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1956-05-23 第24回国会 衆議院 内閣委員会 第52号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年五月二十三日(水曜日)    午前十時五十八分開議  出席委員    委員長 山本 粂吉君    理事 江崎 真澄君 理事 大平 正芳君    理事 高橋  等君 理事 保科善四郎君    理事 宮澤 胤勇君 理事 石橋 政嗣君    理事 受田 新吉君       大坪 保雄君    大村 清一君       薄田 美朝君    高瀬  傳君       辻  政信君    床次 徳二君       眞崎 勝次君    横井 太郎君       井手 以誠君    稻村 隆一君       片島  港君    西村 力弥君       細田 綱吉君  出席政府委員         検     事         (法制局第二部         長)      野木 新一君         総理府事務官         (恩給局長)  八巻淳之輔君  委員外出席者         衆議院法制局参         事         (第一部長)  三浦 義男君         専  門  員 安倍 三郎君     ――――――――――――― 五月二十三日  委員田村元君辞任につき、その補欠として辻政  信君が議長の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  旧軍人等遺族に対する恩給等特例に関する  法律案大平正芳君外十一名提出、衆法第五五  号)     ―――――――――――――
  2. 山本粂吉

    山本委員長 これより会議を開きます。  旧軍人等遺族に対する恩給等特例に関する法律案を議題とし、質疑を続行いたします。  先日の大村委員質疑に対する答弁恩給局長よりいたします。八巻政府委員
  3. 八巻淳之輔

    ○八巻政府委員 一昨日の本委員会におきしまして、大村先生からお尋ねの点は、陸海軍学生生徒というようないわゆる準軍人が、敵機の来襲に際しまして対空戦闘に従来して倒れた、こういう場合の取扱いはどうかというお尋ねであったと存じます。旧恩給法の第二十七条によりますと、準軍人就職ということは戦務、それから戒厳地境内の勤務または外国の鎮戌に服することである、こういうふうにいっております。その場合対空戦闘勤務に服したということが、旧恩給法第二十七条の職務に出るかどうかという問題になるわけでございます。この準軍人在職があるかないか、就職があるかないかということを決定いたします戦務概念というものは、一般的には恩給法規定いたしまするところの従軍加算、いわゆる戦務加算を付せらるべき勤務をいっておるのでございまして、この勤務というものはどういうものであるかということは、そのつど勅裁を経まして内閣告示によってきめられておるものであります。大東亜戦争が開始せられますとともに、内地におきましてもまた本土防衛に従事する部隊勤務する者につきましては、戦地戦闘部隊のそれと変らないというふうな事態になりましたので、昭和十七年の内閣告示の三号、それから同じ年の十一号というものによりまして戦地以外の地域において直接防衛に関する勤務に従事した公務員に対しましても加算をつけるという旨を定めたのでございます。この直接防衛に関する勤務に従事したということの具体的な指定といたしまして、陸軍次官から陸軍部内一般陸亜密第三〇六五号でもって、個々防衛部隊名というものを指定いたしまして、またその翌年昭和十八年、その一部改正がございました。従いまして、そうした防衛部隊に所属し、そうした勤務に従事する者が戦務に服したということになるわけでございます。ただしかしこの指定というものが昭和十九年、二十年になされておらない。その間ブランクになっておる。戦争がますます苛烈になりまして、空襲が激しくなった時代におきましては、忽忙の間にこの指定がおくれておったのじゃないだろうかというふうな考え方が今できるわけでございまして、そうした指定ブランクというものを現在の段階において何か埋める措置が必要ではないか、埋めることによって御趣旨の点の具体的な問題が救われるということがあるのじゃないだろうかというふうに私は考えております。この点につきましては、今後とも旧陸海軍省のあとの仕事を引き受けておりますところの厚生省の方と十分連絡をとりまして、具体的な措置というものについて今後研究していきたいと思っております。以上一昨日のお尋ねに対してお答えいたします。
  4. 大村清一

    大村委員 ただいまこの問題については、恩給当局において受給資格を与えられるように研究考慮をしようというお答えに拝聴したのでありますが、私の例示してお尋ねいたしました案件に対しまして、遺族年金を受ける資格を与えるということが、今回この議員立法を提案された趣旨目的であると信ずるのであります。言いかえてみますと、内地死亡についても遺族年金恩典に浴させるというのが今回の本法案立案の主要な要点であったと思う。いかにも戦務地ということにつきましては、従来多くは外国地域指定し、内地の場合におきましても、戒厳地帯というような特殊の場合だけに限られておったのであります。それは戦争が多く海外において展開されたという事字実に基くと思うのであります。戦争が苛烈になりまして、終戦直前敵機空襲というようなことは確かに日本内地戦場と化しておったのでありまして、もしただいまの御説明のように陸年次官戦務地指定するという場合におきましては、これらの点を包含されるのが当然しかるべきであったと思うのであります。しかし何かの都合で最後の二ヵ年については指定が行われていなかったそうでありますが、それらの点にかんがみまして、この法律適用内地戦務地であるということに御解釈願いたい。また御解釈だけでいかないということでありますならば、今回の立法趣旨がその点にあるのでありますから、法律の明文をもってこれを確定するというよりなことがはなはだ望ましいと思うのであります。その辺一つ委員会におきまして適正に審議の結末をつけていただきたい、このように希望する次第であります。  なおこの際念のためにもう一つお尋ねをいたしておきたいと思いますことは、今回の改正案におきましては、受給資格があるためには「営内居住すべき者」ということが法律の条文に出ておるのであります。ところが従来の解釈によりますと、士官学校寄宿舎居住すべき者は――奇宿舎営内にあらずというような解釈が行われておるやに聞いておるのであります。しかし私の信ずるところによりますと、「営内居住すべき者」というのは、生命に危険のあるような場合に随時にほかに退避をすることができる、疎開ができるというような立場におる人は受給資格上考慮いたしませんが、居住の移転の自由が制限され、州内に居住すべき義務を持っておるというものに対してこの恩典が与えられるという趣旨だと思うのであります。かくいたしますと、士官学校生徒士官学校奇行舎居住すべきものであることは明らかでありますので、法の精神から申しますと、同等に取り扱うべきものだと思うのであります。しかし字句の上から申しますと、ただいま申しますように、「営内居住すべき者」と明示してありますので、適用上そこに非常に疑義が生まれるのではないか、疑義が生まれてもしこの恩典からドロップをすることになりますと、立法趣旨と非常に違った結果になると思うのであります。「営内居住すべき者」の解釈について一つ当局の御意向をこの際念のために承わっておきたいと思います。
  5. 大平正芳

