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1956-04-04 第24回国会 衆議院 公職選挙法改正に関する調査特別委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年四月四日(水曜日)     午前十時三十九分間議  出席委員    委員長 小澤佐重喜君    理事 青木  正君 理事 大村 清一君    理事 淵上房太郎君 理事 松澤 雄藏君    理事 山村新治郎君 理事 井堀 繁雄君    理事 島上善五郎君       相川 勝六君    赤城 宗徳君       加藤 高藏君    河野 金昇君       椎名  隆君    田中 龍夫君       中馬 辰猪君    二階堂 進君       福井 順一君    藤枝 泉介君       古川 丈吉君    三田村武夫君       森   清君    山本 利壽君       佐竹 晴記君    竹谷源太郎君       滝井 義高君    中村 高一君       原   茂君    武藤運十郎君       森 三樹二君    山下 榮二君       山田 長司君    川上 貫一君  出席国務大臣         内閣総理大臣  鳩山 一郎君         国 務 大 臣 太田 正孝君  出席政府委員         法制局長官   林  修三君         自治政務次官  早川  崇君         自治庁次長   鈴木 俊一君         総理府事務官         (自治庁選挙部         長)      兼子 秀夫君  委員外出席者         法制局参事官         (長官総務室主         幹)      山内 一夫君         総理府事務官         (自治庁選挙部         選挙課長)   皆川 迪夫君     ————————————— 四月四日  委員内藤友明君辞任につき、その補欠として河  野金昇君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  公職選挙法の一部を改正する法律案内閣提出  第一三九号)  政治資金規正法の一部を改正する法律案中村  高一君外三名提出衆法第二一号)  公職選挙法の一部を改正する法律案中村高一  君外四名提出衆法第二二号)     —————————————
  2. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 これより会議を開きます。  前会に引き続き、内閣提出公職選挙法の一部を改正する法律案中村高一君外三名提出政治資金規正法の一部を改正する法律案中村高一君外四名提出公職選挙法の一部を改正する法律案、以上三案を一括議題といたします。質疑を継続いたします。竹谷源太郎君。
  3. 竹谷源太郎

    竹谷委員 昨日の質疑におきまして、私は、太田国務大臣に対しまして、小選挙制採用という、そういう事情変更によって、その他の各般の選挙執行運動罰則等に関する分をどの程度まで町改正をしても、この一時不再議原則に反しないかということをお尋ねしたのでありまするが、故意かどうか知りませんが、その回答がきわめて不十分であり、ほとんどなかったと言ってよろしいのでございます。それで、小選挙区制の採用という条件がありまするならば、ひとり衆議院選挙に関するばかりでなく、いろんな選挙法上の問題について、公職選挙法改正してもよろしいかどうか、あるいはこの小選挙区制の採用ということに直接重大なる因果関係を持つものだけは許されるが、その他は再審議は許されない、こういうふうにお考えであるか、この点をはっきりお答えを願いたいと思うのでございます。
  4. 太田正孝

    太田国務大臣 昨日からの一時不再議の問題でございますが、もちろんこのことは厳格に解さなければなりませんので、今回政府の出しましたのは、小選挙制度目的を達するためにする改正でございます。その範囲以外にわたったところの条文整理等はあったと思いますが、目的または趣旨は、小選挙区制の改正ということであります。
  5. 竹谷源太郎

    竹谷委員 今の御答弁では、今回提案政府改正法案といたしましては、小選挙制採用というものと直接重大なる因果関係がある規定の再改正だけにとどめる、その他のものには、一時不再議という原則を尊重して、及ばない、こういうふうに言われておるのであります。そこで、お尋ねしたいのでありまするが、二百一条の六と二百一条の七、これは参議院の方にも関係があるように思われるのでございまするが、これは衆議院だけの関係であるかどうか。この二百一条の七という規定は、その表題にもありますように、「(衆議院議員及び参議院議員の再選挙及び補欠選挙の場合の規制)」こうありまして、第二項に、「前条の規定は、参議院議員の再選挙又は補欠選挙について、準用する。」このようにあるのであります。これはどうも今おっしゃることと違うように思うのでありますが、いかがでしょうか。
  6. 兼子秀夫

    兼子政府委員 二百一条の六の規定は、御説の通り参議院議員選挙の際における政党政治活動規定でございますが、これは、前回改正におきまして、「政党その他の政治団体は、その政治活動のうち、政談演説会及び街頭政談演説の開催、ポスターの掲示及びビラの頒布並びに宣伝告知のための自動車の使用については、参議院議員通常選挙選挙運動の期間中及び選挙の当日に限り、これをすることができない。」これは二百一条の五と同じような趣旨におきまして改正をいたしたのでございます。今回の改正は、衆議院議員選挙の小選挙区制の改正に伴いまして、二百一条の六が、その衆議院議員選挙に伴う改正によって影響を受けないように改正をいたしたものでありまして、これは実質的にはいじっていない、かように判断をいたしております。
  7. 竹谷源太郎

    竹谷委員 条文改正しても、その内容実質的でなければ、どのように条文変更しても差しつかえないということと、一時不再議の問題と関連がありますが、これは次に論ずることといたします。  その次の二百一条の八でございます。これは「(都道府県知事及び市長選挙の場合の規制)」、これまた、旧法がこの間の参議院提案によって改正になり、今度またそれを改正するということになっておりまして、これまた、同様に、都道府県知事市長選挙にまで影響が及んできている。それからまた、二百一条の十一、これもまた、実質的でないから、文句を変えることは自由勝手だという議論につながるかもしれませんが、これまた参議院議員知事市長関係を持ってくるようになりまするし、また、二百五十二条の二、これは「(政党その他の政治団体政治活動規制違反)」すなわち罰則に関する規定改正にもこれが及んでいる。これまた旧法参議院提案によって改正をされ、それをまた今回改正せんとする。このように、今回の改正案は、旧法が新法によって改正せられており、これをまた今回の改正案によって改正しようとする。しかも、それは、先ほど太田国務大臣が言われたような小選挙制採用という、この衆議院関係のある事項以外にわたりまして関係が生じてくる。申すまでもなく参議院選挙区は変っておりません。市長都道府県知事選挙区も変っておらない。従来と、これらの選挙については、選挙区その他について何ら変更を見ていないのに、再度の改正をしよう、こういうことになりますると、どうも、選挙制度採用という、この著しい条件変更だと言われること以外に及んでいる。こうなりますと、この公職選挙法という膨大な法律の中の別表改正という条件変更があれば、その他の規定は全面的に何度改正しても差しつかえない、こういう結論にならざるを得ないように思いますが、この点いかがでございますか。
  8. 兼子秀夫

    兼子政府委員 お答えいたします。  二百一条の七の今回の改正は、前回改正によって、条文は従来通り衆議院議員の再選挙又は補欠選挙について、準用する。」という規定になっておりましたのを、今回の改正では、これは、実質的に動かさない意味におきまして、参議院議員規定を準用するという整理のいたし方をいたしたのでございます。  それから、以下二百三十五条の二と二百五十二条の二も、同様の趣旨によりまして、実質的に動かさないという意味をもちまして、条文整理を行なったのでございます。
  9. 竹谷源太郎

    竹谷委員 小選挙区の採用によって衆議院関係政治団体活動態様等に再改正の案が出ておる、これに伴って、これと歩調を合せる意味で、参議院知事市長等選挙に関しても、その実質は変らないが、これと関連して改正を試みたのだ、こういうのでございます。そこで、私は太田国務大臣林法制局長官にお尋ねしたいのでございますが、一体、一事再議の場合、実質的な意味が違わなければ、いかように条文改正しても、一事再議原則に反するということにはならないのであるかどうか。皆さんのおっしゃる目的趣旨客観的事態というものが違わなくとも、文章を変えるのであれば——実質的にさえ違わなければ、いかように文章を書き改めてもそれは差しつかえない、こういうふうにお考えになっておるかどうか、伺いたい。
  10. 林修三

    ○林(修)政府委員 今の点につきましては、あるいは前に自治庁長官からお答えがあったかもわかりませんが、私どもといたしましては、一事再議原則適用については、この一事再議原則というものが、国会会議における議事運営ルールとして採用せられております趣旨等から考えまして、同じ法律の同じ条文を二回改正する、あるいは数回改正するということは、必ずしも機械的、形式的にいけないというものではないと考えておるわけでございます。結局、前後の改正実質的に同じであるか違うか、こういうことから判断すべきものだと考えておるわけでございます。必ずしも、条文の体裁、形式あるいは同じ条項改正したかどうか、という形式的な判断のみでやるべきものではない、結局、それが実質的に同一であるかどうかは、その趣旨目的が違うかどうか、あるいは客観的な条件が違うかどうかということを総体的に判断してきめるべきものだ、かように考えておるわけでございます。
  11. 竹谷源太郎

    竹谷委員 どうも今の答弁は明確を欠くのでありますが、そうすると、実質内容が違わなければ、いかように書き改めても——ごく端的にいうと、今まで文語体であったものを全部口語体に書き改めたというなら、何度書き改めても差しつかえない、なお進んで、文章文語体口語体に改めるばかりでなくて、同じ口語体でも、その表現の仕方を変えても実質的に意味は違わない、こういうふうに考える場合は、文章態様を何べんも書き改めたり、あるいは条文を入れかえたり、そういうことは差しつかえない、それは一事再議原則に反しない、こういう御見解でございますか。
  12. 林修三

    ○林(修)政府委員 その場合場合によって、これはおのずからそのときによって判断すべきものと存じますが、法律案改正が何らの理由なしにそう何回も行われることは、あり得ないことだと思います。すべて法律案は何らかの理由があって改正せらるべきものだと思います。たとえば、お話の文語体口語体に変えるということが行われることは、これは実質的に——前にかりにある条文について一回改正があった、今度は法律全体を文語体から口語体に書き変えるということは、これはその理由があり、またそのことも許されることだと思うのであります。ただ、その前後の改正が、全く同じ条項について二回改正をしようとしておる、実質的な案件についての改正をしようとした、こういうことであれば、一事再議原則に抵触すると思いますけれども、単に形式的にある法律文語体から口語体に変える、こういうことは、前にたまたま同一条文について改正があったといたしましても、おそらく私は一事再議原則には当らない、かように考えるわけでございます。
  13. 竹谷源太郎

    竹谷委員 そういたしますと、文書を書き改めたり何かしても差しつかえないという過去の実例がございますか。
  14. 林修三

    ○林(修)政府委員 今の実例につきまして、口語体文語体を改めた場合、その法律同一国会において前に改正したという実例があったかどうか、実はここで直ちにお答えする材料を持っておりませんけれども、これは取り調べて、もしそういう実例があればお答えいたします。
  15. 竹谷源太郎

    竹谷委員 さような実例はあり得ないと思う。それは、条文を変えるのであれば、当然一事再議原則にぶつかるのであって、一事再議原則が許される同じ問題でも、客観的な事態等の激変による場合、あるいは再審議ということは可能な場合もあるかもしれませんが、何ら理由がなくて文章が書き改められたり条文が変ったりするような、そんな前例はあり得ないと思うのです。  なお、今、あなたは、法律改正するには何らかの理由目的があるはずだ、だから理由目的のない改正はあり得ないとおっしゃる。これは私もその通りだと思う。何らの理由目的のない法律改正というものはあり得ないのである。そうすると、理由目的さえあれば、同一国会に二度も三度も法律改正して差しつかえないということになるのでございますか。
  16. 林修三

    ○林(修)政府委員 これは、過去の実例を見ましても、ある法律条文同一国会において数回にわたって改正した例は、実は幾らでもあるわけであります。この場合、それが一事再議に当るかどうかということは、結局、理由目的、その趣旨同一であるかどうかということによって判断されるべきものと考えるわけでございます。理由趣旨あるいは条件が違ったという理由に基きまして、同一国会におきまして同一法律同一条項が数回にわたって改正された例は、幾らでも実はあるわけでございます。国会会期が旧憲法時代と比べまして相当長期にわたる現在といたしましては、こういうことは、一事再議原則適用ないもの、また当然許さるべきものと考えているものでございます。
  17. 竹谷源太郎

    竹谷委員 林さんの言われるのは、法律改正のためには理由目的がなければならないし、また理由目的があれば再改正もできる、そういう前例はたくさんあるということでありますが、一体理由目的のない法律改正はあり得ないのですね。そうすると、一ぺん改正したものをまた改正しようとしたときには、必ず理由がある。そういう理由目的があれば、すべてそれは一事再議原則に違反しないということに、あなたの理論の進め方からいうとなると思うのですが、そういうことになりますか。
  18. 林修三

    ○林(修)政府委員 結局、この一事再議原則は、国会を初めといたしまして、いろいろの会議体議事運営が、スムーズに、混乱しないように行われることを期するための議事運営原則であろうと思うのであります。ある議案につきまして、本日たとえば甲という議決をし、翌日になって何らの理由もないのにこれを乙に変更する、さらにまた翌日甲に返す、こういうことを許しておれば、その会議体議事運営は混乱しまして進まない。そういうことを防止する趣旨が、この一事再議原則の建前であろうと思います。いわゆる理由なしに、条件変更なしに、ある議決をまたもう一ぺん蒸し返して変更するというようなことが認められない、こういうことであろうと思うわけであります。ただいま申しましたのは、趣旨理由が違えば一事再議原則には当らないと申したわけであります。全く同じ理由で、同じ趣旨で、同じことをもう一ぺん議するということは、一事再議原則に当るのだ、かように考えておるわけであります。
  19. 竹谷源太郎

    竹谷委員 どうもそこがいいかげんでありますが、ある事項についてきょうは甲という条文を作った、翌日になって同じ問題について違った趣旨改正をやる、こういうふうに甲乙丙丁といろいろな改正が行われるという場合に、その甲乙丙それらが趣旨目的が全く同じで改正する理由はあり得ないと思うのです。理由目的が違うからそれを改正するのであって、同じ理由目的改正するはずはないのです。だから、いかなる場合も、法律改正をなさんとする場合は、趣旨目的が多少でも違わなければならぬと思うのです。そういう意味で、趣旨目的が違えば再改正可能である、そしてそれが一事再議原則に反しないというようなことになりますると、どんな法律改正も何べんやってもよろしいという結論になると思うのです。どうですか。
  20. 林修三

    ○林(修)政府委員 これは法律案法律として制定せられるようになりましては、その趣旨目的が違っておのおの改正理由があり、改正の必要があってなさるべきものであれば、これは同一国会において何回かそういう改正が行われてもしかるべきことだと思うわけでございます。何らの理由なしに、ある議案について本日可決した、しかし明日その議決をくつがえして否決をする、こういうことは当然議事運営の混乱を招くことでございますから、こういうことを防止するのが一事再議原則の第一の趣旨だと私は思うわけでございます。これはそういう趣旨から出てきた原則だと思うわけでございまして、同一案件につきまして、何らの事情理由変更なしに、もう一ぺんその議事を蒸し返して議決をし直す、こういうことを防止するということが、一事再議原則の第一の最も主要な趣旨であろうと思います。従いまして、法律案の場合、ある法律案について議決があり、さらに事情変更あるいは理由趣旨変更によりそれを追いかけて変更するということは、今申しましたように、事情変更なり理由趣旨変更があればこれは許さるべきものだ、そういうことがあるかないかという御判断は、おのずから国会においてあることであります。そういう朝令暮改的改正がいいかどうか、これは国会において判断があるべきだと思うのでありますが、理由趣旨あるいは事情が違えば法律改正は許される、かように考えておるわけでございます。
  21. 竹谷源太郎

