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1956-04-03 第24回国会 衆議院 社会労働委員会 第30号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年四月三日(火曜日)    午前十一時二十九分開議  出席委員    委員長 佐々木秀世君    理事 大坪 保雄君 理事 中川 俊思君    理事 野澤 清人君 理事 藤本 捨助君    理事 岡  良一君 理事 滝井 義高君       植村 武一君    大橋 武夫君       加藤鐐五郎君    亀山 孝一君       草野一郎平君    熊谷 憲一君       小島 徹三君    高橋  等君       田子 一民君    田中 正巳君       中村三之丞君    仲川房次郎君       八田 貞義君    林   博君       古川 丈吉君    亘  四郎君       井堀 繁雄君    岡本 隆一君       栗原 俊夫君    堂森 芳夫君       長谷川 保君    八木 一男君       柳田 秀一君    中原 健次君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 小林 英三君  出席政府委員         厚生事務官         (保険局長)  高田 正巳君  委員外出席者         厚生事務官         (保険局健康保         険課長)    小沢 辰男君         専  門  員 川井 章知君     ————————————— 本日の会議に付した案件  健康保険法等の一部を改正する法律案内閣提  出第七八号)  厚生年金保険法の一部を改正する法律案内閣  提出第七九号)  船員保険法の一部を改正する法律案内閣提出  第八五号)     —————————————
  2. 佐々木秀世

    ○佐々木委員長 これより会議開きます。  内閣提出健康保険法等の一部を改正する法律案厚生年金保険法の一部を改正する法律案及び船員保険法の一部を改正する法律案を一括して議題とし審査を進めます。質疑を続行いたします。中原健次君。
  3. 中原健次

    中原委員 まず最初大臣の御所見を承わっておきたいと思います。  鳩山内閣が出発してからこの方、私どもの耳には絶えず社会保障拡充ということが聞かされておるわけでありますが、今回の健康保険法等の一部改正の御提案内容を見ますると、そのような社会保障拡充への方向をこの中からくみ取ることができないというように考えるのでありますが、これに対して厚生大臣の御所見はいかがでございましょうか、一応伺っておきたいと思います。
  4. 小林英三

    小林国務大臣 私はいろいろの御見解もあることと思いますけれども、たとえば厚生省関係の所管にあります各種の予算の問題を検討いたしましても、それは内部におきまして、この仕事は多少充実してきているからこちらの方に回していこうというようないろんな関係はございますけれども、確かに昨年度の厚生省予算よりも本年度の方がふえておるのでありますから、総体的に見まして私は前進をしておると信じておるのであります。
  5. 中原健次

    中原委員 予算数字がふえておるから、この面においては確かに拡充方向に向っておる、これははなはだ機械的な見方のように思うのです。では社会保障対象となる国民対象数がふえておるということについては、どのようにお考えになるのか。従って、ただ数字がふえておるから拡充方向に向っておるという証拠づけにはちょっとならぬのじゃないかと思うのですが……。
  6. 小林英三

    小林国務大臣 たとえば健康保険の問題についていろいろお考えになっているのだと思いますけれども健康保険の問題にいたしましても、政府が今回国会に提案しておりますような改正案につきましてはいろいろの御議論があるでありましょう。しかし今日の健康保険は、数年前に比較して相当進歩向上しておりまして、しかも二十九年度から本年度にかけまして六十六億円の赤字を出すような情勢になっておるのでありますが、しかしやはり医療というものが保険の収入に対して非常に急激なカーブで上っております。これは各国ともそうでありまして、むしろ望ましい状況でございます。私は今日こういうふうに進歩向上いたしております健康保険については、国もこれに相当の補助をいたし、また被保険者もある程度の一部負担をふやしていく、そして健康保険を健全な状況に置く、しかもその時代における高度の技術を保持しながら健全な状態に持っていくということは望ましいことでありまして、これは私は決して社会保障の中核である医療保障後退ではないというように信じておるのであります。
  7. 中原健次

    中原委員 後退でないから、今度の改正案後退させるということなんですか。妙な質問ですけれども、そういう感じがするのです。後退ではないとおっしゃったけれども、今度の改正案を見ますと、たとえば扶養者範囲も縮小され、継続給付期間も延長されず、その他どんな部分々々にも縮小の姿が出ておるわけです。これはどういうことですか。あまりよすぎたから、今度は縮小させるということなんですか。妙な質問に聞えるかもしれませんが、妙な質問をせざるを得ないようなあなたの御答弁なんです。いかがですか。
  8. 小林英三

    小林国務大臣 これはいろいろの御議論もあると思いますけれども、今日のように累年赤字が出て参りますということは、これを放任いたしておきますと、健康保険自体の壊滅になる、これはひいては勤労者諸君生活を脅かすような大きな問題になるのでありまして、今日のごとく健康保険医療内谷が相当向上進歩しているこの際におきまして、一部負担をある程度まで延長していく、一部負担内容をふやししいくということにつきましては、総件的に考えまして、私は健康保険制度の大きな進歩であると考えております。それから今の継続給付の問題でありますけれども、これなんかも、私は健康保険自体から考えますると、そうすることがいいと思っております。しかしそれらの線に漏れた方に対しましては、生活保護その他の問題で救済すべきである、こういうふうに考えております。
  9. 中原健次

    中原委員 国民保険方向へ向わなければならぬということははっきりしておると思います。そうだとすると、このような措置は、やはり逆行したことになるのではないかと思うのです。これはどのような言葉をもってしましても、ちょっと説明つけようがない。国民をみんな保険範囲に抱いていこうとする場合、やはり国民全般が抱けるような方向へ一歩でも進んでいかなければならぬ。ところが実際は、その列からどんどんはずしていくという形になるのではないか、私はそう思うのです。ですから改正案を読ましてもらうと、読ましてもらうにつれてそういう感じがする。これは政府考え方が逆になるような感じです。せっかく社会保障拡充を言われながら、実態は逆の方へいやおうなしに行っておるではないか、この感じが非常に盛んです。(「伸びる前には縮むのだ」と呼ぶ者あり)なるほど伸びる前に縮むという浜口内閣時代の宣伝をしておりますけれども、あれは果して伸びたのでしょうか、これは問題があると思うのです。ですから、願わくはもう少し大胆率直に御表現を願いたいのです。やはり言葉でそこを修飾して、その場を何とか糊塗していくというのでは、われわれは納得がいかないのです。従ってそういう焦点について、あと具体的な数点に触れて御質問いたしますけれども、たとえばそれなら、世界情勢を見まして、世界各国社会保障方向日本の今の社会保障方向との間にどのような開きが出ておるのか、それとも日本が非常に進んでおるのか、そういう点についての御説明を求めたいと思います。
  10. 小林英三

    小林国務大臣 今の御質問につきましては、多分社会党の方でお考えになっておる、たとえば赤字が出るならば、国庫負担二割でも全額国庫負担にすべきであるというようなお考えのもとからの御質問だろうと思うのでありますが、私は今日の累年続出いたしておりまする赤字、三十一年度は六十六億円を予想される赤字、これらを解決いたしますには、やはり従来のように借入金によってやるか、あるいは全額国庫負担によってやるか、あるいは私どもが今提案しておりまするように、国からも責任を持って補助させ、またこの程度の進歩向上した健康保険であるから、一部は被保険者にも出してもらいたい、この三通りの方法があると私は思うのでありますけれども、政治というものはどこまでも現実の問題でなければならない。やはり国の財政にマッチして、漸進的にやっていくべき問題であると思いますので、とりあえず、今日の健康保険赤字状態から考えまして、私どもが今提案いたしております改正案によって健康保険を軌道に乗っけていくということが、私は将来に対します被保険者すべての問題について最もいい行き方である、こういうふうに信じておるのであります。
  11. 中原健次

    中原委員 今御質問申し上げましたが、一番最後の、世界各国における、少くとも文化国家らち内における世界各国社会保障の姿、実態ですね、それと日本との関係、この説明を求めたわけなんです。
  12. 小林英三

    小林国務大臣 先般のI・L・Oの会議におきまして、一部負担の問題に対しまして論究されましたときにも、これはやはり各国財政状態にマッチしてやるべきであるということからいたしまして、それに対する限度というものは決定されなかったのでありまして、私は日本の国におきます今日の政府管掌健康保険の問題に関しましては、ただいま私どもが御審議を願っておりますような方向が最もよろしい、こういうふうに考えておるのであります。外国の例につきましては、ただいま事務当局から一応御説明いたさせたいと思います。
  13. 高田正巳

    高田(正)政府委員 お答えいたします。世界各国社会保障状態を私どもも十分には研究をいたしておらないのでございますが、医療保障と申しますか、そういう面から考えますと、御存じのように、英国は国家のサービスという建前をとっております。しかし、ここでも薬剤の支給を受けたり、あるいは入れ歯をしてもらったりした場合には、一部負担といいますか、本人負担というように相なっておるわけでございます。  それから、その他の西欧の諸国におきましては、たとえばフランスにおきましても、あるいはニュージーランド、ドイツ等におきましても、たとえばフランスの例をあげますれば、療養費払い、本人が現金で一応払っておきまして、それで保険の方で八割を本人に償還するというような建前をとっております。かような国々と比べますと、健康保険の画におきましては、日本はむしろ進んでおるというふうに申しても、差しつかえないのではないのだろうか。  なお共産党といいますか、民主人民共和国系統国等におきましては、これは医療が、たとえばお医者さんなんかも自由開業というようなことでなくして、国営的な性格を持っております。これらの国におきましても、ソビエト等におきましては一部負担をいたしておるということを聞いております。さようなわけで、これらは国営的な方向でございますので、ちょっと比較ができないかと思います。  大観いたしまして、老齢年金とか、そういうふうな面におきましては、これは別でございますが、健康保険、すなわち医療保障という面におきましては、わが国はむしろ水準的には高い水準を維持しておる、かように私ども考えておる次第でございます。
  14. 中原健次

    中原委員 世界社会保障、ことに医療保障の問題についてはなはだ不十分な説明をいただきましたが、そのことできょう議論をするつもりはありません。とにかく日本世界的水準を維持しておるというので、非常にものを安易に考えおいでになるように思われますが、しかし日本国民生活水準あるいは生活の諸要件の客観的な事情というものは、これは実は相当問題があるわけでございまして、従ってこのことを議論にのせていくとすれば、社会保障、あるいはその中における医療保障の問題についてのわが日本国民の国際的な地位というものは、これはあなたのおっしゃるようなそういう簡単なものでは片づかぬのじゃないか。いな、むしろもっともっとわれわれはこの問題について深い検討がいるのではないかということに到達すると思うのです。しかしさっき申しますように、このことで議論しようと思いません。議論しようとすれば、先ほど与党の方から声もありましたように、これは総理大臣出席を求めて、根本的な、徹底的な論究をしなければならぬと思うからであります。  先ほど大臣に非常に心を用いていただきました、国庫医療保障の面における赤字に対する定率負担低額負担といいますか、そういうふうなものについての問題です。これをいやしくも国民の側に押し返すというのではなしに、国策の中で国がこれをしょい、かつ赤字を消していくという態勢をとることは、何もとんでもない、意外な、間違ったことでもないと思うのです。従ってそういうことができるはずにかかわらず、そういうことをなるべくすまいとする動きが今度の改正案の中でもうかがわれるわけです。やむを得ないから今回はわずかに出すということになったようでありますけれども、これは当然赤字に対する処理の責任を国で負うべきであって、そこまでいかなければほんとうの保障にならぬ、こう思うのです。従ってこの点に関しましては、現在政府考えおいでになる考え方は、これを大きく省みて検討のし直しをする必要があると思うのです。従ってこの点についてはもう何かと考え方の上で開きがあるように思いますが、それは別の機会に譲ることにいたしたいと思います。なぜかといえば、これは国家財政の全面的な問題についての論議にもなると思うからであります。従って本日は、そういう前提の中から、二、三の点について質問をしてみたいと考えるわけです。  先ほどちょっと触れましたように、たとえば継続給付受給資格の一年への延長の問題ですが、そのことについて提案者のお立場からの御説明を一応求めてみたいと思うのです。
  15. 高田正巳

