運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1956-05-14 第24回国会 衆議院 公職選挙法改正に関する調査特別委員会 第32号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年五月十四日(月曜日)    午前十時三十四分開議  出席委員    委員長 小澤佐重喜君    理事 青木  正君 理事 大村 清一君    理事 松澤 雄藏君 理事 三田村武夫君    理事 山村新治郎君 理事 井堀 繁雄君    理事 島上善五郎君       相川 勝六君    臼井 莊一君       岡崎 英城君    加藤 高藏君       菅  太郎君    椎名  隆君       瀬戸山三男君    田中 龍夫君       中垣 國男君    二階堂 進君       福井 順一君    淵上房太郎君       藤枝 泉介君    古川 丈吉君       森   清君    山本 勝市君       山本 利壽君    片島  港君       佐竹 晴記君    鈴木 義男君       滝井 義高君    竹谷源太郎君       田中織之進君    原   茂君       森 三樹二君    山下 榮二君       山田 長司君    小山  亮君  出席国務大臣         内閣総理大臣  鳩山 一郎君         国 務 大 臣 太田 正孝君  出席政府委員         法制局長官   林  修三君         自治政務次官  早川  崇君         自治庁次長   鈴木 俊一君         総理府事務官         (自治庁選挙部         長事務代理)  皆川 迪夫君  委員外出席者         議     員 中村 高一君         衆議院法制局参         事         (第一部長)  三浦 義男君     ————————————— 五月十四日  委員藤枝泉介君辞任につき、その補欠として椎  名隆君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 五月十二日  公職選挙法の一部を改正する法律案に関する請  願(小牧次生紹介)(第二一五八号)  安達郡の選挙区を第三区に編成の請願(粟山博  君紹介)(第二一七一号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  公職選挙法の一部を改正する法律案内閣提出  第一三九号)  政治資金規正法の一部を改正する法律案中村  高一君外三名提出衆法第二一号)  公職選挙法の一部を改正する法律案中村高一  君外四名提出衆法第二二号)     —————————————
  2. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 これより会議を開きます。  内閣提出公職選挙法の一部を改正する法律案中村高一君外三名提出政治資金規正法の一部を改正する法律案中村高一君外四名提出公職選挙法の一部を改正する法律案、以上三案を一括議題といたします。  なお、右三案並び青木正君外二十名提出修正案につき、一括して質疑を継続いたします。島上善五郎君。
  3. 島上善五郎

    島上委員 私は、今回政府与党が出されました大修正案に関連して、総理大臣に若干質問したいと存じます。  今回の与党から出されました修正案は、御承知のように政府提案のいわゆる小選挙区制政府から考えますれば、一番大事なところ、公職選挙法改正案の本体ともいうべき区割り案分断されて将来に残される。これは野党修正をするというならば別でありますけれども政府与党があらかじめ提案に際しては十分連絡して、政府案というよりも与党案ではないかとさえいわれるほど緊密な連絡のもとに出された政府案に対して、法案二つ分断してしまう。そして一番大事なところを将来に残す。このようなことは全く異例の修正であり、いうならばもう法案そのものがなくなったと言ってもよいくらいなものである。今度の修正案によって、一体生きるところは何であるか。しいて言うならば、区画委員会、いわゆる七人委員会を残して、次の常会までに総理大臣区割りについて答申をする。これだけなんです。その他の部分は全くなきにひとしい。空文にひとしいものである。もう政府案廃案になったと言ってもよいくらいである。このような大修正案政府はのんでいるわけですが、こういうような大修正案をのむならば、私は、むしろいさぎよく、きれいさっぱりと撤回する、この方が当然ではないかと思うのです。いつまでもいつまでも原案にしがみついて——これは、私は、単に政府の面子を立てるために、あるいは世間体をごまかすためにしがみついているのではないかとさえ言えると思うのです。実質的には廃案にひとしい。私は、この際政府はきれいさっぱり撤回する、こういうふうな態度に出るべきではないかと考えますが、総理大臣に対してこの点に関する所見をまず承わりたいと思います。
  4. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は島上君と見解を異にいたします。修正案は、小選挙制度原則はやはり維持せられておるものと思います。政党本位選挙、これの強化はやはり承認されておりますし、区画修正は慎重を期したいというだけであります。別に差しつかえはないと考えております。
  5. 島上善五郎

    島上委員 ただいまの御答弁を伺っておると、何か政府原案が依然として生きておるような、そういうふうにお考えになっておるようです。しかし、今度の政府案は、総理大臣もしばしば答弁しておりまするように、区割りとともにこれは一体のもので、区割りとともにぜひ今国会成立をさしたい、こう言っておった。ところが、その肝心の区割りが、法律二つ分断されて将来に残されてしまった。この次の通常国会までに区画委員会答申をする、それに基いて政府法案を出す、こういうことになっておりますけれども、この次の国会一体果してそれが成立するかどうか、これは全く未知数なんだ。そうして成立して公布後六カ月たたなければ今度の修正案は生きない。生きるのは区画委員会のいわゆる七人委員会だけなんだ。これはどう考えても、世間に対する見せかけは政府案の半分だけ通ったような形に見えますけれども、実質的には廃案にひとしい。何も生きていない。私はこういうふうな大修正をのむにはのむ理由があると思うのですが、それではその理由を伺いたい。総理大臣にしても、太田長官にしましても、この区割りは、世間が言うようにいわゆる党利党略ではない、ゲリマンダーではない、正当なものである、こういうふうに言い張ってきておる。新聞の論調にしましても、その他国民の声にしましても、あまりにも露骨な党利党略である、ゲリマンダーである——ゲリマンダーというような言葉は私ども初め国民は知らなかったのですが、この法案が出てからゲリマンダーという言葉があまねく普及し、そのほかいろいろ地方的な名前までできておる。しかるに、太田長官及び鳩山総理はそうではないと言い張っておる。そうかと思うと、総理大臣が発言したあくる日に、岸幹事長は、党利党略は当りまえだと言っておる。党利党略であり、ゲリマンダーであるということは、いかに否定してもこれは動かすことのできない厳然たる事実だ。そこで、党利党略ゲリマンダーを将来に残して、全く白紙に返して新規まき直しにやり直すということは、私はそれだけの理由がなければならぬと思う。これが党利党略でもないし、ゲリマンダーでもないし、公正なものであるというならば、この大事なものを分断して残すということは理由がないはずです。そこで、この大修正をのんだ理由は、四面楚歌ともいうべき世間の激しい批判にあって、政府反省したのだろうと私は思う。国民の声に耳を傾けて謙虚な気持民主政治をやろう、こうおっしゃった昨年十二月二日の総理大臣施政演説にあります言葉、その言葉通り国民批判に謙虚な気持で耳を傾けて反省なさった結果であるかどうか。もう一つは、われわれは、このような国会構成の基礎を変える大改正提案者言葉をかりて言っても、革命的ともいうべき改正だと言っておるこの大改正をするに際しては、多数を持っておるからといって一方的にやるべきものではない、野党とも十分協議して話し合い成立の上にやるべきものである、こう絶えず主、張して参りましたが、そのわれわれの主張の正しさをお認めになったのかどうか。つまりこの問題の区割り案分断して将来に残し、そして白紙に返して出直したということは、世論批判反省してそのようになさったのか、また社会党の、このような改正は両党——両党といわず、政府与党野党が十分話し合いして、その了解の上になすべきものである、こういうわれわれの主張をお認めになって修正をのまれたのか、その修正をのまれた理由を伺いたい。
  6. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 社会党と全部について話し合いができれば非常にいいと思います。けれども、小選挙区制と中選挙区制というものにお互いに固執しておりまして、これでは話し合いができないのです。ところが、区画については話し合いができるところもあると私は思うのです。そこで慎重に審議する値打ばそこにあると思う。
  7. 島上善五郎

    島上委員 もう一つ。きびしい世論政府反省してのんだ。今私が言ったように、昨年十二月二日の総理大臣施政演説の中では、私は国民世論に謙虚に耳を傾けて、国民とともに民主政治を行う決意にあふれております、こういう言葉を使っております。それをそのまま今度の法案に当てはめて考えますれば、今度の法案は、特にそのゲリマンダー区割りに対しては、国民あげてきびしく非難をしておる。そのきびしい国民非難に耳を傾けて反省をされたかどうか、この点を一つ伺っておる。
  8. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 区画制というのは非常にむずかしい問題で、個々利害に直接の関係のある問題で、非常にむずかしい問題です。わが党から出した案についても、社会党から出した案についても、同じように非難はあるのです。了解しなければなかなか直ちにのみ込むというわけにいかない案なんです、案そのものの性質上。それですから、政府も民間に多分の反対のあることはよく承知をしております。これは謙虚な気持で再検討をして、そうして慎重な態度区制を作りたいというように考えたわけであります。
  9. 島上善五郎

    島上委員 私の質問に対する焦点が少しはずれているような気がするのです。念のために申しますが、社会党が出した案はと、こう言っておりますが、社会党は案を出しておりません。これはどこへも出しておりません。これは事実だからはっきり申しておきます。  そこで、私が伺っておりますのは、選挙区割りというものは、個々利害関係が伴うもので、なかなかむずかしいものだ、しかし、その個々利害関係に重点を置くから、いわゆるゲリマンダーというものができるのです。今度の世論の一番激しい点は、党利党略ゲリマンダーがあまりにも露骨であるから、国民が憤激しておる。私の伺っている第一の点は、この国民世論に、総理大臣初め政府の皆さんが謙虚な気持で耳を傾けて反省をなさったかどうか、これを聞いている。今までは、少くとも政府は、国民政府案を支持しているような答弁をしておった。党利党略ではないし、国民の中に一部誤解はあるようだけれども国民政府案を支持している、こう受け取れる答弁をなさっておった。ところが、事実は、国民は圧倒的に全部といってもいいほど政府案に対して反対だ。特にゲリマンダー区割り案に対しては反対だ。この国民の声に耳を傾けて反省をなさったかどうか。これを第一の点として伺っている。この点を簡明直截にお答え願いたい。
  10. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 この問題についてもそうでありますが、他の問題につきましても、謙虚な気持世論には聴従する覚悟を持っております。
  11. 島上善五郎

    島上委員 他の問題を私は今聞いているのではないのです。この問題を聞いている。今まで答弁に関する限りは、政府案党利党略でもないし、ゲリマンダーでもない、国民反対をしてない、一部誤解はしているだろうけれども国民はそのうちだんだんわかってくれる、こういうような答弁を一しておった。それは今まで信念を持って提出しておったから——それはそれでもよろしい。しかし、分断をして肝心なものを将来に残し、しかも新規まき直しにするというような大修正をのむからには、そののんだ理由一つは、今私が言ったように、この区割りに対する国民批判に耳を傾けて反省をした結果であるかどうか。反省をしたというのは、政府原案が悪かったということですから、そういう反省をした結果であるかどうか。すなわち政府原案が悪かったということを率直にお認めになった結果であるかどうか、私はそれを伺っておるのです。
  12. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 この区画制大綱につきましては、大原則は変更されておりません。ただ区割りの小部分につきましては、誤解に基くものもあり、不当なものもあるでしょう。それについて再検討するということは当然なことだと思います。
  13. 島上善五郎

    島上委員 大原則は変更してないとおっしゃいますけれども、今度のこの修正案にどこに大原則を変更してないことがありますか。まるで白紙ですよ。全然白紙です。しかも、今度の修正案によりますと、七人委員会というものを全然新に設ける。この七人委員会はどういう答申案を出すか全く未知数なんです。全くわからぬ。どこに大原則が生きていますか。それから区割り個々については直さなければならぬ。区割り個々、どこの区割りをどういうふうに直すか、これも全く未知数だ。選挙制度調査会の案に近いものが出てくるのか、政府案に近いものが出てくるのか、全く別なものが出てくるのかということは全然わからぬ。私は、おそらく、この七人委員を任命するに際して、公正な見地から任命しましたならば、今回政府提案したものとは全く面目を一新した、それこそ公正なものが出てくるに違いないと思う。そうだとするならば、これは政府案というものは跡形もなくなってしまう。区画に関する限りは完膚なきまでに変更されてしまうということになる。(「そんなことはない」と呼ぶ者あり)当然そうなる。そうだといたしますならば、私は、ここで、政府政府原案の正しさというものを全くもう放擲してしまって、白紙になって、すなわち政府原案は誤まりであった、こういうことを率直に認めなければ、このような大修正をのめないと思うのです。私はこれからまだいろいろ質問もしますけれども、私の質問しているのは、総理大臣が率直に国民批判にこたえて、政府案が悪うございました、誤まりでした、こうかぶとを脱ぐのが当然だと思う。かぶとを脱がなければならぬ。そういう答弁はしにくいでしょう。そういう答弁はしにくいでしょうけれども、もし鳩山総理大臣が率直な政治家であるならば、私はそういうふうに率直に答弁するのが当然だと思う。ごまかす必要はないのだ。この機会に及んでごまかして、政府案がさながら生きているような、そういう答弁をする必要はないと思う。政府案が誤まりでした、国民の声に耳を傾けて反省をいたしました、その結果この分断の大修正案をのんだ、こういうことになるのが私は率直な政治家答弁であろうと思う。しつこいようですが、この点、念のために、国民がこの法案の成り行きを注視しておるのですから、国民に答えるつもりで、はっきりともう一ぺんお答え願いたい。(発言する者多し)
  14. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 謙虚な気持を持って国民の意思にこたえるつもりであります。(「与党のヤジのために聞えない」「もう一ぺん答弁しろ」と呼び、その他発言する者多し)聞えないようですから、もう一度答えます。謙虚な気持を持って世論にこたえるつもりであります。
  15. 島上善五郎

    島上委員 こたえるつもりじゃなくて、今度この修正案をのんだのは、謙虚な気持国民世論に耳を傾けて反省をなさった結果であるかどうか、これを聞いているのです。そう回りくどく、いろいろなごまかしのような言葉じゃなしに、謙虚な気持国民の声に耳を傾けて反省なさった結果であるかどうか、これを聞いている。こたえるつもりと、将来のことはこれはまた別です。今度のこの大修正案をのんだのはそういう反省をなさった結果であるかどうか、これを聞いている。
  16. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 先刻も申しました通り、私は速記には載っておるものと思いますが、大原則については同じなんです。政府区画制の割合については、慎重に世論に聴従して決定すべきものだと思う、こう言っているのであります。
  17. 島上善五郎

    島上委員 ちょっと委員長にお願いしておきますが、私ども理事会において今後の審議日程についてお約束しております。これは守りたいと考えております。しかし、与党の諸君がわれわれの質問を妨害して、そのことのために不測の事態が発生したり、そのことのために質問が予定通り進行しない場合には、われわれは約束を破棄する場合がありますから、これを申し上げておきます。ですから、委員長は、十分委員会審議が正常に進行するように一つ御注意願いたい。  鳩山総理大臣は、しきりに、大原則が生きておる、こういう言葉を使っておられますが、総理大臣は、この与党修正案理由書要綱をごらんになったと思いますが、この修正案説明理由なり要綱なり法案なりの一体どこにどのような形で大原則が生きておるか。これをお答え願いたい。
  18. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私が大原則が存しておると言うのは、区画についての大原則が存しておるという意味でありまして、それは、三月十三日の「答申を尊重し、」とあることは小選挙区制の承認でありますから、大原則は承認されておる、こう思うのであります。
  19. 滝井義高

    滝井委員 今の島上さんの御質問に関連して、少し総理の御答弁の中に矛盾がある感じがいたしますので、この際質問させていただきたいと思います。  それは、今総理の御答弁の中におきましては、中選挙区と小選挙区とをお互いが固守して話し合いができなかった、まとまらない、そこで区割りで話し合うと、こういう御答弁があったのでございます。そうして、同時に、大綱については今度の修正案は変っていない、こういうことなのでございます。自民党の方が小選挙区を主張し、社会党が中選挙区を主張してまとまらなかった、そこで今度は、区割りについて話し合うということになれば、何もそこには、この大綱というもの、すなわち小選挙区の大綱という、原則が、この法案の中に確認をされて、はっきりしておるわけでも何でもない。また、選挙制度調査会の案を尊重する、この尊重するということは、今まであなた方が政府提案をした場合においても、単にこれは形式的に尊重しておるだけであって、必ずしもその通りになっていない。これは、総理も出ておる法案を御存じの通り、二十区にわたって二人区ができておるということは、明らかに形式的な尊重で、その通りではない。しかも、実際に選挙制度調査会の案をもとにしてできた、すなわち尊重されてできたにもかかわらず、同じものが二百六十区にしかすぎない。約半数が同じだけなんです。そうしますと、小選挙区と中選挙区において、社会党自民党との間に話がまとまらない、区割りについて話し合うということは、小選挙区の大原則認められたということにはならないのです。だから明らかにあなた自身の答弁の中にもその矛盾が出てきておる。これは一体どういうことになるのですか。もっと明白に、一つ頭を冷やして涼しくして、正常な形で御答弁を願わないと、大事なこの委員会の運営にきわめて重大な混乱を来たしますので、一つはっきり分けて総理に御答弁を願わなければならぬ。そこで私はあらためてもう一回わかりよくお聞きをいたしまするが、小と中との間において話し合いができない、区画割りにおいて今後話し合いをやっていくということ、これはどういうことなんですか。まずこれを御答弁願いたい。
  20. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 太田君から答弁してもらいます。
  21. 太田正孝

    太田国務大臣 総理大臣が私から御返事を申し上げろということですから、申し上げます。党の修正におきまして、修正案の中に三月十三日の「選挙制度調査会答申を尊重し、」とある意味と、区画割りを相談するという意味と、言葉が少しく私にも了解しかねる点がございまするが、「尊重し」という意味は、申し上げるまでもなく、先ほど御指摘になったように、政府案は二十区にわたる二人区を設けております。私も、正確なる意味の小選挙区案は一人一区であるという意味におきましては、例外的に二人区を二十認めたのであると申し上げたのでございます。政府案というものを別にして考えますと、三月十三日の答申を尊重しというのは、その答申の中心となるものは厳格に一人一区ということが書いてあるのでございます。私はおそらく修正の主意はかような意味であると思いまするから、総理大臣が三月十三日の答申を尊重するという意味は、小選挙制度そのものを尊重する意味である、こうお答えしたのであると信じます。また、区割りについて相談するという意味も、通俗に総理が言われたのでございますが、今度の修正案の内容について私の判断するところにおいては、区画委員会を新たに設けまして公正また中正なる案を作るというのでございまして、これは、党が関与したことでもなく、政府が関与したことでもなく、中正なる七人の委員のお方々によって作られるもの、かように私は思うのでございます。従って、総理の言われた意味もかような意味であると申し上げるのでございます。
  22. 滝井義高

    滝井委員 どうも答弁がはっきりしない。総理は、小選挙区あるいは中選挙区を相互が固守して話し合いができない、そこで区割りで話し合うとおっしゃるのですよ。そうすると、お互い立場から、総理は、社会党は中選挙区を固守し、自民党が小選挙区を固守するので話し合いができない、そこで区割りで話し合うということは、お互い原則認め合うという意味じゃないでしょう。どうですか。
  23. 太田正孝

    太田国務大臣 総理がはっきり申し上げましたのは、中選挙区を主張される社会党のお方々と、小選挙区を主張される政府及び与党立場とは、いわば話のプラットホームが違っておりまするからまとまらない、こうはっきり申し上げたのでございます。それ以外の問題はどうやっていくかという手段については、先ほども総理大臣が言われました通り世論もよく聞きつつ、新たなる区画委員会で御判断を願うという意味でございます。もし言葉が足らなかったとしたならば、総理意味はかような意味でございます。
  24. 滝井義高

    滝井委員 その通りであるならば、何も、あなたがさいぜんおっしゃるように、一人一区のいわゆる小選挙区の大原則認めたということにはならないじゃありませんか。どうしてなりますか。
  25. 太田正孝

    太田国務大臣 それは答申案そのもの判断になるのでございまして、答申案は、一貫いたしまして、一つの点は区割りの問題、もう一つの重要なる点は政党本位にやるという二つの柱でできていることは、私の申し上げた通りでございます。ただ、滝井委員の御指摘通り三百六十しか認めない、二百十七が違っておる。これも現実でございます。決して現実をどうこう申し上げるわけじゃございません。そういう意味でございまするから、三月十三日の答申案というものは、率直に申しまして小選挙制度そのものを支持しているものであり、いわんや一人一区で政府系よりももっと厳格にできておるわけでございます。その意味を申し上げたのでございます。
  26. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、まず第一に、選挙制度調査会の三月十三日の案を尊重して、七人の衆議院選挙区画画定委員会が今度は案を作りますよ。そうしてできた案を今度は政府が尊重して、法律を作って国会に出すことになるのですよ。そうしますと、出てくる法律は三段になってくるわけなのです。そうした場合に、政府はそこでまた自由に変えることができるのです。あなた方の尊重するというのは、過去の状態から見ると、四百七十七の選挙区の中で同じものが二百六十しかとれなくても、尊重した、こうなるのですよ。そうしますと、尊重する尊重すると言うけれども、その実は、三段の変化の中で全くゆがめられたものになってくる可能性は十分あるのです。この点は、今度の修正案にしても、今のあなたの御答弁にしても、私はどうもすっきりしないのです。だから、この際ここでまずはっきりと、一人二区という選挙制度調査会の案を尊重いたしますけれども、両党の話し合いでこれはわれわれがきめて参りたいということを、明瞭に御答弁になったらどうですか。
  27. 太田正孝

    太田国務大臣 区画委員会で決定いたしまして総理提出し、政府国会提案いたします。今までの経過におきまして、今御指摘のように三段の場合があるではないか。その通りでございます。しかし、今までの審議の経過を見まして、またこの修正案が通過いたしまする場合に、区画整理案を、区画委員会答申をいかに取り扱うかという問題につきましては、政府としてはそのまま出すつもりでございます。ただし、答申した後に行政区画等において変更がありましたときは、これは別問題でございますから、行政区画に変更あってまでもそのまま出すという考えではございません。ただいまのところ、今までの審議の経過を見ましても、政府といたしまして答申案そのままを出すという考え方でございます。
  28. 滝井義高

    滝井委員 では、最後の言質をはっきりさしておきたいのは、いわゆるこの修正案にも元の法案にも基いて作成する。基くということは、今度の場合については、七人の区画画定の委員が作ったものはそのまま政府は出す、こう了承して差しつかえありませんね。
  29. 太田正孝

    太田国務大臣 それでよろしゅうございます。ただ、今言ったようなごくわずかな場合ですが、行政区の変更等の場合は考えなければならぬ。先ほど謙虚ということで島上委員からお話がありましたが、ほんとうにその意味総理大臣が常に言われている通りで、今回の事態にかんがみましても——私はこの前の委員会のときにも申し上げましたが、私が謙虚と言ったのはさような意味でございますし、法案の取扱いについてもはっきり速記に残しておいて差しつかえないと思います。
  30. 島上善五郎

