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1956-04-26 第24回国会 衆議院 地方行政委員会 第42号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年四月二十六日(木曜日)     午前十一時十二分開議  出席委員    委員長 大矢 省三君    理事 亀山 孝一君 理事 鈴木 直人君    理事 永田 亮一君 理事 山中 貞則君    理事 吉田 重延君 理事 北山 愛郎君    理事 中井徳次郎君       唐澤 俊樹君    川崎末五郎君       木崎 茂男君    纐纈 彌三君       櫻内 義雄君    渡海元三郎君       徳田與吉郎君    丹羽 兵助君       古井 喜實君    堀内 一雄君       加賀田 進君    川村 継義君       五島 虎雄君    坂本 泰良君       櫻井 奎夫君    西村 彰一君       門司  亮君  出席政府委員         自治庁次長   鈴木 俊一君         総理府事務官         (自治庁行政部         長)      小林與三次君  委員外出席者         専  門  員 円地与四松君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  地方自治法の一部を改正する法律案内閣提出  第一一一号)  地方自治法の一部を改正する法律施行に伴う  関係法律整理に関する法律案内閣提出第一  二五号)     —————————————
  2. 大矢省三

    大矢委員長 これより会議を開きます。  日程に入る前にお諮りいたします。地方行政自治法の一部を改正する法律案、及び同整理法案について、参考人より意見を聴取いたしたいと存じまするが、両案について参考人出席を求めることに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 大矢省三

    大矢委員長 御異議がなければ、さよう決定いたします。  なお、日時は明二十七日といたし、参考人は昨日の理事会で協議いたしました八団体とし、人選については委員長に御一任を願いたいと存じまするが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 大矢省三

    大矢委員長 御異議なければさよう取り計らいます。     —————————————
  5. 大矢省三

    大矢委員長 地方自治法の一部を改正する法律案地方自治法の一部を改正する法律施行に伴う関係法律整理に関する法律案、両案を一括議題として質疑を継続いたします。北山愛郎君。
  6. 北山愛郎

    北山委員 きのうに続いてお伺いしますが、きのうは第二条のことを主として言ったわけであります。この第二条がやはり一番大事なので、きのうお伺いした点は、今度の二条の改正によって、府県というものが市町村よりも上の団体になって、市町村のやる事務の一般的な基準についての規制をやり得る権限を、府県という団体に持たせる、こういうところにあるのではないか、こう聞いたところが、どうも小林さんは非常に上手というわけではありませんが、あいまいな御答弁をされたわけであります。  そこできょうは鈴木さんにお伺いしておきたいのですが、問題になるのは、新しい第五項の第三号と第二号です。二号にはいろいろ行政の水準の維持であるとか、基準維持等府県仕事となっております。それから第三号の方では、最後のところに「市町村事務処理に関する一般的基準設定」という規定があります。これは従来なかったと思いますが、こういう仕事府県権能の中に入ってくるわけでありますから、こういうふうな市町村事務処理についての条例というものを府県で定める、そういうことになると、市町村はその府県の定める一般的基準に従ってその行政事務をやっていかなければならない、こういうことに今度の改正によってなるのではないかと思うのでありますが、この点について鈴木さんから御説明願いたいと思います。
  7. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 市町村事務処理に関する一般的基準府県設定をする仕事をやることを、今回の改正案で明らかにいたしておるわけでございますが、この点は現行法の十四条にいわゆる行政事務に関する条例ということで、根拠規定と申しますか、権能に関する基本規定があるわけでございまして、そういう行政事務に関する条例一つの働きの内容を示すものとして、市町村事務処理に関する一般的基準設定、こういうことをここにうたったわけでございます。何らこれによって新たなる法律上の権能、性格に変更を加えたものではないというふうに考えております。
  8. 北山愛郎

    北山委員 ところが今指摘された自治法の第十四条には今お話しの点は第三項にあるわけです。「都道府県は、市町村行政事務に関し、法令に特別の定があるものを除く外、条例で必要な規定を設けることができる。」と書いてある。ところがその十四条の第一項のところに「普通地方公共団体は、法令に違反しない限りにおいて第二条第二項の事務に関し、条例制定することができる。」と書いてある。そこで今度のこの新しく設定された府県仕事というものは、いわゆる第二条、第二項の仕事だと思います。第二項の事務であるからというので、今度は新しく行政事務でない、それ以外の一般的な市町村事務処理に関して、条例制定ができる、こういうふうに考えなければならぬのじゃないか、こう思うのですが、そうじゃなくて、今お話のように、従来の規定にある第三項の場合に限る、こういう趣旨であると考えていいのですか。どうもその間矛盾があるように思われる。
  9. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 第二条第二項の、普通地方公共団体はその区域内におけるその他の行政事務で国の事務に属しないものを処理するというのは、これはもちろん御指摘のように、地方公共団体根本的権能規定でございますから、先ほど申し上げました十四条の行政事務条例制定に関する権能というものも、第二条第二項がすべての基本であるという点においては変りはないわけでございまして、第十四条の根拠するものは、やはりいずれもこの第二条の基本から発しておるものというふうに考えていいものと思うのであります。
  10. 北山愛郎

    北山委員 ただしかし、従来であれば、わざわざ第三項で「行政事務に関し」と書いてあって、一般的な事務処理については、都道府県市町村のそういう行政事務だけに限って条例できめる。条例できめれば、やはり市町村はそれに違反することができないようになっておる。ところが今度は十四条の第一項に該当するような府県事務範囲を広げたわけですから、その中に市町村事務処理に関する一般的基準設定ということが、新しく府県事務になってきた。だからその事務について条例を定めることができる。こういうことは、第一項と第三項というものは別個のことになってくるのじゃないか。今までであれば、第一項については、その中に今改正の中で出てくる市町村事務一般的基準設定ということがなかったのです。府県のそういう仕事ではなかった。権能ではなかった。今度は新しく権能の中に入ったのだから、これを第十四条の第一項に従って条例を定める。その条例市町村が従わなければならぬ、こういう関係になるのじゃないかと思いますが、そうじゃないのですか。
  11. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 根本の考え方といたしまして、第二条の第二項は、これは、基本的な普通地方公共団体全体を通ずる原則規定でございまして、第十四条において、どういう場合に条例制定できるかということが規定されておるわけでございますが、この条例制定権基本はもちろん第二条から発しておるわけであります。そこで条例制定につきまして、市町村事務処理に関する一般的基準設定というようなことが卒然としてここに出てきたのではないのでありまして、十四条の第三項に基いて、市町村行政事務について条例で必要な規定が設けられる——俗に統制条例ということを申しておるわけでございますが、そういうことができるというのは現行法基礎があるわけでございます。ただそれを今回は、府県というのはこういうような種類の仕事をやるのであるということを書き、従って府県市町村との間に、ひとしく普通地方公共団体ではあるけれども、その主として処理いたしますところの仕事というものはこういうものであるということで、おのずから実際の運営における違いというものを明らかにしようというのが、今回のこの改正趣旨であるわけでございまして、現在の基本の建前を変更するという趣旨のものではないと思っておるのであります。
  12. 北山愛郎

    北山委員 ただしかし、従来この第十四条の第三項にわざわざ「都道府県は、市町村行政事務」というふうに書いてあるのです。おのおのの団体自分事務について、条例を作るということは当然のことなんです。ところがこの場合には、府県市町村事務についての条例を作るというのです。ただしかしその場合は行政事務だ、これはそれ以外の事務ではないという意味なんです。今度のように市町村事務一般処理に関する、この一般的な基準設定をするということが府県権能の中に入ってくれば、それは第十四条第一項の規定に基いて条例がきまって出てくると解せざるを得ないのです。もしお説の通りであるとするならば、今度の改正案の中で「市町村事務処理に関する」といわないで、「市町村行政事務処理に関する一般的基準設定」ということにしなければ合わないと思うのです。行政事務とそれ以外の公共事務とは違うのですよ。だからそれを区別して、第十四条の第三項というのは行政事務に限って市町村の——というのはよその団体のことですが、よその団体行政事務処理に関しても都道府県はできるんだ、こういう意味であったのです。だからこれだけを基礎にして、一般的な事務基準設定できるのは当りまえだというような議論はできないと思うのです。やはりこれは権能の拡大なんです。そういう自治庁の態度ならば、なぜ市町村行政事務処理に関する一般的基準設定とかなんとかいうふうに書かなかったか、あいまいな文句を使うことは、法律ですから許されないと思うのです。
  13. 小林與三次

    小林(與)政府委員 私から御説明を申し上げます。この規定自治法の頭に書いてあります通り、第三項に例示されている事務配分を書いたんですが、第三項に例示されている事務というのは、今の第二項の事務を受けておるわけでございます。そこで要するに、第二項に普通地方公共団体権能府県市町村を通じて一様に書いてあるわけでございまして、これは申し上げるまでもなく公共事務法令に基く事務その他の行政事務で国の事務に属しないもの、こういう平面的に書いてある普通地方公共団体事務でありますが、都道府県市町村ではその事務はやはりおのずから違う、その違う内容をここに例示したのが今度の規定でございます。それでございますから、今の事務としてこれを一応受けてそのまま書いておるわけでございまして、本来普通地方公共団体権能でないものがプラスになるわけでも何でもない、本来府県市町村にある事務についての配分基準、運用の基準をはっきり書いたのにすぎないのでございます。それでございますから、市町村固有事務について府県が調整するというか、統制する権限が今あるかといえば、これは当然そんな権限はないのでありまして、府県府県事務、それから法令に基く事務その他国の行政事務市町村に属しない事務範囲内にしかないわけです。だからその事務範囲内で府県事務市町村事務と、段階を分ければこうなるぞということで書いたにすぎないのであります。
  14. 北山愛郎

    北山委員 こういう改正をしますと、市町村事務処理に関する一般的基準設定都道府県ができるのですから、そこでこの規定に基いて市町村衛生なら衛生の問題、あるいは部落会の問題とか、いろいろなことを都道府県条例できめるということが、やはり十四条の一項でできるようになっておる。条例できめたときには、今度はもとの第二条第十一項、第十二項の「地方公共団体は、法令に違反してその事務処理してはならない。なお、市町村及び特別区は、当該都道府県条例に違反してその事務処理してはならない。」「前項規定に違反して行った地方公共団体の行為は、これを無効とする。」こういう規定が生きてくる。それが権限の逸脱であるとかなんとかいうことは、これはどこでも論争することはできないのです。論争してみたところで、この法律、この規定に基いて、都道府県市町村事務一般的基準設定内容とする条例を作る、これは適法に行われる。そうすると適法に行われた条例に従って市町村はその事務処理を行わなければならぬ、それに違反すればそれは無効だ、こういうことになるのじゃないですか。そういうことにならないのですか。
  15. 小林與三次

    小林(與)政府委員 それは今申しました通り府県府県としてやり得る権能基本は、市町村と同様に二条の二項に書いてあるわけでございます。府県であろうが市町村であろうがその公共事務と、それから法令に基く事務とその他の行政事務で国の事務に属しないもの、こういう三つのいずれか以外の事務府県市町村もやれないわけであります。しかしこれは、府県市町村はすべての事務について、同等にひとしくこういう権能があるかといえばそうじゃない。府県段階市町村段階とあればおのずからその事務内容というものは違うべきである、そのふるい分けをこれはやったわけでございます。それでございますから市町村固有、いわゆる公共事務について府県が何でもできる権能が当然に、自動的にあるかといえばそれは明らかにないわけでありまして、府県というものは府県公共事務か、しからずんば法令によって府県に属する事務とか、その他いわゆる行政事務で国の事務に属しないと考えられるものしか、これはないわけでございます。それで行政事務に属するようなものにつきましては今の統制条例というような観念も次第に出てきましょうし、また法令に基く事務に関連すると考えてもいいわけでございますが、その場合でも、要するに府県というものは、何でも市町村のことをこの範囲内にあるものはやったらいいかといえば、それはやっちゃいかぬ。むしろ府県というものは一般的な基準設定にとどまるべきであって、それ以外のことはやってはいかぬ、市町村にまかせるべきであるということを明らかにしておるわけであります。でございますからこれは全然ない。今まで自治法の二項で予想されていない事務を一般的に、包括的に与えたということには一つもならぬのであります。だから市町村固有事務について、かりに規制できるということがほかの法律根拠づけられたらこれはできます。たとえば水防法あたり水防団員定員基準を定めることができるということがあれば、これはもちろんできます。そうでなければ十四条二項にあるような統制事務とか、その他法令に基いて根拠がある場合でなければ、固有事務についてできっこないのであります。しかしながら府県というものは、そうした他の法令その他に基いて市町村については一般的な基準を、必要があれば定め得る、そういう地位府県であって、市町村市町村としてその固有事務を遂行する地位にあるぞということを明らかにしたのにすぎないのでございます。
  16. 北山愛郎

    北山委員 だけれども、こういうふうな規定になればこれはできるのですよ。一般的基準設定だけはできる。これは例条でできるでしょう。そうすると府県条例に示された基準に従って市町村でやらなければならぬということになる。だからここはこうやれという直接の具体的なケースについての指揮監督はできないにしても、一般的基準というものは条例できめることができるのですから、その一般的な基準によって、市町村行政事務であろうがあるいは固有事務であろうが基準に従わざるを得ないという効果が出てくるのじゃないですか。それともできないというのですか。
  17. 小林與三次

    小林(與)政府委員 その事務は、こう書いてありますけれども、第三項に例示されているような第二項の事務をこれは書いたわけなのであります。そこで第三項を見てみますと、第二項の事務例示するとおおむね次の通りである、ただし法令に別段の定めがあるときはこの限りでないとあって、これは事務例示にすぎないのであります。だからこれは第二項にちゃんとさかのぼる。それと法令の別段の規定とでこれは読むことになっておりまして、みんなそれのもとがあります、それを振り分けというか、例示していったのにすぎないのでございまして、これによって新たな特殊な権能を与えるということには、ちっともならないのでございます。
  18. 北山愛郎

    北山委員 第三項の方は例示だから、なおさらこれ以外にもたくさんあるということなんです。ここで例示されている以外のその他の一般的な事務についてもここには何ら制限はないのです。とにかく市町村事務処理に関する一般的な基準設定ということが一般的にできるということが書いてあるでしょう。第三号はそうじゃないのですか。特別自然に制限が受けられるような規定がどこかにあるようなお話ですが、どにこもない。ただ条例上そういうふうに考えるのだというだけの説明では、法律の解釈にならないのですよ。文理の上には何ら表現されておらない。「市町村事務処理に関する一般的な基準設定」というふうに書けば、何も限界はないのですよ。一体どこに制限があるのですか。
  19. 小林與三次

    小林(與)政府委員 それですから、今申しました通り第三項も事務例示です。第三項というのは何を例示したかといえば、前項事務例示したので、第二項の事務例示したのであります。それでありますから第二項で許されることだけを例示し、その分配をきめただけでありまして、第二項で許されない事務はてんで初めから考えようがなし、考えてもおらぬのでございます。
  20. 北山愛郎

