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1956-05-10 第24回国会 衆議院 公職選挙法改正に関する調査特別委員会 第29号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年五月十日(木曜日)    午前十時五十五分開議  出席委員    委員長 小澤佐重喜君    理事 青木  正君 理事 大村 清一君    理事 松澤 雄蔵君 理事 三田村武夫君    理事 山村新治郎君 理事 井堀 繁雄君    理事 島上善五郎君       相川 勝六君    臼井 莊一君       岡崎 英城君    菅  太郎君       椎名  隆君    瀬戸山三男君       田中 龍夫君    中垣 國男君       二階堂 進君    福井 順一君       淵上房太郎君    藤枝 泉介君       古川 丈吉君    森   清君       山本 勝市君    片島  港君       佐竹 晴記君    鈴木 義男君       滝井 義高君    竹谷源太郎君       原   茂君    門司  亮君       森 三樹二君    山下 榮二君       山田 長司君    小山  亮君  出席国務大臣         国 務 大 臣 太田 正孝君  出席政府委員         自治政務次官  早川  崇君         自治庁次官   鈴木 俊一君         総理府事務官         (自治庁選挙部         長)      兼子 秀夫君  委員外出席者         議     員 中村 高一君         総理府事務官         (自治庁選挙部         選挙課長)   皆川 迪夫君     ――――――――――――― 五月十日  委員森島守人君辞任につき、その補欠として門  司亮君が議長の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  公職選挙法の一部を改正する法律案内閣提出  第一三九号)  政治資規正法の一部を改正する法律案中村  高一君外三名提出衆法第二一号)  公職選挙法の一部を改正する法律案中村高一  君外四名提出衆法第二二号)     ―――――――――――――
  2. 小澤佐重喜

    小澤委員長 これより会議を開きます。  内閣提出公職選挙法の一部を改正する法律案中村高一君外三名提出政治資金規正法の一部を改正する法律案中村高一君外四名提出公職選挙法の一部を改正する法律案、以上三案を一括して議題に供します。  質疑を継続いたします。門司亮君。
  3. 門司亮

    門司委員 大臣に最初に聞いておきたいと思いますが、これは大臣がすでに説明をされて、衆議院を通過し、参議院をおそらく通過して法律になっておると思いますが、二月の十六日に提出されて、本会議を三月八日に通った国会議員選挙等執行経費基準に関する法律の一部を改正する法律案というのがあります。この大臣説明書を読みますと――選挙法の百四十四条ですが、百四十四条のところに該当する大臣説明書を読んでみますと、衆議院議員候補者については、現行二千枚を五千枚にする。こう書いてあります。ところがこれは大臣の誤まりだこ思う。これは兼子君の誤まりじゃないかと思う。現行法で、五千枚になっております。そうでしょう。そうして今次の今出されておりまする政府原案では、これが三千枚に訂正してある。これがほんとうでしょう。私はこう解釈するのですが、それは間違いございませんか。  〔委員長退席大村委員長代理着席
  4. 兼子秀夫

    兼子政府委員 百四十四条につきまして、前回改正におきまして、政府説明が、現行二千枚を五千枚と説明したのは誤まりじゃないか、このようなお尋ねでございますが、御承知のごとく、百四十四条におきましては、衆議院議員ポスターは二千枚という規定に第一号でなっておりまして、この百四十四条のポスター運動用ポスターでございまして、これは、二百一条の三の規定によりまして、その第二項で「第百六十四条の二第七項に規定するポスターは、公職候補者一人について、五千枚を交付する。」このようは衆議院議員選挙特例規定がございまして、百四十四条のポスター枚数が、何と申しますか、規定はございますが動いておらなかったのであります。でございますので、二百一条の三の規定を削除いたしまして、百四十四条の規定を復活すると申しますか、それで百四十四条の第一号が二千枚になった。その二千枚を五千枚に改める。特例廃止して本則に戻って本則の二千枚が五千枚になる。実質上は御指摘のごとく変りはないわけであります。ポスターの性質が違っただけでありまして、枚数は御指摘のごとく同じとございますが、法律整理といたしましては、二千枚が五千枚になっておるわけであります。
  5. 門司亮

    門司委員 そうすると、これは今度の改正の法案で三千枚になる、こういうことですか。
  6. 兼子秀夫

    兼子政府委員 今度の改正で三千枚にいたすことになります。
  7. 門司亮

    門司委員 私はそうだと思います。その通りだと思います。そこで、大臣に聞いておきたいと思いますが、この法律案の出ましたときに、私は大臣には念を押してあります。こういう法律案を出して先に可決することがいいか悪いかということ、それは、新しく出る選挙法改正について、必ずこういう基準選挙賞用影響するものが出てきやしないか、その場合にまた改正案を出すかという質問大臣に私はしているはずです。ところが、その通りになってきて、費用の算定の基礎になる数字に違いが出てきた。そうすると、この衆議院を通過して、すでに参議院を通過して法律になっておると考えられるが、その一部をまた改正しなければならぬようなことになりはしなか。おそらく、大臣は、費用関係は、枚数が少しくらいふえても減っても、大して違いはないという御答弁を私はされると思うのだが、法律体裁としてははなはだまずいものができる。同一国会に、一方は五千枚で通して、一方は三千枚にする、こういう法律体裁上きわめてまずいものができると思うのだが、この点に対して大臣はどうお考えになるか。
  8. 太田正孝

    太田国務大臣 告知用ポスター運動用ポスターにした関係でございまして、その意味においての改正でございます。
  9. 門司亮

    門司委員 これはその意味において改正ですが、私の聞いておりますの費用の、要するに基準になる数字が、いずれにいたしましても、こういう形で違って参りますると、法律体裁としては、私はきわめてまずいものができると考えるのでございます。前の国会には五千枚というふうに直そうという考え方大臣説明されておる。ところが、今度は三千枚になって出てくる。この数字の食い違いが私は、この法律体裁としては――専門である兼子君にでも聞けば、いろいろ第何条がどうだこうだといって、一応の説明はするかもしれませんが、これは、法律だけを見て、選挙管理委員会にそれを持っていくと、きわめて妙なものが出てきやしないかと思う。私はどっちがどうかわからぬように感ずるですが、どういうふうにはっきりと釈明をつけていくのか。
  10. 太田正孝

    太田国務大臣 申し上げるまで、もなく、趣旨目的が違っているからそういうふうになったのでありまして、なお詳しくは選挙部長から御説明を申し上げます。
  11. 兼子秀夫

    兼子政府委員 この告知用ポスター廃止の議論は、第二十国会改正のときにも若干出ておったのでありますが、その後の選挙の実績にかんがみまして、御承知のごとく改正になったのであります。従いまして、候補者運動員の方々は十分その点は御承知になることだろうと思います。また、選挙管理委員会といたしましても、大事なこと、でございますので、いかに改正になりましても、その点はあやまちがなく徹底できると思うのでございますが、確かに、同一会期に同一条項と申しますか、形式的には二千枚を五千枚とし、さらに三千枚になるということは、非常にややこしいという感じを与えるのでありますが、先ほど大臣から御答弁がありましたように、これは小選挙制実施に伴う改正でございまして、趣旨目的が全然遣う。実質におきましては、前回のときにはいじっておらないのであります。
  12. 門司亮

    門司委員 どうも私にはわからぬのですが、枚数の変更が当然あるということになりますと、やはり国会議長選手等行経費の共進に関する法律の一部改正が出ておりますから、私はこの法律あとから出せばよかったと思う。それを先に可決している。五千枚になって経費基準ができている。新しい法律は三千枚に変えてある。そこに、法律の取扱いとして、私はきわめてまずいものになりはしないかという考え方なんですが、どうなんです。
  13. 兼子秀夫

    兼子政府委員 国会議員選挙等基準経費に関する法律の前町の改正におきましては、告知用ポスター運動用ポスターに切りかえました関係上、告知用は従来公営でございましたが、運動用でございますので、関係経費を落しております。従いまして、今回は、国会議員選挙等基準経費に関する法律に関しましては、関係がないわけでございます。
  14. 門司亮

    門司委員 私はそういうことが事務事務的の一つのごまかしだと思うのです。片っ方落してあるから、こっちで数字が減ったからといって、総合して計算すれば同じようなものだ。経費は同じようだと言えるかもしれない。どちらにしても、今まであったものをやめて、変えているんだから、それはいいんだ、私はそういう答弁だと思う。またこの前の質問のときにもそういう答弁をしている。選挙基準に関する襲用だから、多少狂ってきてもこれでいいと考えるというような答弁をしている。そういう甘いわけをするだろうが、法律としてわれわれが審議する場合には、同じ数字のものが大臣説明書の中にないと、非常に体裁が悪い。だから、この点は大臣がどう考えるかということです。同じ国会に同じ選挙に関する法律案が出ておって、片一方には二千枚を五千枚と改めた、その次には三千枚と変えた。ほんとうなら三千枚がはんとうだ。あなたの方は、事務的に今までの公営告知川をやめた、従って経費の上には枚数には変りはないんだと言う。そういうことではなくて、私の聞いているのは、一つ政治論といいますか、結局同一国会にこういう大臣の異なった説明をしなければならないような法律案をどうして出されたかということなんです。
  15. 兼子秀夫

    兼子政府委員 先ほども申し上げましたのですが、前回告知用ポスター廃止に伴いまして、国の国会議員選挙等に出します経営の面におきまして、それはその金額か落ちるわけでございます。従って、その費用候補者の方に移るわけでございまして、基準経費に関する法律には関係がないわけでございます。従いまして、今回の小選挙区の実施に伴って選挙区が小さくなって枚数が減るというようなことは、候補者経費には関係がございますが、国の公営経費の方には関係がないわけでございます。
  16. 門司亮

    門司委員 私は、さっきから申し上げておりますように、国の経費関係がないということは一応甘えると思います。通算すればそういうことになると思う。しかし、大臣説明としては、同じ国会数字の異なった説明をされているのです。私はそういうことが政治的にどうかと言うのです。見てごらんなさい。大臣説明書にはちゃんと書いてあるのです。その点、見方によるとどうもおかしいんですよ。費用の内訳は違っておっても、総体の費用変りはないからというのが、部長答弁だと思う。だからこれでいいんだという御答弁だと思う。それは事務的に考えればそれでいいかもしれない。しかし、法律体裁としては、変えたら変えたように、一つ一つ法律が、やはりつながっておる法律として、だれにもわかるように法律説明を一応しておいてもらわぬと、読んでいる方では、どっちがほんとうだか一向わからなくなってくる、こういうことなんです。もう一応大臣から、一つはっきり、どれがほんとうなのか、どうしてこうなったかということを聞いておきたいと思います。
  17. 太田正孝

    太田国務大臣 先ほど私が申し上げました通り選挙制度のこの趣意に基きまして前のと変ってきたわけであります。この点についての詳細は今選挙部長が申し上げた通りでございまして、さよう御了承を願いたいと思います。
  18. 門司亮

    門司委員 どうも、この問題については、われわれには一向わからぬのであります。(「区域が小さくなるから枚数が減るんだ」と呼ぶ者あり)区域が小さくなるから枚数が減るんだと言うが、法律が出ておるんだ。その法律二つあるのです。一つ法律には五千一枚としてある。同じ国会二つの異なった法律を出しているんですよ。だから聞いておるのです。この法律の出たときに大臣に注意したのです。あと選挙法改正が出ますから、そのときに数を注意をしたんですが、会議録を読んでごらんなさい。出てきたものはやはり数字が違って出てきている。それは、通算すれば費用が同じだから、国の費用は同じだという事務的な答弁をしている。あるいはそうかもし下ない。しかし、法律自体改めるものは改めておかないと、われわれとしてはどうしても納得がいかないんだ。だから国会議員選挙等執行経費基準に関する法律の一部改正法律案の方は、これはもう大まかに事務的にものを考えて出したんだ、あとから選挙法が変っても、その費用の内部において数字が同じなら変えなくてもいいという当局考え方だろうと思う。しかし、それでは法律自体体裁は合わなくなってくると思う。だから、この点をもう少しはっきりしておいてくれませんか。
  19. 兼子秀夫

    兼子政府委員 先ほど申し上げましたように、告知用ポスターは御承知のごとく公営でございます。従いまして、国会議員選挙等基準経費に関する法律によって国の経費を支出いたすわけでございますが、その運動用ポスターになりますと、その基準経費法律改正いたしまして、前回改正でその関する部分の金額を落したわけでございます。今度の改正におきましては枚数は五千枚から三千枚になりますが、これは、運動用ポスターでありまして告知用ポスターでございませんの、国の出します経費には関係がないわけであります。
  20. 門司亮

    門司委員 もう一ぺんあなたに聞いてみますが、大臣はこう説明しておるのですよ大臣説明書は、前段を一応抜きましてこう書いてあります。一応読んでみますと、「改正について申し上げますと、第一点は、衆議院議員及び参議院地方選出議員個人演説会告知用ポスター制度廃止されることに伴い、個人演説会告知用ポスター経費に関する規定を削除することであります。」、こう書いてある。これは今お話し通りであります。「第二点は、候補者が使用する選挙運動用ポスター枚数を、衆議院議員候補者については、現行二千枚を五千枚に、」と、こう書いてある。「参議院地方選出議員候補者については、現行二千枚を八千枚に」、こう書いてある。これは、明らかに、大臣説明書から見ますと、選挙運動用ポスターと書いてある。そしてこれが今のように数字が変ってきておるということになると、基準に関する法律だから、国の経費をどのくらいに見積るかという経費なんだから、大体通算して同じような経費であるなら同じでもよろしいというのが、当局のお考えであろうと私は思う。ところが、どう考えても、この大臣説明書を読んでみて、今お話しのように選挙運動用ポスター枚数とこう書いてあります以上は、今度三千枚と変ってきたものとの関連性がないとは甘えないと思う。だから、法律の姿をすっきりしておいてもらいたいと思う。変ったなら変ったでもいいですよ、どう変ったって。しかし、法律だけはすっきりしておかないと、こういうややこしい説明が出てくるのです。
  21. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 この点は、先ほど来選挙部長から申し上げている通りでございまして、公営の経につきまして執行経由基準法は定めておるわけでございますから、経費に直接関係を持って参りまするのは、個人演説会告知用ポスターというような公営ポスターにつきましては、それをどうするかということで影響を持ってくるわけであります。それで個人演説会告知用ポスター経史に関する規定は、すでに参議院関係改正でこれは落したわけでございますから、経費基準法の上からいいまして、この関係はもう全然ないわけであります。今度は、ただいま御指摘のように、候補者が使用する選挙運動用ポスター枚数が二千枚というのを五千枚にいたし、これをさらに三千枚に今回の政府提案では改正をしようというわけでございまして、これは要するに個人候補者でございますけれども、経費基準といたしましては関係を持ってこないわけでございます。
  22. 門司亮

