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1956-03-07 第24回国会 衆議院 内閣委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年三月七日(水曜日)     午前十時五十六分開議  出席委員    委員長 山本 粂吉君    理事 大平 正芳君 理事 高橋  等君    理事 保科善四郎君 理事 受田 新吉君       江崎 真澄君    大坪 保雄君       大村 清一君    北 れい吉君       小金 義照君    椎名  隆君       辻  政信君    床次 徳二君       福井 順一君    眞崎 勝次君       宮澤 胤勇君    粟山  博君       山本 正一君    横井 太郎君      茜ケ久保重光君    飛鳥田一雄君       石橋 政嗣君    稻村 隆一君       西村 力弥君    細田 綱吉君       森 三樹二君  出席国務大臣         法 務 大 臣 牧野 良三君         国 務 大 臣 清瀬 一郎君         厚 生 大 臣 小林 英三君  出席政府委員         法制局次長   高辻 正己君         法務政務次官  松原 一彦君         検     事         (矯正局長)  渡部 善信君  委員外出席者         議     員 岸  信介君         議     員 山崎  巖君         専  門  員 安倍 三郎君     ————————————— 三月七日  昭和二十三年六月三十日以前に給与事由の生じ  た恩給等の年額の改定に関する法律案内閣提  出第一〇一号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  憲法調査会法案岸信介君外六十名提出衆法  第一号)  法務省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第二五号)(参議院送付)  厚生省設置法等の一部を改正する法律案内閣  提出第九五号)     —————————————
  2. 山本粂吉

    山本委員長 これより会議を開きます。  憲法調査会法案を議題とし、質疑を続行いたします。通告がありますので、順次これを許します。茜ケ久保君。
  3. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 質問に入る前に、一言岸さんのことを正式に言っておきませんと困りますので……。憲法調査会法案は、政府提出でなく、自民党岸幹事長筆頭提案者として、自民党全員の賛成を得て提出しているのであります。そこで、先般来鳩山首相の御出席も得て、いろいろ御質疑を申し上げておりますけれども、党としての責任のある御答弁がございませんし、山崎先生に御熱心な御答弁をしていただいておりますが、どうも御答弁を聞いておると、みんな個人的な立場の御答弁が多いようであります。清瀬文部大臣の御答弁も、いわゆる提案者である党を代表した答弁がないのであります。こういった点から、やはり私は、社会党としても、これは提出者である自民党責任ある立場の人から、責任ある御答弁をどうしてもしていただかぬことには、納得のいかない点が多々あるのであります。かような意味において、先般来私は、筆頭提案者であり、党の幹事長という、一応自民党代表される立場にある岸信介氏の御出席を要望したのでありますが、先般の委員会においては、党務のために出席できぬという御返事を受けました。私はもちろん幹事長として党務重要性考えますけれども、この憲法改正しようとする準備をなさる憲法調査会法案提案者であり、さらに党の代表として、このような重大な案件に対する答弁のための出席を要望した場合には、党務もさることながら、きん然としてこの席に御出席いただいて、党の責任者立場から御答弁していただくことが、私は至当だろうと思うのであります。まことに残念ながら、今まではその機を得なかったのであります。従ってきょう私はどうしても岸幹事長のそういった立場からいろいろと御質問を申し上げて、党の責任者としての御答弁を要望したのでありますが、いまだに御出席がない。しかし与党の諸君委員長責任において必ずここに出席をさせるということでありますから、一応私はそういうことを了承して、質問に入るわけであります。一つその点委員長においては十二分に意を体して御処置あらんことを強く要望しておきます。  この憲法調査会は、いろいろな質問を通じて伺っておりますと、さらに第二条で「日本国憲法検討を加え、関係諸問題を調査審議し、」ということをうたっております。そしてまた、質問をいたしますと、文部大臣もあるいは山崎議員も、その多くを憲法調査会に期待をされておるようであります。もちろんまだ成案もないのでありますからやむを得ぬと思いますが、憲法調査会ができまして、憲法調査会が、この目的にうたっていますように、「日本国憲法調査検討を加え、関係諸問題を調査審議し、その結果を内閣及び内閣を通じて国会報告する。」こうなっておりますが、この検討を加えるということはどういうことを意味するか。これは非常に抽象的でありまして、検討を加えて、各章ごと、各条文ごと成案を得て、憲法調査会一つのここに改正される憲法草案を作る意味か、あるいはただ単に調査検討し、さらにいろいろな問題を調査審議したものを、そのまま内閣なり国会に御報告なさるのか、この点が明確でないのであります。憲法調査会相当日時を費して現在の憲法検討を加え、さらに調査審議をして、今の憲法とは異なった憲法草案お作りになるのであるか、あるいはまたそういうものを別な機関において作るための資料を作成されるのであるか、この点を明確に御答弁願いたい。
  4. 山崎巖

    山崎巖君 ただいまの御質問にお答えを申し上げたいと思います。憲法調査会が設置せられますと、たびたび申し上げますように、改正の要否、並びに改正すべしという結論に達しますれば、どういう点について改正をするかというような点を調査審議するのが、この憲法調査会の使命だと思います。結論として成文まで作るかどうかというお尋ねでありますが、これまたたびたび申し上げますように、憲法調査会は、調査会自体で自主的な運営をはかり、いかなる結論を出すかというような点も、調査会自体がきめる問題でございまして、ただいま提案者としまして、どういう結論が出るかということを予測して申し上げることは差し控えた方がよろしいのではないかと思うわけであります。
  5. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 それはただいままでもたびたびそういうことをお聞きするのでありますが、すべて調査会ができてから調査会にこれをまかしてという話でありますけれども、少くとも自民党憲法改正するという前提のもとにこういったものをお作りになるのでありますから、私はもし調査会が、調査会自身でその成文を作った方がいいとか、あるいは成文を作らないで、ただ単なる成文を作るための資料をと申しますか、現在の憲法調査あるいは検討して、ただ単なる新しい憲法を作るための資料だけを作るというようなことを、憲法調査会自身がそれを自主的にきめるということでありますか。——その点どうも私どもには納得がいかぬのです。憲法調査会お作りになる趣旨が、一応憲法改正するという一つ前提条件をもってお作りになるのでありますけれども、新しい憲法成文をどこが作るか。憲法調査会にそれをまかして、憲法調査会が作ることを自分できめるかどうかという点がはっきりしておらぬということは、憲法調査会法案を審議する過程を通じて私どもはどうも納得がいかぬのであります。幾ら今から前提を持っておらぬと言われても、提案者としては一応改正することを前提とされておりますから、憲法調査会に新しいに法の成文を作るという権限といいますか、そういうことをやはり与えるという一つの心構え、でなければ、そういった新しい憲法成文を作るということを憲法調査会に与えることができないとすれば、ただ単にここではどういう点を改正したらいいか、あるいはどういう点が不合理であるかといったような点を一応資料として出して、また憲法成文を作るためには憲法調査会といったようなものではなくて、もっと重要なという言葉は語弊がありますけれども、もっとしっかりした機関を作って成文を作るというようなことがあり得るのではないか、こういう点を思うのでありますが、どうも山崎議員の御答弁では、その点が私ども不安であり、納得がいかぬのでありますから、もう少し具体的にあなた方の立場を宣明していただいたらいいのですが……。
  6. 山崎巖

    山崎巖君 重ねてのお尋ねでありますが、憲法調査会ができまして、先ほど申し上げましたように、改正を要するという結論が出ました場合に、問題点をしさい検討して、その問題についての意見がある程度まとまるということまでは、はっきり申し上げてよろしいかと思います。その意見をどういう形で憲法調査会がきめるかということは、調査会自体運営の問題であり、調査会自体が自主的にきめるべき問題ではなかろうかと私は考えております。
  7. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 その点はそれではっきりわかります。ただ新しい憲法成文はどこで作るのか。そういった改正すべき点を指摘したり改正の要綱などは調査会でいいと思いますが、今の憲法に対抗する新しい憲法成文はだれが作るのか。調査会が作るのか、あるいは別なものが作るのか、ここなんです。成文作成責任はどこでやるのか。
  8. 山崎巖

    山崎巖君 憲法成文最後にきめますのは、いわゆる国民に対する発議というとになりますから、国会自体が正式の成文をきめるということになると思います。ただそれの発案の問題は、いつも申し上げますように、発案権政府にも国会にもある、私どもはこういう解釈をとっておるわけでありますから、発案の場合には政府がやるか、あるいは国会がやるか、この二様が考えられると思います。しかし発案政府がやるか、あるいは国会がやるかということは、その場合に決定すべき問題でありまして、今から政府が出すとかあるいは国会で出すとかいうことをきめるのは困難ではなかろうか、こういうふうに考えております。
  9. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 だいぶ具体的になって参りましたが、発案権政府にもあるかどうかは別といたしまして、調査会調査を完了した具合に、その完了した調査会資料によって新しい憲法成文がで承るわけでありますが、今山崎議員の御答弁では、国会発議するのであるから国会成文を作るというような御答弁と了解いたしましたが、国会が作るといたしますと、では国会の中に憲法調査会調査の完了によって新しい憲法を作るための何か機関お作りになる意向であるかどうか、この点を御答弁願います。
  10. 山崎巖

    山崎巖君 先ほど最後の案を作るのは国会であると申し上げましたのは、国会がその案を決定して国民国民投票を求めるという趣旨でありますから、この点誤解のないようにお願いいたしたいと思います。  なおただいまの御質問でありますが、これは国会自体が決定すべき問題でありまして、国会においてどうしても憲法審議のための特別の機関が必要であるという御意見がありますれば、そういうことになると思います。
  11. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 それぞれ機関の自主的な活動を尊重なさった御答弁でございます。それはけっこうであります。それぞれの機関自主性の尊重はけっこうでありますけれども、やはり私は提案者としては、ある程度の筋道の立った——憲法改正という重大なことを御提案なさるのだから、いろいろな運営については、それを強制されるのじゃなくても、一応の最終段階までの一つレールというものを考えていただいた方がいいと思う。でなければ、ただ調査会を作って調査会にまかせるのだ、今度国会にまかせるのだ——そういうことはけっこうであります、けっこうでありますけれども、やはり私は、あなた方としてはせっかくこうした重大なことをなさるのだから、そういった最終段階に至るまでの大体のレールというものをお考えになっておくことが必要じゃないか。でなければ、憲法調査会がどんな方へ突っ走っていくかわからぬ。あるいはあなた方が予測しないところまで突っ走っていくようなことも、あなたの御答弁を聞いていると考えられる。憲法調査会は自主的に調査会の中でいろいろなことをきめてやったらそれでいいかということになりますと、これは私ども国民代表として、それでは事が事だけに私はあまり安心できぬと思うのです。特に現在は、どうもあらゆるものが逆コースへ転換しようとするきざしのあるときだから、なおさらそう感ずる。従いまして提案者としては、そういった提案者の意思をあらゆる機関に強制するのでなくて、やはり何か一つのものをお持ちになっていることの方が大事ではないかということを考えるのですが、この点に対していかようにお考えになりますか。
  12. 山崎巖

    山崎巖君 憲法改正の問題は、ただいま御指摘のように国家的の非常な大きな問題だと思います。従いまして国会におきまして慎重審議をされる期間というものは、私どもは必ず相当期間があり得ると予想いたします。ただ憲法調査調査会というようなものを国会に置くかどうかということは、これはそのときになりまして国会できめていただく問題でありまして、私どもが、その方がいいとか、あるいはそういうことはいかぬとかいうことを申し上げることは、非常に困難だと思います。
  13. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 さらに第二条で、その結果を「内閣及び内閣を通じて国会報告する。」とございますが、この報告するということは、これは憲法調査会はおそらく相当長い時日を要して調査検討すると思うのでありますが、その調査が完了してから国会等報告するのか、あるいはその中間において、ある程度調査研究の進んだ過程において、国会中間報告等をなさるのであるか、この点を一つお伺いしたいと思います。
  14. 山崎巖

    山崎巖君 ただいまの御質問は、法文にございますように、調査審議の結果を報告することになっておりますので、結果が出表してから国会並びに内閣報告する、こういうことになると思います。
  15. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 そうしますと、相当長い時間憲法調査会がそういった検討調査を進めるわけでありますが、その間国会等報告がないといたしますと、われわれとしては、憲法調査会がどのような調査過程を通じて結論に到達するかということがわからぬわけでございます。そうしますと、との憲法調査会のいわゆる会議と申しますか、調査検討を進めるいろいろな運営になると思いますが、そういったものは公開してなさるむのか、あるいは一般の傍聴をさせない秘密会をもって運営されるものか。これはまたそうお尋ねすると、それは調査会運営とおっしゃるかむしれませんが、やはり私はその点は今おっしゃるように、結果が出てから初めて国会報告なさるとすれば、われわれとしては中間のいろいろな情勢がわからぬということになりますので、これはなかなか重大である。従いまして、との調査会運営を公開でなさる意向であるか、あるいは秘密会のような一般にその成果がわからぬというような形でなさるものであるか、との点について御答弁をお願いしたいのです。
  16. 山崎巖

