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1956-04-13 第24回国会 衆議院 商工委員会 第32号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年四月十三日(金曜日)     午前十時四十分開議  出席委員    委員長 神田  博君    理事 小笠 公韶君 理事 鹿野 彦吉君    理事 小平 久雄君 理事 笹本 一雄君    理事 長谷川四郎君 理事 中崎  敏君    理事 永井勝次郎君       阿左美廣治君    秋田 大助君       宇田 耕一君    内田 常雄君       菅  太郎君    椎名悦三郎君       島村 一郎君    首藤 新八君       鈴木周次郎君    田中 角榮君       田中 龍夫君    中村庸一郎君       野田 武夫君    前田 正男君       南  好雄君    森山 欽司君       山本 勝市君    伊藤卯四郎君       加藤 清二君    佐々木良作君       佐竹 新市君    多賀谷真稔君       田中 武夫君    帆足  計君       松尾トシ子君    松平 忠久君       八木  昇君  出席国務大臣         通商産業大臣  石橋 湛山君  出席政府委員         総理府事務官         (公正取引委員         会事務局経済部         長)      坂根 哲夫君         通商産業政務次         官       川野 芳滿君         通商産業事務官         (大臣官房長) 岩武 照彦君         通商産業事務官         (企業局長)  徳永 久次君         中小企業庁長官 佐久  洋君         通商産業事務官         (中小企業庁振         興部長)    秋山 武夫君  委員外出席者         議     員 春日 一幸君         通商産業事務官         (企業局商務課         長)      古沢  実君         専  門  員 越田 清七君     ————————————— 四月十三日  委員石田宥全君及び八木昇君辞任につき、その  補欠として帆足計君及び水谷長三郎君が議長の  指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  百貨店法案永井勝次郎君外十二名提出衆法  第三号)  百貨店法案内閣提出第七〇号)     —————————————
  2. 神田博

    神田委員長 これより会議を開きます。  永井勝次郎君外十二名提出にかかる百貨店法案内閣提出にかかる百貨店法案、以上両案を一括議題とし、審査を進めます。質疑の通告がありますから順次これを許します。山本勝市君。
  3. 山本勝市

    山本(勝)委員 ただいま議題となっている百貨店法案について、いささか質疑を行いたいと存じますが、質疑に入る前に、私がこの法案に対して何ゆえにかくも深い関心を寄せるかという理由を簡単に申し述べておきたいと考えます。  御承知通りこの法案は、百貨店業者活動を抑制する権限を通産大臣の手に、実際は官僚の手に委任することを内容とするものでありまして、明らかに国家が権力をもって国民の自由に規制を加えんとする一つ委任立法であります。この点は政府案社会党案も同様であります。民主主義国家において、国民の自由が基本的人権として尊重せらるべきは論を待たないところでありますが、注意すべきことは、国民自由権は、憲法第十三条に規定するように、国民個人として一人々々保護されておることであり、また国民の自由は憲法第十二条にも明記されておる通り国民の不断の努力によってのみ保持され得るということであります。自由や権利国民個人として保障されるということは、申し上げるまでもなく、ただ一人の自由権利といえどもみだりに侵してはならないということであります。また憲法第十二条の規定は、国民自由権の尊重がいかに憲法に規定されておりましても、油断をすれば容易にそれは空文と化することを警告したものと考えるのであります。ワイマール憲法にいたしましても、明治憲法にいたしましても、国民の自由は保障されておりました。そうしてこれが制限法律によらねばならぬことになっておりました。しかるにそれがいつしか破壊されて、独裁専制政治が実現したのでありますが、われわれはそれが常に国家のためとか、公共福祉のためとかという名目のもとに破壊されているという事実を忘れることができないのであります。多数決は民主主義一つ形式に違いありませんが、しかしわれわれが最も警戒を要するのは、民主主義が多数の力で破壊される危険についてであります。すなわち民主主義形式によって民主主義そのものが破れる危険についてであります。ワイマール憲法民主主義も、明治憲法民主主義も、法律によって、すなわち多数の力によって破られたのであります。私が昨年、社会党及び民主党から百貨店法案提出されたときからこの法案に対しておそらく多くの同僚諸君が不可解と思うほどの関心を示しましたのは、この法案民主主義の根幹をゆすぶる法案であると信じたからであります。私はしばらく通産省におりました関係から、通産当局に対してもたびたびこのような法案提出することのないように忠告をいたして参りました。そのたびごとに、私に対する答え政府提案の意思はないということでありました。しかるにこの国会になって私にとっては突如としてこの法案提出を見るに至ったことは衷心遺憾にたえません。  以下の質疑は、もちろん商工委員としての私個人質疑でありますが、この際同僚諸君並びに政府において誤解のないように、本案に対する自由民主党の態度についても一言しておきたいと思います。党の総務会においては、この法案について意見の一致を見ず、結局時間の関係から政府提案を承認はするが、同時に内容についてはどのように修正をしてもよいという決定を行いました。すなわち委員会の審議と並行して党においてもさらに内容を検討し、最終的には両院議員総会において決定するとせられましたが、その後今日まで党の最終決定は見ていない実情であります。  さて第一にお伺いしたいのは、これは政府案並び社会党両者に対して共通でありますが、私的独占禁止及び公正取引確保に関する法律とこの法律との関連についてであります。御案内の通り私的独占禁止及び公正取引確保に関する法律は、その目的として、「公正且つ自由な競争を促進し、事業者創意を発揮させ、事業活動を盛んにし、雇傭及び国民所得水準を高め、以て、一般消費者利益確保するとともに、国民経済の民主的で健全な発達を促進することを目的とする。」と規定しておるのであります。すなわち独禁法の基本的な考えは、公正かつ自由な競争を促進することが事業者創意を発揮せしめ、事業活動を盛んにし、雇用及び国民所得水準を高めるゆえんであって、それによって一般消費者利益確保せられるとともに国民経済の民主的で健全な発達が促進されるというのであります。しかるに今回の百貨店法案におきましては、たとい公正かつ自由な競争でありましても、中小商業者に対して著いし不利益を与えると認められる場合には、これを抑制することが国民経済の健全な発達に資するというのであります。これは政府案における言葉をそのままとりますと、国民経済の健全なる発達に資するというのであります。両法案の基本的な考え方は一致しがたいように思われるのでありますが、提案者政府及び社会党においてはどういうふうにそれを一致させておるのでありましょうか、まず第一にこの点をお伺いいたします。
  4. 川野芳滿

    川野政府委員 百貨店法事業活動中小商業事業活動に深甚なる影響を及ぼしまして、中小商業事業活動が脅かされる、そういうような点から事業活動にある程度の調整をいたそう、こういうことを目的といたしておる法律であります。独占禁止法は御承知のように私的独占、不当なる取引制限及び不公正な競争禁止する法律でございます。従いまして百貨店法独禁法とはその目的を異にいたしておるわけでございます。従いまして不公正な競争をなくする、百貨店事業活動中小商業に著しい影響を及ぼす場合必要な調整を行うものでございまして、その目的とするところは中小商業の保護にあるわけであります。従いまして両々相待ちまして中小商業の維持、育成をいたす、こういうわけでありまして、決して相反するものとは考えておりません。
  5. 春日一幸

    春日一幸君 お答えを申し上げます。山本君の御質問は、政府案並びにわが党案共通の点にも触れていささか反論を込めての御質問がございましたので、その点にも触れてお答えをいたしたいと思うのであります。  御承知通り、この百貨店法案政府がみずからお出しになっておるのでありまして、しこうしてその政府案の中にも、百貨店売り場面積拡張、それから新設についてはやはり許可認可事項として拘束を加えんといたしておるのであります。ところがこういう事柄は、ただいま山本さんの御発言によりますと、与党がこれに対して了承を与えていない、なお修正するということは自在である、ただ単にこの法案国会に上程することだけを承認しておるというお言葉でありまするが、私は少くともこの神聖なる国会の場がそのような不確定議案と申しましょうか、そのような裏面に八百長的な、暗黙のいろいろなかけ引きが込められて、そうしてそういうものがここへ上程されて参ったということについては、まことに遺憾の意を表せざるを得ないのでございます。申し上げるまでもなく、かつて委員会における表決決定が本会議における表決決定と相反したことによりまして、さきには参議院において小川友三君が除名をされたことすらあるのでございます。私ども議会政治責任政治である立場において、与党政府が一体なる立場においてこういう法案が出て参りましたからには、当然これは与党政府間において十分その理解をされ、そうして合致した意見のもとに提案されておると考えておったのでありますが、それが実は単なる不確定議案であり、修正してもいいというような、そういういわば中途半端な法律案をお出しになったということがもし事実でありますれば、これはまことに大きな、重大な政治問題であると考えるのであります。その問題の取扱いはいずれ政党間において処理がされるでありましょうが、そこで御質問になりました要点に触れてお答えをいたします。  まず第一番に、その企業自由の原則に対する憲法論であります。山本君は経済学の博士でいらっしゃいますから、当然、この問題について深い御造詣がおありでありましょうけれども、しかしながら現在の憲法下におきましても、企業の自由の原則はあらゆる場面において公共福祉のために拘束がされておることは御承知通りでございまして、たとえば金融関係法保険関係事業、あるいはふろ屋とかあるいは輸送業、そういうような業種はいずれも企業の自由の原則憲法で定められておりながら、いずれも公共福祉、全体的な経済上の権衡をはかるという立場でそれぞれの制限を受けておるのであります。あるいはまた経済行為にいたしましても、たとえば為替管理がしかれておりますし、あるいはまた融資規制が行われておりまして、経済行為独占禁止法のもとにおいて、あるいはこの憲法のもとにおいて、いろいろの拘束が行われておることは、これまた公共福祉、これを守るという立場において厳に行われておることでありますので、こういうような理解の上に立って百貨店営業行為について、この際必要な規制を加えたいということは、別にその憲法精神、現在の政治秩序、そういうものに逸脱するものとは考えないのであります。  それからもう一つは、独占禁止法関係におきまして、これはわが国経済憲章は、公正にして自由な競争を通じて経済発展とそれから国民福祉をはかる、こういうことが述べられておりますけれども、私ども考えるところでは、現在この百貨店事業活動が自由公正の競争ということよりもむしろ弱肉強食のきらいがありはしないか。われわれの考えておりまする自由公正の商業活動というものの規範は、たとえばだれでもやろうと思えばやれる、こういう共通の場所を考えていきたいというのであります。申し上げるまでもなく、百貨店にはその背後に大きなシンジケートがあり、大資本を持っておりますので、いろいろ売り場面積拡張しようと思えば自由自在に拡張もできましょうし、販売行為仕入れ行為ともに特殊の方法をやろうと思えば、大体それが経済の常道でありまする限りおおむね着想したことがなし得ないことは少いのであります。ところが中小企業者はやはり手銭手弁当関係資金におのずから限界があります。百貨店がなし得ることを、またなしておりますことをやろうと思いましても、おのずから資金限界がございましてなし得ないのでございます。こういうわけで百貨店は一方においてどんどん膨脹し、小売店はそういう拘束を受けまして、結局だんだんと百貨店発展をいたしました度合いだけこの小売店が圧迫を受けて参る。これは国民全体を通じての自由にして公正な原則、こういう独禁法が指向いたしておりまする精神から申しますると、むしろ独占禁止法の違反の事柄に属する。そういう意味で、さき公正取引委員会が一応告示をいたしまして、百貨店に警告を発したことは御承知通りでありますが、ところがなかなかそういう効果が上って参りませんので、さき告示をいたしました事柄をもこの法律の中に吸収いたしまして、そうして経済秩序確保して独占禁止法精神をさらに貫きまして、そうして百貨店相互間、百貨店小売店百貨店と問屋、それから消費者、そういういろいろな相互間における秩序調整していきたい、こういうのがこの百貨店法提案趣旨であるのでございまして、山本君の御見解とはだいぶ隔たっておるのでありまするが、いずれも現行法律の範囲におきまして何ら抵触する面はないと存ずるのであります。
  6. 山本勝市

    山本(勝)委員 ちょっと私お願いしておきますが、私は質問をしておるのであって討論しておるのではありません。それで質問の点だけ一つお答えいただきたいと思います。ですから私は、政務次官よりもむしろ局長にお願いした方がいい。あらかじめ用意してきたものを読まれるというとどうしても質問と違ったことが出てきますから、それよりも質問した要点だけを答えていただけばけっこうなんです。春日さんの話も憲法論が出ましたが、あとで質問しようと思うことを質問のないうちに答弁される、これは困るのであります。ただいまの質問についての答えは、実は私の問いに答えていないということは、もう皆さん承知だと思う。私のは、独禁法の場合には、不正な競争とか不当取引とかいうものでありますと、これは取締りの対象になる、しかし平穏かつ公正、あるいは公正かつ自由な、不正不当でないところの取引は、むしろそれが消費者利益になり、国民経済の正常な発達に寄与するのだ、こういう基本的な考えの上に立っておる。ところが今度の場合には、百貨店の不正不当の取引を取り締るというのなら一致しますけれども、そうではなくて、不正不当でない、正当公正かつ平穏なるものであっても、その影響力考えてこれを取り締るというところに両者は一致しないものがある。しかし私の質問意味さえはっきり御了解願い、かつ記録にはっきりとどまりますれば、私はそれ以上尋ねません。  第二にお伺い申したいのは、本法において国民基本的人権制限せんとする憲法上の根拠についてであります。民主主義憲法精神からすれば、すべて国民基本的人権制限法律によらなければならないとともに、それは公共福祉のために必要やむを得ないときに限られております。このことについては何人にも異論はないと信じますが、そこで伺いたいのは、百貨店の平穏かつ公然たる事業活動が、いかなる意味において公共福祉に反すると考えるのであるかということであります。私がこの点に疑問を持ちますのは、一般百貨店が繁盛をするということは、結局は消費大衆便益に貢献するからであると思うのでありますが、いかなる憲法学者の説を検討いたしてみましても、およそ経済の世界において、平穏かつ公然たる活動によって消費者の信用を博し、もって同業者に優先するという事実をもって公共福祉に反すると解釈しておる者は一人も見当らぬからであります。春日さんの方は、先ほどこの点に触れて、資金の少いものが資金の多いものと同じことをやろうとしてもやれないということがもうすでに不公正なんだ、金を持っておるものと同じようにやらせるのが公正なんだという解釈をしております。これは考えの根底が非常に違っておりますので、お伺いしませんが、局長の方はどういうふうに考えておられるのか、そういう点を伺いたいと思う。つまり百貨店の不正不当な活動は、これは問題ないですが、そうではなしに、正常な活動であって、ただそれが消費者に対して非常に便益を与えるというので消費者がそこへ集まってくる。それがそれほどに便益を与えない——これは資金が少いとかいろいろな事情がありましょうが、そういうことのためにサービスが悪いとか、いろいろな点で打撃を受ける、そういう影響を与える行為が、もしこれが公共福祉に反するということであったら、およそ百貨店だけではない、いかなる産業におきましても同じ事実が起って参ると思うのであります。これはどういうふうな意味で、この法律によって制限することが公共福祉の上に必要だと考えられたか。これは理由があるに違いないのでしょう。公共福祉という点が憲法上問題になることは十分に考えられておるに違いないのでありますから、それはどういうふうに一応解釈しておられるかということを伺いたいと思う。
  7. 徳永久次

    徳永政府委員 この法律の第一条の目的で簡単に趣旨を表現いたしているわけでありますが、「百貨店業事業活動調整することにより、中小商業事業活動機会確保し、商業の正常な発達を図り、もって国民経済の健全な進展に資する、」これを裏から理解していただきますれば、公共福祉としてどういう実態を考えておるかということが御了解いただけるのではないかと思うわけであります。と申しますることは、日本国民経済の中におきまして、百貨店の最近の事業活動の状況といいますものが、自主的な店舗拡張売り場面積拡張という現象を非常に呈しておりまして、それをそのままに放置しておきます場合には、ここに書いてあります中小商業事業活動機会、もっと簡単に申し上げますれば、中小商業者商業を営む機会すらもなくなるという危険をはらんでおるというところが公共福祉から見て適当でない、それをほどほどに調整する必要があるというのがこの法律目的であり、憲法の条章から見まして適度の調整を必要とすると考え趣旨であります。
  8. 山本勝市

