○渡辺(惣)
委員 北海道地方の
調査について、以下既略御
報告申し上げます。
北海道班は、去る八月六日午前函館市の
北海道庁渡島支庁に集合いたしまして、八日間にわたって
調査を行い、まず道南
地方以後、後志、空知、上川
地区を経て網走
地区に入り、最後に十勝
地区に至り、八月十四日帯広にて解散し、日程
通りここに
調査を滞りなく終了いたした次第であります。
以下、
産業の
振興、
開発、おもに
農業、水
産業及び
鉱業さらに交通、主として
道路、
鉄道等について、事項、別に順次申し上げることといたします。
第一に、まず
農業関係について申し上げますと、
北海道農業は、いまだ気象や土性等に恵まれない劣悪な自然条件下にあって、しばしば冷
災害等を受け、その進展をはばまれておりまして、その
対策としては、泥炭地等、特殊土壌地帯の
開発及び特殊気象地帯に適した有畜
農業経営方式を強力に推進しなければならないのであります。
開発、土地改良のおもなものをあげますと、次のものがありました。
一、道南
地方開発としましては、イ、灌漑事業、湯川、大町、松前、北檜山
地区であります。口、小団地
開発、木古内、知内、天ノ川、乙部元和
地区その他。二、積丹半島
背後地開発。三、共和村灌漑事業。四、篠津
地域開発事業。五、美唄
地区(桂沢
ダム)土地改良事業。六、美唄
地区索道客土事業。七、七里原野
地区土地改良。八、小清水町、濤沸湖周辺の
草地改良。九、居辺無水地帯の
開発。
次に、集約
酪農地区の指定を
要望するものとしましては、八雲町、羊蹄山麓地帯、遠軽、北見、斜網
地区等がありました。なお八雲町は土地利用区分確定
調査を望んでおり、またビート
工場誘致を望むものとしては、道南
地方、斜里町、その他がありましたことを申し添えておきます。
さらに
国有林等の開放等について
要望のあったおもな個所について申し上げますと、一、藻琴山麓
地区、
国有林約四千
町歩余の開放をここ数年来
要望されていたのですが、これらの
国有林は既入植地と地続きであり、土壌等から見ておおむね開拓適地と認められますので、食糧
対策とともに、入植及び
農業の次三男
対策にもあわせて大いに寄与すると思われるので、営林当局はすみやかにこれが
措置を急ぐよう、特に
要望して参った次第であります。二、足寄
地区、九州大学演習林約四千
町歩の開放
促進についてでありますが、これも文部省、林野庁当局間の協議の後、適切なる
措置をすみやかにされるよう
要望するものであります。三、またその他十勝
地区上士幌町、網走
地区生田原町、道南、後志
地区等において
福島町、上ノ国村及びその他小団地
開墾に伴い、放牧その他のために
国有林の開放を望む声をしばしば耳にしたのであります。四、また網走刑務所を移設し、その敷地二千
町歩、耕地六百
町歩の開放を切望する陳情を受けたのでありますが、刑務所を移設するについて、その適正なる代替地の資料を本
委員会に提出されるよう申して参りました。これらの
国有林等の開放問題等については、
地元側と
関係当局の話し合いを一そう積極的に進め、未解状のまま放置することなく、すみやかに円満なる解決を望むものであります。
小団地
開発について申しますと、道南、後志
地方等の漁民は、漁場の狭小化と
資源の枯渇等の理由から今日の窮乏を招いており、これら零組漁民の救済保護には、まず農耕地を与え、多角経営方式を取り入れるような
対策が強力に推進されなければならないのでありまして、小団地及び
背後地の
開発には人道的、社会的見地に立脚して、特にカを注いでこれが
開発に当ることが肝要であります。この
立地条件に恵まれない小団地地帯には、特に小団地を対象とした
開発整備事業の補助率の引き上げの特別の
措置を考慮し、狭小なる小団地も見捨てることのないよう、留意することがきわめて必要なことと思われました。
次に開拓者の問題について申し述べますと、
入植者の安定、確立をはかるためには、基礎
工事のおくれをすみやかに取り戻すとともに、営農資金を十分に確保することが必要でありまして、困難な問題が多いとは言え、日夜不利な自然的条件と取り組んでいる開拓者諸君に思いをいたして、
零細漁民の救済保護と同様、人道的、社会的見地から、強力な
措置をとるよう強く
要望するところであります。
さらに冷害凶作の問題について申しますと、網走
地区においては水稲が皆無、平均三分作強といわれ、著しい不作が予想されておりますが、この際ビート、ハッカ、バレイショ等の寒冷作物への転換が望ましく、特にビートの増産により有畜化経営の
発展を促し、あわせて土壌改良に役立たせることが肝要であると思われました。十勝