    山崎巖君 ただいま私の答弁を先回りでおっしゃられたので、はなはだ答弁がむずかしいのでありますが、やはり今お話の通りに、これまた調査会が決定する問題だと思うのであります。ただ国会にはお互いに国政調査権限もあることでございますから、この憲法調査会の経過におきますいろいろな資料でありますとか、あるいは意見でありますとか、そういうことを国政調査権に基いてお求めになりますれば、それに基いて国会にその資料提出するということは、当然あり得ることではないか思っております。
  17. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 そういったこともできないわけではございませんでしょう。それから一方私どもが非常に心配するのは、調査会運営におまかせいただくのも、先ほど来申しますようにけっこうでありますけれども調査会運営いかんによっては、今度は逆に、調査会がその調査検討を進める過程において、憲法調査会成案を得て新しい憲法が生れるまでの長い期間を通じて、何らかの形で国民に流れまして、たとえばある条項に対して、これはいかぬ、こうしなければならぬということが次々に流されていって、そういった資料、あるいは一方的な宣伝とは申しませんが、まあ宣伝的効果を持った具体的事実によって、知らず知らずの間に一方的に国民がその方に集中されていく。いつの間にかこれはもうこういう形で憲法改正しなければならぬのだといった先入観を与えられ、そうしてあなた方がいよいよ成案を得て国会発議権を通して国民投票をなさる場合には、国民世論がその方に一方的に形作られていくという危険を私は感ずる。こういったことに対して、憲法調査会は完全に防ぎ得る運営方法というものがあり得るかどうか。私は事重大だと思う。これは憲法調査会が半月や一月で成案を得るならば、そういう危険もありませんでしょうが、皆さん方の御答弁を聞いていると、憲法調査会相当長い日時を要して結論を得るのは当然でありましょう、憲法改正でありますから。そうしますと、私の今言った危惧は、危惧ではなしに、いつの間にか国民世論が、自然に政府機関のあらゆるものを通して、そういう方向に持っていかれる可能性がある。この点については、絶対そうしたことはあり得ないという約束をなさることはできないかもしれぬが、私は十分な御留意が必要だと思う。この点についての御所見を承わっておきたい。
  18. 山崎巖

    山崎巖君 ただいまの御質問でございますが、憲法調査会の議事に関しましては、八条で会長が調査会の議を経て定めることに相なっております。従いまして先ほどから申し上げますように、すべて発表等につきましても、調査会自体の自主的の意見によってきまることと思うのです。もとより調査会が始まりますれば、そのつどその会議模様等につきましては、責任者が発表するというようなことはあり得ることだと思います。ただいまの御心配でございますけれども、そういう点につきましては、私の方としましても十分留意しまして、そういうことのないように努めて参ることは当然でありますが、同時に私どもの希望を申し上げますならば、この調査会には憲法改正反対意見を持った方々も御参加を願いまして、その結果がへんぱにならないように、そういう点も十分注意するならば、今御心配のようなことは防ぐことができるのではないか、こういう感じを持っておるわけであります。そういう意味におきまして、少し率直に申し上げますれば、社会党方々にもぜひ御参加を願いまして、ただいま御心配のようなことのないように御協力をお願いすることが非常に適当ではないか、こういうふうに私は考えておるわけであります。
  19. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 第三条に「調査会は、委員五十人以内で組織する。」という規定がございますが、この五十人というのには何か特別な意味があるかどうか。五十人というその員数の出てきた根拠がありますならば、それを承わりたいと思います。
  20. 山崎巖

    山崎巖君 五十人にきめましたのは、特別の根拠として申し上げるものはないと思います。ただ従来から内閣等に設置されました調査会前例等を見まして、五十人が適当ではなかろうか。なお昨年提出いたしました憲法調査会法案の内容も五十人となっておりますので、それを踏襲したにすぎないのでございます。
  21. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 五十人という人数根拠はないとおっしゃいますが、五十人の中に国会議員が三十人、そして一般学識経験者が二十人ということでございますが、これまた今御答弁のように、国会に幾らか重点を置いて、それに学識経験者のいろいろなアドバイスを期待するという意味でありますか。この辺のところはやはり今の御答弁と同じであるか。また特に三十と二十の比率お作りになった理由は別にございますか、あれば承わりたいと思います。
  22. 山崎巖

    山崎巖君 特別の理由としてはございませんわけでありますが、ただ憲法の問題は非常に重大な問題でありますし、結局国会発議にもゆだねなければならぬ問題でもございますので、普通の有識経験者よりも国会議員の方を多数に入れた方が適当ではなかろうか、こういうことで、数は国会関係者は三十人、有識者は二十人、こういうふうにきめたわけでありますし、これまた前回の憲法調査会法案でも同様な人数に相なっておるわけであります。
  23. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 国会議員三十名の中で、今山崎議員反対党である社会党議員にも入ってもらいたいというような御意向のようでありますが、この国会議員三十人の人選と申しますか、あるいは比率と申しますか、これは衆参両院ございますし、政党の差もございますが、この三十人を今あなたのおっしゃる反対諸君参加も願いたいということの意味を含めて、衆参そして政党別比率等について、何か腹案をお持ちでごさいますか。あったらお示し願いたいと思います。
  24. 山崎巖

    山崎巖君 今私自身として特別の腹案を持っておるわけではございませんけれども、従来の国会議員から出られます調査会委員の数の割り振り等、従来の慣例もあることでございますから、おそらくその慣例が尊重せられるということになるのではなかろうか、こういうふうに私自身としては今考えておるわけであります。
  25. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 政府はいろいろな委員会お作りになっていらっしゃいますが、そうした委員会委員任命される場合に、私ども考えると大して国政運営上重大な意義を持っているものじゃないというものの委員に対しても、たとえば議員がなる場合においても、あるいは議員以外の者がなる場合においても、国会承認を受けるという制度があるようであります。しかるにこの憲法調査会のごとき、まことに国の基本法改正するためのいろいろな調査検討を行うところの、これは私どもにとってみますれば、国の仕事としては最も重大な意味を持っておると思うのであります。こういった委員任命に対して、ただ単に内閣任命するという簡単な任命方法をとっていらっしゃる。これは私はちょっと看過できない事実だと思うのであります。先ほど指摘しましたように、大して問題もないような各種の委員任命においてすら、国権の最高機関である国会の同意を受ける処置をとりながら、憲法調査会というまことに重大なものを処理するこの委員会委員任命が、単に内閣任命するということは、私どもにはちょっと納得いかぬのでありますが、何かこれには特別な理由があってなさったことか、これを一つ明快に御答弁願いたいと思います。
  26. 山崎巖

    山崎巖君 ただいまの御指摘の点でありますが、憲法調査会ができまして委員任命いたしまする場合、国会閉会中の場合も考えられますし、まだ先例によりましても、たとえば地方制度の根本的な問題を検討しまする地方制度調査会のごときも、これは国会承認経ずし任命をいたしております。かたがたそういう先例もありますし、また行政的の何か権限を持ったような委員会でありますならば、これは当然国会承認を経べきものと思いますけれども、これは要するに調査審議機関でもありますし、国会承認経ずしてもよろしいのじゃないか、また今申しまするように、閉会の場合も考えなければならない、委員の交代の場合もときどき起るでありましょうし、そういう便宜の点から考えましても、この制度の方が適当ではないか、こういうことでこの案にいたしましたような次第でございます。
  27. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 ちょっと山崎議員の御説明では納得が参りません。もし調査会法案が通過して、調査会委員任命でもされるような場合に、私に言わしむれば、もし閉会中なら臨時会を開いて任命しても悪くないと思うのであります。地方行政とおっしゃいますけれども憲法改正する、これは山崎議員はただ調査検討するとはおっしゃるけれども、事実上この委員会成文を作らぬといたしましても、成文を作る一歩前のところまで行くと思うんですよ。形の上では成文はどこかほかのところで作るかもしれませんが、成文を作るに重大な基本的のものを作りますね。従って憲法調査会が新しい憲法成文を作ると言っても私は過言ではないと思う。それほど重大な仕事をするこの委員会委員が、閉会中であっては困るとか、あるいは補欠を出す場合に閉会中では困るといったそんな便宜的なことで任命されることは、私は絶対納得いかぬと思う。あなた方がそんな簡単なことでこの問題をお取扱いになるとすれば、私どもは容易ならぬことだと思う。私は、この第三条のいわゆる内閣任命という点は、ただいまの山崎委員の御答弁では、これは絶対納得参りません。もう少し根拠のある御答弁を要望したいし、私はこんなことではとても承知できない、こう思うのでありますが、もうちょっと腹のすわった御答弁をお願いしましよう。
  28. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 ちょっと私から申し上げます。わが国で議員がほかの委員会委員等になる場合には、現在では国会法の三十九条によって国会承認を得ておるのでございます。これは戦前の法規にはなかったことでございますが、議員が国の政治に専念するということからできた法規と思います。そこでこの三十九条の前段に「法律で定めた場合を除いては」とあるので、法律で定めた場合は国会承認を得ずして就任を認めておるのであります。そこで今回の憲法調査会法で三十人以内は国会議員がこれに就任するということを認めたのでございますから、今後国会議員のうちでおつきになるのには、法律のあらかじめの承諾によって、一々本会議承認の議案を出さないでもいい、こういう構成にしたのであります。これはほかにも例のあることでございまして、これがためにこの委員を軽く見たのではなく、ある意味においては法律的の権限によるので重く見たとも言えるのでございます。
  29. 山崎巖

    山崎巖君 先ほど申し上げました便宜論は別にいたしまして、本質的の議論といたしましては、さきにも申し上げましたように、普通の国家意思を決定しますような委員会でありますならば、これは国会承認を得るのが当然だと思います。しかしながら、この調査会は別に国家の意思を決定するものではなくて、憲法問題について調査審議する機関であります。従いまして、先例によりましても、内閣任命するという例が私ども多いように考えまして、こういうことにいたしたわけであります。
  30. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 ただいまの文部大臣の御答弁もちょっと私にとってはピントはずれだと思うのであります。また国会のことをするのでないとおっしゃいますが、私は国会のことをするしないにかかわらず、たびたび申し上げるように、国の基本法である憲法改正するためにいろいろ調査検討する機関でありますから、言いようによってはまた国会のこともいろいろ関係してくると思います。国会は、あらゆることを憲法によってきめるところですから、直接国会法について、あるいは国会の通常について論議しませんでも、憲法を根本的に改正することになれば、当然国会のことも入ってきます。私は今の言葉じりをとって言うわけではありませんけれども、私ども命をかけてまでこの憲法を守り抜こうという立場にある者からすれば、全く容易ならぬことだと思うのであります。鳩山首相のおっしゃるように憲法第九条を変えて再び戦争をするような事態を起し得る改正を意図されておる、さらにその他重要な点がありますが、このような国の根底をゆるがすような内容を持っておる重大な仕事をするものの委員が、ただ単に内閣任命だけであっては——任命なさる場合はいいでしょう。今山崎議員反対立場の者も入れたいというお話でございますが、けっこうでございましょう。しかし絶対的には改正賛成の委員が絶対多数であって、その中に一部調査会の議論を左右するに足らぬ者を刺身のつま的にお入れになるでしょう。それはほんとうの刺身のつまであります。しかしもしあなた方が大体この人はわれわれの考え通りの発言や調査をするであろうと思った人が、入ったところが案外違っておる、これは見ておるとどうも調査会の内容が皆さん方が最初期待した方向と別な方向へいきそうな気がするといったような場合、内閣はいつでも罷免できますよ。そして勝手に新しい者が入れられる。これでは私はほんとうの仕事はできぬと思う。それは議会においてもあなた方が今絶対多数でありますから、国会承認を経るといたしましても、皆さんの意見が十二分に出ることは当然でありますけれども、それにしましてもただ単に内閣が簡単に任免するのではなくて、少くとも私ども国民代表としてこの重大な案件にそれこそ生命をかけてもというくらい重要視している者の意見がこの任免等についても反映できる機会というものは、私は当然与えらるべきだと思う。私は今清瀬文部大臣山崎議員の御答弁を聞いていると、その点がまことに軽い、というのではありません、軽い、重いというよりももっと重大に考えていただいて、このことをもっと慎重にお取り扱い願う方が至当である、当然であると思う。どうも今のお二方の御答弁を聞いていると、そういった点から、私はこの憲法調査会の将来の運営に対して大きな危倶と不安を持たざるを得ない。私はおそらく国民全体もそういったものを感じていると思う。従いましてこの第三条の内閣任命という点については今までの御答弁ではとても納得が参りませんが、この条項は、国会議員の任免については国会承認を受けるという条項に一つ御改訂なさる意思はないかどうか、これを一つ最後にお聞きします。
  31. 山崎巖

