○原(捨)
委員 私は第四班を代表いたしまして、
調査の結果を御
報告いたします。
本班に参加した
委員は伊瀬
委員と私の二人で、五月十日から十二日までの三日間にわたり、岐阜県、京都府及び奈良
県下の
農作物の凍
霜害について、
現地を
調査して参ったのであります。
最初は岐阜県を
調査いたしたのでありますが、御存じのように岐阜県は
養蚕の非常に盛んな県であって、
農家のこの
養蚕への期待は大きく、
現金収入は年間これに依存しているといわれているほどであります。しかるに四月三十日の凍
霜害は、桑樹に対し壊滅的打撃を与え、
回復の
見込みも立たない
被害の
状態を呈し、まことに
農家の悲嘆は深刻そのもので、想像以上のものであったのであります。
私たちはまず県庁において、
県当局より県内における
被害の
実情について御
説明を承わったのであります。その概要を申し上げますと、総
被害額は十一億八千九百余万円で、そのうち桑の
被害が最も多く、総
被害額の五六%に当る六億六千七百余万円で、これは
栽培面積六千四百余
町歩のうち五千六百余
町歩に及び、実に八八%の
被害でありまして、またこのうちの三分の一は壊滅で、
回復不能といわれているものであります。その他
被害は、
麦類に二億円、
果樹に一億二千余万円、
バレイショに六千八百余万円、茶に六千二百余万円、ほかに菜種、
タバコ、
蔬菜類も大きな
被害があったのであります。
時間の
関係上と、午後三時より二十五里以上にわたる
現地調査日程のため、直ちに
現地に向ったのであります。あいにく、正午近くより降り出した雨は本降りとなりましたが、
予定の
調査を実行することとして関市へと進んだのであります。
この道沿いの
桑園は、長良川に沿っている
関係上、
被害を免れている地点が随所に見られ、河川よりの水蒸気が
霜害の軽減に
効果があったことがよくわかったのであります。関市から美濃加茂市、可児市、御嵩を経て恵那市に進むに従って
被害ははなはだしく、青い麦畑の中に茶褐色に枯れた
桑園が点々と散在しているのがよく見られ、
回復の
見込みも立たず、手の施しようもない
程度の
被害で、
県当局の
指導もあって、ほとんどが切り捨てられていたのであります。いまだ切り捨てられない桑樹を何とか手入れにより、一枚の葉をも得ようと懸命に
努力をしている
農家の方々の悲壮な姿が見られたのも、
養蚕に依存することのいかに大きいかを物語っているといえるのであります。
調査の途中部落々々で
農家の苦境をお聞きいたしたのでありますが、
昭和二十八年からの凍
霜害のため、そのたびごとに受ける
融資の返済がかさみ、もはや
農家収入からしてはその限度に達しているとのことであります。
翌十一日京都府に参ったのであります。まず府庁において、知事、府
会議長その他、府御当局より総括的な
被害状況を承わり、その後京都府管内における
被害地区の市
町村長、
関係団体代表の多数の方々より、種々
被害の
実情について御
説明をいただいたのであります。総合して申しますれば、茶の
被害が最も多く深刻で、
被害地区も山城
地方に集中的にあったようであります。総
被害額二億八千三百余万円のうち約一億九千七百万円と、七割以上が茶の
被害でありまして、
栽培面積に見ますると、一万一千五百余
町歩のうち九千二百余
町歩の
被害で、八割に当る大きいものであります。その次には
桑園の
被害で、約四千万円に上り、丹波
地方が
中心のようであります。
果樹、
タバコも
相当の
被害をこうむっていたのであります。
現地の
調査には知事、府会副議長の御
案内をいただきまして、京都市から城陽、田原、宇治田原、湯船を経て笠置と、有名な銘茶の産地である山城
地方を一巡いたしたのであります。この
地方の茶は、
静岡県等の茶の産地と、その
生産、
栽培方法において非常に趣きを異にしているのでありまして、高級茶と申しますか、玉露、碾茶を主として生一産している所であって、そのため、茶樹は丁寧にこも、むしろにておおわれ、大切に手入れをされているのであります。これらの業者は、一番茶で茶の収入の八割を
生産し、二番茶、三番茶で二割の収入を得る
生産状態であります。今年のこの凍
霜害は例年より七日から十日ほどもおそく、また
零下六度の
低温が長時間続いたために
凍害を招き、このおおいのある茶園でさえも
防除の
方法もなく、ほとんどが
被害を受けたのであります。ちょうど新芽が出初めたときで、それを徹底的にたたかれ、従って今年は、今後手当を十分尽したといえども、一番茶を失った現在、八割近い
損害は免れないのであります。おおいがあってさえこの
状態でありますので、おおいのない多くの茶園においては全く悲惨で、いまだ見るからに真冬の姿と同様、若芽らしきものが見当らないばかりか、
被害後十日を経た今日でさえ、本年は若芽を出さないのではないかとさえ思われるほどの打撃を受けているのであります。この山城
地方の
農家の
現金収入のほとんどが茶に依存し、専業者も多数あるわけで、今年の
現金収入の八割近くを失った
農家としては、
補助金によるか、無
利子の資金による救済に望みをかけているようであります。
最後の
調査県は奈良県でありまして、やはり茶園の
被害について
調査をいたしたのであります。非常に時間の制約を受けております
関係上、前に述べましたように山城
地方の
調査を十二日の午後三時まで行い、それから奈良県の
調査に入ったのであります。高尾から奈良県に入り、月ヶ瀬、柳生、福住を経て奈良市と、
現地を見せていただきましたが、奈良県の茶園はおおいのない茶園が多く、集団的に
栽培されているのが目立って見られたのであります。この
地方も山城
地方とほとんど同様の
被害で、壊滅の
地区が多く、県よりの
説明によりますれば、地表温度が
零下六度まで下ったとのことにて、水蒸気も完全に凍り、これが降下して
凍害を起し、そのために河川沿いの
被害がはなはだしく発生しているとのことであります。
県下の総
被害額は、一億二千二百万円となっており、そのうち茶の
被害が最も多く、
栽培面積一千余
町歩の六〇%に当る六百余
町歩に
損害を受け、その
金額は八千二百万円余に上り、総
被害額の七割近く占めるもので、また
凍害もはなはだしく、
バレイショにおいて五十三万貫余に及び、一千六百万円となり、カキ、菜種、
桑等も
相当大きな
被害を出していたのであります。
かくのごとく、三日間の
調査日程を一応終了いたした次第であります。
以上簡単でありますが、凍
霜害について
現地調査。概要を申し上げましたが、その
対策として最も
要望していることは、
樹勢回復のための速効性肥料と、病虫害
予防のための農薬の緊急手配と、これに要する費用の補助であり、これは早急に
措置する必要があると考えられたのであります。
共済金の
早期支払い、
営農資金の
低利かつ
長期の
貸付、及び前回の
災害による償還金の延納
措置が最も強い
要望でありまして、その他は各班とほぼ同様であります。
今年の凍
霜害の特徴は、
低温が長く続いたために
凍害を起し、速効肥料を吸収する力を失い、樹勢の
回復が非常におくれること、及び例年より七日から十日間ほどもおそい時期にあったため、
樹勢回復による事業の挽回が期せられないことがあげられるのであります。
各地とも
農民各位が
災害防止に非常な
努力を払い、
被害を最小限度に食いとめるためにあらゆる方途を講じられたにもかかわらず、かくも甚大な
被害を招いたことは衷心より御同情にたえない次第であります。
以上御
報告いたします。(拍手)