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1956-03-15 第24回国会 衆議院 内閣委員会 第24号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年三月十五日(木曜日)     午前十時三十七分開議  出席委員    委員長 山本 粂吉君    理事 大平 正芳君 理事 保科善四郎君    理事 受田 新吉君       大坪 保雄君    大村 清一君       北 れい吉君    小金 義照君       椎名  隆君    薄田 美朝君       高橋  等君    辻  政信君       床次 徳二君    眞崎 勝次君       松浦周太郎君    宮澤 胤勇君       山本 正一君    横井 太郎君      茜ケ久保重光君    飛鳥田一雄君       石橋 政嗣君    稻村 隆一君       西村 力弥君    森 三樹二君  出席国務大臣         国 務 大 臣 清瀬 一郎君  出席政府委員         法制局長官   林  修三君  委員外出席者         議     員 山崎  巖君         専  門  員 安倍 三郎君     ————————————— 三月十五日  委員勝間田清一君辞任につき、その補欠として  茜ヶ久保重光君が議長の指名で委員に選任され  た。     ————————————— 本日の会議に付した案件  憲法調査会法案岸信介君外六十名提出、衆法  第一号)     —————————————
  2. 山本粂吉

    山本委員長 これより会議を開きます。  憲法調査会法案を議題とし、質疑を続行いたします。飛鳥田君。
  3. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 それでは憲法調査会法案について質問を申し上げます。  前回、たしか二十二特別国会だと記憶をいたしておりますが、私の本会議における質問に対して清瀬大臣は、この現行憲法マッカーサー憲法であるとお述べになり、これをその後取り消されたのでありますが、その御趣旨は、押しつけられた憲法であるというように受け取れるのでありますが、いまだにこうお考えになっていらっしゃるのかどうか、これから伺いたいと思います。
  4. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 私が現行憲法を簡略にマッカーサー憲法だと称しまするのは、ちょうど明治時代に作られた憲法明治憲法と言うのと同じでありまして、簡略化した名前であります。皆さんがその名前をおきらいのようでありまするから、あのときは取り消しましたが、今に至るまで私の演説論文等にはその文字は使っております。現行憲法ができましたときに、わが国では高論の世界一般における自由がなく、あの当時いかなる経緯でこの憲法案が提出されたかということはあまねく国民は知りませんでした。それから占領後、あのときはこうであったということが逐次判明いたしました。それによりますると、わが国当時の内閣、幣原内閣においても、松本博士主宰のもとに一案を用意心されたのでありまするが、昭和二十一年の二月の初めに、わずかなる時間で現行憲法の草案ともいうべきものができ、またこれをもとにして日本政府憲法原案の作成を要求せられたのは事実であります。押しつけるという日本言葉意味の広い言葉でありまするが、その状況を押しつけるというならば必ずしも言葉の乱用でもなかろうが、私自身としては押しつけの有無にかかわらず、一国の憲法占領時代すなわち国民が完全なる自由を持たぬ時代には制定するのはよろしくない、こういう考えを持っております。あのときの私の提案趣旨弁明演説をごらん願いたい。私は当時押しつけという言葉は避けて、占領時代にできたものだからということに重点を置いて説明いたしております。
  5. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 そういたしますと、マッカーサー憲法という呼び名は明治憲法と同じだ、そういう略称であるというふうに御説明になりましたお言葉をそのまま受け取りたいのですが、ところがあなたの御説明を読んでみますと、「国会を解放して、自主的、新たなる憲法と、マッカーサー憲法とどちらがいいかという選挙をやってみようと思っております。」こういうふうに述べておられる。すなわち自主性のない憲法である、今度作ろうとするものは自主性のあるものである、こういうふうに対置をせられておるのでありまして、決してこれはただ単に明治時代にできたから明治憲法と呼び、マッカーサー元帥占領中にできたものだからマッカーサー憲法と呼ぶというような単純な呼称のようには受け取れないのであります、あなたが占領誌代にでき上ったものである、こういう意味を含め、押しつけという言葉はあえて使わないが、実質的な意味としては同様なものと解釈をしてさしつかえない、こういうふうに今お述べになっていらっしゃる。そういうものを含めてマッカーサー憲法とお呼びになっているのかどうか、もう一度伺わしていただきましよう。