    山本(勝)委員 おそらくそういうふうに考えられたに違いないと私も思うのでありますが、実は先般予算委員会のときに、私は法制局を呼んで、すでに百貨店法案というものが提案されているのだから、法制局においてもこれを審議したに違いないと言ったところが、審議したという。そこで、自由の制限は、公共福祉に反しない限りやってはいけないのに、どういう意味公共福祉に反するという解釈をしたのかということをお尋ねいたしましたところが、法制局局長はほかに用事があって、部長でありましたか、見えられまして、こういう答弁をされた。それは、日本における中小商業者というものは非常に数が多くて、いわば日本の国の経済のバツクボーンをなしていると解釈する、背骨をなしている、この背骨を大事にしないと経済がくずれてしまうから、この背骨を打ちこわすような力というものを排除しなければ経済が倒れてしまう、こういう意味のことで、私らから見ればいささかこじつけと思いますけれども、一応そこで切り抜けようとしておられるようでありました。かりにその活動が不正不当でなくても、全国で百数十万もあるところの業者がそれによって倒れてしまう、国民経済背骨が折られてしまうというようなことでありますと、非常の措置をしてでもそれに対する打撃を排除することは、公共福祉立場から十分に理由があると私は思うのですが、ただ私の調査によりますと、わが国における全小売業者の中で、五十坪以下の店舗業者がどれくらいあるかといいますと、全体の九九・六%を占めている。いなかは、皆さんが頭でちょっと想像なさってもわかりますが、大てい十坪以内である。つまり十坪といえば二十畳敷でありますが、二十畳敷あるいは三十畳敷なんという店舗の店はよほど大きい方です。東京でも神田から日本橋にかけて見ましても、小売業において五十坪以上、つまり百畳敷以上の店舗を持っておる店というものはそうありません。ですからこの九九%以上を占めておるものが非常な打撃を受けておる、経営困難になっておるという場合にはこれを救済するということは私は必要だと思う。思いますが、これがどうして困難に陥っておるかということで、これを救済するには効果のある方法をとらなければならぬ。これは過激な競争というか、破滅的な過当競争というものによって経営困難になっておるのであります。そうしますと、都会において干坪以上、いなかにおいて五百坪以上の店の新設拡張を押えてみましても、それ以下のものは全く自由だ、購買組合も全く自由、それから中小商業者お互い同士競争も全く自由だというような、こういう立法をしました場合に、この法律によって得られるところの利益と、この法律によって失われるところの価値というものとを比較して、果してプラスになるか、マイナスになるかということを私は考えるのであります。マイナス面としては、御承知通り、自由、基本的人権というものをやむを得ず押えようということ、これは憲法の、民主主義一つ原則に対するある程度の例外をそこに認めようという点も一つの重大な問題であります。もう一つは、合理的な経営をやって能率を上げてそうして能率の上らないものよりも成功するものを押えるということは、経済の進歩あるいは秩序原則に対する一つの非常に大きな変革でありますから、これもやむを得ず行う場合はほんとうにやむを得ないのであって、これも一つマイナス面であります。それと比べて、これらをやった場合に果して全体の九九%余りを占めておる業者にどれだけの、つまりそれらの生活ないし経営プラス面をもたらすか。ほんとうにそれらを助けるということは私も必要だと思うのでありますが、それならば税を安くするとか、金融の面のいろいろなめんどうを見るということを別にいたしましても、この一つの自由を制限するというやり方から見ましても、千坪以上押えるとか、地方において五百坪以上押えるというのではなくて、九九・六%を占めておるものを助けるためには、少くともそれ以上のものを、これは憲法上の基本的な問題ですから、永久に押えるということはできませんが、一時過当競争をストップさせて、そうして息をつかせる、このための有効な方法としては、少くとも私は五十坪以上、すなわち百畳敷以上の店舗を持っておるものを制限するという方がはるかに効果があると思う。それが非常にめんどうだというのならば、もう少し上げて、地方においては百坪以上、六大都市においては二百坪以上のものを押えたらいい。小さな九九・六%を占めておる五十坪以下のものの競争相手というものは、千坪以上、五百坪以上の百貨店よりも、地方においてはむしろそれ以下のものが激しい競争相手になっておる、こういうふうに私は考えるのでありますが、何ゆえに六大都市においては千坪以下を規制ワク外に置いたか、地方においては五百坪以下の商業者規制ワク外に置いたか。つまり全体の一%か二%より占めていないものをワク内において、そうして九九%以上を占めておるものの競争相手としてそのまま放置することにしたか、この点を伺いたい。
  9. 春日一幸

    春日一幸君 この法律は、現在行われております百貨店商業活動をさらに削減し規制しようというのではなくて、新設あるいは増築しようという場合に、許可、認可という拘束を通じて制限をしていこうとするものであることを御理解願いたい。といたしますれば、現行の百貨店百貨店としてやっていこうと思えばやっていけるし、小売店もやっていこうと思えばやっていけるという、そういう秩序をこの法律によって確保していこうと考えておるのでありますから、従って私どもは、現在の百貨店小売店とを通じての商業活動は、おおむね日本における商業活動の全体的な立場において妥当なものであるという理解の上に立っておることをまず御承知を願いたいと思うのであります。さらに申し上げますならば、私どものねらいは、現在の日本産業構造上必要欠くべからざる立場を占めておるもの、すなわちそれは労働者を雇用する面において、あるいは消費者に消費物資を供給する任務を果す立場において、小売店が必要欠くべからざる立場にあるということを理解いたしまして、この小売業者たちが正当にその事業を行なっていこうと欲すればそれがやっていける、こういうことを念頭に置いておるわけであります。  そこで今、現実に九九・六%が五十坪以下というお話でありますが、山本さんのお考えは、将来日本経済が海外に発展せず、だんだんと人口がふえていくという場合に、それらの人々に職場を与えなければならないというようないろいろの事情の変更が生じて参りました場合には、あるいはそういう必要も生じて参るかもしれませんが、われわれが当面しております現状というものは、これは山本さんが御調査になっております通り、また通産省の商務課が調べたところによりますと、昨年の六月十八日現在で百貨店のさらにものすごい大拡張計画が行われておるというこの現実を最も重視いたしておるのであります。具体的に申しますと、東京においては十合東京店、丸物池袋店、川崎においては、さいか川崎店などが新築計画、それから拡張工事は秋田において木内、金沢の大和、鹿児島の山形屋、福岡の岩田屋、和歌山の丸正、姫路の三共、小倉の井筒屋、東京においては伊勢丹、三越、松坂屋上野店、名古屋においてはオリエンタル、丸栄、浜松においては松菱、こういうような工合に百貨店のものすごい拡張計画が行われております。こういう状態を無拘束にほうっておきますと、百貨店相互間の競争が激しくなり、そうしてその競争競争とのしわ寄せをさらに小売店が受けて、百貨店もやっていけなくなり、さらに小売店は一そうやっていけなくなる。こういう当面しております現実を最も憂慮いたしまして、こういう無拘束競争状態に対して、公共秩序公共福祉を案ずる立場から、この程度の規制は当直やむを得ない、こういうのが私ども法律案提出しております最も大きな理由一つでございます。御指摘のように、さらに実際的にそれ以下のものまでも規制なすべしという事柄につきましては、私どもは現在百貨店が現実に大拡張しているという当面応急的な措置といたしまして、とりあえずこの措置を考えておるのでありますから、それ以下のものについては今後の経済情勢の推移に応じまして、また別途の措置をとらざるを得ないのではないかと考える次第であります。
  10. 山本勝市

    山本(勝)委員 今伺いますと当面の措置として、今いろいろなたくさんの計画をしておる、これをほっておくわけにいかぬ、こういう点を非常に重視しておるのだということでありました。おそらく通産当局もほぼ同様だと私は思うのです。しかし、なぜ最近になってそういう計画がたくさん出されたか。そういうことは私はやや事実と違うと思いますが、昨年くらいから拡張計画が多く立てられたのは、御承知通り百貨店法というのを作って今後新しい新設拡張は認めないということが国会において問題になってきたものですから、それで今のうちに計画をしてやっておかぬとやれぬようになってしまうというので、三年後、五年後にやろうと思ったものまでも今計画に着手するということになった事実は否定できないと思います。しかし、それは別にここで議論するわけではありません。ただその点で多少見解が違いますが、しかしとにかく原因は何であろうとも、すでに目の前にたくさん出てきている。それがバツクボーンに影響するということであれば、これはそのまま放置するわけにはいきません。自分でつけた火でも燃え上って隣に類焼するときには、これは近所の家をぶっこわしてでも類焼を防がなければならぬ、自分でつけた火だからといってほっておいてもいいという言いわけにはならない、これはよくわかる。しかしそういうことでありますればこれは当面の問題であって、ここ一年とか二年とか一定の限界を切って新設拡張をストップする、そしてその間に最も有効かつ総合的な中小企業の安定策を考える。さしあたってほっておけぬからというなら、時限立法となすのが至当ではないか。それを恒久立法として百貨店法を作る作るといったから、それじゃたまらぬからというのでたくさん計画がかけ出してきた。これをほっておけぬからという、そういう法案を恒久立法とする必要はないのじゃないかというふうに思うのですが、これは一つ春日さんでもけっこうです。
  11. 春日一幸

    春日一幸君 でもとははなはだ失礼でございます。  お答えを申し上げたいと思いますが、御承知通りどもはこれを禁止いたしてはいけないのであります。私の申し上げますのは、将来日本の人口がだんだんとふえてくる、さらに消費的な需要も増大をして参る、そういうような場合に物品供給機関がさらに必要になるというような場合、さらにまたその地域においてそういうものがあっても小売業者の正当な商業活動を圧迫しないであろうと通産大臣が認定をいたしました場合は許可がなし得るわけであります。従いまして恒久立法として永久に新増設を禁止しておるのではないのでありまして、ただ企業者の単なる姿意によって無制限にじゃんじゃんふやしていくという行為を一応ストップしておいて、そのつどそういういう公的な機関の審議にかけてこれを許可していく、こういうことでございますから、恒久立法立場におきまして経済の実情と何ら相反するものではないと存ずるのであります。
  12. 山本勝市

    山本(勝)委員 そうしたら、先ほど私が伺いましたが、東京においては千坪以下のもの、地方においては五百坪以下のもの、たとえば四百坪とか四百五十坪というようなものはこの制限ワク外になっているけわですね。すると最近の経過を見ましても、もしこの法律が通った場合必ず起ってくるのは、何らかの名目でその制限以下のものを設けるということが起ってくると思います。そういうものを放任しないで、もう少しワクを広げて、そうして全商業者の九九・六%というパーセンテージを占めておるものを保護するために、五十坪以上というのはあまり下り過ぎるなら、百坪かあるいは二百坪以上のものは、これはほとんど一般の小売商人にはないという。そういうものは、ですから相当の資本金を集中しなければできない。そういう地方における四百坪、三百坪といったような百貨店を自由を放任しておくという理由はないじゃないかと思う。当面の問題として処置するために、時限立法にするということと、そうして経済界の事情が変化してきた場合、消費者が非常に要求する場合には、もちろん許せるという余地も残しておきますが、時限立法にすると同時に、その一定期間だけならば私はもう少し制限ワクを広げた方が、小さな商業者、九九%以上を占める商業者にとってプラスになる、こういうふうに思うのですがいかがですか。
  13. 川野芳滿

    川野政府委員 山本委員のお説も一つのお説であろうかと考えます。しかし実際問題といたしまして、現在中小商工業者に重大な影響を及ぼしておりますものは大デパートでございます。従いまして旧百貨店法におきましても、六大都市においては三千平米で、地方においては千五百平米というふうにいたしておりましたので、そういう観点から今回は六大都市が三千平米、地方が千五百平米というふうにいたした次第であります。なおなぜ時限法にいたさないか、こういうお説でございますが、今回の法律が全然新築あるいは増築を認めない、こういうような法律でございましたならば、あるいはお説のように時限法ということも起るかと考えますが、中小商業者に悪影響を及ぼさない、こういうような地方におきましては、審議会の答申によって新設あるいは増築を認める、こういうような案件でございますから、従って時限法にせなくても、現在提案をいたしましたこの法律でいけるのではなかろうか、こういうわけでそういうふうにいたした次第であります。
  14. 山本勝市

    山本(勝)委員 私はだいぶ考えが違いますけれども、討論になるとまずいからやめますが、許可するかしないかを商工会議所に相談した場合に、必ず同業者というものは猛烈な陳情をする、それで非常な打撃を受けますと。またこれまで打撃を受けたかといって通産省で聞いて回ったようでありますが、聞いて回れば必ず税金がこわいから、それだけででも打撃を受けましたと言うにきまっておる。新しくできるときは、なるべくできないことを同業者は望むのでありますから、もう反対陳情があって、実際この制度をやれば新しく認めることは非常に困難になるということは、これはどなたも承認しておられる。これは何も認めないのじゃないのだということでありましても、事実上この場合は認められぬことになる、それも私はやむを得ないと思う。やむを得ないから、そのかわり時限立法にして、そして有効なようにもっと範囲を拡大して、一定期間をストップして、そうして破滅的競争に一息つかせるということなら自由の制限もまだ意味があると思うのです。しかしこれは意見の相違になるかもしれませんから、私はその次の質問に移ります。  第四点に伺いたいのは、この法案商業の正常な発達公共福祉の見地に立って消費者、中小商工業者並びに雇用労働者の利益、特に消費者利益をどのように考慮したかということについてであります。言うまでもないことであるが、商業といわず、工業といわず、すなわち生産といわず、配給といわず、すべては消費のためのものであります。消費に役立たない生産も流通も完全に無意味なものであります。この意味におきましても、国氏の基本的人権制限が許される公共福祉やまたは商業の健全、正常な発達を考慮する場合には、何にも優先して消費者利益が考慮せらるべきものと考えるのであります。この法案消費者利益を全然考えていないのではないかとすら疑われるのでありますが、もし考慮していないとすれば、消費者利益公共福祉の中に考える必要がないとせられた理由、考慮しておるのだとするならば、本法のどこにそれを考慮しておられるのかを承わりたいと思います。これは一つ企業局長にお願いいたします。
  15. 徳永久次

    徳永政府委員 この法案を立案いたします際に消費者という字句は条文には出て参っておりませんが、それは法案の作り方の建前が、百貨店事業活動と中小企業との調整という面をとらえて立案するという建前をとりました関係上、表現が出ていないわけであります。しかし直接字句は出ておりませんが、第一条の目的の「商業の正常な発達を図り、もって国氏経済の健全な進展に資する」という字句の中には当然に消費者便益という点を考慮しておるつもりでございまして、現実にこの法律の運用といたしましては、この百貨店審議会におきましては、この員数をごらん願えば御理解がいくと思いますが、中立の委員あるいは消費者代表の委員のみをもって構成したい、百貨店側、小売商側を入れないもので構成したいというふうにも考えておるわけでございます。運用はその面におきまして消費者立場というものは十分に考慮される仕組みになっておるというふうに考えておるわけでございます。
  16. 永井勝次郎

    ○永井委員 社会党案について御答弁申し上げますが、御質問の、消費者をどういうふうに考えているかということについては、わが党案は第一条に明確に「その活動一般消費者一般小売業者及び卸売業者の公正な利益を阻害することを防止する」、こういうふうに条文の上に明らかにしておるのでありまして、従ってこの法の目的に基いて今後これが具体的に運用される面において消費者利益が守られていく、かように考えるのであります。具体的の例をもって、先ほど来企業の自由性その他について山本委員からいろいろ御質問のようでありますが、百貨店の側から見た自由というばかりではなしに、小売業者消費者の側から見た自由もまた守られなければならない、かように考えるのであります。現在の百貨店は御承知のように、単に百貨店小売業者という対立関係にあるばかりではなくて、百貨店の過度の競争の結果として百貨店百貨店との間における競争も激甚をきわめておるわけであります。たとえば百貨店で品物を買う、ことに特売品を買う、こういう場合は、犠牲品として出しておるのでありますから、ほかの商店で買うよりは安く買うことができると思うのです。この安く買うという反面には百貨店にこの犠牲品を供給しておるところの卸売あるいは問屋というところがたたき買いされておるわけであります。問屋も卸売業者も損しては経営が成り立たないのでありますから、百貨店に対して原価を切って、あるいは安く売る、あるいは返品という形において買いたたかれる、あるいは手伝い店員というような形で人件費を負担させられる、こういったものの犠牲は、要するに日本の貿易の面で外国には出血輸出をして安く売る、そのかわり出血輸出によって生じたところの赤字は国内の商品に転嫁する。肥料でいえば、外国には一俵六百円前後で売るが、国内の農民には九百円で売る、こういうよう形になってくるのでありまして、百貨店で買えば安く売るけれども、その安く売った反面は、百貨店以外の商店から買う方へこれが転嫁されて、百貨店には安く売る、ほかの方には高く売るという形で消費者はこの百貨店の過当の競争によって大きな犠牲を負担せしめられておる、こういう形になる。このような不公正な取引が現在行われておるのでありますから、わが党は第一条に、明確に消費者立場を守って、小売業者百貨店消費者も公正な取引秩序の確立の上にそれぞれの利益が守られる、こういう立場を確立するために長期にわたってやらなければいけない。従って時限立法というような短期な現象ではない。日本の商取引関係秩序確立、こういう上に立って長期に順次やっていきたい、こういう高邁な理想を持ってこの法案提出しておるわけであります。
  17. 山本勝市

    山本(勝)委員 今政府の方では、運用の面で消費者利益を考慮していくのであるという答弁でありました。消費者利益考えないというようなことは——これは公共福祉というものを考えたらまず消費者を頭に置くべきである。ほかのことも置くべきであるが、まず消費者を置くべきである。ことに自由の制限ということがほかの人の利益になるというだけではなくて、その自由に置くことが公共福祉に反するという説明が立たないと、この憲法でいう自由の制限の正当な理由にはならないと思うのです。消費者にとっては百貨店が非常に便益だから栄えてきたということは事実でありますから、消費者を頭に置いたのではこれはなかなか制限することはできない。そこで結局運用の面で無視しないというふうなことにならざるを得ないのだと思う。とにかく私は了承しがたい。  それから今の社会党の方の説明でありますけれども、なるほど第一条には消費者云々ということが出てきております。言葉目的に出てきておりますけれども、法の実態そのものの上に消費者利益というものが考慮されておるとは私は思いません。これは言葉として第一条に出てきておるだけだと思いますが、まあこれも議論になるからこれ以上追及いたしませんが、これはもう両方とも非常に苦しい答弁です。百貨店で安く売ることはほかで高くなる、こういうことは、要するに過当競争とかあるいは不正な競争とか不当な取引というものを取り締るのはよろしいでしょう。今永井さんは過当競争ということを言われましたが、過当競争制限するということはそれは私はよろしいと思う。しかしそれは百貨店と小さな業者との間に過当競争があるというよりも、むしろ小さな業者お互い同士過当競争、コストを割ってまで競争をするというようなことは、百貨店がやるよりもむしろそれ以下の小さいところに多いのです。ですから、それはほんとう過当競争を防ぐためには、私は暫定立法として、そのかわりもう少し広く競争をストップして息をつかせるというのが法の目的に沿うておると思うのです。そうこだわる必要はないんじゃないか。あくまで恒久的に——元来国民権利、自由、基本的人権制限するような、そういうきわめて例外的な措置、そういう法律というものを恒久立法でやろうというところに、私は皆さん基本的人権に対する尊重、あるいは国民基本的人権確保していくという熱意に欠けるものがあるのじゃないかとすら考えるのです。油断をすれば基本的人権というものは侵されるんだ。憲法学者によっては、法律によっても基本的人権は侵せないとする解釈をする人すらあるし、社会党の諸君の中にすら細田君のようなそういう解釈をしている人すらあるのです。しかし私はそうは思わない。公共福祉に反する場合にはやむを得ず制限しなければならぬが、やむを得ずやるんだから、これはやはり時限立法としていくべきだ。しかも当面の事態に処するためにそのまま置けないんだという、緊急的な措置として、競争を建前とする経済の上にこれを制限することも万やむを得ないというのでありますから、これは時限立法とする、そのかわり有効な措置をとる、こういうことに考え直してもらえないものかどうか、もう一度お伺いします。
  18. 春日一幸