地区においては特に菜豆類の
被害が著しい点を思いますと、投機的営農観念を払拭し、家畜の導入等による多角経営方式に移行し、耕土改良、
地方培養が先決問題でありまして、その地味に合う作付転換を行うことが必要であることを痛感いたしたのであります。また
開墾川の
機械、ブルドーザー、ダンプカー、トラック等を貸し付けてもらえば、
地元の自力で
開発は容易に推進することができるとの意見を
各地において伺ったのでありますが、
機械公団というようなものを設立し、この
要望にこたえることはきわめて有効な
措置であることを痛感いたしました。
第二に、水
産業関係、おもに
漁港の
整備等について申し述べます。
視察して参りました
港湾及び
湖水のおもなものをあげますと、道南後志
地区では函館、
福島、松前、江差、熊石、久遠、瀬棚、岩内、神惠内、余別、古平、余市港、網走
地区ではサロマ湖、能取湖、網走港等を見て参りました。
北海道の水
産業は漁場の狭小化と戦時戦後を通じての漁獲による
資源の枯渇などの理由から、今日の窮乏を招いているのでありますが、特に道南、後志
地区の漁民の窮乏は著しいものがありました。
漁業
振興対策としては、漁業
生産の増大と漁家経済の安定がはかられねばならないのでありまして、
生産増大のためには遠洋、沖合い漁業の
振興のために漁船、漁具の改良はもとよりのこと、まず
漁港の
整備、浅海増殖等が強力に推進されねばならず、また漁家経済の安定のためには、努めて多角経営を可能ならしめるための諸
対策がなされ、処理加工、保蔵施設の
整備等によって、
水産物価格の安定をはかることに重点が向けられねばならないのであります。
一つには、まず
漁港の新設、
整備等について申しますと、
漁港は現在
北海道海岸線約二千八百キロの周辺にわずか七十港しかなく、それも大半が拡張または改良を切望している実情でありまして、その内容の詳細についてはここでは省略いたしますが、一例としてあげれば後志
地区の泊
漁港のごときは三十年前築堤されたもので、近時の沖合い漁業の急速なる
発展のため、漁船の大型化と数の増加のため、在籍船すら収容できず、荒天の都度、大半が他港に避難する
状態であり、しかも山岳が直ちに接している地勢のため、漁業以外に生計の道もなく、全く同情にたえない実情でありました。窮乏している
零細漁民の救済、保護の立場から、
地方港湾費等の大幅
増額によって、これらの切実なる
要望にこたえることがきわめて肝要なことであることを痛感して参った次第であります。
この際、一言付言いたしますと、
漁港の新設は一部落のためというのではなく、全体の経済圏から慎重に
検討を加える必要があり、また
着工以来長期間を要して
完成した
漁港が、そのとたんに水深、
規模等の問題から、その使用に耐えず、直ちに改良する必要に迫られるといったことのないように十分留意し、経済効率を上げ得る万般の
対策措置をなすことが必要であることを申し述べておきます。
次に、浅海増殖について申しますと、投石、コンクリート礁、岩礁爆破、岩面掻破等により、沿岸魚族、ノリ、コンブ、貝、カキ等の増殖をはかるものでありますが、これはすでに瀬戸内海その他の
地域において好成績をおさめている事実を思いあわせて、格段の創意、
研究により、急速に飛躍的
発展を期したいものでありまして、
湖水利用等による増殖、孵化放流等の
振興と相待って、この
発展、
育成のために国家補助並びに資金融通の面について特別の
措置を払うべく、異常な意欲を感じて参ったのであります。また処理、加工、保蔵施設として、冷蔵庫、製氷
工場等の施設が
整備されることが必要と考えられました。以上の
振興対策と相待って、新式漁法を具備した大型漁船の沿岸沖合いへの侵入を防ぐ方途も、あわせて考慮する必要があると思われました。
なおまた、後志
地区において漁業組合の分裂並びに対立があり、ひいては市町村行政と調和を欠く傾向すら生じておるところがあることを耳にいたしたのでありますが、組合の
整備統合がすみやかになされ、強力な機能を発揮できるよう、
関係者の一そうの努力を期待する次第であります。
また一方貸付の対象を従来の組合のみに限定することなく、市町村にも拡大し、むしろ市町村の責任において適正に調整をはかりたいとの意見も申し述べていたのは、注目すべきことでありました。
第三に、
鉱業、特に
地下資源の
開発等について申し述べますと、
視察をして参った鉱山は、住友余市鉱山、銅、鉛、亜鉛、硫化
鉄等であります。三井砂川鉱山(石炭)及び国力鉱山(鉄、マンガン)等でありまして、また長万部町内に噴出している
