運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1956-02-09 第24回国会 衆議院 内閣委員会法務委員会連合審査会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年二月九日(木曜日)     午後二時三十二分開議  出席委員  内閣委員会    委員長 山本 粂吉君    理事 高橋  等君 理事 保科善四郎君    理事 受田 新吉君 理事 下川儀太郎君       大坪 保雄君    大村 清一君       薄田 美朝君    宮澤 胤勇君       横井 太郎君   茜ケ久保重光君       飛鳥田一雄君    石橋 政嗣君       西村 力弥君    細田 綱吉君       森 三樹二君  法務委員会    委員長 高橋 禎一君    理事 池田 清志君 理事 椎名  隆君    理事 高瀬  傳君 理事 福井 盛太君    理事 佐竹 晴記君    小島 徹三君       世耕 弘一君    林   博君       花村 四郎君    宮澤 胤勇君       横井 太郎君    横川 重次君       神近 市子君    吉田 賢一君  出席国務大臣         法 務 大 臣 牧野 良三君  出席政府委員         法務政務次官  松原 一彦君         内閣官房長官 田中 榮一君         警  視  長         (警察庁刑事部         長)      中川 董治君         検     事         (刑事局長事務         代理)     長戸 寛美君  委員外出席者         内閣委員会専門         員       安倍 三郎君         法務委員会専門         員       小木 貞一君     ————————————— 本日の会議に付した案件 総理府設置法の一部を改正する法律案内閣提出第一号)     —————————————
  2. 山本粂吉

    山本委員長 これより内閣委員会法務委員会連合審査会を開会いたします。私が議案の付託を受けました委員会委員長でありますので、本審査会委員長の職務を行います。総理府設置法の一部を改正する法律案議題とし、政府より提案理由説明を求めます。田中政府委員
  3. 田中榮一

    田中(榮)政府委員 ただいま議題となりました総理府設置法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び概要を御説明いたします。今回の改正は、売春に関する諸問題がきわめて重要であり、かつ複雑な問題であることにかんがみまして、このたび内閣総理大臣または関係大臣の諮問に応じて売春対寅に関する重要事項について調査審議させるため、総理府付属機関として売春対策審議会を設けることを目的といたしている次第であります。法律案概要は、右の趣旨にのっとり総理府設置法第十五条を改正するものであります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御賛同あらんことをお願いいたします。
  4. 山本粂吉

    山本委員長 これより質疑に入ります。通告がありますのでこれを許します。吉田賢一君。
  5. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 田中政府委員に伺います。内閣において売春問題対策協議会なるものが設置せられ、各省のそれぞれの担当者がときどき協議をしている、こういうことを聞くのですが、それは事実でありますか。ありとすれば、いつごろからか、目下どういうふうにその協議は進行しておるか、それをまず聞きたい。
  6. 田中榮一

    田中(榮)政府委員 売春問題に関しましては、第二十二国会のあとを受けまして、昨年の十月、売春問題を根本的に解決いたしたいというような考えからいたしまして、政府部内に売春問題連絡協議会というものを設置いたしております。そして内閣官房長官のうち一名がその議長となりまして、各省連絡調整に当っておるわけであります。私がその議長となりまして、現在まで十一回の会合を開きまして、売春問題の法案作成その他につきまして慎重審議をいたしております。
  7. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 十数回にわたって慎重審議法案作成その他の作業をしておられることは、まことに多といたします。大体どういう構想、どういう方向で、どういう点が論議焦点になっておりましょうか。あまり詳しくは要りませんから、大体の御構想方向問題点、そういうことだけ概略の御説明を願います。
  8. 田中榮一

    田中(榮)政府委員 概略だけをかいつまんで申し上げたいと存じます。この売春協議会を設置いたしました目的は、前の通常国会におきまして、法務委員会におきまする、有力な審議機関を設けて、その審議機関にかけて法案検討して国会に早急に提出せよという付帯決議の線に沿いまして、政府といたしましてはまずこの法案作成にかかる必要がございますので、その法案作成を準備いたしております。そのねらいといたしましては、まず売春取締り売春防止の点と、いま一つ売春婦の今後の保護更生、並びに売春婦に転落せんとするその一歩手前においてこれを保護いたしたい、いわゆる売春婦保護更生、並びに売春婦に転落せんとする一歩手前婦人を何とか保護したい、こういう二つの観点から法案作成を急いでいるのでございます。当初の計画といたしましては、売春防止法一本にいたしまして、その中に取締り、そのほか単純売春も一切含める予定でおったのでありますが、単純売春取締りにつきましては、これをある事情のもとに削除する原則を立てまして、むしろ売春婦に対して場所を提供するとか、そうした不良の環境を作る業者とか、あるいはこうした業態を誘致するような環境をなるべく排除してしまう、こういう観点重点を置きまして、その法案の中に保護更生の点もつけ加える予定であったのでありますが、この保護更生法案は、売春防止法一本にすることにおいて、非常に木に竹を継いだような法案になるおそれがございますので、保護更生に関する法案婦人保護に関する法案として独立いたしまして、この売春防止法案婦人保護に関する法案と二本立で進むことで、実はその内容検討しておったのでございます。  しかるに今回の予算要求に際しまして、いろいろ国家財政の都合からいたしまして、この保護更生に関する予算要求が思うように参りませんで、われわれの目途とするような理想的な予算査定が受けられず、きわめて少い予算査定を受けましたので、万やむを得ず後者の婦人保護更生に関する法案は一応これを取りやめることにいたしまして、法律とせずに、これを厚生省なり労働省行政措置に譲りまして、そして法案といたしましては売春防止法案だけにしぼりまして、ただいまこれを検討いたしまして、ほぼ内容も整備いたしまして、今回本委員会に付議されておりまするこの総理府設置法の一部改正法律案が、もし成立いたしましたならば、売春対策審議会を早急に開催いたしまして、この売春対策審議会におきまして、さらに私ども関係協議会におきまして作成いたしました案を十分に御検討願いまして、その御検討を願った上で国会法案提出いたしたい、かような考えでやっております。
  9. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 そうしますと、売春法案作成作業上、第一点としては単純売春の条項をある事情によって削除した、これは非常に重大なことでありますが、順序上次の段階に伺うことといたしまして、そこであなたの方の今の連絡協議会は、やがて提案されておる本法案に結実していくという過程の前提作業であったかのように思うのでありますが、あなたの方の、ただいまの連絡協議会のお仕事は、これは大体御説明通りに、二十二国会におきまして法務委員会において売春禁止法に対する附帯決議が可決せられましたその趣旨に従ってなさっておるものと、御説明等によって了解するのであります。そういたしますと、この前の決議なるものは、御承知通りに、昨年の七月十九日、当時の民主党の御提案によって可決せられたのであります。ただいま委員長席にある山本君が提案理由説明せられたのであります。そこでこの決議によりますと「いわゆる売春等に関する諸問題は、文教保健道義社会秩序並びに転落貧困家庭扶助政策など各般に亘り、速かに抜本的総合施策を樹立しこれを実施する必要がある。仍て政府は、この際内閣に強力なる審議機関を設け、その議を経て行政措置立法的措置予算措置など総合対策を策定し、国会審議を要するものについては次の通常国会提出」する、こういう趣旨が明らかになっておるのであります。そういたしますと、ただいまの御説明によれば、保護更生施設につきましては、予算要求も不満足な結果になったらしいことが理由で取りやめることになった、婦人保護法案を作るつもりであった炉、これは取りやめることになった、こういうことを言われております。そうしてまた、第一にお述べになりました単純売春取締りについては、これもこの際は触れない。ただ、場所提供者であるとか業者であるとか、これを誘発するような環境に対して防止目的にした法案にとどめる、こういうことになりますので、この決議趣旨にははなはだそぐわないので、まことに不満足千万であると思うのですけれども、この点については一体どうお考えになっていますか。
  10. 田中榮一

