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1956-06-01 第24回国会 衆議院 大蔵委員会 第42号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年六月一日(金曜日)     午前十一時三分開議  出席委員    委員長 松原喜之次君    理事 黒金 泰美君 理事 小山 長規君    理事 高見 三郎君 理事 藤枝 泉介君    理事 石村 英雄君 理事 春日 一幸君       奧村又十郎君    杉浦 武雄君       竹内 俊吉君    内藤 友明君       中山 榮一君    夏堀源三郎君       坊  秀男君    前田房之助君       横川 重次君    石山 權作君       田万 廣文君    平岡忠次郎君       横山 利秋君  出席政府委員         大蔵事務官         (主税局長)  渡邊喜久造君         大蔵事務官         (管財局長)  正示啓次郎君  委員外出席者         大蔵事務官         (管財司計官) 上東野正二君         通商産業事務官         (軽工業局アル         コール事業長) 菊池 淳一君         参  考  人         (警視庁防犯課         長)      田中 八郎君         専  門  員 椎木 文也君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人より意見聴取  接収貴金属等の処理に関する法律案内閣提出  第一四八号)  税制に関する件  請願審査小委員長より報告聴取   請 願  一 釣竿釣用具に対する物品税撤廃に関する請   願(平岡忠次郎紹介)(第二六号)  二 期末手当免税措置に関する請願池田清   志君紹介)(第一〇八号)  三 元中野電信隊跡敷地開放に関する請願(   岡崎英城紹介)(第一二一号)  四 補助金等に係る予算執行適正化に関す   る法律実施に関する請願田中彰治君紹   介)(第一七号)  五 みつまた価格安定対策確立に関する請願(   菅太郎紹介)(第一四〇号)  六 同(中村時雄紹介)(第一七一号)  七 互助組合掛金非課税に関する請願世耕   弘一君紹介)(第二二七号)  八 炭鉱医療施設敷地払下げに関する請願(   松井政吉紹介)(第三二四号)  九 揮発油税率引上げ反対に関する請願田中   利勝君紹介)(第三二五号)  一〇 ビール税率引下げに関する請願横川重   次君外三名紹介)(第三五三号)  一一 同(今井耕君外一名紹介)(第三五四   号)  一二 同外二件(福田赳夫紹介)(第三五五   号)  一三 同(横路節雄紹介)(第三九二号)  一四 補助金等に係る予算執行適正化に関   する法律実施に関する請願塚田十一郎君   外二名紹介)(第三八八号)  一五 奄美群島の黒糖に砂糖消費税法適用除外   に関する請願池田清志紹介)(第四五九   号)  一六 揮発油税率引上げ反対に関する請願(五   島虎雄紹介)(第四八七号)  一七 営業用乗用自動車に対する物品税撤廃に   関する請願五島虎雄紹介)(第四九〇   号)  一八 互助組合掛金非課税に関する請願(横   路節雄紹介)(第五五三号)  一九 関税定率法の一部改正に関する請願(楢   橋渡紹介)(第五五四号)  二〇 日本専売公社新庄出張所総合出張所に   昇格の請願松澤雄藏紹介)(第五七八   号)  二一 漁業課税の改善に関する請願鈴木善幸   君紹介)(第六三一号)  二二 関税定率法の一部改正に関する請願(松   本七郎紹介)(第六五三号)  二三 税書士法制定に関する請願北村徳太郎   君紹介)(第六七四号)  二四 互助組合掛金非課税に関する請願(春   日一幸紹介)(第六九九号)  二五 関税定率法の一部改正に関する請願(田   原春次紹介)(第七〇〇号)  二六 同(松原喜之次紹介)(第七〇一号)  二七 同(大西正道紹介)(第七三九号)  二八 果実エッセンスに対する物品税撤廃に関   する請願上林與市郎紹介)(第七〇二   号)  二九 津山市に国民金融公庫支所設置請願(   大村清一紹介)(第七〇三号)  三〇 同(小枝一雄紹介)(第七八二号)  二二 ビール税率引下げに関する請願塚原俊   郎君紹介)(第七三八号)  三二 酒税率引下げに関する請願中馬辰猪君   紹介)(第八二六号)  三三 同(中馬辰猪紹介)(第八五三号)  三四 元中野電信隊跡敷地開放に関する請願   (菊池義郎紹介)(第八八四号)  三五 在外資産補償に関する、請願中馬辰猪   君紹介)(第九三三号)  三六 紙に対する物品税撤廃に関する請願(南   條徳男紹介)(第九三四号)  三七 ビール税率引下げに関する請願矢尾喜   三郎紹介)(第一〇二九号)  三八 釣竿釣用具に対する物品税撤廃に関する   請願森清紹介)(第一一〇二号)  三九 積雪寒冷地帯に対する所得税特別控除   等に関する請願渡邊良夫君外四十名紹介)   (第一一三六号)  四〇 軍用水道を米子市に移管請願足鹿覺   君紹介)(第一二二一号)  四一 三級清酒設定反対に関する請願芦田均   君紹介)(第一二四四号)  四二 みつまた価格安定対策確立に関する請願   (井谷正吉紹介)(第一二四五号)  四三 中小企業等協同組合法の一部改正に関す   る請願春日一幸紹介)(第一二六四号)  四四 余剰農産物見返円の貸付に関する請願(   春日一幸紹介)(第一二六五号)  四五 互助組合掛金非課税に関する請願(小   林かなえ紹介)(第一二七四号)  四六 同(八木一郎紹介)(第一三三九号)  四七 同(杉浦武雄紹介)(第一三四〇号)  四八 中小企業等協同組合法の一部改正に関す   る請願久保田鶴松紹介)(第一二八六   号)  四九原油及び重油に対する関税撤廃に関する請   願(小平久雄紹介)(第一三四一号)  五〇 煙火類に対する物品税撤廃に関する請願   (小林かなえ紹介)(第一三四二号)  五一 企業整備による政府買上げ代金貸付に   関する請願辻政信紹介)(第一三五七   号)  五二 中小企業等協同組合法の一部改正に関す   る請願伊藤卯四郎紹介)(第一五一三   号)  五三 純粋果実水に対する物品税撤廃に関する   請願關谷勝利紹介)(第一五二七号)  五四 旧豊川海軍工廠跡地価引下げに関する   請願八木一郎紹介)(第一五八七号)  五五 旧外貨債有効化に関する請願中川俊   思君紹介)(第一五八八号)  五六中小企業等協同組合法の一部改正に関する   請願砂田重政紹介)(第一六〇一号)  五七 同(佐竹新市紹介)(第一六三〇号)  五八 純粋果実水に対する物品税撤廃に関する   請願山本友一紹介)(第一六〇二号)  五九 骨牌税軽減に関する請願黒金泰美君紹   介)(第一六〇三号)  六〇 余剰農産物見返円の貸付に関する請願(   宇田耕一紹介)(第一六〇四号)  六一 同(佐竹新市紹介)(第一六二九号)  六二 旧外貨債有効化に関する請願佐竹新   市君紹介)(第一六三一号)  六三 同(首藤新八紹介)(第一六五二号)  六四 同(永山忠則紹介)(第一六五三号)  六五 同(生田宏一紹介)(第一六七六号)  六六 同(橋本龍伍紹介)(第一六七七号)  六七 同(石坂繁紹介)(第一六七八号)  六八 在外資産補償に関する請願森島守人君   紹介)(第一六三二号)  六九 運動具に対する物品税撤廃に関する請願   (岡良一紹介)(第一七八三号)  七〇 証券取引法の一部改正に関する請願(小   山長規紹介)(第一七八四号)  七一 中小企業に対する税制改正に関する請願   (赤松勇紹介)(第一七八五号)  七二 同(横山利秋紹介)(第一七八六号)  七三 同(志村茂治紹介)(第一七八七号)  七四 同(穗積七郎紹介)(第一七八八号)  七五 同(松岡駒吉紹介)(第一七八九号)  七六 同(高津正道紹介)(第一七九〇号)  七七 同(中村英男君外一名紹介)(第一七九   一号)  七八 同(茜ケ久保重光紹介)(第一七九二   号)  七九 同(田中武夫君外一名紹介)(第一七九   三号)  八〇 同(春日一幸紹介)(第一七九四号)  八一 同(木崎茂男紹介)(第一七九五号)  八二 同(林博紹介)(第一七九六号)  八三 同(濱野清吾紹介)(第一七九七号)  八四 旧外貨債有効化に関する請願小川半   次君紹介)(第一八三五号)  八五 同(永山忠則紹介)(第一八六〇号)  八六 同(永山忠則紹介)(第一八八六号)  八七 中小企業等協同組合法の一部改正に関す   る請願堀内一雄紹介)(第一八三六号)  八八 中小企業に対する税制改正に関する請願   外一件(稻葉修君紹介)(第一八三七号)  八九 手巻蓄音器に対する物品税免税点設定   に関する請願戸叶里子紹介)(第一八六   一号)  九〇 国民金融公庫貸付わく増額に関する請   願(永山忠則紹介)(第一八九七号)  九一 庄原信用金庫中小企業金融公庫代理店   設置請願永山忠則紹介)(第一九二一   号)  九二 余剰農産物見返円の貸付に関する請願(   藤枝泉介紹介)(第一九三六号)  九三 同(福田赳夫紹介)(第二〇〇二号)  九四 中小企業等協同組合法の一部改正に関す   る請願福田赳夫紹介)(第二〇〇一号)  九五 同(藤枝泉介紹介)(第一九四九号)  九六 在外資産補償に関する請願鈴木善幸君   紹介)(第二〇〇三号)  九七 酒税率引下げに関する請願田中武夫君   紹介)(第二〇一五号)  九八 中小企業等協同組合法の一部改正に関す   る請願唐澤俊樹紹介)(第二〇三三号)  九九 同(竹谷源太郎紹介)(第二〇八二   号)  一〇〇 余剰農産物見返円の貸付に関する請願   (唐澤俊樹紹介)(第二〇三四号)  一〇一 同(竹谷源太郎紹介)(第二〇八三   号)  一〇二 三級清酒設定反対に関する請願生田   宏一紹介)(第二〇三五号)  一〇三 福島県立たばこ試験場国営移管に関   する請願助川良平紹介)(第二〇九五   号)  一〇四 アコーディオン等に対する物品税の品   種別免税点設定に関する請願井上良二君紹   介)(第二一〇九号)  一〇五 労働金庫に対する資金運用部資金の長   期融資に関する請願田中彰治紹介)(第   二一四六号)  一〇六 余剰農産物見返円の貸付に関する請願   (遠藤三郎紹介)(第二一五九号)  一〇七 中小企業等協同組合法の一部改正に関   する請願遠藤三郎紹介)(第二一六〇   号)  一〇八 信用保証協会目家財政資金導入等に   関する請願櫻内義雄紹介)(第二一六四   号)  一〇九 運動具に対する物品税撤廃 に関する   請願内藤友明紹介)(第二一七七号)  一一〇 桜島噴灰降灰によるたばこ耕作被害   措置に関する請願山中貞則紹介)(第二   二一〇号)  一一一 旧外貨債有効化に関する請願池田   清志君紹介)(第二二三二号)  一一二 企業整備による政府買上げ代金貸付   に関する請願松岡松平紹介)(第二二四   一号)  一一三 運動具に対する物品税撤廃に関する請   願(上林山榮吉君紹介)  一一四 夢手県国立たばこ試験場設置請願   (鈴木善幸紹介)(第二二五〇号)  一一五 東北製塩株式会社製塩許可に関する   請願鈴木善幸紹介)(第二二五五号)  一一六 桜島噴火降灰によるたばこ耕作被害   措置に関する請願池田清志紹介)(第二   三二四号)  一一七 うさぎ毛皮製品に対する物品税撤廃に   関する請願田中織之進君紹介)(第二三二   五号)  一一八 貸金業高金利引下げに関する請願(   森三樹二君紹介)(第二四七八号)  一一九 不渡小切手防止対策確立に関する請願   (森三樹二君紹介)(第二四七九号)  一二〇 小山地先海岸空地払下げ取消に関す   る請願久保田豊紹介)(第二四八一号)  一二一 中小企業財政投融資資金融資措置   に関する請願森三樹二君紹介)(第二五〇   五号)  一二二 電話加入権の差押えに伴う措置に関す   る請願河野密紹介)(第二五〇九号)  一二三 中小企業者等に対する競売等に関する   請願森三樹二君紹介)(第二五三一号)     —————————————
  2. 松原喜之次

    ○松原委員長 これより会議を開きます。  まず税制に関する件について調査を進めます。本日は奧村委員よりの要求によりまして、参考人として警視庁防犯課長田中八郎君の出席を求めております。質疑を許します。奧村又十郎君、
  3. 奧村又十郎

    奧村委員 私は参考人警視庁防犯課長、それから通産省アルコール事業長、国税庁の間税部長にお尋ねいたしたいと思いますが、その前に、私のお尋ねしたい事柄の概略を申し上げて、なるべく時間の関係もありますので、簡単に要点だけをお尋ね申し上げたいと思います。  政府御当局の取締りの努力にもかかわらず、相かわらず工業用アルコール横流れが跡を断たない。その工業用アルコールをもととしたしょうちゅうの祭造がはんらんしておるということは、まことに残念なことであります。たとえば昨年末発覚いたしました横浜の桜木アパート内でのしょうちゅうの密造事件から端を発して、広島通産局から出たところの工業用アルコール約五百五十石が流れておるということが明らかになっております。これは新聞に出ておる。次に最近五月十四日、読売その他各紙の報道によりますと、仙台通産局から出た工業用アルコール五百十六本のドラムカン入りでありますが、これがやはり横流れして、東京その他各地へしょうちゅうの密造となってはんらんしておるということを承知しております。その他しょうちゅう酒造組合などの情報を調べてみますると、名古屋管内においても、密造のしょうちゅうを飲んだために、目がつぶれたとか、あるいは死んだとか、いろんな事件が起っておる。あるいは東北地方においてはカキ渋を抜くための工業用アルコール約九百石が横流れして、しょうちゅうに化けておる。ずいぶん数えれば切りがありません。今取締りの網にかかって調べられておることは、ほんの氷山の一角ではないか、かように考えられる。そこで、すでに麻薬ブローカーとともに、アルコールブローカーの組織が全国的に根を張っておるということは、まぎれもない事実である。これを何とか撲滅しなければならぬ。それでなければ、酒税の引き下げ、税収の確保等はとうてい期すべくもない、かように考えるのであります。そこで特に今回仙台通産局から流れた工業用アルコール横流れについて、重点を置いてお尋ねをいたしたい。つまりこれは、この横流れ取締りをするための法律制度が悪いためにこのようになるのか、あるいは法律制度はいいが、取締り関係官庁が責任ある取締りをしていないのか、この点を徹底的に調べて対策を樹立しなければならぬ、私はかように存ずるので、この観点から事件をお尋ねいたしたいと思うのであります。つきましては、警視庁防犯課長さんから、今回の仙台通商産業局管内から流れた工業用アルコールの横、流し事件について、事件概要を簡単に申していただきたいと思います。
  4. 田中八郎