  6. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 重ねてお問いでありまするから申し上げまするが、あのときの私の説明は党を代表しての説明でありまして、党の同僚とも諮って、きわめて客観的に説明いたしておるのであります。ごく簡単でありますからそこを引用しますれば、「現行日本国憲法は、昭和二十一年、すなわち、わが国の主権が連合国最高司令官の制限のもとに置かれておった時代に制定せられました。ことに、その法文は、同司令部の示唆と指導のもとに、きわめて短時日の間に立案せられたのであります。」これは世間周知のことであります。こういうことを言いまして、具体的にマッカーサーとかホイットニーがこの案を作るについてフィジィカルな圧迫を加えたか、あるいはまた国会がこれを制定する際に連合国の意見を待って初めて修正が許された。私は当時追放最中でありましたから、事実知らないことは抜いておきまして、ともかくもあの降伏文書で、日本の天皇も、日本政府も、この指令のもとにあるんだというその指令則のもとにおいてやられたからということに重点を置いておりまして、具体的の圧迫事実には言及しないように自分で慎んでお吟ます。しかしながら今各方面でだんだんと明白になって、押しつけという言葉が院内にも使用されております。押しつけという言葉は俗語でありまするから、そういうことを押しつけということは言えぬでもないんです。本来民主主義自由主義に徹底したならば、今は占領中だから暫定憲法は作らしても、永久の憲法占領中に作らすということは遠慮すべしということは、マッカーサー考えてしかるべきものであったんです。その証拠にはこの戦争を始める最中にルーズベルトとチャーチルは、たとい勝っても負けても政府形態を他人に押しつけないという大西洋憲章を出しているんです。大西洋憲章を出している上から見れば、占領中に政府形態を作ってこのようにせいということを押しつけと言っても、日本の国語としては無理じゃないと思いますけれども、私はそのときはその言葉を避けております。
  7. 森三樹二

    ○森(三)委員 私は今の飛鳥田委員質問に関連いたしまして、清瀬文相にお尋ねし、特にあなたがこの憲法改正調査会の担当の大臣であるという地位を私は非常に重視しなければならぬと思うのです。あなたは本会議でもってマッカーサー憲法という言葉を使われて、それを取り消しなさった。その取り消しなさったということについては、やはり私はあなたに大きな反省があったからでなかろうかと思うのです。単にあすこの場を議会の議事の運営を一時しのぐために、あなたは自分の本心にもない取り消しをなさったものでなかろうかと思っておったんでありますが、ところが今のあなたの御答弁を拝聴しておりますと、自分はやはりその後もマッカーサー憲法という言葉を使っておる、しかもその使っておるのは、かつての旧憲法明治時代に作られたから明治憲法と言っておる、一つ呼称として呼ぶ上において便宜なためにそういう言葉を使っておるというような印象を私は受けたのであります。もしもそうだとするならば、これは一国の国務大臣であり、また文教の衝に当っておられるところの大臣としては、憲法九十九条に規定するところの国務大臣あるいは議員がこの憲法を十分に順守尊重しなければならぬという規定からいたしましても、非常に軽率な考えである。私はそういう考えでもって文教の任に当られるということは、まことに遺憾にたえないと思うのでありますが、ほんとうにあなたは単なる呼びやすいからというような簡単な考え方で言っておられるのか、あるいはそういう言葉を使って、それがすなわち押しつけられた憲法だ、自由な意思によってできたものでないというような印象国民に与えようとして、いわゆる現行憲法軽視、蔑視、排斥する意味において言っておられるのか、どうも私はそういうようにとれるのでありますが、御所見を重ねてお尋ねしたいのであります。
  8. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 今の御質問の趣意が少し私はとりかねたのでありまするが、あなたの御承知通り議会の本会議、または委員会もそうでありまするが、その空気というものは御承知通りで、あるいは言葉の言いそこないが、近時もちょいちょいあるのでありますが、そういうことで刺激されることがあるのであります。そこでマッカーサー憲法という言葉が刺激的のことだと見えまして、あなたの方から取り消せとかいったような声がありましたから、これは拘泥するに及ばぬから取り消しをしたのでございます。取り消しても、また取り消したのはけしからぬといって私に懲罰の動議が出ました。これはどこの国でも国会にありがちのことでありまして、しいて過去のことをとがむるに及ばぬと思います。私はあなたの方の態度を批評するということは、失礼でありますからしませんが、これは国会の常であります。ただマッカーサー憲法ということを使っておる人は、宮沢俊義という博士も使っております。田畑忍という人も使っております。(「人が使ったから、あなたが使っていいということはない」と呼ぶ者あり)あなたの方の西村榮一さんもお使いになっております。矢部貞治さんもお使いになっておる。そうすると、これをマッカーサー憲法というのは、それほど不当な用語でもなかろうと私は今思っておるのです。
  9. 森三樹二

