる、むしろその話がついたようなこととか、過去の成績を見て外貨割当を通産省が行なってくれる、こういうことを改めまして、西独フランススペイン東独アメリカその他こういうふうにカリ供給地ソース別に、輸入業者独禁法違反にならぬ範囲の自主的な協議会を業界の要望ともマッチするように合せまして、そうして東独の方はこう言っておるから、西独の方もまけてもらいたい、こういう品質のものをもらいたい、またCIFすなわち運賃諸振り込みでいいかげんの値段にしたり、バック・ペイが生じたりすることのないように、日本輸出先のFOBで買うというような努力をしたい、外貨割当の総ワクソース別操作にも、農林省はもちろん実質上の発言をいたしまして、そういうふうにしたいという努力をしておるのでございます。
  14. 中村時雄

    中村(時)委員 もしかりにそういう結果が出ました場合、向うの方でそういうふうに一つカルテルをやっておる、それが日本の方へ来ました場合に、各工場においてそれに準じて行われやせぬかということが一つあるわけですが、日本自体もそれらの工場カルテルを結んで操作をするようなことはありませんか。
  15. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 これは、肥料としては製品輸入といってもいいようなものでございますので、外貨割当に当りましては、取り扱われる全購連と全肥商運系統のもの、国内配給業者、これは需要者代表とも考えられるものでありますが、そこと事実上相談をし合いましてやっております。かたがたもって、ただいま申しましたところの大日本加里というような外国資本出先独占機関が、全購連はもとより、いわんや弱体の商人系統を支配してそういうことをやることは、この春肥からはほとんど解消しました。
  16. 中村時雄

    中村(時)委員 ちょっと私の質問が悪かったかもしれませんが、硫酸カリの方が非常に少くなって、塩化カリの方が非常に多くなってきているわけです。そこで輸入数量を調べてみますと、三十一年度が百二万トンで、そのうちの元卸価格は、硫加が九百四十円になっており、塩加の方が七百八十五円になっている。ただし、私の言うこの硫加というのは、K2Oの四八%の価格のことを言っているわけですが、わざわざそういうふうに切りかえるその理由ですが、実際の問題として硫酸カリがほしいのは、御承知のように、柑橘あるいはバレイショタバコなどである。北海道などの場合は特にそうだろうと思いますが、そういう点から先ほどの芳賀委員の御質問が出てきたのだと思います。そこで、価格相違がそういうふうになっており、要望がこういう結果が出ているにもかかわらず、これをどんどん輸入していこうということになれば、向うカルテルを結んでいるからやったのではなくして、うちの方でもそういう傾向がありはしないかということの御質問なんです。
  17. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 具体的に需要者団体その他と打ち合せながら、農業立場から外貨編成の原案を作りました肥料課長に答えさせることにさせていただきたいと思います。
  18. 桧垣徳太郎

    桧垣説明員 経済局長のお答えに補足いたしまして御説明を申し上げます。  塩加硫加割合が、御質問通り硫加が少くして塩加が多いのはその通りでございます。また、従来予算編成に当りましても、ただいま局長から申し上げました通り塩加を多く硫加を少く計上して参ったのでありますが、これは経過的に申しますと、日本外貨事情の窮屈な時代にありましては、カリ肥料全体に組まれます外貨予算を最も有効に使用したい、それが日本農業生産力を確保する上に有利であるということは当然でありますので、そういう見地からもK2Oあたりの安いものをもって充てることが有利であるという、この観点につきましては、かつて国会においてもその趣旨の慫慂を受けたこともあったのでございます。今、内地春肥価格について中村先生からお話がありましたが、これは農林省基準価格で、その通りでございますが、買付価格から見ましても、塩化カリは、これはソースによりまして価格相違がございますけれども、シフ価格で大体トン当り八十ドル前後。それに対しまして硫酸カリは、内地シフ当り百二十ドル前後、K2O単位当りにいたしますと、昨年硫酸カリについても、先ほど局長からお話がありました通り欧州値下げをはかって参りましたけれども、やはり塩加に対して約五割以上の割高の肥料である。このことでむやみに硫加が増加いたしますことは外貨予算の負担にもなるということで、抑制的に一つ理由としてはあった。いま一つは、日本農業の側における技術的な観点からいたしましても、吸湿性の問題は芳賀先生のおっしゃる通りございます。ございますけれども、塩化カリをもってカリ需要給源とすることに差しつかえないという問題については、それを使用すること、奨励することが日本経済全体のためにも、また農家経済のためにもいいのではないかということでありまして、従いまして従来はどうしても硫加でなければ施肥上支障があるというものに優先的に外貨編成をいたしたのであります。その例は、たとえばタバコでございますとか、あるいは北海道バレイショでございますとか、こういうものにつきましては優先的に外貨編成をいたして、硫酸カリの取得に努めて参ったのであります。従いまして、その後数字から申しますと、硫酸カリの最も多かった年は昭和二十八年にK2O五〇%にしまして約二十万トン一〇〇%にしまして十万トンを入れたのでありますが、三十年に七万五千トンにまで落してきたのは、そういうような事情から、硫化をそれだけ入れなければならないという必要は必ずしもないのではないかという見地から減少して参ったのが経緯でございます。ただ外貨事情の好転という点が一点ございますことと、いま一つカリ全体の使用量がふえて参ったということから、この硫酸カリ輸入減少ということが、現象としては非常に強く現われて参ったということは御指摘通りであると考えております。その他の作物につきましても、どうしても硫加を必要とするものについては、農林省としては当然確保の措置を講じて参りたい。ただただいまも申しましたように、非常に割高な商品であること、それから硫酸カリについては、目下のところはフランス西独がほとんどの給源、要するに欧州カリカルテルの根源にだけしか給源がない。従って非常に割高に売られておる。それからこれはコンスタントに期待できるかどうか疑問でございますが、アメリカから若干入ってきておる程度である、こういうことから日本硫酸カリについての需要を大きく出しますと、それが将来の輸入条件交渉に当って、常にその想像される輸入要請量向う側からひもがつけられるという、不利な点を残すことが一点心配されるのであります。これは私が交渉に参りました際にも、この点を向う側から非常に強く言われたのでありますが、これはカリ輸入政策全体としては、将来にわたって考慮をしておかなければいかぬ点ではないか。ことに内地でも塩化カリから硫酸カリに変性の措置も講じられておりますので、これはただいま局長から御説明のありました通り、今後の問題は外貨事情それから内地需要事情を合せつつ無理のないように外貨編成をして参りたい、輸入措置を講じて参りたいと考えております。
  19. 芳賀貢