    山崎巖君 私が先ほど申し上げた中で、国会の云々ということを申したようにお聞き取りのようでありますが、私の申し上げましたのは、内閣委員任命して国会承認を受ける委員会は、国家の行政権を決定するとか行政権につながるような委員会で、それは内閣任命して国会承認を得るのが前例でありますけれども調査、審議だけの機関でありますれば、これは内閣任命するのが例としてもむしろ多いわけであります。従いましてそういう例をとりまして、この憲法調査会内閣任命にゆだねた、こういうわけでありまして、今この案につきまして、私ども国会承認を得るというように修正する意思は持っておりません。
  32. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 御意思がなければそれはもうやむを得ませんが、しかし私はくどいようでありますけれども、こういうことはやはりただ単なる内閣の任免ということでなくして、できるだけ国会あるいは国民の意思がこういうものに反映するような運営、そういったことを十二分に含んでいただいてなさることの方が至当ではないかと思うのであります。しかし提案者においてそういった意思がないとおっしゃるならこれはやむを得ませんが、しかし私どもはこの憲法改正反対という立場におりましても、こういった法案がやはり具体的には多数の力で成立して、そしてまた実際に活動するという過程が一応考えられる上においては、やはりそういう危倶を感ずるのであります。まあ一つそういった善処方を要望しておきます。  次に、私は清瀬文部大臣お尋ねしたいのでありますが、今まで本法案の審議の過程を通じて天皇に関する問題がたびたび論じられております。清瀬文部大臣は、現在のいわゆる民主憲法のもとにおいて、また民主日本の国情からいって、いわゆる旧憲法時代に現人神とかあるいは神様的な扱いを受けた内容を持っておる天皇という言葉が、現在も使われ、また将来も使われるようでありますが、天皇という言葉に対して文部大臣はどのようなお考えをお持ちであるか。このまま天皇という言葉を使ったことの方がよろしいのか、あるいはまた、これは今の憲法を作るときにも相当論議があったようでありますが、現在のような姿で残って参りました。またここで自民党諸君は、憲法改正しようとなさる意図のようでありますが、そういったことによって天皇という呼び名を何か別なものにお変えになるような御意思があるかどうか。またないとすれば、天皇という言葉は、やはり依然としてりっぱな言葉であるかどうか。こういう点で、一つ文部大臣の御所見を承わりたいと思います。
  33. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 まことに重大なお問いでございますが、数千年来使った、わが国の皇室の首長を天皇と申し上げるのは適当と存じます。
  34. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 数千年使ったとおっしゃいますが、数千年はどこまでがほんとうかどうかわかりませんけれども、少くとも天皇制のもとに長い間呻吟した国民立場が、大東亜戦争の敗戦という形で、一応日本の過去の歴史はそこで——私はなくなったとは申しません、なくなったとは申しませんが、今文部大臣のおっしゃる数千年来積み重ねた日本の過去の形態というものが一応そこでこわされて、敗戦を機に新しい姿の日本に生まれかわったと思うのでございます。私どもは大東亜戦争という無謀な戦争を通じて、負けたという現実に際して——これはもう負けたという事実に対しては遺憾でありますけれども、しかし戦争に負けたということによって、私どもはこの点でも多くのものを得たと思うのであります。その中で最も大きなものは、いわゆる基本的人権の尊重とか、民主主義とか、平和主義、この現行法に流れておる三つの原則は、特に私どもは敗戦という一つの大きな犠牲を経て得たものでありますけれども、全く日本国民としては、これは仕合せだと思うのであります。そういった過程を通じて、文部大臣の頭の中に、数千年来使ってきた言葉であるから、やはり天皇という言葉はいいとおっしゃるけれども、私どもはその中に一つの大きな時代の転換と申しますか、こういったものを契機に——どもはどうしても天皇という言葉は、過去の非常に忌まわしい現実と結びついて不似合いであると思う。私は過去において天皇の名によって、無実の罪で懲役の刑を受けました。いわゆる治安維持法によって豚箱に六カ月、刑務所に三年半もつながれました。何も私は——まあ山崎議員がここにいらっしゃいますが、あのときは山崎議員ではありません、ほかの人ですが、今現に国会の中に国会議員としていらっしゃいます。私は具体的なものが何らなかったのに、ちょっと来い、で引っぱられて、四年という長い獄屋の生活をさせられた。これは最後には天皇の名において懲役を言い渡された。これは私の例でありますが、そういったものが数々ある。また戦争に、天皇の名によって引っぱられて、何百万という若人が死んでおるのです。こういった天皇という言葉からくるところのなまなましい現実を見るときに、この際天皇という言葉は、国民にとっては決して響きのいいものではないと思う。それは一部の支配階級——今の自民党の皆さんにとってはあるいはりっぱなものかもしれません。天皇を利用して、過去においてずいぶんいろいろなととがなされておる。従いまして私はこの際憲法改正しようとおっしゃるならば、ただ単に数千年来使ってきた言葉であるからまことにけっこうです、ということではなくて、日本の現実と天皇というものをもっと掘り下げて考えて、ここで英断をもって何らか別な言葉をお考えになる意思はないか。清瀬文部大臣も、天皇陛下はありがたいといって最敬礼をなさるのが能ではないと思いますが、その点もう一度はっきり言って下さい
  35. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 ほかの人はどうお考えになるかしりませんが、私は天皇という称号を改むべしという考えは毛頭持っておりません。このままでいいと思います。ただ、しかしながら主権の存在を国民に置くか、また現在のようにこれを国民結合の象徴とするか、または国際法にいう元首ということに申し上げるか、それは別でありますけれども、さっきも申しました古来用い来たっておる天皇の称号を廃止するなどということは夢みたこともございません。
  36. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 まことに清瀬文部大臣は、昔でいえば忠義一徹のお言葉でありますが、まあけっこうでありましょう。私は、天皇と国民関係についてどのようにお考えか、昔は天皇に対しては、いわゆる最敬礼と申しますか、絶対至上であって、天皇という言葉を聞けばすぐに不動の姿勢をとった。今はそうでありませんけれども、やはりまだ国民の中には、天皇という言葉を使う場合には、過去のそういった残骸がまだだいぶん残りております。一部の諸君の中には、天皇に対して清瀬文部大臣のようなお考えも残っておるように考えますけれども、大部分の国民は、すでに異なった行き方、異なった考え方にだんだん大きく生れ変ってきた、この現実を私は無視できぬと思う。それをいつまでも天皇というものはありがたいものだという、何か特別のものだというような形で残すことは、国全体の立場からいいかどうか、これは私は考えものだと思う。しかし清瀬文部大臣の今の御答弁では、清瀬先生の頭は簡単にはちょっと変りますまい。そこで、清瀬先生にはお伺いしません。山崎さんに聞きますが、この点どのように考えますか。かってあなたは天皇の名において相当暴力的なことをおやりになったのは事実です。それをここであばいて、あなたの個人攻撃をしようとするものではありませんが、あなたも清瀬先生と大差ないのではないかと思いますけれども、しかし最近私がお会いする山崎さんは、なかなか進歩的な考えを持っておられますが、こういう意味において、今の私の問い——天皇を国民との関係においてどのようにすることが、日本全体のためにも、また国民のためにも、また天皇御一家にとっても、どのような姿に置くことが一番いいことであるか、この点一つあなたの構想をお伺いしたいと思います。
  37. 山崎巖

    山崎巖君 私も日本の歴史から考えまして、また国民の現在の感情から考えましても、天皇の呼称を変えるということは適当でないと考えます。
  38. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 いろいろ聞きたいととがたくさんございますが、もう時間もございませんから、私は清瀬文部大臣にもう一点お伺いいたします。清瀬文部大臣は天皇至上主義のようなお考えでありますけれども、今度憲法改正されようとする場合においては、過去のような天皇と全然連絡のない別個な形で、こういったことを調査したり考えたりするのではなくて、この際思い切って天皇の意思をお聞きしたらいいと思う。今までは天皇はまるで神様に祭られて、勝手に天皇を利用した——と言っては語弊がありますが、天皇を使いました。私はよく開会式に見える天皇を見て、まことに気の毒だと思う。ああいう形の天皇というものは、まことに気の毒だと思う。全然天皇などというものは、自分の意思がない。だれかにあやつられている状態なのです。幾ら天皇々々と、文部大臣あたりからおだてられても、私は自分の意志で行動のできない人間というのは、まことに不幸だと思う。従って、今までのように天皇を祭り上げて、天皇の意思と何ら関係のない人たちが、関係のないことをするよりも、この際天皇の意思を聞いたらどうか。この際憲法調査会は、一つ天皇の今後の国民との関係憲法上の立場、こういったものをさっぱり天皇に意見を徴して、天皇の意見を入れて、言葉はどうでもいいが、天皇の処置を考えるという意思はないかどうか。また、かつて文部大臣あたりは、ただ単に最敬礼をして、ごきげん伺いをするのではなくて、そういった天皇自身のあり方について、今まで意見を聞いたことがあるかどうか。あるいは皇太子でもいい。天皇一家の、天皇一家という立場についてのご意見を聞いたととがあるかどうか。あったら、それに対する天皇の御意思をここで表明せられたい。そんなことがなければ、今度の憲法改正しようというこの機会に、天皇の意思を反映させるだけの決意があるかどうか。その点を一つ清瀬文部大臣からお伺いしたいと思う。
  39. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 現在の日本国憲法は、もとの世間でいう明治憲法の手続によって改正されたものであります。それゆえに、天皇の御意志をもって発案されております。天皇の意思に関係なくできたものではございません。あなたはいろいろおっしゃいますけれども、しいてここで討論はしませんが、一つの民族、わけても日本のような九千万近くの大民族が結合していくということは、非常に大切なことでございます。よその国は、国民結合の象徴がなくて、始終動揺をしておる国があるのであります。わが国がこの天皇を国民結合崇敬の的とするということは、日本の持っておる非常に大きな利益でございます。われわれは伝統的にいいものはこれを保持していく、そうして進歩には勇敢に行く、こういうのがわれわれの政治観でございます。天皇の地位をどうするかは、やはり憲法調査会で、さっき答えた通り、討論されるでありましょう。民主主権ということは、これは天地の道理にかなったことでございますから、国民主権のことはいかなる調査会でも動かすことはいたすまいと思いますが、天皇のお立場なり、あるいは称呼なりについては、討論されることと私は思っております。しかしながら、私自身としては、やはり天皇のお名前は保持したいと思っております。
  40. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 では、まだ質問がありますが、岸幹事長が見えたので、一つ岸幹事長にお伺いいたします。  ただいま、岸議員ほかから御提出なすった憲法調査会法案の審議をしております。鳩山総理も見えましたし、また今山崎議員清瀬文部大臣もおいでになって、いろいろ御答弁を願っておりますが、ずっと御答弁の経過を見ておりますと、自民党としての責任ある御答弁がないのであります。そこで私は、岸議員は党の幹事長であるし、さらに本法案筆頭提案者でありますので、この際やはり自民党代表して、憲法改正しようとなさる一つの決意をここで御表明願いたい。  憲法調査会法案の提案理由というものは、まことに簡単でありまして、ただ占領中にアメリカが一方的に押しつけた憲法であるから、これを独立した今日日本的に改正をするのだという、簡単な御説明であります。鳩山首相憲法第九条でいわゆる陸海空軍が持てないような規定になっておるので、これを変えなければならぬというお答えであります。鳩山首相憲法第九条の改正というものを、これは正直に具体的におっしゃっておるのでありますが、提案理由で説明されました、ただ単にアメリカが占領中に一方的に押しつけた、これは形の上ではそういうことが言えぬこともないでございましょう。日本の国会という機関があったにかかわらず、占領中ということで、それはそういう点はありますけれども、しかし私はそれだけでは、この憲法改正するために、その一つの準備機関お作りになる憲法調査会法案をお出しになった真意とは受け取れない。やはり私は自民党としては、相当今の憲法に対する考え方なり、あるいはこれをどのような方に改正しなければいかぬといったようなことがあると思います。今天皇のことについて文部大臣にお聞きしておるのでありますが、たとえば天皇のことについても、ただ文部大臣はありがたい、ありがたいで、何かやはりその思想の根底には、旧憲法時代の天皇至上主義と申しますか、天皇神格化的なお考えが、依然として残っておるようであります。これがいい悪いは別として、そういったことを考えますときに、自民党が先般第二十二特別国会であのような混乱を起しながら、遂に廃案になったこの憲法調査会法案を、またここにいわゆる二百九十九名の絶対多数のもとにお出しになった、そこには何か理由あると思うのです。その点私は岸幹事長に具体的に一つ一つの問題についてお聞きするのでなくて、この憲法調査会法案を重ねてお出しになった自民党としての立場と申しますか、そういった考え方を率直にここで御表明願いたい、こう思うのであります。
  41. 岸信介

