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1956-02-15 第24回国会 衆議院 地方行政委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年二月十五日(水曜日)    午後一時四十三分開議  出席委員    委員長 大矢 省三君    理事 亀山 孝一君 理事 永田 亮一君    理事 古井 喜實君 理事 吉田 重延君    理事 北山 愛郎君 理事 中井徳次郎君       青木  正君    唐澤 俊樹君       川崎末五郎君    木崎 茂男君       渡海元三郎君    徳田與吉郎君       灘尾 弘吉君    丹羽 兵助君       森   清君    山崎  巖君       山中 貞則君    加賀田 進君       川村 継義君    五島 虎雄君       坂本 泰良君    櫻井 奎夫君       西村 彰一君    門司  亮君  出席国務大臣         国 務 大 臣 大麻 唯男君         国 務 大 臣 太田 正孝君  出席政府委員         警察庁長官   石井 榮三君         警  視  長         (警察庁長官官         房長)     坂井 榮三君         警  視  正         (警察庁長官官         房会計課長)  後藤田正晴君         警  視  長         (警察庁警備部         長)      山口 喜雄君         総理府事務官         (自治庁行政部         長)      小林與三次君         総理府事務官         (自治庁財政部         長)      後藤  博君  委員外出席者         参  考  人         (警視総監)  江口見登留君         専  門  員 円地与四松君     ————————————— 二月十五日  委員山花秀雄君辞任につき、その補欠として門  司亮君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 二月十四日  奄美群島復興特別措置法の一部を改正する法律  案(内閣提出第四四号)  町村職員恩給組合法の一部を改正する法律案(  内閣提出第四七号)(予) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  奄美群島復興特別措置法の一部を改正する法律  案(内閣提出第四四号)  警察に関する件     —————————————
  2. 大矢省三

    大矢委員長 これより会議を開きます。  まず警察に関する件について調査を進めます。  なお本件について警視総監江口見登留君を参考人として御発言を願うことにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 大矢省三

    大矢委員長 御異議なければ、さよう決定いたします。  それでは順次発言を許しますが、政府側より、大麻国務大臣石井政府委員坂井政府委員山口政府委員後藤田政府委員、以上の方の御出席がありますから、さよう御了承願います。  それでは通告順によって発言を許します。中井君。
  4. 中井徳次郎

    中井委員 当委員会は、一週間ほど前から地方財政計画について審議を続けておるのです。従いまして、私のお尋ねいたしまするのは経費の面からでございますが、昨日自治庁当局にお尋ねいたしましたところが、警察職員につきましては、昭和三十一年度は減員をしないというふうな御答弁がありました。私ども考え方といたしましては、警察——一昨年あの乱闘の原因になりました警察法の大改正に際しまして、そのときの政府は大体三つの改正理由を述べました。一つ責任を明らかにすること、一つは能率的にすること、それから第三には統合することによって経費節約をはかるということ、これはたしか七十億であったと私ども記憶いたしております。その当時私どもは、統合しましても、果してその節約はできるかどうかということについて、大いに意見を持っておったのであります。実際やってみますると、統合してその年の秋にすぐ警察費が足りなくなって、特に補正予算か何かを組みまして、警察費を増額したという記憶があります。しかしその際にも、私どもはこの経費の節減のことはどうかというと、たしか七十億はやると言っておった。承わるというと、昭和三十年度においては多少の減員をやられたようでありまして、これが三十一年、三十二年と続くもののように私ども考えておりましたところが、三十一年度においては、これはやらないということであります。こういうことでありますると、政府の約束と実際はだいぶ違う、これは大へんな問題であると思いますので、なぜ減員をやめたか、その理由につきまして、大ざっぱでけっこうでございますから、ちょっと国務大臣からお答えをいただきたいと思います。
  5. 大麻唯男

    大麻国務大臣 ごもっともな御疑念と考えます。しかしながら、また時勢の変転に従いまして増員をしなければならない部面も出て参りまするし、交通事故も多くなるとかなんとかいうようなことで、どうしても増員しなくちゃならぬという場面が出てきましたので、差し引きしますると、どうも三十一年度は減員を見合せるほかはないという結果に陥った次第であります。もしこまかな数字が御必要であればまた申し上げます。
  6. 中井徳次郎

    中井委員 今の御答弁で、一応そういう事情が出てきたということでありますが、どうですか。現実に、たとえば交通関係が非常にひんぱんになって、交通事故がふえて参りました。このために特に警察官増員を必要とするというようなことは、二、三年前からわかっておったことのように私ども考える。それからもう一つ申し上げたいのは、今の全国警察定員配置でございます。この配置は、あの国警自警の区別を廃止した当時と、どのように変っているか。  それから今大麻さんからお答えがあったが、その具体的な数字等について、長官からちょっと伺っておきたいと思います。
  7. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 三十一年度に警察官整理をストップいたしました理由につきましては、先ほど大臣から御答弁のありましたように、一昨年の警察制度改正当時予測されなかった、その後の情勢変化と申しましょうか、そうしたことから増員を要する部面がかなりあるということからいたしまして、私ども事務当局といたしましては、関係方面に若干の増員の要求をして、折衝いたしておったのであります。かたがた整理計画もあることでありますので、増員と差し引きして、真に必要な増員は認め、整理すべきものは整理するという建前でいくのが筋が通っておるのじゃないか、こういう考え方をいたしておったのであります。とにかく恒久的な増員ということになりますると、いろいろ慎重に考慮を要する面もあるから、とりあえず三十一年度の整理をストップしておいて、その間に情勢の変換もあるでしょうし、恒久的な新定員をどうするかということは、さらに慎重に十分に検討すべきではなかろうか、こういう結論に到達いたしまして、三十一年度の整理を一応見合せる、こういうことに相なったのであります。  しからば、制度改正当時予想されなかった、その後の情勢変化により増員を必要とする理由はどういう点であるかという点であります。先ほど大臣の御答弁にもありましたように、交通事故が非常にふえた、これは制度改正当時もそういう傾向にあったことはわかっておったではないかとおっしゃるかもしれませんが、それにいたしましても、交通事故は非常に飛躍的に多くなっているということ、さらには覚醒剤取締りを強化する、これは制度改正後に起りました問題であります。さらにまた当時は一応犯罪発生傾向等もおおむね横ばい状況であったのであります。そうした状況をわれわれは計算の基礎として考えておったのであります。その後の実際の犯罪発生状況等を見ますると、漸次増加している、特に悪質凶悪犯が非常にふえている、こういう状況にあるのであります。さらにまた、講和発効外国とのいろいろな人の往来等もひんぱんになり、また在日外国公館等増設等も非常に多くなりまして、いわゆる外事警察態勢を整備しなければならぬ、こういつたような状況にも相なっておる。特に日ソ国交調整等も近く実現を見るというようなことになりますならば、こういう面についての必要な要員を確保しておかなければならぬ。あれこれいろいろ増員を必要とする理由考えられましたので、先ほど申しました通り、私ども事務当局といたしましては、整理整理として計画通り実施し、反面その後の情勢変化によって増員を必要とするものはお認め願って、その間相互に差引勘定して、整理すべき余地があるならば整理するということを、お願いするのが筋ではないかというふうに考えておったのでありますが、恒久的定員というものはさらに慎重に検討すべきものであるということから、とりあえずの措置といたしまして、三十一年度の整理をストップする、こういうことにいたしたのであります。従いましてこれはあくまで暫定措置であります。ここで三十一年度整理すべきものをストップした、その定員が新定員として恒久的にすえ置かれるというものではないのでありまして、三十二年度以降をどうするかということにつきましては、将来またあらためて検討する、こういうつもりでおるのであります。
  8. 中井徳次郎

    中井委員 今の長官お話を伺っておりますと、一応もっとものように思われまするが、しかしそういうことになりますとどうですか。戦後十年たちまして、私ども世の中はやはりだんだんと落ちついてきたというふうに考えておるのですが、今の長官お話しだと、なかなかまだ事件が多くて落ちつかない。これからどうもほうっておいては日本ももう一騒動起りそうだというふうな気さえするのでありますが、どうですか。客観的に見て落ちついておるときに、どうして警察官をふやしていかなければならぬか。覚醒剤取締りも必要でありましょう。それは私去年当委員会で言いました。しかしこれも一応峠を越したように——少しこれは甘いかもしれませんが、私どもは了解をいたしております。交通関係もまことに困った問題でありますが、これは全国警察官の異動その他によって適宜解決できない問題ではない。全体の計画を削らずに三十一年度だけ一応延ばすという今のお話しでありますが、どうしてそういうことになったか、この点どうも日本の内政の状況についての判断が少し食い違うように思うのでありますが、大臣どうでございますか。さらに警察官増員しなければならないような今の日本社会情勢でしょうか。その点ちょっと伺っておきたいと思います。
  9. 大麻唯男

    大麻国務大臣 詳細なことはわかりませんけれども、どうも大したことはなかろうというふうに考えておる次第でございます。
  10. 中井徳次郎

    中井委員 どうも私は遠回りのようなお尋ねをしておりますが、最近の地方財政の困難ということについては天下周知の事実であります。従って政府におかれても苦しい財政の中から、本年度はかなり地方財政については努力をしたというのが担当大臣説明でございます。そこで私ども内容を見せていただいたわけでありますが、こういう苦しい中であるというので、他の一般地方公務員につきましては、相変らず減員ということでこの計画はで変わらず減員ということでこの計画はできておる。ひとり前から当然三年計画で減らすという警察官だけが残っておるということについては、どうも私どもは、警察の皆さんの努力が足りないのではないか、どうも考え方が少し甘過ぎやせんか。特にまた、多少関連のありまする自衛隊なんというものは、相も変らず今年も増員ということになりそうでございますると、保安要員だけがふえて、一般教育行政、国民のサービス機関の第一線にあるものはどんどん減らしておる。こういう点でどうも私どもはつじつまが合わない気がいたします。その点どうして警察だけが現状維持でないといかぬのか。特に先ほどお尋ねしたがお返事がなかったのですけれども、この警察定員につきましては、たしかこれが設けられましたとき、警察制度国警自警でもって出発いたしましたときには、地方においてはその当時はまだ自衛隊はございませんでした。保安隊もありませんでした。従って日本の内乱とか、そういう問題についてまで考慮が払われたのか、大都市においては、警察官定員は、人口百八十人ですか二百人でしたかに一人。非常に数が多い。地方に参りますと千人に一人というふうなことであったと私は記憶をいたしておる。段階が相当ございます。従いましてその後客観情勢変化ということになれば、自衛隊その他どんどんふえております。私はこの考え方からいたしまして、この態勢が、国警一本になって二年になってまだできておらぬということは、どうも理解に苦しむのでありますが、そういう点について都市定員がどうなっておるか、地方はどうなっておるかお答えをいただきたい。これは長官からでけっこうです。
  11. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 先ほどお答えいたしました通り警察社会情勢変化に応じて、それに対応した警察力を持っておることが必要であろうと思うのであります。警察制度改正当時と同じような社会情勢であり、警察対象となるものが同じでありますならば、その当時それを前提として計画しました整理も可能であり、またそれで事足りるということになるわけでありますが、先ほども申しました通り、その後情勢変化によりまして警察力増強する部面ができましたので、三十一年度についての整理をストップする、こういうことにいたしたのであります。定員状況について、各府県、特に都市と郡部に違いがある、これもお示し通りであります。これは、都市は何と申しましても警察対象になるものが多いわけであります。農村地帯ではそれに比較すれば少いということから、勢いそうならざるを得ない、それがまた適正な配置であろうと思うのであります。
  12. 中井徳次郎

    中井委員 具体的に言って下さい。東京都は人口一人当り幾ら地方はどうだと。ありませんか。
  13. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 ただいま手元にその資料を持っておりませんので、数字を明確にお答えできないのは、はなはだ残念でありますが、後ほど資料を整備いたしましてお答えいたしたいと思います。
  14. 中井徳次郎

    中井委員 私この程度でやめまするけれども先ほど言いましたように、他の地方公務員については非常に自粛の点をあげておる。しかるに警察だけは約束通りやらない。二年目でストップということはどうもふに落ちない。客観情勢変化といいますが、先ほど説明されましたようなことでは、あえて増員を必要としない。前に述べましたように、それはそれとしてもっと前から定員配置があったはずでありますから、その点はどうも私納得できません。非常に世の中が物騒になってきたという判断であるのかどうか、この点もう一度お答えをいただきたい。
  15. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 世の中が非常に物騒になっておるというようなことではございませんが、先ほどもちょっと申しました通り、たとえば犯罪発生状況を見ましても、これは昨年の犯罪情勢について私ども統計をとったものでございますが、まだ昨年の一月から十二月までのものが完成した数字でございませんので、一応昨年の一月から十月までのそれを、前年同期と比較したものをちょっと手元に持っておりますので、御参考までに申し上げてみたいと思います。前年同期に比べて、昭和三十年一月から十月までの全刑法犯発生件数は、約九%増加いたしておるのであります。しかもその犯罪内容を見ますと、凶悪犯粗暴犯、こういったものが非常にふえておる。さらにまた、全刑法犯の半ば以上を占めますところの窃盗犯、これもふえております。犯行の常習化合議化あるいは犯罪集団化組織化、こういった傾向が見えるのであります。また再犯者の割合を見ましても、前年度よりもはるかにふえておる。あるいは凶悪犯については単独犯ではなくて、二人以上の共同による犯罪、こういったものがふえている。あらゆる部面について、こういった好ましからざる傾向示している。こういう状況下にありますので、警察としては、こうした取締りをさらに徹底するためには、どうしても警察力も一段の増強を必要とする、こういう考え方をいたしているわけであります。
  16. 中井徳次郎