    高田(正)政府委員 継続給付と申しますのは、中原先生よく御存じのように、被保険者資格をすでに失なった者に対する給付でございます。言葉をかえて申しますれば、保険料をすでに納めておらない人に対する給付でございます。しかしながら、過去におきまして保険料を納めてその人が被保険者であったということによって、被保険者でなくなり、保険料も納めない者に対しても、引き続き給付を続けていくということでございます。従いまして、言葉をかえて申しますならば、現在の被保険者保険料でそれをまかなっていくということに相なるわけでございます。さような性格のものでございますので、現在の被保険者医療給付につきましても非常に赤字が出たりなぞいたしまして、十分に参らないときに、かつて被保険者であった者に対する給付を続けていくというのでございますから、そこにおのずから、かつて相当期間保険者であったということでございませんと、現在の被保険者保険料を納めておる者と、そうでない継続給付を受ける者との間における不均衡というものが出て参るわけでございます。さような意味合いにおきまして、私どもといたしましては継続して一年ぐらいは被保険者であった者でございませんと、結核等でございますればこれは三年間も引き続き給付を受けられるわけでございますから、均衡を失するのではあるまいか、かような観点からこの改正案を御提案申し上げたわけでございます。なお期間があまり短うございますと、逆選択というふうな問題も起って参ります。さようなことも防止をいたしたい、かような意図で御提案を申し上げておる次第でございます。
  16. 中原健次

    中原委員 そうすると従来六カ月であったものを一年に延長されたわけですが、従来の六カ月というのは弊害が多過ぎた、こういう御解釈なのですか、いかがですか。
  17. 高田正巳

    高田(正)政府委員 お答えをいたします。六カ月ということによりまして弊害が多過ぎたかという仰せでございますが、今私が最後にちょっと触れました逆選択というふうな問題は、若干もちろんあったわけでございまするが、そういうことでなしに、主たる理由としましては今申し上げましたように、弊害と申すよりはむしろ被保険者である者と被保険者たりし者との均衡ということを考えて、一年が妥当であろう、こういう考え方に即しておるのでございます。
  18. 中原健次

    中原委員 保険を受ける側から申しますと、均衡などに実はこだわっていないわけです。ことに継続給付を受けなければならぬ、そういう立場に立たされた人々の経済的な事情というもの、これはどのようにお考えですか。
  19. 高田正巳

    高田(正)政府委員 お答えいたします。継続給付を受ける人は病気であるわけでございまするので、もちろん経済的な観点におきましては、その人だけの立場に立ちますればお気の毒な方でございます。従ってその面からのみものを考えまするならば、かような改正はいろいろ問題があろうかと存じます。しかしながら私が前に申し上げましたように、保険というものは個々の人たちだけからものを考えるわけにいかない、全体の被保険者保護ということをまず第一番に考えなければならぬわけであります。さような意味合いから申しまして、今日は三年間も給付期間がございまして、この給付に要する費用というものは非常に莫大に上り得るわけでございまするので、少くとも過去一カ年間ぐらいは継続して被保険看たりし者というくらいに限るのが、それらの観点から、保険全体の立場から申しますると妥当であろう、こういうふうなわれわれの見解なのでございます。   〔委員長退席中川委員長代理着席
  20. 中原健次

    中原委員 保険の行政という立場から考え、あるいは保険政策立場から考えますと、まず保険を受ける国民の側についてものを判断するというのが大事なのであります。そうしますと、継続給付を受けなければならぬ立場に立ち至っている人は、まず従来は被保険者であって保険料金を納めている人でして、そうであってみれば、その人が納められなくなったということは、業を失ったという人であり、失業者であるわけであります。失業して、かつ病で倒れている、これはどのような立場から判断するにしましても、国が保障せずにだれが保障するかという問題が起ってくるのではないか。しかるに今回の改正案はその資格をわざわざ切り下げられる、つまり一年に延長されたということは、その考え方のちょうど逆をいくものになるのではないかというふうに私は思うからお尋ねしておる。従ってこれが適正な改正であるということを説明されるためには、もう少し説明が十分でないとうなずけない、むしろどうも逆にとれる。いかがでございますか。
  21. 高田正巳

    高田(正)政府委員 お答えいたします。保険は今回、政府管掌に対しましては国順補助三十億というものが初めて支出をいたされましたけれども、大部分のものは保険料によって給付を行う建前のものでございます。しかも保険は被保険者に対する保護ということが主たるねらいでございます。今問題になっておりまする継続給付方々は、これはすでに被保険者ではない方々である。従って保険料をもってまかなう保険給付対象といたしましては、まず第二義的なものと考えなければならぬかと思うのでございます。従いまして保険立場からいたしますれば、被保険者保護にもいろいろ赤字を出して問題が起っているところに、第二義的なところに不足な保険料をつぎ込むということは、現在の被保険者とそれらの方々との均衡上いかがであろうかということで、この改正を御提案申し上げたのでございます。しかし今中原先生仰せのように、そういう方々は一般的に申しまして非常にお気の毒な立場にある方々である、そういう場合が多いであろうということも私はわからないわけではございません。しかしながらその面は、これは保険が見なければならぬということでなくして、他の社会保障施策、たとえばその方が非常に貧しくて医療費負担にたえないということであるならば、生活保護法医療扶助の官給というような方途によって、他の国民と同じように、同じ立場において救済さるべきものと私は考えるのでございます。そういう方々を現在の被保険者保険料でもって見てやらなければならないというわけのものではあるまい。いずれにいたしましてもかりにそういう気の毒な方であるといたしますれば、国としてそれぞれ施策を講じなければならないということで、私としても十分わかるわけでございますが、現在の被保険者負担においてやらなければならないという理屈均衡上いかがなものであろうか、かように考えておる次第でございます。
  22. 中原健次

    中原委員 それは解釈がなかなかむずかしくなると思うのですが、被保険者であることを失わしめられたという立場に置かれたということは、その人の意思から出ておるのではない。(「失業したんだろう」と呼ぶ者あり)失業自分から求めておりません。失業せしめたのです。そうであってみれば——しかしこれを無制限に扱えというのではない。ただ、その認める被保険者たりし期間扱い、それをわざわざここで一年に延長しなければならぬほどの問題だろうか。従来でさえそれが六カ月で取り扱われておったものを、今回わざわざそういう論理から、つまりあなたのような論点から、これは一年に延ばすのが妥当であるという、そういう議論になるでしょうが、むしろ今日のように自分意思に反して失業立場に立たされる人がたくさんおる段階です。そういう場合に、国家としてはそのことをやはり考うべきじゃないか。にもかかわらず、それをさしずめ扱い者を減らそうというところへ持っていこうということは、やはり最初大臣も言われましたように、医療保険の問題がよくなりつつあるというのと逆の方に行きつつあるということになるのではないか。これはどう考えてもそう思えるのです。理屈を言っても仕方がないのですが、私はそう思う。そこでお尋ねしたいのは、現在の受給者の数に対するこの取扱いを受ける者の数、つまり六カ月を一年に延長したことによって、大体家族を含めて被保険者の数がどれほどの数に上るか、この数の問題です。それからもう一つ、同じ関連だからお尋ねしますが、入院治療を受けておる患者の中で、しからばどの程度の人がつまり六カ月を一年に延長したことによってその中へ計算されていくか。それらの点についての数字的な説明をお願いいたします。
  23. 高田正巳

    高田(正)政府委員 お答えいたします。これは推算でございまして、過去の実績のサンプル的な調査から推算をいたしたものでございます。その点は御了承いただきたいと思いますが、私ども推算でございますと、六カ月以上という現行の制度でございますと、被保険者本人、それから家族と合せまして診療の件数は百六十万件でございます。ただしこの件数は、たとえば一年ずっとかかっておるとしますれば、一カ月ごとに割っておりますので、十二件になります。それで百六十万件くらいに推算されるわけでありますが、一年以上ということに今回の改正案がなりますと、家族をも含めましてその件数が、約百十四万件くらいに減って参るであろう、その減少件数が四十六万五千件くらいという見当をつけておるわけでございます。
  24. 中原健次

    中原委員 四十六万五千件といえば相当大へんな数ですが、その四十六万五千件に相当する数の人がそのらちの外へいかなければならぬ、こういうことになるわけですね。その点について御答弁願いたい。
  25. 高田正巳

    高田(正)政府委員 さようでございます。ただ、現在継続給付を受けておりまする既得権者といいますか、これは、経過規定によって保護がいたされております。しかし将来は、これから病気になる人でございますが、それは、そういうふうな件数減少を示すであろう、こういう計算でございます。
  26. 中原健次

    中原委員 それが大事なんです。そこで、病人がこれで絶えるのじゃないので、むしろ逆にふえるかもしれない。ことに国民生活水準が非常に極端から極端へ現われつつあるとき、むしろわれわれは病気はかえってふえるおそれなしとせないのです。従ってこの四十六万五千件という大体推算されたものが、ふえても減りはしないということも一応言える。いずれにいたしましても、それが減ろうとふえようと、その非常に大へんな数の人々が将来そういう取扱いを受けなければならぬということになってくる。そうすると、この健康保険法そのものの本来の目的に、それが実際沿うのであろうか、これははなはだ危惧を感ぜざるを得ない。それは生活扶助その他の取り計らいもあるであろうということでございましたが、しかし少くとも健康保険の被保険者でありし者、その家族の者としましては、これはどうしても大へんなことになるとしか思えないと思うのです。しかしこれは今回の赤字解消の問題に関連してか、非常にきつい犠牲をそこに作り上げていくということをあらかじめ予期しての措置であるということにもなると思うのですが、そういう点について政府立場から、それもきわめて公正妥当な判断であり取扱いであると言い切れるのですかどうか、この点について伺いたい。
  27. 高田正巳