天然ガスの利用
状況等を見て参りました。
北海道は積丹半島、十勝川上流トムラウシ地帯を初めといたしまして、
各所において
各種の鉱産に富み、たとえば石炭は
全国対比四八%を産し、水銀、石綿のごとく
北海道のみのものもあって、金、銀、銅その他
地下資源はきわめて豊富であるにかかわらず、実情は
地下資源調査の立ちおくれのため、また一方鉱山の多くが山間僻地にあり、加えて積雪、寒冷の悪条件のもとに、
鉱山道路、輸送力の不備のために、
鉱業の
開発、
振興をはばんでおり、眠れる宝庫は依然としてそのまま放置されていることは、きわめて遺憾なことであります。従って、
鉱業の
振興、
開発は、
地下資源の基本的
調査が徹底的になされることが、要諦でありまして、あわせて
立地条件の改善のために
鉄道、鉱山、
道路等の
建設が
促進されなければならないところであります。これらの具体的な
対策として考えられることは、
政府投資によるボーリング会社というようなものを設立して、個人等が私有している鉱区を積極的に
開発する方法を真剣に考慮すべき必要を痛感いたした次第であります。
なお採鉱または
天然ガス等の採掘に伴い、
地元にそれらの関連
産業等があまり
発展していないのは遺憾な点でありまして、その点に関して格段の
研究努力が必要であると思われたのであります。
以上で、
産業振興として
農業、水
産業及び鉱
工業等に
関係することを申し述べたのでありますが、総合
開発を推進するに当っては、試験所、測候所等の試験、
研究機関の
整備、陣容の充実をはかることが必須要件であることを申し述べておきます。
第四に、
交通施設について申し述べます。
交通網の
整備は
産業活動における動脈であり、施設の
整備は
開発に先行してなされなければならないものでありますが、
北海道における
道路、
鉄道、
港湾、その他の交通諸施設は、遺憾ながら今日なお
相当立ちおくれの
状態にあるものと言わざるを得ないのであります。
まず
道路について申し述べますと、いずれの
各地においても
道路の新設、補修、改良に対する切実なる
要望を伺って参ったのでありますが、以下そのおもなるものを申し上げますと、古部―椴法華間の海岸
道路、知内―
福島―松前間海岸通路、久遠―太櫓間海岸
道路、瀬棚―持田岬間海岸
道路、長万部―島牧間、磯谷―岩内問海岸
道路、積丹半島迂回海岸
道路(神恵内―余別)、積丹半島横断
道路(神恵内―古平)、上砂川―西芦別問(
鉱山道路)、幾春別―芦別間、層雲峡―武華間、滝上―朝日間、端野―仁頃―若佐間、斜里―ウトロ間、糠平―然別湖間(林道)、足寄―オンネトー湖―雌阿寒温泉間(林道)、糠平―三段―層雲峡間(林道)、足寄、芽登坂(急坂勾配引き下げ)改良等がありました。
近時の自動車輸送量の増大に対処して、
幹線道路の舗装等も必要なことではありますが、特に橋梁につきましては、
各地において
要望のあったごとく、可及的すみやかに永久橋に切りかえていくことが、きわめて有効な
措置であることを確信いたしました。
北海道の海岸線環状
道路の
完成は、経済文化の面からきわめて重視されているところでありまして、特に
開発が進んでいない道南、後志
地区の海岸線
道路は、隧道を設けるなど難
工事を予想される個所もあるのでありますが、一刻も早く陸の孤島を救出する意味においても、人道的見地に立脚して強力に推進すべきものであると思われたのであります。また
鉱山道路について一言いたしますと、
鉱山道路の新設、
整備は、
開発、開拓
道路に比してきわめておくれていることは遺憾な点でありまして、積極的な
措置がとられるよう特に切望してやまないところであります。
次に、
鉄道の新線敷設のおもなものをあげますと、五稜郭―戸井問、松前―原口―瀬棚間、後志西海岸
鉄道(黒松内―岩内)、定山渓―豊浦間、深川―付近―芦別間、美深―北見枝幸間、上川―十勝二段間、旭川―石狩沼田間、朱鞠内―羽幌間、斜里―標津間、北見相生―釧路間、雄武―北見枝幸観、足寄―白糖間、新得―千歳間、清水―日高―辺富内間等でありまして、路床に軌条を敷設するのみとなっており、
完成にはさほど費用を要しないものもあることを申し述べておきます。
この際、青函トンネルについて申しますと、すでに
予定線として取り上げられている書函トンネルの開通実現は、本州との交流は言うに及ばず、
北海道の
資源開発、
産業振興のために寄与するところが非常に大きいものがあると思われるので、早期実現を期したいものであります。
なお檜山
地区の
各所において、交通機関確保のため、国鉄バスの運行を切望する声がきわめて大きかったことを申し添えておきます。