    春日一幸君 御答弁をいたします。ただいま永井君から消費者利益がいかにはかられているかという問題について、すでにわが党の基本的な考え方についてお答えを申し上げたと思うのでありますが、その問題に触れて、特にわが党案と政府案との違いまするところは、それをおもんばかりまする立場から、わが党案は特に仕入れ行為制限、それから販売小売の制限、これを加えておるわけであります。消費者と申し上げましてもこの法律立場から二色あろうかと思うのでありますが、その一つは、百貨店で品物を買う消費者、それから小売店で品物を買う消費者とあるわけでありますが、その絶対量から判断いたしますると、その消費者の数のいずれが多いかということは、正確な資料はありませんけれども、百六十万店舗にわたる小売業者のその顧客の数を推定いたしまするとき、やはり小売店から買うところの消費者の数がより多いということは、これは山本さんも御了解が願えると思うわけであります。そこで今第六条の制限と第七条の制限は、百貨店が安く売れる、どうして安く売れるかということは、そこに不公正とおぼしき取引が現在行われているから、そのように安く売れる。たとえば品物を仕入れまして時期がおくれてから返品するとか、あるいは問屋の従業員を使用することによって人件費を節約するとか、特にわが党案は、公共建造物を百貨店の売り場に提供してはならないという規定もあるわけでありまして、小売店は自分の金で品物を買い、自分の金で家を作る、それで小売業を営んでおりますが、特に百貨店がそういうような公共の建造物を借用いたしまして、百貨店業を行うという形になりますと、当然そういうような設備費がかかりませんから、従って販売コスト、営業コストというものが少くつく、従って値段を切り下げることができるわけであります。多くの消費者利益をはかりまする立場におきましても、やはり有機的な関連を持って、仕入れ行為制限販売行為制限をはかることによりまして、そうして小売店百貨店とが同一の営業コストで営業が行なっていけるという、そういう商業秩序一般的ならしめていきたい、そうして多数の消費者利益を守っていきたい、こういうことであります。  なおこの際付言いたしたいことは、小売店にはなはだしい不当の圧迫を与えるような月賦販売行為規制せんといたしておるのでありますが、こういうような問題なんかも、考えてみますれば、消費者が限られた収入によってその消費生活を弁じて参ります場合、月賦販売という形になりますると、そうして全部が月賦販売という形になりますると、これは大へんな形になろう、生活の破綻にも、家庭経理の破綻にもなろうかと存ずるわけであります。そこで、そういう消費生活者のためには、やはり労働金庫とか、消費生活をまかなうに足るところの別途の金融機関、こういうようなものの機能を拡充強化することによって、月賦販売によらずして、収入に見合うところの支出、こういうような消費体制を確立し、かつ指導していくということが必要ではないかと考えておるわけであります。わが党と政府案との違いは、すなわち消費生活者の利益が本立法によってごうまつといえども損耗することのないようにということで、こういう一般的な配慮を加えておるわけであります。  それから恒久立法と時限立法との問題は、ただいま政府からもお答えがあり、永井君からも御答弁申し上げました通り、これはいずれの立法もしょせんは条件付であり可動的であります。客観的情勢が著しく激変いたしますればその情勢に従って法律の改正が行われることは、ひとりこの法律ばかりではないのでございます。従いまして私ども理解が、現在における百貨店の分布状態、小売店の分布状態、これが日本の消費生活を弁ずるのにおよそ必要にして十分な態勢ができ上っておるという、いわば飽和状態にあるのに、百貨店だけがその大資本の威力によってさらにその飽和状態をも破って膨脹して参りますると、その膨脹した場面だけが小売店に対する相当の圧迫、圧力になってくる、それを防ぎたい、こういう分析の上に立っておるのであります。しこうして、特に地域的に必要な場面がありますれば、その地域における実情に応じて通産大臣が許可を与え得る体制に相なっておりますので、これは時限立法あるいは恒久立法というような必要性の限度内にあるかと考えておるわけであります。よさう御了承願います。
  19. 山本勝市

    山本(勝)委員 もう一点だけお伺いいたしますが、この法律を実施する場合に、従来この法律がない時代、すなわち自由に新設拡張もできた時代に企画をして、そしてその新設拡張に着手しておるものに対しては、どういうふうに処置するかという問題であります。これを禁止しないなら別ですが、するとするならば賠償しなければならぬということは、これは憲法上当然だろうと思う。公用徴収によって収用する場合といえども適当の代価を支払わなければならぬ、こういうことであると思いますが、もしそれを禁止する場合を想定しておるとしたら、その賠償にどれくらい見積っているのか、大体現実に、大よそでけっこうですけれども、どれくらい賠償額が総額で上るものか、それをちょっと伺いたいと思います。いかがですか。
  20. 永井勝次郎

    ○永井委員 ただいまの御質問の点は、わが党案も政府案も同様な経過的な措置をとるようになっております。法文にこれは明らかであります。大体昨年わが党がこの委員会百貨店法案提出いたしました。民主党の方からも提案がされました。粗末ではありましたが一応提案がありました。当時政府におきましては、来年は政府提案として出すのだ、こういうことがこの委員会で言明されたわけであります。でありますから、社会党百貨店法案出しておる、民主党も出しておる、当時の政府も一年後にはこれを提案するのだ、こういうことでありますから、もう百貨店法政治的な情勢から見ても、また一般の世論から見ても、これは一年後に正式に議題にかかるのだということが明確になっていたのであります。そしてまた当時百貨店協会その他の方々も参考人としてこの委員会に呼びまして、そうして現在百貨店の増築が非常に激しくなっているがどうだということを質問したときに、百貨店協会の方は、法律によってそういうことをやっていただかなくても、われわれ協会は自粛して十分法律にかわるべき自主的な措置を講じますから、立法だけは避けてもらいたい、こういう話でありました。しかるにもかかわらず、一年後には出るのだというところで、もうやるのなら今のうちだといって、この一年間における増築というものは非常な勢いでなされてきておるわけであります。しかもいよいよ提案がされるということを見定めてやっておるのでありますから、これはもう一年前に予告して、そしてやっておるわけでありますから、自粛するという当時のこの委員会における約束から見ましても、当然制限を受けた場合における損害がもしありとするならば、それはみずからが背負うべきものだ。社会秩序、商取引秩序を確立するということに協力する立場ではなくて、それに逆行する不公正な立場をとった結果としての報いでありますから、これはやむを得ない。ただ経過的な措置をわれわれはこの法律の方で定めておる。こういうことで、もちろん保証の限りではない、かように考えております。
  21. 徳永久次

    徳永政府委員 お答え申し上げます前に、ちょっと私から念のために申し上げておきたいと思いますが、先ほどのお話の中に、政府側は一年後に法案を出すというふうに言明したとございましたけれども、それは私ども政府側としてはしなかったと心得ております。その点だけお断わりしておきます。  それから今山本先生のお尋ねの中に、かりに不許可にした場合に補償を考えておるかというお話でありますが、私どもといたしまして補償等の用意はいたしておりません。考え方といたしまして、現実の許可申請に対しましては、附則にありますような事項に照らし、常識的に処置するつもりでございますが、かりに百貨店の土地だけ買っておった、それが不許可になったという場合に、それが直ちにその業者の損害を招くというふうに考えなくてよろしいのではないかというふうにも考えまするし、さような点から補償の必要は起らない問題だというふうに考えておるわけであります。
  22. 山本勝市

    山本(勝)委員 質問はこれで終ります。ただ最後に一言付言しておきますが、私はこれは本気で質問しておるのでありますけれども、先ほど来の答弁、ことに社会党の諸君の答弁は、この機会に少し宣伝するというふうな口ぶりが出て、まるで擬国会のような感じを受けたことは、私は遺憾千万です。この百貨店法案というものについては、現に一橋大学の中山伊知郎君のごときは、非常な反対で、公聴会でもあればいつ何どきでも出て公述したいという希望すら述べている。同じ一橋大学の植松教授も、こんな法律はないという反対の意思を表明しているし、またこの間ここで公聴会に呼びました北海道大学の金沢良雄教授も四月十五日号のジュリストで、やはり百貨店法を論じておりますが、その中で通産省が消費者代表の声としていろいろあげているようなことを、ああいうものはほんとう消費者の声ではないというような、きわめて批判的な意見出している。金森徳次郎氏は法の乱用であるとして、憲法上の非常な疑義を出している。いずれにしましても、私はこの法案の最初からの過程をよく知っておりますから、非常に遺憾にたえないのであります。かつて昭和六年の二月に出ましたきわめて重大な意義を持つ重要産業統制法というものも、やはり業界の強い陳情のもとにできたのでありますが、あの法案などは、国会においてろくろく審議をしておりません。その結果後に上田貞次郎教授が朝日新聞で、一体国会はどうしているんだ、この重大法案をといって批判している状況でありますが、私はこの百貨店法案を見て同じような感じを禁じ得ないのであります。二十八年八月でありましたか、同じ通産委員会において中小企業安定法の一部改正法案が通過したことは御承知通りでありますが、そのときの速記録を読みますと、あの改正というものは私自身から見れば、経済にとって重要なポイントに触れている法案だと思うのですが、その法案については、驚くなかれ、一言半句の質疑、一言半句の討論も行わないで通っているのです。私はそういうことを繰り返したくないと思う。昭和二十八年七月十五日の通商産業委員会の速記録を見ますと、「大西委員長、これより会議を開きます。本日は、まず特定中小企業の安定に関する臨時措置法の一部を改正する法律案議題といたします。御質疑はありませんか。——御質疑がなければこれより討論に入りまするが、討論はこれを省略いたし、ただちに採決に入りたいと存じまするが、御異議ありませんか。「異議なし」と呼ぶ者あり、大西委員長、御異議がなければ討論はこれを省略し、ただちに採決いたします。本案に賛成の方の御起立を願います。総員起立」こういうことで、これはそれぞれ人の考えは違いましょう、それでよかったんだと思うかもしれないけれども、いやしくも基本的人権制限というものは、油断をすればいつでもくずれてしまう、ことに今回のように、何々のおそれあるときは制限することができるという一つの権限を官僚の手にゆだねるという委任立法をやっていく習慣がつきますと、民主主義などというものは憲法にどんなに書いたって保たれるものではない。そこに金森さんのようなきわめて温厚篤実なる人すらも、中山伊知郎君のようなきわめて温厚篤実なる人もこの法案には驚いておるという実情がある。しかしこれ以上しゃべりましても私一人でひとり相撲をとっておるような感じで、いたずらにばかにされるような感じもいたしますけれども、何と言われましても私はこれだけのものを記録に残しておかないと承知できないということで申し上げたので、実は討論をするつもりで立ったのではないのです。どうか一つ十分に御審議を願いたいと思うのであります。できることなら学者の意見も、あまり時間をとらぬ範囲で金森さんや中山伊知郎君などの意見を聞いてやるのがほんとう委員会としてやるべきことではないかと思います。しかしあまり時間をとるようでは差しつかえますから、簡単に願わなければなりませんが、慎重に願うことだけはぜひお願いしたいと思います。
  23. 神田博

    神田委員長 先ほどの永井勝次郎君の発言中不適当と認められる言辞がありますれば、委員長において後刻速記録を取調べの上で善処いたします。  次は多賀谷真稔君。
  24. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私実は質問に先だちまして、百貨店法が出ましたので、山本博士のような御議論もあるかと思って各国の百貨店法について調べてみたわけであります。ところがアメリカは百貨店法ではありますんが、チェーン・ストアの制圧法がある。フランスがしかり、オランダがあり、デンマークがあり、スイスがあり、ベルギーがある。あるいは蔵払い禁止の規定、すなわち特売禁止の条項がこれまた相当あるわけでありまして、ベルギー、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、イタリア、ノルウエー、ポルトガル、スイス、こういうようにございます。あるいは景品を与える禁止、これもかなりある、こういうように現行並びに戦前におきましてもあるわけでありまして、その点は何も憲法違反という問題は起らないであろう、こういうように確信するわけであります。西欧のような民主主義発達した基本的人権を重んずる国でもこれだけ出ておりますから、いかに中小企業の保護に各国とも苦悩しておるかを示すものだろう、こういうように考えるわけであります。  そこで百貨店法について賛成の見地から二、三質問をしてみたいと思うのであります。それは第一番に公取委が百貨店業における特定の公正な取引方法を指定して以来どういう活動をされたか、簡単でよろしいから公取の方から御説明願いたい。
  25. 坂根哲夫

    ○坂根政府委員 特殊指定をいたしましてからどういう活動をしたかという御質問でございますが、特殊指定の内容がかなり複雑でございまして、一番問題は例の手伝い店員の制限の規定でございます。これは逐次各百貨店に対しましてその手伝い店員を相当調査いたしまして、その調査の報告に基きまして、われわれの見地からいたしまして各百貨店ごとに改善の計画を指示いたしておるわけであります。もし資料が御必要でございますればまたあとで差し上げることにいたします。  それから例の阪急友の会の問題でございまして、友の会で阪急が非常に大きくやっておったのでありますが、これも私どもが阪急にいろいろ相談いたしまして、最も可能な限度において縮小した格好でやらしておるわけであります。従ってその限度においてやっておるところでは何ら周辺の百貨店あるいは小売商から問題が出ていないような実情でございます。その他各項目にわたりまして逐次調査を続けながら漸次改善の道をたどっておる、こういう事情でございます。
  26. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 昭和二十九年以来百貨店が規模の拡大に狂奔しておるという感じを受けるのですが、その規模の拡大に伴って利益率が低下しておるんじゃなかろうか、こういうように考えるのです。これは政府並びに提案者の方でそういう調査をなさっておったらお聞かせ願いたい、ことに政府について承わりたいと思うのです。
  27. 徳永久次

    徳永政府委員 今正確な利益率を調べたものを記憶いたしておりませんが、大体傾向といたしましては売り場面積がふえ、それによりまして売上高もふえておりますけれども、坪当り売上量とか、雇用者、従業員一人当り売上量というものはほとんど横ばいの傾向でございます。
  28. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 規模の拡大に伴っての利益率が必ずしもふえていない、むしろ率としては低下の方向にきておるのではなかろうか、こういうふうにわれわれいろいろのデータから推測できるわけであります。そこでそのしわ寄せというか、それが百貨店対小売商、百貨店対問屋というところに現われておるところにこの法案提案された理由があるだろうと推測されるわけであります。そこでまず社会党案政府案との違いについて、ことに店舗に関する制限として社会党案で、この第七条に「国、地方公共団体及び公共企業体は、百貨店業者に対し、その所有する施設を店舗として使用させてはならない。」こういう規定があるわけであります。これを一つ社会党提案者の方からその趣旨を御説明願いたい。
  29. 春日一幸

    春日一幸君 これはあくまで自由にして公正なる競争が可能な状態に置きたい、こういうことになるわけであります。御承知通りこういうような国有鉄道、日本専売公社、日本電電公社、その他公共団体を対象といたしておりますが、こういう分けな資金によって建設されましたところの売り場、これが百貨店との特殊契約によってその事業の場に提供されますと、何と申しましてもそれだけ設備資金を必要としない形になってくるのであります。従って営業コストはそれだけ安くこれを計算することができる。小売店で当然計算しなければならないところのマージン、そのパーセンテージが百貨店においてはより低き率によって営業が可能となるわけであります。これは機会均等あるいは自由にして公正なる競争原則をここで乱る形になりますので、従いましてこういうような場所はデパートの売り場として提供しない方が、全体的の秩序からこれがよかろう、こういうことでこの法律規制を加えたわけでございます。
  30. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私も実は公共的な営造物を利用させることについてはやはり公平でなければならない、これは国の税金でまかなっておるのでありますから当然その恩恵を受けるのは均等でなくちゃならぬ。通産次官がおられますが、こういうのは受益者負担でもあまり議論のないところですよ。電源開発のとはちょっと違う。これは国の何ですから、受益者負担の考え方をかなりとられてもいいのですが、まあそういうことは本論よりはずれますから質問いたしません。ことにターミナルの駅なんかのデパートというものは、これは必ず通らなければならぬ、こういう状態になっておるところに店を置いておる。これはまさに売らんかなの状態である。ですからこういう公共利用的な建物、しかもそこは必ず通る、駅の出品であり、入口でありますから必ず通過しなければならぬ。しかもその土地は、私人が持っておるならばとにかく、公共物である。そこに店舗を構える。こういう一つの方式、これをこそ政府案としても盛られてしかるべきであると私は考えるが、政府案としては、どうしてこれをおはずしになったか、これをお聞かせ願いたい。
  31. 川野芳滿

