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1956-04-23 第24回国会 衆議院 公職選挙法改正に関する調査特別委員会公聴会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年四月二十三日(月曜日)    午前十時二十九分開議  出席委員    委員長 小澤佐重喜君    理事 青木  正君 理事 松澤 雄藏君    理事 山村新治郎君 理事 井堀 繁雄君       相川 勝六君    臼井 莊一君       大森 玉木君    岡崎 英城君       加藤 高藏君    菅  太郎君       熊谷 憲一君    椎名  隆君       瀬戸山三男君    田中 龍夫君       中垣 國男君    藤枝 泉介君       淵上房太郎君    古川 丈吉君       三田村武夫君    森   清君       山本 勝市君    佐竹 晴記君       島上善五郎君    鈴木 義男君       竹谷源太郎君    滝井 義高君       原   茂君    田中織之進君       森 三樹二君    山下 榮二君       山田 長司君    小山  亮君  出席政府委員         自治政務次官  早川  崇君         総理府事務官         (自治庁選挙部         長)      兼子 秀夫君  出席公述人         東京都議会議長         全国都道府県議         会議長会会長  四宮 久吉君         日本経営者団体         連盟専務理事  松田 正雄君         政治評論家   矢部 貞治君         早稲田大学教授 古村  正君         専修大挙教授愛         知大学教授   吉川末次郎君         評  論  家 石垣 綾子君  委員外出席者         総理府事務官         (自治庁選挙部         選挙課長)   皆川 通夫君     ————————————— 本日の公聴会意見を聴いた案件  公職選挙法の一部を改正する法律案内閣提  出)  政治資金規正法の一部を改正する法律案中村  高一君外三名提出)  公職選挙法の一部を改正する法律案中村高一  君外四名提出) について     —————————————
  2. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 これより公聴会を開催いたします。  議事に入ります前に、公述人の方に一言ごあいさつを申し上げたいと存じます。  本日御多用中のところ特に御出席を願いましたのは、さきに御通知申し上げました通り、本委員会におきまして目下審議中の内閣提出公職選挙法の一部を改正する法律案中村高一君外三名提出政治資金規正法の一部を改正する法律案及び中村高一君外四名提出公職選挙法の一部を改正する法律案は、小選挙区制の採用を中心といたしまする内閣提出の案を初めといたしまして、国民一般的関心及び目的を有する重要な法律案でありますので、成規の手続によりましてここに公聴会を開催し、学識経験を有せられる方々を公述人として選定し、各位の御意見を拝聴し、よってもって本委員会の審査に慎重を期することにいたしたのであります。  つきましては、何分ともに以上の趣旨を御賢察の上、それぞれの御立場より腹蔵のない御意見の御陳述をお願いする次第であります。  なお、議事の進め方につきましては、公述人意見陳述の発言時間はお一人当り三十分以内でお願いし、公述人お一人ずつ順次御意見の御開陳委員側の質疑を済ませていくことといたします。  それでは、ただいまより三案を一括議題として公述人に関する議事を進めます。  まず、四宮久吉君より御意見の御開陳を願います。公述人官久吉君。
  3. 四宮久吉

    四宮公述人 私は、東京都議会議長であり、全国都道府県議会議長会会長をいたしております四宮久吉であります。今回、公職選挙法の一部改正に関する法律案等につきまして、公述人として私を御指名いただきまして、ここに私の意見を述べるの機会を得ましたことは、非常に光栄とするところでございます。  由来、私は、青年のころから今日まで、選挙というものがほとんどすべてであると言っていいくらい、人生の大部分を選挙で暮して参ったのであります。自分選挙だけでも、区会、府、市会あるいは都議会、代議士、こういう選挙は合せて十四回であります。それから、人の選挙事務長であるとか、あるいは総括主催者であるとかいうのを、十五回ほどやって参りました。議員生活も約三十年になりまするが、そういう関係で、今日私が申し述べますことは、むしろ理論的より実際的の面から申し述べることが適切ではないかという考えをもちまして、私の体験いたしました実際面につきまして、今度の改正案に対しまして意見を述べてみたいと考える次第であります。  私は、今度の改正案に対して、まず三つの方面からこれを考えてみたいと思うのですが、その第一点といたしましては、小選挙区制がいいか悪いかという問題、それから、第二点では、選挙区画の問題がどうであるか、それから、第三点といたしましては、選挙運動等に関する改正事項について申し述べてみたい。大へん時間が制約されておりますので、ごく簡潔に申し述べてみたいと思うのであります。  従来も、御承知通り選挙法改正するときには、大選挙区にしても、中選挙区にしても、小選挙区にしても、必ずいろいろな論議が起ってきて、とうてい完全無欠選挙法改正ということはむずかしい。簡に過ぎればまた簡に過ぎて、はなはだしく選挙費用がかかる。厳に過ぎればまた厳に過ぎて、この前のように、女学校の生徒が行きがけに看板が倒れておったのを親切げで起したら、それが労務提供だというので警察に引っぱられたというような、あたかも選挙が窃盗か強盗かの犯罪を犯すかのような情勢に陥った場合も多々あるのであります。そういう点から考えましても、なかなか、選挙法改正につきましては、厳に過ぎていかず、寛に過ぎてはいかず、あらゆる点からできるだけ選挙国民がほがらかにできるような立場においてなされることが、私は最も望ましいことだと思うのであります。こういう意味からいたしましても、今度の改正案につきまして、その第一点である小選挙区制が果していいか悪いかという問題であります。まあ、結論的に申せば、私は賛成と申し上げるのが適当であろうと思う。その理由といたしますことは、御承知通りに、従来小さい政党が四つも五つも分立いたしまして、絶対多数という政党がないために、比較多数の政党政府を適当するということに相なっておりました。これでは非常に迷惑するのは国民であり、政府施策を表明いたしますと、それに向って、企業にいたしましても、その他それぞれの事業をなす者は、それに基いて計画を立てる。さて、計画を立ててみたら、最後になってその法案が流れてしまう。その法案がほとんど予定の通りに行っていないというようなことになり、ことにそれが長く結論を得られないということは、一般国民に対しても非常な迷惑を及ぼす場合が多い。そればかりではない。私たちも、全国都道府県会を代表いたしまして、いろいろな地方施策をいたします。東京都もまた同じようでありますが、そういう場合に、一体東京都がどう計画を立てていいかということに、今までにずいぶん悩んできたのです。政府はこういう計画を立てるであろうというので、政府を大体標準に置いて計画を立てるというと、それが全然異なった方面結論を得るというようなことに相なりまして、ほとんど東京都の事業に手がつかない。それがために時期を失するというような場合も多々あるのであります。そういう時期でありますので、一般国民気持もそうでありますが、われわれ地方議会といたしましても、どうしても政局を安定する政党がほしい。それによってどうかわれわれが信頼して政治ができるというようなことにしてほしいという希望でおりましたところが、幸いに世論の趨向に皆さんも十分感得いたされまして、それぞれの政党が二大政党となって、ここに安定政権を得たのであります。こういう立場から申しましても、どうか、私は、政局というものは、政権を担当するものがある期間安定して、そうして所信に基いて一貫した事業をしてほしい、施策をしてほしい、そうなれば、われわれ地方団体としても、また一般国民としても、安心して政治ができ、いろいろな企業ができると思うのであります。そういう点から考えましても、この小党分立を防ぐには、まずこの小選挙区制というものが一番適切な問題である、私はさように考えておるのであります。  それでは、小選挙区に対する問題が出たが、これが最もいいかというと、これにもやはりいろいろ短所、長所がありまして、世間でもいろいろこの問題に対しては論議になっておりますが、まずこれを私考えてみますならば、小選挙区のいい点といたしましては、その一として、選挙区域が狭くなることにより選挙運動費が比較的少額になる。それから、その二といたしましては、政党施策選挙足に周知徹底しやすく、かつ選挙人候補者人物識見を十分知ることができる、こういう点。それから投票率がよくなる。それから、その四といたしまして、候補者乱立というものが比較的防止ができるとともに、同じ政党の者の同士打ち弊害というものがなくなる、少くなる。それから、五といたしましては、選挙運動取締りが徹底いたしまして、選挙の公正がある程度期せられる。それから、この短所として言えますことは、前のとうらはらになりますが、買収行為が行われやすい弊害がある、こういう話がありますし、選挙干渉が強くなる。それから、新人進出がはばまれて、全国的な人物が不利となり、地方ボスが生じやすい。それから、四といたしまして、死票が多くなって民意が反映できぬというような問題があります。このほかこまかい問題がありますけれども、おもにこういう問題が論議中心になると思います。  私は、こういう問題を比較して、実際面についていろいろ考究いたしてみますると、選挙地域が狭くなることによって選挙費用が果して少額で済むかどうか、こういう問題でありますが、中には、いや、選挙費用がうんとふえる、こういう御議論をなさる方もあります。選挙費用がふえるという中身を解剖してみれば、結局は買収があるからだ。その他、一般交際として、あるいは花輪だとか祝儀だとか寄付だとかいうものがうんとふえるじゃないか、こういう点を考え選挙費用がふえる、こうなりますと、もうこれは実際を離れた問題で、買収する人は、場所が広ければ広いほど、なお多くの金を使って買収することができるのですから、花輪にしても交際にしても、金がある者はどんな交際でも広ければ広いほど多くできるのだから、こういうような問題は別で、特に小さくなって緻密にお互い激戦になるから、ますます使うというような見地からのお考えでありましょうけれども、これは私が後に申しますけれども、選挙違反というものがむしろできなくなるという、私は実際面の結論を持っておる一人でございます。いずれにいたしましても、選挙区域が狭いということは、結局、あらゆる面から、いろいろな平素の交際にいたしましても、あるいはまた選挙区域に対するいろいろな通信その他にいたしましても、自動車の交通その他にいたしましても、費用の減るということは事実であります。しかしながら、されはといって、選挙区が五分の一になったから選挙費用も五分の一で済むかというと、なかなかそうはいくまい。それだけ緻密にやらなければならぬということは事実です、そういう点から申しましても、私は、選挙費用の額はある程度減るであろうが、さりとて、半分になるとか三分の一になるとかいう意味には解しておりません。しかしながら、選挙費用が減ることだけは事実だと思うのであります。  それから、政党施策選挙民に周知徹底しやすい、かつ選挙民候補者人物識見をよく知ることができるという問題でございます。これは、現在の自由民主党にいたしましても、社会党にいたしましても、それぞれ大会を開いて、新綱領の発表をしたりして、いろいろやっておりますけれども、知識階級が最も多いといわれる東京においても、果してどれだけの人が社会党政策、自民党の政策に対して十分理解しているかといえば、私はごく少数の人だと思っている。大体今までの一般政党は、選挙民国民に対してもうちょっとその施策というものを周知徹底しなければ、私は、政党政治の本来の意味は出てこない、そういうふうに考えておりますが、選挙区が小さくなることによって、これからそれぞれ皆さん立場においてもいろいろ報告会も開きましょう、あるいは座談会も聞きましょう、懇談会も開きましょう。とにかく、区域が狭くなればなるほど、それだけ選挙民に近づく機会が多い、そうして選挙民と理解し合う、こういうことになって、政党候補者、それと選挙民との間がだんだん接近し、最後には直結するような形まで進めることが、政党政治を非常に盛んにする原因になると思うのです。従来の実例を見ますと、演説会にしても、少し人の少いところでは、ここが広いから、あそこよりここが寄りがいいだろう、ここよりあそこが寄りがいいだろうというので、演説会もなるべく省略して、場合によっては選挙中一回も行かないというようなことがある。それだからといって、平常のときにそれぞれの施策を徹底する機会があるかと申しますと、さような機会はないのであります。そういう意味から申しまして、選挙民がほんとうに政党を理解せず、その候補者を理解しないというところに、私は、結局、ブローカーがはびこったり、あるいは選挙ボスか中間に入って、右にしたり、左にしたり、自由にすることができるのだと思う。ある程度その政策を理解して、そうしてその候補者に対する気持が相通じ、それを信頼する強い力があったとするならば、これはなかなかブローカーがどう言おうが、ボスがどう言おうが、そんなものに支配されるものではない、さように私は考えておるのであります。こういう意味から申しましても、ただ選挙区が小さくなると、今申しましたように選挙がこまかくなり、お互い激戦になるということは、これは当然私はそういう問題は起ると思います。しかし、その選挙の戦いが熾烈になるということこそ、選挙民があるいは政党にあるいはその人に対し非常に関心を持ち理解を持っていく非常な大きな動力である、さように私は考えておる。そういう意味から申しましても、できるだけ接触面を多くして、双方が努めて選挙を強く推進していくということによって、初めて目的が達し得る。それで、選挙民と血の通うところの政党並びに候補者こそは政治を新しくするのだ、そういうふうに私は自分の実験で申し上げてみたいと思う。  それから、候補者乱立が比較的防止できるとともに、同一政党内の同士打ちという弊害が少くなる、こういう問題であります。結局、定員が多いということになりますと、同じ政党候補者が立っても、あれよりはおれが強いから、並びに人数が何人あるから一つ立ってみよう、おれは弱くても一つやってみようという気になる。これが結局一人にしぼられることになると、あわよくば当選ができるであろうなんという人々が少くなる。結局候補者が努めてしぼられる。しかも公認という力が今度の選挙法改正によって偉大な威力を持つことになりますから、そういう点から考えましても、これは努めて乱立が防げる、同士討ちが少くなるであろうと思われるのであります。  それから、選挙運動取締りが徹底し、選挙の公正がある程度期せられるということについて申し上げます。この問題につきましては、これの反対論である買収が多くなる、あるいは選挙干渉が強くなるという問題とちょうどうらはらのような関係にございます。私はこういう問題は今までも自分自身経験したことがございます。その人と選挙民との間に血のつながりがある、直結している、お互いに理解し合っているということは、選挙干渉がかりにあったとしても、非常に排除できる、今言うように、関係の薄い人が買収その他いろいろな力でふらっと向けるものと違って、直接の関係者である候補者選挙民政党という関係が一つながりになっておりますと、——私の例を出してまことに恐縮でございますが、皆さん御存じのように、かつて東条内閣のときに推薦選挙が行われたあのときの干渉は、私の経験においても、あるいは今までの歴史の上においても、全く前代未聞の干渉であります。警察署長選挙運動事務長みたいなもので、票の足りない者は推薦候補にさあ買収せよということまでやって、実に強力な——私は非推薦で出ましたが、毎日十四、五人くらいが私服で私のうちに参りまして、私のうちの門をくぐる者はことごとく引っぱっていって警察で取り調べる。私も、外に出ると、あの当時は個々面接が許されなかったので、うっかり、まあ今度先生一つ頼むとやったら、監視がついているから、それでおしまいになってしまう。そういう関係で、外に出ない方がよかろうと思って、私はうちで自分で書いた文章だけで選挙運動をいたしたことがございます。それでも、おかげさまで相当なところで当選できた。この選挙民候補者の血のつながりというものは、あのときにも、選挙干渉を受けて困っている、身動きできぬということを私が書いてやることによって、かえって選挙民は非常な力強い支援をするということになったと思うのです。買収は激烈な競争のあるときには実際問題としてできない。それは両方が牽制し合う。かりに買収するという事実があると、その問題に対してはお互いに片方を牽制する。あるいは、かねて、あれはどこへ買収に回っていくか、こういうことでお互いに牽制する。それにもそれぞれの反対立場にある者が目を注ぐ。そうすると、選挙に対する買収その他非合法の運動に対する監視というか、あれはいつこういうことをやっているじゃないかということで、やればすぐ問題化するということに相なりまするので、そういう点から申しても、選挙民お互い監視によって買収その他の選挙運動は事実上防止される。のみならず、はなはだしい選挙干渉でもすると、最近では——この前の知事選挙においても、警察が大目に見たために、かえって世論の反撃を買って落選したという評判の人もあるように、最近ではなかなか民主化されて、警察官も昔みたような非常な非常識な選挙取締りはできない、干渉圧迫ということは想像できないのでありますから、その点において、私は、むしろ、買収とかあるいは選挙干渉という問題は、政党並びに候補者及び選挙民がだんだん直結することによって、お互い監視されるという立場において浄化される。そういう意味から申しましても、この小選挙区制が適当ではないか。  それから死票の問題がいろいろ論議になっておりまするが、私の考えますることは、この間も、三人立ってその中で一人当選すれば、あとの人の得票がだめになるから、従って、それが過半数あっても、半分以上が死票になるという実例があるじゃないかというお話もございましたが、たまたま一部部にはそういうことはここで断言できませんけれども、しかし、全般的に考えたときに、そういう結果は起り得ないと私は考えております。むしろ、政党あるいは人の力がだんだん浸透することによって、政党が人をしぼることによって、候補者が少くなり、死票が減少するのではないか、年をとるとともに、むしろいい結果になるのじゃないかという考え方をいたしております。  それから、新人進出機会がなくなる欠点があるという御意見もございます。これは、社会党にしても、あるいは自由民主党にしても、大いに考えなければならぬが、むしろ保守系においてこの問題は特に考えなければならぬ問題である。時代に適応した人材を出さねばならぬ。三木さんも政党を若返らすと大いに言っておりますが、時代時代において、若い人、若い人を、新しい人材を折々入れていくことこそ、やはり時代に適応した政党として活発に活動ができると思うのです。そういう点から申しましても、大てい、今までの選挙では、どういう立場であっても、三割ないし四割の人は、地方選挙でもまた中央の選挙でも落選があるのが実情でございます。従って、必ずしも新しい人というのは全然皆無というわけではないのです。ことに、政党がそれぞれ公認の場合に、すべての観点を考慮して、そうしてその人を選んでいって新しい時代を作っていく、政党が永久に生命を持続しようということになれば、従って、こんな問題はそれぞれの政党でも研究するということになれば、新人の開く道というものはおのずから解決できるものと、さように私は考えておる次第であります。  それから、第二点の区割りの問題でございます。これはだいぶん各方面でもいろいろ論議がございますし、新聞その他の論調でも、いい悪い——最初はだいぶん調査会案に向って風当りが注がれていたようでありますが、それからだんだん変って、今では政府案にだいぶ肩がわりして、何か調査会案は正常化されたような感じを思わせるような節があるのでありますが、いずれにいたしましてもいろいろ論議があって、それぞれの候補者なりあるいは現議員の方との間に、いろいろ区割りをすることについて、あそこはこうしておれに都合を悪くしたのだろう、あそこを割ったからおれをどうというように、それは議論すればおそらくは解決ができない。私は、この問題について万人の賛成するような結論を出すということは、神様でもおそらくはちょっと困難ではなかろうか、さように考えておるほどむずかしい問題でございまするが、しかし、私の知っておる範囲においては——私は郷里が徳島でございます。東京徳島その他の問題についていろいろ新聞で書かれておるようですが、私は自分の知らないことをここで申し上げるわけにもいきませんが、その問題に対する東京都と徳島県との例を見ますと、東京都は、各方面意見を聞いてみましても、大体まあまあこれならというところである。まあまあこれならという程度ならば、まあがまんしなければならぬというところでございます。  ただ調査会案政府案とは多少違いがございます。  世田谷区のようなところは、これはむしろ今までの人口の比率が一万票ばかり違っていたのに、今度五千票ばかりお互いに何して差を減少したという点から申しまするならば、いずれにしても、同じ区内を二つに分割する場合に、そういう問題が起るのはやむを得ない。従って、むしろ適正なような結果に相なっておると思います。  それから、江戸川区の問題でありますが、これらも、やはり、地方事情を十分に勘案されている政府案の方が、むしろ江戸川区を行政区一区画としたという点等についても、いろいろの意見を聞いてみますと、いろいろ論議もあるけれども、これの方がむしろ調査会案よりいいではないか、というような考えを持っておる方が相当あると考えられるのであります。  それから、非常に話題になっておるのは品川の二人区であります。これが相当話題になって、最初荏原地区と伊豆七島の間の四万くらいの人口一緒になるという問題が調査会案として出たのですが、大体調査会案はどうしても一人一区で割り切ろうというところに、各方面でもいろいろな無理が幾らか出ておるように私は聞いておる。一人一区ということになると少し無理で、しかも人口を調節しながら一区に割りつけようということになると、この問題においては多少の無理というものが生ずるのです。それであるから、こういう矛盾を二人区にして緩和するという方法によって、このはなはだしい欠点を補うという考え方は、それぞれ人によって考え方があります。どうでも一人一区に片づけた方がよかろうという見解を持つ人もありましょうし、いや、そういうはなはだしい矛盾のあるところは緩和したらよかろうというように考える人もございましょうし、それぞれの見解はございましょうけれども、その区民の強い要望その他の関係等も勘案しますれば、これはときと場合とによって二人区を持つということが、むしろ適当な場合がないでもないと思います。かりに品川区の人人に商わせると、荏原地区と島を一緒にして、その両方のまん中に品川区の本所管内を一区にし、その土地を越えて海を隔てて向うの島と手を組んで一区にするのは矛盾ではないか、常識的にもどうも適当でないという議論が起るのは、地方の区民の感情から申しましても当然起り得ると思います。そういう点から勘案して、どっちにしてもむずかしいから三人一区で円満に片づけろということで、結論に相なったのかとも思いますが、いずれにいたしましても、そういう特殊な事情のあるものに対しては、まあそれもいい考えではないかというふうな結論を出しているのですが、そういう点で、東京都におきましては、大体の点は——それはこまかいことを一々申しますれば論議がありましょう。何か一部反対をしているのは、千代田区だけでやれという申し合せをして、この委員会に要求したという話もちょっと聞きました。しかし、千代田区だけでは十二万で、十九万の標準と同じにやらせろという感情を承認するということは、第三者の正しい批判としてはとうていだめだということは常識的にわかることであって、他の行政区画のものを幾らか調整して一区にすることが適当ではないかと思われます。  それから、私は生まれが徳島県でありますが、徳島県の例にいたしましても、二区、三区が少し動いております。板野郡と阿波郡を調査会案と違えて一緒に二区に入れておりますが、これは適当だと思う。調査会案では、阿波郡を三区の麻植郡、名東郡、名西郡というところへ持っていきましたが、かつて私も徳島県で選挙をしたことがありますけれども、あの広い吉野川を隔てて川の向うということになると、大水が出てどうにもならぬで困ることもあり、大へん不便があるのです。それを阿波郡を二区へつけて、勝浦郡を三区の方へつけましたが、勝浦郡なら名東、名西郡と地続きで、こうすれば現在私の知る範囲における徳島県の情勢から申しましても、調査会案よりは政府案の方がむしろ適切な考え方をされているというふうに考えております。  こういう点から、その他の問題についてもいろいろ論議がありましょう。私も新聞などではいろいろ聞いておりますが、新聞でもこれはだれだれの党略のためにという御意見を聞きますと、話を聞くと、新聞で見るともっともなような点もありますけれども、これは実際的に見ていないのですから、私がここで論議を申し上げることでございませんが、いずれにしても、皆さん方で、こういう不合理な点がございますれば、委員会でどうか一つ——われわれも議会人でございますが、議会で、委員会においてこの問題を十分検討して、そうして慎重審議いたされまして、それを合理化されるということもけっこうです。しかし、小選挙区制という問題だけはすみやかにこの問題を解決して、前に私が申しますような事情におきましても、早く実施できるような機会を得ることが、非常にわれわれ地方行政に携わる者として望ましいことだ、かように考えておる次第でございます。  それから、選挙運動等改正事項についての問題の意見、これは幾つもございますけれども、一番問題になっておるのは、立会演説を廃止したということでございます。これは、立会演説ということは、理論的に考えると非常にもっともな意見で、一堂に違った政党意見を聞いて、そうしてそれに対する正しい判断をするという観点から申しますれば、これはもう時間的に申しましても、また聞く選挙民立場から申しましても、時間が節約される。お互いに便利な立場にあるのです。ところが、従来の例に見ましても、なかなかそれが理想通りいかない、こういう例が多いのです。ことにこれが小選挙区になって一つ一つの候補者ということになると、選挙者の方でもだんだん熱がかかってくるということになるから、演説会場に行ってもヤジ隊をお互いに繰り出して、双方が乱戦をして、まるで、第二者として静かに聞きたいと思う者は、何が何だかわからぬというような結論になる場合が往々にしてあるのです。この間の産経ホールの両党の討論会に私はちょっと何しましたが、双方で大へん意見ががたがたと盛んに討論いたしまして、聞こうと思っても聞かれなかったという例が多いので、こういうことは、激戦になるということによってお互いに力を入れていこう、これはやむを得ない情勢でありますが、そういうことによって、双方の間におけるところの議論を正しく静かにお互いに聞いてみて、その判断を——政党の大事なことであります政党政策が入るか入らぬか、それを国民が理解するかしないかという問題になりますれば、あらゆる観点から幾人かの者が幾らもこの方面から説き起して、そうしてその本人に、十分に納得するだけの議論をさせる機会を与えなければ、ほんとうに何か一般選挙足政党というものが直結しない。ただ、与えられた時間において、ちょこちょこと、これは時間がありませんからこの程度でというような程度でなく、一人の見方と幾人かの見方を十分にそれぞれの角度から選挙民に吹き込む、そういうことによって、その観点が十分に——政党の主義政策というものは十分に説いても現在でさえわからぬのですから、これをさらにこまかく説いて、そうして選挙民候補者、それと政党というものがお互いに血の通うような、ほんとうに政党政治の確立をされるということが、私の最も望ましいことだと思うのであります。  以上、簡単でございますけれども、私の経験を一応申し上げまして、そうして皆さん方の御理解を得るならば、まことに幸いであり、また委員会における私の申し上げることが他山の石として御参考に賜われば、なお幸いと思います。どうかよろしくお願いいたします。ありがとうございました。(拍手)
  4. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 四宮公述人に対し質疑の通告があります。順次これを翻します。滝井義高君。
  5. 滝井義高