    田中参考人 弊視庁防犯課長田中でございます。ただいま御質問のありました事件につきまして、まず概略を申し上げたいと存じます。私どもといたしましては、どうもしょうちゅう、あるいは合成酒といったものが、都内を初め近県におきましていろいろ横流しされているというような事実は聞いておった。これはだいぶ前から聞いておった。どうもなかなか端緒がつかめないということで苦労しておったのでございますが、東京国税局とも協力いたしました結果、一昨年の十月ごろから大体端緒がつかめてきまして、都内のそういったしょうちゅう密造している個所を捜索いたしたりして参ったのでございます。ところがこういった末端のところを取り締りますと、さらにそれの上のブローカーがあるということがだんだんわかってきたわけでございます。それで、この間の新聞にも出ておりましたような、大竹正作とか、脇坂芳樹とか、あるいは南田哲郎、こういったものがいわゆるブローカーの親玉のような空気が見られまして、それぞれ内偵を進めておりましたところ、神田にあります昔すし屋をやっておりました店舗を根城といたしまして、そこで横流しアルコール取引をしておったという事実が判明したわけであります。それでいろいろ状況証拠を集めました結果、これらの者を逮捕いたして取り調べを進めて参ったわけですが、これらの者の自供、あるいはその他の証拠によりますと、どうも仙台方面からこういったアルコールが流れているんじゃないかというような結果になったわけでございまして、いろいろ内偵を進めておりましたところ、仙台飯田富吉川合榮太郎、この者が仙台化学工業合資会社という会社を設立いたしまして、それが仙台通産局に申請いたしまして、速乾ニスと申しますか、早く乾くニスでございますが、ニスを作るからということで、通産局に対してアルコールの特別な配給を申請しておったわけでございます。それを申請して割当を受けまして、普通の値段よりも安い値段アルコールを買って、通産局の係官の立ち会いのもとに、そのアルコール薬品をまぜて、ニスを作っておったわけです。ところが実はニスを作るといいながら、その攪拌方法と申しますか、薬品をまぜるまぜ方等につきまして細工を施し・あるいは薬品につきましても、正規の薬品を入れないで、別の溶けないような薬を入れまして、それで確かにニスを作りましたということで、検査員の目をごまかして、実は横流しをしておるというようなことが、判明したわけでございます。従いまして、この飯田富吉あるいは川合榮太郎というものの取引先、その他購入先といいますか、通産局から割当をもらった関係その他をいろいろ調べまして、大体過去創立以来五百本以上のものを横流ししておったという事実が判明いたしたわけでございます。それで国税局の協力を得表して、先般仙台の方に捜索に行ったわけでございます。その際、どうしてこういうものが横流しされるのだろうということで、いろいろ証拠書類、あるいは関係係員立ち会い状況等を調べる必要がありましたものですから、五月十四日の日に仙台通産局に対しまして、私の方で出かけていきまして、捜索令状により捜索したということであります。それで関係書類を私の方に押収して参ったような次第でありまして、これによって、現在まで全国各地に流れておって、どうしても根源のわからなかった、ルートのわからなかったアルコール横流し、しょうちゅうの密造というものが、大体一貫してこういったルートで流されているのじゃないかという、一つルートだけはわかったような気がいたしている次第でありまして、幸い今度の私の方でやっております事件は、飲めばすぐ目がつぶれるとかいうような、悪質なアルコールではないのでございまして、二合や三合くらい飲んだ程度では、からだに直接影響がないようなアルコールでございまして、その点よかったと思うのでございますが、今後こういった事件の事犯の取締りというものは、徹底してやっていかなければならぬ。そういった面につきましても、今後通産局通産省なりあるいは大蔵省方面とも十分協力いたしまして、やっていきたいというふうに考えておる次第でございます。以上が大体事件概要でございます。
  5. 奧村又十郎

    奧村委員 アルコールブローカー密造関係には特に第三国人が多いということを聞いておるのでありますが、今度の事件について、第三国人がどのくらい加わっておりますか。
  6. 田中八郎

    田中参考人 ただいま申し上げましたのは、日本人の上の方のブローカーを申し上げたわけですが、末端の方になって参りますと、非常に朝鮮人が介在しておるという事実があるようでございます。最初どもが逮捕いたしました関係者といいますか、未端のブローカーは、朝鮮人が非常に多いようでございます。私の方で今までこの事件に関連して送致いたしました人数が全部で百二十五人ございまして、ちょっと私、今あれでございますが、いわゆるそういう横流しを受けたアルコールを買い取りまして、実際にそれからしょちゅうを作っておったのは、ほとんど朝鮮人だと言って差しつかえないかと思います。
  7. 奧村又十郎

    奧村委員 たまたま仙台通産局から流れてきたアルコールをもって密造しておるということがわかったのでありますか、しかしこれらの密造常習者は、仙台通産局から流れたものだけでなしに、おそらくアルコールはいろいろな方法をもって手に入れておるものと思うのです。そのほかにもルートを持っておるのでないか。これは確認しておられなくとも、そういう推定ができないのか。仙台以外にも流れておるルートがあるということは、推定できませんか。
  8. 田中八郎

    田中参考人 ただいまのお話しの点につきましては、必ずしもこういった仙台事件のように、一応割当を受けまして、それを横流ししておったというようなものだけに限定されるとはいい切れないと思います。今お話しのように、それぞれ自分のところでそういったアルコールを作ったりして、もともと最初からそのルートに乗っておらないようなアルコールもあるように私は思っておりますが、ただ具体的な事件といたしましては、現在私の方でやっておりますのはこれだけでございますので、ちょっとほかに具体的な例を申し上げられないのでございますけれども……。
  9. 奧村又十郎

    奧村委員 五月十四日に令状を持って仙台通産局にお越しになって、この工業用アルコールの払い下げのやり方をお調べになった。それによって工業用アルコール横流れやり方、これは仙台だけ、でなしに、全般的にそのやり方欠陥どもわかったので、今後の取締りに非常に参考になった、こういうような意味のお話がありましたがやはりこの通産局取締りがもっと厳重に的確であればこういう横流れはあり得ない。その取締りなどについて欠陥があると私は思うのでありますが、率直に、仙台通産局取締りにおいてどのような欠陥があるか、一つお差しつかえのない範囲で、お感じになったことをお話し願いたいと思います。
  10. 田中八郎

    田中参考人 先ほどお話しのように、実はまだこの事件は全部済んでおりませんで、一応上の方は通産局まで参りましたのですけれども末端の方は全国に相当ばらまかれておるような事件でございまして、まだこのほか各県の方にも関連があると思いまして、今そっちの方に、足の方に主力を注いで捜査中でございます。従いまして、最後的な結論と申しましてもあれなんでございますが、一応現在までに通産局関係について私の方でわかっておる点だけを申し上げますと、このニスを作るような場合には、必ず通産局検査係員が立ち会っておるわけなんです。立ち会います場合には、これこれの薬をまぜる。たとえば酒精の溶解のためには、マカッサル・コパールという薬をほんとうは投入しなければならないものだそうです。ところが実際には、アラビア・コパールを使用しておったというような状況です。従いまして、それがアルコールには溶けなくて、油に溶けるコパールでございますので、ほとんど上の方にたまっておって溶けない。しかもこれは、それぞれ通産局に届け出まして、どういう装置で攪拌するのだということで許可を受けておるわけです。仙台の場合には、ドラムカンの中に二本プロペラーを入れて、これで攪拌するということで申請許可をとっておったらしいのですが、現実にはそれを一つだけつけておる。しかも上の方でから回りをさせるというような操作を施しておったらしい。従いまして、ニスを作るとはいいながら、実は大部分がアルコールのままで残っておるわけです。従いまして、そういうふうに攪拌したということで、通産局係員が封切を施しまして、翌日果して攪拌されておるかということを確認に来るわけなんです。そういう確認なり立ち会いというものを厳重にやっていただければ、あるいはこういったようなことは起り得なかったのじゃないだろうかというような気がいたすわけであります。しかも、何しろこういう立ち会いといったようなことにつきましても、通産省あるいは通産局とされましても、厳重にやっていただいておることとは存ずる次第でありますけれども、やはりもっと係員が専門的な知識を十分体得いたしまして、そういったことで検査員の目をごまかすというようなことがされないように十分注意していただきたいというのが、私の方で調べました結果の一応の結論でございます。
  11. 奧村又十郎

    奧村委員 どうも通産局係員というか、検査員が業者から非常に目をごまかされておる。そこで、これは業者と監督の係員とが結託してわざとごまかされておったのか、あるいは善意で見ておったが、結局はごまかされたのか、そこが私は一番大事な点ではなかろうかと思うのです。これは取締りの責任者である通産局、あるいは通産省関係官も来ておられますから、あとからお聞きするつもりでありますが、警視庁防犯課長にお尋ねしたいのはその際において、業者との間に収賄、涜職の嫌疑のかかるようなことはなかったのか、あるいはもと通産省の役人の方であって、やめてから業者の中へ入り込んでおる者があるのではないか、そのように結託するような推定、あるいは嫌疑を受けるような事実はなかったかということをお尋ねいたします。
  12. 田中八郎

    田中参考人 まずあとの点からお答えいたします。もと通産局におった人が現在こういうブローカーをやっておるという点は、私は確認いたしておりません。  最初の点でございますが、川合栄太郎が仙台化学工業合資会社というものを作りましたのが去年の五月ごろでございました。それ以前の点については、私どもの方ではそこまで調べがいっておりませんが、それ以降、先ほど申し上げましたような、ドラムカンだけで五百十何本というアルコールの配給を受けておるのですが、その際には、通産局係員が全部立ち会っておるわけです。しかもこれが一回や二回ならともかく、相当回数にわたりまして全然気がつかなかったというのは、ちょっと常識で考えました場合には、何か裏にあるのではないかということは、当然想像できるわけでございます。従いまして、私の方といたしましても、通産局捜索に行きます際に、そういった点があるかもしれないので、十分注意して調べてこいということを私の方で係官に命じたわけでございます。そして川合栄太郎、あるいは飯田富吉を今まで調べました結果からも若干推定されるのですが、ある程度なれ合いというか、若干大目に見ておったのではないだろうかというような推測はできるのでございます。ただそういう心証に対して、物的な証拠というものはなかなか出にくいのでございまして、明らかに供応を受けて一緒に飲み歩いたとか、アルコール横流しで先のことまでいろいろめんどうを見ておったというような証拠がはっきり出てきておりませんものですから、なお今後とも、十分そういった関係につきましては、私の方としましてもいろいろ取調べを進めていきたいと考えております。はっきりと贈収賄の関係があるとまで断定するのは、むずかしいような気が現在のところはいたすわけでございます。
  13. 奧村又十郎

    奧村委員 その御答弁によりますと、仙台通産局の当局としては、別に刑事上の責任を問われることはないようです。別に現在の制度を改めずとも、今後こういう工業用アルコール密造横流れは防げると思われますが、先ほど防犯課長のお話では、横流れルートがわかったということでありますが、どうも今のお話でいくと、どこに責任があるか所在がはっきりしないような感じがするであります。役所同士のことですから、言いにくいでしょうが、それじゃ横流れが行われた根本の原因はどこにあるか、今の取調べの側でお感じになられたことをお聞かせ願いたい。
  14. 田中八郎

    田中参考人 私の言葉が足りなくて申しわけなかったのでございますが、確かに今度の事件によりまして、こういったアルコール横流し、あるいはしょうちゅうの密造最初から最後までのルートをつかめまして、非常に私どもとしても将来の取締り参考になるということなんでございますが、ただ私の気持といたしましては、こういったアルコールの立会検査の際に、もう少し厳重に立ち会いしていただきたい。法令関係のことは何でございますが、どうも仙台について申し上げれば、検査がルーズであったのじゃないだろうか。こういう検査を厳重にやっていただいて、しかも、少くとも業者となれ合いがあるのじゃないかというような疑惑を持たれることがないように、正当な立ち合いをやって、しっかりと確認さえしてもらえば、こういうものはなくなってくると考えておるわけであります。私の方で調べました範囲内では、現在のところ通産局関係では、たまたま仙台が出てきたわけでありますけれども、ほかの通産局では、こういうことはおそらくないと私も思っておりますし・通産省当局におかれましても、今後これを一つの材料とされまして、厳重に立ち会いその他につきまして取締りをやっていただくということであれば、非常に私としても幸いじゃないか。やや私の立場から離れて参りますけれども、個人的な気持を申し上げれば、大体そのような結論でおるわけでございます。
  15. 奧村又十郎

    奧村委員 警視庁の方では、ただいままだ調査中でありますから、そうはっきりしたことはお話しできないと思うので、通産省アルコール事業長の方にお尋ねを申し上げたいと思います。  直接の監督の責任のある通産省では、今度の事件についてお調べになったかどうか。お調べになったとすれば、通産省、責任官庁の側でお調べに触った事実をごく簡単にお述べを願いたいと思います。
  16. 菊池淳一

    菊池説明員 私どもの方で、この事件新聞に出ましてから調査をしたかどうかというお尋ねでございますけれども、そのアルコール専売法違反の事件の調査につきましては、私の方で係員を使いまして、独自の調査をして、国税犯則取締法によって処理いたします方法、それから告発いたしまして、警察関係にやっていただく方法、それから今回のように、最初から警察関係でお調べになるというよう血ケースがございますが、今回の問題につきましては、警視庁仙台においでになりまして、直接被疑者とか、あるいは設備等を御調査になっておりますので、私どもの方で直接そういう業者に対して二重と申しますか、捜査をやっておられるところへ、また横から手を出すということはいたしておりませんで、もっぱら警視庁の御捜査になったところを今承わるということになっております。従来まで、現地の通産局でもいろいろ警視庁の方からお教えいただきまして、今防犯課長の御答弁になりましたような内容を大体承わっておりますが、まだ捜査の段階で、詳細なことは話せないということで、それ以上のことは承知しておりません。しかし、捜査が終りましたならば、さらに具体的に承わりまして、私どもの方で処置すべきことは善処したいと思っております。
  17. 奧村又十郎

    奧村委員 肝心の責任官庁の通産省の方では、この事件はまだみずからお調べになっておられぬ、警視庁の報告を聞いておる、こういうことですが、それでは警視庁のただいまお話しになったことをそのまま現在お認めになるのですか、その点を伺いたい。
  18. 菊池淳一

