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1956-08-11 第24回国会 衆議院 大蔵委員会 第47号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年八月十一日(土曜日)     午前十時五十八分開議  出席委員    委員長 松原喜之次君    理事 有馬 英治君 理事 高見 三郎君    理事 石村 英雄君 理事 春日 一幸君       淺香 忠雄君    大平 正芳君       加藤 高藏君    川島正次郎君       吉川 久衛君    杉浦 武雄君       内藤 友明君    中山 榮一君       古川 丈吉君    前田房之助君       山本 勝市君    石山 權作君       成田 知巳君    平岡忠次郎君       横錢 重吉君    横山 利秋君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 一萬田尚登君  委員外出席者         大蔵事務官         (大臣官房日本         専売公社監理         官)      白石 正雄君         大蔵事務官         (財務調査官) 大島 寛一君         大蔵事務官         (主計局長)  森永貞一郎君         大蔵事務官         (主計局給与課         長)      岸木  晋君         大蔵事務官         (主税局長)  原  純夫君         大蔵事務官         (銀行局長)  東條 猛猪君         日本専売公社理         事         (製造部長)  坂元 晃佑君         日本専売公社理         事         (塩脳部長)  三井 武夫君         専  門  員 椎木 文也君     ――――――――――――― 八月十一日  委員井上良二辞任につき、その補欠として成  田知巳君が議長指名委員に選任された。 同日  委員成田知巳辞任につき、その補欠として井  上良二君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  税制に関する件  金融に関する件  外国為替に関する件  専売事業に関する件     ―――――――――――――
  2. 松原喜之次

    松原委員長 これより会議を開きます。  税制に関する件、金融に関する件、外国為替に関する件、国有財産に関する件及び専売事業に関する件について質疑を続行いたします。石山權作君
  3. 石山權作

    石山委員 私のきょうの課題は、おおむね為替関係なのでございますけれども、大臣おいでになるし、大臣が先ごろ東北地方を回りまして、特に秋田県の八郎潟など視察されて、いろいろ有意義なことをば知事初め地方自治団体に暗示を与えている点がありますが、それに関しまして、少しく内容がわからない点などもあるので、地元を代表する代議士として一応聞きただしておきたい、こういう点もございます。それからきのう銀行局長から説明を承わった、金融貸し出し過多に関して抑制する、この考え方が、いざさか事務当局大蔵大臣との間に、これは事務の手続上のいき違いかどうかわかりませんが、そこに相違があるかのように新聞紙上では発表されておる。それでは私は金融の場合において、統一ができないことははなはだ残念だと思うのでございますが、特にこの際、高利率を適用しても、この貸し出し過多をば抑制するという日銀考え方と、市中銀行あるいは大蔵事務当局では、そんな必要はないのだ、今さら一年前のたなざらしの問題をば今出す必要はないのじゃないか。特に市中銀行の場合は、もう契約が済んでいるにかかわらず、今さらそんなことを出してみたところで、われわれは応ずることはできないといういうな面もある。少しこの点、きのう銀行局長は、意思の疏通のためであって、事務当局大蔵大臣との間に考え方相違はないといういうにおっしゃいましたが、私は前に大蔵大臣が考えていた人事異動問題等を考えてみて、何かそこに割り切れないものが残されている。そういうふうな考え方があるので、一つ大臣から直接にお聞きしてみたいと思います。  大臣秋田おいでになりまして、八郎潟を視察されたようでありますが、この中で大臣は、八郎潟干拓賛成であるとおっしゃっております。しかし日本経済全体のバランスという言葉を使っているのですが、それと同時に、経済的なはね返り等も考えなければならぬ。これはこの文章だけ見ますと、一体何を考えていられるのかわからないのが残念でありますが、大臣おいでになったとき、ちょうど私不在でござまして、もしいれば、よく事情も聞きただし、あるいは地元の者として、この問題に対してよく説明もできたと思いますけれども、残念ながらお会いすることができなかったのであります。大臣のおっしゃっている日本経済バランスが、八郎潟干拓の問題とどのくらいの関係があるのか。経済的なはね返りというのは、一体何を意味していられるのか、こういうことを一つこの際お聞きしたいのでございます。
  4. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 新聞にどういうふうに書いてあるか、私読んでおりませんのでわかりませんが、今の御質問についての私の考えは、八郎潟干拓それ自体は非常にいいだろう、ほかの干拓ということに比べても、いろいろな条件から見てもいいだろう、こういうことは実地を見て感じたので、そういう話をしたのであります。ただこれをやるのには、むろん資金が相当巨額にかかる。今日いろいろと各方面でも着手をしているが、この資金源をどこに求めるか、どういうふうな機関がやるか、いろいろな問題があるから、そういうものを総合的に考えて検討しなければなるまい、こういう気持で話したのであります。要するに、私はそういう程度で話したのであります。
  5. 石山權作

    石山委員 その程度ということですが、大臣は青森へ行かれまして、例の通り日本経済の問題としては、人口が大へん多いんだ、人口が多いのに生活を安定させるためには、どうしても貿易にたよらざるを得ないということを相変らず強調されております。そういうような眼目に対しては、私は何も意見がないのでございますけれども、貿易をば繁栄さす、いわゆるコスト安という点に関しまして、今まででは、大臣のお話とわれわれの考え方にいささか相違があると見ております。たとえば銀行利子の問題、あるいは外貨割当の問題、こういうものを抜きにしてコスト引き下げということは、うてい考えられない。国内に与えられたコップのワク内においてのみのコスト引き下げになりますと、これはどうしても働く者の低賃金、労働時間の延長安全衛生設備の不完全というふうな形でしわ寄せされて、税金の面では、非常に格差の出る税金に変っていくと思うのでございます。特に法人税のように、特別措置によって免税がたくさんあるような現象が、私はそれを証明しているのではないかと思う。  外貨割当の場合を考えてみますと、去年度の想定は、黒字があんなに出るということは予想しておらなかったようでございます。今年度に至りますと、こんなに赤字が出るということも想定しておらなかったようでございます。これは商売でございまして、商売は生きものでございますから、これは何もきちんとその通りいくとは、だれしも予想していないのでございますが、現われた結果を見ますと、当局のものの考え方計数の集め方、経済全般に対しての見通しはいささか甘いのではないか。裏返して見ますと、非常に勉強が不十分なのではないか、責任あり方が確立しておらないのではないかというふうに言いたいのでございます。今年度赤字のできた大ざっぱな答弁を承わりまして、この善後措置をばいかようにしてやるかということを、大臣から御答弁を願いたい。
  6. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 別に私は、見通しにおいて間違いをしていると考えてはおりません。国際収支において、今後非常にきびしいといいますか、貿易等が非常に競争が激しくなるだろう、このことは常に申していることであります。国際収支においても、ことしの六月までは、私は数字的に詳しいことを今ここで申し上げるのはどうかと思いますが、私の記憶によると、大体輸出は月に一億九千万ドルから二億ドル、輸入の方が一億八千万ドル、こういうふうで、輸出は順調に伸びている。ただ問題は、私どもの考え方は、こういうふうに輸出が伸びているんですから、そう心配もないが、輸入をここで押えて、手持ち外貨をふやしていくのが日本経済にいいのか、あるところまで手持ちが増加した場合は、これを維持する程度にとどめて、輸入もふやす、そうして輸入輸出を通じて貿易拡大をはかっていく、そこで日本経済拡大もある、こういうふうに考える。しかもそれが物価面にもいい影響を与えて、物価を下げる効果を持つ、こういうふうな考え方です。むしろ輸出もふえるが輸入もふやしたということで、政策的にも輸入をふやしているわけであります。ですから、今の三十一年度会計年度見通しにしても、私はやはり見込みよりも輸出がふえ、初めの予定よりも輸入もふえる。その結果、初めの予定しているときよりも収入じりは若干悪くなるが、赤が出るとも考えておりません。今の見通しは、まあとんとんというふうな点を見通していいのではないか、こういうふうに考えるわけであります。
  7. 石山權作

    石山委員 一億何千万ドルの赤字が現実的に出ている。これの善後措置、つまり経済バランスから見た場合、これをいかにして処理して来年度立場をとるか、その処理の考え方はどこに調子を合わしているか。現実的に一億数千万ドルの赤字に対して、どこにポイントを合わしてこれからの貿易政策を進めていかれるのか。それに対しての財政措置をいかにしてとってバランスをとろうとしていられるのか、こういうことを御説明いただきたいのでございます。
  8. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 おそらく一応一億一千万ドルという赤字会計年度に出るということも、あり得るということの発表をいたしております。しかしこれは、お考え願いたいことは、一番輸入の多い月がずっと続いていったとした場合に、輸入がこれだけになる、その一番大きなときをとると、こういうふうなことも考えられる、そうして輸出の方は、むしろ用心をして、若干私は厳格に見てやる。ですから、この一億一千万ドルという赤を非常に重点に考えていろいろな施策をするのは、あるいは妥当でない、こういうこともあり得る。悪いときもあり得るという程度で、御理解を願った方がいいかと思います。
  9. 石山權作

    石山委員 私たも見てみますと、去年の五億幾ら黒字というものは、非常に人為的な輸入を押えた結果止まれた、つまり自然的な黒字ではなかったというふうに思っております。それだけ、大臣が常に言われているコスト労コスト引き下げに非常に大きな影響を与えたのではないか。どうしてもこの場合、コスト引き下げをして、国際貿易上において有位な地位を占めるとするならば、いくら日労働者が勤勉で、能率を上げようとしていても、今の為替管理方法外貨割当方法やり方では、どうしても原料高にならざるを得ないのではないか。特定御用商人を作るよろな、特定の政商を作るような現在のやり方では、決して原料安ということは夢にも望み得ない。広く買える羊毛であっても、よそよりもずっと高く買っているというのが、今までの経緯であった。羊毛だけではない。これはバナナであっても砂糖であっても、あらゆるものについて指摘できるのではないかと思っている。そういうような大まかだところ、つまり原料の高い、あるいは利子のでい、税金の差別のあるところに、ただ労働者のみにコスト安、の責任があるというふうな在来の言い回しであっては長続きしないし、正常な日本経済回転発展にもならないのではないか、そういうことも私は考えているので、大臣が常日ごろ考えているコスト引き下げに関して、もう一歩突っ込んだ話を承わりたい。特に来年度予算を考える時期にそろそろきているのでございますから、その外貨割当方式をいかに考えておるか、為替の問題をいかに考えておるかというふうな点も、もう一歩突っ込んで御説明できる段階なのではないか。一萬田構想というものが、来年度予算を前にして形成されつつある力ではないか、こう思って、私は念を押してお聞きしておるのでございます。
  10. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 為替割当方式等につきましては、三十二年度あるいは三十一年度下期等においてどういうふうに持っていくかということは、実情に合うようにもちろん検討を加えております。私はこういうふうな為替制限等の面からコスト高を生ずるということは、御説のように極力避けなければいけない。今日為替管理をなるべく緩和し、あるいはまたなるべく貿易を自由化して、AA制などもふやしていこうというふうな方針をとり、また輸入もなるべくふやして、原料高にならないように、原料が十分自由になるようにしようという方法をとっているわけであります。なお十分客観的な情勢変化に適応ができるように改正を加えて参りたいと存じております。
  11. 石山權作

    石山委員 先月から一カ月たって、そろそろ予算期を控えていながらも、大臣考え方というよりも、答弁の仕方は、ちっとも中身が充実していないと思います。もちろん今の鳩山内閣内容が、まだ予算を編成する立場に立っていないというふうにいわれておりますけれども、それにしても、私は来年度予算を編成されるあなたとしましては、もうそろそろ物の考え方がまとまってもいいのではないか、これはあなたの責任だと思う。鳩山内閣がどうあろうが、それは別にして、日本財政経済というものは、だれがその任に当たっても、資本主義的な物の考え方によって現段階が進むとするならば――特に前年度並びに三十一年度予算に関しては、あなたの功績を高く評価している方もある、くそみそに言う方もある。しかし手当な点を探し求めれば、やや可であったといろ批評が多いと思う。そのあなたが、来年度予算に対してもっと積極的な物の考え方が生まれないということは、おかしいと思う。先月も同じ、今月も同じ、しかも予算編成期が迫っているにかかわらず、まだ重要な、特に日本経済を左右する大きなもの、貿易と密接に連なるところの外貨割当為替方式がいまだあなたの脳裏に浮かんでいない、形をなしていないとするならば、これはゆゆしい問題だと私は思ろ。今までのように慎重に考慮する、漸進的に問題を解決するというが、漸進的というのは、一体何を意味しているのかとわれわれは問いたい段階である。問うても、私は決して無理な段階でないと思っているのですが、どうでございましょう。もう少し形のある、内容の実った答弁ができないものでございますか。
  12. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 具体的な話となりますれば、私ほどういうものに外貨を割り当てていくか、あるいはこれはAA制に持っていくか、そろいうようなことにこの外貨割当方式はなると思います。これは通産省とも十分相談しなければなりませんし、私の基本方針としては、なるべくAA制に持っていきたい。しかし同時に、これは国内産業との関係もあるのでありますから、必要なものは割当もやらなければならない、こういうふうな状況にあります。具体的と申しても、これは一覧表でも出してみるというわけにはいかないかと思います。
  13. 石山權作

    石山委員 どうも外貨割当は、この分でいきますと、去年度もあなた方の見積りが誤まったと同じに、今年度も誤まった。来年度もおそらく今のような考え方でやるとするならば、誤まると思う。これは、今までの日銀貸し出しの点を見ましても、大蔵当局計数の集め方も日銀計数の集め方も、本年度の上半期は当っておらない。非常に著しい相違を来たしている。これは、あなた方の思うように日本経済が動いていないのか、あるいはあなたたちが思っているよりも、経済が好回転をしているのか知りませんけれども、いずれにしても、あなた方の意図のもとに日本経済が動いていないということが、立証されている。ですから、日銀がどんなに高利率を適用しようとしても、市中銀行はそっぽを向いている。指導性がない。何を言っていやあがる、あなた方の言っていることが何も当っていないではないか、こういうことを言っている。この点は、確かに私は、市中銀行がふんぞり返って皆さん指導性を笑っているのは、適切だと思う。今も大臣答弁しているように、大へん場当りで、政治、経済に対する深い愛情と綿密な計数の集積ということを怠っているように見えてなりません。そうでなければ、あなたはもっと親切に、具体的な話ができるはずであります。その例証として、私は金融の問題も、あなた方の意図からあまり離れないところをとっていくべきが当然だと思う。それがずっと離れているところを見ますと、何か皆さん考え方が、事務当局であれ、政府であれ、少しく粗雑なのではないか、場当り主義なのではないかと思う。もちろん春の風が吹けばひとえものを着るというたとえもありますけれども、それにしても、あまりに放任的なやり方ではないか、責任あり方がはっきりしないのではないかということを申し上げたいのであります。今回、日銀貸し出しが非常に多くなって、その抑制の考え方として、日銀側では高利率を適用すると言っております。これに対して大臣は、不承々々か知りませんけれども、やや賛成をしておられる。しかるに二日か三日だったあとにおきまして、市中銀行大蔵事務当局は、反対の意向を表明したことが新聞紙上発表されているのでございますが、この辺の間は、どういう関係でちぐはぐな格好で発表をされているのか、その経緯大臣がお知りでないならば、だれか事務当局の方でもよろしいが、御答弁を願いたい。
  14. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 決して御意見のように、ちぐはぐな点はありません。今一つの例として、高率適用制度についてお話しがありましたが、これも決して、大蔵省と日本銀行で見解の相違があるということはありません。ただこの高率適用というようなことを大きく取り扱って、いかにも金融を引き締めるかのような心理的影響を与えることは、適当でないだろう、こういうふうな批評は持ちます。持ちますが、高率適用制度は、私がおった当時でありますが、非常に日本銀行貸し出しがたくさんある。三千億以上四千億というように、日本銀行にこなくては市場資金の調整が困難であった。とういうときの高率適用と――第一次高率適用ですが、それと御承知のように、金融正常化が一応達成された、もら日本銀行にそう依存しなくてもいいんだ、また依存しない方がいいんだ、それが可能だという客観情勢ができた場合に、その高率適用制度が新しい状況に応ずるように変化するのは、当然だろうと思います。かりに四千億まで日本銀行が貸さなくては市場金融が正常でないという客観情勢の場合は、そう早く高率適用がかかりますれば、これはかえって不適当である。ある程度まではやはりいってもいいという態度はよろしいと思う。しかしもう依存度がなくなった、もうない方がいいんだというときになると、日本銀行でやはり早く一次高率適用がかかるようになる、これは当りまえのことなんで、ただ客観的の情勢変化に応じて改正を加える。改正を加えぬのが、むしろ私ほおかしいんじゃないかというふうに考えておるわけであります。ただ何でもかんでも一時にたたき出して、いかにもかね太鼓で金融を締めるかのように言うのは、心理的な影響が強すぎるぎろうという考え方であります。
  15. 石山權作

    石山委員 大臣の御答弁を要約しますと、外貨割当貿易の問題、あるいは金融問題も、そうせっぱ詰まったものの考え方をしなくてもいいのじゃないか。ということは、裏を反せば、日本経済に弾力と余裕ができたという意味かもしれません。あるいはもう出たとこ勝負という両面も兼ねているように聞えます。まあそれはそれとして、これはやむを得ないでしょう。あなたの御答弁を追及してもなかなか出てきませんけれども、一つこの点だけは、あなたの一番の管轄の問題ですから、御答弁をいただけるのではないかと思うのですが、政府がお作りになりました中小企業振興審議会がございます。これの第二部でありましたか、金融税制関係部会長工藤昭四郎さんが司会をしまして、過日何か会議が開かれました。その場合に、私まだ内容を詳細に調べておりませんけれども、大法人各種特別措置の問題が一案となって出ているようでございます。これは、そろそろあの時限法などをばおおむね改廃をして、その分を中小企業に回したらどうかという意見じゃないか――時限法は、われわれが前の国会においても、いろいろと論議をしたのでございますけれども、あの特別措置法なる時限法は、今の経済状態からするならば、もうとっくに私は廃止してもいいものはたくさんあるのではないか。こういう点、政府が作られているこの審議会の中からも、そういう声が出ているのでございますから、来たる三十二年度予算を組む場合には、十分この点が私は反映されると思いますけれども、この特別措置法、特に時限法に関して、大臣は今の段階においてどういうふうな御意見を持っておられるか、これをお聞きしたいのでございます。
  16. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 御質問の点につきましては、客観的な事情変化しておるのでございますから、それに適応するように検討を加えまして、ほんとうに情勢に応ずるように今回は改正を加えるということでございます。
  17. 石山權作

