○井堀委員 私のお尋ねしているところに対する御答弁としては、まことに不満であります。
大蔵大臣は検討していくということでありますが、これは相当やかましい問題なんです。現に与党内部でも医療担当者に犠牲を強要したり、被
保険者にはなはだしい出血を
要求するような
改正案を出しまして問題が起っておる。私のお尋ねしておりますことは、
健康保険と国民
保険を同列に扱うということになれば、
赤字はもう解消するのです。問題の外になる。すなわち
医療費の二割を
負担すればそれで問題は解決するのであります。何もありません、今のように医師会を向うに回して、あるいは被
保険者の非難攻撃の中に立たなくてもいいのです。
〔
委員長退席、藤本
委員長代理着席〕
事柄はいろいろいわれておりますけれ
ども、
結論は簡単なんです。
小林厚生大臣は、まだ今日二千九百六十何万、約三千万の国民が、医療
保険の恩典から除外されておるということを非常に同情的に言っておりますが、私もその点については、当然国民のすべてが法の前に平等であると同様に、こういう
社会保障の前に差別されるということは許されることではないと思いますが、その問題をこういうところに引例されることは逆なんです。それは
健康保険の場合においてたびたび言われておりますように、適用範囲を拡大するということをやらないで
——また今
保険から除外されております
人たちがどういう
人たちであるかをお尋ねすれば、
厚生大臣は答弁できないと思う。むしろ今除外されている人々こそが、こういう
社会保障の恩典をまっ先に受けなければならぬ気の毒な
人たちです。それは個人の責に帰するものではなくて、社会
制度の責、あるいは
政府の政策の破綻から起っておるところの、いわば社会的な他の
理由による善意の被害者である。これは分析してみればすぐわかります。たとえば雇用
労働者の中の三百七十五万の
人たちはどういう人であるかといえば、五人未満の事業所の
労働者である。あるいは労働
基準法を適用できない家内
労働者、あるいは雇用の不安定な人々でありますから、
収入がきわめて零細で、
生活をささえるだけの
収入を得ていない零細所得者であります。こういう者に医療
保険の恩典にまっ先に浴せしめるようにすることこそが、今日の政治としては一番先に
考えなければならぬ問題であると思います。だからこれを救済するために
保険全体を引き下げて救済するというのであればまた別です。そのためならば高い水準の者はある
程度がまんすると言うかもしれません。ところがそれからはずされておる者については、この前の
改正のときにも、適用範囲を拡大する意思はないかと言ったら、
趣旨には賛成だという意思を表明しております。そのできない
理由は何かと言ったら、事務的な
理由とかあるいは
財政上の
理由をあげておる。そんな矛盾した答弁はないと思います。特に
厚生大臣ともあろうものが三千万人の者がどういう人であるかということを
考えれば、今言うようなそういう雇用
労働者とその
家族——これは他の場合にも
大蔵大臣にお尋ねする都合がありますから
一つ資料を提供しておきますが、今日の日本の雇用
関係の
状態を見てみますと、
政府は三十三万人の雇用が増大したことを統計で発表しておる。確かにその
通りであるが、その三十三万人の雇用がどこに増大しておるか、またその雇用の変動がどうなっておるかということを知らなければならぬ。それを農林
関係と非農林
関係に大きく分けてみましても、農林
関係においてはむしろ減じておるのです。しかも農林
関係で四十六万人も雇用が減じておる。この農林
関係の雇用が四十六万人も減じたということは、これは一方において農地改革その他農村の文化が高まったというようなことになるかもしれませんから、このこと自身は必ずしも悪い傾向とは思いません。しかし、この四十六万人の雇用が減じて非農林
関係が逆に七十九万人の増加になるという結果になるわけであります。
さて、それではこの七十九万人の雇用がどのように非農林
関係に増大しておるかということを見ることが大切なんです。それは大体二百人未満の事業所、さらに十人以下の零細事業所、あるいは一人か二人しか雇用していないというようなところに著しく増大してきておる。さらに
家族労働が二十三万もふえておる。それから、これは統計には出ておりますが、かつぎ屋とか紙芝居屋とかいうような、失業者の定義からははずされる不完全
労働者が著しく増大してきておるということです。だからこういう者にまでもこの
社会保険の適用の範囲を広げていかなければ、実はほんとうの
社会保障制度の
意味をなさないのです。でありますからこういう者を一体どうして適用していくか。今度の
改正の中に少しでもそういう芽が出ておれば、われわれはその低いことを嘆くのではなくて、その成長を待つのです。ところがそういうものは何ら出ておらぬじゃないですか。この
改正案のどこに出ておりますか。こういうものを把握する
改正の意図をどこに出しておるか。そういうものが出てこなければ
——保険は相互
扶助的な使命の上に立つというならば、高額所得者がある
程度負担を増大する、あるいは雇主の
負担を増す。あるいは逆にあなた方は外国の例をしきりに引いて、
医療費の一部
負担をいっておりますけれ
ども、その一部
負担の歴史を見てごらんな
さい。みなそれは低い気の毒な人のために
比較的恵まれた者が譲歩するという
意味において取り上げられておる。日本のように下の者はほったらかして、そうして今日の
負担に耐えないような者に
負担を増すようなことでは一体どこに
社会保障制度の前進がありますか。どこに
社会保障制度の成長のために芽ばえがありますか。こういう根本的な問題を私
どもが明らかにしていけば、
国庫の
負担を増額するということは私は五十歩百歩だと思う。三十億を六十億出せば一応
国庫の小康を保つことができます。そこで次に
赤字の問題に触れるのでありますが、その六十億の財源があるかないかということについては私
どもの言及するところではありません。ただその必要が高度であれば私は
予算はどこからでも回せると思う。すなわち
大蔵大臣の言葉でありますが、順序をどう求めるかということなんです。私は今一番卑近なところで国民
保険と
健康保険の例をとった。例は必ずしもよくないのですけれ
ども、先ほど同僚の
岡委員は防衛費に例を求めたのですが、そこまでいかなくても近いところにある。
社会保障のワクの中からだけ判断してみても、今日の三十億を六十億にすれば、今年は六十六億の
赤字を見込んでおりますけれ
ども、これはこの
改正案が通れば減ります。
標準報酬が上ってきますから。それから
政府の言っている他の政策が高まってくればということは、あなた方は同じことを別な言葉で言っている。
予算全体の上であるいは
財政政策や経済政策、金融政策の中では雇用は増大していく。拡大再生産はとにかく伸びていく。
大蔵大臣ではないけれ
ども地ならしは済んで、これからだんだん育ってくるようなことを言っていたではないですか。ところがこの見込みの中には悲観的な
立場に立って見込んでおる。大体六十六億と言うけれ
ども、六十六億出せばとにかく一応
赤字の段階から脱皮できると思う。わずかではないですか。三十億と六十億の
違いではないですか。五十歩百歩とはよく言ったものです。この六十億を踏み切れなかったのは、私は以上の問題に対する
大蔵大臣の配慮が足らなかったのではないかと思う。
厚生大臣の追及が足らなかったのではないか。この点に対するお話し合いが両者の間になされて、閣議でこの問題に対して討議をされて否定されたのであれば、われわれはまた
議論の仕方がある。この二つの点だけについて
大蔵大臣と
厚生大臣おそろいのところで、両者の
主張を明らかに
一つ伺っておきたい。