    菊池説明員 私どもの方では・仙台通産局の職員を招致いたしまして、事情を聞いております。ただ、私どもの方では、監督の立場にある者がどうしたかということはわかりますけれども、どういうふうにごまかされたかということは——これは、ごまかされることがわかっておればごまかされないで監督したわけでございまして、どういうふうにごまかされたかという事情は、やはり相手を調べないとわかりません。その相手は警視庁の方でお調べ願っておりまして、設備とか人間についても、警視庁の方で呼んでお調べになったわけですから、私の方の職員に関する限り、まだ警視庁からどういうお調べがあるかということは承知しておりませんので、それを伺いました上で、果してそういうことがあったのかどうか取り調べたいと思っております。
  19. 奧村又十郎

    奧村委員 警視庁のお話によると、ドラムカンで約五百本余りのアルコールですから、しょうちゅうに換算すれば約二千石余りが横流れ、つまり脱税されておるわけなんです。しかし警視庁はまだ捜査中であり委して、これを起訴し——起訴しても、これはまだ裁判があるということで、事件がほんとうに終結するまでにはまだまだ相当日がかかる。しかしその間に、取締り官庁である通産省としては、通産省から出たアルコール横流れして脱税の具に供せられておるのだから、どこに欠陥があったか、だれに責任があったかは知らぬが、大きく通産大臣に取締りの責任がある。それをただ警視庁のお調べにまかせて、通産省は何らお調べにならぬ。現に、横流れがある、つまり税金を脱税しておるということになれば、通産省自体が払い下げたのだから、その脱税相当額を徴収しなければならぬ。その脱税相当額徴収の手順は整っておるのか、あるいはその脱税額を徴収するための担保をとっておられるのか。その手配はどうしておられるのですか。
  20. 菊池淳一

    菊池説明員 その脱税額に相当します金額も、ただいまのところ大体五百何本かが流れておるというお話でございまして、具体的にそれを徴収するには、確定した数字が必要でございます。それで、実は警視庁の方にもたびたび伺いに上っておるのですが、まだ捜査中でその段階でないということであります。  どうして独自でやらないかという御質問でございますが、結局、こういう捜査は、今までも関係官庁が協力してやっておる場合がたくさんございまして、現実問題といたしまして、被疑者が峰視庁関係に勾留されておるとか、あるいは証拠書類が押えられておるということで、私の方の調べができないような状態にあったわけでございます。従いまして裁判が終らなくても、私どもの方として、そういう措置をとる資料は整い得るわけでございますので、警視庁の方の確定的な数字を承わることができましたら、われわれの方でもそれを再確認して、その処置をとりたいと考えております。
  21. 奧村又十郎

    奧村委員 警視庁の方は犯罪の捜査に重点を置かれるので、脱税額に対する追徴、税の徴収は警視庁に何ら関係はない。従って、警視庁の方は犯罪関係ですから、起訴をしても、裁判その他で事件が終了するまでには、いろいろな関係でおそらく三年も四年もかかるでしょう。その間、警視庁事件の終了までお待ちになるのですか。警視庁がお調べになるのは犯罪であって、脱税額を調べるものとはまた別です。そして脱税がすでに発覚しておるのですが、脱税が幾らあるかも、取締り官庁の通産省自体がお調べになろうとしない。警視庁の調査が完了するのは三年も四年もかかるが、その場合に被疑者が逃亡してしまう、脱税者が逃亡してしまう、担保をとっていないということになると、二千石の脱税では、おそらく何億円という脱税でしょうが、これに対して脱税額追徴の処置はまだとっておられぬ。いつとられるのか、警視庁事件の終結はいつになるのですか、取締り官庁としての責任がそれで勤まるのか、その点をお伺いします。
  22. 菊池淳一

    菊池説明員 私どもの方で追徴額を徴収いたしますのは、必ずしも警視庁の方の裁判手続が全部終って、確定するときを待つのではもちろんございませんで、もう近々に終結されるというお話でございましたので、それを待っておったわけでございます。弊視庁の方は、脱税額をお調べになるのではなく、犯罪をお調べになるというお言葉でございますけれども、犯罪の捜査内容には、どのくらい横流ししたかという事実があるわけでございます。従ってその点がはっきりいたしましたならば、処置がとれるわけでございます。  私の方で監督責任があると申しますが、これはすでに過去の事実となっておりまして、現場に参りましても、別にそういうあれは残っているわけではございませんで、やはり証拠物件とか、人間を真接お調べになっておる警視庁よりも、こちらの方がさらによく調査できるという客観的条件が実はございませんので、今のところ、警視庁の御調査を待っているわけであります。
  23. 奧村又十郎

    奧村委員 脱税額の調査と犯罪の調査とは全然別ですから、通産省独自で脱税の調査は、当然せなければならぬ。ところが今の御答弁によると、警視庁事件の終結を待って、脱税額の徴収その他の処置をいたしますということであるから、私はそこをお尋ねする。これは私の調べた範囲によると、これだけの大事件であるが、まだ起訴されている者はわずかです。またその処分はわずかです。おそらくこれから証拠固めをやっていかれるのでしょう。だから私の推定では三年も四年もかかる、その終結するまでお待ちになるんですか。通産省みずからお調べになるということは、当然きょうまでにしなければならぬのですが、それじゃ、どうなさるんですか。
  24. 菊池淳一

    菊池説明員 実は私どもの方で、調査を十分できかねる客観的条件にあると申し上げたのでありますが、書類型守も警視庁の方に行っておったりいたしまして、やはり警視庁のお調べを一応参考にすると申しますか、それを承知したいと考えているわけであります。それは三年も四年もたって終結してからというのではなく、警視庁からそういうことをお漏らし願えれば、私の方では直ちに着手できるのでございます。
  25. 奧村又十郎

    奧村委員 警視庁では、犯罪にかかわってお調べになったのですから、密造や脱税について警視庁で調べたことはごくわずかで、氷山の一角にも当らない。従って脱税血どの取締りの責任者である通産省は、こういう事件がなくとも、常日ごろ脱税がないかということをお調べになるのが当然だが、今の御答弁によると、ほとんど弊視庁まかせでおられるということは、いかにもこれは私はおかしいと思う。この点は時間もかかりますから、別に私は法律制度を研究の上で、あらためてお尋ねいたします。  そこで警視庁にお尋ねいたしますが、工業用アルコールというものは、専売アルコール法律に基いて変性することになっている。ところがその変性の方法が誤まっておった、すりかえられておった。そのすりかえられたことを承知して取締り官吏が見のがした。これはやはり一種の犯罪であると思う。先ほどお話しになったように、マカッサル・コパールとかなんとかにかえて、大体変性が完全に行われるとするならば、こういうアルコールは飲料に供せられるべきものでない。それが飲料に供せられるというのは、この変性がごまかされておったからです。このごまかされておったことについては、これは事実上犯罪があるものと思うのですが、その点、警視庁は突きとめてお調べになったのですか、どうですか。
  26. 田中八郎

    田中参考人 まぜ方が法規に違反したまぜ方をしている点を調べたかどうか、これにつきましては、先ほどもちょっと申し上げたのですが、私の方で調べました結果は、要するに不溶解性のアラビア・コパールを使用しておったということで、これは、川合栄太郎あるいは飯田富吉の自供によりましても明らかでございます。現実に、そういった工場を捜索いたしました際に押収いたしましたドラムカンの中の構造その他からいきましても、これは明らかに本来使用すべき薬品をまぜないで、別のものをまぜておって、アルコールをもとのまま残しておいて、そのアルコール横流ししたという事実ははっきりしておるわけですが、アルコールのまぜ方が悪かったかどうかというような点につきましては、ちょっと私の方では、犯罪になるという確信がないのでございます。
  27. 奧村又十郎

    奧村委員 ただいま警視庁お話しの通りで、要するに取締り官吏がごまかされておった。  そこで通産省のお方にお尋ねいたしますが、アルコールを専売にするという精神のもとは、これは水をまぜればすぐしょうちゅうになり酒になり脱税される。これを防ぐためにアルコール専売というものは行われておるというくらいに私は考えておる。従って変性とか、あるいは脱税というものを防ぐことに最も重点を置いて、通産省は取り締られなければならぬ。ところが変性の方法をごまかされた、あるいは製品にするときに、プロペラを一番上だけつけて、下の方はごまかしてあった。そういうごまかされたような取締り官吏は、当然責任をとらさなければならぬ。そこで、責任をとらせますか、あるいはすでに責任をとらせましたか、その点をどういうふうにお調べになりましたか。
  28. 菊池淳一

    菊池説明員 専売官吏の責任の問題でありますが、実は、こういうようにある程度なれ合いでやっている疑惑があると推測ができるということを伺いましたのは、現在初めてでございまして、今までいろいろ伺いに参りましても、まだ捜査の段階であるというので、実は承知しておりませんでした。私どもの方で事情を聴取いたしまして調べた範囲では、非常にまじめな人間で、非常に注意してやっておった、しかも業者とのそういう関係ができませんように、単独一でやらせずに、人間を交代してやらせるというような注意を払っておったということでございまして、処分をいたしますには、やはりはっきりした証拠が必要でございますので、その点も警視庁のお調べを、できたらばすぐいただくということを常々お願いしてありまして、それによって処置をいたしたいと考えております。
  29. 奧村又十郎

    奧村委員 それではお尋ねいたしますが、警視庁が調べたこの事件について、裁判等事件が確定し広ければ処分はしない。つまりこの事件通産省は認めない、従って取締りの官吏の責任はまだ追及しない。そういうふうに変性はごまかされた、あるいは製造はごまかされたが、そういう役人はまだそのまま仕事をしておるわけですね。いつ、その責任をお調べになるのですか。
  30. 菊池淳一

    菊池説明員 警視庁の捜査が完全に終結するということではございませんで、警視庁がいつ私どもにいろいろなことを教えて下さるか、それは警視庁の御判断でございますけれども警視庁からいろいろ事実、あるいは証拠となるようなことをお知らせいただけますれば、そのときに、別に捜査の終結ということを待たなくても、私どもの方はその事実をつかめばよろしいわけでございます。ただこういう問題は、やはり証拠がなければなりませんので、私どもの方で直接被疑者を招致するとか、そういうことができない状況になりましたので、今のところ警視庁でお調べになっておるのが、一番証拠としても、あるいは事情も、裏からも表からも御承知になっておるという状況でございますので、それを伺いまして、それをもとに判断したいと考えておるわけであります。
  31. 奧村又十郎

    奧村委員 警視庁の今のお話では、すでに変性がごまかされておった、それから製品の製造においてもごまかされておった。そうして五百本余りのむのが横流しされて、密造に使用されておったということは、今はっきり言われた。そこで変性がごまかされておった、製品の製造がごまかされておったという、その事実をまだお認めになりませんか。もしこれを事実とあなたが認めるとすれば、変性ということについては、変性済みの証明書というものを取締りの役人が判こを押して出しておるでしょう。あるいは使用したら使用済み証明書というものを判こを押して出しておるでしょう。その役人に責任がないと言われるか。そのごまかしの事実を、警視庁はすでにはっきり言っておられる。その事実を通産省はまだ調べない。しかし警視庁は、はっきりこういうことがあったと言う。その役人の責任は、まだ追及されないのですか。すでに変性済みの証明書に判こを押した役人がおるでしょう。その役人の責任をあなたは追及されないのでしょうか。これから先まだその役人に二年も三年も同じ仕事をやらしておくのでしょうか。
  32. 菊池淳一

    菊池説明員 こういうごまかされた事実がありましたことは、これははっきりと表に出ていることでございまして、事実でございます。その責任につきましては、同じごまかされたといたしましても、普通の人間の能力で良心的にやっておって、なおかつ相手の方がその裏をくぐってやるというような場合と、そうでなくて、非常にルーズであって、怠慢が指摘されるという点と、では、これはまた責任の度合いが違ってくると考えられるわけであります。私どもの方では、通産局の監督者である者からいろいろ聞きましても、非常にまじめな男である、また規定通りに監督しておるというふうな報告も受けておるのでありますけれども、今警視庁の御発言では、ルーズな点があったのではないかというお話もありましたので、そういう点、どういうところにルーズなところがあったとか、あるいはどういうところで疑惑が推定できるかというようなことをやはり一応お話をお伺いして、その上で処置を考えませんと、私どもの方では、そういう事実はわかりましたけれども、どの程度かという程度の工合がやはりわかってから処置したいと考えておるわけであります。
  33. 奧村又十郎

    奧村委員 そこで、大体通産省のお考えがわかったと思うのです。つまりすでに脱税はあった、ごまかされてもおった。しかしその関係官吏が、善意でもって一通りの取締りをしておったならば、これは罪にはしない、こういう御答弁のように聞えるのですがね。つまり収賄とか涜職とか、何か犯罪がなければ、一応官吏としての一通りの責任を勤めておれば、やめさせる必要はない、こういう意味の御答弁のようであります。そこでそうなると、今度の事件は、たとえば封緘してあった場合、封緘の紙を水ではがして夜のうちに品物を入れたり、あるいは品物を夜のうちにすりかえる。この場合、一通りの注意はしたが、夜中にやったことまでは注意は行き届かのぬだ、そういうことでも責任はのがれるという御答弁のようでありますが、その通りですか。
  34. 菊池淳一

    菊池説明員 私の申し上げますのは、言葉が足りませんで、あるいは十分二一を尽していないかもしれませんが、ごまかされたという事実がありました以上、これは幾ら良心的にやっておりましても、能力の点とか、そういう点で欠陥があったということは脅えるわけでございます。ただその処分と申しますと、やはり一生懸命やっておったけれども、能力の足りはい場合と悪意があったとかいう場合と、おのずから処分の仕方が違って参ると思います。ただ、普通の規定通りやっておったのだから、どんなことがあってもほうっておくという意味ではもちろんございません。
  35. 奧村又十郎

    奧村委員 そこで話がまたもとへ戻るのですが、警視庁は犯罪関係を調べ、通産省取締りの官庁としてもっとそれ以上に責任のある調べ方をしなければならぬ。そこであなたが言われるのは、まじめにやっておったかどうかということを、通達省自体が調べたければわからぬというのですが、その調べをあなたはしておらぬ。それで責任は遂行で承るか。それからもり一つ、脱税をした者は、この法律によって脱税額を追徴しなければならぬ。その法伊執行をあなた方は怠っておられる。それをどうするのですか、その責任はどこにあるのですか。
  36. 菊池淳一

    菊池説明員 仙台の職員がどういう勤務態度で監督しておったかということは、もちろん現地の監督者でなければわからぬのであります。現地の課長六招致いたしまして調べたところでは、先ほど申しましたように、まじめに勤務しておる男であるということで、果して疑惑を招くようなことがあったかということは、私どもにはないということでございまして、警視庁の方から伺いましたので、その点をさらに厳重に調査いたしたいと思うわけであります。  それから工業アルコールと一般の高いアルコールとの差額の追徴につきましては、私どもの方で処置しなければならない問題でございますが、今までも、大体警察関係とか捜査しておられるところと話もいたしまして、数字が確定したところで——別に裁判所とかなんとか何年もかかっておるというわけでございません。一応自分の調査したところでは、これだけ流れておるという事実をお話しいただきますと、それに基いて判断いたしまして、そういうものの一致したところで大体やることになっておりますから、それほど長い時間はかかりませんので、それと合せて処置したいと考えておるわけであります。
  37. 奧村又十郎

