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1956-07-17 第24回国会 衆議院 大蔵委員会 第45号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年七月十七日(火曜日)     午前十一時五分開議  出席委員    委員長 松原喜之次君    理事 小山 長規君 理事 高見 三郎君    理事 藤枝 泉介君 理事 石村 英雄君    理事 春日 一幸君       奧村又十郎君    吉川 久衛君       内藤 友明君    中山 榮一君       古川 丈吉君    坊  秀男君       前田房之助君    山本 勝市君       横川 重次君    井上 良二君       石山 權作君    竹谷源太郎君       平岡忠次郎君    横錢 重吉君       横路 節雄君    横山 利秋君       石野 久男君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 一萬田尚登君  委員外出席者         総理府事務官         (南方連絡事務         局長)     石井 通則君         外務事務官         (アジア局第一         課長)     針谷 正之君         大蔵事務官         (大臣官房長) 石原 周夫君         大蔵事務官         (主計局長)  森永貞一郎君         大蔵事務官         (主計官)   中尾 博之君         大蔵事務官         (主税局長)  原  純夫君         大蔵事務官         (銀行局長)  東條 猛猪君         大蔵事務官         (為替局長)  石田  正君         国税庁長官   渡邊喜久造君         郵政事務官         (貯金局長)  成松  馨君         専  門  員 椎木 文也君     ――――――――――――― 七月十七日  委員員遠藤三郎君辞任につき、その補欠として  山本勝市君が議長の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  税制に関する件  金融に関する件  外国為替に関する件  国有財産に関する件     ―――――――――――――
  2. 松原喜之次

    松原委員長 これより会議を開きます。  税制に関する件、金融に関する件、外国為替に関する件及び国有財産に関する件について質疑を続行いたします。  質疑に入る前に、前田委員より資料要求についての発言を求められておりますので、これを許します。前田君。
  3. 前田房之助

    前田(房)委員 資料提出要求いたします。政府は三十二年度から税制根本改革をやるということをしばしば声明いたしておるのであります。これは税の現状から見ましても、ぜひ断行しなければならぬ問題だと思います。それにつきましては、租税特別措置法によりまして地方税国税について千数百億円の減収になっております。この経済的効果について、その実態を知ることがきわめて必要だと存じておるのでありまするが、私は昨年党の税制調査特別委員長といたしまして、しばしば政府に対してその資料提出をお願いいたしたのでありますが、政府も早急に調査をされたようでありますけれども、運輸関係以外の分け安易に資料が集まらぬということで、じんぜん今日に至っておるのであります。しかしながら、この問題は国税調査についてもきわめて重大なる問題であろうと存じまするので、私はこの機会において、あらためて政府にその資料提出要求いたします。すなわち租税特別措置法によって免じまする経済的の効果を、各税種別に、その実態について詳細なる資料を当委員会提出されんことをば委員長を通じて要望いたしておきます。
  4. 原純夫

    原説明員 経済的効果とおっしゃいましたのは、おそらく各種の税収にどれだけ影響があるか、つまりどれだけ減収があるかということだろうと思いますが……。
  5. 前田房之助

    前田(房)委員 そうじゃないです。減収の問題はよくわかっておるのでありまするが、減収したために、各税種にどれだけの経済的の効果があるか、こういう資料でございます。あれだけ減収した以上は、相当経済的効果がなければならぬ、現段階において、果してどれだけの経済的効果があるか、効果がなければ、これはやめてしまったらいいです。その資料一つ提出されんことを希望いたします。
  6. 原純夫

    原説明員 たとえば産業合理化のために機械の耐用年数を短かくするというようなことの結果、合理化がどれだけ行われたかという効果をおっしゃっているのだとわかりましたが、わかる限りしつらえますが、ただいま産業合理化の点にいたしますれば、税法上の償却年数の短縮だけでなくて、そのほかに合理化効果というものはいろいろな原因が複合してくることになりますから、その原因で幾らということはおそらくむずかしいかと思いますが、他の原因をも加えて、結果としてどういう合理化が行われれいるかというよう資料でありますれば、その場合はできるだろう。場合によりましていろいろ因果関係が、直接のものとほかの要素が入ってきますものとあると思います。私もまだ新任早々ですので、よく資料実態をチェックしておりませんが、チェックいたしまして、できる限りのものを御提出申し上げるようにいたします。
  7. 春日一幸

    春日委員 前田さんの要求された資料によってどういう結末が現われて参りますか、私ども同じような立場に立ちまして、別のまた同一の目的に沿った研究をいたしますための資料要求いたしたいと考えます。それは価格変動準備金だとか、あるいは異常危険積立金だとか、あるいは退職準備金損金算入制度とか、いろいろなもので、ずっと企業体にそれぞれの資金が積み立てられておると思うわけであります。それの積み立ての累積が、今それぞれの特別措置によって積み立てられております総額が一体どの程度になっておるのか、それから同時に、そういう特別措置適用を受けまする企業体の、過去一、二年でもいいと思いますが、その経理内容を示す資料、すなわち配当がどの程度か、流動資本がどの程度蓄積されておるか、その程度資料も、代表的なものについて一つあわせて御提出願っておきたい。  なお集約いたしますと、各租税特別措置法によってそれぞれ企業体の内部に留保されたところの、いわゆる損金勘定として企業体に留保されたものの総額、各項目別にその総額がどのくらいであるか、それから適用をずっと累年受けてきている、しかも各種適用をあわせ受けることによって、その企業体経理内容がどういうような状態になっているか、代表的なものについてあわせて御提出要求しておきます。
  8. 原純夫

    原説明員 承知いたしました。第二段の対象会社経理内容ということになりますと、特定会社ということになる、その特定会社の選び方はいろいろあると思いますが、御連絡をとりながら、妥当なサンプルをとるというようなことで、代表的なものを選んで参りたいと思います。
  9. 春日一幸

    春日委員 そういうことでけっこうでありますが、その代表的なものを選ぶ場合、たとえば電力会社よう渇水準備金フェーバーを受け、それから退職準備金のフェバーも受け、あるいはその他いろいろなフェーバーも受けている、そういうような幾つかをあわせて受けているものと、一つしか受けていないものと、いろいろな場合で類別がつくと思いますが、大体われわれがその資料によって総合的に判断ができ得るようなものを、一つ自主的に御考慮を願って、抽出調査を願いたいと思います。
  10. 松原喜之次

    松原委員長 次に石村君。
  11. 石村英雄

    石村委員 渡邊長官にお尋ねします。法人税法の三十一条の三ですが、同族会社のいろいろな行為について否認をできるようになっている、「法人税負担を不当に減少させる結果となると認められるものがあるときは」政府否認をする。この「法人税負担を不当に減少させる」という不当の基準はどういうところで不当だと判断せられるか。
  12. 渡邊喜久造

    渡邊説明員 同じよう規定所得税法の方にもございますが、結局同族会社なるがゆえに、たとえばその会社を、支配している個人との間で、たとえば売買取引をする。その場合に、相手がその人の支配下にある個人会社であるがゆえに、値段を、ほかの一般に叱る場合よりも特に吹く売った。あるいは個人から仕入れる場合に、逆に、普通一般の人から仕入れればもっと安く買えるのに、非常に高く買う。こういったようなことで、法人所得を作為的に減らすことによって法人税負担を軽減する。こういうふりに認められる場合におきまして、それは普通の非同族、全然第三者の関係であれば、そういう事実はできないわけでございまして、結局税の負担を軽減するためにそういう措置をしておるという場合におきましては、負担の権衡の趣旨から考えて、それは正常な取引があったものとして所得を計算することができる、こういった関係がその規定のねらいである、こう解しております。
  13. 石村英雄

    石村委員 そうしますと、行為否認でよく問題になるのは、同族会社社長重役、あるいは家族の使用人に対する給与に対して、税務署で、この給与は取りようが多過ぎるといって、頭からそれを削減して、重役の傷心には、それを認定賞与として法人税をかけるよう措置を講ずるということが地方ではしばしば行われているようです。これも、やはり今の法人税負担を不当に減少させるという観点から、そういう措置が講ぜられているのですか、それともほかの条文によってやっているのですか。
  14. 渡邊喜久造

    渡邊説明員 税務署がそういうことをやっているとすれば、今おっしゃいました同族会社行為否認規定によってやっているものと思います。
  15. 石村英雄

    石村委員 給与が高過ぎるという判断は、何を基準にして判断しているか。税務署では簡単にわからない。おそらく国税庁秘密通達か何かを出していらっしゃるのではないか。事実上は同族社会だが、少し大きいよう会社の場合には、社長なんか十万円くらい月給をもらっておるものもあるらしい。たとえばこのごろ小さな商売をしている連中法人にたくさんなるわけですが、そうすると、一万円とか一万五千円とかに抑えられてしまう。片方は十万円というものを認められる、この基準というものはさっぱりわからぬ。どういうわけでお前のところは給与の取りようが多過ぎると判断されるのかわからないという声が、一般に非常にあるわけです。通達なら通達が出て、それが公表されておれば、いい悪いは別として、まだわかるわけですが、その通達なるものが秘密だ。そんなものがあるとかないとか、前の平田長官はないようなことを言っておられたようですが、事実上はどうも通達があるらしいと、こう皆見ている。そうして給与が多過ぎるから、認定賞与法人税よけい取るというようやり方を事実上税務署はやっているわけです。これは、渡邊さんは国税庁長官になられて日が浅いから、税法だけのことで実際のことは御存じないかもしれませんが、今までそういうことがずっと行われて、現在も行われているわけです。税務署としてもこういう処置をとるについては、何か標準を国税庁の方からもらわなければやりにくいことだと思う。ただつまみ算用で、たとえば山口なら山口地方税務署で独断では、やれないはずだと思う。何か基準を考えていらっしゃるのではないか、こう思うのですが、いかがですか。
  16. 渡邊喜久造

    渡邊説明員 今石村さんの御質疑になった問題は、私主税局長時分にあなたからたびたびお話は伺っておりまして、当時国税庁にこういう問題があるんだが、よく研究をしてみろということは伝えてはおきました。今度私長官になりましたので、自分自身としてその問題は取り上げてみたいと思っております。国税庁として各国税局税務署に出している通達は、私の知っている限りにおいてはありません。ただ各税務署あるいは国税局におきまして、応の基準を持っているものがあって、お話しのような問題が出てくるのじゃないかと思います。従いまして、実態に合せながらどういうふうにこの問題を処理していったらいいかという問題は、これはわれわれとしましても十分取っ組みたいと思っております。同族会社だから結局配当する、しないということは、会社の方でそれほど株主が関心を持ちません。従いまして、合理的な普通の給料を取っていれば相当の利益が上り、法人税も課税される、事業税も課税される。高給を取れば、これは勤労所得になって法人所得は減り、事業税もかからぬ、こういう問題が出てくるものでございますから、従いましてどの程度俸給ならよしとするかといったことが、おのずから議論になるわけでございますが、その会社実態というものともにらみ合わさなければなりませんし、なかなか一律な基準を作ることも困難であるということから、この問題は相当国税庁の中でも懸案になっておりながら、まだ解決していない。そこで個々の税務署におきましていろいろなやり方があるというところに、御指摘の点があろうと思います。私としましては、この問題は早急に取り上げて検討してみたい、かように考えております。
  17. 石村英雄

    石村委員 基準はないと言われるんだが、実際はもうそれをやられているわけなのです。これでは中小企業連中は、ベース・アップの要求政府にするよりほか手がない、こういうことになるのです。給料が高いとか安いとか、それもけたはずれに高いというならそれは問題でしょうが、二万円とか、三万円とかいう程度のものを高い安いできめて税金をとられる。給料を高くすれば、勤労所得税をとられているわけですが、勤労所得税も十万円、二十万円というよう勤労所得もあるし、三万円、五万円という程度のものもある、それを一がいに同じような頭で、小さな食料品店だから、お前のところは一万五千円くらいでいいはずだというようなことで勝手に認定政府ですか、国税庁長官としてそういうやり方が――なるほど法文には不当なとばく然としてあるが、さっきお話になったように安く買うとか、安く売るとかいうことはあるいは不当といわれるかもしれない。しかし給与一般水準なんかで、二万円、三万円のものを高い、安いといって勝手に税務署が下げて、そして法人税をとるというやり方は、これは少し行き過ぎじゃないかと思う。検討するとこう言われるが、平田長官のときからもずっと続いておるのだが、一向この問題は解決がつかない。新長官として早急に解決つけられるか知りませんが、それもあまり政府の権力を自由に振りかざしてさめられたのでは、やはり困る。法律では不当とばく然として、出ておるのですが、このばく然さを利用して勝手なことをするということは、非常に問題だと思う。結局もっと長官考え方をはっきり出していただきたい。われわれ考えますと、何だか同族会社というようなものは認めない方針じゃないか、こういうようにとられる。法人としての資格を事実上税法において否認するという考え方が、基調をなしておるのではないかという感もするわけです。その点はいかがお考えですか。
  18. 渡邊喜久造

    渡邊説明員 同族会社の場合におましては、先ほども申し上げましたように、給与を幾ら払うかということにつきましで、非同族のく会社ほど株主相互間牽制もございませんし、従いまして、どういうふうにしたら税負担が一番安くなるかというようなことも考えて俸給をきめるということもでき得るわけてございまして、そういう点を考えての規定があの規定だと思っております。従いまして、極端な場合におきましては、あの規定を働かせるのがむしろ当然であります。働かさないのがおかしいという場合もあろうと思います。石村委員が御指摘になっているような、その程度のものをもって不当とするかしないか、これにはさらにまたいろいろな議論があろうと思っております。従いまして、どの程度のものをもって不当とするか、そういう点になりまして、やはり一応一つ考え方が出てこなければなりませんが、結局その会社資本の大きさ、事業の大きさ、そういったようなものも頭に入れなければなり幸せんでしょうし、あるいはまたそれが正常な一合にどれだけの収益を上げ得る会社であるか、給料ばかり払ってしまって、会社としては全然赤字が出るよう会社であってもおかしいわけでありまして、そういうようなところから今の問題が出てくるものと思っております、私まだ国税庁へ参りました早々でございますが、この問題のあることは、前からあなたが御指摘になっている通りでありまして、私としても問題があるところと思っております、従いまして、どういうふうに処理していくのが一番適切な措置になるか、これはもう少し検討さしていただきたいと思います。
  19. 石村英雄

    石村委員 どうも大蔵省の考え方は、小さな業態の連中から何とかあらゆる手を通じて税金をとってやろうという考え方基調になっておるのではないか、こういうように考えられる、渡邊さんはやはり小さな連中からできるだけしぼり上げる御方針なんですか。
  20. 渡邊喜久造

    渡邊説明員 国税庁で考えておりますところは、結局税法を適正に執行することであり、同時に考え方といたしましては、それぞれの負担能力に応じて税金を納めてもらうことでありますから、小さな人に余分に納めてもらって、大きな人からは少くとるというようなことは、もちろん毛頭考えておりません。結局それぞれの負担能力に応じた税金負担していただくというのが、考え方基調になるべきものである、公平なる税負担考え方基調になっていくべきである、かように考えております。
  21. 石村英雄

    石村委員 公平なる税負担ですが、給料よけい払えば、源泉徴収所得税を当然払うわけなんです。あえてそんな小さな会社から、法人税よけいにとるという必要はないのではないか。一億、二億という資本金の大会社重役なら、年に二百万取ろうが三百万円取ろうがかまわない、小さな会社は、そんなものは給料よけいにやらぬぞ、法人税の方でしっかりとってやる。どうもこういう考え方基調にあるような気がするのですが、こういうやり方を、三十一条の三で特に給与関係について適用する趣旨はどこにあるわけですか。
  22. 渡邊喜久造

    渡邊説明員 給与を不当に高くして払いますと、それは確かに給与の方で所得税はかかりますが、しかし企業の場合におきましては、給与所得控除の問題もございますし、それから事業税がその場合に、やはり相当働いてきます。法人税がかかる場合は事業税がかかってくる。給与所得の場合には事業税がかからぬ。こういったようなことがありますので、給料を払えばやはり所得税をとられるのではないか。それはお説の通りでありますが、事業税関係相当働いてくる。そういうようなことから、税負担を特に回避する意味において、給料を余分に取るということが川々行われることがあります。ただ問題は、どの程度のものをもって不当とするかというところにあなたの論点もあるのではないか、こういうふうに思います。大きな会社の場合と小さな会社の場合、一億、二億の大きな資本を持っている会社重役さんと、それからせいぜい二十万、五十万くらいの資本金会社重役さんとが同じ給与であって当然ではないかという御趣旨とも思いません、ただ今御指摘になっているのは、そうした小さな会社給与について税務署相当のしんしゃくをしている場合、それが果して妥当であるかどうか、こういう点の御指摘だと思います。その点につきまして、われわれの方としてとくと検討さしていただきたい、かように考えております。
  23. 石村英雄

