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1956-04-04 第24回国会 衆議院 社会労働委員会 第31号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年四月四日(水曜日)    午後二時十五分開議  出席委員    委員長 佐々木秀世君    理事 大坪 保雄君 理事 野澤 清人君    理事 藤本 捨助君 理事 岡  良一君    理事 滝井 義高君       植村 武一君    大橋 武夫君       亀山 孝一君    川崎 秀二君       熊谷 憲一君    小島 徹三君       小林  郁君    高橋  等君       田中 正巳君    中村三之丞君       八田 貞義君    古川 丈吉君       亘  四郎君    井堀 繁雄君       栗原 俊夫君    堂森 芳夫君       八木 一男君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 一萬田尚登君         厚 生 大 臣 小林 英三君  出席政府委員         大蔵事務官         (主計局次長) 宮川新一郎君         厚生政務次官  山下 春江君         厚 生 技 官         (公衆衛生局         長)      山口 正義君         厚生事務官         (保険局長)  高田 正巳君  委員外出席者         厚生事務官         (保険局健康保         険課長)    小沢 辰男君         厚生事務官         (保険局厚生年         金保険課長)  松田 盛進君         専  門  員 川井 章知君     ————————————— 四月三日  療術既得権存続に関する請願三浦一雄君紹  介)(第一七三二号)  同(中嶋太郎紹介)(第一七三三号)  同(吉川兼光紹介)(第一七六三号)  同(鈴木直人紹介)(第一七六四号)  同(森清紹介)(第一七六五号)  同(林博紹介)(第一七六六号)  同(助川良平紹介)(第一七六七号)  同(木村文男紹介)(第一八一六号)  健康保険法改正反対に関する請願小笠公韶  君紹介)(第一七三四号)  同(稻村隆一君紹介)(第一七五八号)  同(猪俣浩三紹介)(第一七五九号)  同(中原健次紹介)(第一七六〇号)  同(西尾末廣君紹介)(第一七六一号)  同外一件(柳田秀一紹介)(第一七九九号)  あん摩師はり師、きゆう師及び柔道整復師法  の一部改正に関する請願小川半次紹介)(  第一七五六号)  同(保科善四郎紹介)(第一八一八号)  同(椎名隆紹介)(第一八二六号)  教護院国営化に関する請願小林信一君紹  介)(第一七五七号)  美容師法制定に関する請願井谷正吉紹介)  (第一七六二号)  日本赤十字社法改正に関する請願安平鹿一  君紹介)(第一七六八号)  同(穗積七郎紹介)(第一七六九号)  同(石村英雄紹介)(第一七七〇号)  同(稻村隆一君紹介)(第一七七一号)  同外一件(加賀田進紹介)(第一八〇〇号)  同(松尾トシ子紹介)(第一八〇一号)  国立病院等における看護婦の産休、病休のため  の定員確保に関する請願池田禎治紹介)(  第一七七二号)  同(櫻井奎夫君紹介)(第一八〇二号)  健康保険制度拡充強化に関する請願福永一  臣君紹介)(第一八一七号)  理容師美容師法の一部改正反対に関する請願(  愛知揆一君紹介)(第一八二五号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  健康保険法等の一部を改正する法律案岡良一  君外十二名提出衆法第二号)の撤回許可に関  する件  健康保険法等の一部を改正する法律案内閣提  出第七八号)  厚生年金保険法の一部を改正する法律案内閣  提出第七九号)  船員保険法の一部を改正する法律案内閣提出  第八五号)     —————————————
  2. 佐々木秀世

    佐々木委員長 これより会議を開きます。  この際お諮りいたします。岡良一君外十二名提出健康保険法等の一部を改正する法律案につきまして、正規の手続をもって撤回の申し出がありますが、本案はすでに委員会議題といたしております関係上、衆議院規則第三十六条によりまして、委員会許可を得なければなりませんが、これを許可するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 佐々木秀世

    佐々木委員長 御異議なしと認め、本案撤回許可することに決しまし
  4. 佐々木秀世

    佐々木委員長 内閣提出健康保険法等の一部を改正する法律案厚生年金保険法の一部を改正する法律案、及び船員保険法の一部を改正する法律案議題とし、審査を進めます。質疑を続行いたします。岡良一君。
  5. 岡良一

    岡委員 政府の御提出にかかる健康保険法の一部を改正する法律案につきましては、すでにその中核に触れた御質疑同僚滝井委員からしさいに展開をされまして、その御答弁については私どもことごとく納得をいたしかねておるのでありますが、なお私はいささか観点を変えて、この改正案なるものか事実改正案であるのか、改悪案であるのか、日本の社会保障制度を前進させるキー・ポイントとして期待できるのか、それともこれを転機として、改悪方向後退方向に一歩進むのではなかろうかという点を、国の予算とり関連において実は質問をいたしたかったのであります。そういうことからかねて大蔵大臣の御出席要求いたしておりまして、厚生省関係の皆さんにはさして質問予定もありません代大蔵大臣がお見えになるまでの側、多少お尋ねしてみたいと思います。私どもはかねてから国庫負担の二割ということを主張いたしております。私ども主張につきましては、別にこれという新しい問題ではないのでありまして、厚生省でも年来予算省議では、一割五分等の国庫補助あるいは負担政府管掌健保財政については要請しておられたわけであります。現に昨年の三月に厚生省の方で発行いたされました健康保険の現状というあのリーフレットを見ましても、やはりその旨が強く主張をされ、かつまたその理由についてもしさいに書いてあるのであります。ところが今度お出しになった改正案を見ると、この国庫負担という、いわば厚生省としての伝家の宝刀ともいうべき多年の御主張が著しく後退をいたしておることは、私から御説明申し上げるまでもありません。これは一体いかなる事情によったものでありましょうか。
  6. 小林英三

    小林国務大臣 私は先般も当委員会におきまして申し上げましたように、健康保険赤字財政につきましては、でき得れば医療費の一割程度国庫負担を仰ぎまして、そうして健康保険財政を軌道に乗せていきたい。国庫から医療費を約一割の負担を願い、その旭の問題につきましては、被保険者の一部負担を願って健康保険発達向上に持っていきたい、こういう念願を持っておったのであります。従いまして今の岡さんのおっしゃるように、二割云々ということとは違っておりますけれども、私が就任いたしましてから、三十一年度予算につきましては、厚生省といたしましては、最初四十億国庫負担を期待をいたしていたのであります。しかしながらいろいろな御議論もございましょうが、とにかく国の財政の点から勘案いたしまして、最終的には私ども希望通りにならないような国家財政見地に立ちまして、私どもといたしましては、少くとも被保険者一部負担に見合うだけの国庫補助要求いたしまして、そうしてとりあえず今年度は三十億の国の補助をもらうことになっております。さらにこの問題につきまして、党と大蔵厚生両相が寄りまして、これはやはり社会保障の確立の見地からいたしまして、国が暫定的でなしに、引き続いて国庫補助をいたすべきであるということからいたしまして、ただいま御審議を願っておりまするように、国の補助を法制化いたしたのでございます。
  7. 岡良一

    岡委員 そういたしますると、結局詰まるところは今日の一部負担というものは厚生省の当初のお考えとしては、ある程度の一部負担、しかし国は一割を負担するという建前で交渉したが、国の財政的なもろもろの理由から、さらに一部負担を強化せざるを得なかったということで、この一部負担というものにはやはりそうした国家財政上の見地が強く反映をしておる、こういうふうに理解をしていいわけでございますね。
  8. 小林英三

    小林国務大臣 一部負担の問題につきましては、国の健康保険財政全体の面からいたしまして、われわれといたしましては、今日考えておりますような一部負担考えておったのであります。しかしこれにはやはりどこまでも予算でありますから、厚生省収支数字大蔵省収支数字等に多少の食い違いがございました。この点につきましては両省の間におきまして綿密に検討いたしました結果、今日の健康保険財政収支数字が最後にきまったわけでございます。
  9. 岡良一

    岡委員 私がお尋ねをしておるのは、先ほどの大臣の御説明だと、厚生省は当初一割の国庫負担大蔵省要求をした。しかしながら国の財政事情があったためにそれは実現しなかった。その結果として今度のような一部負担に変更するというような御説明があった。そういたしますればこの一部負担は、やはり広い意味では国の財政的な理由に基くものだ、こう理解せざるを得なかったのですが、その点を簡単なことでございますからお答え願いたい。
  10. 小林英三

    小林国務大臣 私が最初考えておりました点から考えますと、国の補助関係から多少の相違は出てきたと考えております。
  11. 岡良一

    岡委員 それでは一部負担の問題で、私ども多年臨床に携わっておる者の立場から実態を指摘して、厚生省のお考えをただしたいと思うのですが、現在政府の原案によると入院患者では一日三十円、一カ月九百円向う六カ月負担をするということになっております。これは現在の政府管掌の被保険者にとっては耐えられる程度負担である、こういうふうにお考えでしょうか。
  12. 小林英三

    小林国務大臣 私が先ほど岡さんに御答弁申し上げました中に、私の聞き違いがあったように考えます。国庫負担最初ども考えておりました医療費の一割程度という問題が三十億円に減少したことは、これは申し上げた通りでありますけれども、その国庫負担というものが減少いたしましたために一部負担が多くなったというようなことではないのでありまして、私岡さんの御質問に聞き違いがあったようでありますが、その点は一つこの際はっきりしておきたいと思います。
  13. 岡良一

    岡委員 数字の問題ですから保険局長からお答え、願います。
  14. 高田正巳

    高田(正)政府委員 先ほどの岡先生の御質問の御趣旨は、最初厚生省が四十一億程度、いわゆる一割の国庫負担要求しておった。それが三十億に減った。従って一部負担はかえって赤字を埋めるために当初予定をしておるのよりそれだけふえたのではないかというふうな御趣旨に拝聴できるような御質問であったと思います。そうでは決してございません。私どもが実は考えておりました一部負担というのは、今日御提案を申し上げておる一部負担よりは最初はまだ金額が大きかったのであります。いよいよ社会保険審議会等に諮問をいたしました一部負担というのは二十三億六千万円程度で、ございまして、大体今と同じようなことであります。予算の方が国庫負担が減りましたけれども、それは一部負担金額には全然影響いたしておりません。全体の収支を、先ほど大臣がおっしゃいまするように、私どもの来年の医療給付費の伸びの見方と、大蔵省見方とに若干の調整を要する点がございました。さようなことで、全体のそういう問題で調整をいたしたわけで、ございまして、別にそのために国庫負担要求よりは減ったために一部負担金がふえたということではないのであります。  それから第二点の入院患者から三十円六カ月間とることは、負担に耐えると思うかどうかという御質問と拝聴いたしました。これは相当長期になりますると、二年も三年も入院をしておるというふうな人々になりますると、入院のためにいろいろな費用がかさみまして、相当問題があろうかと存じまするが、六カ月程度であるならば、一日三十円ということであるならば、私どもとしてはまず御負担を願えるのではあるまいか、こういう建前からこの案を御提案を申し上げておるわけでございます。この一部負担傷病手当金とを関連せしめて考えることは、いささか問題があることは十分承知をいたしておりまするが、一応参考傷病手当金というようなものを考えました場合にも、一番少い人で、今回標準報酬が四千円に引き上っておりまするので千六百円傷病手当金が支給されるわけでございます。もちろんこの一部負担は独身の場合に千六百円一番少い方で支給されるわけでございます。これと直ちに一部負担金額考え合せますことは、さいぜん申し上げましたように、いろいろ問題がございますけれども、一応そういうことも参考一つにはいたしまして、私どもは三十円という金額をきめたわけでございます。
  15. 岡良一

    岡委員 それでは政府管掌健康保険の場合、被保険者標準報酬平均一万一千余円ということになる。そこで最低を取らなくて、この平均の一万一千余円ということにして、傷病手当金を六割ですね。そうすると、七千円弱ということになる。こういう推算にはいろいろな問題はありますけれども、大づかみに見て、そのうちから月月九百円を払わなければならぬ。これは家族持ちで、かりに奥様と子供がいるというような場合に、あなたの身になってみて、月々九百円というのは大して負担にならないと言い切れるでしょうか。
  16. 高田正巳

    高田(正)政府委員 大体平均一万二千円でございますから、六割としておきますれば七千二百円ということに相なるわけであります。七千二百円の中で九百円ということは、果して負担がし切れるであろうか、どうであるか、こういう趣旨の御質問でございますが、もちろん標準報酬の高だけ、あるいは傷病手当金だけでその方の負担能力を判断いたしますことは、これはいろいろ問題があるとは存じます。それから七千二百円のうちで九百円ということはある程度負担ではあろうかと存じますが、翻って入院に要する給付総額というふうなものを考えました場合には、比較長期にわたります結核入院等においても、月に一万四、五千円程度給付はいたしているわけであります。この給付の額と比較をいたしますことにおいて、また入院をすべくしてベッドの不足等入院のできない在宅患者とのいろいろな意味比較の上において、一日三十円程度であれば諸般の事情を考慮して、まずやむを得ない金額ではあるまいか、かような私ども考え方なのでございます。
  17. 岡良一

    岡委員 その被保険者がかりに結核にかかって長期の療養を要する。最近は給付の内容も、特に結核に関しては非常に向上している。従ってその給付は対価としては一万四、五千円にもなろうかと思う。あるいはまた結核にかかって入院はしたいが、できない在宅患者比較して、大体相応ではなかろうか。しかしこれは理由にならないと私は思うのです。問題はやはり二人の家族を持った被保険者入院をする。そこで七千円程度になる。これから九百円を払わなければならぬ。生活保護法東京都における三人家族医療扶助教育扶助住宅扶助を合せての金額は幾らでしょうか。
  18. 高田正巳

    高田(正)政府委員 生活保護法には住宅扶助とかいろいろなものがついておりますので、私は正確な数字をただいま承知いたしておりませんですが、大まかなところで四、五千円程度になるのではあるまいかという気がいたしますが、十分調査をいたしましてからお答えいたします。
  19. 岡良一

    岡委員 それは非常にうかつなお話です。私は実は調査をしていただいたのですが、私も何十何日というところまでの数字は省略いたしまして、四人家族東京都の生活保護生活扶助それから住宅扶助教育扶助そ他一切を含めての扶助総額は一万七百余円です。でありますから、これを三人に落せば大体四分の三でいけるわけなんです。まあ七千五百円見当ということになるわけです。そうすると、今度せっかく働いて、結核などという病気はそう自分の個人の過失で起る病気でないことは御承知通り、しかも長期を要する。その病気になって病院入院した。そうすると、手取り賃金生活保護法扶助額並みに落されてくるわけです。その中からなお九百円か病院に支払わなければならぬということになれば、生活保護法扶助などというのは最低のものなんですが、それよりもまだ手取り賃金が低い。それをさらに一部負担で取られるということになれば、これはその身になってみて、入院をするということについてはためらわざるを得ないのじゃないかと私は思う。事実そういう実例がある。この点どうお考えでしょうか。
  20. 高田正巳

    高田(正)政府委員 岡先生のお説は一応ごもっともと拝聴いたします。ただ生活保護法御存じのように主としてその人間の食いぶちというものが生活保護の中で一番大きなあれを占めている。三人家族でかりに一人が病院に入って一切の治療を受け、生活もできるということになりますと、そこでだいぶ家計の方は生活保護法で参りますれば違ってくるわけです。さような点もございますので、私ども今直ちに生活保護法基準額をこの傷病手当金の額と比較いたしまして、先生が仰せのように直ちにさような事態が招来するというふうには私ども考えないのでございます。なお入院長期にわたりました場合においては、いろいろな形でそれまでのたくわえ等もなくなって参りましょうし、長期患者につきましては非常にお気の毒な状態に立ち至るということを私ども考えますので、それで六カ月ということに一応切ったわけです。まず一カ月九百円程度のものであれば、決してどなたも楽とは私は申しませんけれども、まずこの程度のことであれば何とか御負担をいただけるのではあるまいか、こういうような考え方に立って私どもは御提案を申し上げているわけでございます。
  21. 岡良一

    岡委員 東京都における三十年十月現在の四人世帯の生活保護家庭平均収入は一万大百四十四円ということになっている。その中では飲食費が六千四百十五円ということになっておりますから、まあ大きくつかめば一人の飲食費は千五百円と見れるでしょう。そこで一万二千円の標準報酬を前提として、これが六割の七千二百円ということになる。入院をすると千五百円は生活保護法ならば要らないわけです。従って六千円のものが七千二百円、そこで九百円をまた入院費で払うということになると、御主人が病気になって入院をするということになると、その人たち生活水準というものは現在の生活保護法並みに一応数字で見ればなるということになる。僕は社会保険というものがそういうふうに病気を守ろう——労働者にとっては健康であることが生活を維持するただ一つの元手でありますから、この唯一の資本を病気によって失わんとする、そこでそのために病院入院すると、とたんに残された家族生活保護法並み生活水準に落されるということでは、これは社会保障中核としての健康保険の使命から見て、まことにふさわしからぬことだ、まあこの入院料を見て、そう思うわけですが、いかがでしょうか。
  22. 高田正巳

    高田(正)政府委員 岡先生もよく御存じのように、生活保護法は一応そういう基準額を持っておりますけれども、その家庭収入があればそれは差し引いて払うというふうなことになっております。傷病手当金の場合にはその人にいかに収入がありましょうとも、あるいは財産がございましょうとも、とにかく傷病手当金というものは、病気になって働かなくなれば支給される制度なのでございます。その辺にも、生活保護法傷病手当金との金額比較をいたしまして、先生の御推論のように結論が直ちに出てくるということにつきましては、私どもも若干私自身で納得のできないところがあると思うのでございます。しかしながら、私どもは月九百円の負担というものが、患者にとりまして決してやすやすとできるというふうな観点に立って、これを御提案申し上げているわけではございません。月九百円の負担でございますし、ある程度の重荷になるということは、私ども十分承知はいたしておるわけでございます。しかしながら先ほども申し上げましたように、それによって受ける本人の給付総額、あるいはいろいろな被保険者相互間の均衡というふうなものをも彼此勘案をいたしまして、この御提案を申し上げておるわけでございます。
  23. 岡良一

    岡委員 もちろんこの標準報酬、そうして六割の傷病手当金、さて生活保護法の総扶助費だと、こう数字だけつけ合せてみて、それから結論を引き出そうというのではありませんが、現実にどういう状況になろうかということの一応の推定のためには、やはり与えられた数字が何といっても基礎になる。だから、今御指摘のように多少の蓄積があっても、それが物であるか金であるか知りませんが、それにしても、やはり一種の居食いの状態に陥っていくということが言えると思います。こういうような状態に落ち込んでいくということがあらかじめ予想されるにもかかわらず、このような一部負担をもって報いなければならない、こういうことは社会保険の根本的な精神と申しましょうか建前から申しまして、私は非常にとらないのです。そこのところをいかがお考えになりましょうか。
  24. 高田正巳

    高田(正)政府委員 一部負担のやり方につきましてはかねがねるる御説明を申し上げておりまするように、いろいろな方法があるわけでございます。長所もあり短所もあるわけでございます。その中でも大きな問題として、入院患者に一部負担を課するかどうかという点につきましては非常に議論が二つに分れると思うのであります。入院患者からも一部負担を取れという主張をいたしまする側におきましては、これは在宅患者あるいは被保険者相互間の均衡とか、あるいは入院患者に対して給付される金額総額というような観点から、むしろ三十円でも少し軽きに失しないかという御意見も相当あるのであります。ところがいわゆる負担をしやすいかどうかという観点に立って議論をいたしまする側の方におきましては、それは入院患者はいろいろと費用がかかるのであるから、なるべく短期の外来患者みたいなものから金を取ることにして、入院患者のようなものからは金を取らないのがいいんだ、こういうふうな御主張もあるわけであります。岡先生のお立場は、そのお気持は若干開きがございましょうとも、大体お気持としては後者の御主張の点に立っておられると思うのでございまするが、しかしながらそれらのいろいろな立場の御意見というものを私どもとしましては、十分に社会保険審議会あるいは制度審議会等で拝聴いたしまして、まずただいま御提案を申し上げておるような程度のものであれば、いずれの見地にお立ちになっておる方々にも大体御納得がいただけ、また患者としましても何とか——もちろん楽な負担だとは私は申しませんけれども、この際この保険の健全なる発達のために一部負担をやっていこう、こういう原則が容認されまするならば、患者の側におかれましても、入院患者からこの程度負担をお願い申し上げることは何とか御了承をいただけるのではないか、こういうふうな私どもの見解で御提案を申し上げておるわけでございます。
  25. 岡良一