    岸信介君 この法案を私ども提案をいたしまして、すでに提案者代表し、——同時に提案者代表するということは、わが自由民主党の考え方を代表して、山崎議員から今日までるる申し上げておると私は承知いたしております。別段幹事長として、山崎議員提案者代表し、党を代表して申し上げておることに、別につけ加えるべき何ものもない、かように存じております。
  42. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 先ほど申しますように、山崎議員などのお説を聞いておりますと、個人的な御意見が多いのであります。これは速記録をごらんになればわかりますが、自民党という大政党代表して堂々たる御見解が、自民党の態度の御表明がないのであります。そこでわざわざ私は岸さんをお呼びしたのであって、今のような御答弁で事足りるならば、わざわざあなたをお呼びするのではない。国民もこういったことを聞いておって、納得のいかない点があると思う。今平和憲法、平和憲法といって、一応私どもは非常になじんで参りまして、またりっぱな憲法であると思っているやさきに、これはいかぬから変えなければならぬとおっしゃる以上は、私はやはりもっと突っ込んだ一つの御主張なりお考え方がなければならぬと思うのであります。ただ単にアメリカが作ったんだからというだけでは、私はやはりとの重大な基本法をお変えになろうとする理由は非常に薄弱なものであると思う。ところが今まで聞いておると、それは皆さん方社会党憲法改正反対であるからそのように言うとお考えかもしれませんけれども、私ども憲法改正反対、賛成にかかわらずこういった重要な条件を、私たちの立場からすれば、それはもちろん小さい面をとってみればあるいは意見もございましょう。しかし少くとも大筋においては私どもはまことにりっぱだと思う。と同時に、あなた方は幾たびも質問過程を通じてこうおっしゃっている。憲法の三原則である平和主義と民主主義と基本的人権を尊重するという立場は、絶対くずさぬとおっしゃっている。平和主義を徹底的に守るということと、その平和主義を最も端的に現わしている憲法第九条を改正するということはどういったことかこういった関係、あるいは民主主義をあくまでも守るということと、今たとえば清瀬文部大臣答弁されたような天皇という存在、これと国民との関係における規定、あるいは基本的人権、これも私は先般の調査会の問題で鳩山首相に徴兵制についてお聞きした。船田防衛長官は就任当時、当然戦争を予想して兵隊を派兵した場合はどんどん倒れていく、倒れた者を補充するためにはどうしても憲法改正して徴兵制を実行して徴兵しなければならぬとおっしゃっている。こういうことと、やはり基本的人権の尊重ということとは関係がある。こういったことには何らお融れにならないでぼかしてしまって、ただ単に三つの原則は守るんだとおっしゃっている。どういうふうに守るのか、守るべき条項を変えて、逆に私の方からいえば、それをこわすような方向に変えようとする意図がありながら、どういう点でこの三つの点を守られるか、こういう点が今までの御答弁では私どもはどうも納得がいかない。しかも個人的な意見が多いのであります。そこで私もお忙しいでございましょうからくどくは申しませんが、この際自民党の確固たる御信念を、どうしてもお一言岸さんの口からはっきりここで御表明願った方が、私はよろしいんじゃないか、こう思うのであります。
  43. 岸信介

    岸信介君 この法案は、御承知の通り憲法に関する調査会を作ろう、こういう法案でございまして、今日まで民主党としても、憲法に対する各項目にわたってこれをどうすべきかということをまだ決定はいたしておりません。ただしかし提案理由において説明しておるごとく、その後提案者代表して山崎議員が御説明申し上げたごとく、今日の状態において憲法を全体的に再検討し、これを根本的に調査していくところの必要の事態に達しておる、こういうことにおいては政府ははっきりした見解を持っておりますが、各項目に対するいろいろな議論、どういう方法においてどういうふうにするかということこそは、この調査会において研究せられ、またそれにおいて具体的な方向が示さるべきものである、私はかように考えるのであります。
  44. 森三樹二

    ○森(三)委員 関連質問。岸さんにお尋ねしますが、私はこの憲法改正につきましては、従来あなた方が合同しない前に、自由党においても、民主党においても、それぞれ党の機関においてたとえば岸試案と称されるような、あるいはまたその他の方々の試案が発表されております。政党としてもあなた方は一つ成案をもって発表もされているのでありまして、あなた方が自由民主党として合同された今日においても、一つの案にお持ちになっておられるはずであります。しかも私はそういう立場において、今回の憲法調査会なるものは、国会議員三十名と学識経験者二十名、合計五十名をもって構成することになっております。そうだとすれば、われわれ社会党がこれに参加するしないは別といたしましても、あなた方はあなた方の政党として十分その機能を発揮せられまして、一つ成案を得られるはずだと思うのであります。しかるに現在あなた方は三分の二以上の勢力を持っておらない。憲法改正は御承知の通り三分の二以上の議員発議がなければ行えないのでありまして、かりに憲法調査会において一つ資料ができましたところで、直ちにあなた方の政党において憲法改正案というものを出すことができないのであります。ある論者は政府に提案権があると申しておりますけれども、これに対しては幾多の疑義があるのでありまして、現在の国会の勢力分野においては、このような資料ができたところで、法案提出し、発議することはできない状況にあるのでありまして、私はこの三分の二以上の勢力を持った政党があった場合においても、やはり憲法改正しようとするならば、国会の内部に憲法調査会あるいは憲法改正特別委員会というものを設けて審議することが、やはり国会の場を通じて新聞、ラジオその他のあらゆる機関によって国民に批判をさせる機会を与える。ところが今回のこの憲法調査会にあっては、おそらく公開するわけにもいかぬでしょうし、非常に内々的にその議が進められるというふうな形をとるのだろうと思います。従って私は少くとも現在の勢力分野においては、こうしたところの特別な調査会を設けるということは、三分の二以上の議員発議がなければ憲法改正ができないというあの精神に違反するものであると考えているのでありますが、岸さんはどういう御所見を持っているか、明確に御答弁を願いたいと思います。
  45. 岸信介

    岸信介君 今日まで憲法に関する改正の試案といいますか、意見は各方面にいろいろ出ております。わが自由民主党におきましても、憲法調査会という委員会を置きまして、そうして党の意見調査研究しまとめておりますが、党としてのまとまった意見は今日までまだできておりません。われわれはこの本法において置かれる調査会においてもし成案ができたといたしましても、その成案が直ちに日本の憲法改正案の原案となるものとは実は考えておらない。この調査研究の結果は国会政府報告することにこの本法においてなっているので、これに基いて議会がどういうふうに扱っていくか、また政府がどういうふうにこれを扱っていくかという問題は、その後の問題であろうと思います。従いまして本調査会において研究せられ調査せられた結果が直ちに憲法改正原案となって、国民の了解やわれわれの理解もなく実現されるということは絶対に考えられないのであります。私はその点においては、今お話のような前提とは前提が違うと思う。なおこの調査会国会に置いたらいいじゃないかという御議論も私ども伺っておりますが、やはりこれには議員外の有識者も入れて一つの研究調査をすることが適当であるという見地において、政府に置くことが適当である、こういう考えを持っているわけであります。
  46. 森三樹二

    ○森(三)委員 私は現在の三分の二以上の勢力を持たないあなた方の政党が、かりに憲法調査会資料ができましても、それを参考としては憲法改正発議権を行使することができない、そのような状況下においてこのような憲法調査会を作るのは、憲法九十六条のあの精神に背反するものだ、このように考えるのですが、これに対して岸さんはどう思われるかという質問をしたのでありまして、そこを一つ明確に御答弁をお願いしたいのです。
  47. 岸信介

    岸信介君 成案をいよいよ得まして、あるいは改正案を国会に提案するという場合におきましては、これは御質問のごとく、三分の二以上の者が要るということは、これは憲法の明示するところでございます。しかしわれわれが研究し、調査するということ、またその研究し、調査したところの結果は相当国民に理解され、また各方面からこれが批判を加えらるべきものであるということは、私は当然のことであると思います。そういうことをいたすことにつきましては、別に三分の二がなければそういうことは絶対にできないというものではなくして、実際のこれを提案する場合においては、今森君の言われる通りの条件がなければならぬことは、言うを待ちませんけれども、しかし本法のごとく、調査をし、またそれによって得たところの結論国会政府報告する、そうして各方面の批判を受ける、また国民の理解を深めていくということは、別に三分の二なければできないというむのでもない、かように考えます。
  48. 森三樹二

    ○森(三)委員 できないことはないということをあなたはおっしゃるが、私は憲法の基本精神にもとるような、つまり反するような憲法調査会というものになりはしないかということをお尋ねしておるのであります。特に私はあなたのお考え前提としても、かりにこの調査会法案なるものが通過し、五十人の構成メンバーができたといたしましても、先ほど申しましたように、われわれ社会党はこれに参加するか、しないかは態度はまだ表明しておりません。もしわれわれが参加しないような場合が起きましたならば、なおさらあなた方の政党だけでもって三十人の国会議員を出し、学識経験者を集めておやりになることになる。そうするならば、結局あななた方が現在こうした調査会を置かなくとも、あなた方の政党において適当な学識経験者を招聘して、あなた方の政調会において十分私はなし得ることだと思うのです。特にこういうような制度を置きまして、ぎょうぎょうしく調査会というようなものを置いて、内閣一つの審議機関とすることは、従来非常にたくさんの行政機構改革に関するその他万般の審議会があります、その審議会というものによって、つまり一つ資料成案を得まして、これを新聞に堂々と発表し、あたかも憲法改正はもうやらなければならないのだ、憲法改正の各条章、たとえば戦争放棄の問題あるいは天皇制の問題、家族制度の問題にしましても、こうしなければならないのだという、あなた方のつまり与党の勢力の国会議員あるいはあなた方の都合のいいような学識経験者任命して、そうしてこれが世論である、どうしてもこれに改正しなければならぬというようなことを天下に公表される、すなわち世論を作るための、私は政策的に作られる調査会であると考えております。それをあなた方がいかにそうでないと強弁されましても——もしそうでないというならば、私は特別にこういうようなものを作らなくても、あなた方の政党においても政策審議会というりっぱな機関があるのでありますから、そこでもって十分おやりになることができると思うのであります。それをわざわざ憲法調査会というような、こういう特別の機関を設けて、しかもそれはあなた方の都合のいいところの学識経験者あるいは議員によって構成され、かりにわれわれが参加する、しないにしても、多数のあなた方の都合のいい人々によってそこに一つの案というもの、資料というものが生まれてくるのであります。そうしてこれがたびたび新聞、ラジオ等によって国民に公表せられまして、どうしてもこういうふうに改正しなければならぬのだというふうに宣伝といいますか、あなた方の立場からいいますならば、啓蒙といいますか、そういう一つのねらいを持ってこの調査会を作ろうとしておるということは、まことに私は卑劣だと思うのであります。こういうような調査会を作らなくても、あなた方の政策審議会というものによって堂々と資料を作って、案を練ることはできると思うのであります。こういう重要な特別の機関を作る必要は毛頭ない。こういうものを作る場合においては、私は先ほど申し上げましたように、やはり三分の二以上の勢力をあなた方が得たときに行うならば、これは話がわかりますけれども、現在の段階においては私はこういうものを作るべきではない、かように考えております。
  49. 岸信介

    岸信介君 私は本案を提案いたします際に、党を代表して社会党をおたずねしまして、こういう趣旨においてこの憲法の全体を調査し、研究したい、ついては日本の将来を責任を持って考える上においては、党を別にしておっても、この考えにおいては共通するはずだ。共通の広場において憲法についておのおのの立場から十分に意見を交換して、一致するもの、また意見がどうしても分かれるもの等について研究しようという考えであるから、ぜひ社会党においても共同提案に賛成をしていただきたいということを、私は社会党の首脳部の方にお願い申し上げたのであります。不幸にして私どものこの悲願は達せられなかったのでありますが、この意味において、われわれの立場からわれわれだけでもって都合のいい結論をだそうなんということは、私は毛頭考えておりませんし、そういうことなら、今御指摘のごとく、われわれの党内に調査会を設けております。これは党としての意見をまとめる上において調査していくことは当然であると考えております。従ってこの調査会は、森君の御意見は御意見でありますけれども、私どもは全然見解を異にするものでありますということをお答え申し上げます。
  50. 森三樹二

    ○森(三)委員 かりにこの憲法調査会法案なるものが通過して発足いたし、憲法改正一つ資料ができたと仮定いたしまして、その場合においても、すなわちあなた方が三分の二以上の勢力を得ない場合には、その資料というものは憲法改正の案文としては日の目を見ることかできない。それはあなたも御承認なさると思う。現在の勢力では当然あなた方はそれを発議することはできない。いわんや今後選挙を何回やっても、自由民主党が三分の二以上の勢力を得ることができない場合には、これはおそらく永久に改正案として出せないかもしれない、あるいはまた出せるかもしれない、あるいは小選挙区制を施行すれば、あなた方が一挙に三分の二以上の勢力を得るかもしれない。そうした三分の二以上の勢力を得たときに、あなた方がこういうような機関お作りになることは、これはあなた方の御自由でありましょうけれども、現在の段階においてはいつ三分の二の勢力をあなた方が得るかわからない。そのやさきにこういうような機関を置くということは、まことに潜越ではないか。いわゆる憲法九十九条には、国会議員も国務大臣もすべてこの現行憲法を尊重し、順守しなければならないという規定があることは岸さんも御承知だと思う。それをやたらに今からあなた方が、三分の二の勢力を得ない今日において、いつ得るかもわかりません今日において、これを改正しようなどということは、そうしてこのためにこうした調査会などというものを設けるということは、私はまことにおこがましいと思う。私はこういうような情勢においてあなたにお尋ねしたいことは、いかに資料ができましても、改正する発議権が行えない現段階においては、これは私は全く無意味だと思う。しからばもしこういうような調査会ができまして、案文の資料ができました場合には、あなた方はそれを機会に衆議院の解散を断行して、国民憲法改正の必要があるかどうか、そうしてまたこうした資料か正当であるかどうかというような、そうした国民の裁断を求める衆議院の解散を行う意思があるのかどうか、この点を私は明確に一つ答弁を願いたいと思う。
  51. 岸信介

    岸信介君 この調査会において結論が得られて、これが公表せられ、また各方面から批判をされて、ぜひこういう憲法改正をやれという強い要望が国民の大多数の意見であったとしますならば、おそらくその間において行われる選挙において、これを支持するところの者を国民は多数に選出するだろうと私は思う。これは今おっしゃる通り、まだどういう案ができるかもわからない今日において、私がどうするんだということを抽象的に申し上げてみましても始まらないのであります。現段階としては、われわれは真剣に日本の憲法を再検討する、そうして改正すべき点については改正すべき点を明らかにして、それの案をわれわれが作り出すことが必要であるかどうかということを私ども考える段階であると思う。今直ちに将来のことを申して、解放するとかしないとか私が申し上げてみても、これは実は実際上大した意味のないものである、こう私自身考えておるのであります。
  52. 森三樹二

