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1956-04-06 第24回国会 衆議院 社会労働委員会 第32号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年四月六日(金曜日)    午後零時二十五分開議  出席委員    委員長 佐々木秀世君    理事 大坪 保雄君 理事 中川 俊思君    理事 藤本 捨助君 理事 滝井 義高君       植村 武一君    小川 半次君       大橋 武夫君    加藤鐐五郎君       亀山 孝一君    川崎 秀二君       熊谷 憲一君    小島 徹三君       小林  郁君    田中 正巳君       田子 一民君    中山 マサ君       林   博君    古川 丈吉君       亘  四郎君    井堀 繁雄君       岡本 隆一君    栗原 俊夫君       多賀谷真稔君    堂森 芳夫君       長谷川 保君    八木 一男君       柳田 秀一君    山口シヅエ君  出席国務大臣         内閣総理大臣  鳩山 一郎君         厚 生 大 臣 小林 英三君  出席政府委員         厚生政務次官  山下 春江君         厚 生 技 官         (医務局長)  曽田 長宗君         厚生事務官         (保険局長)  高田 正巳君  委員外出席者         厚生事務官         (保険局健康保         険課長)    小沢 辰男君         厚 生 技 官         (保険局医療課         長)      館林 宣夫君         専  門  員 川井 章知君     ————————————— 四月六日  委員三宅正一君辞任につき、その補欠として多  賀谷真稔君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 四月四日  健康保険法等の一部を改正する法律案岡良一  君外十二名提出衆法第三三号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  小委員及び小委員長の選任  健康保険法等の一部を改正する法律案内閣提  出第七八号)  厚生年金保険法の一部を改正する法律案内閣  提出第七九号)  船員保険法の一部を改正する法律案内閣提出  第八五号)     —————————————
  2. 佐々木秀世

    ○佐々木委員長 これより会議を開きます。内閣提出健康保険法等の一部を改正する法律案厚生年金保険法の一部を改正する法律案及び船員保険法の一部を改正する法律案議題とし、審査を進めます。質疑を続行いたします。八木一男君。
  3. 八木一男

    八木一男委員 私はただいま議題と相なりました件につきまして、鳩山内閣総理大臣質問をいたしたいと存するものでございます。鳩山内閣は昨年の二月の総選挙のときに、社会保障拡充することを非常に大きな題目として、大きく明らかに打ち出しておられたわけでございます。また本年一月三十日の衆議院における総理大臣施政演説の中で、総理大臣は民生安定の政策のうちで社会保障を最も重要な問題として取り上げておられます。そしてまた社会保障中心課題は、医療保障であるという点を明らかにしておられるわけであります。そのような政策をとっておられるわけでございまするが、一方に今議会健康保険法の一部改正案をお出しになったわけであります。この健康保険法の一部改正案は、その中に非常に内容を悪くする要件をたくさん含んでいるのでございまして、被保険者団体とか診療担当者団体では、その点を強く指摘いたしまして反対をいたしているわけでございます。また社会保障制度審議会社会保険審議会においても、その欠点について明らかに指摘いたしまして、政府にその答申をいたしておるわけでございますが、政府といたされましては、そういう世の中の声、また審議会の熱心な審議の結果を無視されまして、内容の非常に悪いものを改正案としてお出しになっているわけでございます。この点は鳩山さんがいつも言っておられます社会保障拡充という非常に大きな一枚看板に、矛盾するものであると私ども考えるわけでございまするが、総理大臣の御所信はいかがでありましょうか。
  4. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私はあなたのおっしゃるようには考えませんので、政府としては社会保障制度確立推進についてつとに重点を置きまして、これが施策進展に努力して参ったつもりであります。特に医療保障の達成が当面最も緊要な問題と考えられますので、昭和三十五年実施を目途といたしまして、全国民対象とする医療保障確立をはかるために検討をさせております。  なお今後の人口の老齢化現象に対処するため、老齢者対策についても特に慎重に研究を進めておる次第でございます。
  5. 八木一男

    八木一男委員 大へん驚いた御答弁でございます。総理大臣厚生行政について詳しく御研究になっておらないのではないかと私は思うのでございます。(「総理大臣が一々厚生行政のこまかいことを覚えておれるかい」と呼ぶ者あり)こまかい問題だというヤジも飛んでおりますけれども社会保障看板にされまして、特に憲法の二十五条できまった社会保障拡充しなければならないという規定を実行する立場にある総理大臣としては、それに関係のある出された法律が、どのような影響をもたらすものであるかということぐらいは、知っておいでにならなければ、総理大臣としての責任は果し得るものではないと思いまするが、その点についてはどうでございましょうか。
  6. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 社会保障制度推進は、政府の鋭意努力しておる施策一つであります。三十一年度予算におきましては、経済五カ年計画との関連をも考慮いたしまして医療保障対策確立のための施策保健衛生施策拡充家族計画推進公的扶助強化失業対策拡充等中心とした社会保障関係の経費を、三十年度に比較いたしまして増額計上いたしておりますので、社会保障はかなりの進展を見せておるものと私は考えております。
  7. 八木一男

    八木一男委員 そういうことですから、総理大臣看板について検討をしていただかなければならないと思う。今費用だけで——いろいろと厚生大臣なり厚生省政府委員なりの書いたものを読まれて、御答弁になっておられるようですけれども、(笑声)費用総額がふえておりましても、その対象がふえておりまするときには、そのような金額はふえてもそれは当りまえな話でありまして、一向それは拡充になっておらないのでございます。結核対策費などは、総理大臣はその内容検討しておられないと思いますけれども総額がちょっとふえても、それは結核療養所経営費がふえたのが、そのふえた原因でありまして、実際に病人とか被保険者とかあるいは生活保護対象者というような人たちに対するいろいろの施策が、ふえたものの内容ではないわけでございます。  それは横道でございまするから本道に戻しまするが、この健康保険改正案内容につきまして総理大臣は昨年の六月に、政府の方で保険料率を引き上げられたことを御記憶になっておられると思います。その引き上げられる前の保険料率は、世界で一番高率な保険料率であったわけでございます。その保険料をかけられる被保険者は、政府管掌保険の被保険者でございまするから、日本中小企業労働者でございます。そのような非常に貧しい人たち保険料料率を、昨年お上げになった。その料率をかける標準報酬額をまた今度お上げになろうとしている。そういうような案でございます。そうして保険料を二重に上げておいて、その保険料を強制的に払わされる被保険者病気になりましたときには、今度は前と違って、前よりもよけいに——前にはごくわずかの初診料がございましたが、それと別に再診料その他を出さなければならない。入院したときもお金を出さなければならない。出さなければ十分な診療を受けられないというふうに変っているわけでございます。鳩山さんは正直な方だと私は思うわけでございまするが、それを考えていただきましたならば、その健康保険改正案を、前進だとか改正ということは言えないと思う。その点について率直なお考えをいただきたいと思う。
  8. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 その問題につきましては、厚生大臣から答弁をしてもらいます。
  9. 小林英三

    小林国務大臣 御質問の要旨は、内閣施策でありまする、社会保障制度に対して、前進であるか後退であるかというようなことに伺っておるのでありますが、厚生行政の内部におきましても、この仕事はだいぶ——たとえば結核病床等におきましても、われわれが考えておりましたことよりも、年間を通じて相当ふえている。これは昨年度よりも少く減らして、この問題は厚生行政の他の面に回そうというような、いろいろな変化は私はあり得ると思いますけれども、いずれにいたしましても、本年度の厚生省だけの予算におきましても、相当進展をいたしておるのでありますから、社会保障全般から見まして、私は相当進歩であると考えております。
  10. 八木一男

    八木一男委員 厚生大臣には後ほど御質問をする機会がございまするから、きょうは申し上げません。しかし厚生大臣予算内容を見ましたら、結局金額で少数の増大を見せておりましても、その対象がふえている。ふえているから、それだけふえるのは当りまえで、それでは前進になっておらないということは、少くとも明らかにわかっていなければならないと思います。特に結核の今の問題でも、実質的に患者とか被保険者に対する費用はふえておりません。その点で拡大であるというようなことは、言われない方がいいと私は思うのであります。正直に拡大ではないということをやはりお認めになるべきだ。厚生大臣は、今の予算拡大されておらない、だから大蔵大臣に向って、もっとふやして拡大になるように、鳩山内閣公約が実現できるようにしてもらわなければ困るということを、主張さるべき立場にあるのでございます。それを、拡大でないのを拡大であるというようなことを言って、総理大臣が安心しておられるような状態を作るのは間違いでございます。公約が実現できないということを、厚生大臣鳩山総理大臣に強硬に突っぱって、鳩山さんが、自民党公約実行するのである、だから今の予算を組み直して、法律をやり直して、その公約を果そうじゃないかというふうな決断鳩山さんが下されるように、厚生大臣はその補助をしなければならない。それを、そのような言いわけがましいことをおっしゃるのは、厚生大臣ほんとうの貴任を果されるゆえんではないと思うのでございます。総理大臣、どうぞその点についてお聞き願いたいと思いますし、厚生大臣の御答弁はその点については求めません。総理大臣に申し上げますことは、今そういうようなことで、健康保険については、実質的な非常な後退がございます。たとえば今の標準報酬平均は一万二千円でございます。それが病気になりますと、傷病手当金ということになりまして、収入が六割になります。その場合に七千二百円ということで、大体において生活保護家庭と同様な生活状態になるわけでございます。それが標準でございまして、その平均より下っておる人は、それよりもはるかに貧しいような状態になるわけでございます。その人たちに、もし入院している場合には一日三十円、一月九百円というような負担をかけなければならないというような内容を含んでおるわけでございます。鳩山総理大臣はお仕合せでございまして、今御病気でございます点については御同情申し上げまするが、その他の物質的生活は仕合せな生涯を今まで送っておいでになりました。ですからごく貧しい人たち気持はあまりぴんとはこられないと思います。結核療養所おいでになりますると、毎日新聞をとっている人はほとんどございません。共通で新聞をとっております。ところが便の跡始末をするために古新聞が必要だ。その古新聞が払底しておるような状態にあるところがあるわけでございます。結核療養所では一円二円という金が現実に通用いたしております。そのような人たちから、毎日何をしなくても三十円取り上げるというようなことは、非常な過酷な行政でございます。総理大臣はそのようなことをしようとする御意図は、私はあるいはないのじゃないかと思うのでございまするが、そういうような結果をもたらすような内容改正案政府から提出されておるのでございます。でございまするから、総理大臣といたされましては、勇断をもって現在の政府案を撤回して、今予想されておるような中途半端な修正案ではなく、もっといいものをみずから出そうという決断を下されるようなお気持はないのでございましょうか。
  11. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 結核患者に対してベッドがないくらいのことは私も承知しております。私もよく看護婦から聞いていまして、よく知っているのです。それで社会保障強化ということが非常に必要だということはよくわかっております。現在の健康保険法も一段と進歩しておるものだ、一段と進展したものだと私は思っておるのであります。健康保険法改正については、すでに厚生省の当局が議会において説明をいたしたと思いますが、決して社会保障後退であるとは私は考えておりません。
  12. 中山マサ

    中山(マ)委員 関連社会党のお方々の御発言を聞いておりますと、これは後退である、総理大臣後退ではないとおっしゃるのでございますが、私はこのたびの改正案はあるいは緊急措置ではないかと思うのであります。いわゆる健康保険赤字ということを目標としての緊急措置であるといたしますれば、これが立ち直ったならばこれを撤回して、もっとほんとうのものにしろというこの言をいれていくことも私はあるいはできるのではないかということを考えておりますが、これを立て直す間のその年限ですね。見込み大臣にお願いいたします。これが赤字が解消して、いわゆる組合管掌のような黒字になった場合は、これを何とかしようというお考えがあるかどうか。それが何年間でそういうところにいくか。それを私ちょっと参考までに聞かせておいていただきたいと思います。きょうも朝日新聞に出ておりましたが、ドイツでいろいろ軍人法というものが出てきた。ところがアデナウアー首相は、結局自分の党だけでその問題を押し切らないで、相手方の話もよく聞いて、共同的にものをやったということが、きょう朝日新聞に出ております。それで政府で押し切らないで、大いに相手方と話し合って妥協していくことが一番よい政治だということが出ておりますが、他山の石参考にするとは私はよいことだと存じます。参議院の議長がやめますときに、社会党の方が、国会内において闘争委員会というようなものを掲げておることはけしからぬ、ここは話し合いの場所でなければならぬということをあいさつとしておっしゃいました。われわれはこれを大いにかみしめて検討すべきだと思っております。あながち他党の言うことを非とするだけが能ではないと、しみじみ私はけさの新聞を読んで考えましたので、参考のために、何年くらいしたらこれが立て直るか、お互いに了承し合ってのものができるかということを考えてみたい。私一人の考えであって、何も党を通したのではございませんから、あるいは脱線かもしれませんが、私はこれは信念としては正しいと思うのでありますから、何年くらいすれば立て直しの見込みがあるのか、あるいはいつまでたってもこれを続けなければまた赤字になるおそれがあるのかどうか、総理大臣がそういうこまかいことをなさっておりますると、各委員会研究しろ研究しろと言われたら大へんだと思いますから、専門のお方があるのですから、私は厚生大臣にお聞きしたい。もし厚生大臣がそういう計算までしてないとおっしゃるのでしたら、厚生省保険局長でもけっこうですからお尋ねしておきたい。
  13. 小林英三

    小林国務大臣 中山さんのお尋ねでありますが、私どもの今回御審議を願っておりまする健康保険法の一部改正法律案というのは、中山さんの今お尋ねになりましたように、緊急措置とは考えていないのであります。従来から御承知のように赤字が出ておりまして、三十年度におきまして前任者川崎厚生大臣時代にやりました、いわゆる資金運用部から借り入れまして、一部は保険料率を引き上げ、暫定措置をしたのでございます。これはやむを得なかったのでございますが、今日健康保険内容をつぶさに検討してみますると、数年前から考えますると、相当進歩向上いたしておるのであります。医療費も非常に上っておりまするし、今後といえども医療費はある程度まで上向の一途をたどると思っておるのであります。いずれにいたもましても、今日の健康保険制度といたしましては、その時代における最も高度の医療をやらなくてはならぬわけでありまして従って三十一年度におきまして六十六億円余の赤字を見込まれておりまするが、今日の改正案は、政府からも補助金出し、また被保険者からも一部負担をさせまして、その他の諸般の改正をいたし、健康保険を将来ほんとうの財政的に軌道に乗せるばかりでなしに、健康保険そのもの全般的な進歩向上をはかり、将来の被保険者のためにもいたすようにしたいというのでございます。従って今中山さんのお質問になりましたような暫定的な緊急措置ではないというように私ども信じておるのでございます。
  14. 中山マサ

