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1956-06-03 第24回国会 衆議院 社会労働委員会 第53号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年六月三日(日曜日)     午前十時四十一分開議  出席委員    委員長 佐々木秀世君    理事 大坪 保雄君 理事 野澤 清人君    理事 藤本 捨助君 理事 滝井 義高君       植村 武一君    大橋 武夫君       加藤鐐五郎君    亀山 孝一君       草野一郎平君    小島 徹三君       高橋  等君    田中 正巳君       中村三之丞君    中山 マサ君       八田 貞義君    亘  四郎君       赤松  勇君    井堀 繁雄君       岡本 隆一君    五島 虎雄君       多賀谷真稔君    長谷川 保君       八木 一男君  出席政府委員         法制局次長   高辻 正巳君         検     事         (法制局第二部         長)      野木 新一君         法務事務官         (入国管理局         長)      内田 藤雄君         大蔵事務官         (主計局次長) 宮川新一郎君         厚生政務次官  山下 春江君         厚 生 技 官         (公衆衛生局環         境衛生部長)  楠本 正康君         厚 生 技 官         (医務局長)  曾田 長宗君         厚生事務官         (医務局次長) 河野 鎭雄君         厚生事務官         (薬務局長)  森本  潔君         厚生事務官         (社会局長)  安田  巌君         厚生事務官         (引揚援護局         長)      田邊 繁雄君         労働事務官         (大臣官房総務         課長)     村上 茂利君         労働基準監督官         (労働基準局         長)      富樫 總一君         労働事務官         (職業安定局         長)      江下  孝君  委員外出席者         検     事         (民事局参事         官)      平賀 健太君         大蔵事務官         (主計官)   小熊 孝次君         大蔵事務官         (主計官)   中尾 博之君         厚生事務官         (大臣官房企画         室長)     牛丸 義留君         厚生事務官         (保険局庶務課         長)      山本 正淑君         厚 生 技 官         (保険局医療課         長)      館林 宣夫君         厚 生 技 官         (人口問題研究         所総務部長)  舘   稔君         労働事務官         (大臣官房労働         統計調査部長) 堀  秀夫君         専  門  員 川井 章知君     ————————————— 六月三日  委員西村直己君、阿部五郎君及び吉川兼光君辞  任につき、その補欠として濱野清吾君、五島虎  雄君及び多賀谷真稔君が議長の指名委員に選  任された。 同日  委員五島虎雄君及び多賀谷真稔辞任につき、  その補欠として阿部五郎君及び吉川兼光君が議  長の指名委員に選任された。 同日  理事岡良一君五月三十一日委員辞任につき、そ  の補欠として同君が理事に当選した。 六月二日  母子年金法案長谷川保君外十六名提出、衆法  第七〇号)慰労年金法案竹中勝男君外五名提  出、参法第一三号) (予) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事の互選  労使関係労働基準及び失業対策に関する件  社会保障制度医療制度及び公衆衛生に関する  件     —————————————
  2. 野澤清人

    野澤委員長代理 これより会議を開きます。  都合により委員長が不在でございますので、私が委員長の職を勤めます。  この際、理事補欠選任の件についてお諮りいたします。理事岡良一君が五月三十一日委員辞任せられたに伴い理事に欠員を生じておりますので、その補欠選任を行わねばなりませんが、委員長より指名するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 野澤清人

    野澤委員長代理 御異議なしと認め、理事岡良一君を指名いたします。
  4. 野澤清人

    野澤委員長代理 次に、労使関係労働基準及び失業対策に関する件について調査を進めます。発言の通告がありますので、これを許します。井堀繁雄君。
  5. 井堀繁雄

    井堀委員 本日は日曜日でお勤めの皆さんには特別の御出勤をいただいてまことに恐縮であります。これも国会運営が多数の横車のためかようなところまで御迷惑を相かけるようになりましたことに遺憾に思う次第であります。  きょうは、第二十四国会の幕を引く日でありまして、私はこの国会を通じまして、労働行政ことに雇用の問題・労働保護の問題に対する現在の政府任務遂行の上における欠点やあるいは不行き届き等に対して指摘をいたしまして、さらに労働政策全体に対する無為無策を非難いたしまして、その積極的な対策を要望いたしました。その中で、当然政府法律の命ずるところによりまして国民の権利を保護いたさなければならない問題で、それが国民生活の中でも最も重要であります労働を提供して生活を維持しておりますすなわち月給賃金債権が、全くじゅうりんされて顧みられないというおそるべき事実を指摘いたしました。このことは言うまでもなく、保守政策を実施する自民党にいたしましても、あるいは社会主義政策を主張いたします社会党にしても、立場の違いやあるいは政策の相違によって左右さるべき問題ではありません。事柄はきわめて事理明白でありまして、あたかも雪が白くて、炭が黒いといったようなきわめて明白な事柄であります。そういう問題が今日完全に処理できないようなことでありましては、それは無政府状態政治に対する国民の信頼を全く失うようなおそるべき結果を招来する事柄であります。従いましてこういう問題は即座に解決しなければならぬ事柄であります。それは未払い賃金債権に対する現状であります。私は十二月の予算委員会におきまして、その責任者注意を喚起し約束をいたさせたのであります。当時の会議録がございますからこれを引用いたしたいと思いますが、当然法務大臣責任労働大臣責任がこの場合追及されるのであります。事実については当時私は労働省から資料の提供を受けて、このことをこの委員会で明らかにしておりますが、この機会に現状についてもう一度申し上げておいた方がよかろうと思います。  これは労働省労働基準局調査によるものでありますが、昭和三十年度の一カ年間のものを月別に平均したものをここに作らせてみたのであります。それによりますと、毎月平均して件数が五千三百二件というおそるべき件数であります。また金額の大きいことに驚くのであります。それが十六億を突破する大きな金額になって、さらに被害を受けております労働者、サラリーマンの数は十三万三千百五十八名という大きな人数になっておる。このことは説明するまでもありません。今日労働を提供してそのことによって生活を営むということ、これは当事者にとりまして唯一生活の道をこれに依存しておるということは申すまでもありませんが、今日近代文化国家におきましては、一人の国民も飢えることのないようにというのが政治の当然の責任であります。これは労働を提供してその代償として受け取るべき賃金でありまして、すでにそれは労働を相手に提供した後に発生してくるものであって、いわゆる法律にいう債権です。これは他の債権と異なりまして、その人の生活をささえるということだけではなくて、これは社会秩序を維持する基本的な条件である。言うまでもなく、こういう事態が公然と許されるということになりますと、それは動労意欲に対する重大な影響をもたらすのであります。働いても賃金をもらえない。その労働者は、言うまでもなく資本主義経済の現下にありましては、営利を対象として労働者を雇用するのであります。人を使うのであります。利潤を上げるために労働者を使っておって、利潤はさっさと上げて、支払うべき賃金を払わないというようなことは今日の社会におきましてはこれ以上の罪悪はないのであります。それはひとり雇い主労働者という関係ではない、このことは資本主義社会におけるところの秩序根底から破壊する大きな事柄であります。こういう問題が解決できないような政治はだめなんです。この問題の解決を私は法務大臣労働大臣責任において迫ったのでありますが、そのときの予算委員会における法務大臣答弁、さらに民事局長のこれに対する補足答弁が記録に残っておりますが、全部をここに紹介する必要はありますまい。牧野法務大臣の私に対する答弁の中で、「お説のようにどうしてもこれは立法措置。そしてこんな事例法務当局もあまり知らない。だから新しい事例であるこういうものは、おっしやる通り非常に重大で、ほうっておくわけにはいかない。だからあらためてもう一ぺんよく法務委員会その他においても、資料をいただいて、そして善処措置としてどういう手をとったらいいか、行政的にはどの点まで働けるかということを考えまして、場合によっては立法措置ですね。よく考えます。」こういうふうに答弁をしておるのであります。この答弁は今読み上げました通りに、必ずしも立法措置をとるとは言っておりませんけれども、講ずる必要を認めたことは間違いない。これはその前に、前段において私と法務大臣の間に取りかわされた論議を全部読まなければならぬわけでありますが、申し上げるまでもなく日本賃金債権保護する法律としては、労働基準法の二十四条に「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。」と規定して、二項には「賃金は、毎月一回以上、一定期日を定めて支払わなければならない。」と命じておるのであります。しかも罰則規定もあるのです。このように基準法罰則規定までも加えて労働者賃金債権保護しようとすることは、先ほど来申し上げておる通りであります。この法律が全く無視されたように、一年間に七千件を突破するような未払い状態が今日依然として続いておる。今後も続くであろうことが見通される。おそるべきことではございませんか。これを即刻解決する必要を牧野法務大臣も、今申し上げたように認めておられる。そこでこれをどういうふうにしたらいいかということについては、問題二つあると思うのであります。  一つは、賃金未払い現状を解消するような道を開くということがあるわけです。これは政治全般に関連してきます。これはわれわれも一半の責任を負わなければならぬと思うのでありますが、特に政府は重大な責任をとらなければいけません。働かして賃金も払わぬで営利社団が許されるようだと、切り捨てごめんです。封建時代にもこんなことは許されません。徳川幕府のむごたらしい労働政策がしかれた時代においても、ゴマの油と百姓はしぼればしぼるほど出るという建前で、かなり極端にしぼったものです。しかしその中には、あまりわがまませぬよう、死なぬようということで、生活保護には最大の配慮をしたものです。働かしておいて賃金を払わないなんてことは、今日の社会の複雑な時代におきましては、殺すも同じことなんです。封建時代よりももっとむごたらしい状態であるというのはこのことなんです。であるからこそ、この問題の解決をはかるためには、他の方法としては、その事実をきわめてこなければならぬ。これは労働省基準監督局長なんかがぼんやりしてはいけません。こういう状態はどのくらいあるか。ほかのことはほったらかしても、現地にかけつけて解決をするような熱意がなければならない。私は幾つかの事実問題について相談を受けて、出先の基準監督署にいろいろ注意をし、督励をいたしておりますけれども、第一に数が多過ぎるということと、監督官の数の面としては、とうていこの問題を解決するには人員が不足だということも、私は認めなければならぬ。しかし、ただ監督官をふやすことによって解決するということは適当じゃないと思う。ここに基準法の大きな欠点があるのです。私がこの問題についてすぐに解決することができると思うから、政府に警告を発して、その措置を要望したのに対するこれは答弁だ。でありますから、それはまた幾つかの問題を処理しなければならぬ法律でありますが、きょう法務省の方に答弁をいただかなければならぬのは、ここで言っておる立法措置を講ずるというのは、それは賃金債権と他の債権との関係において起る問題を処理することはできるし、またやらなければならぬ。これは確かに私は今日の法の盲点だと思う。これを補修するということを一つには答えて、いま一つには、その保護が不十分であるということは行政力能力と誠意の問題であると思う。このことは労働行政の中に、もう少しよい意味での力を持たせる必要があると思う。これは必ずしも立法措置に限らない。すなわち行政力の限界をいっておるわけです。この二つに答えておるわけです。それでこれはもう六カ月前のこと、であります。六カ月後の今日、この約束に対する行政的な面における成果をどれだけあげておるかを、きょうは基準局長から明細に一つ答弁してもらいたい。  それから法務省責任者——まあ法務大臣は、おととい廊下で、お病気の由で、ぜひ出て答弁したいのであるが出られぬから、民事局長を差し向けるということであった。きよう伺いますと民事局長病気だ。病気はまたやむを得ません。しかし、二人がいないときには法務行政が停滞するというわけのものでもありますまい。当然その職務を代行する人がきようお見えになると思うのですが、まだ来ておりませんから、こういうすぐお答えのできる事柄から順次片づけていきたい。法務省には、来たらまたすぐそれをお尋ねしますが、その前に、基準法第二十四条に、賃金は、通貨で、直接労働者金額支払い、毎月一回以上、一定期日を定めて支払わなければならぬと、こう規定しておる。一カ月どころじゃありゃしない。この三十年の不払い事件の内容を見ていきますと、前月のものがずるずる繰り越されておって、その繰り越し件数だけを見てみましても、毎月七千五百三十一件、解決しているのはわずかに二千二百二十人件といったような、こんなべらぼうなことが許されるはずのものじゃありません。こういう点について一体——まあこの前のことは別として——私は直接労働大臣法務大臣に対しまして、この事実を明らかにして、また回答しておるように、行政的に処分をするもの、あるいは処置をとるべきもの、善処すべき事柄について約束しておる。もちろん総理大臣もはべっております。鳩山内閣としてはこの問題に対する義務を当然国民約束している。その以後のことだけでもけっこうであります。その後どのよろな変化をしておるか、まずその点……。
  6. 富樫總一

    富樫(總)政府委員 るるお話がございましたように、まことに労働者にとりまして賃金唯一生活の資でございますから、労働法分野におきましては、これを刑罰をもって支払うべきことを要請しておるのも、仰せのような趣意に基くわけでございます。しかるところここ数年来、相当の賃金の遅欠配があります。われわれといたしまして、はなはだ遺憾に考えておるのであります。これに対する扱いといたしましては、原則的に払えるのに払わずにいいころかげんにするというようなものは、もちろん厳罰ということで送検しております。あるいはまた世間的に一般的に、払わぬでも何とかいけるのだといういいころかげんな気分仕事を始めて労働者を雇う。その結果遅欠配が生ずるという例なども、小さな土木請負などにおきましてはずいぶんあるのでございます。そういうふうに賃金払いは何とかなる、払いのときには何とか言を左右すればいけるというような風潮などがかりに一般化すれば重大なことでございまするので、そういうものも、結果においては支払い能力がないにいたしましても、そういう気分仕事をおっ始めるというようなことが明らかであるものもどしどし送検しておるのでございます。問題は、一番われわれとして苦心払いまするのは、現実に一生懸命にやりましても、どうしても払えない。これがわれわれといたしまして非常に苦心をするところであります。最後会社がつぶれてしまったという場合には、工場を売るとかあるいは土地を売り払う。そういう場合に、すばやく賃金債権だけ確保するということに努力するの、ありますが、労働者といえども会社をつぶしてまで賃金をとるということは最悪の場合でございまするので、事業継続可能性を持ちつつ、細々とながら持ちつつもその間に不払い賃金を何とか払わせようというところにわれわれ基準監督機関苦心があるわけでございます。それに対しましては、一つ事件につきまして一人の監督官、あるいは本局の監督課長がもうかかり切りで一月、二月かかってあちこち奔走するわけであります。あるいは親工場代金の取り立て、あるいは金融機関に対する金融の依頼、中に二、三の例を申し上げますれば、この間も京都にあった事件でございますが、会社がつぶれた。会社不動産を売り払ったその代金は、全部その銀行の抵当に入っておる。銀行はその代金を全部とっても損をする。けれども一方においては四、五十万円の賃金不払いがある。そこで女の監督官がお百度を踏みまして、銀行重役に泣きつきまして、そうして最後銀行重役会で、その銀行が損してでも、かわいそうな労働者にその四十万円を回してあげようというような決議をする。あるいは中小工場が不振で成り立たない。いろいろ調べてみたらその事業主素封家の若だんなで能力がない。そこでそのおじさんで有力な人を見つけてきて、そして家の傷にもなるではないかということで事業の再建を依頼した。それならばやりましょうということで建直し計画をして、遂に未払い賃金解決するというように、いろいろの努力をいたしておるわけであります。昨年におきましては、平均いたしますると、月末現在十六億の不払いがあったわけでございまするが、しかしこの間におきましても、先生に差し上げた資料にございまするように、月間二千件を余る件数、そうして六億を突破する遅払い解決しておるという私ども努力の一端を一つ御了察いただきたいと思うのでございます。幸いにいたしまして、今年に入りまして経済情勢の好転と相待っておると存じまするが、昨年の十二月末におきましては、労働金庫に対する融資等努力もございまして、一挙に不払い金額が十一億台に下ったのでございます。毎年暮れに特別の解決努力をいたしまするので、十二月にはぐっと下るのでありますが、例年は正月からまたじり高になってくるのが例年傾向でございまするが、今年におきましては、十二月に下って、さらに二月、三月に減少いたしまして、ついに最近の三月におきましては十億台に下っておるわけであります。この傾向は私どもまことにけっこうな傾向と思って喜んでおるわけでございます。しかしながら金額の多寡にかかわりませず、労働賃金不払いということは、そのこと自体深刻な問題である。しかもそれの発生する場面が中小企業であるというようなことで、決してわれわれといたしましては事態を楽観をしておりません。先般の全国の基準局長会議監督課長会議給与課長会議におきまして、一段とこの遅欠配解決基準行政の最重点事項として取り上げて努力するようにというふうに指示いたしておるのでございます。法的に申しますれば、仰せのように労働法分野におきましては、刑罰をもって支払いを要請しておりますのに、民事事件といたしましては、この優先支払いが御承知のようにきわめて力のない先取特権という程度の地位しか占めておらぬということは、われわれといたしまして何か隔靴掻痒の感をいたすわけでございます。前に先生の御質問によりまして、法務省がこれを検討するということでございます。われわれとしてもこの法務省の検討の結果に大いに期待をかけておるような次第でございます。
  7. 井堀繁雄

    井堀委員 基準局長の長たらしい御答弁がありましたが、その割合に中身はちっとも変っておりはせぬじゃないですか。とにかく私が警告いたしましたのは昨年の十二月です。先ほど私はここで三十年全体のものを紹介したわけです。その以後二月までの資料しか届けられておりませんが、その十二月、一月、二月の実績を見ましても、依然として五千七百九十七件から五千百十七件、五千二百三十八件というように未払い事件が繰り越されておる。しかも二月末日の件数現状は五千三百十一件も残っておる。ちっとも従来と変ってはおりはせぬ。努力したというが今まで並みの努力であって、まあそれは基準局長にここで問うのは当を得ぬかしれませんが、しかし今日は大臣にかわって答弁しておるのです。大体労働大臣が今日出て来ないということ自体がけしからぬことなんですよ。この節の政府は、まるっきりどうも崩壊前夜の姿である。政治を担当する能力をみずから放棄するようなものだ。こういう重大な問題について局長にまかせておこうというのですから、推して知るべきですが、そういう意味で、私はあなたに基準局長として、同時にまた労働省大臣にかわってこの答弁をしてもらうつもりで伺っております。できないことはできないと言ったらいい。私が今聞いておるのは、昨年の十二月にこの事実を明らかにして、その後一生懸命に解決しますということを約束しておる。法務大臣は、今言うように、立法措置を講じなければならないかもしれないといっておる。労働大臣は、これは長くなりますから紹介しませんけれども法務大臣と同様の趣旨の答弁をしておる。ところが、変っておらないのです。二月までしか来ておりませんけれども、三月も、おそらく四月も、私は大体大同小異だと見ておる。これを解決することができなければ、どうすればよいかということを言わなければならぬ。できもしないことを、できるようなことを言ってごまかすことは、罪を重ねることになる。先ほども私が言っているように、これは労働行政の中におきましてはきわめて重大な行政的任務です。たまたま基準局長答弁の中で、非常に重大な事柄でありますから、私はこの点ちょっと言及しておきたい。さきにも述べましたように、この問題を解決するためには、やはり二つの大きな措置が必要だ。一つはやはり立法的措置を行うこと。一つ行政力をフルに活用するということ。それから、他は先ほども申し上げたように、これは全体の政策と関連を持つようになりますから、政府の当然の責任で、この問題については、大臣答弁をしなければならぬことだと思うのです。しかしあなたに大臣が全部を委任されて、ぜひ答弁せよということだろうと思う。そこで、あなたはその点ちょっと言及されたようです。たとえば事実問題で、監督地位にあります監督官が、事件解決の際に——私は涙ぐましいお話だと思う。私どももそのことを経験しておるのでありますが、一つにはやはり封建的な日本時代思想というものもあると思うのですが、長年自分の勤めた職場を愛するということは、私は非常に大事なことだと思う。この美しい人情もしくは思想根底をぶちこわすことになる。長い間働いてきた職場を守るために、食べるものがないのだ、質屋通いをしておるのだ——労働金庫の今日の役割というものは、未払い賃金の立てかえじゃないですか。労働者の相互扶助的な、ありもしない金を何とかやり繰りして、零細な金を集めて、その金でそういう事態を救い合うということをして、今日日本労働者職場を守っている。その美しい人情をいいことにして、未払い賃金をそのままほうっておくなんということは、とんでもない話だ。もっと意識が高まってくれば、こういうことをやらなくなる。やらたくなったら、資本主義の秩序はそこから崩壊するんじゃないか。これは保守党の重大な責任なんです。保守党の上に乗っかっている政府は、こういうことをやらぬようなら、やめたらいい。このことだけで、政治をあずかる能力をみずから否定するものである。抽象論ではない。こういうことは、隠そうとしても隠すことができない。昨年の一年間と、私が警告してからの半年というものは、何らの進歩を示していない。それをただ単に労働者職場を守るという、この美しい伝統の精神の中にいつまでもおんぶされているというようなことは、無責任きわまる話だ。私はこれは即刻解決すべきものだと思う。ほんとうのことをいえば、私は基準局長一つ一つの事実を出して、これはどうして解決しないのか、できるじゃないかという証拠を突きつけてやりたいと思うこともある。一つには、労働行政の怠慢なんです。一つには、政府はこういうものに対する指導力を要するに失っておる。政策の遂行というものは、何も予算の上に並べるだけではない、スローガンを掲げるだけではない。法務大臣がいっている行政的働き云々ということ、ここなんです。私は、もっとこういう問題に対して政府が関心を持ってくるなら、もっと見るべき成績が上ってくると思う。うわのそらで聞いておるに違いないのです。この政府は、人民の権利を守るとかあるいは民主主義をしこうなんておかしなことです、こんな封建的な、反動的な、反労働者的なことでは、どこに国民のことを考えておるか。私は決して労働者の階級的利益を守ろうとして主張しておるのではない、これは資本主義の中に発生してくるあらゆる犯罪の中においては、最も憎むべきものです。今日の刑法を見てごらんなさい、詐欺罪にしても、これをもっと本質的に掘り下げてくれば、詐欺罪というものは最も憎むべき行為です。何時間も働かしておいて賃金を払わないのです、それを払ってもらわなければ食えぬから、質屋通いをしたり労働金庫から金を借りてきてやっておる。基準監督官法律の前に眠っておるではありませんか。しかもここに出てきておる労働省の統計資料というものは、基準監督署の窓口に出たものの一部です、まだ裏にはどれだけあるかわからぬ、未払い賃金に泣き寝入りしておる者がさらにある。基準監督官の力が足りなければ、補強する政策を出してきたらよい、人をふやすのも道でしょうし、もっと効率的に活用する処置を講ずべきです、そういう案を出してくべきです。私は、予算委員会で、労働行政の中で欠くるものがあるのじゃないか、未払い賃金の解消のために労働省設置法の中にあげられておる最小限度の任務を遂行するに十分じゃないじゃないかという事実をついておる。相手が払ってくれぬのだから仕方がありませんということなら、これは要らないのです。今日五千件も残っておるではありませんか。その金額で十一億三千七百万円もまだ未払いになっておるではありませんか。労働者の数で十三万の者がまた被害を受けておる、大へんなことじゃないか。これをどう解決するかということについて何らの答弁もなされてないが、まず基準局長としては、これを解決するためにはどうしたらよいかということです。できなければその理由をこの際明らかにしてもらえば、私どもはまたそのために——もし役所の能力が不足なら、能力を補強するための具体的要請を議会にすべきです。これで十分だというなら、この問題を解決するための道を明らかにすべきです。ところがそうでなくして、六カ月もかかってこれができ上ってなかったら、きょうすぐからでもこうすればできる、ああすればできるということをわれわれに答弁しなければならぬ、この点を正直に答弁なさい。
  8. 富樫總一

    富樫(總)政府委員 まことに賃金の遅欠配という事案は、関係者にとりまして、またわれわれの行政にとりましても深刻な問題でございます。数字から申しますと、件数におきまして今日なお五千件台の数字を示しておる。しかし一方におきましては、これは三月の暫定統計でございますが、金額において昨年平均十六億円であったものが十億台に減ったということは、それ自体は私ども喜ばしき傾向と思うのでありますが、一方におきましては、件数がそれほど減らないのに金額が減っておるということは、一件当りの件数が零細化してきておる、つまり賃金の遅欠配中小企業、零細企業の場において、総体的により多く発生する傾向にあるということを、私ども深刻に憂慮しておるわけでございます。これにつきまして、役人の手不足がないかというお話でございますが、むろん基準行政賃金の遅欠配に限りませず、適用事業場九十万を持っておりまして、今日のわずか三千人足らずの監督官で十分だなどとは毛頭言えないわけでございます。しかしながら一方におきまして、賃金の遅欠配監督不足のために起るというよりも、一般的に見ますならば、悪質なものはどしどし送検しておるのでありますが、これの解決が停滞するという一般的傾向というものは、監督官がどうとか送検するとかいうことよりも、この経済の背景、基盤が私どもとしては基本的な悩みの種であるわけであります。最近大企業に対しまする中小企業賃金格差、あるいは最低賃金ということが問題になりますのも、同一の問題だと考えておるわけであります。われわれの方の監督行政におきまして一段と努力いたしますとともに、この労働行政分野から見ました中小企業、零細企業の経済的背景といったものもあわせまして、広大なる視野をもってこの問題を検討すべく、労働省に新たに給与審議室を設け、あるいは労働問題懇談会において御研究を願う、こういうような努力方向をもって苦心しておる次第でございます。
  9. 井堀繁雄

    井堀委員 それは私の質問に対する適当な答弁じゃない、あなたは見当違いをしておられる。もっともこれは労働大臣分野に触れる問題で、産業経済政策の総合的な欠陥から起ってきておるものであることもいなめない。もちろんこれは総合的な政府政策全体の面で追及しなければならぬが、しかしあなたは第一義的には、その原因がどこにあろうと、この未払い賃金の問題を法律に照らして解消しなければならぬ。それなら、子供が飢えに泣いておるからといって窃盗が許されるか、自分の生命に関するからということで盗みが許されているのか。労働行政の一番大事なものを扱っておるのに、そんな大臣が世間を瞞着するような答弁を、あなたはまねをしてはいけませんよ。さらに、あなたは数字の上で減ったと言っておりますが、なるほど件数は減っていないが金額においてはやや減じておりますけれども、これは例年傾向なんです。大口の未払い解決しただけなんです。これはもちろんあなた方の努力もありますけれども、その努力によって表われた数字じゃないのです。今までやっていたことについて言われたから、少し注意してやっておるということぐらいのものなんです。それでは私の質問に対する答弁にならない。もちろん私は、第一線で一生懸命働いておる人々、あるいはあなた方監督地位にある人の、この問題解決のために昼夜をわかたない努力に対して、もっと一生懸命やってもらいたいという要望は別として、敬意を表しておる。しかしそれだけで解決できないのじゃないかということを聞いておる。これは依然として残っていきますよ、これは言っておきます。また六カ月日にここで聞きますよ、臨時国会が開かれなくても、通常国会が開かれますから、そのとき聞きます。そのときあなたはごまかせませんよ、数字ですから。そのときこれが半分に減るとか、解消したとか答えなければならないでしょう。これはりっぱな犯罪ですよ。売掛代金債権に対して申しわけするのと違うのですよ。このことを私は言っておる。半年後にこれを解消する見通しをあなたは言明できますか。できないとするならどうしたらいいかということを、あなた自身が国会に対して要請するなり、あるいは要請する前に私が聞いておるのですし、いい機会を与えておるのですから、どんどん主張なさい。どっちか言わなければならぬ。
  10. 富樫總一

    富樫(總)政府委員 やや繰り返すようなことになりがちでございますが、率直に申しまして、現在毎月千八百件近い解決にかかわりませず、新たに生じまする遅払い事案というものは、全部今後六カ月とか何カ月という期間を限って解決できるということを、申し上げる自信はございません。仰せのように、妻子飢えに泣く云々というような事案の場合、そうしてそこが幾らかでも払えるという事案がございますれば、−法の命ずるところによりまして、われわれといたしましては、送検いたしております。また今後もするつもりでありますが、先ほど井堀先生もおっしゃいましたように、会社をつぶしてしまうということでなく、労使とも話し合って細々とつなぎながら、そして今まで起った遅払いをどうして解決するかということは、監督官も仲に入り、そして分割払いあるいは金融事業の立て直し、あるいは発注会社あるいは発注県庁等の支払いを促進するということで、ともかくこの最悪の事態に至らぬように努力するということより、われわれとしてはいたし方がないのであります。法律的に申しましても、何と申しますか、期待可能性の理論とか申します、最大の努力をしても、払えないというものを送検いたしましても、これは労働者のためにもならない。その間をぬいましてわれわれとしては最善の努力を払う、こういうことをするより、実際問題としていたし方がないわけであります。
  11. 井堀繁雄

    井堀委員 私はあなたの地位を責めておるのではないのです。こういう問題の解決のためには、もっと具体的な要求が国会にも、あるいは上司を通じて、予算作成その他の政策の中に現われてくるように努力すべきではないかということをほのかに考えておったわけです。それは今あなたが言われるように、一つは産業経済の総合政策の中で解決していかなければならぬことはいうまでもない。取締りやあるいは事件を検挙して処罰することによってこういう問題は解決できることではないことを私は承知している。しかし当面の問題としては厳重にこれはやっていかなければならぬ。ぴしぴしやるのです。起訴したらいいのです、ほんとうのことを言うと。大体甘いのです。これも法律です。だからさっき私は窃盗の例を上げたじゃないですか。涙なくして見送れぬような犯罪がたくさんありますよ。鬼のような検事だと思いますよ。人情を知らぬ判事だと思うようなことがありますよ。事実を聞けば、とてもそういう人を獄屋につなぐということは忍びない事柄を、社会秩序を維持するためにやっているじゃないか。そういう者を許したら秩序は保持できぬからやっているじゃないか。しかしこの問題は先ほどから私が言っているように、食えなくなったから、ひもじいから、背に腹はかえられぬという単純な犯罪と違って、最も悪質な犯罪なんです。ケースはいろいろあるけれども、ただで最初から使おうと思って雇用したのではないということは、あなたの知っての通りなんです。前もってお前は何日働けば幾らの賃金を支払う、月給でどのくらい支払う、何日には現金で支払うという約束をしている。それが払えぬから仕方がないということになったら、だれがまじめに働くか。働かなくなったらどうするのです。特に日本現状から言うたら、旺盛な勤労意欲と高い能率と技術に待つ以外に日本経済の再建はありはしない。日本民族の仕合せを願うためには、日本現状から判断したら、一生懸命に働いてもらう以外にありません。働く能力のある人間はみな働いて日本の再建のために立たなければならぬときではないか。あなた方の月給は待たずにきちっと払われている。その税金をこの中から取っているんですよ。遅配になったからといって、払うときになると、その中から源泉徴収できちんと取っている。そうして、労働者の相互扶助的な中において、安いながらも公務員は時期がくればきちっともらえるようになっている。片方は一カ月も二カ月も、どうかすると踏みにじってしまう。遅配だけじゃない、欠配である。この中でもらえぬ者がたくさんある。そんな状態をほったらかしておいて、それは産業政策がよくないから、日本の財政力が足らぬから、経済力が弱いからということでは、政府は要らぬ。これじゃ人民一人々々の力ずくでやるより仕方がない。何事よりもこの問題を早く解決する義務がある。その一線に立っている課長としては部下を大いに督励して、能率的に効果的に仕事をおやりになっている点については敬意を表する。しかし下の者に対して命令を発する、督励するとともに、何べんやってみても限界がある。その限界がどこに出ているかということがあるはずです。私は必ずしも監督官をふやすことばかりが唯一の方法だとは考えていない。あなたも言うように、違反を検挙してはおらぬのですよ。実は労働者の方から訴えがあったときに、忙しい中だということで出てきているのがこの件数じゃないか。私どもに訴えてきているのは、この制度はこの節は監督署に行ったって相手にしてくれぬと言っている。よく聞いて調べてみると、相手にしていないのじゃない。あまり問題が多過ぎて相手にしていられないのです。何たることです。そういうことをあなた方は国会一つも訴えてこない。監督官が足らぬでどうにもならぬ。表に出たものはこのくらいだ。出ないやつがあとにどっさりあるということを、なぜ国会に報告しないか。この問題を解決するためには起訴したらいい。私はこの間−事実をあげてもいいのですけれども、裁判所もけしからぬ、検事なんかもけしからぬ。せっかく監督署がこれはあまり悪質だ、とても耐えられぬというやつを摘発したやつを不起訴にしてしまう。これを一つ、きょうは時間がありませんから何ですけれども、私は資料を出させる。子供が六人も七人もいておやじがなくなって、二年も三年も食うに困って、細君がせっぱ詰まって店のものを遂に盗んだ、というようなものが決して微罪処分されてはおらぬのだよ。びしびしやっているんだよ。それを私は悪いとは言わない。片っ方は長い間一生懸命働いてもらえないじゃないか。それから発生した犯罪でも、そっちの犯罪だけは縛ってきているんです。その原因を作った雇い主は処罰されない。書類を添えて検挙せいといって出したやつを不起訴にしているじゃないか。裁判所はそれを不起訴処分にしているじゃないか。なんじゃ、これは。法は人民の前に平等だなんて。私はこういう不平等が起ってくるのはあなた方の声が足らぬからだと思う。犯罪というやつは偶然に起るものじゃありませんよ。賃金欠配や遅払いの中から起っている社会犯罪というものがかなりあるんだよ。しかしそれを現象的にだけ処罰している。原因を断とうとしておらぬじゃないか。もっともさかのぼってくれば政治家の責任にもなるけれども。私はそう遠いことを言うているのじゃない。私はもっと具体的に言いたい。この内訳を、賃金未払いになっている内容を洗いざらいしたらもっとはっきりするだろう。しかしこういろ問題を解決するには、まず第一に、全部一ぺんにやれないでも仕方がないからだんだん少くしていく。半年かかったらこれだけ減りました、あと半年かかったらこれだけになります、こういうことが見通せるなら私はこうやかましく言わないが、見通せない。私は今初めて言っているのじゃない。第十九国会以来このことを言い続けてきている。あまり耐えかねたから法務大臣労働大臣予算委員会で閣僚全部いるところで責任の所在を明らかにさせた。そうしたらようやく答えが一つ出てきた。法務省はさすがにその責任の所在を明らかにした。立法措置を講ずる、こう言った。あるいは行政能力をフルに活用するために検討する、とこう言っている。やるかやらぬか私は見守ってきた。労働省の手において私はもっと主張してもらいたい。少くとも次の国会にはそういうものを遂行するための必要な経費は遠慮なく主張したらいい。認めるか認めないかはわれわれの任務になる。出したらいいのです。そうでなければこういう未払い賃金は仕方がありません、この法律は当分眠るのだ。元来基準法というものに対する考え方が間違っている。しかし賃金の問題については私は別に考えてよろしいと思う。私はこれ以上のことを問おうとは思いません。承知しているだろう。私は大臣に対してはっきりと約束さして次の国会に期すべきことを期待しておったのでありますが、あなたからよく大臣に伝えて、伝えるだけでなく、具体的な要請を国会に出されることを要求して、あなたに対する質問を留保しておきたいと思います。  そこで法務省の平賀さんがお見えになっておりますが、さっきあなたがおいでになる前に、法務大臣の去る十二月八日の予算委員会における会議録の一部をここに朗読をいたしまして、大臣国会約束したことを告げておきました。あなたお聞きになって御存じでしょうから再度読むことは避けますが、立法措置を講ずることを必要と認められて六カ月になります。あなたの地位はよく存じませんけれども、きっと民事局長と同じ仕事をなさっておると思う。大臣は私におととい院内で、病気だから残念ながら出席できぬ、しかし私にかわって局長を出すからという御答弁でございましたが、局長も御病気だときよう伺いました。もちろんあなたがそれを代理されてきょう御答弁いただけると思うのですが、今お聞きのように、第一義的には行政上の監督地位にある労働省監督局長答弁を伺ったのですけれども、この賃金未払いを解消するためには、これは何といったって、人間は善悪の両方を持ち合せておるのでありますから、一方には法律というもので、言うまでもなくその犯罪をびしびしと取り締っていくきびしい態度が、国になければならぬはずなのです。それがもうかなりいろいろなケースがあるのですけれども、よほど悪質なものでないと起訴しない。私がこういうことを言うのは失礼だと思うけれども、地検あたりではこういう専門的な知識を持たぬような、労働法のような近代的な所産である立法精神を理解していない人たち、古い教育しか受けていない人たちが、自分の考えで微罪処分にしたり、不起訴にしたりしている、これはどうかと思う。まず、この点に対するお考え方に私は問題があると思うので、これに対するあなたの御答弁をいただきたい。さっきあなたが来る前に件数をずっと並べてみたのですが、決して減ってはいない、むしろふえている傾向にある。こういう上り下りの数字が出てきているというのは、私に言わせれば監督行政の成果ではなくて、要するに経済界の変動だけなのです。だから結局この点は上手にやった方が得だという気持もかなり蔓延してきている。何も処罰するわけじゃないのですから、こんなボロもうけが他にありますか。ただで人を使うのだから、こんなうまい商売はない。しかしながら国家財政が苦しいからということで、公務員に二、三カ月ただで働いてもらうというか、そんなことはできやしないし、またそんなばかなことを言う者はありやしない。だから私は、賃金の問題はあらゆるものに影響してくるきわめて重大な問題だと思うのです。もちろん余裕のある人だちは、国のため、社会のために奉仕すればいいのです。しかし一般に会社工場がつぶれかかっている例をながめてみると、他に比較しておおむね収入が減っているときです。そしてジリ貧になってきて、いよいよどたんばに来てから投げ出されているというのが、こういう人たちの実情なのです。私はそれをよく知っている。賃金の未払い、遅欠配というものは景気のいいところにはありはしません。たまには思惑その他で企業が失敗をして、その責任を負わすということもあり得るけれども、そういうものはまだ解決がつくのです。日の当らぬ産業であったり、経営力にも問題があるでしょうけれども、非常に悪いところです、こういうものを一体どれくらいの割合で起訴されておるか、また監督署から摘発されたものを、他のものに比較してどういう工合に処分をしておられるか、その統計的な結論について、一つお答えいただきたい。
  12. 平賀健太

    ○平賀説明員 ただいまのお尋ねは労働基準法二十四条違反の事件の処理状況に関するものと思うのでございますが、それは法務省で刑事局が所管いたしておりまして、刑事局の係官も多分来ておることと思いますので、私に対する御質問を終りましたあとでも、あるいはただいまでも、政府委員室の方に連絡いたしまして、答弁してもらったらいいのじゃないかと思います。
  13. 井堀繁雄

    井堀委員 ほかの都合もありましょうから、それは数字で出していただきましょう。  きょうはいわば節季で、幕を閉じる日です。私は幕をあけたときに質問して、幕を閉じるときに質問すると約束してあるのです。きょうは委員長にも私ども理事を通じて、労働大臣法務大臣にそろって出ていただいて、この問題を解決してもらうことを要望しておいた。ところがこの節は乱調子になりまして、あなた方の責任じやありませんけれども、夜中にやってみたり、昼寝したり、きのうなんか労働大臣が昼寝をやっている。委員長も行方不明だ。こんな無責任なことをやっているのです。これは国会として恥かしい話で・あまりほめたことじゃありませんから、自粛いたしましょう。  そこで一つ数字でけっこうですから資料を出していただいて、また休会中もこの委員会は他の法案の継続審議がございますので、その節にけじめをつけようと思いますから、賃金未払い事件に関する処理の結末・経過、三十年度の平均と、一番新しい数字を出していただきたいと思います。
  14. 平賀健太

    ○平賀説明員 ただいまの点は刑事局の方では調査が可能だと思いますので、できる限りすみやかな機会に資料を提出いたすように、私から申し伝えます。
  15. 井堀繁雄

