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1956-05-04 第24回国会 衆議院 公職選挙法改正に関する調査特別委員会 第26号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年五月四日(金曜日)     午前十一時十九分開議  出席委員    委員長 小澤佐重喜君    理事 青木  正君 理事 大村 清一君    理事 松澤 雄藏君 理事 三田村武夫君    理事 山村新治郎君 理事 井堀 繁雄君    理事 島上善五郎君       相川 勝六君    臼井 莊一君       岡崎 英城君    菅  太郎君       椎名  隆君    灘戸山三男君       田中 龍夫君    中垣 國男君       福井 順一君    淵上房太郎君       藤枝 泉介君    森   清君       山本 勝市君    片島  港君       佐竹 晴記君    鈴木 義男君       竹谷源太郎君    田中織之進君       原   茂君    三鍋 義三君       門司  売君    森 三樹二君       森島 守人君    山田 長司君       小山  亮君  出席国務大臣         国 務 大 臣 太田 正孝君  出席政府委員         自治政務次官  早川  崇君         自治庁次長   鈴木 俊一君         総理府事務官         (自治庁選挙部         長)      兼子 秀夫君  委員外出席者         議     員 中村 高一君         総理府事務官         (自治庁選挙部         選挙課長)   皆川 迪夫君     ――――――――――――― 五月四日  委員滝井義高君、田中織之進君及び山下榮二君  辞任につき、その補欠として三鍋義三君、森島  守人君及び門司亮君が議長の指名で委員に選任  された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  公職選挙法の一部を改正する法律案内閣提出  第一三九号)  政治資金規正法の一部を改正する法律案中村  高一君外三名提出衆法第二一号)  公職選挙法の一部を改正する法律案中村高一  君外四名提出衆法第二二号)     ―――――――――――――
  2. 小澤佐重喜

    小澤委員長 これより会議を開きます。  内閣提出公職選挙法の一部を改正する法律案中村高一君外三名提出政治資金規正法の一部を改正する法律案中村高一君外四名提出公職選挙法の一部を改正する法律案、以上三案を一括議題といたします。  質疑を継続いたします。竹谷源太郎君。
  3. 竹谷源太郎

    竹谷委員 先般、当委員会の命を受けまして、私ども秋津雄藏君を班長といたしまして、仙台における地方意見を調査いたすために派遣されまして、その結果につきましては、松澤雄藏君より先日御報告がありました。大体において公正を得ているのでありますが、その報告は多少抽象的に流れまして、もう少し明確に具体的のことも追加申し上げることが審議上御便利かと思いますので、これから数点につきまして補足をいたしたいと思う次第でございます。  第二番目に公述をいたしました新明正道君の意見でございますが、これはこの報告書には抽象的であまりに簡単でございます。大体結論たけは出ているのでございますが、そのうちの最後の方に、附帯訴訟賛成であるとただ一言報告をいたしておるのでございますが、これにつきましては、新明君は、連座制強化免責規定の削除ということを強く主張しておったのでございます。なお、今回の政府提案における附帯訴訟はむろんよろしい、しかしながら、これはまだ訴訟手続がないのであって、この選挙法改正と同時に、附帯訴訟に関する手続法を主張するものであって、これなくしては無意味である、これは同時に立法する必要がある、そして連座制強化をはかるべきであるという強い意見のあったことをつけ加えておく次第でございます。  それから、第三番目の小杉十郎君、この人の意見最後に書いてありますが、区画割りに関する問題でございます。これにつきましては、宮城県の登米石越村は調査会案によると第七区になっているのであるが、政府案によれば、この石越村だけを、第七区に属する登米郡から切り離して、第八区の栗原郡にひっつけておる、これはよほどよく説明しなければ、県民納得を得られないと思う、こういうふうに述べておるのでありますが、これにつきましてはこういう簡単な説明ではなかったと思うのであります。政府説明によると、石越村は、追って栗原郡の若柳町に合併になる県の計画があるのであるから、これを栗原群の方にひっつけたのである、こう申しておりますけれども、これは、宮城県庁は全県的に一応の合併計画というものを作った。それによれば石越村は若柳町に入る計画になっておるのでありますが、その手続はまだ何ら進んでおらないのであります。一面、宮城県第一区とされておる仙台市についてでありますが、これは二人区といたしておるのでありますが、すでに生出という名取郡の村は、当該村議会において議決がなされ、市議会ももちろん、県においてもすでにこれを承認しておるというようなものか、まだ仙台市には入っておらない区画割りになっておるのでございます。この石越村は若柳町に合併になるかもしれないが、ただ県の計画に載っているという理由だけで栗原郡に入れたのはおかしい、今はこれがいつ合併になるかわからぬ情勢にあるのであるから、合併になったときに入れればいい、選挙区画割り確定委員会でこれを改正すればよろしいのであって、今からこの石越村を若柳町の一体として考えることは不合理である、そこで、もしこの政府案区画割りについて修正を施すならば、まず第一に石越村について調査会と同じように修正すべきである、こういう強い意見があり、これは県民一般が不合理な政府案だといっておるところであるということを、強く主張しておった点をつけ加えておく次第であります。  それから、第四番目の小野昌次君、これは元岩手日報編集長をやった新聞人であった人でありまするので、相当詳しい情報を持っておりまして、各方面意見を述べてくれたのでございます。班長報告は、それらについてごく概略だけを触れておるのでございますが、これは大へん参考になる意見が多かったので、この小野昌次君の意見のうち、この班長報告にないところの、参考になる点を二、三申し上げておきたいと思います。  まず、一般県民意見をいろいろとこの方は調査されたようでありまするが、ある公務員意見だといって紹介されたことは、必ずしも小選挙区が絶対悪いというわけではないが、今回の政府案において、政党政治運動それから選手運動というものを認めたことは、一つの進歩のように見える、しかしながら、選挙に当って政党選挙運動の特権を有するものは、五十人以上の確認政党に限るということになると、五十人以下の小政党やあるいは無所属から出た立候補者はこの特典がない、これは選挙の自由を著しく制限することになると思うが、こういう差別的なやり方は、どうも憲法違反ではないかという自分は疑いを持っておる、このようにある公務員意見を漏らしておったということを陳述いたしました。  次に、社会福祉関係職員意見であるといって述べたところによれば、小選挙区は、表面はお金がかからないというような話であるが、しかしながら、これは、実際には政党選挙運動費用というものはどうも制限がないようであるが、これはどうなるのか、これではその方面に抜け穴があって、かえって今までよりも小選挙区になって金がたくさんかかるのではないかという自分は疑問を持っておる、このように社会福祉関係職員が申しておったという報告がありました。  次に、地方政治家意見、この地方政治家保守党に属する人だそうでありますが、この人の意見によると、この政府案は、自民党の決定であるから、自分らとしてはやむを得ないとはいいながら、しかしながら、この政府案によれば、現役の強みが倍加する、そしてボスとのつながりが強くなり、現役が独占する結果となり、新人は出られなくなる、そして政治というものに新鮮味がなくなるであろう、自分自民党員であるが、個人としてはこの政府案には非常な疑問を持っておる、このように、ある保守党地方政治家は述べておったということを陳述いたしたのでございます。  さらに、この区画割りについてでありますが、これについていろいろ意見を述べておりましたが、政府案自分たち賛成はできない。まあ小選挙区をやるとすれば、選挙制度調査案が常識的であり無難であろうと思う。花巻市、稗貫郡、それから和賀郡、これは切り離すことのできない地域と考える。調査会案もこれは一つにしている。ところが政府案和賀郡を切り離した。また東西両磐井郡と一関、この二部一市は一選挙区となっているべきものであって、政府のいわゆる地勢、交通それから従来の伝統、こういう点からいいまして、一体とするという方針であるならば、これらの二部一市は一つにすべきものであるものを、磐井郡というものを分割している。   〔委員長退席山村委員長代理着席〕 そして二人区を作っている。これは県民から手きびしい批判を受けているということを報告いたしております。なお、岩手県の自民党幹部も、これは非常に困る区画割りた、こう申しており、上京をして自民党本部幹部懇談をしたはずである。これは何とか一つ調査会案のようにしてもらいたいということを陳情した結果、自民党幹部においてもそのようにして、やろうということで了解したというようなことを、自民党の県連の幹部が言っている。このように報告をいたしておった次第でございます。さて、ことに重要なことは、このような無理な区画割り選挙法というものを、やるということは、国民の非常な不信を招く結果になるので、おもしろくないということを強調しておった次第でございます。  第五人目に、元宮城町村長会長をやっておりました富田という人が意見を述べたのでございますが、この方の意見は割合に短かかったのでありまして、この報告にも簡単に報告してございますが、その中で、特に重要な点で松澤君の報告から落ちていると思われる点は、選挙運動のうちの悪質の運動でございますが、買収、供応等というような問題について次のように言っているのであります。こういう選挙違反候補者運動員の間の意思疎通がなくて行われることは絶対にない、自分は四十年、五十年の選挙経験を持っているが、必ず候補者選挙運動員との間には意思疎通がある、従って当然に運動員違反候補者連座が及ぶようにすべきである、ということを述べておった次第でございます。  それから、最後に、和久幸男君、これは福島民友新聞社の社長でありますが、県内の世論等もいろいろ織り込みまして、大へん有意義な報告でございました。これについては、この報告書にも相当書いてありますから、特につけ加えるほどのこともございません。  以上のようにいたしまして、小杉十郎君、これは宮城県会議員でありますが、この方を除いては、どうも今回の政府の小選挙法案というものに反対意見であり、相当手きびしい批判意見があった次第でございます。  簡単でございますが、松澤君の御報告に対して、われわれの立場から補充報告を申し上げた次第であります。
  4. 山村新治郎