    高田(正)政府委員 お答えいたします。先ほど、継続給付対象者になるのは自分が希望をしてなったわけではないからというようなお話もございましたが、その点も確かにあると存じます。しかしこれらにつきましては、そうであるからといって、保険が現在の被保険者保険料でこれを見てやらなければならないということは、必ずしもそこまですぐ参るということは私どもとしましてはいかがであろうか。むしろさような問題につきましては雇用の安定施策でございますとか、あるいは失業対策でございますとか、そういうふうな施策がそこにまず行われなければならない。また、その方が非常に貧しくて医療費負担にたえられないということであるならば、先ほども申しましたように、一般の国民と同じ立場において医療扶助等の対象になるというふうなことでいくべきではあるまいか。従来六カ月でございましたけれども、しかしながらその第一義的な現在の被保険者医療給付にも事欠くような保険が、第二義的な被保険者たりし者にまでも六カ月で給付をいたし続けるというよりは、むしろ一年くらい被保険者たりし期間を持っている人だけについてそういう第二義的な給付をやっていった方が、今日の保険の実情に即してものを考えて参る施策ではあるまいか、かように私ども考えておる次第でございます。
  28. 中原健次

    中原委員 その他の施策でというお話がありましたが、現在の政治の動向から考えて、完全雇用だとかそういう姿が期待されるでしょうかしら。そういう言葉は確かに流れております。けれども、むしろ国の施策は逆にその反対の方にどんどん行きつつある、そういう実態の中からただいまのようなお言葉が出るとすれば、これはただ一つの言葉の上でいわば提案者立場説明しておいでになるだけで、むしろどんどん失業状態が増大しておる。そう言えば、去年より今年ということでいろいろ言いわけをなさると思いますけれども、しかし総体的に言えば、六十数万の失業が依然として続いておる現在なのであります。でありますから、こういうときにむしろこの施策こそ国が力を入れなければならぬ社会保障施策ということになるのじゃないか。ことに最近問題になっておりまする生産性向上の方針といいますか、生産性本部活動の方針といいますか、これを見ますと、なるほどいろいろこれも言語づけはしておるようですけれども、にもかかわらず、実態から言えば、いわゆる急速なオートメーション化も出てくるようですが、その辺の面から、完全雇用どころじゃないという状態がむしろ非常に可能性をはらみつつあると言えるわけなんです。ですから、こういう瞬間こそ、なおさら社会保障というものはより拡充されていく、そしてたとえば医療保障でいえば、被保険者の側により有利に条件づけられていくというのでなくては、これは今の政府の政策の立場から考えても非常に大切なことになるのじゃないか。これは社会主義政策の立場からじゃない、資本主義政策の立場から言えるのです。ですから今の鳩山政府立場からいえば、これほど大事なことはない。社会保障政策の拡充ということは、これは不可避的な一つの政策なのです。しかるにそれをくずしていかれる、だんだん不利にしていかれるということになると、問題はむしろ逆な結果にどんどん突き進んでいくということになるのじゃないかと私は思うのですが、これはいかがですか。
  29. 高田正巳

    高田(正)政府委員 お答えいたします。中原先生の御質問の御趣旨、私ども必ずしも理解できないわけではございませんけれども、私どもといたしましては、先ほど申し上げましたような見解から、かくすることが保険というものをよりよくしていくゆえんである、こういう見解のもとに御提案を申し上げておるわけでございます。なお御存じかとも存じますが、任意継続という制度が別にございまして、六カ月間の給付であれば、過去において二カ月間被保険者でございましたならば、解雇されてもう被保険者ではなくなった、しかしながら自分保険料を納めれば、六カ月間だけの給付を受けられる、こういう制度は別にあるのでございます。この点も御参考までにつけ加えさしていただきます。
  30. 中原健次

    中原委員 いろいろ御説明いただきましたが、しかし、これはやはり失業者立場を実は理解していらっしゃらぬ御答弁です。失業者というものは、そういうゆとりを持つ立場におらぬわけです。ですから、そういうゆとりを持たぬ、わずかの保険料さえ納めることのできない立場に追い込まれておるのが失業者です。従ってその失業者に対して、従来でさえもはなはだ不十分な健康保険の政策ではあるけれども、それでもなおかつ六カ月までの被保険者を認めるということになっておったものを、わざわざ一年に延ばすという措置をなさったということ自体が、これは失業している者の立場に対する理解のないことなんです。むしろこのことを問題にするのなら、被保険者の世論調査をしていただいたらどうでしょうか。被保険者はどう言いますか。被保険者もやがてそういう境遇に連なる立場にいる人なんです。もっともである、よかろう、こう言いますかどうか。被保険者はおそらく政府のこういう措置がよろしかろうとは言わぬと思います。とんでもない、このようになると私は思うのですが、いかがでしょうか。国民の世論を聞いて、特に被保険者の声に聞いてこのことを措置するというような、そういう考えがなぜ起らなかったのでしょうか。あまりにも政府の、何といいますか、欺瞞政策そのものをそのままに出している。残念ながらそういう言葉で言わねばならぬ。いかがですか。
  31. 高田正巳

    高田(正)政府委員 お答えいたします。被保険者の世論調査というふうなことはいたしておりません。ただ私どもといたしましては、法律上きめられております社会保険審議会なり、社会保障制度審議会なり、さような審議会を通じまして被保険者の代表の方々の御意見も拝聴はいたしております。さような措置をとって御提案申し上げたわけでございまして、被保険者全般の世論調査等をいたすことは、大問題でございまして、さような措置はとっておりませんし、またとる意思もございません。
  32. 中原健次

    中原委員 審議会の方でもいろいろ議論があったように伺いますが、この措置は、どのように釈明されても妥当な措置とはならぬと思います。はなはだ非妥当な措置である。結局こういう場合に、さなきだに生活に困窮している、特に国民の中でも不幸な立場に立っているその人々にそのしわ寄せをおおいかぶせていくということは、社会保障本来の精神にもとっている。これははっきり断定できるわけです。もとっていないなどと言うものは、よほど感覚がどうかしているのです。もとっております。  なお続いてお尋ねをいたしますが、扶養者範囲が今度縮小されているように拝見しますが、これはどういう意味ですか。
  33. 高田正巳

    高田(正)政府委員 お答えいたします。これは必ずしも縮小ということではございませんので、むしろ被扶養者範囲を、従来不明確でございましたものを明確にいたしたわけでございます。と申しますのは、従来の規定でございますと、もっぱらその者により生計を維持するものということになっておりまして、もっぱら被保険者に扶養されているというふうなしぼり方がいたしてございまして、その範囲は非常に不明確になっておったわけでございますが、今回の改正におきましては「主トシテ其ノ被保険者ニ依リ生計ヲ維持スルモノ」ということで、この面においては若干の緩和をいたしているわけでございます。しかしその範囲につきましては一定の明確な線を打ち出したわけでございます。かようにいたしましたことは、従来のような規定でございますと、それぞれ保険官署の取り扱いによりまして区々になるおそれがございまするので、さようなことでなく、たとえば三親等内の親族であるとかなんとかいうふうに範囲を客観的に明確にいたしたわけでございます。
  34. 中原健次

    中原委員 その明確化したということが、実はこの範囲を非常に狭めたことに役立つわけであります。これが問題になる。それから同時に、これは審議会の方で問題にして指摘しておいでになったと思うのですが、不具廃疾者の満十八才未満の者の取扱いです。これはどのようにしてこの改正案で組み上げられるお考えなんでしょうか、これについて一つ御答弁願いたい。
  35. 高田正巳

    高田(正)政府委員 お答えいたします。不具廃疾者でございましても、三親等内、すなわちおい、めいまでは、この規定によって被扶養者範囲として保険給付が受けられるわけでございます。具体的に御指摘の問題は、それ以上の、あるいは全然血縁関係も何もないような不具廃疾者等を預かっておったような場合はどうなるかという御趣旨だろうと存じますけれども、それ以外のものにつきましては保険給付は受けられないわけでございます。  私どもかくしぼりましたのは、大体民法八百七十七条に扶養義務の規定がございますけれども、この扶養義務の規定の範囲に大体しぼったわけでございます。もっとも民法の方は、これよりはもう少し狭くなっておりますが、三親等内の親族につきましては、特別な事情というものを家庭裁判所で認定して扶養義務を認めるというふうにしぼられております。私どもは、そこを無差別に、三親等内はこの範囲に入れるというふうにしぼったわけでございます。と申しまするのは、結局そういう方々について被保険者が何ら扶養すべき義務もなくて、ただ自分の御意思でそういう方々を扶養されておるというふうな場合までも、その本人が被保険者であり、保険料を納めておるということで、保険がそこまで給付をいたさなくてもよかろう、それは御本人が、いろいろな御事情で特に扶養義務がないものを自分で扶養されておるような関係にあるわけでございますから、御本人責任においてさようなお扱いをなすっておるわけでございまして、そこまでの保険給付する必要もあるまい、どこかで一線を引くといたしますれば、何かの線を求めなければなりませんので、さようなところに一線を引いたような次第でございます。
  36. 中原健次

    中原委員 審議会の答申の中にそういう扱いをすべしというのがあったように思うのですが、そうするとこの答申は妥当ではない、こういうことにお考えなんですか。
  37. 高田正巳

    高田(正)政府委員 社会保険審議会におきましては、今中原先生御指摘のように、そういうものまでも考えたらどうかという御答申をいただいたわけでございます。私どもといたしましてはそこまで考えることはいかがであろうか、いろいろ事務上の問題も起って参りますし、われわれが今御提案をしております原案、すなわち三親等内の親族あるいは内縁の妻の両親、連れ子までも含んでおりますが、さような範囲でしぼることがむしろ妥当であろう、かように考えた次第でございます。
  38. 中原健次

    中原委員 審議会の答申には、もちろん当然そういうべき根拠があってのことなんだろうと思います。ことに今日の社会事情から申しますと、自分の勝手で世話をしているのであるから自分の能力でしかるべく処理したらよかろうという片づけ方というものは、今日の国民生活の実情におけるいろいろな困難性に対する理解の乏しさからくる即断だといえると思います。いわんや、そこにいろいろな複雑な事情があればこそ三親等外の人まで含まなければならぬやむを得ざる事情がそこらじゅうにあるわけでありまして、しかも、その措置をとられたからといって、保険財敗の面からそれほど大きなことではないはずだ。にもかかわらずそこを明確に打ち出して、三親等以外の者には何らの必要がない。こういう扱い方というものは、これもやはり社会保障制度それ自身の考えている精神にもとっているということはいえると思うのですが、このことについては、議論になるといけませんから控えます。  続いて、次の点にちょっと触れてお尋ねしてみたいのですが、それは大臣及び知事の検査権を強化する問題なんです。これはいろいろ議論もあったことですからあまり深くお尋ねすることは私の願うところではありませんけれども、この取締りの強化をやり、あるいは検査をどんどんやり、あるいは事業場にも病院にもどんどん入っていく。しかもそれに一つの強制力を持たせるというような措置がでかでかと出ているわけですが、これはどうお思いになりますか。現行の憲法はこのことを許しますか。政府はしばしば憲法を忘れたようなことをなさったり言われたりするわけですが、そう簡単に憲法を片づけられたら困るのですけれども、現行憲法は、このようなことはどうぞ容赦なくやりなさいということになっておりますか。ただその一点だけ伺っておきたい。
  39. 高田正巳

    高田(正)政府委員 お答えいたします。憲法の問題はいろいろ論議されておりますることは承知をいたしておりまするが、私どもとしましては、現行の憲法のもとに法律を立案いたしたわけでございます。従いまして、どの規定をとらえましても、憲法違反とか、憲法に許されていないというような問題はない。この点につきましては、私どもといたしましては、十分な研究をいたして、それぞれの専門的な部局とも十分審査を経まして御提出を申し上げている次第であります。
  40. 中原健次