    門司委員 その説明は、それは違うのじゃないか。大臣説明書は、少くとも選挙費用の決行の経費基準に関する法律案説明の中に入っておるのだよ。個人が負担するなら、大臣がこんなところでよけいなことを言わなくてもいい。個人が幾ら負担しようと、国の選挙費用にちっとも関係がありはしない。国の選挙費用関係があるから、私は言うのです。それを五千枚が三千枚になってくると基準が今全然違ってくるのだ。問題は、同一国会同一関連のある法律で、二つ数字が出てきておるところにおかしいところがある。法律とどうして合せなかったか。これが委員会にかかったときには、必ず選挙法改正法律案が出てくる。出てきたときには違ったものが出てくるのではないか。そうすると一事不再議が問題になってくるが、この法律は通してもいいかということは念を押してあるはずだ。ところが、出てきたものはやはりこんなものが出てきた。もう少しはっきりしておいてもらいたい。
  23. 太田正孝

    太田国務大臣 そういう必要がある場合には直すということを、私はそのときに申しております。
  24. 兼子秀夫

    兼子政府委員 門司委員の御質問は、前金の国会成員選挙等執行経費基準に関する法律の一部を改正する法律栄提案理由の御説明をお引きになって御質問であります。衆議院議員告知用ポスター廃止基準経費そのもの影響をを持つわけでございますが、それ以外の運動用ポスター枚数を憂えましたことは、これは、基準経費の面におきましては、そのポスター検印等事務費、そういうものに関係を持つ点において御説明を申し上げておる次第です。
  25. 門司亮

    門司委員 私はそういう事務的のことを言っておるわけじゃないのです。同じ国会基準が違ってくるということは、どうもちょっとおかしいですよ。だからもう少しわかりのいいように話をしてもらわないと、大臣の御答弁のように、そのときに法律を改められるなら改められてけっこうです。けっこうですが、改められるということになると、どっちの法律を改められるかというと、結局経費基準に関する法律の方を改めなければならぬと思う。そうするとこの法律はこの国会で成立しておるのですよ。参議院を通っております。これをまたこの国会で出しますか。また三千枚ということになりますが、そんなことになったら大へんでしょう。そんなことはできないでしょう。だから、さっきも言ったように、委員会で、そういう心配はないかといって念を押したのだ。そうなりはしませんか。
  26. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 ただいまの点ですが、個人運動用ポスター枚数をふやした関係だけで、この国会議員選挙などの執行経費基準に関する法律を特に改正する必要はないと認めておりますので、私どもはこの関係のことは提案をいたさなかったわけであります。もし必要がございましたならば、これは公職選挙法改正案の附則において当然にこの関係条項整理すべきであったのでありますが、この必要がないと考えておりますので、特に提案をしないわけでございます。
  27. 門司亮

    門司委員 これは、法律立法技術の上からいけば、あるいはそういうことが言えるかもしれない。しかし、体裁としては、これはどう考えてもきわめてまずいものですよ。今の大臣の御答弁のように、数字が間違っておるなら、新しい法律か何かに訂正しておく必要があると思う。そうしておかないと、同一国会で異なった法律が出ておるというように解釈することが私は一面できると思う。基準が違ってきておるのですから、経費の上において、事務には差しつかえがないという答弁はできるかもしれない。しかし法律上の体裁としてはどうもまずいものができ上るということになると私は思う。だから、この点については、もう少しあなたの方ではっきり話をまとめておいてくれませんか。後ほどでもいいから、間違いがないように一応こしらえてもらいたい。これをいつまでも押し問答しておりますと、きょう一日押しておっても始まらぬと思いますから、あとでこれは内容をはっきりしてもらいたいと思います。  それから、その次に一応聞いておきたいと思いますことは、問題になりますのは、法の二百七十条の二の改正であります。現行法によりますと、「中央選挙管理会選挙管理委員会、」こう書いてある上に、「自治庁長官」という字を入れるということであります。これは何の必要があって入れられるのか、この点を一つはっきりしておいてもらいたい。
  28. 兼子秀夫

    兼子政府委員 現行の第二百七十条の二の規定は、選挙に関する届出等の執務時間に関する規定でございます。午前八時三十分から午後五時までの、間にしなければならない。」こういう規定でございますが、この選挙管理官庁と申しますか、この規定は「中央選挙管理会選挙管理委員会投票管理者開票管理者選挙長選挙分会長などに対してする届出請求、申出その他の行為」、こういうことになっておまして、現在自治庁長官に対する届出請求等は、この規定の解釈上、やむを得ず「分会長等」の「等」で読んでいるのでございますが、やはり自治長官に対する届出等がございますので、これは自治庁長官というものを頭に規定上出そう、こういうことの趣旨改正でございまして、事務的の趣旨改正でございます。
  29. 門司亮

    門司委員 私はおそらく、そういう答弁があるだろうと思っておりましたが、事務的の問題としても、自治庁長官は、現行法によっても、都道府県の選挙管理委員会その他を指揮監督することができると書いてあります。さらに、参議院の全国区についても、選挙管理委員会ですか、その執行指揮監督をすることができると、ちゃんと書いてある。それ以上に、ここにこういうことを一体入れる必要があったかということです。今の兼子君の答弁ですが、「等」ということでやっておったというのですが、届出なんというものは、自治長長官に届け出なければならぬようなものは、今日の選挙の状態ではないのであって、選挙管理委員会に届け出ればいいことになっている。事務整理だというような軽い意味であなたの方は上に書かれたかもしれないが、この選挙法改正を通じて見ると、やはり自治庁長官というものが非常に大きく選挙全体を支配するという感じを持たせることになりはしませんか。
  30. 太田正孝

    太田国務大臣 ただいま選挙部長が申された通り、現在もその通りやっているのでございまして、規定上それが出ておらないのを「等」という字に含ましておったのを、現在やっている通りに直したのでございまして、新たに自治庁長官の権限をふやすとか、そういうような意味においてしたのではございません。明確にいたしますためにかようにいたしたにすぎないので、新たにそういうことをするのでなく、すでに現状におきましてそうやっているのでございます。
  31. 門司亮

    門司委員 問題は、今申し上げましたように、今まで何も差しつかえなかった。これは差しつかえないはずです。特に自治庁長官と書かなくてもいいはずですし、また、選挙の際に自治庁長官届出をしなければならないということは、ほとんどないはずです。だから、今までに支障のなかったものを、ことさらに事務整理としてどうしてここに入れなければならなかったかということは、私は単なる事務整理ではないと考える。この改正された選挙法とはかの法律とを兼ね合せて見て参りますと、選挙というものが公平無私に行われるような形をなしておらない。これを私は聞いているのです。どうしてもこれを入れなければならないという具体的の事実がありますか。
  32. 太田正孝

    太田国務大臣 ただいま申しました通り現実にやっておらないのを新たにやるならば、門司委員の御指摘のような問題が起りましょうが、現実にやっているのでございまして、ただそれを明らかにしたといって、それが新たなる強い力をそこへ加えるというような意味では断じてございません。
  33. 兼子秀夫

    兼子政府委員 選挙の管理事務は、大部分は都道府県選管なり市町村の選管でやっておりますので、選挙が公正に行われないではないかというような御心配は、これはないと思うのであります。ただ、自治庁長官に対する届出その他の行為があるかないかの問題でございますが、政党の政治活等につきまして、これは法律規定に基きまして自治庁長官届出があるわけであります。この受付の時間でございますが、これは、選挙法の全般から見まして、やはり二百七十条の二の規定で、従来はこの一番最後の「等」に含んで読んであったのでございますが、先ほど申し上げましたように、自治庁長官に対する属も、はっきりとほかの選挙管理機関と同じような執務時間にしよう、ただそれだけの趣旨でございます。
  34. 門司亮

    門司委員 この問題もいずれあとでだんだん私どもの考え方のようなものが出てくると思うが、一応そうしておいて、その次に聞いておきたいと思いますことは、自治法の改正との関連性であります。自治法の改正で、御存じのように、選挙管理委員会というか、各種委員会事務局を長の任命する者が兼任することができるような規定に改めております。このことは、選挙が厳正公平に行われなければならない今日の選挙管理委員会の機能をかなり大きく阻害するものだと考えるが、選挙関係からくる大臣のお考えは一体どうなのか、その点を一つこの機会にはっきりしていただきたいと思います。
  35. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 今回の地方自治法の一部改正法案におきまして、御指敵のように、行政委員会等の事務局の職員と、それから知事部局、市町村長部局の職員との間の兼職の規定を定めておるのでございますが、この点は、要するにできるだけ繁閑相応じて仕事ができるようにいたしたい、最小の経費でできるだけ能率的に専務処理ができるようにいたしたいというようなことから、あのような規定を設けておるわけでございまして、そのことの結果といたしまして選挙に関する仕事が不公正になりまするとかいうような心配は、私ども全然ないものというふうに考えておるのであります。
  36. 門司亮

    門司委員 これは非常に大きな誤まりだと思います。選挙を公正に行おうとするには、やはり事務局の事務員というものは選挙管理委員会がこれを任せ命ずるというような縦の系統を明確にしておきませんと、人でありまするから、往々にして任命権者の言い分は割合よく聞くのであります。今までのように選挙管理委員会事務局が独立をしておる場合においては、これは厳正な選挙の管理についての仕事ができると思いますが、これが長の任命した者になって参りますと、やはり任命権者にある程度の、屈従するという言葉は、悪いかもしれませんが、意を体して仕事を行う危険性が出てくると思う。従って、選挙を公正に行おうとするならば、私は現行制度でなければならないと考える。自治法の改正による説明だけでは、いわゆる経費その他が云云されて自治法は改正されておりまするが、私は経費だけでは済まないと思う。こういうきわめて厳正に公平に行うことのために、選挙管理委員会制度というものができておるのであります。しかも、この制度は、先ほどこの委員会でも同僚からの質問がありましたように、現行の議会で選挙するものでなくして、官選にしたらどうかという意見まで出ておる。しかし、現行は都道府県あるいは市町村の議会がこれを選挙して定めておる長はその間に何らの権限も持っておらない。同時に選挙された者が事務局を構成しておる。長はこれについて何らの指揮命令をするわけにはいかない。従って、選挙管理委員会というものは、選挙の公平を期することのために、公平を期する基準に基いて今日の選挙管理委員会ができておる。これを長の任命する者でいいということになって参りますと、今申し上げましたような選挙が公正に行われないという一つの問題が投げかけられてくる。従って、自治法の改正には費用その他の関係でそういうことがいえるかもしれないが、選挙自体から考えて、参りますると、費用がいかようにがかろうとも、選挙の厳正公平を期するという一本にしほられることが、正しい選挙法関係からくる見解だと考える。従って選挙法改正に当って、あの自治法の改正が一体大臣は正しいとお考えになるかどうかということを、もう一度聞いておきたい。
  37. 太田正孝

    太田国務大臣 今回の自治法の改正の中で、ただいま御指摘の問題は、現行法においては「委員の申出があるときは」というのが「委員と協議して」ということになっています。従って、それではいかぬということになりますれば、これは行われないので、その立場を侵すことはない、かように私は考えております。
  38. 門司亮

    門司委員 侵すことはないというお話でありますが、現在大臣の手元に来ておると思うのですが、全国の選挙管理委員会はこのことを非常に心配しております。もし、今度の規定で、地方の財政が苦しいからといって兼任を仰せつけられるようなことになりますと、選挙事務が一応渋滞するということもいえましょうし、同町に身分が行政庁の身分になるということになってくると、どうしても選挙の公正が期せられなくなる。いわゆる選挙管理委員会が意のままに動けないということは選挙自体に悪影響を及ぼすものとして、全国の選挙管理委員会がまだ陳情をしておるでしょう。私がこの機会に大臣に聞いておきたいと思うことは、そういうただ字句だけではありませんで、実質的の問題でそういうことがなされてよいかどうかということでございます。
  39. 太田正孝

    太田国務大臣 ただいま申し上げました通り委員会の方で承諾しなければできないのであります。そこを抑えつけてやるとかいうような意味ではございません。また選挙管理委員会会議が二、三日前に開かれました際におきましても、そのことはよく説明しておいたわけでございまして、決して御心配のようなことはなく、また心配のあることがあってはいかぬと思います。従って、協議するということの意味におきまして、押しつけるのではなくて相談ずくでやるのでありますから、それができないというのならば、これは引き受けるべきものではない、私はさように考えております。
  40. 門司亮

    門司委員 そうすると、あの自治法の改正問題は何で改正されたか、私にはわからなくなってくる。
  41. 太田正孝

    太田国務大臣 協議してできて、それが差しつかえないならば、経費の点にもよくなることでございますし、協議してできないことであるならば、それはいけないこと、できるならばそれをやっても差しつかえない。協議者同士の意思が合致しなければできないのでございますから、できたならば、これはやってもいいことではないか。しかし、委員会側におきましていけないとなったら、これはもちろん引き受けるはずはないと思います。
  42. 門司亮

    門司委員 私はその点を附いておるのですよ。ただ経費だけを節約するということが眼目で、ああいう字句に直されたということ自体に、選挙の公正が侵される危険性が出てきておると思う。だから、大臣選挙の公正を侵される危険性をなくするには、選挙自体の建前からいえば、あの自治法の改正は必ずしも好ましいものではなかったと私は思うが、大臣もそういうようにお考えになりますか。
  43. 太田正孝

    太田国務大臣 もちろん、この委員会の権限をどうするとか、無理に押しつけるというような、今門司委員の仰せられました公正ということに反する場合においては、それは引き受けるわけでもございませんので、その点につきましては委員会そのものの公正の立場から処置されることと思います。
  44. 門司亮

    門司委員 もし大臣答弁がそういう御答弁であるとするならば、私はあの自治法の改正は要らなかった、現行通りでよかったと思う。大臣が同じ大臣で、そうしてああいう改正をしなければならなかった心境というものは、自治法のときに説明されたように、経費その他の関係からくるというなら、これは大臣考え方は大きな誤まりだと思う。そのことは、厳正公平に、そうしてやはり民主主義の原則に従って行政を行なっていこうとするには、民主主義の行政を行うものの原則として考えなければならないことは、経費あるいは能率というようなものも非常に大事なものであることに間違いはございません。経費も能率も非常に大事なことであるごとには間違いはないが、それよりも大事なことは、私はやはりデモクラシーだと思う。従って、どういう旧情がありましょうとも、経費がどうである、あるいは能率がどうであるからといって、民主主義というもののあり方をくずしてはならないと思う。あくまでも民主主義の行政、厳正公平な行政に従って、これに能率と財政というものが調和される形が私は望ましいと思う。これが私はやはり今日の地方行政の根幹をなす一つのもののえ方だと思う。それを、経費がどうだ、能率がどうだということで、行政委員会に多少でもひびの入るような考え方を持つこと自身、大臣考え方に誤まりがありはしないかと私は考える。
  45. 太田正孝