    大平委員 大村委員からあげられました最初の問題、それから「営内居住すべき者」というものの概念規定の問題は、私ども見解では、この法律案を作案いたしました根本精神は、大東亜戦争が文字通り総力戦的な様相を帯びて参りまして、戦地、非戦地の限界というものがだんだん消されて参ったという実態に即しまして、在米の厳格な恩給法で救えない対象をどうして救うかというところにあったわけでございます。従ってこの法律の案文の解釈に当りましても、そういった根本精神立法精神に返りまして、弾力のある解釈適用がなされてしかるべきだ、こう思うのでございます。そういう点は政府側にもよく御了得願うように努力して参っておるのでございますが、ただいまの問題は法制的に若干の疑問点があるようでございますので、即刻法制局側を呼びまして、ここで法制局側の御見解を一応お聞き取り願いたい、こう思います。根本精神は少くとも御例示になりましたような案件は救わねばなるまいというのが精神であると私どもは了解しておるわけでございます。
  6. 三浦義男

    三浦法制局参事 議員立法の関係で、法制局の方で一応立案いたしましたので私から便宜御説明申し上げます。お尋ねのありました点、私ちょっと席におりませんでしたから、あるいは誤解いたしておるかもわかりませんが、一応営内居住というものはどういうものであるか、どういうふうに考えておるかということを御説明申し上げます。営内につきましては、たとえば陸軍等におきましては、いわゆる丘営その他の屯営あるいは、官衙学校等も一応含むと考えております。それから営内居住すべき者という場合におきましては、法令その他特別の根拠によりまして、営内居住することが義務づけられておる者ということでありまして、たとえば陸軍について申し上げれば、御承知の通り兵役法現役兵現役中これを在営せしめる、こういうような規定がございまするので、兵は少くとも在営義務がある、かように考えていいかと思っております。それから次に下士官につきましては、これは陸軍武官服役令でございますが、その規定の中に、「部隊編入中ノ下士官ハヲ営内二居住セシムシ陸軍大臣ハ其ノ定ムル所二依り之ヲ営外二居住セシムルコトヲ得」こういう規定がございまして、原則的に下士官営内居住義務を負っておりまするが、陸軍大臣が定めました範囲の者につきまては、営外居住が建前になっておる規定がございます。そうして営外居住いたしまする範囲は、陸軍大臣が別に陸軍省令できめておりまして、いわゆる曹長の、二等以上の給料を受けておる――二等と申しますと七十円ですか、それ以上の給料を受けておりまする者は、営外居住させ得る、こういうことになっておりまするので、それを除きました下士官は、一応営内居住義務を負っておるものだ、かように考えてよろしいかと思っております。それから将校その他の方々につきましては、特別に法令上の根拠によって、宮内に居住するということの規定がないようでございまするので、これらの人たちあるいはその他の人たちにつきましては、法令上の根拠がなくとも、たとえば軍命令あるいは師団命令とか部隊命令等によりまして、特に営内居住するということが明瞭に立証され得るような、そういう事態にありました場合におきましては、それは営内居住する義務があったものと考えてよろしかろうと思っております。ただしそれの立証につきましては、今からのことでありますので、個々の人についてこれをやることはなかなか不可能でございますので、一般的にそういう特別の措置が講ぜられておったかどうかということの認定の問題になるかと思っております。  海軍につきましては、特に今のようなはっきりした規定はございませんが、兵役法陸軍海軍とも適用がございますので、兵につきましては海軍も同様でございます。下士官その他の者につきましては、海軍につきましては、いわゆる勤務の性質上艦船居住ということが主でございますので、海軍外出規則と申しまするか、そういうような規定におきまして、艦船部隊あるいはその他集団的に特にある所に居住するような、まとまって起臥をともにするようなことになっておりまする範囲の者につきましては、外出についてある制限がございまして、勝手に出て行ってはいけない。ことに艦船等におきましては、半舷上陸とかあるいは三分の二上陸というような規定があるようでございますので、その意味ではいわゆる外出が直接禁じられておるのでありまして、間接にはある艦船その他の部隊居住することの拘束を受けておる。逆にさらに進めて申しますれば、そういうところに居住する義務があるものと推定してよかろうかと思っておりますので、そういう範囲の者につきましては、やはり海軍におきましても、営内居住すべき者に入り得ると考えております。  それから先ほど私、官衙学校等と申しましたが、それは営内居住すべき当の範囲には入りまするが、この特例法規定してございまする二条の規定の中で、そういう営内に局住すべき者で、在職期間内に職務に関連して負傷し、疾病にかかってあと死亡したという条件がございまするので、その条件に当てはまらなければ、官衙学校等において居住義務を負っている者でも、この特例は受けない、こういう結果になると考えております。
  7. 大村清一

