○横山
委員 私は、日本社会党を代表いたしまして、
租税特別措置法等の一部を
改正する
法律案並びに
関税定率法の一部を
改正する
法律案に対して、反対の意見を申し述べるものであります。
まず、租税特例
措置法の反対の
理由を申し上げます。
租税に対する世界各国のあり方については、いろいろの形があり、またいろいろの原則があります。しかし、その中で何人も普遍的な常識をもって理解いたしますのは、担税能力の問題であり、所得に応じてこれを納める公平の原則であります。公平の原則こそは、多くの原則のうちでその中枢的な原則であります。これによってこそ、
納税者たる国民諸君の納得は得られ、税務行政に携わる税務職員の苦労は、飛躍的に物心両面において軽減されると確信するのです。私はこの公平の原則が、そのときの経済的な
政策の上の要請に基いて、ある例外を示す場合のあることを否定するものではありません。しかしながら、それはおのずから限界があるものであります。何となれば、
一つは、これにより恩恵を受けない人々の犠牲
負担によってその恩恵がもたらされるからであります。同時にこの特別
措置が、結果的に見て補助金を出すと同じような結果となる場合が少くないからであります。すなわち補助金支出が
批判の的となることを考えて、これをくらますために、容易に考えられやすい
課税上の特例によってごまかすというようなことは、為政者として心から反省をしなければなりますまい。
今やこの特別
措置は、例外であるべきはずのものが、実体的には原則の
一つとなり、平年度々おける減収は、利子所得の非
課税百億を初めといたしまして、配当
所得税及び証券投資信託収益
課税の特例五十億、配当控除の特例六十億、交際費の否認十五億を見ておりますが、さらに輸出所得の
特別控除三十五億、法人増資の登録税減税八億、航空機用ガソリン及び通行税七億、貸し倒れ
準備金百億、価格変動
準備金百億、退職給与引当金百五十億、異常危険
準備金二十億、特別修繕引当金百二十億、概算所得控除が八十億、外国人
課税の特例が六億、渇永
準備金十二億、違約損失、補償
準備金二億、外国技術使用料
課税六億等々、全く枚挙にいとまなく、二十九年度においてもまさに九百八十五億の巨額の金が、取るのがほんとうだけれどもこの際負けておくということに相なり、まさに租税理論は逆転しておる結果となっております。しかもこれらは、形の上では中小企業にも幾ばくかの恩恵を与えておるように見えますが、その
実態は、大資本、大企業、大口所得者のみに奉仕する減税
措置でありまして、数年来にわたって日本社会党が糾弾し、円滑なる
納税の危機となるであろうことを警告し、その根本的な刷新を絶叫してやまなかった次第でございます。しかし、今やこのことは、国民各階肩の知るところとなり、中小企業各団体も決然としてその根本的廃止を唱え、農民、労働者は申すに及ばず、
政府の諮問機関たる臨時税制調査会においてすら、この十二月の答申をもって、現存する税制上の各種の特別
措置は、それぞれの
政策的効果をねらって設けられたものにせよ、経済の正常化に伴い、漸次これを
整理し、税制の
簡素化と
負担の均衡化に資すべきであると主張するに至りました。
今回
政府のとった
措置は、これに対してわずかに交際費の損金不算入で十億と、他に多くの第一義になさるべき幾多の廃止問題があるにかかわらず、労働者に間接的に悪影響をもたらすおそれある退職給与引当金の制限による七十八億を取り上げ、しかも航空機用揮発油及び地方道路税の免税を三カ年継続し、八億円の減収とし、また有価証券取引税の一部を
改正して、公社債並びに貸付信託の受益証券等の譲渡による取引税を現行の二万分の三、一万分の七から、それぞれ一万分の一、一万分の三にさらに減税しようとするものであります。われわれはかかる不公平に絶対反対をいたします。われわれは予算組みかえ案を通じてこの
租税特別措置法に根本的メスを加え、正常な形に戻すことによって六百四十四億円を捻出し、これをもって中小企業、労働者農民に真の減税をするように
提案をいたしました。しかるに自民党は組みかえ案を否決したのであります。この際われわれ国
会議員は、過ぐる総選挙に当って、国民の声にこたえて全国津々浦々でわれわれが党派を超えて主張したことを想起すべきでありましょう。鳩山内閣の組閣の際の公約を想起すべきでありましょう。それは低額所得者の減税であり、中小企業の減税であり、税の
簡素化による国民の納得でありました。勤労者に幾ばくかの減税が行われました。しかし今市町村津々浦々に起っているトラブルは、国税が下って市町村民税が上ったという不満であります。さらに固定資産税、軽油税、都市計画税等続々と生まれようとする増税であります。参議院選挙が済みますると、
政府与党は、おそらく運賃の値上げをしようとする意図もまた明らかであります。本年度国税五百億、地方税四百億の増税があります。中小企業に何がされましたか。税の
簡素化の公約に逆行して、複雑な概算所得が行われ、目的税は続々と生まれようとして地方財政の弾力性を圧迫し、軽油税は、用途別免税によってますます複雑にして犯罪者の温床ともなろうとしているのであります。
政府与党は、一体これに対していかなる言いわけをしようとするものでありますか。
先般、一萬田大蔵大臣は当
委員会で、私はそう税理論に自信がないとはしなくも告白されました。問題はここにあるのであります。金融の大家、日銀の法王たりし大臣が、税に対して数々の公約をしながら、全力をあげて遂行しましたことは、何とみずからの古巣の銀行を擁護する預金利子の免税にほかならなかったのであります。それは、税の大原則に逆行するもはなはだしいものでありまして、そして根本的