    太田国務大臣 選挙を公正にしなければならぬこと、それぞれの委員会がその立場をもって民主主義的に動かなければならぬことは、お言葉の通りであります。今回の改正につきましては、あるいは教育委員会、あるいは公安委員会、いろいろなものがございます。時期的に忙しくないようなところもございます。その仕事を公正に民主主義的にやることに差しつかえない限りにおいては、わずかな金であっても、この際、地方財政の立場から上て、経済の点を考え、財政の点を考えるということは、私としては現状の地方財政を見ましてやむを、得ないことだと思います。もちろん、お言葉の通り、これが公正を件するとかあるいは民主主義の根本に触れるというような問題でございましたならば、しかも協議してやるわけでございますから、その立場々々の委員会が、しかるべく公正に、しかるべく民主主義に反しない範囲においてやることと思います。しこうして、そのために、わずかの金じゃないかというお言葉につきましては、これは見解の相違だと思います。が、門司委員の言われる公正ということ、民主主義敵に動くということは、私もその通りに思っております。ただ、数々の委員会がありまして、御承知のことと思いますが、地方財政としてはほかの委員会におけるがごとくいろいろの経費がかかっておりますので、今回は、非常に小さいことでありましても、そういう点に注意していって、かたい財政をしていきたい。財政の点はもちろん第二義でございまして、第一義の公正の点あるいは民主主義を侵すことのないようにということは、門司委員のおっしゃるのと同じ考え方でございます。
  46. 門司亮

    門司委員 同じ考え方と言われるが、実際に現われてくるのは違っておりまして、私どもと同じ考え方じゃないように感ずるから、実は聞いているのであります。  その次に聞いておきたいと思いますことは、同じように自治法の改正によって選挙管理委員会の諸君の給与の規程を改正して、これを日当制に改めようという考え方であります。このことは、選挙管理自体から考えて参りますと、非常に時期的に忙しいのであります。同時に、選挙をあやまちがないように行おうとするには、絶えず問題があると考えます。この間に、選挙管理委員会の諸君が、単に日当制で出てくるということになって参りますと、これは選挙管理委員会委員長がおそらく招集することになると思いますが、その人の意思によって各自治体の選挙管理委員会が動くことになる。従って、非常に熱心な方がおありになれば、かなり有意義に使われるかもしれない。しかし、たまたま不熱心な方等があって、招集がされないということになりますと、結局選挙事務というものは全部――協議したかしないかわかりませんが、とにかく長の息のかかった、事務屋の諸君の手にまかされるという危険性が出てくると思う。やはり監督が事務的にも行き届かぬ、従って、責任の所在がどこにあるかわからぬような問題が必ず出てくると思う。だから、襲用の点等については見解の相違だという大臣の御答弁でございますが、費用の点等を選挙管理委員会に関する限りは言うべきではない。選挙の公正を期そうとするには、選挙管理委員会については十分経費を惜しまざる形が、政治をよくする形だと考えておりますが、この点について大臣はどう考えておりますか。
  47. 太田正孝

    太田国務大臣 給与の問題あるいは報酬の問題、日当の問題、手当の問題等は、大体におきまして国の制度に右へならへの方式で行くべく現在行われております。しかるに、国家公務員につきまして、非常勤の者に対しましては日当制をとっておるのでございますので、その点を入れたにすぎないのでございます。ただし、この前のときに、社会党のお方の御質問があってお答えいたしましたが、現在の選挙管理委員会委員の給与そのものがどうであるか、低くはないだろうかというようなお言葉もございました。私もその点については十分考慮しなければならぬことと思っておりまして、ただいま御審議中の別途の地方行政委員会における自治法の改正についての修正御意見等もほのかに聞いておりますが、そういう場合におきましてどうするか、こうなりますと、国家公務員にならって制度を設けるということは私は正しいと思います。ただし、地方々々においての関係もございます。条例等においてこれを定めるようなことも一つの工夫ではないかと思います。門司委員の言われた手当そのものについての問題と、給与に対して国家公務員、地方公務員を同様に考えていく制度のもとに置くべし、非常勤と常勤との関係は公務員の間におきまして厳格に差を見るべしということは、筋の通ったことと私は思うのでございます。しかし、ただいまのお言葉の点につきましていろいろ御議論のあることも聞いておりますので、私といたしましては、制度制度としてかくのごとくするとともに、条例等においてしかるべき方をとっていく方が筋の通ったことではないか、かようにも考えておる次第であります。ただいま出している法案についての別途の自治法との問題でございますが、自治法につきましてそういうお説がありましたことは、私も十分考えて善処いたしたい、こう考えております。
  48. 門司亮

    門司委員 善処されるという言葉ですが、法律法律で、これをかりに条例にゆだねるといたしましても、あるいは費用弁償というような形で、条例からいわばゆだねられるかもしれない。しかし、問題になりますのは、実質的な地方の選挙というものについては、まだ啓蒙の余地も非常にたくさんある。従って、選挙管理委員は非常勤だから国にならえといいますが、国の委員会の非常勤と地方の実質事務に携わっておりますこれらの非常勤とは違うのであります。私は、行政委員会自体、これが常勤であるかあるいは非常勤でなければならないかということには一応議論の余地があると思いますが、しかし、行政委員会としてあります今日の選挙管理委員会が常勤でなければならないという理論にはならぬと思う。これが行政委員会である限りにおいては、非常勤もやむを得ないと考える。しかし、それだからといって、これに日当制を加えてくるということになりますれば、さっき申しましたように必ず弊害が出てくる。やはり常時何時でも必要に応じて各自が出かけていって、啓蒙運営なりあるいは事務の監督ができるような組織にしておくことの方が、私はやりよいと思う。現在のような制度でありましても、実際の選挙に当ってごらんなさい。必ず選管の一カ所か二カ所にできるのは名簿の脱落であります。そうして選挙管理委員会では相当困っている。こういうことがなぜできるかということであります。この原因はどこにあるかよく調べてごらんなさい。どこに原因があるか。選挙というものが非常に重大であることは申すまでもないのでありまして主権在民だなんて言ったところで、主権者としての権利を行使するのは投票の一票だけであります。選挙というものは単なる事務ではないと私は思う、主権在民としての国民の権利、国家の主人公としての国民の権利の行使は選挙のときに一票を投ずるだけであって、ほかはみんな役人がいろいろな法律に基いて仕事をして参りますから、おれは主人公だといっていばってみたところでどうにもならない。その主権在民の国民にとって最も大きな権利を行使する選挙事務選挙の仕事に携わる選挙管理委員会の仕事というものが、長の権限に属する吏員によって満足なものが行われようとも考えられませんし、またこの重大な仕事に携わっております委員の諮れが、普通の委員会と同じように――普通と言うと語弊があるかもしれませんが、あるいは中には大した用のないものもあるかもしれない。全部の行政委員会と同じような形に考えられる。そうしてこれが日当制でいい、出たときだけ支払えばいいのだという考え方自体に、大臣の誤まりがありはしないか。選挙自体がどういう重要性を持っておるかということの大臣考え方が、少し大きくこういう問題には作用することがこの際必要ではないかというふうに考えておるのでありますが、大臣はこの点についてどういうふうにお考えになるか、もう一度御答弁願いたい。
  49. 太田正孝

    太田国務大臣 給与の問題は当人の受ける金の問題でございまして、ただいまの選挙管理委員会委員の方々の動き方についての言葉とは別の問題でございます。ただし、日当という言葉が悪いから、その仕事が非常に問題になるということは、国の給与、地方給与全体を通じての給与、報酬等の定め方の問題でございまして、別に金でもってどうこうという意味ではございません。しかし、実質上の問題として手当が少いとか、いろいろな問題についてはもちろん考え、なければなりませんし、さらに、自治体の考え方から条例で別の取扱いをする場合も考えたらどうかと、こう考えておる次第でございます。選挙管理委員会につきましては、実は二、三日前に会議がありまして、その席でもいろいろな問題が出ました。私も知らないことも多いし、いろいろ聞かれるに、実は選挙管理委員会にもう少し力を持たしたらどうかという説さえ出ております。立会演説におきまして騒いだ者を静めることもできないのです。またやろうと思ってもできないのす。なぜできないかと申しますと、十五分、二十分の間にかりに騒いだ者が的確にありましても、これを処理するところの権能を持っておりません。その際に警察を呼ぶなんということは、最も民主主義的の選挙においていけないことでございますが、そういう場合に何か方法がないかというようなことも唱えられました。また、よくいう、地方において事前なりあるいは選挙中において悪いことがあるならば、選挙管理委員会にもっと力を加えたらばという説さえも出たのでございます。しかし、これは相当大きな問題でございまして、人権にも関係することでございますから、私は、選挙管理委員会制度そのもの、権能その他についてはとくとこの際研究いたしたいと思っておりますが、今回の改正にはそれは加わっておりません。ただいま門司委員の言われました手当の問題と、その委員会の動きの問題と、いかなるふうに民主的の線において選挙管理委員会を動かしていったらいいかという問題と、私は別に考えておる次第でございます。
  50. 門司亮

    門司委員 大臣はきわめてものを割り切って、経済的にものをお考えになっておりますが、人間はなかなかそうは参りません。一定の専業に対する一つのつながったといいまするか、これをかりに現在の労働法規の立場あるいは労働者としての、働く者としての見方からいいますると、一定の期間にずっと継続して雇用されて、おります者の責任感と、その日のその日の給料を支払われる者とのその事業に対する責任感というものは、おのずから私は違ってくると思う。これは、人間でありまする以上は、私はやむを得ぬと思う。国の非常勤の諸君がそういう形になっておりますから、地方もそれでいいんだというお考えは、私は非常に大きな考えの違いだと思う。国の委員会におきましては、直接の仕事をする問題等はほとんどないのであります。ものを定める場合のいろいろな、諮問の機関としての考え方はございます。しかし、選挙管理委員会は、直接選挙を管理するという一つの仕事に携わっておる。自分たちの責任において仕事をしなければならない。国にありまする多くの非常勤の委員会というようなものは、直接自分が責任を持ってどうこうするということは割合に少いのです。同じように非常勤でいい、非常勤だからこうだという考え方で、地方のこういう行政委員会を律せられたのでは、実際の仕事は私はできないと思う。  もう一つ大臣の今のお考えのようだと、お聞きしておきたいと思いますことは、大臣のお考えは、どこまでもの物と人間の動きというものが別個のように考えられておる。物と人間の考え方というものは、一応別個に考えれば考えられるかもしれない。しかし、これは関連性を持っていることに間違いないと私は思う。常時責任を持つ人のものの考え方と、ただ、招集されたときに、その日に限ってその事務を処理すればいいというものの考え方の上には、非常に大きな開きがあると私は思う。選挙管理委員会等のごときは、そういう招集されたときに単なる一つの答申をし、事務を処理すればいいという筋合いのものではないと考える。常時啓蒙宣伝も必要でございましょうし、選挙の際に間違いのないように仕事をしていくという考え方がなければ、この仕事の完遂はできないと私は考える。だから今の大臣の御答弁では私ども満足するわけには参りませんが、大臣のお考えはどうですか。選挙管理委員会の本質をもう少しはっきりしてもらいたいと思います。
  51. 太田正孝

    太田国務大臣 現行法におきましても、すでに非常勤のこれこれという中に選挙管理委員も入っております。非常勤の職員の中に入っておりますので、非常勤と常勤の区別ということは、私は十分考えなければならぬ問題で、あろうと思います。ただお言葉のように少いとかいうような問題につきましては考えなければなりませんが、常勤、非常勤ということはただ受ける給与の問題についてのことでございまして、私は何も人と物とを区別して考えたいという考えは持ちません。ただし、報酬ということは厳格なる経済上の財物を与えることでございますから、それが非常勤と常勤とに現状において区別して書いてあるのであります。常勤とは書いてないのでございます。非常勤の職員に対し報酬を出す、こう書いてありますので、ただそれの取扱いについての問題ですが、ただいまのところ選挙管理委員会は常勤職員とする考えは私は持っておりません。
  52. 門司亮

    門司委員 私も何も常勤の管理委員会にしてもらいたいとは申し上げておりません。ただ、報酬の支給の仕方によって、委員の気持の上で責任感が違ってきはしないか。もしそれが違ってくるということになりますと、非常に大きな問題を起すと私は思う。そのことを私は心配しておるのでありますが、大臣はそういう心配はないというお考えですか。
  53. 太田正孝

    太田国務大臣 非常勤だから軽いという意味にまたおとり下さると私も迷惑いたします。非常勤でも非常に大切な職員があるのでございまして、その事柄と給与の関係とは別だ、私はかように申し上げるのでございます。中央選挙管理委員も、この意味におきまして同様な扱いになっておるのでございます。  なお、第一の問題につきましては、先ほど事務当局、私からお答え申し上げた通りでありますが、なお、念のために、正確な文字として門司委員にお示し申し上げたいと思います。
  54. 門司亮

    門司委員 それではまた何かその文書をもらって、あとからなお疑義がありますならば、質問することにいたしまして、大体十二時までという約束だそうでありますから、一応私の質問を保留いたします。
  55. 大村清一

    大村委員長代理 これにて暫時休憩いたします。  午後一時半から再開いたします。    午前十一時五十八分休憩      ――――◇―――――    午後一時五十六分開議
  56. 小澤佐重喜

    小澤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を継続いたします。鈴木義男君。
  57. 鈴木義男

    鈴木(義)委員 私前会に引き続いて御質問いたしたいと存じまするが、ただ、新聞等の伝うるところによれば。本文と別表とを分離して、本文だけを審議するというようなことを承わっておるのでありまするが、われわれはその本文が一番の問題あって、別にゲリマンダーだけを分断しろというのではないのでありますから、一人一区の小選挙制度をわが国に即応採用することは、果してわが町の政治を向上せしめるゆえんであるかということを考えて、この根本問題について疑いを持っち、われわれは反対の意見を持っておりまするがゆえに、ここに質問を展開し明らかにしようというのでありまして、連座制の強化ということもその一環にほかならぬのであります。ゆえに、だんだんそこに参りまするが、その前提となるいろいろな問題を簡単にお尋ねをいたして参りたいのであります。  そこで、小選挙区制論というものは、わが国ではだいぶ前から存在したことは御承知通りであります。そして、あまり実際の選挙等関係のない学者あるいは評論家というような人々で、小選挙区制がよろしいということを申しておった人があることは、われわれも承知いたしておるのでありまするが、その当時の、数年前の小選挙区制論というものは、当時にあって十分のレーゾン・デートルがあったことはわれわれも認める。何となれば、わが国が、小党分立とまでは申しませんが、複数の政党が分立しておって、離合集散が絶えない。政局がなかなか安定しない。そこで、これを安定させるのには、二大政党の対立を実現しなければならない。二大政党の対立はどうしたらできるかというと、一つの方法は小選挙区制を採用することである。こういう理論から小選挙区論というものが起ったのであります。ところが、昨年の秋二大政党が期せずして実現したのであります。ゆえに、今月憩いで小選挙区制をしがなければならない理由はひとまず解消したと思われるのである。保守党がたちまち分裂をする、あしたにも分裂をするということであれば、多少考えなければならぬ点もありまするが、しかし、それは分裂してからでおそくないとわれわれは見ておるわけであります。出直して一つゆっくり検討をしたらよかろうという世論も圧倒的であり、また、国会においても、御承知のような段階に入ってきたのに、なお本文と別表とを分離してまで審理を急ぎ、どうしても小選挙区制を短かい機関のうちに通さなければならないという理由がどこにあるのでありまするかお尋ねをいたす次第であります。
  58. 太田正孝