    奧村委員 その間いろいろまだ疑義がありますが、それでは弊視庁の調べがきまってから脱税の追徴をするということですから、百歩譲って、それでは最後に、法律に基いて担保を取っておりますか。また警視庁がこの事件をお調べになって、すでにもう三月もたっておるのですから、脱税の嫌疑は明らかである。税の確定はしなくとも、担保はすでに取っておらなければならないが、担保は取っておりますか。
  38. 菊池淳一

    菊池説明員 専売工場の担保は、工業用のアルコールは安い値段で売りますので、果して安い値段でこの目的に使われたかどうかということを確認いたします間に、もしそれがその目的に使われておりませんでしたならば、差額を徴収いたしますので、そういう目的で担保を提供させるという仕組みになっております。本件につきましては、工業用の中でも、輸出用の目的の場合と一般の工業用の目的とございまして、輸出用の場合には、輸出用に使われたかどうかということを確認いたしますのに一月くらい、長いのは半年くらいかかりますので、これはちゃんと徴収しております。一般の工業用の場合は、大体売りましてからその確認をいたしますまでに一週間くらい、早いものは即日使ってしまいますから、すぐに使用承認が出てしまえば担保を返すということになっておりますので、この問題は、使用承認がごまかされたという事実はございますが、使用後に担保を取っておくという制度はないわけでございます。果してそれに使用されたかということを確認するまでの担保でございます。それが使用済みが出て参りません場合とか、あるいはほかに使われたとかいう許可の申請がございまして、他に回すという場合に担保を取っておくという制度じゃございません。
  39. 奧村又十郎

    奧村委員 それではただいまの御答弁によると、要するに払い下げた工業用アルコールが、つまりニスに製造されたという使用済み証明書の再数が提出されれば、担保は取らなくてもいいということですね。それじゃ証明書の出るまでには担保を取ってあったのですか。
  40. 菊池淳一

    菊池説明員 輸出用の場合には、先ほど申しましたように長い間かかりますので、取っておりますけれども、一般のものは、すぐそういう使用済みが出て参りまして、ほんのわずかの期間でございますから取っておりません。
  41. 奧村又十郎

    奧村委員 そうしますと、数億円という脱税が行われたにもかかわらず、担保も取らない、追徴税も取ろうとしない、それじゃ法律実施は空文になってしまう。それじゃ通産省にお尋ねしますが、法律そのものがこれは不完全なんですか。あなた方この法律アルコール横流れを取り締っていけるとお考えになっておりますか。
  42. 菊池淳一

    菊池説明員 脱税の金額につきましては、かりに百キロであるとしますと、価格が大体三十万円でありますから約三千万円になりますけれども、これの担保は、法律目的通り使ったそのあとまで取っておくという意味が実はございませんで、問題は使用済みを確認するのに、こちらがごまかされないように厳重にやるというところが。ポイントでございますけれども、一応そういう制度がとられて、目的通り使用されたということのあとになおかつ担保を取っておくということは、ちょっと制度としてむずかしいのじゃないかと考えるわけでございます。  なお専売の目的につきまして、先ほど酒税の確保と申しますか、そういう横流れをどうして防ぐか、これはこの目的はそうでございますが、もう一つは、工事用のアルコールの需要に対して安い原料を供給して、円滑な需要を確保するといろ目的もあるわけでございまして、何千軒という業者の大部分はまじめに仕事をしておりますし、また需用の大部分は東京、大阪に集まっているわけでございまして、その需用者の多いところは、通産局取締り要員もよくやっておりまして、問題を起しておりませんけれども、たまたまこういういなかと申しますか、あまり需要のないところでそういう問題を起しましたことは、申しわけないと思う次第でございます。ただそういう取締り本位だけで参りますと、たとえば変性剤の問題にいたしましても、くさくて飲めない、あるいは飲めばすぐ死ぬというような非常に広い変性剤を入れますと、横流れの点については徹底を期せられるわけでありますけれども、まじめな業者にとってみますとそういう変性剤が入りますと営業用に使用でき低いということになりますので、その点のかね合いが問題でございます。そこで取締りを厳重にやるという点については、さらに一段と改善方策を講じまして、再びこういうことの倣いように努力をいたしたい、こういうふうに存ずる次第であります。
  43. 奧村又十郎

    奧村委員 今後取締りを完全にするというお言葉で、まことにけっこうですが、しかし終戦後句年各地工業用アルコール横流れしておるので、そういうあなたのお言葉が実行されておるんなら、もう今日こんな不愉快なことをわれわれ審議する必要はないはずなんです。  そこで最後にお尋ねしたいことは、ニスとして製品が消費者に確実に使用されたということが確認されるならば、脱税は行われぬのですから、担保も要らない、追徴も要らないのだ、こういうことです。そこで、果してニスとして、製品として末端消費者までそれが使用されたかどうかということを、あなたの方で確認するような方法がとられておるか、これが問題です。あなたの方は、使用済みの証明書というものは、ただドラムカンの中でアルコールニスの原料とをまぜたときに、すでに使用済み証明書をお出しになるのでしょう。ところがそのまぜる方法は、ドラムカンの上っつらにプロペラをつけて、下の方はプロペラをはずしておいて、下の方のアルコールはほとんどまざっていない。そこでニスを作ると称して、大部分が横流れしておる。従ってその横流れをほんとうに防ごうとするならば、その製品がニスとして消費者の末端まで行き届いておるかどうかということを、実際に確認するのが問題です。そこで、製品が末端の小売店までいっておるということを確認しておりますか。また確認する法律の根拠規定がありますか。そういう通産省取締りの態勢ができておりますか。それをお尋ねいたします。
  44. 菊池淳一

    菊池説明員 使用済みの確認と申しますのは、これは最終消費者の確認でなくて、もちろんアルコールを使ってある製品を作る者が、果してアルコールをその用途に使ったかどうかという確認でありますから、そこでほんとうにそういう品物ができましたならば、その用途にアルコールが使用されたことになるわけでありまして、一々製品の需用家を調べてやるということは、この法律の建前ではやっておりません。ただ事実上果してそのものが流れておるか、売られておるかどうかということは、事実上の問題として、各通産局の間で連絡して調べておりますが、これは法律上の制度としてやっておるわけではございません。捜査の端緒と申しますか、そういうケースをつかむための方法でございまして、要するにそのアルコールが正しく使用されたということを物理的、化学的に正確に把握できれば心配ないわけでありますけれども、補足的な意味で、そういう需要者の照会を、同じ通産局の中ではもちろんやりますし、ほかの通産局の場合には、通産局同士連絡をとってやっておる、こういうことであります。それから今度の事件につきましても、やはり調べたわけでございますけれども、これも需用者と違反者との間に連絡ができておりまして、名義を金で買って、買ったというようなことに連絡ができておりましたので、これもごまかされておったのでございますけれども、そういう需要者の調査は、今後もやりたいと思っております。
  45. 奧村又十郎

    奧村委員 私どもは、何も役所を追及していじめようというのじゃなしに、こういう不愉快なことが毎年々々広範に行われておるということを、何とかこの際改める方法はないか、制度が悪ければ、法律が悪ければ何とか改めたいという立場からあなたにお尋ねしておるので、その責任者であるあなたが、その答弁では非常に不満足です。そこでニスアルコールとともかく攪拌して、一応まぜ合したら使用済み証明書を出して、それでもう横流れの心配はないのだという今までの取締りやり方欠陥があるのだから、それは全部の製品とは言わなくても、こういう脱税の危険のあるものは、末端小売店まで調べなければいかぬ、こういうことを考えるのですが、これは今の法律で、末端の小売先まで通産省は調べることができますか。
  46. 菊池淳一

    菊池説明員 今の法律では、末端の製品の小売商までは調べることはできません。ただ問題は、かきまぜたら使用済み承認書を出すというのではなくて、明らかに製品ができたことを確認して使用済み承認書を出すわけでございます。今回の場合にも、夜中に入れまして、ほんとうのニスを入れておりますので、ほんとうのニスができたというふうに考えたわけでございます。それが、たまたま入れかえられたものを調べたために、こういうことになってしまったわけでございますけれども、ただまぜただけでなくて、最終製品がそういうものになったということを確認してから、もちろん使用承認書を出しておるわけでございます。従って販売の先の末端までは調べておらないわけであります。
  47. 奧村又十郎

    奧村委員 販売の末端まで調べていない。しかし今度の事件に限っては、製品の売り先を確かめてみたところが、それによると、それの横流しをした関係者と売り先が事前に結託をして、すでにもう売った、買うたの口の先の連絡がついておった。だからそれ以上のことは調べる方法がない。こういうことですが、しかしそれで取締りは完全にできますか。そういうその報告を調べて、それを、たとえば罪にするとか改めさせるとか、そういう法律規定はありますか。
  48. 菊池淳一

    菊池説明員 販売の末端まで調べることは、法律の制度としてはございませんけれども、補足的な、補充的な方法といたしまして、この事件に限らず、ときどき抜き打ち的にそういう調査をやっておるわけでございます。従いまして、この場合は、たまたま事前にそういう連絡がございましたけれども、事前に連絡がなければ、果して売っていない、こちらは売った、こちらは買って血いということがわかりますれば、そこで違反の事実が発見されるということも効果がございますので、このいう事件限らず、そういうことはやっておりますけれども法律上の制度として全部売り先まで調べるということは、これはもう需要着たる数は無数にございますし、それを一々調べることはとうていできませんので、そこまでは制度としてはないわけでございます。
  49. 奧村又十郎

    奧村委員 それでは一方国税庁、つまり大成省の方では、酒税取締りのためには末端小売店まで調べる。場合によっては、礼状を持ってその店の中に踏み込んで、帳簿その他を臨検することもできる。そうすると、通産省の方では、同じアルコールではあるが、これは調べることができない。いわんや販売店の中に踏み込んでいくということは法律上できない。そうすると、同じアルコールの管轄でありながら、取締りの点において大蔵省と通産省と大きな食い違いがあるのです。それでその点をお尋ねします。
  50. 菊池淳一

    菊池説明員 酒の場合におきましては、酒がほかの製品になるわけではございませんで、あくまで酒のうちにだんだん消費段階を通じていく。最終の小売店にいきましても一応酒でございますから、これは酒としての取締りが行われるわけでございます。私どもの方は、アルコールとしては行きますけれども、ある工場から業者にいくというようなルートもございますけれども、要するに需用上アルコール以外の製品になるということになりますと、それはもうアルコールではございませんで、普通の一般の化学製品になるわけでございますから、これをまた一々の買い手方をどうということは、アルコール取締りという範囲外に出て参るわけでございまして、そこまではやらない。酒の場合は、あくまで酒という形の上においてのルートが国税庁によって追及され、かけられていくということでございます一。
  51. 奧村又十郎

    奧村委員 これは、もうこれ以上お尋ねしても、あまり明確な御答弁は得られないと思いますので、私はいずれ後日通産大臣なり、また理事会での御協議の上で、仙台通産局の責任者等を喚問してお調べになるということを希望申し上げて、私の質問はこれをもって終ります。
  52. 松原喜之次

    ○松原委員長 奧村委員の御発言によりまして、後日これをさらに参考人を呼んで調べるとか、あるいは休会中に逆にこちらから調査に出かけて、そうして詳細に調べる等の手続は、いずれ理事会で御相談、いたすことにいたしたいと存じます。     —————————————
  53. 松原喜之次