    芳賀委員 桧垣さんの説明で大体わかったわけですが、問題は、ただ政府指導方針だけで塩化カリの方がいいから硫酸カリを減らした方がいいという、そういうことでなくして、これはやはり実際肥料を用いる農民肥料に対する認識が高まってそうなるというような一つの推移と相待って転換していかないと、それでないと、極端に今度は硫酸カリがことしは少いのだということになると、必要以上に硫酸カリに対する期待が高まるということになり、また肥料値段が高くなるということにもなりかねないわけです。ですから、これは国家経済の上から見ても必要であるかもしれませんが、農民に対しては、やはり自分の使いたい肥料を使えるという条件だけは認めていかぬと——そうしながら指導をそこに向けていくようにすべきでないかというふうに考えられるわけです。たとえば窒素肥料にしても、硫安よりは尿素の方がいいのだということがわかっておっても、それなら硫安をやめて尿素に簡単に切りかえられるかというと、なかなかそうもいかぬのと同じような点があると考えるわけです。  もう一点は、最近カリの時期的な需要に応ずるような手当がだんだんおくれていっているようにわれわれは承知しておるわけです。輸入の時期がだんだんおくれていっているんじゃないですか。こういう現象一つの顕著な傾向でないかと思うのですが、将来の手当等に対してもこれは非常な影響が出てくると思いますが、そういう点はどういうためにおくらかしているのですか。その点はいかがですか。
  20. 大石武一

    大石(武)政府委員 前段の点についてお答え申し上げます。確かに仰せの通り農家の経営が一番よくなるような方法において指導すべきだろうと思います。従いまして、もちろん農家需要というものを非常に尊重いたしますが、なお農林省といたしましても、試験場なり何なりの意見や指導というものを十分取り入れまして、正しく農家の指導をいたしましてその方向に持っていきたい。それにあわせていろいろな外貨とか国の経済事情も考慮していきたい、こう念願する次第であります。  なおあとの段につきましては政府委員よりお答えいたさせます。
  21. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 芳賀先生の第二点の御質問は、この春肥の手当につきましてそういうことがございましたと思います。それは、外貨割当上にはほとんど問題がございませんでしたが、あまりに欧州カリカルテルの力が強くて、中村委員の御指摘になりましたような、もっと日本の力を強くして有利に買う力がないということを考えまして、なおまた輸入業者輸入すれば所定のマージンがとれるというような性格を持っておりますので、そこでソース別に、東独西独アメリカをも入れ、輸入業者協議会を設けさせて、少数の代表的な者、幹事が代表になってソース間に交渉を上手にやりつつ輸入してくる、輸入原価を下げる、また仕切りの場所もFOBで買えるというような機構改革と、有利に買う買い方、日本の独占資本に対する圧迫をはね返す力を少しでも強くする改正をしつつありましたので、そのことで若干手間取りました。かたがたもってその基礎の上に立ちまして、肥料課長を渡欧せしめまして、日本交渉しない、言いかえますと、外国カルテル日本支店で交渉せしめないで、本店で交渉する、そうでなければカリそのものの運賃その他を除いた原価交渉が全然不可能であります。河野農相がその糸口をつけてきてくれましたので、その交渉を行わしめたのであります。それが非常に難航をきわめましたものですから、話がつかなくても、東独は腹をきめて早く入れろ、アメリカのものは手配するようにといたしましたが、若干おくれましたことはお説の通りであります。かたがたもって外航運賃の値上りの影響が非常に多くありましたとともに欧州は寒波でありまして、先般もこの点は申し上げたと思いますが、船の手配等が非常にむずかしくございまして、決定いたしました数量及び価格において輸入するのでも、欧州寒波の影響による外国航路の船腹の関係、運賃の関係等からおくれたのであります。今後はそういう気候上の問題等はありませんので、新たにその都度価格、数量の交渉に当りまして、手配に手落ちがないようにいたしたいと思います。
  22. 芳賀貢

    芳賀委員 次に硫安の問題ですが、七月に肥料審議会が開かれると思いますが、その場合政府硫安価格算定の作業を進めておられると思いますが、やはり問題になるのは算定方式の問題だと思います。過去二カ年間は、これは国内需要分についてそのバルク・ライン内の加重平均の算定方式を用いたわけですが、一方においてはやはり総平均方式をとってもらいたいという声もだんだん高まっているわけです。それでこれらの点に対しては事前に政府の特定方式に対する態度を明確にしてかからないと、政府自身の自信がくずれてしまうようなことになると、これは大へんだと思うのです。ですから、この際政府としての一貫した算定方式に対する態度を明らかにされておく必要があると思うのですが、いかがですか。
  23. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 硫安の供給、そのうちの輸出国内向け保留あるいは工場在庫、流通段階の在庫、需要、こういう観点から総体的に見ますと、消費は相当増加いたしまして、輸出もまた、だんだん好調になりつつありますし、国内の供給について端的に見ますと、設備の増加、生産量の増加によるある程度の生産費の切り下げと合理化を加えまして、所期の目的を達しつつあります。そういう中におきまして、従来とりました算定方式の変更の要を少くとも農林省は目下のところ認めておらない。しかし供給量が多くなることは、会社数、工場数なり、設備能力が増加したことでございまして、その割高な会社ないしは設備から申しますと、ことによると、ますますバルク・ラインの中と外の差が従来以上に出てくる傾向もあるのであります。企業努力が足りなかったり、製法や設備が古かったりいたしますと、そういうことになりますが、それはそれで別途措置を講じまして、肥料価格に関して、単なる総平均をとってバルク・ライン方式よりは、むしろ原価の算定が高くなるというような措置は、農民立場から肥料は重要な問題でありますので、農林省としてはとりたくないと思っている次第であります。
  24. 芳賀貢

    芳賀委員 この点は今安田さんが言われたのですが、硫安企業の合理化が進んでいけば、コストの差はだんだん接近しなければならぬというふうにわれわれは考えております。そうしないと、特定のメーカーに対して合理化についての特定の配慮を政府が講ずるというようなことになれば、劣勢メーカーの商コストを解消することはできない。しかし国内硫安工業全体の視野の上に立っての合理化を進めてくるということであるならば、コスト差はだんだん接近しなければならぬと考える。そこに合理化一つのねらいがあると思うのですが、有力メーカーと劣勢メーカーとのコスト差が広がっていっているか、接近しているか、その傾向はどうなっておりますか。
  25. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 詳細なことと、ごく最近の、この次の肥料に反映せしむべき現状においてのことは、肥料審議会のときを待っていただきたいと思いますが、芳賀先生のおっしゃるように合理化が進み、合理化の一部として増加設備をしたところは、特に新しい装置である、こういうふうに見ますと、理論としては原価が下って合理化が進んでいるということになります。しかし実際には、各工場の設備が、最近では製鉄の廃液であるとか石油化学と一緒になった製造をする、また硫安だけでなしに尿素も行なう、さらに肥料系統以外の製品もどのように作るかによって化学肥料というものの原価が見らるべきものでありまして、具体的には必ずしも歩調をそろえて合理化が進んで、生産費の安いところと高いところとが格差が縮まってくるという傾向ではなくして、合理化の質的変化、生産設備の量的変化でなしに質的変化が来ている段階でございますので、具体的にはお話のようでないのでありまして、ちょうど過渡期の現状だと思います。
  26. 中村時雄