    太田国務大臣 二大政党はできた、今まで小選挙区論は過去数年来の政変、政局不安定、議会運営の上から見て必要であるということをその当時言われたが、その事実は今日解消したという鈴木委員のお言葉でざいました。昨年来二大政党が形の上にできましたことは、御指摘通り、また現実の事実でございます。同時に、あの小党分立とまでいわず、鈴木委員の言われました多数の政党のあった場合に小選挙区論はあったが、すでに二大政党ができた今日には、小選挙区論というものはあっても非常に力がないと申しますか、その時分と事情が違うということが鈴木委員のお言葉でございます。しかし、昨年の夏から今日にかけての緑風会の小選挙区区割りまで発表した事実、それから下村海南等に氏よる小選挙区促進運動というものが昨年の秋口から強く唱えられたという事実は、やはり、この問題につきまして、輿論といわず、世論といわず、私の見たところでは、その空気というか、事実というか、声というか、あったように見るのが正しいじゃないか、私はかように考えるのでございます。
  59. 鈴木義男

    鈴木(義)委員 それは事実を無視しておる御議論でありまして、いずれも、この選挙制度調査会が設けられたときにもまだ多数の分立時代でありまして、決して二大政党の対立になっておらなかったから、必要を感じ制度調査会を設けたのであります。また、下村氏のごときは、ずっと前から、おそらく十年前からこの議論を主張しておる人なのです。それで、行きがかり上、二大政党ができてしまったからそう急がぬでもいいと思っても、引っ込めるわけにいかないから、この議論を通しておるのであります。私は、選挙制度調査会で、下村委員の御義説を選挙法論におけるクラシックである、古典に属するものであると申し上げたくらいでありまして、それは、ただ日本のほんとうの政局の実際を無視して選挙制度論として議論するならば、下村海南氏の御議論などはまことにりっぱなものであります。けれども、今の日本にこれを実施することになるとどういう結果を生ずるかというと、下村さんも予期せざる意外な結果が出てくる。それは私が下村氏に申し上げたために、よほど御反省になったようでありました。ただ、慰めて、そうでもあろうが、少しがまんしたらそのうちまた盛り返すであろうと言うから、それでは日本のために間に合わないということを私は申し上げたのであります。現にこの制度調査会に参加した矢部貞治君のごとき、学者でありまするが、自分はこれに賛成ではあるが、すぐにやることには反対である、ある座談会で、これは「ジユリスト」の座談会でありまするが、こういうふうに述べておるのであります。私は、かりに小選挙区法が国会を通っても、この次の選挙ですぐやるというのは無理じゃないかという感じを持っているのです。だから、次の次からやる、こういったような多少ゆとりを持った態度をとるべきじゃないか。それからまた、参議院選挙がその前に済みますから、そこで社会党が三分の一をとってしまえば、憲法という問題は多分そう急迫した問題にはなりません。その程度の余裕は置いたらいいじゃないか。私は最初からそう考えておったのですが、自民党の方は、この国会で通さなければとても通らない、今こういう格好のようですね。こういうことを述べておるのであります。こういう、比較的自民党に好意を持ち、この制度に賛成している学者ですらも、こういうことを申しているくらいであります。いわんや、あとでだんだん御紹介いたしまするが、今すぐこの制度を日本にしくことは、取り返しのつかない打撃を日本の政界に与えるということを信じておる学者は少くないのであります。ゆえに、私は、何かここに特別の目的がない限りは、しゃにむにどうしてもここで通さなければならぬという理由を発見するに苦しむのであります。一つ率直に、どうしてもこの国会を通さなければならないという理由があるならば、いま一度お聞かせを願いたい。
  60. 太田正孝

    太田国務大臣 学者の御説も御引用になりましたが、私も、一昨日矢部君と会いまして、私の感じを率直に申しました。小選挙区測度に対する意見は大体におきまして一般的の空気である、ただいろいろな批判が政府案に対して起っている事実も、これも率直に認めなければならぬ、かように申したことと、昨年の七月の選挙制度調査会の委員会におきまして、蝋山政道氏も、小選挙制度を――これは活字に残っておるのでありますが、小選挙制度がいいとおっしゃっている。しからば、昨年の七月から今日までどう情勢が変ったかというと、情勢が変ったという事実は、ここに二大政党というものができた、曲りなりにも、というと大へん行き過ぎた批判になりますが、とにかく二大政党ができている。小選挙制度というのは、二大政党ができて、たとえばすぐに解散があった場合にどうするか、こういうようなときには、今までの個人的色彩の多い選挙でやっては、やはりまたむずかしい問題になるのじゃないか。施行時期の問題を鈴木委員が仰せられましたが、その町題は別といたしまして、少くとも方式として小選挙制度を持っていくのがいいじゃないか、この判断におき、ましては私はやはり依然として違っておりません。急ぐとか急がぬとかいうお言葉がございましたが、二大政党というものがずっと伸びていくためにも、日本の政局を安定するためにも、選挙制度としての問題は小選挙制度でなければならぬ、これが私は筋であり、ねらいであり、また選挙制度を処理するについての、われわれとしては現状における唯一の方法だ、たとえてみれば政党が非常に発展していった場合にはどうかというような問題も起りますが、明治、大正、昭和を通じての政局の動きというものを見ましたときに、少くとも個人本位であった原内閣のときの小選挙区の姿はここに取り入れることができませんから、私どもは、選挙制度調査会の答申の通り、政党というものに力を入れた新らしい方式の小選挙制度でやっていくべきものじゃないか、かように考えた次第でございます。  なお、きのう電話で蝋山政道氏とも話したのでありますが、社会入党と何かいい話し合いがつかないかというお話もございました。けれども、私は、制度としては小選挙制度をとっていくよりほかない、こういうように申し上げておいたのです。筋の問題でございます。
  61. 鈴木義男

    鈴木(義)委員 どうも私の質問に対する答えになっておらないのであります。そういうお答えは下村海南氏のお答えと同じなのです。筋として小選挙区制がよいということは、私は、時間の問題を無視するならば、私もそう申して差しつかえないと思います。けれども、この国会でどうしても通さなければならないというほど緊迫せる常があるか、こういうことをお尋ねしておるのです。少くとも二大政党が今曲りなりにもできておるのであります。それが破綻を来たす見通しが目前にあるわけでもない。しかるに、どうしてこの国会で、しかも日限を切ってまで通さなければならないというようなことは、どうもわれわれには了解のできない何か隠されたる理由があるのじゃないか、さように思うわけであります。いま一度お尋ねをいたします。
  62. 太田正孝

    太田国務大臣 私は何も隠すところはございません。すでにその道がいいとなったならば、その制度を設けるのは、私は当然なことじゃないか、かように考えております。
  63. 鈴木義男

    鈴木(義)委員 その政党本位の選挙運動をやるということを前提にして、昔の個人本位の小選挙区と違うということを、今太田長官はお答えになったのでありまするが、なるほどそれは二つの理屈である。そこで、今の日本の政党が、遺憾ながら――自由民主党も社会党も占めて私は申すのでありまするが、この選挙法が期待するような政党としてのりっぱな統制を持ってこれは、公認政党にしても、いろいろな選挙をやっていく上における諸種のやり方において、政党がりっぱな統制力を持たなければ、結果が出てこないのであります。そういうことはあらゆる学者が論じておるところでありまするが、一体政党にそういう統制力があるとお考えになりますか、ちょっとお伺いをいたしたい。
  64. 太田正孝

    太田国務大臣 今鈴木委員の御指摘のように、統制力があるかないかという問題、従って公認の問題等がここにからんでくるわけでございますが、統制力の点が十分でなければこそ、ああいう規定もはなはだ政党としてはおもしろくないように感じまするが、私は、現状においての判断においては、あの規定もやはり必要じゃないか、かように考えた次第でございます。
  65. 鈴木義男

    鈴木(義)委員 今蝋山君の説を長官は御引用になりましたが、蝋山君が最初小選挙制度を賛成しておって、今でも原則としては賛成をしておるのでありますが、今すぐ一本に施行することについて疑問を持ち、ことにこれを施行する時期について非常に慎重でなければらぬとともに、もしどうしてもしくというならば、弊害がないようにする附帯条件をつけなければならないということを、選挙制度調査会でも提案をしたのであります。そのことを二つよく反省をしていただきたいと思うのでありまするが、蝋山君が同じ座談会で述べておるところを今読み上げますると、小選挙区の問題は選挙例度としては非常に重大でね。普通選挙になってから、今まで一度も区制の変更、というものはなかったので、これを取り上げるということは選挙制度としての小選挙区の価値だけで、はなかなかきまらない、またきめてはならない、いろいろな影響力がある問題です。そこで、僕は一つの条件としては時期のを考えなければいけない。いま一つは、小選挙区と言ってもいろいろの方法がある、その方法について考慮しなければならない。そう考える理由は、現在の政局安定ということも小選挙区と結びつく、小選挙区の長所なのでこれはわれわれ取り入れなくちゃならないけれども、その政局安定ということの裏には、たとえば党内の問題、つまり同士討ちを避けるためとか、そういう党内の問題が非常に大きく出てくるようなことになると、それは広い意味でやはり党利党略になる。これは避けなくちゃならない。そうなると結局反対党の問題も出てくるのだ。反対党が少しも納得しないような選挙区制というものは、これは議会政治の運用をかえって困難にする。だから反対党を何とかして納得せしめるような案に持っていかなくちゃいけない。こういうのが、時期という問題について考えねばならぬ、と僕の考える理由なんです。よくお聞き取りを願いたいと思います。まさにその通りであると思うのであって、蝋山君の考えでは、小選挙区制はよろしい、よろしいといっても、ちょうど薬を飲む時期みたいなもので、日本においてこれを実施するに今が最適のときであると考えると非常に問題である、両党の勢力がもう少し近接し、そして二大政党の形がほぼ安定したところでこの制度実施すれば、ほぼ目的を達するのではないか、今これをすぐにやるならば、おそらくは社会党の方は地盤を分断されまするから、非常に少数に減ずるおそれがある、そして自由民主党は不必要にふくれ上るきらいがある、こういうことを申しておるのであります。二大政党が対立しておるのであり、共通の土俵をこしらえる仕事でありまするから、話し合いの上でもう少しわれわれの納得のいくような態度をおとりになることが何ゆえにできないのでありましょうか。
  66. 太田正孝

    太田国務大臣 この間の答申は厳格なる一人一区制でございます。小選挙区制をとるか、中選挙区等の二人区等を主としたものをとるかということは、これは主義の問題でございます。話し合いは、一つの線で、小選挙区でいく上においての話し合いという問題と、小選挙区によるかあるいは中選挙区によるかという問題とは、これはもう本質的に違う問題じゃないでございましょうか。ここに問題があると私は思います。蝋山君が七月に唱えたときと、ことしになって唱えたときとは、比例代表制を加味するという意味では、西ドイツの制度を入れようというところに問題があったようでございます。だから、純粋なる小選挙制度ではないと私は思います。現在のドイツがそれであると思いますが、蝋山君の考えは、そういう意味を――学者の議論などをここに持ってくる必要はございませんけれども、持っているのではないか。私の見るところでは、比例代表を入れた結果というものは、結局大選手区制を持ってきているということは、これは筋で、当然なことだと思います。それで、私どもは、ドイツの現状においても比例代表を入れたために結果は悪かった、今選挙制度改正論が起っておるがごとくに、この際に比例代表制は入れるべきものではないという建前で、問題は小選挙区でいくのなら話し合いの道もあろうかと思いますが、小選挙区と中選挙区論では本質的な違いじゃないでございましょうか。私は問題はそこにあると思うのでございます。学者の説もできるだけ私も勉強して読んでおりますが、蝋山君の説もかように私は見ておるのでございます。
  67. 鈴木義男

    鈴木(義)委員 ここで今学問上の争いをするのも変でありますから、できるだけその点ははしょりますけれども、それでは、小選挙区をもし徹底的に主張するのなら、二人区を作ることは間違っておる。一人一区で通さなければならぬはずだ。そこに、もうすでに政府案においても妥協があり、一つの理論的には通らないものを持っておる。実際の政治というものを考える場合には、理論ばかり通すべきものでないことは、長官もお認めになるところであろうと思うのであります。従って、われわれはどういう選挙制度がよいか。それは理論的には比例代表が一番いいわけなんだ。国民の投票に数的に比例して代表が出てくる。しかしそれは実際政治の上にあまりよくない。ことに小党分立の場合にはよくないから、大体二大政党の対立であるならば、比例代表式の西ドイツのドント式のようなものを入れると非常にうまくいくと思う。あまりに大きく死票が出るから、その死票を生かす道をある部分に発見するわけでありまして、私は、わが国においてあまりひどい差を人為的に作る結果をもたらさない、死票を少くするというならば、蝋山君の提案したようなのをとりあえず採用していくことが無難であろう、こう考え選挙制度調査会においても賛成するような意向を表明したわけでありまするが、しかしそれは理論的にいいからというのではないのです。日本の実際に適切であるからという意味であることを、御了承願わなければならない。そこで、このまま小選挙制度をしいた場合を考えますると、どんな人が公平に見ても、日本の政界というものは一時はかたわになる。だんだん直っていくかもしれませんが、自由民主党が大きくなり過ぎ、社会党が小さくなり過ぎるということは、公平に見て間違いのないところであります。そこで、自由党は二百九十九名でもなお足りないとして、この上とりたいというのは貧欲ではないかということを、私がたびたびお尋ねするわけであります。今とりあえずこれでやっていけるし、まず大ていのことはやれるはずなんで、ミシガン大学教授のブロックという人は、選挙法を非常によく研究をしておる学者でありますが、この人が、選挙制度というものを政権獲得の手段にしたり、あるいは政権を維持する手段にしたりすることは最も邪道である、そういうために選挙法をいじるということは最もよろしくないことである、ちょうど、西ドイツでも、アデナウアーの政権を維持せんがために、選挙制度に手をつけようとした、フランスでも、フォールとマンデスが争って、政権を獲得したいために、選挙法をいじろうとした、こういうのは政治上における選挙制度を手段とする邪道であるということを申しておるのでありまするが、わが国においても、今絶対多数を持っておる自由民主党が、この上にも自己に有利なれとして選挙制度をいじることは、これは邪道ではないか、かように考えるのでありますが、その点はいかがでありますか。
  68. 早川崇

