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1956-03-14 第24回国会 衆議院 内閣委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年三月十四日(水曜日)     午前十時三十四分開議  出席委員    委員長 山本 粂吉君    理事 大平 正芳君 理事 保科善四郎君    理事 受田 新吉君       大坪 保雄君    大村 清一君       北 れい吉君    小金 義照君       椎名  隆君    薄田 美朝君       高橋  等君    辻  政信君       床次 徳二君    林  唯義君       福井 順一君    眞崎 勝次君       松浦周太郎君    宮澤 胤勇君       粟山  博君    山本 正一君       横井 太郎君    飛鳥田一雄君       石橋 政嗣君    稻村 隆一君       片島  港君    勝間田清一君       成田 知巳君    西村 力弥君       細田 綱吉君    森 三樹二君  出席国務大臣         内閣総理大臣  鳩山 一郎君         国 務 大 臣 清瀬 一郎君         厚 生 大 臣 小林 英三君         労 働 大 臣 倉石 忠雄君         国 務 大 臣 太田 正孝君  出席政府委員         法制局長官   林  修三君         外務事務官         (アジア局長) 中川  融君         厚生事務官         (大臣官房総務         課長)     小山進次郎君         労働政務次官  武藤 常介君         労働事務官         (大臣官房総務         課長)     村上 茂利君         労働事務官         (職業安定局         長)      江下  孝君  委員外出席者         議     員 山崎  巖君         厚生事務官         (引揚援護局未         帰還調査部長) 吉田 元久君         労働事務官         (労政局労政課         長)      大野雄二郎君         専  門  員 安倍 三郎君     ————————————— 三月十三日  委員辻政信辞任につき、その補欠として芦田  均君が議長指名委員に選任された。 同 日  委員芦田均辞任につき、その補欠として辻政  信君が議長指名委員に選任された。 同月十四日  委員茜ケ久保重光君及び下川儀太郎辞任につ  き、その補欠として勝間田清一君及び成田知巳  君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 三月十三日  国家公務員に対する寒冷地手当及び石炭手当の  支給に関する法律の一部を改正する法律案(千  葉信君外九名提出参法第二号)(予) 同 日  東北地方薪炭手当支給に関する請願愛知揆  一君紹介)(第一二七一号)  同外一件(須磨彌吉郎君紹介)(第一二九〇  号)  金鵄勲章年金復活に関する請願早稻田柳右エ  門君紹介)(第一二九一号)  元満州国日本人官吏恩給法適用に関する請願  (愛知揆一君紹介)(第一三二五号)  同(竹谷源太郎紹介)(第一三二六号)  同(保科善四郎紹介)(第一三三七号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  憲法調査会法案岸信介君外六十名提出衆法  第一号)  労働省設置法等の一部を改正する法律案内閣  提出第六二号)  厚生省設置法等の一部を改正する法律案内閣  提出第九五号)     —————————————
  2. 山本粂吉

    山本委員長 これより会議を開きます。  憲法調査会法案を議題とし、質疑を続行いたします。通告がありますので、順次これを許します。細田綱吉君。
  3. 細田綱吉

    細田委員 私は総理に伺いたいのでありますが、あなたが野党の時代には、現在のような軍備を持つことは憲法違反だと言っておられた。ところが朝に立たれてから、この御心境変化された。しかもそれがさらに拍車を加えて、憲法改正を急いでおる。われわれの見たところでは、再軍備を公然とするために、まず第一に憲法改正をされるのだ、こう考えておるのですが、かつて現在の軍備違憲だと言われておった人が、朝に立たれて違憲にあらず、さらに憲法改正をしかくお急ぎになるのはどういうわけであるか。また、その心境の御変化過程一つ伺いたい。
  4. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私はあなたの言われる通り在野時代に軍隊を持つことは憲法違反だと唱えたことがあります。けれども、それはその後変更いたしました。解釈を改めました。
  5. 細田綱吉

    細田委員 その解釈を改められたことはよくわれわれも知っておるのです。あなたもかつては法律家御出身です。野にあると朝にあるとを問わず、憲法解釈に、そう総理鳩山ではなくて、個人鳩山として変るはずはないと私は思う。ところが総理になられてから非常に変化がある。どういうわけでその変化を来たしたか、その経過を一つ伺いたい。
  6. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は総理になってから自衛隊が持てるということを言ったわけではありません。総理になる前に、自衛隊法が議会を通過したころに私の意見を変えたのであります。
  7. 細田綱吉

    細田委員 かつて憲法は千古不磨の大典とまでいわれ、まず半永久的というか、永久的に変えることがない大法典であり、基礎法典であると国民は意識した。ところが現在の憲法は制定されてからわずかに十年、しかもあえて憲法違反をしてまでも広範な自衛隊を持つというようなことをしますと、まだ国民民主主義の訓練を受けていない、まだ日本の十年の憲法では国民憲法になれるところまでいかない。国民民主主義をよく訓練するためにも、なれさせるためにも、また憲法というものの権威を保持するためにも、そう早急に憲法というものは改正するものではない。あなたはこれは占領下に置かれた当時制定せられた、こう言うのですが、占領軍治下において制定されようとされまいと、これは日本憲法であることは間違いないわけです。従って平たく言えば、現在どういうところが御不便で、日本国政担当のためにどうしても憲法を変えなければならぬというところはどういうところでございましょうか。
  8. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 提案者からもよく説明しております通りに、この憲法は占領されている時分にできた憲法であります。あまりに時間もかからずに急速にでき上った憲法ではあります。それですから、この際再検討をするのが必要だと私は考えております。
  9. 細田綱吉

    細田委員 急いだから拙速で十分でないということを言われるかもしれません。しかし急がなくて、ゆっくりやって悪い場合もあるし、急いだが案外いいという場合もある。ただそれだけでは、われわれあなたの憲法改正の御心境に到達したということがわからない。あなたが憲法改正されようと、しかもそれを急がれるのは、どういうところに政権担当の上から不便である、これを改革しなくちゃいかぬという原因があったかということを具体的に伺いたい。
  10. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私はただいまの憲法を便、不便でもって改正した方がいいというような考え方を持っていないのです。この憲法のでき工合がただいま申した通りでありますし、日本が独立をしたら日本国民自由意思を土台にして、そうしてこの際再検討するのが適当であると思っておるのであります。
  11. 細田綱吉

    細田委員 そうすると、一応制定の過程占領治下に置かれておったから、国民の自由な意思によって決定せられるならばそれでいい、だから憲法改正調査会がかりにできて、そうしてこのままでいいのだという結論に到達しても、あなたはそれでいいのですか。
  12. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 憲法調査会ができて、憲法調査会の判断は尊重をいたすつもりでおります。
  13. 細田綱吉

    細田委員 かつて自由党の案でしたか、どこの案でしたか、天皇を元首とするというような原案ができておったと思いますが、現在のあなたのお気持は、天皇に対する国法上の位置はどういうようにされるつもりですか。
  14. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 天皇に対して特別の考えを持っておりません。憲法調査会の判定に待ちたいと思っております。
  15. 細田綱吉

    細田委員 憲法改正されると、現在の自衛隊はどういうふうに変るでしょう。
  16. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 憲法調査会の決定によって、自衛隊がどういう性格を持つかということはきまると思います。
  17. 細田綱吉

    細田委員 国際間に現在ロカルノ条約が有効に存在しておるということは、あなたもお認めになるでしょう。
  18. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 これらの点については法制局長官から答弁をしてもらい
  19. 林修三

    ○林(修)政府委員 今手元に材料を持っておりませんから、はっきりした御答弁は留保させていただきますけれども、たしかあれは戦争平和的処理に関する、紛争の平和的処理に関する条約だったと存じますけれども、効力を持っておるかどうかということについては、今ちょっと資料を取りましてからお答えいたします。
  20. 細田綱吉

    細田委員 あなたこの前の御答弁で、急迫不正の侵害のあった場合には、外国基地もたたく、こう言われたのですが、政府の重要なポストにある方が、まだロカルノ条約が有効か、存在しているかというようなことも調べなくちゃ分らぬ、とこう言うが、これは今言われたように、明らかに平和的処理方法を決定せられておるわけであります。従って外国基地をたたくということは、それが報復であろうと何であろうと、戦争端緒にまで発展していくということはお考えになりませんか。
  21. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 どういうお質問でしょうか。
  22. 細田綱吉

    細田委員 あなたが前回の答弁に、急迫不正の侵害なりと考えた場合は、それが外国基地であろうと、行ってたたく、こういうふうに御答弁になったわけです。従ってそれが日本にとってはかりに急迫不正の侵害を防止する意図であろうと、外国基地をたたくということは、戦争端緒になるということはお考えになりませんか、といっておる。
  23. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 仮定の問題としてそのときには答弁したのでありますが、私が答弁をいたしますときに条件をつけております。それはその以外に自分の国を守る方法がない場合には、その基地をたたくよりいたし方がない。そのたたくということは自衛権範囲だと思うとこういう答弁をしたのであります。ちょうど正当防衛と同じように、そのほかにはやり方がない場合にはその道を選ぶより仕方がない、こういうような答弁をしたのであります。
  24. 細田綱吉

    細田委員 それはわかるのです。あらゆる手を尽してない場合ということは、これは当然な話なんです。そう軽軽しく外国基地なんかたたくものではない。その御意見はよくわかる。しかしあらゆる手を尽し、あらゆることを考えた末にこれよりないと思って外国基地をたたいても、それは外国基地をたたくことによってまさに戦争に突入する一つの発端になるとお考えになりませんか。
  25. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 こちらは自衛権を持つという説明をしたのでありまして、向うから侵略するということが戦争原因にはなるかもしれませんけれども、こちらで自衛をしたということによって戦争が起きたということは言えないだろうと思います。
  26. 細田綱吉

    細田委員 そうするとあなたはこっちは自衛のためなんだから、敵の基地をたたいても、それは戦争にならぬ、こういうふうにおっしゃるのですか。
  27. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 そのときの状態がそれらを判決いたしましょう。ともかく先方が日本を攻撃してきまして、それを防衛する以外に道のない場合に、防衛をした方が戦争を始めたのだということは言えないだろうと私は考えます。
  28. 細田綱吉

    細田委員 これはどうも、あなたのは問いに対して問いをもって答えるというようなことで、ともかく急迫不正の侵害にしても日本侵害する、日本がそれを防止するための意図ではあっても、向うをたたくんですから、そうなると戦争に入らざるを得ない。そうすると、あなたは日本だけが戦争じゃないといっても向うがまた来る、またこっちがたたく。そうするとまた戦争になってくるのは当然だ。これは日本国民がやるのじゃなくて、敵が基地をたたかれたことによって宣戦を布告するかもしれない。その場合にはどうなさいますか。
  29. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私はたびたび申した通りに、他に方法がない場合自滅を待つことはできないからと申しておるのであります。そういうような無抵抗主義をとるわけには参らないと思います。
  30. 細田綱吉

    細田委員 私はあなたの御意思がきわめて正当防衛的であり、あるいはまた自滅を待つわけにはいかぬというそのお気持はよくわかるのです。ですからそういう場合に戦争にならないかという客観的なことを伺っているのです。あなたの主観的な、無理もないという気持を伺っておるわけじゃない。私にはようくわかっている。ただ客観的にそういう場合に戦争にならぬか。ならないかであろうというような安易な気持で、あなたの言う基地をたたく、しかしそれは自滅するよりもいいというような考えで、戦争になるかもしれないという気持でやられるのか、そのことを伺うのです。
  31. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 こちらでは少しも戦争に持っていきたいという意思はないのであります。自衛する範囲内において自衛力を発揮するだけなんでありまして、戦争に持っていって侵略するという意思はないのでありますから、よくわかりさえすれば戦争にはならないはずであります。
  32. 細田綱吉

    細田委員 そうすると、たとえば宣戦布告状態になると、おのずから第三国の関係というものが国際法上出てきますね。あなたは敵が日本に急迫不正の侵害をするからその根拠地をたたくんだと言われる。それではかりにその根拠地で使うところの多くの武器を、第三国がそこへどんどん搬入しておった、船舶で輸送しておったというような場合に、日本はその船舶をどうなさいますか。
  33. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私はそういうような、だんだんと仮定をこしらえての御質問に対してはお答えができません。
  34. 細田綱吉

    細田委員 仮定じゃないじゃありませんか。あなたは現にたたくと言われた。たたく限りは戦争になるか、ならないかのどっちかです。片っ方が日本にたたかれたことによって宣戦を布告するかもしれない。それをあなたの方が考えなかったらよほどどうかしている。
  35. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 その戦争になるかならないかは、日本意思がよくわかればならないはずであるとさっき答えました。
  36. 細田綱吉

    細田委員 はずであるというようなことは、これはあなたの方が仮定なんです。現にたたくんだから、向う宣戦布告するかもしれませんよ。これは実力行使なんです。それでは伺いますが、あなたの自衛権範囲というのはどの程度のことを言われるのです。いわゆるあなたの自衛権交戦権、この定義を比較して一つ説明を願いたい。
  37. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は他の機会において説明したと思いますが、自衛権というものは正当防衛権と同じようなものでありまして、正当防衛と同じような条件が備わらなければ自衛権を振り回すわけにはいかないというように思っております。交戦権というものは拿捕の問題たとか、いろいろな問題に対して影響が違いますので、交戦権有無というものと自衛権有無というものは、私は結果において違いがあると思いますが、その詳細な点については法制局長官から答弁してもらいます。
  38. 林修三

    ○林(修)政府委員 交戦権についてはこれはいろいろ説もあることでございますが、大体私ども考えておる説は、戦時において交戦国が持っておるところの権利、かように考えておるわけでございます。その内容といたしましては、今まで代表的なものといたしましては、ただいま総理大臣から御答弁申し上げましたように、中立国船舶を拿捕するとか、あるいは占領地行政を行うとか、そういうことが内容となっておると思います。
  39. 細田綱吉

    細田委員 私はやめようと思ったが、その答弁じゃ承服できぬ。交戦権とは交戦国が持つ権利だ。交戦国が持つ権利というのはどういうのだ。
  40. 林修三

    ○林(修)政府委員 ただいま申し上げました通り戦時において国際法交戦国に認められておる権利、かように申したわけでありまして、その内容はいろいろあると思いますが、今申しましたように、中立国船舶を拿捕するとか、あるいは占領地行政を行うとか、そういうものが代表的な内容だと思います。
  41. 細田綱吉

    細田委員 状態はまさに交戦状態です。敵が不正な侵害をする、日本基地をたたく、これは客観的な状態はまさに交戦状態です。このときに日本自衛のため、敵もまた自衛のためだというかもしれない。しかし常にそういうことによって戦争に入る。それでさっきも申し上げたように、そういうような基地に多くの戦略戦術武器弾薬等を搬入する場合、第三国の船はどうなるのです。
  42. 林修三

    ○林(修)政府委員 外国の領土、領海内にある中立国のものに対して、拿捕するとかなんとかいうことは、交戦権がない限り認められないことだと思います。
  43. 細田綱吉

    細田委員 それじゃ最後に、あなた方はいろいろ考えて、そうしてこれよりやむを得ないからということで敵の基地をたたくといわれるが、あなたの方でまだ研究されていないとか、資料がどうとかおっしゃるが、ロカルノ条約によって、戦力武力に訴えない一つ方法というものを約束されておるわけです。こういうようなことは、そういう場合に日本国際連合に訴えるとか、あるいはその他の平和的手段に訴えて解決するということは、総理はお考えにならないのですか。
  44. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 もちろん平和的に処理するというのが主でなくてはなりません。それでありまするから自衛権発動の前に、急迫にして不正なりということを言ったのは、そういう場合のいとまのないときをさして言ったのであります。
  45. 細田綱吉

    細田委員 終ります。
  46. 山本粂吉

    山本委員長 次に西村君。
  47. 西村力弥

    西村(力)委員 私はきのうの本会議でも法規改正、ことに最高法規である憲法改正などの場合には、この改正すべきであるという環境条件が十分に成熟しておるということが必要であって、なおまたこの法律がある限りにおいて、日本の発展は望み得ない。ほんとうに重大な桎梏となってきたということが確実の場合において、初めてそういう法規改正は企図されなければならないのだ、こういうことを申したのでありますが、総理法律改正する場合に、こういう原則に立ってもちろんお考えになっておると思うのでございますが、その点はいかがでございますか。
  48. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 あなたの御意見と同じような考え方を持っております。
  49. 西村力弥

    西村(力)委員 しからばこの憲法改正に重大なる決意を持って立ち上るだけの環境条件整備されておる、こういう把握を何を持ってなされたか、それをお聞きしておきます。
  50. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 こういうことを主張する人がありまして、それがだんだんと国民の間に浸透して参りまして、そうしてそういうような空気が百できるようになると思うのです。
  51. 西村力弥

    西村(力)委員 それでは単なる事実の把握でなくて、あなた自身の希望せられた考えから左右されておる。希望的立場でもってこの改正をやろうとするのだ、こう言わざるを得ない。予算委員会でわが党の淺沼書記長質問した場合においても、明白になったのはあなた方の手において意識的にやった世論調査でさえも、改正を否とするものがよけいだ、こういうことになっておる。しかもたびたびの総理答弁では、憲法改正に着手してそれを進める過程において、国民の理解が深まって改正が勝利を占めるのだ、こういう不謹慎なることを言っていらっしゃる。われわれはまことにそれは不謹慎だと思う。現実においては改正を否とするものがよけいおる。それを押し切って改正を爼上に乗せることによって、改正を妥当とする、是とするものがよけいになる、こういうことをたびたびあなたは答弁せられておる。それではあなたの希望的な立場を無理やりに国民に押しつけるんだ。環境条件の不整備を、成熟しない状況のままに押し切るんだという工合になる。先ほどの、環境条件整備を待ってやるんだ、ことにこれは慎重を要するから十分なる成熟が確実にわかってからやるんだというあのことを了承されたあなたの立場とは大いに違うと思う。この点はいかがでございますか。
  52. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は、押しつけるという気分は毛頭持っていないのです。われわれがどういうような憲法改正を志しているかということが国民にだんだんとわかってくれば、国民は賛成してくれると思う。そういうような傾向は世論調査の上では表われているのでありまして、だんだんとわかってくるから憲法改正論がふえてきているわけです。
  53. 西村力弥

    西村(力)委員 世論調査の結果がわかっておると言う。わかった結果が、是とするものは少数だということが判明しておるのです。その点をはっきりしなければならない。では私はお聞きします。あなたの持っていらっしゃる政府というものは自民党そのものであるかどうか。これはもちろんそうじゃないと思う。私は、あなたの立っている内閣というのは自民党そのものではなく、やはり三分の一を占める社会党も含めた国会の上に立っての政府であると思うのですが、総理の御見解はいかがですか。
  54. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 国会信任を得ましたから政府ができたのであります。
  55. 西村力弥