    田中(榮)政府委員 政府といたしましても、こういう順序で最初いたしたいと考えておったのであります。売春等に関する決議の中に、「政府は、この際内閣に強力なる審議機関を設け、その議を経て」ということになっておりますので、当初、通常国会が終りました際に、閣議決定に基き事実上の審議機関を設けてやったらどうかという意見政府部内にございまして、そういう手っとり早い方法でやってはどうかということで、実はそういう意見があったのであります。ところが各方面連絡をいたしまして、法務委員長の御意見等も十分に聴取いたしました結果、それではいけない、むしろ法律の根拠に基く審議機関を設けて、その審議機関によって、さらに行政措置立法措置予算措置等総合対策を策定しろという御意見がございましたので、今回総理府設置法の一部改正によりまして、この売春等に関する決議に基きまして審議機関を設けることになったわけであります。そこで、一方におきまして予算査定がすでに始められまして、政府といたしましては非常に苦慮いたしたのでありますが、この審議機関にかけても恥かしくないような予算要求いたしまして、厚生省労働省法務省警察庁におきまして、この審議機関にかけましても政府としても十分に自信のある対策を立てるべく努力いたしまして、相当な予算額要求いたしたのでございます。しかるに、われわれの努力がはなはだ微力でございまして、残念ながら、今回の予算におきましては、辛うじて総合して五千万円の経費が計上されたのでございまして、さような関係から、ただいま申しましたところの、第二の婦人保護に関する法案というものを、独立の法案としてかけるということが非常に困難になって参りましたので、やむを得ず行政措置ということになったのであります。もちろん政府といたしましては、今後この審議機関を設けまして、この審議機関の御審議によりまして、さらによりよい対策を樹立いたしまして、本問題の解決に努力いたしたい、かような意図を持っておるわけでございます。
  11. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 どうもこれは非常に重大な点にあなたはお触れになっておるのであります。大蔵大臣とか法務大臣がおられないのがはなはだ残念でありますが、幸い法務次官がおられるので法務次官にお尋ねするのですが、花村法務大臣は、さきに読み上げた売春等に関する附帯決議に関しては、その御趣旨を尊重して極力努力しますということを、御承知と思いますが、二度繰り返しております。   〔山本内閣委員長退席高橋法務委員長着席〕 それでこの決議趣旨は抜本的な総合施策ということが目標になっておる。当時法務委員会における論議焦点は、文教保健道義社会秩序あるいは転落防止各般補助政策など、各般にわたりまして、実に広範な論議がかわされたのであります。でありますので、この決議に盛られたものと私は考えるのであります。そういたしますれば、今田中政府委員がお述べになったごとくに、十五億円の予算要求して五千万円に削られた。これはまじめにこの決議趣旨を尊重して、売春対策各般施策を行わんとする意思政府にはなくなった、決議の当時には法務大臣責任のある答弁をしたけれども、その後大臣がかわるやその意思がなくなってしまった、こういうことも考えざるを得ないのであります。この点についてあなたはどうお考えになっておるか。もっともきょうは大臣がおられないけれども、これは実に大事な点でありますから、そのつもりで一つ述べてもらいたい。
  12. 松原一彦

    松原政府委員 重大な御質問でございますから、やがて法務大臣が出席いたしますので、根本的な方策等に対する責任のあるお答えは法務大臣から申し上げると思います。  私はこの問題に対しては深く研究いたしておりませんけれども、きわめて重大な問題でございまして、この根本対策法律一本ではできないと思うのでございます。それは純潔教育の問題があり、道徳の問題に根本を持っており、さらに保護方面に重きを置かなければなりませんし、法務省といたしましては、また一面いかなる罰則を持つことが適切であるかという担当をいたしておりますので、私も就任以来寄り寄り会議に出席しましていろいろ承わっておりますが、いよいよ責任の重いことと、範囲の大きいことと、影響に伴う諸般の問題が輻湊しておることをば知って参りましたので、これは文教の面においてもよほど深く考えていかなくてはならないし、厚生省の方における婦人保護あるいは法務省におきましても単なる罰では済みませんので、現に東京地検などでは相談所を開設しましてやっておりますが、こういうような微々たる措置ではとても及びがつかぬと思いまして実は予算要求いたしたのでございますが、万やむを得ずかような予算の結果になって参りましたので、私ども責任を感じております。しかしこの売春対策は、ただ簡単な取締り法とかいったような問題でない、広い根を持ったものでございますから、今回新たに法律による審議機関ができまして、御研究を願いました上で、私ども精一ぱい今後の対策に対しましては努力いたしたいと考えておる次第でございます。
  13. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 今政務次官の御説明の中にもありましたように、やがて法務大臣炉見えるそうでありますが、時間の関係もありますので、すみやかに御出席せられんことを御督促願いたいと思います。  田中政府委員に伺いますが、あなたの方では総括して各省予算要求内容をつかんでおられるはずなのでありますが、十五億円が何を目途としてはおられたかはっきりいたしませんが、大体の輪郭として何を目標にしておられたのだろうか、何を削られてしまったので五千万円ということになったのだろうか、それを簡単でよろしゅうございますから、一つ数字を御説明願いたい。
  14. 田中榮一

    田中(榮)政府委員 各省予算要求に対しましては、一応総理府において取りまとめて重複を避けるように連絡調整をとったのであります。総理府予算といたしましては、売春問題審議会に必要な経費といたしまして相当額要求いたしました。それから厚生省関係といたしましては、まず婦人相談所を各都道府県に設置させる。これは知事が設置いたしましてその経費の八割程度を国が補助する、こういうわけでございます。
  15. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 数字を言って下さい。
  16. 田中榮一