    中山(マ)委員 それでは最後に申し上げたいことは、「安い政府」という題で文芸春秋に書いているのを見ますと、二十九年度において七十三億の金がむだに使われているということが書いてありまして、これはただごとではないと思ったのであります。総理大臣にこれを申し上げたい。そういうむだづかいが片方においてされておって、片方では二十三億五千万円だけのお金でこうしてお互い委員会が大騒動をしなければならぬというようなことを考え合せますると、総理大臣におかせられましては、どうぞ一つ政府予算のそういうむだづかいがないようにしていただきたい。こういう負担を別口として結局七十三億ですか六億円ですかは国民の税金から出しておるのでございますから、どうか国においては片方においてはむだづかいをして片方においては二十三億くらいのお金病人に迷惑をかけるということのないように、総理大臣としてのお立場において大蔵省を鞭撻して下さいまして、取るべきものははっきり取り、むだづかいをさせないで、病人を守るという大臣友愛精神をここに徹底させていただきたいということをお願いいたします。
  15. 八木一男

    八木一男委員 総理は、先ほど社会保障拡充をはかっているということを繰り返し御答弁になったわけでありますが、社会保障拡充はいろいろな点でいたしていただかなければならないわけであります。健康保険後退はさせないということが第一であります。健康保険のことで政府に追究しますと、保険に入っていない人がいるからそのバランスを考えてというようなことをよく政府委員答弁します。ところがそういう人たちを今の健康保険の方に急速に近づけていただかなければならないわけであります。ところが政府の方では、五年後に医療保障が行き渡るように今調査しているというようなことを言っておりますけれども、そういうようなことでは手ぬるくて間に合いません。国民健康保険経営内容にはいろいろ悪いところがありますから、いろいろな方法でそれの国庫負担をふやすことが第一、それが至急に全国に行き渡るように強制適用法律を出すことが第二であります。また五人以下の事業所労働者健康保険の恩恵を受けておりません。日雇い労働者諸君に対する健康保険国庫負担も少いので、その内容は非常に窮屈なものであります。その一つ一つについて総理の御答弁を要求しませんけれども、よく大綱について聞いていただきたいのであります。そういう四つも五つもやっていないことがあります。それを全部やっていただかなければならないわけであります。まずその第一に健康保険改悪にならないようにしていただきたい。その眼目は、申し上げるまでもなくたった三十五億円の問題であります。三十五億円という予算支出政府決意されれば、世の中の被保険者方々も満足し、医療担当者の方も満足され、与党内の社会保障に熱心な委員方々も非常に満足されるわけだ。たった三十五億円であります。個人にしたら大金でありますけれども、一兆五百億円というような予算規模の中で、あと三十五億円が出せないことはないと思うわけであります。総理ほんとう社会保障拡充するという公約を果す気がありましたならば三十五億円はできるわけであります。総理は、ほんとう後退になっているのに前進であるというような政府委員ごまかし説明を信じ切っておられるのか、それともみずからほおかむりをしておられるのか、どちらか存じませんけれどもほんとう社会保障拡充する気があるのかないかは、この三十五億というものをさらに支出しようという御決意をお示し下さるかどうかにかかっていると思うわけであります。総理大臣の明確な御答弁を願いたいと思います。
  16. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 社会保障拡充のためにいろいろの措置が必要だということもあなたのおっしゃる通りですけれども国家財政全般とにらみ合せながらやっていかなければならないので、三十五億は何でもないといいましても、全般から見ればなかなか三十五億円という金は出て参りません。このたびはやむを得ないと思います。
  17. 八木一男

    八木一男委員 社会保障ほんとうにやろうというお考えがないからであります。その全部の施策日本社会党やり方でやればできるのであります。先ほど中山君が言われましたように、他山の石にして社会党政策をまねておやりになったらどうですか。
  18. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 ただいまは現内閣やり方以外にはいい方法はないと思っております。
  19. 八木一男

    八木一男委員 日本社会党考え方自民党考え方は非常に違っておりますので、即時やるというお返事を期待することは無理かもしれませんけれども、たくさんのしなければならないことの中で、少くともこの健康保険内容改悪を食いとめるためにあと三十五億円を出すというくらいのことは、ほんとうやる気があったらおできになるはずでございます。ほんとう社会保障拡充する、また後退を食いとめるお気持があるのかどうか、はっきりとお答えを願いたいと思います。
  20. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 予算がすでに両院ともに確定いたしました今日、三十五億円でも出すのはなかなかむずかしいのです。御了承願いたいと思います。
  21. 八木一男

    八木一男委員 方法は幾らもございます。現在予備費が八十億計上されております。また補正予算という問題もございます。そういう後退を食いとめる点でおやりになる場合には、野党も大いに協力するでございましょう。その心配はないのでございます。やるという御決意があればできるのでございます。再度御答弁を願いたいと思います。
  22. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 国のその他の財政等を見まして、三十五億円を増額するということは適当なる措置とは私は考えられません。
  23. 八木一男

    八木一男委員 財政全般のことについて逃げ言葉を使っておられますけれどもほんとうやる気があったら三十五億はできるのでございます。ほかのものをやめて、社会保障の方を先に考える、社会保障拡充することの方を重大に考える、公約をしたものの実行の方を重大に考えるというほんとう責任をとるお考えがあったらできるのに、ほかのもっと重要でないものに金を出されるからできない。公約を果されるつもりだったら、三十五億円をすぐ追加支出なさる措置総理として決断なさるべきだと思います。再度その点を御考慮願って御答弁を願います。
  24. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 先刻申しました通りに、ただいまではできないと思っております。
  25. 八木一男

    八木一男委員 大蔵省でただいま昨年度の予算実行状態を調べております。防衛庁の予算でまだ実行されていないものが昨年度中に二百億円ございます。その原因は非常な水増し請求であるということが予想されるわけでございます。二百億円も予算に計上して使わない金が去年出ている。ことしの予算はもっとふえておる。そういうところを詰めれば、三十五億円ならわけなく出るわけであります。やる気がないから出せないので、やる気があれば出る。総理はもう一回お考えになって、防衛庁費を削って出される決心を示していただきたい。
  26. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 健康保険赤字を全然国庫負担とすることは必ずしも適当なこととは私は考えません。
  27. 佐々木秀世

    ○佐々木委員長 八木君に申し上げますが、お約束の時間がきましたから簡単に……。
  28. 八木一男

    八木一男委員 今の御答弁ではいろいろと補助者が紙を配っておられましたけれども、そういう考え方が間違いでございます。日本という国が非常に貧困な国で、国民経済も貧困であるかもしれませんが、保険経済が貧困で、個人経済も貧困でございます。ところが衛生状態も悪く、労働状態も悪く、そうして特に長期の病気にかかる状態がほかの国よりも多分にあるわけでございます。一方において医療は世界の水準に達しておりまして、その医療を十分に受ければ十分にからだがなおるという技術がある、そういう状態があるわけでございます。それがいろいろ経済的な問題で縛られるということは、ほんとう社会保障の観点から見て残念なことでございます。そういう場合においてはすべて公けの立場で、国費から金をつぎ込むという立場でこの問題を解決いたしまして、金があれば病気が早く、よくなおせるのに、金がないためにそれができにくいという貧しい行政ではなしに、だれでも今の進歩した医療を十分に受けられて、そして早くからだをなおして社会のために尽すことができる、家族と生活を楽しむことができるという行政を打ち立てることが、最もいい政治じゃないかと思うわけでございます。鳩山さんはそういう考えを持っておられないはずはないと思うわけでありますが、そういう点でどうでありましょう。
  29. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は、抽象的に考えまして、社会保障拡充には全力を尽すべきものと思います。けれども、ただいまの赤字を国庫ですべて負担しろというのには応じかねると申したのであります。
  30. 八木一男

    八木一男委員 最後に、幾ら申しましても押し問答でございますからこれでやめますけれども、それでは鳩山内閣総理大臣にはっきりと私は要求を申し上げたいことがございます。というのは、三十五億円というのは、一兆五百億円の予算のワクならできることです。ほかのことをあとにすればもっと小さな予算でもできる。社会保障拡充ということには、さっき並べたようなまだまだたくさんのことがある。その中のたった一つの今のこの問題すら解決しようという意図をお示しにならない。それは、社会保障拡充するという気持をお持ちになっていない、公約実行しようというほんとう気持を持っておられないからです。それならば、社会保障拡充するという看板をこの場ではっきりとおろしていただきたい、それを要求いたしまして質問を終ります。
  31. 佐々木秀世

    ○佐々木委員長 滝井義高君。
  32. 滝井義高

    ○滝井委員 ただいま八木さんからいろいろ御質問がございましたが、少しく角度を変えて総理にお願いいたしたいと思います。  その前に、昨日自民党の臨時党大会で鳩山さんが総裁に御就任になられたことを心からお祝い申し上げます。(拍手)代行委員制が解けまして、責任の帰趨が明白になったことは、二大政党の対立の上からいっても、これはきわめて喜ばしいことでございます。  そこで、その臨時党大会における総裁就任のあいさつの中において、自分が国会で一番閉口したものは国防問題であった、特に憲法九条と自衛隊の問題が一番閉口だったという意味のことを申されたように新聞で見ました。そして、最後にボールドウィン首相の言葉を引用されまして、あまりいじめないでくれということを言ったということであります。私は今日は総理をいじめるつもりはございません。そこで、総理は国防の問題で一番いじめられておりますが、私の立場からいえば一つ鳩山内閣社会保障をいじめないでもらいたいというのがまず第一の鳩山さんに対するお願いなんです。これは一つ鳩山さんもよくお考えになっていただかなければならぬ。あなたが国会で国防の問題で非常に頭を痛めると同じように、その頭を一つ社会保障に使っていただけるかどうかをまず第一に私はお伺いをいたしておきたいと思います。
  33. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は、社会保障についてはできるだけの熱意を示したいと思っておるのであります。私は、何よりも日本が共産化することをこわがっているのです。日本の共産化を防ぐのには国民生活を向上せしめることと社会保障強化することが並行していかなくてはならないと確信しておるのであります。その意味によって社会保障制度強化ということをまず党を作りました時分に申したわけであります。
  34. 滝井義高

    ○滝井委員 社会保障をできるだけ強化していくという御熱意を示していただきました。そこで私は今度お尋ねすることになるのですが、社会保障の中核は社会保険です。さいぜん総理は、三十五年を目途として医療保障をやる、こういうことを御説明になりました。そこで現在日本の人口は八千九百二十七万の人口がございますが、この中でまだ医療保障、社会保険の影響を受けていない国民というものが三千万あるわけなんです。三千万の医療保障の恩恵を受けていない国民がある。これを一体どうして医療保障を受けさせるか、これが私は現在の社会保障拡充するという看板を掲げた鳩山内閣の最大の課題だと思うのです。抽象的に五年の後にはやります、こう言ってもなかなかこれは問題だと思いますが、こういう場合にどう具体的に三千万の未組織の国民社会保障の恩典の中に切り開いて入れていくのだという、その首相の一つお心がまえをお伺いしたいと思います。
  35. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 約三千万の国民は何らの疾病保険対象になっていないということは全く残念しごくなことであります。医療保険の達成が当面最も緊急を要する問題であるということはあなたと同じ考え方です。それをどういうようにしていくかということについては私は詳しく知っておりませんから、どういう順序でもって三千万の国民の十分な医療の機会が与えられるかということについては厚生大臣から答弁をしてもらいます。
  36. 滝井義高

    ○滝井委員 こまかいことは厚生大臣にまたあとでお聞きしますからけっこうです。そうしますと総理は五カ年の後には必ず三千万の国民医療保障の恩典に浴せしめる、このことは今御言明ができたわけですね。
  37. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 昭和三十五年度実施を目途といたしまして全国民対象とする医療保障確立をはかりたいと考えておるということは、全く事実であります。
  38. 滝井義高

    ○滝井委員 昭和三十五年になりますと全部の国民医療組織の中に入ってしまうということになります。そこで現在総理、いろいろ御病気で多くの医師に見てもらっておられます。総理はおそらく医師の経理の状態というようなものも、その診療を受けられておる医師からおぼろげながらあるいはお聞きかと思いますが、実は現在全国の医療機関が赤字でございます。それから総理も御存じのように今問題になっておる健康保険赤字でございます。いわば日本医療保障を支えておるところのその基盤である医療機関と、そしてその医療機関を抱きかかえておる社会保険の組織というものは、この二つもが赤字に悩んでおります。その赤字に悩んでおる基盤の上に未組織の三千万の国民を投入をしますから、従ってこの赤字というものはますます拡大していくことは事実なんです。そうしますと、その赤字の基盤の上に三千万の国民を投入した結果、赤字拡大することはどういうことを意味するかというと、日本国民医療内容というものが急激に低下をするか、あるいは医療従業員の労働の強化をもって医療内容の急激な低下をまかなうか、あるいはレントゲンその他の施設の再生産を放置をして古い機械を使っていくかという——総理はいろいろ電気療法などを受けておりますが、そういう近代的なものは入れずに、昔ながらの電気機械を用いる、こういうことになるわけです。これは私はそういう意味から日本社会保障拡充にはならない、こういうことになる。そこでそれを防ぐためには、五カ年のうちに、昭和三十五年になったならば全国民医療保障に入るのですから、少くとも今年、来年、再来年と順序になしくずし的に国費を社会保険に投入しなければ、昭和三十五年になってから八千九百万の国民を抱きかかえるこの社会保障というものはできないことになる。これは理論的にもその通りだと思います。今総理が御言明になった。そうしますと大体来年は総理、その理論から申しますと相当のこれは社会保障費を投入さしていただけることになると思いますが、そういうことに総理のいわゆる常識論としてなるでありましょうか。
  39. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 ただいまのお話を伺えばごもっともであると思います。
  40. 滝井義高