    岡委員 結局入院の場合、政府案の一部負担を取るということになれば標準報酬基準として考えれば、傷病手当金は七千円程度に落される。そこでさらに入院料として月九百円を負担するということになると、生活保護法扶助を受けている家庭と大して違わない所得水準になるということは私はいなめないと思うのです。問題は、大してそうなるであろう、いやならないであろうということをいろいろ今論議をしてみたところで果てしのない話でありますが、私はこの一部負担というものをやっておる国を資料でも、どの国が一部負担をやっているということはいろいろ報告がありましたが、しかし一部負担をやっている国はみんな最低賃金制をとっておるということなんです。フランスが九千円、西ドイツが一万一千円、英国が二万四千円というふうに最低賃金制が行われて初めて、それを基準として、果して一部負担労働者生活にとって可能であるかどうか、負担に耐え得るかどうかということがはかられてくるわけです。ところがこの最低賃金制がとられてない日本で、ただ推定からこの程度はよかろうというようなことは非常に危険な独断だと私は思う。およそこれは保険制度全体を貫く原則だと私は思う。労働者保険において、最低賃金制がない国でこの一部負担を行おうとすることは、今申しましたように、いわゆるボーダーラインにその家族を突き落す危険が非常に多い。この点をどういうふうにお考えになるのでしょうか。
  26. 高田正巳

    高田(正)政府委員 最低賃金制の問題は非常に大きな問題でございまして、私どもがこれに対しましてとやかく論議すべき限りではございません。しかしながら、私どもといたしましても、日本の国民経済がそれを許すといたしますれば、私どももさような制度は望ましいものとかように私自身は考えております。ただしかし、最低賃金制というものと一部負担というものは、今岡先生は、大所高所から関連があるというふうな御議論でございますが、私は必ずしもそれだけ直接的な関連はないものと考えるのであります。最低賃金制がないからといって一部負担というものが保険制度の中で、これは絶対的に排除すべき思想であるというふうには、私ども考えないのでございます。なるべくいろいろな、被保険者一部負担でございますから患者ということになりますが、なるべくいろいろな立場患者に公平に、一カ所にあまりしわ寄せすることなく公平にやらなければならぬとすれば、一部負担をばらまいていくという観点に立ってそのことを判断すべきものと考えるのでございます。その意味で、入院患者に三十円の負担を課しましたことは、これはいろいろお立場立場で御議論のあるところは十分私も了承いたしますけれども、私どもは今御提案を申し上げているような一部負担の散らし方が、私どもの見解では一番妥当なのではないか、こういうふうな考え方から御提案申し上げ、御審議をいただいておるわけでございます。
  27. 岡良一

    岡委員 一部負担が被保険者である労働者の家計にどの程度の重圧を及ぼすのであるかということを、ただ推定でつかむということは、非常に危険だ、これにはやはり最低賃金制というものが確立されて、そこで果して一部負担というものがどの程度に可能なりやというものが算定されるのだと私は思うのです。これはやはり保険の大きな原則だと思います。現にスエーデンが二割五分の一部負担をしておる。スエーデンでは最低賃金制どころか、標準報酬制をとっておるではありませんか。労働者に与える賃金の中には医療費というものがちゃんと見積られて入っておる。だから病気になったときには、二割五分なら二割五分の一部負担ができるのです。それはそれとしまして、いま一つの問題なんですが、そういうふうに社会保険として、社会保険負担の公平と申しましょうか、その社会保険財政を維持するために負担の公平をはかるとすれば、むしろ最善の方法は保険の料率を私は引き上げることだと思う。これが最善の方法であって、日本の現状で一部負担をするということは、実に策の得たものではないと私は思うのですが、この点はいかがでしょうか。
  28. 高田正巳

    高田(正)政府委員 それは確かに一つの御議論であり、御見解であろうと存じます。私どももこの保険財政を立て直しまして、健康保険というものが今後健全な軌道に乗っていくためには、どういうふうな措置を講じたらいいだろうかといろいろ考えましたときに、今の料率の引き上げということも、これは当然その検討の過程に非常に大きな問題として提起されたわけでございます。ただこれに対しまして、私どもがそういう提案をいたさなかった理由につきましては、まず現実の問題といたしまして、健康保険におきましては、昨年度千分の五だけ引き上げております。これは非常な関係者の御反対を押し切って、厚生大臣に国会からまかされました範囲でございましたので、非常な御反対を押し切って、実はその措置を講じたわけでございます。さらに今回料率を引き上げるということにつきましては、私ども自身、昨年からの経緯にかんがみましてそういう案を出すことが非常に困難でございましたことが一つ。それからいま一つは、しかしそういう経緯ではございましたけれども社会保険審議会等、すなわち利害関係者の皆さんで、いやそれは一部負担よりは料率の引き上げで行くべきものだ、料率の引き上げについてはわれわれも賛成なんだという御意見でございますれば、これはまた考えようがあったわけであります。しかしながら関係者の御意見は、事業主側においても被保険者側においても、料率の引き上げには御反対であったわけであります。ただ一部船員保険の部面におきましては、被保険者の側から、料率でものを考えていったらどうかという御意見がございましたが、少くとも健康保険につきましてはほとんど全般の方が料率の引き上げについては否定的な意見でございました。これは審議会の答申にもその筋が詳しく出ております。さような経緯からいたしまして、私どもといたしましては料率の引き上げを今回御提案申し上げなかった、こういうことに相なったわけでございますが、しかしこれはまた来の問題といたしましては、十分にさようなことにつきましても検討いたすべきものと、かように考えているわけでございます。
  29. 岡良一

    岡委員 私どもは別に保険料率を引き上げろという主張をいたすのではございません。しかし現在の被用者保険財政的に安定ならしめ、財政収支の不均衡が起ってきたという場合、道は国庫負担か、さもなければ料率の引き上げ以外にない。一部負担というのは私は下の下なる策だと思う。特に被用者保険は千分の六十五をそれぞれ三二・五ずつ事業主と労働者が折半をして負担している。そこに被用者保険というものの本来の使命がある、また意義があるわけです。これも今度の改正では、こうした被用者保険のあり方とは全く矛盾した、病気になった場合は何か受益者負担的な考えが出ているような取扱いは、私は社会保険としてはとるべき道でないと思う。いかがですか。
  30. 高田正巳

    高田(正)政府委員 事業主と被保険者が折半負担の原則は、健康保険におきましてはすでにこわれておるわけでございます。初診料の一部負担というものもございまして、すでに現行の制度におきましても、それはその通りには参っておらないわけでございます。今回この一部負担の範囲を広げましたことによりまして、さような点がまた顕著になって参ったということでございます。この点岡先生の御意見、わからぬでもございませんけれども、私どもといたしましては、国庫負担料率の引き上げ、あるいは一部負担、かような方法しかないわけでございます。今先生が御指摘のような方法しかないわけでございますので、その料率の引き上げを今のような経緯で避けまして、国庫補助と一部負担、この二本建で参る、こういうふうなやり方を御提案申し上げておるわけであります。しかしながらこれにつきましてはいろいろな御論議があるということは十分承知の上で、われわれはそれが一番いいのだという見解のもとに御提案申し上げたのでございます。
  31. 岡良一

    岡委員 今初診料としては四点なら四点払っておるということですね。それは現実にされておるが、それをやっておるからさらにそれを拡大していこうということは社会保険としては正しい方向じゃないということを実は申し上げておるわけです。  それはそれとして健康保険財政収支上、結核の療養に要する支出はどの程度になっておりますか。
  32. 高田正巳

    高田(正)政府委員 政府管掌も組合管掌も大体三分の一、三分の一をちょっと出ておると思いますが、大まかに申しまして三分の一、かようにお考えをいただければ間違いないかと思います。
  33. 岡良一

    岡委員 金額は幾らですか。
  34. 高田正巳

    高田(正)政府委員 かりに三分の一といたしますれば、来年の政府管掌医療給付費が四百十何億でございますから、百三十億ばかりになるかと思います。
  35. 岡良一

    岡委員 この健康保険結核にかかった療養者の大きなたてとなり防衛力となってくれることは非常に望ましいことでありますけれども、しかしわが国の結核の特殊な現実から申しまして、健康保険財政に大きく結核が食い込んできた、財政収支のアンバランスの原動力は結核だ、この点にメスを入れることが日本における労働者健康保険の最も根本的な解決法だと私は思うのですが、いかがでしょう。
  36. 高田正巳

    高田(正)政府委員 お説の通りと存じます。被用者保険だけでなく、これは国民健康保険等を通じまして日本のあらゆる医療保険の根本的な問題であろうと私は存じます。
  37. 岡良一

    岡委員 そこで厚生大臣にお伺いいたしますが、政府提案趣旨説明の中でも、健康保険の将来の安定を期するためだとあった。ところが健康保険を現実に財政的に大きく脅かしておるものは結核である。この結核に対する処置を怠っていかに健康保険の安定を期そうというても空文になることは事実数字において示されてきておるわけなんです。この点に健康保険の安定を期するためには、結核に対して思い切ったメスを入れることによって初めて健康保険の安定が期し得るのであって、ここに厚生省の今度の改正一つの大きな盲点があると私は思うのです。いかがでしょう。
  38. 小林英三

    小林国務大臣 岡さんがおっしゃっていますように、また今局長から申し上げましたように、政府管掌あるいは組合管掌におきましても、結核というものが財政に大きな重圧を与えておりますことは私どもよく承知いたしております。ただ政府管掌健康保険の赤存につきまして、今それでは結核対策をどういうふうにするかという問題につきましては、これは健保の赤字の対策に関連いたしまして健康保険をほんとうに健全な軌道に乗っけるという問題につきまして、もちろん結核対策ということもあわせて考えるべき問題ではございますけれども、今早急にこの問題を決定することはなお将来に相当調査研究をすべき問題があると思いまして、現実の問題といたしましては健康保険財政対策とあわせてすべての改正をいたしまして健全な発達に資しようというのでただいま御審議を願っておるのであります。しかしお説の通り結核対策というものは将来引き続いてすべての社会保険と並行して調査研究をいたしまして、できるだけ早くこれらの対策とあわせて全体の社会保険の総合的、具体的な案を作るべきものだと考えております。
  39. 岡良一

    岡委員 なお結核を根本的に撲滅しようということになれば、今のようなやり方ではおぼつかないことはこれは申すまでもありません。よほど思い切って予算を計上して、年次計画でもって徹底的に、精力的に結核対策を立てなければなりますまい。しかしそこまでいかなくとも、たとえば現在健康保険の被保険者入院しておる人には相当資格喪失の者もあるわけであります。これについても予算上相当多額なものであろうと思います。一方結核予防法があり、療養費というものも支出されておる。ところが健康保険の被保険者についてはこれをむしろ回避するということさえも行われておるという実情であります。こういう面は長い将来の根本対策は別としても、とりあえずはやはり個人の過失ではなくして、労働なり、生活の環境、過労と栄養不足とを大きな原因とする結核という国民病に対して、これが健保の財政に大きく食い入って脅かしておるという現状ならば、今申しましたような形の資格を喪失しておる者についても予防法の療養費の肩がわりくらいは幾らでもやってやれないことはないのじゃないかと思うのです。だからそういう長い将来のことを申さなくても、現実の問題としてそういうことはやれないのでありましょうか。
  40. 小林英三

    小林国務大臣 結核の問題につきまして私どもただいま御審議願っております健保の改正案を決定いたします際にもいろいろ研究をいたしております。しかしこの問題を今直ちに勘案をいたしまして同時にこれを解決するということはなかなか容易なことではない。たとえて申しますならば、同じ結核でも非常に軽い、重いの問題もあります。またこれを取り扱いますのにも全国の結核患者につきましても重い者だけ入院させて、軽い者だけはふるいにかけてやったらよいじゃないか、そういうことをやるにいたしましても今日なかなかこれらの問題を早急に健保の財政と合せてこれを直ちに決定するということは容易なことではない。やはり現実の問題といたしまして政府管掌健康保険財政の立て直し、並びにすべての医療費の合理的な解決の問題につきましても、ただいま御審議願っておりますような改正案にいたしまして、先ほど申し上げましたような結核対策等につきましても今後十分調査研究して決定していきたいと思います。
  41. 岡良一

    岡委員 私が申し上げたいことは、健康保険を守ってこれを発展させるためには、今度の改正案というものが、たとえば結核の問題一つをとらえてみても、いわば財政の基礎をなす根本的な問題を先に延ばしておいて、そうして窮余の一策として病気になった被保険者に追い打ちをかけるということになっておる。私はこういう政策は社会保障を前進させるという当然の職務を持っておられる厚生省のやり方としては納得できないということを申し上げたい。  どうも大蔵大臣がお見えにならないので、私もこれは何にも予定にないことを申し上げて時間つぶしをやっておるのでありますが、松田さんのお顔が見えますので、松田さんに少しお尋ねをいたしますが、厚生年金保険の積立金は本年度幾らありますか。
  42. 松田盛進

    ○松田説明員 三月末におきまして一千四百十億円でございます。
  43. 岡良一

    岡委員 本年度予算では利子は幾らありますか。
  44. 松田盛進

    ○松田説明員 本年度予算では利子は約九十二億円ございます。
  45. 岡良一

    岡委員 これは厚生大臣にお尋ねいたしますが、今厚生金保険課長からお答えのように、同じ事業場に働いている一人の労働者が、一方では同じポケットから失業保険なりあるいは年金保険なりあるいは健康保険の料率を出しておる。一方では健康保険赤字にあえぎ、そこで入院をすれば月九百円、医者の窓口を訪れれば二回目、三回目も三十円、十円の一部負担を払わなければならぬ。ところが一方、同じポケットから出しておる積立金は千四百億、利息は九十二億、本年度の予算を見ると五十五億が医療機関や住宅の方に向けられる。そういうものがあるわけですね。しかしそれにしましても一人の労働者が一方では健康保険が赤子だから一部負担、一方では積立金の利子が百億近い、それをよそへ貸してやって住宅を建てろ、病院を建てろこ、れでは私は労働者に対する保険行政として資金繰りの面ではきわめて不均衡じゃないかと思う。もちろん厚生年金保険保険料も修正をするということで、この利息も原資に見積ってあることも私はよく知っております。だからまるまる一方の穴埋めにしろなんという乱暴なことを申し上げるのではありませんが、少くとも現在の姿では少し不均衡じゃないでしょうか。というのは今も申しましたように、労働者が同じポケットから出している保険料です。厚生年金もみんな源泉徴収で出しておる。ところが一方厚生年金の金庫に入った分は利息が九十二億円、一方では六十六億の赤字が出ている。さてそれの方は一部負担で取るということは、労働者を対象とする社会保険の体系から見て、私はそこに非常に至らない点があると思うのでありますが、いかがでしょうか。
  46. 小林英三

    小林国務大臣 厚生年金の積立金が千四百億円近くありまして、これもその通りであります。今岡さんのお認めになっておりますようにこれらの利息というものもやはり元金に繰り入れられましたものを対象として運営されているようでございまして、ただそれらの勤労者並びに事業主の醸金によって積み立てられておるものでございますから、これらの問題につきましては還元融資をして、勤労者諸君の福祉の増進になるように政府は今いたしておるわけでございまして、私はこれらの還元融資の金額等も将来ますます増強いたしますように期待をいたしておるのでございます。
  47. 岡良一

    岡委員 私が申し上げておるのはそういうことじゃないのです。問題は一人の労働者、かりに厚生大臣が工場に勤めておられるといたします。あなたの月々の賃金から保険料として厚生年金あるいは失業の分も、それから健康保険の分も取られる。ところが一方厚生年金の方は今申しましたように九十二億も利息がある。ところが健康保険の方は六十六億五千万かの赤字が出た、そこで政府も三十億出すがお前らも病院入院したら月九百円出せということで、健康保険赤字を穴埋めしようとする。一方では九十二億の貸付をしようという大きな余裕がある。もちろん原資に繰り入れられておるから、赤字の補てんに使えるものではありませんが、そういう姿は労働者保険としては非常に不合理な姿ではないかと私は思うのですかいかがでしょう。
  48. 小林英三

    小林国務大臣 今の御質問趣旨が私よくつかみかねるのでありますが、政府管掌健康保険というものは、やはり毎年々々の健康保険料の収入によりまして運営されておるものであります。これが御承知のように二十八年の末あたりから赤字が出て参り、三十一年度におきましてもやはり六十数億円の赤字が出ようというような状態になっておるのであります。従いましてこの赤字になる原因というものは、やはり保険収入はあまり増収が得られませんで、支出の方の医療費の方が毎年毎年非常な勢いをもって増大されておる。このように今日赤字が出るような形になっておりますことにつきましては、医療技術の進歩その他いろいろな原因がございますが、いずれにいたしましても、社会保険として発達いたしておりまする健康保険制度というものが、医療費の向上によって、私はむしろ当然のことであると思います。しかしこのままの状態でほうっておきますというと、健康保険制度というものは崩壊の一歩前である。もし崩壊するような運命になりまするならば、私はこれによって勤労者諸君の生活にも大きな脅威を与える。そこでこれをどうするかという問題に立ち至っておるのでありまして、今日の健康保険の一部改正案というものは、一方におきましては国庫から補助を受け、一方におきましては一部負担を願って、健康保険制度発達向上をはかる、こういうのでありまして、私は年金の問題とは姿は違っておりますけれども、性格が変っておるのじゃないか、こういうふうに考えております。
  49. 岡良一

    岡委員 大蔵大臣もお見えになりましたので、大蔵大臣に若干の質問をいたしたいと思います。大蔵大臣を私は十日も二週間も前から、恋人を待つように一日千秋の思いで待っていたのです。今日はなかなか帰しませんから……。  大蔵大臣にお伺いいたしたいことは、今度健康保険法改正案なるものが政府から提出をされて審議をいたしております。その内容については、同僚の議員諸君からもまことにしさい質疑がかわされました。私はこういう改正が国の社会保障制度の前進を意味するのか、あるいは後退意味するのかという点を検討いたすについては、どうしても国の財政規模というものと関連して考えたいと思うので、その点について若干のお尋ねをしたいと思うのです。  まず第一にお尋ねいたしたいことは、大蔵大臣はすでに一昨年の第一次鳩山内閣以来、三代にわたって続いて大蔵大臣の職におられるわけでありますが、そこで鳩山内閣の政策の重点というものは、いつも選挙のつど、組閣のつど公約をされております。その施政方針演説等においてもうたわれておりますのは、民生の安定、社会保障の充実というかけ声であった。ところが私ども三十年度、三十一年度の政府予算比較をしてみましても、このような公約を掲げられながら、社会保障制度の充実というものはかけ声に終っておるのではないか。そこへもってきて健康保険法——ども改悪と申し上げますが、改悪が出て、赤字の穴埋めが被保険者労働者諸君やその家族負担になる。いよいよもってそれでは三十年の歴史を持つ健康保険でさえも、大きく逆行をしようという懸念を感ずるわけです。一体大蔵大臣立場において、わが国の社会保障制度は去年、今年の予算を通じて、果して前進をいたしておるかどうかという点を明快な御所信を承わりたい。
  50. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私のほんとうの希望といたしましては、財政が許すならば、社会保障というものにできるだけ比重を傾けて予算も編成をしたいのであります。しかし何分御承知のように日本の経済基盤の確立をして、国民生活の安定をそこに求めていかなくてはならぬという関係から、ここ引き続いて三年になりますが、財政の健全性ということをどうしても基調にしなくてはならぬというようなことから思うように伸びませんが、しかし政府としては社会保障にできるだけの配慮を加えて、特に三十一年度におきましては、むろん被保険者の一部負担患者の一即負担というものが出て参りましたが、今回国としても三十億の補助をするという新しい一つ制度、これはやはり社会保障といいますか、特に健康保険といいますか、医療対策について国として新しい一つのスタートで前進であると信じております。私は社会保障の確立を促進するために、財政は苦しいがあえて三十億を補助するという制度をとったわけでありまして、ただこの際において患者に一部負担をさせるというようなことは余儀ない。これは今日の健康保険財政上から見て、真にやむを得ない。同時にまたこういう健康保険の恩恵に浴しない非常にたくさんの人々もあるということ等から考えましてまあしかたがなかろう。しかし健康保険については前進をしておる。従いまして社会保障一般についても政府としては前進させつつあるということは申し上げてよかろう。いろいろと数字的にも統計的にも若干のそういうことが出ようかと思いますが、それは特に申し上げるほどのことでもありませんので控えておきます。
  51. 岡良一