    ○早川政府委員 鈴木委員の御質問の中で、私は少し誤解されておる点があると思うのです。なぜなれば、今政府が突如としてこの小選挙区法を取り上げたならば、ちょうどアデナウアーの政権のように、またフランスのこの前の選挙前の政府のように、多数派をとるために突如として出したのであれば、御説の通りであります。しかしながら、小選挙区は、鈴木委員も御承知のように、特に社会党の有力な方も入られて、六年間にわたってその是非を論じ尽したのであります。しかして、選挙制度調査会も一年間にわたりまして論じられまして、その結果として政府がこのたび国会提案しておるのでありまして、突如として小選挙区を無理やりに多数で提案したというのではありませんで、その点は決してそういう特定の目的のために採用したという御意見は私は当らない、かように考えております。
  69. 中村高一

    中村高一君 ちょっと今の早川君の答弁に補足しておきたいのですが、今早川次官の答弁によりますと、内閣の選挙制度調査会で答申を出して、その答申に基いてやったのだから突如ではないというのですが、内閣の調査会の内容を見ればわかるのでありますが、だんだんだんだんそこへ持っていくような形に調査会ができておるのであります。たとえば、委員の顔ぶれを見ましても、もうほとんどが小選挙区の促進会を作っておる諸君が大部分です。あとわずかに社会党とか労働組合の者を委員に入れておりますけれども、そのできております調査会の内容というものは、もうこれはほとんど小選挙区制に持ち込むための調査会であったと私たちには見られるような形になっておるのでありまして、これはもう当初出発したときに小選挙区の答弁が出ることは明らかなんであります。しかもこれに対して、委員会では、われわれが幾多事実をもってこの審議に対しまして小選挙区制に対する反論を加えて参りましたけれども、結局多数の力で押し切ってしまって答申に持ち込んだという経過を見ましても、今早川次官が言われたように、きわめて公平な立場から調査会ができて、その答申がきわめて公平にできたといわれるような形を政府は作っただけでありまして、全くこれはゆがめられた調査会であったということを明確にしておかないと、何か理論が曲げて報告されておるようでありますから、この点はどうしても訂正する必要がありますので、明確にしておきたいの、であります。
  70. 鈴木義男

    鈴木(義)委員 早川次官のお答えは、今までやってきた結果、結論が出たというのであるが、その途中に二大政党が現われてしまった、この情勢の変化に応じて、今までずっとやってはきたが、もう必要はないからここでやめようというのが当りまえの考え方です。何も急いでやる必要はなくなった。しかるに、前からずっとやってきたのであるから、行きがかり上しゃにむにやらなければならないということは、われわれには納得がいかぬということを申し上げておるのであって、その経過が次官の言う通りであることは私も認めておるのであります。  そこで、これはこの前に長官にお尋ねをしたのであるが、社会党だけではない、そのほかの政党だって考えのうちに入れてやらなければならないということを申したのでありますが、それはいかにも私だけの主張であるようにおとりになったようでありますから、この際蝋山君も同じことを申しておることを紹介しておきたい。これは共産党などはなくてもよいという議論で、今度の制度によると共産党はもう議会に出てこられなくなるだろう。これはひとしくみなが予想しておることでありまするが、その点について蝋山君もこういうふうに申しておる。これで共産党は出られなくなりますね。これを議会に出さないということはいいことでしょうか。私はそれは間違いだと思います。今の日本の指導者階級は共産党の問題をただ弾圧というような意味では警戒しているけれども、ほんとうに内面的に考えて、共産党の勢力及びそれに同調している国民分子というものを議会制度になじませるというための方式を考えていないと思うのですよ。これは英国のように小選挙区のような制度が歴史的に確立しているところなら、共産党も文句を言いませんけれども、今度改めて小選挙区をやるということになると、こういう少数党は地上では息することができなくなってしまうのです。そういうものはやはり公然と活動させていく方が議会主義のためにいいのじゃないか。あれを地下にもぐらせることは危険なことだ。こう申しておるのであります。この一つをとってみても、この小選挙制度というものを無条件に今日日本にしくことは考えなければならぬとお考えにならないかどうか。
  71. 太田正孝

    太田国務大臣 私自身としては、主義としては共産主義に賛成しておりません。しかしながら、今回の制度におきまして共産主義がいかなる形において出るか出られぬかという問題につきましては、少数党の場合も考えておるのでございますから、私はこの制度によってすぐ共産主義の政党が出なくなるという判断は私持ちません。また今日の数を持っておるところの政党でありましても、その政党がみずから自粛するとか、あるいは勉強するとか、政策を考えるとか、いろいろな苦心をしなければ、ちょうど十数年前のイギリスの自由党が今日実に見るも哀れな姿に減少したことを考えてみますれば、そういう意味において、二大政党ができても、互いに切磋琢磨して、国家のため国民のために一生懸命やらなければいけない。しかも最後の投票をきめるものは国民でありますから、こういう点を見ますと、今鈴木委員の仰せられました共産党をくずすためにこういう案を作ったのではないかという考え方は、この法案の中には私は考えておらないのであります。
  72. 鈴木義男

    鈴木(義)委員 くずすためにというほどの故意があるとは思いませんが、結果においてそうなることは、日本の政治を考える上に十分考えねばならぬ問題があるのじゃないかということを申し上げておるのであります。そこで、選挙の公正を確保するというとが、私の質問せんとする一番大切な点で、連座制というのはひとえにそれを目標にしておるのでありまするが、そのために、これをほんとうに実行できるならば、私は、小選挙区についても、もっとまじめに考えてもよいとさえ思っておるのである。日本に一件の買収もなくなり、買収類似行為もなくなるという自信が待てるなら、今の状態において小選挙区をやっても、あるいは害が少いかもしれない、比較的公正な結果が出てくるかもしれないということを考えるのであります。これからるる実例をあげつつ御質問を申し上げまするが、そういう確信が持てない。ゆえに、公正確保のために政府はどういう努力をしようとしているのかということに、一番われわれは主力を集中してお尋ねいたしておるのであり、政府の所見も聞きたいところなんであります。ところが、今度出されておる案によると、ただ一つ連座制の強化として附帯訴訟を認める、検事の附帯公訴を認めるということになっているだけなんだ。検事が附帯公訴をやらないよりはやった方がよろしいのでありますけれども、時間的に幾らか今までよりは早くなろうか。ことに、今の制度では、だれか篤志家が現われて、選挙民のうちから訴訟を起す人がないと失格はしない。そんなことでは百年河清を待つようなものでありますから、これは当然改めなければならないが、検事が附帯訴訟を起すことはけっこうであります。附帯訴訟で幾らか時間が縮まるそれから附帯訴訟ということを唯一の武器とせられる以上は、附帯訴訟に関する法律をお出しになって、これがむしろ前提で、少くともこれと同時に本文というものは通過するのでなければ、いつ選挙がくるかわかりませんが、翌日にもくるものとすれば、実効を上げないわけであります。一体いつこの法律をお出しになる予定であるか、お伺いをいたしたい。
  73. 太田正孝

    太田国務大臣 この前にもその御質問に対してお答え申し上げました通り、なるべく早く、しかも国会にかけなくてはならぬ問題ですから、少くとも来たるべき国会においてそれを出すようにいたしたい、出します、かようにお答え申し上げた次第であります。
  74. 山田長司

    ○山田委員 ただいまの鈴木委員の御質問関連いたしまして、太田長官に御質問申し上げたいと思います。連座制の規定関連して、むしろこれと並行した形において考えられてよい問題が、私は政治資金規正法の問題であると思うのです。この政治資金規正法の問題は、一体こういう大きな選挙法改正をされる場合に、なぜ考慮されて今度の場合提出されなかったものか、まず最初にこれを伺います。
  75. 太田正孝

    太田国務大臣 鈴木委員の御質問、山田委員の御質問、両方にわたって私の申し上げたいことは、選挙制度と並んで、公正なる選挙をするために、ただいま山田委員の言われました政治資金規正法、また鈴木委員の言われました連座規正の強化及び公営の拡張、この三つがどなたにも考えられる選挙の公正についての問題でございます。この公営につきましては、この前早川次官から申したこともございますが、日本の制度というものは相当の広さまでいっておりまして、結果におきましても、今日のイギリスよりもアメリカよりも、どこの国よりも公営選挙の形は進んでおります。これはまあ別といたしまして、連座制につきましては、私どもとしては免責規定まではずすということは考えておりません。しかも、この点については、十分その立場も考えなくてはなりませんし、附帯公訴の方法でいこう。また、山田委員政治資金規正法は、あの国会の乱闘のあった後に、各政党のお方々が集まりまして、いろいろ議論をいたしました。そのときに問題になりましたのは、この間社会党の方々が御指摘になりました、一定の法人等からの寄付の問題がありました。同時に、労働組合、職員組合の寄付の問題もございました、反対論も賛成論と両方ありまして、きまらない状況でございます。政治資金規正法を作るといたしますれば、この両面にわたって考えなければならないが、今日その問題で、すでに今までの各党間の御意見がまとまらないままに政治資金規正法を作ることは、私はもう少し検討する必要がある。これは政治資金……。(発言する者多し)そういう意味におきまして、山田委員の仰せられました政治資金規正法の問題は、私ははっきりと申し上げておる次第でございます。
  76. 山田長司

    ○山田委員 ただいま太田長官の御答弁を伺いますと、法人関係の寄付その他についての問題、労働組合の寄付等の問題について、これが明快な結論が出ないから規正法を作らずにおくという話でありますけれども、大体法人の場合における会社は利潤追求の会社が多いと思うのです。さらにもう一つの場合は、国家予算をもらっておる会社、国家から補助を受けておる会社、あるいは助成を受けておる会社――あの造船疑獄事件などは、そういう点においてあなた方の関連のある同志諸君にたくさんの金が回ったわけでありますけれども、これと関連しておる幾多の事件が間々存在しておると思うのです。私は今ここでどうしても政治資金規正法を作らなければならないという理由の二つとして、あなたに聞いていただきたいと思うのですが、それは森林法の規定であります。あの法規で現在三十億からの金が全国の森林組合に出て、おります。保守党の議員の中で選挙のときにこの三十億の金をもらっておるかどうか私は知らぬけれども、とにかく、これがために、地方の森林組合は、少くとも三十力から五十万くらいの金を保守党議員、そういう関係者に出しております。大体これをもらってないような人は、よっぽど森林関係にうとんぜられた見られ方をしておる人だと思う。そういう状態で、森林法は今日制定されて、国家から補助金が出ておるが、一つの例を話しても、大体杉の宙木一本に国家の補助が六円行っておる。緑の羽根の運動で六円、一本十円の杉の田を植えるのに、十二円の補助が行っておる。こういう状態で、合7日三十億の予算が消費されておるわけですけれども、それがために、そういう金がいわゆる保守党議員と称せられる者の中にたくさんにばらまかれて、選挙が行われておるわけですが、こういう点で……。(発言する者多し)これは一つの森林法の法規の規定だけを私は申し上げておるのだけれども、これに並行する規定がたくさんにあると思うのです。こういう点を、公平な選挙を行うためには、どうしてもやはりこういう問題について、あなた方が規正を強化しなければ、私は公平な選挙は行われないと思うのです。そういう点で、私はあなたに質問したいのでありますけれども、どうしてもこういう規定については明確にしなければいかぬと思う。  すなわち、もう一つ例をお話しすれば、あの保全経済会の問題のときには、いわゆる殖産会社に関係した人たちが、法制でこれを取り締ろう、法制で成文化して、この殖産会社の育成強化をはかろうというようなことが行われて、当時私は行政監察委員として、これを行政監察特別委員会で取り扱った一人でありますけれども、池田勇人を二月の三日に喚問することが決定しておりながら、それが全然喚問できないで、六月の末ごろまで持っていかれた。しかも、そのときには、いわゆる駒井重次氏に続いて池田勇人の喚問が決定をした。しかるに、それがちっとも進行しないで、続いて関連のある保全経済会では、三千万の金が鳩山一郎及び三木武吉にまで出ておるという事件があったにかかわらず、これは進展しない。一体こういうことは政治資金規正法が強化されなければ、みんな関連があっても、これをどうすることもできないわけです。公平な選挙を行う上においては、当然こういう規定を設けるべきだと私には思われるけれども、一体、自治かとしては、やはりこういう問題について常に行政をして、法規一を作ってでも、こういう選挙法などを出す場合には、むしろ連座制の規定政治資金規正法の問題を先に出して、公平な選挙を行うようにしなければならないことがあなた方の立場でなければならぬと思う。こういう点で、こういう規定を作り出して、しかる後に選挙法改正というものをやろうとしなかったのか、その点を承わりたいと思う。
  77. 太田正孝

    太田国務大臣 私は世の中の悪いことをいいなどと申す気はございません。ことに選挙につきまして腐ったことがありますことは、山田委員と同じように憤慨する一人であります。しかし、あらゆる一実がいかにあるかということは、私はわかりません。  今御指摘の森林法の問題でございますが、私は、天龍川に育ちまして、金原明善のおったところでございまして、森林に生きたものでございます。しかし、身不幸にして今まで森林組合の金が云々ということは、実はここで初めて聞きました。私は愚か者でございます。けれども、ここに具体的な、実をお取り上げになりまして、選挙の腐った行いが行われているということの指摘には、私はすぐに承服できません。ただ、悪いことはいけませんから、選挙が公正にいくための制度というものはけっこうと思います。そうして、この前のときに鈴木委員にも申し上げましたが、法律というものでいく手も一つあると同町に、一方には育成するという問題も大きいと思う。ことに、選挙制度調査会の答申におきましては、第五項目において最も力を入れておる点でございます。法律によってやる手も、もちろん必要でございましよう。と同時に、一方に教育、啓発のためにする方面も、また決して少くない効果があると私は思うのでございます。法をもって法を責むる場合もございましようが、私は、小選挙制度をしくにつきまして、今まで行われておった法律さえも行われない現状も考えなくちゃならぬじゃないか、また、一面におきまして、選挙狩川委員会という制度につきましても、今まで十分にこれが発揮されなかった面もあるのではないかと思うのでございます。すでにある法律におきましても、相当の点におきまして革正していくことができるではないか。私は、そういう意味で、この前のときにも鈴木委員にも申し上げた次第でございます。
  78. 山田長司

    ○山田委員 あなたも、おそらく、造船疑獄事件のときに、指揮権発動で、これが当時の自由党の幹部にまで検察当局の手が伸びなかったことを御存じだと思うのです。私は、こればかりじゃなくて、おそらくこれと同じような大きな事件があったろうと思われるものは、当然究明すべきテーマに取り上げている問題の中に、低性能船舶買入法という法律が昭和二十八年までありました。これらの問題についても当然私は取り上げられるべき幾多の問題があったと思うのですけれども、やはりこれがみんな政界に腐り切った汚点をたくさんに残している原因だと思われるので、こういう問題について規定を設けないで、あなたが今度の選挙法改正というものを出した根拠が私はわからないのです。こういう日本の政界に幾多の汚点を及ぼす事件があったにかかわらず、どうしても当然法規を設けてやるべきだったのを、連座制の規定にしても、あるいは政治資金規正法の問題にしても、こういう規定を検討されないで出した理由というものが私には不明朗なんです。どうですか、あなたは良心を持っておる政治家として、こういう問題の強化をはかられなかったという点は一体どこにあったのですか、その根拠をもう一回御答弁を願います。
  79. 太田正孝