    竹谷委員 理由趣旨が違えば、何度同じ問題について改正をしても差しつかえない。そうすると、これは一打不再議原則というものはないのだということと同じに考えざるを得ないのです。理由が違わないで改正するはずはないのです。必ず何らかの理由があって改正する。今、太田国務大臣は、小選挙区制という衆議院に関する選挙区というきわめて狭義のルールとなるべき選挙区割り変更するという重大問題、これに伴って衆議院関係改正をするというのでありますが、今、私が、参議院なり知事なり市長選挙にもこれは関係しているが、どういうわけだと理由を聞くと、それに関連して、これも歩調を合せなければならぬという理由がちゃんとある、理由があるからこれを出してきているのは当然なのだというふうになると、小選挙区制という別表が変れば、相当広範に選挙法全体にわたって関連のないものはないのです。だから、これは理由さえあれば全面的に改正してもよろしいかということを聞いている。そうなれば、小選挙区制の採用ということによって、三百条にもわたる公職選挙法に関する、すなわち衆議院参議院知事市町村長都道府県議会議員市町村議会議員あるいは県並びに市町村教育委員、これらの公職選挙事務執行なり、選挙運動なり、あるいは政治資金規正の問題なり、罰則なり、連座制の問題なり、そういう問題全部について、合理的にいえばそれぞれこれと歩調を合せるためには改正を要する。そうすると、全文をどのように何べん改正しても、前に参議院提案によって改正されたものをまた改正する、よく考えてみたら、また別の理由が出てきて、どうしても改正しなければならぬと、同じ会期中に何度も全面的に改正してもよろしいということになれば、一事再議原則を尊重するという政府の方針はすっ飛んでしまって、一事再議原則というものはあり得ないということになるのじゃないか、こう思うのであります。理由さえ違えば差しつかえないというのならば、内閣不信任決議案というものも、前には外交問題で不信任をした、今度は農政問題、今度は商工問題、今度は国防問題だというふうに、理由さえ違えば毎日内閣不信任決議案を出しても差しつかえないという結論にならざるを得ないと思う。みな理由が違う。目的が違う。それからまた、先般、社会党は、鳩山さんの健康が非常にお悪くてお気の権にたえないので、首相引退勧告決議案というものを出した。非常に親切な決議案を出しましたところ、自民党の方では、それは結局からだが悪ければやめるということになる。そうすると不信任と同じ実質内容だ、そうするとこれはあとで不信任決議案というものを出せなくなるといって——政治目的ではないのです。健康上理由なのです。健康上のためにやめたらよかろうという親切な目的なのです。そういう目的理由も全然違う引退勧告決議案それ自体が、不信任決議案が将来出る場合にはそれと衝突をする、一事再議原則に反するという理由をもって、われわれの提案に反対をいたしたのでございますが、あなたの言うようなことならば、趣旨目的さえ違えば、同じ会川中において何度改正しても、あるいは何度同一問題について論推しても差しつかえないという結論にならざるを得ないと思うのです。政府はそういう見解をとっているかどうか、明確に御答弁を願いたい。それから、太田長官にも、先ほどの理由によって、知事市町村長あるいは教育委員という各選挙につきまして、それぞれ多少でもこれと関連があれば、全部何度変えてもよろしい、こういうふうにお考えになっているかどうかをお尋ねしたい。
  22. 林修三

    ○林(修)政府委員 この一事再議原則適用は、あくまで国会における会議体議事運営ルールでございまして、国会の御判断によってきめるべきことだと私どもは思っておるわけでございます。しかしながら、私どもといたしまして、法律案提案いたしますに際しては、これが過去の実例あるいは過去における取扱い等から考えて、こういうものが一事再議原則に当るかどうかということは、十分研究した上で出さなければならない責任を持っているわけであります。この意味におきまして、今までの考え方等もいろいろ研究いたしまして、この範囲であれば一項不再議原則に当らないものと考えて、先ほど来御説明もいたし、そういう範囲においてこの法律案を作成し、御提案を申し上げておるわけであります。  不信任決議取扱いにつきましては、これは全く国会内部でおきめになることでございまして、政府としての意見を申し上げることは差し控えることといたします。
  23. 太田正孝

    太田国務大臣 選挙法改正につきまして御質問の問題につきましては、先ほど選挙部長の申し上げた通りであります。実は、経過を申し上げますと、衆議院選挙法というものを別に作ってやったらばという考え方と、公職選挙法の一部改正するという考え方と、二つ私ども初め考えたのでございますが、この際は、衆議院選挙法というものを別に作るよりも、この中でやろう、そういうことになりましたので、他の関係の部分についても整理する関係があって、かようになった。先ほど選挙部長の申し上げた通りでございます。
  24. 竹谷源太郎

    竹谷委員 林法制局長官は、この一事再議の問題は国会運営の問題であるから、われわれが干渉すべき筋合いでないと言われる。むろん干渉したりとやかく言うべき筋合いではございませんが、しかし、政府は予算なり、条約なり、あるいは法律案なり、その他の議案提出する権限を持っており、またこれに対し説明をしたり、またそれができましたら、執行重大責任を持っておるのでございます。そうした立場にあるところの政府といたしましては、それがむろん国会運営に関する原則の問題であろうとは言いながら、確たる判断による見解を持ちまして、そのもとに、政府提案せんとする法案一事再議原則に反しないという十分な確信を持って、法律案提案すべきものである。そうしますと、法制局長官といたしましては、この法案一事再議原則に反するかどうかわからぬが、それは一つ国会できめてもらいたい、こういう考えでお出しになったのか、それとも、これは一事再議に関する見解政府としてはきめまして、これは一事再議原則には反しない、そのようなお考えでむろん出したのだろうと思うし、その出すにつきましては、十分一事再議原則についても研究をして、その限界いかんということはわかっていなければならぬはずであります。今の御答弁を聞くと、右に行き左に行き、いろいろとどうもどこに政府見解があるのか明らかでない。一事再議原則に関して、あなたとしての見解をもう少し具体的に一つ述べていただきたい。
  25. 林修三

    ○林(修)政府委員 ただいま御質問の点は、先ほどもお答えしたわけでございます。政府といたしまして、この法案提案するに際しましては、当然一事再議原則に当るかどうかということは、政府としての考え方に基いて研究をいたしております。また、従来の国会における慣例、先例あるいは取扱い等も十分研究いたしまして、この範囲であれば一事再議原則に当らないものと、かように考えて、実は提案をいたしたわけでございます。ただ、最終的には、一事再議原則に当るかどうかということは、国会がおきめになることはおっしゃる通りでございます。ただ、政府といたしまして、提案するに際しましては、もちろんこの法案一事再議原則に当らないものと確信をいたしまして、提案しておるわけでございます。
  26. 滝井義高

    ○滝井委員 関連して法制局長官にちょっとお尋ねしますが、あなたの今のいろいろの御説明で、趣旨目的事情変更、こういうことがものさしとして出てきている。これは、いろいろ言葉の使い方等から勘案してみて、私はそう思うのです。昨日もそういう御答弁があったのですが、さらにそれが、今度は、今の御答弁を聞いていると、形式的に字句が同じであっても、内容が変っておればいいのだ、こういうことです。ここにあなたが答弁した速記録を持ってきております。そうしますと、こういう場合はどうでしょう。厚生保険特別会計というものが現在あるのですが、厚生保険特別会計法の三条に、一般会計からの受入金という項目がなかったので、一般会計からの受入金ということをつけ加えたのです。そうしまして、これは国会の大蔵委員会に厚生保険特別会計法の一部改正としてかかって、法律がすでに国会通りました。ところが、今度は、同じその内容のものが、健康保険法の一部改正という法律の中に並列をして、その中に、今度は同時に厚生保険の会計法の一部を改正する分として、一般会計の受入金という項目をつけ加えて出したのです。一方はすでに国会を一週間くらい前に通過しちゃった。そうしますと、そういう同じものがこれは現在まだここに残って、健康保険の関係審議されておる。それはなるほど字句は同じです。ところが政府の受入金という方は、その予算を見ると、内容は三十億円なのです。ところが、一方まだ残っているのは、社会党提案であって、これは二割の国庫負担を一般会計から出しまして、そうして厚生保険特別会計に入れる、こういうものであります。なるほど字句は同じであるが、その一般会計から特別会計に入れる金額が違う。しかも目的が違うのです。一方は補助金として法律に書いてある。一方は定額の国庫負担なのです。これは一体明らかに目的も違うし、しかも内容も違うのです。ところが、法律の文面は、同じく一般会計からの受入金ということで、文字は同じなのです。これは一事再議になるかならないか。
  27. 林修三

    ○林(修)政府委員 今最初におっしゃいました厚生保険特別会計法の一部改正法案は、確かに政府提案したものであります。今おっしゃった内容のものだと存じております。あとで御引例になりましたのは、あるいは社会党からお出しになりました健康保険法の一部改正案ではないかと思います。この内容を実はまだ詳しく検討しておりませんから、確たるお答えはできかねるわけでございますが、今おっしゃいましたことを基礎といたしますと、実は、厚生保険特別会計法の一部改正によりまして、特別会計の一般会計からの受入金という歳入のワクはできたはずでございます。その歳入のワクが、一般会計からのいわゆる三十億という国庫補助であるか、あるいは二割という補助であるかを問わず、これは特別会計としては受け入れのワクができておるわけでございます。その点をもう一ぺん改正をなさいまして、別な意味改正なさるならば、これは別でございますが、今おっしゃいましたことを基礎にいたしますと、一般会計からの受入金というものがもう入っておれば、同じものを改正なさる必要はないのじゃないか、かように考えるのでございます。その点、ちょっと、まだ法文を見ませんと確たる御返事ができないのでございます。
  28. 滝井義高

    ○滝井委員 私の解釈としては、ワクができたからそうだと思います。ところがその入れる金の目的が違うのです。一方は補助金です。一方は定率の国庫負担で、違うのです。同じ会計に入っていくが、目的が違ってくるわけです。趣旨目的が違えば、一事再議にならぬ、こういう解釈なんでしょう。趣旨目的が違うのです。片方は一般の補助金であり、いつこれが減らされるか、零になるかわからぬようなものです。一方は二割という定率の国庫負担です。明らかにこれは雲泥の差があるものなんです。これは一体どうなんですか。趣旨目的が違うのです。
  29. 林修三

    ○林(修)政府委員 今おっしゃいましたところの問題は、むしろ、厚生保険特別会計法の問題ではなくて、おそらく健康保険法の問題ではないかと私ども思うのですが、健康保険法に基いて一定額の国庫補助をやる、それをさらに成立した法律をあるいは国庫負担に切りかえる、そういう問題ではないかと思うわけでございます。これが一事再議に当るかどうかという問題ではないかと思います。厚生保険特別会計法の方は、特別会計というものは一つの入れものでございますから、一般会計からの受入金というワクができれば、これは、国庫補助であっても、国庫負担金であっても、おのずからこれは、そういう別の法律が変れば、当然に入ってくるべきもので、改正する必要があれば私は改正可能だと思いますが、今おっしゃったところでは、さかのぼって改正する必要はないのじゃないかと考えられます。ちょっと法案を読んでおりませんので、あるいは確たるお答えにならないかもしれませんが、そう感ずるわけでございます。
  30. 滝井義高

    ○滝井委員 形式論的には私も改正する必要はないと思います。ところが、今あなた方の御説明を聞いてみますと、趣旨目的が違えばいいのだ、こういうことになれば、明らかに趣旨目的が違う。どうして私はそう言うか。今われわれが出しておる法案は、厚生保険特別会計法という政府提案のものが通ったので、社会党の案を撤回しなければならぬという事態になった。その理由はなぜかというと、一事再議にかかるということを委員部から言ってきた。これは法制局の見解でそうらしい。そこで、そうだとすれば、今ここで問題になっておる趣旨目的が違う、そういうことから今御質問しておる。さらに、昨年は、同じ厚生保険特別会計の中においてこういうことがあった。本年の三十億という補助金というものを、一般会計からの受入金として、厚生保険特別会計法の三条を変えた。ところが、昨年の赤字補てんのために、十億円ずつを毎年入れることに変えたときには、一般会計の受入金とはしないで、附則でやってしまった。そういうように、政府は、あるときには受入金といったり、あるときにはそういうことを附則でやってみたりという法律のやり方をやるのです。だから、これは、明らかにあなた方自身にも一事再議の一貫性がないという感じがして仕方がない。  そこで、二十二国会における補助金等の整理等に関する特別委員会の会議録を見ますと、あなたはこういうことを言っている。読んでみますと「一事不等議の原則は、実は国会議事運営の上の原則でございまして、私どもがかれこれ申し上げる筋ではあるいはないかもわかりません。しかし、お尋ねでございますから、一応私どもとしてはどう考えておるかということをお答えしたいと存じます。そもそも、一事再議原則がございますのは、これはやはりある議案について委員会なり本会議の意思が決定した、これを同じことについてすぐまたひっくり返すというようなことは国会運営が混乱するというようなことから、この一事再議原則が立てられておるものと存ずるわけであります。そこで、問題といたしましては、結局同じ議案かどうかという内容の審査になってくると思います。これは、御承知の通り国会の期間が長ければ、その間に同じような内容について対象の事態が変ってくれば、当然同じような内容議案が出ることもあり得るかと思います。」これがいわゆる客観情勢の変化ですね。「そういう場合には、かりに形式的には全く同じ内容でも、これは一事再議とは言えないと思います。」こういうようにあなたは大体規定をしている。  ところが、きのう突如として太田長官が、趣旨目的が違えば——、ということは失言であったかどうか知らぬが、おっしゃった。そこで、あなた方のうしろにおられる説明員の方が、同時にそれも原則に加えてしまった。そうしてここに二つの原則ができた。それならば、補助金のときの例を引いて言うと、二十二国会で四月、五月の暫定予算が出た。それに見合う補助金の整理法案を二カ月後に出してきた。その後政府は十カ月分を出してきた。ところが、当時、自由党が、これは全く国会運営上の問題として、十カ月は認めぬと言い出した。そこでこれをどういう工合にするかということが問題になった。そうして、やむを得ず、自由党の力に屈服して、当時の民主党が、一カ月分、いわゆる六月の暫定予算にならざるを得ない関係になって、一カ月分出してきた。これは目的内容とか事情の変化とかいうものではない。そういうようなものまで事情の変化といえば議論の余地はないのですが、全くこれは力の無理押しでやられた。そうして一カ月分出してきた。政府は同時にそのときは十カ月の法律を出しておった。二つ出てきた。そうして一戸不再議原則がそこに問題になって出てきた。そうしてさらに、政府は、やむを得ず、泣きの涙で、十カ月のやつを、今度また一カ月だけの分を通して、あとの九カ月の分をあとに出した。それでこれは三木になった。これは、あなたの言うような事情の変化とかなんとかというのではなく、全く力でやられた。だから、あなたが言われるように、内閣不信任案等においても、同じように、そういうことは国会がおきめになるので、私たちの関知するところではございませんと言うならば、力によって変り得るという原則がそのほかにあるということを、一つおつけ加えになる勇気があるはずです。今の内閣不信任案だって同じでしょう。それが不信任案の形で出たか、法律の形で出たかという違いだけのもので、不信任案の場合は、内容趣旨全部違う。それを、内容がくるっと違っておるにもかかわらず、しかも理由が違っておるにもかかわらず、あなたはそれについては御答弁にならない。これはおかしいと思う。だからその点はどういうことなんですか。
  31. 林修三

    ○林(修)政府委員 昨年の補助金等の臨時特例等に関する法律案の御審議のときの過程において私が御答弁いたしましたことは、まさに今おっしゃった通りであると思います。また、本日あるいは昨日太田長官から申し上げたことと、本日私から申し上げたこととは、全然違っておらないと思います。同一趣旨で申し上げたはずでございます。それで、この補助金等の臨時特例等に関する法律の昨年の審議過程でありますが、その力関係云々は私もよく存じませんが、政府が最初に四月、五月分の暫定予算に見合いまして二月分延長する法案を出しまして、これが議決されました。その次に、政府は、一応本予算を出して、本予算に見合って、この補助金等の臨時特例等の法律をさらに五月から本年の三月まで延ばす法案を出したところが、国会における予算案御審議の過程において、本年度予算が五月末までに成立せず、六月も暫定予算でやることになりまして、政府は六月分暫定予算を出した。六月分の暫定予算が出ているから、この補助金等の臨時特例等に関する法律も、それに見合って、一月分だけ延ばすべきだという御趣旨で、衆議院の御発議で一月分延ばす法案が出て、これが議決されました。その過程におきまして、さきに政府で出した法案とあとから衆議院で出した議案とが一事再議に当るのではないかということが問題になった。その際におきましては、衆議院からお出しになりました一月だけ延ばす法案は、六月分暫定予算に見合って、そういう趣旨のもとに出されたものである。政府案は、さらにそのあとを受けて、本予算成立ということの事態に即応して、これをことしの三月まで延ばすという内容でありまして、両者おのずから趣旨目的内容が違うのであります。そういうことを申し上げたはずであります。これは本日申し上げていることと全然趣旨が違うわけではないと考えるわけであります。
  32. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、あの場合のことを例にとって申しますと、政府は現実に十カ月の案を出している。ところが、六月の暫定予算を組まなければならぬという情勢が出てきた。そのときに、政府が出している十カ月の案を修正して暫定的な法律案にする形が一つある、それから、あの場合のように、全然別個の形で、政府案とは違った議員立法で一カ月の法律案を出す形がある。これは二つとも一事再議原則に違反しませんか。
  33. 林修三