    井堀委員 それでは平賀参事官に次のことをお尋ねいたしたいと思います。あなたもたしかこの委員会に御出席になっていたかもしれません。あるいはあなたの方の局長にお聞きになっているかと思います。一つにはこの賃金の遅欠配の際に、これは特に大きい事業に起った数多い例の中で、債権の優先順位——これは他の法律とも深い関係があることではありますけれども、私はその点に対してはしろうとですから法律技術上のことはわかりませんが、常識以上のものでないと考えます。先ほど来繰り返し申し上げているように、未払い賃金の問題を解消する能力資本主義社会が失ったときには、資本主義社会の自殺なんです。この問題は当然資本主義社会としては負うべき大きな義務がある。この問題の解決ができぬようなことでは、政治は大きな口をあいては言えない。ですからこれは即座に解決しなければならぬ。この前も言ったように労働ということによって、その労働の成果は会社の財産になっているのです。半月なり一カ月なりに一度、大がい一カ月払いということで、その月働いたものを月の終りに払うという形ですが、そうしてできた財産は、自分らで働いて作った財産です。基準法の中には賃金通貨をもって払えとあるが、貨幣に取りかえられない製品であったり半製品であったり、あるいはすでに一つの財物になって残っておる。しかしそれには賃金の一部が入っておるということは常識で判断ができる。それを税金が持っていく。あるいは他の債権法律的手続をして、あるいは抵当権を設定して持っていく。それは私どもからいえば、一つの技術上の手続が先にきたというだけじゃないですか。十何万の人がそういう被害を受けておる。被害者は、その手続を持ってくればそこにごそっと持っていかれちゃう。その場合労働者保護できぬというようなことで、一体法治国が許されるはずがない。これをどうして守るかということをお尋ねしたところが、どうにもならぬ。そこで私は、この問題は基準監督署がもっと積極的にやったらいいのじゃないか、たとえば未払い賃金であるということを監督署が認めたら、これは起訴もできるし処分もできることになっているのですから、そのことだけで賃金債権を保証することはできぬものかと言ったら、ただそういうことだけしても、それは行政と司法権の混同ということで工合が悪いという専門的な御答弁がありました。それはごもっともなことだと思うのです。だが、法律はさっきも言ったように手段ですから、目的はやはり人権擁護なのです。正義を守るためなんです。正義がむざむざじゅうりんされて、人間の基本的人権、一番大切なものがこわされる、こんなばかげたことはないのだがどうするかといったら、あなたの方の担任大臣は、これは立法措置ですねと、こう言っておられる。それではこの立法措置をおやりいただくようにというと、それじゃ検討しましょうか、あなたの方も参考資料を出して下さい、こういうことでもう半年たっているわけですが、もう大がい準備ができたでしょう。そういうことについて省内ではどの程度具体的な成果が上っているか、お伺いしたい。
  16. 平賀健太

    ○平賀説明員 ただいま御指摘になりました、昨年十二月の予算委員会における大臣の御答弁、私も速記録を見まして承知いたしておるわけでございますが、あの直後ですが、私どもの方に対しまして、法務省所管の法律を改正する、あるいは何らかの立法を講ずることによって、この未払い賃金という社会的に許されない状態を何とかなくする、あるいはそれを減らすというようなことはできないか、研究をしろと  いう大臣からの御命令がございまして、私ども局長とともに検討いたしたのでございます。私ども能力の及ぶ限りにおきまして、十分検討いたしたのでありますけれども、遺憾ながら、法務省所管の法律の改正あるいは新しい法律の判定をもちましては、この事態は救済できないという結論に達しましたので、大臣にその旨を報告いたしました。それで大臣も、それならば仕方がないということで、その際了承されたのでございます。その後私どもに対しましては、重ねて大臣から何らの御命令もございませんので、私どもとしてはそのまま今日に至っておる次第であります。
  17. 井堀繁雄

    井堀委員 今の御答弁によりますと、大臣にあなたの方の事務当局の意向を伝えてあるそうですが、私どもはまだ大臣から何も聞いておりません。それで、きょうその返事を聞くつもりでおったのですが、局長に聞いてくれればわかる、こういうことですが、大臣は今あなたが答弁したようなことを答弁するように言い置いていかれたのですか、その点をはっきりしてもらいたい。
  18. 平賀健太

    ○平賀説明員 私、直接大臣にお会いして、こういう御答弁でよろしゅうございますかといって大臣の許可をもらってきたわけではございませんけれども、ただいま申しました経過によりまして、大臣もそのおつもりではないかと私どもは思うわけでございます。
  19. 井堀繁雄

    井堀委員 これは非常に重大でございますので、今あなたの御答弁でここで押し問答をしても仕方がないと思うのですが、ただ一言はっきりしておきたいことがある。それは、それではこういう債権労働者の権利というものが全くじゅうりんされっぱなしで、手の施しようがないという事実を、あなた方は現行法の中でどう解決したらいいとお考えになっているか、この点に対する所見を一つ承わりたい。
  20. 平賀健太

    ○平賀説明員 法務省所管の法律でということで考えられますことは、要するに賃金債権に対して優先順位を与える。一般債権に対してはもちろんのこと——まあ一般債権に対しては現行法でも優先いたしておるわけでありますが、抵当権であるとかそういう担保権のついた債権、あるいは国税なんかの税金の債権よりも優先する、賃金債権が第一順位だということにすることが考えられるわけであります。ところが、そうすると抵当権なんか設定しまして金を貸す人もなくなりましょうし、融資の道が全く閉されてしまう。この賃金不払い労働省のお調べによりましても、件数としては大体中小企業なんかが非常に多いようでございますが、こういうものに対する融資の道は閉されてしまって、中小企業そのものが資金の面で立ち行かなくなってしまう、元も子もなくなってしまうということに必然的に相なるわけであります。それから一般債権に対しましては優先いたしておるものでありますが、何分これは最後の段階におきましては、強制執行をしていくということになるのでありますが、これは労働者の側としては非常にわずらわしいことでありまして、実際問題としてなかなか思うようにいかぬ。それで、本来ならば現行法のもとではあとの順位であるところの一般債権が、先に早いもの勝ちでもってとってしまうということになるのでありまして、それを防ぐには、たとえば賃金債権に見合うような一定の具体的な財産を確保させまして、これは強制執行はできないというような措置を講ずるとか、差し押え禁止の財産の範囲をきめるというようなことも考えられるのでございます。ところがそういうことになると一体どうなるかと申しますと、一般債権者は手も足も出ないということになりますと、その一般債権者の中にも、困りましたことにはやはり中小企業なんかがあるわけでございます。その人たちの債権がとれないということになりますと、その人たちのかかえている労働者に払う賃金のもとになるところの債権の回収ができないということになる。そういうふうに非常に連関いたしております。現在私どもの承知いたしておりますところでは、売掛代金であるとかその他の請負代金であるとかそういう債権の回収ができないということが、中小企業を非常に苦しめておる実情でございまして、そういう差し押え禁止の財産の範囲を拡張いたしますと、この債権回収ができないというような事態をますます激化させることになりまして、それがまた賃金不払いのもとになっていくということで、回り回って循環していきまして、どうもそういう措置では目的を達することはできない。要するに無から有を生ずることはできないという、一口に申しますとそういうことに相なるわけであります。これを救済いたしますには、これは法務省の所管。ない、専門外のことでございますけれども、やはり何らかほかの手段を考えなくてはならぬのじゃあるまいか。これは私どもの所管外でございまして、こういうことを申していいかどうかわかりませんが、現在失業保険の制度なんかもございますが、この失業保険の方の適用の範囲を拡大するとか、あるいは新しい立法をいたしまして失業保険に類似するような、賃金の未払いが生じました場合に社会保険の制度によってこれを救済していく。先ほどお話のように、労働金庫なんかでは不十分でございましょうから、とにかくそういう全国民の負担においてこれを救済していく、そういう制度、これはすなわち社会保険かと思うのでありますが、そういうものを設けない限りはどうにもならないのじゃないか、そういうふうに法務省の民事局としては考えておる次第でございます。
  21. 井堀繁雄

    井堀委員 非常に私は意外な御答弁を伺ったのであります。一応今の御答弁によりますと、現在の法規の中ではこの債権保護することはできない。ことにあなたのお説をお借りすれば、優先順位の問題で税とそれから担保権設定その他の方法もあるわけですが、この点についてはあなたは、それがもし法律でそういう優先順位を認めるということになれば、そのことによって発生するところのものを非常に懸念されておりますが、これは議論になりますから避けますけれども、それは逆なんです。資本主義経済というのは、これは利潤経済、搾取経済ですからね。あのマルクスの言葉を借りる必要はありません。だから、労働力がただで使えるということになりましたら、こんなうまいことはもちろんない。これは許されることではないのです。根本はそこにあるわけなんです。これを要するに、はっきり承認するかしないかによって問題がきまると思うのです。しかしこれはあなたに議論を吹っかけても仕方がない。あなたが今言ったように、現在の法規の上ではどうにもしようがない。前に法務大臣が私ども答弁したことは、ほんの思いつきだったということになるわですから、これはぜひ次の機会に法務大臣に出席してもらって、そのときはあなたにもぜひ出てもらって、この問題を解決したいと思います。私はこの問題に対して、法務大臣答弁が正しいと思うのですけれども、あなたがそう御答弁になる以上、この問題はこの程度にいたします。そこで未払い賃金の問題について、どうしてもそれがだめだということになれば、あとはまた元へ戻ってくるわけです。基準法の適用をびしびしやる。そして起訴したら、あなたの方もそのままやる。やらなかったら、他の法を持ってこなければならぬ。私はどっちがいいかというと、立法措置の方が穏当だと思う。社会政策的な行き方だと考えて、こう質問を向けたことろが乗ってきたわけです。あなたの考え方はもっときついわけです。僕は解決の道がある。どっちがいいかといったら、賃金を払わぬでもいいなんということは、今日の社会においてどこもよう言い切ることではありませんから、基準法をどこでも守るに違いないと思う。この問題は一つ結論が出ました。あなたの考え方と法務大臣の考え方が、必ずしも一致しているかどうか、私は疑いがある。この問題の解決は残念ながら次に譲りましょう。  あなたにことづけするわけじゃありませんけれども、きょうのことを法務大臣局長にそのまま復命しておいて下さい。あなたも御存じのように、前に大臣には、材料を提供する意味——大臣は悪い意味で言ったのじゃないと思うけれども法務省の役人は、新しいそういうことについては割合に承知していないようだという意味のことがありましたけれども約束もあるから、私は忙しい中をさいて、わずかな時間ですけれども、あなたも同席だったと思いますが、民事局長にお会いして、もっと詳しい話をしておいた。ほぼわかっておりましたけれども、この点は思想的な問題もあると思うのであります。これは次にはっきりきめたいと思います。その点できょうは問われたということをよく言っておいて下さい。これは国会の意思であります。  それでは賃金未払い債権保護の問題につきましては保留いたしまして、他の問題がたくさん残っておりますので、次の質問に入りたいと思います。平賀さんには大体この程度でけっこうです。  これは前回問題にいたしました雇用の問題です。経済企画庁の長官と、労働大臣のお二人に御答弁をいただいたことと記憶をいたします。御存じのように雇用の問題は、わが国産業経済の政策の中では最も重要なものでありますし、もちろん産業経済に限るわけではありませんが、日本経済の自立達成をはかろうとすれば、この問題にどうしても言及しなければならぬ。さらにまたこれが発展して、いろいろな社会問題の因になり、果になって発展していくわけであります。この問題を徹底的にやっておかなければ、私は労働行政などというものは正常な姿にならないと思う。この問題と失業対策の問題について二、三お答えをいただきたいと思います。  雇用の問題についても、まず第一にはっきりさせたいのは、——時間の制約がありますから、長々とお尋ねすることはよくありますまいから、これは後日できるだけ資料を整えて、文書でけっこうですから、出すことを約束していただきたい。そうする意味で質問を簡略にしていきたい。まず第一、役所の出しておる日本の統計資料を一通り私は調べたつもりでありますが、隔靴掻痒なんです。たとえば雇用の現状の分析、実態を正確に把握するということについて資料が乏しいのです。しかし労働省のように、このために一つの役所があるのですから、ここで取りまとめるということは、決して難事ではないと思いますので、実はそういうものをあらかじめ労働白書などの中でうかがうことができるのじゃないかと思って、いろいろ検討いたしましたけれども、不得要領で残念に思います。今度労働白書のようなものを出されるときには、こういう点を明確にしてもらいたい。現在、日本労働力というものが——労働力という定義が問題になると思いますが、今統計資料の中でいろいろなものを総合判断してみますと、生産年令、すなわち満十四才以上に達した人々を一応あげて、その中から完全失業者と就業しておる者、そういうものを労働力と見て、あとは非労働力というふうに分けておるようであります。私はまずその分け方が不合理だと思う。これをどういうふうに分析し、あるいは統計の上で整理をしてくるかということは問題があると思います。私はどういう工合にしたがいいという意見は今日差し控えたいと思いますが、専門家の方で考えていただきたい。私の聞きたいのは、日本一つの弱点でありますが、うまく使えばこれが強みにもなると思う。それは他の国国に比較して、人口が領土やその他の関係に比べて非常に多い、密度が高いということでしょう。入口の増加の状況その他については、あとで人口問題研究所の方に資料を提供してもらって勉強していきたいと思います。ほんとうはそこから先伺ってこっちに入るのが順序だと思いますが、労働省の方が先に来ておりますから、少々順序は違いますけれども、しかし一応統計の上で日本の人口の増加の傾向というものに対する一つの見通しが出ております。たとえば政府の長期経済計画を立てる上に人口の増加率をどう見込むかという資料が出ております。これが正しいかどうかは別でありますが、日本の人口が今後どういう工合に変化をしていくかという問題も大事だと思います。この問題も私は基礎的に一つ勉強いたしたい。その資料労働統計の中にどう使うかということが重要だと思います。そういう意味できょうは伺います。  そこで日本の人口の増加の傾向というものは、従来のように急カーブを切って上ってきたものが、ややカーブがゆるくなってきた。また今後ゆるくしていくような政策をとる必要が一方に現われておるということ、またそれが実際にむ響いてくるというふうに私は理解できると思う。しかしこれは私の考えです。この点に対しては専門家の意見を聞きたいと思います。ところがそれとは別に労働人口のカーブというものは、これと正比例しない。これは他のいろいろな原因もあると思います。乳幼児の死亡率が減ったとか、わかりやすくいえば、人生五十年が相当高い水準を保つことができるということは、すぐ労働人口に影響してくる。それから医術の進歩やあるいは薬の研究がだんだん成功してくるに従って、健康を保持することができるということになれば、やはり労働力に非常に大きな関係を持っている。こういう点を考えていけば、労働力の急速な低下ということは考えられない。やはりある程度のきびしい線をたどって、どうかしていくべきではないかというふうに、一応私は考えているわけであります。これは考えだけですから、こういうものに対する統計を一つはっきり出してもらいたい。  それからその上に立ってお尋ねするのですが、今まで失業対策でわれわれはばかな議論ばかりしてきたと思うのです。政府の出してきた完全失業者だけ見せつけられて、失業対策の対象にするなんてナンセンスです。われわれがここで見ていかなければならぬのは、日本の特殊事情、どこの国にもこういう傾向はない、今の乏しい資料だけでここにそれを拾ってみた。そうしますと、一応三十年の十月の国勢調査の結果に現われた八千九百四十万人と押えた総人口に対する十四歳以上の生産年令に達した者が六千百四十四万人、そして労働人口四千四百十一万人と押えて、その中で当時完全失業者が七十二万人で就業者が四千三百三十九万人、こういうふうな平面的な統計が紹介されてきた。これは化かされるのです。完全失業の七十二万に対して、政府失業対策の基本数字を予算その他で説明して、われわれもいい気になってそれで論議してきた。あにはからんや、問題はほかにあった。そこでそれをまたこういう分け方をしている。農林、非農林の関係に分ける。あるいはまた自家営業者あるいは家族労働者、そして雇用者——この雇用者というものが今日直接的には労働市場に現われた姿です。この中にも問題はもちろんございます。そこでこの十月の統計資料をそのままここに採用するとしますと、日本の特殊現象として、自営業種というものは一千七十九万人という、実にべらぼうな数字になっている。その次に、さらに驚くべきことは、家族労働の多いということ、それが一千五百九十八万人、それに比較して雇用されている者がわずかに一千六百五十九万、こういうことです。その一千六百五十九万のうちの完全失業者だけを取り上げて、失業対策なんてばかな話はない。そんな労働政策はないですよ。だからもっとこの問題を置きかえて、どういう工合に分析していくかは別でありますが、たとえば最近総理府の統計局の統計資料の方法も改められてきているようであります。ごく新しい行き方の中で、私はいろいろ見るべきものがあると思いますけれども、しかしこれは労働省の統計でやるべきものだと思う。そこでたとえばこの中に見えておりますのも、非労働力人口は、十四歳以上の生産年令層の中から就業人口と完全失業者を引いた一千七百二十四万人いるのです。その中でこれは労働市場に直接影響ないと思われる者は通学している者四百八十六万人、家事に従事している者八百五十二万人、わからないのが三百八十六万人ある。こんなべらぼうな労働統計なんてあるんじゃない。こんなものをもって、一体日本の雇用問題を論議するに至ってはばかばかしい話です。そして完全雇用なんて何をぬかすと言いたい、でたらめもはなはだしい。でありますから、まず労働省はこの統計資料の中で、雇用の実態をもう少し正確に出してくることが必要である。この統計資料の中ですぐわかりますのは、千七百二十四万人のうちの四百八十六万人の通学者は、卒業すればすぐ就職するのだから別だが、わからないなんというばかな話はない。しかもそれが少数ならいいですけれども、三百八十六万人もある。さらに家事に従事している。その家事が問題なのです。これは家事に従事しているのだから、収入がないということ、すなわち雇用関係における賃金、給料の形で支払われてないということ。ところがそうかと思うと、ここに出てきている自営業者につきましても問題がある。自営業者というものは、何か雇用関係はないけれども、間接的には不特定の雇用になっているのです。こういうものは、潜在失業の中川においても、一番労働市場を荒す関係のものなのです。こういうものが明確に出てこない統計というものはだめなんです。その数字がかなり大きいということ、家族労働力の中で、とり方にまだ非常に無理があると思う。私はあまり専門的になりますから詳しくは言えませんが、こんなものを出してはいけません。もっと労働省の統計というものは日本労働人口が端的につかめるようなものでなければならぬ。こういうふうに見てきますと、私がお尋ねしたいと思うことはすぐ答弁できないと思うから聞きませんが、これは統計では農林関係と非農林関係に分けるとか、製造業その他に分けるとか、いろいろ分け方がありますが、どう分けてみても農林関係だけを別にしている。ところが傾向としては、農地改革の行われた戦後の日本の農村経済というものは、戦前は失業者の緩衝地帯だったのが、逆に余剰労働力を都市に排出する傾向が出てきていることは統計ですぐわかる。でありますから農村の労働力人口というものはすぐ都市の失業問題に響いてくる人口であるというふうにとっていいと思う。こういうものをもう少し正確に統計の中で私はつかむべきだと思う。つかんでいないだろうと思うから、聞いてもわからぬだろうと思うから聞きませんけれども、ほんとうはこういうことを聞いて失業対策を論じてこなければならぬ。これは一つこういうものを整理して出してもらいたい。一体農村人口の都市人口に肩がわってくるものがどういう形で変化をとげてくるかということを統計で出してもらいたい。それから家族労働というものは、これは農村特有のものですけれども、これも大体統計としては私はつかんでこれると思う。適正耕地というものは、耕地はそうどんどんできてくるものではありません、開墾されてみてもっぶされる土地と差し引きますと、そうできてくるものではない。そこで労働力の変化は考えてこられるが、そういうものをやはり見ておらなければならぬ。労働省は農村の労働力に関係がないとは申せません。相当やはり日本の農業経済の変化、農村の文化水準の発展というようなものから見てくる必要があると思う。ことに私は非常に興味深く見たのは、労働間の中で新しい傾向がぐっと出てきている。労働時間は私は農村は平均すれば相当長い労働時間を見込んでおったが、非常に少い労働時間になっている。そうしてそのカーブは非常な速度をもって労働時間が短縮されてきている。これは私は農村文化のために慶賀すべきことだと思う。反対に都市の労働時間というものはかなり長いものになってきているという統計が出ている。一体この統計資料をそのまま信用していいかどうかということについても、私にわかに判断ができませんけれども、これはあとでちょっと聞きたいと思います。そこでこういう資料の中で、すぐ出してもらいたいと思うのは、家事に従事している、あるいは不詳だという、こういう人口は大きいですから、これを一体、私どもは潜在失業と言いたいところですが、どういう性格に把握していくか、これは日本労働問題の大きな隠れた問題だと思う。こういう点に対する雇用の現状を分析する上について前提条件になってくる資料、そういう労働人口の正確なる把握、これはすぐには出せぬかもしれないが、なるべく早い機会にこういうものを整理して、一般的な統計資料にはならぬまでも、われわれが労働行政を審議する上に必要な資料ですから、早く整えて出していただきたい。  それから総理府の統計局の統計と労働省の統計調査部がやっている仕事の間に、私はもう少し有機性を期待したいと思うのです。これまた具体的には言いませんけれども……。  そこでこの労働調査報告を私は毎月よく検討してみて、最近の傾向を非常に不安に感じている。というのは、政府は雇用量が増大したとか、労働の安定性とかいっている。言いわけもありましょろけれども、そういうことは別にして——中には政府の出した白書をそのまま信用している学者の驚くべき論文を見せつけられて、こういうりっぱな人がこういう資料をなまで使っているのかと、正直に言って意外に感ずるととがある。これは非常な罪悪です。ですからそういう意味でもっと慎重にやっていただきたいと思うのです。  そこで一、二お尋ねしたいと思いますことは、失業統計の中で出てきます雇用の実態ですが、日本の雇用関係というものは労働法に言うようにはっきりしてないんですね。一番顕著なもの、日本の古い労働者の姿が現われているのは建築関係、俗に下職という大上、左官、石屋さんなど、こういう人は不特定雇用なんですね。これらは税の上では事業税を取り立てられている。だから請負業者であるか賃金労働者であるかというような問題について、いろいろ把握しにくいものがあると思う。だからそういうものをどういう工合に労働省としては統計の中に現わしてくるかということは、そういった点で内閣統計局の資料とは異なった意味の特色が出てこなければならぬ。そうでなければ労働省の統計などというものは存在理由が薄くなる。これは極端な例です。  それから失業統計も一般統計の中で取り扱っているから仕方がないが、何か一工夫したらいいと思う。完全失業を把握するのに一週間に一時間でも働けば除かれ、調査期間の一週間のうちでこれを決定するので、ある程度の不合理は仕方がないとしても、これをもって失業対策の対象とするような、そんなばかなことはない。それで労働時間の統計でこれを見ると、非常におもしろい結果が現われてくる。これは失業者の場合をいろいろな角度から見てきている中で、失業意識というものを統計資料の中から出してきたことは非常におもしろいと思う。労働省はこういうものをもっとうんと出さなければいかぬと思う。なるほどこういう数字を見ていきますと、かなり大きな数字になるんですね。その内容を見ていきますと、たとえば失業しているからというのはすぐわかるのです。学校を卒業したからとか、これから学校を卒業するからというのもわかりやすい。二番目に生活が困難になったからなどということが出ている。これがなかなか大きなウェートを占めているんですね。生活が困難になったから、今雇用はされているけれども、最低生活をささえるだけの収入を得ていないということを表明しているものとして相当留意すべきだと思うが、こういう行き方ではなくて、もっと労働時間、収入というものを見て——日本では最低賃金法がしかれていないのです。これは弱点ですが、しかし労働基準法の中では最低賃金制を採用するという任務を課せられておるわけですから、最低賃金制度の実施は別にして、どのくらい生計費を必要としているか、統計表に出してもらわなければならぬ。これは仮定ですが、たとえば今日二十歳、八千円なら八千円、六千円なら六千円として、それ以下のものはどれくらいとか、それ以上のものはどれくらいか等……。これは私が使った一つ資料ですが、国税庁が勤労所得税徴収の必要から作製された民間給与実態調査が一番信憑力がある資料一つになっている。労働省資料などは役にも立たぬことになってしまってはいけません。もしそういうものに対して私どもの気がつかぬものがあるということなら、この際答弁していただければけっこうです。  私が知っている範囲では、労働省の統計資料では、今日の雇用労働者だけに限っても所得の実態をつかむことができない。勤労者の賃金収入がどれだけかわからないで失業問題を論ずることはいかがかと思う。  労働時間の問題がここに出ておりますが——時間がありませんから一ぺんに何もかも言いますから、答弁も一ぺんにしてもらいたい。労働時間を非常に興味深く見ておりますけれども、一週一時間から三十四時間ですね。時間から三十四時間とその間が切れている。しかし資料はあるに違いない。これは整理すれば出てくると思う。そうすると一週の週給を厳重にやっていたとしても、よほど特殊な技能を持っている者以外は、一日に二時間や三時間働いて生活をささえるに足るような収入を保証するだけの日本の経済力でないことは想像にかたくない。こういう収入というものは知ることができると思うのです。その数が実に大きいじゃないですか。八百八十二万ということをこの統計資料政府は紹介している。大きなものですよ。だから私は潜在失業者を八百万から一千万というふうに押えて、この前の予算委員会で経済審議庁に雇用の長期計画を聞いたのですが、もっと大きいのです。その線をどこに引くかということにも非常な幅が出てくる。こういうようなことで、日本で完全雇用を論ずることはもちろんですけれども、もうこれから五年後には二十万か三十万の完全失業者、あとは全部雇用体制に組み込めるなどと言っても、ばかを言うな以外に何も言えないのです。その点を私が予算委員会で追及したらしどろもどろで、結局あなたの説に同調せざるを得ませんということでかぶとを脱いでしまった。こういう醜態はいけません。こういう基礎の上に打ち立てられた経済計画などというものが計画であろうはずはない。でたらめもはなはだしい。あちらからくずれ、こちらからくずれていくものである。それがもっともらしく聞えて、議員がよほど勉強していないとつい煙幕になるような効果はあったかもしれぬ。しかしそのことはまた日本政治の上に大きな害悪を流したことも争えない。そういう点の責任は事務当局にある。われわれが労働省労働統計調査部を設立したのも、その点を改めたいからだったのです。今私が言いましたところで御答弁が願えるならと思うのです。  自営業者一千七十九万、農林関係を除きまして非農林だけあげましても四百七十九万という者は雇い主的な性格なんです。その雇い主というのは一人使っていても雇い主です。こういうものについて統計の上で何かわれわれに報告すべきものがあるかどうか。さらにこれは非農林関係だけれども、家族労働の三百十九万、その内訳に対して、一体雇用問題と関係のある数字をどういう工合に分析しておるか。それから非労働人口の中の家事に従事しておる者は潜在失業者として対象になるかならぬか、ならぬとするならばその根拠、さらに労働時間の問題。これらについて御答弁をいただきたい。
  22. 堀秀夫

    ○堀説明員 ただいま井堀議員のきわめて御熱心な御研究と該博な御知識に基くところの御議論を敬意をもって拝聴いたしました。いろいろ問題がありまして、特に日本においては、人口の伸びに対しまして労働力人口の伸びがきわめて多いという問題は、まさしく日本の特殊性でございまして、たとえば昨年の例をとってみましても、昭和三十年の平均の総人口は百七万人の増になっておりますが、労働力人口は百六十四万人の増というようなことで、これは一つは、先ほどお話のありました乳幼児の増が少くなってきたということのほかに、最近は農村その他におきまする非労働力人口が労働力化しておる、そういうような傾向が著しい、このようないろいろな事実にからみ合っておるのでございます。  そこでお話もございましたが、ただいま昭和三十年の労働経済の分析を近く労働白書として発表する予定でおりますが、その中におきましても今のような労働力人口の増大の問題を少し掘り下げまして、詳細に分析して御期待に沿いたいと考えております。  なお、ただいまお話のありました総理府の労働調査労働省の統計調査との関連でございますが、これは世界の各国でもそうでございますが、大体世帯を対象として扱いますところの人口調査と、それから事業場につきまして労働条件の実態を明らかにするところの調査とはおのおの分離してやっておるのが例でございまして、たとえばアメリカにおきましても、日本の毎月動労統計調査に該当する調査はアメリカの労働省の統計局でやっておる。それから労働調査に対応するところのカレント・ポピュレーション・サーヴェイも、商務省のセンサス局、ちょうど日本の統計局に該当するところでやっております。こういう状態であります。日本におきましてもそのような考え方でおのおの別の角度から把握しております。ただこの労働調査等につきましてはいろいろ定義等の不明確な点がありまして、今後において改善をすべきだと思われる点が相当あるのであります。われわれといたしましても、総理府統計局と密接な連絡をとりまして、いろいろ注文をつけて直してもらっております。特に今のお話にありましたような失業意識の問題等にからみまして、現在の労働調査ではどうも正確に把握できないような面がありますので、ことしは総理府統計局におきまして、この七月を期して就業構造基本調査という大調査を実施することにしております。これによりますと、今お話のような点が相当はっきり出てくるんじゃないかと思います。これは集計がちょっとおくれるの、おくれますが、しかし今までになかった調査ができるし、これにはわれわれの意図が相当反映しているということをお認め願いたいと思うのでございます。  それから家族労働の問題でございますが、これはお話のように非常に問題でございまして、特に日本におきましては総就業者中に占める家族従業者の割合は三五・六%、それから自営業者の割合は二五・四%というような状況でございまして、米、英、西ドイツその他の各国に比べましてその率が非常に高いということが特色であります。その内訳がどうであるかということは、いろいろわれわれの方で注文をつけておりますので、今後統計局の方でもだんだん明らかにしてもらうことになっておりますが、ただいまお話のありました労働時間が一週三十四時間未満の就業者は約一千万人いる、このような状態であります。これが果して潜在失業者と全部いえるかどうか、これはまた問題でありまして、先ほどお話ししましたように、農村等におきまして従来は非労働力であって、家族従業者的なものであったものが、最近は非常に顕在化した労働力人口化している。こういうようなものがふえまして、特にこの二月から三月あたりを比べますと、一カ月で二百三十万も非労働力人口が労働力人口になっている。これはやはりそういう面でありますが、こういう面が短時間の就業者になって現われている。こういうものもありまするから、これを全部潜在失業者というのも当らないと思うのでありますが、この中で、たとえば十九時間未満の就業時間であって追加就業を希望する者、それから二十四時間から三十四時間のもので追加就業を希望する者、それから転職を希望する者、このようなものを合せますと三百万人くらいになります。この辺が不完全就業者といえるのではねいかと思います。但し、この不完全就業者は潜在失業者といえるかというとこれも問題でありますが、いろいろの面から、完全な就業の仕方ではないということがいえると思います。  なお、今お話のありました家族労働の中で潜在失業者的なものがあるのではねいかというお話もありましたか、これは、非労働力人口の中で就業を希望している者を毎年三月に調査しておりますけれども、昨年の三月の統計局の調査によると七十一万人ばかりあるということになっております。  それから世帯の収入調査については何も的確なものはないのではないかというお話でありましたが、あまり的確なものはございませんけれども先ほどお話のありましたもののほかに労働調査の付帯調査といたしまして毎年十月に収入の調査をやっておりまするので、これをごらん願いますとまた別の角度から収入状況がわかります。それから統計局でやっております家計調査を見ましても収入の状況がわかります。  こういうことになっておりまして、いろいろの問題がありますが、われわれの方といたしましても、今後におきましては、御趣旨を十分体しまして、各方面の御意見を十分に伺いまして統計調査の完璧を期して参りたいと考えております。  なお、お話資料につきましては、できるだけそろえまして後刻御提出いたします。   〔野澤委員長代理退席、委員長着席〕
  23. 井堀繁雄

    井堀委員 統計資料につきましてはいろいろ希望や注文がございますが、あなたが今すぐ御答弁になったように、非常にずさんな資料であるくせに、われわれが大事な政策を論議するときにその目的の意識をあまり強く使い過ぎておると思うのであります。これは少し反省してもらいたい。これは大臣を呼んで聞かなければいけなかったのだが、大臣が来ないので仕方なくあなた方にこういう抽象論を聞くことになって、あなた方も困るでしょう。もっともあなた方も、きょうは源氏あすは平家というようなわけで、どっちにも仕えなければならぬ身分でいろいろ困難もあると思いますけれども、しかし、統計だけは厳然たる事実を主張するという強さがないと、二大政党が対立した場合にはどうにもならなくなると思う。だから、一方において選挙法だけ改正してみようと考えたところで、他の者がこれに調子を合せてくれほかったならば何にもならない。政策をもって論議するとしても、向うでその政策の足場が全くでたらめだったりすると何もならないと思う。これは非常に重大なことだと思う。あなた方日本の役人は頭もいいし非常に器用だと思います。何を聞いても何とかかんとか格好をつけてしまうような答弁をする。そういうことができるということはあなた方にとっては便利であるかもしれませんけれども、そういうことは統計としては全く信憑力がないのです。だから、統計関係の役所の人だけは、あまり自分の意思や想像を加えないで済むようなものを早く出してもらいたい。また、私どもの言うことを聞いたらすぐ出してくれるくらいの準備がほしい。そういう意味でさっき例をあげたのであって、また具体的に注文いたしますが、とりあえず私は申し上げておくが、雇用の実態を把握する問題については、聞き方によっては右の方へ行き、また聞き方によっては左の方へ行くような、そういうずさんなものは出さないように願います。数字はこうなっておりますといっても、それをどうお使いになるかということは政党や政治家の裁量です。だから私はそこら辺でさっきあなたが答弁したことがすぐわかった。私は論議になりそうな工合にあやふやです。私の方が事務当局のような質問の仕方をして、答える方は、よほど政治的な響きを与えるくらいの幅のある見解を持っていられる。それは今あなたの言うように潜在失業が失業であるかどうか。大体失業という定義がでたらめなんですよ。一時間でも雇用されたら失業じゃないとか、そんなことは言わないで——それは使うのはこっちが使うんですからね。一体失業対策としてどこまで押えていくか、どこから先は社会保障制度にまかせるかというような問題は、これは政策上の問題だ、あなた方の答弁するところじゃない。今三千円以下の収入のものがどれだけおる、十万円以上の勤労所得者がどれだけおるという数字を出せばいいのです。そうしたらそれを見て、十万円以上のものはこれは労働政策の中としては少し高過ぎるとか、三千円ではこれは労働政策じゃない、いわゆる社会政策でいくべきだというような問題が政策の中に出てくるわけです。だから日本社会政策労働政策というものとが全く混同されておる。それが証拠に、社会労働なんでいうことを言うゆえんもそこにある。それはあらゆるところに混線してきますから、統計のもっとはっきりしたものが出てくるようになりますと、こういうものに対する一つの大きな推進力になると思う。あなた方の努力は、やはり大きな貢献を約束されておりますから、張り合いのあるお仕事だと思う。そういう意味で張り切って一ついいものを出してもらいたい。  もう一つは、失業的意識を有する者の統計表が出ていて、私非常に興味深く見たのですけれども、この中で二十五年の八月、二十六年の三月、二十七年、二十八年、二十九年の三月のものを統計出していますね。これを見ていきますと、二十六年の三月で二百二十七万人、それが二十九年の三月では三百五万人というふうに出してきておる。これと完全失業者その他の統計の全体を合せてくると、事実に近いものが出てくる。そういう点で、私どもは総合判断をするより仕方がない。結論なんというと、勘どころということになるのでまずいけれども——政治家はそれでいいと思う。しかしあなた方一が、私どもの上前をはねるような、勘で答弁をされるようなことがあったんじゃいけない。今後一つ労働省の役人の中でも特に統計をいじる人は、そういう点に対しては私は厳重に一つ慎しんでいただきたいとお願いいたしておきたい。大臣なんというやつは調法ですから、議員に責められるときに何とかうまく逃げられればいいと思うのです。そうじゃなくてもそうですから、統計資料出すところはきちっとしていただきたい。二が三に読めるようなことになっては困ります。  そこで労働時間の関係は、実は私はきょうそのことを労働大臣に聞こうと思っていたのですが、労働大臣がおりません。遺憾ですが、たとえばこの統計の中で、二十九年の年間の平均労働時間を出しております。この労働時間をずっと見ていきますと、二十四年から二十九年までの統計では全産業が大体並行しておりますが、農林関係と非農林関係を見ていきますと、農林関係では、二十四年の一年間は四〇二二時間、それが三七・九時間に減ってきている。それが非農林関係になりますと、四十六時間であったものが、逆に四七・六時間になってきている。その内訳をずっと見ていきますと、今の基準法のいう一日八時間、週四十八時間制という、この原則を貫いております数字は、さすがにあまり大きく動いていない。大きく変化を遂げておりますのは、非農林関係においては八時間の、要するに基準になるべき正常な労働時間と思われるものの動きは、農村関係ではぐっと減ってきておるということですから、これはいい傾向です。農村はこういう労働時間の関係からいえばだんだん平常化しつつある。文化の水準に沿ってきつつある。ところが非農林、ことに製造業などを見ますと、長労働時間がぐっとふえてきている。それとまた逆に、短かい労働時間の数がふえてきている。こういうものが不健全な姿になってきているということは、こういう統計の上で言えると思う。これが信用ができないといったら、論議の足場がなくなっちまう。だからわれわれが一応この統計資料に信を置くとすれば、私は日本の近代産業化を意図し、特に今後の輸出振興をはかろうという、日本民族の雄飛すべき前途を考えますと、暗たんたるものがあると思う。やはり労働時間が正常なものになっているところほど、近代文化国家としてのあらゆる条件を具備してきているという一つのバロメーターになってきていることは間違いない。だから高度の技術水準を有して、貿易ですなわち優位の地位を占めているものは、やはり労働時間が非常に健康な姿をとっている。労働政策というものは、こういう産業政策全体を結びつけて考えなければならぬ。最近ややもすれば労働省の存在というものが怪しくなってきているというのは、こういう問題に対する主張が足りないからで、失業問題といったらニコヨンの問題だけを取り上げて論議しなければならぬなんて、そんなばかな話はないですよ。ニコヨンの問題なんかとっくに解決してなければならぬ。あれは過渡的な姿だ。それが恒常的になっている。だから今言う労働時間のようなものは、労働省はどんどん資料を出してもらう。きよう労働大臣がおったらお伺いしょうと思ったのは、一体広報で、部分的な要求ですけれども労働時間を延長してくれという要求が、基準法に反して出てきている。時代は逆行している。すなわち完全雇用を一方に言う以上は——完全雇用というのは言い過ぎでしょうけれども、スローガンなんでしょうが、できるだけ失業問題の解決を急ごうとする善意からすれば・ただ仕事さえ与えればいいんじゃないんです。それが日本の産業のためにプラスになるか、要するに日本経済の上昇にマッチするかどうか。角をためて牛を殺しちゃ何にもならぬ。こういう点が失業対策の全体政策の中から雇用対策として取り上げられてこなければならぬじゃないか。こういう意味で、この労働時間の問題なんかについても、私はもっと労働白書の中に取り上げてこなければいかぬと思う。私はあれは非常に残念に思う。皆さんが非常に骨を折ったものをけなすのもいけませんけれども、こんなのは白書じゃない。そこいらのはきだめを集めてきたものじゃないか。もっと整理の仕方があると思う。ちっとも特徴がない。こういう時間の関係をもっと重視して、そうして統計のとり方はあなた方がとればもっといいものになる。そこで雇用の問題については、どうしても大臣に聞きたいと思う。今度ILOに行かれるんだから、ILOに行って少しよくなってくればいいんだが、日本のソシアル・ダンピングと長い労働時間というものは有名なんです。それをまた日本政治家や資本家は誇りにしている。非常に勤勉だなんてばかなことを言っておるのです。労働のロスが多いということはばかげたことなんです。用事もないのに工場に長い時間拘束しておるということはどっちのためにも損なことです。もっと短かい時間に高い能率と優秀な技術を生産にマッチさしていくという行き方が、近代国家の今競ってやっていることだ。倉石さんのたった一つの看板は労使協調の懇談会をやるんだということである。私は何も懇談会が悪いというんじゃない。いろいろの措置をやることはけっこうだ。ただもっと化学的にやらなければならぬ。労働者と雇い主の間には分配問題で利害の対立がある。それを言葉の上や話し合いでやるんでは納得にならない。僕はそういう懇談会を持つということはけっこうだが、そのときにはそういう資料を出すべきだ。ここに日本の雇い主と労働者が手を握れる広場があるではないか。限られたものを分け合っても、うまくいくはずはない。そこで、ペース・アップの問題を批判するならば、労働者は納得されるに違いない。食うや食わずの状態に置いて、けつをひっぱたくようなことで分配問題をとがめるに至っては、けしからぬ話だということになる。そういう点で、こういう問題の統計資料というものは大いに役に立つ。あなたも諸外国のことをちょっと引例された。私は勉強が足りませんから、よく知りませんけれども、ちょっとのぞいただけでも、私どもに与えてくれる資料というものはわかりやすいのです。私はデンマークやノルウェーのような——スエーデンは特にいいのですけれども、あんな国がと思ってばかにしたけれども労働関係に対する統計資料というものは、字が読めなくても数字はわかりますから、ちょっと聞けば頭に入るような、なかなか整理されたものがあります。そこで私は日本資料を持っていったのですが、わからないといっておる。調べれば調べるほどわからなくなるのです。そういわれてみれば、比べればわかると思う。こういう点で、私は労働省の統計資料というものは考えてもらいたいと思う。  話があちこちいきましたけれども労働時間の問題をもっと短縮しなければならない、これはできるのです。こういうことは、保守、革新で階級的な議論をする必要がない。自民党にも、賢明な、明るい見通しの人たちがたくさんおるのですから……。そこでこういう平均の労働時間を見れば、全産業において四十二・七時間しか実際働いてないのだから——もっとも国会は夜通しやるのですから、あまり大きなことは言えないけれども、これは非常なできごとだとして……。そうすると、四十二。七時間という全産業における統計資料が出て、これはだんだん短かくなってきておるということですから、傾向としては、労働時間を短縮する傾向が実際に現われておる。だから、労働時間を長くするということではなくて、短かい間にどうするか。世界の水準は、今日四十二時間制ですから、こういう点で労働時間の問題あるいは賃金の問題も論議できるような状態にしないと、少くとむ政府は手をかまれるのです。ベースアップを押える、ばかなことをするな、資本家の犬だといわれても、その通りでございます。今日のこの世の中で、ベースアップを押えるというばかなことはない。それが物価を刺激するとか、あるいは経済に悪循環をもたらすという理屈を言おうとすれば、こういう資料を持ってこなければならない。それが政治なんです。だから、ねじを巻くところはあなたのところですから、それは大事ですけれども、私ども労働省に統計局を置くことに大賛成をしたのは、こういう意味です。ちょっと口が悪いですけれども、そういう意味で、もっと期待をしていただけに、もっといいものを出してもらいたい。労働時間の問題についても、これを聞けば、倉石さんのような頭のいい人だったら、四十八時間制を四十二時間制にしたらいいと言うかもしれません。そしてこれを調整していくのが政治なんです。少く働くところはふやしていく、よけい働くところは減らしていく、これがすなおな政治なんです。これは社会主義を指向するとか、資本主義を温存しようということには何も関係がない、どちらにも共通する広場です。私はこういう点で実はいろいろな問題があって、きょうは具体的にそういうものをあげて、全部借金払いをしてもらうつもりで労働大臣の出席を求めたのです。佐々木さんもよく聞いておいて下さい。労働大臣をここに出席させないと、日本のためにえらい損なんです。  そこで、せっかく江下局長も来ておりますから、一つだけお聞きしたい。お聞きのように、完全失業は即刻解消しなければならないことはおわかりだと思う。日雇い労働をあのままにしておいてはいけませんよ。そういう意味で、日雇い労働の問題を解決しなければならない。ですから、私が注文しないでもすぐわかるでしょう。越年資金は幾ら出しますかとか——夏季手当の時期になりましたね、国会で責めなければ出せないようなことではしょうがない。今度は何日分出しますか。今度は要求されないでも出すようにできているでしょう、予算をとっておるはずです、その点ちょっと答弁して下さい。
  24. 江下孝

