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1956-03-30 第24回国会 衆議院 国土総合開発特別委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年三月三十日(金曜日)     午後一時五十八分開議  出席委員    委員長 廣川 弘禪君    理事 志賀健次郎君 理事 松田 鐵藏君    理事 竹谷源太郎君 理事 渡辺 惣蔵君       植木庚子郎君    川村善八郎君       笹山茂太郎君    首藤 新八君       南條 徳男君    本名  武君       小平  忠君    芳賀  貢君       三宅 正一君    門司  亮君       森 三樹二君    岡田 春夫君  出席国務大臣         建 設 大 臣 馬場 元治君  出席政府委員         北海道開発政務         次官      白波瀬米吉君         北海道開発庁次         長       田上 辰雄君  委員外出席者         参  考  人         (北海道開発審         議会会長)   黒沢 酉蔵君         参  考  人         (元北海道拓殖         銀行頭取)   永田 昌綽君         参  考  人         (経済評論家) 稲葉 秀三君     ————————————— 本日の会議に付した案件  北海道開発公庫法案内閣提出第六三号)     —————————————
  2. 廣川弘禪

    廣川委員長 これより会議を開きます。  本日は、すでに決定をいたしておりました通り北海道開発公庫法案について参考人各位より御意見を伺うことにいたします。  御出席参考人は、北海道開発審議会会長黒沢酉蔵君、元北海道拓殖銀行頭取永田昌綽君経済評論家稲葉秀三君、以上在名方々でございます。  この際一言申し上げます。参考人方々には、御多用中のところ本委員会に御出店下さいまして、厚くお礼を申し上げます。本委員会ではただいま北海道開発公庫法案審議中でありますが、この際本法案に対する皆様方の忌憚のない御意見を承わり、審査の参考にいたしたいと考えておる次第でございます。なお御意見開陳の時間は、お一人おおむね十五分程度といたし、その順序黒沢さん、永田さん、稲葉さんの順序でお願いいたします。また御意見御発表の後、委員側から種々質疑もあろうかと存じますので、お含みの上お願いいたします。  それでは最初に黒沢参考人よりお願いいたします。黒沢参考人
  3. 黒沢酉蔵

    黒沢参考人 北海道開発公庫法案が上程されましたにつきまして、私ども意見を徴されるのは、まことに光栄と存じております。  この法案は、実は開発審議会において一昨年来——北海道開発の健全なる遂行を期するために、非常に欠けている点が一つあるのであります。それは何かというと、基本的施設であるところの道路、河川、港湾とか電力開発だとか、土地改良というような方面には、毎年ある程度の公共事業費を投じておりますが、それと当然並行して進まなければならぬ第一次産業、すなわち鉱工業の面に対しては何らの直接の施策がないのであります。これは長い間北海道開発に関係しておる者としては、みな遺憾に思って、要望しておったものであります。そこで開発庁におきましても、若干の試案はありましたが、まとまったものは実はできてなかったのであります。そこで審議会としては、何とかこの非常に欠けている面を補いたい、こういうことから、理事会を開きまして、いろいろ相談をして、とにかくこの問題を取り上げようじゃないか、こういうことになりまして、一昨年、審議会みずからの考え方で掘り下げようという打ち合せをいたしたのであります。そこで審議会は、金融財政の小委員会がありますので、その委員会に委嘱をいたしまして、これの調査研究、立案をお願いしたような次第でございます。小委員会は、長い間かかりまして、いろいろの専門家がこれに加わりまして、そうしてでき上ったのが北海道産業振興開発公社案というのであります。これを審議会が、さらに全員で総会において審議をいたしまして、そうして満場一致可決して、政府に建議した。政府はこれを取り上げて、これが実現をはかるべく、開発庁一つの案を作りました。それが北海道開発公庫法案となったような次第であります。  そこで私ども要望しておる——これは私ども要望というよりは、開発に関連するすべての人々——審議会には各政党からも出ております。衆参両院からも出ておりますし、学識経験者、各層の人が出ておるのでありまするが、これらはことごとくその必要性を力説しておるのでありまして、いわば国民全体がこの問題に対しては支持、共鳴をしておる問題なんであります。ところで、政府成案、これが、だんだんいろいろの変化はありましたが、今日この委員会審議されることになったことは御承知通りであります。  ただ私はこの機会に、非常に遺憾だと思う点を一点申し上げて、そうして各位の御尽力を願いたい、こう思うのであります。それは何かというと、審議会におきましてもだいぶ論議されたのでありまするが、この十億円という政府財政出資では、どうもあまりにも少な過ぎるということであります。北海道産業開発に対して低利長期資金を投入する上において、わずかに政府財政出資が十億円であっては、これはわれわれの建議し、われわれの要望しておった点から見ると、はるかに遠いのであります。この点が私ども非常に残念に思うのであります。ここまでこぎつけたことに対しては深く感謝をいたしますけれども、いま一歩進んで、せめて五十億くらいの財政投資があったならば、この法案の要求している趣旨であるところの低利長期の投融資ができるのではなかろうか。十億ぐらいのところでは、これはとうていまかないができませんから、結局預金部資金を入れるとか、公債を発行するとかいう結果にならざるを得ない。けれども、そうなりますと、金利が非常に高くなるのであります。それでは、このわれわれの要望しているところの低利長期融資というのには、どうかと思う。これは日本財政状態としては、ここまで奮発したのですら、なかなか容易ならぬことであったとは思いますけれども、しかし日本としては、ただ一つ残されているところの北海道資源開発、この産業面開発をするという政府財政投資に、わずかに十億円では、これは何としても情ない金額なのであります。この点は私どもとしてははなはだ遺憾である。今議会においては一日も早くこれの成案を見ることを希望するのでありますが、来年の議会におきましては、どうか一つほんとう低利長期資金になり得るような額を、政府財政投資をしいただきたい。これが私ども要望であります。  以上、私はこの法案全体に対して賛成いたすわけでありますが、ただその点に対しては遺憾の意を表し、さらに一段の御尽力をお願いしたい、審議会としてはこれだけをお願いいたしたい、こういうように思うのであります。はなはだ簡単でありますが、これだけを申し上げて私の意見を終ります。廣川委員長 議事の進行上、参考人方々に全部お願いいたして、それから質問に入りたいと思います。  次は永田さんにお願いいたします。
  4. 永田昌綽

    永田参考人 それでは意見を申し上げます。大体は今黒沢さんからお話のありましたようなことで、ほとんど尽きているかと思います。御承知でもありましょうが、審議会建議案ができます場合に、私は直接それに関係しておりました一人でありますので、黒沢さんの申されましたことをもう少し補充をして申し上げます。  結論がら先に申し上げますが、今日ここに出ておりますところの公庫法案というものは、われわれが検討し、考えました方法に幾段階かあるのでありますけれども、その幾段階かあるものの中では、これが最小限度のものであると私ども感じております。そこでその法案を拝見いたしまして私が感じますところは、北海道にいわゆる鉱工業を興すというために、たくさんの不利益条件がある。その不利益条件は、他の方法によっていろいろ克服されるでありましょうが、しかし、いわゆる広い意味お金というものが足りないということも、大きな原因の一つである。その金をさらに、通常言葉で言うところの金融という金と、それから事業を興すところの産業資金、この二つに分けて考えてみますと、通常金融といわれておるものにおきましては、北海道はもちろん十分ではありませんが、しかしながら全国に比べてみまして、特に北海道が非常に不定をしておるということではあるいはないであろう、かように思います。しかしながら、事業を興す方の資金ということになりますと、北海道は特に不足しておるんじゃないだろうか。北海道にそれがありさえすれば、必ず事業が興るというわけではありますまいが、そういうものが北海道にもう少し十分にあったならば、北海道産業を振興するに大へん強力であろう、そこに主として着眼をいたしました。そこで御承知通り、普通の意味合いにおける金融資金と申しますれば、商業べースであるとか、いろいろな諸条件があって、なかなかこれにむずかしい条件がつくわけであります。だから北海道が最も切望しておるものは、普通の金融資金よりも、もう少し積極性を持った、どちらかと申しますと、言葉はよくないかもしれませんが、もう少し大胆な目的を持った資金の方がいいのではないか。しかしながら、よく言われますように、北海道開発するのに、われわれの考えでは、何もかもみな国家のお世話になって、国費でもってやろう——それは未開地開発国費でやるのが原則でありましょうが、産業のことにつきましては、国費ばかりに依存するということであってはよろしくない。そこで何ほどかの国費というものは、基礎施設は別でございますが、この意味合いにおける産業開発に  つぎ込んではいただくのだが、民間資金もそこに何とか引っぱり込むということを考えようじゃないか。そういうことを考えていきますと、まず国家でもって相当額資金をお出し願って、それをもとにして民間資金を呼び込んでこよう、こういう考え方をした方がいいじゃないか。そういう意味合いにおきまして、たとえて申しますれば、ここに二十億の資金を投じて企業するならば、その何年かの採算性というものはそれほどよくはないが、終局は成り立って、そうして、これが北海道産業としておい立っていく。こういう見通しのある場合に、ただ民間の人にまかしておきますと、御承知のような不利益条件がいろいろありまして、なかなか大胆にこれに漕手することができませんが、かりにその二十億の、出発するための資金が要るところを、十億を国家で一応持つ、こういうことであるならば、民間産業人から申しますと、十億の金があって、二十億の仕事ができるということならば、多少他に不利益条件があっても、そこに一つの興味を呼び起すのではなかろうか。かような考え方からいたしまして、それが全部ではありませんが、大筋を申しますと、かような考え方からいたしまして、この審議会で討論をいたしました北海道産業振興開発公社案なるものは、全部政府出資によってそのものを作っていただきますけれども、そこではその公社自身がみずから進んで北海道の諸条件調査し、企業等調査をいたしまして、そうしてこれが北海道産業として成り立つという見込みであるならば、その公社みずからがいろいろ検討したものによりまして民間に呼びかけて、そうして民間産業人をしてそこへ一つ資金を入れさせる、そうして公社出資をする、かようにいわゆる出資ということを主として考えてきたわけでございます。そうして出資ということをいたしまして、その事業が成り立ちましても、新規事業である場合は、普通の意味合いにおける金融機関は、直ちに飛びついてはくれないものが多うございますから、そういう場合にはその金融もしてやる。それから、そこまで公社が力を入れて出資まではしなくても、民間人々が寄って、出発をするところの資金だけはできる。資金だけはできても、金融機関は、商業ベースとか、いろいろありますから、新規のものにはすぐには飛びつけぬというものがある。そういうものについては、あるいは融資の面を考えてやるならばできるのではないか、かような考え方でできたのが、北海道産業振興公社案の中心の考え方でございます。  ところが、今日ここで拝見いたしております公庫法案なるものを見ますと、それに比べますれば、いろいろな点において多分に金融機関的な感じをよけい受ける。むしろ初めの考え方は、そういう公社的のものであって、金融ということは付随的なものである。だから、積極的に、能動的にこれが動くのだ、こういう考え方でありましたが、この法案から受けます感じは、大へん金融機関的な性格になっておりまして、金融機関的であるという点において、多少感じの違う点があります。そういうことでありますから、こまかいことを言うのは、まだそういう段階でないと思いますが、たとえて言いますれば、先ほど来申しましたような、いわゆる公社法案で考えますならば、この本社なんというものは東京になければいかぬ。なぜかというと、産業人相手にして北海道設備資金を呼び込む仕事をやるというには、相手東京しかいない。北海道には、ないことはありませんが、きわめてわずかなものである。東京本社があるということが、その仕事を大いに活動さすべきもとになる。けれども、この法案によりますと、本社札幌ということである。金融機関であれば、札幌の方がむしろ適切だ。それからさらに進んででは、われわれが建議いたしましたのは、債券発行という制度を設けております。これは制度として債券発行のことは考えたのでありますが、今これが始まったからといって、すぐに債券を出さなければならぬというようなことではない。おいおいにこの公社活動が信用を得、また日本債券等に対する市場その他の状況が変った場合には、三、四年後に債券発行する、こういう公社と考えれば、当然それがそういう工合にいかなければならぬわけですが、この説明書その他を拝見してみますと、すでに債券発行する計画になっている。そういう点から見れば、相当金融機関的な傾向になっております。これがよい悪いを言うわけではありません。ただ私ども感じは、先ほど黒沢さんも仰せられましたように、こいねがわくば、もっと政府財政出資が多くて、そうして先ほど来私が申しましたような意味合い活動のできる機関であるならば、これは願ってもないことだと私どもは考えておりましたが、しかし財政の都合でございますか何でございますか、政府出資が十億にとどまっている。これでは、とても私どもの言うようなことはできないことになる。これは今日の実情からやむにやまれず、おそらく最小限度の案をお作りになったものであろう。しかしこの法案をよく拝見いたしますと、そういう法案にはなっておりますが、しかしながら政府出資もおそらくこれきりではないだろうと思いますから、今後政府出資がふえ、かつ公社当局者が、先ほど来申し上げましたような北海道実情をよく御認識になって、そうして運用していただけるならば、先ほど来申し上げたような、北海道としてはまことに願わしい運用ができるようになるんじゃないか。その出発点といたしましては、この法案というものは、北海道の求めているところの実に最小限度であるというふうに私は感じます。言いかえますれば、先ほど黒沢さんもおっしゃいましたように、皆さん方にはこれに満足せずして、もっと政府出資を多くしていただいて、この公庫運用というものが、ただ金融機関的でなしに——金融機関ではありますけれども、これは金融機関としては例の診しいところの、いわゆる出資をするということが公然と認められておりますから、そういう機能を大いに働かせていただけるような状況にしていただけるならば、北海道産業開発というものに相当効果があるのではないか、かように考えております。
  5. 廣川弘禪