  5. 原茂

    ○原(茂)委員 一昨日の山村班長から報告がありました第二班の御報告に、補充意味で関連した報告をしておきたいと思います。順序を追うてやりますと時間がかかりますので、大体四人の供述人の方々の供述中心にいたしまして、この報告に載っていない点を取り上げて、箇条的に申し上げてみたいと思うのございます。  その前に、一昨日この班長報告をプリントによりあるいは班長からの発言をお聞きいたしましたが、まことに遺憾だと思いますのは、非常に主観が多く入っておりまして、その他は公平な立場で取り上げたようでありますが、その点を意識的に打ち消したいという意味報告も私はあわせていたしたい、このように考えているわけであります。  まず第一に、奈良県会議員吉田之久君から大体八つにわたって陳述せられた重要点だけを申し上げてみたいと思うのですが、総括的に、吉田君は、この法案をとらえまして、一日に言うなら、これは国民権利をあまりに無視し過ぎている、世論には一切耳を傾けない、党利党略で充満している、これを総括すると、結論的には選挙を一党一派のものと考えているようにしかとれない法案であって、これはまさに国民権利をじゅうりんするものだ、こういうことを強く主張された上に、第一点として特に吉田君が強調されましたのは、選挙制度調査会の運営の内容に関してでありますが、特にその終りにおきましては、まさに政府にくみする委員あるいは官僚等がある種のチーム、ワークをとって非常な暴挙を行なって、ついに何が何だかわからないような結末を告げるようになったということを、強く不満だと強調されておった点が注目されたのであります。  第二には、個人演説会立ち会いを廃止した場合に妥当かどうかを考えてみるのに、今までの実績から言うなら、個人演説会というものは、応援弁士の数が非常に多くて、最後にちょっと候補が出てきて、どうぞお願いをいたします、だけで終ってしまうのが前例だ。こういったような個人演説会というものが正しく妥当に直されるという自信があるならともかく、そうでない以上は、立ち会いを廃止したときの個人演説会というものは、もう候補のまじめな充実した政策発表等は、今までの経験からいうなら行われていかない。こういうことが考えられるので、立ち会いを廃止したときの個人演説会というものは非常に重要なものになってくるし、過去の経験から徴すなら、どうしても政策をみっちりと候補者が発表していないという事例を特に注目すべきである。こういうことが第二に言われたのであります。  第三には、選挙制度そのものに言及をいたしまして、今小選挙制度にするかしないかということを論じているが、自分たち立場からするなら、むしろ死票等をなくし、正しく世論を国会に反映させるという点から、大選挙比例代表制が最も望ましいのである。わが国国情に照らして、現段階においては、小選挙区どころか、中選挙制度そのものも廃止いたしまして、大選挙比例代表制にすべきだということを強く強調いたしておったのであります。  第四に、さきにも申しました死票等批判をるる述ベまして、結局するところ、この法案というのは、一つの大多数党ができ上る、その多数党の独裁による政治ファッショ化というものが当然考えられてくるので、かつての戦争をした日本におけるあのファッショへの道を再びこの小選挙区法はつけるものになる、従って、これは戦争へ通ずるものであり、憲法を改悪する道に通ずるものであるから、単にこの小選挙区法、だけを取り上げて考えることは不可であるということを、強く強調されたのであります。  第五点といたしましては、わが国の現状からすると、この小選挙区を採用することは、結局、個人個人との血みどろな対立激化を招きまして、政策浸透とか政策中心選挙などと看板を掲げてみても、絶対にそういった理想には到達しないで、むしろ、かつてない個人個人の激烈な戦いが展開されてくる、結果するところは、わが国の国内至るところに三十八度線を現出するということになるので、これはおそるべき結果を招来するものと考える、こういうことを強調いたしておりました。  第六点には、特に奈良県の区割りについてでありましたが、ここにおいでになる早川次官説明等もお聞きになったあとで、その説明がいかに当っていないか、全然実情に即していないという点を強く指摘いたされました。こういう点は、こまかく申し上げると参考になると思いますが、いずれ、区割り審議に入りましたときに、非常に参考になる意見が出ておりましたので、そのときに譲らしていただきたいと思いますが、とにかくせっかくの早川次官説明があったにもかかわらず、その説明が、即座に、これはく全然妥当でないという意味で打ち消されまして、しかも、列席の早川次官も、何か顔色を見ると納得をしたような顔色をしておりました。この点非常に私は心の記憶に残るわけであります。  第七点といたしましては、供託金値上げについてでありますが、これは選挙費用を軽減しようということを強くうたっておることに逆行もするし、とにかくなぜ十万円が二十万円にならなければいけないのか、その理由が鮮明でない、はっきりしていない、従って、こういった費用軽減等という一つの筋を通すなら、当然この供託金値上げはすべきでないということに、強い主張をなされたわけであります。また、引き続いて、法定選挙費用の額ももっと思い切って減らせ、そして公営を強化していかなければいけないのだ等々が、吉田之久氏の陳述の、しかも班長報告になかった重点だ、かように思うのであります。  次いで、皆川利吉君、これは全繊同盟の三重県支部書記長をやっておる方ですが、この人からやはり相当な意見陳述されました。全体的にはこの謀略案ともいうべき小選挙法案にはもとより賛成ではないが、この前置きのもとに、数点にわたって開陳されたわけであります。  そのうち二点だけ報告補足しておきたいと思うのですが、第一には、政府のこの地方懇談会に臨む態度についてでございました。いやしくも、こういう重要法案を持ってきて、そうして地方の声を実際に聞こうというのだったら、少くとも先に行われたような早川次官説明態度内容等は非常に不満である。理由としては、本来なら、せっかく出てきて、政府がこういう法案を今出しておるのだが、何かこれに対して御意見はございませんか、あなた方がお考えになって、こういうところがいけないというところがないかどうか、謙虚な気持で一つ皆さんの御意見をお聞きしたい、こういう態度政府側が出るのが当りまえなのに、まるで、地方へ出張ってきても、もう頭からこれは非常にいい案である、名案である、こういう点が特徴であるといったように、何かいいのだ、いいのだというので、これを押しつけに来たような態度は、こういう地方における公聴会なり懇談会を開く趣旨からいって、非常におもしろくないのではないか、今後十分注意をしてもらいたい、こういって早川次官などに強くその態度の反省を求めておったようであります。この点はまさに私どもその通りだと考えまして、そのときに私どもも気がついたのでありますが、今後は、やはり、こういう政府案等を持って、地方懇談会なり公聴会を開こうとするときには、政府側態度としては、当然どこかに、何か御意見等がありませんか、何か御注意はありませんか、こういう謙虚な態度で出ていくことが正しい、こう思いますので、この点を特に補足して報告いたしたわけであります。  第二点といたしましては、班長報告にはございませんでしたが、連座制をもっともっと強化しなければいけないという点を、強く、いろいろな例をあげて強調されておりました。これが皆川利吉君の陳述の中の補足の二点であります。  第三に、高木高次郎君、愛知県の町村長会会長ですが、この方の意見の中に、やはり一つだけ補足しておきたいと思いますのは、立会演説会は廃止すベきだという意見がこの高木さんからは述べられたのであります。この意見に対しまして、私どもから、ヤジがあるからというので立会演説会を廃止する、それだけの理由だと、どうも納得がいかないが、あなた方がお考えになって、ヤジという多少の弊害があるから立会演説会をやめる方がいいのか、あるいは、この法案提案理由説明にあるように、政策中心に今後の選挙を争うのだ、従って、政策浸透ということに重点を置くというのが、政府側態度であり、この法案の精神なんだが、一体多少のヤジという弊害があるからというのと、それで政策浸透をさせようという点と比べたときに、立会演説会というのは、どっちにウエートを置いて、廃止する、廃止しないということをきめるべきかということを答えてもらいたい、こう質問をいたしたのでありますが、これに対して高木さんはついに答弁ができなかったのでありまして、この点各地方公聴会、ほかのブロックの報告を見ましても、やはりヤジ等弊害があるからという意見があったようでありますが、ヤジという多少の弊害があっても、政策浸透するためには――個人演説会の場合には、どうしても、その党に好意を持つ者、その候補者に好感を持つ者が大部分演説会場に参りまして、反対党政策を聞く機会がなくなって来るわけでありますから、やはり立会演説会というものを通じて初めて政策浸透というものができるのではないか、こう私ども常々考えておりましたのを、この反対をする高木さんに政策浸透ヤジのあるということとどっちが重要に考えらるベきかということをお尋ねしたのでありますが、ついに、これに対しては、わざわざ答弁を避けたような状態でございました。  次に、寺門博君、名古屋の市会議員でございますが、この方の陳述の中から五つだけ補足報告をいたしたいと思うのであります。  第一には、こんな重大問題の陳述をせよというのに、自分は旅行もしていたけれども、その通知とそれから政府案外二案というものが、きのう自分の手元に届いた、いやしくも一晩だけの余裕でこれを勉強せよ、陳述せよという態度は、この重要法案に対する議会の、委員会考え方が少し甘過ぎるのではないか、選挙法改正委員会としてもっともっと慎重に考慮する考えがあるなら、当然三日なり四日なりの猶予期間を置いて、十分に考えさした上で陳述を受けようとする態度が正しいと思う、こういった、われわれを機械的に、時間等を無視した態度陳述をせよということ自体、この重要な選挙法に対する委員会全体の考え方を私どもは疑わざるを得ない、こういったことが強く述べられまして、これも私どももっともだと感じたわけであります。いかに急いで上げようという場合でも、急げば急ぐほどに、重要法案、である場合には、相当の期間勉強もし、考えもできる時間をやはり陳述人に与えて、しかる後に十分な意見を拝聴するという態度が今後もとられなければいけない、こういうことを痛感いたしたわけであります。  第二点といたしましては、この法案は単に外国のまねをしているのか、あるいはある特定の外国から強要されて実施しようとしているのか、そうとしか自分には考えられない、現在のわが国国情からして、どうもそういう不純なところに何か原因があって、この法案を強行通過させようとしているとしか自分には考えられない、こういうことが強く主張されたのであります。これに対しては、前段にいろいろな理由考え方説明があったのでありますが、結論だけを第二点として申し上げておくわけであります。  第三には、これは政府案というよりはむしろ自民党案なんだ、いやしくも政府提案の形はとっているけれども自民党という党員の利益を中心にして考えられた区割り案がついているからして、自民党案自分考える、こういうおもしろい意見を出しておりました。  第四には、こんな区割り一体有権者名簿が正しく配付できるかどうか非常に疑問だ、学校区中心に割ってみたり、あるいは行政区を全然無視した割り方をしていたり、こういったことで選挙をやるなら、おそらくあとで当選無効の訴えとか、あるいは全然違った有権者名簿のもとに問違ったところで選挙をさせられるといったようなことが、その当日になって発見されるといったような事態も招来されるのではないか、非常にこの点は、技術的にも、この区割りによっては実際に選挙を施行することはむずかしいのではないか、こういうことを強調しておりました。  第五に、ポスターの問題に言及いたしまして、ポスターの数を今度はふやすということも何かいいようには考えられるけれども、実際には、自分たもが選挙をやる農村等においては、たとえば革新的な分子が選挙運動をやると、ポスターだけは張らないでくれ、票は陰でこっそり入れます、しかし、ポスターを張られると、何かちょっと保守党に悪いような気がするから、ぜひポスターを張るのだけはかんべんしてくれ、こういうのがいなかの実情なので、ポスターの数がいかにふえたからといって、その他にたくさんの矛盾を持っている以上は、ポスターの数をふやしたからいかにも選挙が公明に行われるのだ、こう印象づけようとしても、これは無理だ、そういういなかの農村における実際の実情というものをもうちょっと考えなければいけないのではないか、こういうことが強調されていたわけであります。  大体、以上四氏の陳述の中で、これはと思う数点に関して補足報告をいたしたわけでありますが、最後に、各県の選挙管理委員会の、委員長の方々に、このあと懇談会に御出席をいただいたわけであります。そこで、そのとき、の模様が班長報告には非常にあっさりと書いてありますが、特に私どもこれは選管の委員長の言葉である点から重要だと思う二、三の点を、最後補足しておきたいと思うのであります。  まず第一に、一般世論としては立会演説会を望んでいる、こういう意見が過半数の方の意見でありました。一人、二人の方が、立公演説会はどうもヤジ等があって非常に混乱を来たす場合が考えられるので、しいてやらなくてもいいのではないかといったような軽い気持で立会演説会批判いたしておりましたが、その他の方は全部立会演説会はやるベきだ、こういうことを強調いたしておりました。これが選挙管理委員長立場からの発言でございますので、非常に参考になるかと思うのであります。  第二には、今回のこの選挙法を見ますと、とにかく一人一区が原則になってきますので、公報などの数が五倍から十倍の数になってくる。従って、これを急速にそのときそのときの事態に応じて印刷をしなければいけない過去の事例がたくさんあるのだが、どうも今までの選挙区が五つにも六つにも十にも分れてくると、これを全部同時に交付できるような公報等の印刷を自分の県などで考えてみた場合、県内に、そんなに急速に、しかも多くの公報を一ぺんに刷り上げる印刷の設備がない。これは私は非常に重要な発言だと思うのでありまして、こういう点も実際に選挙法をいじるときにはやはり考えていきませんと、ある特定の地域では公報の印刷がついに間に合わなくて、実際に選挙戦が始まったずっとあとになって配付されるというようなことも行われるのではないかと、この管理委員長の発言から、私は痛感いたしたわけでありまして、やはりどのくらいの数になるのか、時間は最短の場合何時間くらいあるのかということをよく吟味した上に、その地方々々の実情に即して、印刷屋等があるかないか、能力のあるなしを十二分に政府側の準備の場合には調査をしていかないと、不測の事態が起きるのではないか、私はかように考えまして、たしかこれは奈良県の選管の委員長の御意見だと思いましたが、自分の県にはこれをすぐ間に合せるという印刷の設備がない、こういうことを特に強調しておりましたが、これは注目に値すると思うのであります。  なお、この面から、費用の点からいっても、とにかく今までと同じ状態で、ただ選管でやると言われても、非常に費用が増額してくるので、何か国家的な補助なり裏づけがないと、とうていこれはやっていけそうもない、こういう点も強調しておりました。それとともに、選挙の啓発運動等は常時選挙管理委員会の仕事として行なっているわけですが、選挙区がこまかく分れてくればくるほど、やはり相当手をかけ人をふやしてでも常時啓発の運動をしていかないと、われわれ当事者だけは中選挙区が小選挙区にこういうふうに変ったのだということがわかっていても、実際の国民大衆は、中選挙というのは一体何なのだということすら知らない者が多いので、これが小選挙区に変ったという、その変ったことだけの説明、啓発をするのでも、相当の時間と費用がかかると思うから、こういう点に関してのその費用を国から出させるというような法律の裏づけをぜひやってもらいたい、国会でその種の法律をやはり作ってもらわなければ困る、こういう意見が開陳されておりました。  第四に、選挙制度審議会あるいは調査会等には、今までのような委員会の構成でなくて、全国の管理委員会から、少くともブロック別ぐらいにして、その管理委員長を、数多く、やはりこういう審議会あるいは調査会等には委員として正式に入れてもらうと、もっと妥当な選挙法というものができるのではないか、こういうことが特に強調されておりました。これはやはり今後、常時選挙のことを専門に各地方で勉強している選挙管理委員会というものが実存する以上は、この実際の選挙に一年中携わっている選挙管理委員会の代表者を、数多く、やはり選挙関係の審議会とか調査会等には委員として出しておくことが妥当だ、こうしうふうに痛感いたしたわけでございまして、やはりこの発言は重要なものと私は考えて参ったのであります。  第五点といたしまして、県会と比べまして今回の区割りというものが非常に複雑怪奇となっている。県会の方がむしろすっきりした区割りの上で選挙か行われることになり、衆議院の場合には、この県会の区割りというもの、すらを切りきざんで、複雑怪奇な格好にしていくために、こういうやり方で区割りをしていくことは、いろいろな面で、選挙管理の面で不都合が予想されるので、この区割りそのものが、何といっても選挙管理委員会としても納得のできない重要なことと考えられる、といった意見をやはり委員長の一人が出しておりしましたが、まさにこれはこもっともな意見だと私ども考えてきたわけであります。特に三重県の委員長だと思いましたが、三重県の場合などは、北から順次に割ってくるとか、南から順序よく割ってくるようにすれば、何もこんな不自然な形の区割りはできないはずだった、どうも、区割りを作る原則というものが、筋の通った原則がないのではないか、やはりもっと県民自身が納得できるような区割り案というものを、特別な考慮を払って今後作り直すべきではないか、こういうことがこの選管の委員長から出たわけであります。  なお、現在の、区割りのままで選挙を行うとすると、公報などを配る場合にも、正確に間違いなく配付するということがどうも自信がない、とにかくこういう区割りに関して何回かの審議がこれから行われると思うが、政府の側も謙虚な態度でこの区割りに対してはもう一度考え直すべきではないか、こういった意見が選管の委員長の一人から出されましたことをあわせて報告いたしまして、私の補足説明を終りたいと思います。
  6. 山村新治郎

    山村委員長代理 午後一時再開することといたしまして、暫時休憩いたします。    午後零時四分休憩      ――――◇―――――    午後二時三分開議
  7. 小澤佐重喜

