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1956-09-22 第24回国会 衆議院 国土総合開発特別委員会 第24号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年九月二十二日(土曜日)     午前十一時二十三分開議  出席委員    委員長代理 理事 川村善八郎君    理事 篠田 弘作君 理事 薄田 美朝君    理事 竹谷源太郎君 理事 渡辺 惣蔵君       伊藤 郷一君    植木庚子郎君       林  唯義君    本名  武君       北山 愛郎君    小平  忠君       永井勝次郎君    三宅 正一君       岡田 春夫君  委員外出席者         総理府事務官         (北海道開発庁         次長)     田上 辰雄君         農林事務官         (農林経済局         長)      渡部 伍良君         農林事務官         (農林経済局農         政課長)    保坂 信男君         農林事務官   落合 豊二君         農 林 技 官         (振興局農産課         長)      岩永 達夫君         通商産業事務官         (石炭局長)  讃岐 喜八君     ————————————— 六月二日  北海道開発庁設置法案内閣提出第一六八号)  北海道開発庁設置法施行法案内閣提出第一七  二号)  北海道に在勤する者に支給される石炭手当等に  対する所得税の特例に関する法律案横路節雄  君外九名提出衆法第五四号)  国土総合開発に関する件 の閉会中審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国土総合開発に関する件     —————————————
  2. 川村善八郎

    ○川村(善)委員長代理 これより会議を開きます。  廣川委員長は病気のため本日出席されませんので、私が委員長の職務をとり行います。さよう御了承願います。  それでは、国土総合開発に関する件について議事を進めます。説明員といたしまして、農林経済局長渡部伍良君、農政課長保坂信男君、作物統計課事務官落合豊二君、農産課長岩永達夫君の四名が出席されております。発言の通告がありますので、この際順次これを許します。永井勝次郎君。
  3. 永井勝次郎

    永井委員 私は農林省当局に対して、北海道凶作実情と、これに対処するいろいろな措置について、当局考えておる事柄をお尋ねいたしたいと思います。大信に出席を求めてあったのでありますが、大臣がお見えになりません。従って出席されておる方々は、農林省のそれぞれの所管を代表しての答弁と了承しまして、責任のある御答弁をお伺いしたいと思います。  まず第一に、いろいろお尋ねいたしたいことがあるわけでありますが、それの話を進めていく能率的な運び方として、北海道のことしの凶作に対して農林省はどのような実情把握されておるか、現地実情当局把握されておる情報というものの間に非常な開きがあったり、また、私がこれから質問しようとする前提条件と非常な食い違いがありますと、まずその基礎的条件を整備してから質問に入らないといけないと思うので、質問に先だちまして、農林当局が入手しております北海道の本年度作柄について、具体的な状況一つ御説明願いたいと思います。
  4. 渡部伍良

    渡部説明員 本年度北海道農作状況につきまして、かねてから冷害ぎみであって、収穫が相当減るという見込みであるという報告を受けておりますが、私の方といたしましては、統計調査部を通じて半月ごとの時点で報告をとっておるのであります。九月十五日現在の報告はただいま集計中でありますので、最近の状況は正式のレポートとしては受けておりませんが、九月一日現在の調査に比較しましては相当ひどい、こういうような報告を受けております。九月一日現在の報告によりますと、七月の日照時間は北海道東北部においては、測候所開設以来少いという記録を示しておるのでございます。従って七月から八月にかけまして、名句の平均気温は平年に比較しまして二度ないし四度低く、日照時間は各旬二十時間ないし四十時間少い。そのために、各種農作物生育が非常に悪い。特に水稲等につきましては、道南中央部は平年に比較しまして十日から十二日、東北部は十二日から十五日穂が出るのがおくれておりまして、かつ穂が出るのがふぞろいであります。実り方も非常によくないという報告を受けております。その後だんだん調べておりますが、回復したような報告はない。私どもの方で随時統計調査部及び北海道庁から様子を承わっておりますと、なかなか容易ならぬ状態であるということでありますので、私の方では統計調査部を督励しまして、北海道庁とよく連絡をした上で、農作物生育状況調査を督励しているのが現状であります。先ほど申し上げましたように、十五日現在の調査、十月一日現在の調査を順次やっていって、どのくらいとれるかということを確定していくことになっております。現在農林省把握している実情は以上の通りでございます。
  5. 永井勝次郎

    永井委員 ただいまの御答弁によりますと、現状の形において正確にまだ把握されておらない。抽象的には非常に凶作だ、異常な天候のもとにおいて作柄が悪い、そういう概括的なことはわかるわけです。またその作柄の確定については、まだ気候的にいっても成育の過程にある。決定した段階ではない。しかし、もう九月も末であって、北海道でありますと、地帯によってはもう霜が降る。これからは霜が降って、全部の作況が終ったという段階ではないにいたしましても、大体の見通しは現在現地においてはつけられる状況であります。そういたしますと、本年の凶作対策については、当局においては、抽象的ではあるが、非常な凶作だというそのレポートに基いて、今後凶作対策をどのような手続と、どのような時間的な配置によってこれを取りまとめて、凶作に対する応急措置はどういうふうに考えて、プログラムを予定しておるのか、あるいは恒久対策はどういうふうな手続、方法によって樹立しよう、確定しよう、こういうような考えであるのか、それらの、この北海道の異常な凶作に対する対策の樹立の内容及びその時間的な配置等について、その予定を二つ明確にしていただきたいと思います。
  6. 渡部伍良

    渡部説明員 先ほど申し上げましたように、冷害の様相がひどくなりそうだということは、統計調査部、あるいは道庁等情報でわかっております。特に、先週でありますか、先々週、北海道知事が見えまして、いよいよ冷害間違いなし、だから対策考えてくれ、こういう申し出もありました。私の方としては、もうすでに作物の係の係官を派遣して実情調査もいたしておりますし、また北海道に対しましては、営農資金とかあるいは来年の種の確保、そういう従来の冷害対策は二十八年、二十九年と講じてきておるのでありますから、道として各町村別にどういうことをしなければいけないかということ、実際に即して準備をしておいてもらいたいということを、知事に私、直接会ってお願いしておきました。さらに、北海道お話のように冬の期間が非常に長いのでありまして、ほとんど一年一作で、半年は、特殊の地域を除いては、働く場がないのであります。特殊な対策考えなければいけないのである。それらも、特に私、北海道知事に会ってお願いしておいたのは、全国的にこういう災害が起ったのであれば、また全国的な考え方がありますが、今年は幸か不幸か、北海道がほとんど冷害をこうむり、内地でも、高冷地では北海道と同じように、たとえば信州の山の奥、福島、そういうところでは、ちょうど同じような状態になっております。しかし、これは山の中で、特殊的な問題で、あまり問題になっておりませんが、北海道としてに、ほとんど全道がそういう状態になっているのであるから、道としてたとえば先般農林委員会北海道の方から何かお話が出ましたけれども、いわゆる救農土木というようなことをやって、日銭を落さなければならないということになる。しかし、先ほど申し上げましたように、冬がすぐくるので、従来のように、全国状況がまとまってからやっていくというのでは、北海道としては間に合わないであろうから、大体のところで見当をつけて、どこの村でどういう仕事があるということが、図面ですぐわかるように準備されておいた方かいいのではないか。私の方としてきめるのは、一応統計調査部の判定待って、米何ぼの減収、豆何割減収ということによって、営農資金とかいろいろ算定されるけれども、その前に、そういう準備ができておらない、また農林省統計の数字がきまらない前でも、道としては独自の応急対策を講ずる必要があるのではないか、こういうことを申しておるのであります。私どもの方では、そういうつもりで道と連絡して準備をいたしておるのであります。
  7. 永井勝次郎