    廣川委員長 次は稲葉さんにお願いいたします。
  6. 稲葉秀三

    稲葉説明員 私は委員長から経済評論家として召喚をされましたので、経済評論家的な立場に立ちまして、今のお二人の御意見とは多少違った角度から、この問題を申し上げてみたいと思います。私は、この公庫法案には、いろいろ国民経済的な立場から論議しなければならない問題点があるだろうと思います。しかし時間の関係もございますので、簡単に申し上げたいと思います。  第一点は、北海道開発というのは、政府の力、与党の力、野党の力、民間の力、こういった熱意もございまして、相当日本としては、今までも進んできた、それを、より進めるために、民間投資を誘発するための公庫法案がここに出たのだと思います。ところで、私は今までの経過を見ますと、機構の問題についてはいろいろ論議が行われた、また道庁や開発庁ではいろいろ計画も行われた。しかし幾構の問題についても再検討しなければならない問題があり、また現に今まで行われました諸計画も、ほんとうにこれが能率的であったかどうか。また現に達成率三〇%とか四〇%の計画が、計画自体欠陥がなかったかどうか。こういうことも問題だろうと思います。  そこで私は、今後もっとこういうふうなことをてこ入れにして、民間産業をも含めた北海道総合開発を考えまする場合には、具体的にほんとうに国がどういうふうに北海道重点を指向するか、こういうような基本的な考え方がなければ、結局こういうものができたって、あとはうまくいかぬのじゃないか。ただ便宜的に、あるいは政治的に若干のプラスを与えるということになり、ほんとう日本の国のために、あるいは北海道のために開発をするということには、どうも結果としてうまくいきにくいのじゃないか、こういうふうに考えるわけであります。私の個人の意見を申しますると、どうもいろいろ問題はもてはやされながら、北海道開発に対する重点について、非常に国民の間には、分裂があると思います。どうも評論家的な立場で申しますと、政治的な要素が非常に強いのと、北海道が非常に面積的に大きいので、どんどん産業も振興するだろう、また人口も吸収できるだろう、こういうような要素が非常に強い。現に私も数回行ったのでありますが、一回や二回北海道に参りますると、なるほどここは宝庫であるといったような感じがいたします。多くの政治家が来られて、そうおっしゃいます。しかし中には、東京に帰ると忘れてしまうという方も多いと思います。その点では、私は廣川さんが昨年来、からだを張ってこういうものをお出しになった少くとも意図そのものにつきましては、尊敬を申し上げたいと思います。しかし意図だけではいけないので、少くとも現われた形から見て、公庫法というものを取り出すということになれば、いろいろここで考慮していただきたい問題点があるということを申し上げておきたい。  次に問題は、この公庫のあり方ということだと思います。私は先ほど申したように、北海道に特殊的な開発の余地があると思います。しかし、どうも一般の人がこの北海道を特に開発しなければならないというようなことと、私が今までずっと日本長期計画国土開発の問題を取り上げてきました角度とは、だいぶ違います。私の方が正しいかどうかわかりません。しかし私はこう思うのであります。北海道は未開発地域だといわれております。また資源が非常に少くないといわれております。しかし、ずっと国土開発的にいろいろな日本地域を検討して参りますると、何も日本宝庫北海道だけではないのであります。また未開発地域北海道だけではないのであります。従って、たとえば産業構造について申し上げましても、大体北海道の現在の産業構造は、日本平均産業構造よりもやや高度化されております。そして未開発でどんどん開発しなければならないというが、案外公共事業も組織的に増大しております。民間投資も行われております。しかし最近の状態においては、北海道経済の形態というものは、平均よりも落ちている。要は、国土の大きいということだけでは解決できない。また工業誘致をここでてこ入れする場合において、北海道工業立地マイナス条件ということについても、十分これを考えてもらいたい。そうして、むしろ北海道民の必要とするところの消費産業で、特別に北海道に成り立つというやうやっと、北海道特産物、こういうものは、内地で加工するよりもより有利になる、こういうことに全体のお金を向けていく。そういうことについて責任のある態勢がとられる。このようなことが、少いお金でやるのかもしれないけれども、生きていく問題である。その点が私は過去において、また今後におきましても、十分解決されないような感じがいたします。私の率直な意見を申しますと、私は日本で一番未開発で、一番経済効果のあるところからいろいろの産業事業を興すということが必要であると思う。そういうようなことをどんどん進めて参れば、結果において、北海道というところへよりプラスの結果が行くだろうと思います。従いまして、私はこの公庫マイナスだとは思いません。プラスだと思います。しかし将来国土開発委員会は、単に北海道だけではなくして、全体の国土開発公庫となり、そうして北海道のことも考慮しながら、内地のいろいろ必要な事業に対しても、民間投資と、それから公共事業の対象になるような間を縫っていくんだ、それの第一歩をするんだという、こういう角度でやってもらいたい。来年度の八十億の金はそういうところに使っていただきたい。同時に、現在国では開発銀行のルートを通じてお金も出ております。中小企業金融公庫からお金も出ております。そういうものをだんだん北海道について工夫する。そうして将来進んでは、公共事業北海道導入も考えて、そうしていろいろ工夫していく。ただそれを北海道のためだけに使わないで、全体のために使っていただく、こういう方式にまで将来発展せしめる、こういうことを考慮して作っていただきたい。  第三に申し上げたい点は、黒沢先生永田先生からいろいろお話がございましたけれども、私は北海道において産業を興す、特に中小企業加工産業を興すということにつきましては、ある程度当初の発足期間においてはマイナス条件があるたろうと思います。その点をやはり十分考慮に入れてお考え願いたいと思います。しかし北海道の場合においては、マイナスだからといって、常に安い金利を与えるとか、あるいは常に税金その他において保護政策をやるということは、結局長い目で見て、私は北海道産業を育成するということにならないと思う。こういうようなお金は、先に永田さんがおっしやいましたように、民間の広範な産業資金北海道に流れるんだ、こういうようなことを誘発する意味公庫であり、計画でなければならない。そういたしますると、ある一定段階において、金利の安いものを与えるということは必要であるかもしれませんけれども、次の段階においては、日本のどこと競争してもやっていけるんだという産業北海道に興すんだ。それを、ここで北海道だけは特別扱いにするんだというような気持でやれば、保護がなくなれば、つぶれてしまう。北海道産業人の努力だってだめになる。人口の吸収だって、自然な形でできないということになると思うのであります。私は北海道開発を主張します。しかし、あまりに保護的な意味開発というものは、私は必ずしも主張しない。なるほど十億というお金は少いお金かもしれません。しかし七十億という民間のいろいろないわゆる貯蓄というもの、国民のどこかの貯蓄というものが、北海道にことし四月以降一年間で流れていく。来年はまた流れていく。来年ならば、そういうお金は、内地のどこかよそ百で、やはり設備資金やいろいろな資金として使われていくというお金であります。決してただのお金ではない。そういたしますると、やはりこのお金を、できるだけ将来は、ほかの産業と競争してもおれの方はやっていけるんだ。こういう意味で、私は責任を持ち、自信を持って使っていただきたい。  いろいろはかに申し上げたい点もございますけれども、ただ公庫法案そのものだけが問題じゃなくて、そういう背景においてこの問題が取り上げられることが重要ではないか、こう思います。
  7. 廣川弘禪

    廣川委員長 以上で御三方の御意見を伺いましたが、委員より質問いたしたいという希望がありますので、順次これを許して参ります。三宅さん。
  8. 三宅正一

    ○三宅委員 黒沢さんに主としてお伺  いをいたしたいと思いますが、黒沢さんは北海道事業の本拠をお持ちになり、北海道開発審議会の会長でもありますので、いわば総体の立場でお考えになると同時に、北海道のことを一番よく御存じになっておりますから、主として私どもが危惧しております点についてお伺いいたしたいと思います。  私ども北海道開発について見ておりますと、ここ数年来ほとんど機構いじりばかりやっておると思うのであります。北海道開発庁長官などというものは、五、六年の間に七人も八人も大臣としてかわり、そのたびごとに、新しい計画のようなことを思いつきでもって放送される。そうして極端なことを言えば、そういうことによって、かえって道民を惑乱するような面が非常に多かったと思うのであります。敗戦後の日本で、北海道の持っておる資源的な面、またこれらの開発の面が非常に重大だということは、国民全体が考えておることでありまして、私どももその点については、もっと本式に力を入れなければならぬと思うのでありますが、ややもすれば今日までは、そういう機構いじり、そして思いつきでもって道民を惑乱するような面が多かったと思うのであります。これは日本全体としてもはなはだ遺憾なことでありますが、特に北海道に生き、北海道のことを考えられる立場におられます黒沢さんなどとしては、非常にふんまんにたえぬところじゃなかろうかと私は思うのであります。こういう点について、今度の公庫法案にいたしましても、今黒沢さんは十億なんという政府の金ははなはだ少い、総体で来年八十億ということになりますが、少いと言われまして、私どもも必要がありますならば、もっと出さなければいけないと思います。しかし、私どもが心配いたします点は、たとえば木材糖化の問題にどれだけの金を入れ、低品位炭の利用のためにどれだけ大きな金を入れるかという大まかな点は出ておりますけれども、私どもが見ております。と、基礎調査が足らぬのじゃないかと思うのであります。木材糖化などというのは、ほんとうにうまく行われますならば、日本にとって一つの画期的なことだと思うのであります。従いまして、国費としての試験研究費などももっとたくさん入れるということは、けっこうであるけれども、まだ中間試験の段階にしかきておらぬところで、急いでこれだけ使ってしまわなければならぬということで、食いものにされるような格好で使われまして、ちょうど復金の不始末が起きたと同じように、不始末をやりますと、将来にわたっての北海道への導入資金が、そのために逆に減るというような事態も起きるんじゃないかと思うのであります。でありますから、ほんとう北海道のことを考えられますならば、第一次五カ年計画における産業基盤の育成という点などにつきましても、国の費用の関係もありますけれども、まだ十分にいっておらない。そういう点をまず一つ国としては力を入れるべきである。第二には基礎調査にもっと根本的に力を入れるべきである。その上だおいて、ほんとうに興さなければならぬ産業であるというのならば、企業の形態についても考えませんと、利権屋が食いものにするという関係では問題にならない。従ってそういう点についても、いやしくも国費を入れます限りは、大いに考えなければいかぬと考えます。従いまして、私どもが今度の公庫法案で非常に危惧を感じております点は、たとえば資金を運営するについて、衆知を集めるとかいろいろの点がない。従って昔の満鉄であるとか、そういうような感覚で、利権屋の食いものになるようなことになりましたならば、これは実に許すべからざることだと思うのであります。私どもほんとうに基礎調査ができていきますならば、財政の面においても、たとえば青函の地下を掘るとか、そういう点についても、もっと金を入れてよいと思っておるのであります。おるのでありますが、中くらいの調査で、何だかわからぬところへ八十億も使われてしまうということでは、非常に大きなロスだと思うのであります。こういう点について、審議会長としてほんとうに関心を持っておられ、その土地の方として関心を持っておられます黒沢さんとしては、私は相当にふんまんを感じておられる点もあろうかと思うのであります。私ども聞きたい点は、そういうところにあると思うのであります。そういう基礎的なことができました上において、日本の総合開発の一環として、ほんとうに効率的に金が入ります限りにおいては——最近は国の金は一兆円の予算とか、いろいろの点がありますから、ある程度限界があるとして、民間資金というものは、国が保証したり何かすれば、むしろ二重投資や浪費に使われておる面がありますので、八十億といわず、その何倍でも、効率的に使われるなら、けっこうであります、どうもそういう点について、不用意の点があるのではないか、北海道に住んでおらぬ者として、北海道のことを考えれば考えるほど、どうもその点が少しうわついておりはせぬかという点を考えますので、この点についてまず黒沢さんにお伺いして、それから永田さん、稲葉さんにも、その点についての感想を承わりたいと思います。
  9. 黒沢酉蔵