    川野政府委員 政府案といたしましては、その決定は審議会にゆだねる。こういうわけでございまして、多分審議会といたしましては、その建物の四囲の実情等を勘案して決定するもの、こういうふうに考えております。
  32. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 それではたとえば社会党案の第七条のような条項は、当然この政府案の中で許可する場合にも一つ含まれる条件である、基準である、こういうように理解してよろしいでしょうか。
  33. 川野芳滿

    川野政府委員 その点でございますが、実は四囲の実情等によりまして、違う場合があろうかと考えます。ある場所におきましては、公けの建物についても許可する、こういう場所があるいはあろうかとも考えます。あるいはまた四囲の事情からそういう場合には許可しない、こういう場合もあろうかと考えます。従いまして、その決定は審議会にゆだねておる、こういうわけでございます。
  34. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 どうも最初の答弁では一つ原則のように言われ、あるいは例外があるかのごとく——例外があるということはあるいはやむを得ないかもしれませんが、今度は二度目の答弁をされたときは、どうも白紙のようなことで、四囲の情勢という言葉をお使いになったので、非常にぼけて参りました。この点、あなたの方では一つの基準としてこれは考えられておるかどうか。あるいは万やむを得ない例外のときがあるかもしれませんが、一つの基準として原則として考えられておるかどうか、これをお聞かせ願いたい。
  35. 川野芳滿

    川野政府委員 法案の中にもございますように、著しく中小商業者に圧迫を加える、こういう場合でございますならば許可がない、しかしそういうものに圧迫を加えない、こういうことでございますならば、おそらく審議会は社会常識上判断いたしまして許可する、こういうことになろうかと考えます。
  36. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 中小企業に圧迫を加えるとか加えないとか言われるが、その中小企業者というのは、既存の中小企業者であるのか、あるいは今後そういう地域に発展し得る可能性がある、こういう場合の中小企業者であるのか、この点はっきりしないわけなんですけれども、今おっしゃいましたことは、これは何も今私が申しました社会党案第七条のようなことだけでなくて、全般に通ずる話であります。そうしますと、先ほどの一番初めの答弁とはかなり食い違うように判断されるわけです。ですから、国の公共的な営造物、これに店舗を構える、こういう場合には、国の行政行為といいますか、国の許可という一つの条件がつくわけですから、一般的な判断とはかなり違うのではなかろうか、かように考えるわけです。ですからこの点は重点的にお考えであるかどうか、一つの基準の原則になるかどうか、もう一度明確に一つお聞かせ願いたい。     〔委員長退席、小平(久)委員長代理着席〕
  37. 川野芳滿

    川野政府委員 私が初めに御答弁申し上げましたのは言葉が足りなかったのではなかろうかというふうにも考えておりますが、新設店舗を許可するという場合においては、ただいま申しましたように、中小企業者に非常な悪影響を与えます場合には当然審議会においても許可がない、しかしそういう影響がないという場合におきましては、おそらく審議会においてはそういうものは許可するのではなかろうかというふうに考えております。なお公共物に対しまして許可を与えるかどうか、デパートとしての営業を許可するかどうか、こういう問題は、おのずから公共物をデパートに貸すかいなかという問題について検討されるものであると考えます。
  38. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 デパートに貸すかどうかということは、それは公共物の判断であるというふうにお考えでありますが、この場合も受益者負担ではありませんけれども、その公共物としては損害は比較的にないのであります。むしろそれによって損失はなく、若干貸し料その他をとって益金が上るというようなことになりはしないかと思います。ですからそういう点は、単にその公共営造物の管理者にまかせることなく、これも一つ判断の基礎の中に含めていろいろと審議さるべきであると考えるわけです。ですからそのことが、一般のデパートを作った場合と駅においてデパートを作った場合と、中小企業に与える影響を同じように考えるべきじゃないと私は思う。やはり国の営造物であり、国の許可によって一つ営業行為が行われるのですから、法の精神というものは中小企業の保護にあり、そこに百貨店法があり、またこれは国の管理下にあって一番見やすいわけですから、私はむしろ当然基準としては禁止をする、許さないということが妥当ではないかと思うのであります。何も国の恩恵を受けないで自由によそに建てようとするものすら制限しようとするときなんですから、当然国から恩恵を受けて建てようとするものについては、許可しないという方針の方がすっきりしてよいのじゃないですか。
  39. 川野芳滿

    川野政府委員 実際問題として、公共物を建てる場合に資金がございますれば、当然公共物をデパートに貸す問題というものは起らないと思います。しかし資金がなくて公共物を建てるという場合におきましては、その資金をデパート業者出して建てる場合も起ろうかと考えます。そういう場合において、四囲の事情から中小業者に全然圧迫を加えないというような場所がございますれば、あるいは審議会においてこれを認めるという場合も起ろうかとも考える次第であります。従ってそういう関係もございますから、この政府案法律の中には基準としては何ら入れなかったわけであります。
  40. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 法律で入れなくともけっこうですが、行政運営としての基準というものの中に入っておるかどうかを最初から聞いておるわけですが、大体中小企業者利益を害するというこの考え方、このこと自体に私はかなり大きな問題があると思うのです。なぜかといいますと、今の問題でいきますと、既存のものによって既存の中小企業者を害するという場合と、現在は中小企業者を害しないけれども新設によって、将来中小企業者一つの開拓の市場をなくする、こういう場合とがあるだろうと思う。少くともこの法律が出てきた以上は、これは中小企業保護という大前提に立っておるのですから、なるべく中小企業の開拓の市場を与えるというのが、やはりこの精神でなければならぬ。そこで将来中小企業がそこに建設し得る一つの市場であり、余地である、こういう場合は残しておくというのが当然である。なぜかというと、政府がわざわざこういう法律まで作って、自由な建設についても制限を加えようというときですから、私はそういう余地を政府として残しておくのが当然ではないか、かように考えるわけです。ですから、そういう場合は消費者が非常に不便を感ずる、こういう場合には、あるいは例外的にやむを得ないかもしれません。消費者が非常に不便を感ずるということと、中小企業者利益を著しく阻害するということとは、かなり違うのです。ですから、消費者が非常に不便を感ずるという場合は、あるいはやむを得ない場合があるかもしれません。行政運営として、法律事項でない以上は、消費者が非常に不便を感じない程度であるならば、当然許可すべきでない、今後その付近に中小企業者が開拓するであろう店のために、私は許可すべきでないと考えるが、次官はどういうようにお考えですか。
  41. 川野芳滿

    川野政府委員 消費者が非常に不便を感ずる、こういうような場合があった場合におきましては、当然審議会はそういう点を勘案して許可する、こういうことになろうかと考えます。しかし実際問題として消費者が不便を感ぜずして、中小商工業者に圧迫を加える、こういうような場所等がございますならば、審議会は当然そういう場所については許可を認めない、こういうことになろうかと考えますので、そういう点は審議会にゆだねておる、こういう法の精神でございます。
  42. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 どうも今の答弁ははっきりしないのです。消費者が不便を感ずる場合は、審議会は認めるだろう、私もそう言っているのです。ですから、私が聞いておるのは、消費者が非常に不便を感ずる場合でなくて、消費者は不便を感じない、また中小企業者も著しく利益を阻害する、こういう場合とはちょっと違うので、今中小企業者はいない、ですから、今その付近で中小企業者利益を阻害するということがない、消費者の不便を感ずることもない、しかし今後この町の発展とともに、中小企業が進出する余地のあるところだ、こういうところには許すべきでない、こういうことを主張しているのです。ちょっと私の質問が悪かったかと思いますけれども……。
  43. 川野芳滿

    川野政府委員 そういう問題につきまして、本法律案において規制したらどうか、こういうお尋ねのようでございますが、本法案におきましては、実はそういう点は審議会にゆだねておる、従いまして、審議会におきましてそういう点をよく勘案して、従ってその勘案の結果、許可すべきものは許可する、許可すべからざるものは許可しないように、こういうふうに審議会の決定にゆだねておるような次第であります。
  44. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 その審議会の考え方を聞いておるのです。審議会の考え方というのは、おそらくあなたの方で原案の基準を出されるでしょう。政府はいやしくも法律案出した以上、どういうような基準でやるかということを出されるでしょう。その基準の範囲内で、現在の中小企業者利益を著しく阻害はしないけれども、事は公共の営造物である、そしてその管理権は公共が握っておる、許可を与える自由を持っておる。ですから、この法案趣旨は中小企業の保護にある。現在は中小企業の利害を著しく阻害することはないけれども、それはあくまでも中小企業の市場の分野に属しておる。だから、消費者の不便さえなければ、これは許可をしないという方向に進められたらどうですかと聞いておるのです。
  45. 川野芳滿

    川野政府委員 基準はどうかというお尋ねでございますが、そういう基準は実は作っておりません。しかし審議会の委員の常識に待ってきめていただきたい。なお審議会といたしましては、法案にもございますように、その地方の商工会議所の意見を聞く、こういうことにもなっておりますので、従いまして、決定してよいか悪いかという問題等につきましては、おのずから社会常識的に決定が生まれるもの、こういうふうに考えて、おる次第であります。
  46. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 どうものれんに腕押しのような感じがするのです。審議会で全部逃げられておりますけれども、あなたの方の自民党からですらこれは憲法違反じゃないかという御議論もあるような法律をあえて出す政府としては、かなりの決意がなければならぬじゃないか。そういう場合に公共の営造物という最も政府の権限のあるところにそういうデパートあたりを許可する必要はないじゃないか、こういうことを言っておるわけですけれども、どうも答弁がはっきりいたしませんので、また後日の質問に譲りまして、次に進みたいと思います。  次に、社会党百貨店対小売、あるいは百貨店対問屋という関係で不公正な取引禁止しておるのですが、この点政府案にない理由をお聞かせ願いたい。
  47. 徳永久次

    徳永政府委員 社会党案の中に、たとえば現在独禁法で取り締られております事項も包含されております。政府案の方にはその事項は入っておりません。私ども考え方といたしましては、独禁法の領域の分野と、百貨店法の律しております領域の分野とは、法律的に性格の違いがあるというふうに考えております。同じく百貨店関係することではございますけれども、それぞれ法の精神に即して適用すればいいので、百貨店に関することであるならば、一つ法律にまとめなければならないという約束ごとといいますか、そういう考え方は必ずしも適当でないというような趣旨で、私ども独禁法の分野に属することは独禁法の適用に譲り、百貨店法はそれ以外の事項を取り扱うというふうに立案しておるつもりであります。
  48. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 社会党は、政府案と違う、不公正な取引について規定をしておる、対小売とか対問屋について規定しておることは、政府としてもそれは認めるけれども法律の体系として全然別々であってもいいのだ、こういうようにお考えになっておるというように了承したいと考います。社会党があえてこの条文を本百貨店法に掲げたゆえんのものは、そういう事実が起って後にこれを摘発する、こういうようなことでなくて、初めからそういう疑わしい事実には許可をとる、事前から防止する、こういう親切さがあってここに載せられたのである。私はかように理解をいたしておるわけです。  次に、政府案が既存の業者を保護する、独占の助長になる、こういうことがいわれておる。というのは今申しましたように、この不公正な取引の方は書いてないものですから、新設あるいは増築の場合だけを掲げておりますから、そういうようにいわれておるのだろうと思いますが、この点については政府はどういうようにお考えであるか、これをお聞かせ願いたい。
  49. 徳永久次

    徳永政府委員 私ども既存の百貨店擁護を、この法律で意識は全然いたしておりません。また法律でさようなことを意識したつもりはないわけであります。営業行為に対します取締りにつきましては、既成のものでありましょうが、本法によりまして新たに設けられた百貨店でありましょうが、同じ適用を受けるわけであります。
  50. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私の質問に対してただ主観的なお話をなさっただけで、どうも正確を欠いていると思うのですが、この点は両案とも非常に憂えられている点でありますから、もう少し明快にしておく必要があるのではなかろうかと考えますので、少しく明確な答弁を願いたい。こういう批判がありますので、聞いているわけですから……。
  51. 徳永久次

    徳永政府委員 お尋ねのなぜ既存の百貨店の擁護になるかという意味がよくわかりませんので、あらためて趣旨を御説明いただければお答え申し上げたいと思います。
  52. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 そういう批判があるという話をしているのです、私自身が思っているというわけじゃないのです。そういう批判があるから、それはやはりこういう委員会あたりではっきりしておく必要がある、こういう意味でお尋ねしておるのであります。おそらくその批判をしている人々は、限られた既存の業者だけが営業が営まれるのじゃないか、新設を願う業者にはなかなか営業が下りないのではないか、だから既存業者の保護になる、こういう意味ではなかろうかと思うのです。そういう批判に対してどういうようにお考えであるか、こういうことを聞いているわけです。
  53. 徳永久次

    徳永政府委員 この法律全体が、百貨店の新規の事業活動店舗新設拡張及び新たに百貨店業を営むというものを許可制にするわけでございますので、その面からいえば許可制は禁止ではございませんけれども、従来全然自由に放置されておったというよりは制限がつきますので、その感触から見まして、結局、今まで自由自在であったが、既存のものは、新しいものが続々出てくるということはなくなるであろうというような意味において、既成百貨店の擁護になるのではないかという感触での批判があるのかと思いますが、法の趣旨から見て、感触は感触として、結果としてさような感触を一般の人が受けるような事態になることはやむを得ないのではないかというふうに考えます。
  54. 春日一幸

    春日一幸君 現実の問題といたしましては、ただいま山本君に対する答弁の中で敷衍いたしました通り、三越は、松阪屋は、丸物はというよう工合で、それぞれ支店の増築、新設の計画が行われております。ところが、この法律がもしも施行されるという形になりますと、それ以上の膨張が抑制されて参るわけでありますから、現在の範囲以上の膨張ができない。こういう意味で必ずしも保護になるという事柄は当らないと思うのであります。けれども制限新設が行われる場合を考えまずと、新しい競争者をさらに多く輩出させないように、それを阻止するという立場において、百貨店としてもこれは受くるところは少からざるものがあろうかと存ずるのであります。
  55. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 百貨店というのは、たとえば鉄鋼の独占、こういうものとはかなり違って、総合経営でありますけれども百貨店はあくまで小売りであります。ですから、競争相手というのが小売りになっているのですから、必ずしも保護にはならないのじゃないか。こういうように私自身は理解している。鉄鋼のように独占的な事業をしている、ですから、それだけを何すると、これは独占化の憂いがあるから許可をしないということになる。ところが、百貨店は本来の性格が小売りである。総合営業ではありますが、小売りでありますから、小売店がその対抗者としてある。ですから私は必ずしもそういう理論は成り立たないのじゃないかと私自身は理解しているのですが、もう一つの問題は対消費者との関係であります。これがやはり一番大きな問題ではないかと思うのであります。そこで対消費者との関係についてはどういうように考えられているか。政府並びに社会党提案者の御説明を願いたい。
  56. 徳永久次

    徳永政府委員 先ほど山本先生にお答えいたしましたように、私ども消費者利益の擁護という字句は使っておりませんが、第一条の「商業の正常な発達を図り、もって国民経済の健全な進展に資する」という言葉の中には、商業それ自身が消費者と離れて成り立つものではございませんので、当然に消費者のことは考えらるべき事項だというように考えておりますことが一つ。それから本法の施行に実質的に非常に意味を持ちます審議会の委員というのは学識経験者をもって構成するということにいたしておりますが、健全な常識をお持ちの方あるいは商業問題に関する学者あるいは消費者代表というような方々だけで編成するわけでございますので、その判断の中には当然十分に消費者利益便益というものが顧慮されて決せられるものというように考えている次第であります。
  57. 春日一幸

    春日一幸君 わが党案は、この法律が施行されることによりまして直接消費者利益が増大されるという面はそこには現われていないかと存じますが、しかしながら特に考慮を払いましたことは、この法律の制定によって消費者利益が阻害されないようにこのことを最も重視をいたしているわけであります。そういうような意味合いにおきまして、小売店も別の性格において消費者でありまして、現在の小売店百貨店の分布状態において、この構造のもとにおいて、現在消費生活者は何ら不自由ではないので、従ってその消費生活者が現在すでに確保しておりますところの利益を犠牲に供することのない範囲において小売店利益確保されている、こういう工合に御理解を願いたいと思います。
  58. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 中小企業庁長官にちょっとお尋ねしますが、要するに小売店百貨店から非常な脅威を受けているというのが今まで指摘された点であります。しかしながら小売店自体にも非常な問題があるのではなかろうかと思う。何を申しましても小売店の強みは地理的関係であるとかあるいは専門的知識を持っているということであります。ところが汽車賃を払っても百貨店の方が安いという状態では非常に困るのであります。われわれが百貨店法をせっかく可決いたしましても、かえって消費者に迷惑をかけるということでは相ならぬと思うのですが、ですから私は専門的な小売に対する知識といいますか、これは本来あるのですから、専門的営業あるいはサービスをもう少し確立して、強化していくことが必要ではないかと考えるわけですが、それに対して百貨店法案が通過した後の小売店に対する指導をどういうようにお考えであるか、お聞かせ願いたい。
  59. 佐久洋

