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1956-05-08 第24回国会 衆議院 社会労働委員会 第40号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年五月八日(火曜日)     午前十一時十七分開議  出席委員    委員長 佐々木秀世君    理事 大坪 保雄君 理事 中川 俊思君    理事 野澤 清人君 理事 滝井 義高君       植村 武一君    小川 半次君       荻野 豊平君    亀山 孝一君       草野一郎平君    小島 徹三君       高橋  等君    中村三之丞君       中山 マサ君    林   博君       古川 丈吉君    井堀 繁雄君       岡本 隆一君    堂森 芳夫君       長谷川 保君    森本  靖君       八木 一男君    横山 利秋君  出席国務大臣        労 働 大 臣  倉石 忠雄君  出席政府委員        労働事務官        (労政局長)   中西  實君  委員外出席者        労働事務官        (労政局労働法規        課長)      石黒 拓爾君        専  門  員  川井 章知君     ————————————— 五月八日  委員三宅正一君及び柳田秀一君辞任につき、そ  の補欠として森本靖君及び横山利秋君が議長の  指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  公共企業体等労働関係法の一部を改正する法律  案(内閣提出第九四号)(参議院送付)     —————————————
  2. 佐々木秀世

    ○佐々木委員長 これより会議を開きます。  公共企業体等労働関係法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  質疑を続行いたします。横山利秋君。
  3. 横山利秋

    横山委員 大臣がじきおいでになるそうでありますから、その以前に少し労政局長にお伺いしておきたいと思います。  政府側提案理由の説明の中に、「周知のごとく占領下早急の間に立法されたものであり、その内容はいわゆる飜訳立法の最たるものでありまして、その後若干の改正はありましたが、なおわが国実情に適しない点が多く、また技術的な不備欠陥が随所に見られ、このため公共企業体等労働関係無用摩擦紛争を招いているきらいすらあり、従来とも本法改正を要望する声が少くなかったのであります。」とあります。法律改正に際しまして、政府側現行法をかくまで何と申しますか非難をし、そしてその欠陥をあげておるということは、あまり例のないところであります。しかしながらこの政府指摘をいたします点につきましては、私どもは全く同感でありまして、この公共企業体等労働関係法が、今日までその欠陥あるがゆえに、多くの無用紛争を起しておりましたことも、すべての関係者の知るところであります。従ってここに改正政府が所期をいたしまして、今回改正をする決意に至りましたゆえんにつきましては、われわれとしては共感を覚えるところ下あります。しかしながらここに改正をするに際しては、その従来の欠陥、弊害を根本的にこの際再検討をいたし季して、本来いかにあるべきかということについて、徹底的な議論をし、しかる後にこの改正がされなければならぬと私は存ずるわけであります。しかしながら今回政府提案をいたしておりますところの改正案は、政府みずからその提案理由の中においても言っておるのでありますが、やや弥縫的に過ぎる点が多々ございます。従って、どうしてこういうような弥縫的な点に発せざるを得なかったかという点を、まず第一にお伺いをいたしたいと思います。
  4. 中西實

    中西政府委員 前会にも、大臣の方からもお話がございましたが、この公労法考えます場合に、問題は三公社現業あり方、その他労働法体系全般を根本的に考えるということの必要は、われわれとしても考えておるわけでございます。しかしながら、その根本的な検討は、やはり相当の日にちもかかることでありますし、さらにまた国家公務員法関係、その他との関連もございまして、なかなか急速に全体的に、根本的にというわけにも参りません。そこで今回は、公労法の技術的な点につきまして主として改正をする。すなわち公労法建前はそのままにいたしまして、従来から見まして非常に技術的に不備欠陥があるところ、さらにまた無用摩擦紛争を招いている点、こういう点につきましてとりあえず改正をして、公労法のある限りはできるだけ円満にこれが運用できるようにしたいということで、今回の提案になった次第でございます。
  5. 横山利秋

    横山委員 大臣がお見えになりましたから、質問焦点大臣にお移しします。  ただいまの私の質問は、根本的な欠陥を持っておるのにかかわらず、どうして弥縫的なことをしたのか、こういう点でありました。今のお答えは、提案理由にもございますように、一面には三公社、五現業あり方検討が必要である、あるいはまた労働法体系全般との関連において考えなければならぬ、こういうことであります。これはごもっともではあります。しかしながら、倉石労働大臣がここに大臣となられたその直後において——かねがねあなたが公労法関係をされて、この運営に多大の影響を持っておられましたお方として大臣になったその直後に、公労法改正するという決意を表明せられたことは、私は並々ならぬ決意のほどがうかがわれたのであります。従って今日この弥縫的な改正案をもって、根本的には触れない、そしてその理由として三公社、五現業あり方そのもの検討が必要だ、あるいは労働法体系全般検討が必要だということでは、大臣の当初の決意と期待を裏切るものはなはだしいといわなければなりません。大臣は、一体大臣におなりになったときに、公労法改正するという所信天下に表明された決意というものは、果してこのような弥縫策であったものかどうか、また、その後所信が変ったものであるかどうか、変ったとすれば、今後就任当時のその決意をどういうふうに具現をされるつもりであるか、この点について、大臣所信をお伺いしたい。
  6. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 今非常に欠陥があるというお話がございましたが、私ども公共企業体等労働関係法を制定いたします当時に、第一公共企業体というものについて非常に考えさせられたのでありますが、このことは、あの当時の諸般の情勢で、一応公共企業体というものを作ることになって、その法律が制定されたわけでありますが、この公共企業体というものについては、私どもは、入閣いたします前から、日本の現在のような状況で、公共企業体という形の運営がうまくいくかどうかということについて、多大の疑問を持っておりますし、また現在私ども公共企業体というものについても、多くの考えさせられる点を持っておるわけであります。しかしその公共企業体あり方を根本的に考え直すということは、行政審議会などにおいてもいろいろ研究されておるようでありますから、これは今すぐにどうこうということもできないかと存じます。しかし将来はこういう問題についても、審議会あたり検討を待って、私どもは善処いたしていきたいと思うのでありますが、公共企業体というものが現存いたしておる以上は、公共企業体等労働関係法というものもあるのでありますから、そういう公共企業体労働関係について持っておる法律をどうやってなるべく苦情がないようにしようかということが今度の法律案のねらいでありまして、私どもは決して弥縫策だとは考えておりません。現在の公共企業体というものを現存させておる以上は、この取り扱う法律をより理想的なものに近づけていきたいというのが念願でありますから、私の参ります前にすでに応答があったかもしれませんけれども、私どもとしては本法の取扱いについて当初から一番疑点を持ち、何とかこれは実情に沿うように直すべきではないかと考えられておることは仲裁裁定であります。この十六条二項というものが制定されますときには、御承知のように、まだ占領中でありましたが、当時質疑応答の間で確認されましたのは、最終的にはやはり国民の代表である国家最高機関たる国会において決定をしてもらうという趣旨である、こういうことなんでありますが、なるほど予算を伴う問題でありますから、国会意思を無視してはできないことは当然でありますが、その段階に至るまでの間にも、なおかつ法の運用によってもう少し合理的にいけるのではないか。こういう考えで、私どもは最終的に予算編成まで至らない間でも、法の改正によってできるだけ仲裁裁定を尊重し得る建前をとっていくべきではないか。この法律にある一番大きな欠陥とわれわれが考えました仲裁裁定を、どうやったら尊重できるかということを前提にものを考えましたときに、やはり私は今度の改正というものは非常な前進である、こういうふうに考えておるわけであります。ことにこの法律は臨時の審議会を作って、そこの御審議を願って、その答申が出たわけでありますが、この答申の御趣意もやはりそういうところにありまして、政府はあらかじめ審議会方々に私ども考えなどは一言も示唆いたしたことはありません。この審議会方々の熱心なる御討議によって出されました答申案趣旨を全体の法律に盛り込むことに努力をいたした、こういうことであります。
  7. 横山利秋

    横山委員 非常に御懇切な御答弁で恐縮をいたします。ただしかし、私が大臣の所見としておただしいたしたこととは少しずれがあるようであります。私が端的にお尋ねいたしましたのは、大臣になられた当時、公労法改正をすると天下に表明せられたあなたの気持と、この改正案というものは適合をいたしておるものであるかどうかということをただしておるわけであります。政府提案理由そのものに、根本的にさらに三公社、五現業あり方は、労働法全般との関連において考えなければならぬのであるけれども、さしあたり今回の改正案は、基本的建前は一応維持するとして、現下のわが国実情に適しない諸点を改めるのだ、こういっておられるわけであります。従ってこれらから私ども推察をいたしますところは、大臣の当初の決意というものはなお今後も続くのではないか、こういうふうに推察をいたしておる。従って大臣は今の御答弁で、公労法焦点仲裁裁定の完全なる実施にある、これはもう全く同感であります。同感でありますが、これをもってすべて公労法は完備せられたるものとはよもやお考えにならないであろうと思う。従ってこの提案理由のいっておりますところが大臣本旨であるか、あるいはまた今御答弁のように、これで一応済んだというふうな印象を与えられているのが本旨であるか、大臣になられたときの公労法改正決意は、今後は一体どういうふうになるのか、これをお伺いしておきたいと思います。
  8. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 政府といたしましては、一般行政機構の改革ということについて、公共企業体あり方についても慎重な検討をいたして参りたいと思っております。そういうことを私どもは申しておるわけでありますが、現在の段階においては公共企業体というものを今すぐにいろいろ改めるということはその時期が至っておりませんからして、私どもはそういう考えであるということを表明いたしておるわけであります。従って現行公共企業体というものが存在しておる以上、この法律をどういうふうに理想的なものに近づけていくかということで審議会をわずらわした、そこで審議会答申を尊重した、こういうことでありまして、公共企業体等労働関係法というものも、やはり基本的な労働組合法などの一本の体系づけたものにする方がよいではないかという御議論も相当あるのであります。そういうようなことは、なお公共企業体というものを基本的にどうするかというふうな問題のときに全般的に考慮すべきことではないか、こういうふうに思っております。
  9. 横山利秋

    横山委員 私の質問にまだやや、くつを隔てて足をかくような感じがありますが、少し別の方面からそれでは御質問をしてみたいと思うのであります。  公労法が制定をされてからこれでたしか二回目の改正であります。その改正方向と申しますか、今回大臣改正をされるに当って、公共企業体等職員労働関係あり方を大体大筋としてどちらの方へ持っていこうとなさるのかという点をお伺いした方がよかろうと思うのであります。たとえば現存いたします民間産業労働者、また一面にあります現行公務員制度、この中間的存在としての公共企業体等労働関係法が当初制定されたのでありますが、その後の改正方向はこの二つ中間にあります法律をどちらの方向へ持っていこうとなさるのか、今回のこの改正はまたどの方向でこれをお考えになるのか、この二つのポイントのどちらをあなたは所期しておられるのか、これをお伺いしたいと思います。
  10. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 お尋ねの御要旨は、多分公共企業体に従事しておる労働者一般公務員方向に近づけていく考え民間産業労働者並みに近づけていく考えか、こういうふうなお問いだと思いますが、このことにつきましては私としてはやはり公共企業体等労働関係法が制定されました当時の趣旨は尊重いたしていきたいと存じます。公けに奉仕する義務を持っておる一般公務員、今までは公務員であったが現業関係の者を特別なる法律をもって、そして団体交渉権はこの人たちに認めて上げる方がいい、そして罷業権はなくしてもらう、そのかわりに調停仲裁の形をとらせる、こういうことでありまして、現在のところ私どもはこの方向をどっちの方にも近づけていこうといったような考え方は持っておりません。
  11. 横山利秋