    ○江下政府委員 日雇い労働者に対します夏季の特別措置の問題でございますが、本年度におきましても、その生活の実態にかんがみまして、措置をいたすつもりでございます。その措置の内容につきましては、予算の内容丁ともにらみ合せて、目下検討をいたしております。早急に決定をいたしまして、私の方から指示をいたしたいと思います。
  25. 井堀繁雄

    井堀委員 いつごろ私どもの方に知らせてもらえますか。出すときはさまっているでしょうね。
  26. 江下孝

    ○江下政府委員 確実に何日までというお約束をするのはまことに苦しいのでございますが、大体私どもの見当では中旬ごろには決定いたしたいと思います。
  27. 井堀繁雄

    井堀委員 これは皮肉を言うわけではありませんが、もう予算は通ったのですから……。こういうものは予算外で出すのですか、予算の中で出すのでしょう、ちゃんと組んだら、あのときにほんとうは約束されておるわけです。私は特にこれは議論があるのです。私ども立法措置を議員立法にしたいと思っておりますが、こういうことは、きょう大臣がおれば解決しておきたいと思う。政府はあの法案に対する改正案を出さなければならぬ時期がきておるのです。私はああいう制度というものを否定するのではありません。あれをもっとよい姿に置きかえていかなければならぬ、部分的に要求してはいけないのです。あれは御案内のように緊急失対事業という法律の名前が表明しておるように、一つの過渡的な政策としてとらえられておる。しかし日本現状はそれを過渡的なものとして許さなかった、ますますそういうものをする場が必要になってきたという実際上の問題をあすこでしょっておるわけですから、性格がぐっと変ってきております。その点性格に沿うように改善をしていかなければいけない。これはさっき雇用の問題について統計が出てくれば、その統計の中で一々大臣に証拠を突きつけて答弁を求めるつもりだった。あなたに聞けば、これは専門家だから私どもよりも詳しい。とにかく個人は流れがあるかもしれません。しかし、大体あすこに来る人は老齢者が多い、というのは定年満期ということにならなくても、労働力の非常に価値の高い者を安い賃金で使おうというのは資本主義の時代ですから……。それがこぼれてくる者がある、それを社会政策で見ていくか、労働政策のワクの中で見ていくかという中間的な存在です。しかし労働政策でとっておる以上は、労働政策としての限界をつけるべき時期がもうきておるのです。そうすると、年のいった人とか健康のすぐれない人、労働市場の中で落伍しなければならぬ、個人の責めに帰しない、社会的にめんどうを見なければならない一つ労働層というものがあすこにあるわけです。そういうものに対する一つ保護政策というものが、立法として考えられて置きかえられてくれば一つの前進です。私はこういう基本的なものに対する考え方をしてきてよいと思う。何も社会党が政権をとるまで待っておらなくてよい、これは保守党でやれる、そういう点できょうはこの点に対しては労働大臣はすぐ答えていただける、この次の国会にはすぐ出すと言うに違いないと思う。この点はこの次にやるが、江下局長に注文しておきたいことは、今までもう何回もやっておるのでしょう。全国のわずかのニコヨンの人たちが集まってきて陳情騒ぎをしなければならぬようなことはやめましょうや。今はできぬけれども、今度はこうするという法律と同時に予算にきまったものは出しましょうや。そういうふうにわれわれにもう世話をやかせないようにして下さい。  それからもう一つ、これからニコヨンという言葉が意味をなさぬようになったと同じような意味で、これも労働政策の中でいくとすれば、あの中で変えなければならぬものです。まあ失業救済ではあるけれども一つの層ができたら、そういうものに対して給料をどのくらい見なければならないかというようなものに対しても、私はもっと考え方を改める必要があると思う。そして予算を取るときにも出してもらいたい、この次の予算のときにはこの問題をやりますから。私どもの方としては追い打ちをやってはいけませんから、ちゃんと予告しておきます。そういう意味で、きょうは借金を払ってもらうと同時に一つの予告である。だから統計資料をその前に準備してもらう。その次には今言う日雇い労務者の問題、緊急失対事業法というものが事態に沿うような発展を考えてもらいたい。この点あなたの御答弁だけを伺って、これはこのくらいにしておきたいと思います。
  28. 江下孝

    ○江下政府委員 緊急失対法の問題でございますが、お話のように、発足いたしましたときとは、やや実情も変ってきていると思います。私どもも決して放任しているわけではございませんで、実は法律の内容を絶えず検計を続けているわけでございます。いかなる結論になりますか、私どもできるだけ早目に結論を出したいと考えております。
  29. 井堀繁雄

    井堀委員 せっかくお忙しいところをお休みにおいでいただきました厚生省の人口問題研究所の専門家の方に質問をいたしたいと思っておったのでありますが、不幸にして労働大臣法務大臣が御欠席でありますので、時間をほかにさいてしまったわけ、であります。私どもの知りたいことは、先ほどお聞きいただいたと思いますが、労働政策、特に日本の雇用問題が喫緊な問題であると同時に、今重大な段階にあるわけです。この問題の解決は、先ほど自民党の諸君も力んでおられるように、これは思想の問題やあるいは政党の志向する基本的なものとは違いまして、共通の広場において解決しなければならぬ問題だ。いやがおうでも人口は急に減らすということはできぬことである。今後の増加をどうするかということに問題がある。そういう点で一、二お尋ねをいたしまして、あとでいろいろ資料を提供していただいて、勉強さしてもらおうと思うのですが、一つは現在の日本の人口をどうすればいいかという問題が雇用の問題でちょっと出てきました、そこで将来どういう人口の変化を見込んでいればいいか。これは遠い将来はわかりませんけれども政府は五カ年計画を政策の基本的なものにされております。五年間くらいの人口の見通しというものをわれわれは正確につかんでいかなければならない。この政府の計画はあなた方の方の資料を基礎にされて作られたものだと思うのですが、人口がこのままの姿でいけば五年後にはどうなる、しかしここでどういう手を打つ必要がある、この二つがあると思う。まずこのままの姿で野放しでいけばどういう状態になっていくだろうか、という基本的なことを伺いたいと思います。
  30. 舘稔

    ○舘説明員 人口問題研究所の総務部長でございます。ただいまのお尋ねに対しまして、近い将来に日本の人口がどうなるかということについて私どもの方で研究いたしておりますところを簡単に説明さしていただきたいと存じます。私どもの方では、ただいまお手元に差し回しました印刷物の中で、がり版の二枚紙の非常に簡単なものがございます。この表の四と表の五とに、非常に簡単な形にいたしまして、将来の入口の趨勢を計算いたしたのでございます。大体の計算方法といたしましては、表の四で昭和四十年のところに筋がひっぱってございますが、これは昭和四十年までが比較的科学的に推定できるというところから、昭和四十年を推計することを目標といたしたものでございます。そうしてそれ以後の年次につきましては、昭和四十年の最後のところで仮定いたしましたものを、出生率や死亡率の仮定をそのままコンスタントといたしまして、これをずっと将来に押し広げてみましたものでございます。従いまして昭和四十年までの推計につきましては比較的正確であると考えられますし、ただいま御指摘の通り昭和三十年から三十五年というようなきわめて近い将来につきましては非常に誤差が少いものと考えております。その根拠は、この推計の基礎は、昭和三十年の国勢調査の年令別の人口がまだ発表されておりませんので、昭和二十五年から各年令男女にわけて積み上げてこまかく推計したものでございますが、昭和三十年の国勢調査と比較いたしますと、八千九百三十万の人口について約一万くらいの違いしか出て参りません。従いましておそらく今後五年間くらいのところにつきましては、大した誤差は生じないつもりでございます。ただし昭和四十年以後におきましては、ここに表われております数字よりも出生率が下りますれば、それだけ少くなる見込みでございますし、従って年令の構造む多少変ってくるものと考えられるのでございます。それでただいまお尋ねがございました要点の一つは、現在の変化のままでいったらどうなるかという点でございます。これまでのごく最近におきます変化をそのまま延長して参りますと、あるいはこれよりもわずかに総、人口としては多くねる程度でございまして、これにはいわゆる受胎調節の普及あるいは出生率の低下が、やはり今後政策的な力をも含めて、持続するというふうに仮定をいたしておるのでございまして、現在の程度の出生抑制についての政策がとられる限り大体このような人口が実現してくるもの、さように考えておるのでございます。これは総人口だけの問題でございます。  その次に、ただいま御指摘になりました年令から見ました構造がどう変っていくかということが非常に大きな問題でございます。そのためにこの表の五のところに年令に分けて、各零才から十四才までの子供の人口と、十五才から五十九才の生産年令入口と、六十才以上の年寄りの入口との三つに分けまして、その間の増減を実数をもつて比較いたしましたものが表の五でございます。これによりますと、ただいまお尋ねの昭和三十年から三十五年までに日本の総人口は三百九十万の増加と考えられるのでございますが、これに対しまして現在出生率が非常な速度、下っております関係上、十五才未満の子供の入口は約二百四十万減る見込みでございます。これに反しまして十五才から五十九才の生産年令人口は五百三十万の増加が予想されます。そうして六十才以上の年寄りの人口も約五カ年間に百万の増加という状態でございます。これを戦前の状態と比べますと、これまで日本の人口では子供の人口がふえる一方でございまして、減ったためしはございませんが、今度初めて昭和三十年から三十五年の間で子供の人口が減るということになって参ります。それから生産年令人口の増加は、ただいま先生から御指摘もございましたように、総人口の増加をはるかに上回っておる状態でございまして、五年間に五百三十万、年間約百万と少しばかり平均でふえるという状態でございます。そうしてこの生産年令入口が増加いたしますのは、先ほど先生から毛御指摘がありました通りに、死亡率の改善が特に乳幼児のところに強く働いてきておりましたために、現在から近い将来にかけて生産年令に飛び込んでくる、いわば生産年令人口の予備軍と申しましょうか、そういう子供の人口が現在多いものでございますから、従って今後近い将来においては、これらが生産年令人口に入って参ります関係上、このように生産年令人口が激増いたします。この生産年令人口の激増につきましては、人口の方面ではこれを調節する方法がございません。問題は、これはすでに生れてしまっておる子供が生産年令に飛び込んでくるわけでございますから、人口政策的にこれをコントロールできない人口でございまして、その点が非常に問題だと存じます。  それから老人の人口は死亡率の改善と現在の生産年令人口が比較的多いために老年人口の中に近い将来繰り込んで参りますために、死亡率の改善ということと、現在の生産年令人口が逐次老年人口の中に繰り込むという二つのことを考えますと、比較的近い将来においては老人の増加も多くなることを考えなければならないかと思われるのでございます。  それからその先の昭和三十五年から四十年の五カ年間について申し述べますと、総人口の増加は出生率が下りますためにやや衰えて参ります。この五カ年間に三百十万の増加が考えられるのでございます。ところが日本の出生の減退が昭和二十五年以後に始まりました関係上、これらの子供たちが毎年毎年少く生れたものでございますから、昭和三十五年から四十年までの間では子供の人口はより一そう減ることとなりまして、約四百四十万の子供の人口の減退が予想される状態でございます。これに反しまして、十五歳から五十九歳の生産年令人口は六百四十万から増加するのでございまして、昭和三十——三十五年に比べましてはるかに、百万以上も五カ年間に多く増加するということになります。それからなお年寄りの人口が約百二十万五カ年間に増加するという状態でございます。かような点からはわれわれ人口現象をながめておりまして最も痛感いたしまする点は、すでに先生から御指摘がございました通り、総人口の増加ということも問題でございますけれども、十五歳から五十九歳の生産年令人口の増加、しかもこれは人口政策としてはコントロールすることのできない増加である。従って問題を広げて解釈いたしますならば、国民経済の方からどうしてもこの点では適応していかなければならないのでございまして、人口の方から適応のすべもない人口増加である、こういうことが言えるかと存ずるのでございます。  なお各年次につきまして、非常にこまかい各年令男女についての推計をいたしております。お手元に差し回し度した雑誌の終りの方に付録の統計という欄がございます。その付録の統計の中に、将来人口の推計といたしまして、各年令についてこまかい結果を掲げておいたのでございまして、ただいま申し上げましたのは、それを最も簡単な形に要約したものでございます。
  31. 井堀繁雄

    井堀委員 全くわれわれはこういう問題に対して勉強が足りなかったことを恥じておりますが、今御説明の中で一段と不安を感じますのは、人口調整というものが可能なのは、受胎に対する調整だけであるということになりますと、そう近い将来に人口調整というものについて可能性の限界は、もうきわめて狭いということがわかったと思うのです。そこでその受胎調整の問題ですが、ここの統計をちょっと見ますと、昭和二十五年から三十年の間の出生率というものを二三二で、それから三十年から三十五年を一六一九に見込んでありますね。受胎調整というものは、こんなに数字的に実際に出るものですか。この点どうもしろうと考えでわからないのですが……。
  32. 舘稔

    ○舘説明員 ただいま人口現象としても最も基本的な点についてお尋ねがございました。簡単にお答えさせていただきたいと存じます。  なおただいま生産年令人口増加について人口政策として調整の方法がないということを申し述べたのでございますが、しかしそのことは同時に出生の抑制、たとえば家族計画の普及等が無用であるということにはならないわけでございます。この普及についてはいろいろな意味も持っておるのでございますが、なお多少の意義がこの点で認められますのは、海外移住の問題もございます。それをつけ加えさせていただきます。  次に出生率について、これは一番むずかしい問題でございますが、ただいまの日本の出生率が下っております速度は、一般に考えられておりますよりもはるかに急速度のものでございまして、これは表の三でごらんになっていただきますと、最近の日本の出生率は人口一〇〇〇について一九と相なっておりますが、この一九という数字は、実は私どもの方では世界の文明国の中でもむしろ出生率の最も低いところの数字でございます。そうして戦前の水準が三一という数字でございまして、これに対して、こんなに短かい期間に一九というところまで下ったという前例は、これまでの西ヨーロッパとアメリカの文明国にはその前例がございません。それで現在一九という出生率は、大体国際的に比較いたしますと、あの長年の間出生率が低いといわれておりましたフランスの出生率とほとんど同列になっております。アメリカの出生率などは、最近人口一〇〇〇について二四ぐらいでございますし、オーストラリアもやはり二四ぐらいになっております。それからカナダなんかに至りましては二七といったような状態でございます。それから長年出生率が低いといわれておりますイギリスでございますが、イギリスが一六ぐらいのところでございまして、世界の文明国の中でも出生率の最低限界に非常に近寄りつつあるという状況でございます。  それからこの出生率の価が問題であると同時に、もう一つは下る速度なんでございますが、出生率の下る速度として、これまで一番ひどかったといわれておりますのは、第一次大戦のあとの一九二〇年から一九三二年までのドイツの出生率の下り方が一番ひどいと言われております。ところが日本の現在のこの出生率の下っていく速度を精密に計算いたしますと、あの一九二〇年から一九三二年までのドイツの速度をはるかに上回っておるのでございまして、その点で日本の現在の出生率の限界速度はこれまで世界の文明国でほとんど経験されなかったほど激しいものだというふうに考えられるのでございます。そうしてこれは各年令の母親につきまして一々こまかく出生率の下り方を研究いたしまして、それを総合いたしましたものがここの推計出生率ということに相なっておるのでございます。特に現在の日本では年令三十歳以後の出生率が非常な速度で下っておるのでございます。これまでの日本の出生率は母親の年令の三十過ぎてからの出生率が、特に外国の文明国に比べても非常に大きいのが特徴でございました。それが最近では非常な急速度で下ってきておりまするし、特にまた二十歳未満のところはもちろんのこと、二十歳から二十四歳といったような最も出生率の高い年令における出生率が、特に最近でございまするけれども、非常に急速度に下って参りました。このような点を考慮いたしまして——これはここには全体のごく荒っぽい出生率しか出ておりませんけれども、これを各年令の母親に分けてこまかく計算して総合したものがこれでございまして、大体ただいまのところ昭和四十年までは出生率は大体このような傾向をたどるもの、ただしそれにつきましては現在行われておりますようなたとえば受胎調節の政策とかこれらの政策がゆるめられないで現在の状態もしくはそれ以上の力で推し進められる限り、こういう出生率は大体実現するものではなかろうかと予想いたしておる次第でございます。
  33. 井堀繁雄

    井堀委員 もう一つお尋ねしたいのですが、受胎調節に対する知識は私は皆無ですけれども、全くこれは的はずれの質問かもしれませんが、受胎調節と人口調整の問題は非常に密接な関係があることはそのまま認めたい、だからそういう意図からいたしますと少々急激だと思われても、極端な受胎調節を必要とするという客観的な条件はあると思うのです。しかしこれは将来日本民族全体の立場から計画を立てる場合に、そういう過渡的な政策のつもりでやったのが、将来の民族に非常に大きな不幸を残すようなことになりはせぬか、大体そういう歴史もあるように聞いておりますので、こういう点については一方には目的を急速に達成したいという私どもの立場は、さっき申し上げるように労働力人口の調整を急がなければならぬという迫られたものを感じておるわけですけれども、しかしそれと受胎調節というものが民族の一つの悪い習慣としてあるいは後天的な性格のようなものになって焦げついたら救いがたいものにもなるという危険もあるのではないか、しかしこれは全くしろうと考えであるということであれば安心ができるのです。そうでないとするならばここに依存するということについては何か別の政策をあわせ行うことになる。こういうことに対して心配をしておるのです。
  34. 舘稔

    ○舘説明員 ただいま御指摘の点につきまして簡単に御説明申し上げたいと存じます。この人口増加を調整するということが現在非常に重要であることは御指摘の通りでございまするし、しかもこの人口増加の速度を調整するに当りまして死亡率を調整する余地が比較的幅が狭いものでございますから、勢い人口増加率を調整しようといたしましたならば、出生率の調整に待たなければならないということも御指摘の通りでもございます。ただこの出生率の調整が将来の民族の人口に対してどういう作用を与えるかということにつきましては、現在のところ純粋に学問的に申しますならば、世界の学界でも論争がございまして、まだ落着はいたしておりません。ただ日本の将来について確かに言えますことは、少くとも昭和五十年もしくは六十年に、ここに仮定して推計いたしましたような程度で人口構成が変り、人口増加率が変るという程度ならば、ごく客観的に見まして、現在の欧米の文明国程度の変化の仕方でございまして、直ちにこれによって民族の将来が不安であるということは今のところまだ言えないのではなかろうかというふうに考えておりまり。純粋に理論的に開き直りますと、これは世界でも、まだ結論の出ていない問題でございまして、しかし最も重要な問題であることは確かなんでございますが、少くともこうして計算してみます限り、昭和五十年もしくは六十年といったような比較的短い今後の一世代の間をとって考えます限り、私はそれほどの危険はまだ感ぜられない。大体現在の西ヨーロッパの文明国が経験した程度の変化しか人口構造には起って参りませんということだけは確かに言えると存じます。
  35. 中山マサ

    ○中山(マ)委員 関連して、この出生率がこういうふうに減って参りまする階層は、どういう人口の階層でございますか。いわゆる労働者層あるいはインテリ層というようなものを分けましたら、どこが一番顕著でございますか。
  36. 舘稔

    ○舘説明員 ただいまのお尋ねの点につきまして現在の状況を簡単に申し述べます。現在受胎調節が最も普及しておりまする階層は俸給生活者の階層でございまして、これに次ぎましていわゆる自由営業者丁と申しますか、独立営来者の階層でございまして、それから労働者階層、それから一番受胎調節の背及の度が低いのが農民と漁民、大体とういう分布になっております。
  37. 中山マサ

    ○中山(マ)委員 そういたしますると、労働者階層と申しますれば、けさ同いておりましたように、いわゆる賃金の未払いとかいうような非常に苦しい階層の方が、いわゆる昔から貧乏人の子だくさんとかいうような悪い言い草も残っておるのでございますが、こういうような向きの人たちの生活状態を改善するために、これが役に立っていない。比較的生活が安定しているような人たちの方が逆にこれをやっておるということになりますると、全体からひっくるめていって、就職だとかあるいは入学だとか、そういう問題についての解決は幾分か見てくるでありましょうが、生活に苦しい人たちにもう少しいい生活をさせることに役立っていなというような結論を出さなければならぬと思いますが、そういう人たちに対しても、よりよき安心した生活ができるようなことに対しての御努力、今日までのいわゆる啓蒙運動と申しましょうか、たとえば大阪市でございますが、聞いたのでございますが、今厚生省の方でも考えていらっしゃいますようないろいろな器具を無料でやるというようなことを大阪市では現在やったのでございます。しかしこれを使ってくれないというのが結果でございますが、そういうふうなことに対するまでの御努力、そうしてその結果と申しますかそれをちょっとお知らせ願いたい。
  38. 舘稔

    ○舘説明員 ただいま御指摘の点につきまして簡単にお答えさしていただきます。人口政策という見地から見ました場合に、この問題につきましては学問的にはいろいろ問題のある点でございまするが、私どもの立場といたしましては、少くとも人口政策として見る限りにおいては、特定の階層を予想しない。つまりその意味は、平たく申しますと貧乏人は子供を産むなといったような線では工合が悪いのじゃないかというふうに人口政策の面からは考えておるのでございます。そうしてこの点につきましては、幸いにして現在こういつた受胎調節普及の政策などが政府政策として取り上げられて参りましたので、この点に重点を置くとこによりまして、ただいま御指摘になりましたような労働者階級あるいは農民層に入りにくい受胎調節が漸次日本では普及の度を高めつつあると考えましてよろしいのではなかろうかと存じます。この点は西ヨーロッパの文明国の場合と日本の場合と非常に違って参りまして、西ヨーロッパの文明国では受胎調節の普及がいわば一つの全く自由な文化運動として発展いたしました関係上、比較的この思想の理解しやすい俸給生活者間に強く普及いたしたのでありますが、日本では、人口政策といたしましてこれが政策的に取り上げられるということになりますと、自然の場合よりも、もっと必要とされる階層で、しかも入りにくい階層というようなところにはかえって普及しやすいのではないかというふうに考えております。私どもの方でもその点は絶えず注意いたしまして調べておるのでございますが、たとえば一つの地域とかあるいは一つの職域とかで、こういった特殊の指導のめんどうを見られたところにおきましては、非常に普及率がすみやかだということが私ども研究の結果わかりましたので、従いましてこれにつきましては、適当な職域なり地域なりを個別的に指導していくという方法でもってこの家族計画の普及は確かに可能たという確信を最近得てきておるような状態でございます。ただそれにつきましては、先ほども御指摘の通りに、個々の重要な職場もしくは地域等におきまして十分な指導が行われませんと一しかもただいま大阪市の例について御指摘がございました通り、まことにその通りなのでございまして、むしろ非常に気長と申しましょうか、それこそひざをつき合して話をして、よく納得してもらうというような、きわめて個別的な指導が必要かと存ぜられます。幸いにして近ごろそういったような指導の仕方がそれぞれの地域の自発的な意思によって、あるいはまた事業体の自発的な意思によって行われるようになりました。そういうようなところでは、普及の度が、私どもがこれまで調べて参りましたところよりもはるかに急速の模様でございます。従いましてそういったような指導方式をとるならば、普及の可能性が十分あるというふうに感じておるのでございます。  それからなお現在の政策といたしましてどういう政策が行われておるかということにつきましては、これは直接私どもの所管でございませんので、こまかい点は申し上げられませんが、ただ研究者の立場から見ておりますと、幸いにして現在の受胎調節の普及の政策がどうやらその効果をおさめる段階に入りかけた状態ではないか、ごく客観的に見ますとそういうふうに考えております。
  39. 井堀繁雄

    井堀委員 人口問題は非常に各般の政策と深い関連を持つ問題でございますので、いずれまた適当な機会を委員長にお作りいただいて、一つみっちり検討いたしたいと思っております。ことに住宅政策あるいは社会保障政策等は、この問題と離れて今論議が行われておるというのは一種の奇形的な姿だろうと思います。こういう問題と関係をさせてもっとお尋ねをしなければならぬと思うのですが、きょうは労働関係でございますので、ついででありますから一問だけお尋ねして終りたいと思います。  それは、またそういうことについて御研究をなさっておいでになると思いますので、もしそういう関係資料がございますならばあとで提供していただきたいと思うのですが、さっき他の委員からお尋ねがございましたように、受胎調節というものが必要なところにぴったり実施されているかどうかということに対して私ども疑いを持っているわけであります。これはいろいろな障害が横たわっておると思います。一つは、やはり環境というものが——一番極端な例をとりますと、私はどういう受胎調節の手段方法があるか詳しく知りませんけれども、小さな部屋に多くの家族が同居しておるようなところでは、そういうようなことは求めても実行できない。そういうようなことでは、これまたそういう人たちには何らの恩恵を与えることができぬということになりましょうし、環境というものがいろいろあると思います。そういう環境に見合うような方法があるのかないのか、ないとすれば、どうすればよいか、これはそういう環境が改まらなければだめだということになると、必要なところに必要な政策が要るということになるでしょうし、いま一つは、生活の内容といいますか、今のそれも一つ生活の内容ですが、食生活日本では古くから禅宗、宗教の中で、食べもので性欲を抑圧するというようなことが行われておる。これは性欲との関係もありましょうし、道徳の関係あるいは広い意味社会教育、こういうような問題、また将来の弊害その他を考えて総合的に取り上げられてこないと、民族の運命を左右するようなことになるであろうと思います。当面の必要性を満たし、かつ民族の将来にも貢献できるような——虫のいい要求ですけれども、そういうことをわれわれとしては考えなければねらぬ。でありますから、この問題について今私があなたにお尋ねいたしたかったのは、労働問題、ことに雇用の適正な配置をしようとするための必要でお願いをしたわけですが、だんだん聞いておる間にこのことも直接関係の深いことだと思いましたので、もしそういうようなものに対してこういった資料がありましたら、また別な機会もありましょうけれども一つお願いいたしたいと思います。
  40. 舘稔

    ○舘説明員 ただいま非常に重要な点を御指摘いただきましたので、一言だけわかっておりますことをつけ加えさせていただきたいと存じます。  ただいまの普及条件としての一番大きな問題が環境条件でないかという御指摘でございますが、まことにその通りでございます。しかし環境条件に対しましては、現在技術の発達が、漸次環境条件を無視する、と言うと言い過ぎでございましょうけれども、環境条件のいかんによっても適応し得るような技術が最近では相当進んでおると考えられます。  いま一つは、それと相互に関連してくる問題がございますが、費用、器具の問題であります。これらの点につきましても、安上りでどんなところででもできるような受胎調節の方法というものが最近漸次発達をいたし、また事実上普及いたしかけたような状態でございます。それから食生活の点、つまり食生活に関連いたしましての問題といたしまして御指摘になりました点、これも——問題点でございます——特に性欲の問題でございますが、性欲につきましては、性欲の変動というものと受胎とが直接関係をしないようにする手段が受胎調節でございます。その意味におきまして、性欲の変化のいかんにかかわらず、受胎を防ぐ方法、そこに、現在の方法としては一つの方向がございます。ところが、これに伴いまして、ただいま御指摘の通りに、社会倫理、それから社会教育の問題でございますが、これは受胎調節もしくは家族計画に関する限りぜひとも必要な条件でありまして、この二つの点がございません限り、いわゆる受胎調節の乱用と申しますか、手段の乱用が起る可能性はあらかじめ認めなければなるまいと存じます。従いましてこの点から私どもが考えておりますのは、受胎調節の普及ということは——受胎調節ということは技術の名前でございますから、技術の普及ではなしに、さらにその根底にわれわれの生活態度と申しますか、いわゆる合理的な、また人道的な生活をする者の考え方と申しましょうか、受胎調節から離れまして、もう一つ上にある家族計画の理念の普及ということをあわせて考えているような次第でございます。  それからただいま御指摘の資料の一部分につきましては、お手元に差し回しました戦後日本の人口問題という資料の中に一部分——全部ではございませんし、また大へんこれは調べにくい性質のものでございますので、先生の御期待になるような十全のな資料ではございませんけれども、この資料の中に大体の動向はわかり得る程度の資料を、要約いたしまして、これに分析的な説明をつけておいたのであります。なおこの資料はあまり外にまいておりませんので、部内の研究の種に作ったもので、研究論文的なものでございますから、そのおつもりでごらんいただきたい。このプリントの四十七ページ以下のところに、御指摘の大体の傾向をわかり得る資料は、一応集めておきましたから、ごらんいただきたいと存じます。
  41. 井堀繁雄

    井堀委員 大へん貴重な資料を提供していただき、かつ説明を懇切にいただきまして、啓蒙されるところが非常に多くて感謝いたしたいと思います。なおもし対外的にはばかるような資料でありますならば、秘密は厳重に守りますから、ぜひ一つどんどんわれわれに資料を提供していただきたいと希望いたしまして、私の質問を終りたいと存じます。
  42. 滝井義高

    ○滝井委員 ちょっと一、二点だけ労働省にお尋ねしたいと思います。井堀委員から日雇労働者の夏季手当の問題が出たのですが、今何日分出すということは御答弁ができないようでございますが、もしそれをお出しになったときに、昨年の暮れに六日分を出したときと同じように、生活保護関係の日雇労働者の夏季手当を得た分を、生活保護費の中から差し引かないような措置というものが、今度はやってもらわなければならぬ。十分今度は厚生省の社会局と連絡の上やってもらわないと、どうも昨年の十二月の状態を見ても、福岡県等がやっておるだけで、他はやっていない。こういう状態が見えるようであります。その点一つここで御言明をしていただきたいと思います。
  43. 江下孝

    ○江下政府委員 お尋ねの、日雇就労者でありまして生活保護を受けます者の夏季及び暮れの特別措置の恩典が、事実上受けられないという問題につきましても、先般滝井先生から御指摘がございまして、厚生省と十分打ち合せをいたしまして、今回から行います措置についてはこういうことのないようにということで、厚生省から指示をすることに相なっております。
  44. 滝井義高

    ○滝井委員 ぜひ一つ市町村及び各県の当局に、十分間違いのないようにお願いしております。  次にお尋ねしたいのは、最近六大港あるいは関門港等で外国汽船会社が自己所有の船舶への荷積み荷おろし作業を自営をする行為が頻発をしておるということをいわれておりますが、そういう事実があるのかないのか、これを説明して下さい。   〔委員長退席、野澤委員長代理着席〕
  45. 江下孝

    ○江下政府委員 運輸省の調査によりまして承知いたしたのでありますが、在ボルネオの英国系ジャーデン・マジソン会社に所属する船舶が、先般東京、大阪、関門の港湾に入港いたしまして、自船船員による一部船内荷役の積みおろし作業を行なったということを聞いておるのであります。私どもの聞いておりますのは一応現在のところそれだけでございます。
  46. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、そういう外国船が、作業自営のために労働者を自分の船に乗せてきてやるということは、それは国内法ではどういうことになるのですか。
  47. 江下孝

    ○江下政府委員 これは港湾運送事業法がまず一番問題になる法律だと思いますが、これについては実は運輸省にも数回聞き合わしてみたのでありますが、運輸省におきましてはなお実情を詳細調査検討中であるということでございます。いずれにいたしましても、かかる外国船舶が自分の船で荷役をやるということは、国際慣行なりあるいはわが国の港湾労働者の就業状況等からいたしまして好ましくないと私は考えております。これについては運輸省といずれ相談をいたしまして、そういうことが今後できるだけ起らないようにということで解決して参りたいと考えます。
  48. 滝井義高

    ○滝井委員 今後起らないようにといっても、現にそれが行われているということになると、なかなか問題だと思うのです。そういう場合に、どうもきょう運輸省の方がおいででないので、これ以上追及しにくいことになったのですが、これはあなたの方で責任を持って、今後運輸省と十分話し合ってそういうことが起らぬように責任を持てますか。
  49. 江下孝

    ○江下政府委員 先ほど申し上げました船は、これは滝井先生も御承知と思いますが、東南アジアの港湾では荷役労務者が不足しているために、東南アジアへ寄港する場合には荷役労働者を特に積んでいる。それがたまたま日本の港に来て、その積んできた労働者に荷役さしたという特殊な例で、今後そういうような傾向にすべてがなるということではなかったように私どもは承知しております。従ってこの問題は国際問題などという大きな問題でなくして、個別的な折衝で解決がつくということで、運輸省と相談をしております。
  50. 滝井義高

    ○滝井委員 どうもそこらのこまかい事情は実は知っていなかったので質問することになったのですが、もしそういうことが明白であれば、これはやはり港湾労働者等一般に非常に心配しているという事態がありますので、一つ労働省の方で至急そういうこまかな事情を港湾労働者の方に御通知いただいて、これはきわめて例外であった、こういう例外も今後できるだけ発生しないように努力するということを、運輸省ともお話し合いになって御通知願いたいことを要望いたしておきます。
  51. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 安定局長に二、三質問をいたしたいのですが、実はわれわれペテンにかかったという感じを持っている。それは今から質問する第一点の問題は、地方交付税の標準財政需要額の算定の範囲の問題であります。もう一つの問題は石炭鉱業合理化臨時措置法の施行に伴う失業対策の問題です。この二点について質問をいたしたいと思います。  まず前者の地方交付税の算定の基礎でありますところの単位の問題が、実に県におきましては四千二百二十一円というのが、今年一月から五千六百二十九円になり、さらに今年四月からはこの地方交付税の一部を改正する法律案が通過をいたしますと、それが一万五千九百十四円になり、また市におきましては六千八百七十五円というのが九千百六十七円になり、さらに今度の法律の改正で一万五千九百十四円になる。こういうことで今まで失業対策の地方負担分が実際自腹によってまかなわれ、そうして赤字財政に拍車をかけている。こういう点もその面においては解消される、こういうことでわれわれ安心をしております。実は失業対策事業費の全額国庫負担という問題もありましたけれども、この単位費用が非常に上ればこれによって解決されるのではないかということで、そういう要請につきましても、一応われわれの側から納得してもらったような事情があり、また局長自身が、今度は大幅に上りましたといってわれわれに言われたので、われわれもそういうことだな、こういうふうに考えておりましたところが、はからずも、失業者一人当りという、一人というその基礎数字を今度は変えたんだということになった。そこで今まで私たちは非常に安心しておりましたが、これなら何にもならない、従来と一つも変らないじゃないか、こういうことになって参ったわけです。従来は、この一人というのは、その市において住んでおりますところの失業者一人を当然やりますし、県におきましてもやはりその失業者をやる、すなわち同じ失業者が県の地方交付税の算定の基礎にも入り、市の方にも入っておる。だから両方とも非常に少く入れてあったのです。ところが今度は、一応金額は上りましたけれども、失業者を分けるんだ、いわば同じ失業者が1同じ失業者と言ってはちょっと語弊がありますが、千名なら干名という失業者がおるとすると、四百名は市がやる、あとの六百名は県が負担するんだ、こういうことで、従来の算定基礎と全然違う方法を持ってきたわけです。ですから、われわれ単位費用が非常に上ったと喜んでおりましても、これならば意味をなさないじゃないか、こういうように考えるのですが、労働省としてはどういうようにお考えであるか。
  52. 江下孝

    ○江下政府委員 今のお尋ねの問題、ペテンにかかったというように先生の方ではお感じになったかもしれませんが、私といたしましては、先生に申し上げたときは、まさしくこの算定基準が上るというだけを承知して申し上げたので、決して先生をペテンにかけるつもりで申し上げた気持はございません。ただ今お話のように、算定基準の労働者の計算におきまして、従来はダブって計算されておったのが、今度は県は県、市は市というように分れた、こういうことでございます。その点は、仰せのごとく確かに従来よりは悪くなりました。しかし私の方で計算をしてみますと、それでも従来よりは県も市もおのおの有利になっているということは言えると思います。ただ、五千なんぼが一挙に一万五千になる、こう申し上げた点については、確かにそれだけでは正確じゃなかったので、その点は間違いでございました。おわび申し上げます。
  53. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私は今度の取扱いのように、県と市と分ける、こういう方法もこれは一案かと思って、別にそのこと自体を否定するわけでもありません。しかし私たちは、労働省局長の方も初めは私と同じように解されておったのではなかろうかと思う。そこであなたを責めるわけではないのですけれども、上ったと考えておったのが、事実は全くぬか喜びであったのです。それは若干上っておるかもしれませんが、この不合理性は依然として解消されていない、ここに問題があると思う。ですから、この点について、依然として市の負担が算定の基礎に入っていない、こういうような状態では非常に困ると思うのですが、どういうようにお考えであるか、今後またどういう運動をされようとしているのか。
  54. 江下孝

    ○江下政府委員 今のお話は、たとえば大牟田なら大牟田が、従来の算定基準が六千円であった、今度は一万五千円になるということで、これは市の場合におきましてはそれだけ増加になるということは言えるんじゃないかと思います。だから今申し上げましたように、たとえば大牟田におきましては、三十年度に比し三十一年度は八百七十七万円の増加になる、こういうことでございます。
  55. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 従来よりも多くなることは事実です。それは私は否定しません。このような比率でいくんじゃないけれども、それじゃどうかというと、従来よりも多くなることは認める。しかし結局依然としてその財源を探し求めなければならぬという状態にあるでしょう。それは市は受益者じゃないか、若干負担をする分については、受益者であるから、交付税に全部入れるということになれば当然地元負担というものは考えられぬというような、受益者負担という概念からはずれて、それなら全額国庫負担と同じじゃないか、こういう議論をする人もある。これは澁谷さんがぼくにそう言った。ぼくは、はなはだけしからぬじゃないか、それは交付税をまるまるくれるならそうだけれども、それは算定の基礎になるのであって、交付税をくれるわけじゃないじやないか、だから交付税の算定の基礎にまるまる入っておったって、それは何も受益者が、全額国庫負担になって、市は非常に得だという観念にはならないという説明をしたわけです。  さらに質問をいたしますが、今のお話は、三十年度の実績と、三十一年度の、この法律が通過した後の計画とを比較されたものだと思う。そういたしますと、三十一年の一月から三月までやりました単位費用の引き上げを三十年度分について見れば、三十年度もそれが実施されたと考えれば、三十一年度との比較はどうなりますか。
  56. 江下孝

    ○江下政府委員 今申し上げました数字は、一月から引き延ばした数字だそうでございます。
  57. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 一月から三月までの単位費用を、さかのぼって三十年の四月から十二月までの分についても適用しての数字ですか。
  58. 江下孝

    ○江下政府委員 そうだそうです。
  59. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 それにいたしましても、若干上るということは肯定するのですけれども、これじゃ解消しない、依然として問題が残る、私はこう言わざるを得ないわけです。ですから、もう全額国庫負担という線を強く出してもいい時期にきている。事業を起したからといって、それが市の受益になるような考え方でなくて、もう市は事業を起すことが非常な負担になっている、こういう実情ですから、全額国庫負担というのは、現在の法律に書いてある。一部または全額補助をすると書いてある。現在の緊急失業対策法には、全額という文字が使ってあるんです。ですから本来立法当時には、全額国庫負担ということが法律の中にあるのですから、今日のような失業状態で、しかも集団的に失業者が発生するというような状態法律が予想して書いているのであるから、当然全額国庫負担ということを打ち出され、それが認められてもしかるべきだと考えるのですが、どういうようにお考えですか。
  60. 江下孝