    中原委員 現行憲法でも再軍備ができるという解釈論もあるのですから、これはまあいいでしょう。しかしいずれにしましても国民は納得しません。政府がどのように御研究になったか知りませんが、これはやはり議論のあるところだと思うのです。これが議論のないところだと思われるとすれば、それはとんでもない一つの独断だと思うのです。それは一種の独裁的な政治の傾向につながるのです。そう思います。しかし議論はよします。いずれにしても、そういう点については一応私の口からお耳に入れておきます。  最後にもう一点お尋ねして質問を終ります。それば任意加入の問題ですが、政府の方からもらいました資料によって見ますと、任意加入の事業所の数のその後の変動の様子です。昭和二十六年度末以後における変遷をずっと見てみますと、ここ二、三年ちょっと停滞しておるようです。これはもう相当入れ尽したからかくなったのか、それとも何か方針によってかくなったのか、この点はいかがですか。
  41. 高田正巳

    高田(正)政府委員 お答えいたします。二十八年に改正をいたしまして適用事業場の範囲を広げたのであります。従いましてその後任意包括の方が件数が少くなって参っておると存じております。そのことが一番大きな原因であろうかと存じます。
  42. 中原健次

    中原委員 二十九年の十一月二十六日付のあなたの方からお出しになった、任意包括被保険者の申請に対する認可基準についての通達です。これをちょっと御発表願っておきたい。
  43. 高田正巳

    高田(正)政府委員 お答えいたします。それまでは各県まちまちに任意包括の認可をいたしておったわけでございますが、これらの認可につきまして各県まちまちでは工合が悪いので、昭和二十九年の十一月に認可基準を定めて、都道府県知事に通知をいたした次第でございます。
  44. 中原健次

    中原委員 その内容はわかりませんか。
  45. 高田正巳

    高田(正)政府委員 数項目ございます。その事業主とその従業者であるといわれておる人との間の使用関係が明らかであること。それから二番目には保険料の納付が確実に行われる見込みが明らかであること。それから三番目といたしましては、当該事業所における従業員の報酬月額が政府管掌健康保険の平均報酬月額に比べまして著しく低額でないこと。それから四番目は逆選択のおそれのないものであること。それから五番目といたしましては、従業員の移動率が著しく高いというようなこと、その他の事情によって都道府県知事において健康保険の事業運営に著しく支障を来たすおそれがあると認められるというようなものについては、十分検討しろというふうなこと、大体そういうふうな点でございます。
  46. 中原健次

    中原委員 なるほど一応もっともらしく定義づけられておるわけでございますが、そういう一つの規定を規定づける措置がだんだん任意包括をするという呼びかけといいますか、あるいはそういうよき誘導がそのために鈍ってくるということにはなりませんか。つまり小さい事業所、これはほとんど小さい事業所ですが、そこの労働者を被保険者たらしめるための勧誘の措置です。そういう言葉を使うのはなんですが、そういうことをしたからかえって鈍らすことになりはしませんか。
  47. 高田正巳

    高田(正)政府委員 お答えをいたします。私どもといたしましてさような通達を出しました趣旨は、今申し上げましたような数点に適合するようなものでございませんと、これを健康保険の中に任意包括として取り入れましても、その後の保険料の徴収でございまするとか、あるいは諸般の関係につきまして、いろいろと保険運営上問題が起ってくるわけでございます。従いまして任意包括は、現在の健康保険建前といたしましては、その他の者は強制加入でございまして、任意包括につきましては第二義的な問題でございまするので、そういう数項目に適合するようなものでございませんと、強制加入で本人意思いかんにかかわらず保険に入れられる方々に対する保険の運営というものが影響を受けまして健全でなくなる。そういうことでございますれば、強制加入の方々に——これは強制加入でございまして、本人意思いかんでございませんので、これらの方々に対する保険の運営の責任上、十分にさような点も配慮すべきものと、かように考えるわけでございます。しかし今中原先生が御質問の中に仰せになっておりました、五人未満の今日では強制適用になっておらない、任意包括でしか入ることのできないこれらの五人未満の事業所における従業員の健康保険の問題につきましては、これは非常に重大な問題でございまして、これらのところに健康保険制度を拡張して参りますことは非常に重大な問題でございまして、この点につきましては、御存じの七人委員会の報告書等でも重大に論究をしておられるわけでございまして、私どもといたしましては、その御趣旨に沿ってこの五人未満の事業所の従業員に対していかなる医療保障の手を打っていくかということにつきましては十分に検討をいたしたい。今回のこの御提案と同時にさようなことをいたしまするには、非常に資料等、基礎調査が不十分でございます。本年度に若干の基礎調査をいたしておりまするが、さらに来年度におきましては、これらの問題をも含めて医療保険全体についての約一千万円程度の調査費も計上されておりまするので、これらを活用いたしますことによって、この五人未満の従業員の方々について、いかにこれを措置していくかということにつきまして早急に研究をいたし、施策を講じたい、かように考えておるわけでございます。
  48. 中原健次

    中原委員 七人委員会の方のこの問題に対する御注意もあったようでございますが、まさにそうなのでして、弱小の工場事業所等における労働者の保健状態、健康状態というのは非常に危惧すべきものがある。従ってそれだけにこの人々の健康を少しでも安全に保障するためには、健康保険法がそのすみずみまで行き届くような、そういう措置が当然講じられなければならぬし、いまだなおかつこれが具体化していないというところに大きな当局の手落ちがあると申し上げても言い過ぎではないと私は思うのです。ことに御調査でもございましょうが、この弱小の工場事業所等はわが日本の産業の実情から考えますと、実は非常に大きな地位を占めておるわけなのです。日本産業におけるウェートをなしておるといっても言い過ぎではないのです。しかもそういう場所に働く人々立場国家の考慮の中に入れられてないということになると、これはまことにもってけしからぬことである。従って早急に、少くとも今回のこの改正案の中には当然そのことが織り込まれるべきものであったはずなんです。少くとも改正というからにはほんとうの意味における改正法律案であってほしいのです。ところがどうもさっきから申しますように、熱心に読めば読むほどこれは改悪になっておるのです。だから主管局長の好意のある言葉ではありましたけれども、実はそういう改正案とは見ようべくもないのじゃないか、こういう感じさえいたすわけであります。要するに、これは集約して参りますると、結局保険財政赤字を被保険者の側へあびせかける、そういう一つの意図があるだけに、先ほど御発表願いました指示の要綱の中にも多分にそれがうかがわれるわけなのです。従って社会保障というものの精神がもう少し検討され直されなければ、ほんとうに期待するような改正案は作れぬのじゃないかとさえ私は思います。従って社会保障制度拡充していくという政府の方針が真に徹しておるなら、こういうとんでもない改悪案を出ようはずがないと思わざるを得ません。これは大臣どうお思いになりますか。全面的にいろいろ問題があるわけですけれども、一番最後に今局長が言われました弱小事業所、工場等の労働者の保険の措置の問題をどうお思いになるか。責任をもって作案をどんどんなさるお考えがあるかどうか、これを最後に承わっておきたい。
  49. 小林英三

    小林国務大臣 五人未満の事業所の従業員をどうするか、今回の健保改正案にはこれが出てないじゃないかというような御意見もあるのでございますが、労働者の保護の面からいたしましてもこれらの零細な企業に対しまする取扱いということは望ましいのでありまして、ただ適用するにつきましては零細企業の労働の実態を把握する必要もございまするし、働く人々につきまして使用関係がどうである、あるいは賃金の実態はどうである、またこれらの零細企業というものが保険料負担につきまして経営にどんな影響があるかというようなことも考えなくちゃなりませんし、また健康保険それ自体の保険財政の面から考えましても、これらの零細企業というものは御承知のように非常に一般より低いのでありまして、従って保険料の収入が低くなるのでありまして、被保険者にすでになっておられます既被保険者保険料負担をやはり引き上げなくちゃならぬということも起ってくると思います。五人未満の事業所にも適用いたしまするならばやはり事業所の数が非常に多くなりますし、御承知のように七人委員会におきましてもこれらの五人未満の零細企業に対しては特別の健康保険というようなものを作ってはどうかというような意見もあるのでありまして、私どもといたしましても今御意見のありました点につきましては重々承知いたしておるわけでありますから、いわゆる社会保険の適用を受けていない方方が三千万人以上もあるのでありますから、われわれといたしましてはこれらの問題とあわせて総合的にすべての社会保険の問題を検討いたしまして、たびたび申し上げますように三十五年を目途といたしまして国民保険の線に持っていきたい。それには各種の社会保険につきまして総合的に調査研究をいたしまして、これらの問題に対してすみやかに計画を得たい、こういうように考えております。
  50. 中原健次

    中原委員 労働の実態の把握が必要だからということは、労働の実態の把握ができていないことを告白になったので、率直ではなはだありがたいと思いますが。しかしきょうの段階になってまだ労働の実態が把握されていないというような当局の立場は、ほんとうに責任を果しているといえない。労働者の実情からいきますと、その零細企業の中で働いている労働者の数が非常に圧倒的な多数を占めているという実情の中において、このものを忘れてそれでいいのであろうか。これはすでにその実態を把握されていなければならぬし、むしろその措置については成案がとっくに出ていなければならぬ。それがきょうまでなおざりにされておったばかりか、むしろそのことをやるとすれば今までの被保険者保険料も引き上げる措置が必要であるというようなことを、それにかみ合して御提起になるとすれば大へんだと思うのです。そういうところにすでに政府社会保障に対する、あるいはまた健康の保障に対する政策の大きな判断の誤差がある。本質がそうだとまでは私は申しませんが、大きな誤差がある。そういうことでは今日のような、国民が非常に不安な心境に追い込まれている段階で、今の政府の政治や施策に対して、せめてもここにというよりどころを発見することができない、政府施策に対して全く国民は反対の立場に立たざるを得ないということにならざるを得ないように思うのです。同時にこれはやはり国庫の補償の問題、これは赤字に対する、あるいは保険財政に対する国庫補償という問題を本気で考えなければだめです。それをすぐ労働者の肩へぶっかけて、あるいはそのためになすべきこともなさないでというようなことでは、しかもその他の措置という中では、これは私だけじゃないと思うのですが、少くともまじめにこの保障考える者の立場からいいますれば、今度のような改悪の措置にまでならざるを得なかったところの一番大きい根本の問題は、国家が腹をきめておらぬ、腰を入れておらぬ、こういうことになると思う。だから政府国庫保障を積極化すというそういう態勢に持っていくなら、真実の健康保険法の改正を実現するということになってもらいたいと思います。その点はいかがでございましょう。
  51. 小林英三

    小林国務大臣 御承知のように今日は健康保険そのものといたしましても、ただいま御審議願っておりますような政府管掌健康保険、あるいは府県管掌の健康保険、あるいは日雇い労働者の健康保険、あるいは船員保険もあり、その他各種の共済保険もあります。こういうふうな勤労者を対象といたしましての保険があるということ、そのほかに御承知のように主として自営者を対象といたします健康保険があるというようなわけでありまして、その中にはまだ三千万人もこれらの適用を受けてない方もあります。その中には五人以下の、ただいま御意見のありましたような零細な企業があるのであります。それぞれの保険が今日まで発達をして参っておるのでありまして、いろいろ御意見もありましょうし、御見解もありましょうが、この辺で一つ総合的にすべてのこれらの社会保険の問題を検討していくということが必要なことであり、そういうような意味からいたしまして、私は先ほど申し上げましたようなことをお答えをいたしたのであります。
  52. 中川俊思