    石山委員 これで終りでございますけれども、答弁にならぬと思います。私は幾らあなたにお聞きしても、情勢に応じてよろしく勘案してという言葉の繰り返ししかいただけないので、非常に残念に思います。ただ人口が多くて、日本の八千万の民族が生きていく上には、貿易最大課題である、この意見は、私はいつも聞いております。その通りだと思います。それに関して、コスト引き下げ貿易の繁栄のもとがただ働く人の、中小企業のみの勤勉努力だけでは、もう私は立ち打ちのできない時点に立っているのではないか、こういう点を私は何回も言っているのですが、一つ認めていただきたいと思います。そのコスト引き下げの重要な中身としては、外貨割当については、特定企業特定の業者を私はあまりにも育て温存さしてはいけない段階にきている、もっと自由に、もっと幅を広げてやる必要がさし迫ってきているのである。こういう点を一つ申し上げるとともに、今お聞きしましたところの税制改正も、三十二年度でよろしく勘案してもいい時期が、おのずから、しかもあなたが言うように、無理のない形で私は近づいておると思う。これを捨てておくならば何かのときに、あとになって、時限法をもう一年延長たどというやり方でおくとすれば、むしろこれは人為的で、私は正常な経済発展を非常に阻害する方向へいくだろうと思う。その例としましては、政府のやったこの中小企業振興審議会にも出ている通り、私はそろそろそういう時期がきているだろうと思うので、そういう点も一つよろしく勘案して、自由党内閣であっても、新しいブレーンの人々が新しい政策を掲げようと努力している時代でございますから、新しい時代をよく見ていられる大臣のことでございますから、万遺漏はないと思うのでございますけれども、来年度予算に関しましても、そういう点をよく勘案されて、少しく新政策くらいを振りかざしていただかないと、いたずらにして第三年度を迎える一萬田財政は、私は何の足しにもならないのではないか、そう思いまして申し上げたわけです。私はこれで質問を打も切ります。
  18. 松原喜之次

  19. 春日一幸

    春日委員 私は生命保険契約における、たな上げされておりまする分の返済問題について、大蔵当局の御意見をお伺いいたしたいと存ずるのであります。それは、八月七日の日経新聞が報道しておるところによりますと、生命保険協会では、終戦以来たな上げされております一万円以上の契約、それからその当時国から受けておりました補償金の全額、これを本年度中に返済する方針を立てた、こういうことを報道いたしておるのであります。これは昨年来金融機関が第二封鎖預金、その他外地預金、こういうようなものの払い戻しを始めたために、生命保険協会でも、ようやくこのたな上げ契約の返済問題を取り上げるようになったものと考えられるのでありまして、いうならば、すでにおそきに失するとは考えますが、しかし戦後すでに十カ年間、生命保険の支払いも受けれず、あるいはまた保険料の支払いも払い込みもできなくして、実際にこの契約がほとんど無効の状態にありました、これらの契約者にとりましては、これは一応の福音であると見ることができるかと存ずるのであります。しかしながら、新聞の報道いたしておりますところでは、これらのたな上げ契約の処理方法については、必ずしも明確になっておりません。この際本委員会を通じて、この生保協会が立てておりますところの支払いの具体的計画並びにその内容、これを一つこの際国民の前に明らかにいたされたいと思うのであります。
  20. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お話は非常に具体的なことでありますので、一応今までの経過、今日の状況を、銀行局長から説明いたします。
  21. 東條猛猪

    ○東條説明員 ただいま春日委員のお尋ねの、生命保険会社のいわゆる調整勘定の整理に関する問題でございまするが、御承知の通り金融機関再建整備法の第三十七条で、この調整勘定の整理が進捗をいたしまして、ここに利益金がたまりました場合におきましては、それぞれ所定の順序によりまして処置をいたすことに相なっておるわけであります。すでに御承知の通りに、二十三年の三月に、いわゆる小口の生命保険契約の救済のために、政府から補償しました金額は三十八億であります。これに法定の年四分五厘の割合を乗じました利率を加算いたしますると、本年の三月で大体五十二億になる。二十社の生命保険会社の中で、今日までだんだんといわゆる調整勘定の整備が進捗いたしました結果、政府からの補償金の償還に充てる財源の見通しが確実につきました会社、そうしてまだその整理が十分に進捗いたしませんで、償還の財源のめどがはっきりつかない会社、いろいろございまするが、ただいまの方針といたしましては、この償還の財源の見通しのはっきりつきました会社からは、できるだけすみやかにそれぞれ既定の方法に従いまして、政府補償金の返還をなさしめる、さような方針をとっております。償還が行われましたあとのいわゆる生命保険のたな上げ契約の処置につきましては、もとより調整勘定の利益の限度内におきまして処置せられることは、申し上げるまでもないのでありまするが、その具体的な方法、時期等につきましては、生命保険会社の作っておりまする協会の内部で、いろいろとまだ協議中の段階でございまして、たな上げ契約の処置をこういうふうにしたいという具体案までは立てておりませんが、右申し上げました整理に対する往還が進捗ないし完了するのと並行いたしまして、その具体案もただいま研究いたしておる、こういう段階でございます。
  22. 春日一幸

    春日委員 そこでお伺いをいたしたいのでありますが、たな上げ契約の返済については、法律で新旧勘定を分離いたしまする場合、国から借りた補償金を返済するのが建前になっておる。こういう法律の構成になっておると思うのであります。そういたしますと、返済金額は、ただいま局長が御答弁になりました通り、元利合計五十二億円、それからわれわれの調査いたしました資料では、たな上げ契約分が三十二億円、生命保険会社の調整勘定では、現在その利益が生じておるものは四十億円くらいしかない。そういたしますと、結局差引いたしまして、これらのたな上げ契約分の支払いをいたそうといたしますると、どうしても四十億円程度赤字が出てくるのではないか、こういう工合に考えられるわけであります。こういうその不足分はどういうような工合で調達をして、そしてこのたな上げ契約分の支払いに充当せんとするものであるか、この点一つ銀行局長から、御調査になっている範囲内において御答弁を願いたいと思います。
  23. 東條猛猪

    ○東條説明員 申し上げるまでもなく調整勘定の処理は、現在の金融機関再建整備法の定められたところに従いまして処置が行われるわけでございます。それで、ただいま申し上げましたように、政府補償金で償還すべきものは、元利を合せて約五十二億になっておりますが、今日までのところでは、まだこの調整勘定の償還の財源が五十二億をまかないまして、そしてたな上げになっておる保険契約を全部まかなうというところには立ち至っておらぬわけであります。また調整勘定の現状は御承知の通りでありまして、各会社によりまして、まちまちでございます。従いまして、法律の命じております通り、この調整勘定の整理が進みますれば、まずもって政府に対する補償金の償還に充てる。そして調整勘定の処理、整理を進めて参りまして、残額の範囲内におきまして、いわゆるたな上げ契約の処理が行われる。その際に、各会社ごとにいろいろ調整勘定の状況が違っておりまいすので、その具体的な時期、方法をどうするかということにつきまして、今協会側でもいろいろ検討いたしておりますし、私どもの方でも、その話を聞いていろいろ検討いたしている、こういう段階でございます。
  24. 春日一幸

    春日委員 そういたしますと、結局法律に基いて、国からの補償金を優先的に返還を行う。そういたしますと、残された債務三十二億円、これは支払いをする財源がなくなってしまう。せっかく金融機関が第二閉鎖や外地の預金を払い戻しをして、その債務を忠実に履行しようといたしておりますこのときに、この生命保険会社だけが、結局支払い財源に事欠いてくるような、こういう調整勘定の処理というようなことは、これは国民のためにふさわしいやり方ではないと考えられる。そこで、結局何らかの形によって、この三十二億円を支払うための必要財源捻出の方途が講ぜられなければならぬと考えるのでありますが、具体的に、どういうようなことがその対象として考えられるか、この点を一つ銀行局長から御答弁を願いたいと思います。
  25. 東條猛猪

    ○東條説明員 申し上げるまでもなく、調整勘定は、元旧勘定に所属をいたしました財産の処分がだんだんと進捗をいたしまして、それと帳簿価額の違いによって利益がたまっていく、こういうことに相なっているのであります。従って、この調整勘定に属しております資産が、できるだけ有効に、また有利に処分せられますことについては、関係の会社も考慮を払っておりますし、私どももさような建前で、いろいろ相談に応じているわけでありますが、調整勘定の資産源というものは、さように元旧勘定に所属しましたものに限定されている限りにおきましては、また現行法の命じておりますように、いわゆる新勘定と旧勘定とはっきり区分いたしまして、新勘定はどこまでも新しく保持、育成していくという建前をとっている限りにおきましては、この調整勘定の財源に限りがあるということは、これはやむを得ない結果でありまして、現行法の命ずるままに、この調整勘定の処理はやってもらわなければならない、かように考えている次第であります。
  26. 春日一幸

    春日委員 そういたしますと、この生命保険会社二十社の中には、調整勘定の利益が不足をいたしまして、結局国家補償金を返済した暁において、たな上げ契約の返済が不可能になるものがある、それから可能なものもある。そういうようなことになると思うのでありますが、当然こういうものについては、大蔵省はすでに調査を進められていると思いますが、すなわち可能なもの、それから不可能なものの数の分布状態、それから不可能なものに対しては、政府は当然何らかの措置を講じなければならぬと思うのでありますが、これに対するどのような対策を考慮されているか、この点を一つお伺いいたしたいと思います。
  27. 東條猛猪

    ○東條説明員 先ほど来申し上げておりますように、調整勘定の整理はただいま進捗中でございまして、またこれに属しております資産にいたしましても、有価証券ほかいろいろございます。それから今日までのところでは、まだ的確にどの程度の会社がたな上げ契約の処理が十分できるか、またどの会社はできないかという見通しには到達いたしかねております。ただ抽象的に申し上げられますことは、先ほど来申し上げておりますように、会社によって調整勘定の状況が区々でございますので、たな上げ契約の処理に事欠かない会社ももちろんあるわけでございますが、今日のような状況で推移する限り、遺憾ながらたな上げ契約まで十分手が回らないという会社も出て参るおそれもあるというのが現状でございます。今しばらく、この調整勘定の進捗状況がはっきりいたしますまで、御容赦を願いたいと思います。
  28. 春日一幸

    春日委員 問題の焦点は、戦時補償特別措置法でありますが、この法律によってその債権をたな上げされました契約者、その中では、このような処理が個々の計算で行われるといたしますると、会社によってはあるものは支払いが受け得られるものもある、あるものは支払いが結局受け得られない、こういうようなそれぞれ相異なる結果を生じて参るわけであります。法律のもとをただせば、結局この戦博補償特別措置法によってたな上げされておる債権が、あるものは支払いを受け得られて、あるものはたな上げ状態で先の見通しもつかぬ、こういうような措置が行われるということは、法律の前に国民平等でなければならぬという原則の上に立もまして、さらにはまたこの保険協会が大きな団体であるという実際的の理解の上に立ちましても、これはふさわしいことではないと存ぜられるのであります。従いまして、仄聞するところによりますと、この生保協会ではできるだけ同一条件で、かつまた同時にその処理を行うということが新聞に報ぜられておりましたが、私どもが検討いたしますると、数字的には必ずしもそういうようなことが可能であるかどうか疑わしいと存ぜられるのであります。どうか一つ銀行局長におかれまして、株価の確定評価その他いろいろな監督行政を通じて、財源捻出の方途もないわけではないと考えられるので、せっかくこういうような措置が講じられんとするならば、そのたな上げされたるところの一切の契約者たもが支払いの受け得られるような、そういういい結果の得られるように、万全の措置を講じられんことを強く要望しておくものであります。  それから次はもう一つ、蓄積円に対する外国為替管理法違反容疑の事件についてお尋ねをいたしておきたいと存じます。これは八月の六日と七日の日経新聞の報道でありますが、この映画蓄積円の中で、総領十六億円のものがきわめて功妙なるからくりで、結局ハリウッドにドルに換算されて送り込まれておるということが、先般東京地検並びに警視庁の調査によって、だんだんとその全貌が明らかになりつつあるのであります。当然大蔵省は、外為の管理責任者といたしまして、これらのいきさつについてすでに調査されておることとは考えますが、本日、この新聞に報道された以外に、調査によってこの実情がどういうような工合のものであったか、おわかりになっておりまする範囲を一つこの際明らかにいたされたいと思うのであります。
  29. 大島寛一

    ○大島説明員 御説明いたします。御質問の映画の蓄積円についてでございますが、昭和二十八年の三月末におきまして、いわゆる蓄積円が約二十三億円に上っておったのでございますが、このうち映画団体と話し合いをいたしまして、九億円相当のドルによる送金、すなわちドルに直しますと約二百五十万ドルでございますが、それを承認いたしますと同時に、その残額並びに二十八年度の新たに蓄積される分につきましては、日本国内での米国映画のロケーションの費用でありまするとか、映画購入費用の支払いでありまするとか、それから教会、学校等に対する寄付、貸付、投資、その他の支払い等国内の使用を認めることにいたしたわけであります。これに基きまして約十七億円の寄付が行われておるわけであります。ただいまお尋ねの点は、新聞に現われました記事を基礎にされまして、さらに詳細どういう点があるか、こういう御趣旨でございましたが、私どもとしましては、今申し上げましたような措置に基きまして寄付することを認めたおけでございまして、そのほかに具体的にどういう点があるかという点につきましては、関心を持って調査をしておるわけでございますが、蓄積円が寄付されるに至りました経過並びに処置につきましては、概要今申し上げたような次第でございます。
  30. 春日一幸

    春日委員 私どもが調査いたしました範囲によりますと、すなわち昭和二十八年の四月に、大蔵省と米国映画輸出協会との円で次のような契約といいますか、覚書といいますか、了解といいますか、特例といいますか、これが与えられた。それは、蓄積円を日本にある外国の宗教団体あるいは教育関係の団体に寄付金として使ってもいい、こういう取りきめが行われて、この取りきめによって、米国映画協会は同年の十月から二十九年の三月までの間に、カトリック中央協議会に対して十五億五千万円、新教インターボードに対して五千万円、それぞれ寄付をしておる。ところがこれは実は表向きの単なるからくりであって、この日本での蓄積円支払いと並行をいたしまして、アメリカ木国のカトリック本部から三百七十万ドル、またインターボードの本部から十四万ドルがハリウッドに払い込まれておるのであります。一方日本にありますカトリックの教会は、この蓄積円寄付の行われた前年、すなわち昭和二十七年までは、毎年アメリカの本部から三百七十万ドル、それからインターボードは十四万ドルを経営資金として送られてきて、これは一ドル三百六十円で日本円と交換して、これが運営資金として使われておった。これらの事実から、東京地検並びに警視庁が調べたところでは、蓄積円を日本の教会などに寄付するというのは、実際は単なる一つのからくりであって、結局はハリウッドが蓄積円をドルにかにる方便であったにすぎないという結論を得ておる様子であります。しかもカトリック教会、これが三百七十万ドル、公定歩合三百六十円で換算をいたしますると十三億三千万円であります。ところがこれが実際には、三百五十万ドル分といたしまして蓄積円で受け取ったのが、一ドル四百二十円の換算になりまして、結局十五億五千万円、こういうような大がかりなやみドル事件が、この大蔵省と米国映画協会との取りきめを契機としてこういう大きな犯罪が行われておる。これはただ単に蓄積円のドル化禁止が破られたばかりではなく、円の公定歩合までが全く無視された事件ではないかとわれわれは推測をしておりまして、非常にこれを重視いたしておるのであります。こういうような事柄について、当然外為当局としては、それぞれ問題があのように報道されて、しかも検察当局が調査をしておりますから、所管当局として十分事態の真相を究明されておることと思うが、こういうような事柄についてはどういうような報告を得ておられるのであるか、この機会に明らかにされたいと思います。
  31. 大島寛一

    ○大島説明員 ただいまのお尋ねに関連しまして、私どもの調査いたしておりますところによりますと、カトリック関係で十五億余万円が寄付されておることは、かねて報告を受けておりまして、事実でございます。その総額が、その他のものもございまして十七億余円になっておりますことも、先ほど申し上げた通りでございます。ただいまのお話に関連いたしまして、寄付をする上表でドルの取引が行われておるのではないか、またそのレートがおかしいのではないかという御趣旨のお尋ねであったかと思いまするが、先ほども申し上げましたように、この映画団体と協定を結びました内容におきまして、学校、教会その他に寄付することを認めており、またその名義を移しますることも認められておったわけでございます。それに関連しまして、海外におきましてどういう取引等があったかどうか、そういう点につきましては、私どもとしては関知していないわけであります。新聞によりますと、検察庁当局として調査中であるということでございまして、私どもも十分関心を持って調査をしておる状況でございます。
  32. 春日一幸

    春日委員 それじゃこれをお伺いをしたいと思うのでありますが、たとえば、大蔵省と米国映画協会との間の取りきめによって蓄積円を寄付することは認められておる、この寄付行為は何ら国内的には違反ではない、けれどもこれと並行して、外国においてこれが実質的に、ドル化されておる、こういうような実質犯については、外国為替管理法違反ではないかどうか、これは一つ大蔵当局の御見解を伺いたい。たとえば今回の事犯のごとく、今まではカトリック本部から日本の支部に対して、三百七十万、ドルという金が送られておった。ところが、この蓄積円を寄付することによって、現に昭和二十九年には送られていないわけです。同時にハリウッドで、カトリックの本部からハリウッドへそれだけのドルが払い込まれており、実質的にドル化がされておるわけです。こういうようなことは、外国為替管理法違反ではないかどうか、これを一つお伺いをいたしたい。
  33. 大島寛一