    岡委員 一部負担是か非か、あるいは国庫の三十億が妥当やいなやということは、私どももこれまでの委員会で同僚の委員からもいろいろ議論が出ておるわけでございますが、社会保障制度の充実ということを旗じるしとせられておる鳩山内閣といたしましては、たとえば数字をお示しいたしますると、昨年は総予算の中で千十二億、本年度が千百三十四億、百二十二億ほどの増になっております。しかしその内訳を私どもは分析する必要がある。内訳を分析すると、生活保護法費用が三百六十億、あるいは失業対策の費用三百五十億、従って失業者と貧困者が国内にふえてきたということを日本の社会保障予算は物語っておる。これでは日本の現実的な社会保障制度が前進されたものとは私は考えられない。その点大蔵大臣の御所見を聞きたいと思います。
  52. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 社会保障の今後の充実ということについては、今お話のあった岡さんと私は同じような考え方に帰着するのではないかと思います。私は特にその点について日本経済の基本の条件、私はやはり貿易に依存する日本の経済、こういうふうに考えておる結果、これはあるいは一つの私見になるかもしれませんが、どうしてもそのことだけから見ると、雇用関係は非常にむずかしくなる。これはなぜかというと、国際的に非常に競争しなくてはならない。そうしますとプロダクションもマスにならなければならない。機械も入れなくてはならないというふうな、生産費をなるべく安くしていいものを多量に作る、これが海外に販売市場を求めていく、こういうふうになって参りますと、雇用がやはり非常にむずかしくなって参る。そこで日本としてはどうしても社会保障ということを考えなければならぬ。それならその財源はどこに求むるかという点について悩みがあるのですが、あくまで資本主義、自由主義に立脚しなければ貿易はやれないが、しかしそこから生ずる利潤関係において今後社会保障の財源を求めていく道があるだろう。そうして具体的には、日本としては、どうしても第三次産業になりますがサービスあるいは文化的事業というものをいろいろな力で興していく。ここに雇用を求める。そうすると若干のずれがある。そこのところはやむを得ず失業対策あるいはまたその他というようなことでやっていく、こういうふうな考え方をいたしておるものであります。
  53. 岡良一

    岡委員 もちろん社会保障ということになれば、やはり働き得る国民にはできるだけ雇用の機会を与えるということは社会保障の大前提だと思うが、そこで政府の方でも、五カ年計画では完全雇用という旗じるしを立てておる。今大蔵大臣の御答弁を聞くと、それではますますもって雇用の機会が少くなるということになって、完全雇用の看板は全くのから手形だというような格好になりますがいかかでしょうか。
  54. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これは私は一つの段階的に申したのでありまして、必ずしも全体的に雇用の機会が少いとは申しがたいのでありますが、しかしやはり貿易に関係するということになれば、今言うたような雇用について不利な条件も出てくるということはやはり頭に入れておくのがいいという考え方であります。従いまして、別個にまた雇用の機会を十分与えるような、これはサービス的な事業というものが雇用にはいいのじゃないか、こういうふうに考えて、そういうような意味合いの第二次的な産業というものを日本としては特に興していく。また貿易が振興すれば、むろん貿易によって経済が拡大していきますから、そこにまた雇用はふえていく、これはむろんのことであります。しかしそうして貿易というものを基調とすると、ある段階においては、あるいは雇用というものが苦しいときがあるだろう、こういうふうに考えておるのであります。要するに社会保障ということについては、保守政府にしても、保守という言葉は的確でありませんが、たとえば鳩山内閣でもあるいは今後くるであろう内閣にしても、必ず日本としては十分力を入れる。ただ財政関係がありますから漸を追うてこれをやっていくという以外には、やはりやっていけない、かように考える次第であります。
  55. 岡良一

    岡委員 お話がだんだん横道に入りますが、しかしこれは社会主義の政党であろうが資本主義の政党であろうが、日本の現実では、何と申しましても拡大均衡の政策は当然とらなければならないと思います。拡大均衡の政策というもので特に貿易の振興ということに重点をおいていく。しかしその結果がやはり文字通り拡大均衡して国民生活水準を高めていくものでなければならない。ところが失業と貧困というものは、経済学のいろはで言えば、いわゆる資本主義の必然の悪だとさえ言われておる。現実に去年も生活保護法予算は補正をしてまでも組まなければならなかった。今年はその総額よりもさらに上回るものを組まなければならぬということは、いわゆる政府予算そのものが日本における貧困の増大というものを数字で物語っているということになる。言ってみれば資本主義の必然の悪である貧困がますます広範に増大をしている事実を物語っている。それに対する弥縫策として予算を計上するということでは、私は社会保障ではないと思う。私はそう思いますが、重ねて大蔵大臣の御所見を伺います。
  56. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 決して弥縫的な考えをもってやっているのではありません。今日の財政規模におきまして、これは先ほどから申しますように、日本の経済の自立再建のために、国民生活安定のために適当な規模を持たなければならぬ。その範囲内において社会保障はどうあるべきかということは、できるだけの配慮を加えて予算を編成いたしているわけであります。
  57. 岡良一

    岡委員 よく、諸外国の社会保障関係予算と、その国の総予算比較して、そうして力こぶを入れているか、入れていないとかいう論議もありますが、これは私は非常に危険な類推だと思うのです。先般一昨年、一つ二つは一昨々年の数字でありますが、諸外国の支出している社会保障関係費が国民一人当りどれだけに達しているかということを調べてみました。こういう数字が出ているのです。イタリアが六千五百十三リラ、日本の金にすれば大体四千円程度でしょう。フランスが千五百五十フラン、日本円にしてもこの程度でしょう。西ドイツが百五十六マルク、一万三千円程度でしょう。英国が十六ポンド、一万六千円、これには住宅の金が入っておりますので、それを差し引いてやはり一万二千円ほどになります。ところが日本は千四百円程度です。やはり諸外国に比べて国の支出している社会保障関係費の一人当りの金額は非常に乏しいのです。しかも総予算として見れば、失業や生活保護予算に七〇%近いものが取られてしまっているということでは、健全な正しい意味社会保障予算はまことにりょうりょうたるものではないかと私は思うわけですが、これはやはり大蔵大臣の認識と御努力が足りないせいじゃないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  58. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私も先ほどから申しますように、必ずしも十分であるとは思っていないのであります。今後予算の許す限り漸を追うて比重をふやしていく、パーセントをよくしていく。三十年度に比べて三十一年度が国民所得に対する割合もやはりふえてきているのであります。漸次年を追ってこの関係を改善していきたいと考えております。
  59. 岡良一

    岡委員 厚生大臣にもあわせてお考えを伺いたいのですが、こういうような事情からいたしまして、日本の社会保障制度を前進させるといえば、何といっても国は法制的にも予算的にも社会保険の育成にうんと力こぶを入れる、これが社会保障を前進させる大道であると、私は私ども立場から信じておりますが、この点について、きわめて原則的な御意見でありますが、お開かせを願いたいと思うのです。厚生大臣大蔵大臣にお願いします。
  60. 小林英三

    小林国務大臣 岡さんの仰せのように、医療保険というものは、いずれにいたしましても社会保障中核でございますし、この問題につきましては、今後ますます、今大蔵大臣もおっしゃっているように、国の財政の許す眠り、国家が大いに手を差し伸べていくべき問題だと考えております。
  61. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 厚生大臣がただいま御答弁になった通りに存じます。
  62. 岡良一

    岡委員 実は先ほど来大蔵大臣のお見えになる前にいろいろ議論をしておったのですが、御存じのように健康保険にしても生活保護法にしても結核の療養に要する支出が非常に多いわけです。健康保険でも今度の赤存はほとんど結核からといってもいいくらい、百三十億ある。生活保護法医療扶助にしてもその六割ということを聞いておりますから百二、三十億。日本のとぼしい弱体な社会保障制度社会保険制度財政的には結核に食われている。このままの姿でいくと、結核によって日本の社会障制度財政的にくつがえされようという危険さえもあるわけです。これに対してはもちろん国としては十二分の努力を払っていただかなければならないわけですが、この点大蔵大臣結核の問題には関心を持っておられたように先般も私はお聞きいたしましたが、今度の予算編成等において結核問題についてはどのような考慮を払われていただいたでしょう。
  63. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 結核の対策、これはほんとうに日本の特別な国辱でもありますし、何とかしたいと思うのであります。特に私は結核対策は、むろん結核が起った後にいろいろしなければならぬが、その前にやはり衛生といいますか、鳩山内閣が特に住宅ということを——これはいろいろ御批判がありますけれども、何とか住宅問題を解決しようじゃないかというのも、やはりこういうような結核ということも頭に動いて、非常に不潔な所に住んでいるということが結核の温床になりはしないかというところからでありますが、そういうことはさておきまして予算面から申しますと、三十年度に比べて三十一年度は予算総額が百二十九億九千五百万から百三十三億六千六百万、結核については健康診断の対象人員の増加が約三割です。三十年度では三千二百十二万五千人が対象になっているのが三十一年度では四千二百九十四万九千人と約三〇%の人員増になります。それから医療費公費負担の件数も増加しております。これが件数にしまして五十七万六千百件が三十一年度では六十三万四千五百七十九件、約一〇%の増になります。それから公費負担で医療範囲の拡大をやりましたが、これは三十年度ですが、三十一年度では外科手術による入院料を追加しました。それからさらにレントゲン自動車を整備する。この補助が三十年度では二十台にして考えたのですが、三十一年度では三十七台やる。かようにいたしまして結核対策についてはほんとうに意を用いているつもりでありますが、何分にもやはり今日の財政上なかなか金が要るのでありまして、思うようには行っておりませんことは率直に認めて今後の努力に待ちたいと思います。
  64. 岡良一

    岡委員 結核健康保険財政の直接の関係については先ほど来多少の私見を申し上げておったのですが、しかし何と申しましてもよほど国は結核の問題についてこの際考えていただかなければならぬ。今御答弁にありましたようにレントゲン自動車をふやす、集団検診をふやす、そうすれば発見されるのは病人です。病人を発見した場合に、これに療養の機会を与える。ところがこれは長期病気であるし、しかも働き盛りの者になると、一たん病気になられたら、なかなか背負いきれないというような状態になっている。こういうような療養の費用というものは、今度の結核の対策費の中でも、外科手術を公費負担の対象に加えたというだけで予算総額としてはほとんど微々たるものである。そうしてそのしわ寄せがみんな健康保険の方に流れてきておる。健康保険給付費の中で、当然健康保険負担すべきものを、結核予防法に基く療養費によってまかなわれておる率は総医療給付費の何%になりますか。
  65. 高田正巳

    高田(正)政府委員 被保険者一人当りに見まして四十一円程度の公費負担でやっておるというような計算になります。
  66. 岡良一

    岡委員 とにかく私どものいただいた資料で見るとたしか療養の公費負担分の保険財政への寄与は健康保険の療養に要する費用の〇・〇七%ぐらいなんです。しかも百三十億というものは結核が食っておるわけです。しかも予防法に基く公費負担は〇・〇七%、まことに零細なものです。その結果のしわ寄せとしてとどのつまりは年度末になると大きな赤字が出るという結果になるのです。この結核問題の解決はよほどしっかりやってもらわなければならぬ。レントゲンを用いたりそれもけっこうで、できるだけ早期に発見する、発見したらすぐこれを直すという積極的な手段を、もう少し国の財政的な責任においてやってもらわなければいかぬと思うのですが、こういう問題がそのまま未解決のままにされておいてそして健康保険赤字になると、さあ一部負担だということでは社会保険のあり方から見て私ども納得がいたしかねる、こうるる申し上げておるわけなんですから、ぜひこの点は一つ今後とも大蔵御当局でも御留意を願いたいと思います。なお今もお話を申し上げておったのでございますが、これは大蔵大臣いかがなんでしょうか。できない相談なんでしょうか。というのは健康保険の方は赤字がことしは六十何億出た、そこで国も三十億出す、患者も一部負担をしろということで切り抜ける、こういうことになった。ところが一方同じ労働者が源泉徴収のような形で賃金から差し引かれておる保険料の中で厚生年金の部分がある。これはもう千四百億以上の積立金になっており、来年度の予算では九十二億の利子が見込まれておる。これは福祉還元ということで五十五億ばかりが住宅や医療機関に出される。しかし病院を幾ら作ってみたところでそれだけでは——それはそれとしましてそうすると同じ労働者のポケットから出ておるお金が厚生年金の分では年は百億近い黒字になってきておる。一方健康保険では七十億近い赤字だ。そして毎月まじめに保険料を払っておる労働者病気になったときには、一部負担で今度はまかなうのだということになると、私どもは被用者保険というものから見て非常に不均衡じゃないか、何かここに操作の道があるんじゃないかということを感ずるのです。これはしろうと考えなんですが、勘として私ども何かここに考えるべきものがあるんじゃないか、現に英国のヘルス・サービスの予算の中には英国の社会保障の掛金の利息を、赤字補填として相当つぎ込んでおる。もちろん英国の厚生年金の場合は、老齢年金、養老年金の場合は、日本と違って今むしろ赤字にあえでおるようであります。日本は十年後に料率を修正しようというような方式をとっておる。利息は原資に入れてなるべく保険料率を安くしょうというような取り計らいもやられておる。それもけっこうだが、しかし政策として考えた場合には、せめて利息の幾分かを、一方同じ労働者の加入しておる健康保険制度赤字部分に入れて、病気になった労働者負担にならないでこの資金の操作をしてやれるというような制度が私は保険としては当然じゃないか、こう考えておるのですが、こういう考え方は原則的にいかがなものなんですか。大蔵大臣の御見解を伺いたい。
  67. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 厚生年金保険金、これを勤労者の厚生のためになるべく効率的に使う、この御趣旨も、私は同感です。ただ従来日本では資本蓄積がはなはだ不十分でありますので、そういうところにこの金を回すゆとりがなかったというところであろうと思います。そしてまた今お話のように厚生年金が千三百億から四百億くらいありましょう。その利子収入保険料を払う財源にするという仕組みになっておりますものですから、これは使えない。そこで今さしあたります許す限りにおきましてこれを勤労者の厚生のための資金融通になるべく回したい、しかし今は率直に申しましてそう回っておりません。今八十億くらい回っておるかと思うのでありますが、おもに勤労者の住宅資金ということになっておりますが、この内訳は今持っておりません。しかし今後この資本蓄積の状況等からして、私はやはりこういう金はなるべく勤労者の福祉のために使うことができれば、非常にいいんじゃないか、なるべくそういう方向に今後考えていくべきであるというふうに考えております。
  68. 岡良一

    岡委員 そこで厚生年金の積立金の運用について諸外国の例など調べてみると、英国でもアメリカでもやはり大蔵大臣が管理しておられる。ただ利子の運用は、英国は今申しましたように、ナショナル・ヘルス・サービスに非常に大きくつぎ込んでおる、赤字補填につぎ込んでおる。わが国では保険料率の算定を十年後には修正するという修正方式をとっておる。だから利息は全部原資として繰り込んで、保険料率を高からしめないような考慮を加えておるということも一つの方法ではありましょうけれども、私が申し上げたいのは、それは厚生年金課の窓口から見た考え方健康保険課の窓口から見た考え方であって、問題は出しておる労働者立場からものを考えるべきではないかと思うのです。そうすれば各国のやっておるいいお手本は、やはりこれを採用して、もちろんそうなれば機構、制度の統合ということになると思いますが、やはりそこまで持っていかなければならぬと思います。いずれにしても、一人の労働者立場から考えてみた場合、おれが払った保険料は厚生年金で年に全体合せれば、百億近い利息がある。それを利息をつけて貸し付けておる。一方では健康保険赤字だといって病気になった場合には一部負担を取られるというのでは、出しておる労働者立場から見た場合には、もっと現実的なやり方があるのではないかと思うのですが、いかがですか。
  69. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これは従来ずっとやってきておる事柄もありますので、どういうふうな影響があるかということをとくと考慮する必要があると思いますが、私は考え方としては今お話のような説は、やはり今後十分検討を加えていくべきことだと考えております。
  70. 岡良一

    岡委員 実は私ども健康保険給付については特にさしあたり政府管掌保険については二割の国庫負担をしろ、これを年来主張しておるのであります。この間もこの委員会では、御提出の法案審議の際公聴会を聞きまして、日本医師会、歯科医師会、薬剤師協会、労働組合、健康保険連合会など関係団体の方々が、ひとしく結論としては二割の国庫負担でもまだ足りないくらいだと言われたくらいで、これは関係団体としてはさもあらんと思いますが、二割の国庫負担をしてくれれば当面の健保の危機というものは、すらすらとこう切り抜けることができて、そうして医者の総辞退とか、こういうごうごうたる非難やあるいはまた不安というふうなものもなくやっていけた。なぜ二割国庫負担というような私ども主張を、大蔵省としてはあるいは政府としてはこれを非とせられたのであるか、これは関係団体一様の強い最低の希望ということも今般われわれは確認をしたわけですが、なぜこれがいけないか。なぜこれを拒否されたか。その点についての大蔵大臣の御所見を伺いたいと思います。
  71. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 一品に申し上げますれば、財政が許さないということになるのであります。財政が今日ではそこまで手が伸びません。なおまた同時にこれは厚生大臣のお考えですけれども保険制度自体については今のままでいいのか。私はこれはしろうとで、予算の仕事も一年ばかりやったのですが、何とか保険、かんとか保険保険の数が大へん多いのです。もう少し何とかうまくならぬのかという気持もいたしておるので、これは今後厚生大臣ともよく相談してみたいと思っております。
  72. 岡良一

    岡委員 財政が許さないという御意見、私ども予算の組みかえ案では防衛分担金を全額削ってあります。そのとき与党政府の諸君は、全く不可能なことを社会党は主張しているということを言われた。しかし事実上、日本の会社保障をより前進させ、より向上させようとすれば、必ず突き当る壁はやはりそこにくるわけです。守るに足る国を作るか、国を守ることを急ぐかという二律背反の命題に突き当るわけです。ところでこれは大蔵大臣も御記憶だと思うが、一昨年鳩山内閣ができたときにも、防衛分担金を削減して、そうしてこれを民生安定に充てる、社会保障制度の充実に回したいということを言われた。ことしは防衛分担金はなるほど八十億減額した。ところが一方防衛関係費はざっと千四百七億ですから八十億ばかり増加した。一方健康保険は七十億弱の赤字だ。そこで財政が許さないからといって被保険者の一部負担をいろいろな理由を求めて強化されようとしている。これでは言われたことと、せられることとは全く違う。しかもまた財政が許さないというけれども、大きな防衛分担金等を抱えておる。これがやはり社会保障関係費を如実に圧迫していることは、今数字で申し上げた通りです。ここにメスを入れる必要があるのではないかと思うのですが、大蔵大臣の御所見はいかがですか。
  73. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これは根本にはやはり世界観の問題にもなりますし、それに基く社会政策というようなものとも関連しますから、どうも議論になりにくいのであります。私どもは防衛については、今日の世界情勢において日本として国力の許す限度において、漸次防衛をやっていく。むろん防衛ですから、これは私の考えですが、限界はある。しかしある限界のところまでは、少くとも国力に応じて漸次防衛はすべきだというような考えをいたしております。また如実にそれを政策といたしております。それと同時にお話のように日本の国情、特に敗戦後の日本として財政に対する支出需要が非常に多いのでありますが、現実にやはり社会保障考えていかなければならぬ、ここに非常な悩みがあるのであります。これを調和をとりつつやっておるというのが現状であります。従いまして社会保障も必要であるし、防衛力の増強も今申したような条件においてやらなければならぬ。そうして同時に社会保障もやる。しかしずっと先を考えてみると、日本という国は社会保障という方向財政的にも重点が徐々に向き得るであろう、また向けていくべきであろうと考えております。
  74. 岡良一