    太田国務大臣 指揮権発動のときに、私は恥かしながら落選しておって事情を知りませんまた、この小選挙制度をしくにつきまして、一方にどういう方策をもってやったらいいかということは、私の演説の中にも書いておりまする通り、公明、粛正ということは、最後においては国民の力に待つほかはないと私は思います。主力を法制に置いてやっていくという考え方もございますが、現在の法律を十分に施行することにおいても、私は行われる道があるのではないか。ただ法だけでもっていこうという考えではなく、私の主力を置いておるのは、答申案の第五項目に力を置いておる、啓発の点に置いておるのでございます。
  80. 山田長司

    ○山田委員 関連ですから、私はこの一点だけでやめます。あなたは、落ちておったから、あの事件は知らなかったというような答弁でありますが、一体、政治に志す者が、落ちておろうが、当選しておろうが、あれだけ天下を震駭させた大きな事件を知らずにおったという、そんな間抜けた政治家がありますか。少くとも政治に志を持った者としては、当然、あの事件については、やはり私は少からず嘆いた心でこの記事を見たと思うのです。そういう点で私はもう一ぺん伺いますけれども、一体どうしても政治資金規正法や連座制の規定というものが、当然この法律が出される前に検討されてもよかったはずだと私は思う。そういう点が何ゆえに出されなかったのか、何がゆえに検討されなかったのか、これをもう一ぺん伺います。
  81. 太田正孝

    太田国務大臣 私が知らなかったと申しましたのは、関係がなかったという意味でございます。言いわけではございません。それは事実でございます。もう一つ政治資金規正法につきましては、この法案を出す前にお互い十分研究いたしたのでございます。先ほども申しました通り政治資金規正法において法人の問題を考えるときに、アメリカ流に個人にのみ限ることがやれるかやれぬかの問題も考えました。また労働組合、職員組合の寄付につきまして、果してここで社会党のお方々との話し合いがまとまっていく段階になかったことも知っております。従って、私は、この国会において幾たびも申しました通り、政党法を作る中におきまして政治資金規正法を完成していくのである、決してこれをうっちゃらかした意味ではございません。
  82. 鈴木義男

    鈴木(義)委員 連座制についてはあとで御質問をいたしまするが、なぜこの小選挙区制をしかく急ぐか、しかくあせるかということの理由を考えて、ほかに発見できないが、ただ一つ憲法改正ということが浮ぶのであります。これはわれわれがそう考えるだけでなくて、広く世の中でもそれを考えておる。どうか長官は、顧みて他を言うような答えでなく、一つこの点について率直なほんとうのところを述べていただきたいのであります。たとえば、蝋山君が同じ座談会でこういうふうに観察をしておる。「さらに時期の問題で大きいのは、今日憲法改正の問題がいろいろの情勢から進展し、政府がはっきりと調査会を設けてやるということになってくると、政治的に小選挙国制が憲法改正の問題とからんでくる。三分の二の多数を確保するために小選挙区制を採用し、選挙区制があらためられると必ず解散という問題になってくる。そういう政治情勢がからんでくると、その問題とこの小選挙区制は事実上不可分の関係になってしまう。小選挙区論というのは憲法改正論とは当然論理的に結びつくものではないけれども、情勢的にはそうなりはしないか。そこで時期の問題は非常に考えなくちゃならない。その時期をどうするかということについては一つ考えとして、」「大体憲法の問題とにらみ合わせていきたい。一方、憲法問題というもので調査会が作られるならば、それはいいとして、そこで十分論議が尽されたときに、憲法改正が是か非かなんということではなくて、憲法改正でも相当内容的な議論が済んだときなら、これは一つの時期になるだろう。しかし今はどう改正するか、でなくて、すべきかすべからざるか、ということが大きな問題なときに、この区制の改正問題ということになれば必ず数の問題に結びつく。」それだからこの際は慎しむべきであり、やめるべきであり、延ばすべきであるという意見を述べておるのでありますが、私もその点については同感であります。大体両党の差がまだ開き過ぎているということは先ほど申す通りでございますが、今憲法改正が議題に上っているときに、小選挙区制をしゃにむにやらなければならないということを言うならば、このほかにちょっと理由を発見することができないということになる。長官はどういうふうにお考えでありますか。
  83. 太田正孝

    太田国務大臣 ただいま御引用になりました蝋山政道氏の御説の中にも、論理的関連はないが、そういう判断をするのがしかるべきではないかというお言葉でございました。憲法改正の問題とこの問題と私自身がいかに考えておったかということは、この間の選挙のときにも、私は小選挙区でなければいかぬということを述べまして、ただの一言も憲法改正なんということは申しておりません。(「不正直なんだ」と呼ぶ者あり)、不正直だ……。冗談言っては困ります。(笑声)そういう意味におきまして、小選挙制度と憲法の問題と私はからみ合せておらないのでございます。
  84. 鈴木義男

    鈴木(義)委員 それは形式的御答弁というもので、鳩山首相も同じようなことを言っておる。そうして論理的な関連性はない、それはその通りでありましょう。けれども、一ツ橋の講堂で憲法改正をしなければならないという演説をやったときには、社会党の数を減殺して、ぜひとも自由民主党を大きくして、憲法改正を断行しなければならないと述べておる。そういう演説を引用して総理に私がお尋ねをしても、いや、別に論理的関連性はない、全然関係なく考えておりますなどと言うのである。こういう答弁を天下だれがそのまま額面通りに受け取るでありましょうか。これは一つよくお考えを倣わなければならぬ点であります。  それから、この機会に、あらゆる起り得べき問題は一応考えたということを明らかにしておかなければならぬと思うのでありまするが、かりにどうしても小選挙区を実施するといたしましても、ドイツのやっているドント式の比例代表を加味したやり方であるならは、やや公平な世論の発揚ができるのではないか。たとえば、例を福島県にとれば、定員が十二人でありまするか、そのうち七人だけを選挙でやる。平均人口三十万に一人ずつとして七つに分けて七人だけは一人一区の小選挙区で出す。そうしてたとえば、今のままでいきますると、保守党が四十五万から五十万取って十二人みな取ってしまいそうであります。七人の場合でも七人みな取るでありましょう。そうして社会党は三十万取るが一人も出せないというような現、実が現われてくる。その三十万をことごとく死票にすることは残酷であるから、そこで、比例代表式の、ドント式で、政党が公認しておる候補者の名簿に従って、福島県では五人まではその残りのものを分配する。三十万票の死票のあるものには四人やる、士力票死票のあるものには一人割り当てるということにすれば、オール・オア・ナッシングで、一方は全勝するが一方は零敗するというようなひどい差は出てこない、こう考えるのでありますが、こういう方法でわが国においてかりにそういうことをやることがよいか悪いかということについて、長官はどうお考えになりますか。
  85. 太田正孝

    太田国務大臣 ドイツの比例代表を半分加味した制度は、私もでき得る限りにおいての研究をいたしました。また結果がどうなるかということも考えました。今鈴木委員のお言葉の中に一言ございましたが、比例代表というものは、結局するところ、一番大きな効果は死票がなくなるということで、これは重大な事実でございます。いやしくも国民の一票というものを大切に考える場合に、それが選挙の結果に死んでしまう。大へんなことでございます。その点において私は比例代表論者でもあったのです。ところが、比例代表にやった結果はどうであるかというと、フランスの制度、イタリアの制度にわかるがごとく、現に半分入れておる、ドイツの現状におきましても、比例代表をとったがために、半分入れたのでございまするが、小党分立の姿が出てきて、ここで改革論が現に起っておるのが現在の事実でございます。私は死票がなくなるということはいいと思います。けれど、死票のなくなるということと――今回小選挙制度をとろうという重大な目的一つの政局安定、二大政党に持っていこうという考え方と比例代表とは、どうしても矛盾すると思うのであります。従って、蝋山君等の言われる比例代表制をこれに加味しようという考えは、私としては今のところ持っておらないのでございます。
  86. 鈴木義男

    鈴木(義)委員 一応この委員会、であらゆる問題を考えたということを明らかにするために、私は必ずしもそれを賛成でやりたいというわけじゃありませんが、考えてみるのであります。ことに、先ほど引用したミシガン大学のブロック教授のごときは、人間の考え選挙制度の中では、このドント式の半分比例代表を加味したものが最も進歩したものである、そう申しておるくらいであって、まずそう簡単に退けるべき町題ではないということを一応申しておく次第であります。  そこで、この政党の選挙運動となり、政党の戦いになるのだということを、今度の制度の唯一の特徴として、長官及び政府筋は主張されるわけでありますが、これは、政党がそれだけに値する発達を遂げておるならば、問題はないと思うのでありまするが、どうもその点について私は疑問を持っておるのであります。私が疑問を持っておるだけでなくて、学識経験者が、それぞれの立場から、やはりこの疑問を述べておるのであります。たとえば、蝋山君が、公平に考えて小選挙区は自民党にとってももろ刃の剣だ、これを強行することはみずから傷つけるかもしれないのだ、党内自体の問題である、そういうことを申しておりまするが、確かに私もそう思う。これは自由民主党も一つまじめにお考えになっていただきたい。自分を傷つけるようになりはせぬか。第一にくるものは私は間違いなく予言できる。大地を打つつちが間違っても、私の予言ははずれない、こう思っておるのでありますが、それは保守党が分裂するということであります。第二の保守党ができる。この公認問題にからんで必ずそういう事態が生ずることを、私は予言してはばからないのであります。  そこで、この政党の政治活動ということを目標にして妙な規定がある。全国を通じて五十回、一人の選挙区に対しては十回、二人立っておるところでは二十回まで……。(「また同じことを言うか」と呼ぶ者あり)いや、これは大事なことでありますから、お尋ねをしなければならない。そうしてこの十回ないし二十回ある候補者のために政党が応援できる。かなり大規模な演説会あるいは政党の幹部、総裁というようなものが出かけて行って応援を、する。これは非常な有力な応援であります。その費用というものは相当かかりますし、これを計算すれば相当な額になるはずであるが、これは選挙費用の中に加算されないということは、非常な不公平であります。一体なぜ公営を拡充したかというと――世界に例を見ないと長官は言ったが、私もそれを認めます。わが国では遺憾ながら持てる者が議会に出てくる。持たざる者は出てこないというので、どうしても、待たざる者でも公平に出てこられるためには、公営を拡充するほかはないということで、これをやったわけであります。ところが、今度のこの制度でいくと、やはり持てる政党が持たざる政党を圧倒するということになるのであります。全国に向ってこういうように展開をする、その選挙運動の費用というものは莫大なわけであります。個人がこれを持った場合には相当の類に上る。それだけで法定費になるでありましょう。それは計算に入れないということは、これは不公平な規定であり、断じて改めていただかなければならぬと思うのでありまするが、いかがでありますか。
  87. 太田正孝

    太田国務大臣 蝋山君が言われ、また御引用になりました、この制度は政党にとってもろ刃のものである。私はこの席においてこういうことを申しました。今日の政党明日を語ることは、これは問題である。何となれば、小選挙制度をしきましても、公認制度の問題、組織の問題、こういう点についてお互いが一生懸命にやっていくのでなければ、二大政党の対立もできなければ政党の発達ということもできない。私はそういうことは常に思っております。ただこの制度だけやればいいというような感じは持っておりません。その点は、鈴木委員の御引用になった点と同じでございます。  第二の問題は、政務次官からなお詳しく申し上げますが、政党のやっていく仕事というものが今回においては限定されてわりまして、これこれのこと以外にはできないのでございます。それが今までよりも非常に広がったかというと、その程度のものは広がったのじゃございません。今までやっておる事柄の選挙運動に利用する面という項目は、限定されておるのございます。従って、非常な額が、この選挙において、政党を通じてつぎ込まれるというお言葉は、私はそうでないと思います。その意につきまして、なお詳しく政務次官から申し上げますが、この点は再三御返事申し上げたところでございまして、法規においてちゃんと出ていることを私は申し上げるのでございます。
  88. 早川崇

    ○早川政府委員 少し誤解があるかと思いますので、さらに付加いたしまして、費用がかからないということを御説明申し上げますと、今の選挙法によりますと、鳥取県の知事選挙に見られましたように、革新団体なら革新団体に十五の団体から応援が来て、応援演説をやっております。今度の選挙のその費用たるや莫大なものです。従来は、何ぼ政治団体が応援に来ましても、いや機関車労組とか、いや何々ということはみな自由であったわけであります。ところが今度の選挙法によりますと、御承知のように、一つの政党以外には、そういう演説の応援にも来れない、政党の主義主張を主張することもできないのでございますから、おのずから一つの政党だけの常勢拡張の応援ということになります。その点におきましても、費用の絶対量から申しますと、当然非常に減ってくるということになると思うのであります。(「買収は違うじゃないか」と呼ぶ者あり)買収に関する限りは、現行選挙法におきましても、買収があった場合には当然選挙犯罪として取り締ることになるわけであります。
  89. 鈴木義男

    鈴木(義)委員 たとえば、選挙が始まると、ある政党は総裁が飛行機を使って飛んで歩く。わが党などは、どうも飛行機を使ってちょっとやるという可能性はない。あっても金がかかる。そういうことは、やはり、フェア・プレーの原則から、できるだけ公平に選挙運動をやることが公営一つ趣旨なんです。公営というものは、一方的だけはよけいなこともやり、他方がやれないということ、でないのでありまして、こういう不公平なことができるようになっておることは、断じてよい選挙法ということはできない。私は、この意について、原案提案者である政府は、もっと慎重に、また緻密に一つ考えていただきたいと思うのであります。  それから所属党員は他の公認以外の候補者を応援することができない。これも憲法違反の疑いがあるというので、前回他の同僚が質問をいたしたのでありますが、この機会にいま一度この点を確かめておかなければならぬのであります。大体政党法がないわが国において、ある党の規律を乱したいという場合に、政党が除名するかもしれないが、自分はそんなものは受けないということで、やはり党名を名乗って選挙運動をやる場合に、これをどうして阻止することができるか。阻止することはできないし、こういう前提を十分に緻密にしておかないで、ただある党派に属する者が公認以外の者を応援してはいけないのであるといっても、実際に統制がとれるものでありません。きのうまでその党に属しておった人が、公認されないからといっても、立候補する。必ず半数の人を率いていって、自分の運動員としてやるに相違ありませんし、その人たちはその人のために働くに相違ない。しかし、それは、政党法がありあるいは刑事制裁もあります場合には、制裁を加えることができるかもしれませんけれども、今は制裁を加えることはできないと思う。あえてそれをやって差しつかえないというならば、これは人権じゅうりんでないかと思うのでありますが、その点について政府の御見解はどうでありますか。
  90. 早川崇