    永井委員 私、伺いたいのは、具体的に統計事務所から作況統計提出される、それに基いて、こういうひどい状況であるというところで、農林省現地に乗り込んでいって、さらにその実情はどうかということを調べて、それから対策を立てるという運びになるのか、あるいは大よその状況から見て、深刻な作況である——もちろん統計事務所からの統計提出もできるだけ早く取りまとめていく。道の関係のそういう調査報告提出も求める。しかし、それと並行して、その提出がなされたら、直ちにそれに対処できるような本省の受け入れ態勢準備するために、直ちに責任ある者を現地に乗り込ませて、そうしてその直接の責任において現状把握をする、あるいはこれは行政府とは別であるが、農林委員会が先般国政調査に参りまして、ある程度状況把握されておるけれども、さらに必要ならば、議会からの何も要請する、あらゆる中央からの現地への働きかけと、現地における調査の取り運びと、そこでマッチしたら、直ちに次の手が打てるというような態勢を整備するための用意があるのかどうか。そうでなくて、現地からの報告を待って動こうという、受けて立つという態勢でいすに腰かけて、そういううわさだなと、うわさを聞きながら待っておるのか、乗り出していって、それを把握して、よしということで態勢を整えようとしているのか、その心組みなり、あるいはそういう考え方一つ伺いたい。時間的に、これは統計事務所統計を待って共済金支払いをするということでは、来年にならなければできないのですから、そういう情勢に対処する農林省としての本年度凶作に対する態度を伺いたいのです。
  8. 渡部伍良

    渡部説明員 お話通りでありまして、いずれにしましても、実際に仕事をするのは道が主でありますから、私の方では、最後的に、あるいは営農資金を何割なら何割出すということは、統計調査仕事を待たなければきまりませんが、そのうちの半分なら半分、六割なら六割は、先に出したらいいのでありますから、そういうことができるような準備をしておいてくれ、それから、たとえば救農土木にしましても、北海道庁の方で、これは町村別にどういう仕事をやるかということは、調べればすぐできるわけでありまして、こことこことをこうやるのだから、これだけ金が要るということで、早く金が出れば、それだけ準備が早くできるのですから、大体の推定で、いわば最後の精算はあとでやるけれども応急のところから順次手のつけられるような準備をしてほしいということを、道知事にお願いしているのであります。なお、お話のように、最後予算的あるいは数字的の決定はいずれにしましても、統計調査部報告を待たなければならないと思います。それを待っておりますれば、おそくなるから、応急的に、暫定措置といいますか、そういうことをどうしても講じなければいけないと思います。そこで農林省からも、北海道側の要望もありまして、来週、農林経済局災害担当局になっておりますので、私が振興局関係課長、あるいは農地局課長その他を帯同して、大体一週間ぐらいの予定現地調査に行って、対策考えたい、こういうふうに考えております。
  9. 永井勝次郎

    永井委員 局長みずから乗り込んで、手早く現状把握してその被害実情に対応する対策を樹立するという、こういう誠意に対しましては、了承いたしました。しかし今局長が申しておるように、来年の営農資金をどうするとか、こうするとか、大体凶作対策については前例もあることであるからというような、従来の凶作一つのモデルにして、そういうワク内で問題を処理しようというような、こういう先入観念がある。その先入観念のあることが、私は間違いだと思う。問題は、一つの答えを待たないで、没価値的に現状把握する、そうしてその現状把握したら、その現状把握に対応したる対策を立てよう、こういうものの考え方運び方態度というものは、そうでなければならぬ。私は八月の二十四日から五日間ジープで、これは地域的ですが、一番被害の甚大だといわれる網走支庁管内を全部回りました。このときは非常に雨が降っている最中で、大体豊作と期待された夏作が、麦もエンドウも雨が降ってだめだし、イモも腐り出した、こういった状態で、夏作はほとんど全滅状態、秋作はもちろん、米は一粒もとれない、あるいは大小豆、その他も全然見込みが立たない、こういう現状で、これは大へんだ。従来の凶作とは質も違うし、量も違う。質、量がてんで比較にならぬ。これは強い言葉で言えば——強い言葉でなくても、抽象的に言いましても、この被害というものは、網走支庁管内に関する限り、開道以来のものである。ことに天候状態からいいましても、六月の初めから八月の末まで、三ヵ月間、快晴の日がほとんど数えるほどしかない、こういうような異常な天候でありますから、この異常な天候の中で異常な凶作が結果されるということは、これは当りまえなことであります。そういうふうな現状把握しまして上京いたしまして、私は農林省その他に回って、そのことを言うと、ちょうど九月一日の作況報告する前ですから、もう農林省では全国豊作でにこにこしておる。北海道も、まあことしは若干の減収はあるけれども、いいだろう。私は、とんでもない状況だと言うと、にやにや笑う。また年中行事の、秋になったら凶作対策として出てきて、そうして農林省をごまかしたり、あるいは圧力をかけて何とかうまいことをやろうというような心組みが、もう北海道には動いているのではないかというような、こういうにやにやとした顔をする。ですから、私はそのにやにやは何だというわけで、けんかして回った。それほど当時八月の末及び九月の初めには、まだその程度認識より農林省にはなかった。その後よほどその認識が改められ、あるいは現状に対するレポートその他で改められたにしても、今の局長答弁からいたしましても、営農資金とか何とかは、すでに来年の話ではない、今この寒空を控えて、どうやって食っていこうかという問題が現地では起っている。だから、問題のつかみ方が大へん生ぬるい、あるいは現状を正確に把握していないのではないか、こういう心配があるわけです。ですから、局長がこれから乗り込んでいってやるということについては、非常に賛成です。本年の凶作というものは、地帯別でもだいぶ違います。オホーツク沿岸は全く開道以来の大凶作でありまして、一粒もとれないというような強い表現で言っても過言ではない、こういうふうに考えている。従ってこの開道以来の凶作対策というものは、従来の例にない、そのワクをはずした異常な対策がなければ、現状に対処するゆえんではない、合理的な一つの解決の道ではない、こう考えている。ことに、ことしは全国的には大豊作である。二百十日も二百二十日も無事に過ぎまして、あとは実りの秋を待つというような喜びが全国的だ、従って、災害対策あるいは凶作対策というもの、減収対策というようなものは、農政に関する限り、あるいは現在建設省関係でも、そういうものの対策がない。部分的な凶作だ、全国的な豊作であるから、負担力からいきましても、何ぼでもある。ですから、そういう方面の予算なり何なりを、手早くしぼるならしぼる、ように、追加するなら追加するように、現状に対処する。そういう措置を手早く進めていかなければならない段階にもうきているのではないか。でありますから、われわれのように現地に立って、なまなましい非常に深刻な被害の惨状の中から当局を見ていますと、今の答弁は、ことしの北海道凶作を質疑応答している環境ではない。私は、非常にのんびりしていて、どこの国の経済局長かなというほどに感ずるわけであります。でありますから、今度の凶作に対しましては、まず心の持ち方を改めてもらいたい。また現地においては、地帯別にはやはりとれてるところもあり、非常な地域差ががある。また同じ地域においても、この凶作があっても、これを乗り切るだけの力を持っている農家もある。そういういいものをちゃんと整備して、そうして、ほんとうに食えない者は食えない者としてやる。来年の営農資金を貸せばやれる者、貸さなくてもやれる者、こういう従来のような、凶作だという一般的な包括的なものの考え方でなしに、そういうものを組み立てて、やはりことしの凶作対策というものには対処しなければならない、私はこう原則的に考えておるわけでありますが、この原則的な考えに対する局長の御所見を伺いたい。
  10. 渡部伍良

    渡部説明員 お話のように、農林省としましては、先般米の収獲量を発表したときには一割程度減収で、しかし、その中には、お話のように、北見地区なら北見地区、これはほとんど収穫がないというのが出ておる。道全体としてのものとしては、そういうことであったのであります。従って、その後の推移を先刻申し上げましたように、注視しておったのでありますが、回復のきざしはなくて、だんだんひどくなっていっておるのであります。それに北海道地域的な特殊性として、内地と違って、秋になって回復する見込みがないということは、大体私の方でもあきらめてきておるのであります。先般農林委員会から調査に行った報告等もまだ承わっておりませんが、道からは、もう農林委員会調査に随行しての状況、あるいは道知事が直接管内を回られた状況も刻々入っております。そこで、これは容易ならぬことであるというので、さらに現地調査に行こうというのであります。この現地調査は、お話通り、先ほど私も申し上げましたように、道が主にならなければならないのでありますから、私、参りまして、道庁側と、永井委員お話がありましたような作業内容をそこで打ち合せてその何割か、帰ったらすぐ手が打てるような準備をしたい、こういう心組みで参りたいと思います。先ほど来申し上げましたように、とにかく町村別にどういうことをやらなければいかぬかということがはっきりしなければ、農林省の方で抽象的にどういう対策考えろと言われても、これは困るのであります。やっぱり現地でどういう仕事をやるかということをはっきり確立する必要がある、こういうふうに考えます。
  11. 永井勝次郎