    中川委員長代理 午前中はこの程度にとどめ、午後二時半まで休憩いたします。    午後零時五十二分休憩      ————◇—————    午後四時二十三分開議
  53. 佐々木秀世

    ○佐々木委員長 休憩前に引き続きまして再開いたします。  午前中の質疑を続行いたします。八田貞義君。
  54. 八田貞義

    ○八田委員 改正案につきまして逐条的におもなる点について質問さしていただきます。  まず第一が第九条の問題でございますが、これは事業主に対するものと関係者に対するものと二つの監査、検査規定になっておるわけでありますが、この場合の関係者は、一体どういう人をさして関係者というのですか、それをはっきりとお伺いいたしたい。
  55. 高田正巳

    高田(正)政府委員 お答えをいたします。従来の規定にも同じように関係者という文句が入っておったのでございますが、これはそこに書いてございますように、被保険者の異動とか報酬、保険給付保険料等に関しての調査権でございますので、この関係者と申しますのは、具体的に申しますと、事業所の人事係の人でありますとか、あるいはある特定の被保険者の上役の方でありますとか、そういうふうな方方をさしておるわけでございます。
  56. 八田貞義

    ○八田委員 それで了解したのでありますが、その次の第九条の二でございます。この第一項は一般医師に対する保険給付に関する監査規定でございますが、この場合に一般医師は保険診療の担当者ではないわけであります。従って保険給付の中でも一般医師の場合には診療簿の提出を命ずるような監督権限までは及ばなくても、報告だけにとどめても差しつかえないと考えるわけであります。というのは、被保険者が一般医師にかかった場合に、一般医師に保険給付に関する報告を求める場合、一体どういった報告の種類をお考えになっておられるか、これを一つお伺いいたしたいのであります。
  57. 高田正巳

    高田(正)政府委員 お答えをいたします。九条の二は、別に保険医療機関という特別な保険との関係、契約のない医療機関につきましても適用ある規定であることは今八田先生御指摘の通りでございます。ただこれは監査とか検査とか、そういうやかましいことでなくして、何と申しますか、調査に参るというふうな調査権というふうに申した方がむしろ妥当ではないかと思います。それで、ただいまの診療簿その他の物件の提出というお言葉でございますが、これは提示でございまして、提出と提示とは法規上書き分けてございます。従いましてこれは差し出させるというのでなくして、見せてもらう、こちらから伺って見せてもらうという意味でございます。なお報告と申しまするのは、文書で御照会をして御報告を得ましたり、あるいはまた電話でお問い合せをするというふうなこともあるわけでございます。さような意味合いのものでございまして、これはあくまでも、保険給付に関連をして医療機関の方に問い合せをしてみる必要のある案件がたびたびございますので、そういうふうな場合に働く規定でございます。
  58. 八田貞義

    ○八田委員 そこで私局長に申し上げたのですが、一般医師に対して保険給付をなした場合の手当に関してとかあるいは支給に関しての報告でございますから、一般的に申しまして休業の診断書とか傷病手当金請求証明書、こういった種類のものですね。こういった程度の限界のものに対して、一般の自由診療患者の診療簿、帳簿書類まで及ぶわけなのですね。そこで私は監督権限としてあまり広過ぎはせぬか、やはり保険医師と一般医師とは区分されてしかるべきだ、こう私は考えておるわけでございます。この点についてむしろ診療録とか帳簿書類とかその他の物件の提示を省いてしまってもそう支障がないものと私は考えるのです。たとえばこれを直すならば、診療、薬剤の支給または手当に関し報告を求めまたは当該職員をして質問をなさしむることを得、これでもって十分に一般医師に対するところの保険給付に関する調査、そういったものは支障がない、こういうふうに私は考えるのでありまするが、重ねて局長の御意見を徴収したいと思います。
  59. 高田正巳

    高田(正)政府委員 九条の二につきましては、確かに八田先生の御指摘の通り、なお私がお答えをしましたように、これは特に監督のための規定ではございません。従いまして立ち入り等もここには規定がございません。今先生のお話では、診療録、帳簿書類その他の物件の提示を命じというのを削ってしまったらどうだという御意見でございますが、現実にいろいろ不服申し立ての審査というのをやっております。地方に審査官というものがあり、中央に審査委員会というものが置かれまして、一審、二審という関係になっておるわけであります。かようなところにかかって参りますいろいろな争いの審査をいたします際にも、かようなものを現実にちゃんと拝見をして、そうしてこの審査の基礎資料にするというようなことは、現実にあるわけでございます。従いまして私どもとしましては、かようなものが必要なものと考えておるわけでございます。
  60. 八田貞義

    ○八田委員 局長の今の答弁ではなかなか了解しがたいのでありますけれども、さらに進んで参ります。  その次に、四十三条の三についてですが、「保険医療機関又ハ保険薬局ノ指定ハ命令ノ定ムル所ニ依リ病院若ハ診療所又ハ薬局ニシテ其ノ開設者ノ申請アリタリモノニ就キ都道府県知事之ヲ行フ」となっておりまして、医療機関は局長もよく御存じの通りに開設者と管理者とあるわけであります。もちろん医師が開設者の場合にはこれは管理者になりますが、非医者の場合には開設者と医師であるところの管理者と分れてくるわけでありますが、この場合に保険医療機関あるいは保険薬局の指定というような非常に重大な意味合いを持っておる指定に関して、開設者だけにとどめて、管理者を除外した理由、この点について質問をいたしたいと思います。
  61. 高田正巳

    高田(正)政府委員 お答えいたします。開設者と管理者とございますことは、よく存じておるわけでございますが、開設者が全般の最高の責任者であることは申すまでもございません。保険医療機関の指定というようなことにつきましては、その経営方針に関することでございまして、保険医療を担当するというふうなことを願い出るかどうかということであります。これは経営方針に非常に大きな関係のあることでございまして、日々の業務をどういうふうに管理していくかということよりも、むしろさような観点から申しますならば、開設者が最も最高の責任者でもあり、妥当であろうという考え方から開設者というふうにしぼったわけでございます。
  62. 八田貞義

    ○八田委員 そこで問題が出てくるわけであります。これは四十三条の四との関連について考えてみますと、医療機関の実際の運営あるいは監督というのは管理者が当っているわけであります。開設者は開設者その人が医師である場合には管理者たり得るわけでありますが、今のお答えでありますと、開設者は最高の責任者である。医業の経営に当っておるのだ。医業の運営は違うのです。医療機関において一番必要なものは何かと申しますと、診療、調剤の運営にあずかる管理者に責任がなければならないはずであります。ですから医療機関を正しく法通りに施行していくためには、開設者と管理者とが一致しなければならぬわけであります。ところが非医師の場合には経営面のみの追及が激しくて管理者を抑制するような場合も間々起ってくるわけであります。ですから保険医療機関、保険薬局の指定というような場合には、開設者よりはむしろ管理者に与えなければならないと私は考えるのですが、いかがですか。
  63. 高田正巳

    高田(正)政府委員 お答えをいたします。医療法上管理者が運営の最高の責任者でありますことは、お説の通りでございますが、管理者にさような権限を与えておりますのは、開設者がやはりこの管理者にさようなことをやらしております格好に相なるかと存じます。  四十三条の四の規定との関連で御質問でございますが、四十三条の四の場合におきましては、ここには開設者という言葉は出て参りません。保険医療機関はということになっておりますので、もし開設者と管理者との関係において、たとえば日々の診療業務につきましては、すべて管理者に権限が一件されておるといたしますならば、医師の診療がここの医師の担当規定に沿うようにやっていただきますのも、内部的には管理者の御責任ということに相なるわけでございます。さような意味合いから、ここでは別に開設者という言葉を使っておりません。ただ四十三条の三の方におきましては、これは保険とさような契約を結んでいただくかどうかという最初の出発の場合でございますから、しかも経営方針に非常に関連のあることでございますので、一番最高の責任者である開設者から申請をしていただくことが妥当であろう、かように私ども考えまして、立案をいたしたわけでございます。
  64. 八田貞義

    ○八田委員 それで私は医療法との関連についてと申し上げたのでありますが、医療法によって医療機関というものは、すでに医療機関としての運営は管理者があずかることになっておるわけです。ですから医療機関が現在動いておるわけです。そこに保険医の指定をやるのですから、実際の診療、調剤に関する責任者はだれかと申せば、開設者じゃなくて、むしろ管理者なんです。現在医療機関が動いておる、それに対して保険医療機関としての指定をするのですから、その責任者は一体だれだというならば、開設者よりはむしろ管理者にあるわけです。その点で保険医療機関というものは、すでに医療機関としての設備その他の条件を備えておって動いておるのであるから、その動いておる運営にあずかる責任者は管理者であるから、むしろ指定という言葉をしっかりつかんでこの条文を解釈するためには、管理者の申請とするのが至当ではないか。医療実態から私はそういうふうに申し上げておるわけです。これに対していかがでしょうか。
  65. 高田正巳

    高田(正)政府委員 お答えをいたします。たとえば病院の例をとってみますれば、日々の病院の運営と申しますか、あるいは診療といいますか、そういうことにつきましては、管理者が責任を持っておられると思うのでございます。しかしその病院が保険と契約を結ぶかどうかというような問題につきましては、私が先ほどから申し上げておりますように、この病院の開設者、それがもし医師であればもちろん管理者と一致する場合が多いわけでございますけれども、病院の開設者としての立場から、そういうふうな契約をしてはどうかということが、御申請があるのがむしろやはり事柄の性質上妥当なのではあるまいか、私どもはさように考えておるわけでございます。
  66. 八田貞義

    ○八田委員 せっかく開設者という名前を作ったので、医療実態は管理者が運営にあずかっているけれども、あくまでこれを除外したくない、管理者一本で進んでいきたい、こういうような答弁のようでございまするが、この点につきましては、私の質問の意味が那辺にあるか、医療実態とよく結びつけてお考え願いたいのであります。  時間がありませんので先の方に進んで参りまするが、この四十三条の四で第二項のところに、「保険医療機関又ハ保険薬局ハ前項ノ規定ニ依ルノ外」こういう文句が使ってあって、その中に「市町村職員共済組合法ニ依ル療養ノ給付ヲ担当スルモノトス」となっておりまして、市町村職員共済組合法によって医療保険を行なっておるわけでありまするが、この場合に基金と契約を結んでおらない市町村職員共済組合というものは、相当あるわけであります。こういう場合には、たとえば例をあげて申し上げてみますると、埼玉県のような場合です、埼玉県は東京とは非常に近いものですから、埼玉県の市町村職員共済組合に入っておる被保険者が、東京のお医者さんにかかるわけであります。そうする場合には、東京のお医者さんは一応埼玉県の方に書類を出さなければならない。非常な繁雑があるわけであります。千葉県においても同様なことが起っておるわけてあります。そこで市町村職員共済組合というものが、基金と契約しておる実態、そういうことについて、ちょっとお知らせ願いたいのです。
  67. 高田正巳