    黒沢参考人 ただいま三宅先生から非常に根本的な問題について御質問があったのでありますが、私は北海道に五十余年間おるのでありまして、北海道のことは若干知っております。そこで、北海道というものを達観して申しますと、明治初年には国は全力をあげて北海道開発に力を入れたのであります。従って黒田清隆が、当時のアメリカのグランド大統領に頼んでケプロンを連れてきて、そしてケプロンがドイツその他から世界的な水準を持った優秀な技術者をたくさん呼びまして、開発に着手したのであります。ところが明治の十五年くらいまでは非常な熱意を持っておったのでありますが、日本はだんだんうわ気が出まして、外の台湾あるいは朝鮮、大陸、こういう方面に力を入れるに従って、北海道はだんだん忘れられてしまった。これが大体の北海道のいきさつであります。  そこで、実は今までは日本の国は北海道から吸い上げておった。われわれはこれは北海道にとって非常に遺憾だと思っておる。われわれは多年、仕方がないから自まかない主義という主義を立てまして、戦前までは自まかない主義でやっていこうじゃないかというのが、例の拓殖計画であります。第一次、第二次の拓殖計画というのは、自まかないなのであります。日本国費をもらわないで、自まかないでやって参った。そこで北海道には木材といい、石炭といい、たくさんの資源がありますから、事業家がどんどん入ってきて、一口にいえば、資源の略奪といった方がいいかもしれませんが、こういう傾向が長年続けられたことは事実であります。私ら道民から見ると、北海道というものは、いわば長い間日本が大陸に発展するために犠牲になっておった。ちょうどこれをごく下世話で簡単に言えば、貞操の妻があったのに、だんだんおやじがうわ気して二号、三号、四号、五号、六号、こういうふうに六号まで幾つも作って、北海道から資源を取り上げて、みんな入れ上げてしまった。それで戦争で負けた、さあ北海道の開拓だということで、戦後朝野の意見が思いついたのが、私は、忘れておった糟糠の妻をようやく思い出したというのが、北海道の開拓でないかと思うのであります。そうなったときに、何にもありはしない、財産をみんな蕩尽したあとですから。北海道にある金なんというのは、目くされ金で、今まで北海道から吸い上げた金からいえば、非常に少いものです。これは必要があれば、私は数字を幾らでも説明します。これは決して大言壮語するのではありません。稻葉先生からいろいろな議論があったけれども、私はどう考えたって、北海道以外には開発資源はないと思う。私は全国至るところ歩っております。農村という農村はいかむところはございません。三宅さんの郷里である新潟も、ずいぶん長い間参っております。あらゆる村までみな知っております。私は公平に見まして、北海道を開くということが、日本の残された、天から授かったものであるということだけは、稲葉さんがどうおっしゃろうとも、断言してよろしい。私は五十年以上北海道におりまして、また日本全体も不肖ながらわかっております。その見地からかく断言するのであります。  さてそこで、今お尋ねの基礎調査が足らぬじゃないかという点は、ごもっともです。これはわれわれ審議会といたしましても、道民といたしても、しょっちゅう議会に陳情しておることであります。本年も、基礎調査に少くとも五億円くらいの金を出さなければだめじゃないかというのに、幾らも出しておりません。これは一つ三宅さんのような理解のある方が、国会で基礎調査に御努力を願いたい。  次に、利権屋の食いものになるのではないかということでありますが、過去においては、そういう実情は実際たくさんありました。正直に申しますと、実は私どもその跡始末をしておる。私は酪農でありますが、酪農というのは、木を切ったり、荒らしたりした跡を始末するのが酪農なのでありまして、私どもはそれをやっておるのでありますから、それが過去にあったことは、決していなむことはできない。だから、今後もあるのではないかということは、大いに考えていただきたい。今日利権なんというものは、北海道にそうあるものではありません。これからの北海道の開拓というものは、ほんとうに科学的に、しかも熱意と努力を傾注してやるのであります。それ以外に北海道資源開発する方法はありません。でありますから、昔の北海道をお考えになって、また北海道で金もうけしたなんというような話を聞いて、今後もそういうことになりはせぬかという御見解は、私は断じてないと思う。私ども道民が決して承知しません。そういうやからは、代議士であろうと、参議院議員であろうと、あるいはどんな実業家であろうと、これは排斥して、われわれは決してそういうものに対してはくみさない。幾ら道民が幼稚であっても、そのくらいの識見は持っております。しかも今はだいぶ違っておりますから、その御心配は私はないと考えるのであります。  機構いじりについてのことがありましたが、なるほどそういうきらいは、私ども結果から見れば、あると思います。しかしながら、実際、今北海道の機構くらい、複雑怪奇な機構はないのであります。開発庁というものがありましても、これは予算を政府に要求する機関で、これを実施する面においては、各省に分れてしまうのであります。各省が分れ分れにやるのであります。つまり開拓費の統一、これがないのであります。幾ら今の金が価値がなくても、とにかく百七、八十億の公共事業費がいくのであります。これを一つの手で、一つの頭で緩急よろしきを得てその金を投ずれば、私は経済的にやっていけると思う。ところが、今の機構ではできません。今のように多元的な、そうして役人がみななわ張り争いをやっておるような機構になっておりましては、とうてい経済的な予算の使い方はできません。そこで歴代の長官がかわるごとにこれを痛感されて、何とかこの機構を一元的に直したいという熱意が現われて、いろいろお話になったり、考えられたりするのだろうと思うのです。ところが、日本の政局が御承知のようなわけで、開発庁長官で一年と続くような人がいないような状態です。何カ月かで、ぼこぼことかわる。これは私三宅さんと同じようにまことに残念に思う。だから、これはいたずらに機構いじりではなしに——人がかわるということが、はたから見ると、機構いじりをやるようなことに見えるのではないかしらんと想像される。しかしながら、これは遺憾なことです。こういうふうに何べんも長官がかわるたびごとに、思いつきと言っては失礼外すけれども、私もそんなこともあるだろうと思います。そして実際には、何もしないうちにまたかわって、三カ月か五カ月間また別の人がくる。これは北海道開発のために非常に残念なことです。ぜひとも三年か四年一人の人でやってほしい、このように私どもは常に思っております。しかし、北海道の機構そのものは複雑であって、このままではいかぬということだけは事実であります。  以上のようなわけで、戦前までは北海道から相当のものを搾取しておった。その意味からいって、こんなちつぽけな金ではなしに、どんどん北海道開発国費を投ずべきだ。しかし無理は言いません。最も経済的に使う、同時に機構も考えていただきたい、こういうのが、私どもの考えなのであります。  はなはだ尽し得ませんけれども、以上申し上げて、不十分でありますが、お答えにがえる次第です。
  10. 永田昌綽

    永田参考人 機構の問題のことは私にはわかりません。  基礎調査の足りないことはまことに痛感しております。  第三点のこういう公庫のようなものができた場合には、いわゆる利権屋——厳密に言うと、どういうことかわかりませんが、利権屋がこれをどうこうしやしないか、こういう御懸念のお話がございました。私は北海道で当時特殊銀行——やはり政府の息のかかった特殊銀行でありましたが、北海道拓殖銀行に三十数年間勤めさせていただきまして、みずから北海道開発金融に当った経験を持っております。今度の公庫法案というものは、昔の拓殖銀行の機能をさらに拡張して、公庫出資をし、あるいは債務を保証するという点において、拡張はされておるという点はございますが、大体は拓殖銀行に似たような存在であります。そこで私の三十数年の経験を申し上げますが、その間に北海道におきまして、いわゆる利権屋さんのために事を二、三にされたという経験は一つも持っておりません。今日時世がだいぶ変っておりますが、公庫理事者となる、公庫を経営される人間さえしっかりしておれば、こういうことは問題じゃないと思います。私は自分の経験から、そのような心配はいたしておりません。
  11. 稲葉秀三

    稲葉参考人 簡単に私の意見を申し上げます。私は、先ほど北海道に対する基本的な国の施策がきまってないじゃないか、こういうことを申し上げたのでありますが大まかに申しますと、次のような考え方を、基本的にはっきりする必要があると思います。  その一つは、北海道は後進未開発地域だといわれておりますけれども、先ほど申しましたように、道民一人当りの所得は決して内地平均所得と変っていない、内地よりもプラスになっているという事実があります。だから、現に東北あたりと比べますと、大体道民一人当りの実質所得は、三割あるいは二割見当高いという事実は否定することができません。そうすると、つまり並行作業をやるために、北海道の道民生活が非常に劣っているから、一つ北海道をやれということなら、これは別の考え方が必要です。しかし将来は北海道経済を非常に大きくして、人口も吸収して、そして東北や新潟その他の次、三男坊問題の解決も一つやっていこう、そういうことであれば、考え方はまた違います。そういうような考え方が、実は混同されているというのが現実だと私は思います。だから、もしも将来のためにやるとするなれば、はっきり言えば、もっと大きな投資をやって、そのかわりにそれを楽しむために、内地のほかの府県は公共事業費も減らす、あるいはほかの府県に対するところの融資も減らして、北海道へ持っていこうということになる。それから、黒沢さんは言われておりますけれども、私が五カ年計画の実績やその他を各部で調べた限りにおいては、非常に多元的で、複雑で、投資の金額に対して、十分国民に報いるだけの投資効果を、現実の北海道では上げていないと思います。それを港湾について、道路について、漁港について、もっと今の金をきちんと使うというやり方をすれば、もっと効果があります。それを国民にはっきり示すべきであると思います。もしもそれだけの条件を保証されるなれば、また国会がそれを認められるなれば、そういうこともいいでしょう。しかし今の行き方は一つ北海道もやりたい、それに便乗して東北もやりたい、何もやりたいというのです。そうすると、結局は国民の税金負担を多くするとか、また金融のしりぬぐいをするとかいうことになってしまって、うまくつじつまが合わないような形になってくる。だから、基本的にそのどちらの方向で北海道をやるのかということを、この際おきめ願いたいというのが第一点。  第二点として申し上げたい点は、それでは、どういうふうにすれば北海道人口を吸収できるかということであります。現実に北海道人口は、大体二十年前に比べて五割増加をしておるわけですから、北海道は、全国平均三割よりも、人口増加があるという事実は否定できません。しかし現実に北海道では、今自然増加と社会増加とを合せて十万人であります。三、四年前は、北海道宝庫だといわれながら、北海道人口は社会的にはよそへ移動しておったということが現実であります。そして工業をやれば、どんどん人口が吸収できると申しますけれども、現実に北海道では、私もこの間行って参りましたけれども、だんだんと生活の格差が多くなっておる。失業その他がだんだん増大している。四百八十万人の人口をもってすら、現実にそういう事態が北海道においてあるという事実も、私は否定はできません。  またもう一つ申し上げたい点は、北海道に工場を起す場合には、立地条件等いろいろの形から見て、内地よりも相当高度の産業を育成しなければならぬということです。中小企業であれ、もっと機械化された、能率化されたものでなければならないと思います。それをあまりお考えにならずに、やれ水産物がいい、油がいいとなると、二百も三百もどんどん工場ができる。それを道庁も開発庁も、また産業の企業者の方々も指導されていないで、現実に北海道で資本が浪費されたという事実を、私どもは否定するということはできないのであります。そうしてまた、そういったような事実が今後にだって、ないとは限りません。現地の方々には、黒沢さんの今のお話のように、わしらは内地から搾取されているのだ、というような植民的なお考えが多いと思いますが、しかし私たちは、北海道も立ち、内地も立つという形において、この問題を解明したいのです。それには、黒沢さんのようなお考えを持っておれば、どうも北海道だけの北海道であるということになり、北海道も立たないし、内地も立たないということになりはしないかという事実を私はおそれます。そうすると、こういったようなお金はできるだけ能率的な企業に使って、そうして北海道の中でお金が滞留して、デフレで中小企業がどんどんつぶれたという事実には、現地も一つ反省してもらう、そうして系列の多い中小企業であっても、もっときちんとした工場を育成する、こういう方向へ流していく。そうしてあとは、民間資金において裏打ちをしていく、こういうことでなければならぬと思います。私は、こういったような公庫や公団に類するようなところから出る金は、結局国民の金だと思います。だとするなれば、そういったような使い方を北海道方々にも十分考えてもらって、そうして、将来内地の人を引き取るなり、あるいは高い所得を持って、一つ税金で内地の社会保障のお金を出すとか、こういったような気持でやってもらいたい。昔がよかったのに今はだめだから、一つ昔並みにせいということは、日本のこれからの再建の上で必ずしもいい考えだとは私は思いません。
  12. 三宅正一

