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1956-10-11 第24回国会 衆議院 大蔵委員会 第52号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年十月十一日(木曜日)     午前十時四十一分開議  出席委員    委員長 松原喜之次君    理事 有馬 英治君 理事 小山 長規君    理事 荷見 三郎君 理事 藤枝 泉介君    理事 春日 一幸君       淺香 忠雄君    生田 宏一君       奧村又十郎君    吉川 久衛君       竹内 俊吉君    内藤 友明君       古川 丈吉君    坊  秀男君       前田房之助君    横川 重次君       有馬 輝武君    石山 權作君       平岡忠次郎君    横錢 重吉君       横路 節雄君    横山 利秋君  委員外出席者         総理府事務官         (南方連絡事務         局長)     石井 通則君         外務事務官         (アジア局第一         課長)     針谷 正之君         大蔵事務官         (大臣官房長) 石原 周夫君         国税庁長官   渡邊喜久造君         郵政事務官         (貯金局長)  加藤 桂一君         参  考  人         (沖縄外地引揚         者連合会事務局         長在外資産補償         獲得期成会事務         局長)     比嘉 一雄君         専  門  員 椎木 文也君     ————————————— 本日の会議に付した案件  物品税法を廃止する法律案春日一幸君外十二  名提出衆法第一五号)  酒税法の一部を改正する法律案春日一幸君外  一二名提出衆法第一六号)  税制に関する件  外国為替に関する件     —————————————
  2. 松原喜之次

    ○松原委員長 これより会議を開きます。外国為替に関する件について調査を進めます。本日は春日委員よりの要求によりまして、参考人として在外資産補償獲得期成会事務局長比嘉一雄君の出席を求めております。  比嘉君には、非常に困難な事情のもとにある沖縄からわざわざ上京されまして、今日御出席をしていただいたことに対して、厚くお礼を申し上げます。  それでは質疑を許します。春日一幸君。
  3. 春日一幸

    春日委員 比嘉君には、沖縄に在住いたしておりまする日本国民にして、はなはだ困難な状況にありまする諮問題解決のために、一身を挺して非常な努力をされておりますることについて、非常な敬意を表するものでございます。先般御陳情を受けまして、在外資産処理その他在外預金処理、なお郵便貯金支払い促進等に関する諸問題について、本委員会はそれぞれの関係当局に対して、これが解決促進方を強く要望いたした次第でもありますが、その後それらの諸問題がどういうような工合に現地において処理をされておりましょうか。この機会にその概要について御説明を願いたいと存じます。
  4. 比嘉一雄

    比嘉参考人 原稿を朗読いたしまして、説明にかえさしていただきたいと思います。「宿命島沖縄に住む外地引揚者訴え」と題しまして、お話し申し上げたいと思うのであります。  御紹介にあずかりました比嘉一雄であります。先生方には、日夜政務御多端にもかかわらず、われわれのために貴重なる時間をきいていただきましたことに対し、沖縄在住の十五万、約三万世帯外地引揚者にかわって衷心より感謝申し上げるものであります。  では、宿命島沖縄に住む外地引揚者訴えと題しまして、お話を申し上げることにいたします。  先生方の御記憶にいまだ新しいことと思いますが、不肖私は、去年の十月以来、沖縄在住の全外地引揚者代表いたしまして、生活苦にあえぐ子が御両親に御相談のつもりで上京すること、去る五月とこのたびで都合三回にわたって上京し、苦しんでいる引揚者の諸問題について御相談申し上げているのであります。まず、まっ先に先生方の親心によって解決していただいた預貯金問題についてお礼を申し上げたいと思うのであります。この預貯金問題は、いまだ支払いの段階に至っておりませんが、南方連絡事務局の御依頼によって、近々に支払うべく、もうすでに十月五日から調査を始めておるようでありますので、あらためてお礼を申し上げますとともに、御安心下さいますようお願い申し上げる次第であります。  では未解決のまま残された問題について、御相談願いたいと思うのでありますが、その残された問題ということは、沖縄在住のわれわれ外地引揚者に対して、特別援護策を講じていただきたいということであります。私が申し上げる特別援護策ということは、終戦後設けられました引揚援護法によって、厚生省において引揚者生活更生のため、無担保で一世帯三万円ないし五万円貸し出された更生資金を、沖縄におるわれわれにも今からでも貸し出していただいて、本土におられる引揚者と同等に本国政府の恩情に浴させていただきたいという意味なのであります。この更生資金実現こそ、私たち代表の上京した目的であり、また重大使命なのであります。どうぞ諸先生方、身売りした子に愛の手を伸ばす父母の御気持になっていただいて、この更生資金実現させていただきますよう、重ねてお願い申し上げる次第であります。  もし引揚後十年も過ぎた今日、更生資金ということが筋が通らないということであれば、形を変えてでも御援助願いたいのであります。ぜひとも特別援護策を講じていただきたいとしつこくお願いしなければいかぬということは、御承知のように、本土におられる外地引揚者方々は、沖縄におるわれわれとは全く事情を異にするからであります。本土の場合は終戦直後から、政府におきましても引揚援護法が設けられると同時に、政府の中に援護局があって、十分とはいえないまでも、常にあたたかい手が差し伸べられており、国民金融公庫に行けば、無担保生業資金として更生資金が借りられたということも、本土におられる引揚者方々の特典と申さなければならないのであります。その上、引揚援護会という民間団体や、その他個人的にも同情が守せられているのであります。ところが沖縄におきましては、そういった法律もなければ、全住民戦災者であるために、民間団体であろうと個人であろうと、だれ一人われわれに同情を寄せるゆとりはないのであります。これだけ申し上げても、本土におられる引揚者沖縄にいる外地引揚者生活状況とを比較しても、いかに悲惨なものであるかが御想像できることだと思うのであります。さらに申し上げますならば、本土方々は負けて裸で引き揚げ自分の家や財産はないにしても、親戚縁者には家や財産が残っているのであります。広島長崎の場合も、都市地区においては人命財産も焼き払われて、生き残ったわれわれからして見れば、原子爆弾のためになくなられた方々に対し何ともいえない気の毒な気持を起すということも全国民の人情でなければならないのであります。でも広島長崎のごときは、土地だけは完全に残っているのであります。  ところが、沖縄の場合は、県下ほとんどが人命財産を失った上に、いまだ米軍から次ぎ次ぎと土地も取り上げられつつありますことも、全国民承知通りであります。皆様わが国戦前国策を思い出していただきますれば、さぞ御納得のいくことだと思いますが、戦前わが国国策は、南進国策とか海外発展とかいいまして、外務省拓務省は、海外におったわれわれ在留邦人に向って、今おる土地に根を張って、わが国海外発展のために、新日本建設のために、その土地開拓事業全力を入れよといい、母国に送金する必要はないといって指導してきたのが、当時の日本政府移民政策であったとするならば、当時も今日も日本政府に変りがないゆえに、敗戦によて海外から裸で引き揚げて苦しんでいるわれわれ外地引揚者に対する全責任は、政府が負うべきであると断言してはばからないものであります。  今度の敗戦のため、三府四十三県という四十六人兄弟のうち、沖縄が一番犠牲になっているということに対しましては、全国民だれ一人として否定することはできないはずであります。よって私は、沖縄在住外地引揚者に、特別援護策として、早急に更生資金貸付、あるいはそれにかわるべき援護措を実施していただきたいとお願いしておるのであります。なお南洋群島やフィリピンからの引揚者が多数であるために、子供四、五人をかかえて困っている未亡人や、息子や嫁が現地で戦死したために、四、五人の孫を育てるのに苦しんでいる六、七十才以上の老人家庭がはなはだしく多いということも、御参考のために申し上げておきたいのであります。  しかし、申し上げましたごとく、敗戦のためにこういった悲惨な目にあっていることは、母国日本再建に偉大なるプラスのあることも認識していただきたいのであります。同時に四十六人兄弟のうち、一番親のためになっているということもわかっていただけば幸いであります。なぜそう申し上げるかと言いますならば、かりに鹿児島でできる大根や菜っ葉をどれだけ大阪や東京に運んでも、外貨獲得にはならぬと言うことも皆様承知通りであり、戦前沖縄は、それ相当野菜肉牛鹿児島や神戸に出しておつたのであります。ところが今日の沖縄は、野菜作りに適しておった土地の良いところは軍用地にとられ、食べ余して県外に出しておった肉牛は、アメリカ人大量消費によって、住民が食べて余るどころか、とても足りなくて、野菜類やその他日用雑貨一切が本土よりの輸入となっている現状であります。でありますがゆえに、全住民が朝から晩まで安い賃金でアメリカにこき使われてかせぐ金は、ほとんど生活必需品代となり、ドルになって外貨として母国に送られていることも御承知願いたいのであります。戦後の沖縄の買切面と日本対外買易面を見れば、沖縄母国再建にいかに役立っているかがはっきりすることと思うのであります。正確の数字を持ち合せていないということも残念ではありますが、大略申し上げて御参考に寄与することができますれば幸いであります。  沖縄本土からの輸入額は七千万弗に対し、沖縄から本土への輸出はわずかに七百万弗にすぎないのであり、戦後日本対外貿易によるドル獲得の面から、比率的にいってアメリカが第一位で、沖縄が第二位を占めているようであります。という意味で、去る五月の国会のとき、大蔵委員会社会労働委員会において、私は父よ身売りしている子に愛の手を伸ばせと訴えたのであります。  次に、人口問題の解決策として海外移民の送り出しを、旅費資金の面、あるいは事務面についても本土の他県並に取り扱っていただきたいことを切に御願いしてやまないものであります。三十万人しか収容できない島に、現在人口が八十三万に、毎年の自然増加が二万人以上になっておりますので、大量移民の送り出しが急を要するのであります。沖縄移民実現のために相当の経費を要することでありましようが、沖縄現地出身外務省嘱託を任命していただきますよう、特にお願いする次第であります。  結論といたしまして、先ほどから申し上げましたごとく、われわれ外地引揚者が再び海外進出実現を見るまでの食いつなぎとして更生資金もしくは特別援護措置早期実現を賜わりますよう繰り返しお願いし、なおついでに申し上げたいことは、今後もし南方地域遺骨収集団を派遣なされる場合は、沖縄代表も参加できるようにしていただきますよう特にお願いするものであります。  最後に全国外地引揚者が十年も待ちわびている、在外財産暫定補償措置を来年度予算に間違いなく実現させていただきますよう、全国引揚者の一員として特にお願いし、以上申し上げて諾問題解決促進方を折り入ってお願いして、私の話を終ることにいたします。  弱輩の意見をお聞きとりいただきますれば、小生無上の光栄と存ずる次第であります。まことにありがとうございました。
  5. 春日一幸