    島上委員 それではもう一つ、これは太田長官に伺っておきたいのです。「選挙制度調査会答申を尊更し、」ということがありますが、選挙制度調査会答申の中には、区割りの問題もありますし、定員の問題もありますし、政党本位の運動に切りかえるというのもありますし、さらに大事な点は、連座制の強化、政治資金規正、あっせん収賄罪の立法措置、こういうものが伴わなければ小選挙区に基く弊害を防止することができないという答申をちゃんと文書でなさっておる。この部分についても尊重されるというふうに理解してよろしゅうございますか。
  31. 太田正孝

    太田国務大臣 別に理屈詰めで言うわけじゃございませんが、あの修正案を、私の解釈するところにおきましては、区割りについて区画委員会の意見を尊重していくのでございまして、その以外の点のことはあの修正案の中にはないように私は見ております。その点は誤解のないようにお願いいたします。ただし、それならば、答申案の中にある政治資金規正法の問題、連座制強化の問題をどうするかということは、政府の意見は毎々御質問に対してお答え申し上げたような次第でございます。今回の尊重するというのは、あそこにはっきり書いてありまする通り——私が修正案の解釈をするのは間違いかもしれませんが、図画につきましてのやり方について、しかもそれはワクをきめまして、人口の問題、行政区画の問題、あるいは地理的の関係など、総合的にと書いてあったように記憶いたしますが、ワクもきまっております。そうして大方針は三月十三日の答申を尊重し、こう私は解釈しております。
  32. 原茂

    ○原(茂)委員 今の問題に関連いたしまして、総理大臣にちょっとお伺いしたいのですが、三点に分けてお伺いします。  最初に、今回のこの与党の出した大修正案ですが、この修正案政府がのんだわけですが、こういうことになった直接の動議というものはどこにあったでしょうか。何も理由なくこういうことにはならないと思うので、どこかに、こんな大きな、ずたずたに修正される案をのまざるを得なかった何か動機があると思いますが、総理一体動機はどこにあるとお考えになったのか、その点を先にちょっとお伺いしたい。
  33. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 区制案は非常にめんどうな問題でありまして、世論にもずいぶん反対が強かったものですから、それを慎重に考慮すべき必要ありと私は考えました。
  34. 原茂

    ○原(茂)委員 世論反対批判等が強いので考慮する必要がある、こういう判断から総理はこの修正案をおのみになった、こういう御答弁でした。しかし、そういうことはこの選挙法を出された最初からの非常に大きな原因であったのですが、直接の動機というものは私はほかにあったのじゃないかと思う。直接の動機というと、今国会の場合で言うなら、この問題に関する限りは、議長の裁定が起きる原因というものは方々にあったと思いますが、とにもかくにも議長裁定というものが出たために、総理もこの与党修正案というものをのむ御覚悟ができたと思うのです。議長裁定が直接の動機になっているのじゃないかと思いますが、どうでしょう。
  35. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 あなたのようなお考えに私も異存はございません。
  36. 原茂

    ○原(茂)委員 異存がないというお答えがあったわけです。そこでお伺いしたいのですが、今も答申案を尊重するという問題あるいは七人の画定委員を設けるといったような問題、こういうような答弁がありましたが、議長の裁定の内容でございますが、たとえば、区画割り原則についてはあまり委員会を拘束しない、大体三つの基準をきめただけでこれをやっていきたいというようなことが、与党修正案の骨子になっている。なおこの画定委員会というものは七名によって構成をすると出ております。こういったことを議長裁定の中に何か多少織り込んであったのか、議長裁定の中には、こういった精神を総理がのまざるを得ないような裁定があったかどうか、この点を一つお伺いしたいと思います。
  37. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 太田長官から御答弁願います。
  38. 太田正孝

    太田国務大臣 私から答弁いたしまして、さらに総理大臣から、補足すべきものがありましたならば、補足を願うことにいたします。  与党修正案のできた関係につきましては、政府としては修正案の出たそのものを見るのでございまして、修正案そのものについての経過につきましては、私どもはなるべく穏やかに事がまとまっていけばいい、こういう意味におきまして考えたのでございまして、何ら深くその点につきましてコミットした交渉を私どもがしたわけではございません。これは党として相談されたことでございます。もちろん相談の結果としてこうなったということは聞きました。議長が問題の中に入るとかいろいろなことにつきましては、こまかいことは私は承知しておりません。
  39. 原茂

    ○原(茂)委員 そういうこまかいことを承知しておらない長官が答弁することも、第一不穏当なんです。間違いなんです。私の質問に答えるためには、こまかいことを聞いているから答えられるのです。そういうことを聞かない大臣が自民党の一員であるくせに、しかも、幹部の責任ある者が、そういうことを知りませんで、答弁するのがおかしいのです。従って、そういう意味から言うなら、与党の総裁としての鳩山さんにお伺いしたらはっきりするので、総裁たる鳩山さんが、この区割りの基準をかくかくの条件で作るとか、七人の委員会を構成してやるとか、こういったことを議長裁定の中から何か刺激を受けたのか、そういうことは全然裁定の中になかったかどうか、それをお伺いしたらわかると思う。
  40. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 根本は変っておりませんから私は承知をしたのでありまして、詳細のことは私は存じておりません。
  41. 原茂

    ○原(茂)委員 先ほど私がこの大修正案政府がのんだ直接の動機は議長の裁定にあるのではないかと言ったのに対して、その通りだと総理はおっしゃった。議長の裁定があったからこんな大きな修正案をのんだとお答えになった。そのくせ、議長裁定の詳細にわたってはわからない。内容は知らない。一体何を基準として総理として、責任をとってこの修正がのめるのですか。総裁も知らないというのでは、議長のあの裁定を尊重する精神がちっともないとも言えるし、何かいいかげんに糊塗しておけばよろしい、その場しのぎの考え方でこんな大きな修正案をのんだのだというふうにしかとれません。そういう態度でこんな大きな世論を動かした問題を、こんな大修正を加えるものを政府がのめるはずはない。総裁として、総理として、いやしくも議長裁定の詳細に関して検討を加えて、その逐条に関してよく承知した最後に決を下したはずなのです。それを、詳細は知らない、議長裁定を尊重しているものと思えない態度で、単に修正案をのんだというのでは、この場における答弁にならない。少くとも、議長裁定のある程度の骨子に関しては、小選挙区の原則認めているとかいないとかいうだけではなくて、何カ条かの議長裁定の原則というものは、はっきりと承知した上で、これに対する決を下したと私は思うのですが、そういう詳細に関して、いわゆる何本かの柱、大事な個条に関して総理が知っているのか知っていないのか、この点をもう一度お伺いしたい。
  42. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 根本は変更していないと私は認識をしまして、承知をしました。
  43. 原茂

    ○原(茂)委員 根本が変更になっていないどころか、この選挙改正の中には五つにも六つにもわたる大きな根本があるのです。しいで言うなら、ゲリマンダーと称された区画割りが大きな主体であることはわかります。そういうものが変更されていないということは言えない。この根本が変更されてしまったのです。区割りが一番重要なポイントであるとするなら、これがもう全然別表に移されでしまって、どう変るかわからない。政府の考えた区割りなどというのは全然白紙に返ったのじゃないですか。根本が大変更を加えられている。にもかかわらず、根本が変っていないからという答弁では納得がいかないわけです。そうではなくて、もっと本質的にこの議長裁定を中心にして与党がこの修正案を出してきた、この議長裁定というものはどういうところに重点が置かれて裁定されたかを、総裁であり総理大臣であるあなたがよく吟味した上でこの決定をなさったと思うので、議長裁定の詳細に関してあなたが御存じかどうか、もし——もしじゃない。知っておられるのが当りまえなんですが、当然知った上で、その裁定の中に、区画委員会を別に設ける、七人でこの委員会を構成する、こういったようなことがあったかどうかを、もう一度はっきり御答弁願いたい。わからなければ、太田さんに聞いたり、だれでも呼んでここで聞くまで待ってもけっこうですから、聞いてはっきり御答弁していただきたい。(太田国務大臣委員長々々々」と呼ぶ)ちょっと待って下さい。太田長官に聞いておるわけではない。総理にお伺いしておるのです。もしこういうことがはっきりしないと、おととい、きのうからせっかくここまできたこの修正案というものに対して、社会党は根本的にその態度を変えなければいけないわけです。いやしくも、議長裁定の精神というものを、議長裁定の中心の課題というものを、重要な案件というものを、総理がこれを全然知らないで、まわりが総理をごまかして、いいかげんにたぶらかして、局面を糊塗するために総理には詳細知らせなかった。議長が何を言ったか総理は知らないで、そのままでこれを通そうとするなら、責任政府の今日、いやしくも総理が全責任をとってこの修正案をのむということにはならないわけですから、われわれとしてはこの修正案審議に応じかねるわけです。全く態度白紙に返さなければいけなくなるから、長官でなく総理からお答えを聞くまではやめないわけです。
  44. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私が先刻申した趣旨は、小選挙制度原則は維持せられておるし、政党本位選挙強化、これが承認されておりますし、区割り改正には慎重を期する意味で、この修正案に同意をした、この通りに思います。
  45. 原茂

    ○原(茂)委員 答弁がはっきりしてきたわけです。最初からそうおっしゃっていただくと六十点ぐらい満足するわけです。そこで、私がお伺いしたいのは、今の区割り原則あるいは七人の委員をきめるということに関して、この議長裁定の中には、何か与党に対しはっきりした指示あるいは了解があったと思うのですが、この点総理は御存じかどうか。あったらどういう了解があったのかを明答願いたいと思うわけであります。
  46. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 文字通り意味は了解をしております。
  47. 原茂

    ○原(茂)委員 文字通り意味、すなわちこういうことを政府認めようとなさる場合には、議長裁定の中にこういう文字が出てくる前段に、文字には出てこない議長の与党に対する意思表示があり、与党の幹部はこれをのんで、初めてこういうものが出てきたのだと私は了解している。その間の経緯を総理が御存じないと、これは重要問題だ。私どもは小選挙区に対して反対態度をとっておりますから、その内容のいかんが社会党に影響を与えるものではありません。しかしながら、いやしくも両党が議長裁定と議長を尊重するということを公党の面目にかけてはっきりと誓って、議会と議長の権威を守ろうとする私ども態度は、あなた方と私どもと変りはないわけです。その意味で、議長裁定の中にこの文字が表面に出てくるまでに、議長の何らかのサゼスチョンがあって、これを与党幹部ははっきりと了承した上でこの文字になってきたと私は了解しておりますし、報告を受けている。もしそうでないとするなら、この文字だけをとらえて了承することができないというわけですから、もう一度はっきりとお答えを願いたいと思います。
  48. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 慎重に区割りを決定したいということの意味以外に、裏に何ものもありません。
  49. 原茂

    ○原(茂)委員 この点は非常に重要でございまして、私は関連質問ですから、これだけで時間をとると、まわりがお困りになると思いますから、次の質問者に徹底的にこの点に関する問い合せをお願いしたいと思うのですが、最後にはっきり申し上げておきます。もし、総理がおっしゃったように、議長とあなた方との間に何らの指示もなければ了解も与えていないということになりますと、ここに出てきたこの文書は、このまま私どもはのむことはできないわけです。少くともこの文書の一字一句がどうのという問題ではない。議長裁定を中心にしてこの大修正が行われて、わが党もこの議事運営に正常な形で協力のできる段階になったことに対しては、議長に満腔の敬意を払っているわけです。その議長裁定を尊重する意味においては、自民党社会党ももろ手を上げて協力する態勢がようやくできた。議長裁定の中の非常に重要な個条に関して総理はこれをお認めにならない、知っていないということになると、全然白紙に返した自民党との間のこれからの話し合い、あるいは議長に対しても、こういうことに関しては総理から違った形で答弁をはっきりいただけるまで、議長に対してもわが党から疑義をただす態度に出たい、こう思うわけです。この党をはっきり今御存じないようですから——ほかにここにいる委員の方もわからないらしい。わからないほどに総理がわからない。総裁がわからないのですから、与党幹部の議長に対する約束というものは、与党委員諸君にもわかっていない。反対党の私どもは全部これを知っておるわけです。こういうことは非常に困る。従って、この点に関しては、明日も総理はおそらく御出席になると思いますから、そのときまでに委員によって質疑が行われていなければ、明朝私からはっきりよくお調べ願った上で総理の御答弁をお願いすることにして、保留しまして、私の関連質問を終りたいと思います。
  50. 島上善五郎

    島上委員 総理は、先ほど来、根本は変更していない、大綱は変っていない、あるいは原則は維持されておるというような御答弁をされておりますが、今回の政府案から区割りというものを取り去ってしまったら、全く意味のないものです。しかも、この区割りは、抽象的な言葉では選挙制度調査会答申を尊重する、こうなっておりますが、選挙制度調査会とは全然別の七人委員会を作って、その七人委員会答申したものを今度は政府は尊重するというのですから、政府案とは私がさっきも言ったように大へん変ったもの、全然出直した形の公正なものが出てくるに違いないと思う。そうだとするならば、少くとも今度の政府提案の最も大事な部分が消えてなくなってしまう。跡形もなくなってしまうこのような大修正政府がのむ決心をしたわけですから、この前代未聞とも言うべき、政府案を骨抜きにし跡形もなくしでしまうような大修正与党から出して、それを政府がのむというからには、その政治責任をどのようにお考えになるのか。私は当然政府は重大な政治的な責任があると思う。総理大臣にその政治的責任をどのようにお考えになっておるか、これを伺いたい。
  51. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 先刻原君に答弁をいたしました通りに、小選挙制度原則は維持されておると思います。政党本位選挙強化も承認されておるものと思います。区画改正については、慎重を期する意味におきましてこの修正案に応じることは、政府に何らの責任を負うべきものではないと私は思います。
  52. 島上善五郎

    島上委員 おそるべき御答弁です。自分がこれは正しいものと信じて出して、しかも今国会における最重要法案である革命的とも言うべき重要法案である、こう信じておる。そうして、先ほども私が言ったように、今までの答弁に関する限りは、この区画割りは正しいものである、党利党略ではない、あくまでも正しいものである、こういう確信を持ってお答えになっておる。その正しいものが跡形もなくなってしまう。このような骨抜きにひとしい、廃案にひとしい大修正をのんで、何ら政治的責任を感じない。私は総理大臣からおそるべき御答弁を承わりましたが、一体責任政治というものはそういうものですか。政府が確信を持って正しいものと信じて出したものが全く消えてなくなってしまうほど修正されておる。それでもけろりとしている。原則は生きておると言いますけれども、きわめて抽象的な言葉で、選挙制度調査会答申を尊重する、これだけの言葉しかない。どこに原則が具体的に生きていると言えるのか。それば与党及び政府の勝手な解釈なんだ。こんな言葉はどのような解釈でもできる。さっきも滝井君が質問したように、大体政府提案理由の説明によりますれば、選挙制度調査会答申を尊重したと言っている。その尊重したはずの政府提案が全部消えてなくなるほど大修正されてしまった。原則なんかどこにも生きてない。勝手な解釈をすればそうですが、第一、岸幹事長——これはここで言うべきことかどうかわかりませんが、与党の代議士会で、骨と皮ばかりになってしまったと言っておる。骨と皮ばかりでない。実際は骨と皮もなくなっているのです。政府提案した大法案が、こういうなきにひとしいような大修正を受けて、政治的責任を感じません。私はこの点について重ねて伺いますが、政府が出した法案がこういうふうにもう跡形がなくなっても、それでも一向政治責任を感じない。鳩山総理大臣の政治的な良心というものは一体そういうものであるのか。政府の出した法律案の跡形がなくなってしまっても、けろりとして、カエルの顔に何とかみたいにけろりとしている。一体政治的責任というものはそういうものですか。私どもの良心によりますれば理解ができない。重ねて伺います。
  53. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 たびたび答弁をいたしましたが、私は修正案が小選挙制度原則を維持しているし、政党本位選挙強化も承認をしておるし、区画改正については慎重を期したいというのでありますから、これに応ずることは当然のことであって、政府の何ら責任を負うべき筋合いのものではないと考えます。
  54. 島上善五郎

    島上委員 太田長官は、この前、同僚の滝井君の質問に対して、もし政府原案がくずれたら、当然政治責任を負うというような意味答弁をされておったと思います。私が先ほど来言っているように、このような跡形もない大修正を加えられたということは、いわば与党から政府に対する不信任案を突きつけられたようなものだ。明白に与党から政府に対して不信任案を突きつけられたようなものだ。当然、私は、直接の衝に当っている太田長官はもちろんのこと、総理大臣もその責任を負うて不明を天下に謝すべきだと思う。これほど国民の与論を沸騰さした大法案がこういう形になるということは、当然政府がその政治責任を負うべきであるし、その不明を天下に謝すべきなんだ。太田長官総理大臣は、私は何のかんばせあってここにおめおめ来て答弁するかと言いたい。一体その政府の不明を大下に謝するというお考えがあるかどうか、お考えを伺いたい。
  55. 太田正孝

    太田国務大臣 私のことが出ましたから、私自身から申し上げます。滝井委員質問されましたときに、根本に触れるような、小選挙制度をくずす場合においては責任をとると、はっきり申し上げたのであります。しこうして、総理大臣が今言われた通りに、小選挙制度の根本は存しておるのであるという信念のもとにおきまして、その意味において、この前申し上げた通りでございますから、責任がないと総理大臣が言われたのでございます。私の申し上げましたのも、根本に触れるならばということをはっきり申し上げたのでございますから、さよう御了解を願いたいと存じます。
  56. 島上善五郎

    島上委員 他の同僚の質問をする時聞の関係もありますので、私はまだ足りませんが、また明日も質問する時間があったらしたいと思いますので、これで最後にしておきますが、この与党修正案が最終的にできるまでの過程においては、「選挙制度調査会答申を尊重し」という言葉ではなくて、「一人一区を原則として」云々という言葉だったのです。それがだんだん変ってきて、「選挙制度調査会答申を尊重し」、こういう抽象的な言葉になったのです。原則として一人一区という修正案だったのが、こういうふうに変ってきておるのです。変ってきておるということは、要するに原則として一人一区であるということにこだわらなくなって、それを放棄したことを意味しておる。きわめて抽象的な言葉に、どういうふうにでも解釈できるようにもう変ってきておるのです。これは原則がくずれておる。大変更を加えられておる。どういう案が出るかは全く未知数なんだ。これを、原則が維持されておると、そういうような言葉は、政府の面子を保つために勝手にそう解釈しておるだけなんだ。私は、政府案原則は全くくずれ去っておる、少くとも区画割りについては白紙に返った、どんなものが出てくるかわからぬと思っておる。こういうような大修正を加えられた以上は、罪を、その不明を天下に謝し、当然直接の太田長官はもちろんのこと、総理大臣はその政治責任を明確にすべきものである、こうあくまでも考える。このことを重ねて伺って、私の質問を終ります。
  57. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は、先刻答弁した通りでありますから、再びいたしません。
  58. 島上善五郎

    島上委員 私はそういうような抽象的な答弁ではきわめて不満足です。おそらく、そういうような答弁を聞いておる国民も、一体何を答弁しておるのかと、きわめて不満を感じておるに違いないと思います。従って、今も申し上げましたように、同僚議員の質問時間の関係もございますから、私は、時間がありましたら、さらに明日重ねて質問したいと思いますので、これをもって本日の私の質問を終ります。
  59. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 井堀繁雄君。
  60. 井堀繁雄

    ○井堀委員 鳩山総理にお尋ねをいたしたいと思いますが、総理は、この委員会で、この法案提案の精神についてこのようにお答えになりました。それは、この法律案は政局の安定と二大政党を育成して責任ある政党政治を確立するという意味の御答弁であります。また太田長官提案理由でこのことを再々強調されておるのであります。ごもっともなことだと思うのでありますが、ここで私のぜひ伺っておかなければなりませんことは、政党政治は申すまでもなく責任政治であることは、何人も異論のないところであります。もし政党政治が責任をとらないようなことになりますと、これは全く意味をなさぬことになるのでありまして、一番重要なことは、国民はもちろんのこと、政府といたしましては、この政党の組織と政府の機構とを関連させた有機的な中に責任政治を確立するということでありますから、かような立場から、今回政府提案されました選挙法が、同じ政府を構成しておりまする与党である自民党から、法案の精神を全く分断するような修正案が、一再ならず二度にわたって提案されておることであります。このことは提案者の説明の中に明らかにされておりますが、二つ理由をあげております。その一つは議長のあっせんにこたえてということであります。次の一つは、諸般の情勢を考慮してと、こう答えておるのであります。  言うまでもなく、議長のあっせんは、議会の運営が正常でないことを憂えられて、議会政治の権威のためにあっせんが行われましたことは、一面におきまして、議会を構成するわれわれとしてはまことに不名誉なことであります。しかしながら、このことは事実として現存しておることでありますから、いなめないのであります。そこで、この議長のあっせんの趣旨は、機会の混迷を前提とされ、議会を権威づけるためのあっせんである。このあっせんにこたえて、政府原案に対しまして全く本質を失うような大修正案与党が出すに至ったということも、また偽わらない事実であります。この事実に対して、総理大臣としては重大な責任をとらなければならぬと私は思うのであります。もしこういう問題に対して責任を回避することになりますならば、それは政党政治、責任政治などというものは全く存在しないことになるのであります。これは非常に重大なことでございますので、いかなる責任をおとりになろうとするか、その方法について明確にされる必要を私は痛感いたしまして、この点をまずお尋ねいたしたいのであります。  次に、諸般の情勢を考慮してという問題でありますが、このことについても当然政府の所信を私は伺わなければならぬと思うのであります。まず第一の、議長のあっせんが国会権威のために行われたということは間違いないのであります。このことは、私ども責任を回避するものではありません。しかし法案提出したのは政府であります。その政府提出した法案世論から全く擯斥を買ったということであります。こういう事実をあなたが是認されないわけには参らぬと思うのでありますが、こういう事実を是認されまして、一体あなたみずからが政党政治、責任政治の確立を目ざして本案を出したのでありますから、結果はそれと逆になったということは、まことに遺憾千万とわれわれも御同情を申し上げ、責任の一端をになうものであります。まず政府として、これに対する明確な態度をこの際明らかにされたいと思うのであります。
  61. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 民主政治というか、もっと広く議会政治といいますか、いずれでもけっこうでありますが、民主政治あるいは議会政治におきまして責任政治の必要であるということは、言うまでもありません。この責任政治の議会が、議長のあっせんによってようやく鎮静したということは、議会全体の不名誉であります。これも全くその通りと思います。けれども、この議長のあっせんがあったということが、政府が責任をとるべき事態とは私は考えておりません。
  62. 井堀繁雄