    小澤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を継続いたします。佐竹晴記君。
  8. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 広島における第三班の現地調査について、班長大村清一氏より報告書提出されまして、その要綱はあげられておりますが、その調査会は午前と午後と約五、六時間にもわたって、長時間に及んでの意見陳述並びに質疑応答でありましたので、簡単なその報告書だけでは十分その実情を尽し得たものとは考えられません。ところで、本法案審議に当って、地方の実情を十分しんしゃくいたしますることは最も必要であるのはもちろんのことであり、これがためには、政府並びに与党の考え方地方民にどういうふうに響いているのか、また地方民としてはどのようなことを求めているかというようなことを十分検討しなければなりませんことは、多言を待つまでもありません。私は、こういう見地に立ちまして、班長報告に漏れた点はもちろん、要綱だけではぴんとこない地方実情にも触れて、現地調査の結果を一そう明確にいたしたいものと考えます。また、われわれのこの発言は、理事会できめられました通り、意見の開陳でありまするので、右現地調査の内容をつまびらかにいたしまするとともに、これに基くわれわれ委員意見をも忌憚なくこの際披瀝いたしまして、もって現地調査の結果を意義あらしめたいと思う次第であります。  まず、広島県会議長の林與一郎氏は、政府案賛成をいたしまして、政局安定のためにはこの案の実施が必要である、二大政党になれば政局の安定が期せられる、自由民主党、社会党に二大国民政党として育成発展してもらうために、県民は深い関心を持っているとお述べになりました上、区割りについては大体政府案でよろしいと断定をいたしました。この意見陳述者について強い印象を受けましたことは、二大政党の育成、政局安定とは言っているものの、この陳述人自民党の広島県支部幹事長でございまして、心の中では自民党でこり固まっており、社会党に対してまるで対抗するかのごとき感じが露骨に現われている点であります。すなわち、その陳述の後に、山下榮二議員より懇切に質問いたしましたのに対しまして、頭からその問いを抑えつけるがごとき、まるで対抗するがごとき言辞をもって応酬しておられたのであります。そこで、私から、林さんに対して、二大政党の育成強化を希望なさるならば、二大政党の勢力の均衡を得ることと政策の近寄ることが必要でありまして、社会党に好意的であってこそ、その希望が達成されるのではありますまいか、しかるに、今回の小選挙区制がいたずらに政府与党を大きくし、独裁専制の方向に押しやる実情ではないでありましょうか、政策を近寄らしめようとするのならば、社会党に天下を渡す方が早道ではありますまいか、社会党が天下を、取れば社会党も理想論だけでは済まされず、国民批判を受けてより現実的ならざるを得ない、それでこそ初めて自民党政策とだんだん近寄ってくると思うのでありますが、どうですか、一つ社会党に天下を譲ってもよいというお気持になりませんか、こう言って私は問いを発しますや、いたけだかになって、社会党には断じて天下を渡されませんと気張っておられました。これは、二大政党の育成強化などとおっしゃるけれども、全くそれとは相反するお考え方であるとしか受け取れなかったのであります。口では二大政党の育成強化と言いながら、心では社会党には断じて政権は渡されない。自民党の独裁の永続を熱望している姿が、地方有力者の間に浸透いたしておりますことが、ありありと看取されたのであります。(発言する者あり)意見でありますから、主観のまじりますことは当然であり、最初お断りいたしております。これが今回の小選挙区制法案提出の真の意図でもあり、政府のねらうところでもあり、県会議長というような地方の指導者に対しても、以心伝心、よくその気持が通じておるとしか見られなかったのであります。私はこの陳述者の言を聞いて、日本の二大政党制と政局安定などとは、およそほど遠いものであるとしか聞かれなかったのであります。  次いで、広島市長の渡辺忠雄氏は、小選挙区制賛成を唱えて、区別り別表も、ずいぶん練られた案で、よいと思うとお述べになりました。そして小選挙区制賛成理由として、費用の軽減、候補者が身近になり、よく知ることができ、政策の徹底を期することができるなど、一応一般論をお述べになりました上、次の通りお述べになりました。  すなわち、法案二百一条の三、第四項に規定する、他党の候補者の支持、推薦を禁止することは少しく行き過ぎではないかと思う、二大政党の維持育成のためとはいえ、小さな政党もあるのであるから、法律でこれを押えつけるのはどうかと思う、無所属や、中立でも、臨時結社を作って、推薦団体を作ってやっていいではないかと思うとお述べになりましたことは、傾聴に値する陳述であったと存じます。市長の要職にあり、公平な立場にある人々でさえも、しかも与党に味方する立場にありまする人々でさえも、このように述べておりますことは、政府といたしまして大いにしんしゃくしてしかるべきではないかと私ども考えたのであります。  次いで、山口県会議長三木謙吾氏は、小選挙区制賛成を唱えて、報告書にもあるような理由を述べておりましたが、その中で私の感じたことは、二大政党ができ、政局安定が肝心であると述べた上、ことしの予算案も年度内に議決を見たことは、政局安定のおかげで、県民も非常に喜んでおると陳述をいたしましたことは、少々牽強付会な言説ではないかと考えたのであります。ことに、その予算案が、どれほど保守反動的政策実現のためであり、社会党の要望などに一顧だも与えておらないところの独善、独裁的なものであっても、これが年度内に通りさえすれば県民は大喜びだというがごときは、全く与党かぶれもはなはだしい。いわゆる公正無私の陳述とは受け取ることができなかったのであります。ところが、この陳述人ですら、選挙の粛正と浄化のための法案が社会党から出ているが、これには賛成であるとお述べになっておりました。これは、やはり、選挙の粛正、政界の浄化を希望する声の高いことが、地方にも徹底いたしておりますることが、よくわかったのであります。しかし、この陳述人が、小選考区制をしけば選挙費用がよけいかからなくて済むとか、費用が多くかかれば利権あさりやその他の害を生ずるので、小選挙区制はその意味からも必要である、選挙ブローカーやボスは許されないなどと述べておりましたが、これは私は全く逆ではないかと考えたのであります。また、小選挙区制では新人が出られないとの懸念があるが、その心配はない、新人はどんどん出てくるとお述べになったあたり、これは必ずしも実情に即しているものとは考えられません。あまりに与党擁護に偏する口先の弁解としか聞かれなかったのであります。しこうして、最後に、区割りについてはいろいろの見方があるが、神様でないからやむを得ない、原案に賛成であると述べておりました。全く与党案うのみの気持を露骨に表わしておられたのであります。これに対して、細迫委員から、山口県の区割りやゲリマンダーについて詳細な質疑応答がかわされまして、温厚な細迫委員の言に対しては、さすがに二木議長も笑みをたたえて、ともによい選挙区を作りましょうと同調いたしておりまレたことは、印象的であったのであります。  仏供いで、 神戸新聞の論説委員長の畑専一郎氏は、小選挙区制には概念的には賛成である、ただし条件付であると前提をいたしまして、貴重な陳述をいたしております。報告書にもありますが、十分でありませんので、さらに詳細をここに述べてみたいと考えます。  均衡を得た二大政党の基盤が確立された場合にこそ、りっぱに運営ができる、日本の現状では浮動票で決定するウエートが少いので、小選挙区制を実施するのは尚早であると述べております。この点は報告書に大体書いてありますが、これだけでは十分私どもが理解することのできない点がございます。この畑氏の供述は、日本の実情とイギリスの例を比較検討いたしました論証でありました。すなわち、日本では、農村は自民党の固定票が絶対的に多く、都市、労働団体は社会党の基盤になっている、この固定票の差があまりに大きいので、浮動票で決定するウエートが少い、これでは小選挙区制をしくのは危険であるというのであります。すなわち、イギリスは、五百三十の議席中、保守党が二百、労働党二百と大体均衡を得た固定票が基盤になっている、あと百三十が浮動票によって決定される、従ってこの浮動票のウエートが非常に高い、日本の場合も、固定票がイギリスのそれのごとく確立し、その余の分が浮動票で動くようなことになって、そこに均衡を得た二大政党とならねば、小選挙区制を実施するのには適当でない、日本は現在自民党と社会党の二党間に一千万票の開きがある、しこうして一カ年大体百万票程度、社会党が伸びている実情にある、四、五年の後に初めて並列状態になるであろう、この状態ですぐただいま小選挙区制を実施することは危険である、少くとも二年くらい延ばして実施しなければ、小選挙区制をしく目的に反することになると思うとお述べになりました後に、選挙区制別表の点に詳細言及されました。この点がどういうわけか報告書には一切これを抜きにいたしております。しかし、この点はきわめて重要でありますので、私はここにさらにこれを述べておかなければなりません。すなわち、兵庫県について見るのに――これは畑氏の言うところでありますが、兵庫県について見るのに、現在自民党が十、社会党が八の議員を持っておる。今度定員が一人増して十九名になる。ところが、今度選挙をやったならば、新聞人として何と公平に考えても、今度の区割りでは、自民党が十四名、社会党が五名当選すると大体見られておる。社会党は約半分の議席を失い、自民党は十四割に膨張すると思われる。これはあまりにも公平を失した案であるというのであります。また、神戸は、調査公案は一人五区であったが、自民党案では二名区を二つ作った。これは、社会党が強いので、一人一区とすると自民党の方に都合が悪いと見たためであろう。尼崎や淡路に考慮を加えているが、その淡路について言えば、自民党の票は九万、社会党の票は七千、そこで淡路の票をそのままにしておくことはもったいない、よってこれをちょん切って、三万を明石にくっつけた。これも第三者としてはどうしても合点がいかない点である。こういうふうに党利党略で、区割りを定めているので、全国を通じて、今度の改正選挙区割りに基いて選挙をやったならば、自民党はおそらく当選四百名、社会党は八十名程度しか当選者を出すことができないであろう。これは新聞人として公平な観察であるとお述べになっておりました。こうなると専制横暴に陥り、これに対してはゼネラル・ストライキ等で対抗しなくてはならぬようになり、だんだん乱世化していくおそれがある。今回の政府案は、古今を通じ、えげつない案であり――これは畑さんの言葉通り私筆記しておりましたので申し上げますが、古今を通じ、えげつない案であり、日本の民主政治のために承服できないところであると、かように具陳をいたしております。次に、小選挙区には買収はつきもので、連座制強化は必要条件である、また立会演説を廃止しようとするのは解するにしむと述べた上で、質疑応答に際して、このような案は、かりに多数で無理に押し切っても、実行は困難と思う、少くとも二、三念施行を延期するとか、次の選挙には適用しない、次の選挙は現行法でやって、次の次から施行するというような考慮が払われない限り、これを実行したならば大へんなことになるであろうと強調されておりましたことは、傾聴に値すると思うたのであります。その説くところ、新聞人、ことに論説委員長として多年の経験を持ち、また該博な知識に基いて、また地方の実情に即して、公平な見地に立って、民主政治を守らなければならぬという熱意のほとばしるところ、かような陳述になっておることを一承わりまして、私どもえりを正さざるを得ないものがございました。  次いで、東洋レーヨンの労働組合役員、これは愛媛の方でありますが、増田正雄氏が次の通り述べております。  まず、自分は経済闘争中心で来たもので、総評には反対の労働会議に属し、穏健な考え方の方であるとみずから任じておるものであると前提をいたしまして、今回の政府提出小選区法案には反対である、自分は、過去二回にわたる地方選挙経験から見て、現在の日本国民政治常識が十分発達しておらず、小選挙区制をしこうとするにはまだしもの感を深うする、今日の状態では選挙区が小さくなればなるほど、小ぜり合いが激しくなり、当落のためには手段を選ばず、また地盤温存のために必死となるから、今直ちに小選挙区制を採用したならば、政界を非常に腐敗させる危険がある、小選挙区制になると、議員は当面する地域的利害と地盤内の情実に狂奔をいたしまして、足元のことばかり考え、大局に立って論議することを忘れて、建設的な考え方が自然に消極的になってくる、また顔の選挙が幅をきかし、利用価値の選挙となり、顔のない、利益提供のできない新人や婦人の進出が阻害されることは、地方の実情に照らしてきわめて明確である、また有権者の側に立つて見ても、議員選択の自由を失う、これは有権権者のための選挙改正ではないと、はなはだ不満を述べておりました。また一票少くても落選し、少数意見は議会から抹殺される、現在審議中の原案を見るのに、政府与党だけが勝手に作ったもので、あまりにも独善的なものである、選挙区制の問題は、政党の運命と立候補者の当落に直接影響することであるから、書く政党の間によく話し合ってフェア・プレーでやるべきであるが、今回は何の話し合いもなく、野党の要望をにべなく拒否いたしておる、一方が満悦すれば、一方が不満足であるのは当然で、今回の法案のごとき一方的なものはフェア・プレーではなく、はなはだよくない、また定員四百六十七から四百九十七に増加し、経費の膨張を来たすことは、国民多数が大いに不満とするところであると、地方の実情を訴えておりました。  しこうして、問題の区割りについては、全画的に承服いたしかねると述べました上、るる論証をいたしておりましたが、そのうち、二十区の二人区を作ったのは、地理的その他きれいな言葉で説明をなすっておるが、われわれ地方におる者は、政府のさようの説明に信を置くことができないと述べた上に、具体的にその証拠として、広島二人区のところでは、地盤調整のつきがたい二人のために作られたものであることをあげ、群馬、三重、愛知、東京、埼玉、日立、北海道岩見沢、福岡、門司等の具体的事例をあげて詳しく講じておりましたが、私はこれは省略いたします。ともかく複雑怪奇な実情であることを詳しく述べた上、さらに愛媛県地方にもその実例のあることをあげておられました。  次いで、小選挙区制で党公認制を認めたのは、最高幹部に絶対服従せしむるねらいのあることが、地方民の間にも強く批判されておると言うておるのであります。また、自民党総務会で、代行委員の一人が、小選挙区実施のためには一年くらいの準備を与える、現議員は全議員を公認すると公言し、また川島選挙対策委員長が、こうした配慮をしてやって、それでさえ落選する者は、よほど選挙が下手だと言っているなどは、あまりにも自民党の党略本位であることを露骨に表わしたものであって、国民としては憤慨にたえないと述べておるのであります。中央におけるわれわれの論議の際にも出てきた言葉で、ありますが、地方の人々はこのようなことに対して深き関心を持っております。こういったような気持が深く、また地方局の脳裏り中に浸透いたしておるのでありますから、十分この点をお考えにならなければ、そういったよ、うな考えを持つておる人を承服せしむことはできないと私は思うたのであります。  次いで、広島県会議員の山崎実君は、次のようにお述べになりました。  小選挙区制自体には、長所もあれ、ば短所もある、しこうし一般論としては、長所はこれであって短所はこれだといろいろ項目をおあげになりましたが、これは省略いたしましょう。そうして長所、短所の要点をあげました上に、ただいまの日本にこの小選挙区制をやろうとすると、長所は発揮されないで、短所のみが現われるであろとお述べになりました上、内容に入って次のように陳述いたして、おります。  すなわち、まず二大政党の育成、政局安定を眼目としているというが、小選挙区という技術的改正で、事ほど簡単にその目的を達成できるものではない、フランスにもその例を見るがごとくに、日本の実情は階級的、社会的条件の非常に複雑であることにかんがみて、小選挙区制をしいても、二大政党は育たず、政局安定を期し得られるものとは、私ども地方にあって考えるこきができないと言って、その地方の実情のまことに意味あることを言外に表わしておりました。さらに、党略的区割りとして、その政党のための選挙区制をしけば、真の政党本位の、政策本位の選挙などは行われよう道理がない、また選挙費用は少くなるというが、小選挙区になれば、自分たちの体験から見ても、買収、供応がやりやすくなり、その競争が激化して、当選のためには手段を選ばないようになる者が続出してくる、よって、かえって費用は増大する、これはまことに地方の実情に照らして明らかであると述べております。さらに、人物選定が容易になるというが、地域的に小さくなるほど情実因縁にとらわれやすく、小さな人物が当選してくるであろう、かように述べた上、さらに、今回の改正は、単なる技術的区割りの改正といったものではなしに、背後に何かあるとの印象を深うする、国民は非常に批判的である、異常な強引さでやろうとする、三木武吉さんが言ったところによると、今度の小選挙区制は、一回だげやれば、また元へ戻すのだと言うているが、これは強く地方に響いている、広島の県会議員の中でも、自分の肩をたたいて、君、山崎君、一回だけでこの小選挙区制はやめるんだよと言う者さえもあった、憲法改正をやったならば、また元へ戻すであろうという印象は、だれもが心の中に描いている一般的な事柄になってきていると、かように述べておられたのであります。現在の実情では、必ず選挙粛正に開する方策の樹立が先決問題で、このままで小選挙区制をしいたならば、長所は一つも出てこない、短所ばかり出てくるのである、しかるに、選挙粛正に関する方策を非常に軽んじ、それに対する十分な対策を立てず、かつ立会演説なんかを廃止しようといたしているあたり、理解に苦しむと述べております。  なお、これら陳述人陳述の後、各委員より活発な質疑応答かかわされましたが、その際、私より、広島県のゲリマンダーについて新聞旧紙記載の具体的な事例を読み上げまして、陳述人意見を求めたのでありますが、だれもこれに反論する考はなかったのであります。ただ、広島市長のごときは、にやにや笑いながら、おもしろい記事ですと漏らしておられたのであります。  私に、この地方の実情を察知いたしまして、相当この地方の実情は本案審議参考にすべきものであり、また十分この意を体してその結論を求めなければならぬことであると考えた次第であります。  以上、私の意見陳述いたします。
  9. 小澤佐重喜