    春日委員 よくわかりました。比嘉君の御陳述は、沖縄に在住する日本国民に対して、更生資金貸付を行なってくれという一点に集約されるかと存ずるのであります。国のまつりごとが、特に沖縄に何ら及ぼされることなくして、沖縄に在住しておりまする日本国民同胞諸君がはなはだ惨たんたる状態にさらされておるということにつきましては、まことにお気の毒にたえないのでありまして、私ども国政に参画をいたしておりまする一個の国会議員といたしまして、まことに責任を痛感いたしておる次第であります。今後この御要請に基きまして政府を鞭撻し、さらに国会理解を深めつつ、御要請実現のために全力を尽したい、こう考えますので、今後とも一つなお現地事情について、国会並びに政府に対してその実情があまねく理解できまするように、一そうの御努力をお願いいたしたいと存ずるのであります。  そこでこの陳情に関連をいたしまして、政府関係当局にお伺いをいたしたいと存ずるのでありまするが、この比嘉君の陳情は、沖縄に在住する日本国民に対する更生資金貸付の一点にあると存ずるのであります。しかもその主張の根拠となるところは、日本国内地に居住をいたしておりまする日本国民に、その引揚者戦災者生活困窮者に対しては、それぞれ更生資金貸付が行われておるのであるから、従って法律の前に国民平等であるという理念の上に立って、日本国民である沖縄に在住する沖縄住民に対しても、同様の法律救済をしてくれ、こういうところにあると存ずるのであります。従いまして、この際国民金融公庫更生資金貸付をされるに至りました沿革、それから現在のその概況、こういうものについて、一つその概略でけっこうでありまするから、この際お述べをいただきたいと存じます。
  6. 石原周夫

    石原説明員 ただいま手元に、今春日委員お尋ね数字を持ちませんので、至急作りまして委員会の方にお出しをいたしますが、大体の要旨は、この御陳情の点にもございましたように、一世帯当り三万円であったと思いまするが、引揚者の方で、引き揚げて来られまして生業資金の要る者に対しまして、当初は府県を経由してお貸し付けをいたしたと思うのであります。それを国民金融公庫ができるようになりまして、これを国民金融公庫の方で引き受けまして、国民金融公庫においてその事務を取り扱って参っておるわけであります。現在相当程度回収をいたしておるように思うわけでありまするが、それらの正確な残高、どういうような回収状況になっておるかということにつきましては、至急表をお作りいたしまして提出をいたしたいと存じます。
  7. 春日一幸

    春日委員 私ども調査によりますと、ただいま官房長から御答弁のありました通り昭和二十一年、終戦直後引揚者戦災者生活困窮者に対する国の援護措置といたしまして、このような措置が講ぜられまして、その後三十年度の実績といたしましても、相当の額に上っておるのであります。三十年度におきましては、申し込み件数は二万七千五百件、金額で十億五千六百万円、貸付を行いました実績にいたしましても一万五千二百二十五件、金額で四億七千五百万円、相当金額を動員いたしまして相当効果が上っておると存ずるのであります。そこで比嘉君が主張されておりますように、沖縄に在住しておりますこれらの日本国民も同等の救済を、要求しておるということは、最近において沖縄日本との関係が、いろいろな委員会論議を通じて明らかになっておりますことは、すなわち沖縄施政権はないけれども、しかし潜在主権というものが日本にある。沖縄在住住民は、これは日本国民である、日本国籍を保有する、こういうことが実際厳然たる事実として、いろいろな論議を通じて明らかにされておると存ずるのであります。こういうような見解からいろいろ判断いたしますと、当然沖縄に在住しております日本国民に対しても、やはり同様の援護措置を今からでもとにかくおそくはないので、特にまた彼らの困窮状態がはなはだしく、そうして早急に何ら解決されるめども立っていないので、従って本国責任において、当面しておりますこれらの困窮状態を解除するための諸策が講じられなければならないと私は考えるのでありますが、これに対する政府見解はどうでありますか。
  8. 石原周夫

    石原説明員 先刻来お話しのございました現地実情は、とくと拝承いたしたわけであります。こういうような困窮状態に対しまして、国民金融公庫更生資金を、内地と同様に貸し出しを考えてはどうかというお尋ねであります。この点につきましては、先般、二、三カ月前の委員会の席上でも一応お答えをいたしておいたのでありますが、春日委員お話の中にもございましたように現在のところ施政の権力と申しますか、権限と申しますか、現実施政を行なっておりますのはアメリカでありまして、現在日本側潜在主権というとはございますけれども施政までは及んでいないのであります。ただそのうちで、たとえば属人的な効果を明らかに持ちます軍人恩給でありますとか、先般措置をいたしました遺族国債の買い上げ、あるいは在外預貯金支払いというようなことにつきましては、内地におきまして処理をいたしますことが可能なる限り処置をいたしておりますことは、春日委員承知通りであります。沖縄方々においても御承知を願っておるかと思います。しかしながらその程度を越えまして、沖縄の中におきましてそういうような更生資金貸付をいたすということは、現在まで私ども検討いたして参りましたところにおきましては、そこまで参りかねるのではないかというふうに考える次第であります。
  9. 春日一幸

    春日委員 属人的な保護法は、いろいろ擬制的な解釈で、沖縄に在住する日本国民にも及ぼすべきものであると考えて、そういう処理をしたということでありますが、この戦災者というような考え方引揚者というような、こういう身分関係というと語弊があるかもしれませんけれども、これは属地的な問題ではなくして、海外に居住しておりました日本国民があまねく引き揚げを余儀なくされた事柄でございまして、従って広義に解釈するならば、属人的な関係を私は持っておるべきものと解釈もし得ると存ずるのであります。そういう意味合いから考えますと、属人的な保護政策については、今お話しのありました在外預金引き揚げ現金、その他郵便貯金等の問題が解決できたということであるならば、私はこの理解を一歩進めて、そうしてやはり身分的にこれは引揚者であり、また戦災者である、そういう者に対しては、日本国民として平等の取扱いをしていくということは、私は法理論上困な解釈ではないと思うが、この点いかがでありますか。
  10. 石原周夫

    石原説明員 戦災あるいは引き揚げというようなことによりまして更生資金貸付をいたすということでございますし、申すまでもなく同じく日本人でございますので、かりに内地にお引き揚げになったといたしますれば、そういった場合と同じような措置をとることは申すまでもないと思います。たた引き揚げられた土地沖縄でございますので、貸付をいたすということに相なりますと、やはり沖縄引き揚げた方、内地引き揚げた方ということで、そこに地域の区分が出て参りまして、そこにおのずから施政権が及ぶ及はないということのけじめがつくかと思います。今までやっておりますものは、純粋に属人的なものでありまして、在外預貯金取扱いなどにつきましても、先刻来御了解を願っておりますように、内地に持ってきて金を返してもらう。それを為替勘定を通じて返すという仕組みをとっておるわけでございまして、その辺からもお考えを願えるかと思うのでありますが、そういう意味で、やはりこの更生資金貸付という問題に相なりますと、施政権の限界というものがどうしても出て参るというふうに考える次第でありまする。
  11. 春日一幸

    春日委員 お互い見解の相違というたところで、これはものの理解同情を加えての判断のいかんにあると私は思うわけであります。本来ならばこの在外預金処置等につきましても、現実にはこれらの当事者たち沖縄に居住しているということは、これは政府も認めているのだけれども、ただその擬制解釈上の便宜の手段として、特にそうすることが最も簡潔な理解である、こういうことで、彼らの代表者日本に居住するものと擬制して、これに一括払いの形で便宜な方法をとっている。これはお互いに協力して、そういう便宜な方法によって承認をしているわけでありますけれども、問題は、比嘉君が今陳情されたように、かの地に住んでいる困窮者たちが、いずれもわれわれの兄弟である、日本国民であるということ、しかもそれが戦争の犠牲者であってかれらの個人の恣意によってそういう結果が招来されたものではないということ、こういうことを考えて参りますならば、ただ一つの観念的な属地論、あるいは属人論で割り切つて捨てるべきものではないと私は考えるのであります。ただ私は、たとえば独立国には外交保護権があるのだから、それで日本国政府アメリカ国政府との交渉において、アメリカ国政府政策を通じて、沖縄に在住するところの日本国民が現在のような困窮状態からのがれることができる、救済されることのできるような措置アメリカ政府に要求する力が日本政府にあるならば、これは別途の解釈で、すなわち何と言いましょうか、施政権を持つていない土地に対してそういうことができないから、ほかの方法を講ずるということも考えられるのでありまするけれども現実には、対米折衝を通じては、こんな問題ではない、土地問題から補償問題から何一つ解決されてはいない。沖縄代表が、アメリカ政府に対して、あるいはアメリカ国会に対して、いろいろ陳情された結果によりますと、これは行政協定安保条約によって、それらの一切の損害は日本政府責任を負うべきものであって、アメリカ政府の関知しないところであるという明確なる断定的な回答を得て帰られてきておりまする立場において、これは結局在他国である、結局自国の政府外国政府によって問題を処理するよりほかに方法がない、こういう考え方に立ってその問題を判断するならば、これは法律上いろいろな解釈があるかもしれないけれども自分国民であるから、いろいろな便宜的な解釈をこらすことによって問題の解決をはかる、こういうところで政府の好意ある努力が試みられるのでなければ、いつまでたっても沖縄に在住するところのこれらの犠牲者たちは、ほんとうに惨たんたる状態の中に捨てておかれる、こういう結果になるであろうと思うのであります。私はこの際速記録を通じて政府関係責任者たちに強く要望しておきたいことは、沖縄に在住しております日本国民、この兄弟たちがどんなむざんな状態に捨ておかれても、政府はてんとしてこれに対して何ら顧みないのだ、それはそれ、これはこれとして、われわれはそれに対して全然心を痛めない、責任も感じない、こういうことであるならば、これは全然別個の問題であります。けれども先般来各委員会において、強調されております通り沖縄に居住しております同胞の困難なる状況を、何らかの解決国政を通じて行なっていこう、こういうまこと心だにあらば、私は問題の解釈などというものは、どんな方法でもこの要請にこたうるの結論を作ることが、私は困難ではないと思うわけであります。ただいま申し上げましたよう事情によりまして、いずれにしても外交保護権を行使することもできないならば、とにかく擬制的な解釈でもって内地引き揚げて来た日本人と、日本潜在主権を持っております沖縄引き揚げて来た日本人と、そこに何ら差別的な処遇を受けるということのないような推置をこの際講ずるの考え方はないか、何かそういう方法を研究するの意思はないか、この際石原官房長からもう一ぺん伺いたいと思います。
  12. 石原周夫