    西村(力)委員 国会信任であるということになるが、もちろんわれわれはあなたに投票しない。もちろん少数でありますが反対をした。その全体の上に立っての内閣である。こういうことになるのか。政党政府であるから自民党だけの上に立っての政府であるか。これはどちらに考えられますか。
  56. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 これも本会議で申しました通りに、民主政治というものはむろん多数の政治ではありますけれども、少数意見も尊重していかなくてはいけないということを言いました。その意味で言えば、政府というものは国民全体の政府である。少数党社会党投票もせず、信任もしないでしょうけれども、しかしながらやはり社会党の上に立つ政府だと私は考えております。
  57. 西村力弥

    西村(力)委員 それで明確になりましたが、それでは今回の憲法調査会内閣に置くということは適当でないと私は思う。それはなぜかなれば、国民意思というものは、はっきり現在の国会勢力分野に現われているはずだ。憲法改正をやってはならないという国民意思は三分の一以上ある。少くとも投票に表われた数は三分の一以上にある。ところが憲法条章に従えは、憲法改正は三分の二以上の国会勢力でもって初めて発議ができる、こういうことになっておるから、国会全体の上に立っておる政府は、たとい自民党がどれほど憲法改正を急ぎ、熱意を持とうとも、政府としては国民全体の意思の上に立っておるんだ。国民全体は、憲法条章によって憲法改正を否定する勢力、すなわち三分の一以上の意思政府に預けているんだ。憲法改正は不可能だということを今なお国民意思というものがはっきり表明しておるのである。それであるから政府としては、今憲法調査会政府に置くということは遠慮しなければならない。こういう工合に当然いくべきであると思うのですが、この点に対する総理見解はいかがでございますか。
  58. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は憲法改正の準備をしておるだけでありまして、憲法改正発議は、むろん国会の三分の二以上の信任を得なければできないことはよく承知をしております。
  59. 西村力弥

    西村(力)委員 国民意志というのはこの民主的な選挙によって表明されておるのです。その上に立ってあなたの方は内閣を作っていられる。自民党国民の三分の二の意思でもって立っておるのですから、それは憲法改正を急がれようとどうしようと御自由です。しかしあなたの方は自足党を支持した国民の三分の二の意志と、社会党を支持した三分の一の意思と、その全体の意思の上に立っておるのです。それてあるから憲法調査会内閣に置くというのは、これは自民党そのままでない政府としては、これは私は適当ないと思う。この点内閣憲法調査会を置こうとせられた総理民意に対するはっきりした御見解をお示し願いたい。
  60. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は憲法調査会には、憲法改正を相談するにも社会党に入ってもらいたいと思っていたくらいでありまして、憲法調査会には社会党の人にも発言権を与えて、そうして意見を参照していきたいと考えております。無視してなどはやるつもりはございません。
  61. 西村力弥

    西村(力)委員 私はそんなことを聞いているのではない。民意憲法改正を是とする者は三分の二、三分の一が非とする者ということが選挙によって現われた、その全体の上にあなたは内閣を組織されておる。だからこう考えてくると、憲法条章をすっと開くと、三分の二以上の賛成がなければ憲法改正することができないのだ、そういうことになる。国民意思を尊重するならば、今政府憲法改正に乗り出してはならないのだ、こういうことになるのです。だからどうしてもその点についてあなたの真摯なる答弁を私は求めておる。この点をどう考えるか。
  62. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 この前の選挙には憲法改正の是非を争いにいたしませんでした。むろん憲法改正するときには国民に問うてしかる後に憲法改正に着手するわけであります。ただいま準備をしておるわけです。
  63. 西村力弥

    西村(力)委員 われわれは憲法改正に絶対反対、再軍備に反対を国民に強く訴えてこれだけの支持を得たわけなんです。あなた方がどうしようとも憲法改正しようということを言うたらもっと少くなったかもしれぬ、はっきり打ち出してそうして憲法改正をやるんだ、海外に青年もやるんだ、敵が攻めて来たらやっつけてやるんだ、こういうことを打ち出してこの古い愛国心に訴えようとしたならば、あなた方の支持はもっと減ったかもしれぬ。あなた方はやらないにしてもわれわれはやったんだ、やったところが三分の一以上の支持があった。この国民意志を無視して憲法調査会内閣に置くということは、国民意思に対する反逆だと私は思う、その点明確に一つやってもらいたいと思う。
  64. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私はあなたと意見が違います。
  65. 西村力弥

    西村(力)委員 意見が違ってはどうにもしようがない、この際議論をするわけには参りません、それでは意見の違う点はそのままにしておきまして、次に一点だけお尋ねしたいのでございますが、今アメリカ軍が日本に駐留して、そうして日本意思いかんにかかわらず、外国に戦禍を広げるということがある、事実今まであった。ところがそのアメリカ軍と交戦をした国が正当防衛だという主張のもとに日本の国に反撃を加えた場合、あなたはやはりこれを敵の侵略と見て、正当防衛のあなたの主張されるそういう行動を開始せられるかどうか。この点についてはいかがですか。
  66. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 そういうことは考えておりません、
  67. 西村力弥

    西村(力)委員 そうすると考えておるというのはどういう場合ですか。
  68. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 外国から急迫にして不正なる侵略を受けた場合に、日本自衛権があるということを主張しておるのであります。
  69. 西村力弥

    西村(力)委員 考えていないという工合に言っていらっしゃるが、あなたはよほどぼけている。なぜかというと、朝鮮事変のときにアメリカの空軍あるいはその陸上部隊がどんどん日本から行った。そういうので、日本の九州の飛行場などにおいては間もなく敵の反撃があるだろうというので、燈火管制をやったり、さまざまな防衛態勢の準備を行動的にやっておる。だからこういうことを考えておりませんというのは、実情を知らないもはなはだしいと言わざるを得ない。どうでしょうか。
  70. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 アメリカが占領していた時代と占領がおしまいになった時代とは違います、
  71. 山本粂吉

    山本委員長 お約束の時間ですから、結論をお急ぎ願います。
  72. 西村力弥

    西村(力)委員 占領中と今と違うと言うが、それじゃ今アメリカ軍は日本に了解を得て、しかる後に対敵行動を始めるというのであるかどうか、その点占領中と今ではどういう工合に変りましたか、
  73. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 米軍は安全保障条約に書いてある以外には行動はできないと思います。
  74. 西村力弥

    西村(力)委員 時間が他の人に食い込むのをおそれますからこれでやめますが、しかしはっきりした、安全保障条約以上に出られないという答弁をしましても、日本に断わってからでなければできないのだという工合に、今占領が終ったあとは変ったということは全然ないはずなのです。そういう点をごまかされてはわれわれとしては納得できない。  以上をもって私は終ります。
  75. 山本粂吉

    山本委員長 次に大坪君。
  76. 大坪保雄

    ○大坪委員 憲法調査会法案をめぐっての論議はもう相当長い期間続けられておりますが、社会党の諸君から入れかわり立ちかわりいろいろ御質問がありますけれども、大体もうお尋ねになる事項は終りになったようなふうに見受けられる。単に堂々めくりをしているような感じがいたします。この状態でいけは、これは何十日やっても結論には到達できないのじゃないかというようにさえ私どもには考えられる。それで今日私どもは、この調査会法案の提案者が御提案なさったときに、その提案の趣旨として説明された事項にすっかり同感をいたすのでありますが、不幸にして今日大政党である社会党が反対をしておられる。この反対の状態であればこれはまことに不幸なことでありますけれども、いろいろお話を伺っておりますと、どうもいろいろ誤解に基く点もあるのではないかと思われるし、あるいはことさらなる曲解をなされておるというようにも感ぜられる点もあるようでございます。誤解であれば、やはり早くその誤解を解くようにしなければならぬ。曲解であれば、これは同じ日本人でありますから、話し合いをして話し合いのつくところがあるだろうと思うわけであります。総理はこの憲法改正については不退転の決意をお持ちになっていると私は思うのでありますが、そういう誤解や曲解については、なるべく早い機会にあらゆる方法手段を講じてこれを解くという行動に出なければならぬ、そういうようにしていただきたいと思うわけであります。  そこでどういう点が誤解であり、曲解であるかというようなことを私はこの際考えてみたいと思うのであります、最近新聞紙の伝うるところによりますと、二つの社会党関係の声明というものが報道されております。その二つの声明を見てみますと、やはり誤解もあるが、曲解も相当あるように思われるのであります。その二つの声明について、私はこれに関連せしめて総理の御所見を伺いたい。それは国民に対して社会党の誤解を解く。総理並びに私どもの考え方国民に明らかにする。こういうお気持をもって一つ答弁を願いたいと思います。  その一は、去る二月二十三日の各紙夕刊であります。これに報道したところを見ますと、大阪で社会党憲法擁護国民連合と共同で護憲演説大会を開かれた。そのために、社会党の鈴木委員長以下首悩部が大阪に下られたのでありますが、その下られた際に、大阪で声明を出しておいでになる。その声明を見てみますとこういうことが書いてあるのです。「政府与党は、アメリカの強い要請を背景としていよいよ憲法の改悪を強行しようと露骨な動きを示し出した。」こういうように書いてある。果してアメリカの要請というものがあったかどうか、この点であります。これに関連して、私は総理にその事実の有無をお尋ねしたい事柄があるわけであります。それはその翌日、二月二十四日の朝日新聞の朝刊にこういう記事が出ている。「鳩山首相を攻撃、護憲演説会で鈴木委員長」というのです。これはいろいろ述べられておりますが、その記事をちょっと読んでみますと、「鈴木委員長の演説要旨次の通り」というので、「鳩山首相は昨年八月私と会見したとき、日ソ交渉は年内にまとめ、また重光外相を押えて中国との友好を進めるとはっきり言った。」云々。そうして先の方で、「ところで今鳩山内閣は党利党略によって憲法改悪を目ざしているが、ここで私は古い記憶を思い起す。それは鳩山首相が戦後の追放中にダレス米国務長官に帝国ホテルで一札を渡し、憲法改正し、第九条を取り去って本格的な軍隊を持たねばならぬ。日本の軍需工業再建のため融資してほしい。そのかわりにアメリカの戦時動員計画に対しては積極的に協力すると約束した。」こういうことを書いてある。これは私どもとしてはまことにゆゆしいことのように思うのでありますが、そういう事実がございましたかどうか、その点を伺いたいと思います。
  77. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 このたびの憲法改正についてアメリカからは何らの話はありません。要請どころではありません。何も話はないのです。憲法改正したいという希望をこちらからアメリカに通知したこともございません。独立した日本が、自分の憲法改正するのにどういうわけでアメリカに相談する必要があるのですか。独立した国家が、自分の国の憲法改正することについて、アメリカに話し合いをする必要は全然ないはずであります。そういう誤解の生ずることはまことに遺憾であります。ダレスと会いましたときには、そういう情勢がありません。まだ自衛隊という話もないのであります。それを、ダレスと私が会って、日本自衛するために軍隊が必要であるとか、あるいはアメリカの計画に日本が参与するというような、そんな能力がある時代じゃないのです。
  78. 大坪保雄

    ○大坪委員 私はさようであろうと存じます。私は総理の言を信じたい。それはこれを見てみましても、当時、ダレス米国務長官と書いてありますけれども、鳩山総理が追放中はダレスは国務長官ではなかったと私は思うので目す。こういう話はできたはずはないと私は信じておりました。今鳩山総理の言を伺いまして、そうであったろうと思う。しかしながら事柄は天下の大新聞である朝日新聞にはっきり出ているのです。鈴木委員長の演説の要旨として書いてある。これは私はゆゆしいことだと思う。鈴木委員長が事実を曲げて、そうしてことさらに総理を誹謗するような結果をもたらすようなことを述べる、しかも自分の護憲という欲望のためにやるというようなことは、これは私どもは憲法改正を進めたいと思うその気持からしても、なかなか許せないことだと思うのであります。こういう点ははっきりしておかなければいけません。要するに、うそやごまかしで国民を指導するようなことがないようにしなければならぬと思うからであります。この点については総理初め極力国民に訴える措置を私はとっていただきたいと思うのであります。  そこで私どもは、この問題はやはり社会党の諸君が非常に誤解があるのではないかと思うから、私はこれを言いたいのである。(発言する者多し)あるいは曲解があるのではないかと思うから、私はそれを言いたいのである。この憲法は先刻の……     〔発言する者多し〕
  79. 山本粂吉

    山本委員長 大坪君に御注意申し上げます。総理に御質問を願います。
  80. 大坪保雄

    ○大坪委員 それで私どもは今の日本憲法が占領中になされたことであり——これは時間がありませんから、私は非常に残念でありますけれども、その占領中になされたということは日本に主権がなかったことである。そういう状態でなされたということであるから、私どもはこれを改正しなければならぬと思うのでありますが、それに対して社会党の諸君はそういうことは問題でないということを言っておられる。しかし私はこれらの点はやはり国民によく知らしめなければいかぬと思う。時間がございませんからもう一つ社会党の……(笑声、「社会党への質問じゃないんだ」「あっちだよ、質問は」と呼び、その他発言する者多し)総理質問している。
  81. 山本粂吉

    山本委員長 お静かに願います。
  82. 大坪保雄

    ○大坪委員 先刻も自衛権の論議がございましたが、憲法調査会案に対して、社会党の諸君が不幸にして反対をしておられる。しかしながらこれはやはり社会党の諸君ともよく話し合いをしてこれを進めるようにしなければならぬと思うわけでありまして、先刻の西村君からの御質問の中にもありましたし、先般同僚高橋君からも要望されたことでありますが、何としましても社会党の諸君は(笑声、発言する者多し)気に入るものであればそれに協力する、気に入らなければ協力しない、従って憲法調査会というものができても、これには協力しないというような意見を述べられておる。こういうことでは私は適当でないと思いますから、総理は極力社会党の諸君に対しまして(笑声)憲法調査会に入ることの努力を続けられなければならぬと思うのでございますが、その点についてさらに明確に一つ御所信をお述べ願いたいと思うのであります。
  83. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 憲法改正につきましては、社会党と相談をしてやっていくべきものと考えまして、党の幹部から社会党の方には申し込んだはずであります。そういうような考え方でいきますから、憲法調査会の方にも社会党の人には入ってもらうように交渉するつもりでおります。
  84. 山本粂吉

    山本委員長 どうぞ結論をお急ぎ下さい。
  85. 大坪保雄

    ○大坪委員 社会党の声明を読み上げまして恐縮でございますが、自衛権の問題が今問題になりました。こういうことはやはり私どももはっきりしておきたいと思いますから、総理一つ見解をお尋ねしたい。(「どこに質問しているんだ」と呼ぶ者あり)要するに、それは説明に時間を要するのだ。(笑声)一昨十二日に東京の各紙の夕刊は一斉に社会党の声明というものを発表いたしております。それによりますと、社会党自衛権交戦権に対する解釈というものが出ております。これは社会党考え方でありますから、それを国民に訴えられるのは適当であろうと思います。しかしながらその内容がもし非常に一方的であれば、これはやはり総理のお立場としても、これに対する総理見解あるいは政府見解を明確にされることが必要じゃないか。国民の誤解をもたらすようなことがあっては、この憲法改正というような大事業は行い得ない。そういう意味からして私どもは社会党の諸君にはきわめてお気の毒でありますけれども、声明というものが出ておりますから、その点について一つ総理見解を伺いたいのであります。  まず声明では……
  86. 山本粂吉

    山本委員長 大坪君に御注意申し上げます。時間がありませんから、結論をお急ぎ願います。     〔「名委員長」「ゆっくりやれ」と呼び、その他発言する者多し〕
  87. 大坪保雄

    ○大坪委員 自衛隊の設置や増強は憲法違反である、こう断定している。その断定の基礎として、日本憲法は国の固有の権利たる自衛権を認めておるが、しかし自衛権の発動たる戦争や武力の行使は永久にこれを放棄した、従って自衛のための武力の保持も交戦権も認められない、こう言うのであります。(「その通り」)侵略などされた場合は、侵略のされほうだいということになる。(「どこが侵略するのか」と呼ぶ者あり)申すまでもなく、一国の自衛権とは、国または国民に対して急迫または現実の不正な危害がある場合に、その国家が実力をもってこれを防衛する行為なんです、力なんです。国が独立すると同時に本来的に持っている固有の権利であります。これはすでに国際間に確定した原則であり、しこうしてこれは国の独立の基礎条件なんです。(「その通り」)自衛権自衛力すなわち権利と力とは分別し得るものではありません。力の保障のない権利などというものはないんです。すなわち自衛権というのは自衛力のことなんです。これを放棄することは自衛権の放棄なんです、独立の放棄なんです。これは死を意味する。私は、社会党の諸君は侵略のされほうだい、死んでもいい、日本の国は亡びてもいいというようなことを考えておるのかとさえ思う。この見解を私は総理にただしたいのであります。私は、いかに法律に無知であるとしても、かくも乱暴な議論や声明をされたことに対して真意を疑うものであります。さらに憲法九条の「国権の発動たる戦争」という文字を、ことさら声明の中で「自衛権の発動たる戦争」と書きかえて、そうして自衛力がないと主張せんとしておる。これは国民を欺瞞し、愚弄するものであるといっても私は過言でないと思うのであります。
  88. 山本粂吉

    山本委員長 大坪君に重ねて御注意申し上げます。約束の時間ですから、結論をお急ぎ願います。
  89. 大坪保雄

    ○大坪委員 そこでこれらの事柄について声明の各項目を読みますと、日本は独立国でないということをはっきりいっておる点がある。その声明の四項なんか明らかにそうです。それからその次に五項には、たとえば日本が侵略をされた場合には、こういうことを書いておる。具体的な侵略に対する防止策は武力以外の方法、たとえば国際司法裁判所への提訴、国際連合の活動促進など、基本的には米ソを含む極東安全保障体制の確立にあるなどといって、大体敵国から侵略をされて、そうして……。(発言する者多し)
  90. 山本粂吉

    山本委員長 結論をお急ぎにならないと発言を禁じます。
  91. 大坪保雄

    ○大坪委員 こういうことで一体日本の安全が確保できるかということであります。私は本来三十分の予定で準備をしておったのでありますが、社会党の諸君に十五分……(「ゆっくりやれ」と呼び、その他発言する者多し)それでこういう司法裁判所に提訴をして——竹島の例で明らかではありませんか。そうして日本防衛ができるか、あるいは国際連合に訴えて防衛ができるか、また今日の米、ソの対立の状態があるのに米、ソを一緒にした極東安全保障体制を作るというようなことができるか、こういう今日の世界情勢に対する認識の不十分、こういうことで一体社会党は今日の時代を背負っておるつもりであるかどうかと思うのであります。こういう声明に対しましては、国民に対して誤解のないように、政府としてもあるいは与党としても声明を出されるということが必要じゃないかと思います。要するに、国民に対する宣伝、そういうことに対してもっと積極的なる御処置を取る御意思はございませんか、そのことをお伺いしたいと思います。
  92. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 ただいまのお説に対しては大体私は賛成であります。われわれが自衛権を主権するのは、やはり憲法九条がこれを禁止はしていないという解釈のもとに、自衛権があるというように考えております。自衛隊を持つということか憲法違反でなしという意味は、憲法の九条はこれを禁止してないという解釈をとるからであります。日本が自分の国を守るという権利がなければ日本は独立をしていないはずです。  それからあなたが今おっしゃった英、米の協力体制で日本防衛するというようなことは、どういう意味だか私にはわかりません。そういうようなことはあり得ないことです、今の状態においては。でありますから自由民主党としても、もしもこれを国民が信用するような場合には、これを駁撃しておく必要があると思いますけれども、ちょっと頭のある人ならばこれは信用しない、こう思うのです。
  93. 大坪保雄