    高田(正)政府委員 お答えいたします。市町村職員共済組合は、都道府県単位でできておるわけでございますが、ただいまいわゆる医療給付をやっておりまする市町村職員共済組合は、全部基金と契約を結んでおります。全体で四十三という数字が出ております。それであと結んでおりませんのは、山梨県がこれは市町村職員共済組合という形でなく、健康保険組合という形でやっておりますので結んでおりません。それから熊本県ともう一つ何県でございましたか、いわゆる長期給付の方だけやっておりまして、短期給付の事業をやっておりませんので、基金との関係を結ぶ必要がないということで、その他につきましては、全部基金と契約を結んで、基金の方で支払いの事務等を代行いたしておる、こういう形になっておるように私は承知しております。
  68. 八田貞義

    ○八田委員 その実態については、局長もまだよく、御存じないようですから、あとで御調査になって資料をお示し願いたいと思います。  それから四十三条の七、これは指道規定でございますが、この場合に旧法では、「命令ノ定ムル所二依リ」として、一定の準則でもって指導する規定になっておったわけであります。ところが今度は、「命令ノ定ムル所ニ依リ」という文句が省かれまして、手放しで都道府県知事の指導を受けられるような規定になってきたわけであります。そこで私はその条文を読みまして、行政機関の指導の限界につきまして明らかにしておく必要がある、保険医療に対して行う指導というものは、療養担当規定のワク内に限らるべきだ、こういうようなことをはっきりしておく必要があるのではないかと考えます。そこでこの指導は一体どのような指導を受けるんだということを全条文にわたって検討して参りますと、四十三条の四または前条の規定の順守、これだけに指導が限られてくるものと解釈するのでありますが、四十三条の四とか、あるいは四十三条の六以外の指導規定はどこにありましょうか。
  69. 高田正巳

    高田(正)政府委員 お答えをいたします。指導に関する規定につきましては、従来と全然変っておりません。ただ先生が今御指摘になりました「命令ノ定ムル所ニ依リ」というのを削っております。これは実は従来ともこの命令につきましては、何も規定がないのでありまして、別に必要がないというわけで削ったわけでございますが、実際の運用は御存じのように、あとの方の規定に出ておりますが、中央医療協議会の指導の大綱については諮問をいたさなければならないことになっております。従来もたしか同じような規定があったと思います。それで従来社会保険医療担当者指導大綱というものが中央医療協議会の諮問を経てきめられております。御決定をいただいた大綱がございます。従いましてこれに従って指導をいたすわけでございまして、従来と全然変っておりません。今の命令を削りましたのは、従来ありましたけれども、これに基く命令は何ら定めておらない。また定める必要もない。全部法律に即して、また中央医療協議会の従来から御審議を願っております指導大綱に基いて指導するということで、何ら変りがない。従ってこの命令を必要がないということで削ったわけでございます。
  70. 八田貞義

    ○八田委員 そこで実は今まで「命令ノ定ムル所ニ依リ」という指導は、指導大綱というものは別にあったわけですね。今度四十三条の十四に入ってきたのですね。そうでございますね。
  71. 高田正巳

    高田(正)政府委員 さようでございます。
  72. 八田貞義

    ○八田委員 ですから私はこの条文をずっと見ますると、「命令ノ定ムル所ニ依リ」という文句があれば、必ずあとの条文と関係するようになっているわけですね。大がい「命令ノ定ムル所ニ依リ」という文句がありますと、あとの方の条文を探せば必ずそれに関係するものが出てくるわけです。ところがこの四十三条の七の場合は「命令ノ定ムル所ニ依リ」というのが全然ないものですから、そこで四十三条の十四と関連するということは、私はわかったのですけれども、しかしこの条文を見ただけでははっきりしなかったのです。ですから、できるならば、「命令ノ定ムル所ニ依リ」という文句を入れた方が、この条文を解釈する場合に親切である、すなおである、かように考え質問いたしたわけであります。  それで、さらにまた進んで参りますが、四十三条の八の一部負担の問題でございます。この一部負担の問題につきましては、滝井委員も非常に詳しく質問をいたしておりますので、私は重ねてここで質問いたして時間をとる考えはございません。ただこういうことを明らかにしておきたいと思うのであります。患者一部負担というのは、保険財政赤字になったので、何とかして財源を探さなければならぬ。財源をいろいろと探してみたけれども国庫補助は、三十億円しか補助を受けなかった。そうすると、仕方がないので患者一部負担によってやっていこう、こういう財政対策であります。そこで頻度の高い再診の場合に負担をかけていく、初診の場合には、これは、従来からお医者さんが取っておったのであるから、五十円では財政効果はゼロ、こう出しておられるわけです。ところが一般の人々は、患者一部負担というものは、もしも患者が払ってくれなかったならば、お医者さんに支払いする金がないんだ。保険者が今までお医者さんにどんどん払っておったのだけれども、もしも一部負担をしてもらわなければお医者さんに払う財源がないのであります。大きな穴があきますから、医師会の先生方、どうか一つ一部負担にして納得してくれ、こういうふうに誤まり伝えられ、一般の人々もそういうふうに解釈しているわけです。ところが実際は保険財政から患者一部負担の二十三億六千万円出しておられるのは、保険者が支払う責務というものをとってしまう。そうしてその患者一部負担の徴収する義務者はだれかと申しますと、お医者さんです。従来の観念でいくならば、初診料はやはりお医者さんの徴収義務にあったわけです。さらにまたあとの二十三億六千万円何がしも、お医者さんが全部自分で徴収しなければ、未払いの分は全部お医者さんの負担になる、しわ寄せになる、こういうことになるわけです。ですからお医者さんに支払う金がなくなったのではありません。お医者さんに支払うべき保険者の当然の責任を医者の方に転嫁した、しかも患者にその負担を与えた、患者はお医者さんに払えません。ここに保険財政に大きな穴があきます。だから一部負担をどうしてやらなければ、保険者が支払うことはできない、こういうふうに言うのは、間違って解釈しているわけなんです。実際は保険者が支払うべき医療給付を全部、その一部負担の金額だけは保険者の義務をなくしてしまって、医療機関の方にその義務と責任を転嫁したわけです。いかがですか。——結局私の質問があまりはっきりしないと思うのですが、現在初診料というのはお医者さんが取っておるわけです。今度の患者一部負担も、全部お医者さんが取るわけです。ですからあなた方が、この患者一部負担につきましていろいろな金額を書いてきておられます。ところが初診料は五十円ですから、全部ゼロになっております。他の再診料の十円とか三十円の場合には財政効果は収入幾ら、こういうふうに書いてある。入院の場合は幾ら、こういうふうに書いてあるのですが、それをちょっと見ますと、やはりこれは保険者が全部徴収してお医者さんに払うのだというふうに解釈をせざるを得ないのです。ところが実際はそうでない。在来の初診料と同じように、患者一部負担は全部お医者さんが徴収するのだ。その未収の場合は、それはあなた方の努力が足らぬのだ、こういうふうになってくるわけです。実際の療養給付責任保険者にあるわけです。ところが保険者は、こういった患者一部負担についてはその責任医療機関の方に与えた、こういうことになるわけです。その点いかがですか。
  73. 高田正巳

    高田(正)政府委員 お答えをいたします。お手元に資料が差し上げてありますかどうか、なお私お答えをしました二十三億五千一百万円という数字は、仰せの通り、従来の初診料の現行通りの四点分につきましてはゼロということになっております。それはどういう資料で、またどういう意味で今の二十三億五千一百万円ということを御説明申し上げたかと申しますと、これによる財政効果が幾らかということで御説明を申し上げ、資料も御提出をしてあるわけでございます。従いまして、その財政効果という意味でその資料は出してありますので、従来通りのところは財政効果としてはゼロということになるわけでございます。  それから元来保険者責任を負うべきものを医師に転嫁したというお話でございますが、お気持は私にもわからないことはございませんけれども保険者が何もかも全部をカバーしなければいけないものかどうかということは、この保険の法律できまるわけでございます。現に家族は半額は負担をしておりますし、国保でもそうでございます。保険というものは一文も本人に出させてはならぬのだという理屈はないわけで、その裏といたしまして、保険者が、保険である以上は全部出さなければならぬのだという理屈もないわけでございます。それでそれがどういうことになるのかということは、結局健康保険の法律自体できまるわけでございます。さような意味合いでこの法律自体を御審議をお願い申し上げているわけでございます。逆に、たとえば先年やりましたような給付期間を二年を三年に延ばしたというふうな場合には、八田先生の御議論をもってすれば、今度は個人の負担であったものを、あるいは個人の負担でございますから医師が当然徴収されるべき責任を負っておったものを、今度は逆に保険の方がその責任を課されたというふうな議論になってくるわけでございます。そういうふうなことではございませんので、一体保険というものがどこまで見るかということは、これは法律自体できめらるべきものである、さような意味合いにおいてそのことが妥当であるか、不当で、あるかということについて十分に御審議をいただいている、私どもはかようなつもりでいるわけでございます。
  74. 八田貞義

    ○八田委員 そこで財政効果という面でこういった数字を出してきておられるわけでございますが、こういった相関関係にある受診率の増減につきましては、何らこの場合については触れていないわけです。その点について私もいろいろと文句もあるわけであります。そこで財政効果として、御提出願っておるいろいろな書類を拝見して、一般の人々はこれはやはりこれだけ自己負担をしてもらえば、医療担当者に対する支払いはできるんだ。これはみんな素朴な気持でいる場合には、そういったような受け取り方をするわけです。ところが実際は徴収事務というのは、医療担当者がやるんだ。しかも現行の初診料につきまして、これは一体どれくらい医者が徴収しているかと申しますと、七割以下、六割くらいな状態になっておるわけです。その筆法でいきますと、医者に徴収義務を与えた患者の一部負担の金額にしても、未収分が非常にふえてくる、こう考えざるを得ないわけです。ですから、医療担当者に一部負担の徴収義務を課する以上、未収になった場合は、やはり法律によってその責務は保険者が負うものであるという一項は当然入るべきだ、私はそう考えのです。この点について、局長は納得のいかないような顔をされておりまするが、実際に診療に担当している人にしてみれば、これは重大な問題なんです。そういうふうなことで、診療担当者の気持になってお考えになりますと、この法の打ち出し方というものがあまりにも一方的だ、こういうふうになってくるわけであります。  そこでもう一つお伺いいたしたいのは、初診料は「五十円以下ニ於テ厚生大臣ノ定ムル額」、こういうふうになっております。ただ初診料の場合に、「命令ヲ以テ定ムル初診ヲ除ク」と書いてありますが、一体この場合はどういう場合をさしておるのか、これをお伺いいたしたいと思います。
  75. 高田正巳

    高田(正)政府委員 お答えいたします。これは現在初診料をとれないような初診があるわけでございます。たとえば一カ月以内に合併症がまた出てきた、たしかそういうふうなきめになっておったと思いますが、そういうふうな初診料をお支払いしないような、しかし理論的には初診ということになるような初診があるわけでございます。そういうふうな場合までこの五十円以内——五十円、四十六円と定める予定でございますが、さような場合にまで一部負担の五十円、四十六円を課しますることは、少し行き過ぎではないか、従ってそういう場合は除きたい、こういう意図でございます。
  76. 八田貞義