    ○滝井委員 今四宮さんから非常に貴重なる御意見の公述をいただいたわけでございますが、まず第一に、小選挙区制をやることによって政局の安定を望んでおったが、それができることになるという意味の御発言があり、同時にそこに信頼した政策をその政党に実行していただくことになるという御発言があったのです。御存じのように、現在の日本の二大政党というものは、きわめて形式的な二大政党がようやくできたという段階だと思います。そこで、こういう段階において一挙に今度の国会で小選挙区を通してやるということが、果して二大政党を育成して政局安定になるかどうかということなんです。御存じのように、現在この小選挙区の法案、すなわち公職選挙法の一部を改正する法律案を出したために、再六十数件の法案政府は出したけれども、まだそのうちの六十数件しか通過をしない。むしろ与党の内部自体にも非常なこれに対する不満が出ている。あるいは世論も非常に反対をしておる。与党の内部においても、新聞の伝うるところによれば、三木、松村会談等が行われて、参議院で修正しなければいかぬだろうというような、こういうようないろいろの意見が出ておるということは、明らかにこれは政局の混迷がこの法案を契機として徐々に現われてきておることを示すと思う。こういう現象が一つ現われておることとともに、現在二大政党というものが形式的であるということは、二つの政党政策に非常に大きな開きがあるということなんですね。自民党と社会党との間の政策の開きがあるということ、同時にそういう開きがあるということは、もっとこれを拡大をしていえば、日本においては、極右的な右と極左的な左と申しますか、こういうものが非常に大きな隔たりをもって対決しておるという形があるということなんです。と同時に、そういう左右の開きがあるとともに、これは福岡でも出たんですが、上下の開きがあまりにも大き過ぎる。たとえば、ある政党の領袖は、自分のうちの犬が病気になると、三万台のハイヤーに乗せて犬の病院に通う。しかし、一方において大衆はその日の生活もできない、飯も食えない状態にあるという、こういう上下の開きが非常に多いということですね。すなわち、一つの政党は、政策においては理想主義的なものを掲げておる、一つのものは、逆コース的な、あるいはきわめて反動的なものを掲げておるという開きがある。いわば社会的な基盤と申しますか、社会的な開き、こういうものが非常に大きくあるというときに、二大政党をやって政局の安定ができるかどうかということ、むしろ、そこには、二大政党ができ、政局安定よりか、暴力的な革命の素地が、今申しましたような多くの開きと上下の開きとのためにできはしないかということをおそれるのですが、地方自治、いわゆる生活に直結をする自治行政に当られておる、しかも全国の議長会の会長さんもやられておるようでございますが、そういう四宮さんの御意見を一つ伺いたいと思います。
  6. 四宮久吉

    四宮公述人 今の御質問にお答え申し上げます。今お話のように、新しく両党とも結合したばかりだから、従って党内の統制がとれてないときに、そういうことをするがいいか悪いかというお話でございますが、私は、それがためにむしろ小選挙区制をして、そうして党内の意見の統一をしなければならぬというふうに考える。今までの御承知通り社会党にしても、あるいは自由民主党にしても、幾つかの政党寄り合がまず統合された。しかし大体の線は同じでありますが、末端においてはいろいろな感情もありましょうし、前の政党の違いもありましょう。それは両党とも同じ立場です。従って、ことによると、感情的に、彼が右するならおれは左するというような、党内においても、これはいわゆる政党の合流の悩みの一つです。こういう問題を解決するためには、やはり党の力、党の施策というものを強く打ち出して、それを順奉することによって、党もまた、ある程度、その施策反対するものに対しては、相当な制裁を加えられるようにして、少くとも党の施策によって国民世論に訴えて当選した者が、そのつど、そのつどで党内で反対論を唱えておるようなことでは、これから先だってわれわれは安心して政党政治を託するということができなくなる。そういう点から申しましても、少くとも早くこの小選挙法案を通して、そうして今までは党内における摩擦があったが、今度はそれぞれ党が強く政策を推進し、それを人も順守し、そうして党が今度一体になって、施策によってできた今度の新しい政党であったならば、おそらくは、現在のように感情が深く出て、そうして党内野党みたような問題が幾つも起るようなことは、自然的に少くなるであろう。これは私の想像であります。  それから、金持ち、あるいは貧乏人という問題でございますが、これは社会党の方にも一言私は申し上げたいと思います。社会党は組織労働者だけでもありますまいが、私たちが見ると、多くは組織労働者だけ、赤旗を振っているような者だけに依存しているような感じがするのです。これを全国民政党として、これから大いにやっていただきたいのです。今の施策、方針からいえば、むしろ青年層に非常に強い背景を持ち力を持っておるが、壮年層に対しては私は非常に魅力が欠けておると思います。この点、金持ちであろうが、貧乏人であろうが、同じ国民であります。選挙民であります。その最大公約数を出すことが、結局政党が発達し、政党がますます助長せられる原因だ、かように考えます。いつの時代にも、金持ちと貧乏人というものは、これはいろいろな角度から、おそらく世の中に全滅するわけにはいかないだろう。健康な者と弱い者も、これまた全滅するわけにはいかぬと思う。やはり、社会というものは、多少金を持った者と貧乏人というものが全部なくなるというような——三百万円なら三百万円を平等に持っておるという社会は、これから先にもとてもでき得ないと思いますが、少くとも均衡を保てるように、一つ社会党さんが全国民を対象とした立場において社会施策を施して進んだら、それは是正されると思います。こういうことで国民との間に血のつながりができますれば、おそらくは社会党の天下も遠い先ではない、私はさように考えております。
  7. 滝井義高

    ○滝井委員 私の御質問申し上げた点が少しくどかったので、意味がとりにくかったと思いますが、実は非常に政策の開きが現在あるということ、それから議席の開きが非常に大きいという現段階では、小選挙区制を実施していくということになりますと、これは暴力革命的な機運を醸成するおそれはないか、こういう質問でございます。
  8. 四宮久吉

    四宮公述人 私はそんなことは考えません。憲法治下において、法律治下において、そんな革命なんかはありません。むしろ私は社会党が伸びる機会が多いと思います。なぜかと申しますと、今までのように、社会党が少い候補者を立てて戦っているうちは、いつまでたっても伸びない。どうしても社会党は当選が少いだろうというので、候補者を少くするということでなく、各選挙区に一人ずつ立てて、その候補者人材を提供して、若い人材をどんどん入れて、そうして選挙区で堂々と戦わせるということになれば、そのくらいの勇気がなければ、これからの日本の政局は担当できぬと思うのです。
  9. 滝井義高

    ○滝井委員 長い将来はそういうことが考えられるかもしれません。しかし現在の政治の流れというものを無視はできないと思うのです。たとえば、現在の政治の流れをごらんになると、国防会議構成法案とか憲法調査会法案とか教育二法案とかいうものは、政治の流れというものと逆に行っている。これは大学の学長さんその他世論はそういう傾向に向いている。そういう中で小選挙区制に持っていくと、あなたが翼賛選挙で御心配になった選挙干渉というものが行われる。これは絶対多数になってきますから、そこをわれわれは実はおそれるのです。だから、まず現在二大政党ができて、そうして政策もだんだん接近しようとする傾向はあるのですから、何も急いで今の中選挙区から小選挙区に変えなければならないという理論的な根拠はない。同時に、また、現在の小選挙区がいいか悪いかということについても、国民にはまだその可否は徹底していない。こういうところで一挙にやろうとしておるわけです。これは自民党の方にも小選挙区の可否についていろいろ意見があるわけです。そこで、私は、今の政治の流れの中においてそういうことをやれば、そういうおそれがないか、こういうことなんです。同時にまた、それをやることによって政局の安定はできない、二大政党の対立が阻止せられる、こういう御質問を申し上げておるのですが、その点をもう少し明確に願いたいと思います。
  10. 四宮久吉