    中村(時)委員 局長にお尋ねするのですが、今あなた方のやっていらっしゃるのは、ほとんどバルク・ライン方式でやっていらっしゃるわけですね。そういたしますと、バルク・ライン方式の中にある工場は大体どのくらいになっているのか。というのは実際の最低にいたしましたら、私どもの聞くところによると、東圧や砂川あたりでは七百六十円ぐらいでやっていらっしゃる。まず第一点として、バルク・ライン内でやっている工場というものは十四社十七工場の中で幾らあるかということをお聞きしたい。
  27. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 三十年肥料年度の現行の価格の基礎になりました場合においては、十七工場中九工場であります。
  28. 中村時雄

    中村(時)委員 するとおそらくバルク・ライン内におけるところのこの九工場と残りの八工場には、非常に今言った価格相違があると思うのです、こういうことになってくれば。そうような場合に、おそらく単独で硫安だけをやって、しかもバルク・ラインでないというような行き方をとっている工場は非常に苦しい経営になっていくと思うのです。それらに対しては今後どういうお考え方を持っていらっしゃるか。何か一つの御施策でもあれば承わりたいと思う。
  29. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 私ども共に考えるべきことと思いまして、乏しい知識でも外部の学識経験者の御意見も聞きながら、業界の御意見も聞きながら考えておりますが、そのことそのものは通産省でまず考えていただきたい、また考えるべきことである、通産省でしっかりやれと、こう申し込んでいるわけであります。
  30. 中村時雄

    中村(時)委員 えらいことを言う。通産省に申し込むのもけっこうですよ。しかし通産省に申し込む前にあなた方自身も直接関係があることです。十分に考えてもらわなければならぬ。それではもう一回質問を変えまして、バルク・ライン内の工場内におけるところの最低価格とバルク・ライン外の最低価格というものの相違がどの程度になって価格の上に現われて来ますか。
  31. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 まじめに誠実にお答え申し上げますが、肥料審議会の直前の作業をいたしている段階でありますので、過去のことで申し上げるのもどうかと思います。現在やっておりますことは、まだしっかりその時期にきておりません。それから農林省努力を払うべきでないかということは当然でございまして、石油化学系統の中に工場の系列を重複せしめまして、問題は硫酸でありましょうが、その工場を認めることとか、会社自身が設備の拡充とか、機械を更新する、こういう場合の資金調達には、積極的に私ども努力をいたしております。また製造方式はなかなかむずかしい化学工業のことでありますが、単独生産をやっている東北肥料なんか、なかなか採算はつらいと思いますが、これらはもう少し関連産業を努力すべきじゃないかということで考えておるわけです。
  32. 中村時雄

    中村(時)委員 どうもお答えのピントがはずれてしまうのですが、あなたをつるし上げるとかなんとかいう悪意を持って言っておるのではないから、冷静に答えてもらいたいのです。たとえばあなた方の方で、価格相違が年平均が三十年度においては七百九十八円七十九銭と平均指数が出るくらいあれば、最高指数なり最低指数なりがわかっておるはずなんです。わからなかったらその数字は出やせぬ。今問題にしておるのはバルク・ラインを中心にとっておるのです。バルク・ラインでとっておるところは、今言う通り十七工場のうちで九工場しかないのです。そうしますと残りのものは硫安なら硫安だけでやっておるものと関連産業を持って尿素もやっておるというところは経営状態が違っておるわけです。実際に関連産業をやっておるところは有利な条件になっておる。ところが一貫作業で単独作業しかやっていないところの工場はかなり苦しい立場になってくるわけです。そこでバルク・ラインの価格が全然異なってくるだろう、こういうことはわれわれにだってわかるわけです。そこで私がお聞きしておるのは、バルク・ラインの工場における最低価格と、一般のそういうふうに脱落するであろうと思われる工場価格構成は、それだけコストが高くなってくる、その相違点がどれだけ違っておるかということをお聞きしたわけです。
  33. 桧垣徳太郎

    桧垣説明員 ただいま局長からお答え申し上げました通り、本年度と申しますか、三十一肥料年度につきましては調査中で、お答えすべき段階ではございませんが、一応昨年の硫安の生産費の状況を申し上げますと——これはまずその前に硫安の生産費は終戦以来復興の途上では非常に開きが大きかったのであります。硫安の増産五カ年計画の趣意に伴いまして、昨年までたどってきました経緯は、コストの最高の工場とコストの最も安い工場との開きは順次縮まってきたのが現状であるわけであります。要する価格差は縮まってきておるという傾向をたどってきたのでありますが、局長の答弁にもありましたように、今後はこれは新しい事態が起ってくるかもしれませんということは想像されますけれども、これはまだ数学的にはつかまえられてない段階であります。昨年のものを見ますると、九工場のバルク・ラインの中における平均価格公定価格の基準になって、七百九十八円七十九銭であるということも仰せの通りであります。最も安い工場トン当り二万九百十六円、これは利潤を込めました生産費でございますけれども、かますに直しますと七百八十四円に祖なります。バルク・ラインの最高工場が八百二十五円、トン当り二万二千一円である。それから十七工場のうち最もコストの高い工場トン当り二万七千八百四円、従いましてかます当りにしますと千円を越すような価格になる。それからここで問題になりましたのは、実はこの最後の最高のコストのところは、法律上の硫安工場としてつかまえてはおりますけれども、この工場は経営採算の方では果して硫安のこういう原価が支配的な経営要素なりやいなやはなはだ疑わしい工場でありまして、そういうものはまず二、三の工場についてはこれは除外してよろしいんじゃないか、少くとも肥料政策の面から除外していい工場ではないだろうかというふうに考えますると、一応硫安工場としての最高のコストをかけておる工場は、トン当り二万三千五百九十三円、かます当り八百八十五円という工場が最も高い工場になる。もっともこの工場につきましても、直ちにこれがどうにもならない生産費であるかどうかということは、この工場合理化進行の途上においてつかまえた原価でありますので、どうであろうか、この工場を除きますと、あとはかなり縮まって参りまして、十四番目の工場が二万二千八百七十五円、従いまして八百五十八円の利潤込みの原価生産費に相なるのであります。従って最高最低の幅というものは約七十円程度に、昨年の原価の調査の結果では相なっておるわけであります。これは今後どういうふうに転換しますか。合理化の質的変化というものが現にわれわれにも察知されますし、またその方向に向って進行しておりますので、将来に待たなければならぬということであります。またバルク・ラインの工場についても、現に各種の質的な合理化の計画が推進されておりまするので、直ちにますます開くというふうに見るべきか、あるいはこれは縮小の可語性があるというふうに見るべきか、これは将来を待たなければ私どもとしては断定しがたい状況であるというふうに考えております。
  34. 中村時雄

    中村(時)委員 では今おっしゃったように、七、八十円の開きが一工場に対してもあるわけですね。そこでちょっと突っ込んで具体的にお聞きしたいのですが、東圧、砂川ではかます当り幾らぐらいでやっておりますか。
  35. 桧垣徳太郎

    桧垣説明員 御質問でございまするけれども、この原価の生産費につきましては、いわゆる業務上取得いたしました問題でありますので、個別の会社原価について発表をいたしますことは、私の方としていたしかねると思いますので、お許し願いたいと思います。
  36. 中村時雄