    ○滝井委員 いずれこれは午後に大蔵大臣もお呼びいたしますので——総理はその私の論理の正しさについては御同意をいただきました。そこで私は総理に敬意を表することになるわけであります。総理のこの内閣が第一次組閣以来掲げたものは日ソ交渉、それから減税をやる、住宅を拡充する、社会保障制度拡充強化する、こういう四つのもの、もちろん昨年の二十三国会においては憲法改正行政機構の改革、税制改革ということになったのです。一応そこでは社会保障というものはありませんでしたが、これはその後の今国会においても社会保障拡充強化するということが依然として言われております。そこで非常に富の栄えておるアメリカの状態を見ても、ロンドン・タイムスではこういう言葉を使ってアメリカの経済の状態を表現したことがある。ノウ・バター・ウイズアウト・ガンス、大砲あるところにバターあり、こういう評論をしました。アメリカの国民が一生懸命になって人殺しの武器である大砲を作っておるときにのみアメリカの国民生活は私たち日本人の九倍も高い生活水準を保つことができるのだということを、ロンドン・タイムスがかつてアメリカの現在の経済の姿を見て評論をしたことがある。これはすでに現在のアメリカの経済が一つの矛盾に逢着をしておる、それを端的に表わした言葉だと思うのです。そこでしからば日本においてはどうなのかということなんです。さいぜん冒頭に申し上げましたように、国防の問題で非常に御苦労をなさっております。しかし総理はまだバターの問題についてはあまり御苦労をしたという発言を実は聞かない。きょうは今から御苦労するのだと、今から社会保障については考えようという御発言をほんとうにいただき、喜んでおるわけなのでございますが、まず数字の上から見てみましても、ことしの予算を見てみましても、旧軍人を含めた防衛費、賠償関係費というようなものもふえております。それから地方財政に対するいろいろの援助の金もふえております。国土の保全費もふえております。文教費もふえております。ところが減っておるのは社会厚生費と産業経済費、それからその他が減っております。この二項目だけです。なるほど社会保障費は、生活保護と児童保護と遺族の援護費と社会保険失業対策結核対策、これだけ見ると百億だけふえております。これは追加予算がありましたので、三十一年と三十年度を比較しますと、今までは、追加予算のないときは百二十二億でありましたが、現在百億ふえております。これはふえておる。厚生省予算も五十七億ふえております。ところが今度は、社会厚生費として大きな予算のワクの中で国民生活の貧困を救っていこうという、こういう高い観点から見ていくと減っている。その二つの項目だけが減っております。産業経済費と社会厚生費、この中には住宅費と文官恩給だけを私は入れてみると、減っておる。こういう点で、いわば社会保障前進をしておるのだということは、この数字の上から見てもどうも言えないですね。しかもさいぜん八木君が申したように、さらにその上に一部負担というものをかける。一部負担というものをかけてきまして、それがわずか二十三億です。二十三億のために全国に健康保険の反対が起っておる、こういうことなんですね。これは私はっきり自分で数字をはじいてみた。そういうことでこれは明らかに減っている。なるほど厚生省予算の上に出たいわゆる社会保障費というようなものは百億と五十七億増加をしております。しかしもっと観点を広げて、国民生活を左右するこの社会厚生費という観点から減っている。そこでこれは総理も今言ったように少くとも大砲を強化しようとするならば保守党の政策としてはバターというものを考えなければいけない。そうしないと、アメリカのように大砲を一生懸命作るときにのみバターがある、こういう経済では私はいけないと思うのですが、その点をもう少しく率直に総理の御意見をお伺いしたいと思います。
  41. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は、家屋の増設については世界的の問題で、住宅の増設についてはどこの国でも非常に熱心であります。日本においても家屋の増設ということは必要だと思っております。私はそれでときどき聞いておるのでありますが、日本の家屋の増設費というものは減ってはいないと思っております。財政投融資の方から金が回っていまして、増設せられる家屋の数もふえておりますし、金も減ってないというふうに聞いておるのですが、これは間違いじゃないだろうと思います。
  42. 滝井義高

    ○滝井委員 広い観点から見ると、減っておるのは、今申しますように産業経済費とそれから社会厚生費だけ減っている。そこでその議論をしておっては時間がございませんので、もっと根本の問題に入りますが、さいぜんも申しましたように、三千万の未組織の国民医療保障の中に入れるとすれば、最低に見積っても、来年は三百五十億をこれに投入しないと、五カ年の後には全国民医療保障の恩典に浴する形にはならないのです。三千万の国民にやるためには三百五十億要るんです。だから総理は、お考えになるとおっしゃったのでございますから、三百五十億を考えなくとも、相当考えていただかなければならない、こう思うのです。そこで、この問題のむずかしさはどこにあるかと申しますと、三百五十億を入れてもらわなければならない。私はそれを入れるのはなかなか困難だと思いますが、この困難について、やはり総理の英断が必要なんです。その困難な事情を私は率直に申し上げます。それは現在日本国民所得あるいは総生産というものの伸びというものが、きわめてゆるやかなんです。たとえば国民所得の増加の状態を見ても、二十九年から三十年には、これは九%くらいしか伸びておりません。三十年から三十一年には五%の伸びしか見ていない。ところが総理医療費になりますと、三割から四割ずつ伸びていっている。ここに問題があるのです。だからこの問題にほおかむりしてはいけない。少くとも五カ年の後には、全国民医療保障のあたたかいふところに抱かれるためには、揺籃から墓場までの制度を、鳩山総理が名実ともにほんとう拡充しようとするならば、まずこの矛盾にメスを入れていかなければならぬことになるわけなんです。この医療費の急激なる増高、そしてこれに国民所得が伴わない。国民所得が伴わないということはどういうことかと申しますと、いわゆる社会保険をまかなう保険料を、ぐんぐん引き上げていくことができないということを意味するのです。これを一人々々の俸給に換算してみれば、賃金というものが横ばいの状態になっておるということなんです。賃金が横ばいであるならば、そこに一定の率をかけた保険料というものは、すでに一応のコンスタントの状態になる。ところが医療がどんどん上っていく。なぜならば、近代的な医学というものはぐんぐん進んでいくのです。昨日ニューヨークで発見された薬は、本日は東京のまん中で臨床に使われておる。こういうことになるのです。従ってこの矛盾を総理は解決して、三千万の国民をどうして医療保障の中に入れるかということが一番大事なことなんですが。その点どうです。
  43. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 具体的の方法については、私考えていませんので、これについては厚生大臣から答弁をしてもらうより仕方がありません。
  44. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、総理はこういう矛盾が現在の医療にはあるということはおわかりになったと思います。従って医療保障を五カ年の後にやるというからには、やはり国防の問題と同じように、少くとも国防と社会保障とが車の両輪だとするならば、自衛隊と憲法九条の問題に使う程度の頭を社会保障に一国の総理は使ってもらわなければならぬ。こういうことなんだと思いますが、どうでしょうか。使っていただけましょうか。
  45. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 とにかく国防も必要だし、医療保護も必要だし、国の財政の規模というものは広いものですから、そのあんばいをするときでなければ、具体的なことは言えません。
  46. 滝井義高

    ○滝井委員 もう少し総理社会保障の問題を国防と同じ程度に一つ頭に置いていただくことを、実はお願いいたします。  そこで、時間がきましたから最後に一つ質問いたしますが、実は最近の立法の傾向を見ますと、鳩山総理のもとにおける絶対多数が、どうもたががゆるんでいる。従ってその絶対多数を利用して、お役人さんたちがどうも官僚統制を強化しようとする立法の傾向が出てきた。たとえば、今までは三者構成でいろいろ相談をしてやっておったような機関というものが、全部その三者構成というものが断ち切られて、そして表に役人が出るという形が出てきました。たとえば労働保険審査官及び審査会法、あるいはこの健康保険でもそうですが、その審査機構というものも、そういう傾向が出てきました。これはやはり私は考えなければならぬことだと思います。今回の健康保険法改正は治安維持法の医療版だと、こう世間は言っている。これは明らかに官僚統制が強く出てきたことを意味する。しかも絶対多数のその力を利用して、この際こういう形が出てきているので、これはやはり二大政党になった現在においては、政府与党というものは、もっとふんどしをしっかり締めかえていただかなければならぬ。とともに、現在におきましては、すでに総理も御存じのように、保険医が二十府県にわたって総辞退をしました。その数は二万をこえております。しかもそればかりではございません。同じような日本の知識階級であるところのいわゆる十大学長あるいは全国の大学の教授たちが、やはり現在総理の行おうとする政策である、あの地方教育行政の組織及び運営に関する法律案についても、これは明らかに国家統制が出てきたのだということを言って声明を発している。いわば医療担当者とかあるいは学者、大学のプロフェッサーというような者は、少くとも社会における良識のある人たちです。その良識のある人たちが、総辞退をしようとしている。各府県の教育委員が総辞退をしようとしている。これはやはり鳩山内閣が行おうとする政策というものが、社会的な背景と申しますか、その社会的な背景というものをよく見て立法していないという具体的な現われではないか、私はこう思うのですが、まず官僚統制が最近の立法についてはだんだん出てきたという点、それから今申しますように、保険医の総辞退やあるいは大学教授の声明、教育委員の声明、こういう問題は、鳩山内閣政策が社会的な背景を無視した政策ではないかというニュアンスがあるのだが、それについて総理はどうお考えになるか、この二点について伺いたい。
  47. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私はできるだけ国民の声を聞いているつもりです。とにかく、今あなたのおっしゃったような傾向はないと思っております。
  48. 滝井義高

    ○滝井委員 それならば、現在医師が総辞退をしています。しかも全国の都道府県、市町村の教育委員等も総辞退をしようとしている。これはやはりその収拾の方策というものを政府考えなければいけないと思うのです。(「みんなわがままだ」と呼ぶ者あり)これはわがままではないわけです。やはりここに何らかの、内閣に対して社会的な反省を求めようとするつもりでやっているわけなんです。だからこの点についてやはり総理はこの際率直に、これらは知識人ですから、知識人がそういう行動に出たということについては、これは今までかつてないことです。人間の命を扱うところの医療担当者、心のかてをわれわれに注入してくれる教育者、こういう人たちがこういう傾向に出るということは、これは感情の問題じゃない。私はよくよくのことでこういうことになっていると思うのです。これに対してやはり総理は、これはこういう方向で解決をするんだということを、やはりこの際率直に御表明になる方がいいと思うのです。一つ率直に御表明いただきたいと思います。
  49. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 あなたの考え方はよくわかります。そういうようなことも起きないように、政府としては考えなくてはなりません。
  50. 滝井義高

    ○滝井委員 どうもありがとうございました。これで終ります。
  51. 佐々木秀世

    ○佐々木委員長 この際小委員会設置の件についてお諮りいたします。理事会におきまして協議いたしました結果、薬価基準等に関する調査のため、小委員十名よりなる薬価基準等に閲する小委員会を設置すべきであるとの御意見でありましたが、同小委員会を設置するに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  52. 佐々木秀世

    ○佐々木委員長 御異議なしと認め、そのように決します。  なお小委員及び小委員長の選任につきましては、委員長より指名するに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  53. 佐々木秀世

    ○佐々木委員長 御異議なしと認め、小委員には    亀山 孝一君  藤本 捨助君    亘  四郎君  野澤 清人君    八田 貞義君  熊谷 憲一君    岡  良一君  滝井 義高君    長谷川 保君  山口シヅエ君  以上十名を指名し、小委員長には熊谷憲一君を指名いたします。  次に本小委員会に調査のため参考人を招致いたす場合には、その人選及び手続等につきましては、すべて委員長に御一任願いたいと存じますが御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  54. 佐々木秀世

    ○佐々木委員長 御異議なしと認め、そのように決します。  本会議散会後まで休憩いたします。    午後一時二十一分休憩      ————◇—————    午後二時四十五分開議
  55. 大坪保雄

    ○大坪委員長代理 休憩前に引き続き再開いたします。  都合により委員長が不在でありますので、私が委員長の職務を行います。  内閣提出健康保険法等の一部を改正する法律案厚生年金保険法の一部を改正する法律案及び船員保険法の一部を改正する法律案を一括議題とし、質疑を続行いたします。堂森芳夫君。
  56. 堂森芳夫

    堂森委員 まず厚生大臣お尋ねいたしますが、三月五日の委員会と思いますが、最初の本法案の審議に当りました委員会で与党の中村三之丞委員があなたに質問したのに対して、一部負担の制度を拡張して参ったことは決して赤字対策ではない、これは健康保険の制度の発展のために作った制度である、こういうふうな答弁をしておられたと記憶いたしておりますが、厚生大臣はそのように御記憶でございますか。
  57. 小林英三

    小林国務大臣 当時中村さんの御質問に対しまして、今回御審議を願っておりまする改正案というものは、単なる赤字対策ではないということをお答えいたしたのでございます。
  58. 堂森芳夫

    堂森委員 そうしますと、単なる赤字対策ではない、こういうふうな意味の御答弁としますと、赤字対策もある、こういう意味でございますか。
  59. 小林英三

    小林国務大臣 いろいろな意味から考えますとそういうような意味にもとれると思いますが、要するに今回の健保の改正案というものは赤字対策のみを考え改正したのではありません。
  60. 堂森芳夫

    堂森委員 そうしますと、一部負担制度の拡張ということは、健康保険としてはいい方法ではない、こういうふうにお考えでございますか、あるいはそれが当りまえである、こういうふうにお考えになりますか。
  61. 小林英三

    小林国務大臣 今回の改正内容というものは、もちろん国庫補助といっても、お尋ねの一部負担それから標準報酬の等級区分の改訂、こういうふうな財政対策的なものを主体といたしまして、そうして健康保険の組織の整備でありますとか、その他の諸点をあわせまして健康保険制度の将来にわたります向上発展を期そう、こういうことで改正をいたしておるわけでございます。
  62. 堂森芳夫

    堂森委員 くどいようでありますが、そうすると一部負担拡充して参るということは合理的だ、こういうふうにお考えでございますか。
  63. 小林英三

    小林国務大臣 政府管掌健康保険制度の将来の発展向上のためにやるのでございますから、今お尋ね通り考えております。
  64. 堂森芳夫

    堂森委員 日本健康保険制度における一部負担制度の歴史を見ますと、政府から資料をもらっておりますが、たとえば昭和十八年四月一日から昭和十九年四月三十日までこれこれ、こういうふうな負担がございます。あるいはまた昭和十九年五月一日から二十二年八月三十一日までの負担制度もございます。その後幾つもございます。それから二十四年五月一日から現在のような初診料だけの負担、こういうふうになってきたと思うのです。そうすると過去においてはほとんど保守政党内閣責任においてやったことですが、従来一部負担制度をやったりやめたりした、こういうことと、今度あなたが責任者としておやりになる一部負担制度の拡充というものとは矛盾いたすのではないかと思いますが、いかがでございますか。
  65. 小林英三

    小林国務大臣 今堂森さんの御意見のありましたように、一部負担そのものにつきましても、いろいろな経過と申しますか、歴史もあるわけであります。昭和二十四年におきましては、現行法にありますように初診料相当額を負担し、今日まで行われておるのでありまして、この健康保険そのものには今日までいろいろ歴史はございますが、最近、医学の進歩あるいは技術の進歩等によりまして、医療費が非常に増高をいたしておることは事実でございます。しかもこれらの原因につきましては、私どもの提案理由の説明にも申し述べておる通りでございますが、今日のこの医療費の増高、健康保険財政の支出の増加というものは、今後引き続いてそういうふうになって参る傾向をたどっておると私は思います。これは単に日本ばかりではございません。諸外国を通じまして同じような傾向をたどっておるのでございまして、私は今日の健康保険内容をつぶさに検討いたしまして、今日のように、数年前よりも進歩向上いたしております現状に即しまして、しかも一方におきましては、たびたび申し上げますように社会保険の適用を受けない人々が相当数に達しておるのであります。こういうことからにらみ合せまして、この健康保険の財政の立て直し、しかも将来に向いまして、高度の保険医療というものを保ちながら、健康保険を軌道に乗せていきますには、政府からも法制化されましたような補助をいたし、また被保険者におかれましても、ある程度一部負担を拡張していくということは、健康保険制度それ自体の進歩向上のために必要である、こういうふうに私は考えております。
  66. 堂森芳夫

