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横田政府委員 それではお手元に御配付いたしました、
昭和三十年四月から十二月までの間におきまする
私的独占禁止法の
運用状況の
概略と申しまする書面に基きまして、簡単に
運用状況の
お話を申し上げたいと思います。
御
承知のように、
昭和三十年に入りましてから、
業界によりましては
輸出の
振興等によりまして
かなり好転をいたしたものもございますが、やはり全体的に見ますと、
緊縮政策による
影響等からいたしまして、
不況の
傾向が相当見られるのでございます。従いまして、このような
状況のもとにおきまして、
カルテル、トラスト、あるいはおもしろくない不公正な
取引方法というようなものがあちらこちらに見られるわけでございまして、それらの問題に対しまして、
公正取引委員会といたしましては、諸般の
事情を
考えながら
運用の万全を期して参ったわけでございます。
まず
公取の
仕事の上で、
届出制をとっておりまするいろいろな問題につきまして若干申し上げますと、この
届出制、たとえば合併、営業の譲り受け等の
届出、あるいは役員の
兼任等に関しまする
届出、あるいは
委員会の
調査担当部門におきまして絶えずいろいろな
調査をいたしておりまするが、その
調査の結果等を通じまして明らかに看取できますることは、
企業の
集中がだんだん進んできておるということと、それからいわゆる
企業の
系列化と申しますか、そういうものがだんだんと顕著になってきておるということでございます。これは御
承知のように、
弱小企業が乱立いたしましたその後に当然起ってくることでございまして、ある
意味において
かなりけっこうな
傾向とも申せますが、しかしこの
集中なりあるいは
系列化が度が進みまして、全体的に見まして、いわゆる活発な
事業活動の拘束を来たすということになりますれば、これはやはり
独占禁止法上放置することのできないものでありまして、現在の
段階におきましてはまだそれほど顕著な弊害というものは現われておりませんけれども、しかしもしその
傾向が進みまして、またその方向がよくない方へ向いて参りますれば、当然われわれといたしましても何らかの手を打たなければならぬということになりますので、この点につきましては、そういう動きをしさいにながめながら今後のわれわれの態度をきめて参りたいというふうに、最近の
事情を見て感じておる次第でございます。
それから
届出制に続きまして、御
承知のように
認可制度が
独禁法の上には若干ございまして、御
承知の
不況カルテル、
合理化カルテルにつきましては、一定の
法律上の
要件のもとに
カルテルの
結成が適法化されておるわけでございますが、結論的に申しますと、
不況カルテルにつきましてはまだ一件もこれを
認可しておりません。これはあるいは
法律上の
要件が多少窮屈になっておるという点もあるかと存じまするが、現在までのところ、非公式にいろいろ
申し出があったものが二、三ございまするが、いまだ正式に
認可したものはございません。もっとも最近におきましては、いわゆる麻の
業界におきまして
かなりの
不況が見られまして、最近にあるいはこの
業界から
不況カルテルの
申請があるのではないかということが予期せられております。この問題につきましても、
運用の上におきまして十分の考慮を払いまして、もしこの
要件に合致いたすものでございますれば認めて参りたいと
考えております。それから
合理化カルテルにつきましては、この方はだんだんに
事件がございまして、この
報告書にもございますように、この
年度内におきまして六件ほども
認可をしたものがございます。
生産品種の
制限に関するものが大
部分でございまして、
混紡糸、純
スフ糸、
ベアリング——この
ベアリングは
合理化カルテルの
制度を作ります際に例として御
説明を申し上げたようなわけでございますが、これは最近に至りまして
結成が
認可になったのでございます。それから
混紡糸、純
スフ糸につきましては、その後にさらに
変更の
認可などもございました。大体
生産品種の
制限に関するものが大
部分でございますが、御
承知の、これと違います
鉄くずの
カルテルにつきましては、昨年春でございますか、これを