    石原説明員 ただいまの春日委員お話でございまするが、外交保護権と申しますか、施政責任を持っておりますアメリカ側におきまして、当然しかるべく措置をいたすのが筋合いであろうというふうに考えております。それの具体的の、どういうようなことに相なるのかというようなことにつきましては、これは外務省からお答えをいたすのが筋合いだと思いますので、私の方からそれ以上には申し上げませんが、そういうような筋合いでございますので、そこら辺にも、率直に考えまして努力の余地があるのではないかというふうに考えております。われわれが国内でできますことにつきましては、先般遺族国債につきましては、何とか解決の道を見出したのでありますが、なおそれ以外にも、何らか従来考えておりますワクの範囲内で可能なごとがございますかどうか、この点につきましては、私どもも今後研究をいたして参りたい。ただ現在私どもが考えておりまするところでは、更生資金貸付という形に相なりますると、先ほど来申し上げております属地、属人というような関係がどうしても出て参るのではないかと考えております。
  13. 針谷正之

    ○針谷説明員 ただいまお話を承わりましたように、事実まことに困ることがあれば、その施政権者であるアメリカが、当然その住んでおる住民に対する責任を持っておるわけでありますから、これについては、日本国といたしましても十分話し合いをする余地が残っておるわけでございます。ただし引揚者という特殊の範疇に分けることは、これは話し合いの上に問題があるかと思います。ただ一般に困窮者の立場をアメリカは見なければならないという点におきまして、事実問題がありましたら、それについては当然話し合いを進め得るものと考えております。
  14. 春日一幸

    春日委員 それでいろいろの方策が検討されてせっかくの陳情でもあり、わけて事態は、これを傍観するに忍びないほど窮迫、窮乏をきわめておるのでありますから、アメリカとの交渉によって問題の解決が可能であるならば、これは当然その方法もあわせて講じていただかなければなりませんけれども、しかし今までの経過を見ますと、なかなか日本外務省の物腰、またその冷淡なるやり方でもってしては、的確な問題の解決などというようなことは、これは早急に期待すべくもないと考えるのであります。そこで、一応外務省から外交保護権の立場に立ってアメリカ国民と同じような待遇をしろというような主張は、大いにやっていただくことは当然でありましようけれども、しかしそれも形式的にやったところで、そういう結果になってこなければ何にもならない。だから、これは結局お互い国民同士であるのだから、交渉しても何の解決もつかないのだから、解決つくまで待てということでは、これはとてもわれわれとしては、そういうことで問題を糊塗するわけには参らないと存ずるのであります。従いまして何らかの国内的措置を構ずることによって最もすみやかなる解決をはかってこの陳情たちの、要請にこたえていかなければならぬと考えるのでありますから、一つ大蔵省あたりが責任的にこの問題を取り上げていただいて、ちょうど予算編成期にも差し迫っておりますから、必要な財政資金をそういう方向へ、とにかく予算に計上されるということを強く要望するものでありますが、一つの試案といたしまして私ども見解をこの際申し上げて御参考に供したいと思うのであります。これを申し上げますならば、日本本国においては、引揚者戦災者生活困窮者に対しては、財政資金を、政府金融機関であります国民金融公庫に委託貸付の形式で現在更生資金の貸し出しを行なつておる、これが一つ現実であります。そこで沖縄住民に対しては同じような財政資金を、この際便宜かの地にあります特殊金融機関、それは協同組合中央金庫及び大衆金庫の二つがあるようでありますが、これに貸与いたしまして、そうして日本国土内において国民金融公庫が行なっておると同様な委託貸付業務をこれに行わしめるということが、適当ではないかと考えるのであります。それはどういうような理解の上に立ってこういう提唱が行われるのであるかと申しますと、およそ金融、それからその金融業務の国際性、こういう立場に立って、現在いかにいろいろの問題が処理されておるかということを見ますると、日本政府外貨外国銀行に預託しましたり、あるいは外国為替銀行が海外に支店を持ったり、特にまた日本輸出入銀行が海外における合弁会社に投資金融及び事業金融を行なっておりますし、また昨年日本海外移住振興株式会社法が制定されてこの会社によって、単に渡航費の貸付だけではなくて、移住したところの諸君が外国において農業、工業に従事する、そういうことに必要な資金についての貸付をも行わしめる、さらに進んで投資や事業の経営等についても、これらの会社がその法律に基いて外国で金を出しておる、一つの経済ベースで問題の処理を行なっておる、こういう事例も現在幾多あるわけであります。こういうような点から考えますと、そういうとき、もしそれが必要であると考えられるならば、更生資金貸付業務を、国民金融公庫沖縄支店開設というようなことでこういうような問題が処理をされましても、これは金融機関の国際性から考えまして、何らとがめらるべき筋合いのものではないと考えられる。ちょうどこれは、輸出入銀行が海外においてそういうような金融活動をし、特にまた日本海外移住振興株式会社法の例等から考えましても、国民金融公庫がそういうような業務をも含めて、こういう沖縄に進出して同様の業務を新しく開始するということも、これは国際法上、あるいは金融の国際慣例上何ら支障のないことと考えられる。さらにこういうような方式によって、沖縄住民に対するいろいろな要請がとにもかくにも一つずつかなえられていくということについては、まことに喜ぶべき事柄であると考えるのだが、こういうような問題について、大蔵省はいかに考えられておりましょうか。さらにわれわれが調査したところによりますと、国民金融公庫のこれらの戦災者引揚者、それから生活困窮者に対する貸付と、それからこの回収状況等を考えてみますると、これは必ずしも貸し倒れになってはいない。そういうような状況で、必ずしもこれは全額そういうような工合に支出してしつぱなしという形にはなりませんし、この回収金をもって恒常的にこういうような金融業務を行なっていくということは、はなはだ沖縄の窮乏を救済する上において貢献があると思うが、この点についていかように考えられておりましょうか。重ねて御答弁をお願いいたします。
  15. 石原周夫

    石原説明員 ただいまの春日委員の御提案と申しまするか、お話でございまするが、今承わりましただけで、しさいに検討をいたすいとまもございませんので、とりあえずの感じだけを申し上げておきます。春日委員のおっしゃいますように、海外の事業活動をいたすということは、これは民間会社についてもございますし、春日委員の御指摘のような輸出入銀行、あるいは海外移住振興株式会社というようなものがあるわけであります。これらはいずれも、何と申しますか、その事業の採算ベースということで、その事業自身としてやっておられまして更生資金の貸し出しを、国民金融公庫というような政府が全額出資をいたしておりまする法人、それに政府の財政資金を委託いたしまして貸付をいたすということに相なりますると、これはまさに厚生福祉行政の一つの態様になるかと思います。そういう意味におきまして先ほど来私の申し上げておりまする施政権というものが、アメリカ側にあつて、日本側には今そこに及ばないのであるということにやはりぶつかってくるのではないかというように考えております。ただ私今伺ったときの感じをとりあえず申しておきます。
  16. 春日一幸

    春日委員 これは、官房長のぼくは研究が足りないのではないかと思うのです。と申しますのは、施政権というのは、不特定多数の住民を対象とするものでありまして、われわれがここに提唱いたしておりまするのは、特定少数の者を対象といたしておる。すなわち引揚者、それから戦災者、こういうものを対象としておるのでありまして特に引揚者については、これは三万世帯でありますが、とにかくそれだけの数に限定されておる。従いまして、これは広義の施政権の中に包含されるかもしれないけれども、さらにまた、これは広々義のいわゆる日本国民の身分に関するところの、あるいは特定の者の享受するところの特殊の権利、こういう形で、属人的なこれは解釈もできないことはないと私は思うわけであります。沖縄に在住する生活困窮者全体を対象とするのではなくして、引揚者戦災者にしてなおかつその生活窮乏の状態にある者のみを対象として、しかもそれが日本国民であるから、国家の犠牲になったものであるから、なおかつアメリカ救済もその施政権を通じて行われないから、見るに忍びずしてこういう排置を講ぜんとするということなんだから、これは国際的に考えても、またアメリカの良心に訴えても何らとがめらるべきことではない。ことに進んでわれわれが、日本国政府がそれをことさらアメリカに対するつら当てのようにやるというのではなくして、アメリカがいろいろな事情があってやって下さらないのだから、それだから結局日本政府がこれをやらざるを得ないのだ。こういう現実の問題としてこれを取り扱わんとするのでありまするから、私は、問題の解釈は政治的に、さらにまた法律的にいろいろあなた方が専門的に検討されれば、私は可能な方策というものは生まれてくると思う。だからこういう問題は、今このような簡単な質疑応答を通じては、適切な結論は出てこないと考えまするから、どうか一つ政府の内部においても、よく専門的に十分御研究を願いますと同時に、現地実情等についても、さらに当事者たちから十分その実情調査されまして、現実に困つておりまする沖縄同胞たちが、とにもかくにも生きていけるように何らかの方策を立ててやっていただくのでなければ、これはてんで問題にならぬと思う。どうか一つそういうような意味合いにおきましてこの来年度の予算編成までには、これに対する的確なる対策が講じられて、沖縄陳情たち要請にこたえる方策を立てられんことを強く、要望いたしまして私の質問を終ります。
  17. 石原周夫

    石原説明員 ただいまのお話の点、私どもよく勉強いたしまして検討いたしたい。ただ申し上げておきますことは、やはり施政権の限界というものは、ある客観的なところに線が引かれると思うのでありまして、そのワクの中で事務的に検討いたすことに相なるかと思います。先ほど申し上げましたように、現在のワクの中で、できるだけのことは従来も検討いたして参りましたし、大体いろいろ考えてみまして今のところで思いつくものはやったつもりでおります。あるいはこれからやるつもりで仕事をしているわけでありますが、なお今後も、そういうようなことでやり得る余地が残っていれば、十分に検討いたしたいと思います。
  18. 春日一幸

    春日委員 私は、もう一つだけそれであるなら申し上げておきますが、とにかくいろいろな研究をこうしてもらいたいということなんです。ちょうど在外預金の払い戻しについても、いろいろとその問題がございました。けれども、これらの諸君が沖縄に在住するということでは問題の処理ができないから、内地に在住するという擬制的なこの解釈でもって、とにかく一括その代表者に払う、こういうような方法でその問題の解決をしようということでございまして、最終的にはそのようにされたかどうか、まだ報告は受けておりませんが、私はそういうような事例等も参考にいたしまして、沖縄に現在在住しておりまするこれらの引揚者たちが一応日本に帰ってきて、そうしてその更正資金をとにかく借り受けてそれから沖縄へ行って、その居住地において簡易なその事業を始めていく、こういうような事柄等も、日本国民であります限り、彼らが往来するということも自由であるという立場から、そういうことも私は全然不可能の事柄ではないと考える。いずれにしても、現実に為替関係においても、今それだけの外貨に類似するものを向うに出したとしても、現在その沖縄は、日本の為替帳じりにおいては、アメリカに次ぐ第二位の黒字貿易地にされているわけです。そういうような関係からしましても、私はここで十億や五億の金を出したところで、それはあまりやり過ぎたということにはならぬと思う。どうかそういう意味で、困窮度がひどいのだから、しかもそれは国策犠牲になった諸君であってアメリカもだれもその問題の解決をは、かってくれるのではなくして、日本政府が乗り出すのでなければ問題の処理ができないという最終的な判断の上に立って対策を考えるならば、私はいろいろな方法が生まれてくると考えますから、あれはだめだ、これはだめだと、ただその施政権というものを最高のものに考えないで、そこに生きている人間を中心として、そこから外交保護権施政権潜在主権も、いろいろな問題が相互にからみ合っていろいろな処理がされる。こういうことで、最高のものはそこに在住している住民であり、そうして問題となっているものはその住民困窮である。ここでさらに問題の解決をはかるように、一つ御検討を願うことを強く要望いたしておきます。
  19. 松原喜之次