    ○三宅委員 三先生からいろいろ有効なお話を伺ったのでございますが、私は、黒沢さんを中心にしてなおお伺いしたいのであります。第一に、基礎の調査にもっと資金を出す面につきましては、私どもちっとも異議がありません。たくさんの金をつぎ込みまするためにはやはりこれがほんとうに根本でありまするので、この点につきましては、私ども社会党に籍を置いておりまするけれども、それこそ超党派の関係において努力いたしますることに、何らの異議はありません。幸いにいたしまして、たとえば北海道開発審議会というものがあり、それから国会の中では、自由民主党の方も社会党の方も、それぞれの党派が北海道開発の特別委員会を作っているわけでありまするから、こういう点については、できるだけの努力をいたしたいと私は考えます。同時に、私どもは、最初この委員会が、北海道開発特別委員会という名前で作られようといたしまするのに反対をいたしました。北海道の重要性はだれよりも認めるけれども国土総合開発の一環として考えなければ、二重投資も出てくるし、ほんとうにいけないという意味で、われわれの方で、北海道開発特別委員会ということでなしに、国土総合開発委員会にしてもらいたいということで、そういう線が取り入れられましたことを非常に喜んでいるわけであります。現内閣におきましても、御承知通り経済再建五カ年計画というものを作りまして、国民所得の増加と人口の増加と貿易等の関連におきまして、全体として、たとえば漁港の整備に幾ら金を出す、道路開発に幾ら金を出す、それから社会保障に大体何パーセント出すということをきめているわけであります。私どもがちょっと調べてみましても、たとえば廣川委員会できめました漁港開発の金をその注文通り回しますと、五カ年計画で全国に回すのが一つもなくなつちゃって、マイナスが出てくるという線も出て参りまするので、いかに重要性があるからといって、総体の関係において観察しなければいかぬことは、申すまでもないところであります。そういう意味におきまして、私は基礎調査等においてあらゆる機関が協力いたしまして、もっと資金を出すという点については同感であります。しかし黒沢さんの御意見、それから永田さんの御意見について私どもの了承できない点は、私どもがこの公庫法案で危惧を感じておりますのは、基礎的なプランがないのに、一応八十億の金を出すことを予定している。その金はある意味においては小さい金でしょうし、ある意味においては大きな金でしょう。それで、今やもう北海道に利権屋の食いつく余地はないと言われましたけれども、敗戦後の惨たんたる日本経済状態を見て、国が貧すれば貧するほど、小さいものをいじくって食いものにするわけであります。従いまして、私どもが心配をしておるのは、専門家としてどういうふうにごらんになっているか、たとえば資金運営に関する委員会のようなものでもないと、変なところに使われてしまう。少くとも善意であっても、基礎調査のうまくいっておらぬところに使われてしまって、浪費される危険性が非常にあるのではないかということを心配するのであります。われわれも八十億なんという金でなしに、もっと大きな金を将来出しますること、毎年ふやしていきますることについては、一つの異議はないのでありますがそういう点がこの公庫法案については少し欠けているのじゃないか、私は黒沢さんなり永田さんなりから、こういう点はむしろ法案を修正でもした方がいいんじゃないか、そうしないと、長きにわたって北海道開発に金が逆に出ないことになるのではないか、というような点についての御指摘があるのではないかということを実は期待をいたしておったわけでありますが、そういう点についてはどうお考えになるか、それを一つ承わりたいと存ずるのであります。  黒沢さんの言われまする通り内地における開発北海道開発とでは、ほんとうに有効にやりますれば、黒沢さんの言われた通りだと思うのです。それは経済効率だって何だって、大きなものが北海道にはたくさん残っておると思いますから、われわれはそれにうんと金をつぎ込むことには一つも異議はないし、それから、今日のように東京人口がもうしばらくで一千万になるというような、こういうばかげた人口の配置なんということはあり得ないのだからして、われわれは大きな立場に立って、人口の分散などについてもほんとうに考えなければならない、産業の分散などについても考えなければならない、過大都市の抑制についても考えなければならないので、こういう点については私は基本的な立脚点は黒沢さんと違わないと思うのでありますが、ともかく今の法案自体についてわれわれが心配をするのは、こういう機構でやられましたならば、金の浪費と乱費と利権が必ずくっついてくる。それは逆に、将来の北海道開発を危険に瀕せしむるものであるという危惧が、私どもとしてはまだ去らないのであります。この点一つ専門であります黒沢さんと永田さんに、もう一ぺんお伺いをいたしたいと考えております。
  13. 黒沢酉蔵

    黒沢参考人 非常に大事な点に入ったようでありますが、先ほど来の私のはほんの概論でありまして、これはただ北海道を正しく認識していただきたいという熱意のあまり申し上げたのであります。今の御質問は、この公庫が誤まりなく発達するためには、機構上に何か不備を感ずるのじゃないか、何かもっと公庫の機構についての内容に入ったようでありますが、実は開発審議会永田さんが中心となりまして、そしてこれは全く専門家だけ集まったのであります。日銀の副総裁であるとか、開銀の副総裁であるとかいうような、全く中立的な実業家を五人ほど選びまして、それで案を立てたのでありますが、そのときには経営委員会というものを置いて——これは公社案であります。公社案の場合には、経営委員会を置いてやる。そのほかに執行機関理事長以下理事がやる、こういう案であったのであります。これが私どもの建議をいたしました内容であります。開発庁はこれをお取り上げになりまして、いろいろ御審議の結果、公社という名称を公庫と改めたわけであります。その他若干変っておりますが、そして内容を見ますと、先ほど永田さんがおっしゃったように、われわれの立てた案の最小限度のところで食いとまっておるように思うのであります。すなわち管理委員会というものが一方にできておって、そういう機構で、管理委員会相当な権限を持ち、一方、役員も理事長以下理事がおって、執行機関として権限を持つ、こういう内容であったのであります。これを私ども審議をいたしまして、満場一致で、これは社会党の諸君もおられたのでありますが、みな賛成されてこれを答申したのであります。ところで今日出ておるこの案を見ますと、管理委員会というものは消えておるのであります。これについて私が開発庁に参ったときに、開発庁の次長からお話を承わると、法制局や大蔵省の意見としては、そういうように二つの機関があって、どうも責任の所在が紛淆する、ぼやけてくる。だから、この種の公庫には、そういう一方において管理委員会があり、一方において理事長以下の役員があるというような制度は、どこもいたしていない。これはどうも責任の所在が明確を欠くという意見であって、そう言われればそう思って、われわれ残念ながら削ることにした、こういう御報告があったのであります。私はこれを聞いて、なるほどもち屋はもち屋でいろいろな点から考えて、やはりそういうものかな、これは傾聴すべき有力な意見だなと思いました。しかし、一年以上もかかってでっち上げた私どもの案としては、何となくどうもさびしいような、たよりのないような点も感じられたのは事実であります。しかしこれは政府責任を負うて、もって私どもの建議を、とるべきものはとり、落すべきものは落したのだから、これ以上われわれはかれこれ言うことはない。もし諮問でもされるならば、これは委員会において十分審議してお答えすることはやぶさかではありませんけれども、そういうことでなしに、これはまた実際の問題として、そういう意図もなかったろうと思います。それでこの点に対しては、私は今ここで審議会会長としてそのよしあしを申し上げることは、少し行き過ぎではないかと思う。これは政府責任において今のような法案ができたのでありますから、私は、いろいろな法制局の法理上のそういう考え方も、やはり有力な一つのものであろう、しかし、そう思うだけでありまして、私の今の立場としては、これに対して可否を申し上げるのはどうか、こういうふうに考えておるのであります。
  14. 三宅正一

    ○三宅委員 そこで私は、永田さんにも関連してお伺いしたい、永田さんは北海道拓殖銀行の理事者として長いことやってきた経験で、間違いないようなことを言っておられますが、私はまず第一に根本的な性格論からお伺いします。普通の金融機関でありますならば、事業をやりたい、金がほしいというところに貸してやるのですから、これは金を集めて待っていればよろしい。そうでなくて、今度の八十億の金を出してやりますのは、一つ北海道に必要な産業を育成しようということでしょう。そうだといたしますと、その基礎になりますところの、たとえば木材糖化工業としては、技術的にはもうここまで来ているのだ、あと資金が足らないだけだという話でありますならば、企業形態をどういうふうにしてやらせるかというような指導をいたしまして、それを作らせることが必要なんであります。それからまた、たとえば低品位炭の問題にいたしましても、そういうケースが出てくると思うのであります。あるいはチタン工業を興すということだって出てくると思います。ところが、私よく知りませんけれども、この法案が通っても、たとえば理事長とかいろいろなものは大体金融専門家が入る。そこで、たとえばアメリカのTVAで理事者が全責任を持ってやるということについては、一つのものについてちゃんと基礎的調査ができているから、フリー・ハンドで一つやらせようというので、人格を信頼し、能力を信じてやらせるということになる。ところが、大蔵省出だとかなんとかいうような金融専門家だけがおって、技術のことは何もわからない、基礎調査はできておらない、そして一年のうちにこれだけ使わないと、また来年金が出ないというようなことでやられると、根本的に私は間違いだと思う。そういう意味におきましても、たとえば原子力委員会などで、湯川博士だとかその道の権威者が入ってやられるということであるならばわかるが、銀行という観念において、金を扱うということについてはエキスパートであるけれども、技術も産業もわからないような者がおって、そして基礎調査もできておらない、それで八十億使おうということが先に立って、そこに政治力が加わって、それが食いものになってしまうということになると、私ははなはだおかしいと思う。だから、われわれ政治家立場でありますと、早く開発したいという理念が先に立って、ややもするとエラーをやるかもしらぬけれども金融専門家である永田さんあたりが、われわれがそういう点を心配するのに、あなたの方で何も心配なかろうという参考人としての御意見は、おかしいのではないかという感じが私はいたすのでありますが、永田先生、いかがでありましょうか。
  15. 永田昌綽

    永田参考人 基礎調査ができていないということは、お説の通りで、まことに遺憾であります。こういう公庫のごとき機関が、ある一つの事柄を取り上げますためには、基礎調査参考になると私は考えております。私どもの従来の経験もまたそうでございます。しかし、こういうものを運営されます理事者の方々は、たとい、いかなる基礎調査がありましても、みずからの機関、みずからの目で見、みずからの手でもって一つ調査をしなければ、判断はできないのであります。従って基礎調査があるということは、非常に能率を高め、具体的の調査を早からしめるという点におきましては、大へんに効果のあるものであるが、ただ、それがないために、今後公庫理事者がこれを運営するというのには、大へん時間と手間がかかるだろうとは思います。その点で基礎調査がないということは、非常に遺憾なことでありまして、あればあるほどいいが、しかし、あっても、やはり直接の自分の調査というものがなければ、結論が出ないのであります。しかし能率は非常に下るということになると思います。  それから、いわゆる利権の問題でありますが、これは私の体験を申し上げておるのであります。どうもいろいろと御懸念がおありのようであります。そういうことは私どもも考えましたが、先ほど黒沢さんからもお話がありましたように、審議会が建議をいたしましたものには、特別の管理委員会とか経営委員会というものがつけてあります。それはどういうことであったかと申しますと、先ほども申し上げましたように、出資重点を置く考え方というものは、下手をすると利権が入るおそれがある。金融の点においては、何ぼ公庫が普通の金融ベースよりは幾らかグレートを下げたものをやると言いましても、金融のことだけはそう懸念はないと思いますが、しかし出資ということにおいては、事と場合によっては、これは結論が早く出ない仕事でありますから、そういうこともあるいはなきにしもあらずであります。そういう考えもわずかにありまして、この委員会というものが考えられました。しかし、この経営委員会とか管理委員会というものをつけることを構想いたしましたのは、出資によって北海道にそういう産業を新しく興そう、あるいは振興開発をやろうという場合には、理事者だけの考えよりも——あの委員会に参加を願う人は、日本産業界において最もすぐれた産業人であり、北海道開発ということにつき非常に明察達識の人の知識をあそこにつぎ込もうという考えで、あの委員会を考えております。この委員会というものは、一面には非常に積極性を持っておるが、二面においては、三宅さんの仰せられますような出資に関する多少の懸念に対して、これをチェックする力もあるかと考えたのであります。しかし今日ここに出ております出資というのは、もちろん今後も行われましょうが、この案によれば重さが非常に小さくなっておるようであります。どちらかというと、金融機関的のものであります。金融機関の性格におきましては、それほどのものをおつけにならなくても、要するに問題は、この理事になる人であります。理事になる人があやふやでは、どうかと考えております。  それからもう一つ、これを銀行経験者がやるということになれば、産業のことは何もわからない、かように御断定になりましたが、これが果して正しいかどうかということにつきましては、私は多少の疑問を持っております。これをみずから執行しなくても、金融機関の人間はたくさんの産業に触れまして、産業に対する批判力を持っております。産業の批判力を持っておれば、この仕事はできるのでありますから、そういう点においては、必ずしも御説の通りには賛成をいたしかねるのでありまして、この公庫に関する限りは御心配はなかろうと思います。
  16. 黒沢酉蔵