    ○佐久政府委員 全く御趣旨は私も同感でございまして、かりに百貨店法通りましても、それによって自動的に小売業が繁盛するというふうには実は考えておりませんので、小売業自体としては内面の問題と対外的な問題、この二つの点で今後大いに考慮しなければならぬ点があると思います。内面的な問題というのは経営の合理化、要するに商売の経理上の問題でございますが、これは従来も商店診断、あるいは商店街診断というような方法でもっぱら専門家の診断を受けさせまして、それによって改善に努めて参っておるのであります。今後もこの点は引き続き強めて参りたいと思っております。それから対外的には、やはり人にものを買ってもらうのでありますから、サービスを大いに考えなければならない。こういう点は最近だいぶ小売業者も覚醒をいたしまして、地域々々で集まっていろいろの研究をし始めて参っております。同時に小売店の協同組合の組織化、これは従来も若干ありましたけれども、非常に力の弱いものでありますので、今後はこれを強化していきたい。そのほかに専門店の全国的な組織とか、商店街の全国的な連合会というような組織も最近だいぶ強化されて参って、こういう方面の強化助長を今後も続けて参りたい、かように考える次第であります。
  60. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 最後に政府に一点だけお尋ねをいたしますが、百貨店の労働組合の人々がかなり心配しておるのですが、それは例の閉店時刻及び休業日、こういうものを政令で定めることになっておる。これによってある一定の規制をされれば従来よりも労働時間その他が長くなるのではなかろうか、こういうことを心配しておる、私はそれは杞憂だと思いますけれども、どういうようにお考えであるか。これを最後に一言でよろしいですからお聞かせを願いたい。
  61. 徳永久次

    徳永政府委員 営業時間の適用分につきましては、私どもは小売商に及ぼします影響等を考えまして、ある程度現状より縮めることをねらいといたしておるわけであります。ただしそれには十分な経過期間といいますか、摩擦を極力少くするという意味で三カ月なり半年なりは現状維持と申しますか、そういうようなこと、あるいは土地の状況によりましょうが、そういうことを考えつつ影響を極力少くしながらやりたい。さりとて全然短かくしないということは法の趣旨から見ても適当ではなかろうというふうに考えておるわけであります。従いまして今お話のような、労働時間が長くなるという点につきましては、私どもむしろ短かくなるというふうに考えていただく方が適当ではなかろうかというふうに考えております。
  62. 小平久雄

    ○小平(久)委員長代理 この際午後一時三十分まで休憩いたします。     午後零時四十五分休憩      ————◇—————     午後二時四十七分開議
  63. 神田博

    神田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  永井勝次郎君外十二名提出にかかる百貨店法案内閣提出にかかる百貨店法案、以上両案を一括議題とし、質疑を継続いたします。加藤清二君。
  64. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 本法案につきましては、すでに皆様御承知通り、前国会から継続審議されているようなものでございまして、要はこの法律を一日も早く通してもらいたい、こういう要望が今や国民の声となっておる次第でございまして、私どももこれについてはこの法案が一日も早く通るということについて御協力を申し上げたいと存じておるわけでございます。その意味において、せっかくこれほど国民が期待しているところの法律が通っても骨抜きであっては、仏作って魂入れずということに相なりますので、私ども提案しております法律案と、それから政府提案にかかわるところの法律案とを比べてみますと、魂は社会党案に多く入って、政府案はどうも魂が少し抜けかかっているんじゃないか、こう思われますので、その点を一つ尋ねてみたいと存じます。  まず第一番に、本法案によりますと、先ほどの御答弁にもありましたように、ほとんどの事が審議会でもって決定されるような様子でございます。この審議会のメンバーでございますが、どのような方々を御用意なさっていらっしゃるのでございましょうか。そのメンバーのいかんによっては、魂が入ったり出たりすることになりますので、その点をまず伺いたい。
  65. 徳永久次

    徳永政府委員 お尋ねの審議会の委員につきましては、私もまだ具体的には選考を進めているということではございません。ただこの法案に七名と書いてあります点で御了解いただけると思いますが、中には学識経験者ということにいたしておりますが、この際申し上げられると思いますことは、利害関係人でございます小売商代表なり、あるいは百貨店代表というような方々は、審議会の委員に入っていただかないということが一つございます。逆に申し上げますれば、中立委員的なもので構成いたしたいということでございます。具体的にはきまっておりませんが、大体の感じを申し上げますれば、商業問題に関しまする専門的な造詣の深い学者の方、それからいわゆる新聞、評論関係の方、消費者代表的な方及び広く公正、常識円満な経験者というような方々からお選び申し上げて御就任いただくということを考えております。
  66. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 承わるところによりますれば、審議会のメンバーは、大体専門の学者、それから新聞評論家、消費者代表、これに加うるに常識家、こういうことのようでございまするが、こういう方々であれば私も賛成でございます。その際に、デパートを代表するとか、小売を代表するという人は、絶対にこの仲間へは加えないんだ、かように心得てよろしゅうございますか。
  67. 徳永久次

    徳永政府委員 デパート関係者及び小売関係者は入れない。趣旨から言いまして、中立委員として文字通り公正正中立な御判断をいただける人という意味でございます。そういう誤解を招かない人を委員としてお願いいたしたい。
  68. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 こういう審議会、諮問機関には政治家、議員が入っておる場合を多く見るわけでございまするが、政治家をここへ入れる御予定はございまするか、そういうことはとんと考えたこともないのでございますか。
  69. 徳永久次

    徳永政府委員 私ども事務的には考えたことはございません。
  70. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 次に、商業活動調整委員会の人選についてお尋ねしてみたいと存じます。この審議会は地方の商工会議所の意見を徴することを要するということになっているようでございますが、これはさように解釈してよろしゅうございますか。
  71. 徳永久次

    徳永政府委員 本法では、商工会議所の意見を聞かなければならないというふうにいたしておるわけであります。商工会議所によりまして、広く商業問題一般の適切な裁きをつけるということのために、商業活動調整委員会というようなものを商工会議所で作って、百貨店対小売商問題その他もろもろの商業問題を円滑に処理してもらいたいということは、通産省として各地の商工会議所にその趣旨の通牒も出しておるわけであります。従いまして、その種の調整委員会が商工会議所にできておりますれば、おのずからその意見も聞いた上で、商工会議所の意見としてはその委員会意見も十分に参考にされて出てくるというふうに想像いたしておるわけであります。
  72. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 もし商工会議所に商業活動調整委員会が設けられまして、その意見の申し出によって事が運ばれていく、こういう勘定になりますると、ここに問題が生ずると存じます。すなわち委員会のメンバーがつまり将来デパートをどうするか、小売をどうするかということを審議するに当っては、その両者を加えない、公正中立な立場に立っている人のみによって構成する、こういう精神に反する結果が生じてくると存ずるのでございます。なぜかならば、この商工会議所のメンバーなるものは、ほとんどが大企業につながる人が多いのでございます。そのことを中小企業の方々はよく御存じない向きもありまするし、知ってられる向きもありまするが、もしかすると、大企業の人が中小企業の代表じゃ代表じゃということになりがちなんです。たとえて言うと、先日行われました中小企業政治連盟何とかやらに、大企業だと考えられる某参議院議員の方が会長に選ばれて見える。私はあれはどうことかしらん思うておる次第でございまするけれども、商工会議所の代表者というのは、ほとんど大企業です。特に名古屋に例をとってみますると、私の地元だからよくわかりまするが、ここはほとんどがデパートの経営者で商工会議所が成り立っておるようなものでございます。伊藤次郎左衛門さんを筆頭に、当代の商工会議所の会頭神野さんもやはりデパートを経営して見える。愛知県知事桑原さんも、丸栄のデパートを経営して見える。ほとんどがデパートの経営者のようでございます。ここへ諮問されるということになりますると、あなたのおっしゃいました公正妥当な結論、公正中立なメンバー、こういう要望にすっかり相反する結果になるが、これを是正する必要ありやなしや。まさかこの商工会議所のメンバーを変えろというわけにもいかないでありましょうから、商業活動調整委員会の中に、今日商工会議所の代表にはなっていないけれども、事この問題に関しては、特別にメンバーを加える。つまりほんとうに小売商の代表を商業活動調整委員会のメンバーに加える必要が各所に起ってくると存じまするが、これについてはいかがなものでございましょうか。
  73. 徳永久次

    徳永政府委員 お尋ねの点につきまして、二つのことを申し上げたいと思います。一つは、商工会議所の意見を聞くということについての商工会議所の態度の問題でございます。御承知のようにこの法律によりますと、最終判断は通産大臣であり、それからその主なる参考になりますものが審議会の意見であるということであります。商工会議所の意見を求めますが、商工会議所としましては、たとえば百貨店新設問題が出ました場合に、それをイエスかノーかというようなところまでの意見を商工会議所に求めるというつもりは、実はないわけであります。そうなりますると、商工会議所が百貨店対小売というような場合に商工会議所それ自身のあり方にひびが入るということも起ろうかと懸念するわけであります。ただ関連してこの種の意見もあり、あの種の意見もありというようないろいろな事情を出してもらえばよろしいというふうに私ども考えておりますが、その点を一つ御了解いただきたいと思います。  それから第二に、もう一つ申し上げたいと思いますのは、ただ商業問題に関しまする調整委員会を作って、小売商問題を円滑に推進することをやってもらいたいということを、私ども商工会議所に申しておるわけであります。これはこの法律と離れまして、法律の運用を離れて、むしろ問題はその地域地域の商工業者一つの問題であり、円滑に妥当な結論を得ることをお世話することが商工会議所の任務であると考えますがゆえに、この種の委員会を作って商工会議所らしく働いてもらいたいということを申しておるわけであります。しこうしてその委員会には、大体百貨店問題でございますが、当然に百貨店関係と小売商関係の人、消費者代表その他学識経験者を入れました構成で、公正な委員会を運用して下さいということを申し上げておるわけであります。従いまして商工会議所の役員、理事者がそういうことであるとしましても、商工会議所に設けられます委員会は公平な結論の出る組織構成によりまして、商工会議所としてそういう問題を妥当にさばくということ、それが商工会議所が商工会議所らしく発展するゆえんであると考えまして、この種通牒を出しておるわけでございます。法律とからめてお考えいただきますと、その辺に食い違いがありますことを御了解いただきたいと思います。
  74. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 公平な組織を作るというお言葉でございますが、なるほどいかなる組織から出た方でございましても、商工会議所の代表ともなれば、自分の畑だけのみならず一般考え方を代弁するということになられましょうけれども、それは望まほしきことでありまして、現実になりますとだれしもが自分の立場を守るということになりがちなんです。そこでせっかくあなたのおっしゃいます公平にして中立的な意見をとりたいというその考え方を実現するには、やはりその実現をするに都合のよい組織を作られることがころばぬ先のつえではないかと思うわけでございます。何も現在のメンバーが悪いと私が言うておるのではございませんが、ほんとうに公正中立な結論を導き出すには、やはり各層の代表者をここに加え、特に小売の問題について審議する場合には、小売の代表者が一人も加わっていないというようなことは民主主義原則にも反するのじゃないかと考えられますので、この点はあろうことならば——調整委員委員会のメンバーに小売が入っている商工会議所はよろしいと思いますけれども、入っていない商工会議所はぜひ入れるべく努力していただきたい、かように思うわけでございます。  次に売り場の面積でございますが、デパートの範疇に入るものの売り場面積はどの程度に考えていらっしゃいますか。都会と地方では違うでございましょうけれども、あなたの方で規制をしようという場合にその面積はどの程度に考えていらっしゃいますか。
  75. 徳永久次

    徳永政府委員 お尋ねの趣旨が十分理解がいかないのでございますが、規制の仕方としましては、この法律では御承知のように百貨店の定義のところに、六大都市では三千平米以上、その他のところにおきましては千五百平米以上ということにいたしております。それは百貨店の定義でございまして、具体的な支店、出張所等を設けます際には、その広さに拘泥なしで許可を受けなければならないというふうに法律ではでき上っておるわけであります。
  76. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 私の聞いているのはこういうことなんです。本店がかりに三千平米ある。今度支店をまた別なところに三千平米作ると六千平米になる、その場合支店として作った場合には勘案に入れないかということを聞いているのです。
  77. 徳永久次

    徳永政府委員 本法の適用を受けますか、受けませんかということは、ある物品販売業者一つの店で三千平米または千五百平米以上のものであれば百貨店業者になるわけであります。なってしまいました暁はどこにどの程度の支店、出張所を作るといたしましても、すべて許可が要るということでございます。
  78. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 こういうことを聞きたいのです。私の質問が悪かったかもしれません。たとえば東京で本店を三千にしますとひっかかるから、これを二千五百とか、二千八百にする、本店は銀座にあるとか、日本橋にある、その支店を今度池袋に持っていく、あるいは渋谷に持っていく、またそこも二千五百だ、二千八百だということになりますと、支店は本店の数に入れないということになりますと、ひっかかるその下でいけば幾らでもふえていく、こういう勘定になりますね。その場合はどうなりますかということを聞いておるのです。
  79. 徳永久次

    徳永政府委員 ただいまおあげになりましたようなケースでありますれば、この法律百貨店としての適用を受けません、ただし現に六大都市におきましては御案内の通りいわゆる大きな百貨店といっておりますのは大ていのこの法律規制されております三千とかいう限界をはるかに越えておりまして、一万あるいはそれ以上というのが百貨店でございまして、観念上はお話のようなことはできるということになりますが、実際問題としてそれほどの実益があるものかどうか、六大都市等におきましては大した実益がなく、従って弊害も起らないのではなかろうかというふうに考えております。
  80. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 それではもう一点。ただいまこの法案が審議されておる最中にもどんどん拡大競争が行われておるわけでございますが、この法律が先国会提出された折に、今すでに拡大競争が行われておるが、一体これをこのまま放置しては困るのじゃないかということを銀行の増設になぞらえて私は質問をいたしました。その際のお答えの中に、銀行も許可を受けてやっておるのであるから、そうむやみにふえるものじゃない、絶対にふえない、心配する必要はないのだという意味お答えがあったはずでございます。その折に私はこういうことを言ったことを覚えておる。大阪の梅田駅から御堂筋の南海ビルに至るまでわずか二キロしかない間に銀行の支店がふえてふえてふえ過ぎて、九十六行もあります。こんなに必要でありましょうか、まさに九十六行はもそっとで百行になりますが、これは百鬼夜行のたぐいと違いましょうかといったら、そんな心配はないという御答弁でありましたが、百貨店もあのころから、どんどん拡大競争をやられまして、大都会にいって新しいビルの建築を見たら大てい百貨店か銀行と見たらまず間違いないというほど競争が行われております。そこでこの増築中のものを一体どのように規制なさろうとしていらっしゃるか、それとも法律が通るまではこれでよろしいということでございましょうか、いかがでありますか。
  81. 徳永久次

    徳永政府委員 新増築中のものでございますが、法律ができますまでの間は、それに対して何らの制肘を加えないということは、法治国でございますので、やむを得ない事態だと思うわけでございます。ただ本法が、幸いにして両院の御賛同を得て成立しました際に、それをいかようにさばくかということでございますが、その点は法律の附則で、経過規定といたしまして、建築の進捗の程度とか、中小商業事業活動に及ぼす影響とかいう点を考えて定めるということにいたしてあるわけでございます。非常に抽象的に書いてございまして、具体的な運用ぶりをどうするかということは非常にむずかしい問題かと思うわけであります。私ども審議会の委員の良識に待ちたいというふうにも考えておりますが、この問題は、ある意味でこの法案の非常に大事なところであるわけであります。戦争前にも百貨店法がありまして、その際の経過措置として、新増築の問題については、基礎工事ができておるもので、他に転用すれば非常に損が起るといいますか、そのようなものは許可するという基準があったわけでございますが、今回の法律の場合には、それほど単純には参らない事情がいろいろとあるのじゃなかろうかというふうに考えております。と申しますのは、件数もずいぶん多いということもございますし、それから周囲の状況によってもずいぶん違う点もございますし、またある意味では、許可するしないという場合につきましても、一ぺんに八階建なら八階建までを許可しなければならないものか、とりあえず半分を認めて、あとはもうしばらく世の中の経済状態の推移を見てというようなこともありましょうし、いろいろな、非常に複雑な要素を関連して判断されるということになるのではなかろうかと考えておるわけであります。
  82. 佐竹新市

    ○佐竹(新)委員 この際通産大臣にお尋ねしますが、この百貨店法は、要するに小売商人が百貨店の圧迫を非常に受けるということにおいて出されたのがその趣旨でありまして、けさからの質疑応答の中にはっきりあるわけであります。従いまして、この法案には明らかに調整と書いてありますが、われわれは規制と言っておる。しかしながら、今加藤委員から質問されましたように、昨年来どんどん百貨店が増築をし、また駅も百貨店にひとしきものを作りつつある。今の政府委員の答弁のように、こういうものを何ら調整しない、できるものはできっぱなしでやらせるということになれば、この法案を通しても意味をなさないわけであります。これに対してはやはり規制する必要がある。たとえば今建築中のものはこれを他に転用さすとか、あるいは政府が補償してやるとかいうことをやって百貨店調整しなければ、幾らこの法案を作っても意味がないと思うのですが、通産大臣はこれについてどのようにお考えになりますか。
  83. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 現在作りつつあるものを一般的に押えるとか、また今後この法律で、できてから認めないというわけにはいかぬというのであります。だから、この法律に書いてありますように、認可するときに実際に事情に応じて認可するといってもこれは非常にむずかしい問題になりますが、非常に顕著な事実というか、顕著に小売商の方に圧迫を加えているという場合には、これは考慮の余地があるだろうが、しかし建築中のものは、建築しているという事実を認めざるを得ないというのが建前であります。
  84. 帆足計