    石村委員 それではもう一点最後にお尋ねしますが、局としてではなしに、庁として基準お作りになる御意思はあるか。
  24. 渡邊喜久造

    渡邊説明員 基準といいました場合、あまり数学的にきちっとしたような、しゃくし定木的な基準が果していいかどうか、よほどいろんな各種の条件がからみ合いますから、なかなかむずかしい問題じゃないかと思っております。しかし少くとも全国の税務署がある程度よりどころとし得るような、それがどの程度具体性を持ち、どの程度抽象性を持つかという点は検討してみたいと思います。何らかのよりどころをやはり待ち得るよう基準は作りたい、かように考えております。
  25. 石村英雄

    石村委員 こういうばく然としたことがあるんだから、水準を作られるのは、この法律がある以上けっこうだと思います、従ってその基準お作りになったら、それを公表せられる御意志がありますか。
  26. 渡邊喜久造

    渡邊説明員 そういう基準を作りましたら、公表していい思っております。
  27. 石村英雄

    石村委員 では公表をお願いするとして、現在各局が、あるいは税務料基準を持っておると思う。それを一つあらためて公表してみていただきたい。いかに不合理なでたらめをやっておるかということを天下に明らかにするために、これをお願いしておきます。
  28. 春日一幸

    春日委員 関係当局にお伺いをいたしたいのでありますが、沖縄問題につきましては、先国会におきまして数回にわたっていろいろな質疑を行いまして、問題は逐次解決の方向に向って進んでおるかと思いますが、そこで当時政府からそれぞれ御確約を願ったかと思っておりまする一、二の問題について、その後の交渉、処理進捗状況についてお伺いをいたします。  まず第一番に、沖縄に在住いたしております日本国民、そのうちの引揚者に対する在外預貯金処理については、その後どういうような工合に処理が進捗しておりますか。これを一つ具体的にこの際御答弁を願っておきたいと思います。
  29. 石井通則

    石井説明員 沖縄におきまする引揚者在外預貯金等関しましては、直接沖縄に偏った者は、おおむね本人が所持しておると認められます。それから本土を経由して沖縄引揚げた者は、それらの預貯金送金為替証書等税関に保管されておりますので、これらに関しまして、その後これをどういうよう処理するか、いろいろ関係各省等とも連絡協議をいたして参ったのでございますか、まずこの建前といたしまして、税関保管物件内地に居住する者にその返還の請求をさせる方が最も便利であるし、またそれらの債権の取り立てば、内地に居住する者に譲渡して支給するという建前で、どういう機関にそれを委託するかということをいろいろ研究しておりました結果、東京に沖縄県の整理財産等を保管しております財団法人沖縄財団というのがございますので、その沖縄財団税関保管物件代理受理者とし、また取り立てる債権の譲り受けにも沖縄財団に当らしめるということにいたしまして、本土の中は一応固めてございます、ところが沖縄におけるこれらの関係者が非常に多いので、沖縄における取扱いに関しまして、その普及徹底指導等については琉球政府に当らしめ、またそういう委託代理受領書、あるいは債権の譲り渡しの処理、その他関係書類の取りまとめを市町村に委任することといたしまして、おおむね成案を得てございます。なおこれが関係機関も非常に多数でありますし、またこれが周知徹底等のためには、あるいは広告文その他細部の指示をいたさなければなりませんので、これらの最終的な成案を目下鋭意検討いたしておるような次第でございます。  なおこれに関しましては、琉球政府並びに市町村等の協力を得なければなりませんし、これについてはアメリカ管理当局の了解を取りつける必要がありますので、これらに関して目下準備を進めておるような次第でございまして、ごく最近にこれらの事務が実施の運びになっていくと考えておるような次第であります。
  30. 春日一幸

    春日委員 内地に居住しております引揚者たちは、もうすでにそういう在外預貯金払い戻しを受けたり、あるいは当時制限された現金の払い戻しを受けましてからすでに数カ年を経過いたしておることは、御存じ通りであります。当然沖縄に在住いたしております引揚者たちは、その困窮度が、内地に居住いたしておる者から比較いたしますればはるかに困難な情勢を加えておりますので、これはもっとすみやかに払い戻しが行われたければならぬわけでありますが、ただいまお伺いをいたした範囲によりますと、前回本委員会で大体の方針を承わりましてから、すでにかれこれ二カ月近くに相なるかと存じます。二カ月をけみしましてようやくそういうよう方針が決定しただけで、アメリカとの話し合い等についても最終的の取りつけが行われていないということは、まことに遺憾に存ずるわけであります。私は、これはすみやかにアメリカとも交渉されて、すみやかにその町村の機関等をそれに活用されるならば、それでもけっこうでございましょうが、該当者たちに当然帰属すべき預貯金が早く手渡しされるように御要望いたしたいと存じます。しかしこういうような場合に、口数がたくさんにわたるだろうと考えられますので、町村においても相当の事跡費がかかるのではないかと私は考える。こういうような場合、結局事務の経費をまかなうために、引揚者当事者から何分かの費用を取り上げるというようなことでは、せっかくの国会における措置も画龍点睛を欠くのではないか、私はこの際大蔵省にお伺いしておきたいと思いますが、そういうような場合、特別に沖縄のその取扱いを行う機関に対して必要な経費の助成を行う意思があるかどうか、そういう必要は認められていないか、この点についてどのように検討されておるか、この点を一つ伺っておきたいと思います。
  31. 中尾博之

    ○中尾説明員 今回のこれらの措置に伴います公的な活動に要する経費でありますが、これらにつきましては債務者の方で当然負担すべきもので、内地であれば必要でないにいたしましても、ちゃんと債権者まで渡すということのためには、当然負担すべき経費もございますようでございますし、それから国といたしまして、こういう積極的な施策とも申せませんが、とにかくレリーズをいたしました。これらのことについては周知徹底、乗りおくれのないようにやっていく責任があると存じます。それからなお純粋に債務者側の負担に属するもので、しかも特別な事情によって特殊な経典を要するというようなものにつきましても、何らか円滑にうまくいくような方法が講ぜられますように、この点につきましても目下頭を痛めておるところでありまして、事業に支障のないよう処理いたしたいと考えております。
  32. 春日一幸

    春日委員 先回の委員会で、該当者たちにこういうよう措置がなされるのだということを周知徹底せしめるために、政府として沖縄の適当な新聞でこれを広告してはどうか、こういう要望をしたことがありましたが、当時の御答弁では、まだ政府の意見が決定をして早々のことであるので、いまだその運びに至っていないというような御答弁でございました。しかしながら今局長の御答弁によりますと、大綱はすでに決定して、その処理を待つばかりになっております。従いまして、当時者たちがすみやかにそういう申し出を行なったり、あるいは必要な証拠書類を取りそろえたりいたしますためにも、何かしかの時間がかかりましょう。相ねがわくは一つ政府、あるいは債覇者側においてこういう処理を行いまして、そして該当者はすみやかにそれぞれの機関に申し出てもらいたい、こういう周知徹底のために必要なる措置を講じられんことを強く要望いたしておきます。  それから第二には、遺族出庫債券に関する問題でありますが、当時大蔵省の御答弁では、遺族公債はこれは買い上げることにした、こういうふうに決定されております。その後これの処理、その経過はどういう工合に進捗いたしておりますか。この点についてお伺いいたしたいと思います。
  33. 石井通則

    石井説明員 遺族国庫債券の買い上げの措置に関しましては、一つは買い上げるべき人の認定の問題がございます。もう一つは、これらをどうして支払うかという問題があるのでございます。買い上げるべきものの認定に関しましては、琉球政府の社会局長にその認定を委任する。なおまた必要があります場合におきましては、社交局所管の旧地の福祉事務所に協力せしめるという方針をきめ、それから支払いに関しましては、現地の工務交通局の協力を受けて、現地の郵便局から支払う建前をもちまして、先月初旬に要望をきめまして、現地のアメリカの管理機関にその了解を取りつけたのでございまして、七月十四日に、アメリカの民政府も了解をしたという返事を受け取ったのでございます。従いまして、その方針によりまして、関係各行の共同通達をして、至急支払いをいたすような段取りに進んでおります。
  34. 春日一幸

    春日委員 了解をいたしました。これまた一つすみやかな周知徹底と、その促進をはかられんことを強く要望いたします。  それから、その当時私どもが要望いたしました項目の中の、その引揚者、戦災者に対しまして、国民金融公庫を通じて更正資金一世帯当り三万円の貸付が、日本国内に在住する引揚名に対しては行われた。沖縄にありましては、当然日本国民たるの身分に変りがありませんし、特にまたかの地に居住いたしております引揚者は、おおむね生活困窮状態にあるという想定も成り立ち得るわけであります。こういうような意味合いで、沖縄の大衆金庫でありましたか、何かそういうよう金融機関を代行機関といたしまして、日本国内に居住いたしておりますところの引揚者がかつて受けたと同じこういう経済的な措置を、この沖縄に居住しております引揚者に対しても同様に行なっていただくべきものである、法律の前には国民平等でなければならず、特にこの問題は、言うならば身分法のようなもので、たとえばかつて措置されました恩給法ですか、こういうよう法律等が沖縄に居住しております日本国民にも適用されておると同じように、この引揚者、戦災者、こういう身分にある生活困窮状態にある者に対しては、三万円を限度としてかつて日本の内地に居住しておる諸君に与えられたと同様の援護措置が講ぜられるべきだ、こういう主張をいたしましたに対して、当時大蔵当局の御答弁は、この問題については、早急に一つ検討をして、近い機会にその方針を明らかにしたい、こういうことでございました。私どももその御研究が進められることを期待して今日まで参ったのでありますが、沖縄に在住する人々といたしましては、特にその要望が切実なものがあろうと思うので、この問題に関する大蔵省当局の御検討はどのように進められておりますか、この際お伺いいたしたいと思います。
  35. 中尾博之

    ○中尾説明員 当時その問題につきまして承わりまして以来、部内におきまして数回検討いたしました。しかしながら、まだ現在までのところは結論は得ておりません。議論はいろいろございます。事情によりましていろいろ考えるべきところもございます。しかしながら内地における取扱いと同じものを同じ意味において向うで実施するかという線はまだちょっと言及しがたいところであります。現在におきましては、さらに一般的な情勢といたしまして、沖縄そのものにおける日本籍を持った住民が、一般的に非常に不満足な環境にあるということがむしろ基本的な問題であります。そういうような点につきまして、全般的な心配をいたしておるわけであります。その中に隠れているわけでは決してございませんけれども、むしろそういう方向において全般的に努力いたすべきである。日本内地における施策を向うに持って行くということは、建前の上から申しまして若干無理があるのではないかという意見が強い次第でございます。しかしなお引き続きまして検討は進めるつもりでございます。
  36. 春日一幸

    春日委員 恩給法その他の身分に属します援護立法は、みんな沖縄に存在する日本国民にも適用されておる。こういう事例にかんがみまして、引揚者、戦災者という身分には変りはない、日本国内にいる国民という身分に変りはないのであります。属地的な立法には、やはり行政権の問題等が関連をいたしまして、相当の制約を受けることはわれわれも理解に苦しまないのでありますけれども、こういう属人的な問題については論議の余地はないと思います。特にアメリカの冷酷な行政の被害を受けて、全沖縄県民がその窮情を国会にしばしば訴えておる実情等からも考えまして、当然この援護措置はいまなお必要欠くべからざる事柄であろうと考えますから、法律上の問題は専門家において十分御検討願って、特に政治的な配慮から、引き揚げた人人が向うで困っておる、そして向うから何の救済も受けられない、日本国内に居住しておる者は三万円ずつでも借りたのだ、こういう立場小ら、一つこの問題についてもう少し深く検討されて、彼らの要望にかなうよう措置をとられんことを強く要望いたしておきます。  次に郵便貯金の問題でありますが、これは先国会以来、奄美大島に関する協定の問題に関連をいたしまして、特にアメリカとの交渉が必要であるということで、郵政省もいろいろと御交渉を進めていただいておることと思い談ずが、本日その交渉の経過、その見通し、これはどういうような状態に相なっておりましょうか、これらについて一つ伺いをいたしたいと思います。
  37. 成松馨

    ○成松説明員 この問題につきましては、先国会におきまして春日先生からいろいろ御指示、御鞭撻をいただきまして、私どもといたしましても、一刻も早くアメリカとの具体的な話し合いに入ることを目途としまして、郵政省の作りました案に基いて、関係各省お集まり願って数度の会合を開いて御意見を伺い、また御説明も申し上げ、目下の段階では、アメリカ側との話し合いにつきましては、外務省の方から御説明があると思いますが、内部的具体的な資料の問題につきまして、計数について大蔵省の力でしさいに御検討をいただいておるわけでございます。
  38. 針谷正之

    ○針谷説明員 この問題につきましては、先般の国会のときも沖縄からの陳情団も見え、また春日先生の強い御要望等もあって、事の重要性、緊急性につきまして、関係方面ともそのやり方、方式等について十分協議を進める一方、外務省といたしましても、アメリカに数回折衝いたしまして、この問題の重要性について説明いたしておるわけであります。  すなわち、この沖縄の郵便貯金がいかに緊急性があるかということの認識をアメリカに深めるように折衝するとともに、ちょうど奄美大島に関する協定がありまして、その第三条三項によって、わが方としてはこの問題を何とか解決したいということを申し込んでおります。第三条三項と申しましても、やり方はいろいろで、技術的の方面についても、最も早く、しかも合理的に解決する方法を今検討しておるが、間もなくこの問題をそちらに持ち出すから、そのときには十分事の重要性を認識して、すぐ応じられるよう措置をやってくれということを申し込んでおります。アメリカ側といたしましても、沖縄の問題は非常に関心のあることと思いますし、また国会の動きについても十分見ておりまして、ことに陳情団がきたり、あるいはこの委員会でいろいろ要望のあった点は十分知っております。またもちろん私どもの方からも説明いたしますが、アメリカもこの点は十分認識しておるようでございます。そしてまた、事は政治的に重要であるし、郵便貯金というものはいろいろ技術的にも問題がある、自分の力としても、技術的の問題は検討しておきたいと申しておりました。今後そちらの力へ打ち出したら、さっそくできるような手配をするように申し込んでおります。きょうの委員会の状況等もさっそく向うへ申し伝えて、問題を早く解決するように、今後現実的な折衝が起ったときには、さっそくこれを実現に持っていかれるように、向うが十分納得するように今後さらに努力したいと思っております。
  39. 春日一幸

    春日委員 沖縄問題は、最近基地問題が重要な当面の問題として、アメリカの冷厳酷薄な圧制に対しまして、沖縄県民は総決起の形で、今、国会に対してもアメリカに対しても、強い要望を続けておるわけであります。けれども今政府当局に強い反省を願いたいことは、われわれが先国会以来ここでいろいろ審議を進めておりますこれらの問題は、保守政権がこれらの問題を本日まで全然取り上げていなかった。冷厳酷直な圧制は、ひとりアメリカばかりではなく、日本の保守政権自体が、この長年の間にわたって沖縄県民に対して必要にして当然の処置を本日まで怠っておるということにあるということを、十分反省願わなければならぬと思います。  そこで、この郵便貯金の問題だけが結局ペンディングの問題として今残されておりますけれども、これは奄美大島の協定に基いて当然払い得べき性質のものであり、これは合理性の深い、かつ切実性の深い問題であるのでありますから、一つ真剣に、その気持になって米当局に当ってもらえば、そんなに日にちをかけなくても解決点に達し得るのではないかと、隔靴掻痒の思いにたえない。何回か要望を続けて、さらに先国会の末期においては、政務次官も出てこられて、強くあのような確約をしておられたいきさつにもかんがみまして、自来二カ月を経過した今日、まだ最終的な取りつけに達していないということは、私は今なお政府の怠慢を糾弾せざるを得ないのであります。  この際伺っておきたいが、外務当局が米当局と交渉されて、この問題に対して、アメリカは果して切実性と申しましょうか、この問題の緊急性と申しましょうか、そういうものを正当に理解しておるのかどうか、彼らの強い要望があなた方によってそのまま取り次がれておるのかどうか、もしもあなた方の交渉がほとんど事務的であって――私たちが考えるのは、奄美の協定が、成立してから三カ年、国会で問題になるまで、あなた方が全然この問題に対して交渉しなかったという怠慢は、今さら追及したって仕方がないと思うけれども、そういうような経過にかんがみて、その交渉が事務的におざなりになされておるということであれば、国会でこういう貴重な論議を何回繰し返しても、結局いい成果をおさめることはできないじゃないか、交渉されたり、それぞれ向うの応答によってあなた方の方で受けられた印象等もあるであろうから、果して緊急性と切実性を向うが正当に理解しておるかどうか、大体交渉の空気はどんな工合でありましょうか、この際一つ伺っておきたいと思います。
  40. 針谷正之