    永井委員 現地でどういう作業をやるかということを用意して現地に乗り込みたい、その方が仕事運びがスピーディーにいくだろう、こういう考えであるならば、私はもし参考になるならば申し上げて、またこういう質疑をすることが、乗り込んでいく局長作業を助けることになると思いますから、申し上げたいと思いますが、私はことしの凶作というものは、地域的には開道以来かってない災害である、従って異常の措置が講じられなければならない。来年の営農資金なんということは第二の問題で、第一に当面している現地の窮状というものは、これから食う問題をどうするかということで、それがまず第一の問題です。これはやはりさしあたっては、いろいろ地域的に仕事を配分して、働いて食っていけるような態勢をすみやかに整備するということ、整備するためには、地域的には秋の収穫が何もないという地帯があるわけですから、時間的にも、これはもう少くも十月中にこれらの作業現地で実施される段階に入らなければ、十一月になると、もうところによっては土が凍り出す。越冬のためのいろんな用意がなされないということになるから、少くも十月の中旬ころまでには、そういうことが着手の運びに至るだけのスピーディな運びをしなければ間に合わない。まず第一に食う問題、第二の問題は、私はやはりたとえば共済金が下る、あるいはこれから働いていくにいたしましても、税金の問題であるとか、古い借金の問題であるとか、こういう救済の処理をどうするかということが第二の問題だと思います。北海道は四百何十億の借金を持っておる。そして系統機関だけでも、少くも農家一戸二十四万円の借金をしょっておる。かりに八分の金利といたしましても、これだけの借金と、これだけの金利支払いながら、累年の凶作を受けた中で、この正当な償還をしながら今後の営農を合理的に経営していくという条件は、私は罹災農家の大部分というものは持っていないと思う。もし予算がなくてそういうことができないというならば、これは借金のたな上げになる、あるいは何年据え置き——三年か五年の据え置きにして、あるいは十年賦というような、健康な形で働いて償却できるような条件を与えなければ、再起はできないという、それほど深刻な災害現状である、私はこういうことが言えると思う。でありますから、もし局長現地に乗り込むとするならば、救済のたな上げにはどれだけの資金とどれだけの用意、それから現地においてどういうふうに処理するかというぐらいな用意は持ってお乗り込みになった方がよろしかろう、そういうことを持たないで、そして、まあ貸した金だから返してくれ、新しく金を貸すから、古い借金を借りかえる、そんなのんきな話を持って現地へ行けば、向うずねをかっぱらわれて、足ぐらい折られるというほどの——おどかすわけではないですが、それほど深刻な現状であるということで、一つそのくらいの用意は持ってお乗り込みになったらよろしかろう。第三は、来年の営農資金です。これは種子の問題、当面している取り急ぐ問題は、食うことと来年の種を用意すること、米だけではありません、畑作関係の問題もあるわけですが、当面応急措置としては、食うことと古い借金のたな上げ、それから来年の営農資金、この問題にしぼられる。これを実施するための具体的な内容というものは、いろいろ地域的にも異なりますし、いろいろあると思いますが、この三つの問題はぜひやらなければ、今日の凶作実情に沿うものではないと考えます。これに対して局長はどういうふうにお考えになるか。
  12. 渡部伍良

    渡部説明員 だんだんの御注意、私ども考えておるところであります。(「足を折られるのも考えているか」と呼ぶ者あり)足も折られぬようにいたしたいと思います。それでも、やはり現地実情ももう心し——従来二十八年以来の災害のいろいろな、今お話があったような措置を講じておりますが、一部分から回りしている部面がありまして、金を出したのが、ほんとうに必要なところへ流れていないで、ルーズに使われた、こういうふうな例もありますので、そういう点も十分道とよく打ち合せをして、効果のあるようにいたしたいと思います。(永井委員食糧の問題は」と呼ぶ)食糧の問題は、  二つに分れると思うのであります。食糧を買う日銭がほしいという問題と、現物を用意する、この問題があります。これらも当然処置しなければいかぬ問題と考えております。
  13. 永井勝次郎

    永井委員 借金のたな上げはできないというようなことを現地で言われないように、一つ腹を据えて行ってもらいたい。これは石炭関係なんか、終戦後いろいろ貸したやつは、現在相当多額のものをたな上げしているのです。それから三年ほど前に会社更生法という法律ができたことを局長は知っているでしょう。営利会社が営業を失敗して借金ができた、その借金を払えば、この会社がつぶれるというので、借金をたな上げして会社を更生さして、会社が更生して支払い能力ができてから、ちびちび返していこう、こういうようなことを法律的に認めてやっておる。最近の例では、日平産業なんかは実に四億五千万円という下請に対する債務を——零細な企業が労働賃金で働いて納品してきたものに対して、四億五千万円を公然とたな上げできるような法律をほかの方ではやっておって、農家がまじめに働いて天災で凶作を受けて、そうして借金が累積した、その借金のたな上げができないなんて、こういう不合理なやり方を当然のことのように、農民は弱いからというようなだまし方で、あるいは弱い者いじめの考え方で、現地で口の先でごまかすという、そういう心組みでなくて、ほんとうに食っていけない貧農の苦しい生活の悩みに触れて、そうしてこれをどういうふうに解決したらいいかという気持で一つ乗り込んでいただきたいと思います。  それからこれは応急措置なのですが、この機会に私がお尋ねしておかなくちやならないのは、毎年々々凶作があれば救済救済だ、こういう消極的な農政では、私はこれはもういつまでいっても、明るい前進への一歩は踏み出せないと思う。だから、この連年の凶作によって北海道農政の当面しているいろいろな弱点というものを科学的に明確に分析して、ここの部分はこういうふうにしようということを打ち出さなければならない農政の転換の段階である。また北海道農政を通じて、河野農政という、こういうむちやくちゃな農政を正常な軌道に乗せてやるという——技術陣を持っている事務当局が、はっきりとしたデータを出して、このしろうと考えでめくらめっぽうに力で押し切ろうとしている農政を転換するいいチャンスだと思う。だから、しっかりした考えで、一つ科学的な裏づけのある農政の転換を用意する必要があろう、こう思うわけです。  そこで、第一に私、北海道の農作の特性を見ますと、戦前は凶作といえば、水稲の凶作であったわけです。ところが、戦後は畑作までも凶作被害を受けてきている。これはどういうわけであろうかと考えますと、戦前は凶作といえば水稲にきまっていたようなんですが、これが品種の改良も進み、耕種肥培の技術も進み、技術的にいろいろなものが向上して、耐冷性の品種もでき、また北海道における水稲耕作というものの技術が進んで、割合に冷害に適応する耕作が進んで参りましたから、水稲の方は戦前よりも割合に被害を減少しているということが言えると思う。ところが、畑の方は水稲に比べて技術がそれほど進んでいないということが、畑作の被害が多くなりつつある一つの原因ではあるが、もう一つは、戦前戦後を通じてのこの誤まった農政の累積の結果として、非常に地方が減耗している。地方の減耗の結果として、畑の凶作が拡大されつつある、こういうことだと思う。でありますから、この凶作を根本的に芟除しますためには、積極的な形でこの凶作を解決するという考え方に立ちますならば、この根本問題は、何としても地方の増進ということが基礎になってこなければならないと考えるわけであります。今そういうことを明確にする段階にきていると思うのですが、局長はどういうふうにお考えになるか。
  14. 渡部伍良