    ○井堀委員 私は実に意外な御答弁を伺って、まことに日本の政党政治のために遺憾の意を表したいと思うのであります。政府がこれに責任を感じないということは、これは私どもの全く予想せざることであります。申すまでもなく、この法案提出したのは政府であることは間違いないのです。その政府案が、与党の手によって、しかも議長のあっせんによって、二回にわたって修正が行われているのだ。こういう事実をあなたはお認めにならぬのですか。
  63. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 その点については、先刻申しました通りに、この修正案は小選挙制度原則は維持しておるのであります。それから政党本位選挙の強化も承認をしておるのであります。ただ、区画について慎重を期する意味において、修正案ができて、それに応ずるというのでありますから、政府としては責任をとるべき筋合いのものではないと私は考えます。
  64. 井堀繁雄

    ○井堀委員 内容についてはあとで明らかにして質問をいたすのでございますが、まず今私のお尋ねしておるのは、提案者側の言うところの修正理由というものが二つある。その一つを今あげておるわけです。すなわち、議長のあっせんは、はなはだ遺憾なことではありますけれども国会の正常な運営ができないと見てとり、それを正常な運営に戻すためであったことは間違いがないのであります。これをあなたは御否定になりますか、お認めになりますか。
  65. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 その通りであります。
  66. 井堀繁雄

    ○井堀委員 これをお認めになる以上は、議長のあっせんは、政府提案法律案というものが、議会の審議の過程においてそういう混乱が起きたということでありまして、その原因がどこにあるかということは、申すまでもなく、法案それ自身が提案されたことにまず出発するのであります。しかも、その法案修正するに当りまして、与党であり、政党政治でありまする場合に、あなたは、総理大臣であると同時に、自民党の総裁である。なるほど、立法府と行政府の三権分立の建前から言いますと、責任を分つのでありますけれども、政党政治の場合には、党の組織の責任者としての地位をやはり国民の前に問われるのであります。そのあなたが総裁でありまする与党が、——政府案を、要するに大幅に、しかもこれは、新聞あるいはその他の世論批判がありますように、本質を全く失うような大修正であります。こういうような修正が行われなければならなかったということは、あなたはお認めにならざるを得ないのであります。こういうことが行われたということに対して、私は、総裁としての責任はとにかくとして、政府の責任というものは、こういうものに対してどうしなければならぬかということは、非常に大事なことだと思う。あなたはこれに対して明確な所信を述べられる立場に置かれておると私は思うのでありましで、この点に対してあなたがもし責任を感じないというならば、もう一度はっきりこの点の御答弁を伺っておきたいと思うのであります。
  67. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 たびたびその質問に対してお答えをいたしましたが、その通りであります。
  68. 井堀繁雄

    ○井堀委員 あなたは政府の責任をお感じにならぬ。驚くべきことである。  次に、私は、諸般の情勢ということは、これは提案者がどう答えられるかは質問をいたしておりませんが、明日明らかにして、その結果であなたに質問したいと思うのでありますが、私の想像でありますが、これはやはり、世論の前に、原案を変えることが正常であると考えての、私は善意に基くものだと理解しております。  そこで、修正案の内容でありますが、あなたは、原則に何らの変化がない、こう言っておりますが、これは詭弁です。事実は、今回修正案を私どもが説明を聞きまして明らかになったのでありますが、政府提案されました小選挙区法の内容は、たびたび説明がありましたように、大きく分けて十項目にわたるのでありますが、その中の七項目が全く修正されております。残されておる部分は、政党の選挙活動と公認制度の問題が、辛うじて残滓をとどめておるにすぎぬのであります。これは何も小選挙区と直接関連のあるものではない。直接小選挙区に関連あるものと思えば、いま一つ残っておるものは、それは繰り上げ当選に関する事項であります。これを除きますと、どこに小選挙区によるものがあるか。党の選挙活動を積極化することは、中選挙区であろうと、大選挙区であろうと、小選挙区であろうと、必要なことであります。公認制度においても、政党政治をとる場合においては何ら変らない。たった一つしかない。あとは肝心な立会演説、供託金の問題は、比較的そのウェートは軽いものでありますけれども、あるいは連座制の強化のための附帯訴訟制度を同時立法化するという修正案のごときは、世論によくこたえておるものとして敬意を表したい。また、選挙区画制の問題につきましても、本文から切り離しておるということは、これは全く大胆な態度でありまして、これにも敬意を表している。だから、区割りを切り離してしまいますと、以上のような関係からいきますと、小選挙区法というものの姿は全く解体されておるのです。しかも、提案の中にも明らかにされ、法律の条文にも明らかになっておりますように、次の通常国会までに区割りをきめて、そこで審議をすることになるのでありますが、それが、その区割りと並んで、また本文に対する修正も必要になる点も多々あるのであります。そういうことは別にいたしましても、こういう内容からいいますならば、どんなにあなたが白を黒と言いくるめようといたしましても、今回政府提案されました小選挙区を施行する選挙法の改正原案よりは、全くばらばらに分割され、ただ単に法案を名前にとどめるだけであることには間違いはないのであります。こういう世論のきびしい反撃にあったことは、まことにお気の毒にたえぬのでありますけれども、しかし、世論にこたえるということは、私は聰明な態度であると思うのであります。そこで、その世論にこたえて、与党である自民党からこのような修正が行われた。この点はあなたは十分御存じだろうと思うのであります。こういう姿は何も私がことさらに説明せぬでもいいと思いましたけれども、こういう事実の前にあなたはなおかつ政府の責任を回避されるか、政府は責任をとらぬでもいいという御答弁を重ねてなさいますかどうかを伺っておきたい。
  69. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 その御質問に対しましては、先刻答弁をいたしましたことによって御了解願いたいと思います。
  70. 井堀繁雄

    ○井堀委員 はなはだ恐縮ですが、前の答弁をもう一回この際繰り返していただきたい。
  71. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 修正案は小選挙制度原則を維持していると私は思っております。また政党本位の政策を承認しているものと思います。区割り改正については、ただ慎重を期したいという考え方で、慎重な態度をとっていくことにしたのでありますから、別に政府としては責任をとるべき筋合いのものではないと思います。
  72. 井堀繁雄

    ○井堀委員 あなたは小選挙区法の原則がくずされていないということを唯一の抗弁にしておりますが、本質はさっき私の説明いたしましたように全くくずれ去っておるのです。小選挙区制にするかあるいは中選挙区になるかという坑は、あなたも十分御承知だと思いまするが、議長あっせんの過程におきまして、あなたの方の党からも一人区、二人区、三人区として例外あるいは特例としてという註釈はありますが、そういう案がたびたび議長から示されておる。また、政府原案は、答申案の一人一区制を二十幾つかに分けて二人制を認めておるわけであります。これは、方々の公聴会あるいは公述人や参考人の間からも言われておりますように、一人一区という最もすっきりした姿の小選挙区は、日本にいきなり採用するということは不適当だという声もたくさんあるようで、暫定的に行うということの異例のことが、表現の仕方は若干こわばっておりますが、二人区を例外として、また区画委員会が必要と認め、あるいは両党がこれに同意を与える場合には三人区もまたやむを得ぬという案が示されたということも御存じだと思います。これは議長あっせん案の二つのうち一つが選ばれたわけでありますが、その一つにそういう案が出ておる。これは言うまでもなく小選挙区という原則の中に幅がある。こういうことが審議の過程において明らかになっている。でありますから、政府自身が一人一区——これは小選挙区なんです。二人区を入れたということは、ここで議論は試みようとは思いません。必要がそういうふうにさせた。なお、あなたが御存じのように、法案の中に規定されております選挙区画委員会には、法律は抽象的な文書だけを並べておりまして、この委員会がもし二人区、三人区というような例外を必要と認めた場合にはどうなるかということには、法律は何も記していない。こういうように内容もがらっと変っている。これを、いかにも原則が通っているから、残滓が残っているからということで、あなたはしがみついている。しかし、それほどあなたがこういうものに執着を感じ、そこに隠れていかにも責任を回避しようというようなあわれな姿は、日本の議会政治確立の上に残念だ。こういうことは、はっきりお答えになって、何がおそるべきことがあるか。そういうことまで忌避されることは、あなたが二大政党政治を確立し、国民に対して責任をとり得る牢固たる政党の上に基盤を置く政府を作るなどと言うことは、全くみずからこれを否定する大事な発言になると思うので、くどく質問を申し上げております。しかし、あなたがそれ以上の御答弁ができぬというなら、繰り返しますまい。鳩山さんの責任政治に対する考え方というものはこれで一つの定義ができる。  そこで、それでは、やや具体的なことで、あなたの責任についてお答えを一ついただきましょう。それは、今度の修正案の中に、選挙区画委員会というものを定めることになっております。この画定委員会と同時に、この法案の中には、この委員会は七人のそれぞれの人々を予定しておりますが、これと総理府設置法の第十五条との関係であります。総理府設置法第十五条の規定によりますと、総理府の中に付属機関として選挙制度調査会が明文化されております。続いて政令で必要に応じて特別の事項を審議させるために五人以内で臨時委員会、さらに調査会に専門事項を調査させるための専門調査委員会を設置することができるようになっている。そうしてこれの内容を全部読んでみますと、全くここにあげております衆議院選挙区画委員会と同質のものであります。ただ違うところは、その委員の数が五人、片方は七人となっている相違で、あります。それから、あらかじめ委員の人選についてこの法案の中にうたっております衆議院議長の推薦する二名であるとか、国会図書館長であるとか、あるいは選挙管理委員の中から選ぶといったようにいたしてあるだけでありまして、これは、この法律からいきまするならば、総理大臣が任命することになっておりまして、この七人も総理大臣が任命するという手続は同様であります。でありますから、こういう人々を総理大臣が選ぶということは何ら妨げてないのでありますから、こういう法律が厳存しているのにもかかわらず、全く同質のものをここにあげてきたということで、しかもそれによっていかにもゲリマンダーに対する世論のきびしい非難にこたえようとする以外に、どこに修正案の余地がありますか。そうして一方には、三月十三日でしたかの答申案、すなわち「選挙制度調査会答申を尊重し」とわざわざ法律の中に入れている。だから、調査会の答申を尊重するくらいでありますから、調査会の制度それ自身に対しては尊重するどころではない。厳然たる法律でありますから、これを守ることは異存のないはずです。当然その法律の精神によって行い得るものを、ことさらにこういうものをつけて世論を瞞着する以外に、何らの理由を私どもは発見することができない。こういうことまでしなければこの法案を存続させることができぬような、かなり苦しいやり方であります。一体、そういうことをして、この政府の責任をあなたは回避しようとするのであるか。あるいは、そうでなく、政府の責任は痛感しておる。しかしその責任のとり方をこういうところに持ってきたのであるか。この点は総理大臣として明確にされる義務が私はあると思う。これに対してはっきりしたお答えをいただきたい。
  73. 太田正孝

    太田国務大臣 今総理府の機関についての御質問でございますから、私からお答え申し上げます。なお、必要があれば、総理大臣から補足されると思います。  お示しの選挙制度調査会というのは、申し上げるまでもなく、国会議員の選挙及び地方公共団体における選挙、国及び地方の選挙制度について諮問する機関でございます。今度新たに設けようとするのは、区割りにつきまして区画委員会を作ろうというので、目的が全然違っており、これと相並んで付属機関となるわけでございます。(「全然違うということはない」と呼ぶ者あり)今私の申しましたのは、目的が、諮問機関という選挙制度調査会の全面的の機関に対しまして、区画についてだけの委員会でございますから、それをはっきり申し上げた次第でございます。
  74. 井堀繁雄

    ○井堀委員 太田長官と私は議論をする所存は一つもありません。そういう苦しい御答弁をなさることは、私はますます疑いをたくましゅうすることになる。三百代言の議論をされたって通りません。諮問機関であることはいずれも諮問機関である。それから専門委員会、臨時委員会は、そういうものに対して全部今までやってきた答申をあなた方は尊重なさるというが、答申案の中に区画はちゃんとついて出てきたじゃありませんか。いかにも自分の責任を回避するために、ああでもない、こうでもないと言っている以外に、とりようはありません。そういう無理なことをなさらずに——私がこれをあげたのは、総理大臣政府の責任をいかにも回避しようとする言いのがれをなされるから、あまり見苦しい限りだと思うので、こういう具体的事実をあげて御反省を願うのです。私は、何も、政府の責任を、野党であるからこれを攻撃せんがために言っているのじゃないのです。議会政治を確立し政党政治を確保していきたいために、私は責任の所在を明らかにすることが大切であると思ったのです。責任の所在をあいまいにするようなことでは、政党政治は成り立ちません。それは政党じゃないのです。こういう点が重大でありますから、私は、あなたの答弁は、ただこの際この場をのがれればいいということではなくて、日本の政党政治確立のために、責任ある御答弁がいただきたかったのであります。この責任を回避されるということはおそるべきことであります。みずから議会政治、政党政治を否認する結果に私は相なると思う。まことに残念であります。  次に、大事なことは、この法案審議の過程においてでありますが、これは私ども責任の一半をになうものでありますけれども、このために国会の重要な機関が麻痺したということは、あまり言い過ぎであるかもしれませんけれども、莫大な時間と多くの空費をいたしました。そして実はこれは廃案だという言葉は無理があるといたしましても、実質的には廃案同様であります。次の通常国会に持ち越されるのでありますから、あるいは継続審議のような性質のものになるかもしれませんが、いずれにいたしましても、この国会において効力を発生する法律にならぬことは間違いがない。このことは、議会も国民に対する責任を問われますが、この法案提案しこの国会審議を求めた政府は、国民の重大な生活に関係の深い法案審議がおくれて、しかも十七日の長期の会期延長を行わなければならぬという事態に対して重大な責任があります。こういう責任をまず国会国民から膺懲を受けるでありましょう。国会議員はいうまでもなく選挙を通じて国民から直接批判を受けます。懲罰を受けましょう。政府国会にまず責任を問われるのです。要するに衆議院の選んだものでありますから、あなたはまず衆議院に対してその責任を明らかにする義務がある。これを無視されますか。まずこの点に対して御答弁を求めます。
  75. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 ただいまの御質問に対しては、たびたび答弁をいたしましたから、再びいたしません。前の答弁で御了承願います。
  76. 井堀繁雄

    ○井堀委員 前にあなたが私に答えていただきましたのは、法案原則が変っていないから、法案が寸断されてみても、それに対する責任を必要としないという意味答弁であった。今私のお尋ねしておるのは、この法案提案したのが政府であることはよも否定されますまい。できることではない。政府が出して、それの審議のためにこの委員会は何日間やったと思いますか。他の委員会に比較して全く異例な長時間にわたる審議が行われた。また、その審議の過程において、国会の中において正常な秩序を乱すがごとき非常な混乱をかもしたことも、遺憾ながら認めなければならぬのであります。こういうような状態をかもした法案が全く死文化してしまったということも事実であります。これに対して、立法府に対する提案者である政府は責任を当然問われるのです。われわれこれから問うのです。問う前に、政府みずからがその責任の所在を明らかにするという義務を私は聞いておる。その義務を放棄するかどうかということを聞いておる。
  77. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 議会の混乱について、政府は責任をとるわけには参りません。
  78. 井堀繁雄

    ○井堀委員 あなたはよほどどうかされておると思う。議会の混乱については、議長みずからがそれぞれ裁定をし、あっせんをしておるように、議長みずから責任を感ずるからやっておられる。われわれも責任の一半はわかると言っておるじゃないか。政府国会に対する責任はそれとは別個なんです。こういう法案を出したのは政府じゃないか。その法案政府を支持する政党が大幅に修正したことも事実ではないか。これに対する責任を感じないというべらぼうな答弁があるか。その答弁ができないようでは、総理大臣の資格はないじゃないか。明らかに答弁をなさるべきだと思う。
  79. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 先刻の答弁によって御了解を願います。   〔「明確な答弁をしろ」と呼ぶ者あり〕
  80. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 先刻の答弁で御了解を願ますという答弁がありました。
  81. 井堀繁雄

    ○井堀委員 私はあなたが答弁ができない苦しい立場にあることがわからぬわけではありません。しかし、そういうわずかなそれぞれの関係における苦しい立場に私どもは同情して、あなたの答弁を求めないで引っ込むわけには参らぬ。議会に対する政府の責任というものは、いつでも明確にされる義務があるのです。あなたがその義務を回避されるならば、何をかいわんやであります。別な方法でその責任を述及する以外に方法はないのです。どうですか。これでも御答弁なさらないですか。もう一度伺います。
  82. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 先刻の答弁によって御了解を願います。
  83. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 先刻の答弁によって御了解を願いますという答弁であります。
  84. 井堀繁雄

    ○井堀委員 総理にもう一度お尋ねいたします。私があなたにお尋ねしておりますのは、責任の所在を三つの角度からお尋ねをしたのです。第一の点については、あなたから御答弁をいただきましたから、いい悪いは別として、一つ答弁になると思う。第二の問題については、あなたと私との見解がまるきり違ったものになっております。それは、この法、案が、あなたの方としては完全なものとはもちろん言い切れないのでありましょうけれども法案の面目を維持しておるから責任をとらぬと言っておりますから、これは世論がきめてくれることだと思うのです。しかし、第三の、議会に対する政府の責任をお答えにならぬという法はないでしょう。私のお尋ねすることが間違っておれば、それを否認なさったらいいでしょう。どちらか御答弁なさる義務があるでしょう。
  85. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は、先刻、あなたの質問に対し、議会の混乱については政府は責任はとれない、こう申したのであります。
  86. 井堀繁雄

    ○井堀委員 私はあなたに議会の混乱の責任をとれと言っておるのではありません。これは、議長みずからが、その責任を感じられて、与野党の間をあっせんされておるという事実は、決して名誉なことではありません。しかし、議会としては、秩序を維持するために手続をとり、それが曲りなりにも進行しておることは間違いないのであります。そのことで私はあなたに責任を聞いておるのじゃない。私があなたに責任を聞いてきたことは、こういう法案を出して、その法案——与党ですよ。あなたが総裁している政党ですよ。その党からかくのごとき大幅な修正が行われたという事実は、政府に対する——国会、がこの法案審議をめぐって混乱を来たしたその混乱の原因がこの法案にあることはよもや否定なさいますまい。それをあなたは否認なさいますか。
  87. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 その点についても私は答弁をしてあるつもりであります。すなわち、小選挙区制原則は維持されておるし、選挙区割りについては慎重に審議をする方がいい、こう思いますので、それで慎重審議についての方法が書いてある修正案に同意をしたのであります、この同意したということは政府の責任とは考えません、こうお答えをしておるのであります。
  88. 井堀繁雄

    ○井堀委員 多少明らかになってきたが、それでは私のお尋ねすることに対する答えにはなりませんから、もう一度明らかにしておきます。政府提案されました法案が、あなたのおっしゃられる通りに小選挙区という本質は失っていないから、こういう点にあなたの主張があるようでありますから、それは世論批判に待つといたしましょう。しかし修正に応じたことは間違いがないのです。修正に応ずることは反対ですか。これを一つ伺っておきます。
  89. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 修正について両院が再審議することについては異存はないのであります。
  90. 井堀繁雄

    ○井堀委員 私のお尋ねしておりますのは、与党が最初の案を引っ込めて今回また出しました案、今出ておってこの委員会で説明が行われておる案については、総理大臣は御存じないことはない。この修正案に対しては、太田長官は予算の裏打ちを必要とする手続について同意を与えておりますから、これは間違いないと思うのであります。総理はこれを否定されるわけはないと思う。この点、次の質問をいたしますために必要ですから、お答えいただきたい。
  91. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 修正をされることはやむを得ないと考えております。
  92. 井堀繁雄

    ○井堀委員 あなたは非宿に往生ぎわが悪い。やむを得るとか得ぬとかいうことでなくて、与党から——あなたは総裁じゃないですか。あなたに相談せずに出すはずがない。そういうことは明確にされる必要、があると思う。それも答えられる自信がないようでありますから、伺いません。しかし、太田長官によって明らかにされておりますから、修正認められておるのであります。この修正案は、さっきも申し上げたように、この国会では、参議院にいきましても——衆議院では、委員会で約束がありますから、今明日のうちにわれわれは修正案に対する質疑、討論を終って本会議に上程できるようにという議長の申し出に対して、われわれも協力申し上げる意思を表明しているわけであります。しかし、この法案については政府も同意を与えて提案されておるということを、われわれは非公式ながら伺っておるわけであります。これを公式的にはっきりいたさなければ、今後これを審議する上に非常な間違いを起してはなりませんから、責任ある総理大臣から明確な御答弁を聞きたい、こう言っておる。それが明確な御答弁ができないのですか。
  93. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 わが党から提出せられたる修正案の趣旨には賛成であります。
  94. 井堀繁雄

    ○井堀委員 そこで、これに賛成をなさっておるのでありますから、この法案は、私がさっきあなたに説明いたしましたように、ここで衆議院を通過いたしまして、よしまた参議院がこの原案通りに通過いたしましても、区画割りが次の常会において確立いたさなければ、法律としての効力は完全な姿において発効しないことは御存じでしょう。
  95. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 その通りです。
  96. 井堀繁雄

    ○井堀委員 それを御存じでありますと、政府は、提案理由の説明にもありまするように、ぜひこの国会でこの法案を通したい、それは政局の安定を急ぐからだ、政党政治の確立が非常に喫緊の要務であるからということで、他の法案審議に先だってこの法案審議をしてくれということをたびたび申し出て、また、委員長も議長もこの意を受けて、他の委員会に臨む委員の諸君が、この委員会のために多くの時間を割愛して、長時間にわたって長期間この問題を審議してきたことを、よも否定なさいますまい。この汗案が成立しなければ、それは全く無意味になるじゃありませんか。またそのために混乱が起きたということは、それは議会が勝手にやったのだとあなたはおっしゃるかもしれませんが、そういう事態が発生するような原因をまいたことは、以上で明らかであります。こういう問題に対して、政府が議会に対していささかも責任を感じないということは、おそるべきことなんだ。どういう責任をとるかということは、おのずからあなたの御都合もありましょう。責任を感じないということは一体どういうことです。もう一度この点に対するはっきりした御答弁を伺いたい。
  97. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私の先刻申しましたのは、議会の混乱については責任をとるわけにはいかない、こう申したのであります。
  98. 井堀繁雄

    ○井堀委員 国会の混乱のその事態に対する責任の追及を私はあなたにはしておらぬ。国会を混乱させた原因はこの法案にあったことは間違いないでしょう。それから、法案審議のために長時間を費し、その結果が国会の延長という重大な事態を招来したことは間違いないじゃないですか。こういう結果に対する政府の責任があります。その責任をとらぬというならとらぬと言いなさい。
  99. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 これについてはたびたび答弁をいたしましたから、前回の答弁によって御了承を願います。(「しておらぬじゃないか」と呼び、その他発言する者あり)しております。
  100. 井堀繁雄

