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1956-10-29 第24回国会 衆議院 商工委員会木材利用の合理化に関する小委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年十月二十九日(月曜日)     午前十時五十二分開議  出席小委員    小委員長 鹿野 彦吉君       秋田 大助君    小笠 公韶君       長谷川四郎君    多賀谷真稔君       中崎  敏君  小委員外出席者         総理府事務官         (経済企画庁調         整部長)    小出 栄一君         林野庁長官   石谷 憲男君         通商産業事務官         (軽工業局有機         化学第一課長) 熊谷 典文君         通商産業事務官         (軽工業局建材         課長)     川田 博通君         通商産業事務官         (繊維局紙業課         長)      橋本 徳男君     ————————————— 七月二十五日  小委員本名武君同月二十四日委員辞任につき、  その補欠として首藤新八君が委員長指名で小  委員に選任された。 十月二十九日  小委員篠田弘作君、首藤新八君及び鈴木周次郎  君同日小委員辞任につき、その補欠として秋田  大助君、小笠公韶君及び長谷川四郎君が委員長  の指名で小委員に選任された。 同日  小委員永井勝次郎君同月十日委員辞任につき、  その補欠として多賀谷真稔君が委員長指名で  小委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十二年度木材資源利用合理化  関係予算に関する説明聴取  木材糖化等に関する説明聴取     —————————————
  2. 鹿野彦吉

    鹿野委員長 これより会議を開きます。  まず昭和三十二年度木材利用合理化計画及び予算などに関しまして、政府においてはどのような措置を講じようとされつつありますかについて、大略その説明をお願いすることにいたします。経済企画庁小出調整部長
  3. 小出栄一

    小出説明員 木材利用合理化の問題に関しまして、最初に私の方からごく全般的な問題についてお話申し上げまして、あと農林省通産省等のそれぞれの官庁からその所管に関する具体的な問題について補足していただきたいと思います。  木材資源利用合理化の問題につきましては、かねてから経済企画庁におきまして、木材資源利用合理化協議会関係官庁方々等を集めまして、今後の数年間にわたりまする木材需要量、あるいはそれに対する供給量節約量等測定いたしまして、これに基きまして今後いかにしていけば木材資源利用合理化推進できるかということについて協議を進めて参っております。また一方民間の方におきましても、木材資源利用合理化推進本部という団体がございまして、これに対しましては、経済企画庁の方からある程度予算をとりまして補助金を出し、この運動の推進に努めて参っておりますことは、御承知通りでございます。  最近の経済情勢から申しますれば、先般商工委員会の本委員会におきまして御説明申し上げましたように、比較的経済基調は好調でございますけれども、その中におきまして相当隘路部門と申しますか、ボットル・ネックが現われて来つつある情勢でございます。たとえば物価問題等におきましても、基調といたしましては大体卸売物価もジリ高ということでほぼ推移しておるのでございますけれども鉄鋼関係でありますとか、あるいは木材——特にこの木材等につきましても非常に強調を示しております。これは結局におきまして、木材需要量というものが今後ますます増大する、一方におきまして他面供給が追いつかないという需給関係現状なり将来に関する見通し等に基く価格の値上りということが主たる原因であるように思うのであります。こういう見地から申しましても、三十二年度以降におきまして、やはりこの木材資源利用合理化という問題は、政府各種施策の中におきましても相当重点的に取り上げていくべき問題である、かように考えておりまます。従いまして一方におきまして、これも先般商工委員会においてお話し申しましたように、企画庁におきまして策定いたしました現在の経済五カ年計画というものが、すでにものさしとしてやや寸法が合わなくなってきている、少し小さいきらいが出てきております。従ってこれを改訂するということの準備に入っておりまして、おそらく本格的な改訂は来年度において行われることと思います。そういう際におきまして、その中における木材の今後の需要測定あるいは供給力測定等につきましても改訂をしていきたい。従って先ほど最初に申しました木材資源利用合理化協議会において、一応今後六カ年間の木材需要量というものを関係各省の御審議によって測定いたしまして、これに基く一応の対策を立てたのでございますが、さらにこれにつきましても再検討をいたしまして改訂を進めていきたい、かように考えております。とりあえずの問題といたしまして、三十二年度関係におきましては、予算の問題といたしましてはすでに関係各省から大蔵省要求提出済みでございます。ただこれに対する査定なり審議ということは本格的に行われていない段階でございます。従って一応その要求いたしました予算内容につきましてごく概括的に申し上げますと、経済企画庁関係におきまして、先ほど申しました木材資源利用合理化促進のための企画庁におきます協議会に関する費用、これはごくわずかなものでございますが、民間側におきます木材資源利用合理化推進本部という団体に対しまする補助金がございます。これにつきましては、先般来鹿野委員長が海外にお出かけになります前に大体の御相談をいたしまして、一応決定して要求をいたしております。その総額は二千万円でございます。これは御承知のように、木材資源利用合理化推進本部に対する補助金予算は、三十年度におきましては五百万円、三十一年度におきましては六百五十万円ということでございましたが、これをさらに飛躍的に増大いたしまして、一千万円の補助金にいたしたい、かように考えております。その内容といたしましては、この推進本部が実施いたします各種事業の中で、重点的に集中して特定のその中心になる事業に対して補助金を出したい、かように考えておりまして、具体的に申しますれば、結局木材資源利用合理化という政策推進するためのPR関係のための費用でございます。内訳を申し上げますと、映画の製作に一千万円、それから各種PRのためのパンフレット製作に四百四十万円、ポスターの製作に六十万円、ラジオとかテレビの放送料に五百万円、これはいずれも所要経費の百パーセントの補助ということで、総計二千万円の補助金要求いたしております。  これが経済企画庁予算関係のものでございます。そのほか、それぞれ各省からの御説明があると思いますが、文部省関係におきましては、小学校、高等学校等の校舎の建築を木材から鉄件の方に切りかえるということに関する補助金でありますとか、建設省関係におきましても同じく公営住宅あるいは公庫、公団というふうな関係住宅を耐火建築化するためのいろいろの費用補助する。大蔵省におきましてもやはり公務員宿舎等関係がございます。また国鉄費用特別会計の方におきましては、国鉄関係におきましてまくら木であるとかあるいは柱というようなものをそれぞれコンクリート化していくというようなための費用、それから通産省関係におきましては行政費関係で多少ございます。こういうようなそれぞれの関係予算要求しておる次第でございます。  予算関係はそういうことでありまするが、一方木材資源利用合理化推進していきますために、木材を使いまする産業紙パルプというふうなそれぞれの産業におきまするコストの引き下げ、品質の改善というふうな、利用面における節約なり合理化のための政策というものを推進することが一方において必要であり、また他方におきまして木材を使わないで木材に代替するための産業育成していく。たとえばガス事業都市ガス拡充五カ年計画というようなものがございますが、こういう都市ガス拡充五カ年計画推進していくための金融的な措置というふうなものも考える。それには御承知通り開銀資金の問題がございまして、開銀資金につきましてはすでに今年度の問題とまた来年度財政投融資の問題がございまするが、さしあたり今年度の問題といたしまして、電力、海運等の特別のワクのほかの一般産業ワクで、一応今年度財政投融資計画におきまして百十三億円というものがございます。その中で特に木材資源利用合理化のためのワクというもので、都市ガス拡充でありますとかあるいは紙パルプ産業合理化であるとかいうふうな関係におきまして、具体的に今年度開銀資金要求につきましてただいま通産省中心といたしまして金額を調整中でございます。開銀資金は先ほど申しました当初の財政投融資計画におけるワクのほかに、最近回収が非常に進んでおりますので、この回収金をどの程度まで財源と申しますか融資財源として見込むかという問題もございまして、それらをにらみ合せまして決定していきたい、かように考えております。  またさらにそういった木材を利用いたしまする産業、それから木材に代替する産業育成のほかに、純然たる新規産業と申しまするか、新技術関係におきまして木材糖化等その他の新技術の開拓、新規産業育成というような面につきましてもやはり開銀資金等金融措置に関しまして、工業技術院なり通産省なり農林省なりそれぞれのところからの推薦によりまして調整した上でこれに対する要綱なり具体的な融資額を決定していきたい、かように考えております。これらの新規産業内容等につきましては、それぞれの所管庁から御説明があると思います。  大体以上申しましたような方向がごく概括的な問題であります。いずれにいたしましても繰り返して申し上げますると、木材資源利用合理化というものはやはり三十二年度においてはもちろん、今後相当長期にわたりまして、短期的にも長期的にも日本経済にとっては非常に重要な問題であるという認識のもとに政府施策を集中していきたい、いくものの一つとして取り上げていきたい、かように考えておる次第でございます。ごく概論的のことを一応申し上げまして御参考に供したいと思う次第でございます。
  4. 鹿野彦吉