    小澤委員長 井堀繁雄君。
  10. 井堀繁雄

    ○井堀委員 私は、七名で、編成されました第四班に参加いたしまして、い福岡に派遣されました。さきに青木班長から現地調査について報告がありましたが、重要な点について報告が漏れておりますので、簡単に補足説明を加えまて、本委員会の使命を全ういたしたいと思います。  公述されました六名の方のうち、西岡竹次郎君、すなわち長崎県の知事でありますが、この報告につきましては大要を尽されておりますが、一点補足をしておくことが、今後の審議の上に大きな役割を持つと思いまするから、付言いたしておきたいと思います。  それは、西岡君の意見開陳の中で、班長報告にも触れて、おりましたが、イギリスの労働党の小選挙区に対する態度を例に求められまして、こう述べております。イギリスの労働党は小選挙区制によって成長し、それによって、今日の保守、労働二大政党対立という政治形態をかち得た、こう述べまして、続いて、それはいきなり一人一区制というような小選挙区制を採用したものではない、すなわち当初は二人区、三人区をもって、長期にわたりて徐々に整理され、現在の全区一人区制となり、しかも政権は三回目の選挙反対党に手渡ししたという、最も理想的な政治が行われたと述べました。このことはさきに青木班長報告されました部分にもありましたが、後段の点においてこれが漏れておりますことは、西岡君の発言を誤解するもとと相なるものと思いまするので、補足を加えておきます。  さらに、次にこう述べております。現在政府が提案しているがごとき法案については考慮の余地がある、すなわち、客観的な諸条件の成熟した上に、公営の徹底、連座制強化、など、それらの欠点を補って小選挙区に踏み切るべぎだ、こうして社会党の顧問片山哲氏の小選挙区制に対すろ論説を引用されておるのであります。この報告には間違いはありませんけれども、こういう点を漏らしますことは、西岡君の説を誤まることになると思いますから、付加いたしておきます。  次に、委員の質問に対して二、三答えがありました。この中には漏れておりますが、あまりに重要ではないと思いますので省きまして、一点、これは論議の中心にもなっておりまするから、述べておきたいと思います。  二階堂議員が、小選挙区制実施に伴い立会い演説会を廃止することがよいと思うが、これに対する所見はというので質問をされましたのに対して、西岡君は、立会演説会は、政策一般に周知せしめる上からも、多数の聴衆を集める点からも存置すべきである、こう述べておるのであります。こういう点は私は非常に注意をすべき点だと思います。  さらに、第二番目に立たれましたラジオ九州報道部長の田井正行君の意見の中で、漏れておりまする点がございます。それは、冒頭かように述べておる。公聴会を軽んずる国会並びに政府態度に対して非難を浴びせて、こう述べております。従来たびたび開催された公聴会その他は、国会の審議にどんな影響を与えているか、われわれの意見を国の政治に反映させてもらえないのなら、議員が国民の血税を使って、ここまで来た意味がない、かように述べまして、公述人の意見がたまたま軽視される過去を非難されておりまする点は、われわれは非常な責任を痛感いたしまして、ぜひ、こういう意味でも、今回の現地調査の結果に対しましては、政府はもちろん、国会におきましても、重視すべきであることの責任を感じたのであります。  続いて、国会の審議には民主的なルールが欠けておるという現状について、きびしい批判が行われまして、政府区割りを党略的選挙区であると断じて、これを非難するのみならず、いわゆるゲリマンダー・ラインなるものが党略によるものであることは目に見えるようであるという形容詞を使われております。そうして候補者の得票数や、あるいは選挙の際にそれぞれの選挙区において現議員の得票した数というものを明示して、一区々々について公開審議をして、国民納得せしむるような審議のやり方をいたすべきであることを述べた点は、重要な点でありまして、この報告が落ちたことを私は残念に思います。そして、それに付加いたしまして、こうすることによって、ややもすれば信用を失いかけつつある議会政治の信用向上をはかることを強調されておるのであります。  さらに、立会演説会に言及されまして、これを廃止することはどうしても納得ができない、むしろ立会演説会を拡大強化することを主張されました。また、小選挙制度によって政局安定を考えておるのは誤まりであると指摘いたしまして、政局の安定は選挙制度以外のものであることを指摘いたしました。報告の中には一部述べられておりまするから、重複を避けますが、国民生活の実態について言及された点は、われわれとしては大いに考うべきことだと思うのであります。さらに国民政治的思想水準に対する具体的例証をあげて批判された点も、われわれは耳をかすべきことで、あったと思います。こういうように、国民生活の実態や国民政治思想の現状について、もっと注意深く検討を加えて、小選挙制度の問題は考えられなければならぬ。ことに西岡氏がイギリスの例をとりましたあとでありましたせいもあるかもしれませんが、英国の例にならうということはきわめて危険であるという前提で、日本の実情とイギリスの長い経験と民族性や客観的諸条件の相違を批判されまして、これをまねることは非常に危険であるということを述べた点は、われわれ十分聞くべきことであると思います。さらに、罰則の強化あるいは時効期間の延長や連座制の徹底等について、かなりきびしく批判をいたしております。  最後に、附帯訴訟はぜひ本案と同時に提出すべきものである、これを別に考うることは矛盾であるということを指摘しております。  第三番目に立ちました福岡市商工会議所の池見茂隆君の発言につきましては、大体要を尽しておるようでありますが、一点、私どもにきびしい警告であると思いまするから、漏れた点をあげてみましよう。こう言っております。政策の実現できない政治は、国民にとってこれ以上の不幸なことはない、これを解消するためにもつと適切な小選挙区制に賛成すると、ここでは賛成をいたしております。そして、その次に、国会の本件審議をめぐって党利党略による混乱が予想されるが、絶対にこのようなことのないように強く要望するという発言は、われわれといたしましては非常に考うべきことであったと思います。  四番目に、熊本県の西田きくえ君が立ちました。この点につきましては報告の中で大要触れておりますが、これも重要だと思いますから、一、二つけ加えておかなければならぬと思う点をあげてみます。  西田君は、婦人の立場から、政府案に対する批判をかなり具体的に行なっております。かなり長い時間でありますから、いろいろ述べられておりますが、これを要約してみますと、婦人の政治進出についていろいろ述べまして、ようやく国会に婦人が進出できるようになったこの状態を維持することが、いかにわが国の新しい国作りのために必要であるかを述べまして、これが小選挙区制の実施によってはばまれるということを、いろいろな事例をあげて述べておる点であります。  その中で、地方の封建制の残存しておる点を具体的に述べられて、こう言っております。地方では事大思想が強く、おじいさんから親子三代にわたって政治家となり、代議士はその家の家業となり、その土地ではその家につながりのない人では全く政界に出られないという考え方が植えつけられている、これをさらに強化するような小選挙区制は、ますます政治をボス化し、ぬぐうことのできない結果をもたらすであろう、こう述べております。これは熊本の実情を説明して余りあるものだと思います。  さらに、区割りの問題について具体的な事例をあげて述べておりますが、これは、後に述べる機会があることでありますから、省略をいたしますが、区割りについては筋が通っていない、せめていえば、保守候補当選をはかるための区割りとしか思えないというきびしい批判をいたした点は、注意に値すると思います。  五番目に、西日本新聞社論説委員大石三郎君が述べた点で、次のごとき点はぜひ記録にとどめたいと思いますから、敷衍をいたしておきます。現在審議中の政府案には反対であるという立場をまず明確にして論議を進めておりますが、その中で情実因縁にからむ違反が起りやすい点を具体的に事例をあげまして、その予想される状態をどうして排除するかという前提がなければ、小選挙区制を実施するということは暴挙であるという説明をしております。そうして、時効期間については、国会の会期が長くなった今日、選挙違反事件を取り調べることが困難であり、過去には検察権を圧迫したような拒否権発動といった例まで見せつけられておるんだから、この点はよほど警戒を国民はいたしておる、こう述べまして、ぜひ時効期間は社会党案まで延長する必要があると結んでおります。  二番目に、連座制の規定も不十分である点に言及されまして、特に政府案の中に連座制を必要とするかのごとく見せて、附則でこれを死文化したということは、きわめて老獪なことであって、こういうことは慎しむべきであるという警告を発しました。  三に、今度の改正案の中で一つの特徴ともいうべきものは、金のある政党候補者に有利と見られる抜け穴条項があると追及をされました。そして、政党選挙参加についていろいろと言及をされておりますが、これは省きます。  四に、区割りについてこういう警告をいたしております。両党――社会党、自民党をいっておるわけですが、両党の選挙区割りに対する完全な意見の一致は当然困難であろう、こういう見通しの上に立ちまして、これは、学識経験者など第三者による調査会を設置して、この意見に、多少不満があっても従うべきではないか、こういう警告をされた点は、大いに味おうべきことだと思いました。  六番目に立ちました長崎県地評の菊地忠三郎君の発言についても、ぜひ付加いたしたいものが一、二あります。  それは、区割りの点についてぎびしい批判がなされた点であります。区割りは厳正中立の立場にある者によって定むべきものであって、党利党略個人的利害によれば当然支離滅裂になる、それを政府自民党選挙制度調査会案の四百七十七区のうち二百十七区にわたって変更を加えたということは、われわれの了解しがたい点であると鋭く批判しております。  さらに、長崎県九州地区の特別事情でありましょうが、離れ島を二分したり、あるいは半島を縦割りしたり、あるいは二人区を作った実情が、いかにもゲリマンダーとしては醜い姿であるという点を具体的に指摘されております。そしてこの区割りは社会党を極力不利に導くための巧妙な手段ではないかということに言及をいたしております。  次に、立会演説会を廃止しようとしている政府案に対するかなり鋭い批判を加えられて、前者の述べたように、立会演説会はむしろ拡大して、候補者への質問の機会を許すような措置をとることの力が、政策本位の選挙をやるという建前からすれば妥当ではないかという意見が述べられた点は、一つの新しい主張であると思いました。  三番目に、政治団体について、直接労働運動をやっておる関係からでもあろうと思いますが、二つ以上の団体から公認または推薦を受けることをはばむような改正は、非常な反動的な思想に立つものであるという点を強く非難しております。また、公認候補者五十名以下の団体という、五十名という限界を設けたということはどうしても理解できない、こういう点を想像するのに、平和勢力の推進母体である婦人や労働団体を選挙から締め出すところの陰謀ではないか、というきびしい非難を浴びせておるのであります。  こういう点は、青木班長報告に漏れておりました点で、きわめて重要ではないかと思いましたので、私のメモの中から一応取り上げてみました。  このほかに、当日の報道陣はかなり多くのスペースをさきまして、この公聴会の公述人の意見を公表いたしておりますので、こういうものも機会があれば記録に残して参考にしたらよいのではないかと思うのであります。  最後に、この会合が終りましたあとで、九州の各府県の選管の代表者諸君と、懇談をいたしました。この懇談で、本法審議の上に重大な発言がかなりたくさんございましたが、これは非公開でございましたので、この際発表することはいかがかと思いますので、いずれあと理事会などに諮りまして許しを得て発言の機会を得たい。また、この点につきましては、ぜひ選管にかわって政府にただしたい点もございまするので、後日機会を見て発言をいたしたいと思っております。  以上をもちまして私の補足説明を終りたいと思います。
  11. 小澤佐重喜

    小澤委員長 小山亮君。
  12. 小山亮

    ○小山(亮)委員 太田自治庁長官にお伺いいたしますが、この小選挙法案が議会に上程されました当時から、三月十五日以来今日までの間の経過をずっと見まして、私は太田自治庁長官も本問題については相当に心境が変っておいでになるのじゃないかというふうに考えます。というのは、先般来全国各地区の公聴会あるいは議会における公聴会、そういうすべて、の報告を見まして、各委員からの議会に報告されております報告内容を見ますと、小選挙区案に賛成意見を持っておられた人々ですから、この政府の出しました今日の区画案に対しては、ほとんど異口同音に反対をしておられるような様子であります。詳細なことはなお各委員についていろいろ御質問を申し上げたいと思っておりまするけれども政府においても、すでに、国民世論の動向というものについては、相当考えておいでになるのじゃないかと思います。従って、本案を提出されました当時の自治庁長官の心境と今日の心境というものは、相当変って、おるのじゃないかというふうに私は、考える。これにつきまして率直に長官の御心境を伺いたい。というのは、当時の心境と今なお少しも変っておらないのだ、あくまでこの法案は一分一厘修正の必要がないのだということになりますと、私どもこれからの審議の仕方というものを考えなくちゃならない。しかしながら、今日までの経過をごらんになって、もうすでに今までのような政府が出した法案そのままではいけない、何とかここに考慮しなければたらないのだというふうに長官がお考えになっておいでになるならば、おのずと私どもの方の審議の方法も変ってこなければならない、こう思うのであります。従って、私は、党派を離れた無所属の立場におきまして、大田長官の御心境を伺っておきたい、そうして各地区から報告されました報告に基いての質疑を行いたいと思うのでありますが、さしあたって一番最初に太田長官の心境を伺いたいと思います。
  13. 太田正孝

    ○太田国務大臣 各地にお出かけになりました皆様方の御意見を書類でも拝見いたし、きょう午前は出られませんでしたが、報告も得ております。世論の大切なることは、小山委員に申し上げるまでもなく、私の半生と申しますか、言論界に立っておりましたので、その気持ちは御了解願えると思います。もちろん、私は、区割りの問題につき一ましての説明のときに申しました通り、地形上の線というものはいろいろ引ける線がある、ただわれわれとしてはかような線がいいと思って引いたのである、富士山の見方でも雲がかかれぱ変るということを私が申しますのは、ただ形容ではございません。いろいろお聞きいたした上で、私の心境が変ったかと申せば、もちろん心境に響いております。悪い点は直さなければならぬと思っておりますけれども、総理大臣も言われました通り、衆議院の御意見も聞き、参議院の御意見も聞き公正だと思ったときにすべての問題を最後的に解決いたしたい、かように考えている次第でございます。  ただ、私は一言、この御報告のうちで、ほとんど全国といっていいくらい反対が出ております立会演説についてのことでございますが、これは私の説明が足らなかった点もございますから、この機会に補足しておきたいと思います。私は、有権者に言葉をもって達する方法は、言論につきましてはいろいろ方法があると思います。個人演説もその一つ、立会演説もその一つ、それから非常に大きな問題でありまするのは街頭演説でございます。さらに今回は政党の演説も加えております。これらが有権者の耳に入る道筋でございますが、たとえば立会演説けっこうでございましょう。だが、これに集まる女の立場というものも、私は常に注意しておるところでございます。全体におきまして女性が集まった人員の一割に及んでいるのは、全国でも少いかと思います。たとえば、五百人から三百人くらいの間の一割と申せば、五十人、三十人となりましょうが、それだけ集まれば精一ぱいと思います。私の短かい経験でございまするが、たとえば、浜松市のごときは、三千人も集まりましても、一割の三百人は集まりません。有権者の過半数を占める女の方々の耳に何で入るかというと、これは街頭演説でございます。仕事のひまに聞く、こういう意味におきまして私が最も力を入れたのはこの点でございます。  それから、立会演説におきまして一番私の遺憾に思う点を一つ申し上げて、御批判を仰ぎたいのでございます。それは、先般の産経会館における演説も相当の混雑があったようです。大阪におきましては、さらに、新聞に報道するがごとくに、苦々しい結果も来たしたようでございます。(「計画的なやり方じゃないか」と呼び、その他発言する者あり)しかし、問題は、有権者の意見がどういうように聞かれるかという問題でございますが、御承知の通りこの方式は時間を限っております。たとえば十五分に制限すれば、十五分たてば次の人が必ず立つことになっております。妨害した者に対しては取締りの方法もございますが、それは不能な問題でございます。かように考えますると、立会演説を静かに聞く、こういう意味でいけるならば私はけっこうだと思うのです。決してこれに反対いたしません。しかるに、イギリスにおきましてはなぜ個人演説を持ってきたかということは、静かに聞くという問題でございます。しかも、たくさんの人が集まるのかというと、イギリスの選挙の実態におきましては、たくさん集まらないのです。多くても二十人、三十人、むろんイーデンのような偉い人が来たときには、たくさんの人が集まるようでございますが、普通のときはそうではございません。なぜかといえば、新しい有権者を得たいというのが、イギリスの静かに聞く個人に演説の由来であると私は聞いております。私は、こういう意味において、静かに聞くものならば立会演説けっこうだと思います。しかしながら、現状におきましては、勝負を好む国民性と申しますか、興味もあると思います。立会演説の効果ということについては、かような点もお考え願いたい。よって、たとえば立会演説にラジオなどがもし利用されるものであったならば、けっこうなことではないかと前々から考えておったような次第でございます。で、政党の演説とみな加えていきますと、相当に有権者に入る道がございますので、私が無理に立会演説をきらいだと言ったわけではございません。私の観念が違っているならば、これは改めなければならぬ。心境が変ったかというような問題につきましても、私が今頭の中に描いておる問題の一つでございまして、私は、かような意味におきまして、いろいろ皆様方の御意見を聞き、世論も聞きまして、どこへ行ってもこの問題が出ておるが、分析いたしまして、婦人が有権者の半分であるが、聞く機会はどこにあるかということも考えなければならぬ。相争う、非常な熱意でやる両党の人たちの動きもあるでございましょうが、実際におきましてはほんとうに静かに聞けない場合が多いということを考えたりいたしますと、この問題につきましても、もう少し私は申し上げる機会があったらよかったと思っております。ただし、広くいろいろな御意見を聞いてみますると、とるべき点がむろんあるではないか、こう考えております。しからば、いかなる点をいかにするかということは、ただいまのところ申し上げかねまするが、改むべきことがあったならば改めねばならぬ。このことは、私の率直なる、だれにもとらわれず、私一人の立場においても考えている点でございます。
  14. 小山亮

    ○小山(亮)委員 太田長官の立会演説に対するお話がございました。この点につきましては私は意見がございますが、これはあとに譲ります。そうしますと、太田長官の心境の変化を来たしたという点について伺いますが、太田長官は、小選挙区制を採用するのは政局が安定する上の最大要件である、こういうふうに言われた。それから、選挙政党政策中心に行われなければならぬ、こういうことも言われた。それから、政党の識別、理解には立会演説を要しない、こういうことを言っておられた。それから、公認の規定、つまり五十名以下の団体は政党としての活動を許さぬ、こういうことを言われた。これらの中で心境の変化を来たしたと言われることはどこなんですか。どの点をあなたはおっしゃったのですか。
  15. 太田正孝

    ○太田国務大臣 私の心境の変化と申しまする意味は、あるいは小山さんのおっしゃる意味と違っておるかもしれません。かりに修正とかいうような問題になったことを最初におとらえになりましたが、その問題は衆議院及び参議院の御意見を聞いた後に決定いたしたい、こういうのでございまして、私が甲とも乙とも言ったというのではございません。かような意味におきまして、皆様方の御意見をほんとうに忠実に考えていきたい、この点におきましては、私は自分の仕事の立場からも深く信じている、かように申した次第でございます。
  16. 小山亮

    ○小山(亮)委員 太田長官は、衆議院と参議院と両方の意見を聞いた上で、修正を考えたいというお答えでありますが、衆議院と参議院と一度に両方の意見を聞くということは困難です、衆議院と参議院はいずれも独立しているのですから。あなたは衆議院の意見をお聞きになって、修正をしなければならぬと考えるならば、修正をなさる、そういう建前じゃないのですか。衆議院でどういうことを言っても、参議院の言うことを聞かなければならぬ、こういうことをおっしゃるのですか。あなたが衆議院というものをどういうふうに考えておいでになるか、参議院というものをどういうふうに考えておいでになるか、つまりあなたの衆議院に対する考え方をここではっきりさせるわけなんですから、その点をどうか明白におっしゃっていただきたい。
  17. 太田正孝

    ○太田国務大臣 もちろん衆議院の構成に関する問題でございますから、衆議院の意見を尊重すべきことは言うまでもございません。しかし、国会の審議というものは両院によってやられておるのでございますから、私どもは慎重に慎重を期する上において聞くというのでございまして、衆議院の構成に関する事柄の重要なることは、申し上げるまでもないことであると思います。
  18. 小山亮

    ○小山(亮)委員 そうしますと、衆議院の今日までの論議の間に修正すべき点ありとお考えでありますか、どうですか。率直な心境を伺いたい。全然ありませんか、それとも何らか修正しなければならぬ点を見出す、こういうお考えですか。
  19. 太田正孝

    ○太田国務大臣 ただいま申し上げました通り、貴重な御意見であり、修正すべきものがありましたならば、修正に持っていかなければならぬ、こう思います。しかし、その点がどこにあるかということは、私としては、もう少し練った上でなければ、申し上げることができません。結局は、審議の途中におきまして、修正の機会というものは、衆議院における場合が一つ、それから参議院における場合が一つ、こちらからやる場合があり、党からやる場合があるのでございますから、その間の状況を政治的にも見るべきが筋ではないかと存じ上げます。
  20. 小山亮