    ○林(修)政府委員 これはその当時いろいろ御議論があったことと思います。私は必ずしも形式のみで判断すべきものではないと思うわけであります。しかしながら、あの当時は、政府案を一ぺん修正してまた政府が出すということはあまり適当ではなかろうということで、政府とは別に衆議院で議員提案でお出しになりました。さらに、この政府案は政府みずから修正したわけであります。そういう過程をたどった。これはその場合場合によっておのずから判断せらるべきことと思いますから、必ずしも形式のみによって一事再議に当るかどうかということにはならない。ただ、その場合に、議案取扱いはどちらが適当かということは、おのずからそのときに判断するものと考えております。
  34. 滝井義高

    ○滝井委員 私がお尋ねしているのは、あのときは議員立法ですから、政府案を六月だけの一カ月に修正することは一事再議になるかならぬかということです。
  35. 林修三

    ○林(修)政府委員 これは、必ずしも形式によらず実態によって判断すべきだということは、先ほど来申し上げているところであります。ただ、あの場合において政府が出しました法案は、御承知のように、五月三十一日から本年の二月三十一日までさらに十カ月延ばす法案でございました。これを衆議院におかれて一カ月分に修正されて、それをまた今度は政府が六月から本年三月まで延ばすという法案をもう一ぺん出すということは、法律上不適当でなかろうか、一ぺん政府が出したものをもう一ぺん修正して出し直すということは不適当ではないかということで、あのときは六月一ぱいだけは議員提案でお出しになりました。同時に、政府案もそのままではいけませんから、政府はみずから修正を提案いたしまして、修正をしていただいたわけであります。そういう手続をとったわけであります。この方があの場合の手続としては適当であったと考えて行われたものと思います。
  36. 滝井義高

    ○滝井委員 私は手続の問題が適当か不適当かを言っておるのではないのです。問題は一事再議原則にその場合は違反するかどうかということをお尋ねしておる。なぜならば、それは明らかに内容趣旨が違ってきておる。あなた方の解釈でいえば違ってきておることになる。ただ日にちを変えただけでございますけれども、議員立法ならばよろしい、政府ならどうも手続上いかぬからということで、お茶を濁してはいけない。政府がやった場合はどうだ、こう言っておるのです。
  37. 林修三

    ○林(修)政府委員 先ほど申し上げました通りで、私は必ずしも形式のみによって一事再議に当るかどうかということにはならないと思うのであります。従いまして、かりに、形式上政府案が修正されて、さらにもう一ぺん、新しい必要によって、それをさらに延ばすという政府案を出しても、必ずしも私は一事再議に当らないものと思いますけれども、あの場合には、政府案が修正されて、それをもう一ぺん修正する政府案を出すということは、果していいかどうかという議論がありまして、議員立法によって行われたのであります。私は、必ずしも形式によっては判断されない、こう御了解願いたいと思います。
  38. 滝井義高

    ○滝井委員 実は、当時提案者である床次君は、今の政府提案した六月末までというような修正をやることは、これはどうも一事再議だというような誤解を生ずるものではないかということを私どもも懸念をしておる、こう言っておるのです。与党の提案者自身が懸念をしておるのです。そうすると、私は懸念自身もおかしいと思う。また、あなたの今の答弁も、どうも確信がないのです。政府案にしたらどうだということになる。これは、議員がやろうと、政府がやろうと、変えることについては同じなのです。ちっとも変っていない。そうしますと、政府案を十カ月を一カ月に修正をして、それを追って政府があとの九カ月分を出すということは、あなたはどうも手続がおかしいと言うし、床次君はそれでは一事再議のおそれがあるということをみずから言われておる。そうしますと、目的とか内容という先に立てた原則というものがどうもくずれてくるのです。これはそう言っているのです。速記録にも書いておる。あなたの答弁も、政府案を修正した場合においては、どうも手続上工合が悪いと言って、断言できないのですね。私は昨日もお願いしておる。だから、法制局としては、いたずらに時の権力に屈服することなく、やはり法律家としての立場で——こんな議論は毎国会こういう問題が起るたびに議論されておるのですから、あなたとしては、当然、法律のお守役と申しますか、正当な解釈者としての権威ある立場で、一事再議の問題に対する限界というものを出す時期がきておると思うのです。だから、どういうこととどういうことという、少くとも基準は出していただかなければならないと思う。昨日私がお願いしておるのだから、きょうその基準を明白にしてもらいたいと思う。昨日から客観情勢の変化と趣旨目的が違えばという二つの場合が出てきた。ところが、どうもその二つのものさしだけでは、われわれが納得のいかないような、二十二国会の補助金の例のような場合があるわけです。そして、今までの一事再議の問題が起ったときの過去六回の事例と、今回の公職選挙法のこの改正の場合とは、内容が非常に大きな隔たりがあるのです。今までは、期日の変化とか、あるいは簡単な人数の変化とか、あるいは簡単なお金の変化なのです。ところが、今度は、十一の項目にわたっている非常に内容の広範なものなのです。こういう点で今までのものとは違っておるので、この際やはりそこに限界、基準を設ける必要があるということを昨日お願いしておるのだから、あなたの方は御研究をしてこられたはずです。だから、あなたも率直に基準を言って——それは、国会のことであるから、国会が勝手にやれということになれば、一事再議の問題は、原則だけでなく、力で、数できめられることになってしまう。そういうことでなくして、やはりそこに明白な基準を出してもらいたいと思います。あなたの考えを率直にきょうは述べてもらいたい。
  39. 林修三

    ○林(修)政府委員 政府といたしましての考え方は、実は先ほどから何回も申し上げたわけでございますけれども一事再議というのは、もちろん、御承知のように、旧憲法時代と違いまして、現在は、憲法にも、国会法にも、議院の規則にも、何ら規定はございませんけれども、これは、やはり、会議体議事運営を円滑に混乱しないように行うための一つの基本原則として、条理上認められているものであろうと考えるわけであります。その条理上認められる範囲はどの範囲になるかということになるわけでありますが、これにつきましてはもちろんいろいろ御見解があるわけだと思います。私どもといたしましては、先ほどから申し上げました通りに、一事ということは必ずしも形式的、機械的に同じ条項、同じ文句ということだけで判断すべきものでない。結局、ある議案と次に出た議案一事であるかどうかは、実質的にその新しい提案議案が出るに至った客観的事情の変化あるいは目的趣旨の変化、違い、こういう一つ、あるいは二つ、三つの要素を総合的に判断してきめるべきものだ、かように考えているわけでございます。この例で引きましたものは、すべて形式的には同じ法律で同じ条項を何回か改正している例でございますが、そういうようなものを国会において御議決になったことは、すべてそういう御判断のもとにされたもの、かように考えているわけであります。今まで、実は、新憲法下の国会になりまして、この一事再議原則法律案——他の議案は存じませんが、法律案につきまして問題になりました例は、私寡聞で全部は記憶いたしておりませんが、今までは二回だと思います。今度で三回目だと思っております。第七回国会における政府職員の給与の問題の場合、それから昨年の二十二国会の補助金等の臨時特例の場合、それから今度、かように考えております。この場合、すべてを通じまして、私は先ほど申しましたような考え方で解決されているものと考えるわけであります。
  40. 川上貫一

    ○川上委員 関連。ごく簡単でありますから伺いますが、この問題は、今問題になっておりますし、ことに法制局長官法律問題でないという発言があったので、今度の選挙法改正関連があると思うから、明確にしておきたいと思う。  御答弁内容はこういうことだと思う。第一に、理由があれば、同一の事例も再審議できる、こうはっきり言われた。それから、そのほかの場合、目的内容が違っている場合には一事再議原則に反しない、こういうことなんです。そうすると、三つあるのです。目的、これが一つ、内容、これが一つ、いろいろな理由、これが一つ、客観的な情勢というのは、これは理屈になりません。この三つです。そこで、私が聞きたいのは、すなわち目的内容理由、これが違えば一事再議原則には反しないというのであるか、これが一つ。第二は、目的が同じであっても、内容が違えば差しつかえないというのであるか、これが第二点。第三点は、目的内容は同じであっても、理由が違えば差しつかえないのか、これが第三点。これを私の聞いた通りに正確に答えていただきたい。
  41. 林修三

    ○林(修)政府委員 先ほど私が申し上げましたのは、目的趣旨あるいは客観的事情の変化、こういうことを申し上げたはずでございます。こういうことが違えば、ある議案とあとで出てくる議案とが、かりに形式的に同じ法律案同一条項に触れておるものでも、前の法案とあとの法案とは一事再議原則に当らないもの、かように考えますということを申し上げたはずでございます。つまり、ある法律案と次の法律案が、その内容が違えば、もちろん問題にならないはずでございますが、形式的に同一法律同一条項について改正しようとしている、こういう場合において、形式的には同じものに触れているわけでございますから、そこで形式的に一事再議原則に当るのではないかという疑問が出るわけであります。その場合においても、それを改正せんとする目的が違う——目的趣旨というのは、あるいは同じことかもしれませんが、目的趣旨が違うということ、あるいはまた、その背景になっておる客観的事情の変化、あるいは物価が変ったとか、あるいは国際的の情勢が変ったとか、あるいは国内的の情勢が変って、別な立法をしなければならぬという理由が起った、こういうことがあれば、これは一事再議原則に当らない、こういう趣旨で申し上げたわけでございます。
  42. 川上貫一

    ○川上委員 その答弁がさっぱりわからぬのであります。そういう言い方をしてはわからない。私の質問には答えられない。私が聞いておるのは、目的が違えば差しつかえないのか、これが一点。目的が同じであっても内容が違えば差しつかえないというのか、これが第二点。目的内容は同じであっても、理由が違えば差しつかえないのか、これが三点。これを正確に言ってもらいたい。
  43. 林修三

    ○林(修)政府委員 私の今までお答えいたしましたことによってお答えをしたいと思いますが、私は、目的趣旨あるいは客観的事情が違えば、それらを総合的に判断して、一事再議に当るかどうかということを判断すべきもの、かようにお答えいたしております。従いまして、その場合において、目的趣旨あるいは客観的事情の変化と、両方の要素がなければいけないということは申しておりません。片一方だけの要素でも、その場合において一事再議にならない場合があると私は思います。両方の要素が加わっておる場合もあると思います。つまり目的あるいは趣旨が違うということ、あるいは客観的事情が違うということ、こういうことがあれば一事再議原則に当らない、かように考えておるわけでございます。どちらかの事情があれば、その場合において判断せられて、これは一事再議ではないということが判断せられる余地がある、かように考えておるわけでございます。内容が変るということでございますが、私そう申したつもりはございません。内容という意味がよくわかりませんけれども法案内容が違っておれば、もちろん私は初めから一事再議に当らないもの、かように考えております。
  44. 川上貫一

    ○川上委員 法制局長官の方から、あとで長官にも聞きますが、これは法律上のことを言うておられる。法律上の立場で法律法律と言うておられる。ところが、これは法律上の問題じゃない。議事運営上の問題なんです。ところが議事運営上の問題について法制局長官見解を述べておる。前会においてもこの問題について見解を述べておる。そうすると、法制局長官の今言うておられることは、ただ法律上の問題だけじゃない。不信任の問題にもその他の問題にも令部関連してくる。そこで、私が聞きたいのは、私はさっぱりわからぬが、目的が同じであっても、内容が違えばよろしいのか、それが一点。目的が同じであり内容が同じであっても、客観的条件理由が違えば差しつかえないというのか、こう聞いておるのです。そこがはっきりしない。これは今後重大ですから聞きたい。
  45. 林修三

    ○林(修)政府委員 先ほどから私御答弁いたしておりますことは、実は最初にもお断わりしたと思いますが、一事再議原則は、国会における議事運営原則でございまして、私の方から申し上げることはあるいは僭越ではないかということは、最初にもお断わりしたわけでございます。しかし、これは、政府法案提案するに当りまして、政府法案一事再議に当るかどうかということは、政府として当然研究して、それに当らないものという確信を得て出すべきもの、かように考えます。その過程においては、これを研究いたしまして、政府の出しておりますこの法案一事再議原則に当らないもの、かように確信をして出したわけでございます。その根拠となる見解を実は述べたわけであります。議事運営原則法律の解釈でないことはおっしゃる通りでございまして、これは、国会法にも憲法にも、何も規定はないわけでございまして、全く国会における議事運営原則である、かように考えるわけでございます。
  46. 川上貫一

    ○川上委員 そうごまかされては困る。太田長官法制局長官の言われたことに何も御異議ございませんか。
  47. 太田正孝

    太田国務大臣 今法制局長官が言われました通り、本法案を出すにつきまして、議院運営委員会にかかりまして、私と法制局長官と臨席いたしまして、御質問に対しお答え申し上げましたその趣意は、この席において申し上げたことと寸分違わないのでございます。私は、小選挙制度という今までの制度と違った制度を作るにつきまして法案を出すのでございまするから、先に出たところの参議院選挙を主としたものとは違っておる、かように申し上げた次第でございます。
  48. 川上貫一

    ○川上委員 もう一つお伺いしておきますが、この一事再議の問題というのは、法律問題ではない、議事運営上の問題ということは、これは明らかである。そうすると、たとえば、目的が同じであっても——たとえば内閣不信任は、目的は同じですが、内容が違えば一事再議にはならない、こう解釈してよろしいか。これは法制局長官に聞いておるのではない。あなたはこれには関係ない。これは太田国務大臣に聞きたい。
  49. 早川崇

    ○早川政府委員 この問題は、法律内容の問題でもございません。むろん憲法の内容でもございませんので、われわれは、国会内部議事運営の解釈は、全部議運なりあるいは本会議で決せられるところに従うのでありまして、先般来大臣が言われましたように、われわれの参考意見としては、趣旨目的並びに客観情勢が変れば一事再議には当らない、という程度の意見を持っておるという以外に申し述べられないのであります。
  50. 森三樹二

    ○森(三)委員 関連して。いろいろ政府側から答弁がありましたが、私は具体的な問題をつかまえて皆さんに一つ話したいと思うんですが、与党の諸君も、やはり重大な問題だから、一応傾聴していただきたいと思う。それは、あなた方は議事運営とか言いますけれども、議院運営委員会でも、この広範な内容を一々検討して、果してこれが一事再議に該当するかどうかというようなことを検討することはできないのですよ。やはり、われわれが、当委員会において、当委員会の権威と、それから国会の権威を維持するために、この法案内容を個別的にわれわれは研究しなければならない。私は一つの具体的な法案をとらえますが、たとえば立会演説会の例を引きますと、前国会より今国会審議がわたりまして、三月十五日に参議院を通過いたしました法案は、百五十八条の二において、すなわち、無投票当選の場合には、立会演説会を開催しなくてもよろしいという手続上の規定があり、しかもその第二としては、「天災その他避けることのできない事故その他特別の事情に因り立会演説会の開催が不能となつた場合においては、これに代るべき立会演説会は行わない。」というように、立会演説会をやるということを前提として、どうしてもそれができないような場合を、ここに一つの法案として作ってあるわけです。ですから、先般三月十五日に参議院を通過したところのこの公職選挙法の一部を改正する法律案においては、明らかに立会演説会というものを前提として通過しておるわけです。しかるに、また、この政府提案の今審議せんとするところの法律案の中には、立会演説会を一挙に廃止するということが提案されておる。ここに全く国会の意思というものが分裂し混乱を起しておる。一方ではちゃんと立会演説会をやるということを前提とした法律案を通しておいて、今またここに立会演説会を廃止するような法律案は意志の分裂であって、これはとうてい承認することはできない。これに対して法制局長官の御答弁を伺いたいと思います。
  51. 林修三