    鹿野委員長 次には栽培林業の現況及び対策あるいは林野庁所管明年度木材資源利用合理化関係予算措置などについて説明を聞きたいと思います。石谷林野庁長官
  5. 石谷憲男

    石谷説明員 最初に明三十二年度木材利用合理化関係農林省予算要求の概要につきまして御説明を申し上げます。  三十一年度におきましては農林省に、農林水産企業合理化試験研究費補助金、こういう名目の農林関係企業合理化試験研究に対しまする補助金が二千三百七十五万円計上いたされておるわけでございまするが、この中の林業関係の分、いわゆる木材資源利用合理化関係の分といたしまして、五つ企業体に対しまして、五つ研究題目ごとにそれぞれ補助金を交付しておるわけでありますが、その総額は二百八十九万円ということに相なっております。これに対しまして明三十三年度におきましては、具体的なテーマにつきましてはいまだ確定をしておらぬわけでございますが、予算総額といたしまして大体同種の補助金を三百万円程度計上するということで話を進めておるわけであります。それが一つであります。  このほかに、御承知のように製材過程におきましていわゆる、のこの目立て技術というものが製品の歩どまりの上に非常に大きな影響を持つということからいたしまして、すでに目立て技術者養成機関を持っておるような県もあるのでございますが、この現実に着目いたしまして、特に三十二年度におきましては秋田外九県の林業指導機関に対しまして、目立て技術者養成施設を併置せられる、こういうことのために必要な補助金といたしまして八百三十八万円を要求しておるという現状でございます。以上が特に農林省で直接的に木材資源利用合理化に役立つ意味合い予算要求でございます。次に栽培林業現状並びにこれに伴うところの措置でございまするが、すでに当委員会におきましても再三にわたりまして御同様な御質問をいただいておるわけでございます。私の方といたしましても将来急速に増大を予想されまする木材に関しまする需要の要請に対しまして、可能な限りこれを国内資源をもって充当して参りたいという目標のもとに御承知通り鋭意造林事業推進に当たっているわけでございますが、その状況から申しますると、終戦直後におきまして戦時中に切りっぱなしのまま放置して参っておりました百二十万町歩以上にも達しまする造林の未裁地は本三十一年度をもちまして全部これを解消するという取り運びになっておるわけでございます。  そこで今後の目標といたしましてはすでに造林地化されましたものに対しまして、これを繰り返し伐採、植栽をするということで十分かといいますと、必ずしもそういう関係にはないわけでありまして、あくまでも将来の需要増大に備えまして、可能な限り生産力の高い造林地の造成というものを期待して参るということにいたさなければならない、かように存じておるわけであります、従いまして林野庁といたしましては、三十年度末五百六十三万町歩に及んでおります既往造林地を、今後の最終目標といたしまして、これを倍加いたしたい、大体一千一百万町歩くらいの目標造林地化をはかりたい、かようなことを考えておるわけでありまして、当面の目標といたしましては、昭和三十五年度末までに七百三十五万町歩造林地を確保いたしたい、こういう考え方のもとに、さらに本三十二年度から拡大規模造林を実施して参るということにいたしておるわけでございます。当然これらの林地は現在未立木の状態であります森林、並びにきわめて散生の状態であります森林、及び現在の天然生用材林につきまして、非常に生産力の落ちておる部分に対して、これを伐採して生長旺盛なるものに置きかえる。並びに農家周辺薪炭林の中に新しい用材林化対象を求めまして、造林地化を進めて参る、こういったことによりまして新しく造林地対象を拡大して取り上げて参りたい、こういう考え方を持っておるわけでございます。  そこで昭和三十二年度を初年度といたしまして、三十五年度までの目標によりまして、民有林につきましては、現在の四百六十万町歩造林地を六百万町歩に拡大し、国有林においては百三十万町歩林地を百三十四万町歩に拡大する、こういうことの対策を講じて参る予定でございます。同時に、従来のごとく単位面積当り生産量を短期間に引き上げて参るということを目標としての具体的な措置というものが、従来とかく非常に低調であったわけでございまするが、これらの拡大規模造林を実施いたします機会に、いわゆる林木の質の問題を取り上げて参る必要に迫られておるわけでございまして、さきに研究段階の問題ということで御答弁申し上げておりました林木品種改良に関する予算要求というものを、本年度から相当大幅に取り上げて、目下大蔵省折衝をいたしておるような段階でございます。この事業内容につきましては、資料として差し上げてあります中に簡単なパンフレットを用意しておりますので、後刻ごらんいただきたいと思うわけでありまするが、私どもといたしましては、今から採種林の選定をいたすというようなことから出発いたしまして、既往優良品種につきましては、これらを指定してこれの普及をはかって参る。また外国樹種等につきましても、優良なるものを指定いたしまして、これの奨励をはかって参るというようなことをいたしますと同時に、全国の森林につきまして、精英樹選抜々行いまして、これらをもとにして事業用のものの大量生産に着手して参る。さらに人工交雑によりまして、新しく優秀な品種を創作して参る。こういった一連の仕事に対しまして出発するわけでございます。  本年度予算要求といたしましては、特に一般会計におきまして、採種林指定及び優良な杉品種指定、こういうことによって暫定的な、措置を進めますと同時に、さらに今後の恒久的な措置の第一歩といたしまして、先ほど申し上げました精英、樹の選抜林木育種場設置、こういったことを取り上げておるようなわけでございまして、これらに対しまする予算要求は、一億一千三百万円ほどになっておるわけでございます。その他国有林野事業特別会計におきまして、育種場設置二カ所、並びに採種林調査精英樹選抜、こういった仕事のために三千七百万円の予算要求をいたしておるわけでございます。これらの事業は直ちに事業化するというふうには考えながらも、一面におきましてはまだまだ並行的に試験調査をやってみるということも必要な段階でありますので、別に林業試験費といたしまして、これらの問題の調査研究のために千八百万円の予算要求するという状況でございまして、これらを合せますと、昭和三十二年度予算要求総額は約一億六千八百万円ほどになるわけでございます。これは相当長期にわたりまする事業のちょうど第一年度予算要求でございますので、一応こういう段階にとどめておるわけでございます。切実に明三十二年度優良品種大量生産のために、一応国有林野市業といたしまして、茨城県下に一カ所、北海道に一カ所の育種場を設ける、一般会計の中におきまして、九州に一カ所の育種場を設けるということで、さっそく事業化方向に歩み出すというような措置研究いたしておるわけでございます。
  6. 鹿野彦吉