    四宮公述人 私はただいま説明の中に十分今の話はしておいたと思います。それは皆さん御理解いただけると思う。むしろ、今なるがゆえに、今から社会党もそういう心がまえで順次発展段階に進まなければならぬ時期じゃないか。一人しか当選できないというような区割りにしたら、一人々々の……。(「社会党改正じゃないぞ」「質問自体がわからぬよ」と呼び、その他発言する者多し)それだからこの際今の質問に答えておるのです。
  11. 滝井義高

    ○滝井委員 あまりヤジらぬように、委員長できるだけ静粛にさせていただきたいと思います。  そこで、四富さんの御意見の中で乱立が防止できるというお話があった。実は太田自治庁長官は乱立をするとおっしゃった。この点はあなたと自治庁長官との間に御意見がちょっと違うわけです。(「あり得るかもしれぬと言ったのだ」と呼び、その他発言する者あり)まず一、二回は乱立するというのが太田自治庁長官の御説明なんだ。この点はあなたの御見解と幾分違うようでありますが、この法案の通った後の一、二回の選挙が、日本の政治の方向、議会政治の性格というものを決定的にすると思います。太田さんは、それを、乱立が多くなる、そのために十万円の供託金をまず二十万円に引き上げて、泡沫候補を防止しなければならぬ、こういう御説明をされておるわけです。そこで、あなたの方の乱立の防止ができるというところが幾分違うので、もう少し御見解を伺わせていただきたいと思います。
  12. 四宮久吉

    四宮公述人 それは考え方で、多いという人も少いという人も両方あるでしょう。しかし、私は、実際は大ぜいになれば、私らの選挙区でも同じく同士打ちでいつも選挙をやっているのですが、何人になればおれは出るという——人数がふえるとどうしても争う率が多くなってくるのです。たった一つのいすを争うということになれば、大ていの人はしり込みしてしまう。ことに、地方議員でもやっている者は、ますますしり込みしてしまう。地方議員なんかをやっている者は、自分のいすを捨てて向うへいこうかどうしようかということになると、なかなかふん切りがつかぬですから、むしろ私はその点においては非常に少くなるというふうに考えております。
  13. 滝井義高

    ○滝井委員 それは太田長官と非常に御見解が違ったわけであります。そこで、この御公述の中にも、乱立が防止できる、そしてしかも政党の中においては派閥の対立というものがだんだん解消してくるだろう、こういうお話がございました。同時に、さいぜん第一回目の質問の御答弁の中にも、そういう意味の御答弁があったわけなんです。なるほど、表面に出てきたときには、公認というものは、一人一区においては、その政党は大体一人しかやらぬことができないという建前になっております。もちろんこれは二人やっても一人やっても差しつかえはないという答弁がありました。政党は三人やっても一人公認しても差しつかえない。建前では一人でなければならぬとなっておるが、そういう御答弁があったのです。一応私は一人一区は一人の公認が原則であり常識だろうと考えます。ところが、その公認になるまでには、党内はかなえの沸くがごとくに非常に多くの問題が実は出てくると考えております。従って、表面的には一人の公認が出てくるが、その公認を決定したあとのしこりというものは、これは相当なものになりはしないかという心配が実はあるんです。現在は、公認が多いために、その争いが比較的緩和されておりますが、今度は一つの選挙区にしぼられてきます。あるいは多い場合で二人ですから、その点公認争いが政党内部に及ぼす影響について、四宮さんの過去の御経験もいろいろあられるようでございますが、これはどういうように政党に影響するのか、その点一つ御説明願いたい。
  14. 四宮久吉

    四宮公述人 結局はそういう問題が起るでしょう。公認されるということが、その人の選挙の運命に相当大きな影響がくるということは事実で、それはやるでありましょうが、結局政党公認を主として当選させるというつもりである。その他の者は、政党を名乗って出ることはできない。政党でない者が幾ら外からがたがた言っても、もうその人は政党公認でなくなっているのだから、その点は心配がない。もしその人が政党以外から中立で立てば、その党から関係がなくなってやっている。それだから、おそらくもう立たないとするなら——結局党内で今までみたいに多くなるという原因はどこにあったかというと、かりに、地方選挙でもそうですが、私らの地方選挙実例を見ても、政党内部で一人の代議士が幾人かの候補者をささえている。それを自分の方でやろうというので幾人かやるが、最後は、公認問題で、準公認問題ということで、いろいろ面子を立ててやっていますが、こういうことはなくしてほしいというのが私の願いである。こういう問題があることが、かえって禍根を残し、内部における抗争がより強くなってきている。こういう点から申しますれば、むしろそういうふうに公認はずばりときめる。公認があるし、準公認があるし、しかも定員一ぱいやってまだあふれているという公認の仕方はありませんよ。そういう平信から申しましても、むしろ、不自然なことよりか、明確にやるということの方が適当じゃないかと私は思っております。
  15. 滝井義高

    ○滝井委員 実はそれが理想だと思います。ところが、さいぜんあなたの御議論にもありました通り、現在はまだ自民党も合同してできたばかり、社会党も統一したばかりです。こういう中において、問題はそういう強い統制力を政党が発揮できるかということなんです。それができないところに問題がある。たとえば、佐賀県においては、前防衛庁長官の杉原さんは公認漏れになるという事態が出てきた。これは政党自身の統制力というものが現在まだ発達していない、力強くなっていないところに私は問題があると思う。しかも、そのために、政党内部のそういう問題まで現在法律できめられなければならぬということが、悲しい事態として公職選挙法一部改正に示されておる。この点どうも今の御意見は、理想論として悲しいことだということを述べただけですが、現実の問題を私はお尋ねしておる。現在の自民党なり社会党の中でそういうことが可能であろうかどうかということを、おそれておるわけです。
  16. 四宮久吉

    四宮公述人 それは、大臣だろうが、総理大臣だろうが、選挙民に直結していない者はどんどん公認をやめた方がいいと思う。いわゆる血の流れというものが選挙民との間にない選挙、つまり政党とのつながりがないものをやるところに将来微妙な政権ができるので、そういう意味から申しましても、もう論ははっきりしておると思います。
  17. 滝井義高

    ○滝井委員 選挙民の血のつながりという非常にいいことを言っていただいたのですが、血縁ということは選挙にきわめて大事なことなんです。ところが、小選挙区制を実施しますと、それが非常に露骨に現われてきて、政治の老人化現象が出てくるということです。これは九州の公聴会でもあったのですが、この小選挙区制が実施されると、婦人や若い人は出られないだろうということです。東京のような非常に文化の発展をしておる高い水準のところは、ある程度いいと思う。ところが、現在憲法でも改正して家族制度を復活しようというような傾向にあるところ、しかも非常に封建性の強い農村、こういうところにおいては、どういう傾向が出てくるかと申しますと、いわば家つき、地つきという関係が出てくる。小選挙区になると、みずからのホーム・グラウンドで選挙するような形になってしまう。死ぬまで、そこの候補者というものは、いわば昔の封建の諸候が領地を与えられたような好格になる。これは熊本から出てきた公述人のお話でありましたが、実は、われわれ、熊本においては、新人や婦人はこの小選挙区制が実施されたら出られないだろう、なぜかというと、それは代議士になることが代々稼業になっていらっしゃる人が多いのだから門地、門閥がものをいって私たちは出られません、こういう公述があった。みな、なるほどと、いわば納得したような形であったのです。これは東京のようなところはそういうことはないと思いますが、いなかに行くとそういう傾向が強くなっておる。そういう中で、選挙にいっても同じなんだ、だからやめたという人がおる。あるいは郡の一部がちょっぴり隣りの大きな郡につけられますと、このちょっぴりつけられた二つないし三つの町の人は、もうどうせわれわれの町や区からは代議士は出れないのだ、だから棄権だ、こういう機運が出てきておるというようなお話も実は聞いたわけです。だから、最近は、自分らも一区、二区と言うよりか、一区を太郎兵衛さんの区、二区を次郎兵衛さんの区、こう言った方が早わかりだと育っておる。こういうことは、昔の封建諸候が領地を与えられたと同じような格好になっておるということなんです。この点は東京あたりはそういうことはないと私は考えておりますが、どうも草深いいなかに行くと、そういうニュアンスがこの小選挙区制実施の世論とともに出てきておる感じがするのですが、この点はどうなんですか。
  18. 四宮久吉

    四宮公述人 そういうことはたまにはあり得ると思います。たまにはあり得るけれども、そんなことであったら、社会党なんかだんだんふえるわけはない。
  19. 滝井義高

    ○滝井委員 そうです。ふえない。
  20. 四宮久吉

    四宮公述人 いや、だんだん最近はふえてきておる。
  21. 滝井義高

    ○滝井委員 中選区だから……。
  22. 四宮久吉

    四宮公述人 中選区でも……。(発言する者多し)話を静かに聞いて下さい。それで、これからの選挙区でも、そういうふうな形で、時代は、だんだん政党施策でもあるいは選挙候補者でも若い者を要求するように自然になりつつある。おそらく私は最近の情勢はそうだろうと思う。ところが、婦人の問題は、これはいろいろの論議があるでしょうけれども、どうも最初みたいにだんだんいかなくなったというのは、実際にいろいろな選挙を通してやってみたら、どうも婦人が選挙の代表として思ったようにいけなかったという関係があったのじゃないか、私はそういうふうな感じがする。そういうような関係から、選挙民がこれはどうも適当じゃなかったということになれば、これはいたし方ない話です。しかし、若い者がこれからだんだん社会的に活躍するということは、もう時代の要求で、民主化されて、政党政策だってだんだん社会党の昔唱えた、私らがまだ若いころに唱えたようなものが、保守党だってそういう線にまで及んでくるようになる。これは自然に時代というものが解決するので、若い者が決して地方のいわゆる地主とか財産家というもの——それは一部にはそういう事例があるかもしれませんが、その人は必ず人に対して徳行を施し、ほんとうに人格を認められ、適任者であるというような特殊な事情がないと限り、私のいなかの方にだって金持はたくさんあるし、財産家もあるし、信用もあるが 代議士として出ておられる方はない。だれも今金持だというので——徳島県でも東京でもまあ一人、二人はあるかもしれぬけれども、そんな金持は出ていないと思うので、そういうような意味で御了承願いたい。
  23. 滝井義高

    ○滝井委員 時間がないそうでありますから簡単に終りますが、次に、四宮さんは全国の都道府県議会議長会の会長さんをされておりますが、今度の小選挙区になりますと、市会議員選挙区、県会議員選挙区、都会議員選挙区、こういう選挙区よりか衆議院議員選挙区の方が小さくなるわけですね。これに対して、当然この県なり市の選挙区というものを変えなければならぬというような事態が起りはしないかという一部世論もあるわけなんでございますが、この点に対する御見解を一つ伺いたいと思います。
  24. 四宮久吉

    四宮公述人 それは、私は、地方の選挙はなるべく行政区というものが強く考えられる。まさか私の出ておる文京区を幾つも分割してそれぞれするということは困難であります。行政区というものは小さく区画するということはこれは困難でありますが、代議士ともなれば、それは選挙に出る一つの関係区域であります。行政の区域ではないのです。関係区域です。地方の行政区というものは地方自治ということを主体に考えるが、片方の代議士になると、選挙区域ということだけであって、地方行政みたように深い関係ではない、そういうふうに考えます。今度の選挙区にいたしましても、かりに赤坂が千代田区の中に入ったって、それが将来に大きな影響を及ぼす、それがために非常に不利な条件になるとか、それがために区が非常な損失をするというような関係はない、私はそういうふうに考えております。
  25. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、四宮さんは、都道府県なり市会の選挙区は今のままでよろしい、小選挙区制になってもそのままでよろしいと……。
  26. 四宮久吉

    四宮公述人 行政区ですから、文京区とか千代田区とか、こういう区域——それは区の中にも小さい区もあって、今まで一人一区の区もあります。これは行政区が一つのまとまりになっておるので一人一区でよい。これは現在島にしても市にしてもそういうところがございますが、そういうところは地域的に行政区として便宜であって、代議士を選出するのは人口というものを主体に考えるのだから少しぐらい行政区が多少あちこち移っても、それがために他に影響を及ぼすことはないので、あります。
  27. 滝井義高

    ○滝井委員 これは専門外になるかと思いますが、実は自治法の改正で、選挙管理委員会が今度知事なり市町村長の付属的な機関になるのです。今後、選挙の公正を確保するためには、いわゆる選挙管理委員会というものは一個の独立した機関にして、やはり市長なりの干渉を受けない——今も受けてはいないと思いますが、今後さらにそういう疑いのかからないものにしなければならぬのじゃないかという考えがあるのです。その点あるいは少し選挙事務の問題になりますからどうかと思いますが、これはきわめて選挙を公正にやる上に大事な点でございますので、議会側の御意見をお伺いしておきたい。
  28. 四宮久吉

    四宮公述人 現在の制度、現在選挙管理委員のやっておる仕事は大して変更する必要はないと感じております。今の段階として、私の感じでは、いろいろな点から申しましても、知事がこれをどうのこうのといって干渉する力はありません。のみならず、割合に公正にやられておるので、現在の制度は決してこれを変える必要はなかろうというふうに感じます。
  29. 滝井義高

    ○滝井委員 わかりました。
  30. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 島上善五郎君。
  31. 島上善五郎

    ○島上委員 時間がありませんので、十分くらいにしておこうと思います。ですから、あまり私の質問を妨害するようなことを、うしろの方でごじゃごじゃ言わぬように希望しておきます。  選挙区が狭くなれば選挙費用が少くなる、これは政府の提案の一つの大きな理由にもなっておって、まことにけっこうであります。そこで、あなたは、衆議院の選挙費用が一体どのくらい少くなるとお考えになっておりますか、それをまずお伺いします。
  32. 四宮久吉

    四宮公述人 だれがやったってそういう計数が立つわけではないが、理論的にいって、区域が狭くなれば、通信も自動車も、いろいろな点において、今までよりか——しかし、私はより以上一般政策などを選挙民に浸透させなければならないから、そう莫大な、五分の一の選挙区になったから選挙費用が五分の一で済むとは申さないが、少くともあらゆる観点から常識的に考えても少くなるであろうということは、選挙区が広ければ広いほど選挙費用が多くかかるという今までの自分経験からいっても、そうなるであろうというふうに感じております。
  33. 島上善五郎

    ○島上委員 私は事実に基いて言うのですが、衆議院の選挙よりも、都会議員あるいははなはだしきに至っては区会議員選挙の方がよけい金を使っておるという事実がある。問題は、現在の中選挙区の選挙区が広いから金がかかるのではなくて、選挙法を無視して、不正な、不当な、あるいは腐敗した選挙運動をやるところに、金を莫大に使う最大の原因があると思う。少くとも今日はそうなんです。私どもは大きなことを言うわけではありませんが、現行法定費用以下でやっておる。すなわち、平均七十二万円以下でやっておる。費用の点では私どもはまさに理想的だと思っておる。しかし、それにもかかわらず、現行選挙法のもとにおいて、区会議員で百万円使ったという人がある、あなたは都会議員ですが、都会議員ではもっと使っておる人がある。これは要するに法を無視した腐敗、不正の選挙運動をやっておるからなんです。それを防止することが——費用を軽減し、政界を浄化するために不正、腐敗を防止する手をぴしっと打つことが、より必要ではないかと考えるのですが、いかがですか。
  34. 四宮久吉

    四宮公述人 それは、私が先ほどから何回にもわたって説明した通り選挙費用をたくさん使っておる人があるかもしれませんが、私は一々調査したことはありません。しかし私に限り選挙費用は法定費用の半分です。半分で大丈夫、いつでも私は半分で選挙してお目にかけるだけの決意を持っております。決して私はさような選挙費用を使っておりません。ただ問題は、選挙費用がなぜそういうように多くなるかと申しますれば、買収が多いとかなんとかいうことは、やはりつながりがないから……。
  35. 島上善五郎

    ○島上委員 買収の問題はあとで出しますから……。
  36. 四宮久吉

    四宮公述人 いや、いや、政党候補者選挙民との間の接近が今までは少かった、浮遊していた。そこに選挙ボスが起りあるいは選挙ブローカーが起っておる。そうしたことを少くするには、努めて接近する力、理解する力、この力というものが常にあることによってブローカーだとか買収の問題が少くなる。こういう意味で申し上げておるので、たくさんの金を使って入ったという人があるなら、それはだれが入ったか私は知りませんが、私は選挙費用がかかっていない。それは私の地元に行ってお聞きになっても十分おわかりになることだと思います。
  37. 森三樹二