    ○林(修)政府委員 これは、太田自治庁長官からもお答えがあったようでございますが、結局、さきの公職選挙法の一部改正法律は、参議院議員選挙運動についてのことを主体といたしております。また、それとの関連において、衆議院議員選挙運動にも触れた点はございますけれども、これは、あくまで現行の選挙区制を前提としての、選挙運動の合理化ということを主体としてお考えがあったものと考えるわけであります。また、このたびの法案は、何回も御説明がございましたが、小選挙区の採用を主体といたしまして、これに伴う選挙運動、あるいは政党政治活動、公認候補制、こういうことを衆議院議員選挙において取り入れようとするものでございます。その意味において、これは新しい小選挙区制の採用に伴う一つの関連した改正でございまして、前回法律改正趣旨とは全然違うもの、かように考えて、一事再議に当らない、かように考えております。
  52. 森三樹二

    ○森(三)委員 法制局長官はおそらくそういうような遁辞を答弁されるのだろうと思っておりましたが、果してその通りだ。ところが、先ほどから、趣旨とか、目的とか、あるいは内容とか、理由とかいうことを言っておられますが、衆議院選挙を行うという目的趣旨は何ら変っておらないでしょう。あなたも御存じかと思いますが、たとえば地方自治体の首長選挙になりますと、わずか人口三万か四万の市長選挙においても立会演説会を開催しておりますよ。あるいは、町村長の選挙のごときでさえも、立会演説会を行なっておる場合があります。そういうような例からいくならば、選挙の公営というものは、過般の選挙制度調査会においても行われ、また、たびたび、この選挙法改正委員会でも、経費の節減、そしてまた政策浸透のために、いつも選挙の公営という問題が叫ばれておるのです。その選挙公営の一番主眼となるものはどこかというと、立会演説会をつまり公営で行う、候補者に費用をかけないというのが、一番大きなポイントだったのです。これを削ってしまっておるでしょう。小選挙区制にしたからというようなことは、私は趣旨目的変更されたものとは言えないと思う。小さな市の市長選挙でさえも立会演説会を行なっておるじゃないか。あなたの答弁はその点で非常に矛府がある。あなたはそうした市町村長なんかの立会演説会をやっておることをお知りにならないのですか。これは重大な発言ですよ。この一つの具体的な問題を、あなたが趣旨目的、あるいは内容が違うからというような、そういう詭弁を弄して答弁されても、それは通りませんよ。重ねて答弁を願います。
  53. 林修三

    ○林(修)政府委員 この法案内容が果して妥当かどうかということは、実は私のお答えすべき限りではないと思います。これは自治庁の方の政府委員からお答えすべきことだと思います。(「一事再議に該当しておるじゃないかということだ」と呼ぶ者あり)私が先ほど申し上げましたことは、趣旨目的が違うので、そういうことから出てきた改正であるから、前回改正とは趣旨目的が違う、従いまして一事再議には当らない、こういうことを申し上げているわけでございます。立会演説会の採用がいいか悪いか、これはまた別の観点からの御議論があるべきことだ、かように考えております。
  54. 森三樹二

    ○森(三)委員 つまり立会演説会制度自体がいいか悪いかの問題を私はあなたにお尋ねしているのではないのですよ。私は、過般の三月十五日に、立会演説会をつまり前提としたところの法律案が通過しているではないかと言うのです。それを今政府提案法律案によってこれを改正せんとすることは、すなわち、あなたが先ほどからるる言われているところの趣旨目的あるいは内容とか理由とかいうようなことは、この問題に適用した場合に、一事再議の問題というものは明らかに出てくるではないか。政府提案の今改正せんとする法律案は、この立会演説会の問題を具体的に検討してみた場合において、明らかに一事再議原則に反するではないかということを私はお尋ねしているのですよ。重ねて明確な御答弁をお願いする。
  55. 林修三

    ○林(修)政府委員 先ほど来お答えしたことに実は尽きるわけでございますが、現在の立会演説の規定は現行の選挙区制を前提としてできているものと思います。あるいは、参議院議員につきましても、おのずから現在の制度のもとにおいてできているもの、従いまして、新しく小選挙区を採用するに当りまして、立会演説を採用するかどうかは別個の観点から考えるべきものだと思います。小選挙区の採用という観点から立会演説会は不必要である、こういう考えのもとに出たものと思います。この点では、趣旨目的が違うと先ほど私が申し上げたことで、御了解願えるものと思います。
  56. 山田長司

    ○山田委員 先ほどから黙って長官の御答弁を伺っておりますが、おそらく長で一身もわからずに私は答弁していると思う。これはやっぱり非常に重大な問題ですから、一事再議の問題については、長官自身で、一つあなたの考えで最も正しく法の解釈がさるべきものが、国会で多数できめてもらえばいいのだというような、いくじのない立場にあなたはあると思う。一事再議の問題について明確な文書を一つ出していただきたい。どうも、あなたのお話を聞いていると、さっぱり要領を得ない。どうか一つ文書でこの問題について定義を出してもらいたい。
  57. 竹谷源太郎

    竹谷委員 先ほど、太田国務大臣から、議院運営委員会で述べたところと、今当委員会において一事再議原則について答弁したことは何ら寸分変らない、こういう御答弁でありましたが、三月二十六日の午後に開かれた参議院議院運営委員会の速記録を拝見いたしますと、太田国務大臣は、藤田君の質問に対して、次のように述べております。「一事再議原則目的において、趣意において、客観的事態におきまして違っております場合におきまして、これがその目的、その趣意において根本的に違っておるかということが、この一事再議原則判断する重点ではないかと、こう思うのでございます。」「先般御審議を仰ぎ、可決されました参議院議員選挙のあの改正は、同時に衆議院議員運動にもかかったものもございますが、いずれにしても、小選挙区という目的趣旨、客観的情勢等におきましては、全然違ったものという考えのもとに今回の法律案を出した次第でございます。」このように述べて、次に林政府委員が答えまして、「結局ある事項についての議決がありました場合に、その後何ら事情が変らない、何らの事情変更がないにもかかわらず、それを後においてさらに別の議決をする、あるいは再び議決するということは、これは国会審議を非常に混乱に陥れる、こういう趣旨として一事再議原則が認められておる」こう述べまして、最後に「小選挙区制の採用を前提といたしまして、それに伴いまして選挙運動をいかに合理化するかということをきめたものでございます。その趣旨目的等において全然違うものであります。」こういうふうに、この委員会におきましては、趣旨目的客観的事態の全く違った、全然根本的に違ったような場合においては、同じ問題でも同一性がなくなる、同一問題ということでなくなって、一事再議原則に反しない、こういう答弁をいたしておるのでございます。これは、速記録にあるので、お二人ともはっきり述べておるので、間違いないと思う。ところが、昨日来当委員会で質問をいたしますと、最初は客観的情勢の変化ということで押し通そうといたしましたが、どうも旗向きが悪い。そこで趣旨目的というものを昨日ここにつけ加えて参ったのであります。ところが、趣旨目的ということを加えてきましたので、私は、先ほど、改正案の二百一条の七、八、九、十、十一というような問題について、これはどうも全然根本的に異なったことを参議院議員知事選挙まで持ち込むということは行き過ぎではないかという質問を持っていったところ、今度は、趣旨目的というものについては全然根本的に違うというようなことを言わずに、それにまた理由とか内容とかいうものをつけ加えまして、この参議院議員運営委員会で述べたことを非常にぼやかしまして、最初に客観的情勢で押し通そうとしたが、うまくないので、今度は目的趣旨を持ち込む、そのほか理由が違ってもよろしい、その上に今度は内容が違ってもよろしいと、いろいろ拡張解釈が行われてきました。こうなりますと、先ほど来私がたびたび質問するように、法律改正するには何らかの理由趣旨はつけられる。つけられるとすれば、この選挙法全般にわたって何度改正してもよろしいかどうかということを、たびたび重ねて質問しているが、全然これに対して返答がない。同じ抽象的なことを答弁しているだけでございます。今も、川上委員からの、趣旨目的あるいは理由内容、それらが違っても一事再議原則に反しないかどうかという質問に対しまして、これまた答弁を回避いたしておるのでございまして、どうも、太田長官が議院運営委員会において答弁したところと、この委員会において政府答弁するところとは、寸分の相違はないどころか、これは全く相違があることは、この速記録と対照してもはっきりしておるのでありますが、これでも、太田長官は、答弁において相違がない、このように抗弁せられるかどうか。
  58. 太田正孝

    太田国務大臣 私の申し上げましたことは、理由とか内容ということは私は言わぬつもりでございます。速記録をごらん願いたい。私も見ますが、初めからしまいまで趣旨目的、客観情勢等によってきめる、こう申し上げたので、それだから寸分たがわぬと申し上げた次第でございます。
  59. 林修三

    ○林(修)政府委員 先ほど来申し上げましたことは、衆参両院の議院運営委員会で私が答弁したことと、実は趣旨は違わないつもりでございます。
  60. 竹谷源太郎

    竹谷委員 私がただいま読み上げました通り、ちゃんと文字に出ておる。今、あなたは、理由とか内容とかいろいろな事項をそれにつけ加えておる。結局、答弁に窮して、そのように見解がきわめて不明確なのでございまして、変りはないということは断じて——この委員会での速記録は追って出ると思いますが、参議院運営委員会あるいは衆議院運営委員会の速記録と対照すればわかることでございまして、これは追ってまたその対照をした上でお尋ねをしたいと思いますが、先ほど来皆さんから質問のありまする、理由が違えば何度再議してもよろしいかどうか、これを一つ林長官からはっきりイエス、ノーを言ってもらえればよい。よけいなことは要らない。
  61. 林修三

    ○林(修)政府委員 私は理由ということを言っておらないはずでございます。趣旨目的あるいは客観的事情が違うということで、一事かどうかということを判断すべきものであると申し上げたと思います。理由ということは、あるいは法律案が何らの理由なしに改正されるはずはないということで、理由ということを申し上げたのでございますが、一事再議に当るかどうかということは、先ほど来趣旨目的あるいは客観的事情が違うかどうか、こういうような要素で判断すべきもの、かようなことで申し上げたはずでございます。
  62. 竹谷源太郎

    竹谷委員 今理由ということは述べなかったと言っておりますが、これはみなでそれを聞いておる。これはどうもあなたは黒を白と言いくるめることがはなはだ上手であるが、これは黒を白と言いくるめるどころではない。それは全く違ったことを言っておる。そうなってきますと、うそをつくということを私はいわざるを得ない。そこで、趣旨目的でもけっこうです。趣旨目的、なおまた理由等が違えばどんどん再改正をしてもよろしい、こういうのでございますが、一体、一事再議原則というものが、欧米の諸国において、早く議会政治の発達した国において、あるいは成文法、あるいは不文法に基いてこの原則が確立せられ、わが国の旧帝国憲法においても採用せられておりましたが、新しい憲法では、衆議院の優越という事実にかんがみまして、こういう条文はなくなっておりますけれども、この一事再議原則が牢固として現存することは、太田さんも、林さんも、この委員会において、また議院運営委員会においても、たびたび断言をして、そして院議は尊重し、一事再議原則に反しないようにしたいということをたびたび述べておるのでございますが、この一事再議原則というものがなぜ打ち立てられなければならなかったかという根本的の理由考えますのに、これは、先ほど来御答弁のありますように、議会運営を混乱させないように、そして議院の意思が分裂をしないように、国民の、法律に従う、その信頼感を失わせないように、国民の従うところを明確にするためにできたものであろうことは間違いないのでありまするが、その政治的な原則の発生の理由というものは、たとえば、不信任決議案を何度も出して、そうして混乱させるというようなことがその最たるものでありまして、結局、一事再議原則というものを打ち立てたのは、そうした政治的な意図、目的趣旨に基くところの議会混乱というものを防ぐところに、ほとんど重点があると思うのであります。そういたしますれば、国会内の一党一派が、ある趣旨目的のために、いろいろの政治意図のもとに、法律を何べんも改正しようというような事態、そのことは、この一事再議原則が政治的に確立されたその根本からして、十分検討を経なければならぬ。この意味合いにおいて、客観的情勢の変化という、その主観的でない事態に応ずるために再議を要するという事態に関しましては、私はある程度承服をいたします。すなわち、第一国会において、府県民税総額の基礎となるべき単価を、百二十円を百八十円にし、二百四十円と二度改正をいたしておりまするが、これは当時の客観的経済事情の激変に基くものでございまして、これは同じ府県民税の総額の基礎ではありますが、これは同一性を失ってきた、客観的情勢の激変によって、同じ問題であるが、違ってきた、従って、一事再議原則に反しないと判断することもやむを得ないと思うのでありまするが、当時の政府なりあるいは一党一派の趣旨目的、政治的な意図、そのようなものによって何べんも法律改正するというようなことを厳に戒めるために、この一事再議原則が発生したものと私は考える。こういう趣旨で、この一事再議原則というものを判断しないならば、非常な混乱をして、先ほど来お話のあったように、一党一派の力関係等によって、勝手ほうだいに、法律の番人でなければならない法制局長官が、あるいは同じ委員会、国会内における各委員会に違った答弁をしたり、また、同じ当委員会においても、昨日ときょうとでは一事再議原則範囲が変ってくる、こういうようなことが起きては大問題でございまして、この点に関しまして、一事再議原則というものが政治的な意図、趣旨目的というようなものによって紛淆されるということは、とんでもないことだと思う。法律の番人である法制局長官は、一体、一事再議原則というもののできた理由は先ほど来述べられておりますが、その根本となるべき、各国においてこのような制度の発生した根本的な政治的な理由を、あなたはどう考えられるか、お伺いしたい。
  63. 林修三

    ○林(修)政府委員 先ほど実は御答弁した通りだと思うのでありまして、結局、国会という会議体議事が円滑に混乱しないように行われる、こういうことが理由でございます。これは、政治的と申すか、そういうことは実は私どもよく存じませんが、結局、会議体運営が混乱せずに行われるということが、こういう原則が発生した理由だろう、かように考えるわけでございます。それで、法律案のような場合には、もちろん客観的情勢によっても新しい改正理由は起りますけれども、ある内閣においてある政策を採用しようという場合に、前に改正した法律をさらに改正するという必要が起る。これは当然考えられることでございます。特に国会会期が相当長い現在におきましては、一事再議原則は、先ほど申し上げましたような趣旨において理解すべきものと、かように考えておるわけでございます。
  64. 竹谷源太郎

    竹谷委員 国会会期が長くて、その間に客観的情勢の変化がある場合については、私が先ほど述べた通りなんです。問題は、一党一派なり政府が、趣旨目的をいろいろ変えまして、そして政治的意図のもとにいろいろなことが行われることを排除するために、この一事再議原則が発生した。単なる混乱を防ぐなんと、それは目先の事態であります。その根本的な理由はこういうところからきていると思う。一院の意思が、会期が長いといっても五カ月や六カ月でございまして、何ら客観的な情勢の変化もないのに、右に行き左にする、そんなことは簡単に許されるべきではないのでありまして、結論幾らお尋ねしても要領を得ない。われわれは政府答弁をもって絶対に満足することはできない。しかも、この一事再議原則たるや、国会運営上非常に重要な根本原則の一つでございまして、この法案審議上、どうしてもこの問題をはっきり解決する必要があると思う。そういう意味合いにおきまして、幾ら太田自治庁長官や林長官に聞きましても、これは、一時を糊塗したり、全然政治的意図でもってそのことをやっており、すなわちそれ自体もうすでに一事再議に反するような意図を持っておるのでありまして、こういう人たちと応答しても、われわれがこの問題を審議する十分の参考にならない。  つきましては、この一事再議の問題について、参考人を当委員会に招きまして、その公述を求め、これを参考といたしまして、この問題に明確な判断を下したい、このように考えますので、委員長におかれまして、ぜび参考人を呼んで公述を聞かれる、こういうお取り計らいを願いたい。その呼びたい方々は、東京大学教授の宮沢俊義君、東京大学教授の兼子一君、東京大学教授の団藤重光君、成蹊大学教授の佐藤功君、早稲田大学教授の中村宗雄君、静岡大学教授の鈴木安蔵君、以上六氏をぜひ本委員会に招きまして、その公述を聞き取るようにお取り計らいをお願いいたしまして、その上でこの問題はなお質問いたしたいと思いますが、留保をいたしまして、一応一事再議に関する問題の質問を打ち切る次第でございます。
  65. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 竹谷君の参考人喚問請求の問題につきましては、後日理事会を開いて適当な結論を得ることにいたします。  川上貫一君。
  66. 川上貫一