    岡委員 厚生省関係社会保障関係費は、政府の五カ年経済建設計画の中で、五カ年間の総予算はどれだけになりますか。
  75. 高田正巳

    高田(正)政府委員 ただいまその所管をいたしております者が参っておりませんので、数字が手元にございませんので、御了承を願いたいと思います。
  76. 岡良一

    岡委員 私の記憶で大して違わないと思いますが、大体六千五百億程度です。ですから五カ年間とすれば平均千三百億くらいになろうと思います。そこで人口増を考えていきますと、あの経済建設五カ年計画の中では、社会保障関係費としては国民一人当りの分千四百円ばかりがあまり増願になりません。ところが一方、防衛関係費、いわゆる防衛費なるものは五年後には、これは試案だということではあるが、二千百五十億になろうというふうなこともすでに公表されております。とすると社会保障関係費と防衛費との間における非常に大きな不均衡が実は起ってくる。現在われわれが持っておる資料からはそう見ざるを得ない。そうすればそれは明らかに防衛関係費が社会保障関係費を食うことになる。言いかえれば国民生活が防衛のために犠牲になる。それでは、分に応じた防衛というけれども、事実上は国民生活を犠牲にするという結果になる、こういうことになりはしませんか。現にことしは、先ほど申しましたように、防衛費は、支出金については八十億減額、関係費は八十億増額、一方健康保険赤字は七十億近い、三十億は出すが、あと半分ほどのものは被保険者負担しろということで、ここに現に被保険者への負担という形で防衛関係費の圧迫が出てきておる。機械的にそう申し上げるわけではないが、実情はやはりそういうふうにわれわれが理解しても通ると思う。そういう結果が将来はさらにもっと大きな形で出てこようとしておる。これではいかに大蔵大臣社会保障に対して漸を追うて一つ力こぶを入れようと言ったところで、事実国の計画の中の数字から見ると、そうならないことになるわけですが、いかがでしようか。
  77. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これは将来にわたることでありますが、私の考えを一応申し上げておけば、やはり防衛力でありますから限界があるという考え方一つ、今後どういうふうにその防衛力を進めていくか、これは国力にふさわしい−国力にふさわしいということは、国民生活を強く圧迫したり、あるいはまた国民に対する最小限度の福祉施設に非常な支障を生ずる、言いかえれば、社会保障を非常に圧迫するとか、そういうようなことのないような限りにおいて、漸次防衛力を増強していく。むろん国際情勢等において格段の何らかの変化があればこれは別個でありますが、一応私は考え方としてそういうふうな考え方で進んでいくつもりもいたしております。これは同時に安保条約を見ても、そういうふうに、やはり日本の経済力に応じた、国力にふさわしい程度でやっていくというふうなことになっております。これは当然なことであります。特に今日の防衛というものは、何も鉄砲のたまを撃ち合うのが防衛ではない。やはり国民生活の安定、社会が安定をしておるということが大きな防衛というふうな見地から、そういうものを含めて防衛を考えないと、防衛というものは考えられないのでありますから、これはおそらく防衛庁長官とても同じ考えだと思います。そういうふうな考えで、今後社会保障調整のとれた防衛力の増強ということをやっていきたい。具体的にどうなるか。これは今後国防会議等においていろいろと策定されるでありましょう。その際にそういうような趣旨をもって対処したいと考えております。
  78. 岡良一

    岡委員 皆さんそうおっしゃるのです。予算委員会でそういうふうに質問したときにも、やはり総理はそう言われた。しかし事実が皆さんのそういうお約束というものと矛盾しておる。そこでお尋ねいたしますが、安保条約で日本の経済力に見合う防衛負担ということが一応約束されておるといたしまして、たとえば今年の予算の編成をはたから見ておりますと、この健康保険赤字問題なんか、最後まで政府、与党の間でも非常な論議の焦点になって、とどのつまりが、今改正案として出されたような予算におちついてきた。ところが千四百七億の防衛関係費はほとんど傍若無人に大手を振ってまかり通っておるというような姿である。そういう状況を見ておりますと、先ほど申しましたように、五カ年計画の社会保障関係費が六千五百億台である。防衛関係費が五年後には二千億をはるかにこえようというような数字を見せつけられますと、防衛分担金は減っても、防衛関係費はむしろかえって増額するという悪循環が、特に本年度の予算案にはっきり出ておるじゃないか。これでは社会保障関係費というものは、いよいよその犠牲になろうとするのじゃないか。国民生活そのものが防衛のために犠牲となろうとする、そういう赤信号がすでにもう出ておるじゃないか、こう考えるわけです。皆さん品では、日本を守るそのためには、守るに足る国を作らなければならぬ、こうはっきり言われますが、事実その予算というものを見ておると、かえって逆な事態が深刻になろうとしておるというように私どもは見るわけなんですが、この点重ねて大蔵大臣の御見解を伺います。
  79. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 御指摘の点については、これはいろいろと意見の相違もあると思います。防衛庁費を幾らにするのが妥当なりやいなやということは、これは防衛自体に対する基本的な考え方の相違からも私は来ると思う。防衛庁費と社会保障費との予算上の関係でありますが、むろんこれは私が繰り返して申しますように、われわれ自身としても、財政が許せば社会保障費にもう少し回したい。しかし本年においても、むろんそれは自然にそのくらいはふえるんだといえばそれまででありますが、財政的な見地からいたしますれば、やはり昨年度に比べて本年度の予算は百億はふえておるのであります。そうして国民所得等に対する社会保障費のふえ方を考えると、三十年度は、私今数字を十分覚えていませんが、記憶にあるところでは、多分一・五%くらいなものであったろうと思います。それが一・六くらい、若干でありますが、割合も三十一年度は三十年度に比べて増加している。防衛費の国一民所得に対する三十一年度の割合は二・何がしというところで、こういうふうに漸次社会保障をふやしていく、同時にまた社会保障制度のあり方についても、やはり今後考えていかなくてはならぬ、かように考えて、できるだけ御協力を得まして社会保障の充実に努めたい、かように考えておる次第であります。
  80. 岡良一

    岡委員 それから先ほど防衛分担金の問題等については、社会党と政府では世界観の相違だ、こういうふうなお話がありましたが、私どもは防衛支出金の三百億全部を減らせと主張をしておるのです。これは事実上できないと思われますか。
  81. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 それはとても今できないことでございます。
  82. 岡良一

    岡委員 あなた方と同じ世界観に立っている政党がこれをやっているじゃありませんか。西ドイツです。西ドイツでは、防衛分担金の未支払いが今年の三月までで三十二億マルク、三千億円をこえております。来年度は毎月一億マルクずつ二十四億マルク、日本の金にすれば二千億をこえるが、今年の春になってから、分担金の支払いはやめたとはっきり言い切って、支払わないじゃありませんか。だから英国やフランスの軍隊は撤兵しようじゃないかということさえ、それぞれの国内で議論が起っている。西ドイツの国会では減税に回せと言っている。去年はヴォランティーヤ・ビル、志願兵法を通しても、せいぜい二千名、千八百名しか今のところ集まっておりません。こういうように、同じ敗戦国だって、しかも同じ世界観に立っている資本主義の政府である大蔵大臣のシェッファーが、はっきりそう言い切っておる。一文も出さないお手本をやっている。あなたはできないということはないと思う。やろうと思えばできると思うのですが……。
  83. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 それはやろうと思えばやれぬこともないかもしれぬが、それは適当でないと私は思います。
  84. 岡良一

    岡委員 私どもはそういう意味で、この健康保険制度改正というものが、決して単に健康保険だけの改悪というものでない、社会保障制度の中心である社会保険というものに対して大きな赤信号を呈示するものであるということ、それからまだまだやらなければならないことがある、それをまるで怠って、ただ当面の弥縫策に労働者の犠牲、負担を強要しているというようなこと、従って結核の対策とか、あるいは被用者保険の一元化というような問題についても、これは今後の問題ではあるが、しかし前の川崎厚生大臣のときには、制度の統合については、企画庁を設けるという意見を発表されたこともある。こういう問題は当然やはり解決さるべきだと思います。同時にまた分担金の問題では、いろいろ大蔵省には大蔵省立場もありましょうが、同じ世界観を持っている資本主義の政権だって、西ドイツではちゃんと、一文も払わないと言い切っている。五千億からの金を払わないというので、あわてふためいて、イギリスでもフランスでも、撤兵しよう、自国民の負担でドイツに兵隊を送る必要はないだろうという議論も起っているということが最近の新聞に出ている。やはり真に労働者のからだを守り、社会保障を守るという気持は、もっとしゃっきりした、日本の自主独立を守るという心組みと連なっていると私は思う。こういう点は、まだまだ日本の政府なり財政当局なりが非常に第三国の意思に制約されている、引きずられているというようなことによって、やはりこういう健康保険改悪が出ているんじゃないかと見ている。他に質問の方もありますから、私はこの程度にいたします。
  85. 佐々木秀世

    佐々木委員長 野澤清人君。
  86. 野澤清人

    ○野澤委員 せっかく大蔵大臣が見えたものですから一、二点お伺いしたいと思うのですが、すでに予算も決定しましたので、来年の話をすると鬼が笑うといいますが、来年度の問題について一応お伺いしておきたいと思うのです。これは厚生大臣大蔵大臣と合せた問題で、たびたび滝井君その他から御質問がありましたが、国庫負担の問題についていろいろと心配をされております。また補助金の問題に関しましても、成文はできたが、定額補助というものは計画されない、こういう状態でありますが、この来年度の補助金がどうなるかということについては、再三再四大蔵大臣も、また厚生大臣からも、必ず出るのだという暗々のうちの了解だけはしているのでございます。ところが経過的にこれを見ますと、昨年度の二十二国会以降、当時厚生大臣をやっておりました川崎君時代に、少くとも昭和三十一年度にいったならば、健康保険に対して二割の国庫負担をするのだ、こういう強い意思表示がありまして、昨年健康保険法改正がありました。これは審議未了になってしまいましたが、その結果、今度の小林厚生大臣になってから、一割の国庫負担という要求が出たのだと思うのです。ところが、いよいよ折衝に入ってみますと大蔵省ががんとして聞かぬ、国家財政の規模から予算措置ができぬというような理由で、何べんも何べんも悲壮な決意で折衝してもなかなか厚生省の言うことを聞いてもらえない。結果においては補給金という名前が生まれてきた、今度は補助金として一応成文の中に姿を現わしてきたわけなんです。これについてたびたび小林大臣にもお尋ねをしますが、大蔵大臣が出すと言うたから差しつかえないんだ、こういうことでばく然としておるのです。与党の議員としてこれははっきりしておきたいと思うのですが、先ほどの大蔵大臣国庫負担患者の一部負担に対する御見解のときにも一応その筋が現われておりますし、また厚生大臣説明を聞きますと、健康保険財政というものが毎年々々の収入によって運営されるということが明言されております。ところが年度じまいになると赤字が出て初めて補助金がきまるというような財政の行き方では非常に困ると思うのです。経過的にこれを申し上げますと、昨年健康保険法がつぶれたということは、赤字の抜本対策だということで前の厚生大臣健康保険法改正を出しました。今回は根本対策として小林厚相が打ち出した。鶏が先か卵が先かという禅問答みたいなものですが、少くとも今度の健康保険法改正ほど社会を大きく刺激して大きな社会問題になったものはないと思うのです。医師側が総辞退をしなければならぬ、こういう事態まで引き起しているのですから、与党としましてもこの案を通すには相当の決意をしてやっているわけです。これだけの健康保険法が万一通った暁には、少くとも大蔵大臣としては定額の補助金を出すくらいの考えがあっていいのじゃないか。ところが根本対策もしてないのに国庫負担せいと言うても大蔵省では聞けないんじゃないか、こういうふうに与党の議員としては立場上善意に解釈しております。いよいよここまでくれば来年の予算編成時期には、少くとも大蔵大臣は定額の補助金を出す決意をするくらいの気持になっていって差しつかえないんじゃないか。来年度のことを言うと鬼が笑うといつか大臣も冗談に言うておられましたが、今のところ見渡す限り閣僚の編成がえがあっても大臣は大体継続すると思うのです。そこで予算も通ったお祝いに、どうかこの委員会に対してしっかりしたはなむけの言葉をいただけるならば、この健康保険法も近いうちに何とかして通したい、こういう考えでいるのでありますが、この点に対してはっきりした御見解を発表していただきたいと思います。
  87. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 健康保険法通りまして、来年度予算編成になりますが、むろんしばしば御答弁申し上げましたように、今回の補助制度は単なる赤字補てんのためのものではなく、健康保険を健全に育てていく意味において補助しているのであります。来年度どういうふうにそれをするか、私は、時間的な余裕もあるので、もう少しこれを考えていきたいと思います。
  88. 野澤清人

    ○野澤委員 厚生大臣に決意のほどをお聞きしたいのです。ただいま大蔵大臣は非常に含みのある言葉で何とかこれを考えようということでありますが、これだけの社会問題まで引き起した大改正を主唱した責任者として、来年度からの健康保険に対する補助金の定額補助についてどれだけの確信をお持ちになっているか。今ここで三十億とか五十億という約束はできなくても、日本の社会保険を伸張させる大きな動機になるのでありますから、この際あなた自身はどんなことがあっても必ず大蔵大臣と折衝してかちとる、こういう御決意があるかどうか、また自信があるかどうか。健康保険法改正案が上程されてから今日までの大体の空気から見て、あなたのお顔を見ているときょうくらいほがらかな顔をしているときはないのですが、この問題についてのはっきりした決意をお示し願いたいと思います。
  89. 小林英三

    小林国務大臣 野澤さんのただいまの御質問に対して、今大蔵大臣としてはお聞きの通りの御答弁をなさったのでありますが、私は先ほども岡委員の御質問の際にちょっと申し上げましたように、私といたしましてはこれは最初から定率の国庫補助を出してもらいたい、こういうような考え方大蔵省ともいろいろ折衝いたしておるのであります。しかし私が実際に閣僚の一人といたしまして国の財政全般についていろいろ大蔵大臣と折衝いたしまして、財政の問題から、今年はとりあえず三十億円、しかも大蔵大臣社会保障の確立の見地からいたされまして、厚生大蔵両局とも折衝の結果、今日御審議を願うような結果になったのであります。大蔵大臣も今御答弁なさいましたように、私といたしましてはできるだけ大蔵当局とも折衝いたしまして——大蔵大臣は十分考えてみようと言っておるのでありますから、私の気持といたしましては今野澤さんのおっしゃるように、ぜひ一つ将来は定率でお願いしたい、こう考えておる次第であります。
  90. 野澤清人

    ○野澤委員 そこで先ほど大蔵大臣国庫負担の面についてのお話に、三千万人の未加入者があるというお話がありました。この委員会の全体の空気としては少くとも党の政策として五カ年計画の中には国民皆保険にしようという空気がみなぎっております。この時期が来年になるか、再来年になるか、あるいは四年後になるかわかりませんか、そういう傾向が強く打ち出されてきております。これに関しましても、いよいよそういう事態に立ち至った場合に国家財政の規模というようなことで締め上げられますと、皆保険というものも実現困難になってきます。この問題に対して大蔵大臣としてはやはり準備おさおさ怠りなく、国力の回復とともにこの社会保障制度を推進する上においての捨て石としてすでに地ならしを行われた。そういう法律改正が今度実現するとすれば、その上に基礎打ちをし、柱を立てるということに対して、単なる大蔵大臣という立場でなしに、少くとも日本の社会保障制度を確立する意味において三千万人の受け入れ態勢についても十分検討する。こういうお考えでお進み願えるかどうか、この点を最後にお尋ね申し上げておきます。
  91. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 御質疑の点につきましては厚生大臣が非常に御努力なさっておるところであります。大蔵大臣といたしましても財政の許す限りにおきましてこれに協力いたしたい、かように考えております。
  92. 佐々木秀世

    佐々木委員長 井堀繁雄君。
  93. 井堀繁雄

    ○井堀委員 先ほど岡委員質問に対して大蔵大臣は三十億の補助金を予算に組んだことが健康保険に対する何が前進的な措置のような御説明がありました。従来の健康保険に対する財政的な冷淡な態度から比べれば、あるいは一つの進歩であるかもしれませんが、今この委員会審議されております健康保険あるいは船員保険厚生年金保険を含む社会保険審議の過程で明らかになったところによりますと、大へんな改悪であるのです。そこで、二十億を政府が出すことによって、その改悪の一部を是正することができるかできぬかということがやはり重要なことになると思うのであります。ここで三十億を出すということについて、先ほど来大蔵大臣は、国を財政全体の関係からこの方面に支出する金の困難なことを理由にされておりますが、その点についてはわれわれも全く否定するものではないのであります。  ただこの際明らかにしておきたいと思いますることは、同じ医療保険の中で健康保険と国民保険の二つの例だけを取り上げてみてもいいと思いますが、国民保険の場合においては、今日医療費の十分の二すなわち二割、そのほかに保健婦に要する経費の三分の一、事務費はもちろん全額を負担しておるわけであります。国民保険健康保険補助金をかような点で相違を作ったのは、大蔵当局としては、やはり財政上の関係でありますならば、こちらに医療費の二分の一を出せば、健康保険についても二分の一を出すべきではないか、かように考えますが、この点に対して、財政上の理由でいずれに重きを置いたかということについては、大蔵当局としての見解があるはずであります。この点についてお尋ねをいたします。
  94. 佐々木秀世

  95. 井堀繁雄

    ○井堀委員 いや、これは政策上の問題ですから、大臣の見解をはっきりと伺いたいと思います。
  96. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 だいぶんいろいろこまかい理由もあるようですから、一応政府委員から答弁させます。
  97. 宮川新一郎

    ○宮川政府委員 この問題につきましては、政府管掌健康保険に対しまして幾ばくの補助を出すかということにつきましては、国民健康保険との、バランスももちろん考えてみなければならないと思います。御承知のように国民健康保険には事業主の負担がございません。つとに二割の国庫補助をいたしておるのでございます。政府管掌健康保険に対する補助につきましては、大臣が申しましたような財政状態考え、他の保険との、バランス等を考えまして、とりあえず政府管掌健康保険収支の。バランスがとれるようなラインで補助をするという観点に立ちまして、三十億の補助をいたしたような次第であります。
  98. 井堀繁雄

    ○井堀委員 健康保険保険料を半額雇い主が負担ずるという事実が、政府補助金に差別をつけた理由だということを言っておりますが、そこで問題は、健康保険の本質の問題になるわけであります。これは何回か委員の質問に答えられておったようでありますから、繰り返すことを避けたいと思います。健康保険と国民保険の相違の問題は、今後の日本の社会保障制度を確立する上に重大な事柄でありますし、特に国の財政上の関係において取捨選択が行われるところでありますから、はっきりいたしておきたいと思います。  言うまでもなく、健康保険の歴史が一応問題になるわけであります。健康保険は、工場法の一部が取り入れられたことは言うまでもありませんが、今日船員保険の中にもその精神が生きておるわけであります。一般にわれわれは、工場法の場合においては公傷病ということを言ったものであります。すなわち、業務上の疾病については雇い主が全額負担をしておったものであります。ところが健康保険が生まれるときに、その既得権の一部が奪われたわけであります。そのかわりに、すなわち、業務上以外の場合の疾病についてもその保険給付を受けることができるということで調和されるのではないかというので、当時の既得権の問題は一応ケリをつけておる。しかしここに問題があるのです。雇い主が半額負担をするということは、そういう根拠に基いた歴史上の理由一つある。いま一つの問題は、一般の国民保険健康保険の相違は、業務上の疾病がこの中に含まれておるからであります。これは言うまでもなく、雇用労働者の労働力保全の、要するに労務管理ないしは生産上の国策の一つとしてこの問題が取り入れられているという事実を無視してはならぬのであります。でありますから、先ほどの理由だけをもって国民保険健康保険との差別をつけるということにここで百歩を譲ったといたしましても、五人未満の事業所の労働者はこの中に入っていないじゃありませんか。あなた方の統計からいきますと、三百七十五万人からの雇用労働者でその恩典からはずされている人たちがあることが明らかになっている。こういう問題を、都合のいいときには、雇い主が半額負担しているのだから国庫負担を減らすのだということになりますと、全額国庫負担でめんどうを見なければならぬ三百七十万の労働者がいるじゃありませんか。これはどうしますか。だからそれは理由にならぬと私は思う。理由をそういう点に求めてくるならば、先ほど厚生大臣も答弁しておりましたし、大蔵大臣も答弁されておりましたが、労働力保全の問題は、日本の拡大生産、すなわち政府の十大政策の一つにあるように、産業の基礎的条件をつちかうための政策からしても、あるいは貿易振興という当面の問題からしても、むしろ急務の問題であります。でありますから、もし雇い主の負担が半額あるとするならばという理由でこの問題を削るとするならば、さっきの問題を解決しなければなりません。それから他の理由を求めて、日本の一番急がなければならぬ生産の基礎をつちかうという国策からいえば、労働力保全の問題は急務であります。ことに業務上の疾病はかなり大きな比率を示しているのでありまして、業務上の疾病に関する経費は雇い主が全額持ったらどのくらいの金額になるかというと、これは私は計算しておりますが、それが雇い主の負担総額と見合うような金額であるというなら、それもまた一つの計算の仕方であります。でありますから、そういう理由をここにあげる場合においては、その点を解決していかなければならぬのであります。これは非常に重大なところでありまするから、くどいようでありまするが、そういう関係の中から今日国庫負担を三十億にするのが正しいか、あるいは社会保険審議会の答申するように、療養費の二割を負担するのが妥当であるかという問題を解決していかなければならぬ。この問題を解決しないで、ただ財政上の理由だけなら、それはただ序列を変えるだけの話である。序列からいったら、国民保険の方に先に回すか、健康保険の方に先に回すかという狭いワクの中で判断していく問題があるのですが、もっと国の政策全体の中から考えくるならば、国民保険よりも健康保険を優位に置いてすべきだと思う。こういう点に対する考え方をはっきり伺っておきませんと、ただ単に大蔵省厚生省の折衝だけによって答えを出されるということでは穏当でないと思う。この委員会大蔵大臣をわずらわしたのは、この問題に対するケリをつけていただきたいからである。事務当局の形式的な答弁ではこの問題は解決しないのです。日本の財政政策全体をどういう工合に調合していくかという点について、あなたは序列ということを言われましたから、順序をどこに求めるかというのです。たとえば私が今言いました国民保険健康保険の序列について、あなたはどちらを先にするのか、伺いたい。
  99. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 ただいまの健康保険に対する三十億の補助医療費に対する二割の国庫負担、これはどちらが妥当なりや、こういうふうな点でありますが、今回三十億国庫補助をいたしましたのは、第一はまず先ほど申し上げましたように財政もなかなか苦しい。ところが一方健康保険はまさに赤字で非常に苦しんでおる。もうほうっておけば崩壊せぬとも限らぬ、これは何とかしなければという事情もあります。同時にまた他の保険との関連も考えまして、これは単なる赤字補てんでありませんで、この際今後の社会保障考えて、社会保障確立に一歩前進するという意味ももって、とりあえず三十億健康保険に入れよう、こういうことであります。その妥当性等につきましては、今後私、他の保険との関係等も考えまして十分検討を加えてみたい、かように考えております。
  100. 井堀繁雄