    ○森(三)委員 時間もありませんから私は最後に一点申し上げます。これはあなた非常に詭弁を弄しておられると思うのです。結局憲法改正したいから憲法調査会をあなた方がお作りになっていることはもう明らかなんです。しかる以上はその資料というものができました場合には、あなた方は一刻も早くその結論に基いて憲法改正したいということもこれは当然であります。しかる以上は、あなた方は三分の二以上の勢力を衆議院にあるいは参議院に得たいということも、私は当然であろうと思うのでありまして、その目的でなくしては、政党に政策審議会があるにかかわらず、特別にこういう憲法調査会などという機関を設けることはない。そうしてここでもって作り上げられたところの案文というものを新聞、ラジオでどんどん発表して、憲法改正の機運を高め、そうして国民にどうしても憲法改正しなければならないのだというような印象を与えて、その機運を盛り上らせるために作るのだと私は言わざるを得ないと思うのです。結局あなた方の都合のいい、あなた方の思うような憲法改正をしようという意思があることは明らかだと思うのでありまして、これができ上った以上は衆議院の解散をやるという意思があなた方になくして、どうしてこの調査会法案というようなものをお出しになったか、私は理論が撞着しておると思うのです。その点についてはあなたは重大な決意を持って答弁されなければいかぬ。  もう一つは、現在非常に問題になっておりますところの小選挙区の問題、これにつきましては、いろいろ賛成、反対意見もありますが、現在あなた方の政党で作っていろところのこの小選挙区制というものは、すなわち三分の二以上をとらんがために——あなたも御存じの通り、この小選挙区制の割り振りについては、あまりにも一人々々の議員諸君の都合のいいような、選挙区の区画割をして、これは新聞にもずいぶんたたかれております。公平な選挙区割でなくて、あなた方の政党の人々のみの当選を期するようないわゆるゲリマンダリングのようなああいう悪らつな選挙区の区画割をしておる。これは天下のもの笑いになっております。そういうような悪らつきわまる選挙の区画割をいたしまして、そうして三分の二以上を獲得し、憲法改正をはからうとしておる。これは国民大衆は非常に憤激しております。あなた方の小選挙区改正の意図は明らかに憲法改正につながっておると思うのでありますが、この点に関しても岸幹事長の明確なる御答弁をお願いしたい。  以上の二点をお尋ねいたしまして私の質問を打ち切ります。
  53. 岸信介

    岸信介君 先ほど解散の点について、今もお尋ねがありましたが、私は今日の段階におきまして必ずいつ解散するとか、でき上ったらすぐ解放するというようなことを責任を持って申し上げることはできない、こうお答えしたことを第一点については繰り返すだけであります。  それから第二点の小選挙区制の問題につきましては、これは社会党の方面からは憲法改正と必然的に結び合せたようにいろいろと論議されておりますけれども、私が申し上げるまでもなく、この小選挙区制の問題が国民の間にあるいは識者の間にいろいろ論議されましたのは、相当古い歴史を持っております。このために歴代の政府が選挙法の小選挙区制を中心とした何をやるという委員会を設けたこともございます。また社会党の私の尊敬する友人諸君で、これに参加せられて、研究をされて小選挙区制をやったがよいという御議論を社会党内において持っておられる方があることも、世間周知の事実であります。従いましてそういう沿革を持っておるものであり、さらに昨年の末日本に二大政党ができることになりました。二大政党ができない前におきましても、議論としては、日本の国会が少数、多数の政党に分れて政局が不安定であるのは選挙区制がいけないのだ、小選挙区になれば自然に二大政党になるので、二大政党の機運を醸成するためにも小選挙区をやるというような、識者の議論もあったことは御存じの通りであります。すでに二大政党ができまして、この二大政党を健全に育て上げるためには、両党とも国民の間に組織を持った組織政党国民政党として成長することが、国会政治の運営の上から望ましい二大政党の姿である。それをやりますのには、私は小選挙区制が妥当であるという考えを持っております。こういうような考え方に立っておるのでありまして、憲法改正と小選挙区制を不可分のものであり、あるいはそのための手段であるかのごとく社会党の人が論ぜられることは、小選挙区制の沿革なり本質なりを御研究になれば、私はおのずと議論は違うと思うのでありまして、私どもはこれを決して憲法改正の手段もしくは不可分のものとして考えておるわけではないということを申し上げておきます。
  54. 西村力弥

    ○西村(力)委員 ちょっと関連して。私は清瀬文部大臣お尋ねしたいのでございますが、大臣がその席にすわっていらっしゃる立場は国務大臣としてですか、または憲法調査会法案提出者としてであるか、私が今までの様子をうかがっておりますと、御自分がまっ先に立って提案せられておるような立場で行動し、答弁せられておる、こう受け取っておるのですが、その点非常にすっきりしないものを私は感ずるのでございます。そのことを言うのは、現在第二十七回の選挙に基いて鳩山総理大臣が総理に指名せられて、鳩山内閣が成立してずっと続いておるわけなんでございますが、この政府というのは、あくまでも国会の意志に基いて成立しているというのでございますので、大臣としてはこの与党の二百何名の上に立っての政府であるか、国会の全体の上に立っての政府であるか、こういう立場をどういう工合にお考えになっていらっしゃるか、これを先に一つお聞きしたいと思う。
  55. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 私は本日内閣代表して出席いたしております。しこうしてこの内閣はこの案の成立することを予想いたしまして、憲法調査会の予算を提出いたし、予算の方は内閣提出、法案の方は党の提出になっております。
  56. 西村力弥

    ○西村(力)委員 質問のポイントは、与党の二百何名の上に立っている内閣であるか、国会の議決という上に立っている内閣であるか、その把握をどういう工合にお考えになっていらっしゃるか。
  57. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 国会の総理大臣指名の手続を経て、鳩山氏が内閣総理大臣につかれ、われわれは鳩山氏の指名によって閣僚の地位を占めております。憲法にある通りであります。
  58. 西村力弥

    ○西村(力)委員 そうすると、国会の議決を経て、国会全体、野党のわれわれも含めた上にたっての政府である、こういう工合にもちろんお考えになっていらっしゃることだと思う。そうしますと、私の関連して聞きたいことは、とにかくこの間の選挙によって、国民の意思というのは三分の一以上が憲法改正反対するわれわれを支持した。そういうことは、現在の内閣においては、憲法改正ということに対して着手することは不当であるという国民の意思が決定されたという工合に私たちは思う。そうでありますから、自由党が党内において幾ら研究しようと御自由でございますけれども、この憲法調査会内閣に持ってくるということは、この間の選挙に現われた国民の意志をはっきりじゅうりんすることに相なるだろうと思うのです。三分の一以上憲法改正反対の意思を示したことは、全有権者の半分にはなりませんけれども憲法改正重要性からきて、三分の一以上の憲法改正を否定する国民の意思というものは、この内閣憲法改正に着手すべきではない、こういうワクをはめたのだ。こう国民の意思を受け取るのが当然じゃないか。それを、内閣の中に調査会を置くということは、国民の意思に反することである、私はそう思うのです。その点に対するはっきりした御見解をお聞きしたいと思う。
  59. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 わが日本の今の政治のあり方は、世間でいう議院内閣制なることはあなたのおっしゃる通りであります。しかしながら、政党政治の上から見れば政党内閣でございます。このことを前提として申し上げておきます。憲法調査会法は法律でございます。ほかの法律と同じように、院内多数で決せられれば、そのときに内閣はこれに従う。
  60. 山本粂吉

    山本委員長 関連質問ですから簡潔に願います。
  61. 西村力弥

    ○西村(力)委員 これは総理に対して質問をしたいと思いますので、大臣の逃げ口上のようなことをお聞きしてもしようがありません。これは保留しておきます。
  62. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 関連して。岸幹事長がお見えになって質問が中途で折られましたが、最後——最後でありません。まだだいぶ残っておりますが、天皇に関する質問が私は相当ございます。その点をあらためて御質問申し上げます。きようは最後に一言文部大臣としての清瀬さんにお伺いしたいのは、私の承知しております中学校で、これは三年生でありますが、五十人のクラスの生徒が討論会をいたしました。どういう関係でありましたか、そのときのテーマが、ちょうど天皇というものは現在の日本にとって必要かどうかというテーマだったそうであります。このテーマで約二時間にわたって五十人の中学三年生が討論をしたそうであります。結論として出ましたものは、その中で天皇が必要だという結論に到達したのは一人であります。あとの四十九名は全部、これは天皇は必要はないという結論を出しております。これは先生か指導したのでもなければ何でもない、子供たちの自由な討論でありますから、子供の自由な意見がそこに出たわけです。こういったことは清瀬文部大臣がいかに天皇至上主義をお考えになりましても、現実の日本の姿というものは、すでにいくべきところにいきつつある。こういう形の中で、私は先ほども言ったように、天皇という存在は過去において天皇という地位を利用して一部国民の収奪を行なったり、あるいは若い青年の血を流したり、いろんなことをやってきております。こういったことを再び起すような立場に天皇という存在を押し込むことでなく、天皇というものは、私はもっと人間的な立場として、もっと自由な意思と、自由な行動のできる姿におくことの方が、これは国にとっても、あるいは国民にとっても、また天皇自身にとっても仕合せではないか、こういった、今申し上げたある中学校、これはもし必要ならば私は名前を言ってもいいのでありますが、文部大臣でありますから、言えばすぐそれは強権を発動なさるに違いありませんから、簡単には申し上げません。今言ったこういう事態を、文部大臣としてどのようにお考えか。これはいわゆる中学校の三年生の討論の過程と、結果に対する御見解と、さらにそういった結論から、いわゆる憲法上の、あるいは日本における現在の天皇というものとの関連というものを、あなたがやはり依然として先ほどからおっしゃるように、五千年の歴史云々という形でいつまでもどこかに祭り上げて、そうしてやっていく御意思か、この二つのことを一つお伺いいたします。
  63. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 天皇のお立場は、すでに昭和二十一年一月一日のお言葉で、国民と自分との考えは、敬愛と信頼の念につながれておるのであって、自分は現人神ではないとおっしゃっておるのです。それゆえに、戦前ある時代におけるお立場ではないことは、茜ケ久保君御承知の通りであります。私も昔のように、これを神様としてあがめろということは今朝以来一ぺんも言ったことはございません。ただ国民結合のためには、この民族が数千年来尊敬し来たっておる皇室の存在はまことに尊いことだ。こう申しておるのであります。今の世の中は、敗戦後思想は動揺しております。それゆえに、学校内においても、一部あなたの今御論のような空気で教べんをとっておる人のあることも承知しております。しかし、その中学三年生が、どういう子供であるか知りませんけれども、えてして人間の生活に一番必要なのは空気であるのに、空気を忘れてしまうという人ももちろん世の中にはあるのでございます。(「天皇は空気か」と呼ぶ者あり)日本人としては、今日の皇室の存在というものが非常に必要でございます。
  64. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 もう長くはありませんが、私は今の清瀬文部大臣答弁を聞いておりまして、まことに何と言いますか、遺憾にたえないのであります。ここで今、清瀬文部大臣と討論をしても始まりません。始まりませんけれども先ほど私がちょっと指摘したように、中学生の自由討論の形を、清瀬文部大臣は、何か特殊の教師が指導したように伺ったのでありますが、その点について一言私は申し上げたい。私はよく実情を知っておりますが、教師が指導したから、そういうふうになったという形で受け取ってもらっては困る。今の日本の大勢というものは、そういうふうに、いわゆる世界の大勢に順応して、そういう方向に流れていく実際というものを文部大臣はよく見ていただいて、すぐ何かというと文部大臣は、一部何か事にせんとする教師が、そのように指導するかのような御返答をなさるのでありますが、そうではない。清瀬文部大臣がどのような教育方針をお立てになろうと、なるまいと、そういった世界の情勢とともに流れていく日本の姿が、私はこの中学三年生の討論の中に如実に出ておると思うのであります。そういった意味お尋ねしたのであります。ですから、一部の教師がそのように故意に指導するということでなくて、そういった若き世代の、特に少年の世代の中に、日本の現実の姿をはっきり体得して、いわゆる天皇という一つの具体的な存在によって私は申し上げましたが、こういった流れ方に対して、今憲法改正をなさろうとする自民党なり文部大臣が、そういったことをこの憲法改正の上に、どのような姿で反映させられようとするか。こういったものを全然無視をして、今文部大臣は、天皇を神様にしようとは思わぬとおっしゃるけれども、ただ単に天皇が二十一年の元旦に、自分は神様でないとおっしゃったから、扱い方が神様的な扱いをしないとは私は言えないと思う。まあそれはそれとして、そういった現実の日本の姿というものを、憲法改正の上にどのような形で表現される御意思か、その点を一つお聞きしたのであって、決して教育上の文部大臣の強権を発動させるような種をまいたのではありませんから、御承知を願います。
  65. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 あなたがよく御承知の通り、教育は直接の薫陶と、その次は教化及び形成、この三つの力が加わるのであります。教員が指導しないでも、その人の平素のあり方が教育に非常な影響を及ぼすことは、教育学説の示す通りでございます。しこうしてわが国は、実は気の毒と思うのですが、これらの人は占領時代に大きくなったのでありますから、正直にそういうことを考えておる教師もあるのでございます。しかしながら日本民族、日本人の実際というものをもう少し考えてみると、やはり私は日本人大多数は皇室の存在によって大いに利益を受けておるものと思っております。それゆえに、一時の占領中の変則的な心理状態をそのまま持っていくということは、私の任務ではございません。これを正しき姿に引き直すことは文政を担当しておる私の任務の一つでございます。しこうして日本の憲法においてもその通りで、占領中の行き過ぎ、わが国はいかにも永久自治の力のない民族だ。外国が来れば抵抗しないで頭を下げるのが憲法の精神だといったような、言葉は過ぎるかもしれませんけれども、人類として劣等感を持つといったことはよろしくない。昔考えた優秀民族は、日本だけが一番えらいのだといったような八紘一宇はよろしくありません。しかしながら人類は平等でございます。平和は平等のうちに成り立つのです。一方が優秀で一方が卑屈では平和は成り立ちません。水の平らかなるごとくに、人類の平等権もそうあるべきであります。憲法もそういう正しい姿の上において打ち立てるべきである。日本の教育またしかり、こう言わざるを得ないのであります。
  66. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 まだだいぶん質問も残っておりますが、次の機会に譲ります。
  67. 山本粂吉