    渡部説明員 お話ごもっともの点がだいぶあると思いますが、(「もっともでないところもあるのか」と呼ぶ者あり)もっともでないところもあります。断定的に……(具体的に示せばどういうところがもっともでないのかしと呼ぶ者あり)たとえば地方の問題をおっしゃいますけれども、おそらくデンマークの農業を見ましても、堆肥その他反当千貫入れておるわけです。北海道は家畜が戦争前から一時減って、九万頭です。たとえばデンマークでも北ドイツでも、北海道よりも気象条件その他が悪いところで農業をやっている。それには、実をとる作物でなくて、根をとる作物をもっと入れなければいけないのじゃないかということを、この二、三年末非常に認識されてきたのです。今までそれをやかましく言ってもいかなかったのです。そこでお話のように、これを機会に北海道の、内地と違った新しい農業を確立しなければいかぬのじゃないか。これは農林省責任があるのですけれども北海道現地責任があると思うのでありますが、やっとわかってきたのじゃないか。たとえばビートの品種の改良にしても、あるいは火山灰地の深土耕の問題にしても、これは戦争後の問題であります。ですから、だんだんよくなってきておりますが、ここ数年間冷害が連続して、実とりの作物は簡単に品種改良といわれても、たとえば豆なら豆で、北海道だけでできている亜の品種改良の問題は、なかなかむずかしい問題があります。それらの問題をこの際全面的に押し出して、北海道現地においても、たとえば乳牛の問題でも、これは畜産局長のときに非常に悩んだのですが、とにかくほかの地方はこれだけ乳牛がふえているのに、なぜ北海道だけ戦争前からふえないのか、その理由はどうだと北海道庁を追及しても、こうであって理由はわからない、そういうことでは……。(「その理由は説明してあげます」と呼ぶ者あり)それはいろいろありますけれども、わかっておっても、言えないというところがあるわけであります。そういう点をこの際改めるいいチャンスじゃないかと思って、私自身はそう考えております。農林省内でも、声を大きくしてそういうことを言っております。それには、やはり北海道の農業が内地と違うのであれば、内地の技術だけじゃなしに、こういう寒冷地で農業を成功しているイギリスではスコットランド、北ドイツ、デンマークあるいはニュージーランド、いろいろ例があるわけでありますから、そういう例ももう少し真剣になって取り上げることも必要である。それから今まできまっているものは、強力に推し進めていくことが必要じゃないか。率直に申しまして、まだ全部の条件が規定されないし、全部のやることが場に乗っていないのが現状であります。農政の問題につきましても、今後努力したいと思います。
  15. 永井勝次郎

    永井委員 局長の話は、農業経営の合理化は、とれるものを作ることにあるのだ、これはその限りにおいて正しいと思う。ただし、これが経済的な問題を無視して、とれるものを作ればそれが合理化だ、こういう、かすみを食っていけというようなことを言うなら、それでいいですよ。しかし、農家が経済的に自立するという条件に立つならば、そんなばかな農政に従う農家は一人もありません。ここに本名君もおりますが、先般農林委員の方がずっと視察に参りました。そして北見の方をずっと回った。北見は米はことしは一粒もとれないのです。そういうところを見て、二十八年の凶作、二十九年の凶作、今年の凶作、満足にとれたのは去年一年、四年に一度よりとれない米を、なぜ北限の地帯で作らなければならないのだ、道の農政指導は一体どうしておるのだ、こういう話があった。ところが農事試験場や道庁でも、いや米はなるべく作らないで、安全作物を作るようにと指導しているのだけれども、なかなか農家がそれに従わないのだ、それから米に対する日本人の愛着から、米に膠着しておるのだ、こういうような説明でありますが、こういう夢のような説明では、農林委員の専門の連中は了承することができない。どうもそういう説明ではわからない。そこで私は本名君やみなに、こういうことなんだということを説明した。米を作っても、ことしは北見の方面は米は一粒もとれません。一粒もとれなくても、一反当り七千円前後の共済金があります。それからわらの収入が一反当り千円から千五百円、そうすると、一粒もとれなくても、米を作れば、反収八千五百円から九千円のものが確保されている。ところが、畑の場合どうかといえば、一反に豆四俵とる——四俵とるということは、豊作の方なのです。ところが、一俵二千五百円の価格であるならば、豆を作って豊作で四俵とって、反収一万円よりないのです。とれなかったら、補償もなければ、何もない。米の場合は、一粒もとれなくても、小一万の収入というものは保障されている。とれた年は八俵から九俵、ある年は十俵、これでは何ぼ安全作物を作れといっても、そろばんをはじいたならば、ばかでも米を作りますよ。豆を作るばかはない。こういう経済的な条件を整理しないで、そういう解決をしないで、農産物の価格の安定とかなんとかいうことをしないで、政策的に米麦中心の農政をやって、畑作のことは全然考えないで、とれる作物とかいっても、品物はとれるかもしれないけれども、経済的に保障されない。しかも農業経営の合理化だ、こういうことを抽象的に言いますが、農業経営の合理化ということは何かといえば、耕種、肥培管理をよくして、あるいは地方を増進して、たくさん生産するということが、合理化の対象でなければならぬ。ところが、そういう方法で増産したら、豆の値段がどんと下って、豊作貧乏で、畑の方はそろばんに合わない。そういうばかな農政をやっていて、今の経済局長の言うように、とれるものを作れと、どんなに奨励しても、そろばんを置いたら、そんなばかなことを農家はするものじゃありません。でありますから、この機会に米麦中心のへんぱな農政というもの、政策的に国民の食糧を確保するということだけの目的を持ったゆがめた農政から、水田も畑作も含めた適地適作ということが経済的にも可能である、そしてそれを作ることによって増産ができていく、こういう農政に転換する一番いい機会だと私は思う。経済局長は、北海道の牛がそうふえない、こう言うのですが、北海道の牛の歴史的な過程をずっと見ると、牛の頭数が減ってくる。減ったら補助金を出して、牛をどんどんふやしていく。牛がだんだんふえてきますと、牛乳の生産がたくさんできてくる。それが一つの限界以上の増産になると、今度は乳価がどんと下ってくる。乳価が下ってくれば、牛が減ってくる。そうしてまた補助金を出して十をふやす。牛乳を増産すると、乳価がまた下ってくる。そういうことの繰り返しをやっている。乳価と牛の頭数の増減をグラフにとってみれば、ずっと曲線を描いて、はっきりとわかる。北海道では、乳価と牛の増減は常に正比例して動いている。経済的な裏づけをちゃんと合理的に保障しないで、ただ牛を奨励したって、問題の解決にはならぬと私は考えるわけです。それでわからなければ、経済局長焼き直さなければ、洗脳工作から始めなければ、だめだと思う。でありますから、北海道では牛の奨励をどういうふうにしているかというと、畜牛家は、乳を対象にして牛を飼ってはいけない、牛のくそを対象にして、地方を増進するということを対象にして、牛乳の収入は副産物だ、こういう考え方で牛を飼わなければならぬ。こんな夢のような奨励をしたって、農家は承知するものではありません。私のこれだけの——一を聞けば十を悟るのが経済局長の専門の立場だと思う。十をしゃべっても一を悟らないならば、生まれかわる以外方法がない。でありますから、今日の北海道凶作に対する根本的な解決は、第一に地方の増進をはかるということ、これは農家自身の自力だけではやれないのですから、補助金をぶち込んでやらなければいけない。それから第二は、農産物価格の最低の保障をやらなければいけない。保障なしに収穫のあるものを作れというような前時代的なことを言ったって、そんなものは解決の糸口にはなりません。もし私のこれだけのことでわからないならば、何ぼでも申しますが、この所見に対して、あなたはどう考えるか。経済問題を無視して、ただ空漠な、理論的な、教科書のまる写しのようなことをやって、経済的なことを考えないで、滅私奉公とか農民としての本務を尽せなんて、そういう精神教育で増産をはかろうとしているのか。これは基本的な問題ですから、一つはっきりと伺っておきたい。
  16. 川村善八郎

    ○川村(善)委員長代理 本名君から、永井君の質問に対して関連質問をしたいという申し出がございますから、これを許します。その後一括して渡部局長の御答弁を願います。
  17. 本名武