    ○井堀委員 これに対する厚生大臣の見解を伺います。
  101. 小林英三

    小林国務大臣 井堀さんから、健康保険発達の歴史からいろいろお話があったのでありますが、とりあえず三十億円国庫補助をいたした。井堀さんのお考えでは、もっと国庫補助すべきではないか、少くとも二割とかあるいは赤字全額とかいうようなものを補助すべきだというような考えがあっての御質疑だろうと思うのでありますが、もちろんこれは国家財政という面からもございますし、一方におきましては、国民のうちで三千万人もの人が社会保険の適用を受けていない。すべての医療に対して、国には税金を納めるが、自分の費用で医療にかかっていく、こういう状態にあることも考えまして、この際とりあえず国庫補助を健保の赤字財政の解消と、社会保障の確立の見地から出されたものでありまして、将来の問題につきましては、ただいま大蔵大臣のおっしゃったようにさらに検討します。こういうことであります。
  102. 井堀繁雄

    ○井堀委員 私のお尋ねしているところに対する御答弁としては、まことに不満であります。大蔵大臣は検討していくということでありますが、これは相当やかましい問題なんです。現に与党内部でも医療担当者に犠牲を強要したり、被保険者にはなはだしい出血を要求するような改正案を出しまして問題が起っておる。私のお尋ねしておりますことは、健康保険と国民保険を同列に扱うということになれば、赤字はもう解消するのです。問題の外になる。すなわち医療費の二割を負担すればそれで問題は解決するのであります。何もありません、今のように医師会を向うに回して、あるいは被保険者の非難攻撃の中に立たなくてもいいのです。   〔委員長退席、藤本委員長代理着席〕 事柄はいろいろいわれておりますけれども結論は簡単なんです。小林厚生大臣は、まだ今日二千九百六十何万、約三千万の国民が、医療保険の恩典から除外されておるということを非常に同情的に言っておりますが、私もその点については、当然国民のすべてが法の前に平等であると同様に、こういう社会保障の前に差別されるということは許されることではないと思いますが、その問題をこういうところに引例されることは逆なんです。それは健康保険の場合においてたびたび言われておりますように、適用範囲を拡大するということをやらないで——また今保険から除外されております人たちがどういう人たちであるかをお尋ねすれば、厚生大臣は答弁できないと思う。むしろ今除外されている人々こそが、こういう社会保障の恩典をまっ先に受けなければならぬ気の毒な人たちです。それは個人の責に帰するものではなくて、社会制度の責、あるいは政府の政策の破綻から起っておるところの、いわば社会的な他の理由による善意の被害者である。これは分析してみればすぐわかります。たとえば雇用労働者の中の三百七十五万の人たちはどういう人であるかといえば、五人未満の事業所の労働者である。あるいは労働基準法を適用できない家内労働者、あるいは雇用の不安定な人々でありますから、収入がきわめて零細で、生活をささえるだけの収入を得ていない零細所得者であります。こういう者に医療保険の恩典にまっ先に浴せしめるようにすることこそが、今日の政治としては一番先に考えなければならぬ問題であると思います。だからこれを救済するために保険全体を引き下げて救済するというのであればまた別です。そのためならば高い水準の者はある程度がまんすると言うかもしれません。ところがそれからはずされておる者については、この前の改正のときにも、適用範囲を拡大する意思はないかと言ったら、趣旨には賛成だという意思を表明しております。そのできない理由は何かと言ったら、事務的な理由とかあるいは財政上の理由をあげておる。そんな矛盾した答弁はないと思います。特に厚生大臣ともあろうものが三千万人の者がどういう人であるかということを考えれば、今言うようなそういう雇用労働者とその家族——これは他の場合にも大蔵大臣にお尋ねする都合がありますから一つ資料を提供しておきますが、今日の日本の雇用関係状態を見てみますと、政府は三十三万人の雇用が増大したことを統計で発表しておる。確かにその通りであるが、その三十三万人の雇用がどこに増大しておるか、またその雇用の変動がどうなっておるかということを知らなければならぬ。それを農林関係と非農林関係に大きく分けてみましても、農林関係においてはむしろ減じておるのです。しかも農林関係で四十六万人も雇用が減じておる。この農林関係の雇用が四十六万人も減じたということは、これは一方において農地改革その他農村の文化が高まったというようなことになるかもしれませんから、このこと自身は必ずしも悪い傾向とは思いません。しかし、この四十六万人の雇用が減じて非農林関係が逆に七十九万人の増加になるという結果になるわけであります。  さて、それではこの七十九万人の雇用がどのように非農林関係に増大しておるかということを見ることが大切なんです。それは大体二百人未満の事業所、さらに十人以下の零細事業所、あるいは一人か二人しか雇用していないというようなところに著しく増大してきておる。さらに家族労働が二十三万もふえておる。それから、これは統計には出ておりますが、かつぎ屋とか紙芝居屋とかいうような、失業者の定義からははずされる不完全労働者が著しく増大してきておるということです。だからこういう者にまでもこの社会保険の適用の範囲を広げていかなければ、実はほんとうの社会保障制度意味をなさないのです。でありますからこういう者を一体どうして適用していくか。今度の改正の中に少しでもそういう芽が出ておれば、われわれはその低いことを嘆くのではなくて、その成長を待つのです。ところがそういうものは何ら出ておらぬじゃないですか。この改正案のどこに出ておりますか。こういうものを把握する改正の意図をどこに出しておるか。そういうものが出てこなければ——保険は相互扶助的な使命の上に立つというならば、高額所得者がある程度負担を増大する、あるいは雇主の負担を増す。あるいは逆にあなた方は外国の例をしきりに引いて、医療費の一部負担をいっておりますけれども、その一部負担の歴史を見てごらんなさい。みなそれは低い気の毒な人のために比較的恵まれた者が譲歩するという意味において取り上げられておる。日本のように下の者はほったらかして、そうして今日の負担に耐えないような者に負担を増すようなことでは一体どこに社会保障制度の前進がありますか。どこに社会保障制度の成長のために芽ばえがありますか。こういう根本的な問題を私どもが明らかにしていけば、国庫負担を増額するということは私は五十歩百歩だと思う。三十億を六十億出せば一応国庫の小康を保つことができます。そこで次に赤字の問題に触れるのでありますが、その六十億の財源があるかないかということについては私どもの言及するところではありません。ただその必要が高度であれば私は予算はどこからでも回せると思う。すなわち大蔵大臣の言葉でありますが、順序をどう求めるかということなんです。私は今一番卑近なところで国民保険健康保険の例をとった。例は必ずしもよくないのですけれども、先ほど同僚の岡委員は防衛費に例を求めたのですが、そこまでいかなくても近いところにある。社会保障のワクの中からだけ判断してみても、今日の三十億を六十億にすれば、今年は六十六億の赤字を見込んでおりますけれども、これはこの改正案が通れば減ります。標準報酬が上ってきますから。それから政府の言っている他の政策が高まってくればということは、あなた方は同じことを別な言葉で言っている。予算全体の上であるいは財政政策や経済政策、金融政策の中では雇用は増大していく。拡大再生産はとにかく伸びていく。大蔵大臣ではないけれども地ならしは済んで、これからだんだん育ってくるようなことを言っていたではないですか。ところがこの見込みの中には悲観的な立場に立って見込んでおる。大体六十六億と言うけれども、六十六億出せばとにかく一応赤字の段階から脱皮できると思う。わずかではないですか。三十億と六十億の違いではないですか。五十歩百歩とはよく言ったものです。この六十億を踏み切れなかったのは、私は以上の問題に対する大蔵大臣の配慮が足らなかったのではないかと思う。厚生大臣の追及が足らなかったのではないか。この点に対するお話し合いが両者の間になされて、閣議でこの問題に対して討議をされて否定されたのであれば、われわれはまた議論の仕方がある。この二つの点だけについて大蔵大臣厚生大臣おそろいのところで、両者の主張を明らかに一つ伺っておきたい。
  103. 小林英三

    小林国務大臣 井堀さんから、零細な、たとえば五人以下の事業所の従業員等の問題についてもこまかくお触れになったのでありますが、私は五人以下の事業所等につきましても、井堀さんがおっしゃるように、三千万人のどれくらいのパーセンテージになっておるかということは、今はっきり申し上げられませんけれども、この中にはもちろん国民健康保険の、主として自営している方たちを含んでおります国民健康保険の未加入者の人たちは、必ずしも私は零細な対象者ではないと思っております。しかしいずれにいたしましても、そういう零細な方たちの社会保険制度を一日も早くしくことは緊要であり、重要な問題であります。たとえば零細な問題につきましては三年くらい前に適用されました日雇い労働者健康保険、これなんかも長年の懸案であったのでありますが、国会等におきましてもいろいろ御心配願って、今日の改正改正を加えて、だんだんとあのような方たちにも一つ保険が制定されておるわけであります。ただ問題といたしましては、今健康保険赤字の対策にあわせて直ちに五人以下の零細な事業所における勤労者の被保険者保険をどうするかというような問題につきまして解決するということはなかなか容易ならぬことであります。非常に重要でございますので、できるだけ早くこれらの問題についても解決をいたさなければならぬことはもちろんでございますので、こういう問題もあわせまして、私どもといたしましてはこれらの三千万人の皆保険を三十五年を目途といたしまして調査研究いたしますために九百万円の予算もとっておりますし、これは五人のりっぱな人たちを選任いたしまして、厚生大臣の相談相手として今後速急にこれらの調査研究企画を定めて参りたい、こういうふうに思っておるのでありまして、ただ健康保険で毎年増大いたしておる赤字、その赤字をほうっておきますことは、これはもう健保の制度の壊滅になりますので、ただいま御審議を願っておりまするような改正によりまして健康保険の将来の発展向上をはかろう、こういうことで今御提案を申し上げておるわけでございます。どうかその点は御了承願いたいと存じます。
  104. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 厚生大臣から詳しく御答弁がありまして、それで尽きておると思います。御了承願います。
  105. 井堀繁雄

    ○井堀委員 三十億が六十億になぜいかなかったかということを聞いておるのです。
  106. 小林英三

    小林国務大臣 なお井堀さんの属しておられまする社会党におかれましては、先般健保に二割あるいは国保に三割というようなお考えもあったのでありますが、私はやはり政治というものは現実の問題でございまするから、やはり国の財政考えまして、そうして漸進的に将来の社会保障の問題も考えるということが、私は正しい政治の行き方と考えておるのであります。
  107. 井堀繁雄

    ○井堀委員 全体の予算関係の中から一体六十億出せるか出せぬかという議論はあまりに幼稚な議論だと思う。ただ出さなきゃならぬという判断が前提になるわけであります。この点に対して厚生大臣大蔵大臣の間で一体どのような折衝が行われたかということが前提になるのでありますけれども、どうもあまり突っ込んだ協議がされていないようでありますから、そういう点でお答えがしにくいのであるならば、もっと答えをしてもらいやすい点を申し上げて伺いましょう。これもごく卑近な同じ健康保険です。同じ健康保険で、組合管掌と政府管掌の二つだけを比べてみてもいい。保険組合、これは全部の保険組合がそうだとはいえませんけれども平均してやや小康を保っておる。黒字を出しているという言い方は言い過ぎかもしれませんけれども、とにかく政府管掌健康保険に比べますと、まだ安全地帯にあるわけです。ところが健康保険だけが、しかも昭和二十九年から急速に赤字が出てきたという原因を見ていきますと、政府説明にもありまするが、統計の上にずっと出てきておる。それはすなわち、保険勘定の中では、出す方と入る方とがありますから簡単であります。その支出の面で一番大きいものは何だというと医療給付でありますが、その医療給付が減らないでは収入がそれに見合ってこない。それで健康保険組合と政府管掌の比率を見ていきますと、非常な開きが出てきている。この開きがちょうど赤字になっている。ということは政府も認めておりますように、保険収入の基礎になっております被保険者の報酬実額すなわち給料がはなはだしく低額であるということが明らかになっておるわけです。この点からいえば、健康保険組合を独立させることなく一本にして、どんぶり勘定にすればこの赤字がずっと減ることだけは確かです。しかし、そういうことを私は聞くのじゃない。ここでお尋ねしたいのは、二つの理由があるのです。その一つは、今言うように被保険者の実収が比較的高い大手筋の事業所、一方は零細事業所、この問題があると思う。他の一つに思惟しなければならぬことは、経営上の問題がある。結果から見ますと、政府管掌は経営の仕方がまずい、組合管掌の方は効率的な経営が行われている。それにはいろいろ理由があると思う。この理由を明らかにする義務があるのです。この二つの点を私どもは論議しなければならぬと思う。そこでお尋ねいたしたいのは、同じ性質のものがこういう違いが出たということは、その一つ理由である零細企業、中小企業というものが政府の政策の転換によって——大蔵大臣、あなたの責任です。私はデフレ政策に反対するものではありません、健全財政を否定するものではありません。そういう政策を一方にとろうとするときには、必ずそれから起ってくる弊害というものがあるのです。どんないいことをしたって、ほおかぶりしたってうしろだけ出るのですから、当然その被害をこうむるべき弱いところに手当をしてこそ、それは総合的な国の施策なんです。大蔵大臣は、この中小企業、零細企業がどうしてこう収入が低くて、大きいところは収入が高いと思いますか。賃金だけの現象でしょうか、経営全体の現象でしょうか。大蔵大臣としては、こういうものに対して一応責任がありましょう。あなたのときから健全財政に切りかえて、それがすぐはね返ってきておる。この点に対する大蔵大臣の見解を承わっておきたい。
  108. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 中小企業なるものが特に利潤が少いということも、一品には言い切れないと思います。これもやはりいろいろと千差万別でありますが、しかしそういう点で今日中小企業の利潤率が低い、従ってまた給与も十分にいかぬ、こういうことは率直に私も認めます。従って今日中小企業対策の急務が叫ばれておるゆえんであると思っております。
  109. 井堀繁雄

    ○井堀委員 なるほど、中小企業なるものにも例外があります。中小企業必すしも低所得者ばかりとは限りません。しかし今論じているのは、保険経済の中でどうして収入が低くて負担は変らないかという問題を、健康保険組合と政府管掌のものを比較して申し上げている。数字は省きますけれども、比率だけを見ましても格段の相違です。たとえば同じ保険組合の中でもその現象は現われている。たとえば、厚生大臣がかって理事長をしていた組合をあげましょう。それは川口工業健康保険組合で、比較的小さな工場を集めております組合なんです。その組合と王子製紙の健康保険組合と、この二つの例を見てもわかります。その保険財源の決定的な条件になりますところの標準報酬、その平均標準報酬が王子製紙の場合には二万七千四百一円、それに対して川口工業健康保険組合は二万二千百五十八円、半分に当らないのです。これは川口工業健康保険組合の標準報酬の把握にもし疎漏があったとすれば、それは厚生大臣理事長をしていたのでありますから、あなたの責任になる。これは昭和二十九年ですよ。このように大きい事業所、これは王子製紙ですから一流の会社です。組合管掌平均を見ていきましても、二万一千六百二十一円の標準報酬が出ております。ところが政府管掌の方を見てごらんなさい、この事実をいかんともしがたいでしょう。大蔵大臣は中小企業政策を他の方法でやっておるというけれども、これはもしあなたが言う通りに、中小企業が低くないとするなら、標準報酬を把握するための報酬実額に対して政府の手落ちがあったか、健康保険組合の方は百パーセント徴収しているという結果になるかどっちかだ。これは厚生事務当局の責任になるか、政府の中小企業対策がインチキか、そのいずれかを答弁しなけばならぬ。その数字違いはどちらでしょう。厚生大臣大蔵大臣はその原因をどうつかんでおいでになるか、このことがはっきりしなければ、健康保険法改正などというものはできるものじゃないですよ。
  110. 高田正巳

    高田(正)政府委員 これは組合管掌と政府管掌とは、実際の賃金の実態が違うのでございます。もちろん組合管掌の方は事業主と保険組合がうらはらでございますから、標準報酬のつかみ方においても、政府管掌よりはすぐれておるところがあると思いますけれども、しかしそのことによって五割も六割も標準報酬が違うということはあり得ないのであります。これはあくまでも組合管掌におきましてはその平均賃金が高い、政府管掌におきましては中小企業でございますので、その平均賃金が安い、従って平均標準報酬が安い、こういうことに相なると存じます。
  111. 井堀繁雄

    ○井堀委員 大蔵大臣はどうですか。
  112. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 ただいまの説明で十分であろうと思います。
  113. 井堀繁雄

    ○井堀委員 今の保険局長説明でよろしいだろうという大蔵大臣の御答弁ですが、保険局長の答弁は——私はさっきは標準報酬比較を申し上げたので、保険料の徴収額を言っているのではない。保険料の徴収額だけ見ましても、保険組合関係では、昭和三十年の見込みは一人当り一万三千百五十五円、ところが政府の方は九千四百五十四円でしょう、これはえらい違いじゃないですか。だからこの違い——大蔵大臣の認められる標準報酬はもっと開いておる。だから私は保険料徴収の額が開いておるということも問題であるが、それはさっき保険局長が言うように、組合の場合は雇い主と被保険者がうらはらですからですからごまかす必要もなければごまかせない。ですから正確に標準報酬と報酬実額がマッチしてくる。政府管掌の場合は、その捕捉が困難だという理由保険局長はほのめかしておる。私はこの問題の解決を別にしなければならぬと思う、またできると思う。それよりもいかんともしがたいのは、標準報酬が低い、すなわち報酬実額というものがはなはだしく開いているという事実は否定できない。そうすればその低い理由は何であるかということが前提になってこなければならぬわけです。大蔵大臣はそれを認めたのですが、政府管掌のものは中小企業、零細企業を包容するところの全国的な経営であります。保険組合の方は大体九百幾つかのうちその八割までは大きな事業所です。この点は明らかになっている。あなたは今それを認められた。そうすると中小企業、零細企業を含んでおるから低い、その場合は保険組合と政府管掌の開きはずっと続いていきますよ。その解決をいかになされるかということがはっきりしなければ、この赤字の問題を一時ここで国庫が出したところでどうにもなるわけのものでもない。この点に対して大蔵大臣は、どういうわけでそういう開きが出たか、しかも昭和十九年以来極端に現われてきたのです、この原因は何でしょう。
  114. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 中小企業において給与が低い、これは今日の状況では非常に禍根が深いように思うのであります。結局これは銀行問題からもくるのでありますが、いろいろな理由から今日やはり中小企業というものは利潤が非常に低い。これは数の多いことも原因しましょう。いろいろあります。従って利潤率が低いから給与も自然低いということになるのであります。こういうことに基いての保険の問題ですが、今日の組合保険政府管掌の不均衡をどういうふうにするか、これは一つ私はやはりとくと考えてみなくてはならぬのじゃないか。これを今日のようなふうに置いておくのがいいのか、私はあまり専門家でありませんから何とも言えませんが、やはり十分検討する必要があるのじゃないか。さらにまたこのままに分離しておくとすれば、一体どうすればいいか、これも今後考えてみたいと私は思います。今ここでどうすればいいかという結論を持っておりませんのを遺憾に思います。
  115. 井堀繁雄