    山本委員長 暫時休憩いたします。午後二時より再開いたします。    午後零時四十五分休憩      ————◇—————    午後二時二十九分開議
  68. 山本粂吉

    山本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  厚生省設置法等の一部を改正する法律案を議題とし、政府より提案理由の説明を求めます。小林厚生大臣。
  69. 小林英三

    ○小林国務大臣 ただいま議題となりした厚生省設置法等の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由を御説明申し上げます。  この法律案は、厚生省の付属機関であります、未帰還調査部を縮小いたしまして、これを本省の内部部局に編入いたしますとともに、引揚援護局に現在置かれています次長二人のうち一人を減じ、この減じました次長一人を保険局に置くこととし、あわせて、本省の付属機関であります国立予防衛生研究所及び国立衛生試験所の所管事務について、所要の調整を行いますことをその内容といたしておるのであります。  まず第一の改正点であります未帰還調査部について申し上げますと、御承知のように、引揚援護業務の推捗に伴いまして、引揚援護局関係の職員は、昭和三十一年度におきましても、引き続き縮減されることとなっておりますが、反面、現在なお調査究明を要する未帰還者は六万数千名に上っておる実情でありますので、未帰還調査部は、今後なお相当期間にわたりまして、複雑かつ多量の業務を継続して処理しなければならないものと考えられます。従いまして、次第に縮減される人員をもって、これらの業務のより能率的、効果的な処理、運営をいたしますためには、本省の付属機関から内部部局たる引揚援護局未帰還調査部に改組いたしますことが適当でありますので、これを行わんとするものであります。  改正の第二点は、保険局に新たに次長を設けようとすることであります。御承知の通り、保険局は一面において中央行政機関として、健康保険、国民健康保険、厚生年金保険その他各種社会保険の諸制度について企画し、その総合的整備をはかることをその所管事務といたしておりますが、他面政府管掌の健康保険、日雇労働者健康保険、船員保険及び厚生年金保険の各事業について保健者として実際の業務を処理する任務をになっておるのであります。しこうして、近時、医療保障を中心とする社会保険の充実強化を要望する声が特に高く、政府におきましても、昭和三十五年を目途といたしまして、全国民に医療保険を普及させる決意を固めておりますので、社会保険の整備につきましては、この局を中心として格段の積極的施策を講ずることが要求されているのであります。しかるに他方この局においてその業務の運営に当っておりまする健康保険及び船員保険の事業は、累増する赤字のためはなはだしい財政難に襲われておりまして、一たび運営を誤りますときは、医療保険の一大支柱をなしておりまするこれらの制度そのものを破綻させる危険さえもはらんでいるのであります。かかる条件のもとにおきまして、内、その管掌する社会保険諸事業の運営に万全を期しつつ、外、国民皆保険を目ざして医療保険の一大飛躍をはかりますためには、さしあたりの対策として局長を助けつつこの困難なる業務の一半を分担処理する次長の設置を不可欠とする次第でございます。しこうして、これに伴い新たに次長一人を増員いたしますことが諸般の情勢上許されませんので、比較的に事務量の減少して参りました引揚援護局次長二人のうち一人を減じ、これを保険局に新たに設けられまする次長に充当しようとするものでございます。  改正の第三点は、国立予防衛生研究所と国立衛生試験所についてでございますが、これらの付属機関におきまして、医薬品等の検査、検定に不可欠な標準品を製造することができる根拠規定を明確にしようとするものでございます。  以上が、この法律案提出いたしました理由でございます。何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いする次第でございます。
  70. 受田新吉

    ○受田委員 厚生大臣に今御説明いただいた改正案に対する資料要求をいたしておきたいと思います。未帰還調査部を今度東京の本省へ移される案が第一に出ておるのでありますが、それに対して、未帰還調査部が千葉の稲毛で、過去において、いまだ帰らざる人々の調査究明に尽力した実績、その案件、件数というようなものをお示しいただいて、どのように活躍してきたか、とれを今度本省へ入れることによって、政府が直接東京で今後事件を処理されるわけでありますが、その際の重要な参考資料としたいので、未帰還調査部の取り扱っておる件数、案件、及び未帰還調査部に勤務しておる職員は漸減してきたわけでありますが、漸減をしていく資料として、そうした取扱いの内容をお示しいただきたい。しかる後、次会から質問を申し上げたいと思いますので、特に未帰還調査部の過去における業績——いよいよ稲毛から引き揚げるということになれば、戦後の長い歴史を作ってくれた未帰還調査部に対する敬意も払わねばいけませんので、その実態を御報告いただきたいと思います。
  71. 山本粂吉

    山本委員長 本案に対する質疑は後日に譲ります。     —————————————
  72. 山本粂吉

    山本委員長 次に法務省設置法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑に入ります。受田君。
  73. 受田新吉

    ○受田委員 法務大臣に、本改正案に対する質疑を要点をかいつまんでいたしたいと思います。ここに掲げられました改正案の骨子は、結局少年院の新設と若干の少年院の分院及び少年鑑別所の分所を本院または本所に昇格させるという問題だと思うのです。この少年院の新設につきまして、特に広島矯政管区の少年院に送られる少年が非常に増加しておるというその実態は、どういう理由に基くかをお示し願いたいのであります。
  74. 牧野良三

    ○牧野国務大臣 政府委員より詳細にお答えをいたさせます。
  75. 渡部善信

    ○渡部(善)政府委員 お答え申し上げます。少年の犯罪は終戦後上昇の道をたどりまして、二十五年、六年が頂点をなしておったのでございます。その後やや下降の道をたどって参りまして、一昨年ごろから大体横ばいの状況を呈しておるのでございます。しかしながらその内容を検討してみますと、凶悪な犯罪がだんだんと上って参っておる傾向にあるのでございます。一例を申し上げますと、凶悪犯として殺人の罪でございますが、これが終戦の年には百四十九件でありましたものが、昭和二十六年には四百九十六件となっておるのでございます。それが二十七年には三百九十三件となり、二十八年には三百八十三件、二十九年にはさらに四百十一件と上ってきておるのでございます。強盗の罪をとってみますと、昭和二十年には四百五十五件であったのでございますが、昭和二十五年には二千八百三十件となっておるのでございます。その後これは下降の道をたどったのでございますが、昭和二十八年にはこれが千五百八十二件と下ったのが、さらに二十九年には千八百三十件とまた上って参ってきておるのでございます。強姦の罪をとってみますと、二十年が二百十八件であったのでございますが、昭和二十六年には千五百三十件になり、さらに二十九年には千九百七十七件と上って参りております。その他粗暴犯をとってみますと、昭和二十年には千七百四十六件でありましたものが、二十六年には一万五千八百七十五件と上りまして、二十九年にはやはり一万五千九百二十九件というふうに上って参っておるのでございます。かような状況でございまして、質的に少年の犯罪は悪化して参ったということが言えると存ずるのであります。これは全体的な傾向でございまして、広島の矯正管区におきましても、やはり同様の傾向をたどっておるのでございますが、ちょっと広島管内だけの分の統計は手にしておりませんので、詳細に申し上げるわけには参りませんが、大体同一の傾向をたどっておるというふうに考えておるのでございます。広島の状況を見ますと、広島の管内には、広島、岡山、山口、島根、鳥取の各県が矯正管区内の管轄区域に相なっております。岡山はこの五県の中で大体二七%くらいのところを占めておるのでございます。さような関係から、岡山は少年犯罪につきましては相当重要な県であるのでありますが、今まで少年院の設置を見なかったのでございます。今度岡山の方に設けまする少年院は、中等少年院を設置いたしたいという考えを持っておるのでございます。これは広島管内におきまする少年院の収容状況からいたしまして、中等少年院の収容力が特に少くなって参っております。そのために、この状況を補うために、岡山に中等の少年院を設けまして、その不足を補っていこうという趣旨にほかならない次第でございます。
  76. 受田新吉

    ○受田委員 岡山はずいぶん少年犯罪が多くて、少年の諸君さえも人心すでに荒れ果てておるという実情にある、非常にやっかいな県であるということで、岡山県人は嘆かれることであろうと思うのであります。しかし、実際がそういう数字が出ていることになれば、かつての法務大臣の犬養さんの出身地としては、やむを得ないことだと思うのでありますが、すでにこの岡山少年院の新設につきましては、法務省から出した資料にも、地元県民の強い要望がある。第十四国会でこちらの法務委員会でも強い要望があったのだ、こういうことでありますが、これは地元民がそういう強い要望をしておるという理由は、そういう犯罪が特に少年に多いという立場からですか、あるいはほかに何か考えるところがあったのでございましょうか。
  77. 渡部善信

    ○渡部(善)政府委員 お答え申し上げます。それはただいま申し上げますように、岡山におきまする犯罪状況、ことに少年犯罪の現状からいたしまして、やはりその地方における少年犯罪の処理上必要だというところから、その要望が特に強かったのではなかろうか、かように考えております。
  78. 受田新吉

    ○受田委員 この少年院の収容状況を拝見しますと、昭和二十四年から急激に二十五年にかけてふえておる。そうして二十六年からずっと全国を通じ一万人台に安定しておるわけでありますが、二十四年末から二十五年あるいは二十六年への急激な上り方は、どういうところに理由があったのでしょうか。
  79. 渡部善信

    ○渡部(善)政府委員 お答え申し上げます。二十四年から二十五年、二十六年と急激に上って参りましたのは、実は昭和二十四年に少年法の改正が行われたのでございます。そのために、従来は十八才までは少年の限界となっておったのでございますが、少年法の改正によりまして、二十才まで少年の年令が引き上げられたのでございます。さような関係から、十八才を越しまする十九才、二十才までの、最も間違いをしやすい年令層が、少年法の適用を受けることに相なりましたので、急激にその収容数が増大して参ったような状況に相なっておる次第でございます。
  80. 受田新吉

    ○受田委員 少年の犯罪ということは、これは教育にも関係があることでありまして、いたずらに少年の監獄のような少年院へ入れて——一方では矯正も考えておるわけでありましょうけれども、少くとも少年に一つの希望を失わしめるようなこういうところへ入れる以上は、それに対する良心をよみがえらせるというやり方が、何かの方法で強くとられなければならぬと思いますが、これに対して厚生省、文部省等とも関連して、いかなる措置をとっておられるか、御答弁願いたいのであります。
  81. 渡部善信

    ○渡部(善)政府委員 お答え申し上げます。仰せのごとく、少年院に収容いたします限り、これらの少年たちに力強い矯正教育を施して参らなければならないわけでございます。実は少年院に収容いたします少年たちの性格を分類いたして、いろいろその対策を考えておるのでございますが、これらの少年たちの性質を考えて参りますと、大体の大ざっぱのことを申し上げまして、正常な精神状態にある者が約三分の一でございます、それから準正常の域にある者が三分の一、それから精神に障害があるものと認められる者が残りの三分の一、大体三分の一ずつくらいの割合に相なっておるのでございます。従いまして少年院の処遇からいたしますと、これら精神的に欠陥のある者の処遇が、一番われわれとして注意をし、また処遇の適正を期しておるわけでございます。この問題につきまして、心理学的にあるいは精神医学的にあらゆる面からこの少年たちを検討いたしまして、その少年たちの取扱いに十二分に適正を期しておるわけでございますが、われわれといたしましては、性格的にいろいろと取扱いのしにくい少年たちではございますが、これらを職業を通じて少年たちの今後の道を見出していとうというところをまず主眼点に置きまして、職業補導を主眼とした更生の道を現在考えておる次第でございます。なおこの処遇の問題につきましては、ただいま引き続き研究検討をいたしておるのでございまして、最近も専門家の協力を得まして、特殊な少年たちの心理的な研究調査ということに目下従事いたしております。この三月末日ごろにはその結果も大体得られるのではなかろうか。これに基きましてさらに処遇上に大きな参考資料を得たいということを考えておるわけでございます。
  82. 受田新吉