    ○大島説明員 ただいま御質問のような場合がありましたときにおきまして、実質的にドル化されておるかどらか、それが為替管理法逢反であるかないか、それは具体的な事実いかんにもよるわけでございまして、具体的な事実をはっきりさせずに、一がいにこれが違反であるというようなことは言えないと思いますが、同時に違反でないということも言い切れないと思うのであります。ただ、ただいまの映画の蓄積円に関連いたしましては、当時イギリス、西独等の例にもかんがみまして協定ができまして、寄付することが認められたわけでございまして、いわばその裏で海外におきましてドルの授受が行われたかどうか、そういう点につきましては関知していないわけでございます。
  34. 春日一幸

    春日委員 大蔵省は外国為替を管理するに当って、あなたの方には当然いろいろな注意義務が課せられておるべきものと私どもは考えておる。それがたとえば、そのような大蔵省と米国映画協会との間の取りきめによって、結局蓄積円のドル化禁止の大方針が破られるよらなおそれはないかどうか。これはあなた方はそういうような取りきめを行うに当って、そういう事柄をあらゆる場合を想定予見して措置をするの義務を国家から課せられておると思う。また同時に、公定歩合が十分に保たれるかどらか、これもあなた方があらゆる場合を予見して注意を払うの義務を課せられておると私どもは考える。しかるに昭和二十八年四月における大蔵当局と米国映画協会との間の取りきめは、現実に国内法では寄付してもいいというから寄付したのだという工合で、何ら外為違反にはならないかもしれない。けれども実際に、検察当局が調べておるから、全貌はいずれ明らかになるでありましょうが、この日経が報道しておるところが実情であるといたしますると、それまで毎年送ってきたものがその後送られていない、そうして現実に、ハリウッドにそういう金が送られておるというような事柄等も調査の結果――十分資料が得られないであろうけれども、大体の全貌はおのずから明らかになってくると思う。そういたしますると、結局ドル化禁止の大方針が破られたというようなことについては、あなた方が当然払わなければならない注意義務を怠ったとはお考えにならないか、五大なる過失を犯したとはお考えにならないかどうか。この点はこの十月三十日でありますか、外国人の旧株収得制限が撤廃されるという事柄と関連をいたしまして、重大な事柄であると思うから、この際あなた方の見解を明らかにしておいていただきたいと思うのであります。
  35. 大島寛一

    ○大島説明員 お話しの通り為替管理法を執行いたしまする当局といたしまして、為替管理法の目的並びにその趣旨に従って、違反その他が行われないように十分の注意をいたすことはもちろんでございます。その意味におきまして、大蔵省は為替管理の執行に怠慢ではないかという趣意の御質問がございましたけれども、そういうことはないと考えておりまするし、また常に日ごろそういう点について留意をし、また調査もしておるわけであります。
  36. 春日一幸

    春日委員 この措置が大蔵省としては何らの誤まり、失態ではなかった、あなたはこういう断定的な見解を表明されましたが、もし後日検察当局の調査によって、この宗教団体並びに教育団体に対する寄付を容認するという措置によって、永劫的に実質的なドル化禁止の大方針が破られておった事実が判明し、さらにまたそのレートが三百六十円ではなくして、ここに報道されておるように四百二十円であったり何かしたような事実が明らかになった場合、一体あなたはどういう責任をとられるのか、全然失態ではなかったと言うのだが、そういう事態が明らかに行われておったということが明らかになった場合でも、なおかつこれは失態ではないと考えられるかどうか、この点を一つ答弁願いたい。
  37. 大島寛一

    ○大島説明員 ただいま私が申し上げましたのは、為替管理当局といたしまして、常に処しておるところの方針なり措置なり心がまえについて申し上げたわけでございます。具体的な事実につきまして、ことに御質問の事実につきまして、どうというふうに申し上げたつもりではなかったのでございます。将来これが検察当局等におきまして違反ということになった場合に、どういう責任をとるかという御趣旨の御質問でございまするが、そのような仮定の事実に対しましては、お答えできない点をお許しいただきたいと思います。
  38. 春日一幸

    春日委員 私の質問は、そんなことを言っておるのではないのです。具体的な事実について私は言っておるのです。と申しますのは、二十八年の四月に大蔵当局と米国映画協会との間に取りきめが行われた。すなわちその取りきめたるや、蓄積円を日本における教育団体、宗教団体に寄付してもよろしい、こういう取りきめが行われて、現実に寄付をしたわけだ。寄付をしておいて、同時にこのカトリックとインターボードの本部は、当然日本へ送るべきところのドルを送らないでおいて、アメリカにおいてハリウッドへそのドルを払い込んでおる。こういうような現実の取りきめが行われたわけです。これを新聞が報道しており、同時に検察当局がこれを調べておる。現にそれを裏づける証拠といたしまして、その後インターボードの本部から日本のインターボードの支部へ送金が行われていない、あるいはカトリックの本部から日本の支部へ金が送られていない。その資金がいかに調達されたかということは、これはすなわち日本の円が寄付されたから、結局送金が必要でなくなったから送られてきていないわけです。同時にそのカトリックは、映画協会が日本へ省付するという行為の裏づけとして、アメリカにおいてドルを支払っておるということがここにも明らかになろうとしておる。そうだとすると、ちょっとお聞き願いたいのだが、このことは、すなわち蓄積円をドル化してはいかぬという禁止の大前提を根本からこわしてしまった形になるのです。私が申し上げるのは、このことは、すなわち大蔵当局と米国映画協会との間に取りきめた寄付行為容認の事柄は、あなた方が当然払わなければならないところの注意義務を怠りはしなかったか。すなわち検察当局において、これが犯罪になろうとなるまいと、これは別問題なのです。現にあなた方は、この取りきめを二十九年以降現在においても廃止しているのでしょう。従って二十八年度にそれを認めたことによって、二十八年の十月から二十九年の三月までの間にそれだけの寄付が行われて、結局その蓄積円が現実にドル化されておるということは、現実にドル化禁止の大前提がこれによって破壊された。従ってあなた方が払わなければならないところの注意義務を怠ったのではないか、われわれはこういう工合に考えておるのだが、あなた方はそうはお考えにならないかどうか。この点をお伺いをしているのです。
  39. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これは、一つ私からも一応当時の状況を申し上げますが、二十八年ごろ、いわゆる映画蓄積円を何とか処理しなくてはならぬ、こういう状況下にありました。ところがわが国の外貨事情等から見ても、そう送金もなかなかできないということで、ある程度の送金を認め、そしてその残りの蓄積円について寄付を認める、そうして円につきましては、当事者間の議渡も認める、こういうふうにして、蓄積円を何とか解決したい。そうして当時の状況では、西ドイツ、イギリス等と同じように会社間で引き取ったのでありますが、映画蓄積円の処理について同様なことも行われておるということで、蓄積円の処理を比較的当時の国情に適応するようにするということに、私はあったと思います。今指摘されるようないろいろな点についても、十分注意を払って、総合的にこういうところで処理をするのがいいというところにあったと私は判断をいたしております。
  40. 春日一幸

    春日委員 何のことだか私はわからなかったのだが、私が質問して大島君が答弁しておった。そうして、とんだところへ一萬田大臣が飛び込んできて、わけのわからぬことをおっしゃって、私どもわからなかった。私の申し上げたのは、要するに、特例的な取りきめと申しましょうか、とにかく寄付してもいいというものだから寄付したんですね。大体宗教団体と全然関係のない、あるいは教育関係関係のない、すなわち映画協会が身銭を切って寄付したのですよ。わかっていますね。そうして検察当局が今被疑事件として調査している。ところがこの裏づけとなって、カトリックの本部とインターボードの本部がハリウッドへそれだけのドルを払い込んでいるという嫌疑のもとに、これを外国為替管理法被疑事件として調査が進められている。このことは、すなわち蓄積円のドル化禁止の大前提が破られたと私たちは見ているのです。そうだとすれば、そういろ特例措置は、あなた方が課せられているところの注意義務を怠った。たとえば寄付したらば、映画関係なら映画人が日本へ来て滞在費に使うとか、あるいは映画関係に使うというたらわかる。お互いの業界のためにそういう金を使うということならわかるのだけれども、映画関係で教育団体、宗教団体ヘ寄付する。しかもそれが相当の巨額にわたって寄付するということについては、われわれは疑義なきを得ない。そういうわけで、現実に問題としているのは、現実にドル化されているということなんですよ。これは、そういう特殊の取りきめを行うことによってドル化禁止の事項が破られたのでないか、すなわち措置を誤まったじゃないか、こういうことを私は言っているのです。だから、そういう事柄は、これは国際的な問題だから、外国為外管理法としての直接法律に違反するかしないかということを私は問うてはいない。ただあなた方としてそういう取りきめを行なったことが、ドル化禁止の善良なる管理をしなければならぬ、そうしてそれに必要にして十分なる注意を払わなければならない、この立場において措置を誤まったことになりはしないか、これをお伺いしておりますから、この御答弁を願いたいと思う。それが全然かまわないということならよろしい、みなにやらせますから……。
  41. 大島寛一

    ○大島説明員 最初に、ただいま大蔵大臣の御答弁になりました点を、私若干補足して申し上げたいと思います。大臣がお答えになりました通りでございまして、当時このような映画関係者と協定をいたしましたのは、ただいまのお話にもありましたように、イギリス、ドイツ等の例も参考にいたしまして、ある程度の送金も認め、また残った蓄積円につきましては、寄付その他の使用を認め、また振りかえも認めるというような措置をとりまして、総合的に当時として処理されたものであるわけでございます。  そこで私に対するお尋ねの点でございますが……。
  42. 春日一幸

    春日委員 ちょっと待って下さい。そういたしますと、こういうような取りきめを容認するということは、必ずアメリカにおいてこれがドル化されるであろうということをあらかじめ想定して、それもやむを得ない、すなわち直接送金を許すということは重大問題だから、こういうような紆余曲折を経てドル化されておるということはやむを得ない、こういうような了解の上に立ってそういう取りきめが行われたのであるか、その点を一つ明確に御答弁願いたい。
  43. 大島寛一

    ○大島説明員 ドル化されることを想定しておったかどうかという点につきましては、そういう想定をもって取りきめをしたわけではないと思います。
  44. 春日一幸

    春日委員 想定はしないけれども、そういうような場合があり得ても、これは蓄積円を処分するという方針の上に立って、これは差しつかえない、こういうような了解の上に立ってそういう取りきめが行われたのか、この点も明らかにしておいていただきたいと思います。
  45. 大島寛一

    ○大島説明員 先ほど来御説明申しましたように、寄付されることにつきましてはやむを得ないということで、正式の取りきめも了解もあるわけでございます。  その次に、向う側におきましてドル化されるといろことを了解したかどうかという点につきましては、そういう了解をもってやったわけではないわけであります。
  46. 春日一幸

    春日委員 ドル化されるということは了解をしたわけではないが、ドル化されることは絶対いかぬ、外国為替管理法の建前からも、なおかつ蓄積円のドル化禁止の大前提からも、あらゆる場合にこれはドル化されてはならぬ、こういう考え方の上に立ってそういう取りきめを行われたのかどうか、この点を一つ伺っておきたいと思います。
  47. 大島寛一

    ○大島説明員 ドル化されてはならぬという了解、あるいは取りきめに立っておるかどうかという点でございますが、この点につきましては、当局としては関知するところでなかったのであります。
  48. 春日一幸

    春日委員 関知するところでなかったということは、ドル化されるならしてもよろしいでしょう、そういうことであると、これは私は重大な問題だと思う。大臣、果してその通りであるか。まああなたの御在任の前のことだから、あなたに質問するということもあるいは当らないことかもしれませんけれども、従来蓄積円をめぐってずいぶん不明朗なうわさが流れておる、特に映画の蓄積円の問題なんかは氷山の一角なんです。すなわちドル化をめぐっていろいろな人々が暗躍し、それによって不浄の利得をかせいでおるということは、これはもうずいぶんちまたにうわさが流れておることなんです。われわれが理解しておるのでは、蓄積円制度というものは、やはり日本外貨を獲得するために、そうしていろいろな目的のために、非常にきびしい措置としてこれがとられておるものと理解しておった。そういたしますと、今のあなたの御答弁で、これはイギリスの例もあるし、あるいはドイツの例もあるんだから、若干そういうところは外貨で送金を認めたのだから、アメリカの場合も認めなければならぬだろう。しかしまあ直接認めるということは、ずいぶん論議もあるところだから、従ってこういうような方法を許すから、あとはお前たち勝手にうまくやれ、こういうような暗黙の理解の上に立ってそういろ取りきめが行われたならば、それはそれとして、はっきりこの際答弁を願っておかなければならぬと私は思う。問題はそこから新しく発生すると思うので、この際明確に御答弁を願っておきたいと思います。
  49. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 暗黙の理解があったということじゃないと申し上げました。そういうところには、結局外国からの送金ということになりますが、たとえばカトリックの教会から日本のカトリック事業に送金する、これも必ずしも送金しなくてはならぬ、また送金が必然というわけでもないと思います。ですから私の考えでは、当時そういう点には触れずにおった、そしてこういうような問題を解決するのには、非常に完璧というわけにいかぬ点もありましょう、全体として蓄積円を解決しておるということになりますから、いろいろと突き詰めていけば若干問題の点もあると思いますが、全体としての解決ということで、こういうふうな処置を取り運んだものと考えております。
  50. 春日一幸

    春日委員 実はこの問題は、質疑応答を通じて明らかになりましたことは、非常にいろいろと複雑な内容を含んで調査しておる様子でありますから、ただいまさらにこの論議を進めていくことは適当でないと考えますので、私は新しい資料を得ることによって、後日この問題をさらにお伺いすることといたしまして、のっぴきならぬ用事がございますので、本日の私の質問はこの程度に留保いたしまして、次会に重ねて質問を続行することといたします。
  51. 松原喜之次

    松原委員長 次に淺香君。
  52. 淺香忠雄

    ○淺香委員 当委員会でも最近起りつつあるところの相互銀行あるいは信用金庫、信用組合等の不祥事件について、質疑応答がかわされましたのです。第一相互とか、あるいは常磐とか、あるいは福井の信用金庫、東北にもあると思うのですが、その後大阪におきましても、御承知の通り大阪では商工貯蓄信用組合、それから生野の信用組合、それから大黒信用組合、また最近は第一貯蓄信用金庫を閉鎖したというようなことで、次から次へとこうした閉鎖もしくは倒産が続出しつつあるのに対して、一体大蔵省で、これが経過と並びにこの起りつつある事態に対して、どういうようにこれを収拾し、さらには中小企業者の重要な金融機関であるところのこれらの金融機関に対して指導し、あるいは監督し、その他どういう措置をとられんとしておられるのか。とりあえず大阪に今起りつつあるこれらの金融機関の倒産、または閉鎖問題に対して、財務局とどういう連絡をとって、どういう処置をしておるかということをまず最初に承わりたいと思います。
  53. 東條猛猪

    ○東條説明員 数多くの金融機関の中で、経営者の措置よろしきを得ず、いろいろ遺憾な事態に立ち至っております例が間々ございますことは、私といたしましてまことに遺憾に存じておる次第でございます。淺香委員御承知の通りに、信用組合につきましては、実はこれは地方の府県知事の監督に属しておるわけであります。私どもは信用組合も大事な信用機構の一環でございますので、いろいろその認可の場合でありまするとか、あるいは店舗を増設したいといろよらな場合につきまして、抽象的には各府県知事に、ころいう金融情勢であるので、よほど慎重な態度をもって経営の指導に当らなければならないといろことにつきましては、府県知事の方にいろいろとそういう話し合いをいたしておるのでございまするが、何分信用組合となりますると、直接私どもの方で指導するとか、監督をするとかいう立場にございませんことは御承知の通りでございまして、しかも信用組合の数も、御承知のように全国に非常に多うございます。そういう点、実は行き届かない点がございますことは遺憾であります。具体的に御指摘がありました第一貯蓄信用金庫でございますが、これは経営者の経営が当を失しまして、いわゆる導入預金、それに伴いまする不良貸付があったわけであります。これにつきましては、閉鎖とかなんとかいうことではありませんで、御承知のように、全国信用金庫連合会から資金的な援助がすでに出ております。そろして信用金庫につきましては、特に御承知のよろに同業連帯の思想がございますので、関西地区の適当な信用金庫の援助によって事態の収拾をはかりたい、かように存じておる次第でございます。お話しのございましたように、全般的にだんだん金融の正常化に伴いまして、各種の金融機関の経営をよほど適正ならしむる必要がございますが、多くの中には、情実に伴いまする不良貸付をいたしましたり、あるいはまた導入預金をいたすというような遺憾な点がございますことは、はなはだ遺憾でございますが、できるだけそういうことは避けるような指導をいたしておりまするし、今後とも及ばずながら努力いたしたいと考えております。
  54. 淺香忠雄

    ○淺香委員 なるほどこの信用組合は、府県が認可、許可を与え、また監督をしていくという立場にあるということほ承知しております。そこでさかのぼって数年前に、これを府県の権限にまかすかどうかということは、当委員会でも非常に議論のあったところでありましたが、ああいう結果になり、私ども今これを再検討しなければならぬ時期にきている、私はこう思うのです。お説のように、府県の認可、許可、あるいは監督のもとにあるにいたしましても、これが大蔵省あるいは出先の財務局として、この事態の推移をただ傍観しているというだけであっていいかどうか、これは私は非常に重大な問題だと思う。そこで当然その起きつつある状態に対して、出先の財務局は直接監督の任にあるところの府県と十分連絡をとって、そうして預金者に迷惑をかけないでこれを再建するのにはどうして整備をするか、今後こうして全国的に起りつつあるところの問題をどう処置していくのかというようなことは、これは出先の財務局としてほ当然重大関心を持たなければならぬことだろうと私は思うのです。ところが今のお話では、どうも抽象的な御答弁であって、監督は府県がやるのだ、なお自分らの方にも関連はあるけれども、注意するというくらいでは、実はちょっと納得できないのですが、大阪の今の問題は局長さんどうですか。
  55. 東條猛猪

    ○東條説明員 少し説明が十分でなかったと思いますが、もちろん信用協同組合も金融機関でありますので、私どもも全体の金融機構の信用を大事にしなければならないという観点から、その育成指導ということには努力をいたしておるつもりでございます。従いまして、財務局長あるいはその金融方面を担当いたしております方面におきましては、府県知事の方と十分連絡をいたしまして、これは法律的にはいろいろ問題はありまするが、具体的な、たとえば認可の問題でありまするとか、あるいは問題が湿りました場合の善後措置、そういう場合には十分連絡をし、また大蔵省といたしましても、財務局といたしましても、できるだけのことをいたすという方針でもって対処いたしておるつもりでございます。
  56. 淺香忠雄