    中井委員 私、この程度にいたしておきますが、世の中は物騒になったのではないが、犯罪はふえたと言われるけれども、まことにおかしなことで、私はそれは物騒になったのだろうと思うのであります。  それからさらに、自警国警が一本になったら、治安も非常によくなって能率的になるというのが、あの当時の説明でありますが、今の客観的な数字を見ますと、実は逆であったということにならざるを得ないと思いますが、どうでございますか。そういうものと関連して、数字はいろいろとございましょうけれども、前から申しておりますように、他の自治体が非常に節約をいたしておるのであります。従って警察関係も三十一年度はそのまま、そんなら三十二年度からはやはり既定方針通り減員をなさるものであるかどうか。私どもは何も理由もないのに、何でもかでも首を切れと言っているわけでは決してございません。ただ政府の御計画見込み違いであったという点について、どうも納得できませんので、お尋ねしているのでありますが、三十二年度からはどのようなお考えであるか、これをちょっと大臣に伺ってみたいと思います。
  17. 大麻唯男

    大麻国務大臣 お話の点は、非常に傾聴いたしました。警察といえども、決してむやみに費用をかけようなどという考えは持っておりません。なるべく御趣旨に沿いたいというつもりでおります。しかしながら客観情勢変化によりまして、三十二年度また同じようなことを繰り返すことになるかもしれませんけれども、なるべく既定経費を節減できるように進めるつもりでございます。
  18. 中井徳次郎

    中井委員 三十二年度も相変らずこのままでほおかむりでいくように私は了解するのですが、国務大臣は国政全体として考えて、私は首を切れとは言いませんけれども配置転換その他によって、これは最初の計画通りおやりになるのが筋だと思います。どうかそういう意味でまじめな一まじめなというと、はなはだ失礼でありますが、そういう態度でながめていただきたい、これを最後にもう一度……。
  19. 大麻唯男

    大麻国務大臣 承りました。しかし中にはもっと警察力を充実しなくちゃいかぬぞというて、だいぶ激励される向きも実はあるのでございます。けれども国家全体から見ますというとそうばかりも行きませんから、なるべくこちらは慎みまして、警察増強なんぞしないつもりで進めていることも、一つお認め願いたいと思います。
  20. 大矢省三

  21. 北山愛郎

    北山委員 ただいまの質疑を伺っておりますと、鳩山内閣ではやはり警察官は減らすことはできない、増員の必要があるというお話でございまして、実はこの前吉田内閣当時において警察法改正をしたときには、吉田首相保安隊をふやすから警察官は減らしてもよろしい、こういう御意見であったようでありますが、鳩山内閣においては自衛隊の方もふやさなければならぬ、警察官の方もふやさなければならぬ、こういうことになってきたわけでありまして、これはやはり大きな政府責任であろう。吉田内閣責任鳩山内閣責任かわかりませんが、この資本主義社会悪のために、世相がたくさん凶悪な犯罪を生んでいるというように聞えてきたわけであります。そこでちょっとお伺いしたいのは、先ほどお話の中に治安関係がございましたが、日ソ交渉等もあるので、治安関係からして警察官増員が必要である、日ソ交渉一つ警察官増員原因である、こういうようなお話であったので、ちょっと気になったのであります。われわれの知り得る限りにおきましては、いわゆる世界的な平和の傾向、対立の緩和ということからいたしまして、しかも日本がソビエトと国交回復交渉を始めるという最近の情勢を通じまして、少くとも数年前のようないわゆる公安的な犯罪というものは少くなっている傾向ではないか。むしろ日ソ交渉によって、国内における公安的な面の治安というものは非常に緩和され、改善されてきたというふうに考えるわけなんですが、ただいまのお話では、日ソ交渉の結果として治安を守るために警察官増員が必要だと言う。私非常にその点気になったのでありますが、長官からこの点をお答え願いたい。
  22. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 日ソ国交が回復いたしますならば、彼我の間にお互いに自由に行き来ができるようになるのであります。人の往来が多くなる、外国人が多く国内おいでになるということになりますと、外国人保護のために、警察の職分というものはそれだけふえるわけであります。在外公館の方々に対する保護というようなこと、現在でも在日公館につきましては、私の記憶では約百十カ所くらいあるのでございますが、盗難だとかいろいろなことがありまして、専任の警備警察官配置してくれという要請があるのでありますが、現在の警察力をもってしては、なかなかそこまでかゆいところに手の届いたような手当ができないのであります。それが今後日ソ国交回復ができまして、さらにお互い彼我往来も多くなる、外国人日本に在住される者も多くなり、外交官多勢おいでになるということになりますれば、そうした外国人保護という面からだけ考えましても、警察官の若干の増員ということは必要になってくるのじゃないかと考えます。
  23. 北山愛郎

    北山委員 そういう外国人保護するというお言葉でありますが、私どもの知っている限りにおいては日ソ交渉というのではなくして、むしろ現在のこの特殊な植民地的な状態において外国人がどしどし入ってきている、この取締りに手薄で困っておるということは、私ども聞いておるわけなのであります。ですからそういう面で警察官増員が必要であるとかあるいは整備しなければならぬということはわかるのですけれども日ソ交渉によってことさらにその保護なりそういう面を強化しなければならぬということはどうも受け取れないので、その点について重ねてお伺いしたいと思うのです。  それから外国人保護について特段のことをしなければならぬということになれば、増員をしなければならぬということでありますから、一体具体的な対策としてはどういうことをお考えになっておるか。そういう面からくる増員の必要、これは少くとも一つの機構なり何なりを新たに設けるとか、増員するとか、どういう面を増員していくのであるか。具体的なお考えがあったならばこれをお示しを願いたいのであります。
  24. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 私が先ほど来、たとえば日ソ国交回復とのこともこれありと言ったということで、外事警察増強の必要を申し上げましたのが、若干誤解を招くようにお受け取りになっておるとしますならば、はなはだ遺憾であります。たとえばということで申し上げたのでありまして、要するに外事警察が、現在われわれの現状におきましてはきわめて手簿であることは御存じのところと思うのでありまして、そうした面が今後日ソ国交回復で、外国人彼我の往復も多くなるということになれば、さなきだに現在手不足の外事警察というものが一そう貧弱なものになりますので、そうした面も増強の必要があるということを申し上げたのであります。  なお三十一年度は整理をストップするというだけでありまして、現在の実人員がさらにふえるということはないのであります。増強々々といいますと、何か現在の警察官頭数がさらにふえるような印象を与えるかもしれませんが、決してそうではなくて、三十一年度に整理をストップするということは現在の頭数を減らさない、こういうことにすぎないのであります。現在以上に警察官がふえるということはないのであります。その点は御了解願いたいと思います。
  25. 坂本泰良

    坂本委員 私は、本日は大麻警察担当大臣並びに石井警察庁長官以下のおいでを願いまして、これから御質問いたしたいと思いますのは、ただいま問題になっております春季労働攻勢に対する取締り、これについていろいろのデマ、憶説が飛んでおるし、あとで申し上げますように、警察極秘文書を配付してその取締りをやろうとしておる、こういうような事実もございますから、この点に関して御質問を申し上げたいと思うのであります。  ことに今度の春季労働攻勢と新聞で三段抜きあるいは五段抜きに書いてございますが、これは現在の日本の状態における勤労者、官公労あるいは公共企業体あるいは民間の勤労者が、その生活権を確保するための賃上げの要求をいたすものであり、この賃上げの要求が期せずして全国の各働く労働者の要望となってここに現われてきておるのであります。従いまして労働者の生活権を守る経済的な問題、このための要望を春季労働攻勢といい、あるいはこれはゼネストであるといい、これに対しては断固取り締らなければならないといって、新聞ではやはり三段抜き、五段抜きで春季弾圧という大きい見出しをもって発表されたのであります。さらにまた大麻警察担当大臣も参加されました閣僚関係懇談会が持たれまして、そうして取締りの方針を決定したというようなこともわれわれは聞いておるのであります。もしもかようなことで、いよいよこれからのこの働く者の賃上げの要求に対して弾圧をするということになりましたならば、その弾圧の尖兵を承わるのは警察であるのであります。この警察取締り方針が弾圧方針となりましたならば、全国八割を占めるところの働く大衆を弾圧することとなり、警察の目的である国民のための警察ではない、弾圧の警察である、かように考えられるのであります。従いまして過去の事例から考えまして、多分に弾圧のおそれがありますから、この際大臣長官以下の方方に対して御質問を申し上げたいと思うのであります。ことにただいま申しましたように、今度の、官公労にしても公共企業体にしても民間の組合にしても、お互いの賃金を値上げをして、生活権を守ろうというこのほんとうの経済的の要望を春季労働攻勢というふうに言論機関その他から銘打たれたと思うのでありますが、直ちに春季労働攻勢と申しますと、これに対して春季闘争の弾圧というふうにいわれるのは、われわれは非常に残念でございますが、春季労働攻勢といわれることを考えますときに、これに対する弾圧をなぜわれわれが一番心配するのかと申しますと、昨年来軍事基地反対闘争あるいはその他ストライキあるいは年末闘争、こういうものに対する警察取締り方針が弾圧であるというふうに、われわれには考えられるのでありますから、非常に心配をいたすのであります。ことにただいまは警察官増員の問題もありましたが、われわれは昨年のストライキ並びに年末の要望等に対する警察の処置を見ますときに、われわれは警察はこういうものを弾圧して、一部資本家のための警察ではなかろうか、かように考えられて、果して現在の警察は国民のための治安のための警察であるか、極悪犯人に関する事件は迷宮入りになりまして、そうしてその捜査がうやむやになるにかかわらず、その反面におきましては砂川の軍事基地の反対の闘争の場合、あるいは大高根の軍事基地の反対闘争の場合においても警察官の出動は、調達局のやり方が正しいものであるという前提のもとに千名、二千名の警察官の動員をいたしまして、そうしてそのやり方を見ますと、全く消極的なピケの排除に対しては、また送りをするというような訓練が行われております。こういうようなことを考えますと、警察は極悪犯人を捜査し、逮捕し、そうして治安を守るということは二の次にして、そうして農民が土地を取り上げられて生活手段をなくすからといって反対闘争をするのをやっちゃいけないといって押えつける、弾圧する、あるいは年末闘争においてもわれわれの考え方によれば弾圧すべきものでないものに対して、強硬な弾圧、検挙等を行なっておる、こういうことを考えますときに、これから行われるところの春季闘争に対する警察取締りに対して非常に心配をいたすものであります。ことに砂川のあの軍事基地反対闘争の場合において数百万の金を警察は使って、あそこに弾圧の手を下したのでありますが、同じ日本国民の警察官とそれから日本の農民、それからそこに応援に行っている労働組合員、この同じ日本人が、ここにしのぎを削って、どうして闘わなければならないか、そうして数十名の検挙者をどうして出さなければならないか、これをじっと見まするときに、果して日本警察官日本の国民の税金で月給をもらっておりながら、日本の国民のためにやっておるのであろうかどうかということに疑問を持つのであります。ある人はその際にこういうことを言っていました、日本警察官は米利日害の徒であると言っておりました。アメリカの利益のために働き日本人の害のためにやるものである。どうして日本の国民の税金をもらっておる警察官が、こういうことをして農民、労働者を弾圧するのであろうか、米利日害の徒であるということを聞きまして、非常に私は残念に思った次第であります。従いましてこの春季労働攻勢に対する警察の今度の弾圧が、もしも伝えられるような弾圧でありましたならば、これは国民の最も悲しむべきことであり、われわれ国民の代表として国会におる者は絶対見のがすことはできないのであります。かような考え方に立ちまして御質問を申し上げたいと思うのであります。  質問をいたすのにわかりいいようにいたしたいので事例を申し上げたいのであります。それは去る二月六日の西日本新聞に三段抜きで「ピケ、坐り込みも検挙、県警の春季労働攻勢対策」こういう見出しで1、2、3、4と四つにわたるいわゆる警察取締り極秘文書を各警察署に配付した、こういうことが権威ある西日本新聞に出ておるのであります。これは熊本県のことでありまするが、私はこの内容を見まして、これは単なる熊本県だけでなく、警察庁から全国の各県警本部にこういうものを出しておるというふうに考えられるのでありまするから、この事例をあげまして、そうして果してこういうことがあるかどうか。またここにあげられておるいろいろのことに対してどういう考えを持っておられるか、こういうことを総括的には大臣の御所見を伺い、部分的には長官以下の御答弁を伺いたいと思うのであります。私は偶然熊本に帰りましてこの新聞を手に入れたから申しますが、これは単に熊本県だけではないと思うのです。ことにまたこの熊本県につきましては大麻大臣も熊本県の選出であられるし、また自由民主党の吉田代議士も熊本県であるし、社会党の川村君も私も熊本県の選出の者でありますから、やはりこういうことが熊本県だけでなく、警察庁からこういうのが指示されて全国の県の警察本部に通達せられておる、こういうふうに考えるものでありますから、この事例をあげてそうしてその御所見を承わりたい、さように考えるのであります。少し長くなりますがこれは重要な問題でありますから、一つまずこの新聞に出ておることをここに提起いたしまして、それによって、これを基礎としての警察の春季攻勢に対するところの取締りの方針をただそう、こういう考えであるのであります。この新聞によりますと、「熊本県警察本部では新年度予算編成期の三月を目標とする総評翼下労働組合の春季闘争が二・一スト以上の闘争となり不法越軌行為、または暴力行為などの発生が予想されるとみて、従来取締り上最も問題となっていた官公労闘争のピケ、坐込みも断固検挙してもさしっかえないとの極秘文書を四日県内各署に流した。官公労争議の取締り方針としては一、有形力の行使による争議にはただちに取締りを実施し、現場検挙のほか証拠収集など捜査上必要措置をとる。たとえば労組のピケッティングが官公庁職員の出勤を阻止するため多人員を動員してピケを張るときは、たんに説得程度でもこれを取締る。その取締り方法はピケ員の実力排除を主とし状況によってはリーダーなどの積極分子は検挙する。この場合ピケ動員数の多少は問わない。2、坐込みの時は管理者の退去命令ののちもこれに応じないものは不退去罪として実力排除または検挙を行う。少数者の場合でも管理者に暴行、脅迫が行われるなら実力行使または検挙を行う。3、全電通、全逓などの行う作業能率の低下または欠勤による作業の停滞で起された郵便法、公衆電気通信法、国家公務員法(ピケ、坐込みを除く)地方公務員法違反容疑事件には事後検挙に備えて証拠集めに努力する。4、とくに国鉄労組の取締りには国鉄職員は国鉄法第三十四条で公務員とみなされ、たんに威力行使ていどでは犯罪を構成しないとさる二十六年七月十八日の最高裁判例にそって一応消極的に解していたが、ことしは警察庁と最高検との協議の結果、積極的に解釈され、企業体としての国鉄の業務を妨害していることが明らかに認められるときは、業務妨害罪で取締りを行う。なお取締りに当っては違反行為の実力排除に重点をおき、その対象は主としてピケ員がスクラムを組み線路上に立ち、しかも相当の時間にわたって列車運行を妨害するなどの極めて悪質な行為とする。業務妨害罪にあたらない場合でもピケ隊員が気ままに鉄道構内に入るときは職員といっても正当な目的を持っているとは思えないから鉄道営業法第三十七条違反、また場所によっては刑法百三十条の建造物侵入、不退去罪にあたるので鉄道公安官を援助し、状況が切迫すれば検挙、取締る。」以上のようなことが具体的に取締りの方針として新聞に発表されておるのであります。そこで私は第一にお聞きいたしたいのは、大麻大臣は春季闘争に対する関係閣僚懇談会に出席して、どういう相談をされたか、もちろん取締りの方針を相談されたと思いますが、その取締りの方針はどういう方針を立てられたか、さらにまたこういう新聞に出ているような方針を立てられたんじゃないかということを私は懸念するのでありまするが、そういう事実があったかどうか、この点をまずお伺いしたいと思います。
  26. 大麻唯男