    ○小山(亮)委員 そうしますと、太田長官は、修正すベきかどうかということは、もう少し審議を尽して、論議した上でなければわからぬというわけなんですか。そうすると、この委員会でもう少し慎重に審議して、その論議を尽した上でお考えになる、こういうことですか。
  21. 太田正孝

    ○太田国務大臣 私は、審議を延ばすとかそういう意味で申し上げたのではございません。われわれの意見として、政府一体としてきむべき問題は、閣議にかけまして、政府提案についてのことを処理しなければならないので、私が今日言うべきものではございません。審議が不十分などとは私は考えておりません。
  22. 小山亮

    ○小山(亮)委員 それなら、あなたは、もっと審議を尽して、もう少し練ってとおっしゃったのは、どういうことですか。それはあなたのお部屋でお練りになるのですか、それとも、議会を通じて、国民とともにこれを、審議するというのですか、どちらなんですか。
  23. 太田正孝

    ○太田国務大臣 お言葉に対して答えることもどうかと思いますが、もちろん採決の前の討論という時期になりますと、ここでやるべきがよい、もうちょっと先へ行って参議院の意見を聞いたがよいということは、当然当事者として考えなければならぬことと思います。どの部屋という問題ではないと私は考えます。
  24. 小山亮

    ○小山(亮)委員 まず、立会演説の問題から長官に伺いたいのですが、全国の公聴会で立会演説をやれ――やるなというのはごく少い。ほとんどやれという議論が多いのです。自分の短かい体験から申し上げますと、これは太田長官も十分御承知でしょうが、個人演説会をおやりになると、太田長官を支持する人だけが聞きに来るのです。私の演説会をやると、私の方の側の連中だけが聞きに来て、反対の側は聞きに来ない。私がこんなことを申し上げる必要はないと思いますが、そこに個人演説会弊害があります。立会演説会だと、いやおうなしに両方みんな来る。婦人の問題をとらえておっしゃいましたが、婦人はどちらかといえば個人演説会の方が多いのです。しかし、立会演説会も非常に多いところがあります。私は長野県でありますから、長野県の実例を申し上げますと、聴衆の四割は婦人で、非常に多いのです。ですから、あなたのおっしゃることとは大へん違う。静岡県の例をおとりになったので、所によって違うでございましょうが、私どもの体験から申しますと、婦人の立会演説を聞きに来るのは非常に率が多い。そうして反対党が非常に聞いている。そこの間で論議を戦わされるのですから、これが一番よい演説会になる。街頭と申しましても、忙しい街頭に立ちどまって十分も十五分も話を聞くというのはございません。立会演説の効果はありますが、街頭演説の効果はほとんどないと言う人があります。この点について都会と農村とは違いがございましょうが、何といっても一番効果のあるのは立会演説だ。立会演説では騒ぐと言われるが、騒ぐことになれば個人演説会でも同じことです。私は、ついこの間、私の郷里の市長の選挙をやりました。これは、一対一の対立の選挙でありますから、非常に殺気立った選挙でした。いよいよ最後の四、五日になりますと、非常に殺気だってくる。むしろ個人演説会反対党が荒しに来るのです。酒気を帯びた反対党員が、五、六十人トラックに乗ってどんどんやってきて、演説会場になだれ込んでくる。だから、演説会を妨害するということになれば、同じことなんです。個人演説でも立会演説でも街頭演説でも、こわそうと思えば幾らでもこわれるのです。ただそれをどう取り締ってこわさぬようにするかということが問題なんで、ヤジられるから立会演説はやめたということを言いますと、大ぜいの前でやる場合には、ヤジられない演説会などというのはほとんどないでしょう。いわんや非政続出の政党が大衆の前に立ってヤジられるのは、私は当然だと思う。私は、そういう意味からいって、あなたのおっしゃる立会演説会を廃止することは、あなたと私は意見が違うのです。あなたがどこの例をおとりになっていらっしゃるか知りませんけれども、私の意見と全然違う。もう一度意見を伺います。
  25. 太田正孝

    ○太田国務大臣 私も、自分のところ以外に、実は今までの選挙におきまして、ひどいときには三分の二の期間をよその区へ参りました。口幅つたいことを申すのではございませんが、全国的は演説会には相当に行って、自分で知っているつもりであります。小山さんの県である長野県は、われわれ言葉でもって生活する人間が行くには注意しろ、非常に勉強されている方が多い。――こういうのを、私は、どこのところ、どこのところと記憶しておりますが、よく承知しておるつもりで、全国的の意味におきましても、大体の空気をのみ込めているつもりでございます。私自身は、何度もここで申しますように、中選挙区時代における立会演説会が悪いということは一言も申しません。非常に効果があったということを申しております。それは速記録にはっきりしている通りでございます。  街頭演説につきまして三分、一五分というお言葉でございましたが、私自身は十五分以上かけているのでございます。かければかけるほど、私は効果があると思っております。  また、ヤジの点でございますが、私もヤジをちっともこわいと思う人間じゃございません。一般的に見て、いかに聴取者がこれを受け入れるかというところに、この選挙演説のとうとき有権者に訴える場面が出ると私は思うのでございます。あるいは議論の違いになるかもしれませんが、私は静かにものを聞くというのが小選挙区の考え方であると思います。今までの個人演説にヤジがあるとか、いろいろあるでございましょう。決してないなどとは私は申しません。どっちが言論戦として訴える場合に効果があるかということが、問題の中心点であろうと思います。私は、再三申し上げるように、中選挙区時代の効果を決して悪いなどとは考えておりません。私自身も非常にありがたかったのでございます。ただし、個人演説会は今までのを少しも減らさず六十回、しかもそれが四分の一の地域になり、二十五日の選挙期間が二十日になったので、これらの点を考えると、相当に多いのではないか。さらに政党の演説におきましても、今までよりも多くなっている。あらゆる点を考えまして、決して有権者に訴える口の手というものには欠けておらない。これが私の最初に考えた点でございます。私は決して立会演説そのものを没却しようというものではなく、小選挙区のもとにおいてのあるべき姿はこの方かいいのじゃないかというのが、私の考え方でございました。もちろんこれも程度論でございますので、世論が申されるところはよく考えまして、この点も処理いたし、自分考えをきめたいと考える次第でございます。ヤジの点とか、効果の点とか、私も口幅ったいことを申してはなはだ恐縮でございますが、大体に全国的な言論で動く場合の姿というものを、これはもちろん政談演説に限りまして、学術演説は別にいたしまして、かように考えておる次第でございます。その点におきまして、これまた口幅ったいことでございますが、ラジオのごとく、ほんとうに静かに聞いてくれる場面があるならは、これは非常に効果があるじゃないかということを考えたのも、その点にあるのでございます。
  26. 小山亮

    ○小山(亮)委員 私は今の点で長官にもう一度伺いたいのですが、現在のような選挙制度でどうしたら言論戦に人を集めることができますか。私は人を一番多く集め得るのはやはり立会演説会であると思う。個人演説会になるとどうしても少いのです。しかしながら、立会演説会は農繁期でも多いのです。そういう点から見まして、どうしてもやはり口から自分たち政策その他を国民に訴える、これはやはり立会演説会が一番よいと思うのですが、この一番人の集まる立会演説会をやめさせてしまうということは、私はどうしてもふに落ちない。あなたも全国を歩いておられるとすれば、立会演説会の効果というものはどのくらいかということも、人の集まりがどのくらいかということも御存じのはずだと思いますが、これはどういうわけでどうしてやめなければいけないのですか。私にははっきりわかりません。
  27. 太田正孝

    ○太田国務大臣 毎々申し上げます通り、私は中選挙区下における立会演説会の効果のあることを認めることは、何度も言っておるところであります。ただこういう口から耳へというこの言論が選挙におきましてどう利用されるかという点につきましては、決して今回の政府の提案になるものが国民に訴える点においては欠けるところなし、こう考えたからでございます。しかし、これも初めての考え方でございますのと、今回の立会演説会は、前と違いまして、有権者は別として、今までのごとくに一つ政党から三人も出ておるというような場合をお聞きなさる場合と、集約されまして各政党で人をきめてくる場合とは、違って考えてよい問題ではないか、またもちろん私も何度も申します通り、立会演説会が悪いという意味ではございませんけれども、私の考え方が違っておれは、とくと考えなければいけないと存じます。
  28. 小山亮

    ○小山(亮)委員 私はどうしてもあなたと意見が合わないのは、小選挙区制になりますと政策が徹底するということをあなたはしばしば言っておられる。しかし、選挙のときに掲げる政策というものは、自民党から共産党くらいまでほとんど違わないのです。選挙のときに掲げる政策というものは、社会政策を徹底的にやるというようなことを言って、それを見ますと、実にどこが保守党なのであろうか。どこが革新政党であるかわからぬというところの政策を掲げておる。実際やることはまるで反対のことをやっておるので、羊頭を掲げて狗肉を売るということをやっておる。ですから、政策だけでこれを区別するということは、よほど頭のよい人でなければわかりませんよ。総明な太田長官くらいの人ならすぐ見分けるでしょうけれでも、一般大衆の毎日々々その日の生活に追われておる人は、政党政策などをよくつまびらかにしておる人はありません。従って、やはり立会演説会でおのおの異なった立場におる者が大衆の前で話し合って、その演説を聞いてそこで初めてわかる。普段から政策をいつも研究し合っておる者はありません。ことに小選挙区になりますと、そんなどころではない。弊害の方が実に多い。これはもうわれわれが言うまでもないのです。あなたの党の三木武夫君が言っておるじゃありませんか。『現在ですら、議員は、選挙区の「面倒をみる」ことで、多くの時間と費用を費している。この慣習は、選挙区が小さくなればなるほど、一層強まると思う。冠婚葬祭から就職の世話にいたるまで、三百六十五日、選挙区の「面倒」を見ることになりかねない。また、それを、議員の側から積極的にやれば、三百六十五日の選挙運動である。世論は、こういう点を直感して、取締規定の強化を求めたものと思う。』これは「世論が、連座規定や立会演説会を重要視したのは、小選挙制に不可避の弊害を直感している証拠だと思う。」こういうことを言っておられる。あなたの方の最高幹部かどうか知りませんけれども、相当の人がこういうことを言っておるのですよ。おなたの党内でも、小選挙区になればなるほど金がかかるということはみな言っておるのです。そういうことで非常な弊害が起る。個人的な何々後援会とか、何とかという個人的なつながりというものが、小選挙区になれば非常に強くなる。これは、私が言わなくても、太田君はよく知っておられるはずなんです。どっちかというと、小選挙区になりますと議員が世襲になる。世襲になると職業的なものになってしまう。あなたのむすこがあなたの跡を継いでまた議員に出てくる、その孫がまた出てくるというふうになりがちなんです。ずっと以前にも小選挙区はありました。ですから、今日までの、経過を見ましても、今の議員に二世、三世というのが出ているでしょう。それはその関係で出ているのです。新しい組合とかなんとかができてきて、新しい労働運動ができてきて、革新政党によって初めてその弊害というものが打破されつつあるんです。今までのような行き方でいくと、どうしても縦の関係だけが深くなりますから、親分子分の関係になってくる。ですから、やはり、小選挙区になればなるほど、代議士が世襲の職業的なものになってしまって、弊害は実に非常なものになる。そういうことは私が言うまでもない。太田君の方が説明しなければならぬくらいだと思うのですが、あなたはそういうことをお考えにたりませんか、よくなるとお考えですか、どうですか。
  29. 太田正孝

    ○太田国務大臣 私が政治批判をすることは恐縮でございますが、今までの明治、大正、昭和を通じての政界の動きというものには、おそらく小山委員も遺憾の点を見出すことが少くないと思います。しかも、大正八年に作ったところの小選挙制度と違ったやり方でございまして、新しいこの方策というものが、一人のものがあとへつながることになるのか、そういうことについては、私は政治の道というものをお互いに寄って直していかなければならぬという血に燃えているのであります。今までの悪い点、それはどこまでも直さなければならぬ。今日一党を占めておるものは明日の一党ではないと思います。政界の英知によりまして、政党の英知によりまして、みずからも磨かなければならず、また互いにしのぎを削っていかなければならぬと思うのです。今日の政治のやり方については、おそらく、小山君とひざを交えたならば、悪い点はずいぶん指摘することができると思います。その悪い点がそのまま残っていくとのみ考えるのは、これは私と考えが違います。われわれは、われわれの力によりまして、政界を直していかなければならぬ。しかも、新しい考え方としてのわれわれの見るところは――政策によらなければ何になるかというようなお言葉がございました。また、過去におきましても、羊頭狗肉の例もあったでしょう。悪いことです。しかし、お互いがこれでならぬというので、政策をもとにして争うというその方向を示すことは、われわれの義務であり、また政治の進化するゆえんであると私は考えておるのでございます。過去においての悪いこと、それはさらにお互いが直すべきことではないか。口幅つたいことを申しましたが、私の心の底はそこにあるのでございます。
  30. 小山亮

    ○小山(亮)委員 今の長官のお話からいうと、なおさら小選挙区にして、はいけないじゃないですか。かえって大きくしなければだめでしょう。あなたのおっしゃることから言うならば、逆な方向にあなたの考えを進めようとなさるから、そこで私はますますあなたに質問を申し上げなければならぬわけなんですが、どうなんですか。実際のところ、小選挙になればなるほど、情実因縁が強くなるでしょう。これはあなたは否定することができぬでしょう。たとえば小選挙区の中において私とあなたが争ったということになれば、一方は太田党であり、一方は小山党なんです。冠婚葬祭から何から何まで全部分れてしまうのです。結婚するのでも、あなたの方には私の党からの関係のものはやりたくないというような気持に昔なったでしょう。それは小選挙区の弊害なんです。そしていずれもその時分は壮士というものを養ったじゃないですか。あいくちや刀をふところに入れている壮士がいて、両方が反対党候補者の演説会場を荒しに歩いたでしょう。それが非常に恐いというので、選挙の神様と言われた安達さんは、小選挙区はいかぬというところから、大、中に直したのではないですか。あなたはその経験をずっとお持ちになるわけなんです。それをまたそういう状態に戻したならば、なおさら、あなたのお考えのような、きれいな政治というものはできないということになるのじゃないか。なお親分子分の関係が深くなるではないですか。私とあなたとその点はひざを交えて話せばわかるとおっしゃるが、ひざを交えて話せば、あなたが私の説を肯定しなければならぬと思うのですが、あなたはその位置においでになるから、しいて私の言うこととあなたの意見が違うように言われるが、ひざを交えて話せば、あなたの意見と私の意見は同じにならなければならぬはずです。どうです。
  31. 太田正孝

    ○太田国務大臣 過去の政治形態におきまして、小選挙区というものを今日のような形において行なったときはございませんというのが、私の主張であります。安達さんが選挙においてうまく動いたとか、そういうことは私も承知いたしております。けれども、大正八年のときの制度は今日の制度と違っております。私は、こういう意味におきまして、最初にお話し申し上げたときに、区制というものは大、中、小それぞれ利害得失がある、しかし、現下の日本の要請は、どこまでも政局を安定しなければならぬ、過去数年来の例を見ればわかる、その意味におきまして、大選挙によればいろいろの利益もございましょうが、われわれの考えるのはそうではないのだ、小選挙区によりまして政局安定を得ることが各国の例でもあるし、またわれわれのとった今日の主張であると、再度申し上げた次第でございます。私は、大選挙制度のいい点も、比例代表制度のいい点も知っております。しかし、もしそれによりましたならば、小党乱立で大へんな姿になるのではないかということで、そこを世論といたしましても――これは確かな世論でございます。数年前あの苦々しい事件まで起しました政党の問題につきましてこの議論が起ったのが、私の見たところの政治の経過でございます。私はその点において判断は間違っておらない、かように考えるのでございます。
  32. 小山亮