    中村(時)委員 この前に資料を提出をしていただいた中では、あなた方どうおっしゃったか知りませんけれども、七百六十円となっておる。ともかく六十円から七十円程度のものが、今言ったように七、八十円違ってくる。そこで合理化をはかったものがこういうようなコストにもなる、こういう最低のコストにもできるということは間違いないことです。工場によっては今言ったように七、八十円下るということが間違いないのです。そこでそのコストを下げる条件というものはどうにあるか。たとえば原価の問題もありましょう、あるいは労働賃金の問題もありましょう、いろいろあるわけです。そういう点を的確に抽出されて、初めてあなた方の肥料行政の中の価格構成というものはでき上ってくるわけなんですね。そういうようなものを持っていなかったら、通産省と話し合いを幾らしてみたって、いつだって通産省の方がイニシアチブをとるという結果が出てくるわけです。そういうことになりはしませんか、私はそう思う。局長はどういうふうに考えられるか。通産省の方は十分やってもらいたいということでは、これはちょっと農林省としては困るのではないか、こう思うのです。そういう意味でお聞きしておるのですが、局長はどういうふうなお考えをお持ちでございますか。
  37. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 政府委員まず第一に私が先ほど申し上げましたことは、主管としましてはまず第一に通産省が農林省から申し上げなくても御努力願うべきでありますが、その上に農林省は最も熱意を持って、直接の措置としては通産省であっても、要求を具体的に指摘して考えて、意見もまとめて要求しなくちゃいかぬ、そういう意味でございます。その際に考えておりますのは、他産業との関連とか、一企業体が肥料外として一応取り扱われておるものを、一連の企業として扱っておりまする点において、よく留意しなくちゃいかぬと思います。合理化もその点に相当ありますし、最近イギリスでトン当り三十数ドルのアジア向け輸出硫安ができる。そういうものは日本にはまだできておりませんので、それらを育成するとか現在の製法別また関連産業をどの程度持っておるかということによる差によってどのくらい出るか、というような点を押えまして、包装その他原価構成を各項目にわたってすべて合理化をはかってもらおうというのであります。
  38. 中村時雄

    中村(時)委員 正直に申しまして、どうも局長のおっしゃっていることはぴんとこない。というのは、少くとも需給計画は農林省でやらんならぬ。通産省で云々とおっしゃることは——生産計画なら別であります。生産計画となると、石炭の問題であるとか電気の問題であるとか、あるいはまたコークスの問題、鉄の値上りの問題で、いろいろな関連産業というものは上っていきおる。実は私はなぜこういうことを聞いておるかといえば、こういうふうに基礎的なものが、みな上っていきおるから、ただ単に抽象的に合理化といっても、非常に困難性を伴うのじゃないかという点が一点あるわけです。そこで需給計画の方面はどうかといえば、少くとも五貫から一俵の間というものは、その使用度はどんどん伸びていきおる。私はそう思っているのですが、それに間違いがあったらまたお答えを願いたい。そうすると、生産量というものはふえていく。そこに需給計画というものを当然農林省で立てていかなければならぬという結果が出てくる。そういう意味においてあなたにお聞きしている。生産コストの問題は、生産費そのものだけを見ていけばあるいは通産という逃げ方もあるかもしれませんが、今言ったように需給のバランスというものを考えるのは、私は農林省の所管じゃないかと考えている。どういうふうにお考えになっているか知りませんけれども、私はそれをお尋ねしてみたい。
  39. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 中村委員お話を私のお伺いしたところで整理いたしますと、硫安工業合理化そのものから生ずる生産費の低減ということと、肥料値段をきめる際に、算定方式をどうして、またバルク・ラインをどこへ引っぱるか。政策上マル公として、農業のことも考え、企業のことも考え、国内供給と輸出のことも考えてどうきめるかということ、バルク・ラインの外に出る企業の方は、またどう考えているかというようなことで、バルク・ラインをいかにするかということと二つになるのじゃないかと思います。  今まで申し上げましたことは第一点のことでございまして、やはり第二点は、これはまさに政策でもあり、肥料行政そのものでもあると思いますが、あくまで国内供給を確保する。輸出まで考えた生産量でなしに、国内供給数量の確保に遺憾がないところで出す方が値段が安い場合は、そっちに力を入れてきめたいと思っておるわけです。そういうところで二つの点の差があるので、それぞれの措置をとりたいと思います。
  40. 中村時雄

    中村(時)委員 それじゃもう一点お聞きしますけれども、私の先ほど言ったように需給計画に基いた考え方から申しまして、たとえば生産能力が三十年四月一日現在で三百十一万トンとなっております。それから、お聞きしたところによると、三十一年四月一日で三百四十万トンで、三十万トンほどふえてくるわけです。そうするとふえたということは、少くとも生産コストと関連をさせますと、そこに価格の幾分かの安値が出てくる、当然こう考えられる。しかし片一方においては、あなた方の策定が正しいかどうかは知りませんけれども、先般のあの春季闘争においては、労賃の値上げによって七%上ったといって問題にしている。そういうようないろいろな問題がここに関連してきている。しかし現実の問題としては数量はそうやってふえてきておる。そこで全般を見渡した場合には——一々取り上げていきおりますと時間がかかるから、全般から取り上げますと、三十万トンぐらいふえるという予定のもとに立ったときは、少くともコストが下るということが常識的にいっても前提になってくる。そうすると、あなたはトン当りどのくらい下げられるかということをお尋ねしたいのです。
  41. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 中村先生の御意見、御質問、よくわかりますけれども、時期としても適当でありませんし、肥料価格硫安価格というものは、一応その関係からだけでは出てきませんので、その点にはお説の通りの留意をいたしまして、見落さないようにして織り込んで、その他の要素を検討したあとで申し上げるのが適当であり、そのためにまた肥料審議会もできて、その時期もきまっておると考えております。
  42. 芳賀貢

    芳賀委員 調整保留分の取扱いですが、最近肥料審議会で調整保留数量を厳密に検討して、それを政府に答申して、実施してもらうことになっておるのですが、政府がまじめにやっておらぬことは事実なんです。今日肥料の値上げの場合においても、十六万トンの調整保留分を確保すべきだということになっておる。ところが、聞くところによると五万数千トン程度しか調整保留分の手当をしておらぬということなんですが、そういうふまじめな態度というものはどこに起因するかという点を、これは簡単でいいですから、一つ
  43. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 法律に従い、審議会の計画を元にして実施すべきことは当然であります。具体的には需給計画上に保留分をこういうふうに置きましたことと、現実に買上げを指示して保留せしめて、またプールをしてそれを放出するという数量とは、関係法律も条文が二つに分れておりまして、その精神から推しましたことには忠実にやっておるつもりでございます。第一に申し上げますと、工場在庫その他の在庫が少いときに、計画通りであっても、不必要なと実態が認められるときに調整保留を買い上げますと、国内から供給を奪いまして、値段を上げて目的を達しない。また工場で正常な在庫を持っておればメーカーに当然負担せしめていいものを、国が利子補給その他の措置を講じまして、あるいは全購連等の保管機関の負担を加えまして行わしめるのは、農業政策上よろしくないという意味で、その観点から最高限度の調整保留をとるようにいたしておるのであります。さらに第三点といたしましては、調整保留肥料の目的からいたしまして、これは生産と需要とが時期が違いますので、不需要期に買い上げて需要期に放出するという時期的制限の、その時期に生じた生産、在庫のことを見合って、需給計画に基いて、その範囲内で買い上げするのが法の精神にも合い、需給計画の精神にも合うとして行なっておるために、ここ三年ばかりを通じまして計画より下回っておるのでございます。特に今年度消費の増加が非常に目立ちまして、昨年の豊作のあとを受けたせいだと思いますが、その関係からしまして、買い上げ量は以上の考え方からすると五万二千トンぐらいに結果がなったということでございます。
  44. 芳賀貢