    ○松原委員長 なお横錢委員より関連質問の申し出がありますので、これを許します。
  20. 横錢重吉

    横錢委員 今比嘉代表から沖縄実情並びに要望されております点について承わったのでありますが、今われわれに対して訴えられましたこういう問題は、沖縄米軍あるいは日本側政府というような面に対しては、どういうふうな陳情方法をやっておられますか。またこれに対する答弁あるいは現状、こういう点はどうであるか、この点を承わりたい。
  21. 比嘉一雄

    比嘉参考人 よくわかりました。実は沖縄現地におきまして大衆金融公庫という、ほぼ国民金融公庫と似たような名前を持った組織があるのでありますが、この大衆金庫というものは、八十万住民に対してわずかに去年まで三千七百万円が、今年増資されまして五千九百五十万円になっておるわけでありますが、この五千九百五十万円の大衆金庫の金は、ほとんど中小企業者を対象にして貸し付けております。それが四千万円以上も貸し出し済みであり、またその増資前に、借り入れ人の要求を満たしきれなくて、貸し出しを中止したような実例もあるのであります。わずか六千万円足らずの金で三万引揚者の——一世帯一万円としましても三億円になりますので、三億円の要求を満たすことは絶対にできないのであります。そういう組織はあっても、実際面において不可能であるために、われわれが困り切って本国政府にお願いするのでありますから、そういう実情も御賢察下さいまして従来外地におきまして築き上げたところの財産は戦争のために放棄して、はだかで帰ってきてそのまま苦しんでおるわれわれ引揚者気持をお察し下さいまして、この更生資金の貸し出しをぜひ実現さしていただいて、次に来る移民政策に貢献させていただきたいことを、この席でお願いいたしまして、促進方をお願いするのであります。
  22. 横錢重吉

    横錢委員 今の点わかりました。さらにアメリカの軍政部の方からどういうふうな回答、あるいはまたどういうふうな気持を持っておるか、この点については触れられたことはありましたか。
  23. 比嘉一雄

    比嘉参考人 アメリカ政府には、まだそれを要請したことはありません。大体琉球政府というのが、アメリカ政府の代行機関でありますために、琉球政府を中心としておりますが、琉球政府は、われわれ外地引揚者に対して、まだそういったようなあたたかい気持を述べるまでに至っていないのであります。なぜかと申しますならば、沖縄は、この戦争で惨たんたる状態に陥りましたために、あらゆる諸問題の解決がまだ未解決に残されておるがために、われわれ引揚者にも、まだあたたかい手が延べられなかったということで、われわれもお願いしてもむだだ、また何ぼ全国民沖縄政府に頼んでも実行不可能であります。だから頼もしい両親にすがるよりほかに仕方がないのでありまして、親の前に子がお願いにきたという気持をお察し願いたいのであります。
  24. 横錢重吉

    横錢委員 もう一つ伺いますが、引揚者の人数は、大体どの程度になっておりますか。
  25. 比嘉一雄

    比嘉参考人 人数は約三万世帯で、人口にして十五、六万人に及んでおります。
  26. 横錢重吉

    横錢委員 外務省に伺いますが、外務省は、この沖縄住民が今訴えられましたような生活困窮状況、あるいはまた沖縄住民の生活全般の問題、こういうことに対しては、現在までに調査をされたことがありますか、この点について伺いたい。
  27. 針谷正之

    ○針谷説明員 一般的の問題については、いろいろな資料などをいただいておりますが、特にこの引揚者の方がどういう地位におるかということについては、まだわれわれ伺ったことはありません。
  28. 横錢重吉

    横錢委員 それでは今後調査を行おうとする気持があるかどうか、あるいはまたそういうふうな対策を立てておるかどうか、この点について伺いたい。
  29. 針谷正之

    ○針谷説明員 ただいま初めてここで聞いた問題でございますから、これについては、また関係方面とも十分協議して、事実を確かめてみたいと存じます。
  30. 横錢重吉

    横錢委員 先ほどから外交保護権の問題が出されておるわけですが、外交保護権をどういうふうに出すかは別としても、ともかく沖縄住民の生活がどうなっておるかということの実情をつかんでいなかったならば、外交保護権を検討する上においても問題にならないと思う。従って今の答弁では、沖縄状況がよくわかっていないようであるけれども、これは今後もしばしば問題になってくる点であるから、十分調査をされるようにお願いをしておきたいと思います。  それからまた先ほどの春日委員に対する答弁では、石原官房長の答えにも、現実になかなかなしがたいというような点で答弁をされておるようであるが、これは現在までにおいては、相当困難な問題もあろうけれども、何とか開いていく道はないのかどうか、特に今日本の外交は、ソ連との間に国交回復の問題をやっておる。ソ連との国交回復については、日本外務省は、どちらかというと臆病な態度をとっていると思う。しかしながらアメリカとの間には、そんなに困難な問題もないのであるし、従ってどしどし日本側の立場、あるいは日本としてはこういうふうにやってほしいというようなことを、沖縄の問題については言える立場にあるんじゃないか、こういうふうに考えておるのだが、この問題に対してどういうふうに処置されるつもりか、これは石原官房長から伺いたい。
  31. 石原周夫

    石原説明員 先ほどから外務省からお答えのありまするように、本来アメリカ施政の範囲に属することでございまするので、これは話し合いをしていただくということでございます。私も先ほど申しましたように、筋合いといたしましては、アメリカ側に当然考えてもらわなければならぬことでございまするので、この点は外務省において引き続き努力をしていただきたいというふうに考えております。
  32. 横錢重吉

    横錢委員 外務省の針谷課長に伺いますが、今の沖縄の地位というものは、非常に不確定な地位なんです。信託統治に移す手前の状態で、アメリカがこれを統治しておる、従って、それはどこまでも信託統治の精神をもって沖縄を統治しておる、こういうふうに一般的に了解をしておる。大体信託統治の精神というものは、軍事的なもの、あるいは政治的なもの、こういうふうな面については、住民の意思は認めないというふうな考え方で立っていると思うのです。しかしながら、その半面において平和の産業、平和な生活、こういう問題に対しては、全面的に責任を背負う。住民の生活に対しては、何ら政治、軍事に関係ないものについては、一切の責任住民にかわってやるのだから、不足をなからしめる、こういうような立場に立っていると思う。ところがあにはからんや、アメリカは信託統治を標榜しておりながら、実際は沖縄から搾取をしておるのです。信託をするというのは、住民にかわって政治を行なって、福祉を与えるのが目的だ。その福祉を与える目的にまるきり反して、沖縄住民から搾取をする、こういうふうな印象を今日与えていることは、非常に遺憾だと思う。しかも今ここに持ち込まれてきている現実の問題を見たならば、生活保護者、あるいは引揚者、こういうものが、今日の敗戦国の日本の現状よりもさらにひどい状況に置かれておるが、何ら手が打たれていない。また外務省外交保護権、あるいは潜在主権ということを知っておりながら、これに対して調査も不十分だ、対策も立てていない。おそらく先日沖縄の軍事基地の問題が出たときに、外務大臣がアメリカに対して交渉したはずであるが、この交渉の中において、住民の生活の問題についても触れたかどうか、この点は大いに疑問がある。この点は、もし触れておられるならばお答えを願いたい。さらにこういうふうな信託統治に対する立場は、日本としては初めてであるけれども、しかしながら、今申したように、日本の現在の外務省アメリカ政府との間には、一体となったところの連絡がとれておるのではないかこういうふうに思う。従って、今までは困難であったかもしれない。しかしながら、沖縄住民の生活を何とかしてもっとめんどうを見よう、こういうふうな気持があるならば、おのずからそこに打開する道がある。こういうふうな点を、もっと積極的に取り上げてほしいと考えるけれども、この点について御見解一つ伺っておきたい。
  33. 針谷正之

    ○針谷説明員 外務大臣がアメリカとの話し合いにおきまして一般の生活に触れたかどうか、私特に直接に聞いておりませんが、そらく当然起ってくる問題として、触れているのじゃないかと解しております。ただいま起きております土地問題も、結局生活の問題に触れる問題であります。また今までも、いろいろ米軍の方の不法事件なんかがありましたけれども、そのつど、その事実がはっきりしました暁におきましては、それを取り上げてアメリカと話を続けてきております。今後とも、また事実としていろいろの生活上の問題が起りましたならば、外務省におきましても、その解決努力をいたしていくつもりております。
  34. 松原喜之次

    ○松原委員長 それでは比嘉君に一言ごあいさつを申し上げます。本日は、お忙しいところを長時間にわたり御出席を願って、貴重なる御意見を陳述していただき、委員会の審査に多大の参考となりましたことを厚くお礼を申しあげます。     —————————————
  35. 松原喜之次

    ○松原委員長 次に、春日一幸君外十二名提出にかかる物品税法を廃止する法律案及び酒税法の一部を改正する法律案を一括議題として質疑を許します。奥村君。
  36. 奧村又十郎

    ○奧村委員 私はただいま本委員会で継続審議中の社会党の諸君の御提案である物品税法を廃止する法律案、酒税を引き下げる法律案、二案に関して提案者に対して御質問をいたしたいと存ずる次第であります。  特にただいま政府において税制の根本改正を企図いたしまして、いろいろ調査立案中であります。社会党におかれても、次期政権を目ざして現実政策面において十分御検討中であろうと思いますし、特にこの税の根本改正なるものは、来年改正して再来年また改正するというわけにいかぬ。十年、二十年なるべく——税の改正というものはそうたびたびやるものではない。これはもう御承知通りであります。そこで、社会党も次期政権近しと考えておられるし、またおそらくそういう時機も私どもあろうかと思いますけれども、自民党内閣で税制を改正した、社会党内閣においてまたそれを大幅に改正したというふうなことになって、そうたびたび税制を根本からひっくり返して改正していけば、国民が非常に困る。こういう意味から、願わくば社会党内閣がかりにできる場合においても、そう税制を変えるようなことのないように企図しなければならぬと私は思う。こういう意味合いから、特に税制については、十分社会党の諸君ともお話し合いの上で審議を進めたいと考えて、この両案についてお尋ねをいたすのであります。  この両案は、昭和三十一年度予算の審議に際しまして、社会党から提案されたところの予算組みかえ案と一体になって御提案になったのであります。しかし、もうすでに予算は通過して実施している。従つて予算組みかえ案と一体になって出された以上は、もうすでに社会党の組みかえ案は否決されているのであるから、当然今この委員会に提案中の両案は、撤回されるべきものと思うのであるが、その点どう考えておられるか。
  37. 春日一幸

