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石谷説明員 お話のように、かりに
木材の
利用合理化を徹底的に推し進めるといたしましても、
木材全体の消費量は決して少くなるものではございません。要するに
木材でなければという重要用途にこそ
木材の消費量が高くなってくるのじゃないかというふうに考えるわけであります。現在、大体一億四千万石くらいの
木材消費が見込まれておるわけでありますが、これはもちろん非常にむずかしい推定でございまして、なかなか確たる
見通しを得ることには問題があろうかと思うのであります。私
どもが各方面の御意見を承わりまして、いろいろとそれを
中心にして将来の推定を実はいたしてみておるわけであります。何といいましても今までのような方式の林業で参りますと、現在植えたものは大体四十年後くらいにしか収穫ができないということに相なりますので、少くとも
造林計画というものを実施いたします前提といたしましては、現在植えるものが収穫期となった場合の
需要推定と申しますか、そういうものを一応やってみる必要があるだろう。従いましてそういう見地から出しました大ざっぱな見当によりますと、大約二億四千万石ないし八千万石くらいには相なるのじゃなかろうか、実はこういうような推定をいたしておるわけであります。
昭和七十
年度くらいあたりの
需要量推定は、大体用材につきまして二億四千万石ないし八千万石くらいになるであろうというふうに考えておるわけであります。それに対して、先ほど現在の五百六十万
町歩の人工
造林地というものを一千百万
町歩まで拡大するということを
目標として申し上げたのでありますが、これは少くとも自然条件の上からいいまして、さらには将来の
木材の
需給関係を頭に描きまして、将来
経済的にも可能に相なるという前提を置きまして
造林地化し得る最高限度のものを申し上げたわけでありまして、現在直ちにそれがいわゆる
経済ベースの面に乗っかった
造林地化の
対象地域ということにはならぬのではなかろうと思います。そこで、かりにそういったような
状況のもとに一千百万
町歩までの
造林地化、これは現在の
国内森林のほとんど半分に近いものを
造林地化するということに相なるのでございますが、そういうふうにいたしたといたしましても、全
森林の
供給力というものは二億二千万石というのが最高限度でございます。二億二千万石以上の用材
供給力を
国内の
森林で持つということは、これは不可能でありまして、最高限二億二千万石というのがいわゆる期待し得る
供給力のマキシマムでございます。従いまして先ほど申し上げますように、二億四千万石ないし二億八千万石というのが今後四十年後の
需要推定だというふうにいたしますと、それだけでも
相当大きなギャップがそこにあるわけであります。こういうギャップを埋めて参るということは、もちろん
需要合理化の実績が強力に
推進されるというようなことを前提にいたし、さらに従来のような
考え方から一歩前進いたしまして、いわゆる成長の旺盛な、しかも諸種の被害に対して抵抗力の大きい新
品種というものを材木につきましても取り入れて参らなければならないということになるのでございまして一そのことが可能になりまして初めて従来の用材の場合に四十年あるいは三十五年ということがやむを得ざる自然の伐期だというふうに考えていたものが二十五年ないし三十年になる、こういう
状況に相なるわけであります。従いまして、この
委員会あたりからも非常に強く御要望をいただいておりましたいわゆる
栽培林業、短伐期の
育成林業というものが可能になるわけでございます。御
承知のように現在は大体一億四千万石くらいの
木材を
供給いたしておるわけでございますが、これは既開発林からいたしますと、成長量の約三倍の木を切って
供給いたしたという
現状でございます。従いまして、面積にいたしまして四割、それから蓄積にいたしまして六割くらいな地域というものは、いわゆる未開発の
森林として残されている。それに対しまするいわゆる林道開設のごときは、さまざまな事情もございまして、なかなか
計画通りには参りません。ただいま価格の問題が取り上げられたのでございますが、
木材価格につきましては、確かに
国内の
木材価格の水準は現在国際的なものに比べますると必ずしも高くはないのであります。そういうことが逆に言いますると、外国から輸入をしてくるということを阻害している
一つの要素でございます。ところが将来の
国内の