    芳賀委員 これは幸いに生産が生産計画より相当ふえておることでこういう現象も出たのかもしらぬが、やはり不需要期の生産分を一定数量を確保しておくことによって、需要期に計画以上の需要がある場合においてはこれで調整するということになるわけなんですが、でき得べくんば需給計画等の中における調整保留というものは、これはやはり適切な運用が行われないと、一応数字だけきめておいても、あとは適当にやればいいんだということでは何も権威もなくなるし、もう一つは、大蔵当局との財政上の事由によって、できるだけ調整保留とかこの買付を避けるという、そういう圧力のもとに調整保留分が少くなるということは、これはやはり排除しなければならぬと思いますが、今後やはりこの点に対しては、相当具体的な根拠の上に立った調整保留数量というものを、過去二カ年なら二カ年の経緯にかんがみて、これを確保するようにすべきであるというふうに考えるわけですが、その点はどう思っていますか。
  45. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 今の生産能力の状況と、若干消費がふえるとしましても、その観点からいたしますと、在庫は工場中心に十二万五千トンくらいはあるのが正常在庫だと思っておりますが、それを前提にいたしまして、先ほど申しました三点を制度の精神に合致するものとして、またそう解釈して運用しなければ、かえって肥料価格上昇とか、供給のかき乱しとか、需要期にかえって肥料が足りぬ、こういうようなことを生ずるので、第一点の御意見については、先生のおっしゃる通りだと思います。第二点につきましては、予算面でごらん下さいますとわかりますように、大蔵省の圧迫で予算額を少くするために調整保留肥料、特に買い上げ肥料を少くしたことはかつてありません。それをこえて、肥料審議会の需給計画に基いて、また先ほど申しましたことによりましてやりました場合は、予算が足りなければ補正予算とか次年度予算、これは大体次年度の予算で計上していますから、そういうことはないように私は思っております。
  46. 芳賀貢

    芳賀委員 次に、先ほど局長お話によると、尿素の価格を大幅に引き下げたいという御意見でありますが、肥料需給安定法によっても、今日においては硫安を対象にしての価格の規制をやっておるわけですが、これはやはりア系肥料というようなことになれば、当然尿素も正式に法律の根拠に基いた価格の規制を行うということが妥当だと思うのです。今まで尿素の価格算定等の問題に対しても、いろいろな事情があって、今までは実現が困難でありましたけれども、もうすでにこの次の肥料年度等においては、当然尿素に対する原価の算定を正確に行なって、そうして科学的な根拠の上に基いたところの尿素の価格の規制を行うべきであるというふうに考えるのです。当然七月の審議会にこの問題は出てくると思うので、当局においてはどういう考えで今おられるか、その点はどうですか。
  47. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 必要があれば、法に基いて可能な制度になっておりますからやるべきだと思いますが、指定をすることにより弊害が生ずる場合と、硫安価格の決定上かえって不利な場合、また同じように取り扱って硫安と尿素を同じように考えて実行が可能な場合は、慎重に検討したいと思います。
  48. 芳賀貢

    芳賀委員 この点は政令で指定して直ちに法律の適用はしないとしても、硫安価格をきめる場合において、硫安と尿素の相関性というものは、これは切り離すことができないのです。ですから、政令による指定肥料としての取扱いをしないとしても、今年度硫安価格決定に当っては、あわせて尿素のコスト計算を行なってそれを審議会等に提出すべきであるというふうにわれわれは考えておるので、その点はどうかということを尋ねておるわけです。
  49. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 すでに制定されておりましたならば、次の審議会にそう出すことと思いますが、指定すべきやいなやということを慎重に検討して、必要ならばやるべきだという見地に立っておりますから、目下そういうことを検討中でありまして、やるということを思っておりません。
  50. 芳賀貢

    芳賀委員 その点をあなたは勘違いしているのです。政令で尿素を指定しないとしても、硫安価格決定をやる場合においては、硫安と尿素の一つの企業内における相関性というものは不可分なんだから、当然あわせて尿素の原価計算をやって、それを硫安のコスト計算の資料として出すべきなんです。それを今まではいろいろな事情があって、それが出せなかった、そのことをわれわれは認めてきたのですが、今後の場合においては、もう提示すべき時期に到達しておるので、そういう用意をしておるかどうかという点をもあわせて聞いておるわけです。
  51. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 最高機関の国会の御意思を尊重しまして、お説の通り事務当局としては事実上の作業をいたしておりますが、審議会にそれを硫安と同列に提出してやるかどうかについては、技術的問題、精粗の度合いも、そういうふうに事務的にもでき上っているか、また委員の御意見がどうかということとにらみ合せてのことだと思います。
  52. 中村時雄

    中村(時)委員 最後に一点だけ関連してお尋ねしておきます。先ほどトン当りどのくらい値下げができるか、こういうことをお聞きしましたら、発表するのは差し控えたいということであった。そこで一点だけあなたに注意をしておきたい。たとえばこの前の選挙の際に河野農林大臣が、百円値下げということを発表して政争の具に供したことがある、そういうことをよく注意されて、ちょうど時たまたま参議院の選挙に入るわけです。その参議院の選挙のさ中において河野さんに発表させるために自分たちがここで発表しないんだということだけはないように、それははっきりしておきたいと思う。そういうお含みをもって御答弁願いたい。
  53. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 前段のことは中村先生の認識の問題でございますので、事実がその通りであるかどうかは別問題だと思います。後段のことはよく拝聴いたしました。御心配ないように努めたいと思います。
  54. 小川豊明

    小川(豊)委員 私は提案されている法案に関する点を一つお聞きしたいと思う。一作々日払が質問したその答弁ですが、化成も配合もほとんど肥効には変りはない、価格の面ではかなり割高になっている。こういう答弁であったわけです。それならばそういうものがなぜ化成なり配合なりが浸透したのか、こういう点を伺いたいのと、農家肥料選別の知識は近年著しく向上してきているわけです。また今言ったような判断が農林当局によって出されていたとするならば、その前に、改良普及員というものが農村に対して非常に指導しているわけです。こういう改良普及員に対して、どういうこれに対する指導をあなた方では与えているか、この点をお聞きしたい。
  55. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 第一点は科学の進歩に伴います製法の差で、製法上の合理化、新規方法ができた場合に、それを作った人、その製法を売り出そうという人がそれを保持したいという気持が第一だと思います。第二は、商業政策から出ていることもあると思います。第三点はやはり商業政策の一環ですが、使う者とすれば消費注意を書いたり、価格を差をつけたりしようとする善意をも含めた商業政策といいますか、そういうもののせいだと思うのです。第二点の改良普及員は肥料検査所と連絡をとりまして施肥講習会等において常時訓練をいたしておるわけであります。
  56. 小川豊明