    田中(榮)政府委員 総理府関係といたしましては、売春対策審議会費要求額として百五十三万七千円、それに対する査定額は五十三万七千円であります。  厚生省関係といたしましては、婦人相談所設置費として要求額が二億六千六百四十七万円ほどでございまして、それに対して査定された額が四千万円であります。  労働省といたしましては、婦人相談所、それから一時保護収容費補助金、これの要求額が三千七百万円ほどでありますが、それに対して査定された額は一千万円であります。  それから法務省関係経費でありますが、法務省関係合計額は九億三百万円ほどでありまして、それに対して査定された額は三百十万円ほどであります。非常に少い額査定を受けましてまことに困惑いたしております。  それから警察庁関係は、要求額六千四百四十八万円ほどに対して査定はゼロになっております。  それから最高裁判所関係といたしましては、一億四千九百万円でありますが、それに対して査定はゼロということになっております。  大体以上でございます。
  17. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 そこで重ねてあなたにしっかりと答弁してもらいたい点があるのでありますが、これは根本はやはり前国会での当院で決議された附帯決議趣旨に沿うことになるつもりで、今後この新たに立案されておる売春法審議会検討するつもりなのかどうか。そうではなしに、今予算で削られましたような実に狭い範囲のそういうことにとどめるのか。言いかえますと、審議会というものは、やはり前の決議趣旨から出発した連絡協議会、そして各省々々から出ておられますから、それらの各方面における売春に関連するあらゆるものを取り上げて討議して審議するというふうに、少くともそういう広い立場から問題をだんだん集約していかるべき私は筋であろう、こう思うのであります。あらかじめ予算で、今の予算査定がこういうふうになったから、あれもゼロになった、これもゼロになった、それで遠慮してしまって、そうして狭い範囲でいくというような、そうあるべきものではないと思うのです。そういたしますと、最初あなたがお述べになられました保護、厚生に関する各般施設行政措置にゆだねる、また単純売春につきましては、これはある事情によって削除する、こういうようなことを断定してかかって、そうして単に情報提供者業者等等、これを誘因するような若干のグループのものといったようなものにこれを限定してかかるということは、第は、はなはだしく決議趣旨に遠ざかっているということと、また今日国内の広い世論が、広汎な売春問題解決を求めているということに沿わないことはなはだしい。この二点、実に私は政府は何をお考えになっておるのかと思うのです。これはやはり政府全体を代表して答弁をするつもりで、あなたは一つ述べてもらいたい。
  18. 田中榮一

    田中(榮)政府委員 この単純売春の問題でございますが、連絡協議会におきましては、今単純売春は、これをある事情地方条例にまかして、国家法令としてこれを取り締るということかどうか、こういう御議論もあるわけであります。そういう関係からいたしまして、協議会の案といたしましては、一応単純売春も取り締り得る案も作成されてございます。これを一応甲案と申し上げます。それから今申し上げました単純売春につきましては、これは現在施行されております地方条例取締りに一任いたしまして、国家法令といたしましては、場所を提供するとか、前借を取り締りするとか、あるいはそのほかの売春をさける契約をした者を処罰するとか、そうした環境粛正重点を置いたる法令、これをかりに乙案といたしますと、この甲乙両案の準備はいたしてございます。従いまして私ども考えといたしましては、今年できるべき審議会にはこの単純売春をも取り締り得る甲案と、そうでない乙案と、この両方を付議いたしまして御検討願ったらどうかと思っております。従って今政府として直ちに単純売春取締りはやらないのだということを申し上げておるもの、ではないのでございます。  それから審議会に対する予算との関係でございますが、当初のわれわれの考えといたしましては、審議会にかけても十分に御満足のいくようなものではございませんが、まず審議会において一応この程度予算ならよかろうという程度のものを実は要求したのであります。そうして審議会におきまして予算の使い方その他について十分に御検討を願う、こういう意味におきまして強く財務当局にも要求をいたしたのでございますが、この点が先ほど申し述べましたごとくに、われわれの微力のいたすところで、予算の計上がなし得なかったことは申しわけないと考えております。
  19. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 国務大臣が見えましたから一、二お尋ねいたします。大臣は熱心な売春問題の研究者でありますから、そこは明快な御答弁をお願い申したいのであります。  花村法務大臣が、去る第二十二国会の七月十九日の法務委員会におきまして、売春禁止法に付帯する決議が可決されました際・その決議趣旨を極力尊重して善処します、こういう趣旨を二回にわたって答弁せられておるのであります。そこで根本のお考え方や立場といたしまして、私は大臣がかわったといえども鳩山内閣は依然として続いておるのでありますし、またこの種一の問題は何も大臣がおかわりになって変るべき性質のものではございません。そこであなたも花村大臣が御答弁になったごとくに、決議趣旨を尊重していかれる御意思があるものと思いますが、一つこの際念のために確認しておきたいと思いますが、いかがですか。
  20. 牧野良三

    牧野国務大臣 守って参ります。御安心下さい。
  21. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 そこで今の附帯決議趣旨を読んでみますと、売春に対して各般の問題がある。文教あり、保健あるいは社会秩序転落貧困家庭扶助政策等々、各般にわたって抜本的に総合施策の実施を必要とする、こういうことが断定されておるのであります。そこでこれに対して内閣は、行政措置を、あるいは立法措置を、予算措置を講ずる、こういうことになっておる。ところが今予算の経過を聞いてみますと、三十一年度一般会計予算におきましては、総理府法務省厚生省あるいは警察庁最高裁判所等々に至るまで、総計十五億円の予算要求したけれども、あるいは零になり、あるいは数十分の一になりまして、僅々五千万円の予算しか最終決定になっておらない、こういうことであります。これはあなたも閣員の一人として、国務大臣としての御責任があるわけでありますが、せっかくこの決議趣旨を御尊重になるあなたの立場がじゅうりんされてしまったことになると私は思うのであります。少くとも政府責任を持って、各省が去年以来売春対策連絡協議会も設置して、総理府内部において十数回協議もされて法律の立案にもそれぞれ努力せられて、十五億円の予算を必要として各省から出して、それが五千万円に切られてしまうということは、全くこれは出したものの面目もまるつぶれ、政府売春対策に対する熱意なしと判断し得るような資料ともなり、実にこれはあなたの面目にもかかわっておる問題と思うのであります。政府社会情勢の変化としてやる気がなくなったのではないだろうかということさえ言う人もあるのであります。その点であなたにはっきりした御答弁を願っておきたいのでありますが、いかがなものでありましょうか。
  22. 牧野良三