    ○川上委員 この問題は、今のような形で竹谷君の方から提案されましたが、賛成ですが、一つだけ聞いておきます。一事再議のことについて……。(発言する者あり)これは答えて下さい。
  67. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 川上君、竹谷君に対する関連質問として許可したのですから、その趣旨を逸脱しないように……。
  68. 川上貫一

    ○川上委員 太田長官が前に述べられておるのは、目的内容趣旨において異なるということが本旨である、こう言われておる。本日述べられた、目的は同じであっても、内容趣旨が異なればよろしいというこの答弁と、これは違うのです。これはどっちがほんとうなのですか。これだけはっきりしてもらいたい。この点は、目的内容趣旨という三つがそろわなければならぬという本旨だという御答弁が前にあるのです。本日の答弁は、目的は同じであっても、内容趣旨が異なればよろしい、こうなっておる。これは速記録を見ればわかる。これはどっちがどうなんだ。なぜこういうことを私が聞くかというと、目的内容趣旨がそろわなければいけないということになれば、これはこの今審議しておる法律関係します。それから、目的は同じでも、内容趣旨が違えばよろしいということになれば、今後の議事運営上に重大な関係を持ちます。どちらにも関係があるから、ここをはっきり一つ答弁しておいてもらいたい。これだけです。
  69. 太田正孝

    太田国務大臣 私は、その内容という言葉を、今同僚にも聞いたのですが、言っていないと言う。私も言ったように思いませんです。目的趣旨、客観情勢——何かの一つ覚えのようにそれを言っておるので、ちょっと川上さんが私の言ったののお聞きとりが、私の言った意味とは違っておるのじゃないかと思うのですが……。
  70. 川上貫一

    ○川上委員 私の聞いておるのは、目的の問題なんです。この内容ということが趣旨になりましても、そこは問題はないわけです。目的という項目が必須の本質であるのか、あるいは目的は同じであっても、その他が違えばよろしいか、ここが問題なんです。問題は目的が問題なんですから、これはどちらかという問題なんです。
  71. 太田正孝

    太田国務大臣 文理的に申せば、目的趣旨とはくっつく場合があろうと思います。私は小選挙制度のためにこの法案を出した。これが私のこの法案を出した理由でもあり、目的であり、趣旨でございます。
  72. 川上貫一

    ○川上委員 そうすれば、小選挙区というものは目的ですか。小選挙区ということが目的なんですか。
  73. 太田正孝

    太田国務大臣 もちろん、選挙というものは、公正なる国民の投票を集結するものでございまして、その手段にすぎないことは当然でございますが、法律におきまして今までやった中選挙制度を変えるということは、やはり目的だろうと思います。言葉があるいは悪いかもしれませんが、しかし、これは、常識的に、私はそんなに隠したりごまかしたりする考えはございません。普通にいう言葉で、それは、どこそこへ行くという目的と、どこそこへ行くのにいかなる手段をとって行くかというような問題はございますが、私の言った意味は、そういう広い意味で申し上げましたので、どうかさよう御了承願いたいと思います。
  74. 森三樹二

    ○森(三)委員 太田長官にお尋ねしますが、あなたは目的は小選挙区制を作るのが目的だと言われたが、とんでもない話ですよ。衆議院選挙を行うということが、つまりこの選挙法改正目的でなければならぬ。つまり小選挙区にするか、中選挙区にするか、大選挙区にするかということは、その選挙をやるところの手段方法ではないですか。あなたは手段方法と目的とをごっちゃにしたら大へんですよ。はっきりした答弁をしておいてもらいたい。
  75. 太田正孝

    太田国務大臣 私の言うのは、手段を変えるための目的でございます。
  76. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後零時十九分休憩      ————◇—————     午後二時一分開議
  77. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を継続いたします。佐竹晴記君。
  78. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 私ども社会党においては、今回の公職選挙法改正案に対し、質疑要綱を七、八項目に大別いたしまして、各委員においてこれを分担し、極力その重複を避くると同時に、できるだけ詳しくお尋ねをいたしたいと考えまして、すでに島上委員より選挙制度調査会の答申を中心とする疑問をただしました。次いで、竹谷委員その他の委員より、一事再議関連いたします質疑を試みたのでありますが、私は、今回の改正案に対する総汎的なもの、特に政局の安定と小選挙区制並びに二大政党制問題について、お尋ねを申し上げたいと考えます。  今回の政府提案理由説明によれば、「現在のわが国の政治において最も必要なことは、政局を安定せしめ、国民多数の支持を持つ政党を基盤とする政府が、責任をもって内外にわたる政策を遂行することにあると信じます。」と言われております。この政局の安定とはいかなる事態をさされるのでありますか。議員絶対過半数を占める意味でありまするのか。それとも平穏にしてなめらかな政治運営が期し得られるような状態にあることを意味いたしますか。また他に何か説明がございますか。これを承わりたいと存じます。
  79. 太田正孝

    太田国務大臣 佐竹委員お答え申し上げます。  政局の安定というのは、小党分立でなく、二大政党対立のもとに政権のすわりどころがきまった状態だと思います。
  80. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 日本の現在の政局は安定しておるとごらんになりますか。不安定だとごらんになりますか。
  81. 太田正孝

    太田国務大臣 ただいまの政情におきましては両党対立しておりますが、政局は一応の安定かと思います。しかしながら、小選挙区制というのは、政局の一定及びそれがだんだん育成されて発展していくということは総理大臣も言われた通りでございまして、現状のままでは、まだ両党とも合併して日浅く、しかも国民もまだこれになずんでおらないような状況であると私は見ております。
  82. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 小党分立をいたしまして政権のすわりどころが不十分である、こういう状態がもし政局の安定を欠いておるということでありますならば、現在は、与党が絶対多数を占めておりまして、いわゆる小党分立ではございません。この状態は、御説よりいたしますならば、まさに政局は安定いたしております。その政局が安定いたしておりますのに、現下時局において最も重要なるものは政局の安定である、その政局の安定のためにこの小選挙区法を出すんだということは、これは解しかねます。どういう趣旨でございましょうか。
  83. 太田正孝

    太田国務大臣 小選挙制度は、新しく二大政党を作るような場合にも効果はございます。すでにできております二大政党が、選挙の方式においてこの小選挙区制による方が、将来もずっと進んでいく政治の安定力になる、こういうように考えておるのでございます。
  84. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 しからば、政局安定のために小選挙区制を採用されるというのでありますが、小選挙区制を採用することそのものが、直接に政局安定をもたらすというのでありますか。それとも、小選挙区制をとれば必然的に二大政党制が成熟してくる、よって、二大政党制成熟の暁には、その結果において自然政局が安定すると言われるのでございますか。つまり小選挙区制それ自体が直ちに政局安定をもたらすものかどうか、これを承わりたいのであります。
  85. 太田正孝

    太田国務大臣 申し上げるまでもなく、選挙制度改正ということは選挙の方法の手段でございまして、しかも、そのやり方が、政党を主として、政策をもって争うということになりまするから、従って、今のような点が政局安定をもたらしてくることになると私は考えます。
  86. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 御答弁解しかねますが、小選挙区制をとると政策本位の選挙が行われる、その選挙を通じて二大政党制というものが育成される、その結果政局が安定するんだ、こういう意味ですか。いま一度聞いておきます。
  87. 太田正孝

    太田国務大臣 現在のごとく二大政党ができておりましても、小選挙区によりますとさらにこれが育成されていきますから、ともに政策を旗じるしとして政党が争うという形になります。もし小選挙区でない場合におきましては、中選挙区なり、大選挙区の場合におきましては、個人本位の選挙が相当に多く行われておりまして、これを実現することがむずかしい。二大政党になった今日におきまして、小選挙制度をとりまするならば、政党が対立いたしまして政策でもって争うことになりまするから、ここに安定力をもたらすと、かように考えておるのでございます。
  88. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 総理大臣は、選挙制度調査会の第一回総会の席上において、「日本の政局の安定ということも小選挙区制から始まるような気がするのであります。これが大選挙区あるいは中選挙区ですと、どうしても第三党というものができて二大政党論というものが民主政治には必要だというような原則の論だと思っておるのでありますが、たとえば自由党と民主党とが一つになり、共産党は別としても社会党の両派が一緒になるとほとんど二大政党になる。二大政党になれば小選挙区になれば二つの政党のどちらかが勝つということになりますから、選挙が四年問続けば四年間というものは政局は安定するということは小選挙区制から当然な結論として出てくるような気がしているのであります。」と述べておられます。この総理の御見解太田大臣の御見解とは同一でございましょうか、また違いましょうか。
  89. 太田正孝

    太田国務大臣 ただいま御引用になりましたところを私も読んだのでございますが、大体は同じであると申し上げてよいかと思います。今の「二大政党になれば小選挙区になれば二つの政党のどちらかが勝つということになりますから、」ここが重点であろうと思います。たとえば、野党にある方々が、われらの政権はこうであるということは、はっきり国民にわかっておりまするから、そこで、一方の政党が何かの理由で倒れるということになれば、すぐ国民としても次の政党が与党に立つ、こういうこともよくわかるというような意味も含んでおるかと思います。選挙から四年続けば四年というものは政局が安定するというのは、特別なる事情のない限りは当然想像されることかと思います。その中にいろんな、たとえば汚職事件とか国民の指弾を買うようなことがありました場合には別でありますが、原則として、二大政党のある限りにおいては、四年の期間であれば四年間続く、こういう意味に総理が言われたことと思います。その意味においては同じ考え方でございます。
  90. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 小選挙区制にいたしますと、二大政党のうちのどちらかが勝つ、それだから四年間は政局が安定する、これは原則だと言われます。原則でけっこうでありますが、その原則によれば、まず四年間は政局が安定し、その政権が続かなければならぬという原則をお考えのようであります。そうして、それは頭数をそろえることであり、頭数がそろえば政局が安定するという考え方であります。政党安定のためには議員の頭数をそろえることも必要でありましょうが、それだけでは目的は達せられないと私は思います。公明正大なる政治を行なって、国利民福をはかり、世論の支持を受けなければならないということが政局安定の要諦であると思いますが、いかがでございましょう。
  91. 太田正孝

    太田国務大臣 私は、世論の支持を得るかいなかということは、やはり選挙の投票において決定されることであると考えております。
  92. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 その選挙の方法を曲げて、私利私党のために自分の得手勝手な選挙区を作って、世論の反撃を受けておる。それで政局の安定があるとお考えでありましょうか。
  93. 太田正孝

    太田国務大臣 自分勝手な選挙区を作るとか、そういうようなことは私は考えておらないのでございます。
  94. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 この点はおいおいとまた審議を重ねて参ることでございまして、きょうは総論的な点にとどめておきますが、その程度の御弁解では、とうてい私どもも納得いたしませんし、国民も納得をいたしません。今や一般国民生活安定のために急を要する事項は山積いたしております。にもかかわらず、これを捨てて省みず、小選挙区制案なるものにうき身をやつされておるのであります。国民一般からいかに非難されているかということは、もはや私が論ずるまでもないと思います。三日三十一日の朝日新聞の「この月の政治評投書から」と題する記事には、「小選挙法案」「かつてない悪評」「深刻になった鳩山批判」という最高級の非難の見出しを付しまして、堂々と論じております。まさに史上かつてない誹謗さえ出ているのであります。このように国民の反撃を受けても、なお号数に物を言わせて押し切ってこれを強行することが、政局の安定を得るゆえんであるとお考えでありましょうか。
  95. 太田正孝

    太田国務大臣 新聞及び世論の批判につきましては、つつしんで傾聴いたします。私は、小選挙制度というものは、かりにわれわれが野党のときであっても賛成したい。何となれば、今の状況において中選挙制度をもってやっていきまするならば、再び波乱、政治界におきまして個人本位のものが相当に現われるのでございます。もしその結果せっかくできた二大政党も分裂するようになってはいけないと信じますので、信念を持って、どうしてもこの小選挙区によって二大政党の対立の姿を続けて、小党分立でなく、りっぱな政治の運営をしていくためには、今日なすべきいろいろな施策と同時に、選挙という国民の非常に大切な権利を行う政治に参加するという意味におきまして、私はこの方式をとっていかなければならぬ。与党と野党という意味でなく、私はそう信じておるのでございます。
  96. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 与党優利の前提を作って国会に絶対過半数を占めてさえおれば政局安定が考えられるという、そういう見方としか考えられません。今日まで政府与党のおとりになっている態度は、国民がひとしく批判をいたしておりまする通り、自分の党に都合のいい選挙法を作って、それで国会に絶対過半数を占めてさえおれば、それが政局の安定だと考えておるとよりほか見ることができません。殷鑑遠からず、吉田内閣の場合はどうでございましたでしょうか。絶対過半数を占めてそれで政局安定だといばっておられました。しかし、その絶対過半数を占めて政局安定だとおっしゃっておりました吉田内閣は、あの通り倒れたのであります。汚職と内部動揺のために倒れたのであります。政局の安定は頭数ではございません。公明政治と国民の信頼にかかっております。今や、馬山内閣は、この小選挙法案提案をきっかけにいたしまして、極度の批判を受けておりますのみならず、中には幾多の汚職の芽がすでにきざしております。砂糖に問題あり、硫安に問題あり、北洋漁業に問題があり、バナナ、レモン、競争馬、外貨割当をめぐる汚職は、すでに検察当局のメスを入れるところとなり、有力代議士某はすでに取調べを受け、閣僚の一人もすでにお調べを受けておるではありませんか。かくて、農林、通産正負会におきましてこれらの出題が取り上げられまして、競争馬の為替管理法違反等について閣僚と問答をいたしまするや、その閣僚は、雌馬を輸入しておいてこれで種つけするんだと、うそぶいておるような有様であります。国会にもすでに火の手があがっております。造船汚職以上に発展しないとだれが保証されましょうか。法務大臣病むや、その更迭を早くもうわさするようになりまして、世間は何といっているでしょう。またもや指揮権発動の準備かなとうわさしているなど、まことに忌まわしき限りであります。このような状態でどこに政局の安定がありましょうか。小選挙区制をもって政局安定をはかろうとすることよりも、国利民祐をはかる各種の法律案に重点を履き、民生を安んじ、しこうして世論の支持を得ることが、より大切なる政局安定の方法であると私は考えますが、いかがでございましょう。
  97. 太田正孝

    太田国務大臣 政治家が悪いことをしていけないことは、申すまでもございません。特に政府責任の地位にある者が悪いことをしてはいけない、これは申し上げるまでもございません。また、そのときそのときの国民に対し、あるいは他の国に対しまして、りっぱな外交なり内政をすべきことも当然でございます。しかしながら、選挙法というものは、もし今日安定せりといいましても、二、三年前に吉田内閣が倒れて今日の自由民主党ができるまでの経過をごらんになってもわかりまする通り、小党分立でないようにいくための手段方法でございまして、これによって、その目的は、政局安定という現状の問題以上に、大きな政治の道はどこにあるか。政治の組織をどう作るか。従って、私の申し上げたいことは、今悪いことをしている人があるならば、天下にそれを責める人もあろうし、また弁明する人もございましょう。また現在の外交、内治につきましての方式はもちろんございましょう。同時に、政治の線を、組織をどういうふうに発展せしむべきかという選挙法につきまして、私は過去に行われた選挙は小選挙制度じゃないと思う。政党というものを主とした新しい問題であり、しかも、政党がこれに処するに当りましては、新しい組織によって、新しい公選の方式によりましてやらなければならない、全く新しい問題であるとさえ思っております。現状の内閣の問題であるとかあるいは施策の問題と別に、これは、大きな国策を施行する上におきまして、政局安定という線を今日においてやっておかなければならぬ、せっかく二大政党のできた今日にと、かように考えておる次第でございます。
  98. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 それならば、進んでその意を論じましょう。小選挙区制は決して二大政党制をもたらすものではありません。また小選挙区制が決してさように政局安定に直接な関係を持つものではない。小選挙区制が二大政党制を育成助長するについては、おのおのその国柄によって、ある国においては非常に役立つ場合もあり、またしからざる場合もある。英国のごときは、この小選挙区制をとることによって、二大政党政治を育成助長したのは同違いないと存じます。しかし日本においては断じて私はさようでないと思う。目先ばかり考えて、そして選挙区制を変えようといたしましても、まず私利私欲に終始し、党利党略にうき身をやつしているようでは、とても、英国のそれのごとき、真に公明なる二大政党政治を育成強化するということは困難であると私は考えます。この間、総理は、この委員会におきまして、私の問いに対し、大選挙区制をとったら小党分立したではないかといったような反撃の言葉を用いられておった。しからば、私は言う。小選挙区制をとって一体二大政党制を日本にもたらした実績があるのか、あるならば、これを承わりたいのであります。まず、日本において、小選挙区制をとって、二大政党政治を育成強化するのに適当であったといたしますならば、日本の歴史の示すところで一体どのような状態になっているか、過去における幾多の選挙と幾多の政変がありますので、これを承わりたいと考えます。
  99. 太田正孝