    鹿野委員長 それでは次に木材化学工業、ことに木材糖化工業に関しまして、その後の経過並びに対策、そのほか通産省関係のこうしたことに対する明年度予算関係などについて、通産省の方から御説明をお願いすることにいたします。熊谷有機化学第一課長
  7. 熊谷典文

    熊谷説明員 今お話のございましたように、通産省といたしまして現在一番問題になっておりますのは、木材糖化の点でございますので、この点を中心にいたしまして今までの経緯、将来のやり方等につきまして、簡単に御説明申し上げたいと思います。  従来から木材糖化につきましては、木材資源利用合理化方策の一環といたしまして、できるだけこれが企業化を早くした方がいい、こういうように考えまして、二十九年、三十年、三十一年の三カ年にわたりまして、応用研究補助金、あるいは工業化試験補助金というようなものを政府としては出しておるわけであります。二十九年度におきましては一千万円、三十年度におきましては約三千万円、三十一年度におきましては五百万円、こういうように相なっておるわけであります。それで現在木材糖化につきましては、大ざっぱに見まして、御承知通り二つ方法がございまして、一つ硫酸法一つ塩酸法であります。硫酸法につきましては、従来から北海道林業指導所におきまして研究をされておるわけであります。塩酸法につきましては、野口研究所と新日本窒素肥料で共同でこれまた企業化研究をされておるわけでございます。通産省といたしましては、いずれの方法がいいかというような問題は今後の問題であろうかと思いますが、北海道で現在研究されております硫酸法につきましては、廃硫酸回収という問題が、企業化する場合には当然問題になってくるわけであります。野口研究所の方でおやりになっております塩酸法につきましては、設備相当腐蝕するのではないか、従来の方法によりますと、いたむのではないだろうかという点が、企業化の場合に一等問題になってくる、かように考えておるわけであります。硫酸法につきましては、現在北海道において応用研究的なものをやっておられます。この研究相当進んでおるわけでございますが、まだ最後的な結論は出ていないようにわれわれは見ておるわけであります。できるだけ私どもとしましては、早い機会応用研究が終りまして、工業化段階に行くように考えておるわけでありまして、来年度等におきましては、工業化試験補助金というものを考えたらどうか、かように考えまして、先ほど企画庁の方からもお話がございましたが、研究補助金ワクに将来入れたい、かように考えまして折衝をいたしておるわけであります。  それから野口研究所の方でおやりになっております塩酸法につきましては、すでに応用研究段階を過ぎまして、三十一年度の五百万円の補助金によりまして、現在工業試験的なテスト・プラントをお作りになりましておやりになっておるわけであります。設備もほぼ完成いたしまして、現在の見通しでは工業化試験の結果も、来年三月ごろまでにはわかるのではなかろうか、かように考えておるわけであります。もしこれがうまくいきまして企業化段階になりました場合は、通産省といたしましては、先ほどもお話がありましたが、財政投融資ワクの中で、今後新規企業といたしまして、取り扱って参りたい、かように考えております。従いまして三十二年度財政投融資の交渉におきましても、木材利用合理化につきましては、新規産業ワクに入れて一応十五億程度の金を要求したらどうかというふうに現在考えております。従いまして、もし野口研究所の御研究企業化できるということになりました場合は、今申し上げました新規産業融資、特に金利六分五厘というワクで十分考えて参りたい、かように考えております。  簡単でございますが、これをもちまして一応御説明を終ります。
  8. 鹿野彦吉

    鹿野委員長 以上をもって説明は終了いたしましたが、質疑を行うことにいたします。質疑の通告がありますので、順次これを許すことにいたします。中崎敏君。
  9. 中崎敏