    ○大坪委員 国民が信用するようになればと仰せられましたが、こう次々に声明を出して国民に訴えると、自然そうなるんです。ですから早くやっていただきたいと思います。これを希望申し上げまして、残念でございますが、時間が参りましたから質問を打ち切ります。
  94. 山本粂吉

    山本委員長 次に勝間田君。
  95. 勝間田清一

    ○勝間田委員 総理にさっそく質問をいたしたいと思います。総理は参議院におきまして、自衛に名をかりて、攻撃を加えられた場合には相手の基地を攻撃すると答弁されました。そこであなたにお尋ねをいたしたいのでありますが、今日、中ソ友好同盟条約が中ソ間に締結されております。その第一条及び第二条におきましては、日本基地を出発せる日本国の軍隊、またはこれと同盟する軍隊が中国、ソ連いずれかに攻撃を加えた場合には直ちにこれに武力をもって支援するという条約が、アジアのこの大きな地域に締結をされております。あなたの攻撃を加えるという自衛権の問題と、中ソ友好同盟条約との関係はあなたはどう解釈せられるか、この点をまず明らかにしてほしい。
  96. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は参議院でよく説明をしました通りに、わが国が急迫不正なる侵略を受けた場合のことのみを考えておりますから、そういう場合においては中ソ同盟条約には何らの影響はないものと思います。
  97. 勝間田清一

    ○勝間田委員 もう一点あなたにお尋ねをいたしたいのでありますが、日本とアメリカとの間に日米安全保障条約が締結されておることは御存じの通り、これにおいては太平洋の安全のために、あるいは国土の安全のために、あるいは国内の内乱、騒擾のために、アメリカの軍隊が出動するという条約を締結いたしております。従ってこの侵略を企てた場合に、あなたは攻撃をする、たたく、こういう情勢になった場合においては、アメリカの軍隊はいかなる行動を起すのか。この安保条約とあなたの答弁との関係はどうなるのか、この点を明らかにしてほしい。
  98. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 安保条約は、日本が侵略を受けた場合においては、アメリカはこれを防衛してくれるものと思っております。
  99. 勝間田清一

    ○勝間田委員 アメリカの軍隊は出動するのでしょう。わかります。それがもし中ソ両国の陣営であるならば、中ソ友好同盟条約が発動するでしょう。そこに戦争が起るでしょう。あなたは今日のアジアの情勢を見てどう解釈せられるか。
  100. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 中ソから侵略はないものと思いますから、そういう場合は生じないものと思います。
  101. 勝間田清一

    ○勝間田委員 中ソは侵略を日本に企てないものと思うとあなたはここで前提を持たれておるのでしょうけれども、あなたの法理論から申しますならば、今日の日本の国がいかなる条約を締結しておるか、相手国がいかなる条約を締結しておるか、それに対するあなたの攻撃、武力あるいはたたくということがいかなる意味を持つものかということは、あなた自身が一群よく知っておるべきはずなんです。それをあなたは全然藉口して、あたかも正当防衛権なるがごとく主張することは、今日のアジアの情勢に重大な影響を持つということはあなた自身が知っておられるはずだ。私は確信する。この三国との関係の問題をあなたは考慮せずして今日いたずらに暴言をはいておるのは、あなたの今日までにおける自衛に名をかりる好戦的な態度といわなければならぬと思うのであります。あなたはこれに対してどう所見を有せられるか。
  102. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 あなたの意見とは全く私は違います。
  103. 勝間田清一

    ○勝間田委員 どう違います。
  104. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私はあなたのような考え方を持っておりません。
  105. 勝間田清一

    ○勝間田委員 どう考えておるか、どう違いますか。それを明白にしてほしい。どう違いますか。
  106. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 自衛のためにその基地をたたくということができると申したのは、決して中ソの同盟条約というか、中ソ間の条約には違反しないものと思います。そういうことは起らないと思っております。
  107. 勝間田清一

    ○勝間田委員 起らないという前提を裏づけする条件とは何でしょう。起らないという条件を裏づけするあなたの根拠はどこにありますか。それをあなたに聞かしてほしいのです。国際法上、外交上あなたがそれを裏づけする条件は何を考えていらっしゃる。
  108. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私はこの会議で申しましたこともありますけれども、今日の世界の平和はともかく力による平和でありまして、力のバランスがとれておりますからして、戦争は起らないものと思います。
  109. 勝間田清一

    ○勝間田委員 それならば、自衛隊はどうして増強されるのであるか。平和がくるとあなたは考えておるのに、自衛隊はどうして増強されるのであるか。この点をはっきりしてほしい。
  110. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 日本が独立国たる以上は、自分の国を守るだけの力を持つということ、これがやはり世界の平和を待ち来たす一つ原因になると私は思っております。
  111. 勝間田清一

    ○勝間田委員 あなたの答弁はいたずらに事をもてあそんでおるにすぎない。私は明白に述べますけれども、今日たとえば朝鮮の三十八度線の戦いにおきまして、あるいは国境を越えて水豊ダムの爆撃を行わんとしたときに、これが中ソ友好同盟条約の発動となって世界戦争が起るであろうと育ったのが世界の世論であった。さればこそ今日ダレスが、いわゆるせとぎわ外交と称して世界の非難を浴びた。これが現実のアジアの情勢であります。あなたは防衛に名をかりて、相手の基地をたたく——たたく結果いかなる国際情勢が生み出されるかというようなことについては、あなたは何らの答弁もなされないのである。そしていたずらに自衛に名をかりて、かかる重大な放言をしておることは、責任ある総理答弁とは断じて思えません。私はまことに遺憾にたえないのであります。この点をあなたに一考をわずらわしたいと思う。第二に、私はあなたにお尋ねしたい点がある。それは何であるか。今日あなたの方では、小選挙区制の問題を出そうといたしておる。これと憲法改正との関係というものは、私はもはや明白になって参ったと思う。二月の二十五日のニューヨーク・タイムズを見ても、外国の反動新聞のいずれを見てもわかる通りに、今日鳩山内閣の任務は憲法改正であるが、社会党は三分の一を占めておるので憲法改正ができないのだ。そこで小選挙区制を作るということが鳩山内閣政治の最大の課題となっておる。これが今日における世界の世論だ。正直なあなたは、この小選挙区制の問題は憲法改正の問題とからんで提出しておる問題である、とあなたははっきり認識されると思うが、どうか。この点についてのあなたの答弁をいただきたい。
  112. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 小選挙区制を採用するのは、憲法改正のためではございません。
  113. 勝間田清一

    ○勝間田委員 憲法改正のためでないという根拠はどうでありますか。今国会憲法調査会法案が出て、小選挙区案が同時に提出されるということが、これがどうしてあなたは関係がないと言われるか、はっきりその点を言って下さい。正直におっしゃいなさい。
  114. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私はそう思っています。
  115. 勝間田清一

    ○勝間田委員 なぜにこの二つの案が関係がないとあなたは思われるのか。関係がありませんか。理由をはっきりしなさい。
  116. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 ないということの証明はなかなかむずかしいのです。
  117. 山本粂吉

    山本委員長 勝間田君に御注意を申し上げます。約束の時間がございませんから、結論をお急ぎ願います。
  118. 勝間田清一

    ○勝間田委員 あなたは、今日保守党は、政局安定のためならば、二百九十九名の大きな勢力を持っております。また社会党は、不幸にして今日三分の一の確保はいたしておりますものの、百五十四名にすぎません。ここに小選挙区制の問題が今日上程されていくという根拠は、われわれははっきり世界の世論の示すごとく、国民の多くが認めるごとく、憲法調査会のこの法案を通して、やがて一年の後においては、これがための原案ないし参考案を出して、そしてやがてこれを三分の二の賛成を得て提案していこうというコースを、あなたはおとりになるに違いないのであって、そのためにあなたは、今日小選挙区制を出して、しかも党利党略の小選挙区制を出してここに強行せんとする態度というものは、全くクーデターにもひとしい行為といわなければならぬのであります。私はもし鳩山総理がほんとうに民主主義を愛し、両党間における話し合いをするというならば、明らかにかかるクーデターは断じてやめべきであると私は確信するものであります。今日まで鈴木委員長鳩山総理との会談を、あなたは拒否されました。四者会談を一方的に拒否されました。そして両党における話し合いの道をあなたは一切ふさがれたのであります。そして今日この提案をせんとするのでありますから、あなたの政策というものは、全く民主主義を無視したクーデターにもひとしいことであります。総理の所見を問います。総理の良心ある所見を問いたいと思います。
  119. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は、その点は先刻答えた通りであります。
  120. 勝間田清一

    ○勝間田委員 まことに総理、遺憾でありまして、われわれは今日総理のこの無責任なる、非立憲的な、民主主義をじゅうりんする態度に対しては、断固反対するであろうことを私は最後に申し上げて、私の質問を終ります。(拍手)
  121. 山本粂吉

    山本委員長 森君、もう約束の時間がございません。     〔「総理総理」「五分でいい、五分だけなぜやらせないのだ」「そういう横暴やるなら、今後絶対に委員会の審議に応じない」と呼び、その他発言する者多く、議場騒然〕
  122. 山本粂吉

    山本委員長 暫時休憩いたします。     午前十一時四十七分休憩      ————◇—————    午後二時十七分開議
  123. 山本粂吉

    山本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。森君。
  124. 森三樹二

    ○森(三)委員 私は鳩山総理に対して若干の質疑をいたさんとするものでありますが、鳩山総理は午前中の本委員会におきまして、私が委員長に対して発言の通告をしてあったのであります。あなたの非常におからだのお忙しいことは十分私もわかるのではございますが、この重要なる憲法調査会法案の審議に当りまして、総理は何ら委員長に対して退席の通告もなく、みずからこの委員会を軽視するがごとき態度をとられたことをまことに遺憾に考えておるのであります。委員長は非常に熱意をもって総理の御答弁をお待ちしておったのでありますが、総理は全く委員長に断わることもなく、この委員会の審議を軽視した責任は、これはあくまでも追及しなければならぬと思っております。しかも私はこの委員会においてしばしば見ることでございますが、総理はみずから質問者の質問に対して判断することなく、しばしば林法制局長官のアシスタントとしてのアドヴァイスを受けている。私はこれは国民に対する非常に無責任な態度であると考えざるを得ないのでありまして、できる限り総理はみずからの御判断によって今後御答弁されることを強く要望いたしまして、私の質疑を行わんとするものであります。  総理は、しばしば密法改正のために選挙法を改正するものではないというような御答弁をされておりますが、しからば何がゆえにかの小選挙区例法案を今国会に提案をせんとしておるのか。私は選挙制度調査会の委員といたしまして、かつて昨年の六月あなたがその審議会に臨まれまして、日本の二大政党の議会運営をスムーズにし、政局の安定を得んがためにこの選挙制度調査会というものを設けて、各位に慎重なる審議を希望するという御発言がありました。当時の情勢とその後における日本政治の客観情勢は非常に大きく変化いたしまして、御承知のごとくわれわれ社会党の合同、その後に引き続いて保守合同が行われまして、今や二大政党は日本の国政の上に明確にそのルールに乗って参っております。しかる以上は、総理の諮問されたところの小選挙区制を施行しなければならぬという理由は、私は全く今やなくなっておるのであるといっても過言でないと思うのでありまして、何がゆえに総理はこの小選挙区法案を無理押しに今国会に上程せんとしておるのか、御所見をお伺いしたいと思うのであります。
  125. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私が先刻退席いたしましたのは、すでに了解ができておるものと思ったので、何も故意があって出たわけではございません。  それから小選挙区制を、憲法改正に関連がありとして提出をしているわけではありません。これは二大政党になったならば、小選挙区の方が世界的に普通である。なお、小選挙区の方が、政治国民に浸透していくのにはいいということは、どの国でも言っておることでありますから、二大政党になったら小選挙区制をとった力がいいと思います。とにかく、小選挙区制がいいということは識者の定論でありまして、小選挙区をやるということは、ずいぶん政治家でない人たちからの注文があったわけでありまして、小選挙区に着手したことはずいぶん古いのであります。決して、憲法改正のために、小選挙区論ができたというわけではないのであります。
  126. 森三樹二

    ○森(三)委員 時間がございませんから、私はあなたと論争をしようとは思っておりませんが、あなたは二大政党の日本政治を確立するために、小選挙区制を施行せよというようなお考えを持っておったと、当時私はお聞きしたのでありますが、今日はあなたは逆に二大政党になったから小選挙区制にすべきだというような食言をなさっていることは、まことに私は遺憾にたえたいのであります。各国の例を見ましても、英米のごときは小選挙区制を施行しておるといたしましても、決して小選挙区制を施行したから二大政党になったということではなくして、小選挙区制を施行する前から、すでに英米においては二大政党の対立という政治的な情勢ができておったのであります。総理が今申されたことは、総理が選挙制度調査会に諮問された当時とは異なった御答弁である。これはとりもなおさず、総理の腹の中にはあくまでも憲法改正のために三分の二以上を保守政党が獲得せんとする腹であることは明らかであると思うのであります。私は自民党の幹部の諸君のうちにも、この小選挙区制をわれわれが出すことを君らが阻止せんとするならば、君らも憲法改正内容は反対であってもその手続に賛成するならば、われわれはあえてこの小選挙区制の法案を出さなくてもいいのだ、こう言っていることを私はしばしば聞いておるのであります。私はそのお考え総理の真意でなければならぬ、かように考えておりますが、重ねてお尋ね申し上げます。
  127. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 そういうことはございません。
  128. 森三樹二

    ○森(三)委員 お尋ねいたしましても、そういうことはないというような、ただ表面的な御答弁でありますが、われわれはあくまでもその総理の御答弁は信ずることができないのであります。昨年の六月に設置されました選挙制度調査会のこの答申案を今日政府が非常に急いでおられる。これは私はその理由がわからないのでありまして、すなわちこれも憲法改正の手段としての手続を早めたいと、このように総理がお考えになっておられるのではなかろうかと思うのであります。ということは、先般三月十二日に開かれましたところの、かの選挙制度調査会におきましては、いまだ質疑が続行中であるにかかわらず、保守党のある委員から、質疑打ち切りの動議ならばまた格別でございますが、討論打ち切りの動議を提出し、しかもこれを強引に当時の会長が採決をいたしたのであります。その採決の前にわが党の同僚委員から、会長に対し不信任の動議を提出し、当然会長は会長の職権を行使することができない状態に置かれているにかかわらず、強引に採決をいたしました。しかしながら、その採決の声さえ十分会場にも通ぜず、速記が全然できていない。これは私は確認してあるのであります。そのような無理押しに調査会を強行せしめましたことは、とりもなおさず鳩山内閣の持つ性格が、すなわち憲法改正を促進せんとする小選挙区制を強行しようという腹が、ありありとあの調査会に私は見えたのであります。私どもはあの選挙制度調査会の決議はあくまでも、無効である、こういう建前に基きまして、われわれ九名の委員は、有馬会長に対して、選挙制度調査会の総会を再開すべく申し入れを、書面をもっていたしたのであります。しかるに現在のところ何らこれに対する総会の再開をするというような通知は受けておりません。私は総理がかの選挙制度調査会に対して諮問いたしました責任者として——あのような状態下に置かれた答案というものは、かの選挙の区画割等については非常に矛盾撞着が多い。各府県別の内容を見ましても、人口が多い県が少い県よりも議員定員の割当が少いとか、あるいは府県内においても人口が一つの選挙区では二十五万が以上の区があり、一つの選挙区では人口が十一万というような選挙区がある。あるいはまた一つの市の自治体を区分いたしまして、市会議員の選挙区よりも小さいような矛盾撞着の選挙区を作ってある、こういうことは対しまして、学者グループから非常に大きな攻撃があり、特に死票が多いということで修正案も出ておったのでございますが、こそらを一切無視して強引に採決をした。われわれはあくまでもこれを無効であると考えておりますが、そのような調査会について総理は十分調査をし、総会を重ねて再会する申し入れを私はすべきであると思いますが、総理の御所見をお伺いしたいと思うのであります。
  129. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 選挙制度調査会の運営は自主的にやられるベきものでありまして、今朝その会長である有馬君が見えまして、別に違法であるというようなことについて説明はありませんでしたので、自主的にやられて正当なものと思います。私は無効なものとは考えません。
  130. 森三樹二

    ○森(三)委員 これは私は非常に無責任なお答えだと思うのであります。私どもはもうすでに一昨日根本官房長官に対しましても、当時の調査会の状況が非常に議事手続を無視し、会長はまことに議事運営についてはふなれであるともに、横暴な調査会の運営をもって採決したものである、これについては十分調査をし、総理に対しましてもその旨を申し入れてもらいたい、総理の権限によって有馬会長に対して総会の再開を申し入れてもらいたいということを、強硬に主張しておいたのであります。その根本官房長官があなたに当然総会の再開の要求をされたと思うのでありますが、有馬会長の報告だけをあなたは御信頼になるというお考えに対しては、私は心から反対せざるを得ない。一方の話を聞いて一方の話をなぜ聞かなかったか、根本官房長官からるる私はお話があったと思うのでありますが、これに対して総理の御所見をお伺いしたいと思うのであります。
  131. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 有馬君はずいぶん古い友だちでありまして、非常に人格の高い人であります。その有馬君が有効であるという説明をしておりますから、私はそれを信ずるほかに道がありません。根本官房長官からも有効な旨を聞いております。無効という理由を根本君からは聞いておりません。根本君がただいま予算総会に行っておりまして、ここで根本君があなたに答弁するのが一番適切ではありますけれども、ただいま予算総会に呼ばれておつて行っておりますので、やむを得ずここにいないわけです。
  132. 森三樹二

