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船田国務大臣 ただいま御指摘になりましたように、
防衛庁の予算の繰越額が相当多額に上っておるということは事実でございます。しかしそれだからといってこれを乱用するようなことになりましたら大へんでございますから、本年度の予算の執行につきましてはきわめて慎重に、しかもなるべく年度内に十分消化のできるように今
努力をいたしておるのであります。ただ従来繰越金が相当多額に上っておりました大きな原因は、次のようなところにあるのであります。繰越金を生ずるのはその大
部分が器材費、それから
施設費でございますが、この器材費について申し上げますと、
自衛隊の
装備品で調達を要するものの大
部分は、一般市販製品と異なって特殊の規格性能が要求されており、従来
わが国での製作経験が乏しいため、これが調達に際しては、規格の決定、仕様書の調製に慎重を期するとともに、少数の試作による性能試験の結果を見て発注するよう努めてきておるのであります。従って、これらの一括発注までの準備段階に相当の日時を要するため契約が遅延した、こういうものが多いのであります。なお購入器材の中には
輸入に依存するもの、たとえば
航空機の修理部品、電信
関係の部品、計器類でありますが、そういうものがあり、これらは輸出国側の生産事情、
輸入手続き等のため不測の日時を要した場合が多いのであります。
第三に、
艦船燃料及び
航空機用油につきましては、その貯蔵
施設の整備が、用地の選定難のためおくれておりまして、燃料油の貯蔵に間に合わなかったため、契約はしたものの受け入れが遅延した、こういうような場合がございます。
四番目に、技術
研究所の試作品については、その性質上、
わが国においては未開拓の
研究分野が多いため、その要求性能の決定及び設計に相当の長
期間を要し、かつ試作過程において技術的困難が伴うので、勢いその完成がおくれて繰り越しを生じた、こういう原因がございます。
五番目に、以上の要素に加えて、従来調達業務を相当する機関は各
自衛隊に分散しており、中央調達を一元的に行う調達実施本部はようやく一昨年七月スタートしたような状況でございます。この点が
受田委員の仰せられた機構上の問題に関連するわけであります。このため調達担当職員の充実もおくれ、契約業務はややもすると円滑を欠く傾向がございました。
次に
施設費のことでございますが、そのうちの
施設整備費について申しますと、第一には演習場、航空
基地、弾薬庫等の用地選定に当っては、地元民の納得を得ることが困難な場合が多く、また地元民の納得を得ても補償額、たとえば漁業補償等を含むのでありますが、それらの折価に長
期間を要することが多いということが
一つの原因。次に
米軍施設の返還を受けてその活用を
計画していたものが、
米軍側の事情によって返還がおくれ、従って工事の着手も遅延するというような場合が多いのであります。それから
施設費のもう
一つの大きな問題でありますが、
艦船の建造費であります。これは先般も予算
委員会で吉田賢一
委員から非常に強く御
質問がございましたが、それについて申しますと、第一に
防衛庁の
艦船の発注は、戦後の空白
期間を置いて初めて開始されたものでありまして、このため要求性能の決定及び基本設計の作成に意外の日子を要したということがございます。それから第二の原因として、新造艦の搭載武器の大
部分はMDAPに期待いたしておりますが、その引き渡しがおくれたために、船体等の細目の設計が確定せず、契約がおくれた、こういう場合が多いのであります。それから第三の原因といたしまして、
艦船の建造費は相当に多額の予算でありますので、業者の選定及び契約価格の決定には慎重を期したため、予想外の日子を要した、大体ただいま申し上げましたような事情で、御指摘のように繰越金が従来相当多額に上っておりましたので、これも先ほど来御説明申し上げましたように、調達実施本部というものを一昨年の七月に置きまして、そうしてそれ以来の調達業務につきまして、万全を期するようにいたしております。また本年度の予算の施行については、以上のようなことをよく
検討いたし勘案をいたしまして、誤まりなきを期しつつある次第であります。