    ○江下政府委員 最近の情勢から見まして、全額負担という要望は強いのでございますが、私ども仕事を進める。上におきましては、これは全額負担にしていただければ非常に楽でございます。ただ国と地方財政との全般とのつながりということ、さらには、先ほどお話に出ましたように、他の一般の問題、たとえば生活保護との均衡、そういった点から考えまして、直ちにこれを全額負担にするということは実はなかなか困難なことでございます。何とかして実質的には全額的なものに持っていきたいということで、今後とも極力努力はいたしたいと思いますが、今ここで全額負担にするということをお約束することはできないのでございます。
  61. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 すでに緊急失業対策法の九条が費用の点についてはっきり明記をしている。それを大蔵省でも労働省自体でも、受益者というものが負担をすべきだという考え方が依然として残っておる。その点が私はきわめておかしいと思う。法律は「失業対策事業は、国が、自らの費用で、又は地方公共団体等が、国庫から全部」全部と書いてある、「全部若しくは一部の補助を受けて、実施する。」ですから、法律は地方公共団体が国庫から全部の補助を受けて実施するということを予定をしておるのです。何も法律改正をしてやらなければならぬという事態じゃないのですから、今日のような状態では全額国庫負担こういう地方公共団体があってしかるべきである、かように考えるわけえです。一体どういうようにお考えですか。
  62. 江下孝

    ○江下政府委員 先ほど申し上げましたことを繰り返すことになりますが、労働省といたしましては、先般の三十一年度予算の折衝に際しましては、一部全額負担という線を持ち出したことは、御承知の通りでございます。今申し上げましたような事情で、これが一部特定な市町村、府県に対しまして、五分の四までの引き上げを認めるということで、本年度は実は妥協したわけでございます。そこで将来の問題としては、その趣旨で私ども努力はいたしますが、本年はこれで一つ実施させていただきたいと思います。
  63. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 実はわれわれも西田前労働大臣に吹きまくられた感じがある。われわれが率を上げてくれと言えば、いや率を上げる程度じゃなくて、全額でいくんだ、こう言う。それからけい肺法につきましても、われわれがせめて五年にしてもらいたいと言えば、彼は一生涯にするんだ、こういう理想だけを掲げて現実に行わず、大臣の職を去っていったわけですが、われわれとしてこの政府に対してかなり大きな期待を持ったところに誤まりがあったと思うのです。それは繰り返してもいたし方ありませんので、ぜひ御努力を願いたい、かように希望しておきます。  なお次の問題といたしまして、具体的な問題ですが、石炭鉱業合理化臨時措置法ができます際に、失対事業は市町村に迷惑をかけることはない、国で責任を持ってやります、こういうことでございました。ところが局長もよく御存じの直方の周辺にある木曽、野上、原口という三つの炭鉱が、この法律の実施に伴いまして事業団に対して売山処置を行なったわけであります。そうしてすでに一月からこれらの山は閉山をしておるのであります。いまだに離職金ももらってない。失業対策も全然できてない。こういうことで、特別失対でもやってもらいたいということを言っておるのでありますけれども、それも実行されていない。こういう状態では、私たちは政府法律を出す際に、その法律の実施後の処置について答弁をしても、われわれは今後承服できないと思うのです。すでに家族にいたしまして五百名程度の世帯が、失業にほうり出されておる。しかも直方市は御存じのように、非常に市としては疲弊の状態になっておる。ですから市独自で失対をやろうとしても、財政上窮迫していてできない、こういう状態でございます。そこで何らか特別失対でも起してもらいたい、こういうことを言っておるそうですが、それも処置ができない。これで一体どうしろと政府は言うのですか。ですから、これに対して何らかの対策を立てて、早く失業対策を実行してもらいたい、かように考えるのですが、労働省としてはどういうようにお考えであり、いつ実施の運びに至るのですか。
  64. 江下孝

    ○江下政府委員 仰せ通り直方地区におきまして、特に石炭鉱業合理化臨時措置法によります離職者が、すでに発生いたしておるのでございます。これは先生も御承知と思いますが、まだ正式の契約による前に実は解雇をいたした、こういう事態になっております。これはまことに私どもとしては残念で、この点は通産省にも厳重に申し入れもしておりますが、通産省といたしましては、買い入れの話を始めた時と買い入れの実施時期を、今後はできるだけ縮めてやるということを言っておりますので、ぜひそうしてもらいたい。そういう点で実は若干私どもの方に手違いもございましたことは率直に申し上げたい。ところが事実問題としては、お話通りすでに一月以降、相当数の離職者が出ております。失業保険をもらっておるという段階でございます。そこでこれにつきましては、閣議決定の線もございますし、市、県と相談をいたしまして、早急に現在いかなる事業を起してこれに吸収するかということについて相談いたしております。ぜひ大量の失業保険が切れる前にこの計画を作りまして、実施に移すということで考えております。なおこの問題の処理につきましては、中央に労働対策連絡協議会というものが各省間で作られておりますので、現実に地方の計画ができましたなら、この協議会にかけまして、そうして各省間の調整をはかって実施をしていく。ちょうど駐留軍の失業対策と同じような方向でこれを解決して参りたい、かように考えております。若干時期のずれましたことは申しわけなく思っておりますが、早急な対策を立てて処理いたしたいと考えております。
  65. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 実は売山をしょう、こういう計画を立てるような山ですから、賃金が非常に低い。ですから平均賃金にいたしましても、二百五十円の失業保険までならない、かような状態です。ですから私は特別失対でもして、失業保険を一時停止しても、そういう者を仕事につけたいと希望しているものですから、これは早くやっていただきたい。大体売山の処置の申請をして、その契約の許可のないうちに首を切って、そうして離職金を六カ月も渡さないなんということはけしからぬと思う。これは企業家が悪い悪いと言うけれども法律を作るときに当然これは予想されたことですから、われわれは注意をした。ところが、いや、そういうことはありませんからといって法律を作っておいて、法律ができたら、もうあとは野となれ山となれということでは非常に困る。これは政府責任をもって失業対策をする、こういうことの条件でやったわけです。ですから私たちはそういう問題については積極的に一つやっていただきたい、かように考える次第であります。それからあなたの方からも離職金を早く渡してもらう、こういうことを一つ石炭局を通して事業団に申し入れて実施してもらいたいと思う。なぜかと申しますと、この法律ができました当時と現在では、状況が若干違いまして、中小炭鉱では非常に活気を呈して参りました。そこで移動さえすれば仕事があるという状態が、若干出てきておる。ところが長い間の賃金未払いの上に、離職金はなし、退職金はないというので移動ができない。移動すれば何も失対事業の中に入っていかなくてもいいんですから、離職金を早く出してやっていただけるようにやれば、私はかなりこの問題は解消すると思う。ですから労働省の方から一つ強力に、石炭局を通じて、事業団に離職金を渡してもらうよりな交渉をしてもらいたい。そのようにお願いをいたしまして質問を終ります。
  66. 江下孝

    ○江下政府委員 ただいまの問題はお話通り私は考えております。結局離職金をもらえないために、山にいつまでも居ついておるというようなこともあるようでございますので、この点は通産省とも過去におきまして一、二度折衝いたしましたけれども、さらに強く申し入れをいたしたいと思います。
  67. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 呉の失対の問題は、具体的にどうなっていますか。もう万全の対策は立っておりますか。
  68. 江下孝

    ○江下政府委員 これにつきましてはさしあたりの措置といたしましては失業者を吸収する事業を起すということであります。これにつきましては一昨日でありましたか、関係省が集まりまして、自治庁もできるだけ呉市の財政負担については考慮するということによりましてこれらの事業を施行するということになりました。総額五億程度たったと記憶しております。     —————————————
  69. 野澤清人

    野澤委員長代理 次に社会保障制度医療制度及び公衆衛生に関する件について調査を進めます。発言の通告かありますから、これを許します。五島虎雄君。
  70. 五島虎雄

    五島委員 問題は特に一地域の問題に限定された問題ですが、国会もいよいよきょうで終ろうとするときにたくさんの同僚諸君から質問が山積しておるだろうと思いますけれども、短時間のうちに質問を終了していきたいと思いますから、同僚諸君もあまりおられないのですけれども、お許し願いたいと思います。問題は当局もよく御承知だろうと思いますけれどむ、この問題の解決については、十年間いうならば放置されておる問題であって、その問題が解決していないものですから、あえてきよう最後の日として当局のはっきりした態度、考え方を承わっておけばそれで私の質問は終了するわけでございます。この十年間放置されておる問題というのは、これは昭和二十一年五月に、ときの駐留軍の命によりまして、学童に対して腸チフスの予防注射の接種を校医が実施いたしたのでありますが、ちょうど正当なる校医がよそに旅行中であって、その奥さんが女医ですから、かわって予防注射を実施した。実施する学年は三年及び四年の学童ですが、ところが注射をしたその晩からすべての学童が発熱をいたしまして非常に苦しんだわけです。そこで当時終戦直後の変動の社会情勢の中にあるにかかわらず非常に社会問題になりました。ところがたまたまその予防注射を行なったところの女医さんは開放性結核患者であったということであります。そこで兵庫県におきましてもこれが非常に問題となりまして、刑事問題となって発展いたしました。開放性結核患者の女医が注射をしたのであるから、それが急激な発熱にまで発展したのである、と一方では主張いたしますし、女医の方はそういうことはない、注射自身が悪かったのであるということで双方水かけ論のままこの事件解決を見ないままで進行していったわけですけれども、しかしながら刑事問題は別にいたしまして、予防接種を行ってもらったところの学童自身が百七十五名発熱をいたしまして、その後すべてが結核にかかってしまった。そうして死亡した者が二名おり、重症患者が四名できて、そうしてその後予後観察者という者が百数十名に及んでおると  いうようなことであります。この問題については神戸市兵庫区の道場小学校管下において起きた事件でありますが、ほとんど百七十五名の学童が発熱したということは、小さいいなか町のほとんどの子弟がこれにかかってしまったということであります。自来二十一年から今日まで十年間歳月が経過いたしまして、そうしてさいぜん申しましたように死亡した者が二人あり、重症患者が五名あるというようなことで、それから予後観察者がだんだん病勢が変化いたしまして、重症者に推移している今日から見まして、非常に家族の人たちは心配するあまりに、この問題を何らかの解決をしてもらいたいという要望が非常に高まってきておるわけであります。昭和二十一年の駐留軍占領におけるときの地元民の要望と現在における地元民の要望というものは少しばかりやはり感情の問題についても相違を来たしておるのじゃなかろうかとも思われますけれども、すでに十年を経過いたしました今日においては、小学校の三年生あるいは四年生の人たちも年をとりまして、あるいは大学に進み、あるいは就職適齢期であり、あるいは女生徒だったら結婚適齢期であるわけです。ところがやはりいなかにしますと、一度結核に侵された人たちの結婚条件というものは、非常な悪条件に置かれるわけです。それからまた就職の機会というものも、健康な者が優先的に就職の機会もございますから、就職の機会すらも失われる状況であります。そうしてまたあたら能力を持っておってもやはり結核に侵されておると勉強というようなものも持続できないというように健康的にも悪条件に置かれますから、いろいろな問題で、これは一地区に限った問題ではありますけれども、非常に重要な問題ではないかと思います。調査いたしますると、昭和二十一年は、敗戦後でありまして、駐留軍の命を受けて各地にこれに類した数個の事件が広島とか、北関東方面でも発生したというふうにも聞いておるわけでありますけれども、駐留軍の正当なる命令を今度は県が実施した。そうしてこれを実施された学童自身については、非常に大きな一生の問題としてわれわれは取り上げなければならないと思うわけです。従ってこの十年間にあるいは兵庫の県議会から、あるいは神戸議会から、あるいは地元から、あらゆる姿によって政府に、厚生省にずいぶんだびたび陳情が行われておるだろうと思います。こういうような問題については政府の国家賠償というような法的の根拠がございませんから、当局も非常にお悩みになるだろうということは推測できるわけですけれども、しかし駐留軍の命令であろうとも、それに協力し、実施し、衛生的に生活しようとするところの住民にとっては、非常に大きな犠牲ではなかろうかと思うわけです。そこで吉田内閣から鳩山内閣に移って、大臣ももうすでに二回もかわられました。大臣も新しい、政務次官も新しい。そこであらためてこの問題について、特にこれに類似した事件についてどういうようにお思いになるかということを、きようは大臣に意見を聞きたいと思いましたが、いろいろ参議院の都合等で出席がないわけですから、いたし方がありませんけれども、おそらくこの十年間におけるたび重なる陳情について、厚生当局とされましてはいろいろこの問題について地元の住民が満足するような方法を考えていられるのじゃないかと思うわけです。こういう機会をとらえてでも、公的に聞いておかなければ、地元の人たちも、自分たちの子供が結婚適齢期あるいは進学あるいは就職というような問題でいろいろ思い悩んでいるのですから、従ってこれに安心を与えるということは、やはり政府責任の一端を解消するゆえんではなかろうかと思うわけです。従ってきょうは初めて社会労働委員会に出席させてもらったわけですけれども、地元の人たちが政府がほんとうにこういうようにしてくれるならばこれでまあ満足だというような方法があるかないかということをここではっきり御説明を願っておきたいと思います。説明の内容によってはあらためて質問をいたしたいと思います。
  71. 亀山孝一

    ○亀山委員 関連して。ただいま五島委員からの御質問、まことに私ども御同情にたえません。この腸チフスの予防接種については、従来たびたびこういうような事例がありましたことは、私から申し上げるまでもなく厚生当局はよく御存じのはずなんですが、ちょうど今五島委員の御質問の点にもありましたように、従来こういう問題に対してどういうように処置をされたか。そして今度の神戸市の道場小学校の事件昭和二十一年から今日まで約十年間ほってあったということは、私どもまことに遺憾に思うのであります。そういう点の事情をもう一つはっきりとお聞かせ願い、そしてこういう問題に対して厚生当局はどう処置されるか。この問題は今言われております予防接種全部に関して非常に大きな影響を与える問題ですから、一つ明確な御方針をお示し願いたい。
  72. 楠本正康

    ○楠本政府委員 お答えを申し上げます。ただいまの兵庫県の道場町の問題につきましては、まことに御指摘の通りの実情でございまして、すでに十カ年の経過を見ております。この点に関しましては、私どももその解決を何とかして急がなければならないと苦慮いたしまして、現在までに至っております。今まで外見あたかも放置したような形になりましたことにつきましてはまことに申しわけなく存じております。  なおこの問題は、なるほどお話がございましたように、いまだ予防接種法の施行前でございまして、駐留軍の命令によって実施したわけでございます。しかしながらたとい予防接種法施行前であったとしても、当時の実情から考えまして、当然この駐留軍の命令によります予防接種というものは当局が責任を負うべきもの、かように考えております。従ってその含みで現在までその解決を急いできたわけでございます。  次にしからばなぜそれほど心配をしておるにもかかわらず、解決がここまで長引いたかと申しますと、第一には、これもお話がございましたように責任の所在、過失の所在というものがどこにあったかということにつきまして決定するのに多少手間取つた次第でございます。しかしいろいろな説が出ましたが、その後私ども精細に調査いたしまして、これも御指摘のように予防接種に当りました女医が開放性結核患者であったというふうに菌型等から精細な調査をいたしまして決定をいたしております。  それから次に実はこれも亀山先生からただいまお話がございましたように、他にも類似の事件がございまして、特に訴訟問題等を惹起されたものもございます。従ってそうなりますと、やはり賠償責任というような問題になって参りますので、これらの解決と申しましょうか、取扱いが時間がきわめてかかる、さようなことのためにかかる事件との関連において延び延びになって参っておる次第でございまして、この点まことに申しわけなく存じております。ただ私どもといたしましては、事件発生直後からその当時はたまたま食糧の不足等も著しかった時代でありますので、まず食糧の特配あるいは医療の万全あるいは諸経費の負担等をいたしまして現在に至っておる次第でございます。  なお私どもといたしましては、これらの賠償責任あるいは補償責任というようなものを論議し出しますと、なかなか今後の解決にも時間をとりますので、最近何とかして見舞金というような形式ならば、これは国が当然いつでも支出していい金でありますので、かような考え方に立ちまして、目下財務当局と交渉を重ねております。しかもおおむねその了承を得ておりますので、遠からず見舞金等の形で若干私どもの気持が反映されるのではないか、かように考えます。  次に亀山先生の御指摘の予防接種全体に対するかような注射によります事故の処理でございますが、これは予防接種法施行後におきましては、これは国が責任を持って実施する建前になっております。また国家検定の制度も設けられておりますので、施行後の接種におきましては、これは当然国の責任として解決せらるべきものと存じます。もちろんこれは事件の本質を十分に確かめてみてからの話でございますが、その結果それぞれの責任の個所を明らかにいたしまして、適切な措置を講ずることは当然でございまして、すでに岡山県その他で起きました予防接種法施行後の事件におきましては、それぞれ明確にいたし、適当な措置をそれぞれのケースによってとっております。ただ予防接種法施行前におきましては、この予防注射というものは、主として指導する、勧奨するというやり方を実施して参っております。しかも一方用いますワクチン等の検定制度等もございませんでした、自由に使える建前をとっておった等の関係がございまして、これらの場合には、ややもすると問題の解決が遷延されたり、あるいは以前はうやむやに葬り去られたりというのもないではありませんが、しかしその時代といえども、この道場町のようなきわめて多数の被害者を出した場合におきましては、やはりそれぞれ適当な調査を進めまして、その結果に基きまして多くの場合は処理されております。ただいま問題になっております道場町の問題も、さようなことで多少おくれたきらいはございます。ことに岡山県等の事件は、あとから起きて先に解決されたというような点で、はなはだ不手ぎわな感じがいたしますが、実情はその通りでございまして、今後はできるだけすみやかにこれを実施して参りたいと思います。   〔野澤委員長代理退席、藤本委員長代理着席〕  なお全般的には、予防接種法に基きまして一そうこのワクチンの取扱いあるいは検定等の措置の徹底をはかりますと同時に、予防接種法の施行に対して万全を期して、事故の皆無を意図して参りたい、かように考えておるのでございます。
  73. 五島虎雄

    五島委員 今局長から、この道場町のいわゆる道場事件と地方でいわれましたところの問題についてのかねての努力の経過を説明していただいたわけで、私としては非常にうれしい気持でおるわけであります。ところが現在どういうことになっておるかというと、さいぜんも申し上げましたように、死亡した者が二名おりまして、その死亡した家庭について、見舞金として十万円を兵庫県から支出いたしました。ところがその見舞金というのは、解剖料という名で、解剖した人だけに十万円渡したというようなことがわかったわけです。これは罪悪とか事件が悪性であるというようなことではないのですけれども、解剖した人には十万円渡ったけれども、解剖を賛成しなかったところの家庭には何もなかったという、こういうような問題もあるわけです。それから自宅療養中の者がなお七名あり、予後観察中の者が九十八名ある。従って、ただいま厚生省としていろいろ財務当局と話し、その見舞金の金額について、あるいはその性質について検討中であるということについて、おそらくそれを聞いたら、道場の方々も非常に安心されるだろうと思います。従って、予後観察中の者についてもできるだけの努力をされて、こういうような国家的な事業によるところの国家的な犠牲者に対しては、なお十分の処置について努力していただきたいと思うわけです。  この説明を聞いた上は、何もほかに聞くことはありませんが、ただ、財務当局あるいは大蔵関係とは、金の問題ですから、いろいろ折衝も困難であろうと思いますが、どうか当該委員長も、当局の御説明になるような今後の努力に対しても援助をし、そして地方の住民が満足するように一つ努力をお願いいたしまして、私の質問を終ります。ありがとうございました。
  74. 藤本捨助

    ○藤本委員長代理 野澤君。
  75. 野澤清人

    野澤委員 去る四月一日から、医薬分業といわれます医師法、歯科医師法、薬事法の三法が実施されましたが、その施行後二カ月を経過しましたこの法律をめぐりまして政府のとってこられた施策、経過及びその効果について二、三質問をしたいと思うのであります。  本国会においてしばしば論議せられましたことは、医薬分業と新医療費体系との関連について、あるいは可分であるとか不可分であるとかいうような論議がしばしば行われまして、その結論もつけられないうちにいわゆる新医療体系が一時見送られまして、暫定措置として、今回の処方薬剤料という世にも珍しい名前がついた医師の技術料を示し、あるいは調剤技術料を〇・五点と浮き彫りして、いわゆる暫定点数というものを政府の方で告示いたしました。しかもこれを、四月一日からの医薬分業三法の実施とともに、分業に必要な最小限度の対策として打ち出されたのでありますが、今度の分業実施に伴う新医療費体系の審議に関しては一体どういう経過をたどっているのか、また政府の方としてはどういう処置をしているのか、さらに今後どうされるつもりか、この点を第一に承わりたいと存じます。厚生大臣をお願いしておったのですが、参議院の都合で出られぬということでありますので、山下次官にこの問題についての的確な御説明を願いたいと思います。
  76. 山下春江

    ○山下(春)政府委員 新医療費体系は、諸般の情勢上やむを得ず暫定措置を行いまして発足をいたしました。もちろんこれが不完全なものであり、不備なものであることは御指摘の通りでございまして、厚生省といたしましては、その後引き続き審議会で御審議を願っておりますけれども、まだ結論をいただける段階でございません。しかしながら、医薬分業は法に基いて発足いたしたのでございますから、当局といたしましても、これが円満に遂行されることを期待いたしまして措置を行なっている次第でございます。
  77. 野澤清人

    野澤委員 引き続き審議会で審議中だということは私もわかっているのですが、ただいまの次官のお話ですと、暫定案というものはあくまでも不完全なものだという御指摘であります。そうしますと、三月に厚生大臣が、新医療費体系は必ず六月末日までに完成するということを参議院、衆議院で、並びに中央社会保険協議会でも言明されておるやに聞いておりますが、次官のお見通しとして、新医療費体系は六月未日までに完成するお見込みでいるのかどうか、この点はっきりした御答弁をお願いいたします。
  78. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 新医療費体系に基く社会保険診療報酬の点数改正ということにつきましては、御承知のように、すでに政府の案も提出いたし、各方面の御意見を伺っておったのでありますが、遺憾ながら、四月一日からのいわゆる医薬分業の実施に際しまして、その決定を見るに及びませんでした。しかし、その後社会保険医療協議会におきましてこの審議を続行いたしております。前に大臣からもお話がございまして、できるだけ早く、なるべくは六月一ぱいくらいにこの結論が出ることを期待しているということを申されておったのでありますが、その後協議会は数回繰り返されておるのであります。私どもといたしましても、できるだけ早く結論を得ることを希望いたしておりますが、何しろ各方面からの委員の方々でございますので、十分に意見の合致が出ますかどうか、このことは当局としてはできるだけ努力をいたしておる、かような状況であります。
  79. 野澤清人

    野澤委員 大臣がいないので次官に聞いたところが、曽田局長がかわって答弁されたようだけれども局長の方に聞くことはまた後ほどゆっくり聞きたい。次官の方は大臣の代理として、大体六月中にやるのかやらぬのか、その点をはっきり聞きたいのです。
  80. 山下春江

    ○山下(春)政府委員 大臣がさように決意をしておられますので、六月一ぱいころにでき上ることを期待いたしておりますけれども、ただいまいのところでは六月一ぱいに必ず完成するということを申し上げかねることを遺憾といたします。
  81. 野澤清人

    野澤委員 大体三月の参議院の審議の過程において、新医療費体系に基く保険点数の問題について、いわゆる山下次官の発言が大体影をひそめる動機を作ったと伝えられておる。これは大臣も安直に質疑応答の際に乗っかってしまって、とうとうあれをつぶした、こういう事実がありました。これは何と言うても歴史的な一つの動かすことのできない日本医療制度の上における大きな汚点だと思う。そういう事件を引き起した山下さん自身が出席されておって、これに対して期待をいたしております、また確実に申し上げられません、こんな無責任なことで、果して厚生行政が完全にいくのかどうか。これは社会党の方々の言葉をかりるまでもありません。与党の私としても、きわめて不確定な考え方と運営の上に立つ厚生行政が、どれだけ国家や国民に不利益をもたらすか、こういう結論は当然出てくるわけであります。従ってあなたに腹をすえてお答え願いたいことは、なかなかまどまりにくいもんだというような言いわけでなしに、六月に必ず作りますということを、大臣もはっきり答えておるのですから、これは速記録を見てもらえばわかります。そういう状態であるにもかかわらず、すでに今日になってそれはどうなるかわからない、こういう不確定なことではとうてい国民は納得し得ないと思うのですが、この点に対して再度御決意のほどを承わりたいと思います。
  82. 山下春江

    ○山下(春)政府委員 新医療費体系に対しましては、その進行の過程にあって、私の発言によってはしなくもこの新医療費体系を頓挫させるという事態に立ち至ったことを、まことに私も申しわけなく存じておるものでございます。しかしながら長い間の医療行政の上に行われんとする一つのいわば医療の革命ともいうべきこの問題に対しましては、あとう限りそれぞれの関係者の納得の上に立って遂行されるべきとでありまして、相当な人数の方々でありましょうとも、なかなかそれに納得で遷ないというものを強行いたしますことは、今日私ども国会のいろいろな問題にぶつかって体験させられることでございまして、大臣も六月一ぱいに成案を得て実行に移すということを念願しておられるものと思いますし、私もまた念願するものでございますが、万全なものができるかできないかということは、これは何とも申し上げかねますけれども、できるだけみんなでこれを守り得るようなものを、何とか努力して作りたいということでございまして、新医療費体系に基きました点数表が、すみやかにきめられなければならないということは、今回の健保の改正を通しましても、私どもが痛切に感じさせられたところでございますが、摩擦の少いように、すべり出しますれば、これがみんなに守っていただけるようなものを作りたいということのために、時間が相当費やされなければならないであろうことが考えられますので、六月末日までに、必ずでき上るということを、私重ねてお引き受け申し上げることができないことを申しわけなく存じますが、できるだけ早く御期待に沿うようなものを作り上げたいと存じます。
  83. 野澤清人

    野澤委員 あっさり了解つけられたような格好ですが、いろいろな社会情勢やら世論やらを大へん心配されておるようですけれども、大体新医療費体系というものは一昨々年の第一回に諮問になりまして、昨年の十二月に再度第二回案とも称すべきものが諮問された。この案自体の内容がスムーズに実施されるかされないかという問題よりも、大体この新体系に基く医療点数というものは、だれが一体どこできめるというようにあなた方お考えですか。これは次官のはっきりした御見解を承わりたい。
  84. 山下春江

    ○山下(春)政府委員 長年の経験と相当広範囲な信じられるデータを持ち得る機構である厚生省が、その大体の考え方を決定すべきものと考えます。しかしながらその考えましたことは、厚生省だけの考え方をもってこれを強行ずるということは、今日の社会情勢からすれば、それは無理であろうと思いますので、そこで医療傷議会等の各般の方々のお集まりの審議会、あるいはそれに関係している医師会、歯科医師会あるいは薬剤師会等の相当の広範囲の方々の御意見をまとめまして、多少の見解の相違、異論のあるところがありましても、尽すべきを尽せば、私はその上にでき上ったものは、断じて強行するつもりであります。
  85. 野澤清人

    野澤委員 でき上ったものの実行方法でなしに、大体新体系というものが第一回には見送れば見送れたときには、資料あるいは統計等の信憑性というものが基本的になって、しかも医薬分業の実施というものが一年三カ月も見送られ、第二回目にはいろいろな事情もありますが、結果において私は厚生省自体の提案された健康保険法とかみ合せになって、その犠牲におかれてとうとう流れてしまった、こう一般では批評しておりますので、私はそれを信じております。そこであなたにお尋ねしたいことは、この新点数というものは国今が審議すべきものなのか、それとも中央社会保険医療協議会に諮問したものについて、厚生大臣が決裁をして実施するものなのか、だれがどこでどうきめるかということのお尋ねを申し上げておるのです。この点に対して山下次官として、もし御存じがなければ、これは局長からお答え願ってもけっこうでありますが、手続の問題であり、また決定をいたしますまでの経過の問題でありますから、率直に一つお願いしたいと思うのであります。
  86. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 この新しい点は社会保険医療協議会に意見を問いまして、それに基いて厚生大臣が決定いたすという筋合いでございますが、これを実施いたしますについては、特にこの問題は世間的にもいろいろ関心を引いておる問題でございます。国会方面の御意見というものも拝聴しながら、その意見を十分取り入れて厚生大臣が決定するというのが筋であろうと思います。
  87. 野澤清人

    野澤委員 そうしますと、局長に伺いたいのですが、一応筋としては社会保険医療協議会に諮問して大臣が決定を下る。同時に施行する際にはこれを告示すればよろしいと了承して差しつかえありませんね。そこで、あなたの言われるように、実施に当っては国会にこれを報告して、国会の意見も聞かなければならない。そうすると、その国会の意見を聞くということが絶対条件かどうか。つまり大臣は六月までに必ずやりますと言明しておいて、それで六月にはもう参議院の方が選挙にはってしまいますから、国会はありません。そうしますと、あなたのお考えとしては、来国会の開かれるまでお待ちになるお気持ですか。きょうは最後のどたんばですから、はっきりした御意見を承わっておかないと、せっかくきめられた新点数であっても、これを実施する運びにいかない、こういうふうに感ずるので、一つはっきり承わりたい。
  88. 牛丸義留

    ○牛丸説明員 法律的な問題もございますので、私からお答え申し上げます。  今日の法律構成では、国会に御審議を願うということが絶対要件とはなっていないと思います。ただ先ほど医務局長が御説明申し上げましたのは、今までの経緯その他を考えまして、国会の御意見を拝聴して、御意見がありましたらそれも十分取り入れるという御説明だったと思いますが、法律的な解釈としましては、中央医療協議会の諮問を経て厚生大臣が告示するということだと私は考えておるわけであります。
  89. 野澤清人

    野澤委員 それでは山下次官にお伺いします。大体順序はおわかりになったと思います。本筋はあくまでも中央社会保険医療協議会に意見を聞き、その答申によって大臣が決定をする。それから法律的には、あくまでも国会の審議を得る筋合いのものではない、こういう大体の筋道が立ってきたのですが、かつて小林厚生大臣は、この新医療費体系に基く新点数という問題がもみにもまれて、最後に暫定案になる場合に、多分滝井君かだれかだと思いましたが、この委員会で質問をされまして、それじゃ国会にできるだけ早く報告はするが、報告せぬでも実施に至る、こういうことを言明したことがあります。それからまたこの協議会自体の答申というものが、もし大臣の意図していることと反対の答申であった場合、大臣の立場としてそれにあくまでも従うかどうか、こういうふうな問題についてもたびたび論議されておりますが、これはあくまでも諮問機関であって、多少の内容の食い違いに対しては、厚生大臣が決定すればよいというようなことに承知いたしております。こういう次第でありますので、少くともこの新体系に基く点数を決定するのはなるべく早くやらなければならぬということが常識です。また厚生省全体の立場としても、それが正しい行き方ではないか。こういうことから、国会が休会中であっては点数がきまらぬという結果が出てくるのではないか。従ってそれに対しては国会が休会中でも答申が得られるならば大臣が決意、できるのだ、こういうお考えでおられるかどうか、この点お伺いいたしておきます。
  90. 山下春江

    ○山下(春)政府委員 六月一ぱいに何とか作りたいという大臣の言明もあることでありますから、そのようにいたしたいし、それから従来のいきさつが、国会にお示しをして御批判を賜わるということの方が筋道だと考えますので、やはりそうした方がよいと思います。実は野澤先生御承知のように、医療協議会の会長である湯沢三千男さんが立候補されますので、ちょうどその選挙中は会長不在のままでこれを補充いたしませんので、医療協議会としての結論を出すような態勢には少し不備な点があるのではなかろうか。これは全く私の政治的なものの言い方でありますが、従ってこれは六月末までに結論を得まして、そうしてそれを国会にお諮り申し上げるという機会はその間には得られないのではないか、かように考えております。
  91. 野澤清人

    野澤委員 これは重大な発言ですが、湯沢三千男氏が立候補するとかしないとかということとは別問題だと思います。立候補するとすれば、おそらく会長は辞任されるだろうと思います。辞任されたあとは、やはり厚生大臣の方で会長を補充するか、協議会において会長代理をきめるか——単に選挙があるからという理由でこの会議が続けられないということは、たとい政治的な発言としても、私は聞きのがし得ないと思います。ただしいろいろな情勢から多少延びるということは常識的に予想されるかもしれない。しかし原則としてはこの協議会に諮問されて、しかも一週のうち二日も三日もやろうという申し合せをやっておるものを、会長に事故があったからということで一カ月延びるということは私は絶対に納得がいかないのでありますが、いかがですか。
  92. 山下春江

    ○山下(春)政府委員 ただいま私が湯沢会長が立候補されるということを申し上げましたことが、もしこの新医療費体系を審議することに支障になるというふうな言い方であるとするならば、それは私の申し上げ方の方が悪いと思います。湯沢先生は現在会長の地位にまだあるのであります。それから、もし会長が不在ならば現在の副会長である今井さんがこれを代行されますので、協議会の機構が麻痺状態になるということはあり得ないと思います。ただこれはお互いに政治家のことでありますから、そうではございますけれども、会長が選挙をやっておるというようなことでございますれば、なかなか思うように運ばないのではないか。ただこれが、そういう重大な新医療費体系を審議する機関に連関してものを言ったことはけしからぬということならば、つつしんで取り消しますけれども、私はやはり進まないであろうと考えるものですから申し上げた次第でございます。
  93. 野澤清人

    野澤委員 常識問題じゃなくて、これは実際に厚生省の外郭団体としてこういう機関が設けられておりますが、これはいわゆる公務員と同一の取扱いを受けることになる。その人が立候補をするという場合には、おそらく会長の職のまま立候補されるという例はないと思います。当然これは欠員になるのですから、それを理由にして延びるだろうという予測は、次官としてきわめて不謹慎だと思います。それまでお取り消しになりますか。
  94. 山下春江

    ○山下(春)政府委員 前段で申し上げましたように、この重大な新医療費体系に連関のあるような発言をしたことがけしからぬということになれば取り消しますと、前段に申し上げている通りでございまして、おそらく湯沢さんは会長の職を辞してやられることでございましょうし、その方が辞せられれば、副会長の今井さんが代行して審議を進められましょうから、そのことによっておくれるとは申しませんが、私はやはり選挙中というものはなかなか——今日参議院においていろいろな問題がありますことが衆議院に全く影響しないかというと、そうも参らないのが現実でございますので、延びるであろうと申し上げた次第でございます。
  95. 野澤清人

    野澤委員 いつまで問答しても切りがありませんからやめます。  次に、これはどなたが答えてくれるかわからぬ、おそらく曽田局長からお答え願えると思うが、新医療費体系と前々から呼ばれていた点数表というものに、先ほど局長は、新医療費体系に基く保険点数という長い戒名をつけてきました。私もそれに従って新保険点数と申し上げます。その新体系に基く新保険点数というものは、医薬分業とは可分なものか不可分なものか。たびたび論議されて、いまだはっきりした結論が得られていないように感じられるのです。これに対する厚生省の見解を、どなたでもけっこうですから、一つはっきりとお示しを願いたい。
  96. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 これは先般も御質問になりました点でありまして、私ども繰り返し申し上げておるのでありますが、なかなか表現がむずかしいのでありまして、御了承願えぬかもしれないのでありますが、私どもとしましては、この医薬分業が十分に円滑に実施されますためには、今日の暫定案では不十分である。しかしながら、すでに今日の状態になっておりますように、実施が全く、不可能だとは考えられないのでありますが、ただ、これをより円滑に実施するためには早くこの決定的な姿を打ち出す必要がある、かように存じております。
  97. 野澤清人

    野澤委員 私の聞いたのはこの新体系が分業と可分か不可分かということを聞いたのです。それに対するお答えが願いたい。
  98. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 私どもは医薬分業が円滑に行われるという意味におきましては、このままほうっておくわけにはいかないのでありまして、最後的な姿を打ち出さなければならぬ、その意味においては不可分である、このように考えております。
  99. 野澤清人

    野澤委員 これはこのままでほうっておくわけにいかぬから、何十年待っていて解決しようというのですか。それとも次官の言われるように六月末までにやろうというのですか。大体言葉の含みが多過ぎると思う。絶対不可分であるのか、不可分でないのか。必要なのか、必要でないのか、はっきりしておいてもらいたい。
  100. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 最後的には絶対に必要だと思います。
  101. 野澤清人

    野澤委員 それでは重ねて伺いますが、これもどなたでもけっこうです。現在暫定案で分業三法が実施されておりますが、世間では一応医薬分業に突入をしたと解釈されている。また国民もいよいよ分業になりましてというふうにわれわれにおせじを言う。これは一体医薬分業の法律というものが実施はされたが、ほんとうの医薬分業とお考えですか。それとも羊頭狗肉で、頭だけは、概要だけは、概要だけは医薬分業であるが、中を見れば全然医薬分業じゃないのだというふうにお考えですか。この点、政府の考え方は甘いと思うのです。先ほど山下次官のお話を聞いておっても、分業問題というと、まるではるかかなたの砂漠のできごとのような感じで、みんなひやかし半分でおりますけれども法律を作ってしまって、施行になって、この暫定案でいっている分業というものが、本質的に医薬分業なのかどうか、この点はっきりさしていただきたいと思います。
  102. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 医師が診察及び処方をいたす、薬剤師が調剤に責任を持つという姿を、従来の法の体系から一歩進めたという意味におきまして、私どもは医薬分業が進んだものと考えております。
  103. 野澤清人

    野澤委員 それじゃ医薬分業という戒名は、実際にその通りなんですね。そうすると、これはもう過去二カ月間、実施期に入っているのですが、内容についてはどうですか。
  104. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 この新しい法律が実施されますについてできるだけ混乱を生じないようにという点で、いろいろ国会の方からも御注意をいただきました。また関係の方面ともいろいろ意見の交換をいたしまして、そうして実施いたした次第なのであります。私どもとしましては、まず大きな混乱を生ぜずに新しい形に移り得た、かように思っておるのであります。また、ただいま野澤先生から御質問がございましたように、さて実態がどの程度に進んできたかという点につきましては、私どもも非常に不満足な状況にあると考えておるのであります。しかし新しい体制に移りました以上、実質も逐次これに沿って参るもの、かように期待いたしておる次第であります。
  105. 野澤清人

    野澤委員 意地が悪い質問だけども、この医薬分業だけは、実態は不満足であるが、逐次その趣旨に沿うようになるんだと考えると言う。どういう点からそういうことが言えるのか、その理由というか根拠をはっきり教えてくれませんか、どうぞお願いします。
  106. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 まずこの新しい改正法が実施になったのであります。この前からいろいろ広報宣伝等もいたしておるのであります。必ずしも国民の間に十分理解し尽されたというふうにも考えられないのでありますが、しかし逐次さような考え方あるいは新しい制度の妙味というものがだんだんと広く理解されて参る、こういうように見ております。これが一番大きい理由だと思っております。  それから、先ほども申し上げましたように、このいわゆる新しい診療報酬の支払い方というようなものにつきましても、これが実際にお医者さん方あるいは患者自身にどのような影響を及ぼすかというようなことも逐次了解されて参る、いわゆる新しい制度に対する不満の念というようなものが逐次消えて参るのであろう、こういうようなことも、今後これを利用する方々がだんだん広がってくるということを予想いたしております理由であります。
  107. 野澤清人

    野澤委員 せっかくの御答弁だが、まるっきりでたらめだと思う。大体分業というものは、あなたの言われるように実施期に入って混乱を避けるためだとか、実態については不満足だとかということを承知していながら、それじゃ実際の姿というものはどういうものか。人間のからだで言うと、大体第十国会できめられた分業といいものはちんばな分業である。そして一年三カ月引き延ばされて、昨年の七月にまとまった分業などというものは両足切られてしまっている。それでも義足をはめてくれた。義足をはめても何とか半人前なり三分の一なりの人間活動はできたのだ。ところが今度は三月に、山下方面から端を発して、大臣の省議によって看板をはずしてしまえというようなことから、中身からきれいにお流しをして暫定案ができた。これは両足切って二本の義足をはめてくれたならいいが、大きな一本の義足で動くことができない。あなたが言う通り大衆啓蒙したら幾らか伸びるかもしれないが、現状のままでは絶対に伸びないと私は思う。そこで完全な分業か、不完全な分業かということをお尋ねしておる。あなたのように将来必ず何らかの道が開けると思う、こういう甘い解釈では私は分業問題は立法の精神を全く冒涜するものだと思う。この点についてもう一回御説明を願いたい。
  108. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 私どもといたしましては、この法律につきましては、御承知のように・改正前の姿もあったのであります。いろいろ御審議の結果、ただいま実施になっておりますような改正法が決定いたしたのであります。私どもとしてはこれ、もってどの程度のことがやれるかということにつきましては、私ども努力をしてみ、またその結果の動きというものも慎重に検討いたしまして、その上でさらにこれを改むべきものがあるか、一歩、進むべき必要があるかということを考えて参りたい、かように考えております。
  109. 野澤清人

    野澤委員 それではあらためて医務局長薬務局長、保険局長の三局長にお聞きしたいのだが、四月一日以降、厚生省でこの分業実施に伴ってどういう施策を行ってきたか、どういう対策をやってきたか、具体的に各局長の方で御説明が願いたい。
  110. 森本潔