    ○小山(亮)委員 太田さんくらいの人がだいぶ実際と違ったことをおっしゃるが、事実は、たとえば、今まで小選挙区制が行われた大正九年ですが、この大正九年を見ますと、小選挙区によって政友会が二百七十八名、憲政会が百十名、国民党が二十九名、無所属が四十七名、こうなっておる。二大政党どころではありませんよ。これはたくさんの党が乱立してくる。また、その次の大正十三年の選挙ですが、憲政会が百五十名、政友本党が百十一名、政友会が百一名、革新倶楽部が三十二名、実業同志会が八名、無所属が六十一名、このようにたくさんの政党になっておる。小選挙区制をやれば、かえってたくさんの政党が続出してきて、始末がつかぬようになるんじゃないでしょうか。現にあなたの方では公認でなければ出さぬようにするとおっしゃる。何もあなたの方の公認でなくても、そんな評判の悪い自民党の公認にならぬ方がかえって出やすいからというので、どんどん反対が出てきたらどうなりますか。そうすれば、かえって無所属とかほかの関係のやつがうんと出てくる。これでは二大政党どころではない。三党にも四党にもなってしまう。ですから、今の場合、もう少し土台をちゃんと作って訓練を経た上でやるのでなければ、出し抜けにやるようなことではだめです。公認が乱立して困るとかなんとかいうことは、法律や規則で、きめることではないんですよ。(拍手)あなたの方の党内事情ですよ。党で、自分でちゃんと統制してきめればいいんですよ。それだのに、自分の党できめられないから、統制力がないものだから、国の法律をいじくってやる。これは乱暴じゃないですか。(拍手)非常な自由主義でいらっしゃる太田さんが、この点について、こんな法案に対してあなたの意見がないはずはないと思うのですが、いかがですか。
  33. 太田正孝

    ○太田国務大臣 大正九年の例をお引きになりましたが、あの制度は純粋なる小選挙制度ではありません。何となれば、一人区というものの数に対しまして、八十七の二人区制、三人区が十幾つかあったのでございます。いわば、われわれが例外として二人区を二十だけとっておるのは申しわけないと思うほどでございますが、今の小選挙区の新しい制度と当時の大正九年の制度とを比較して、その結果がどうなったということを言うのは、根本において私と考えが違っております。小選挙制度といえば、すぐ大正九年の例をもっていいますが、だれかあって、二人区の八十幾つというものを出したものをもって、純粋なる小選挙区でないにしても、小選挙区に近いものであるとさえ言うことは、私はむずかしいと思います。されば、その結果といたしまして、当時の政友会と憲政会とが二つにさらに分れてきたのでございまして、私はこの点についても小山さんと見方を異にしております。私がくどく言う小選挙区というのは、断じて大正八年に定め大正九年に行なったものとは違うのでございます。  また、公認の問題についてのお言葉がございましたが、今まで公認というものをそんなに厳格にしないがために、同じ党派から何人も出たり、また何人も公認したということがございますが、小選挙区の実態というものは、その区域において、一人区においては一人選ぶということを強制するのであります。もちろんそれは、お前の党が――お前がやったらいいというお言葉、その通りです。しかし、今日の情勢におきまして、政治の進歩の形におきまして、政党の進んでおる形におきまして、私どもはこれを厳格に定めた方がいい、これはもちろん見方でございますが、私はこう見ておる次第でございます。
  34. 小山亮

    ○小山(亮)委員 かりにあなたが大正九年のときと今日の選挙区制が厳格な一人一区制でないと言われても、それだからといって、今日のゲリマンダーといいますか、何マンダーといいますか、区画割りがそれよりか絶対にいいということの証明にはなりませんよ。あなたは、この天下がごうこうとして反対している今日の区画制に対して、これが大正九年の案よりもはるかにいい案だとお考えですか。なおさら悪くなりますよ。戦後十年間に日本の国会に提出された法律の中で、このくらい世間の悪評をこうむっておるものはないのですよ。この世間のごうごうたる非難があなたの耳に入らぬとすれば、もうあなた方は大衆政治家としての資格がないのです。(拍手)これをあなたはどう考えるのですか。もっとほんとうに良心的に、率直に、これはいけないと思うところがあるんだ、直したいところがあるんだと思うなら、そのことをはっきりおっしゃる方が太田君らしいじゃないですか。どうなんですか。
  35. 太田正孝

    ○太田国務大臣 お話を承わっていますと、区画の中の何人区という問題と、区画割りがいいか悪いかという問題と、二つに分けるべき問題と思います。  一つの区域に何人か出すというような原内閣時代のものと今日のものとは違っておるということが、第一点として私が申し上げた点でございます。  第二の区画割りにつきましては、私が申し上げました通り、ある人を描いていけば問題が起るでしょうが、私の心がまえといたしましては、地理的状況、人口その他の点を考えてやったのでございまして、むろん私にも手落ちはございましょう、それは改めなければならぬと思いますが、ただ単に、かような意味におきまして、小選挙制度区割りという問と、区の中で何人出すという問題と、それを公認する問題とは、別個の問題であると私は思うのでございます。
  36. 小山亮

    ○小山(亮)委員 私は、太田君に、そういうような事務的な話を聞いておるのじゃないのです。実際において以前の選挙のときにはどうしたかというと、今日のこの区割り制と同じように、今に見られないことをやっておるのです。それは、与党の候補者を有利にするために、警察官がどんどん干渉したのですよ。選挙干渉をやったのです。原内閣時分には、はなはだしきに至っては、警察官がついて歩いて買収さしたじゃないですか。中には警察官が反対党運動員を、どんどんふんじばったじゃないですか。そういうことをやっておるのですよ。その区割り案と同じことですよ。今の区割り案だってそうなんです。今日ではもうそれはできないでしょう。警察官がそれほど強い権力を持ってやれないものだから、今こうしたような制度を作って、それと同じような効果を発揮させようということを考えておる。刃物をもって人を殺すか、刃物を持たないで人を殺すか、いずれにしても殺すことは同じなんですよ。薬で殺すか、あるいは刀で殺すか。結局、刀で殺すのも、薬で殺すのも、殺すのは同じことです。そういう意味で、大正九年の制度よりも、今の制度の方が、あなたの方では制度としていいとおっしゃるかもしれませんが、結果としてはもっと悪くなるということを私は言っている。あなたの今おっしゃることは、ただ質問をのがれよう、攻撃を避けよう、避けようとすることだけであって、誠心誠意、日本のために選挙区制をどうしたらいいかということを、心の中から論議するというような態度をとっておいでにならない。この場さえのがれればいいというような行き方ではなくて、真剣にどうしたらいいかということを御相談なさる気はないですか。そうでなければ、何日かかってもこういう質疑をあなたにしなければならないのです。どこをどうするか、いけないところはいけないとおっしゃったっていいんじゃないですか。あなたの党の最高首脳部じゃ、すでに考えておられるじゃないですか。参議院で直そうとかなんとか言っているのですから、参議院で修正させようということなら、修正の必要なことを認めておいでになるのでしょう。あなたには何も相談なく、そういうことを言っておられるのですか。あなたに一応打ち合わされた上で、衆議院はこのまま通過さして、参議院で修正をやろう、こういうふうに党の首脳部の方針がきまっておるということを聞いていますが、あなたの方にはそういう達しはないのですか、御相談はなかったのですか。
  37. 太田正孝

    ○太田国務大臣 私の気持もおわかり下さると思いますが、さっき言った警察力とか、この区割りによってどうこうしようとか、私はそんな気持を持っておりません。また、党との関係については密接に連絡はとっておりますが、党がかくのごときことを決定したとか、またこれをこうすべきであると政府に言ったとかいうようなことは、この席において私の申し上げることではないと私は信じます。
  38. 小山亮

    ○小山(亮)委員 私が太田君に対して特にこれを主張するのは、今になってみれば、与党でもあの調査会案をそのまま出した方がよかったと考えておいでになる人が多いであろうと思うからである。これは、申さば、料理人が作った料理を、お客さんの前へ出す前に、自分の親類同士が寄ってさんざんいいものを食ってしまって、食い散らかしてぐしゃぐしゃにしてしまった料理をお客さんの前へ突き出したようなものですから、食えないのが当りまえです。もとの料理人が作った料理を持ってこいと注文するのは当りまえでしょう。(拍手)それだから、結局調査会案で出したらよかったというふうに今では考えておいでになるでしょう。そうすると、そこで私は太田さんに伺いたいのですが、ほかの人より以上に聰明であり、しかも経験者でおいでになるあなただから、あなただってそういうことを考えられたに違いない。さっきのお話を、聞けば、はなはだ口幅ったいようなことですけれどもというようなことをおっしゃっているが、全国各地津々浦々をお回りになって選挙のことは十分に御承知になっているあなたが、いかに与党が今の案を政府に押しつけようとしたって、それをおのみになるのはおかしいじゃありませんか。あなたは、これはけしからぬ、こんなにいじくったのではだめだということをおっしゃって、お引き受けにならないのが当りまえである。私は、今日のこの紛料を来たしたのは、政府の腰がいかにも弱過ぎるからだと思う。何といったって、政府の腰抜けの態度によって今日のような事態の紛料を来たしたと思うのです。だから、あなたに対してこういうことを繰り返し繰り返し言っているのです。あなたは、初めに政府案として出したこの案を妥当であるとお考えですか。もし最初に政府案となって出たこの案があなたのおっしゃる理想的な案だと言うならば、私は、太田君は選挙のことは何も知らない人だと思いますよ。これは理想の案ではないでしょう。あなた自身がこれは困った案だとお考えになったでしょう。そうじゃないですか。率直に言って下さい。
  39. 太田正孝

    ○太田国務大臣 政府としてきめた案でございまして、私はその当事者でございますが、今のお言葉のような意味におきましては、私は考えておりません。御注意の点は十分拝聴いたします。
  40. 小山亮

    ○小山(亮)委員 私はあなたに注意しようとしているのではないのです。これはいけなかったら直そうじゃないですか。どうですか。直す気はないで、すか。国のために悪いということになっても、直す気はないのですか。国のためにいいと思ってお出しになった法案でしょうが、ところが、全国の批評を聞いても、公聴会意見を聞いても、あるいは新聞論調を見ても、あらゆる有識者の言葉を聞いても、全部がいかぬというのです。そうすると、これはいけないのでしょう。こんなに反対されてまであなた方が議会の多数でこれを通したって、それは国民の声じゃありませんよ。それは国民に反する多数になる。国民から浮き上った自民党になっては大へんでしょう。だから、やはりあなた方は国民の声に聴従しなければならないでしょう。そうだとすれば、あなたはここで直さなければならぬ。これは火を見るよりも明らかなことではありませんか。直す気はないのですか。国のために悪いとわかっていても、直す必要なしとお認めになるのですか。初め薬剤師が調剤するときには、これはからだのためにいい薬たと思って調剤しても、それが毒薬で、これを飲めば死んでしまう薬だとわかった以上は、調剤し直すべきでしょう。それでもなお無理に飲ませますか。それと同じで、これはやはり改めるのが当りまえでしょう。そうでなければ、あなたは大臣じゃないですよ。御意見はどうですか。
  41. 太田正孝

    ○太田国務大臣 私に対する批判はつつしんで受けますが、私が最初申しました通りの考え方でございまして、すべての一意見がまとまったときに、政府としての意見をきめるのでございます。
  42. 小山亮

    ○小山(亮)委員 すべての意見というのはどういう意見ですか。もう一度伺いたい。
  43. 太田正孝

    ○太田国務大臣 国会の意見でございます。
  44. 小山亮

    ○小山(亮)委員 国会の意見は大体わかっているのじゃないですか。あなたはおわかりになりませんか。今日まで、すでに、あなた方が本案を途中で打ち切って本会議へ出そうとして、いけなくてここへ戻ってきて、もう一ぺん慎重審議しようということになったくらいですから、国会の意向というものは大体おわかりじゃないのですか。むしろ、私をして率直に言わしむれば、あなたは自分政党の中の意見をお聞きなさいな。自民党だってそんなに無理押しをしようという人はおりませんよ。三木君だってこれは自民党の人じゃないですか。松村君だってそうですよ。なぜあなたは自分政党の中の正しい意見に耳を傾けないのですか。自分政党意見を全然聞かないで、それで無理押しにこれを押し切ろうとしたってだめですよ。あなた方の政党の中で全部が全部賛成しっこはないのはもちろんですが、しかも大多数は反対ですよ。大多数の人たちがこんな法案反対なんですよ。ごく少数のいわゆる主流派と称するか他流派と称するか知らぬけれども、少数の人が通そうとしている。そんなものを黙ってのんで、無理にこれを国民にのめということは無理じゃないですか。こんなにわかって、もうすでにはっきりしてしまって、先の見通しもついているのに、なぜ、ここらで胸襟を開いて、野党も与党も一緒になってくれ、ここで相談をしようじゃないかとおっしゃらないのですか。それがおっしゃれないのですか。国のためなら、太田さん、大臣のいすの一つぐらい飛ばしたっていいじゃないですか。どうです。あなた率直にやろうじゃないですか。ほんとうに打ち明けて――隠さなければならぬところはありませんよ。与党だ、野党だといったって、ひとしく国家の再建をこいねがっているのです。みんなそうです。だから、あなた率直に国のために胸襟を開くという態度にどうして出ないのです。あなたの立場上それが出られないのですか。ほんとうの心境をもう一ぺんおっしゃって下さい。
  45. 太田正孝

    ○太田国務大臣 党内の御意向のお話もございましたが、これは私がここで申し上げることではございません。私は常に胸襟を開いております。
  46. 小山亮

    ○小山(亮)委員 あなたは、さっぱり――胸襟を開いたって、あなたどの程度開いておいでになりますか。私はずっと開いてもらいたい。ちょっとこう明けないで、ぐっと開いてもらいたいのです。もう少し明けられませんか。敵だ、味方だ、野党だ、与党だということにこだわらぬで、大臣だとか議員だとかいうことにこだわらぬで、胸を広げて、こういう重大な問題はもう少し与党、野党話し合えるような機会を作ることはしておやりになったらどうでしょう。規則上できないことはないのですよ。規則からいって、所管大臣が野党と与党の連中と寄り合って、一ぺん懇談会を開いて、この収拾策はどうしようというような懇談会を開いていけないという法律はないのですよ。できませんか。もう一ぺん言って下さい。
  47. 太田正孝

    ○太田国務大臣 とにかく、私は、何もこのいい年になって自分の地位に恋々として考えておりません。しこうして、私の考え方は再三申し上げた通りでございまして、皆さんの御意見を聞いたあとにおいて決定する、こういう態度に変りはございません。また、広く世の中の、ことを聞き、世論にも耳を傾けていることは、私も人一倍のつもりでございます。
  48. 小山亮

    ○小山(亮)委員 これは、率直に言うと、混成旅団であるところのあなたの政党が統制がきかない、統制がきかないから、党の主流が統制をきかすためにこんな案を作って考えたらしいのだが、もうそれも要らなくなったんじゃないか。統制をきかす必要がなくなれば、率直に胸襟を開いて善後策を考えた方が賢明じゃないでしょうか。もう一つは、実際は太田さんは運の悪いときにこんな大臣をして、えらい法案を持ち込まれて、しまったというような傾きが僕には感じられるのですよ。(「それだけわかっているなら、もう言うな」と呼ぶ者あり)君に質問しているんじゃないのだ。君が長官になったときに質問するよ。――私は、この点は、もうこうやって毎日々々論議していても、この法案を行く末どこへ持っていくのかというふうなことについては、考えておいでになると思うのだ。むだな論議を費さないで、どうしようか、こうしょうかと、率直に考える方法はありませんか。いかがですか。私が聞くのはそれだけの幅を持っているのですよ。だから、私は言うのだ。いかがですか。それはできませんか。もう一度伺わせて下さい。
  49. 太田正孝