    牧野国務大臣 お答えいたします。はつきりその点を申し上げておきます。事務当局は一通り仮装的項目によって金額を見積って出しました。この問題に関しましては、内閣に新たに審議会を設けまして、そこで決定するということになっておるのでありますから、今この仮装項目によって予算を計上するというのは時期を得てないという大蔵当局の申し出に対して、それはもっともだ、そのかわり審議会で案ができていよいよ国会決議すれば、補正予算その他においてしかるべき善後措置はとるべきですな、さようでございます、ということで了承いたしました。金額の末には拘泥いたしません。本旨をあくまでも貫きたいという信念でこの問題に当っております。
  23. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 事務当局事務当局とおっしゃるんだが、一体国家予算というものは、大蔵大臣最終決定するのではないことは申し上げるまでもございません。各省長官予算をあらかじめ作成して大蔵大臣に送付するということは、財政法も明記しておる、ところでございます。そうすると、事務当局とはおっしゃるけれども、たとえば法務省予算におきましても、法務大臣責任大蔵大臣に送付したものと私は思う。それぞれの所管大臣は、それぞれ信念に基いて国策の遂行上必要なりとしてこれを出されたものと思う。ところがそれが大蔵省の所見もっともなりといって引き下ってくるというのでは、重大な問題に対する扱い方があまりにも粗雑でないか。その精神において尊重するけれども予算の末端に至るまで気にしなくてもいいというようなお考え方は、とんでもないことです。予算なしに何も仕事はできません。から念仏を言ったり宣伝したりするだけで、売春問題は解決いたしません。現に二十二国会の際の法務委員会におきましても、川崎厚生大臣のごときも、いろいろ見積って約九十億円近い予算もお述べになったくらいです。これはそれこそその場におけるいろいろな意見に対する答えとして聞いた。しかし省の長官作成して大蔵大臣に送付する予算というものは、そんないいかげんなものであってはならないと私は思います。察するに、これはやはり売春問題というものが閣内全体の空気といたしまして、はなはだしく軽視されておるという結果ではないだろうか。従って、大臣はその精神を尊重すると言っておられるけれども、また今後できるべき案については、予算の裏づけをするというようなことも大蔵省は言っておるかのようでありますけれども、問題はそういう点ではなくして、それより前における広範な各省予算がこんなに切り取られてしまって、零の査定を受けたということはみっともない話なんです。検察庁の予算も零であります。何とだらしのない話でありますか。こういうことでほんとうに信念をもって売春問題を解決できるかと私は思うのです。私は法務大臣におきましては、この決議趣旨に盛られております広範囲な問題を、総合的な施策をもってほんとうに解決して、売春問題を解決するという御意思があるのでございましょうか。もう一ペんその点についてはっきりとしたあなたの信念を聞いておかないといけないと思います。
  24. 牧野良三

    牧野国務大臣 お答えいたします。予算を計上して大蔵省に出しているにかかわらず、それを削減されたら面目にかかわるという御所論で御追及を受けますが、一通りはそうでありますけれども、戦後における予算の盛り万というものは、相当だらしがないのであります。そしてこの予算の盛り方については、一兆三百五十億しか収入がない、これにとどめるといいましても、各省は二兆以上の要求をするのであります。そこで、査定が行われる前に、具体化したものからとっていくということはやむを得ない情勢であることは、あなたもよく御承知のことであります。しかうして客観的事実といたしまして、私が新たにこの任を受けまして、しからばどの費目をどういうふうに使うかということになりますと、私は決定いたしていないのであります。この予算は、御承知通り、前内閣提出したもので、それを査定を始めたのでございます。そこで私はそんな金額の末には拘泥しない、委員の皆さんとよく御相談をして根本方針を立てる、しこうしてその根本方針は必ず皆さんのお力を得て遂げたい、私はこう思っておるのでありますから、今の状態では、私はこれで面目を失したとは思っておりません。しかしもしそういうところがあれば、こいねがわくは議員諸君のお力を得て面目を回復し、力を補充していただいてどうしても目的を達していきたい。そこでどういう方針でいくかといえば、今までの方針とは変えたいと私は思うのであります。そこでその方針をどう決定するかということは、内閣審議会審議に待ちたい。しかし私は責任審議会に預けて、便々として弁解だけに終始するような態度には出たくございません。その点は、皆さんと一緒にこの問題解決に当りたいと思いますから、どうか御助力を請いたいと存じます。
  25. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 そこで今の問題は、これはあなたが自己の統率される役人の諸君のその上に立っての国務大臣の御責任立場からは言えない発言であるのであります。けれどもこれはきょうは問いません。  そこでこの点も伺っておかなければなりません。まず、犬養法務大臣の当時に、内閣で閣議了解事項としてできました例の売春問題対策協議会この協議会は、昨年の九月二日付で総理大臣に対して売春問題対策についてとして、各般にわたる協議の結果を答申しております。この答申の趣旨はずいぶんと御協議になり御研究になった結果と思われますが、あなたはというよりも、政府は、この協議会趣旨を尊重されるのでありましょうか、いかがですか。
  26. 牧野良三

    牧野国務大臣 吉田さん、そこにちょっと困っておるのですよ。尊重しないというわけにいかぬでしょう、といって尊重するというわけにもいかぬのです。いわゆる売春問題のあれはほんとうのところへ手が入っておりませんよ。売春という言葉を使われたことも——私はあれは一体デフィニションをどうしたらよいか、日本の法律語にはないのです。だからこの委員会売春とは何ぞやと定義から定めていかなければならぬ、そのときにむずかしい字が出てくるので、その字の答弁のできる人はここにはいないでしょう。それはまあ私だけだろうと思うが、私もここではその言葉を使えないのですよ。だから外国語を使うか、さもなくば隠語を使うのですが、それではどうも衆議院の委員会じゃはばからなければなりませんから、そこで言葉からずっとやっていかなければならぬ。それと戦後における一時的状態ということにあまりにとらわれないで、私は日本国の品位、新しい性道徳というものに着眼して、ほんとうにまじめにいきたい。ところが私が言うことが折々新聞記者にほんろう的に書かれる、これは新聞記者が悪いですよ、興味を持って書く、あれがいけない。ほんとうにまじめに、そしてほんとうにまん中へ手を突っ込んで解決するということをしたいのだから、もうそんな私を答弁に困らせないで、一緒になってこの問題を解決したい。そんなにあなたに突っ込まれると答弁に困ります。きっと失言する。失言すると、失言のためにこの案の進行が悪くなるから、この程度でかんべんしてもらいたい。
  27. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 まことに春の風のように言われますと困ります。ところで政府審議会を作ったり協議会を作ったりして、いろいろと衆智を集めて協議会がせっかく苦心惨たん答申をしても一向用いられないということに触りますと、これはただいま提案されております審議会もやはり同じような不安を事前に与えるおそれもないではないのであります。政府はこういう審議会を持って、学者、専門家、その他の経験者等々から意見を徴して何かを得ようとするときには、これは申すまでもなくできるだけ尊重するのが根本立場でなければならぬと思います。そこでこの協議会の出しました答申によりますと、たとえば保安処分などににつきましても、やはり詳細に規定いたしておりますが、これらの保安的な処分事項というようなものも、やはり来たるべき売春法案の中に盛り込んでいくというようなお考えをお持ちになっておられるかどうか。先に田中政府委員から伺いますと、どうもその辺については触れたくないような御答弁もあったのでありますが、これはあなたも先に予算数字にはとらわれない、精神を生かして完璧を期するというようなお気持らしいので特に尋ねねばならぬのですが、やはりそういった方面にまでいろいろと立案していこうというお考えを持っておられましょうか。大体この保安処分という問題の内容は非常に重大なことでございます。これは防止にいたしましても、またはそのことの起った後の対策にいたしましても、この取扱いいかんということは非常に重大なことでございますので、せっかくの売春立法の機会でありますから、これらの方面にも相当突っ込んで立案する御意思はございましょようか、いかがでしょようか。
  28. 牧野良三