    ○受田委員 正常な判断の下される者が三分の一、これに準ずる者三分の一残りは障害のある者だという大体の大まかな分け方を示していただいたのですが、その中で特に狂暴性の、将来犯罪を犯すおそれのあるような者というのは、社会の公序良俗にひびを入らせるものであるという立場においていかなる措置をとっておりましょうか。
  83. 渡部善信

    ○渡部(善)政府委員 少年院には種類が四つございまして、初等少年院は年令の非常に低い子供でございます。それから中等少年院、医療少年院、特別少年院という四つの種類に分けております。ただいまのお話のございました性格的に非常に変気いたしました少年たち、あるいは精神薄弱少年というようなものは、医学的にこれを処理していく必要もありますので、さようなものは医療少年院に収容いたしております。医療的な観点から処置をとる必要はないけれども、どうも処遇上困るという少年たちは、特別少年院という施設に収容いたしまして、これらの少年たちの処遇をいたしております。この特別少年院は、施設の状態も特に逃走等を防止するように外へい等も厳重なものになっております。たとえて申しますと、こちらの方にございます小田原少年院は特別少年院でございますが、元少年刑務所の施設を転用いたしたものでございます。外にはコンクリートの外へいが築かれておりまして、これらの逃走を防止するとともに、中で居つくように、少年たちの落ちつくようにいろいろと配慮いたして処遇をいたしておるのでございます。何と申しましても、少年たちが落ちつかなければ矯正目的が達せられませんので、教官の個人的な人格の力の訓育も施しまして、少年たちの矯正教育を実施いたしておるわけでございます。
  84. 受田新吉

    ○受田委員 人生において犯罪の容疑者としてとらわれの身となったり、社会の大きな疑惑を受けたりする者ほど不幸な者はないと思うのでありますが、その人々に将来の更生の道を見出してやり、との人生を自後は非常に幸福に育ててやるというような考え方で法務省が努力して下さっておると私は思います。しかし今ここで私ふと思い出したのでありますが、一般の刑事上の用語として使われている言葉の中に、現に監獄法という法律があるわけであります。監禁される獄舎とか、容疑者として捕えるときの逮捕とか、かかるはなはだ人権無視の言葉が残されていることに対してはいかがお考えか、教育界出身の法務政務次官として御答弁願いたい。
  85. 松原一彦

    ○松原政府委員 お答え申し上げます。監獄法はまことに不快千万な言葉でありまして、ただいまはこの立て直しの立案中でございます。また監獄というものはございません。刑務所と申しておりますが、その刑務所も、今の矯正が主でございまして懲罰ではございません。応報主義はとっておりませんで、極力矯正して指導をするという立場をとっております。ことに牧野法務大臣は、刑罰の厚さをごく少くして、刑罰以前における指導、刑罰以後における補導に特に力を入れようと、今監獄法の立て直しの上からもさような方針でやっているような次第であります。逮捕という言葉の意義は私もよくわかりませんが、なるべくそういう言葉を避けたいものだと思います。
  86. 受田新吉

    ○受田委員 自来法務省は人権じゅうりんをせしめないように法的にそれを守らなければならぬ立場にありながら、人権を無視するような用語がまだ残されている。今監獄法という法律が残っているということに対しても、これは早晩変えなければならぬという気持を法務次官は言われたのでありますが、監獄というその名称が法律の名称として残っているということは、まことに野蛮時代の国の残存物のような印象を多分に受けるわけです。民主主義国家となった今日、かかる言葉がまだ法律の用語の中に残っているそのこと自身がはなはだ不可解なんで、この点につきましては、今法務政務次官が早急にこれを変えたいという決意を表明されてある程度了承したのでありますが早急に解決してもらいたい。ちょっとした容疑者でも、直ちに検事の令状でもって牢獄につながれ、警察官があたかも実際の犯罪人のごとく人権じゅうりんをして、どしどしこれをやっているわけでありますが、この令状執行による逮捕、あるいはそのほかちょっとした不用意のために身柄を拘束されるような場合に、けだものを捕えると同じような逮捕などという言葉が、今ごろの民主主義の社会に残っているということは、はなはだ不可解だ。即時逮捕という用語をなくすることが法務省としては最も大事なことだと思います。刑事用語として監獄、逮捕、かかる驚くべき人権無視の用語を即時切りかえる用意があるかないか、一つ答弁願いたい。
  87. 松原一彦

    ○松原政府委員 監獄法は明治四十年ごろにできましたきわめて古いものでありまして、これは御説の通りに、今日監獄なんという言葉のあるわけはありません。現にありはしません。法律の名称だけでありまして、その内容におきましても、参議院でも先般来いろいろ御注意もございました。新しく作りつつありますところの拘置所のごときも、ただいまではオープンでございます。外壁はございません。オープンの拘置所を作ろうとしておるくらいでございまして、刑務所も矯正所なのでございます。さような意味におきまして、今御注意の点は重々私どもも同感でございますので、今後一そう研究させていただきたいと思います。  逮捕等の名称につきましては、私不幸にしてしろうとでございますから、よく研究して参りたいと思います。
  88. 受田新吉

    ○受田委員 私はさらに少年院に収容されて、暗い生活をしておる子供たちに、せめて親のあたたかい慈愛のもとに生きていくのと同様の措置をしてやらなくちゃならぬのであると思うのであります。少年院などをどんどんふやすということは、私はあまり感心しないのです。少年院に持っていかないで、家庭で、学校で、もっとあたたかい気持でこれを迎え入れてやるという趣旨であるならば、少年院など増置しないで済むのだ。しかも岡山に増設される——宇都宮の少年院はいつか火事をやったときから廃止するような気持になられたそうでありますが、廃止する方はいいけれども、これを増設して、少年に希望を失わしめるような行き方よりは、できれば既設の少年院の設備を整えて、そこで今次官がおっしゃったような犯罪を予防していくという、教育の力、親の愛とかいうもので、そうした犯罪に至る前にこれを防ぐような措置をとっていく方が、意味があると思うのですが、こういう点について御見解を伺いたいのであります。
  89. 松原一彦

    ○松原政府委員 御同感でございます。少年院なども今五十五ございまして、一万人ばかりを収容しておりますが、少年院は予防なんです。そこで予防するのであって、もう一つ上に少年刑務所がございます。少年刑務所にはやらないように、努めて行政措置で、しかも指導教育するという立場の場所を広く作っていく。しかるに私は最近小田原を見たのでありますが、指導所であるにかかわらず、本などが非常に少い。これは皆さんの御同情を得て、もっと教育の場所であるようにいたしたい。少年院というと、すぐに刑務所のように世間では見るのでありますが、少年刑務所と少年院とは全然違います。少年院は学校であるということをぜひ御了解を願っておきたい。  もう一つは、少年院に送る者をば作らないようにする教育がほしいのであります。受田氏も教育界の御出身でありますが、御承知のように、最近は高等学校の卒業生か、卒業式に教師をなぐるような者がたくさんできておる。金をかけて教育をして、卒業させた者が、教師をなぐって傷害を与えるというような教育が、今日日本に行われておることを私は非常に恥と思う。そういうところから、幾ら少年院を作りましても、学校がわざわざかような者を、作って世間に出したのでは、どうにも始末がつかぬ。受田さん教育者として、どうぞぜひ教育界におけるもっと強い反省を御高調くださるようにお願いしたい。
  90. 受田新吉

    ○受田委員 えらくお話が飛躍いたしましたが、松原先生におかせられましては、教育の仕方が悪くて少年院にどんどん人間がふえる結果になるというようなことになりかねないお言葉だったのですが、これは教育の仕方が悪いので、少年の犯罪がふえるということははなはだ問題になると思います。もちろん教育ということをもっと高度のものにして教師もりっぱな人であり、従って子供もりっぱになるということは理想であります。しかしこれは理想であって、教師も人であってときにあやまちを犯すことがある。しかしお互いに戒め合って影響力がないように、いい影響を与えるようにしてやらなければいかぬと思うのです。従って少年院の増設は、教育の仕方が悪いゆえに少年院を増設しなければならぬ、こういうことになるとこれは問題で、文部省との間においてあるいは厚生省との間において、いかなる連絡をとっておられるか。ただ単にこれは法務省だけで少年の犯罪を防止しようとか矯正しようとかいうようなことでは解決しないと思う。少年院の内部において少くとも義務教育は十分やっておられると思うので、そういう義務教育の過程において少年院でいかなる取扱いをされておるのか。あるいは少年院に入っておる少年たちがさらに高等教育を受けようという気持がある者については、いかなる取扱いをされておるか、あたたかい取扱いをされておるか。文部省と厚生省とどういう連絡をしてそういう道を開いておられるか御答弁願いたいのであります。
  91. 松原一彦

    ○松原政府委員 全くあなたと同じに私ども考えておりまして、学校が悪いからのみ少年院がふえるなどということは思いはしません。戦後におけるすべての社会情勢が、非常に複雑な変化を見せまして、帰一するところを知らぬ。従ってこういうものが発生しておるのであります。これをばどうして矯正するかは、私は政治、教育、宗教一切をあげての総合的な努力がなければならぬと思います。従って少年院の受け持つ部分につきましては、異常な、普通の学校に行かれないような者をば引き受けておりますので、この設備におきましては、御承知のような教育をやっておりますので、中学校は中学校の卒業証書をやりたいのでございます。高等学校は高等学校の卒業証書をやりたいのでございますが、やったのではそれが世間で通用しないのであります。少年院の卒業証書では採用してくれない。そこで中学校や小学校等と連絡しまして、そうしてその付近の中学校、小学校に通ったことにしてもらって、先生に来てもらって、卒業証書はその小学校、中学校から出すように今苦労いたしております。現に成功しつつある。そうして世間に出たときには、彼は少年院出身ではないように、今非常な苦労を払っております。  なお小田原の少年院などは特別むずかしい少年院でありますが、ぜひ皆さんにもごらん願いたいのでありますが、作業については非常に熱心に興味を持ってやっておる。りっぱなものがたくさんできておる。注文に応じきれないほどの家具ができております。りっぱに更生しつつあるように思う。野球などは特に上手で付近の学校と試合を喜んでやっておる。私どもは努めて世間の少年と違わないように努力いたしまして、法務省関係のものは暗いと言われないようにいたしておるのでございます。どうぞ皆さん方におきましても御同情下さいまして、折々ごらんの上に激励していただきますと、彼らも喜ぶと思うのでございます。近いところでございますので、お通りがかりに一番むずかしい小田原の少年院をどうぞごらん願いたいと思います。
  92. 受田新吉

    ○受田委員 非常にあたたかいお気持を法務政務次官はお持ちで、私も共鳴いたします。あなたのそういう御信念には共鳴いたしますが、しかし問題が残されるのは、この少年院という特殊の少年の機関をこうして作っておくことによって、社会的には大人で言う刑務所へ子供が入っておるのだという批判を受けておる、その子供にせめてその汚名をすすいでやるように、一時的なでき心で不用意なことをしたが、しかし更生をした結果はこのようなりっぱな人になったという道を開いてやらなければならぬ。そこでその少年の今後の予防と同時に、出て後のそうしたあたたかい心で迎えてやろうという施設、あるいはいろいろな措置等についてはどう考えておられますか。
  93. 渡部善信

    ○渡部(善)政府委員 お答え申し上げます。ただいま政務次官からお答えのありました通り、少年院におきましてはあらゆる面から少年たちの教育の面を配慮いたしております。私一昨日でありますが、印旛少年院、これはやはり小田原と同様に特別少年院であります。ここの少年院に参ったのでございますが、あそこでは短波の無線の局の許可を受けまして、現在その技術の修得をいたしております。この印旛におりました少年たちのことをちょっと申し上げますが、これは相当てこずった少年でございまして、この少年院へ入りますときには、おれはもう男の意地でどうしても逃げてやるんだというようなことを考えて入ってきたのでございます。そしてこの少年が、一度は逃走も企てたのでございますか、少年院の先生たちのいろいろな話を聞きますと、その気持がだんだんほぐれて参りまして、そして電信の技術を修得してもらったところが、これが非常に本人の興味を呼びまして、在所中に電信技師の四級の試験を受けましてめでたく合格いたしております。その後本人の行状が非常に変って参りまして、今後無線技師として立つべく希望を持って少年院を退所いたしたのでございます。ところがこれを受け入れました両親、これは千葉県下の農家の非常に貧しいところでございますが、両親が、そんなことでお前なかなか一生やっていけるものじゃないということで、少年の希望を入れてくれなかったのでございます。そこでそれならば東京にいるおばさんのところに行って相談してくるというので、両親の承認を受けて東京のおばのもとに参ったのでございますが、ここでもおばが、そんなものでやれるものじゃないということで反対したそうであります。そこで少年は非常に親族の反対を受けて困ったのでございますが、自分としてはどうしてもこの技術で立っていきたいというところから、両親、おばを説き伏せまして、お前が自分でやれる自信があるならは一つやってみろということから、それじゃやりますというので、自分が下宿いたしまして、職業安定所に通いながら、さらに引き続いてその電信技術の勉強をいたしまして、せんだって三級の試験に合格いたしました。こういうようなところから、今後さらに上級の試験を受けて必ず私はりっぱな一人前の者になります、ということを少年院の先生の方に切々とした手紙をよこしておったのでございます。これら少年たちのやったことをいろいろ考えてみますと、とんでもない少年たちだというふうに考えますか、その教育よろしきを得てかほどにまで更生していく姿を見ますと、少年たちは導きようによりましてはほんとうにりっぱなものに立ち返っていくという自信を、少年院の教官たちは深めながら、目下努力をいたしておるような次第でございます。この少年たちの予後の関係につきましては、非常に困難な問題が山積いたしております。少年院に入っておりますとレッテルが張られたようなことになりまして、社会がなかなか受け入れてくれません。そこで現在法務省で考えておりますのは、これらの少年たちが少年院を出ましてから後は、民間の非常な理解のある方々にお願いをいたしまして、これは保護司の方々でごさいますが、こういう方々の献身的な御努力を受けまして、少年たちが社会に帰ってからの側面的な指導をお願いいたしておるのでございます。これらの先生方の御協力によりまして、少年たちが社会からのいろいろな困難を克服しながら、目下更生の道をたどりておる現状でございます。
  94. 受田新吉