    大麻国務大臣 今度の春季闘争について何か警察が非常に弾圧でもするかのような御懸念のようでございますが、全然そういう考えはございません。(「大臣は知らないのだ」と呼ぶ者あり)私知りません。ないから知らないのでございます。労働運動の健全にして円満なる発達ということは、国家のために警察もこいねがっておるところでございます。決してこれを弾圧しようとかなんとか、そんな考えは毛頭持っておりません。ただしかしながら厳正にして公平な立場をとらなければならない。警察は仰せの通り国民全体の警察でございますから、労働者の警察でもない、また資本家の警察でもない、国民全体のものでございますから、全体のために働かなくてはならぬ、かように考えております。そういう方針で臨んでおります。しかしながらもし違法なことがあったり不法なことがありますれば、警察としましては断固たる処置に出なければならない、厳正かつ公平で、しかも適切にして適正なる取締りの態度をとっていかなければならない、かように考えております。それが警察の伝統的態度でございます。これだけははっきり申し上げておきますから、どうぞお含みおき願いたいと思います。  それから今坂本さんから御指摘になりました九州の新聞に載っておったということでございますが、警察庁といたしましては全国に対してそんな指令など出したことは毛頭ございません。これだけははっきり申し上げておきます。それではそのときにどうしてそういうことをしたか、あるいはせぬか、何かの間違いかというような問題につきましては、警察長官以下からお話をいたしますが、警察といたしましてはそういう方針で臨んでおりますから、それだけはどうぞ御信用願いたいと思います。あなたのような労働運動に非常に熱心なお方から誤解をされておるということは、非常に国家の損害だと思いますから、これだけはどうか一つ御信用願いたいと思います。
  27. 坂本泰良

    坂本委員 大臣の言われた通り下々までやればそれは問題ないと思うのですが、その通りにやらないのです。たとえばりっぱなことを今大臣が申されましたが、その中にもし違法があれば適切なことをやる、適正ならいいけれども、適切なことをやる、これがいわゆる弾圧という考え方からいき場ますと、適正でなくて、その状態において適宜にやって弾圧をする、こういうおそれがあるのをわれわれは遺憾に思うのでありまして、この点は長官から聞きたいと思います。  なお今御答弁が抜けておりましたが、春季労働攻勢に対する関係閣僚の懇談会が持たれた。その中でこういう取締りの協議をされたかどうか、その点について伺いたい。
  28. 大麻唯男

    大麻国務大臣 そういう際は、警察警察として本然の姿に立ちまして行動するわけであります。別に弾圧なんということは言う者もおりませんでしたし、私としてはもちろんそれは申しておりません。  それからついでながら北山さんに一つ申し上げておきますが、先ほど外事警察の費用が云々という——これはわずかなことでありますけれども、こういうことも一つ北山さんあたりにお含みおき願いたいと思いますが、外国との交渉が非常に激しくなると外事警察が忙しくなります、こういうことを長官が申し上げました。それを何だか誤解になったかのごとくに思いますけれども、そうではございません。たとえばこの間中共から有名な方々の二十人の団体が来られました。そのときにある尊敬すべき、皆さんよく御承知の学者が二人私のところにおいでになりまして、中共の視察団に警察官をつけてくれ、こういうお話でした。私は友人だものですから、そういうことは誤解のもとになりはせぬかと言ったら、いやそうじゃない、たとえば国民政府関係の者とかあるいは日本国内の右翼と申しますか、そっちの方の人たちが誤解をして、ひょっと危害でも加えたら大へんなことになるから、どうぞ警察では特別の保護を加えてくれ、警察官などつけたら誤解のもとだぜ、こう申しますと、いやいやそれはそうじゃない、何か巧妙に一つやってくれ、そうしないと自分たち世話する者として安心しておられぬ、どうしても君が責任を持って保護するように取り計らえというお話がありました。それで私は長官以下警察当局にそのことを取り次ぎまして、何とかつけたらどうか、こう申しました。それで無事に済んで帰られました。そうすると御丁寧にもその二人の尊敬すべき学者がおいでになりまして、実にうまくいった、警察もあのくらいやってくれると非常によろしい、こう言って、そうしてその例などあげて、全部知っておられる。おかげをもって事なく済んで無事に帰られて視察団の人々も満足したし、世話人のわれわれも非常に安心をいたしました。ちょっとお礼に来たということでしたが、それは御丁寧なことだといって、私も非常に愉快であると同時に、私からもお礼を申しておきましたが、そういうこともあるので、警察というものは、そんなに御心配なさいますように、弾圧とか、わけのわからぬ者の集まりばかりでは決してございません、それだけはついでながら申し上げておきます。
  29. 坂本泰良

    坂本委員 ただいま関係閣僚の懇談会はやったことがないとおっしゃるのですが、これはやられたと思うのですが……。
  30. 大麻唯男

    大麻国務大臣 やりましたけれども、そういう弾圧のような相談はいたしておりませんと申し上げたのであります。
  31. 坂本泰良

    坂本委員 われわれの聞くところによりますと、また新聞紙の報道もあったと思いますが、この関係閣僚会議取締りを厳格にやる、警察官だけで足りないときはさらに自衛隊も出動する、こういうことを聞いたのですが、果してそういう話し合いがなかったかどうか、もう一度お聞きしておきたい。
  32. 大麻唯男

    大麻国務大臣 私はそれは承知いたしません。それから先ほどどなたかからの御質問にお答え申し上げようと思って落しましたが、自衛隊警察は全く職分を異にいたしておりますから、自衛隊が多くなっても警察が少くなるわけはございません。これは全く職分が違いますから、どうぞそれだけ一つお含みおき願いたいと思います。
  33. 坂本泰良

    坂本委員 ないとおっしゃればそうですが、しかしながら政府その他がないと言うことが、あって、それを実行に移されるということが現在の政治のようになっておりますから、われわれは大いに心配をするわけであります。もちろん自衛隊警察の職分は全然違うのでありまして、この自衛隊がかりに今度の春季闘争に参加でもしたということになれば、これは果して自衛のための軍隊か。やはりこれは上陸用舟艇を持っておる日本自衛隊であって、どこかの手先で他国への上陸を練習しておる自衛隊、そういう自衛隊に国費を使っておるということが証明されるわけですね。  そこで、そういうことは別にしまして御質問いたしたいのは、ただいま文書を出したことは知らないとおっしゃいますが、こういうように四つも具体的に取締り方針が出ておるわけであります。これの対象になるものは民間の労働組合であるし、官公労であるし、さらに全逓、全電通などの公企業体に及ぶ。従いましてこれに対する点で、もしもあやまちがありましたならば、——ただいまおっしゃったような外人に対する警察の配慮もわれわれ非常に歓迎し、そうしてもらわなければならぬのですが、今度の弾圧は、総評傘下は三百万と言われておるし、その他の労働者六百万を入れまして一千万に上るものに対する弾圧になるわけでありますから、われわれは心配してお聞きするわけであります。政府は官公労その他に対して、さきには次官通牒を出しましたし、今度は一昨日でしたか、根本官房長官が断固取り締るというようなことをやりまして、労働者が賃上げをして生活を守ろうというものを未然に防止する、その未然に防止するのも民主的でなくて、違反したならば検挙する、ピケラインでも検挙する、そうして警察の権力を行使するぞといって、正しい生活権の要求をここに封殺せんとすることに現在なっているんです。政府にその意図があるのではないかとわれわれは非常に心配しているのでありますが、そういうようなことについて、この関係閣僚会議で懇談をやられた。ことに新聞が春季闘争に対する関係閣僚懇談会をやったという以上は、何にもしないただの懇談会ではないと思うのであります。どういう懇談会をされたか、その内容を聞かしていただきたいと思います。
  34. 大麻唯男

    大麻国務大臣 ちょっと言葉が足りなかったからおわかりにならぬことがあると思いますが、まず熊本の新聞から見て、警察庁から全国警察本部長に対して指令を発したろうと仰せられたので、そういうことはないと申し上げたのでございます。  それから閣僚懇談会はもちろんやりました。やりましたけれども弾圧の相談はしなかった、そういうことはちっとも考えておらない。警察としては先ほど私が申し上げました大方針でいこうというだけであります。こういうことを申し上げたわけで、閣僚懇談会の結果かどうだったかというようなことは、またほかの者をお呼びになってお聞き願いたいと思いますが、私が申し上げたのと少しも違いがないと思います。
  35. 門司亮

    ○門司委員 関連して。何度も繰り返されていますけれども、おかしいのは、少くとも政府が勧告をしております内容は、間違いがあった場合にはこれを取り締まるということが、あれをずっと読めばわかるような内容なんです。その取締りに実際に携わろうとする諸君が警察官であることには間違いがないと思う。そうするとある程度その会議で話し合いがなされなければ、私は政府はあんなものは出せなかったと思う。当然あなた方の話し合いの中には、そういう具体的なものについて、たとえば法を守る、法を越えたものだけを取り締るということがあったはずだと思う。同時に法の限界がどんなものかということも少くともあなた方の話し合いの中にあったはずだと思う。政府責任ある立場に立って労働組合に対する警告を出しております。従って警告を出した場合、その内容等について話し合いがあったはずです。なければああいうものは出ないはずだ。それについてあなたの立場から経過を一つここで御報告願っておきたいと思います。
  36. 大麻唯男

    大麻国務大臣 警察先ほど私が申し上げましたように、労働運動の健全な発達をこいねがっておるものでございます。これは問題がない。しかしながらそれをやっておるうちに、法にたがうようなことがあったら、遺憾ながら厳正に公平に取り締らなければならない。これは初めからきまっていることで、今度に限ったことではございませんからそのことを申し上げたのでございます。
  37. 門司亮

    ○門司委員 私は何も警察の任務を聞いているわけじゃない。それは警察法にちゃんと書いてある。少くとも政府責任の立場に立ってああいう警告書を出されますからには、一応警告書を出されるだけの予測をされ、こういうことが行われるということが考えられておったと思う。予測されていたと思う。従ってその予測されているものの中には、当然もし行き過ぎた場合は取締りをする、その任に当るのは警察官であることは間違いがない。従って一体どの辺にその線をお考えになっているかということであります。これは一つの問題ですよ。ただ単に法律を越えれば取り締るということは当りまえのことであって、あの警告について——大麻さんにわかりやすいように聞きましょうか。あの政府が出した警告について公安委員長として政府から相談を受けたか、受けなかったか。
  38. 大麻唯男

    大麻国務大臣 先ほど来申し上げておる範囲内においては相談を受けております。それに同意をいたしております。
  39. 坂本泰良

    坂本委員 官公労に対して政府は勧告を郵送されておりますね。これと私が申し上げましたこの二月六日のピケの取締りというものと両方から考え合せますと、政府としてもここに官房長官から警告をする、政府警告としてやられる以上は、この関係閣僚懇談会において警告の内容を相談され、しこうしてもしこれに違反したならばどういう取締りをするのだ、こういう話し合いが行われた、われわれは絶対に行われたと思うわけです。しかしながら大臣答弁ではないとおっしゃいます。そういうことはないと言うなら、もう少しお考えになって、警告と取締りと両面から決して話し合いがなかったかどうかということをお聞きしたい。
  40. 大麻唯男