    ○針谷説明員 沖縄の問題は、アメリカにおきましても最近問題が起っておりますように、非常に関心を持っておるわけでございます。従いまして、この郵便貯金の問題につきましても、むしろアメリカの方が、こういうことをやることによって住民のアメリカに対する感情などの融和をはかる一つの方法じゃないかと考えておると思います。そうして国会の空気、委員会の空気などを私らも話しましたが、多分にその重要性は納得したものと思いますが、さらに今後は今おっしゃったようなふうにして、外傷省のやり方についても深い反省をしつつ、さらにもっともっと事柄の緊急性、重要性を向うに吹き込むように努力したいと思います。
  41. 春日一幸

    春日委員 これから努力するということは、今までの努力が足りなかったとみずから反省されたことではないかと思うが、いずれにしても今沖縄の問題は、国をあげての大問題に展開しつつあるわけなのであります。  以上申し上げました三つの経済措置のごときは、大した救済にはならぬかもしれないけれども、しかし彼らが長い間叫び続けた当然の最小限度の主張なのであって、この程度の事柄は当然満たされなければならぬ問題であろうと思います。遺族公債の問題、在外預貯金の問題は、その処理について政府方針もおおむね彼らの要望をかなえた形になっておりますので、これはその事務の促進に強く要望するといたしまして、とにかく今後対米交渉の最大の眼目は、郵便貯金の払い戻し処理に関するこの一点に集約されるかと思います。従いまして外務当局は、この国会の空気を正当に伝えられて、そうして当然奄美大島のあの郵便貯金の払い戻しのいきさつ等、債権債務の実在する状態等から考えて、あのような巨大な財源を持っておりますアメリカに財源措置などのごときについては問題ではなく、ただ物事の理解さえ立てば、この問題は速急に処理をなし得る問題であると考えますから、一つ継続的にすみやかに処理を進められて、少くとも次期の八月十日、十一日の委員会までには、議論の余地のないほどに的確なる解決がなされておる状態にされるように、最善の努力をされることを強く要望いたしまして、私の質問を終ります。
  42. 松原喜之次

    松原委員長 次に平岡君。
  43. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 さきに新聞紙上に報ぜられるところによりまして、懸案のLUA制度の撤廃を政府がきめたことを知りました。事実なら大へんけっこうなことと存じますが、念のためにそれが事実かいなか、それから撤廃実施がいつから始まるか、お答え願いたいと思います。
  44. 石田正

    ○石田説明員 LUAにつきましては、何と申しましても、戦後の異常な措置でありますから、情勢が熟するに従いまして、なるべく早くやめたい、かよう政府は思っておったのであります。具体的な措置といたしましては、御承知の通りに昨年の十二月二十日に、いわゆる短期の取引についてはLUAを適用するけれども、長期については適用しないというようにいたしまして、その後の経過を見て参りました。それから金融情勢、為替情勢一般を見ました結果、現在廃止するの最適ではないかというふうに判断いたしましたので、五月十五日付で各外国銀行に通知を発しまして、三カ月間期間を置きまして、八月十六日からLUAは撤廃する、これは前回の十二月の場合と違いまして、八月十六日までにおきましては続きますけれども、十六日以後は、LUAは新たなる取引につきましては全部撤廃する、こういうことでございます。
  45. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 次に外銀筋のリアクションについて御質問いたします。あなたの言われる通り、これは占領下の遺制ともいうべきものであるから外銀自身におきましても、こんな極端な保護政策はないことを知っておるはずであります。廃止は予見していたことと思うのであります。そこで、格別のリアクションはないと思うのでありますが、念のためこの点についてお伺いしたいのです。
  46. 石田正

    ○石田説明員 これは先ほど申しましたような工合に、八月十六日から撤廃するということでございまして、現在では依然LUAの適用はあるわけでございます。従いまして八月十六日以後どういう態度をとるかということが問題でございます。従いまして、通知を受けましたところの各外国為外銀行につきましては、八月十六日までに態度を決定すればいい問題である。しかもそれは、各外国為替銀行と日本の為替銀行との間において、どういうふうな取りきめをするか、こういう問題でございます。従いまして、現在におきまして、全船的にこれは全然心配がないとか、あるいは多少危惧の点があるとかいうようなことを申し上げるのはどうかと思うのでありますが、現在の感じから申しますと、さしたる懸念をする必要はないじゃないか、かよう一般的な印象を得ているのでございます。
  47. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 そうしますと、LUAの撤廃後に、当然モフ勘定の管理運営について整理する必要が出てくると思うのです。それはどういう方針をとられますか。
  48. 石田正

    ○石田説明員 LUA自身の性格にかんがみまして、それをやめるということは、それ自体といたしますれば、各為替銀行が自力で為替取引をやっていく、こういうことであります。政府とか日本銀行とかいうものは直後の責任は負わないのだ、こういうことでございます。従いまして、その点から申しますならば、政府の資金とか、あるいは日本銀行の資金というものは要らないものになるのじゃないか、こういうふうなお考えが出てくることはもっともかと思います。しかしながら、大体LUAがありましてもなくても、日本の為替取引というものが支障なく円滑に行われるかどうかということは、日本全体として一体どのくらいの為替資金を持っておるか、それから日本の一際収支の将来の見通しはどうか、こういうことを基準として向うが判断するわけであります。従いまして、LUAがなくなりましたからすぐそのモフ勘定はやめてしまうのだ、整理統合してしまうのだというふうに考えるのは、実際問題として少し飛躍し過ぎるのではないか、かような感じを持っております。  それからもう一つ、先ほど申しましたように、八月十六日以後になってみたければどういうことになるか、まだきまっておりません。のみならず八月十六日以後にすべり出したものが、どれくらいの期間続くかということが、まだ未知数の状態でございます。これは表するに向うは、政府がまるがかえになるということは変ったけれども、そのほかの点については変りはないんだということを前提にいたしての変化がないということであろうとわれわれは想像いたしておるのであります。従いまして今のお話の点については、慎重に考えなければならぬ。今の段階でどうするこうするということは、かえって逆効果があるのではないかというふうに思っております。
  49. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 あなたのお話からは、結局貿易、海運、保険業者等の外貨の自己保有ですか、買い持ちをさせる、こういうふうに指導していかれるというふうに感ぜられるのですが、そうしますと、モフ勘定として政府が持っていた保有外貨を逐次そういうふうな民間の業者なら業者に保有せしめる、譲渡するとか、そういうふうなことを考えておられるのですか。
  50. 石田正

    ○石田説明員 これは、外貨資金が非常に少い場合におきましては、あらゆる外貨資金を政府に集中いたしまして、その効率的な運用をはからなければならない。いかにそれがほかの一般の貿易業界なり保険業界なり海運なりその他において不便がありましても、やはり政府に集中せざるを得ないのであります。しかしながら平常な状態を想像いたしますれば、そういう対外活動をやるものは、自分の責任で自分でその必要な外貨を持ってやるべきであろうとわれわれは考えているわけであります。しかしながら、今の二つの面から申し幸して、すなわち政府の持っているところの外貨の保有が、あらゆる将来を予測すればいまだ十分ではないという点から考えまして、必ずしも自己保有を大いに促進するという段階には来ていないと思っております。しかしながら方向としては、やはり自己保有という方向で考えてもらわなければならない。  それからもう一つの問題は、自己保有をいたします場合は、どうしても円貨によって買ってもらわなければならない。そこに円の国内の供給量の問題及び金利の問題というのがございます。その面の制約がある。従いまして、この二つの面をからみ合せながら、方向としてはだんだん自己保有の方向へ持っていきたい。どの程度やるかということにつきましては、今のような状況をにらみ合せながら、漸進的にやるべきではないかと考えるわけであります。
  51. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 その漸進の課程におきまして、日本の国内の銀行間で問題になるのは、為替専門銀行の方に、モフ勘定としまして三億ドルをこえたものが預けられておると思うのです。それから他の甲種銀行ですが、これは合せて一億かそこらであろうと思うのです。そういうふうな点から、これが他の甲種銀行の上位に立って為替捜査の前面に動員されて出てくる、これは当然あると思うのです。このいい悪いの点についてはいろいろ談論があるであろうと思うのですが、この問題につきまして、銀行間のあつれきとかいうような問題が起る可能性がありますか。
  52. 石田正

    ○石田説明員 これは銀行でございますので、銀行はやはり競争ということを常にある程度考えなければならぬ。そこで今お話しのように、為替専門銀行と一般銀行との間、一般銀行、為替銀行相互の間、これらの間におきまして競争のありますことは、私は当然だと思っております。また現にあるのであります。しかしながら今日本で一番大切なことは何かというと、日本の為替銀行が外国の銀行と相並んで、日本の国際決済の問題についてその機能を果すということの方がむしろ重点ではないかというふうに実は考えておるわけであります。従いましてわれわれといたしましては、あらゆる場合におきまして、適度の競争というものはむしろやらしておくべきだと思います。しかしそれが追求にわたるおそれがありました場合には、警告その他を発して、無茶なことをしないように始終考えなければならぬ、かように思っておるわけでございます。
  53. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 局長お話ですと、民主主義の機会均等の主張よりは、むしろ国際金融市場における日本の劣勢を挽回することの方が急務ではないか、こういうふうに解してよろしゅうございまししょうか。
  54. 石田正

    ○石田説明員 デリケートな点でございまして、私は率直に申しますと、日本の貿易にいたしましても、貿易外の為替取引にいたしましても、これはだんだん拡大していくであろうと思いますし、また拡大させなければならないと思っております。その拡大していく過程におきまして、日本の為替銀行が多くの仕事をしていくということに当然であるのでありましで、競争のために、その仕事をするより、内輪同士でけんかばかりしているということは好ましいことではないというふうに考えておるわけであります。
  55. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 今度は問題が別ですが、為替相場の自由化が次の問題になろうと思うのです。これはどういうふうな方法でやっておりますか。
  56. 石田正

    ○石田説明員 為替問題につきましては、御承知の通りに一番国家統制の強い血だと私は思っております。それからまた正常化と申しますか、これが最も立ちわくれておる部分であろうにと思っております。われわれがやってわります問題は、国経済一般、それから金融情勢の変化等によりまして、ほかの部面が正常化していくのににらみ合せながら、できるだけ立ちおくれのしないような工合に為替面におきましても正常化をしていこう、こういうのがわれわれのねらいでございます。しかしながら国内的に操作し得るところの問題と違いまして、国際間の問題というのは数十カ国を相手にするところの問題でございます。数十カ国の起ることが全部影響を受けてくるものであって、日本だけでこうするああするということはできない問題でありまして、やはり正常化という問題につきましては、相当慎重に考えていかたければならぬ、かように考えております。  それからよく新聞その他におきまして、為替相場の自由化ということが書いてございますが、私はこの問題は、LUAをやめたから今度は為替相場をという工合に、並列的に考えるべき問題ではないと思っております。為替相場という工合に、並列的に考えるべき問題ではないと思っております。為替相場というものは、日本の円というもののほんとうの価値基準がどこにあるかということが根本でございます。それが維持できるかできないか、どう維持していくか、どういう範囲でゆとりを持ってやっていくか、こういう問題でございまして、ただ経済が正活化したとか、金融が正常化したということでなく、日本の国力がどういうところにあるかということの見分けをつけずに議論をするということは、私は慎重でなければならぬと思います。のみならず、海外の問題につきましても、将来の問題は、ドル、ポンドの問題につきましても、ドルの事情とポンドの事情が違っております。そういうふうな状況のもとにおきまして、為替相場の公定主義、現在のようなぎこちない公定主義というものは、これは漸進的に反省していかなければならぬと思いますが、それがどういう影響を持つか、それがそのときけよくても、あとどうなるかということの見通しをつけていかなければならないと思います。これは、われわれは研究はしておりますけれども、必ずそうすべきだとか、それから今のままでいいのだというふうに考えるべきではなくして、率直に申し上げまして、今研究段階である、この研究段階というのは、始終研究が続いているのだ、こういうふうに御了解願えればありがたいと思います。
  57. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 政府の持っている保有外貨、これをある方面では、日銀の方におろして、その価値の円を開銀等を通じまして、あるいは電源開発とか、そういう方に使いたい、こういう意向もあるやに聞いております。これに対照的の見解としては、今私もあなたもお互いに話をしたことですが、イギリスあたりでとっているように、むしろこれは大蔵省がそれをずっと依然として持っておって、為替の自由化の過渡期における相場の浮動をなくすための平衡的な資金としてとっておいて、為替売買操作に乗り出す、そういうふうな余地をやはり残しておく方がいいという見解、この二つの見解が対立すると思うのですが、大体当局としてはどういう、ふうにお考えですか。
  58. 石田正

    ○石田説明員 私、この為替の問題につきまして始終感じておりますことは、思想的にいろいろ考えられ、理念的に考えられ、実際問題と非常にかけ離れた議論が多いのではないかということを心配しているのです。われわれその責任の一端を持っている者といたしましては、できるだけ実際的にものを考えていかなければならぬ。外貨の保有の問題につきましては、これは平岡先生も御同感だと思うのですが、われわれはく今のような変な外貨資産を持っていることがなくて済むように、全体の情勢をどうするか、このことがまず大事だと思います。そういうふうなものをかかえておりながら、為替平衡資金がどうである、こうであるということを言うのは、これは一貫しておらないのではないか、こういうふうに考えております。  それから為替平衡資金的な考え方云々という問題でございますが、私はお話しのありました言葉じりをとるわけではありませんけれども、ものの考え方といたしまして、正確に申し上げますならば、日本の為替管理というものがどういうふうにして自由化されるかということが先決だと思います。為替について一々許可をとらなければならぬ、許可をとっておりながら、しかも片方で平衡盗一金的に発動しろといったって、発動する場所がないじゃないか、かように思うわけであります。従いまして、為替平衡資金的に出る前においては、やはり為替市場というものができなければならぬ、為替相場というものが自由にならなければならぬ、そこに為替平衡資金の本来の姿があるのだろうと思います。そのまた前の段階だと思いますけれども、現在の段階におきましては、国際収支は、輸出・輸入の関係、賛助外の支払い受け取りの関係がどうなるかということが、予測がつかない問題でございますが、いろいろわれわれといたしましては予想をいたしております。それからまた外貨予算というものを編成しております。しかしそれがそのまま動くものではございません。国内の予算と違いまして、対外関係によって支配されるものでありますから、始終訂正なり何なりをしていかなければなりません。そういう場合におきまして、ことしの上半期なら上半期の輸入といたしましては、予算としましては十五億ドルがいいだろうというふうに思ったけれども、それが十六億にした力がいいという結論になる、そうすると、それに伴って外貨資金の一億というものがふえてくる。そういう場合に、輸出の方がそれ以上に伸びれば問題はないわけですが、輸出がそこまでいかなければ、手打ちの外貨をそれだけ減らしていく、こういうふうな意味におきまして、運転資金的に政府の外貨というものが働くものだとわれわれは考えるわけです。そういう段階でございまして、まだ為替全体の態勢が進まぬうちに、為替平衡資金がいいとか、中央銀行の金融操作がどうであるとかいうふうなことを言うのは、少しまだ過早ぢゃないか、そんな段階まで行っていない。そういう段階において、いかにして個々の問題を片づけていくかということが今大切である、こんなふうに考えておる次第でございます。
  59. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 おっしゃる通り、平衡資金の問題をここで待ち出すことは、日本の為替の現状に照らして少し飛躍的な考えである、こういうことはもっともであると思います。ただし、他方において、この政府外貨を日銀によってどうしようという意見が現実に起ってきておるのであるから、この点からお尋ね申し上げたわけです。ですから、今私の申し上げました日銀への譲渡という問題について、ちょっと御意見を承わりたいと思います。
  60. 石田正

    ○石田説明員 話がなかなか長くなると思いまして、途中でやめたのでございますが、政府見解としては、何もそういうものはきまっておりませんので、私個人の考えとしてお聞き取り願いたいと思うのであります。それは、政府が持っております外貨というものはどういうために必要であるがというと、実際のファンクションは、いわゆる国際収支の変動にどういうふうに対処するかということが中心であろうと思う。そういう意味でわれわれはこれを持っておるわけであります。しかしながら、そういう運転資金として要らないという分がある。そういうものはどういうふうに考えるかというと、やはり私は、これは通貨の準備じゃないかと考えられると思います。そういうものについては、日本銀行に持っていただくのがいいのではないか、こういう考え方で従来やってきたわけであります。しかしながら、今お話しのように、一般的に日本銀行に移すのがいいか悪いかという問題でございます。これは、今大臣がお見えになりますが、速っておるかもしれませんが、私は、先ほど来為替全般のことを申しました通りに、今御質問の端的な問題まで含めて、今考えるのは早い、もっと先の問題だというふうに考えております。
  61. 松原喜之次