    ○受田委員 切実なる例をお引きになられて御苦心のほどを開陳せられまして、私もその点には御共鳴申し上げます。同時に、この少年が、将来ある日本国民である、次代を背負う日本国民であるという意味において、社会へ出てからもつまはじきされないようにという心づかいから、保護司等の協力をはかっておられることについても、うなずかれるのでありますが、こういう少年たちの就職ということになりますと、またより一そう困難な問題があろうと思う。ろくな仕事がない、そこでまた罪を犯すというようなことになると思いますが、そうした職業補導についてはいかなる配慮をされておるのでございましょうか。
  95. 渡部善信

    ○渡部(善)政府委員 お答え申し上げます。職業の補導については、少年院の矯正教育は、学科もいたしておりますが、お説のごとく職業補導が中心でなければならぬと私は考えております。ことに少年院に参ります子供たちは、どうも知能の程度も低い者か多く、いわゆる算術とか何とかいうことがあまり好きでない者が多いのでございます。こういう者に幾ら詰め込みをやりましても、とうていその目的は達しませんので、大体読みもき算術、そろばんができる程度であれはいいのじゃなかろうか、それよりも、むしろただいまの仰せのごとく、職業教育を中心としての矯正教育でなくちゃならぬということを考えております。各少年院によりまして、それぞれ特色を持っておるのでございますが、木工あるいはラジオ、自動車の修理それから洋裁、いろいろな各種目の職業を選択いたしまして、それぞれの専門家の先生をつけまして補導いたしております。ただいま申し上げました印旛の少年院では、竹工、洋裁、木工、それから今申しましたラジオの技術、また孔版と申しましてガリ版の切り方、これもなかなか上達いたしまして、りっぱなものを切れるだけの能力を修得しておるのでございます。かようなあらゆる面から職業の指導を現在計画いたしております。幸い来年度におきましては、教育の面で、わずかではごさいますが、予算的に三百八十万円ばかりの増額を見ておりますので、これらをさらに有効適切に使っていきたい、かように存じておる次第でございます。
  96. 受田新吉

    ○受田委員 私当局の非常な誠意のあるところを一応了承したわけでございます。しかし祖国から犯罪か絶えないことは、石川五右衛門の言葉を待つまでもなく、これははっきりしておる。そこで最後に一言お尋ねして西村君に質問を譲りたいと思うのでありますが、法務省は少年院のような特殊の役所に勤務する公務員に対して、よほどあたたかい心づかいをしてあげないと、精神的に受ける非常な苦痛というものを補ってやることかできない。従って、少年院の職員、特に直接矯正の任に当るような職員というものには、特殊の待遇を講じてあげるとか、あるいは適当なる地位を確保してあげるとかいうような配慮を考えて、その職員と少年との間に、全く一致した精神的なつながりが得られるようにあらねばならぬと思うのですが、その点いかなる御処置をしておられるのか。今回の少年院の増設あるいは昇格等について、職員の増員、待遇とかいうようなものはどういうようにしておられるのかをお尋ねして質問を終りたいと思います。
  97. 渡部善信

    ○渡部(善)政府委員 お答え申し上げます。少年院の職員は、矯正職員といたしまして、普通の一般職員と違った待遇を受けております。これは大体普通の号俸と比較いたしますと三号俸、多いところは五号俸の差異がございます。だんだん上になりまして、矯正の八級と申しますのが一般級の十一級と同一でございますが、この辺になりますと大体同じことになります。しかし下級職員の方になりますと三号俸ないし五号俸の差異が認められております。なお超過勤務等につきましても、特別に率がよく認められておるのでございまして、その点われわれといたしましても、さらに少年院の職員たちの待遇の向上をはかるべく、いろいろと努力を払っておるのでございます。なお少年院の職員の増員でございますが、これはなかなか普通の官吏と違いまして、四六時中の勤務なんでございます。夜寝てからも少年たちは十二分に見てやっていかなければなりません。たとえてみますと、少年院の寝ている子供たちも、ふとんをけっておりますものはそれをかけてやるというところの配慮がなければ、とうてい少年たちの行動を十二分に導くことができないのでございまして、さような面からいたしますと、最も勤務といたしましては激しい勤務と私らは考えておるのでございます。さような面から、なるべく勤務を過重にならないようにというところから、人員の増加もいろいろと配慮いたしておるのでございますが、なかなか人員の点は非常にむずかしいものですから、実現が十二分に参りません。ただ来年度におきまして、これは刑務所も全部をひっくるめてでございますが、約二百五十名ばかりの職員の増加を認められましたので、幸いこれを最も有効適切に運営していきたい、かように存じておる次第でございます。
  98. 山本粂吉

    山本委員長 西村君。
  99. 西村力弥

    ○西村(力)委員 ただいま私が質問いたそうとしたことの一端について受田君からありましたので、その点は省きます。すなわち少年矯正の仕事に従事さるる人々に対する処遇の問題でありますが、その点はそれで省きますが、もう一点人の点について、この誤まった、ことに精神が不安定なそういう人々を補導するそれらの人々は、自己の人格を全部さらけ出して体当りで指導していかなければならぬと思うのですが、そういう場合に、単なる可法職員というワク内の立場をとってでは、全然矯正できないだろうと思う。官吏というものは大過なかろうとするのが当りまえでありまして、漸次自分の地位が上進するということを願うのは当然でありますが、そういう立場に立ってでは全然できない、それでそういう考え方に立たなくてもいいようにするために、もし自分が受け持っておる少年院の収容者に何らか事故が発生したという場合、その責任をそこの職員に全部押しかぶせる、こういうような行き方をとるならば、その職員の勤務というのは正しい姿では行われないだろう、こう思うのです。その点を配慮していられるかどうかということが私の聞きたいととなんです。たとえば少年院では、いろいろ自分の誠意の全部を尽して、能力の限りを尽して補導しておっても、逃亡なんかしたという場合に、その職員がその責任の全部をかぶらなければならぬということになれば、やはり手かせ足かせを付して、責任が自分にかぶらないようにするということに勤務の重点が置かれてくると思う。それでは矯正は不可能だろうと思う。手かせをかけていては絶対に矯正はできないだろうと思う。映画に出てくる少年の町は感銘深いものがございましたが、あそこまではなかなかできないと思いますけれども、ああいう気持でやらなければいけないと思います。職員の処遇の問題の経済的な部面でなく、身分の問題としてどういう工合に取り扱っていらっしゃるか、それをお聞きしたいわけです。
  100. 渡部善信

    ○渡部(善)政府委員 職員の責任の点でございますが、ただいまお話の、たとえば少年院からの少年の逃走の場合等を考えてみますと、これらの責任は私らといたしましては、その原因がどこにあるかということをまず一番考えまして、その原因が職員の責めに帰すべからざる事由でございましたならば、これは懲戒処分はしないことにいたしておるのでございまして、ただその事故が教官等の過失に基く場合等には、そのよって来たる原因を調べまして、さような場合には懲戒の対象といたしますけれども、少年院におきましては大体開放ということが建前なのでございます。そういう点から、仰せのごとく、あまり少年の逃走ということに頭ばかりをかけておりますと、少年たちの教育の面がおろそかになりますので、この点われわれといたしましても同じく心配をいたして、これをやかましく言うことによって教官たちの気持を縮み上らせる、あるいは消極的になっていくというようなことのないように、十二分に考えて処理いたしている次第でございます。
  101. 西村力弥

    ○西村(力)委員 私はある少年院を一ぺん見せてもらったことがございますが、やはり受ける感じは官吏なのです。それで今私が質問した真意をお考えになって、次官の御見解をお聞きしたい。  それからもう一つは、やはりこういう犯罪を犯す少年は、精神的に異常とまでいかないにしても相当不安定なものが多いので、どうしても科学的な措置にもっと重点を置く必要がないか、医学あるいは心理学、そういう科学的措置というもの、ことに医学的な矯正というものにもっと、予算的にも力を入れるべきではないか、こういう見解を持つのです。一国のそういう仕事をやっていらっしゃる人は、学校教育に責めがあるようなことを絶対に考えてはいられないだろうと思うのですが、先ほどの御発言にはちらっとそういうとも見えました。そういうことではなく、やはりもっと科学的な考え方に立って、そこにもお金をつぎ込むべきであろうと思う。この二点について次官の御見解をお尋ねしたい。
  102. 松原一彦

    ○松原政府委員 お説の通りに、少年院の指導者と教育担当者はよほど親心の厚い、しかも強い意思を持ち、手段においても単納でない、子供の性格に応じて発揮し得る頭の働きを持つ人がほしいのであります。従って大きな面から申せば、私は努めて明るい場所に作り上げるということであろうと思う。現地を見ましても明るいところ、つまり野球でも子供らが喜々としてやっている、そうして時間がくると直ちに行って、夢中になって作業をやっておる。また休みの時間には野球をやって楽しんでおるというようなところには、おのずからなる教育が行われておるらしい。どうかしてもっと明るい教育があの中に満ち渡るように、そういう指導力を持った先生方がほしいと思っておるわけでございまして、私も努めて今見て回っておりますので、いずれ御期待に沿うような御返答を申し上げる時期を一日も早く持ちたいと思っております。  それからも一つの信念を持って当る上から言うて、少年の町の例を言っていただきましたが、日本でも宗教というものがもう少しこういうところに取り入れられますならばよいのではないかと私は思のですけれども、御承知のように、宗教は取り入れられません。昔のような教戒師はございません。ここにも一つの日本の少年もしくは不良な道を歩いてきた人々に与える影響力に欠けるところがあるのじゃないかと思います。もっと信念のある、絶対に対するところの信仰を持たせるような道がないことが一つの大きな欠点ではないかという感じを持っております。  もう一つ、今お尋ねのありました彼らに明るさを持たせる点で、食事でございますが、これが今一日六十五円、これで三食食わせまして、おやつまでこの中で何とかはからっていくのでありますが、これを一円上げるのがなかなか骨なのです。なかなか一円上げてもらえないのであります。食事がもう少し豊かになりますと、ここで大きな指導が行われるのじゃないかということを、見てしみじみ思わせられます。必ずしも量が少いとは思いませんが、子供たちは甘いものもほしいのであります。やはり世間並みの子供なのでございますから、食事などについてももう少し思いやりのある単価を上げていただきたいという希望を持っております。どうぞ御同情願いたいと思います。
  103. 西村力弥

    ○西村(力)委員 第一点の責任の負わせ方に対する特殊なしんしゃくというか、それを考えるべきだという質問に対しては、今後どのような工合になさるのか伺いたい。
  104. 松原一彦

    ○松原政府委員 これは実は非常に苦しいところでございます。少年院のあるところはどうも逃亡があると言われるのですが、そのたびごとに山狩りが行われるといったことで、ずいぶん厄介なきらわれ者になっておりまして、先生方もそういったのが現われますと、身を切られるような思いをしますものですから、あなたのおっしゃるように、つい出さない、手かせ足かせではありませんけれども、監視の目を光らせるというようなことになりますから、私が申し上げましたように、また渡部局長も常に言っておりますが、指導者の過失でないものを、ことさらにとがめはせぬ。常に明るく指導をして、まず逃亡などの起こらないようにするがよろしいということで、私数日前に小田原を見ましたのですが、逃亡は昨年、今年と一人もおりません。だんだん減って参っております。世相は悪くなっておるが、刑務所でも少年院でも、内容はだんだんよくなってきていると思う。逃亡がない。以前はずっと二十五年、二十六年、二十七年と逃亡が多かったのが減って参っているところを見ても、指導もずっと上手になっているし、世間も落ちついてきていると思います。過失もとがめるようなことはありません。
  105. 山本粂吉

    山本委員長 これにて質疑は終了いたしました。  これより討論に入りますが、別に通告もありませんので、これを省略するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  106. 山本粂吉

    山本委員長 御異議なければさよう決します。  これより採決いたします。本案を原案の通り可決するに賛成の諸君の起立を求めます。   〔総員起立〕
  107. 山本粂吉

    山本委員長 起立総員。よって本案は原案の通り可決いたしました。  なお本案に関する委員会報告書の作成につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ驚喜あり〕
  108. 山本粂吉

    山本委員長 御異議なければさよう決します。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時三十五分散会      ————◇—————