    牧野国務大臣 ございます。ございますが、私は委員会に現われたる保安処分ということが、人権の尊重の上において調和ができるかどうか非常に憂慮する。どうも形式論が多いのです。これじゃいかぬ。売春法というものは弱い婦人を助ける方がいい。国家が助け、社会が助ける。私は委員長のお許しと委員会の御同意を得て今晩大阪に立ち、あすは大阪でバー・アソシェーションの会がございますので、それに出席して実はこの点に言及したいと思って、ここに原稿を用意いたしておるのでございます。といいますのは、日本のバー・アソシエーションというものは一体どれだけ仕事をしてくれるのか、今現に問題になっている売春法に対しては、検事も判事も弁護士も学者も、すべての人が一つになってこの問題に手をかしてくれ、そして社会的に解決してくれ、そしていたずらに委員会で私を困惑させるよう血ことのない空気を一緒になってこしらえよう。というのは、ほんとうのものを徹底的にこしらえるとなると人権問題に及んでくる、それのみならず、衆議院ではむやみに予算をほしがっているが、そういう予算が容易にとれないというときには、社会的に金を集めても、社会事業として一つ方面を担任してくれなければいかぬということを私は述べたいと思うのであります。東京でこれに関することを述べましたら、牧野良三は僭越なことを言う、われわれに問題解決責任を転嫁しようとしているという陰口があったそうですから、重ねて発言いたしまして、転嫁するのじゃない、国民であるなら分担してくれ、あなた方はなぜ政府ばかりにまかしているか、なぜ衆議院にばかりまかしているか、こんな重大な問題は国民が社会的に燃え上ってやらないでどうするか、一体男が女を買ったり、売春などと言うけれども、だれが悪いか、女じゃない、男が悪いのだ、しかもそれは戦後における風紀が乱れ、性道徳が極端に行っているけれども、年ごろになって性欲の満足をすることができないという社会状態を一体どう見るか、それでもってこの問題が解決すると思うのか、そこまで行かなければ形式的の議論になっていけないといって私は訴えたのである。そうか、わかると言ってくれましたから、お許しを得てあすは大阪に行って、このことを大会の席上で述べたい、そのことも御了承下さい。そして本気になってこれを解決して下さい。議論はよしましょう、これは実際問題ですから、そういうことにするにどうか力をかして下さい。僕の周囲には力が乏しい、それを私は必配しておりますから、今度の審議会委員には特殊な人々を頼み、その人人には終始一貫私の周囲を守ってもらって、予算措置に対しても、社会的な会合を催してもらうのにも、御尽力を得たいと思っておる次第であります。
  29. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 牧野法務大臣はこの問題について、根本からほんとうに社会の衆知を集めて解決したいという御熱意を持っておられるらしい。非常に私はそのことを多といたします。そこで、それであればほんとに裸になったつもりでお互いに二、三の点をこの際検討しておかねばならぬと思うのであります。私が今保安処分云々と申しましたが、これはあるいは一種の刑罰的ないしは刑事法的な考え方の印象を与えましたことは、私の多少言葉の不十分のためと思います。私は今の問題につきまして、たとえばあるいは婦人相談所の問題にいたしましても、ないしは転落防止等に対する各般の厚生施設などにいたしましても、あなたが先におっしゃったように、婦人は気の毒だ、気の毒な婦人売春するのだ、男が悪いのだ、こういったようなお考え方に立てば、なおさらこの転落防止とか、あるいは厚生施設とかいうようないわゆる気の毒な婦人を対象にしたあらゆる施設というものに、国家は手を差し伸べるということを、大胆に、勇敢に、落ちるところなく、漏れるところなく、この際施策をしなければなるまいと思うのであります。やはりこれは売春対策の重要な一環として、一面として取り上げていくのでなければかたわの法律になってしまうと思います。この点は前々回の国会におきまして相当議論が上下されましたので、われわれも深く傾聴しながら、そういったことに今さらのごとく重要性を感ずるのであります。でありまするので、これはそういったいわば厚生省とか労働省とか、行政分担面からいうならば、そういった方面から施策、これはやはり全面的に取り上げていって、そうして売春問題解決の重要な一環として、もしくはこの法律案内容として持っていくということをしなければ私は片手落ちに触るのじゃないか、こう思いますがどうお考えになりますか。
  30. 牧野良三

    牧野国務大臣 その点は全く同感でございます。
  31. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 それからさらにそうなって参りますと、これはどこで扱うかということにつきましても、やはり相当深い考慮を払っておかなければならぬ問題なのです。そこらの、たとえば警察で扱うというようなことも知識、経験、人格、設備、組織等の不十分なところで重大なる問題を扱うということはいかがかと思いますが、やはり裁判系統の国家機関によって適当に扱うというようなこともあるいは必要じゃないであろうか。あるいは厚生省にいたしましても、労働省にしても、相当有力な、何らかの施設を新設するという意気込みをもっていかなければならないのではあるまいかということも考えるのですが、その辺につきましては相当具体的な方法の問題でありますから、今熟してはいまいと思いますけれども、たとえば今のところ家庭裁判所のごときは、非常に平和的雰囲気で社会に貢献していることは御承知通りでありますので、そういったところも活用するということも一つの方法ではないかということも考えるのであります。これは何かお考えでございましたら伺っておきたい。
  32. 牧野良三