    横山委員 どちらの方にもとおっしゃいますけれども、二回にわたった改正がどちらの方向を向いておるかということは、大臣腹の中でよく御承知をなさって仕事を始めておられると思うのであります。そうでなければただ小手先の細工をして、ここが工合が悪いからこう直す、こっちは左を向くがこっちは右を向く、こういう改正があろうはずがありません。従ってこのあといろいろな角度から御質問いたしますが、どうか一つそのものずばりでお答えを願いたいと思うわけであります。  そこで今回この法律改正をするに当っての基本的なものの考え方を三つばかり一つ伺いをしたいと思うのであります。  その一つは、この間大臣は、全国労働基準局長労働主管部長合同会議で、今後の労政方針について訓示をなさった模様であります。その中で、第一に、これまでわが国労働運動労使敵対感情による紛争が多かったが、これは残念なことで、今後安定した労使関係を作るには労使が互いにその立場を尊重して、話し合い解決する労働慣習を確立することが大切だ、こうおっしゃっておるわけであります。おそらくこの点については、民間であろうと、あるいは官業労働者であろうと、あるいは公共企業体労使関係であろうと、同じように私は理解をいたすわけでありますが、そのように理解してよろしゅうございますか。
  12. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 私が申しました趣旨は、その通りに考えております。
  13. 横山利秋

    横山委員 そこで労使の直接の話し合い解決をする、こういう労働問題の基本的前提が、この公労法の中で筋道が通っておるかどうかということをこの際大臣議論をかわしたいと思うのであります。  もとよりこの公労法仲裁制度があり、あるいは国の予算関係をいたし、あるいは最終的には国会審議にゆだねなければならぬ、こういう現行法関係上、自主解決ということが割とむずかしいという点は、今日までの歴史の教えておるところであります。しかしながらその中でも、私はこの法律をいろいろ手直しをする、あるいは根本的に検討をする立場の中で何としても労使双方自主解決をする、その方向運用の問題なりあるいは法律改正の面でお互い検討をしなければならぬ、こう考えておるのでありますが、その点大臣はどのようにお考えでございましょうか。
  14. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 自主的解決ができるということほど望ましいことはないのでありますが、公共企業体というものは御承知のように、今御指摘になりましたように、国会で制定する国の予算拘束を受けておるわけでありますから、そういう点について経営当事者拘束を受けることは、これはやむを得ないことだと思います。
  15. 横山利秋

    横山委員 私は今具体的な問題に触れずに、根本的なものの考え方についてお伺いをしておるのでありますが、しかしそれでは議論にならぬとおっしゃるならば具体的な問題に触れてもよろしゅうございます。今回、十六条、三十五条で政府当該裁定実施されるようにできる限り努力をしなければならぬという政府義務をうたい、あるいは給与総額制度において幾分の緩和をされたという二つ政府がこれは前進だとおっしゃる。その点の趣旨考えてみますと、明らかにこれは一歩でも半歩でも——私はこういう質問の仕方はあまり好ましくないと思いますが、政府立場に立って考えてみましても、一歩でも二歩でも労使の間で自主解決をする、その方向法律改正検討なさったのではないかと思うのでありますが、私のこの理解の仕方は間違いでございましょうか。
  16. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 御承知のように、三公社というものは国会で制定される国の予算拘束を受けることは当然なことでありますが、そこで従来は仲裁裁定の下りましたときに、主管大臣自由裁量の範囲内で決定され得る場面が比較的狭かった。それで実際今日まで十数回仲裁裁定の問題について国会に持ち出されて、私どもがそのことについて討議をいたしましたが、政府がなるべく仲裁裁定というものを尊重するという建前でこれを実施に移そうとする場合には、今回の改正のように大蔵大臣担当者でございますが、できる限り努力しなければならないという義務づけをされたことによって、私はもう大部分の仲裁裁定実施し得る段階になれるものだ、こういうふうに考えておりますから、この点はいわゆる自主的解決に非常な進歩が生ずるであろう、こういうふうに見ております。
  17. 横山利秋

    横山委員 自主的解決方向において問題を解決したい、そういう御答弁については了承いたしました。しかしながら今日までの状況をつくづくと考えてみますと、私どももその一方の当事者の一人であります。一方の当事者の一人として、自分の体験上から考えてみましても、少くとも三公社現業当局者が、今日までの調停案なりあるいは仲裁裁定に対して自分態度を決するに当って、常に主管大臣なりあるいは主管省に、ないしは労働省に、これは受諾してよろしゅうございましょうかどうでございましょうかといってお伺いを立てるということは、もう明々白々たる事実であります。こういうようなことであっては決して実質的な自主解決運営というものには相ならぬだろうと思う。もちろん政府機関の一部ともいうべき状態にはございますから、ある程度のことは私はやむを得ないという点も認めます。しかし今日までの状況は、一から十までその点についてお伺いをしておる、またお伺いをしなければならないような雰囲気を政府自体がかもしておるということをも指摘をしなければ相ならぬと思うのであります。この間調停案が出ましたときに、そのあくる日に、こともあろうに最終的に判断を下すべき大蔵大臣が、このような調停案は受諾ができない、こういうような新聞発表をいたしました。その後本会議において、あなたでありましたか、そのようなことは大蔵大臣は言った覚えはないらしいとお答えになりました。しかしそれを聞いた新聞記者がかんかんになって怒ったものであります。言った言わぬは水かけ論であります。しかしかりに言わなかったとしても、そのような印象新聞記者に与えたことは、これは否定できない事実だと私は思うのであります。こう考えて参りますと、今日まで調停案なりあるいは仲裁裁定が出ました際に、政府首脳者ないしはその政府機関にある者が、これに陰に陽にほしいままに牽制を加え、あるいは公社態度を決するに当っていろいろな影響を与えるような言辞があったと私ども思うのでありますが、この点について、今のお答えと今後の関連について一つ大臣の御所信をお伺いしたいと思うのであります。
  18. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 現在の三公社現業はただいまあなたのお話にありますように政府機関でございますから、そこで御存じのように、たとえば国鉄がいろいろな問題を処理をいたす場合に、国鉄会計でやり切れないというときに一般会計の繰り入れを要求することがあります。こういうふうに一般会計の援助を受けなければ国鉄経営がやっていけないというふうな場合もあり得ることでありますし、専売はまた専売で、一年に幾らという専売益金を国庫に納入するという建前専売公社というものができておるわけでありますから、この運営に当る当事者が、一般産業と同じように、その国鉄担当者専売担当者が、全部意のままに経営し得る独立採算制——ども公共企業体を初め作るときにはぜひ独立採算でやれるようにせよという要望をいたしておったのでありますが、数年来の運営によりますと、御承知のように独立採算でできておるところもあり、一般会計の世話をいつ何どき受けるかもわからないようなものもあるのでありまして、そういう政府機関という立場に立っておる以上は、一応政府とも、了解を求めることもあるでありましょうが、しかしながら今度私どもがこの法律改正に当りましては、まあこの間行われました調停についていろいろな批判をいたしたことは、これは調停でございますから、当事者双方の一方が気に入らないときには最終判決を求めるために仲裁へ出すことが前例でございまして、調停案そのものについて何人かが批判をいたすことは自由でありましょうが、仲裁裁定というものが下った以上は、でき得る限り努力をして、この仲裁裁定実施するように努めなければならない、こういうことでありますから、私は今度の改正案というものは非常な進歩だと思っておるのでありますが、民間産業と同じように、すべて経営当事者自由意思のままに経営運営していくということは、それは今の政府機関という機構の中では不可能ではないか、従って大蔵大臣と相談をすることがあり得るということは、これは当然なことだと思います。
  19. 横山利秋

    横山委員 大臣のお言葉の中にきわめて不穏当な言葉を私はお伺いいたしました。仲裁裁定ならばこれはやむを得ない、しかし調停案ならばこれに批判を加えるのは何人も自由である、こうおつしやったのであります。どういうつもりでおっしゃるか知りません。しかし私は先ほどだからこそ労使自主解決ということをお互いにその横におります関係者としてはこれを尊重しなければならぬという点を念を押したわけであります。仲裁裁定によって労使解決することが望ましいのか、調停事案によって労使関係解決するのが望ましいのか、一体大臣はどちらだとお考えになりましょうか。
  20. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 いろいろな紛争というものを予想いたしますから裁判制度というものがあるのでありまして、公共企業体調停に持ち出さないで団体交渉で妥結する場合もありえるのでありますから、もしそういうことができればそれが一番けっこうなことでありますが、しかしそういう場合に団体交渉が結ばれないとどちらかに不満があるというときには、調停委員会に出される、その調停委員会に対して世間の人がいろいろな批判を加えることは自由であります。裁判に対して批判をいたすのと同じでありまして、このことは私はとがめるべきことではないと思うのでありますが、政府立場としては、ことに三公社経営者としては、出た仲裁はあとう限り実施するように努力をせよということなのでありまして、仲裁裁定が出た場合には、政府は全力をあげてこれが実施できるように努力をしなければならない、こういうことであります。
  21. 横山利秋

    横山委員 最後のことを聞いておるのではありません。あなたが三才の童子に教えるようにお話しになったように、労使団体交渉解決するのが一番望ましいのであります。それがやむを得なければ調停によって解決するのが望ましいのであります。仲裁裁定にかけなければならぬということは、私は法の根本精神としては最も望ましくないと思っておるのであります。あなたは一番最後のことを強調なさって、最後の断が下されたらすべてこれに服従する——これは当りまえのことであります。しかし労働問題の本質論として団体交渉解決するのが望ましいのだ、こう言っておる。それだったならば調停案が出たときに、政府の、一番慎重なるべき一番最後にものを言ってしかるべき人がこれに対して批判をするのが自由だということをおっしやるあなたの考えが私にはわからないと言っておるのであります。もしも調停案労使双方が妥結をするものであるならば、かりにそれが官であり民であり公共企業体であり、かりにその調停事案というものが曲っておろうと引っ込んでおろうと、労使の間で自主的に解決するのであるならばこれはよろしいのではないか。かりのことを言ったのでありますが、またそれが正当な案であって何人も首肯し得るものに対して、大臣たる者が、これに対して批判を加えるのは自由だという立場でとかくの暴言をして、あたら解決すべき調停事案紛争に長引かすということは最も忌むべきではございませんか。しかも調停案によってあの問題は解決したのであります。解決したものを、その調停案が出た直後に、大蔵大臣ともあろう者が、あれはのめぬ、こういうことを言うべき筋がどこにありましょう。私はそれを言っておるのであります。
  22. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 大蔵大臣のことは私はよく存じませんが、新聞に出ておりました翌日大蔵大臣に聞きましたところが、ああいうことを言ったのではない、こういうことでありましたが、私がさっき申しましたのは、出された調停に世間の人が批判をするのは自由である、こういうことを申したのでありまして、政府当局は軽々しくそういうことは言うべきではないでありましょう。
  23. 横山利秋