    大村委員 営内居住すべき問題については、各種の場合を御言及になったのでありますが、私の問題にいたしておりますのは、士官学校生徒空襲によって死亡した場合において、この特例法適用するときに、士官学校生徒は、確かに居住すべき場所は士官学校寄宿舎というように指定されておると思うのであります。しかし聞くところによりますると、士官学校奇宿舎営内にあらずというような解釈があるやに聞いておるのであります。本特例法適用上において、営内居住すべき者の中には士官学校生徒は含まぬか、これはその点で恩給受給資格が備わらないということになるおそれがあるように思うのであります。先ほど申し上げましたように、私は営内居住する者というのは居住の自由についての制限でございまして、それが営内という文理に強く拘束されるものではないという立法趣旨であろうと考えるのであります。他の点はよろしいのでありますが、この点を端的に伺っておきたいと思うのであります。
  8. 三浦義男

    三浦法制局参事 ただいまの点をお答えいたしまするが、先ほど申し上げましたように、学校は一応営内に含むと考えますので、士官学校も同様に営内の中に含まれると考えておりまするが、ただ問題は、そういう営内居住すべき者が在職期間内に疾病負傷にかかったか、どうかということが問題でありまするので、その点において、ただいまの事例は、この特典を受けるか受けないかということの問題になるだろうと思っております。在職期間と申しまするのは、援護法の第三条でしたかに、在職期間規定がございまして、就職から退職までということになっておりまして、特に準軍人学生等につきましては、就職と申しまするのは、いわゆる改正前の恩給法の二十七条の規定がございまして、「準軍人就職トハ戦務戒厳地境内ノ勤務ハ外国鎮戍ニ服スルコトヲ謂ヒ退職トハ勤務終ルコトヲ謂フ」という規定がございます。従いましてこの就職から退職までの期間に、そういう事態に、その具体的の場合が入り得るかどうかということが問題でありまして、その場合に問題になりますのは、つまり戦務にそれが該当するかどうか、戦務によってそういう事態、そういう結果を生じたかどうかということが問題だろうと考えています。
  9. 大村清一

    大村委員 ただいまの御答弁によりまして、士官学校営内入るということが明らかになったのであります。その点から申しますると、この特例法が、適用上について不利ではないと思っております。ただ問題は戦務の点でありますが、戦務につきましては、ただいま提案者からの御見解もございまするし、また恩給局長からもこれに対処する方法について御説明もありましたので、願わくは一つその趣旨、方針によりまして、この特例法恩典に浴し得るようにお取り計らいを願いたいと存じます。
  10. 辻政信

    辻委員 関連。一つはっきりさせておきたいと思います。それは新潟県の遺族から私のところにひんぱんに手紙が来ておりますが、その一人息子を海軍兵学校に入れて、江田島で爆撃を受けて即死しております。こういう者はこの法令適用に当然入るべきものと思うが、あなたの方はどういうふうに御解釈になりますか。職務に関連して……。
  11. 三浦義男

    三浦法制局参事 現在も、この戦務につきましては、恩給同等におきましての解状がございますので、一応法律的な私の方の見解よりも、実際の取扱いの衝にある恩給局の方から御説明していただく方がはっりしていいかと思います。
  12. 辻政信

    辻委員 われわれ立案した者の精神は、当然そういうものは含むという解釈で立案しておるのであります。というのは、戦務という解釈は大体日清戦争日露戦争当時の観念から出ております。戒厳とか戦務というのは古い。この太平洋戦争というのは、国内ももちろん戦場になっておるのであります。職務という従来の法令上の解釈を、戦争様相複雑化に従って皆さんは拡張解釈なさるように、海軍兵学校学生爆撃を受けて吹っ飛んでおります。これはわれわれからいえば議論の余地がないのです。お役人が仕事をされるときには既成の概念でなるべく狭く狭くという、おまわりさんのような気持でこれを適用するから、これは牧師さんのような気持適用してもらいたい。このことを特に申し上げておきます。数は至って少いから、予算にはほとんど影響はありません。
  13. 八巻淳之輔

    ○八巻政府委員 ただいまの辻先生お尋ねでございますけれども、先ほどまだ辻先生がお見えにならないときに、大村先生お尋ねに対してお答えしたと同じようなことでありますが、職務指定内地まで広げられた。大東亜戦争の後に内地まで広げられました際に、その指定の仕方というものは、各防衛部隊というものを押えて指定されました。それが昭和十七年と十八年の二回、陸軍次官からの通達によりまして指定されておるわけであります。私どもが今考えてみますと、昭和十九年、昭和二十年、だんだん戦争が苛列になって本上空襲が盛んになった。かような事態に対応してその指定がずっとブランクになっておる。いろいろな事務増高の際に、その指定がおくれておったんではないかと今になってみると考えられるのでありまして、そういうふうな戦争末期における実態に即するような形で戦務というものの解釈と申しましょうか、その指定を延ばしていくというような面で、陸海軍省の跡を受け継いでおりますところの厚生省と私の方とで研究をいたしまして、具体的な措置に合うようにいたしていきたい、こう思っております。
  14. 山本粂吉

    山本委員長 受田君。
  15. 受田新吉

    受田委員 具体的な措置に合うように、厚生省恩給局と御相談されるという御発言が今あったわけです。恩給局恩給法精神に首尾一貫して作業を進められておると思っておりますが、厚生省と打ち合わして措置されるということはどの点でございましょうか。
  16. 八巻淳之輔

    ○八巻政府委員 先ほども申し上げましたように、職務指定をするにつきまして、防御部隊というものを個々指定するのは陸軍省におまかせしたわけです。そこでその陸軍省仕事を引き継いでおります厚生省というものは、その当時の作戦の状況というふうな、各部隊の行動というものを全部掌握しておるわけなんでおります。そういうデーターなしに、私の方がそれを一つの目安を作るということはこれからとして無理なのでありまして、あくまで厚生省の協力なしにそういうことはできない、こういう意味であります。
  17. 受田新吉