    堂森委員 厚生大臣のただいまの答弁によりますと、諸外国では一部負担をやっておる、こういう御答弁内容であったと思います。それは大臣のおっしゃる通りでございまして、世界のいろいろな国では一部負担は確かにやっております。しかしあなたは、一部負担をやり得るような条件に置かれておるいろいろな国の労働者と、日本の国のような低賃金でどうにもならぬような国の労働者とを混同しておられると思う。また日本の国にはいまだに最低賃金制がございません。しかし諸外国では最低賃金制というものを持っておりまして、少くとも最低の賃金というものは労働者に確保されております。こういうようないろいろな条件を無視されておることは、あまりにあなたが手前勝手な、都合のいい資料だけを諸外国からとってきておられるということになると私は思うのであります。またこの政府管掌健康保険対象になっておられるところの労働者諸君は、日本でも中小企業のきわめて弱小な企業に働いておられる労働者諸君であります。今日、日本労働者がこぞって反対しておる理由はやはりそこにあるのである。そこで大体私が調べました数字では、政府管掌対象となっておる各中小工場の労働者諸君の平均賃金は一万一千円くらいではないかと記憶いたしております。そうしますと、たとえば主人が入院をいたしますと、そのために賃金は傷病手当として六割になる。そうすると入院しました人の月給が一万円なら六千円になる。そうして六カ月間は一日三十円、一月九百円の負担がある。一体それで労働者の家族は生活できるのか。また病人が出れば、入院料や食費はただであっても、いろいろな関係の雑費が出るのは当然です。傷病手当として六千円くらいの額になった労働者の家庭で一日二十円は少い、ピース一つにも当らないというような議論が与党方面ではございますが、それが果して妥当な方法であるかどうか、こういうことに対して大臣はどうお考えになりますか。今日この法案に反対する大きな骨子というものはやはり一部負担だと思います。その点について厚生大臣は妥当だとお認めになりますか、御答弁願いたいと思います。
  67. 小林英三

    小林国務大臣 これは今お尋ねになりますようないろいろな御議論があると思います。しかし今日の健康保険の財政におきまして、この赤字を克服するのにはどうしたらよろしいかということが考えられると思うのです。暫定的の措置としては借入金によってこれを処置するのもけっこうでありましょう。しかしこの健康保険制度というものをほんとうに軌道に乗せて参りますのには、堂森さんの属しておられる社会党の言われるように、これは全額国庫負担にすべしという御意見もあると思います。あるいは今私ども考えておりますような、国庫にもある程度の補助をさせ、また今日のような健康保険状態においては被保険者も一部負担すべしという考え方、これはいろいろその立場立場によって御議論があると思います。しかし私は、少くとも今日の健康保険制度をりっぱに軌道に乗せて、しかも将来の発展向上をはかるのには、この方法が一番よろしいと考えております。
  68. 堂森芳夫

    堂森委員 私はただいまの大臣答弁を聞いておりますと、政府は一部負担をする、被保険者負担をするという非常に安易な考え方をしておられると思うのです。今度の改正案政府が出すに至りました大きな原因は、やはり健康保険の財政の赤字にある、これは明らかな事実であります。この赤字になった原因をつぶさに考えるならば、一部負担労働者に広げていくということは、どうしてもあなたはちゅうちょしなければならぬ理由があると思います。と申しますのは、たとえば労働者対象とした健康保険制度には二つあります。つまり御承知のように組合管掌保険政府管掌保険とございます。組合管掌の方は、いろいろな数字を見ましても、今日では大体受診率の上昇というものが大体頭打ちに来ておる、こう言われておる。ところが政府管掌健康保険においては、受診率はなかなか頭打ちが来ない。こういう事実は何を物語っておるかと申しますと、やはり政府管掌の職場で働く労働者諸君は賃金が低い、また労働条件が悪い。すなわち比較的貧弱な企業形態の中に働いておる労働者対象になっておる。従って労働条件が悪い、あるいは賃金が低い、こういうことで受診率の頭打ちがなかなか来ない、ぐんぐん上っていく。一方では、組合管掌では大体受診率が頭打ちになっておる、こういう事実を見ます。また平均賃金は大体一万一千円である、こういうような低賃金の政府管掌労働者諸君の状態、こういうものを見ますならば、あなたがおっしゃるように、政府が一部負担する、被保険者も一部負担する、こんな割り切った簡単にものを考えるような立場で一部負担をやっていくのだということでは、大へんなことになる、こういうふうに労働者考えるから反対するのだと思うのであります。あなたは、それでもこういうような考え方立場の相違だとおっしゃるかもしれません。しかし政府はいろいろな保険補助をいたしておる。国民健康保険には医療給付の二割をいたしておる、あるいは厚生年金についても給付の二割でありますか、負担しておるはずです、船員保険においても二割ですか、負担しておると思います。そのように、他の各種の保険においては二割負担しておる。ひとり政府管掌健康保険については、それが一割程度の三十億しか負担できない。それも決して法律で義務づけておりません。今度の改正法案を見ますと、政府予算の範囲内においてこれに補給をするといっておるわけです。従って、これは何回も議論が繰り返され、質疑も繰り返されましたが、大切な点でありますから、私は重ねてお尋ねするわけでありますが、政府は、政府管掌健康保険にだけなぜ他の保険並みのような補助ができないのか、こういうことを御答弁願いたい。
  69. 小林英三

    小林国務大臣 堂森さんの御質問によりますと、ことしの政府補助の三十億円は非常に少いというような御意見でありますが、本年はとりあえず三十億円の補助をいたしておりますが、これはこういう健康保険制度に対して出しました政府補助としては、私は相当金額であると思います。しかし私は決してこれでは満足していないのであります。今お尋ねの組合関係等のお話もありましたが、組合関係におきましては、最初から自主的にりっぱにやっていけるような財政的基礎を持っているようなものをもって組合管掌にいたしておるのでありまして、従って組合管掌に対しましては、政府補助しておらないのであります。  それから国保の問題も御意見がございましたが、国保の問題にいたしましても、現在の政府管掌健康保険に比べますと、その給付内容というものも健康保険の方がはるかにすぐれておるのであります。大体医療費の二割ということに国保はなっておりますが、ただいまの健保に対します補助は、一人当りにしましてやや同じ程度になっておるのでございます。
  70. 堂森芳夫

    堂森委員 それは議論にならないと思うのです。国保と健保とは保険料が違います、システムが全く異なっておるわけであります。なるほど半額負担が国保にはございます。しかしこれは保険料が非常に違うわけでありまして、これを同一に断ずることはできません。私は組合保険に何も政府補助しておるというようには申しておりません。そんなことは知っております。これは議論になるからやめます。  方向をかえて見ますと、日本の国の健康保険というものが非常に数が多い、いろいろな種類がある。これは私も医者の一人として十数年ほど開業しまして、相当大きい病院の院長をしたこともございます。その事務というものが大へんなものであるということは皆さん御承知の通りであります。局長もよく御承知の通りでありますが、そういう事務ということを別にいたしまして、たとえば組合保険というのは幾らか楽だ、またある組合のごときは家族に対してすら全額給付をいたしておる。それからまたある組合ではりっぱな病院を持っておる、あるいはりっぱな療養所を持っておる、これ自体は非常に喜ぶべきことである、いいことですが、そうした余裕のある健康保険組合もたくさんある。ところが一方政府管掌においては、同じ労働者であっても一部負担がある、あるいは条件が悪い、こういうようなことあるいは事務の繁雑等いろいろなことがあるわけでありますが、日本にあるところの各種の健康保険制度というものを一つにするということがいいか悪いか、大臣はこの点どうお考えになりますか。
  71. 小林英三

    小林国務大臣 今お尋ねになりましたように、単なる勤労者対象の社会保険にいたしましても、堂森さんのおっしゃったように、いろいろあるのであります。健康保険のそれ自体にも政府管掌のようなものもありますし、組合管掌もありますし、船員保険もありますし、日雇い労働者の健保もありますし、各種の共済組合等もあります。一方におきましては、主として自営をいたしております人人を対象とする国保もある。しかし今お説のありましたように、これらのものの中にもやはりいろいろの経過をたどり、歴史をもちまして今日まで発達して参りましたものがたくさんあるのであります。今直ちにこれを快刀乱麻を断つように、一本にするとかどうするとかいうことはできないと私は思います。ここまで発達して参りました各種の保険につきまして、今後早急に総合的に調査研究をいたしまして、私ども常に申し上げておりますように、できるだけ早くこれらの計画を立てまして、そうして最後の段階といたしましては、昭和三十五年を目途といたしまして国民保険の線に持っていく。それには私は前もって非常に調査研究が必要であると思いますので、三十一年度におきまして五人の医療保障委員というもの——名前はまだはっきりいたしておりませんが、大体そういうふうな意味の厚生大臣の相談相手といいますか、顧問と申しますか、それらの人と専門家と十分に研究を進めまして、できるだけ早く年次計画を立てるというふうな具体的な案に向って進んで参りたいと思います。
  72. 堂森芳夫

    堂森委員 大臣の御答弁でございますが、私は、そのような各種の歴史がある保険制度を直ちに一本にしよう、こう言っておるのではありません。国会を通過した法律によって定められた社会保障制度審議会などにおいても、政府に向っていろいろな答申をいたしております。たとえば日本保険制度は実に複雑多岐である、すみやかにこれを統一するように努力すべきである、こういう答申をしておることも大臣は御承知の通りであります。政府はいつの場合でも、たとえば小選挙区法を見ましても、選挙制度調査会の答申を無視してめちゃめちゃなことをしておるような政府ですから、何をやるかわかりませんが、とにかく世論というものはそういうふうに向いておる。しかし政府は三十五年になると国民保険にするとかいうことをいっておりますけれども、しかしほんとうに近い将来にこの複雑多岐な健康保険制度を統一する、こういうお気持があるのかどうか。皆保険といったって今のままでやっていくのか、あるいは統一していくような意図を持ってやっていくのか、その点一つ答弁願いたい。
  73. 小林英三

    小林国務大臣 今お尋ねになりますように、将来は統一的な方向に向って参りますように調査研究を進めて参りたいと思います。しかもこれは各種のものにつきまして今日までのいろいろの歴史もありますし、経過もありますので、十分に掘り下げまして軽率には扱いません、慎重にこれを調査研究を進めて参りたいと思っております。
  74. 堂森芳夫

    堂森委員 慎重に研究して調査して参る、こういう御答弁ですが、厚生省では現在は何もやっていないのですか、いかがですか。
  75. 小林英三

    小林国務大臣 今の御質問、はなはだ恐縮でございまするが、もう少し具体的に……。
  76. 堂森芳夫

    堂森委員 複雑多岐な健康保険制度を一本化していくような、具体的な調査研究を現在おやりでございますかどうかということです。
  77. 小林英三

    小林国務大臣 従来も、私の前任者時代にもこれらの問題につきましては相当の御研究もなさっておるものと考えておりますが、今年度は約一千万円の予算もございまするので、先ほど私が申し上げましたような点につきまして慎重に企画をし、調査研究を進めてみたい、こういうふうに考えております。
  78. 堂森芳夫

    堂森委員 前任者の時代にもやっておったし、また一千万の予算を組んでやるのだ、こういうお話でございますが、しからばそこに保険局長がおられますから、現在どのような案ができておるのか、あるいは案といかなくてもどういうような構想でやろうとしておられるか、あるいはどのような具体的な考え方があるのか、その点だけ少し詳細にお聞きしたいと思います。
  79. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 お答えいたします。前川崎大臣の時分に、御存じの官房に企画室というものを作りまして、社会保障の問題についての総合的な企画研究に従事をいたしておるわけであります。社会保障と申しましてもいろいろ広うございますけれども、結局医療保障というようなものがその中心になって参るわけであります。医療保障ということになりますれば、医療保険というものがまたその中核的な存在になってくるわけであります。これらのものを一体どうしていくかという問題につきましては、これは非常に大きな問題でございまして、今堂森先生御指摘のように、いろいろな種類のものがあることはだれしも好ましいことではない、しかしながら先ほど来大臣がお答えをいたしておりまするように、あるにはそれぞれ歴史があったり、また事情を異にしたり、いろいろなことで今日のような状態になってきております。しかも一番問題は、保険によりましてこの給付内容相当に隔たりがあるわけでございます。それでただ一本にいたすといっても、現在相当高い給付をいたしておりまするものを低いものへくっつけるということも非常にむずかしいことであります。それから理論的に申せば、高い給付に低い給付をどんどん合わせてくるということは一番望ましいことでございます。しかしこれとてもそう簡単に参ることではございません。あるいは国民負担力とか、あるいは国の財政力とか、いろいろなむずかしい問題がここに伏在して参っておるわけでございます。さようなわけ合いでございますので、調査研究は進めておりますけれども、今直ちに一体どういうふうな形においてこれを実現して参るかということにつきましては、とても結論を出し得ないでおるわけでございます。ただ全体的な方向といたしましては、被用者保険というものを全般的にどう考えるか、自営業者の保険——これはおのずから地域保険になって参ると思いますが、これを全般的にどういうふうに考えるか、大きくはその二本建という問題になるかと思います。ただ被用者保険の中におきましても、たとえば船員保険のように他の長期保険と一緒にやっておりましても、しかも給付の内容は現在の健康保険に比べましてもより高い保険もございます。それから先般来いろいろ御指摘の、現在の健康保険に含まれておらない五人未満の問題とか、それからすでに健康保険とやや似た制度で、保険対象にはなっておりますけれども、その給付の非常に低い日雇い労働者保険というものもございます。たとえば五人未満の問題等につきましては、これを被用者保険の中に繰り入れていくか、あるいは地域保険の中に一本に包含していくべきであるかというような点につきましても、いろいろと論議のあるところでございます。従いまして大きな方向としては、被用者保険あるいは地域保険というふうな、二本建ということに方向づけられると思いますけれども、しかしそれらのそれぞれの関係をどういうふうにするか、あるいはそれぞれの内部における、ことに被用者保険の内部における制度をどういうふうにして参るかということにつきましては、今後相当な期間、調査資料に基いて検討をいたすべきものでございまして、今日ただいまこれがどっちの方向に向くであろうというふうなことを申し上げる段階には、いまだ私ども研究も到達しておらないような次第でございます。御了承をお願いしたいと思います。
  80. 堂森芳夫