    ○井堀委員 それでは簡単にお尋ねしますが、健康保険組合と政府管掌のものと一緒にするかどうかということが大きな問題で、それを今私は結論を求めるわけじゃない。しかし明らかな事実は、健康保険の経営の決定的な条件である雇用労働者の実収が一切を決定するわけです。これが今倍以上に開いていますこの問題の解決をこのままにしておいて保険経済の赤字の問題を処理していこうとするのであるか、あるいはその根本的な問題を解決するとすればどうすればいいか、この点に対し大蔵大臣立場からはっきりお答えをしてもらわなければならぬ。三十億を六十億にする、あるいは百億にするかどうかという問題がそこから出てくるわけです。その点あなたのお考え方を聞いておきたい。中小企業の方の収入がふえるような政策をお取りになるならどういう政策があるか、ないとするならこの赤字は国が見なければならぬ、どっちかを答弁して下さい
  116. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私としては財政負担をなるべく軽くして、しかも合理的にということも抽象的には念願しておるのであります。そういう考え方からすれば、これは両方一緒にした方がいいというようにも考えられるのです。まあしかしいろと問題も多いことでございますから、これは厚生大臣と特に御相談をした上で、考えてみたい、かように考えております。
  117. 井堀繁雄

    ○井堀委員 厚生大臣にお尋ねしますが、御相談の上でというのは、まだそういうことに対して御相談ができていないということが明らかになりました。あなたはこういう重大な問題について大蔵大臣に十分申し入れをしなかったのですか。
  118. 小林英三

    小林国務大臣 たびたび私はこの委員会でもこういう質問に対して申し上げておりますが、井堀さん自身も健康保険組合の問題と政府管掌の組合の問題、これを直ちにどうこうということを考えていないようであります。私も今の組合というものはやはり三十年の長い歴史で今日まで育って参りましたし、井堀さんのおっしゃるように非常に経営の面におきましても従業員と経宮主というものがうらはらでありまして、給料自身も平均一万六千円くらいですか、相当いい給料を得ておるのであります。従って保険収入政府管掌に比べまして非常に高いのであります。しかし私はこれらの問題も合せまして将来研究をいたしまして、すべての社会保険の問題を総合的に調査研究をいたしまして、将来どうするかという問題についての計画を立てたい、こういうふうに考えております。
  119. 井堀繁雄

    ○井堀委員 あなたは今研究と言うけれども提案理由説明の中ではっきり言っているのですよ。赤字が出た原因は何かということを、あなたは明らかに提案理由説明の際にいたしておる。二つの理由をあなたは目頭に上げております。その原因は近代医学の進歩で医療費が増大することはやむを得ぬという考え方を一方に明らかにし、さらに賃金水準の低い中小企業、零細企業を多く包容する政府管掌であるからと、この二つの理由を上げて赤字説明をしておられる。その解決、対策をどうするかということについては、保険料率を上げるということは今日の場合最高限度で困難だ、だからこれはできぬ。近代医学の進歩についてもこれを否定することができない、国民衛生思想の普及の上からいうて医療費を押えるということはできない。そうすれば結局これはどこへいくのです。それはさっき言うように、保険組合の方は曲りなりにもやっておるわけです。政府管掌で出たとすればこれは国庫負担にいくよりしょうがない。そうしなければ責任ある保険経済を被保険者たちは国にまかしておくわけにいわぬのですよ。ところが今大蔵大臣の答弁を聞きますと、重大な問題だからこれから研究しようとおっしゃるわけです。あなたはそういうことを大蔵大臣に言っていないと見える。それとも大蔵大臣がとぼけておるのか。重大なことです。そういうようなことでこういうものをわれわれに審議せいということはむちゃなことです。それは私は初めてこのことを質疑しておるのじゃありません。川崎厚生大臣のときもこのことを明らかにした。善処しますと約束した。人はかわられましても政府の機関は変更されるはずがありません。健康保険改正問題は今出てきたわけでありません。これは重大ですよ、あなた。この健康保険改正を誤まりますと日本の社会保障制度はくずれますよ。全国の医師が総辞退なんということはとうてい考えられない非常手段だと思いますけれども、そういう非常手段を講じてまでも健康保険法改悪を阻止しようというこの動きは私は軽視できないと思う。こういう問題までも惹起しているじゃありませんか。私はこの改正案の内容を一々見ていけばいいのですけれども医療費を一部被保険者負担さしてどれだけ出てくるか。政府は二十五億の三分といっておりますけれども、大したことではありません。そうじゃありません。この今言う根本的な問題をあなた方が閣議なら閣議で、それはそれぞれ担当が違うのでありますから、大蔵大臣はがま口を持っておるから出さぬ方がいいでしょう。しかし何も大蔵大臣の財産でありやしません。国民全体のために必要なところに必要なものを先に出せばいいので、その必要性を認識させるかさせないかは厚生大臣の任務じゃありませんか。認識さしていないということが事実わかったじゃないですか。厚生大臣任務はそれじゃ済みませんよ。この点どうなんです。
  120. 小林英三

    小林国務大臣 井堀さんの先ほどからの私に対しまする質問を翫味してみますと、今の御質問でようやくあなたの御質問趣旨がわかったような気がするのであります。私は組合管掌と政府管掌とが——組合管掌の方はいわゆる給料が、平均の報酬が高いから——この問題を井堀さん自身も今組合管掌と政府管掌、これを一緒にしようとかあるいはどう扱おうとかいうことをお考えになってはいないということもよくわかりました。ただ私は今井堀さんのおっしゃいましたように、政府管掌健康保険赤字というものがどうしてできたかという問題につきましては、私ども改正提案理由説明にありまするようにそれだけではございません、いろいろな理由がありますけれども、大体今おっしゃったような問題につきまして、少くとも数年前よりも今日の健康保険の内容というものは非常に向上進歩をいたしております。この際におきまして井堀さんのおっしゃいますように政府管掌健康保険に対して政府が全額赤字を埋めるべきである、あるいは定率でどうすべきであるというような問題につきまして、いずれがいいか悪いかという問題については、私は井堀さんと私との間にはまだ見解の相違があると思います。私は今日の健康保険組合の財政というものが今のような理由によりまして、これは黒字で健全な財政において多くのものはやっておりますれども、しかし政府管掌健康保険につきましては二十九年あたりから毎年相当な赤字を出しております。三十一年度は六十五億の赤字を予想されておるような状態であります。そこで今日国家財政見地からいたしまして健康保険組合には補助をいたしませんが、しかし政府管掌健康保険に対しましては、とりあえず三十億円の国庫負担をいたしました。そしてその他の問題については一部負担でやっていこう、こういうのでございまして、井堀さんのお考えは多分組合と政府管掌との間に非常に大きな開きがあるのだからして、この際において政府管掌には全額赤字国庫で埋めるべきじゃないかという御議論に立っての御質問だろうと思うのですが、私はそこは相当の見解の相違があると考えております。
  121. 井堀繁雄

    ○井堀委員 あなたと議論するつもりは一つもありません。見解の相違も何もありません。事実問題を言っておるわけでありまして、私が健康保険組合と政府管掌のものを引き合いに出したのは、標準報酬の相違を明らかにいたしたいから申し上げたのです。お断わりいたしておるように、健康保険組合と政府管掌のものを一緒にするのがいいか悪いかということを論じておるのではありません。私は現実をそのまま認めて、保険組合は私はいいと思う。ただ収入の方にこんな大きな開きが出ておるということを、一番身近な例をとっただけなんです。これはほかの統計でも言えるのです。規模別によって所得の格差というものが非常に開いてきておるという統計はほかにたくさんあるわけなんです。しかし類似のものがいいから同じ法律のもとに行われておりまする保険組合と政府管掌のものとの例を引いただけなんです。片方は今言うように非常に保険の財源が少い。だからこの問題だけを解決するためにはどうしたらいいか、何も私はとほうもないことを言っているんじゃないのです。同じ国民の医療保険の中で、国民保険については医療費の二割を出しておるじゃないか、健康保険に対しても同じように二割を出しさえすればすべては解決するのではないか、そういう簡単なことを言っているわけです。その簡単なことについてどうしてできないか、大蔵大臣に聞くと、財源全体だということから絶対量が少いという。それなら議論は別だと思う。絶対量ではなくて同じ性質のものがわけ万によって変ってくるんじゃないかということも議論にはなるのです。しかしそのことを私言っておるのじゃなくて、出さなければならぬというなら、さっきから言っているように問題は三十億と六十億の違いじゃないですか。今年の全体の予算の中からの三十億というものが、政府財政を根底から動かすような大きな問題じゃないじゃありませんか。しかし一方は健康保険全体を左右する大きな問題になってきている。ひいては社会保障制度を根底からくずすことになるのです。鳩山内閣の一枚看板はここでうそでございますということをあなた方自身が暴露するんじゃございませんか。そんな愚にもつかぬようなことをされないでも、うまくいきそうなものだという好意的な質問を私はしておる。小林さん個人を攻撃したりなんかしておるのではありません。厚生省という保健行政の責任の地位にある厚生大臣財政を預かる大蔵大臣との間でこの問題は話し合えば当然話し合いのできることではないか、それができていないということがお二人の間からはっきりしたので、そんなことでわれわれにこういう法案を審議させるということはむちゃじゃないか、まだ会期はゆっくりありまするから、少し練り直したって間に合いますよ。その間を練り直しなさったらきっといい案ができると思います。三十億です、大蔵大臣出しなさい。もう少し真剣に交渉すればまとまりますよ。どうです、その点まとめる意思はございませんか。
  122. 小林英三

    小林国務大臣 いろいろ御意見がございましたけれども、ただこういうことだけは井堀さん自身もお認めになっておることと思うのであります。すなわち国民保険健康保険とでは給付の内容が、健康保険の方が非常に高いということです。健康保険の場合におきまする本年度の三十億円の国庫補助というものは、一人当りの平均にして見ますると、大体において国保と同じになるということだけは私はお認め願えると考えております。
  123. 井堀繁雄

    ○井堀委員 これは一つよくお考えをいただきたいと思うのでありまして、これは何も立場やイデオロギーの相違とか政策の違いではございません、数字ですから。この問題を解決しないでやればほかへもっと悪いのが出てきますよ。だからなるべく早期診断をやって早いところ手術してしまうのです。そういう点を私は答弁して下さるかと思って期待しておりましたけれども、一向不得要領で、というのは相談してないということが明らかになりましたから、これは相談したらまとまるでしょう。それを一つよく相談して御研究願いたい。  そこで次に一つ明らかにしておきたいことがございます。それは今度の改正の中で、保険料率の問題は、これは政府も言っておるように、今日最高限度のものを取っておる。私もその通りだと思う。そこで標準報酬を動かしてきておる。標準報酬を動かす場合に問題が幾つも出てくる。それはこの前もちょっと関連質問政府の所見をただしておきましたが、一級、すなわち影響の一番大きいところの低額所得者の一級がただ千円の違いだという、一見そういうふうに見える。ところが四千五百円以下の所得者は全部千円上ったもので計算されてくるのです。そこで四千五百円以下の被保険者というものが一体何人おるか。大体でけっこうです。そしてこの改正によってどれだけ財政効果が上るかを一つ伺っておきたい。
  124. 高田正巳

    高田(正)政府委員 それはこの前もお答えを申し上げましたし、資料でも御配付申し上げておりまするが、従来の一級、すなわち三千円に該当するものでございます。これは十一万八千人でございます。これを四千円に最低を引き上げますることによって、財政効果といたしましては、約八千万円と記憶をいたしております。
  125. 井堀繁雄

    ○井堀委員 八千万円ばかりを取るのに、その負担はどうなるかというと、これはあなたに伺いたいと思いますが、一体四千五百円以下の人たちがどういう段階になっておるか。
  126. 高田正巳

    高田(正)政府委員 井堀先生の御質問趣旨を十分に拝聴できまんのでもう少し……。
  127. 井堀繁雄

    ○井堀委員 四千五百円以下の所得者、たとえば三千円が何ぼ、二千円が何ぼというふうになる、そういうものをお調べになっておるのですか。
  128. 高田正巳

    高田(正)政府委員 これは標準報酬制度を等級別に押えて保険を運用することになっておりますので、私どもの方にはさような資料はございません。
  129. 井堀繁雄

    ○井堀委員 わかりました。そこで、問題はここにあるのです。第一級三千五百円を四千五百円に上げるということは千円だけの差なのです。ところが二千円の者は二千五百円の違い、千円の者は三千五百円の違いになる。そしてその負担は雇い主が半分持つ。そうすると低額な所得者ほどこの改正によって負担が大きくなっていく。私は低額所得者、そういうものがあることを嘆くのです。否定したい気持なのです。しかし現実は厳粛なのです。非常に多いのです。だからこの改正は、さっきの総論で議論がありましたように、今日一番恩典を早く適切に与えなければならぬ階級から、保険料率の収奪がむごたらしく行われて、もちろんそれに見合う給付がくる、こういいますけれども、その給付は、療養給付はこれはだれも同じことなのです。こういう人たち負担に耐えない階級なのですよ。あなたのところに聞けばわかるのですけれども、私は二、三事実を調査してみた。一番保険料を滞納しているところはこの低額所得者の部分なのです。それは横着とかあるいは事務的に手が届かぬからという理由ではないのです。負担に耐えないのですよ。そういうものに大きなしわ寄せが行われる、この標準報酬の引き上げというものの被害が起ってくる。この点について大蔵大臣、この分は幾らでもない、九千万円くらいです。国庫で特別にめんどうを見るというようなことは考えられぬのですか。
  130. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 この標準報酬につきましては、これは十分検討を加えましてかようにいたしたわけであります。その分だけどうというわけに参りません。
  131. 井堀繁雄

    ○井堀委員 大蔵大臣は考慮するそうそうですから、交渉されればこの程度は出ます。  次は標準報酬関係ですが、標準報酬改正するときに、答申案、資料などを見ますとわかるのですが、健康保険の場合と船員保険の場合とは事情が多少違う、厚生年金保険はなおさら違う。二十級を二十四級に引き上げた、その上げた考え方については私どももわかるでありますが、これを上げるならばさっき言うように政府のいうことは主張が一貫しないのです。さっき言うように、国民全体を医療保険の恩典に浴せしめようということになれば、健康保険の場合であれば、適用範囲を拡大する、あるいはさらに国民保険のように国民全体を包容していこうとするならば、これは財政上の問題はあるにしても、それをはっきりさせる政策が出てこなければいけない。その方はぐっと押えて切ってしまって——それからその下を延ばすということになれば、所得に応じてやるというのでありますから、天井は抜きでいいのじゃないか、上は幾らでも実収に見合うように級をずっと上げていけばいい。この関係はやや専門的になりますが……。そこで健康保険の場合と船員保険の場合のそれと厚生年金の場合でありますが、私は厚生年金保険の場合においては、上をぐっと抜いていくという行き方をすることは、必ずしも健康保険と同じ答が出てこないと思う。しかしそれと同時に、今度提案してきた率の相違があるわけなのです。それから船員保険の場合は、船員の特別事情があって、十七万の船員のうち、五トンか六トンの小さな漁船もあればはしけもあるし、そうかと思うと五万トンも十万トンもあるいはもっと大きな汽船がこれからどんどんできようとしている。そういう高級船員もこれは一本にされた保険でありますけれども、そういう場合に、これは上は野放しにするのが建前でなければならぬと思いますが、こういうものに対しても徹底を欠いているのです。事務当局の発案かもしれませんけれども、一体厚生大臣はこういうものに対して目を通されて、その矛盾をお気づきになりませんでしたか、まず厚生大臣のお考えを伺いたい。
  132. 小林英三

    小林国務大臣 この問題につきましては、事務的な問題でございまするし、一応保険局長から答弁いたさせます。
  133. 高田正巳

    高田(正)政府委員 井堀先生今御指摘のように、厚生年金におきましては最高を一万八千円と押えております。それから船員保険におきましては三万六千円と押えております。それで、今回これらのものを引き上げたらどうかという御趣旨の御質問でございますが、御存じのように厚生年金は一昨年でありましたか、二十九年に大改正を行いまして、ただいまの標準報酬がきまったわけでございます。従いましてそれにつれて年金額もきまって参るわけでございます。これは一昨年御審議をいただきましたことでございまするし、なおこれを引き上げますると、日本経済と申しますか、国民経済にも非常に大きな影響を及ぼす問題でございまするので、これはもう少し将来の検計に待ちたい、こういうわけで今回は、最高は、厚生年金におきましては一万八千円に据え置いたわけであります。次に船員保険でございますが、これはただいま井堀先生御指摘のように、船員保険は短期の医療保険と同時に陸上における厚生年金保険と一緒にやっております。従いまして標準報酬は、長期保険におきましても、陸上の一万八千円が三万六千円になっておるわけであります。それでこれを健保と同じように五万二千円にまで引き上げますると、陸上の長期保険すなわち厚生年金保険の問題とも十分にらみ合せて取り扱わなければならない問題に相なってくるわけでございます。次の問題として、しからば長期保険標準報酬と短期保険標準報酬は二本建に別扱いにしたらいいじゃないか、こういう議論が必ず出て参ると思います。しかしこれはまた船員保険の現在の建前の性格の根本的な変革でありまするので、これらにつきましても将来の検討に待ちたい、かような意味合いから、今回はそれぞれ御提案申し上げましたように標準報酬の最高をその程度にとどめたわけでございます。
  134. 井堀繁雄

    ○井堀委員 この問題はかなり重大な内容を持っておりますので、できるならこれはいろいろお尋ねをしたい。これも大蔵省関係があるのです。でありまするけれども、他の委員の質問の都合もあるようだししまするので、次の機会に譲ろうと思いますが、なお二つばかりごく簡単なことですから大蔵大臣厚生大臣にお伺いいたしておきたいと思います。  それは先ほど岡委員からも質問されておりましたが、結核対策、これは不名誉なことでありますけれども、日本の国民病といわれて、かつては国民病撲滅のために非常に力を注がれた時期がありまして、今日も尾を引いておっていいことだと思うのでありますが、その結果統計の上からいいますと、非常に罹病率が減り、死亡率が減ってきているということは、まことに邦家のため喜ぶべきことだと思うのであります。しかし、この運動は、必ずしも統計の上からいうと油断すべき状態ではありません。世界各国の比例を見ましても、まだはるかに高い罹病率、死亡率を示しておるわけであります。この問題の解決は、ただ単に国民衛生という立場だけでなくて、日本のようにあらゆる経済諸条件、付帯的な悪条件の中で日本の再建をはかろうとすれば、この問題の解決は重大だと思う。ことにそれが生産の面にある人々の罹病率が非常に高い、死亡率が高いということは重大だと思うのです。これを今日のように、先ほど来審議しているように、健康保険にしましても、国民保険にしましても、保険それ自身がまことに、歴史的な事情もありますけれども、ばらばらで、しかもでこぼこで、その連絡において非常に無理がある。こういうときに、その保険にこれを背負わしておくということは、そのばらばら、その矛盾が、そのまま国民病撲滅のための不合理な形において処理していくことになるのでありますから、私はこの際健康保険がこういう面をあげたときでありますから、結核対策というものについては、やはり独立した一つの政策としてもちろん予算もこの中に十分盛り込んで対策を行うべきではないか。それを行うということになれば、今健康保険の当面しておりまする困難な問題の一つが解決していくことになることは間違いないのであります。この点に対する、厚生大臣もそうでありますが、これは財政的な問題が伴うものでありますから、結核対策のために、今中火になってきておりまするが、もう一ふんばりふんばって、一つの対策を立てる、予算の上で考慮する意図があるかないか。この点に対する大蔵大臣の見解を承わりたい思います。
  135. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 結核病に対する対策ですが、これは今日健康保険赤字の原因にもなっておるということも、否定はできないと思います。また事柄の性質上、保険から離して別に結核対策を立てようというのも、やはり私は十分傾聴に値する考え方でもあろうと思うのであります。ただ率直に申して、予算上の問題が大蔵大臣としては常に頭痛の種。単に金がないからやらぬというわけでもありません。できるだけ財政上苦面してやるべきことはやらなければならぬのは、大蔵大臣の職責であることは申すまでもないのであります。しかし、今のところ何分にも結核を健保から離してやって、十分な予算をこれに独立してつけ得るかどうかということには、いろいろな問題もやはりありますので、十分予算もあって確信をもってやれるならばそれもよかろうと思うのでありますが、今のところ私の考えとしては、やはり結核予防法に基いての結核対策の強化、保険制度の活用というものをうまく調整を加えていくのが、今の段階ではかえっていいんじゃなかろうか、こういうふうにも考えております。これはしかし非常に重大でもありますし、また社会保障制度の上にやはり考えてみなければならぬ事柄でありまして、十分検討を加えて参りたいと、かように存じます。
  136. 小林英三