    ○森(三)委員 私は清瀬さんが、あなたが戦犯の弁護をなさっておるときに、しばしば拝聴しました。また特に法曹界の大先輩として尊敬もしておったのです。ところが、あなたが現在の鳩山内閣に閣僚として入り、政党人として復活して以来のあなたの言辞というものは、非常に時代逆行する言辞を弄されておる。特にあなたは今、宮沢博士その他の方々が、マッカーサー憲法と言っていることを引用して、そうして自分の言っていることを肯定しようということは、まことに態度が卑怯であると同時に、あなたの信念のないことに、私は驚かざるを得ない。私は明治憲法と、マッカーサー憲法という称号自体が不似合いなものだと思う。明治憲法というのは、時代を象徴したものだ。現在の現行憲法時代的に言うならば、後世では、あるいは次の時代になった場合には、明治憲法と並んで、これを昭和憲法というかもしれない。何とか別な称号を申すかもしれません。現在において、つまり過去の時代を現わす言葉と、そうしてまた個人の名前を付した憲法を、しかも現在は日本現行憲法でしょう。しかも現行憲法の九十九条には議員国務大臣憲法を順守並びに尊重の義務を負わされているのではありませんか。それを言論の自由を保障されておるところの学者連中、それらの人々が呼んでいるから、私も呼んでもいいということは非常にあなた自身自主性がないと思う。私は一国の文部大臣がそういうような不信念な、しかも現行憲法軽視、そうしてそれを侮辱、拒否するがごとき態度をあなたはとっておられると思うのですが、これはわれわれはあらためてあなたの現在の地位に対する問題として、徹底的に究明しなければならぬと思うのでありますが、重ねてあなたは現行憲法尊重の九十九条の解釈上からいっても、あなたの用語が妥当でないと私は思うのでございますが、重ねてあなたの御答弁をお願いいたします。
  10. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 マッカーサー将軍は、立場は違いますが一世の将軍であります。それゆえに「マッカーサー」という言葉には何も軽べつの意味はないのであります。マッカーサーが、わが国連合軍司令官として治めておられた時代にできたのをマッカーサー憲法というのは、明治時代憲法明治憲法というのとちっとも違わないのです。あなたは私が信念が動揺しておるとおっしゃるが、当時使ったマッカーサー憲法を今もマッカーサー憲法というのだから、やはり信念が一貫しておるのです。ただ、言葉というものは一人が使ったのではジャスティファイされない、(「これは重大問題だ」と呼ぶ者あり)たくさんの人がずっと使うて初めて言葉になるのです。(「それならなぜ取り消した」と呼ぶ者あり)ちょっと待って下さい、発言中です。言葉がいいか悪いかということは、一人が使ってその言葉がいいか悪いかということではないのです。多数の人が使いなれて、初めて言葉が成立するのです。今私があげました人は憲法界で、日本の学界で著名な人です。宮沢先生はともかくも憲法のオーソリティです。矢部先生もしかりです。あなたの方の西村榮一さんもりっぱな代議士でございます。こういう方々も使っておられるということは、これは決して憲法を卑下したものではないので、言葉は別でありますが、今の憲法が存在する間は、私は現行憲法を順守します。順守して、一ぺんも私は、私の党派は現行憲法に違反したことはないのです。暴力的に議会をとめようとしたこともありませんし、警察の行動をとめようとしたこともありませんし、私の方が憲法を順守しておるのですよ。すなわち現行憲法については、改正されるまでは絶大な尊敬を払うつもりでございます。
  11. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 今、森君の質問に対して、マッカーサー憲法という言葉は取り済したが、しかし私たちは今でも、特に私は今でも使っているのであって、信念変更はない、こうおっしゃったわけです。しかし一体事いやしくも議員たるものが本会議において取り消したものを今なお平然とこれを使うと言い、その信念変更がないと言われる。そしてこの公式の委員会の席上においても、一度本会議において取り消されたものを再び平然とお使いになるということに対しては、私たち大臣としてではなしに、議員としての誠実さを疑わざるを得ない。われわれは、本会議において取り消し言葉を再び使おう、そして平然と使いますなどと言い切る方々に対して、これ以上質問を続けるわけに参りません。  ここで一つ休憩をしていただきたいと思います。私たちは党の態度を決定いたします。休憩動議を提出いたします。
  12. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 委員長、ちょっと答弁を……。
  13. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 ちょっと待って下さい。あなたに質問をいたしておりません。私は委員長休憩動議を提出いたしております。本会議においては取り消したものを、またここで平然と使うなどということは、議員として許されるか。(「それではなぜ取り消したのだ」と呼び、その他発言する者あり)
  14. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 なぜ取り消したというお問いがありますから……。
  15. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 今さら弁解は許しません。
  16. 山本粂吉

    山本委員長 ただいま休憩動議が提出されましたので、採決前に懇談をしたいと思いますから、その意味で暫時休憩いたします。    午前十時五十八分休憩      ————◇—————   〔休憩後は開会に至らなかった〕