    ○森(三)委員 ちょっと関連して。今、四宮君のお話を伺っておりますと、血のつながり、ふだんからの選挙民とのつながりということを盛んに言われますが、私実は一昨日仙台でもって公聴会へ出ましたところ、自民党から推薦したところの、七十才くらいになる、長い間県会議員をやって現在町村長をしている人ですが、その人がどういうことを言ったかといいますと、今度小選挙区になると、今まで二百円の御祝儀だったものが、五両月、千円になって、慢性買収が行われる、その人の言葉を借りますと、三百六十五日選挙運動をするようになって、これは大へんなことになるというのです。ここに自民党の諸君もおられますし、これは決して誇張して申すわけではありませんが、あなたが言われる血のつながりというものは、そうした平素選挙民に冠婚葬祭に花輪を贈り、香典をふやす、そういうことを意味するのかと思うのですが、これに対して明快な御説明を願いたいと思う。
  38. 四宮久吉

    四宮公述人 それは考え方で、悪くとって朝から晩まで金をまいて歩くことも血のつながりかとおっしゃられると、私ははなはだ困る。そういういろいろな金を使うという問題ではない。私は従来金なしの選挙です。生まれてから今日まで、四宮選挙に金を使うと言われたことはない。しかし、私は、選挙民の信頼を得るためには努力はいたしております。それは始終四宮という者の行動にいたしましても、努めて十分誤解のないように努力をしておる。選挙民は、あなた方がどこの何という人かというので名前だけは知っているけれども、顔も知らない、話もしたことがないのです。従って政党政策が徹底していない。そして、どうしても社会党をかつがなければ、自由民主党をかつがなければ、日本のために一大事だなんて考えている一般選挙民は少いと思う。そういう、日本の将来はどうすることがいいかという理解を、もう少し一般国民に知らすべき機会がそういうふうになればできる。政党政策国民の少くとも六割か七割が知ってくるような形にまでなってこなければ、政策国民とのほんとうのつながりがなくなってくる、こう言うのです。
  39. 森三樹二

    ○森(三)委員 小選挙区制が実施されますと、今言われたように、候補者となる人と選挙民との密接不可分な公的な関係というものが増大いたします。ふだんのそれなくしては、あなたのお説をかりましても、選挙になって金がかかる。ふだんから選挙民と密接な関係をたくさん作っておかなければならぬ。それには、あなたはお金を使わないと言われているから私は信じますが、要するに先ほどの仙台の公述人などは、必然的に冠婚葬祭の吉凶禍福に対して香典や贈りものをしなければならぬ、平素のそうしたところの費用というものが非常に莫大にかかる、それがすなわち選挙界を腐敗させるもとになるということを言っておったのですが、それに対する御所見を私はお尋ねしておるのです。
  40. 四宮久吉

    四宮公述人 そういうことをする人、しない人を一々ここで詳しく説明はできませんが、あなた方は社会常だから、例を社会党にとると、組織労働者は社会党に入るのです。血のつながりがある。政策が組織労働者というものに理解され、接近している。そういうふうに、あらゆる機会に、各階層を通じて、組織労働者でなくて一般大衆が理解を持ってくれば社会党はおそらく第一党になり得るわけであります。血のつながりというのは、そういう意味で私は申し上げるのです。どうでございましょうか。
  41. 森三樹二

    ○森(三)委員 私が四宮さんに聞いておるのは、それと同時に、選挙区が小さくなれば、平素の選挙民との密接不可分な関係が増大して、必然的に冠婚葬祭その他に対する費用は莫大になるのじゃないか。法定費用が、今度の政府案によって、七十五万円がわずか六十万円に下ったというけれども、これは選挙運動の機関が二十五日から二十日になったのですから当然なんです。もう少し面積的なことを考えればまだまだ下げなければならない。と同時に、その反対に、今度は常時言葉をかえていえば慢性買収的なことが行われ、選挙界が腐敗するのではなかろうかということを御質問しているのです。
  42. 四宮久吉

    四宮公述人 それは考え方で、あなた方の言うような論理からいけば、中選挙区だって同じことです。中選挙区の方が買収するなら広く買収でき、その費用もますます大きくなる。いずれにいたしましても、小さくなるということが、その選挙区の人に接近の機会が多くなるということは事実です。たとえば、徳島県なら徳島県を一回りするよりは、その選挙区の皆さんに対する演説会にしても座談会にしても、一応政策が徹底するようにする機会というものは、地域が小さければそれだけ機会が多いのです。おれは花輪を贈ろう、花輪代議士になろうという考えの人は別です。常識的な話をしないで、たくさん贈ろうという考え方のみを中心に、例外を対象として質問されても、私としては、今の代議士諸君はそういうことはしないであろうということしか申し上げられません。
  43. 森三樹二

    ○森(三)委員 関連質問ですからこの程度にして、あとでまた質問します。
  44. 島上善五郎

    ○島上委員 それでは私伺いますが、見解が違うなら違うとはっきり言っていただいてけっこうです。それから、これは御注文申し上げて失礼に当るかもしれませんが、私も質問を簡潔にしますから、要点を簡潔にお答え願いたい。お伺いしたい点がたくさんあるのです。  現鳩山内閣の法務大臣牧野良三君は、今年になってから、新聞に、小選挙区是か非かという論文を社会党の河野密君と二人で発表しております。その中で、小選挙区の長所をいったあとで、次に短所があります。選挙区が狭くなると買収がしやすくなる、買収が盛んに行われるようになる、ふだん花輪や香典を盛んに贈るようになって、花輪議員、香典議員ができる、そうして、そのあとに、しかし、そういうことは、四、五回も選挙をやれば選挙民が自覚してやがて解決される、こういうのんきなことをいっておる。そうして、そのあとで、だから、小選挙区制にする場合には、連座制を思い切って強化しなければならぬ、買収、供応をやるような悪質な者には公民権停止の厳罰を加えなければならぬ、こういっておる。しかし、そのいったことと同じ政府から出されてきた法案とは大へんな違いです。私もこの限りにおいてはほんとうだと思う。選挙制度調査会においても、今回答申に際しては小選挙区採用すべしという答申をしておりますが、これをやるならば、必ず連座制の強化、政治資金の規正、あっせん収賄罪の立法措置を行うべしと答申しておる。四宮君のように、選挙区が狭くなればお互い監視するから買収が少くなるという野放しな楽観は、これは大へんな楽観論だと思う。そういうような心配を私どもは持つ。それを防止する措置として、連座制の強化、政治資金の規正、あっせん収賄罪等の法的な措置を必要とすると一般識者でも考えておる。その点は四官公述人はどのようにお考えになっておりますか。
  45. 四宮久吉

    四宮公述人 法務大臣がどういう見解をとられたかは私は知りませんが、これはいろいろな意見がありましょう。私は私としての考え方意見として申し上げるより方法がないのです。さきに申します通り選挙法改正は、万人の満足するようには神様でもできないということだけは、一つ御了承願いたいと思います。
  46. 島上善五郎

    ○島上委員 僕の聞いておるところにお答え願えばいいのですよ。牧野法務大臣もそういうことを心配しておるし、選挙制度調査会の意見も全部それを心配しておる。この答申には政府から出ている早川君初め全部賛成しておる。それほどみんなが心配しておるから、それを防止するためには、連座制強化とか、政治資金規正とか、あっせん収賄罪の立法措置が必要である。それは万人が認めておるのです。それを、あなたは、必要ない、手放しでけっこうだ、こうお考えになるかどうか、それを聞いているのです。
  47. 四宮久吉

    四宮公述人 私はただ総括的に申し上げたいのですが、要は、選挙取締りというのは、厳に過ぎていかず、寛に過ぎていかず、厳に過ぎることは、今言うように、事と次第によると事を誤まる。大体その線が私の考えておる線でございまして、その内容についていろいろ論議もあろうけれども、それは私はただ厳に過ぎてはいかぬ、寛に過ぎてはいかぬ、その中庸を皆さん学識経験者から御研究を願いたい。
  48. 島上善五郎

    ○島上委員 私はそういう抽象論を言っているのではないのです。具体的に聞いている。まあしかし御都合の悪いことは答弁されないことも自由ですから、私は答弁なさらないからこれ以上聞きません。
  49. 四宮久吉

    四宮公述人 私も、その内容について、あまりそんな学術的な研究というものを……。
  50. 島上善五郎

    ○島上委員 よろしい。学術的な問題ではない。具体的な問題です。何も学術的な問題や高邁な理論を聞いているのではない。四宮君御自身も選挙をやっているし、私も選挙をやって、その経験からそういう心配があるから、その心配を防止する措置が必要ではないか、万人の意見はそういうことが必要である、こう育っているが、どうかと聞いているので、お答えにならなければ、お答えにならなくてもけっこうです。  それでは、次の問題を伺いますが、現行選挙区では同士打ちがあるが、その同士打ちがなくなる。これは一つの議論です。しかし、これを逆に考えてみますと、今日区会議員でも都会議員でも、多数の定員でありますために、多数の候補者社会党からも自由民主党からもその他からも立つ。このことは、なるほど乱立同士打ちといいますか、選挙をやる方からいえば確かに同士打ちです。しかし、一票を投ずる方から見ますれば、同じ自由民主党候補者でも、自由民主党政策は同じだから、甲でも乙でも丙でもだれでもいい、こういうものではなかろうと思う。その公約した政策を誠実に実行する人物であるか、その能力があるか、人格はどうであるかということを選定して投票する。いわゆる候補者選択の自由というものが、選挙民には与えらるべきものです。私は、選挙法というものは、選挙をやる候補者政党の御都合主義できめるものではなくて、主権者たる有権者の都合を主にして考えなければならぬと思う。同士打ちがなくなるというけれども、候補者選択の自由を奪ってしまう、制約してしまう、こういうことになりはしないかと思う。その点はどうお考えですか。
  51. 四宮久吉

    四宮公述人 御説の通り選挙民候補者選択の自由を有することはもちろんであります。そこで、私がさきにも申し上げた通り政党公認に対しては、少くとも民意のあるところを十分に察知さてれて、自分勝手の党利党略と一部の感情なんかで公認をしておったら、その政党は近い将来に滅びる危機がある。だから、努めてその人とその時期とを見て戦わなければならぬ、公認をせなければならぬ。公認制度は、お互いの、これは自民党においても社会党でも同じ立場にあると私は思うのであります。そういうような点で、公認が最も正しくせられたときには、その政党はいよいよ発展する。そういう意味におきましては、決して選挙民個人を阻害したものではなし、選挙民の心を心として公認をさるべきものだという結論を持ちます。
  52. 島上善五郎

    ○島上委員 どうも、失礼ですが、御答弁が焦点をはずれておりますので、因ります。それでは同じことを繰り返して聞いてもしようがないから、これに関連して伺いますが、先ほど滝井君も質問しましたが、先ほど来のあなたの議論を推し進めて参りますると、都会議員も一人区、区会議員も一人区にするという理論に私は通ずると思うのです。都会や区会は行政区です。文京なら文京、台東なら台東という行政区だとおっしゃる。確かにそうです。区会議員は行政区のことをやる。都会議員東京都のことをやる。しかし国会議員は国全体のことをやる。理論的には、東京の人は、東京自分の入れたい人がなくて、埼玉にりっぱな人がいれば、それに投票してもいいはずなんです。しかし、それは実際上できないので、一定の選挙区をきめているわけですが、理論的には一人区にすべきだという議論は、都会も区会も一人区にすべきだという議論に通じますし、政府の答弁の中にも、やがて参議院議員選挙区や地方議員選挙区も検討しなければならぬと考えておりますと、こう答弁しております。この点をもう一ぺん伺います。
  53. 四宮久吉

    四宮公述人 これは、地方の事実は中央とは大へん違う。地方の行政区というのは結局サービスです。地方の自治というのはサービスなんです。それで、選挙民といいながらも、結局その地域におけるサービスをやらなければならぬ。いろんな問題をサービスする。それは地方行政というものはサービス行政です。だから、サービス行政であるだけに、都民の福祉だとか、あるいはまたいろいろな、今福祉事務所を各区にもよこせというようなのは、やっぱり実態に即した行政のサービスです。こういう地方々々の線から流れ出る金、政府から流れてくる金をもってサービスするから、その地方の行政区域というものは、いろいろな観点において一つとしてやられておる。そういうふうで、文京区なら文京区、千代田区なら千代田区、葛飾区なら葛飾区という区域内におけるサービスというのは、全部平等な立場において、民生委員が人を保護するといっても、その区域々々の関係が実体面にサービスせられなければならぬのが、地方自治の建前である。そういうような関係で、これを分離するということは、他の場合と違って利害が多いのですが、それかといって、国会からじきじきに——国が地方のこまかいところまでサービスするということは至って少い。上から流してみたところが、都が受けて、都がそれを区に流す、区はその区域内のサービスをするという関係から申しましても、そうして政党意識が中央みたように強くない。これは、物事がその地方の利害関係になると、政党は超党派で、社会党自由民主党もそういうようなことで争っている場合でない、そういうこともありますので、大体において行政区というものが多く尊重されるのは——行政区を割るということになると、またその利害関係というものがサービスの上に非常な混雑を来たす、そういう意味から申しましても、適当であろうと思います。
  54. 島上善五郎

    ○島上委員 とにかく私の質問に対する答弁が焦点をはずれて、それに理論的に一貫性がちっともない。私はきわめて不満足ですが、しかしこれ以上私の満足するような答弁を求めることは御無理と思いますから、この問題はこの程度にしておきます。  それから、先ほど来……。
  55. 四宮久吉

    四宮公述人 ちょっと申し上げたいのですが、十二時が来ると用があるので……。
  56. 島上善五郎

    ○島上委員 もう二分くらいです。  先ほど来盛んに血のつながり血のつながりということをおっしゃる。今度の改正案提出の理由の中にも、政党政党政策中心で争う、こういうことを言う。私は、民主政治の進んだ形は政策中心の争いということになるべきものだと思うんです。そこで、これは簡潔でよろしいから、伺いますが、血のつながり政策中心とは、一体どういうものであるか。
  57. 四宮久吉

    四宮公述人 政策も血のつながりであります。その人もまた血のつながりであります。その人が最も適当なりとするなら、決して金をやらなくても、あべこべに選挙民から金を持ってくる人もあります。これはそうなんです。決して金を出さなければ選挙をしないということはない。金を出しながら、休んで選挙を一生懸命夢中になってやる者もあります。血のつながりというものは、その人の人格、識見に対して非常な信頼をするということと、政党というものが自分たち国民のためによくしてくれるということで、どうしても一貫していなければならない、こういう意味です。ちょうど、例をあげれば、いわゆる組織労働者が社会党を信頼するがごとしということにもなります。
  58. 島上善五郎

    ○島上委員 四宮君がさっきから言っている血のつながりというものは、政策とは逆のことを言っている。政策中心であるならば、自由民主党が文京区へ古川君を持ってくるのが適当だと思ったら、古川君を持ってくるのがよろしい。それが政策中心ということなんです。あなたは先ほど来血のつながり血のつながりと言っているが、選挙民をふだんお葬式や何かでサービスしたり、そういうことを血のつながりと言っておる。私はこのことはもう聞きません、何度聞いたって同じことですから。ただ、この間に理論的な大きな食い違い、矛盾があるということだけこの際明確にしておくのです。  時間がないから、もう一点だけ。御承知のように、二名区を二十も作っている。これはもう党利党略であることは、世間も認めておる通りです。そこで、公認問題のところで、今度の改正はあまり目立ってはおりませんが、非常に重大な憲法違反と疑われる改悪がある。というのは、一つの党がその区で公認候補者を持ったならば、その党並びに党員が公認候補者以外の者を支持、推薦してはならない、こういう規定なんです。これが一名区の場合ならばともかくとしまして、定員二各区がある。二名区の場合には、たとえば保守党が二名立てるには少し冒険で票が足りない、一名の場合にはまだ票が一万票ほど余っておる、こういう場合がしばしばある。社会党の場合にもある。そこで冒険を冒しても二名立てるか、あるいは一名立てて、その余る票を自分たちに近い人を支持、推薦するかということは、これは政党自体が自由にやるべきことなんです。そういう場合がしばしばあり得ることなんです。そういうことは政党自体でやるべきことと私どもは考えておりますが、そういうことを法律で規制すべきものとあなたはお考えかどうか、それを伺いたい。
  59. 四宮久吉