    ○井堀委員 あなたが大事の答弁をことさらに回避されようとしている態度は、まことに遺憾千万であります。議会に対する政府の責任をみずから否定するおそるべき行為だと思う。議会政治は、あなたはどうお考えになるか問題なのです。鳩山総理がかかる問題に対しまして答弁をことさらに忌避され、ことに、その答弁が、議会の混乱に対する責任をとらないという答弁は、的はずれの答弁でありまして、議会の秩序については、議長の責任において、すでにその善処が行われておるのでありまして、そういうことを私はあなたに伺っておるのではありません。それは、われわれ議員の良識に基いて、あるいは議長のあっせん等によって、われわれは、最大の努力をしておるところでありますから、これはあなたに何も答弁を求める必要はありません。これは議会がみずから国民の前に責任を明らかにすればいいのであります。私のあなたにお尋ねしておるのは、こういう法案を上程したためにこういう事態が発生したということは、あなたはよもや否定できぬじゃないか。しかも、その法案が、あなたの方の与党から、全く骨抜きにするというよりは、分断して、本質を全く失なうような——この議会で成立しないじゃないですか。次の議会でも成立するかしないかは全く別の問題じゃありませんか。そういうような修正案です。それでも政府は責任をとらぬというなら、とらぬということだけでけっこうでありますから、それだけ御答弁をいただきたい。私は、この問題についての質問は、他の方法で伺うことにいたしたいと思います。はっきり答弁していただきたい。
  101. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 同じ質問でございますから、答弁はさきの答弁によって御了承を願います。
  102. 井堀繁雄

    ○井堀委員 私は、かかる重大な事柄に対する答弁を避けられるということは、まことに遺憾千万に思います。この問題はいずれまた時間をかして明らかに答弁をいただく機会を作りたいと思います。一応、時間の関係もありますから、これをもって私の質問を留保いたします。
  103. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 この際暫時休憩いたします。     午後零時二十四分休憩      ————◇—————     午後二時一分開議
  104. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。   質疑を継続いたします。滝井義高君。
  105. 滝井義高

    滝井委員 まず政府案の方から残りを少し質問しておきたいのですが、それは土曜日にいろいろお尋ねしておった、その続きをやりたいのです。  まず二百一条の五なんでございますが、これの三に「政策の普及宣伝及び演説の告知のための自動車又は船舶の使用については、」こういうことがございます。この自動車を用いて政策の普及宣伝ということは、具体的には一体どういうことなのか、どういうことを自動車を用いて具体的にするのか、これをまず御説明願いたいと思います。
  106. 皆川迪夫

    ○皆川政府委員 二百一条の五に書いてありますただいま御指摘の点につきましては、従来と同じ規定でございまして、自動車を使っていろいろな演説をして歩く、こういうことを大体さしておるものと考えております。
  107. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、自動車を使っていろいろ演説をするということになると、それは政談演説あるいは街頭政談演説だと思うのです。なぜ「政策の普及宣伝」というような違った言葉をここに用いなければならぬのかということです。しかも、その次には、「及び演説の告知」と、こう演説ということがあるのです。従って、演説ということの中には政策の普及宣伝も入っておるはずです。しかも、その前には、同時に二百一条の五の一号、二号には政談演説会とか街頭政談演説、こういうような項目がはっきり出ておるわけです。だから、用語が違うからには、その用い方が何か違わなければ、政策の普及宣伝なんという言葉はここに出てこないはずです。この相違が私にはわかりかねるので、政策の普及宣伝と街頭政談演説、あるいは政談演説、それから演説の告知、こういうものがどういう工合に具体的に違うのか、自動車を用いる場合には、それがどういう工合に用いられ方が違うのかを、もっと具体的に御説明願わぬと、これはおかしいのです。
  108. 皆川迪夫

    ○皆川政府委員 二百一条の五、従来の規定には「並びに宣伝告知のための自動車の使用」こういうふうに相なっておったわけでございます。この宣伝告知という言葉を、政党の政治活動に関する規定でありますので、「政策の普及宣伝」、こういうようにはっきりさせたという趣旨でございます。
  109. 滝井義高

    滝井委員 どうも、政策の普及宣伝、こう字をただ変えたといっても、その前には政談演説会とか街頭演説というのがあるのですから、これもやっぱり政策の普及宣伝なんですね。少くとも、二百一条の十三で、自助車を用いて、政党は、これは政談演説会場、街頭演説をやっておるところ、そこでは連呼はできるわけですね。そのほかのところでは連呼できないのですよ。それから同時に、今度の百四十三条では、自動車の横腹に、選挙の種類とか候補者個人ならば氏名を書くことはできるでしょうが、政党ならば、その政党名を書くくらいで、自動車は用いることはできないはずなんです。そうすると、自動車の使用というものは、これは街頭演説をとまっているところでやるか、政談演説を会場でやるか、それ以外にはないはずなんです。そうしますと、ここは何も政策の普及宣伝というようなことでなくて、政談演説、これでいいわけなんです。わざわざ違った文句を自動車の使用について入れたからには、何かそこに政談演説や街頭演説と違った意義がなければ、法律としてそんな二通りも三通りも違った文句を書く必要がないと思うのです。政策の普及宣伝ということについて政党が政治活動をやって自動車を用いる場合には、何かそこに違った意義が見出されなければならない。その違った意義がどこにあるかということなんです。
  110. 皆川迪夫

    ○皆川政府委員 これは、この前の改正で、「宣伝告知のための自動車」という言葉を、現行法において「政策の普及宣伝及び演説の告知のため」、こういうふうに読みかえたわけでありまして、その現行法の規定を今度の改正案では第三号に、その回数などを変えて書いたわけであります。その趣旨は、先ほど私が申しましたように、宣伝告知ということは、政党の政治活動ということになれば、政策の普及宣伝ということがその内容になるということで、こういう規定がされたものと考えております。
  111. 滝井義高

    滝井委員 では、前の二五一条の五の一号、二号の政談演説会、街頭政談演説、これ以外に政策の普及宣伝の方法がありますか、自動車を用いる場合ですよ。
  112. 皆川迪夫

    ○皆川政府委員 改正案の第六号に「前号の規定によるポスターを除く外、政談演説会の開催中その会場において使用し、又は第三号の自動車若しくは船舶に取り付けて使用する縦二百七十三センチメートル、横七十三センチメートル以内のポスターの類」という規定が入っているわけでございまして、自動車にポスターを取りつけて宣伝をする、行進をするということが、一種の政策の普及宣伝になるわけでございます。
  113. 滝井義高

    滝井委員 だから私は先ほどからそういう点を指摘しておる。自動車の横っ腹に取りつけてやる、こういうこと以外には何もないわけですね。これは、何もそこにそういうことを書かなくても、六号や百四十三条ではっきりわかってきているわけでしょう。それをここに取り立てて「政策の普及宣伝」、こういうことになれば、どうもたったそれだけのことでやるということであるならば、わざわざそういう字句を用いて自動車の使用の要件にしなければならぬという意義というものは、どうもはっきりしないですね。これは街頭演説やら、会場内の演説の方がはっきりしてくるのです。わざわざ違った文句をここに持ってくると、何か政策の普及宣伝のために特に自動車を使用してできるような具体的な方法があるような感じが、この条文だけを見ると、するのですよ。というのは、前に街頭演説会とか政談演説会というものが出ていなければいいのです。出ているのですよ。同じ条文の中の一号、二号に出て、そうして今度三号に、自動車を使用する場合の「政策の普及宣伝」というものが新しく出て、しかもその次には「演説の告知」というものがまた別に出てきているのですよ。何かもっと具体的にそこらが解明されないと、横っ腹につけていくというだけでは——それも政策の普及宣伝の一つではあります。しかし、たったその一つのために、こういう大げさなことをやらなければならなかったかどうか、もうちょっと具体的な説明はないですか。それだけですか。
  114. 皆川迪夫

    ○皆川政府委員 これは現行法にそうなっておりますのをそのまま採用したわけでございまして、取り立てて他意——別に考えているわけではございません。
  115. 滝井義高

    滝井委員 現行法でもそういう点はやはり同じなんですね。はっきりしないのです。現行法をそのまま持ってきたというけれども、現行法そのものが、どうもそういう点でははっきりしない点があるということなんですね。だから、万人が理解し了解をして選挙活動に入らなければならないその条文の中に、こういうある場合においては政談演説と書き、ある場合には政策の普及宣伝と書くということはいけないと思う。やはり何かそこに思想統一をした条文を書いておかないと、読む人によって——われわれ国会議員でも、これはさて具体的にはどういう方法があるだろうかとだんだん繰ってみると、結局自動車の横っ腹にポスターみたいなものを張る以外に何もないのです。それは候補者でもできることなんですね。候補者でも横っ腹へ張っていく。ところが、それは政策の普及宣伝にどれほど役立つかというと、これは見るか見ないかわからぬですから、街頭演説とか政談演説というほどには役に立たないのです。だから、そういう点は、やはり今までの法律にあったから機械的に持ってきましたということではなくて、もう少し筋の通ったものにする必要があるということだけは指摘をしておきましょう。  そこで、その次は、今後この法律成立するかどうかわかりませんが、成立した場合に重要な役割を演ずるであろう区割りの基準について質問を申し上げたいと思うのです。そこで、その区割りの基準に入る前に、もうちょっと基本的な点について、これは太田長官の御説明を得たいのでございますが、今度政府が出しましたこの公職選挙法の一部改正の重点というものは、小選挙区を採用するということと、少くとも政党の地位をある程度確立するということが改正の第一点であるし、第二点は、衆議院選挙だけに限った、こういう趣旨でございました。そこで、この選挙制度調査会答申案を見ると、非常に広範な答申をいたしました。ところが、それはある程度時間的な余裕がなかったということで、政府は、特に連座制や政党法というようなものは次の機会に延ばすのだということで、きわめて範囲を小さくして改正をしたのです。と同時に、この選挙の実態を見てみると、衆議院選挙の実態というものは、同時に参議院やあるいは地方議会の長あるいは議会議員の選挙とも非常に密接不可分の関係にあるということなんです。と同時に、それらの各種の選挙というものは、公職選挙法という一体法律の中にこれが規定をせられておるという、こういう観点から考えてみますと、衆議院選挙に限ったということは、やはりこれは、たびたびここでも問題になりましたように、一事不再議の問題——すでにこの参議院の通常選挙を目的として三月十四日に法律成立をしておるという事態があったということば、政府も御説明になりました。従って、そういう観点と時間的余裕がなかったということで、とりあえず政党を確立し、小選挙区を限度として、同時に衆議院選挙にだけ限った、こういうことなんです。そうしますと、今度はこの法律というものは時間的な余裕が出てきたわけなんでございます。当然、これは、この法律が今度の国会成立をいたしまして、いよいよその法律に基いて次の通常国会に具体的に区割り案等を作るまでには、時間的な余裕が出てきたわけですが、そうしますと、政府は、次の通常国会には——ここは大事なところなんですが、通常国会には、単に衆議院選挙に関連する小選挙区制の問題だけではなくして、当然これは公職選挙法一般の改正と、それからすでにわれわれ大臣から御言明を得ましたところの附帯訴訟やら、あるいは政党法というようなものが一体となって出てこなければならぬと思うのです。同時にまた、地方議会の選挙区の問題等は、先日青木委員から大臣に質問いたしましたところ、それは選挙制度調査会等の諮問を得て検討したいというような御答弁もありました。当然これはそのように、衆議院選挙に関する改正ばかりでなく、公職選挙法のこの法律の性質の上から考えても、一体的に今度の通常国会には、できるだけ、早い機会にということ、次の通常国会、までという御言明がありましたから、全般が出る、こういう御言明がいただけると思いますが、そういう理解で差しつかえございませんか。
  116. 太田正孝

    太田国務大臣 私の考え方につきましてはお言葉通りでございます。参議院蔵員の選挙制度につきましても問題がだいぶあるようでありますから、これを改めるのがいいじゃないか。あるいは地方選挙につきましても考えねばならぬことがあるのじゃないか。しかし、そうぼんやりと申し上げても、これが実際になるのには、政府の一存でなく、選挙制度調査会にかけようと思っておりますので、一体としての法律案ができるようになるかは、私は今言明できないのでございます。ただし、連座制の問題につきましては次の機会にやりたい私自身が言明した通りでございますから、これは別の法律として出すことになろうと思います。筋を申しますれば、衆議院議員選挙法というものは、一つの大きな形にしてやるのがけっこうでありましょうけれども、今回はそれができなかったのでございます。今の参議院の問題及び地方選挙の問題、一体として公職選挙法を次の国会に出すかということにつきましては、選挙制度調査会の意見等もございますので、これから先のことでございますから、必ずそれを一体として出すということの言明は、ただいまのところできないのでございます。あしからず御了承願います。
  117. 滝井義高

    滝井委員 どうも選挙制度調査会に隠れたようでございますが、やはり内閣の意向というものが大きく選挙制度調査会に以心伝心伝わることは当然です、なぜならば、選挙制度調査会というものは内閣の諮問機関だからなのです。これは、吉田内閣の当時に調査会が諮問を受けたときには、割合問題なくまとまりました。あれは多分三カ月くらいでまとまったと思いますが、今回は、十カ月以上かけて、最後には採決その他で混乱したのを見ても、やはり政府の考えている政策というものは、明らかに、われわれの党から見れば、憲法を改正するとかあるいは保守永久政権を確立するのじゃないかというような疑いと、そういう政治情勢が出てきておったところに、実はこういうものがあるわけなのです。だから、内閣の意向が次の通庁国会までにやるのだということになれば、それは当然そうなるのです。しかも、今回あなた方が衆議院選挙だけに限ったということは、明らかに時間的余裕がなかった、一事不再議の問題があった、こういう御説明以外にはないのです。だからこれは当然そういうものがなくなっちゃったのです。そして、次の通常国会ということになれば、来年の一月一日に出したとしても七、八カ月あるわけなのですから、当然間に合わないことはないのです。六カ月かかっても、調査会はもう基礎的なことは答申しているのですから、調査会の意向がどうなるかわからないが、政府の意向はわかるはずなのです。政府としては当然公職選挙法一体として改正するかどうか、その気持が当然出てこなければならぬと思うのですが、政府はそういう方針であるかどうか、これを一つお聞きしたいと思うのです。
  118. 太田正孝

    太田国務大臣 先ほど一言言い落したのでございますが、地方議会については地方制度調査会の方も諮問しなければできません。選挙制度調査会及び地方制度調査会——もちろん制度を変えるにつきましては慎重でなければなりませんが、同時にできれば早いほどけっこうだと思います。参議院の選挙は今回やってもう二年あとになっておりますが、とにかくそのことは別といたしまして、政府としては早く意見を聞き、なるべく早くいたしたい意向でございます。
  119. 滝井義高

    滝井委員 衆議院だけに限って公職選挙法をやるということは、公職選挙法の法典自体の一体性の関係からも、非常にまずいことになるのです。半年以上の歳月があれば、政府がこの小選挙区を実施しようというあの熱意を今度公職選挙法改正に注げば、これ何ぞ半年を待たんやですよ。次の通常国会の冒頭には公職選挙法改正が出せると私は思うのです。こんなことを野党の私が言うのはおかしいのですが、その方がかえって世間通りもいいし、あなた方の一人一選挙区の原則を貫くためにも非常にいいのじゃないかと私は思うのですが、どうですか。太田長官一つここであなたの——歴史に残るのですから、次の通常国会までにはやるという御言明はできませんか。
  120. 太田正孝

    太田国務大臣 ただいま出ている法案を処理して、皆様方の御賛成を得たいという一念でございますので、まずこの法案が通ってからのことにいたしたいと存じます。
  121. 滝井義高

    滝井委員 そういうことでございますればぜひもありません。努力だけはして下さることをお願いいたしておきましょう。  法律はそのくらいにしておきまして、次に基準の問題を少しお尋ねしたいのです。基準はいずれ修正案とも関係をし、今後公職選挙法の一部を改正するための画竜の点睛となるその眼となる点でございますから、これを少しくお尋ねしたいと思うのですが、まず第一に、基準というものはきわめて科学的な根拠に基かなければならぬことは当然でございます。この基準がどういう工合にできるかということによって、そのできてくる成案というものが、ゲリマンダーになりあるいはまたきわめて科学的なものになると思うのです。従って、区割り案を作るときには、私はまず基準というものがえりをただした形で作られなければならぬと思うのです。そこで、基準を作るためには、ます。議員の定数が問題になって参ります。今度の修正案を見ても、四百九十七人以内というようにきわめてぼやけた形になっております。ところが、選挙制度調査会答申というものは、四百九十七とぴちっと割り切って出てきたのです。それでこの四百九十七という算定の基礎というものを一体どういう工合にきめていくかということなのです。これはいろいろのきめ方があります。今回四百九十七ときめたものを見てみますと、私はそこに筋の通った納得のできる科学的な根拠というものがきわめて薄弱ね感じがしてくるのです。あの四百九十七というものは、多分、現在の四百六十六、奄美大島は特別区でありますが、一つあるから四百六十七になるかと思いますが、四百六十六というものを人口で按分をして、そうして現在の定員より少くなるところはそのまま現在の定員にしておく、多くなったところは今度は多いままのものをとっていく、こういう形になっておる。従って、各県の配分をしたときの人口のバランスというものが必ずしもとれないということは、すでに政府案を最終的に——調査会案でもそうですが、作った場合には、青森と佐賀には一名ずつを配当しなければならぬという矛盾も出てきておる。その矛盾はさらにほかの県にも及んでおるわけなのです。この四百九十七は将来改正案を作るときにもつきまとってくる数字なのですね。それで、心を平らかにして、四百九十七、が果して妥当であったかどうかという反省には、今が一番いい機会だと思うのですが、政府は、四百九十七というあれが科学的で、あの算定の仕方が今後もなお採用しても間違いないという算定の方法であったとお思いになりますか。この点まずお聞きしておきたいのです。
  122. 太田正孝

    太田国務大臣 修正案の意向につきましては、党の修正のお方からお言葉があろうと思いますが、四百九十七人というのは答申案政府案と同じでございます。また緑風会の案及び小選挙区促進会の案もあの範囲以下になっておりますので、多分、党の方の修正も、多少のゆとりもほしいという意味であろうかとも思いますが、四百九十七人以内とされたことと思います。私どもがこの数字を確定するまでの経過は、今おっしゃいました通りの経過でございまして、人口で按分して、それから今まで少くも五回にわたっての選挙がありましたので、その選挙の結果も尊重しつつ、減ったところはふやしていく。そうしたところが、選挙制度調査会におきましての議論がございまして、あまりにもはなはなだしい青森と佐賀だけを一名加えたのでございます。この二名以外にふやすという問題もございましたが、人口の点及びふぞろいの点を直すのは、この両方の点にわたりまして二県だけを引き上げたので、その以外には及ばぬという考えを持ちましたから、四百九十七人が今でも至当じゃないか、けれども、自由民主党の修正案のごときにする場合においては、最小限度だけを考えられて、その以外においてどういうようにするかということまで考えられぬでいいじゃないか、こういう意味で以内という字が加わったのじゃないか、政府としては、今までどう考えてもこの辺が落ちつきだ、答申案もそうでございますし、政府案も全く同じでございますし、とった順序も、人口の点、過去の選挙の結果アンバランスをここで補っていく、これも当然やるべきことじゃなかろうか、そうしたところが、人口の点とアンバランスの点と、なお出てきた二県だけはここへ加えようというのでございますから、考え方としては四百九十七人になるんじゃないかと思います。これは、しかし、今政府案についての私の立場からそう考えております。以上にふやそうということはもちろん考えておりません。
  123. 井堀繁雄

    ○井堀委員 関連。今、議員定数の問題が出ておりますが、これはこの前もちょっとあなたにお尋ねしたと思いますが、市町村の地方議会の議員の定数は極力減ずるようにという方針のように見受けられるのでありますけれども、市町村併合の目的の一つには、やはり経費の節約——あるいは交通機関等非常に文化的なあらゆる機関の発達に伴って、いろいろな制約が他動的に行われてくるという事情等からの問題もありますけれども、経費の節約といったような問題が、議員の定数を制約するという方向にかなり大きな拍車をかけていると思うのです。この関係と、今度議員定数が三十人ふえるわけですが、三十人ふえる問題については、しばしばあなたの方の御答弁は、人口の自然増に伴うという点が主なる答弁のように聞いてきたのです。それから、人口の自然増という問題は、地方の議会の場合も同様に考えることが常識だと思うんです。地方議会においては人口の自然増についての考慮を払わないで、国会議員だけそうしなければならぬという理由がどこにあるか。こういう点に対する何か特別な理由があれば、この際ちょっと聞いておきたいと思います。
  124. 太田正孝

    太田国務大臣 地方議会につきましては、この前申し上げたかと思いますが考え方として、衆議員の選挙の場合と違っておる。衆議院議員選挙というものは、少くも内閣を作るという大きな使命を持っておりますが、地方議会にはそのことはない。数を片一方はふやして地方議会はなぜふやさぬか、もしくは減ってるじゃないか、財政上の理由じゃないか、こういう御質問かと思います。地方議会につきましては、合併によりまして、相当自然と申しますか、自治体自体が減らしているのもございます。これは政府の方でどうこうしたわけではございません。それから、人口の増加につれまして相当動くような制度にもなっております。それから、実際におきまして、終戦後における地方議会の数というものは、大は東京都から小は何々村というところまできまっておりまして、大へんなという言葉は悪うございますが、町村の小さいところまで相当の人員がございますので、そんな点を考えて地方で自治的に直していく。こっちが命令するというような考えは持っておりません。むろんそれによって経費が縮まるという場合に、この地方財政の助けになることは申し上げるまでもありませんが、政府の方でどうこうという考えは持っておりませんです。
  125. 井堀繁雄

    ○井堀委員 私のお尋ねいたしたいのは経費の問題だけではないのでありますが、今あなたの御答弁の中で非常に重要視されるのは、国会と地方自治体とのウエートの問題です。今日の国会の使命が非常に重大なものであることは申すまでもないことでありますが、私どもの考えでは、民主政治、議会政治をよいものにするためには、やはり地方自治の完成、地方自治における訓練が中央以上に成長してくるということが、民主政治の基礎的条件でなければならぬじゃないか。そういう意味で、日本の客観的ないろいろな条件から判断して、地方自治の完成といいますか、育成といいますか、こういうものに力を注ぐべきである。そういう点では、むしろ地方議会の方が——議員の数の問題に限ったわけじゃありませんが、議会活動というものに対してはもっと積極的な必要性があるのではないか。国会は必ずしも人口に正比例することが国民の意思を正しく中央に反映するものだと——数学的にはそうなるであろうと思いますが、国民の意思の把握の仕方が、むしろ数に比例するよりは重要ではないか。すなわち代議制の正常な運営の方が高く買わるべきだ。ことに私は、三十人ふえることによってどのくらいの世用か園庭の場合に増大するかというような問題を、一応調べてみたのでございますが、なかなかばかにならぬ莫大な経費を必要とすることになる。私の調べたのはごくずさんなものなんですけれども、直接的な経費だけでも、一人の国会議員をふやすことによって年額二百万円はどうしても下らない。それに間接的なものを入れますと膨大な経費を必要とするわけなんです。こういう関係では、むしろ中央議会においては人口に正比例させるということは大切なことと思いますけれども、それも機械的な正比例がいいか悪いかは議論がたくさんある。ただ人口が自然にふえたということだけでもって三十人の議員を増加する了ということは、経費の点でどのくらいかかるか、あなたの方でお調べになっておれば、その点をお聞かせ願いたい。これはその点では重要視すべきではないか。地方の自治体との関係においては、地方の自治体は漸次減らそうという傾向が現われておる。こういうものとの論理的な矛盾に対して、今までは一向に明らかにされておりません。これは、今度の修正案の中にも「以内」と書いてありますから、どこまで縮めるのかわかりませんけれども、一応目安は立てられるのじゃないかと思うのです。こういう点で今後の審議のためにも必要になると思いますので、そういう点について明らかになっておる点があれば、お答えをいただきたい。
  126. 太田正孝