    ○松原委員長 次に、接収貴金属等の処理に関する法律案を議題として質疑を続行いたします。春日一幸君。
  54. 春日一幸

    春日委員 私はただいま奧村君の質疑応答を聞いておりまして、まことに憤激を禁じ得なかったのであります。関連質問で幾多ただしたいことがありましたけれども、時間の関係がありまして留保いたしておりますが、いずれにしても、その国の政権が滅びんとするや、まずその政権の官吏が腐敗するといわれております。かくのごとくにして、通産官僚は次第に腐敗をしてきておる。防衛庁の役人のように、マリン・エンジンをめぐって腐敗の事実がある。これは、まさに保守政権が間もなく崩壊するの前兆であるのでございまして、特に注目に値する事柄であろうと思うのであります。しかしこの問題は、いずれ後日審議されます場合、わが党の立場から十分その調査を進めなければならぬと存じます。  私は、この際接収貴金属等の処理に関する法律案に関連をいたしまして、重要なる諸問題について、二、三お伺いをいたしたいと存じます。  この法律案並びに政府の趣旨弁明等によりますると、政府は、今回接収貴金属等は、憲法第二十九条の私有財産不可侵の規定をたてにとりまして、そうしてこれは明らかに被接収者本位の立場に立って、しかもそれをで送るだけ有利な条件のもとにおいて返還してやるという建前をとっておるものと大まかに理解ができるかと思われるのであります。  そこで私は、管財局長にお伺いをいたしたいことは、この立法をされましたあなたは、現に戦時利得の吸収、それから戦時横軸の均衡化等のために、戦後幾多の立法措置が講ぜられておることは御承知のことであろうと思うのであります。たとえば昭和二十一年には戦時補償特別措置法が立法され、それからまたこれらの問題については、戦時利得特別令ですか、そういう法律によって、そういう戦時利得を一〇〇%国家に吸収いたしております。その他財産税が制定されまして、これまた戦後におきまするインフレーションを抑制するとか、あるいは健全財政の再建とか、戦争犠牲の均衡化ということのためにそういう立法がとられた。さらにまた昭和二十二年には、非戦災者特別税法が設けられまして、戦災を受けた者と戦災を免れた者との間隔の是正とでも申しましょうか、そういうような調整がとられていることも御承知の通りであります。  そこでこの際伺っておきたいことは、現実にこれらの税制立法措置によりまして、その当時の軍需会社に対する補償金、それから下請関係で、これらの軍需会社に納入いたしました物品の代金、その他土木請負業者の工事代金というものが全部課税で国家に吸収された。このようなものの中には、当時陸海軍に納入した物資の代金で、ことに地方の農業実行組合、いわば耕作農民の連合からなる人々の納めた馬糧用雑穀、あるいは薪炭・あるいは松根油の代金というようなものも全部打ち切られてしまいました。あるいはまた船舶等におきましても、何千トン、何万トンの大きなものから、小さいものはそこらの二十トン、三十トンの漁船というようなものまで、これもこの戦時補償特別立法によって債権を要求する権利をなくしてしまい、もらったものは返還しなければならないという異常の措置が講ぜられていることは御承知の通り、その他あげて参りますならば、当時中小企業者たちが、企業整備のためにいろいろ補償金をもらったのだが、その補償金の請求権も放棄の余儀なきに至っている。建物疎開の補償金、戦争保険の保険金というようなものは、わずかな控除額の設定はありましたけれども、おおむねこれらの戦争によって生じたところの国民の債権は、戦後におけるこの三つの立法によってほとんどなくされてしまっているのであります。ところが今回の接収貴金属の処理については、これらの戦後措置との関係をどんな工合に考慮されているのか、この法律によりますると、憲法第二十九条においては、私有財産権を保護するという規定がある。すなわち私有財産不可侵というようなことをしゃくし定木にのみ込んで、そうしてこの被接収者本位に、しかも格別親切な計らいがなされているが、ただいま申し上げましたように、戦争によって生じたところの国民の債権が、あらゆる場合においてその権利がほとんど剥奪されてしまった、あるものは消滅し、あるものは現実に拠金を一〇〇%かけることによって、同一金額を国に吸収している。こういうふうな関連において、今回接収された貴金属についてのみそれを被接収者にことさらに返還しよう、こういうことははなはだしく不均衡ではないかと思うが、これについて法理論として、また立法に携わりましたあなたが国民感情を尊重せられないはずはないと思うが、そういうような一連の関連性の上において、一体どんな工合にこれを検討して、こういうようなむちゃくちゃな法律案をお出しになったものであるか、この際まずお伺いいたしたいと存じます。
  55. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 ただいまの御質問は、過去の戦争に基く補償問題、あるいは戦争に伴う利得等についての既往におけるいろいろの措置と、今回の接収貴金属処理法案との関係につきましての御質問でございますが、われわれもただいま御指摘の点につきましては、提案までに十分政府部内におきましても研究をいたしたわけであります。御趣旨は、戦時補償特別措置法、あるいは戦時利得に関する特別の町税、また財産税、非戦災者特別税、これらとの関係でございますが、これは、私どもとしてはこういうふうに考えております。今申し上げたいろいろの特別立法、これはすべていわば課税という方法によりまして、戦争から発生いたしました請求権あるいは利得等に対する特別の措置であったことは、御指摘の通りであります。しかしこれは、どこまでもやはりこういう補償なりあるいは請求権、利得というふうなものを課税の対象にいたしまして、そのすべてに対して、いわば法律の前に平等の課税が行われたわけであります。しかるに今回の接収貴金属という関係におきましては、これはただいま春日委員もおっしゃられました通りに、どこまでも憲法の所有権の観念を尊重いたしまして、この所有権尊重の法律の範囲内におきまして許されるものは、これは当然国に帰属させるというふうな措置のあることは、本法案の第二十条等において明らかでございます。しかしそういう法律の範囲を逸脱いたしまして、ただ単に返還になるものに対して特別に課税をするというふうな考え方は、法の前に平等であるという原則から言いまして、厳にこれは避けなければならない。ある意味におきましては、現在豊金属というものがどういうふうになっておるかということに立脚をいたしまして、およそ貴金属を所有する者に対しまして、一律平等の課税をするということは、これは理論としては考え得ることかと思うのであります。従いまして、今回のこの処理法案が成立をいたしまして、現実に貴金属の返還を受ける、これによって所有者がどれだけの貴金属を持っておるかということは明らかでございますが、その所有の事実に着目をいたしまして、およそ何月何日現在貴金属を所有しておる者に対しましては、これこれの課税をいたすという新しい貴金属特別財産税というふうなかりのアイデアでございましょうか、そういうふうな構想で課税をいたすということになりますれば、御指摘のように戦時補償特別措置法、あるいは戦時利得税に対する特別の課税ということと、大体同じような着想によりまして、いわば法律の前に平等であるという一つの特別の措置が講ぜられることに相なろうかと思うのでございますが、もし、今所有権尊重の一つの建前から、大体私どもの見積りで、約四十億程度のものが元の被接収者または所有者に返還される見込みでございますが、これだけを対象にいたしまして特別課税をいたすということになりますると、ただいま春日委員が御指摘になりましたような、既往におけるいろいろの課税の措置とはややその性格を異にいたすことに相なりまして、いわば特別のものに対する一種の特別課税というふうな形に相なりまして、この点は、税の建前から言いましても、きわめて問題の多いことということでございました。さようなことで、今回その返還を受けます者に対しましては、保管の費用その他を負担させるという意味におきまして、大体この価格に対して一割の納付金を納めていただく・こういうことで、実はこの点について種々研究をいたしました結果、結論的にさような案に相なっておるのであります。ただ基本的に、戦争中に供出をいたしまして、きわめてわずかの代金をもらった者と、戦争後接収を受けるまで供出もいたさずに持っておった者との間のアンバランス、いわゆるインフレ利得というふうなものがあって、これが一部の者に帰属するという関係におきまして、アンバランスがあるではないかというこの一つの感情は、確かにさような考え方はあり得るかと思うのでございますが、しかしその点につきましては、戦争中、なるほどきわめて安い価格でございましたが、一応供出をされました方々には、それぞれ対価を支払っておるわけであります。中には・その対価を他のものに投資をするとか、あるいは別個の形におきまして財産保全の措置を講ぜられて、今日これがりっぱに財産となっておるということも、これは一般的には言えなくとも、その人々のケースによって、さようなことも考えられるわけでございまして、この点につきましては、一つの感情論としてはさようなことも考えられるのでございますが、具体的に法律関係としてこれを分析いたしていきますると、やはり今日所有権をまっこうから否定して参ることができないということでございまするから、やはり返すべきものは返す、しかしながら必要な納付金といたしまして、大体妥当な一割程度のものを納めていただく・なおこれが返還を受けましたものを処分いたしました場合には、所得が発生いたすわけでございまするから、これに対しましては、現行の所得税法によりまして課税をして参る、また財産税等で保留をされまして、返還を受ける場合に財産税のかかるべきものはこれをかける、かような考え方で・ただいま御指摘の、既往の諸般の措置との権衡ということは、これをもって一応とれるものという見解のもとに法律案を出した次第でございます。
  56. 春日一幸

    春日委員 これは、いろいろとあれこれとの関係を弁ぜられていきまして、戦時利得特別措置法とか、あるいはそれに対する税法、財産税などで、ただいま具体的に申し上げましたように、その当時戦争によって、国民が持っておったところの多くの債権、こういうようなものが全部剥奪されてしまった。ところがそれと同じ状況下において、同じような性質の財産権が今特に補償されようとしておる、返還されようとしておるのは、現実にその債権が補償されようとしておるわけなんです。だから、そういうような関連において、一つは取り上げられてしまったものと、取り上げられたけれども今戻ってくるというものとの関連において、国民は法律の前に平等であるという立場から、これは国民感情がそういうような片手落ちの措置を許さないのではないか、このことを私は申し上げておって、その点の関連をどういう工合に調節しようとしておるのであるかということも含めてお伺いをしておるのです。と申しますのは、あなたは、大体において民間に返還するのは四十億程度のものであって、これは何としても国に帰属せしめるための法律的な根拠がないので、そうせざるを得ない、こういうようなお話でございました。しかしながら、これらの問題は、いろいろの法律の盲点というか、あるいはその法律欠陥というか、いずれにしても戦時補償の一切の債権放棄のあの原則から考えて参りますれば、その当時これは問題なく償還されて、同一の取扱いを受けてあったものと考えなければならぬ。さらに具体的にわかりやすく申し上げまするならば、その当時制限を受けておったところの債権が、たとえば今度の接収貴金属については、被接収者に四十億円のものを返すことができるならば、たとえば火災保険やその他今申し上げましたようなもろもろの債権についても、やはりその当時債権を拘束したものに対してこれを解除して、何がしかの支払いをしていくというような措置があわせて講じられるならば、それは国民負担の権衡とか、法律のもとにおける平等、そういう立場から考えて宥恕すべき点は、あるいはあるかとも思われまするが、今申し上げましたように、一切の戦時補償の打ち切り、こういう形で、そのものはもう全部不問に付せられる、もう何ら償われるということがない現段階において、当時同じような戦争目的のために供出したところの、しかも代金の決済を受けて、そうして一応仮勘定でも済んでおるというものについて、今回はなはだしくインフレートされた段階において、同一のものが返されていく、こういうことは、私ははなはだしく負担の権衡を逸しておると思うが、この点について、どういう工合にお考えになるか。
  57. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 重ねての御質問でございますが、こういうふうに私は考えております。これは接収という、要するに進駐軍の直接行動でございますが、これがなかりせば、どういうことであったかということを考えてみたいと思うのであります。すなわち進駐軍が参りまして、たまたま戦争中に供出しなかったような方、これに着目をいたしまして接収が行われたのでありますが、この接収がなかりせば、これに対してけしからぬというような感情はあろうかと存じますけれども、とにかく平穏、公然とこれらの貴金属を所有いたしておるわけであり、また接収されたものは、要するにこれを占有いたしておるわけであります。そういう事実関係というものは、接収という行為がなければ、戦後におきましては、特別の法律もなかったのでございますから、そのまま一応合法的に認められておったわけであります。しかるにたまたま接収という行為がありまして、その接収という行為の性格は、最初と今日の間では相当の開きがあるということも事実かと思うのでございますが、とにかく今日になりますと、接収は、この前の当委員会におきまして小山委員の御質問にもお答えをいたしましたように、これは所有権の没収ではない、単に占有を強制的に移したにすぎないということは、今日これを一応法律的に説明する場合には、さように申し上げるほかないと思うのであります。従って、さような行為があったために、今日返還の対象になる四十億の所有者、あるいは被接収者は、その所有または占有の状態に変化があったのでありまして、これをこの法律案におきましては、その元の状態に一応返そうじゃないかということでございます。そこでそういう状態に返しまして、そこから、しからば戦争中のただいま御指摘のようないろいろの請求権、あるいは利得に対する各般の特別措置があったのでございますから、それらの措置とのバランスからいって、現実に所有なり占有なりを回復した事態とのバランスからいって、さらに特段の措置が必要であるということでございますれば、これは先ほども申し上げましたように、貴金属を所有するものに対しまして特別の財産税を賦課するということも、理論的には私は可能であろうかと思うのであります。ただ接収という行為があって、その行為を奇貨として、この際法律的にどうしても返さなければならぬものに対しまして、これだけを対象にして何らかの特別課税をするということは、先ほども申し上げましたように、妥当ではないのではないか。やはりこの接収前の状態に戻すということが、実はこの法律の骨子をなすものでございまして、そこのところを一応御議論願いまして、そうして、こういう貴金属が元の所有者なり、あるいは占有者なりに返還をされました後のこの社会おける財産の分配、あるいは配分に対しまして、いかなる措置を講ずべきかということは、これはさらに次の問題として私は議論の対象にもなり得るかと思うのでありますが、ともかくわれわれとしては、接収前の状態に戻すということに主眼を置きまして立案をいたした次第でございます。
  58. 春日一幸

    春日委員 これは戦後における債権債務の処理という一連の法律との関係において、この問題の処理を考えなければならぬと思います。そこで特に私の強調したい点は、この法律父によって接収貴金属等の一返還を受けるもののほとんどすべては、本来戦時補償特別措置法、あるいはまた財産税法、この適用を受くべかりしものばかりである。このことをよく理解して、今回のこの接収解除の措置を講じなければならぬと思うのです。申し上げたいことは、すなわち占領軍の接収という事実があったために、現実の問題といたしまして、戦時補任特別措置法やあるいは財産税法の適用を免れたのです。その当時中間において接収ということがなかったら、これは戦時補償特別措置法の適用を受けるとか、あるいはその財産が本人に帰属しておるならば、すなわち財産税を申告するときにおいて、彼自体の財産として計上されて、税金の対象になっており、高率累進課税によって、二五%から九〇%までこれはかけられた。だから、そのときに当然国に帰属してしまわなければならなかったものです。特にこれは、御承知の通り、こういうような占領軍の接収という事柄によって実際上中断されておる。さらにこの法律施行後すでに五カ年を経過しておる。従ってこれは保税することができない。財産税については、五カ年間は過小申告であったり不実申告であった場合には、更正決定をすることができる規定になっておると理解しておりますが、五カ年間の時効がたってしまったので、財産税法においてもこれを徴収することができない、更正決定をすることができない、こういうような、要するに時間が経過するのを待って立法されておるところに、私は何と永く被接収者と立法当局者との間のやみ結託すらあるとさえ疑心暗鬼を持たざるを得ないのであります。  そこで、その問題はその問題といたしまして、具体的な一つの問題についてお伺いをいたしますが、これなかりせばということであるならば、すなわちああいう接収ということがなければ、本人たちが持っておったのだという素朴なことを言われるならば、戦争がなかったら、実際問題として家も焼かれないし、火災になったり、かたわになったり、死んだりすることはなかったんだから、これなかりせば本人に財産が帰属しておったというような、そんな子供の言うようなめちゃくちゃを言ってもらっては困る。私はそういうような考えが法律の基本になっておるとするならば、やはりもっと事実に即した、現実にもう少し深刻に徹して物事を検討してもらわなければならぬと思う。  そこで、私はさらに具体的に進んでお伺いをしたいが、いろいろと接収されたこれらの貴金属の中で、今回解除されようとするものは、幸というか不幸というか、すなわち戦時目的に利用されてしまったものについては、返還なんかされないのでございましょう。これはずっと日華事変当時から、日本銀行が売り戻し条件付で買い上げたものである。あるいは骨董的美術的の価値のあるものについても、そういうような措置を講じて、恤兵品として、国民の愛国の至情から陸海軍に献納した。ところがそれらのものが、長い期間にわたって国民の献納したものが、電波兵器とか航空兵器とかいうようなもので役に立って使ってしまったものは、今回は何も返還の対象にならない。何ら救済を受けることはない。たまたま幸か不幸か、偶然に残ったものだけが返還の対象になるのでしょう。出したものはみんな同じなんです。みんな愛国心に訴えて出してきた、それがあるものは使われ、あるものは使われなかった、だから使われなかったものだけが得をする、こんなばかげたことは、変じゃないか。この点はいかに財産権を強調すると言ったところで、やはり立法論というものは、法律を必要とするところの根本義に触れてその法の構成が考えられなければならぬ。いくら何だって同一の物件で——金にしろ、ダイヤモンドにしろ、指輪にしろいろんなものがとにかく同じ目的で出されて、その中のある部分は戦争目的の電波兵器に使われてしまって、たまたま残ったものは返してやろう、残っていなものはあきらめてちょうだい、こういうことでしょう。この点は一体どうなんですか。
  59. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 まず先ほどの私の答弁につきまして、一言つけ加えたいと思っておるのでありますが、私は、接収がなかりせばというような表現を使って、大へんおしかりを受けたのでありますが、決して私は、軽はずみで申し上げたのではありません。ただこの接収というものは、前回の当委員会における小山本員との質疑応答におきまして非常に問題になりましたように、接収という行為が非常に特別の行為であった。日本政府のほとんど関知いたしておらない間に、占領軍と申しますか、これが自分で直接行動で行なった行為であるということを一応申し上げまして、その次に、今春日委員も御指摘になりましたが、財産税とか戦時補償特別措置法とかの関係は、これは当然調整がとられなければならぬわけでありまして、たとえば財産税法の第三十四条によりまして、命令の定むるところによりという法文があるわけでございまして、これによる施行細則第十条によりまして、接収された貴金属等に対する課税の問題は、御承知のように保留になっておるわけであります。そういうふうな国内法との調整の問題は、私どもといたしましても全然別の問題としてあるわけでありまして、そういう調整はとられていないわけでございますが、接収はいわば日本政府としては全然責任のない、進駐軍の独自の行動であった、こういう意味におきまして、接収という行為があった場合となかった場合とを一応申し上げた次第であります。この点を一つ御了承を願いたいと思います。  次にただいまの御質問でございますか、たまたま国民が供出したものの中で、戦争中軍需品等で現実に彼に立ったものは返らない、役に立たなかったものは返るというようなことか、という御質問でございますが、さようではございません。戦争中に私どもも供出したのであります。これは金銀運営会、物資活用協会というような機関を通じまして献納したわけでありますが、これは、先ほども申し上げましたように、きわめてわずかでございましたが、とにかくこれらの供出に対しましては代価を払っております。従いまして、これはすべて国に帰属するという考え方でございます。あるものは仰せの通り戦時中お役に立ったものもあり、あるものはそのまま残っておりましてもいずれにしても所有権は国に州属するわけであり策して、そのものについて返すとか返さぬとかいう議論はないわけであります。問題は、戦時中さような供出をいたさずに、どこまでもいわば持ち続けておったものが、占領軍が参りまして接収を受けたものと、戦時中に供出いたしたものとのアンバランスということを先ほど申したわけであります。ところが接収には、御承知のように全然代価を払っておりません。事実上戦利品として強制的に管理したということでございます。そこで、先般も申し上げましたように、所有権は全然影響を受けていないという解釈に立たざるを得広いのでありますが、しかしながら戦争中政府の代行機関として種々活動した、そのために一応形式的に所有権を取得したというような機関、たとえば交易営団とか、物資活用協会とか、金銀運営会とか、これらの幾関が形式的に所有権を持っておったようなものにつきまして接収が行われた場合、これは先ほども申し上げましたように、法案第二十条によりまして、これらのものは国に帰属させる。そしてこれらの機関に対しましては、当時これらの機関が支払った代価を金利をうけて払うという考え方をとっておるわけであります。さようにいたしまして、法律上説明のつく限り、私どもといたしましても戦時中にさような献納をいたした、または供出いたしたようなものとのバランスのとれるように努めたわけであります。ただどうしても法律的に所有権を尊重するという原則から申しまして説明のつかないものが、最後にぎりぎり四十億見当のものがございまして、これに対しましては、先ほど申し上げましたように、一割の納付金をとるということで、一応返還をいたすわけであります。しかしこれが返還を受けました後の問題は、先ほど申し上げたように、さらに別個の考え方も成り立つ、かように考えております。
  60. 春日一幸