  62. 奧村又十郎

    ○奧村委員 私は、大蔵大臣に税制改正についてお尋ねしたいと思います。非常に大事な大きな問題でありますが、時間がありませんので、簡単に要点だけお尋ねしたいと思います。大臣もそのおつもりでお答え願いたいと思います。  税制の根本的な改正をやろうということは鳩山内閣の公約であるし、また大臣もこの春以来、たびたび国民に約束をしておられるところであります。前国会中にこの税制改正の構想を伺っておきたいと思ったのでありますが、時間的にその機会がなかった。しかし、政府はもうぼつぼつ来年度の予算大綱を作ろうとなさっておられるのでありますから、ここらで税制改正の考え方をお聞きしておきたいと思うのであります。税制改正なるものは、これは、政府がその案を立てて実施すべきものであって、政府の案を税制調査会あいはその他国民の世論を聞くということにするのが建前であろう。なぜならば、税制改正というものは、予算の規模、あるいは今後の経済の見通し、あるいは地方税国税と総介して、一貫して、納税者に公平な税制を作るべきである。こういう立場からいきますならば、財政確立の責任者であり、また税務行政の責任者である大蔵大臣が税制改正の案を立てることは、当然であります。そこで、なるべく早く税制改正の考え方をまとめて、国民に知らせることが当然である。この問題について、当委員会で大蔵大臣のお考え、あるいは抱負をほとんどお聞きすることができなかったので、この際大蔵大臣の税制改正に対する当え方を率直にお述べ願いたい。この際お聞きしないと、当分お聞きする機会がない。大臣は、新聞記者などには車中でいろいろお話しになっておられるようであるが、当委員会では、大臣の大きな約束である税制改正についての御意見を率直にお聞きすることができなかったので、きょうは一つ率直におっしゃっていただきたいと思います。
  63. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 まず税制改革につきまして、政府が原案を持つべきであるという御意見、これも一つのお考えであると思います。私どもとしては、今回の税制改正につきましては、なるべく広く意見を聞きまして、そうして意見を聞きつつ政府の案も作っていきたい、かように考えて今仕事を進めておるわけであります。ただ、税制改正について大蔵大臣はどういうような考えを持っているかというお話でありますが、そういう意見を聞きつつまとめてみたい。もっとも税制改正に関係して検討たしたいというような事項は、非常に多岐であると思います。おそらく事務当局からも、その点については、こういうところに問題があるだろうということは御説明があったろうかと思うのであります。それは、今私ここで申し上げることをいたしませんが、ただ私が考えておりますことは、今新聞等にいろいろ話したではないかというお話でありますが、私の考えでは、税をなるべく公平といいますか、負担側を公平にしたい。むろん今日必ずしも公平でないと申すのではありませんが、そういう点について特に検討を加えていきたい。それからまた終戦以後等におきまして、特殊な目的でいろいろと税法上の特例も置いてあります。それらについても、なお存続する必要があるのかどうかという点について、十分な検討を加えてみたいというようなこと。さらにまた、これは私の一つ考え方でありますが、税の負担について考えれば、何としても動力所行税を初めとして、直接税が重い。しからばそういうものを軽減するとすれば、財源をどこに求めるか、こういう点も関連しまして、私は、もう少し間接税の力に税の重さを移行さしてもいいのではないかというよう考え方を持っております。その辺のことも十分検討を加えて、人の意見も十分聞いてみたい、かような考えでおります。それと、税自体をもう少しわかりやすく、国民もよく納得ができるように簡素化し、かつ徴税等も、能率的にできるようにするには一体どうすればいいか、こういう点をあわせて審議を願っているわけでありまして、皆さんの御意見を聞きまして、できるだけりっぱな政府の原案を作りたい、かように考えております。
  64. 奧村又十郎

    ○奧村委員 私個人の意見を申し上げますと、政府は、税制の根本改正をやろうと非常に大きく取り上げておるようであるが、実際に当ってみると、諸般の情勢から、根本的な改正はできるものじゃない、こう考える。そこで政府は、根本的な改正をほんとうにやろうとしておられるのかどうか。総合的な一貫した税制の根本的な改正をやろうとしておられるのかどうか。そういうふうに国民は受け取っておりますから、もうすでに泥土税の新設とか、その他いろいろな国民の期待、あるいは陳情などがある。またそれに対する反対意見もすでに出ておる。従って、政府の根本的な考え方をここで明確にしておいていただかなければならぬ。そこで私は、そういう大きな改正は実際上はできないと思うが、政府はどの程度の改正を考えておられるのか。つまり、たとえば昭和十五年度の税制の大改正のときは、あれは臨時軍事費などの国家財政のために、大増税を目的とした大改正であったと思う。また昭和二十四のシャウプ勧告による改正も、また税制の根本的主な改正を目的しておる。今度は、そういった意味の根本的な大きな改正というものは、私は必要ないと思うのですが、政府はどの程度の改正を考えておられるのか。考えておられるとすれば、何がためにこの際税制改正をしようとなさるか。それが税制改正の一番大事なところだと思うのです。その点をお尋ねいたします。
  65. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 政府としましては、税制の改正をできるだけ根本にさかのぼってやるという決意でありますことは、変りありません。しからばどういうところからやるか、私は先ほど申しましたように、今日の直接税は、やはり負担が過重である、これは可及的に軽減をすべきだという考えを持っております。ただその場合に、一体財源をどこに求めるかというところに非常に実際的にむずかしい点もあるだろう。これらの点について、各方面の意見を徴していく、それらの結果を待ちまして、さらに考えを固めてみたい、かように考えております。
  66. 奧村又十郎

    ○奧村委員 大臣の御意見によると、現行税制に不合理があって、特に直接税の面においてまだまだ減税をしなければならぬ、こういう御意見であるように思います。そうしますと、おもに直接税を減税し、これは新聞に大蔵大臣が言われたことによりますと、所得税の基礎控除を引き上げる、こういうことを言うておられます、従って、その財源は間接税増徴に求めるということに自然になるわけですが、所得税の基礎控除を上げようという方針は、もうおきめになられたわけですか。どの程度上げられますか。
  67. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 そういう点につきましては、調査会の各方面の意見を聞きたいと思っておるのであります。ただ私としましては、所得税というようなものを考える場合に、基礎控除というようなものが考慮の対象になるだろう。またしていいのじゃないか、こういうふうな私自身の考え方を持っております。これらについては、十分今後検討を加えるので、何をどうするかはまだきまっておるわけじゃありません。
  68. 奧村又十郎

    ○奧村委員 直接税を減税するということの裏には、その財源として間接税の増収を見込まなければならぬ。それでは間接税の増収はどういう面に求められるか。間接税と言えば物品税、酒税、それからたばこの専売益金、砂糖消費税、ガソリン税程度であろうと思いますが、ガソリン税にしても砂糖消費税にしても、それぞれ最近の国会で引き上げたことであります。物品税は撤廃の意見がかなりある。現に社会党の諸君は、すでに物品税廃止の提案をこの委員会に出しておる。また酒税の引き下げ案も社会党の諸君は出しておられる。われわれはまた別途の立場で、酒税は引き下げるべきだと考えておる。そうすると、間接税の増収というのはどの面を考えられるか、結論としては、売上税を新設するよりほかに方法がなさそうに思うのですが、一体間接税の増収というのは、どの面にお考えを持っておられるのでしょうか。
  69. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 その点は非常に重要な点でありまして、その財源をどこに求めるかという点についてはこういう方面に特に造詣の深い人々の御意見を今徴しておるわけであります。必ずしも間接税の増徴というわけではない、私が直接税と間接税の関係で申しますのは、税制一般として、税の負担割合がもう少し間接税に移行してもいいんじゃなかろうかという考えを持っております。たとえば今回所得税をどうするかという場合に、間接税で財源を取るかどうかというのではないので、その財源については十分検討してもらう、どういう財源があるか、どういう財源によるべきか、こういうところにあると思います。
  70. 奧村又十郎

    ○奧村委員 どうもかんじんなところで話がすっかりぼけて、各方面に意見を聞かねばならぬというお話ですが、これも新聞などに出ておるのですが、大蔵大臣は税制調再会の意見を聞くということをよく言われますが、税制調査会というものは、御承知の通り法律に基いておりません。単に内閣の申し合せで、しかも大蔵大臣が都合よくお選びになったのでありますから、これは失礼ですが、そう一々それの意見に引きずられるものではなく、もちろん意見を聞かれるのはけっこうですが、根本の考えというのは、大蔵大臣がお立てになるべきものです。すでに大蔵大臣は、直接税は引き下げると言っておられるのなら、もう少し財源の裏付をはっきり言われなければならぬ。そこで前国会においても酒税の引き下げ、あるいは物品税の撤廃、こういう議論は出ておるのですから、そうすると、その議論とは別に、むしろ増税する考えを持っておられるのか、それ以外には財源の出所がない、売上税を実施しようとするのか、そのかんじんなところは、税制調査会の意見を聞くというところで逃げられるが、先ほどから申し上げているよう税制の根本的な構想というのは大蔵大臣が立てるべきで、調査会で意見を聞くというようなことで逃げられては、これはここで議論ができぬのです。もう少しそこの点をはっきりしていただきたいと思います。
  71. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 大蔵大臣がむろん意見を吐くべきであるのでありますが、しかしその意見は、過程におきましていろいろな人の意見を十分聞いて、それから大蔵大臣の意見をまとめる、こういうふうに私は考えておるのでありまして、今それぞれの人々の意見を徴しておる、こういう状態にあるのです。
  72. 奧村又十郎

    ○奧村委員 それでは別の角度でお尋ねしますが、最近戦後の経済は終結して、日本は新しい経済の段階に入ったということをよく言われる。きょうの新聞にも出ておるように、通産省の経済白書を見ると、戦後経済は終った、つまり経済が正常化したという意味がかなり強く言われておるわけです。そこで今度の税制改正には、正常化した経済に即応して、税制もまた臨時的な制度をやめて、正常な税制に立ち返らそう、こういう意図をお持ちであるか。そうすれば、今臨時的な制度がかなりある。たとえば租税特別措置法というような非常に臨時的な措置がたくさんある。これを廃止するお考えなのかどうか、この点を承わりたい。
  73. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 経済の正常化、これはいろいろな見方並びに認識の度合いがあると思いますが、要するに客観的な経済の情勢に応じた税制にするということは、当然なことであると考えております。
  74. 奧村又十郎

    ○奧村委員 それではまず臨時措置としては、租税特別措置法の諸種の規定でありますが、たとえば銀行預金利子などに対する課税、あるいは株式の譲渡所得に対する課税、こういうものは、すべて金融の正常化のために特に臨時的にとられた措置であるが、これは廃止せられる御意思であるかどうか。
  75. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これにつきましては、先ほども申し上げましたように、それぞれについて十分の検討を加えまして、客観的な事相から見ても廃止すべきものは廃止する、また、なお残す必要があるものは残す、こういうふうに考えております。
  76. 奧村又十郎

    ○奧村委員 大蔵大臣は、当委員会においては非常に慎重な言葉を使われるが、委員会から離れると、あの列車の中の雑踏したところで、新聞記者などに、基礎控除を引き上げるとか、いろいろはっきりしたことを言われるので、当委員会として論議をするのに、大蔵大臣の態度によって非常に委員会の論議も低調になる。この前一度これは問題になったのですが、もう少し腹を打ち割ってお考えのほどを聞かしていただきたい。それから売上税の論議がかなり世上に高まっておるが、売上税を実施するかどうかということが、政府の今度の税制改正の一番大きなめどになる、売上税を考慮しておられるかどうか。
  77. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 今私は、売上税自体について考えておりません。こういう点につきましても、やはり各方面の意見を十分聞かなくてはなりません。特にこの税については、過去においていろいろと問題もありました税でございますので、これはきわめて慎重に考えなければならぬと思っております。
  78. 奧村又十郎

    ○奧村委員 それでは、直接税を減らして間接税をふやすというが、今度の税制改正の大きな目標というものは具体的には何もきまっていない、ほんの大蔵大臣の思いつきであったということですか。
  79. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 決して思いつきではないのでありまして、てのことを実現するために、今各方面の意見を徴しまして、そしてさらに、ここに大蔵大臣としてこうするということをきめたい、かように考えておるわけであります。
  80. 奧村又十郎

    ○奧村委員 それでは、大体政府の御構想のきまるのはいつごろになりますか。  それからもう一つ、すぐ大蔵大臣は、税制調査会に諮ってと言われますが、現在の税制調査会にはどのような諮問をしておられるか。政府の基本的な考え方を土台として税制調査会の意見を聞くならわかる。政府の基本的な考えというものは、当委員会で少しもはっきりしていない。それなのに、税制調査会に諮問をかけている。一体どんな諮問をしておるのか。その諮問の仕方をお尋ねいたします。
  81. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 税制調査会に対しましては、総理大臣からこういうふうな諮問をいたしております。最近の諸情勢に即応すべき税制改正の方策いかんという、きわめて大きな題目を出しまして、これに基いて各般の審議をお願いいたしておるわけであります。
  82. 奧村又十郎

    ○奧村委員 そうしますと、税制調査会には、税制の根本的な改正の一貫した立案を諮問しておるのか、個々の税に対しての可否などを諮問しておるのか、どちらですか。
  83. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 今申し上げましたような、税制改正の方策いかんという諮問をいたしまして、むろんこの審議におきまして具体的な点にも触れていく、かようになると考えておりす。
  84. 奧村又十郎

    ○奧村委員 しかし、かりに諮問を受けた税制調査会の立場になっても、たとえば来年度の予算規模をどうするのか、あるいは経済の見通しはどうなるのか、あるいに現行税制に対して政府はどう考えているか、あるいは国税地方税間の問題をどうするのか、そういうふうな大体の考えの材料を税制調査会に与えなければ、ただそれだけでぽかっと諮問をかけたって、おそらく適正な回答はできないと思う。その程度のことは当然諮問をかけるべきであって、そのかけるべきことをこの委員会に出してもらいたい。もう少しその意味のことをお尋ねいたします。
  85. 原純夫

    原説明員 おっしゃる通り、諮問事項といたしましては、非常に大きな課題で諮問いたしておりますが、それに付随して、税制を考えていただく場合の問題点なり、あるいは問題点を考えていただきますためのデータなりというものは、もちろん随時提出してお考え願っているわけであります。これらにつきまして、お話しのありました当委員会への御連絡ということは、鋭意努めて参りたいと思いまして、最近調査会へ出しましたデータにつきましても、本日お手元に入りますように実は手配をいたしておるというような状態でございます。  なお従前のもので、補完してお出ししなければならぬものがありますれば、それもお出しいたしたいと考える次第でございます。
  86. 奧村又十郎

    ○奧村委員 承わるところによると、税制調査会においても、その審議というものは非常に低調で、出席者も非常に少い。これは諮問をける政府の態度に私は問題があると思う。もう少し政府自身の考え方か明確になさって、諮問に答えやすいよう政府が指導なさらなければならぬ。もちろん当委員会にも、もう少し政府は率直に政府考え方をできるだけ早くお示しになって、われわれも来たるべき税制改正の審議に十分協力できるように、大蔵大臣は御考慮を願いたい。これが私のきょうの質問並びに希望であります。これをもって私の質問を終ります。
  87. 横山利秋

    ○横山委員 関連をいたします事柄ですから、お尋ねいたします。大臣の御答弁が今のような状況ですと、これはなかなか話がおさまらないのでありますから、一つはっきりお答えを願ったらいいと思う。  まず第一に確認をいたしますが、六月八日に大臣は記者会見で、所得税の基礎控除と給与所得控除を引き上げたいとおっしゃった。それから今奧村委員が言ったように、新聞記者にさらに汽車の中で一基礎控除を引き上げる、こういうふうにおっしゃった。この書契に対して、大臣は責任をお持ちになりますか。
  88. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私は記者会見で、所得税、特に勤労所得税負担が重いと思うから、できるだけ軽減したいのだ、そういう場合に、それではどういうところをどうするかといえば、むろんなお十分な検討を要するのでありまして、いろいろな方の御意見も聞かなければならぬが、やはり基礎控除を引き上げるというところが一つの問題点ではなかろうか、こういうような意味を私は話したのであります。これらの点について、なお調査会その他皆さん方の御意見を十分聞きたい。かりにこういう所得税について手をつければ、どういうところがいいとか、これは十分批判を仰ぎたい、かように存じておる次第であります。
  89. 横山利秋

    ○横山委員 あなたはどこかの学者ではないのでありまして、大蔵大臣であります。あなたが端的に、所得税の基礎控除を引き上げたい、こういうふうに言われたことは、もう納税者すべてが知っておるわけであります。もしもそれが、財源がとれなかった、ほかの見返り財源がなかったから、これをやめるという、そういう腹でも今あなたはお持ちなんでありましょうか。それとも、一ぺん言ったことについては責任を持つ、こういう立場で国民に接していられるのでありましょうか。そこのところをまず明確にして下さい。
  90. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これは私の考えでは、ごく率直に申しまして、税制の改正もあることだし、そういう場合に今どういうところを問題にしておるかということを、私は私として示したという考え方であるのであります。
  91. 横山利秋