    中崎委員 最近におきます国際的な情勢、ことに国内の事情を考えてみましたときに、経済というものが漸次高度化されて、目まぐるしい変遷の中に動いておるのでありますが、ことにこうした事態に対処して将来を誤まらないような方向に持っていくには、やはり政治もこれに対応した高度なものに進んでいかなければならぬと思うのです。そういう意味において、経済計画的に推し進められるということが、政治的な角度の上に立って当然推められなければならぬと思うのでありまして、この内閣においても経済五カ年計画とか六カ年計画とかいうふうなものを立てて、一応そうした事態に対処するような新しい方向が進められているということだけではいなめない事実だと思うのでありますが、ただそれといっても、やはり腰だめ的な状態にすぎないのではないか。これをさらに一歩前進をして、真に生きているところの経済というものを政治の面に最も有効に、有意義に取り上げていくという意味において、もう一歩進んだ計個性をただ数字の上だけで取り上げるというのでなしに、真にこれを実行に移す、こういうようにいたして、もう一歩進んだ腹がまえと実行とが伴わなければならぬのではないかというふうに考えているのであります。こういう意味合いにおきまして、経済企画庁がややもすれば一調査機関に堕してしまうというふうな今までの行き方を一歩前進して、日本政治経済の中枢的な、生きた活動的機関としての立場をこの際さらに進めるべきではないかというふうに考えているのでありまして、これはもちろん企画庁長官初めとして内閣全体に対して要望すべき事柄でありますか、一応そうしたような考え方の上に立って私はこの委員会において質疑を試みたいと思うのであります。  さてそうしたような面においてこの木材利用合理化の問題を考えてみましたときに、こうした問題が国家百年の計を立てる上において相当大きなウエートを持つものであるというふうなことは、一応前々の内閣時代から考えられて、閣議においてもこの問題が取り上げられているというのは申すまでもないことなんでありますが、さてこれが裏づけとして一体予算の面においてどの程度考慮されているのか。そうして実際においてその必要を認めながら、その裏づけとなるところの政治的な行為の面においてどういうふうな裏づけがされて今日にきているのかと考えてみますと、その点においてもきわめて遺憾な点があるのでありまして、ことに予算の面においても、三十年度に約五百万円、三十一年度に約六百五十万円、ことに三十年度におきましては、木材利用合理化の小委員会などができまして、それなどからも強い要望等もあって、途中になってやっとこれが予算に差し込まれて日の目を見たというふうなわけでやむを得なかったといたしましても、三十一年度においでたった六百五十万円、こうしたような金額はほんとにおざなりのものであって、いかに木材利用合理化のそうした国策的な方針を実行する上においての政府の熱意の足りないかを表明するものではないかと考えているのでありまして、今回三十二年度として二千万円の予算要求をしておられるようでございますが、これとても私たちは決して十分なものであると考えていないのであります。そこで少くともこの二千万円というものを——いろいろな各省間における施策どもあって総合的にこれは考えなければならぬ問題であるとはいいながら、長年にわたってこの必要性が叫ばれ、今までの金額はあまりにも少な過ぎるというふうな事実も考えて、三十二年度におけるところのごの二千万円の予算というものは、是が非でも一つ確保すべく最善の努力を経済企画庁においてもされんことを要望すると同時に、これは高碕長官にもさらにそうしたことをお伝え願って、十分に善処されんことを要望しておきたいというふうに考えているのであります。  さて今度はその予算実行裏づけとして、それが推進のために林総協に事務的な処理をやらしておられるようでありまするが、それに対しましてもさらに一段と一つ政府の方で、ことに経済企画庁の方で諸般の計画をさらに強力に推進すべく鞭撻督励されて、そうしてこの効果が十分に上るように一つ期待をしてやまないようなわけであります。  それから今度はこうしたような考え方の上に立って林野庁長官に対してお尋ねをしてみたいと思うのであります。ことに最近におきまして建物の不燃性というふうな考え方から漸次木材の建物が恒久不燃性の建物に変りつつあるような傾向は、これは私たちかねがねこの委員会においても主張して参ったところでございまして、喜ばしい傾向だと思うのでありますが、これについて一面建築に対する木材の利用というものがそうした不燃性の建物が漸次進みつつあるということとにらみ合せてみて、家屋の建築方面に使われる用材の見通しは一体今後どういうふうになるのかということを、ここ何ヵ年間かの見通し一つお尋ねしておきたいと思うのであります。
  10. 石谷憲男

    石谷説明員 御承知のように年々大体一千万坪をこえるような建築が現に行われておるという状況でございまして、このためにおよそ五千万石以上の木材が使われておるのが現状でございます。そこでただいまのお話のように確かに不燃化という問題を目ざしまして、いわゆる耐火構造のものが逐次ふえておるという現状でございまするが、一方におきまして、たしか昨年の八月と思うのでありまするが、建設省の実施いたしました調査によりましても現在の住宅不足の戸数は二百七十万戸にも達しておるという現状も明らかになっておるわけでございまして、これとあわせてさらに今後五カ年間には百万戸以上のものが不足して参るというような実に深刻な住宅不足の現状があるわけでありまして、ただいまのようなことで不燃化の進捗というのは確かにあるわけでございまするけれども、それにもかかわりませず、なかなか木材に対する建築需要相当大幅に減少するというようなことは、ここ当分の間は期待できないのではないかというふうに私どもは実は推定をいたしておるわけでございます。
  11. 中崎敏

    中崎委員 世界の情勢といたしましても、木材に対する需要というものは相当に高くして、各国ともことにそれが建築というふうなことでなしに、化学工業方面への原料として相当需要が高く進んでおる。従って世界的に将来の見通しとしては木材に対する需要というものが減退せないばかりでなく、逆にふえるような傾向にあるということを聞いておるのでありますが、林野庁長官はどういうふうに見ておられるかをお聞きしたいのであります。
  12. 石谷憲男

    石谷説明員 確かに従来木材は構造材料として使われるという用途が非常に多かったのでありまして、なかんずくわが国におきましては建築需要というものが木材消費の大宗を占めておった過去の経緯からいたしまして、そういった感が非常に深かったわけでございますが、今後は世界的にといいますか、確かに工業部門の原材料といったことで木材資源が利用されるという傾向は次第に顕著になって参るというように考えておるわけでありまするが、わが国の特殊事情からいたしまするなら、それだからといって一般の建築、これに関連する木材に対する需要というものが急速に低下するということはなかなか期待できないのではないか、こういうのが私どもの見解でございます。
  13. 中崎敏

    中崎委員 木材の価格がやはり相当な地位を占めておりまして、ことに生活の必需物資でありながら、また生活の面において一つの大きな圧力となっておることは争えない事実だと思うのでありますが、これがさらに、近く来年度から値上げを予想されておるところのいわゆる国鉄運賃の値上げがまた木材の価格の値上りに大きな原動力となるものであると考えて憂慮しておるのであります。そうなると用材と国民生活の、ことに物価などの上にどういうふうな影響があるとお考えになっておるかをお尋ねしておきたいのであります。
  14. 石谷憲男

    石谷説明員 お説の通り木材は確かに運賃負担力の非常に少い物資でございまして、運賃値上げ等が直接またこの価格の上に及ぼして参る影響は非常に看過できないと考えるわけであります。そこでこれがそのときどきの状況によりまして需要者に転嫁されるか、あるいは森林の所有者に転嫁されるかあるいは中間の中立ちいたします木材業者の負担になるかということになるわけでありますが、いずれにいたしましても非常に悪い影響を及ぼすことは事実でございます。特に戦前は、木材の大消費市場とその市場に対する供給地というものの地域的な関連性というものが比較的小地域に固定をされておったような感があったわけでございますが、戦後になりましてからは、この資源の賦存状態というものが戦争を通じまして非常に大きく変りました関係もありまして、相当山場と生産地の関係は広範な地域に成り立っておるような現状でございます。従いましてこれを結びつけまするいわゆる輸送機関、この場合におきましてその最たるものは国鉄でございまするが、国鉄運賃の値上りというものは非常に深刻な影響を及ぼすものである、かように私どもは考えておるわけでございます。
  15. 中崎敏

    中崎委員 今林野庁長官から言われましたように、木材の世界的な将来の需給関係とにらみ合せても、また日本の今後における見通しからしてみましても、木材需要というものはむしろさらに旺盛の度をきわめるような状況下にあるわけでありまして、これを補うがためには一面において、まず燃料の面においてガスなどの代替燃料を強く推進すると同時にさらに栽培林業などの高度な方法によって木材の将来の供給量をふやす、同時にまた木材の種類なども相当研究をして、そうして成長を早め、あるいは最も適当な木の種類に変えていくということが必要でありまして、この面においては相当林野庁方面においても研究もしておられるのであります。また品種の改良については、一応パンフレットもいただいておるようなわけでありますが、こういう今の栽培林業並びに品種改良等について、具体的にこういう点についてこういう研究の結果こういうことを発見した、こういう点に大きな期待を持てるんだというような目ぼしい点についてのざっとした説明をしてもらえば、わかりよくていいのじゃないかと思うのであります。この点を一つお願いしておく次第であります。
  16. 石谷憲男