    大麻国務大臣 私が申し上げたのは弾圧の相談はしていないということを申し上げただけであります。
  41. 坂本泰良

    坂本委員 現在の一千万になんなんとする日本の労働者が一番困りますのは、憲法二十七条、二十八条の保障のもとに、さらに労働組合法、労働関係法、その他の法律の上に立って、そうして正しい賃上げの要求その他をやることをすぐ春季労働攻勢であるときめつける。さらにまたその取締りについても弾圧の相談はしていない、そういうふうにおっしゃられるのは非常に私は不満であります。警告を発する以上はいろいろと話し合いがなければ出ないはずであります。私は今大臣からお聞きいたしたいのは、その大臣の話し合いをせられたことは即弾圧とは考えない、各個々々の具体的な問題に入りますと弾圧になるかどうかということがそこで評価されるわけです。弾圧の話し合いをしないということだけでは満足できません、どういう政府の警告が出ておりますか、どういう取締り方針を話し合いされておるか、そこをお聞きしたい。
  42. 大麻唯男

    大麻国務大臣 官公労に対して警告を発しただけでありますから、それをあなたは弾圧々々とおっしゃいましても、そういうむちゃなことを相談したことはない、こういうことを申し上げておる。
  43. 坂本泰良

    坂本委員 この関係閣僚会議が開かれます場合に、大臣の補助役として石井警察庁長官は一緒に行かれたかどうか、お聞きしたい。
  44. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 閣僚会議には私は列席いたしません。
  45. 坂本泰良

    坂本委員 最後にもう一つだけ大臣にお聞きしたいのは、この政府の警告の内容の話し合いはされたのでありますか、そうしてそれに対して新聞紙上すでにピケはどうだ、すわり込みは不法だ、いろいろなことがありますが、そういう点については公安委員長としての大麻大臣が全責任を持ってやられたかどうか、懇談会でそういう話がありましたかどうか、そういう点を伺いたい。
  46. 大麻唯男

    大麻国務大臣 それらのことについては次官会議に移したのもございますし、何が違反であるかどうであるかということは専門家が研究した方が早くわかるのであるからして、そういうふうに御承知願います。
  47. 坂本泰良

    坂本委員 そういたしますと、やはり専門家が研究すれば早わかりだから、そういう取締りについては警察にまかせる、こういうふうに聞き取れるのですが、それでよろしいですか。
  48. 大麻唯男

    大麻国務大臣 警察が従前からとってきました態度で臨んで差しつかえない、こういうことになっておるわけであります。
  49. 坂本泰良

    坂本委員 最後に一つ大臣にお聞きしたい。こういうようにすでに警告を発する前にいろいろ具体的にあげて、そうして今までわれわれが想像もしなかった、ことに最高裁判所の判決で業務妨害にならなかったものも、この際は積極的に検挙するのだということがここに書いてあるわけであります。こういうような取締りについて一もちろんこの中にはあなた方のお考えでは適法になる場合と違法になる場合があると思うのですが、こういう具体的な問題が発生した場合、大臣はどういう処置をとられるか、お聞きしたい。
  50. 大麻唯男

    大麻国務大臣 適法になる場合はそれでけっこうですけれども、違法になる場合は取り締る、こういうことになると思います。
  51. 坂本泰良

    坂本委員 大臣は否定されておりますが、極秘文書なんというのを出すから、やはりこういういろいろな憶測もできるし、心配も起るわけなんですが、今度の春季闘争を対象にした取締りについて、大臣が最初から申されました警察法の一条、二条のあの目的と警察の活動に沿う方針をとられるについて、長官以下に対して十分注意をされたかどうか、その点をお聞きしたい。
  52. 大麻唯男

    大麻国務大臣 年じゅう注意をいたしております。
  53. 坂本泰良

    坂本委員 石井長官にお伺いいたしたいのですが、こういうような文書が大新聞である西日本新聞に出たことを見ますと、これは単に熊本警察本部がこれを出して、そうしてそれを管下の警察に秘密文書としてやったと思えないわけです。県警察本部が出すというからには、やはり警察庁本部からこれに対する何かの指示か通牒がなければ出ない、われわれはこういうふうに考えますが、その点お伺いしたい。
  54. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 先ほど大臣からもお答えがありました通り、いわゆる春季労働攻勢に対する警察取締り方針について、私ども警察庁から第一線に今日までのところ何ら指示はいたしておりません。
  55. 北山愛郎

    北山委員 そうすると、ただいまのお話を聞いておると、西日本新聞なるものに載った記事というものは事実無根だということになるわけですが、警察としてそういう方針を指示しておらぬのにそういう記事を出されておるということになれば、これを取り消すなり、取り消しの要求を新聞社にするとかしなければならぬのじゃないかと思いますが、その点について、いかが御処置になるかお伺いしたい。
  56. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 先ほど坂本委員からお読みになりました新聞記事は、私は初めてここで拝承いたしたわけであります。そうした記事が熊本の新聞に出ておるということは初めて伺ったのであります。内容を十分に検討いたしまして善処したいと思います。
  57. 坂本泰良

    坂本委員 熊本県の警察本部長がいかに有能な者であり県下の取締りをやろうというのでも、やはり自分が考え出してそういうことを言うはずはないと思います。しかしながら、そういうことをやったことはないとおっしゃるから、それでは言葉をかえてお聞きいたしたいのは、現在の警察庁では、こういうような労働運動に対する取締りについて本部で検討され、そうしてその問題について全国の県警察本部に通知をされたかどうか、それをお聞きいたします。
  58. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 今日までに機会あるごとに、労働運動の取締りについて警察のとるべき方針等につきまして、第一線に資料として提供するというようなことは、過去において何べんもあります。従いまして、そうしたものをいろいろ集積いたしまして、第一線において県独自の方策を立てるということはあり得るのでございます。
  59. 坂本泰良

    坂本委員 それでお聞きいたしたいのは、ただいま御答弁のように、この労働運動の取締りについては非常に研究されておるということですが、今ここに四つに分れておるのですが、こういうようなこともやはり研究の結果指示をされたこともあるし、あるいは各県の本部長その他担当の者を集めて話し合いをされたことがありますかどうか。
  60. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 先ほどお読み上げになりましたものを、私は一々正確にかつ詳しく記憶にとどめ得なかったのでありますが、その中の一つである、たとえば国鉄の職員は公企労法で公務員とされておる。従ってこれに対しては公務執行妨害罪は成り立つが業務妨害罪は成り立たない、こういう従来の最高裁の判決であったが、国鉄個個の職員に対してでなく国鉄企業全体に対する業務妨害罪というものは成り立ち得るという最高検の解釈が最近においてきまりましたので、それを地方示しておるということはあります。
  61. 坂本泰良

    坂本委員 今一つだけ申されましたが、そうしますと、この判例は国鉄の判例ではないのですね。公務員の公務の執行に対し、かりに暴行または脅迫に達しない程度の威力を用いたからといって業務妨害罪が成立するものではない、こういう判例なんです。だからこの判例では、国鉄の職員も公務員だからこれに適用されるというので、業務妨害罪にならないというので取締りから除外されていた。暴行脅迫かなければいけないというような見解だったのですね。それを今度は最高検の見解によって、その場合でも業務妨害罪になるからどんどん検挙しても差しつかえない、こういうような見解であるし、その見解を検察庁は守って、今度の春季闘争にはそういう方針で取締り、検挙もする、こういう方針でございますか。
  62. 山口喜雄

    山口(喜)政府委員 法律問題になっておりますので私からお答えいたします。お話のように国鉄の職員は公務員でございます。公務員個人に対して職務の妨害行為があった場合には、公務執行妨害罪をもって取り締る、業務妨害罪をもって処置しませんというのが、その判例の趣旨であります。ということは、公務執行妨害罪というのは、暴行または脅迫をするということが要件になっております。業務妨害罪の方は、暴行、脅迫に至らなくても、威力を示すということで犯罪が成立することになっております。そこでその判例がいっておりますのは、個人に対して仕事を妨げた場合には、暴行または脅迫という程度に至らなければならない、威力という程度で業務妨害罪をもって取り扱うわけにはいかないということを示しておるのであります。ところがその後の高等裁判所の判例におきまして、国鉄の職員が線路に立ちふさがったり、あるいは職員が業務につこうとするのを妨げようとした事例があったのであります。その際に、そういうことをするのは国鉄というもの全体に対する業務の妨害になるのではないかというので、なるという高等裁判所の判例があったのであります。これに対して上告をいたしましたところが、上告審である最高裁判所では、そういう場合には業務妨害罪をもって論議することを認めるような判例をその後に出しておるのであります。そこでその出しております通牒のいわんとするところは、国鉄の個々の職員に対しては、なるほど業務妨害罪をもって論ずるわけにもいくまいが、国鉄という組織体全体に対する業務妨害ということをもって論ずる余地があるということを示しておる通牒でございます。
  63. 坂本泰良

    坂本委員 そうしますと、国鉄の今度行わるべき問題に対しては、乗務員がほんとうに乗務するかどうかわからないのを、それを説得行為で阻止するというピケ行為に対しても、これは国鉄全体に対する業務妨害罪として警察は検挙する、そういう方針ですか。
  64. 山口喜雄

    山口(喜)政府委員 職員がたとえば列車に乗って勤務しようとするのを、ピケを張ってどうしても妨げるというような場合には、その具体的な事情によりまして、国鉄全体に対する業務の妨害と認められる場合には、その容疑をもって検挙することもあり得ると思います。
  65. 坂本泰良

    坂本委員 そうしますと、あなたたちがピケなんかを直ちに業務妨害罪と解するのは行き過ぎだと思います。ピケはやはり労働者の同じ同僚に対する説得行為の一つの方法なんです。それをそういうような立場に立って、昭和二十六年の判例に基いて、警察当局は今までは検挙も何もしていなかった、業務妨害罪は成立しないというので検挙もせずに、指導よろしきを得たのを、今度は国鉄全体に対する業務妨害罪というので、乗務するかしないかわからないのを、ピケの説得行為でやろうというのも検挙する、取締り対象にする、そういうお考えですか。
  66. 山口喜雄

    山口(喜)政府委員 その点は、ちょっと問題の論じ方が変ってきておるようですが、私の申し上げましたのは、乗り組んで業務につこうとする者に対してピケを張って、あくまでもこれを阻止するというような場合には、その具体的な事情を調べた上で、国鉄全体に対する業務妨害の疑いがあれば、業務妨害罪の容疑をもって取り締ります、かように申し上げて、おるのであります。ピケットの問題は別にわきに置いての前提のもとに、私は申し上げておるわけでおります。
  67. 坂本泰良

    坂本委員 それが暴行、脅迫に至らない程度は、これはわれわれは刑法の解釈上当然だというので業務妨害罪は成立しない、そういうような考え方をとっておるわけなんです。しかしそれを今度は対象が国鉄全部であるというところに持っていって、そうして業務妨害にしてこれを警察が検挙しなければならない、どうしてそういうふうに賃上げ、生活権の確保をやろうというのを、解釈を広めて、しかも最高裁判所の大法廷の判決を今度は裏から解釈して取り締らなければならないか。その点がわれわれはわからない。大麻大臣は公正に国民のために警察権の発動をするという。それをどうして、今度の春季闘争に対して広げて、その主体を国鉄全体に求めてこれを検挙しなければならないか、検挙するというようなことをどうして警察は発表して、秘密文書を出すか、その点がわれわれはわからない。どうしてそういう拡張解釈をしなければならないか。弾圧をする警察ならそれでよいでしょうが、大臣の言われましたように、国民のための警察なら縮小して解釈こそすれ、拡大して解釈すべきものではないと考えますが、どうですか。
  68. 山口喜雄

    山口(喜)政府委員 初めにおあげになりました判例は昭和二十五年に出ておるのであります。その後最高裁判所の判例がそれと多少変ったと思われるのが出れば、それに従ってわれわれは警察取締りの基準をきめるということは当然なことであろうと思うのであります。しかもこの通牒は、いわゆる春季労働攻勢に関連をいたして出したものでは絶対にございません。この点は前々から論議がありまして、昨年の暮れ——十二月二十日過ぎだったと思いますが、全然そういう労働攻勢とは関係なしに、私の方から連絡をいたした通牒でございます。
  69. 坂本泰良

    坂本委員 警察当局はまず先に法を守らなければならぬと思うのですが、最高裁判所の大法廷で決定した判例をくつがえすためには、やはり同じ大法廷を開いて、そこで新しい判例として出なければ、やはりこの判例には従わなければならぬ。これは私が言うまでもなく御存じと思うのですが、そうでなければ法を守り、さらに具体的問題に対する最高裁判所の判例は、やはりこれは一つの広義の法として、法律に次ぐ法としてこれを守らなければならない。それが最高裁判所の判例だと思うのです。それを違った意味のことがあったから、それによって警察取締り対象にする。そういうのはもっとこの判例をくつがえす同じ大法廷における新しい判例が出れば、そこに変更してよいけれども、それを勝手に警察が変更するというのは、これは法を守らないことはなはだしいと思う。しかも今度の三月攻勢に対して、そういう見解を持ってこれを取り締ろうという二とについては、これは働く者の生活権確保に対する弾圧だといわれてもやむを得ないと思うんです。だから最高裁判所の判例ももっと、自分の都合のいいようにせずに、法を守るならば法を守るような順序をもって御説明願いたいと思うんです。それでもあなたはまだこの判例をひっくり返した取締りをやってもいいという御方針ですか。
  70. 山口喜雄