    春日委員 ただいま奧村委員から御指摘のありました通り、社会党内閣への日はまさに近まっているのであります。過ぐる参議院選挙におきましては、われわれは圧倒的な国民の御信頼を得ましたが、それに続きます宮城県の知事選挙、富山県の知事選挙におきましては内藤君の格別の御支援をいただきまして、さらにはまた名古屋市長選挙等、連勝のこの状況は、国民大衆の社会党に対する御信頼が、日とともに高まっているのでありまして、それだけに、私どもはその責任の重きを痛感いたしているわけであります。このような理解の上に立ちまして、当然税制万般に関しましては、われわれはいつ何どき政権を担当いたしましても、それぞれ歳出歳入に事を欠かないように、具体的かつ的確なる方策をすでに検討いたしておるのでございまして、おおむねその立案を終つておるのであります。  そこでただいま御質問になりました、すでにこの予算組みかえ案が第二十四国会において否決されているから、この法律案は、もはや進んでこれを撤回すべきではないか、でなければ、歳出歳入に事欠いてくるではないか、こういうお話でありますが、昨日の委員会であなたもお聞きになりました通り、本年度の自然増収は、実に千億をこえんといたしておるのであります。そこでこの法律案によって本年度において減収されますものは、たしか百八十七億であります。そういうわけでありますから、一千億の自然増収をあわせ考えます場合、この百八十億余の減税というものは、何ら差しつかえないものでございまして、われわれの考え方は、この物品税を廃止して、同時にまた酒税に対しては減税を行なつて、国民の要望にこたえなければならぬ。またこの法律案がこの臨時国会でもし可決されましても、国の歳出歳入の上においては何ら障害を来たしてこないものである、こういう工合に考えておるものでありますから、従って両法案をみずから撤回するの意思はないのでございます。
  38. 奧村又十郎

    ○奧村委員 政府は、税制の根本改正を企画しておる。その中には、物品税で増徴をしようという考え方もただいま検討中である、もちろん私ども自民党としては、そういう問題については、まだ一致した意見はありません。従って私がただいまお尋ねするのは、私個人の意見を開陳しながらお尋ねするのであります。しかし社会党としては、ただいま御答弁のように、すでにもうはっきり物品税は撤廃するのだ、しかもこの案は撤回しないということであります上、社会党としては、はっきりした態度をとっておられるのでありますから、そのはっきりした態度について、重ねてお尋ねをいたしたいと思うのであります。  そこでなぜ物品税を廃止されるのであるか、その考え方お尋ねいたします。すでに物品税を廃止する法律の提案理由の説明は出ておりますが、その説明を読んでみましても、どうもはっきり納得ができません。それを読んでみますと、ただ物品税は戦時立法であるからということと、それから現在の七十数品目の中には、日常生活必需品がある、きわめて不均衡、不公正な課税であるからこの際やめるのだ、こういうことです。しかし物品税の七十数品目全部が日常生活必需品とは言えぬでしょうし、また日常生活必需品であるかどうかということは、これは比較的な問題であって、そう一がいに言うべきものではない。そこで七十数品目の現在の品目の中で、一部日常生活必需品があるというからこの際全部廃止するのだというのは、これは少し大ざっぱな荒っぽい議論であって、それでは、おそらく国民は納得できないだろう。もちろん税金はないに越したことはない。しかしできるだけ公平に、できるだけゆとりのある人から税金を出してもらうということは、これはやむを得ない処置であって、その意味で、奢侈品的なものについては、しんぼうして納めてもらわなければならぬ、こういうふうに考える。そこで、物品税をなぜ廃止するのか、日常生活必需品以外でも、相当奢侈品的なものもあろうと思うが、それを頭から全然物品税を廃止するということになさった理由を重ねてお尋ねいたします。
  39. 春日一幸

    春日委員 この提案理由の説明書は、簡にして要を得ていると思うのでありますが、まず第一番に戦時立法であるということ、それから課税対象が公正を欠いておるということ、それからアンバランスであるということ、この三つが柱になっておるわけであります。  御承知通り、この物品税の沿革をたどってみますと、これはまさしく昭和十二年でありましたが、とにかく北支事変特別税という形でもってこれが出て参りましてその後昭和十五年にこの物品税が体をなしたかと思うのでありますが、何といっても、この法律自体は北支事変特別税であって、すなわち戦時特別立法であるのであります。現在日本の行財政が、日本の経済の基準を昭和九年ないし十一年の水準に置こうといたしておりまして先般来税制の改正に当っても、政府からそれを基準としていろいろの権衡がはかられておりますが、昭和九年ないし十一年には、この物品税はありませんでした。従いまして戦争の残骸でありますから、戦争が終って平和的文化国家を建設しようとしておるこの段階においては、こういう戦争目的の上に立てられたところのこの税法は、当然平和的文化国家建設の理念からも一応廃止すべきである。これが戦時立法であるから廃止すべきであるという所論の骨子をなしております。  その次の公正を欠いておるという点でありますが、これは、その当時課税対象が御承知通り高級品、奢侈品を対象とはいたしておりましたが、同時にその後戦争目的を遂行する上において、軍需資材を消費するようなものに対しては、特にこれを物品税の対象といたしたようないきさつ等もあるのであります。従いまして、生活必需品でも、それの原材料が戦争目的遂行のために必要上する原材料を使っております限り、たまたまこれが課税対象になったりいたしまして、そういうようないきさつ等もございまして、この原材料との関係から勘案いたしましても、その課税対象を捕捉する上において、これは歴史的に公正を逸しておりますし、さらにまた戦後においては、御承知通り、あるものは撤廃されましたし、あるものは免税点が設定され、それが引き上げられたり何かいたしまして、その後いろいろな業界の運動が政府並びに国会に行われることによって、あるものはこれが軽減措置が講ぜられ、陳情の行われないものがそのままに捨て置かれて、今日に至っておるのであります。言うなれば、今日課税されておりますこの物品税の課税対象は、政治悪がそのまま一露呈している姿であると極言することもできると私は考えるのであります。従いまして陳情や運動をしたものに恩典と救済が及ぼされ、しからざるものはそのまま捨て置かれておるというこの現状については、これは公正な立場から、別個の角度からあらためて再検討が加えられなければならない。これが、その公正を欠いておるから撤廃を必要とする理由の内容であります。  それから均衡を失っているという問題でありますが、これもまたいろいろな内容があるのでございましてたとえて申しますならば、現在ラムネとか洋酒とか、比較的生活需要度の高いものに対してもこの物品税が課せられているわけでございまして、こういうような物品に課税せられているものと、課税せられていない物品との間において、非常に均衡を失してきているということは、これはもう国会においてもしばしば論議されたわけであります。また税法学者の諸君も、この問題については声を大にして叫んでいるところでもあるわけであります。従って、この提案理由は、この三つの理由を骨子とはいたしておりますが、同時に提案理由の説明の中でさらに敷衍して申し上げておりますことは、こういうような物品税は、この際抜本塞源的に全部廃止する、ちっとやそっといじくり回すだけでは、すなわちその公正を期し、さらに均衡を保つということは不可能であるから、この際全廃して、そうして課する必要があるならば別の角度から、新しい見地から、経済事情とそれから社会情勢とに即応してそうして別途にこれは策定されるべきものであつてこの物品税法というものは、ただいま申し上げました理由によつて、一日も早く廃止すべきものである、別個中小企業保護育成のための政策等もそこにからみ合せましてわが党は、この際あらゆる角度から慎重検討いたしました結果、この物品税がすみやかに廃止されるべきであるという結論の上に立って、この法律案を上程いたしたようなわけであります。
  40. 奧村又十郎

    ○奧村委員 ただいまの御零弁には、どうも納得いたしかねる点が多いのですが、あまり議論にわたってもどうかと思うので、なお進んでお尋ねを申し上げます。  それでは物品税は全廃して、新たなる見地から高級品、奢侈品に限って税をかける、つまり奢侈品税とでも申すべきものをかけるということでありますが、それならば、どういう品目に対してどの程度の奢侈品税をおかけになるか、その具体的な案を、すでに次期政権を目ざしておられるということでありますから、それを一つはっきりと御示し願いたい。
  41. 春日一幸

    春日委員 ただ申し上げておきたいことは、一つの経過といたしましてこういうような高級品、奢侈品に新しい定義を設けて、ただいま申し上げましたようなあらゆる角度から検討を加えて、そういうものを課する必要がある、こういう工合にわれわれは考えているのであります。けれども、今奧村君が御指摘のように、これを廃止すると同時に、身がわりとしてそういうものを立法しなければならぬかどうかという問題になると、それはおのずから別個の問題でございまして、御承知通り、本年度における一般自然増収は一千億もございます。しこうしてこの物品税の年間収入は二百八十億内外しかございませんから、従いまして、後日こういうものを対象にして課税する場合ありといたしましても、すみやかにそれに課税しなければならぬ、そうしてその収入を確保するのでなければ国政に破綻を生ずるというようなことではないのでございまして、別途一千億近い自然増収もございますし、さらにまたわが党独自の予算案をもつていたしますれば、防衛関係費等の大幅の削減等によつて余剰財源も大量に発生して参りますから、その辺の措置は、同時立法を必要としないということを一つ理解願つておきたいと存ずるのであります。しかしながら、私どもが提案理由の説明中に申し述べております通り、高級品、奢侈品に限つて課税する必要ありと認めておるけれども、それを課税する上におきましては、幾多の考察が必要でございます。すなわちその税金が需要者に転嫁されないで、中小零細業者の負担にかかるような問題については、奢侈品でありといえども、これはおのずから別途の検討を加えなければならぬ。また奢侈品のごときに関しましても、高級品のごときに関しましても、たとえて申しますならば、テレビジョンのごときものでも、テレビを普及するためには、その保護政策として特別の猶予措置が講ぜられておる等の事例もございまして、こういういろいろな要素を考案いたしますならば、ただ観念的に高級品であるから、奢侈品であるから一律に課税するというわけには参らないのでございまして、この問題は業界、学界、あらゆる権威者の意見を十分網羅いたしまして、公正、均衡という角度から適切妥当な結論を得たい、こういう工合に考えておるのでございます。その内容につきましては、もとよりわが党において検討いたしておりますが、これは極秘の秘でございまして、なかなか自民党に対しては申し上げられない段階であるわけであります。
  42. 奧村又十郎