    ○淺香委員 それでは局長さん、今大阪で起りました信用組合の問題については、財務局と十分なお打ち合せがないと今の答弁を私は聞きましたが、きょうその資料を出すことがお困りであれば、一つ早急に、この信用組合がどういう経過措置をたどり、どう再建しつつあるのか、これを具体的に調べて、次の委員会で報告していただきたいと思います。信用組合は、それはそれで一応あれにいたしまして、金庫とか相互銀行にもこらいった問題が不幸にして起っておりますが、その最大の原因は、導入屋といいますか、ブローカー、これの暗躍にあると思う。これは局長さんもお認めになると思うのですが、同時にまた経営者が、たとえば信用組合にとっては、出資の十分の一を越して貸し出してはならぬという法律の規定があるにもかかわらず、これを越して貸しておる。また経営が非常に不合理、乱脈で、重役の中には高利のやみをやっているという銀行すらある。こういう実情は、私が言うまでもなくすでに御承知のはずです。こういうふうな点について、ことに導入預金について、これの対策を今どう立てておられるか、これを一つお伺いしたいと思います。
  57. 東條猛猪

    ○東條説明員 金融機関でいろいろむずかしい事態を引き起します一つの原因といたしまして、導入預金の問題があるとかいうことは、もう御指摘の通りでございます。私どもも機会あるごとに、通牒をもって、あるいは口頭をもって、この導入預金の受け入れということが、ある意味において金融機関のほんとうの命取りになるということは常に警告している点であります。金融機関の経営者も、良識のある経営者は、今日の事態を十分に自覚し認識もいたしておるのでありますが、間々一時の資金の窮迫打開のために、あるいは特殊の貸付をするという資金のために、こういう導入資金を受け入れるという不心得な経営者が今なお跡を断っておりませんことは、はなはだ遺憾でありますが、やはりこれは、われわれのそういう注意もさることながら、金融機関の経営者の十分な自覚、金融機関の経富者はどうあるべきかということの認識が根本であろうと思っております。なお具体的な取締りの問題につきまして、私どもの方でも、資金審議会でありますとか、あるいは金融制度調査会等におきましても、この問題を取り上げていただきましていろいろ検討いたしておる点もございますけれども、まだこの席で、こういう具体的な考え方や取締りの方途があるということを申し上げる事態に至りませんけれども、要するに導入預金というものの金融機関に与える影響というものをわれわれも警告し、これをそうしないように監督指導する、金融機関側においても、そういう徹底した認識のもとに、正常な経営をやっていって、相手にしないということではなかろうかと思っております。
  58. 淺香忠雄

    ○淺香委員 そういう事態に追い込むまでに、監督の立場にある銀行局としては、厳重な検査をやらなければならぬが、その検査の状況も、いつもこの委員会でつまびらかにせられない。あなた方が、それぞれの金融機関を専門的な立場から検査をせられさえすれば、これはどらも経営上危ないというようなことが、あらかじめ予知できるはずだと思うのです。それを起ってから、今後も検査を厳重にいたします、導入屋の取締りもやりますといういつもの答弁を聞くのですが、それでは私は満足せぬと思うのです。それならば検査の方法にしても、今までどういうようにやっておりました、今後におきましては、その回数をどれだけふやして、これだけの人員をここへ回して、そうしてこういう方法でやりますということを言われるならば、私どもも幾らか安心ができますけれども、いつの答弁を聞きましても、今おっしゃるよらな答弁の範囲にすぎないということを私は思い浮べます場合に、どうもあなたとしては、それしか言えぬかもわかりませんけれども、私どもとしては満足がいかない。満足がいかぬということは、最近これだけ次から次に起っているのに、一体大蔵省はどうしているんだ、銀行局どうしているんだ、こういう気持は、われわれ大蔵委員ばかりでなく、国民全体の気持があろうと思います。これが一点。それからいま一つは、警視庁が一年前に、導入屋の動きということについて、この今日起った事態が来るであろうということを警告したとも伝えられているのですが、この点はいかがでしょうか、お聞きになっておられるのかどうか、この二点について御答弁をしていただきたいと思います。
  59. 東條猛猪

    ○東條説明員 あとの点から申し上げますが、私の方は、警視庁の力から、導入預金の状況、あるいは今日のようなむずかしい事態になるおそれがあるという警告というものは、銀行局としてはもらっておりません。しかし警視庁からそういう注意があったとか、あるいはなかったとかいうことは、実は何と申しますか、末のことであります。われわれといたしましても、当然この導入頭金の弊害というものは当然から考えておりますので、従来の銀行局といたしましては、導入預金の弊のおそるべきことを関係金融機関には十分に警告をいたし、その自制をかたく要望しておるわけであります。  それから検査の点、申し落しまして大へん恐縮でありますが、御指摘の通り、私どもも検査の重点を比較的健全な金融機関よりは、より比較的に力の弱い金融機関にウェートを移すべきである、つまり検査の回数にいたしましても、比較的健全な金融機関に対しては検査と検査との間が比較的長くなりましても、比較的弱い金融機関に対する検査の頻度はできるだけこれをひんぱんに行うという方針をもちまして、その検査をいたしておりますことは申し上げられます。  それからまた検査のやり方にいたしましても、従来はある一つ銀行なう銀行の全体について検査を行うというやり方をいたしておったのでありますが、最近は場合によりましては、いろいろの資料から特定の、本店とは限りませんで、支店だけを検査する。しかもその重点を導入預金の問題にしぼって検査を行うという検査方法をとっているということも申し上げられると思います。大へんありがたい御注意でございますので、今後とも十分御趣旨に沿いまして、努力いたしたいと思います。
  60. 淺香忠雄

    ○淺香委員 大蔵大臣に一言伺っておきたいと思いますのは、根本的な処置を考えずに、彌縫策だけで表面を糊塗しているような今日の現状では、今後においても、私どもの調査資料からしても、危ないと一言に言ってよい相互銀行なり信用金庫なりがあると見ているのです。従ってこの相互銀行にしても、あるいは信用金庫にしても、信用組合にしても、これは今日全面的に再検討せなければならぬ時期がきているのではないか、こう思うわけです。というのは、相互銀行にしても、もともと無尽会社、無尽屋的性格を帯びておったものが、数年前に法律によって銀行という名称をつけた。銀行という名称をつけたことが早かったかどうかということも、一つ検討事項になろうと思います。その他内容、幾多の問題をこの際に再検討しなければならぬ重大な時期がきていると私は思うのですが、大蔵大臣はどうお考えですか。
  61. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 今日特に相互銀行、信用金庫等、これらの金融機関について再検討を加える時期でないかという御質問、私も全くさように思っております。これは再検討といいますか、これをいかにすれば強化できるかという見地から、十分具体的に考究いたすつもりであります。
  62. 淺香忠雄

    ○淺香委員 それでは、大蔵銀行関係はこれで一応終らしていただきまして、また次会の機会にでもお尋ねいたします。  次に、たばこの関係で白石監理官と坂元製造部長がお見えでありますが、あなたは、管理官としておかわりになって新しいから、こういったことはお知りにならぬと思いますから、坂元さんに主として伺いますけれども、実はこの間、この委員会が何班かに分れて全国を国政調査に参りました。私どもも九州に参りまして、九州のある専売公社の支社でありますが、現実に買いましたたばこをお見せして、こんなひどいたばこがある、これはどこで作られましたかと附きましたところが、このたばこの中身を、こらんになって、これは私の管内ではない、ころ言われたのです。果してこのたばこのケースを見られて、これは自分の局でない、ほかの局だということがわかるものですか。
  63. 坂元晃佑

    ○坂元説明員 わかるようにしてございます。たばこの名前を印刷してございますが、これはこまかには私ただいま存じておりませんが、工場の記号を名前のところに切りまして、表がありまして、それと見比べてわかるようにいたしてあります。
  64. 淺香忠雄

    ○淺香委員 そのたばこは、ピースならピース、バットならバットというように、どこの製造工場で作りましたたばこであっても、一箱何グラムということは規定されておるのでしょうね。
  65. 坂元晃佑

    ○坂元説明員 その通りであります。
  66. 淺香忠雄

    ○淺香委員 原料は、これも全国一定なのですか。それとも製造工場によりまして原料が違うのですか。
  67. 坂元晃佑

    ○坂元説明員 原料の点につきましては、たとえば両切りの主原料になっております黄色葉につきましても、全国の非常に広範な屋地でありまして、それぞれの特徴を持っております。従って、もよりの原料だけでは、品質が変るということは当然あり得るわけでありまして、御承知のように、戦争中輸送が非常に困難なような事態には、もよりの原料にたよるより仕方がない。従って作る工場ごとに品質が変ったという事情もございましたけれども、最近におきましては、できるだけそういうことがなくなるように、少くも品位ということについては、全国的にどこの工場のものでも同じようにできるように、あれこれと配合いたしておりますので、大体統一して参ったというふうに考えております。
  68. 淺香忠雄

    ○淺香委員 それでは今のお話では、製造工場によっては若干品質は違うところもあるが、大体一定しておる、結論はそうなのですね。
  69. 坂元晃佑

    ○坂元説明員 さようでございます。
  70. 淺香忠雄

    ○淺香委員 ところがたまたま九州で発見しましたのは、たまたまのたまたまなのでして、私いつもたばこが好きで、手に買ってみまして、ああひどいものを売っているなということをしょっちゅう感ずるときがあるのです。私はかりでなく、あなた方お役人もそうだろうと思いますし、委員もみなそうだろうと思う。しかしこれを買ったところに言っても、はい専売局に言っておきます。まさかたばこ一箱持って専売局に行く人はまれだろうと思う。ないといってもいいだろうと思う。ところが国としては、財政収入の最たるものですから、非常に利益を上げなければならぬかもわかりませんけれども、国民の側に立った場合に、たとえばピースが四十円であれば、四十円の価値のものを売ってもらいたい。専売になってから、こういうことならば、これは一体専売のあり方を考え直さなければならぬのじゃないかということになり、私どももそういう感じがする場合があるのでございます。ところがこの間九州で見ましたたばこは、問題にならぬのです。ほとんどがこの半分です。その場に、局長並びに製造部長から各部長おられました。各議員の方もおられましたが、見せましたところが、手に持っても、ああひどいたばこですなと異口同音に言われた。これはみなが立証されたわけです。しかしこういう公けに立証されない場合がたくさんあるのですよ。その場合に、あなた方は監督の立場で、全国的にどの製造工場でどういうものを作り、どれだけの目方があり、どれだけの品質かということは、監督官の立場としては、どういうようにそれを監督しておられるか。これは白石さん、無理であろうけれども、今までどんなところでやっておられたか、あなたはその点聞いておられると思うが、その点一つお聞かせ願います。――これは製造部長さんでもけっこうですよ。
  71. 坂元晃佑

    ○坂元説明員 まことに申しわけないことでございまして、まだ御親切な御注意でありまして、ありがとうございました。専売公社といたしましては、製品については、一応始終その監督はいたしております。また工場におきましても、それぞれの検査というような手続は設けまして、それによって検査をいたしておりますけれども、実際問題といたしまして、ただいまお話のありましたのに近いような状態がときたま起きており、そういうふうな御注意はよそからもございまして、そのつど深くおわびを申し上げるとともに、工場の方へは、そういうことの起らないようにできるだけ注意をいたしているつもりでございますが、今回御指摘のこときものにつきましても、ぜひ一つ工場の方に注意をいたしまして、改善を加えるようにしていきたいと思います。
  72. 淺香忠雄

    ○淺香委員 先ほども申しましたように、国民としては、こういうようなことを言うわけです。国民の立場、喫煙者の立場で専売公社の性格を考えました場合に、いわゆる文句の出ないように、一つ十分な監督をしてもらわなければ、この公社のあり方について再検討を要する時期がくると思うのです。そこで白石さん、あなたは初めて監督官にこられたのですが、私ならば、これは随時人を派遣するとか、あるいは何かによって、ぱっと徴収しまして、そうして分析をし、品質を調べ、目方をはかってみまして、ひどいところは始終警告を発し、いいところは表彰するとかして――そうして国民の側から、言いたいことも言えないうつうつたる気持がどこへ結論を持ってくるかということを考えました場合に、一つ今後監督官として処する心がまえも、十分できておられると思いますけれども、最近特にたばこのそういうでこぼこがひどいものですから、特に一つ御注意願っておきますことを、ここで私は警告かたがた申し上げまして、今後の皆さん方の御注意を喚起いたしたいと考えております。一つよろしくお願いいたします。
  73. 松原喜之次

    松原委員長 次に石村君。
  74. 石村英雄

    ○石村委員 時間がありませんので、先般北海道、東北地方を国政調査で歩きまして、いろいろ陳情を受けましたので、そのお取り次ぎをしておきたいと思うのです。しかし、お取り次ぎと申しましても、われわれとすれば、その陳情は一応もっともな考え方だ、こう考えてお取り次ぎをするわけですから、時間があればゆっくり大蔵大臣とも詳しく意見の取りかわしもしたいと思うのですが、時間がありませんので、ごく簡単に申し上げておきます。  北海道、東北地方金融関係で一般的た意見は、中小企業金融公庫及び国民金融公庫の資金量がまず問題になりました。資金量が非常に不足しておるということ、従って資金をもっとふやしていただきたい。国民金融公庫のある県の所長の話によりますと、自分たちが審査いたしまして、貸し得る条件に合致しておる、こう考えておるものの半分程度しか貸せないという話でございました。これがもしそういう人に貸せないということになると、結局これらの零細業者は、町の高利貸しに走らざるを得ないと思うのです。そこで大蔵大臣にお尋ねしますが、中小企業金融公庫の財政資金は、今年度は百三十五億、国民金融公庫は百二十五億という資金計画になっておりますが、これをふやされる意思があるかないか、この点お尋ねいたします。
  75. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私はふやしたいという考えを今持っております。
  76. 石村英雄

    ○石村委員 大へんけっこうなことですが、ふやしたいとお考えになっても、現実にふやしてもらわなければ意味をなきないのですが、ふやすとすれば、資金運用部の金をふやすのか、ほかの分を削ってこの方に回すのか、あるいは資金運用部全体の資金がふえることによってそれが可能であるのかということ。いま一つは、昨年の予算編成のときに、大蔵大臣の原案では、中小企業金融公庫にしても、国民金融公庫にしても、一般会計からの十五億ないし二十億の投資が予定されておったのが、共同修正でそれぞれ五億に減らされ、今年度はこれがゼロになっておりますが、あるいは補正予算でも組んで、一般会計からの投資をしょうというお考えがあるのか、あるいはそれがなくて、単に資金運用部の金を、全般がふえてくるからこれを回す、あるいはほかの開発銀行の電源開発会社の資金計画を減らしてこの方に回すというのか、具体的なお考えをお聞きしたいのでございます。
  77. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 今回は、中小企業対策ということが、政府としても来年度予算編成に対しまして大きな問題点となると思います。ぜひとも中小企業対策をやりたい。そういう場合に、その一環として、中小企業金融面からの対策を加えなければならぬ。それについては、今私資金量をふやしたいということを申し上げたいのであります。そのふやし方、これはいろいろあると思いますが、しかし財政資金を入れるというふうにもすぐ行きかねるかもしれません。これはいろいろありまして、民間資金を導入するという道も考えられぬことはありません。具体的には今後いろいろ検討していきたいと思います。しかし、これはふやすという考えを持てば、そうむずかしい問題でもないように考えております。
  78. 石村英雄

    ○石村委員 むずかしい問題でないということで、大へんみんな喜ぶと思うのですが、そうしますと、民間資金を回すということになると、中小企業金融公庫や国民金融公庫に債券でも発行させるというお考えですか。一つの案としてでけっこうですが、固まった案でないにしても、そういう方法も考えられる、こういうことですか。
  79. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 そういうふうにするときめておるわけではありませんが、しかし民間資金をそういうい方向に活用するとすれば、債券を発行するということになると思います。そういうことも、全体の資金関係等からいくと、やはりこの機会においては考慮さるべき事柄であろうと私は考えております。
  80. 石村英雄

    ○石村委員 ただいまのお考えは来年度の問題であって、今年度については、ふやすことについて何らかの具体的な御考慮があるのかないのか、その点をお尋ねいたします。
  81. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 本年度については、どういうことは考えておりません。しかし経済が御承知のようによろしゅうございますから、回収はいいようであります。従って資金回転もいいので、問題は、やはりそういう資金の運用のワクといえばおかしいですが、配分の仕方です。これがやはり注意する必要があるだろうと考えて、先般私ちょっと東北を歩いたのですが、たとえばこれは具体的に言っていいかどうかわかりませんが、東北地方のある都市を見ると、いかにもここは中小企業に金を今回してあげたらいいのではないかということが、具体的に感ぜられました。そういうふうな地方の状況に応じて、やはり中央も考えていくのがいいのじゃないか。画一的に、何かパーセンテージみたいな形でいかずに、ここは今こういう資金がほんとうに要るのだ、これはしばらくしんぼうができるだろうというような考え方もいいのじゃないかと思っているのですが、しかし、率直に申しますが、金庫の当局ともよく相談してみたいと思います。
  82. 石村英雄

    ○石村委員 回収によって得た金を貸すということは当然のことで、何も大蔵大臣をわずらわす必要はないと思ろ。やはり資金運用部の資金中小企業金融公庫、あるいは国民金融公庫に、当初計画よりももっとふやしてやるということが、大蔵大臣がなざることではないかと思う。回収金をどう回す、それをまた貸す。まざか回収した金を寝かすということもないでしょうから、これは当然の話であって、われわれが聞きたいのは、大蔵大臣も、一般会計から金を出すお考えが、昨年の予算の原案にはあったわけです。補正予算でも組んでおやりになるというお考えがあり、あるいは資金運用部の開発銀行、あるいは電源開発等へ予定している金を回すというのか、また資金運用部の金がことしは非常にふえる見込みだから、当初計画よりもふやすというのであるかどうか、この点を具体的にお尋ねしたいのです。
  83. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 今の私の考えでは、特に補正して増加してやるという考えは持っておりません。これらの機関の自己資金、回収金、これで対処していきたい、かように考えております。
  84. 石村英雄