    帆足委員 ただいまの点はきわめて重要な点だと思うのです。先ほどお答えもあったかと思いますが、かりにこの法案が通過するとすると、施行期日はいつごろですか。そうして、いつ審議会ができて、どういう時刻からこれが活動開始の段階に入るか。その見通しをちょっと事務当局から聞いてみたいのであります。それによって今度は具体的な質疑が始まりますから……。
  85. 徳永久次

    徳永政府委員 この法律は、公布後一カ月以内には政府側としてはいろいろな段取りをして実施するということにしなければならぬというふうに附則で明らかにいたしております。
  86. 帆足計

    帆足委員 審議会は……。
  87. 徳永久次

    徳永政府委員 ということは、一カ月以内には審議会もできていなければ法律の要件を満たしていないというふうに考えております。
  88. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 現在新築中のもの、この法律が適用される以前に申請許可を得たもの等々の調整を行われるならばよろしゅうございますが、もし行われないとなりますると、この法律ほんとうに仏作って魂入れずという結果になるではないか。もうすでにこの法律は一部時期おくれであるから、むしろ百貨店の保護法になるであろう。中小企業の保護を目的として作った法律ではあるが、決してその目的には合わずに、もうこれ以上作ること相ならぬということにすれば、現在伸びに伸びた百貨店をむしろ保護する法律である。つまりそのことは、かつての百貨店法が同じ轍を踏んだわけでございます。従いまして、この法律精神が是とするならば、善は急げでございます。従って、現在新築中のものないしは申請中のものを同じような目で見て、そうして調整するということが最も当を得た方法ではないかと存じまするが、やはり大臣は、前の百貨店法と同じ轍を踏むつもりでございまするか、その点をお尋ねいたします。
  89. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 統制ということは、いかなる場合においても、これの運用をされますと統制されますものを保護するような結果になるということは、これは百貨店法だけでなく一般的なことでありますから、そういう弊害も伴うであろうということは重々承知しております。しかし、今の建築中のものに対しても、それと同じ覊絆によって認可申請がありましたときに許可するかしないかということを決定する以外にないのでありまして、建築中のものは許さないとか許すということをあらかじめ決定することはできないと思うのであります。それから生ずるところの弊害があるとすれば、その弊害についてはさらにまたできるだけの除去をする工夫をするという以外にはないのであります。
  90. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 もう一点だけで終りたいと思います。  ただいまのような御答弁でございますると、まことにおそれ多い話でございますが、この二法案を比較対照してみますると、わが党案は魂が入って、政府提案法案はどうやら魂が抜けておるような気がしてならないのでございます。  そこでもう一つどうしても承わりたいことは、かりに法律ができたとしても、今のような精神で、やむを得ないというような精神でございますと、おっとどっこい、網はかけたけれども魚はみた逃げてしまった、こういうことになりかねないと存じます。すなわち先ほどの御答弁によりますと、この私的独占禁止及び公正取引確保に関する法律にうたわれていることは、本法律にはうたわなかった、こういうことでございましたが、この点事務当局としてはどのように考えていらっしゃるか。すなわちあの公正取引に関するところの指示は、指示された以後よく履行されているとお考えでございますか、それとも履行されていないと考えていらっしゃいますか、これはいずれでございましょう。事務当局から伺いたい。
  91. 徳永久次

    徳永政府委員 私ども独禁法の運用につきましては、公正取引委員会で最善を尽しておられるというふうに考えております。
  92. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 最善を尽しているかいないかじやなくて、実際にその法律が行われているかいないかということを私はお尋ねしておる。その法律趣旨に従って具体的に商業活動が行われているかいないかということをお尋ねしておる。ちょうど公取の方が来ておるようですから公取に承わります。
  93. 坂根哲夫

    ○坂根政府委員 一昨年の暮れに私どもが特殊指定をいたしまして以後、私どもとしては最善を尽して、今朝多賀谷先生に申し上げましたように、あの特殊指定の趣旨に沿って業界の指導に当っております。なおたとえば、それでは指定違反で審判をしたかというようなケースをお聞きになりますと、それはまだございませんが、大体あの特殊指定の趣旨に準じてやっております。
  94. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 私の質問はこの一点で終りますからはっきり答えてもらいたい。あなたの方がその指示に従って事務を一生懸命にやっているかいないかということを聞いているのではなくして、その指示が商業活動の内部に浸透して、具体的によくその指示が守られているかいないか、こういうことを聞いているのでございます。
  95. 坂根哲夫

    ○坂根政府委員 私どもといたしましては、その指示に従って過去一年有余の間に漸次新しい趣旨考え方に沿う取引の態様に転化しつつある、こう考えております。
  96. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 傾向としては出された指示がある程度きき目があったことはあなたの意見と同じように私は認めます。しかしそれで一切今までの悪弊が払拭されたと思うたらとんでもない大間違いです。私は具体的に例をあげあげてみましょうか。たとえて申しますと、昭和二十九年十二月二十一日にあなたの方は特定の不公正な取引方法を次のように指定するというて、その第一に百貨店業における特定の不公正な取引方法、例をあげて、返品のことを事こまかに第一項から第五項にわたって指示しておられるのでございます。昭和二十九年十二月二十一日から今日に至るまで、デパートから、あなたの方ではいわゆる納入業者と呼んでいらっしゃる問屋業者には返品は全部なかったと言い切れますか、言い切れないでしょう。依然として行われているのでございます。その結果は去年どういうことになったか。ゆかた生地が時期おくれてからどんどん返品されたことがある。その結果は注染、しぼり業者を倒産のどん底に追い込んだ。それのみならず、このことはやがてことしの注文に大きな影響を及ぼしておる。具体的事実にあなたは耳をおおうて、目をおおうて通り過ごそうというおつもりですか。これに対してあなたたちはまじめにやっているとおっしゃるならば、まじめに具体的措置をとっていただきたい、どうですか。
  97. 坂根哲夫

    ○坂根政府委員 お答え申し上げます。ただいま私が加藤先生に申し上げましたように、漸次私どもの特殊指定の趣旨によって、従来の納入業者に対する態度から転化しつつある、これは漸次そういうことになりつつあると思います。そこで先生のおっしゃいましたようなケースが、十分あることは私ども承知しております。従ってその間の経緯につきましては、今日その取引の態様について十分調査しておりまして、いずれそのうちに先生の御質問になったような趣旨に沿い得るようになるであろうと考えております。
  98. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 調査されましたならば、本法案が審議されている期間に、ぜひ一つくらいのひな形をここへ出していただきたいものだと思います。そのことはやがてあなたのおっしゃった、この指示を忠実に履行させる基礎ともなるわけです。だからほんとうにあなたのおっしゃった調査が具体的に行われているとするならば、その結果をここへ御提出願いたいのでございます。もしあなたの方から出すことがいろいろな影響上都合が悪いということであれば、私はそのために倒れた商人をここへ喚問することにやぶさかではございません。あえて全業界とは言わず、しぼりと注染だけに集約してでも商人はここへ数人呼ぶことができるのでございます。その結果はことしの注文難となり、この注文難の結果は、おそらく見てごらんなさい、この夏の盛り以降における競争を激甚ならしめる、こういう結果を生むでありましょう。思えばおそろしいことです。国民はそのおかげでことしの夏は少くとも一割から一割五分は高いゆかたを買わされなければならない。もっともこの一割、一側五分にはほかの原因もありますけれども、このことが一つの大きな原因になっておるのでございます。全く国民にとって不幸な現象といわざるを得ないのでございます。ぜひ一つ出していただきたい。  さてその次に発せられておるのが契約以後における値引きの問題でございます。それから臨時雇い等々の問題があげられておりますが、これが公取委からこのような指示が行われておりますのにもかかわりませず、なおそれが十分に履行されていないというところに問題があるのでございます。企業局長さん、ここが問題なんです。そこでどちらの命令をよく順守するかといえば、一番よく順守するのは自分の首の根っこを握っておられる人の言うことをだれしもがよく聞くのでありますが、この百貨店法の首の根っこを握るのはだれかといえば通産大臣でございます。そこで本法案の中に、公取委と重複するかもしれないけれども、大臣の権限として、大臣の命令としてこれを加えるということは、やがて公取委の精神をよりよく実行する上に大きに効果があると存じますが、この点大臣いかがでございましょうか。
  99. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 私はそういうお話も前から実は聞いておりました。しかしながら、今回われわれの方から出しました法律案によりまして、公取と協力して通産省で通産大臣がこの法律を実行する、今までの公取の活動通産大臣がさらに援助し、協力するということになっておるから、これでけっこうだと思います。別段あなたの言われるように公取の指定をあらためて二重に掲げる必要はない、かように考えます。
  100. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 言葉じりをつかんで悪いのですが、今までは協力していらしたのですか、協力していらっしゃらなかったのですか。
  101. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 むろん協力しておったのですが、法律によって通産大臣が公取にこういう協力をするということが明らかになります。
  102. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 協力されておってもなおかつ公取の指示が忠実に履行されていないというこの現実にかんがみて、将来その協力の仕方、あるいはこの指示の実現方について、大臣はどのようにお考えでございましょうか。それだけをぜひ承わりておきたい。
  103. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 この法律によってその点が非常にはっきりし、従って通産大臣が公取に協力し、公取でいろいろ今までもやっておりましたそのことを、さらに強力に実行させることにこの法律が非常に役に立つ、かように考えております。
  104. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 非常に役立たせるためには、やはり政府案よりもわが党提出の案の方がなおよろしいように考えるわけです。もし政府提案のままでいかれるとなりますと、今までと同じ結果をなお繰り返すだけにとどまるようでございます。この点は政府案も、よく御反省の上その点をよりよく実行されるように、あなたの精神がよりよく実現されるような手だてをこの際早急にやられますよう要望いたしまして、私の質問を終ります。
  105. 神田博

    神田委員長 次は帆足計君。
  106. 帆足計

    帆足委員 大臣は月曜日御用件だそうでありますから、ちょっとお尋ねいたします。先ほど来加藤君その他同僚委員質問もありましたが、百貨店法の審議が前国会からずっと続いておりましたために、百貨店の方はあわててどんどん拡張工事、新設工事を進めておる状況は大臣も御承知通りです。私どもとしては、近代的な機構として百貨店の持つ一つのよい面も知っておりますけれども日本の現状から見まして、昨年この問題が日程に上ったときに、百貨店一般小売商との問題は大体においてこれは正当なる均衡点を越えたものと考え国会で論議が集中されたわけです。従いまして、それ以後スピード・アップしてどんどん拡張されておるということについては、政府当局としてもよほどお考えになる必要があるのではないかと考えるのであります。従いまして公布の日を急ぎ、それから過渡期の措置に対してどういうふうになさるかということについて、やはり公正取引の見地から格別な措置が必要だと私は思います。たとえば新宿駅のターミナルで高島屋が進出するというような問題がありまして、地元の商人の諸君は不景気の波にさらされて、競争激甚で、経営困難な限界を今越えておりますときに、非常な恐怖を感じまして、それに対する反対の大会などがたびたび開かれまして、一応ひっ込んだような状況になっておりますが、ああいう問題につきましても、この百貨店法ができたならば、最終的な措置を直ちになさるお考えがあるかどうか。すなわち百貨店法が前国会から国会の論議に上ったということは、そうして政府当局自身もこの問題を前国会から取り上げるに至ったということは、やはりもう問題が何らかの国家規制をしなければならぬというところにきたことを意味するわけですから、その審議の間隙に乗じて、ことさらにどんどんスピード・アップして拡張が進んでおるということについては、既得権益だから仕方がないというだけでは私は大臣の御答弁としては不十分だと思うのです。従いまして過渡期の措置として、現在拡張中のもの、新設準備中のもの等々で非常な社会的摩擦を起しておるような事件があちらこちらにあるのですが、それに対して大臣はどういう心組みをもって行政指導をなさるおつもりであるか。これは責任上伺っておかなければ、せっかく百貨店法ができましても現在の事態では手おくれになるのではないかということが一般から指摘されておりますから、一つ行政指導についての大臣の心組みについて、たとえば新宿の今の例などをもちまして、どういうふうにお考えかお尋ねしておきたいと思います。
  107. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 百貨店法が行われるだろうということから、いろいろ遺憾な動きがあるということも聞いております。いろいろ陳情も受けております。従ってそれに対してはできるだけつまらない摩擦を起さないように、それぞれの関係業者に忠告その他を行うということは現在いたしておる次第であります。しかしこれを法律によって、どこの百貨店になるだろうと認められるような建物は許せないとかやらせないとかいうようなことはできませんので、いよいよ百貨店法が施行されまして、そのときの事情によって認可をするかどうかということをきめる以外には方法はないというように考えております。どうか関係者の正しい良識がそこに働くように念願をいたし、かつまたさように指導して参りたいと考えております。
  108. 帆足計

    帆足委員 大臣の御答弁は一応ごもっともなようですが、良識でもって解決するほどでしたら、実は百貨店法は必要なかったとも言えるのじゃないかと思うのですが、良識の段階を大いに突破いたしまして、これは戦前にも指摘されたことですが、百貨店で魚屋さんや炭屋さんまで始めるというようなことにまで及んで参りましたので、そのたびごとに社会問題にまでなってきたわけですから、行政指導の立場から言えば、大臣が今自粛を求めるという気持を持っておるということでありましたならば、これが一カ月後施行されましたときの審議会の運用につきましては、今の過渡期の問題に対しては、今日の大臣の発言を基礎として相当厳重にやっていただかなければ、せっかくのこの法案意味をなさないのじゃないかと私は思って申し上げたわけで、すなわち審議会ができまして、その審議の段階において、こういう過渡期にことさらにスピード・アップするような事態に対して審議会の注意を促す必要があると私は思っておるのですが、こういうことは英国人なんかだったらやらないことです。法案が出始めたからことさらにこれを急いでやろうとするような、それが目立つほど激しくなっておるというようなことは、これは非常にアジア的な現象だと思うのですが、こういうアジア的な無教養な恥知らずのやり方に対しては審議会の方で……。(「中共もそうだ」と呼ぶ者あり)中共の中にもそういう傾向はあるのです。ロシアにもあるのです。特定の個人を英雄視して崇拝するというようなことはくだらないことです。そこでこういうことは、やはり法律があとになりましても、そういう目に余るようなことをしたときには、ちょっとやいとをすえられるということになっておれば、やっぱりそういう極端なことはしないと思いますから、あまり極端な事例については、一つ審議会において適当な裁断を与えることが必要だと思いますが、結局それも通産大臣のにらみにあるわけですから、通産大臣は一体この過渡期の現象をどういうふうにお考えになっていらっしゃるか。世間ではこれがあと三カ月おくれたら、百貨店法なんかない方がよかろうと言っているくらいなんです。新聞でもこのことは御承知でしょうが、やはり大臣のはっきりとした御答弁を伺っておく方がいいと思います。また具体的例の一つとして新宿のことも申し上げましたが、新宿の例などもどのようにお考えになっておりますか。これは大臣の御良識で判断のつく問題ですから、隣に徳永さんもおられますし、耳打ちをしてもけっこうですから、この際一つ考えをはっきり述べておかれると、むだなことが省けるのじゃないかと思います。従いまして、もう少し強い御答弁をお願いしたいと思います。
  109. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 これは感情的に申しますと、こういう法案ができるかもしれぬということをねらって、故意に拡張をやっているとか——これは百貨店だけの問題じゃありません。ほかの方面にも見られるので、はなはだけしからぬという感じを抱くのでありますが、そうかといってわれわれが感情的になるということも、これまた弊害を生ずるでありましょうから、十分冷静な態度をとっていきたいと思うんです。ですから百貨店を新しく許すときに、現在拡張計画をして建築をしておるものが、その許可を申請してきた場合の審査については、おのずからある程度厳重な審査ということはあると私ども考えております。しかしながら、どうもあれはけしからぬから特別にとっちめてやろうというような感情は持ってはならぬ。これはまた自省をしなければならぬことだと思います。  それから、もう二、三カ月置いたら百貨店法は必要なくなるという説もあります。これも少し感情論です。それはいつやりましても同じような現象が起って、制限するといえば、その制限が行われる前に、自分だけ有利な立場を占めようという動きは、これは日本に特にひどいか、東洋に特にひどいかどうか知りませんが、外国にもおそらくあることだと思います。本にも書いてあるのですから、一般的な人情でありましょう。こうしたことはおそらく予想しなければならぬことでありましょうから、それはそれとしまして、できるだけそういうことが起らないように為政者としては心掛けなければなりませんが、しかしそんならもうこの法律は要らないかというと、そうじゃないと思います。また、とにかくここでは一つの先ばしった動きが現われております。あるいは三カ月か半年かの間には役に立たない、あるいはかえって拡張を急がせたというような結果が生ずるかもしれませんが、そのあとの問題を考えれば、いつまでにこの法律ができるということは、それだけの効能があろうと思いますから、現在建築を急いでいるものがあるからこの法律は無益というのも、少し行き過ぎな考え方ではなかろうかというふうに考えます。
  110. 帆足計

    帆足委員 通産大臣は今後審議会ができまして、法律の運用の過程では一つ相当厳重にやるつもりであるという御発言がありました。この御発言は、公正取引委員会の方でも行政当局でも、ここでちょうど聞いておられたことですし、私どもも幸いにしてこの法案を通過させますときには、そのときの討論の言葉の中にもそのことを厳重に各議員が発言するでございましょうし、時と場合によっては附帯決議のような要求も出るでありましょうが、そのことにつきまして社会党の原案も出ておりますから、社会党の原案を出した代表の方の意見一つ承わっておきたいと思います。
  111. 永井勝次郎