    ○奧村委員 提案者に申し上げますが、ここは神聖な国会委員会で、これは国民全体が注視しておる。特にあなたの言われるように、すぐにでも政権を担当しようかという社会党の税政策をどうするのかということを、ここであなたが社会党を代表して公式に説明なさるのに、もう少しまじめになって……。(春日委員「いやいやまじめです。これ以上のまじめはない。」と呼ぶ)それならお尋ねしますが、われわれ自民党にしても、ただいまお話しのように、物品税を施行するについても、なるべく奢侈品、高級品だけに限って課税をしようということで、社会党の諸君の御協力も得てだんだん品目を減らし、あるいは免税点を引き上げ、あるいは課税対象からはずしてきたものであります。従って、今ではなかなかこれ以上はほかとの均衡上はずし得ないというところまできておる。そこで、これを頭から全廃して、奢侈品、高級品だけかけようというならば、奢侈品、高級品と言ってできるだけわれわれはそういうものを残そうとしてきたものを、社会党がそういうことで頭からはずしてしまうなら、一体奢侈品、高級品というものはどういうものかということを明らかにしなければならぬ。それをはっきりとここで言明をしていただきたい。
  43. 春日一幸

    春日委員 ただいま申し上げました通り、奢侈品、高級品というものの定義も、これは非常に複雑な要素を含んでおるということ、それからただいま申し上げましたように、これは極秘の秘であるということは、私は冗談で言つておるのではなく、これこれのものが奢侈品であり、これこれのものが高級品であるということをここで申し上げますと、そのことがその業界に対していたずらに衝撃を与えましてさらに猛陳情、猛反対、その他いろいろの業界の経済活動、政治活動に対して影響を与えてくる。だから、そういうものの発表は慎重を期して、なおかつ成案が完璧になってから発表すべきものであって検討の過程においては極秘の秘であって、これは容易に発表すべきでないということ、これはあなた方も政権を担当されておりましてそういう問題の取扱いについては非常に慎重を期せられるだろうと思うのでありますが、私どももそういう態度をとっておるのでありまして、ただ私どもが極秘の秘であるといって冗談を言っておるのではない。たとえば友禅なども、これはだれが見ても奢侈品でありましょう。またそのほとんどは零細な屋内の職人がこれを作つておる。そうすると、なかなか需要者に税金を転稼することができないから、背負い込みになってきておる。こういうような奢侈品であっても、その製造過程、事業経営の実情等をいろいろ勘案いたしますると、これは、一がいに見て奢侈品とおぼしきものでも 課税対象としてこれは法律の中に加えていくべきであるかどうかという点については、多大の検討を必要とする。こういう意味でございまして、わが党は、もとよりこういうような法律案を提案いたしましたからには、並行的にその検討は十分加えておりますが、しかしそれは総合的に、かつ最終的に結論を得ておりませんので、従って今その中間的な御報告を申し上げる段階には至っていない、こういうことを申し上げているのでありましてあくまで真摯な態度で御答弁を申し上げておるのでありますから、この点は御了承いただきたいと思うのであります。  なお百八十億余を減税したら、その百八十億余の見返りになるような立法措置を必要とするかどうかという問題については、本年度は自然増収が一千億もあるし、さらにわが党が政権をとるならば、防衛予算等においてわれわれにおいて別個の考察があるので、従ってそういう方法を講ずることによって、財政の均衡が期し得るというのでございますから、この点も一つ明確に御了解を願いたいと思うわけでございます。
  44. 奧村又十郎

    ○奧村委員 物品税は廃止する、奢侈品税はいずれ検討の上で後刻かけるという、その間の、ズレの財源の穴埋めは、何ででもやりくりができる、それはわかります。しかし税はあくまでも公平でなければならぬ。一たん物品税を全部撤廃して、また半年なり一年なり先にいってからいずれかのものに奢侈品税をかけるのだということになると、半年なり一年なりには、その該当品目には全然税がかからぬことになる。そういうことで、果して公平が保てるかどうか。やはり奢侈品税をかけるのなら、奢侈品税の案を出して、奢侈品税を実施するから物品税を廃止する、それなら話がわかるのです。税というものを一たん廃止してまた税を新設するについては、なかなか困難なことくらいは、あなたも国会議員として御承知通りであります。どうせ奢侈品税をやるんだということを言いながら、それは秘中の秘であっていつやるかわからぬ、ただ物品税は廃止する。これでは国民は何のことやらわからぬ。そこの点をもう少し納得のいくように説明してもらいたいと思います。
  45. 春日一幸

    春日委員 申し上げておきたいことは、この物品税が、奢侈品、高級品をも含めていずれもが戦時立法であるということ、それから問題は、昭和の九年から十一年を基準年度といたしまして、その税制もこれに見合していろいろな調整が行われんといたしておるわけでございます。従いまして、昭和十二年に新設されましたところの北支事変特別税、これが物品税として昭和十五年に体をなしたんです。従いまして、この基準年度を目標とするところの現在のいろいろな行財政上の努力から考えますと、この奢侈品、高級品をも含めて、その基準年度には課税されていなかったのですから、従ってこれが全般的に廃止されたといたしましても、何ら公正を失するとか、均衡を失するとかいうようなことにはならない。もともとこれは廃止さるべきものである。ところが、やはりその国の歳入を確保いたしますために、財源確保のために、とにかくこの程度のものが必要でありとするならば、これは課税することが考えられる。しかしそれは、いつ課税するかという時期の問題、さらにまたどれを対象にするかという具体的な問題については漸を追うて、これは私が先ほどから申し上げているように、これを廃止したから同時にこれを立法しなければできないというような筋合いの問題ではない。これは全然別個の問題として、すなわち平和的文化国家を建設する上においてそういうような消費的高級品、あるいは文化的奢侈品、いろいろな問題等についても、こういう国家目的からさらにいろいろな整理が遂げられるでありましょうから、こういう問題はあくまで同時にやらなければならぬという、そういう考え方こそ間違っておるのであって、とにかくこの昭和九年−十一年の基準年度においては、こういう法律は全然なかったということを考えて、そうして新しい角度からわれわれは想を練って案を立てるべきであるこういう工合に考えておるのでありますから、この点を御了解いただきたいと思います。
  46. 奧村又十郎

    ○奧村委員 春日委員の御答弁では、物品税は戦時立法であるからということを重ねて言われるが、戦時に新たに作られた税法なり制度なりというものは、物品税法だけでない、ほかにもたくさんある。現に所得税の源泉徴収の制度も、あれはたしか戦時中に初めて実施された。戦時中にやつたから全部これは悪法だということは、これはどうもあまりに子供だましの議論のように思われる。現に昭和二十七年に私が大蔵委員長をしておりました当時に、物品税を根本的に改めて、なるべく高級品、奢侈品に限ろうということで、その当時全般的に税率も引き下げた、あるいは免税点も引き上げた、そういう物品税の大改正のときには社会党も賛成をして全会一致で国会を通過しておる。戦時立法ならなぜそのとき反対せなかったか。どうもそこら辺は納得がいかない。
  47. 春日一幸

    春日委員 あなたは何を言われるかとんとわからないが、ちょっとお伺いしますが、昭和二十七年にあなたは大蔵委員長でしたか。
  48. 奧村又十郎

    ○奧村委員 そうです。
  49. 春日一幸

    春日委員 その場合、あなたはたしか社会党員だったと思うが……。
  50. 奧村又十郎

    ○奧村委員 いや違う。
  51. 春日一幸

    春日委員 あなたが社会党員であられたのは……。
  52. 奧村又十郎

    ○奧村委員 昭和二十一年。
  53. 春日一幸

    春日委員 昭和二十一年にあなたが社会党を脱党されて、それから自由党に入られたということだが……。(「よけいなことを言うな、からむようなことはよせ」と呼ぶ者あり)社会党の政策を尋ねられた限りにおいては、その当時社会党員であったならば、質同者は知っておるわけだから、私はその点念を押したのであって、それでは伺いますが、あなたが委員長であられたときに物品税法が改正されて、その改正されたときに社会党が賛成したのはどういうわけだ、こういうことなんですね。それはですよ。物品税法中の一部修正が行われたでしょう。それを修正の段階において賛成したのであつて、物品税法そのものを全般的に認めたとか認めないとかいう問題とは違いまして、法律案はその一部修正なんですよ。その修正個所に対して、それを賛成したことであって、それは物品税法の本質に関係する問題ではなくして、その修正条項に関する問題だから、それはそういう調整を加える必要がありということを認めたことになりますから、それは御了解を願えることと思う。
  54. 奧村又十郎

    ○奧村委員 答弁者の御趣旨はよくわかりました。それは私もよく了承します。昭和二十七年のときは、なるべく物品税を奢侈品なり高級品に限って、国民大衆が日常直接使うものはなるべく廃止しようという意味合いで品目を限定して整理した。その意味において社会党も賛成された。従って現在は、まあこの程度なら大衆課税——また今おっしゃいました一部には、大衆課税と言われるものもありますけれども、この程度はやむを得ないということできたものであります。そこで私どもでは、そこまできたものなら、やはり社会党も全然廃止するのではなしに、奢侈品税というものを考えておられるなら、なお一歩進めて今提案者の言われるように不公平な、あるいは不均衡な部分を訂正して、やはり現在の制度というものはやめるわけにはいかぬということにお考えになるのが至当でないかと思いますが、しかしこれは私の議論になりますからやめておきます。  ただ一点お尋ねいたします。そこで、今度の政府の税制の根本改正の意図する焦点は、直接税において、特に年収五十万から百万程度の中所得階級以上の減税をやろう。税率を直そうということであります。この直接税は、御承知の所得そのものに累進して課税をするので、趣旨としてはまことにけっこうです。しかし昨日の政府の答弁のように、実際には申告所得などは、所得の的確な把握ができぬ。すなわち所得がみな逃げてしまう。そこに問題がある。そこで今度は、間接的に消費購買力に対して担税力があるとみなして、どちらかというと、国民生活にぜひ必要というものでもない、幾分豊かな人の使うものに対して課税をしよう、間接に税をかけようということでありますから、この間接税というものは非常にいいと思う。物品税において、これはテレビを自分の家に買う人、あるいはオルガンとかピアノを自分の家に持とうというような人は——国民八千万全部が、そんな豊かな生活をしておらぬ。そこでそういう笠かな人々には多少の税の負担をしてもらおう。間接税は直接税と違って、購買力にかけるのであるからして、納税者も知らず知らずに実際の税の負担ができる。それはもちろん税の転嫁という問題もありますけれども、これをもって直接税の不均衡を補てんするという意味においてどうしても私はこの物品税の考え方、名前は奢侈品税になってもよろしい、そういう考え方はぜひ必要だと思う。その点、社会党諸君においてはどう考えておられるか。
  55. 春日一幸