    太田国務大臣 第一のお尋ねの地方の議会につきましては、ことに民主政治の基盤が地方自治にあることはお示しの通りで、私の常に申しておるところでございます。これこそ民主政治の発展の出発点になるわけでございますから、その点はお言葉通りと思います。  第二の、人口のみによって定員を増加するという考え方については、いろいろ議論がございますが、実際におきまして、大正八年のときに四百六十四人と定めてから、だいぶんな月日を経ております。しかも、大正八年のときには、記憶は間違いないと思いますがたしか八十三人ふやしているのでございます。その内閣におきましても、そういう人口の増加という点を非常に大きく見ておりますが、今回の基準としてふやしました点などから考えますれば、非常な増加ではないと私は思っております。  経費の点については、私今数字を持っておりませんが、お調べしてまた申し上げることができるかと思います。そういう意味におきまして、まずこの程度のことならば、人口の増加に非常に重きを置いたのでもない。しかも大正八年以来ずっと捨てておいた人口の増加に対しまして、このくらいな点は増すべきじゃなかろうか。参議院は、貴族院時代に四百名ありましたのが、二百五十名になっております。その当時に比べますれば衆議院の方は増しておりません。いろいろの点を勘案いたしまして今回の程度のところじゃないか、ただし、それもあまりきちんとするといけないからというのが、修正案の考え方かと思います。これが私の考え方でございます。
  127. 井堀繁雄

    ○井堀委員 今の経費の点について、これは直接経費のことですけれども、歳費は明らかなんです。七万八千円の歳費と、それに通信費の一万円、応召旅費の二千円、滞在費の一日二千円、立法事務費の一万円、秘書の手当が月額二万一千九百円、それから秘書の滞在費が今度出るようになったのですが、その二百円、これだけしか見込んでいないで約二百万、このほかに、一人の議員のために設けられなければならぬいろいろな設備、それからそれに伴う経費、こういうもののできるだけ詳細なものを作って出していただきたいと私は思います。私がこういうことをお尋ねするのはどういう意味かということは、根本的には、私は、議員の定数をいたずらにふやすということには反対の考え方を持っておるのです。もっと人数を減らして、そうして国民の意思を十分反映する道の方に力を入れるべきではないか。数が多いことで、それだけ正確に、算数的に民意が議会に反映するというふうには考えたくない。ことに、さっきもちょっと申し上げましたように、あなたは、大正時代の空間から、今日の人口の増加とそれから定員の増加という点を比較されて説明されておりますが、これは私は大きな理由じゃないと思う。これは、さっき申し上げましたように、交通機関の発達、たとえば、私どもはさきに福岡にまで出張を命ぜられましたが、飛行機を用いれば四時間で飛ぶことができる。これは、大正年間のそれと比較いたしましたら、かなり距離は圧縮され、行動は能率的になっているのですから、そういう時代に比べますと、人口に比例してものを判断するにしても、そういう条件などを政治的に換算してみて、そうして私は定員数などというものを低減されるということが望ましいと思う。私はそこまで調査をいたしておりませんけれども、そういった大正時代の例をおとりになりますならば、その当時と比較して、交通楼門や、あるいは民意を反映する議院の活動半径と申しますか、そういうもの等についてやはり相当裏打ちになる資料をそろえて、そうして三十人増加するというととは、これだけの必要があるといったような説明が望ましいと思う。それは今日私は地方議会に対しても同じことが言えると思うのでありますが、こういう資料ができますならば、あなたの方にはそれに対する便宜がいろいろあろうと思いますから、明日でもけっこうですから、こういう点に対して一つ取りまとめて発表願いたいと思います。そうして修正案に対してわれわれはいろいろな意見を明らかにいたしまして、「以内」ということになっておりますから、どの程度が妥当であるかという線を盛ってみたい、かように考えております。関連質問であまり多く申し上げても何ですが、もう一度繰り返しますけれども、これは経費の上からだけ見ても非常に大きな金額になります。今の日本の苦しい財政の中から見て、そういう経費はできるだけ避けていくべきではないか、そうしてわれわれの努力と勉強によって民意の暢達ができるような道を開拓すべきではないか。そういう点から考えて、これは府県の人口配分をいろいろやっておりますが、そういう点にも関連をしてきますから、こういう点もう少しまとまった資料をお出しいただいて説明してもらう方がよい、こう思いますが、この点に対する長官の所見をお伺いしたい。
  128. 太田正孝

    太田国務大臣 経費の点及び国の財政に及ぼすことは御説明通りと思います。正確な数字が完全にできるかどうかわかりませんが、できるだけのものを資料として作って差し上げたいと思っております。人口の点につきましても、人口のみによっていい議会ができまして、いい選挙ができれば、それはけっこうでございますが、これを腰だめというと行き過ぎかもしれませんが、人口のみによるということもいけないと思います。ただし、大正八年のころとその後の経過を見ますと、普通選挙になった上に婦人参政権の問題が加わりましたので、あの当時、すなわち四百六十四人あったときから比べますと、人口上の点も考えるべき要素が非常にある、私はそう思いまして、三十人程度のものが今度の案に出たようなわけでございます。決して多くすればいいという意味だけじゃございません。少くとも大正八年のときとは事情が非常に違っております。普通選挙というような大きな事件があって、しかも婦人参政権という人口の半分を占める婦人の立場の問題がございますので、そんなことも、実は今まで置いたのがかえっておそかったというような感じも私はいたします。その意味で、人口問題だけでいったわけじゃございませんが、人口も相当考えていい要素じゃないか、かように申し上げたのであります。
  129. 井堀繁雄

    ○井堀委員 それと、もう一つ私は言い落しましたから申し上げるわけです。この人口の問題については、これは大へん重大な問題で論議すべきだったんですが、ちょっとそういう必要をあまり切実に感じなくなってきたので、質問の用意はしておりましたけれども、やめたのですけれども、ここで次に必要なことは、大正八年の場合と非常に違った例として御指摘になりました普通選挙の施行、それから婦人参政権の拡大といったようなものは、もちろん大きなウェートを占める。ただ、その場合に、この選挙法の中でいろいろ改正はされておりますけれども、やはり民心を少数の代表者に正確に把握させるということは、選挙手続の中の重大な事柄だと思うのであります。立会演説が必要である、あるいは大正八年の当時は考えられなかった拡声機をもって短時間に多くの人に候補者の意見を伝える、あるいは日ごろからラジオやテレビその他の文化的な機関を通じて政治的な訓練、教育というものが指導されておる、またそういうものを選挙にどう導入していくかというようなことが、やはり定数と関連して判断されてこなければいかぬのじゃないか。小選挙区をやる場合においては、このことは非常に重大な事柄と私は思いますけれども、これが今度の案の中では非常に軽く扱われておる。この点に対しては、私は十分討議を試みたいと思いまして、いろいろ質問を用意しておったわけでありますが、しかし、大事なことは、政府側の方から、もう少しそういうものに対する相互関係の上で、選挙法にこういう必要がある——ポスターなどに力を入れているようでありますが、ポスターも大事でありますけれども、やはりもっと文化的な機関というものを一つ取り入れて、そうして数とどうからませるかといったような説明があってしかるべきではないか、かように考えておりますので、もう政府案審議する勇気を失った今日、われわれは修正案に対する審議を続けますために一応必要だと思いますから、ここら辺についても勘案をしてできれば明日出していただければ明日の審議に役立つと思いますので、できるだけ具体的な資料を提供していただきたいと思います。  これで私の質問を終ります。
  130. 太田正孝

    太田国務大臣 交通、通信機関の発達ということはお言葉通りでございまして、選挙制度を考える場合におきましては十分注意すべきことと思います。ただいまの資料はでき得る限りにおきまして作る考えでおります。
  131. 滝井義高

    滝井委員 ただいま四百九十七人が適当なところだという御説明でございましたが、しかし、これは人口の多い県が人口の少い県よりか議員定数が少いという矛盾をはらんでいることは、これは払拭できない矛盾なんです。従って、私は、この機会に、やはり大臣も事務当局も反省をしていただいて、何かここに科学的な根拠を明確に与える必要があると実は思うから言うわけなんです。もちろん今の経費のマイナスの面——議員定数がふえて経費がふえる、その経費のマイナスの面を国政上でプラスにするということは非常に大きな問題ですが、それを論ずる前に、やはりこれは科学的な根拠があってふやさなければならぬという筋の通ったものであるならば、これはいかに文化が進んでもふやさなければならぬと思う。しかし、はっきりと人口の多い県が少い県よりか議員定数が少いというこの矛盾を持っている限りにおいては、これは矛盾であることには間違いないことでありますから、これを何らかの形で克服することができれば、これを克服する方法を発見して参らなければならぬと思う。もちろん現行の府県別の配当数を現状のまま一応認めておいて、そうして人口が増加したところだけを人口比例でふやしていく、こういうことになれば、これは相当の数、何かもう八十名くらいふやさなければならぬという話も聞いたのですが、そういう矛盾も出てくることになるわけなんです。ここらあたりを何かもっと自治庁自身が考えたいい案がなかったかどうかということなんですが、これはやはり、この前の福岡の公聴会でもありました通り、長崎県の西岡知事は、岡山県と長崎県を比べて、人口が多い長崎県の方が定数が少いということになれば、それはわれわれは知事としては納得ができないということを、現実におっしゃっているわけなんです。こういうごたごたしているから、西岡さんは、自民党の党員ですから、遠慮して言うてこなかったと思うのですが、そうおっしゃっているわけです。これは何らかの形で、四百九十七が妥当だとそう安直に認められずに、こういうもめたあとなんですから、できるだけ科学的に——ここがかなめになってくるのです。ここから問題が発生してくるのですから、これを科学的にまずどういうふうに定数をきめていくかということが、私は第一であると思うのです。もっと大臣、あっさり四百九十七名でいいと認められずに、大臣が知恵がなければ、うしろに次長もおりますし、早川さんもおりますが、この際大臣を助けて、何かいい知恵がありませんか。
  132. 太田正孝

    太田国務大臣 実は、私、率直に申しますと、府県の囲いというものが、非常に人口上の問題に開進してくるのでございます。北海道からずっと人数だけで切って、どこで切ってもいいということになれば、非常に簡単にできるわけでございますが、そうもいきません。この府県の境という関係が起って参りますので、その府県内における公平ということも考えなければならず、他の府県との振り合いも考えなければならぬ。そこで起ったのが青森と佐賀の問題でございました。このときは、二つの条件で、一方では人口の上で見よう、もう一つは他の府県との割合で選んでいこう、この一つしかないのでございます。そこで、これは、たしか社会党委員の方の御指摘でございまして、ごもっともと思いましてあの二名を加えたわけで、その以外の点は、人口の按分と、五回にわたっての選挙という事実を重く見まして、減らしてはいかぬという考えから出たのでございます。過去のずっとしたところから見ると、たとえば、福井県のごときは、ずっと前の昭和九年の選挙のときと比べて、定員が減っております。だから、こういう点、ふやしてはどうかという議論もございましたが、そこまではいかなかったのでございます。経過はかような意味でございまして、青森、佐賀というものは、全くこれは調査会の案が不足であるということを調査会自身が認められまして、社会党の方の御指摘通り、あれはふやしたわけでございます。ふやしただけを言うと変に聞えますが、何もそういう意味でなく、端的に正しいことと思いまして、私どももこれは賛成したわけでございます。全体といたしまして……。ほかの方からありますならば申し上げます。
  133. 滝井義高

    滝井委員 四百九十七の算定の根拠については、どうも科学的にわれわれもなかなか納得しかねる。これはおそらく納得しかねるもので、この四百九十七人以内でやれといっても、新しくできる七人委員会の方も——七人委員会と今後言いますが、それもなかなかやはり問題だと思うのです。そこで、私は、その問題になっておる四百九十七から、さらにもう少し今度は矛盾指摘してみたいと思うのですが、四百九十七、こうなりまして、今度は議員一人当りの全国の平均人口が十七万九千六百二十八人、こういう工合になったわけなんです。そこで、この十七万九千六百二十八人を基礎にして、この議員の配分を各府県にやることになるわけなんです。そこで、この配分の仕方についてでございます。これは、調査会案は、府県単位に配分をするときにおいては、現行の定数を大体保障をしながら配分をしておると思うのです。同時に、今度は、それをさらにもう一つ選挙区別に、現在の選挙区に配分していかなければならぬことになるわけです。その場合に、旧交会案では、現行の選挙区に配分するときに、これは現行の選挙区の定数は無視してやっていっておる。ところが、政府案では、そうではなくて、現行の選挙区に配分するときに、それを尊重しておるのです。こういうところから、やはりどういう方針でいくかということをきめておかぬと、そこにまたゲリマンダーができてくるのです。四百九十七というものに一つ矛盾を含んでおった。ところが、今度は、それが各府県に割り当てられ、人口十七万九千六百二十八人で割り当てられていくのですから、これが人口通りにぴしっと割り当てられていけばいいのだが、そうはいかなかったのです。その矛盾が、さらに今度は各選挙区に割り当てられるときに、何かそこに基準がないと、拡大をされていくのです。ゲリマンダーができるのです。だから、調査会のとった方針と政府のとった方針とが違っておる。なぜ違わなければならなかったということなんです。まずその違わなければならなかった理由を聞いてから、次の質問に入りたい。
  134. 早川崇

    ○早川政府委員 お答えいたします。選挙制度調査会案と政府案との違いという点でございますが、府県の定員に関する限りはほとんど違っておりません。ただ、現選挙区という場合に、調査会におきましては混合区というものがかなりできておりまして、われわれ政府案は、その策定に当りまして、全部とは申しませんが、現選挙区同士の混合区はなるべく避ける、こういう方針を入れましたので、その点におきましては井手の食い違いができたのでございます。
  135. 滝井義高

    滝井委員 ただ、調査会案が混合区があって、政府の方は混合区をできるだけ避ける、こういうことだけの違いないんですか。そのために、現行選挙区に分ける場合においては、政府案は従って現行選挙区を混合区を避けるためにとった、こういうことだけの理由ですか。
  136. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 現行の選挙区は、選挙制度調査会におきましても、また政府が今回区割りを作成するに当りましても、なるべくこれを尊重する、こういう原則でございまして、人口、地形等、状況やむを得ない場合に限ってこれに対する例外を認める、こういう考え方でございます。従いまして、実際の結果といたしましても、混合された選挙区というものは、あまり違わないと思うのであります。できるだけ現行選挙区を尊重するということに努めていきたいと思います。
  137. 滝井義高

    滝井委員 できるだけ現行選挙区を尊重するといっても、問題は、やはりそれをずっと今後貫いていくというのが政府の方針になると、こう理解して差しつかえありませんか。これは議論をするとなかなか問題が出てくるので、私は今基準を尋ねておるのです。今後七人委員会がいろいろ案をつくるときに、自治庁なり、政党を代表して自治庁におられる大臣の意向というものは、最終的にはきわめて重要な役割を演ずるのです。それはどうしてかというと、こういうこまかい基準なんというものは、委員方はしろうとなんです。私は、ある程度突っ込んで勉強してきたから、こういうことがわかってくるけれども、ほかの人は、基準なんといったって、どういうものを定めていいか、さっぱりわからない。そういう場合には、自治庁の早川さんなり、次長なり部長、調長の意見というものは、相当そこに尊重せられるのです。だから、これは、速記録であなた方の意向をここにぴしっと出しておきさえすれば、その作られる委員方というものは、なるほど国会ではこういう答弁をされておるではありませんか、だからこの点は考えなければいけない、といってやることになるのです。だから、明らかに現行選挙区に今度はその十七万九千六百二十八人を基礎にして出てきたものを、現行選挙区を重んじていくのか、それとも調査会のように全然重んじないでいくのか、こういうことなんです。これは、今早川さんは混合区とおっしゃったけれども政府案にも混合区はあるのです。三十三くらいあるのです。だから、その点の政府の言明を一つ私は得ておきたい。配分する場合には、現行の選挙区を尊重しながらやっていくのだ、これはふえた分についてはやむを得ない。これについてはあとでまたいろいろ共津を尋ねます。しかし、鈴木さんは今まであなた方がやってきた現行選挙区を尊重していきますとおっしゃったけれども、大臣、それを確認していいですか。
  138. 太田正孝

    太田国務大臣 すべては委員会において修正案通りました場合に御決定になることと思いますが、今次長の言ったような意味におきまして、現行選挙区というものは、やはり尊重していくべき原則だろうと思います。
  139. 滝井義高

    滝井委員 そこで、現行選挙区を尊重して、今後やはり定数を配分していくという、こういうお答えをいただきましたので、そう確認をいたしておきます。  そこで、次に問題になるのは、今回政府が、世にゲリマンダーと言われましたが、とにかくあれだけのものをお作りになったことについては、その努力については私は非常に敬意を表さなければならぬと思うのです。しかも、それを作るについての七つの基準をお作りになった。まず、その原則の第一に、各選挙区の人口は、離島、山間地域等の特殊な事情のある場合を除き、なるべく当該都道府県の議員一人当りの平均人口に近からしめる、こうなっております。今度与党が基準として出しておる中にも、「なるべく」という文句がございます。「なるべく均等になるようにすること。」となっておる。「なるべく」などという文句は、これはその作った人々によってどうにもなる。私はそれが「なるべく」でございました、ということで、自由自在になる言葉である。こういう不確実な言葉は、原則とか基準をきめる場合は、いわば一つの公理的なのですから、あいまいなものではいけない。そこで、平均人口に近からしめるとか、なるべく均等にするとか、こういう幅はやはりここで私たちは論議をしておかなければならぬ。たとえば、今度作った政府案を見ても、壱岐対馬は十一万台、しかも同じ長崎県には二十六万に近い佐世保などがある。二人区がありましたが、二人区でも二十六万から五十万の幅がある。こういうものは近からしめたとは言えない。やはり近からしめるというからには、そこに幅がなければいけない。近いということは、たとえば三万なら三万のワクの中で、その上下だ。こうなりますと、平均人口が十七万なら、十七万プラス・マイナス三万と、こうなるのです。だから二十万から十四万の間ということになる。近からしめるというものについては、ほんとうは法律で書かなければいけない。平均人口十七万プラス・マイナス三万以内で作れというようなことでないと、ゲリマンダーが出てくる。だから、近からしめるということは、一体どういうように政府は考えておるかということです。十万も開きがあるのが近いと言ったら、これは大へんなのです。多分福井県にそういう十万も違うところがあった。そういうことでは困るので、やはり近からしめる幅というものがなければならない。選挙制度調査会は、多分初め四分の一くらいだと私は思っておった。四分の一というと二五%です。二割五分の差なのです。だから、何かそこに近からしめるということについての一つの基準というものが与えられておらなければ、大へんなことになる。近いうちには百万でも近いのだという論が出るでしょう。その点、近からしめるという点について、あなた方は何か考慮したかどうか。なるべく均等ということがありますから、これはあとでまた尋ねますが……。
  140. 太田正孝

    太田国務大臣 基準の中に、今度の御案においても、「なるべく」というところが三カ所あったと思います。しかも、前の七つあげた項目の中にも「なるべく」とあり、さらにそれを総合してというので、またもう一つのワクが入っている。この間作った案の中においては、半分にならぬようにということは考えておりました。ただいま御指摘の十万というものの一番模範的な例は、九州の小倉と門司でございましたが、十万開きがございます。われわれが二人区にしたときの理由は、一番説明のしやすい、どなたにも御納得のいけるのは、これを二つ一緒にして二人区にした方がいいという場合に、こういう場合の二人区を作ったわけであります。これは何も抗弁で言うわけではございません。具体的の事実であります。一番困りますのは、各府県の事情が違っておりますから、ことに五大市を含む府県におきましては、都市が非常に伸びていきまして、そこへ非布な人を持っていく場合を考えますと、判り切ったような意味においてできなくなる。たとえば、兵庫県において、山の中の但馬、丹波はどうするか、こういう問題になりますと、ほんとうに因ったのでございます。でございますから「なるべく」という言葉は廃して、もう少し科学的な、きちんとした、幾何学上の線が引けるようにいけばけっこうでございますが、私の今の知恵では、はっきりと言い切るだけの原則を作ることは非常にむずかしいのじゃないかと思います。結局は今お言葉にありましたようなゲリマンダーにならないように、作案者が天然の状況、人口等の点を考えられてやるという、その英知に待つほかないのじゃないか、かように考えております。
  141. 滝井義高

    滝井委員 まあ七人委員会の英知にまかせる、こうおっしゃいますが、やはりこれはわれわれ自身の選挙区を作ってもらうのですから、これはそこで野党与党お互いに話し合って、近からしめるということは、やはり三万なら三万だ、こういうことにしておけばこれはゲリマンダーができないでしょう。たとえば、これはまず県に平均人口十七万を基礎にして配分しましたが、県と県との差があまりはなはだしいのです。たとえば、福岡県は平均十九万、お隣の佐賀県は十六万、隣同士の県が三万の開きがある。しかも、その開きのあるものが、ほかの選挙区に行った場合には十万になってくる。こういう矛盾というものは、やはりこの近からしめるということさえよくきちっときめておけば、出てこない。それは入口である程度きめて矛盾が出たものは、みんな納得する。そういう点と同時に、もう一つ考えておかなければならぬことは、人口ばかりでなく、これは、イギリスでも、農村の選挙区と都会地の選挙区とは、人口が違ってもよろしいことになっておる。だから、文明の利器が発達したにしても、やはり都会の政策政権の浸透力と農村における浸透力はずいぶん違う。これは、労力においても、交通機関の利用の度合いも違うのですから、労力を使用する面においても違うのです。そういう点の原則を、たとえば都会地と農村の議員一人当りの人口の配当を基準で違えておきさえすれば、問題はなくなってくる。そういう点で、私はもっと考えて、近からしめるというこの幅だけは委員会に与えてやるべきだと思う。これは今どうも大臣や次長においてもはっきりしない。これは、政府案が通っておるならば、これだけでも政府案というものは私は大きな矛盾が出てきておると思う。答弁ははっきりしない。  それから、その次にいま一つただしたいのは、選挙制度調査会の案では、飛び地の選挙区は設けないときちっと断定をしてしまった。ところが、今度政府案によりますと、いわゆる飛び地の選挙区は原則として設けないと、原則を入れてしまった。これは一体何のために原則を入れなければならなかったかということなんです。飛び地というものを設けてはならぬことは、これは常識なんです。調査会はだから飛び地はいけないときちっとやった。ところが、お宅の方は、わざわざそこに飛び地の選挙区は原則として設けないという原則を入れちゃった。これは一体どういうことなんですか。
  142. 太田正孝

