○滝井
委員 いずれこれは午後に
大蔵大臣もお呼びいたしますので
——総理はその私の論理の正しさについては御同意をいただきました。そこで私は
総理に敬意を表することになるわけであります。
総理のこの
内閣が第一次組閣以来掲げたものは日ソ交渉、それから減税をやる、住宅を
拡充する、
社会保障制度を
拡充強化する、こういう四つのもの、もちろん昨年の二十三国会においては憲法
改正、
行政機構の改革、税制改革ということになったのです。一応そこでは
社会保障というものはありませんでしたが、これはその後の今国会においても
社会保障は
拡充強化するということが依然として言われております。そこで非常に富の栄えておるアメリカの
状態を見ても、ロンドン・タイムスではこういう言葉を使ってアメリカの経済の
状態を表現したことがある。ノウ・バター・ウイズアウト・ガンス、大砲あるところにバターあり、こういう評論をしました。アメリカの
国民が一生懸命になって人殺しの武器である大砲を作っておるときにのみアメリカの
国民生活は私たち
日本人の九倍も高い生活水準を保つことができるのだということを、ロンドン・タイムスがかつてアメリカの現在の経済の姿を見て評論をしたことがある。これはすでに現在のアメリカの経済が
一つの矛盾に逢着をしておる、それを端的に表わした言葉だと思うのです。そこでしからば
日本においてはどうなのかということなんです。さいぜん冒頭に申し上げましたように、国防の問題で非常に御苦労をなさっております。しかし
総理はまだバターの問題についてはあまり御苦労をしたという発言を実は聞かない。きょうは今から御苦労するのだと、今から
社会保障については
考えようという御発言を
ほんとうにいただき、喜んでおるわけなのでございますが、まず数字の上から見てみましても、ことしの
予算を見てみましても、旧軍人を含めた防衛費、賠償
関係費というようなものもふえております。それから地方財政に対するいろいろの援助の金もふえております。国土の保全費もふえております。文教費もふえております。ところが減っておるのは社会厚生費と産業経済費、それからその他が減っております。この二項目だけです。なるほど
社会保障費は、
生活保護と児童保護と遺族の援護費と社会
保険と
失業対策と
結核対策、これだけ見ると百億だけふえております。これは追加
予算がありましたので、三十一年と三十年度を比較しますと、今までは、追加
予算のないときは百二十二億でありましたが、現在百億ふえております。これはふえておる。
厚生省の
予算も五十七億ふえております。ところが今度は、社会厚生費として大きな
予算のワクの中で
国民生活の貧困を救っていこうという、こういう高い観点から見ていくと減っている。その二つの項目だけが減っております。産業経済費と社会厚生費、この中には住宅費と文官恩給だけを私は入れてみると、減っておる。こういう点で、いわば
社会保障は
前進をしておるのだということは、この数字の上から見てもどうも言えないですね。しかもさいぜん
八木君が申したように、さらにその上に一部
負担というものをかける。一部
負担というものをかけてきまして、それがわずか二十三億です。二十三億のために全国に
健康保険の反対が起っておる、こういうことなんですね。これは私はっきり自分で数字をはじいてみた。そういうことでこれは明らかに減っている。なるほど
厚生省の
予算の上に出たいわゆる
社会保障費というようなものは百億と五十七億増加をしております。しかしもっと観点を広げて、
国民生活を左右するこの社会厚生費という観点から減っている。そこでこれは
総理も今言ったように少くとも大砲を
強化しようとするならば保守党の
政策としてはバターというものを
考えなければいけない。そうしないと、アメリカのように大砲を一生懸命作るときにのみバターがある、こういう経済では私はいけないと思うのですが、その点をもう少しく率直に
総理の御意見をお伺いしたいと思います。