    ○太田国務大臣 先ほど申し上げた通りであります。
  50. 小山亮

    ○小山(亮)委員 それでは、これは太田君に聞きますまい。政党がこういうような小選挙区の区割りをしたり、それから小会派とか無所属いじめのような、五十人以下の政党政党上認めないとか、こんなつまらない、憲法上疑義がありはしないかと思うような案をお立てにならないで、同士打ちを避けるあなた方の党内の方法があるでしょう。各政党ともにその方法をおとりになったらどうでしょう。あなたの方が自分で困るからといって、世間全体を困らせるような法案考えものだと思いますが、まああなたが返事ができないといえばやめましょう。これは特別に自民党やなんかに関係の深い人は別ですよ。また、公聴会に出てくる人も、この次に自民党から公認されるだろうと思っておるような関係の人は、これは別です。利害関係が全くない人たちが、この法案くらいめちゃくちゃな法案はないと言っているくらいのことは、御存じでしょう。天下の声です。おごる者久しからずといいますが、おごった気持をやめて、謙虚な気持で虚心たんかいに天下の声を聞くべきときだと私は思います。もしあなた方がそういうことができないとすれば、議会政治というものに対して国民がほとんど背を向けますよ。議会政治はたよるに足らず。ただ数だけ。形式だけ。議会の中に数が多いということのために、何でもかんでも押し切っていく、国民世論は無視するということだったら、議会の必要はないのです。こんなに多額の国費を費やして議論をする必要はありませんよ。みんな忙しい人間です。数が一人よけいだったら、反対党意見は聞かない、どんなにむちゃくちゃなことでも、何でもどんどん通すということならば、こんなりっぱな建物を作ってお互いが議論し合う必要はない、何でもきめてしまえばいいのですから。ところが、議会政治、民主主義というものは、反対党の存在と反対意見の存在というものを認めることから始まっておるのですから、反対党意見は全然聞かない。どんな意見があっても取り上げない。――その意見は聞いて、謙虚な気持で法案の修正に応ずるという気持がなかったら、一党独裁ですよ。これでは議会というものは必要ない。民主政治をじゅうりんしますよ。日本じゅうの人が悪いという法案、これは直そうじゃないかということをあなたは言い切れないのですか。これは議会政治というものを全然認めない政治家の集団ですよ。これは、そういう政治家がおって、口に民主政治なんかを言われることは、かえって、国のために迷惑だと思う。これは、どうしたって、何とおっしゃったって、直していただかなければならないのですし、また、いかに今日議会を多数で押し切ろうとしたって、実際に押し切れないじゃないですか。世論の力というものは非常に強いし、世論の前に多数が無理押ししようといったってだめだということは、今度の事実でもっておわかりになったはずです。今日は、意地だとか感情だとか面子ということをやめて、直剣にどうしようかということを考え直すときじゃないかと私は思う。  幸いにして議長が委員会に引き戻して、委員会で慎重審議をしろという期間を与えておる。この間に与党の諸君も政府の諸君もよく打ち合せて、この期間内に何とかうまく兵をまとめて陣を引くということを考えなければ、いつまでもいつまでもこんなことをしていては迷惑です。行く先はわかっておる。いかに下手な戦争をする人だって、全滅してへたばってしまうまで兵隊も前線に置く必要はないじゃないですか。日本のかつての大東亜戦争と同じです。もう日本の政府は和平を望んでおる。降伏するということになったら、前線の将校は幾らいばったってしようがない。前線をへたばらせないうちに、大体において兵力をどうしよう、戦争をどこでまとめようというときに、引き揚げ命令を出して引き揚げさせなければならぬでしょう。それとも、みんなへたばるまで置いておくのですか。太田さん、あなたの方はそれでも進め進めと指揮するのですか。私はばかばかしくて話にならないのです。ばかばかしくて、話にならぬから、あなたにこういう話をしておるのです。これは質問の型を破っておりますよ。今までこんな質問をする人はなかったでしょう。これは型破りの質問です。あなたに対する相談なんです。だから、あなたも、相談の気持で、おれはこうだと思っておる、何とかこういうところまでやって、この辺でけりをつけようと思っておるのだと言えば、それで話は済んでしまうのです。(「無理な質問をするな」と呼ぶ者あり)ここだから言えるのですよ。本会議では言えぬでしょう。委員会だから言えるのです。委員会以上に小さいところはありませんよ。今度は待合になってしまう。待合では話になりませんよ。やはり委員会が一番いいのだと思う。  それから、私は常にはなはだおかしいと思っておるのは、あなたの方の党の連中は、これが党利党略――太田君は、いつか、国会で私が質問したときに、それは絶対に党利党略ではございませんと言われた。鳩山総理も党利党略ではございませんと言われた。ところが、岸君は、党利党略だ、当りまえだと言っておる。たた選挙区のとり方があまりにも自民党党利党略に傾き過ぎるとの批判は全然当らぬとは言わない。歴史を見ても党利党略の入らないものはあり得ない、こう言っておる。はっきり自分党利党略を承知しているのですよ。そうすると、幹特長は党利党略だと言う。ところが、あなたはそうじゃないと、言うが、一体どっちがほんとうなんですか。政府はそうでないと言い、与党はそう言っておる。政府を構成する土台になっておる与党がそう言っておるのです。そうすれば党利党略じゃないですか。あなたがこの間言われたことは間違いないのでしょう。どっちがほんとうですか。岸君の言うことが違っているのですか、あなたの言うことが違っているのですか、一ぺん聞かせて下さい。
  51. 太田正孝

    ○太田国務大臣 今日の国会の動きを心配されて、議長がこういう機会を設けて下さいましたことは、再び委員会に戻して疑いを確かめる、こういう意味に私は承知しておるのであります。従って、委員長及び与党の理事の方から聞きましても、一生懸命にやっていこう、静かにやっていこう、こういう意味でありまして、私が初め申し上げたことも、私自身にもし間違いがありましたならば、これは改むべきでございます。党の人と私とここで対決して、私がどう思うか、こういうことにつきましては、私から言うべき段でないと私は思います。総理大臣と私の申し上げることが政府考え方であると、御了承願いたいと思います。
  52. 小山亮

    ○小山(亮)委員 そうすると、太田長官の話からいくと、岸君はうそを言ったということになりますね。
  53. 太田正孝

    ○太田国務大臣 私は、ただいま申し上げました通り、個人として、あるいは幹事長として言われたことが、われわれと関連を持って言ったことでない意味におきましては、いいとか悪いとか、言ったとか言わぬとかいうことは、私のここで申し上げることではない、かように思っておるのでございます。
  54. 小山亮

    ○小山(亮)委員 あなたは、今、議長が幸いにして激突寸前のところで激突を避けて、そうして委員会に差し戻して、静かに慎重に審議するという機会を与えられたことは非常にありがたいと言われる。私も同感だ。それならば、どうですか、静かにお互いに心境を吐露し合って話し合う機会をお作りになったらどうですか。あなたの力は、最初の通り、まるで古い役人が型にはまったことを言うように、私の申しましたことは一向間違いありませんとか、あるいは取り消す気持はありませんとか、あるいは修正する気持はありませんとか言っているが、そういうかたい話ではなくて、政治家としてのあなた、政治家として大きく成長されたあなたとして、こういう問題に対しては静かに話し合うというのならば、型破りの静かに話し合う機会があるでしょう。方法があるでしょう。今までの、ように型通りにやっておれぱ、何年も審議が続きますよ。われわれの言うこととあなたの言うことは違うのだから、平行線なのだから、それをやっておれば何年も審議が続く。何年も審議を続かせるお考えなら、あなたの今の態度でよろしい。ところが、政治家として成長なさったあなたがこの委員会でお話しになるとすれぱ、もう少し話をだんだんに打ち解けるようにして、静かにしんみりした話し合いで、話を落ちつくところに落ちつかせることができないでしょうか。そういう行き方はないでしょうか、どうでしょうか。それとも、私は与えられた権限はこれだけだから、これ以上のことはできません、こうおつしやるのか、どちらですか。
  55. 太田正孝

    ○太田国務大臣 会議の室以外のことは、これは別の問題でありまして、私の申し上げるべきことではございません。かように申すのは決して古い小役人根性で私は申すのではございません。一定の機会を与えられまして、それにも一定の幅もあることと思いますが、そこでできるだけの話をするということは常識だろうと思います。
  56. 小山亮

    ○小山(亮)委員 委員会以外のことを話せと言っておるのではない。委員会の中ですよ。さっきイギリスやなんかの議会のことをあなたは言われたが、こんなに、お互いが、他人行儀に詰め寄ったり詰め寄られたり、攻防秘術を尽したりするようなことは、英国の議会にはありませんよ。あなたは英国の議会のことを言われたから、私は言うんですよ。日本の議会で今までそういう習慣でやってきたけれども、ここで新しい型を作って、そうしてあなたの方から積極的に砕けて、もっとしんみりした話し合いのできる機会を作ろうと思えば、この委員会でできるはずですよ。委員会以外で作れと言っておるのではない。この委員会でできませんか。
  57. 太田正孝

    ○太田国務大臣 私は委員会において御質問を受けたならばお答えをする、これ以外にここでもって、どうこうということは、私はすべきことではないと思います。会議の規則におきましても、質疑をし、討論をし、採決をするという三段の制度を持っておりまして、この方式によることが、多数の集まっておる委員会を処理する一つの昔からの法則であり、また国会の規則においても定められておるところであると思います。なお、イギリスの国会云々ということでございましたが、私はそういうイギリスのやり方においても同様であると思います。また陰においての話のあることも十分に承知しておるつもりでございます。
  58. 小山亮

    ○小山(亮)委員 そうすると、あなたと私どもの話し合いは、もうこれ以上話し合いの機会はないというわけですね。話し合いはこれ以上前進しないわけだ。同じところをぐるぐる回るわけだ。あなたと意見は違うかもしれませんが、私は、こういう形式的な議論だけで時間を費していくならば、国会は要らないと思いますよ。過去の議会もみんなそうです。ただしゃべらんがためにしゃべっておる。記録に残したいがためにしゃべっておる。あなたの方もただ時間かせぎにどんどんしゃべっておる。法案内容には触れさせないように、よろいかぶとで身を固めて、中には一切反対の質問を浸透させないようにやって攻防秘術を尽しておる。今までの議会でも、戦前からそうです。こんな無謀な論議をしないで、もう少し率直に話し合うような話の進め方がありそうなものだと思っております。ことにこういう重要な法案であれはあるほど――ことに選挙区の問題なんかはきわめて重大です。重大であるばかりではなくて、これは議員がみんな知っておるのです。自分に関する選挙区のことですから、議員で知らない者はありませんから、みんなエキスパートなんです。ほかの問題だと専門々々で知らない議員もおりますが、選挙区の問題だけは全部がエキスパートですから、話し合いをつければつくんですよ。だまそうといったってだまされっこないのだから、話はつくんですよ。こういう重要な選挙区の法案なんだから、もう少し両党の話し合いを進めるように考えられたらどうですか。それともこのままでお通しになるつもりですか。たとえば、今ここに戻されている法案というものは、すでは天下定評があるのです。日本中で総スカンを食って、こういうものはだめだといって、すっかり烙印を押されておる。それで国会の本会議であれだけの騒ぎをして通過されたとしたら、満身創痍ですよ。この法案をこのままで審議しろ、この料理をこのままで食えということは無理でしょう。どうしてもこれを元に戻さなければならぬ。元のきれいなものにしてお出しになるのが当りまえでしょう。そうすると、あなたの方が出し直してくるのが当然でしょう。政府がもう一ぺん出し直してくるのがいいでしょう。このまま無理押しにわれわれに飲ませようとしてもだめですよ。もし元に返して出し直すというならば、大幅にあなた方はこの程度までならこの程度まで改めたいのだが、野党も賛成するかというふうに出てくるのがほんとうじゃないですか。それも見せないで、おれの方は応じられないのだとか、立会演説はおれは当りまえだと思うのだとか、これでどこまでも突っぱっていこうとすることは無理じゃないですか。もう試験済みで不合格なんです。落第してしまったのですよ。このごちそうはとても食えないときまったものを、まだそれを無理押しに押しつけようとすることは無理じゃないてすか。どうですか。それとも、あなたの立場としては、大幅にこうするということは言えない。そうすれば、このままにらみ合って何日も何日も過ごすのですか。それとも、あなたは、そうして時をかせいでおいて、いきなりまた強行策でもってこれを通過させていこうというようなことを考えておられるのですか。どちらなんですか。また、これは野党が面悪いのだと、無理に野党の方に悪い烙印を押しつけて、そしてまた強行に押し切って質疑を打ち切り、参議院に持っていこうとなさるのですか。これはあなたの方が悪いのですよ。私はこれだけ言っておるにもかかわらず、そういう態度で胸襟を開いて歩み寄ろうというような様子がない。こうして両党が対立したら、問題はどこで解決するか。あなたの方も修正する用意ありというのでしょう。社会党の方も二人区、三人区というものを出した以上は、歩み寄ろうという態度を見せている。それならば歩み寄ろうという意思がある。それではなぜ出さないか。全然だめだというなら、よそを見ていていいのですが、歩み寄ろうというならば、その程度の問題になってくるじゃないですか。ここまできたのに、なおさらあなたの方が歩み寄りの態度を示さないというのは、これは与党がだめなんです。法案自体が初めからいい法案ならば、こんなことは起り得ない。初めからでたらめな法案で、のめない法案を持ってきて、天下ことごとくこれに対して批判し、反対し、非難しているものをのますのは無理なのですから、よほどあなたの方は譲歩しなければならぬでしょう。その譲歩の範囲は、おれはこういう気持でやるのだというその態度も示さないで、ここで幾ら審議しろ、審議しろといっても、毎日々々顔を見合せて、おもしろくない顔をして、ただ時間をつぶしている以外にやりようがないじゃないですか。これ以上やられるとすれば、あなたの方は手を打たなければならぬ。その手を打たれる何かお考えがありますか。
  59. 太田正孝

    ○太田国務大臣 私は修正するとも修正しないとも申しておりしません。よく意見を聞いてということでございまして、おそらく議長が時間を与えたのもその意味であろうと思います。小山君の私に対するいろいろなお言葉も、政治の大綱を御心配なさっておることと思いますが、私も同様にそのことを心配しておるのであります。しこうして、この席においていかなる案を出すか、そういうようなことにしていくことは、私の今の立場ではできません。私は、とっくり意見を聞きまして、しかる後に考えをきめていこう、かようにお答えするよりほかにないのでございます。私も同様に現在の一議会の動きというものはまことに困ったことであると考えております。修正案を先に出せというお言葉でございますが、おそらく、議長の今日与えられたのも、よく審議してという意味も、そこにあるのではないかと私は思うのでございます。
  60. 小山亮

    ○小山(亮)委員 そうすると、あなたのお見込みでは、こうして審議をしていくうちに落ちつく先がだんだんわかる、それからあなたの決心ももう少し審議を続ければきまってくる、こういうことを意味されるのですか、どうなんですか。
  61. 太田正孝

    ○太田国務大臣 今私が申し上げた言葉通りでございます。
  62. 小山亮

    ○小山(亮)委員 あなたの答弁は非常に上手で、われわれ頭の悪いやつにはよくわからぬのですけれども、率直に私どもにわかるように一つ答弁して下さい。もう一ぺん言い直しますが、議長がこういう紛糾した事態をもとに戻すために、冷静に審議を続けていけ、こういうことで戻されたのだから、それであなたはもう少し審議の経過を見て、いろいろの方の意見も聞いた上であなたの決心をきめる、そうして修正するなら修正の案を考える、こういう意味ですか。
  63. 太田正孝

    ○太田国務大臣 委員会を運営していく委員長のもとにおきまして理事委員各位がやっておるのでございますが、私といたしましては、返されたるこの法案につきまして、御質問があったならばそれに答えつついくほか――まだ二日と四日とやっただけでございまして、その後において審議したという問題は今小山委員と私が応答しているだけの問題だろうと思います。でありますから、静かにほんとうに議長の意をくんでお互いが話し合っていく点が生まれてくるのじゃないか。きょうこの席で修正案がどうだとかこうだとかいうことは、それは私として言うべきところでない、こう言うにすぎないのであります。私はごく平たい意味で申し上げている次第でございます。
  64. 小山亮

    ○小山(亮)委員 公聴会でもって出られた方々に対して質問をしたいと思いますし、なお、太田長官だけではなくて、私は以前から総理大臣に対して質疑を申し込んでありますが、総理に対する質疑も継続したいと思います。従って、私は、きょうは太田長官に対する質疑はここで終ります。
  65. 小澤佐重喜