    黒沢参考人 ちょっと三宅さんに対して一つ落したことがありますから、追加いたします。基礎調査の問題であります。どうも観念的に基礎調査と申しますと、範囲が非常に広いのでございまして、ピンからキリまであるのですが、私どもの言っておる基礎調査というものは、もちろんあらゆる面に対する基礎調査を含むものでありますけれども、特にたとえば地下資源調査をするとか、主として資源の基礎調査ということが重点になっておるのであります。ところで現在まで、それでは基礎調査が何もなかったのかと申しますと、そうではありません。これはずいぶん長い間かかって、不十分ではあるが、北海道庁時代から今日までにおいて、ある程度の調査はできておるのであります。決して何もないのじゃありません。いわんや経済に関する調査事項に対しては、相当なものはやはりできておるのであります。ただ、われわれの要望しているような基礎調査がないという意味を私は申し上げなかったので、大へんに誤解があったと思いますが、何もないじゃないかというようなものではありません。従って、きょうここに出ております北海道開発公庫が運営するくらいの基礎調査は、幾ら北海道貧弱なりといえども、道庁初め各方面でできておりますから、これは御心配はそうなかろうと思います。この点は、私の観念的な基礎調査に関しての発表が少し誤まっておったかもしれませんから、これはつけ加えて訂正しておきます。どうぞ御了承、願います。
  17. 三宅正一

    ○三宅委員 そこで、私は黒沢さんにその点からお伺いをいたしたいのでありますが、確かに私も、資源調査などはある程度いっているのではないかと思います。今度のねらいは、ともかく第一次北海道開発計画におきまして、道路だとか、港湾だとか、いろいろな産業基盤を育成する基礎的な施設を国の投融資でやってきた。それで今度は第二次産業というものを興さなければいけない。こういう立場ですから、そこで北海道のようなところで第二次産業を興しますについて、たとえば木材糖化工業というものは、ほんとうに成功したら非常に大きなことだと思いますけれども、これなども、私どもの聞いておる範囲におきましても、二、三カ所の機関で中間試験の程度までいっているそうでありますが、まだそれで企業として大丈夫だというところまでいっておらない。ほんとうなら、そこへもうちょっと金をつぎ込むことが、第二次産業として育成する上においても必要であって、これが足らないのではないか。あまり急いでしまって、わあわあ言ったから、やらなければならぬというので、急いでやったならば、それは失敗しやしないか。たとえば地下資源の問題にしましても、チタン工業を興すとかあるいはガス工業を興すとか、低品位炭を使うとかいってみたところが、これは品位の低いものを経済的に活用するためには、相当な科学技術というものが入らなければ、できない。その点でも北海道が非常に努力しておることは知っておりますけれども、まだ田の援助は少し足らないと思うのであります。そこへもってきて、あわててこれから何十億つぎ込ませる限りは、企業の形態については相当考えなければいけないと思う。たとえば、都市にガスを回すような工業を興すとすれば、これなどは市町村などの公営形態にした方がいいという場合もあり得るし、そういう点についても、私はいやしくも国の金を硬いまする限りにおいて、企業が存続し、国に迷惑をかけぬようにするという意味においては、まだ足らぬと思いまするので、そういう点を、足りないので、あわてて金を使うというような態度をとらずに、準備が引きてから一ぺんに二百億つぎ込んでもいいから、あわてて使わぬという意味において、理事者だけにまかせることは非常に危険だと私は思うのであります。  それから、黒沢さんもとっくにお気づきになっていると思うのでありますが、たとえば農業団体の経営という形において酪農事業相当に発展した。テンサイ事業が発展した。それをまた株式会社の形態で一つやらせて、その企業がかえって押えられるというようなことがあって、企業の形態としてまずいような形が入ってきたのでは困る。従いまして私は、理事者が全責任を持ってやるにしても、管理委員会などがあって、たとえば農村関係の権威者としての黒沢さんが入られる、道知事も入るとか、それから科学者も入るということにいたしまして、大体金融の面からは大丈夫だが、技術の面からはどうだというような点を、日本的視野、むしろ世界的視野に立って判断するぐらいのことを委員会がやることなしにやることは、非常に危険じゃないか。いわんや、政府が任命することになりますから、変な者がなりまして、浪費でもしましたら大へんじゃないか。私は、この法案自体についていえば、そこがポイントじゃないかと思う。われわれの方も、われわれの支持している知事が、とっくに、こういう公庫のような金庫はぜひ一つ置いてもらいたいということを、意見として出していることも承知しておりますし、弊害のない形でやれるのならば、これはもうやらなければならぬという熱意は持っておるのですが、万一そういう点で失敗をいたしますれば、あと北海道のためにならないということを懸念して、私は言っておるのです。私がそんなことを言っておるのでなしに、そっちの方からそういう議論が出てくるのではないか。国会で考えろという意見が出るのじゃないか。さっきから永田さんあたりから、大丈夫だ、大丈夫だというお話ですけれども、私はどうもその辺がおかしいと思いますが、いかがですか。
  18. 黒沢酉蔵

    黒沢参考人 三宅先生の、実に北海道に同情ある、しかも将来を非常に憂慮されてのお話の点に対しては、ほんとうに心から敬意を表します。その後者の機構の問題に対しては、先ほど御答弁申し上げましたように、私は審議会長としては軽々に、ここがいいとか悪いとか、どうだとかということを申し上げるわけにいかない。これはやはり立場がありますので、その点は御了承を願いたい。が、基礎調査という点について、今木材の糖化とか、いろいろありましたが、これはむしろ北海道でなくして、日本のそういう産業、科学の基礎調査がおくれておる、こう言うた方が私は妥当かと思うのであります。そこで、これを北海道開発庁だけでやるといったって、できるものでありませんし、むしろ、どうしても経済企画庁あたりが、工業技術院あたりが、十分御研究下さる性質のものでないかしらんと思うのであります。従って、そういうまだ若干疑点のあるようなものに対しては、おそらくどなたが役員になられても、投資をするなどということはいたさぬのじゃないかしらん。つまり、これなら大丈夫だということだけになさるのであろうと思うし、しかも、そう言っては少しおかしいのですけれども、ここにあるような金額ならば、これはもう間違いがないという事業だけを厳選して投融資いたしても、私はできるんじゃないか。ただし、これは永田さんもおりしゃりたように、理事者その人によるのでありまして、将来のことは何とも申されま出せんが、北海道調査だとか、あるいは実態だとかという面から見れば、結論において私はそう心配したものではない。しかも官庁が直接監督され、それをまた国会が監督されておるのでありますし、その懸念をされることはないのではないかしらん。ただ私どもは法制のことには知識が暗うございまして、なるほど責任者が二カ所にあるというやり方は、かえってうまくないという点に対しては、実は私はそういう考え方は起きなかったのであります。私ども立案した当時、そういう点で若干のまだ何はありますけれども、大体において心配ないんじゃないか、こういうことを申し上げて御了承をいただきたいと思います。
  19. 廣川弘禪

    廣川委員長 小平さん。
  20. 小平忠

    ○小平(忠)委員 若干お伺したいのです。三宅さんから、全般的な、さらに基本的な問題について御質問がありましたので、私はきわめて具体的な問題についてお伺いしたいと思ったのであります。実は私のお伺いしたいことは、この公庫の運営を適正かつ合理化ならしむるために、昨年券以来いろいろ審議会でも議論して参りましたが、その当時、参与会から経営委員会に変り、さらに管理委員会になっておったものが、この原案にはないという点においてお伺いしたがったのであります。この点につきましても、当時の小委員長である永田さん、開発審議会会長の黒沢さんからも御意思の御発表があったのですが、さらに私はこの点につきましてお伺いいたしたいと思います。  最初に永田さんに、特に公庫法案が国会に上程されるまでのいきさつからいって、北海道産業振興開発公社の小委員長という立場でまとめてこられた方でありますから、私はお伺いしたいと思うわけであります。実は最初公社の案のときには、いろいろ議論がありまして、権威者が集まって五人の小委員の方が作られた。その際最初は参与会というのがあったわけであります。この参与会というものについて、いろいろ議論されました結果、これはどうしても経営委員会がいいのである。そこで当時の経営委員会の性格というものの中に、この経営委員会は、公社の業務の運営に関する重要事項を決定する機関である、こうきめつけているわけです。そこでこの重要事項を決定する機関となった場合に、この経営委員会理事長というものの権限はどうなるのか、混淆しはしまいかということを、この速記録の中にもありますように、私は小委員長であるあなたにお伺いしているわけです。ところが、それは法制局とも相談をし、いろいろ国鉄その他の公社の案とも照らしてみると、これは決して差しつかえないのである。これは人の運営の妙を得ればいいのであって、差しつかえないのであるということから、審議会では満場一致六月に決定をして、政府に建議したわけであります。ところが、その後自民党の廣川委員会ができ、政府与党の方でも検討せられて、この北海道産業振興開発公社案なるものが、政府の方から、建議があったけれども、いろいろ検討した結果、別冊のように北海道開発公庫にいたして、その経営委員会は今度は管理委員会に名前をかえて、そして再び諮問があったわけであります。このときも一応議論になりました。しかしその管理委員会のときには、経営委員会と若干性格が変りまして、いわゆる議決機関というものが削られているわけであります。これこれの事項については管理委員会の議を経なければならぬというふりに、非常にこの運営の方法が変って参っております。そういうことから、当時審議会といたしましても、この考え方についてやはり満場一致賛成を見ておるわけであります。特に重大なことは、政府並びに与党である自民党も、その管理委員会は、従来の公社案のときのような議決機関という字句が削られて、すなわち、重要事項については議を経なければならないというふうに若干変ってきておることもありまして、一たん政府からそういう形で実は諮問があった。そこで私は、公社というものと金融機関というものとはだいぶ変ってきているから、永田さんはまあいいではないか、こうおっしゃられたのでありますが、私はどうもその点理解できないのであります。何か特別な事情でもありまして、この管理委員会がない方がいいのか、当時のお考え方と、今日何か理由があってお考え方が変られたのか。その点を当時小委員長としてまとめられた立場から、特に永田さんにお伺いいたしたいと思います。
  21. 永田昌綽

    永田参考人 お話通りでございまして、経過から申しますと、小平さんも委員であられましたが、お互いに初めは諮問機関という考え方から、参与会という名前を作った。だんだん御討論が進みまして、決議機関ということになりました。しかしそれは諮問委員会であろうと、決議機関であろうとも、いずれもねらっておるところはどこであるかというと、大切なる国費を使うのでございますから、国費を使うために最も有効適切なように、委員の方々には、先ほども申し上げましたように、産業界なりあるいは民間の最も達識の士をそこに呼び入れて、公庫の運営及び北海道における産業の振興開発に十分なる意見を聞こう、そうしてまたきわめて軽い意味においては、弊害も除こう、こういうようなことが実質的なねらいであったというふうに、私は考えております。ところが、その後ただいまお話がありましたような経過をとりまして、そうして今日出ておりますのは、そういうものよりも違った、金融的のものが相当重きをなすような案になっております。そういたしますと、先ほど黒沢さんからお話がありましたが、責任の帰属を明らかにするという点において、そういうことはいかぬという法制上の議論があるそうであります。それもまことにもっともなことだと思いますが、私は実質論として、金融機関としての働きをするという場合には、その管理委員会とか経営委員会はくっついていなければならぬものではない、こういうふうに感じておるのであります。でありますが、今後この財政出資の方が多くなって、非常に多額の出資をして、北海道民間資金を呼びつけながらこの活動をこの機関がやるんだというような状況になりますれば、私はないよりはある方がいい。しかし今委員会というものがなくなっておるのを、私は故意に弁護しておるんじゃございません。それは先ほど来申し上げますような意味合いで、大いにこの公庫が動くならば、ある方がいいと私も思うのでありますが、ここに出ておる案ならば、これはもう金融ということが——少しグレードの違うものではありましょうけれども、大体金融中心の動きのようでございますから、それならば、それほどのことは、ぜひなきゃならぬというものではないであろうと私は感ずるような次第であります。
  22. 小平忠