    受田委員 今辻委員の質問は、海軍兵学校生徒身分にあった者の爆死を戦務であると指摘されておるのでありますが、海軍生徒軍人でなくて、これは準軍人解釈すべきものでありますか、あるいは軍人という広義の解釈恩給法上なし得る道がありますか。そういうことによって今の厚生省との御相談が有効か無効かという結論にもなろうかと思います。
  18. 八巻淳之輔

    ○八巻政府委員 準軍人就職と申しますか、恩給法在職するというのは、こういう場合だけに就職するのだというふうに限定がございます。準軍人という身分を持っただけで恩給法上、の公務員としてその在職年を見たり、あるいは公務に起因したいろいろな処遇を見たりするというようなことではなくて、準軍人身分であっても、一定条件が整った勤務に服するということによってその在職というふうに考えられるわけであります。準軍人すなわち軍人だ、こういうことではない、そういうふうに御了解を願います。
  19. 受田新吉

    受田委員 現在の自衛隊幹部の卵である防衛大学学生、これは公務員の一歩手前の勤務をしておるわけですが、恩給法上の特典が与えらるべきか、あるいは与えない方がいいのか御説明いただきます。
  20. 八巻淳之輔

    ○八巻政府委員 現在の恩給法におきまして、自衛隊のそうした学校生徒恩給法公務ではございません。
  21. 受田新吉

    受田委員 これは恩給法上の体系から言うならば、陸海軍生徒とそれからこの自衛隊幹部の卵である防衛大学学生とは、同一に律すべき筋合いのものでありませんでしょうか。
  22. 八巻淳之輔

    ○八巻政府委員 お尋ねの通り学生生徒ある、こういう身分におきましては全く同一でありますけれども、旧恩給法におきまして、そうした学生生徒であるけれども戦務に服した、あるいは戒厳地境内の勤務を行なった、こういう場合におきましては平たく言いますと軍人として扱う、こういうことなのでありまして、学生生徒であるという身分においては現在の自衛隊学生というものと何ら変りはありませんけれども、それが戦務に服するということによって、それによって生じたところの問題を恩給法上の公務員として扱う、こういうことになっておるわけであります。
  23. 受田新吉

    受田委員 防衛大学学生国家公務員と私は見まするが、いかがでございますか。
  24. 八巻淳之輔

    ○八巻政府委員 防衛大学学生が、学生だけで、どうであるかということについてははっきりいたさないのでありますけれども、その人が少くとも一等陸曹とか一等海曹とかそれぞれの自衛官としての身分を持って学生であるという場合と、それから全然そういう身分を持たないでただ単に卵である、そういうこととは違うのではないかと思うのでありますが、私は実際は防衛大学学生というものがそういう身分を持っておる学生であるのか、あるいはそういう身分を持たないでただ単に学生であるのかそういう点を知悉しませんので、防衛大学の学年がそのまま恩給法上の公務員じゃないとも言えませんし、またあるともお答えいたしかねるのでありますけれども学生だけであるということでありますならば現在恩給法上の公務員でない、こういうことだけは申し上げられると思います。
  25. 受田新吉

    受田委員 私は防衛大学学生は厳然たる国家公務員であると規定した身分があると思います。その純然たる、明らかなる国家公行員恩給法適用をしないということになるならば、その理由がきわめて明瞭なものがなければならないと思うのでありまするが、それは元の陸海軍生徒にも関連する問題でありまするので、恩給体系上の問題として御答弁を願いたい。
  26. 八巻淳之輔

    ○八巻政府委員 ただいま国家公務員であるがゆえにというお話がございましたけれども国家公務員が全部恩給法上の公務員ということにはなっておりませんので、恩給法国家公務員の中でこれこれのものを恩給法上の公務員であるというふうにしぼってきております。でありますから自衛隊防衛大学学生国家公務員であるということだけで、恩給法上の公務員であるということにはならないということを御承知願いたいと思います。
  27. 受田新吉

    受田委員 私はさらにこれに関連して、昨年七月四日、当内関委員会において、当時、ここにおいでの宮澤さんが委員長をしておられるときに、七月四日の冒頭床次議員より「未帰還公務員については、その特殊性にかんがみ現行恩給法若年停止一定適用を排除するとともに、未帰還公務員が死亡した場合の公務扶助料については、その死亡した日の属する月の翌月から支給することが妥当であると思われるので、これらに関し早急に検討の上修正あらんことを要望する。」という海外同胞引揚及び遺家族援護に関する調査特別委員会から本委員会に出された要望事項を朗読され、自後これに対して質疑応答が行われておるのであります。このことについてお尋ねしたいのでありますが、未帰還公務員は、その・特殊性にかんがみて現行恩給法中に若年停止規定がある部分を削除してくれ、こういうことなんです。昭和二十八年七月三十一日をもって、そのときに満十三年に達しておった公務員である軍人は、普通恩給に切りかえて給与を支給する、こういうことに法律的になっておる。それがその年の恩給法の一部改正法律の附則三十条二項にある。これはいかがお考えでございましょうか。いかが取り扱うべきか、この委員会で問題にされた若年停止規定を削除する問題は、恩給局長としてどうお考えか、御答弁願いたいと思います。
  28. 八巻淳之輔