    太田国務大臣 国情によりましてその選挙制度が適応するかどうかということは、佐竹委員のおっしゃる通りと思います。大憲章をしかれて六百年にして今日のイギリスの政治ができ上りまして、小選挙制度のもとにみごとな政局返還の目的を達しております。日本がこれでどうなるか、こういう問題もございますが、過去においてというお言葉でございますけれども、日本においては、一番著しい選挙制度をしきましたのは、大正八年の原内閣のときの床次竹二郎氏が内務大臣だったときの案でございます。しかし、その当時においては、今日の情勢と違いまして、保守党が二つに分れておりました。しかも、そのときの選挙は、政党を主とする選挙ではございません。従いまして、個人本位の、やはり同じ党内におきましても競争するというような状況でございましたので、この例を今日に持ってくることはできないと思います。ましてや今日は革新政党と保守政党の対立でございまして、大正九年に行われた選挙以後の情勢、すなわち保守党が、当時の言葉で政友、民政争うといったような意味とは全然違っていると思います。例を申し述べろということでございますが、今度は、ほんとうの新しい、区割りが変る上に、政党を本位としてやるところに、今度の選挙法改正の大きな目的があることを御了承願いたいと存じます。
  100. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 政党が成熟していなかった時代のあることは、これは私も認めます。しかし、政党が問題でなかったような御議論は、とうていそれに承服することはできません。総理大臣もこの間この委員会で私に対してどう言ったか。「あなたは小選挙区と二大政見と無関係のようなことをおっしゃいますけれども、中選挙区にあるいは大選挙区をとった場合においては、中立党議員というものができまして、第三党、第四党ができたということは、日本の憲政史の明示するところであります。」と私に反撃をしている。政党のあることを認め、その政党の対立していることを認め、そしてその当時においても政策をもって戦っておったことも、これは間違いございません。成長しておったか成長していなかったかということは、程度の問題であります。十八才の子供か三十才のおとなか、それには相違があるかもしれませんけれども政党のあったことは間違いございません。そして、その政党の歴史より、憲政史上かくのごとく明示するところであると言って、総理大臣はこれをとって私に反撃をしてきている。これは一体何を意味するものか。政党を認めてのことであります。しかし、その政党のもとに小選挙区をしいたときに、一体二大政党ができたでありましょうか。明治二十二年の選挙をごらんなさい。むしろあなたの方から承わりましょう。明治二十二年の選挙法改正の後は明治二十三年に選挙があっております。このときに一体どういう党の分野になったのでございましょうか、これを承わりましょう。
  101. 太田正孝

    太田国務大臣 今の明治二十二年の例につきましてはすぐお答え申し上げますが、私の言った言葉が足りなかったために、佐竹委員が御質問されたことと思いますが、私は政党は厳然として政友、民政時代があったということを申しました。しかし、選挙法の中へ政党の力を入れる、たとえてみれば、政党の公認した者でなければ、その政党の候補者になれない。その当時におきましては、御案内の通り、何々党に属する者であるが公認ではないということをうたいつつも、選挙ができたわけでございます。今度の選挙法におきましては、小選挙区法の本来の姿に返りまして、政党の公認した者でなければいけない、その党に属する名を言ってもいけない、かように厳格になっておりますので、私が政党は存在せずと申し上げたのではなく、その政党に、今日皆様方に御審議を仰ごうとしているような、公認の制度でございますとか、あるいは政党政治活動でなく、選挙運動を認めてやっていく、こういうふうなやり方がその当時と違っておると申し上げた次第でございます。  明治二十二年の例は選挙部長から申し上げます。
  102. 兼子秀夫

    兼子政府委員 ただいまお尋ねの明治二十二年の選挙の際における政党の勢力がどうであったかという問題は、ただいま調べまして、後ほど御報告いたしたいと思います。
  103. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 それくらいのことがおわかりになりませんか。弥生倶楽部が一旦二十、議員集会所が四十名、大成会七十九名、国民自由党五名、無所属四十二名、こうなっております。どうです、小党分立ではないか。(「第一回じゃないか」と呼ぶ者あり)第一回でも……。第一回、ここまでくるのには、相当長きにわたって、板垣のごとき私どもの土佐から出た先輩であるが、板垣死すとも自由は死せずと、彼らは身を張ってやった。今日のごとき黄金でぶち回るような、そんなきたない根性ではなくして、彼らは真に政党運動のために身を挺してやった。あなたのおっしゃるそれよりも、もっとその当時の人間の根性には政党意識が発達しておった。あなたのおっしゃるように、国会開設当時におけるところの彼らは、それほど政党観念がなかったか。またそのときに政策について認識がなかったか。あなたがそのようなことを言うならば、彼らは墓場の中で必ず憤慨しておるであろう。彼らはわれわれよりはもっと真剣なる考え方を持っておったに相違ないと思う。その当時かくのごとくにしてだんだん盛り上っていったものが、あの国会開設となり、国会開設の基盤には政党が必要であるとして政党ができた。よって小選挙区制をとったが、小党分立であった。この事実をいかんといたします。
  104. 太田正孝

    太田国務大臣 そのお言葉の小党分立したことが日本の政局をずっと安定したかということは、明治、大正、昭和にわたっての政治史の示すところでございます。私も、日清戦争になるまでの第七議会までの経過につきましては、佐竹委員と同じ感じを持っております。しかしながら、日本の政治が選挙制度によって安定したか安定しないかという問題になると、今回のような小選挙区制をとったことはありませんので、私の言う政局安定……。(「改悪だ」と呼ぶ者あり)これはほんとうでございます。新しい政党の力を公認制度にまで求め、あるいは選挙運動にまで発展させるというやり方はございません。私は幾度も申し上げておりますが、新しい制度のもとに、新しい方式としてのこの小選挙制度をお考え願いたい、かように申しておるのでございまして、過去の小選挙上区制度において、今日のものと比較すべき問題はなかったと私は信じております。
  105. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 私はあなたの説に承服いたしかねます。私は、国会開設以来の選挙法改正に対する提案理由並びにその後の審議状態を見てみたのであります。あなたは新しいとおっしゃるけれども、あなたが当会議においておっしゃっておることは、すでに大正八年の改正のときにも、それからずっとその後の改正のときにも、ほとんど同じことを言っておる。提案理由及び国会審議状態も、私は全部速記録を調べてみた。あなたの言うところにどこに新しいところがあるか。政局の安定という点だけきょう新しい言葉を持ってきておる。その政局の安定とは何か。議員多数を占め、三分の二以上を占めて、そして四年間の政局安定を得ようという、御自分だけに都合のいいようなことをすることは歴史上かつてない、こういうのです。それらは、朝日新聞その他に言ってくるところの幾多の投書によって証明されておりまするがごとく、明らかにあなた方のやることは新しい。新しいでしょう、それは。こんなことはやりません。こんなゲリマンダー、サラマンダーは、米国には例はあるが、英国のごときは例がありません。日本においては、それはなるほど新しいでしょう。あなたのようなゆがんだ選挙法を持ってきて、それでおれが新しいからなんと言ったところで、それは問題になりません。歴史の示すところ、また日本の立憲史上において、今日まで小選挙区と大選挙区とについて論議されたことは、今月といえどもその筋においては変っておりません。あなたのおっしゃる政局安定というその言葉は、新しい言葉であるが、しかし、そのときどきの状況に応じて、大正八年原内閣のときにおいては、あれだけ政局安定を得ておったけれども、さらにより多くのものを欲したために、あのときには政局安定という言葉は用いなかった。しかし、今日あなたのお考えになっておると同様のことを原総理大臣は考えておったことが、その当時の速記録によって明示されておる。私は、この際、その後の明治三十三年大選挙区制に変ったときの分野、大正八年小選挙区制に変ったときの分野、大正十四年中選挙区制に変ったときの分野、これを一つ承わりたい。
  106. 兼子秀夫

    兼子政府委員 先ほどお尋ねの、第一回の選挙のときの政党の分野でありますが、当時は定員が三百名で、自由党一、自由倶楽部百二十七、改進党一、議員集会所四十三、大成会八十、無所属四十八であります。  それから、明治三十三年の法律で三十五年に選挙が行われておりますが、(佐竹委員「三十五年八月十日」と呼ぶ)三十五年八月十日、第七回の選挙しおきましての分野は、定員が三百七十六でございまして、立憲政友会百九十、憲政本党九十五、帝国党十七、壬寅会二十八、同志倶楽部十三、無所属一十三、合計三百七十六でございます。  次は、中選挙区制、大正十四年の法律で昭和三年に選挙が行われておりますが、昭和三年の二月二十日に第十六回の総選挙が行われております。この当時の定員は四百六十六名でありまして、その選挙後の分野は、立憲政友会二百十九、立憲民政党二百十四、革新倶楽部三、実業同志会四、それから社会民衆党四、日本労農党一、労働農民党二、民権党一、それから無所属が十八、計四百六十六でございます。  昭和二十一年四月十日の第二十二回の総選挙の分野におきましては、当時の定員酒四百六十四でありまして、日本自由兄百四十、日本進歩党九十四、日本社会党九十二、日本協同党十四、日本共産党五、諸派が三十八でありまして、そのほかに無所属八十一、計四百六十四名であります。
  107. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 私の調査いたしました——これは国会の立法考査局で調べてもらったのでありますが、あなたの方の資料と二名ないし三名ずつ少々違っております。あなたの方のそれを資料にいただきたいと思います。  さて、そこで承わりたいのでありますが、これらの日本の憲政史が今回の改正に参考とするに足らぬということは、私はとうてい承服することができません。過去の歴史が示しまするがごとく、いろいろとやっております。明治二十二年に小選挙区で、三十三年に大選挙区となり、大正八年小選挙区となったが、大正十四年中選挙区となわ、昭和二十一年に大選挙区に戻し、さらに昭和二十二年中選挙区制となった。この二十二年のときはどうでしょう。今の委員長なんかも一緒にお互いにもみ合って、包帯をなすったり、告訴をなすったり、血をもってこの委員会を色どってお互いが争った。そのときに中選挙区にお返しになったのは、だれあろう保守党の皆さん方であった。そのときの提案理由には何と書いてある。小選挙区制も過去においてはやってみたが、どうも芳ばしくない。また大選挙区も長もあるが短もある。従って中選挙区制に返すというのがその審議の題目であったと、私は記憶しておる。かくいたしまして、それぞれの政党の成長工合いと、その当時におけるところの客観情勢その他をいろいろと勘案いたしまして、小選挙区制であったのを大選挙区制にしてみたり、さらに小選挙区制に戻してみたが、また中選挙区制にしたり、さらに大選挙区制にしてみたところが、また血をもって中選挙区制に返すといったような工合に、それぞれおのおのそのよって立つところの政党の歴史があり、基盤というものがあったのであります。ただいまの太田大臣の御説のごとくにいたしますれば、全くわれわれの立脚いたしております政党の歴史なんというものは眼中に置くことなく、新しいものだから、新しいものだからと言うが、それはあなたのお考えだけで、それでいいかもわかりませんけれども、この日本における政党の歴史を一切無視して今回の案件がここに審議されようとは、私は考えません。いま一度大臣の所見を承わっておきたいと思います。
  108. 太田正孝

    太田国務大臣 だんだんお話を承わりまして、私は、過去の政治家のなさった功績に対しましては、つつしんでこれを尊敬するものでございます。私の申し上げるのは実際といたしましても、革新政党と保守政党とが対立するこの大きな姿になったのは、これは、だれがごらんになりましても、明治、大正、昭和になかったことでございます。大正八年のときには保守の対立はございました。先ほどの佐竹委員のお言葉の中に、あのときの小選挙区と今日の小選挙区との差につきまして、大正八年の選挙の結果、やはり小党分立になったと言われたのは、その通りと思います。しかし、なぜ小党分立になったかと申しますれば、やはり選挙法によりまして個人本位に行われておった。今度のは、そういう意味でなくて、政党本位にやっていく。ここは二大政党対立という、このはなばなしい姿が、今までの世の中になかった姿で現われ、これをまたりっぱなものにしていって、政権の授受というものが美しくいくためにこそ小選挙区制をとる。それには、政党の力を、大正八年のときと違いまして、今回の選挙法にあるような方式に織り込んだような次第であります。私はさように見ておるのでございます。
  109. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 個人中心と政党中心でもってこれを区別し、今度は全く前とは違って新しい法案とおっしゃいますけれども、人間というものはそう飛び切って変ったことをやるものではありません。ドイツの法学を日本が学び、英国の政治を日本が見習う、また米国のゲリマンダーまでもここに入ってくる、こういったような工合に、人間としては一脈の相通ずるものがあって、世界におけるその政治の変遷も、大筋の推移は、決してそんなに離れてぽかんと新しく生まれるものではありません。必ず一つの系統をなし、その小選挙区なら小選挙区は、英国においてはどうだった、フランスにおいてはどうだった、ドイツにおいてはどうだった、アメリカにおいてはどうだった、日本においてもどうだったというような工合に、おのおのその風俗、習慣、その政治情勢等を勘案いたしまして、長をとり短を捨てて、お互いにおのおの改廃をいたしておるものであります。そんなに変ってぽかんと新しいものなどというものが出ておるわけではございません。個人を中心として、あるいは政党を中心としてとおっしゃるならば、世界の歴史を一つお考え願えればわかります。すでに先進国であって政党を中心として猛烈に争って参りましたフランスのごときは、いかがでございましょう。一八七六年から八五年まで、一八八九年から九一年まで、一九二七年から第二次大戦前まで、定員一名の小選挙区にいたしましたが、一度も二党制にはなっておらないのであります。イギリスは大選挙区当時から二大政党制であって、小選挙区制になったから二大政党になったものでないということも、これは私が申し上げるまでもありません。アメリカは、一八四二年全州にわたって小選挙区制を採用いたしましたが、その半世紀も前、ワシントン大統領執政当時から二大政党制でありましたことは、申し上げるまでもございません。日本は、後進国として、常にこれらの政治先進国のあとを追うて、これに適当な取捨を加えて適当な改廃が行われてきておる。この世界の歴史に、日本の先ほど申し上げました政治実情、歴史を勘案いたしまするのに、そんなに新しいものがぽかんと出るわけはございません。どの世界の歴史を見ても、小選挙区制をとったから直ちに二大政党政治が育成強化されるなどということは、これはとうてい結論づけることができぬものでありますが、太田大臣は、小選挙区制をとれば、二大政党制をしくのに、これが適当であるというところの根拠を、いまだ私どもにお示しいただきません。これを十分御説明いただきたいと考えます。
  110. 太田正孝

    太田国務大臣 すべての事象と同じように、政治事象というものも変転して進んでいくものであろうと思います。佐竹委員の言われる通りと思います。しこうして、現下の日本におきまして革新政党と保守政党が対立したというのも、日本の現状において必要性があったればこそ、かようになったと思うのでございます。こういう意味において、その国、その国の特色はございますが、日本の現状においてほんとうにいい政治を出していくのには、大選挙区で小党分立を引き起すような状態よりも、この制度の方が当然いいことであると考えておる次第でございます。
  111. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 私の質問に少しもお答えをいただきません。小選挙区制をとれば、何がゆえに二大政党制を育成強化するに役立つか、こういうのです。
  112. 太田正孝