    春日委員 間接税重点主義をとるか、あるいは直接税重点主義をとるかという問題については、昨日の委員会において、あなたと政府との間においていろいろと意見が交換されておりました。これは非常に深遠な問題でありまして私どもといたしましては、これは別個の見解を持っておりますが、私どもは所得のあるところに課税する、もうけた人から税金を納めてもらう、担税力の強きものに重き税金を背負ってもらう、こういう二つのカテゴリーから、その方策を推し進めんとしておるのでございまして、ただ今表題となっておりますこの物品税、これを廃止するからといって、これはわずか三百億程度のものでありますから、従いまして、現在間接税の総額の中において占めております度合いは、総括的にそう大したものでない。酒税あるいはタバコの間接税に見合うものを含めます中において占めております度合いは大したものでありません。今私はこの物品税を廃止せんとするのは、ただこの法律案の提案趣旨の説明の中にも申し述べております通り、戦時立法だからやめろ、不公正だからやめろ、均衡を失しておるからやめろという、この三つの線がその主張の骨子をなしておるものであって間接税重点主義、直接税重点主席という問題のらち外においてこの判断をいたしておるわけでありますから、さよう御了承願いたいと思います。
  56. 奧村又十郎

    ○奧村委員 ただいま御答弁になりました事柄については、これは社会党の党議としてきまっていることなんですか、春日委員個人の御答弁ですか。
  57. 春日一幸

    春日委員 われら日本社会党の党議であります。     —————————————   〔委員長退席、小山(長)委員長代理着席〕
  58. 小山長規

    ○小山(長)委員長代理 引き続いて税制に関する件について質疑を許します。奧村又十郎君。
  59. 奧村又十郎

    ○奧村委員 国税庁長官お尋ねを申し上げたいと思います。それは、現在の清酒その他酒類の密造の実態並びにそれに対する対策に関してであります。御承知通り、残念ながら密造がいまだに全国的にしょうけつをきわめております。私ども大蔵委員会において、閉会中全国各地方を五班に分れて国政調査をいたしましたときも、たとえば九州においての島原地区等のごとき、現地近くを歩いてみたのでありますが、これでも法治国家かと思うような状態で、至るところ不愉快なことを聞かされております。農村地帯においては、今度はすでに小型の船を作って、どぶろくを船でしぼって清酒にしている。しかも農閑期には、どぶろくの巡回指導者が回つている。酒屋さんの杜氏の上りが、巡回指導でどぶろく醸造の指導に歩いている。これは高知県で聞きましたし、山陰地方で聞きましたし、北陸地方でも聞きましたが、そういうように、相変らずしょうけつをきわめているということで、本委員会としてもこれは一刻も捨ておけぬ。今までたびたび問題にしているが、これが解決できぬとあれば、この際何とか思い切つた処置をせなければならぬ。そこで実は当委員会には、農村のどぶろく密造が押えられぬのなら、戦時中にも一部ありましたように、いっそ農家から酒屋さんに米を持っていって、委託醸造をやらせてくれぬか、それならどぶろくはとまるがという声を聞いております。政府の方でどうしてもどぶろくその他の密造を押えることができなければ、これはやむを得ぬ、農家の委託醸造も一部許さなければならぬということもわれわれ考慮中であります。  その意味合いにおいてここで一つ密造対策をしっかりお聞きしたいと思うのでありますが、まず第一に、一体国税庁の方で見られた現在の全国各地の密造の状態を、一つ数字によって概略、簡単でけっこうですから、それも年々ふえているか減っているか、またどういうふうに密造の実態が変ってきているかということを申していただきたいと思います。
  60. 渡邊喜久造

    ○渡邊説明員 酒類の密造が現在におきましてもなおかなり一般的に行われているということにつきまして、直接取締りの責任にありますわれわれとしまして非常に遺憾なことであるというふうに存じております。密造が一番盛んに行われましたのは、御承知のように終戦直後から数年間のことであります。戦前におきましても、農村密造、いわゆる濁酒の密造、濁密と称するものは地域的にかなり盛んであった地域もありまして、当時からその面につきましては、大蔵省としましてずいぶん熱心にこの絶滅につきまして努力して参ったところであったのですが、終戦直後、御承知のように社会秩序といいますか、経済秩序が乱れ、片方では酒類の供給が非常に少なかった、税率も高い、従って酒の値段も高かった、こういったような幾つかの要素が重なり合いまして非常に動いておった。終戦後における密造の姿は、私は大体大きく二つに分けて考えることができるのではないかと思います。一つは、第三国人などが中心になってやっておりました、主として販売を目的とした密造ですね。販売密造とわれわれは簡単に読んでいます。それが一つ。それから農家が自家用のために作る、これも必ずしも厳密に他に供給するということが全然ないというわけではありませんが、大体主として自家用をねらった密造、この二つの形態に分けることができると思います。両者につきましては、もちろんわれわれは並行的に取締りを実行しておりますが、特に販売密造というものについて重点を置いた取締りというものが、従来かなりなされて参りました。その後酒の税金も下り、酒の値段も下った。それから供給面からいいますと、一応現在におきましては、蒸留酒などはむしろ出荷を統制しようといったような姿にありまして、供給能力としては、設備からいいましても、原材料からいいましても十分力はある。清酒につきましては、昨年くらいまでは、原料である米の関係から、どちらかといいますとやはり供給が少くて、市場でいえば売手市場の姿にありましたが、最近はそういうこともなくなりまして下手をすれば買手市場になつた。酒の供給がそういうふうにふえて参りましたし、同時に片方、われわれが警察当局の協力を得まして、相当取締りを強化した。そんなことも順次実を結びまして、既在の状況は、終戦直後に比べれば、だんだん滅ってきているのじゃないかとわれわれは思っております。密造が全国で一体どれくらいあるだろうか、これがはっきりわかれば密造でなくなるわけです。従いましてわれわれとしては、いろいろな資料から一応の推計をしてみる以外にはないわけでありますが、しかしその推計によりますと、昭和二十四年などはかなり多かったんじゃないか。その当時は、おそらく二百五、六十万石の密造があったんじゃないだろうか。これは酒類全体でございます。現在はそれに対しまして、大体半分程度には減っておるのじゃないだろうか。百二十万石見当になっているんじゃないだろうかというふうに、われわれの方の推計資料の数字からは出て参ります。ただこれに対しましては、いやもっとあるだろうという御意見もございますし、それ以下だという御意見もあろうかと思いますし、われわれとしては正確な数字として申し上げるよりも、一応資料から見ての推計であります。従って一時から比べればかなり減った、しかしまだまだ量としては非常に大きい、こういうことを申し上げることができると思います。
  61. 奧村又十郎

    ○奧村委員 その密造のやり方、そういうものも、何といいますか、時代に即して非常に巧妙になって、また状態も変ってきているということを各地で聞いているのですが、国税庁ではどういうふうに調べておられますか。
  62. 渡邊喜久造

    ○渡邊説明員 お話のように、少くとも戦争前と比べますと、相当大きな違いになっておるのじゃないかと思います。先ほどもちょっと触れました販売密造、これはしょうちゅうなどを中心にして行われ、一部清酒などもやっておる而もあるようでありますが、主としてしょうちゅうで、こういうような加工は、結局やはり蒸留機械を使ってやっております。大体販売密造は、主としてしょうちゅうが多かったのですが、最近はお話のように清酒について、これも濁酒じゃなくて、ときにはしぼりまして、そして清酒めいたものにして売っているといったような姿のものも出てきている、そういう話も聞いております。農家の関係は、われわれの方へ入ってくる情報としましては、やはり濁酒関係が中心で、それは飲む機会に、多少しぼるというか何というか、かすをとって飲むということもあり得ると思います。これはやはり相当濁っておりまして清酒そのものといつた姿とは違うのじゃないかと思いますが、農家関係は、どっちかというと濁酒関係が多いのじゃないか、こういうふうに思っております。
  63. 奧村又十郎

    ○奧村委員 私ども国政調査で全国的に視察した感じによりますと、戦後十一年たっていまだに密造を組織的にやっているような者は非常に悪質で、組織的で、ちっとやそっとじゃやめない。要するに悪質になったということが一般的に言えると思います。また農家の密造においても、だんだん密造のひどいところがはっきりしてきて、密造をやっていないところはほとんどやっていない。やっているところは相変らずしょうけつをきわめている。こういうように地区がはっきりしてきたと感じとれたのですが、国税庁はそういうように感じておりませんか。
  64. 渡邊喜久造

    ○渡邊説明員 今の、地区内に密造の盛んな地区というものの姿が順次はっきりしてきた、まだかなり一般的だとはいいましても、密造の地区というものが割合にはっきりした姿をとってきた、こういうことは私も言い得るのじゃないかと思います。戦争前におきましては、どちらかといいますと、大体密造の地区というものは一応きまっておりまして、その他の地域ではあまりやっておらなかったわけであります。終戦直後それがかなり一般化したが、また順次密造地域というものが、相当はっきりした姿をとってきたということは、われわれも言えると思います。ただ多少戦争前に比べますと、やはりまだまだ戦争前ほどの局部的な姿ではない、こういうことが言えると思います。
  65. 奧村又十郎

    ○奧村委員 今の御答弁の通りであるとすれば、清酒その他酒類の供給が非常にふえまして、売手市場が買手市場になつた。従ってもう密造するというような守旧が非常に薄れたわけです。しかもただいまお話しのように、やり方が悪質であり、また地区内に固まってきたということであるから、政府の密造対策もそれに即応して、適切妥当なな方法をとらなければならぬと思う。そこで、現在政府はどういう適切な対策をとっておられるか、またとろうとしておられるか。
  66. 渡邊喜久造