    ○森(三)委員 根本官房長官は、これを有効とか無効とか言う権限はもちろんないと私は思う。しかるに根本君が、これを有効と言っておったというような御答弁は、当然私は総理の越権行為であると思うのであります。私は総理がそういうような御答弁をなさる以上は、来たるべき選挙法改正委員会においては、あくまでも総理の責任と、しかも総理に報告されたという有馬会長の責任を追及しなければならぬと私は考えておるのでありますが、有馬会長は人格識見のりっぱな方であるから、有馬会長の報告を私は信じた、というお話しでありますが、人間の人格識見がりっぱだからといって、議事運営が必ず完全に行われたということはいえないのであります。そうしたところの総理の一方的なお考え、押しつけ的なお考えはまさしく、民主政治のルールをわきまえないものである、かように私は考えざるを得ないのでありますが、かの大正九年の原内閣当時、あるいは大正十三年の清浦内閣当時において鳩山総理は、やはり政治家の一人として議席もあったと思うのでありますが、かつてわが国において小選挙区制によるところの二回の選挙というものが、日本政治の上において買収と弾圧、そうしてまた一般の有権者の間におきましても、非常に激烈な競争が起り、お互いに取引もしない、結婚もしない、抜刀して切り合いをしたというような実情も、われわれは知っておるのでありますが、何がゆえにあの二回の小選挙区制というものが、常に悪いものだということをお考えになって改めなかったのか。われわれは今日こうした非常に一方的、押しつけ的に選挙制度を改正する理由は毛頭ないと考えております。再び日本にあのような激烈な競争を見、議員は選挙区の培養に常時慢性的な買収や饗応をしながら、国政の審議には当ることがはなはだ薄いという結果を生むことを非常にわれわれはおそれておるのでありますが、これに対して総理はいかなるお考えを持っておられますか。
  133. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 民主政治というか、代議政体にだんだんと国民がなれて参りますと、あなたの今指摘されたような弊害は少くなってくるものと思います。
  134. 山本粂吉

    山本委員長 森君に御注意申し上げます。時間を非常に経過しておりますから結論をお急ぎ願います。
  135. 森三樹二

    ○森(三)委員 それでは結論を申し上げます。新聞を見ますと、明日閣議を開きまして、選挙法改正案の閣議決定をする。そうして明後日には法案を提出するというような記事が見えておりますが、われわれの見解は先ほども申し上げましたように、あくまで答申案と称すべきものは有効にはできていない、無効である。そのような無効の答申案を総理が基礎として選挙法改正案を提出することには、われわれは絶対反対でありますが、あなたは先ほどの御答弁のようなお考えを持って明日閣議で決定し、明後日あのおそるべきところの、すなわちゲリマンダリング、またハトヤママンダリングというような日本政治の変革、あなた方が永久政権を確立せんとするような、おそるべき民主政治破壊の小選挙区法案を、明後日提出されるということが見えておりますが、果してそういうようなお考えを持っておられるか、御答弁を願いたいのであります。
  136. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は明日閣議で決定するということは存じません。どういうような議案が出るかは私は知りません。官房長官のところでこしらえますから、官房長官は知っておるかもしれませんが、小選挙区のことは聞いておりません。
  137. 森三樹二

    ○森(三)委員 これはなかなか重大な御答弁だと思う。あれほど新聞に堂々と出、しかもこういう国会の御議の中においても、この選挙法の改正案こそは、お互いに血で血を洗うような審議がもたらされるであろうということがいわれておる。そういう重大な法策について、あなたはあした閣議決定をするかどうかも知らない。法案をいつ出すかどうかも知らないというような、まことに無責任きわまる総理であると思う。これについて私はもっとあなたは真剣に、この法案がどういうような状態において出されんとするかということを、十分承知しておられなければならぬと思うのです。もう少し真剣な御答弁を願いたいと私は思うのであります。
  138. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 閣議に何をかけるかということを前もって発表する責任を私は持っておりません。
  139. 山本粂吉

    山本委員長 森君に御注意申し上げますが、時間ですから結論を出して下さい。
  140. 森三樹二

    ○森(三)委員 しかしながら、あなたは閣議に何をかけるかということを当委員会において発表する義務はないとおっしゃるけれども、少くともわれわれは、国会議員として法案の審議に当るところの責任を持っておる。しかる以上は、重要法案をいつ提出するかということをわれわれが聞くことは当然であると思うのであります。それに対して総理が、その法案をいつごろ出すかということさえも言えない、わからないでは、私は総理大臣の職責は勤まらないと思うのです。この重要法案をいつ提出するかということを明確に答弁しない以上は、絶対に私の発言は続行いたします。
  141. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 その準備ができているかどうかということは、私がするわけじゃないのですから知りません。
  142. 森三樹二

    ○森(三)委員 この選挙法の改正案を政府提案として出すということは、あなた方において十分おわかりのはずである。しかる以上は、国会の審議に当りまして、いつ法案が提出され、どういう審議になるかということを、あなたは十分お考えにならなければならぬ。いやしくも総理大臣である以上、この重要法案をいつ提出するか全然知らないというがごときは、私は総理の職責は全うされておらないと思う。総理大臣はこの際、その重要法案であるところの選挙法改正法案がいつ出るかということを責任をもって御答弁願いたい。われわれは国会議員として、この重要法案に対してはあくまでも慎重審議しなければならない職責を持っております。私は総理がそういう態度をとるならば、今後の法案に対してはわれわれは一切審議権を行使しないというふうな考えさえも持たなければならない。私は総理の良心を持つた御答弁を重ねてお伺いしたいと思うのであります。
  143. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 準備ができさえすれば早く出した方がいいという考え方を持っております。
  144. 山本粂吉

    山本委員長 森君に御注意申し上げますが、すでに時間も非常に超過しておりますから、しいて発言されると禁止することになりますから、結論をお急ぎ願います。
  145. 森三樹二

    ○森(三)委員 私はあえて時間を延長してまで尋ねようとは思いませんが、私はこの重要なる法案に対して、総理がいつ出るかわからない、その見通しさえもここでお答えにならないということは、われわれとしてはこの重要なる法案に対して、今後の審議をすることはできないと私はいわざるを得ない。当然自分が招集した閣議においてこれをいつ上程するかというその目安さえも、あなたが述べることができないということは、まことに誠意がないといわざるを御ない。当然これは明らかに新聞にも書いてあるんだ。国会の会期は五月の十七日というのもわかっております。従って今後提案されるところの重要法案は、いつ出すかという目安をつけて政府はおられるに違いない。それが当然であります。いやしくも総理大臣が、かかる軍要法案について、いつ提出するかわからぬというならば、すべからくこういう法案はお出しにならぬ万がいいと思うのであります、もっと責任と良識を持って御答弁を願いたい。
  146. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 準備ができ次第提出するという以外に答弁のしようがございません。
  147. 森三樹二

    ○森(三)委員 それでは準備ができ次第と言われまするが、その準備ができ次第というのは、われわれからいうならばもう切迫しておる。先般来十日に出す、あるいは十五日に出すということをいわれておりますが、それならば大体の目安——何月何日ということを、明確にあなたがおっしゃれなくても、大体のあなたの見当を表明されることは当然なければならぬと私は思います。
  148. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私はただいままでの答弁以外に答弁できません。
  149. 森三樹二

    ○森(三)委員 はなはだ遺憾でありますが、私はこういうことでは今後こうした法案の審議というものは——総理大臣がそういう無責任な御答弁をなさるようなら、今後の法案の審議、持に選挙法の改正案に対して、私はあらためて総理の御出席を願い、あるいはまたその選挙制度審議会の会長である有馬会長その他の委員諸君の御出席を願いまして、根本的な質問を続行したい、こういう要望をいたしまして、一応私の質疑を打ち切ります。     —————————————
  150. 山本粂吉

    山本委員長 次に厚生省設置法等の一部を改正する法律案を議題とし、これより質疑に入ります。  質疑の通告がありますので、これを許します。受田新吉君。
  151. 受田新吉

    ○受田委員 小林厚生大臣に、私は今回御提出厚生省設置法等の一部を改正する法律案の重要点について質疑をいたします。  この法案改正の主目的の第一点は、未帰還調査の本省直接移管ということにあるようでありますが、第一に未帰還調査部そのものを、これから時間をかけて一つお尋ねして、実態を明らかにし、今後の未帰還調査部のなす任務について、大臣の適切なる御説明を願いたいと思います。  未帰還調査部は、これまでどういう仕事をしてきたか、今後いかなる仕事を予定しているかということについて、資料提出を願いましたところ、一応われわれのある程度納得のいく資料を御提出下さいました。これをつまびらかに検討いたしまして、御質問をいたします。未帰還調査部は、終戦から今日に至るまで、いまだ帰らざる人人の調査に非常な努力をされたことは、衆目の認めるところである。ところがこの未帰還調査部が今日まで果した任務と、それからあなたの方で計画しておられるところの未帰還調査部における職員の定数という問題を私指摘しなければならない。現に未帰還調査部の職員は、三十年現在で五百二名、三十一年は未帰還調査部の職員が三百一名となっている、こういうように漸減されてきているのでありますが、この人員を漸減する目的をいま一応明らかにしていただきたいと思います。
  152. 小林英三

    ○小林国務大臣 未帰還調査部の職員の漸減ということでありますが、結局現在六万数千人分人がまだ帳簿の上におきましては未帰還ということになっているのでありますが、引揚援護局全体といたしましての仕事がだんだん減って参りましたので、全体といたしまして減らしつつあるのでありますが、未帰還調査部といたしましても、大体将来とにらみ合せまして、このくらいの程度ならばその職務を遂行するには差しつかえがないということから割り出したわけであります。
  153. 受田新吉

    ○受田委員 このくらいの程度ならという程度は、どういう基準に基かれたか、御説明を願います。
  154. 小林英三

    ○小林国務大臣 詳細な問題につきましては、未帰還調査部長から答弁をさす方が便宜と思いますから、そちらから答弁いたさせます。
  155. 吉田元久

    ○吉田説明員 未帰還調査部の三十一年度の定数は、ただいま三百一名という概数を受けております。三十年度の五百二名から比較をいたしますと、相当の減少でありまして、この点は直接調査の実務を担当いたしております私としても、調査上に及ぼす懸念があるのでございます。ただ本年度内局に入ることになるといたしますと、付属機関として独立しておりましたときに比べますと、管理業務の人員というものがほとんど要らなくなります。換言いたしますと、三百一名はほとんど全部を調査業務に専従せしめることができる利点が一つございます。なおまた現在は千葉がだいぶでございまして、一部業務の関係上東京に課を出してございますが、これが東京に全部集結いたすことになりますと、部の中の業務の運営もしくは在京の各関係機関との連絡も便利になりまして、この点は確かに従来に比べてよくなっております。彼此勘案いたしまして、三十一年度におきましては私としましては、この人員の減少が人数面だけの減少程度で、業務上の支障を何とか少くしたい、部長としてはこのように努力したい所存でございます。
  156. 受田新吉

    ○受田委員 引揚問題に関連があると思いますので、外務大臣あるいは外務政務次官の御出席をちょっと願って、未帰還調査に関する御説明をいただかなければならぬので御要求いたしておきます。  今調査部長から御答弁がありまして、この漸減の内容に一応の御説明があったわけでありますが、しかし未帰還調査という問題は、戦後十年間政府も非常に苦労し、御努力なさったにかかわらず、まだ六万数千名という生死のはっきりしない、あるいは生存しているが帰ることのできない人々というのが残っている。この人々の調査は、今後は今までの調査とは変った意味で非常に苦労があろうと思う。この苦労があろうであろう仕事を人間をだんだん減らして解決するということは、これは実際上職務に当る人々の労務過重と調査の粗漏という欠陥が生ずると思うのであるが、御所見はいかがでありますか。
  157. 小林英三

    ○小林国務大臣 私は人員はたとい減りましても、今までの経験と努力をもっていたしますならば、十分にその目的を達し得るものと確信いたしております、
  158. 受田新吉

    ○受田委員 議員の定数がすでに国会法に定むるところに反していると思うのであるが、委員長、いかがでありますか。
  159. 山本粂吉

    山本委員長 直ちに定足数に満ちるようにいたしますから、どうぞ質問を御続行願います。
  160. 受田新吉

    ○受田委員 私は初めのときだけ出席して途中からニコヨンのごとく消え去る諸君があまりにも多いこと、政府与党のだらしなさは、実は質問をしながら痛憤にたえないところなのです。しかもこういう厚生省設置法等の一部改正法律案などというものは、人道的な問題を処理するきわめて重要なる法案である。その法案をこういうふうに冷淡に見て、憲法調査会法案の審議には一応首を出すが、厚生省設置法などというと厚生省はなめられて、さっと引き揚げられるということは非常に遺憾に思います。委員長においてすぐ処置をされんことを希望します。  私はこの未帰還調査部の仕事は今後非常に困難になるということを今申し上げたのでありますが、大臣は能率を上げるということでこれをごまかそうとしておられるのであります。少くとも未帰還調査部の仕事は、未帰還者留守家族援護法によって第十三条が今回改正された、留守家族手当支給停止を今後さらに三年延間長するという改訂がされたことも大臣御承知の通りなのであります。そうすると今後三年間必死になって、未帰還者留守家族援護法の第二十九条に規定されている未帰還者の調査究明というところへ、法律の精神によって政府は努力しなければならない、その政府がこれから三年間に、その留守家族をしていまだ帰らざる人の生死をきわめて明瞭にされて、その家庭生活をしてはっきり区切りをつけさせる重要使命のある未帰還調査部に対して、残された職責によって能率を上げてやっていくということで、果して間に合うと思われるのであるかいかがであるか、もう一度御答弁を願います。
  161. 小林英三

    ○小林国務大臣 私はこの未帰還調査部の仕事というものは、終戦直後におきまして非常な苦労があったと思うのであります。これはもう最初は雲をつかむような話の中から調査を進めていったのであります。しかし今日におきましては、この点はこういうふうになっておる。あの点はどういう程度固まっているということが大体わかってきておると思うのであります。従いましてあとの一番必要な部面につきましては、もう定員は三百名そこそこになりましたけれども、今日までの長い経験と努力をもっていたしましたならば、これだけの人数をもって十分に目的を達することができると考えております。
  162. 受田新吉

    ○受田委員 三十二年度においては両名に減らすことになっておりましたかね。
  163. 小林英三

    ○小林国務大臣 三十二年度におきましては二百七十八人にいたすつもりでございます。
  164. 受田新吉

    ○受田委員 私はこうして漸次職員を減らして、その仕事の能率を上げさせるように御企図しておられる大臣の気持にわからぬことはありませんけれども、しかしこれから先の調査というものは大よそもう見当がついたとあなたはおっしゃったけれども、例のニューギニアのサマテ島で生死不明と称しておる政府と、確かに生存しているのだと帰還証人が発言になっておる例の神戸の長田タマエさんの問題などのごときでも、これはその調査のために、政府は先般も二十数名の参考人を呼ばれて非常に努力をしておられる。こういうことを考えると人一人の調査究明には国費が相当かかっても、職員が相当たくさんおってもそれを尽してあげるのが、これが敗戦の痛苦にあえぎ生きておる留守家族への親切ではないかと考えておる。だから綿密に調査をして外交的にも渉外関係で努力をせられまして、留守家族を納得せしめるところまで骨を折ってあげるところにあなたの御責任があると思う。この点について、あなたは人員を減らすことでこういう問題の解決が能率的にできるというような御説明では、私は筋が通らぬと思うのでありますが、御所見を伺いたい。
  165. 小林英三

    ○小林国務大臣 ただいまの御意見の、たとい一人の問題でありましても、その問題につきましては十分に人手を使って究明すべきであるという御意見には、全く御同感でございます。私どもといたしまして先般引揚援護局長を松本全権につけてやりました問題も、やはり十分に現地におきまして専門家をして究明させようというようなつもりでやったのでありまして、先ほどから申し上げておりまするように、この問題は大体むずかしい問題ですが、終戦後今日まで相当経験を積んでおりますから、今日の三百名の人員をもっていたしましても、仕事の配置よろしきを得れば、私はりっぱに片づけ得るものと考えております。
  166. 受田新吉

    ○受田委員 大臣はこの残された人々の調査究明——六万五千の人々を解決するには今後どのぐらいかかるという見当をつけておりますか。
  167. 小林英三

    ○小林国務大臣 先般遺族援護法の一部改正をしていただきました場合におきまして、とりあえず私は三年ぐらいの日子は要するものだ——あるいはそれ以上かかるかもしれませんが、相当の日数を要するものだと考えております。(「定数がない」と呼ぶ者あり)
  168. 受田新吉

    ○受田委員 今どれだけの日数と言われたのですか、ちょっと騒々しくて聞かれなかった。
  169. 小林英三

    ○小林国務大臣 相当の日数がかかると考えております。(「定数が足らぬ」「散会々々」と呼ぶ者あり)
  170. 受田新吉

    ○受田委員 相当の日数と今言われたのでありますが、これははなはだあいまいな計算であって、あなたの方としてある程度こういうものの調査に当っては、科学的にもあるいは実際的にもいつごろまでかかるか、これまでの調査でこれだけの日数がかかった、これからまだ困難になるであろう調査に、どのくらい日数がかかるであろうという大よその検討がつかぬようでは、厚生大臣の職務は勤まらぬと思うのでありますが、御見解を承わりたいのであります。
  171. 小林英三

    ○小林国務大臣 この問題はなかなか今後何年かかるということを、ここで私が責任をもって御答弁申し上げることは困難でございます。できるだけ早くすべての問題を究明いたしまして、早くその所在を明らかにするということに努力いたしたいと思っております。
  172. 受田新吉

    ○受田委員 あなたは昭和三十二年以後は、今の二百七十一名をずっと存置せしめるという御意向でありますか。
  173. 小林英三

    ○小林国務大臣 その際におきまして、今後どのくらいな人数であったらば適正に運営できるかという問題も判断してやっていきたいと思っております。
  174. 受田新吉

    ○受田委員 この定員法の改正のとき、昭和二十九年に、昭和三十二年までの定員の逓減数字というものをちゃんと政府は一ぺんにお出しになったのです。いつ幾らに減らすという目標を立てておられる。この目標は調査究明がどういうふうに発展するか、それに要する職員がどれだけ要るかという年次計画を立てて、昭和三十二年までの逓減法則をお立てになっておられる。こういう点について大臣はいかがお考えでありますか。
  175. 小林英三

    ○小林国務大臣 この問題は実際にこの職務に携わっております未帰還調査部長答弁させた方がいいと思います。
  176. 吉田元久

    ○吉田説明員 二十九年に定員法ができました当時の未帰還調査関係の内外の情勢と、今日とは多少変っております。私個人の考えを申し上げますと昭和三十二年以後におきましては、新しい未帰還問題の情勢に即応した考慮が払わるべきものだと思いまして、実務を担当いたしております私としては、これらの資料を準備して上司に意見を申し述べる所存でございます。     〔「人員不足」と呼ぶ者あり〕
  177. 受田新吉