    山口(喜)政府委員 私どもは最高裁の判例に反したような取締りは断じていたさないつもりでおります。むしろ最高裁が二十五年に個々の職員に対する問題として業務妨害罪は成立しないといっておりますけれども、一方において国鉄の業務というものを対象にして、その国鉄の業務を妨げるという場合には、業務妨害罪が成立するという最高裁の判例が出ております以上は、その面につきましてわれわれが今後の取締りについて方針をきめていくということは、警察として当然のことだろうと私は考えます。
  71. 坂本泰良

    坂本委員 私は寡聞で、これを変更する最高裁判所の判例は知りませんが、かりに部分的にあったとしてもこの二十五年の判例は大法廷における判例ですから、これをひっくり返すのにはやはり同じ大法廷を開いてやらないことにはできないわけです。そういうような問題になるのを、暴行脅迫でなくても、威力であったならばすぐに取締りをやる。そういう方針に拡張して持っていくところを弾圧だといわれてもやむを得ないと思うんです。しかしそれが警察庁の見解としてやっておられるか、最高検察庁の見解であって、それを守って警察庁がやられるか、その点をお聞きしたい。
  72. 山口喜雄

    山口(喜)政府委員 通牒を出すにつきましては、従前からこの問題については何回も最高検とも協議の上、意見が一致して出しております。
  73. 坂本泰良

    坂本委員 そうすると今申されました通牒はいつごろお出しになりましたか。
  74. 山口喜雄

    山口(喜)政府委員 先ほど言いましたように、私の方としましてはたしか昨年の十二月の終りだったと思います。労働攻勢の問題と全然関係のない、年末闘争も済みまして、平穏な時期であったと記憶しております。
  75. 坂本泰良

    坂本委員 だんだん秘密文書の馬脚が現われたように思いますが、昨年の十二月末にはすでに新聞紙その他においては、三月攻勢に総評その他は立ち上って、そうして賃上げ闘争に集約をしてやるんだ、そういうことが十二月の初めごろから出ていたことを、私はおぼろげながら記憶しておるわけです。  もう一つここでお聞きしたいのは、今言われました二十五年の最高裁の大法廷の判例と変った判例というのはいつごろ出たわけですか。それを聞きたい。
  76. 山口喜雄

    山口(喜)政府委員 二十八年一月十六日と三十年の十月二十六日です。
  77. 坂本泰良

    坂本委員 そこでお伺いいたしたいんですが、二十八年の一月十六日と三十年の十月二十六日に出たのを十二月の末に通牒として出された。その間二ヵ月ばかりあるわけですが、これは最高検と打ち合せて、最高検の意見として出されたのか、警察庁だけの見解として通牒を出されたのか、その点お聞きしたい。
  78. 山口喜雄

    山口(喜)政府委員 相談はしまして、通牒は警察庁の通牒として出ておりますが、おそらく最高検も検察庁に対して同様な趣旨の通牒を出されたものと想像致します。
  79. 坂本泰良

    坂本委員 この問題は法務委員会で最高検、また法務大臣に聞くこともあろうかと思うのですが、この大法廷できまった判例に対して、二つの、たぶん部分的な判例、この解釈はこじつけだろうと思うのです。従って警察が法を守る立場にあるならば、法を守る上において具体的の法律を守らなければならないと同時に、いろいろの問題が起きた場合に、その法律の解釈適用については、やはり裁判所の判断を待たなければならぬ。現在の法治国としてそれは当然のことです。最高裁判所の判例として、威力だけでは業務妨害罪にならないという見解をひっくり返して、しかも全国警察官に通牒を出す以上は、やはり同じような手続を経て判例の変更がなされなければ出すべきものでない。従って裏を返せば、こういうこじつけの判例もあるのだからこれをくっつけて、そして取締りを広くして、今度の三月闘争にはびしびしやるためにやったんじゃないかと思われる。大麻大臣お聞きになっておるのですが、そう思われてもやむを得ないと思うのです。そういうことが警察の弾圧だと言われることになると思うのです。ですからこういう点は十分注意してやらなければならぬ。新聞にもこういうことが出ているわけですから、そうしてもらわなければならぬと思うのです。判例の問題は一番最後に聞こうと思ったのですが、そっちから言われたからやったわけです。それからピケなんかについても見解を承わりたいこともあるのですが、警察庁長官は出したことはないと言われるけれども、新聞に、しかも大新聞にこういうことが出たことは、これは正しい賃上げ要求をしようという労働者に対しては非常な脅威なんです。ですからこういう秘密文書を出しておられないならば、こういうのが新聞にも出るような状態に対して、これをどう処置しようという考えを持っておられるか。あるいはこれに輪をかけて、今度の三月攻勢に対しては、なお弾圧しようというお考えですか、その点をお聞きしたい。
  80. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 最初に大臣お答えになりました通り、私ども警察といたしましては、正常なる労働運動に対しましては何らこれに介入し、あるいは干渉しようという気持は毛頭持っておりません。正常なる労働運動は健全に育成発展せんことこそ念願しておるのであります。ただ不幸にして一度行き過ぎて違法状態になりますならば、警察の職責上これは放任するわけには参らない、従って警察力の発動もやむを得ない、こういう考え方を従来ともとっておりますし、また今後においてもその基本方針には何ら変るところはないのであります。この点はどうか十分御了承願いたいと思うのであります。
  81. 門司亮

    ○門司委員 話を聞いておって一向わからぬから率直に言って下さい。政府がすでにああいう声明を出しております。従ってあの政府の声明に基いて、たとえば法の通りに取り締るといっても従来の関係もありますし、特にあの声明の対象になって働くのは警察であります。従って警察はこのことについて何らかの協議が必ずされていると私は思うのだが、この政府声明に対して警察のとるべき態度というものについての御協議が、公安委員会で行われたかどうか、一応公安委員長である大麻さんに聞いておきたいと思うのです。
  82. 大麻唯男

    大麻国務大臣 従来やって参った通りにやるのですから、公安委員会で別に相談しておりません。御意見もありましたので、ちょうど明日公安委員会の定例日でありますから、それに持ち出して十分検討を加えたいと思います。
  83. 門司亮

    ○門司委員 私は公安委員会の日であるかどうか知りません。けれども公安委員会があって、公安委員会委員長が従来のような公安委員会委員長であれば独立した執行機関でありますから、一応今の大臣答弁をうなずきます。しかしあなたは国務大臣でありますから、政府声明については責任がある。その責任あるあなたが公安委員長である限りは、それに対処する警察の態度というものは、当然協議されていなければならぬと考える。もしそれを協議しなかったとすればおかしいじゃ・ありませんか。何のために国務大臣が公安委員長になっておるか。警察法の趣旨からいっても変じゃありませんか。
  84. 大麻唯男

    大麻国務大臣 従来警察のとってきた態度をちっとも変更する必要のないことで、前から同じ態度をとっておる。それだからあらためて協議する必要はないと思います。
  85. 門司亮

    ○門司委員 そういうことを言われておりますが、先ほど警察庁の石井君は何と言っているのです。去年の十二月にいろいろな通牒を出しておる。同時に争議行為に対する取締りとして常識的にものを考えて参りますと、その争議というものをいかに見るかということが一つの大きなポイントなのであります。部分的な小さな争議であるとみなされた場合には、かなりこの取締りについても私は手かげんが行われることは当然だと思う。しかし今回の、少くとも政府が声明を出して、そうして争議行為についての一つの杞憂というと少し語弊がありまするが、政府がも し大規模の争議であるということを考えたとするならば、そのよって来る響影はいろいろ大きな問題を引き起すであろうということを考えたから警告を発しておる。そういたしまするとその考え方の上に立って、これに対処する警察の態度というものがいまだにきまっていないというばかばかしい話は私はないと思う。すでに争議自体というものは部分的ではございまするが 一応行われておる、従って政府声明に対処して当然警察の行うべき行動範囲というものは、私は作戦的にきまっていなければならぬと思う。大麻さんの言うように公明正大であって、国民の警察であるならば、警察の所信をこの際はっきりしてもらいたい。そうして国民の前に公安委員会はこういうことをきめた、あるいは警察庁はこういうことを指令した、こういう取締りの方針だと取締りの方針をはっきりここで言いなさい。
  86. 大麻唯男

    大麻国務大臣 それは何べんも公安委員会に報告はしております。けれどもそれで警察が態度を変えようというのじゃないのですから、従来とっておった通りの方針をとっていくのですから、それで私はなかったと申し上げたので、一々報告はもちろんしておるわけです。
  87. 門司亮

    ○門司委員 その点はもう少し明確に、そういう答弁でなくやってくれませんか。警察庁の方ではっきりしてもらいたいと思うことは、この問題に対して警察庁は何らの協議もしなければ取締りの方針もきめなかった、いまだにそれがきまっていないということである。今あなたの言われたようなことは警察の使命ですから、個々の問題について論議さるべき筋合いのものではない。これは一般論である。問題は争議という新しい事態に対する警察の対処する態度なんです。これをわれわれは聞いておる。だから警察行政がかくあるべきであるなんということを、そこで言われたってそれはわかり切ったととである。だから今度の争議に対する警察取締りの方針、態度というもりをきめなければならぬはずだ、また指令していなければならないはずであって、警察庁はこれについて協議が行われたはずであると思うが、その取締りの方針をはっきりしておいてもらいたい。そうしないと個々の問題について問題が起ります。
  88. 大麻唯男

    大麻国務大臣 よくわかりました。けれども門司さん、私が申し上げますのはこれによって弾圧しようとか何とかという政府の方針ならば、これは政府としては非常に考えなければならぬことですけれども、そうじゃないのです。今まで通り警察がやっておるのを厳正公平にやっていこうというだけのことであります。そのことは一々公安委員会に報告もしていますし、警察庁との協議はもちろんしております。警察の方針がきまっておらないようにおっしゃいますが、そうじゃありません。それは今度の闘争以前からきまっておることで、ただそれを厳正公平にやっていくだけでございますから、どうぞ御了承願います。
  89. 坂本泰良

    坂本委員 今大臣は厳正公平に今まで通りだとおっしゃるのですが、先ほど申しました西日本新聞に出ておるこれを見ますと、今までは問題にしていなかったことを今度の三月攻勢に対しては問題にして、そして検挙する。ことにピケッティングなんかでも、今までは問題にしていなかったけれども、今度はこれを逮捕し検挙するのだ、そうしてその人数のいかんも問わない。そうするとこれによりますと、人数のいかんも問わなければ二、三人でも説得していたら、それをピケとして検挙する、こういうようなふうにとれるわけです。だからこれは取締りの方針として今まで厳正公平にやってこられた、そしてピケとかすわり込みなんかは問題にしていなかった、それを今度の三月攻勢については断固これを検挙するのだ、こういうようなことがいわれておる。さらにまたさっきの問題にかえりますが、業務妨害罪にならないという最高裁判所の判例を勝手に変更して、今度は国鉄全部に対する業務妨害になるというので、これを検挙するのだというふうに取締りの方針が変ってきておるわけです。だから変ってまたならば変ってきたことについて、何か研究もし指令も出す、そういうことがあるんじゃないか。さっきの最高裁判所の判例に変ったような判例が二つあるから、それでもっと広く取り締りを拡張してこれは違反になるぞというような通牒を出されたかどうか、そういう点をお聞きしておるわけなんです。
  90. 大麻唯男

    大麻国務大臣 それは違法なことがあれば取り締りますけれども、しかしそれは弾圧ではありません。取り締るべきものは当然に取り締るということを申し上げておるだけであります。
  91. 中井徳次郎

    中井委員 私さっきから伺っておるのですが、どうもこんにゃく問答のきらいがあるのですが、先ほどから西日本新聞の記事のことが問題になっています。これについては大臣長官もそういう指令は出したことはないと言う。出したことがないのなら、なぜ西日本新聞の記事の取り消しを要求しないのですか。ぜひこれを取消さしてください。社会不安を醸成いたしております。一つこの点を長官から答弁して下さい。
  92. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 先ほどお答えしました通り、二月六日の西日本新聞に坂本委員先ほどお読み上げになったような記事が出ておることを、ここで初めて私はお聞きしましたので、よく真相を確かめまして善処いたしますと申し上げたのであります。
  93. 中井徳次郎

    中井委員 何も真相を確かめないでもここに新聞があるのですから、すぐ読みなさい。善処すると言ったって文書を出していないのなら、これが間違っているなら取り消さして下さい。善処の余地もなにもないと私は思う。その辺のところを承わっておきます。
  94. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 新聞がどこでそういう取材をされましたか、そういう経緯も確かめなければなりませんし、それを熊本県の県警本部長が発表するというようなことは絶対にないと確信いたすのであります。またそういった内容のものを県警本部長が各署長に指令を出したかどうか、そういう点も確かめなければなりませんし、またかりにそうした指令を出しておるといたしまして、またその指令の内容とこの新聞に出ておる記事とが全く一致しておるものであるかどうかあるいは内容が若干違っておるものであるかどうか、そういう点も確かめなければ、ただ新聞にこういうものが出たからといって、それだけで直ちに新聞側を責めるというわけにも参りません。警察側にもし間違った点があるならばこれは警察側が正しくないのでありますから、是正すべきものは是正しなければならない、こういうことにもなろうかと思いますので、私はそういう点を慎重に考慮して善処をすべきものである。問題がしかく重大であるだけに私は慎重な態度を必要とするという意味でお答えをいたしたのであります。
  95. 中井徳次郎