    石谷説明員 お話のように、かりに木材利用合理化を徹底的に推し進めるといたしましても、木材全体の消費量は決して少くなるものではございません。要するに木材でなければという重要用途にこそ木材の消費量が高くなってくるのじゃないかというふうに考えるわけであります。現在、大体一億四千万石くらいの木材消費が見込まれておるわけでありますが、これはもちろん非常にむずかしい推定でございまして、なかなか確たる見通しを得ることには問題があろうかと思うのであります。私どもが各方面の御意見を承わりまして、いろいろとそれを中心にして将来の推定を実はいたしてみておるわけであります。何といいましても今までのような方式の林業で参りますと、現在植えたものは大体四十年後くらいにしか収穫ができないということに相なりますので、少くとも造林計画というものを実施いたします前提といたしましては、現在植えるものが収穫期となった場合の需要推定と申しますか、そういうものを一応やってみる必要があるだろう。従いましてそういう見地から出しました大ざっぱな見当によりますと、大約二億四千万石ないし八千万石くらいには相なるのじゃなかろうか、実はこういうような推定をいたしておるわけであります。昭和七十年度くらいあたりの需要量推定は、大体用材につきまして二億四千万石ないし八千万石くらいになるであろうというふうに考えておるわけであります。それに対して、先ほど現在の五百六十万町歩の人工造林地というものを一千百万町歩まで拡大するということを目標として申し上げたのでありますが、これは少くとも自然条件の上からいいまして、さらには将来の木材需給関係を頭に描きまして、将来経済的にも可能に相なるという前提を置きまして造林地化し得る最高限度のものを申し上げたわけでありまして、現在直ちにそれがいわゆる経済ベースの面に乗っかった造林地化対象地域ということにはならぬのではなかろうと思います。そこで、かりにそういったような状況のもとに一千百万町歩までの造林地化、これは現在の国内森林のほとんど半分に近いものを造林地化するということに相なるのでございますが、そういうふうにいたしたといたしましても、全森林供給力というものは二億二千万石というのが最高限度でございます。二億二千万石以上の用材供給力国内森林で持つということは、これは不可能でありまして、最高限二億二千万石というのがいわゆる期待し得る供給力のマキシマムでございます。従いまして先ほど申し上げますように、二億四千万石ないし二億八千万石というのが今後四十年後の需要推定だというふうにいたしますと、それだけでも相当大きなギャップがそこにあるわけであります。こういうギャップを埋めて参るということは、もちろん需要合理化の実績が強力に推進されるというようなことを前提にいたし、さらに従来のような考え方から一歩前進いたしまして、いわゆる成長の旺盛な、しかも諸種の被害に対して抵抗力の大きい新品種というものを材木につきましても取り入れて参らなければならないということになるのでございまして一そのことが可能になりまして初めて従来の用材の場合に四十年あるいは三十五年ということがやむを得ざる自然の伐期だというふうに考えていたものが二十五年ないし三十年になる、こういう状況に相なるわけであります。従いまして、この委員会あたりからも非常に強く御要望をいただいておりましたいわゆる栽培林業、短伐期の育成林業というものが可能になるわけでございます。御承知のように現在は大体一億四千万石くらいの木材供給いたしておるわけでございますが、これは既開発林からいたしますと、成長量の約三倍の木を切って供給いたしたという現状でございます。従いまして、面積にいたしまして四割、それから蓄積にいたしまして六割くらいな地域というものは、いわゆる未開発の森林として残されている。それに対しまするいわゆる林道開設のごときは、さまざまな事情もございまして、なかなか計画通りには参りません。ただいま価格の問題が取り上げられたのでございますが、木材価格につきましては、確かに国内木材価格の水準は現在国際的なものに比べますると必ずしも高くはないのであります。そういうことが逆に言いますると、外国から輸入をしてくるということを阻害している一つの要素でございます。ところが将来の国内木材価格を考えて参りまする場合に、一体奥地開発という問題がどういう意味を持って参るかということに相なるわけでございますが、私どもといたしましてはやむを得ず当面の措置といたしましては、相当な奥地開発を目標にいたしてやっておりますけれども、将来の需給関係見通して参りますると、奥地開発の問題にもおのずから限度がある。そういうことになりますると、やはりできるだけ経済的に有利な立地に生産力の高いものをつけまして、いわゆる短期間に栽培し得るような林業というものに発展をして参りませんというと、なかなか増大して参りまするところの需要に対しまして適正な価格で一定の量を計画的に供給することがどうしても困難だ。要するに栽培林業育成林業というものの必至な情勢というものはそういうところにもあるように思うわけでございます。これに対しましてただいま申し上げまするように、新品種の導入を考えて参りたい、優良品種の導入を考えて参りたいと考えております。そこで実を言いますると、組織的、計画的にこういった品種の改良を林業面において強力に取り上げるということは過去におきましては実はなかったのでございますが、地方におきましては、もうすでに地方の熱心家がこういう問題を取り上げておりまして、特に一番適切な例は九州の地域の杉についてでございます。この地方におきましては、もうすでに数種以上に及ぶようなきわめて優良な新品種が実はでき上っておるわけであります。そのほかにも最近になりまして、たとえば富山県下あるいは千葉県下、栃木県下といったようなところにそれぞれ相当に品質の優秀な杉の品種が固定されるというような状況も出て参っておるわけでありまして、これらはいずれも成長の点につきましては従来の品種の倍、在来種のものに比べまして倍程度の成長を示しておるというふうなものが現に固定されておるという状況が実はあるわけであります。そのほかすでに過去において導入されました外国品種の中にも、立地の選定さえ誤らなければきわめて優秀な成長を示すというふうな実績が上ったものも相当あるわけでございまして、こういったすでに過去におきまして地方的に取り上って、さらにこれが具体的に効果を生みつつあるというような問題につきましては、これを組織的、計画的に取り上げて参りたいというふうなことはぜひともやって参らなければなりません。それから御承知のように、現在イタリアにおきましてはいわゆるポプラの品種改良というものが行われておりまして、これによってパルプ資源の上に相当大きな役割を果しておるという実情もあるわけであります。それからまた日本産のカラマツは欧州に輸出をされまして、欧州のカラマツとの交配によりまして欧州向きの新品種としてカラマツの資源造成の上に非常に大きな役割を果しておるという現実もあるのであります。また手近なところではいわゆる赤松と黒松の自然交配種というふうなもの、これはあいのこ松と称しておりますが、こういうものが成長の上でも相当顕著なものを示しているという事実があるわけであります。在来地方的に行われておりましたものを計画的に取り上げたということだけによりましても、優良品種の普及という問題につきましてはもうすでに基礎が相当でき上っておるという実情に相なっておるわけでありますが、これらの問題を取り上げますると同時に、ただいま御説明を申し上げましたように、全国の森林の中で現に優秀な生長を示しておりまするものを精英樹として取り上げまして、これらのものを親木といたしまして増植をはかって参りたいということを、もうすでに昭和二十九年から取り上げておりますが、これらの問題を三十二年度からは全国一齊に計画的に取り上げまして、国営の林木育種場を設けまして、これによっていわゆる原々種を作る、これをさらに各都道府県に設置いたしまする原種場によって増植をする、こういう目当てで参ることを考えておるわけであります。これは何といたしましても今から組織的に取り上げる問題でございまするので、予算要求上は確かに一つの新しい予算項目ということになる関係上、今後の問題の土にはいろいろと議論が少くないと思うのでありまするが、皆様方の御支援もいただきまして、ぜひとも三十二年度からは大幅にこれを取り上げまして、先ほど申し上げました大規模な拡大造林というものを実施いたしまする当初から、質の向上の問題をあわせて取り上げるということで、将来の資源対策に万遺憾なきを期したいというのが私どもの見解でございます。
  17. 中崎敏