    ○石村委員 そうすると、結局来年まで待て、こういうことになると思うのですが、時間がないのでこの程度にとどめておきますが、昨日も、実は青森県の中小企業金融公庫のワクが、第二・四半期にうんと減ったというので、論議が相当取りかわされましたが、そうしたワクが減らされた原因は、昨日はっきりしませんでした。しかし一つの問題として、閣議了解事項の、六月一日に輸出産業に金を重点的に出すということが影響しておるのではないか、こういうことが問題になりましたが、われわれとしても、輸出産業というものは、今日日の当る産業である。これは一般銀行にまかせても十分ではないか。それを、こういう政府金融機関が重点をその輸出産業に置くということになれば、東北地方、あるいは北海道のような輸出産業のないところのワクが勢い減らざるを得ないということになるのではないか。こういうことは、中小企業金融公庫とか、あるいは国民金融公庫というようなものの性質から見ると、妥当ではないのではないかというような意見がここで述べられたわけなんですが、この点について、大蔵大臣はどのようにお考えなんですか。
  85. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私は、特にそういう偏した考えを特っておりません。これは中小企業のうちで、輸出産業に関係の多い事業は非常に多くて、輸出産業に重要な地位を占めておりますが、結果的にむろん中小企業輸出産業関係の事業に対して資金が出る、これは当然だと思います。それかといって、一方そうでない中小企業資金を特に不便にするという考えは特っておりません。今話が出ました青森ですが、私実は青森に行きまして、先ほどもちょっと触れたのですが、やはりああいうところは今の復興過程で、同じ東北の土地のうちでも、青森というところを見た場合に、特に中小企業資金が要る感じがいたしました。これは率直な私の感じです。そのワクが狭まっておるという話も開きました。これは一つ中小企業金融公庫その他関係者に事情を聞きただしてみたいと思っております。
  86. 石村英雄

    ○石村委員 一つその点、十分閣議了解事項等も検討を加えられて、中小企業金融公庫なり国民金融公庫等の貸し出しについても、資金量について十分こうした方面に行くように、へんぱなことが起らないように御措置をお願いしたいと思います。こうしたことをほうっておいて、一方で北海道の開発だとか、東北の振興だとか言っておっても、お話にならないと思うのです。十分御検討をお願いしたいと思うのです。  次に陳情があった問題は、中小企業の信用保険の料率が問題になりました。例の八厘一毛、あるいは五厘四毛の再保険の金利の料率が問題になりまして、信用保証協会なんかでは、この再保険をするときに、個々の相手先に対して再保険をするということは知らさずにやっておる。従ってこの再保険の金利も、保証協会が自分の負担で出しておる。従ってこの八厘一毛なりあるいは五厘四毛という金利をとられることによって、信用保証協会は採算がとれなくなるおそれがある。非常に困っておる。こういうことで、この金利の料率も下げてもらいたい、こういう陳情があったようです。もっともなことだと考えたわけなんですが、これに対して、料率を変更せられる御意思はありませんか。
  87. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 この料率の引き下げにつきましては、従来から逐次引き上げてきているように思っておりますが、なお今後できるだけ努力を払いたいと思います。
  88. 石村英雄

    ○石村委員 従来引き下げたということですが、この八厘一毛、五厘四毛というのは、大蔵省からいただいた金融法令集を見た数字なんですが、これは現行はもっと下っているわけですか。
  89. 東條猛猪

    ○東條説明員 おそらくただいまの八厘一毛とおっしゃる数字は、音通保険の数字じゃないかと思いますが、これは二十八年七月から日歩五厘四毛に下げております。あとおっしゃいました包括保険の日歩四厘、あるいは融資保険、あるいは金融機関の保証保険の日歩六厘、これはその通りでありますが、今大臣からお話しのありましたように、たとえば金融機関の保証保険にいたしましても、二十八年七月の八厘から二十九年十二月二十七日に日歩六厘に下げている。あるいは普通保険につきましても、今申し上げましたように八厘一毛から五厘四毛に下げているというようなことで、特別会計の状況等を考慮いたしまして、できるだけ引き下げている、かようなことであります。
  90. 石村英雄

    ○石村委員 特別会計のなにを見ましても、赤字になっていないようですから、一段と引き下げに努力していただきたい。これだけで私は終ります。
  91. 松原喜之次

    松原委員長 次に横錢重吉君。
  92. 横錢重吉

    横錢委員 大臣に御質問いたします。来年度予算編成が迫っていると思うのでありますが、予算編成の中には、自民党が年来唱えてきたところの大減税の政策というものが出るのではないか、こういうふうにも考えますし、かつまた現行の税制の上には、非常な欠陥があります。従ってこの予算編成を前にして、どういうふうな税制改革についての考え方を持っているか、これをお聞きしたいのであります。今までの質同等に対しましても、あまり切らかなものを出しておらないのでありますが、もうこの時期にきたならば、相当程度進んだ改正の意思を持たなければならない段階である、こういうふうに考えておりますが、大臣の意思はどこにありますか、お聞きしておきます。
  93. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 税制の改革の問題につきましては、先般からしばしば申し上げているように、ただいま臨時税制調査会――これは税に関して練達の士ばかりの集まりでありますが、この方々に諮問をいたしまして、その答申を待っているというのが偽わらない現情であります。私としては、できれば勤労所得税等の直接税の軽減をしたいと思います。しかしそれには財源が要る。これらの財源を一体どこに求めるか。また税制を簡素にする。中央、地方を通じての今日の税制にどういうふうな欠陥があるか、こういうところをその際に検討して結論を出したい、かように考えております。
  94. 横錢重吉

    横錢委員 現行の税制上いろいろな形での欠陥が指摘されていると思うのです。しかも現行の税制は、すでに実施をしましてから五、六年たって、大体今の国税、地方税、またその両者の関係、おのおのの持っている税の欠陥、こういうふうな点については、いろいろな角度からの検討ができている、こういうふうに思います。たとえばこの間大蔵委員会として東北地方を回ってみましたが、ここで見えることは、現在の地方税の中でも、固定資産税のうんととれるところでは、村民税を全然とっていない。その隣の市では、何もないところから、全国最高の市民税をとっておる。これは皮肉にも隣合せのような格好であるということを、現実に聞いてきたわけです。これは単に東北におけるここだけでなしに、全国的にいろいろな形で指摘される。もうすでに大蔵省でも、この点の調査はでていると思うのです。こういうふうな形を見るときに、現在の国税だけを取り上げて改革しよう、あるいは地方税だけを取り上げて直そう、こういうふうなことをやっていても、らちのあかない段階になるのではないか。特に最近においては、国税を少しでも減らすような傾向にあるときに、地方税の方ではどしどしと増徴をやる。例の問題になっておる京都の拝観税のような問題とか、あるいはまた各府県におけるところの果樹税とか犬税とか、いろいろな形で増徴が行われておるのでありますが、こういうような形を見たときに、国税が減っても地方税が上ったのでは何にもならぬ。そういうふうな形を野放しにしておいて、現行の税制に手をつけたいということは一体適当なものかどうか、この点に対して大臣はどういう感想を持っているか、お聞きしたい。
  95. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 ごもっともな御意見であります。従いまして、ただいま中央・地方、国税及び地方税を通じての税のあり方、さらにまた各団体間の税源の調整、それらの点も諮問いたしまして、これらの人々の意見を十分聞きたい、かようにいたしておるわけであります。
  96. 横錢重吉

    横錢委員 税源の把握の形から見ても、九、六、四という言葉が行われておる。そして非常に正確に、税源を押しているものと、非常に不正確な把握の上に立って課税をしておるものとがあるわけです。そういうふうな観点から見たときに、給与所得に対してはきわめて正確な税源把握をしておる。中小企業あるいは農業所得、これらの面に対しては、課税の対象が比較的不正確である、こういうふうなことがいわれておると思うのです。こういうふうな不正確の上に、さらにこれがまた市民税の上にはね返っておるという形になっておるので、これは当然早急に改革を要すると思うわけです。そこで新聞等に発表される売上税の構想、これは税源の把握が正確という点から考えたならば、給与所得者に対して源泉所得をかけるのであったならば、当然商人層に対しても売上税をかけるべきだ。これは一番税源がしっかりとしておる。従って理論的に片方には給与所得をかける、片方には売上税をかける、これは一点の非もないところの合理的なものである、こういうふうに私は考える。ところがなぜかこの売上税の実施については、反対の声におびえて、当局がまだ構想を出していないようでありあますが、税の場合には公平な負担ということ、それからまたどこから見ても合理的であるというものが貫かれていなければならない。従って、今日いっておるような形ではなく、もう少し積極的に改革の意思を出してもらいたい。今この調査会に対して諮問をするというようなことで逃げておられるが、調査会の答申というものは、一体いつごろ出てくるのでありますか。
  97. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 大体十月の末には答申になると考えております。
  98. 横錢重吉

    横錢委員 十月の末に出てきたものは、来年度予算編成の中に組み込まれて取り入れられますか。
  99. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 取り入れることにしたいと考えております。
  100. 横錢重吉

    横錢委員 それではさらに、この現在の税金の中で非常に不合理な点をもう少し申し上げてみたいと思います。今申し上げた給与所得の非常に高いという点――私の知っているある市においては、上から数えて三百人までのところで、その七八%が給与所得者、あとはほとんど大きな事業に携わっている者、そうして一般的な商人層、ことに上から三百人までのところでは、農業所得層は一人も入らない、こういうふうな形をもって今日の市民税が出ているのです。この市民税に出ているというのは、今日の国税における負担というものが、直接税がそのままでているということを示していると私は思うのであります。従って、この矛盾もまた解決してもらわなければならぬと思う。それからさらに、現在汗の所得に対してきわめて重い税金をかけて、そうして不労所得であるところの、たとえば貯金の利子などに対しては、貯金は無税ということにして、全然税金をかけておらない。こういうふうなことは、今日の社会情勢から見ても、あるいはまた社会通念から見ても、これが妥当であるとは言いがたいと思うのであります。従って、こういうふうなものに対しては、今臨時措置をとっておるが、当然これは撤廃しなければならぬものと、こういうふうに考えますが、この点は大臣はどう考えておりますか。
  101. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私も大体同じような考えで、公平――公平ということは要するに客観的な事情に最も適応するように税を直していくべきだ、かように考えておるのであります。
  102. 横錢重吉

    横錢委員 今の大臣答弁で、私の考え方と同じようである、従って答申を待ってこれはくみ入れられる、というふうに考えて、私としては了承したいと思います。  さらにまた今日の農民層に対して、農業課税というものはきわめて安い。一般の勤労者層、それから商人層、こういうふうなものに比して、農業に対する課税はきわめて安い。各町村が村民税のとれないという理由は、村民税の課税の対象となる所得税が把握されていないというところに原因がある。従って、との農家が税金が安いといろことをそのまま認めるかというと、これはそうでないのである。農家は税金では納めていないが、米等によって物税の格好で納める。従って米を生産費を割るような値段で納める、それがすなわち税金である。従って物で納める税金と金で納める税金と両方見たならば、やはり農家も重い、こういうことになってくると思う。ただこの場合において、物と金と両方で納めさせておるという税体制というものは適当ではない。従って、これは米は米で相当の価格にする、それから税金税金でやはり他の階層とつり合うものでもって考えていかなければならぬ、こういうふうに考えておるのですが、この点に関しては、大臣はどう考えておりますか。
  103. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私は非常に傾聴すべき御意見と思います。私も、今のは物納税のことだったですが、ちょっと違った何で、税ということと生活水準、この生活水準ということとの関係で、やはり非常に生活が圧迫される、圧迫して税を納めるというのは、同じ税を納めても非常に重い税になるのではないか。その辺非常にむずかしいのですが、私はそういうことを常々考えて、今後はそういうことも考慮に入れて税を考えていきたいと思います。
  104. 横錢重吉

    横錢委員 最後にもう一つ伺いますが、今の日本の税体系は、直接税と間接税との関係で、非常に直接税のウエートが強いわけです。これはシャウプ勧告の線からこういうふうなものが出てきて、漸次移行しておるわけです。ところが税金を下げろ下げろという声は、直接税よりもむしろ間接税の方にいろんな形で上ってきておる。従ってこのまま推移すれば、間接税が下って、直接税がそのまま残ってくるというふうな形になると思うのです。ところが現実には、直接税の方をもっと下げていかなければ均衡がとれないのではないか、こういうふうに考えておるわけですが、直接税と間接税とどっちに重きを置いて減税をしていくか。大臣はどういうにお考えになりますか。
  105. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 非常に意見が一致するようでありますが、私もずっと前から同じようなことを考えておったわけです。
  106. 松原喜之次

    松原委員長 次に横山利秋君。
  107. 横山利秋

    ○横山委員 時間がございませんから、項目的に、重複しないような点を質問いたしますから、先般の委員会でもそうでしたが、大臣がはっきり言うて下されば、時間が非常に経済的に済みますから、そのつもりで一つ答弁願いたいと思います。  先ほどもちょっと話が出ておったんだが、予算の編成期が迫っておる。そして補正予算を組むか組またいかということが議論されておる。それに関連して、一つ二つの質問をしたいと思います。  最初に、健康保険法の三十億の繰り入れの問題が参議院で流れました。そのために支払い金を一括して支払基金を通じて支払われるので、非常な問題が起っておる。全国のお医者さんやあるいは患者さんが、非常にそれについて動揺しておるわけです。ところがあの直後あなたは、これもまた言った言わぬの話にたるか知らぬけれども、新聞に載ったところを見ますと、あなたは、たまには困らしてやれということを言われた。こういうことが新聞にっておる。一体大蔵大臣は、何を考ええておられるのか。政治的な発言だとは思うけれども、政治的な発言だとすれば、まさに奇怪千万な話で、赤字になって健康保険が困っておるけれども、これは混乱の末起ったものである、医者も歯医者も再考もわあわあ言った末だから、たまには、どういうことになるか困らせてやれとおっしゃった、こう新聞には出ておるのであります。まことにけしからぬ話でありますが、大臣はときどきそういう放言をなさるようであります。その放言はどういうお考えで言われたか。それから三十億の繰り入れができないことになったが、これは一体補正予算にお組みにたるつもりであるかどうか。現在すら赤字で非常に困っているわけですが、どうなさるおつもりですか。それを伺いたい。
  108. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 どういうふうに新聞に出ておりますか、今記憶ありませんが、そういうふうなことは、まともにとても言わるべきことではありません。おそらくそういう言葉で表現されているとすれば、ものの解決に、抽象論でなく、具体的にやはり一ぺん経験をするというようなことで、ものの解決がやりよくなるのではないかというような気持があったかもしれません。そういうところです。困らせるという意味では全然ありません。
  109. 横山利秋

    ○横山委員 同じことじゃないか。
  110. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 同じことではない。お互いにそれぞれの立場、ほかの言葉でいえば、お互いのいろいろの立場ともいうべきものもありましょう。ですから、それらの立場をお互いに尊重して、全体的に一致点を見出そうという表現ですよ。そういうふうに御了承願いたい。  それから健保のことですが、あの改正案が国会の御承認を得られなくて遺憾でございました。その後赤字幾らかよくなってきておるようであります。これは一つ厚生省にできるだけ行政措置でやってもらいたいと思っております。まあすぐに困るわけでないので、情勢を見て検討を加えていきたい、かように考えております。
  111. 横山利秋

    ○横山委員 右から言おうと左から言おうと、あなたの御説明は、やはりそれを裏書きするものだと思う。右から言えば、あなたの言う通りだが、たから言えば、困らせてやろうという私の言う通りである。とにかく現実的、具体的事実に直面して困らせてやろうというのですから、非常に意地悪いやり方です。そういうことは現実の結果としては、保険料の収納強化とか、給付抑制対策の実施とか、標準報酬等級の改正とか、あるいは料率の引き上げとか、こういうような医者や歯科医師や患者さんの困るようなことばかり行われている。当時、そのかわり三十億入れますからといって、あなたはそこで常々と答弁なさった。あなたは困らせてやろうということで、こちらの困ることばかり今どんどん行われている。あなたは、多少赤字は少くなってきたとおっしゃるが、それはあなたの言う通りです。しかしそれではあなたの政治的責任は済みますまい。だから私が言うのは、なるほど今国会は開かれておらぬけれども、次の補正予算の中で、あなたは政治的責任を果すかどうかということを聞いているんです。あなたは、責任を持ってそういう必要があるということを痛感して、三十億ほうり込みますということを過ぎる国会で提案した。しかしそれがああいう混乱の中で工合が悪くなったけれど、なおその必要と責任性は残っている。だから、それを当然臨時国会で補正予算にあなたはお組みになるけずだと私は思うが、そういう腹がまえと理解してよろしいかということを聞いている。
  112. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 困らせることの方は、一つ了承して下さい。  この三十億入れるということでありますが、このことはやはり健保に関する改正案、あの全体の関係において考えているわけでありまして、健保をこのままにしておくわけにも行きますまい。従いまして、ああいうふうな改正は、さらに適当な機会に御審議願って、財政負担も考える、こういうことにいたしたいと思っております。
  113. 横山利秋

    ○横山委員 簡単に聞きますが、適当な機会とは、臨時国会というふうに理解してよろしゅうございますか。
  114. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 臨時国公があるかどうか、これもわかりません。
  115. 横山利秋

    ○横山委員 あればというとです。
  116. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 まあ適当な機会ということで御理解が願いたいということでございます。
  117. 横山利秋

    ○横山委員 そういうことでは時間がかかるばかりでございます。私は引っ込みませんから……。臨時国会があるかないかはわからぬ。わからぬけれども、天下の趨勢ほ、もちろんその方向へ向いておることは百も承知のことです。開かれれば、先ほど言ったように、そういう必要を痛感して出し、本委員会もそれを満場一致決定し、そうして参議院へ送ったんだ、衆議院の院議としては、あなたの提案を了承して、その必要を認めたわけです。そういうことで、次に開かれる国手で、あなたはその必要は認めません、こうおっしゃるはずはないと思うが、逆に、いやもうことしはやりません、補正予算の必要は認めません、そういうふうにおっしゃるつもりでありましょうか。逆の面からお伺いいたします。
  118. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 いや、別にそういう点において、ここでいろいろと固執して議論をする必要も、ほんとうをいいますとないのです。しかし臨時国会がどういう性質のものか、そういうものがいろいろありますから、そう簡単にもいきませんし、すぐに困るというわけでもないわけです。来年にいってもいけるわけですから、その点はそのくらいで……。
  119. 横山利秋