    小川(豊)委員 前の答弁によりますと、化成なり配合なりというものはほとんど同じであるし、単肥に比しても高いという答弁であったと思う。従ってそういうものはそう普及しなくてもいい、こういうふうにも解釈できるのです。そういうふうに化成等が配合と何ら変わらないという状態にもかかわらず、一方においてはこういうメーカーに対して燐鉱石なりカリなりをあなたの方では大量に配給しているわけですね。単肥で使った方がいいと言っていながら、そのメーカーに対してはカリなり燐鉱石なりを非常に大量に与える。そういう点から見ると、これは肥料行政の矛盾じゃないかというようにも考えられるが、これはどういうことになるのですか。
  57. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 化成配合といいましても、単肥にした場合化成複合肥料は要らないんだ、少くなる方がいいんだというふうにも必ずしも思っておりません。むしろ製品ができて価格が安くなれば、肥料検査に通るようなものはいいんだと思います。無用に取締法の関係から、また従来の沿革から区別をしまして、その制度が販売業者を不当に利し——購入者の方は多数の商社の選別眼の割に少い消費者でありますから、それが悪用されないようにしたいというのが取締法の趣旨であります。  その次は、燐鉱石を使用いたしますにつきましては、第一点と同様の趣旨をあわせて考えますとともに、単肥に必要な燐鉱石は必ずこれを優先確保するという建前からいたしまして、輸入量の決定及びその配分については、八〇%は必ず単肥の方へ回す。その余をいい複合肥料なり配合化学合成肥料の方に回すようにということで確保しております。
  58. 小川豊明

    小川(豊)委員 単肥に燐鉱石なりその他の八〇%を使うべきだという条件がついていると答弁されている。ところが実際にはその通りに使われていますか。その数字を示してもらいたい。化成と配合を作っている、その化成肥料を作っている工場が五百ある、それから配合肥料を作っている工場が五千五百、合せて約六千ですね。こういうものに、八割を単肥にして二割でこれを維持しろといってもできるはずはないじゃないですか。化成メーカーによけい回しているではないですか。違いますか。
  59. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 その数は銘柄の数でございまして、割合には間違いありません。目下のところは市販は認めておりません。また同一企業体が単肥と合成肥料を両方作っているところがあるのです。
  60. 小川豊明

    小川(豊)委員 それではお尋ねしますが、今のこれは業者の製造している数ですね。単肥に対して出た数量はあなたはどういうように見ておるか。あなたの方は数字を持っておられると思うが、その数字をお聞かせ願いたい。
  61. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 原料燐鉱石については間違いないと思います。その製品量については課長から申し上げます。
  62. 桧垣徳太郎

    桧垣説明員 単肥というのは燐酸肥料のことだと思ってお答え申し上げます。燐酸肥料全体については、昨三十一年四月末を区切りといたしまして、過去の年間の出荷量を見ますと、P2O5を過燐酸に換算いたしまして二百二万トンでありますが、そのうち化成肥料として四十五万トン出荷がなされておるのであります。従いましてただいま約二割と言いました数字は、出荷の方でも大体において合致しておるのであります。
  63. 小川豊明

    小川(豊)委員 もう一点表示のことで、含有成分を八割何とかというような形で表示することになっておるのですが、そのほかに銘柄なり商標なりを容器に入れさせる、こういうふうに聞いておる。それは間違いないのですか。
  64. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 入れても差しつかえないということであります。
  65. 小川豊明

    小川(豊)委員 そうすると一方において化成とか配合とかいう名前は廃止して、複合肥料にしておる。名称はそういうふうで、銘柄なり商標なりをそういうふうに使用させていくとすると、非常に複雑になってきてしまって、取締り行政上からいったならばかえって煩瑣になると思うのですが、こういう点はどういうことになりますか。
  66. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 銘柄は、必ず書くべき事項と書いても差しつかえない事項がありまして、必ず書くべき事項のために煩瑣になるときは、書いても差しつかえないことは省略するだろうと思います。またそうすべきであろうと思います。取締法上は書いても差しつかえない事項は取締りはいたしません。
  67. 小川豊明

    小川(豊)委員 ですから書いても差しつかえないものというものはあなたの方は書かない方がいいのでしょう。逆にいうなら……。ところが業者はおそらく今までの経過から見て入れていくだろうと思います。書いても差しつかえない、取締りの対象にならないというけれども、選別その他からいっても非常に複雑多岐になってくるのじゃないか、この点が一点考えられる。こういう点はもっと考えるべきではないか。  もう一つは過燐酸に関連するのですが、硫酸の事情というものは一体どういうふうになっておりますか。硫酸は最近他産業の需要が非常にふえてきてそっちに硫酸が振り向けられて、肥料メーカーの入手が非常に困難になってきた。従って硫酸の価格もそういう影響でかなり高くなってきておるということを聞いておるわけですけれども、そういう事情があれば、硫酸メーカーに対して何らか処置すべきであると思うが、その点はどういうふうに考えておられますか。
  68. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 複合肥料としては、その数は従前の制度では二種類になっておったと思うのですが、その後数が少くなるような措置法律を作って案を提示しておるわけであります。  第二点の硫酸は、肥料工業、特に御指摘肥料工業では最も重点のわけでございます。日本の産業の上において非常に重要な基礎資材であり、従って需給もだんだんと楽ではない状況にありますけれども、御指摘のような肥料生産には全然差しつかえないように通産省とともに手配を行なって、業界もそれに応じまして増設設備をし、生産確保を行なっております。
  69. 小川豊明

    小川(豊)委員 過燐酸メーカーでは硫酸の製造工場を持っておる会社と持たないでよそから買い入れなければならない会社とあるのじゃないかと思いますが、そういうことはありませんか。もしありとすればその比率はどのくらいですか。
  70. 桧垣徳太郎

    桧垣説明員 過燐酸の製造メーカーで硫酸製造設備を持っておりません工場は全国で一工場あるだけであります。工場数は、私の記憶では確か二十七工場でありますので、その一工場につきましての硫酸の供給については、多少従来よりは努力を要する点があると思いますけれども、不可能な事情にあるとは考えておらないのでございます。
  71. 小川豊明

    小川(豊)委員 製造所を持っておるということは、自分のところの燐酸の生産に間に合うほどのものを持っているということですか。持ってはいるけれども、他から買い入れなければならない工場等もあるのではないか。そうすると、今の硫酸事情というものはかなり過燐酸の生産価格に影響しておるのではないかと考えるが、そういう心配はありませんか。
  72. 桧垣徳太郎