木材価格を考えて参りまする場合に、一体奥地開発という問題がどういう
意味を持って参るかということに相なるわけでございますが、私
どもといたしましてはやむを得ず当面の
措置といたしましては、
相当な奥地開発を
目標にいたしてやっておりますけれ
ども、将来の
需給関係を
見通して参りますると、奥地開発の問題にもおのずから限度がある。そういうことになりますると、やはりできるだけ
経済的に有利な立地に
生産力の高いものをつけまして、いわゆる短期間に栽培し得るような林業というものに発展をして参りませんというと、なかなか
増大して参りまするところの
需要に対しまして適正な価格で一定の量を
計画的に
供給することがどうしても困難だ。要するに
栽培林業、
育成林業というものの必至な
情勢というものはそういうところにもあるように思うわけでございます。これに対しましてただいま申し上げまするように、新
品種の導入を考えて参りたい、
優良品種の導入を考えて参りたいと考えております。そこで実を言いますると、組織的、
計画的にこういった
品種の改良を林業面において強力に取り上げるということは過去におきましては実はなかったのでございますが、地方におきましては、もうすでに地方の熱心家がこういう問題を取り上げておりまして、特に一番適切な例は九州の地域の杉についてでございます。この地方におきましては、もうすでに数種以上に及ぶようなきわめて優良な新
品種が実はでき上っておるわけであります。そのほかにも最近になりまして、たとえば富山県下あるいは千葉県下、栃木県下といったようなところにそれぞれ
相当に品質の優秀な杉の
品種が固定されるというような
状況も出て参っておるわけでありまして、これらはいずれも成長の点につきましては従来の
品種の倍、在来種のものに比べまして倍
程度の成長を示しておるというふうなものが現に固定されておるという
状況が実はあるわけであります。そのほかすでに過去において導入されました外国
品種の中にも、立地の選定さえ誤らなければきわめて優秀な成長を示すというふうな実績が上ったものも
相当あるわけでございまして、こういったすでに過去におきまして地方的に取り上って、さらにこれが具体的に効果を生みつつあるというような問題につきましては、これを組織的、
計画的に取り上げて参りたいというふうなことはぜひともやって参らなければなりません。それから御
承知のように、現在イタリアにおきましてはいわゆるポプラの
品種改良というものが行われておりまして、これによってパルプ資源の上に
相当大きな役割を果しておるという実情もあるわけであります。それからまた
日本産のカラマツは欧州に輸出をされまして、欧州のカラマツとの交配によりまして欧州向きの新
品種としてカラマツの資源造成の上に非常に大きな役割を果しておるという現実もあるのであります。また手近なところではいわゆる赤松と黒松の自然交配種というふうなもの、これはあいのこ松と称しておりますが、こういうものが成長の上でも
相当顕著なものを示しているという事実があるわけであります。在来地方的に行われておりましたものを
計画的に取り上げたということだけによりましても、
優良品種の普及という問題につきましてはもうすでに基礎が
相当でき上っておるという実情に相なっておるわけでありますが、これらの問題を取り上げますると同時に、ただいま御
説明を申し上げましたように、全国の
森林の中で現に優秀な生長を示しておりまするものを
精英樹として取り上げまして、これらのものを親木といたしまして増植をはかって参りたいということを、もうすでに
昭和二十九年から取り上げておりますが、これらの問題を三十二
年度からは全国一齊に
計画的に取り上げまして、国営の
林木育種場を設けまして、これによっていわゆる原々種を作る、これをさらに各都道府県に
設置いたしまする原種場によって増植をする、こういう目当てで参ることを考えておるわけであります。これは何といたしましても今から組織的に取り上げる問題でございまするので、
予算要求上は確かに
一つの新しい
予算項目ということになる
関係上、今後の問題の土にはいろいろと議論が少くないと思うのでありまするが、皆様方の御支援もいただきまして、ぜひとも三十二
年度からは大幅にこれを取り上げまして、先ほど申し上げました大規模な拡大
造林というものを実施いたしまする当初から、質の向上の問題をあわせて取り上げるということで、将来の資源
対策に万遺憾なきを期したいというのが私
どもの見解でございます。