    ○小平(忠)委員 一月十六日に開発審議会の会長から北海道開発庁長官に答申いたしております。この案は公社案ではなくて、公庫案なのであります。このときは、会長も、それから参考人として御列席の永田さんも、この案にはむしろわれわれは引きずられて、一つ社会党という党の立場もあろうが、これはぜひ通さなければならないからというわけで、これに賛成をされたわけなのであります。これは決して公社でないのです。金融機関的性格。もちろんこれは金融機関である。その公庫の案に対しまして賛成されたのでありますが、それでは、ほんとうに賛成されたんじゃないというふうに私は解釈せざるを得ないのです。  それともう一つは、審議会の会長である黒沢さんに、この機会にお伺いいたしたいのでありますが、三宅さんもただいま指摘されたように、北海道産業振興、北海道の総合開発を推進するためには、国家財政の現状からいって、やはり一般会計からの公共事業費その他食糧増産費等の北海道に対する財政投資の面からだけでは足らないという意味から、こういう金融機関を作ってもらいたいということは、現に北海道の知事からも、道議会の議長からも、要請があるわけであります。ですから、私たちはこの公庫が適正なる運営ができて、国会に上程されて、審議されて、一日も早くこれを通してやるということには、決して反対するものではないのであります。ただ問題は、過去の例なり北海道の現状から、再びこういうようなことのあやまちがあった場合に、今後の北海道の総合開発に支障があってはいけないから、やはりできるだけの、万全の策を講ずることが必要だということにおいて、論点をこの経営委員会に集中されておるのではなかろうかと私は思うわけであります。現にこの公庫の前身である公社時代からも、昨年の春からも、終始一貫非常に長時間を費して議論されました。これは審議会としてもやろうじゃないか——当時の開発庁長官である大久保さんもこれを聞いておられ、さらに現在の正力長官もこの意思を反映されて、政府みずからもそういう気持になられたのです。与党の方もそういう気持になられた。そして審議会にまた重ねて管理委員会を置こうという形において、これをまたさらに諮問したわけです。ですから、そういう意味において、私は審議会というものは非常に厳正であって、中立でなければならぬと思うのです。会長も常にそういう見地に立って審議会の運営をされてきておるのであります。私は本日のこの委員会において、参考人として御出席された黒沢会長、あるいはこの案の前の案である公社案の起草委員長というか、小委員長であった永田さんからは、むしろ積極的にその発言があるのではなかろうかと期待しておりました。ですから、これは今後の運営にきわめて重要な問題であります。このことの発言は、会長という立場に非常にこだわって、非常に立場々々ということをおっしゃられたけれども、私はやはり今日までやってこられた信念と、そのお考え方もとにおいて、ほんとうにあの当時審議会でやられたことは本心ではなかったというのでは、権威がないと思う。黒沢さんから率直な御意見を拝聴し、またあらためて永田さんからも承わっておきたいと思うわけであります。
  23. 黒沢酉蔵

    黒沢参考人 審議会は、一面においては、いうまでもなく諮問機関であります。一面においては、重要なことを建議することもできるのであります。しかし、これはどこまでもただそれだけの機関でありまして、いうまでもなく行政上の責任政府当局でありますから、この審議会が論議を尽したことを、とると、とらざるとは当局の御自由で、当局の責任において、これはとってやろう、これはこう修正しようということで、それでいいのだ、それが正しいあり方だと思います。ですから、私どもは、法律に命ぜられておるところの職能の範囲において、最善を尽したわけでありまして、そこに何らのこだわりも、何らの技巧も虚飾もありません。ただ最善を尽した、こう思うだけであります。あとは政府当局の責任において——全部とられる、修正される、これはその責任者がやることでありますから、私はそれはそれでよろしいのだと思う。今日ここに出ておるもののいきさつについては、そこに当りまえのことが当りまえにだんだん運行されてきたのだ、こう思うのであります。あとは、国会が最高権威をもって適切なる判断をすれば足りる、こういうふうに私は思っておる次第であります。
  24. 永田昌綽

    永田参考人 私はこういうことに考えております。公社という名前が公庫という名前に変りましたのは、どういうわけであるかということを私は当局に伺ってみました。ところが、日本の現在の立法の慣例といたしまして、みずから事業を直営するものは公社という、そして直営せざるものは公庫というのだ、これが日本言葉の使い方だ、こういうことであります。私は公庫というのは。直ちに金融機関であるとは考えなかった。ただ当時のわれわれの案は、直営をしないのでありますから、直営するものは公社である。直営せざるものは公庫というのだ、これが慣例だということに承知いたしました。  それから、ただいま小平先生からお話がありました公庫という言葉は変りまして審議会に諮問が出ましたときには、資本金は五十億、債券発行は五倍、あの案であります。ああいう案でありますならば、公庫活動は、今日私がたびたび申しますように、融資というよりも、出資という面に非常な重さがかかるであろうと私は考えた。ですから、出資ということに非常に重さがかかって、一つのところに何十億の出資をするという場合には、もちろん練達たんのうなる理事者がおありでありましょうけれども、しかしながら、それよりももっと民間産業人、その他からも知識を注入する組織を作っておった方がよいのではないか、かように私は考えておりました。ところが今日出ておりますのは、資本金十億になって、出資活動は圧縮されておる。債券は二十倍の発行になって、非常に金融機関的なにおいが強くなってきておるということになると、金融のウエートが非常に重くなってしまいますから、それならば——当時考えました前の案は、資本金が五十億、債券発行力は五倍、しかもその本社東京にある、こういう一体の関連した案ができたのでありまして、その案が少し変っておるのでありますから、ぜひなければならぬということは、今の段階では、ないのではないか、こういうのでありまして、これはないのが当然だ、ないのがよいと言って、決して弁護しておるつもりではありませんから、どうぞ御了承を願います。
  25. 小平忠

    ○小平(忠)委員 これ一点で終りますから……。黒沢さんから、審議会は諮問機関だから答申するのだ、そのあと政府がそれを受け入れる、受け入れないということは、政府の権限だ、これはその通りでありまして、その通りのことをおっしゃったのです。先ほど三宅さんの質問に答えられておりますから、私が重ねてお伺いする必要はありませんが、ただ非常に大事なことは、今までの質疑応答を通じまして明確になってきておることは、公社金融機関とだいぶ変っておる、だから、管理委員会とか経営委員会というのは必ずしも置かなくてもよいのじやなかろうか、こういう意見だと思うのです。これはわれわれが審議会審議いたしました当時、公社案のときは決議機関としてしまっておったものだから、それで私も、いわゆる理事者というものと、この経営会というものの混淆、混同はしないかということについても伺ったのであります。それが今度は開発公庫におきまして、それが管理委員会となり、議決機関という形に変ってきておるわけであります。ですから、何も混淆はいたしませんし、現に日銀におきましても、政策委員会というものがあるわけであります。実は審議会の答申に対して管理委員会をけることについては、黒沢さんが開発庁に行かれたときに、次長から、実はこういうわけで法制局からも、大蔵省からも、どうも管理委員会というものと理事者というものは、いわゆる権限、こういった面において非常にまぎらわしい、混同するようなことから、これはやめだということを口頭でお話があったということであります。これについては、私、また次の委員会において、大事なことでありますから、明らかにしたいと思いますが、最後に黒沢さんにお尋ねいたしたいのは、そのいきさつなりお考え方はわかりました。ただ、この公庫法の質疑も進んでおりまして、近くどちらかに態度をきめなければならぬという段階にきております。そこでわれわれは、この管理委員会あるいは経営委員会というものを重要視いたしておるわけであります。これは北海道開発公庫でありますから、やはり北海道の道民の意思なり、あるいは北海道の知事とか議長の意見なり、さらに学識経験者を網羅して設置されております開発審議会意見なりというものをわれわれは大いに尊重していきたいと思う。それで、黒沢さんは現にその審議会の会長であられるわけですが、その見地から、今日の開発公庫に管理委員というようなものがあった方がいいのか、あるいはない方がいいのか、それを一つお伺いして、私の質問を終りたいと思います。
  26. 黒沢酉蔵

    黒沢参考人 これは先ほど答弁した通りでありますが、開発庁長官から正式の諮問を受けますれば、開発審議会を開いて慎重審議して、その結果をお答え申し上げたいと思います。ただそれだけでございます。今私の意見だけをここであれこれ申し上げることは、ちょっと行き過ぎではないかという懸念を持っておりますから、差し控えたいと思います。
  27. 小平忠

    ○小平(忠)委員 会長は政府出資十億というのは少い、これはふやした方がいい、こういう意見を出しておられるわけです。それで審議会で……。(発言する者あり)何かいろいろ言っているけれども、君たちだって賛成して出しているのだろう。全会一致で審議会で決定しているものを、今度は削ったわけです。だから、政府出資が少いという御意見があるならば、管理委員会というものを置いた方がいいのか悪いのかという意見を述べることについては、ウエートも考え方も同じではなかろうかと思うのでありますが、その点は会長の立場というようなことをおっしゃいましたから、あえてそれを追及しょうとは思いませんけれども、非常に大事な問題でありますから、審議会の会長という立場において今後何分の善処をされんことを強く要望して、私の質問を終りたいと思います。
  28. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 関連して。一言稲葉さんに御意見をお伺いしたいのでありますが、今までの委員会参考人がお述べになったこと、また質疑を通じてほぼ見当もおつきになったと思うのですが、北海道開発公庫法審議に当って、この管理や資金計画、業務方法等に関して、どのような方向でこの公庫を運営していったらよかろうか、というようなことに焦点がきておるということをお感じになったと思うのです。先ほどの稲葉さんのお話の中にも、北海道だけで開発を考えてもいかぬ、日本全体の計画から考えてこなければならぬという意見をお述べになりましたが、私も痛切にそれを感ずる次第でございます。国土開発法の方に、全国計画を立てるという規定もあるようでございますが、まだ全国計画が樹立されておらず、従ってその全国計画北海道なり東北なり九州なりにおろして、そして北海道については国土開発についてどのような役割を分担すべきかという、確たる計画ができておらないわけであります。こういうときに、北海道開発あるいは特定地域の総合開発計画というふうに、そう末端の方が非常に進行しておるというのが、現在の日本開発でございます。それで、これは先ほどから問題になっておりますように、公社法が移行して公庫法になったが、非常に公社的な性格が濃厚でありまして、事業を経営するよりも、金を貸すという方に重点を置いておるというか、事業を経営するような意味で、金を貸すという方向になっておると思います。これは北海道開発計画を推進する非常に重要な国家機関でございますが、この公共の機関が金を貸すに当って、単なる金融機関専門家——むろんその人は、永田さんのおっしゃるように産業経済文化、各方面の知識経験は十分持たれておるとは思いますが、しかし専門家ではございません。最も知識の高いのは金融方面の観点からだけで、それで総裁なり理事なりだけで決定するということは、どうも万全を期しがたい、それよりも各方面の知識経験者を集めて、その委員会によって運営なり管理なりが決定せられるという方が、北海道開発計画の万全を期するゆえんであるとわれわれは考えておりますが、稲葉さんはこの点に関して、第三者の立場で今までの論議をお聞きになった点等から総合されて、どのようにお考えになられるか、御意見を承わりたいと思います。
  29. 稲葉秀三