    堂森委員 高田保険局長答弁を聞いておりますと、何も具体案がない、こういうふうに私は解釈していいと思うのであります。たとえば三年くらい前でございましたか、私立学校の共済組合の法案が出たことがございます。私はこの法案に対していろいろな意味で最初猛烈に反対いたしたのであります。ということは、私立学校の職員の健康保険組合がないということは、これは非常に遺憾なことであります。しかし従来公立学校の職員にはちゃんと共済組合がある、そこへ持ってきてまた私立学校だけの人たちのための共済組合を作ることは、日本社会保障というものを単純化していくという方向の逆になるのではないか、こういう意味で私は委員会でも幾回にもわたって質疑いたしたことを記憶しております。そうしますと、当時の模様を見ておりますと厚生省はかなり抵抗しておったように聞いております。こういうことをしてもらったのでは社会保障というもの、社会保険というものは逆行になるといっておったということを聞いております。しかしあなた方の力の弱いためか、とうとう負けてしまった。そういうような歴史を見ましても、この健康保険を一本化していくなんということは、なかなか並々ならぬ仕事であろうと私は想像します。あなたの答弁を聞いておりましても、たとえば給与のレベルが高いものに対して低いものをどうしていくか。なるほど高い給与を受けておる人たちはレベル・ダウンに反対するのは当然でございます。そこであなた方の考えておるような立場で、すなわち国はあまりめんどうを見ないのだという考え方で、根本的な立場というものにはやはり限度があると思います。従って大きな勇猛心を持ってやると同時に国がやはりめんどうを見ていくという大原則が立てられなかったのであります。厚生省のいかに優秀な官僚諸君がさか立ちになってがんばってみたところでそれは不可能であろうと思います。従って将来大臣は、国がめんどうを見ていくのだ、そういう大原則に立って閣内において社会保険の統一にがんばっていくという意思があるかどうか。あなたのように三十億ぐらいでこの場一時補助はやむを得ないのだ、そういう弱い立場ではなしに、他の国民健康保険あるいは厚生年金保険、いろんなものに二割ぐらいの補助を持っているのですから、とにかくそのような弱い立場では、この重大な今後の日本社会保障というものを一本化していくような、社会保険というものを一本化していくような大事業はできない。それに対してどのような決意を持っていらっしゃいますか。その点一つ伺っておきたい。
  81. 小林英三

    小林国務大臣 もちろん近い将来に国民保険ということで進んでいこうということでございますから、国もこれに十分の力を入れる、補助金問題等につきましても十分に考慮していくということは困難でございます。ただいまの堂森さんの御意見は、われわれの将来の大きな参考といたしまして拝承しておきたいと思います。
  82. 堂森芳夫

    堂森委員 時間もございませんから方向を変えたいと思います。全国の医師の保険医総辞退の問題であります。私の聞くところによれば、政府与党が政府出した原案に対して修正案出している、こういうふうな話を聞いております。新聞にはすでに出ております。このような情報があるわけです。明日はその修正案が出るそうでありますが、このような修正案が与党から出されて衆議院を通過しても全国の医師は承服できない、こう言っておるわけですが、厚生大臣は与党が修正した案で全国の医師が納得するとお考えでございますか。この点一つ承わっておきたいと思います。
  83. 小林英三

    小林国務大臣 健保の改正案はただいま国会の御審議を願っている最中でありまして、私は国会としまして慎重に審議されまして、そうしてかりに修正案が出た、こういう場合におきましては、そのときにおきまして私どものこれに対する態度をはっきりときめていくべきだ、また今お尋ね新聞等に載っておりまする与党修正案に対して、全国の医療担当者の諸君が云々という問題につきましてはこれは私が今ここではっきりとしたそれに対する回答をすべきではないと考えます。
  84. 堂森芳夫

    堂森委員 それはそれとしまして、今明日与党から修正案が出される、こういうことを聞いておるわけです。その案は新聞で私が見た程度でございますが、この修正案に対して大村厚生事務次官談として新聞に出ております。読み上げます。「健保の赤字をなくし建て直すために出し改正案だから簡単には修正案に承服しかねる。」こう書いてある。それから古畑日本医師会理事談、「立入り監査は削除されたが、医師の黙秘権は規定されなかった。一部負担についても病気の際幾らかでも現金を出さねばならないということは患者にとってつらいことだ。特に入院中、毎月九百円を三カ月間とられるのは物入りの多いときだけによけい苦しい。医師会としては反対せざるを得ないと思う。」こう書いておるわけであります。医師会のことは出てみなければわからぬとこうおっしゃるかもしれません。それももっともかもしれません。しかしそれでも厚生大臣としては非常に重大な責任があるわけなんです。そんな簡単なことで答弁を濁すことはできないと思う。それはそれとしてあなたの部下である事務次官は与党がそういうものを出しても承服しかねる、なかなか簡単には応じかねる。服しかねる、こういっておりますが、大臣いかがでありますか、さっきのあなたの答弁と事務次官の談話とは違いますよ。
  85. 小林英三

    小林国務大臣 私は今堂森さんの御意見のようなことはいささか無理ではないかと思います。かりに与党におきましてこういうかくかくの修正案を出そうという場合におきましては、厚生省の事務当局といたしましては、今堂森さんがお読み上げになったようなことを申すことも、またそう考えることも当然であると思います。ただ私といたしましては、もしそういうふうな与党のお考えになりました、与党がいろいろな客観的な情勢、諸般の情勢から判断されまして適当なる修正案を、適当というと語弊がありますが、ある修正案を出すことになったというような場合におきましては、私も党出身の閣僚でございますので、与党のお出しになりまする修正案につきましては、私といたしましてはこれに対して善処するということを考えるのが当然であると思います。
  86. 堂森芳夫

    堂森委員 言葉じりをとらえるわけではないですが、あなたはたびたびこの長い間の委員会で今政府出しておる健保法の改正案は、全然それを修正をする意図はありません。またはそういうことは全然考えていないこういっておられた。それからまたあなたの部下である木村事務次官、厚生省の事務官僚諸君の総元締めである木村次官は、われわれはそういうものに承服しかねる、こう新聞で発表しておる。あるいは談話ではないかもしれません。新聞記者諸君が会ったときにそういう話が出たのかもしれません。いずれにしてもそういう意見を発表しておる。こういうことはあなたの責任じゃございませんか。それは簡単に与党が言うのだから、それでいいというのではあなたは厚生大臣として、従来からのあなたの御答弁と比較して、それであなたは何ら責任を感じられない、こういうことでございますか。
  87. 小林英三

    小林国務大臣 私が委員会あるいは本会議等におきまして、現在私どもが御審議を願っておりまするいわゆる改正案の原案を撤回する意思もございません。また私みずからこれを修正しようという意思もございませんということを申し上げたのはその通りでございます。私の気持は現在でも変っていないのであります。ただ与党におかれましていろいろな客観情勢その他を勘案されまして、与党がある程度の修正案を出すという場合におきましては、私も与党出身の閣僚でございまするから、それに対して善処いたすということをただいま申し上げておるわけであります。
  88. 堂森芳夫

    堂森委員 それ以上追究をするということはやめましょう。もし——これは仮定論でありますが、全国の医師諸君は政府与党の修正案でも承服できない、そして事態は悪化してくるだろうという見通しも持てるわけです。それは仮定でございます、将来そういうことがない方がいいわけでございますが、しかし全国の医師たちはそのような修正では応じられない、こう言っておるわけです。そこで保険医が総辞退した場合に、政府が当時、大村次官の談話も発表になりましたが、もし保険医が総辞退するならば、公的医療機関というものでわれわれは極力やっていくのだ、こういうことを言っております。しかし、公的医療機関というものは、一体どれくらいの患者を収容できるものか、あるいは外来患者を診察できるのかという問題は、非常に大きなことであると思うのです。たとえば京都府でいろいろ調査しましたのを私調べてみました。京都府で三十一年一月分の統計を見ますると、京都府下の公的医療機関というものは五十三カ所あるそうです。そのうち保健所を除くと、二十カ所しか公的医療機関がないそうであります。そうしますと、現在一月三十一日の統計によりますと、入院患者の総数が七千九百八十四人あるそうであります。そして公的医療機関で扱っておる数字が約半分で四千二百六十三人あるそうであります。外来患者数が十七万五千九百十九人、公的医療機関で取り扱っておる数が約一九%で三万四千百四十八人となっています。そういたしますると、この公的医療機関というものが扱っておる入院患者は、京都府で半分でございます。それからまた、外来は約二割でございます。かような実態で、あなたの部下が言っておるように、総辞退をしたらおれたち公的医療機関を総動員してやるのだ、かまわない、こういうことを言っているのでありますが、これ自体が暴言なんです。あなたの方では、たとえば医師が総辞退するというような気風が見えたときに、威嚇的な声明書みたいなものを発表して、医師の全国的な単一の団体である医師会と何ら懇談するというようなことをやらずに、威嚇的な声明を出してけんかを売っている。これはかなりいろいろな新聞にも書いておりました。ある新聞では社説でも書いておりました。決してあなた方がやった態度は正しくない、医師が総辞退するということは、これはもちろん問題があるけれども厚生省のやることもどうかと思う、実際当を得ていない、こういう発表をいたしております。とにかくあなた方が言うように、公的医療機関というもので、そんなにたくさんの人を扱えると思うのかどうか。私は常識を疑うものですが、実際そんな場合に公的医療機関だけでやれますか、どうですか。
  89. 小林英三

    小林国務大臣 先般の衆議院の本会議におきましても、私は、最悪の場合におきましては、辞退をなさらない医療担当者諸君並びに公的医療機関の御協力を仰ぎまして、国民諸君に御心配をかけないようにいたしたいということをお答え申し上げたのでございますが、先般の去る四月一日におきます日本医師会の役員改選等におきましても、総辞退派といいますか、その方の関係者の役員候補が辞退をされまして、従来の小畑、丸山、田沼、この会長、副会長が再選されましたということは、私は日本医師会全体の空気だったと思うのであります。これによりまして私は日本医師会の幹部並びにそれらの評議員各位の御意向がどこにあるかがうかがわれると思うのでありまして、私はこれらの幹部諸君が最悪の場合を引き起さないように善処されると考えておりますし、また私ども自身といたしましても、すでに出ております辞退書につきましても、できるだけ御理解を得て、そうして最悪の事態が起らないようにということを念願いたしておるのでございます。
  90. 堂森芳夫

    堂森委員 時間もございませんから終りたいと思いますが、さっき厚生大臣は医師会の役員の選挙で小畑さんや丸山さんが当選したということが、医師会が円満におさまる、あるいは総辞退の問題が円満におさまる一つの現われだ、こういうような御見解のようでございますが、簡単なものではございません。一会長や一副会長でどうというものではございません。この健康保険法の一部改正法律案は、全部の医師あるいは全国の関係の深い労働者諸君が根強い反対運動を展開しておるのであります。あなたがそのような安易な考え方でおられると、日本の国の医療にとって大きな不祥事を起すことは、これは火を見るより明らかであろうと思うのであります。これは質問ではございません。いろいろ聞きたいのでありますけれども、約束の時間でありますから、これをもって質問を終ります。
  91. 大坪保雄

    ○大坪委員長代理 八木一男君。
  92. 八木一男

    八木一男委員 先ほど同僚の堂森委員厚生大臣の質疑応答を伺っていたわけでございますが、一番最後に現在重大な状態になっております総辞退についての質疑応答がございました。総辞退について最終的には公的医療機関の協力を求め、その他辞退をしていない診療担当者の協力を求めて遺漏なきを期したいというようなお考えであるように思うわけでございますが、もっとこういう問題について具体的に掘り下げて御準備になっておられませんと、被保険者が非常に困ることが起ると思うわけであります。具体的な御準備が厚生省当局としてはおありになるはずだと思うわけでありまするが、それについて現在何かいろいろ具体的に考えられたことを伺っておきたいと思うわけでございます。
  93. 小林英三

    小林国務大臣 ただいま堂森さんの御質疑にも、私の考え方はお答え申し上げておるのでございますが、できるだけそういう最悪な事態はもちろん避けたいと思います。しかしながら、最悪の場合に処することもまた必要でございます。それに対しましては、関係事務当局ともいろいろ意見を交換いたしておりますが、そういう具体的な問題につきましては、必要があればまた局長からも御答弁さしたいと思っております。しかし私もたびたびそれらの医師会等の役員にお目にかかっておりまして、今日のいろいろな推移から考えてみますと、私は賢明なる医療担当者の諸君のことでございまするから、保険医というもののきわめて重大なる公共性のあることも御存じだと思いますから、結局におきまして私は最悪の事態は起らぬ、こういうふうに信じておるのであります。
  94. 八木一男

    八木一男委員 今の厚生大臣の御答弁では、はなはだ不満なのでございます。この前二月の当社会労働委員会におきまして、私がこういう保険医の総辞退が各府県の医師会において議決をされておる、また中央の医師会においても議決をされておる、こういう問題について対処する方策はどうかということを伺いましたところ、厚生大臣は絶対そういうことは起らないという私の信念だということを言われました。五回も六回も押し問答しても、結局信念で押し通されましたが、現実にそういう事態が起ってきた。そういうことを考えられると、重大な責任を御自分でお感じにならなければいけないと思っておるのでございますが、今度の総辞退の事柄でも、たとえば保険医としての診療をお医者様方が辞退なさったときにどうなるということも、起らないという信念でというようなことでなしに、起ったときにどうするかということをもっと具体的に考えておられなければならないと思う。またそういう事態を防ぐためにも、もっと真剣な考慮が払われるべきであると思うのでございます。三月二十三日の次官通牒では、いろいろと弁解がつくような、政府が最大の努力を払った美辞麗句を述べておりますが、第二項でもし各府県の医療担当者が説得を受け入れないときは、はっきり辞表を受け取れという御指示をしておられるわけでございます。各府県知事は、やはりこういう重大問題が起らないようにそれを一応預っておいてどうするというような措置考えておった府県の知事もある。そこを厚生省が非常にはっきりと受け取れ、そういうものはもう返さない、そういう非常に強い力で圧迫するというようなことを誇示し、そういうことを予測させるような方策をとられた。ところが二十三日にそういう方策をとられてから、総辞退が各府県で相次いで起った、そういう点に厚生省としてのやり方のまずかった点があると私は思うわけでございます。こういう点について事務当局じゃなしに、厚生大臣として考え直されて御反省をされたことがあるかどうか、伺いたいと思います。
  95. 小林英三

    小林国務大臣 お尋ねの二十三日でございましたか、次官通牒を出したのでございます。私もあの案文は承知いたしております。ただあの際にあの翌日でございましたか、毎日新聞だと考えますが、大見出しでもって正式に受理しろということを出したのを私は承知をいたしております。しかし少くとも私といたしましては、あの次官通牒というものは、厚生省といたしまして当然処理すべき問題であるということを信じまして、明らかに承知をいたして出したのでございます。前もって都道府県知事にもできるだけ御反省を促していただく。それから辞退者につきましても、できるだけ慰留をしていただきたい。それがどうしてもできない場合においては正式に受理をする、これは当然だと思いまして、あの際にも医師会あるいは歯科医師会等に対しまして、御辞退については一つ慎重にお願いいたしたいということもお願いいたしてございまして当時の客観的情勢からいたしまして、厚生省として当然とるべき道だ、こういうふうに確信をいたしております。
  96. 八木一男