    北山委員 二項、三項というのはこの際は問題ない。この五項の新しくできた第三号の中にある「市町村事務処理に関する一般的基準設定」というのは、いわば原則例外なんです。ほんとうは府県という団体市町村は違うのですから、この二項、三項はそれぞれ自分事務なんだ。府県府県事務市町村市町村事務についておのおのやっていく。ところがこの例外として府県市町村事務について基準設定を示すことができるということだから、いわば例外的な規定なんだ。それぞれの団体が、それぞれ自分に与えられた担当の事務をやるというのは普通の場合であって、それを自分以外の市町村仕事処理についての標準を示してやるのだという権能府県に与えられる。それも一般的などの事務という限界はないのです。二項であろうが、三項であろうが、そんなことは何も限界はないでしょう。この三号には、行故事務に限るのだとか、あるいはその他の法令できまっておるものに限るのだという規定はどこにもない。どこかにあるのですか。
  21. 小林與三次

    小林(與)政府委員 それは第五項のまず頭にはっきりそういうことを書いてあるのでありまして、都道府県は「第三項に例示されているような第二項の事務で」云々処理する。第四項をごらん願いますれば、市町村は「前項例示されているような第二項の事務処理する」こういうことになりまして、みんな前項を受けておるわけであります。第三項を受け、さらに第二項をこれは受けておるわけです。要するに現行法の第二条第二項は、府県市町村を問わずきわめて抽象的に一般的に普通公共団体としての権能を書いてあるわけであります。しかしながらそのうちには県という段階と、市町村という段階があって、おのずから事務配分の相違というものがあるべきじゃないか。その二項の府県市町村との段階における事務配分基準をこれは書いたのでございまして、規定の上ではきわめて明瞭になっていると考えます。ちょっと説明が十分でないものですから御了承願えないのは、非常に残念だと思っております。
  22. 北山愛郎

    北山委員 今のお話の点はわかるのです。それぞれの府県事務市町村事務をある程度確定しようという趣旨で、できた規定であるということは、何も御説明をいただくまでもない。その際第三号のここに書いてある「市町村事務処理に関する一般的基準設定、」ということが府県事務としてやり得るということをここで与えているのです。今まではこういう規定はなかったと思う。新しく入った規定です。それは昨日もお話があったように、連絡調整のためであって、市町村事務が大体統一的にやれる、あるいはその間の連絡調整をとるためにやれるとしても、少くとも府県市町村のやっている事務についても、ある程度規制を加える規定です。ですからこれは新しく入った規定なんです。しかもその中には十四条の第三項のいわゆる行政事務のことを言われましたけれども、そこからはみ出しているのです。だから今度は十四条の第一項によって行政事務以外のものについても一般的基準設定条例を出し得るようになるのではないか、こういうふうに改正すれば出せないのですか。そういう条例は、たとえば市町村において三項に例示されている事務の中で、たとえば調査統計をやるという事務について、調査統計一般的基準を示す府県条例でこういうふうな調査統計をやれということを示すことが、今度の改正規定によってできることになるのでしょう。今まではできなかったのではないですか。それだけの違いがこの改正によって出てくるのではないか。そこで今まで府県でやっておった仕事範囲を、今度の改正によって相当拡大したのではないかということを聞いているのです。それを今までと何ら変らないのだという御説明では、どうもこの規定趣旨がわからない、ない方がいいくらいだと思うがどうでしょうか。
  23. 小林與三次

    小林(與)政府委員 これは一号、二号、三号、四号に具体的に例示してあるので、いろいろそういう御疑念も出てきたのだろうと思いますが、それは結局五項の頭に書いてあります通り、第三項に例示されているような第二項の事務についての規定でございます。だから根本的に第三項に例示されているような第二項の事務府県市町村ではどういうふうに分け合っていくか、こういうことを書いているわけでございますから、実は第二項の最後に書いて規定の上においてはその点を明らかにいたしているわけです。そこで今仰せられました通り、かりに市町村の今の定員を何人にするとか、市町村内部財務統計をかりにどうするとかいうことを勝手に府県条例を作れるかということになると、府県にはそういう権能がないからできない。別に法令によって特定に根拠づけられれば別ですが、それはできない。しかしながらたとえば今の住民統計と申しますか、経済統計と申しますか、統計法に直接あるいは間接的にそういう規定があるかないか知りませんが、産業統計を県が全般にわたってやる。その場合に県が国民から統計事務をとるのは、ある程度連絡調整をとってやらなくてはいかぬから、そういう基準を作ろうと思えば、私は二項ではいわゆるその他の行政事務で国の事務に属さないものとしてやり得る。しかし市町村内部の組織の定員をどうするとか、財務統計をどうするとかいうことは、市町村プロパーの問題でありましてそんなことは府県はやれっこない、こういうふうに考えているわけでございます。それでございますから、全然これによって現在ある府県権能に、この例示によってプラスをしたということには一つもならぬし、またそうする意図も全然ない。実はそういうふうに表現されているはずだと思っているのでございます。
  24. 北山愛郎

    北山委員 鈴木さんのお答えがないのですけれども、どう考えても今の小林さんの御答弁では明らかでない。それは第二条の第二項は、たとえば公共事務については、その公共事務ということになって自分事務をやることは明らかなんです。ところがそれを例示したのは三項でしょう。ところがこの新しくできる第五項の第三号というのは、特に府県市町村事務についての規制ができるということなんです。だから普通の場合はできないが、こういう規定があるから今度は新しくできるようになる、こういうことなんだと解せざるを得ない。できないという保証はどこにもないでしよう。その今の規定からできないというのは、第二項の「普通地方公共団体は、その公共事務云々と書いてあって、自分事務をやるというだけのことを書いてあるだけだ。そして三項では例示しているだけだ。だからそこからは何も出てこないわけです。今までそのままであるならば市町村市町村仕事府県府県仕事、これをやるだけなんだ。それを今度は府県市町村事務処理について規制を加えることが第五項の第三号でできるようになる、あるいは第二号でもできる。たとえば「義務教育その他の教育の水準の維持、」というようなことで、これはできないことはない。義務教育なんか法律できまっているものはその法令によるでしようが、それ以外の一般的な教育の水準の維持のための条例というものを府県が定める、それが市町村関係する場合もあり得る。と同時にまた三号については「市町村事務処理に関する一般的基準設定」ということで、これでひっかけて条例ができるということなんです。今まではできなかったことができるようになるでしょう。できないのですか。これはだから意味のない——意味のないというか、従来と変らないということになればこの規定をとった方がいい。誤解を招くのです。鈴木さんどうですか。
  25. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 だんだんと御議論でございますが、これは先ほど来行政部長が申し上げております通りでございまして、まず現行法の第二項、第三項の関係をよくごらん願いますと、これは第三項というのは、第二項の規定が非常に抽象的でございますから、それをはっきりわからせるようにしようというところで、こういう仕事が地方団体のやる仕事であるということを書いたわけでございます。第二項は申すまでもなく積極的な住民の福祉増進に関する公共事務と、いわゆる委任事務の「法律又はこれに基く」事務と、それからさらに消極的に住民に対するいろんな災害等を防除するための自主的な行政事務、こういう三通り仕事普通地方公共団体のやる仕事である、こういうふうに書いておったわけであります。ところがそれではわからないというので、その後法律をさらに改正をしていただきまして、ずっと二十二項目を書いて、普通地方公共団体の第二項にいう三つの種類の仕事内容例示すればこういうものである、こう書いたのでございます。ところがこの二十二を見ますと、これは都道府県市町村もともに普通地方公共団体として、普通地方公共団体はこういうことをやるのだ、この中はそれぞれ(北山委員「それはいいのですよ、関係がない。」と呼ぶ)いや関係が大いにあるのでございます。いろいろ府県のやることも市町村のやることもごっちゃくたに書いてあるのですからわかりにくい。府県というものはどういう仕事をやるのである、市町村はどういう仕事をやるのであるということを明らかにしようというのが今度の趣旨であります。今回の改正法律案の第二ページの三行目のところを特に御注視願いたいのですが「都道府県は、市町村を包括する広域の地方公共団体として、第三項に例示されているような第二項の事務で、概ね次のような広域にわたるもの、統一的な処理を必要とすもるの、市町村に関する連絡調整に関するもの及び一般の市町村処理することが不適当であると認められる程度の規模のものを処理するものとする。」こういうことで府県のやる仕事というものは、現在地方団体範囲にきまっておるが、その中でこういうような種類のものが府県仕事になるんだということをここで明らかにしたわけであります。従ってこれは二項なりあるいはことに三項を受けて書いておるのでございますから、三項に書いてあるような事務で、おおむね次のようなもの、こういうことでありますので、決して三項の範囲をこれは逸脱しておるものではないのであります。言えかえればさらに二項の方ももちろん受けてきておるわけでありまして、そこで御指摘の三ページの終りから三行目にございます「市町村事務処理に関する一般的基準設定」に関すること、これは何か新しいことを加えたのであるかと申しますと決してそうではないので、現在三項にございます二十二項目にわたって列記されております仕事の中から振り分けをして、こういう仕事を持ってきたのであります。三項の仕事というのは、これは裸で書いておりますけれども、これらの仕事の中で全然法令規定がないというものはないと思います。大ていこれは三項のただし書きに「但し、法律又はこれに基く政令に特別の定があるときは、この限りでない。」ほとんどその仕事のやり方というものは法律なりそれに基く命令で規定をされておるのであります。ですから実際はそれによって動くのでありますが、およそ府県というものはどういうものをやるものであるか、どれが本来的な性格のものであるかということを明らかにしようというのが、今回の規定でございまして、これによって現在一般的に普通地方公共団体仕事をして定められているものの中から振り分けをしようというだけでありまして、幅を広げようという考え方ではないのであります。  それからさらにこの第十四条の関係でございますが、これも要すにこの第三項に規定しております仕事の幅をいずるものではないのでありまして、ただ行政事務に関する統制条例という立法権制定基礎をここに書いたのでありますが、仕事の幅としてはやはり三項に定められているものの範囲をいずるものではないのであります。従って私どもは先ほど行政部長が何回も繰り返し申し上げました通り、文言の上でございましても「第三項に例示されているような第二項の事務で、」と、こうはっきりうたってあるのでございますから、何も今までの範囲を越えて、ここで新しい規定を設けたというのではない。要するに現状を振り分けをしたというふうにお考えを願いたいと思います。
  26. 北山愛郎

    北山委員 今の御説明でもわからないんですよ。第二項と第三項の御説明がありましたが、そんなことはわかり切っていることです。ただ問題は、その仕事範囲はこれ以外にもたくさんあると思うのですよ。この例示されていない以外のこともある。問題はそういうふうな仕事が、個々の事務について主として府県がやっていることもあれば、それから市町村のやっていることもあるし、また法令によって府県市町村関係規定されている場合もあります。だけれども今の第五項の第三号のような規定を置きますと、各項目のどれについても府県市町村仕事をやる場合の一般的基準を示し得るということであって、府県市町村関係においては府県権能を広げたのだ、こう解せざるを得ないというんですよ。この仕事の種類別ではないんですよ。たとえば今例をあげましたが、調査を行い統計を作成するということは、これは府県事務でもあり、また市町村もやります。ところが今度の第五項第三号によって市町村事務処理に関する一般的基準設定ということで、今度府県市町村の調査統計事務についての基準をきめ得る。それから各項目みなそうなんですよ。多少法律でこまかい点まできめられている分は別でありましょうが、そうでないような範囲については、府県条例でもって市町村仕事のやり方をきめよう、たとえば第八号の「防犯、防災、羅災者の救護等を行うこと。」これも市町村事務でもあり、また府県も多少やるでしょう。ところがそれについて府県の方では市町村の防犯、防災あるいは救護等のことをやる場合の事務一般的基準というものをきめ得る、こういうことをどの事務についても許した、こういうことは違うんです。要するに事務の種類別ではなくて、今までの府県市町村関係を変更しているのです。今まではそういうことはできなかったでしょう。やはり法令規定によって府県市町村関係が律せられて、その範囲内でやっておった。今度は一般的に公共事務についても、行政事務についても、例示さはた事務以外のすべての事務について、すなわち何も範囲がないわけですから、市町村事務処理に関する一般的基準設定というものは府県がやり得る。これは無制限に、この一般的基準設定という形においては、府県市町村事務規制し得るということを認めたのであって、今お話しのような説明では、一向納得しない。的をはずれておる。だから現状をそれだけ改変しているということは認めざるを得ないと思うのです。どうです。そういうふうな事務について、先ほど来私が伺っておるように、府県条例でもって、市町村が調査、統計をやる場合の一般的基準をきめるというようなことができるようになるでしょう。そうすると、その条例市町村が従わざるを得ないでしょう。そういう効果が起ってくるのではないのですか。だから今の二十二項目の事務のどれについてもあるいはそれ以外の一般的な事務についてもできるような権限府県に与える。府県というものはそういうふうに市町村事務規制できるものだというようにするのか、今度の二条のねらいなんです。だからここはちょっと一行だけの問題だけれども、非常に重大なんです。
  27. 小林與三次

    小林(與)政府委員 これはそういうことには一つもならぬのでございます。と申しますのは、たとえば、一番典型的なものをごらん願いたいのですが、ここにあっせん、調停、裁定、訴願の採決と書いてありますが、あっせん、調停、裁定は、この書き方が、都道府県前項に掲げるもののほか左の事務処理する、そうして第三項のように書いてあれば、あっせん、調停、裁定、何でもやれる、こういうことに実はなろうと思います。それと同様に、今おっしゃいました問題も、新たに権限を与えたということになろうと思うのでございます。しかしながら、そうじゃないのでございまして、繰り返し申しました通り、第三項を受け、さらに第二項を受けて、第二項でやり得る事務を第五項として書いただけでございます。たとえば今御例示の第三項の十五号ですか、「普通地方公共団体事務処理に必要な調査を行い、統計を作成すること。」これはそれぞれの団体事務処理に必要な団体公共事務を書いておるのでございまして、府県府県のためにやる、市町村市町村のためにやる。その市町村のためにやる事務府県が勝手にコントロールできるかと言えば、法令でそういう一般的な権限が与えられない限りはできっこありません、これは市町村固有事務ですから。しかしながら、たとえば、その次の十六号をごらんになりますと、「住民、滞在者その他必要と認める者に関する戸籍、身分証明及び登録」ここからさらにいろいろな産業統計とか、経済統計とか、住民統計というものが想像されるわけですが、そういう事務になってきますと、これは一種の行政事務であります。行政事務でありますから、府県がやろうと思えば府県だってやれる、市町村がやろうと思えば市町村だってやれる、国だってこれはやれる事務なのでございます。そういうような事務につきましては府県もやり得るが、いわゆるこうした市町村間におけるその条例の統制と申しますか、そういう形でこれはやり得るということが、ここから出てくるわけです。十五号のは市町村のプロパーの仕事ですから、できっこない。そういうことはおのずから第二条第二項がそういうふうに規定されておるのでございまして、それを分けて例示したにすぎないのでありまして、大ワクはきまってしまっておりますので、そのワクの中の配分例示でございます。でありますから、ワクを逸脱するわけでもない、プラスするわけでもごうもない、こういうことだけは規定の上においてはっきりしておると、われわれは考えております。
  28. 北山愛郎

