○正示
政府委員 ただいまの御質問は、過去の戦争に基く補償問題、あるいは戦争に伴う利得等についての既往におけるいろいろの
措置と、今回の接収貴金属処理法案との
関係につきましての御質問でございますが、われわれもただいま御指摘の点につきましては、提案までに十分
政府部内におきましても研究をいたしたわけであります。御趣旨は、戦時補償特別
措置法、あるいは戦時利得に関する特別の町税、また財産税、非戦災者特別税、これらとの
関係でございますが、これは、私
どもとしてはこういうふうに考えております。今申し上げたいろいろの特別立法、これはすべていわば課税という方法によりまして、戦争から発生いたしました請求権あるいは利得等に対する特別の
措置であったことは、御指摘の通りであります。しかしこれは、どこまでもやはりこういう補償なりあるいは請求権、利得というふうなものを課税の対象にいたしまして、そのすべてに対して、いわば
法律の前に平等の課税が行われたわけであります。しかるに今回の接収貴金属という
関係におきましては、これはただいま
春日委員もおっしゃられました通りに、どこまでも憲法の所有権の観念を尊重いたしまして、この所有権尊重の
法律の範囲内におきまして許されるものは、これは当然国に帰属させるというふうな
措置のあることは、本法案の第二十条等において明らかでございます。しかしそういう
法律の範囲を逸脱いたしまして、ただ単に返還になるものに対して特別に課税をするというふうな考え方は、法の前に平等であるという原則から言いまして、厳にこれは避けなければならない。ある意味におきましては、現在豊金属というものがどういうふうになっておるかということに立脚をいたしまして、およそ貴金属を所有する者に対しまして、一律平等の課税をするということは、これは理論としては考え得ることかと思うのであります。従いまして、今回のこの処理法案が成立をいたしまして、現実に貴金属の返還を受ける、これによって所有者がどれだけの貴金属を持っておるかということは明らかでございますが、その所有の事実に着目をいたしまして、およそ何月何日現在貴金属を所有しておる者に対しましては、これこれの課税をいたすという新しい貴金属特別財産税というふうなかりのアイデアでございましょうか、そういうふうな構想で課税をいたすということになりますれば、御指摘のように戦時補償特別
措置法、あるいは戦時利得税に対する特別の課税ということと、大体同じような着想によりまして、いわば
法律の前に平等であるという
一つの特別の
措置が講ぜられることに相なろうかと思うのでございますが、もし、今所有権尊重の
一つの建前から、大体私
どもの見積りで、約四十億程度のものが元の被接収者または所有者に返還される見込みでございますが、これだけを対象にいたしまして特別課税をいたすということになりますると、ただいま
春日委員が御指摘になりましたような、既往におけるいろいろの課税の
措置とはややその性格を異にいたすことに相なりまして、いわば特別のものに対する一種の特別課税というふうな形に相なりまして、この点は、税の建前から言いましても、きわめて問題の多いことということでございました。さようなことで、今回その返還を受けます者に対しましては、保管の費用その他を負担させるという意味におきまして、大体この価格に対して一割の納付金を納めていただく・こういうことで、実はこの点について種々研究をいたしました結果、結論的にさような案に相なっておるのであります。ただ基本的に、戦争中に供出をいたしまして、きわめてわずかの代金をもらった者と、戦争後接収を受けるまで供出もいたさずに持っておった者との間のアンバランス、いわゆるインフレ利得というふうなものがあって、これが一部の者に帰属するという
関係におきまして、アンバランスがあるではないかというこの
一つの感情は、確かにさような考え方はあり得るかと思うのでございますが、しかしその点につきましては、戦争中、なるほどきわめて安い価格でございましたが、一応供出をされました方々には、それぞれ対価を支払っておるわけであります。中には・その対価を他のものに投資をするとか、あるいは別個の形におきまして財産保全の
措置を講ぜられて、今日これがりっぱに財産となっておるということも、これは一般的には言えなくとも、その人々のケースによって、さようなことも考えられるわけでございまして、この点につきましては、
一つの感情論としてはさようなことも考えられるのでございますが、具体的に
法律の
関係としてこれを分析いたしていきますると、やはり今日所有権をまっこうから否定して参ることができないということでございまするから、やはり返すべきものは返す、しかしながら必要な納付金といたしまして、大体妥当な一割程度のものを納めていただく・なおこれが返還を受けましたものを処分いたしました場合には、所得が発生いたすわけでございまするから、これに対しましては、現行の
所得税法によりまして課税をして参る、また財産税等で保留をされまして、返還を受ける場合に財産税のかかるべきものはこれをかける、かような考え方で・ただいま御指摘の、既往の諸般の
措置との権衡ということは、これをもって一応とれるものという見解のもとに
法律案を出した次第でございます。