    春日委員 それでは、一つ具体的の問題についてお伺いいたしますが、あなたはただいま、代価の支払ってあるものについては所有権が国に移動しておるから、そういうものは今回の処理の対象の中に含めていないと言われた。ところが、われわれが日銀を調査したりなんかして記憶にあるところによりますと、これは、日華事変当時から日本銀行がいわゆる売り戻し条件付で買い上げてある。たしか領収書も添えて、金の茶がまや宝船、いろいろなものがありました。これは明らかに仮勘定にしても、売り戻し条件付にしろ、一応代価が払ってあるわけですね。こういう売り戻し条件付で買い上げた骨董的価値のある美術品については、今回接収解除によるこの法律の適用は受けないのですか。これをちょっと伺っておきたいのであります。
  61. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 ただいま具体的に、日本銀行のいわゆる売り戻し特約付の金その他の製品につきましての御質問でありますが、これはたしか仰せの通り、今回の接収交金属等の処理法等の対象でございます。この点につきましては、売り戻しの特約という点がはっきりしておりまして、この特約を、今日におきましては、否認をするということは法律的に困難であるという解釈のもとに、これは返還いたす対象になっております。御質問の趣旨は、これも一応対価を払ったんじゃないか。従って、先ほどの対価を払ったものは所有権が移っておるということとは矛盾するじゃないかというふうな御質問の御趣旨でございますが、この点は、日本銀行がこの売り戻し特約付の金、銀を収集いたしました沿革及びその事由からいたしまして、確かにその特約の中に、戦争中にこれを政府の用に充てた場合には別だけれども、戦争中にかようにいたさずして事変が終了いたせば、できるだけすみやかに返すというふうな趣旨の特約が入っておるわけであります。この点はよく御承知であるわけであります。そこでこういう特約を否認いたしまして、この際これを没収するということは、先ほど申し上げたように、法律構成といたしまして無理でございます。そこで、これは一応さような特約を尊重いたしまして、返還はいたしまするが、これに対しましても、先ほど申したように一割の納付金をとる。また返還を受けましたものがこれを処分いたした場合には、その所得に対しまして、現行法令の定めるところによりまして、所得税等を課する、あるいは法人税を課するという考え方をとっておるわけでございます。
  62. 春日一幸

    春日委員 ただいま明らかになりましたが、その売り戻し条件付という一つのハンディキャップがあるから、それについては、代金を支払っておるものでも本人に返してやる、こういうことになっておるけれども、これは日華事変以来、そういうような単なる経済契約で、国民は金、眼、ダイヤモンドを国へ醵出したものではない。これは婦人会から隣組から、みんなこれは愛国心に訴えて、とにかく戦争に勝つために、国家目的に使って下さい、こういうことで、これはきれいな気持で出してきているのです。それで、その当時自分の一番大事な結婚記念の指環から、あるいは大学を卒業したときの銀時計まで出した人たちがある。そんな人たちの物は、金を払ってあるからそれは知らないということで、国民感情が納得できるとお思いになるか。いずれにしてもこの戦争目的、国家目的、公けのために使って下さいといって、自分の一番大事な金、金貴属、ダイヤモンドというもの——それは本人にとっては一番大事なものでしょう。命にかわるものもあるだろう。そういうものをみんな出してきておるか、たまたま売り戻し条件付になっていないから、それは金を払ってあるからだめだ。けれども売り戻し条件が付いておるというものについてだけは返してやる、清算をしてやるというようなことでは、これは機会均等を失するというのが私の主張なんです。  それからもう一つあなたに申し上げたいことは、接収ということについては、日本政府は責任を負いがたい、ごう言っておられる。これは当然のことでしょうけれども、責任が負いがたいということと、結果的には責任が果せない、責任がないということと同じなんです。接収はアメさんがやったんだから、日本政府には責任がない、解放されたんだからまたもとに戻すという考え方と、日本政府が責任を負おうと思っても負えない、また負っても非常に結果が悪い、こういうことは、結果的に同じことなんです。たとえば戦争について一切の責任を国が負えと言ったところで、死んだ子供は帰ってこないし、それから何千億というよう国民の戦争債権を払えば、国が破綻する、あるいはものすごいインフレーションになるということで、国の経済が立ち行かなくなる。このことは、結局接収ということについては責任がないということと、それから一切のそういう戦争債権について国が責任を負おうと思っても負いようがない。だから戦時補償特別措置法という法律が、国会の承認を得て、国民の納得のもとに施行されたんですよ。だからその責任がないというて、接収されたものだけを戦時債権と切り離してあなたが取り扱われようとするところに、われわれの理解のできな得ないことがあるのです。だからその点を十分に重視して、その問題の処理をしてもらわなければならぬ。(「研究しておらぬ」と呼ぶ者あり)少くとも今藤枝君が、社会党はこれを研究しておらぬというけれども、さきには行政観察委員会において、われらが共同でこの法律案の処理のあり方について共同で案を出しておるくらいのわれら日本社会党に対して、このような問題について研究しておるだとかおらぬとか、たわけ坊主が何を言うか、わけがわからぬ。  そこで私は、さらに一歩進んで考えたいと思うのですが、貴金属と名のつくものは、今申し上げましたような日華事変から終戦直後に至るまでの一連の経過があるわけなんです。特に見のがしがたいのは、終戦直後において隠匿しておったやつから 何とか貴金属報告令というようか法律によって報告をしなければならなくなった、そういうような非国民の分もこの中には含まれているのですよ。そういうアルファからオメガまで、一切の問題をこの法律によって一刀両断的に処理されようとしている。言うなれば、貴金属というものは、戦争中国民すベてが国民の愛国の至情から醵出した、そのことを腹に置いて考えなければならぬ。そこで代金が払ってあろうとなかろうと別問題にして、一部は、使用されてしまったんだから、これは返還できない。しかし一部は、たまたま使用されずに終っておるから、これは返還してやる、こういうことでは非常に矛盾が生じてくる。しかも今回の政府案では、これを供出した本人に返還するというのではなくして、接収者、すなわち供出を取り扱ったところの代行機関にこれを返還してやるという、ここにも大きな疑問がある。(「返還しないんだよ」と呼ぶ者あり)最後まで聞け。そこでこの問題について、私はこの際主税局長にお伺いしなければならぬと思うんだが、一体戦時補償特別税としてこれが施行されたときに、こういう接収というような事実がなかったならば、これは一体どういうような取扱いを受けておったであろうか、こういうことを一つあなたからお伺いいたしたいと思う。すなわち戦時補償特別措置法に基く特別税によると、これは戦争に基因して発生したところの一切の国民債権、その相手が政府並びに地方公共団体または特定機関、こういうものに対する請求権で・その支払い期日が昭和二十年の八月十五日以前に到来をしているもの、同日までにまだ支払いの済んでいないものについては、それから同時に、請求権の発生した原因が、昭和二十年八月十五日以前に生じた損害や引き渡しをされた物資や施行された工事等に基くものであって、その支払い期日が昭和二十年八月十五以後に到来するもの、こういうものは全部百パーセントの課税をしたわけなんですね。そうでございましょう。それでありますから、このときの接収という事実がなかりせば、一体これらの貴金属に対する税法上の措置は、すなわちこの戦時補償特別措置法によってどういうような処理をされたであろうかということを、この際機械的に公正に御見解をお述べ願いたい。
  63. 渡邊喜久造

    ○渡邊政府委員 お答えいたしますが、戦時補償特別措置法によって一応課税を受ける形でもって打ち切りになりましたものは、その対象としては国に対する債権、それから特に政令で国の機関として指定した機関に対する債権、これだけに限られております。同時に、国に対する債権につきましても、その全部について打ち切ったというわけのものではございません。たとえば、大蔵省に机なりいすなり、あるいは紙を納入していた、そういった場合の債権が、たまたま八月士五日現在で残っていたというようなものまで打ち切ったわけではない。この点につきましては、まず第一に、国に準ずる機関はどんなものがあったかということについて申し上げますと、それは施行規則の第一条に規定してありまして、産業設備営団、日本倉庫統制株式会社、損害保険中央会、その他まだ幾つかございますが、こういった機関だけである。従いまして、もちろん府県、市町村はこうした中に入っていない。それから国に対する請求権、あるいはこうした機関に対する請求権にいたしましても、第六条に規定がありまして、これは法律的な根拠は第一条の第四項と、第一項のただし書きにございまして、第一項のただし書きのところに「但し、政府又は特定機関の通常の業務に関して生じた請求権を除く。」それから第四項に「第一項但書の通常の業務に関して生じた請求権の範囲は、命令でこれを定める。」この委任規定によりまして、施行規則の第六条にありまして「法第一条第四項の通常の業務に関して生じた請求権は、左に掲げるものとする。但し、旧陸軍省、旧海軍省及び旧軍需省航空兵器総局の業務  (これらの官衛の委託に基いて昭和二十年勅令第一号の規定によりなされた業務を含む。)に関して生じた請求権については、第一号に掲げる請求権及び金銭の寄託その他これに準ずるものを原因として生じた請求権とする。」そこで並べてありますのが、「俸給、賃金、年金、退職金その他の給与の請求権」それから二号としまして「土地、建物、施設その他の物の譲渡、賃貸、建造、改良、維持又は修理その他の給付の供給で日常の活動に必要なものに関して生じた請求権」それから三号「日常の活動に係る金銭の貸借、寄託その他これらに準ずるものを原因として生じた請求権」四「前三号に掲げるものを除く外、日常の活動に関して生じた請求権」そういうふうにそれぞれの規定がございまして、戦時補償請求権として打ち切られましたものは、主として軍との関係によりましての軍需品の納入関係、で生まれた請求権でありますとか、あるいは総動員法とかその他に基きまして補償されていた損害賠償請求権、そういったようなものが打ち切られたわけでございまして、日常活動に基くものは打ち切られていない。それから日本銀行の関係の債権債務関係は戦時補償特別措置法の対象にはなっていない、こういう関係にあるわけでございまして、春日委員の御貫目の具体的な事例となりますと、もう少しおっしゃっていただきますれば、その辺がどういう関係にあるか、申し上げていいと思います。
  64. 春日一幸

    春日委員 この問題はいろいろ複雑するところが多岐多面にわたっておる。そこで今申し上げておきたいのだが、金銭以外のことについては、補償打ち切りの道がないと言っておるけれども、これは彼らが不勉強である証左であって、これは法律が明らかに規定しておるように、金銭によって給付を受けるもの、あるいは金銭以外の方法によって給付を受けるもの、こういうようなものも本法施行の即日、そういう権利が消滅するという規定になっておる。物とわかず金といわず、一切の請求権が消滅しておることは明らかなんです。この点は諸君はよく勉強されることを……。(「所有権と請求権は違う」と呼ぶ者あり)一切の所有権も請求権も債権とおぼしきもの一切を含めて……。(「それは違う」と呼ぶ者あり)それはよく諸君が勉強されれば……。(発言する者あり)まあよろしい。それで私は渡邊……。(「請求権と所有権と間違えては困る」と呼ぶ者あり)委員長——ここで目薬なんかさされてどうする。(笑声)委員長、これはどうも困るですね。  戦時補佐請求権の問題を僕は論じておるのだが、その請求権の中には、金銭によって給付を受けるものと金銭以外の方法によって給付を受けるものと二つあるわけなんです。その一つの金銭のものは、これはむろん一〇〇%の課税をすることによって国に全部徴収される。ところが金銭以外のものですね。一切のそういうものは、その法律が施行される日にその請求権が消滅する、こういう形によってそれはなくなっておるのですよ。だからその点ははっきりしておかなければいけない。よく理解されることを要望するが、そこで私は渡邊……。(発言する者あり)請求権が消滅するのだから、今後あらゆる形においても、どんな形においても請求することができ広い。だから金であろうと物であろうと権利であろうと、何であろうとこれはだめなんだ。そこでこの戦時補償特別措置法によって制限を受けたところの財産権というものは、ずいぶん多岐にわたっておるのです。今渡邊さんの御答弁によると日常活動によって云々というようなことは、補償打ち切りを受けていないと言っておられるけれども、これは非常に多岐にわたっておるのです。特に今指定された相手の中で産業設備営団、損害保険中央会、戦争保険契約をなした損保会社、国民更生金庫、船舶運営会その他の団体があるわけなんであります。特にこの中には、今申し上げておるように、企業整備の補償金から建物疎開の補償金から戦争保険金は当然のこと、百姓が納めた馬匹薪炭類、そんなものの請求権から土木青負業者の工事代金、むろん軍需会社に納めた納入代金、それから政府がそういうところへ未支払いになっておる補償金、こういうようなものも全部この戦時補償特別措置法の制限対象になっておるのですよ。そういうような客観情勢下において、もし接収のことなかりせば、こういうようなものもやはり戦時に発生したところの……。(「八月十五日前に接収なんかありはしなかった」と呼び、その他発言する者あり)ちょっとヤジを封じてもらわなければ困る。こういう貴重な質問に対して、法理論を展開しておるときに、ヤジで半畳を入れられたのでは、現実の問題として冷静なる論述ができない。だから、これは退場を命じていただくか、それとも何らか落ちついてやれるようにやってもらわないと、実際これは、憲法論から民法論から税法論からいろんな法律に携わるときに、一々半畳を入れられては、まっ向から倫理が混乱してくるから……。
  65. 松原喜之次