    北山委員 それは何べん聞いてもわからぬですよ。説明が的はずれというか、故意に的をはずしているような感じがする。だから建前は、今小林さんが言われたような建前であるのを、その建前を変更するために、第五項の第三号のような規定が入ってきたんです。もし建前が、そのように市町村のそういうふうな事務府県が干渉できない、調査統計なら調査統計事務について、それぞれのプロパーの仕事をするのであって、府県市町村調査統計について干渉することができないということが建前であるならば、何もこの規定は要らないのではないか。それをこのプロパーのそれぞれみずからの調査統計なら調査統計をやる以外に、府県市町村の調査統計事務処理に関する一般的基準設定ができるのだということを、この第五項第三号で書いてある。そういう意味に解しなければ、正しい法律解釈ではないと思う。法令でなければできないというが、法令としてここに新しく出てきたじゃないか、これは法令じゃないのですか、法律じゃないのですか。そういう権能を広げたんですよ。それ以外に解釈のしようがない。鈴木さんも小林さんもそうそうたる法律学者だから、そんなことは百も承知だと私は思う。承知してこの規定をわざわざ入れたんです。もしお説の通りであれば、こんな規定は入れなくともいいはずです。私が先ほど来お聞きしているのは、この規定に基いて、市町村のいろいろな事務処理に関する一般的基準設定内容とする条例とか、そういうものは、府県が作れるのか作れないのか、これなんです。
  29. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 いろいろお話しでございますが、私どもは決して的をはずしたお答えを、しいて申しているわけではありません。そっくりそのままのことを申し上げておるのでありますが、なお別の角度からいま一度御説明申し上げますと、第三号の、市町村事務処理に関する一般的基準設定に関することというのは、これによって新たなる権能を与えることでないことは、先ほど来何回も申し上げておる次第であります。  しからばどういうものであるかと申しますと、それは、先ほど御説明を申し上げましたように、地方自治法の中で拾っていきますれば、いろいろありますが、第十四条の第三項で、「都道府県は、市町村行政事務に関し、法令に特別の定があるものを除く外、条例で必要な規定を設けることができる。」ですから市町村行政事務について条例一般的基準設定をするというのが、ここに一つ入るわけであります。そのほかにもいろいろ特別法の中に、私は今ここでつまびらかにいたしておりませんが、府県が町村のやる行政事務につきまして、一般的な基準設定を認めている法令がたくさんございます。そういうものがすなわちこの市町村事務処理に関する一般的基準設定という仕事であって、そういう仕事府県がやる、こういうことをここに振り分けをして書いただけであります。これによって、およそ市町村事務でありまするならば、何でも府県一般的基準設定ができるんだということを、ここで新しくうたったわけではないのであります。これはやはりそういう基本的な市町村のどういう仕事をやるんだという働きを示そうとして、ただ書いただけでございますから、これは第二項、第三項というものの性格が、何らこれによって新たなものを加えるというのでなく、他の法令なり自治法の他の部分できまっておりますことを、ここで明らかに例示したにすぎないのでございます。ですから、ここに何らか新しいものをつけ加えるという趣旨のものでは全然ない。この点はぜひ御了解を願いませんと、全体の考え方が食い違って参りまするので、よく一つ御了解願いたいと思います。
  30. 北山愛郎

    北山委員 私はこの規定があいまいだから、この点を明らかにするために、御質問を申し上げているのです。このまま通してしまうと、どういう解釈もできる。だからお伺いをしているんです。  そうすると、第五項の第三号に書いてある事務は、第二条第二項の、都道府県事務である。これだけは明らかでしょうね。
  31. 小林與三次

    小林(與)政府委員 それはきわめて明らかでございます。
  32. 北山愛郎

    北山委員 そうすると、自治法の第十四条第一項に、「普通地方公共団体は、法令に違反しない限りにおいて第二条第二項の事務に関し、条例制定することができる。」従って第五項第三号の、市町村事務処理に関する一般的基準設定というようなことも、都道府県事務であるから、いわゆる第二項の事務であるから、その事務に関して条例設定することができる、これは第十四条第一項によって、そういうことになるのじゃないですか。
  33. 小林與三次

    小林(與)政府委員 そういうことにはならないと思います。と申しますのは、第二項で府県市町村固有事務について、そういう基準設定する権限が与えられていなければ、これはできっこないわけですが、そういうものは与えられていない。先ほど申しました通り市町村の定数を勝手に府県条例できめるという権能は、現在の第二条第二項によってはこれは与えられていないわけです。それでありますから、与えられていないものにつきまして、きめようがないと思うのでございます。
  34. 北山愛郎

    北山委員 二項、三項の方だけでは与えられていない。ところが第五項の第三号で今度与えられてきたのです。この第五項第三号の事務もいわゆる広い意味で第二項の仕事の中へ入るのだという明確なお答えが今あった。やはり市町村事務一般的基準設定という仕事も、これは都道府県事務、すなわち第二条第二項の事務の中に入るということを明確にお答えになった。そうなれば、十四条の第一項によって、法令に違反しない限りにおいては、この一般的基準設定についても府県条例を作り得るという解釈になってくるのですよ。そうじゃないというならば、はっきりとその根拠をお示し願いたい。
  35. 小林與三次

    小林(與)政府委員 第二項の事務は、はっきり書いてあります通り公共事務一つ。それから法律またはこれに基く政令により普通地方公共団体に属する事務一つ、それからその区域内におけるその他の行政事務で国の事務に属しないもの、この三つでございます。それでございますから、たとえば、今御例示になっておる市町村プロパー定員をきめる、こういう問題は、府県公共事務でないことは明瞭でございます。それなら法律またはこれに基く政令によって属する事務かといえば、そういう特別法もないのも、これはまた明瞭でございます。それならそれは国の行政事務かといえば行政事務とはいえない。市町村プロパー事務ですから……。それではなくて、市町村市町村民に対するそれに類示の例として、たとえば住民の統計を作るということになれば、これは行政事務と考えられるから、その行政事務ということの見地から府県が統制的な条例を作り得る、こういうことになろうと思うのでございまして、その点はちっとも法律上心配のない読み方ができる、こういう前提で実は立案いたしておるのでございます。
  36. 北山愛郎

    北山委員 そういう頭になり切っておるからちっとも疑いがないのです。じゃあらためてお伺いしますが、この第二条第二項の中に、普通地方公共団体は、今お話のあった「その公共事務及び法律又はこれに基く政令により」云々とあるでしょう。その法律の中から地方自治法は除外するのですか。
  37. 小林與三次

    小林(與)政府委員 それはもちろん入ります。
  38. 北山愛郎

    北山委員 そうすると、今度の改正案の第五項第三号に掲げてある、市町村事務処理に関する一般的基準設定ということも、これは地方自治法によって都道府の事務として、いわゆる法律に基く事務として、認められた事務になってくるのじゃないですか。
  39. 小林與三次

    小林(與)政府委員 それは今申しました通り、この書き方を、都通府県は第二項の事務のほか左の事務処理するとか、別に新しく授権をしたという式に書けば、まさしくそういうことになろうと思います。これはそういうことにはしておらぬのでありまして、要するに、二項の範囲内においてできるこの自治法の実体的な規定もありましょう。それから他のそれぞれの法律の実体的な規定もありましょう。その他そういう範囲内てできるものについてのふるい分けでございまして、その点は私は全然心配がない、こういうふうに考えております。
  40. 北山愛郎

    北山委員 しかし今度の改正案も、先ほど来お話があった通り府県市町村の性格、権能というものは、広い意味では明らかに一つの授権です。性格、権能を明らかにするのですから、個々の具体的な規定として、その市町村権限を与えるあるいは府県権限を与えるという規定ではないにしても、やはりここにあります通りに、この改正案は、府県市町村の性格、権能を明らかにしようというのですから、府県はこういう仕事をするものだということを多少変更しているでしょう。具体的な特別法の場合だけに限るといういうな規定ではなくして、やはり地方自治法の中に、都道府県市町村事務処理に関して云々、こういう基準設定ができるのだという権能を与えた規定ではないですか。しかもそれは第二条第二項のいわゆる法令に基いて都道府県に属せしめられた事務として解釈しなければどうもおかしいと思うのだ。御心配がないというのだが、私は一人くらい心配しようが、そんなことはかまわない。だが、こういう法律が出てきますと、法律ですからこれが適用になってくる。いや、あのときは小林さんがああ言った、こう言ったと言っても始まらないのです。少くとも一つの客観的な法規として評定するのだから、文理上読めるようなものでなければならぬと思う。この言葉によれば、市町村のどの事務とも書いてないのですから、限界がないのです。とにかくその直接の指揮監督ではないにしても、都道府県一般的基準設定だけはできる、こういうことになってくるでしょう。そうすれば、それはやはり第二条二項の都道府県法律で許された事務になる。そしてまた第十四条の一項によって法令に違反しない限り条例制定できる。そうして条例ができれば市町村はこれに違反してはならぬということになってくる。どうしてもそう行かざるを得ない。私の法律論は間違っていないと確信いたしておりますが、これは間違いであるということを、もう少しはっきりと鈴木さんから御説明願いたい。
  41. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 実体の問題に即してお答え申し上げたいと思います。要するに、市町村事務処理に関する一般的基準設定仕事として、しからば府県条例でどういう基準設定できるかということを申し上げたいと思うのですが、それは、先ほど申し上げましたように、一つはこの自治法十四条の三項に基くいわゆる統制条例、これは市町村行政事務についてやれる。その他特別法に市町村事務処理基準について、府県は何々ができる、こういう規定があろうかと思いますが、そういうものをさしていると思うのであります。今北山先生の御心配しておられますことは、市町村固有事務といいますか、公共事務につきまして、これによって市町村事務を何か一般的基準でどんどん縛っていくことを、府県が当然やれるようになるではないかということだと思いますが、私がそうではないと申しましたのは、この五項の仕事は第二項と第三項を受けて書いてあるわけでございまして、第三項の例示をごらんになりましてもわかりますように、これは法令に特別の規定があれば当然それが優先する、こういう建前になっておりますし、さっき小林君が申しましたように、第二項で申しますれば、これは本来府県仕事としてやれるものでなければ結局やれないわけでありますので、委任事務公共事務と、いわゆる国に属しない行政事務以外府県のやれる仕事はないのでございますから、この一般的基準設定というのは、第二項の原則から言ってどこに入るかと申せば、これは公共事務ではない。そうしますと、第二段の委任事務であるかどうか、こういうことになろうと思います。そこで、これはおそらくは委任事務と呼ぶほかはないと思うのでございますが、そうなりますと、たとえば十四条の第三項をごらんになれば、市町村行政事務に関し条例で必要な規定を設けることができる、こうなっておるのでございましてここでかりに市町村事務に関し条例を設けられる、こういうふうに、公共事務も委任事務もあるいはその他の行政事務も全部ひっくるめてそういう立法権があるというように書いてあるのならば、御心配のようなことが全部出てくると思うのでありますが、しかしここでは行政事務についてのみ府県というものは統制条例、要するに統一的な処理条例設定できるのだ、こう書いてあるのでありますから、この法令の特別の定めというのは当然三項のただし書きにあります法令の特別の定めにもなるわけでございまして、そういうものが、当然この三号の一般的基準設定の場合にはかぶってくるわけであります。従って十四条の制度を制定いたしたその範囲から考えましても、お話しのような公共事務について、府県一般的基準設定ができるか、さっきの定数でありますとか、そういうようなものについてこれができるかといえば、これは当然十四条の第三項で排除されてしまっておるのであります。ですから、その点からも御心配のようなことは全然ない。要するにそれぞれの法令根拠に基いてやり得るものしかやれないのでありますから、私どもは何ら今までの基礎を変えるものではない、要するに現在ありまする権能なり仕事の種類を、ここに類型的に例示したにすぎない、こういうふうに考えておるのであります。
  42. 北山愛郎

    北山委員 鈴木さんの特異な解釈が出てきたのですが、そうすると、市町村事務というのは、この場合は委任事務だというのですか。そんなことどこにも書いてないじゃないですか。言葉の上で公共事務は含まない、こういうふうな解釈である、それでいいですか。
  43. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 今申し上げましたように、この三号を自治法の問題として考えますと、十四条の第三項から、一般的基準設定というのは結局条例でございますから、そうしますと、行政事務についてしかそういうものはできない。公共事務については、この十四条三項は特に表現上も排除しておるわけであります。
  44. 北山愛郎

    北山委員 それじゃ大体まとめておきたいと思うのですが、そうすると、鈴木さんのお話は、第十四条第三項によって都道府県市町村事務について条例で定める場合は、行政事務に限るという趣旨に、第十四条の第三項は特別にそう書いてある、行政事務と特に書いてあるから、その市町村事務に関して条例設定し得るのは行政事務に限るのだ、こういうふうに十四条を読むがために、たとい今度の改正によって市町村事務処理に関する一般的基準設定ということが、都道府県事務とされた場合においても、それは条例でそういう取りきめをすることはできない、こういうふうな解釈でいいですか。
  45. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 ですから、この一般的基準設定は、今お話のように第十四条第三項に根拠を持ちます場合と、あとはそれぞれの特別法の中で、こういう一般的基準設定を特に府県に認めておりますものがあれば、それが入るということであります。
  46. 北山愛郎

    北山委員 しかしそれは法令で明確に条例で定めることができるというふうに授権をされなければならぬと思うのであります。そうでなければ、やはり先ほど申し上げたように、第十四条の第一項で法令に違反しない限り——もちろん法令に違反してはなりません。ですから法令に違反しない限りにおいては、何でもかんでもできるというふうに解されるのであって、ただほかの法令で個々の事務について都道府県条例でそういうことができるのだ、こういうことを特に規定しない限りにおいては、この市町村事務についての条例を作るということは、原則としては行政事務に限るのだ、こういうふうな趣旨に解してよろしゅうございますか。
  47. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 その通りでございます。
  48. 北山愛郎