    太田国務大臣 この前のとき総理大臣も言われたと思いますが、政策が接近してくるというような言葉も用いられました。たとえばある政党が理想的の案をしょっちゅう出す場合に、これに現実的なものを盛ってくるとか、保守的なものが進歩的な政策を出してくるとか、たとえば、イギリスにおきましても、最近におきまして特に政治の運行がいいというのは、労働党の作りました住宅政策、これを盛んにやりまして、労働党は非常な人気を得ました。しかし、保守党がなりましてから、その住宅をよけい作って、しかもタウン・シティのりっぱなものを作りましたために、さらに次の選挙において投票を得た。言葉をかえていえば、保守党が保守党でなくて進歩性の部分を入れたからである。政策の接近というようなことは、次の政権は何をするかということが国民の関心でございますので、従って、そういう意味におきまして、小選挙制度というものは政治の進歩に益するものである、かように考えておる次第でございます。
  113. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 小選挙区制の致命的欠陥は例の死票であります。太田大臣は超過死票を論ぜられました。超過死票というのは、当選した人が余分の票をとった場合で、この場合は、その人が投票者の意見を代表いたしておりますから、これは死票ではありません。その人に対する投票者の意見というものは、その人によって行われております。これに反して、小選挙区制による場合は、多数の票を得ながら落選いたしまして、その票を投じた人を代表する人がなく、文字通り死票となるのであります。それのみならず、少数が多数を支配するという結果さえも生じまして、民主主義の根本を破壊するに至るおそれがあると思います。たとえば、かりに有権者十九万人を一単位といたしますときに、その選挙区の十九万人の約八割に相当するものが投票したといたします。そうすると十五万であります。A候補六万票、B候補五万票、C候補四万票を獲得したといたしますならば、A候補は六万票で当選をいたしまして、B、C両候補の得票九万が死票となります。その結果、六万の少数が九万の多数を支配する結果となります。かような次第でありますから、小選挙区となった後、かりに自由民主党の総得票が四〇%程度であっても、議員数は六〇%から七〇%にも達しまして、国会の三分の二、すなわち六七%以上を占めるようなことはあり得るのでありまして、そうなりますと、有権者の四〇%の少数のものが国会の絶対多数となり、有権者の六〇%の意思が無視されまして、国民の絶対過半数の意に反して憲法改正や再軍備が行われるという結果もあり得るのであります。かような不合理はまことにおそるべき民主主義の破壊であると考えますが、太田大臣はいかにお考えでありましょうか。
  114. 太田正孝

    太田国務大臣 佐竹委員のお言葉のように、死票が出るということは、有権者のとうときものがむだになるわけでいけないことと思います。大選挙区制におきましては割合に死票が少い、特に比例代表をやります場合におきましては、死票がほとんどなくなるのでございます。これはけっこうでございます。しかし、比例代表によって、大選挙区によってやりました場合には、どうしても小党分立になることは、その模範的なものは今日のフランスであろうと思います。しからば、小選挙区になれば必ず死票が非常にふえるかといいますと、実績におきましても、大正八年に小選挙区にしたときに、九年の選挙の結果を見ますと、死票は三割一分でございまして、昨年の中選挙区における選挙の結果は三割二分でございます。しかし、事情も違いますし、いろいろな点を考えなければなりませんが、選挙がほんとうに勝つか負けるか、死票がどうなるかということの一つの中には、制度もありますし、あるいは選挙の方法とか、あるいはその党が非常に評判が悪かったとか、いろいろな問題もございましょうが、総じて申しますならば、大選挙制度により、比例代表によるのが、死票が少い、これは私もそう思います。しかし、比例代表によりまして小党分立する方がいいか、小選挙区によって小党分立せず政局が安定する方がいいか、ここが問題の分れ目であると考えるのでございます。
  115. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 死票の多いことの欠陥をお認めになりました。しかし小党分立にならないからその方をとるのだとおっしゃいました。それだから、先ほど来、たびたび重ねて、小選挙区制をとってもみな二大政党にはならない、小党分立になるおそれがある、現在二大政党になっておるから、それに便乗していろいろなことをやろうとするお考えがあるかもしれないけれども、そうでなしに、根本的に小選挙区制をとったならば二大政党制になるのだという根拠を示せと言っても、お示しにならぬし、日本の歴史を説いても、これに対して逃げておるし、世界の歴史から見ても、小選挙区制が小党分立の実情を示している、日本ひとりそんなことがありっこないのだ、一体どうだとお問いいたしましても、それに対して一向お答えがないのであります。これを明らかにすることなしに、ただ、これに利益があるからわれわれはその特徴をとるのだとおっしゃいましても、われわれはこれに承服することができません。いま一度その点を御説明願いたい。
  116. 太田正孝

    太田国務大臣 私は、日本の現状についても、今までこういう制度をとらないという意味におきまして、今度の制度を申しました。また、諸外国の例におきましても、小選挙制度の最も発展し、その効果をおさめているイギリスのことも申したつもりでございます。お問いに対しまして、私は決してお答えしないわけじゃございません。説明が下手だったと思いますが、私ははっきりかように申した次第でございます。
  117. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 それでは総理大臣にお尋ねいたします。  今回の提案理由の骨子は、政局安定のためというのが最大の眼目でございます。政局安定というのは、どういう事態を指さすものでございましょうか、これを承わりたいと思います。
  118. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 政局安定というのは、いろいろな考え方があると思いますけれども、二大政党を維持するのに小選挙区制が一番いい。二大政党が維持されるということは、小党分立の事態よりは政局が大体において安圧するものと私は思います。
  119. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 私はそんな飛躍的な御説明を聞こうとは思いません。政局安定というのはどういう事態を意味するのか、こういうのです。絶対過半数を占めておれば、政局安定と見ていいのでありますか。
  120. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 その絶対多数を持っておれば、その党派が政局を担当しているときは、政局は安定でしょう。けれども、それだけでは政局の安定ということには足りないと思います。二大政党の維持ということが、一面から見れば政局の安定だと私は思います。
  121. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 日本の現在の政局は安定しておるとお考えですか、不安定であるとお考えですか。
  122. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は現在の政局は安定しておるものと思います。
  123. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 安定をしておるのに、今度のこの法律案の最大眼目は、提案理由説明にありまするがごとく、政局の安定にあるんだとうたっております。あなたが政権を担当しておられる間は、そうして自民党が絶対過半数をお持ちになっているんですから、そうこの際じたばたあわてて、国民の反撃を買いながらも、こんな小選挙区制案を出してこられないでもいいと思いますが、いかがでございますか。
  124. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 見方によれば、現在の政局は安定しておるし、二大政党が対立をしておるので理想型だと思います。けれども、これを維持し育成していくのには、やはり二大政党を維持ができる、育成ができるような制度にした方がいいと思います。それには、小選挙区制を採用しておいた方が、少数党の介在を防ぐことができますから、私はやはり政局の維持に必要だということは言い得ると思います。
  125. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 総理大臣は、選挙制度調査会の第一回総会の席上で、こう申しておられます。「日本の政局の安定ということも小選挙区制から始まるような気がするのであります。これが大選挙区あるいは中選挙区ですと、どうしても第三党というものができて二大政党論というものが民主政治には必要だというような原則の論だと思っておるのでありますが、たとえば自由党と民主党とが一つになり、共産党は別としても社会党の両派が一緒になるとほとんど二大政党になる。二大政党になれば小選挙区になれば二つの政党のどちらかが勝つということになりますから、選挙が四年問続けば四年間というものは政局は安定するということは小選挙区制から当然な結論として出てくるような気がしているのであります。」と述べております。今日も同様にお考えでございますか。
  126. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 大体その通りです。
  127. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 この御趣旨によれば、小選挙区制にしたら、二大政党のうちどちらかが勝つ、それだから四年間は政局が安定すると、こうおっしゃっているが、頭数がそろえば政局が安定すると考えることは、これはとんでもないことだと思うのであります。政局の安定のためには、国会議員の頭数をそろえただけでは目的は達せられません。公明正大なる政治を行なって、国利民福をはかり、世論の支持を受けなければ、とうてい政局の安定というものはあり得ないと私は考えます。しかるに、今や、一般国民生活の安定のために急を要するものは、これを放擲して、小選挙区制のためにうき身をやつしている。一般国民から多大なる非難を受けているのにかかわらず、なおかつこれを押し切ってやろうといたしておりますが、そこに果して政局の安定なるものがあるでございましょうか。
  128. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 理想は日本の政局を安定したいというのでありまして、鳩山内閣の安定なんということは考えていません。
  129. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 あなたの内閣や自民党の内閣のことを聞いているのじゃありませんよ。あなたはそれをお答えにならねでもけっこうです。そんなことを私は聞いているんではない。頭数がそろっただけでは、政川安定というものは欠けるところがありはしないか、頭数がそろっただけではいけない、もっと政局安定のために必要なるものがあると私は言うのです。必要でないというのですか。
  130. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 二大政党というものが確定できますれば、それで政局の安定というものは期待できると言っているのです。たとえば今保守党の内閣ができている。保守党内閣が常にいい政治をやっていけば、保守党内閣の継続期間というものは相当に長引くでしょう。けれども、何か過失があって失敗しますれば、次にかわるものがなくちゃならぬのです。そこで政局安定には二大政党の対立ということが必要だというわけなんです。その二大政党を育成していくのにはどういう制度がいいかといえば、大選挙区は小党分立する傾向がある、だから、小選挙区にして、二大政党の対立を常に存在するようにしたいというのが、政局の大体の見地から見た安定になる、こう私は考えております。
  131. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 あなたは、この間のこの委員会におきまして、井堀委員の質問に対してかようにお答えになりました。「二大政党ができれば、その二大政党の間に政策の近似性ができるということは必要だと思うのです。近似性ができればこそ、政局の推移が非常になめらかにいくと思うのです。ところが、現在におきましては、そういうことはちょっと期待できない。政策について、イデオロギーが違っておりまして、近似性がないのです。」と言っております。二大政党ができましても、政策の近似性がなければ政局の推移がなめらかでない、すなわち、政局安定のためには、イデオロギーが違った社会党などと対立しておったのでは、政局の安定がないという趣旨をお述べになっておりますが、今日イデオロギーの対立いたします社会党が対立しておることは、これは政局の安定を欠いておるものですか。
  132. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は現在のことのみを言っているわけではないのです。それですから、小選挙区制をとれば、大体において長い年月にわたって政局は安定するという意味なんです。現在は、社会党と保守党とがイデオロギーが一致して政策に近似性があるとは思っていないのです。それで困っているのです。お互いに両党が近似性を持つようになることが理想なんです。小選挙区が日本に生まれてくると同時に、社会党も反省をして、両者がお互いに近似性を持つようにしてもらいたいと思う
  133. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 あなたが大へん新しい政治家として私ども尊敬しておりました時分がありますが、ここでこうやって接してお尋ねしてみますると、あまりにも保守反動であることがよくわかります。社会党に近寄れといったって、これは、新しいものが古いものに、そうカビのはえたものに近寄れますか。古いものが新しいものにぐっと近寄ってこなければいけません。老人が少々若いものの意見を取り入れるようにならなければ、国家の進歩発展というものはありません。英国はどうです。あの労働党の政策を、ほとんど保守党の手によってまかなっていっているじゃないか。保守党が労働党の政策をならって、保守党が労働党にだんだんと近寄ってきているのです。あなたの方が少し改心なさって、社会党の方へ近寄ってこられたらよろしい。
  134. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 これは、佐竹君の言う通りに、私があなた方だけに反省しなさいというのは、それは少し礼を失しているかもしれません。お互いにそういう気持になりたい、私はそう申しておるのです。
  135. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 物事が話し合いで双方が寄り合っていこうというのなら、話はわかりますよ。今度の小選挙区制の問題にいたしましても、もっと話し合っていけば、こんな大きな声を立てて対決しないでも事は済みます。あなたは、この間の答弁で、かようにおっしゃっております。日本の二大政党は、イデオロギーが違っていて、近似性がないと述べましたその後に、「近似性のできるということは望んでおりますけれども、近似性がなければ政策の遂行ができないという結論にはならぬはずであります。」と。これは一体何を意味しておりましょうか。イデオロギーが違った社会党と対立していて、政策の近似性を望むことができないからとて、政策遂行ができないわけはない。つまり社会党より絶対多数の頭数をそろえて政策を遂行するよりほかにはない、そのために小選挙区制をしくのだ、そこに政局安定があるのだということを物語って余りがあるのであります。結局、絶対多数で社会党を押し切り、政策を遂行する、そのための小選挙区制の改正だというのでございましょう。これはまさに独裁専制強行の意思表明と見なければなりません。社会党の存在を無視して強行しようとする重大なる意図の表明と見なければなりません。いかがでございましょうか。
  136. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は、小選挙区制にして憲法を改正したいというようなことは思っておりません。ということを申しました。
  137. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 民主政治下においては、政局の安定ということは、ただに政策の近似性のみならず、二大政党の勢力がほぼ対等の状態にあって、一方の政党が政策が行き詰まれば、一方の政党がこれを引き受けて、政権を担当して時局を収拾する態勢が整っておるということが、絶対に必要であると思います。しかるに、今回の小選挙区制案では、政府与党だけが絶対多数を占め、その永久政権を企図しておることは、ただいま申し上げた通り一見明瞭である。これは、二大政党の維持育成とは逆行するのであり、政局を不安定ならしめ、民主政治を破壊するものである。あなたが先ほどからおっしゃっておる通り、自民党と社会党とがイデオロギーが違っておる。だからこれでは二大政党対立の自然の姿ではない、困るのだとおっしゃる。固るのだ。どうするのだ。小選挙区制をやって絶対多数を占めて、社会党が何と言おうと押し切る、これでなければ政局は安定ができないということを、あなたははっきりその心のうちに描いておればこそ、社会党が困るのだとおっしゃっておる。そうでなければ、その言葉は出ません。どうです。お互いに勢力の均衡を保って、あなたの方においてもし政策が行き詰まれば、社会党がいつでも政権を担当する、社会党が行き詰まれば、また自民党が直ちに政権担当ができるように、その勢力の均衡を得るところに、小選挙区制の妙味がなければならぬ。しかるに、今回この小選挙区制案を出したゆえんのものは、イデオロギーが違っておるのだ、社会党の言うことは困る、何とかしなければいかぬ、よってこれを一つやっつけて、こちらが絶対多数を占めて、それでもって自分の思うままにやりたいというのがあなたのお考えにあればこそ、先ほどのお言葉が出ておるのでありましょう。これを承わりたい。
  138. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私にそういうような考え方をしておりません。今あなたのお話の中に、勢力の均衡性ということがありましたけれども、それは選挙できまるのでして、そんなことは四年ごとに変更すればこそ立憲政治の妙味があるのですから、勢力の均衡性なんていうことは、政局の上で考える必要はないと思うのです。
  139. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 それならどうですか。社会党はイデオロギーが違ってまことに困る、近寄ってこないというときに、政局の安定を期するのには、絶対過半数をとることが必要条件でしょうね。
  140. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 それは、多数をとっている方が政権をとるわけであります。多数をとらなければ、政策の実行はできません。しかし、それが三年か四年も続けば、政策の変化もくるだろうし、政府の失敗もあるでしょうから、そこで政局が自然に変転していくわけであります。
  141. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 社会党がイデオロギーを三年も四年も変えなかったらどうです。そうなったら、あなたはどこまでもやりたいでしょう。
  142. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 これは、社会党がどういう政策をとるから保守党としては困るという考え方をするでしょうけれども、多数少数は保守党の考え通りにきまるというわけでもありませんから、選挙のたびごとに国民がこれを決定してくれます。
  143. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 国民がこれを決定してくれるならば、自然のままに国民に決定さしたらよろしい。ゲリマンダーやサラマンダー、ハトマンダーをやって、いろいろ小細工をやって絶対多数をとろうとするところに、世論の反撃があるんだ。あなたは、先ほど、問いもしないのに、絶対多数を占めて憲法改正をやるなんということは考えておらぬとおっしゃった。問いもせぬことをあなたが語るということは、よほど頭へこられている証拠だ。一月二十八日、神田の共立講堂で、あなたはこのような演説をなさっておる。自主憲法期成議員同盟主催の憲法改正演説会における鳩山総理の演説、「私は自主憲法の議員諸君が、今日はじめて国民に向かって、この第一声をひらかれたことに対して非常な敬意を払い、そして同時に祝意を表する次第であります。この運動がだんだんと拡大をしていって、大多数をもって憲法改正が議会を通過するようになることを切に欲しておる次第であります。この憲法が議会を通過するのはなかなか困難なことであります。三分の二以上の勢力をもっていなくては憲法は通過しないのでありますが、社会党も、今日の勢力はまだ微弱ではありますけれども、それでも憲法改正を妨害するだけの力はもっているのであります。もう少し保守勢力の人が熱心になって社会党の勢力をもう少し減殺するようにぜひ御尽力をお願いいたします。」と演説をなさっておる。いかがでございますか。あなたはこういう御演説をなさいましたか。婦人公論四月号にはっきり載っておりますが、このような演説をお認めになりますか。
  144. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 演説は認めます。その通りに話しました。
  145. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 それで初めてわかりました。あなたが、当委員会において、社会党とイデオロギーが違う、社会党は困る、それで小選挙区制を通して、どうしても政局の安定をはからなければならない。——その政局安定とは何か。社会党を押えつけて、自分たちの政策の遂行のできるように、そしてここに言っているように、三分の二以上の勢力を占めて憲法改正をやりたい。よって、政局の安定を——あなたの言う政局安定をここで欲せられている。つまり、その政局安定のためには小選挙区制が必要だと、ここに提案なさっている。あなたは、三分の二以上の勢力を占め、もって政局の安定をさせたい、社会党はまことに困る——先ほども社会党は困るとおっしゃった。そのあなたのお考え方は、二大政党の勢力の均衡にあらずして、三分の二以上を占めて独裁専制をやろうとするのじゃないですか。
  146. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 そういう考えは持っておりません。
  147. 滝井義高