    小林国務大臣 井堀さんのおっしゃったように、結核の死亡率が非常に少くなっていることも事実でございます。しかし罹病率はやはり依然として二百七十万人ぐらいといわれているのであります。しかし今の井堀さんの御質問のように、健康保険財政に対しまして結核の問題が非常に大きなウェートになっているということも事実であります。しかし今この問題を直ちに健康保険財政問題とにらみ合せいたしまして、こういうふうに解決して、結核の問題をこういうふうに改めるとか、あるいはこういう別の対策を立てるとかいうことにつきましては、直ちにやるということは私は少し早急だと思います。いずれにいたしましても、先ほど申し上げましたように、近い将来の問題といたしまして、私どもの相談相手といたしまして五人のりっぱな経験者を置きまして、そうしてそれらの総合的な研究調査をいたしまして、早くこれが対策を立てて参りたい、こういうふうに考えております。
  137. 井堀繁雄

    ○井堀委員 時間の都合がありますから、大蔵大臣にごく簡単にお尋ねして、あとで別の機会に答弁してもらってもけっこうですが、さっき岡委員も触れておりましたが、これはほかの機会にも私ちょっとあなたにお尋ねして、まだ結論を得ていない事柄です。それは厚生年金保険法改正が出てきている。これは毎回言っている、さっきも言っているように、厚生年金の千四百億ですか、その金があなたの管理のもとに、すなわち資金運用部の大きな原資になっているわけです。今も原資を見てみますと、簡易保険の金もあるようでありますし、郵便年金、郵便貯金のものもあるようでありますけれども、そういうものを一本にして、貸し出しが、拝見いたしますと、それぞれ分けて貸し出されている。しかしそれがどこにどう回っているということは、これはどんぶり勘定になっておりますから、一番大事なことは、厚生年金の積立金のような金は、この本質からいって独立させるべきじゃないか。長期保険の財源は長期保険の財源として管理して、そうしてその利回りが堅実であれば−堅実でも相当高い利回りがあるわけですが、あなたの方の報告をきょうとってみたのですけれども、預託の利率は二分から六分まで、それも短期のものと長期のもので、七年以上という長期のもので六分で預かる。反対に貸し出しの利率については国が使う場合でも年利六分で使っている。その他政府機関、地方公共団体、勤労者の厚生資金等といって、六分五厘取っている。一体こういう利率は、あなたは銀行局を通じて商業銀行に対する利率の制限監督をしておられる。またこれと同じようなものですけれども、公務員の共済組合のごときは、かなり上手な金の運転をしている。長期のもの六分で短期のものに至っては、一体年に二分なんというような、そんなばかなことがあるものですか。こんなことをしてはいけませんよ。だからこういう長期保険でありますから、最も確実でなければならぬことは言うまでもありませんけれども、私は還元融資をそうむやみにやれということを言うのではありませんけれども、一方には保険の性質から考え大幅な還元融資をして、しかもそれは堅実でなければならぬ。利回りについても、その使うところによってやはり取捨選択をしていかなければならぬ。しかし今政府が使っているもので六分なんというばかなことはありません。私はほかの例をたくさん持っております。きょうは時間がありませんから申し上げませんけれども、この点についてはまたいずれ機会を得てお尋ねいたしたいと思います。これは今度は何とか一つ解決しましょう。結論を出しましょう。こういうものを解決しないで保険赤字なんというものをぬけぬけと出してきてはいけません。できるものからやっていきましょう。これは決してむずかしいことではない。ある金ですから、お金の管理の仕方をきめればいいわけです。この点に対しては一つ考えをいただいて、この次は、重大問題だから考えるというようなことを言わないで、これは明らかなんで、出し入れもきまっておりますから、この問題については次回に具体的にお尋ねをしますから、具体的に御答弁できるように御用意を願います。一応私の質問は留保しておきます。
  138. 藤本捨助

    ○藤本委員長代理 大橋委員。
  139. 大橋武夫

    ○大橋(武)委員 私は三つ、四つ伺いたい点がありますが、特に大蔵大臣お急ぎのようでありますから、大蔵大臣関係のある点を第一番に伺いたい。  それは健康保険保険財政と診療報酬の関連の点なんでございますが、御承知通り、医師等に対しまする健康保険診療費の支払いの基礎は、単価及び点数になっておりますが、この単価というのが、昭和二年に健康保険が発足いたしました当時には、一点単価は二十銭ということで出発いたしております。これが今日御承知通り十一、二円ということでございますから、ちょうどこの三十年間に六十倍に引き上げられたことになっておる。これは物価の三百倍ないし五百倍といわれておるのに比べますと、かりに三百倍といたしましても、少くとも相対的に五分の一に切り下げられておるということを意味するわけでございますが、この点は大蔵大臣はお認めになるでございましょうか。
  140. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 大体さように考えおります。
  141. 大橋武夫

    ○大橋(武)委員 そうなりますと、健康保険の報酬をもって主たる収入といたしております開業医諸君の経済においては、この三十年間に収入が相対的に五分の一に切り下げられておるということを当然認めざるを得ないと思うのですが、この点はいかがでございますか。
  142. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 数字的なことでありますから、政府委員の方からお答えいたします。
  143. 宮川新一郎

    ○宮川政府委員 物価の倍数から申しますと、大橋先生の言われましたような計数にあるいはなるかと思うのでありますが、稼働点数等が増加いたしておりますので、医師の収入が果してどの程度の率になっておりますか、少し詳細に検討してみなければ、正確な数字は申し上げることはできません。
  144. 大橋武夫

    ○大橋(武)委員 稼働点数ということは、つまり労働がそれだけふえたことによる増収ですから、これは自然増収であって、少くとも政府健康保険に協力する医者の労務に対する支払いというものは、相対的に五分の一に切り下げられておるということは、お認めになると思いますが、いかがですか。
  145. 高田正巳

    高田(正)政府委員 先生が仰せの通りに、報酬は単価に点数をかけるわけです。従いまして、点数の方が一定でありましたならば、さようなことになるかと存じます。点数も今大橋先生が御指摘の時代からいろいろと変遷をしてきております。私も古いことはよく存じませんが、たしか内服薬が一・五点というようなときもむかしはあった。それが今回は二点になっております。あるいは入院料の点数を引き上げておりますとか、いろいろな点数の改訂がございますので、直ちに先生のようなことには結論づけられないと思いますけれども、大体の傾向としてはさようなことも認めます。
  146. 大橋武夫

    ○大橋(武)委員 そういたしますと、ただいま点数がふえたというのは、一点が二点になったとか、あるいは二点が三点になった、かりに二点が五点になっても、これは倍ちょっとになったということです。そうすると、片一方においては単価は相対的に五分の一に切り下げられているのであるから、点数が五倍に引き上げられていない限りは、計算上は医者の減収が当然予定されている、こういうように思われますが、いかがですか。
  147. 高田正巳

    高田(正)政府委員 先ほど稼働点数の話が出ましたが、稼働点数は大橋先生は自然増収だ、労働の強化によるものであるという仰せでございますが、その際に問題になりますことは、医師あるいは薬剤師の収入というようなものをいわゆる企業的に見ますか、あるいは給与的な性格を加味してものを考えますかということで、非常に大きな考え方の相違が出てくると思います。やはりいずれに見るということもできませんでございますが、稼働点数というものを、自然増収であるからそれは別個であるというふうに、全然別個の問題として切り離してしまって全部を論ずることは、若干そこに無理がありはしないか、私どもといたしましては、やはり稼働点数というものを十分に考慮に置いて単価の問題を考えていかなければならぬ、かように考えるわけでございます。
  148. 大橋武夫

    ○大橋(武)委員 そこで厚生省結論として、昭和二年に比べて今日の医者は収入は減っていると見るのですか、ふえていると見るのですか。
  149. 高田正巳

    高田(正)政府委員 これは非常にむずかしい問題でございまして、私、的確にその資料を持ち合せないのでございますが、おそらくむかしの医師の収入を他の職業の方々の収入と比べましてその差額は、今日の医師の収入と他の職業の方々との差額より大きかったとは私は思います。そういう意味におきまして、医師の収入は昔よりは比較的一般国民の平均所得というようなものに近づいてきているというふうなことは、あるいは申せるかと存じます。その辺のところも資料を持ち合せません。
  150. 大橋武夫

    ○大橋(武)委員 かりに今日一般国民所得に師匠の収入が近づいてきているとれすば、それはそういうふうにしようという社会保険当局の意図のもとに点数がきめられ、単価がきめられ、そうしてそうなったのであるか、それともそうでない理由でそうなったのですか、それはいかがでしょう。
  151. 高田正巳

    高田(正)政府委員 保険当局といたしましては、さようにいたす意図は全然持っておりません。
  152. 大橋武夫

    ○大橋(武)委員 それで少くとも厚生当局としては、昭和二年の水準に比べると、今日の医者の収入というものが相対的に見て非常に減っておるということはお認めになっておると思うのですが、それでどうしてそういう事情になったかということを考えてみたいと思うのです。というのは、この社会保険制度、ことに健康保険制度というものは、健康保険保険料というものが収入になっており、そうして医療給付というものが支出になっておるわけです。これは昔から、バランスをとって考えられておったものです。ですから今日医者に対する支払いが非常に減ったということになりますと、物価の高騰に伴う労働者賃金の引き上げによって当然保険料の収入は上ってきておるわけなんだから、それがその通り昔の保険と同じような保険給付をだされておれば、医者に収入減を結果する理由はないわけだと思うのです。しかるに今日医者の収入減になっておるということになれば、何かそこに特殊な原因があってそういう結果を生んだと言わざるを得ないと思うのですが、それについて厚生省はお心当りがありますか。
  153. 高田正巳

    高田(正)政府委員 非常にむずかしい御質問でございまして、あるいはお答えがぴたりとしないかもしれませんが、最大の原因というものは、結局国民経済の伸びよりは医療の伸びの方が早かったということが最大の原因と思います。
  154. 大橋武夫

    ○大橋(武)委員 そこで私の申し上げたい点は、厚生省健康保険制度というものを保険制度としてお考えになっておるだろうと思うのです。保険制度の根本といたしましては、保険給付と申しますか、サービスと申しますか、それを基準として保険料がきめられてあるべきものだ、こう言わざるを得ないと思う。そこで今あなたの言われました医療の伸びということになると、その医療の伸びというものは、すなわち健康保険のサービスのそれだけの引き上げを意味するわけです。そうすると保険の原理といたしまして、保険給付がそれだけ引き上げられれば、当然保険料というものの引き上げを伴わなければ保険経済というものは成り立つ道理がない。ですから、たとえば終戦後におきましても、結核の療養期間を延長されるとか、あるいは今まで取り扱わなかった家族の医療に対して半額補助制度をしくとか、あるいはまた今まで使わなかった抗生物質を医療の上に採用するということになれば、明らかにそれだけ保険としてのサービスが向上してくるわけです。金がそれだけかかるわけです。ですから保険財政を成り立せるためには、それに応じた保険料の引き上げを行うか、あるいはその保険料の引き上げができないとすれば、保険料の引き上げにかわるべき国庫補助その他の歳入面の措置というものをしなければ、保険経済というものは当然赤字にならざる得ない。こういう点について厚生省はどういうふうにやってきておられますか。実は大蔵大臣に直接質問の形で伺っておりませんが、こういう事情について一つ大蔵大臣にも十分な御認識をいただきたいと存じまして、便宜厚生当局に質問しておることをお許しいただきます。
  155. 高田正巳

    高田(正)政府委員 保険料の引き上げについては、過去にやって参っております。それからなお収入確保のための国庫負担ということにつきましては、今までは給付費についてはございませんで、三十一年度に初めて成立をいたした、こういうことに相なっております。
  156. 大橋武夫

    ○大橋(武)委員 そこで国庫補助なり保険料の引き上げなりが、昭和二年以後において新たに付加されたところの療養期間の延長であるとか、あるいは抗生物質療法による医療費の増額だとか、あるいは家族の半額による治療、こういうことによる経費増を十分にカバーしておればいいんですけれども、果してこの保険料の収入面の増加と支出面の増加とはバランスしておるとお考えになりますか。
  157. 高田正巳

    高田(正)政府委員 それがカバーいたしておりませんので、実は二十九年度以来赤字を出しておるわけであります。
  158. 大橋武夫

    ○大橋(武)委員 それで、赤字は言うまでもないですが、私の伺いたい点は、果してその差額というものがこの赤字であるかどうかということを、十分に御検討いただきたい。おそらく私の想像によりますと、この保険給付の内容が引き上げられたことによるところの経費増というものは、今現われておる赤字よりははるかに大きいのではないか。そうすると、その経費増から赤字を差し引いた残りというものは、本来ならば赤字であるべきものが、どこかに隠されておる。それがこの診療費の相対的引き下げとなっておるのではないかということについてお考えを承わりたい。
  159. 高田正巳

    高田(正)政府委員 大橋先生の御所見、私どもも一応抽象的には、あるいはそうなっておるかもしれないというふうに考えまするが、ただこれは具体的に数字をもって検討いたしてみませんと、確実な点はわかりかねます。
  160. 大橋武夫

    ○大橋(武)委員 抽象的にそうであるということをおっしゃった程度で、きょうのところはいいと思います。というのは、私どもが聞いておるところによりますと、従来健康保険給付の内容がたびたび引き上げられておる。これは確かに被保険者にとってけっこうなことでございますが、それが単価の据え置きということによって、医者の負担において健康保険給付の内容の引き上げが行われておったのではないかということを、私は疑っておるわけです。これは計算をしてごらんになればはっきりいたすと思います。終戦後のことだけ考えましても、御承知通り物価高騰によりまして、労働者賃金が上ってきておる。その結果は、お正月の賃金に比べて年の暮れの賃金が三倍にもなれば、保険料は意外の増収になる。また事実なってきた。そのときには、その保険料の増収は労働者賃金の引き上げです。労働者賃金引き上げは、物価の騰貴であります。物価が騰貴したから、賃金を上げてもらわなければならぬ。そこで賃金が上って、その賃金に対してある一定の率をかけて保険料を出しますから、保険料は自然に上っておる。ところがこれはインフレの結果でございまして、このインフレというものはお医者さんたちに対しても同様に作用いたしておりますから、お医者さんたちもやはり生活が苦しくなっておる。それを緩和するためには労働者賃金が上ったと同じように、お医者さんに対する単価も引き上げていってやらなければ、医者というものは生活が苦しくなるのは当然だと思う。ところが従来その場合において厚生当局のなさったことは、この黒字というものは本来物価騰貴の影響であり、従って物価騰貴の生活上の苦痛をひとしく受ける医者にこれが支払わるべきものであるにかかわらす、たまたま保険経済のバランスで余裕があるというので、いろいろと新しい給付をなすった。そのためにインフレによる収入増として医者にいくべきものが医者にいかずに、相当な部分が健康保険の内容の改善という面に使われておる。これはもう計算してごらんになればおわかりだと思います。そうだといたしますと、健康保険の実際上の赤字、実質上の赤字というものを検討する場合には、バランスの上における赤字ばかりでなく、医者の診療費を上げなかったということによって医者の負担となっておる赤字があるはずだ。しかしこれは政府予算においては、医者の負担になってしまっておるのでございますから、赤字として残っていない。そういう赤字があるべきはずでございまして、これが最近数年間における医者の生活を非常に圧迫し、そうしてその生活の苦痛から医者というものは健康保険に対して非常に厄介者扱いをしておる。この医者の生活の問題が今度の総辞退というできごとになっておると私は考えておるのです。ですから今度医師会が総辞退の理由として、一部負担は困るとかあるいは新医療費体系はけしからぬとかいうことを言っておられますけれども、医者が総辞退にまで突っ込んだ理由は、一部負担でも、新医療費体系でもないのです。ほんとうはこの医者の犠牲において健康保険の内容の引き上げが行われたことによって医者の生活というものが極度まで来ておる。そういう際には何かきっかけがあれば厚生省に文句を言いたくなる。これがたまたま新医療費体系とか、今度の健康保険改正ということをきっかけとして爆発したのが今度の医師の総辞退ということになっておるのじゃないかと私は判断いたすのでありますが、この私の判断に対しては厚生大臣はそれは間違っておるとはっきり断言して下さることができるでしょうか、それともやはり君の言うことは一理あるというふうにお考えになられるでしょうか、厚生大臣の御答弁を承わりたいと思います。
  161. 小林英三

    小林国務大臣 大橋先生のただいまの御意見は相当傾聴すべき点が多々あると考えます。
  162. 大橋武夫

    ○大橋(武)委員 そこで私が大蔵大臣に特にお願いいたしたいという点は、ただいま私の申し上げましたことは健康保険の実質上の赤字というものは単に予算面に現われた六十億、七十億のほかに、数十億、あるいは百億以上のものが医師の負担になっておるという事実でございます。このことはたまたま今度の健康保険法改正によって今年度末あるいは来年度予算において若干の黒字が残った場合においても、これで黒字になったから、国庫補助は要らないのだというようなお考えをなさらないようにしていただきたい。すなわち政府予算の上に黒字が残ったとしたならば、その次には実質上の赤字でありながら、政府予算面においては赤字になっていない部分、すなわち医者の犠牲になっておる部分、それをできるだけ補ってやるということが私は社会正義の上から当然の要求だろうと思います。従って将来黒字が出た場合においては優先的に医者に対する診療の単価というものを合理的なところまで引き上げるという措置をとることが私は政府として当然必要だと思いますが、そういう点について将来大蔵大臣は十分御考慮願えるかどうか、この点を承わりたいと思います。
  163. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 次の予算編成のときには御意見の点は十分考慮いたしたいと存じます。
  164. 滝井義高

    滝井委員 今大蔵大臣から重要なる発言がございました。それは次の予算編成のときには十分考慮するという御答弁でございました。そこで私はその御答弁はこの場限りのものであってはならないと思うのであります。と申しますのは、単価を一円上げることによって二十九年の統計で百十三億を要します。従って現在、二十九年よりか非常に多くの件数があり、それからその他の点数の状態が複雑になっており、変ってきておる。従って一点の単価を一円上げたならば幾らの支出増になるのか、政府管掌だけでけっこうでありますから、その見通しを一つ言っていただきたい。
  165. 高田正巳

    高田(正)政府委員 総点数の資料を持って参っておりませんので、正確にお答えすることはただいまできませんが、大よそ政府管掌だけに限りますと、三十五、六億から四十億見当になるのではないかと存じます。
  166. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 先ほど私が大橋先生の御質問について御答弁しましたが、これは私はすぐ単価を引き上げる、こういうように申し上げたのではないので、私の理解したところでは、健康保険に黒字が出ても、すぐに政府補助を打ち切ったりそういうことはせぬように、こういうような御意見がございましたが、私もそのようなことはせずに、そのときにいろいろなことを考え財政補助をどうするかということを考えたいという意味でありましたので、すぐに単価の引き上げをするというふうにおとりになるのは困りますから、ちょっと申し上げておきます。
  167. 大橋武夫