    ○松原委員長 お静かに願います。
  66. 春日一幸

    春日委員 そこで、そういうような情勢下において、この戦時補償打ち切りが課税の方式でとられたのでありますから、だから、当然この法律の精神から言うて、この接収されたところの金貴金属については、すなわち、一つは戦時補償特別措置法、あるいは財産税法、あるいは非戦災者特別税、この三つの法律の関連において、これが当然その課税対象たり得べかりしものである、こういう工合に私は理解しており、またそういうふうになされなければならぬとわれわれは主張するものであるが、渡邊局長は、これに対してどういう工合に判断をされますか、お尋ねをいたしたい。
  67. 渡邊喜久造

    ○渡邊政府委員 財産税、それから戦時補償特別税、それから非戦災者特別税、その全体について一応どういう関係にあるかという御質問を受けたわけでございます。順々に申し上げて参りますと、一番簡単な問題としましては、非戦災者特別税、これは戦災を受けていなかった者について課税されたわけでございますが、この場合におきましては、戦災を受けたか受けなかったかということで納税義務者になるかならないかがきまりまして、同時にその場合に、非戦災者であれば、その人の家を対象にした関係のものと、その人の個人のその他の財産を対象にしたものとあって、いずれも、家の場合におきましては家の賃貸価格の何倍、それから家以外の財産を対象とした場合におきましては、その方の住んでいる家の賃貸価格の何倍、こういうように非常に大義かなところで課税の負担がきまっておりますから、従いまして、この税に関する限りにおいては、今度の接収貴金属の問題とは直接どちらにしてもそう深い関係はないというふうに御理解願っていい問題じゃないかと思います。  それからその次の問題として財産税の問題、財産税に関する限りにおきましては、これは昭和二十一年の三月三日にあった財産であれば、一応課税の対象になるわけでありますが、ただ、貴金属について接収を受けた、そして今手元にない、こうった場合におきまして、それを通常の姿のままにおきまして財産税を課税することについては、これは無理があるだろう、こういう考え方のもとに、接収を受けた貴金属があった、そしてその旨を法令の規定に従いまして届出した場合におきましては、財産税の課税はあと回しにする、こういったような全体の建前になっております。それが、先ほど正示管財局長の申し上げましたように・届け出した分につきましては、財産税の課税が今後に問題として残っている。届出をしておりませんと、当時当然課税になるべきものであったというふうに御理解願っていいと思います。  それから戦時補償特別税との関係でございますが、これは、現在問題になっておりますのは、結局八月十五日当時におきましてはまだ個人の手にあった貴金属が、その後において進駐軍によって接収されたもの、それからその当時買い戻し条件付でもって日本銀行に売り渡して、それから日本銀行から買い戻しをして、一応はその人の手に移ったわけですが、それがその後に接収されたもの、それから日本銀行に買い戻しの条件付で売り渡しますが、しかしこれを買い戻す前の、まだ買い戻しの手続が済まない間に、そこで接収という措置がありまして、買い戻しができないままにストップしてしまった。この三つが対象に触るわけでございますが、先ほどもちょっと触れましたように、日本銀行に対する各種の請求権というものは、戦時補償特別税の課税の対象になっておりませんので、その分につきまして、戦時補償特別措置法によって請求権がなくなったとかどうとかいうようなことは、ちょっと言えないのではないか、かように思います。
  68. 春日一幸

    春日委員 財産税は時効は五カ年でしたね。
  69. 渡邊喜久造

    ○渡邊政府委員 通常の場合におきましては、財産税の時効は五年で宗成するわけであります。ただ先ほど申しましたように、届け出をしてある金とか、そういうものについては、課税を猶予するといって、課税権そのものがまだとまっておりますから、この分は、課税権が動くようになりましてから五カ年は、なおかつ課税できる。こういう関係のものであります。
  70. 春日一幸

    春日委員 ところが、現実に五カ年前にこの財産税は施行されたのだが、あれは申告税ですから、その当時の申告の実態が果して適切なものであったかどうか、さかのぼってこれを調査するというようなことは事実上不可能ではないかと思う。各税務署において、申告用紙が保存されているかどうかも疑わしいことであるし、さらにその財産を加えることによって、その免税点がたしか十万でしたか、それをこす面があるか、あるいはこさないかというようなボーダー・ライン等については、なおさら困難であろうと思うわけであります。しかもその時効が五カ年経過しているということによって、さらに課税を行おうとしても、その課税権が生きているとしても、そういうことによって負担の均衡をはかっていくということは、実際においては期しがたいのではないか、こういうふうに考えるのでありますが、この当時何か報告書ですか、それに基いて申告をしている人はいいですが、申告をしてない人もあると思います。そういうものは、脱税犯として三年以下の懲役か何かの処罰規定があったと思うが、そういうものを行使することができるかどうか、たとえばその当時申告をしておれば、貴金属がこういうふうに接収されているのだということを財産税の申告書の中に申告しているものは、今申し上げたようないろいろな困難性はあるけれども法律上は脱税の意思はないし、脱税犯を犯していないが、ところがそういう申告をしてない、そうして現実には今度戻ってくる、そして財産税については、十万円の免税点の上に出るか下になるか、あるいはまたその上積みであったとしても、これは法律の累進課税であることによって、二五%の課税をしたものから九〇%の課税までにおいて、実際に納めなければならなかった税金についても、実際的に大きな異同を生じてくる。そういうような追捕が実際できるのかどうか。それから申告をしておかなければならなかったものを、その当時申告しなかったものについては、これは故意の脱税犯として三年以下の懲役に処する。たしかこういう処罰規定があったと思うが、そういう法律の適用はなし得るものかどうか、この三点について明確な御答弁が願いたい。
  71. 渡邊喜久造

    ○渡邊政府委員 三点とおっしゃいましたが、私の答弁が不十分ならまたつけ加えて御答弁申し上げますから、そうお願いしたいのでございますが、現在までにおきましては、財産税に関しましては、すでに時効が完成しておりますので、不幸にしてそうした申告をしなかった、あるいは申告漏れの人があったということがありましても、またそれが現在においてはっきり出ましても、現在としましては、税金の徴収をすることも法律的にはできませんし、またこれを脱税犯として処罰するということも、法律的にはできません。こういうふうに解しております。
  72. 春日一幸

    春日委員 とにかく法律的には、処罰規定や、あるいは課税の追捕ができない。いわば時間が相当たってしまって、公正なる処理のできないような時期を選んで立法がされてきたということなんかもある。これは国民として特に重視をしなければならぬ。これをよく記録を通じて、全国民に知らさなければならないことだと思うので伺うのでありますが、時間の関係もあるので各論に入りますが、一つ正示局長にお伺いをいたします。同一保管中の貴金属の間には、必ずしも同一物と認められないものが多い。かりに法律的に同一性のあるものと認定しても、接収の時日及び内容が——明らかに十年前にさかのぼるんだから、これは的確とか、そのものずばりとか、間違いがないということは期しがたい。そこでこれを返還する建前で、一刀両断的に法律をもって律していこうとする場合には、現実に人がやるんです。国有財産の処理について、あなたの管理がどんなものであったかということは、先般行政管理庁の報告によって明らかにされておる。台帳に記載されておるところの国有財産がすでに存在しなかったり、あるいは賃貸契約において、あるいは処分等において、明らかに不当なものであったものが幾らもあるんです。そういうような国有財産の管理状況の実態にかんがみて、十年前のそのものが、その本人のものであったということの認定、このことは人がやるんだから、情実や不正というものが介入するおそれがずいぶんあると思う、それで、こういうような相当数の不公正とか、あるいは違反、こういうことが多分にあり得るとかいうような心配は、この立法に即しての措置の実際の過程において、あなたはそういう心配はありませんか。たとえば金とかダイヤモンドとか、何カラットの指輪とかいろいろなものがあるでしょう。売り戻しつきで供出されておるものについては、これは何のだれがしたといって、一々名付がつけてあって心配ないと思うけれども、その他のものは非常に類似性が多い。これをその当時の書類に基いて、これが太郎さんのものだ、次郎さんのものだ、こういう工合に判定するということがはなはだ困難なる過程において——一つのダイヤモンドにしても、同じカラットでも、大体光沢の工合だとか、カービングの工合だとかいうことで、私はずいぶん価値が違うと思うんです。そういうようなときに、非常に不公正だとかなんとかいうような、あなたの方の行政管理庁の監査報告にかんがみて、絶対心配はないかどうか、この点まず伺いたいと思います。
  73. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 ただいまの御質問は、この法律案の実は一番重要な点でございまして、この法律案が成立いたしますと、返還請求ということにまず相なるわけでありますが、権利者が返還の請求をして参る、これに対するただいまの御質問は、認定行為のその内容につきましての御質問であります。これは非常に重要な問題でありまして、この点について、公正妥当な措置ができるという確信があるかという御趣旨の御質問のように拝承いたしたのでありますが、最近の国有財産の問題を引き合いに出されたの、でありますが、この点は、国有財産につきましても全く同様でありまして、あやまちのないようにやっていかなければならぬことは当然でございます。十分とは参りませんが、いろいろ工夫をいたしまして、さように努力をいたしております。実はこの認定の各過程におきまして、特定をするもの、特定をしないもの、その特定をするという、このものずばりというふうに認定をすること自体に、非常に問題があるのではないかという御指摘でございますが、これはあくまでも諸般の資料から判断をいたしまして、さような間違いの起らないようにやっていかなければならぬ、そのように努力をするということにお答えは尽きるわけであります。ただそういう場合に、ただいま具体的に例をあげて御疑問を提出されたのでありますが、この点は、すでに日本銀行の地下室等において実際に御調査いただきました場合に、よく御承知を願ったと思うのでありますが、特定するというのは、これはむしろ比較的問題なく、だれが見ましてもはっきりいたすわけでございまするから、これにつきましては、ただいま申し上げたような注意を十分いたすことによりまして、問題なく処理できるというふうに考えております。問題は、むしろ特定をしないような場合の返還の仕方につきまして、非常にこれを公正妥当に行うべく、法律案としましては苦心をいたしまして規定を設けておるのでありますが、これらの点につきましては、実際それの運用に当りまして、種々認定行為等につき不服があるとか、あるいは問題が起り得る可能性は否定きないと思うのであります。これらの場合に備えまして、法律案といたしましては、異議の申し立て等の道を開きまして、審議会の議を経ることももちろん規定をいたしておるのでありまして、大体私どもとしましては、考えられるあらゆる手段をこの法律案の中に織り込んでいただきまして、公正妥当な処理をいたすべく備えておるわけであります。特にこの処分を行う機構といたしましては、先般法律案を提出いたしました後にお願いをいたして、まことに恐縮であったのでありますが、臨時貴金属処理部というふうな一つの市を設けまして、特に多年にわたりまして、国会その他におきましても非常に多くの疑問を提出された本案の処理につきましては、責任をもって最後まで公正妥当な処理ができるような体制を整備したい、かような意味で、特に大蔵省の中に部を設けていただく。ここの職員は、おそらく相当の年月を要すると思うのでありますが、最初から認定行為をいたし返還をいたす、これに対して異議があれば・最終的には裁判等によって処理をされる以外にないと思うのでありますが、それらの場合におきましても、終始一貫、適正な処理をいたすような体制のもとに、特に一部を設けていただき、専任の職員が責任をもって最後まで処理するような体制のもとにやっていきたい、かような趣旨をもちまして、特に部を設けるようなこともお願いをいたしておるわけであります。最近のいろいろな事例に照らして、自信があるかという点につきましては、以上申し上げましたように、あらゆる方法を講じまして、公正妥当な処理を進める覚悟をいたしておるわけであります。
  74. 春日一幸