    中崎委員 ただいまの御説明によっても明らかでありますが、国家百年の将来のことを考えて、ことにこうした生長に長い年限を要するような木材につきましては、早いうちからそうした将来の計画を立ててやっていくことは必要でありまするし、ことに現下の実情に即して品種の改良あるいは栽培林業などは、だいぶん実際のデータも出てきておるようでありますから、一日も早く計画を実施に移され、ことに三十二年度予算としては一般、特別会計を通じて一億六千数百万円の要求額であるというのでありますが、こうした少額の投資によって将来何十億何百億と返ってくるというふうな事業等も考えられますので、この点を経済企画庁などとも御協議の上で強力に一つ、実施についてのいわゆる予算獲得について努力されるように要望しておきたいと思うのであります。  次の木材糖化に関する問題についてお聞きしてみたいと思うのでありますが、これがいよいよ工業化され、企業化のところまでいくのにおよそどのくらいの見通しであるのか、最近の見通しについてお尋ねしてみたいと思います。
  18. 熊谷典文

    熊谷説明員 お答えいたします。先ほど申し上げましたように塩酸法硫酸法と二つ方法がありまして、企業化段階は塩酸の方が少し進んでいるのではなかろうか、かように考えております。現在野口研究所におきまして工業化試験をやっておられますので、その結果は来年の三月に大体出て参る、かように考えております。従いまして現在の仕事が順調に進みますと、出てからすぐ企業化に着手されるかどうかはわかりませんが、来年中には結果によっては企業化に漕手し得るものと、かように考えております。それから硫酸法につきましては現在応用研究段階でございます。応用研究関係でまだ半年程度はかかると考えます。従いまして次の段階としましての工業化試験ということには来年度になろうかと思います。従いまして硫酸法につきましては再来年度の問題ではなかろうか、かような見通しを持っております。
  19. 中崎敏

    中崎委員 まず早く企業化されると考えられる塩酸法の成果についてでありますが、これがいよいよそこまでの段取りになると、アルコールとしての供給量は一体どのくらいの見通しになるのかをお聞きしてみたい。
  20. 熊谷典文

    熊谷説明員 現在野口研究所でやっておられます塩酸法につきましては、アルコールはお考えになっていないようであります。御承知のように結晶ブドウ糖が主体でございまして、副産物といたしましてフルフラール、リグニン、こういうものが出て参る。従来アルコールということも一部におきましては考えられた向きがあるのでありますが、最近の傾向としましてはブドウ糖、フルフラール、リグニンというような方向に相なっております。
  21. 中崎敏

    中崎委員 これと関連しての質問であるが、この機会にアルコール政策についての問題を少し聞いておきたいのであります。今こうした塩酸法によってアルコールの製造が当面考えられないというのは、アルコールの需要供給関係において、その需要がそれほどないからその方のアルコールは考えられないというのか、あるいは価格の点において一これは総合的であるからどれがどうと言えないのでありますが、アルコールの買上げ価格を考えてみたときにどうも引き合いそうにないからやらないというのであるか、そこを聞きたいのであります。
  22. 熊谷典文

    熊谷説明員 詳しいデータを手元に持っておりませんのでデータについて申し上げられませんが、従来の経緯を見てみますとアルコールにつきましては需給の関係もございますが、むしろ値段の関係からいいましてなかなかむずかしいのではなかろうか、特に大規模でないとむずかしいのではないかと考えられます。なおアルコールにつきましては、最近だいぶ企業化の盛んになりました石油化学の面からも考えられており、従いまして木材化学的処理でアルコールを考えます場合は、当然石油化学からの問題を考えていかなければならない。こうなりますとますますもって木材からアルコールに直接いくということは、経営的に見て危険性があるのではなかろうか、かように考えております。
  23. 中崎敏

    中崎委員 関連して今のことでお尋ねしたいのでありますが、石油化学日本においてもここ両三年のうちには製品が出てくるように思うのでありますが、石油化学からできるアルコールと、今政府の方で澱粉などからやっておられるアルコールとの原価の開きは一体どういうふうに違うのであるかを、大よその見当でいいのでありますが、一つ聞きたいと思います。
  24. 熊谷典文

    熊谷説明員 大ざっぱに申し上げますと石油化学から出るものが安うございます。現在石油化学におきましても、アメリカ等におきましては相当アルコールを作っているわけでありますが、日本の石油化学におきましてはまだその段階にいっておりません。と申し上げますのはアルコールを石油化学からやるとなりますと、これまた相当大規模でやらなくてはいかぬ、こういう問題にぶつかるわけであります。従いまして具体的に幾らでできるということは私どもとしてはちょっと申し上げにくいのでありますが、ただ従来業界その他でそういう試算をされた向きもあるそうであります。それによりますと、石油化学で参ります場合は大体五万円くらいでできる、それから普通の方法によります場合は、おそらく原価が八、九万円、かように考えておるわけであります。従いましてそういう意味から相当安くできるということは言えるわけでございます。石油化学の場合は規模の問題が関連して参りますので、当然完全な比較はできないわけでありますが、常識的に申しますと、そういうようなことになるようであります。
  25. 中崎敏