    ○横山委員 あなたはお医者にかかったことがないらしい。あっても、そういう具体的な危険に逢着したことがないらしい。しかしここで健康保険にかかっておる人や病人の身になってごらんなさい。それは、今そのために診療ができないということではないですよ。しかしかかる方も、かかられるお医者の方も、もう少し、あれだけの騒ぎが起した結末を、あなたは親身になって考えなければいかぬですよ。赤字がふえるなら幾らでもふえろ、こうおっしゃるなら別ですけれども、この健康保険の立て直しということが、ここ二年来の問題であるだけに、もう少し大臣も親身になって答弁をなさらなければいかぬと私は痛感するわけであります。  時間もありませんから、次に同じような問題に入りますけれども、過ぐる国会で法律で通りました石炭手当と薪炭代の問題であります。ところが予算措置がどうなっておるでありましょうか。例年なら今月一ぱいに概算払いをしてもらうことになっておる。ところがあなたの方で、一向話がないようである。従って当然みんな今月中に概算払いが行われると思って、北海道では石炭を買う準備をしている。東北及び北陸地帯では、薪炭を買う準備をしている。冬の支度を今からしないと間に合わないころでありますから、当然おやりになると思っているのでありますが、それについてあなたのお考えを伺いたい。
  120. 森永貞一郎

    ○森永説明員 薪炭手当の問題でありますが、法案が提出になりまして成立いたしますまでの経過におきましては、私もいろいろ意見がございましたが、法律ができました以上は、もちろんこれはできるだけ早く実施せられるべきものと考えておるものでございます。ただこの法案の審議の過程並びに成立に即しましても、御存じのように、予算の範囲内において支給するということでございます。ことしは、実は予算がないところにこの法案ができたわけでございます。そこでいつから実施するか、施行の博期も、実は御承知のように、昭和三十二年三月三十一日までの政令の定める日に実施をすることになっておるわけでございまして、それらの点は、ことしは予算がないところにこの法案が成立したという事情をお考え願いまして、しかるべき規定になっておると存ずるわけでございます。さればといって、私どもいたずらに理由なく三月三十一日までこれを遷延するつもりはありませんが、何分にもことしは予算がないのでありますから、これを実行するといたしますれば、やはり各省のやり繰りで、できるかできないかということをまず検討しなければならない。その観点から、目下一般会計、特別会計を通じまして、各省の予算について、やり繰りである程度実施できるかということを目下鋭意検討中でございます。御承知のように、人事院の勧告によって施行地域、金額等をきめることになっておりますが、人事院におきましても、目下まだそれらの点を検討中でございますので、政府部内におきましても、この人事院の勧告と相待って、いかにするか、いつ実施するかということを検討いたしております。  なお八月三十一耳に支給することに決定しているような御質問の御趣旨かと存じますが、これは御承知のように、石炭手当は八月三十一日に支給いたしますが、今回のこの薪炭手当につきましては、いつ支給するかという問題も、まだ実はペンディングでございますので、その点も御了承いただきたいと存じます。
  121. 横山利秋

    ○横山委員 その法律が通っていて、予算化していないということも知っております。それは私はかりでなく、全受給者が知っておればこそ、非常に心配しているのであります。これが、今概算払いがもらえぬ、そうしていつのことだかわからぬということでは、たとえばきょう一万円もらうのと、十月にもらうのでは、非常に値打ちが違うわけです。買う値段もさることながら、準備の段階においても、どこかから借りてきて払わなければならぬわけであります。そうなりますると、せっかく通った法律の国会の意思というものは、ここに非常な打撃を受けるし、受給者諸君にとって、非常な打撃を受けるということが明瞭な事実となって残っているわけであります。予算化について、あなたは各省各庁の特別会計、一般会計を通じて検討しているという話でありますが、そんなことでは、一体いつのことかわからぬじゃありませんか。石炭手当でも、大体例年八月中には全部もらって、すでに話を始めているわけでありますから、これは一つ大臣に御答弁を願いたいわけですけれども、万々相繰り合わして予算化をし、今月中に概算払いを払ってもらうように、受給者諸君にかわって要請したいと思いますが、大臣、いかがですか。
  122. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これは、今主計局長から答弁いたしましたように、予算の範囲内、こういうふうになっておりまして、本年度予算に計上をしてないことは御承知の通りであります。そうしてこれは、地方の団体にもむろん関係があります。自治庁の方にも意見があります。給与担当の閣僚にも考えがあります。いろいろありますので、今率直に申しまして、これらの関係で話をやっているのであります。きよう御了承をいただきます。
  123. 横山利秋

    ○横山委員 どうも大臣のおっしゃることは、はっきりわかりませんけれども、私の要望は、私はかりでなく、ずっと北海道から東北、北陸に至る諸君の要望を、誠意を持って、ごく近い将来において実行するように努力をしてもらえるかどらか、これだけを一つ大臣言うて下さい。
  124. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 ただいま申し上げましたように、本年度予算に計上をしてないのですが、すでにそういう問題が議員立法でできておる。ですから、一体どういうふうにやれるか、これも十分に考えてみなくてはならぬことです。それらの点を、先ほど主計局長答弁したように、事務的にいろいろと相談をしている、こういうことであります。できるだけいろいろの、単に一般会計とか、特別会計というだけでなくて、やはり地方の負担もあります。それらの関係大臣意見も、どうしても聞くというと悪いのですが、それらの関係省とも相談して、政府意見としてまとめる、こういうふうにせざるを得ないのであります。さよう御了承を得たいと思います。
  125. 横山利秋

    ○横山委員 ちょっと小言を言うておきますが、大臣答弁は、やはり事務がむずかしいと言っていらっしゃるのです。国会を通過した法律の実行を妨げているということを、おっしゃるつもりはないと思うのだけれども、しかし、これはあくまで事務の問題として、非常に困難ではある、そのためにいろいろと検討しておる。これだけにとどまるのであって、そのために法律の執行ができませんということは、絶対に言わせない。法律の趣旨というものは、この金額でこれだけの石炭なりあるいは薪炭を買うようにというふうになっているのだから、この趣旨を完全に良識をもって遂行する義務があなたの方にある。私は、あなたが各省と研究しているということは多としますが、それなるがゆえに、この最も必要なるときに、十分なる方法をもって薪炭代なり石炭代を支給することが妨げられますということでは、話になりません。どうか国会の意思をむだにしないようにお願いしておきたいと思います。
  126. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 むろん法律が通っているのですから、法律の命ずる通り執行することは言うまでもありません。従いまして、来年度予算において、予算的措置をとらなければなりません。これはむろんその通りだと思います。ただ法律も、本年度はそういうふうには要請をしてありません。既定の予算の範囲で、こういうふうになつております。従って予算が計上してない。ないのに一方法律だけは早く――早くというと悪いですが、一応出ていますから、そこでいろいろと苦心をしなくてはならない。それが各省にまたがつておるこういうことであって、それぞれのまた意見もありますから、その意見をどう調整していくか、どういうふうにまとめるかということになるわけであります。
  127. 横山利秋

    ○横山委員 では次に、先般の委員会で、やはり人事院の勧告についてお伺いをいたしまして、そのときにあなたは、ただいま検討中である、言うなりばそういう答弁であた。あれから一カ月もたっておるわけです。もういいかげんにあなたの腹もきまったと思うのです。予算編成について重要な問題であるこの人事院勧告に、一体どの程度あなたの腹がきまたものか。率直にいえば、二年ほうりっぱなしになっており、かつ勧告に書いてありますように、民間の産業労働者よりも非常に低いといわれておるし、勧告は三月に調査をしたと言うておるけれども、三月以降物価も逐次上りつつある状況なんだから、この際人事院勧告を尊重して、予算の中へ編成をするという答弁があると思うのですけれども、いかがですか、あなたの腹のきめ工合を、一つ率直にお伺いしておきます。
  128. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 むろんこの人事院の勧告を尊重するという建前といいますか、考えは変っておりません。おりませんが、しかし勧告自体がいろいろと事務的なことにまたがっておりまして、そう簡単に、ああそうかというふうにもいきかねる。また人事院勧告の基礎になっておるような事柄についても、いろいろの而において検討を加えてみなくてはならぬことも少くないようであります。特にこの点は、給与一般に関係してくるので、給与関係の閣僚が中心になりまして、給与自体についても考えてみなければならぬ。今のところ、政府としての意見がまだまとまっておりません。
  129. 横山利秋

    ○横山委員 あなたのおっしやるように、勧告の内容がかなり事務的に、相当複雑な検討を要することは、これは知っています。しかし私が聞きたいのは、そういうこともさりながら、人事院勧告を本年の補正予算の中へ尊重して組み入れていくのかどうかということの大筋の話なんですよ。その間、岸本さんも来ておるのだけれども、この内容について、もう一ぺんあなたの方で検査をするということも必要でしょう。しかしそれもまあ一カ月たっておりますから、いいかげんに返事ができそうだと思いますから、時間がございませんから、こまかいことを言いません。大筋の問題として大臣に聞いておるのは、この勧告を西正して、二年ほっぽっておった公務員の給与を、本年度内に改善する意思ありやいなやということを聞いておるのです。
  130. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 今答弁いたしましたように、人事院の勧告につきまして、慎重に関係閣僚で検討を加え、そして結論を出そう、こうしておるのでありますから、今私が、ただどうするこうすると言うわけにもこれは参りかねます。
  131. 横山利秋

    ○横山委員 もう一ぺんお伺いいたしますが、その検討するのは、これは当然の義務でありますが、政府検討する腹がまえとなつておるものは、人事院の勧告を尊重して、給与の改善を本年度内にする前提に立つてやっておるのか、それとも勧告を尊重するか尊重しないかわからない、全く白紙の立場でやっておるのか、そのいずれであるかという意味を聞いておるのです。
  132. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これも先ほどからお答えしたように、人事院の勧告については、尊重していきたいと思います。がしかし、これを尊重して実行に移すかどうかという、いろいろな問題が先ほどから申すようにありますから、十分検討を加えて、人事院勧告通りにやり得るかどうか、これも考えてみなければならぬ、そういうことであります。
  133. 横山利秋

    ○横山委員 それでは、本年度に人事院勧告を実現をするということについて、あなたの答弁を要約すれば、ゼロではない、そういうことをあなたは言外に含みとして言っていらっしやるわけですね。
  134. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 今はそういうふうに未決定でありますから、何とも言えない、こういうことであります。
  135. 横山利秋

    ○横山委員 だんだんそれこそ悪くなっていきます。未決定であるということになれば、私は、一つこの際大臣のものの考え方を直してもらわなければならぬと思うのです。なぜかというと、先ほどから何回も言うように、二年もほうりっぱなしになっておって、そのたびに人事院は、勧告だか何だかわからないようなことを言うてそうして人事院は、やめるぞというような政府のおどしに乗ったかしりませんが、全く公務員の給与改善について熱意を失ったような態度をして参った。ところが民間の方は、どんどん上って参りましたから、今度ばかりは上げてもいいだろうということで、できたことなんです。その点については、大臣は百も御存じの通りだと私は思うわけです。ここに関係閣僚の間で検討する。先ほどのお話によれば、その内容が複雑であるから、一つこれは、具体的な数字その他について検討する、頭打ちも、これで解消するにはどうしたらいいか、あるいは俸給表の改善についてはどうしたらいいかということをやつておるということは、まさか六十九億かかるから、これはだめだという立場検討せられておるとは私は思わない。それなら、何もこまかいことを検討する必要はないじゃないか。最初から、やるかやらないかわからないということだつたら、具体的に突っ込む必要はないのです。もう私は、本委員会で二回にわたって質問をして、しかもなおかつあなたから、やるかやらぬかわからぬのだというような答弁をいただこうとは思わなかった。私のあなたの説明に対する受け取り方がまずかったら、これは、聞き間違いは言い手の外だということもありますが、言い手も聞き間違いがないように、親切に言ってもらいたい。
  136. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 いえ、やってやらぬから、そういう意味をもってしているわけではむろん私はないと思う。少くとも私はそうであります。それは御承知を願いたい。ただ検討した後に結論を出さなくてはならぬ、こういうことであります。
  137. 横山利秋

    ○横山委員 それでは、この前労働委員会で、あなたにかたくお約束を願つたことが一つありますから、人事院勧告の中の一つとして、約束を一つ果してもらいたい。あのときは、たしかあなたの管下にある税務職員の首切りの問題についての質問であります。いろいろと質問をしましたら、あなたは最後に、税務職員の給料については十分考慮すると、かたい約束を当時せられたものであります。今日、税務職員の給料その他労働条件を、私は国政調査のかたわら、ずっと北陸から東海を回つて見て参りましたが、こもごもに言うておるのです。この間もこういうことを言うところがある。行政管理庁が税務特別行政監察をやるという話がある。そこで税務職員が、これは横山さん、私らとしてはどういう態度をとつたらいいだろうか、こういう話です。私は、ああ、やってもらいなさいよと言つた。ただ、税務職員の中で、こういう感じを持つ人があったわけです。それは、この問うち国有財産の監察を行政管理庁がやった。そうしたら、全く次から次へといろいろなものが出てきた。税務行政をやられると、おそらく出てくるであろう、私らに関係がないいろいろな問題が、上の方では出てくるであろうと思う。私は、当然出るだろう、こう言った。そうしたら、わしらはいいけれども、これによつて徴税の末端におるわれわれが、今日ですら、警察と税務署へ行くのはいやだと国民が言って、税務客員が来ると妙な顔をする。そういうことで、ますますわれわれの徴税の仕事に差しさわりがありはしないか、こういう話であります。まことに税務に熱心なる職員の不安であります。私はそこで、あなたにもお伺いしたい二、三の点があるのですけれども、一つは、あなたが労働委員会で、私に半ば怒り半ば笑って、いや私もよくわかります、従って税務職員の給料については、一つ善処をいたしますと言って約束されたのですが、その後一体それはどうなりましたか。先ほど横錢委員といろいろ意見の一致があったわけですが、私もあそこで、あなたと意見の一致があつたわけです。いいかげんに、意見の一致ということは、もう具体的な事実となって現われる段階だと私は思っておりますけれども、二千九百二十円当時、今からさかのぼれば五年くらい前になりますが、税務職員の税務特別俸給表を設定をして税務職員の特殊な状況というものを認識をしてもらつたのです。ところがたまたまあなたが大蔵大臣になられてからというものは、どうも不平が多いのです。そしてあなたは、部下に命じて組合役員の首を切った、それでもって、給与の改善が行われていないという不平不満というものは、おおうべくもないわけです。そういう点について、あなたの直接の指揮下にある職員について、あなたはどういう措置をおとりになったか、一つこの際明らかにしていただきたい。
  138. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 税務職員の給与を特によくしてあげるというふうに、約束は申したことはないと思います。問題は、税務職員の給与が特に安いかどうかという点は、これは考えてみなければなりませんが、人事院の資料等を見ても、税務職員の給料は特に安いという事実はありません。ただ私は税務職員、警察の方もそうですが、こういう方々は、ほんとうに国民に直接に接する。こういう人の気持のあり方というものは、私は各般の、ことに経済的にも社会的にも、あるいは人心に及ぼす関係も、あらゆる方面に非常に影響を持つだろう。そういう点から、ただ税務職員の仕事がどうである、こうであるというようなこと以上に、そういうふうな見地から、こういう人にやはり生活がなるべく安定をするようにしてあげることが、政策として望ましいことであろう、こういう考えは絶えず私は持つておるわけであります。しかしそんなことをいつても、特別な扱いをすることについては問題が非常にある。ですから、できれば、たとえば公務員住宅というようなものについて、そういうような見地から、税務職員や警察の方、こういう人には、できるだけ早く住まえるようにしてあげたらいいのではないか、こういう考えを持つているのが、私の偽わらない考え方であります。
  139. 森永貞一郎

    ○森永説明員 若干補足して申し上げたいと思います。税務職員に特別号俸が設定せられましたのは、もう数年前でございますが、その後の実施経過にかんがみますと、だんだん時をふるに従ってこの特別号俸の恩典が薄れていくというふうな事実があったわけであります。これは、特別号俸を設けた趣旨から申しまして遺憾でございます。そこで、実は今から申しますと二年くらい前でありますかに一回、さらにそれに引き続きまして、一年くらい置きましてもう一回、是正措置を講じまして特別号俸の号俸差がいつの間にか薄れてしまっておった、その事実を解消いたしまして、今日の状態では、一般の職員に比べて、四号の号俸差を完全に維持いたしております。そのことは、人事院の資料等を見ましても、はっきりわかることでございます、一時途中で、号俸差がだんだん解消しつつあるといそういう状態におての税務職員の不満が、あるいはお耳に達しているかもしれませんが、そのときの事実は、今日は大体解消している、さように御了承いただきたいと思います。
  140. 横山利秋