    春日委員 ちょっと時間が過ぎておるようですけれども、これは重要な問題だし、今国会で疑点を明らかにしておかなければなりませんので、もう少し続けますが、とにかくこの問題は、接収貴金属を保管貴金属によって処理するというところに非常に困難な問題がある。この法律がいろいろ同一性を特定し得るもの、これは一応明確であろうと思うが、その同一性はを法律によって規制せなければならぬ、ここに問題があると思うのです。こういうむずかしい法理論については・自民党の諸君にはわからぬかもしれないけれども、小山君は弁護士だからわかるかもしれないが、その同一性を法律によって規制するというこの立法措置の中に、非常な困難性があると私は思う。法律は、施行しようと思えば公正かつ妥当に行わねばならぬことは当然のことだが、別の角度から言うならば、その法律を施行しようと思えば、その執行者が果してその事柄を公正、妥当になし得るやいなや、その可能性に対するお互いの推定といいますか、これがわれわれ立法府に課せられた大きな判断の重要なる意義の存するところだと思うのですが、まず接収された貴金属の中では品種、種類ですね。形状、ウエートというようなことから、クォリティなんてものもありますが、そういうようなその事柄、あらゆる多くの条件を含めてこれを規制していくということが、非常に困難であると思う。さらに一歩進んで、実際問題として、中には溶解されてしまったものがある。それは憲法論からいっても、本質的にこれは疑義の存するところですよ。ある場合は、藤枝君が献納されたものを、それを判断する男が、これを小山君のやつだというて持っていくかもしれない。小山君の出したものを、黒金君のだというて間違った判断をして、裁判所の判断を得たらどうだったとかなんとかいうのだけれども、その法律を施行するに当って、一々裁判所の判定を得なければならぬというようなばかげた法律というものは、私は未熟で、ずさんで、むしろきわめて危険な法律といわねばならぬと思う。ことさらに、溶解したものは記録に基いて按分処置をしようというのだけれども、これは権衡をはかるとかなんとかいうことだが、現実に執行官の判断が誤まったり何かすれば、また裁判官の判断といえども、五番町事件もあり、八海事件もありまして、裁判官といえども人間のやることだから間違っておる。憲法論は、真実をとらえていろいろ処理をしようというきびしい規定なんだが、これは権衡をはかるためにその不均衡、たとえば藤枝君がもらわねばならぬものを小山君がもらったり、小山君が取らねばならぬものを黒金君が取ったりするようなあやまちを発生せしめるの危険が十二分に私はあると思うが、こんな危険な法律を、憲法二十九条の概念論で立法して国民に押しつけて、それでいいかどうか。この点、もうちょっと上の人に答えてもらいたいのだが、主税局長、あるいは正示君からでもいいが、ほんとうに的確に公正にやれるかどうか、少くとも憲法二十九条なんかを引っぱり出してこの法律の公正を期したあなたとして、ほんとうに確信があるかどうか。あなたの部下たちの仕事のやり工合は、行政管理庁の監査報告の通りなんです、全くの話が。それで今度部を作ったところで、その人たちが一部屋へちょこちょこ集まるだけで、そこに釈迦牟尼とかキリストとか、あるいは春日一幸という人が集まるわけじゃないのだから、私はそこに非常な困難性があると思うが、本法施行について、公正にして妥当なる最終的成果がおさめ得るという大確信があるかどうか、この点を一つお尋ねしたい。
  75. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 特定しない場合の返還につきましては、本案の第九条等にさらに詳しく規定をいたしております。これはむずかしい手続の規定でありまして、これを公正妥当に処理できるかどうか、立法者としては、その可能性について十分審議をしなければならぬという御趣旨は、私も全く同様に考えております。この点は、十分御審議を願わなければならぬと思います。しかし私どもも、実は本案を出しましたのは、前後三回目でございまして、部内におきましても、関係各方面と何回か情報をかわしましてよく練った案でございます。問題は、なるほど非常に技術的にむずかしいのでありますが、私は、これは法律の規定を設けていただくことによりまして、必ずできるものとの確信のもとに実はお願いをいたしておるわけであります。  いろいろ御心配の点でございましたが、私は、この接収貴金属は多年国会の行政監察委員会において御調峯に相なり、また当委員会その他におきましても非常に重要視されまして、たびたび論議されており、いわば天下の注目の対象になっているのであります。国有財産の問題を私はあずかって日が浅いのでありますが、ここにきわめて遺憾な点がありましたのは、どうも天下の注目を集め得なかったところが根本の原因だと思うのであります。もう少し国有財産の処理について大方各位の御注目を得まして、予算をいただくとか、人をいただくということができましたならば、もっと違った形になってきたのではないかというふうにも考えておるのでありまして、当国会におきましていろいろ御議論も願ったのでありますが、私は、これはむしろ災いを転じて福となす非常によい機会であったのではないか、ぜひとも大方の御協力を得まして、国有財産全体の信用の回復に万全を期していきたいと考えておるのであります。接収貴金属の返還の問題は、申し上げましたように、また春日委員は特にお詳しいように、天下、むしろ外国におきましても非常に注目をいたしておる事柄でございして、この処理に当る者が、法律の規定を無視したり、あるいは不都合なことをいたして当面を糊塗することはとうてい許されないことであり、また内外の注目を浴びていることでございますから、注意をしなければならぬと、さように心得ているわけでございまして、私は法律の規定を設けていただき、これを十分会得いたしてその衝に当っていくならば、必ず公正妥当な処理ができるものとの確信を持って、実は法案をお願いいたしておるのでございます。さように考えますが、しかしなお具体的な規定等につきましては、十分御審議をいただきまして、われわれのふつつかな点等につきましては、御注意をいただきたいと考えている次第でございます。
  76. 春日一幸

    春日委員 的確なる回答ではなくて、私の不安は解消されたわけではありませんが、それはそれとして便宜私の質問を先に進めます。  そこでお伺いしたいことは、今回東洋機械外六社の諸君が、その混乱のさなかに、軍需品の納入代金代物支払いという形で、金地金数十トンを政府から取得したのが接収された、今回処理の対象になっておると思うのだが、これは一体どういうふうな理解で本人たちにこれがそのまま返し得る、こういう工合に解釈されているのか、まずこの点をお伺いしたいと思います。
  77. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 ただいまの御質問でございますが、この法律案実施に伴いまして返還の請求の申し立てをさせませんと、個々の具体的ないわゆる被接収者、あるいは所有者の関係は明らかでないのでありますが、ただいまの御質問は、軍需会社等で代物弁済を受けたものに対して、この法律案によって返還されるようなことに対する法律的な根拠はどうか、こういうふうなことのように拝承いたしたのであります。これは先ほども冒頭の御質問に対してお答え申し上げたのでありますが、正常な取引関係等によりまして平穏公然に所有権を取得したようなものが、接収によってその所有権がなくなったとか、あるいは口に帰属したとかいうふうな解釈は、非常に法律上無理がありまして、さような解釈はとれないということを申し上げたのであります。それで代物弁済もやはりその一つでございまして、これは請求権というようなものに対しまして、代物弁済をしたことがいいか悪いかは一つの問題がありますが、いずれにいたしましても、代物弁済の形で一応平穏公然と所有権を取得したような場合におきまして、これを接収という行為によって所有関係が変更されたという解釈はできないわけであります。そこで私どもといたしましては、軍需会社が軍需品の製造の原材料等のために、国の代行機関から配給を受けたようなものは、これは本来その軍需会社等に帰属すべきものではなくて、どこまでも国に帰属させるというふうな法律構成をとったわけでございます。代物弁済という形によって所有権を取得した場合のところまでは、これを国に返還せよということは、法律構成上無理があって、その点は言うことができないという一応の解釈をとりまして、今回の法律実施になりますと、さようなものは、軍需会社の方に返還になる見込みになっておるわけでございます。
  78. 春日一幸

    春日委員 伺いますと、何か一時からここを他の委員会が使うからあけてくれということでありますが——委員長どうしましょうか。
  79. 松原喜之次

    ○松原委員長 質問を一つ保留しょうじゃないですか。
  80. 春日一幸

    春日委員 それではちょっとつじつまだけ合せておきます。今局長の御答弁によると、東洋機械外六社は、請求すれば結局数十トンの貴金属の返還を受けられる、こういうことにならざるを得ない、またその返還請求に応ぜざるを得ないような法律の建前だ、こういうことですね。そこで渡邊主税局長にお伺いしますが、これは明らかに戦時補償請求権の支払い、こういう形で代物弁済を現実に受けておるのです。この東洋機械外六社が明らかにそれに該当しておると思う。しかるに一方戦時補償請求権というものは、法律によって支払い期日が昭和二十年八月十五日以前に到来していたが、同日までに支払いの済んでいなかったもの、並びにその支払い期日が二十年の八月十六日以後に到来するものは一〇〇%の課税を行なって、これをすべて打ち切った。何百かの軍需工場は、あるいはその下にあるところの多くの国民は、その請求権を結局打ち切りさせられてし使ったわけなんですね。ところがこの法律は、五年しかさかのぼって更正決定ができないということで、今回六社だけは、何億になるか、何十億になるかしれないけれども、少くとも数十トンの貴金属をもらうことになる。この戦時補償特別措置法に基く課税の行われた実態とこのこととあわせ比べて、一体あなたは国民の前に、どうして権衡をはかっていこうと考えられるか、税金によって更正決定することもできない。ところが同様の事態は、他の軍需会社は、当時もらっておったものは全部国へ取り上げられてしまった。あるいは税金で取り上げられてしまった、物を取り上げられてしまった。ところがこれらの諸君は、代物弁済の形であったがために、供出したことはしたのだが、今度解除しなければならぬ。しかも税金をかけようと思ったところで時効にかかってしまって、その法律執行することができない。こういうことであって、この六社だけはものすごい所得を得るという形になると思うが、この点の権衡は、税法の上で何らか調整の方法がありますか、あるいはありませんか。
  81. 渡邊喜久造

    ○渡邊政府委員 代物弁済の場合におきましては、結局戦時補償特別措置法は、御承知のように二十一年の十月に公布、施行になった関係もありまして、その当時までに、特にこれは終戦直後でございますが、代物弁済の行為というものはかなりたくさん行われておりました。それは品物としましては、今問題になっておりますような貴金属で代物弁済された例もあります。あるいは当時政府の方から支給されておりました鉄材その他の原材料でもって代物弁済の行為がなされた。そこで戦時補償特別税は、品物そのものを取り上げるという法制の建前にしておりませんで、その場合におきましては、その代物弁済した額に相当する税金を課税する。まだ請求権で残っておれば・請求権のままでもってこれを消滅させることによって課税と同じ効果を与える。それからすでに代物弁済をしておれば、その代物弁済の相当額を金銭でもって払っていただく、こういう建前でできているわけでございます。従いまして、現在の場合におきまして、貴金属が代物弁済を受けた会社の所有に属しておるということは、法律論的には認めざるを得ないわけであります。問題は、本来ならば、当然そのときの代物弁済した額に相当する額の税金を別途金銭で払ってもらうべき建前になっておりましたのが、課税の実態におきまして、その課税が行きわたっていなかったという場合がどうもあるようでございます。これは税務官庁としては非常に遺憾なことでございますが、ただ五年の時効がたってしまっておるがゆえに、現状におきまして、その事実が表に出ましても、少くとも法律的にはちょっと手が出ない、何とも仕方がない、かような事態ではないかと思います。
  82. 春日一幸

    春日委員 憲法二十九条も大事なことだけれども、この措置によっていろいろな不均衡とか、あるいは負担の平等とか、あるいは犠牲の懸隔の調整だとか、いろいろ戦後講じてきた立法が全部破綻をしてしまう心配なしとしない。少くともこの六社だけで数十トンの地金の返還を受ける。しかもそれに対しては、すでにこの戦時補償特別税がその当時申告されていなかったし、あるいは政府の調査と相異なる場合は、施行後五カ年以内は更正決定をなし得るという規定があったから、五年前なら、更正決定をして、その解除された全額についてこれを国に納めることができる道が残されておったわけです。ところが五年の時効が過ぎてしまった今日だから、全額まるまる、この六社の特定された六人の所有に帰してしまって、これが税法の建前で、国は何らこれに対して調整をはかることができない。そんなばかげた法律は、われわれ通すわけにもいかぬし、国民はとてもとても、言うだけで怒っちまって、われわれの国会報告すら聞いてくれぬくらいのものじゃないかと思う。いずれにしても私の質問は、まだこの法律案の玄関口へ片足を踏み込んだ程度で、まだこれから長い時間やらなければいけませんけれども、すでに二時になって、昼飯も食っておらぬし、短時間続けたところで、最終的に質問を終るということもできませんから、委員長から指示がありましたように、一つ日をあらためて、明日が明後日、今国会中に一切の問題点を明らかにする、こういうことで、引き続いて質問を続行することにいたしまして、本日はこの程度にとどめておきます。  なおこういう重要な問題について、私の重要な質問の間に、与党の諸君からはなだしい妨害があったことに対して、特に遺憾の意を表し、委員長において善処されんことを要望して本日の質問を終ります。
  83. 松原喜之次

    ○松原委員長 この際石村委員より資料の要求について発言があるそうでありますから、これを許します。石村君。
  84. 石村英雄

    ○石村委員 接収解除と申しますか、保管解除と申しますか、その覚書の提出をお願いしたいんです。それだけです。     —————————————
  85. 松原喜之次

    ○松原委員長 次に、本日の請願日程にあります釣竿釣用具に対する物品税撤廃に関する請願外百二十二件を一括して議題といたします。請願審査小委員長より、小委員会における審査の経過並びに結果について御報告を願います。請願審査小委員長黒金泰美君。
  86. 黒金泰美

    黒金委員 ただいま議題となりました請願百二十三件につきまして、請願審査小委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。  これら請願につきましては、本日小委員会におきまして、各請願について一々その趣旨を検討し、さらに政府当局の意見を聴取して、採否の決定につきまして慎重な審議をいたしました。各請願採否決定の方針といたしましては、  一、請願の趣旨が妥当と認められる   ものについては、できるだけ採択   すること。  一、請願の趣旨が立法措置もしくは   行政措置によりすでに達成されて   いるものについては、議決を要し   ないものとすること。  一、請願の趣旨が妥当でないものに   ついては不採択とすること。  一、請願の趣旨についてすみやかに   可否を決定することができないも   のについては、なお検討する必要   がありますので、可否の決定は保   留すること。といたしまして、慎重な審議を重ねました結果、各請願につきましては、次の通り決定いたしました。すなわち日程第一、第二、第四、第六、第一〇ないし第一五、第一七、第一九ないし第二二、第二五ないし第三三、第三五ないし第四一、第四四、第五〇、第五三・第五四、第五八ないし第六一・第六八、第六九、第七一ないし第八三、第八八ないし第九三、第九六、第九七、第一〇〇ないし第一〇六、第一〇八ないし第一一〇、第一一三、第一一五ないし第一一九及び第一二一ないし第一二三の名請願の趣旨はおおむね妥当と認められますので、これら各請願はいずれも採択の上、内閣に送付すべきものと決し、また日程第五及び第四二の「みつまた価格安定対策確立に関する請願」中の「みつまた価格安定の法定措置に関する項」「局納みつまた量持続に関する項」及び「みつまた生産農家に対する融資に関する項」につきましては、その趣旨が妥当と思われますので、採択の上内閣に送付すべきものと決し、日程第二三、第七〇、及び第一二〇の冬請願につきましては、その趣旨が妥当でないと考えられましたので、不採択とすべきものと決定致しました。  次に、日程第七、第九、第一六、第一八、第二四、第四五ないし第四七及び第一一四の各請願につきましては、その趣旨はすでに立法措置もしくは行政措置によって達成されておりますので、議決を要しないものと決し、残余の各請願につきましては、その採否の決定を留保いたしました。  以上請願審査小委員会における審査の経過並びに結果につきまして、御報告申し上げます。
  87. 松原喜之次

    ○松原委員長 お諮りいたします。各請願につきましては、ただいま請願審査小委員長の報告の通り決したいと存じますが、これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  88. 松原喜之次

    ○松原委員長 御異議なしと認めます。  よってさように決しました。  なお、議決いたしました各請願に関する委員会報告書の作成、提出手続等につきましては、先例によりまして委員長に御一任願っておきたいと存じますが、これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  89. 松原喜之次

    ○松原委員長 御異議なしと認めます。よってさように決しました。  なお、この際御報告いたしますが、今会期中、当委員会に参考送付されました陳情書は、ただいま諸君のお手元にその件名を印刷配付いたしました通り、全部で三十七件でありますので、御報告いたしておきます。  本日はこの程度にとどめ、次会は明二日午前十時より開会することとし、これにて散会いたします。    午後一時五十六分散会      ————◇—————