    ○永井委員 ただいまの御質問でありますからお答えいたしますが、ほんとうは繊維の場合でも繊維の設備の規制をする、こういうことが予知されますと、このときとばかりに、織機製造工場はもう昼夜兼行でどんどん機械を作る、こういうことで、設備を規制するということと逆行いたしまして、設備が拡大されるという結果が来たされております。また百貨店の場合も同様であります。でありますから、この拡張し切った百貨店の現状において、今手がけておるものはすべてこれを容認するという形で措置をいたしますと、政府提案は、現在及び拡張された百貨店の擁護法という形になりまして、これは中小企業を守るという法案とは質的に違った形になって参ります。従いまして、わが党の天下であれば、この法案提出に当りましては、当然経過的な措置として直ちに行政的な措置をして、拡張その他については十分注意を喚起し、これを抑制するというふうな措置もなし得るのでありますけれども、野党でありますために立法措置よりできない。行政措置はわが党の権限外でありますので、できなかったわけであります。もし砂糖の超過利潤をとる、バナナ、パイナップル・カン詰の超過利潤をとるという場合には、法律はありませんけれども、行政措置によってその超過利潤はチェックするという措置も現実に講ぜられてあったわけであります。当然そういう措置が講ぜらるべきはずであることをわれわれは期待いたしたのでありますが、その期待に反しましてこのような事態に至りましたことはまことに残念でありますが、わが党といたしましては行政措置をする権限がございませんし、その能力がございませんので、残念に存じておるわけでございます。
  112. 帆足計

    帆足委員 今の永井君の答弁なら私もよくわかるのです。同じ党であるから、自画自讃で申し上げるわけではありませんけれども、この問題については全国の小売商の諸君が非常に注目し、期待しておると思うのです。石橋さんでなかったら今度の百貨店法がここまでくるかどうかわからなかったと思うのですが、おそまきながらも、石橋さん並びに親愛なる同僚議員諸君が、社会党出したことによって、これは正論として一般の支持を得ているから、多少骨抜きにはしたけれども、とにかくある程度の規制は必要だといってこの法案提出されたことには大いに敬意を表します。しかしだれしもがそう言っているのです。過渡期の措置を怠っているところはないか。私どもせっかく政府がやろうという気になっているときに水をさそうということはしたくありません。一刻も早くこの法案をりっぱな形で通すようにしたいと思っておりますけれども、すべての人がそう言っているのです。過渡期の措置について何らの手が打たれていないじゃないか、あとは審議会がスローモーションでまごまごしていたんでは、百貨店擁護法になりはしないか、これはすべての人が言っていることですから、従って問題の論点を明らかにして、今後の運用に対して、議員としては明確な注意を喚起しておくことが私は非常に必要だと思うのです。公正取引委員会の方も見えておりますが、とかく法律というものには運用次第でこういう穴ができるわけですから、この不当な穴をふさぐように、運用上注意していただきたいということを希望しているわけです。きょうは通産大臣から厳重な注意をもって運用するという発言がありましたので、私はこれだけにとどめておきますが、われわれといたしましてはただここで発言しただけでなくて、何らかの形で、これを運用の上に実際に反映するようにしてもらうように今後とも要求いたしますから、そのことだけを申し上げておきまして、またあとで質問いたすことにいたします。
  113. 神田博

    神田委員長 次は田中武夫君。
  114. 田中武夫

    田中(武)委員 何か大臣が月曜日には見えない、こういうことですから、大臣に一、二の点をまずお伺いしたいと思います。私先日下請代金の支払い遅延防止に関連いたしまして、本会議質問いたしましたときに、大臣は自民党のいわゆる政府案には欺瞞性なんかない、百貨店法社会党案と比べてもらえばよくわかる、こういうように答弁せられたのですが、私、社会党案政府案を見ました場合、政府案はただ売場面積と出張所、支店の規制、それから一、二の顧客の送迎に対する行為について勧告できる、こういうような点だけうたっておりまして、たとえば公正取引委員会の過去二回にもわたって勧告いたしましたような不公正な取引、いわゆる問屋との間の経済的な地位を利用いたしまして、手伝い店員とかあるいは特売向けの商品を特に命ずるとか、あるいは委託販売あるいはまた一旦返しておいて返品の再購入、こういうような方法による不公正な取引は何ら規定をしていないわけですが、そういうふうな点につきましてはなぜ規定されなかったのか。かつて公正取引委員会がすでに二回にわたって警告しているような事項が入っていないのですが、そういうような点についてはどのように考えられておられるのか。
  115. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 公正取引委員会百貨店に対して勧告をし、あるいは取締りあるいは審査を行うというようなことは、むろん続けてやるわけであります。ただ今までは公正取引委員会だけでやっておりましたのを、この法律によりまして通産大臣公正取引委員会と緊密な連絡を保ち、また公正取引委員会にいろいろ援助をするというような形で、今までの取締りを強化するということをこの法律で規定するわけであります。公正取引委員会自身がやることをそのまま復唱をここにはしてはおりませんが、公正取引委員会がやることはむろん認めておって、その公正取引委員会活動をこの法律によって一そう強力にする。その強力にすることに通産大臣が協力する、かようなことをこの法律で規定したわけでありまして、従ってそれを落したわけではございません。
  116. 田中武夫

    田中(武)委員 公正取引委員会が、これは不公正な取引だと考えて警告をし、いろいろな措置をとるということは、この法律がなくともできるわけです。現にやっておるわけです。しかしこれを百貨店法として特に取り上げて、そうして中小企業の保護育成のためだ、こう言う上は、かつて公正取引委員会が二回にもわたって警告したような事項は、当然法案作成において考慮すべきじゃないか、このように思うわけなんです。
  117. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 その点は十分検討いたしまして、その結果今度通産省が出しましたこの法律案の方がよろしいということでかような条文にいたしたのであります。そのときの審議のこまかい点は私忘れましたから係である政府委員からお話しいたします。
  118. 徳永久次

    徳永政府委員 午前中に同じような御質問がございましてお答え申し上げたのでありますが、独禁法で扱っております事項と、それから百貨店法で扱っております事項と性質に若干の違いがございますが、独禁法で扱っております事項は、いわば公正競争ということでございまして、たとえて申しますれば、明らかに経済秩序、法秩序維持上ルール違反の事項を取り締るということでございます。この百貨店法の方は、その点ややニュアンスを異にいたしておりまして、ルール違反ではないが、たとえて申しますれば、相撲で横綱の張り手を押えるというような感じでございます。張り手は相撲の四十八手裏表では禁手ではないわけであります。ただ横綱は度の過ぎることはほどほどにしろというようなことでございまして、そういう方のニュアンスが違いまするし、また現に不公正競争の取締りについては法律もあることでございますし、しかも独禁法は、運用によりまして非常に弾力性もあり、個別的な条文で書きますより、むしろ運用の弾力性も多いという面もございますし、今回御提案になりましたような社会党案というのは、前の案にもこの種の条文はあったわけでございますが、私はその点もよく研究してみたわけでございますけれども、法体系が違うこと、独禁法で十分にやり得るということ、またそれはやりようによって弾力性が十分にあるということから見まして、この百貨店法の中には取り入れることはプラスではないというふうに考えまして、はずしたわけでございます。
  119. 田中武夫

    田中(武)委員 この問題につきましては、私中座しているうちに同僚委員から質問があったようでございますので、この程度にいたしまして、他の面につい石橋通産大臣にお伺いいたします。  大臣も御承知のように、この百貨店法案は、二十二国会社会党提出いたしました。また当時の民主党の方からも、簡単でしたが、六条程度のものが出ました。ところがこれが、国会最終日に、砂糖三法案とからみまして流れたわけでございます。今日政府がこれを提案してこられたのには、いろいろと政治的な意図もあったかと思われます。たとえば参議院選挙を前にして、全国の小売商人に何とかしなければならないと考えられたのかもしれないし、またどうせ社会党から前のような強いといいますか、中小企業立場からいうならば、より強い法案が出るから、何とかそこまでいかないところでお茶を濁そう、そういうような考え方で出されたかもしれない、こう思うのですが、ほんとうに大臣が中小小売商人の保護育成というような点を考えて出されたならば、なぜ二十二国会のときに百貨店法案が成立するように通産大臣としても努力されなかったのか、お伺いしたいと思います。昨年一年に百貨店のいわゆる新増築がどんどん行われまして、一年間に十万平方メートルにも上るところの売り場面積拡張された、これは約六割の増築といわれておるわけであります。これは考え方によりましたならば、こういう法律が出るぞ出るぞといって、百貨店にある程度の準備期間を与えて、この法律が出たときには、百貨店には何ら苦痛が感ぜられないというような時期まで待って出してやる、こういうようにも考えられるわけであります。たとえば売春禁止法にいたしましても、同じようなことをたどっているのではないか。出るぞ出るぞといいながら政府は出さない、そういうことによってある程度の期間を与えて、売春禁止法の場合は、一応それによって転業、廃業の機会を与えるという意味もあろうと思いますが、百貨店の場合はそういうものではない。大臣は、今出されるくらいならば、なぜ二十二国会においてもっと早く成立するように努力しなかったか。おくれたのは私はそういうように考えますが、百貨店に増新築の機会を与えて、この法律が出たときには、すでにその法律によって百貨店としてはあまり痛くないというような時期まで待ってやったような気もしますが、その点どうなんでしょう。
  120. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 私には参議院議員選挙があるからどうというような、そんな器用な考えは浮ばないのです。全くこれはまっ正直な、ただ経済法案として考えております。実を言うと、昨年この席あるいは本会議等でも、そういうことを私は漏らしたかもしれませんが、百貨店法案というもので果して小売商を保護することができるかどうか。国民経済全体として考えても、百貨店法案というものはただ百貨店売り場面積制限するとか、その営業の方法規制するということは、一応一般の小売商人に有利であるように見えますが、それが果してどれだけの効果があるか、あるいはまた一般消費者に対してどういう影響があるかということについては、私に相当疑問がありました。従って昨年においては、この百貨店法案社会党からお出しになりましたのに対して、直ちにそのまま服そうという気持にもならなくて、実を言うとちゅうちょしたのであります。ちゅうちょしたことは、私の判断がその場合にはっきりしなかったということは、不明を謝さなければならぬわけでありますが、そういうわけで昨年は踏み切り得なかったのであります。その後だんだん各方面からも事情を聞き、また百貨店業者自身が、今御指摘のように、この法案提出を予想してむやみに店舗拡張するというような不謹慎な行動を取り出したことも、私に反省をする機会を与えました。それで今回は思い切って百貨店法案出して御審議を願うわけであります。いわゆる政治的な考慮からちゅうちょして百貨店業者利益を与えるためとかあるいは選挙のためというようなことを考えたわけではありません。
  121. 田中武夫

    田中(武)委員 大臣は今そのように答弁なさいましたが、政治的な配慮、もう一つはやはりある程度の期間を与えてやった、こういうようにしかわれわれには考えられない。と申しますのは、午前中の山本委員質問に対しましてわが党の春日さんから答弁のときにも、昨年一年の間に増新築の計画をやって、あるいは実行したところの各地における百貨店の実情を述べておりましたけれども、あのような状態であります。従ってこれはむしろおそきに失する、こういうように考えるわけですが、その点につきましては今大臣もそう言われたので、これ以上申し上げません。  次に、この法案において売り場面積あるいは増新築の制限をする場合に、その土地の商工会議所の意見を聞く、こういうようになっておりますが、現在の商工会議所のあり方を申しましたなら、ことに大都市の商工会議所の実情を見ました場合に、必ずしも商工会議所は弱い立場の人たち、いわゆる中小小売商人の代表機関とも考えられないわけであります。より強い資本力を背景とするものの発言の方が強いようにも思うわけであります。そういうことについて商工会議所のあり方をどのように分析しておられますか。あるいはまた私が言っておるようなあり方であるとするならば、そこへ諮問をすることは、ほんとうに腹からこれらの制限をするという気持でなく、商工会議所というものを一つの防波堤として増新築の制限ができないような規定とも考えられますが、このようなことについて大臣はどのように考えておられますか。
  122. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 どうもそういうふうに相手方の腹を探って、そうじゃなかろう、何か裏があるのじゃなかろうかというような疑いを一々かけられることはどうかと思う。私についてはさような裏はございません。それから商工会議所の性格についてもいろいろ批評があります。都市によって違うと思いますが、大体地方都市においては中小企業者、特に商業者利益を相当に代表しておるというふうに私は考えております。それは現実行ってみましてさような感じを抱いておるわけであります。
  123. 田中武夫

    田中(武)委員 私は至って正直者でありまして、別に人の裏をというようなことはないのです。ところが今までの大臣のといいますか、現在の政府のやっておることが、どうもそういうことが多いからそういうように考えざるを得ないのであります。そういう点はともかくといたしまして、先ほどの御答弁で百貨店法を作ったからといって、中小企業が直ちに救われるものでないと言われたことは当然だと思う、その通りだと思います。百貨店法ができたからといって中小企業が救われるとは考えられません。従ってこれの成立と同時に中小企業に対するあらゆる育成の手段が必要だと思います。またそういうことがなければ、百貨店法を作ってもほんとうの意義がないと思う。そこで大臣は、百貨店法を作ると同時に、今言われたように、これだけでは十分に救われないのだから、こういう手を考えておる、こういうことがあろうと思いますが、中小企業、ことに中小小売商人の立場を保護してやりあるいは育成することについてかねてどのように考えておられるか、伺いたいと思います。
  124. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 零細な小売業者をどうして経済的に成り立たせるかということは、中小企業問題の中でも最も困難な問題で、ずいぶん古く明治時代からしばしば論議されておるにもかかわらず、実は一向にその解決の方策を見出し得ないというのが現状であります。従って私どもといたしましても、どうしたらいいかということにつきまして、今にわかに名案がないことに苦しんでおるわけであります。しかしとにかく中小商業者ができるだけ共同して施設をするとか、あるいは仕入れその他について適当な方法を講ずるというような、いわゆる協同組合的な方法によりまして、小売業者が連携をしてその経済的な基盤を築き上げる、強さを増す、同時に金融等についてできるだけの便宜を供する、こういうはなはだ平凡でありますが、それ以上の名案は今持っておりません。
  125. 田中武夫

    田中(武)委員 たとえば金融の問題等についても考えておる、こういうようなお話でありましたが、つきましてはこれは考えておるだけでなく、今後もこれを具体的に積極的に一つ進めていただきたい。そうでなければ百貨店法を作ったからといって安心になるものじゃない、おっしゃる通りであります。この点を特にお願いをいたしておきます。  そこで、きょうはあわてて呼びだされてきたものですから、パンフレットを持ってこなかったのですが、昨年の一月に旧民主党が選挙に際して出した政策要綱というパンフレットの十四ページに、中小企業振興対策というのがありまして、その七項目にはっきりと百貨店売り場面積拡張店舗新設、不当販売方法を抑制する措置を講ずるというようにうたっております。大臣も旧民主党の党員の一人として、この政策要綱に基いて選挙公約をなされたと思うのですが、今政府出しておられる法案を見ました場合、売り場面積拡張店舗新設についてはなるほど明文はあります。しかしながら不当販売方法を抑制する措置を講ずるという点でございますが、なるほど条文には顧客の送迎について云々という規定がございまして、これでもって公約を果されたと考えておられるかどうか知りませんが、不当販売方法を抑制する措置を講ずるとうたわれておりながら、なぜ不当販売方法について明確な規定を設けなかったかお伺いいたします。
  126. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 その問題は先ほどからもしばしば御質問がございまして、また答弁もいたしております。公正取引委員会の方でやれるものはむろんやるし、またわれわれとしてもさらに一そう公正取引のために協力して取締りをするということになっております。ですから、今の民主党の公約に違反しておるとは思いません。
  127. 田中武夫

    田中(武)委員 大臣の今の答弁はおかしいと思うのです。公正取引委員会においてやれる——独禁法ならば昨年一月の選挙以前からちゃんとあるわけです。しかしながら昨年の選挙に当って、百貨店法を作るということを公約せられて、その中において不当販売方法を抑制する措置を講ずるとうたっておられる。もしそういうことであるならば、その方法独禁法によって規制する、百貨店法においてはこれこれの点を抑制するんだとなぜ言わなかったか。今の御答弁は、この公約を考えた場合、大臣のでたらめな言いのがれであり、詭弁だと思うのです。
  128. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 こまかいことは一々覚えてはおりませんから政府委員答えさせますが、民主党が選挙のときに発表した文章は一々こまかく分析して書いたものではございませんで、全般として百貨店等の不公正な取引を抑制することをうたったのでありまして、その中で公正取引委員会がやれるとか、あるいは百貨店法においてやるというようなこまかい点まで考えて表現したわけじゃないのです。ですからその表現がどういうふうに今度の法律に現われておるかということは、そういうふうに文句を対照したからといってすぐに出てくるものじゃないと思います。しからば不公正な取引をどういうふうにしてこの法律が押えようとしておるかということにつきましては、さっきからしばしば申し上げたのでありますが、なおちょっと記憶がはっきりしない点がありますから、政府委員お答えいたさせます。
  129. 徳永久次

    徳永政府委員 百貨店営業行為につきましては、条文御案内の通り、第九条に勧告の規定がございます。この規定は社会党案の構成とは若干構成は違うごとく見えるわけでありますけれども、しかし先ほどの御答弁で申し上げましたように、百貨店の営業活動それ自身を取り出しまして、これはルール違反であるというふうに言いがたい性質のものでございまして、その度を過ぎまして、中小商業事業活動影響を及ぼすという場合に取り締る、これが問題の本質に合致したものであるというふうに考えまして、さような規定が設けられておるわけであります。私ども勧告はケース・バイ・ケースになりますけれども、その幅は相当弾力性もあるものであり、事態に即して十分の効果を上げ得るというふうに考えておるわけであります。
  130. 田中武夫