    中井委員 私は何も慎重にやらぬで、早くやれというようなことを言ったのではないのでありますが、あなた方は全然出していないと言う。ところがりっぱな文章になって出ておるのです。私は善意に考えて皆さんは文書でお出しにならないでおそらく口頭でお伝えになったかとも思う。ですから全然出していないということについて実は非常に疑問に思いまするから伺うのであります。どうですか。ほんとうにその記事に載っておるようなことは全然出してない、あるいは大臣は知らぬ、長官は知らぬが、下の方の課長級で出しておるかもしれませんでしょう。そういうことについて伺いたい。
  96. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 先ほどお答えいたしました通り春季労働攻勢に対する警察取締り方針として、警察庁として第一線には何ら指示をいたしておりませんと申し上げたのであります。しかし今日まで労働運動に対する取締りにつきましてはいろいろ問題があります。機会おるごとに私どもの方では第一線の参考になるべき資料を提供するということはあるわけであります。たまたまその中で先ほど話題になりました最高裁の判例の問題、こういったものは警備部長がお答えしました通り、昨年の十二月下旬に最高検と打ち合せの結果意見が一致いたしましたものを参考資料として流した、こう申し上げておるのであります。
  97. 中井徳次郎

    中井委員 それでは早くお調べになって、この委員会にそれを取り消すか、それを認めるか、どっちか一つ返事をしていただきたいと思います。
  98. 坂本泰良

    坂本委員 なお今のにつけ加えるようですが、先ほど来、大麻大臣は国民のための警察であるから、厳正公平にやるというふうに言われております。そこでいよいよ三月攻勢と申しますか、賃上げの要求をやろうというやさきにこういうような新聞を出す。新聞に出る以上は——大新聞は何か種がなければ出すわけはないし、ことにそれを見ますと、文書的にちゃんとできております。もしそういうことがなかったら、そういうことを勝手にやっちゃ困るという申し入れもあるでしょうし、取り消しもあるだろうと思うのです。それをやってもらうと同時に、大臣にお聞きいたしたいのは、こういうふうに新聞に出たというのは、今までの警察取締りより一歩進んで、労働者の少しの行き過ぎでもすぐ検挙するというふうにそこに見えるわけですから、ああいう新聞が出たのに対して、積極的に、秘密文書でも出していることはないというようなことを言ってもらわぬことには、官公労の連中その他が非常に心配しているから、それをやられるかどうか、やられる御意思があるかどうか、ちょっとお聞きしたい。
  99. 大麻唯男

    大麻国務大臣 私は初めて聞いたことで、今どうしろと言ってもしょうがないのです。それと同時に、坂本さんにちょっと御一言申し上げておきますが、少しぐらい行き過ぎてもとおっしゃるが労働運動は少しでも行き過ぎてはいかぬと思う。そういうときは御注意願いたいと思います。
  100. 坂本泰良

    坂本委員 大臣がそこまでおっしゃるのなら、私はもう一つお聞きしたいのですが、私が行き過ぎと言うたのは、今までは警察取締り上ピケ並びにすわり込みについては検挙もしていなかった。ところがこういうような文書を見ますと、数のいかんを問わずピケは二人でも三人でも検挙する。そういうふうに出ておるわけです。取締りについて非常に峻烈なあれが出ておる。それを、自分たちはそういう秘密文書も、指示したこともないとおっしゃるなら、そういうことはなかったと取り消していただいた方が、労働者のための警察長官としてのあれだと私は思うのですが、その点の御見解を承わりたい。
  101. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 今御指摘になりました、数のいかんにかかわらず、いやしくもピケはすべて取り締る、こういったようなことは私ども絶対に考えておりません。そういった間違った点もありますから、それだけに私の先ほども申し上げた通り、この新聞記事を十分検討し、またどうしてそういう記事になったかといういきさつ等も確かめまして、県警察本部長に、もしわれわれの日ごろ連絡している以上の行き過ぎの行為がありますならば、これはもとより是正させるように注意いたしたいと思っております。
  102. 坂本泰良

    坂本委員 それでお聞きしたいのですが、それでは今度の賃上げの要求がこれから集団的に行われるわけですが、これに対してピケ並びにデモについては、やはりそこに書いてあるようにどんどん検挙してもいいというお考えをお持ちであるかどうか、そこをお聞きしたい。
  103. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 いやしくもピケ、すわり込みであればどんどん検挙してもよろしいというようなことは全然考えておりません。あくまで違法な状態になったものを取り締るというのが警察のとるべき態度でありますので、その基本方針には何ら変りはありません。
  104. 坂本泰良

    坂本委員 そこで私はそういうりっぱなことをおっしゃったからお聞きしておきたいのですが、官公職員は、国家公務員も地方公務員も争議権はもちろん法律で奪われております。しかしながら憲法第二十七条、第二十八条の団結権、団体行動権、こういうような基本的権利は認められておるわけですから、その団結の威力を示して、それで組合員の意思を鼓舞して、お互い労働者が要求をしてその実現をはかる。これは一つの大衆行動として、争議行為でない、われわれはそういう見解の上に立ってピケあるいはデモは違法行為でない、こういうふうに考えておりますが、警察庁長官はどういう御見解を持っておられますか、承わりたい。
  105. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 簡単に一言では言えないと思うのであります。ピケ、すわり込み、デモにしましても、いろいろな態様がありますので、その程度いかんによりまして、違法の疑いを受ける場合もありましょうし、そうでな  い場合もありましょう。従いましてわれわれとしましては、個々具体的なケースに接しまして慎重にその実相を究明し、それが果して違法であるかどうかという点を考慮の上、警察力を行使すべき場合にのみ警察力を行使する、こういう態度をとっております。
  106. 坂本泰良

    坂本委員 そこでもう一つお聞きしておきたいのは、全国警察長官であられる石井長官は、国家公務員並びに地方公務員は争議権は奪われておるけれども、団結権、団体行動権、こういうような基本的権利は認められておる、こういうふうに私は考えますが、この点いかがですか。
  107. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 御意見通りであります。
  108. 坂本泰良

    坂本委員 もう一つ、すわり込みについての警察の御見解をお聞きしておきたいのですが、このすわり込みは、われわれは集団の陳情活動の一つである。従って労働組合でなくて、このごろは陳情には大挙して各官庁に——われわれも利益代表として行くことがありますが、大挙して行ってぜひ聞いてもらわなければすわり込むのだといって長くいることもあるのですが、昨年まではいわゆるすわり込みというのは警察は問題にしていなかった。この程度ならばいいということでやっておられたのです。それをその文書によると、これは違法行為として摘発をするのだ、こういうことが書いてあるわけですが、そういう考えでやられる方針かどうか。なお加えてこのすわり込みは集団の陳情活動であるというふうに考えておられるかどうか、その点をお聞きしたい。
  109. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 すわり込みが集団陳情の一形態であるかどうかということは、人によってそういうふうに考えるのが適当であると思う方もありましょうし、そうでないという方もありましょう。見解が相違するかもしれません。それはともかくといたしまして、すわり込み即すべて警察取締り対象というふうに私ども考えておりません。穏やかなすわり込みによりまして、集団陳情の形態をとるということも、あるいはあり得るかと思います。しかしながらたとえば各官庁においての大臣室の前でのすわり込みというようなことがあった場合、当該官庁の管理権に基いて退去を要求したにもかかわらず退去しないということになれば、これは不退去罪を構成することになりはしないかと思うのであります。そういった場合には、場合によりまして当該官庁の管理者から警察に出動要請がありますならば、われわれとしては出動せざるを得ないという場合もあろうかと思います。いろいろの態様がありましょうから、一がいにすわり込みはすべて警察取締り対象になる、あるいはならないと断言することはできないと思います。
  110. 川村継義

    ○川村(継)委員 関連して簡単にお聞きしたいのですが、長官からお答え願ってもいいし、警視庁の方からお答え願ってもいいのですが、予備隊の出動について私疑念を持ったことがあるのです。予備隊の出動については、何か基準あるいは出動させる場合の手続というのですか、そういうものがあると思うのですが、それを具体的に話してくれませんか。
  111. 江口見登留

    ○江口参考人 予備隊を出動させる必要があります場合には、当然地域における管轄署長から警視庁の警備第一部の方に要請があるわけであります。その要請に基いて適当にどれくらいの人数を派遣するかということをきめるわけであります。大体の手続はそういうことであります。どういう場合に何人出すとか、そういう具体的な点は、一々具体的な場合に判断することになっております。
  112. 川村継義

    ○川村(継)委員 そうすると管轄署長なら管轄署長から警視庁に要請する、それが基準になるわけですね。第一の手続については、警視庁から直接派遣される場合がありますか。
  113. 江口見登留

    ○江口参考人 地元の警察署長が知らないのに警視庁で直接予備隊を出動させるということはあり得ません。
  114. 川村継義

    ○川村(継)委員 そうすると所管の署長が警視庁に要請すれば、警視庁はいかなる場合でも予備隊を出すのですか。
  115. 江口見登留

    ○江口参考人 その要請にいろいろの検討を加えました上でその判断を決定するわけであります。
  116. 川村継義

    ○川村(継)委員 私もそうなければならないとしろうとながら考えておったのですが、こういう事実がある。日にちは忘れましたが昨年予備隊が百名ほど出動したときに、どういう手続でやられたかというと、麹町の署長が警視庁に要請した。そのときには夜おそくでしたか、警視庁の責任者たる者がだれもいなくて、係長級と思われる若い人たちがおった。それで署長から要請がありましたから出しました、そういう話を聞いたのですが、一体警視庁は予備隊を出すときには、どういう場合を考えて、どういう状態であるときに予備隊を出すのか、それはいろいろ考えられますけれども、本日は要請がありましたから出しました、こういうこともあったわけです。われわれは非常に驚いたわけですが、この点について警視庁の責任者として出動については落度があったのではないか、こういうふうに考えたのです。それについてどのようにお考えであるか、その事実についてお聞かせ願いたい。
  117. 江口見登留

    ○江口参考人 その事実とおっしゃいますが、どういう場合のことだったか、私一向に存じませんけれども……。
  118. 川村継義

    ○川村(継)委員 例の年末手当の問題のときに、自治労の人たちが自治庁に集団で陳情に行った。ところがなかなか大臣に会えないので、大臣に回答をもらおうと思って夜おそくなった。ところで自治庁のあの建物を管理しておる人が麹町署長にいつまでも帰らないから帰るようにしてくれという要請があった。そこで署長から警視庁の方に予備隊出動の要請があったと思うのです。夜おそく、十時ごろだと思いますが、たくさんの予備隊を出動させて、そこへ陳情に行っている者を引っぱり出してしまった。それで、その引っぱり出すについては、予備隊を率いて行った隊長がやはり引っぱり出すに該当するという判断をしたのかもしれませんけれども、とにかく、引っばり出したときにけが人を出しておる。そのことを今私が繰り返してどうこう言うのではなしに、夜おそく署長が予備隊を出してくれと言ったら、残っておった当直の若い人たちが、よしきたということで簡単に判を押して予備隊を出したということに対して私は疑問というか、重大視せざるを得ないので、お聞きしているわけです。
  119. 江口見登留

    ○江口参考人 そのときは夜おそくだったものですから、係の人しかいなかった、それで、その係の者がどういう手続でその予備隊を出すようにしたかということにつきましては、私は今詳しく承知しておりませんが、あるいは警備課長あるいは警備第一部長に直ちに連絡をとった上で、その要請がいいと認めて、上司の了解を得た上で派遣したものと考えております。
  120. 川村継義

    ○川村(継)委員 大体私はどういう状態の場合に予備隊の出動が必要かというようなことは、警視庁の責任者が判断しなければならないのではないかとつくづく思うわけです。ところが今私が申し上げましたような事例を考えてみたときに、官庁内に何名集団陳情をされたか知りまんが、そこに百名の予備隊をそのままそっくり出動させて、これを取除くというようなその手続、その判断の仕方というものに非常に疑問を持っておるわけです。それで、予備隊を出動させる場合の基準というもの、あるいは手続はどうなっておるかということを具体的にお聞きしたい、こういうふうに考えて今お尋ねしておるわけです。
  121. 江口見登留

    ○江口参考人 ただいま詳細な事情を心得ておりませんが、軽率にその係だけで判、断して、何人ということをきめて出したはずはないと思います。やはり部長の了解を得て、その要請が正しいと認めて、またそれだけ出す必要を認めて派遣したものであることは間違いないと思います。
  122. 川村継義

    ○川村(継)委員 私の申し上げたようなことがおそらくあってはならないと思うのですけれども、事実そういうことがあったとしたら問題になる。それでこれについては、私は六名かの証人によってわかっている事実を申し上げているのですから、この点については、もう一ぺんその当時のことをよくお調べおきを願いたい。これはまた機会があったらお尋ねいたします。
  123. 坂本泰良

    坂本委員 もう一つお聞きしたいのは、定時出退庁の問題ですが、これは、ほんとうの順法の精神からいけば、やはり定時に出て、定時に帰るというのが当然なことです。ところが、これがいろいろのことで認められていないわけですが、この定時出退庁というものについて、警察庁はどういうお考えを持っておられますか。
  124. 山口喜雄

    山口(喜)政府委員 要するに官公労は争議行為を禁止されておるわけです。従って争議行為あるいはこれに類する行為をして公けの仕事の正常な直営を阻害してはならない。そこでもしも公けの仕事の正常な運営を阻害するということのために、順法闘争という美名のもとにいろいろな行為が行われました場合には、それぞれ国家公務員法に規定がございますから、それによりまして処置されるものと、かように考えております。
  125. 坂本泰良

    坂本委員 その説明がちょっとおかしいと思うのです。争議行為はもちろん禁止されております。定時に出て定時に帰るのがどういう場合に争議行為になるのか。警察庁は争議行為をどういうふうに解しておられるか。ただ大勢の者が一緒に定時に出て定時に帰る、それは法を守っているのだが、それを争議行為だとして、どうして違法だとするのですか。その争議行為の考え方をお聞きしたい。
  126. 山口喜雄