    四宮公述人 それは私も先に説明しておいたのです。一人一区で根本的に貫くかどうか、これがいいか悪いか、二人区を置くことがいいかどうか……。
  60. 島上善五郎

    ○島上委員 いや、私の聞いている焦点は違うのです。
  61. 四宮久吉

    四宮公述人 よく聞いて下さい。一人区で貫くことによっての弊害を二人区で補うという方法をとることの必要があるかないか、この問題です。
  62. 島上善五郎

    ○島上委員 いや、それを聞いているのではない。
  63. 四宮久吉

    四宮公述人 じゃ、何です。
  64. 島上善五郎

    ○島上委員 よくおわかりにならないようですから、もう一ぺん簡単に言います。私の聞いているのは、こうなんです。今度の改正で、ある選挙区で政党公認候補者を立てた場合に、他の者をその政党及び政党員は支持、推薦してはならない、こういう改正をしておるのです。これが非常に問題です。  そこで、私は、今具体的な例を言うんですが、品川区のように、二名区が二十もある。その二各区で、少し冒険だが、二名立てて、二名とる戦いをするか、それとも、共倒れをするおそれがあるから、一人立てて確保するかということは、党が自分の判断できめるわけです。法律できめることではありません。ところが、この法律の改正で、公認候補者があった場合には、他の者を支持、推薦してはならない、党員も支持、推薦してはならない、こう規定してある。しかし、現実には、三名立てるには少し冒険だけれども、一名だったら、票が一万票ほど余るという場合がしばしばある。その余る票を全然政策の違う反対党にやるよりは、無所属でやがて自分たちの党へ来るような者とか、あるいは労農党……。(「共産党もだろう」と呼ぶ者あり)共産党と言わせたがっておるけれども、私は言いませんが、それは、あなたの方でも、あなたの方に近い党があるなら、その余る票を自分たちに近い候補者にやって支持、推薦して、これを当選させたい、こう思うのは当然だと思う。それを禁止している。今度の法案でそういうことを禁止することは妥当かどうか、これを聞いている。
  65. 四宮久吉

    四宮公述人 それは、基本を云々するのに、わずかの小部分の例外を取り上げてするのであって、基本的に候補者一人のときを精神としてやるときは、そういう戦いでなければ、これは正常化されぬ、これでなければ、ほんとうの筋でない、こういうふうに考える。
  66. 島上善五郎

    ○島上委員 現実に二名区が一十もあるので、これを聞いているんです。どうもこれはこれ以上お伺いしても、お答えが困難のようでありますから、私はいずれ他の人に伺います。ただし、私は、ただいまの答弁は焦点はずれで、満足しません。
  67. 田中織之進

    ○田中(織)委員 あなたの立場について、一点だけ伺っておきたい。先ほどお述べになった御意見は、四宮さん個人の御意見だと承わっているんですけれども、あなたはたまたま全国の都道府県議長会の会長さんをやられているわけなんです。そこで念のために伺っておくんですけれども、地方議会の中には、たとえば奈良県の議会のように、小選挙区制に賛成、反対立場が入り乱れて、特に区割りの問題等について議会として反対の決議をされており、兵庫県議会も、淡路島の問題その他の問題で同様な決議をなされたというふうに伺っておるのです。そういう意味で、地方議会の中には、小選挙区制に賛成するとか反対するとかは別問題として、少くとも今の政府案ではいけないという意見があるわけです。そこで、あなたは、きょうは会長ということがあなたの資格なんですけれども、お述べになりました点は、あくまであなた個人の意見だとわれわれは了承しておいていいのか。もし都道府県議会の議長会の会長という立場において、何らか地方議会関係者を代表するような意味意見であるということであれば、これはあとで物議をかもすかもしれないということが一応考えられますので、その点を確認しておきたいと思います。
  68. 四宮久吉

    四宮公述人 私は、最初から申し上げているように、役職はそういうようなことをいたしておりますが、しかし、きょうの公述は、私個人の自分経験であるということを、特に前に説明を加えて申し上げております。
  69. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 これにて四宮公述人に関する議事は終了いたします。  四宮君には御多用中のところ御出席をわずらわし、長時間にわたりお引きとめをいたしまして、まことに御苦労さまでございました。これにてお引き取りを願います。(拍手)  次に、石垣綾子君より御意見の御開陳を願うのですが、議事に入る前に公述人に一言ごあいさつを申し上げたいと存じます。  本日御多用中のところ特に御出席を願いましたのは、さきに御通知申し上げました通り、本委員会におきまして目下審議中の内閣提出公職選挙法の一部を改正する法律案中村高一君外三名提出政治資金規正法の一部を改正する法律案及び中村高一君外四名提出公職選挙法の一部を改正する法律案は、小選挙区制の採用を中心といたしまする内閣提出案を初めといたしまして、国民一般的関心及び目的を有する重要な法律案でありますので、成規の手続によりましてここに公聴会を開会し、学識経験を宿せらるる方々を公述人として選定し、各位の御意見を拝聴し、よってもって本委員会の審査に慎重を期することといたしたのであります。  つきましては、何分ともに以上の趣旨を御賢察の上、それぞれの御立場より腹蔵のない御意見の御陳述をお願いする次第であります。  なお、議事の進め方につきましては、公述人意見陳述の発言時間は大体三十分以内でお願いし、公述人はお一人ずつ順次御意見の御開陳をお願いしたいと存じます。  石垣綾子さん。
  70. 石垣綾子

    ○石垣公述人 私は、戦後日本で新たに参政権を与えられました日本の選挙権を持つ一人の女性として、きょう、ここに簡単に私の意見を述べさせていただきます。  先ほどから皆様のお話を伺っておりましたところ、多分自民党の方々でいらっしゃるらしい議員の席から贈賄その他選挙に対する腐敗の問題が出ましたときに、選挙民を侮辱しているではないかというようなお言葉がたくさん出ました。私は、選挙民を侮辱しているではないかと言うほど、そうした良心を持っていらっしゃる議員の方々が大勢いらっしゃるならば、このような選挙改正というような大きな問題になりましたときに、やはりその選挙民を侮辱しないように、もっと選挙民全体の意見を聞いてから、問題をはっきりきめていただきたいと思うのでございます。(拍手)実を申せば、この政府多数党が、自分たちに大へん都合のよい選挙改正案をお出しになり、多数という暴力によりましてそれを押し切ろうとなさることよりも、ほんとうに選挙民のことをお考えになりますならば、そういうことをなさる前に解散なさって、新たに国民に意を問うてからやっていただくことの方がいいと私は思うのでございます。(拍手)  それで、今度の選挙改正の支持者の方のお話は、第一に候補者がわかってよろしいということでございます。これについて、私は第一に自分意見を述べさせていただきます。  今度の選挙改正によりますと、選挙区が大へん狭くなりまして、現在の三分の一から六分の一になることは、皆様御承知通りでございます。地方選挙よりも選挙区は小さくなります。地方選挙の場合に、これはここにいう選挙に関連はございませんけれども、私は地方を旅行いたしましたときに、相当小さな選挙区における選挙がどういうふうに行われているか、その弊害というものをしみじみ見て参りました。都会におきましては選挙民の訓練はできておりますけれども、地方に参りましては、そうした訓練は、日本の現状においてはまだできておりません。私は、こうした選挙改正を持ち出しますには、やはり日本の現在の選挙昂の訓練の程度また日本におきます議会制度の伝統、その歴史、そういうものをはっきりお考えになりまして、考えなければならない問題だと思うのでございます。現在におきましては、地方は、言いかえますれば、日本の大部分でございますそうした選挙をいたしますときの態度がどういうふうになっておりますか。これは現実でございますが、私がある町に参りましたときに、ちょうどそこで市長の選挙が行われておりました。どういうふうにして行われているかと申しますと、ちょうど小学生徒を遠足に連れて行きますように、各政党の係の方が選挙民を一ところにお集めになるのです。そういう場合に、特に女性もたくさん集められて参ります。その一つに固まった人間が、一人の引率者に連れられて選挙所へ行くわけです。そこに行きますと、ちゃんと紋付はかまを着た、えらそうな方がすわっていらっしゃる。特に現代の農村の女性は、まだまだ古いものを一ぱい身につけております。これは私たちがだんだん取り除いていかなければならない問題でございますけれども、農村におきましては、いつもえらい人の前には黙って頭を下げる。家庭におきましても、御主人の前に黙って頭を下げる。これは日本の女性の押しつけられた伝統でございます。それが一たび社会の問題になり、世間に出ていきますと、紋付はかまを着ていらっしゃる、ひげをはやしておられる男性の前に出ますときには、やっぱり胸がどきどきしてしまって、そして自分はこの人に入れようと思いながらも——こういう人に入れなさいということを前もっていろいろな御通知があるのであります。それは選挙違反でございますから、はっきりしたそういうことはございませんけれども、女性としては、特にそういうところは敏感でございます。社会に生きていきます上には、世間からきらわれては、どうしても生きていかれないのですし、えらい人がこれこれに投票しろと言われると、それに違反して投票することがどうしてもできないのが、日本のまだ現状でございます。そういうような場合に、自分の意思に反して、やはりその土地の顔ききというふうな人に投票しなければならないというような現実の日本であることを皆様お考えになっていただきたいと思うのでございます。できるだけそういう弊害が起らないようにするのこそ、私は選挙改正の根本問題でなければならぬと考えております。  そこで、選挙区が狭くなれば、候補者がよくわかるから、批判できるということをおっしゃいますが、これはまだまだ日本の現状においてははっきりできることでなく、それの反対に、情実、裏面工作、そういうものが非常に顔をきかせる危険が非常に多いと、思っております。特に私は女性の立場から、そういうところに置かれた女性の心理がどういうふうに動くかということは、ただいま申し上げた通りでございます。  それから、私は女性といたしまして一票を投ずる権利があるとともに、政治家として出られる権利も人間として持っておると思います。先ほどからもいろいろ議論がございましたけれども、現在政府が提案しております選挙区制になれば、婦人の議員は出る余地がほとんどないということをいわれております。もしそうでないとお考えになる方があれば、私は言っていただきたいと思うのでございますが、これはほとんど一致した考えのように私は見受けております。なぜ出られないかと申せば、皆様がよく御存じと思うのでございますが、日本の、特にこれまでの選挙にはいろいろの情実がございます。その土地のボスと結びつかなければなりません。待合へ行ってお酒も飲まなければなりません。いろいろな金づるとも関係がなくてはなりません。女性は今までそういう社会に出ておりませんから、比較的そういうものがございません。私は、女性が何も男性にすぐれているから政治に出ろと言っているのではございません。女性の中にはすぐれた人もあり、また一部のそういうきたならしいことをする人も私はあると思っております。ただ、女性はこれまで社会の権力者の地位にございませんでした。いつでも女性としてしいたげられた生活であり、しいたげられた社会層の中に生きております。ですから、私たちの胸の中には、現在の社会に対するいろいろな批判、これを通して、よくしてほしい、子供をかかえた未亡人は、やはり社会福祉のことをやってほしい、教科書などもただでやってもらいたい、そうした日常生活と結びついたいろいろな要求を女性として持っております。そうした女性の要求を堂々と唱えるのは、やはり私は女性の議員に多く期待しております。しかし、男性の議員に全然そういうことがないとは私は思っておりません。男性の方にも、そういうことを主張して下さる方がございますけれども、そういう方々と同時に、やはり女性がそういう政治の面に出なければならないものだと思っております。それは、この社会が男と女でできております以上、一国の政治も、やはり女性の意思というものが反映されなければならないものだと思っているからでございます。ところが、今度の小選挙区制になりますと、女性は——普通のこれまでの日本の観念はどうでございましょうか。女はだめだ、男の方がえらいのだ、特に政治家として出すには、女ではだめだという観念、これがまだ非常に広がっております。こういう観念と戦っていってこそ、これからほんとうにいい選挙ができると思うのでございます。女が出ないのは当りまえじゃないか、それで出られなければ、しかたがないじゃないかという投げやりで女が出られなくなってしまうということは、日本の国をまた元へ持っていく危険性が非常に強いと考えております。私は、女性として、特に今度自民党政府が提案されました小選挙区制の案には、反対している次第でございます。選挙費がかからないというような問題、これは私はここでは立ち入らないことにいたします。女性といたしまして、現在の日本の政治に対しては、いろいろと不満があるわけでございます。そうした不満を反映させるために、女が正しい一票を行使できるように、できるだけはかっていただきたい。選挙というものは、自分の自由の意思で、秘密選挙でなければならないと考えるのでございます。ところが、選挙区が非常に狭くなって参りますと、その秘密選挙がなかなかできなくなる。そうして、そのために自由意思をもって選挙することができなくなるという危険性がございますから、その点をよく考えていただきたいと思うのでございます。  それから、小さい区になりますと、そこに一人しか議員が出ないことになります。自分の投票したい人が、そこに立候補してくれないという悩みがずいぶん出るだろうと思うのでございます。その場合に、ある人は、あんな人には投票したくないから棄権しようという危険性も出てくると思います。棄権する人が多くなれば、やはり民主主義の制度に市販する方向に参るのでございまして、そういう意味から申しましても、現在提案されております小選挙区制には、私は反対をいたさなければならないのでございます。  そのように棄権する人が多くなり、自分の思った人を議員に出すことができなくなるというふうになりますと、国民の感情は次第に議会政治に対して失望を感じて参ります。現在でも、正直に申し上げれば、議員の評判というものはあまりよくない。ここで申し上げるのは大へんに失礼でございますけれども、そういうことを申します。私がこの間汽車に乗っておりましたら、十くらいの男の子が乗っていて、東京へ出てきて、そうして日本の国会というところへ見物に参りまして、帰ってきて、母親に、議員というものは人をなぐるものですか、まあそうだというような話をしているわけです。これは、もちろん新聞などがそういうことを書き立てたからだと思いますけれども、議員の評価がそれほど下るということは、悲しいことだと思う。議員は、確かに国民が一票を投じて、私たちにかわって政治をして下さる方々ですから、それだけの責任を持ってやっていただきたいと考えます。自分のほんとうに出したいと思う方々がだんだん出られなくなり、女性としてこの方はと思う婦人議員が出られなくなったときに、どういう感じを持ちますか。議会なんて自分たちの生活とは離れたものだ、幾ら何をやってもしようがないという絶望感に陥って参ります。そうなったときにどうなりますか。議会というものの否定そのものに国民感情が走っていってしまうと思うのです。この小選挙区制によりますと、私たちの見通しでは、第一に婦人議員の出る余地がなくなる。それから新人の出る余地がなくなる。そうしますと、ほんとうの意味の正しい政治家でなくて、情夫を使って出られる政治家が非常に多くなる。ほんとうの意味の二大政党という制度は、日本ではだんだんになくなってしまうのではないかと思います。そうして、多数を占めた政党が、自分たちの勝手なことばかりどんどんやって参りますと、もう国民はどうにもならないものだという壁にぶつかった感じになります。そうなったときにどうなるでございましょうか。もう選挙なんかどうでもよい、議会政治なんかどうでもよいということになる。せっかく日本が戦後民主国として、議会制度で世論の反映をもって政治をやっていこうとしますときに、世論の反映というものがなくなりまして、暴力が出てくるおそれが多分にあると思うのでございます。日本をほんとうに守り育てていくために、議会政治の正常な発達ということを皆様は真剣に考えて下さらなければならない立場にあると思うのでございます。もし皆様が勝手に小選挙区に改正なさり、自分たちさえ当選すればよろしい、そうして多数の暴力をもって、自分たちのすきなことをやっていこうというような野望を持っていらっしゃるとするならば、日本の議会制度そのものを破滅に導く第一歩ではないかと思うのでございます。  このような理由から、私は、現在政府が提案していらっしゃる小選挙区制には反対するわけでございます。  私の話は簡単にこれだけで打ちとめまして、あと御質問がございましたら、お答えすることにいたします。  (拍手)
  71. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 石垣公述人に対し、質疑の通告があります。順次これを許します。井堀繁雄君。
  72. 井堀繁雄