    ○本名委員 今永井委員から、特に農林委員の一人である私の名をさして御発言がありました。今の御発言に対して、一応私は賛意を表しますが、ただ重大な問題が誤解されやすく発言されておりますので、その点を一つ申し上げておきたいと思います。と申しますのは、大体米麦中心の農政から、畑作へ重点を移しかえるのではなくして、畑作にも重点を持っていけという御意見には、私は全く同感であります。ただ、その場合の経済的な比較論として、今お話がありましたが、実はこの話は永井先生から美幌で伺いました。そのときに、時間があれば、私は大ぜいの聞いた者に誤解があってはいけないと思って、そこで発言したかったのですが、非常にお忙しい日程で、時間がなかった。たまたま本委員会で発言があったので、申し上げておきますが、経済的な比較論から申しますと、水稲耕作者は共済金あるいはわらの収入があるので、畑作を回避して米を作るということは、考え方の基本においては、全くないということであります。こういうことを農民の前でストレートで話をいたしますと、大きな誤解を生ずるのであります。あくまでも水稲耕作者というものは、畑作とは別個な立場に立って、営農の安定化をはからなければならない。永井委員の発言を裏を返して言うと、水稲耕作は共済制度とわらの収入があるから安定作物である、安定しておるのである、というふうに農家にとられるのであります。私ども農林委員としては、絶対そういうようなことは考えないで、当局におきまして、米麦中心を畑作中心に思い切って移しかえるくらいの覚悟で、局長は今度北海道実情をつぶさに調査していただき、さらにもう一つは先ほど永井委員からも話がありましたが、まずもって恒久対策とあわせて、今度の冷害対策をとらなければならない。そのうちの一番大事なことは、今日の緊急対策のうちの食いものの問題、あるいは営農資金の問題、いろいろありますけれども、何といっても北海道の寒地農業の特異性に立って考えなければならないことは、営農の形式ではなくして、方式を改めるということであります。この方式を改めるということについて、次の委員会で私は詳しく意見を申し上げたいと思いますが、この点に対して農林省は今後北海道の農業をどう指導していくかということを、今回の冷害を契機として、十分頭の中に入れてやっていただきたい。それはいろいろ十何年も二十年も前から、合理化にあわせて機械化の問題が論議されておりますが、単なる機械化ということは、今のあの耕作状況において——耕作面積あるいは今日までの習慣、気候、風土の上において、果して機械化ということが、口だけで叫んで、できるか、できないかということを、よく見てきていただきたい。その上に立って、新しい畑作偉業あるいは北海道の実地農業の安定化をはからなければならないということを、今度の冷害でまざまざと見せつけられて参りました。従って、局長も今度ごらんになるには、この点に深く思いをとどめて、しかも予算編成期に入っておる今日、北海道農業に対して、予算措置の上からも、この恒久対策について十分な検討を加え、ほんとうの寒地農業の安定策というものを、場当りの救済対策ではなくして、恒久的な、基本的な営農方式を、国の政治と責任において、どういうふうに変えていくかということの観点において、御調査をいただきたいということを申し上げて、永井委員答弁をお聞きいたします。
  18. 渡部伍良

    渡部説明員 私は北海道の農業の特性は——これは農林省のまとまった考えではないので、そこはお許し願いたいのですが、とにかく百万町歩のうち二十万町歩が水田で、八十万町歩が畑地でありますから、全然内地と違う農業だと思うのです。水田のところは内地と同じでいいかもしれないけれども、八割を占める畑地の農業をどうするかという問題は、率直に言って、農林省でも確立したものは——ここに農産課長もおりますけれども、ないのではないかと思います。これがお話に出てくる場当り政策で、農家にそのときそのときのもうかりそうな作物を作らせる、それが作物的に見てもあるいは土壌的に見ても、必ずしも適してないものでも、一年当ればそれで食える、こういうことが、北海道開発以来、繰り返されてきているのではないかと思います。私の方で悪口を言う人は、北海道の農業は今度農業だ、今度というのは、今度は一山当てようということです。そういうことを言っておる。しかし八十万町歩の畑作農業をどうするかということの基本的な問題は、まだ片づいていないと思います。それで、私が先ほど申し上げましたように、とにかく安定作物を選び出すことが一番根本ではないかと思います。(「経済的安定もある」と呼ぶ者あり)もちろんです、安定というのは、作物がとれなければ、経済的安定というものは成り立たないわけですから。(「価格政策だってある」と呼ぶ者あり)価格政策でも、今のようにして、稲がとれなくても、共済金がとれるなら、作らないで毎年そのようにやっておればいい、これではほんとうの安定作物ではないと思うのです。ですから、そういうことを今後編み出さなければならないのではないかと思います。従いまして、ここでまだ固まらぬ意見を申し述べて議論をするつもりはない、また、しても私の方が負けるだろうと思います。皆さん方は現地で長年やられておるのですから。やはりこれは、北海道庁北海道の農業が内地の農業と違う特殊性をはっきり認識して、要するに北海道というのは東北以上の面積があるのでありますから、それだけの自信と農林省をリードするくらいの意気込みでやってくれなければ、困るのではないかと私は思うのです。(「金をまかしてくれればやりますよ」と呼ぶ者あり)それは国会で十分議論されておるのです。私の方ではできるだけ北海道の意見を聞いて、いい機会でありますから、これをよく研究いたしたいと思います。  なお、北海道の先輩方の御意見は、私としても、今後、行く前にも伺いたいし、行ってからも十分伺うつもりでおります。お説の通りこういうふうに冷害々々と繰り返しておったのでは、ほんとうに浮ばれぬと思いますから、十分検討したいと思います。
  19. 川村善八郎

    ○川村(善)委員長代理 薄田委員からも関連の質問をいたしたいという申し出がありますから、これを許します。
  20. 薄田美朝

    ○薄田委員 私はちょっとこれから用事があって失礼いたしますので、当面の問題について、これに関連してお伺いしたいと思います。  今度波部局長おいでの際には、やはりそういう今の根本的な問題もありますが、当面のことしの問題が多い。それについて、できれば各省の関係者を引っぱっていって、道庁とか開発局なんかの意見を聞いて、一つ解決してもらいたい。これは非常に急を要する問題です。たとえば、私、しばらく向うへ行っておりましたので、すっかりまだ整理しておりませんが、一例を申し上げますと、失業対策費を用いる場合です。北海道では、登録しておらなくて、今は失業者が村にない、そういうふうな場合でも、十一月ごろになると失業者がふえてくる。救農の道路をこしらえるとか、港湾をこしらえる場合になると、失業者がない、当面の問題として、実際上登録してなければ、そういうことがあるのです。この間も労働省に行っていろいろお話したような次第でございますが、そういうような場合は、例外的にどうこうしよう、全国的に北海道も一律にして、それはいかぬということになっております。そういうような問題についても、道庁なり開発局なり、いろいろなお話がありましょうから、関係者も一緒に行って、すぐ解決していただかないと、十一月になると、実際上それが行われないのです。幾らかでもいいから、そういうような問題も考えていただきたい。ばれいしょ澱粉なんかも、毎年ばれいしょ澱粉を買い上げておるのです。ところが、いつも買い上げが十一月後になる、そうなると、勢い大手の連中だけがもうかって、生産者は何にももうからぬというので、私ども、昨日当局ともいろいろお話したのですが、いろいろほかの関係がございますから、今すぐ幾ら幾らと価格を算定することは困難でしょうが、買い上げるということだけ早く言明してもらいますと、農協でプール計算というか、いろいろな名称はございますが、農協で大体資金を融通しておいて、あとからそれを公平に分けるというようなこともできる。買うか買わぬかわからぬというような状況のもとでは、どうにもならない。毎年そういうことが繰り返されておりますが、農家の生産者は非常にそのために不平を言っておる。そういうような連中が私らによく訴えるのは、政府は大手ばかりにもうけさせて、自分たちがいいことをやっておるのじゃないか、ということであります。それはまことに残念なことで、そんなことはないのだというふうに説明しましても、なかなか農民は承知しないのであります。従って、そういうような問題についても、今お話がございましたような、本質的な北海道の農業をどうするかということはもちろん大事なことでありますが、向うの連中は今の問題なのです。実際行ってみると、そんなものじゃない、ずいぶんひどい問題です。あなたが団長になって参られれば、建設省とか、労働省とかいうところから、それについてだれか引当の人を連れて行ってもいいわけです。そうして現地に参られて、一々各省でどうこうしようということになると大へんな問題で、一ヵ月も二ヵ月も三ヵ月もかかりますが、現場で、大体大筋でやるというふうなことで解決いたすように、出発する際に、そういうふうな準備をして参っていただきたいということを、私からお願いいたします。
  21. 渡部伍良

    渡部説明員 私の方が今度去りますのは、今まで統計調査部現地農家との作柄に対する食い違いが非常に大きかったのです。そういうことでありますと、いろいろな災害対策の手も打てませんから、そこを私が行って、この程度被害である、だから、この程度のことは考えなければいかぬということをきめてこようと思うのであります。ほんとうに何石とれたかということは、ひまがかかるので、そんなことをやっておったら大へんです。それが主でありますので、対策をどうするかということの農林省関係のものは、おのずから出てきますが、ほかの方の関係のものまでも私は考えなかったのであります。これは、しかしこの前の冷害対策等でも、お話のように国務大臣が各省の関係官を率いて行かれたのでありますので、これを私に注文をつけられても因るのでありますが、北海道担当の国務大臣もおられるのでありますから、そのようにお取り計らい願ったらいいじゃないかと思います。私、帰って上司にはよく伝えたいと思います。
  22. 川村善八郎