    北山委員 まあ幾らか安心したようでありますが、それでも心配は、違ったところははっきりいたしません。それはこの第二条の改正の全体を通じまして、その他の点については非常に不明瞭であるが、不明瞭であるだけに安心ができるのです。ところがこの第五項第三号の特に市町村事務処理に関する一般的基準設定ということを都道府県ができる、こういうことは、新機軸であると私は思うのですよ。だからその点を非常に気にするので、それでお伺いして時間をとったわけですが、実は多少疑点が残っておりますので、問題はこういう規定をたてにとって、今後府県が何でもかんでも市町村事務は一般的に基準府県としてはできるのだというふうに解釈をして、そうしてどんどん市町村事務規制するということに乱用されると、今までの府県市町村の独立の関係、それぞれの持ち分を持ってやるという関係が乱れてしまう。そうしてこれは自治庁がねらうところの身分関係が、はっきりとそこに設定をされてしまうという重大な危険を冒すことでありますから、この点はよく慎重にやっていただきたいと私は思うわけであります。  それからその次に、これはこの前の二十二国会でもお伺いしましたが、例の府県市町村の国の監督です。二百四十六条の二から三ヵ条ばかり相当重大な規定が入っておるわけです。内閣総理大臣または都道府県知事は、「普通地方公共団体事務処理又はその長の事務の管理及び執行が法令規定に違反していると認めるとき、又は確保すべき収入を不当に確保せず、不当に経費を支出し、若しくは不当に財産を処分する等著しく事務の適正な執行を欠き、且つ、明らかに公益を害しているものがあると認めるときは、当該普通地方公共団体又はその長に対し、その事務処理又は管理及び執行について違反の是正又は改善のため必要な措置を講ずべきことを求めることができる。」というような重大な干渉の規定が加わっておるわけであります。これは地方自治法の従来の原則根本的にくつがえすといってもいいほどの重要な規定と思うのであります。鈴木さんにお伺いするのですが、鈴木さんは、この前の国会でもお尋ねをしたのでありますが、やはり地方自治の本旨ということは、その地方のそれぞれの団体の自主性を侵害しない、できるだけこれを尊重するというところにあるのだ、従って指導やあるいは勧告、助言というような形はいいけれども、国が地方団体に干渉したり監督したりするということは、地方自治の本旨を害するのだというようなことを、鈴木さんもこれを自説としてお持ちであったかに私承わっておるのですが、どうしてこのような規定を入れたのであるか、こういう規定によって従来の地方自治の原則根本的に変更するということは、どういう趣旨から出たものであるか、こういう点について一つ明らかにしていただきたい。
  49. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 地方自治の本旨を尊重しなければならぬという点は御指摘の通りでございます。今回この二百四十六条の二において内閣総理大臣が、地方団体事務処理あるいはその長の事務処理が違法である場合、あるいは行うべきものを行なってないといったような、ここに列記してあります場合において、「違反の是正又は改善のため必要な措置を講ずべきことを求めることができる。」こういうふうに規定をいたしたいという趣旨は、決してこの地方自治の本旨に反するものとは私ども考えていないのであります。これが従来のように何々すべしといったようなそういう考え方ではございませんで、こ規定の建前といたしましては是正改善のための必要な措置を求めることができるということでございます。あくまでもそれに基いて自主的にその是正改善の措置をしてもらう、こういうことがこの基本でございます。しかもこれは要するに違法であるということを中心にした考え方でございまして、こういう程度のことは、たとえば英国等におきましても会計検査等の場合におきましては、はっきりと国の機関がこれを監査して、その結果賠償命令を出すというような強い権限まで与えておるようでございますが、結局はそういうふうにいたしますれば、地方自治の健全な伸展を期するゆえんであるわけでございまして、やはり自主的に是正改善の措置をしてもらうように求めるのでございますから、私どもはこれによって特に自治の本旨を害することはないのではないかというふうに考えておるのであります。
  50. 北山愛郎

    北山委員 それは外国の民主主義が相当浸透しておるところ、あるいは地方自治というものが実際の生きた生活の中に溶け込んでおるというところと、日本みたいなまだ憲法や法律等の、言葉の上においては相当徹底したものを持っておっても、それが実際の生活の中に、社会の中に生きておらないという場合とは、根本から違ってこなければならぬと思うのです。イギリスがどうだ、イギリスが小選挙区だから日本も小選挙区だといったような議論は私は間違いだと思う。私はそういう見地からもこの点について疑義があるのでありますが、特に明らかに法令規定に違反しておるような行為を、地方自治体がやった場合については、それは注意を与えるというようなことはあるいはいいかもしれませんけれども、この中には確保すべき収入を不当に確保せずとか、不当に確保しないのだが、正当に確保しないのだが、それぞれの団体の事情によって違うと思うので、あるいは事務の適正な執行を欠き、明らかにし公益を害しているというような、非常に抽象的なことを認めるときというように、内閣総理大臣や知事が一方的に認めれば、この是正を求められるというようなことは私は行き過ぎじゃないかと思うのです。法令に違反しているというような明らかな行為については、あるいはいいかもしれませんけれども、事務の執行が適正でないあるいは不当に金を使っている、あるいはその税金の徴収もどうも不熱心だというような具体的なケースごとに、それぞれの事情が相当違うというような問題については、団体が自主的にこれを是正するというようなことを求める方が——求めるというか、そういう団体の自主的なスタビリティといいますか、自己是正をするというような力に待つ方が、これこそ自治の本旨にかなうものであって、そういう建前のもとに今の地方自治の制度ができておると思うのです。それを外部から、あの団体はどうも税金の徴収に不熱心だ、不当に収入を徴収しない確保しない、あるいは事務の執行が適正でないとかというようなことでもって、総理大臣やあるいは知事がこれに是正の要求をするというようなことは不当な干渉ではないか、こう思うのですがどうですか。
  51. 小林與三次

    小林(與)政府委員 これは法令違反の場合は別で、それ以外の場合もわれわれといたしましてはだれの目から見ましても不都合である、こういう場合を特に限定したのでございまして、今おっしゃいました通り、こういう問題は自治体の自主的な判断にまかした方が一番望ましいのでございます。しかしながらまま事例を見ましても、たとえば山を勝手に売り払うにしても正当な価格ならいいけれども、きわめて安い値段で譲渡するというような事例も現にあります。(「国にはたくさんある」と呼ぶ者あり)それからこの前の委員会でもいろいろ議論になりましたが、退職金の条例のようなものでも、だれが見ても不都合なことをやっておる。そういうような場合に最小限度国が取り消したり、代理執行をやったり、これは私は当然行き過ぎだろうと思います。現在の自治体の建前は、そういう強権的な権限をやることは当然できない。しかしながらあまりひどい場合には一つ考え直せ、つまり最後は向うの自主的判断にまかしておるのでありまして、北山委員のおっしゃいました通り自主的に改正してくれることを望みますが、少くとも注意を喚起する、こういうことは許されていいんじゃないか、またその程度のことをやることが、かえって自治体の正しい運営というものを保障していく、それこそスタビリティを確保していくゆえんじゃないだろうか、こういうふうに存じておるわけでございます。
  52. 北山愛郎

    北山委員 どうも自治法とか地方行政に関する法律というのは、何か国のやることは何でもかでもよくて総理大臣なんていうのは神様で、知事というのはその神様の弟子ぐらいにして、そしてあとのものはみな悪者で目を離せない。ともすれば悪いことをする、どろぼうのように考える建前から規定が作られている。ただいまほかの委員からもヤジが入ったんですが、国の方だって、やはり同じような事態がたくさんある。だからむすこや娘の方から勧告しなければならぬような問題がたくさんあると思うのですよ。だからこういうふうな規定は私は独善的だと思う。少くとも私は現在の内閣総理大臣などというものはこういう勧告助言などをする資格なしと思うのです。これはみずから反省して、国の方にもいろいろ間違いはある。しかし国は国で何とかこれを国民の批判にこたえて忠実に直していく地方団体は間違いがある、その間違いはその団体が直していくという建前をとる方が実態に即している。現在の国の政治のやり方を見ても、私はこんな規定は少しひとりよがりではないか、こう思うのですが、その点について鈴木さんは自信がございますか。
  53. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 いろいろ御見解ではございますが、私どもといたしましては内閣総理大臣がただ一方的に勝手に認定をしてどうこうするということではございませんで、内閣総理大臣がこの問題を取り上げますまでの段階におきましては、現在の地方自治法の中にございます各種の監査の規定でございますとか、あるいは議会におきますいろいろの調査の問題でございますとか、いろいろの方法による内部的な監査、調査等が行われて、それでなおかつ問題が解決しない、しかもこの場合において関係事務を所管しております主務大臣が、何とかこの行政事務が伸びていくようにしなければ困る、こういうようなよくよくの場合におきまして、主務大臣から発動して総理大臣の措置を求めてくるわけでございまして、総理大臣がその主務大臣の請求を至当と思った場合において、初めて総理大臣からこういうような法令違反の事実があるが、これを一つ是正してもらいたいということを、自主的な措置を求めるわけでございますので、これは総理大臣に全く自由、自在の監督権を与えるというような趣旨のものでは全然ないもので、従って御心配のようなことは全くないものと考えておるのでございます。
  54. 中井徳次郎

    ○中井委員 今の問題ですが、今の次長の御答弁のようなことでありましたならば、私は現行法でも十分にやれるのではないかと思います。どうしてわざわざこういうふうな改正をなすったか、その点がどうも実は納得できません。どうでしょうか。
  55. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 これは理論は理論でいろいろ理屈はあると思うのでございますが、しかし現実の状況を見ておりますと、府県なりあるいは市町村の特定の団体の中におきましては、法律上執行すべき仕事も執行しない、そのために困るのは住民でございまして、かえってそういう状態を放置しておくことの結果として、住民の福祉が非常に阻害をされる、あるいは不当な経費の支出があって、そのために住民が将来不当な債務を負わねばならぬ、こういうようなことがあるわけでございます。それを是正するのには、現行地方自治法の中に、それぞれ監査委員の監査でございますとか、あるいは住民からの監査請求でございますとか、あるいは県議会、市町村議会における各種の調査等もあるわけでございますが、それにもかかわらず、なおそういう事実が相当多数あるわけでございまして、そういうような場合に、それをどうしてもそのまま放置しておきますることは、団体の自主的な処置のみにまかしておけない、やはりこれは一応注意を喚起して、自主的な是正措置を講じてもらった方がよろしいという場合が相当あるわけでございます。そういう場合に、これを発動をしよう、こういうわけでございまするから、私どもはこれはむしろ地方自治がほんとうに住民の福祉になるようにするために、むしろ必要な最後の保障になる規定ではないか、こういうように考えておるのであります。
  56. 中井徳次郎

    ○中井委員 私が今お尋ねしたのは、そういう事実はないとは言っておらぬのです。そういう事実があった場合に、今、現行法でどうしてやれぬか。自治庁が通達したり勧告を出したりすることはできます。ただ法的な効力はどうかということになりますと、多少問題はあると思いますが、しかし現在の日本の地方組織から見ますと、自治庁長官その他から文書が一本来れば、それは勧告であろうが何であろうが、非常な重要な政治的な意味を持っておる。これは政治の段階だと思います。そういうものにまで法令を改めることはどうであろうか。これは非常に慎重に深刻に一つ考えてもらいたいと思う。現在だってやれるし、やっておるだろうと思う。ただその場合に、あなた方が怠慢であっておやりになっておらぬのかもしれませんが、どうですか。その辺のところは、現行法ではやれないという解釈はどうしても出てこないのであります。
  57. 小林與三次

    小林(與)政府委員 現行法では、この規定に書いてあるようなことは、われわれはやれないと解しておるのでございます。
  58. 中井徳次郎

    ○中井委員 どうしてやれないのですか。私がお尋ねしているのは、そういうふうな法的な、総理大臣がどうだ、自治庁長官がどうだ、府県知事を通じてやる、あるいは府県に対してもそういうことをやるというような、法的なことをやるということは、自治の非常な侵害になる。しかし助言、勧告ということは、これはたとえば農林大臣が文書を出すことだって私はできると思うのです。ある府県における農林行政が非常にまずいということになれば、自分はこういう考えであるという文書を出す。そういう助言勧告はだれだってできます。道を通っておる第三者だって投書をすることができるわけです。それが自由主義なのです。それだのに、どうしてあなた方は故意にそういうものをやらずにおいて、私らに言わせれば一本裏から小じゅうと的に金で縛るとかなんとかいうことを、しばしばこれまでやっておられる。そういうことではなくて、もっと堂々と文書をお出しになって、あなたの方のやり方はどうであるか、一つ事情を知らしてくれ、われわれの判断ではこう思うが、どうであるかという文書を出すことは、何も自治の干渉にはなりません。それが法的な根拠を持つというこになると、私は非常な問題が起ってくると思う。こういう意味において、今の段階では地方自治体を育成するという考え方からいって、せいぜいその段階である。それさえもこれまではやらない。やれないという根拠はどうしてもわかりません。それを一つ知らしていただきたい。
  59. 小林與三次

    小林(與)政府委員 これはわれわれ地方に対しましては、やはり自治の建前から見て、法令上許された限度でこれは動くべきでありまして、許されない程度にまで事実上いろいろな形で、とやかく言うということは避けるべきではないか。それがいわゆる通牒行政とかいろいろな行政と言われるような問題もあるのでございまして、そこでわれわれといたしましては、特に自治体がやる問題に対しまして、自主的に判断した行動について、とやかく言うときには、そこにやはりきちんとした制度の建前のもとにおいてやるべきであろうと思うのでございます。それで現行法では御承知の通り、この組織及び運営の合理化に関する全般的な勧告、助言の規定は、これはございます。これは組織及び運営の全般的な問題として、われわれもやっておらないわけではないのでございます。しかしながら個別的な行為につきましては、具体的にああしろ、こうしろ、こうするななどと言うことは、むしろ控えるべきだという建前で、一貫して参っておるのでございます。各省はそれぞれ補助行政の上で補助金の条件とか、そういう意味でそれをやるということはあり得ると思うのでございますが、そういう点も逸脱してやるということは、むしろ避けなければならぬと思います。かりにあったとすれば、やめるべきもので、やはりやる以上は、きちんとした制度を前提にして動くように、筋道を立てて動くことが、正しい自治体というものと中央政府との関係をはっきりさせるゆえんではないか、こういうふうに存じておるのでございます。それは地方からいろいろ聞いてくれば、それについてわれわれ見解を述べることは、これはございます。
  60. 中井徳次郎

    ○中井委員 それでは私はこの問題を午後に譲ります。ちゃんと合理的な運営とか何とかいうものがあるのにもかかわらず、当然出すべきものを出しておらぬところがたくさんある。そして法律だけどんどん先行させる。実は私の近所にあるのです。隣の県ですが、奈良県の大柳生村の村長さんが非常に変っておりまして、額と鉄砲を掲げて、日の丸の旗を立てて、そして村長になるやいなや、消防団を解散して、今度は村会とけんかをして、村会を開かない。三月三十一日になったけれども、開かない。午後八時ごろになって急に開いて、すぐにまたけんかをしたというような村です。これは週刊朝日その他に出まして、全国的な問題になっておる。ところが県からも自治庁からも何の勧告助言をしない。そんなものは合理的な運営でも何でもない。当然やるべきものです。今の段階では十分そういうことをやる根拠がある。しかも現在まだそれもやっておらぬというのに、法律だけどんどん進んでいくということは、どうもよくわからないので、お尋ねしたわけであります。また午後からやることにいたします。
  61. 大矢省三

    大矢委員長 それでは午前中の会議はこの程度にいたしまして、午後は一時半から再開いたします。  それまで休憩いたします。     午後零時三十九分休憩      ————◇—————     午後三時三十五分開議
  62. 中井徳次郎

    ○中井委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  委員長が所用のためお見えになりませんので、理事の私が委員長の職務を行います。  地方自治法の一部を改正する法律案地方自治法の一部を改正する法律施行に伴う関係法律整理に関する法律案の両案を一括議題とし、質疑を継続いたします。質疑の通告があります。これを許します。北山愛郎君。
  63. 北山愛郎

