○渡部(伍)
政府委員 だいぶ、何といいますか私の方の宣伝というか説明が足りないので誤解があるようですが、昨年の予算に二千万円を計上したときには、あるいはお話のようなことがあったのかも知れません。しかし私が昨年十月に
畜産局長を拝命してからは、もっぱら事務的に技術的に畜産の振興をはかるのにはどうしたらいいかということ、すなわち御
承知のように畜産の
団体は自然発生的に、何人か寄れば畜産協同組合である、あるいは任意組合である、あるいは登録協会である、あるいは綿羊協会である、種々雑多あるのであります。その中で協同組合法によるのが約三千あると思います。その中で非出資のものが半分、出資が千四百くらいだったと思いますが、いずれも大部分はいわゆる弱体組合になっているのであります。それからウサギがいい、綿羊がいいということになれば、みんな寄り合って自然発生的に組合ができておるのでありまして、流行を追うというか、こういう傾向があります。また養鶏組合のようなものはこれは養鶏家が寄りまして、養鶏の密度が低いところに広く協同組合を作ってうまくいかない、こういうのがございます。また一方からいいますと共済組合の診療事業等が非常に発達している県もあります。種々雑多になっておるわけであります。畜産会ができましたのは、御
承知のように
日本の畜産が戦後十年ですっかり様相を変えまして、たとえば和牛は百五十万頭から二百五十万頭を突破し、乳牛は十数万頭が四十万頭を突破する、綿羊が数万頭から百万頭を突破する、それが戦後十年間に行われたわけであります。それに対する指導というものは、遺憾ながら戦前の旧態依然たる指導で、わずかに、家畜がふえてきたので自給
飼料の部面も増さなければいかぬというので、草地改良が出てきた。乳牛の指導にしましても、ホルスタインならホルスタインのいい品種は種畜牧場で成功して配付している。しかしそのできた商品をどうするかというようなことについては、これは率直に申し上げまして今まで農林省にそれに対する何らの考え方はなく、行き当りばったりであったことは、この前どなたか指摘されましたが認めざるを得ない。肉についてもそうであります。肉などについても、極端にいえば戦争前十万トン余りの肉が屠殺されておった屠場をそのままで、二十万トンの肉を生産しておるわけであります。それに対して需要はもっとあるのでありますから、肉の消費価格は下らないで、いたずらに生牛価格が下っている。そういうふうに一連の畜産業というものは、従来の農家経営を拡大する、たとえば役牛を飼い、あるいは自給肥料をとる、そういう面だけの行政は
相当浸透しておったのでありますが、これを商品化する流通に手を触れなければいかぬといいながら触れていないわけであります。それからまた技術の面でいいましても、乳が売れるから乳牛をうんと入れるというので、私どもの方で集約酪農地を方々回っておりますけれども、いい牛を入れたものが数年たつうちにその能力が落ちてしまうとか、あるいは優良な牛が、もっとしぼればいいのにしぼり足りないで乳房炎が起きている、いろいろな問題があるわけであります。これは特殊の地域を一部々々とらえてみますと非常に振興した、うまくいっている地域もあるのでありますが、全般的に見ますれば十年間にそういうようになったのでありますから、
政府の指導もあるいは
団体の指導も、農家の受け入れ方も十分でないのであります。そこで中央畜産会なり府県畜産会を作る際には、まず初めに畜産会を作って、畜産
団体の利益
代表というような考えもあったそうでありますけれども、私が
畜産局長になった当時では、要するにいいものを作る、家畜の個体の能力を全部発揮することから手をつけていこうじゃないか、しかる上農家の畜産に対する関心を高める基盤ができてから、さらに経済利益を主張し、その他の活動に入っていったらいいじゃないか、こういうふうになっておったのであります。その
趣旨に従いまして中央畜産会のやり方は、現在あります
団体をメンバーとする社団法人にいたしまして、畜産会ができたからあの
団体はもう要らない、こういうふうなことは言わないのであります。畜産会がだんだん働きを増しまして、畜産会の働きで存立の必要がなくなれば自然に解散されることはけっこうであるけれども、畜産会ができたがゆえに
団体をやめろということは言っておりません。さらに畜産会の
仕事はそういう
団体の
仕事を
一つの場に出して、衆知をしぼって技術指導を徹底していこう、こういう考え方であります。従いまして経営診断、技術指導をやりますのにも共済組合でやりますか、協同組合でやりますか、場合によれば乳
業者の技術者を嘱託いたしまして、先ほど申し上げました指定農家の技術の指導をやる。来年度に掲げております三千三百四十七万円の費用は、たしか一カ月に四日、一農家に参る日当の費用が大部分であると思います。あとは印刷費とかあるいは講習会費でありますが、そういう費用を計上しているだけであります。今までの畜産諸
団体が行なっておる事業を
お互いに情報の交換をし
一つの場において畜産業を進展せしめるような第一歩の
仕事を技術指導の面から取り上げていこうというのが
趣旨であります。