    ○川村(善)委員長代理 永井君にお願いいたします。次に小平君の質問がございますので、できるだけ簡潔にどうぞお願いいたします。
  23. 永井勝次郎

    永井委員 なるべく簡潔にいたします。局長がわかってさえもらえば一言でよろしい。  局長は大へん農産物価格の問題をかりそめに扱っておる。あまり重要に考えておらぬ。ただ、ものを作る、作りさえすればいいのだというものの考え方、これは根本的に考え直してもらわなければいかぬと思います。私はこの際、やはり農産物価格の安定法を一つ作らなければ、畑作経営というものは安定しないと思う。もしほんとうの安定を考えるならば、日本農業というものの今後のあり方というものをほんとうに安定させようというならば、価格の問題を無視してはできないと思う。ところがやっておることは逆だと思う。たとえば昭和二十九年にはハッカが非常に上りました。ところがブラジルからこれを輸入してその頭をたたいた。だれの利益になるかというと——はそれをやっておるのですから、よくわかるが、ハッカが一組一万円近く上ってきた。そうするとトクホンですか、肩のこりをなおすあれですが、その原料にしたり、歯みがきの原料にする、その方が困るというので、その業者の要望をいれて、農家何方の利益をたたきつけるために、ブラジルから輸入して頭をたたき、値上りをたたき、ぐっと五千円前後にこれを位下げさした。また、ことし北海道凶作で、豆が暴騰するといえば、豆を輸入してこの値上りをたたき、そうして消費者の利益をはかる。従来でも生産している農家が採算を割って貧乏して、この農家の犠牲によって、供給された原料を加工する加工業者がみんな利益を受けておる。こういうばかな、経済的な一つの搾取方式というものを組み立てておいて、そして価格の問題にほんとうにてこ入れをしないという農林省考え方というものは、私はどうかしているのではないかと思う。資本家の側から見れば、ういやつじゃ、こういうことになるかもしれませんが、農民の側から見れば、何をしておるのだ、こういうことになる。ほかの方は何をやっているかといえば、二年ほど前は鉄が下った、石炭が下った、そのときに何をしたかといえば、鉄のためにてこ入れをやっておる、あるいは石炭のために石炭合理化法案を通して、これにてこ入れをやった。今はどうかというと、石炭は値上りしている、鉄が値上りしている。鉄が値上りし、石炭が値上りした場合は知らぬ顔、硫安の問題がやかましくなって、値下げをしなければならぬというような情勢になってきたら、硫安生産の合理化資金というものを三百何十億これにつぎ込んで、そうして必ずこれらの大企業に対してはてこ入れをしておる。農産物の場合には、去年なんかたくさんとれて値下りした場合には知らぬ顔、値上りすればこれの頭をたたく。これで一体農家が立っていくかどうか。生産農家が生産意欲をこれで盛り上げることができるかどうか。常識では、僕は、少くとも農林省の経済を担当していれば、農民とこれぐらいの共通点があってもよさそうなものだ、こう思うのですが、この点を一つ答弁願いたい。  それから、私は日本の農業をどうするかというようなことで、中途半端な議論をしたって、問題の解決にはならぬと思うのです。私は昨年ソ連の方へ行ってみて、そうして向うの試験機関や何かの施設が、意気込んで非常にもりもりとやっていることに感心してきたわけなんです。向うは人間改造と自然改造が二つの大きな柱だ。自然改造の基礎は何かというと、試験、研究、調査だ。この試験、研究、調査に力を入れていることは非常なものです。そして大へんな施設をしている。どのぐらいの予算でやっているかと聞いたら、いや予算の大体のワクはあるけれども、これに別に縛られないのだ、しかし自分の学問と技術と熱意が不十分ために、昨年は予算をこれだけより使わなかった、一昨年はこれだけより予算を使わなかった。これほど国が試験、研究、調査というものに力を入れている。でありますから、いざ根釧原野の開発だ、北海道農業をどうするかというような問題のときには、何十人とあらゆる専門家がそこに集まって、いろいろなディスカッションの中から、どうすればいいという科学的な基礎に立った方策というものが、立ちどころにそこにできていくと思うのです。平素そういう用意をしないで、凶作があったら、ちょこちょこと小手先で、いかにして予算を使わないで効果の上ることをやるか。それも経済効率ということを考えてやるならいいが、いかにごまかして予算を少くして、口の先でやろうかというようなことに終始する。それには、しっかりした試験、研究、調査のデータがあるとごまかしがきかないから、そこで、これをいいかげんにやっている。でありますから、そういう結果として、たとえば根釧原野の開発なんか、試験場や何か日本の国内の技術者の言うことを聞かないで、世界銀行の金を貸す者が来て、ここはいいぞと言ったらすぐ飛びつく、こういうばかなことをやっている。でありますから、私らの方の雄武の重粘土地帯の入植者は、私はことし行ってみて涙の出る思いをしてきたのですが、ふとんを持っていない。寝室の方にわらを一ばい積んで、わらにもぐって寝ている。寒いからたき火をどんどんたく。うちの中にいるおばあさんは煙で目を赤くしている。どういうような生活をしているか、何を食って生活をしているか、見て胸の詰まる思いがする。この重粘土地帯に入った入植者は、今まで政府から補助金をどのくらいもらったかというと、家屋とかそういうものは別として、土地改良に対する補助金として合計二十二万、こんな二十二万くらいな土地改良の補助金で、あの重粘土地帯の土地改良ができると思うのかどうか。一体そういう調査、研究、試験のデータが農林省にあるのかどうか。そういうデータなしに、ただ人口が余っているから、お前はあっちへ行け、人口疎開で、そこへ行って野たれ死ねというようなことは、私は人道上の問題だと思うわけです。そういう農政の限りにおいては、私は日本の農政というものは——そればかりでなく、この経済構造の中における農業というものは、みじめだと思う。とにかく農林省から出している統計によると、全人口の四七%は農民だ、こういっている。その農民の総所得はどうかといえば、国民総所得の一七%だ、こういうデータを出しておきながら、農民の収益を向上するための諸施策というものは、価格の面からも、あるいは増産の面からも、あまりに熱意が足りな過ぎるということは、私は良心が麻痺している、こう思うのであります。でありますから、あえてこの二つの点について局長の良心的な答弁を期待したいと思います。  もっともっといろいろ質問したいことがありますが、あと質問者があるということでありますから、最後の締めくくりとして、これから北海道の深刻な凶作の実相の中で、いろいろちりあくたでよごれている魂を洗い清めて、目をさまして、現状把握して、良心的な対処をしようという局長の門出に当って、一つ良心的な答弁をあえて求めまして、私は一応この場の質問を終っておきます。
  24. 渡部伍良

    渡部説明員 農産物の価格安定が農業政策の一つの柱であるということは、私も全く同感であります。私の方で農産物の価格を無視した政策をやっている、こういうお話でありますが、そういうことはないのであります。(「ないことはない、実例を二つあげている」と呼ぶ者あり)とにかく売り手は高ければ高い方がいい、買い手は安ければ安い方がいいというのが原則であります。そこの調和をどこでやるかということは、これは政府のやることでありまして、その調和点のきめ方が、そのときどきによって、はっきりした基準によって行われていないところに、問題があるのではないかと思うのであります。これは私どもが行政をやる上において非常に悩んでおるのでありまして、(「悩まないようにやればいい」と呼ぶ者あり)そうは簡単に参らないのでありまして、戦争中の統制——ロシヤの例を引かれましたが、ロシヤのように強力な統制組織があれば、悩まないで、できるかもしれませんが、現在ではそういうことはできないのであります。いろいろな意見を調整するのが、私どもの役目だと思っております。その際に、お話のような、どっちかに行き過ぎができてきている例も私は否定しませんが、これはしかし現在の制度あるいは行政組織では、私どもを責められても、能力の限界があると思います。さらに北海道の開拓その他北海道の特殊の農業施策をやれという点は、私は農林省の中で、北海道対策では人後に落ちないと思っております。しかし先ほど申し上げましたように、とにかく厳寒の地であり、それから農林省北海道との人事交流も十分でありませんし、北海道北海道で、農林省は知っていると言いながら、何も知らぬと言われる。こういう状態であります。これはどうしたって解決しなければいかぬ問題であります。私は役所の中では、やかましく言っておるのであります。今後とも努力したいと思います。
  25. 岡田春夫