    ○井堀委員 石垣さんにお尋ねをいたしたいと思います。  私は、本院の命を受けまして、福岡の公聴会に参ったわけでありますが、九州一円ブロックの代表から六人の方が選ばれまして、その中の、御婦人で西田さくえさんと申します熊本の方に公述していただきました。その節のお話に、今度の選挙区の区割りの問題あるいは選挙法改正によって、一方において直接婦人の立候補が困難になり、他方において有権者としての婦人の自由がはなはだしく押えられるのではないかという御心配を前提にしてお尋ねがありました。その中で具体的なものとして公述されましたのは、未亡人でありますとかあるいは生活保護を受けております恵まれない人々のための婦人団体の活動というものは、選挙と非常に深いつながりを持っておる。こういう婦人団体の仕事が重要であることは、その仕事が直接国民生活につながるということも大事であるが、そういった活動を通じて、日本のおくれた婦人の地位を引き上げる、すなわち民主主義の成長の過程で、婦人の地位というものは高く評価される。こういうものが、今度の選挙法改正によって、被害を受けることは、耐えがたいといった意味の発言がございました。私は非常に貴重な発言だと思いました。私どもは、必ずしも小選挙区制を頭から否定するものではないのです。あなたも御指摘になりましたように、客観的な条件というものがよい理想であっても、受け入れられなければ、かえって大きな弊害を生む、こういうふうに私どもは考えておるわけであります。そういう考えの上から、私どもの選挙人をきめるときには、こういう法律の改正によって、婦人の受ける影響を重視していかなければならぬと思うわけであります。そういう関係で、私はここで二、三お尋ねをいたしたいと思います。  第一に伺いたいのは、あなたは地方と中央の御婦人の水準を比較されておりましたが、都会にありましても、今日の家庭婦人というものは、まだ独立した政治意欲を自由に発揮するということが、私は困難な状態にあると思う。こういう場合に、小選挙区になりますと、よい方の面から申しますと、選挙民候補者との接触は非常に緊密になることになる。しかし、それが全体の成長の度合いと均衡がとれなければならぬ。男子の場合には、ある程度政治との関係は深いと思いますから、よい悪いにつけ密接な関係を持ってくる。そうすると、男の意思で女の意思というものが動かされてくるのではないか、小選挙区と中選挙区の場合においては、そこに非常な違いが出てくるのではないか、この点に対するあなたの見方と申しますか、お考えと申しますか、この点について一つ伺っておきたいと思います。
  73. 石垣綾子

    ○石垣公述人 ただいまおっしゃいました通り、女性が選挙に一票を行使いたしますときに、まだまだ訓練ができておりませんので、御主人のいうことを聞くとか、それから、だれかえらい人のいうことを聞いて一票を入れるという習慣は、農村だけでなしに、都会にもあることは、私は事実だと思います。そういうような現状にございますときに、候補者自身をあまりに身近にするということは、その方の政策を知るというならば大へんけっこうなことでございます。けれども、政策を知らずに、その方の、たとえばめがねをかけていらっしゃるとか、ネクタイがどうだということによって、これが支配されるような危険があると思います。現に、あの候補者はひげをはやしているから、えらそうじゃないかと言う御老人もまだまだあるわけであります。しかも、議員のような方々は、当選なさいますと、こう申し上げては大へん失礼でございますけれども、おいばりになるわけです。なかなかそれが名誉の地位でございますから、いつも風を切って歩いていらっしゃる。ところが選挙のときになりますと、急に頭をお下げになるわけです。そして、その方の政策は知らずに、その方の外形だけを知っております。また政治的な訓練を受けていない女性は、そうした候補行が台所口にいらっしゃいまして、奥さんどうぞお願いしますと言って頭を下げます。そうすると、まだ客観的に物事を見る訓練のできておらない女性は、ついお気の毒になって、あんなにふだんいばっていらっしゃる方が、あんなにして、私のためにおじぎをして下さるということになりますと、そういうことが感情で動かされる危険が大へんにあるわけであります。それで、やはり選挙民候補者をよく知るということが必要でございますが、知るという意味は、政策をよく知るということにならなくてはならないのであります。ところが小選挙区になりますと、その政策よりも、これまでのいろいろな伝統、習慣などから、ただその人の外形を知っておるということだけになりまして、感情的に支配される危険が非常に多くなると思います。ですから、婦人が正しい一票を使いますためにも、現在の中選挙区でいく方が、私はそうした危険を避ける可能性がずっと多くなると思うのであります。
  74. 井堀繁雄

    ○井堀委員 次に、もう一つお尋ねをいたしたいと思いますのは、これも西田さんのお話の中で私の強く感じたことです。それは、あなたもお聞きいただいたと思いますが、さっきの公述人四宮さんからお話で、翼賛選挙のときの例を引かれておりました。これは別な意味で引かれたのでありますが、この人も外地から引き揚げられた方で、戦前のことも経験しておられるし、外地のこともよく知っておる。戦争によって非常に大きな被害を受けたこともあると思いますが、そういう関係から、婦人の政治的な進出が直接的間接的に鈍くなってくると、日本の平和勢力というものが、ここからくずれるのではないかということを非常におそれておりました。そのことの関係で、これは吉には出しませんでしたけれども、あとで私廊下でお会いしたときに、どうも今の政府の性格について疑いを持っている、翼賛選挙のお話が出ましたが、東条内閣のときの閣僚でありました人が返り咲きしている、これはいい悪いは別でありますが、重光さんのような、あるいは大麻さんのような、あるいは岸幹事長のような人たちは、東条内閣のりっぱな閣僚なんです。そういう人たちが政治の表に闊歩をしてきた。それからラジオのA級の戦犯者の討論会の録音などを聞いたりしても、最近の政治というものは、また往年の軍国主義的な傾向がぐっと強くなってきた。これと今度の選挙法改正が、一脈の関連があるのではないか、こういう疑いを持たれて、出てから私に質問をされました。そういう御婦人の御心配も、地方婦人の中にある。選挙法にからんで、この点に対するあなたのお考えをお聞かせいただきたい。
  75. 石垣綾子

    ○石垣公述人 女性は、やはり戦争の痛手を非常に受けて参りました。これは内地にいらした方も、また外地にいらした方も、日本の女性は、この戦争によって大きな痛手を受け、その中からいろいろと考えてきている現在だと私は思うのでございます。先ほど女性の政治的訓練がないということを申し上げましたけれども、女性が心の中に持っております平和への願い、それは、私は非常に強いものだと思うのでございます。ところが男性の一部の方方は、これから再び日本を軍備させて、夢よもう一度というふうに考えていらっしゃる方もかなりおありになるのではないか。女性が、その場合に、あのような悲惨は繰り返したくない、自分の子供を守り、夫を守り、そして社会を守るという立場から、どうしてもああいうような昔のことを繰り返したくないという願いを強く持っているということを御存じなものですから、小選挙区制にしたならば、婦人の議員は第一に出られない、また女性の一票も、思う通りに、かなりあやつることができるだろうということをもくろんでいらっしゃるのではないかと疑える節もあるわけでございます。それに関連いたしまして、憲法改正の問題も出て参ります。憲法改正の問題におきましても、小選挙区にいたしまして、改正論者を多数議院に送り、そうして、しかも一気に改正してしまおうというような気配もあるのではないか。これはやはりあの戦争で苦しんだ女性として、そういうことをあらしめてはならないと考えております。やはりただいまおっしゃいましたように、女性のほんとうの意思がこれによってこわされるのではないか、そして戦争というようなもの、また日本が昔に逆戻りすることをどうして日本の女性が特におそれるかと申しますと、戦前、特に戦時中の日本の女性は、実に人間として扱われておりませんでした。みじめなものでございました。そういう地位に引き戻されてはならないと考えている願いが非常に強いので、そうした女性の御心配が出たので、私もそれに全面的に賛成いたします。
  76. 井堀繁雄

    ○井堀委員 直接、選挙法に関連して、一、二お尋ねをいたしたいと思います。  今度の選挙法改正については、提案者側としての政府は、二大政党を育成していくための理由と、いま一つは、政局の安定を強調いたしております。この点について、御婦人の立場からごらんになったままを一つ聞かしていただきたいと思います。私どもは、この二大政党を育成するということについては賛成なのであります。しかしその二大政党は、作られた、要するに一部の権力者や野心家によって作られた二大政党であってはならぬことは言うまでもないのです。不幸にして、今の二大政党選挙によらない二大政党であることは、残念ながら認めなければならぬと思います。この点については、あなたは解散をなさってという御主張でありましたから、私どもと同じ考えだと意を強くしておるわけであります。そこで小選挙区になったら、どうして二大政党を作り上げていくかということについては、一応外国の例もあります。日本の小選挙区の例は、大正九年と十五年に経験しております。これは必ずしもその目的を達することに役立っておりません。でありますから必ずしも、小選挙区制をとれば二大政党を成長せしめるというふうには、にわかに肯定できぬと思います。しかし、理想としては一応あり得ると思うのです。また理論的には、ある程度そういう可能性はあると思うのです。しかし、それを実際に実現するためには、私は選挙民がその気にならなければ、何にもならぬのじゃないかと思う。その選挙民の半ば以上が、実は婦人有権者であるわけであります。ですから、御婦人のお考え方で、この理想が実現できるかできぬかをきめるといっても、私は言い過ぎじゃないと思う。ところが御婦人が非常に関心が薄いように感ずるのです。でありますから、半分以上、すなわち決定的な力を持っておりまする国民の一部を代表される御婦人に、一体、二大政党を理想の形に実現していこうという意思があるかないかということは、私どもこの法案を審議する際に、非常に大切な目標だと思うのです。そういう意味で、あなたのお考えなり——御婦人の共通しているこういうものに対する考えは、私はそこまで成長していないのではないかと思うのです。でありますから、結局理想を掲げて、現実は偽わるような結果になるんじゃないかと思うのです。それから、政局の安定は、申すまでもなく、そういう形で作られたものは、国民の自由を奪う結果に、すなわち権力が政治の悪い部分に現われてきて、要するに民意の反映というものは、特にさっき言うように、二分の一以上の御婦人の意思が押えられてしまったら、これは人為的なものになり、やはり権力政治に陥っていくから、そういう政局の安定は国民の願うところではないんじゃないか、ですから、理想はよくても、過渡期におけるそういう姿はとうてい忍べないんじゃないか、こういう点に対して、私は、御婦人の間で、特に進んだ考えを持っておりまする婦人の間では、こういうものに対するお考えがあるんじゃないか、私どもはそういうお考えをぜひの選挙法に反映させる義務を感じておるものですから、非常にお尋ねとしては広範な尋ね方で恐縮ですけれども、一つお答えいただきたい。
  77. 石垣綾子

    ○石垣公述人 現在の日本の二大政党と申しますのは、私はほんとうの意味の二大政党だとは決して考えておりません。これを、二大政党というのはすりかえでありまして、人為的に党利党略できめられた二大政党にすぎず、ほんとうの民主議会の二大政党とは、よほど離反したものになっていると私は考えております。ですから、ただいま御指摘のございました通り、やはり日本の女性、選挙民の半数以上を持っております、投票数の半数以上を持っております女性が、もっとこの問題について真剣に考えなければならないことは、私たちの義務であると思います。選挙の一票を持つということは権利であると同時に、それを正しく遂行する、それについてよく知るということは、選挙の一票を持っております田中の義務である。私たち女性は、その義務をまだほんとうに遂行していない傾向があることを、私どもは自己反省しなければならぬ問題だと思います。  二大政党になれば、政局が安定するということを皆様おっしゃいます。和は日本の現在において、もし二大政骨によって政局が安定したというならば、それはどういうような安定であるかということを考えてみたいと思うのでございます。先ほどいろいろと小選挙区の選挙にまつわる日本の現状について、ここでお話がございましたが、小選挙区になりまして、当然の結果として予想されますことは、保守政党が非常に伸びるんじゃないかということでございます。保守政党が伸びて、そうして社会党その他革新政党の勢力はだんだんに小さくなる。ここにおきまして、私は二大政党の本質とかなり離れたものが予想されるような気がいたすのでございます。しかもそうした場合の政局の安定、絶対多数を擁する政党がいつまでも長いこと続いて、そこにおける政局の安定というものは、どういうものでございましょうか。私は、そうした安定は、実際におきまして、日本の国民の不安定をかもし出すものだと思っております。イギリスのように、あの保守政党が出ましても、社会福祉の設備はちゃんと整っておりまして、赤ん坊が生まれるときから死ぬまで、国家がやはりちゃんと人間一人が人間らしく生きることを考えてくれるような政治は、日本では行われておりません。その逆に、未亡人が困っても、また一家心中がどんどんございましても、そういうような施設はほとんどなく、国民が困ろうが何しようがかまわずに、私利私欲のために政治をやっていらっしゃるような日本の現状、そういうものが政治の中で強硬に押されていけば、私は安定した政治にならずに、一部の方の利益を推し進めるものになると思うのでございます。その意味から、私は政局の安定と将来を不安定にし、国民の生活を不安定にする危険の方が多いのではないかというふうに考えておりますので、二大政党の安定ということについては、これは私はほんとうの意味の安定ではないと思います。
  78. 井堀繁雄

    ○井堀委員 次に、これも選挙法改正の中で、一つの新しい傾向でありますが、それは、従来の候補者個人と個人の争いよりは、政策の争いに持っていきたいという主張をしております。これも私ども理想としてはそうあるべきでありますし、今の現実をその理想に一日も早く近づけるように推し進めなければならぬという点も認めます。そういう意味で提案したと説明されておりますが、その説明は首肯ができる。そこで、今度の法律の中では、ごらんいただいたと思いますが、政党選挙に参加することを認めておるわけです。従来の政党選挙に参加するよりは、積極的な形がとられておる。この法律では確認団体、こういっておりますが、政党でなくても、その他の政治団体、すなわち労働組合でありますとか協会であるとか、あるいは婦人団体もその中に入るわけですが、そういう人たちが、今度、全国で五十人以上の候補者を持ち得るようなことについての条件がついておりますから、実際上困難と思います。これは二大政党中心として選挙をやろうという考え方も一つあろうと思いますが、いま一つは、この政党選挙運動をやる者に対する制限が、今度の法案の中ではきわめて不明確であります。この団体が選挙に参加することになると、一番大事なのは、その政党自身の純潔を守らなければならぬ。これは私どもも政府にいろいろ資料を出させまして、勉強いたしておるわけでありますが、今までの選挙で、戦前戦後を通じて、選挙違反の事犯の中で一番多いのは、パーセントはちょっと不明確でありますが、七〇%から八〇%が買収、供応です。買収、供応がついて回るような選挙が行われるようでありましては、これはもう国民の信頼するような政府ができるはずがないということは、一応うなずけると思う。しかし、現実においては非常に多くの違反が出ておる。これはもちろん法律に抵触して、それから警察官の目が届いたところですから、届かぬところにたくさんあると見るべきなんです。そういう実情で、政党選挙に介入してくる場合には、集団的にその悪いものを持ち込んできて、その悪いものを大きく悪く合理化する、カムフラージュされるような役割をするという点が、検討すれば検討するほど出てくるわけです。この関係の中で、あなたにお答えいただきたいと思いますのは、政党が純潔であるかないかは、政党がどういうところから資金を集めておるかということを私は言わなければならぬと思う。国会は汚職や疑獄で国民から非常にたたかれておりますが、その涜職というものは、個人の野心を満たすための収賄、贈賄でないことは明らかなんです。おおむね政党を維持するためであって、その当人にとってはお気の毒なものもあると思うのであります。犠牲になったり英雄になったりしておりますから、一がいには言えませんけれども、そういう人が金をたくさん集めてくれば、党内における勢力家になるということは、いなめない事実である。でありますから、その政党の金をいかにたくさん集めるかということが、党を支配する勢力を形作る現実であることは間違いない。その政党の資金について、私今調べる方法はございませんので、政治資金規正法——外国ものに比べれば非常に弱いものでありますけれども、その規正法によって届出をされたものだけを昭和三十年度一年間について調べてみた。そうすると、今日一つの政党に固まりました自民党は、八億二千八百万円寄付金をもらっておる。それから社会党が一億六千四百万円、金額の差は非常にありますが、その内容が問題なんです。さっき、自民党の諸君は、社会党が労働団体から多くの寄付をもらっているということを非難しておりますが、これは私は議論の余地はないと思うのであります。社会党にも、一部政府の面接請負事業をやりましたり、あるいは政府から資金の援助を受けたり、あるいは法律を通じて政策的な手厚い保護を受ける会社や団体が、たくさん寄付をしておる。私ども印象にまだ新しく残っておるものとしては、造船汚職のとき、飯野という海運会社から公然と寄付をもらっておるわけです。これは法律問題にもなったぐらいで、そういうところからもらいたくはないと思うのでありますが、そういうところから金を集めなければ政党の維持ができないという事実は否定できないと思うのであります。こういう状態の政党選挙に入り込んできて、一体公明選挙が行われるのであろうかどうかという非常な疑いを持つと同時にそれが狭い地域になりますと競争が激しくなりますから——イギリスの例がよく引かれますが、イギリスは一世紀に近い長い訓練と経験を経て、その間に買収や汚職がたくさんあったわけですが、それを克服するためにはやはり血のにじむような努力が払われておる。この点と日本の現実とは非常な距離があると思う。あまり理想を追うために、かえって角をためて牛を殺すような結果になるのではないかという心配をいたしておりますが、御婦人の直観的な、こういうものに対するお考えを伺っておくことは——われわれ政治をやる者はとかく野心がありますから、こういうものを決定する上に重大な役割を持つと思いますので、御意見を伺いたいと思います。
  79. 石垣綾子