    ○横山委員 そういたしますと、問題点をお示しになった、こういうふうにあなたはおっしゃる。もしそれができなかったら一その提供した問題点については、やめる場合があるということをも含んでの話ですか。そういう当てのないことをあなたがおっしゃったということに理解してよろしゅうございますか。
  92. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 そういうふうにやかましく言われれば……(笑声)私といたしましては率直に申しまして、まず所得税が重いということは一般考え方と考えております。それで、そういうところは、できるだけ自分としては軽減の措置をとりたいという自分の意欲を示したわけであります。
  93. 横山利秋

    ○横山委員 あなたが自分の意図を示したのだ、これはできるか、できぬかわかりません、もし見返り財源がなかったらやめます、そういうことで済むとお思いでありましようか。私は、少くとも前にも言ったように、去年の税制改正についても、本委員会の与党諸君すら寝耳に水のような、相談にあずからなかったようなことを提案されて、ずいぶん騒動を起したことをわれわれは記憶しておるのです。そういうときに、今後は民主的にやると本委員会であなたがおっしゃった。それが、今税制改正であなたが明らかにされたのが、直接税の軽減である。しかも所得税の基礎控除を引き上げる、こういうことを明確に二回、三回にわたっておっしゃったのであります。それを公式の場面でお尋ねをすると、それは当てにならぬことだから、あまり信用なさらぬでくれ、こういうことは全く意外千万です。  次の質問に移りますから、もう一ぺん、あなたの三べんもおっしゃった基礎控除の引き上げについて、ほんとうに確信を持っておっしゃったことであるかどうか、それだけ最後にお伺いをしておきます。
  94. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 決して引き上げても、引き上げぬでも、どうでもというような、そんなふうなことを考えてもおりませんし、また言うたわけでもないのでありまして、私としては、さようにいたしたい、そういうことを実現するよう努力を払う、こういう考えで今日おるのであります。
  95. 横山利秋

    ○横山委員 第二番目にお伺いしますが、選挙の最終盤の最後に、岸幹事長が談話を発表して、売上税は作らない、こういう談話を発表しました。この岸幹事長の談話について、あなたは御連絡を受けられましたか。
  96. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私ども今売上税を考えておるわけでもないのでありまして、党としても考えていない、こういうような発表であったと思います。
  97. 横山利秋

    ○横山委員 そういたしますと、岸幹事長の談話というものは、あなたの理解するところによれば、今は考えていないのである、将来予算の編成の際に織り込まれることはあり得る、こういうふうにあなたは岸幹事長の談話を理解していらっしゃるのですか。
  98. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これは政府といたしましては、それをとるとらぬは別といたしまして、一応税制調査会等の答申を待って、そうしてどういうふうな答申が出るか、まだ答申が出た事柄についてはどういう根拠があるか、そういうことを一切検討を加えた上、政府としては原案を作っていきたい、かように考えておるのであります。
  99. 横山利秋

    ○横山委員 税制調査会の話を聞いておるのではないのです。与党の幹事長である岸さんが新聞に談話を発表して、選挙戦の最終盤に全国民に訴えた言葉に、売上税は創設しない、こういうことであったのです。それについて、あなたは御連絡を受けられたかどうか、おそらく御連絡を受けられたと思うけれども、それであったならば、国民が今受けておる感じというものは、与党の幹事長が創設しないと言ったから、今後売上税はないであろう、こういうふうに判断をいたしておる。その判断について、大蔵大臣はどうお考えになるか、こう聞いておるのです。
  100. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私も今考えていないのでありまして、その点については全く白紙であります。
  101. 横山利秋

    ○横山委員 そういたしますと、岸談話によって国民が納得しておりますように、売上税は創設されない、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  102. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私の考えでは、政府としては、そういうふうな点について今後十分検討を加えてみたいと思っておるのです。ただ今申しましたような諸情勢から、非常に慎重な態度で考えなければならぬことも言うまでもありません。また非常に困難な点もあるでありましょう。しかし私は、するというのでもありませんが、何もしないということも、今ちょっと申し上げかねるわけであります。
  103. 横山利秋

    ○横山委員 大臣は御存じでありましょうが、今全国津々浦々、中小企業者が大会を開いて、そうして売上税に反対の気勢を盛り上げておるわけです。そこへ出席された与党、野党の候補者がこぞって、私は売上税に反対です、こう言っておる。そうして与党の候補者の皆さん、あるいは応援に来られた皆さんが、これだけではいかぬ、党としてはどうかということを迫られて、本部へ照会があり、与党を代表して岸幹事長が、売上税は創設しない、こういう回答になって現われておるのです。それをあなたが今するとも言わない、しないとも言わない、こういうふうな御返答であるとするならば、これは与党と政府との間に重大な食い違いがある。今売上税の問題が天下の風雲を巻き起しておる。きょうも新聞記者の諸君が来ておられるけれども、明らかに与党と政府との間の重大な食い違いが、きょうかあしたの新聞に載るといたしますならば、これは非常な問題に発展をすることを私はおそれるのです。従ってそういうことをも考えて、幹事長のしないと言ったものを、あなたがするかもしれないというふうに、今ここで明言されることは、これは非常な問題だと思いますが、どうでございましょうか。あなたはやはりするともしないとも言えない、こういうふうにおっしゃるつもりでございますか。
  104. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 少し言葉の何があると思いますが、するともせぬともという意味ではないのです。私は、税の方について造詣の深い方々に、先ほど申しましたように、とく全般的な諮問もいたしております。従いまして、そういう方々の御意見を十分聞いた上でと、こういうふうな気持でおるだけであります。
  105. 横山利秋

    ○横山委員 納得しません。私の聞いておる焦点というものは、民主政治の中で、与党の幹事長がしないと言ったその直後にあなたがしないとはよう言い得ない。これだけしつこく情勢をお話しして聞いても、しないとはよう言い得ないということは明らかに、する用意をあなたは腹中に蔵しておると見るよりほかにない。そういうふうに見られてもよろしいのですか。そこのところを私は聞いておる。臨時税制調査会外どうのこうのいったってもうこういう段階においては理屈になりませんよ。政府として、与党の幹事長が作らないと言ったものを、あなたは言葉を濁して、作るかもしれぬというような印象を与えているような今の心境というものは、非常に重大じゃありませんか。ほんとうに今白紙であれば、しないなら、しないとおっしゃい。するなら、するとおっしゃい。するともしないともわからないというならば、することもあり得るとはっきりおっしゃったらどうです。
  106. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 たびたびの御質問ですが、特に与党の幹事長がああいうふうに声明されれば、そういうことの実現が非常に困難であるということは、これはもう言うまでもないのであります。そのことは、むろん私も承知いたしておる。ただしかし、せっかく今税制全般についていろいろの人の意見を聞いておるのですから、それを聞いた上で、私は私として結論を出したい、かように言うだけであります。
  107. 横山利秋

    ○横山委員 そういたしますと、ひょっとしたら、臨時税制調査会が売上税を作れと言った場合においては、あなたは賛成することがあり得る、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  108. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 さように次々な仮定では――私としては、今申しましたように、非常に困難であろうということは、これは実際の政治の上において認める。ただ税制全般を、そういうふうな税に堪能な方々がどういうふうに考えておるか、そういうことを十分フリーな立場で御検討願うという意味において、私は今この結論を出すのは控えておるわけであります。
  109. 横山利秋

    ○横山委員 私はどうしても納得できないのです。この間ある中小企業の売上税問題の大会に私も出ましたし、与党の諸君も出ました。そうして私ども国会議員の目の前に出されたものを見ますと、こういうふうに書いてある。岸幹事長が創設しないと言った。けれども、これをわれわれは信用してはならない。なぜならば、今日までわれわれは、幾たびも公約の破棄によって煮え湯を飲まされているからである。こういうことが書いてあるのです。私は、少くとも幹事長が言ったのであるから、皆さんまさかそんなことはないでしょうと、一応与党のような意味において答弁をしたのです。けれども、今ここでこれだけしつこく聞いても、あなたは売上税は作らないとは、どうしてもおっしやらないのであります。そういうことは、明らかに中小企業の諸君が今全国で憂えている二とを事実として私は認識するよりほかはないのであります。もうそれ以上あなたが御答弁ができなければ、これは、幹事長はああ言ったけれども、大蔵大臣は作るいこともあり得るという立場において審議を進めておる、こういうふうに私は理解をいたします。  次に質問を継続いたしまして、第三点は、あなたが何回も何回も言う臨時税制調査会の焦点は、今私は三つにしぼられておると思うのです。一つは、大企業のすべてが現行の特別措置をそのまま存続することを執拗に主張しておる。もう一つは、さらに大企業は、石炭業が追加投資引当金制度、鉱山業は鉱床補てん積立金制度、紙パルプ業は造林準備金制度を、それぞれ新たにその上に設置することを主張しておる。第三番は、中小企業の代表機関である法人会や青色申告会や中小企業団体連盟が、口をそろえて売上税の創設の反対と現行特別措置の大幅整理を主張しておる。争点は今明確になってきておるのです。ところが今いろいろ御意見を聞いておったけれども、この争点というものは明確になってきて、やはりどこから財源を取り上げるか。租税特別措置法に大メスを入れるか。大企業の言うことを聞いて、その土にさらにプラス・アルファをつけるか。それともなおそこから財源を浮かして、売上税もとらぬかというふうなところに来ておるのです。この来ておるときに、あなたがまだ意見がきまってないということは、私はあり得ないことだと思っておる。もしも直接税を減らす、こういうことであるならば、その見返り財源については、ここで争点がきまっておるのでありますから、大体の構想というものは、政治的に判断をなさるべき段階に来ておると私は思うのでありますが、この点について大蔵大臣としてどうお考えでありますか。
  110. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 まだ私として判断をするだけの報告に接しておりません。ただ私が申し上げておきたいことは、中小企業の問題ですが、中小企業については、私は今の日本の経済の段階において特別にいろいろな面、これを育成といえば言葉が悪いかもしれぬが、手を差し伸べて、この困難なる状態を助けるようにしたい、かように考えておるわけであります。従いまして、一方において金融面その他において中小企業を助けてやろう。助けるという意味は、言葉が悪ければ強化する。企業自体のあり方についてもむろん考えるのですが、強化する。そういう際に、税の上から特に中小企業が非常に困る、そういうようなことは私は考えられないと思う。そういうようなことを考えつつ、今後の税制の答申等も一つ考えていく。中小企業関係においては、私はさよう考え方を持って調査会の答申等をさらに検討を加えたい、かように考えております。  〔委員長退席、石村委員長代理着席〕
  111. 横山利秋

    ○横山委員 私はかつてあなたに二回にわたって申し上げたことがあるのですが、あなたが大蔵大臣になられてから、中小企業に対する減税をあなた自身の手でおやりになったことはまだ一回もないのですよ。去年なんかは、政府は反対したけれども、われわれの方また与党の方から、こちらの席から、所得五十万円以下は三五%にしろ、あなたの意図に反してまさにそうなったのです。あなたの手から送られたものは、ガソリン税の増税である、あるいは地方税の増税である。あなたは今日まで何回も中小企業の減税を言われたけれども、今日まで一回もあなたの手によって中小企業の減税が行われたことはないのですよ。御存じだと思うのですが、一回もないのです。今ここであらためてあなたは中小企業の減税だ、こうおっしゃるのだが、今臨時税制調査会の集約した争点の三点を私が言ったのに対して、あなたが中小企業の減税をやるとおっしゃるならば、もうこの調査会に対するあなたの考えは明白になったと私は理解をするのです。ほんとうにあなたが中小企業の減税をやるとおっしゃるならば、売上税を創設すべきではない。それから租税特別措置法に大メスをふるうことです。それ以外にどういう中小企業の減税の方法があるか。私は今金融の話をしておるのではない、税金の話をしておるのです。ですから、あなたがここで何回も中小企業の減税をなさるとおっしゃるならば、今の争点の中でおやりになるとすれば、売上税の創設はしない、租税特別措置法にはメスを入れる、そういうふうに理解してよろしいか。そのほかに方法があったら一つ言って下さい。
  112. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 中小企業について、何もお前は減税はせぬじゃないか、こういうお話でありますが、しかし所得税等について、特に低額な所得の方についてのいろいろな減税措置は、私は中小企業の方々にもみな均霑するだろうと思っております。決して中小企業の税について冷淡なわけではありません。なお先ほど申し上げましたことは、中小企業の強化ということを考えておるから、いろいろとこれについては施策をしなくてはならない。その際特に税の面において中小企業を今よりも苦しめるような結果を免ずるような税というものは、私考えられないのじゃないか、小小企業を強化するという以上は、総合的にあらゆる面からやはり助けていくというふうなことにならなくちゃならぬだろう、かように申し上げたわけであります。
  113. 横山利秋

    ○横山委員 大臣は、自分で言っていることがどういう結論になっているか知って言っていらっしゃるのでしょうか。抽象的な言葉を具体的に言うならば、もう売上税を創設しない、租税特例措置法にメスを入れて、そして中小企業に減税をやる、こういう結論にならざるを得ないじゃありませんか。私の推定が間違っておるなら間違っておる、そのほかにこういう方法でやるのだというヒントでもあるならば言って下さい。単に絵にかいたぼたもちのようお話をされて、中小企業の減税をやるのだと言うたところで、どういう方法になるか。もうここまで来れば、あなたの方の話をずっと推定するならば、そういうふうにならざるを得ないじゃありませんか。それにもかかわらず、あなたは言を左右にして争点をぼかそうとしておるのが、私にはよくわからないのです。子供にもよくわかるようにお父さん一つ話して下さい。
  114. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 また同じような答弁になりますが、私が申し上げることは、みんなの意見を聞いてから自分の考えをきめたいということにあるのです。ただそれだけです。
  115. 横山利秋

    ○横山委員 そうすれば、もう一ぺんあなたのおっしゃったことだけをここに繰り返して確認をしておきますが、今回の税制改正において、あなたは中小企業の減税をする、また中小企業にこれ以上重税になるようなことはしない、こういうことだけは明確におっしゃった。それが、今度の税制改革について、あなたが本委員会においておっしゃった意見である、こう理解してよろしいか。
  116. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私は今までの言葉のうちで、たとえば中小企業に減税をする、そういうふうなことは言ってはおりません。それらの点については、すべてみなの意見を聞いた上で、さらに自分の考えをまとめる。ただ私が先ほどから申しましたのは、中小企業の強化ということは、どうしても今後の施策として政府としても取り上げなくてはならぬ、また取り上ぐべき段階にある。これはいろいろと今後具体的に出ると思います。そういう場合に、一方で中小企業の強化をはかる施策をやりつつ、一方税がかりに今よりも重くなるとか、中小企業を特に今よりも税で苦しめるというよう措置をとることは矛盾もしておるのだから、それはなかなか考えられないのじゃないか、かように私は申したわけであります。
  117. 横山利秋

    ○横山委員 それでは今のお話は、中小企業に対する減税はしない、中小企業にこれ以上負担のかかるようなことはしない、こういうことがあなたの御答弁のように承わりました。そうだといたしますならば、あなたの御答弁を翻って考えてみて、売上税についての岸幹事長とあなたの答弁との間の重大な食い違いというものは、私は国民納税者諸君に非常に衝撃を与えるものだと憂慮するものであります。そういうことがいつまでも続いてよいものではないと私は思います。すみやかにこれは政府与党の間で解釈を統一して、明確にされんことを望むわけであります。次回の委員会において、重ねて私はその点について、与党と政府との意見調整の結果についてお伺いすることにいたします。  それから第二点の、今の臨時税制調査会における結論について、今の争点について、あなたが中小企業にこれ以上の重税になるようなことはしない、こういうふうにおっしゃった点についても、十分に今後の結論について私は注目をいたしておきたい、こう考えておるわけであります。  時間がおくれまして恐縮ですが、最後に一点だけお伺いしておきたいのは、きのう人事院が公務員給与の改善を勧告いたしました。そうしたらまたあなたは、この間御注意したにもかかわらず、すぐに談話を発表されまして、これはあかぬというふうな談話を発表されたことは、繰り返し繰り返し私は遺憾の点を表せざるを得ないのであります。公務員諸君は、もう二年にわたたってベース・アップをいたしておりません。この勧告の中にもございますように、それぞれの民間給与とも、三公社五現業の給与との不均衡もすでにございます。先般社会労働委員会で、あなたは私に対して、特にあなたの管轄下にある大蔵省職員に対して、給与の改善はしなければならぬ、こう言って力説をなさいました。それにもかかわらず、今ここに公務員給与の改善を勧告されたら、まっ先にあなたが、これはどうもまずいというようなことをおっしゃったのは、全く今日までのあなたの言動と相反したところがあるのではないかと思うわけです。一体どういうつもりでそういうことをおっしゃったのか、またこの給与改善についての今度の勧告について、あなたは尊重なさるお気持があるのかないのか。それは予算のこともございましょうが、すみやかに臨時国会を開いて、最低線――もう私どもにして見れば、この勧告は低い線で、不満足なものではありますが、しかし公務員についてしこに勧告されたものを、臨時国会で予算に計上することは、当然の政府の責任だと思うわけですが、これらについて大蔵大臣の所見を一つ率直に言っていただきたい。
  118. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 給与に関する人事院の勧告について、私は何もいかないとか、批判はいたしておりません。ただああいうふうにした場合に、財源といいますか、やった場合にどのくらいの金が要るだろうかということについて、このくらいの金は要る、これはやはり財政上についても相当大きな負担にもなる、こういうふうなことを私は一応申し上げて、これは人事院の勧告も非常に御苦心をなさっておる、十分尊重もいたしましょう。がしかし、給与制度全体に関する改正になりますから、非常に技術的な面も多いし、事務的に検討を加えなくてはならぬ点が多いから、さっそく事務当局に言って、一つ十分検討を始めよう。むろん関係各省とも一緒になって検討しよう。これだけが今の状態であるので、それらの検討をしました上で、さらにまた大蔵大臣として、あるいはまたこれは給与担当の大臣が特に中心でありましょうが、結局は、やはりこれは、金の面も財源の点もあるのでありますから、大蔵大臣としても考えてみます、こういうことになると思います。
  119. 横山利秋