    ○岡田委員 関連して。今の価格政策の話ですが、農林経済局長としてそういう御意見をどうこう言うのは、ちょっと私は心外です。というのは、価格の決定は、需給関係の間における調整だというのが基本的な概念だ、こういうようなお考えのように私は受け取れたのだが、農林経済局として問題になるのは、そういう点もあるでしょう。しかし、もっと基本問題は、先ほどから永井委員お話のように、シェーレの問題なんです。いわゆる工業製品と農産物価格とのシェーレの問題はどうなっているのか、このことが事実上、再生産の問題に関係してくるわけなんです。そういう農業経済の立場からいえば、当然農業生産物の価格の問題を要求し得る立場があるはずなんです。こういう点が無視されているではないか、軽視されているのではないかということを再三先ほどから主張されている。立場の点からいえば、あなたは価格関係の調整の立場に立つのではなくて、むしろ、そういう重工業生産その他の工業製品との不均衡の問題について、農業生産の見地から、あるいは農業生産物の価格の関係からいって、これだけ上げるべきだという要求を出さなければならない立場だと思う。あなたは調整の立場じゃなくて、要求の立場に立たなければならない。その立場自体が農民の不満を買っている基本問題になっている。この点を再三さっきから言われているんですよ。だから、あなた自身が答弁を意識的にはぐらかされているのか、あるいは農林経済局長だから、そういう点は御存じないとは私は思わないけれども、しかしながら、意識的にやはりはぐらかされるということは、農業行政に対して忠実な態度だとは私は考えられないから、この際はっきりしておいていただいた方がいいと思います。
  26. 渡部伍良

    渡部説明員 お話の点よくわかるのであります。しかし農林経済局長の立場は各原局——水産なら水産、振興なら振興、林野なら林野、畜産なら畜産、そういう原局では利益代弁一点ばりであります。私の局の立場は、これは農林省最後の行政として、調整しなければいかぬ立場にあります。従って、シェーレの問題も絶えず悩んでおります。しかしシェーレの問題は、一つ一つの集積で、その総和で出てくるわけであります。その一つ一つをきめるときには、先ほど申し上げましたように、結果的に見て、行き過ぎの問題が起って非難を受けるということが出てくるのであります。しかし、そういうことがないように努力はしておるのでありますけれども、たまには、そういうことが出てくるんじゃないかと思います。
  27. 岡田春夫

    ○岡田委員 それは部分的な問題もあるでしょう。そうじゃなくて、農業生産物の価格体系の問題なんです。あなたの言われたように、シェーレというものは全体の一つの比較の問題ですから、その中で部分的にアンバランスもあるでしょう。しかしシェーレになっているそういう価格体系それ自体が問題だということを、さっきから言っているんです。だからそういう価格体系について、あなた自身やはり農業経済関係のいろいろなデータをお持ちなのだから、その上に立って勇敢に主張さるべきじゃないか、こういうことを言っておるわけなんです。一つ一つの、たとえばエンドウがどうだとかいうような問題もあるかもしれないが、それよりも、その基本になっている体系の問題なんです。そういうことです。
  28. 渡部伍良

    渡部説明員 それは結局農林省としては、農民の立場を、ほかの国民の分野とのバランスにおいて考えなければいかぬ。その限りにおいては、農産物の価格が高いことを望んでおる。従ってシェーレの問題は、農林省の役人で毎日考えております。しかし、それは先ほど申し上げましたように、一個々々の問題の集積であります。その一個々々をきめることが行政でありますから、その際に出入りが出てきている。努力の足りなかった点、あるいは行き過ぎの点、こういうことが出てくるのでありまして、基本的な考え方については、おっしやるのはよくわかるのです。何といいますか、いろいろ議論があると思いますけれども、行政庁あるいは政府が強力な、最終的な決定権を持った場合と、いろいろな意見を調節していく場合と、行政上はっきりした結末が——これはエンドウのことを言っても、確保できない場合が出てくるので、いろいろな御不満があるのじゃないかと思います。
  29. 川村善八郎

    ○川村(善)委員長代理 小平忠君。
  30. 小平忠

    ○小平(忠)委員 午前中の時間もだいぶ経過いたしておりますし、北海道開道以来の冷害凶作につきまして永井委員からきわめて適切なる意見を加えた質問がありまして、大体の要点は尽きておりますけれども、あなたが火曜日にお立ちになるので、私二、三点御指摘申し上げて、ぜひ善処を願いたい、こう思いますので、あえて質問をいたしたいと思います。  今次の北海道冷害凶作はまことに深刻であります。従ってこれは農林大臣にぜひおいでを願いたいと思っておりました。私もそれを申し上げておったわけでありますが、農林大臣にかわって、とりあえず経済局長のあなたを呼んだのであります。ただ遺憾なことは、農林大臣がきょうから月曜日にかけて四国に行く、どんな重要な用事があるかわからぬのでありますが、北海道実情考えてみますならば、四国へおいでになる余裕があるならば、なぜ北海道においで願えなかったかという点において、まことに遺憾であります。このことをあなたに申し上げても、どうもなりませんが、そこで先ほど永井委員から指摘されましたように、北海道開道以来の冷害凶作は、まさに私はそうであると確信いたします。特に北見、十勝、根釧、天北は最も被害が甚大であり、特にオホーツク海沿岸は収穫皆無と申し上げても過言でないと思います。ところがそういった東道、道北の畑作地帯被害の激甚に対比して、道南から石狩、空知、上川の米作地帯におきましても、まさに四十年来の凶作であるということを御認識いただきたいのであります。私、先般農林水産、委員の一行のお供をいたしまして、全行程は回らなかったけれども、見ました。さらに私は特に米作地帯被害の甚大な関係上、五日間つぶさに水田地帯を見て回りました。ことしの冷害現状は、特に畑作地帯についてはもう議論が尽きておりますが、米作地帯については、大正二年の凶作の場合にも例を見ないということなのであります。というのは、稲の最も成育に大事なとき、すなわち幼穂形成期といえば七月下旬であります。さらに出穂期、開花期といえば北海道は八月に入ります。その時期に最低気温十度以下に下るということは、完全に稲の成育に一大障害を与えておるわけであります。ところが四十年も五十年もそういう経験がないために、穂が出て、若干花が咲いて、花粉が多い少いなどということは、農家は相当研究いたしておりましても、過去にそういう例がないものだから、何とかとれるという期待を今ひまで依然として持っておったわけであります。ところが、もう今日の状態では、八月の気温が逆に九月になって高まってきたけれども、これは決定的なものであります。そういうことから、今までどんな冷害の場合でも、五分作より以下のことがないような地帯においても、二分作、三分作という状態であります。北海道で八月二十五日現在の田畑合せましての被害の集計は、五分四厘作と見まして三百五十九億でありますから、今日はもちろん道庁の方の数字もそれを上回っておると思います。道自体が調査した数字は、九月十五日現在で目下その数字をまとめておりますけれども、その被害程度はもっと上回りまして、おそらく全道的に見て、四分作を下回るのでしょうが、そういうことになりますと、被害総額においても五百億に近いという大被害をこうむるわけであります。そういう観点かし、一つ局長は火曜日にお立ちになるのでありますから、相当な腹がまえと同時に——大臣が見に行って、大臣が政治的な答弁をされる場合と、局長とでは違いますよ。相当つつ込んだ質問もされ、問われますから、ある程度大臣とも打ち合されまして、相当な腹がまえを持っていってもらいたい、これが第一点であります。  そこできわめて具体的な問題を二、三点お伺いいたしまして、私はあなたの北海道においでになる参考に願いたいと思いますが、問題は先ほどから議論されておりますように、緊急対策恒久対策に分れるでありましょう。恒久対策の問題につきましては、先ほどからいろいろ議論されているように、北方農業、寒地農業という見地に立って、これは寒地という場合でも、凶作のない農業経営のあり方をやはり根本的に考えなければならぬと思うのでありますが、当面の問題は、やはりこの甚大な被害をこうむった被害農家をいかにしてことしの冬越しをさせるか、来年の再生産をいかにしてさせるかという問題にきております。その際に、従来の負債の繰り延べでありますとか、来年の営農資金あるいは共済金の早期支払い問題等々は当然でありますが、一番困っておりますのは、ことしの冬越しをするために、農家に就労によりまして、現金収入の道を得せしめる救農土木事業であります。これは従来の行き方から参りますと、かりに道路の改修あるいは砂利敷等々の問題も、市町村道はいけないの、道道はいけないの、農道はいけないのというようなワクをはめられると、被害農家にまんべんなく均霑した施策がとれませんから、北海道のことしの場合には、そういうワクを拡大して、はずすということが絶対必要であります。同時に、土地改良の場合におきしましても、実際可能な問題は、暗渠排水あるいは馬そり客土、馬搬客土、こういう問題も、従来のように三十町歩以上の団地でなければだめだということをやりますと、被害農家に均霑することができませんから、これはかりに五町歩でも、十町歩でも、客土であった場合にけ、その対象にするということを絶対お考え願わなければならない。現実に北海道、十万農家のうち、救農土木事業によって現金収入を得せしめなければならぬ農家は、私は七割と見ている。そうすると、十二月から四月までの五ヵ月問、大体どんな農家でも、この冬越しに、月一万円くらいのものはどうしても与えなければならぬ。そうすると、五ヵ月と見ると、五万円であります。二十万戸農家のうちの七割を対象にして十四万戸の五万円となれば、これは七十億という予算が伴います。しかしこれくらいのことは局長も腹をきめて行ってもらわないと、一万や、二万の救農土木事業を与えたって、焼け石に水です。本年は本州におきましては九号台風、十二号台風等の被害は激甚でありますが、幸いに本年度は予備金も相当残っております。ですから、一つ十分に腹を据えられまして、納得できて、安心できる答弁を御用意なすって向うへおいで願いたい、この点が第一点、救農土木事業についてどうお考えか、お伺いいたしたいと思います。
  31. 渡部伍良