    横山委員 了解をいたしました。それではぜひとも今後あのような誤解なり何なりが出ないように、厳に注意を願いたいと存ずるのであります。  そこで第二番目に法改正に当っての根本的なお考えをお伺いするのは、第一番目の自主解決の尊重とあわせて、先般も鳩山内閣総理大臣が本会議で、政府としては今後仲裁裁定については尊重いたします、従ってぜひともと、こういうことを二回も繰り返しておっしゃったのであります。どんなに法律改正をいたし、どんなにこれがりっぱな法律になりましても、しょせん、最後に仏作って魂を入れずと申しますか、政府を流れる精神として、仲裁裁定を完全に実施するという気持が胸底に流れていなければ、法律というものはいかなる抜け道もあるものでありますから、何にもならないのであります。この点について先ほど大臣もおっしゃったんだが、今後の政府仲裁裁定の完全なる実施という点について、基本的なお考え一つもう少し詳しくお伺いをいたしたいと思います。
  24. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 御承知かもしれませんが、今日まで私自身が労働委員会で、国鉄専売等の仲裁裁定がありまして、その仲裁裁定について国会に議決を求めて提案されましたときに、私どもが両者の中に入って、そうしてこの程度のところで一つ国会の議決ということにして、両方で円満に話し合いはできませんかというふうなことで、仲裁者のようなことになって、骨を折ってまとめてあげたことが何べんかあります。そういう私自身の体験から、本法改正して政府仲裁裁定実施させる義務を持たせることによって、大部分の仲裁裁定は尊重されるという形でまとまるんではないか、こういう考え方本法改正案を出しておるわけでありまして、今度の改正案については、私はこの改正案を円満にやって参りさえすれば非常に収穫が多い、こういうふうに考えておりますが、仲裁裁定が出た場合にどこまでどういうふうにするかというふうなことについて、必要がありましたら、政府委員の方から詳しく御答弁申し上げます。
  25. 横山利秋

    横山委員 仲裁裁定の完全実施について、大臣がいろいろな角度で今日までも努力をされてきたことは、私は存じ上げておるわけであります。ただしかしながら、この仲裁裁定実施ということについて、いささか所見の異なるものを私は考えるのであります。たびたび与野党の間において、仲裁裁定の完全実施とは何ぞやということが議論をされております。政府側の話によりますと、たとえば日にちがおくれてもこれは完全実施である——完全実施とはおっしゃらぬかもしれぬけれども、尊重であるとおっしゃっているのであります。一体仲裁裁定で、第一次裁定から今日に至ります間に、文字通りその裁定が完全実施されたものが何件あるでありましょうか。私は少くとも予算関係あるものは一件もないんじゃないか、ないしはそれが実施されても、具体的に出ております第二項目、第三項目を全音完全に実施したことは一件もないのじゃないか、かくすら考えておるのであります。ひいき目に見ましても、完全実施されたものは六件、うちベース改訂のものはわずか三件、そのうちほんとうに文字通り実施されたものは一件もないのであります。そのことについて労働省の累次の発表というものは、日にちのおくれたものも実施に勘定をいたしておるのでありまして、私はそこに仲裁裁定の理論ということについて、あなたと判断の異なるものがあるのではないかと思います。かつて、死なれました末弘巌太郎博士と国会の与野党との間に質疑応答が行われました。先ほど大臣もおっしゃったはずであります。仲裁裁定というものは一種の裁判です。裁判というものは、それがオール、オア・ナッシングで、履行されたかどうかについて最後まで白黒が争われるのであります。その裁判であるものが、半分やって、これは尊重である、ないしはこれは仲裁裁定実施した円いうことでありますならば、これはどうも大臣のものの考え方が根本的に違っておるのではないか。私どもは裁定というものは、十の内容が出て九つやったからそれでやったことになるかならぬかといえば、それはもう仲裁裁定の理論からいって、やったことにはならぬ、別な角度でそれが行われたと見るべきだと思うのであります。この点については、第一次裁定の際に、仲裁委員会各委員の諸君と、あるいはまた国会においての論争の焦点となったところであります。大臣が今ここに重ね重ね、また鳩山総理大臣が重ね重ね、仲裁裁定実施をすると言明をされた意味というものは、欠けたるものも勘定に入れてのことでございましょうか、その辺を一つ明白にお答えを願いたい。
  26. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 即時実施ということになりますと、なかなかむずかしいと思う。つまり三十五条を受けて、十六条の建前から国会政府が持ち出す、そういうときに、先ほど申し上げましたように国会が中に入って話し合いをやって、そうして、まあこの程度のところでしからば妥結しようではないか、こうやって妥協いたして参ります。のに、相当な時間がすでに経過をする。そこへもってきて、やはり政府側の都合で、それならば何月からどれだけのことをやろうではないか、こういうような話し合いをいたしたこともありますから、なるほど仲裁裁定が下りまして即時にそれを実施しなければならないということになれば、ただいまお話のような御不満もあるかむしれませんが、これはやはり当事者双方を呼んで、国会の方で話をつけていったことが多いのでありますから、この程度のことは、仲裁裁定を尊重して、これに基いて妥結をさせてあげたんだ、こういうことになると思うのでありまして、このことは私どもの解釈と——今あなたがおっしゃったような、即時これをそのまま実施しなければならぬということになると、国会の議決を求めてきておる時間的な問題も出てくるでありましょうし、その辺のところは一つ将来は、今申し上げましたように政府努力義務を負わせておるのでございますから、従来よりはよほどスムーズにいくのではないか、またいくようにわれわれも努力をいたします、こう御了解を願いたいのであります。
  27. 横山利秋

    横山委員 残念ながら了解できないのであります。あなたは私の質問について、まず第一に学問的にお返事が願いたいのであります。仲裁裁定実施というものはどういう意味であるかという点について、学問的に一つあなたのうんちくを聞かしていただきたいのであります。政治的な問題は別であります。第二番目にお伺いをいたします。少くとも仲裁裁定実施というものは、あなたのおっしゃったような裁判制度の一種であればそれを値引きしてこれでやったことになるという理論は、私は今日まで労働法の学説の出には生まれていないと信ずるのであります。この点についていかがでございましょうか。
  28. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 私はよく学問を知りませんからして、なかなかお答えがむずかしいと思いますが、この法律実施して参ります建前を見ますと、御承知のように一たん下りました仲裁裁定というものは、予算上、資金上支出不可能という場合でなければ政府国会に出して参りません。他の条項、待遇の問題などは、仲裁裁定というものはすでに当事者双方拘束するのでありますから、そのことはわれわれ審議の対象になりません。そこで仲裁裁定実施しようとしても、政府がかりにそういう決意を持ったといたしましても、国会において予算的にこれを否認されれば、実施できないことは御承知の通りであります。従って仲裁裁定というものができたならば、常にそれは国会拘束を受けてそうして予算をきめてやらなければならないということになれば、それは百パーセントそういうことになるでありましょうが、それですらなおこれは予算審議する期間がずれるわけであります。私は学問的にはどういうことになるか知りませんが、実際に運用していく立場から考えまして、やはり十六条二項というもので国会審議を求めるということになる以上は、若干の時間的ずれなんということについては、やはり従業員の諸君もよく了解されることだと思います。
  29. 横山利秋

    横山委員 質問する前にお断わりをしておきますが、先ほどから大臣は即時実施ということになるとむずかしい、即時という意味はだめだ、こうおっしゃっておるのでありますが、私はそんなことを聞いておるのではないのであります。その裁定が、時間がおくれても全部実施される、こういう建前において聞いておるのでありますから、その点は御了知なすって御答弁が願いたい。  学問的にはわしは知らぬ、こうおっしゃる。あなたが学問を知らぬなら、私は夜間中学の出身でありますからなお知らぬのであります。知らぬけれども、今日までの歴史的な過程を経て、労働法学界におけるあらゆる学説を通じ、国会における審議を通じて考えられます点は、これは裁判制度であるならばオール・オア・ナッシングだ、こういう点であります。それを値引きして、一割値引しても尊重になるならば、これを九割値引きしても尊重したことになるのであります。ましてあなたは、それを一割だから尊重する、これからするのだという説を立てていらっしゃるのではありますまい。従ってこの点は一つ明確に、学理的なお答えをさらに重ねて求めたいと思うのです。  それから二番目のいわゆる政治的な御答弁であります。あなたはその政治的な答弁に際して、政府がどう考えても国会で否決すればしょうがないじゃないかという意味の御答弁をなさる。それだったらなぜ鳩山内閣総理大臣は、本会議で裁定を尊重しますと大だんびらをあげるのでありましょうか。鳩山内閣総理大臣がそういう政治的な発言をするということは、少くとも大多数をかかえる与党の総裁として、同時に総理大臣として私が責任を持ちますということであります。これが、総理はよいと言ったけれども与党が承知をしないということであるならば、民主政治は原則的にだめなんであります。まさかそんなことを考えての総理のお答えではあるまいと思う。あなたはまた先ほどからそんなことを考えておられるのではないと思います。政治的というのは——国会で否決したらあかぬ、そんなことは百も承知でありますが、政治的という意味は、そういう意味ではないはずであります。少くとも政府が全労働者に向い、あるいは学者に向い、世論に向って、今後は裁定を尊重いたしますと何回も何回も答えているというゆえんのものは、与党の代表者として、与党の首脳部としてこれを了承いたしますと答えているのだと私ども理解するのであります。そういうふうにまっすぐに一つお答え願いたいと思います。重ねて御答弁をわずらわしたい。
  30. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 私は従来の政府でも、仲裁裁定を尊重しないという意思を持った政府はないと思うのであります。もちろん仲裁裁定はみな尊重すべきものでありますから尊重はいたしておりますが、予算上質金上支出不可能な協定は政府拘束するものではない。従って政府はそういう場合には国会の議決を求めるというのが法の命ずるところでありましょうから、そういう範囲においては現在の内閣も仲裁裁定をもちろん尊重すべきである。しかし仲裁裁定が下ったからそれをそのまま実施するということは、今申しましたように十六条二項というような場合のあることを前提として言っておることは御承知の通りでございますから、やはり予算上資金上支出不可能であるということで国会の議決を求めなければならないというそこに至るまでの段階において、すでに御承知のように、従来はちょっとしたことでも大蔵大臣が拒否すればだめな問題がたくさんありました。そういうものに対して政府は絶大なる実施義務を持つべきであるというのが今度の改正案趣旨でありますから非常な前進だ、こう考えております。
  31. 横山利秋