    ○八巻政府委員 未帰還公務員の普通恩給について、その留守家族に普通恩給を支給するという場合におきましては、若年停止を排除したらどうか、こういうお尋ねだと思うのでございますが、未帰還公務員につきましての恩給法適用といたしまして、御承知の通り恩給法の三十条で、未帰還公務員在職年が、軍人でありますれば、将校であれば十三年、下士官、兵であれば十二年、文官でありますれば十七年というふうな年限がたちますと、普通恩給がつくわけです。ただしかし二の未帰還公務員の場合には、そういうふうな年限に達しても、その恩給を本人に至急することはできないので、そのかわりに留守家族に支給する、こういうことにしてあるわけです。そこで元来恩給というのは本人に専属しておるわけでありまして、本人の年令が五十五才未満であるということになれば、若年停止規定適用を受けて満額の普通恩給をもらえない、その留守家族もまたその代理の支給を受けるという意味におきまして満額の支給を受けない、こういうことは当然のことになってくるわけであります。従いまして、留守家族であるがゆえにその満額を支給してはどうか、こういう問題でございますけれども、これはあくまで恩給法本来の問題じゃなくて、留守家族援護対策一般の問題として考えていただけないだろうか、こういうことでございます。また現実の問題といたしまして、留守家族一般につきましては、兵の公務扶助料と同じ額の三万五千二百四十五円でしたか、これがいっておるわけでありまして、少くとも兵、下士官につきましては、その人が十二年に達してもらう普通恩給がまるまるいきますよりも多い額が、兵、下士官の留守家族にはいっておるわけでございます。従ってフルにもらえるということによって利益を受けるのは、大体階級の高い者であろうと思うのであります。また階級の高い人も、現在終戦後十年たっておりますから、大体は五十五才以上になっておる。こういうような事情からいたしまして、若年停止の排除ということによって恩典を受けるという方々は非常に限定されてくるのではないだろうか、こういうようなことを考えますと、恩給法本来の筋をなるたけくずしたくない、もし考えていただくならば留守家族援護対策全般の問題として考えていただきたい、こういうふうに考えているわけであります。
  29. 受田新吉

    受田委員 恩給法規定された事項を援護対策で考えろというのは、非常に筋の通らぬ罪なのです。そうしたらこれは初めから恩給法に入れなかったらよかった。未帰還公務員に対して普通恩給を支給する規定がある以上は、その法律趣旨に基づいて政府は考慮されなければならぬ。これに入ったらまぎらわしいのであって、もともとこれは援護対策だということになると思うのですが、局長とされては、この未帰還公務員恩給は、恩給法に入れるべき筋合いのものではない、原則論から考えてこの法律は誤まっていたとお考えでしょうか。
  30. 八巻淳之輔

    ○八巻政府委員 未帰還公務員に対する恩給の処遇の問題について、第三十条というものは恩給法の本来の筋を通しながら、しかし未帰還公務員の留守家族にはこれを代理に支給するという方法を構じただけでありまして、それ以上に出ないというふうにお考え下さい。
  31. 受田新吉

    受田委員 そうすると非常に責任が軽い意味にお考えになっているようですが、私は今法制局第一部長が急いでいるようでありますので、これに関連した法制技術上のお尋ねをしたい。もし私が今指摘しました未帰還公務員の普通恩給を受ける者の若年停止排除の規定をここで修正案として出す場合に、今日自民党の各位から出されたこの法案の本則の中でそれをうたうべきか、附則の中でうたうべきか、いずれにせよ修正が可能な問題であるかどうか。これは昨年本委員会に出された党派を越えた申し入れに対して、本委員会が取り上げた問題でありますので、この委員会として責任を果さなければなりません。委員会は昨年七月四日からまさに一年を迎えようとする今日、再びこの恩給法上の問題を論議する段階にきたのでありますが、これを忘れたごとくに考えられていることがないようにしなければなりませんので、法制局第一部長としての御見解を伺いたいと思います。
  32. 三浦義男

    三浦法制局参事 今度議員立法で出ておりますのは、本邦等において負傷し、または疾病にかかり、これにより死亡した旧軍人または旧準軍人遺族に対する扶助料及び遺族年金特例法でございまして、特にこの前提が非常にございまして、一定のワク内におきまして、この特例法で出すという建前にこれがなっておりますので、今のお話の点、私前にここで論議された内容をよく存じませんが、そういう問題につきましてかりに改正をしようという場合におきましては、法律の形式の上から申し上げますれば、恩給法自体を直接改正するか、あるいはこの特別法の中で取り扱うとすれば、特例法の中の本則の問題でなくて、附則の方で別途に恩給法の一部をさらに改正するというような形式が望ましいのではないか、かように考えます。
  33. 眞崎勝次

    眞崎委員 ちょっと関連して……。さっきから士官学校生徒、兵学校生徒身分取扱い、それから戦時勤務と認めるか認めないかの解釈について質疑応答があったようでありますが、従来海軍で取り扱ったところを御参考までに申し上げて、ぜひともそういうものは戦時勤務とみなしていただきたいと思うのでございます。大体兵学校生徒は軍籍にある軍人でありまして、下士官の上、準士官の下、 こうなっております。しかしながら恩給の対象とはなっておりません。候補生になったとき初めてその勤務年限が恩給の対象になっております。それでまたそういう者が死亡したときに進級させます慣例からいいますと、平時勤務においていわゆる公務、戦時においては職務でなければ特別の進級をさせておりません。ところが兵学校生徒爆撃で死んだというような場合に特別に候補生に昇進をさせ、また士官学校生徒もそういうふうに取り扱ったということは、恩給法令の中に含む取扱いをその当時にしておるのでありますから、また当時の責任者がこういうふうな進級をさせておることから考えまして、当然戦時勤務と認めて恩給の対象にいたしてもらうのがほんとうじゃないかと思いますので、一言申し上げておきます。
  34. 受田新吉

    受田委員 引き続き未帰還公務員若年停止規定について触れ、あわせて法制局第二部長にお尋ねしたいのであります。未帰還公務員恩給若年停止をやめてはどうかという議論は、若年停止という恩給体系をくずすものであるとしばしば政府当局は言うておられる。しかし若年停止規定というのは、もともと恩給法体系の上にあったものではなくして、戦後現われたものであると私は思うのです。従って恩給体系上の問題ではないと思うのでありますが、いかがでありましょう。
  35. 野木新一

    ○野木政府委員 若年停止の点について十分研究して参りませんでして、御満足いくような答弁はあるいはできないかと存じます。恩給法の今までの沿革につきましては、むしろ恩給局の力からお答え願った方がよいかと思いますが、御指摘の点につきましてはなお研究してお答えいたしたいと存じます。
  36. 八巻淳之輔