    中崎委員 関連してお聞きしたいのでありますが、現在アルコールを原料にして酸化エチレンを国産的に作っておるのでありますが、今アルコールが相当高いために——専売になっておりますから、政府が高くお売りになっておるのであります。これがために、アルコールは澱粉、要するに百姓の作ったイモを買い上げて、そうして政府がそうした農林政策を含めて高い原料を買って、アルコールを作らしておる関係もあって、アルコールの値段が相当高い。そのアルコールを原料にして酸化エチレンが国産として作られておる。その製品は勢い高いから、外国から酸化エチレンを輸入してくれば安い。そこでせっかく政府政策に従ってその原料をつぶして酸化エチレンを作っておるものが——コストが高いということで外国からどんどん酸化エチレンが輸入になって、国内におけるその産業というものか相当窮地に追い込まれておる。最近世界的の風潮としては、貿易の自由化とか、あるいは日本で言えばAA制の拡大というような問題とも関連してきておるのでありますが、しかし一面において政府が農林政策を遂行する上において高い澱粉を原料として使わしておる。それでまた税金もこれに含まれて、そうして製品としては高いものになっておる。それを原料として買ってきておるものの値段というものは上るのが当然でありますが、それを見殺しにして、一方において価格が安いからというので、どんどん製品を外国から輸入してきておる。こういう行政指導のあり方ということが正しいかどうかということについて私は幾多の疑問を持つのでありますが、この点について一体どういうふうに考えておるか。たとえばアルコールの値段を安く供給して、外国からの製品に対抗するような機会を与える考え方があるのかないのか、もしそういうことができないというならば、輸入をできるだけチェックして、そしてそうした施策に協力しておるものを保護するという考え方があるのかないのか、それをお聞きしたいのであります。
  26. 熊谷典文

    熊谷説明員 アルコールをどうするか、もう少し安いアルコールを作らしていくか、そういう問題につきましては、現在のアルコール行政といいますか、醗酵工業によりますアルコールをどうするかという非常にむずかしい問題を政治的には含んでおるのでありまして、私からお答え申し上げるのは適当でないかと思いますが、ただ安いアルコールができるということは非常に好ましい、かように私は考えております。  それから具体的に酸化エチレンについての御質問で、ございましたが、ごもっともだと思います。従いまして現在、先ほども申し上げましたように、石油化学からいける酸化エチレンという問題を考えております。現在エチレンがまだ国産化できておりませんが、そういう面で現在酸化エチレンの輸入という問題が起きておるわけであります。本年の終りごろにおきましては、石油化学からエチレンが出て参りますので、そうしますとそのソースから酸化エチレンにいたしますと外国品にある程度太刀打ちできるものが出て参る、かように考えておるわけであります。従いましてアルコールの問題は非常にむずかしい問題でありますので別にいたしましても、酸化エチレンの問題につきましては、私どもは、将来輸入しなくて国産でやっていける、それで需要者の方に御迷惑をかけないようにしていける、かように考えておるわけであります。
  27. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)小委員 ちょっと一つお聞きしたいのですか、品種の改良をやって相当成績を上げておるということは知っておるのですけれども、植林の場合に昔と同じように、ただあの山は昔から杉がよかったとか、針葉樹がよかったとか、闊葉樹がよかったとか、雑木がよかったという程度だけで植付をしておるのじゃないでしょうか。私そこに非常に疑問を持つのですが、地質というものを調べていけば、松にいいか、ヒノキにいいかわかる。特にあなたが今新しく日本で考えたような非常に成長率の早いものを植え込むにはどういう地質がいいか、こういう点についてお宅では幾らか調べさせて植林させるのですか。
  28. 石谷憲男

    石谷説明員 実は今お話のようなことがあるわけでございまして、従来はきわめて客観的に杉が成長する、松が成長する、ヒノキがいいということでやっておったわけでありますが、それでは実際問題といたしまして科学的な基礎で造林事業というものをやるわけに参りませんので、現在では適地調査というものを別に予算をとりましてやっておるわけであります。やはりあくまでも地質、土壌の構造等とその上にどのようなものを植えるかという関連性につきましての調査をやりながら造林すべき樹種の指導をいたしておるということは、近年実施をいたしております。それからよく外国樹種等で非常に成長の目につくものがございます。たとえばよくございますように、ユーカリでございますとか、あるいはアカシアでございますとか、あるいはポプラ、そういうようなものにつきまして、いいもの、だからあれをすぐさま広めたらいいじゃないかということなんですが、今お話の、一体どこまでそれが実地に適応するものか、特に平地と違いまして傾斜地ということになりますと、わずかの土地の転変でありましても樹種というものは非常に変ってくるという状況がございますので、適地調査というものをやりながら、一方におきましては、それに対する取り上げるべき樹種をあわせて指導する、こういうことを近年は実施しておるわけであります。
  29. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)小委員 私この話をここで聞くというのは、何か今までの一つの観念によって植林が行われておるというふうに見てきたのですが、私が実際見てきて——赤城山ですが、一応ナラを植林しましたところが、ナラは三年目くらいで姿がなくなってしまった。そうするとその中に実生の赤松が非常に大きくひとり成長しておるのです。そういう姿を自分で見たときに、これはどうしても地質、土壌の調査というものを十分して植林をしなければ、日本全国でもえらい大きな損害になる、こういうふうに私は考えたのです。そこで一帯に赤松をためしにずっと植えさせてみたのですが、赤松の成長率というものは非常にいいのです。そういう点から考えて、ただ植林をすればいいのだということでなくて土壌によって成長率というものが——あなたがどんなにりっぱな、新しい品種を持ってきてみても、土壌にマッチしないものは成長するはずがないと私は思うのです。ですからまず土壌の調査、そういうことが第一に考えられなければならない。それがすなわち私は科学的な植林方法だと考えるのです。ですから、願わくはなるべくそういうふうな方法をとって、むだのない植林をしてもらいたい。営林署がするばかりでなく、一般の民有林等にもそういう点について極力御指示していただきたい、こういうふうに考えてお願いするわけです。どうかお願いします。
  30. 石谷憲男

    石谷説明員 まったくお説の通りでありまして、そういう方法で指導していきたいと思います。
  31. 鹿野彦吉

    鹿野委員長 なおこの際私からもちょっと質問さしていただきますが、石谷林野庁長官に対して御質問いたしますけれども、今二億三千万石の供給が最高であると、日本木材資源についてお話がありましたが、これは四十年で伐採するということを仮定にしてのことでございますか。ちょっと承わりたい。
  32. 石谷憲男

    石谷説明員 一応私の方といたしましては、ただいま申し上げましたように五百六十万町歩造林地を持っておりまして、その他天然林でありますが、両々合せまして当面一億二千万石ぐらいの木材を年々供給しているという状況であります。そこで一応民有林につきましては、全体の四百六十万町歩造林地をできるだけ早く六百万町歩まで引き上げたい、こういうふうに先ほど御説明申し上げたのであります。これは要するに成長量というものが一応ありましても、伐採し得る木がある段階からとだえるということを防ぎますために、そこまではすみやかに造林をしておく必要があるということから、そういうことにいたしておるわけであります。そこで今申し上げましたのは、一応昭和七十年のころということで、今から四十年後の状況を想定しました場合に二億四千万石ないし二億八千万石の木材需要が想定できる。それに対しまして供給力の方は二億二千万石というふうに申し上げたのですが、従来の観念によりまして、大体四十年あたりで伐期の到来するものということが、一応供給力の前提になっているわけであります。
  33. 鹿野彦吉