認可いたしましたが、その後のいろいろな情勢で、その
カルテルではどうもうまくいかないということでございまして、昨年の暮れにさらにこれを更新と申しますか、
構想を新たにいたしまして
申請がございましたものが、ことしの一月になりまして
認可になり、この
カルテルによって今
鉄くずの問題が
業界において処理せられておるわけでございます。
それから
独禁法の
適用除外法といたしまして、
中小企業安定法あるいは
輸出入取引法等に基きますいろいろな
案件がございまして、これは
主管庁が
通鷹省になっております結果、
公取としては同意あるいは協議という形でこれに関係しておるわけでございますが、との方の
事件も相当件数が出てきております。しかしこの点はこの
報告書に比較的詳細に書いてございますので、
しの点の
説明は省略させていただきたいと存じます。それから
公取におきますいろいろな
調査でございます。これは
公取の
仕事こいたしまして非常に重点を置いておるものでございますが、この中にはいわゆる
総合調査——われわれが
総合調査と名づけておりますものと個別のいろいろな特殊の
企業につきましてその業態を
調査いたします
区別調査と、この二つに分けておりますが、この
総合調査につきましては、最近は
流通機構における
集中と
系列化ということをねらいまして、いろいろな
調査をいたしております。もう一つは先ほども触れました
企業の
集中の
傾向そのものをいろいろ
調査いたしております。方にも毎年この
集中の結果を
表等にいたしましてお出しいたしておりますが、まだ準備が整いませんのでお出しいたしておりませんが、いずれ適当な
機会にこの
集中の最近の
傾向を報告さしていただきたいと
考えております。なお
個別調査につきましては、
証券市場における
支配集中の問題、
国産自動車工業の問題、
ドラムカン工業あるいは
損害保険料の問題あるいは
電線業界の問題等々、十二件ほど
調査いたしまして、すでに
調査を終ったものもございますが、なお続けて
調査中のものが
相当数に上っております。
それから最近の
公正取引委員会の
仕事の
かなり多くの
部分を占めておると思われまするものに、いわゆる不公正な
取引方法の取締りという問題があるわけでございます。これは御
承知のように
独占禁止法に根拠を置きまして、
公正取引委員会が不公正な
取引方法といたしまして
指定するもの、その
指定がやはり
公取の
仕事になっておりますが、その
指定しましたものに基きまして、
業界におけるおもしろくない、そういう
取引方法を取り締って参るという面に
かなりの
仕事のウエイトが最近では置かれておるのでございまするが、その中で二、三申し上げますと、ます第一に
新聞における不公正な
取引方法の問題でございます。これは日常御
承知のことと存じまするが、
新聞業界におきましていろいろないわゆる
販売戦がだんだんいき過ぎて参りまして、
景品、
招待つきの
販売であるとかあるいは
新聞社が
販売店に対しましていわゆる
押し紙をするとかその他おもしろくない
方法が相当とられておりますので、これは
昭和二十八年に
公正取引会員会が
業界等からの
申し出もございまして、いろいろ調べました結果おもしろくないと思われるものにつきまして不公正な
取引方法の
指定をいたそうとしたのでございまするが、この際は、有力な
新聞社からそういう問題は
業界にまかせてくれ、あまり役所の方で手を入れないでくれといって、いわゆる
自粛態勢をとるからという
お話がございましたので、二十八年には警告を出した
程度にとどまったのでございます。
業界におきましては、その後いろいろな
手段を講じて
自粛自戒に努めておったようでございまするが、やはりそこにどうしても
自粛だけでは守り切れないものがございまして、特に最近、昨年の暮れでございまするが、御
承知の
大阪読売新聞は二億円の
抽せん券、
景品をつけまして
抽せんをするというような、
かなりとっぴな
手段まで用いるというようなことが出て参りましたので、やはりこの際不公正な
取引方法の
指定をすることが適当であるという
——これはむしろ
業界の方からそういう要求が出て参りまして、かねがね
委員会の方でも
考えておったことでございますので、昨年の暮れに
公聴会を開きまして
指定をいたした次第でございます。これはもちろん