    北山委員 先ほどの問題はあとへ回しまして、その前に、第九十二条の二に地方団体の議会の議員が、この団体に対して請負とかそのような関係になってはならないという規定がございます。これは地方団体の長についてもそういう規定があるわけでありますが、国会議員との場合の権衡はどうなんでしょうか。そのような点はどういうようにお考えですかお伺いしたい。
  64. 小林與三次

    小林(與)政府委員 これは国会議員と地方議会の議員とはだいぶ違いまして、と申しますのは、議会で扱う事案が相当違うのでございます。国会は御承知の通り根本的には法律をお作りになる。それから国の予算でありますが、地方では主として地方の予算、おまけにこの予算は直接的に団体みずからが執行する経費、そうしてさらに現在では重要な契約はみな議会の議決事項になっております。それでございますので、議会で扱う事務がきわめて直接的、具体的でございまして、執行事務をやっておるのと大差がない問題がきわめて多いのでございます。それでございますから国会と違った扱いをしてしかるべきものだと存ずるのでございます。
  65. 北山愛郎

    北山委員 今の問題は程度の差と言いますが、やはり国会議員についても性質からいえば同じようではないかと思います。しかも国の経費についても国の行政事務の執行についても、地方団体を通じてやる。必ずしも間接的な執行ばかりではなくて直接の執行が相当ある。直接の請負契約もあるわけなんです。しかも問題はむしろ地方団体より大きいのでありますが、特にこの地方団体の長なりあるいは地方議会の議員等についてだけ請負等の関係に入ることを制限しているということは、何か非常に片手落ちではないかという気がいたしますので、むしろそういうふうな請負関係といいますか、関係の業務なりあるいはそういう案件については、それに該当する関係議員はその議事に参加することはできないという方式でもって制限する方がむしろ妥当ではないと考えますが、どうしてそういう方法によらぬのですか。
  66. 小林與三次

    小林(與)政府委員 国会とは程度の相違といえば程度の相違でありますが、その程度が離れているというふうにわれわれ考えておりまして、地方議会の議案は、先ほど申しました通りきわめて直接的なものであります。おまけに今申しました通り契約でも議会の議決事項でありまして、いわば決定権が議会にあるというような問題もありまして、ほとんど執行行為に準ずるような仕事は、重要な問題についてはみな議会の議で行われております。そこで間々いろいろ問題もあり議論もあり得るのでありまして、議会活動の巧妙を期すためにも、また御本人のその正大な働きを保証するためにも、この方が適当であると考えるのでございます。今の議案が議会にかかっておるときに参与しない、除斥の問題でございますが、除斥の問題はもちろん現在でも直接的な事件になれば除斥の規定が働くのでございますけれども、それだけでは実際の実情を見ますと十分な成果を上げていないのでございまして、そういう現実の実情も基礎にいたしまして、この制度をとることにいたしたのでございます。
  67. 北山愛郎

    北山委員 地方団体が契約を結ぶ場合には議会に関係があるといわれますが、やはり一々議会の議を経るのでなくして、これは枝葉な契約だと思うのです。日常の業務の執行については国と大した性質の相違はないのじゃないか、こういうわけで、このような規定趣旨はよくわかるのですけれども、規定が行き過ぎのような感じがするわけです。請負といっても簡単な請負もあるわけですから、その請負の決定に議員が参画をしないというようなことであれば差しつかえがないのじゃないか。むしろ問題は国の方によけいあるのであって、個々の契約の締結以外に、一つ法律を作るということ自体が、もうすでに一定の業者等に利益を与えるという直接の関係がある。その法案そのものに関連がある。それも一向平気で、国会の場合においてはそういう弊害が相当指摘されながらもそういうふうな措置をしておらない。こういうことから比べますと、地方議員に対しては非常に厳格な取扱いをしようというわけでありまして、いささか権衡を失するような感じがするわけであります。  それから次に、きのうでしたかお話がありましたが、常任委員会の数を人口段階によってかげんするということです。これは百九条です。それから百二条の初めのなるべく議会の定例会を開かないようにする。それと、この常任委員会の数をなるべく減らそうとするような趣旨、これは地方議会というものが活動しないように抑制しようという考え方の現われではないか。むしろ議会というものがもっともっと活発に活動する方が、自治の本旨というものを伸ばす上において好ましいのじゃないか。もちろん行き過ぎはある、間違いもある。しかしやはりそこに民主的な政治というものが発展していくという大きなプラスがあるわけでありますが、これでいくと、何だか議会というものは一応置いておくけれども、できるだけ活動しないようにしろ、こういうように足を引っぱり、そして活動範囲を狭くする方向に一生懸命この規定を置こうとしておるように見える。これでいいものかどうか。なぜこういうふうな方向へ行かなければならぬか、これを明らかにしていただきたい。
  68. 小林與三次

    小林(與)政府委員 われわれは議会の働きを制限しようとか、足を引っぱる、そういう気持は全然ありません。あくまでも議会というものが議会本来の機能を最も適切に合理的に発揮することを期待しております。またそういう趣旨法律制定にも当っておるわけであります。  それでまず第一番に百二条の定例会の問題でございますが、これは御承知の通り、現在は毎年四回招集しなくちゃならぬということになっております。すべての都道府県から一切の市町村を通じてこういう規定になっておるのでございますが、議会の活動は、団体の大小により、仕事の規模によりまして、それぞれの団体において実情が違うのでありまして、必要があればもちろん開かなくちゃいかぬ。しかし必要がないのに何回といって釘づけにする必要は実はないのでございます。それで四回以内で、条例でそれぞれの団体の実情に合うような回数を定例会として、あと必要に応じて臨時会を開く、こういう趣旨にいたしまして、団体の実体に合うように議会が自主的にきめる建前をとったわけでございます。  それからもう一つ常任委員会の問題でございますが、常任委員会の問題も数は一応制限いたしましたが、地方の会議は御承知の通り議員数の多いところもありますが、少いところもございます。議会というものはできるだけ全体として総合的に運営することが望ましいのでございまして、本会議中心と申しますか、全員が市町村の全体の問題について論議をして事を運ぶということが本来の議会活動だろうと思うのでございます。しかしながら実際は事務の繁閑その他によりまして、それでは動きのつかぬところもだんだん大きくなればなるほどあるわけでございまして、そういうときに常任委員会を作って専門的に審議をするという建前だろうと思います。それでございますから、常任委員会というものもそうした議会活動の本来の活動をできるだけやるのに必要な範囲内で作るべきでありまして、数が多ければ多いほどいいものではない。できるだけまとまって審議をしていくという建前を作るのが、これが基本の考え方であるべきだろうと思うのであります。そういう意味で議会の規模とか、団体の規模というものをおおむね頭に入れまして常任委員会も作って、そして合理的な議会の運営をはかりたいという趣旨にほかならないのでございまして、議会そのものの実質的な活動というものは、当然本来の使命に従って活発に積極的に行わるべきものであることは申すまでもないことと存じております。
  69. 北山愛郎

    北山委員 大体の御意見はわかるのですけれども、ただこの規定を見ますと、東京都にあっては十二以内、それから北海道及び人口二百五十万以上の府県並びに人口百万以上の市は八つ以内、人口百万以上二百五十万未満の府県及び人口三十万以上百万未満の市は六つ以内というように、人口に比例して、六つとか、八つとか、十二とかいうように一定数で段階をつけなければならぬという、その理論的な根拠は、一体どこにあるのか私にはわからないのです。やはり百万なら百万以上の大きさの市なり、道府県というものは、行政の質的には同じような程度の仕事をする。従って常任委員会というものは仕事によって分けるのであって、区域によって分けるのではないでしょうから、仕事によって分けるとするならば、片方は六つであり、片方は八つであるということは、何もそこに理論的な基準がないのではないか、ただこれは腰だめに作ったものではないかと思いますが、何か根拠があるのですか。東京の場合は十二というのは何を考えているのか、あるいは六つとは何を考えているのか、何か根拠がありますか。
  70. 小林與三次

    小林(與)政府委員 これは人口段階別にいたしましたのは、大体人口段階によって団体の規模もきまる。それによってまたおのずから仕事の規模もきまる。そういうことも前提になりましょうし、関連もありまして、議員の定数というものも人口段階できめているわけでございます。都道府県の部制も人口を基準にして大づかみにきめているわけでございまして、今度の常任委員会の数は都道府県の部の数、現行法もそうなっておりますが、いわばそれに右へならえをして数を一応きめたわけでございます。市の場合は現在そういう基準がございませんが、府県がきまったのに対応して、均衡がとれるように市の方も割り当てたのでございます。それでございますから、大体議員定数におのずからバランスがとれて、市と府県の均衡もとっております。ただ東京都は役所の局部の数よりも多くなっておりますが、これは東京都は御承知の通り自治法で書いてある行政部門の部局のほかに、膨大な公営企業の組織がありますので、その点を頭に入れまして、この数にいたすことにいたしたのでございます。
  71. 北山愛郎

    北山委員 しかしこの次のたとえば「議員は、それぞれ一箇の常任委員」というふうに必ずしも定める必要はないのじゃないでしょうか。原則としては一箇だ、しかしある場合には重なる場合もあるということは、これは認めておいてもいいのじゃないかと思う。しかも片方の常任委員会の数も、六つ以内とか八つ以内とかいって必ずしも固定しておらないわけです。従ってその委員会の数と、議員の定数とそれぞれの団体によって多少の違いがあると思うので、一つのものさしで、どこの団体も同じだというわけじゃないでしょう。だからやはり一箇の常任委員と限っていくというのは、大体一つ原則とする、しかし例外も認めるというような幅を見て規定する方がいいのじゃないか。こういうふうな規定でいきますと、何もかにも組織、運営、議会の内容について法律でこまかい点まできめてしまうことになるので、私は非常に好ましくないと思うのです。  それからまたその次の第百九条の最後の点ですが、「常任委員会は、議会の議決により特に付議された事件については、閉会中も、なお、これを審査することができる。」とあったのを、「特定の事件」というようなことにしてしまった。これなどもどういう意味であるか、一つお伺いしておきたい。
  72. 小林與三次

    小林(與)政府委員 常任委員会の数を幾つにするかということは一つの問題であろうと思いますが、やはり常任委員会を作るとなれば、きのうもその話が出ておりましたが、三人とか四人で委員会が作られるわけでなし、ある程度の数というものがあって初めて常任員会としての十分な機能が果せるわけでございます。それでおのずから議員数との関連もあるのでございまして、議員数が少ければ、二十人やそこらならば、ほんとうは任委員会は作らずに、二十人全体で議案を討議していくのが、むしろ望ましい事態だと私は思うのでございます。ただ特定の問題があれば、ほんとうはそれぞれ特別委員会を作って、特別の必要に応じて審議をせられた方が筋だと思うのでございます。それで常任委員会といたしましても、基本的な制度としては一応の数の限度というものがあってしかるべきじゃないか。あとは特別委員会でそれぞれ補いをつけていけばいいだろうと思うのでございます。それ式に常任委員会を作る以上は、それぞれ議員も責任を明らかにして、それぞれ一箇に所属して、そうして専門的な討議を進め、または必要があれば委員外として十分な発言ももちろんできるわけでございますから、それぞれ内部で責任を分担する以上は、こういう形にする建前が正しいだろうと存ずるのでございます。  それから百九条の一番末項の継続審査の規定でございますが、これは「特に付議された事件」というのを「付議された特定の事件」と、字句はきわめて小さい表現の相違になっておるのでありますが、もともと継続委員会の制度は、議会というものの会期制の建前から申しましても、いわゆる会期不継続と申しますか、そういう原則から申しましても、会期の中間において継続審査をするのは、議会が特にまかせた特定の事件に限るのが本来の趣旨だろうと思うのであります。現行法におきましても、「特に付議された事件」と書いてありまして、特別に付議された事件というのが本来の趣旨だろうと思うのでございますが、実際に従来の行われ方を見ますと、付議された特定の事件でなしに、一般的な案件でも、一般的、包括的に付議が行われている実情がございますので、そこでこの継続委員会の本来の趣旨、精神というものを明確にして、そうして議会活動というものに節度を与える、こういうことにいたしたのでございます。
  73. 北山愛郎

    北山委員 どうも私は今申し上げたようないろいろな例を見ても、議会の活動を一つのワクの中へはめ込んで、できたら議会がそう動かないようにしよう、黙ってあまり会議を開催しない方が好ましいという方向へ進めていくのがこのねらいじゃないかという気がするわけです。議会の閉会中におきましても、これは特定の事件についてだけやり得るというようなことでなくて、やはりどんな問題が起きてくるかわからぬのですから、その際、国会の場合でもそうでございますが、閉会中に起きたことについてこれをさっそく取り上げる。もちろん執行機関が取り上げれば問題がないのでございますけれども、やはり議会がこれを取り上げて、そうしてその解決をすみやかにやるというような、国会の国政調査等の機能というものを私は大きく買っていいのじゃないか。この問題はやはり地方議会でも同様だと思うのです。従って私は今いろいろお伺いしたような、機構なり地方議会の運営等についてワクをはめていくという考え方には、どうも賛成できない。  次に、その他いろいろ同様な規定がありますが、行政委員会については一体自治庁はどういうお考えですか。この中でも、行政委員会というものの自由な活動を抑制し、そうして地方公共団体の長のもとに行政委員会を置かせていく、むしろ知事や市町村長を補助するような機関あるいは諮問機関的な機能しかないような形に持っていこうとしておるように思うのですが、一体行政委員会について自治庁としてはどのように考えているのであるか、これをお伺いしたい。
  74. 小林與三次