    ○大橋(武)委員 私の伺いましたことは、将来黒字が出た場合には単価の合理化という問題について優先的な御考慮が願えるかどうかということを御質問いたしましたので、それに対して考慮するという大蔵大臣のお答えをいただいておるわけでございます。この点については速記録に明らかになっておると思いますが、先ほどの御答弁を取り消す意味でおっしゃったのではなく、その場合においてはただそれだけではなく諸般の情勢を判断する、こういう意味で今補足されたのかと思いますが、そういう意味に了解してよろしゅうございますか。
  168. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 いや先ほどの答弁を取り消したのではありません。ただ財政の状況ですぐに大きな負担をやるというわけにいきませんから、その点を申し上げたのであります。
  169. 滝井義高

    滝井委員 私は財政事情を抜きにしようということを申しておるわけではないのです。二十八年二月十三日の当時の向井大蔵大臣のお約束もある、まさかこれを忘れておるはずはない。この前私が指摘した二十六年十二月七日の閣議了解事項もある、合理化のためにはすみやかにやらなければならぬことになっておる。これは内閣自身がわれわれの方にそういう文書を出している。だから今のような御答弁ではどうも納得がいかないのです。だから当然今大橋さんが言われたように、一点単価については次の予算の編成のときに考慮をする、これでなければいけないのです。それはどうしてかというと、閣議了解事項になっている、しかも向井大蔵大臣が言っているからです。今保険医の総辞退が広がる情勢にある、だから私はこれをはっきりしてもらわなければいかぬ。今厚生当局から三十五億ないし四十億と言われた。一円でそうなんですからね。だから私が言うのは、大臣は実態を知らないで簡単に御答弁しておられるが、事は重大であるから念を押しておる。大臣が簡単にこの場だけでお茶をにごしておいて、あとで大橋さんにあのとき言ったのはそういう意味じゃなかったと言われて逃げられては大へんだから、私は御忠告を申し上げておるわけなんです。三十五億、四十億というような大きな金であるということを認識して腹をきめてもらわなければならぬ。明白にしてもらいたいのはそこなんです。
  170. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私、別にこの場限りの答弁をすればいいという意味では毛頭ありません。今大橋先生のお話を聞いてなるほどと考えましたので、まず財政が許せば、黒字になったからといってすぐに補助をやめるということはしないで、財政の許す限り大橋先生の言われるような方向考えるという気持外御答弁申し上げたのです。十分検討はいたしますが、すぐに大きな財政負担をすることが可能であるということを申し上げたことはないのであります。
  171. 滝井義高

    滝井委員 くどいようでありますが……。いずれ私はあさって総理にお尋ねするつもりです。これは大蔵大臣から総理大臣にあてていることです。二十八年の二月十三日の向井大蔵大臣の総理大臣あての覚書には、すみやかに検討を加えるものとする、こうなっておる。すなわち社会保険診療報酬については関係各省においてすみやかに根本的な検討を加えるものとする、こうなっておる。私は昭和二十八年に代議士に出てきましたが、そのとき以来これを言っておる、みんなやります、やりますというけれども、一向にやらない。そしてきょうは検討するという御言明もありましたので、一萬田大蔵大臣の時代にぜひこれは検討していただいて、現在の単価が適正ならばやる必要はない、不適正ならばこれはやらなければならない、だからまず適正であるか不適正であるかということをやってもらわなければならぬ。これはあなたの前任者が二十八年にこういうことをみずから言われておるのですから、これはすみやかな検討をやるというお約束はできると思うのです。何も検討してすぐ予算を出せという意味じゃないのです。適正であるか不適正であるか検討してもらって、適正なら出さなくてもいい、不適正ならば今後どうして出すかということをお考えになればいいと思うのです。ですから、その御検討するというお約束を願いたいと思うのですが、どうですか。
  172. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 検討することはむろん異存はありません。これはやることはやります。
  173. 大橋武夫

    ○大橋(武)委員 厚生大臣に二、三点伺いたいのですが、第一に伺いたい点は、今回の政府案を拝見いたしますると、保険医に対し、あるいは保険薬局に対しまする監督規定の強化ということが入っております。これは保険の責任者として、赤字の原因になっておる保険の歳出の問題でございますから、監査あるいは監督をなさることは当然であると思うのでございますが、たとえば一般医師の間において心配されておることは、政府の監査、監督ということになると、とかく官僚独善的な監督に堕するおそれはないかという点なんであります。ことに医療にいたしましても、調剤にいたしましても、これは非常に専門的な事柄でございますので、監査、監督する場合においても、医師あるいは薬剤師の業務について十分専門的な知識を持った者、そしてその業態について十分理解のある者が監査監督に当らなければ、いろいろ弊害が起きるというのは当然予想されるわけであります。  そこで一つ考えられますことは、今日ありますような医師会、薬剤師会、歯科医師会というようなものを法制化いたしまして、政府健康保険の医療については、これらの機関と契約する、また監査、監督等については、これらの法制化された団体に公的な権限を与えて全面的に責任を持たせるというようなやり方が考えられるわけなんでありますが、それには、やはり医師会、歯科医師会あるいは薬剤師会を法制化するということが前提になると思う。この点につきましては、同僚の野澤委員も本会議において質問をせられておるのでございますが、政府といたされましては、この医師会、歯科医師会、薬剤師会等の法制化を進めて、できるだけすみやかな機会にこの法律案提案されるような御意図があるかどうか、この点を特に確かめておきたいと思うのであります。  もちろんこの医師会、歯科医師会、薬剤師会等の法制化につきましては、強制加入等の問題があり、これについては憲法上の御検討の必要もあるようでございますが、少くとも今回保険医あるいは保険薬剤師、保険歯科医師というものが登録制度になりましたならば、この登録を受けておる人だけは、強制加入させるということは、登録自体が自発的意思に基くものでございますから、憲法上の論議を生ずる余地はなかろうと思う。少くとも健康保険関係する医師について強制加入をするということは、私は法的に十分考え得ると思いますが、その辺のことを十分御検討の上、この三団体の法制化について積極的に御立案になってみようというお考えがありますかどうか、これを伺いたいと思います。
  174. 小林英三

    小林国務大臣 今大橋先生のお尋ねになりました医師会、歯科医師会並びに薬剤師会等の将来の法制化という問題でございますが、私は先般も参議院の社会労働委員会におきましてもそういうような意味の御質問に対しましてお答えしたのでありますが、日本の保険医療の健全な発達のために強力なそれらの諸団体の結成があることは非常に望ましいことでございまして、将来のそういう問題につきましては私どももまことにけっこうなことだと存じます。ただたとえば監査の問題につきましても、ただいまはその地方の医師会等の団体の立ち会い等を得まして官僚独善に陥らないような工合に進めておるのではございますが、今おっしゃったような将来そういうふうな団体ができまして、厚生省が医療保険発達のためにそれらの諸団体と協調をして将来運営をしていくということはけっこうでありますが、ただ保険の契約とそれらに委託してやるとかやらぬとか、そういう問題につきましては、私は将来十分に検討してみたいものだと考えております。
  175. 大橋武夫

    ○大橋(武)委員 次に今回の改正案においては一部負担の増額が入っておりますが、一部負担につきましては従来医師において徴収が非常に困難であるということが言われておったわけでございます。むろんこの点については今まで厚生省側においても、また医師会側においても的確な統計はないようでございますが、今回この一部負担が大幅に引き上げられますと、またこの徴収難という問題が相当やかましくなってくるのではないかと思うのです。そこで政府とされましては今後この一部負担の徴収が果して順調にいくかどうかということについては一つの責任を持って御調査をお願いしたと思います。そしてもしこれについて相当な困難があるという場合においては、むろん医師、歯科医師、薬剤師がまず第一に自分でできるだけ徴収に努力をするということは当然ですが、努力をしてもなお徴収の困難があるという場合においては、これはそれだけ不当に医師、歯科医師、薬剤師に損失を与えることになるわけでありますから、政府としては責任を持って徴収に協力するような措置を一つ御研究いただきたいと思いますが、この点についてのお考えを承わりたいと思います。
  176. 高田正巳

    高田(正)政府委員 一部負担がどの程度徴収困難になるかということにつきましては、今大橋先生が御指摘のように実際にこの制度を運用してみなければちょっとわからないわけでございます。私どもといたしましては、被保険者側に対しましてお医者様にかかったならば必ず一部負担を払わなければならぬのだということについての十分な理解と啓蒙とをいたしたい、これも非常に大きな問題だと思いますので、これをいたしたいと考えております。  なおまた徴収未納等につきましての全般的な調査は、これはとてもできぬと思いますけれども、あるいは部分的な調査等も将来模様によりましてはいたしてみたい、かように考えております。ただ政府がかわってお医者様の未納分を徴収するということにつきましては、実際の事務上の問題から申しましても、それから、これはいろいろ御議論もあることでございますが、理屈の上から申しましても、相当いろいろな問題があろうかと存じます。かような点につきましては将来の検討に待ちたい、かように考えております。
  177. 大橋武夫

    ○大橋(武)委員 最後にもう一点だけ承わりたいと思います。それは、現在の保険給付の対象といたしまして、薬価基準というものがお示しになってあります。この品目及び価格の設定はどういう手続でやっておられるか。品目を決定する際の手続、またその価格を決定する際の手続を伺いたい。  なおあわせて、これは非常に種類が多く、現在三千三百種もあるというのでございますけれども、中にはほとんど実際の処方に表われていないような品目等も多いわけであります。そこで、これを実際に即しまして品数を減らすというようなお考えがあるかどうか。またそういうお考えがあるとすれば、どういう手続によって残すべき種類を決定するのがよろしいか。それらについてのお考えをまとめて話していただきたいと思います。
  178. 高田正巳

    高田(正)政府委員 薬価基準に登載をいたします品目、価格についてはどういうふうな手続でやっておるかという御質問でありますが、品目につきましては、特殊な抗生物質というようなものを新たに収載をいたします際には、これはたしか学会に諮問をいたしまして、学会の御答申を待って収載をいたしておるはずであります。雑多の薬につきましては、これは別にさような手続を経ませんで、私どもの方と薬務局の方と相談をいたしまして、収載をいたしております。たださような手続であります。それから価格につきましては、これは先般来の委員会でも御説明を申し上げましたが、年に一回大調査、それから二回ほど小調査をやりまして、実際の取引値段を売方と買方と両方で調査をいたします。その実際の取引値段を調査いたしましたものを——そこにバルク・ラインとか、いろいろな問題がございますけれども、結局それをそのまま価格に収載をいたします。こういうふうな手続になっております。  それから、品目の整理を考えていないか、あるいはそれをやるとすればその手続はどういうふうになるかという第二点の御質問でありますが、品目の整理は、実は私ども保険当局といたしましてはやりたいのでございます。しかしながら、一方におきましては制限診療になり、結局薬価基準に収載しておりませんと、それをお使いになっても払わないという格好になってしまいますから、実質的にお使いになれないということであります。従いまして、医療担当者の側から相当な問題が起って参るであろうと思います。しかしながら、私どもといたしましては、なるべく収載品目を減らして参りたいという気持を持っております。それで、これはごく最近でございましたが、そういう気持を表わしまする意味において、薬価基準に収載されている品目を一類、二類、三類というふうに分けまして、私どもとしてどうしてもなければならぬ薬というのは大体において一類というふうに、部類分けをしているようなわけでございます。若干そういう気持が現われた措置でございまするが、私どもといたしましては、制限診療でありまするとか、診療内容の低下でありまするとか、さようなことになりましては非常に問題でございますけれども、品目の整理につきましては今後十分に検討して参りたいと思っております。ただその際には、やはり医学、薬学両方面の方々の御意見を拝聴してやりませんとなかなか問題が多かろうと思います。さような心づもりでおるわけであります。
  179. 野澤清人

    ○野澤委員 関連して伺います。非常にいい質問を大橋先生はしてくれたのですが、今のお答えで大体はわかりましたけれども、実は過般も滝井委員から、分業に伴う薬局整備の件等についても御質疑がありました。それに対する政府の見解等も聞いたのでありますが、現実の問題として、実際に薬価基準に収載されたものが三千種以上あるために、各薬局とも非常に苦労しております。次回に私の方から資料も提出いたしますが、本郷の大学病院から出ました一カ年間の処方せんを集計いたしまして、薬価基準に収載されているものが何種類調剤されたかということの頻度を調べまして、その統計が全部でき上っております。御参考までにこれは政府の方へも提出したいと思いますが、三百数十種で終っております。それを三千種も供与いたしておりますと、薬局としては、どの処方が来るかわからぬために非常に苦労いたします。制限診療というような御懸念もありますが、滝井さんのような実際に洗練されている医者の立場から見れば、品種を減らすことについてはおそらく不賛成はないと思うのです。この点については、一つぜひ後日御検討を願いたい。  それから、今度の健康保険法改正について一点だけお伺いしたいのです。機関指定の問題とそれから医療担当者の登録の問題について伺いたいのですけれども、どうもこの指定ということと登録ということと、その発生する原因だけを忘れて取り消しが非常に心配されるのですね。だから、機関指定の取り消しということはどういうのだ、それから登録の取り消しということはどういうのだというふうに、取り消しという面について一般も非常に心配しておりますし、また医療担当者もこれはかなり不安を持っていると思うのですが、これらに対する実行の方針を政府としてはこの際示して一応安心した形に指導されることが適切じゃないかという感じがいたしますけれども、この点に対する政府の準備とか、あるいは具体的にどう指導していくかというような方針がありましたならばお示し願えれば大へんけっこうだと思います。
  180. 高田正巳

    高田(正)政府委員 第一点の御質問につきましては、先ほどお答えを申した通りであります。将来十分に御趣旨に沿うように検討いたして参りたいと思います。  それから第二点の問題でございますが、これは条文にいたしますると、四十三条の十二と四十三条の十三ということに相なるわけでございます。法律的にも従来は、療養担当義務違反というような場合に取り消せるというようなことになっておりまして、非常にばく然としておったわけであります。それを今回は、非常に重大なことでございまするので、四十三条の十二と四十三条の十三で事柄を一々列挙いたしまして、いわゆる法定事項、つまり、自由裁量の余地のない法規裁量ということにいたしたわけでございます。しかもこの条文の解釈といたしましては、あるいはちょっとした過失等による違反につきましても取り消されるのではないかというふうな御不安もちょいちょい伺うのでございますが、これらはいずれも従来もそういう取扱いをいたしておりますし、またこの法文の解釈の上から申しましても、故意または重大なる過失という場合でございまして、さようなちょいとしたことでかようなことをいたすというようなことは全然ございません。それからそのような事態が起りまする場合は、その前提といたしまして四十三条の十による監査が行われるわけでございます。その監査につきましては、医療協議会で御答申を得てきまっております監査要綱というものがあります。これによりますると、こういう場合に監査をするのだというふうにこの場合をしぼってございます。なおまた方法につきましては医師会と連絡をして、医師会の立ち会いの上で監査をいたすとかいうふうに監査要綱には明らかにきめてございますので、今御心配のいわゆる役所だけで独善的にかようなことをいたすというふうなことは、従来もございませんし、今後も絶対なきものと私どもは信じております。  なおまた今の取り消し等が、指定の取り消しにいたしましても、登録の取り消しにいたしましても、これは何条でございましたか、地方医療協議会の諮問を経て行われますることは、これも御承知通りでございます。なおその際に私どもといたしましては、さらにその前提として実際上の措置といたしまして、診療担当者の団体の方々の御意見を現実の問題としていろいろ伺いまして、十分な御連絡をとってこの医療協議会に対する諮問の原案を作成してかけていく、こういうふうな行政上の措置もとるつもりでおります。大体そういうふうなことを考えておる次第でございます。
  181. 野澤清人

    ○野澤委員 よく政府の意図、趣旨はわかるのですが、ただ担当者の医師とか歯科医師、薬剤師というものが不安でいるのではないか。要するにわからない。これを政府の方で、これはただいますぐ具体的にどうというのではなくて、早急に医療担当者に理解のいくように善処してほしいという考え方でございますから、どうぞお含みをいただきます。これで終ります。
  182. 滝井義高

    滝井委員 どうもおそくなって済みませんが、さいぜん大橋さんの質問の中で稼働点数の問題が出てきたのですけれども、それには稼働点数を十分に考慮しなければならぬという御説があったのです。そこで、多分あの十一円五十銭の単価を決定するときの稼働点数は四千七、八百点くらいだったと思うのですが、現在はどの程度に稼働点数がなっておるのか、それをちょっとおよそでいいのですが、教えていただきたいと思います。
  183. 高田正巳

    高田(正)政府委員 ただいま資料が見当らないのでございますが、大体倍近くなっておるのではないかと思っております。もし御必要でございますれば、また別個に後日申し上げたいと思います。
  184. 滝井義高

    滝井委員 それでは次会までに一ついただきたいと思いますが、たとえば倍として九千点になったと仮定します。そうしますと、稼働点数というのはおそらく全国の社会保険の総点数を医師の数で割ったものだと思いますか、そうしますと現在の診療報酬の支払いの行き先を追及していってみますと、六割は公的医療機関なんです。いわゆる病院です。そうすると残りの四割が主として私的医療機関、大ざっぱな見方でいきますとそうです。あなたの方の社会保険の現状分析というあれが出ております。これは何かマル秘と書いておるのですが、それによるとそうなっております。そうしますと、現在の医療機関の九四%は診療所なんです。診療所ということになれば公的なものが非常に少く、私的なものが圧倒的に多いのです。そうすると私は稼働冊数というものは、まず公立の病院と申しますか、公的な医療機関のものと、私的な医療機関のものと分けるべきだと思う。分けてやってみないと正確にものが出てこない。少くとも日本の医療の零細企業としての、私的な開業医の姿というものは出てこない。単に社会保険立場からのみ稼働点数を論議していると、今のような機械的な割算が出てくるのです。しかしほんとうにわれわれが医療行政制度という政策を立て、今後の日本の医療機関のあり方を究明するときには、公的な医療機関、これは税金も何も払っていない。しかも安い給料で、インターンで大学を五年も六年もやってきても、わずかに五千円、六千円しかやらぬ。こういう姿です。それから一つは、平均年令が四十六才ないし七才の医者が、もう家族総動員してやっておる。こういうものとこれは全く従業員の形態が違う。そういうものをみそもくそも一緒にして、単に総点数を医者の数で割って、稼働点数がこうだから医者の実体がよくなった、こういうことは出てこない。これはきょうはもう時間がありませんから、一つごめんどうでしょうが、できればあさってまでくらいにおよその数字でもいいのです。政府管掌だけでもかまいません。それをいわゆる公的な医療機関関係と、私的医療機関に分けて、一つ稼働点数をできれば出していただきたいのです。できなければその先でもいいのです。実は健康保険法が通るまでに出していただきたいのです。どうしてかというと、国民医費の伸び、その他の総括的な質問を総理や大蔵大臣厚生大臣にしなければなりませんので……。これは岡君が単価の資料を要求しておるはずです。一点単価の資料とともに、四千八百点の稼助点数の分析、その他当時十一円五十銭なり十二円五十銭がきめられるときの資料を冒頭にお願いしておりましたが、われわれのところにこない。幸いきょうは大橋先生から稼働点数の問題が出たから、重ねて私の方から要求するわけです。
  185. 高田正巳

    高田(正)政府委員 今滝井先生の仰せになりました御趣旨につきましては、若干私ども承知をいたしております数字と、先生数字に食い違いがあるように思いますが、しかしそれはいずれにいたしましても、今の資料を出せということでございますけれども、公的医療機関がどう、私的医療機関がどうというふうな統計は私どもの方にないわけでございます。何とかいろいろ推計を加えたり何かできるかもしれませんけれども、しかし明後日までに御満足のいくような資料が御提出できますかどうか非常に疑問でございますから、日が延びますことを御了承いただきたいと思います。
  186. 滝井義高

    滝井委員 そう詳しいものでなくてもいいのです。多分あなたの方から出している健康保険の現状とかなんとかいうあれがあるでしょう。秘という判を押してあるから私はきょう持ってきておりませんが、二十九年か三十年かに出ております。私は人が持っておるのをちょっと見たのですが、公的医療機関と申しますか、それを中心とした病院関係の所得、それから普通の私的医療機関、診療所を主とする所得に分れておる、大体六割と四割になっておる。大体それに入っておるのです。私は自分のところを探したらあるいはあるかもしれませんが、そういうことがわかっておるのですから、それはやればわかると思います。だからこれはそうむずかしいあれではありませんから、大ざっぱのところでけっこうですからぜひお願いいたします。
  187. 藤本捨助

    ○藤本委員長代理 次会は明後六日午前十時半より理事会、十一時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後六時四十一分散会