新聞の
中味そのものに対してわれわれがとやこう言うわけではございませんので、いわゆる不正な不当な売り方という、
販売方法そのものに対しまして若干の公けの規制を加えようという
趣旨でございます。幸いにその後
業界におきましては、ますます
自粛態勢も整備せられまして、まだ若干問題は残っておりまするが、ある
意味において非常に
新聞業界がきれいになっております。しかしこれはやはり今後の問題としまして、
指定も最近のことでございまするので、今後もこの方面に
相当注意を払って参りたいと
考えております。
次に
百貨店の問題でございますが、これは一昨年の暮れに、ただいま申しました
百貨店業における特殊の不公正な
取引方法の
指定をいたしまして、いわゆる返品でございまするとかあるいは卸しの
業者、
納入業者から無理やりに
手伝い店員を出させるとか、あるいは
景品つきの
販売をするというようなことに対しまして、不公正な
取引方法の
指定をいたしました。その結果はどうであったかと申しますると、まずこの
景品つきの方から申しますると、これはほとんど跡を断ちました。ただわずかに当初から問題になっておりましたものが、これは
友の会の問題でございまするが、これも当時行なっておりました
友の会のほとんど半数は廃止あるいは停止されまして、残りましたものもいわゆる
サービスの限度を
公正取引委員会といろいろ打ち合せをいたしまして、今までやっておりました
サービスのほとんど半額というようなところに落ちつきました結果、現在ではこの
友の会の問題は、そう皆様のお耳にも触れておりませんと思います。そういうふうに非常な
是正が講ぜられまして、この
程度ならばまあいいのではないかというふうに私たちも
考えている次第でございます。
それから次に
手伝い店員の
指定でございますが、これは
指定をいたしました当時は、
数字が多少狂っておるかもしれませんが、大体全国の
デパートで実に一万三千人からの人を
納入業者から提供させておったのでございます。それが一時にこれを整理いたしますることは、いろいろな問題がございまして、特に労働問題にも触れて参りますので、この
是正につきましてはいろいろ慎重な
段階を経まして、だんだんやって参りました結果、昨年の暮れにおきましては、約三千人にこれが減ってきております。つまりそれだけ
納入業者の負担が軽くなってきておるわけでございます。ただこの
手伝い店員につきましても、特殊の
技能を必要とするものにつきましては、こういうものを派遣して売り込むことが、これは
納入業者の利益でもございまするので、この特殊の
技能を持ちまする者につきましては
除外をしてございます。いかなる者が特殊な者であるかということにつきまして、現在
業界といろいろ
公正取引委員会と折衝いたしまして、これは
デパートによりまして非常に見解が違っておるものもあるようでございまして、そこら辺をだんだんに歩み寄らせまして、どうしてもそういう特殊の者を派遣してもらう必要のあるものに限定いたして参りたい、そういうふうに
考えております。しかしただいまの
数字だけではどうかと思いまするが、
数字から申しましてもそれだけの
是正が講ぜられたということは、これは何も私どもの力ではなく、全くこれは
業界自身の
自粛と、それからやはりこれは一般世論の力というふうに私は観察しておる次第でございます。
それからもう一つ下請代金の問題がございます。これは
公取がやはり二十八年当時から鋭意取り上げてきておることでございまして、これはいわゆる特殊
指定をしてはおりませんけれども、二十九年の二月ごろでありましたか、いかなるものが支払い遅延になるかということにつきまして、いわゆる認定
基準というものを発表いたしまして、大体この認定
基準に従いまして取締りをしてきておるわけでございまして、二十八
年度、二十九
年度、それから三十
年度と三回にわたりまして相当な範囲の
調査をいたし、しかもその
調査の対象となる親
企業の数をだんだんふやして参りまして、三十
年度には百数十社の親
企業、それからその下の何千かの下請
企業、これは通産省の中小
企業庁とも密接な連絡をとりまして、双方から調べまして、そのうちであまりおもしろくないと思われまする親
企業四十社につきましては、さらにきわめて精密ないろいろな