    小林(與)政府委員 行政委員会全般についても、一般的な考え方はもちろんあるのでございまして、これは地方制度調査会の答申にもあります通り、われわれはわれわれだけの考え方を申し上げますれば、行政委員会は中立的、準司法的と申しますか、そういう事務を扱うものを中心に考えるべきであって、普通の行政事務は一般行政系統の仕事で総合的に扱うことが正しい、基本的にはそういう考え方を持っておるのでございます。しかしともかくも、たとえば選挙管理事務とか人事委員会の事務とか労働委員会の事務とか、中立的、準司法的な事務として扱うべき委員会がそれぞれあるのでございます。そこで、そうした行政委員会がございますが、今度の改正で具体的に取り上げましたのは、その行政委員会と知事、市町村長、その背後にある議会との関係の調整をどうはかるかという問題でございます。これはそれぞれの行政委員会としてその権限を独立的に行使すべきことは制度の建前上当然でございます。それぞれの固有仕事の執行については、すべて長の補助機関とか下部機関とかいう感じはもちろんないのでありまして、独立の執行権を自主的に行使すべきことは当然でございます。ただしかしながら、行政委員会は同じく地方公共団体の機関でございますから、地方公共団体一般に通ずる問題につきましては、やはり一般的に考えるべき問題があろうと思います。たとえば予算の執行の問題でございますが、予算の執行の基本的な権利は、それぞれ行政委員会にある場合におきましても、金繰りの関係とかその他いろいろな関係で、団体の会計経理全般の調整に服してもらわなくちゃならぬことが当然にあり得るのでございます。そういうような場合に、財政運営の最高責任者である長において、何らかある程度の調整権を持つということは、これは当然考えられていいことだろうと思うのでございます。財産の利用の場合にもそうでございまして、財産でもそれぞれの委員会の所属になれば、委員会で好き勝手というだけではいかぬ場合がやはりあるのでありまして、財産は公共団体の財産として、それぞれ総合的に利用さるべき部面が当然あり得ると思うのでございます。そういう意味で、今度の改正に取り上げましたのは、予算の執行の部面と財産の管理の部面、もう一つ内部の組織の面で、委員会がそれぞれ内部で部を作ったり課を作ったりすることは自由になっております。自由になっておりますが、こういう部課のような内部組織というものは、やはり他の組織との間の均衡とかバランスというものは当然考えられてよいのでございまして、そういう意味で全体的なバランスというものを考えるために、長が総合的な責任をある程度果す、これも自分が決定権を持つようなことは行き過ぎでございます。行き過ぎでございますが、全体としての調整を持たせるようにしてよい。このことは現に国でも、たとえば予算の執行につきましては、国会であろうが最高裁判所であろうが、財政の経理につきましては、今日大蔵大臣が会計法などにおきましてそういう権限を持っております。財産につきましても、国有財産法でやはりそういう権限を全部持っておるのであります。こういう内部管理事務というものは、団体として総合的に運営をすることが適当だろうと思います。しかしながらそれぞれの行政権限は、これはあくまでも独立的に、自主的に、思うままに行使すべきものでありまして、その点の限界は明らかにいたしまして、今回の自治法規定を設けたのでございます。
  75. 北山愛郎

    北山委員 ただいま予算の執行だとか、財産の管理あるいは織組等についての今度の改正の必要性を述べられましたが、実際上今までの規定で運営してどの程度の支障があったのか。私は大体から見れば、地方公共団体行政委員会について大した支障はなかったのではないか、こういうような改正を特に必要とするような事態は起らない。それは法律になくても、それぞ連絡をとってやっておるわけです。予算の編成についても、これは団体の長の方でやはり権限があるのでありますから、決して勝手に行政委員会が動くわけにはいかないのです。だから規定があろうがなかろうが、十分連絡をとってやっているのであって、その他の場合でも同じだと思うのです。今までの実績がこういう改正をどのように必要としておるか、これが私非常に疑問に思っておるのですが、何かこういう改正をしなければならぬという特別な事情が実際にどの程度にあったかということを伺います。
  76. 小林與三次

    小林(與)政府委員 これはごもっともでございまして、すべてがそういうえらい問題を起しておるわけではもちろんございません。しかしながら、たとえばこの部の問題にいたしましても、お配りいたしましたこの法律案関係資料で、五十何ページかに一応県庁の部局の数だけの表をお配りしてございます。それで県庁のいわゆる内部、普通の執行部局の数と、それから各行政委員会にそれぞれ部があったり、課の数は出しておりませんから比較になりませんが、部の数だけをごらんになりましても、ほかの部がある程度合理化しようというような場合に、やはりそれぞれの行政委員会の内部部局だって、バランスをできるだけとることが当然でございまして、これはそれぞれの部の職務の分量とか中身などによって部局ができるわけでございますから、これはたとえば公安委員会であろうが、その他の各部であろうが、そう性質上違うはずのものでもないと思います。課の数になれば、もっといろいろあるのでございますが、そういうものを総合的に、ある程度長といたしましても発言権を持つようにすることは、これは全体の機構を合理化しようとするためには適当な配慮だろうと思うのでございます。  それから予算の問題につきましても、実は間々事例があるのでございまして、予算が割当配付されますと、全体の金繰りその他も考えずに、一度に金を使ってしまったり、そしてあとからまた足らなくなったからといって、しりを持って来るというふうな事例は決してないわけじゃないのでございまして、この点につきましては執行部局、知事、市町村長の方からも、そういう意味権限の必要性というものが、われわれのところにもよく要望もあったのでございます。  財産の問題につきましても、もちろん現に使っておる公用財産は、それは当然行政目的に使わなければなりませんが、その仕事がやめになって、ほかに転用、活用できるような場合にも、いわゆる所管になりますと、そこはおのずからセクショナリズムが働くのもやむを得ぬかもしれませんが、かかえ込んで放さないということも現にあるのでございまして、学校の校舎がかりに余っても、それはいろいろな形で総合的に管理案を考える、警察の庁舎を考えましても、公安委員会だけでなしに、県全体、市町村全体の立場から総合的な活用を適当に考えるように、制度の大筋を立てていくのが、現に必要な事例もあります。また制度の建前といたしましても、そうすることによって全体の合理的な調整をはかることができるということで国の制度をも参酌いたしまして、そして知事、市町村長と各行政委員会との間における円満な調整、総合的な運用というものを確保しよう、こういうのが今度の改正趣旨でございます。
  77. 北山愛郎

    北山委員 一、二の例でもって、まずいことがあるから制度を直さなければいかぬということは、どうも私どもは受け取れない。確かにそれは多少ともあるでしょう。あるでしょうが、能率ということと、もう一つこのような執行機関についての分権といいますか、行政委員会を作るというようなことは、それ自体にやっぱり意味があるのです。なるほど能率だけから考えれば、一人の人が何でもかんでもやる方が、いわゆる総合的な行政であって、ぽんぽんやれるかもしれない。しかしちょうど戦争前の日本の国みたいに、要するに中央集権がどんどん進んでいって、そして何でもかんでも中央でどんどん能率的にきわめていくということが結果的に見れば必ずしも能率的でなかったということは、やはりそこにいろいろな実例があると思うんです。また民主主義が、結局においては長期的に見れば能率的だという理由がそこにあると思う。そのときそのときで見れば、何だ、たくさんの人の意見を聞いたり、たくさんの機関を要したりして非能率ではないか、こういう意見も出るでしょうが、そういう制度を長く続けていくことによって得られる大きな利益というものを見て、そういう考え方から地方の行政委員会等が置かれておると思うんです。ところがどうも今まで自治庁がとってきておるコース、それから言葉の片りん等を考えてみると、行政委員会否定の考え方があるのじゃないか、鈴木次長なんかはそういう考え方をお持ちではないかと思うんですが、将来行政委員会を廃止するというお考えを鈴木さんは持っておるのじゃないでしょうか。
  78. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 行政委員会につきましては、北山先生も御承知のように、いろいろその利害得失について従来から論議がありますことは、私どもも承知いたしておるのでありますし、またアメリカあたりでは行政委員会をむしろ減らしていこうといったような考え方もあるようでございますが、私どもまだそれらの点については結論を出していないのであります。やはり行政委員会を特に設けて、特定の部門の行政事務については、レイマン・コントロールと申しますか、そういう人たちが直接にその仕事の責任者になってこれをやっていくという方がより民主的にやれる、また地方の実際に即したやり方ができる、こういう考え方は確かにあろうと思うのでございまして、私どもはやはりそういう考え方を今日否定しようというような気持は全然ございません。ただ、先ほど来申し上げまするように、内部管理事務と申しますか、組織でございますとか予算でございますとか、あるいは財産の管理でございますとか、そういうようなものにつきましては、行政学的に見ましてもいろいろと合理的に運営をしていかなければならない点が多々あるわけでございます。それらの処理について行政委員会ごとにそれぞれ独立の立場から財産の管理が行われ、予算の執行が行われあるいは組織の運営が行われるというようなことになりますと、なるほど一面の長所はあろうかと思いますけれども、同じ自治体の組織でありながら、非常にアンバランスな組織の膨張が一方にあり、一方は非常に小さい。あるいは予算の執行につきましても、責任者が異なるがゆえに非常に違った格好になるということはどうも好ましくないと考えまするので、そういう内部管理的な事務に関しましては、やはり予算全体と申しますか、財政統轄の責任にあります地方団体の長と、行政委員会との間に、ある程度の関連をつけた方がいいのではないか、こういうふうに考えて、先ほど来行政部長から御説明申しましたような事項の改正を考えたわけでございます。しかし、常任委員会それ自体が行いますところの本来の教育なり公安なりそれぞれの業務につきましては、これはもちろんそれぞれの行政委員会としての責任において処理するわけでございまして、それらの点についてまで何らかの調整をしようというような考え方は全然とっていないわけでございます。
  79. 北山愛郎

    北山委員 私もこの行政委員会については、今申し上げたような日本の地方政治における民主主義をよく浸透させる上において、もっともっと続けていきたい制度だと思うのです。能率ということを考えればずいぶんむだがあるように思われますが、しかし日本の国で、もし能率だけを問題にするならば、非能率な総理大臣などは一日としてこれは許しておけない。ですが、とにかくそれを民心の批判によって、民主的な方法によって国会に反映させ、そうして政権の移動をしていくということが、民主主義のいいところだからこそ、いろいろな批判があってもこれは存在しているのだと思うのです。ソビエトにおいては、スターリンみたいな能力としては非常にすぐれた独裁政治家もあって、一時は神のように信仰されたのですが、現在ではやはり批判されて、民衆の中から力を生み出していく、やはり民衆が最後には偉いのだということで、民衆の中から、世論の中から、そしてまたそういう人たちを政治に参画させることによって、徐々に、長い間に政治を直していくというところが、この制度のいろいろな形に現われた民主主義だと思うのです。従って、この自治法の中におきましても、行政委員会のような制度は、能率という点において、あるいは経費という点において多少議論があるかもしれない。しかし、これは尊重していくべきである、こういうふうに考えるわけでありまして、この改正はいろいろな点でそこに触れる部分がある。行政委員会の機能を抑制するような点が多々感ぜられますのは、まことに遺憾だと私は思うのです。特に選挙管理委員会にしても、今度の小選挙区制で相当仕事が複雑になってくるではないかというふうに考えられるわけであります。もしもあの法案が通りますと、一つの市において幾つかの選挙区を持つので、それを一つの管理委員会でやらなければならぬ。こういうことについて自治庁はどういうふうにお考えになりますか。
  80. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 今回の小選挙区制の案がもしも実施になりました場合には、同一市内に数個の選挙区ができることは御指摘の通りでございます。今日におきましても、同一市内に選挙区を設けて議員の選挙を行うということがあるわけでありまして、数個の別個の選挙を同一自治体の中で行うということについて、すでに選挙管理委員会といたしましては経験済みでございます。ことに都道府県の選挙管理委員会になりますれば、もうこれは常にそういうような状況であるわけであります。ああいうふうに分れることになりましても、選挙管理委員会の事務の執行につきまして、若干複雑にはなるかもしれませんが、十分やっていけるものとえ考ております。
  81. 北山愛郎

    北山委員 先ほどいろいろな例を申し上げて、内容的に私の気持では率直に申し上げたつもりでございますが、総理大臣を例として申し上げたことは適当でないと思いますので、その部分は取り消していただきます。  次に進みます。今の選挙管理委員会ですが、選挙法ともちょっと関連をいたしますが、一つの町で三つの投票区を設けるというような場合が出てくるわけですね。そうすると、四人の選挙管理委員がそういうふうな三つの投票区を同時に管理しなければならぬというような非常に重要な仕事が出てくるではないでしょうか。
  82. 小林與三次

    小林(與)政府委員 選挙管理委員会の下に投票区が三つも四つもあるということは現在でもその通りでございます。今度の選挙区の改正とは全然関係がない。投票区には御承知の通り投票管理者というのがおりまして個々の投票の管理をやっております。選挙管理委員会は全般的に選挙の管理事務をやっておりますから支障がないと思います。
  83. 北山愛郎

    北山委員 今までも投票区はたくさん置かれておるわけです。ただしかし、今度の場合には、選挙区を異にした投票区が一つの管理委員会の下で起り得るのです。その点が非常に違うのです。一つの市が三つなら三つの選挙区に分れている。管理委員会は一つである。従って、これは当然投票区を変えて、三つなら三つにしなければならぬのじゃないでしょうか。今までの投票区は選挙区としては一つの単位で、その中で投票区を幾つかに分けるという場合が通例だと思うのです。現在の投票区の規定もその場合だけを考えておるのじゃないかと思うのです。ところが今度の場合は選挙区を異にした投票区ということになる。これも当然なるのじゃなくて、現在の規定から言えば、選挙区を異にする場合、同じ選挙管理委員会の管理のもとでやる場合でも、その管理委員会が必要と認めなければ投票区を異にしなくてもいいのです。そういうことになっておるのですが、そういうことをお考えになって、こちらの自治法改正なりあるいは選挙法の改正を考えておるのであるか、それをお聞きしたい。
  84. 小林與三次

    小林(與)政府委員 一つの選挙管理委員会のもとに選挙区が数個あるということは、これも現在でもあるわけであります。たとえば都道府県をごらんになれば、衆議院の選挙区が幾つもあるわけであります。それから市町村の場合だって選挙区を設けることができるのでございまして、市町村の場合にも選挙区が幾つもあり得るわけでございます。そこで投票区は、これは申すまでもなく、一つの選挙区が選挙の単位でございますから、一選挙区の中で投票人が非常に多くて困る場合に、投票の便利のために設けるのですから、各選挙区ごとに投票区を設けることは当りまえな話で、現在でももちろんその通りやっておるわけでございます。それでございますから、その点は今回の選挙法の改正によって何の影響もない、こういうふうに存じております。
  85. 北山愛郎

    北山委員 選挙法の方へいってしまうのですが、関係がないことはないと思うのです。今度の選挙法改正のような選挙区割りをして、市町村単位でなく、一つの市を二つにも三つにも割るということを予想するならば、やはり投票区というものは、その場合には必ず別にするのだという規定が選挙法の中になければならぬと思う。その規定がないのじゃないでしょうか。だから今までの規定によれば、選挙法の第何条ですか、市町村の選挙管理委員会は必要があると認めるときは、市町村の区域を分けて数投票区を設けることができるというようにあるだけであって、一つの市が数選挙区にまたがるから当然に投票区を分けなければならぬということはないのです。従って極端な場合を言えば、選挙管理委員会が必要と認めなければ、たといその市が二つ、三つの選挙区にまたがっておっても、投票区をそれに合して分けないで、適当に分けてもいいわけです。それがどうも私はおかしいのじゃないか、こういうふうに考えるのです。
  86. 小林與三次

    小林(與)政府委員 御心配になる点はこれは全然ないのでありまして、投票区はもちろん市町村の区域による建前になっております。それで投票区という観念はそもそも選挙区単位の問題でありまして、選挙を執行する場合に個々の投票なり開票なりというものが選挙区全体にやれぬ場合に中をどう分けるか、こういう問題でございまして、だからその場合にかりに選挙区ごとに一つの投票区でも一向にかまいません。しかしながら一投票区では動きがつかぬ場合で、まさしくこの必要があると認めるときに数投票区を設けるのでございまして、今おっしゃいましたようなことは、実際全然心配がないと思うのでございます。数選挙区にまたがって一投票区を設けるなどということは考ええようがないのでございまして、選挙管理委員会はその選挙の筋に従って必要な投票区を設けることは当然だろうと思います。
  87. 北山愛郎