    ○森本政府委員 薬務局関係で御説明申し上げます。四月一日以降の実施の事前処置といたしましては、一応三月中に終了いたしたわけであります。四月一日以後の状況といたしまして考えられますのは、現実に出ておりますところの医薬分業実施の状況はどうであるか、さらにその障害になっておる点はどういう点であるか、また今後新たに考えるべき点はどういろ点であるかということであったのであります。ところがこれは四月末あるいは五月末というように、そのつど何かの指示をし、あるいは報告を徴するということも考えられるのであります。そのことも一応私どもは考えておるのでありますが、実は数カ月間の実施状況を見ておって、今申しましたような実施の状況、それから今後改善すべき点というものをながめて整理して、それから処置いたしたい、かように考えておりまして、この六月十二、三日でございますか、全国の課長会議を開きます際に、今申しましたような実施の状況、さらに今後処置すべきことを整理いたしまして、一応それに基いて今後の処置を検討いたしたい。従来個々の処置をとることも考えられましたが、それはかえって適当でないのではないか、むしろ二、三カ月ゆっくり見まして、しかる後に総合的な施策をいたすべきである、かような気持を持っておる次第であります。
  111. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 医務局関係のことを申し上げますれば、四月以前に、この法が実施されますについていろいろ注意すべき点、あるいは法の解釈というようなことについては、薬務局及び医務局と一緒にいろいろ合議いたしまして、そして各府県の方に通牒をいたしておるのであります。私ども直接に監督いたしております国立病院、療養所、こういうようなところにおいて、今の新しい態勢のもとにおいて、病院においては処方の作り方・あるいはそれの処理の仕方というものをいかにすべきかというようなことは、院長会議、所長会議等を逐次開きまして、それに対して指示を与えておるわけであります。近くその結果どのような処方の出方であるかというようなことについても報告を集めることになっておりますが、今までのところまだ十分に集めておりません。近いうちにその結果が出て参ると思います。
  112. 館林宣夫

    ○館林説明員 保険医療におきまして、従来ともに処方せんの発行に伴う保険薬剤師の調剤の取扱いはやっておったわけでございます。しかしながら新しい制度に応じた諸般の改正をする必要があるものですから、先ほど来議題となっております点数表がその最たるものでありますが、私たち新医薬制度の目的を十分に果すような、円滑な実施ができるような目標を持った新点数表を中央社会保険医薬協議会に御諮問申し上げたわけでありますが、どうしてもそれによる答申が期日までに間に合いませんで、やむを得ず実際の実施に最小限度間に合う程度のものを中央社会保険医薬協議会の御答申によって決定いたしまして、三月二十三日にその御答申の内容を各都道府県にあらかじめ通知をいたし、また新医薬制度に伴います手続の改正、すなわち担当規定の改正案の実施に先だちまして一応予告を各都道府県にいたしたわけです。しこうしてこの点数表が官報に告示になりましたのは三月二十七日でありまして、なおそれに引き続きまして三月末に新医薬制度の実施に伴う社会保険診療報酬点数表並びに調剤報酬計算表の改正等に関する解説・また新医薬制度の実施に伴う健康保険医療担当規程等の改正についての解説をいたし、また特定薬剤の範囲に関しまして告示をもって三月末日に示したわけでございます。また四月上旬に入りまして、先ほど予告をいたしました告示が掲載になりました。なおその後におきましても、従来の手続では必ずしも新医薬制度の実施に適当でないと思われるような諸手続、書式等を改正いたしまして、処方せんの様式を四月十三日の省令で改正いたし、また四月十三日に局長通牒をもってその内容を各都道府県に示しております。また四月二十五日に国民健康保険の療養担当者が被保険者に対して交付する処方せんの様式を改正する場合の書式について通知をいたし、また四月二十七日に医療協議会から答申のございました国民保険担当規程の改正案の予告をいたしました。翌二十八日には告示でそれを官報に登載いたしました。また四月二十八日・さらに薬価基準を一部改正いたしまして、従来のむのに追加をいたしまして、処方せんが発行せられた場合の便宜のための改正をいたした次第でございます。これは四月二十八日には改正についての予告をいたしたのでございまして、それが官報に登載されましたのが五月十日の告示であります。また五月十八日には国民健康保険の保険者と療養担当者である薬剤師との協定の例示を改正いたしまして、課長通牒で調剤報酬請求書の提出並びに請求明細書の取扱い等についての手続の解説を通知いたした次第でございます。もとよりこれらの諸手続の改正は、必ずしも改正いたさなくとも、従来ともに処方せんの発行は保険で扱っておったので、できないわけではございませんけれども、さらに担当規程等を明確にいたし、また書式等を新しい書式に改めるというようなことをいたした次第でございます。  ただ私ども今日なお至急に取りかかる必要があると考えておりますのは、請求明細書の提出先が現在保険者でございます。これが必ずしも新医薬制度の実施を円滑ならしめておらない実態があるということを痛感いたしておる次第でございます。しかしながら私どもの考え方としましては、基金の方で一般の医療費と同じように支払うような取扱いにいたしたい、しかも一刻も早くそのような取扱いにいたしたいつもりでおるわけでございますけれども、その取扱い手数料等の問題もございまして、なお今日においても切りかえに至っておらぬ次第でございます。でき得る限り早急に切りかえの方針をとりたい、かように考えておる次第でございます。ただこのようにいたしましても、現在の暫定案そのものが必ずしも新医薬制度の実施に十分な内容を持っておりませんので、処方せんの発行が特に急にふえるというような実態は、この暫定案をさらに改善しない限りはなかなか容易でない、かように考えております。
  113. 野澤清人

    野澤委員 三局からそれぞれの立場で解説してもらったのですが、大体薬務局の事前処理、それから四月以降の実施の状況あるいは障害、今後の改正等については、数カ月間状況を見なければという状況できわめてたよりない。薬務行政上これだけの新医薬制度というものが発足しているのですから、もう少し迅速、勇猛果敢に指導してもらわねければ困る。実際にどのくらいの降路があり、どういうところで障害を来たしておるかということはおそらく御存じないと思う。過般も処方せんがどのくらい出ているかも御存じない状況でしたらから。  なお、医務局の方でも局長の通牒を出した、あるいは国立病院や療養所に指示を与えた、これもその通りだと善意に解釈いたしておきます。それから保険局の方でも、だいぶこまごまとその書式の改正やらあるいは解説等について御努力なされたことに対しては、一応敬意を表しますが、実態を知らぬものかというと、これはこのままで差しつかえない。私はあまりにもよく実態を知っておるものですから申し上げるんだが、大体保険局は健保の問題でてんやわんやのために、とにかく健保調剤などということについてはおそらく放任しておったと思う。これは大臣初め次官等でもやれやれ分業は実施した、実施して、処方せんなど出ようと出まいと知ったことではない、こういろ安心感というか、あきらめ感というか、そうしたことが基本でこうしたことにあると思うが、三局とも私は不誠意だと思う。そこでもし不誠意でないとお考えになるならば、医務局長に伺いますが、この四月から五月の三十一日までに自由診療の処方せんがなんぼ出たか、また保険局の方では保険医処方というものがどのくらい出たか、こういうことの実態が、関心を持っておれば、おそらくつかめたのじゃないかと思いますが、この点いかがでありましょうか。
  114. 館林宣夫

    ○館林説明員 正確に私どもの方で請求書の集計の四月分が判明いたしますのは、通例六月半ばごろの予定でございます。ただし現在までに手元の資料によりますと、約千五百件ほどという集計が出ておりますけれども、これは必ずしも正確なものではありません。
  115. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 医師の方からどれだけ出たかということにつきましては、今のところ調査ができておりません。私どもの病院、療養所につきましては先ほど申し上げましたように、今資料を求めておるところでございます。
  116. 野澤清人

    野澤委員 曾田局長にお尋ねしたいのだが、あなたは先ほどだんだんふえるだろう、よくなるだろうというお話でありましたが、大体四月、五月は従来よりも処方せんはふえておるとお思いですか、減っておるとお思いですか。
  117. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 まことに遺憾なことではございますけれども、私ども的確な資料を今のところ持っておりません、何とも申し上げかねるわけでありますが、大体私は若干ふえておる。かように判断いたしております。
  118. 野澤清人

    野澤委員 若干というのはどのくらいふえておるのですか、たとえばパーセンテージにすると……。
  119. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 私から申し上げるのはどうかと思うのでございますが、薬剤師協会等でお調べになった数字等によると、幾分ふえておるというように私漏れ承わっております。そうしてそれがある程度実情を反映しておるものではないか、かように判断いたしております。
  120. 野澤清人

    野澤委員 どうも卑怯な局長で困ったものだが、資料をくれというから薬剤師会で差し上げた、これはもう調べておりませんならおりませんでよいと思う。それについては対策は何も講じてない、通牒は出しっぱなし、おそらく四月に出した通牒のはね返りは本省ではつかんでおらぬ、また保険局の方で心いろいろな解説をしたりあるいはまた告示をしたりしている事柄についてはよく状況はわかりますが、後ほどこれの困難な険路というものあるいは障害というものを一つ一つ申し上げます。その間ただ感心したのは、基金払いに一刻も早くしたいが、手数料等の問題でなかなか切りかえができない、これは要するに客観情勢としても・当事者としてはすみやかに切りかえすべきだ。そういう処置については、何もやっておらぬ。おそらく私が黙っておったからほっておいたんだと思うのだが、それなら次の国会からは毎月あなた方に聞きますよ。やっている、やっているともっともらしいことを言うけれども、これについてはさっぱり誠意を示していない。  もう文句ばかり言ってもしょうがないですから、これは曾田局長にお尋ねするのですが、あなたは漸定案というものは分業に支障がないとお考えになっているか、支障があるとお考えになっているのか。
  121. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 私は決して満足すべき状態ではない、これはどうしても、決定的な新点数というものの体系が作られなければならぬ、かように考えております。
  122. 野澤清人

    野澤委員 満足すべきものではないということは、先ほど指摘しましたように、三月までの医療費体系というものが暫定案と称して、実に不可解な処方薬剤料というような新しい名称を使っておる。いまだかって処方薬剤料などという言葉はない。この中に新たに医師の潜在技術料というものを含んで、調剤料というものはわずかに〇・五点、六円というものをはじき出しただけなんです。この暫定案というものには、新しい構想というものは何もない。そうすると、医薬分業というものに対するあなた方の考え方はどうなんですか。要するに、分業に対する理念というものをどうお持ちなのか。この点、山下次官は長いこと厚生行政に携わっておられるのですから、この新医療制度の医薬分業というものの長年の闘争の経過から見て、その理念はどういうところにあったのか、これをお聞かせ願いたい。
  123. 山下春江

    ○山下(春)政府委員 医と薬とは当然分離されることが好ましい姿であり、正しい姿だと思っております。しかしながら非常に長い慣習がございまして、これを一挙に分離する、そして法施行後二カ月を経過したにもかかわらず、遅々としてその実績が現われないではないかというおしかりの点につきましては、今各局から申し上げました通り、漸次ふえつつございますけれども、その慣例はどのような広報活動をいたしても、私は一挙にはその実績が現われないと思います。しかしながら相当の時間をかけますれば、漸次所期の目的のような姿に必ずなるものと思っております。  私しろうとでございまして、これ以上のことを申し上げる力を持っておりませんけれども、やはり医療は、医と薬が分離して確立されることが好ましい姿であろうということに対しては、確信を持っておるのでございます。
  124. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 私どもの医薬分業についての理念というものは、ただいま山下次官が申された通りと考えておるのでございます。姿といたしまして、診療報酬にどういう影響があるかということにつきましては、少くとも医師のところで処方せんをもらって、薬局に調剤を頼んだというような場合に、医師と薬剤師に対しまして、どのように報酬を支払うべきかということを、一応きめなければならぬということになるのでありまして、その限りにおいて、最小限の必要な姿というものは暫定案が打ち出した、しかしながら暫定案の姿といたしましては、診療報酬全般に対しての基本的な考えというものと、果してこれが合致しておるかどうかということになりますと、かなり妙な姿が出ておる。ただわずかに、従来の薬治料の中に含まれておった医師の診断処方の技術料というものだけしか含まれていないというような姿のために、非常に不合理に見える形となって参っております。こういうような点から、いろいろ関係の方々あるいはその内容をお知りになる患者の人たちも、これは不合理な姿だというふうにお感じになると思うのであります。かような感じが根本にあります限り、この制度をさらに広めていく、これに乗っかっていくというような意欲を、非常に薄くさせているのではないか、こういうふうに考えますので、私どもは医薬分業をするために形の上で必要とする点、それからまた診療報酬というもののあり方という点の両面から、ある程度国民あるいは関係者の満足を得られるような姿に持っていかなければ、結局落ちついたところに参ったものとは考えられない、こう思っておる次第であります。
  125. 野澤清人

    野澤委員 今のお二人のお話を聞くと、大体山下さんは医と薬とを分離するのだというお話局長お話は、せんじ詰めていくと、いわゆる診療報酬の払い方について形を整えるという、こういうことはおそらくこの医薬分業というものの柱を二様に立てて、いわゆる技術を分離するのだ、同時に合理的な支払い方式というものをきめて、経済的に分離するのだ、こういうふうに大ざっぱに解釈ができるのではないかと思うのです。それを理想の形として進むべきだというふうに了承して差しつかえありませんか。——そうしますと、現在の診療報酬として新たに暫定案で示された内容が、不可解な新しい術語だという処方薬剤料、それから調剤技術料の二段がまえ、しかもその内容に至りますと、十五円きざみでこれが打ち出されておるところがあの実態を見ると、旧来の医療費の算定基準と何ら変らない。要するに処方薬剤料という名前をくっつけたが、薬品原価プラスアルファというものは、いわゆる潜在技術料、これは処分せん料にかわるべきものだ、診察料にかわるべきものだという、善意の解釈をすれば、そういうことになってくる。けれども今度の暫定案というものは、単に調剤技術料というものを〇・五点とはじき出したわけです。何ら新鮮味もなければ、分業の物と技術を分離する、あるいは技術と技術を分離する、支払い方式を合理化するという理念に到達していない。従ってこれは羊頭狗肉、あくまでも形だけは分業であるけれども法律は実施されておるけれども、内容というものは全くゼロだ、こういうことを私は四月一日から以降ずっと考え続けておる。  そこであなたの方に伺いたいのですが、この処方薬剤料というものは、あくまでも旧来の医療費の算定基準で作られたものか、相当の含みがあってこれをやられたものか、この点について局長はどうお考えになっていますか。
  126. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 こまかい点に入って参りますので、私からこの御答弁を申し上げることが正しいかどうかわからないのでありますが、私了解いたしておりますのでは、とりあえず暫定案は今までの姿をくずさずに、とにかく先ほど申し上げました医薬分業の制度に移り変りましたときの、医師あるいは薬剤師に支払うべき報酬をどう分けるかということでこれが決定されたもの、かように思っているのです。従ってその実態等につきましては、野澤先生がおっしゃいますように、いろいろ理論的な難点を多々含んでいると私も考えております。
  127. 野澤清人

    野澤委員 御指摘の通りですが、こまかい問題といいましても、方程式はきわめて簡単なんです。それで処方薬剤科というものをそのまま見ると、今町の開業医の方々が丁七点プラス〇・五点、そうすると、十五円までの薬価の場合には二・二点までもらえるのだからというので、非常に安心している。また一部では喜んでいるという状況です。ところが、この実態を解剖してみると、あなた方はやはりこれをまだごまかしているのじゃないか。医系の人に、あるいは医師会等に説明するときには旧来の点数のままで示している。旧来の算定の基準でやっている。これは医務局長に文句を言っても仕方がないと思いますが、ところがこの処方薬剤料というものを分解してみますと、十五円までの平均薬価を〇・七点と見ている。そうしますというと八円七十五銭になるのですが、この薬価はコンスタントになる、その処方せんによって。それに調剤技術料というものがくっついて、あと一点が残る。残ったものは要するに処方料なんです。そうするとこれは医者の技術料なんです。そうするとこれは医者の技術なんです。こういうふうに分解してくると、少くともこれは新しい医療費体系の理念が多少織りまぜられているのじゃないか。一皮むくとそういうことになる。そういうふうに薬品原価、医師の技術料、薬剤師の調剤技術料と分離すると反対があるからというので、処方薬剤料というような名前をくっつけたのだと私は思う。だから、開業医の方では十五円までが二・二点だというので、大へん点数をもらえる。一皮はいでみると、結局医師のところとは一点しか残らない。ずっと六十円までこれが続いていく。こういうふうな暫定案を示しておいて、表から見れば旧点数。これを分解していくと、新体系の理念に基いてこれは構成したものである、こういうふうな解釈がつく。そこでこれが果して分業か分業でないかということは、薬治料だけをことさらに取り上げてごまかして、これは最小限度分業に支障のない姿だという。それでは注射料はどうするのだ、こういうことになってきまして、どんなことをしても厚生省としては一日も早く新体系に基く点数表を作らなければねらぬ。しかもあなた方が昨年の八月八日に厚生省発医第七十四号として、各都道府県知事あてに発送しました通牒を見ますと、これは医務局長丁と薬務局長連名で通牒を出しています。それは昨年の法律改正に基いて、医師法、歯科医師法及び薬事法の一部を改正する法律の一部を改正する法律の公布についてという名前でありまして、法第四十五号についてこういうことを言うています。(二)の四項に「本法律の実施上、従来の医療報酬体系は改訂する必要があり、政府はすでに昭和二十九年九月従来行われた各種の調査等を基礎として新医痛費体系に関する構想を公表したが、その後本構想の再検討を行っており、更にその再検討の結果に基いて、社会保険診療報酬点数の改訂を行うため、必要な措置をとる予定であること。」こういうことで、はっきりと八月八日通牒を出しておって、しかも大臣は六月末までと言っているが、いまだに審議会の方は非常に困難である。また混乱を避けたいのだというふうなきわめて矛盾したあいまいな考え方で果して分業というものが完全にいけるかどうか。こういう問題からそちらこちらで便宜主義的に厚生省はごまかしをやっている。つまり暫定案というものが生まれてきたのは、おそらくこれは厚生省が参画して各局とも相談したものである。処方薬剤料なんというあんな変ちくりんな名前をつけたものだから、患者の方では処方せん料が一・七点取られると思っている。しかもこれに対する啓蒙宣伝というようなことについてはむしろ放任しておいて、薬剤師会がやるだろう、医師会がやるだろうというような態後でもって、実際に徹底しておらぬ。それじゃ現実にどうかと申しますと、これは私十三府県を歩いて調べてみました。そしてその処方せんの出工合というようなことから調べていますが、はなはだしいのは開業医であって保険の処方せんの書き方を知らない医者がある。それから法律の内容を全然知っておらない。極端な例ですが、ある薬剤師の弟が二人医者になっている、その医者が兄貴のところに来て言うのに、患者から請求がないから処方せんは出さないのだ。ところが今度の法文というものは、患者が医師に診療を受けた場合に、医師が投薬の必要ありと認めた場合には処方せんを出さなければいけない。こういうので、処方せんを要らないとか薬品が要らないと断わったときには処方せんを出さなくてよろしいという規定になっている。しかるに医者自体というものが患者から要求がなかったから処方せんを出さない。要求がなかったら書くのがあたりまえです。ところが全然それを書いておらぬ。これが常識になっていまして、その医者に会って聞いてみたところが、兄貴の方だけに四月一日から十五日までにたった一人ですよ。君、それじゃひどいじゃないか、今度の分業法というものはこういうふうに改正されているんだ。初めて聞くんだ、患者から要求がなければ処方せんを出さなくていいのだと思った、こう言うて、それではこれからなるべく書くようにしましょう。これは近所に二人で医者を開業しておって、しかも隣りに薬局があるのですから、兄弟三人でやっているのですから、処方せんを出そうと出すまいと大した影響がない。ところがそのお医者さんの方ではまじめに考えている。患者が請求しないから処方せんを出さなくてよろしいのだ。こういうのであって、手近に薬局があってそこへ行けば簡単に済むものをわざわざ自分の薬局でもって調剤して出さなければならぬ。こういう不便な実態が生れてきている。こういう事柄を考えると、これは千例の中の一つか一万例の中の一つかわかりませんけれども、推して知るべしで、こうした実態についてもう少し医務局の方としても開業医の方に滲透するようにすべきでないか。同時に今度は薬剤師の方でも処方せんを拒否するという態度の者があるということで、実態を調べてみますというと、これは理由になるならぬということは別としても、老齢者の調剤というものが非常に不確定だ。これらに対して薬務局あたりがどう今後処置していくか。たとえば七十歳を過ぎて子供がない、孫がない。従ってその人の名前で開局してりっぱな薬局を持っているけれども、老眼鏡をかけてコンマ以下の調剤をするのには本人が自信がない。こういうことでせっかく処方せんがきたけれども、これをお断わりしなければならない。これは非常に良心的だと思う。これは極端な例でありますが、現実の問題というものは非常にわれわれが想像した以上に困難な状態にある。しかも今度の法律というものが特例まで設けて処方せんが出るようになっている。そういうものが実際に出ないという状況でありますが、これらに対しては三局としてはどんなことをしても努力して下すって差しつかえない問題じゃないか。特に国民大衆に対する啓蒙といたしましても、実際長年の医薬の闘争の経過から見て感情的なところも相当あります。これはわれわれも認めます。従って薬局の玄関へ行くと、医者にかかったら、診察を受けたら、必ず処方せんをもらいなさいと書いてある。今度はお医者さんの窓口へ行くと、従来通り薬は差し上げますと赤い字で書いてある。全く正反対のプロパガンダをお互いでやっている。これは過渡的な一時的な現象で、やがては仲よくいけると思うのですが、兵庫県のある町では三師会を開いて非常に仲よくやっております。従ってここで出ます処方せんの処理等もきわめて合理的にいかれる。こういうことで各地の情勢は差があります。その県の衛生部長なら衛生部長があっせんして三師会を開くようなところでは、比較的処方せんが出やすくなっております。ところがまた感情的に絶対に話し合いをしないというところもある。これらについては、ほかの手続上や何かの通牒よりも、せっかく作った法律ですし、しかもまた厚生省としては、今度の分業三法というものも歴史的に非常な経過をたどって作り上げたものですから、これは医務局長としても保険局長としても薬務局長としても、相当重大な決意でもってこれの実際の運用をはからなければならぬと思うのです。ところがこれがおろそかになっている。厚生省の予算一は、それは大蔵省から締められているからないかもしれませんが、大体国民大衆に対する啓蒙などとというのは全く投げやりだ。たまに薬事課長がラジオで放送したくらいなものだ。実際この分業の内容について、それじゃ医務局長ねり保険局長なりがどれだけの解説をしているか。あるいはテレビ等の宣伝も利用したことがあるかどうか。周知徹底週間あるいはは月間というようなものを作ってやりましても、ポスターはストップされる。医師会から反撃を食ったら大へんだというので、宣伝カー一つ出せない。こういう行政上の大きな盲点というものをあなた方が承知しながら、果して法治国としての日本の現在の厚生行政というものは満足にいくかどうか。これは私一人が幾ら大きな声でどなってもしようがない問題でありますから、いずれまた次期国会にはあなた方の誠意のあるところを示してもらうことを楽しみにいたしまして、そうして細部なことについては申し上げませんが、ただ一つ保険行政上の隘路として、これはおそらく保険局でも意識してはおるのだろうが、まじめにこれらについての対策が行われておらないと思うのです。その一つはどういうことかというと、社会保険医療報酬の支払い方法について、医師の医療報酬は支払い基金を通じて支払って、薬剤師の調剤報酬は各個払いとなっている。従来処方せんが実際に出回っていなかったら問題は何もなかったのですが、この四月一日からはとにかく処方調剤というものが薬局において現実に行われている。架空論じやない、現実の問題だ。ところが薬剤師に対する支払い方法というものが、保険者にとってもまた保険薬剤師にとっても非常な不便であり、不経済であることがひしひしと感じられる。しかもこれをしさいに観察していくと、このせっかくの制度そのものも進展を阻害されるような状態である。これは先ほど支払い基金の問題についてあなたから御指摘があったから、これはおそらくすみやかに善処されると思います。この基金払いについても実際に今非常な難点に逢着している。同時にまた不経済な実情として指摘できることは、第一に政府管掌の健保の調剤報酬の支払いです。これらについても各保険とも非常に因っておる。つまり政府管掌のものは保険薬剤師から都道府県の保険課へ請求しなければならない。各都道府県ではこの請求を審査し仕分けをして、各保険薬剤師個々に支払いをする。そうしますと保険課の事務手数あるいは事務処理というものが非常に過重になる。それでありますからその保険課自体が保険の処方せんを出すことを喜ばない。これは一つ二つの県じゃありません。保険課の課長なりあるいは課員なりは、処方せんが出たならば自分たちの事務負担が大きくなるからなるべく処方せんが出ないことを願っておる。この実例については県名から名前まで全部私の方で調べております。しかし初めてのことですから私の方では遠慮しておきますが、今後もさような状態が各府県で続けられるならば、一一名前を指摘して、そしてまた不審があるならば本人を呼んでもらって対決してもよろしい。せっかく法律を作り、あなた方が通牒を出しても、その締めくくりをしておらない。従ってこういう事態が尾を引いて残る。これが第一。  第二には健康保険組合や共済組合等、この組合制度に対するところの請求であります。保険薬剤師からばらばらにくる請求を審査して、現金を為替に組んで書留郵便で個々に送付する。そうしますと、数多く処方せんが出ているならば文句ないのです。ところが、調剤技術料なんというわずかに十円か二十円くらいの請求に対しても為替に組んで送付するということになってきますと、書留郵便で出すのには一薬剤師の請求に対して七十円かかってしまう。こういう実情であります。この手数料やあるいはその手数等、経済的負担の結果は処方せん発行を喜ばない。それで組合、保険団体等ではぜひ処方せんを出して分業にしたい、国策の線に沿いたいとしょっちゅういわれるのですが、実際に当ってはそういう不便がある。また不合理な点が生まれてくる。事務量がふえるとマイナスの面がふえていく。こういうことは再三再四この分業が国会で取り上げられた当時から過去三年間もやかましく論ぜられた。厚生省は少くともその実態については知っていなければならないはず、あります。そうしますといろいろな通牒を出すと同時に、こうした隘路についてはいち早く善処されるのが至当じゃないか。それを放任されている、こういう状況は全く見のがし得ない不手ぎわじゃないか。  第三の問題点は保険薬剤師の立場からの批判であります。処方せんが少いのはもう想像していましたから薬剤師は何も文句を言いません。ところが実際に調剤報酬という点——これは医系の議員の方にもたびたび指摘されるのですが、一剤一日分六円や七円で果してやっていけるのかということですけれども、この調剤報酬を各保険者ごとに一々請求しなければならぬ、こういうことになってくると、一剤の調剤手数料六円なんというのでは郵便切手代にも当らない。そうすると、処方せんが相当、数がくるならば採算がとれるが、たった一枚を送らなければならないというふうな実態では、これはどうしても薬剤師自体としても長い間には拒否せざるを得なくなる。そうすると薬局も整備した、ガラス張りもきれいにし、しかも天びん、薬物の手入れをしてせっかく準備しておきながら、月一枚か二枚の処方せんでは長い間には薬剤師だって実際回れ右せざるを得なくなる。一方出したいという保険組合があっても出すことができない。こういうふうな隘路はこれは何というたって厚生省自体がしまつをしなければならない問題だと思う。支払いの方法の不適正というものが実際に当面する非常に重要な事項だと思う。そこでこれらの事柄を考えて新たに問題点を拾ってみますと、保険薬剤師の調剤報酬支払いというものは、いわゆる基金扱いとする方がいいのか、他に方法があるのかという問題点があると思います。これは今即答を得なくてもけっこうですから、一つ至急に厚生省自体として考えてほしい。つまり支払い基金の場合を考えてみますと、この手数料は現在一点について十二円五十銭を徴収している。ところが全度薬局で調剤した場合にこれの審査を要求すると、やはりそれだけの金を出さなければならぬ。この金額は処方せんが出れば出るほど大きな金額になってくると私は思う。その支払い基金となった場合には、こうした同額の手数料を徴収するということは従来の医師の請求からかんがみて二重取りになるのだから不当じゃないか、こういう理屈も立つ。確かに不当だということはわかりますけれども、それじゃ何ぼにきめるかというと、これは勝手にきめられない。従ってこれらについてはもう現に調剤もし、支払いもしているのですから、これらについては少くとも一日も早くこれは善処してもらわなければ困る。しかもこの保険の調剤日数というものは非常に短かいのですから、一カ月分、二カ月分というような調剤日数ならば調剤報酬も相当な額になりますから、郵便で送り、手数料を払っても、これは何ら差しつかえない。ところが月一一枚か二枚の処方せんに対してこういう現況では、これはどんなに曾田局長がやがてよくなりましょうと言うてみたところが、絶対によくならない。ちょうど水の流れてくるところに大きな石を持っていってせきとめたようなもので、流れたい、流れたいといって一生懸命行った水をよそへ持っていってしまう。医者の方でもおそらく呵々大笑していると思うのです。医師、開業医の方では出したくてしょうがないけれども、薬剤師は喜ばないじゃないか、あるいは保険者団体は喜ばない、県庁の役人が喜ばぬじゃないか、こういうきわめて悪条件を羅列しておいて涼しい顔をしている。聞けばこれから何とか調べて対策をする、また通牒を出しました、あるいは告示を出しましたと言うが、出したものは事実でありましょう。しかしそれに対する実施というものが何ら行われていないのが現況だと思います。調剤というのは医師の発行した処方せんの通りに調剤されるのが建前でありまして、薬剤師自体の自己裁量によって医療行為をするのとは異なっているのですから、これは論議は幾らでもあると思うのです。従って支払い基金における審査というものは、単なる独立した医療行為と違いますから、審査料にしましてもきわめて軽度なものでも済むと思う。しかも優秀な医者が書いた処方せんについての調剤行為なんですから、これらについての手数料を徴するのは全く不当であると一方で考えている。しかし不当だといっても全然ただというわけにいかぬから、早くこれを善処してもらわなければならぬ。  それから第二に取り上げられる問題は、これは一部山形県等ですでに発足しています、薬剤師協会が支払い基金のかわりに一切の事務を扱うということをやっております。これも非常にいい方法なんです。県庁で喜ばぬ、また基金払いにしても不合理だということで、やむを得ず県庁の方やあるいは保険団体と相談した結果、薬剤師協会自体がこの支払い基金の代行をするというような行き方をしまして、事務一切の取り扱いをするということで協定をして出発しているのです。今のところは百通か二百通の処方せんですから問題はありませんが、この事務費用というものを全部薬剤師協会が負担するという行為がいつまで続くか。処方せんは山形あたりが四月の月で約二百枚しか出ていません。そうしますと、これが五百枚になり、千枚になり、あるいは五千枚になり、というようなことになったならば、薬剤師協会自体が医師会に対してどうか処方せんを出さないでくれと頼まざるを得ない。その事務費の出どころがない。こういう問題点も拾ってみると、一応打開策として考えられるが、これまた必ず行き詰まる。こうした実態について皆さんが厚生省部内においてよく御検討されておるならばいざ知らず、案外こうした問題については私は疎漏じゃないか、こういう感じがするのでありますが、この辺に対しまして保険局としてはどういうお考えでいるか。またこうした問題点について早急に具体的に検討する御意思があるかどうか、この点をお伺いしたいと思います。
  128. 館林宣夫

    ○館林説明員 ただいま野澤先生からお話のございました第一の三点、あるいは第二の薬剤師協会が支払い事務を取り扱うという問題、いずれも保険薬剤の支払い方法の問題でございますが、先ほど申し上げましたように、現在の保険者扱いでございますと、非常に事務上繁雑でございますし、また保険薬剤師が採算が合わぬといったような実態のあることは御指摘の通りでございまして、私どもといたしましても、何とか早急にその解決をはかりたいということで目下検討中でございます。かつて一般医療担当者の中の医師の支払いを医師会が請け負ったこともございますし、従いまして方法としては薬剤師協会等がその支払い事務を一時請け負うという方法もないわけではございませんので、これらについても実は検討はいたしておる次第でございます。ただ一番この問題のむずかしい点は、従来十二円五十銭で済みましたものが二枚に分れるために、かりに保険薬剤師から参りました請求書を医師の請求書と同じようにすれば、ちょうど倍の審査並びに支払い手数料になるし、かりにそれほどになりません、その半数あるいはそれ以下になりましても、それらの経費がかさむという問題が一番この問題のネックになっておるわけでございまして、しかしながらこのままではどうしても事務の上に非常に支障がございます点は私どもも重々感じておりますので、でき得る限り早急に円滑に実施させるようにいたしたい、かように考えて検討をいたしております。
  129. 野澤清人

    野澤委員 そうしますと、これらの今、柱を立てた問題点については早急に対策を講じてもらいたい。もう国会も終りになりますから、再度お尋ねをするというわけにいきませんので、休会中にはときどきあなたの方へ伺って、実情を教えてもらいたい。進捗状況も監視いたします。その点お含み願います。   〔藤本委員長代理退席、大坪委員長代理着席〕  なおせっかくの機会でありますので、私の方で調べました現況について、この保険調剤の実数を申し上げます。調べましたのは十七府県です。東京、京都、神奈川、兵庫、新潟、千葉、滋賀、岩手、山形、秋田、富山、岡山、山口、愛媛、高知、佐賀、熊本、この十七府県を調べたのですが、そこで保険調剤として四月分に出た枚数が千六百四十枚、それから前月の比較でありますが、三月分保険調剤として上ったのは二百三十九枚です。そうしますと三月分と四月分との倍加率は六・八倍、保険調剤ではふえておるのです。それから自由調剤では四月分がこの十七府県で三千六百三十枚、三月分の実績はちょうど二千枚であります。従ってこの倍加率は一……。八倍であります。合計しまして、四月分に出ましたのが五千二百七十枚、これは十七府県の状況であります。  なお東京都で四月一日から三十日までの間を二十七支部について、個別にこれは調べたのでありまして、剤型別、あるいは固形あるいは異剤型というようにすっかり今調査をいたしておりますが、さらに一剤一日分の単価についても調査中であります。できれば参考にこれは薬務局や保険局に差し上げたいと思いますが、この枚数は調べた結果が全部で三十五支部で、二千五百六十五件分であります。受理した処方せんの数は二千六百四枚、内訳は保険調剤が五百三枚です。自由調剤が二千百枚、この東京都の比率を見ると一対四になっております。それから二千五百六十五件のうち、実際に処方せんを受理している薬局は七百六十九件です。約七割の薬局は一枚も処方せんを受け取っていないという計算になります。で、一局当りの受理数とか、あるいはいろいろ詳しいデータも出ておりますが、これは参考に薬務局の方に提出しますから、そのときに見ていただきたいと思います。ただ特質と見らるべきものは、この中で歯科医から出たものが三十九枚あります。ごくわずかでありますが、三十九枚歯科医の方から出ております。  それから投薬日数の比重を見ますと、二日分というのが圧倒的に多いのです。これは自由診療も保険診療も一緒にしてですが、一日分が百五十五、それから二日分が五百九十六、三日分が二百七十九、四日分が百六十六、五日分が九十一、六日分が三十二、七日分が百六十、八日分が十六、九日分が四、そこで十日分にいって百五と上っております。これは自由診療のものが相当あるものですからこういう結果になったと思いますが、投薬日数の一番長いのが九十日であります。それから五十日というのが三枚ありました。こういう状況でありまして、新医薬制度については一応協力し得る態勢に一生懸命がんばってきている。そうして厚生省がぼんやりして何もやらぬ間に、民間の方では一生懸命個別にこれを調査している。近々のうちに全国の隘路、それから管理の態度、指導要領の不徹底、こうしたものが各県別に全部上っきますから、あなた方がいくらいばって通牒を出したような顔をしても、今度は実際に現地におるのですから、とても言いのがれはできぬと思うのです。私が生来おとなしいものだから、あなた方はなめ切っている。次の国会には堅頭にまず報告を聞き、はなはだしければ十日目、十日目にでも私の方から追及をいたしますから、どうかきょうの質問については、皆さんまた分業かとお考えかもしれませんが、現にもうこれは制度として入っておるのですから、入っておるものについても育成を怠る、指導もしないというのでは、その官吏は鼠竊にひとしいと思う。従って給料ばかりもらうのが能じやないのだから、何とか一つこれを具体的に推進のできるようにしてほしい。今日になってはもう医師、薬剤師の問題じゃないと思う。新しい法律をいかにして合理的に国家の制度の上に生かしていくかという問題です。こういうことをおろそかにしておくからこそ、これはよく保険局長に伝えてもらいたいのだが、健保の改正なんかも流れてしまう。こういうことをきちんとやっておりさえすれば、必ずあれは通っておる。神様はこれはよく知っておるのです。そういうことですから、どうか社会党のせいばかりにしないで、一つこの分業の推進ということについてもしっかりやってもらいたい。  なお最後医務局長にお願いしておきますが、あなたと議論をしても始まらない、分業理念についてはむしろ私よりもあなたの方が詳しいはずなんだから、これについての論争は申し上げません。ただ新しいこの体系の理念を織り込まないで分業法を実施しても、これは完全分業じゃない。要するに分業とは名ばかりであって、実態は旧来の陋習で、しかも最も悪い医療費の算定基準というものを押しつけているにすぎない。どうしても新医薬制度を完全に樹立するためには、新体系の理念に基くところの新点数というものが生まれなければならぬ。これを一日早くやればやるほど、日本の国家も国民も救われる。そういうことは、提案したときだけあなた方は主張する。今日になってみると、責任を回避するために、だんだんよくなるでしまうという。今日の状況で何がよくなりますか。そういう誤謬を繰り返しておったのでは、とうてい日本の医薬制度というものは健全化されないと思います。従って保険財政の赤字に対する検討から薬価の小委員会等も設けられて、いろいろ保険局あたりで望んでいる保険医薬物の数も整理して少くしようかなんということを、一生懸命私らは片棒かついでいるのだ。従ってあなた方の方としても、この法の運用には絶大なる熱意を示して善処してほしい。これはだれが何といっても、私は国会議員として分業実施については命を張ってやってきた問題であります。みんなほかの委員とすれば笑いことのようにしているが、これが完全にいくかいかぬかということは今後の問題ですから、私としては追及の手をゆるめずに今後もやっていきたい。このために保険法をつぶしては大へんだと思って、今日まで遠慮していた。最後だからしょうがない。やむを得ず申し上げる。どうか肝に銘じて、御善処方を願いたい。なお局長自体としては、厚生大臣にもよくその意のあるところを伝えていただきたい。そしてより以上なまぬるいならばへこれは閉会中といえどもわれわれは追及しなければならぬと思いますから、よろしく御善処方を懇願いたしまして、私の質疑を終りたいと思います。
  130. 大坪保雄

    ○大坪委員長代理 滝井義高君。
  131. 滝井義高

    ○滝井委員 ちょっと一、二点、大臣の来る前に大臣関係のない部分を聞きたいのですが、それは今野澤さんから御質問のありました、処方せんによって調剤をしたその薬局の診療報酬の請求事務ということなんです。あるいはちょっとこちらで話をしておるうちにお答えになったかとも思いますが、現在の基金の人員と予算の関係で、今後野澤さんの御意見の通りにどんどん推進していくと、ある程度処方せんもふえていくということになると思いますが、当然この審査機構等も確立しなければならぬと思うのです。現在二千何名とか出ていると思いますが、それはどういう取扱いをしておりますか。
  132. 館林宣夫

    ○館林説明員 現在の取扱いは従来と同じでございまして、すなわち保険薬剤師からの請求書は保険者へ提出することになっております。従いまして政府管掌健康保険の分は各都道府県の保険課へ参っております。また各組合の分につきましては各組合の事務所へいっておるわけでございます。
  133. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますとその保険者が取り扱っておるということになりますと当然これは保険者自身が審査をして、そして支払いをやるというわけであります。やっぱり審査事務を保険者みずからがやっておるわけですね。縦に首を振っておりますから……。そう理解しますと、その支払い関係ですが、診療報酬支払い関係はどこを通してどういう工合にやっておるのですか。たとえば現在保険医の支払いは基金を通じて銀行に支払われてくるのですね。銀行の窓口を通じて支払われてくる、こういう形になっているのですが、これはどういう形で支払われておりますか。
  134. 館林宣夫

    ○館林説明員 現在の保険薬剤師に対しまする支払いは保険者から指定銀行なり郵便局を通じて支払っておるわけです。
  135. 滝井義高

    ○滝井委員 指定銀行といいますけれども、健康保険の保険医はずっと長いこと指定銀行を作っておるからはっきりしてくると思いますが、保険薬剤師諸君というのは、四月一日から新たに保険薬剤師と指定された人が相当多いのですね。そうすると銀行その他が基金を通じて支払うならば、指定銀行とはっきりしていると思うのですが、新たになった人がそういうことを確立しておりますか。
  136. 館林宣夫