    ○石垣公述人 日本の政党が正しくないお金、つまり贈賄によりまして政党をまかない、そしてそれによって選挙費用も出し、選挙に当選すれば、そのお金を出してくれた人たちのためにいろいろ仕事をする。国民の方は犠牲にしても、そうした少数の人たちのために尽すということは、これまでたびたび新聞にも出ておりましたし、私はこれは事実だと思っております。そこが日本の政党の腐敗を招く大きな原因でございまして、政党がそうした個々のある階級の人たちの支持によって運営されておる。そうした政党の性格というものが、現在の日本の政治が乱れている原因でございます。そこへ持って参りまして、そのような政党選挙のときに再びその腐敗をぶちまけるということは私はどうしても反対しなければならないと考えるわけでございます。御質問はこれだけだったと思いますが、もし何か取り落しておりましたら……。
  80. 井堀繁雄

    ○井堀委員 寄付金の問題です。
  81. 石垣綾子

    ○石垣公述人 これは、日本の政党だけに限らず、アメリカにおきましても、政党に対する寄付金というものは、非常に問題になっております。アメリカでは、少くとも表面の規則といたしましては一人が五千円以上の寄付を二つの政党にしてはならないという規約ができております。もちろんそれはいろいろな方法によって破られてはおり、そうしてまた破られておるがために、アメリカの二大政党もいろいろな弊害を呼んでおります。私はアメリカに長くおりましたので、その弊害を知っておるわけでありますが、それが日本では、大っぴらにそういうことをしなければ政党人としての資格がないというふうにまで見られておるというところに、また日本の大きな問題があるのではないかと思います。そうしたお金を集める人が顔ききになるという日本の政党のあり方、これは小選挙区になりました場合に、お金がかからないなどということよりも、日本の現在では、買収ということもずいぶん行われておりますから、ますますそういうことが目立ってくる、乱れてくるのではないか。そうして、そうした政党選挙の中に直接入ってくるということは、一つの問題として私としては反対しなければならないと思っております。
  82. 井堀繁雄

    ○井堀委員 まだ他の委員の方からも御質問があるそうでございますし、時間の都合もありますから、いろいろお尋ねしたいと思いますが、いま一問だけお答えをちょうだいして、私は質問を終りたいと思います。それは、今までお尋ねいたしましたことと関連して、具体的にわれわれがどうすればいいかという判断でありますが、小選挙区を行う場合には、選挙公営を徹底させるということでなければいかぬ。その選挙公営を拡大しようという意図は現われておりますけれども、内容は一向見るべきものがありません。そこで、立会演説の問題が具体的に出ております。立会演説に対していろいろ非難もありますが、立会演説を通じて、婦人の聴衆が一番多いということを、私ども今までの経験の中で一番うれしく思っております。それは、同じ場所で異なった立場をとる代表者の意見が一ぺんに聞けるという特徴、それからまた大ぜいの人が集まる所に御婦人の出席率がよいということは、今日婦人が政治関心を持ち始めてきた、またそれがだんだん強い意欲となって成長しておるのは、新聞やラジオもありますが、私は立会演説会に大きな功績を認めてよいのではないかと思うのです。最近お互いにサクラを引っぱり出してヤジリ合うという傾向も出ておりますが、これは訓練の未熟から出てくるのでありますから、そのしんぼうはしなければならぬと思うのでありますが、それにしても、婦人の聴衆が非常にふえてきたということは、そういうものに対する鎮静剤にもなるし、またそういうよい制度をこの際廃止しようとする政府の原案、これは私非常によくないことだと思いますが、立会演説をやった方がよいとお思いでしょうか、やめた方がよいとお考えでしょうか、簡単に一つ……。
  83. 石垣綾子

    ○石垣公述人 私は、立会演説は、候補者の待っております政策を知るのに一番いい方法だと思っております。それが、今度与党の方の案によりますと、立会演説を禁止する、これは私は大反対でございます。婦人のみに限らず、一般選挙民がやはり立会演説によりましてその候補者政策を判断する大きな足がかりにしておるものをよすということは、その裏に、政策よりもほかのもので選挙民の投票を集めようとする意図があるのではないかと疑われるのでございます。それと同時に、ただいま問題にはなってないですけれども、連座制の強化ということがいわれておりますのに、連座制の強化ということも廃止になっているような格好でございます。そういうことを考え合せますと、この小選挙区制というものは、ほんとうの意味選挙のやり方をしないで、自分たちに大へん都合のいいようなことを押し進める意図がその陰に隠れているような疑いを、私は一人の選挙足として受け取れるのでございます。
  84. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 佐竹晴記君。
  85. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 時間がないそうでございますから、ほんの一、二の点をお尋ねいたしたいと思います。小選挙区制になると、婦人の出る余地が少くなるとおっしゃったのでありますが、現在当選されておりまする方々の地位を、辛うじてでも維持する程度とお考えでございましょうか。さらに激減するおそれありとお考えでございましょうか。
  86. 石垣綾子

    ○石垣公述人 私は、婦人の候補者新人であれば、もちろん出る余地はないと思いますが、現在議員でいらっしゃる方々も、小選挙区制になれば、かなり減るだろうという予想を立てております。その理由は、先ほどいろいろ申し上げたことで、婦人議員が一対一で男子議員と争わなければならないとき、そこにおきますハンディキャップというものは非常に大きくなります。それは単に女性が男性より劣っているというハンディキャップだけでなしに、社会の習慣、ものの考え方、その他いろいろなものが重なり合いまして、そのハンディキャップというものが非常に大きなものになり、婦人の議員はかなり減るのじゃないかというふうに考えております。
  87. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 もし中選挙区なりあるいは大選挙区制をとるといたしますと、婦人の方々の進出する余地は、相当に開けてくるとお考えでございましょうか。
  88. 石垣綾子

    ○石垣公述人 現在の中選挙区制のもとで、どれだけ婦人の議員の当選される率がふえてくるかということは、私は現在のところはっきり申し上げられませんけれども、小選挙区制になるよりも、中選挙区の方が、婦人の議員進出する可能性は多いということを申し上げます。
  89. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 そうすると、結局小選挙区制になって一対一でやられると、非常なハンディキャップがつく、そのハンディキャップというのは、男の方だったら、あるいは料理屋に行ったり待合へ行ったりしてごちそうもできるし、いろいろな手も用いることができるが、婦人の方々にはそれがなかなか困難である。その他先ほどお述べになったようないろいろな事情から、一対一で男と戦わされると、いろいろな不自然な不利益を受けるが、しかし、中もしくは大選挙区制になって、公正な運動をやって、広い範囲内で同じ志を持つ人を求めるということになれば、中もしくは大選挙区になれば、相当婦人の方々も進出する余地がある、結局この中、大選挙区においては、そのハンディキャップを取り去るに適当な、公正なる選挙を望むことができるという意味に解していいでございましょうか。
  90. 石垣綾子

    ○石垣公述人 その通りでございます。選挙区が大きくなればなるほど、婦人というような新しい人——これは婦人のみに限らず、議員にお出になる新しい方も当選される率は大きくなっていくと思っております。
  91. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 先ほど、今日の二大政党は党利党略でできているとおっしゃっておりましたが、それは、たとえば今の自民党につきましても離合集散によってでき上ったもので、まだ国民の審判を受けた政党ではない、自分の御都合で作り上げたところの、つまり離合集散の結果でき上った多数というものは、これは党利党略による多数であって、国民の審判を受けた多数ではない、その多数の力をもって、しゃにむに自分の党のために都合のいいところの法案を押し切ろうとすることは、党利党略である、こういうふうに聞えたのでありますが、いま一度これを確めておきたいと思います。
  92. 石垣綾子

    ○石垣公述人 私は、自民党が成立しましたときに、ほんとうに議会政治が行われているならば、一ぺん国民に意を問うて、そうして政党が新しくできなければならないものだと思っておりましたが、それができておりません。それは国民に問うたのでなくて、やはり党内の党利党略で結びついてものだろうというふうに私は解釈している次第でございます。ですから、ただいまおっしゃいました通り、現在の政党は、ほんとうの政策の上で結びついたのじゃないという印象を私は受けております。
  93. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 社会党は、御承知通り講和条約を中心といたしまして、その政策中心として猛烈に分裂をいたしましたが、これが相当長きにわたって調整されて、ここにまた合同いたしました。政策によって合同を見た。ところが今度自民党の離合集散は政権を目標といたしまするところの、政権を長く自分の手におさめて、社会党に渡すまいとするところの動きであるとよりは私どもは見ることができないのであります。  そこで、ただいまの石垣さんのお話を承わりまして、婦人の方々のお考えになっておることと、われわれの考えておることにも、まことに共通性のあることを私は見たのです。ただいまのお言葉によりますると、結局国民に信を問うべきである。国民に問うて、そういったことは、たとえば党の離合集散のごときは、堂々とやるべきである、こういう見地に立って申しまするならば、これに対して、婦人としても、少くとも国民の過半数を持っている、その婦人の意見を尊重することなしに、勝手におやりになるということは、これは党利党略であるとお考えのようであります。結局国民の過半数を持っておるところの婦人に信を問うべし、いさぎよく解散を断行して、その上に立っての政治分野のもとに、今回のたとえば二大政党育成なら育成、小選挙区制施行が、その二大政党育成強化になるかならぬかといった根本問題を国民に問うべし、こういったような声が婦人の方々の中にあるかのごとく私は承わります。あなたもそのお考えの一部を代表せられたお言葉ではないかと拝承いたしましたが、いま一度御所見を承わりたいと思います。
  94. 石垣綾子

    ○石垣公述人 もちろん、私、女性は日本の国の政治を動かすのに大切な役割を持っていると思います。ただ残念ながら、女性の政治的訓練というものはまだ高くない。しかし、これは女性だけ責められるものではなく、日本の選挙民全体の政治的訓練がまだ少いと思うのでございます。ですから、やはり議員の方々はそうした国民選挙訓練、政治訓練というものをほんとうにしていただかなければならないのです。ところが、現在いろいろと拝見いたしておりますと、そういう訓練をするかわりに、買収という別な手段でやろうじゃないかというような手段もかなりあるのじゃないかということを私は憂える次第でございます。申し上げるまでもなく、政党が党略によりまして離合集散なさるときは、もちろんのこと国民全体に問うていただかねばならないことだと考えております。女性として、特にそのことを強調したいと思います。
  95. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 中垣國男君。
  96. 中垣國男

    ○中垣委員 石垣さんにお尋ねいたします。先ほどこの選挙法改正ということは、多数の暴力じゃないかというような御批判の言葉があったと考えるのでありますが、私がこれからお尋ねいたしますことにつきましては、そういうことを御前提になさらずに、一つ簡単にお答え願いたいと思います。  第一に、小選挙区を実際に実現したいという、こういったような考え方の基本というものは、自由民主党考えているのじゃない。昭和二十六年六月に、片山さんや下村宏さんたちが中心になりまして、むしろ社会党や当時の保守党や、そういう政府等が関係しない全く純粋の民間的な間から生まれてきたものなのです。そこで、当時は二大政党の育成というようなことは、小選挙区のこの問題とはからまっていなかった、といいますのは、社会党両派ありましたし、民主党、自由党その他政党がございまして、当時はただ同じ選挙区で同志討ちをしたくないというようなことが——昭和二十四年の選挙に片山哲さんが落選されまして、党派をこえて非常に御同情されて、何かそこに選挙そのものが矛盾があるのではないか、そういう点から起きておる。ところが、その後いろいろの疑獄その他の不正容疑の問題が起きまして、それらの原因というものは、二十七年に選挙をやった、八年もやった、こんなに政局が不安定であって、選挙等をたびたびやる、そういうことが原因になり結果になって、いろいろな問題が起きてくるのだということから、二大政党の育成とかあるいは成長という問題が非常に強く叫ばれるに至って、今日この法案が出されておる。そこであなたにお尋ねしたいのは、先ほど二大政党のそういう対立というような問題は、私は賛成でないとおっしゃったように、私の誤解かもしれませんが聞いたのであります。どうでございましょう。
  97. 石垣綾子

    ○石垣公述人 二大政党は、ちょうど人間の成長しますように、自然に成長していくものであれば、私はその二大政党を支持いたします。しかし、無理に赤ん坊を急に大人にするような二大政党のあり方には、反対するわけでございます。
  98. 中垣國男

    ○中垣委員 それでは、それでけっこうであります。別に議論をするつもりでございませんから……。  そこで、先ほどこういうような小選挙区法を実施すると、婦人や新人が出られないじゃないかというお言葉があったのでありますが、その点について、実は大へんあなたと考えが違う。私どもは、二大政党を育成するのだという前提に立っておる。あなたは前提に立っておられない。そういうことでお考えになったと思いますが、この選挙法の条文を改正せずに、区割りだけを小選挙区にしたら、あなたのおっしゃるようなことになるのじゃないかと思うのです。ところが、今度の選挙法というものは条文の改正がありまして、同じ地区で一人の定員のところに一人しか公認してはならぬということになっている。しかも党員は、自分の党の人が公認されたならば、その他の人を応援してはいかぬということになっておる。でありますから、新人や婦人の方が出る出ないということは、社会党なり自由民主党なりが公認をするかせないかという問題になってくるのです。もう一つの問題は、その地区に公認され得る新人なり、御婦人があれば、当然これは公認される。その政党のために非常によく協力されたり、お尽しになったりしていますと、当然そういうことがあります。これは私ども自由民主党立場におきまして、今度の全国参議院の候補者等を見ていただきましても、非常に婦人を尊重しておりまして、社会党より私どもの方がはるかにたくさん候補者を出しております。この事実は事実としてお認め願いたいのであります。その婦人や新人のこの問題は、あなたのお考えと違うのでありますが、ただいま私が申し上げましたようなこういう論点から見ても、なお御賛成じゃございませんか。
  99. 石垣綾子

    ○石垣公述人 ただいま自民党の方は、婦人の候補者公認する大へんいい政党だということを伺いましたが、それは私は信用しないのでございます。なぜしないかということをちょっと申し上げさせて下さい。実は、これはアメリカの例でございますが、アメリカにおきましても、婦人の立候補者というものはなかなか政党から公認してもらえません。なぜ公認されないかと申しますと、アメリカのように、いわゆる男女平等というような国で、そうした伝統も持っておりますし、婦人が参政権を得ましたのももう四十年近くなっております。その国でございましても、政治というものは男子が長いこと独占してきたものでございます。ですから、男子の偏見というものが第一にございます。それから、政党がある候補者公認いたします場合には、そこに立候補すれば当選できるかという可能性を見るわけでございます。それでただいま申しましたように、婦人の当選率が低いと見れば、やはり公認する率は少くなる。それがアメリカで婦人の候補者公認しない一つの理由になっていると私は考えるのであります。アメリカにおきましても、婦人の候補者公認されないことを見て参りますときに、日本においては、なおさらそういうことはより多くあり得るだろうと私は思うのであります。そして、自民党がただいま大へんに婦人の議員公認をしている、するつもりでいらっしゃるというようなお話を伺いました。そこで、私はそれは事実であるかどうかはまだ存じておりませんから、ここで何とも申し上げませんが、こういうことをなさっては困りますということを申し上げたいのでございます。これは戦後選挙が行われましたときに、いわゆるパージにひっかかった男性の方々が、身がわりとして女性をたくさんにお出しになって、公認候補ということになさったと思うのでございます。そういうような党利党略に基きまして、女性を利用なさるということがございましたらば、これは大反対でございます。(拍手)
  100. 中垣國男

    ○中垣委員 それは別に議論をしようとは考えておりませんが、私が先ほど申し上げましたのは、参議院議員公認候補は、すでに自由民主党新人を出しております、こういうことを申し上げたのです。これは小選挙区のことはまだこれからのことでございます。  そこで、今度の小選挙区にいたしまして、実は一番新人にチャンスが与えられるのです。といいますのは、私どもの選挙区で申しますと、少くても一人は確実に新人に出ていただかなくちゃならない。これは候補者の問題で、当選の問題とは異なっていますが、社会党におきますと、私の選挙区におきましては新人が三人出なければならない。全国的には、社会党の諸君は新人が少くても二百名以上おそらく立候補されると私は思うのです。そういうことで、小選挙区にしたら新人が立候補の機会がないとかなんとかいうことは、全然違うのです。この点は事実でございますから、自由民主党にとりましても、社会党にとりましても、この論点は同じだと考えるのであります。そういう点、もう一度伺いたい。
  101. 石垣綾子