    稲葉参考人 実ははなはだ重要な問題であり、また私は黒沢さんなどのように、この問題に全然タッチもしていない。今いろいろ御論議を聞いて、かすかにわかり出したので、こういったような問題について権威のある国会でお答えをするのは、参考人として、幾ら経済評論家でも、むずかしいと思うのであります。それで一応今聞きましたことを、一般的な角度から、私自分の経験を生かして申し上げたいと思います。  まず御質問は二点に要約されると思います。一点は、国土総合開発的な観点から北海道のあり方をどうきめるかということなんですけれども、私はできるだけ国土開発的な観点を考慮していただきたいと思います。ぜひ今後この委員会で御考慮を願わねばならない問題は、日本でも経済六カ年計画を初め、いろいろ計画ができておりますけれども、行政機構の関係あるいはその他から申しまして、その実行可能な計画は、地域計画ではなくて、産業計画という形になっておるということです。大体建設省は建設関係の予算を握って、それをいろいろな方面に回していく、そういう形になっております。従って、地域的な計画をする場合におきましては、よほど縦と横の関係について具体的な考慮が必要だろうというふうに思います。それが実はなされていない間におきましては、幾ら地域計画ができましても、それはペーパー・プランになってしまう。ですから、私が一番お勧めしたいことは、それは北海道の方にとっては不満足かもしれないけれども、現実に北海道に投げられておる各省の公共事業予算、あるいは財政融資から流れているお金、こういったものを、一ぺん北海道立場で総合的に考えた場合に、どういう割り方が一番合理的かということについて、専門家その他を御動員になって作って、今度それを上積みにして、こういう事業をしていこう、ああいう事業をしていこうという形にやっていただくことが、今の情勢から見て、地域的な総合開発ほんとうに発展せしめる一つの道だろう。やはり今の形においては、幾ら国土開発がいわれ、特定地域計画がいわれ、全国計画ができたって、結局ペーパー・プランです。経済六カ年計画だって、私はペーパー・プランだと思います。だから、ほんとうにできる計画を作っていただくなら、現実から出発してどういうようなことをしていく、また縦と横の関係を御考慮になって、この公庫の問題をどういうふうにしていこう。また東北で今いろいろと私どもも基礎的な調査を進めておりますが、そういったような場合に、そのような点を十分考えたものにし、またそれを公庫と結びつけていただくということが、ほんとうの民主化された計画を進めていく上に重要だと思います。これは一ぺんに行かないかもしれませんけれども、ぜびともこの委員会でお考え願いたいと思います。  それから第二の問題は、現実に北海道を中心にしてこの公庫というものを運営していくときに、理事長、理事機関だけではなくして、もっと広範に、いろいろな方々意見を聞いて、貸し出しをしたり、受け入れ勘定をしていくということについてどうかという御意見であります。そうして現に、開発審議会でこういったようなことを審議中には、そういうことにまとまったんだけれども、この法律ではそれが明示されていない、こういうようなことが問題だと思いますが、大体そのように了解してよろしゅうございますか——そこで私が申し上げたい点は、まず第一に、二つの面のかね合いだと思います。一つは、私は政府のいろいろな委員会の委員をしております。またいろいろ外部の公的な機関の諮問委員会の委員をしておりますが、現にこの間も、国鉄のあり方といったものについて経営調査会で半年以上この問題を論議し、そうして国鉄の機構の問題、それから諮問機関のあり方とかいうようなものについて、いろいろ検討いたしました。それが、私は遺憾ながら北海道にそのまま当てはまると思いませんけれども、原則としては、今後こういう形でやっていくという形が合理的だと思います。つまり衆議を聞くということは非常に重要なことであります。しかし、私はどうも最近の各政府委員会のあり方を見ておりますと、実は委員会そのものが、責任転嫁や、かくれみのになるというような形跡がやはりあるという現実は、これはまた否定はできません。従って、ほんとう理事長や理事の方が公平であれとするなれば、私は別に貸し出しをどこどこにするかということと、それから、出された貸し出しが正当に使われているかという件につきましては、諮問委員会を作る必要はないと思います。しかし実情がよくわかりませんので、もしもそういったようなことが政治的に悪用されるということがありまするならば、それは作った方が合理的だと思います。それから第二に、それではいろいろ広範な方々意見を聞くということが必要かどうかということになりますと、これは私はきわめて必要だと思います。そこで、いわゆる法的によらないような、もっと軽い意味のいろいろな諮問機関を現地とか東京でお設けになってやっていく、そうしてもしも理事さんのやり方やあるいはいろいろなやり方が悪いとするならば、やはり理事長が責任をとる、理事責任をとる。これは理事長や理事がいわゆるほんとうに民主主義的な行動をするかどうか、そこにやはり責任を集中する、その限りにおいて諮問的な役割りをやっていくという形が、合理的である。最悪の場合は、私は三宅さんの意見に同感で、必ずしもこの公庫がうまく発足してくれるかどうかということはわかりません。東京の評判というものは、どの程度当てになるかわかりませんけれども、いろいろ悪口を言う方の意見も聞きました。また悪口を言われる方には、むしろ東京の銀行家や実業家が多い。これは割引きして聞かなければならぬという点も、私はよくわかります。しかし最悪の場合においては、諮問委員会を作ったって、事態は同じことだと思います。その点はよく御考慮になって、おきめをいただきたい。これは一般論でございまして、必ずしもこの公庫に当てはまるか、どうかということはわかりません。しかし私に、この公庫を中心にして一つお前の意見をもっと徹底的にやれ、それを一つ皆さんの方の決議の参考にしてやろうというなら、私に約一週間の日時をおかし願いたいと思います。
  30. 廣川弘禪

    廣川委員長 森君。
  31. 森三樹二

    ○森(三)委員 私はもう各委員からいろいろ御質問がありましたので、簡単に質問したいと思います。  実は私も審議会の会員といたしまして、黒沢会長あるいは永田さんが財政金融委員長として、この公庫法案のできる前提の公社案等にも参画して参ったのです。先ほど来三宅委員あるいは小平委員からもいろいろお話がありましたが、私もその点に関して、審議会の委員として審議に当りました責任者としての立場から、黒沢会長あるいは永田さんに一言御質問したいと思うのでありますが、当時あの審議に当りまして最初出発いたしました公社案、これについてはいわゆる諮問機関であるところの経営委員会あるいは参与会というものがございました。永田さんも非常に造詣の深い御計画を立てて、あのプランをお作りになったのです。私もこれに対して大きな信頼を持っておったのでありますが、いよいよこの公庫法案があと何日かでもって通過するというような段階になりまして、最後の仕上げに参っているわけです。この制度が一たびでき上りましたならば、この制度を改革する、あるいはこの法律を変えるということは、相当今後至難な問題でございます。われわれはその意味において、まさに出発せんとするこの公庫法案審議に当りましてやはり大いに慎重審議しなければならぬ。今稲葉さんから非常に含みのある御意見を拝聴いたしまして、私どもこうしたところの法案審議し、これを通すためには、公庫のそれこそ後顧の憂いなからしめなければいけない、かように考えているわけであります。私は当時の審議の過程を通して考えてみているのでありますが、当時はやはり黒沢会長も永田委員長もこうしたところの諮問機関はぜひ必要であるという御見解を持っておられたように、私は思うのであります。それがいつの間にか、公社案なるものが公庫案にすり変えられた。そこでもって、永田さんの御説明によるところの投資的な性質のものから、いわゆる金融機関的なものに変ってしまった。それで自分としては諮問機関的なものは必要ないという御見解に変ったごとき御発言がございましたけれども、その当時、私は同僚の小平委員等とともに、やはり経営委員会諮問機関等のものは置かなければいけないということを強くその席上でも発言いたしました。その当時私の記憶では、永田委員長といたしましても、必ずしもわれわれの説に反対しておられたようには私は受け取っておらないのでありまして、永田さんのお考えの中には、やはりそうした諮問機関的なものはあった方がいいのだというようなお気持を拝察したのであります。私はこの委員会において、黒沢会長、当時の永田委員長を追及するというようなことは考えておりませんけれども、少くとも御両所の当時の御心境、そして今日この法案がまさに国会を通過せんとする段階において、将来をおもんばかるという形からいうならば、やはりわれわれは万全の策をここに設けておく必要がなかろうか。われわれに課せられた任務はまことに大きいのでありまして、黒沢会長のお言葉をかりるならば、この出資金の十億では足らない、五十億の資金は必要だ。特にこの法案の中には、資本金の二十倍の公債発行の規定もあるわけでありまして、発足いたしました今後においては、だんだん政府出資金も増加もいたしましょうし、公債発行のワクもふえる可能性こそあれ、将来においてはこの運営のいかんによってはこの公庫法というものは、北海道開発、道理の公共の福祉増進に非常に期待すべきものがあると思うのです。万一その運営を一たび誤まらんか、全く取り返しのつかない重大なる事態に立ち至ることを私はおもんばかりまして、この際黒沢会長、永田参考人といたしましても、これにつきまして当時の経緯を十分一つお考え願いまして、やはり公庫の運営に対するところのブレーキといいますか、将来をおもんばかったところの大事をこの際とる必要があるのではなかろうかと思うのでありますから、御両所のほんとうの腹蔵なき御意見、御希望等を十分開陳せられまして、この法案の万全の措置をとりたい、かように考えるのでございまして、あまり突き詰めた——あなた方は政府委員でもないのでありまして、何も追及しようなどというような考えを持っておりません、追及はまた別な舞台においてすべきであると思いますので、腹蔵なき御意見を拝聴したいと思うのです。
  32. 黒沢酉蔵

    黒沢参考人 お話の点まことによく森さんの心境は了解できるのでありますが、小平先生にもお答えしたように、御承知のように審議会長としては、やはり諮問にならないのをかれこれ言うわけにいかぬ、諮問になった場合にはよく皆さんと相談して、そして結論を申し上げる、こういうのでないと、それ以上のことを申し上げることは、私は今日は審議会会長としてお呼び出しになっておるのでありまして、あまり越権がましいことをやると、また別な方向から文句を言われるので、御了承を願いたいと思います。そういうわけですから、決してこれは逃げるわけでも何でもないが、私はそれが正しいのじゃないか、こういうふうに考えておるわけなのであります。私の考え方は先ほど申したようなわけであります。そこでこの問題は、つまり以前の経過であるならば、もう管理委員会がけっこうというような答申をしておるのですから……。ところが、その後ものの考え方がだいぶ変ってきた、大蔵省と法制局の法理論がだいぶ違うので、そうなってくると、どっちがいいのかということに対しては、稲葉さんからも先ほどいろいろな議論があったが、私はもっともだと思う。これは審議した上でないと、どっちがいいのだと言うわけにはいかない。そこでこの点は御了承を願いたいと思います。
  33. 永田昌綽

    永田参考人 お話のありました通りに、審議会におきましては、私どもも賛成どころではない、そういう考え方で進んできたということは間違いないことでございます。しかしそれは先ほども申し上げましたように、少くとも五十億以上の資本であって、そして債券発行限度は五倍近所である、しかもその場所は東京である、そういうような一体をなした案として、しかもその機関出資が主である、こういうことと一体になって、そういうことを考えたわけでございます。ところが今日の案というのは、大体金融機関的の傾向が非常に強くなっておりますから、そういう傾向になっておるものであるならば、必ずしもなければならぬというほどのことではないのではないか、こう言うだけでありまして、いやないのがけっこうです、ないのが当然です、前の審議会のやったことは間違っておりました、決してそういうことじゃありません。どうぞそういうことで……。
  34. 廣川弘禪

    廣川委員長 岡田さん。
  35. 岡田春夫

    ○岡田委員 大へんお急ぎのようですから、簡単にお伺いさせていただきますが、先ほど北海道開発計画についてもいろいろお話があったわけであります。今だいぶ経営委員会や管理委員会に問題がしぼられておりますが、基本の問題として、北海道開発計画の中でこの公庫はどういう役割を果していくのか、この点が問題の焦点になってくるのだと思うのです。そこで、これはちょっと御意見に沿わないかもしれませんが、私の意見を簡単に申し上げたいと思います。先ほど稲葉さんのお話通りに、道民所得の平均からいえば、全国の平均と比べると北海道の方が多いことは事実であります。しかし、そこで先ほど黒沢さんの言われたように、北海道産業が搾取されているのではないかという問題につきましても、従来の北海道産業に対する日本の、簡単にいうといわゆる内地資本の投下の仕方からいって、搾取されているということも私は事実だと思う。というのは資本の投下の仕方に問題があったわけなんです。これは否定できないことだと思う。そういう点から考えてみますと、北海道開発計画をどのように立てていくかという問題が、一番重要な問題になってくるのではないか。これは三宅さんのお話通りに、基礎調査をやって、今後五カ年計画なら五カ年計画をどういうように立てていくか、この点が実は一番問題になってくる。ところがこの五カ年計画は、この公庫法を出しておりながら、開発庁にはないのであります。これが実は公庫法案の致命的な欠陥だと私は考える。ですから、先ほど三宅さんのお話のあったように、結局利権的なものになるじゃないかとか、いろいろそういう問題ができてくるのです。一つ計画のワクがあって、その計画に基いて運営されていくのなら、そういう点をできる限りにおいて防止することができると私は考える。  そこで、大へん長くなりますから省略いたしまして、第一点は、先ほどお話しになりました北海道開発計画を樹立する上において、産業計画あるいは公共事業費の上に上積みして一つ計画を立ててみてはどうかというお話でしたが、これはいい悪いは別として、確かにそういう御意見はあり得ると思う。ところが自立五カ年計画というのは、そういう計算の算定方式ではやつておらぬ。とすれば、あなた自身の、国全体の一つ国土計画の中の一環としてこれを考えるべきだというお話を、もう一歩考えてみますと、国全体の計画と違った計算方式で違った結果が出てくるのではないか、ということは、国土計画の一環としての役割を果さないのではないかということも言えるのではないか。こういう点から考えると、自立五カ年計画の算定方式がいいか悪いか別といたしまして、前段のそれとの関連にやや矛盾があるのではないかという感じを受けたのであります。これが第一点であります。  第二の点は、五カ年計画を樹立するに当っては、私は実は自立五カ年計画のコルム方式というのは、日本に適用するのには非常に問題があると思うのです。しかも道庁は、今五百五十万の人口に基く計画を立てております。私はまだ詳しく調べておらないが、どうも失業者数において、政治的なさじかげんをしておるように感じられてしようがない。これは第三次産業の吸収度その他において、さじかげんが相当あると感じられる。これは私も調べてみようと思っておるのですが、今後この五カ年計画を最も実現可能な方式をとるためには、どういう方式をとったらいいかという点につきましても御意見を伺いたい。  第三点、私は世界銀行の投資の問題が当然これに関連して出てくると思うのです。この金では足りないのだから、当然世界銀行からもらおうじゃないかという話が出てくる。私は、世界銀行からもらうことはいかぬと思う。ひもをつけられる。(「もらわない」と呼ぶ者あり)現実にいろいろあるのだから……。稻葉先生は世界銀行のいわゆる融資についてどのような御見解をお持ちか。この三つの点を伺っておきたい。
  36. 稲葉秀三