    ○横山委員 そうしますときのうの夕刊に載りました、この勧告はだめだと言われたようなあなたの談話というものは、根拠なきものだ、こういうふうにおっしゃるわけですね。それが一つ。  それからもう一点お伺いしますが、新聞によりますと、本日根本官房長官が閣議に報告をして、その取扱いについて検討することに予定されております。きょうあなたは閣議を終っていらっしやったそうでありますが、本日の閣議において、この人事院の勧告がどういうふうに結果がなされたか、それを一つ伺いいたしたい。
  120. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 政府としては、今関係各省で事務的にまず十分な検討を加えて、その結果さらに意見をまとめよう、こういうことになっております。
  121. 横山利秋

    ○横山委員 きょうの閣議はそれだけのことですか。
  122. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 大体そういうふうな話です。
  123. 横山利秋

    ○横山委員 そういたしますと、この勧告について、政府は尊重するともあかぬとも何ともこまらなかったわけですか。きょう私は、もう二時間か三時間たてば夕刊を見るわけですが、あなたのここで答弁される言葉と、おそらく根本さんが発表されただろうと思うのですが、違いはないと思いますが、率直に一つ言うてもらいたいと思います。
  124. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 言葉を一々申し上げかねるのでありまするが、むろん政府として、この人事院の勧告は常に従来とも尊重はいたしておるのであります。できるだけその、趣旨に応じたことをやっていきたい。むろん今回も尊重いたすことは間違いないと私は思います。それがゆえに関係省において事務的にすみやかに検討を加える、かようになっております。
  125. 石村英雄

    石村委員長代理 この際石山委員より関連質問の申し出があります。これを許します。
  126. 石山權作

    ○石山委員 大臣は今まで日本の経済安定というふうなことをしょっちゅう言っておられたのですが、この安定は低物価につながる安定をお考えになっておられますか。
  127. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 経済の安定ということは必ずしも低物価ということではありません。ただしかし、日本の経済を安定させるためには、どうしてもいわゆる輸出の振興ということが今日の段階では重要であり、先行しなければなりません。従って生産費というものが国際的な水準になくては競争ができませんから、そういう意味において、生産コストをきるだけ低くする努力を払っていくということが経済安定の量も大きな点になる、かように考えておるわけであります。
  128. 石山權作

    ○石山委員 大臣は、大蔵省に来られる前には非常に金が唯一なもので、絶対権威があるのだというふうに考えられて、やはり低物価税をとっていたと思います。今の貿易の問題なども、去年の暮れあたりから、大きな新聞の論説などでも非常に言われていたことですが、為替管理法などといっても、官僚のやり方はまずいのだ、もうそろそろ改めるべきだ、いたずらに国内物価を高くする、プレミアをつける、そのために汚職が限りなく起きる、イモ、砂糖、バナナというふうな問題も次々に起きる、物価の安定の意味からしても、為替管理法というものを改める必要があるのではないかということを論議されているのですが、それに対してどういうふうなお考えを持っておられますか。
  129. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これはやはり経済の正常化につれて、為替管理は緩和していくべきだ、こういう方針をとっております。
  130. 石山權作

    ○石山委員 先ほど為替局長の石田さんからも、経済の正常化という言葉をたくさん聞くのですが、時によって正常化が非常に御都合のいいようなことになったり、また非常に幅が狭くなったりいろいろなのですが、あなたのおっしゃる経済の正常化というのは、どういうことをおっしゃるのですか。
  131. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 経済の正常化と言えば、ごく平たく言えば、それぞれの分野にあって経済は一本立ちでやっていける、特別な温室的なものはない、こういうふうに考えれば比較的わかりやすいのではないかと思います。
  132. 石山權作

    ○石山委員 官僚統制という言葉を申し上げると、いささか耳にさわるかもしれませんけれども、もっと幅を広く、もっと国内の物価といろいろにらみ合せて、物資が豊富になったのでありますから、そういう点でもう少し管理法を変えるというお考えがあるかないか、その時期をいつごろにしようと考えているか、こういうことを一つ聞きたいと思います。
  133. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 産業構造の問題ですが、これは私の考えでは、終戦後における日本の国情というものが非常に変化しまして、特に四つの島になっておる、そうして今後の輸出市場というものが東南アジアなどが中心になってくる、こういうことを考えた場合に、やはりこれに適応する産業構造というものが考えられていくべきだというふうに私は考えておるわけであります。
  134. 石山權作

    ○石山委員 今の日本の貿易の考え方、あるいは大蔵省が日銀等を通じて金融界に及ぼす強制力を見ていますと、やはり日本の経済の安定ということは、低物価に結びついているのではないかと思っております。低物価と結びつくにはどうしても金利高が問題になる。税金が世界に類例のないほど高いということが私は問題になると思う。そういう点には触れないで、たとえば賃の問題などをくぎづけにするというようなことを大臣はしょっちゅう表明されているようでありますが、それでは私はやはり片手落ちではないかと思う。あなたが声を高くして叫んでいられましたところの金利の引き下げの問題はどうなりましたか。あるいは保険料率の問題はどういうふうになっておりますか。最初は、あなたの意図するところは、私たちも賛成して見守っていたのでございますけれども、一厘方ようようすったもんだでやっておって、そのまま行方不明になっておって、さっぱりあとが続かないというのが現状のように思いますが、前途はいかがでございましょう。
  135. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 金利の問題でありますが、金利はなるほど一厘下ったとい、わけではございません。むしろ相当急激な低下を見ております。ただ問題は、常に金利が下る当初と同じような速度でずっと下るというようなものではないのでありまして、当初の金利の下り方は、特に輸出が非常によくて輸出超過、言いかえれば外為会計から来ている資金の蓄積が多かった、かように考えているわけであります。従いまして、今後においては蔵にある商品をふやす、原料をふやす、こういうふうなことになってくると、輸入をどうしても日本の場合はふやさなければならぬ。こういうことになってくると、そこで市場資金が若干枯渇します。枯渇までいかなくても、思うようにふえない。そうすると、一時金利の下げ足が鈍る、こういうことは当然考えなければならぬ。しかしながら結果において、日本の産業が貿易に依存してやっておるということは、物価の安定を前提としなくてはならぬ そして経済が拡大して、…民所得がふえて、物価は安定する。こういうように自然の関係を考える場合に、貸金の蓄積というものはやっぱり増加していく、行く先はやはり金利は低下の傾向にある、かように考えていいと私は思っております。ただ一時的ないろいろな原因から、金利は一時停頓することはありますが、大勢としてはなお下る環境にあると私は考えております。
  136. 石山權作

    ○石山委員 私、金利の問題が貿易の場合非常に障害になっていると聞きます。金利と、いわゆるココム協定の問題が日本の経済をいびつにしている、こう言われているほど日本の金利が高い。それに引き比べて貸金などは法外に安い。そういたしますと、賃金が法外に安いということを言いますと、一人当りの単位の生産量が違う、こういうデータをお出しになって、いろいろ比較されておりますけれども、公平に申しますれば、人件費などは、日本の場合は非常に安いということは、私は言い得ると思う。高いのはその生産に与える原料、金利荷、それから古い機械でございます。この三つが作用してコスト高になっているのではないか。そのうちに一番優位を占めているのは金利でございます。これは銀行の方がどう言うかもしれませんけれども、あなたが日銀総裁にいられる当時は、非常に銀行の方が楽をして、収益をうんと上げたのではないか。地方に行ってごらんなさい。日銀でも各人銀行もそうでございますけれども、こわさなくてもいい建物をどんどんこわして、そうして新しい建物を建てて金融の殿堂を誇っておる。これほどもうけているではないか。こういう点、もう少し金利を引き下げる余地がまだまだあるのではないか。得にあなたが願っている日本の経済安定が低物価に連なるとするならば、そういうことを指導される任務があるのではないか。日銀から政策委員の権威をなくしまして、金融制度調査会をば大蔵省がおおむね握るような現段階においては――あなたは前には、金融というものの中立性を保つ、こういうふうなことをおっしゃっていたのですが、最近はそうではないように思う。金と物とは違うらはらであるし、金の権威を高めるためには、やはり行政的な手腕が必要になるということがだんだんあなたの活の中身に出てくるところを見ますれば、もう少しあなたの働く余地が、日本の金融界あるいは日本の産業のコストの問題などいろいろの面にまだ残されている、こう思うのですが、もう少し御所見を承わりたい。
  137. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 金利の点につきましては、従来も努力して参っております。なお先ほど申しましたような情勢もあるのでありますから、今後一そう金利が下りますように努力していきたい、かように考えております。
  138. 石山權作

    ○石山委員 大蔵委員会相当の大臣が、ただそういううるさいというような格好で突っ放すんじゃ、委員会としては非常にやりにくいことだと思います。あなたは相当の大臣でございまして、よそからおいでになった方でないのでございますから、やはりもっと詳細なところを、特に金融に関する限りは、あなたはお手のものなのでございますから、もっと親切な答弁があってしかるべきなのであって、たた考えておるというんじゃ、これはだれしもできる答弁であります。考慮する、考えます。これは皆さんがしょっちゅう使いになる言葉で、それはよその大臣から聞いてもよろしいのですが、私は大蔵大臣からそういう言葉を聞きまして非常に残念に思います。そういうふうになりますと、私も質問する意欲を失ってしまうので、結局は当委員会はおざなりになるし、しゃべればあなたのあげ足でもとって、たまには穴でもこしらえて落としてやれ、こんなようなことにしかならないのであって、やはり委員会の場合特に大蔵委員会の場合は数字がものをいうのでございますし、そういう点では、私は卓をたたいたり、あなたを落し穴に入れるようやり方は何も要らぬと思う。もっと腹を割ったやさしいものの考え方で、身内のことだと思って、これはこういうわけでできないのだ、こう言っていただけば、何もわれわれだって、むやみやたらにあなたに対して、野党だから反対しなければならないといって、年がら年じゅう力んでいるものでもあるまいし、もう少しそういう点を御考慮願いたい。ことに来月も当方員会は二日開かれます。私らも勉強しましてもっと質問しますが、今みたいでありますと、この次は落し穴を用意して、あなたに辞職勧書を見せたりするよりなあまりおもしろくないことまでして、気持を引き立ててやらざるを得ないというようなことになるのでありますから、そうでないよう一つお願いいたします。  最後に、私低物価の問題につきましてもう一つお尋ねしたいことは、間接税の問題でございます。低物価と間接税の関連性、それからあなたが認可権を持っている公共企業の問題のたとえばガス、水道、鉄道、こういうふうなものの料金、ガス、水道などは、去年度すでに上ったように思っておりますけれども、まだ残っている問題で特に一番大きいのは、鉄道運賃でございます。これは来年にするとかいろいろあるようでございますが、そういうことに関して、特に間接一税の場合は、あなたが直接の担当の権限を持っているのでございますから、それに対する御所見を承わりたいのです。
  139. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 御承知のように、今後日本の経済で、一番注意すべき点は、私は物価の増高にあると思います。これは今日国際経済においても同様なことがいえるであろうと思うのであります。従いまして、物価の騰貴を招来するというようなことについては、私非常に慎重にならざるを得ない、かように考えております。そういうふうな見地から、間接税当についても、あるいはその他のいろいろな政府機関の料金の引き上げというような点についても、これは非常な慎重な態度でいかなくてはならない。そいうようなことから、物価勝貴を招来せしめるようなことがあってはならぬ、かように考えておけるわけであります。
  140. 石山權作

    ○石山委員 一つだけ御要望申し上げて終りといたしますが、人事院の報告についてでございます。これは二十九年、三十年ともに、人事院は勧告その他の作業をば見送っております。そのために、民間との差が相当顕著になっているということは事実でございます。しかも民間においても、差があるということでございます。中小企業と大企業の差は、これまたまことにはなはだしい。私どもの今の税制の問題もそうでございますが、税制の場合にも、不均衡と簡明にするということに是正しなければならぬ。これは大臣も賛成だと私は思う。非常に繁雑な体系をば簡明にする、不均衡といわれて非難を焚けている税体系をば均衡化する、これは私はだれも不賛成でないし、政治を志す者は当然だと考えておる。給与の問題も、日本全般から見た場合どうしてこういう不均衡が起きたか。大企業の組合の人々は相当な賃金をもらっておる。ある組合によると平均二万五千円、ある組合によりますと、残念ながらその半額をももらっておらぬ。官公にしましても二万円にはほど遠い。こういうような体系は、決して正しい経済のあり方ではない、こう思いますと、問題はやはり政治の貧困というものをまざまざと私たち見るような気がしてなりません。特に日本の経済の中枢をになっている――これは私は何も一萬田さんのみをさして言っているのではない。大蔵省の各局長さん、長官等に対しても私は要望申し上げておく。こういうような不均衡は、やはり政治の面で是正する余地がたくさんあるのではないか。考え方によると、やり得る要素があるのではないかと思うのでございますから、今後もお互い、われわれも一生懸命やりますと同時に、大蔵大臣のように最初から、一千億かかるからこれはあかぬというような言明で、そういうふうなもののきめ方では、私は政治は決してよくならぬと思うのでございますから、お互い一つよろしくやっていただきたい。こういうふうに要望申し上げておきます。
  141. 石村英雄

    石村委員長代理 小山君。
  142. 小山長規

    ○小山(長)委員 委員会もたびたび開かれませんので、一つ何っておきますが、不動産銀行はその後どういうふうに進捗しておりますか。大蔵大臣は、今後どういうふうに進めていかれるか、一方針だけ伺っておきたいと思います。
  143. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 不動産銀行の点でありますが、これにつきましては、まだ十分検討をしなくてはならぬ点が多多残っておりまして、今事務手当で検討を加えて、果してこれが銀行としてペイしていくか、収支償われていくかという点を中心に検討を加えております。それと同時に、私が従来から申しますように、これはやはり中小企米金融の一環として考慮したい、それには、金融界としても適当な考慮を払ってほしいというような、いろいろな点も今交渉を進めております。大体そういうことで、今ここでどうきまったという段階ではありません。大体話は進んでいくだろう、かように考えております。
  144. 小山長規