    ○石垣公述人 ただいま自民党の方から新人が多く立候補するというお話でございましたが、私はこの新人ということをもう一ぺんちょっと考えてみたいと思うのでございます。私が新人と申しましたのは、必ずしも政治に全く出たことのない人ということよりも、新人という意味は、これから大いに抱負を持って日本の国をよくしていこう、日本の国民のために尽していく、そうした考えを持っていらっしゃる方を私は新人と呼びたいのでございます。その場合に、もちろん自民党の方にもそういう抱負を持っておいでになる方もおありと思いますけれども、革新政党の方が、そうした抱負を持っておいでになる方が多いのじゃないかというように私は考えるのであります。保守政党の方の新人は、やはりいろいろな内部での関係がおありになって、その新人ということに非常に箔をつけなければならない新人ではないかというように考えるわけでございます。
  102. 中垣國男

    ○中垣委員 時間がないそうで、お急ぎのようでございますから、もうあと一点だけお尋ねいたします。  先ほど立会演説を廃止するというようなことは、これはもう時代の逆行だというようなお言葉があったのでありますが、実は私どもの考えというものは、演説会を非常に重視しておるのです。従来、中選挙区のときの演説の回数よりも、大体三倍になるのです。ですから、そこで政策を述べる機会というものは、小さな範囲のところに演説会場を設けてやるのでありますから徹底する。特に私は、東京は知りませんが、おそらく私と同じような農村地帯にある方は、全部一緒だと思うのでありますが、立会演説会に女の方が全然ないとは申しませんが、おそらく一%なんという数はこない。ところが個人演説会でございますと、三十人、五十人というようなものは必ずくる。その会場が今度は六十カ所もあるのです。今まで二十回、二十五回しかやれなかったのが六十回やれる。  そこで、この演説会の効果と言うもの、いわゆる二大政党政策で闘うのだ、こういったような政策選挙民に知らせるということにつきましては、これは万全の措置だと私は考えるのです。そういうふうに考えますが、どうでありましょうか。
  103. 石垣綾子

    ○石垣公述人 私は、やはり選挙におきまして、演説会は大切だと思うのであります。しかし、候補者が出します政見というものは、これはこれまでの私の経験によりますと、自民党でも社会党でも、なかなかりっぱなことをおっしゃるわけです。それで、その現実に即さないりっぱな政策をお出しになった場合に、反対党の政党の方がお立ちになりまして、立会演説会をなさいますと、あなたは今そういうことを言うけれども、こうじゃないかという議論になるわけであります。それによりまして、選挙民はこの人の言っている選挙の公約というものは、本物かうそものかということが、はっきりだんだんわかってくる。そのために、立会演説会というものがほしいと思うのであります。
  104. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 これにて石垣公述人に関する議事は終了いたしました。  石垣公述人には御多用のところ、長時間にわたりお引きとめをいたしまして、まことに御苦労に存じます。これにてお引き取りを願います。この際、暫時休想いたします。    午後一時三十三分休憩      ————◇—————    午後二時四十二分開議
  105. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  議事に入ります前に、公述人各位に一言ごあいさつを申し上げたいと存じます。  本日御多用中のところ特に御出席を願いましたのは、さきに御通知申し上げました通り、本委員会におきまして目下審議中の内閣提出公職選挙法の一部を改正する法律案中村高一君外三行拠出の政治資金規正法の一部を改正する法律案及び中村高一君外四名提出公職選挙法の一部を改正する法律案は、小選挙区制の採用を中心といたしまする内閣提出案を初めといたしまして、国民一般的関心及び目的を有する重要な法律案でありますので、成規の手続によりましてここに公聴会を開会し、学識経験を有せられる方々を公述人として選定し、皆さんの御意見を拝聴し、よってもって本委員会の審査に慎重を期したいとするものであります。  つきましては、何分とも以上の趣旨を御賢察の上、それぞれの御立場より腹蔵のない御意見の御陣述をお願いする次第であります。  なお、議事の進め方につきましては、公述人意見陳述の発言時間はお一人当り三十分以内でお願いし、公述人お一人ずつ順次御意見開陳委員側の質疑を済ましていくことといたします。  それでは、ただいまより以上三案を一括議題として公述人に関する議事を継続いたします。  次に、矢部貞治君より御意見の御開陳を願います。公述人矢部貞治君。
  106. 矢部貞治

    ○矢部公述人 矢部貞治でございます。小選挙区制の問題につきましては、すでにその長所も短所もほとんど論じ尽されておるように存じます。また人間の制度に完全無欠の制度というふうなものはないと思いますので、長短が相半ばしているところもございますし、考えようによれば、一般に長所と認められておりますところが、角度を変えて見れば即短所といえないこともございませんし、また短所考えられておりますことが、観点を変えて見れは即長所だともいえないことはないわけでございまして、絶対に正しいとか正しくないとかという問題ではないと思うのでございます。問題は、どのような角度から考えて総体的にどちらを選ぶかという問題に帰着するだろうと考えております。そういう前提におきまして、私は、小選挙区制そのものは、わが国の議会政治政党政治をよりよくするために役立つものと考えておる次第でございまして、小選挙法案が成立いたしますことについて、強く期待をしておる一人でございます。ただし、ただいま審議中の政府法案につきましては、強く修正を要望したいと思います点が若干あるのでございまして、それらのことを申し述べたいと存じます。  私が小選挙区制そのものは議会政治政党政治のよりよいあり方に役立つと考えます点は、大よそ次の三つの観点からでございます。  第一には、有効な多数を持った政府を選ぶという目的に、小選挙区制度が最もよく適合すると考えるという点でございます。二十世紀のいわゆる大衆的比企政治におきましては、安定した政府があって仕事のできる態勢になっておりませんとやっていけないということを、私は第一次大戦後の世界的ないわゆる民主政治の危機ということから学んだつもりでございます。そのような意味で、有効な多数を持った政府を持つということは、現代の民主政治のあり方から見て非常に大切な点だと考えておるのでございます。選挙制度ないし代表制度の眼目を、もし社会の縮図または反射鏡を国会に作るというところに置くといたしますならば、この目的に最もよく適合しますのは、言うまでもなく大選挙区比例代表制だと考えるのであります。この比例代表制というものの実績を見まするのに、多くは小党の分立をもたらしまして、安定した政府というものが持ちにくいという状況でございます。そこで、私は、この選挙制度の眼目というものは、先ほど申しますように、有効な多数——イギリス人がワーキング・マジョリティと申しておりますこの有効な多数を持った政府を選ぶというところに置きたいと思うのでありまして、そういう眼目から考えますると、比較的に小選挙区制度がその目的に最も近づき得るということが、私が小選挙区制度がよいと思う第一点であります。  それから、第二には、わが国の政党の近代組織化を促進するために小選挙区制度が適当であるという観点でございます。私は、率直に申しまして、わが国の政党はまだ十分に近代政党にまで発展しておらないという感じがいたすのであります。党内に多くの派閥が対立いたしまして、それがいわゆるボスというふうなものを中心にして、いわば親分、子分といったような関係を作っておるところがある。このような派閥が寄り集まっておるところに、わが国の政党政治弊害が出てくる原因があるというふうに考えるのであります。そこで、このような党内の派閥がどのような理由で生まれてくるかということを考えますと、もとよりその理由は一、二にとどまらないのでありますけれども、私はやはり選挙における同士打ちということが重要な一つの理由であろうかと考えるのでございます。たとえば、現行の中選挙区制度におきましては、同一の選挙区から同一の政党候補者が数名立つ、反対党の地盤はなかなか食えませんから、そこで同じ党の地盤をお互いに食い合って、反対党の候補に対するよりも、かえって同じ政党の他の候補に対する争いの方が深刻であるというふうな様相も、往々見かけるのでございまして、そのような選挙における同士打ちというものが、やがて政党内の派閥関係に連なっていくということを考えてみますると、こういう状態をなくさないというと、わが国の近代政党化というものはなかなか困難ではないかというふうに、私は考えるのでございまして、それには、少くとも公認候補が一人にしぼられる小選挙区制度が適切であるというふうに考えるのであります。のみならず、小選挙区制度になりますと、全国にわたりましてそれぞれ一つの区に必ず候補者を一人立てなければなりませんから、やがて政党の全国的な組織化ということが必要になって参るのでありまして、そういう意味において、わが国の政党が全国的な組織を持った近代政党になっていく、国民政党に発展していくということのために、小選挙区制度が役立つところが大きいと考えております。これが第二の点でございます。  それから、第三には、小選挙区になりますれば、少くとも法定選挙費用は減少するということでございまして、このような点が、近年わが国で汚職問題が起りましたときに、小選挙区論というものが盛んになってきました少くとも一つの大きな理由であったと思うのでございまして、なるべく選挙に金のかからないような制度を考えたい、それには地域も狭くなり、有権者の数も減るところのこの小選挙区制度がよいのではないか、こういうことが少くとも一つの大きな動機であったと思います。しかしながら、その反面におきまして、小選挙区になりますると、買収とか戸別訪問というふうなものや、あるいは慢性の事前遅効というふうなものが激しくなりまして、実際には法定以外の費用はよけいかかる、こういう危険があることも、これもあながち否定できないと思うのであります。従いまして、小選挙区をやるならば、必ずこれとともに事前運動取締りを考慮する、あるいは政治資金の規正を厳正にする、選挙運動取締りを強化するというふうなことが必要であるわけでありまして、とりわけこの点で私が重視いたしておりますのは、連座制の徹底化ということでございます。そのような方法とともに、何と申しましても、選挙民政治的自覚ということが最後の重大な点でございますから、同時に政治教育というふうなものが振興されなければならないということも申すまでもございませんが、そういう方法と結合いたしますならば、婦人も青年も参政権を持っております今日、選挙の腐敗を減少せしめるということは必ずしも不可能ではないのではないか、そういう意味で、連座制の強化その他の方法と結合いたしまして、小選挙区を実施すれば、選挙費用が減少する見込みがある。これが私の小選挙区制に賛成する第三の理由でございます。  私は、要約いたしまして、このような観点から、小選挙区制度がわが議会政治政党政治の改善に役立つと考えておるのでございます。もとより、先ほど申し上げましたように、小選挙区制度にはまたそれに伴う欠点弊害もあることは存じておりますけれども、これは相対的な問題として、どの観点から選ぶかという意味でございますが、私は、ただいま申しますような観点から、小選挙区制度が実現することを期待するものでございます。  しかしながら、ただいま国会で審議中でありまするところのこの政府の小選挙法案を見ますると、これは与野党の間に予想以上に激しい対立関係を生んでおりまして、かえって、この法案を強行することが、議会政治を破綻に陥れる危険もないとは言えないというふうな状況である上に、さらに外交問題なども重大な段階に入っておりまする今日、わが政界がこのような対立関係を続けているということは、はなはだ不幸だというふうに考えるのであります。反対党の方は小選挙区制そのものに反対という態度ではございますけれども、しかし、この問題がなぜこのように激しい形で対立関係に入っているのかということを考えますると、少くともその一つの大きな理由は、政府案が多分に党略的な臭味を持つという疑いがあるところからきているように思うのであります。もしせめて選挙制度調査会の答申が討議の前提として採用されておりましたならば、対立は対立でも、今ほどに感情的な対立関係にはならなかったのではないかと、私はひそかに考えているのであります。私は、選挙制度調査会に関係した一人ではございますけれども、決してこの調査会の答申が完全無欠であるなどと思い上っているわけではごうもございません。ただ、その中に多くのあやまちもございましょうし、また政府として受け入れがたいところがあるだろうということも、あながち否定はいたさないのでございますから、国会の審議の過程の中で合理的にこれが修正されるということには、少しも依存はございません。ただ、よく人が申しておりまするように、選挙制度、とりわけ選挙区制の問題というものは、いわば相撲の場合の土俵に当るわけでありまするから、その相撲の当事者の一方だけがその土俵を作るということは、やはり適当でないと思うのであります。それがかりに厳正公平に作られたと仮定いたしましても、やはり、相撲の相手方から見ますれば、そこに疑心暗鬼を生ずるということは、これは無理もないのであります。いわんや、それがさらに自分に都合のよいように、相手に都合のよくないように作られたというふうな疑いが持たれるといたしますれば、相手方が承知しないということは、私は当然だろうと考えるのであります。そのような意味で、いわゆる李下に冠を正さず、瓜田にくつを入れないという襟度を待ちまして、この土俵は少くとも第三者が作ったものを討議の前提にしていただきたかったと思うのであります。もちろんその第三者も過誤を犯すことはございますから、審議の過程で話し合いの上で修正されることは、これはごうも異存はございませんけれども、そういう意味で、私ども調査会案を尊重していただきたいということを要望しておったのであります。しかし、今日の政府案は調査会の案とかなり異なってるところがあるようでございますが、しかし、これは、そのような意味で、国会審議の適当な段階におきまして、最も問題となっているような点を適切に修正していただくことを、私は強く希望いたす次第であります。そのことがまた小選挙区制度そのものを実現させるために必要でもあると考えるからでございます。  それはどういう点かと申しますると、ただ問題点だけを申し上げますならば、たとえば、区割りの問題につきましては、二人区という問題をもう一度再検討を願いたいということでございまするし、さらに、一人区の場合におきましても、世間から著しくゲリマンダリングの疑いがあると見られておりますような部分は、一つ修正していただきたいということでございます。それから、さらに、選挙運動に関する部分につきましては、私はとりわけ連座制の問題をもう一度考え直していただきたいということと、それから立会演説会の問題をもう一度考慮していただきたいということを、特に強く申したいのであります。  区割りにつきましては、どういう区割りがどの常に有利であるか不利であるか、どの方に有利であるか不利であるかというふうなことは、実は私は選挙というふうなことに実際の経験がございませんので、この点につきまして具体的には存じません。ただ、多くの新聞紙などでやかましく指摘されているような部分は、確かにそのような疑いがあるということだけは言えると思いまするし、私どものところに全国からいろいろと意見が寄せられておりまするが、その場合にも、自分選挙区について政府案調査会案を比べてみると、調査会案ならば比較的公正と思うけれども、政府案はすこぶる遺憾だというふうな手紙がかなり参るのでございまして、そのような点を一つ十分再検討していただきたいというのが、区割りについての私の希望でございます。  さらに、連座制につきましては、調査会の答申は、総括主事者または出納責任者が買収等の罪——これは費用の超過その他も入るのでございますが、それを犯して刑に処せられたときは、直ちに当選人の当選を無効とする、そしておとりによる免責規定は削除するという答申が出ているのでございますが、政府案の方でも検察官の附帯公訴ということを規定いたしております点では、現在よりも一歩進めているということは認められますけれども、これでは連座制の規定としては私は十分でないと考えるのであります。それからまた、その附帯公訴の問題は、さらに別に法律で定めるということになっておりまするし、それから免責規定の削除ということは、これは触れられておりません。これらの点は、私としましては、やはり連座制というものを徹底化していただきまして、小選挙区制に伴う選挙の腐敗というふうなものを、できるだけ厳重にチェックするようにお願いしたいのであります。  この問題に関しまして、社会党から提出されております二つの法案があるようでございますが、私に本日この公述方を交渉されました方に、直ちにその法案を送ってくれということを申し上げたのでありますが、昨日までに社会党法案は私の手に届かなかったのでございまして、それにつきましては意見を述べることができません。けれども、社会党法案の中にもし政治資金の規正の強化、あるいは連座制の強化というような趣旨がございますならば、一つ十分にそれを取り入れていただきたいというのが、私の希望でございます。  それから、さらに、立会演説の問題につきましては、私は、選挙制度調査会におきましても、むしろ個人演説会はやめてでも、立会演説会を強化していただきたいということを説いた一人でございまして、これも今日やはりその考え方を変えておりませんので、この点も一つ御考慮いただきたいと思います。  そのほかにいろいろ問題点はございますけれども、私が最も重視します点は、それだけの点でございます。  重ねて申し上げますが、私は小選挙区制度そのものは実現していただきたいと考えております。それがために、公正でない、あるいは疑いのある点は一つ十分に修正をしていただきたい、こういう意見でございます。(拍手)
  107. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 矢部公述人に対し質疑の通告があります。順次これを許します。鈴木義男君。   〔「三案に対する意見を聞いているんじゃないか」「政府案だけじゃない」「あと二案に対する意見を公表しろ」「休憩」と呼び、その他発言する者多し〕
  108. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 暫時休憩いたします。   午後三時二十七分休憩      ————◇—————   〔休憩後は開会に至らなかった〕