    ○八田委員 局長がこれをお書きになったときには、そういうお考えでお書きになったとは私は思えないのですがね。もちろん今の答弁でいきますと、療養担当規程にある初診という項目ですね。一カ月通用するところの診察券だ、こういう意味で御答弁になったと思うのですが、そういう意味合いをもって解釈されるならば、「命令ヲ以テ定ムル」という言葉がおかしいと思うのですが、いかがですか。
  77. 高田正巳

    高田(正)政府委員 お答えいたします。今の答弁で申し上げましたのは、現在は担当規程でございますか、点数表でございますか、告示ということでございます。法律の除外例を認めるわけでございますので、これは除外例としてはあれと同じことを定めるにいたしましても、この場合には法律形式として命令の方が妥当であろう、こういうことで命令というふうにいたしたわけでございますが、これは告示としても、あるいは厚生大臣の定むるところといたしましても、どういうふうなことにいたしましても、法律では差しつかえないわけでございます。しかし命令ということが一番妥当であろうという意味で、命令といたしたわけでございます。
  78. 八田貞義

    ○八田委員 そこで初診を五十円以下にしぼってこられた根拠、これについては私いろいろ質問をしなければならぬ問題があるのですが、そういうことは省きまして、初診を五十円以下にされた理由、担当者として局長が初診の場合五十円が妥当であるとお考えになった理論体系、そういったものについてお伺いいたしたいのであります。
  79. 高田正巳

    高田(正)政府委員 お答えいたします。五十円以下と申しますのは、今申し上げましたように、現行通りという意味でございます。それで初診の際に現在より以上の一部負担を課しますことは、いわゆるお医者さまにかかりにくくするというような結果が弊害として出てきやしないかという点を考慮いたしまして、初診の際は現行通りというふうなことでいったらよかろう、かような結論に到達をいたしたわけでございます。先般も御説明を申し上げたと思いますけれども、一部負担のやり方につきましては、いろんなやり方があるわけでございます。それぞれ長所もあり、短所もあるわけでございます。私どもといたしましては、いろいろな考えられる方法から、これが一番適当な方法であろう、こういうわけで御提案を申し上げておるようなわけでございまして、現行通りに初診の際の一部負担を押えましたのは、今申し上げましたような意味合いでございます。
  80. 滝井義高

    ○滝井委員 ちょっと今のところに関連してですが、実は四十三条の八に、「一部負担金トシテ」、こういうことになっておるわけです。一部負担金ということは金額負担ではないことは確実なんです。そうしますと、「初診ヲ受クル際五十円以下ニ於テ厚生大臣ノ定ムル額」こういうことは、あなた方は、たとえば甲地だったら五十円ですから、五十円そのまま取るんだろうと思います。乙地は四十六円だから四十六円そのまま取るんだろうと思います。そうすると一部負担ではなく、初診だけで終るとすると五十円、四十六円の全額が取られる。さらにその次の二号においても、これは三十円と定額になっておりますが、これは三十円に満たないときにはそのままになる。たとえば、投薬、注射のない再診の場合は二点ですね、二点としますと、甲地では二十三円です。全額です。一部ではありません。それから一日薬をもらったとしますと、再診料はなくなりますから、今度の暫定案では二・二点です。そうしますと、乙地で二十五円三十銭、全額ですね。たまたま薬を二日もらうと、三十円でいいことになる。これは法文は一部負担と書いておるから、全額ではないはずです。ところが初診の場合も全額、再診の場合も全額になってしまう。だからこの条文では読めなくなる。一部負担じゃない。全額負担です。しかも家族はその半額でいいんです。すると、法律の建前家族の方は付随であって、さしみのつまであって、本人の方が大事なんです。ところが本人の方が全額負担して、家族は二十五円三十銭の半額を負担すればいい。あるいは再診の場合は二十三円の半額十一円五十銭を負担すればいいということになって、立法上矛盾してくるのです。そういう場合は全額負担です。そうするとその場合条文からは読めないのですが、これはどういう解釈をおとりになりますか。
  81. 高田正巳

    高田(正)政府委員 お答えいたします。非常なレア・ケースとしてはさような場合があり得るわけでございます。しかしそれは従来の規定におきましても一部負担というものは初診料相当額ということになっておりまして、今御指摘のようなレア・ケースの場合にはやはり全部負担になります。ほかに初診だけが行われて投薬も注射も何も行われなかった場合には同じように全額負担になるわけであります。この言葉の使い方は現行の規定のものと変らないものと考えております。
  82. 滝井義高

    ○滝井委員 今までならば診療全体を見て、その全体の中における初診の場合だけ、こういう概念が一部負担の概念だった。ところが今度の場合には初診の場合でも、再診の場合でも、投薬した場合も、注射した場合も、入院した場合でも全体の場合において一部負担の概念がかかっていくわけです。法文の書き方としては初診においても全額を払う、一日分の薬をもらっても全額を払う、こういう形になってくるのです。軽い病気なんかの場合全額払う場合があるのです。初めに見てもらう、その場合五十円全額払った、その次に行きますよ、薬を一日分もらうと本人は全額払う。そうしますと保険の恩典を一回も受けずに全額払ってしまったことになる。その治療の形態からいえば一部負担ではない、全額負担です。今までの例では初診が一回のときは初診だけで全額になるからいいのです。ところが今度は個々の治療行為のすべてにわたって、ある場合には全額を負担しなければならぬ場合が出てくるというと、範囲が非常に広げられておる概念になるのです。今までの一部負担の概念とは違ってきているのです。今までの一部負担はそれによってある程度むちゃな抑制がないようにということで、傷病手当金の三日間の待機とこれがいわば並行してきておったものなんです。ところが今度の立法の考え方はあなた方は今までの考え方と同じだと言うけれども、そういう場合を考えると非常に違ってきているんです。だからこの点は一部負担金ということになると、今申しましたように再診の場合なんかは一部負担ということにはならぬ。投薬も注射もない再診なんですからね。初診で全額払い再診で全額払うということになると一部負担じゃない、全額負担になっちゃう。この概念で押していくことは、どうも法文の上で少し無理があるんじゃないかという感じがするんです。今までだったら、たとえば初診だけで終れば全額負担になります。その理論を敷衍したものだと言えば成り立たないことはないけれども、それは今までの概念と非常に狂った概念になって、法解釈としてはちょっと無理なんですよ。
  83. 高田正巳

    高田(正)政府委員 お答えをいたします。さようになる場合が多かろうと少なかろうと、レア・ケースが非常に多くなるか少くなるか、量の問題はございますけれども、これはいずれにいたしましてもレア・ケースでございまして、いずれにいたしましてもレア・ケースであるということになりますれば、従来の法文でも今滝井先生の仰せのように、初診料の額に相当する額を一部負担金として支払うべし、こういうことになっておりまして、それで初診だけで何にもなかった、そのままでたとえば次のお医者様にかかったとか何とかいうことになりますれば、これはやはり理論的に全額負担ということになるわけでございます。だから従来にもそういう場合は一部負担金という言葉を使っておりました。従いまして法律上の関係といたしましては別に従来のものと言葉の使い方において違いがあるということは申せないと思うのであります。ただ滝井先生の御指摘のようなレア・ケースでいきますと、毎日々々お医者様に行くたびに、病状によりましてはそのほとんど全部を自分負担する場合が起ってくることは事実でございます。そういう場合がレア・ケースといえども従来より多くなることは事実でございます。それが不合理じゃないかという御意見もごもっともでございます。ただ私最初に御説明申し上げましたように一部負担のやり方につきましてはいろいろの方法があるわけでございまして、いろいろある方法のどの方法にも欠点を持っておるわけであります。一部負担のやり方にはいわゆる足切りというような何円までは全額自己負担だというようなやり方さえあるわけであります。従って今回私どもが御提案申し上げております一部負担の方法は若干そういう思想が入ったような格好の一部負担の方法になっておる、従ってその辺のところはこの一部負担の方法の欠点であると申せば欠点であります。しかし足切り一部負担をやれという主張をする論者にとりましてはこれはむしろ長所である、こういうことも言えるわけであります。そういう問題は確かに御指摘のようにあると存じますが、法律的に一部負担金という言葉を使いました関係においては旧法も新法も別に論理の隔たりはない、かように考えておるわけであります。
  84. 滝井義高

    ○滝井委員 一応百歩を譲りまして、法律論としてはあなたの言うことを認めましょう、法律論としては認めますが、政策論となった場合の矛盾を指摘いたします。それは現行の慣行を見てみますと、薬は二日分やるのが普通です。あなた方の政策は、日本の医者は注射が多い、できるだけ投薬でもっていきなさいというのが今のあなた方の保険の指導方針です。それで薬を二日分ずつもらうことを考えますよ。二日分の薬をもらいますと、家族は乙地であれば、今申しましたように二日分で五十円六十銭ですから、半分の二十五円三十銭を払えばよい。ところが本人はそれより多い三十円ずつ払うのですよ。これは一つの大きな矛盾なのであります。いわゆる社会保障という中核体である社会保険において一番恩典に浴さなければならぬ保険料を納めておる本人自身が、さしみのつまになっておる家族よりも多い額を負担しなければならぬという政策はない。しかもこの前の統計でもお示しになったように十五円以下の注射というものが一番多い、投薬も十五円以下のものが多い、十五円以下、注射は四点ですよ。この場合でも家族は乙地ならば、半額の二十五円三十銭払えばよい、本人は三十円払わなければならぬ。法理論的にあなたのおっしゃることを認めても、今度政策論的にこれを見れば非常に大きな矛盾が一部負担の中に出てきておるということです。しかも治療の上で実際実践せられておるのは投薬が今言ったように二日分でしかも十五円以下か多い、注射においてしかりとすれば、本人家族より多く負担しなければならないという政策はあり得ない、一部負担というのは家族よりも軽いものでなければならぬ。私がこの前申しましたように、受診率は家族と同じになるという理論はここから出てくる、あなた方は変らぬという理論を御主張になっておりますが、働いておる本人病気になって、家族よりうんと負担しなければならぬという理論はどこからも今日の社会保険からは出てこない、それを出すとすれば日本の社会保険後退です。あなたが何とおっしゃっても矛盾だということを率直にお認め願いたいのです。
  85. 高田正巳

    高田(正)政府委員 お答えいたします。この一部負担の方法におきましては、レア・ケースとして今御指摘のような場合が起ることは私ども承知をいたしております。さようなことを回避いたしますためには、たとえば定率の一部負担というようなものが、そういう意味合いにおきましては一番合理的なわけでございます。しかし定率の一部負担というようなことになりますと、これはまた別個の非常な欠点を持っておりますので、それらを最初申し上げましたようにいろいろと彼此勘案をいたしまして、私どもはこの方法が一番よろしいというつもりで御提案を申し上げておるわけでございます。
  86. 八田貞義