    ○館林説明員 保険者からの支払いの場合には別に基金の指定銀行のような特別指定の銀行もございませんし、保険薬剤師の要求する都合のいい銀行なり郵便局あるいは直接払い等の方法によっておるわけでございます。
  137. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、今はこの保険薬剤師の取扱い件数が非常に少いので、税金等の関係もないと思いますが、多分医師は四万円以上だと思いますが、保険薬剤師もそういうことになれば四万円ということが出てくると思うのですが、そういう事務まで保険課とか保険組合が今度代行するのですか、取扱いの上では。
  138. 館林宣夫

    ○館林説明員 保険薬剤師につきましてはただいまのところ税金を基金は控除するようなことに相当するような手続はやっておりませんでした。
  139. 滝井義高

    ○滝井委員 多分税金の関係は所得税法か何かできまってきておると思うのです。そうするとこれはやはり支払い基金の問題についても所得税法との関係の問題にしても早く整備をしておかないと大病院の付近の薬局というものは非常に大量に取り扱う場合が出てくる。そうしますと所得税法で引けないと一方の保険医は引いたは一方の保険薬剤師は引かないという、こういう不合理な面も出てくるわけで、急速に整備をしていく必要があるということなんです。それからいま一つは結核予防法、生活保護関係の暫定点数の取扱いですが、これはどういう工合になっておりますか。
  140. 館林宣夫

    ○館林説明員 結核予防法等におきましても暫定点数によって取り扱われておると思います。
  141. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、その場合の結核予防法や生活保護法は指定医しか取り扱うことができません。従って薬剤師も生活保護法と結核予防法の指定薬剤師で一なければ取り扱うことができません。ところが現在おそらく結核予防法には規定がないと思うのですが、この点はどういう工合になっておりますか。
  142. 館林宣夫

    ○館林説明員 この点に関しましては、生活保護法並びに結核予防法の新医薬制度に伴う取扱いにするためには、法律改正をすることが必要であるということで、目下その改正案は参議院で審議中でございます。
  143. 滝井義高

    ○滝井委員 それは参議院に提案中ですか。
  144. 館林宣夫

    ○館林説明員 法案の名称は正確には忘れましたが、身体障害者云々というような表題であったかと思いますが、衆議院先議で参議院に回付されております。
  145. 滝井義高

    ○滝井委員 私も今社会労働関係法律全部調べたんですが、身体障害者福祉法の一部を改正する法律案というのがあるが、この中に全部あるのですか。結核予防法関係生活保護関係それから身体障害者はもちろん更生医療の関係か何かで入りますが……。
  146. 館林宣夫

    ○館林説明員 その法律案の中にあるはずでございます。
  147. 滝井義高

    ○滝井委員 多分私は身体障害者福祉法の一部を改正する法律案を審議するときは、ちょうど公職選挙法の方に行っておったので、私はそれを気づかなかったのだと思います。それは確かにあるようでございます。  次に伺いたい点は、そうしますと、さいぜんの野澤さんの質問とちょっと重複するところがあると思いますが、この医療費体系の取扱いについてでございますが、御存じのように医療費体系はまだ衆議院では一日も審議しておりません。それで野澤さんはなかなか短兵急に医療費体系を出せ出せ、六月末までにとおっしやるけれども、医療費体系はできていないのですね。そこで今度は日にちが出てきたんですが、あなた方もこれからちょっと楽になりますから、いよいよこれはじっくり腰を落ちつけて二年、三年かかってもかまわぬと思いますから、いわゆる基本的な調査を今やって、大蔵省主計局も来ておりますが、八月に三千万円ぐらいの予算をとって、ほんとうに医療費体系をやる調査をやらなければならぬと思いますが、新医療費体系に基く新点数ではなくて、新医療費体系そのものを出してもらわなければならぬと思うのですが、この点はどうですか。医務局長新体系を今度出してもらえますか。
  148. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 新医療費体系と申しまして、どの程度までをこの範囲のうちに含めるかということがきわめて微妙な問題にもなります。私どもできるだけ広範な、またできるだけ慎重に検討しましたものを作りたいかように考えておりますが、先ほど野澤さんからもお話がございましたようにすでに発足いたしておりますいわゆる医薬分業法の実施というようなものを円滑に進めますために、それとのにらみ合せでどの程度のもので一応案を固めていくか、少くとも保険の点数としましてはいかような姿にするかというようなことをにらみ合せて考えていかなければならぬものだ、かように考えております。
  149. 滝井義高

    ○滝井委員 医薬分業に必要な限度というものはもうこの委員会の再三にわたる質疑応答を通じて明白になってきた。少くとも薬価についてだけ物と技術とに分ければ、これで医薬分業は実施可能であるというのが保険局長なりあなたの御答弁であったのです。そこで医薬分業というものに入りましたから、もう医薬分業には一応関係なく、今度はほんとうに日本の医療における適正な薬価の基準と適正な技術料を確立するために、これらの医療費体系を作らなければならぬのです。医療費体系というものは医薬分業と不可分だとあなたはさいぜんおっしゃったが、不可分でも何でもない。医薬分業をやることができるかどうかの、いわゆる前提的な条件としてこれを作ることは・あなたは私の医薬分業についての質問に対する答弁のとき、可分でございますということは明言した。いつ不可分に豹変したのですか。しかし私は今可分とか不可分とか児戯に類することは言いたくないのです。従って私は医薬分業は実施されたのだから賛成です。これはもうそのままでやってよろしいと思う。そこで、今度は医薬分業というものとは関係なくして——あのサムスがやってきて、日本の適正な薬価の基準と適正な技術科を確立しなければならぬとおっしゃった。このサムスの言葉は神の言葉としてみな受け取ったはずです。そして今私たちは適正な薬価基準を森本薬務局長と一緒にやっております。小委員会もできておる。ところが今度は、同時に適正な技術料というものをきめなければならぬ。適正な技術料はストップ・ウォッチではかるようなことは許されぬ。もしストップ・ウォッチではかって医者の技術料をきめるというなら、一つ厚生大臣の適正な俸給は幾らか。厚生省で事務をとっておる間、国会答弁をしておる間、それをストップ・ウォッチではかって、先にそれから出してもらいたい。あるいはわれわれ衆議院議員の適正は報酬というものは幾らなのか、どういうことできめるのか。もしあなた方がストップ・ウォッチできめていくということになれば、全部それでやらなければならぬということになる。公務自由業である医者の技術料だけをストップ・ウォッチで時間をはかっていくというようなことは、これはそれ一つだけには許されないのです。少くとも国がやるならば、全部そういう形をとらなければならぬ。そうしますと、あなた方医務局長の俸給というものもやはりそれできめられる。あなたが国会に来てここですわっておる間は入らぬですよ。答弁しておる間だけをはかる。それからあなたが役所にすわってぽんと判を押す間、あるいはあなたが役所の書きものをする間だけがあなたの労働時間になる。そうしますと、おそらくあなたの労働時間というものは二時以下になるのです。そうすると、二時間の給料というものは幾らにするかということになれば、医師のストップ・ウォッチではかった給料というものが二万三千円になるなら、これは二時間なり三時間なり働きます。そうするとあなた方のものというものはぐっと落ちてくる。基礎代謝と答弁に必要なエネルギーで、あとは何かちょっとつけ足せばいいということになるのです。だからそういう概念を持ってくることは、もはやこれはナンセンスなのです。そういう概念を持って検討し、作った二十七年のものをなお金科玉条のものとしてこれを医療協議会にかけておったって、ここに持ってきたって、とても、私一人でも反対して絶対につぶしますよ。だからそういうつぶれるようなことのわかっておるものを持ってきて、またきょうのような健康保険と同じ二の舞を演じてはならぬ。私は大みそかで最後だから、忠告しておきたい。浅見絅齋は、来年から一ついいことをやろうといったところが、その師は、その日がちょうど大みそかの晩であったが、何ぞ来年を待たんや、大みそかの晩から一つやりなさい、こう言われたというのです。だからあなた方は先のことを言う必要はない。今日この日から——医療費体系を作りますということは言明せられたはずです。だからどうですか、今度は大蔵省も見えておりますから、ほんとうに予算をとって、健康保険の二の舞を演じないように、二度も出してそれが審議未了とか継続審議になるような醜態を演じないように——今度は医療費体系も二度目ですよ。今度作ってやりそこなったらだめです。だから三度目はりっぱなものを確立するために、これは根本的にやってもらわなければならぬ。これはいずれあとで大臣が来たら大臣にもやりますが、どうですか、あなたは主管の責任局長として医療費体系は、ほんとうに日本に正しい技術料を薬剤師のためにも医師のためにも歯料医師のためにも確立するために、もっと根本的な調査をやり直すつもりなのか。それとも今中央社会保険医療協議会にかかっておるあのちゃちな、時間ではかったようなもの、われわれがこっぴどくやってその不合理性を暴露したものをなお金科玉条としてやっていくつもりなのか。あれを参考にするということならよろしいと思う。しかしあれをもって医療費体系とは私は断じて言わせないつもりです。だからもう一回根本的に——非常に社会情勢も変って参りました。医療の状態も変ってきた。しかも厚生省自身も、五カ年で全国民のうちの残りの三千万円の国民を医療保障の中に入れるということを言明をしました。同時に、来年度は少くとも五百万の国民国民健康保険に入れるということを参議院で、同僚山下議員の質問に対して答えておる。これは当然来年度からも本格的に日本社会保障を確立するために、まず適正な技術料を確定することが先決問題なのです。だからそれと並行してこれをやってもらわなければならぬと思うの、すが、どうですか。そういうことをやるおつもりなのですか。やるならやる、やらぬならやらぬということを御答弁願いたい。それによって私はあとの大臣に対する質問の工合もありますから……。
  150. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 いわゆる新医療費体系と申しましても、先ほども申しましたように、いかような範囲にわたるかという点についてはいろいろな考え方があろうかと思うのであります。大きく考えまして、一つは医師に対する技術料、報酬というものの絶対額がいかようにあるかということの問題、それからもう一つの問題は、その絶対額はとにかくといたしまして、いろいろな診療行為に対してそれぞれいかように配分さるべきかというバランスの問題、こういう点があろうかと思うのであります。そのほか、たとえばいわゆる個人差の問題でありますとかいろいろな問題が関連してくると思いますが、大きな問題としては、私かように二つに分けられるかと思うのであります。先に申しましたいわゆる絶対値というものについては、私正直に申し上げまして、この判定はなかなか困難な問題ではないかというふうに考えて曲るのであります。その後者の問題につきましては、私ある程度客観的な基準と申しますか、かようなものは打ち出せる。しかしながら後者の問題にいたしましても、医師の技術というものは今も申されましたように、単純にストップ・ウォッチではかったというようなことだけでは非常に決定いたしがたいということは、私どもも承知いたしておるのであります。ただ基準になりますものとしては、さような比較的客観性のある算出の方法をいたしまして、それにいろいろ医学常識的な考慮を加えてほどほどの数字を出していく、かようなものではないかというふうに考えておるわけであります。新医療費体系あるいは診療報酬の理想的な姿というようなものはどの程度までを要求するか。非常にこまかい点・あるいは十分広範な問題ということになりますと、これは確かに二年、三年だけではなしに、あるいは五年十年かかるかもしれないのでありますが、私どもとしましては、今日の状況よりも一歩なり二歩なり進んだ形で、これでもって実際に診療に当っております人たちも、あるいはこの診療報酬を負担する人たちも、まずまずこれならば一歩前進したというような姿が打ち出せるならば、これを実施いたすというような考え方でいかなければならぬと思います。今も言われましたように、私ども今日ただいまからでも——前に出しております案というものに決してこだわってはおらぬつもりでありまして、いろいろ皆様の方からも名案と申しますか、いろいろなお考えがございますればそれをお聞かせを願って、あすからでもまた考えますときにはそれを取り入れて考慮いたしたい、かように思っておる次第であります。
  151. 滝井義高

    ○滝井委員 どうも抽象的な御答弁でございますが、私は、医療費体系のその内容の問題は、いずれできてからお尋ねしたいと思うし、また作る過程でこの点はどうだという意見を求められれば、その具体的な内容について勉強し、考えてお答えいたしたいと思うのです。その前に、あなた方が二十七年の三月と十月を基礎にしてお作りになった体系というものを、今中央社会保険医療協議会におかけになっておるのですが、それをあくまで医療費体系として押し通していかれるつもりなのか、それとも、あれはもうわれわれがすでにだめだという烙印を押しておる、そのためだという国会の意思を無視してなおあれを押していくのかどうか、この際白紙に返して、あれは参考にすることはよろしいけれども、白紙に返すという立場でやり直す意思はあるかどうかということをお尋ねしておるのです。これは大臣は、私には、あれはまあちょっと事のはずみで六月だ、こう言っただけでありまして、あんなものはもう死んだと同じでございますという音加味の答弁をしている。またあなた方は日本医師会にもそういう御答弁をされておることは、すでは健康保険の公聴会において明白になっている。今になって死児のよわいを数えるように、死んだ者を呼び返すことはだめなのです。それは、歌ならば、死んだはずだよお富さんということもあるかもしれませんけれども、そんなことは政治の上ではだめなのです。これは死んだお富さんの年を数えたってだめなのだから、この機会に心機一転、あれを参考にしながら各界各層の意見を聞きながらやり直したらどうだ、こういうことを言っているのです。だからその御答弁を得たいのです。これはあなたが御答弁ができなければ、大臣が来てからでけっこうなのですが、担当局長としてあれで押し通すつもりなのか、それともこの際別にあれをやり直す、こういうことでございますか。あれはわれわれは何も審議しておりませんから、野澤さんのようにあれは六月一日から実施するなんていったって大反対です。その点を一つ……。
  152. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 私どもとしましては今までのいきさつから御承知の通り、何もこだわったふうに考えておりません。ただし私ども皆様方からの御意見も拝聴いたしまして一いろいろと国会以外のところからも御意見も拝聴いたしておるのであります。こういうものをにらみ合せました結果に基きまして、どういうものがいいか、私どもも、お示ししました原案というものには決してこだわってはおりませんけれども、それ以上の名案というものが考えつきませんならば、結果論的にはそれに似たもが出てくるということは、今の段階においては何とも申し上げかねる状況であります。
  153. 滝井義高

    ○滝井委員 回りくどい御答弁でどうもあまりはっきりいたしませんが、この段階ですから、どうせ六月までできぬことははっきりしているのですが、そうするとあなた方は、日本の新医療費体系をあれを基礎にして作っていく、こうおっしゃるのですか、どうですか。あれを基礎にしてやっていくならいく、いかないならいかないと明確に御答弁願います。もうこの段階では歯に衣を着せる必要はありません。
  154. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 医療協議会においてこの問題はいろいろ皆様方の御意見が出て、その結果に基いて厚生大臣が決心をなさるもの、かように私は了承しております。
  155. 滝井義高

    ○滝井委員 いつも言うように、医療協議会はあなたの方の諮問機関です。従って国会に対する答弁としては——私はあれを基礎にするのかしないのかという政府自身の意見を聞いておる。医療協議会なりあるいは社会保険審議会の通りにあなた方がやるのならばそれでいいです。その通りにはやったためしはないのだから。これは私は政府当局の責任者としてのあなたの御意見をお聞きしている。どうしますか、あれを基礎にしてあくまでやっていくのか、それとも新しくやりかえるのかということ、あれを基礎にするならする、別にやりかえるならやりかえる、それだけでけっこうなのですが、御答弁ができなければ、大臣でなければできませんと言って下さい。大臣が来るまで待ちますから……。
  156. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 医療協議会につきましては、所管の局長でもないのでございまして、答弁に十分な責任を持ち得るかどうかわからぬのでありまして、むしろお控え申し上げた方がいいかもしれぬのでありますが、私了解いたしておりますのでは、現在医療協議会においてこの問題は検討され続けておる途中でございますので、その結果によりまして、厚生省としても腹をきて参る、かようなものと了解いたします。
  157. 滝井義高

    ○滝井委員 厚生省がそういう了解をされることは、私はちっともかまわない。しかし少くとむ国会の意思というものは、二十七年に作ったあれはだめだということを言っておる。これは小島君がここにおればわかる。当時の委員長は、あれではいかぬと言っておる。だから作りかえてこいということで医薬分業というものは一年三カ月延期になっておる。ところがそれをまた出してきて——だめだからこそ医薬分業に暫定的な案でいったじゃありませんか。それは歴史的な経過というものは見なければいかんですよ。従って私たちは、あなたの方に国会の意思として、衆議院に関する限りは、やりかえてこい、こういうことを言った。やはりかえてきておりません。ですから、そのやりかえてくるものをいつ出すかということを言っておる。あなた方が中央社会保険医療協議会にかけておるのは、前医療費体系に基く社会保険の点数じゃないですか。医療費体系は出していない。ですから医療費体系をいつ出すかということを私は言っておる。あんなものは医療費体系ではないのです。だから、少くとも医薬分業の前提的な条件として、医薬分業の可否を判定するための医療費体系というものが出てきていない。だからそれをお出しなさいと言うのです。新医療費体系があの点数だなどということは三つ子だってだまされません。そういう論弁はこの際弄してはいけない。事態が、平静なときに言うのならいい、もはやすでに健康保険法というものは、審議未了になるか、継続審議になるか、こういう事態です。しかもあなた方のお作りになったところの新体系というもの——実際は新体系ではなかったが、それもだめになって、暫定案というもので現実の政治に実施されておる。こういう段階になってもなお新体系に対する答弁ができないということは、あまりにも無責任です。だから新体系というものは国会へいつ出しますかということを聞いておるのです。
  158. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 前にも御質問がありましたときに申し上げたのでありますが、私どもは新医療費体系と申しますのは、医療費のあり方というので、その考え方が本質である、かように考えております。これはいわゆる新点数表というものでお示しいたしました中にこの考え方が含まれておる、かように考えております。
  159. 滝井義高

    ○滝井委員 それはあなたの独善だ。それは、二十七年に出したものは新医療費体系ではなかったのですが、二十七年に出したものと今度出したものとは雲泥の差がありますよ。私の方の党の春日君の言うように、やかんとてんかんくらいの差がある。そういう詭弁を弄するものじゃないですよ。あなた方そういう詭弁を弄してやっておると、またやりそこないますよ。きょうはもう最後ですから、責任も何も追及したくありません。もはや日本の医療というものは、今のままでいけば重大な危機に直面する。だから何らかの形で最後の機会にお互いの意思疎通をはかって、そうして今後来年度の予算の面においては、やはり日本社会保障というものが末広がりになる基礎を作らなければいかぬというのがわれわれの今の考え方なんです。今のようなあなたの考え方では、もう次の通常国会なり臨時国会で医療費体系が出てきてもだめなことは今まで言ったことではっきりしておる。だからこれはこの際厚生省自身も根本的に反省をし直して、ああいうものを一つざっくばらんに一応御破算にして、関係者を集めてやりましょうと言ったらいい。そうすると、あれは結局基礎になるのです。考え方の一つの重要な参考資料になる、データになるのです。これは確実なのです〇二十七年のものと、今度あなた方がお作りになった点数というもの、あるいは暫定案というものが、一つの大きな参考資料になってくるのです。ところがそれにこだわっておるからこそこういうことになる。それならばお尋ねしますが、大体この中央社会保険医療協議会では、四月一日に一応たな上げされて以来どういう形になっておるのですか。これを一つ御説明願いたい。
  160. 館林宣夫

    ○館林説明員 四月一日以降しばらく中央社会保険医療協議会の開催がなかったのでございますが、五月に入りましてからほとんど毎週二回程度開かれております。審議内容は暫定案を作りますまでに、種々論議せられました論点を整理いたしまして、それを整理メモという形でまとめまして、今その整理メモの逐条その内容をさらに明確にいたし、整理中でございまして、その整理メモに盛られました主要論議点が中心議題になりまして、新しい点数表の考え方のかなり根本的な論議、あわせましてそれに付随する各論的な論議というようなものが行われておる状況でございます。
  161. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、医療協議会で、今までの暫定案のいろいろ論議をした論点に対して、整理メモというものを作っておるそうでございますが、あとでそのメモを一ついただきたいと思います。  そういうメモを作って、点数表の考え方とかあるいは各論的なものをやっておるということでございますが、そうすると、新体系はどういう形になるのですか。あなた方の出した新体系というものが、そういう論議の結果、全部修正をされて、今度答申をされる形になるのですか。
  162. 館林宣夫

    ○館林説明員 ただいま論議せられておりますところは、昨年十二月末に政府が提出いたしました新点数表に対しまして、三月中旬ごろまで約二カ月半にわたりまして、種々論議が行われたわけであります。その論議の主要点が一応整理せられ、抜き出されておるわけでございまして、いま一度その論点を明確にする、あわせて医療費の組み立ての考え方というものを根本的に考えていくということも同時に行われておるわけでございます。  なおその論議の結果、どういうふうにとりまとめ・その後においてそれをどうするかというようなことは、今後相談しようということで、医療協議会が行われておる次第でございます。
  163. 滝井義高

    ○滝井委員 医務局長さん、今の御答弁をお聞きになりましたか。結局あなたの考えておる根本的な医療費体系というものは、医療協議会でどんどん修正されていっておるじゃありませんか。そうでしょう。それならば、あなたはここで今のような医療費の根本的な考え方、組み立て方というものを考えて、そしてそれを論議して医療協議会の答申を待ってやるというならば、あなたの本来のものと全く似ても似つかぬものになってくるじゃありませんか。あるいは同じものになるかもしれませんが、今のような考え方からいけば変る可能性の方が強い。そうすると、あなたはここで、根本的に各界の意見を聞いて、やりかえることにやぶさかではないという答弁をしてもちっとも差しつかえないじゃありませんか。何か今の医療課長答弁、あなたの意見の通りにいっておるでしょうが、違うじゃありませんか。その点どうですか。
  164. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 言葉の表現にあるいは誤解を生ずるような点があるかもしれませんが、私も先ほど、私どもの原案というものに何もこだわってはおりませんということを申し上げたのでありまして、一応あの案が出ておるのでありますから、その後皆様方の御意見というものに従って、いかような筋が出て参りますか、私どもとしては決してこだわりを持っておらぬということを繰り返し申し上げた次第であります。
  165. 滝井義高

    ○滝井委員 それではっきりしてきた。そうしますと、二十七年に作ったものがそのまま生きていくのではなくして、それはあくまでも参考的なものとしてしか今されていないということですね。従ってあなたたちがお作りになった医療費体系というものは、形式的にはとにかく・実質的には白紙と同じ形になって、そして医療協議会における専門の委員の諸君が論議をして、それが組み立てられ、新しい点数表として現われてくるものであると理解して差しつかえありませんか。これは医療課長から先に尋ねておきたいのです。そう理解して差しつかえありませんね。
  166. 館林宣夫

    ○館林説明員 昨年暮れに諮問いたしました政府の原案は、あくまでも医療協議会に審議された形になっております。ただその審議の過程におきまして、政府のものの考え方・その底にあるものの正しさというものを審議するためには、当然医療費の組み立て方の根本から論議していく必要がある。その論議をだんだん整理する必要がある。いたずらに種々の欠点その他を無計画に論議することでなくて、第一歩から基本的に論議し、固めて考えていく。従いましてその際においては、政府の従来の考え方ももちろん、私どもとしては発表いたしますし、またそれに対します医療担当者側の別の論点があれば別の論点、また考慮すべき点があれば考慮すべき点が論議せられるわけでございます。その意味合いにおいては、かなり根本的に別の考え方も同時にそこで論議せられるという状況であるわけでございます。
  167. 滝井義高

    ○滝井委員 従って政府の作ったものがそのまま今までのように答申されることはない。大体今までの医療協議会では主として幹事案というものが通っていった。今までの歴史的な経過を見ると、中央社会保険医療協議会の考え方はそうなんです。ところが今度はそうではないのです。明らかに今までの行き方と違うのです。あなた方が根本的なものの考え方を第一歩から固めていくということはそれをくずしていくということを意味しておるのです。立場の違う人が考えていくのだから……。その場合にあなた方の考えをそこに出していく、それはあくまでも参考的なものです。それに従っていくというものではないのです。だからこれはさいぜんあなたも各界の意見を取り入れていくことに御賛成になったわけでございますから、御両者の御意見で大体基礎的な考えはわかりました。あの医療費体系は二十七年のものは一応参考的にするが、これは第一歩から中央社会保険医療協議会で考え直していくのだ、それが政府の意見と一致することがある。しかしそれは偶然であろう。こういうことに結論的にはなるわけでございますから、了承いたしました。あとでいずれ大臣が来れば、その点御両所の担当技術官の有力な御意見として私受け取っておきまして、大臣にもう少し伺うことにしたいと思います。  そこで次にお尋ねしたいのは、衆議院はまだ一つも医療費体系についてはやっておりませんから、いずれこれは国会の御意見を聞くという明白な御答弁野澤さんにございましたから、これは医療協議会が第一歩から考えて、できたならば、当然今度は国会の意向を無視してすぐに実施することはないであろうことを了承したいと思うのです。それはどうしてかというと、前の暫定案というものは、四月一日から医薬分業を実施するというきわめて政治的な急迫した背景というものがあったからなんです。そこでその点は大臣が来てから私お尋ねしていくことにしたいと思います。  そこで大臣が来る前に、大蔵省の主計局の次長さんが見えておりますからお尋ねすることになるのですが、健康保険の問題です。さいぜんから論議をしておりますように、現在日本社会保険医療というものは、きわめて重大な一つの転機に立たなければならない状態になってきました。それはすでに健康保険法がこの国会を通る見通しがなくなったということです。これは初めから通る見通しはなかったのですが、確実に通る見通しがなくなってきました。今聞くところによりますと、すでにこれは審議未了になったようでございます。あるいは言葉をやわらかくすれば、継続審議になる可能性があるかもしれませんが、大体今のところはない。脈が切れた。脈が切れれば坊さんに渡さなければならぬが、医者の私はもう少し先を見ていきたいのです。そこで問題は、三十億の予算は通りました。そこでこの健康保険法の七十条の三によりまして初めて「国庫ハ第七十条二規定スル費用ノ外予算ノ範囲内二於テ政府ノ管掌スル健康保険事業ノ執行二要スル費用ノ一部ヲ補助ス」、こういうことになったのですが、この法律に基いて三十億が出たということなんですが、この法律が継続審議なりになれば問題ないが、現在は審議未了ということがほとんど確定的になってきました。そうしますと、三十億の取扱いは、大蔵省としては当然これは出していただけるものだと思いますが、そう理解して差しつかえありませんか。
  168. 宮川新一郎

    ○宮川政府委員 健康保険法の改正につきましては、私ども是が非でも御審議願いました線で可決成立することを念願いたしておるのでありますが、かりに審議未了になりました暁におきましては、御承知のように健康保険の勘定に赤字が生ずる見込みが大になることになるわけでございます。今回政府といたしまして健康保険勘定の財政を再建いたしますために一方においては国が補助し、一方におきましては患者に一部負担をしていただくというようなラインで御提案している次第でありまして、かりにこの健康保険法が審議未了になりました場合におきましては、法的根拠がございませんので、予算は通過いたしておりますが、三十億は支出できないものと考えております。
  169. 滝井義高

    ○滝井委員 そういろ法的な見解はどういうところから来るのですか。
  170. 宮川新一郎

    ○宮川政府委員 特別会計に対しまして一般会計から繰入金をいたします場合には一般会計と特別会計と厳密な会計区分をいたしておりますので、実体法の補助するとか負担するとかいう規定に基きましてやっておる次第でありまして、実体法に規定がなければこれは特別会計に入れることはできません。かような法的解釈をとっている次第であります。
  171. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、七十条の一の方は、これは明らかに事務の執行に要する費用はこれを負担するとなっている。負担なら義務です。ところが補助金というものは、今までの法律でも、法律的な根拠がなくても、補助金を出している例の方が多い。法律で補助金を規定している方が少い。何も健棄保険の法律とはちっとも関係がない。関係なくてもよろしいのです。従って七十条の三に補助すると書かなくても、予算が通れば厚生保険特別会計の受け入れの袋ができているのです。三条の中に、「保険料」の下に、「一般会計の受入金」を加えたのです。従って袋ができているので、予算が通れば補助金の規定がなくても入るのが今までの通則的な考え方です。今になって大蔵省がそういう詭弁を弄するならば、他の一般の補助金もすべて法律的な根拠がなければあなた方の指示によって出さぬと、こういうことになるのです。そういうことは今の段階、この医療が重大な危機に直面しているときにそういう詭弁をもって、法律が通らなかったら——予算が通っているのですよ、それを出さぬと言う。この七十条の三というものは、あなたの方と自民党の政策審議会と厚生省の三者の政治的な取引の結果できたものです。これはただアクセサリーです。二十三億の一部負担をさせるためには何らかの形でここに書かなければねらぬということで書いたもので、初めの厚生省の原案にはなかった。あとから、きてきたものです。あなたの方はこの三十億というものは暫定的な補給金だというような説明を予算委員会で私にはしてくれている。ところがその後説明書を書きかえてきたことは、この前指摘した通りです。それは宮川さん、今になってそんなことを言えば、全国十万の療養者が今度の選挙には自民党からみな逃げてしまう。あなたの不言だけで逃げる。あなたの政治的な責任は重大だから大蔵大臣のかわりの答弁として私は要求している。大蔵省があの法律が通らなかったら三十億出せないという言明は、自民党の大蔵大臣一万田さんのかわりにやったものと理解して差しつかえありませんか。私天下にこれを公表しなければならぬ。
  172. 宮川新一郎

    ○宮川政府委員 補助金につきましての滝井委員の御質疑につきましては、補助金につきましては、御指摘の通り法律に基くものと予算に基くものと二つございます。しかしながら特別会計の繰り入れの関係につきましては、一般会計と会計区分の原則に立ちまして、私どもといたしましては実体法がなければ不可能と考えております。経過的にいろいろなコースはございましたが、補助と負担の考えにつきましては、健康保険の財政再建というものは特別勘定の自主的な問題である、それに対して国が補助するという関係で、負担と補助との使い分けをいたした次第でありまして、負担と書くも補助と書くも、特別会計に対する繰り入れの要否の点については私は同様と考えております。なお非常に重要な問題であるが、大蔵大臣の代理として明言できるかといろ御意見でございますが、この点につきましては大蔵大臣の言として申し上げてよろしいと思います。
  173. 滝井義高

    ○滝井委員 自民党の大蔵大臣が、この法律が通ら血かったために三十億は出せませんという御言明をいただきました。これはきわめて重大なことで、全国の医師会の療養担当者あるいは労働者一つ発表したいと思うのですが、そこで今宮川さんは補助するということと負担するということが同じだということを申しました。これはそういうことはないのです。私は法律の専門家ではありません。しかし負担をすると書けば必ずこれは義務費です。補助をするというのは義務費じゃないのです。これはしろうとでもその論は正しいと思うのです。補助するということは、何も補助しなくてもいいのです。補助することができるであって、補助をしなくてもいいのです。ところが負担をすると書けば、絶対負担しなければならぬ、義務費ですから。この点今あなたは同じだとおっしゃったが、同じですか。
  174. 宮川新一郎

    ○宮川政府委員 ただいまの御質疑の点を中心といたしますれば、私は違うと思います。ただ特別会計に入れるかどうかの面につきましては、負担と書くも補助と書くもも私は同様と考えております。
  175. 滝井義高

    ○滝井委員 それはやはりそうではないと思うのです。この健康保険法が流れれば、そのときは負担というものはなくなる、これは義務費ですから、法律がなければ行けないのです。ところが補助するということについては、これは法律がなくても行けるはずです。そのときは、特別会計に関係なく行けるわけなのです。補助金というものは、そういう形になっている。それならばまずあなたの方はそれでよろしい。そうすると、厚生省の保険局長を、これは大事なところですから呼んでもらいたい。この三十億の話がきまらぬと あとの一部負担の話はできないのです。
  176. 大坪保雄

    ○大坪委員長代理 それでは保険局長が来るまで、しばらく他の人に……。それでは長谷川保君。
  177. 長谷川保

    長谷川(保)委員 主計局次長がおいでですから、ついでに伺いたいのですが、御承知のことと思いますが、北朝鮮に帰りたいという朝鮮人の諸君が、すでに二月ほど前、あの平壌におりました日本人をこじま丸という船が迎えに参りましたときに、ぜひその船に乗せて帰してくれ、こういうことで世帯を畳んで東京へやって参った四十五名ばかりでありますが、日本赤十字社の門前にすわり込みをいたしました。その後赤十字社で総会等がございましたために、私ども中に入って一時そこを撤去さしたのでありますが、総会が終るとともにまた再びすわり込みをいたしました。わずか四十五名でありまして、それ以上出てくることについては、絶対それは困るということで、私ども朝鮮人の総連合の方にきつく申しまして、絶対それ以上出てくることまかりならぬということで今押えてあるわけであります。結局、先般国際赤十字社がその後日本に参りまして、また京城及び平壌に参りましてこの問題の解決のあっせんをしております。その問題が解決しましてから正式に大ぜいの者が朝鮮に帰れるようにしよう、こういうようにいたしてあるのでありますが、この四十五名の諸君が今日まですわり込みまして、長くなりますし、病人等も出て参る傾向が出て参りました。遂に数日前に、それでは自費で香港まで帰るということになりました。この香港まで英国船で帰ります金は、彼らが何としてでも作るということで努力しているのでありますが、しかしながらその船賃だけではもちろん帰れないわけです。そこで何とか少し政府で見舞金を出してもらえないだろうかということであります。このことは、あなたも御承知のように、中共に帰国いたしました中国人の諸君には、帰国雑費というような名目で幾ばくかの金を持たして帰してわけです。先般平壌から引き揚げて参りました日本人に対しましては、朝鮮の政府が一人当り六万円という金を、朝鮮を離れるについてのいわばせんべつというような意味でくれました。そのほかに、私は平壌で彼らの収容所も実際に見たのでありますが、実に懇切至らざるなき取扱いをしている。たとえば、子供をかかえてあの戦乱の中をさまよってきた婦人たちでありますから、衣服等もございませんため、日本へ帰っても恥かしくないようにといって、ツー・ピースの洋服まで作ってくれている。これほど懇切な扱いをしている。また彼らは収容所の中では全然働かないで、たとえば帰るまでに朝鮮の舞踊を習おうということで、崔承喜の舞踊研究所からわざわざ先生が来て舞踊を教えておるというほどに、実に至れり尽せりの扱いをしている。私たちはこれを見て感激して、今さらながら朝鮮を見直したのでありますけれども、こういう事情でございます。今日赤前にすわり込んでおります四十五名の諸君も、そのような六万円もくれなんということは決して言っておらない。香港へ着きますと、とにかく香港で一泊しなければなりませんし、香港から九竜に渡って、九竜から深センという国境まで少くとも行かなければならぬ。中国の中はあるいは中国の紅十字の方でお世話をして下さるか、あるいは朝鮮の大使館も北京にあることでありますから、領事館も広東あたりにあるかむしれ乗せんし、お世話をなさるでしょう。ともかくもこの香港に着くまでの船賃は、何とかして借金をしてでも自分で作るけれども、それ以上のことができないというので、あるいはその船賃も幾分足らないかもしれないというような事情でございまして、何とかこれをめんどうを見てやる必要があるのであります。このことは、自後朝鮮から引き揚げます日本人の引揚問題にも必ず影響すると思いますし、わずかなことでありますから、一万円ずつくれましても四十五万円、二万円ずつくれましても九十万円というようなわずかな金で済むわけであります。その他のものにつきましては、先ほど申しましたように、国際赤十字社がちゃんとしてから後ということになっておりますから、これは問題はないと思います。このことについて、社会局長もお見えでありますが、社会局長あるいは厚生次官、あるいは引揚援護局長にいろいろ今日まで話をしたのでありますが、この金の問題になりましてなかなかうまく出せないという状況にあります。実は昨日日赤の方のいろいろごあっせんの結果、朝鮮の政府から電報が参りまして、そしてとにかく香港まで来い、香港へ迎えに行ってやるというような電報が参っているわけであります。また日赤等の尽力でもう予防接種その他をいたしまして、帰るだけになっております。この英国船で帰ります契約を今月の五、六日ごろまでにしなければならぬという状況です。船は二十六日でございましたか神戸を出るのでありますが、その前に契約をしなければならぬ、こういうような差し迫った状況であります。昨日も引揚援護局長といろいろ話したのでありますが、問題は結局大蔵省がそういうものを厚生省の方から出すことを許してくれるかどうか、そこに非常に難点があるということが一つ。いま一つは、外務省の方で、この点について韓国政府から彼らが北朝鮮に引き揚げるために日本の公金を出してくれるなという話があるというようなことが問題のようであります。彼らは自費で帰るのでありますから、とにかく帰ることは帰る。だから日本の公金で帰るというわけでない。ただ香港あるいは船の中の小づかいとか、船に乗るまでの小づかいというものについてある程度の心配があると思うのであります。大した金ではないのでありまして、この点を少しめんどうを見てやれば——これを全然見ないとなると、自後朝鮮から引き揚げて参りましょうし、また朝鮮政府に対しても相済まぬと思う。ここで一つ大蔵省の方で、厚生省の方にあります何かの金を、たとえば日赤なら日赤に何らかの名目で出していただくことができれば、日赤の方はその金だか何だか知りませんが、とにかく日赤で少しは見舞金を出してもいいというような考え方もあるように伺うのであります。そこで大蔵省の方で大局的にお考えになっていただいて、厚生省の方にそういうたぐいの金を支出することを目をつぶっていただくというか、あるいは黙認していただくというか、あるいは了解してくれればなおけっこうでありますが、何らかの措置がとれないものしありましょうか。非常に差し迫った問題でありますの、で、大蔵省の方の御意向について伺ってみたいと思うのです。
  178. 宮川新一郎

    ○宮川政府委員 詳細事情を承わりまして、種々勘案しなければならぬ問題だと思います。厚生当局が言われましたのは、おそらく予算技術上と申しますか、そういう引揚朝鮮人に対しまして何らかの形で見舞金が出せるかどうかということにかかっていると思います。予算的には、もちろん予算科目もございませんし、何らかの形で流用いじまして、目を立ててやらなければならぬ。その際に、たとえば外地から日本に引き揚げて来られる方々に対しましては引揚援護費から出しております。これは予算上当然のことだと思うのでありますが、逆に朝鮮の方が帰られるときに、果してそういう金が使い得るかどうか、非常に問題があるかと思います。ただ将来日本人で朝鮮におられる方が引き揚げて来る場合に、また相対的によくして下さるということも考えなければならぬということもよくわかりますが、今直ちに大蔵省といたしましてもこれを黙認するというわけにも参りませんし、この辺のところは複雑デリケートな問題でありまして、ただいま即答はいたしかねる次第でありまして、よく厚生当局と相談いたしたいと思います。
  179. 長谷川保

    長谷川(保)委員 いろいろお立場があると思いますので、私はここで明確な御意見を伺おうと思いませんが、そういうような事情でございまして、わずかな金でございますから、何とか了解をして上げていただくように、腹芸でも胸芸でも何でもけっこうです。とにかくそういうことをもしお考えいただければ、今後の引揚者のためによいことである。先ほど申しましたように、中共へ帰る者に対しましては、何でも一人当り七、八千円かの帰国雑費というものを出し、そうして船を用意いたしまして送った、こういう今日までの実情で、近くまた興安丸が向うへ迎えに参りますが、それにもまた中共の人を乗せて帰るという。朝鮮の人は安導券等の問題で日本の船で運べない、こういう実に気の毒な状況にあるわけであります。あとのことは多分国際赤十字が中に入って問題を解決すると思いますが、さしあたってのわずかの人のことでありますから、どうかいろいろ御尽力をいただきたい。その程度で、御返事は要りません。どうぞよろしく。
  180. 大坪保雄

    ○大坪委員長代理 八田委員
  181. 八田貞義

    ○八田委員 曾田さんにお尋ねいたしますが、このたび医療法の施行規則の二十九条が改正になりましたが、どのように改正されましたか、一つお知らせ願いたい。エキス線診療室の遮蔽規定です。
  182. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 実はここに古い施行規則を持ってきておりませんので、正確に申し上げかねるのでありますが、エキス線診療室の危害防止のために、エキス線機械に散乱線が生ずるのをできるだけ防止する装置をうけることとか、あるいは診療室から他にエキス線そのほかの有害放射線が散乱して参りますのを防止するために、いろいろ壁等に挿入し、あるいは塗布いたす鉛塗料等を、新しい放射線学研究の進歩の結果によって、従来のものを正確に改めたという点が、主要な内容だと御了承願いたいと思います。
  183. 八田貞義

    ○八田委員 それで私は質問いたしたいのですが、今度遮蔽規定についていろいろなこまかい点を設けられたことは・非常にけっこうでありますけれども、病室を持っていない個人診療所の小型装置、たとえば移動装置とかあるいはポータブル、こういった簡単なものをエキス線室で使用する場合には除外例を設けたい、こう考えておるのですが、こういった個人診療所を対象としたような、小型装置でやられる場合についての除外例は規定がないわけなんですね。除外例規定がございますか。
  184. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 特別な除外例というものは設けてございませんが、いわゆる小型と申しますか、最も極端なのは歯科用のエキス線機械なんかでございますが、こういうものについては、きわめて簡素な装置をいたせばよいというように定めておる次第でございます。
  185. 八田貞義