    山口(喜)政府委員 その場合に行政の管理者の方から、たとえばきょうは居残りをしてやってもらいたいという命令が出ることがあり得るわけですね。その場合にはやはりその正常な業務上の命令に従って業務につく必要があるわけであります。その場合に、きょうは定時退庁だということで、みな語らって帰るということは、やはりこれは違反になってくるかと思います。
  127. 坂本泰良

    坂本委員 そういたしますと、やはり業務命令というのは各個人々々に出なければならないと思うのですが、警察は定時出退庁に対する取締りの違反としての対象については、業務命令が各個人に出ているかどうかを十分確かめた上で、この定時出退庁に対する違反になるかならぬかを御判断になろうと思うのですが、そうであるかどうか。
  128. 山口喜雄

    山口(喜)政府委員 その通りであります。
  129. 坂本泰良

    坂本委員 そこで集約したところでお聞きいたしたいのは、この3に、全電通、全逓などの場合に定時出退庁なするというような場合に、作業能率の低下となるような場合は、違反容疑事件の事後検挙に備えて、証拠集めに努力をする、こういうようなことがあるのですが、やはりこういうようなことも警察庁は考えておられるかどうか、これをお聞きしたい。
  130. 山口喜雄

    山口(喜)政府委員 その新聞記事を拝見しておりませんので、何とも申し上げられませんか、そうでなしに、かりに今お話しのような事例がありました場合には、やはり慎重に取り調べまして、もしそれが国家公務員法、あるいは公共企業体労働関係法違反になりますれば、取締りをいたします。
  131. 坂本泰良

    坂本委員 最後にお聞きいたしたいのは、定時出退庁とか、超勤拒否というのは、これはやはり現行の法律の範囲内において、法律を守る行為なんですね。それを業務命令違反として検挙するというようなことは、われわれは行き過ぎだと思うのですが、大臣もおられますから、最後に総括的にそういうことも含めてお聞きいたしたいのは、国家公務員にしましても、人事院が数回勧告をする、政府はその勧告を一つも守らない。しかしながら、一方、この公務員の働く者に対しては業務命令を出して、そうして定時出退庁の問題についても取り上げて、これを違反として検挙の対象にするというのは、これはほんとうに大麻大臣が言われるような、厳正公平の、国民のための警察であるならば——まず全然争議権をなくしたから人事院を設けて、人事院の勧告についてはベースその他をきめなければならないという法律を守っていないのは政府なんですね。それらの点は不問にして、ほんとうに法を守るというのを、業務命令ということでこれを違反だ、検挙をする、豚箱にぶち込むというのは、これは私は警察の厳正公平なやり方ではないと考えますが、大麻大臣はいかがお考えでございましょうか。
  132. 大麻唯男

    大麻国務大臣 どうでしょうかね。とにかく、去年は人事院の勧告を守っておるのですから、それと比較してどうこうときめつけるのは、どんなものかと思いますね。
  133. 坂本泰良

    坂本委員 私はそのどんなものかについての考え方が違うから質問したのです。人事院勧告は、去年はそうでしたが、それ以前三回ほどあったのを守っていないわけですよ。そういうような政府の立場はそのままにして、そうしてこんな通牒を出すというようなことなんかは——これは政府の最高の政策になると思うんですが、これは政府は間違いだと思うわけなんですよ。それの上に立っての取締りですから、それはどんなものかと、大麻大臣がお考えになったと思うんですが、しかし人事院勧告がどんなものかということではなくて、そういうのは政府は守るべきものであるのにそのままにしておいて、そうして警察を使って定時出退庁を業務違反として検挙をするというのはどんなものか。これは私のいうことに賛成されたんではないかと思うわけです。
  134. 大麻唯男

    大麻国務大臣 坂本さんの御質問がどんなものかとこう言っておるわけです。
  135. 坂本泰良

    坂本委員 時間もたちましたから、私いろいろお聞きをいたしましたが、やはり大麻大臣は円満福徳な方で、長年の政治経験を持っておられるし、今最後にどんなものかと言われたように、この三月攻勢の取締りを実現しないと——ここに警察庁長官以下責任者が来ておられますから、やはり公安委員長であり警察担当の大麻大臣が言われたように、ほんとうに法を守り違反者を取り締るについては、七人の罪人をのがすとも一人の無事の民を罰することなかれということもわれわれは聞いておるわけですから、三月攻勢だ、春闘弾圧だという、こういうさなかにあって、官公労の職員初め一般の労働者が、その生活の幾分でもよくなることを期待し、要望しておるわけですから、この要望にそむかないような警察取締りをやっていただきたいと思うのです。私はそれをお願いすると同時に、われわれが不当弾圧対策特別委員会などというものを作って、いやしくも警察と対立をしてやるようなことがないような警察の行き方をやっていただきたいということを要望いたしまして、私の質問を打ち切ります。
  136. 大麻唯男

    大麻国務大臣 坂本さんのお心持よくわかりました。しかしちょっと誤解されては困りますがね、私どんなものかと言ったのは、あなたが人事院の勧告とこの勧告を一緒にして言われるのは、ちょっと無理じゃないかという意味で申し上げたんですから、それは誤解ないようにお願いします。  それから、あらためて申し上げますが、警察は、労働運動の正常、健全なる発達については非常に念願をしておるものでございます。それで決してへんぱなことはいたしません。厳正公平に、適切なる取締りをいたすつもりでございます。しかし、違法になったらこれぐらい先、間違っても許さぬというわけじゃございませんけれども、違法なことに対しては勇敢に取締りはやる。これが警察の本来の姿だろうと思いますから、これだけはどうぞお含み置きを願いたいと思います。
  137. 坂本泰良

    坂本委員 それで、やはり犯罪になるかならぬかは、これはまた法廷に行って決することですが、私は、警察の職務は裁判所とは違いますから、その取締りの行き過ぎによって国民を萎縮させ、再び昔のような暗黒警察になっては困るから、そういうふうにならないようにやっていただきたいと思うのです。
  138. 大麻唯男

    大麻国務大臣 よくわかりました。坂本さん、政府が警告を発しましたのはおどかしではなくして、間違いのないようにしようというので警告を発しておるのだと思いますから、そのつもりでお願いします。
  139. 大矢省三

    大矢委員長 加賀田進君。
  140. 加賀田進

    ○加賀田委員 治安問題に対してはまだいろいろ論議があると思うのですが、時間も相当経過いたしましたので、簡単に御質問いたしたいと思いますから、大臣並びに長官も、簡潔に要点だけを御答弁願いたいと思います。  先刻申し上げましたいわゆる地方団体の寄付金の問題でありますけれども、これは地方財政の赤字の原因一つとして、ずっと国会でいろいろ論議されて参りました。そこでそういう地方行政の意思を体しまして、私の記憶するところでは昨年の七月七日だったと思うのですが、国家公安委員会を開いて、その席上で本問題に対する善処を審議されたと聞くのであります。それに基いて、七月二十一日かに次官通牒が各地方公安委員に発せられたと思うのですが、特に大臣にお聞きいたしたいのは、七月七日の国家公安委員会における地方行政の寄付金に対する要請の善処に対して、どういうような決定をされたかお伺いいたしたい。
  141. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 ただいまお話通り、昨年の七月二十一日付をもちまして、いわゆる財政援助を目的とする警察後援会——名前はいろいろありますが、そういったものを廃止するように、そうしたものから警察は寄付を受けないようにという通牒を出したのであります。警察に対する寄付の問題は、私ども以前から頭を悩ましておったのであります。これは警察の公正なる執行を疑われるようなことも間々あるのでありまして、民間のいかがわしい人から寄付を受けるというようなことは厳に抑制して参ったのであります。昨年七月に出しました通牒による寄付の禁止は、そうしたいかがわしい個人から寄付をもらうという問題でなく、さらに進みまして、先ほどお話通り地方自治体が今日赤字で非常に困っておる際に、警察が管内の市町村に寄付金をお願いして、それだけ地方自治体の赤字の原因を作っておるということであってはまことによくないことであります。もともと警察が本来必要とする費用は、当然今日で申しますならば国費ないしは都道府県費でまかなわれるべきものでありますので、そうした正常の姿と申しますか、理想の姿に持っていくべくお互い努力しようじゃないか、そういう意味で年度半ばに、それにかわる財政の裏づけもしないで寄付を受けることをやめるということは酷であるけれども、この際思い切ってやろうじゃないかということで、警察後援会等からの寄付を受けることを禁止したわけであります。当時私どもの調査によりますと、もっぱらそうした財政援助を目的とするいわゆる警察後援会式のもののある県が三十五府県ありまして、それが先ほど申しました七月二十一日付の通牒に基きまして、各府県とも誠意を持ってこの問題の解決に当ってくれまして、おおむね昨年の十月末をもちまして、いずれも廃止をいたすというふうに承知をいたしておるのであります。これが何がしかでも地方自治体の赤字財政克服のために役に立っておるとしますれば、私ども非常に喜ばしい次第であると考えておるわけであります。
  142. 加賀田進

    ○加賀田委員 今の長官お話では、三十五府県において十月末をもってそうした外郭団体が解散したので、大体そういう点はないだろうという御説明でありますが、実は少し名称を変えて同じような外郭団体ができて、実質的に地方公共団体並びに住民に寄付を仰いでおるという事実が各地にあるわけであります。だから、従来作られておりましたいわゆる防犯協会とか治安協会とかいうものは一応解散しましたけれども、引き続いてそれによく似た名前の組織ができて、地方財政圧迫の原因にもなっておるし、特に地方の住民にも寄付を仰いでおるという現状があるわけですが、そういう点に対して長官として調査されたかどうか説明をしていただきたい。
  143. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 先ほど私申し上げましたのは、もっぱら財政援助を目的とする団体を廃止して、そうしたものから警察が寄付を受けるということはやめようということにいたしたのでありまして、たとえば交通安全とか防犯等の、本来そうした目的を持って団体を構成しておるというものは、これはまたいわゆる民警一体と申しますか、そういった協力を外部から警察が受けるということは、これは非常に望ましいことでもありますので、そうした団体まで廃止するということは、むろん考えておりません。ただお話のありましたように、いわゆる警察後援会などのもっぱら財政援助を目的とする団体の廃止をしたために、当然許されるところの交通安全協会あるいは防犯協会といったようなものに名をかりて、そこに依然として財政援助を受けるような予算を組んで、そこから警察が実質的に依然として財政援助を受けるということであっては、これは何のために後援会を廃止したかわからないということになります。私たちとしましては、そういう点は厳に注意を喚起し、そうしたことのないようにしていきたいと思っております。今日その実情はどうなっておりますか、私ただいま詳細なデータをここに持っておりませんから、正確にお答えできませんが、そうしたことのないようにしていくという決意だけ披瀝いたしまして、お答えといたします。
  144. 加賀田進

    ○加賀田委員 非常にけっこうな決意でありますが、事実はやはりそういうことが行われておるわけです。これは私も各地方を回りまして、そういう実態を見て参りました。一つの例を申し上げますと、これは私自身が調査いたしましたのですが、奈良県の大和郡山市におきまして、すでに九月の三十日に防犯協会というのが、その次官通牒に基いて解散をいたしております。これは三十年の当初予算で約五十万円の予算を計上いたしております。それで三十日に解散したのはいいのですが、その翌日の十月一日に、引き続いて防犯協会に儀をつけただけの防犯協議会というのが現在発足いたしております。これが今申し上げましたように、警察機能を援助するということだけでなくて、やはり地方団体にこういう財政的な負担金を要請いたしております。そこで十月の二十日に大和郡山市の市会におきまして、追加更正予算というものが提出されまして、それを見ますと、新たに設けられました防犯協議会には、二十七万二千五百円かの負担金が予算として計上されておるわけであります。こういうことになりますと、前の当初予算の中で、こういう協会に対して五十万円のいわゆる負担金が計上された、その金がどこへ行ったかといいますと、三十日に解散するんだからといって、年度半ばにおいて、その五十万円を全部使ってしまった。そしてあらためて二十七万円ほどの負担金をこの追加更正予算に計上しなければならないという現実が起っておるわけであります。これでは逆効果であってそういう次官通牒に基いて、五十万円で年度を終ったものが、合計七十七万円以上の負担を負わなければならぬという現状が現在起っておるわけであります。これはやはり今長官の申された趣旨と全く反した、百八十度の転換をいたしておるという現状が事実であります。これに対して長官としては今後どう対処されるか、一応お伺いいたしたいと思います。
  145. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 先ほど申し上げたことを繰り返すことになりますので、簡単に申し上げます。財政援助をもっぱら目的とする後援会を廃止をした反面、他の団体名義に名を変え、依然として実質的に変りのないことをやるのでは、何ら意味をなさないので、私といたしましては、厳にそういったことは注意を喚起いたしまして、是正させたいと考えております。おそらくただいま提示されたものは、例外中の例外であろうと私は考えたいと思うのでありまして、全国にそうそんなことがざらにあるとは考えておりません。あの通牒の趣旨を各府県の本部長は十分に体しまして、まじめに取っ組んでこの問題の解決に当ってくれているものと確信をいたしておるのであります。ただ遺憾ながら二、三そういう例外的な事案があるとしますならば、今後十分是正をさせたい、かように考えております。
  146. 加賀田進