    ○八田委員 一部負担の問題につきましては、さいぜんの滝井委員の質問に対して局長が答えられましたように、いろいろと矛盾の点を包蔵しているわけです。これについて追及しておりますと幾らでも時間がかかりますし、委員長からも時間ということで催促を受けておりますので、この問題につきましては一応これで保留しておきまして先の方に進んで参ります。  そこで四十三条の九でありますが、その第三項のところで「保険者保険医療機関又ハ保険薬局トノ契約ニ依り当該保険医療機関又ハ保険薬局ガ療養ノ給付ニ関シ請求スルコトヲ得ル費用ノ額ニ付前項ノ規定ニ依り算定セラルル額ノ範囲内ニ於テ別段ノ定ヲ為スコトヲ得」こういうように書いてございます。この契約という言葉でございますが、これは特別割引契約です。一体どういう保険医療機関を頭の中に入れられてこういうような特別割引契約というような条文をお書きになったか、これを明らかにしていただきたい。
  87. 高田正巳

    高田(正)政府委員 お答えいたします。従割割引をいたしておりますものだけを頭に置いております。従いまして、具体例を申し上げますれば、国立療養所等は割引をいたしてやっております。私どもは、従来のものより広げる意思はただいまのところ持っておりません。
  88. 八田貞義

    ○八田委員 この問題についてはさらにいろいろ質問いたしたいのでありますが、時間がありませんので、先の方に進んで参ります。  四十三条の十五でありますが、四十三条の十五に医療法の第三十条の想定と同じことが書いてあるわけです。これは医療法の三十条と同じなんです。ところが医療法の第三十条は一項、二項、三項、四項と分れておる。ところがこの四十三条の十五を見ますと、医療法第三十条の一項だけが記載してあって、その他の部分は全部省いてあるわけです。これは一体どうしてお省きになったか、この点をお伺いいたしたいのであります。  具体的に申してみますと、弁明の機会を与えるということが条文の中にありますが、その場合には書面をもって弁明をなすべき日時、場所及びその事由を通知すべし、こう書いてありますが、運用方法についてははっきり条文化されていないわけです。たとえば公開の場所とは一体どういうところだ、あるいは弁明をなす場所は地方医療協議会でやるのか、どういう場所を明示しておるのか、また弁護人をつけることを許してくれるのかどうか、こういった規定は医療法の第三十条の二項から四項にわたって明記してあるわけです。ところが四十三条の十五ではすっかりそれをとってしまって、第一項だけを記載しておる。これは医療法との関連において非常に矛盾がありはせぬか、二項から四項までとってしまわれたその理由を一つ具体的に御説明願いたいのです。
  89. 高田正巳

    高田(正)政府委員 お答えをいたします。医療法の規定には、なるほど聴取書を作り、これを保存するとか、報告書を作成し云々というようなこと、あるいは代理人を出頭させ云々、これは弁護人ではございません、かわりの者がという意味でございます。そういうふうな規定があるのでございますが、私どもはこれは他の法律にも、たとえば生活保護法とか、その他の立法例は私忘れましたけれども、こういう弁明の規定を挿入してありまするものの立法例を参照いたしましてこの条文を設けたわけでございます。この条文は御存じのように今まではなかった条文でございますが、これを新たに設けたわけであります。  今仰せの、一体どんなところでやるのだというふうなことにつきましては、これはこの規定の運用の方針に関することでございまして、その点につきましては、先般滝井先生の御質問でありましたかにお答えをしましたように、私どもとしましては、医療協議会というものを予定して運用の方針として考えておるわけでございますが、その場合に、本人がお出になる場合もありますし、あるいは書面で弁明をなさるというふうな場合もございますが、人によりましては、事によると公開の席上をおきらいになる方があるかもしれません。これは社会保険審議会でございましたか、どこかの席上で、公開の席上でやるということはむしろおもしろくないのじゃないか、その辺の運用については十分その相手方の実情に即したような運用をしなければならないという御注意があったほどでございまして、そういう運用方針につきましては、私どもとしては、医療協議会の席上でやるということを従来もやっておりますし、その方針で今後も参りたい、かように考えておるわけでございます。
  90. 八田貞義

    ○八田委員 今の答弁によりまして大体お気持はわかるのでありますが、はっきりと弁明の場所、方法などを運営通牒か何かによって明らかにしていただくことをお願いしておきます。  それから、これは二十一ページに書いてありますが、「第五十一条第二項中「又ハ病院若ハ診療所」を削り、」となっておりまして、産院だけが残って参ります。そうしてまた「同項に後段として次のように加える。」「分娩ニ関シ病院又ハ診療所ニ収容シタル」となっておりまして、ここで二分した理由が私にはよく了解できないのですが、ここで二分した理由を御説明願いたいのであります。
  91. 高田正巳

    高田(正)政府委員 お答えいたします。これは全く字句の整理でございまして、従来の規定でいきますと、結核である病院に入っておった、そのときに分べんをしたような場合には額が半額になってしまうわけでございます。そういうふうなことに読まざるを得ないようなことになるわけでございます。ところが、これを書き分けまして、今度の新しいあれでいきますと、さようなことにはならないことになるわけでございます。
  92. 八田貞義

    ○八田委員 局長は結核を例にとって説明されましたが、これは結核じゃないのです。私、局長にちょっと申し上げておきたいと思いますのは、こういうふうに二つに分けた理由は、私も初め非常に異様に感じたのでありますけれども、よく読んでみますと、要するに、第五十一条第二項の「病院若ハ診療所」を削って産院だけを残したのは、正常分べんの場合だけに限ったのでおる、ところが新たに「分娩ニ関シ」という条項を入れたのは異常分べんの場合だ、こういうふうに私は了承してこの改正考えておるわけなんですが、そうじゃないのでしょうか、どうですか。
  93. 小沢辰男

    ○小沢説明員 実はこの改正規定の趣旨は、異常分べん等で病院、診療所へ収容された場合は、分べん費の額は半額とすることに今までになっておりましたが、従前の規定では、他の疾病で入院している人が分べんをしたような場合においても半額となるように解せられますので、そこでそれを明確にするために、分べんに関して収容された場合に限ると第二項ではっきりと追加して書いたわけでございます。
  94. 八田貞義

    ○八田委員 今の答弁で了承いたします。まだたくさんあるのですが、第六十七条の二に飛んで参ります。  第六十七条の二は、詐欺その他の不正行為によって保険給付を受けた者がある場合には、その全部または一部を保険者は徴収することができるのだという条文でございます。この条文ではもちろん当然なことでございますが、ただ、あとの方の第二項を読んでいただきますと、この場合の詐欺その他の不正行為というものは、事業主と保険医だけに限定されておりますね。この点に私は疑問があるのです。保険医と事業主だけに詐欺その他の不正行為というふうに限定された理由ですが、保険給付にあずかる担当者は医師、歯科医師、薬剤師であります。この場合、保険薬剤師は全然この規定の中に入っていないわけですね。保険薬剤師が全部が全部正しいことをやるという前提であるが、実際にそういうことがわかっておれば除いてもいいですけれども、これからはっきりと医薬分業が行われてやられていくわけです。巷間、「サービスとして処方センよりタップリ盛ってございます。」というようなことがいわれているわけですが、当然そのような場合もレア・ケースとして考えられる場合がございます。またあるいは、全然薬剤の給付をなしておらぬのに、あたかも薬剤の給付をなしたかのごとく詐欺の申告あるいは不正の行為がなされる場合も考えられるわけです。法というものを正しく運営していくためには、この条文の中に、事業主と保険医だけに限らないで、保険薬剤師に対してもやはり同様の規定があってしかるべしと私は考えるのですが、いかがですか。
  95. 小沢辰男

    ○小沢説明員 六十七条の二の規定でございますが、実はこれは、不正の請求とか、そういうようなものは全然対象考えておらないのであります。たとえば被保険者が事業主から確かに病気で休んでおるというような書面をもらったり、あるいはそれに必要な診断書を保険医からもらったりしまして、それが虚偽の診断書であったというような場合に、まず第一番には、もちろん被保険者がそういうような不正行為によって保険給付を受けたものですから、それに直接その人から、あなたはそういう行為によって取ったのだから全部私の方に取り上げるぞということで、直接徴収ができる。それに協力をし、共同正犯になるような診断書の発行というような点で、その賠償について連帯で直接その保険医の人からも取れる、こういうことを規定したのでございます。従いましてその保険薬剤師がこういうような診断書を発行する、そういう場合に証明書を発行するというようなことは全然ないわけでございますので、その必要がないわけであります。そういう意味でこれは保険薬剤師を書いてないのであります。
  96. 八田貞義

    ○八田委員 あなた方は非常に考え方が一方的でへんぱだというのです。これは診断書というふうに限定していますね。保険給付は診断書ばかりじゃありませんよ。保険給付は薬剤師の給付もあるわけです。当然起り得る可能性というものは考えられるわけですね。それに対して除いてしまって、一方的に保険医だけにそういったものを与えるということは、保険医、保険薬剤師というものがおるわけですから、やはり同様なことをやっておかなければ法としてはへんぱな条文だというふうに解釈されてしまいます。ですから多分私の質問によって局長も課長も、あるいは心の中で、ああそう言えばそうだというふうに思っておられると思うのです。ですからその点一つへんぱな法律は作るべきではないというお考えのもとに、保険薬剤師の場合においても同様な規定を作るべきであろうと私は考えますが、いかがですか。
  97. 小沢辰男

    ○小沢説明員 先ほど御説明申し上げましたように、実は虚偽の診断書によって、こういうような給付を受けせしめたという共同の責任を追究するだけの規定でございますので、保険薬剤師の方で診断書の発行を許されているような建前でありましたならば、当然保険薬剤師を書かなければいけませんけれども、そういうことはもう保険医に限られておりまして、保険薬剤師には起り得ない。それから先生のおっしゃるようなことは、これはいわゆる診療の保険給付の請求について不正があったような場合、たとえば先ほどお話があったように、処方せんに書いていないような薬をどんどん与えたというような場合は、この条文の関係事項ではない。これは別に処分がある。従って不正請求の場合は全然この場合の対象ではないのです。
  98. 八田貞義

    ○八田委員 そういうような解釈をされると、あなた方はこれを作ったが、どうしても修正したくないんだという気持がそこに流れてくるわけですが、そうしますと前の方に戻ってまだまだやらなければいけなくなってくるわけです。そうすると四十三条の四で、「保険医療機関又ハ保険薬局」というのは、これは命令の定めるところによって診療または調剤に当っておるわけですね。当然保険給付としてやはり同様なる規定がなければならぬ。診断書だけに限って固執されるということはへんぱな考えですよ。やはり保険薬局、保険医療機関としてあるならば、保険医療機関においては診断書において詐欺の通告がある場合がある。だからこういう条文を作らなければならない。しからば保険薬局においてはどうか、保険薬局においてもそういうことは起り得る可能性があるというならば、当然やはり条文化してくる必要があります。この点について、あなた方はこれでは絶対だめだという気持でなく、すなおな気持でこの条文を読んでいただき、すなおな気持で私の質問を聞いていただけば、これはああ失敗した、こういうようなことが出てくるはずです。もう時間も来ておりますから、この点について強く答弁は求めませんが、一つ十分に頭の中に入れられて、改正案ですから間違いないようにお願いいたしたいと思います。
  99. 佐々木秀世

    ○佐々木委員長 次会は明四日午後一時より理事会、一時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時四十五分散会