    渡部説明員 先ほど来申し上げましたように、今度の冷害は特殊の限られた地域でありますし、しかも冬季の長いところで、一作地帯であるので、救農土木が必要であるのでありますが、私、先ほど申し上げましたように、道知事の方に早く申し込んで、ともかくあまり町村の数もないのですから、一つ一つの村がどうだということぐらい知事さんがつかんでおらなければ、北海道だけの対策であるから、なかなか中央に持ってきても、できにくい、こういうことを申し述べておるのであります。従って、その点は私の方でも十分検討してみたいと思います。
  32. 小平忠

    ○小平(忠)委員 それは一つ十分に御決意の上で、おいでを願いたいと思います。  第二番目は資金問題でありますが、実際に営農資金の確保ということは、きわめて重要な問題でありまして明年度の再生産資金を確保するという見地から——局長御存じのように、天災による被害農林漁業者等に対する資金の融通に関する暫定措置法という法律があります。この法律によりますと、経営資金というのは、御承知のように償還期限五ヵ年で、年利三分五厘であります。こういうものの融資の道は当然講ぜられなければならぬと思います。次に従来の二十八、二十九年の災害資金、これの本年度の償還額は大体二十六億円あります。この二十六億円のうち、実際冷害によって償還不能だという農家に対して、これを延納する、あるいは経営資金に借りかえるというような措置を講じませんと、とうてい不可能であります。こういう点について、いかようにお考えになっておりますか。特に開拓者の場合は深刻であります。開拓者の資金確保という見地についても、現在のところ、すでにもう大体数字も上ってきておりますし、もう具体的な構想があろうかと思いますが、いかがでございますか。
  33. 渡部伍良

    渡部説明員 累年災害地域につきましては、償還の延長なり、あるいは借りかえをやることにいたしております。これは九号台風以前のものについては、政令でそういう措置を講じております。北海道について、それと比較してどういうふうに処置しなければならぬかということは、現地へ行ってよく検討したいと思います。
  34. 小平忠

    ○小平(忠)委員 十分に考えておる、研究しておる、こう言われるのですが、それはある程度研究されておるということではなくて、絶対的な問題でありますから、出発までにある程度御決意をされてから行った方がよろしいのではないか。  もう一点は、これは水稲作地帯でありますか、本年の予約米に対する概算金、俗に前渡金といっておりますが、この前渡金を個々の農家はもう使ってしまっておる。ところが、実際に供出できないのです。御承知のように、これが共済金と相殺をされるというような形をもしとった場合、何のための農業災害補償法によるところの共済金かわからなくなってしまう。そこで現地の強い要請は、どうしてもこの償還を来年に繰り延べしてもらいたい、これは絶対的な要請であります。この点についていかがでございましょう。
  35. 渡部伍良

    渡部説明員 予約米の前渡金の問題は、台風の場合も問題が出ておるのであります。これは現在までのところは営農資金の融通によって、借りかえなり、あるいは共済金をもらったら、それで切りかえるということでよいのではないかと考えておりますが、それではだめだという意見もありますので、もし食糧庁が償還を延期するということになれば、特別の法律が要るのでありまして、最終的には、この営農資金で切りかえるか、あるいは食糧庁が返還請求を長くあとに延ばすかということは、まだきまっておりません。しかし、いずれにしても農家にこの前渡金が負担にならないようにするということは、この前農林委員会で農林大臣が言明された通りであります。その趣旨で研究しております。私から今どっちにするのだという最終的結論は申し上げられませんが、いかなる方法によるにせよ、御要望の趣旨が通れるようにすることにはなると思います。法律を出すか、あるいはほかの方法でいくか、どっちかであります。
  36. 小平忠

    ○小平(忠)委員 私は質問を次会二十六日に譲りまして、これでやめたいと思いますが、北海道に行かれましても、九月は非常に天候も違っております。特に水稲の場合でも、分けつが従来よりも多く、穂は出ておりますが、つっ立っておる。ところが、現在の本州、四国、九州のように、今つっ立っておっても、これから実る地帯とは違います。もうすでに霜が降るということで、専門家が考えればわかるのでありますから、そういうようなことで、どうか一つ実地について現実に稲の穂を見、あるいはもう花も咲かない、全然実もつかない豆につきまして、その他の作物について、よく現地でつぶさに調査願いまして、深刻な問題だけに——年度のこの問題は、日本の食糧問題の解決にきわめて重要なウエートを握っております北海道のいわゆる雑穀地帯現状、あるいは北海道の今日自給自足ができ得ない米作について、飯米をいかに確保するかという、そういう大きな問題からかんがみまして、ぜひこの際あなたが現地に行かれたならば、十分に認否をされまして、特に緊急措置といいましても、これは雪が降ってできなくなってからじゃだめなんです。今御指摘のように、この中にはまだたくさんございます。その中には行政的措置によってできる問題もありますが、中には、やはり国会を開いて立法措置をしなければならぬ問題もあるのであります。われわれは急速に臨時国会の開会を要求して、あなた方の仕事をやりやすいように努力いたしたいと思っております。ぜひ一つそういう見地から十分に調査願いまして、万全の措置を講じていただきたいということを申し上げまして、私の質問を終ります。
  37. 川村善八郎

    ○川村(善)委員長代理 岡田君。
  38. 岡田春夫

    ○岡田委員 私は、きょうは建設大臣または事務次官、河川川長の出席を求めておったのですが、きょうはどうしても出られないようで、この次に質問は留保いたしますけれども、それに関連してぜひ必要な資料を今のうちに要求しておきたいと思います。きょうは建設省の人が来ておりませんけれども、委員部の方からぜひ伝えてもらいたいのです。委員長御了解をいただきたいのですが、継続事業で北海道の桂沢のダムの建設工事が行われております。この継続事業の年次別に分けた費目別の実施計画予算、並びにそれが今年度中に終るので、昨年度までの実際の支出状況、そういう点をぜひ資料として出していただきたい。これはこの次の委員会までにお願いをいたしておきます。
  39. 川村善八郎

    ○川村(善)委員長代理 ただいまの岡田委員より要求のありました資料の提出を求められたことにつきましては、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  40. 川村善八郎

    ○川村(善)委員長代理 御異議なしと認めまして、できるだけすみやかに本委員会提出を求めることにいたします。  本日は北海道冷害につきまして、各委員から深刻な質問がありまして、渡部経済局長からもるる御答弁があったものでございますが、私も各地を回りましたところが、同様な意見が非常に強かったのでございまして中には、農村の中で国有林の払い下げを受けまして木材の伐採をしたいという希望や、薪炭を製造したい、炭焼をして当座をしのぎたいという地方もございますので、林野庁の方にも連絡をいたしまして、その道を開かれるようにお願いをいたします。  他に御発言がないようでございますから、本日はこの程度にとどめまして、次会は来たる二十六日午前十時より開会いたします。  今日はこれをもって散会いたします。     午後一時五分散会