    ○受田委員 人員が不足しておるという結論に達しましたので、十五名おらぬということに今なるはずであります。十五名おりませんね。それでは今定員不足を指摘せられておりますので、定員がそろいましたらすぐ始めますから、一応定員がそろうまで休憩を宣告願いたいと思います。
  178. 山本粂吉

    山本委員長 ちょっと速記をとめて。     〔速記中止〕
  179. 山本粂吉

    山本委員長 速記を始めて。受田君。
  180. 受田新吉

    ○受田委員 質問を続けます。先ほど外務省の方に御出席を願っておきましたけれども、この方はどういうふうになっておりますか。
  181. 山本粂吉

    山本委員長 目下連絡中でありますから、ほかの方の御質問を願います。
  182. 受田新吉

    ○受田委員 未帰還調査部のお仕事はこれから非常に困難になってくるので、人員を減らさないで、むしろ念を入れて、残された方々に対してあたたかい愛情を注ぐべきであるという点を先ほど指摘したのであります。従って、定員法の改正で、昭和二十九年から三十二年まで未帰還調査部の職員を漸減して参っておることについても考うべきではないかとお尋ねしたわけです。この点今未帰還調査部長の御答弁があったのでありますが、私はこの人員を三百名から来年は二百七十一名というふうにはっきりした数字で減らしていく、この数字の減少の比率はどこから生れてきたのか、これがどうも納得できないのです。ここを御説明願いたかったのでありますが、先ほどの御説明ではそこが明瞭でありません。もう一度御説明いただきます。
  183. 小林英三

    ○小林国務大臣 この問題につきましては、厚生省の減員の方針に基いて未帰還調査部長からの申し入れによってやったのでありますから、一応未帰還調査部長から答弁を願います。
  184. 吉田元久

    ○吉田説明員 二十九年に定員法が改正せられました際に、三十二年度までに至る定員の逓減の計画ができたのでございます。その当時の情勢から申しますと、今日のごとく対ソ、対中共との未帰還問題も発生しない以前でありまして、当時の立案の基礎は、二十九年度における予算人員等を持ち得たならば、三十二年ごろには大体が片づくであろうという前提でございました。しかるにその後いろいろ情勢が変化しまして、なおまた現に残っておりますものは、先ほどから御指摘の通り非常にむずかしいものばかりであります。従って、三十二年度以降においては、今後の内外の情勢等を見まして、もう一ぺん私どもは再検討いたしたいと考えております。
  185. 受田新吉

    ○受田委員 そうすると、三十一年度の三百一名も、情勢が変化しておるのでありますから、これを考え直すべきではないでしょうか。
  186. 吉田元久

    ○吉田説明員 本年度の三百一名につきましては、私先ほどお答えをいたしました通り、何とか三十一年度はできるという程度でございました。それ以上は申し上げられないのであります。
  187. 受田新吉

    ○受田委員 何とか三十一年度はできるということは、どうもあいまいもことしておるのです。何とかでなくして、はっきりとした態度を示していただかないと、われわれは国会の法案審査に当って、何とかというようなことであいまいにこれを審査するわけにはいかないのであります。はっきりした結論を出してお諮りいただくことが、私は国会に対する政府の責任だと思います。
  188. 吉田元久

    ○吉田説明員 この定員の問題の主務は、実を申しますと私の方でないのでありますが、三百一名ときまりましたのは、本年度の引揚援護関係の他の業務をあわせた総定員がきまりまして、そのうち私の方に三百一名割り振られたわけでございます。これは恩給、援護、直接舞鶴の引き揚げを担当しております引揚援護局、あるいは本省内の各課、これらを含めました定数の逓減がありまして三百一名ということになったのであります。未帰還調査の実務だけから申しますと、私どもの方は多々ますます弁ずるということでございますけれども、総ワクがきめられて、その範囲において私のところが三百一名になりましたことは、私自身がきめましたのでございませんで、他の業務と勘案してきめられたのでございますから、その実情についてはお答えができない次第であります。
  189. 受田新吉

    ○受田委員 これは厚生大臣に答弁していただかなければならぬ問題になったわけですが、二十九年から年次計画的に職員を逓減する計画が立てられた。ところが途中外交上の問題等で状況が変化した。従って、当然三十二年などは考えなければならぬというようなお話が未帰還調査部長からあったわけです。三十一年度の未帰還調査部の人員は三百一名でありますが、引揚関係の総人員は八百十一名という数字が出ている。未帰還調査部の三百一名については、厚生大臣が引揚業務に関与する職員をと一括して率いておられる立場上十分説明を願わなければならぬ。二十九年からの年次計画を途中から改めなければならないような事情があるならばある、そうして八百十一名という数字はどういうところから出したのか、これは今後どうしなければならぬ、都合によればこれを減らすとかふやすとかいう必要もあるという点について、大臣の御答弁を願います。
  190. 小林英三

    ○小林国務大臣 援護局全体の数字につきましては、援護局の局長とも十分打ち合せをいたしまして決定いたしたのであります。しかし、ただいま未帰還調査部長も言っておりますように、今後の問題につきましてはなお検討いたす考えでおります。
  191. 受田新吉

    ○受田委員 今後の問題ではない。三十一年度はもうすぐ来るわけなんです。この八百十一名と三百一名の問題を未帰還調査部長は多々ますます弁ずると言われたのですけれども、さしあたり検討でなくして、これに対するはっきりした見解を御説明願いたい。
  192. 小林英三

    ○小林国務大臣 私は、三十一年度の問題につきましては、先ほどお答え申し上げましたように、従来の経験、努力によりましても、十分やっていけるべき問題であると考えております。
  193. 受田新吉

    ○受田委員 そうすると、厚生省は三十二年度においては引き揚げ業務に関与する職員をどう考えておられるのでありますか。全体の立場から御説明いただきます。
  194. 小林英三

    ○小林国務大臣 ただいま直接に未帰還の事業に関与いたしております吉田部長からも意見を申し上げましたが、いろいろ今後ソ連、中共そのほか相手国の政府がこの問題につきまして好意的に御協力をしていただくということになりますならば、私は未帰還調査部といたしましての業務も比較的円滑にいくと思っております。いずれにいたしましても、三十二年等の問題につきましては、そのときのいろいろな内外の情勢とにらみ合せいたしまして、決定いたしたいと思っております。
  195. 受田新吉

    ○受田委員 今未帰還調査部長は、引き揚げ業務に関与する総ワクの中から、未帰還調査部の職員を割り当てられたのであって、これは私の方ではいかんともしがたいという御説明があったわけであります。そうすると厚生大臣としては、引き揚げ業務全般に関与する職員の総数と、未帰還調査部の職員の比率というものは十分あなたの方でお考えになってされたと思うのですが、この点どういう意味でこういう数字が削り当てられたかを御説明願いたいと思います。
  196. 小林英三

    ○小林国務大臣 これはやはり、割当といたしましても、厚生省省の内部におきまして、引き揚げ援護局全般にわたりましては、局長が各部長——今まで二人おりましたが、各部長とも相談いたしまして、全般的に数字を配置して行われるということが正しいと思います。
  197. 受田新吉

    ○受田委員 各部長とも相談をされておる、それは当りまえの話なのです。これは大臣が御説明されるまでもないわけですが、未帰還調査部の職員の数字は、引き揚げ業務全体から三百一名という数字が出、また来年は二百七十一名という数字が出ております。これは未帰還調査部を重く見ようとしておるのか、軽く見ようとしておるのかというような観点から、どういう意味でこれだけの数字が出たかを御説明いただかなければならぬ。ことに、関連して舞鶴の引揚援護局を今後どういうふうにしようと計画しておられるのか、これと連関して御答弁をいただきたいと思います。
  198. 小林英三

    ○小林国務大臣 今お聞きの問題につきましても、なお舞鶴等の問題につきましても、私は担当の局長が一番よく事情を知っておると思いますので、担当の局長と相談をいたしますし、また担当の局長は、その部下の部長その他と相談をいたしまして、比較的正確な数字によって運行していくということが正しいと思いますし、今日までの人員の数字の決定につきましても、さようにいたした次第でございます。
  199. 受田新吉

    ○受田委員 私は厚生省省が二十九年、三十年、三十一年、三十二年と四ヵ年の漸減計画を立てられた途中で、外交交渉その他で突然の事情変更もあったのだからという御説明が、今調査部長からあったのであります。そうなると、初めの計画よりも変った事情ができた限りにおいては、定員においても当然これに変更を加えなければならぬと思うが、定員の方は依然として四年計画をそのまま実行していく、外交交渉その他の引き揚げ業務については、事情が変化していると、はっきり御説明があるのに、定員はなぜこれをそのまま続行されようとしておるのか、そこを今お伺いしておるのであります。
  200. 小林英三

    ○小林国務大臣 先ほどからお答え申し上げましたように、三十一年度におきましては、未帰還者の問題につきましては、三百一名で今までの経験と努力によりますればやっていける、今後の問題につきましては、内外の事情に即応いたしまして、適当に善処していきたい、こういうことを申し上げているわけであります。
  201. 受田新吉

    ○受田委員 そうすると、大臣は三百一名では実際不足しておるのだが、まあ仕方がない、予定の計画を実行していかざるを得ないという立場ですか。一応はこの人員では不足しておるのだというようなお気持があるのですか。
  202. 小林英三

    ○小林国務大臣 私は先ほど申し上げましたように、この数字を決定いたしますにつきましては、私といたしましては、一番この問題にタッチしております局長を通じまして、そして引揚援護庁の内部の数字の問題については調整をしたものだと確信をいたしております。今部長はお聞きの通り意見も言っておりますから、今後こういう問題につきましては、十分に調整が行われてしかる後に決定すべき問題だと思っております。三十二年度の問題等につきましては、内外の情勢に即応いたしまして十分やって参りたいと思っております。
  203. 受田新吉

    ○受田委員 私は大臣の御説明ははっきり言うていただけばいいのです。つまり三十一年度はもう来年度ですから、来年度の定員はこれじゃ足りないのだが、足りないものを無理してやるのだという立場か、あるいはこれで差しつかえないのだという立場か、もしほんとうは足りないというなら今からでも定員を改正してもう一ぺん増員してもいいのですから、この点をはっきりお答え願いたい。それを言っていただけば、こんなに質疑応答しなくても済むのであります。
  204. 小林英三

    ○小林国務大臣 三十一年度におきましてはこの三百一名でやっていける確信がございます。
  205. 受田新吉

    ○受田委員 確信があるというのはさっきからの御答弁でわかっておる。しかし実際は足りないという気持があるのか、あるいは実際はどうだ、そこです。あなた御自身としては事情の変化で人員が多かるべきだというお考えがあるのですか、状況の変化でもっと多い方かいいのだというようなお気持があるのですか、ここをはっきりしていただきたい。
  206. 小林英三

    ○小林国務大臣 私はこれで十分やっていけると考えております。
  207. 受田新吉

    ○受田委員 それなら初めからはっきりこれで十分だとおっしゃればいいのを、何だか多々ますます弁ずという言葉をあなたが引き継がれてそんなことをおっしゃられるからこういうことになってきた。厚生大臣は信念を持ってお答えいただかぬと、時間がいたずらにかかりますから……。それで次の問題としてわれわれは未帰還調査ということは非常に関心を持っておる。厚生省以上にわれわれは誠意を持ってこの問題を取り扱おうとしておる。あなた方以上の熱意を持っておる。ところが厚生省は本省の付属機関であった稲毛の部を今度本省の直接の部にされたということは、ある点においてはこれはきわめて意義が深いことだと思うのですが、これに関連して問題を提供するのは、稲毛からこちらへ移管したために、稲毛の職員があちらでがんばる、残ろうと決意したのだが、一時間以上の時間がかかる、それで転勤できないというような事情にある者がないか、もう一つは、だんだんと整理される職員の就職についてはどういう手を打っておられるか、この二つをお答えいただきたいと思います。
  208. 小林英三

    ○小林国務大臣 この問題につきましては部長から答弁いたします。
  209. 吉田元久

    ○吉田説明員 稲毛から東京に移りますために、職員で通勤できない状況にあります者で、ただいま私が存じておりますのは約十名くらいでございます。この者はまことに気の毒でございますので、どうするか私の方でも検討いたしておりますが、宿舎を求めるというようなこともなかなか早急にはできませんので、個人的に東京の親類等から通えるような状況になりますれば非常に好都合と思いますが、今私の方で対策を検討しておるところでございます。  就職については、私のところの課長以下就職あっせん委員を作りまして、各方面に手を回してただいまあっせんの検討を始めておるところでございます。そういう事情でございます。
  210. 受田新吉

    ○受田委員 運動を始めていらっしゃる程度では三十年度の分はもう年度末ですからじき整理されるわけでしょう。それを今から運動を始めたのではこれは間に合わぬじゃありませんか。
  211. 吉田元久

    ○吉田説明員 運動を始めておると申しますのは、こういう実情でございます。目下のところ整理人員は大体見当ついておりますが、だれがこの整理に該当するかということが、まだわからない状況でございまして、ただいまの就職あっせんの運動としましては、各方面に求人の口があるかを当って、人員が判明し次第その要求に応ずる人を採用してもらう交渉をするように、今運動を進めておるわけであります。
  212. 受田新吉

    ○受田委員 小林厚生大臣にお尋ねいたしますが、厚生省は年次計画的に人員整理を引揚業務に関与する人々に対していたしておるわけです。その最初の三十年において千二百四名、三十一年八百十一名と漸次減少してくる、この数字に現われてきた整理者に対して、いかなる措置をとって参られたか、現在失業のままで街頭へほうり出されておる整理職員がどのくらいあるか、これは重大な社会問題でありますが、特に厚生省というお役所は、そういう点においては深いあたたかい心を送る大事な役所でありますだけに、絶対にこういう路頭に迷う人のない措置がとられておると私信じておりますが、実態をお示し願いたいのであります。
  213. 小林英三

    ○小林国務大臣 今日までの経過につきましては一応総務課長から答弁いたさせます。
  214. 小山進次郎

    ○小山政府委員 ただいまお話しがございました通り定員法の改正をいたしまして、年次的に縮減されていきます人々の行く光の問題については、非常に考えなければならぬ問題がたくさんございますので、かねてからこのことについてはいろいろ御注意もいただいておりますし、また当局としても非常に努力しております。この問題の解決のために省内に引揚援護局長を中心にいたしまして連絡の組織を設けまして、常に各方面へのあっせんをしておりますが、大体あっせんの要領といたしましては、できるだけ国家公務員のままでほかにかわれるものがあるならばかわるような方法で解決をしていく。従来の事例から見ますと、やはりそれを希望する人が多いようでありますので、できるだけそれで解決をしていく。それから国家公務員のままで解決をしていくことができません者につきましては、都道府県の職員として引き取ってもらえる者は、引き坂ってもらうようにあっせんに努めているというようなことでやっておりますが、今日までの大体の成り行きを申しますと、年令が四十才未満程度の人の場合は、割合にこの点が努力によってスムースにいっておるのでございますが、年令が四十を越して参りますと、この話がなかなか円滑に参りません。そういうような人々はできるだけ厚生省の省内で欠員ができました場合に優先的に引き受けさせる、若くてほかの方面に転換がしやすい条件の人は、努めてほかの方面に積極的にとってもらうように努力するというようなことをいたしております。なお十分御存じのことではございますが、この機会であるから進んで退きたいという人もかなりございます。そういう人々に対しましては特別待命の制度を毎年適用いたしまして、そういったことが工合よくいくように努力をしております。
  215. 受田新吉

    ○受田委員 一応万全の措置をとる態勢にはなっておるようでありますが、現実に千二百四名という三十年の引揚業務に関与する職員、そのうち整理される人々の中でどれくらいが職業についておるでありましょうか。
  216. 小山進次郎

    ○小山政府委員 手元に数字を持ち合わせておりませんので、後日取り調べて御報告を申し上げるようにいたします。
  217. 受田新吉

    ○受田委員 私たちが聞くところによると、この整理される職員の人々はまだ四、五十名しか仕事についていないという、非常に不安定な状況に置かれておると伺っておるのです。こういう点についてはいたずらに人員整理のみでなくて、その対策を十分考慮していかなければならぬし、また私さっき申し上げるように、この引揚業務、特に未帰還調査の仕事は非常に困難になるのであるから、このわずかしかおらぬ職員を整理しなくても、もっと高い立場で十分仕事をしてもらうことができると思うので、こういう点については十分御考慮を願っておきたいと思います。  次に大臣が早く帰られるようでありますから、大臣に御質問をする点を先にあげておきます。改正の第二点である保険局に次長を設けるという点であります。これは大臣の御説明にあったごとく、この保険局がいろいろな社会保険の諸事業が山積をしておる重要な局であるので、それに関心を持たれることは当然であると私は思います。けれども引揚援護局の次長を一名とって、そして保険局に一つ加えるという、このやり方はどうも釈然とせぬところがあるわけですが、これは引揚援護局をやむなくとったのが、あるいは引揚援護局は職務の整理上仕事が簡単になったからこれは当然とったのか、その点御説明いただかなければならぬと思います。
  218. 小林英三

    ○小林国務大臣 これは行政管理の問題に関連いたしまして、その方針にのっとりましてやむを得ずとったものであります。
  219. 受田新吉

    ○受田委員 行政管理の立場からやむを得ずというのは、実際はとらない方がよかったということになるわけですか。
  220. 小林英三

    ○小林国務大臣 今日の問題としてはなお残したかったのでありますが、保険局の次長の仕事というものが将来より多く要求されるものでありますから、そちらを減らしまして保険局の次長をふやした、こういうことに相なる次第であります。
  221. 受田新吉

    ○受田委員 引揚援護業務というものは今最終段階で非常に重大な段階にきておるわけです。その方からやむなく一名を削って、それを保険局にくっつけた。厚生省部内のワク内操作だという印象がきわめて濃いのであります。引揚援護局はすでに局長でさえも現地に行って外交交渉をしておられる。このような局長が不在中においては次長がこれにかわらなければならぬし、その次長もすでに一人は今ビルマに行って遺骨収集の重責にある。すると今引揚援護局は一人の次長が残ってこちらにおられるにすぎないのだけれども、その次長が一人になるというと、局長も次長も他国にあって、国内においては最高責任者なしという現象も起るわけです。そういうような非常に重大な引揚援護業務、これは国際的にも非常に重要なんです。こういう重要なときに引揚援護局の次長を一人もいで、保険局にこれをくっつけたということは、まことに遺憾千万だと思うのであるが、この引揚援護業務はすでに国際的に重要な最終段階に達しているという意味からも、一つあなたはこの法案を少し考え直されて、行政管理の立場もあろうが、重要な引揚援護業務を重視する意味で、今からでもおそくないが、次長をこのまま置くように努力せられる意思があるかないか、御答弁いただきたい。
  222. 小林英三