    小澤委員長 森三樹二君。
  66. 森三樹二

    ○森(三)委員 私は、仙台を初めといたしまして四班にわたる各派遣委員報告を一応聞いたのでありますが、この各派遣委員報告を聞きました中において、われわれはまことに感銘を深くしたものがあるのであります。私どもは、当委員会を通じまして、この選挙運動の問題、あるいは選挙費用の軽減の問題、あるいは選挙の公営の拡大、あるいは政治資金規正法その他区画割りにつきまして種々質問をしたのでありまするが、各地方公聴会を通じまして、まことに、私は、われわれの主張が正しいものであったということを、まざまざとこの四カ所の委員会を通じて知ることができたのであります。すなわち、小山委員も言われましたように、今や全国的に政府提出法案に対してはごうごうたる国民の非難の声が集中しておるのでございますが、この国民の声を、過般の四カ所におけるところの地方公聴会において、私どもは率直にその意見を聞くことができたのであります。一例をとりますと、私は仙台班に加わったのでありますが、元宮城県町村会長をいたしました富田広重という人がおりました。年令は約七十才程度の人であります。長い問政党政治の歴史を持った人でありまして、選挙運動が飯よりも好きだ、自分はもう若いときから選挙運動ばかりやってきた。――しかもその人は保守党の人でありまして、昔のいわゆる政友、憲政時代のあの二大政党対立の時代から今日に至るまで、一生涯を自分政治活動、とりわけて選準運動に携わってきた、選挙運動は三度の飯よりも自分は好きだ。そういう長い運動を続けた人でありますが、その人の意見を大臣もお読みになったかと思います。これはぜひ一つ大臣も目をみはって読んでいただきたいと思う。すなわち、その中にはこういうことが書いてあります。その人の報告書はまことに簡にして要を得ておるのでありまして、大選挙区制であろうと中選挙区制であろうとかまわない、要は国民のためになる真の政治家を選び出せる制度だ、もし小選挙区制になると選挙費用が少くて済むと言うが、そんなことはない、選挙区が小さければ候補者は三百六十五日選挙運動をしなければならないことを考えなければならない、処罰規定を厳重にしなければならないと述べた。報告はこれだけであります。報告書はこれたけでありますが、これは要約されたものでありますが、その公述は相当長時間にわたって行われたのです。私が補充的に申すならば、この人は、自分保守党だ、しかしながら、小選挙区になれば、年がら年じゅう三百六十五日選挙運動が継続される、しかも、その人が、言葉の中において、ここにはありませんが、詳細にこう言っております。たとえば、冠婚葬祭の場合においても、従来二百円であった香典が五百円になる、従来五百円であった御祝儀が千円になるのだ、だから、平素三百六十五日の運動と、そしてそうした候補者となるべき者は多額の出費が行われるということは、もう火を見るより明らかだ。大きな声で、七十になる、長い問の政党政治運動を行なったところの宮城県の町村長会長富田君が絶叫した姿を、私はまざまざと思い浮べたのであります。このことは、まさに、私どもがこの委員会において太田長官にしばしば申し上げておりましたように、小選挙区になると選挙運動が熾烈になる、あらゆる弊害はたくさんありますけれども、いわゆる慢性的な買収、供応がそこに生じまして、選挙粛正は根本的にくずれてしまうということを、太田長官にもしばしば尋ねたのでありますが、太田長官は、これに対しまして、そういうことは絶対ありません、選挙区が小さくなることによって法定費用も少くなる、従って選挙の粛正、選挙費用の軽減が行われるということを、しばしばおっしゃっていましたが、この仙台における地方公聴会において長い問政党運動政治活動、選挙運動を行なったこの保守党の代表とも見るべき長老の言葉に、私は非常に感銘を受けてきたのであります。これに対しまして、太田長官の御反省ある御答弁を願いたいと思うのであります。従来の御答弁は、申しては失礼でございますけれども、単なるおざなりの答弁としか私どもは受け取ることができない。あなたも長い政党政治家として選挙運動も十分御承知の方でございます。みずからを偽わることなく、あなたの良心に訴えて、私は当委員会において明確に御答弁をされることを要望してやみません。
  67. 太田正孝

    ○太田国務大臣 森委員長が御指摘になりました富田さんのお言葉は、短かい文句でございますが、私は経験者としてのとうとき言葉だと存じます。問題は大中小選挙区制の利害得失ということから解決されると思うのでございます。私が提案理由にも申しました通り、区制にはそれぞれ長短がある。長といい、短といい、そのうちの短の部分が、三百六十五日云々というこの経験者の言葉に現われたことと思います。私ども考えている現下の政治の大勢というものは、この数年来小党分立してえらい騒ぎまで起した。これをどうするかというときに、二十六年から始まりましてずっと続いておる声は、小選挙制度にしたらいいというので、小選挙区制が万能というよりも、大きな目的がそこにあるのか――私決してこれは飾った言葉ではございません。小選挙区の悪い点も認めなければならぬ。しかし、どの区制度においても、問題は選挙の結果ということの見方が一つありますし、もう一つ候補者立場から見た問題がありますし、もう一つは有権者から見た問題、この三つの点からくる上に、さらに加えるならば、選挙執行者の便宜、そういうような問題がございましょう。これも警察が手を入れるなんという意味でなく、そういう四つの点から考えていきますと、大中小ともそれぞれの利害得失があると思います。今、日本において、終戦後何とか日本を建て直すについては、政治の道が固まっていくがいいという意味におきまして、互いに大きな形になって論争して政治のいい道にいこう、こういう考え方からいたしまして、今日の小選挙制度が私は手段として、いい、こういうように考えたからでございます。幾たびも申し上げました通り、小選挙区にも中選挙区にも大選挙区にもそれぞれのいい点と悪い点がございますが、現下の要請するところは、私どもはこの小選挙制度にある、こう考えたからでありまして、富田さんの御意見はむろんとうとく尊重しているところでございます。しかし、意見の見方、あるいは議論の立て方が富田さんと私とは違っているように存じ上げるのであります。
  68. 森三樹二

    ○森(三)委員 私が長官にお尋ねしたのは、その区制の問題ばかりではなくて、いわゆる候補者が三百六十五日選挙運動をしなければならないというそのこと、先ほど申し上げましたように、冠婚葬祭の香典だ。あるいは御祝儀だというものが今度は二倍三倍になってくるということを、はっきりと富田元老が言っているのですよ。私はその点を聞いている。あなたは、大選挙区、中選挙区を論じて、昭和二十六年来の云々と言われましたが、そのことを私が質問すれば、それだけでも尽きないところの、お互いが何時間も費さなければならない根本問題になるわけであります。あなたがそうおっしゃるならば私は申しますけれども、すなわち昨年の選挙制度調査会の答申を要求されました場合には、まだ二大政党は日本の政治情勢としては生まれていなかった。しかるに、その後において日本社会党の両派の合同が実現され、これを一つの契機として保守党も統一したのでありますが、答申を要求されたその当時と現在とでは、客観情勢は日本の政治情勢の上において全く異なっていると思う。しかし、私は、そのことを今あなたと議論しようとも質問しようともしているのではなくて、その故老が、小選挙区制になると、年がら年じゅう三百六十五日選挙運動が行われて、冠婚葬祭その他においては、候補者となる者は莫大な御祝儀や香典を包むようになるのだ、だからいわゆる選挙が粛正されなくなる、選挙が腐敗堕落する、慢性買収という形において、ふだん金を使っておる者は選挙になればきつくなる、でありますから、政界の浄化ということができないじゃないか。あなた方政府側としては、小選挙区制になると区画が小さくなるから、選挙費用が少額で済むのだ、選挙費用が軽減されるのだということを、絶えず御答弁なさっておるのだ。しかるに、この故老の言によっても、反対に、いわゆる常時の買収や供応が行われて、実質上の、つまり事前運動も含めまして、選挙運動というような形において費用が増額される。候補者がそのような無理をすれば、結局汚職、疑獄に通じたところの贈収賄というような問題にも発展をする。だから、政界の浄化もできないし、選挙運動というものは、政策本位の立会演説のような堂々たるものを廃止した結果、全く地下にもぐったところのいわゆる戸別訪問、悪質な買収、供応というような形になって生まれてくる。ひいては、候補者は、大きな財政上の負担になりまするから、無理から無理をする、政界が腐敗をする、私はここを太田長官にお尋ねしておる。たくさんお尋ねしたいことがありまするけれども、時間もございませんから、この点を私は強調してあなたに御質問を申し上げているのです。
  69. 太田正孝

    ○太田国務大臣 もちろん悪い点につきましては直さなければならぬと思います。私どもは、今の世の中が、今日の政治の方向といたしましても、いろいろ直さなければならぬ点におきまして、制度に罪ありか、人に罪ありか、ずいぶんお互いにおいても直さなければならぬ点があると思います。どの制度においてもいろいろな欠陥がありますが、私は、その点を、目には目をという言葉がある通りに、お互いは耳に耳をもって狭い区域においてこれを守っていく。イギリスにおきましても、長い問いろいろな悪い点がございましたが、今日に仕上げてきたのは、やはり悪い点を直したからであろうと思います。三百六十五日云々というのは、むろん形容でございましょうけれども、そういう今までの欠点があるといしたましたならば、中選挙区時代においてもあった欠点ならば、私はどの制度においても直さなければならぬ、こういうように思います。答申におきまして啓蒙運動に力を置いたのも、その点にあるのではないかと考えておるのであります。
  70. 森三樹二

    ○森(三)委員 とにかく時間がこれでもって切れますから、最後の質問をいたします。私は太田長官の核心に触れた御答弁をお聞きしたいと思うのです。  要するに、せっかく小選挙区制にして、二大政党を育成するとか、あるいは政局が安定するとか言われますけれども政党の腐敗をかもしたならば何にも私は役に立たぬと思うのですよ。せっかくできたという二大政党が、絶えず贈収賄とか疑獄とかいうような問題になって、一昨年の造船疑獄その他の保全経済界のようなああしたところの多くの汚職、疑獄が起きたのでは、太田さんといえども、二大政党がせっかくできても、日本の政局の安定などということはとうていできないと思う。しかも、大政党になればなるほど、党の財政というものは相当莫大な金になることは、先般の政治資金規正法に基くところの調査報告によってもおわかりです。つまり、何億という金が財界から寄付されている。それなくしては大政党、特に保守党においてはやっていけないということも、はっきりあなたはおわかりのはずなんです。私のあなたに問わんとする核心はそこになってくるわけです。結局、莫大な政治資金や、莫大な選挙費用というようなものが使われるならば、すなわち選挙運動に常時耐え切れないような金がかかるとするならば、その政治家も結局は腐敗墜落するような汚職、疑獄に知らず知らずのうちに巻き込まれるのではないか、あなた方の政界を浄化して二大政党を育成するという目的はついにくずれ去るのではないか、私そこをあなたにお尋ねしたいのです。問題は、あなたは、小選挙区制にすれば二大政党ができていい、政局が安定すると言われますけれども、そのできたものが絶えざる慢性買収や、あるいはそのために莫大な金がかかり、汚職、疑獄が起ったならば――また起る可能性が十分あるわけです。結局、選挙というものに勝たなければならぬために、政党個人も無理な金を使うようになるということを私は申し上げておるのです。あなたは、小選挙区と中選挙区、大選挙区、お互いに利害得失はある、長所、欠点はあるが、あなたから見るならば、小選挙区の方が得があるのだという御見解であろうけれども、私は、選挙費用の軽減ができないという点、汚職や疑獄というような問題が非常に起きてくるとうような点、この点だけに要約して御答弁をお順いしておるのです。あなたに何も小選挙区制の長所を今ここでお尋ねしようとは思わない。いわゆる常時の慢性的な買収――繰り返して申しますが、常時の供応や買収が行われるというその事実をあなたは肯定されるのかどうか。従って、莫大な金が、常時――常時ということは、告示になりまして選挙運動に入る前ですから、いわゆる事前運動だ。絶えざる事前運動というものが行われる。もちろんこれは事前運動として刑罰に触れる行為でありますけれども、小選挙区になりますと、選挙、区が小さくなりまして、絶えず人と人とのお互いのつながりをたくさん持った者が勝つわけなんです。われわれ社会党は、すなわち政策をもっていつの選挙にも戦ってきた。この選挙は、お互いの政党政治の戦いは政策をもって戦わなければならない選挙なんです。この政策によってわれわれは票を得ておるのです。ところが、選挙区が小さくなりますと、政策ばかりは言っておられない。個人個人とのお互いの親密度合い、そうしたものをたくさん持った者がやはり選挙戦に勝つという結果になりますから、常時人と人とのつながりをそこに持っていかなければならない。これがその候補者となるべき者、すなわち政治家に莫大な財政上の負担をかける、政党にも莫大な金がかかる、結局汚職、疑獄の道に通じますから、あなたが二大政党を、育成するとか政局の安定をすると言われましても、根本的な政界の浄化という問題になりますと、せっかくのあなたのお考えというものはくずれ去るのだ、そういうことを私はお尋ねしておるのでありまして、この際あなたから小選挙区制の長所をお聞きしようとは思わない。欠点の最も大きなところと思いますので、その点を要約して御答弁願いたいと思います。
  71. 早川崇

    早川政府委員 森委員にお答えいたします。  森委員が欠点と主張されておる点は、裏返せばまた長所でもあるのであります。なぜなれば、宮城県の町村会長がその点がいかぬと言われた半面、私は名古屋へ参りましたが、愛知県の町村会長は、むしろ小選挙区になって個々の人のつながりができて、今までの選挙のように知らぬ人ではなくて、身近な人が話し合って、またいろいろ頼むにも頼みやすい、その人の人格識見も知れるとか、これが小選挙区の長所である、こういう御陳述をされておりました。先般モリソン元英国外相が来られましたときにも、同じように、小選挙区の長所は、身近に知り合って政策も話し合う、またいろいろなめんどうも見る、これが大選挙区と違う長所だと申されておりましたが、そういう意味においては、森委員が別の立場から欠点と言われる点が同時に長所になっておる、こういうことも言えるのであります。ただ、悪い面といたしましては、今申されましたように常時買収があるじゃないかということでありますが、しかし、二十万の人口で、たとえば金とか供応をしょっちゅうやっておりますと、その供応された人はなるほど感謝いたしますが、それをされない人は今度は逆に反対派に回るのです。鳥取県の選挙におきまして、朝日新聞がいみじくも記事に載せておられましたのは、保守派の候補者が支部結成という名で供応をして回った、これが非常な反感を青年層なり婦人層に買って、これが敗因の一つだということを喝破しておる。小選挙区で、モリソンが言われましたような意味のこまかいところまでわかるということは、いいことなんです。悪いことじゃないのです。従って、そういう意味においては、欠点と言われるところよりも、愛知県の町村会長が指摘されたような、身近なこまかいところまでめんどうを見る、しかも人柄もわかるという面において小選挙区がいい、こういう観点に立たざるを得ない、こう私は思うのでありまして、裏から見ればむしろ長所の方が多い、こういう立場に立っておるのであります。小選挙区全般の論議は、これはまた別問題で、今森委員が言われました問題一つを取り上げますと、そういう点になるのではなかろうかとわれわれは考えておるのでありまして、現に名古屋の公聴会ではそういうことでありました。
  72. 森三樹二

    ○森(三)委員 時間が参りましたから、私の質問を留保いたしますが、私は、今早川政務次官が言われましたモリソンの言葉を考えましたときに、これは、イギリスのような、政界がほんとうに浄化されたところの例をもってわが国に用いようとしても、それは当らないのです。私は、数年前に、フランスにおいて、現在の、ギ・モレ首相が社会党の書記長をやっておる時代に会いまして、フランスの選挙におけるところの買収、供応の問題を聞いたのですか、ギ・モレ当時の書記長は、フランス人は、自分の投票権を行使するのに、買収や供応なんかによらない、すなわち買収、供応の利益よりも自分の一票を正しく使うことの利益の方がよほど大きいのだ、そんなことにまどわされるフランス人はおらないということをはっきり言っておりました。ヨーロッパ各国の先進国の例を日本に当てはめた場合に、日本の今日の政治意識の発達からいって、私はそれはまだ当らぬと思う。  それから、あなたは名古屋の公聴会の問題も話されましたけれども一般の大多数の世論、大多数の人々の声というものは、やはりこの宮城県の公聴会におけるところの富田老人の言葉が全く適切である。早川政務次官の言われるような説を述べる人は全くまれでありまして、だれしもここにおる人々は、慢性買収、すなわち三百六十五日の運動になるということは認めておるのです。これがすなわち政界を腐敗さすところの大きな原因となることを私は強調する。  なお私は質問がございますけれども、次会に留保いたしまして、本日はこれをもって一応終了いたします。
  73. 小澤佐重喜

    小澤委員長 本日はこれにて散会いたします。    午後四時四十三分散会