次に、
港湾の問題がありますがすでに
漁港の
整備の問題として大略述べましたので、ここでは簡略に補足する程度にとどめます。
避難港として
整備を望むものとしては、岩内、松前、江差、日司、川白、八雲、ウトロ港等多くあったのであります。また
航路の安全航行に必要な燈台の新設を望むものとして帆起岬、知床岬、石崎港かあり、岩内港、日司港、寿都港、広尾港等は、その
改修整備を望み、また岩内港は警備救難署
設置を望んでおりました。
なお、この際付言いたしますが、たとえば江差港のごとく坤頭、築堤
工事がおくれているため、マンガン等の
地下資源、あるいは山村
資源等の滞貨が山をなしている
状態や、また瀬棚港も同じく設備未
完成のため、農
水産物中、特に種バレイショを内地輸送するに当ってやむなく陸路輸送するのでありますが、季節的に配車の不円滑等から三割余の凍結を生じ、莫大な損失をこうむっている実情や、さらに檜山、後志その他の
地区において
荷役、積荷等の設備がないため、ブナ材等は浜辺にさらしたまま放置されておる
状態で、沖合いで船に積載するまでのロスは、約二割以上に及ぶといわれている
状況を
各所において見て参りましたが、この面の施設の
整備もゆるがせにできない問題であります。また、積丹半島の一部にも見られる
通り、まだ
道路も通じていない全く文字
通りの陸の孤島、その他僻地、離島を結ぶ重要交通機関である離島僻地
航路就航船に対する補助その他の
特別措置も忘れてはならないものであることを申し添えておきます。
その他道内航空路の
整備のため、空港の新設を
要望するものとして函館、旭川、帯広等があり、女満別のごとき、その拡充を望んでおりました以上、交通について申し述べましたが、
交通施設の
整備により、経済、文化の交流が容易となり、
産業の飛躍的
発展が予想されるところでありまして、これらの
早期完成を切に待望するものであります。
第五に、大学の新設、昇格、拡充等の問題について申し述べますと、函館、旭川、網走、帯広等の
各地において新しい大学
設置の強い
要望を伺ったのであります。
北海道の広大なる
地域の特異性等によって、この問題は内地におけるこの種の大学の問題と同一に論ずべきではなく、それらの
要望の趣意は十分了解できるのでありますが、いたずらに総合大学などという名に拘泥することなく、各
地方独特の特色を十分盛り込み、実業にマッチしたものを作り上げ、
開発の衝に当る人材の素質の向上に意を注ぐことが望ましいものと思われました。
以上、事項別に申し述べましたが、この際気づいた点を二、三申しますと、たとえば観光地唐突峡下流付近に、風倒木が放置されたままになっており、また
工場等の汚水が化学的処置をなされずに放水され、いずれも与える影響について
十分検討を加えられずに多年放置されたままになっており、
ダム工事の
完成とともに、
地元民との間に種々のあつれきを惹起している等の問題を見聞したのでありますが、これらの解決には、事前事後の時宜に適した
対策処理に当って、
関係者の格別なる熱意と努力によって、すみやかに適切なる
措置がなされることを特に期待するところであります。
最後に、
北海道総合
開発をより一そう強力かつ効果的に推進するためには、まず第一に
北海道開発関係費の大幅
増額により、これまで未解決の基本的問題を解決し、なかんずく
零細漁民及び
入植者の救済保護を優先的に取り上げることがきわめて肝要なことであります。他面、
北海道の
後進性その他の特異性から、免税
措置等も考慮されるべき点であると考えられるのであります。第二としては、
北海道開発公庫その他
政府関係金融機関の資本金の
増額により、長期にしてかつ低利の投
融資を確保し、さらに貸付の対象を
地方自治体にまで拡大する
措置をとることが必要であると考えられたのであります。
以上をもって
北海道の
調査について概略御
報告申し上げたのでありますが、酷暑の間、八日間にわたり、約千七百キロ余の行程を早期より夜おそくまで
調査をいたしましたのに対し、
関係各機関が非常に協力していただいたことを深く御礼を申し述べるものでございます。また今日の
調査報告に触れなかった多くの
地区の
状況についても、できるだけその
要望に沿うよう努力し、日程の都合で今回
視察できなかった
地方につきましては、次の
機会において
調査に参ることにいたしたいと思います。
最後に、
調査の結果得た結論等につきましては、これは早期実現できますよう
政府当局、特に本日御列席の
農林省、
建設省、通産省、文部省、
北海道開発庁等の
関係各機関の御協力を
要望して、
報告を終る次第であります。