    ○小林国務大臣 これは省内に次長を従来よりよけいふやすということは、今日のいろいろの面から考えて不可能でございまして、保険局といたしましては、提案理由の御説明にも申し上げましたように、より重大な意義がございますので、引揚援護局といたしましては、援護局長ほか一名の次長があれば今後やっていける。保険局はより以上の仕事がふえてくる、こういうようなつもりでございまして、今お聞きのようなことをただいまいたそうとは考えておりません。
  223. 山本粂吉

    山本委員長 受田君に御相談申し上げます。厚生大臣は四時から社会労働委員会の方にお約束があるそうでありますから、この辺でいかがですか。
  224. 受田新吉

    ○受田委員 すでに私の質問が今クライマックスに達せんとしておる折柄もうちょっとがまんしていただきたい。社会労働委員の方には、今厚生省の重要な基本的な問題について大臣が答弁に立っているので、やむなく出席がおくれるという旨の通告を委員長においてお取り計らいを願います。
  225. 山本粂吉

    山本委員長 何分ぐらいですか。
  226. 受田新吉

    ○受田委員 質問に対する答弁によって時間の長短があると思うのです。
  227. 山本粂吉

    山本委員長 五分ぐらいでどうですか。
  228. 受田新吉

    ○受田委員 五分というと一問か二問しか質問できないのですが、厚生省の問題は非常に大事ですからもうちょっとだけ……。
  229. 山本粂吉

    山本委員長 それではもうちょっとだけ……。
  230. 受田新吉

    ○受田委員 保険局を非常に重視せられておる。これは私も同感であります。厚生省部内において保険局のウエートをうんと高められたということに対して一応御説明があったのでありますが、次長制の置かれているのは医務局と引揚援護局と今度新たにできる保険局でありますが、保険局の保険行政に対する大臣の今後の政策というものをお示しいただきたいのであります。
  231. 小林英三

    ○小林国務大臣 これははなはだ恐縮でありますが、この間の提案の理由にもかなり詳しく御説明申し上げておるつもりでありますから、御了承願いたいと思います。
  232. 受田新吉

    ○受田委員 かなり詳しく申されておりますが、これは一々指摘すれば限りがないのでありますが、次長を置くに当って最も大きな問題は、先ほど私が指摘したような保険行政を拡充強化するという点にある。しかしその保険行政というものを大臣はどういう方向に今後持っていかれようとするのか、たとえば国民年金制度というものも調査研究するような方向へ持っていこうとせられるのかどうか。将来に対する一つの構想というものが大臣としてなければならぬ。ここに今出席がないようでありますが、前川崎厚生大臣は、将来日本の保険行政について国民年金制への発展、社会保障制度の拡充強化という点について非常に大きな構想を述べておられたが、小林現厚生大臣はこういう問題について、いかなる社会保障的な立場からの保険行政というものをお考えになっておられるか。前の川崎厚生大臣をはるかに凌駕するほどのりっぱな抱負経綸をお持ちになっておられると思うのでありますが、この点大臣の御所見を伺っておきたいのであります。
  233. 小林英三

    ○小林国務大臣 私は衆議院の本会議でも申し上げておりますように、現在の医療保険というものが社会保障の中心でもございまするし、またただいま社会保険の未加入者も三千万人程度おるのでありまして、今御指摘になりました医術の進歩等によりまして、老齢者の数もふえて参りますし、いずれにいたしましても、三十五年度を目途といたしまして、国民全体が社会保険に入るようにいたしたい、こういうことで今後をやっていきたいと思っておりますし、健康保険の問題あるいは国保の問題、その他今日健康保険の赤字に対して非常に大きなウエートになっております結核対策の問題をどうするとか、いろいろな問題を今後やっていかなければならないと思っております。こういう観点に立ちまして保険局の仕事というものは相当将来発展していかなくてはならぬという観点に立ちまして、保険局に次長を置いてやっていきたい。現在保険局というものが一方におきましては、中央において行政面においてタッチいたしておりますし。また他方におきましては、保険局みずからが保険者として仕事をやっておるようなわけであります。いろいろな意味におきまして、保険局の仕事というものは将来増大していくという観点に立ちまして、次長をぜひ置いていただきたい、これが今回の改正の趣旨であります。
  234. 受田新吉

    ○受田委員 厚生大臣は厚生年金保険という制度を非常に重視せられておると思いますが、この厚生年金保険の制度の拡充強化、その他いろいろな社会保険を統一した意味の国民年金制度への発展というようなことはお考えになっておりませんか。
  235. 小林英三

    ○小林国務大臣 社会保障の完璧という点におきまして、将来養老年金制度というようなととろまでも持っていくべきものだと考えております。
  236. 受田新吉

    ○受田委員 養老年金というようなところに持っていく養老年金制度は、すでに厚生年金保険にも入っているわけでございますが、厚生年金保険をそのまま拡充強化していくのか、あるいはこれらの社会保険をすべて一丸とし、あるいは恩給制度というようなものも含めて国民年金制度への研究を続けていくというような意思があるのかないのか。これは厚生大臣として大事な問題です。
  237. 小林英三

    ○小林国務大臣 そういうような問題もあわせまして、社会保障の完成のために私どもといたしましては、昭和三十五年というものを目標といたしまして、すべての方面において研究調査して参りたいと思っております。
  238. 受田新吉

    ○受田委員 あなたの目標は三十五年にとどまっているようです。三十五年を目標としてすべての調査と言われるが、あなたが今御指摘になったように、いまだ約三千万人ほどの未加入者を数えておるというのは、国民健康保険と健康保険そのほかの共済組合等の適用を受ける人々を合せた数字のほかに全国民で三千万人が入っていないということになるので、これは単に既設の制度を三十五年までに充実したいという大臣の御意思である。それよりももっと高い立場において国民皆保険という制度ができてきたならば、これをさらに飛躍して国民年金制度へ発展強化させるかどうかというような御研究を、大臣になられた以上は持っておらなければならぬ。三十五年に到達する一応の各種保険の目標を御説明になるのじゃなくて、将来日本の保険というものはどうあるべきか、国民年金制度、恩給法等はどう一本に取り扱うべきかというような点については、少くとも時局を担当する厚生大臣としての、よかれあしかれ一つの抱負経綸がなければ私は厚生大臣は勤まらぬと思う。そういう御意思があって初めて保険局に次長を置き、同時に保険局の中に一つの課も設けて国民年金を研究させるというふうにもなってくるし、また大臣の抱負経綸によって機構が適当に拡充強化されると思うのです。そういう今私の指摘しましたような政策について、厚生大臣としての抱負経綸があるかないか、また全然そういうものがなくて、三十五年までで、自分はそれから先は考えておらぬという考えかどうか、お示しを願いたい。
  239. 小林英三

    ○小林国務大臣 私が今申し上げましたのは、今御指摘になりましたように、三十五年を目途といたしまして国民皆保険に持っていきたい。なお今御指摘になりました年金の問題等につきましては、国の財政等ともにらみ合せまして、いずれ日本の国が、財政的にも国の力というものが伸びて参りました場合には、おのずからそういう方面にも意を用いていくべきものだと考えております。
  240. 山本粂吉

    山本委員長 受田君に御相談申し上げますが、厚生大臣は社会労働委員会の方へ御出席を非常に強く要求されているようですから、先ほどお約束のように、またあれから十分たちましたから、お願いします。
  241. 受田新吉

    ○受田委員 大臣に質問を保留してよろしゅうございますね。それじゃ質問を次会及び理事会と相次いで御足労いただかなければならぬおそれがありますけれども、一つ十分このわれわれの熱心な審議に御協力いただきまして、この法案が慎重審議の上通過するように、御協力あらんことをお願いして、大臣に対する本日の質疑はこれをもって終了し、次会に対する質疑を保留します。
  242. 山本粂吉

    山本委員長 外務省の中川政府委員がお見えになりましたから、御発言を願います。
  243. 受田新吉

    ○受田委員 中川局長さんにきょう御苦労いただきましたのは、ただいま厚生省設置法等の一部を改正する法律案が上程せられまして、政府よりここへ審査を願っておられるわけであります。この審査を進めていく過程において、どうしても外務省の御見解なりあるいは状況報告なりをお聞きしないと、この法案審査に支障が起る段階に達したわけなんです。それで特にこの関係事項といいますのは、未帰還調査部を従来厚生省の引揚援護局の付属機関として稲毛の方にあったのを、今度それを持ち運んで本省の中に入れたということが、改正の第一の要点になっておるわけであります。それを本省の中へこれを入れたということについて、未帰還調査事務というものがどういうふうに進んでおるか資料を御提出いただきましたところ、これはやはり外交上の問題が相表裏するので、一がいに厚生省だけでは処理できないという御答弁があったわけです。それは未帰還調査部の業務を続けていくためには、未帰還者留守家族等援護法の第二十九条に、まだ帰らざる人々の調査究明が政府の責任においてなされなければならぬという一項があるわけです。それはやはり外務省との関係でそれがなされるので、自然外務省のお知恵を借りなければならぬというような厚生省の方の言い分なんです。そこでこの調査究明におきまして、未帰還調査部の職員をふやしたらいいか減らしたらいいかという定員にも関係してくるので、外務省の御見解をいただきたいのでありますが、先ほど厚生省の大臣及び部局長の御答弁では、この未帰還調査業務は、最近において急速に転換した。外交上の都合で非常に変ってきた。どう変ったかということは、私外務省によって明らかにしていただきたいと思うのでありますが、調査究明は現在の外交交渉の上において非常に困難があるか、あるいはもうわかることはわかって、あとは簡単に処理できるような段階であるか。すでに松本全権とマリク全権とが交渉しておられるようでありますが、また引揚援護局長の田辺さんも御足労いただいておるようでありますが、外務省は、この調査究明に対してどんな見通しで協力しておられるかを御説明いただきたいのであります。
  244. 中川融

    ○中川(融)政府委員 未帰還者調査究明の問題でございますが、従来は引き揚げがあるごとに、その引き揚げてこられた方々から、受田委員御承知の通り、詳細な状況を聞きまして、それに基きまして、厚生省の未帰還調査部で詳細な資料を作りまして、それによって各人ごとにその人がどう行動を行っていたか、いついかなる情報がその人についてあったかということを集めまして、それについての調査を続けてきておるのでございますが、これは大体完了に近づいたと申しますか、引き揚げが進むに従いまして、これが進んできておるのは御承知の通りでございます。ところが引揚者の数が、だんだん最近に至りますと減って参りまして、従って厚生省の未帰還調査の仕事もおいおい比較的楽になってきたのではないかと考えております。今後残ります問題は、どうしても今までそういう引揚者の人たちからは情報がわからなかった人たちの数が、中共とソ連と合せまして数万に達するわけでありますが、この人たちの状況を調査する、この仕事が残るわけでございます。これは結局日本側ではどうあっても資料がそろいませんので、結局相手国の政府に交渉いたしまして、相手国の政府からこれの調査をしてもらい、その結果を知らしてもらうということになるわけでありまして、この方の交渉は、御承知の通り、ロシアにつきましては、松本、マリク会談で劈頭からこれを要求いたしております。日本から日本がその資料をほしいと思う人たちの詳細な名簿を出しまして、調査を要求いたしております。先方も調査自体については、主義上反対しておりません。しかしながらこれはなかなかむずかしい仕事であるということを申しておるのであります。今までのところはまだ結果が出てきておりません。これは政府といたしまして、今後極力努力を続けるわけでございますが、果して的確な資料が早急に入手できるかどうかということにつきましては、現実の問題といたしましては、相当困難を予測しなければならないのではないかと考えております。  なお中共につきましても、ジュネーヴにおきまして、御承知のように、わが総領事と先方の総領事との間に引き揚げ問題についてだけは直接の話し合いが行われておるのでありますが、この会談におきましても、現地にいる人たちの帰還ということのほかに、さらに日本側に事情のわかっていない約四万に上る人たちの状況の調査ということを、向うに要求しているのであります。これにつきましても、先方は主義上は異存はないと申してはおりますけれでも、そういう終戦直後からの状況は、あの混乱の状況のもとにおいておられた数万の人たちの状況を今調べろといっても、調べる方法が自分の方にもないわけじゃないかというようなことも言っているのであります。これは強く今後も交渉を継続いたしますけれども、果して短期間にこれまたわれわれの欲するような状況が入手し得るかどうかという点については、相当の疑念を持たざるを得ないというのが、遺憾ながら実情でございます。  最近の調査究明の外務省担当分の状況、並びに今後の見通しにつきまして、簡単に御説明申し上げます。
  245. 受田新吉

    ○受田委員 中川さんのまとまった御報告を聞いたわけでありますが、日ソ交渉においてわれわれの非常に関心を持っているのは、残留同胞の帰還問題であろうと思うのですが、これは調査究明に直接響く重大問題でありますが、政府の日ソ交渉上における扱い方においては、残留同胞の帰還促進を第一に取り上げて、それから領土その他の問題を審議するという段階は依然としてそのままの形であるかどうか、及びそれについて残留同胞の調査究明に何らか役立つような新しい材料がつかめていないか。現地の松本全権からの状況報告等で何らかつかみ得るものはないかを御説明願いたいのであります。
  246. 中川融

    ○中川(融)政府委員 日ソ交渉におきまして、引揚者の問題というのは、そのほかのあらゆる問題に優先いたしまして、まっ先にこの問題だけ切り離して交渉するという態度を当初から政府は堅持しているのであります。その態度方針については、今もって変りはないのであります。従って残存者の帰還及び行方不明者の調査ということが、第一の優先順位を持っているわけであります。これについて何らか有望な手がかり資料でもないかというお話でございますが、これにつきましては、先方は主義上異存はない、調査はいたしましょうということを言っておるのであります。その意味におきましては、友好が一つの材料であるということが言えるのでございますが、それでは具体的に何かそういう調査の数について少しでも資料をこちらによこしたかということになりますと、遺憾ながら今までのところ、具体的な資料等についての提示は受けていないのであります。しかしわが方から詳細な名簿を提示しておりますから、これが非常に有力な手がかりとなりまして、ソ連内の各地において、先方にその意思があれば相当な調査ができるのではないかと期待いたしておるわけであります。
  247. 受田新吉

    ○受田委員 未帰還者留守家族等援護法にはっきりと、今後三年以内に消息の不明なものに対しては留守家族手当を支給しないという規定があり、しかもこの間の法律改正でこれが三年延長されたわけですが、昭和三十四年七月三十一日でこれがもう打ち切られるわけです。結局三年間延長したいということは、外交上の努力というところに重点を置かれて、二十九条の調査究明を裏づけしてもらいたいという意思であることを、外務省の最高責任者としてお含みいただいておると思うのです。従って今後三年間で、その留守家族たちはもう未帰還者の留守家族でないとはっきり断定される運命になっておるのか。ことしの七月三十一日までのものを三年延長したわけですけれども、その三年の間に未帰還調査に非常に貢献のある御努力がされて、この未帰還者留守家族等援護法に規定された未帰還調査を三年以内には法律の精神に基いて完了せしめるという熱情を持っておられるかどうか、御説明いただきたいと思います。
  248. 中川融

    ○中川(融)政府委員 幸い三年間延長になりましたが、この三年間には、厚生大臣のお言葉をかりるようでありますが、画期的な変化がある、あるいはすでにその変化の兆が見えていると申していいと私は思うのであります。それは要するに当該国と直接の交渉が始ったわけであります。しかもこの直接の交渉におきまして、未帰還者の調査ということについて当該国がいずれも原則としては異存がないということを言っておるのであります。従ってこの交渉の進歩につれまして、この調査の問題も相当進捗するのではないかと期待いたしております。もとよりこの広大なる領域におきまして、相当長期間にわたる動静について調査するわけでありますから、なかなか急速に資料は集らないかとも思いますけれども、当該国政府が意欲をもって実施する限り、集まり得る資料はこの三年間に集まるのではないか、かように期待しております。それにつきましてはあらゆる努力を傾注する熱意を持っておるのでございます。
  249. 受田新吉

    ○受田委員 中共との問題は、三年以内に外交上の努力を十分されないと解決できないおそれがある。現在日ソ交渉のような正式交渉をしてないのでありますから、中共に残っておられる多数の人々というものは、日ソ以上の難問題にぶつかってくる。この点、三年以内に中共との国交回復、あるいはこの問題について早急に政府意思を代表する人を送って当らせるとかいうふうな、この法案の精神にのっとった外交上の努力について抱かれる御意見をお示し願いたいと思うのであります。
  250. 中川融

    ○中川(融)政府委員 引き揚げの問題、及び調査究明の問題は、これは人道上の問題といたしまして、あらゆる問題と離れて推進され得る問題なのでありまして、その意味から中共との間に、国交調整問題とは別に、ジュネーヴにおきまして直接の交渉を開始しておるのでございます。従ってこの問題についてはあらゆる方法をとりまして、ぜひこの三年の間にでき得る限りの調査究明を完了いたしたい。今の現状をもって把握し得る限度におきましてのものは完了いたしたいと考えております。このためにとるべき措置につきましてはさらに研究いたしますが、その状況に応じて、最も適当かつ必要な措置をとっていきたいと考えておるのであります。
  251. 受田新吉

    ○受田委員 外務省の熱情はよくわかるのでありますが、中共との問題は、依然として双方の国交が回復に至っていない、しかも日ソ交渉のような外交上のルールにも乗っていない中国との関係があって、いずれが是か非かで議論もされておる、しかも今の重光外務大臣のような考え方で、とかく台湾を重んじ中共を軽んじようという外交上の政策においては、非常にむずかしい問題が起ると思うのですが、引き揚げ促進の問題だけは正式の外交交渉ができる前においても、人道的立場から政府政府の関係で処理し得る道がありはしないかと思うんですが、その道は現在におきましては見通しは立ちませんでしょうか。
  252. 中川融

    ○中川(融)政府委員 引き揚げの問題は政府政府直接の交渉をしてよいという考えでありまして、すでに昨年夏から、ジュネーヴにおきまして政府当局、政府機関相互間に直接これの話し合いを始めておるのであります。従ってただいま受田委員のおっしゃいましたことはすでに実施しておるのでありまして、今後もこの方法によりまして、これだけは政治問題と切り離しまして、ぜひ推進していきたいと考えております。
  253. 受田新吉

    ○受田委員 田付総領事を介しての中共との交渉というものは、はなはだなまぬるいものでありまして、直接中共に乗り出して行くという政府政府の関係において軌道に乗せる道はないものか。
  254. 中川融

    ○中川(融)政府委員 必要あらば直接行くのもよいと思うのでありますが、現在までのところ先方の態度は、北京に来てくれという話がありますのは引き揚げの問題ではないのでありまして、これは一般国交調整の問題を討議するために北京へ来てもらいたいという話であります。先方の態度は、引き揚げの問題は政府間で話す必要なしという態度をとっておるのであります。ここらになかなかむずかしい問題があるのであります。われわれといたしましては、ジュネーヴにおける今の総領事館の交渉を今後とも続けまして、これによって打開の道を開いていきたいとただいまのところは考えておるのであります。
  255. 受田新吉