    ○小山(長)委員 この問題は、私法案審議のときも申し上げたのでございますが、単なる朝鮮銀行の救済ではないのでありまして、わが自由民主党としましても、中小企業の竹に苦しんでおりますのは、金融はどうにか現有ゆるんでついておりますけれども、依然短期の金融があって、始終期日に追いかけられておる。設備資金はもとよりでありますが、運転資金は特に短期によっておる。そこでこの不動産担保銀行なるものができれば、一番中小企業が苦しんでおる長銀の金融ができるであろう、ここに私は正眼があったのであろうと思います。同心に、これについては、政府の方もそれから民間の企業も共同してやらなければならぬ。単なる朝鮮銀行の救済ではないのだから、共同して大きな目的に使っていきたいというのが、法案の構成の際におけるわが常の態度でもあったのであります。そこで今大臣が言われましたこと、それから新聞等で拝見をしますと、市中の大銀行に対して、相当な資金的な援助をしてもらうような交渉をされておるようでありますが、市中の金融機関が、多少私は認識が足りないのじゃないかと思う。ということは、市中の金融機関に私が行って話をしますと、中小企業には大銀行だってやっているのだ、五〇%やっているじゃないか、こう言われるのであります。やっていますけれども、かんじんなところは短期金融だということ、短期の金融であるから、中小企業は困っておるのであります。そこで金融の量においては、あるいは徐々に改善されておるかもしれぬけれども、質において一向改善されていない、ここに問題点があるのでありますから、その点を大銀行等にもよくお話をされて、そうして相当な資金をここにプールして、しかも長期の金が使えるように協力してもらいたいということを、大臣の方からよくお話し願えば、市中もついてくるのじゃなかろうか。そうして同時に、それには、銀行そのものがただ朝鮮銀行の残党の寄り合いであるというようなことでは、市中の協力も得られないと思いますので、やはりここには、布中の金融機関が協力できるような人間というもの、首脳部の構成というものを具体的にお話しになって、人的にも資金的にも協力できるような態勢を大蔵大臣の方から一つ指導していただかたないと、なかなかわが党の願望は達成できないのではないか、こう思いますので、これを一つぜひ御推進願いたい。  それからもう一つ。大蔵当局は非常に悪いデマ宣伝を飛ばしている。これは一つ大臣に監督していただきたいのでありますが、不動産銀行ができてもペイしないじゃないか、そんなものはできるはずがない、こういうふうなこと大蔵事務当局が言っている。こういううことでは、市中銀行は協力しようにも協力のしようがありません。これはりっぱにペイするのだということを自信を持って、また指導もしなければいけませんが、事務当局の方は、大臣が考えるほどあまり熱を入れておらぬ。これはわが党の政策に協力しない連中でありますから、一つわが党の選出の大臣は、そういう面においても監督していただきたい。そして目的は、中小業の長期の金融をどうやって円滑にはかっていくかとうことなんですから、それをペイするかしないかというようなことは、長い目で見なければわからぬことなんです。それから百億あれば、それはばかでもちょんでもできる。私でもやれと言われればできるくらいです。三百億も資金量が集まればできないことはないのでありますし、ぺイの問題は、要するに資金の分量の問題なんですから、そういうところを事務当局がよく御指導願って、変なことを事務当局から新聞に出したり、金融界を惑わすことのないように、一つ十分大臣は目を光らしていただきたい。同時ににこれが進むように、むろん資金運用部の金も使わなければならぬでしょうし、あるいは率先してこれを使うということを表明されることが一つの促進方にもなるかもしれませんから、そういう点を十分お考え願って、わが党がせっかくいいことをやろうと思っているのに、いつまでもごたごたしているのでは困りますから、その点十分御考慮の上でやっていただきたい。むろん大京としては、そのおつもりでおやりになっておると思うのでありますが、なお市中の協力ということは、このスタートの上で私は一番大事なことだと思いますので、その点特にまた慎重に、しかも迅速に促進していただきたい。これも要望しておきますが、何か今後のことについてお考えでもあれば、一つ伺っておきたいのであります。
  145. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 全く私同じ考えで指導を今いたしております。それから大蔵省の事務当局のお話がありましたが、そういうことはないと思いますが、注意は十分いたしております。今後ああいうことはないと思います。
  146. 石村英雄

    石村委員長代理 春日君。
  147. 春日一幸

    春日委員 鳩山内閣はその成立当初から、綱紀粛正をその表看板の大きなものとして国民に約束をいたしておりますが、それは政官界の粛正ということで、汚職、疑獄、収賄、涜職、そんなものは厳に排撃しなければならぬ。しかしこういうような問題は、その後防衛庁の中古エンジンからバナナ、競馬、多久島と、次々と政府部内から馬脚を表わして、これは全く全面的に崩壊をしてしまったことは、まことに残念しごくに存ずるのでありますが、その綱紀粛正の中に、具体的に政府が掲げておりました項目の中に、マージャンを廃止したり、宴会政治を廃止したりすると同時に、公邸を廃止するということを強くうたっておりました。この際あなたは、国有財産管理の責任者として、その後公邸がどの程度廃止されたか、これを一つ伺いいたしたい。  それからわれわれが知った範囲において、その公邸の廃止の形態が、たとえばこれは直接あなたの管理にはならないかもしれないが、国鉄総裁の加賀山之雄君、あるいはまたあなたの直接管理のもとにあった井上義海印刷局長、こういうような公邸の廃止のあり方は、国有財産をほとんど二束三文の形で当該使用人に払い下げをいたしまして、そうして公邸が廃止されたのだが、こういうようないわゆる選挙公約の公邸廃止が、この加賀山君の例やあるいはまた井上義海君の例のような、こんな形で廃止していくということは、この選挙公約を率直に果した形式であるかどうか、この点についてどういうような批判を持っておられますか。責任者として一つこの際見解をお示し願いたいと思います。
  148. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 公邸は四つ残しまして、あとは全部廃止いたしまして処分いたしております。それからあとの国有財産の処分についての問題ですが、これは不適当なことがありましたことについては、それぞれ処分をいたしました。なおこれは、私が大蔵大臣になったときからそういうふうに思っておったのでありますが、何しろ国有財産は、特価では二兆をこえるものを持っております。これが運用あるいは処分が適当であるかどうかということは、非常に大きな問題で、それは今日の管川方法あるいはまた処分、活用について、根本的な検討を加える必要があろうというので、先般国有財産についての審議会を作りまして、これは地方にも作りましたが、今根本的にこのあり方について審議を願っておる次第でありまして、むろんこれは将来国会にも諮らなければなりませんが、最もいい方法を見出してやりたい、かように考えております。
  149. 春日一幸

    春日委員 国有財産を廃止するという方針のどさくさに乗じて、当該使用人たちが不当に養い価格でその公邸の払い下げを受けておる、こういうようなことは、参議院の委員会議論においても、幾多の事例が明らかにされておるが、本委員会においても、幾多の事例を取り上げて政府を非難しております。公邸を廃止するという、こういう方針に乗じて、当該使用人たちがはなはだ安い価格でそれを私有化しておる、こういうような廃止の仕方はいいか悪いか、これを一つはっきり御答弁を願っておきたいと思います。
  150. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 決してこの国有財産処分について、不当に安い値段で払い下げるというようなことがあってはならないのでありまして、今回井上君の例がありましたが、これについて厳重な処分をいたしたわけであります。
  151. 春日一幸

    春日委員 それで綱紀粛正の実を上げるためには、公邸を廃止するという方針に基いて、不出に安い価格で受ける辻中がけしからんことは論を待ちませんけれども、しかしその公邸に住んでおって、その職を退いてなおかつ長期間にわたって公邸に居住して、それを占有しておる連中が少くはない。例を言うならば、国鉄においては、天坊副総裁なんかは、やめてしまってからすでに一年何がしかになりますか、こういうような工合になかなか公邸から立ち去ってはいない。少くとも公邸に住んでおるような諸君は、相当社会的地位も高いところにある人々なんだから、そしてそれは国民の共有の財産であり、そしてその機関のそれぞれ当事者が住まうという公邸の本来の性格から考えて、当然それは早期に明け渡ししてやる、そしてその間の責任を明らかにしておかなければならぬと思うのだが、本日なおその公邸に居住しておる前任者たちがたくさんあると思う。こういう連中に対して、大臣は一体どういうようなお考えをお持ちになっておるか、この際御答弁願いたいと思います。
  152. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 全く御意見の通りでありまして、職務関係によってその家を占有しておるとすれば、それが終れば、やはりなるべく早く家を明ける、これは当然のことだと思います。
  153. 春日一幸

    春日委員 なるべく早くというのも、おのずから限度がある。これは期せずして発令されることでありますから、一カ月や二カ月で直ちに居住先を探すということは困難ではあろうと思うが、さりとて一年も、中には一年八カ月も住んでおる連中がないわけではない。こういうよう連中に対して、綱紀粛正の表看板を掲げて本日までいろいろな選挙を戦ってきた政府といたしまして、当然そういうような不当な居住者に対して、すみやかに退去するように適切な措置をとられんことを強く要望いたしたいと思います。  そかれら売上税の問題なんですけれども、これは横山君の適切な質問によって、大体おぼろげながら政府の意図しておるところはわからないではないですけれども、しかしわかったかというと、これは何もわかってはいない。水に映った二十日月みたいなもので、見ておれば見えるけれども、つかんでみれば水だというようなもので、これは結局なかなかむずかしい。私はこの際はっきりしておかなければならぬことは、特にまた大臣の御理解を願っておかなければならぬことは、今全国各地において催される中小企業者の大会は、いずれも売上税創設絶対反対、これをスローンとして大会が持たれておる。そして売上税が創設されるかもしれぬので、事前にその業界の意思を明らかにしなければならぬというので、大会を特に持って、そういう議決を行なって、政府並びに国会に対して陳情を行なっておることは、大臣もあるいは御承知のことであろうかと思うのであります。そこで岸さんが発表されたよう方針が、これは政府並びに与党を貰いての方針でありとするならば、はっきりそれを国会を通じて国民に示されて、そういうような大会を持たれることは無用である、政府も与党もそんな意図はないのだということをはっきりされることによって、彼らの心配を解消することが、政府として親切な態度ではないかと思うのです。横山君の指摘されました通り、一兆円のこの予算の範囲内において、一方を減ずればどこかにその補いをつけなければならぬ。そのつける方法は、私どもこの大蔵委員会においても長年審議をいろいろして参りました経験から徴しますれば、これは組税特別措置法の重要なる項目を廃止するか、あるいは売上税というか、取引高税というものを復活するか、これは二者択一であって、ほかに方法はないと思われる。われわれが最も心配することは、再軍備予算があるいはふえていくかという問題、他の一つは、さきに大蔵大臣が発表されたこの直接税、ことにこの動労所得を軽減するという、こういう公約と相関連をいたしまして、その補いをこういう売上税によってつけられるのではないか、ここに中小商工業者たちの心配があるわけであります。私はこの際理論的にもまた政治的にも、あなたの方が売上税をおかけになるというのであれば、これはかけるのだということをはっきりされて、問題の所在を明らかにされたがよろしかろうと思うし、おかけになる意思がないということであるならば、これはまたこの際明確にいたされまして、そうして全国で続々と持たれておる大会に対して、そういう必要のあるなしをはっきりとされることが、私は親切なる政府の態度であろうと思います。従いまして、もう少しはっきりと一歩進んで、かけるならばかける、かけなければかけない一なぜ本委員会でこの問題を特にかくのごとく執拗にお伺いをするかと申しますと、これはもうかれこれ予算編成期にも入って参りまして、かけるならばかける、かけなければかけぬということも、この七月、八月を通じておおむね腹がきまることであろうと考える。時期を失しては相なりませんので、この際あなたがほんとうに政治的的責任において考えておられるところを率直にお述べを願って、国民の腹がまえを一つきめていただきたい、こういうふうに考えるわけであります。売上税は創設される意思があるのか、それともそれは全然ないのか、この点をもう一ぺんはっきりお示しを願いたいと思います。
  154. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 いろいろとただいま御意見がありましたが、御意見の点は十分承わっておきます。  なお売上税の点につきましては、先ほどから皆さんにたびたび御答弁申し上げておきました。それで御了承願いたいと思います。
  155. 春日一幸

    春日委員 私は一個の議員としてあなたにお伺いをいたしております。人に御答弁されたことは、私が聞いておる場合もあるし、聞いていない場合もある。そこで私ははっきりお伺いをいたしたいことは、私が聞いた範囲ではわからないのであります。そこで一個の議員としての権威において、私は大蔵大臣に質問をいたしております。そこで売上税というものは創設されるのであるか、されないのであるか、これをお伺いいたします。
  156. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 今私は、売上税について実は考えていないということをしばしば申し上げた。しかし税制をどうするかということは、今税制調査会に包括的にすべてを諮問いたしております。それの結果を待って考えてみたい、かように申し上げておきます。
  157. 春日一幸

    春日委員 現在の政治は政党政治であって、これは政党が責任をとらなければなりませんし政党から責任を持って大蔵大臣の席に着かれた以上は、あなたに徴税行政に対する抱負と経輪とがないというわけはないと思う。与党自体ですらわからないから、奧村君がああいうよりな質問をしておるわけであります。かけないということがはっきりしておれば、ああいう質問があるわけはない。かけられるかもわからないというような、こういうような心配があるからこそ、与党内部においてもこの点を明らかにしなければならぬというので、ああいう質問が行われておるのであります。そこであなたは、ただいま税制調査会の答申を待って、その上でその腹をきめる、こういうことでありますけれども、税制調査会というものは、何も責任的立場にあるわけではない。国民は何らそのようなものに信託はしておらぬ。こういうようなものの答申を待って私の腹をきめるのだ、こういうようなことでは、委員会にはなりませんぞ。国会構成にはなりませんぞ。このよう税制調査会というものは、国民と国会に対して何のつながりもありません。従いまして私が聞かんとすることは、社会党の存日委員は、政府の大蔵大臣に対して政策的に、今回この売上税をかけるのかかけないのか、別途与党の幹事長である岸さんは、かけないのだ、こういうことを言っておるが、そういう方針を大蔵大臣はおとりになるのかどうか、税制調査会というような、こんなものは全然われわれとは関係ありません。大蔵大臣に尋ねて、あるならばある、ないならばないと御答弁願えばいいことであって、議決機関でも何でもない調査会の決議がどうだこうだというようなことでは、われわれは国会議員として職責を遂行することはできません。おかけになるならばなる、ならないならばならないと、この際一つ明確に御答弁願いたい。
  158. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私の申し上げますことは、まだ大蔵大臣として自分の意見をきめる段階に今ないということであるのであります。むろん与党の幹事長もああいう声明をしておるから、非常にむずかしいということを一方では考慮はしておる、こういうのが今の段階だと思います。
  159. 春日一幸

    春日委員 それではお伺いをいたしますが、その税制調査会の答申を待ってあなたの腹をきめる、こういうことであります。これは与党、野党を問わず、政党人といたしましては共通の心がまえ、ルールというものはあるでありましょうが、あなたは与党の幹事長の意見を重く見られますか、それとも税制調査会の意見を重く見られますか、どちらでありますか。
  160. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 どちらが重いとか、軽いとかという意味では決してありません。私はやはり大蔵大臣として最も適当な時期を選んで、自分の考えをきめていきたい、かように考えております。
  161. 春日一幸

    春日委員 そういう御答弁では、国民は一層疑心暗鬼にかられると思うのです。もう少し問題を大胆にかつ誠実に取り扱うのでなければ、お互いの職責は尽しがたいではありませんか。あなたは税制調査会、調査会と言われますけれども、これは単なる諮問機関なんですね。しかもそれは、法律によるところの諮問機関ではなく、これは単なる、総理大臣が任命をしただけのことであって、これは国民とは何のつながりもないのですよ。ところが政党の幹、長というものは、その政策を掲げて信を国民に問うて選ばれた、それぞれの党員の信任を得て幹事長になっておられる。その人が信念を持って――国民と深いつながりを持っておる政党の、しかも幹事長が、信念を持って売上税はかけない、こういう工合に言っておる。ところがあなたは、その独自の権威を持って、これは全然別別のものだ、別個の見解である。大蔵大臣としては別の方針をきめるのだが、そのきめる大きな基礎になるものは税制調査会の答申である、こういうことでありますが、一体そういうあり方というものは、お互いに政党人としても、また現在の政党内閣の責任体制を明確にする上においても、これはだれに聞いたって納得ができないではありませんか。だから私のお伺いしたいことは、われわれに明らかになっておることは、自由民主党としては売上税はかけないのだが、この上自由民主党の内閣の大蔵大臣は、幹事長の言葉をそのまま政府方針としてのっとるものであるか、それを否認するものであるか、これを一つ伺いいたしたい。それはどちらでもいいのです。ただ私は、税制調査会の答申を待たなければあなたの腹がきまらないということは、これが大きな重要なる政治政策であるだけに、はなはだ納得ができない。だから、この点を一つ明確にしていただかなければ、私は引き下るわけには参りません。だから、なぜその税制調査会の意見にそれほどこだわられるのであるか、またどういうような職務権限、あるいは法律とのつながりがあってあなたにそういうような制約を及ぼしておるのであるか、この点を、一つわれわれの納付ができるように御答弁を願いたいと思うのであります。
  162. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 決してこだわるのではないのであります。むろん政党内閣でありますし、与党の幹事長は、与党を代表しての、言葉でありますから、それを尊重していくことは言うまでもありません。そういうふうな考えた尊重しつつ、また多くの専門家の意見も聞きつつ、私は私としての見解をきめよう、こういうのであります。どうぞ誤解のないようにお願いしたいと思います。
  163. 春日一幸

    春日委員 これは重大な問題であります。予算の編成はいつごろから取りかかられますか。
  164. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 今のところいつからというふうにも考えておりませんが、なるべく早いうちに予算編成の方針はきめたい、かように考えております。
  165. 春日一幸

    春日委員 税制調査会の当該問題に関する答申は、いつごろあなたの手元になされますか。
  166. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 今のところ、委員会へはなるべく早く答申を出すように督励いたしておるのでありますが、いつということはまだ連絡もありませんが、おそらく九月末か十月にかかりはしないかと一応想定いたしております。
  167. 春日一幸