改正はあげて延引を重ねて、今や三十二年度に押しやられようとしております。この際大臣は、率直にみずからの欠陥を認識し、税に全力をあげるべきでありまして、出直すべきであります。
今日、勤労者は、国税、地方税ともに天引き
課税のもとに、数年来ふつふつとたぎる怒りを押えることができなくなっておるのであります。中小企業もまた実行されない公約に怒りを禁じ得ないのであります。
私は、昨年当
委員会において税制の採決に当って、フランスのプジャードの反税運動に例を引いて警告をいたしました。めぐる一年、プジャードは総選挙の
機会を得て、国民の怒りのもとに五十数名の議席を得、ためにフランス政界はますます混迷の度を加えつつあるのであります。二大政党の対立は、明白な責任政治の実現にあるのであります。
政府与党は、その言に忠実でなくてはならず、われわれもまた監督する責任を国民から負っておるのであります。目ざめつつある中小企業と労働者、農民の怒りは、いつか爆発することを銘記すべきでありまして、この危機を警告し、このごまかしの法案に反対するものであります。
この際、
所得税についても若干の敷衍をいたしたいと思うのであります。この場合一五%を二〇%にすることのみについてみますれば、二十二国会当時のわれわれの主張を、ようやくにして
政府がのんだ点については了といたします。しかしシャウプ勧告以前は二五%であったし、地方税の増徴という点を考えまするときは、まだまだの感があります。われわれは、大臣が本
措置は暫定
措置であると言ったこと、税制調査会の根本的
改正に待つと言ったこと、また
主税局長がついに二〇%の根拠を示し得なかったことは、今後の
実態調査による結果に待つこととして、今後さらに一層前進させる意味で、一応本案に対する賛意を表しますが、しかし
所得税の
改正は勤労控除にとどまるべきではございません。
私どもは、この際、組みかえ案において計上いたしました標準家族五人を基準とし、年収三十万円までは免税とし、基礎控除を十万円に、扶養控除をそれぞれ三万円と一万五千円に、青色申告税控除を十万円に、事業所得者の所得金額計算に当っては、必要経費以外に特別勤労控除を行うこととし、
課税率を総所得額の一〇%、最高限度四万円にし、期末手当中それぞれ五千円を非
課税とすることを企図するのであります。
かくして、
所得税法に対する
政府予算は、百五十一億一千二百万円の減税となりますけれども、昨年に比べれば六十億の減税でしかありません。租税全体からいうならば、昨年に比べて五百二十八億八千七百万円の増税であります。地方税を含めますならば優に一千億の増税となるのであります。
私どもは基準年次の昭和九年—十一年の国税、地方税の総額が国民一人当り二十七円であったことを思い出します。よしや物価の倍率が三百五十倍といたしましても九千四百五十円であります。しかるに三十年度においてすら、われわれは一万四千二百三十円を生まれたての赤ん坊すら
負担しておるのでありまして、まことに脅威の重税といわなければなりません。何がゆえにこそかくなるのでありましょうか。どうしたらよいのでありましょうか。私どもは、国民のほうはいたる重いということ、不公平ということ、
税金がむずかしいということ、この三つの声に率直でなくてはならぬ。その意味においては、われわれの主張する再軍備の予算を根底から修正すること、
租税特別措置法の根本的
改正をして、国民の声にこたえる大原則を実行することを重ねて主張するものであります。私は、この際われわれの主張に一歩前進という意味において、
所得税に賛成はいたしますが、これはより高い戦前水準を目ざす意味を持っておるということを付言いたすものであります。
次に、
関税定率法の一部を
改正する
法律案について反対
理由を明らかにいたします。
近来
政府は、重税にあえぐ国民の声に対して、これを遮蔽するべく間接税の増徴、増税によって大衆
課税に
転嫁をしようとしております。かかることは、新たなる不公平を起そうとするにほかなりません。直接税の公平は直接税で解決すべきであって、大衆の目を瞞着できるこの間接税増徴に断じて
転嫁すべきものではありません。いわんや
砂糖は主食の転化物であって、準主食ともいうべきであります。今回
砂糖の関
税率を、原
砂糖は一キロ七円六十二銭程度を十四円に、精製糖については、一キロ十七円一銭であるけれども、これを一キロ二十四円に
引き上げ、その他の
引き上げをはかっております。かくして六十二億の増徴です。われわれは、従来から
砂糖会社の余剰利益について糾弾を試みてきました。昨年二十二国会末において、河野農林大臣不信任案を上程せんとしたのも、
砂糖にからまる問題であったのであります。従って、
砂糖小売価格を上げないで
関税を上げ、これを中間超過利潤から吸収するというならば、多少恕すべき点はあろうと思います。しかし本法案は、これに対する何らの保障もないのでありまして、依然たる業者擁護に根底が秘められ、国民の生活
負担にしわ寄せをやる危険を持っておるのであります。六十二億の増税はどこにしわ寄せされるか、働く国民の
立場から反対せざるを得ません。
砂糖消費税法の一部を
改正する
法律案は、ある意味においては、一歩危険が少いと判断されるところも
相当ございます。しかしこの法案については、今後の経過を監視しつつ賛成はいたしますけれども、
関税定率法の一部を
改正する
法律案については、断固として反対の所信を表明いたしまして、討論を終ることにいたします。