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橋本(登)
委員 一応形式論をお聞きしたのは基本的な方式を、どういうものがあるかないかを伺うために、まあ形式論から入ったのですが、実際問題は
アジア局の方の問題だと思います。大体今の質疑応答を聞いて、
アジア局の課長さんの方でもおわかりと思いますが、もっと外交なり政治というものを幅広く
考える。これはお役所の方としては一応法律なりに基いて行なっておりますから、なかなかその
考え方が困難と思いますが、これは私の
見解を申し上げますれば、今政府で――政府はもちろんでしようが、党内の一部にも社会党の一部でも、いわゆる中共との早期国交妥結論についてはその時期でないという
意見を持っておる人があります。しかし国交回復というものは、もっと広げれば厚くなるものではないか。いきなりここで条約ができたから、どことどこの国とは仲よしになるというのではなく、それにはいろいろな要素が加わって、お互いの親善
関係、国交回復という実質ができ上るのだ。単に条約ができたから、それで両国が国交
関係ができた、形式はそうだけれ
ども、日本とエチオピアとの間の国交回復がかりにできたといたしましても、その国交回復というものより、ただ
一つの民間協定であっても、日本と中共との中日貿易協定の方が、より日本の民族にとっては重大な
関係を持っているということは言えるだろうと思う。日本と中共との
関係は民族的に
考えても、また
地域的に
考えても、これは非常に重要な
関係にある。早期妥結のできない
一つの大きな
理由は、もちろんこれは形式論からいえば日本がすでに国民政府を
承認して、それが中共といいますか、大陸地帯も主権下にあるという解釈のもとにあの条約を結んでおるということでありますが、実際は違っておる。もう
一つの
理由は、ことに外務省等にはこの
見解が強いのですが、全部ではありませんが、党内にもこういう
見解はあります。朝鮮事変によってアメリカ人が失った人命、これが大きな
原因で、アメリカには当分の間中共を
承認しようという民族的な感情が起きてこない。であるからして、今日本が、中共と日本との実際のあり方から見れば、アメリカ貿易というものを除けば別ですけれ
ども、これを除いていけば、日本と中共との
関係で、両国民の立場から見れば、これは一日も早く国交回復をしなければいけない立場になっておる。けれ
ども実際問題としては、そうしたアメリカ人の対中共の民族的な悪感情、こういうことで非常に阻害されて、もし日本が中共と近づくようなことがあれば、おそらく日本とアメリカの
関係が悪化するであろう、こういう意味からして、かなりこの早期妥結に対しては、そういうような実質論から一部に反対論もあるわけであります。もちろんこの点はよくわかります。けれ
ども私たちは、――私たちというよりも私個人ですが、両国間の国交回復というものは、単にペーパーに書いた条約のみによって国交回復が実質的にできるものではない。形式論としてはそうですが、もちろん国民の民族感情、あるいは
地域的な
関係、あるいは歴史的な伝統、こういうものが積み重なって両国の親善
関係なり国交回復ができるものである。であるからして、少くとも正式の国交の回復をするまでの間に、あるいは最近行われておるようなお互いに文化の交換なり、――この間梅蘭芳が来ましたが、文化の交換なり、あるいは民間中日貿易の促進なり、そういう幾つものものが、正式の国交回復に先行されて行われて何ら差しつかえがないと私は思います。日本とシナの将来から
考えるならば、行うことが当然政治家の任務じゃないかと思う。単にアメリカのそうした中共に対する悪感情にのみわれわれがこだわって、そうしてあらゆるところに消極的な態度をとるならば、日本としては将来アジアにおける地位を非常に困難ならしめるのではないか、こういう点から
考えて、もちろん形式論からいって直ちに中共と日本との間に、こういう郵便物協定を作るということは条約違反であり、
規定上できないという立場であるならば、当然何かそうした総合的な観点から
考え、日本の東南アジアにおける、あるいはシナにおける将来の立場等から
考えても、あらゆる
方法によって両国間のいわゆる連携というものができていくことが、日本の将来のために必要じゃないか。そこで
アジア局のお
考え方として、そういう非公式な
方法として何らか私こまかい点はわかりませんが、何らかの形でこういう素朴な人類社会、国際社会の生存に必要な協定といいましょうか、協定というと非常に誤解を生ずるのですが、いわゆる非公式な取扱い方で積極的に進める、こういう
考え方を持っておられるかどうか。それともそうした日本と国民政府との
関係及び中共との
関係またはアメリカとの
関係からして、消極的にこれを扱うべきだというお
考え方か、それとも今私が申しましたような大局的な見地からして、協定としてこれを実現することは困難であっても、これを何らか非公式な方式で、そうして両国民の一歩々々の前進を進めていく、これがアジア民族のあるべき姿である、こういう
考え方からして、いわゆる協定、条約論には触れない範囲内においそういう道を尽す
方法があるかどうか、またそういうことについての
アジア局のお
考え方を
一つお述べを願いたいと思います。