    ○加賀田委員 長官が示達を流されてもなかなかそうはいかない。労働組合に対する示達は率直に拡大解釈して、忠実に守られるけれども、こういう示達に対してはなかなか守り切れないという現状だろうと思うのです。なおこの大和郡山市の問題で、さらに今度あらためて警察庁の庁舎を建設するためにいろいろ問題が紛糾いたしております。この市に対して一千坪程度の土地を無償で提供してもらいたいというような要求も、あるいは警察の幹部の方が手分けして住民に寄付を仰いで回っておる、しかもその住民の中で特殊飲食店とかあるいは質屋とか、特に風俗営業取締りで一カ月ごとに更新する警察の力によって営業を左右するというような背後的な圧力をおかけなさっておる。これは、表面的には寄付は個人の自由意思であって一各個人の希望に基いて寄付をされるのは何ら拒否する必要はないじゃないかというような事由になると思いますが、そういう警察のいわゆる権力を背後に持ってするならば、強制的な寄付という形が実際非常に起ってくると思います。私はこれは具体的な資料を持っております。各一軒当り一万円とか、あるいは露天商人には三十人平均一万円というようなことでいろいろなされておるわけなんですが、地方財政法の第四条を見ても、やはりこういう強制的な徴収、それに相当する行為を含むものは禁止されておる。これは財政法上にも影響いたしておりますし、往々にしてこういう形で従来もなされ、旧警察のそういう態度が地方住民に非常に圧迫を来たしておる。一方では労働組合には大なたをふるって、お前たちはそういう争議行為をやっちゃいかぬとかいうような形で、右手には大なたをふり回し、左手はうしろへ回して住民からしぼり上げているという印象を国民に与えては、民主警察の実態というものが危ぶまれるじゃないか。しかもこういうことが現在起っておりますので、長官としてこの際明らかにしていただきたいと思います。
  147. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 個人、特に業者から寄付を求めるというようなことは前々からやかましく禁じております。ただいまお述べになりましたのは、私はきわめて少数の遺憾な例外的事実であるというふうに考えたいのであります。そうしたことが全国にざらにあるというふうには考えないのであります。もしそうしたことが、二、三の例外でありましてもあるということは決して好ましいことではありませんので、今後さらに注意を喚起しまして、そういったことのないように努めて参りたいと思っております。
  148. 加賀田進

    ○加賀田委員 長官から大体の意思を伺ったのですが、これは重大な問題でありますから、今申し上げたような内容に対して、大臣としてどう善処されるかということを明確にこの際言っていただきたいと思います。
  149. 大麻唯男

    大麻国務大臣 寄付金に関しますることは、石井君の申した通りであります。
  150. 門司亮

    ○門司委員 大臣がそういうお考えなら、もうちょっと聞いておきたいと思います。もしそうした行為があるならば、事実を差しとめるというお考えがあなた方にありますか。
  151. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 事実を差しとめるとおっしゃったのですか……。
  152. 門司亮

    ○門司委員 わからなければもう少し詳しく話しますがね、たとえば今指摘されたような、警察としてははなはだ好ましからざる行為を行なっておる。警察の全体とは申しません。今長官も言ったようにごく少ないだろうが、もしそういうものがはっきりあるということになれば、そういう行為をしてはいけないということを——それらの団体に長官責任を持ってその行為を中止するよう勧告されるか、あるいは中止を命ぜられるというお覚悟はございますか。
  153. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 私が直接そうした団体に呼びかけるということはできないと思います。私は都道府県公安委員会ないしは都道府県本部長に対して、そうした点を是正するように注意を喚起し、都道府県公安委員会ないしは都道府県本部長の責任において、そうした問題を起してもらわぬようにする、こういう順序であると思います。
  154. 門司亮

    ○門司委員 もちろんあなた方は民間の団体に注意をするわけにはいかない。あるいはできるかもしれぬ。あなたは違法行為は取り締る取り締るとさっきから盛んに言われておるのですから、違法行為は取り締ることは当然だと思うか、争議ばかりが違法行為じゃありません。違法行為はたくさんあります。警察の立場で厳正に、そういう行為は地方財政法にも違反するということがわかっておるならば、それをあなた方は警察を通じて中止させる。これはあなた方自身が問題なんです。これは警察として一番大事なことです。だから、当然そういうことは地方財政法に違反するからやってはならないということを、当該警察長なり、あるいは本部長なりに厳命されて、もし違反者があるならば、それを厳重にあなた方は取り締られてもけっこうだと思います。そういう御意思があるかどうかということなんです。
  155. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 先ほど申し上げました通りでございますが、外部の寄付に依存するということは、決して好ましいことでないからこれをやめよう、前々からこの問題はわれわれ考えております。個人、業者等から寄付をもらうということはかねてより抑制をいたしておったのでありますが、それ以外に、さらに市町村と自治体に負担をかけることすらやめようというのが、昨年の七月の通牒でありまして、いわゆる後援会等を廃止せしめたのはそういう意図にほかならないのであります。この考え方を持ちまして今後ともやっていくつもりでありますから、ただいまお話のありましたような問題が、もし具体的に起りますならば、そういう観点から十分善処したいと思っております。
  156. 門司亮

    ○門司委員 どうも警察は逃げられて困る。悪いなら禁止したらいい。あなたの威令が事実上行われないのですよ。法律の違反もありますし、あなたの威令も行われない。従って悪いことをやったら警察庁が指令を出して、それに違反する署長があり、本部長があったら取り締ったらいいじゃないか。労働争議はかり取り締るのが警察の能じゃないでしょう。私はそういうことでもう一応この際はっきりしておきたいが、たとえば今お話になったように、警察署を建てる場合の費用の支出責任者はたれかということです。警察署というものはたれが費用を出して建てるべきであるか。一体たれが建てるのですか。その辺を一つはっきりしておいてもらいたい。そうすれば、たとえば今の一千坪を寄付してもらいたいというような行為がいいか悪いかというようなことがわかってくる。私は今日の警察法の建前からいけば、警察署を新しく建てる場合の経費は国が負担すべきだと思うのですが、一体どうですか。たれが一体責任を持って負担すればいいのですか。それ一つこの際はっきりしてもらいたいと思います。
  157. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 警察庁舎を建てる金はこれは都道府県費であります。ただそれは補助金の対象になっておりますので、二分の一国の方から補助する、こういう建前になっておるのでありまして、庁舎の建築に対して前々から寄付が多額に民間からとられるということで、いろいろ問題になっておるようであります。今後私どもはそういったことのないように、警察庁舎の建築につきましても、本来あるべき姿に持っていきたい、かように考えております。
  158. 門司亮

    ○門司委員 そうすると、こう解釈していいですか。今のお話で、県費でこれを建てるのがほんとうだということになりますと、たとえば市に一千坪寄付してもらいたいとか、あるいは市から幾ら金を出してもらいたいということは違法な行為だということにはっきり解釈して差しつかえありませんか。
  159. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 一がいに違法とは言えないのじゃないかというふうに考えるのであります。お互いの話し合いで円満に作る場合もあるじゃないかと思います。
  160. 門司亮

    ○門司委員 私はそういうところがけじめがはっきりしていないから、その下の問題がいろいろ起ってくると思う。県が負担すべきものなら県が負担したらいいじゃないか。当該市町村に一体何で負担をさせるのか。国が処置すべきものは処置すればいい。そういうところに明確な線を引いておらないから、さらにその下へ行っても明確な線が引けないのです。間違っておるなら間違いということをはっきりしておいて、市町村はそういうものを出してはいけない、県の支出であれば県の支出であるということをはっきりしておきたい。国の支出に対しては国の支出とはっきりしておきたい。これは、あなた方はどうお考えになっているか知りませんが、決算を調べてごらんなさい。どんなものが出てきているか。地方財政の赤字の原因はこれが一つあるのですよ。二十八年度だけでも、県が国の施設または国の機関に寄付した総額は二十四億であると言われているけれども、市が国の機関または国の施設に寄付した額は四億ないし六億ある。さらに市が都道有県に寄付をした額というものが二十数億に上っておりましょう。これは地方財政計画にもなければ正しい意味の市の経理の中に載ってこないものである。これがやはり地方財政を毒している一つの大きな問題なんです。だから県が建てるなら県の建てるものに対して国の補助があって、それでものができ上るのであります。何を好んで一体市に寄付をさせるのですか。国がなぜ責任を負わないか。自分たちの責任を回避しておいて、そうしてそれが市や住民に負担をかけておいて違法でないという理屈が一体どこにあるのです。警察がほんとうに厳正公平であるということを公安委員長はしばしば言われておりますが、厳正公平ならその辺も一つ厳正公平にやったらいいでしょう。そうして地方財政に迷惑をかけないようにした方がいいのです。迷惑をかけるということは、それだけ警察の厳正公平な態度が傷つけられるということなんです。だからそういうことに対しても、断じて市町村にそういう寄付を受けてはならないということをはっきり通達しなさい。そうして言うことを聞かなかったらそれを処罰なさい。労働者だけがあなた方の取り締る対象ではないのですから。それをおやりになる意思がありますか。
  161. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 先ほどお答えいたしました通り、理想としましては国費ないし都道府県費をもって警察庁舎を建てるべきものでありますので、そういう本来のあるべき姿に持っていくべく私たちは今後努力したい、かように申し上げておるのであります。ただ地元で非常に熱意を持っておられまして、ぜひここに庁舎を作ってもらいたい、ついては土地その他で協力をするといったような切なる申し出のある場合もあるかと思うのであります。そうしたものをむげに断わるのもどうかというようなこともあるいはあるかと思いますが、しかしなるべくそうしたこともなく理想の姿で今後はやりたい、かように考えておるのであります。今日まで警察庁舎の新築、増築等につきまして、ただいまお話のようにいろいろ芳ばしからざる状況のあったことは、私も十分承知をいたしておりますので、今後はそういうことのないように努めて参りたいと思っております。
  162. 門司亮

    ○門司委員 目と鼻の先にあるからはっぎり教えておきましょう。神奈川県の川崎警察署はどうですか。すぐそこにあるのですよ。自動車で行ってごらんなさい。国道のまん中に警察署が依然として残っておってじゃまになるから道路の拡張ができない。警察署だけがぽこんと残っております。消防署の火の見やぐらがあってこれを片づけなければどうにもならない、そのために移転を迫られておる。事実ははっきりわからないが、新聞の報ずるところによりますれば、国と市と県の負担区分がきまったから新しい警察ができたと書いてあるのです。そうすれば負担区分がきまったということは何ですか。切なる希望だというけれども、地元の切なる希望ではなくて、これは国道の上にある警察であって国の方から切なる希望があったかもしれないが、何も地元から切なる希望があったわけではないと思う。うそだと思ったら行ってごらんなさい、すぐそこだから。こういう問題を今のようなことで私はのがれられるというところに問題が残されると思う。少くとも今日の警察はそういうことでなくして、やはり地方に迷惑をかけてはならないという、私ははっきりとした建前にあなた方はお立ちになることがよいと思う。取り締るところは厳重に取り締り、線を引くところは厳重に線を引いておかないとだんだんと法が乱れます。でありますから一つ今のようなことでなく、切なる願いとか何とかというようなことを言って地元に競争させるようなことはやめて、警察が確固とした方針で、ここに警察署を建てる、交番を建てるがよいという方針があるなら、その通りお出しになって、おやりになる方がよいと思う。その方が警察行政がゆがめられない、切なる願いがあるというようなことで、地元の意思によって警察のそういう施設が動かされていくということは、厳正な警察行政でないと思う。曲げられた警察行政だと思う。そういうことのないように一つはっきりと取り締る、それをやらせないということを一つここで言っておいて下さい。そうでないとこの結末がつきそうもありません。
  163. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 御意見十分拝聴いたしました。理想的なあり方に持っていくべく最善を尽したいと思っております。
  164. 加賀田進

    ○加賀田委員 抽象的に努力するということなんですけれども、今言ったようなケースはあちらにもこちらにも残っております。でありますから七月に出された次官通達も何らその後の対策が講ぜられていない、あらためて私は質問いたしましたのは、そういう事態でこの次官通達の趣旨が十分反映されていない、だからこの際長官としてはあらためてそういう問題に対して何らかの処置を講ずるかどうか、その点を伺っておきたいと思います。
  165. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 いろいろ御例示をいただきました点も十分に参酌いたしまして、注意を喚起いたしまして、さらに善処したいと思っております。     —————————————
  166. 大矢省三

    大矢委員長 警察に関する件はこの程度にいたしまして、昨十四日付託されました奄美群島復興特別措置法の一部を改正する法律案を議題とし、政府当局より提案理由説明を聴取いたしたいと思います。太田国務大臣
  167. 太田正孝

    ○太田国務大臣 奄美群島復興特別措置法の一部を改正する法律案につきまして、提案の理由並びにその内容の概要を御説明申し上げます。  昭和二十八年十二月、終戦八年を経過して復帰いたしました奄美群島の復興を促進するために、同群島の特殊事情にかんがみ奄美群島復興特別措置法が制定され、復興事業が進められて参ったのでありますが、昨年本群島の行政分離中におけるガリオア債権などが、アメリカ合衆国より日本政府に移転されましたので、この債権を出資して、復興事業等に必要な金融措置を円滑に行うために、同法の一部が改正され、奄美群島復興信用保証協会が設立されたのであります。  同協会は、発足以来その業務の適切な運営に努めてきているのでありますが、先般の名瀬市の大火もあり、資金需要が著しく増大している実情にかんがみ、必要な保証基金を確保するために、国は、同協会に対して二千五百万円を出資することとし、復興事業に必要な金融が円滑化をはかり、復興事業の遂行に遺憾のないよう措置を講ずることといたしたいと存ずるのであります。  以上この法律案の提案理由及びその内容の概略について御説明いたしたのでありますが、何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御賛同あらんことを御願い申し上げる次第であります。
  168. 大矢省三

    大矢委員長 本案に対する質疑は後日に譲り、本日はこの程度にとどめて次会は公報をもってお知らせいたします。本日はこれにて散会いたします。    午後四時三十分散会