    ○八巻政府委員 若年停止規定は、恩給法が大正十二年に総合的に一本にまとめられたときからできたものではございませんが、たしか昭和八年の大改正があったときから若年停止規定が加えられた、こう思うのであります。そしてまたその若年停止の押え方というものは、逐次年令の上のところへ上げられてきたというふうな沿革を持つものでありまして、昭和八年からすでに二十年を経ておる今日、若年停止のものの考え方というものが、恩給法といいますか、恩給制度そのものの中に溶け込んできている、こうも考えられないことはないのであります。ただ昭和八年に大改正のあった当時の考え方といたしましては、恩給法恩給制度をそのまま野放しにしておくことによって財政的な負担が非常に広がるのをおそれて、そういうふうな方法をだんだん講じてきたというふうに考えられるわけでありまして、その手法として恩給制度の一環と今やなってきておる、こういうことを申し上げるわけであります。
  37. 受田新吉

    受田委員 大改正昭和八年でしたか、わずかに三十八でしたかの若年停止規定が生まれたと私記憶いたしておりますが、戦後の改正で、特に最近の改正若年停止規定が非常に強化された。恩給法の建前からいうたならば、若年停止というものは原則論にはならぬと思う。若年停止というものはそもそも予算上の都合もあろうが、これは社会保障的な観点から見られるもので、若い人は働く能力がある、能力のある者に国家が給与上の恩典を与える必要はないじゃないか、こういうところから原理が成立してきておると思うのです。だから恩給法そのものの建前からいったら、国家の公務に従事した者に対して国が反対給付を与えるという解釈で十分間に合うので、若年停止規定恩給法の本則として見るべきではなく、社会保障への前進基地として、恩給法が順次純然たる恩給法の建前からやり切れなくたった一つの証拠です。恩給法をだんだんくずして、これが国民年金への発展の過程に行く一つの一里塚が若年停止規定となって現われた、私はかように考えております。そういう意味からいったならば、法理論の上からいっても若年停止というものは恩給法の建前からは考えられない規定である。法制局においてもさように解釈されるのが私は妥当であると思うのです。従ってここに未帰還公務員だけは例外を作らなければならぬ。なぜかというと、戦後十数年帰ってこれない人々は、本人がここにおらぬのであって、その留守家族に渡す普通恩給は年が四十五にならぬから若年停止だ、四十五以下の者には恩給を渡さぬということになったならばこれは大へんな問題である。年が若くても本人がそこにおらぬ。その子供が帰らぬためにその親に与える精神的、物質的な苦痛は容易でないということを考えた場合には、若年であろうと何であろうと、帰らざる人である以上は普通恩給を支給すべきじゃないでしょうか。特に現行恩給法の中においても、けがをしたり病気である人々はこの恩給法規定によっても若年停止規定がない。年が若くても傷病者の場合の恩給は全額を支給しておるのです。そういう規定もあるのでありまして、若年停止規定をやめても傷病者と同じ、いや、本人がそこにおらぬのですから、傷病者よりもっとひどい規制を受けておる対象が私は未帰還公務員だと思うのです。はなはだお気の毒な立場にある人々でありますがゆえに、恩給法上においては傷病者の恩給を受ける人と同等の若年停止規定を削除すべきではないかというこの委員会の論議も、私は肯定できると思うのであります。局長さんは御新任まだ日浅くして、御苦労ではございましょうが、信念を持って御答弁を願いたい。
  38. 八巻淳之輔

    ○八巻政府委員 御説の点よくわかるのでありますけれども、実際問題といたしまして未帰還者で普通恩給を受けている者はたしか百八、九十名ございます。そのうちの九〇%が将校でございます。この方々の中で七割しかもらえないとかあるいは五割しかもらえないとか制限をつけられておる方は大体その中の三割、あとの七割は大体全額を受けておる、こういうふうな実情でございまして、数からいっては非常に少い。先ほど申し上げましたように、兵、下士官のクラスにおきましてはその方が十二年になって満額普通恩給をもらえたとしても、それよりも多い額の公務扶助料と同額の年額巨万五千円という留守家族手当を受けておるのであります。従いましてこの具体的な措置というものは一体どういう意味を持つのか、観念的には留守家族であるがゆえに本人は向うにおるのだ、従って若年停止規定というものを撤廃してもいいのじゃないかという点につきましては、確かにそういう御意見もあろうかと思うのでありますけれども恩給法の建前の問題からいいましても、具体的な問題からいいましても、そのままこれをすぐどうこうするということはどうだろうか、私も現在のところ自信がないのであります。
  39. 受田新吉

    受田委員 自信がないというえらいさびしいお気持のようですが、しかし局長さん、私は未帰還者の現状を見ましょう。もう一度指摘してみましょう。昭和三十一年七月三十一日も間がないのでありますが、十三年に達した兵隊の人が今年になったら大量に入るはずです。昭和十八年ころに入隊した人がほとんど全部であると言っていいのでありますから、昭和三十一年七月末現在で普通恩給を受けることができるとこれを改正したならば、兵、下士官の階級にある人が大量に入ってくるわけであります。さようにお考えになりませんか。
  40. 八巻淳之輔

    ○八巻政府委員 今御指摘がございましたように、兵隊の方々がもうすでに大部分でございますが、終戦後十年ほどたっておるため、そういう人についても普通恩給がつくではないか、こうおっしゃるわけでありますけれども、現在そういう方々の留守家族には留守家族手当、すなわち先ほど申し上げましたように、公務扶助料と同じ額の三万五千円という留守家族手当がいっておるわけであります。その人にまた普通恩給が全額参りましたといたしましても、それに及ばない、それよりもさらに相当下回ったものがいくわけなんでありまして、普通恩給が下回っておる場合には留守家族手当の方を支給するということで、もしも普通恩給の方がオーバーするという場合には、そのオーバーした額は、そのオーバーする方の普通恩給に切りかわる、こういうふうになっておるのでありまして、現実の問題といたしましては、大部分の兵の留守家族をいうものに対しては普通恩給が満額いくよりも多くの額の留守家族手当がいっておる。すなわち公務扶助料と同額のものが支給されておる、こういうことを御了承願いたいと思います。
  41. 受田新吉