    横山委員 お伺いしていくに従って、政府公労法改正に関する観念というものが、いわゆる学理的にも政治的にも何ら従来と変っていないということを私は考えて失望せざるを得ないのであります。少くとも第一の、仲裁裁定実施という意味で値引きもあり得る、値引きも尊重のたぐいである、完全実施のたぐいであるという観念であるならば、今日までと何ら変りありません。  それから第二番目の政治的な問題として、大蔵大臣も入る、運輸大臣、労働大臣も入る、五人で相談するのを二人にする、あるいは一人減らして四人で相談するのだから前進だ、こういうような意見ならば、これまた単なる手続の問題であって、仲裁裁定の尊重をほんとうにするのだということにはなるまいと私は思うのでありますが、その点についてはいかがですか。
  32. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 私は少しあなたのお考えと違うのでありますが、仲裁裁定はあとう限り実施するように努力しなければならないというように義務づけられておるのは、さっき申し上げましたように、十六条二項で政府の権限内ではいたし方のないものはこれはやむを得ないが、そうでない限りは政府としては十分に義務を持ってこの仲裁裁定実施するようにしなければならぬ、こういうのでありますから従来よりは非常な進歩だと思います。
  33. 横山利秋

    横山委員 これは水かけ論になるかと思うのであります。しかしあなたも私が何を言わんとするかについてはよく御存じであると思います。重ねて申し上げておきますが、仲裁裁定実施というものは、今日の学界の通説として、これを完全に実施してこそ実施である。それがあなたの言うところの裁判の最終的な判決である。もしも裁判で、お互い裁判にかけて争って百万円をもらえるという勝訴を得たが、それが九十万円しかくれない、あと十万円はどうするのだということになったら、さらにまた争うでありましょう。それがあなたの言うところの裁判です。そうでなければ、あなたは裁判制度という言葉を軽々しく口にすべきではないと私は思います。従って、いろいろな例外的なことはさておくといたしまして、仲裁裁定実施という根本的な理念についてあなたは再検討をなさるべきである。その観念を従来とは少し変えて議論をなさらなくては、世論も労働大衆も納得しない。これは速記録に残されるのでありますが、大臣はどうも百パーセントやるということを考えていないらしい。値引きも考え政府仲裁裁定実施ということを考えているらしい。こういうような印象をあなたは今本委員会に植え付けようといたしておるのであります。これは本改正に当ってはきわめて重大な発言だと私は思うのであります。もしそうでなかったら重ねてあなたの御答弁を願いたい。
  34. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 どうも私のしゃべり方が下手なのでよく理解していただけないようでありますが、十六条二項で、政府の権限の範囲内ではいたし方のないものは、これは国会の議決を求める、こういうことはもう明白であると存じます。そういうこと以外の場合においては、従来の法律を今度は改正して政府に十分に義務を持たせたのでありますからして、今申し上げましたように、政府としてはもう最大限度のあとう限りの努力をし得る立場に立っておるわけでありますから非常な進歩ではないか、こう申しておるわけであります。
  35. 横山利秋

    横山委員 これまで大臣に長い時間この問題に対して質問をいたしておりますのは、単に法律的な解釈で私はいたしておるつもりはないのであります。いわゆるあなたのお得意の政治的な質問をいたしておるわけであります。あなたは政府の一員として、政府はよいと言ったけれども国会でいかぬと言ったらそれでおしまいじゃないかというのは、それは法律的な解釈です。しかし民主政治のもとで、与党の大多数を引き連れて内閣を組織しておるその内閣の首班、労働担当相の人が、私はやります、私は裁定を実施しますということを言うことは、それは実施されるということであります。政府はいいといったけれども国会はあかんということを勘定に入れるとしたら、これは学理的な答弁で、最も私の不得手な答弁に類するところであります。あなたが、私はそういうことは知りません、政治的にお答えをしておるのですとおっしやるならば、政府実施をする、そういう決意だということは、とりもなおさずこれは国会において賛成をすることに、私はすなおに受け取るのであります。そういう意味においてあなたにお答えを求めておるわけであります。もしも私の意味がおわかりにならなかったら、もう御答弁はよろしゅうございますが、いかがでございますか。
  36. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 今のあなたのお説を反対の方から解釈して参りますと、間違ったら訂正していただきたいのでありますが、仲裁裁定が下った場合には、予算上、資金上支出不可能な協定がかりに結ばれたというときには、政府拘束を受けるものではないとなっておるが、その場合にも、仲裁裁定を尊重するという建前から、予算を編成して国会に出せ、こういうことになるのだと思うのであります。しかし、予算を編成して提出させる義務をこの法律によって政府に負わせることは、不可能だと思います。従ってその点については、この法律を当初審議いたしました場合も非常に論争されたのでありますが、最終的には国会において議決を求める、従って政府提案しないでも、国会においてこの仲裁裁定に要する資金上の措置をせよという議決が行われれば、政府の政治的責任がそこに生じてくる、こういうことであると存じます。
  37. 横山利秋

    横山委員 私はそんなに心がけの悪い人間ではありませんから、どうぞ邪推をしないで、まともに答弁をしていただきたいのであります。私の言っておりますのは、あなたのいう政府予算上、資金上できない、そういう場合には国会でやってもらうのだから、政府はどうしようもないじゃないか、そういう議論もあるけれども、それを乗り越えて、この法の根本的精神、大前提となりますのが、あなたの方としては仲裁裁定をこれから守りますと言っていらっしゃる。守りますであるならば、私は仲裁裁定というものはひどいものが出る場合もあり得るというような考えを持たないのであります。今日までも、仲裁裁定で勤労者の不評判なものは数限りないのであります。従って、客観的に申せば、両方からいろいろな議論もあるけれども、公正な仲裁裁定が出ている。あなたはそうではなくして、けしからぬ裁定が出ているという考えをお持ちならば、それはもう土俵場が違いますが、大体において労働者も不評判、それから公社の方も不評判な、客観的にいえばそこで公正な裁定が生まれている。そういう前提に立って、しかも政府がそういうような歴史を承知の上で裁定を実施しますといっておることは、てにおははさておき、民主政治のもとにおいては、これからは政府は裁定を完全に実施していくというようにすなおに理解をしたい、こう言っておるのであります。話がえらいいろいろな方向に参りますから、今のあなたの答弁においては私はやや不満足でありますが、水かけ論になるおそれもありますから、この点については、もう少し具体的な条文のところで具体的にお伺いをするとして前提の第三番目に移ります。  第三番目の質問は、ここに第一の自主解決、第二番目の完全実施という問題と関連をいたしましてお伺いをいたしたいのであります。本来公共企業体労働者に対してストライキ権が禁止をされておるということについてであります。簡単に御答弁を願いたいのでありますが、罷業権というものを、本来労働者の基本的権利というものがあって禁止をされておるのか、本来なくて禁止をされておるのか、どちらとあなたはお考えでありますか。
  38. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 本法について私ども考えますことは、今政府でやっております公務員制度調査会の答申案などにも、こういう人たちに対する身分上の処遇などについても言及いたしておりますので、政府は根本的にいろいろ検討はいたしておりますけれども本法罷業権を禁止いたしておりますゆえんのものは、やはり公共に奉仕する義務を持っておるものは罷業権はないことが妥当ではないか、こういう考え方でありまして、私はその意味はやはり公務員罷業権を持たないと同じ趣旨考えております。
  39. 横山利秋

    横山委員 私のお伺いしておるのは、今あなたはないのだとおっしゃるのだが、そのない前提として本来あると考えておるのか、ないと考えておるのか。あるものを、こういう事情だからといって禁止をされておるのか、それとも本来こういう公務員なり何なりには全くないのだ、だから普通の立場、当りまえの形に今あるのだ、こうお考えになるのか。これは倉石労働大臣の長い労働行政の体験の中から一つのお考えがあろうかと思います。このお答えが実はあなたの全人格を表示するものだと思いますから、一つ慎重に御答弁をお願いいたしたいと思います。
  40. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 政府委員からお答えいたさせます。
  41. 中西實

    中西政府委員 これは法律問題ですから、一応私から申し上げます。御承知のように、わが国の憲法二十八条でいわゆる労働三権というものを保障しておるわけであります。従って一応勤労者というものはこの保障を受け得るわけであります。そこで憲法の十二条の公共の福祉並びに十五条の公務員というものは公けに奉仕するものだ、この両方からやはりこの二十八条というものは排除される場合がある、こういうふうに考えられます。
  42. 横山利秋

    横山委員 局長の御返事は、あるのだけれども、禁止されておる、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  43. 中西實

    中西政府委員 これは学者によって説がはっきりいたしておりません。問題は公務員について特に学者間でいろいろございます。すなわちこの二十八条の勤労者というところに公務員が入るかどうか。これは憲法ができます際の論議におきましては、一応入るような答弁政府からなされております。しかしながら現在ここに果して公務員が入るのかどうかということについて、さらに最近ではいろいろと違った考えも述べられております。従って入るかどうかということは結局観念論で、実体が問題ではなかろうかというふうに考えます。
  44. 横山利秋

    横山委員 驚いたことであります。再軍備の問題だけ憲法の解釈が変ったのかと思ったら、憲法二十八条の解釈も変ってきたようであります。しかし今局長は、二十八条によってあるのだけれども、ほかの方で制限されておるのだ、こういうふうに遠慮しいしいおっしゃったようであります。そこで一つ今までのことは聞かなかったことにして、もう一ぺん大臣にお伺いをいたしたいのであります。これは今局長もおっしゃったように、学者間においてはほんの一部は、ないという説を立てておる人もないではありません。しかしここに労働問題を担当せられております大臣が、基本的に労働者の権利をどういうふうに理解しておられるかということは、局長のおっしゃるような抽象的な問題であっても、与える影響というものは実に大きい、はかり知りがたいところがあろうかと思うのであります。絵にかいたぼたもちであっても、やはり見るときには楽しいような気がいたすものであります。従って大臣がこの問題についてどういうふうに理解をされておるかということは、一回私はお伺いをしたいと思いましたので、一つ大臣から親切に御答弁を願いたいと思います。
  45. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 政府委員の申し上げることは全部これは政府の代表として申し上げておることでありますから、政府の一貫した考え方を代表して申し上げておるわけであります。これはほかのことになるかもしれませんが、憲法二十八条の労働基本権という中にある罷業権といわれるものは、固有のいわゆる法律上の権利であるかどうかについては、これも多くの説があります。これは消極的な行動権であるというふうなことを言うものもありますが、私どものところとしては、ただいまのところ、ただいま労政局長が申し上げましたような解釈に統一しているわけであります。
  46. 横山利秋