    太田国務大臣 これはなかなかめんどうな問題がございまして、答申案の方でも、豊橋のところでございますか、ぐっと向うの渥美半島のところで、やはり飛び地ができたのでございます。そんなことがありましたので、そういうようにいたしたのでございまして、別に故意に何したわけではございません。答申案の方にもそういうところが起ったのでございます。
  143. 滝井義高

    滝井委員 答申案の方はきわめて少かったと思うのですが、まあこれは死児のよわいを数えるわけではございませんが、参考のために聞いておきたいのですが、政府の四百七十七区の中に、飛び地というようなものは一体どのくらいあるのですか。
  144. 太田正孝

    太田国務大臣 二つでございます。所は事務官から御説明申し上げます。
  145. 皆川迪夫

    ○皆川政府委員 長野県東筑摩郡、愛媛県の北宇和郡、いずれも同一郡自体が飛び地になっている場合に、その飛び地の選挙区を例外的に認めたわけでございます。
  146. 滝井義高

    滝井委員 これは死児のよわいになりますが、愛媛のごときはずいぶん問題のあったところだと心得ております。  次に移ります。基準の五に、平均人口以下の市及び区の区域は、原則としてこれを分割しないこととあるのです。ところが、調査会案では、非常に詳細に平均人口以下の市及び区の区域を分割する場合をきめておるのです。市の人口が二つ以上の選挙区を作れるときとか、付近の市区町村で一区ができぬときとか、ぴしっと条件付なんです。ところが、政府の方では何ら条件をつけていない。今度与党原案の中には、もう市のことは何も書いていなかったと思うのです。町村のことだけ書いて、あとは書いていない。こういう点で、やはり市というものが今後の選挙を作る上に非常に大きな問題になる。特に五大市などは問題になってくるのです。そういう点についてやはり明白な基準を政府はこしらえておかなければいかぬと思うのです。私は、実は、与党の出した三項目くらいの基準、では、とても七人委員会は困ってできないと思う。だから当然これはぴしっとしたものにしなければいかぬと思う。町村合併によって全国に相当大きな辺陬の市ができている。だからそういうものについてどういう工合に今後取扱っていくか。市や区の区域を選挙区を作る場合に考えていくか。昔は郡が単位で、郡役所があって、それを割らないでやったからいい選挙ができた。今度はそうはいかない。市が郡のまん中にできて、郡は分断されているというところができている。だから一体どうするのだという点を、明白に政府の方で腹がまえを持っておらなければならない。ことに、今度の区でも市はむちゃくちゃです。調査会案はある程度きちっとした原則を立てていっている。あなたの方は、市で分割して、四十二くらいの市区が多少分けられていると思うのですが、しかも非常にむだと思われ不合理と見られるものが十五市くらいある。こういう点から考えても、やはりはっきりとした原則を何かしなければいけないと思うのです。どうも調査会案はきちっとしてくれてある。政府はしてない。何かもっといい考えがありますか。これは与党の出した修正案には何も市に触れていない。町村だけしか触れていないのですが、どうですか。
  147. 早川崇

    ○早川政府委員 党の修正案のことでありますから、われわれは決定的な回答はできないわけであります、が、われわれから案じまするに、七人委員会というものは、政府あるいは政党を離れました第三者的存在に区割りをまかそうという趣旨だと思います。従って、選挙制度調査会の案を等申しろ、そうして次の各号に掲げる三項目を基準に総合的に考慮し、定員は四百九十七人をこえてはならない、こういう三原則の範囲内で、この七人委員会自身がきめるべきではなかろうか。これに対して政府がいろいろ基準を設けまして指示するということは、差し控えるべきではなかろうかと私は思っております。
  148. 滝井義高

    滝井委員 ゲリマンダーであろうと撤回しようと、すでにああいう案が天下に公表されたならば、それはわれわれの大脳細胞の中に一つの既成事実として印象づけられたことは事実だ。少くともわれわれが世の中で生きていく限り、経験と印象は今後の物事を処理する上に重大な役割を演ずる。私は、死児のよわいを数えることになるかもしれませんが、政府が作ったときの市及び区の区域は原則としてこれを分割しないといった、その基本的な態度がここに表明されていいと思う。調査会案は、その市及び区の地域は分割しないことを原則とするけれども、その分割する場合を書いてくれている。政府はそれを何もやらずに、多分市は四十二分割しておりますから、分割するについては、原則として分割しないが、それを分割したからには、何か分割するものさしをもって分割しているに違いない。そのものさしがいまだにないというのは、市を割ることはゲリマンダーだということを告白したことになる。四十二も分割するについてはものさしがあるはずだ。無計画に議員の言う通りに割ったはずはないと思うが、どうですか。
  149. 早川崇

    ○早川政府委員 具体的な事例を申しますと、和歌山市というのを分割しております。その理由は、海草郡が飛び地になっておりますので、その飛び地を解消した方が——あの紀ノ川筋の河西地区を旧和歌山市と一体として、和歌浦付近は海草郡にくっついておりますから、新合併の和歌浦地区を海草郡に分ける、こういうことが実情に即しているという場合が一例であります。それは飛び地という原則とかみ合った結果そうなったのでありまして、政府案においては七つの、原則を立てております。従って、行政区画を分割しないという中には、市を分割しないということもおそらく入るだろうと思います。しかし、それもあくまで原即の問題であり、この七つの、原則がかみ合った場合においては、やむを得ずそういう市等を分割する場合が出たわけであります。従って、市を分割しないという一原則だけを政府案の基準にしておりませんので、和歌山で申し上げるような実例が出て参ったのでありまして、他の場合にも、それぞれのそういった理由がありまして、分割している次第であります。
  150. 滝井義高

    滝井委員 政府は、市及び区の区域は、平均人口以下のところは原則として分割しないということでありましたが、それはそれぞれの個々の特殊事情で分割したのであって、それには原則はなかったと了解して差しつかえないので、りか。今のような個々の具体的な例で御答弁いただきますと、さいぜん人口の問題で門司と小倉を出しましたが、何も門司と小倉は合せて二人区にしなくてもいい。十四万と二十四万ですから、十万違ってもかまわない。壱岐、対局と佐世保とがあるのですから、一人々々でいいのです。あるいは、そうおっしゃると、今度は八幡のごときは二人区にしてもいい。ところが、割った。長崎なんかもそのままで二人区にしている。ところが熊本市は割ってしまった。割って一対一にしている。そうして菊池郡のようないなかに二人区を作ったということになると、あなた方が、個々の具体的な場合で、この七つの、原則がかみ合ってどうにもならない場合には市も割ることがあるという御答弁なら、それぞれの特殊の事情によってこの七つのものさしを一々当ててやるというなら、話はわかる。ところが、それが七つか八つならばそういうことでいいが、少くとも四十二くらいあるのです。数えてみたら多分そのくらいあると思う。だから、四十以上も割っておるからには、何かそこにものさしがなくちゃ工合が悪い。これは特殊の事情なら特殊の事情でいい。それぞれの特殊の事情でやったというなら、私はそれで了承したいと思う。
  151. 早川崇

    ○早川政府委員 平均人口以上の場合には、なるほど四十二割っておるのでございますが、先ほど申し上げましたように、無原則で割っておる。和歌山その他の例のように、政府案におきまして、提案理由で説明いたしました七つの、原則を総合的に勘案いたしまして、やむを得ず、割った方がベターだというときに限りまして割っておる、こういうわけでございます。
  152. 滝井義高

    滝井委員 これは事務当局にお尋ねしなければならぬかと思いますが、早川さんも選挙制度調査会委員になっておられますが、そうすると、調査会の(5)の方は「市及び区の地域はこれを分割しないのを原則とする」こうなって、あなたの方の平均人口以下ということがこれにはないですね。あなたの方はある。ところが、この(5)の「一つの市の人口が二以上の選挙区を設けるに足る場合又は附近の市、区町村のみの人口をもってしては、一選挙区を画するに足らない場合には、例外的に分割を認めるものとすること。なお、市区の分割に当って適当な自然的分割線を求め難い場合には、支所、出張所の区域、学区等の境界によるものとし、この場合旧来の市街地と町村合併によって編入された新地域とに分割することはなるべく避けること。」と、きわめて合理的な出し方をしている。これは尊重されたのですか。分ける場合には政府は考慮されたのですか。どうなんですか。
  153. 早川崇

    ○早川政府委員 政府案の作成に当りまして尊重しております。
  154. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、やはり今後こういう区割りを作る場合には、当然こういう調査会の五番目の方針は尊重されなければならぬと思うのですが、今後も政府は当然尊重されていくでしょうね。
  155. 早川崇

    ○早川政府委員 このたびの委員会修正と申しますか、党修正を見て、みますと、先ほど申し上げましたように、この七人委員会は、英国のバウンダリー・コミッションのような権限を持たすかに、われわれは解釈するのでありまして、当然、その基準といたしまして、選挙制度調査会答申を尊重するということがうたわれておる以上、政府はこれに加える何ものもないのでございまして、七人委員会のレコメンデーションを尊重していくという以外に、いろいろつけ加える弁はないのでございます。
  156. 滝井義高

    滝井委員 まあ調査会案尊重の言葉が出ましたから、それで了承いたしておきましょう。  次は、郡ですが、明治二十二年や大正八年のころは、まだ私ら子供ですが、郡役所はあったと記憶しております。従って、当時の行政はある程度郡を中心に行われておったので、自治体の分け方というものが郡が中心になったのはよろしいと思う。ところが、今後は、ある程度町村合併等で相当市がふえてきました。そうしますと、やはり郡の区域の取扱い方というものは、非常に今後の選挙区の画定の上において問題になってくるところなんです。あなたの方は、政府案では、特別の事情のない限りは郡の区域は尊重すること、こういうことになっております。調査会は「郡の区域は、なるべくこれを分割しないこと。」となっておるわけなんです。政府案は、多分百二くらいですか、郡が分れておった。数えてみたら百二くらいあったと思いますが、これは、郡は、市がまん中に、きたり端の方にできたりして、非常に複雑になっておるので、私はこれは基準を設けようといってもなかなかむずかしいと思う。しかし、それにしても二分されたり三分されるという——市なんかできると二分まではやむを得ないと思うが、三分、四分されるということになると、大へんなことになると思います。今回作った政府案の中に、三分されたり四分されたというような郡がありますか。あればちょっと……。
  157. 早川崇

    ○早川政府委員 三分された郡もございます。
  158. 滝井義高

    滝井委員 四分はありませんか。
  159. 早川崇

    ○早川政府委員 四分はないと記憶いたしております。ございません。
  160. 滝井義高

    滝井委員 三分されたのはどのくらいありますか。私数えたら百二くらいあったと思ったのだが、わかりませんか。——わからなければけっこうです、三分されたものがあるということだけで。私は二つまでばやむを得ないと思うのですが、一つの郡が三つに分けられるということになりますと、たとえば選挙区の三つも分けられた郡というものは、もはや、小選挙区になっても、その郡から代議士が出るという意欲がなくなって、これは必ず棄権する。たとえば、私のところで、田川郡というところなんですが、それが五カ町村だけが峠を越えていく京都郡につけられる。そこの選挙民は、われわれはもう選挙をする気がしないと言っておる。それは、人口が二十万も二十五万もある隣の郡に、わずかに二万か三万の全く経済的に交流してなかった地域の住民がつけられれば、そうなるのが当然なんです。代議士は二十五万ある郡から出るのは当然なんです。小くなれば、これは門地、門閥というものが働き、いわゆる地域代表のような意識が出てくるから、そうなるとその地域が棄権することは確実なんです。そうしますと、近代的な政党の組織を作るとか、あるいは政治思想を普及するとか、政見を普及徹底せしめるとかいうようなことは、お経の題目になってしまう。だから、二分まではやむを得ないが、三分ということはやめなければならぬ、こう思う。その点は太田長官どうお考えになりますか。将来こういうものをお作りになるとき、あなたからも当然そういう助言をしてもらわなければならぬと思うのです。
  161. 太田正孝

    太田国務大臣 郡の立場というものは御指摘通りでございます。今日におきましては行政区画としての意味はほとんどありません。ただ産業団体の連合会等が郡を主としております。町村合併の結果を見ると、一つの郡の中に二つくらいな村がある。あるいは一つもあったかと思うのです。そういう意味で、郡という意味は非常に変ってきておりまして、郡を包括した行政改革と申しますか、制度改正ということをやはり地方制度調査会にお願いしておるようなわけでございます。調査会案と政府案との間におきまして、実はいろいろジグザグになっておりまして、向うで割ったものをこっちで割らないことにしたところもございます。たとえば秋田県の山本郡とか、私の狭い記憶でございますが、あるいは愛媛県の喜多郡とか、あるいは、非常な陳情がありましたのは山梨県の問題でございまして、こういうところは分けてはいかぬというので、政府案の方では分けておらぬと思うのでございます。しかも、他の一面におきましては、やむを得ず三分割したようなところもございますが、私も、御趣意のように、なるべく分たぬという方針を貫きたいと思っております。
  162. 滝井義高

    滝井委員 やはり七人委員会ができても、太田長官の発言や助言というものは強く作用すると思いますので、ぜひ一つ三分はしないように御努力を願いたいと思います。  そこで、次は、少し皮肉な質問になるかと思いますが、この政府の七つの基準を読んで私たちがどうしても理解できない言葉づかいがある。それを今後の参考のためにお聞きしておきたいのです。それは、まずこの原則の第一に、「特殊な事情のある場合」、こうあります。二番目には「諸般の事情」という言葉がございます。六番目には「特別の事情のない限り」という言葉がございます。七番目には「やむを得ざる場合」、こうある。一体これらの四つの言葉はどういうことなんだということです。こういうことがゲリマンダーを作ることになるのです。それはもう立案者の勝手ですよ。「諸般の事情」、「特殊な事情」、「やむを得ざる場合」、「特別の事情のない限り」、とこうある。しかも、「諸般の事情」というのはどういうことかというと、「地勢、交通、人情、行政的沿革等、」、それから「特殊な事情のある場合」というのは「離島、山間地域等」、それから「やむを得ざる場合」というのは、調査会案では「人口、地形等の情況によりやむを得ない場合」、こうなっておる。「特別の事情のない限り」はちょっとはっきりしないのですが、こういうように言葉が全部違うのです。こういう言葉づかいを原則の中に書かれれば、これは自由自在です。あめの棒と同じです。都合のいいように特殊な事情ややむを得ざる場合を作ってしまう。こういうことでは、これは原則でございますけれども原則としてものさしにならぬのですよ。あるところに持っていって、府県の配分になると、そのものさしは一尺長くなる、選挙区で小さく配分するときになると、そのものさしは五寸になってしまうということでは因る。これはもう死児のよわいを数えるようなものですけれども、基準というものは今後こういう形ではならないと思う。この点太田長官どうですか。
  163. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 お話の点は、確かにこの表現それだけでは抽象的でございますから、何を含むのか明らかでないという御議論もごもっともでございます。しかし、第一の「離島、山間地域等の特殊な事情のある場合を除き」と申しますのは、離島、山間地域等の特殊な事情というので、要するに地理的序の事情でどうしてもうまく平均人口に近い区割りができないという場合が、現実に作業いたしますればすぐわかりますが、あるのであります。そういう場合をやはり例外のゆとりとしてこういう表現を作っておきませんと、現実区割りができないというところからでありまして、特殊な事情と書きましたからといって、特別に何でも何かやれるのだという意味のつもりでは全然ないのであります。  その次に御指摘の六番目の「特別の事情のない限り郡の区域は尊重する」、これも同じでございまして、たとえば郡が間に市ができてしまったりして二つに分れておるというような場合には、その分れておる郡を別個の選挙区に入れるという場合もあるわけでございまして、そういうような場合はやはり「特別の事情のない限り」の中に入ることと思うのであります。これは郡が今日必ずしも経済的にも社会的にも一体性を持っていない、はなはだしいのは市によって分れておるというようなところから、やはり郡の地域をすべて尊重するというわけに参りませんので、例外のゆとりを残しておかなければならぬと思うのであります。  第七の点の「やむを得ざる場合のほか、現行選挙区の境界にわたる選挙区は設定しない」、これも上述のいろいろの原則からいたしまして選挙区の区割りをいたすわけでございますから、現行選挙区の境界にわたる選挙区を一切設定しないということは、現実にこれを区割りして参りますとできないのであります。ことに人口をなるべく近からしめるということになりますと、だいぶ前にできました現在の中選挙区の区域内の人口には非常にアンバランスがございますので、どうしても他の選挙区に橋をかけていわゆる混合選挙区を作らなければならない、こういう場合が現実に出て参るのであります。これは調査会案でももちろん同様であるわけでございまして、そういうようなゆとりをつける意味の表現でございます。  特殊の事情、特別の事情、やむを得ざる場合というのに、若干表現は違いまするけれども、特別に現実の違いはない、要するに、例外を表わすために、かような気持の上での違いを表現の上に表わしたというにすぎないのでございます。
  164. 滝井義高

    滝井委員 気持の上の違いというものは、やはり現実に大きな違いになってくる。やむを得ざる場合というのは、調査会では、「人口、地形等の情況によりやむを得ない場合」、人口、地形とはっきり土にうたっておる。ところが、あなたの方は、今度は二番目で地勢、交通、人情、こうなっておる。そうすると、一の山間地域というのはやはり地勢なのですよ。ところが、それは上に離島、山間地域等というような形容詞的なものがついておって、それが特殊な事情であって、今度地勢や交通や人情や行政的沿革というのは諸般の事情だ、こういう言葉づかい——日本語というものは非常に便利なもので、いよいよ作るときになって第二項のあれを利用しようと、当面は何とでもできる、諸般の事情になっておるのだから。こうなると、第一段の地域がそうやらなければならぬようになっておっても、今度一段の地域から切り離すときはどうにも理屈がついてくる。しかも、その不確定な特殊な事情の下に、しかも、「平均人口に近からしめる」というような、不確定なきわめてあいまいな表現になっておる。あいまいな表現の下にあいまいなものが重なれば、それは原則とは言えないのですね。だから、上が「特殊な事情」というあいまいなものであるならば、「近からしめる」というものには幅をぴっとはめておけばいい。どこか一つ押えるところがなくちゃいかぬ。この一項なんかどこでも押えられないのですよ。また、これ一つあればどうでもなるということです。この議員の修正案なんかでも、こんな基準で選挙区を作れといったってできはせぬ。今私は一つの例をあげたんですが、今度の与党の出した修正案では、三つの原則的なものを法文の附則の中に書こうとしておるのは、私は一つの進歩だと思うのです。選挙区というものは、これは政党のものでもなければ政治家のものでもない。これは国民のものなんだ。国民のものだとするならば、当然こういう基準は法律できめなければならぬと思うのです。全度三項だけでも法律の形態をとって出てきたのは、私はまあ進歩と思います。ところが、この三項だけでは、七人委員会がいよいよやるとなるとなかなか大へんなんです。だから、私は、これが政党のもので政治家のものでもないとするならば、少くとも基準なり原則法律できちっとある程度きめるべきだと思う。そして、それでまかせれば、それで作って出てきたものは、いかに与党野党が文句を言おうと、公正な基準において作ってあるのだから、科学的な根拠によって作ったものだということになれば、文句は言えない。この点について大臣の所見を一つ承わっておきたいのですが、大臣は法律で基準を作ることに御賛成であるかどうか。
  165. 太田正孝

    太田国務大臣 もちろん、基準がはっきりして、しかも法律できまっておりますれば、かれこれ言う段ではございません。その点につきまして、修正案提案者の御意見はございましょうが、私の解釈したところでは、結局委員のお方の考え方をあまり拘束しないという意味で、人員についても四百九十七人以内とつけたのじゃないかと見ております。他の一面におきまして三原則を掲げておりますが、一つは人口から、一つは行政区画から、もう一つは地理的関係から見ているので、しかも、その地理的関係のしまいの方に、たしか「等」という字があったと思いますが、そういう点につきまして、まあ大原則は三つじゃなかろうか。小原則につきましては、委員会のお方の考えによるのがいいのじゃないか。そこにゆとりをとって、公平なる考えをもって判断しなければならぬ七人委員会のお力によるのがいいのじゃないか。なるほど規則できちんときめればけっこうでございますが、今ずっと御指摘になりましたように、日本の地形といい、また産業の発達の状況といい、郡が分れてまん中に市ができたとかいろいろな事情がございますので、そんな点を一々きめ得ればけっこうかと思いますが、いろいろな点から見て、委員会の御意見を尊重するという意味修正されようとするのじゃないかと思います。「なるべく」とかあるいは「特殊な事情」とかいう表現をいたしておるのは、御指摘のように一本の表現の方がいいと私は思っておりますけれども、ただいまのところ、法律で全部きめ得られない問題は当然残るわけでございまして、その点につきまして、委員会のお考えにまかすか法律できちんときめるか、私としては、この修正案のような大原則を定められる方がけっこうじゃないかと考えております。しかし、これはまだ提案者の御説明を聞かないので、私としてもし提案を受ける場合にはどうするかという考え方から申し上げた次第であります。
  166. 滝井義高

    滝井委員 基準はそのくらいにして、次に、今度の与党修正案には、衆議院議員の選挙区画委員会というものができることになっておりますが、この委員会は次の通常国会までで命のなくなる臨時的なものと大臣はお考えになっておるかどうか、これを二つお聞きしたい。
  167. 太田正孝

    太田国務大臣 御指摘のように、法律の方にはなくて、提案理由の方に臨時的と書いてあります。その意味のように解釈しております。
  168. 滝井義高

    滝井委員 これはいよいよできてしまえば内閣の方に移ってしまうのですが、提案者法律には書いていないで臨時的なものだとおっしゃっているので、実は政府も二千万円の予算等も御了承になったのですから、政府の方もそういう、心得がわかっておると思ったのですが、政府はそういうことを臨時的なものと提案者がおっしゃったのだからとおっしゃる。いよいよこれが通れば政府のものになってしまうのですが、政府も、その通り臨時的なもので、この命というものは次の通常国会までだとお考えかどうかということを言っているのです。
  169. 太田正孝

