○三井
説明員 この流下式の転換に伴いまして、今お話しのように、相当多数の失業者が出て参ります。これらの気の毒な犠牲者をどう処置いたしたらいいか、これは公社といたしましても、流下式転換を指導いたしまする場合に、非常に頭を悩ましておりまする問題の
一つであります。この点につきましては、昭和二十九年にすでに公社としての
方針を定めまして、現在塩業組合を指導いたしておりますのは、この
方針に従っておるのであります。その
方針の大体を申しますと、今お話しのように、基本的な
考え方といたしましては、
労働者と雇用
関係のあります塩業組合、あるいは地業会社でもって、この失業手当の問題はでき得る限り配慮いたすべきである、公社として
幾ら幾ら出したらよかろうとか、あるいは公社自身がその一部を免除してやるとかいう考えは持っていないわけであります。地業組合といたしましては、もちろん組合によりましては、相当の資産、信用を持つておるところもございますが、組合によりましては、また非常に貧弱な組合もございます。現在の資力信用をもってしては、十分退職手当を支給し得ないというようなところも考えられるわけであります。しかしながら、この流下式の転換を行いまするならば、それによりまして経営の合理化はもちろんのこと、生産母の相当の増大を十分に期待し得るのでありまして、それによりまして、虚業組合の基礎も強固になり、能力も増大してくる。その将来の信用の増大までを考慮に入れまして場合吉によりましては、一時借入金をいたしましても、この際の失業犠牲者に対してはできる限りの失業手当を出すべきだ、退職金を支給すべきだ、かような指導をいたしておるのであります。しかしてその
方法の
一つといたしましては、流下式の転換をいたします場合に、従来は御承知のように、塩田の経営なるものは、塩業組合とは申しましても、個々の塩業者が自分の塩田を品分で経営するというような形が多かつたのです。決して塩業組合全体が一本の経営というような形になっておらなかったのであります。流下式の転換を行います場合には、転換の工事はもちろんでありますが、転換後の組合または会社の経営というものも、組合、会社を一本の経営形態にまとめまして、それによりまして組合、あるいは会社の経世を極力合理化しまして、経費の節減をはかり、さらにまた能率の向上、生産の増加ということに努力して参り、それによって、少しでも退職金を多額にできるような基礎を確立するというような指導をもいたしております。
それからまた、先ほども申しまするように、流下式塩田への転換を希望する者は、このごろは押すな押すなという
状況でありますので、その希望者の中からどの組合を採択するかという順序をきめまする場合には、その退職者に対しての退職金の支給につきまして、十分な用意ができているものから優先的に取り上げて参るといったような配慮もいたしておるのであります。そのほか失業保険にすら従来加入していなかったような組合もあるのでありますが、この失業保険に積極的に加入させますように指導いたしておりますとか、あるいは塩田労務者としては仕事がなくなるのでありますけれども、流下式転換の工事には相当の労力が必要でありますので、これらの工事への配置転換をはかる。かりに組合、会社が転換工事を直営いたさない場合でも、その請負をいたしました事業者に従来の労務者を積極的に使用させまして、それによりまして、失業者の一部の救済をはかるといったような
方針もとつております。大体各組合とも、優先的に転換工事に失業者を採用することにつきましては、これはもう当然のこととして、積極的に協力をいたしておる
状況であります。
そのほか、組合が退職金を支出いたしますために、
資金の十分な手当ができない場合には、公社といたしまして、これらの
資金の調達を積極的にあつせんする。このためには、
中小企業金融公庫ともすでに話し合いをいたしておるのであります。またこちらのあっせんで、この失業手当の支出のための
資金を借り入れた例もすでにございます。こうした点のあっせんも十分にいたす
方針で臨んでおるのでありますが、ただこの失業手当と申しますか、退職金につきしまして具体的に一人当り
幾らの金額を出せといったような指導は、先ほど申しましたように、組合の能力にもよりますし、また地方々々の慣裡、あるいは
状況等の違いも考えられますので、公社といたしまして一本の基準を示して、これだけの失業手当を出せといったような指導はいたしておりません。具体的な地方の実情に応じまして、個々の場合に応じて、各地方局が積極的にあっせんするという
方針をとらしておるのであります。
御参考までに、ただいままでに失業いたしました者に対しまして組合が支出いたしました退職金の例を申し上げますると、本人が希望をいたしました場合と、それから組合の方から祉極的に整理をいたした場合とでは多少違いがあるのでありますが、最高では一人当り三十四万三千円という例が出ております。平均をとりまして希望退職の場合が大体一人当り五万五千円くらい、整理退職の場合で平均が三万二千五百円
程度といった
状況になっておりますが、この額も、初めはなかなか組合の方も公社の指導を聞き一ませんで、わずかの退職金で済ませるというような空気でありましたのを、極力指導して参りまして、組合、経営者側の認識を最近では相当改めさせておりますので、この基準も急送こ向上しておるような次第であります。なおこの例で私ども満足いたしませんで、今後とも組合の能力に応じて できるだけの退職金を出すようにいたさせるということで参りたいと思っております。