    ○受田委員 外務省アジア局長に対する最後の質問ですが、未帰還調査部が厚生省の引揚援護局へ入ってくるということによって未帰還業務が軽んぜられるという印象を国民に与えてはならないと思うのです。従って外務省としても非常にこれから熱情を傾けていただかなければならぬのですが、ソ連、中共以外の南方諸地域等においてまだ残された問題がある。局長さん御存じの長田タマエさんのサマテ島の事件のごとき、これらの外交上の努力を未帰還調査部の調査に基いて一つ十分御努力していただき、またそれによって実が結ばれないとするならば、直接現地に乗り出して留守家族をして納得がいけるまでの調査をさせるような便益を供与するというようなところまで心を配っていただく、それが私は調査究明の法律の精神を政府が順守されることになると思うのでありますが、いかがでございましょう。
  256. 中川融

    ○中川(融)政府委員 御指摘の通り考えております。南方諸地域にまだ案外相当の未帰還者がおられることが、時間のたつにつれましてわかってくるのでありまして、この方々の状況を調査するということは、ぜひ今後三年間に実現したい。かように考えております。なお必要あらば船等を出しまして、さらに政府の費用をもってこの調査を実施するということも必要であると考えておるのであります。この点につきましては、厚生省とよく連絡いたしまして、ぜひそういう運びにいたしたいと考えております。
  257. 受田新吉

    ○受田委員 どうでしょうか。外務省に対する質問はあまり長くなってお気の毒ですからおきますが、厚生省に対する質問は非常にまだたくさん残っておりますが、本日はこれで打ち切ります。
  258. 山本粂吉

    山本委員長 速記をやめて。     〔速記中止〕
  259. 山本粂吉

    山本委員長 速記を始めて。厚生省設置法等の一部を改正する法律案に対する質疑は後日に譲ります。     —————————————
  260. 山本粂吉

    山本委員長 次に労働省設置法等の一部を改正する法律案を議題とし質疑に入ります。通告がありますのでこれを許します。石橋君。
  261. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 時間も非常におそくなっておりますし催促もあるようですから、なるべく簡単に大臣に対する質問だけ先にやりたいと思います。  最初お伺いいたしたいと思いますのは、最近非常に問題になっております駐留軍関係の労働者の問題でありますが、最近新聞の報道にも明らかになっておりますように、本年度におきましても相当多数のアメリカ軍が日本から引き揚げていくということが発表されております。この点に関して最初お伺いしたいわけでありますが、二月三日の閣議の了解事項にも示されておりますように、人員整理とかあるいは特需関係の発注量が減った場合には、なるべく早く日本政府に通報があるように、強力に米軍に対して要請したいということを決定いたしております。これはもちろん失業対策の万全を期するという精神をくんでの御決定であろうかと思うわけでありますが、こういう線を具体化するためにも、特に本年度どの程度の米軍が撤退するのか、これに付随してどの程度の労働者が失業するかということが、やはり失業対策確立の根幹になると思いますので、まず最初にその見通しからお伺いしておきたいと思うわけであります。これは防衛庁関係の発表であろうかと思いますが、現在日本におりますアメリカ軍は、歩兵師団が一つ、海兵師団、空挺師団、独立砲兵大隊、工兵大隊といったような地上部隊四万二千、海軍部隊が六千五百、空軍部隊約五万、計九万八千五百名おる。そのうちことしは六月までに約一万一千名の撤退が政府に通告されている、こういうふうにいわれておるわけでございますが、確実な情報であるかどうか、まずお伺いしておきたいと思います。
  262. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 駐留軍労務者関係のことにつきましては、最近正式に呉の国連軍から通報がありましたが、そのほかのただいま御指摘のようなことについて私は承わっておりませんから、調達関係でそういう情報を得ているかどうか、調達庁の方から御説明申し上げます。
  263. 丸山佶