    牧野国務大臣 吉田さん、ほんとうのところをお問い下すってありがとうございます。実は大蔵大臣、大蔵両次官、主計局長、若い主計官を前にして、そのことを論じたのであります。そこで、金をくれというのじゃないからだが、主管をどこにするかということにも私はまだ心配しているのだ。まず今まで法務省の仕事というものを大蔵省は知らぬのだ、法務省は文化行政をやるセンターですよ、しかし、今のところじゃ、そういうふうに取り扱っていないから、ことしの国会から法務省国家の文化行政の中枢だということを自覚なさい。そこでまず、法務省ではないけれども、親類の裁判所には調停委員という人が非常な活動をしていることを知れ、一年に三十万件事件がある、十六万件は調停委員がやって下さるのだよ、裁判官がやるのは十四万件にすぎない、だから調停委員にまず予算を盛りなさい。それから、人件擁護局があるが、婦人の人件をじゅうりんすることが非常に多い。だから、これは擁護局などといわないで、尊重局といって、ここに注意をなさい。そしてまた、罪を犯して出てきた人の保護ということに対して、保護費が足りないこの方面を尊重しなさい。吉田さん、この方面はわずかだが、私の要求しただけの予算をくれたのです。そして、あなたの言う家庭裁判というようなものまで持ってきて、ここには、ちょっと年を取って、若いうちは道楽をして、世の中の表裏を知ったやつを中に入れないと、親切が届かないのですよ。それを今やろう。それにはまず私は神近さんやあなた方に相談して、あなた方と平素一緒になっていける、こういう人が行って婦人の味方にならなければだめですよ。味方という心でいこう。さて、この主管をどうするかということまであるので、田中官房副長官と、今度の委員には吉原の病院長であったとか、どこの学校の校長先生であったとか、そんな人はだめだ、思い切って従来の内閣の人選とは違った、突き破った人を持ってこようといって、そういうことを心がけております。だから、まくいくかどうか知らないが、本人も承諾するかどうか知らないが、ちょっと思い切った人選があっても、怒らないでおいて下さい、驚かないで下さい。牧野の言うような理想は実現するかどうかわかりませんけれども、そんな考えを持って行なっているのです。そして、大蔵当局もなるほど、少しは理解したらしいのですね。そして、隠れたところに、わずかではありますが、必要と思うだけの金はみんなくれました。これからはほんとうにやってみたいと思います。
  33. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 そこで審議会を設置して、売春に関する各般の調査審議をなさることになるのだが、おそらく今国会中に立案して成案を得て、国会に出すということは、前国会、前々国会の約束でありますから、そうなりますと、作業もかなり急がなくちゃなるまいと思います。そこで伺いますが、気の毒な婦人、気の毒ということを根本において婦人を見るその目からいたしまして、あなたら政府としては、この売春婦に対して処遇をどういうふうにしようと根本的にお考えになっているのでしょうか。まさか、いくら気の毒な婦人であるといえども、大切にして、りっぱな別荘で御飯を食べとってもらうという、そんなお気持はないでしょうが、あるいはこれを処罰するようなこともお考えになるのか。そうではなくして、条例のように科料とか拘留とかいうことをお考えになっているのか。あるいはまた、職業を与えたり、医療をしたり、あるいは教化したり、あるいは保養さしたりなとして、身心とも新らしい希望を持たすようなことにでもさせようということをお考えになっているのか、その辺について。かっこれらの審議会でもそういうことも考えようというふうになさるのだろうか、その辺についてどうお考えになっておりましょうか。
  34. 牧野良三

    牧野国務大臣 そこが中心でありまして、そこが私の心持が定まっていない。それで今度の委員には、ほかのことはそんなに問わなくても、あなたの今まで御心配下さった速記録の重要なものを見せればことにその点には椎名さんがたくさんいいものをこしらえて、それにアンダー・ラインをつけて、議論はこうなんだという本をやって、それで審議や何かは簡単でいい。今のあなたの質問、これが問題ですよ。どうしたらいいか。そこで婦人は気の毒だが、男も気の毒なんですよ。ちゃんと結婚さしてやればいいんですが、これがまたそう簡単にはいかぬ。そこで社会をどういうふうにしたらいいかというと、閣内にはいろいろな要求があるのです。警察の要求と防衛庁長官要求・これがまたなかなか違ってきている。あそこは若い者を扱っているからね。それでもういいかげん年を取った者が考えたってだめなんです。若い者の身になって考えなければならない。しからば若い者に会ってみると、どうしてくれるのかと若い連中は私に言ってくる。年寄りはどうするのかと言ってくるのです。その調和をはかるのが審議会だと思うのでございます。そこでこの問題さえ四、五日して解決すれば、よしその方針で行こうとなれば予算措置行政措置も機構も大体いくのじゃないか。それで田中さんは相当裏面にも通じているので、そっちの方面のことはいいのじゃないか。だいぶここにたよっておりますと同時に、私ども政務次官は風紀の方面に関しては信頼するオーソリテイだと思っておりますから、私はこの両君に期待するところが非常に多いのですが、何としても皆さんの御協力を得るのほかありません。よろしくお願いいたします。
  35. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 そういたしますと、この点についてはまだお考えが定まっておらぬようでありますが、だんだん御研究になるようでありますが、そうすると今度立案されようという法律案にはそこにも触れて織り込んでいくというのが基本的な御方針、こういうように伺っていいんですか。
  36. 牧野良三

    牧野国務大臣 さようでございます。
  37. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 そこでついでに、その片っ方のことも聞いておきたいのです。婦人の処遇についてはおよそあなたの考え方の方向がわかりましたが、相手になった男に対しはどういうふうにお考えですか。
  38. 牧野良三

    牧野国務大臣 それです。(笑声)罰すればそっちの方を罰するのですね。婦人を刑罰に処さないで、罰すればそっちですが、そこで防衛庁長官なんかそう簡単にしてくれるなよ、とこう言ってくるわけです。あそこは若い者ばかり扱っているんだから。といって彼らが風紀を乱したらどうか。風紀を乱さなくして、個人の秘密にやることには干渉してはいかぬ。これは私の方針です。憲法の定めるところ。風紀を乱さずして個人が内緒ですることはこれは法の干渉する限りでない。そこで融通のつくことがきっといく。風紀さえ乱さなければいい。そこで風紀は乱さなくても社会的に病気なんかのことに対しては、よろしい、そういうことに対しては手が届くということをいたしていきたい。そうしてやかましく目的とする厳罰はどこへいくかというと、人身売買とポン引きだ。これを中心にやれば法律目的の中心がぴしゃっといくというように思っているんです。
  39. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 後段の人身売買の件及びこれに関連いたしまして、答申の一内容にも出ておったのでありますが、たとえば勧誘とか、あっせんとか、場所の提供とか、欺罔を手段にするとかして売春を行わしめる側につきましては、これはやはり相当な処罰をもって臨む、こういう方針がやはり根本になるわけですか、いか炉ですか。
  40. 牧野良三