    稲葉参考人 はなはだ重要な問題でございますが、簡単にお答え申し上げたいと思います。北海道について、私が先ほどややリコメンドしたやり方と、国の自立五カ年計画とのやり方が、食い違っているのではないか、この点は先ほど岡田さんが御指摘になった通りであります。私は三年ほど前にアメリカに参りまして、コルム博士に親しくお目にかかったことがございます。その後コルム方式が採用されて、国の自立経済計画の基礎になった、こういうことも承知しておりますし、また私はその委員会仕事に参加をしておるということも事実であります。しかしコルム方式なるものは、御存じのように一つの目標計画にすぎないのであります。ちょうど五カ年、六カ年後に日本人口がこれだけになる、これに対して職業人口がこれだけだ、労働力率がこれだけだ、そして労働生産性がこれだけだ、それを収容するためには、産業水準はこの通りでなければならない、といったことをただ想定をしたという計画にすぎないのであります。そして現実との間に、一応ほんとう意味の橋はかかっていないということであります。ちょうど私は、昭和二十二年から二十三年にかけて、連合軍総司令部と折衝する、そして日本経済の長期的な目標を立てる、さらに対外援助あるいは賠償の緩和を要請する、こういったような含みもございまして、第一次あるいは第二次五カ年計画経済復興計画を作るという仕事をしたのでありますけれども、そのときの方式とやや違いますが、結局は同じことであります。しかしあの当時は、御存じのように日本経済はまことにこんとんとしておった、国民の生活は非常に不安にさらされておった、しかもその不安の上に、ある程度賠償のための強い撤去が要請せられる、しかもわれわれは平和な形において将来生きようとしても、ある程度重工業、化学工業を持たなければ、日本は自立をしていけない、そういったようなときに、ある程度目標を与え、方向を与え、また賠償の緩和を要請したり、あるいは在外資金がないわが日本といたしまして、やはり立て直りの資金を要請するというふうな方式は、あの当時においては相当現実的であった。しかし今日のように、もはや経済水準がここまで大きくなってきた場合においては、むしろその六カ年目にこうなる、その六カ年目にこうなるけれども、現実とはそれはほとんど橋渡しがない、しかも、経済企画庁長官がその六カ年計画の実績というのを国会で御報告になっておりますけれども経済企画庁というのが、どの程度予算を指導したか、どの程度産業投資を指導したかといったようなことに対しては、ほとんど何もない。こういったような計画を国が作り、またそれを発表し、それを実行したと称することは、実際どうかと思うのであります。そうであるとするならば、むしろ、ほんとう意味の総合計画は、別の方法論で行われなければならない。別の方法論というのは、むしろ現実を中心にして、あまり数字に中心を置かないで、現実の手がかりからプラスマイナス、いろいろな道を変えることにおいて、どの程度までわれわれの経済が合目的的になっていくか、それの障害は何であるかということを始めるということが、ほんとう意味経済計画でなければならないと私は考えます。万全の方式ではございませんけれども、私はそういう意味において、経済六カ年計画をやり直してほしい。だから、はっきり申せば、目標計画と積み上げ計画、その両方をにらんで、そしてむしろポリシーに中心を置いた計画をやっていただくということが、つまり日本の今後あるべき自立計画であり、総合計画であるのではないかと思います。そういったような意味において私は北海道計画もあってほしい、こういうふうに思うのであります。  そこで岡田さんに申し上げたいのですけれども、先ほどちょっと第一次五カ年計画の話を申し上げました。私は北海道開発審議会の委員ではございませんけれども札幌の方でそれの原案をお作りになるときに呼ばれまして、そうして道庁や知事さんの御諮問にあずかって、そうしていろいろリコメンドしたことがあります。そこで私は申し上げたいのですけれども、あのときの五カ年計画が、私は国から与えられるであろうところの予算及び投融資計画から見て、あまりにも大き過ぎるのじゃないか。つまり大きい計画を作って、夢を与えるということがほんとうの総合計画なのか、少い金であっても、できるだけ一歩々々確実にこれをやっていくということが五カ年計画なのか、となりますと、私はつまり後者の方式の方が合理的じゃないかということを、その当時にもはっきり申し上げたことがございます。決して国の経済バランスの上からは、先ほど申し上げましたように、北海道人口吸収を将来は千万人にする、そのために日本の国をあげて北海道を支持する、という方式にはまだなっていないのですよ。そうでしょう。そのなっていない現実から申しますと、北海道の、日本の内部におきまする財政投資のあり方は、やはりだんだん上向いております。現に北海道経済が最近やや好転しているという裏には、国の財政融資が非常に強いという事実もあるわけです。しかし、これを合目的的に言えば、十分なものでないことは、それは私はわかります。しかし、どうしても北海道開発しなければならないとするならば、現実の資本をどういうふうに使ったら一番プラスになるかという意味計画を作ってほしい。その意味におきまして、私は来年度からお作りになりますところの、三十二年度からの五カ年計画におきましても、そう大きな計画を作って、そうして五年、六年後には北海道はこうなる、しかし現実においては三〇か四〇%しかできないという計画をお出しになるということは、よほど少くしてほしい、こういった意味のことを申し上げております。たとえば漁港にしましても、港湾計画にしても、もっと別のやり方をすれば、うまくやっていけるという方式が私はたくさんあるように思うのです。それをまず考えていただいて、そうしてそれを上積みしていく、——行政機構の改革もいいけれども、むしろ真に北海道のことを思われる方が、それに上積みをして、責任をもって、今度はこういうお金をつけるというやり方は、私は北海道を現実的に真の意味プラスにすると思う。その間に国の方針をきめて、ほかを削っても北海道重点を置くんだという方針をおきめになり、そのかわり、ほかの地域はある程度がまんをするということでなければ、国民の税金負担はたまったものではない。そこまでの論証は、決して北海道からなされていないと私は思うのです、黒沢さんは五十年北海道においでになったかわかりませんけれどもほんとう北海道経済の成長率、投資効果、そういうようなものを経済学的に裏づけになって、十分御証明になっていただきたいと思います。そうしたら、国民はやはりついていきます。そういったような方式を僕はやっていただきたいということで、私の申し上げましたことは決して矛盾をしているとは思いません。  それから第三の、北海道開発をするときに、外資を必要とするかどうかという問題であります。私は、それは国内資金北海道開発されれば一番望ましいことだと思います。しかし国内資金で、ほかだってやはり開発していかなければならぬのですから、どうしてもそれがだめだとするならば、世界銀行の金を借りるということも、決して何から何までだめだと言う必要はないのじゃないかと思うのです。要は、それをほんとう開発意味と、将来の産業開発や道民生活の向上に使っていただけるとするならば、そう形式ばって議論をする必要はないじゃないかと思います。
  37. 岡田春夫

    ○岡田委員 これで終ります、大へんお待ちのようですから。私は実は稲葉さんの御意見を非常に傾聴はしておったのですが、一つだけ私の気になりますのは、(「思う通りにならぬからだろう」と呼ぶ者あり)思う通りにならぬからじゃない。分折の仕方を、道民の所得並びに国民の所得で平均するというやり方、これは一応の指標としてはわかりますけれども、やはりそこで問題になってくるのは皆級構成の問題なんです。たとえば北海道民の所得は上っているけれども、先ほどもちょつとお話のように、私もここに資料を持っておりますが、道民の全世帯の二一%が極貧層であるということ、こういう階級構成が実は問題になるのであつて、この点を考慮に入れないで、ただ全体的な平均ということであるとするならば問題なのではないか、ということを申し上げるつもりであった。  それからもう一つは、先ほどのような計画を立てるというのが、資本主義経済もとにおいては、たかだか精一ぱいの計画なのであって、それ以上の綿密なる計画を持つことは、この社会機構においては、すでに不可能なのであるということを言われたのだと私は理解したいと思うのだが、事実そうじゃないかと思うのです。それは計画経済が本来的にやり得るならば、これは全面的に計画経済でそれをやり得ると思う、しかし、そのこと自体が行われ得ないところに、北海道開発の悲劇があるし、矛盾があると私は考えている。その点を今稲葉さんがお話しになったのだと私は理解したいと思います。  それから第三点は、永田さんにお聞きいたして終りたいと思います。先ほどから、公庫法というのは、性格が変っちゃったと言われるが、なるほど変っちゃったと思うのですよ。今まで小委員会その他を再三おやりになって、これだけ部厚い速記録もできるほどおやりになったのは、金融だけでなくて、先ほどからお話のように、投資の面もやるのだという点に重点があったといわれておつたわけだ。ところが投資の一面におしては、この八十億のうち、たった五億しか使わないことになったとするならば、こういう公庫法案ならば、むしろ何も公庫法案を作らなくても、従来の金融機関を十分に活用してもやり得るのじゃないかという結論になるのではないか。永田さんの御意見は、特に管理委員会を設けないならば、そのようなことになるのじゃないか、このように私はお聞きしたのですが、この点はいかがですか。これだけで私は終りにいたします。
  38. 稲葉秀三

    稲葉参考人 岡田さんに申し上げたいのですが、私の申し上げたことを、今おっしゃったようにお取り下さることは、けっこうだと思います。しかしもう一つ申し上げたい点は、つまり社会的構成の変化というのは、何も北海道だけではございません、日本全体においてそういうことがある。しかし北海道だって、日本全体だって、われわれの将来の所得というものをやはり増加さしたいのであります。しかし、その際問題になりますことは、社会的の差ということも重要でございますけれども、それ以上に、またそれと並行しまして、全体の道民の所得の増加ということの解決法も必要であります。そして全体的な道民生活の向上というものを可能ならしめるものは、結局私は第一次産業と第二次産業、並びにそれに付属をしたところの生産的な意味の第三次産業の増加であると思う。そういう意味から申しますと、むしろ国民所得の増加と同時に、税制やその他の作業によるところの平均化、これがやはり将来の長い目で見た日本の問題でなければならぬ。現に日本は今後出生率が低下をいたしまして、人口の増加は百万人にも満たないだろう、ここ十年ばかりは、やはりこの出生率の低下に伴う青年層の人口は、百十万人とか百二十万人という形になっている。しかも十分それを工業で吸収するだけのものはない。そして、またわれわれは、さらに税金負担をそのために加重される。しかし加重される税金も、なかなかそういった均衡作用には向かないような点があるといたしますと、あなたのおっしゃる資本主義経済の中だからかもしれませんが、むしろその場合において、与党といわず野党といわず、そういうことについてもっと現実的な配慮をわずらわしたい、こういうふうに思います。
  39. 永田昌綽

    永田参考人 こういうことならば、別に機関を設けなくてもいいじゃないかというお尋ねでございます。それは先ほど申し上げましたように、北海道としてはぜひほしいのでありまして、こういうのが要るのでありますが、しかし、これは最小限度の案であろうということを申し上げたのであります。しかし、これは審議会の過程においても、それならば、開発銀行北海道に対する金のワクを広げて、そうしてやらせたらいいじゃないか、あるいはもっと極端にいうならば、それに利子の補給をするとか、損失の補償をするということでもいいではないかという議論もあったのであります。でありますが、今開発銀行の例を出しましたから申しますと、かりに開発銀行のワクをそういう工合に広げた場合には、開発銀行の最高首脳部は日本全国を相手にしておられますから、北海道のことなんかにそんなに昼夜熱心になっていただくわけにはいかない、そうすると、北海道のことをあずかっておる北海道の支店長がやるということになる。そこで私どもは、北海道をひいきにしておるところの一人でありますから、その当時私はこういう言葉を使いましたが、寝てもさめても北海道のためのことを考える専門の機関がほしいのだ、そのためには、どうしてもこういう別個な機関が要る、これは大へんな差でございますからね。その機関の最高首脳部が——私は現にそれを北海道で何十年かやらしていただきましたが、寝てもさめても北海道のことを考える。北海道に局限されているのですから、九州のことなんかちっとも考えやしません。とにかく北海道はどうすればよろしいかということで、寝てもさめても、心血を注いで北海道産業発展のことを考える最高首脳部がおるということと、最高首脳部はそれほど考えない、支店長だけが考えておるということとでは、北海道が受けるところの経済効果その他の点が大へん違う、そういう意味合いにおいて、どうしても北海道独立の機関がほしいのだ、しかも、それは先ほどもたびたび望んだのでありますが、しかしそれは諸般の事情でできないというならば、今日ここに出ておる案は最小限度の案であろう、かように考えます。御了承を願います。
  40. 廣川弘禪

    廣川委員長 それではほかに御質疑がなければ、これにて参考人よりの意見聴取を終ります。  参考人各位には、長時間にわたりまして非常に貴重な御意見を承わり、本案審査の上にきわめて参考になると考えます。この際厚くお礼を申し上げます。  次会は明三十一日午後一時より開会いたし、大蔵、農林、通産、建設各当局の出席を求めて、本法案に対する質疑を行うことにいたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後四時三十九分散会