    八木一男委員 受理するということを指示した文句は非常によけいなことであったとわれわれは考える。受理するのが当たり前で、それを明示する必要はない、それを明示するところに、受理したら返さない、次には指定しないぞというような脅迫を含んでおるというふうに一般的には解釈されておる。われわれもそう思います。医師会もそれに反発しておられる。そういうところに厚生省やり方の一人よがりのところがございます。こういう問題について、そういう措置をとられたあとで総辞退が続いたということについてもっと深刻に考え直してみる必要があると思うのでございます。  この問題はさておきましてその次の項にあります公的医療機関の協力を求める等のことで総辞退に対する措置をうたっておられますが、それだけでこの問題に対処することが具体的にできると厚生大臣はお考えでございましようか。
  97. 小林英三

    小林国務大臣 最悪の事態が万が一起りました場合においては、厚生省といたしましては、先ほど申し上げましたように、辞退書を出しておられない医師並びに公的医療機関の協力を得まして被保険者各位に御心配をかけないようにいたしたい、こう考えております。
  98. 八木一男

    八木一男委員 今御心配をかけないようにと言われましたが、実際に被保険者は非常に困る。たとえば今までそばのお医者様に見てもらっておった。ところが問題になって、五月一日から、望ましいことではありませんが、そういう事態が起ったときに、今度は公的医療機関に行った、そのときに初診料を二度取りされる、そういうときには初診料をおまけになる考えでございましょうか。
  99. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 事務的な問題でございますから、私からお答え申し上げます。お医者様をかわりました場合は、初診料はもう一度払っていただかなければなりません。
  100. 八木一男

    八木一男委員 今高田保険局長が言われましたように、初診料を二度取りされます。厚生大臣は御心配はかけないと言われましたが、被保険者はそれだけ現金をとられる。これはほんとうに困るのですが、その問題をどうされますか。
  101. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 保険医から保険医に転移をされました場合にもその問題は同様でございます。従ってお医者さんをおかわりになった場合には、他の一般の扱いと同じように当然初診料はもう一度お医者様の方でお取りになるということはやむを得ないことだと思います。従いまして、そういう面において被保険者に迷惑がかかるじゃないかという御趣旨であろうと思いますが、もちろん保険医の総辞退等が行われました場合には、被保険者並びにその家族に御迷惑のかかることは当然でございます。従ってさような事態が起らないように私どもとしては全力をあげてこれに対して努力をいたすということは当然でございます。さようなことが万が一実際問題として起りました場合には、若干の御迷惑がかかることは当然でございますけれども、その御迷惑を少しでも少くする、これが私どものとるべき最善の策であろうかと存じます。
  102. 八木一男

    八木一男委員 厚生大臣に重ねてお伺いしたいわけでございますが、公的医療機関に協力を求められましても、今のような問題もございますし、またかわった場合にも、公的医療機関と申しますのは大体遠いところにございます。すぐそばに隣り合せに国立病院があるということはございません。従って交通費がかかり、時間がかかって待たされるとか、いろいろなことがございます。ですから公的医療機関は被保険者国民には非常な影響がある、それを必ず起らないという信念で済ましておかれたのではいけない。そういう問題が起らないように最善の努力をされるべきだ、国民に迷惑をかけるよりは、大蔵省に圧力をかけて補正予算で三十五億円出させる、それでこの問題は解決するというようなことを考えられるのが厚生大臣の任務でございます。厚生大臣としては信念で起らないということだけではいけない。前に事態があるのです。起らないと言われていたが、起ってしまった。ですから今度はほんとうに真剣にお考えになるべきだ。こういう総辞退のもとであるこの政府提出健康保険改正案の悪い点、これを抜本的に直す、あるいはその案を撤回することを真剣にお考えにならなければならないときでございます。信念だけでやられないで、そういう点を考えられなければいけないと思うわけでございます。そして公的医療機関は御承知の通り非常に低賃金で労働強化をしいられておる。その人たちはここで非常に仕事が集中したならば、非常にやりきれないという立場にあるわけであります。もちろん医は仁術で、医療に従事している人たちでありますから、そのときは根限りの努力を払うでありましょうが、そういう労働強化された状態において、さらにその労働強化の度を高めるようなことは避けるようにやはり厚生大臣としてお考えにならなければならぬ。ところがそういうことが起ることをあまり気にとめられない、公的医療機関の協力を求めるから大丈夫なんだというふうに安心されておることではいけないと思うわけです。総辞退の根本でありますこの保険法の改悪を阻止し、中身が悪くなるのをとめるという点について、もっと真剣な御努力を厚生大臣としてしていただきたいと思います。厚生大臣総理大臣を口説かれればある程度見込みがあると思います。この総辞退の問題については、この程度にとどめておきます。  次に厚生大臣の根本的なお考えを再びちょっとただしておきたいと思うわけでございます。社会労働委員会において厚生大臣は、社会保障制度審議会とか、あるいは社会保険審議会とか、そういう審議会の意見を尊重するということを常々何回も繰り返しておられたわけであります。ところがこの出て参りました政府提出健康保険改正案は、社会保障制度審議会社会保険審議会の意見を尊重しておらないことは厚生大臣はお認めになると思うわけであります。社会保障制度審議会では、赤字対策の一部負担のようなことはいけない、国庫負担をうたわないのはいけないということを申しております。そうして国庫負担は、前に社会保障制度審議会では数回二割ということを繰り返しておりまして、明らかに二割国庫負担が必要であるという立場をとっておるわけであります。社会保険審議会でも二割国庫負担ということを明らかに打ち出しております。このような諸審議会の意向を尊重しておられない案を出されたわけであります。ここで尊重しようと明言されたことと相反するわけでございます。それについてどういうお考えを持っておりますか。
  103. 小林英三

    小林国務大臣 これらの諮問機関に諮問いたしまして、これらの諮問機関の答申につきましてはいろいろと検討をいたしたのでございます。たとえば赤字を全額国庫負担にすべしというような問題につきましては、一方におきましては社会保険の適用を受けていないものも相当数に達しておるのでございまして、三千万人といわれておるのでございます。これを全額国庫負担するということは、単に国庫財政の面からだけでなしに、そういうふうな理由からこれを出さなかったのであります。
  104. 八木一男

    八木一男委員 厚生大臣はそのようなお考えでは困るのであります。他とのバランスというようなことを考えるのは、大蔵省にまかせておかれたらいい。厚生大臣社会保障前進することをまっしぐらになって主張されなければならぬのに、厚生大臣がそのように消極的なことでは因ります。他に保険関係のない三千万人の人があると言われますが、それは政府が今考えておられます調査くらいではなしに、国民健康保険内容がよくなるように、国庫負担をふやして、強制適用になるような法律を積極的にお出しになったらいい。それをしないで調査ぐらいでごまかしておいて、そうしてバランスとかなんとかいうことは社会保障を担当する厚生大臣のお言葉としては不適当であります。大蔵省には大蔵大臣が別におられるのでありますから、厚生大臣大蔵大臣立場でなくて、厚生大臣立場で堂々と所信を披瀝し、閣議で主張してそれを押し通していただきたいのであります。  次に一部負担についてお伺いいたしたいのでありますが、この法案を提出されるときの説明におきまして、保険料を引き上げることは、ほとんど不可能と考えられるということを言っておられるわけであります。もちろん政府管掌保険におきましては、中小企業で非常に賃金ベースが低く保険料は今まで世界一高かったのですから、そう言われるのは当然であります。ところが、保険料を引き上げることは不可能である、従って保険料を被保険者負担することは困難であるという状態をお認めになっておりながら——健康な被保険者でも困難であるのに、病気になった被保険者が一部負担をし、よけいな金を払わなければならないということは不可能であるはずであります。それなのになぜ一部負担ということをこの案の中に盛り込まれたのか、それを伺いたい。
  105. 小林英三

    小林国務大臣 たびたび申し上げますように、政府からも相当補助をいたす、しかもこれを改正案の中に法制化いたしておるのでありまして、今日の健康保険状態においては、政府補助をいたし、被保険者も一部負担をしてやることが結局健康保険制度進歩、向上であるという考えから、さようにいたしたのであります。
  106. 八木一男

    八木一男委員 そういうことはとんでもない議論でございます。一部負担の問題は、そういう問題のときに保険で対処しようという相互扶助の考えからいたしまして、その根本理念に相反するものであります。一部負担考え方について、先ほども堂森委員からいろいろと意見が述べられたわけでありますが、厚生大臣は、ほんとうに一部負担が悪いということをお考えにならないで、ばく然と政府からも出したのだから患者も一部負担をしてもよろしいのだというお考えであるならば、これは非常に重大な問題でございます。一部負担について根本的にどう考えておられるか、もう一回はっきりお伺いしたいと思います。
  107. 小林英三

    小林国務大臣 私は政治というものはあくまでも現実のものでなければならぬと思います。今日の国家財政の見地からいたしまして、あるいはまた三千万人も社会保険の適用を受けない人があって、しかもこれらの方々医療を受ける場合においては自費でやっておられる、こういう立場におきまして——しかもこの健康保険というものは今日非常に内容進歩向上しておりますし、今後もなお向上進歩して参ります。ざらに医療費は年々増額するのでありますから、そこで政府も三十億円出し、将来もまた相当補助を出すのでありまして、被保険者にも出していただくことが結局将来の健康保険の健全なる発達になり、被保険者のためにもなる、こういうっもりで今日御審議を願っておるわけであります。
  108. 八木一男

    八木一男委員 非常にあきれ返った話でありますので、この問題についてはこの程度にとどめておきたいと思いますが、厚生大臣にこの問題について一つ御要望を申し上げますが、もっと強い態度でやっていただきたいと思うのです。私は社会党ですが、自民党鳩山内閣におきましても社会保障看板にしておられるわけであります。そこでそれを推進する役目は厚生大臣でございます。総理大臣にはこまかいことはおわかりにならない。そこで厚生大臣が、これはどうしても必要だということで徹頭徹尾食い下られましたならば、この社会保障予算通り健康保険の案の内容が悪くならないという立場にあったと思います。それが非常に声が弱かったためにこういうことになった。声を強くされないと、こういう患者とか被保険者とか、診療担当者が困るのであります。そういうような遁辞でお逃げにならないで、ほんとうに徹底的に強い大臣立場厚生行政を進めていかれることが必要であります。それができないならばみずからほかの人とかわらるべきであると思います。もっと強い態度で社会保障を進められんことを強く要望しておくわけであります。そしてこの一部負担につきまして診療担当者の人が非常に強く反対をしておられます一つ原因には、一般的にはこれによって長期治療ができなくなる。それから、患者負担が増すという点もございますけれども、そのほかに受診率が下る。受診率が下ることによって診料担当者の生活が脅かされるという問題が一つあるわけでございます。私の入手しました資料によりますると、個人の開業医の収入は一般に思われているように多いものではございません。月六万円以下の収入の人が約半数を占めておるような状態でございます。四万円以下の人がさらに半数を占めておるような状態です。その収入の中からたとえば家賃を払い、地代を払いあるいは自分の持ち物であるときにはその償却をしなければならぬ。また薬剤師の人に報酬を払い、看護婦に報酬を払い、器具の償却をなす、そういうことをしなければならないわけでございます。おまけに医師になるにはずいぶん時間がかかる。三十五、六にならなければ一本立ちの医者になれないような状態でございます。この場合、医師の収入は今社会保険がその大部分を占めておりますのに、医療費の問題については厚生省一つ考えておらない。前からそのまま据え置きである。一般に物価も上ってベース・アップもやっておられるのに、医家の収入に直接関係がある点数その他の問題については一つも配慮がない。こういう状態でざらに今度受診率が低下すれば、この人たちの収入が下る。医は仁なりと申しますけれども、経済的に安定しない限りはほんとうに後顧の憂いなく治療に没入することは、やはり人間でございますから困難でございます。やはり社会的な責任を十分に果しておる人にその生活を十分に保たせるような考え方をしなければいけない。厚生省のこの措置は今までの収入をとめおくばかりでなく、受診率の低下を通じましてベース・ダウンをしておるような状態でございます。厚生行政全般診療担当者が後顧の憂いなく診療に邁進できるような考え方にならなければいけないと思いますが、この点について厚生大臣の御所信はいかがでございますか。
  109. 小林英三

    小林国務大臣 八木さんのまさに仰せの通りだろうと思います。
  110. 八木一男

    八木一男委員 今の御答弁は私は満足するわけでございますが、それを実現するためにこの法案についても、医療費の体系についても、厚生大臣は強く御自分の今表明されました御所信が明確に生きてくるようにしていただくことを強く要望するわけでございます。  次に標準報酬の問題について少しく御質問申し上げたいと存じます。昨日の社会労働委員会におきまして、同僚の井堀委員厚生大臣に御質問をなさいました。そこで最低の一級の標準報酬を三千円から四千円に上げたのは過酷であるという問題をいろいろ質問されたわけでございます。厚生大臣からもまた政府委員からも御答弁があったわけでございますが、そこでその三千円から四千円に上げることによる財政効果は幾らであるかという質問に対しまして、約八千万円という御答弁がありました。そのときに大蔵大臣もそばにおられまして、これくらいの少い金額であるから大蔵大臣考えてくれないか、考えるべきであるというような御質問をなさいましたところ、大蔵大臣はしかと考えるという御答弁をなさいました。厚生大臣はその絶好のチャンスに、即時大蔵大臣とこの問題について御交渉になりましたかどうか、それを伺いたいと思います。
  111. 小林英三

    小林国務大臣 別に話し合いをいたしておりません。
  112. 八木一男

    八木一男委員 正直におっしゃいますのはけっこうでございますけれども、この機会にこそ厚生大臣大蔵大臣に食いつかれる必要がございます。いつも大蔵大臣の大なたのために厚生省予算はへずられておる。そうして厚生大臣社会保障を熱心に進めようとしながらも野党の攻撃にあう。このときに大蔵大臣厚生大臣は反撃しないでいつチャンスがございますか。公式の社会労働委員会厚生大臣大蔵大臣が両方おられるところで大蔵大臣は明言された。ここをつかんで、そうして補正予算なり何かでこの金を引きずり出すというようなことを即時なさらなければいけないと思う。政府委員もその機会をつかまなければならぬ。これについてどうお考えですか。
  113. 小林英三

    小林国務大臣 今の八木さんのお尋ねの問題につきましては、大蔵大臣八木さんが今おっしゃったようなことを答弁したといたしまするならば、これは今日の改正案について云々と言ったのではないと私は考えます。将来そういう問題についても考慮しようという意味じゃなかったかと思います。これは速記録をよく調べてみなければわかりません。
  114. 八木一男