    北山委員 ここは選挙法のあれじゃないのですが、自治法との関連におきましては、やはりいずれの場合におきましても選挙管理委員会の仕事というものは相当複雑になると考えなければならぬ。単なる投票区の区域を分けたのじゃなくて、選挙区を異にする投票区を自分の管理地区内に市なら市の中に持つわけでありますから、全然別個な選挙区のわけです。だからそこに出る候補者も違う、いろいろ違うわけです。従って取扱いは別にしなければならぬ。単なる今までのような投票区であれば、ただ投票区の区画にとどまるのですが、選挙区を異にしておるのですから、普通の投票区の区域とはまた違うわけです。こういう仕事の上の繁雑さがあるのです。それを一つの選挙管理委員会がやるのですから、その事務の負担といいますか、いろいろなことを間違いなくやるにはいろいろなむずかしい事務上の負担がかかってくると思うのです。ところがそういうような負担をかけておきながら、この管理委員会の委員の手当を日当制にするというような改正をしておる。それでいいものかどうかということです。特に選挙管理委員会の委員というものは、管理委員会を開くときにはやはり全員出席しなければならぬというように書いてある。だから日当制にしますと、何おれは日当をもらわぬのだから出なくてもいいのだ、逆に言えばそういうことも前提にしているようにも考えられる。それでいいものかどうか。やはり出席その他、日当とかそういうことに限らず報酬なら報酬ということにしてやる、こういう方が正しいのではないか。一方においてはそのように選挙管理委員会の任務というもの、仕事というものを重くしておいて、一方においては日当制にしてしまうということは、どこに一体理屈があるか、それを伺いたいのです。
  88. 小林與三次

    小林(與)政府委員 問題は委員会の手当の問題に移ったようでございますから、それについてお答えいたします。これは選挙管理委員会も人事委員会も、その他公安委員会もいろいろありましょうが、われわれの考えによりますと、給与というものは、給与の本来の性質上職務に対する対価と申しますか、報酬でございまして、それで給与法の基本的な考え方は、国の給与制度もそうなっておるようでございますが、常勤の職員に対しては月給なり年俸なりそういう形でやっているし、非常勤の職員に対しましては勤務の実際に応ずるように給与というものはやる建前になっておるのでございます。国の給与制度はそういうことで規律されまして、国家のあらゆる非常勤の職員はみなそういうふうな処遇を受けているわけでございます。この点は給与の建前から考えまして当然のことでありまして、現在特別な規定はございませんが、現在の制度のもとにおいてもそう行われてしかるべき問題だろうと思うのでございます。われわれは今度の給与の規定は、国の給与制度と基本的な制度だけはやっぱり一致させるべきじゃないか、それでこの制度ともう一つの例の給与の種類を定める給与制度をとったのでありまして、あと具体的な給与の額の決定とかそういうものは、それぞれ団体の実情に応じてやってしかるべし、こういうのが給与の制度についての改正を加えようとしたゆえんであります。それぞれの委員会の重要性ということは、これは当然それぞれ法律で定まった重要な職分を持っておるわけでありまして、選挙管理委員会一人重し、人事委員会軽しということはありゃしないわけで、全部の委員会はひとしく重要な任務を帯びておるだろうと思うのであります。そういう職務の重要性の問題とこれは直接かかわりない問題だろう、私はこういうふうに考えておるのでございます。
  89. 北山愛郎

    北山委員 これはやっぱり関係があると思うのですよ。公安委員にしたところが、あるいは教育委員にしたところが、あるいは今の選挙管理委員にしたところが、それはただ一定のときに人が集まって会議をするというだけの仕事ではないのですよ。やはり教育委員会なら教育委員会でその職務に伴うところの、日常の、夜でも昼でもそれにつきまとってくる仕事があるわけなんです。自分会議で出ていく、そのときだけしか仕事をやらないのだ、そういうわけには参らない。日常の執行機関ですから、それに伴う日常の仕事があるのであって、それをただ出席をしたときだけの日当だけ、そのときだけ働いたという建前はおかしいのではないか。それはたとえば諮問機関等における審議会等の委員であるとかそういうのであれば、出席をしてその会議に臨んだというときだけに限ってもあるいはいいかもしれませんけれども、とにかく小さいながらも一応執行機関なんんであって、それに伴った日常の一つの任務がある。公安委員にしたところが、これは公安委員会の会議出席をしない場合でも、公安委員としての任務、仕事が常にのしかかっておるわけなんです。事件が起ればやはりその責任は負わなければならぬ、そういうふうな執行機関について特に日当にしておいて、議会の議員の方は報酬にしておくのはどうも筋が通らぬと私は思う。議員の方が大事で、委員の方は大したことはない、こういうふうな考え方がそこにあるんじゃないか、私はどうもそういうふうにしか思えないんですが、どうでしょう。
  90. 小林與三次

    小林(與)政府委員 これは執行機関であることは間違いないんでございますけれども、執行機関でありましてもその勤務の態様というものは、常勤もあれば非常勤もあり得るのでございまして、常勤の場合はもちろん常勤の状態を基礎にして給与を支払うべきである、非常勤の場合は非常勤の事態に即して支払うべきものでございます。もちろん中央におきましても、中央の選挙管理委員会というものがやはり御承知の通りでございます。これは参議院の選挙を中心にやっておるのでございますが、この選挙管理委員会でも、回数が多いか少いかという問題はもちろんありましょうが、こういう給与の体系をとっております。文化財保護委員会あたりだって非常勤のものにつきましては、やっぱり勤務の日数に応じてやるという建前になっておるのでございまして、そこは同じふうに考えていいんじゃないかと思います。ただ、今の選挙管理委員会でも、会議があるから出るだけが勤務かといえば、そういうことはないんでございまして、その管理委員会の職務として出張をしたり、何か特別の用務を帯びて仕事をやる場合は、もちろんこれは勤務と考えていいのでございまして、それぞれ勤務に応じて問題を考える、これが今の給与制度というものの基本的な建前でございます。この基本的な建前に従って給与制度というものを動かすのが筋の通った考え方だろうと存ずるのでございます。
  91. 北山愛郎

    北山委員 お話しの通りであると、給与については国と地方と同じにする。国がそうやっているんだから、そういうふうにするんだというような御答弁であり、しかも先ほど来伺った例の職務上一定の地位につけない、請負関係に立てないとか、そういうことについては国の場合とは違うというようで、ある場合には国の例に準じてやる、ある場合においては準じないということで一貫していないんじゃないかと思うんです。ですから地方議員についても、地方の執行機関の委員についても、それに対する責任というか、資格については、むしろ国よりもやかましいことをやっておいて、そしてこれは違うんだと言っておいて、給与については国がそうやっているんだから地方もそうやれというのはおかしいんじゃないですか。都合のいいときにだけ準用するというように見えて、私にはどうも納得がいかない。
  92. 小林與三次

    小林(與)政府委員 都合のいいときだけ利用しようというふうな気持は一向にございませんで、本来ああした方があらゆる実情から考えてふさわしいものは、なるべく国も地方も一様に考えた方がいいと思うのであります。あとはそれぞれの実情によって、実態が違うものは実態に即して当然これは考えてよいのでございます。
  93. 北山愛郎

    北山委員 今までの報酬を日当にしたということになれば結果としてどうでしょう。委員については、出るときだけ出ればいいんだ、会議なら会議に、そのときだけ出席すればよい。日当だけ捨てれば欠席してもいいんだというような気分が醸成されるんじゃないかと思うんです。従ってこういうふうなやり方は、やっぱり委員会というものの活動がもっとだらけてもいい、日当さえもらわないつもりなら、出なくてもいいんだという気分を醸成するような感じがするわけです。従って一貫して委員会というものの仕事を尊重していない。どんどん活発に活動して、その機能、勤務を果し得るというようなことを考えないで規定しているような気がするんです。それとも日当にすれば税金がかからぬようになるから、実質は得ではないかというような思いやりもあるのか、そこら辺をもう少ししっかりお答えを願いたい。
  94. 小林與三次

    小林(與)政府委員 日当にするか月俸にするかで税金には何の関係もございません。そういう特別な思いやりなどというものは考えるはずもございません。  それから日当で日割り計算、勤務日数に応じて支給するということをすると、一々出ていくのは金もらいに出ていくようで、金がほしくなければ出ていかぬとか、そういうお話が今出たのでありますが、私はそういう気持で公職に従事しておられる委員会の委員というものは、おそらく一人もおられないだろうと思うのでございます。各行政委員会の委員になられる人は、それぞれ相当識見の高い、人格高潔な方々で、たとえば人事委員会の委員にはそういう表現を使っておりますが、当然に自治というものの本来の精神、運営につきまして深い理解のある方がなっておられるのでございまして、何も手当目当てに仕事についておられるような方は一人もおられぬだろうと思うのでございます。その勤務に応じてそれ相当の手当を差し上げるのは当りまえだというだけでありまして、手当はほしくないから仕事をやめようというような方がもしおられるとするならば、これはむしろ委員をやめていただくのが筋でありまして、ほんとうにその職務のために専念していただくりっぱな方々ばかりだとわれわれは信じておるのでございます。
  95. 北山愛郎

    北山委員 よくそういうふうなお答えをいただくわけなんですが、もしそういうふうなりっぱな人たちだというならば、それ相当の扱いをした方がいいと思う。そういう人がなっておるのだとすればそうした方がいいのであって、特別に、従来の報酬をなぜ日当にする必要があるか。そこに私は先ほど申し上げたような気分を起させるのではないかと思うのです。そんな、日当でいやならやめよう、こういうわけにはいかぬのじゃないかと思うのです。どういう人が委員になっておるかは別といたしまして、公安委員なり教育委員なり選挙管理委員なり、そういうものになった人を、やはりそれ相当の扱いをするということが、制度として必要でないか。それをニコヨンに見ておるのだというふうに誤解をされてもしようがないのではないか、こう言うのです。そうだとすれば、何も今までの報酬を日当に切りかえる必要はなかったのではないか、こういう点を申し上げたので、私はどうも今の小林さんのお言葉ですけれども、それじゃ議論にならぬと思うのですがどうでしょう。
  96. 小林與三次

    小林(與)政府委員 私は、日割り勤務日数に応ずることによって、ニコヨンという言葉をお使いになりましたが、そういう言葉を使った扱いにするというふうな気持はさらさらございません、また現に先ほど申しました通り、国の中央選挙管理委員会の委員に対しましても、文化財保護委員会の委員に対しましても、原子力委員会の委員に対しましても、これは勤務日数に応じて手当を支給する建前になっておるのでございます。それで問題は、それぞれ地方におかれましてりっぱな方がなっておられますから、りっぱな方に出ていただくにふさわしいような報酬を差し上げることは当然の問題だろうと思うのでございます。それは、給与の額をどうきめるかという問題で、それぞれ実際に応じて支給されることと思います。しかしながら給与の建前だけは、給与というものの本質から考えて、筋を立てておくのが正当な考え方じゃないか、そういう考え方に出ておるのでございます。
  97. 中井徳次郎

    ○中井委員長代理 北山さん、あなたの御質疑はまだ続くと思いますが、きょうはだいぶん時間もたちましたし、大矢省三さんから質疑の申し出がありますので、あなたの御質問は後日に譲っていただきたいと思います。それでは大矢省三君。
  98. 大矢省三

    大矢委員長 簡単に一つ……。今度の地方自治法改正のねらいは、何といっても府県市町村の性格を明らかにすることである。従ってそれに基いて事務配分ということが、特に第二条に規定されておると思うのですが、私どもとして一番心配するのは、こういう性格のもとにおいてこれこれをなすべきだ、こういうことで特に「第五項第四号に掲げる事務については、その規模及び能力に応じて、これを処理することができる。」、規模と能力に応じてこれこれを処理することができるというが、一体その規模、能力を判断するのは、どこでやるのか、これは自治庁でやるのか、あるいは当事者において府県知事がこれこれの市町村にはこれだけの能力があるからこれをやるというのか、この判断を一体どこでするのですか。
  99. 小林與三次

    小林(與)政府委員 第二条の問題は、自治団体の運営の基本の建前を書いてあるのでございますから、それぞれの自治団体がこの条文の趣旨に従って自主的に判断し、自主的に運営する、こういう建前でございます。
  100. 大矢省三

    大矢委員長 そうすると、結局は双方合意の上で能力があると認め、また一方がそれをやらしてほしいというなら、一体県と市町村の間でどういう決定をするのですか。
  101. 小林與三次

    小林(與)政府委員 合意で決定をするという必要は必ずしもないのでございます。ただ問題は、特定の施設を例にとれば、特定の施設を県がやった方がいいか、市がやった方がいいかということの議論が起った場合には、それは両者円満に話し合いをして、また相互に競合しないようにしなくちゃならぬという趣旨に従いまして自主的に運営されることを期待しておるわけでございます。
  102. 大矢省三

    大矢委員長 結局規模と能力ということをどこが判定するのですか。それがはっきりしなければならぬ。今まではお互いに話がつかない場合には、自治庁の長官または総理大臣がこれに対して勧告なり、いろいろなすということが書いてあるが、今度は一つもない。幾らこういう規定で規模と能力に応じてこれを処理するということが出ていても、一方が——たとえば一番いい例は建築基準法の場合、ああいうものは当然十万以上の都市がやるべしといっても、県知事がそれを離さない場合はどうしてもやれない。幾ら法文に出ていてもそれが現実に実現できないようなことが方々にある、たとえばこれに関する委員会をこしらえて、その委員会で、能力がある、これこれはやらしてよかろうと判定し、また県の方もよかろうというならできるだろうが、ただ法律だけこしらえても、どこが判定するのか。一方がよろしいといわなければできぬのか、あるいは自治庁の方でそういうことを勧告してやらすのか、一つ規定がない。ただ能力に応じて処理することができるということだけが書いてある。結局これは空文にすぎないと思うのです。その点は、たとえば具体的に言いますと、第五項の四号に掲げる事務については、これこれは適当にやりたいということがたくさんある。やりたいということを一方が希望して、私の方は能力がありますといっても、能力があるかないかということを一体どこで判定するのか。現にやっている県の方では権限を縮小されるということによって、やらぬといえばおしまいです。これは非常にあいまいで、しかもどこが判定するものか、まとまらなかった場合にはそれをどうするのかという規定が、前にはあったが、今度の改正規定では一つもない、こういう点はどうですか。
  103. 小林與三次

    小林(與)政府委員 これは今大矢委員がおっしゃいました中にもありましたが、県が現に持っておる施設を市町村におろせという場合、ないしは市町村が持っておるやつを県に上げろという場合も、一つの問題としてあり得るとともに、新しい仕事をやる場合においでどっちがやるか、こういう問題と両方あり得ると思うのでございます。それで具体的にある団体が持っておる施設につきましては、かりにこの趣旨に従って相互に移譲した方がいいという場合には、これは施設移譲の問題で相互の話し合いによって、この条文の趣旨に従って話し合いをつけて移譲をお願いしたいと思うのでございます。移譲の話し合いがつかなければ事が動きませんが、円満な話し合いによって事を進める、それから新しくいろいろ仕事をする場合におきましては、この条文の趣旨に従って、府県府県としてのふさわしい仕事を考え、市町村市町村としてのふさわしい仕事を考えて、それぞれ自主的にやっていただきたい、こういうのがこの法律案趣旨でございます。個々の施設そのものを一々どこがやるかということを、自治庁に相談するとかなんとかいう趣旨じゃございませんので、府県市町村との一般的な事務基準として、これにのっとって、相互にむだな重複なり競合なりが生じないように、自主的にやってもらうという建前でございます。
  104. 大矢省三