    ○早川政府委員 罰則で縛っておるのは、その党所属員が、公認でないにもかかわらず、その政党の公認候補だとか所属員だと名乗ることがいけない。これは罰則がある。あとのほかの政党の人たちがほかの党の運動をいたしましても、これは御承知のように訓示的規定となっておるのでありまして、罰則で縛っておらないのであります。しかし、政党全体として他の候補を応援するという場合には、ある限られました選挙運動は政党としてはできません。個人としては何ら罰則で縛っておりませんので、その点は単なる訓示的規定であるということを、誤解がないように御了承願います。
  91. 鈴木義男

    鈴木(義)委員 そういう実効を上げ得ない規定というものは意味をなさぬと思うのでありまして、すべからく御撤回になるのが適当でなかろうかと思うのであります。ことにわれわれは、そういう事態に遭遇することが相当あることを今から予想しておるのでありまして、こういう法規の制裁に服するわけにはいかないのであります。  そこで、いよいよ私の分担である連座制の問題に入っていきますが、この連座制を強化せよということは、わが党で前に法案を出して特に主張をしておるくらいでありまして、これはほんとうに厳密にやれるというのであれば、小選挙区制も比較的弊害は少くやれるのではないかという一つの望みを持っておるくらいのものでありまして、しかもこれを一々全部刑事制裁に付せよというのではありませんが、少くも買収類似の行為というものはよろしくないものであるから、裁判所の認定によって、選挙のためにやったと認められる限り、そういう卑劣なる手段で当選した者は、その当選を失わせる、もっと進んで、当選を失わせるだけでなくて、さらに落選した人も今後十年間とか五年間とかは立候補できないようにする。イギリスの制度はそうなっておるようでありますが、そうなれば初めて実効を上げるのではないか。なぜ買収あるいは買収類似の行為をやるかといえば、ひとえに当選したいからである。ところが、それをやったために当選を失うだけでなく、落選した者も何年か立候補はできなくなるということであれば、初めて慎しむことになるのであって、イギリスの選挙が歯止されたのも、ひとえにこの連座制の強化からきておるといわれておるのである。ゆえに、私は、この問題を一つまじめに取り上げて、政府現行法の総括主宰者あるいは出納責任者の行為だけについて連座制を検事の付帯公訴で強化するというようななまぬるい態度でなく、われわれの提案に同調していただくことができないか。今からでもおそくないから、一つその点の修正を考える雅量がないかということをお尋ねするために、いろいろな実例をあげつつ御質問を申し上げておるわけであります。  前回、自分より下級の議員、府県会議員であるとか、知事、市町村会議員、市町村長、それらの選挙に陣中見舞を贈ることも、自己の選挙を有利にしたいためであるから、やはり望ましくない行為ではないか、あるいは地方的な利益誘導をやること、それはもちろん選挙のときにやればいけないのであるが、平素でもよくない、長官は、それをやるのが政治家の任務であるから、そういうことまで禁じてはいけないようなことを言われたのでありますが、その用い方があるのであって、選挙を有利にせんがためにやる。私は、はなはだしい実例を申し上げると、私の選挙区に、議会が終って帰っていく、選挙のときなんか、議会でもって通過した法律のうちの一番よいようなものを三つ、四つ、これはわが輩が作った法律である、自分が作り、提案し、そうして国会を通したので、自分が作った法律であるという演説をして歩く人があります。賛成の一票を投じたということは確かにわれわれも認めるが、政府が出した案であって、その委員会にもあまりまじめには出てきておらなかった人たちが、やはり選挙区に帰るとそういうことを言って歩いて、そうして大いに票を集める。そういうのは、これは法律上何かになるかというと、ならぬけれども、どうもあまりほめたことではない。そういうことを初め、いわんや地方的利益――あの鉄道はおれが敷いてやるんだ、あの港湾はおれが修築してやるんだというようなことは、えて言いがちなものである。そういうふうなこともできるだけなからしめることが望ましい。また、あらゆる機会に行われる寄付、おそらくこういうものも同僚諸君みな腹の中では困っておられると思う。それはみなやはり寄付の競争となって、取りに来る方からいうと、だれ代議士も出しました、だれ代議士も出しましたということで並べられると、やはり出さざるを得ないということになる。こういうことは何とか取り締ることができぬか。それから供応、接待、あらゆる集会に酒を届けるとか、いろいろなごちそうを配るとかいうようなことも、みなできるだけやめるべきではないかということを申し上げて、原則として賛成だ、ただそれを法律で取り締ることはどうかというようなお言葉であったのでありますが、私の言うのも、一から十までこれは法律で取り締るわけにはいかないでありましょう。ただ、裁判所が認定して、なるほどこれは選挙の手段に使った、バスを一台用意して、各部の有権者を一万人以上も山に連れていったというようなことは、これはだれが見たって選挙のためにやったと認定しても間違いない。そういう場合に連座にかけることは一向差しつかえないであろうと思うのでありまして、私が質問している趣旨を間違えないように一つお願いしたいと思う。そういう場合に、失格させることは差しつかえないばかりでなく、望ましいことではないか。冠婚葬祭に御香典をやるとか、御祝儀をやるとか、これも普通の社交においては当然のことでありますけれども、どうも代議士その他の人のやり方は過ぎたるものがある。親疎を問わず出しておる。はなはだしきは、それぞれの村、町に代理人がおりまして、そうしてみな、、不幸があり御祝儀があれば、遅滞なく届けることにしておる。そうしてあとで報告をしてとる。こういうことは私はりっぱな買収であると思うのでありまして、ただそれが選挙に接着した六カ月だけ今は処罰されるわけでありますが、そうでなくもっとさかのぼってできるなら、いつやっても、やはりそれが選挙のためにやったと一定せられる場合には、これを失格の原因にする、こういうことを一つわれわれは考えているわけでありますが、政府はどういうふりにお考えであるか。また中村君にも一つお答え願いたいのであります。
  92. 早川崇

    ○早川政府委員 連座制の強化という問題でございますが、私は、この前の委員会で申し上げましたように、日本の連座規定は限界まで来ている。英国にならえという御意見でありますが、英国にならえということは、日本の連座制をもっと強化じゃなくて、ゆるめろということになるのです。なぜならば、英国では、候補者が選任監督を十分すれば、出納責任者がどれだけ犯罪を犯しても助かるわけであります。その点はすでに連座制としては限界にきていると考えるのであります。ただいまの問題のいろいろな冠婚葬祭、あるいはバスで選挙人を案内するとか、このようなことは、これは好ましいことではないと私は思います。代議士同士があるいは正月の年貢状を自粛したというようなことは非常にけっこうなことであって、われわれの選挙区におきましても、不当な寄付はお互いにやめようじゃないか、社会党、自民党代講士が、共同いたしまして新聞で発表いたしまして、寄付はやらないといった申し合せをいたしまして、そういう点では非常に自粛されたと思っておりますので、でき得べくんばそういう自粛の方法で防げればけっこうかと思うのであります。ただ、事前運動になる部分は当然罰せられますが、事前運動の六カ月以前の問題、これは法律によって縛るか、あるいは今申し上げましたような自粛の措置でやるかは、これは個人の人権に関するもので、よほど慎重に検討いたしまして、結論を得べきものであろうと思います。現政府といたしましては、そこまで法律で縛るというのはいかがなものであるか、かように考えております。
  93. 中村高一

    中村高一君 連座制の強化が政府ではもう限度にきているという御答弁でありまして、果して日本の選挙法が連座制の強化について限度にきているかどうかは、これはわれわれも十分に検討をいたしているのでありますが、私たちは決して限度にきているとは見ておらないのであります。それは、選挙現実を見ますればわかる通り選挙違反の件数が、衆議院議員の総選挙におきまして、いつも三万とか四万台とかいうような選挙違反がとにかくあります現実を見たとき、やはり連座制を強化するということが、日本の選挙現実に必要だということを私たちは痛感をいたしまして、今度連座制の強化に関する法案を提出いたしているのであります。その点について政府とわれわれとの間には大きな開きがあるのであります。この点に関しまして、比較的公平だと政府も言うておりますのが内閣の調査会であります。この政府で学識経験のある者を任命されたその諸君の答申を見ましても、やはり連座制は強化しなければいけないという答申をしているのでありまして、ただいま早川次官が言うたように、もう限度にきているからこれ以上連座制を強化する必要がないなどと言った人は一人もないのであります。全部の委員諸君が、口をそろえて、まだまだ日本の選挙界の腐敗の現状からは連座制を強化すべしという、一致した見解を述べているのであります。この点については一人の反対者もなかったのでありまして、早川君は、行き過ぎだとか、あるいはもう限度にきていると言われているけれども、早川君以外の方は、大体もっと強化すべしという意見が多いということを、この答申案にはっきり書いてあるのであります。しかも答申案には、選挙運動の総括主宰者またば出納責任者が買収等の罪を犯して刑に処せられたときは、直ちに当選人の当選を無効としろ、こういう選挙法改正案提出しなければいけないのだという条件付で出ておるのを、政府は、この点については目をつぶって、小選挙区法の区割りの方にだけ力を入れておるということだけを見ても、答申案の趣旨を全く政府はじゅうりんしておるようにわれわれには考えられまして、遺憾しごくでございます。そこで、われわれが今回提出いたしておりますところの連座制の強化は、先般の委員会でも私は申し上げておりまするから、重ねて時間をとることはよろしくないと思いますので、その点は前回に譲りまするけれども、前回は当選の無効という点だけを主張いたして参りました。われわれの提出しておりまする連座側の強化の中には、なお強化しなければならぬ点があるのであります。それは、今回の法案には出しておりませんけれども、資格の喪失であります。この点については、日本の現在の選挙法では、普通の犯罪では五カ年間、買収等の違反については十カ年間となっております。しかし、イギリスの選挙法などを見ますると、腐敗行為をいたした者に対しては十年間、違法行為をした者は七年間とかいうふうに、やはりこの点についても相当厳重な規定が行われておるのが一つ。もう一つは、選挙違反によって得たことが明らかである得票は減票すべし、当選行の総得票の中から選挙違反によってはっきりした票が百票出るとしまするならば、その百票は得票数から減票する、そうすることによって、百票の違いで当選をしておる者があるならば、これは失格させるがいいというイギリスの規定を、今度の社会党の改正案の中に採用いたしておるのであります。買収などによって得票したということが明らかであれば、それは不正な票、無効な票でありまするから、総得票数から差し引くということがわれわれは最も合理的なことだと思いまして、この点も追加いたしまして、最も公平に得票を計算をさせるという方法を講じたのも、やはり連座制の強化によってわれわれが選挙の運営の公正化を期するために提案をいたしましたことを、あわせてこの機会に追加いたして説明いたした次第でございます。
  94. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 ただいまの鈴木委員の事前運動、三百六十五日買収の問題につきまして、関連して御質問をしたいのであります。  実は汚職、疑獄事件の後に、国会自粛という建前から、国会法を改正する、選挙法改正する、また政治資金規正法を強化する、この三つの事項が国会において相談になりまして、その結果、国会法の改正がなされ、続いて公職選挙法改正がありましたが、遺憾ながら政治資金規正法はまだ改正になっておらない。そこで、わが党は、御案内のように政治資金規正法改正案を今国会提案しておるのでございますが、さて問題は、昭和二十九年に国会自粛の意味合いから公職選挙法改正をやったが、その改正の中に第百九十九条の三という規定がございます。これによれば、「公職候補者又は公職候補者となろうとする者は、当該選挙に関し、当該選挙区内にある者に対し、寄附をしてはならない。但し、政党その他の政治団体又はその支部に対し寄附をする場合は、この限りでない。」と第一項にありまして、第二項に「前項本文の規定の適用については、当該選挙区内にある者に対してする通常一般の社交の程度を超える寄附は、当該選挙に関しする寄附とみなす。」とありまして、三百六十五日買収がこの法律規定によって防がれる建前に一応なっておるのであります。ところで、今鈴木委員のおっしゃられたように、地方選挙の場合、すべての候補者に五千円、一万円、二万円と寄付をする、あるいは、お盆のときには、お墓に人夫をやりまして、だれかれの差別なく盆花を供える、さらに各町村に常時選挙運動代理人がおりまして、これが、冠婚葬祭はもとより、犬が死んでもおくやみを持っていく、こういうようなことが行われる。お正月になりますと、ふろしきあるいは手ぬぐいに自分の名前を書き入れて、年賀にそれを持って新年おめで、どうと言って歩く。そのようなことが去年の秋以来非常に盛んになってきた。これは、自民党において小選挙区をやろうという動きが出ましてから、小選挙区という区画ができたなら、この区画から自分が立とうと思う区域に対して、これがひどく行われているのであります。農村の作業場が改築されて部落の集会所ができると、そこへ幅六尺、長さ十五間にわたる名前入りの何万円もかかる紅白のまん幕を寄付する。何かいろいろなそういう会場ができた場合には、また三万円、五万円というすばらしいいす、テーブルを寄付して、それに名前が入っておる。このようなことがじゃんじゃん行われているのが現状でございます。そのような行為を防ぐという趣旨から、この公職選挙法改正国会自粛のためにでき上ったはずである。その場合、年賀状も互いに自粛をしよう、暑中見舞も出すまいというのが議院運営委員会できまり、また各党の代議士会で満場一致承認されている次第でございますが、このように常時買収がこの小選挙区法の実施の動きが出てきましたときから猛烈になって参りました。そこで、この百九十九条の二の解釈について、今買収は一カ年の時効でございますけれども、わが党はこの買収に関する違反は二カ年の時効期間としようという改正案を出しておるのでございます。しかし選挙の一年前以後のものであれば何とかひっかけられるが、それ以前のものは全くひっかけられないということになると、この規定は空文になるのでございますが、一体自治庁としてはどういう公権的な解釈をしておるか、大臣から承わりたいと存じます。
  95. 太田正孝

    太田国務大臣 条文に対することでございますから、選挙部長が話してから、私が御答弁いたします。
  96. 兼子秀夫

    兼子政府委員 第百九十九条の二の規定は、御承知のごとく第二十国会において改正された規定でございますが、その第二項の規定によりまして、「通常一般の社交の程度を超える寄附は、当該選挙に関しする寄附とみなす。」という規定がございまして、通常一般の社交の程度を越えないものはまあよろしい、こういう規定に相なっておるわけでございます。この百九十九条の二の規定は、できるだけただいま御指摘のような事例を抑えたいという趣旨規定されたものでございますが、やはり人間の社会生活上社交というものは無視できない、そのような見地から、当時の改正の経過におきまして、このような規定に相なったのでございます。でありますので、法律でやり得る面、それから道徳でやり得る面、二つの面において努力をいたさなければならないと思いますが、いろいろと年末年始等に自粛申し合せと申しますか、そのような措置が行われて、相当効果があるように考えております。それで、選挙前に行われます通常一般の社交の程度を越えました寄付は、やはり事前運動として法規に該当することになるわけでございますが、その認定は御承知のごとく非常にむずかしく、裁判所にまかされるということになろうかと思います。
  97. 太田正孝