    鹿野委員長 私が今そのことをお尋ねしましたのは、イタリアのポプラの栽培林業は八年から十年で伐採できる仮定をとっている、こういうことが東大の猪熊教授の報告に出ておりますか、こうしたアカシア、ユーカリ、ポプラというような生長率の早いものを栽培林業によってやるというような御計画なり、あるいは御研究なりはどういうふうになっておりましょうか、承わりたいと思います。
  34. 石谷憲男

    石谷説明員 すでに最近改良されておりますイタリア産の新しいポプラにつきましては、まだ造林的に相当まとめて植えたという実績は国内にはないのでありますが、何かアカシアのたぐいでありますとか、ユーカリのようなものにつきましては、過去におきまして、ある程度まとめて植えられた事実があるわけでございます。そこで一体こういうものがどの程度の立地までに適用できるかという問題、要するに、先ほども御質問をいただきましたように、一体この地質とか土壌との関係において、どこまで山の地域に広げて植えることが可能かというような問題につきましては、実は外国産のものにつきまして確たる資料はないわけであります。先ほど御説明いたしました千八百万円の林業試験関係予算要求を三十二年度に特にこの林木育種の問題についてやっておりますが、これについては外国樹種の導入をいたします場合の適地調査というようなものの予算相当の部分を占めております。いずれもこれらは導入を積極的にやって参ります場合の問題といたしましては、今後の問題に属するわけであります。しかしながらいかにいたしましても、お説のように、きわめて短かい期間に伐採ができるような短伐期のものにするようにいたしませんと、資源的にどうしてもバランスがとれないということは、現在ももちろんでございますが、長い将来を見た場合においても、明らかにギャップがあるわけでありますその、ギャップを埋める手段といたしましては、やはりできるだけ木材の利用を合理化するということと、供給力をふやすということ。供給力をふやすのは、ただ単に広がりをふやしていく、造林地をふやしていくというだけでは絶対間に合わぬ。四十年の伐期のものは三十五年なり三十年なり、さらには二十年というように、需要先の用途によりまして、その適材はできるだけ短期間に伐採し得るような林業の導入ということに尽きると思うわけであります。特にイタリア産のポプラのことにつきましても、イタリアでは相当広範に取り入れられておりますけれども、これらの立地条件を国内に残されたその造林対象と比較いたしますと、日本で取り入れる余地というものはそう広くないのではないかと考えております。
  35. 鹿野彦吉

    鹿野委員長 ただ私は長官にお尋ねしたいのは、四十年伐採と十年伐採ということを考えますときに、土地を四倍に活用することができるわけでございますから、日本としてはこれより重大な問題はないということになると思うのでございます。それで私たちのしろうとの考え方では、イタリアで栽培林業として成り立つものは、日本ではより一そうできるのではないか。ということは、日本はイタリアよりも多雨多湿の気候、風土に置かれているわけでございますから、そうしたことからも木材に対しては全般的に適地である。日本国全体の中で北海道から九州に至るまでの間、どの土地に対してポプラが向くか、ユーカリが向くか、アカシアが向くか、あるいはまたそれよりももっと生長率の早いものがあるかもわかりませんが、そうしたものが向くかというようなことは、非常に大きな問題であると思いますので、ぜひ一つ今後研究の重点をここに置いていただきたいと思うのでございます。ただいま長谷川委員からも発言がありましたように、それに対しましては科学的の土壌の研究というものが基礎に置かれて、ただ腰だめでなく、そうして土壌の研究の上に立って、どのような種類の木材が適地であるかというような方向に向っていただけば、なおさらけっこうでございます。私は今般機会を得まして、アメリカ、カナダを旅行することができまして、向うの土地を見てきたのでございますが、私の想像以上にアメリカ、カナダというような国柄は恵まれた土地であるのに驚きました。結局われわれはカナダがうらやましい、アメリカがうらやましいと、いかにうらやましがったところで、どうにもなるものではない。ですからあくまでも日本日本の実情を知って、日本の実情に即したところの経済自立方策を立てなければならないということは、私年来の考え方でございまして、昨年来パンフレット等にも出し、この前の国会にこの商工委員会においても私は相当の発言をいたしたわけでございますが、一そう私のこの考え方が誤まりでなく、一刻も早く推進しなければならないということを痛感いたして参りました。そのためには、日本国民に希望を与え、日本国民みなが働いていくためには、雇用の増大、雇用の創造をはからなければならない。ところが雇用の創造をやるということは、結局この山林地栽培林業をやっていくより日本には方法がない。栽培林業をやるについては、採算的に合うためには、四十年の伐採というようなことを考えた場合には、絶対に栽培林業は採算がとれないわけだから、少くとも八年ないし十年というような伐採期間を置くならば、十分に栽培林業として採算がとれてくる、こういうようなことになるわけでございますので、幸いに従来役に立たないとされておったポプラ、アカシア、ユーカリなどという材種は、木材化学によって他の木と何ら劣るところなく処理することができる、同じような価値として処理することができるというような見込みが十分立ってきたわけでございますので、ごうした立場から私は、日本の国土の大部分がこうした材種によって栽培林業が行われるようなことができれば、非常に日本国民に希望が与えられるのじゃないか、このようにも考えますので、ぜひ一つ今後そうした点に主力を向けていただきたいとともに、なおきょう御出席の経済企画庁関係の方々、通産省の方々、あるいはまた農林省の方々にぜひお願いいたしたいのは、日本国の経済自立という大きな立場から、この栽培林業木材化学、あるいはこれにつながるところの酪農経営というようなものが、この一連の構造が結局日本を救うただ一つ方法であるというふうに私は考えておるのでございますが、皆さんもぜひ一つ研究下さいまして、そうした立場から今回の予算の編成などについても特別な御配慮と御努力をお願いいたしたいと思うのでございます。木材を付加価値の低いところに使うことから高い方向に使うということについて、当然いろいろな予算措置が講ぜられなければならないし、ぜひ一つお願いいたしたいとともに、なお一言私は今の熊谷有機第一課長にお願いいたしたいのですが、木材化学から生まれるところのアルコールが採算的に全然合わないのだというようなお話がありましたけれども、これは私が今まで調べましたところのものとちょっと違うような気がいたしますので、この点、きょうはそうしたことについてあなたと議論をすることを好みませんが、ぜひ一つ研究下さいまして、木材化学から生まれるところのアルコールも採算に合う、こういうふうに私は承知いたしておりますものでございますから、ぜひ一つ研究下さいまして、日本に資源のない石油化学の将来と、日本に恵まれた資源を基礎とするところの木材化学の将来というようなことについて十分御配慮下さって、御研究下さらんことをお願いいたします。  なおきょうは御多忙のところ、委員諸君も、また政府関係の皆様にもいろいろとありがとうございました。  これをもって散会いたすことにいたします。    午後零時二十四分散会