調査をいたしまして、その結果なおそのうちの半数ほどに、十数社だと思いまするが、あまりよろしくないものが認められましたので、これには支払いの
計画書を提出させまして、現在ではその
計画に基いていろいろ
是正が行われつつある状態でございます。この点につきましては、
公正取引委員会としまして、はなはだ手不足ではございますが、できるだけの力を今後も尽して参りたいと
考えております。なお、あるいはこの
国会に、
公正取引委員会のそういう方面の
仕事がやりよくなりますように、またこういう問題の
是正に役立ちますようなことを
目的といたしまして、下請代金の支払いの遅延の防止に関する若干の法案を提出することに、今準備をいたしております。まだこれはいろいろな方面との折衝が完全に済んではおりませんので、ここで内容をはっきり申し上げる
段階になっておりませんが、そういう
法令の研究も現在いたしておる次第でございます。
それから、これは不公正な
取引方法の問題でございますが、なお御
承知のように
公正取引委員会は
事件を
審査し、それを審判に付して審決するといり、いわば司法的な機能があるわけでございますが、これにつきましては、お手元の資料にございますように、件数ははなはだ少うございます。
事件として正式に取り上げられましたものは四十件
程度でございますが、なるだけ大きな、また
意味のある
事件を取り上げる、あまりこまかなものを一々重箱のすみをほじくるようなことをしないという態度で、
審査審判の
仕事をやっているわけでございますが、その一つ一つを御
説明するのは省略さしていただきまして、ただちょっと特殊の
事件としてお耳に入れておきたいと思いますのは、野田醤油株式会社に対し、
独占禁止法の第三条に基きまして、野田が独占しているということによりまして、最近一年ほど審理をいたしました結果、昨年の暮れに一つの審決をいたしております。これはあまりこまかなことは省略いたしますが、大体御
承知のように野田醤油その他四じるしというものは、しょうゆ
業界の相当な重要な地位を占めておりまして、しかもその四じるしの中で、野田が絶大な地位を占めているわけでございます。この大きいことそのものは何も現在の
独禁法上問題にはならないのでございますが、その力をバックにいたしまして、野田醤油が卸売価格、小売価格を
指定をし、これが自然にほかの四じるしもそれにならわざるを得ないというような状態がございました結果、しょうゆの価格というものは
生産者価格はもちろん、少くとも四じるしにつきましては、卸売価格も小売価格も全く野田のきめる通りの価格で売られているわけでございます。いわば、野田は物価庁であるというようなこともいわれているようなわけでございまして、これは自然にそういうことになるのならば、もちろん
公正取引委員会として取り上げることはないのでございますが、これをそういう下級の
段階の価格を
指定いたしますと同時に、これは野田の方では単なる希望価格と申しておりますが、実際は希望でも何でもないのでありまして、その価格が守られているかどうかを非常にいろいろな機構を通じまして
調査をして、そしてそれを破る者があれば、荷止めをしかねまじき気勢を示すということで、全くこれを破ることは、ほとんど事実上困難であるというような事態が出てきておるわけでございます。これはもちろんしょうゆだけでなく、そういう状態はほかの
業界にも、いろいろな点が違っておりますが、多少あるわけでございますので、まず私どもはこの野田の
事件を取り上げまして審決をいたす、現在これは東京高等裁判所に訴訟になっておりますので、こういう問題が独占を構成するかどうかということについて裁判所の最終的な判断を仰ぎたいというふうに私どもは
考えております。問題は、おしょうゆで、はなはだ小さいではないかとおっしゃるかもしれませんが、しかし私どもの
考えておりますのは、実はおしょうゆだけではないのでありまして、同じようなことがいろいろな
業界にあり得るわけでございまして、それを一つ一つ今後私どもの監視の対象とし、またこれに取り組んで参りたいというふうに
考えておりますので、
審査事件の中で特にこの問題を取り上げて申し上げた次第でございます。
以上、はなはだ簡単でございましたが、昨
年度におきます
公正取引委員会の事務の概況を御報告申し上げた次第でございます。