○三浦
参考人 ただいまの説明と重複しない程度においてごく簡単に申し上げたいと思いますが、まず
小売商対策あるいは
小売商行政というものを
考える前に、この
小売商が現在敗戦後の日本においてどういう役割をしているか、役割といいますよりは、どういうウエートを占めておるかと申し上げますと、大体全国の商店数が百六十万店舗ある。ここに働いておる従業員だけでも四百九十二万人もおる。さらにそれの主人並びに家族あるいは子供たちを入れて勘定してみますと、大体家族だけでやっておるというものがそのうち七五%もあるのでございますから、従って八百万人とか一千万人とかいうような日本総人口の十分の一に当る数が、五坪か十坪の
売場面積を擁して生活しておる、あるいは生活ができておるということでございまして、これは要するに、日本の国民をこういう第三次産業と申しますか、こういう方法において収容できるものとしては、国家としても非常に好都合なものではないだろうか。そういう
意味において、この
小売商業対策というものは、流通機構を預かる重要なる役割を果す経済的な機能のほかに、そういう
一つの大きな社会的機能を持っておるものだ、従ってこれを生かすか殺すか、あるいはどういうふうな対策をもって臨むか、そういう
一つの社会的な背景を
考慮にお入れになって、
国会並びに政府当局においてもお
考え願いたいと思うことが第一の前提でございます。
つきましては、具体的に二、三の点について特にお願いしておきたいのですが、終戦後、非常に忙しかったのでございましょうが、とにかく生産の復興に追われて、金融、税制その他の措置で
小売商の具体的対策というものは一体とられただろうかということをわれわれ仲間同士で、十年間の過去の実績について特に慎重に調べてみましたけれ
ども、とにかく思い当るものがない。やっとあるのは
一つ、
百貨店法という、
小売商を直接対象にしたところの、助成的といいますか、あるいは保護的な立法が去年、おととしあたりから問題になって、ことしやっとそれが施行された、これが
一つのような気がするのであります。もちろん資金の融資等につきましては、
中小企業金融公庫とかあるいは中金等を通じて派生的には恩恵を受けているでございましょうけれ
ども、具体的に
小売商を対象にしての施策というものは、ちょっと残念ながらわれわれは初めからほかには
考えつかないような
状態でございまして、しかもその
百貨店法が、
先ほどの質疑のように、その運用の面においては、社会不安を逆に醸成するような大きな問題にもなりかねないような運用をされておるわけでございます。そういうような点から、この
小売商対策というものについては、この辺で、いわゆる生産物を流すところの商業というものに国家的な
見地から
検討を加えていただきたいということが大前提でございます。具体的に二、三の点について商業の問題を申し上げたいと思いますが、まず第一には、今問題になっておりますところのこの組織法の問題でございますが、これは相当
審議されているようでございますので、われわれは一日も早きその
結論を望んでおります。
第二の問題としましては金融
関係でございますが、この金融の問題は、要一するに融資順位から申しても、今までは商業は常に
あとの方に回されてきております。また担保その他の
関係からいって、審査の対象から漏れて、表向きは非常に公平ということになっておりましても、事実的に受ける恩恵にはほとんど薄くなっておるのでございましてこれらの点は、今後商業を振興さすという観点から、この組織法と関連して総合的に
小売商の振興法をお
考え願いたいと思うのでございます。たまたまきょうの毎日新聞には通産当局の御発表もあったのでございますが、その具体的な点で特にわれわれが要望したいのは、いわゆる
小売商を一応外からの、圧力から救うために
百貨店法とかいうものもできておるのでございますが、内部的にこれをふるい起すという点に重点を置いた
法律、特に生産と問屋と販売の小売という縦の
関係を秩序立てるということが
一つ、また横においては、左側に生協並びに購買会と
いうようなものをどういうふうに今後整理していき、あるいは処分していくかという問題、右側においては
百貨店という大きな
資本圧力からさらにどういうふうに擁護していくかという問題、それから
小売商内部の問題として、無限にふえようとする
小売商の増加を、人口がふえるのだから仕方がないのだという無為無策のままに放置しないで、何らかの方法においてこれを規制していくということ、この三つの形において秩序をきちんと立てていただきたいということを
内容にし根幹にしたところの
小売商の安定並びに振興をはかる
法律を一緒に
考えていただくように
——いや、これはむしろ着想されているようでございますが、非常にけっこうな話でありまして、ぜひ御推進を願いたいと思うのでございます。
それから、最近問題になっておりますところの最低賃金法があるいは
議論されると思うのでございますが、これも
小売商としては非常な関心と、むしろある人々は恐怖の目をもって見ているのでございますが、これらにつきましても、労働基準法に従って、労働環境、労働条件、職域等も漸次よくしていきたいという
考え方をわれわれ企業主としてはいわゆる人間的に持ち合せておるわけでございますが、しかしながら、その基準法並びに最低賃金法が守れるような企業態勢というものを前提にしてお
考え願うとともに、一日も早くそういうふうになるようわれわれもまじめに
考えるから、そこへ
法律が持っていけるという
立場を作っていただきたい。これらは総合的にあらゆる施策が伸びてこなければ実行できないことでございますが、
先ほど話しました税金の問題、あるいは資金の問題、あるいは組織の問題等にもう少し関心を持っていただけるならばそういうこともみずからの手で解決できると確信いたしております。
以上簡単に申し上げましたが、特に申し上げたいのは、
百貨店法を作った結果から見まして、その運用というものが非常にむずかしい。特にこの運用の衝に当る場合において、
小売商を一体どうするのか、保護するのかどうかという判断の問題で非常に左へも大きく曲れば右へも大きく曲る。今度
小売商の振興等をお
考え願う場合においても、いわゆるその辺の根幹となるところを十分に突き詰めておいていただいて、最初に申し上げた日本の人口過剰というようなものから、これを単なる
小売商を救済するというような恩恵的なものでなしに、国家の大計として御研究願いたいと思うのでございます。簡単に意見を申し上げた次第でございます。