    太田国務大臣 二千万円の問題をちょっと申し上げておきますが、国会法におきまして予算に関係のあるものはどうするというので、今まで大体二千万円だから二千万円と申し上げたので、選挙がありませんから、すぐその支出が起るわけではないので、ただその関係があるということだけを申し上げたのであります。  それから、臨時にするかというのと恒久的にするかというのと二つ考え方がございます。イギリスの制度のごとく恒久的制度をやることが必要な考え方もございますが、今回は、この区割りをするために、臨時的にそれだけを設ける、こういう意味でございまして、恒久的の考えは、今のところ、私がこの解釈をした立場でも、政府がこれをのんだ場合でも、臨時的のものでけっこうかと考えております。
  170. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、これは提案者よりか政府の方にお尋ねした方がいいから、実はお尋ねしておるのですが、こういう立法の形態をとって、提案者も臨時的なものだとおっしゃっており、しかも、この法案でも、この区画画定委員会がその仕事の終る時期は、次の通常国会までにもう委員会の仕事が終ってしまうわけですね。その場合に生き延びる期間というものは、過去にこういう立法があったかどうか知りませんが、大体常識的に、臨時的なものだといっても、いつまで生き延びるのですか。臨時的といっても、五年も、三年も、六カ月も臨時なのですが、立法上の取扱いからいって、提案者は臨時とおっしゃっているのですが、役割としては次の通常国会の前の日までに作らなければならぬでしょう。そこで終るのか、それとも法案が通ってしまって、そして終るのですか、あるいはできた後までずっとあるのか、こういう臨時的なものというものの、取扱いは大体どういうことになるのですか。
  171. 太田正孝

    太田国務大臣 これは臨時的のものでございますので、次の常会の始まるときまでに出さなければならぬというのでありまして、それまでにできなかった場合には、また新たなる問題として考えなければならぬと思っております。
  172. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、政府答弁は、次の常会まででこれは消える、こういう解釈ですね。
  173. 太田正孝

    太田国務大臣 申し上げるまでもなく、作成することがこの委員会の任務でございますから、そこで切ってしまうかどうかという問題は、そのときの問題であろうと思います。
  174. 滝井義高

    滝井委員 これは一般論を尋ねているわけですから、決してこれにこだわる必要はないと思います。こういう立法形態、普通の法律の形で出てくれば、形の上で読めば永久的なものに感ずるのです。総理府の設置法の中にあるわけです。ところが、提案者の方の説明では臨時的だとおっしゃる。しかも通常国会の前の日までに作らなければならぬ、こうなっている。だから、こういう場合には前の日でなくなるものだというのが、政府の解釈だとして差しつかえありませんか。これはきわめて重大ですから、提案者政府が違うのでは困る。意思統一をして下さい。
  175. 早川崇

    ○早川政府委員 法律上には、案を作りましても、直ちにこれを廃止しろということは何もございません。従って、法律的義務は通常国会の召集前日までに答申案を出さなければならぬという義務はございまするが、出したから直ちにもう廃止するという必要は毛頭ないのでございまして、これが通常国会にかかっている間、いろいろ通常国会の過程において委員会をそのままに置いていて、答弁に参考人として呼ぶという場合も起り得るかと思いますので、そのときの情勢によって考える、かように解釈すべきものだと思います。
  176. 滝井義高

    滝井委員 そうすると、今の太田長官の答えと違うのです。太田長官は常会までとおっしゃったのですが、早川さんのが政府の考え方ですか。
  177. 太田正孝

    太田国務大臣 私の申し上げましたのは、この委員会は案を作成するのが任務である。そこで切るかどうかということはわからないと申し上げたので、そのあとを受けで、政務次官が、国会における答弁の参考人に呼ぶというようなことはあるから、延ばしてもいい、こう申し上げたのであります。私の言ったのも幅のある意味であります。もし私の言ったのが悪かったら、私のを取り消して差しつかえありません。
  178. 滝井義高

    滝井委員 国会に参考人で呼ぶためには、何も委員をやめておっても参考人として呼べるわけです。そういうことがこの委員会の存続する理由にはならないのですよ。しろうとでもそんな論は納得できぬ。もう少しはっきり筋の通った答弁をしてもらいたい。委員会の任務の終ったものを置けば、これは国費を乱費することになる。任務は前日で終るのです。これは私一般論を尋ねている。こういう場合抗業者は臨時的なものだとおっしゃる。任務が国会召集の前日までに終った場合に、そのあと存続しなければならぬと思えば、存続しなければならぬ理由がなければならない。提案者に尋ねてもいいのですが、意思を統一して下さい。
  179. 太田正孝

    太田国務大臣 先ほど申し上げました通り委員会の任務がございますので、任務のために、期間が一応きまるわけでございます。しかし任務が済んだからといって、すぐやめるか、こういう問題につきましては、なお必要ある場合においてはそれを置くこともできる、こういうように解釈していいと思います。
  180. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、それは臨時的なものではないということになる。だから私が言うように、臨時的というのは、五年でも臨時だ。五年の時限をつけた臨時立法だ、こうおっしゃる。これは五年でも臨時、六カ月でも臨時なんだ。だから、この法文を見たならば、どこからも臨時というものは出てこない。しかし提案者提案理由で臨時だと説明された。しかもそれは通常国会の前日までで任務が終る。それで臨時立法だという。しかしそれが終ってもなお存続するのだ、その存続する理由は参考人で呼ぶためだという。それなら委員をやめておっても呼べる。存続するならば、存続する理由が明白になってこそ、初めてそれが出てくる。ところが、任務が終った委員会が存続するならば臨時的でないということが出てくる。だから、政府がそういう事情ならば、提案者の意思はどうなのか、その点の御説明を願いたいと思います。
  181. 青木正

    青木委員 ただいまの滝井委員の御質問でありますが、この委員会の使命は、本来この法律によりまして新しく区割りをきめるだけのために設けられたものであります。そういう仕事の内容が臨時的である。さらに、法律の体裁から申しましても、従って本文に入れずして附則に入っておるのであります。附則に入っておるということは、臨時という表現はしておりませんが、おの、ずから臨時的な意味を持つもの、かように解するわけです。もちろん法律の存続する限り附則は生きておるのでありまして、法律的には附則の廃止されぬ限りは生きておりますが、考え方としては、やはりそうした考え方に立って、恒久的なものではない、かように存ずるわけであります。
  182. 滝井義高

    滝井委員 これは附則に入っておるから臨時的なものだ、こうおっしゃいます。ところが、附則に入っておりますけれども総理府設置法の中にいくと、そうではなくなるのです。選挙制度調査会と同じく総理府設置法の中の十五条には並んでくるのです。だから、あなた方は附則に入っておるから臨時的なものだとおっしゃるが、では総理府設置法の中にはどうして附則に入らぬのですか。これはおかしいと思う。
  183. 青木正

    青木委員 形式的には臨時とか恒久とかいうことはあり得ないわけであります。この法律において附則に持ってきたという趣旨は、そういうように臨時的なものであるという考え方から附則に持ってきた、こういうことを私は申したのであります。従って、法律上からいいますれば、設置法の中に当然入れなければならぬもの、かように考えます。
  184. 滝井義高

    滝井委員 法律論としては私それでは納得できぬのです。総理府設置法の中に選挙制度調査会衆議院議員の選挙区画委員会とが並んでしまう。そして、しかも選挙制度調査会の中にも臨時の委員を作ることができるし、それから同時に学識経験者によって専門の調査員を作ることができる。これも当初の原案であなた方は五人を考えておったが、この五人も同じことをやるのです。同じことをやる者を別にこの選挙制度調査会の中に作ってもいいのですよ。五人委員会というのを作ってもいいのですよ。だから、そういう点になると、どうも、あなた方の説明では臨時的だとおっしゃっても、どこにも臨時的ということが出てこない。しかも、それがたとい臨時的であるということを認めても、しからば、その臨時的な区画を画定する七人委員会の寿命というのはどこまでかということになると、いわゆる区画を作る前日までが寿命なんです。そうなるとこれはおかしいのです。大臣は参考人を呼ぶという。だから自治庁の解釈と与党の解釈が違ってきておる。これ以上やるとあれですから、もう少し政府与党との間の意見の調整をしてもらいたい。まだ期間がありますから、意見の調整をして、こないと、こういうことのためにこの議場が混乱することはまずいので、あとに譲ります。
  185. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 森三樹二君。
  186. 森三樹二

    ○森(三)委員 実は、私は、明日鳩山総理の出席を要求しておりまして、総理に対して本法案について根本的な質疑をしようと思っておりましたが、午前中同僚委員の諸君から鳩山総理質問があった。鳩山総理の所属しておる、しかも総理が総裁であるところの与党から今回大幅な修正案提案されました。その大幅な修正案は、すなわち本文と区画表を別個に出しまして、あのゲリマンダーのはなはだしい区画表は一応たな上げにされた。政府が自信満々として出しましたところのあの区画表が、ついに国民世論とわれわれの正当な主張のもとに屈服したわけであります。それに対する政治的責任をしばしば追及したのでありますが、総理はこれに対しててん然として恥ずることなく、何ら自己の政治責任を明確にしない。まことに遺憾なる答弁を展開しておったのであります。しかも、議長裁定の経過等につきましては全く知らぬ顔の半兵衛で、かたわらにおるところの太田長官の耳打ちによって、ほとんどわれわれに聞えるか聞えないかわからぬようなあいまいもこたる答弁をして糊塗しておったという実情であります。このいわゆるクーデターに比すべきところの選挙区割表を出しまして、圧倒的に保守党の諸君の永久政権と保持せんとする野望をたくましくしておりましたこの法案が、今や全国的な世論の背景の前に屈服して、そうして大幅な修正案が出されまして、政府原案は全く骨抜きにされたといっても過言ではないのであります。私は、しばしば、当委員会におきましても、太田自治庁長官に対して、今日、言論界あるいはその他の文化団体あるいは学者等によって、政府原案が実に極悪なるところの一方的な与党の味方をするところの法案であるということを指摘されておる、これに対して、あなたは、みずから世論の前に大いに反省されて、これを撤回する意思がないかということを質問いたしましたが、あなたはその当時撤回する意思がないということを明白にされておった。しかも、修正する意思があるかという問いに対しましては、謙虚な気持を持って、今日の審議状況を見て云々というようなお話がありましたが、現在あなたのとらなければならない態度としては、このような政府国会を通過さすという重大な決意を持って出されておった革命的な法案が今や全く行き詰まりを来たしまして、あなたの所属しておられるところの自民党からこのような大幅な修正案が出たことに対しまして、あなたの政治責任は私はまことに大きいと思うのでございます。あなたは、現在、みずから提案されました政府原案をあくまで支持しようと思っておるのか。あるいは、この修正案の方がよかったのだ、このように考えておられるのか。私は、一応、あなたの政治責任を追及する前提として、お尋ねしたいと思うのであります。
  187. 太田正孝

    太田国務大臣 今回の与党修正が出たことについての政府の責任につきましては、午前に鳩山内閣総理大臣からお答え申した通りでございます。もともと今回の法案の骨となりますのは二つございますことは、私の申し上げたことでございます。その一つは、個人本位を排して政党本位としたということが、法文の中の骨になっております。もう一つの骨は、申すまでもなく、区割りであります。鳩山総理大臣の言われました通り、小選挙区制の根本につきまして骨はちゃんとここにあるのである。しかも、言論界のこともお引きになりましたが、昨日の読売新聞に御手洗君の出しておる論説におきましても、小選挙制度そのものについてまで間違っておると言ったのではない。——これは私は直接会っても聞いたことでございます。また委員の人たちからも聞いたことでございます。従って、骨としての小選挙制度の実体があります限りにおきましては、政府のこの大きな主張というものの実体は私はくずれない、小選挙制度をどうしても通すべきものである、こう考えておる意味におきまして、鳩山内閣総理大臣が言われたごとく、第一は、小選挙制度の根本を認められたということ、第二は、政党本位選挙について強化されたということ、第三は、慎重を期するためのこの修正案におきまして区画委員会を設けるということ、従ってこれを受けても差しつかえないという言葉でございましたが、私もかように信じておる次第でございます。三つの理由からでございます。
  188. 森三樹二

    ○森(三)委員 あなたは修正案を受諾してもかまわないというような非常に消極的な答弁でありますが、私があなたにお尋ねしたのは、あなたがその修正案を受けてもいいという御答弁ばかりでは、私は足らないと思うのです。今日の段階において、かの政府提案は、すなわち選挙制度調査会答申案を全く無視したところの区画割り表を提出した。私どもは何回もこれを指摘しておきました。あなたは御手洗君の説を今お述べになりましたが、すなわち政府が尊重するといったところのあの選挙制度調査会区画割り表というものを全く無視したところに、こうしたあなた方の不信という問題が起きてきたのです。そこで私がお尋ねするのは、受けてもいいというが、そういう消極的な答弁では私は足らないと思うのです。あなたが出されておったところの政府提案というものは、あなたは今でも是なりと確信しておるのか。しかし、与党からこうした修正案が出たから、やむなくこれを修正するというのか。そのあなたのとるべきところの、自分がみずから出された法案に対する責任をどのようにお考えになっていらっしゃるか、お尋ねしておるのです。今でも、あなたは、あの法案を出されたということに対して確信があるのだ、あの法案はあくまでも通したいと思っておるのだ、このように考えておるのか、あるいは、今日与党修正案を出されたことが、今日の段階では自分の気持にぴったりと合うのだ、このようにお考えになっていらっしゃるのか。その点を私は明確にしておくことが、私が今後あなたの政治責任を十分お尋ねする一つの大きな材料となると思うのでありますから、ここを明確に一つ答弁を願いたいと思うのです。
  189. 太田正孝

    太田国務大臣 政府として総理大臣が言われた言葉以上のことはありません。つまり、この修正案を受けてもよいということを、午前に鳩山総理大臣が言われました。しこうして、これに対して政府は責任を負うかということにつきましては、責任を負わないと言われたのでございます。私も、この前の委員会のときに、本体に触れる場合があれば私は責任をとると申し上げた言葉を御記憶願いたいと思うのでございます。
  190. 森三樹二

    ○森(三)委員 私の求める答弁に対してあなたは非常に飛躍的な御答弁をなさっているが、この修正案を受けてもいいとか受けなくともいいという問題ばかりでなく、あなたが確信を持ってお出しになったところの政府原案は、現段階ではまことに無理であった、自分は大いに反省をしている、あなたが前にも言われた謙虚な気持で、これは無理だった、このようにお認めになるのか、それとも、自分たちが出したあの政府原案は今でも正しいものであるんだ、できればこの政府原案を通したいんだ、こういうお気持であるか、そこを私はお尋ねしている。政治的責任の問題はあとでお尋ねいたします。まずその前提として、あなた方が出されたあの法案は、現在においてもあなたは確信を持っておられるのか、その確信はもうすでにこわれてしまったのか、ここが重大な点でありますので、私はあなたにあらためてお尋ねをしているわけであります。
  191. 太田正孝

    太田国務大臣 受け入れるということは、もちろん謙虚な気持でございます。受け入れるということは、承認するということでございます。責任につきましても、同様な意味におきまして、総理大臣の言われた言葉を繰り返すにすぎません。
  192. 森三樹二

    ○森(三)委員 あなたは、御自分の急所を非常につかれたと思われるせいか、修正案のことについてのみ御答弁になりますが、私は、修正案ばかりではない、あなたがお出しになった政府原案というものについて、これは全くひどい、自分たちの錯誤であった、政府提案選挙制度調査会のいわゆる案というものを無視して、二人区を作り、ゲリマンダーを作り、あれはまことに悪かった、国民に陳謝しなければいかぬ、このようなお気持なのか、それとも、あなたの出した政府提案は、今でも最高至上のものである、しかし与党から大幅な修正を受けたから、これは受けてもいいというのか。あなたがお出しになった政府原案に対するあなたのそのお考えをまず私はお尋ねしているのであって、修正案を受けてもいいということは、あなたは何回も言われ、それはわかりましたが、あなたがお出しになった政府原案というものは、現在でも撤回されずに、そのまま現存している。それに対するあなたの御所見、確信というものをこの際お尋ねしているわけです。
  193. 太田正孝

    太田国務大臣 もし小選挙制度の実体に触れましての根本をくつがえすものでありましたら、私は賛成いたしません。毎々申し上げます通り、小選挙制度の根本に触れぬ限りにおきましては、修正認めてもよい、こういう意味でございます。
  194. 森三樹二

    ○森(三)委員 そうすると、裏を返せば、修正を受けてもいいということは、やはり自分たちの出しておった政府提案というものは大きな誤謬であった、錯誤であった、党利党略であった、こういうことをあなたは是認されていると私は解釈しても差しつかえないと思うのでありますが、それに対してお尋ねしたい。
  195. 太田正孝

    太田国務大臣 この小選挙制度の基本というものは、先ほど申しましたように、二つの骨組みでできている。その一つの骨組みは厳然として存するということ、第二の区割りにつきましては、その方向をきめ、その委員会をきめてやる限りにおきましては、私はいじってもよい、かように思うのであります。しかも、その委員会とても、原則とするところは、修正案におきましてわれわれの言ったところとほとんど同じであり、しかも四百九十七人以内とされている。これもわれわれの言ったところでございます。ただ、現実区割りにつきましての党利党略云云というお言葉でございますが、私はそのできるものがどういうものが生まれるかということを今日考えつつ、その点につきまして現在の私の気持といたしましては、区割り制度ができてくる日を待って、私どものこともきまるだろうと考えます。しかし、議長まで中へ入った現下の状況から見まして、私は、この大事業をいわば二期に分けてやることになったのでございますが、骨組みとしての小選挙制度というものは、厳然として法案の中に残っておると思うのでございます。
  196. 森三樹二

    ○森(三)委員 あなたは、最も自己の痛いところはそらして、そうして修正案を受け入れる、譲るというような言葉を言っておられる。譲るということはすなわち一つの妥協であり、自分が持っておるところの案というものを、もうすでにあなたは否認されているような御答弁である。結局、あなたの出されたところの案というものは、もう骨抜きになってしまった。そこで、あなたが出されたところの法案というものは間違っておった、あのような調査会の意思というものを無視したところの、全く党利党略のものであった、無理であった、非常に作為的なものであった、このようにあなたはお考えになっていらっしゃるかどうか。あなたが出したところの法案というのは、現在まだ存在しているんだ。これに対してあなたどう思っておられるかということを私はお尋ねしているのであって、そういうことを私は何べんもお尋ねしている。すなわち、あなたが当初出されたところのこの法案が、現在においても正しかったんだと思っておるのかどうか、できればあなたが出されたところの政府提案というものを通したいんだ、通したいけれども、今や与党から大幅な修正案が出たから、これは仕方がない、譲らなければならない、こう思っておるのかどうか、あなたが出されたところの法案に対する見解を尋ねているんです。修正案そのものに対しては何回も御答弁がありましたから、これは重ねてお尋ねをしておらない。あなたがお出しになったところの政府原案というものは厳然として現在存在している。私は撤回を何回も要求したが、あなたは撤回なさらない。しかも、それに対して、あなたはみずから修正案も出されない。現在、当初出されたままで本委員会に付託されておる。あなたみずからの手によって出されたところの政府原案というものが、あなたは、今でも確信を持って、これが一番いいものだ、これを通すべきであったのだ、また通したいんだ、こう思っておるのかどうかということを私はお尋ねしておるのです。
  197. 太田正孝

    太田国務大臣 修正の点については言わなくともいいということですから、私は申し上げませんが、小選挙制度というものの原則をここに法案として出したということにおきましては、私は現在の案をもって主張しておる次第でございます。
  198. 森三樹二

    ○森(三)委員 現在の案をもって主張しているということはどういうことなんですか。
  199. 太田正孝

    太田国務大臣 先ほど申し上げました通り、小選挙区案の骨組みとなるものは二本ありまして、一つの点は、個人本位を排して政党本位にしたことは、答申案にある通りでございます。この点につきましては何らの変りはございません。しかも、区割りにつきまして原則を定め、定員も定め、しこうしてその委員を別に作っていくというだけのことでございまして、私は、この意味において、小選挙区案の骨組みというものは厳然として存するものと思っております。
  200. 森三樹二

    ○森(三)委員 全くあなたの出された法案が、政府原案というものが現在なくなってしまって、あなたが撤回しているならば、私はあえてこのように何回も追及しないのです。しかし、当委員会には政府が出された案というものはちゃんと現存しているんだ、従って、その案というものをあなたは支持しているのかどうか、今でもあの案は正しいものであったんだ、できればそれを通したいのだ、しかし、与党からこのような大幅な修正が出たから、これはやむを得ないのだ、こういうふうにあなたは考えておるのかどうかをお尋ねしたいのです。太田さんも私の言っていることはわかっているはずでありますが、あなたは、ことさらにそらして、あなたの政治的責任を追究されることをおそれる余り——御自分が出されたところの政府原案というものに対する責任をあなたはどう考えているか、私はそこを聞いているのです。あなたが出されたところの政府原案というものは、現在でもこの委員会にかかっているんじゃないですか。この原案というものは、現在でもあなたは正しいものと思っているかどうかということを、簡単に一つ答弁願いたい。
  201. 太田正孝

    太田国務大臣 小選挙制度として正しいものと思っております。
  202. 森三樹二

    ○森(三)委員 それはあなた、そういうことを言うならば、これは私は大へんだと思うのだ。あなたは今はっきり言われた。小選挙区という制度の上に立って正しい法案だと言う。それならば、ここであらためてあなたの政治責任というものは重大である。いわゆる国民を敵にし、そうしで世論を敵にし、あなたはあくまでもこれに対して反抗するというところの決意を持っているということを、ここに私は明らかにされたと思うのであります。あれほど全国民が反撃しているところのその法案を、現在でも正しいものとあなたは思っておられる。まことに私は驚かざるを得ない。しかもあなたはその修正案を受ける。いわゆる小選挙区制という一つの柱がそこに立っておる。政党活動というものの柱が立っておる。だからこれを受けるというようなことを言っておられますが、私どもが何回も指摘したところの立会演説会はどうなりました。あなたがあれほど立会演説会は必要ないと言った。その立会演説会は、今回の与党修正によってりっぱにこれは認められているじゃありませんか。また供託金の問題についても、私どもはいわゆる供託金を引き上げる必要はない、小選挙区制の建前からいっても選挙区が小さくなっている、また運動費用の問題にしても、こうした問題についてもあなたに対して私どもはるる質問した。あれほどわれわれが追及したところの立会演説会というものを、あなたは否定しておったじゃないですか。今回の与党修正にはりっぱにその立会演説会を認めてきているのです。しかも供託金の問題も現行法通り十万円とされている。あなたは、いわゆる小選挙区制というものの前提に立つところの柱と、政党の政治活動という、この二本の柱が入っているから、自分としては修正を受けると言いますが、それならば、立会演説会や供託金の問題については、どのようにあなたはお考えになっていらっしゃいますか。これについてのあなたの御答弁を承わりたい。
  203. 太田正孝

    太田国務大臣 私は先ほど来申した通りでございますが、修正について云云は言わぬようにということでしたから申しませんでしたが、世論の点も考え、かつ議会の効きもよく考えましで、かような方向によるための修正は、これはやむを得ない、しかし骨組みは変らない、根本の考えは小選挙制度である、かように考えておる次第でございます。
  204. 森三樹二