    横山委員 どうもおかしな答弁ですよ。労政局長の解釈は統一した解釈ではなくて、どっちだかまだ解釈がきまっていませんという解釈ですよ。そういうことを大臣がおっしゃっていられるなら、私はまことに遺憾千万です。やはり局長のおっしやるように、どっちとも解釈が統一していませんという解釈であるとあなたはお答えになったんですか。
  47. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 これについては、今申し上げましたようにいろんな説がございます。私どもは憲法を考えますときにおいても、この点は非常に論争の中心になると思うのでありますが、私どもとしては、やはり公務員法の制定のとき、それから公務員法制定当時の速記録をごらん下さるならば、この点について非常にしばしば論議が繰り返されておりますが、私どもとしてはこれが勤労者であるという建前を一応とって参りますときにおいては、やはり憲法二十八条の団体行動権というものはあるのだ、こういうふうな解釈でありますが、しかし公務員には公務員法によってこの団体行動権を禁止しておる、こういうふうに解釈しております。
  48. 横山利秋

    横山委員 これは、今私がこの御質問をしたからというて、またあなたがお答えになったからというて驚天動地のことが起るのではないのであります。ただ労働行政を担当される大臣として物事の考え方を全日本の労働者に与える。しかしながら今日はこうなんだという、今日というものが規制を与えるものでありますから、そのつもりで率直にもう少し御答弁なさってよろしいのではないか、こう考えるわけであります。何か今局長のわからぬような解釈に大臣——そう申し上げては失礼でありますが、左右されているような感じがいたすのであります。私は今日までの労働法の解釈として、憲法の解釈として本来あり得るものは何かという、その一番最初の基点がぼやけておって、そうして改正をするということは、これはまことに政府としても軽率のそしりを免れがたいと私は思うのであります。再軍備の問題については今日までもずいぶん論争になりまして、そして議論のあるところでありますが、しかし労働者の基本的権利というものが本来あるのかないのか、それは私は知りませんけれども今日はこうであります、こういう御答弁大臣所信のほどであるといたすならば、まことに私は残念に思わざるを得ません。もう一度重ねて申し上げますが、この御答弁によって何か驚天動地のことがあって、政治的な大影響を与えるものならばいざ知らず、そういうものでございませんから、率直簡明に御答弁をもう一度お願いしたい。
  49. 中西實

    中西政府委員 憲法二十八条の勤労者の解釈でございますが、一応われわれといたしましては、いわゆる働く者はここに入るというふうに考えております。ただ労働三権をどの程度、どう規制するかということは、これはそれぞれの立場、対象によりまして法律によってきまっていくことでございまして、従ってここでその範囲を云々することは大してあまり実益がないじゃないか。結局は実体的に見まして法律によってそのことがきまっていくというふうに考えます。
  50. 横山利秋

    横山委員 お約束の十二時半で休憩することになっておりまして、もう五、六分しかございませんが、この問題だけに私は限定してお伺いをしておきたいと思います。  局長、あなたは、さっきも私は二へん言うのでありますが、あるならある、ないならないと、はっきり言ったらどうですか。あるようだけれども、少し言葉じりを濁して、次に私が質問をしようとする言葉をかえっておくらせるきらいがある。あなたも言うように、私も言うように、あると言ったってどうのこうのでないとしたら、あるならある、ないならないで、はっきり言えば次へ質問が進む。もう一度明確に一つ……。
  51. 中西實

    中西政府委員 この点につきましては公務員制度調査会の際にもわれわれ相当論議したのであります。従って現在の解釈といたしましては一応二十八条に勤労者というものはすべて入る。しかしながら十五条なり十二条なりでそれぞれ制限を受けるというふうに、一応われわれとしては解釈をとっておるわけであります。
  52. 横山利秋

    横山委員 了解いたしました。それで勤労者は憲法の適用を受ける、全勤労者は本来労働者の基本的権利を持っておるという立場に、政府の解釈としてあるということを了承いたしました。  次にまだ質問がたくさんあるのでありますが、一応これで切りがようございますから、午前中の質問を終りたいと思います。
  53. 佐々木秀世

    ○佐々木委員長 午後二時まで休憩いたします。    午後零時」二十七分休憩      ————◇—————     午後三時四十四分開議
  54. 大坪保雄

    ○大坪委員長代理 都合により私が委員長の職務を行います。  休憩前に引き続き会議を再開いたします。午前中の質疑を続行いたします。横山利秋君。
  55. 横山利秋

    横山委員 午前中に引き続いて御質問をいたしたいと思うのであります。  私が午前中に質問をいたしました最後の主要な点は、自主解釈丁ごいうことが第一点であり、それから完全実施ということが第二点であり、労働者の基本的権利という点が第三点でありました。大臣以下政府委員の御答弁は、私どもとしてはいささか納得のできない点もございますが、その趣旨としてはほぼ了承いたした次第であります。そこでその次にお伺いをいたしたい点は、同様先般の大臣労政方針についての訓示の第二点にこういう点がありました、これからの労働問題のうちで賃金問題は最も重要であるが、この解決の方法として今後労働問題懇談会を通じ、各方面の意見を聞くとともに、労働省内にはさきに設けた給与審議室で賃金のあり方検討していきたい、こういう言葉が見られました。そこで午前中の質問とも関連をいたしてお伺いをいたしたいのでありますが、大臣が就任をされました直後に、労働問題懇談会でありますか、そういうものをお作りになって、しかも新しい構想として労使間で産業別に話をしていきたい、こういうお話をされたように私は記憶をいたしておるのでありますが、現在もまだそのようなお考えを通しておいでになるのでありましょうか、その後この問題についてどういうふうに、大臣としては具体的にお考えになっておるのでありましょうか、その点をお伺いいたしたいと思います。
  56. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 私はしばしば申しておりますように、労使というものは終局において利害が常に一致しているはずなんだであるからして、なるべく話し合って妥結点を見出して、円満に労使関係をやっていきたいのだというのが基本的な考え方でありますので、労働問題懇談会もしばらく中絶しておりましたのを復活いたしまして、こういうものも活用したいと思いますし、また御承知のように八大産業に特に企業別の協議会といったようなものを設けまして、企業別で労使あり方といったようなものについて、また労働問題を中心にした企業のあり方といったようなものを一つお互いに常に了解し合う努力をしていこうではないか、こういう考え方でございまして、そういう方針で進めていきたいと思っております。
  57. 横山利秋

    横山委員 その趣意とせられることについてはいま少しくお伺いしなければならぬのでありますが、その形としては私どもとして賛同するにやぶさかではないのであります。この構想なりこの御意見を今日の公共企業体の中に同じように抱かれ、同じようにそれを適用されるお気持があるかどうか、お伺いいたします。
  58. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 企業体は独自のものでございますから、それぞれ経営担当者がいろいろお考えになると思いますが、私どもとしては今申し上げたような趣旨で円満なる運営をやってもらいたいと考えております。
  59. 横山利秋

    横山委員 このたび八条の改正がなされました。そして第八条の「公共企業体等の管理及び運営に関する事項は、団体交渉の対象とすることができない。」という文章をあとにされて、「ただし、公共企業体等の管理及び運営に関する事項は、団体交渉の対象とすることができない。」こういうふうに政府案としてはなっておるわけであります。この点が単なる文字上の扱いだけで改正をされておるのか、それとも大臣として今お話になったような基本的構想を含ましめてここへ改正をなさったものであるかどうか、この点をお伺いいたします。
  60. 中西實

    中西政府委員 八条の一項、二項の関係を逆にいたしましたのは、これは全く技術的な改正でございまして、ただいまの構想との関連はここにはございません。
  61. 横山利秋

    横山委員 それでは大臣が先ほど御答弁になりましたように、公共企業体においても自分の基本的な構想については同様値あるというお考えはどこに現われておるのでありましょうか、私は今日の公共企業体が必ずしも民間と全く同一に議論できないという点については、政府の御意見も一部は首肯できるところがあるのであります。しかしかりにそういう意見をとってみますならば、逆説的に言えばそれなるがゆえによけいに、大臣の構想というものはこの公共企業体の中でより十分に生かしていかなければならぬと私は思うのであります。ストライキ権を禁止する、あるいは団体交渉を制限する、もしその構想が法の基本的立場を、私どもは反対ではございますが、生かすといたしましたならば、よけいに公共企業体あり方なりあるいはその運営について労使が、十分な深い理解を持つということが必要ではなかろうかと思うのであります。局長は今単なる文字上の修正だとおっしゃったのでありますけれども、それはそれといたしまして私は大臣としてこの八条の第一項の改正について、基本的なあなたの構想というものがどうしてここに生かしていけないものか。この改正改正としても、文章上の改正だといたしましても、あなたの方針というものを公共企業体の中へ生かしていく方途をどういうふうにお考えになっておられるものか、お伺いをいたしたい。
  62. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 このことは労働問題の各般に関係のある重要な問題でありまして、私どもとしてもいろいろ考えておるところでありますが、経営の面に向ってそういうようなことをすることが今日の状態で妥当であるかどうかということについては、なお研究の余地があると存じますし、審議会などでも、こういう問題についていろいろお話し合いがあったようでありますが、私どもとしては、経営に対してなお参加するといったような程度まで法律で制定をするという段階ではないと存じます。
  63. 横山利秋

    横山委員 私はそれなるがゆえに注意して表現をいたしておるのでありますが、あなたが労使協議会なりあるいは労働問題懇談会なりと、こういったお言葉を使っておられるゆえんのものは、大臣経営参加という意味においての言葉を使っているのではないと私は理解をいたしておるのであります。そういう意味ならば、それなりに公共企業体においてもあなたの構想は生かし得るのではないか。かりに法律上の中へあなたの構想が生かされないにいたしましても、運営上なりあるいは労使問題についての労働大臣あり方として、国鉄なりあるいは専売なりそのほかの公社において、労使懇談会なりあるいは労使協議会なりそういうことをあなたとして勧奨するとか、あるいは自主的な運営に期待をするとか、そういうあなたの構想を生かし得る余地が十分にあるのじゃないか。あなたとしてそういう考え方を持っておられるならば、なぜそれを公共企業体労使の中で生かして、よりよく労使お互いに認識をし合い、そうして自主的な運営をそこで話し合いをしていくということはやり得るのではないか。なぜあなたはそれをやらないのか、またこの法律改正の中にもそのうまみを残していないのか、その点を重ねてお伺いをいたしたい。
  64. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 そういう問題は、特にここで法律でそういうものを制定いたさなくても、やはり経営側も従業員側もそういう気持になっていただければ、常に同じ屋根の下で働いておられる方々でありますから、十分にその意思の疎通をはかるように私はやっていただくことを希望いたしておるのでありまして、もしこれを強制するとすれば、やはり両者の意見が一致しないと経営方針がきまらないということでも困るわけでありまして、そういういろいろな面をしんしゃくいたしまして、私どもの希望としては民間産業ばかりでなく、こういう特別な企業体もでき得る限り労使が話し合って進めてもらいたいという希望においては、当初申し上げておるように変りはないのでありますが、現在法律改正の場合におきましてそういうことを強制するというところまでは踏み切れない、こういうわけでございす。
  65. 横山利秋