    受田委員 これに関係してすぐ問題が起るのは、普通恩給を受ける公務員が死亡した場合、これは現在の留守家族手当をもらっておる人が死亡しても同様でありますが、公務扶助料を支給することになる。これはあわせて質問しておきますけれども公務扶助料を支給されるのは死亡が確認された後でなければならないように恩給法でなっておるのです。ところが死亡は四、五年前であった、発表がおくれたという場合に、公務扶助料の支給を既往にさかのぼってしてあげる方が有利であるという場合がしばしば起ってくるわけであります。従ってあなたがおっしゃったように、普通恩給が低いときには留守家族手当の方の差額は払い戻ししなくてもいい、普通恩給が多いときには普通恩給を出すというように、すべて条件のいい方をとってやればいいのであって、一ぺん払ったうちから差し戻し、返還せよというような規定を作るのは、とんでもない冷酷な規定でありますから、これはわれわれは許されないと思います。従って、死亡の日にさかのぼって公務扶助料を支給した方がいい条件にある人には、死亡確認の日よりは、事実死亡の日にさかのぼって公務扶助料を支給するという規定にしておく方がこの点においても私は有利であると思いますが、そういう取扱いがあわせここで要求されておりますけれども、御見解を伺いたいと思います。
  42. 八巻淳之輔

    ○八巻政府委員 未帰還公務員公務扶助料につきまして、現在の恩給法附則の三十条というものの建前が、公務員の死亡の判明した日から公務扶助料に切りかわる、こういうようなことになっておるのでございますが、これを現実の死亡した日にさかのぼって支給すべきではないだろうか、こういうお尋ねだろうと思うのです。この問題につきましては、現在留守家族手当というものが、兵の公務扶助料と同額の三万五千二百四十、五円でございまして、大体の兵の方々の留守家族につきましては、現実の死亡のときにさかのぼろうと、あるいは死亡判明のときから公務扶助料に切りかわろうと、その額においては変りがないわけであります。ところがもしも死亡判明のときからということにさかのぼって公務扶助料ということになりますと、現在相当高額の普通恩給を受けておる方々、すなわち佐官以上の方々については、逆に今までもらっておった普通恩給の一部分を返さなければならぬ、こういうふうな、不利になる人が出てくるわけであります。今受田先生のお話によりますと、そうした不利になる人はそのままほっておいて不利にならないようにすればいいではないか、こういうようなお話でございますけれども、問題の筋といたしまして、そういうふうな扱いをするということになれば一律に扱わなければならぬだろうと思うのであります。それからまた公務扶助料をさかのぼって支給するという問題が起きましたのは、留守家族手当も受けられない、また恩給法上の普通恩給も受けられない、こういうふうなエア・ポケットを一体どうするのだ、すなわち留守家族手当の対象にならないような、次、三男を中共、ソ連に抑留されておるような、そうした父母、そういうものは留守、家族手当の対象にならないのだけれども、こういう人は、一体どうするのだ、こういう方々に対しても何らかの処遇を講ずるために公務扶助料というものを現実の死亡判明のときからさかのぼらせるのがいいのか、あるいはそういう人にまで留守家族手当というものを範囲を広げるのがいいのか、こういうような問題になってきていると思うのでございます。先ほど申し上げましたように、公務扶助料をさかのぼらせるということになりますと、一方において逆に返さなければならぬ不利をこうむるというふうな方々が出てくるのでございまして、恩給法の立て方の上で現在の死亡判明のときからというのをこわしまして、現実の死亡日にさかのぼってやるということについてはいかがか、こう考えている次第であります。
  43. 受田新吉

    受田委員 二十八年の七月末の法律改正までは死亡の日にさかのぼって支給していたと私は了解しているが、いかがでございますか。
  44. 八巻淳之輔

    ○八巻政府委員 恩給法本来の姿からいいますと、現実の死亡のときから公務扶助料が支給される、こういうことになっておるのでございますけれども、未帰還公務員に関する処遇といたしまして、死亡が判明するまでは、あるいは本人が生きて帰ってくるまでは、生存してずっと在職しておる、こういう考え方で立法されてきているわけでございます。従いまして、当初は在職しておるということによりまして未復員者給与法というふうな形で現実の在職者としての給与が支給されておるというような時代もあったのでありますが、その後それが一本に統一されまして、留守家族手当という形に切りかわってきたわけであります。でありますから恩給法援護法との関係におきましても、本人が生きて帰ってくる、あるいは死亡が判明するよでは、これはあくまでも生存して在職しておるというふうな考え方できておりますので、従って死亡判明のときからそれは死亡者として扱うというふうな筋を通してきておるので、それを逆にある特定の人が救われないからこれをひっくり返すということは、なかなか法体系の上からいってむずかしい問題ではなかろうか、こういうふうに考えております。
  45. 受田新吉