    田中(武)委員 私は企業局長の答弁を求めているわけでなく、いわゆる政治家としての石橋通産大臣が選挙における公約と、実際通産大臣としてとられた法案提出の態度についてお伺いいたしておるのでありますが、石橋通産大臣公正取引委の活動によってそういうことができる、こういうふうにおっしゃっておりますが、公正取引委員会が指定したのは値引それから売り場面積規制であって、不当販売方法については規制いたしておりません。またもし販売方法について公正取引委員会活動によってできるというなら、独禁法第何条によって、どのような方法によってなされるのか、そういうことを考えておられるか、お伺いいたします。
  131. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 ただいま徳永政府委員から申し上げましたように、この法律によれば、また勧告によって不公正と認められる商行為は抑止するということを書いてありますから、そういうことで民主党の公約を果しております、そういうことであります。
  132. 田中武夫

    田中(武)委員 本法案によって、勧告ができるということであるから、その勧告に従って公正取引委員会が動く、こういうことによってという、いわゆる三段論法的なことでうまく逃げられたようでありますが、この点につきましては、これ以上申し上げませんが、やはりはっきりと公約にうたわれたのであります。それは何なら明日でもパンフレットを持ってきてお目にかけてもいいですが、不当販売方法を抑制するということは、ああいう抽象的な文句のことをうたわれたものではないと思います。もしそういうことを考えられたとするなら羊頭を掲げて狗肉を売るといいますか、公約を読んだ場合は、中小企業の方々には、これは具体的に一々きめてくれるんだ、こう思わせておいて、実際票だけもらったら、あとはやらなかった、こういうことになるということだけを申し上げておきます。  次にこういう点についてもすでに質問があったかと思いますが、たとえば公共企業体の建物、駅とかいうようなところに百貨店が店を出す。そういうことによって、より一そう交通を複雑、混乱に陥れているという状態もあるわけでございます。また新宿ですか、高島屋の進出ということが、地元に大きな問題を呼び起しております。同じ社会党案によりますと、これらの問題について禁止規定を入れておりますが、政府案によりますと、こういうことについて何ら考えておられないようであります。またもう一つは、これは場所がいいということで利用せられるのだと思うのですが、今度は国または公共団体が何らかの催しをする場合、これを百貨店の一部を借りてやる。そういうことによって人を集めるというような方法もやっているわけでありますが、こういうことが中小小売商人に相当な影響をもたらしているわけです。そういうようなことについてわが党案においてはこれまた配慮をいたしておりますが、政府案にはこういうことも配慮がせられておらない。大臣はどのような観点からそういう規定を入れられなかったのか。あるいは考えておったのだが、どういう理由で入れなかったのか。全然考えておられないのか、そういうことについてお伺いいたします。
  133. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 たとえば非常な繁華な駅などでもって営業させるとか、あるいはまた百貨店の中で催しものをするというお尋ねでありましたが、そういうことは非常に幅の広い問題であって、一がいにそれが悪いとか、いいとか、一般的には規制できないと思います。ですから、一つ一つの場合に当りましては、この駅においてはこういう営業を百貨店がやるのがいけないとかいいとか、あるいはまたある百貨店において何か催しものをすることがいいか悪いかということも、その場合々々によってこれを規制するかしないかということをきめなければならぬ、かように考えております。だから一がいに全般的に網をかぶせるという条項を入れなかったのであります。
  134. 田中武夫

    田中(武)委員 大臣の御答弁は、一がいに言えないから、その場合々々によって、こういうことでありますが、それではその場合々々によってそういうことが禁止または抑制できるというのは、政府案ではどういう条文でなされるのでしょうか。
  135. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 新設許可の場合は新設許可の条文を使う。それからふだんのやつは、第九条がそれに当るものと思います。
  136. 田中武夫

    田中(武)委員 第九条の規定は勧告となっておって、「百貨店業者の出張販売、顧客の送迎その他の営業に関する行為がその百貨店業事業活動を通じて中小商業事業活動影響を及ぼすおそれがある場合において、中小商業の維持育成を図り、」以下略しますが、「ときは、その百貨店業者に対し、その行為をしないように勧告することができる。」こういう規定ですが、それは拡張解釈すればそういうことも入っているように思いますが、実際は苦しい言いわけであって、九条のときに、この中に今私の言っているような公共企業体の建物設備を利用することやあるいは国または公共団体が催しものをすることをそれをしてはいけないとか貸してはいけないという勧告をすることを考えて書かれたものではないと思いますが、それはちょっと詭弁ではないかと思いますが、どうでしょう。
  137. 徳永久次

    徳永政府委員 今のお尋ねの問題は、駅を使うとか使わないとかいうことでございますが、そこを使うことが適当でないと、いろいろな面から見まして思う場合には、それはいずれも第三条の営業の許可になりますし、それから店舗新設等の場合でありますれば、第六条の許可ということで出て参るわけで、それの許可の際に処理されるということになるわけであります。
  138. 田中武夫

    田中(武)委員 なるほどこれから新たにたとえば新宿の駅ができたときに、そこで高島屋がやろうというときには営業の許可という線になっているでしょう。それでは今までにやっているものを直ちになくさせるということはできないと思いますが、そういうことについての問題。それからもう一つは催しものですが、催しものについては何条でいかれますか。
  139. 徳永久次

    徳永政府委員 催しものにつきましては、私どもは第九条の営業に関する行為というものが催しもの、百貨店営業のいわば顧客誘引のための行為というか、そういうことで営業に関する行為の中に当然に入っているものと解釈して差しつかえないと思います。
  140. 田中武夫

    田中(武)委員 九条で催しものは規制できるということなんですが、そうするとお伺いしますが、東京都なら東京都が何かの催しものをするというような場合、これは一つ一つどこかへ通産省等で届けさすということになっていますか。この規定によりますと、そのやった結果が中小企業を圧迫するということであるならば勧告できる、こういうことなんです。これが何回か継続して繰り返してやられる場合には、それは勧告することによって自後を規制できると思う。ところが一つの催しは一週間とか十日とか、こういうものが主催者が変って繰り返して行われるわけです。そういうような場合に、そのときそのときを見てといっても、やられてしまったあとになる。九条によってやれると言っておりますが、ぼくがこういう質問をしたから九条を拡張して言っているのであって、これを立法されたときに、これを考えられたときにそういうことは考えいなかったと思うのですが、どうなんですか。そのときからそういうことができると考えておられましたか。
  141. 徳永久次

    徳永政府委員 百貨店が現在においてもある程度の催しものをやっていることは御承知通りでございます。それがある程度の顧客誘引の効果を上げているというふうに理解すべきであろうということは当然でございます。それが本法によって中小商業事業活動影響があるということをどう理解すべきかということでございます。それをやめさせなければならないというふうに社会通念上理解できる程度のことになります場合には、第九条は当然に働くものというふうに私ども考えております。
  142. 田中武夫

    田中(武)委員 私が申し上げているのは、主催者側は一々変るのですよ。東京都がやる場合があれば、今度はどこかの県がやる、あるいはどこかの市がやる、あるいは国のどこか、通産省とかあるいはそのうちの中小企業庁とか、こういうのが変っているのですよ。そしてある一定期間、五日間なり一週間、あるいは十日間というように、何々展示会、何々展覧会、こういうことにしてやるわけなのです。それで同じ行為を反復してやられる場合は、これがいわゆる中小企業に対して圧迫になり、中小企業の育成に影響を与える、こういうことで勧告をする、こういうことになるのでしょう。だからそういうときにはできるけれども、こういうように一々主体が変ってくる場合に、あなたの言われるような九条で果してどういう効果があるのですか。
  143. 徳永久次

    徳永政府委員 お話のようにいろいろな種類の催し事は、主催者は百貨店でないという場合があろうと思います。しかし百貨店が場所を提供してやっておるということも確かでございます。それは通常の場合百貨店側として顧客誘引のねらいということもありましょうし、また百貨店側としての百貨店営業にふさわしいといいますか、ある意味のパブリック・リレーションというような趣旨でやっておるということもあろうかと思うわけでございますが、それが度を過ぎまして、百貨店の顧客誘引としてその面がどぎつく出、またそれを通じて中小企業事業活動影響を及ぼすというふうに考えられます場合には、それに場所を提供しておる百貨店に対しまして、そういう催し事に提供する場所を制限させるとかいうふうなことは、当然に第九条によって勧告できるというふうに考えております。
  144. 田中武夫

    田中(武)委員 もう一つ聞きますが、たとえば東京都が何々展覧会をやる、これが九条の勧告事項に該当するような場合、いつ勧告をするか、そしてそれに対して勧告をしたときに、その効果はどういうところに及ぶのか。
  145. 徳永久次

    徳永政府委員 今お話のようなケースの場合、東京都が催し事をやりますという場合でありますならば、一応常識に解しまして、東京都のやりますような行為というものは、それに百貨店が場所を提供したとしましても、百貨店の営業の顧客誘引というよりは、むしろ東京都が適当な場所を求めたという意味で、百貨店としては百貨店の営業に付随してパブリック・リレーションをやったというふうに解するケースの方が常識的には多いのではないかというふうに私考えるわけでございますけれども、しかしお尋ねの趣旨は、ある種の人がやった場合、それが百貨店の営業活動を通じて小売商に影響を及ぼすという場合に、どういう取締りの仕方をするかという趣旨であろうかと思うわけでありますが、そのことが顕著になりました場合には、会期が期間中でありましても差しとめる。期間が残っておりましても差しとめを勧告することもできましょうし、その事例に徴し、以後類似のことをやらないようにというような勧告もできましょうし、その辺は第九条の勧告は弾力性を持って、実情に即して運用ができるというふうに考えております。
  146. 田中武夫

    田中(武)委員 こういうことにひっかかって時間をとって恐縮ですが、どうも語るに落ちるのところにきたようです。あなたは、もし東京都がそういうことをやるときは顧客の送迎ということでなく、東京都が他の目的でもってやるという場合が多いであろう、こうお答えになりました。そうするならば私が先ほどから言っておる、公共団体が百貨店を利用して催しをするような場合に、その催しもの自体によって人が吸いつけられたり、いろいろな方法によって中小企業が圧迫を受ける、そういうようなことについて考えておるだろうかどうかということを聞いたときに、九条でやれるというが、これは九条では考えていないということを物語っておる。それからある期間にそういうことがあった、そういう事態が起ったとすれば、期間中でも勧告もできるでしょうというが、これはあくまで勧告であります。法律効果は直ちに発生いたしません。そうするなら、あと一カ月なり一週間ある途中で勧告して果してどういう効果が現われるのかお伺いいたします。
  147. 徳永久次

    徳永政府委員 今の御引例のような場合、たとえば一カ月の催しであるといたしますと、その途中におきまして政府側が勧告をいたしたという際に、途中で催し事を切りかえなければならないようなケースも起り得ることはあると思うのであります。ただ同時にそれをすっぽととめるということばかりがねらいというよりも、その程度のことをするなということの効果というものも、この勧告によりましてあるというふうにお考えいただいてよろしいじゃなかろうかと考えるのであります。
  148. 田中武夫

    田中(武)委員 きょうは大臣中心の質問ということで、あなたにならいつでもできるわけなんですが、こういうことにひっかかったのでついでに申し上げますが、それじゃ勧告というものの法律効果を伺いましょう。勧告というものは直ちに効果を発生しますか。相手方が、もうあと一週間くらいだからというようなことで応じなかったときにどういうことになるのか。勧告というものはあくまでも勧告であって、法律効果は直ちに発生しない。そこを九条でやっているのは、先ほど私が指摘いたしました民主党の公約でる、不適当な販売方法を抑制する措置を講ずるということにならない、と私が申し上げたところへ落ちてきたようです。なぜ勧告というようなごまかしをやられるのか。勧告というようなことでは直ちに効果を発生いたしません。法律上の効果をお伺いいたします。
  149. 徳永久次

    徳永政府委員 法律は十分の効果を発揮すればよろしいのでございまして、法律の構成上窮屈にといいますか、がんじがらめにできているからというふうにばかり解すべきではない、かと考えるわけでございます。私ども百貨店に対します勧告につきまして、百貨店業というものはいわば客商売でございますので、いやしくも通産大臣が、度を過ぎた行為であるというふうに認定いたしまして、第九条の規定に基く勧告にいたしました場合に、百貨店側は当然にそれを尊重いたしまして、その通り実行するというふうに私ども期待いたしております。(「実行しないよ」と呼ぶ者あり)万が一にもその勧告通り実行できないということは、私ども百貨店の性格から見まして予想いたしておらないわけでございます。最初からそれを、期待通りのことは期待できない人であるというふうに考えて、法をきつく作り上げておくばかりが能じゃないじゃなかろうかと考える次第でございます。
  150. 田中武夫

    田中(武)委員 ますますおかしいと思います。公正取引委員会が過去数回にわたって警告を出しておることは御承知通りで、警告を出したからといって直ちに実行できましたか。それからこの勧告は主催者に対して勧告をせられるのか、それとも百貨店に対して勧告せられるのか。これはどうも百貨店に勧告するようであります。しかし主催者側がいやだと言うたらどういうことになるか。百貨店が客商売であるならばなおさら、主催者側がいやだというのに強制執行のように展示品を屋外にほうり出すことはできない。そうすれば結局これは勧告をしたら目的を達したということに終るということになる。そうして勧告ということは相手があくまで良心的にやる場合を意味するのであって、そういうことに対して見解が異なったりあるいは耳をおおうて聞かないという態度になったとき何もならない。なるほど法律を作る上にはあなたがおっしゃったように、勧告しても聞かないであろうということで勧告を入れたということでないことはよくわかります。しかしながら今までの事例から見まして、相手はこういうあいまいな規定でおいそれと言うことを聞くようなしろものであるかどうかお考えになったか。公正取引委員会が警告してすら何ら改まっていないという実情じゃないですか。その点についてどうお考えになっておりますか。なお勧告の法律的な効果を僕は聞いているのです。判決とかそういうものではなく、直ちに効力の発生するものではない。そういうことによってこれがほんとう目的が達成せられるかどうかということを聞いているのです。
  151. 徳永久次

    徳永政府委員 勧告に違反しました場合に罰則もないということはこの条文に出ておる通りでございます。しかし勧告は具体的な事例に即して具体的な措置ぶりというものを勧告いたすわけでございまして、抽象的にばく然とした勧告をいたすということはないと思いますが、その辺は守るべき勧告を、尊重はしたが食い違いが出たというような事例というものは起らないものと私は考えております。
  152. 田中武夫

    田中(武)委員 この点につきましては相当私と見解が異なるようであります。しかし時間の都合もありますので、質問を保留いたしまして、次に大臣に希望と申しますか、それを述べて時間の関係上終りたいと思います。  国または公共企業体の設備、建物、こういうものは、国民全体が平等に利用すべきところであります。そこを一百貨店に全部提供する、そういうことによってそれ以上の交通の混乱とかいろんな状態を起しておる。またそのことが中小企業、付近の小売商人に大きな圧迫になっておるということは言わなくても御承知通りであります。そこで九条でできるのか、三条で新築の場合は許可を制限できる、なるほど法律解釈の仕方によってはできます。問題は後の運用であります。運用に当りまして、ここでお答えになったこと、われわれが申し上げていることを十分お考えいただきたいと思います。  なおわれわれがこの百貨店法について前からやかましく申し上げておるのは、現在百貨店のあり方を見ました場合、いわゆる百貨店相互間の競争、大資本と大資本が火花を散らしての競争が、その爆風といいますか、その余波が経済的に弱い中小企業に圧迫となってきておる。またそのことによって中小企業であるところの問屋、メーカーがいろいろな面において、先ほど来言っておりますような、委託販売とかあるいは手伝い店員とか、またいわゆる返品、たたき買い、こういうようなことによってほんとうに圧迫を受けておる。不公正な取引が行われておるということをわれわれは考えまして、強く申し上げておるわけでありますが、問題はこの百貨店法の今後の運用です。この運用に当って、そういうことについて許可なりあるいは勧告をなす、官庁の監督をなされる通産大臣の頭の持ち方一つだと考えますので、ここでお答えになったことを十分考えていただきまして運用していただくよう特に申し上げておきます。と申しましたからといって、直ちに政府案全般について賛成しておるわけではありません。この点についてはまだ申し上げたい点がたくさんございますが、きょうは私勝手に昼からおそく参りまして、皆さんに御迷惑をかけてもいけないと思いますから、この程度で終ります。
  153. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 百貨店法を施行する限りは、むろんこれが十分有効に運用されるように努めなければならぬことは申すまでもありません。ただ問題は非常に複雑でむずかしい問題です。なかなかそう簡単にはいかないと思いますから、審議会その他を通じて十分に事情を明らかにし、消費者にもあるいは一般の小売商にもよろしいように——小売商さえ助ければ消費者はどうなってもいいというわけにはいかないから、それらの点も十分考慮してやっていきたいと思います。
  154. 神田博

    神田委員長 ただいま議題になっております永井勝次郎君外十二名提出にかかる百貨店法案内閣提出にかかる百貨店法案に関する質疑は一応終了いたしたようであります。両案に対する各派の態度決定までに多少の質疑もあろうかと存じますので、これらの質疑があれば来たる十六日に行うこととし、同日中に質疑を打ち切りたいと存じますが、かように取り計らうに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  155. 神田博

    神田委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたします。  本日はこの程度にとどめます。  次会は来たる十六日午後一時より開会することとし、これにて散会いたします。     午後四時四十六分散会