    ○横山委員 少し水かけ論になりますが、あなたの方としては、解消しておるという、それから税務署の職員は、解消していないという、それから前長官の阪田さんも、まだまだだと言うておる。これは水かけ論になりますし、時間が長くなりますから、私は具体的な事例は別の機会に申し上げますが、決してそれで税務職員の号俸差というものが、完全に二千九百二十円当時に復帰したとは言いがたい点があるわけです。それは一つ、あなたの方はえらい自信を持っていらっしやるようでありますが、一つ国税庁とよく話し合ってみて下さることを私は要望したいのです。  それから大臣に申し上げたいのでありますが、税務職員は、とかく国民の非難の的になります。これは納税者の立場としても、普遍的にあり得ることだけれども、しかしながら、また不正の問題も、会計検査院の資料を見ればあるわけであります。一方税務職員は、一人々々が独立の機能を持つて納税者と折衝してやっております。官吏の中でも、一人々々独立の機能を持っているのは、割とめずらしいと思う。そういう人たちが、とかく給料が安いということによって生ずる諸問題というものを、特に私は納税者へのサービスという点において公正なやり方について考えなければならないことだと思います。そこに号俸差のあるゆえんだと思うのであります。私は、別に税務署の職員が給料が高いとか、あるいは公務員との間がどうというわけでなく、その特別な職、そうして独立な機能を持って納税者に面接に接し、しかも常に不満を受けておる、感じ悪く見られておる、そういう立場にある諸君の気持を尊重してやってもらわなければならぬ、こういうことを申し上げたいわけです。あなたは家を建ててやりたいというお話がございます。これはもっともです。税務職員は、大体私の調査したところによりますと、二年くらいですぐ転勤であります。それといいますのは、その勤務しているところの納税者とひっかかりができたのでは、情実因縁ということになるということで、二年くらいでほとんど転勤です。そして希望のところへ行けるかというと、希望のところは、大体自分の居住している税務署です。ところがそういうところでは問題があるというので、希望してないところへ転勤させられる。従って住宅事情というものは特に問題があることは、あなたも想像ができることと思う。こういう点について、とにかくあなたが、すべての公務員の給料の問題を、財布のひもを預かっておられる関係上、自分の傘下の職員について特別なめんどうを見るということは、あるいは他から問題があるような印象もありましょうけれども、しかし公平な見地、徴税の円滑な実施という意味においては、林段の考慮をしてもらわなければならぬ。先般国税の組合は、納税者に対する親切運動をこれからやろうということを決議したそうであります。まことに私はけつこうなことだと思うわけであります。どうか一つ労働委員会であなたが答弁のあった意味のことを、てにをはの相違はありましょうけれども、その趣旨を十分に体して今後とも正そう税務職員が、明朗な気持で納税者に接し得るように、格段の配慮を特にお願いをいたします。
  141. 松原喜之次

    松原委員長 午前の会議はこの程度にとどめ、午後二時半より再開することとし、暫時休憩いたします。    午後一時四十八分休憩      ――――◇―――――    午後二時四十八分開議
  142. 松原喜之次

    松原委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  専売事業に関する件について質疑を続行いたします。成田知巳君。
  143. 成田知巳

    成田委員 公社側と大蔵省側はどなたがおいでになっておりますか。
  144. 松原喜之次

    松原委員長 塩脳部長大蔵省の白石専売監理官です。
  145. 成田知巳

    成田委員 すでに当局側も御承知と思いますが、わが国の塩田地帯、特に瀬戸内海ですが、そのうもでも香川県を中心にいたしまして、最近塩田労働者の首切り問題が、一つの大きな社会問題になっております。今後首切りはさらに相当出る見込みであります。これに対する失業対策というものも、当然考えられなければならないと思いますが、その前に聞いておきたいことは、今度の首切りというのが、御承知のように、従来の製塩方法から流下式に切りかえられたところから出ている問題だと思うのですが、この流下式への切りかえというものは、ももろん政府並びに公社が慫慂なさっていると思うのです。今後の計画としまして、現在の旧式な塩田方法を、流下式その他の近代設備に切りかえる御計画があると思うのですが、大体どういう構想で、どういうテンポでお進めになるか、簡単にお答えを願いたいと思います。
  146. 三井武夫

    ○三井説明員 ただいま御質問のありました、塩田の流下式転換への改善の問題でありますが、従業の入浜式の塩田を流下式に転換するという問題が起りましたのは、大体二十七年ころからでございます。当時におきましては、公社といたしまして、相当流下式塩田の研究をいたしておりましてこの新しい塩田に切りかえることによりまして塩田の能率を相当向上させることができる、能率を向上させると同時に、塩の生産費を相当低減することができるということで、この新しい様式を製塩業者に教育宣伝をいたしておったのであります。二十七年度から始めまして、希望者には流下式の塩田への転換を、公社でも補助金あるいは農林、漁業資金等によって援助するという方針をきめて、この転換を始めたわけであります。しかしながら二十七年当時におきましては、この流下式塩田なるものに対する塩業者の認識が十分でありませんでしたので、相当塩業者の中では、流下式の転換をちゅうちょする者も多かったのであります。今香川県の問題のお尋ねがあったのでありまするが、従来香川県のごときは、御承知のように、入浜式塩田としての成績が非常に良好でありましたので、ほとんど香川県の塩業者は、流下式への転換をする者もないというような状況であったのであります。その後二十八年、二十九年とだんだん希望者のところを流下式に転換をしてみますると、その転換した後の成績が想像以上によろしい。もちろんこれは、御承知の通り塩田の改良だけではないのでありまして、流下式の塩田に枝條架を相当程度併設することによりまして、両々相まって塩田の能率を高めるわけであります。そういうことになりまして、ほかのむしろ香川県以外の従来の塩田としての成績の悪かった地方の方が、積極的に流下式への転換をやって参っておったのであります。その転換の成績が、今申しますように、だんだんと顕著になって参るということで、香川県のごときは割合におくれまして、これでは自分らも、今までの入浜式塩田を特っているわけにはいかないということになりまして、このごろになりまして、なかなか積極的になって参っております。ただ公社といたしましては、この流下式転換の希望が、現在ではほとんど全国的に出て参るような状況になっておりますけれども、これを転換いたしまするためには、今申しますように、一部には補助金を出しておりますし、また農林漁業資金でこの転換を援助するというような方針をとっておりますので、年々定められております補助金の予算なり、あるいは農林漁業資金資金ワクというようなものに制限されまして、なかなか希望の者を全部実現させるというような状況ではないわけであります。それでも昭和二十七年度には三百六十四町歩しか流下式に転換したところはなかったのでありますが、三十年度末におきましては、約二千三百町歩、全国の塩田の約五〇%が、この流下式に転換を了するというような状況でございまして、今後大体四、五年くらいかけまして、全国の塩田の流下式に転換し得るところは転換させたいというふうに考えているのでありますが、公社のこのようなスピードに、なかなか塩業者の方では近ごるは満足いたしませんで、もう補助金も要らないし、農林漁業資金も要らない、自分らの自己資金でどんどん転換さしてくれというようなことで、このごろでは塩業者の方がなかなか積極的に自己資金を投じて、公社の取り上げました計画以上に流下式への転換をいたしているというような状況であります。私どもの方では、ただいま申しますように、補助金、農林漁業資金でこれらのものを全部収容し切れないというような状況になつている現状であります。
  147. 成田知巳

    成田委員 そこで、入浜式から流下式に切りかえる場合でございます。同じ経済効果を上げるのに必要な労働者の数でありますが、たとえば入浜式でしたら一トン幾ら労働者、流下式なら幾ら労働者と、大体の数はおわかりになると思いますが、その数字をお示し願いたいと思います。
  148. 三井武夫

    ○三井説明員 塩田労務者の数は、御承知もございましょうが、地方によって、なかなか従来からの習慣等も違っておりまして、一律には参らないのでありますけれども、大体平均といたしまして、一塩戸といっておりますが、一塩戸十二、三人くらいを使うのが通常ではないかと思っております。一塩戸と申しますと、大体一町歩半くらいになつておりますので、一町歩に直しますと、大体八人くらいというのが普通の状況ではないかと思います。このうちで、浜子といっております常用の労務者が大体三人くらい、残りの五人くらいが臨時雇いという形になっております。これを寄せ子というようにいつております。この常雇い三人くらいの者があるいはもう少し使っておるところもございますが、三、四人くらいのところが、大体の基準ではないかと考えております。これが、理想的に流下式の操作をいたしますると、一町歩半人で済むというような計算になるのでありますが、この点は、今お話しの通り、失業の問題もございまするので、理想通りの人員の整理ということにはなかなか参りません。しかし将来の理想的な操業をするのに必要な計算上の必要人員と申しますると、〇・五人くらいで足りるということをいわれているのであります。
  149. 成田知巳

    成田委員 そうしますと、現在すでに約五〇%の切りかえが行われているわけですが、四、五年のうちにあとの五〇%を流下式に切りかえた場合、現在働いている労務者、これを何万人と見てこれが流下式に切りかえられた場合に何人に滅っていく、その間失業者というものは大体何人になるか、概略の数字でよろしゅうございますが、お示し願いたいと思います。
  150. 三井武夫

    ○三井説明員 現在までに常雇いの人同で、流下式に転換したために整理されました者が、約三千人でございます。これを今後、先ほど申し上げましたように、大体四、五年で整理いたしますると、その間の要整理人員が約五千人ほどになります。流下式の転換を完了するまでに整理されまする総数が八千三百人ほどになる見込みでございます。これは、もちろん先ほど申しましたように、かなりその目標とする少い人員を基準にして計算いたしておりますので、実際には、これほどの失業者が出ることにはならないわけであります。一応計算上現在までの失業者三千人と合せまして八千三百人、すなわち今後出て参ります者が約五千三百人ということになります。
  151. 成田知巳

    成田委員 現在入浜式で働いておる常用労務者というのは、何人おるのですか。
  152. 三井武夫

    ○三井説明員 現在入浜式で残つておりますところが約四千町歩ほどになりますが、この四千町歩に、先ほど申しますように、三人かりに堂雇いがあるといたしますると一万二千人、二人半といたしますれば一万人の労務者になります。一万人ないし一万二千人くらいの労務者が現在就業をいたしておるわけであります。
  153. 成田知巳

    成田委員 この一万二千人というのは、全国の数ですか。
  154. 三井武夫

    ○三井説明員 全国です。
  155. 成田知巳

    成田委員 一万二千といたしましてもし流下式に転換すれば、〇・五人でいいわけですね。そうすると六分の一で済むわけですね。大体、三人使っていたのですから、六分の一で済むということになるのですよ。そうすると、大体二千人あればいいので、一万人くらいの首切りが出る、こういうことになりましよう。そうでございますね。
  156. 三井武夫

    ○三井説明員 先ほど申しましたように、〇・五人というのは、理想的な配置人員でございます。実際には、今後現在の一万人ないし一万二千人くらいのうちで、五千三百人くらいを整理いたしまして、残りの者は残す。しかしこれは、もちろん理想的な配置人員よりはよけいなものを使うということで、予定いたしております。ほんとうに理想的なところまで整理しなければならないということになりますと、今おっしゃいましたように、八千人くらいは整理しなければならないと思っております。実際的には、私どもその理想的基準にまでいきなり整理してしまうということは、やってはいけない、できるだけ順々に減らしていくということで、多少余剰人員のめんどうを見てやらなければならないということを言っております。あとでいろいろ申し上げることになると思いますが、これは私の方で考えております失業対策の一つの手段でございます。
  157. 成田知巳

    成田委員 そういたしますと、常用といたしまして一万人近くの失業者が出る。そのほかに、臨時を大体常用の倍便っておるわけですから、臨時で職にあぶれる人が大体二万人近く出る。相当な失業者が出るわけなんです。現に香川県でも、すでにこの問題で首切りの問題が起きまして、現在のところでは退職手当の支給をめぐりまして、紛争が起っておるわけです。今まで聞いたところでは、公社当局説明としましては、直接の雇用関係は塩田業者と浜子関係にある、労働者関係にあるので、再売公社が雇用関係に立っておるわけではないのだから、この退職手当の問題については、何ら自分たちとしては考えるわけにはいかないのだ、こういうような御発言の模様らしいのですが、この退職手当の問題について、専売当局としてどのようにお考えになっておるか。従来あっせんその他で積極的にこの問題の解決に乗り出された例があるかどうか、承わりたい。
  158. 三井武夫

    ○三井説明員 この流下式の転換に伴いまして、今お話しのように、相当多数の失業者が出て参ります。これらの気の毒な犠牲者をどう処置いたしたらいいか、これは公社といたしましても、流下式転換を指導いたしまする場合に、非常に頭を悩ましておりまする問題の一つであります。この点につきましては、昭和二十九年にすでに公社としての方針を定めまして、現在塩業組合を指導いたしておりますのは、この方針に従っておるのであります。その方針の大体を申しますと、今お話しのように、基本的な考え方といたしましては、労働者と雇用関係のあります塩業組合、あるいは地業会社でもって、この失業手当の問題はでき得る限り配慮いたすべきである、公社として幾ら幾ら出したらよかろうとか、あるいは公社自身がその一部を免除してやるとかいう考えは持っていないわけであります。地業組合といたしましては、もちろん組合によりましては、相当の資産、信用を持つておるところもございますが、組合によりましては、また非常に貧弱な組合もございます。現在の資力信用をもってしては、十分退職手当を支給し得ないというようなところも考えられるわけであります。しかしながら、この流下式の転換を行いまするならば、それによりまして経営の合理化はもちろんのこと、生産母の相当の増大を十分に期待し得るのでありまして、それによりまして、虚業組合の基礎も強固になり、能力も増大してくる。その将来の信用の増大までを考慮に入れまして場合吉によりましては、一時借入金をいたしましても、この際の失業犠牲者に対してはできる限りの失業手当を出すべきだ、退職金を支給すべきだ、かような指導をいたしておるのであります。しかしてその方法一つといたしましては、流下式の転換をいたします場合に、従来は御承知のように、塩田の経営なるものは、塩業組合とは申しましても、個々の塩業者が自分の塩田を品分で経営するというような形が多かつたのです。決して塩業組合全体が一本の経営というような形になっておらなかったのであります。流下式の転換を行います場合には、転換の工事はもちろんでありますが、転換後の組合または会社の経営というものも、組合、会社を一本の経営形態にまとめまして、それによりまして組合、あるいは会社の経世を極力合理化しまして、経費の節減をはかり、さらにまた能率の向上、生産の増加ということに努力して参り、それによって、少しでも退職金を多額にできるような基礎を確立するというような指導をもいたしております。  それからまた、先ほども申しまするように、流下式塩田への転換を希望する者は、このごろは押すな押すなという状況でありますので、その希望者の中からどの組合を採択するかという順序をきめまする場合には、その退職者に対しての退職金の支給につきまして、十分な用意ができているものから優先的に取り上げて参るといったような配慮もいたしておるのであります。そのほか失業保険にすら従来加入していなかったような組合もあるのでありますが、この失業保険に積極的に加入させますように指導いたしておりますとか、あるいは塩田労務者としては仕事がなくなるのでありますけれども、流下式転換の工事には相当の労力が必要でありますので、これらの工事への配置転換をはかる。かりに組合、会社が転換工事を直営いたさない場合でも、その請負をいたしました事業者に従来の労務者を積極的に使用させまして、それによりまして、失業者の一部の救済をはかるといったような方針もとつております。大体各組合とも、優先的に転換工事に失業者を採用することにつきましては、これはもう当然のこととして、積極的に協力をいたしておる状況であります。  そのほか、組合が退職金を支出いたしますために、資金の十分な手当ができない場合には、公社といたしまして、これらの資金の調達を積極的にあつせんする。このためには、中小企業金融公庫ともすでに話し合いをいたしておるのであります。またこちらのあっせんで、この失業手当の支出のための資金を借り入れた例もすでにございます。こうした点のあっせんも十分にいたす方針で臨んでおるのでありますが、ただこの失業手当と申しますか、退職金につきしまして具体的に一人当り幾らの金額を出せといったような指導は、先ほど申しましたように、組合の能力にもよりますし、また地方々々の慣裡、あるいは状況等の違いも考えられますので、公社といたしまして一本の基準を示して、これだけの失業手当を出せといったような指導はいたしておりません。具体的な地方の実情に応じまして、個々の場合に応じて、各地方局が積極的にあっせんするという方針をとらしておるのであります。  御参考までに、ただいままでに失業いたしました者に対しまして組合が支出いたしました退職金の例を申し上げますると、本人が希望をいたしました場合と、それから組合の方から祉極的に整理をいたした場合とでは多少違いがあるのでありますが、最高では一人当り三十四万三千円という例が出ております。平均をとりまして希望退職の場合が大体一人当り五万五千円くらい、整理退職の場合で平均が三万二千五百円程度といった状況になっておりますが、この額も、初めはなかなか組合の方も公社の指導を聞き一ませんで、わずかの退職金で済ませるというような空気でありましたのを、極力指導して参りまして、組合、経営者側の認識を最近では相当改めさせておりますので、この基準も急送こ向上しておるような次第であります。なおこの例で私ども満足いたしませんで、今後とも組合の能力に応じて できるだけの退職金を出すようにいたさせるということで参りたいと思っております。
  159. 成田知巳

    成田委員 最近は、補助金だとか、農林漁業金庫の融資の道はなくても、業者の方から積極的に流下式に切りかえようという動きがあるようであります。現在また過去において補助金なり融資のあっせんを政府はやったのでありますが、それはやはり近代化するために、それだけ政府がてこ入れをされたのであります。ところが働いておる労働者の受ける感じからいきますと、業者は政府の補助金をもらい、あるいは低利の金の融資を受けて流下式に切りかえ、将来非常に明るい希望を持っておる。ところが自分たちは、その結果首を切られる、こういう感じになることは当然だろうと思う。そこで補助金なり融資をされるときに、当然流下式に切りかえる結果として、不可分に首切りになるのですから、当然義務として業者は退職手当を支給すべきである、こういうような指導をなさったかどうか、これをまず承わりたい。
  160. 三井武夫

    ○三井説明員 ただいまお話しの通り、流下式への転換には、最近では一部自己資金だけでやっておる者もあるわけでありますが、大部分の者に対しては、補助金なり農林漁業資金のあっせんをしておるわけであります。これは形だけ申しますると、今お話しのように、経営者の方には国家資金まで援助しておるのに、労務者に対しては何も心配しないじゃないかということになるのでありますが、私どもの考え方といたしましては、流下式に転換をはかることによりまして、その組合としては十分基礎も確立し、産額もふえるのでありますから、やはり組合に力をつけるという意味からいきまして、流下式転換が必要であり、またその必要な流下式転換を促進させるために補助金を支出し、国家資金をあっせんする、これは広く申せば、やはり組合全体のためになるということを考えておるのであります。先ほど来申し上げましたように、将来のそうした組合の資産、信用の増加ということまで見込んで、十分な失業手当を出させるということを希望いたしております趣旨も、その点にあるわけであります。私どもといたしましては、この流下式転換に伴いまして、失業者が幾人生じることになる、これに対して退職金の支出はどういう用意があるかということは、当然計画を承認する場合に前提として審査し、あるいは少い場合にはこれを増額させるように指導するといったような扱いをいたしておるのであります。失業問題を考慮しないで、流下式転換ばかりを考えておるといったような塩業者に対しては、積極的に公社としては援助しないというような原則の態度を持っておるわけであります。
  161. 成田知巳