    ○八田委員 その簡素な装置でよろしいという規定は、どこにございますか。
  186. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 ただいま唐突な御質問でございますので、いろいろ種類の違います機械について、それぞれどういうような装置を求めておるかというようなことにつきましては、後ほど一つ十分調べまして、場合によりますれば資料として差し上げたいと考えます。
  187. 八田貞義

    ○八田委員 ただいま局長が言われたように、放射線学会の答申案では、移動用とか、あるいはポータブル、こういつた歯科医の持つレントゲン機械等を含めて、こういう場合には二十九条の規定の適用を行わないということの答申案が出ておるはずです。ところが今度の医療法施行規則の改正案には全然なかった。それで私は適用除外例をどうして設けなかったかということについて、疑問を持ってるわけです。それで伺りているわけです。今御答弁にありましたように、まだ詳しく調べておられないようなんで、はなはだ遺憾だと思いますが、なぜこんなことを申し上げるかという理由を申し上げておきたいと思います。  まず第一の理由といたしましては、今お知らせ願った二十九条のようなエキス線診療室の遮蔽規定を設けていきますと、全国に五万以上の個人診療所がございますが、こういった設備をやらせるということになりますと、これに要する費用は相当に上ってくるわけであります。ことに鉛を使用する場合が多くなって参りますので、鉛は御承知のように日本国内にはございません。どうしても輸入しなければならぬものでございます。ですから国家的な見地から考えれば考慮を要しなければならぬ、こういう問題がここにあるわけであります。また鉛というのは、今日原子力の研究あるいは原子力利用の研究が盛んになるに従って、鉛はますます需要が高まって参ります。そこで私はこういった鉛の利用方面について、国家的見地からいくならば個人診療所にこういった二十九条の規定を実施させるということは非常に無理だ、こういうようにまず一つ考えられて参るわけであります。それからまたエキス線の障害というものの国際恕限度は、一週間のエキス線障害の恕限度というものは三百ミリ・レントゲンということがきめられておるわけであります。一回の撮影で約〇・一五ミリ・レントゲンの散乱線量でありますから、二千枚の撮影でもって恕限量に達するわけであります。一週間に二千枚撮影する開業医というものは、常識的にいってまずないものと考えられる。ですから当然こういった個人診療所におきましては二十九条のような厳重な規定をするには及ばない、こういうふうに私は考えるのですが、局長いかがでしょう。
  188. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 放射線の障害につきましては、だんだんと利用の範囲が広がって参りますと、これをあまりに放漫にしておくというわけにはいきません。やはりある一定の基準を設けて万全の策を講じなければならぬというのでありまして、ただいまも申し上げましたように国際的な基準も研究が進んで参っております。また私どもの方といたしましても、放射線学会及び医師会等にも御相談申し上げまして、そして大体この程度のものであるならばほどほどではなかろうかというようなことで、かような施行規則の改正をはかったのであります。もちろん学会のことでございますから若干の方々の間には多少御異論のある方もあるかもしれないのであります。大体私どもの方としましては放射線学会及び医師会の御意向も伺って、これが妥当であろうというような御了承を得て、これを改めた次第であります。なおその後の研究の進み方等によりましては、いろいろまたこの改正なり、あるいは改正に及ばないまでも、この運用なりについて十分考慮して参りたい、かように考えております。
  189. 八田貞義

    ○八田委員 今お話しになったように二十九条の規定に除外例を設けなければならぬということは、今日の実態から考えれば当然法施行規則の改正をやる場合にはそういったことが頭に浮んでこなければならぬわけです。個人診療所で〇・一五ミリ・レントゲンの散乱線量しか要しない、するとそれに対して、一体国際恕限度に達するためにはエキス線撮影を何枚やらなければならぬかといえば二千枚です。二千枚撮影をやるというような個人開業医が果してあるかどうかということを申し上げておりますので、除外例を必ず設ける必要がある。しかも放射線学会から、二十九条の規定には個人診療所には設けてほしくないというような答申が出ておるわけなんです。それを局長はごらんになっておられるだろうと思うのですが、忘れられてしまったと思うのですけれども、これは非常に重大な問題なんです。実態の面から見て、二十九条のものを押しつけていく場合には、医師の負担というものは非、常にふえてくるわけなんです。今までいろいろな問題について医師の負担という問題は盛んにいわれておりますけれども、これをさらにまた二十九条の規定を実施することによって、個人開業医というものは非常に負担が多くなってくるわけです。ですから私は先ほどから申し上げましたように、実態面から考えてみて当然除外例というものを設けるべきである、かく考えているわけであります。ですから局長も、さっそくこの運用面において何とか考慮するということじゃなくて、はっきりと二十九条の除外例として、たとえば移動用とか歯科用のようなポータブルを使う場合、こういう場合には除外例を設けるというような規定があってしかるべしと考えるのですが、いかがですか。
  190. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 御指摘の点につきましては私どももせいぜい勉強いたしまして検討いたしたい、かように考えます。
  191. 八田貞義

    ○八田委員 そこで私が適用除外例をなぜ要求するかと申しますると、二十九条の規定は病院とか、または患者の多い各科専門医を持っておるような大診療所のみにこの二十九条というものは適用するんだ、こういうふうに法にはっきりと除外例というものを作っていただく、そうでないと将来再び、今までの戦争におきまして銅線を撤去したように各開業医のエキス線室の鉛をはがして、そうしてまた原子力の利用の方面、研究の方面に使っていかなければならぬというような愚をやらなければならぬ、こう私は考えるのです。ですからどうか再び戦争中に銅線をはがして、それを戦争目的に使ったというような愚を繰り、返さないように、壁にくっつけた鉛をはがして、そうして再び使おうといった愚をやらぬようにお願いいたしたいのであります。これは希望として述べておきます。
  192. 大坪保雄

    ○大坪委員長代理 長谷川保君。
  193. 長谷川保

    長谷川(保)委員 医務局長にちょっと伺いたいのですが、先ごろある地方に参りますと、国立病院でございましたか、それに対して看護婦は必ず寄宿舎におらなければならぬ、外に住まいを持っていてはいかぬ、こういうような指示を与えておるようであります。聞くところによりますと、厚生省からそういう通牒が出たということであります。こうなりますと看護婦が結婚できない、結婚すると同時にやめなければならぬということになって、すでにこういう言葉も出ておるそうでありますが、土曜夫人という言葉ができておるそうであります。これはあるいは本や雑誌にでも出ておったのかもしれません。土曜日の晩にしか奥さんになれない、こういう状況だというのです。これは私はやはり重大な問題だと思うのです。どうも結婚をすれば職務を退かなければならぬということになりますと、結局近江絹糸になってしまう。どうも日本政府が近江絹糸になっては困る。もし結婚をして外に住まうことによって職務上困るということでありますれば、それに対する対策をお立てになって、国立病院の中に託児所をお作りになるというようなことを当然なさるべきであると思います。また私が病院を経営しておりまする経験から申しますると、相当数結婚している人がありましても、けっこうそれはそれといたしまして、上手に経営をして参りますればやっていける、こういうように結婚をすればやめなければならないということは、小さな開業医ならともかく、国立病院としてはそういう道をとらせるべきでないと思う。それは重大な人権問題として看護婦たちが私に訴えております。そういう点で通牒をお出しになっているのかどうか、まずその点を伺いたい。
  194. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 ただいまの点については、私どもも久しい前から、これは将来だんだんと大きな問題になってくるだろうと考え、いろいろ検討いたしてみておりますが、私どもの方から全部の看護婦が寄宿舎に泊まり込んでおらねばいけないというようなことを通牒等で指示したことはございません。ただこの問題については、極端なことを申しますと、それでは全部通勤でいいかということになると、病院の運営上非常に困るだろうという点から、大体何パーセント程度までは通勤者がおっても大体患者の看護に事欠かないというようなことを各施設で研究するようにということは、いろいろ集まりがありますたびごとに申してはおるのでありますが、全員宿泊するようにというようなことの指示はいたしておりません。
  195. 長谷川保

    長谷川(保)委員 そういうことでありますれば、多分何かの間違いで、通牒がきておるように病院当局が看護婦に言っているのかもしれないと思いますが、そういう点についてだいぶ各地にそういうことについての看護婦の非常な不満があるようであります。今お話しのように、全員を通勤させるということでは実際上困ると思いますが、やはり看護婦も人間として結婚生活ができるような方針をぜひお立てになっていただきたい。そういうことを何らかの機会に国立病院の者に通じるようにして、看護婦を大事にしてやっていただくよう一つ御処置を願いたい。  昨日朝鮮から日赤の方に、朝鮮人の受け入れのことについて電報が参ったようです。国に帰ることはもちろん承知であり、係員を香港まで迎えにやるというような電報が参ったとのことであります。それで日赤でもすでに予防注射その他をいたして帰す準備をしているようであります。正直に申して、私はあそこにすわり込んでいる諸君が、すでに帰国するくらいの金は持っているだろうと初め考えておりました。いろいろ実態を聞いてみると、一部の者は持っているけれども、大部分の者はそういう金もないようであります。もちろん何としてでも、友だちから借りてでも、知り合いに頼んででも船賃だけは必ず作るというように申しております。ただそういうことになると、私あの線を通って参ったのでありますが、香港でどうしても一泊しなければならぬということがまずまず考えられる点であります。香港から九竜に渡って九竜から汽車で二時間ばかりかかって国境に参る鉄道が非常に高いという問題と、帰国までのいろいろな雑費、小づかいがある程度要るのではないか。北京には朝鮮の大使館があり、広東あたりには多分領事館くらいはあろうと思いますから何とかなるだろうと思いますが、国境に着くまでの手当の余裕ができなければ出発できないわけであります。先ほど大蔵省の主計局次長は厚生省と相談しましょうということを言われたのでありますが、私が非常に心配することは、そういうことで朝鮮の政府に申しわけないということ、朝鮮から帰って来るであろう日本人の問題について困る点が出てくるのではないかということであります。中共、ソ連、韓国に抑留されている日本人の帰ることについて、あれほど熱心に心配し、運動し、苦心して帰ってもらえるように努力をしておるわけでありますが、同様に外国人でその国に帰りたいけれども帰れないという諸君に対しては、人道上の立場から帰る処置をみんなでしてやることは当然のことであります。いまだ帰って来ない日本人の身の上のこともお考えいただいて、ぜひともこの際もう一歩前進してもらいたい。朝鮮の方から、あの日赤前のすわり込みの四十五名の諸君に対して帰国についての電報が参ったようであります。朝鮮の方は受け入れのために係員を香港まで迎えに出すという電報が参っております。これについて二十六日神戸発のバター・フィールドで帰りたいというのでありますが、管理局の方はこれを出すことに御異議はありませんか。
  196. 内田藤雄

    ○内田政府委員 この問題は前々から日赤といろいろ御協議申し上げておりまして、われわれとしては帰国なさる人をとめようという考えは持っておりません。ただ一応そういう考えでありますが、その考え方の原則と申しますが、外国人が日本を去ろうとする場合に、日本としてとめる必要はない。犯罪とかなんとか犯して逃亡しようというような者は別でありますが、通常の場合ならば、そういうことをとめる必要はない。しかしてその際の行く先の問題については、個人の自由を尊重するというのが人道上からも当然のことであって、その行き先についてはわれわれとしては関知しない、こういう建前で大体過去においても考えてきておりますし、今後もそういうつもりでおります。ただこの問題につきましては多少外交上の考慮などもございますのですから、ただいまお答え申し上げましたように、一応われわれとしてとめるつもりはございませんが、しかし外務省あたりが——これもまずそういうことはないと信じておりますが、必ず出られるかということでございますれば、これは私きりでその最後の結論を申し上げる地位にはおらないと考える次第でございます。しかしわれわれの考え方といたしましては大体日赤にもはっきり異存がないということを申し上げておきます。
  197. 長谷川保

    長谷川(保)委員 重ねてお伺いしたいことは、今度帰りまする四十五名の中に、朝鮮人の奥さんになっておりまする婦人とその子供がおります。多分婦人の数は三、四人でないかと思いますが、これは御承知のように入籍ができないことに日本ではなっているそうでありまして、子供も奥さんの子供ということになって届がしてあるそうであります。こういうことも非常に困ったことで、そういうことであれば、結婚後入籍ができるようにしてあげなければいけないということも私ども考えておるのであります。現状はそういうことでありますが、朝鮮の方が心配しておりますのは、そういう国籍が違うという形式になっておりますために出るときにそこに問題が起りはせぬかということであります。このことについては、事実朝鮮人の奥さんになっており、そして子供まで生んでおりまする日本のこの婦人及び日本人として一応国籍が日本にありまする朝鮮人と日本人との間にできました子供たちの出国についても、原則としてこれは差しとめることはないのか、このまま向うに帰すのか、この点もよっと伺っておきたい。
  198. 内田藤雄

    ○内田政府委員 確かにお説のような問題がありまして、これは法律的にせんさくいたしますといろいろ問題が起り得ると思っておりますが、ただいまのところわれわれといたしましては、そういうことば実祭上やむを得ないことでございますのみならず、ただいま仰せのようにやろうと思っても法律的に入籍ということができない事情にあるということを考えますと、これをあまり法律的に重箱のすみをつついたようなことをやるのは妥当かどうか非常に疑問に考えておりますので、実際問題としてはほかの朝鮮人の夫婦と大差ない取扱いで善処いたしたいと考えております。
  199. 長谷川保

    長谷川(保)委員 それでは次に社会局長に伺いたいのであります。先般来いろいろこの問題について特別な御心配をいただいておるわけでありますが、ただいま申し上げましたように、局長の方でもあるいは十分お調べになっておるかもしれませんが、私の調べたところでは実際に金のない連中がある。これでもし帰れないということになりますと、帰るべき家もありませんし、生活も立ててやらなければならぬという実情にある者もあるようであります。こういうような状態でもありますし、その点先ほど主計局長との話をお聞きになっておりましたように、私は大局的に見てこの問題の処理は必ずしもできないものではないと思う。何とか生活扶助の金を出してやるとか工夫して御尽力いただけば、大蔵省の了解が得られないでもないと思う。それらについて先般来いろいろ御心配をいただいておりますが、何分にもいよいよ非常に差し迫って参りまして、朝晩私のところに、朝鮮の人が非常に心配をいたしまして、どういうことになっただろうか、厚生省の方ではどういう意向だろうかということを二回も三回も聞きに来るという状況であります。この点社会局長の方で何か手を至急打てそうだということになりませんか。お立場がありますから確言をしていただこうとは思いませんけれども、何らかの打開の道が四、五日のうちに出てきそうだということにならないでありましょうか。聞くところによりますと、バター・フィルドの方でも朝鮮の人が果して船賃を払えるかどうわからないので、厚生省の方で何とか保証してくれぬかというようなことも朝鮮の諸君にいっておるようでありますが、先ほど申しましたように、船賃だけは断じて作りなさい、どうしても作れなければ私どもも心配しようということも実は私申しておるわけです。おそらく朝鮮に安堵感を得て正式に大量に帰るときも国際赤十字の尽力でそう長い将来ではあるまいから、場合によってはこちらで金があってやはり朝鮮に帰ろうという人から諸君の間で借りていってもいいのじゃないか、ない人は借りていきなさい、それがどうしてもできなければ少しぐらいはわれわれも心配しようじゃないかということも実は申しておるわけであります。そういう事情でありますので、私は般賃だけは必ず彼らが作るようにということを彼らにもよく申し渡しております。けさもやって参りまして、そのことは自分たちでやりますが、何分にも帰る道筋のことを考えると香港へ着くまでの般賃だけではいかにも心もとないので、少し何とか見舞金をもらえぬだろうかという話があるわけであります。先ほど来申し上げておりますように、向うから帰って参りました者ににつきましては相当向うで厚遇を受けたわけでありまして、何とか少ししてあげなければ相済まぬと私は考えるわけでありますが、そういう道がつくように努力するという見通しが願えるかどうか、確言はいただかなくても御方針でいいかと思いますが、局長にお伺いいたします。
  200. 安田巌

    ○安田(巌)政府委員 長谷川先生が北鮮の引揚希望者についていろいろごあっせん願っておることにつきまして、私どもも深く敬意を表しておる次第でございます。私個人といたしまししも、帰るという希望を持っておる者は何とか帰した万がいいと考えております。ただ、すでに御承知かと思いまけれども、国際関係上いろいろ問題炉ありまして、公費の中から何らかの形で出すということに問題があると思います。これは田邊局長からいろいろ御説明があるかと思いますが、一番根本の問題だと私は思います。ちょうど四、五日前お話のように私費で帰りたいということですわり込みをした人もあります。代表者が申し出たそうであります。私費で帰るということになりますればそういった問題は一応解決するわであります。私どももそれで一応問題は片づいたかと思っておるわけであります。しかし、それが実際確かめられるまでは、船会社等の関係もよく調べてみるということであります。そこで、生活保護費で何とか出せないかということでございますけれども、これも御承知かと思いますが、生活保護法を適用するにはどうしてもある一つの大きな前提があるわでありまして、生活できないという者の保護を何らかの形でやって保護せいということでありますので、今のところそう詳しくは調べておりませんけれども、かりに出すといたしましても割に少いのじゃないかという気もいたしおります。その上にいろいろ公費で出すということ自体について問題がございますので、出せるとか出せないとかいうところまで押し詰めては研究いたしておりません。いずれまたこれが帰れるということでございましたならば、そういり問題につきましても十分研究してみたいと思っております。
  201. 長谷川保

    長谷川(保)委員 田邊局長とは昨日も個人的にいろいろお話を申し上げたわけ、ありますが、先ほど申しましたように、昨日お話をしたあとで連絡があったのでありまして、朝鮮からそういう電報が参った。それで彼らといたしましてもいよいよ安心をして朝鮮に帰れるという形になりましたので、差し迫っておることでございますから、先ほども私は大蔵省の主計局次長に何とか方法をつけてもらえないかということを実は申し上げたわけです。それに対して大蔵省の方で相談しょうということをお話になって今お帰りになったわけですが、何らか引揚援護局の方でそういう道がつかないだろうか、昨日お話申し上げた後まだ時間も幾らもたっておりませんけれども、何かお考えがないだろうか。実は朝鮮人が待っておるもんですから、ぜひお考えいただきたいと思うのですが、何らかお考えないでしょうか。
  202. 田邊繁雄

    ○田邊政府委員 在日朝鮮人が北鮮へ帰るという問題でありますが、これは私どももできれば御希望が達するようにという線でいろいろ考えておるわけであります。しかし今日の段階では、すでに御承知の通りやはり国際赤十字会員会のあっせん努力によって正式な道が確立され、あるいは援助が確立されるということが何といっても根本問題でありますので、実はわれわれとしてもそれを首を長くして待っておる状態でございます。今日の段階におきましては先ほど社会局長からもお話がありました通りに、政府が正式に国の予算を支出して援助するということを打ち出しかねる状態にあるわけであります。しかしただいまいろいろ話もございましたので、政府といわず何らかの方法ができないものだろうかということは頭をひねっておるわけでございます。なお関係者とも十分打ち合していきたいと思っております。
  203. 長谷川保

    長谷川(保)委員 両局長にお願いをしておきたいのでありますが、先ほど来申し上げておりますように非常に差し迫った問題であります。私も明日までしか東京におりませんので、何とか一つ人道上の立場からこの問題を解決し、大局的に今後朝鮮から帰ってくるであろう日本人のためにもこの問題を解決していただきたい。いろいろ事務御繁忙のことと思いますけれども、そういうような事情でありますので、特に両局長におかれまして政務次官あるいは大臣等とも御相談いただき、入国管理庁あるいは外務省とも特別に積極的に御相談いただいて、この問題を二、三日うちにぜひ解決する道を考えていただきたい、このことをお願いいたしまして私の質問を終ります。どうもありがとうございました。
  204. 大坪保雄

    ○大坪委員長代理 八木一男君。
  205. 八木一男

    ○八木(一男)委員 私は同和対策につきまして社会局長にお伺いいたしたいと思うわけでございます。  この前の二十二国会で同和対策に対する請願書が受理されまして採択になっているわけでありますが、その中に、国会自体に対する請願は別といたしまして、厚生省内部に同和事業関係の部局を作るということと、各省にまたがる同和対策審議会を作ってほしい、それから同和問題の研究所を作ってほしい、それから国庫支弁による地方専任職員を設置しておしい、地方同和対策運営費の助成をしてほしい、全国福祉協議会に同和部門を設置してほしいというような項目、その他経済問題について、環境衛生について、あるいは文化厚生について、あるいはまたそのほかの問題について、同和教育について請願が採択になっているわけでございますが、その後その問題がどのように推進されているかどうかを明確にお答えをいただきたいと思います。
  206. 安田巌

    ○安田(巌)政府委員 同和の問題は御承知のように大へん古い問題でありまして、なかなか複雑な問題を包蔵しておるようでございます。政府といたしましては、御承知のように終戦後新憲法が公布になりましてからは、何かそういった特別の対策政府がとるというようなやり方でなくて、一般行政の中にそういうふうな考え方を取り入れて、そうして同和問題をだんだんと解決していきたいというような考えでおったわけでございます。しかしこの前も申し上げましたけれども、その後いろいろ府県等で問題がございますし、いろいろまた府県に人員等につきましては予算等も出ておる実情もございましたので、一つ政府全体と言わないで、厚生省だけでも何かそういったような対策を立てられないだろうかというようなことで、実は二十八年から隣保館、本年におきましては共同浴場もあわせて同和対策として取り上げたような実情なのでございます。そういうふうな考え方が一つと、それから今おあげになりましたような新しい部局を作るとか、新しい機関を作るとか、あるいは人員を増加するというようなことが、御承知のように今なかなかむずかしい時期でございますので、そういうふうなことはなるほど昨年承わったわけでございますが、まだなかなか実現しないような状況でございます。
  207. 八木一男

    ○八木(一男)委員 今一応、そういうことである程度推進したいというお考えを伺ったわけでございますが、この問題は非常に大きな問題でございまして、そうして普通に言われているような観念的な差別という問題だけでないのでございます。そういう問題につきまして社会局長はどのような御認識を持っておられるか、伺わしていただきたいと思います。
  208. 安田巌

    ○安田(巌)政府委員 実はこの同和問題というのは各省の行政の中に問題がいろいろあるわけでございますので、厚生省が一応当番役と申しますか、窓口というような意味で地方改善事業協議会というものを作って、これは各省の方にいろいろ出ていただいているわけであります。そこで今の同和の問題に対する根本的な考え方はどうかということでございますが、これはもちろん教育の面が、学校教育でありますとか、あるいは社会教育とかいう意味で非常にあると思うのであります。それから環境において差別の実態があるようでは困るのですから、この環境を改善することによってそういうものをなくしていくのも一つの行き方である。そこで私どもがとりあえず厚生省の中で取り上げる問題といたしてましは、セツルメントを作ってそこにいろいろ簡単な施設を作ることによりまして、そこを中心にしてものの考え方の方も、あるいは環境をよくしていく方もやっていきたい。それに加えまして昨年ごろからやり始めましたのが実は共同浴場で、私どもの力の及ぶ限りにおいて、私どもの行政の範囲内においてそういった問題をだんだん処理していきたい。これは大きなことを申しましても、長い間の因習がございますのでそうすぐには参りません。しかし私どもできる範囲においては熱心にやっていきたいというふうな実は心組みでおるわけでございます。
  209. 八木一男

    ○八木(一男)委員 ただいま厚生省としてのお立場を伺いましたけれども、そのもとの部落問題、それに起る差別問題、そういうものの根本的な原因とか、それを排除するには何が一番大事であるかということについての御認識を伺いたい。
  210. 安田巌

    ○安田(巌)政府委員 これは先ほど申し上げましたように、根本的に同和問題というものを大きく取り上げていくことがそういった問題に対する一つの方策としていいことであるかどうかというような問題があるわけでございまして、これまでの考え方といたしましては、政府はそれを大きく取り上げないで個々の行政の中で解決していくようにした方がむしろ差別事象をなくす上にもいいのじゃなかろうかという考え方もあるわけであります。これも一つの考え方であります。あるいはまたこれを根本的に大きく取り上げるということが考えられるのでありますけれども、しかしこの問題の根底にはやはりいろいろな経済問題、社会問題もあるわけでございますので、これをそう簡単に一つの省ですぐにこういう対策をとればこういうふうになるというわけにはいかぬだろう。しかしながらいろいろ差別の実態がある場合には、その差別の実態をなくす、あるいは環境もよくしていかなければならぬというような点につきましては、厚生省として自分のところでできることでございますので、そういったところに主力を注ぎながら、同時にそういった差別の考え方というものをなくしていくということにつきまして、そういうセツルメントのようなものが中心になり得ないだろうか。また同時に文部省等におきましても、そういったようなことについて御協力を願う、こういうふうな考え方でございます。これはいわゆる根強い問題といいますか、経済上の問題がたくさんあるわけであります。
  211. 八木一男

    ○八木(一男)委員 今局長が言われましたように、この問題は行政面としましては厚生省のほかに文部省の関係もあり、あるいは建設省、労働省、農林省、通産省、地方自治庁すべて関係のある問題でございます。しかしこのような大きな問題をてんでんばらばらにやっておったんでは、なかなか根本的な解決は道は遠いといわなければなりません。そこでこの問題の一番中核である厚生省において、その根本の大筋を立てて、新しい部局を設けるとか、他の省との連絡をもっと強力に、緊密にするとか、そういう根本的な対策を立てられなければならないと思うわけであります。そこで、先ほど根本的な御認識について伺ったわけでございまするが、安田さんは相当御認識をお持ちと思いますけれども、二度の質問でそのことにお触れになりませんので、私の方から触れさせていただきたいと存じます。  もともとこの問題の発生の起源については、学説にいろいろございます。しかしその問題が非常に大きくなりましたのは、徳川時代の本多正信の、百姓を食わしむべからず、飢えしむべからずというようね農民の収奪政策のために、士農工商の二番目の上位の虚名を与えて、多くの農民から収奪した。そのために農民以下の階級を作るということによって、農民に観念的な満足を与えた。そういう徳川政府の収奪の方策をとってきたその一番の犠牲をこうむったのが、今の部落の人々である、こういうのが現状でございます。そして非常に観念的な差別が高まって、徳川時代には部落の人はほんとうに人間的な扱いをされなかったという状態でございました。  ところが明治のときに、そういう制度が悪いことに気がつきまして、一切そういう差別をなくしました。なくしたのはよかったのでございますけれども、経済的な問題についての配慮が全然なかった。徳川時代にはそのような猛烈な人格を無視された差別を受けておりましたけれども、斃獣処理に対する特別の権益を持っておりまして、経済的にはやや安定しておったわけでありますが、明治の表向きだけの解放によりまして、そういう表向きの差別はなくなったけれども、まだほんとうの、実際の差別は残っている。しかも経済的な特権がなくなったために、非常に大きな資本に押されて、特殊産業もみんな衰微して参ったわけであります。特に現状におきましては、労働関係では、非常に遺憾なことであってあるべきことではないのでございまするが、いろいろと各会社で就職のときに、ほかの条件は同じでありながら、そういう差分的観念のもとに、そういう人たちを採用しないという状況が現在ございます。そのために労働者として働こうとしても、非常に条件の悪いところになり、すぐつぶれるような中小企業で、安い賃金でなければ就職ができない。それで生活に苦しむだけでなしに、その中小企業がつぶれるとすぐ失業に追い出される。そのような就職もなかなかできないというようなことで、ほとんど労働部面において半失業者の状態でございます。これが特に日本の西側における日雇い労働者の諸君の大部分に、そういう立場の人が多いのでございます。特に安田さんはそういう面で、日雇い労働者につきましては、生活保護その他の関係で非常に関係が深いので、そういう点について御配慮願いたいと存じますけれども労働面では非常に不利な状態で、ほとんど食えない状態にあります。そのほかに、今度は農民として働くことを思う人たちは、もともと農地を持っておらなかった。明治解放以後に農地を幾分獲得しても、なかなか獲得できなかった。そして小作農としても働く余地が少かった。それで終戦後の農地解放の場合にも、実際の小作をしているという立場がないために、耕作農民として自分の耕地を確保することができなかった。だから農村地帯にたくさん居住しながら、農地を持っていない人が大部分、農地を持っていてもごく零細の、ごく肥沃でない地帯をちょっと持っているだけである。農民としても生活が成り立たないわけであります。中小企業者としてはどうか、手工業者としていえばどうか、これは伝統的にその地帯に興っておりました、たとえば皮の関係のくつ、あるいはまたほかの皮製品、あるいはまたげた、鼻緒、そのような製品がおもな産業でございます。ところがそれが、たとえばげた、鼻緒等は近代の生活様式の変化によりまして、ほとんど売れ行きが悪くなっている。皮製品は、巨大な資本でこれを機械的に作るようなことが発達いたしましたので、完全にこれも押えられているというような状況でございます。漁民の場合でも、漁法が今進歩いたしましたので、一本釣の漁民は、このような組織的な漁法には対抗できないので、非常に貧困な状態でございます。すべての方面で押えられているという状態であります。その状態のために極度に貧困である。極度に貧困であるから衛生状態も悪い。そういうような状態もございます。また就職その他で、ほかの友だちは就職するのに就職できない。希望を持って学校を出ながら、そのように社会から実質的に締め出されるということのために・非常に厭世的になって、行動にも、非常にそういうようなニヒリスティックの傾向があるわけです。そのために、ただでさえ貧困で失業者であるために、一般から非常に人格を尊重されないという立場にあるのであります。それがさらに、そういうような虚無的な考え方によって、また衛生環境も悪いために、さらにそういう傾向を増大するということで、今差別の再生産という時代に遺憾ながらなっているわけでございます。  こういう問題は、同和教育の促進とか、あるいは少々の環境改善というようなことでは、根本的に解決できるものではございません。でございますから、本来からいえば一つの省を作ってもいい問題でございます。日本国民の中の三百万をこえる——人によって、計算によって違いますけれども、五百万と称せられる人もございますが、それだけの巨大な人口を有する同胞が、このような非常に深刻な目にあっている。そういう問題を根本的に解決するためには、一省を作ってもこれはなかなか解決が至難の問題でございます。ですからそういう問題について、根本的に、ほんとうに徹底した対策を立てなければならないと思うわけでございますが、遺憾ながら今の行政機構はそういう状態ではありません。でございますから、その中核の、主たる任務を持っておられる厚生省におかれましては、各省と連絡をとって、そういう問題に対処できるようなりっぱな機構を作るために、最善の努力を払われるとともに、現在予算の関係とか何とか、おそらく言われると存じますけれども、その障害を突破して、省ができなければ院であっても、院ができなければ庁であっても、また少くともここに請願されているような、各省にまたがった審議会とか、あるいは厚生省内における部とか、そういうようなものが実現される態勢にならなければならないと思うのでございます。それを推進するには、もちろん関係者の熱意ある運動も必要でございましょうけれども、根本的には厚生省の社会局か、これに本腰に取り組むというつもりでやってもらわなければならないと思うのでありますが、それについていかが考えておられますか。
  212. 安田巌

    ○安田(巌)政府委員 大へん有益なお話を承わったわけでございまして、私どもいろいろ啓発されるところが多いのでございますが、今仰せのように非常にむずかしい問題を含んでおります。ことにこの根底には経済問題があるわけでありまして、完全に就業されるような状態でありますと、今のようなお話はないのでございますが、一方においてはたくさんの失業者を含んでいるというようなときに、これを行政的に、権力でもって是正をいたしていくということは、なかなかむずかしい問題でございます。それには、いろいろそういったような環境、生活状況についても、はなはだ微力ではございますけれども、そういうところからでも少しずつ直していきたいというのが、私どもの念願でございます。力が足りないのでいろいろ御指摘される点もあろうと思いますが、今後いろいろ研究、努力して参りたいと思います。
  213. 八木一男

    ○八木(一男)委員 環境の改善について御努力いただくことは、それは非常にありがたいと思いますし、どんどん推進していただかなければならないと思いますけれども、この問題は厚生省、あるいは文部省、地方自治庁等が、このこまかい予算で一生懸命やられましても、根本的な解決は至難であると思います。ですからそれをやられると並行して同時に、別に官庁ができたからできると私は思いませんけれども、そのような省とか、院とか、庁くらいができるくらいの決意でやらなければ、予算も獲得できませんし、少い人数で必死になってやられましても、この問題は三百万の人口の問題でございますから、なかなか困難でございます。ですから根本的に、最終的にこの問題を解決して、その人たちに平等に仕合せな生活を送らせるということを考えますならば、現在そのような機構を厚生省の社会局が中心になって作り上げることを即時、たとえば来年度でなくても何年後には実現できるような態勢を作り上げるために社会局は推進していただくことが必要だと思います。それで御答弁努力しようという御答弁を期待いたすわけでございますので、その点ぜひお願いをいたしたいと思います。  具体的な問題にちょっと触れたいと思いますが、具体的な問題について、たとえば環境衛生の問題がございます。またセッツルメントの問題がございます。この問題は今大きな問題を申し上げましたけれども、この問題が解決することによって幾分でもやはり差別概念が少くなるという要因もできます。また虚無的な考え方に陥ることを防ぐこともできます。それによってまたいろいろな就職条件もよくなるというような遠い影響もございますし、ですからこれは一刻もゆるがせにしないでどんどんと進めていただきたいと思うわけでございますけれども、現在の予算の額またその処置するスケールがあまりに小さいのでございます。それで今言ったような省とか庁まで作ってほしいというような状況でございますので、社会局としてはほんとうにふん切って、来年度予算においては大蔵省に断固として巨大な予算を要求していただきたい。大蔵省が何と言っても安田さんの政治力で説き伏せてそれを実行するようにやっていただきたい。大蔵省の方もおられるので、聞いておられたと思いますが、このようなことでありますから、財政上の重大な責任を持っておられまするけれども、三百人の人が人間でないような待遇に置かれておる、その問題を解決するために、そういう有効なところに国費を使うということは大蔵省としても少しも惜しまれないと思う。総体の財政のワクとともにその金がいかに使われるかということが大蔵省の最大問題であろうと思います。最も有効な、最も必要なところに使うという見地におきまして、社会局は巨大な——来年度においてはおそらく今の予算の百倍くらいは要求しなければならないと思いますけれども、この点大蔵省においても十分に今から御考慮をぜひお願いしたいと思うのでございます。  いろいろ同僚の質問の方もお待ちでございますから、この請願書の一つ一つに触れたいのでございますけれども、これは差し控えまして、根本問題と、現実の対策の問題についてほんとうに本腰でやっていただくことを心から期待し、またお願い申し上げまして、私の社会局長に対する質問を一応終らせていただきます。健康保険課長が来たらまたやらせていただきます。
  214. 大坪保雄

    ○大坪委員長代理 滝井君。
  215. 滝井義高

    ○滝井委員 どうも長いこと法制局が来ていただけぬものだから、次から次とあとのカラスが先になるような格好になっちゃったのですが、(笑声)さいぜん主計局の方から健康保険法の一部を改正する法律案が審議未了になる情勢が非常に濃厚になって参りましたので、審議未了になった場合には、現在すでに予算が通貨しております健康保険の赤字財源のために一般会計から厚生保険特別会計の中の健康勘定に三十億円の金が補助金として入っておるのでございます。これはこの健康保険法の一部を改正する法律案が審議未了になってしまったならば、この補助金というものは予算が現実に通っておるにもかかわらず、厚生保険特別会計には入らないかどうか、この法律上の見解を実はお尋ねしたいのですが、法制局の見解をちょっとお尋ねいたしたいと思います。
  216. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 大へんおくれて参りまして、その点おわびを申し上げます。ただいまの御質問でございますが、先ほど大蔵当局からお話があったことと存じますが、私、ただいまの御質問がありました限度内でお答えを一応申し上げたいと思います。御承知のように、一般会計・特別会計というものは、そもそも財政法に規定があるわけですが、特別会計を法律で設置するというわけで、一般会計、特別会計の関係は、実は法律上の産物として制度が設けられております。従ってその両会計は、一つは財政法そのもの、一つは特別会計法というそれぞれの法律によってワクが作られる。それからまたその双方の関係というものは、今申し上げた関係から申しまして、それぞれ実体的な関係もまた法律で作らなければならないというのが基本の原則であろうと考える次第であります。従いましてただいまのお尋ねでございますが、健康保険法の改正に今度挿入されましたことから申しまして、これは七十条の三だと思いますが、これに補助するというふうな規定の文言がございますが、その内容は今申し上げた観点に照らし合せて申し上げてみますと、それは一般会計から特別会計に対して繰り入れるというのと実は同じことなのでございまして、そういう規定がないことになりますと、ただいま申し上げて参りました一般会計と特別会計との間の関係についての法律上の根拠が欠けることになりますので、今の御質問の点は、これは消極に解せざるを得ないと、法制局としては考えておる次第であります。
  217. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、法制局の見解は、一般会計から特別会計に三十億繰り入れるということはできない、こういう見解ですね。
  218. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 その通りでございます。
  219. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、昨年一般会計から千億の金を繰り入れた、これは健康保険法に何ら法律的根拠がなくて、繰り入れたのですか、これは一体どういう根拠で繰り入れたのですか。
  220. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 その昨年の、何と申しますか、私、この委員会には平素あまり顔を出しておりませんので、また実体関係を私必ずしも十分に承知しておりませんので、一応その補助自身がいかなるものであったか、その点を多少研究させていただきたいと思うのですが、もしお尋ねの中にございますればそれでお答えいたします。
  221. 滝井義高