    桧垣説明員 過燐酸メーカーは硫酸については自給をするものが大部分であります。硫酸の現在の生産能力は全国で六百六十万トン程度でありますが、そのうち肥料メーカーの持っておりますものは四百五十万トン程度、全体の七五%程度が肥料メーカーの生産能力に属するものでございます。その他のものが百五十万トン程度の硫酸能力を持っておるのでありまして、買酸をいたしておりますのは過燐酸メーカー全体で約十三万程度という数量でございますので、現在の硫酸事情から申しますれば、肥料の生産に支障があるとは毛頭考えておりません。  なお、これはメーカーによって事情は異なりますが、硫酸の需要が強くなって参ったことは、一面から申せば硫酸の操業度が上ったということでございまして、そういう面からは硫酸のコスト低減というような現象があるということもあわせてお答え申し上げます。
  73. 小川豊明

    小川(豊)委員 最後にいま一点。先ほど芳賀委員中村委員硫安のコストの問題でいろいろ質疑をされたわけですけれども、この硫安のコストについては、あなた方の発表された今の調査は通産省の調査ですか、それとも農林省独自の調査なのですか、その点をお聞きしたいわけです。
  74. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 法律に基きまして両省が共同でやったのであります。
  75. 小川豊明

    小川(豊)委員 こういうことを聞いておきたいのですが、これはあなたの方ではどういう見解を持っておられるかお聞かせ願いたい。硫安のコストの中で最も大きな要素を持っているのは電力なんです。そういう電力の場合に、一貫作業をする大きな工場等で主流製品に対する電力がよけい使われている。従って硫安等に対しては現実には安い電力を使って硫安が生産されている。しかしながら価格を構成する場合にはそうでなくて、やはり広範な電力料金を基礎にして作っていくという話をよく聞かされているが、そういう計算というものはあなたの方では硫安のコストに区別して計算されておるのかどうなのか、この点をお尋ねいたします。
  76. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 硫安工業に使いまする電力は、従来から企業の性質そのものからも安い電力を使うことになっておりまして、原価計算に当りましては特にその点に留意をいたしまして、お話のようなことはないようにいたしております。
  77. 村松久義

    村松委員長 神田君。簡単に願います。
  78. 神田大作

    ○神田(大)委員 ゆっくりやりたいと思いますから、そのつもりで一つ聞いてもらいたい。  食糧の取締り等につきましては非常に厳重な検査機関と、それからそれに関連するたくさんの予算をとって、一俵の米たりといえどもくず米が入っていると不合格にして、過酷なほどの検査をやっておる。農産物に対する検査規定はそういうふうに厳重なものである。ところがあべこべに肥料の問題になると、予算の面においても非常に貧弱だし、また取締りの面においても非常にゆるやかだと思う。こういう点はまことにどうも遺憾だと思うのですが、こういうことに対しましてあなたたちはどうお考えになるか、お尋ねいたします。
  79. 大石武一

    大石(武)政府委員 お答えいたします。ごもっともな御意見でございます。私どももその通りいたさなければならぬと思いまして、相当の検査員を各県に配置いたしまして一生懸命努力いたしておりますが、御説の御意見を最も生かすように今後とも十分に努力いたす所存でございます。
  80. 神田大作

    ○神田(大)委員 政務次官は安受け合いしていけません。あなたは、われわれの質問に対してすぐにごもっともだということを言って、委員会のたびに言いますけれども、ごもっともだというお考えが予算の面において、実際の面において生かされなければ、あなたの答弁はだれも信用しなくなる。どうも安受け合いのきらいがあるから、そういう答弁はわれわれは形式的に聞くというようなことになって、お互いに権威にかかわることであるから、あなたは答弁した以上はそれを実行するという決意を持ってもらいたい。  それで、現在の肥料の生産が非常に増大いたしまして、昭和二十五年ごろから比較いたしますれば、大体倍以上の生産力が出ているにもかかわらず、この検査機構というものはほとんど現状維持である。あるいは減っているかもしれないが、そういうことで果して完全な肥料の取締りができるかどうか、その点をお伺い申し上げます。
  81. 大石武一

    大石(武)政府委員 どうもおしかりいただいたのでございますが、私は事実自分の気持を率直に申し上げるのでございます。皆さんも御承知のように、農政に対しては何らの経験もなかった者が政務次官になりましてやっと半年でございます。聞くこと見ることほとんどがみな感心することでございますので、全くその通りそう思うのでございまして、微力ではございますが、一生懸命努力いたす所存でございます。  なお、現在の肥料の検査員につきましては、中央で約百名、九十六名でございます。地方にも百四十九名配置いたしまして、予算もこの数年来倍額、今五千万円近くの予算を計上されている現状でございます。今後ともこれは誠意をもって努力いたす所存でございます。
  82. 伊瀬幸太郎

    ○伊瀬委員 神田君の質問に対して政務次官は、肥料会社に対して厳重な監督をするというような御答弁であったが、また農民が非常な被害を受けているのだが、それに対して政務次官は一体どういうふうなお考えを持っておられるか。私のところへつい二、三日前手紙が来ているのによると、名古屋の矢印という肥料会社が奈良県に肥料を売ったのです。ところが、僕の方の吉岡という肥料店なんですが、それがたまたま奈良県の北葛城郡地方の蔬菜に肥料を置いたところが、フキとかイチゴとか、はなはだしいのは麦、エンドウというようなものが全部発芽しなかったということで、農民が今非常に騒いでいるという。そういう手紙が私のところに来ているのですが、一体こういうような御調査はすでに済んでいるかどうか、もしそういう被害が認められるというならば、その農民の損失補償をどういうふうに考えられているか、これを一つ政務次官から御答弁を願いたい。
  83. 大石武一

    大石(武)政府委員 それはおそらく東亜合成という会社のことだろうと思いますが、これはきのう御質問がございまして、経済局長より詳しくその補償の方法まで御説明申し上げておるわけでございまして、十分に補償いたして、会社にも補償させておるのでございます。
  84. 伊瀬幸太郎

    ○伊瀬委員 きのう御説明せられたようですが、私聞いていないので、もう一ぺん詳しく政務次官からお答えをいただきたい。
  85. 大石武一

    大石(武)政府委員 それでは局長より正確にお答えさせたいと思います。
  86. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 御趣旨を尊重いたしまして簡明にお答え申し上げます。  被害状況は昨年十二月ごろ埼玉県にまず発生いたしまして、関係県は奈良、滋賀、三重、愛知等の諸県からあることが報告されまして、静岡にも至っております。岐阜にも至っておることが判明いたしました。作物被害は麦、菜種を中心としておりまして、被害があったことは事実であります。その使用した肥料は矢印化成肥料赤一号と認められます。とりました措置は、会社が率先して、被害があったことは事実であるから、十分に農家と話し合いまして現金賠償をするというのでその措置を認めまして、農家からは農林省に向って県を通じても不満はございませんでした。農林省はこれに対しまして、肥料検査所で検査するのみならず、特に検査所は分析でございますから、さらに進めて、名古屋大学、愛知農業試験場、農林省東海農業試験場の合同の分析試験検査をいたしましたが、登録規格に応じたものは使っておるようでございましたが、その製法が従来の製法とは違ったものであった。特にその肥料が栽培試験等で被害を生じたことは試験的に明確でありませんでしたので、なお引き続き研究中でございます。
  87. 伊瀬幸太郎