    牧野国務大臣 私は法律家で刑法が専門で、今法務大臣をやっているけれども、生まれながらにして人を罰するのがきらいなんでございます。だからどうかして罰しないようにと考え、検察庁にも人は罰してはならぬということを述べましたところが、問題を起したのでありますが、そこは吉田さん、非常に新しい考えでいきたいと思うのでございます。
  41. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 それから一般に業者立場についてとかく世間に論議されておる件でありますが、法律を作りまして実施まで相当の猶予期間が要るという意見、あまり長く置いてはいかぬという意見青々、いろいろあるようであります。この点につきましては経過規定の実施の時期というものにつきまして、これも大事な点でありますから、相当お考えになっておると思いますが、いかがでございますか。
  42. 牧野良三

    牧野国務大臣 それは全部委員会意見を尊重したいと思っております。
  43. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 それでは最後に伺いますが、この委員会ができましたら、これは二十二国会決議趣旨も御尊重になるはずでありますので、国会が閉会をするまでに立案して国会にお出しになる、こうしなければ間にも合うまいと思うのです。前の決議には次の国会ということがうたってありますし、これは政府国会の公約と申しますか、こういう次第にもなっておりますので、相当努力してもらわぬと間に合うまいと思いますが、審議会を設けて審議会で立案し、討議し審議して、ぐずぐずしていると会期がだんだん終ってしまう。衆議院で審議し、参議院でまた審議しなくちやなりませんから、会期末になってから出てくるということになりましたら間に合いません。ということになればこれは政府の大きな食言だという結果になると思う。またこの審議会に籍口して売春対策を延ばすんだというような疑いも生ずるわけであります。これらの点につきまして、この審議会によって本会期中に立案して提出する、そこまでお運びになるつもりであるかどうか。
  44. 牧野良三

    牧野国務大臣 三月のうちに審議会にはもう案をこしらえてもらいます。そこで四月にはあなた方と一緒に審議してかけ足でやつちゃう。だから案がいいものになるように、そしてその案ができるまでの間にきっと新聞、雑誌、あらゆる方面から世論のいいのが出ると思うのです。そのうちには、審議会だといってほったらかさないで、私を一通じて、また政府委員を鞭撻して、あなた方の御意見を盛るようにしてもらいたい。そしてできるだけ協力していただいて御希望に沿うようにし、世間から逃げたなんて言われることは一生の汚名ですから、それは私が防止いたします。人権上必ずやってみせます。
  45. 高橋禎一

    高橋委員長 佐竹晴記君。
  46. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 ちょっと一、二お伺いいたしたいと思います。なかなか大臣はその道の通であられるようであります。そこで一つお教え願っておきたいのでありますが、お言葉によると売春婦とおっしゃっておる、そのお言葉の中に婦人が気の毒であるといって、婦人を対象にするお言葉が出て参りました。ところがこの婦人でも売りと買いがあるそうであります。そこでこの売る方はなるほど売春でもよろしゅうございましょうが、この買う方は相当のオールドミスが大へんしきりにほしがるそうであります。またとてもしつこいそうであります。こういった者を禁じないと、今度売る方の若い男の精神を非常に乱ることが今日非常に重大化しておるようであります。また売春を禁止いたしますと、同性愛の問題が非常に深刻になって参ります。このことはひとり日本だけではありません。現に世界的問題であります。売春婦を禁止いたしました諸国の実情はどうでしょうか、全部男と男との問題、女と女との問題となっておる。そうして日本はあの敗戦の後に外人が入り込んで参りまして、日本には大きな組織ができております。これは通であられるあなたがよくおわかりのことであると思います。この組織は風紀取締り上重大なる対象とならなければならぬと思いますが、今御論を聞いておりましても、田一中副長官のお話の中からも、大臣のお言葉の中からも、その片鱗さえもこれを見ることができません。男が男と風紀を乱す組織は、これは実に重大な問題がありまして、今私は資料の収集中でありますが、本日ここではこれを具体的にお尋ねをすることを省略いたしますが、某財界の巨頭のごとき、ある美男子の有名なる俳優をとりこにして、世間から注視されておりますことも、これは今日の話題になっております。特定人をあげてよいのでありますが、これは大きな問題とされておる。この審議会ができましたならば、あなたのおっしゃる単に売春婦売春婦というそれだけを中心にしてこの問題をお考えになって、これを審議会にかけようとなさるのか、少くともあなたの答申を求めようとするものは、売春婦だけを対象とするものか、それともただいま私の述べておりますような諸般の問題についても、十分これらに対して検討を加えて答申せよということを求めようとされるのか、この点を伺っておきたいと思います。
  47. 牧野良三

    牧野国務大臣 お答えいたします。今佐竹委員の御質問のように、広い範関でなければいけない、従ってこの法律は風紀を正すということを元にいたします。戦後日本の若い婦人が外国人と手を組んでいまわしいところに出入することを、むしろ外貨獲得の功労者であるような顔をしていく風習ができたということは、敗戦後の実に情ない実態でございます。多くのものはこれから出ておる。のみならず先ほど売春婦ということを言っておられるけれども協議会における権威は、売春とは何ぞやというときに、不特定多数の者を相手として反対給付を受けて性交をするを言うと書いてありますけれども、性交とは何ぞやと委員から政府委員が質問を受けたら答えられないそういう法律はこしらえてはならないと私は法務省の内部で戒めたのであります。従ってあなたが憂慮されている通り、そしてあなたが各種の事実を御承知通り、風紀を取り締る、そうしてわれわれの性生活を正しく振粛していくという心持で制定いたしたい、かような考えを持っておるわけでございます。
  48. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 御飯を食べたいときに食べさせれば、すぐに問題が解決いたします。おなかがすいておる者に食べさせないで、そしてお前は食慾を起してはならぬと、罰則をもって取り締ろうとするところに無理が出て参ります。こういったような問題も風紀々々といって風紀を取り締るということだけで——先ほど私の言いました男の子にも売りも有れば買いもあるし、女の子にも売りもあれば買いもあるような状態でありますから、それをいかに疎通するかということを直ちに法規その他によって取り締るような対象とすべきかどうかということについては、その根本的な問題に触れない。根本的なものに触れないで、表面に現われたいわゆる風紀を取り締るといったようなことではとてもこれは問題にならぬではないか。大臣のおっしゃる根本問題処理ということならば、その疎通という面、これを通じて風紀をどうするかということを審議会において十分審議せしめ、その疎通する方法を答申せしめる方向にお立てなさるべきではないかと考えておるのであります。そういたしますと、この審議会においてはかなりの日時を食うのではないかと私は思う。先ほど三月中に出させて、四月にはともどもにその案を審議してもらう、こういう御意向のようでありますが、果してそう参りましょうか。私の憂えるところは、審議会というものができますといつもありますように、一年も二年も時間をゆっくり費して、答申をしろといってもなかなかできない。その答申がおくれたと遂には一体どうなるであろうか。答申炉あなたの御希望のようにせられて、今期国会中に法案提出する運びに至ることを十分確信を持っておっしゃることができようか、この点を一つ確かめておきたいと思うのであります。
  49. 牧野良三