    ○滝井委員 実は昨年度は健康保険のこの特別会計の中に十億円を繰り入れた、それは何も健康保険法の中に根拠があってやったわけではございません。厚生保険特別会計法の一部を改正する法律案の中の十八条によってやったのです。これは義務的なものではない。繰り入れることができるというだけで、繰り入れてもよければ繰り入れなくてもよいという、こういう規定でやったのです。従って今のあなたの御意見によれば、当然これは実体法がなければ一般会計から特別会計に繰り入れることができないというこの論理が矛盾してくるのです。実は昨年は衆議院の法制局の見解によって、それをついたのです。ところが当時の厚生当局の説明は、これはこの法律の十八条にそういうものを書いたからできるのだという見解でございました。ところがその場合に、しからばなぜ三条に一般会計よりの受入金というものをつけなかったかということなんです。ところがそれは付則かなんかで便宜的にやったらしいのです。ところが今年は一般会計からの受入金というものを三条にはっきり入れてきたのです。衆議院の法制局の見解は、初めから一般会計の受入金というものを作らなければならない見解だったのです。ところが当時それをやらなかったのです。私はそれを指摘したのです。ところが今度は一般会計から三十億受け入れる段階になってから、初めてこの三条の中に明白にしてきたのです。初めからわれわれはこれはすべきだという主張であったのです。ところが今度はこの法案がいよいよ審議未了になりますと、大蔵省の見解は補助するのと負担するというのは同じだというような見解も出てきたのです。てこで私はさいぜん衆議院の見解をただしてみたのです。衆議院の法制局の見解は、補助するというのと負担ずるというのは明らかに違う、負担をするというのは義務的なものであって、これは法律が流れればだめになる、しかし補助というものは何も特別会計、一般会計の関係なく、法律があれば補助も出せるし、なくても出しておる方が多いというのです。現実の立法の形態の上から見て、補助金というものは、この補助するということは法律になくてもどんどん出ておるのだ。むしろ補助すると書いてあるのが少いという見解もある。そうしますと、「補助ス」という七十条の三があってもなくても、すでにこれは補助金の予算が通っておるのだから、それが当然だというのが衆議院の法制局の見解です。宮川さんは今補助するのと負担するのとは同じだという見解をとった。私は法律はしろうとですが、それならば何も同じ条文の中に「補助ス」と「負担ス」と書かなくてもいい。「負担ス」というのは、私のしろうとの考えでは義務費なんです。義務費である限りにおいては、絶対に法律がなければだめです。ところが「補助ス」というのは、昨年もすでにこれがなくても十億円やった。もちろん十億円というのは七カ年間でやるという規定はありますが、一般会計から特別会計に入るという袋は同じです。一般会計からの受入金である。だから袋が同じ証拠には、ことし法律を根拠に三十億も同じ形でそこに入っているということです。こういう点は一つ法制局は、宮川さんと打ち合せたかもしれませんが、正しい立場でしてほしいという。私は何も健康保険のどうこうでなくて、法律の解釈の見解をまず明白にする必要があるという立場からお尋ねしておるわけです。
  222. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 だんだんお話を伺って参りましてわかって参りましたわけですが、ただいま二点ばかり御質問があったようでございます。  まず一つの問題は、逆の方から参りますれば、負担と補助というものの法律上の性格いかんという問題だと思います。この点に関する限りで申し上げれば、むろんその負担ということと補助ということとは、その実定法上この場合はどうかというような問題はあるかもしれませんが、しかし負担ということと補助ということとの法律上の性格いかんという正面からのお尋ねでございますれば、これは明らかに違うと思います。その内容につきましては、衆議院の法制局でございますから、そちらの方のお話がございましたが、概して申し上げればその通りだと申してよいと思います。大蔵当局でどういうふうに御説明になったか、あるいは繰り入れの関係では同じだというようなことではなかったと想像いたすわけでございますが、その方はまた大蔵当局からもお話があるかもしれません。それから先年の例についてこういう例があるじやないかというお話がございました。その点はただいま条文を照らし合せてみますと、御指摘の条文でもございますが、第十八条の六というのに「政府ハ」とありまして、「十億円ヲ限り同勘定二繰入ルルコトヲ得」という規定がございます。これは繰り入れという言葉でございますが、これはまさに両会計間の法律上の関係を明らかにしたそのものでございますと同時に、繰り入れという用語から自然に出て参りますように、繰り入れというのは、繰り入れる方と繰り入れられる方とが当然に予想される問題でございますので、繰り入れという一つの用語でもって、ただいま私が申し上げておりました関係のことは、十分にまかない切れておるというふうに考えるわけでございます。  それからもう一点ございましたが、補助というのは、一般に法律上の根拠なくしてやっているではないかというようなことがございました。確かにそういうお考えも考えとしては起るのも無理はないと思うわけでございますが、しかし補助という場合に一般に考えなければなりませんのは、そのためにこそ私は最初に申し上げたの、ありますが、一般会計と特別会計の関係というものは、実は法律上の産物であって、法律上で実は仮想に作り上げたもので、法律で明らかにされないとその関係もまた明らかにならない。そういう意味合いにおきまして、特別会計と一般会計の場合には、一般の場合における補助とは違って、その受入口と申しますか、それからまた相互の関係と申しますか、そういう点を明白にする必要がある。そういう意味において、一般の補助という場合にこうだからといって、一般会計と特別会計の間もそうだというふうに結論することができないのではないか、こう考えるわけでございます。むろん先生仰せになりましたような点も私ども考えてみましたが、しかしそれは一般会計、特別会計という法律上の産物ということに目をつぶった場合の話があって、この特殊の会計法上の制度であるものにつきましては、必ずしも通用しないことではないかというふうに考えて、先ほどの結論をやはり正しいものだというふうに考えるわけでございます。
  223. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますとあなたの見解は、昨年入れた十億というものは、同じ一般会計から特別会計に入れたものであるけれども、それは厚生保険特別会計、一部のこれだけで足る、この健康保険というものは何ら関係がないということになりますと、一般会計から特別会計に入るのには三本の線になっております。一つは厚生保険特利会計における十億の入れ方、すなわちこの厚生保険だけへ入れる十億は、来年もこれから必ず入ってくるのです。ことしだけ十億はやるんだというのではなく、来年も十億入るのです。それからいま一つは七十条の一項で入っていく負担です。これは一般会計からの受入金としては入っていかない。とにかく七十条の一は一般会計からり受入金の三十億以外のものとしてこれが入っていく。事務費というものは別の形で入っていく。そうすると今度はいま一つの同じ七十条の三圭二十億というのが一般会計から入ってくる。だから一般会計から入る金はそういう三つの複雑なルートでこの中に入っていく。こういう法律の作り方なんというむずかしい方法はないと思う。しかも同じ七十条の「補助ス」というのと「負担ス」というのが同じだというのですから、同じならば、なぜ同じ条文の中に「補助ス」、「負担ス」と区別せずに「補助ス」と書かないかということなんです。七十条の一つの方は、これは予算がどんなに苦しくても、事務費は義務費ですから、その額の多少はあっても、これを負担しなければならぬ。計上しなければならぬ。ところが七十条の三は一銭も入れなくてもいいのです。ところが七十条の一の方は絶対入れなければならぬものなんです。だからこれはしろうとの解釈かもしれぬけれども、七十条の一と三は絶対違うと見ております。その解釈はどうですか。
  224. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 これは先ほど御指摘の点でございますが、要するに負担と補助との法律上の性格が違うか違わないとかいう問題だと思います。しかしこれも先ほど答弁申し上げましたところから当然に結論されると思うわけでございますが、負担というのは、むしろ国と当該対象との負担区分を明らかにしたわけで、従って「負担ス」とある以上は、その区分に関する限りは、義務であるというふうに考えて差しつかえないと思います。補助する方は、これは御質問もあまりないがと思いますが、今申し上げた点において法律上の相違がある。だからこそまた同時に、負担と補助ということを書きます以上は、条文を異にして書く方が明確であろうというわけで、あちらにもありこちらにもあり、おかしいじゃないかという論は、今申し上げたような法律上の性格の区分が明らかになれば、一向に差しつかえないものだというふうに考えていいかと思います。  それからもう一つ七十条についてのお話がございました。これは業務勘定に入ることになっておると私は思います。そういう意味でまたこれがあることも別に支障はないのではないかというふうに考えるわけでございまいす。
  225. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、そこで大蔵省の見解とあなたの見解と違ってきた。大蔵省は七十条の三の「補助ス」というのは義務費だという見解をとった。ところが、そういう見解はとれない、補助することと負担することと同じだといろ見解は、七十条に関する限りはとれない。さいぜん私が申しますように、七十条の一は、大蔵省がどんなに出すまいと思っても、予算の範囲内においては絶対出さなければならぬものだ。ところが七十条の三はあなた方のあれで出さなくてもいい場合がある。義務費ではないのです。だから「補助ス」と「負担ス」というのは、七十条については、今のあなたの見解が私は正しいと見ている。ところが主計局の次長さんはこれは同じだというのですが、そういうことは成り立たないと思う。
  226. 宮川新一郎

    ○宮川政府委員 先ほど御質問がありました際に申し上げたのですが、私は補助と負担とは違うと思います。その点は申し上げたはずです。一般会計から特別会計に繰り入れる関係におきましては、補助と書くも負担と書くも法律規定が要るということは同じこと、あると考えるというふうに御答弁申し上げたと思います。この点は速記録に残っておると思います。
  227. 滝井義高

    ○滝井委員 そうすると、補助をするためには補助すると書く毛負担すると書くも同じだ、こういう関係でしょう。ところがそれは今言ったように、形式的には入れるということだけについては一応同じかもしれません。ところが片一方は義務的なものであり、負担に関する限りは、七十条の一を一応限定して議論すれば義務ですよ。ところが三の方は、あなたの方は入れても入れなくてもいいのです。これは義務ではないのですよ。
  228. 宮川新一郎

    ○宮川政府委員 これは義務ではございません。しかしながら先ほど滝井先生から与党と政府との間の折衝の際のお話がございましたが、私どもは一応特別会計法に今度の三十億の繰り入れの規定を入れるよう考えておったわけです。これを特別会計法よりも、今回御承知のように健康保険法を全面的に改正するのだから、実体法の方に政府は大きく事業の執行に要する費用の一部を補助するということを明らかに入れてもらいたいというような話が起って参りまして、特別会計法で規定するところを実体法の方に規定した、こういう経過になっております。特別会計に一般会計から金を入れるについては何らかの法律規制がいるということにつきましては同じでございまして、先ほど高辻政府委員がお答えしたと同様な考えを持っておる次第であります。
  229. 滝井義高

    ○滝井委員 とにかく入るという点については同じです。しかし片一方は非常に拘束力を持っておるし、片一方は拘束力を持たないのです。高辻さんはそういう見解でしょう。この七十条の一と三の関係のあなたの見解には私も賛成なんですが、あちらは同じだと言っておるのです。私は大蔵省と厚生省と、それから自民党の政策審議会との間に文書を取りかわしたのを見ましたが、それは政治的な配慮であって、その証拠にはあなた方はこの予算の説明に何と書いておるかというと、初めのうちは臨時補給金と書いておる。それが参議院にいってから直されておる。私はこれをこの前比べて示しましたね。だから臨時補給金というものは法律で規定をしなくても臨時に出し得る方法というものはあるはずです。  そこでそのこまかい論議はやめにして高辻さんにお尋ねしますが、今までにこういう具体的な前例がありますか。たとえば二つの場合を尋ねればわかると思いますが、こういうように特別会計に一般会計からお金を入れる場合に、すべて補助金でする場合、実体法がなくして入れた場合があるかどうかということなんです。全部実体法がなければ入れていないかどうか。これは両面でどちらでも同じですが、その実例があるかどうか。
  230. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 その範囲といいますか、実際にやっていることがありゃしないかということだと思いますが、これはどうもあるべきではなかろうと思うわけでございます。実際問題としてはないと思うのでありますが、事実の有無はちょっと私から確信を持ってお答えするわけには参らないと思います。
  231. 滝井義高

    ○滝井委員 大蔵省は特別会計を担当しておるわけですが、一般会計から特別会計に入れたのはたくさんあるのです。厚生保険特別会計の例をとってみても、たとえば昨年においては・非常に変則的なことかもしれぬが、厚生保険特別会計自身で一般会計からやる形を作りましたね。何かこういう例がほかにありますか。
  232. 中尾博之

    ○中尾政府委員 一般会計から特別会計に繰り入れられます場合に、すべて繰り入れの特別な規定を設けております。特別会計法の中にその条文を備えました場合には、繰り入れるという表現を直接に使っておるわけであります。それから保険のような場合につきましては、例の七十億の問題は直接特別会計法で取り扱いましたので、繰り入れという会計法上の言葉でこの問題を処理いたしておるわけであります。それから先ほどからお話のございましたようなその繰り入の分につきましては、会計官で資金的にいろいろ決済したりなんかする場合に繰り入れるという例はときどきございますが、その場合には金額その他を繰り入れるという表現を用いまして、特別会計法に特別血規定を設ける例は一般的に行われております。なお保険の場合につきましては、直接繰り入れという言葉を用いませんで、事業に対して負担するとかあるいは補助するという、今も論議になっておりますような表現を用いまして、その事業に対して援助するという趣旨と、それが会計官で当然繰り入れられるものであるという趣旨と、両方を含ませまして繰り入れの規定ということで働かしておる次第であります。
  233. 滝井義高

    ○滝井委員 どうもわかったようなわからぬような形ですが、一般会計からの受け入れ金でも、その袋が同じであるにもかかわらず、一方はこういう厚生保険でいくし、一方は健康保険でいくというような複雑な形というものは、やはりあとで会計検査院が監査その他をする場合に非常にまぎらわしくなる。一応法律を引き出してきてみるということになって非常に複雑になると思うのです。またそういう複雑なことをしなくても、袋が一般会計の受け入れという一つであるなら、むしろ健康保険法か何かではっきりした方がいいと思われる感じがするのです。もしこの健康保険法の一部を改正する法律が審議未了になったならば三十億は入らぬ、こういうことがはっきりしました。そこ毛法制局の見解は明白になりましたので、今度大蔵省にその善後処理を尋ねるわけですが、今年の健保勘定を見てみますと、まず法律が審議未了になって保険料の収入に非常に大きな影響を及ぼしてきます。というのは・標準報酬がもはや引き上げができなくなる。それから一般会計からの受け入れ金の今の三十億はだめになります。さらに歳出の面における保険給付の部面の一部負担がだめになりました。従って当初政府は、六十七億の赤字が健康保険の勘定には出る、こういうことでございましたが、行政的の措置による六十億は依然として行政措置でございますからこれはいいと思います。先般自民党自身が衆議院で修正したときに、あの修正案で五億六千五百万円だけは赤字になる、しかしこれは行政措置でやるんだということ、ございました。なお不足ならば十七億九千九百万円の予備費でやるんだということでございました。もはや今度は予備費ではどうにもならぬという事態になってきた。あるいはこの法律が審議未了にならなくとも、この法律は五月一日から実施の法律であった。今日たとい参議院の本会議を通ったとしても、すでに五月、六月と二カ月だけ穴があく。七月からしか実施できない。そうしますとこの法律が通らないことによって一カ月に二億前後の欠損になってくることは明らかです。そういう関係で、これが審議未了にならなくとも、この法律が五月一日から実施されるという点から見ても、これは非常に大きな予算上の穴があいてくることも確実になってきた。そこでこれは直接人間の生命に関係をする重大問題でございますから、私たちはこれを次の通常国会で論議をするというわけには参りません。従ってどうしてもここで大蔵当局の善後処置の見解をお尋ねしておかなければならぬと思うのです。今言ったように歳入の面においては保険料収入と一般会計の受け入れ、歳出の面に酷いても保険の給付、こういう点で非常に大きな歳入欠陥、歳出増が出てきて、二重に健保勘定は危機に直面することになるわけです。そこでこれに対する善後措置をどうするつもりなのか。大蔵当局としては、当然これは予算の修正を必要とする段階に来ておる。どうするのか、一つ御説明願いたい。
  234. 大坪保雄

    ○大坪委員長代理 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  235. 大坪保雄

    ○大坪委員長代理 滝井君に申し上げます。この問題はきわめて重大のようであります。食事の都合もありますし、暫時休憩いたしたいと思います。再開は午後八時の予定。  暫時休憩いたします。    午後六時五十四分休憩      ————◇—————    午後九時十五分開議
  236. 大坪保雄

    ○大坪委員長代理 休憩前に引き続き再開いたします。  質疑を続行いたします。八木一男君。
  237. 八木一男

    ○八木(一男)委員 山下政務次官にお伺いいたしたいと存じます。  日雇い労働者健康保険法についてお伺いいたしたいと思うわけでございまするが、本年度予算編成の際に厚生省の当局では、同法の改正の案を持っておいでになって、大蔵省にその予算の要求をなさって、残念ながらそれが財政上の理由でとめられたということを仄聞しておるわけでございまするが、現在厚生省でもお認めの通り、現在施行されております日雇い労働者健康保険法につきましては、非常によい法律でございまするけれども、その内容が非常に不十分な点があると思うわけでございます。山下政務次官は前からの関係で十分御承知でございますが、蛇足ながら私の方から申し上げますると、まず第一に、療養の給付期間が現在一年しかございません。日雇い労働者といえども、ほかの健康保険の被保険者と同じように長期の疾病にかかることは当然でございます。むしろその生活状態から見ますると、長期の疾病にかかる危険性が多いわけでございます。一般の健康保険は、一般の疾病に対しては二年間、結核等の長期疾患に対しては三年間というふうになっておりますが、現在のこれの一年という状態は非常に短か過ぎて、社会保険としての意義を十分には発揮しておらないように思うわけでございます。その点が第一点と、その次に、埋葬料とか家族埋葬料あるいは出産費等の一時的な現金支出がございまするけれども、傷病手当金とか出産手当金あるいは保育手当金のような継続的な現金支出が保険給付の中にないわけでございます。日雇い労働者の場合には、病気になりまして職務を休みますると直ちに収入がなくなるわけでございますから、その傷病手当金の意義というものは、ほかの保険の被保険者よりも非常に重大でございます。これがないと、医師の診断で診療を受けておりましても、休んで静養しなければいけないという指示を受けましても、家族の生活のために無理をして働きに出るということが起るわけなんでございます。でございまするから、幾ら注射をしても薬を飲んでも何も役に立たないというようなことになって、健康保険のほんとうの大事な意義が失われてくるのではないかと思うわけでございます。この点について、このような傷病手当金等の現金支出が必要であるということは、社会保障に熱心、あられます山下政務次官は十分に前から御承知でざいまするし、またそれを推進しようという熱心な御意欲をお持ちだと思うわけでございます。また社会保障審議会でも、その他の社会保険審議会でも、同様の答申を数回にわたって出しておることも御承知の通りであります。  次に、そのほかに保険の給付を受ける要件がいまだはなはだ過酷のものがございます。昨年これが改正されまして幾分よくなったわけでございまするけれども、二カ月に二十八日と六カ月に七十八日という要件になっておりまして、片方の方は一カ月十四日間、片方の方は一カ月十三日平均の要件ということになっておるわけでございます。御承知の通り京都地区等の非常に就労状態の悪いところでは、一カ月十五、六日という平均の日雇い労働者の就労平均の統計が出ております。十五、六日の就労でございますと、自分の家族が急病で看護のために休んだとか、ほかの家族的なことでほんとうに必要な事故で休んだとか、また自分の腹が痛いけれども——これについてはあとで詳しく申しまするけれども、特にこの保険で手続が不便ですぐ行かれないために休んでしまったというような場合に、十三日あるいは十四日を切れる場合が往々にして起るわけでございます。それと同時に、たとえば最初痔が悪かったということで要件を満たしておりまして、その病気に対して保険診療を受けましても、その痔が悪いために長いこと休んで、その次に今度肺炎を起したという場合には、最初のときにすでに休んでおりまするので要件がはずれておりまして、次の第二病については診療が受けられないというような欠点もございます。でございまするから、この要件を下げることが非常に大事ではないかと思うわけでございます。この六カ月という要件を各党で相談して作りましたときに、二カ月の要件をあまり下げますときには、逆選択が起る危険性があるので、六カ月の要件を作って、それを非常に低く下げたときに逆選択も起らず、まじめに働いてまじめに保険を受けたいという意欲を持っておる被保険者諸君が、自分の保険料をかけ捨てにしないで診療を受けられるように相なるのではないかということで、歯医者たちの意見がまとまったわけでございますが、この六カ月の要件を現在の七十八日よりもっと緩和して、私どもは六十日と思いますけれども、厚生省御当局として、そういう点についても御勘案いただきまして、これを下げるような御努力をされるようにお願いしたいと思うわけでございます。  それではこの問題としての最後に、それを実現するために、やはり財政上の問題がございます。現在の日雇い労働者の収入は、御承知の通り非常に低廉なものでございまして、就労平均も少いのでございます。でございますから保険料の値上げでこの給付を上げようとしても、これは事実上不可能でございます。このためにやはり国庫の負担の増額をいたしませんことにはそれが実現ができない状態にありますことは、厚生省当局もすでに御承知の通りでございます。でございますので、どうか本年度お作りになりました案をさらに検討されまして、私どもの考えておりますことも御勘案いただきまして、さらによいものをお作りになって、それが来年度においてほんとうに実現するように、厚生省当局で、特に政務次官の御推進によりまして、実現するように御配慮を願いたいと思うわけでございます。幸いにして大蔵省の主計官の方がお隣でございますので、どうぞ大蔵省の方も今私の申し上げておる点を十分にお考えいただきまして、厚生省がほんとうに必要だとする御要求に対しまして、大蔵省当局の方は十分これをいれて、金を有効に使う場合には別に出し惜しみをしないという状態で御勘案を願いたいと思うわけでございます。さらに戻りまして、厚生省当局が積極的に御推進をぜひしていただきたいと思うわけでございます。山下政務次官の御決意を伺わしていたださましたら大へんに幸いだと思います。
  238. 山下春江

    ○山下(春)政府委員 八木先生の非常に御熱心な御努力に対しまして、私どももおこたえ申し上げたいと思うわけでございますが、遺憾ながら医療給付の内容あるいはその傷病手当等につきましていろいろ検討をいたしておりますけれども、どうも先生の御想像よりもことしは赤が出るのではないかというような非常な心配を実はいたしておるのであります。その大部分が、歯科の診療がよくなりましたせいで、それが非常に急激にふえておる点ではなかろうかと思っておりますが、お気持はよくわかりますし、私ども努力を傾けたいと思っております。せっかく検討をいたしております。  それから資格の発生の規定でございますが、これにつきましても八木先生、私どももともに苦労をいたした点でありますが、今申し上げましたように、ことし非常に財政的な危険を感じておりますので、熱意をもって今後も引き続き検討いたしていくつもりでございます。一つその点御了承を承わりたいと思っております。
  239. 八木一男

    ○八木(一男)委員 御誠意ある御答弁をいただきまして非常にありがたいと思います。歯科の点で給付金のふえておりますことは私どもも仄聞いたしております。これはしかし非常に貧困の状態にありまして、いえば治療ができない労働者諸君がこの補綴ができるようになったときに今まで何十年間もしなかったのが、一時にやったというような一時的な現象であろうと思いますので、この点について保険会計の赤字について御心配になり過ぎて、改正の御推進について少しブレーキをかけることをいたしませんように、一つお願いをいたしたいと思うわけでございます。  それからもう一つは、歯科治療の点についての赤字がございましても、これは少くとも国庫負担を、今の一割をもっと増大しなければとうてい、傷病手当金その他の数億の金がいるので、これはできないと思いますので、少くとも本年度の厚生省の原案を下回らないで、あるいはもっと上回るような原案をお作りになって、強力に一つ政治力をもって大蔵省の方々に心よく御承知願って、そうして現実化するように御配慮を願いたいと思うわけでございます。  それから次に、これは厚生省の原案に入っておらないのでございますけれども、現在の保険の適用者と同様な状態にある労働者の諸君がおります。そしてやはり一般の健康保険にも入れない、そういう状態で健康保険の適用を受けることを熱望いたしておるわけであります。この点について厚生関係ではいろいろの御心配があるようでございます。その最大の原因の一つは、保険料を集めるについて、技術的な困難があるのではないかという点であろうかと思いますけれども、私ども社会党の案を自画自讃するわけではございませんけれども、このことについて相当一生懸命衆議院の法制局とも何回も検討いたしまして作った案がございます。それを一つ御参考にしていただきまして、ほかの同様の気の毒な人々に健康保険の恩典があまねく行き渡りますように御配慮を願いたいと思うわけでございます。  それから時間もございませんので続けて申させていただきたいと思いますが、今度の改正の問題でなく、一般行政上の問題でまず第一に申し上げたいと存じますのは、先ほど申し上げましたことと関連があるわけでございます。が、これの適用の方法でいろいろ行政上の配慮を払いましたときに、適用範囲をいろいろ不都合なことを起さないで拡大する道もあるのではないかと思います。その点で政務次官には一番大綱をつかんでおられるわけでありますから、またこまかい点について実際に携わっておられないかもしれませんが、山本庶務課長もおられますし、当該の小沢課長その他と一つ研究して、行政上の点でそういう問題が拡大適用できるような道を御研究になって御推進になっていただきたいと思います。この点については、厚生省もいろいろと考えておられたこともあると思うわけでございますので、それを特にお願いいたしたいと存じます。  それから適用の問題でなしに、現在この保険のほんとうの具体的な施策の施行の点についてでございますが、非常に不便な点がございます。といいますのは、保険の資格があるのにその証明に手数がかかるわけでございます。たとえば二カ月二十八日、六カ月七十八日の要件を備えておるかどうかという点で、非常に証明するところが遠いところがある。一県に少数しかない。だから一時間か二時間ほどかかって、電車賃を払って証明を受けなければならないという場合に、その電車賃が惜しいような境遇の人が多いわけでございますから、そのために腹の痛いのをがまんして、盲腸炎を悪化させるということもございますので、その点について一定期日に、一カ月なら一カ月に、前もって六カ月の要件もあるわけでございますから、適用を完全に受けられるものについては、あらかじめ証明書を何かのついでにもらえるというような制度を、ぜひお考えをいただきたいと存じます。それとともに扱う事務所を現在各市町村に委託をしておられるようでございますが、その条件をよくいたされまして、どこの村でもそれを政府の代理で扱ってくれるというふうにしていただきましたならば、遠くまで電車賃をかけて仕事を休んで行かなくても済むということになると思います。その点についてどうか一つ、特に御配慮を煩わしたいと思います。今の私どもの要望につきまして、どうか政務次官の御意見、また山本庶務課長の御意見、御決意でもけっこうでございますが、一つ承わりたいと思います。
  240. 山下春江

    ○山下(春)政府委員 お話の前段の点につきましては、私ども非常に苦労をいたしまして、三十五年度にはぜひ国民皆保険の線を打ち出したい、その中のいわゆるボーダー・ライン層という一番困難なケースでございますが、これはしかしどうしても解決しようという熱意をもって、今取っ組んでおりますので、また先生方のお知恵を拝借いたしまして、御心配になっておるような点を解決する方途をぜひ講じたいと思っております。後段の方に関しましては、前々から先生方も御研究でございますし、私どもも研究いたしておりますので、何とか便宜を得る方法が見つかるように努力を続けまして、御期待に沿うようにいたしたいと思っております。
  241. 山本正淑

    ○山本説明員 適用上、行政的になるべく日雇い労働者をカバーできるような配慮をされたいという御意見は、八木先生から特に従来承わっておりますし、私どもといたしましても日雇い形態の労働者に対しまして——これは一番問題は把握の仕方でありますので、的確に把握でき、しかも保険料納付その他について公正が期せられるというような業態から、なるべく安易に入れていこうという考え方を当初から持っておりまして、またその線で進んであります。現在、二、三の業種につきまして問題として取り上げておりますので・御趣旨に沿って研究いたしたい、かように考えております。  それから証明上の手数料がかかるという点は、これも当初から御指摘を受けた点でございまして、過去二カ年間におきましては、大蔵当局とも打ち合せいたしまして予算を組んでございまして、市町村の数は毎年相当大幅にふやして参ったのでございます。ただしかしながら、市町村で事務を取り扱うという点については、大体限度まできておるのじゃないか、かように考えられますので、今後の運営につきましては、さらに他の方法について十分検討していきたい、かように存じております。
  242. 八木一男

    ○八木(一男)委員 政務次官並びに山本庶務課長の御答弁をいただいて満足でございます。本日は残念ながら厚生大臣あるいはまた保険局長、また健康保険課長がおられませんでしたので、どうか山下政務次官並びに山本庶務課長の方から、そういう当該の関係者に私どもの要望するところをお伝え下さいまして、ともどもにこの問題を進めていただくことを特にお願い申し上げる次第でございます。お疲れのところを引っぱりまして、大へん申しわけありません。  最後に一言、大蔵省の方にお願いをしたいわけでございます。今のようなことをお聞き下さったと思いますけれども、特に大蔵省の方では、財政の総ワクを維持したいというお考えで財政計画をいつも作っておられる点につきましては、総体的にこれは必要な態度であろうと私どもは存じます。しかしながら今の予算編成上でいろいろとむだな点がございます。これは防衛庁の予算にもずいぶん余って使い残しもございましたし、また前にいろいろと補給金を出しておりましたのも、その必要のないところも出てきておるわけであります。そういう点の配慮をいたされましたならば、この問題を推進するくらいの資金は、財政のワクを広げなくても出てくるのじゃないかと思います。大体において日本政治が、今まで貧しい人や病気に潤わす点が少なかったことをわれわれ遺憾に思うわけでございますが、厚生省当局ではそれを推進しょうと一生懸命になっておられますので、この点について大蔵省御当局も、財政のワクだけではなしに、資金を有効に、ほんとうに役立つようにという観点からお考え下さいまして、このような、今申し上げましたことについての厚生省の御推進に、あたたかい心で心から御協力していただくようお願いしたいと思うわけでございます。どうか関係の主計局長あるいはまた大蔵大臣その他に、私どもの要望を伝えていただくことをお願いいたしまして、質問を終ります。
  243. 大坪保雄

    ○大坪委員長代理 滝井君。
  244. 滝井義高

    ○滝井委員 どうもこれはしんがりになりましたが、簡単にちょっとお尋ねします。さいぜん、この健康保険法の一部を改正する法律が審議未了になることによって、国からの補助金の三十億は、法律的な見解としてすでに出すことができないということが明白になったんですが、それに伴って必然的に約五、六十億の赤字が、この厚生保険特別会計の健康勘定に出るということが見通されることなります。この健康勘定の歳入、歳出の総計は五百九十五億でございますから、一カ月に少くとも四十九億必要だと、こうなりますと、この法律が通らないことによって、一カ月分だけは確実に穴があくという形になってきたわけです。そこで、もうすでに六月になっておりますので、その善後処理について十分見通しを考えておかないと、人間の生命に関する医療の問題でございますので、これは非常に重大であるということの発言がありましたところ、大坪委員長代理の方から、それはきわめて重大であるので、党の方とも相談しなければならぬだろうというような御発言がありまして、一時休憩になったわけですが、その点に関して、主計局の次長さんが見えておりますので、大蔵当局のお取扱いですね、これを一つ御説明願いたいと思います。
  245. 宮川新一郎

    ○宮川政府委員 滝井委員の御指摘がありましたように、この法律が審議未了になりまして、このまま放置いたしますと、健保の財政上非常に大きな問題が残るという点につきましては、全く同感でございまして、私どもといたしましては最後の瞬間まで、この法案の通過することを念願いたしておる次第でございまして、ただいまこれが審議未了になった場合どうするかということにつきましての対策等については、いまだ検討いたしておりません。さような状況であることを御了承願いたいと思います。
  246. 滝井義高

    ○滝井委員 審議未了になったときの対策はまだ考えていない、こういうことでございましたが、これはもうさいぜん私が指摘をいたしましたように、この法律が審議未了になるならぬにかかわらず、五月一日から施行なんです。そしてすでにもう六月三日なんです。そうしますと、五月、六月の二カ月だけは確実にブランクになって、月に最低見積って二億だけは、この法律が通らないことによってだめになってくる。そうすると五月、六月分で四億です。それからすでに衆議院の修正によって五億六千五百万円の欠陥が出る。これはこの前、私が衆議院を通るときに御質問を申し上げたところ、それは行政措置でやっていくんだ、こういう御説明がありました。なお足らなければ予備費でやる。十七億九千九百万円の予備費がございますが、健康保険の今までの状態から言うならば、予備費が十七億そこそこでは足らないことは過去の実績が示している。ところが今度はそれがさらに五億六千五百万円、腰だめ的な数字で見ても四億、約十億の穴があいてくるのです。そうしますと、これだけ、毛当然大蔵当局としては、この法律がきょう通ったとしても、考えておられることなんです。この法律は五月一日の日付で実施なんです。先般私が参議院で傍聴しておりましたところ、社会党のある議員が、六月一日から本法案が実施になるんだということを言っておりました。それから厚生大臣もまたそのおつもりで御答弁をしておった。ところが法律は六月一日から実施なんということは書いてない。五月一日から実施になると書いてある。だからこれは当然修正しなければ、七月になるか六月になるか、わからない。ところが現実の問題として、きょうこの法律が通ったとしても、もはや六月に実施できないことは確実になった。どうしてかというと、その日その日の支払い関係があるのです。従って中途からこの法律を実施すれば、基金の支払いが技術的にほとんど不可能なんです。だからどうしてもこれは、きょう通ったとしても、実施は七月だ、こういうことになって、確実に二カ月プランクになる。こういう事態になることは、法案が五月一日の日付で衆議院を通っているんですから、その点からいっても大蔵当局としては当然そのことを考えておかなければならぬ問題なんです。だからそういう点、審議未了になったことは——今言ったようにわかりません——審議未了になることは自民党自身も了承しておるので、これは確実なんです。従って今言ったように十億の問題が新しく、衆議院通過のときに四億加わった十億の形で欠陥が出てきている。そういう点、やはり何らかここに財政当局としてとり得る、考え得る処置というものをお示しいただきたいと思うのです。
  247. 宮川新一郎

    ○宮川政府委員 滝井委員の御指摘になりましたように、一カ月の実施の時期のずれ等による赤字増加ということも考えられます。しかしながら一応歳出権といたしましては、四百数十億円の歳出権があるわけでありますし、予備費十八億もあることでございますから、一応現在のまま推移いたしまして、よく事態の推移を見きわめ、厚生当局の御検討をも待ちまして考えたい、かように考えております。
  248. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、大蔵省としては、今の段階では、一応予算面から約五、六十億の欠陥が算術的には考えられる。しかしそれは事態が表面化してからそのときに考えるので、今のまま一応推移していくというのが、大蔵当局の考え方ですか。
  249. 宮川新一郎

    ○宮川政府委員 その通りでございます。
  250. 滝井義高

    ○滝井委員 今まで大蔵省は、健康保険の会計の運営に当って借入金が六十億円ありますが、これは長期借入金です。ところがこの長期借入金の六十億は、資金運用部の計画に実は今年は載せておりません。これは宮川さんは、あるいは御存じないかもしれませんが、載せていないのです。この資金運用部の計画には載せていないけれども、これは資金運用部の計画からことしは年度末に出しました。三月ぎりぎりになってから、いわゆる国庫余裕金を長期に借りかえまして、そうしてたった一日だけおいて三千万円の利子を払った。そうして翌年度の四月に送る、こういう形をとっておるのです。そこでこの国庫余裕金は利子がつきません。もしそういう事態が起れば——これわあなたとしては、現在の六十億の国庫余裕金を厚生保険特別会計に貸しておるのですが、さらにそういう事態が起れば、国庫余裕金で泳ぐということも、これは一番いい方法だと私は思うのです。そういうことは考えられないかどうかということ、です。
  251. 宮川新一郎

    ○宮川政府委員 一時的の金繰り上必要な場合には国庫余裕金の運用ということももちろん考えられます。しかしながら抜本的対策といたしましては、やはり、かりにこの法案が審議未了になりました場合に、健康保険の財政状況は、最近給付費の伸び方が前に比べて少くなっているというような事実もあるように聞いておりますが、その辺の事態の推移を見た上でいかなる対策を立てるか、やはり国会で御審議を願い、それと並行してそういうことも考えるということになるのではないかと考えておる次第であります。
  252. 滝井義高

    ○滝井委員 もうすぐやめます。なかなかどうも慎重になってきたようでございます。常識論として、こういうように予算に五十億、六十億の穴があいたならば、補正予算を組むというのが常識的な答弁じゃないでしょうかね。その点参議院の選挙が終れば、どうせ臨時国会も開くことは今の政治常識から考えたら当然のことなんです。そうしますと、当然この健康勘定というものは、そのまま放置しておけば赤字が出ることは確実なんですから、そうすると、何らか特別会計の補正ということも常識的には私は考えられると思うのですが、宮川さんの常識からはそういうことは出てこないのですか。
  253. 宮川新一郎

    ○宮川政府委員 一番初めに申し上げましたように、最後の瞬間まで法案の通過を念願いたしておるわけでございまして、ただいまの段階におきまして補正予算を組むというところまで考えておりません。
  254. 滝井義高

    ○滝井委員 まあそうあなたは最後最後と言うけれども、参議院では、厚生省関係は母子福祉の法案以外はもうやらぬということで、おそらくもう今ごろ大臣が行ってすわっておるのじゃないかと思います。厚生省はそれ以外にない。議運でもうきまっておる。だからもうあと二時間のところですが、これは議事日程がきまってしまったのです。だから最後の瞬間までと言っておるが、私は確かめてきておるのです。だから私はもう今までのことについては厚生省を追及したり、大蔵省を追及しようとは思いません。これはこういう事態のもとでこうなったのです。これは決してあなた方の責任でも何でもない。責任はむしろわれわれ社会党にもありますし、自民党にもあると思っております。私はああいう法案を通すことには初めから反対であった。それが、自民党がここでああいう修正をやらずに、また参議院もその修正をのまずに、さらに再修正をしようというような態度をとらずに、堂々と政府の出したものでまかり通っていく、こういう姿に対しては、社会党としてわれわれは反対はするが、その反対でもまた考え方があったと思うのです。ところが政府が出した法案を与党みずからがずたずたに切っていくということは、これはあなた方と相談しなければ、与党としてそういう無責任なことはできないはずなんです。だから与党自身がそういうことをやっておるからには、大蔵当局もそれに対応する形というものを、絶えず事務当局として予算を扱うのでありますから、とっていかなければならない。私たちは初めから審議未了という方針を打ち出しておるわけです。それはもっと日本社会保障は金を出さなきゃならぬという見地に立ってやっておる。三十億や四十億の目くされ金では八千万の国民社会保障はできないというのが私らの見解なのです。だからわれわれはむしろこの法案が流れれば、これを契機としてさらに防衛庁あたりのああいう乱費を粛正して、防衛庁に必要な金は保守党の力で認めさしてもよろしい。やはり中古エンジンを買うような乱費があるならば、あるいは艦船建造に伴うところの何十億という金が繰り越されてきておるし、防衛庁としては二百億以上繰り越されてきておることなんですから、そういう金があれば、社会保障をぎゅっと確立していく姿を作り、保守党に反省を与える、内閣の古い頭の閣僚諸公に反省を与える、こういう事態を作る以外には、日本社会保障の確立はできないというのが私たちの考え方なんです。幸い天の声か、天がくみしてくれたか、そういうことになっちゃった。そこで私は非常にお気の毒だと思うけれども、やはり日本社会保障の確立のために最後——これは厚生省の諸君はみな悲観しております。しかし悲観する必要はないと思う。これからほんとうに日本社会保障ができる、こういう考え方なのです。次長さんは最近主計局に来られて、感覚も新しいと思っておるので、われわれはお互いに一つ相共通した立場でこの問題と真剣に取り組んでいく必要がある。そこで今夜はおそいけれども、そういう立場で、やはりこういうものがつぶれたといって悲観しておっても始まりませんから、つぶれたその瞬間から、よりよきものを作る努力が必要だと思うのです。そのために、私は大臣が逃げておるのはけしからぬと思う。堂々と大臣が出てきてこの事態を衆議院で説明をして、参議院でこういう状態にある、私は今後こういう方向でいくんだということを明確に示すことが、国民に対する厚生行政を受け持っておる大臣責任だと思う。あるいは保険局長だってそうです。どんなことがあってもこの委員会が開かれておるのだから出てきて言うべきだと思うのです。ところがそれはどうも腰が抜けておるという事態では、私らは承知できない。私らは野党ですけれども、やはりよりよきものを作るために最後努力をしなければいかぬ。そのためにはこういう瞬間が一番いいのだ。鉄はやはり熱されておるときにたたく以外にはほんとうのものができてこない。そこで来年度の予算編成はいよいよ間近に控えておる。もうすぐかかるのですから、やはりその一つの推進力となるものはあなた方だと思っております。私は政党人です。現在の日本の政党は、率直に言ってまだあなた方にはかないません。自民党の政策だってあなた方がみな作っておる。社会党の政策だって、やはり厚生省へ行っていろいろ資料をもらってこなければできない。だから私は政党人ですけれども、悲しいかなわれわれの力のないことを認めなければねらない。われわれも勉強します、しかし今の段階ではこの事態をどういう工合に切り抜けていくかといえば、やはり厚生省なりあなた方の頭から一番いい頭脳のひらめきが出てくるだろうと思うのです。そうすると、そういうものが、ある程度の示唆を受ければ、われわれはそれに向って協力していく以外にない。あんな修正案がもし通ったとしても、今の健康保険は半殺しの状態です。そうして当面を糊塗してずるずるといってどうにもならないことになってしまう。今ならばまだ健康保険は考え直せばどうにもならぬということはないのです。今ならばまだ打つ手は幾らでもある。ところが先になってどうにもならなくなったときには、これはほんとうに救いようがないのであります。今ならまだ脈はある。私は言質だとかなんとかは言いません。私は厚生大臣や保険局長のこの問題についての責任は今後追及しようとは思いません。やはり与党と野党が国民医療を確立して、日本社会保障をどういう工合に確立していくかを今日から真剣に考えていかなければならぬ、こういう形なのです。その反省はやはり今日のようなこういうときが一番いいのじゃないかということで、来年度から厚生省のこういう予算を推進していく一つの力であり、一つのケルンの役割を演ずる宮川さんに率直に意見を伺いたいのです。これはあなたも補正予算その他の問題はやりにくい、今夜ここで御答弁できないことは了承いたします。それは大臣でも今はなかなかできぬと思います。しかしこれはこういう状態になれば、常識論として大体どうすればいいかという技術上の問題ですね、これを一つ私に教えていただきたいと思うのです。率直にいって、責任を追及してそれを言質にするという気持はありません。どうぞ一つ……。
  255. 宮川新一郎

    ○宮川政府委員 社会保障問題についての権威であられる滝井先生から、非常に御謙遜された御発言でございまして、恐縮に存ずるのであります。私も主計局に入りまして、まだ初めての予算編成に当ったような次第で、十分自分の意のあるところまで、予算編成に現わす段階にございません。社会保障の充実につきましては、この前大蔵大臣が御答弁申し上げましたように、私も財政の許す限り、できるだけこれを拡充していくという意図を持っております。その点におきましては、滝井委員と私は同感だと思うのであります。ただ今回の健康保険法の改正に見られました事態につきましては、これは私どもの見解と滝井委員の御見解とは、異なっておるわけでございますが、今後とも、こういう事態になった——私はこのまま放置できないと思うのでありまして、どうすればいいか、この辺につきましては、なお私もよく勉強して、善処して参りたいと考えております。
  256. 滝井義高

    ○滝井委員 もうこれで終ります。あなたはなかなか放置できないということの御見解でございますので、放置できないということがおわかりになれば、その放置できない事態の中から、具体的な対策が出てくると思います。そこで一つぜひ一この健康保険の問題は、今後の日本における非常に重要な問題になってくることは確実だと思います。これが一つの契機になって、あなた方も放置できないということで、十分検討していただく機会を得たことを、私は日本のために喜ばしいと思っております。そこで、社会党はいろいろ暴力だとか何とかいわれましたけれども、この暴力がいわば日本の貧しい階級を救う一つの原動力になるならば、社会党は天下から暴力といわれても、もって瞑すべきだと思います。どうかそういう点で、われわれも御協力申し上げますので、真剣に一つ、厚生省は力をておりますから、むしろ大蔵省が声をかけてやって、そうして一つ討議をしてやっていただくことをお願いします。  きょうは非常におそくまで、最後までがんばって、まことに申しわけございませんでしたが、どうかそういう点でよろしくお願いしたいと思います。どうも委員長、ありがとうございました。
  257. 大坪保雄

    ○大坪委員長代理 本日はこれにて散会いたします。    午後九時五十三分散会