    ○伊瀬委員 損害を賠償するということですが、実際農民にはそういう賠償が渡っていない。ことに肥料の取扱い業者農民代表者とこそこそ話し合いをやって、代表者の人には大体少し金をやって、そうして何も言わない農民は泣き寝入りさせられているという状態である。安田局長は、奈良県においてのそういう被害反別とか解決状況というものをはっきり御調査なさっておりますか。
  88. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 損害額の算定及び話し合いの妥結が済んでおらないところがごく一部分あります。賠償することは既定のことでありまして、その補償金額が決定次第すぐ払うことになっております。そのことにつきましては、農林省は最も重大な関心を持って、それを一そう促進しつつあります。
  89. 伊瀬幸太郎

    ○伊瀬委員 賠償に際して農林省は何か監督官でも県に派遣されて、親しく農民との話し合いに同席されるというような御意向がありますか。
  90. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 まず第一に、県庁から報告があったほど、県庁が重大な関心を持っておった問題でございますので、農林省が一般的にその方針を立てて、以後県にやらせておるわけでありますが、必要に応じまして、出ろということでありましたらいつでも間に立って出て解決するつもりでございます。
  91. 神田大作

    ○神田(大)委員 先ほどの農林政務次官の答弁は非常に正直でいいと思いますが、しかし政務次官を勉強させるために政務次官にしたのではないので、やはり農林政策を強力に遂行してもらうためにあなたはそこにすわっているのだから、ただいろいろな話を聞いてごもっともごもっともと感心してばかりいたのでは、これは農林政策の強力な遂行にはならぬと思う。そういう点は、答弁した以上はそれをあなたの政治力でもって実行する、そういうことで一つやってもらいたい、こう私は強く要望しておきます。  それで一つ肥料課長に聞きたいのですが、この肥料検査の様式等から考えましても、米の検査とか麦の検査に対しては票箋を作らせて、その票箋というのは横何寸、縦何寸で、どういう紙質を使い、しかも張り紙はとれないようにちゃんとするというように厳重な規格でやっております。しかもその裏表に判を押し、俵にまで青いインキで打つのである。ところが肥料の検査はただ紙っぴらに成分量を書いただけで、輸送途中でなくしたり、わからなくなってしまったりするような非常に不的確な間違いやすい不注意な検査様式になっている。これはわれわれとしては、農家が一目見てこの肥料成分がわかり、肥効がわかり、その使い方が明瞭にわかるような、そういう表示の仕方にして、しかもそれが輸送中やその他の事故で落ちないように、そういうようなことにも気を配らなければならないと思いますが、そういう点については気を配っていないと思います。この点について今後取締り上どう考えられるか、お尋ねいたします。
  92. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 神田先生のおっしゃいます通り、この法案を御可決下さいましたならば、すみやかに御趣旨を尊重いたしまして最大限度の努力をいたします。
  93. 神田大作

    ○神田(大)委員 それから予算の面ですが、肥料検査所の予算はなるほど四千六百六十九万円になっております。しかし大部分はベース・アップによる人件費の増高なんです。事業費は昭和二十五年が七百七十九万円で昭和三十年は七百五十四万円、昭和三十年はかえって事業費が減っておる。昭和三十一年度になってようやく七百九十八万円ということでわずかにふえておる。これでは昭和二十五年から五年間も六年間もほとんど変っていないことになる。しかも肥料の取扱い生産数量とか、あるいはその他の肥料事情というものは相当増大しておると思いますが、こういうようなことではとても肥料の完全な取締りはできないと思いますが、その点はどう考えますか。
  94. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 お話のような点がここ数年来の財成編成方針からあったかと思いますが、三十一年度は吉川前政務次官の御尽力により、また引き続いて大石現政務次官の御尽力によりまして幸い増額され、特に検査する能力は、検査所創設以来相当の年限を経ましたので、能率増進には相当期待すべきものがございます。特に施設費を増額いたしますとその効果も多大であるという現場の意見もございましたので、増額は約三倍に近くいたしたのでございますが、来年度以降は御趣旨によりましてもっと徹底するように努力をしたいと考えております。
  95. 神田大作

    ○神田(大)委員 この肥料の取締りにひっかかる違反事例が跡を断たずひんぱんにあり、特に地方に多いので、こういうことでは農家は安心して肥料を使うことができないのです。さきに局長が言われたように、この予算面においても人的の問題においても、あるいは設備等においても、もっと充実した、消費者が安心して肥料を使い得るような、そういう信頼感の持てる方法を強化してもらいたいと私は考えます。  時間がありませんからこの程度にしたいと思いますが、最後にいま一つお尋ねしておきます。先ほど中村委員あるいは芳賀委員から言われたように、いわゆる肥料価格の問題においては、終戦後急速に設備の改善をし、増大したが、肥料価格は相変らず下らない。しかも政治的に利用して六十円も五十円も実は下げなければならぬものを、二円か五円下げて、しかも肥料は下げたというような政治的術策を使って農民をごまかしているような態度に対しましては、私たちはどうしても許せないものがあるが、時間がありませんからあとの機会においてそういう肥料行政の問題についてまた御質問申し上げたいと思います。以上で終ります。
  96. 村松久義

    村松委員長 ほかに質疑はございませんか。——なければ質疑はこれにて終局いたしました。  討論に入ります。討論ございませんか。     〔「なし」と呼ぶ者あり〕
  97. 村松久義

    村松委員長 なければ直ちに採決いたします。本案に対して賛成の諸君の起立を求めます。     〔総員起立〕
  98. 村松久義

    村松委員長 起立総員。よって本案は原案の通り可決すべきものと決しました。  なお委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任を願いたいと存じます。     〔「異一議なし」と呼ぶ者あり〕
  99. 村松久義

    村松委員長 御異議なしと認めさように決定いたします。暫次休憩いたします。    午後一時二分休憩      ————◇—————    午後四時三十九分開議
  100. 村松久義

    村松委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際お諮りいたします。第二十三国会より継続審査になっております芳賀貢君外十三名提出農産物価格安定法の一部を改正する法律案は、発議者の全部から撤回いたしたい旨の請求があります。これを許可するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  101. 村松久義

    村松委員長 御異議なしと認めます。よって本案は撤回するに決しました。
  102. 村松久義

    村松委員長 さらにお諮りいたします。今会期に付託されました請願の審査を慎重ならしめるため、請願審査小委員会を設置いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  103. 村松久義

    村松委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたします。  なお小委員の員数、小委員及び小委員長の選任につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  104. 村松久義

    村松委員長 御異議なしと認め、小委員及び小委員長委員長において指名の上、追って公報をもってお知らせいたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時四十一分散会      ————◇—————