    八木一男委員 厚生大臣の言われましたように速記録を調べてこの問題について再度御質問をする機会を持ちたいと存じますが、かりに将来のものといたされましても、大蔵省というところは何でも予算をへずりたがっておる。ですからその予算を出すとか考えるとかいったときに即時この問題を交渉しなければまた逃げられてしまう。そういうときに即座にその問題にとっかかられまして、厚生行政がよくいくように、社会保障前進をするような機会を強力につかまれる必要があると思うのであります。この点についても一つ御努力を要望しておくわけでございます。  次に継続給付の要件でございますが、御承知の通りこれは同僚滝井委員からこの問題については詳しく御質問がございました。特に失業をして病気になって、二重の苦しみを負っておる人々が、この要件が過酷になるためにこの保険の恩典を受けないようなことになるわけでございます。これは非常に過酷な、残酷な厚生行政であると思いますが、この点についてもう一回大臣のお考えを伺いたいと思います。
  115. 小林英三

    小林国務大臣 この問題は保険局長から詳しく答弁いたさせます。
  116. 八木一男

    八木一男委員 私は大臣の御所信を伺いたいのでございます。
  117. 小林英三

    小林国務大臣 これは健康保険自体からいいまするならば、継続給付の年限を半年から一年に延ばしたということは適切な処置だと思っております。ただそれに対して、今まで既得権として適用される人々に対しまして、今後適用にならぬような場合がございましたら、これは別途生活保護その他でやることになっております。
  118. 八木一男

    八木一男委員 その問題による財政効果は幾らでありますか。その点は政府委員でけっこうでございます。
  119. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 お答えいたします。三十一年度におきましては、この措置の財政効果はさほど現われて参りません。大体二億五千万円程度と私どもは推計をいたしております。
  120. 八木一男

    八木一男委員 先ほどの標準報酬の最低を引き上げる点といい、またこの継続給付の点といい、財政効果はそれほど大きくない。そうして非常に気の毒な人々は困るわけでございます。気の毒な人が困るような行政厚生大臣としておとりになって、それは適切であるというようなお考えは、ほんとうに困ると思うのであります。厚生大臣病人だとか貧乏な人だとか、そういう人の立場になってものを考えて、そうしてそれをよくするためにどうすればいいかという考えに立たれるのがほんとうでございまして、大蔵大臣のように赤字がどうのこうのということから先に出発されてはいけません。気の毒な人の苦痛がやわらぐような態度できめられ、それには金が幾ら要る。金が幾ら要るからその金をどうして取るんだというように大蔵省の方に要求していただきたいのであります。こういう問題についてほんとうにもっと真剣に考えていただかなければならないと思います。病気になって失業して先行きまっくらだ。病気になった、今までならかかられるところが、今度は保険の方で病気を見てもらえない、その病気は重い病気である、かからなければ死んでしまう病気である、そういうような場合には、非常な不幸がその一家に訪れるわけであります。こういうことを、この厚生省やり方で行おうとしておる。政府委員に詳しい答弁を要求したならば、おそらく被保険者とのバランスということを言われると思いますけれども、被保険者にこの問題について聞いてごらんなさい。そうした方がいいという答えはほとんどないと思います。厚生省は、ほんとうに気の毒な人を助けるという立場からそれを考えなければならぬと思う。赤字を埋めるとか、大蔵省がこう言うからへこむとか、そういう立場厚生行政考えてはなりません。もしこの問題がどうしてもだめだったら、ほかにも考え方があるわけであります。失業保険に二百億円の黒字のあることは御承知だと思います。もし厚生大臣なり政府委員なりがほんとうに真剣にこの人たちの問題に取っ組んだならば、その失業保険財政で、失業保険関連して健康保険的な給付を考えるというような考えも浮かぶわけでございます。こういうことは第二段でありまして、ほんとうは継続給付の要件を前のままにしておくのがいいのでございますけれども、どうしてもだめな場合にはそういうことも考えられて、労働省にそういうことを交渉してみるというような御用意があってしかるべきでございます。厚生大臣はそういう点についてほんとうに真剣に考えておられないような気がいたしますが、それについてどうお考えになりますか。
  121. 小林英三

    小林国務大臣 私も困った方、あるいは病気方々に対する心やりと申しますか、同情を申し上げ、そういう方々をいかに御救済申し上げるかということは、厚生大臣として十分に考えておるのでございます。ただ、健康保険の今日の赤字に対しまして、健康保険を将来りっぱな健康保険の軌道に乗せるという意味におきまして、どうしたらよろしいかという問題につきましては、私と八木さんとは見解の相違があると思うのであります。私は国家財政のみならず、健康保険の将来に対してどうしたらよろしいかという問題につきまして今日の改正案出しておるのでありまして、これに対して八木さんはいけないとおっしゃる、これは見解の相違であります。しかし私は、病人や困った人に対する同情と心やりというものは、決して八木さんに劣るものではないと思います。
  122. 八木一男

    八木一男委員 驚くべき御答弁でございまして、何をか言わんやでございます。もはや時間もありませんので、その点についての大臣のさらに強い御反省を要求いたしまして、次の問題に移りたいと思います。   〔大坪委員長代理退席、委員長着席〕  次の問題は二重指定の問題でありますが、この問題も同僚委員から詳しく触れられましたので、その年限の問題について少しくお伺いをしたいと思います。二年という年限をおきめになりましたことについて、何らか根底がおありでございましょうか。
  123. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 お答えをいたします。二年ということにつきまして算術的と申しますか数学的と申しますか、そういう根底はございません。二年という程度が妥当であろう、こういう考え方でございます。
  124. 八木一男

    八木一男委員 二年ということが妥当であろうというはなはだばく然としたものでありますが、取り消しをする要件が別にあるわけでありますから、こんな二年などという短かい期間でなく、十年でも十五年でもいいわけであります。これを非常に短かくされるところに、たとえば保険医の停年制をたくらんでいるのではないかという想像を生む原因にもなるわけであります。これを大幅に伸ばして、五年なり十年なりになさろうということは、再考慮の余地はありませんか。
  125. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 二年という期間は、医療機関としてもその間に事情が変ってくる可能性のある程度の期間でございます。今八木先生から十年、十五年というようなお話もございましたが、さようなふうにこの期間を延長する意思はございません。
  126. 八木一男

    八木一男委員 変ってくる要件というのは、お医者さんがほかに引っ越されたり、診療所を閉じられたりというようなのが要件であろうかと思います。このときはひとりでにそちらの方から届があるわけであります。そういうような要件を重視しようというところに、非常に世間の疑いを受ける要素があると思うわけであります。これは十分お考え直しをいただきたいと思います。  次に指定の取り消し、登録の取り消しをいたしましたときに、二年以上経過しないときには、知事はこれを拒むことができるというふうになっておるわけでありますが、現在の医療の中で保険医療が大部分を占めておりますときに、この取り消しという措置は非常に重い処置でございます。そういう重い処置を二年も長期間継続して効力を持たせるということは、過酷にすぎると思うわけでありますが、これは厚生大臣のお考えを承わりたいと思います。
  127. 小林英三

    小林国務大臣 この機関指定の取り消しの場合におきましては、この改正案にも書いてあります通り、個人の登録につきましては、一ぺん登録いたしましたものは、ずっと引き続いてそのまま効力があるのであります。さよう一つ御了承願いたいと思います。
  128. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 従来の規定によりますと、保険医の指定を取り消しました場合には、今度永久に再指定をしなくてもいいような法律上の建前になっております。それで今回の改正案によりますと、二年をこえた場合には、もう絶対に登録はしなければならぬ、最高二年ということであります。実際の運用におきましては、従来とも二年もたたないうちに再指定をいたしております。今後とも二年の期間内におきましても、診療担当者団体等々とよく御相談、御意見も拝聴いたしまして、それぞれの方々によりまして、二年の期間内に登録をいたすつもりで私どもはこの規定を書いておるわけであります。
  129. 八木一男

    八木一男委員 その問題の御趣旨には賛成なんでございますが、二年でも私は非常に長過ぎると思います。やはりもう少し短かくしていただきませんと、社会保険の占める率が非常に多くなりますと、医師にとっては、保険医になれないということは、非常に致命的な問題でございますので、二年も長過ぎると思いますので、さらに短縮されることをお考えをいただきたいと思います。  一番最後に締めくくりとして厚生大臣に申し上げたいのでありますが、この問題について私は厚生大臣にだいぶ失礼な態度で毒づいて参りましたけれども厚生大臣にお考えをいただきたいのは、ほんとう社会保障拡充していただきたいからでございます。野党が正しい主張をどんどんやる、それをもって野党の言うこともいいことがあるじゃないかということで、それを言質にして大蔵省に当っていただきたい、また総理大臣に言っていただきたい。そして大蔵省に対して、またほかの各省の大臣に、それよりも厚生省予算の方が大事だということを強く言っていただきたいと思います。そういう点でどうか強い立場をとられまして、そして社会保障全般行政がよくなるように、そしてまた健康保険の一部改正案、あした出るところの修正案が、今晩にもさらによくされるような御努力をもう一回やられるよう要望いたしまして、私の質問を終る次第であります。
  130. 佐々木秀世

    ○佐々木委員長 多賀谷真稔君。
  131. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 ほとんど質問出し尽されておりますので、一、二点だけ大臣にお聞きいたしたいと思います。  どうも納得ができないのは、標準報酬月額の問題でございます。これは厚生省関係だけがこういう標準報酬月額というのを定められておる。労働省関係ではこういうのはありません。現在もらっておる総賃金の総計に対して率をかける、こういうシステムになっておるわけであります。私はこのことを云々するわけではございませんけれども、たとえば二十級以上を上げる、こういう問題と一級の問題とは非常に違うと思う。二十級以上の問題は本来そういう以上の賃金を取っておるので、それを法律によってこの限度までは保険料を払わなくともいい、いわゆる免除をされておる性格のものである。ところが一級の問題は、これは本来三千円しか取ってないものを四千円に法律によって強制をする、いわば擬制的な認定をする問題でございます。ですからこの二つの問題は、本来単に標準報酬日額並びに月額の引き上げということだけでは簡単に決定することができない問題であると私は考えるのでございます。なぜ厚生省としては現在三千円しか取ってない、あるいは二千円しか取ってないものを四千円取ったものとみなして、擬制をする必要があるか、これをまずお聞かせ願いたい。
  132. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 お答えいたします。標準報酬という制度をとっておりまするのは、先生よく御存じのように、事務的に保険料徴収等につきまして非常に簡素になりまするので、そういう制度をとっておるわけであります。それは別といたしまして、三千円から四千円に引き上げるという問題と、上を引き上げる問題とは非常に意味が違うという仰せでございます、これも私よく先生の御趣旨は了解できるわけでございます。さようなことを考えまして、今回上の方は三万六千円から五万二千円まで大幅に引き上げたのでございますが、下の方は一千円にとどめたわけでございます。しかしその一千円も引き上げない方がいいではないかという御議論、これもたびたび委員会で御指摘になりました御議論でございます。それについて私がるる御説明を申し上げておりまするように、健康保険というものは給付の方が大部分は医療の給付でございます。従って医療の給付はいわばフラット的な給付になるわけでございます。その意味におきまして、すでに一人当りの給付が大かた一万円にも達しておるわけでございまするから、若干下の方は背伸びをしてもらい、上の方は頭打ちをするという考え方が、従来の標準報酬でもとられておるわけでございます。過去の標準報酬の等級改訂の場合におきましても、現行の三千円に引き上りましたときにも、あるいはその前にたしか二千円だったと思いまするが引き上りましたときにおきましても、その最低に満たない方々相当なパーセンテージあったわけでございます。今回の改正の程度はもちろんでございますし、それ以上のパーセンテージを示しておることもあったのでございます。さような過去の例から申しましても、まず四千円程度のものであれば無理のないところであろう、こういう私ども考え方でございます。
  133. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私は過去にあったということは了承できるわけでありますけれども、どうもこのたびのその引き上げ擬制については了承できない。なるほど給付はフラットであるということでありますが、それならば税金だって五千円取っておるものを一万円とみなして税率をかけるかというと、税金の方は累進課税になっております。逆なんです。これは国家から受ける恩恵というのはあまり変りがない。ところが現在実際に三千円しか取っていないもの、あるいは二千円しか取っていないものを、この男は四千円取っておるぞ、こうみなして法律によってそれを強制的に取るというところに大きな問題があると思うのです。事務的な簡素化といいましても、三千円というランクを置いても大した差はないのです。あなたの方では統計を出して御調査になっておりますが、大して差がない。何も一級を増したからといって、それによって非常に事務が複雑化するということはどうも考えられない。本来私は、四千円取っておるものを四千円とするということについては異議はない。それをおやりになるには何も異議がないのですが、三千円あるいは二千円しか取ってないものを法律によって四千円と擬制をして、みなして、そして強制をするということはふに落ちない。厚生省はずっとおやりになっているというけれども、労働省の方はそういうシステムはとっていないのです。失業保険だって、あるいはそれに対する厚生年金だって、同じような関係がある。ですから、本来給付を受けているのにそれをなぜ法律によってよけい、高いことにみなして、それを擬制して取るか、ここに私は非常に問題があると思う。大臣、どういうようにお考えであるか、これをお聞かせ願いたい。
  134. 小林英三

    小林国務大臣 三千円未満であった方々を今度は四千円にするということに対して、今お説のようなお言葉があったのでありますが、これはその通りであると思います。しかしこの三千円級の方は、三千円未満でありました方たちを調べてみますと、大体この表にもございますように、全国で十一万何がしあるわけでありまして、統計によるとこれらの方々の大部分、八割までは御婦人の方でございます。これは一家の生計をみずから営んでいない方々であります。そこで千円上りますと一カ月に三十二円五十銭の負担が増すことになるのであります。しかし今保険局長も御説明申し上げましたように、医療費はフラットになっておりまして一年に約一万円程度の給付をいたすわけであります。このくらいの程度のもりはがまんを願うというような意味で最低を四千円とし、最高を五万二千円といたした、こういうことでございます。
  135. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 給付が一万円であるから下のものは高く取ってもいい、こういうことはどうも理由にならない。それなら社会保険をおやめになったらいい。相互扶助の精神を、考え方としては根本的に破壊するものです。あなたの方で率を同じにして、そして標準報酬日額を引き上げられているけれども、これを逆にいえば三千円のものは五千円あるいは一万五千円の人より多くの率を納めている、こういうことになるわけです。ですから私はどうも納得ができないのです。下の方ほど高い率を納める、こういう保険が一体ありますか。そういう税金の制度がありますか。これをよその省がするならいざ知らず、厚生省がおやりになる仕事じゃ絶対にない、かように考えるわけですが、もう一度大臣の所見を承わりたい。
  136. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 お答えいたします。いろいろ税金の累進的な問題とか、御引例がございましたが、税金につきましてはこれは所得の再配分的な思想を十分に持っておるのでございます。社会保険はただ収入に応じて同じ料率保険料出し合うという思想だけにとどまっておりまして、そこにさらに累進的な所得再配分的な思想は——これはいろいろ御議論のあるところでございますが、今日とっておらないのであります。しからば賃金の実態に応じて取ったらいいじゃないかというただいまの仰せでございますが、それも確かに一つの御議論だと存じますが、私か繰り返して申し上げておりますように給付がフラットであるから、下の方は若干の背伸びをしてもらい、上の方は頭打ちをするということで、今までの保険標準報酬やり方はきておるわけであります。なおそれに、ただいま大臣がお答えになりましたように、三千円未満という方々はこの収入によって一家の生計を支えておられる方々でないということが大体において申せると思うのであります。さようでありますのにその方が、たとえば娘さんが勤めておられ、その方の家族ということによって、その両親も兄弟もおじおばも今回の健康保険給付は受けられるわけです。さような実態関係から申しますると、むしろ中間的な家族持ちで、一万円がらみの方々の方が苦しいお立場にあるということも想像できないことはないのでございます。さようなことをあれこれと考えましてまた従来の例もさような例になっておりますので、若干それに満たない方々がございますけれども、三千円を四千円に引き上げ、なおまた過去の平均標準報酬の指数と最低最高の平均標準報酬の指数というものを私どもはとっておるわけでございます。もう少しわかりよく申しますと、三千円と最低をきめたときの政府管掌全体の平均標準報酬が幾らであった、今日の平均標準報酬は幾らになっておる、その指数でもって最低も考えていくということになりますと、最低といたしましては四千数百円と、もう少し高くなるわけでございます。さような指数等もとりまして、私どもとしてはこれが今日の保険の建前から申しまするならば妥当な数字であろう、かような見解のもとに御提案を申し上げておる次第でございます。
  137. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 全く驚き入った議論をなされるのですが、私はそういう議論が、政治をつかさどる者の責任ある答弁かと疑わざるを得ない。たとえば大部分が婦人である、これは山下さんにお聞きしなければなりませんが、婦人であれば高くかけられていいのですか。これをまずお聞かせ願いたい。
  138. 山下春江