    受田委員 局長さんの理論は一貫していない向きがあります。それはこの法改正以前は、死亡の日にさかのぼって公務扶助料を支給する規定ができておる。それが事実一番正しい行き方だと思います。ほんとうに死亡した日から、公務扶助料を出すべきものなんだ。ただそれがソ連、中共等から帰るのがおくれた。すでに四、五年前に死んでいて、死んだということがはっきりしていたことが、故国に帰ることがむずかしくて故国に伝えることができなかったという場合に、留守家族の身になって一つ考えてみましょう。自分の家は次男であったために援護法上の特典もうけておらぬ。すでに昭和二十五年に死んで六年間たっている。過去六年間の分は、死亡確認がおくれたために一切、務扶助料がもらえないんだ。事実は二十五年に死んでいるんだけれども、六年分の公務扶助料を普通だったらもらえているのが、法律上の規定のためて自分の次男は、ようやくことしも戻った人から聞いて死んだ日がわかったために、死亡確認の日をもととして公務扶助料をもらえることになったというときに、その遺族気持はどうでしょう。また国家としても、事実死亡しているその日から六年間、これは内地で死亡しておったならば当然公務扶助料を出すべき期間だ。それを全然公務扶助料を出さぬで死亡確認の日から出すというやり方は、法律体系を乱すものであると考えるが、いかがでございましょう。
  46. 八巻淳之輔

    ○八巻政府委員 今例示をなさいましたように、次三男の父母という方々が留守家族手当の対象にならない。こういう具体的な問題をどうするか。この人たちを救うために、公務扶助料を現実の死亡のときにさかのぼらせるというふうに法体系を全部見直していくかということが一つ。それから、あるいは留守家族手当の対象範囲を、留守家族手当の援護法体系を見直して範囲を拡げるかという問題。これには解決の方法が二つあるというふうに受け取っておるのでございますが、私の方の立場から申し上げますと、あくまでも恩給法が、援護法との関係におきまして死亡判明のときまでは、生きて在職しておるという考え方できておるということでございまして、一方にまた先ほど申し上げましたように、そうしたさかのぼって支給するという建前をとりますと、不利益をこうむる人が相当出てくる、こういうふうな見方からいたしまして、公務扶助料の方をさかのぼらして考えるというふうな解決の方法は、なかなかむずかしいんではなかろうか、こう申し上げたのであります。
  47. 受田新吉

    受田委員 不利益を受ける人は、高額所得者、佐官級以上の人で普通恩給をもらっている人が、公務扶助料よりも高い率のものがおるわけです。そういう人々がなくなっておられたという場合には、その差額を支払わなければならぬという問題が起るんですが、ここはすでに支給した恩給の額はこれを返還するを要せず、というただし書きをつけて、特別を設けておけばいいんであって、今度山田大将が帰ってこられたからいいけれども、もしなくなっておられたとしたならば、大将の普通恩給をもらっていた分と、過去の大将の公務扶助料との差額、年額十万円くらいのものを払わなければいかぬだろう。これは大へんなことですからね。それをわれわれは申し上げておるんじゃないんです。すでにもらっておられる人々は、その間の苦痛料としてそれは返還しなくてもいいという規定を設けておけばいいのであって、救われざる人々を救うために、事実死亡した日にさかのぼって公務扶助料を支給する規定を設けておけば、どちらもとられると思うんですが、つまりある部分を返還しなければならぬ人々は返さなくてもいいという特例を設ければ、これは特殊の例外でありますから、そのくらいの特例を設けたって恩給法体系はくずれるわけではないのです。事実死亡した日にさかのぼって公務扶助料を支給する、ただし死亡確認の日までにすでに支払った普通恩給はこれを返還するを要せず、これだけでいい。こうしておけば私は筋は通っていくと思う。そうすれば全部救われる。全部を救うという態勢をおしきになるのが、政府の態度としては最良の態度だろうと思いますから、もう一度御考慮をわずらわしたい。
  48. 八巻淳之輔

    ○八巻政府委員 そういうふうなすでに高額の普通恩給を受けておる人には、死亡判明の日から公務扶助料を支給することにしても、その場合に一種の二重給与になるという形があってもこれは大目に見たらどうか、こういうふうなお話でございますけれども、それはわれわれ事務的な筋ばかりを考えておる人間以上の御配慮に基くものであろうと思うのでありまして、私どもがここでそれに対してすぐどうこうというふうなことを申し上げることは、なかなかむずかしいと思うのであります。少くとも方法として、公務扶助料を現実の死亡時にさかのぼらしてやるという方法か、あるいは留守家族手当の支給範囲を広げるかという二つの方法を考えるわけでありますが、現実の問題を救うという意味におきまして、二つの問題が考えられると思うのでありますけれども、いずれが妥当であるかということにつきましては、将来とも研究をさしていただかなければならぬと思っております。
  49. 受田新吉

    受田委員 昨年七月四日にこの委員会でこの問題が持ち出されておったのですが、すでに一年になんなんとする間相当御研究をいただいておると思う。そして今回出された大平さんを中心のこの特例法案の中にも、せめて昨年この委員会で問題になった不幸な未帰還者の留守家族の立場を思って、この法改正は附則としてでもつけてお出しになるべきだ。今法制局第一部長三浦氏の御意見によるならば、附則で十分この改正が盛り込めるという御答弁もあったわけです。この問題は、該当者はきわめて少いことだし、予算的にはほとんど問題にならぬのでありますから、高き人道の立場から、今局長さんは自分たちよりはもっと高い立場でというお言葉があったわけであります。恩給局長として事務的な処理をなさるきわめてまじめなお役人としてのごもっともな御答弁があった。従ってこの際法案の修正点として、今私が申し上げておる問題を十分盛り込んでいただく。これは大平さんをして わしむるならば、銭が要るか要らんか――銭は要らぬのです だからこれは一つぜひ盛り込んでいただくように要望しておきます。  時間も刻々迫ってきておるし、今昼食に出られる方もおいでのようでありますから――委員長、きょう質疑を打ち切りますか。
  50. 山本粂吉

    山本委員長 午後まだやります。
  51. 受田新吉

    受田委員 それじゃ午前中の質疑は一応これで終ります。
  52. 山本粂吉

    山本委員長 暫時休憩いたします。     午後零時十分休憩      ――――◇―――――  〔休憩後は開会に至らなかった〕