    牧野国務大臣 私は、委員の顔ぶれを上手に選びますれば、心ずもっと早く答申が得られると思います。もし答申を得られなければしようがありません。牧野私案でも出すのですね。そしてあなた方に縦横からこれを批判していただいて、そしてともかくも、もう法律を作ろうじゃございませんか。それくらいお互いに協力して下さい。そしてあなたのようなお考えを持っている人を少くとも半分は委員に入れたいと思っているのです。そういうことを知っている人が委員に入れば議論はしませんよ。あの議論というのは何か困らしてやろうとか、あげ足をとろうというので議論をするので、困らせという心持がなかったら話は早い。私は夜を日に継いで、場合によったら熱海か箱根に委員会を持っていっていいと思う。そうしてそこで朝から晩までやってもらう。私は選挙法の改正もそういうことをやってこしらえました。それくらいなエポツクをこしらえるくらいの意気でやりたいけれども、それを非難されると困るから、あなた方の方でどうしてもそれくらいの意気でやれよといって支持してもらいたいと思います。
  50. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 これは審議会を作る法案でございますから、私はこの程度にいたします。
  51. 高橋禎一

    高橋委員長 政府側に私から一点お伺いいたしたいのですが、この売春対策審議会はもちろん恒久性のある機関だ、こういうふうに思えるのですが、そう伺っていいですか。
  52. 田中榮一

    田中(榮)政府委員 その通りでございます。売春対策審議会は、単に政府提案しまする法案を御検討を願うというだけでなくして、その実施されました法案がどのように実施されておるか、さらにまた情勢に応じて現在の制度を改善をしていかなければならぬ、こういようなことにつきましても常時御研究なり御検討を願うという意味におきまして、恒久的な審議会として一応置いたらどうか、かように考えておる次第であります。
  53. 高橋禎一

    高橋委員長 和近君。
  54. 神近市子

    ○神近委員 一問だけ関連して、牧野さんにお伺いしたいのです。私も質問の通告を出しておきましたけれども、大体吉田委員の応答で内容がわかったように思いますので、一問だけ…。さっき委員会委員を、まあびっくりするような人選をするということをおっしゃっておりました。それで私すぐにこういうことを感じたのです。まあわれわれがびっくりするといえば、大体売春制度を存続させておきたいというような側の方々が委員に入るのじゃないか、ということは、いろいろ業界の新聞を見ますと、これを存続させておきたいという人たちがこの委員会の中に入るということ、委員会に何名なり獲得するという対国会の運動をするということを決議しているのです。ところが私どもをびっくりさせるような人選とおっしゃるからには、頭の中に業者あるいはそれを代弁するような人という意味を含まれているかどうか、それを伺いたい。
  55. 牧野良三

    牧野国務大臣 びっくりという言葉はちょっと行き過ぎている言葉であります。もしそういう言葉を使ったらかんべんして下さい。ちょっと意表にお思いにならないか——委員の候補者を出してさましたら、実にどうもおもしろくない人ばかりなんですよ。もう少しほんとうに世相に通じて、婦人に対するほんとうの愛、敬愛の念を持って社会を表裏から理解するという人を思い切って人選しようじゃないかということを、田中さんと相談しておるわけです。従って今神近さん、あなたのおっしゃるような人を入れちゃ初めからいかぬ、不信任だ。そうして世間にそんなことがあるか。あなたの方にそういう運動があるだろうか。(田中(榮)政府委員「ございません」と呼ぶ)私のところにはまだ一人もありません。ありませんから心配要りません。あれは新聞がふざけて書くのですね。あれはいかぬ。この問題ではほんとうのことを伝えないで、新聞記者諸君がこれをエンジョイするのです。これははなはだよくない。まじめに行きましょう。真剣に取り組んでいきたいと思います。どうか御安心下さい。
  56. 神近市子

    ○神近委員 バー・アソシエーションへ今夜ですか、あすですかお出かけになるというので、ちょっと意外な感じがするのですが、そこに原稿をお持ちのようですけれども、やっぱりいっか御婦人方に言ったように、芸者は日本のシンボルだからあれは存続させようというような意味の、それに類するような御発言がありはしないかということを、私は懸念するものでございます。いろいろ御答弁を伺っていると、なかなか技術的にうまいそして御表現もうまいと思うのですけれども、そういう場合にちょっと行き過ぎをなさるようなことがあって、その言質をとられるようなことがないように、ぜひ一つその集会では慎重に御行動をお願いいたしたいと思います。(笑声)
  57. 牧野良三

    牧野国務大臣 実は神近さん、だから私は婦人の代表のお方、百人余りのお方にも真剣になっておしかりをしたのです。私がフジヤマ・アンド・ゲーシヤ・ガールズという言葉を使ったのは、あれは牧野の言葉ではございません。アメリカ、フランス、ドイツ、イギリスのヨーロッパ各国の、日本の観光のガイド・ブックにああいうことを書いている、日本のページには富士山が出て、下には五条橋の擬宝珠のところに、だらり結びと普通の芸者とが並んでいる、その上にフジヤマ・アンド・ゲーシャ・ガールズと書いてある。これは牧野が言うのじゃない、すでに五十年来外国人が言っておる。しかるに富士山はどこから見ても非難一つ打たれるものじゃない、しかるに芸者というものはあらゆる方面から欠点がある、欠陥がある、こんなものを日本のシンボルにされてたまるか。私は三十年来・芸者界における風紀というものを改めていかなければいかぬ、外国人に、金さえ積めば日本に来て芸者というものは自由自在になるというような誤まった観念を持たせてはならぬ、これにはどうしたらいいかということに苦労を重ねてきたのですよ。あなたも国民だ、女だ、少しは日本というものを考えて、婦人の生活を、しこうして長い間のわが花柳界というものを、どうして是正したらいいかということを考えなければいかぬ、あまりにあなた方は無情だということを、非難ばかりしているといって、真剣に言ったのです。ところが今の若い人たちは外国のガイド・ブックなんか読んだことがないらしい。新聞社の諸君もそうらしい。だからあれは牧野の造語だという。あんたもそんなことを思っちゃいけませんぞ。あなたは外国通だからわかると思うけれども、外国のガイド・ブックにきれいに書いてあるが、あれがいけない。だからあれをあのままにするには、まず芸者というものをりっぱな芸能人に仕立てて、春をひさいだり何かしなくて、りっぱな社会上の地位を保つことのできる自由人にしなければならぬという説明をしたのであります。従ってひょっとすると大騒ぎをするかもしれませんけれども、こういう意味で言うのでありますから、御安心下さい。けれども、まあ言わないでおきます。(笑声)
  58. 高橋禎一

    高橋委員長 他に質疑がないようでございますから、本連合審査会は終了いたしました。  これにて散会いたします。    午後四時三分散会