    横山委員 いささか私は大臣答弁に失望をいたしました。大臣が就任当時にあげられた所信というものが、一つには公労法改正であるとか、一つには労働問題懇談会なり八大産業において一つ労使の間で話し合いをさしていくというふうなその基本的な構想というものが、片や公労法改正においては単なるつじつまを合せるような格好に終りそうになり、片や労働問題懇談会なり八大産業の懇談会というものは今日なお十分な軌道に乗っていない。しかも私が質問をいたしております公共企業体のこの関係法の改正においても、そのあなたの気持がくまれていないとするならば、私はまことに大臣の公約としては何ら実現を見ていないのじゃないか、そういうふうに迫らざるを得ないのであります。そこで今大臣は、法律で強制するわけにはいかぬと言いました。しからば逆説的にお伺いをいたしますが、労使間で、たとえば経営協議会、たとえば経営懇談会、そういうようなものを公共企業体の中で自主的に設置しそれを運営することについて、大臣はどういう気持、態度をもってこれに当られるかということが第一点であります。  それから第二点は、就任当時お約束になった八大産業の云々、こういう公約については今後どういうふうに具体的に所信を実行していかれるつもりであるか、その二点をお伺いいたしたいと思います。
  66. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 戦後御承知のように、民間産業などにも経営協議会というものを設けられたようなこともありますが、あの経過を見ておりますと、これも十分御存じでありましょうが、何となく闘争の場というふうなところに持っていかれて、むしろ経営側と組合側とがこの企業の育成発展ということについて常に協力してもらうような結果にもならなければ、われわれの期待いたしたようにもならなかったことは御承知の通りでありますが、この企業体におきましても、今御指摘のように、当該企業の中で経営側と組合側とが常に何らかの機関を作って話し合いを進められていくということを設けられることは、これはもうけっこうなことでありまして、そういうところで平素十分な意思の疎通をはかっていかれるということならば、これはけっこうなことだと存じます。八大産業に対して協議会を設けました趣旨は、これは先ほど来申し上げておりますように、まずこの特に重要産業といわれるものだけでも、企業系列の中で労使話し合いをできるだけ進めていくべきではないか、こういう考え方でありますが、これは労働省が常にそこに参加しタッチをして指導していこうとか、そういうようなことを考えておるわけではありませんで、要求があり必要がある場合にはこちら側から出ていって、いろいろな資料を提供したりなどすることもあり得るでありましょうが、やはり自主的に企業別に話し合いをして、その企業の育成、同時に労使関係の円滑なる運営をやってもらいたい、こういう考え方であります。
  67. 横山利秋

    横山委員 私はもう少し具体的に大臣のお考えをお聞きしたがったわけであります。たとえば公共企業体並びに民間のあなたの構想についてのその規模は、どういうふうにあなたは考えておられるのであるか、その回数、それから権限、それに対する法的な裏づけはどういうふうにお考えになっておるのか、その点を聞きたかったわけであります。今のあなたのお話によれば、最初に第一声を放たれたときから何らの変転もありません、何らの進展もないわけであります。結局単なるアドバルーンにすぎなかった、こういうような感じを私は今日においては受けるのであります。もしそうでなかったならば、あれからすでにずいぶんだっておるのでありますから、大臣の最初の方針としても、もう具体的になっていなければうそであります。今日何らの進展もない、おっしやることも当時とちっとも変らないということでは、これはいささか大臣の第一声としてはまずいのではないか。この公約の実現としてはまずいのではないかと私は思うのであります。  もっとも念のために私の考えを申しておきますが、さりとて私は、大臣としてきちんとこの回数はこうである、あるいは権限はこうせよ、あるいは法的裏付はこうするというふうに具体的に大臣が見て、それを労使に押しつけよと言っているのではございません。しかしながらあなたのその構想が、労使双方話し合いの場所を自分があっせんをして作ってやる、ないしはあっせんができなければお互いに説いて、お互いに寄り添えるように話し合いの場を作っていくというふうな構想であれば、またおのずから大臣のなすべき手というのは、第一石、第二石というものがあるはずでありましょう。それを今の話でありますと、案外何も進んでいないようであります。それではならぬ、こういうふうに申し上げるわけでありまして、この構想についての今後のあなたの具体的な手というものを一つ聞かしていただきたいと申し上げておるのであります。
  68. 中西實

    中西政府委員 労使お互い話し合いの場を広げていくことは、大臣御就任以来の御方針でもあり、われわれも前々からその方向で来たわけであります。ただ話し合いの場と申しましても、結局は相互信頼の関係がなければとうてい成功するものでもないのであります。従って公労法改正の際も、実はお配りしてあります答申の中の九というところに、「労使の話合の場に関する事項」というので、特に日ごろから意思の疎通をはかって、「労使関係の円滑化と企業目的の達成に協力する機構労使の合意によってできることは望ましい」という程度の規定を設けるならいいというふうな答申があるわけであります。もしも労使信頼関係のもとに公企体におきましても、そういうものができることは望ましい。ただ法律で書くということになると、全くのお経のようなことになりますので、このことは事実関係でできるのじゃないかということで規定しなかったわけであります。  なお民間の産業でありますが、これも同様でございまして、現在すでに重要産業におきましては、個々の企業だけではなかなか話のつかない問題が多い。たとえば石炭関係に例をとりましても、一つの石炭会社、労使話し合いでは解決のつかない問題がうんとございます。そういう重要産業につきましては、政府筋の産業行政を担当しておるところとかいうようなところがやはり一緒になって話し合いをいたしまして、初めて労働側の納得と協力が得られるのじゃなかろうか。  そこで八大産業ということを一応予定しておりますが、すべて一律には参りません。労使相当信頼関係の深い産業もございますし、そうでない産業もある。従って、信頼関係が相当深まって、お互いに顔を突き合していろいろと当該産業について話し合おうじゃないかという雰囲気のあるところにつきましては、労使同じ場においてそれぞれ疑問の点、問題点を話し合って討論をする、あるいは協議するということになりましょう。しかし信頼関係がそこまで行っておりませんで、うっかり労使顔を合せると、直ちにそこが団体交渉の場、集団交渉の場になってしまうおそれがあって、使用者側も出てこないというようなところにおきましては、場合によっては別々に開いて問題の所在をはっきりさして、そうして徐々に双方が話し合いをするというような雰囲気に持っていきたい。従って画一的に重要産業ごとの協議会というものが運用されるというふうには考えておりません。その労使の気持、信頼関係、こういうものに即しまして究極において双方が話し合いをし、相協力して当該産業の発展に寄与するというふうに持っていかなければならないというふうに考えております。
  69. 横山利秋

    横山委員 政府側答弁としては、答申にはそういう文句があったけれども、それをうたわなかった。それから各労使の現状がこうであるから、画一的にできないというお話のようであります。それならばなぜ大臣は就任当時、そういう現状において、ああいうアドバルーンを上げるのですかというふうに私は質問せざるを得ない。もしそういうことができないというならば、そういうアドバルーンをお上げになる必要はない。そういう一部にはいかぬ、一部にはいいけれども、この際自分としてはその方向に何とかして政治的に持っていきたい、こういうお気持があったからこそ、私は大臣として所信を表明されたと思うのであります。その後大臣がどういう手を打ってその所信の実行に邁進をされたかということが私の聞いておる第一点でありますから、客観的な現状認識を私は聞いておるのじゃなくて、その現状認識の上に立って、なおかつ大臣が表明せられた所信はいかに実行されるやということを私はお伺いをいたしておるのであります。  それから第二番目に、この八条二項の改正点について御答弁を承わりましたが、今の大臣及び局長の答弁によりますと、八条二項の解釈としては、今回の改正案は「ただし、公共企業体等の管理及び運営に関する事項は、団体交渉の対象とすることができない。」こう規定はしてあるけれども大臣のお言葉推察いたしますに、団体交渉の対象として交渉することはできない。しかしながら話し合いなりあるいは協力会議なりあるいは労使懇談会なり、それらをすることは自由であって、自分としてはその方向労使が行くことを望む、こういうことに尽きると思われますが、この点について大臣のお考え伺いたいと思います。
  70. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 今の御指摘のような問題が、私は労使関係の一番重要なポイントだと思うのでありまして、私が就任いたしましたときに、初めて非常に強く感じましたことは、いろいろな法律について改正をすべきだというふうな意見が相当参りました。私はそういう法律改正などということに力を入れるよりも、まず、いい労働慣行を育成し、助成いたしていくようにしたいものだ、こういうのが私どもの労政の中心的なものの考え方であります。法律、規則などをあまりやかましくいって、かえって人に拘束感を持たせるよりは、話い合いの場を作って、よい労働慣行を作っていくことがより大切なことだ、こういうのが基本的な考えでありますということを当初申し上げたわけでありまして、今もそういう考えは変っておりません。従って三十一年度予算にも若干の予算を要求いたしまして、八大産業に対する企業別の協議会というものなどもやはりそういう考え方から出て参ったわけであります。今政府委員の方から、要は相互に信頼感を持ってそういう空気を醸成するようにならなければだめだと申し上げましたのは、要するに私どもとしては当初申し上げましたような趣旨で、そういう方向に指導していきたい、こういう考え方には変りはないのでありまして、常にそういう方向労使関係を持っていくように指導をしていきたい。具体的なことについては、ある産業については比較的早くそういうものが設けられるでありましょうし、時間的なずれはあるでありましょうが、だんだんそうやって話し合いの場を作って、過激な闘争をせずに労使の円満な運営をやっていくように仕向けていきたい、こういうことは今も依然として変りない私ども考え方であります。
  71. 横山利秋