    春日委員 それではもう一ぺん伺います。税制調査会の答申が売上税を創設すべし、こういう答申がなされました場合、一方与党の幹事長は売上税は創設しない、こういう二者相異なる意見がそこにもたらされた場合、あなたの選択はいずれをとられますか。
  168. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 かりに売上税を答申した場合に、どういう根拠に基いて、またそういうものを創設した場合に、一体どういうふうな影響があるのか、あるいはまたその売上税が税全体の中でどういうふうな関係を打つか、いろいろ具体的なものを見た上でないと、何とも今私は申し上げかねるのでありますが、ただ、しかし何といっても国会の御審議を仰がなければならぬことばかり、ありますから、そういう点も十分考慮に入れて大蔵大臣としては考えなければならぬと思っております。
  169. 春日一幸

    春日委員 これはもうまるっきり見当がつかないのだが、ただあなたに申し上げておきたいことは、この売上税が創設されるかもしれない、われわれが質疑応答を通じて明らかになったことは、売上税創設の意図がはなはだ濃厚である、こういう印象を私たちは受けました。そういたしますと、このままでお別れをいたしましては、全国の中小商業者たちは、これは大へんなことだ、こういうので、おそらく全国的に各業種、業態において総決大会が持たれざるを得ないだろうと思う。国をあげて猛烈な反対運動が巻き起るであろうと思う、私は、この際聡明にわれわれが事に処していかなければならぬ考えるのだが、少くとも与党の幹事長が、そういうものを創設する意思はないと一方明らかにしており、そしてあなたの意思、あなたは税制調査会の答中を待って、いろいろなよってもたらされる影響を当えてから腹をきめる、こう言っておられるのだが、その結果、結局与党の幹事長の言うように売上税を創設しないという形にもしなったとすれば、これは中小商工業者に対して莫大な損告を与える形になる。一つの大会を持つのでも、大会の費用そのものでも、五方や十万はかかるであろうし、大会に参加するところの個人負担等を考えれば、何億という大きな負担になるであろう。中小企業者が現在当面しております窮状の一端でもあなたが御理解願っておるならば、そんな意地の悪い御答弁をなさるのではなくして 私たちはあなたに対して、戦うときは戦うのだが、協力するときには協力しておると思う。そういう意味で、あなたが言葉の行きがかり上創設しないということを今さら言い切れないとするならば、少くともそういう疑いを晴らすような適当な表明でもなされてはどうであるか。それとも、あくまでかけるかかけないかわからない、かける方が濃いなら濃いというようなことであれば、国民は猛烈に反対運動をして、あなたを更迭するとか、あるいは内閣を打倒するとか、とにかく問題をそこにまで巻き起していかなければならぬと思う。私はもう少しどちらかに近寄った、かけるならばかける方に近寄った、かけないならばかけない方に近寄った御答弁を願うことによって、関係当事者たちの心がまえ、これに対処する方針等もあらかじめとにかく立てさせてやらなければならぬと思うので、もう一ぺん御答弁を願いたい。
  170. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私の考えておること、また私の今の答弁のもとになっておるのは、要するに税制の改正につきまして根本的にかつ全般的に研究を願う、こういうふうにいたしておるので、従ってごくフリーに、ほんとうに国全体の立場からどういうふうな税制がいいだろうかということを考えてもらいたいという考え方からであるのでありまして、一つ春日さんにもお願いしますが、何も売上税を創設するということを考えておるわけでもないのでありますから、どうぞそう運動を前もってやるようなことのないように、私からもお願いをいたしております。
  171. 春日一幸

    春日委員 私は税制全般について質問しているのではないのです。ただ問題は、売上税の一点に集約をいたしまして、これを創設するか創設しないかということだけをお伺いしておるのです。あなたは大臣に就任されましてもう一年八カ月ですよ。従って、この売上税が創設された場合にもたらされる影響なるものについて、そんな答申待たなければはわからないというようなことではないでありましょう。頭も大へんいい方のように思いますから。だから、この一年八カ月間のあなたの当事者としての経験から考えても、それからまたいろいろな政治情勢等から判断をしましても、かにおいて、責任者である岸さんから、そういう明らかなる意志の表明が行われているし、同心にあなたとしては、一年八カ月の治績を通じて、大体の影響くらいおわかりにならないはずはないのです、聞かなければわからぬというような、そんなければわからぬというような、そんな委員会政治というものは、国民も国会も容認しておるものではない。ただあなたが勝手に作って、気休めに言っておるだけであって、結局それは答弁を逃げる材料にお使いになっておるというだけなら、卑劣な態度ですよ。もう少しあなたは率直に、私はこう思うのだ、かけるべしならかけるべし、こういうふうに思うなら思うということをはっきりして、そうして与党と野党の見解の相違はあくまで国民の批判に待ってその処理をしていく、こういう態度でなければならぬと思う。問題点をことさらに避けて、いたずらにその時期を先にずらしていくというような態度は、政党人として、いわんや最町権威者としてとるべき道ではありませんよ。もう少しあなたがこの問題を明らかにされることを強く要望するのだが、これ以上聞いても、ヒョータンナマズみたいなもので結局要領を得ませんから、これはもうやめるよりしようがない。いずれにしても、適当な機会にあなたがよく検討されて関係君たちは大へんしゅん動しておるのでありますから、いたずらに彼らにいろいろなむだな曲用をかける必要がない状態であるならばない状態のように、またそういうような心配があるならば、その責任者たるの立場において責任を明確にする、こういうことを強く要望いたしまして、私の質問を終ります。
  172. 石村英雄

    石村委員長代理 横路君。
  173. 横路節雄

    ○横路委員 大蔵大臣にお尋ねしますが、人事院の公務員の給与改善の関係ですが、あれは三つあると思うわけです。一つ給与表の切りかえ、号俸の是正と年度末手当、そこで年度末手当のことはさておいて、給与表の切りかえと号俸の是正の場合に、これを人事際勧告のように実施した場合には月幾らになりますか。
  174. 森永貞一郎

    ○森永説明員 人事院からも発表されておりますが、一般職の公務員につきまして、今回の勧告を実施いたしました場合の年間所要願は六十九億ということでございます。六十九億は、一般会計の一般職と特別会計の一般職、両方を含んでおります。
  175. 横路節雄

    ○横路委員 それでは主計局長にちょっとお尋ねしておきますが、昭和三十一年度の予算では、人事院規則に盛られておるところの昇給昇格については、完全実施できるように、予算的措置はなさっていると思うのですが、その点はどうなっておりますか。
  176. 森永貞一郎

    ○森永説明員 昇給に講ずる人事院規則、これは、昇給に要する最短期間を規定いたしておるわけでありまして、制度といたしましては、その期間を経過した者を必ず昇給きせるという性質のものではないわけでございます。そこでどの程度昇給させるかということは、また別の問題になってくるわけでございますが、三十一年度の予算で私どもが見ました昇給原資は、大体四形ということで考えております。従いまして、人事院規則で規定いたしております最短期間ですべての者が必ず昇給できるというのには、若干不十分かもしれませんが、しかし従来の実積にかんがみまして、また欠員の問題あるいは新陳代謝の問題、そういったようなことをあわせ考えますと、これで大体円滑なる昇給昇格が実施できると私どもは考えます。
  177. 横路節雄

    ○横路委員 そうすると、今の主計局長お話では、予算的措置は、必ずしも人事院規則で盛られている最短期間の昇給昇格の実施の予算措置ではないが、今あなたのお話しのように、人事院川州に盛られておる最短期間の昇給昇格は人員等の関係でできる、こういうふうに見込んでおるというお話ですが、その通り解釈していいわりですか。
  178. 森永貞一郎

    ○森永説明員 最短期間をいたしました者すべてを必ず昇給させるというところまでも保障されてはおりまん。ただし、先ほども申しましたように、欠員があるとか、あるいは新陳代でゆとりが出るとかいうことをあらわせ考えますと、相当のところまで昇給できるのではないかというふうに考えております。
  179. 横路節雄

    ○横路委員 実は今あなたにお尋ねしておるのは、地方公務員は、ほとんど人事院規則による準則によって、やっておるのですが、それが全部たな上げになっている。はなはだしいのは、一年ないしは一年半のたな上げになっておる。そこで今最短期間とは必ずしも限らない。しかし、人員等の関係でやれるんだということですが、大体何十%できるという見通しなんですか。
  180. 森永貞一郎

    ○森永説明員 地方公務員のことはつまびらかにいたしておりませんが、お尋ねは、おそらく国家公務員のことだと思います。欠員とか新陳代謝、長期欠席者というようこともございます。たとえば病気で長く休んでおる人は、遺憾ながら昇給の対象にはできないわけでございますが、そういったことを除いて考えますと、パーセンテージではっきり申し上げることはなかなかむずかしいのですが、大体昇給をいたしておるという現状だと存じます。なお地方公務員につきましては、何%とということはお答えできないのでございますが、地方公務員には国家公務員並みの給与ということですっと推移いたして参りましたにもかかわりませず、実績は、地方公務員の方は国家公務員より高かったわけでございます。そのために、いろいろ地方財政上の困難な問題起こって参りましたことは、お承知の通りでございます。そこで昨年は、地方財政問題の解決の一助といたしまして、全国にわたりまして、国家公務員並びに地方公務員全般の給与実態調査を実行いたしました。その結果に基きまして、三十一年からは、国家公務員のベースに合せた単価で地方財政計画を計上いたしております。もし各津方団体の給与水準が国家公務員の単価と同程度であるならば、これは国家公務員並みに昇給昇格もできるわけでございますが、先ほど申し上げましたように、現実はすでに相当高い俸給現在額でありますので、かかる地方団体におきましては、国家公務員並みそういう現象が起っておることは御承知の通りでございます。
  181. 横路節雄

    ○横路委員 そうすると、今のお話では国家公務員については、病気その他特別の事情によらない者については、人事院規則に盛られている最低の期間でやれる、こういうように解してよいですね。
  182. 森永貞一郎

    ○森永説明員 大体そうなっておると信じております。
  183. 横路節雄

    ○横路委員 それから第二点は、今のお話地方公務員において、全国都道府県必ずしも国家公務員より高いとは私は思わないわけです。実態調査の結果、もしも国家公務員よりも低い、あるいは同等の地方公務員の給与を支給しているところがあるならば、それは人事院規則に基いた最低期間でやれる。もしもやらないとすると、それは地方官庁が不届きであるということになるわけですね。
  184. 森永貞一郎

    ○森永説明員 地方行政の専門家でいらっしゃるので、釈迦に説法であると思いますが、御承知の通り地方財政計画と各地方団体の財政、これはもちろす関係はございすが、必ずしもぴったりいかないのが現状でございます。地方財政計画上では国家公務員並みの単価で、また昇給率も見ておりますが、この地方財政計画で地方に対して賦与せられております財源が各地方団体にどういうふうに配分されるか、これは各地方団体にできるだけ公平に参るようにわけなくちゃならぬのでございますが、これは交付税その他でやかましい問題もございますよりに、必ずしもかゆいところに手が届くという交付税の配分ができにくいわけでございまして、現実の地方団体の財政が必ず公平にいっておるかどうか、これには制度上やむを得ない制約がどうしても起ってくるわけであります。そういった歳入面の制約、それからさらに先ほど申し上げましたように、現実の給与が高過ぎるかどうかという、その二つの面から、必ずしも地方財政計画面で見ておりますように昇給昇格が確保せられるということに参らぬ事態が起ってくる、もちろん地方団体によりましては、放漫なる財政計画によりまして赤字が累積しておる、その利払いに加われておって、そのために手が回らぬというところもございましょうし、これは各地方団体さまざまな事情があるわけでございます。それらを通じて、責任論でこうだというふうに割切るわけにも参らぬ。これは地方財政の専門家でいらっしゃる横路さん、十分おわかりのことだと存じますので、これ以上は控えます。
  185. 横路節雄

    ○横路委員 大蔵大臣にお尋ねしますが、この人事院勧告は何月から実施なさいますか。
  186. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これは先ほどからも答弁いたしておりますが、関係各省で十分検討を加えまして、それから政府方針をきめたい、政府方針をきめるときに、そういうことが自然はっきりする、かように考えております。
  187. 横路節雄

    ○横路委員 これはほんとうは、私は九月一日から裁判実施するのが至当だと思います。大蔵大臣、そういうお考えはありますか。先ほど主計局長お話では、一カ月五億なんです。特に大した金額ではない。何月何日から実施なさるのか。昭和三十二年度でやるというのか、昭和三十一年度でやるというのか、その点は、あらかじめ大体の大蔵大臣としてのお考えを一つ私どもにお聞かせいただかないと、次の大蔵委員会はまだ一カ月も二カ月もあとになりますから、お願いいたします。
  188. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 政府としては勧告自体についてまず関係各省で検討を加える、こういうことになるのであります。
  189. 横路節雄

    ○横路委員 大蔵大臣に私申し上げたいのですが、これは先ほど横路山委員や石山委員からもお話しのように、昭和二十九年も昭和三十年も勧告していないわけです。昭和二十八年にはちゃんと勧告してあるわけです。歴代の内閣は、国家公務員から罷業権を取り上げて国家公務員を制定した場合に、人事院勧告については尊重してやるということになっているわけです。従って、前にずいぶん反動的な内閣だといっていろいろ攻撃された吉田内閣の際でも、必ずこれは実施したものなんです。これは鳩山内閣になって初めて行われた勧告なんですが、一体大臣はいつやるのか。先ほどの売上税と同じようなことになりますが、これをやはり私は、はっきりやるならやる、時期についてはどうも今のところわからない。これは、年内にやらぬと人事院勧告の意味がないので、これがきまらないと、私は委員長にお願いして、何時間でもやらしていただく。
  190. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 やるとかやらぬとかはっきり申し上げればいいのでありましょうが、これはいろいろと問題がある。給与制度自体の改正になりまして、いろいろと問題がたくさんありまして、事務的に検討を加えてやるというのがまず先決であります。その上で、その検討の結果に基いて政府としてはきめるということであります。
  191. 森永貞一郎

    ○森永説明員 ちょっと先ほどの数字を、もう少し補足して申し上げたいと思います。先ほど六十九億と申し上げましたのは、これは一般職だけでございます。その中に、一般会計分が六十億、特別会計分が九億、ところが一般会計には、そのほかに特別職の公務員がたくさんおります。たとえば防衛庁の職員、あるいは、大臣、政務次官というような方もおられますが、そういう特別職の予予算について考えますと、やはり一般会計の負担は約百億ということになるので、その点ちょっと漏らしましたから、補足して申し上げます。
  192. 横路節雄

    ○横路委員 それじゃ主計局長にお尋ねしますが、昭和二十八年の場合には、人事院の勧告が行われて、これは、小笠原さんが大蔵大臣のときにやはり実施しているわけです。実は二十九年の場合でも、人事院とわれわれはいろいろ話をしましたが、実際は一一%低いことがはっきりしておりながら 勧告をしてしないわけです 去年も勧告をしていないのです。そういう意味で、これは二年越しの件なんです。これは、私はかえって主計局長にお尋ねした方がいいかと思いますが、まさか昭和三十二年度の中でやるというのではなしに、やはりこの勧告の精神は尊重して、昭和三十一年度のうちには実施なさるでしょうね。九月とか何月とかいうと御返事がしにくいでしょうが、昭和三十年度のうちに尊重して実施なさるお気持があるのだろうと思うのですが、その一点だけ言ってもらえばやめます。
  193. 森永貞一郎

    ○森永説明員 その点は、先ほど大臣からもお答えがございましたように、もちろん人事院勧告はできるだけ尊重しなければならぬわけでございますが、今回の内容につきましては、いろいろ技術的な問題もございますし、財源の問題もございますし、また経済界に与える影響もございますので、検討を持って実施するかしないかということを、今後慎重に決定をしていただくわけでございまして、ただいまのところはっきりしたものが出ていないわけでございます。  なお、二十八年の例をお引きになりましたが、過去におきまして――これかもしれませんが、勧告が出ましても実行しなかった例も、皆無ではないわけでございます。その点だけ申し添えておきます。
  194. 横路節雄

    ○横路委員 それでは大蔵大臣にお伺いしますが、尊重するということだけは変りはないわけですな。この勧告は尊重しますね、それだけは一つお聞きしておきます。
  195. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 勧告はむろんできるだけ尊重します。
  196. 横路節雄

    ○横路委員 主計局長にお伺いしますが、今大蔵大臣は尊重するということですが、尊重するということは、年内実施なんです。三十一年度の中で……。ですから、そういうようにこれはだれしも解釈するのは当然じゃないですか。尊重するというのは、三十二年度実施ということじゃないのでしょう。今の大蔵大臣の尊重するということは、三十一年度のいずれかで実施するとしいうことについての尊重の意味ですね。
  197. 森永貞一郎

    ○森永説明員 大臣の御方針に従いまして、慎重に検討いたします。
  198. 石村英雄

    石村委員長代理 本日はこの程度にとどめ、次会は来たる八月十日金曜日午前十時より開会することといたします。  これにて散会いたします。    午後二時三十一分散会