    太田国務大臣 ただいま選挙部長が申されました通り、裁判所が選挙に関する寄付と認定いたしますならば、百九十九条の二による犯罪となるわけでございます。
  98. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 今大臣選挙部長から答弁がありましたが、それはここに書いてある通りのことで、これ以上の答弁は何もありません。問題は、今私が例示した例はいずれも社交の程度を越えた寄付、あるが、そのような事実があるとすれば、選挙法の主管の役所として、またその責任者として、これは一体選挙違反に該当するか、またこれは検挙さるべきものであるかいなか、これをはっきり承わりたい。  もう一つは、今選挙違反は一年で時効にかかるのでありますが、一年以前であってもこれが選挙違反になるかどうか、この二点をもう一度確かめたいのであります。
  99. 早川崇

    ○早川政府委員 この社交の程度を越えたか越えないかの認定は、おそらく検察当局自身がすることでありまして、これは検察当局あるいは裁判官にまかせるより仕方がないと思います。これは公正な常識で決定すべきかと存ずるのであります。  時効の問題は、お申し出の通り、買収のごとき場合には一年、形式犯のときには六カ月、事前運動の場合にも事後の場合にも、その期間に検挙されなかったならば、それは時効にかかるわけでございますが、特に選挙後逃亡した者の時効を延ばすということは一考の余地がありますが、選挙が済んで二年も三年も不安定な状況に置くということは果して、適当なものであろうかどうか、これはなお検討の余地があろうかと思いまして、今度の政府案ではこの問題には触れていない次第でございます。
  100. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 まだどうも的をはずして答弁をしないのですが、早川君の第一番目の答弁は法務省などに聞きたいと思う。弟三点は、衆議院の場合などはいつあるかわかりませんが、その他の選挙等で一年以上前の場合にはどうなるか、それを聞いている。その答弁を願いたい。
  101. 早川崇

    ○早川政府委員 現在のところ、事前運動の一年を二年前とか三年前とかいうところまで延長する意思は、政府としては持っておりません。
  102. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 一年以上前に行われたら違法と考えるかどうか。
  103. 早川崇

    ○早川政府委員 時効になっているから、それは違法になりません。
  104. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 これは事務当局答弁でもいいのですが、帝国地方行政学会で発行しておる選挙関係実例判例集という本があります。これは国会の図書館にもあり、むろん自治庁にもあるだろうと思う。それの五百五十ページの一に質問がある。「問「当該選挙に関し」の意義いかん。」これは昭和三十年の一月に質問されておる。答えは、第一として、「現に公職にある者に関しては次回に行わるべき当該公職選挙をいう。従ってその選挙が特定されていることを要しない。」特定の選挙でなければならぬことはもちろんでありますが、しかし、現職者に関しては、次に行わるべき選挙が当該選挙だ。従って、この解釈からいえば、時効の問題とは別に、選挙がいつあるにかかわらず、次の公職選挙を目当てとする事前運動であるとして検挙ができるはずだ。それから第二に、「候補者または候補者とならんとする者については選挙が特定されていることを必要とする。」だから、今議員ではない、次の選挙に立候補しようとする者については、立候補してみ「なければわからない。選挙になってみなければわかりませんけれども、現職の者に関する限り当該選挙というのは次の選挙だという意味になると、一年以上前でもその行為が行われたときに、これを問題とすることができる、こういう結論になるの一であるが、この帝国地方行政学会の選挙関係実例判例集というのに書いてある内容は、自治庁が回答したものと思うかどうか、あるいはこれは法務省が回答したものであるかどうか、答弁を願いたい。
  105. 兼子秀夫

    兼子政府委員 ただいまお尋ねの書籍につきましては、調べました上でお答え申し上げます。
  106. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 この問題は非常に重要でございますし、ことにこれは国会自粛の建前からできた法文でもございますし、なお、この法文は、小選挙区というようなことになれば、非常に活用されなければならぬ。これが、もし、自治庁のようなあいまいな解釈ではなしに、断同たる態度をもって臨むならば、三百六十五日の事前運動をある程度抑圧するに非常に効果がある。精神規定などで日本の現在の選挙界を浄化するわけにはいかぬのでありまして、やっぱり法文が必要、である。そういう観点から、なお自活庁の見解、法務省の見解を追ってお尋ねすることといたしまして、この程度で終ります。
  107. 鈴木義男

    鈴木(義)委員 その次は戸別訪問でありますが、戸別訪問のわが国の始祖は、鳩山総理のお母さんの春子夫人が始めたらしい。それで今の薫子夫人も戸別訪問は非常に熱心のようでありますが、これがまたなかなか困ることでありまして、のべつまくなしということになる。ある地方では、戸別訪問の回数によって――県会、市町村会、市町村長等でありますが、代議士もやはり入るのですけれども、当落がきまる。五当三落などというのは、五へんたずねれば当選するし、三べんでは落選する、こういう意味です。私の知っておるある議員のごときは――今ここにおられる議員でありませんから御安心を願いますが、前にいた議員の方は、ほとんど議席におらないで、選挙区の村から村へと回り歩いた。非常にお酒もよく飲める人であるからやれるのでありまして、自分は酒が飲めないからちょっとやれないけれども、やって回っておる。何のためにあの人は出てきたのだろう、いつも選挙区の村から村へと戸別訪問をやって歩いておるというようなものであります。ところが、これがやはり人気を博し、あの人はわれわれの友であるということで、当選には大いに響くわけであります。こういうことは法律上の問題とは申し上げかねますけれども、これは選挙中にやればむろんいけないのですけれども、平素やっているのはどうしようもないのか。こういうことも一つ考えてみなければならぬのじゃないかと思うのですが、考えたことがありますか。
  108. 早川崇

    ○早川政府委員 戸別訪問は諸外国では一切罰則をつけておりませんが、わが国では、鈴木委員の申されますように、弊害があると考えておりますので、日本では、現行法におきまして、戸別訪問を特に罰則によって取り締っておるわけでございまして、政府といたしましては、これをはずすというような意図はもちろんありません。現行法で十分だ、かように考えております。
  109. 鈴木義男

    鈴木(義)委員 私は、現行法で十分でなくて、何とかこれも一つ程度を越える者は失格の原因にするということを考えてもいいのではないかと思う次第であります。そこで、これは長官や政務次官に聞いても仕方がない、法務省の万両に聞くべき問題なのでありまするが、しかし、今から法務省を呼ぶのも時間がかかりますから、一応問題として提供いたしておきまするが、この法がよくできておっても、実際に励行されなければ何にもならないのであります。それで、法律は今のままでもいいが、はんとうに励行するということを一つ奨励しなければ仕方がない。現にわれわれは、目の前で選挙違反の現行犯を見ておるけれども、これを警察に通知しても、警察は手を出さない、そういう例がたくさんあるのであります。この前も一つ例を申し上げましたが、また県会の選挙なんかでは、村じゅう集まってたき出しをして、そうして賦役みたいに人夫のように出しまして、お前はあの方面、お前はあの方面と、みな郡内の村を分担して、細君はみなたき出しとセリつみ、菜つみなどに手伝いに出て、時即が悪いですからつむものがなくなった。まだ野菜のできないときであって、辛うじて川のへりのものをみなつみ上げたなどというふうにして、自分の村から候補者が立つことは非常に迷惑だ、われわれも賦役を仰せつけられるから、出ないわけにもいかないしというようなことすらあるのであります。こんなのは、当然、警察があげないまでも、注意をしてよろしいのであるが、平気で行われておる実例を私は知っておるのであります。そんなのは昔のことだろうと仰せられるならば、最近、この四月に行われた町会の選挙で――最近まで村であったのが、合併して町になったのですが、実は選挙違反に座して、私のところに相談に来たのが実情を訴えておる。それは三百から四百とると当選する町でありまするが、最高点で当選した人は酒を三石飲ませたというのであります。それから二石、一石五斗というのが平均である。町民は、四年に一度のお祭だ、飲ませてくれ、また飲ませる。というのは、選挙をお祭と心得ておるのであるから、朝から晩まで行って飲んでおる。飲ませないようなやつは当選できないのであります。ある者が、飲ませたほかに二万数千円をまいたというので、検挙されました。それは善良な男であるから、一票二千円ずつで買いましたということを申し上げた。ところが、帰ってきてから、集まってきて、呼び出されて玄関から表に出たら、いきなりメリケンを食らわせられて、血まみれになったというのであります。警察に、私は、飲ませたほかに金も使ったから選法違反で検挙されるのは仕方ありませんが、あの三石五斗飲ませたり三石五斗飲ませた方はどうなんですかと聞いたところが、あれをやると町全部あげなければならないから、あの方はやめておく、こう言ったそうであります。それで、たまたまつかまった者が自白をすると、太いやつだ、けしからぬやつだ、仲間を売った者であるといって村八分にされる。そのことを私に訴えて、まことにどうもその町にいにくくなった。――やったことが悪いと考えないで、自白したことがけしからぬと考えるこの道徳水準というものは、よほど考えなければならぬわが国の選挙界の実情であると思うのであります。ゆえに、私は、そういうものを一々縛るということもおとなげないし、やり切れぬことでありますから、どうしてもその当選を失わせるほかに道が一ない。当選したいばかりにやるのでありますから、それで、私は、どうか一つその点について、政府もわが社会党が提案しておるような趣旨をくんで修正をするならば、そういうところへ一つ力を入れてもらいたい、こう思うのでありまするが、一つ御意見を承わりたい。
  110. 早川崇

    ○早川政府委員 そういうような供応が選挙目的にやられますことは、これは当然警察なりあるいは検察当局選挙違反としてあげるべきものであります。もしあげなければ、国会の法務委員会で、そういうものは鈴木委員御みずから取り上げられて調査をすべきもので、さらに、検察審議会というものがございまするから、そういう悪質な犯罪をもし警察なり検察があげなければ、そういう道は幾らでもあるのであります。それをただ見のがしておくというのがおかしいのでありまして、われわれといたしましては、現行法におきましても、そういうことをやったならば当然当選は失格いたしまするし、さらに公民権は五年、七年と停止する仕組みになっておるのでございますから、別に法律を作る必要は毛頭ないのでございます。従って現行法実施するということ以外にこの道はないと私は考えております。
  111. 鈴木義男

    鈴木(義)委員 それは現行法でも訴訟を起せば当選を失うことになっておりまするが、非常に手続が煩瑣であり、実際にだれかが訴えでも起して当選を無効にしなければ、やはり任期中はちゃんと勤めておるのでありまするから、そこでわが党が御承知のような案を出したわけであります。しかるに、それにはなかなか賛成されないで、しきりに原案だけを支持されることは、どうも私は納得いかないのであります。必ず失格する――私は検挙の方を力を入れて聞いているのじゃなくて、そういうことがあれば必ず失格するという規定にし、しかもそれは、訴えなどを必要としない、裁判所から判決が確定したら通知さえやれば、それでその翌日から失格することになれば、これは非常に薬がきくと、こう思っておるのであります。いわんやこの検挙というようなことは九牛の一毛でありまして、私の目に触れたのだけ問題にするというならばけっこうでありましょうが、それは不公平になる。世の中にたくさんそういうことがあるから、私はここで一つの実例を申し上げるだけであって、それを法務委員会で問題にしろなんということは、よけいなお世話というものでありまして、必要があれば、それはまた問題にいたしまするが、そういう意味で今法案の適否を論じておるのでありまするから、どうか政府も、虚心たんかいに、社会党の案もなかなかいいところがある、賛成だ、こうお答え下されば、私は質問をやめるのであります。いかがですか。
  112. 早川崇

    ○早川政府委員 先ほど中村委員のお話、また鈴木委員のお話を聞いておりますると、何か、出納責任者なり総括主宰者がそういう犯罪を犯した場合に、当然失格するということのないように伺えまするが、この場合、附帯訴訟を検事が公訴に附帯していたしまするから、出納責任者なりあるいは総括主宰者が刑に処せられますと、当然失格するのであります。調査会の案でも連座制を強化しろというのを、聞かなかったじゃないかという中村委員のお話でありまするが、私が驚いたのは、そのことを当の調査会の起草委員の御手洗先生もその他の方も知らないのですね。従来の選任、監督を注意しておれば助かるという規定が二年前になくなっているのをお知りにならないで、調査会の方はああいうことをお書きになった。そこでわれわれといたしまして、連座制の強化という意味は、附帯訴訟をつけるということにおいて連座制は限度にくるんじゃないか、それ以上第三者がやったことまでを全部候補者に連座ということになりますると、これは大へんなことになる。意思を通じて第三者の総括責任者なり出納責任者以外の者が悪質犯罪をしたならば、現行法ではこれは候補者が失格する。意思を通じて何もそれを新たに連座ということで規定する必要はないじゃないか。従って、どうか、この連座制強化という問題は、諸外国の実例を見ましても限界にきているという――このわが国の選挙法の進んだ点は私は社会党の方も率直にお認め願いたい、かように思うのであります。
  113. 鈴木義男

    鈴木(義)委員 約束の時間ですから、この辺で切り上げますが、ただ誤解だけは解いておかなければならない。それは、社会党は決して誤解して提案しているのではなくして、やはり一回の総選挙に三万も四万も違反者ができるが、失格する人は一人もない。こんなことは不自然きわまることなんです。それで意思を通じてなしたものまで連座せしめるのは大へんだと早川次官は仰せられるが、それがむしろねらいなんです。大事なところなんです。ゆえに、それは頼まないのに一生懸命にやってくれるようなファンもあります。そういう人たちの行為によって連座させられたのではかわいそうですから、社会党といえどもそういうものは除いてありますが、普通の場合は、出した金はあとからちゃんと埋めるのであります。意思の連絡なしに買収または買収類似行為が行われたなんてことは、まず百に一つ、千に一つないと見なければならぬ。ですから、その点について十分一つ実効を上げるような制度ができるならば、小選挙区をやっても――小選挙区になって一番おそるべきことは、買収及び買収類似行為がふえるということである。とうとうとして行われます。この間の地方公聴会でもみなそれを言っておりました。小選挙区になったら、おそらく三百六十五日買収が行われるでしょう。それは政治に経験ある古老がみな言っているのであります。ですから、そこのところは、一つ十分に粛正のできる方法をとっておいてかからなければいけないということを、私は申し上げるわけであります。  約束の時間ですから、ここで一応打ち切ることにいたします。
  114. 太田正孝

    太田国務大臣 鈴木委員から御懇切なる御質問がございました。私も承わりまして、法律でもって厳格にワクをきめていくという考え方と、現行法でもやれるという問題がまだすいぶんあるということと、それから、中村委員であったかと思いますが、イギリスにおいて減票制度をとっておる。これは私も非常に考うべき点かと思って検討しておりますが、ただいまのところにおきましては、私どもは、現在の制度を連座法の規定において強化するという以外には、新しい問題としては、早く作らなければならぬ政治資金規正法、これははっきりと申し上げておく次第でございまして、法律をたくさん作っていくという建前よりは、まず現状における法律でも励行していかなければならぬ、かように考える次第でございます。
  115. 小澤佐重喜

    小澤委員長 この際暫時休憩いたします。   午後三時五十四分休憩      ――――◇―――――   〔休憩後は開会に至らなかった〕