    横山委員 基本的には大臣のお考えに私も異存はないのであります。そういうお考えであるならば、八条の改正にはまた別の、あなたがおっしゃった点をすなおに表現し得る道があろうかと存ずるのであります。たとえば今私が質問をいたしております八条の前段をうしろに移した、その移した理由は何だといえば、局長は、いやそれは単なる文章の体裁上でございます、こうおっしゃるのでございます。私は、管理運営についてのことは団体交渉の対象とすることができないということをうしろへ移したことは、何かそこにほのかな大臣の基本的な所信というものが見えたのではないかというように善意に解釈しましたら、私はあまり善人過ぎて、いえ、それは何らの他意もございません、悪い意味の他意がございませんでは、これまたおそれ入った御答弁であると思う。少くとも今の大臣お話であれば、八条のただし書きは削除してしかるべきではなかろうか。ここに一項、二項、三項、四項と、これらの団体交渉の対象と書いてあるのに、よけいに、ただし管理運営団体交渉の対象とすることができないといって念を押す必要がどこにあるかということであります。かえってこれらのことについては大臣の基本的構想をおだやかに指導していって、労使の間に自主的な雰囲気によってこれらの懇談会なり、協力会議というものを持っていくようにこの際改正なさるのが、これは私もずいぶん譲った質問の仕方でありますが、大臣立場に立って、構想に立っていけば、当然の方途ではなかろうか。いわんや、答申案にもそういう趣旨はある。いわば大臣の構想と、それからこの審議に当りました答申とは期せずして一致をいたしておるところを、何ら筆を入れずして前と後と改正して、これは文章上の体裁であって、何ら他意はないというならば、これほどいい機会、意見の合ったときに、なぜそれをやらなかったのか。事ここに至っては、大臣お話はますますアドバルーンにすぎないではないか、こういう感じがいたすのであります。従って私は先ほどももう一歩譲って、局長はああは言っておられるけれども、しかしながら大臣お話を聞いてみると、ただし書きの解釈は局長の解釈と少し違うようだ、大臣のお言葉通り、ただし書きの解釈は、団体交渉の対象にはならぬ、しかしこの意味は、幾らでも話し合いをやりなさい、協力会議が持てればけっこうだ、またさらに進んで経営協議会ができれば、それまたけっこうだ、団体交渉の対象にしないだけであって、十分に労使の間で話し合えという解釈であるかというふうに聞いたのであります。その聞き方を十分に理解してもらって大臣に御答弁が願いたいと思います。
  72. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 これは先ほど政府委員から申し上げました通り、現行法と書き方が違っておるだけでありまして、その点につきましては、政府はやはり管理運営の問題については団体交渉の対象にはしない方がよろしい、こういう考え方でありますが、国鉄などの場合に、やはり国鉄総裁はなるべく従業員側としばしば会見をして、そうして国鉄あり方などについても十分理解してもらうように努めたいということを言っておられる方もありまして、そういうようなことについて当該経営担当者が、従業員の諸君に十分なる理解を持ってもらうように平素努められることはけっこうでございますが、やはり経営担当者経営に関する責任を負わせておるのでありますから、私どもとしては、現在の段階においてこのことを団体交渉の対象とはしなくてもよいではないか、こういう考え方からこの改正案提案いたしておるわけであります。
  73. 横山利秋

    横山委員 そこまで私が言っておるのに、まだ大臣答弁は率直にお答えにならぬようであります。重ねて申しますが、大臣の基本的構想というものが、この改正案の文章の中に、局長の答弁によれば、盛られていない。従ってどういうふうにこれからその労使懇談会なり何なりというものを公共企業体に生かしていくのだと私は言っておるのであります。民間産業における実態というものが、かりに百歩を譲って、局長のおっしゃるようなところであるとする。一方公共企業体においては公共性を持っておると政府は盛んに言っておられるから、これがなかなかむずかしいととろで、スト権も禁止されておる、そうしたらどうしたらよいかということであります。そのためには労使が話し合って、むだな誤解やあるいは紛争というものを避けなければならぬ。そのためには、経営について労使の深い理解というものが必要じゃないか。民間よりより一そう深い理解が必要ではなかろうか、私はほんとうにそう思うのであります。深い理解をするについては、ここでは団体交渉の対象にはできないと言っておられる。しかしながら、深い理解をするについて、団体交渉の対象であるかないかはさておいて、なお話し合いの余地があるのではないか。しかも大臣はそれをやれと言っている。やれと言っているなら、八条の前段で私はこういう解釈でよいのか、団体交渉としては禁止している、しかしながら、これは団体交渉としてはいかぬけれども話し合いは十分にやってくれ、できたら協力会議も作りなさい、もっとうまくいったら経営協議会もお作りになったらどうだ、こういうふうな一歩前進した形が、新しい大臣である倉石さんの構想の中から生まれていると私は今日まで理解しておった。しかも答申案も、それを勧めた答申が出ているではないか。それを何ぞはからん、局長のおっしやるように、いや、この文章は全く従来の考えと他意はない、そう言う必要が一体どこにあるのであるか。もしもそれがあなた方の考え方であるならば、先ほど言った自主解決としてあなたと私と意見が合ったのだけれども自主解決の一番温床となるべき労使理解と認識というものを何によってあなたは求めようとするのか、こういう点を言わざるを得ないのであります。従ってもしも大臣が就任当時の労使の協議会なり懇談会なり、八大産業の問題を推進するならば、八条の前段の改正と相まって、八条の解釈については一歩前進した解釈をここに打ち立てるべき段階ではないか、こう私は主張し、かつ大臣所信をお伺いいたしているのでありまして、この質疑応答を通じて公共企業体労使の中に新しい素地を作っていきたい、私どもはこう思っているのでありますが、大臣としてはそれに反対であるのか、冷淡であるのか、またそういうことが好ましいと思っているのか、八条二項の解釈を中心としてもう一度誠意のある答弁が聞きたい。
  74. 中西實

    中西政府委員 立法的な問題につきまして申し上げます。先ほど申しました公労法審議会答申の九「労使の話合の場に関する事項」この点につきましては、特に大臣御就任以来の御意向もありましたので、こういうことが必要じゃないかということが話題に出まして、そこでこういった文章の答申があったわけであります。その際に労働側、それから公企体側の意見というものは、こういった精神的な規定はいいが、一律的に強制するようなものはどうかなということで、法律にきちっときめることについては積極的な意見ではございませんでした。そこで問題は八条でございますけれども、八条は団体交渉の規定でございます。もしもこの答申にありますような条文を入れるとしますれば、私どもは第一条の二項になりますか、三項になりますか、そこに入れるべきじやなかろうか。実はこの答申が出まして初めて作りました原案には、一条関係にこの趣旨のことを入れようとしたのであります。一応の案も書きました。しかしながら、いかにもお経のようになりまして、そういう規定は入れなくても、当然労使話し合いで作るならいいじゃないかということで、実はその条文を入れることをはずしたのであります。八条にこういうことを入れますことは筋が違うんじゃないか、つまり八条は団体交渉の事項でございまして、団体交渉の事項ということになりますと、もしも団体交渉で話が一致しないということになりますれば、これは紛争議になります。一般民間なら団体交渉で意見が合わないのは争議に訴えられることになりますが、三公社現業関係では争議は禁止されておりますので、それは調停仲裁というところに持ち込まれる。話が折り合えば労働協約を作る、労働協約の対象になることになります。管理運営の問題はそういった処理の仕方のものじゃない、従って八条に規定すべきじゃなくて、規定しますとすれば第一条に規定すべきじゃないかと考えたのでありますが、先ほど申しましたような事情で、ことさら規定しなくても当然このことは望ましいに違いないので、もしも双方で異論がなければどんどん作ってやられるがいいじゃないかということで、一応条文から落したわけでございまして、そのことを否定したものではございません。
  75. 横山利秋

    横山委員 趣旨としては局長の御答弁で了解をいたしました。了解をいたしましたけれども、それではあなたの趣旨が条文の中に生かされていないうらみを私は痛感をいたします。一条に入れるということをお経の文句になる、こうおつしやいます。ところがお経の文句だとおっしゃるならばすべてがお経の文句であります。今回政府が三十五条を改正されて、「政府は、当該裁定実施されるように、できる限り努力しなければならない。」と言われました。午前中も大臣はできる限り努力するんだ、だから安心をしてくれとおっしゃるんだが、この文句は言うならばまさにお経の文句でありましょう。これがお経の文句でないという実証は大臣は一体どこからお出しになりますか。私どもは、法律にはどんなものでも抜け穴があるから、しょせんお互いの良識が労使の間での大きな力になることを確信をいたすのであります。その意味において大臣ができる限り努力するんだという考え方や総理大臣が、言ったことをこの際ある程度信頼しなければならぬと思っておるのであります。もしもこれを局長のおっしゃるようにお経だとおっしゃるならば、私はこれは抜いてしまった方がかえってよろしいと思う。そうでなく、これを本改正案の軸心であるとお考えになるならば、それと同様に大臣労使話し合いを広めたいという就任当時の所信というものがなぜ本改正案の中へ入らなかったのであるかどうか、私はそれを痛感するのであります。八条に入れようがないとおっしゃるが、私は入れようは幾らもあると思う。ただし書きを削除するだけでも大臣所信は生まれるじゃないか。第一条に一言労使経営について話し合うということを入れるだけでも大いなる影響を与えるものと私は確信するのであります。そういう点が労働省の内部において一ぺんでも意見が生まれておったとするならば、私はそんなけっこうなことはないと思う。なぜそれが実現できないものか、ほんとうにやる気であるならば、先ほどから私も言ったのでありますが、何も権限、回数、規模を政府がみずからきめようとは言わない。一言労使の間で経営についての話し合いをすることを大臣としては望む、そうして無用紛争を避けるべきであるというのがあなたの労働行政、ことに公共企業体にあってのあなたの重要なお考えであるならば、なぜ入れなかったのか。今日からでも私はおそくないと思うのでありますが、そのあなたのお考え伺いたいと思うのであります。
  76. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 八条の関係につきましてはただいま政府委員から申し上げました通りでありまして、このことは私ども政府としてはそういう考え方でありますが、法文はどういうものを書いてあっても守る意思がなければ空文ではないかというお説であります。このことはもちろんそうかもしれませんが、私ども三十五条に特に政府努力義務を加えますまでには、十分政府部内においても相談をいたしまして、大蔵当局とむこういうことを入れることによる事務的な影響については十分検討をいたしました結果、仲裁裁定というものを尊重してあとう限りの政府としての努力をして、不可能な場合、十六条二項のような場合は国会の御審議を願わなければなりませんけれども、あらゆる場合に努力をして、そうして給与の総額にかかわりませず移流用までしてこれは実現するように期する、こういうことでありますから、このことについては御心配のないように運営されると思います。
  77. 横山利秋

    横山委員 私の質問はあなたの話と違うのであります。私はあなたの言うその間において三十五条の改正を了とするという立場に立っておるのであります。それを了とし得るかどうかはあとで具体的な点について触れるのでありますが、一応今日は了とした立場において質問をする。これはお経でない、そういう立場において私は質問する。これがお経でないとすれば、先ほど言った労使話し合いというあなたの構想をお経でないという立場において抽象的になぜ入れなかったかというのであります。八条の前段の場合についてもできるはずではないか、局長のいう第一条においてもそれができるはずです。なぜそれをやらなかったかということを聞いておるのであります。
  78. 中西實