    ○丸山政府委員 軍自体の兵力関係、それからこれの減少関係についてはつまびらかにしておりません。ただ労務者関係におきましては、一番はっきりしているのは国連の関係でありまして、現在おります八千数百名のうち、年内に六千名、二千名は来年の末というように、これが一番はっきりしているところであります。一方アメリカ軍関係の方は、最近東北地方から騎兵師団が関東、中部地方に移動するのに伴いまして相当数の失業者が出ております。これから来年にかけましてどの程度になるかということの数字は具体的にはわかっておりませんが、従来の年度から見ましてもやはり一万ないし一万五千という数字は予定されるものと考えております。
  264. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 せっかく閣議で決定していただいて、米軍にこういうことは事前に早く通報してもらうようにという申し入れを強くやっておられると思うのでありますが、どうも今の答弁でありますと、この点不明確なわけであります。しかし大量の駐留軍労働者が本年中に解雇されるということは明らかな事実であります。御承知のように、昭和二十三年が一番多かったのでありまして、大体三十万以上の駐留軍労働者がおった。これが急激に減りまして現在直接間接その他合せまして大体十万というものが、ここ何年かのうちに急激に減っている。しかも今後米軍の撤退、これは結局日本自衛隊の増強と見合っていくものだと思いますが、十分に検討を加えられて具体化されていかなければならぬと思うわけであります。そういったときに閣議でこの問題が取り上げられたことは、確かに時宜に適したものだと思うのでありますけれども、この二月三日の了解事項は、まっ先に掲げてある問題一つとってみても具体化するところが何らない。結局失業対策を確立する根幹は、一体どの程度のものが失業するかということを把握することになくちゃならないのですが、それすら十分に把握されておらないということでは、まことにもって私は不安心でならないわけでありますが、一体大量に予想される駐留軍労働者の失業に対処して、大臣はこの対策を確立するだけの自信を持っておられるのかどうか。私はその点についての心がまえと、できればその片鱗をここでお伺いしておきたいと思います。
  265. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 今の御指摘は、米軍が撤退するということについて通報があったかというお尋ねでございましたから、米軍の撤退というふうなことについては、直接労務者に関係を及ぼすことは事前に通報してもらいたいということを言っておるのでありまして、軍の移動につきましては、私どもがそう早くつまびらかにいたすことはなかなか困難な立場であります。しかし内閣における特需等対策連絡会議から先方に申し入れましたことについては、御承知のように、今回呉で、三月から開始をして年内に約六千五百名を解雇する方針であるということを事前に通報いたして参りましたことは、私どもの申し入れを尊重いたしたものと存じます。なおそこで、この一番大きな国連軍で六千五百人という、ことに呉市で大量のものが出るということでありますが、呉は御承知のように、いわゆる失業者多発地帯でございまして、昭和三十一年度予算におきましても、地元の方では、こういうところの失業対策事業は、ぜひ全額国庫負担でやってもらいたいという御要望がありましたが、それがなかなか困難でございますので、御承知のように、最大限度の五分の四という負担率に増額いたしました。市長さんが見えまして非常に喜んでおられましたが、しかし六千五百名というものが一ぺんに出るということにつきましては、私どもとしては対策連絡会議において、十分地元の計画も承わったりして検討いたしておるのでありますが、御承知のように、日本軍が昔時っておりました施設を利用し、あるいはそれを拡大したりいたしまして、連合単が終戦後これを継承してやっておった。ところが日本軍というものがなくなり、国連軍というものも撤退するという非常な事態に直面しておるわけでありますから、これは何と申しましても、そこに働いておる者の雇用の関係は重大な段階であることは申すまでもありません。いわゆる失業対策事業などというものでそれだけのものを吸収することはとうてい不可能であります。これはわかりきったことでありますが、そこで私どもとしては、他の駐留軍の移動する部隊などで、新しい要員を要するというふうなところへの配置転換は、調達庁において十分努力をしておりますし、労働省の立場からは職業安定行政の面で特に駐留軍労務者の失業については、別段の扱いをいたしまして、特別なあっせんをいたしておりまして、他の失業者よりも就職率はこの方は成績がよいようでありますが、ただ遺憾ながらある地域におきましては、駐留軍労務者は御承知のように、取扱いとしてなるべく公務員と同じようにやろうという方針でありますけれども、公務員に対しては失業保険はございませんが、駐留軍労務者は失業保険がございます。それからまた一般の公務員よりも平素の給与手当がよろしいことは、石橋さんよく御承知の通りであります。そこでそういうような諸君が、どうも困った現象でありますが、やはり失業対策事業などを起しましても、ほとんどその方の安定所の窓口においでにならなかったといったようなこともございますので、私どもといたしましては、この要就職についての実態を把握するのに非常に苦しんでおるようなわけでありますが、六千五百名という国連軍労務者がだんだんと年内に解雇されるということについては、これはほうっておくわけにいきませんからして、ただいまも地元の方で何か具体策はないだろうか——先般行われました知事会議などにおいても、広島の知事さんにも特にそういう点をお願いいたしまして、地元に何らかの計画があるならば、国としては全力をあげてそれをお手伝いするようにいたしましょう、そういうことで地元と中央と協力して、出てくる失業者に対する対策を万全の措置を講じようということで、目下鋭意そういうことの相談をいたしておるという最中でございます。
  266. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 呉市の六千五百人の英連邦軍関係の失業対策というものを重点に考えておられるようでありますが、私先ほど申し上げたように、米軍関係の撤退が大幅に行われるということもこれはほとんど確実であります。現に東北あるいは九州の各県において、その予告を受けてここ数ヵ月のうちに解雇されようとしておる人も相当あるわけであります。この点は労働省も一応調査しておるようでありまして、二月三十四日の読売新聞にも、労働省の調べによると、という書き出しで、七月ごろから大体一万五千人という大量の解雇が予想されておるということを、はっきり出してきておるわけであります。ただいまの御説明を聞きますと、駐留軍関係労働者の給与が比較的高いとかそういうような表現で、一般失業対策に行きたがらないのだというふうなことを強調されておりますけれども、これは一方的な片寄った見方ではないか、私このように思うわけであります。駐留軍関係労働者の給与が一般公務員に比べて高いというふうには決して考えておりません。一つのワクの中にはめて、たとえば基本賃金とかいうようなものだけを取り上げて云々すれば、それはあるいはそういうことも言えるかもしれませんけれども、たとえば公務員に適用されております恩給とか、あるいは身分の保障とか、その他共済関係の措置とかいうふうなものを全部ひっくるめて考慮していった場合に、決してそういったような線は出てこないわけであります。退職金の問題一つとってみましても、この率が駐留軍労働者の場合に公務員よりも劣っておる。従って公務員並みにしてくれというのが、関係労働者の現在一番大きな念願になっておることも労働大臣は知っておろうと思うのです。そこでそういうふうな見方をされるのではなしに、やはりもう少し積極的に、こういった大量の駐留軍労働者を何とかしてやろうという熱情を持っていただきたい、私はこのように思っておるわけであります。現に終戦後十年間という長い間、駐留軍労働者がどういうふうな苦しい目にあってきたかということは、大臣もよく知っておられるはずであります。風俗慣習その他違った職場にあってどんな目にあってきておるか。それだけではない。駐留軍の基地の中で働いておるというだけで、日本の国内法による保護すら受けていないという例がたくさん出ておることは、これまた御承知の通りであります。十二月の臨時国会においても私この点質問いたしたのでありますが、当時取り上げました問題がやや具体化して参りましたので、あわせてここで説明をし、そうして大臣の確答を聞きたいと思うのでありますが、あのときに説明いたしました青森の三沢の基地で起きたコックの事件でありますが、湯川というコックがエビフライの半煮えのものを食卓に供したという理由をもって解雇された。ところが実際はそれが理由でない。また本人はその責任は全然ない立場にあった。そこで不当な解雇であるとして地方労働委員会に提訴した。地方労働委員はこれを不当労働行為と判定して救済命令を発した。ところが米軍がこれに従わない。仕方がないので青森の地裁にこれを提訴いたしたわけでありますが、この青森の地裁が非常に奇妙な判決を下しておる。結局地方労働委員会で下した不当労働行為というものは認めておりながら、その点には何ら触れないで、今の行政協定の範囲の中では、米軍の中佐がそういった行為を犯したからといって罰を加えることは何もできない、どうにもならないというような裁定を下してきておる。こういった問題を果して労働大臣として見のがしていいものかどうか。明らかに不当労働行為であるという判定が下っておる。その点何ら救済措置を講ぜられないというような日本人労働者が出てきておってもかまわないのであるか。先回もお話申し上げたように、もし日本政府の責任でどうしても米軍に国内法を適用させるだけの自信がないとするならば、米軍が直接日本人労働者を雇うというようなことを禁止する、全部日本政府が一応雇って米軍に提供するという間接雇用一本の方式に切りかえてしまったらどうか。あるいはまた行政協定そのものを改訂して、そういう疑義が生じないように、十二条あるいは十五条で明示されておるように、駐留軍に働いておっても、日本人労働者は日本の国内法の適用を受けるのだという、これが不明確だ、あいまいだというならば、不明確でないように、あいまいでないように明確に行政協定を改訂するというところまで持っていくのが、労働大臣としての職責上の義務ではないかと思うわけです。少くともアメリカ人だからといって、国内法を無視して、そういう非行をやっているのを指をくわえてながめておるということは、絶対にあるべからざることだと思うのであります。この点間接雇用一本にしたらどうか、あるいは行政協定を改訂したらどうかという私の質問に対しまして就任早々であるから少し研究させていただきたいという答弁であったのでございますが、その後の研究の結果を一つ答弁願いたいと思います。
  267. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 三沢のエビフライの話は私も報告を受けておりますが、基本的に、先方の使役する日本の労務者については労働三法を適用するということが原則であります。しかししばしばトラブルがあることも御承知の通りであります。ただいま日米行政協定に基く労務基本契約につきましては、これも先般御報告いたしましたように、先方と私どもの方で大体のことについては意見の一致したところもございますが、細目協定においてまだ彼我の意見が一致しないということでありまして、これは外務省も一緒になりまして、労務基本契約の改訂については今努力を続けておるところであります。あなたのおっしゃるように指をくわえて見ておることはできないわけでありますから、これは一生懸命で当局者を鞭撻して、労務基本契約の改訂に努力いたしておる最中であります。
  268. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 ちょっとおかしいのじゃないかと思うのです。私が質問いたしておりますのは直接雇用労働者の問題なのです。直接雇用労働者は、日米労務基本契約の適用を現段階において受けません。そこのとろをおはき違えになっておりやせぬか。先ほどから私が主として申し上げておるのは、米軍が直接雇用しておる労働者の問題で、日本政府が雇用して米国に提供しておるいわゆる間接雇用労働者の場合はややましなのです。というのは、最終的な責任を日本政府にとらせるということで、とるとらぬは別として一応ケリがつくからややましなのです。ところが青森で起きておるエビフライの問題にいたしましても、直接雇用労働者なのです。米軍がみずからこれを雇っておる。ここに問題があるわけなのです。従って先ほど申し上げたような、そういう日本の準司法機関である労働委員会で、明らかに不当労働行為であるという判定を下して救済命令を発しても、米軍が知らぬふりをしている。日本のいわゆる準司法機関である労働委員会というものは、完全に無視された格好になっておるわけです。こういうことでいいのですかと私は質問しているわけなのです。これは日米労務基本契約の問題ではないのです。今大臣が答弁されたのは間接雇用の問題です。直接雇用の駐留軍労働者を一体どうして日本法律で守ってやるかと私はお尋ねしているわけなのです。そのところをお間違いのないように一つ答弁願いたいと思います。
  269. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 今の直川の問題につきましては、われわれの方でも従前からあなた方からもお話がございますので、いろいろ相談をいたしておったわけであります。その細目のことについては政府委員の方から御答弁申し上げます。
  270. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 政府委員答弁をまだ要しない段階だと私は思う。結局先ほどから申し上げておるように、こういった哀れな日本人労働者を救う道はほかにないのです。二つしかないと私は言っているわけです。一つは何かというと、日本政府が全部雇う、そうして米軍に提供する。この間接雇用形式一本にしてしまうということ、そうすればとにもかくにも日本政府が雇用上の全責任を負う形になりますからさっき言ったような問題は残らない。それができないならば、行政協定そのものを改訂しなくちゃならぬと言っている。行政協定には直接雇用労働者の場合も、間接雇用労働者の場合も、明らかに日本の国内法を守ると書いてある。ここに読み上げますと、間接雇用労働者の場合は、第十二条の五項、直接雇用労働者の場合は十五条の四項に「別に相互に合意される場合を除く外、賃金及び諸手当に関する条件のような雇用及び労働の条件、労働者の保護のための条件並びに労働関係に関する労働者の権利は、日本国の法令で定めるところによらなければならない。」と明らかに書いてある。書いてあるけれども、向うさんが守らないという。なぜ守らないかといえば、基地管理権の問題がからんできている。裁判官轄権の問題がからんできている。少くとも行政協定が締結された当時は、そういうものにかこつけて日本法律を無視しようなどということはおそらく向う考えておらなかったんじゃないかと思うけれども、後日いろいろトラブルが出てきて、めんどうくさくなったのかどうか知らぬけれども、この明確な規定を無視して、日本の準司法機関がどのような決定を下しても、これを無視していくという態度に出た。しかも日本の裁判所がそれを認めるかのような、奇々怪々な判決を最近は下してきておる。ここに問題があると私は言っている。だから行政協定上アメリカの兵隊に日本法律を労使関係の問題で守らせることが、このような表現ではむずかしいということを言っている。裁判所はそういうことを言っている。しからばもっと明確な規定にこれを改訂したらどうかと私は言っているわけです。日本政府が全部雇ってしまう間接雇用形態一本にするか、行政協定をより明確にして、向うさんが知らぬふりできないようにして行くか、この二つの道をとる以外に絶対に方法はございません。今までの政府のやってきたことをみると、どんなに努力しますといったところで、突っかかってきて、問題は少しも解決されてきていない。しかも先ほど申し上げたように、青森地裁のこういった判例まで出てきておる現在においては、私はこの二つの方法しか根本的解決の方法はないということを申し上げているわけなんです。これは臨時国会でも私申し上げたわけです。ところが大臣は、お話の問題は基本的なことになりますので、十分研究して後日お答えすることにいたしますと言っている。後日が本日になっているわけです。相当長い間御研究願ったものと私は思う。だからその御研究の結果どういうことになりましたか、一つお答えを願いたいと言っているのです。
  271. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 政府委員から答弁いたします。
  272. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 こういった基本的な問題をなぜ大臣は答弁できないのです。私が質問しておることがわからないのですか。結局検討の結果、どういう結論が出たかということだけ聞いておるのです。(「事務的だ」と呼ぶ者あり)事務的じゃないですよ。
  273. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 こまかいことは政府委員の方から御説明申し上げる方が納得していただけると思うから申しておるのでありまして、政府委員説明は、政府の責任をとるところであります。
  274. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 私は経過を聞くならば、政府委員の方にお聞きします。結論だけを聞いておるわけだ。間接雇用の形態をとるこういった日本人労働者の保護の適用を完全にしてやろうと考えたか、それとも行政協定の改訂をやるべきだというように考えたか、どっちもやらぬで、そういうものは日本人だろうが何だろうが、ほったらかしておけという結論になったのか、結論だけを私はお伺いしておる。
  275. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 御承知のように、軍はただいまお話のありました裁判管轄権の問題について、米軍が公務上行なった行為、公けの立場で行なった行為については、これはアメリカ合衆国に対してのみ責任を負うという建前をとっておりまして、従ってただいま御指摘のような場合に、裁判所に出頭をがえんじないというようなことがございます。そういう点については私どもの方では、今御指摘のように、PXであるとかクラブであるとかに働いておる直用及び間接雇用ともに日本の労働法の適用を受けるものであるという見解のもとに、それでは困るということで折衝いたしておるのでありますが、とにかく先方の軍は、今申しましたような主張をとっておるのでありまして、まだ依然として話し合いがつかないでおるというのが今日の実情でございます。
  276. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 話し合いがつかないことは、聞かなくてもわかっておる。今までここ十年間駐留軍労働者というものは現存しておった。常にこういう問題は出てきておる。そのたびにあなた方政府機関は何とかいたします、交渉いたしますということを繰り返してきておる。そのあげくの果て幾ら話し合いをしたってだめだという結論がとっくのとうに出ておる。だから話し合いはだめだ、こういう問題を解決するためには、先ほどから口をすっぱくして言っておるように、二つの方法しかない。この二つの方法をとらないということは、もうしょうがないということになる。日本人の労働者が国内法で守られなくても、保護を受けなくてもしょうがないということになる。あなたはそういうお考えですか。そうじゃないはずだ。そうすれば何とか行政協定改訂の方向に動くなり、あるいは雇用形態を間接一本に切りかえるなり、そういう考慮が払われ、そういう努力がなされておるなら私は了解いたします。そこのところをはっきりお答え願いたい。
  277. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 これは専門象であらせられるあなたはもう十分よく御存じのことでありますが、私の方からは今申しましたようなことで、直用ももちろんのこと、しばしば事態の起りますたびごとに、先方と話し合いをしておるのでございますが、なかなか先方との話し合いに一致点が出ないで困っておるということを率直に申し上げておるのでありまして、そういう状態であるからほっておくというわけではありません。なお努力しておるのでありますが、御承知のような事情でなかなか困難である、こういうことであります。
  278. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 基本的に問題を解決しようという意欲を持たずして、ただ一つ一つ起きてくるトラブルをとらえて、あっちからつっつき、こっちからつっついていったってだめだということを言っておるわけです。なぜもう少し積極的な意欲をもって、私が言っておるような方向に動かないのかということを申し上げておるわけです。
  279. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 行政協定の改訂というふうなことになるようでございますが、そういう点につきましては当該閣僚から一つお開きただしを願いたいと思います。
  280. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 関連。今の石橋君の質問に関連して私もそういう例をたくさん知っている。横浜のPX、大船にもあります、あるいは座間その他にある。直接雇用の労働者が何の理由もないのに、その態度が気に食わないというようなことで簡単に馘首をされている。これに対して解雇権の乱用だということで、われわれが日本の機関の救済を仰ごうとすれば向うが出てこない。(「働かせてもらっているんだ」と呼ぶ者あり)冗談言っては困る。そういう日本人の従業員が簡単に馘首されているということを働かせてもらっているのだからしようがないというならば、労働政策なんかはあり得ない。こういう人々はみんな政府の救済を待っているにもかかわらず現実には何もできない状況にあります。労働省では直接雇用であろうと間接雇用であろうと、日本の労働三法が適用になるということを再々言っておられるが、実際は適用になっていない。この問題をどうするかということは今石橋さんが詳しく聞かれたところですが、もし大臣が努力している、そういうふうに持っていきたいとお考えになっているならば、あなたの努力が結実するまでの間に出てくる何十人、何百人という被害者をどう保護しようとせられるのか、この問題を伺いたいと思う。また同時に直接雇用の関係においては双方の間に就業規則というものができ上っておりません。直接雇用の関係の方々が作っている労働組合が、アメリカ合衆国に向って就業規則を作ってくれという要求をし、再再交渉いたしますこと数年に及んでおります。これについても労働省はほとんど関与せず放置してある。労使の関係の間に就業規則を作ることは理想的だとあなた方は考えておられ、これを勧めておられるにもかかわらず、この問題が依然として解決をしないことについて、放置している、全然関与しないという態度をとられるのは一体どういうわけか、このことをお伺いしたいのです。要約いたしますと、第一の点は、あなたが努力をすると言っておられるその努力が実るまでの間に出てくる何百人という被害者を、とりあえずどう救済しようとするのか、第二には直接雇用の関係において就業規則を作ろうとする希望を持っているにもかかわらず、米軍は何らこれに応じない。こういう態度をあなた方はどう処理をしていこうとせられるのか、どう努力をしていかれるのか、これをお伺いいたしたいと思います。
  281. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 私からそういうことを申し上げるよりは、ほんとうにわかるのは事務当局の方がいいのですが、私への答弁を御要求でありますから、御不満かもしれませんがお答えいたします。  こちらは先方に直用について——石橋さん御存じのように、直用の中でもPXの従業員が一番多いわけですが、そういうところで話し合いがつくように就業規則を作ろうという、今機運になっていますが、そういうことについて向うは拒絶しておりません。それからまた直用について皆さんも御存じのようにいろいろ業態の差別があります。PXとかクラブとかいうのは、割合にまとまっておりますけれども、ボーイさんから女中さんからいろいろございます。そういうものを日本政府が雇って、そうして先方にさらに間接の雇用でやるとかいうふうなことについては、なかなかむずかしい問題があり、話がうまくいかないのでありますが、そういう直用につても、私の方で先方に話をいたしまして、向うから最近申し出ているのは、何か苦情処理機関みたいなものを設けて、そこで話し合いをしようではないか、こういう機運にもなっておるのでありまして、だんだんとそういうふうに進んでいることは事実であります。従って今飛鳥田さんのお話のように、そういうトラブルがあった場合にはどういうふうに救済するかということでありますからして、そういうところで一つ円満に話をつけて、そういう関係を進めていきたい、こういうふうに考えております。
  282. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 今苦情処理の関係、そういうものを設けてやっていこう、こういうお話でしたが、これについては直接雇用の労働者はもうさんざん痛い目を見ております。一つの例をあげてみますと、立川で馘首になった、その解雇に対して異議を申し立てる方法ができ上っております。この異議を申し立てますと、大船の異議申し立て機関にこれが上申をされるのであります。大船に現実に異議の申し立てをいたします。ところが大船のその裁定機関は実情を調べなければならぬというのでこれを立川に差し戻します。ところが御存じのように、立川は空軍です。大船は陸軍です、陸軍と空軍との対立の関係で、そこにつり合いがあって、いまだにこの問題は一年以上解決をされない。そういう例があります。こういうふうに苦情処理機関などというものを向うの中に作って解決をしていこうとするならば、軍の中のいろいろなトラブルに巻き込まれて、本人の利益を保護するなどということはとうてい不可能になってしまう。こういう点から考えてみますと、苦情処理機関を作る、あるいは解雇の異議の申し立てに対する裁定機関を作るなどということは、必ずしも日本人の労働者の保護にはなりません。こういう実態もよくお調べになった上でそういうことを言っておられるのか。このことを一つ伺わしていただきましょう。
  283. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 そういうことをよく承知しております。そうしてまた今軍の中というお話でございましたが、これは労使双方でやろうということでありますから、向うの機関として作るというのじゃないのであります。基本的に困ることは、御承知のように、欧米人と日本人の雇用ということに対する観念に非常に差がございまして、これはもう皆さんも御承知の通りであります。たとえばドイツのごときはストライキをやればもう雇用関係はその日になくなる。そしてストライキが済んだらあらためてその労働者はまた雇用契約を結ぶ。いやならやめたらいいじゃないかというのが欧米人の犀川に対する基本的な考え方であります。そこで日本人としては働く権利を持っているんだという考え方が私どもとしては多いようでありますが、そういう雇用ということに対して基本的に彼らと日本人との間のものの考え方が違っておるところに、非常にやりにくい点があるのでありまして、政府といたしましてはそういうことについて十分苦杯をなめておりますから、できるだけの措置をして、直用については今申しましたように労使双方で苦情処理機関を設けよう、こういうところまで進んでおるわけであります。
  284. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 日本の雇用関係と外国の雇用関係とそのニュアンスが違う、こういうお話でありますが、もしそうだとしても、日本の国土の中へ来て向うさんが仕事をする以上は、日本考え方に従っていただくべき必要があります。このことを労働大臣は強く要求をしていただきたいと思います。  最後に一つ参考までに伺っておきたいのでありますが、ストライキをやりますと雇用関係が切れてしまうというドイツの法律だそうですが、そういう学説を唱えられているドイツの学者の名前を教えていただきたい。
  285. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 これは学説ではございませんで、現にそういうふうな取扱いをいたしておるということを申し上げたのであります。
  286. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 先ほどから個々に起きた問題を苦情処理委員会的なもので取り上げるのだ、あるいは就業規則というものを作る機運に向いておるのだというふうなお話でございますがこれは一九五三年一月十六日、当時の連合国司令官クラーク大将から書簡が出されて以来、はっきり一貫した米軍側の表面上の公約なんです。軍直用労働者といえども間接雇用と同じように扱うのだ、同等の条件のもとに雇用するのだということを常に口では言っておるけれども、実際に守られないということを私訴えて、それに対する措置を大臣にお願いしておるわけなんです。この間もちょっとお話いたしましたが、講和発効当時、われわれといたしましては、行政協定がいささか心もとない、今までの米軍の態度というようなものを通覧しても、面接雇用労働者というものにしてしまうと、必ず国内法は無視されるという危惧から、間接一本にしてもらいたいということを強く要望しておった。ところが当時の労働省当局の人たちは、労働省が責任を負うから、どちらかといえば全部面接雇用すべきだという意見を吐いておった。それくらいの意気込みを当時は持っておった。ところがそれから何年になりますか。当時のお気持をまだ持っておるとは思わないけれども、それほど米軍というものを甘く見ておった。間接雇用にするどころか全部直接雇用にしなければ筋が通らぬ。それじゃ国内法は無視されるからという警告に対しては、労働省がおるから安心しろと大言壮語しておった。それが何ですか。今になって何かためらったよう答弁をする。日米間の労働慣習の相違などというようなところに逃げ込まないでいただきたい。先ほどから申し上げているように、もう少し真剣にこういう暗い谷間に取り残されている日本人労働者のことを考えていただきたい。十二月の質問から本日まで大臣の考え方には研究した跡は全然見えない。保守党の中では比較的進んだ考えを持っておられると思っておったにもかかわらず、あなたの今のような御説明なら、これは鳩山総理の労働問題に対する考え方よりも数段おくれております。私はこの間二月二十三日に総理質問をいたしました。同じような質問をしたのです。結局私が申し上げたのは、一つは日米合同委員会に持ち出す持ち出すと言っておるけれども、過去にこういう問題が累積されていっておる。少しも解決しておらぬ。その原因は行政協定そのものにあるわけなのです。日本法律を守ると言いながら、ある場合には基地管理権を発動する、こういう矛盾したところに問題があるわけなのです。だから積極的にほんとうにこの問題を解決しようと思えば行政協定を改訂しなければならないと思う。少くともほんとうに日本人の基本的人権を守ろうと思われるならば、行政協定を明確にするということが必要だと思う。これに対して、総理は行政協定を改訂する必要があるということは私も同感ですと言っておる。あなたよりも労使の問題についてはよほど理解があり進歩的じゃないですか。そういうことじゃだめだ。鳩山さんよりも労働問題において劣ったおくれた考え方を持っては、私は労働大臣の任務が勤まらぬと思う。行政協定の問題はほかの部局のことだからという逃げ込みをやらないで下さい。少くともこの労使の問題からだけでも行政協定を改訂すべきであるというふうにお考えかどうか。私はその点からお尋ねしたいと思う。
  287. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 内閣総理大臣の進歩的思想をほめていただいてまことにありがとうございます。私は私どもの所管についてでき得る限りの努力を続けていく、こういうことでございまして、先ほど申し上げましたように徐々に私どもの希望の線に動きつつあるということでありますから、どうぞ一つ御援助を願いまして成功するようにいたしたいと思います。
  288. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 総理大臣は行政協定を改訂するというような考え方にも同感だと言っておるわけですけれども、この総理大臣考えにまで達しておらない労働大臣としては、今のような直接雇用の労働者の実態を見ても、なお行政協定の改訂の必要を認めないというのであるかどうか、この点をお答え願います。
  289. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 行政協定のことにつきましては、私がここでそういうことを申し上げるべき資格を持っておりません。その必要がある場合には、政府全体でさらに相談をすることでありまして、調達庁担当の私、ことに労働大臣としては、今申し上げましたように現在の機構の中でも一日々々と事件が出てくるのでありますから、それに対して万全の策を講じていく、こういうことであります。
  290. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 少くとも私は、鳩山総理よりはもう少し突き進んだ真剣な気持でこの問題に取り組んでもらえるものと、このように思っておりました。ところがこういった悲惨な状態に置かれておる直用駐留軍労働者の問題について、全然真剣な意欲を持っておらぬのじゃないかという疑いが起きるような答弁を、あえて固執されておる。それでは鳩山総理が現にこういう答弁をされておることについて、あなたはどういうようにお考えになっておるのか。総理がそういう考えならば、その線に沿って自分も何とか努力しようという考えにならないものかどうか、その点をお答え願います。
  291. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 今申し上げましたように、諸般の問題で行政協定改訂の必要ありということを政府考えましたならば、そのときには閣僚として御相談にあずかりましょう。しかしそういうことを予想して、私がここでとやかく発言することは、遠慮いたしたいと思います。
  292. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 先ほどから申し上げているように、明らかに行政協定は、駐留軍労働者といえども国内法の適用を受けるのだということを明示しておるにもかかわらず、現実においては適用を受けておらない。これは行政協定の表現が非常にあいまいだ、ほかの条項とからんできてあいまいになっておるというふうに地裁で判決を下しておる。そうすると、この行政協定を明らかにしなければ国内法の適用は受けられないんじゃないですか。日本の裁判所がそういう判定を下してしまっておる以上、協定を明確にしなければ、幾らここでうたい文句を掲げても、駐留軍直用労働者は国内法の適用を受けられないんじゃないですか。そういう不満な、不備な協定を改訂する必要を、労働大臣という立場からあなたはお認めにならないのか、私はどうも納得がいかない。現に守られておらないという例を見ておりながら、その原因が行政協定にあるということを日本の裁判所が下しておりながら、あなたがそれに対してもなお協定改訂の必要性を認めないというのは、どういうわけですか。労働委員会がはっきり不当労働行為というものを認定して、仲裁命令を発しておいてすら、どうにもならないというような状態のまま直用労働者をほっておいていいとあなたはお考えになるのですか、もう一度お答え願います。
  293. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 石橋さんも御存じのように、私どもは、国会において行政協定を承認いたすときに、労働三法が日本の労働者に対して適用を受けるということは、その当時からも言っておることでありますし、行政協定にも現にそういうことをうたっております。従って鳩山総理がどういう趣旨で行政協定の改訂ということを言われたか存じませんけれども、むしろ行政協定には労働三法を適用することになっておるのに、それが適用についていろいろなトラブルが起きていることの原因がどこにあるかということでありまして、そういうことについてさらに私どもの方では、直用については、先ほど申しましたような方法で、原則としては労働法が採用さるべきものであるのに、しかもなおかつそれが援用されておらないというところの原因について、どうやってそれを除去していくかということに努力をしているということであります。
  294. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 くどいようでありますけれども、もう現に裁判所で判決が下ってしまっている。判決の肝心なところだけちょっと読み上げましょう。日米行政協定十五条四項のような表現のもとでは、合衆国政府機関に対して、労働法令の違反についての過料制裁を課し得ないものと認める、これが判決の骨子になっているわけです。こういうものが出てしまっている。今のような行政協定の表現ではだめなんだということが、日本の裁判所でいわれてしまっている。争う余地がないじゃないですか。まだありますか。一体それでは被害者はどうしたらいいとあなたはお考えになりますか。私はその点からお知恵を借りたいと思います。
  295. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 米軍側の方は、日本の労働三法は適用しないのだということは、別にあらためて私どもの方には申しておりません。しかるに裁判管轄権の他の問題で、私どもの方から、こういうことでは困るではないかということで苦情を申し入れていることについて、その裁判管軸権に関するいろいろな議論が行われているのが現状であります。そこで私どもの方といたしましては、現在の法律のもとで、しかも労働三法が行政協定のもとにおいて尊重さるべきものであるということになっているのに、どこにそういうトラブルの原因があるかということを検討いたして、それを除去するように努力をいたしているのでありますから、その結果、鳩山総理があなたにそういうお答えをいたしたのであるといたしましたならば、鳩山総理のお考えは、その限りにおいては正しいかもしれませんが、私どもとしては、今ここでそのために行政協定を変えなくてはならないということは、私の立場では申し上げる段階ではありません。
  296. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 今国会自民党憲法調査会法案なるものを出してきております。これは憲法改正というものを目標にしていることは明らかなんでありますが、その改正の必要な理由といたしまして、現行憲法がアメリカから押しつけられた憲法だ、だから自主的な憲法に切りかえる必要があると、いかにも日本がアメリカに対して自主性を発揮しているかのごとく、国民の通俗的な民族意識に訴えることによって、憲法の改悪をはからんとしている。しかしながら、日本政府がアメリカに対して自主性を持っておらないことは、今あなたがここで証明しております。幾ら口で自主性があるのだ、あるのだと言っておっても、実際に駐留軍の日本人労働者に、国内法の保護を与えてやることすらできないじゃありませんか。それをまた何とか完全に与えてやるように努力しようという意欲すら、あなたは持っておらないじゃありませんか。そういうことで何の自主性ぞやと私は言いたい。私は、もう少し真剣になってこの問題を考えていただきたい。しかし、幾ら言ってもあなたはそれ以上の答弁をなさらない。鳩山総理は、先ほど読み上げたように、明らかに行政協定を改正する必要があるということを、私も同感ですと言っている。その線にすらあなたは現在のところ達しようとしておらない。しかし本日ここで幾ら申しても、あなたがそれ以上の答弁をしないというのであればやむを得ません。また後日お尋ねもし、総理にも尋ねることにいたしまして、皆さん方待っておられますので、一応質問を打ち切りたいと思います。
  297. 山本粂吉

    山本委員長 これにて本案に対する質疑は一応終了いたしました。  本日はこれにて散会いたします。     午後五時三十分散会