    ○山下(春)政府委員 女だから高くとっていいということではございませんので、この収入によって一家を支えていると思われない収入であるということも、勘案してあるという意味でございます。
  139. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 ここは社会労働委員会ですから言いますが、最低賃金制度の調査委員会が報告書を出しておる。これは三カ年かかっておる。その報告書を見れば——たった四業種しか限定をして調査をしておりませんけれども、驚くべき低賃金である。これは井堀さんから話がありましたでしょうから私は言いませんが、しかもそれは生計を支えておる人なんです。ですから私はこれはきわめて重大な問題だと思う。十一万八千人だ、これしかいないのですよ、こう言われるならば、じゃ十一万八千人については恩恵を与えなくてもいいのか、こういう議論になる。しかも健康保険赤字だからということになれば、さらに大きな問題として、厚生年金までその料率を引き上げられようとしておる。一体何のために厚生年金の標準報酬日額を引き上げ、犠牲にする必要があるのか、これをお聞かせ願いたい。
  140. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 お答えをいたします。厚生年金の最低を四千円に引き上げておるのでございます。実は健康保険の方におきましては、社会保険審議会等におきましてもいろいろと御議論があったのですが、厚生年金の方では四千円に引き上げることについては、さしたる御議論はございませんでした。というのは厚生年金は御存じのように給付の方がそれだけふえるわけでございます。そういう関係で厚生年金の方としましては大して御議論なく、その引き上げの問題は審議会でも了承されておるわけであります。これを引き上げました理由は、御存じのように健康保険と厚生年金とは同じ事務としてこれを実施いたしておりますので、事務上の便宜等も考慮いたしまして引き上げたわけでございます。
  141. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 厚生年金の場合は給付がそれだけふえるからと言われますけれども、これにもフラットがあるわけです、必ずしも正比例的に上るわけではありません。やはりそこにも議論があるわけです。ですから上る分よりも納める分の方が多いのですよ、この人たちはそういうことになるでしょう。フラットが結局一定しているのですから。それに、加給額というものは比例しますけれども、その加給額の比例するのはわずかですから、結局その人たちは従来よりも損をするということになるわけです。これについては議論がなかったというが、それは議論しなかった方が悪いので、これも私は重大な問題であると考える。健康保険が上り、厚生年金が上る、こういうことで、しかも厚生年金というものは今赤字だから困るという情勢にはないのです。保険経済から見て全然これを上げる理由がない。ただ事務手続が両方違ったら困る、そんなことは私はいやしくも役所がやる以上は、この貧しい人のために一級ぐらいランクをよけいつけてもいいじゃないですか。しかも厚生年金の方は上の方はそのままにしてあるのですから。本来厚生年金と健康保険標準報酬月額が違っても、何らおかしいことはない。保険経済が違うのですから。そこで大臣はこの厚生年金についてはどういうように考えられて出されておるのか。ただ健康保険を変えたから厚生年金も変えるというような、簡単な考えでは困るのですよ。この対象になる人がきわめて貧しい人ですからね。一つ大臣答弁をお願いしたい。
  142. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 お答えいたします。フラットの部分があるのではないかという、年金について仰せでありますが、これはごもっともでございます。ただ大体の考え方としましては、フラットの部分につきましては国の負担、事業主の保険料というふうなものが、大体のフラット的なところに引き当てになったような格好に実はなっておるわけでございます。従って今回引き上げることによりまして被保険者がこの場合には損をなさるということは、厚生年金におきましては考えられないというふうに、私自身は思うわけでございます。
  143. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 給付のトータルからいえばそういうことです。給付のトータルはこういう人たちは多く受けるのですが、私は今度の増額した保険料と受ける方とは比例的に見合わない、かように考えておるわけであります。しかも三千円くらいの人は実質的には、両方とも料率が上るということには耐えられない、かように私は考えるわけです。自由民主党は修正案を出されるそうですから、この点を一つよく考えていただきたい。私はその修正案に期待いたしまして、この問題については終ります。  次には厚生省を激励する意味において一言申し上げたい。それは現在の健康保険赤字原因はいろいろありますが、私はその一つの問題として労災保険が入ってきていると思う、これはやはり見のがすことのできない問題であると考えるわけです。それは公傷いわゆる業務上の疾病が健康保険の中に化けて入ってきている。これは最近の統計を見れば明らかにそういう点がうかがわれるわけです。なぜかといいますと、最近の労災はメリット制になりまして、要するにけがが多くなりますと料金がその業種について、あるいはその事業所については高くなるのです。そこで結局労災保険には出さないで健康保険に全部切りかえて、どんどん出してきておる。それが証拠には大きな重傷とか死傷にはありませんが、軽傷が統計上きわめて少くなってきておる。軽傷が少くなってきておりますから、おそらくけがをしても認めないのだろう、こう言いますと、労働者はさほど反対はしていないのです。なぜ反対をしていないかというと、健康保険で見てもらっているから、反対をしていないのです。ですから労災が健康保険の中にもぐり込んでおる、こういう問題についてはこれは小さな金額ではないと私は考えておるわけです。業者の中には普通の業務上の疾病は健康保険で見てもらえるものだと考えている人が多数ある。この点について厚生省当局ではどういうように御判断になり、それに対処する気持があるかどうか、お聞かせ願いたい。
  144. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 業務上の災害が健康保険にまぎれ込んで参りましては、これは制度の根本をみだることになりますから、先生御指摘のように、かようなことはあってはならないわけであります。従いまして私どもといたしましては、従来もこれについて十分な努力をいたしておりますが、将来はより一そうはっきりとこれらを排除するように努力をいたしたい、かように考えております。
  145. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 あなたの方で、従来健康保険法の、あるいは六十七条を適用するのかあるいは虚偽の申告でいくのかそれは知りませんけれども、この使用者に対してどういう処置をなされたことがあるか、これをお聞かせ願いたい。
  146. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 さような事態がわかりますれは、私どもの方としましては切ってしまうといいますか、保険給付をいたさない。なおそれにつきまして事業主等にいろいろな不正な事実がございますれば、それぞれの条文に従いまして事業主等を処断いたす、かようなことになるかと考えております。
  147. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 大体事業主を処断するというが、あなたの方は被保険者については、そういうふうな受給関係があれば打ち切るとか何とか書いてあるのですが、使用者についてはこの条文では書いてないのですよ。ただ虚偽の申告という点の罰則があるだけです。ですから、むしろ現実は、被保険者の方では行きたくないのですよ。ところが事業者の方が、これは健康保険だ、こう言って健康保険でやっておる。あなたの方はそういう事実があったら打ち切るといいますが、既往の分についても払い戻しの請求をしたことがあるかどうか、それをお聞かせ願いたい。
  148. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 従来は健康保険法の上におきまして明確な規定がなかったのでございますが、今回改正案には、さような場合には事業主も連帯をしてその金を支払わなければならないというふうな規定を挿入いたしたようなわけであります。
  149. 小島徹三

    ○小島委員 関連して。今の御質問は非常に重大だと思うのです。多賀谷君は相当労働問題については詳しい方であり、おそらく選挙区方面におきましてもそういう例をたくさん知っておられるのじゃないかと私は思うのでありますが、もしそういうことが事実あって、そうして今まで厚生省においてそういう問題に対する調査ができていないということでありますならば、これは健康保険の将来にとって重大なことであると思いますから、果して今までそういうことについて調べたことがあるかないのか、あるとすればそういうものに対してどんな処置をとったことがあるのか、その点を一つ示してもらいたい。
  150. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 調査をいたしまして、業務外の災害ではないということになりますれば、それは排除をするというふうなことが審査の場合とも重要な一項目として掲げられているわけであります。さようなことにも十分心を配って運用をいたしておるつもりであります。
  151. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 今の点はきわめて慎重になさらぬと、第一業者は、大臣もおられるけれども、僕は川口市なんかは労災でしないで、ほとんど健康保険で全部見ておるのではなかろうかという気さえするのです。やけどなんていう小さなものは、これは健康保険であるということでみんな健康保険に持っていく、こういうことが健康保険の大きな赤字を作っておる一つ原因でもある。なぜ労災で見ないかというと、労災の場合は必ずそれは安全衛生規則かどこかに違反しておるであろう、こういうことでそのけがをさしたということで、第一その施設その他を改善しなければならぬという問題になる。さらに統計的にそれがいろいろ云々される。そうすると、メリット制によって労災保険金が上る。さらに犠牲者を出さなければならぬ。要するに基準法違反の犠牲者を出さなければならぬ。こういうような問題がからんでおりますから、業者の方では、そういうことよりも健康保険で逃げた方がいいのですよ。労働者の方はどっちでもいいのです。給付を受けさえすればいいのですからこれは黙っておる。ですから健康保険に労災がまぎれ込んでおる。なぜ私がこういうことを言うかといいますと、最近は軽傷が非常に少い。死ぬ者も重傷も多いのに、軽傷だけは少い理由はない。統計は、軽傷だけが少くて重傷とか死者が多いということはない。同じように増加なら増加していかなければならない。ところが軽傷は非常に減少しておるのに、重傷と死者が多い。これは明らかにどこかに隠れておる。そして労働者の方はけがをしても黙っておるわけにいきませんから、どこかで治療を受けておる。これは結局健康保険へ逃げておるのです。これはよその統計から見ると大体実証できると考えるわけです。業者の中には私に対してこういうことを計った人があるのですよ。これは健康保険で大体普通の労災のけがは見るんだろう、そういうふうに思っているのです。ただ打ち切り補償とか特別の場合にのみ労災でやる、ほかはみんな健康保険でしょう、こう思っている者すらある。大体それをあやまちと思っていない。だから少くとも、この現行法の六十四条あたりは被保険者のことが書いてあるけれども、やはり被保険者と同時に、そういう業者に対しては給付の停止をするとかというように、給付を制限する必要があると思う。さらに、打ち切りだけでなくして、既往の分については損害賠償の請求をして、労災保険の方からもらわなければいかぬ、こういう制度を早く確立する必要があると思うのです。この点を私は一つ御注意を申し上げて質問を終りたい、かように考えます。
  152. 滝井義高

    ○滝井委員 関連して。実は千円以下の軽い外傷というものは事業主負担なんです。ところが、この千円以下は事業主負担というのは、まとめて払うのは、小さな事業所には実は莫大な額になるのです。いわばその事業形態からいえば、相対的に莫大になってくる。しかもすぐにその現場で公傷証明を出せばいいが、とにかく医者に行っておけ、こういうことになる。そうして軽い外傷は医者に行くわけです。そうしますと、医者に行くと、二、三日行っているうちになおってしまう。そこで今度は現場で公傷証明をもらおうと思うと、なかなか現場の係が現場証明を出さない。現場証明を出さないということになると、医者の方ではこれは何とかしなければならぬことになる。そうしますといつの間にかこれは健康保険。あれはどうも現場証明が出ないので、自分が誤って用具で手を打ったのでございます、こういうことになる。そうすると、これは公傷であると思われておっても、実際に現場から証明を出してやらなければ治療した医者というものは、これは健康保険証を持ってくれば拒否するわけにはいかない。健康保険にしてしまわざるを得ない。だから事業主は、千円以下のものは自分が負担しなければならぬという経済的な面と、労災がだんだん多くなってくるとメリット制になるという、こういう両方の面から自然発生的に健康保険にいってしまう、現在はこういう制度の形になっている。従ってそういう点では確かに、労災保険というものについては赤字にならぬ一つのブレーキにはなっておるが、どうもそれが健康保険にしわ寄せされている。ちょうど結核と同じですよ。労災と結核は両方から健康保険に攻め寄せている、こういう形になる。これは現在の中小企業の実態から考えて、なかなか非常に微妙な問題をかもしているということなんです。だからこれは、あなたの方では相当積極的にやらないと、これは医者の方しかやっていない。医者の方は小さな外傷は赤で公傷と書いて出せ、こういっている。そうしてほんとうにお湯をひっかけてやけどしたものまでも調査にくるのです。これは厳重に調べておりますが、しかし実際はなかなかそれが実態がつかめない。それは医者も、来たら実態が現場から証明が出ぬ限りは、医者の方で証明するわけには参りませんから、保険証を持ってくれば健康保険にせざるを得ない、そういう実態がある。この点は労働省当局とおたくの方で十分合図をしてやる必要がある、こういうことなんです。それは大臣の鋳物なんかにも多いということをおっしゃっておるわけなんで、これは一つ大臣もそういうことはよくおわかりだと思いますから、これはお願いしておきます。
  153. 植村武一

    ○植村委員 ただいま議題になっております三法律案につきましては、当委員会に付託されまして以来きわめて熱心に質疑応答を重ねられて参ったのでありますが、大体質疑も終了いたしたと考えられますので、これにて質疑は打ち切られんことの動議を提出いたします。
  154. 佐々木秀世

    ○佐々木委員長 ただいまの植村君の動議について採決いたします。植村君の動議に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  155. 佐々木秀世

    ○佐々木委員長 起立多数。よって、本動議は可決せられ、三法案の質疑は打ち切ることに決しました。  明七日は午前十時より開会することといたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時五十一分散会