    ○渡邊説明員 全体としまして、順次密造地域というものの姿が、非常に濃淡がはつきりしてきたということは言えると思いますが、まだまだ地区的に見まして、かなり広い範囲に行われておると思います。結局密造の姿としましては、先ほど言いましたように、販売密造と自家用密造、これは相当性格も違いますので、われわれの方としましても、取締りといいますか、いろいろな面に場おいて多少ニュアンスの違った手をとるべきものじゃないか、こういうように考えておりまする結局密造対策の中心となりますと、やはり一面においては、何で密造が出てくるかという問題ですが、先ほども言いましたように、酒類の供給が少いから密造になるという線は、現在としてはもうほとんど考えられない状態であります。そうすると、なぜかということになりますと、御承知のように相当高率な酒税がかかっておりますから、結局値段の問題といいますか、そういうところに原因がある。米一升を農家が売れば百円前後というものが、酒一升になれば五百円くらいになる。一升の米からは必ずしも酒は一升じゃなくて、それ以上作れるわけですから、要するに税金のかかっている高い酒を飲むのがいやだといいますか、つらいといいますか、そんな関係から密造をやる、あるいはそこをねらって販売密造をやって、税金をまともに納めた酒に比べれば安いが、しかし相当大きなもうけになるような酒を作る。そのためには法を破るような危険もあえてする、こういうような姿になっていると思います。  従いまして、考え方といたしましては、前にも私は申し上げたと思いますが、密造対策というものは、結局二つの問題だと思います。酒に対する税金があまり極端に高くない、モデレートな税金である、要するにこれが高いか高くないかということで、密造する人の密造意欲といいますか、特に販売するものであれば、それによってもうけがきまるわけですから、できればこれの税率をもう少し引き下げるべきじゃないか。これは全体の構想がありますから、酒の税金をそれだけ先走ってすぐやることができるかできないかは別といたしまして、密造対策という面からいけば、やはり酒の税金をもう少し下げるべきじゃないか。これが一つ。それからもう一つは、取締りの問題だと思います。取締りと酒の税金を下げるという二つの対策が相待つて、初めて密造対策も効果を上げていくのではないか。その場合におきましても、やはり販売密造の場合と自家用密造の場合とは、対策に少し違ったニュアンスがあっていいのではないか。というのは、販売密造の方は、先ほども言ったように、第三国人が中心にやつておつて、売ってもうけようという関係ですから、これはもうかるかもうからないかという問題に帰するわけであります。従って、そのもうけのために法を破ることもあえてしょうというわけですから、そのもうけを少くすることが第一の一つの問題になるのですが、これは税率を下げるか下げないかという問題になる。第二の問題は、取締りを強化するという問題が、この面においてはどうしても強く出ざるを得ないのではないか、こういうふうに思っております。ただ遺憾ながらわれわれの陣容、あるいは警察の方にもずいぶん御協力を願っておりますが、現在におきまして、相当一時的にたたきましても、絶えずそこをねらって間断なくある期間たたくということをやりませんと、またもとのようになってくる、こういったような姿にあるわけでありまして、そこまで手が回りかねる問題がやはり一つあるのであります。そこをさらに推し進めていきますと、現在そうした酒の密造によってやっと生計を立てている人たちもあるわけでありまして、この人たちの生活問題も、広い社会的な問題とすると、バック・グラウンドには出てくるのじゃないか。しかしわれわれといたしましては、そういう問題は別といたしまして、販売密造に対しては、やはり取締り強化という線が当然まず考えられなければならない。それから自家用密造の問題になりますと、これは数も非常に多うございます。同時にそういう人の密造の量というのは、必ずしも多くない。従つてわれわれの方は、取締りもやりますが、同時に啓蒙宣伝的な要素が強く出なければなるまい。  従いまして、われわれの方で考えております対策といたしましては、税率の問題ーーこれは結局国会の税法の問題でありますから、別といたしまして、われわれが当面措置している問題といたしましては、取締りの問題、取締りの線といたしましては、今言ったように、販売密造の方は、どちらかというといわば取締りが中心である。それから自家用密造の場合におきましては、取締りと同時に、密造酒というものは衛生的にもいろいろ欠陥もあるのですから、そういつた面も込めましての啓蒙宣伝、これの両者を並行しながらやっていく、こういった考え方でございます。
  67. 奧村又十郎

    ○奧村委員 ただいまの御答弁は、せっかく新長官の御答弁ですが、今までの国税庁長官もいつも同じようにおっしゃいます。そしてただそれだけで済んでしまう。それでは、おそらく聞いておる者も納得はできぬと思う。今の御答弁で、それじゃいよいよこれで密造がなくなるという確信は持てぬと私は思う。先ほどお話しの、まずもって酒税が高過ぎるということについて、長官も認めておられる。これは、先日来この委員会で主税局長も、各国の例を徴し、あるいはいろいろな資料をもって、酒税が高過ぎるということを重々言われたが、しかし一体それでは酒税を引き下げるのかということにいくと、いや実は、ほかとのからみ合いもあってということで、何とも言われないということになるのですが、少くとも国税庁長官として、密造を取り締らせる最高の責任者として、酒税の引き下げということを今度の税制改正にはっきり打ち出していただきませんと、おそらく密造は減らぬと思います。  それから第二段の取締りの点ですが、取締りの方針については、ただいまのお言葉でよくわかりました。方針としてはけっこうに思います。しかし具体的にはどういうことをしておられるか。それは、なるほど農村地帯では密造を撲滅しましょうという看板をかけて走っているトラックもときどき見かけます。しかし、今そんなことで密造が征伐できたりするものでないことは、長官も御承知のことと思います。また、たとえば長崎県の島原地区のように、山奥で部落一つがこぞって組織的に密造をやっておる場合、税務官吏が調査にいくと、一里も離れたところから、せびろを着た税務官吏らしい人が来るということになれば、村の半鐘をたたいてあるいは合図の木をたたいて谷から谷に知らして、取締りに行かれた時分には跡形もわからぬ。あるいはまた取締りに行った税務官吏が頭から袋だたきにあうて追い返されたということなんです。そんなことは、私から申し上げるまでもなく、国税庁長官はよく御存じの通りです。そういう取締りを一年に三回か五回か七回くらいやったって、あくる日からまた同じように密造をやる。これもまた過去十何年間繰り返してきたでしょう。したならば、もうこういうことでは、今の悪質な密造は征伐できぬのだから、新たにどうするか、今まで通りのことをやられるのですか。そうして予算を聞きますと、密造対策費は一億二千万ほどである。そういうものでは第一問題にならぬです。そこで、長官もお話しのように、国税庁の推定で、全国で年間百二十万石の密造がある。これは、国税庁の責任上から非常に控え目に見ておる。私は、少くとも百五十万石あるいは二百万石の密造があると思う。かりに国税庁の言われる通り、百二十万石の密造として、これを二級清酒の税率に換算すれば、この密造が全部なくなって正規の酒を買うということになれば、約三百億の増収になるわけです。従つてこれを征伐すれば、百億や百五十億の税収をふやすことはできると私は思う。その征伐に当って、わずか一億二千万の密造対策費では、これは話にならぬ。この密造対災費を一億に、あるいは五億にふやせば、五億にふやして、その四億ふえた分の少くとも何十倍か何倍かは酒税の増収によっておつりがくる。こんなことは三つ子もわかるのだが、そういうわかり切ったことをなぜやらないか。思い切って密造対策費をふやしてそういう悪質な密造部落を征伐できないか。ただいま長官は、密造をやっておる者の生活問題もあると言います。これはこれでまた別に方法を講ずればよろしいので、そういうことを言われるということは、当の責任者である国税庁長官責任のがれの言葉だ、そう私は思う。
  68. 渡邊喜久造

    ○渡邊説明員 私は、誤解を招くといけませんから、はっきり申し上げておきますが、生活の問題もあるということは、やはり物事をずつとながめていくと、そういう問題があるということを申し上げているわけで、そうだからといってわれわれの収締りの手をゆるめるとかなんとかいうことは、ちっとも考えておりません。それはあらかじめ申し上げておきます。それから密造の対策の問題ですが、これは、そう奇想天外なやり方があるというふうにはわれわれは思っておりません。やはり先ほど申し上げたようなそれはかっての国税庁長官も同じようなことを申し上げたと思います。私も結局同じようなことを申し上げるだけであります。しかし、それは結局いかにひんぱんに収締りの度数をどうふやすか、あるいは範囲をどの程度に広げていくか、こういうところに私は尽きると思つております。結局奇想天外な手段があるのではなくて、むしろ根強く取締りをやっていく。それで取締りの経費につきましては、確かにわれわれももつと多額を使いたいと考えております。まあこれは予算全体との関係もございますので、むしろ輿村委員から、現在のわれわれの要求が少な過ぎるのじゃないか、もっとたくさん使うべきじゃないかということをおっしゃっていただくことは、実はわれわれが同じようなことを言っているわけでして、しりをたたかれた意味において、恐縮ですが、ある意味では、われわれとしては非常にありがたい御鞭撻であるというふうに思っております。
  69. 奧村又十郎

    ○奧村委員 それでは来年度の密造対策費を、ただいま国税庁は主計局へ一億八千万円要求しているそうですが、これをどうですか、五億くらいに増額して要求しませんか。
  70. 渡邊喜久造

    ○渡邊説明員 それにつきましては、私は今ここでもって直ちに、そうですというわけにはちょっといきかねると思っておりますが、さらに検討してみます。
  71. 横山利秋

    ○横山委員 主税局長がまだおいでにならぬそうですから、私の質問を次会に回したいと思います。ただ長官もそこにおられますから、一つだけ強く要望しておきたいことは、きのうの問題です。機械の耐用年数の圧縮の問題ですが、先般通産委員会及び当大蔵委員会で附帯決議をし、本会議においても全員了承いたしました耐用年数の圧縮の問題について、聞くところによりますと、まだその作業が十分進展をしてないようであります。また聞くところによりますと、あの問題が、単に当時の機械設備の制限に関する法律の欠陥を補うためにのみ決議をせられたというふうに誤解を生じている向きもあるようであります。当時云々されましたのは、ただにそればかりでなく、この際根本的に耐用年数の圧縮をはかるべきである、そして今日の中小企業の機械の更新をはかることが、それ自体にとっても、あるいは機械メーカーのためにとっても、日本の産業全般からいって必要なことである、こういう大原則によつて一歩を打ち立てられているわけでありますから、政府としては院議を尊重して、すみやかにこの実施をされんことを私は要望したいのでありますが、どういうように現状なっているのでありますか、お伺いをいたしたい。
  72. 渡邊喜久造

    ○渡邊説明員 繊維機械の制限の法案が国会論議されましたとき、繊維機械の耐用年数だけを特に取り上げまして、耐用年数の圧縮といったようなことが御議論されましたのは、これはやはり、私はそのときの論議の中心は、これによって注文が非常に減って、機械メーカーの手があく、商売ができなくなる、従いまして、せめて耐用年数を短かくすることによって、その辺から機械の発注が生まれるようにというのがやはり議論の中心ではなかったかと思っております。当時われわれとしましては、繊維機械の耐用年数を短かくするだけで、まだなかなか機械の発注には結びつかないんじゃないかというような話を申し上げたように記憶しております。ただその後の様子を見てみますと、その面は幸いにしてと申してよいだろうと思いますが、機械メーカーに最近非常に注文が殺到しているようでして、機械メーカーの方の関係からは、いわば当面の対策として耐用年数をどうこうしなければならぬという必要は、現在のところではまだ見られないのじやないか、かように思います。しかし耐用年数の問題を検討するということは、これはひとり繊維機械だけでもございませんが、繊維機械については特にお話もございましたが、まあいろいろ機械の更新をすみやかにやるという問題は、日本経済を立て直す上において必要な面である、これは確かに一つの御議論だと思います。そんな意味におきまして、現在その点につきまして、いろいろ資料を集めながら検討しておりますが、何と申しましても、耐用年数という問題は、相当広範な範囲にわたりますものですから、現在におきましては、目下検討中であるという程度をまだ出ておりません。これは、主として実は主税局でやっておりますので、私の方は一応そういう話を聞いている。従いまして、その辺の進行状況のこまかい点につきましては、主税局長が出ました折に御質問願つた方がいいかと思っております。
  73. 横山利秋

    ○横山委員 長官のお話には大分異論がございますが、何としても主税局長に、やはり院議尊重の問題についてはただすべきであろうと思いますから、次会に回します。
  74. 小山長規

    ○小山委員長代理 それでは本日はこの程度にとどめまして次会は来る十一月十三午前十時から開会することとしまして、これにて散会します。    午後零時五十七分散会