    ○森(三)委員 私は修正の問題を言わなくてもいいと言っているのじゃない。あなたは修正の問題をのみ答弁の材料として言われておったから、私は言ったのだ。私は、修正の問題ばかりではなく、いわゆる政府提案原案に対するところの今日のあなたの御所見をお尋ねしたところが、あなたはこれをやはり正しいものと思っておる。このようにあなたはお答えになっておる。そこで、私は、あなたが今日このような修正案提案されるところの与党の諸君の立場に立ってお考えを願いたいと思うのでありますが、あのような議長裁定がかりになされなかったとしたならば、どうであろうか。私は、この委員会においても、あなたに、こうしたところの世論と全く相反するところの法案国会審議として提案するということは、われわれとしては納得できない。やはりこれは撤回すべきだということを私ども主張した。しかもまた、これは自由党、民主党が前回の選挙において公約したところの政策でも何でもない。このような日本の議会政治の大幅な変革を来たすところのクーデターに類するところの法案提案するのには、やはり国民の前にこれは審判を求むべきである。衆議院を解散して、そうして国民に問うべきであるということも言ったのです。それ以外に私はこれは解決の方法はないと思っている。ところが、今回幸いに益谷議長の裁定がなされまして、そうして議会の運営は一応のルールに乗りまして、このように審議をしておる私はこのような議長裁定というものは今後何回もあるべきはずのものではない。国会国会の権威に基きまして、憲法四十一条にも規定されておるように、「国会は、国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関である。」とある。その国会の権威をわれわれは保持して、そうして重大なる法案審議しなければならない。ところが、今回のような無謀なるところの法案を一方的に出された結果、ついに国会の運営は困難になった。そこで谷谷議長が裁定をされたのでありますが、私はこの益谷議長の裁定というものがなされなければ、まことに事態は重大で、国会の運営もなされない状態になるのだったと思うのです。こうしたところの立場——大きな問題を起した、いわゆる国会の運営においても、あるいはまた日本の議会政治を大きく変革せんとして党利党略案を出されたところの、この衝に当られた太田長官の責任は、私はきわめて重大だと思うのです。あなたは、みずから出されたところの政府原案与党修正案とは全く同一のものであるかのごとき建前において、今回の与党修正に応ずることによっても、いわゆる小選挙区制というものは維持されておる、そうした前提に立ってみずからの立場を保持せんときゅうきゅうとしておることは、きわめて私は遺憾であると思う。私は、太田長官がほんとうに良識あるところの政治家であるならば、この際率直にみずから政治的責任を感ぜられまして、あなたは自己の地位を明らかにされ、国務大臣たる席を辞任すべきであると考えておる。これに対するところの太田長官の御答弁を願いたいと思う。
  205. 太田正孝

    太田国務大臣 この改正案につきましては、この国会の始まり総理大臣の施政方針演説にあった通りでございまして、しかも、その前に——この前の選挙になかったということでございますが、昨年の夏ごろ以後の情勢というものは、小選挙制度を作るために政府がいかに力を入れておったか、また、この国会の始まりに、施政方針演説によってはっきりとその点はうたっておるのでございます。決してにわかにこれをやろうというような意味でなかったことは、御了解を願いたいと思います。私は、党といたしましても、党員の一人といたしましても、根本たる小選挙制度をくずさざる範囲においての修正ということにおきまして、与党政府とが考えが一致したということは差しつかえないことと思います。私の責任につきましては、先ほど総理大臣の言われたるごとく、政府立場から起ることでございまするので、三つの理由、第一は、小選挙制度の根本に触れざること、第二は、この制度の中におきまして、政党の強化ということを選挙法上においてうたっているということ、これが第一の骨であり、第二の骨につきましては、党におきましても、この際に、議長のごあっせんもございまして、事を円満にするためにという意味での切なるお言葉を受けて党が立ったわけでございまして、私は政府与党とこの点におきましては根本方針を変えざる包囲におきまして賛成しておる次第でございます。従って、私の責任は政府の責任であり、また党の立場におきましても当然考えなければならぬことであると、かように申し上げる次第でございます。
  206. 森三樹二

    ○森(三)委員 太田長官はみずからの責任を回避されるの余り、まことに不明朗な御答弁をなさっておると思う。もし、太田長官は、今日において議長の裁定がなされなかったならば、あくまでも政府原案を強行突破しよう、こういうようなお考えを私は持っておられたのではなかろうかと思う。この修正案が出るまでは、あなたの態度というものは全く何らの反省もなく、あくまでもみずから作られたところの、この法案の本文もあるいは区画割りも、一体としてこれを強行可決さそう、このような態度を堅持されておった。ところが、幸いに議長があのような裁定をなされまして、本文と区画割りというものはまっ二つに割られてしまった、そうして今日与党修正案が出たのでありますが、私どもから見るならば、全くこの与党修正案というものは、今後においてもいわゆる区画割りというものも非常に困難な道を歩むのでございまして、なかなか容易にこれが別表として一体をなしたところの法案というものは、見通しとしては非常に困難であると考えております。そこでもって、あなたは、この議長裁定というものが出たので、私は、逆な言葉で言うならば、あなたも全くほっとしておるのではないかと思う。あなたの身分もこれでもって一応助かったのではなかろうかというような見方も私はできると思うのでありますが、もし議長裁定が出なかった場合には、あなたはみずから提案されましたあの法律案をあくまでも押し通そうとされておったのか。この点についても私は御答弁を明確にしていただきたいと思うのであります。
  207. 太田正孝

    太田国務大臣 私は、議長の裁定のできる前、二日の間におきまして、この席において謙虚なる態度をもってするということを申しました。その後に議長を尋ねまして、議長の真意も知ってやったのでございまして、議長がこういうことをきめてから、それによってどうこうということは、国会現実の状況を見て申し上げたのでございまして、私は世の中におきまして非常な無理を通すという考えば持っておりません。ただ小選挙制度そのものを確立しなければならぬという信念におきまして、またその法案におきましてこれを支持しておることは申し上げるまでもございません。
  208. 森三樹二

    ○森(三)委員 私はそれがゆえにあのようなゲリマンダーの無理な法案はすべからく撤回すべきであると思う。あなた方の閣僚会議においても撤回論が相当強かったのです。しかるに、あなた方は、撤回をなさず、便々として日を送り、そしてあのような紛糾の種をまいた。ところが、現在のあなたの御答弁を見ると、あの裁定が出る二日前に益谷議長に自分は面会して、あのような無理な法案をあくまでも押し通す気持がないことを相談し合った、このような御答弁を今なされた。まことに私は奇々怪々であると思うしからば、あなたは、当委員会においては、自分の出された法案というものは決して無理ではない、小選挙区制に伴うところの当然の法案である、あくまでもこれを維持したいというようなことを述べておられる。一方、議長のところへ行っては、無理はしたくないということをあなたが述べておられるということは、まことにこの委員会を無視された態度であるといわざるを得ないと思うのであります。私は、あなたは、ここにあらためて二重、三重の過誤を犯しておるといわざるを得ないのでありますが、それでは、あなたはその当時議長とどのような話し合いをなされたということについても、重ねて明確にされたいと思う。
  209. 太田正孝

    太田国務大臣 私の申し上げましたことは、今日この席において言ったこととちっとも違っておらないのでございます。
  210. 森三樹二

    ○森(三)委員 あなたが言ったことが、今日この席上で言ったこととちっとも変らないとあなたは言われる。あなたは、自分の腹の中ではどう思っておったかわれわれはわかりません。しかし、私どもの解釈し、あなたから承わりましたところの当委員会におけるところの答弁は、この議長の裁定が出る前と今日とでは全くかけ離れたところのものである。今日では修正案ができて、何となくあなたはそれを受け入れる。そうしてその法案を通しさえすればいいというような気の抜けたビールのような御答弁をあなたはなさっておる。前回の答弁とは全くあなたの態度は豹変されておる。私は、そのようなあなたの政治的な責任、すなわち国務大臣としてあくまでも確信を持ったところの態度、そうしてその確信を今日まで持っておられるかどうか、しかもあのように非常に無理な法案であったということをあなたが自覚されておったのかどうか、もし自覚されでおったならば、あなたはなぜ早く撤回されなかったか、これについてあなたの御答弁一つ承わりたい。
  211. 太田正孝

    太田国務大臣 小選挙制度の根本に触れざる限りにおきまして、私は自分の態度をはっきりこの席においても申し上げた次第でございます。従って撤回する気もないということもこの前申し上げた通りでございます。
  212. 森三樹二

    ○森(三)委員 太田長官は、今日の与党修正案も、いわゆる二本の柱でささえられておる、すなわち一つは小選挙区制の根本制度であり、一つは政党の政治活動の問題である、この二つが許されておる以上は、これを受けてもよいというような答弁をされておりますが、先ほど申し上げました通り、あれほどあなたががんばっておったところの、立会演説会も与党修正によって復活されております。供託金の問題も現行通りになっておる。あなたが最も強調しておったところの立会演説会はみごとに粉砕されたじゃありませんか。私はそれだけでもあなたの政治的責任は大きいと思うのです。まさに見通しのない法案をあなたはお作りになった。このような太田長官の政治的責任をお考えにならない御答弁というものは、全く国民を無視し、国会の権威をお認めになっておらない態度であるといわざるを得ないと思うのであります。あなたがほんとうに謙虚な考えをもって事に当らんとする政治家であるならば、私は、すべからく冠を脱いでこの政治責任を国民に陳謝すべきであると思うのでありますが、御所見を伺いたい。
  213. 太田正孝

    太田国務大臣 たびたび申し上げます通り、根本としての小選挙制度が支持される限りにおきまして、私の考えは変らないのでございます。
  214. 森三樹二

    ○森(三)委員 太田長官は、この小選挙区制を策定することは、いわゆる二大政党を国会において成長せしめ、そうして日本の議会政治をして非常に妙味ある運営をせしめるのだ、このようにしばしば言っておられた。しかし、私は、今日の情勢では、やはり過去の、自由民主党の合同されない前、すなわち一方に一つのキャスティング・ボートを握る政党があって、このような暴虐な法案が出ましたときに、われわれ社会党の正しい要求に加担して、一つのブレーキをかけたところの抵抗をすることが、私は現在の日本の国会の運営としてはよいのではないかという気さえもするのであります。すなわち、自由民主党が三百九十九名というような多数を擁しておる。その多数横暴のもとに、いわゆる政府提案が一応支持されておった。従いまして、今後の運営におきましても、二大政党といい、また二大政党の運営が欧米あるいは英米のそれにならって必要であるといわれましても、英米のごとく、たとい政府与党といえども野党主張する修正が正しいと思うならば、それを謙虚な気持で受け入れるという態度があるところの国会の運営ならばよろしいけれども、日本の現状からするならば、全く保守党と社会党とが対立している場合において、一方が出しました法案につきましても——自由民主党の諸君の中にも、あのいわゆるゲリマンダーに対しては、三分の一の諸君は心から反対をしておった。しかし、その政党の主流の決定に対しては、心ならずも表面では反対をしていなかった。しかし実情は百名になんなんとするところの反対があったのです。従いまして、今日の鳩山内閣、特に太田さんは二大政党論を主張しておるけれども、私は、あなた自身がもうすでにこの二大政党を否定するような政治の運営を行なっておられるのではなかろうかと思う。世論があれほど反撃いたしました場合に、あなたがいわゆる謙虚な気持でその法案を撤回する、あるいは修正するというような態度をとるならばよろしいけれども、議長裁定がなければあくまでもこれを強行突破しようというような場合においては、これを解決するところの方法が全くない。しかも、二大政党でありますから、一方の政党が反対しても、一方の、つまり政府与党はそれを強行突破しようとする。私は、これでは、二大政党によるところの国会の運営、国民生活安定の施策は行うことができないと思う。自由民主党というものがむしろ統一されない前、合同されない前の国会の運営非常に横暴な法案が出ましても、一つのキャスティング・ボートを握る政党があるならば、しばしばわれわれ社会党とその当時の保守党のうちの一部の反政府党とが政策面でもってともになって戦って、そうして法案を食いとめた例もある。従いまして、今後において、あなたのようないわゆる責任を考えないところの国務大臣によって、このような暴虐な法案が出されてくるような情勢下においては、いわゆる謙虚な気持になって何らの反省をしようとしないような政策や法案をお作りになろうとするような内閣のもと、あるいはこれを支持する政党のもとにおいては、二大政党は、むしろ国民のためにも、日本の政治のためにも、幸福をもたらすような施策というものはできないのである。私はこのような考えを最近持ってきておるのでありますが、太田さんは、これに対しまして——あなたは小選挙区制になれば二大政党は育成できるということをしばしば言っておられる。しかし、あなたのとっておるところの政治の現実は二大政党を育成しようとするのではない。私はこれを全く痛感するに至っております。太田さんの今回とられたこの法案に対する態度というものは、まさしく二大政党育成を目途としたところの態度ではなかったといわざるを得ないと私は思うのでありますが、これに対して率直なる御答弁を願いたいと思うのであります。
  215. 太田正孝

    太田国務大臣 私は二大政党育成論を今も支持しております。この数年来におきましての政党の実態が、分れておった方がよかったという御意見に対しては、私は賛成することができません。さればにや、世間におきましても、どうか二大政党になるようにというのが世論であり、私ども保守党におきましては、少くともその声において合同ができた次第でございます。  また、第二の点につきまして、野党の意見を聞かないかというお言葉でございますが、小選挙区論を主張する私たちと、中選挙区もしくは大選挙区、比例代表制等を加味されんとするお考えとは、これは基盤が違うのではないかと私は思います。私は弱くありまして、人様の御意見のいいところはいれる考えでございますが、ただ、いかにも小選挙区論としからざる中、大選挙区論とは、今日の状況においては大へんな違いがある、かように思うのでございます。世の中の正しい議論を伏せようなどとは私は決して思っておりません。しかし、根本論といたしまして、小選挙区論というものが私の主張であり、しかも、二大政党は、この数年来の経過を見ましても、育成すべき義務もあるものではないか、それを果すのには小選挙区制がいい、かように信じておる次第でございます。
  216. 森三樹二

    ○森(三)委員 すなわち、私は、小選挙区制が是か中選挙区制が是かということは、あなた方と意見の対立があることはわかっておる。それはあなたがおっしゃらなくてもわかっておるが、いわゆる小選挙区制を採用しようという立場に立っても、今回のような法案は、すなわち世間でも言っておる通り、実に政府与党党利党略案であり、ゲリマンダーである。このようにもう国民がこれに烙印を押してしまったのだ。従って、たとい小選挙区制を採用せんとするあなた方の立場においても、あのような国民ゲリマンダーだという烙印を押されるような法案をあなたがお出しになった。しこうして今回議長裁定が行われまして、その結果与党から大幅な修正案が出されるに至ったのです。従って、今あなたが小選挙区制あるいは中選挙区制の意見の対立というものは解決できないと言われた。それは私どもも知っております。知っておりますが、少くともこの際選挙制度調査会というあの政府に委託されたところの調査会の答申も出たのです。それを全く無視してゲリマンダーを作ったのはあなた方じゃないですか。この政治責任というものは、あなた方としてはとうてい許されることができないと私は思う。そのいわゆる政府案を作ったところの、そうしてあのゲリマンダーを作られたところのあなた方の責任というものは大きいと思うのです。これに対してはどういうお考えですか。
  217. 早川崇

    ○早川政府委員 たびたび大臣から御答弁になりましたように、政府としては、すでに矢が弓から離れておりまして、国会審議にかかっております。その国会審議の過程におきまして、このたび一つ修正案が出ました。その修正案に対しまして政府はどうかと、こういう段階にきておるわけであります。もしその修正案が小選挙区自体を根底から葬むるような修正案であれば、当然政府は責任をとらなければならぬ。ところが、そうじゃなくって、公認制度であるとか、あるいは政党本位選挙運動とか、小選挙区の基本に関するものが保存されておりまするから、われわれはこれはのむ、こういう立場に立っておるわけでございまして、その考え方に間違いはなかろう、かように思うわけであります。
  218. 森三樹二

    ○森(三)委員 私は、あくまでも政府が考えておるところの小選挙区制の問題と、それから政党の政治活動の二本の柱が修正案の中に入っているから、それであなた方の責任がのがれられるんだというような考え方に対しては、とうていわれわれは了解できない。しかし、あなた方はてん然として恥じることなく、これに対して責任のないようなことを言っておりますが、私は、これは今後もあくまでも追及し、われわれの機関を通じまして徹底的に太田長官の責任を追及しなければならぬと思っておる。しこうして、私は、今度与党から大幅な修正案が出されましたが、非常におそるべき問題を含んでおると思うんです。ということは、法案の内容につきましては提案者から明日承わりたいと思いますが、ここで私は太田長官に十分お尋ねをしておかなければならぬことがあるんです。と申しますことは、かの選挙制度調査会において作りましたところの区画割りについても、あの区画割りを作る場合においては、六人の委員と自治庁の兼子選挙部長らが熱海の某所に糾合してあれを作っておったんです。で、今後できるところのこの七人委員会というものも、この法文の中では、選挙管理委員会の規定の適用を受けることになっておりますが、これはやはり私は独立の機関でなければならぬと思うんです。あなた方の意思がそこに入っているというならば、非常に私はおそるべきものだと思う。選挙管理委員会は自治庁長官の指揮監督に服することになっておるのでありますが、この法文自体からいうならば、私は必ずしも今度できるこの法案——かりにまあできたとしたならば、この七人委員会というものは、自治庁長官の指揮監督に服すべきものでは法的にもないし、実際上もない。あなたが指揮監督するというならば、まことに危険千万で、とうてい安心してまかされるものではないと思う。これに対してあなたはどういう御所見を持っておられますか。
  219. 太田正孝

    太田国務大臣 指揮監督する考えは毛頭持っておりません。
  220. 森三樹二

    ○森(三)委員 まああなたは幸いに指揮監督する御意向がないと言われましたが、ところが、実際問題とすると、あの選挙制度調査会区画割りを作るとき、すでにあなた方の圧力というものは入っておったんです。これは私は実におそるべきものだと思う。ほんとうにあなた方が、良識的に、今後生まれるところの七人委員会というものの不羅独立性を尊重して、これらの人々にのみまかされるならいいんですよ。あなた方が、内々、こうしろ、ああしろといって指示する。しかも政府与党の連絡機関となってあなたが活動される。——自治庁長官として今後いつまでもあなたが存在されるということもないかもしれません。以前は川島正次郎君が自治庁長官であった。今度の区画割りを作るにしても、自民党委員長は川島正次郎君であって、これは前の自治庁長官である。やはり自治庁に対しては十分にらみのきく前歴がありまするので、自治庁の選挙関係には相当自分の意見というものを入れることができた。しかも、あなたといろいろ相談しておることも、われわれは十分聞いておる。従って、選挙制度調査会のあの案ができるという前提に立っても、われわれの見るところでは、相当政党の色彩、政党の希望というものが入っておったんです。そこでかりにこの法案が通って、七人委員会というものができます。ここに書いてあるような諸君が任命されると書いてあるけれども、これに対して政府がいわゆる圧力をかけて区画割りを作るならば、これは全く空文になってしまう。私は、この中に、今後の運営に対しておそるべき問題を含んでおると思う。しかも、私から言うならば、この中にも「同一の政党その他の政治団体に属する者が二人をこえないようにしなければならない。」ということが書いてありますが、実際においては、その人が、政党人として実際の所属政党の登録というようなものが明確にわかればよろしいけれども、かりにわからない場合、しかもその人が政党人であるというふうな場合もしばしばあるのであります。この政党人というものは一応禁止でもするならば格別でありますが、政党人をここに入れるということは、私は非常に大きな誤謬を犯すと思う。これは与党修正案でありますが、一応自治庁でもこれに関係してこの法案を作られておる。太田さんといえども、この与党修正というものはあなたは十分御研究になっておる。あなたは、受ける以上は、この内容を十分知っておられるはずだ。これに対してはあなたはどういうお考えを持っていらっしゃるか。せっかくこういうものを、かりに作ったとしたところで、色のついたものであり、しかもあなたがそれを指揮監督をする——あなたは指揮監督はしないとおっしゃったけれども、しかし、実際において、政党所属のあなたが、国務大臣であり、また政党の意向というものを十分反映するところの義務を持っておる。そうすれば、この委員会にあなたが働きかけて能動的な運動をしてはいけないものだ。能動的な運動をしてはいけないものであるならば、実際問題としては、この間の選挙制度調査会の状況を見ても、あなた方の活動というものは選挙制度調査会の意思の中にこれが通じているんです。私はそれを非常におそれる。従いまして、この法案においても選挙管理委員会の規定を準用してありますが、私どもは、太田長官の責任と、またこの法案を作ることについて、あなたはこの法案を受けたのだから、受ける以上は、私はこうした問題についてもあなたは十分御検討になっておられると思う。これに対する御所見を一応承わりたい。
  221. 太田正孝

    太田国務大臣 今度の委員会は、法律によってきまった地位の人たちと衆議院議長の推薦するお方が二人でございまして、この意味におきまして公正なる委員会ができると思います。もちろん、内閣総理府に置かれる関係におきまして、事務的の点は選挙部において見るでございましょうが、これを指揮監督する、これを左右するような考えは毛頭持っておりません。そうでございますから、午前のときに申し上げた通り答申案ができたならばそのままを出す、ただし、その後においてわずかな期間でございましても、提案する前におきまして行政区画の変ったときはやむを得ないことでありましょうが、その以外には何ら手を触れない方針であるということを、はっきり申し上げた次第でございます。また、この提案理由の中においても、「世論にかんがみ」と、与党修正案理由に書いてある通りでございますから、私は厳格に今申し上げたことをお約束申し上げる次第でございます。
  222. 森三樹二

    ○森(三)委員 あなたは、今回この法案が通って生まれるところの七人委員会一つの案を作ったならば、そのまま政府案として出すというふうなことを言っておられます。まことにその言やよしでありますが、実際において区画割りを作る場合に、たとえば町村合併その他のような場合には手を入れるというようなことを言っておられます。また選挙制度調査会答申案についても尊重されると言っておる。ところが、口では尊重と言うのですが、現実に現われた問題は、全く尊重の反対の無視をしておる。こういうことでは、いかに法律ができたところで、私は全く空文に帰してしまうと思う。従いまして、あなたが明確に再びそのような間違い——いわゆる七人委員会がせっかく案を作りましても、またまた第二、第三のゲリマンダーを作ったのじゃ意味をなさない。(「やらぬと言っているからいいじゃないか」と呼ぶ者あり)やらぬと言っているけれども、やっているのだ。(笑声)太田長官は口ではそういうことを言っておられるけれども、すなわち選挙制度調査会区画割りを十分尊重するということは、何回も何回も太田さんは答弁されておる。しつこいほど答弁されておるが、現実の問題としてそこに現われたものは、全く調査会の結果というものを無視されておる。私は、そういう意味において、重ねて太田長官の責任ある答弁を望みます。  時間がございませんので、他は一応留保いたしまして、明日また私の質問を続行したいと思いますが、これに対する答弁を求めます。
  223. 太田正孝

    太田国務大臣 ただいま申し上げました通り区画画定委員会におきまして公正なる案ができ、それを政府において提案いたしたい。何らそこに作為をしないということを、かたくお誓い申し上げます。
  224. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 本日はこれにて散会いたします。    午後四時五十二分散会