    大矢委員長 そういうことになるとこう解釈していいですか。ここにたくさんあるのですが、たとえば保健医療施設、授産施設、養老施設、社会福祉施設、その他労働会館、それから運動場等の営造物の設置及び管理、文化財の保護及び管理というようなものが第五項第四号にちゃんと書いてある。これを新しくする場合には、自治庁の方でいろいろ能力があるかないかということでこれを認可するのか、また府県知事を通してやる場合も、お前のところは能力がないということで手続をしない場合もあると思いますが、結局このことがまとまらなかった場合における処置というもの、あるいはそれを拒否されたときのそれに対する何らの規定がない。これはできるものと予想してやっているから、そういうことはあまり感じなかったかもしれませんが、往往にして現にあるのですから、そこでこういうものを処理する能力があるかないか、新しく設ける場合、あるいはまた府県が持っているものを自主的に市町村でやる場合の処置については、一方的にきめずに、あるいは自治庁あるいはまた府県ということでなしに、何かそういうことの特別委員会でも、審議会でも設けて、そこに諮問して、それらの意見を十分考慮して、それによって行うか何かしなければ——当事者さらにまた自治庁だけの考え方でこれをやるというならば、せっかくこれらのことをやり得る、規模と能力に応じてやれるということがありながら、実際上やれなくなるような結果になるじゃないかと思うので、その点はそういう機関を設ける意思があるかどうか、伺いたい。
  105. 小林與三次

    小林(與)政府委員 この問題は種類によりまして二種類ございます。つまり法令事務配分がぴしっときまっているものは、これはそれぞれの法律、制度で考えなくちゃならぬと思います。そういう場合も、こういう自治法基本の精神に従って府県市町村事務配分を考えてもらうように、われわれ政府部内でそういう方向でものを考えております。それからそうでなしに、自主的に自治団体が自由にやれる仕事、それが主としてこの四号に書いてある仕事でございますが、その仕事につきましても、特定の団体が現に経営する施設を持っている場合と、それから新しくやる場合とありまして、持っている場合は、たれが考えても弱小な町村で、とてもさばきがつかぬようなものは県がやった方がいいというものもあります。特定の事務なら、むしろ委譲して、府県がさっぱりした方がいいというものがあろうと思います。そのときにはそれぞれその団体相互の間において施設移譲の協議が整わなくちゃいかぬのでありまして、その場合に、かりに両者の間にいろいろ紛議が起って争いが起った場合にどうするか。争いになるかならぬか——大ていの場合はならぬと思いますが、かりになった場合にどうするか、こういう問題だろうと思います。そういうときに、その間の問題が紛争になって、何かさばきをつけなければいかぬということになりますれば、御承知の通り、現在紛争調停委員という制度が自治法にもございますので、そういう場合にはこの紛争調停委員の制度を活用することによって調節もつけることができる、こういうふうに考えております。
  106. 大矢省三

    大矢委員長 それからいま一つ大都市の事務委譲の問題ですが、これは一部もしくは全部という言葉を使って、政令で定めるということが書いてあります。これは特にどういう内容のものをするのか。あるいは一部もしくは全部という言葉が使ってあるが、これは結局どの程度に委譲されるかということが、県側においても五大都市側においても非常な関心を持っている問題であります。そこでこういう法案を作るときには、すでに一部もしくは全部とあるのだが、大体これはこの程度ならいける、こういう点でなぜ一部という言葉を使ったか、これを立案する当時からわかっておられたか、その点で内容のこまかいところは政令できめるときに各省でお考えになるようであるけれども、大体の重要な問題では、府県で現にやっておるものを五大市に移すんだから、もっと篤単に言えば知事ということを市長と読みかえる、そういうことができるのかどうか、そうでなく十六項目の中には、文字通り一部もしくは全部だから一部しかやらないものもあるのだということで、こういう字句を使われたか、その一部とはどういうことか、そういうことを二つ伺いたいと思います。
  107. 小林與三次

    小林(與)政府委員 この問題の大体の考え方を申し上げますと、ここに書いてありますものにつきましても、全部やっていいというものもあります。われわれの気持は要するに大都市において市民と直結した行政で、大都市だけがほかの郡部と違って、独立してそこだけ縁を切って執行が十分にできる仕事、ほかの郡部とかかわりのないような独立してやれるような仕事は、これは原則として私はおろしたい、こういうふうに考えておるのでございます。原則としておるしますが、そうでなしに市部と郡部に橋がかかったような仕事とか、総合的に考えていかなければいかぬような仕事が多少ございまして、そういうものはやはり府県に残さなければなるまい、こういうふうに考えておるのであります。たとえばこの間も申しましたが、伝染病予防に関する事務というものを一つ例にとって考えますと、伝染病予防の実施上の事務でも、たとえば列車の検疫とか郊外電車の検疫というふうに大きく動くものの検疫の事務もあれば、そうでなしに伝染病が発生した場合においてその検疫をやったり、小さな交通の遮断をやったり、消毒をやったりするような事務もあるわけであります。あとに申しましたような事務は、市の保健所を使ってその場で始末して一向に差しつかえない仕事でございます。そういうものはもちろんおろしてやる。それから今の列車の検疫のような市町村にまたがるような仕事は、これは特殊な事務でありますが、そういうものはやはり府県に残しておくより仕方がないじゃないか、こういうふうに考えておるわけであります。  それからもう一つ考えられますのは、つまり全府県を通じて施設が一つあればいいじゃないか、一つ府県を通ずる行政を、市部の大半はやっておるかもしれぬが郡部にも仕事があってまかないがつく場合に、それをわざわざ二つ作って、市一つ、郡部一つやることは、これは二重投資にもなれば二重施設にもなりまして、そういうものはもとのままの一つでいいじゃないか、今申しましたようなそういうそれぞれの市部と郡部と分けきれないような特殊な事務につきましては、これは残しておかなければなるまいというのが大きな問題の考え方でございます。そこで個々の法律につきまして、もう少し具体的に各省ともはっきり話をさして、政令の段階で作りたい、そういうふうに存じております。それでありますから、ここにもあります行旅病人の仕事とか、寄生虫の仕事とか、あるいは墓地、埋葬の仕事とか、屋外広告物というような仕事は、ほとんどそれだけで関係のない仕事ばかりでありますから、そういうものは当然におろしていく、あとの仕事につきましても仕事の中身によってある程度そういう意味のふるい分けをせざるを得ない、するのが全体としての行政の合理的な運営のために適当じゃないか、こういうふうに考えておるわけでございます。
  108. 大矢省三

    大矢委員長 そういう説明をするから心配になるのです。一体伝染病予防のごときも、ちゃんと大都市に規定があり、そこで起きたところで、県の中の五大都市以外で起きたところで、そこで処理すればいいのです。その中にあるものをそこで処理するのは当然なんです。市の中で、今度移譲する項目の中で、自分のところで起きた問題を、これは違うからといって県に責任をかぶせる必要があるか。その現に起きた五大市の中の問題として非常に迷惑なのです。それなんかは両方にあったってちっとも差しつかえない。起きたところで処理する。それからきのうでしたか、いろいろ身体障害者の何とかいう法律があった。というのは、この五項の四号にはちゃんとそのことがあるのです。生活困窮者及び身体障害者の保護、罹災者の救護、これが今言う能力においてやれる、いわんや今度譲ろうとする五大市、大都市に対してこういうものがあるから、これは県の方が一つやれ、こういうものまでも向うに置こうとするから、結局名目だけであって、何の実質もないのではないかという心配をするのです。私はいろいろ具体的に心配しておるところを聞いたわけですが、たとえば建築行政を今度のこれでは譲ることになっておる。ところが建築行政のうちには、今度内政省のうちにできると称せられる建築の中の鉄骨鉄筋、いわゆる耐震耐火といいますか、そういう高層建築に対しては府県を単位とする、五大都市にはそれを建築行政として一般の民家だけだ、こういうことを言うのです。そういうことをまた建設省で主張しておる。せっかく建築事務をもらったって何にもならぬ。かえって両方の取締りを受けて、はなはなだ迷惑だということを言っておる。そういうことがないのかあるのか。これは私は例として単に建築行政だけを言ったんですが、ほかのこともこういうことで、県の方が従来の権限を渡さないと言っておる。結局は政令その他で実質はなくなるというような結果になりはせぬか。そういう具体的なことでそんなことはないかどうか、心配ないと言われるかどうか。
  109. 小林與三次

    小林(與)政府委員 今いろいろお尋ねがありましたが、われわれとしましてはそう御心配なさることはないと考えておるのでありますが、これはまだ政令全部まで各省と話をつけたわけではないので、これからの問題が相当ございます。今おっしゃいますたとえば伝染病の仕事でも、私の申しましたのはめつたにある事例ではありませんが、伝染病予防法にそういう伝染病が流行したり、流行のおそれある場合に、船舶や汽車の検疫を行う事務ということがあるわけであります。それは列車がすっと行く。列車検疫というのは国鉄とかそんなところが普通やるので、市も府県もめったにやらぬと私は思います。しかしそういう制度を現に知事がやることになっておるので、それを知事を市長と読みかえて事をやるかということになれば——列車検疫のようなものは一応知事にしておくよりしようがないのではないか。そうしなければ、市の中で起ったと思ったら、もう隣の県に行ってしまいます。建前としてはそういうものは府県に残しておくよりしようがあるまい。そうでない、それぞれ市内に伝染病が起って、普通の場合は隔離をしたり、そこの消毒をやったりする仕事が大半で、こんな仕事はもちろん市がやってしかるべし、こういうふうに考えておるのであります。  今最後に仰せられました建築基準行政の問題は、これはいろいろ意見があるようでございます。これは御承知の通りもう建築基準法でも協議が整えば市がやれる仕事でございまして、現に五大市でも、横浜とか神戸などはやっております。それ以外の川崎とかもっと小さな市でも、十幾つか、現にやっておる仕事でございまして、こういう仕事はもう五大市以下の小さな市でさえ現にやっておるわけでありますから、私は建前として、そういうものの均衡を考えてもおろすのが適当じゃないか。ただ非常に特異な事例があり得るかもしれません。異常な高さの制限を——今三十一メートルかあるやつをとても高い建物を作るか作らぬかという、そういう問題でもあれば、これはむしろ県全体の問題として考える必要がありはせぬか、こういうような事例もあり得るわけであります。そこらの点の基本的な考え方は、私どもといたしましてはそういうふうに現にほかの市との均衡も考えて、こういう問題は処理しなくちゃいけないというふうに考えて話も進めたい、そういうふうに存じております。
  110. 中井徳次郎

    ○中井委員長代理 質疑がなければ……。門司君。
  111. 門司亮

    ○門司委員 この法律を見てみると、監督の権限が非常に強くなっている。いわゆる総理大臣の権限を知事にまかせるというようなことで、中央の権限が強くなっている。そして逆に住民の意思決定をする議会の権能がある程度縮められておる。縮められておると言わなければ、複雑になっておる。たとえば議案の提出であるとか、あるいは修正の動議であるとかいうものが制限されている。たとえば八分の一でなければならぬ、いや何分の一だと、今まで規定がなかったものが規定されておる。だから、法律をこしらえたときの気持は一体どうなのか。中央の権限だけを強くして、地方の自治体の本来の姿である住民の意思決定の機関、すなわち住民が自分たちの行政に対して自分の意見を入れる機会というものがだんだん狭められてきている。そうして逆に監督の権限を強くしているというのが、この法律案の中に一貫して流れている考え方です。こういう考え方をどうしてしたか。これはどこでも読んでごらんなさい、ちゃんとそういうふうに書いてあるでしょう。委員会も制限している、あるいは議会を四回と書いてあったものを、四回以内にする、縮めてもいいという。それから議案の提出、修正というようなことも、何も書いてなかったのが、定数の八分の一以上の発議にするというように、ずっと制約をしてきている。そうして片方では、さっき言ったように、監督の権限が強くなっている。全く民主政治と逆な方向に出てきている。この考え方が那辺にあったか、どうしてこうしなければならなかったのか、もし鈴木君からでも答弁ができるならば、はっきりしておいて下さい。
  112. 中井徳次郎

    ○中井委員長代理 ちょっと速記をとめて。     〔速記中止〕
  113. 中井徳次郎

    ○中井委員長代理 速記を始めて下さい。
  114. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 根本の考え方の問題についてのお尋ねでございますが、この考え方の基本になっておりますのは、あくまでも戦後拡充強化されました地方自治——要するに民主主義の本旨にのっとりまして、地方自治をその基盤として育成強化する、こういう基本の考え方については、何ら変更を加えていないのであります。ただそういう見地に立ちまして、民主主義の基本的な基盤の上においてできるだけ合理性を、執行機関の面におきましても、議決機関の面におきましても発揮するようにしたい、制度上そういうことを考えていきたいというのが、たとえば議会の運営の方法につきましても、あるいは長と行政委員会との間におきましても、とりました今回の考え方でございます。  それからまた内閣総理大臣その他中央の機関が、何か非常に発言権を強くしたというような御印象であるという話でございますが、これも私どもといたしましては、先ほども御説明申し上げたのでございますが、たとえば二百四十六条の二というような、地方団体が違法な、不適正な、行うべきものを行わないというようなそういうことをやっておりました場合には、従来ならば——従来と申しますか、古い考えならば、これはいわゆる指揮監督権限によって取り消すとか、あるいは代執行するとかいう考え方が出てくるのだろうと思いますけれども、この案においては、そのような考え方に立たないで、違法または不適正の場合等におきましては、その是正改善を求める、こういうことでございまして、あくまでもこれは当該団体に自主的にその違法なるところを是正してもらう、こういうことを求めるだけでございます。そういうふうにやはり地方自治の本旨というようなものについて十分考慮を払いつつ、しかも団体の機関、執行機関なり議決機関の運営の仕方が悪いために住民の福祉が害される、伸びないというような場合に、最後の保障としてそれぞれの行政事務を見ております主務大臣からの請求に基いて、内閣総理大臣が是正の措置を求める、こういうことを入れたわけでございまして、私どもは決して最初申し上げました執行機関、議決機関の関係におきましても、中央と地方との関係におきましても、地方自治の基本を育成強化していくという根本の考え方においては変っていない。ただその基盤の上において、できるだけ合理性をそれぞれの関係において立てるようにしたい、制度上そういうことを定めるようにしたいというのが、私どもの考え方でございます。
  115. 中井徳次郎

    ○中井委員長代理 次会は明二十七日午前十時三十分より開会することにいたします。明日は参考人を招致いたしておりまするので、できるだけ定刻に御参集をお願いします。  本日はこれにて散会いたします。     午後五時七分散会