    中西政府委員 八条に入れられないことは先ほど申した通りであります。実はこのことを条文化することについて公労法審議会においてもあまり積極的ではありませんでしたのと、それから第一条の一項、二項を読みますと、大体その趣旨が出てくるのじゃないか、ことに二項におきまして十分に話し合ってやっていけというような趣旨が出ております。そうなればことさら書く必要もないのじゃないかということで実は条文にはしなかったわけであります。気持といいますか、今後の公労法運営の上におきましては条文があるなしにかかわらず、同じような気持で積極的にもしこういう機構ができればきわめてけっこうだというふうにわれわれとしては考えております。
  79. 横山利秋

    横山委員 もし局長がおっしゃるのが真意であるとすれば、大臣お答えが真意であるとすれば、私が今質問しようとしておることについて私とあなたの間にはそう径庭のあるわけではありません。しかしそうであるといたしますならば、今の局長の答弁によりますと、一条二項の従前の解釈とは違うということに相なるわけであります。少くとも一条第二項の解釈というものは、ここで労使話し合いというところの大臣の構想による話し合いを期待いたしておるとは私は政府の解釈として今日まで承わったことはございません。ここに局長が一条二項は労使話し合いの場を望んでおるというふうに、新しい政府の解釈としてお出しになるならばそれもけっこうであります。けっこうでありますが、しかし今日私は第一条の第二項のどの文章でそれを労使は期待し得るのかということについて御説明を願わなければならないと存ずるのであります。その説明が非常に苦しいようでしたら、と言っては失礼ですが、この際あなたと私の方では意見の一致があるのでありますから、今の局長のお話しのようでありますならば、適当なる文章さえあればこの一部を修正することに私は御異論がないように思いますが、いかがでしょうか。八条第一項前段についても表現の方法がないとおっしゃいますが、私はただし書きを削除してもよいではないかと言うのです。削除して団体交渉の対象として一項から四項までこれが団体交渉だ、あとのことはいかぬぞということをわざわざ言う必要はありません。先ほどの一番最初の答弁の前とあととをひっくり返しただけで何ら意味するものはないという考え方からは、先ほどから少し変ってきたように思うのでありますが、そこを百尺竿頭一歩を進めてただし書きを削除するか、第一項で大臣所信というものが少しでも前進をして文章に表現されるか、適当な文章さえあればこれを修正するのに政府側としては御異存がないように思いますが、いかがでしょう。
  80. 中西實

    中西政府委員 八条のただし書きをとりますと、管理、運営団体交渉の対象になるおそれがございます。それは団体交渉の性格からいってほんとうじゃないんじゃなかろうか。  それから第一条の一項、二項といいますれば、これは今新たに解釈が変ったというよりは、今まででも、ことに公企体あたりにおいて労使お互いに話し合って、常時意思の疎通を遂げて大きな紛争もかもさないということは望ましいことでございまして、従来からもそうでございますが、特に今後はそういう雰囲気なり、また現実にそういう機構ができることは望ましいというふうに考えております。
  81. 横山利秋

    横山委員 局長の御答弁は納得できません。八条のただし書きをとることによって、管理、運営事項が団体交渉の対象になるという議論は、一体どこから出てきますか。少くともここに一号から四号まで個条書きに出ておって、「次に掲げる事項は、団体交渉の対象とし、」と書いてあるだけであります。しかも四号には「前各号に掲げるもののほか、労働条件に関する事項」とあるわけであります。従って、ただし書きをとったことによって、ほかのものが明確に団体交渉の対象になるというふうな議論というものは、私は納得できません。  それから第一条ですね、従来からそれを期待しているという学説も、まことに私は初めて承わる学説でありますけれども、どうしてそういうことが言い得るのでありますか。何を根拠にして第一条がいいというのですか。大臣が就任当時話された所信というものが、この第一条の中に入っておるという実証を一つ示していただきたいのであります。
  82. 石黒拓爾

    ○石黒説明員 条文につきまして御説明申し上げます。  第八条につきましては、現行規定につきましても、これが限定列挙であるか、例示列挙であるかという点について争いのありましたことは御承知の通りであります。特に組合側の方は、御承知のように例示列挙であるというふうに主張されております。従いまして、ただし書きを削除しっぱなしにした場合においては例示列挙である、そして今まであったものが落ちたんだから、当然禁止はされてないのだ、管理、運営も団交交渉の対象になるのだという争いの余地が出てくる。心ずそうなるというわけではございませんけれども、微妙な争いの余地が出てくるおそれがあると考えるわけでございます。  それから第一条につきましては、これはごもっともなお説でありますが、実は審議会におきましても同様の議論がございまして、政府側から話題の一つとして話し合いの場ということを考えてくれと申しましたときに、公益委員及び使用者委員から、一条をまじめに読めばそういう話し合いの場も当然考えられることになるんじゃないかというのに対して、組合側から、いや、八条があるから、一条なんか持ってきても経営協議会なんかはだめなんだということであったはずだ、こういう反論がございました。お説のような反論があったのですが、それにつきましては政府当局より御説明申し上げまして、立法当初におきましては、当時の特殊事情からそういうように主張されたことも確かにあり得ることであるけれども、しかし独立後におきましては、政府としてはそういう解釈はとっておらないんだというような説明をいたしまして、審議会全体の意向として、一条をまじめに読めば団体交渉以外の方法でも、労使が協力をする必要があれば話し合うということは当然出てくるじゃないか。そこで、組合側といたしましても、法律に何ら変な文句を入れることも要らないじゃないか、書きたければ書いてもいいけれどもというようなことで、審議会は落ちついた次第であります。
  83. 横山利秋

    横山委員 今の御答弁、一言をもって評すれば、あつものにこりてなますを吹くというような表現ができると思うのであります。もちろんかつての経営協議会当時においてお話しなさったような問題がなかったではない。先ほど局長がおっしゃったような、また大臣もおっしゃったような敵対感情といいますか、そういう感情が一部になかったではない。しかし今日労働運動は歴史的な変遷を遂げてやってきて、それぞれの民主的な運営をみずからなし得るようになったはずであります。てれなればこそ大臣は就任当時あの所有を表明なさったのではなかろうかと存ずるのであります。そうとすれば、かつて起った一、二の例をもって、これによって紛争が新たに起るという議論は当らないことではなかろうかと私は思う。ここに新しい道を開いていくといたしますならば、すべて物事というものは十全なものはないはずでありますから、十のうち六ついいことがあって四つ悪いことがあったら、その一つを生かしてだんだん七つ、八つ、九つというように仕上げていくことこそ大事なことではないかと存ずるのであります。もしも大臣が真に労使の話合いの場を広げていきたいとおっしゃるならば、それが真意であるといたしますならば、今日の公労法改正段階はその絶好の機会であると存じます。問題は、今のお話を承われば、表現のいかんにかかると私は思うのであります。表現の方法さえ適切な方法がありますならば、政府側といたしましても、この今回の改正の中でこれを織り込むにやぶさかなことはないと思いますが、大臣、いかがでございましょうか。あなたが先ほどから累次にわたって私に答弁なさったことを私も了承いたします。共通の基盤があるようでありますが、あるならば、この際あなたの所信公労法改正の中に脈々として取り入れるということになぜ怯懦になるのでありましょうか。私はその点について重ねて大臣のほんとうのお考えを承わっておきたい。文章上の問題というものは幾らでも方法がありましょう。あなたが真にその道をここに貫くというならば、方法はあとから考えられるというのであります。
  84. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 三公社について、政府機関としての経営の責任者はそれぞれの公社の総裁であります。そこで、われわれが経営当事者に期待いたしておるものは要するに経営の円満なる運営でありますから、その運営の全責任は公社の責任当局が負うべきであります。従って労使関係は、広い意味の運営責任者の責任のうちの一部である労使関係でありますから、経営責任者の当事者と労働側とが十分に話し合って円満に労使関係を処理いたしていくことをわれわれは期待いたしておるのでありますが、そのことをすべて法律で強制をして、その経営に対して団体協約はこうあるべきではないか、こうあるべきであるといったような——経営に対する責任者が経営者であって、そうしてその責任を国に対して負うのは経営当事者である総裁でありますから、私どもは、円満なる運営の遂行は責任者たる総裁に嘱しているわけであります。従って、その経営の責任の範囲内において労使関係を円満に進めていくにはどういうふうにされるかということは、これは経営当事者の責任においてなされるべきことであります。ただ私が常に申しておることは、こういう三公社を初めとして、一般民間産業においても利害が相対立しているのではないので、常に終局的には一致しているのだから、できるだけ話し合いの場を作って円満に労使関係を遂行してもらいたいのだ、法律規則であまりそういうことをきびしくやることは好ましくないことだということを概括的に申しておるわけでありまして、従って、公労法の場合においては私どもとしては、八条のただし書きにありますように、経営及び運営についてはやはり経営当事者が全責任を国に対して負うべきである、こういう考えでありますから、この改正案は妥当である、こう考えるわけであります。
  85. 横山利秋

    横山委員 いささか私は失望いたします。政府提案理由は、根本問題は今日はできない、従って基本的建前は一応維持するとして、その前提わが国実情に即しない諸点を改める、こういうお話でございます。しかし提案理由提案理由といたしましても少くとも倉石労政というものは、その中から片鱗でも現われた改正があるべきだ、そう思っておるのであります。従って改正条文はこうである、しかしながらその条文の中にあなたの所信——かりに文章は一緒であっても、解釈は少しは違ってきた、ないしは局長のおっしゃるように、前とあとと変ったのだ、変っただけのように見えても、そこから新しい道が開けるのだ、こういうように私はあなたの答弁を期待いたしたのであります。あなたも法文を離れて私とあなたの話し合いになれば、あなたは自分所信をお述べになって、そうしてそういう労使話し合いの場が広がることを衷心より期待するとおっしやるのであります。ところが、それでは法律の中で、現行法の解釈なり改正の中でどういうふうに生かされるかというと、もうあなたはすぐに貝がらの中に身を閉じてしまって、何らの答弁をなさらないのであります。それはまことに遺憾千万といわなければなりません。私はきょうの質問はこの程度にとどめようと思いますが、一晩よくお考えになって下さい。私は今ここで大いなる改正を望もうとはいたしておりません。おりませんが、少くともあなたの所信、あなたが労働行政を担当していろいろと公約なさったその公約というものが、今ちょっとした解釈の仕方あるいは少しの条文の変更で生かされる段階にあると私は思うのであります。私は今大いなる望みを持っておるのではありません。あなたの今までのいろいろなお話なり、あるいはどこかで述べられた演説なり、そういうものの方向がこの中に生かされることを望むのです。私は全部が全部とは言いません。私どもにも都合の悪いこともあります。少くとも与野党の間で一致し得る点はここに表わされることを私は期待いたすのであります。これは局長にも石黒さんにもお願いしておきますが、こういう気持で明日も質問をいたしたいので、一つ十分にお考えになってお答弁されることを期待して、本日はこれで終ります。
  86. 大坪保雄

    ○大坪委員長代理 次会は明九日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。     午後四時四十三分散会