    成田委員 補助金を出す場合はもちろんですが、補助金なしに業者の自力でやろうという流下式への転換、この申し入れに対しても、それを許可する場合に、退職手当の用意があるかどうか、こういうことを前提としてお考えになつて、これは厳重に行われておりましようか。要するに許可の条件である。もちろんこれは法律じやないのでしょうが、当局の運営方針として、正当な退職手当を出すということが許可の条件である、こういうふうに厳重に処置されておるかどうか。しかもその退職手当の用意というのが、もちろん常識的な数字というものはあるだろうと思うのです。先ほどお話しになったように、全国平均で希望退職の場合は五万五千円、一方的な整理の場合は三万二千五百円、これは全国平均額ですか円、大体この程度の基準というものをお考えになって、これに達しないような業者については、これはまた地方の特殊事情もありますが、大体の基準としてこういうものを標準として流下式への切りかえの許可の条件にしている、これを厳重におやりになっておるかどうか。実際のところ地方へ参りますと、塩田労働者の組合というのは非常に弱いのです。ところが地方の塩田業者というのは、大体その地方における実力者なのです。勢いその実力者に押されて、こういう問題についても徹底した処置がとれていないのじゃないか。またそれが事実だろうと思うのですが、この点について、特に出先の方はそういう地方の業者との接触もございますが、本社としては、筋を通しまして、そういう方針について十分厳重にこれを実施していく、こういう方針を持つてしかるべきだと思いますが、現在の実情と当局の御方針を承わりたい。
  162. 三井武夫

    ○三井説明員 こちらから補助金を支出したり、あるいは農林漁業資金を出してもらわないでも、流下式の転換をやりたいという塩業者は、むしろ能力も十分にあり、資産の内容も良好であり、あるいはまた金融機関に対しても十分な信用を持っておって、資金の借り入れ等も十分にできるといつたような業者が多いわけでありまするから、そうした業者からの流下式転換の申請を承認いたします場合には、当然それらの業者の資力に応じた退職金の措置というものをこちらから示唆いたしまして、そうした措置が十分にとれていない場合には、当然それに対して十分な考慮をさせまして、その上でこちらが取り上げてやるというふうに指導をいたしております。各地方局におきましても、その趣旨は十分に徹底いたしておると私は信じておりまするが、今後もそういう方針で参りたいと思います。
  163. 成田知巳

    成田委員 その際退職手当の支給の金額の問題、これはもちろん業者からお出しになるのでしょうが、その金額をきめます際に、労働者側と団体交渉をさせまして労働者も納得した上の数字を出さすような指導と申しますか、行政措置をおとりになってしかるべきだと思うのですが、この点についてはいかがでしょうか。
  164. 三井武夫

    ○三井説明員 当然経営者と組合との交渉によつて、それらの場合に円満に退職金の支給の問題がきめられておるはずでありまするが、一昨年でありましたか、徳島でちょっと紛争が起りまして、そのときには、だいぶ全国でも騒いだのでありますが、これが経営者に対するいい刺激になりまして、この点に対する経営者の認識は、急速に改善されたわけであります。先ほども申しましたように、この退職金の基準といったようなものも、各地方ごとに大体の見当ができて参りまして、それらの基準に基く退職金の支給というものは、当然経営者がそのときに考えるといつたような情勢になっている現状でありますので、今後もそうした点を十分に指導して参りたいと思います。  先ほど全一国の希望限職の場合、平均が五万五千円程度と申しましたが、これはもちろん各地域によりまして、相当多い少いがある。ただいまお尋ねの高松の地方局管内でありますると、この平均よりは多少劣っておるようであります。ここには三万三千八百円というふうに出ております。雇用形態、契約内容等によりまして、多少全国的に高い低いの違いがあるようであります。なおこうした基準は、先ほど申しましたように、できるだけ今後の塩業者の資力の充実に応じて育めて参りたい、かように考えておるものであります。
  165. 成田知巳

    成田委員 今地方局別に大体退職手当の基準というものがあるというお話ですが、これは業者なり労働組合にお示しになつておりますか。
  166. 三井武夫

    ○三井説明員 各地方局におきまして、従来流下式転換に伴いまする退職金支給の状況を、報告をとりましたものを集めた数字を申し上げたのでありまして、この数字自体は、各地方局にも組合にも示しておりません。
  167. 成田知巳

    成田委員 今のお話では、実績の報告というのですが、実績じゃなしに、公社当局としては、大体妥当な数字というものも実績を勘案してお考えになつて、これに基いて退職手当の支給をやらすという行政指導があってしかるべきだと思うのです。単なる実績だけじゃなしに、当局方針というものをそこに盛り込んだ数字です。最小限度の線として、地方局として、この地方においては大体このくらいの退職手当を支給すべきだという標準を示しまして、労使の紛争を避ける必要はあると思うのですが、いかがでしょう。
  168. 三井武夫

    ○三井説明員 御趣旨はまことにごもっともなのでありますが、ただ先ほど来しばしば申しまするように、各地方地方の実情あるいは慣習等が相当違っておりまするし、また塩業組合自身の内容も強弱がございまして、私どもといたしましては、必ずしも、あるいは高松地方局は幾らくらいなら適当だろうかといったような基準も示しにくいところでありまするので、塩脳部長会議を招集いたしましたときとか、あるいは各地方局の塩脳部長その他の幹部が本社にやって参りまするときとか、あるいはこちらが出張して参りましたときとかいったような機会を利附いたしまして、できるだけその実情を把握し、またあまりに過少な例に対しては、もっと考えさせなければいけないといったような指導をいたすことにしております。お話しのように、直ちに地方局ごとの分をきめて、これを塩業者に示すといったところまではちよつといきにくいのじゃないかと思います。
  169. 成田知巳

    成田委員 もちろん地方によって事情が違っておるし、情勢によって違っておると思いますが、ケース・バイ・ケースできめておったのでは、実情に沿うたようで促情に沿わない結果になるのじゃないか。そこで一律に幾らということを、地方局ごとにきめることは困難でしょうが、やはり当局がお考えになって、最小限度の基準というものは一応は出ると思うのです。その最小限度のものを基準にしまして、そのあとは業者の資産内容なり、その地方の経済事情というものを勘案して具体的な数字をきめていくということで、最小限度の退職手当の基準と申しますか、このくらいのものはお出しになってしかるべきだと思うのですが、いかがでしょうか。
  170. 三井武夫

    ○三井説明員 なかなかむずかしい問題でありまして、私ども心配いたしますのは、その最小限反の基準をきめますると、塩業者としては、それだけ出せばもう十分だというような考え方をしがちでありまするので、やはり地方局が一番個々の塩業組合の実情、資産内容をつかんでおりますので、その具体的な実情をもとにしてお前のところはもっと出せるじやないかといったような指導をさせる方が、全体の基準はむしる高まるのじやないか。そういうような指導の方が、失業者諸君にも結果としてはいいんじやないだろうかというふうに考えております。
  171. 成田知巳

    成田委員 理屈はそうですが、実情においてそうじゃないと思う。非常に小さい業者というものは、出したくないものですから、実際一文も出さないで百を切つておるところがあります。大きな、相当近代的な経世をやっておるところは、もちろん出していくだろうと思います。しかし一つの理屈としては、最小限度をきめたら、そこへみな逃げてしまうという心配もありますが、塩田の実情からいきましたら、組合もなく、最小限度でさえとれないというのが、現在の実情じゃないかと思うのです。そこで最小限度も、あまり低いものにしないで、合理的なものにすれば、現在の弱い塩田労働者に対するものとしては、私は妥当な線が出てくるのじやないかというように考えております。ぜひそういう点、御勘案願いたいと思うのであります。  退職手当の問題はその程度にいたしまして、今後出てくる常用にしても約一万人、臨時を入れると二、三万の失業者でありますが、これに対する失業対策の問題です。先ほどのお話では、流下式に切りかえるときの建設作業に従事させ、配置転換をして、できるだけ失業を抑えているというお話でありますが、それだけでは、もちろん十分な対策はとれないと思う。これは最近政府でもおやりになつて、もちろん十分ではありませんが、北九州で二、三年前、石炭が非常に不況だつた、たくさんの失業者が出たという場合に、緊急失対のワクを特別に持つてきた。進駐軍労務者が大量に首切られたときにも、そういう処置をした。地方を限られて異常に発生した失業、しかも政府政策の転換と申しますか、政府方針に基いての一時的な失業の発生に対する対策として、ぜひ緊急失対事業なんかのワクを塩田地方に十分とっていただきまして、できるだけ失業者の発生を押えていただきたいと思いますが、そういう御計画を持っていらっしゃるかどうか。
  172. 三井武夫

    ○三井説明員 御趣旨まことに、ごもっともでありまして、従来もこの地方で失業対策事業に吸収できるといったようたものには、優先的に使つてもらうということを労働省の方にも頼んでございます。労働省からすでに昭和二十九年に、その趣旨の通牒が出されておるというような状況でございます。この点につきましては、今後とも十分に努力いたしたいと思っております。なお積極的に地方都市等から、失業対策事業、あるいは特別失業対策事業に吸収したいので、労働省に何とかしてくれといったような依頼にもしょっちゅう接しますが、こうした場合には、私ども積極的に労働省にあっせんを依頼するというような措置をとっております。
  173. 成田知巳

    成田委員 既存のワク内で優先的に塩田労働の失業者を採用するというのではなしに、既存の失対事業のワク外に、ある地方に限って異常に発生した失業者に対しては、別ワクをとって新たに失業対策専業を起して、これに吸収するという積極的な手を打ってもらいたいと考えておりますが、いかがでしょう。
  174. 三井武夫

    ○三井説明員 今のお話のような、別ワクをとってそれに積極的に吸収してもらえるというような場合でありますれば、当然私どもとしては、最大の努力をいたしたいと思います。
  175. 成田知巳

    成田委員 そういうことができる場合というよりも、そういう事態は、ぜひともやらなければならぬ事態ではないかと思います。そこで積極的にワクをとるように御方針を打ら立てていただきたい。
  176. 三井武夫

    ○三井説明員 労働省の方にも積極的にこの点を要請いたしまして、御趣旨に沿うように努力いたしたいと思います。
  177. 松原喜之次

    松原委員長 石村君。
  178. 石村英雄

    ○石村委員 同じような問題をお尋ねしますが、山口県は、香川県なんか四国と比べて、自然的条件が非常に不利で、流下式に変えなければ塩田は採算がとれないというので、だいぶ前から積極的に進めておるわけです。ところが今の成田君が問題にしました失業問題が起りまして相当反対運動が起つておる。流下式にせられて首切られて一はだまったものではないというので、相当問題が起っておるのですが、現在山口県はどの程度流下式に変更されておりますか。
  179. 三井武夫

    ○三井説明員 地方別の転換状況のこまかい数字を持って参りませんでしたが、山口県はお話しの通り、従来から成績が悪い塩田が多かったものでありますから、公社といたしましても、積極的に流下式の転換を指導いたしております。業者の方も積極的に早く転換をいたしたいということで、非常に強く希望いたしておりますので、全体の五割よりはおそらくよほど上回つておるのではないか。六割以上すでに転換を了しておるところが多いのでけないかと思います。防府工場の管内でありまして、本年度分済みますと、七割近くの転換が実現するのではないかと思います。
  180. 石村英雄

    ○石村委員 山口県はどうしてもああいう自然的条件から、四国方面と競争するのには、塩の価格の問題もありまして、流下式に変えざるを得ないと思いますが、しかし今のような失業問題も起りますし、一方ただいま成円君が申しましたように、虚業労働者の雇用関係は、従来から非常に封建的な雇用関係になっておりまして、まだ組合も非常に弱い。失業あるいは退職金に対する措置も、きわめて不十分であろうと思いますから、専売公社としては、流下式に転換を指導していらっしゃる山口県の事情を十分お考え下さいまして、この点についても、指導に下落ちのないようにお願いしたいと思います。  それから次にお尋ねいたしますが、防府の三田尻の専売公社の工場を、近く地元業者に払い下げをせられる御意思があるというようなことを聞いておりますが、これはどういうふうな扱いになっておりますか。
  181. 三井武夫

    ○三井説明員 お尋ねの防府の専売公社の製塩工場の問題でありますが、この工場につきましては、公社になります直前だったと思いますが、それ以前にやっておりました輸入塩の再製の仕事が一時なくなりましたので、希望があるならば管内の塩業者に払い下げを考えたらというような計画があったのでありますが、その当時は、山口県の塩業者は十分な資力がなかった等の事情がございまして、そうした希望はないということで、払い下げが実現しなかったという事情のように聞いております。そこで公社の工場になりまして、その後はあの辺の塩業者から鹹水を買いまして、公社の工場でそれを煎熬するということにいたしましたが、それだけでは仕事が十分ではありませんので、一部は輸入塩の混和再製をして仕事を補うというようなことで、今日まで至ったのであります。そういう形でありますので、あの管内の塩業者は、非常に変態的な形になつておりまして、他の地区の塩業者のように、自分で採鹹か煎熬までの一貫経営をいたすのではなしに、塩田を持ちまして採鹹だけをいたしまして、それを専売公社に鹹水として売却いたしまして、経営をいたしておるというような状況であったのであります。しかるに最近になりまして、あの管内の四つの組合と四つの会社が連合いたしまして、一つの新しい組合を作りまして、どうしても自分らとして煎熬の設備を持つことによって経営の合理化をはかりたい、こういう機運が高まつて参りました。自分らで工場を新たに建設すべきであるか、それとも従来の専売公社の工場の払い下げを受けましてそれに設備の増強をして、、十分な能力を備えた煎熬工場にすべきであるかということを慎重に検討いたしました結果、この際としては、公社の防府工場の払い下げを受けたいというような申請を先ごろ出して参ったのであります。この申請の趣旨につきましては、ただいま申しますように、あの地区の塩業者だけが非常に変態的な経営の形になつております実情を考えますと、やはり公社といたしまても、この必要性ということは十分に納得されるのでありますが、ただ公社側といたしましては、相当長年にわたりまして製塩工場として経営を続けてきた工場でもありまするし、またあそこの工場におきまして、従来真空式の天塩工場としてのいろいろの試験を行なってきたといったような実情でもありまするし、またあそこにたくさんの職員をかかえておりますごとも考えまして、早急にこの払い下げの申請に応ずるべきかどうかということにつきまして、目下いろいろの面から検討を重ねておるような実情であります。理屈の上では、今申しますように払い下げの申請に応ずべきであるということは、一応納得されるのでありますけれども、果してこれを実行すべきであるかどうかということにつきまして、公社自体といたしましては、まだ検討を続けておる段階でありますので、実はまだ結論を得ておらない。もちろんかりにこの申請に応じまして、工場を払い下げるということになりますれば、専売公社法の規定にもございますように、これは国会の御承認をも経なければ実行できない問題でありますので、なおこの点も十分に検討いたしまして、結論を得たいと考えております。
  182. 石村英雄

    ○石村委員 あの三田尻の工場は、公社としては、やはり経済的な立場から工場を置いているというよりも、製塩関係の試験というか、モデル工場というか、そういう試験的な考え方であの工場ができているのではないかと考えるのですが、公社としては、そういう試験的な工場はもう必要はないという段階に達しているというお考えなのですか。
  183. 三井武夫

    ○三井説明員 先ほど申しましたように、一時あの工場の払い下げということを研究したこともあったのでありますが、当時この払い下げに応ずるものがなかったのであります。そこで昭和二十四年の六月、ちょうど公社ができましたときに、あそこに製塩設備を整えまして、その後あそこを真空式の製塩工場として経営をいたしているのであります。真空式の製塩工場は、もちろんあそこが最初ではないのでありまして、当時もうすでに各地にもできておったのでありますが、しかし製塩工場をいかに経営すべきかといったような問題を、いろいろとあの工場の経営によって試験することができる。そうした試験工場の意味をも兼ねまして、今日まで経営を続けて参っておったような状況であります。ただ今日になりますると、必ずしもあそこの真空式工場の設備が、公社の試験目的にかないました、非常に最新式のものであるというような状況でもなくなりましたので、一応試験工場としての任務は終了したとも申せるわけであります。これを新しい試験工場として利用いたしますためには、公社としては、あの工場にまたさらに非常に大きな資金をかけまして、最新式な設備をしなければならぬといったような問題も出て参りますので、果してそういう方策をとるべきふどうか、これは相当慎重に検討を要する点であると考えられるのであります。
  184. 石村英雄

    ○石村委員 この問題は、公社の工場の従業員の問題も当然からまってくるわけであります。払い下げをすれば、おそらく首切りという問題も当然起こってくると思うし労働組合側も非常に関心を持って見ているわけであります。一方払い下げを受けようという業事間にも、この払い下げ価格が幾らになるかということで、採算の問題はきまってくると思いますが、やはりそう安く払い下げを受けられるというわけでもなかろうということで、一部では相当疑問を持っている。ただ今度払い下げようと決定したのは、中の有力者が強引にその決定をさせてしまったというので、内部にはいろいろごたごたがあるようですが、両方の意味で、この問題はよほど慎重にやるべきで、今すぐあわててやらなければならぬという問題ではないと思う。あそこの塩田は、天候だけで、非常にへんぱな片寄った企業形態だという問題は、あるいは鹹水価格の決定とかなんとかの方法で救済する道があるのではないかと思うので、十分慎重にやっていただきたいと思います。
  185. 三井武夫

    ○三井説明員 お話しの点は、非常に影響するところ大きい問題であります。慎重な検討を遂げたいと思います。
  186. 石村英雄

    ○石村委員 何でも近いうちに理事会が公社にあって、理事会でその態度を決定せられるというような御意思があるようにも聞いたのですが、そんなに急に態度が決定されるような情勢にありますかどうか。
  187. 三井武夫

    ○三井説明員 ただいま塩脳部初め関係の各部で、この問題をいろいろの角度から検討を進めているような実情でありまして、このところ速急に役員会に提案するというようなところまでまだ進んでおりません。
  188. 石村英雄

    ○石村委員 これはいずれにしても、労働組合関係が――あそこはずいぶん前からの工場ですから、功労者もたくさんおります。これを民間企業に変えれば、首切りは必然的に起つてくると思う。その関係もありますから、十分慎重な態度をとっていただきたいということをお願いいたしまして私は終ります。
  189. 松原喜之次

    松原委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は来たる九月十日午前十時より開会することとし、これにて散会いたします。    午後三時四十九分散会