    ○滝井委員 ただいまの佐竹さんの質問に関連して、一、二点総理にお尋ねをしたいのですが、総理は、今の御答弁の中で、二大政党維持のために小選挙区制が必要であるということを申されました。私はこの論は一応正しいと見ております。二大政党があった場合には、小選挙区制というものは、私はこれを維持する最良の武器であるという点については認めます。しかし、小選挙区制が行われたならば二大政党ができるという論は、これは別でございます。そこで、今総理の言った、二大政党維持のために小選挙区が必要だという、この論に立って質問をいたしたいと思います。そこで、これは一応抽象的な議論としてはわかるのでございますが、問題は、現実の日本の状態から問題を進めていかなければならぬと思います。そこで、今の佐竹さんと総理との御議論の過程から見てみますと、現実の日本においては、社会党と民自党との間には、政策の間に非常に大きな開きがございます。これが一つ。第二番目には、現実に、数の上において、議席の上において非常に多くの開きがあるという、この現実を無視してはなりません。従って、こういう現実のもとにおいて、一挙に小選挙区制を実施した結果は、一体どういうことになるかということです。これをまず一つ総理に御答弁願いたい。
  148. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 保守政党と社会党は、今日のところずいぶん政策の差が大きいです。けれども、私はこれは長く続きはしないと思うのです。互いに了解をすれば、同じ日本人が、根本的にそんなに違う考えを持つというのは、よほどおかしいのです。私は大体において近寄ってくるのが将来の趨勢だと思います。
  149. 滝井義高

    ○滝井委員 私は長い先のことをお尋ねしておりません。実は、小選挙区制が実施せられますと、一挙に一つの現実というものが出てくるわけでございます。この小選挙区制が実施せられて、第一回の選挙が行われたその後の状態というものは、依然として社会党と保守党との間には大きな政策の開きがあるというこの現実は、いかに総理が言おうとしても、無視することのできない現実です。従って、そういうことになるとどういう結果が出てくるかというと、この小選挙区制が実施せられた段階においては、二大政党というものは確実に崩壊をしてしまうということです。これは、どう総理が言われようと、この小選挙区制の案から見て、確実に二大政党というものは崩壊をいたしてしまいます。これが今度の国会を通った後において、第一回の総選挙の後における状態というものは、そういうことになると断言してはばからないと思いますが、総理はどう思われますか。
  150. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は、小選挙区制が通りましても、二大政党が崩れるとは思いません。二大政党は、小選挙区制の通過によって、将来にわたって育成されるものと思っております。
  151. 滝井義高

    ○滝井委員 一方が四百名近くになり、一方が五、六十名になるというような現実が起ったときにはそれは二大政党とは実は言えない。現実のこの日本の現状で、そしてこの小選挙区案を適用してみますと、現在こういうことがいわれております。これが実施せられるならば、まず社会党の三分の一というものは、あるいは出てこれるかもしれない。三分の一は非常な獅子奮迅の努力をすると出るかもしれないが、あとの三分の一はだめだ。そうすると、三分の一の社会党に、当選可能だというところのその三分の一に見合う部分が、保守党においてはこの小選挙区に対して不満の分子だという分析の結果が出てくることになる。そうすると、総理の言う二大政党というものは出てこずして、一党独裁の形が、現実のこの日本の保守党と革新政党との政策の開きと、現実の議席の数の開きの結果から、必然的に出てくることに相なるのでございます。これは、どう総理が言われても、総理が言ういわゆる二大政党の発展があり、そして政局は安定されますけれども、その政局の安定のもとにおいては、やがて議会自体が非常な不安定になる。いわゆる暴力的な革命が起る素地を作り、みずからその種をまくことになると思うのですが、総理はその心配はないとここに御断定できますか。
  152. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私はそんなことは考えたことがありません。小選挙区制によって保守勢力が独裁的な勢力を得るというようなことは考えたことはありません。選挙をしてからの話にいたしましょう。そんなことは私はあなたの方の全く杞憂だと思います。
  153. 滝井義高

    ○滝井委員 総理の御答弁が聞えないのですが、一方がいわば鎧袖一触される程度の小党になり、五十名以下の小党になって、しかも一方の保守党のみがいたずらにふくれるという状態は、これは、幾ら総理が独裁にならないとおっしゃっても、独裁の形になっていく。従って、現在のように政策の開きがあり、大きく議席の数が開いておる現段階において、こういう新しい制度というものを実施しようとするならば——しかも、この小選挙区制というものは、なるほど選挙の技術を変えるものでございます。しかし、一たびこれが発動されますならば、その政党と議会政治の方向と性格とを根本的に変えていくことは事実なんです。現段階においてこういう重要な政治的に大きなファクターになる小選挙区制を実施せられるとすれば、当然、総理は、この際、友愛精神を持って、国会を解散して信を国民に問うべきだと思う。これではうやむやな政治だと思うのです。この際どうですか。こういう政党政治の重大な方向を決定し、しかも議会の構成を変えるという法案なんですから、これをやられる前に信を国民に問うというお気持になりませんか。今からでもおそくはないのですが、そういうお気持にならないですか。
  154. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 区制の変更について国民の総意を問いただすという例はほとんどないと思います。
  155. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 原茂君。
  156. 原茂

    ○原(茂)委員 今の滝井君の質問は、今日この重要な選挙制度を変えようとするときに、四面楚歌というか、各世論が、ハトマンダーだといって、区画の変更に関して非常に非難している、おそらく全国民的なふんまんが起っているのを押してまでこの選挙制度を変えようというなら、ここで一度国会を解散して、こういうことをやろうと思うがどうだという、信を国民に問うべきだという質問をしたわけです。そして、そういう前例はないし、考えていないというお答えだったわけです。そうですね。
  157. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 つまり、小選挙区制にするがいいか、大選挙区制にするがいいかというようなことを国民に問うた例は、私は少いだろうと思う。それに従うという考えは今持っておりません。
  158. 原茂

    ○原(茂)委員 過去に一回そういうときがあったと思う。大正九年だと思うのです。ここに選挙部長がいるからわかるのですが、原内閣のときに、いわゆる小選挙区に変えようというつもりじゃないのですが、小選挙制度が第四十一議会できまって、次の四十二議会で冒頭に普通選挙を行うべしという三派の提案が行われたために、それならこの選挙を普選にするかどうかを問おうというので、開会直後に解散を断行している事例があるのです。ですから、前例がないのでなくて、前例があるのですから、やはり、この大きな国民の生活基盤を根底から変えるような、こういう大きな政治情勢の変革をもたらすような、私どもはある種のクーデターと考えておるような、こういう区画割りを押しつけるという選挙制度の改革に附しては、この大正九年の前例にならって、やはりここで国会を解散するということも、あなたの言う民主主義という基本に立つなら、当然考えてもいいのじゃないか、こう思うわけですが、これはどうでしょう。
  159. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 大正九年の先例はあなたのお話によっても違うでしょう。先例にはならないでしょう。
  160. 原茂

    ○原(茂)委員 そういうふうに全部同じでなければいけないということは、ほとんど世の中にはないわけです。やはり大きく選挙制度をとらえて、これを国民の民意に問おうという点を考えた点では、大正九年のは前例になると思うのです。どうでしょう。
  161. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は、小選挙区あるいは中選挙区にするということについて、国民の総意を問う必要はないと思っております。
  162. 原茂

    ○原(茂)委員 中選挙区から小選挙区へとか、こういう選挙制度を大中小に変更するときの選挙ではなかったわけです。さっき私の言ったように、普通選挙の問題、従って、選挙の問題というのは、やはり国民の生活、政治というものを左右する最も大事な基本であるということを考えると、あのときに普通選挙を行うかどうかを民意に問うた前例があるんだから、そっくり同じでなくとも、わが党がさきに解散決議案を出したように、今日ここで堂々と今の中選挙制度のもとにそのまま民意に問うという解散をやるということを、前例がないのじゃない、それと同じものと考えて、もう一度考慮をする余地がないかどうかを聞いておる。
  163. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は、たびたび解散するということはいいことだと思うのですよ。とにかく、国民の意思を問うということは、国民に主権があるといいながら、国民の主権を実行する機会というものは選挙のとき以外にはないわけなんですから、選挙をたびたびするということは、民主政治にはふさわしいやり方だと思うのですよ。だけれども選挙にはやはり弊害がついていまして、あまりにむやみにやることは、理論的によくても、できないのです。それですから、外国の例を見ましても、四年に一ぺんくらいが適当な機会になっていると私は思うのです。日本などは、比例でいきますと、むしろ選挙が割合に多いのです。
  164. 原茂

    ○原(茂)委員 日本では選挙が多い。最近は大体一年に一ぺんくらいやっておるんです。中には、そんな大した理由もないのに、ばかやろう解散までやるのです。そういうことを始終やっておるのですから、非常に少い方でないことはわかっているのです。わかっていますが、今日のこの段階にきて、もし、総理が、その理由では民意に問うという気持がない、こうお考えになるなら、もう一度、あの決議案のときにも主張したように、少くとも今日——先ほども答弁の中に、一応政局の安定ができたと言っていますが、現在の一応の政局の安定ということも、やはり、昨年二月以前の自由党、民主党というものが分れていた当時、勝手にこれが一緒になった。あの二月の選挙のときに、自由党も民主党も、選挙が終ったら合同、統一をします、こういって、選挙民に約束をして、選挙を行なってできたものなら別なんです。そうじゃなくて、あの当時には、自由党は自由党で、とにかく民主党とは一緒にならぬと約束をした。民主党も、自由党とは絶対に一緒になりませんと、総裁がはっきり言っていた。そういうことを選挙の公約にしておいて、そうして自由党は自由党、民主党は民主党で、選挙で多数をとってきて、しかも選挙が終った後に国会の中で勝手に合同をしてしまって、そうして新しい政策をここに打ち出したわけです。ということになれば、今の選挙制度の問題は、ほんとうに民主主義というものを考える建前から言うならば、当然、保守の合同ができたときに、国会を解散して民意に問うて、そうして新党の政策の是か非かの判定をしてもらうべきであったのです。当時すでにやるべきことをやらなかった。もうすでに私はあやまちを犯していると思うのですが、どうですか。
  165. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 代議士すべてがどうということは言えませんけれども、多くの保守党の候補者で、あの選挙のときに保守合同を政策の一つとして訴えた人はずいぶんいます。ここにいらっしゃる方のうちでも、保守合同を唱えて当選された方はだいぶあると思います。
  166. 原茂

    ○原(茂)委員 これは、知らぬはおやじばかりなりと言いまして、実際に私ども選挙をやって、この中にいると思うが、選挙が終ったら合同をいたしますなどということを言った人は、ほとんどいないのですよ。ほんとうに言ったのなら、僕は証人を連れてきてもいい。そんな人はあんまりいない。ところが、自由党の当時の総裁すらも、看板に出しただけなんです。政策の看板に保守合同をうたっただけだ。あなた方個々にはそういうことを公約してなかった。これは間違いのない事実なんです。ですから当時すでにあやまちを犯しておる。しかし、それを個々に約束しておる人があったというなら、百歩を譲ってもいいです。今日この選挙制度を変えようとする目的は、今もるる御説明があったように、絶対多数をとって一党独裁をやろうとか、永久政権を握ろうという考えはないのだ、こうおっしゃった。そうではなくて、二大政党の、しかも近似性を持つものを育成しようというのがねらいで小選挙区を実行するのだ、こういうふうな御説明が今まで何回も行われてきました。  そこで、一つその点について戻ってお伺いしますが、この二大政党育成の意味の小選挙区で選挙をやったときに、総理は先ほど小党分立はないとおっしゃったのですが、もしこの段階においてやると、おそらく保守党が二つに割れたと同じ結果になる、こう信じておるのですが、総理は絶対にそうならないという確信があるのでしょうか。たとえば、一人一区ではいやでもおうでも一人しか公認できない。わが党でも同じ。ところが、私どもの地元に行っても、公認になれなければ非公認でも出るのだ。無所属で出る人がたくさんおりますよ。しかも当選確実な者がずいぶんおる。現役で落ちそうなのはたくさんおる。そういう場合に、公認されない者が五十も六十も出てきて、当選してきた。そうしてまた一つ保守新党を作ったときに——私はそうなるだろうと思うのですが、おそらく小党分立になる。かえって今の方が、自由民主党は曲りなりにも、ごみくたが一緒に固まって、ともかく一つの政党になっておる。ところが、今度公認になれない人が、不服を言って、もし無所属で立って当選してきた、そういう者が一つの党を作ると、これは保守分立になりはしないでしょうか。社会党はその心配は絶対にない。保守にはある。どうでしょうか。
  167. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私はあなたのような心配はまだしたことはないのです。
  168. 原茂

    ○原(茂)委員 あなたは、心配したことがないのだったら、賢明な頭なんですから、今私がそういうことをどうですかと聞いておるのですから、お考えになってみたらよい。絶対ないと先ほどはおっしゃった。小党分立はないと言った。しかし、私は、砕いて、そういった貴党の事情によってはなるのではないかと思うがいかがでしょうか、こう聞いておるのですから、今お考えになって、お答えを願いたい。
  169. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 理論的に考えれば、党員は党議に服するのが義務と思いますので、党できめた公認は、私は大体においてそれを承認してくれるものと思っております。
  170. 原茂

    ○原(茂)委員 だから、現在自民党の党員であっても、公認に漏れたために、自民党を名乗らずして立候補して当選した者、これが固まると保守新党が一つできる。私は必ずできると思う。こういうふうに考えているわけですが、その心配は絶対にないとおっしゃるのかどうか、お聞きしておるわけです。
  171. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私はその心配はないとただいまも答えました。
  172. 原茂

    ○原(茂)委員 その問題はおそらく議事録に残るわけでありますから……。選挙がもし小選挙区で行われたとすると、あとで私はもう一度お目にかかると思う。必ずこれは確信がある。  そこで、その次にお伺いしたいのは、現在のようなはなはだしく党利党略本位の区画割りを基本に置いて小選挙区制を実行することに、国民の世論がともかく圧倒的に憤慨をしておるわけです。この情勢の中で、もし小選挙区で選挙をやると、私は、うっかりすると自民党はごっそり減るのではないか、社会党がうんとふえるのではないかと思う。だんだんそういう希望が持ててきたのです。さっき、滝井君は、社会党が三分の一以下になるという説があると質問したわけですが、どうも私どもは最近になると非常に丸がおおらかになってきました。最初はどうも減るのではないかと思った。ところが、最近の状況から見ると、もう社会党に圧倒的に同情が寄って、三分の一を割るどころか、おそらくわれわれが過半数になるような、そういう心配もあると思うのでありますが、総理はそういう心配をしませんか、どうですか。
  173. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は先のことはよくわかりません。
  174. 原茂

    ○原(茂)委員 いやしくも一党の総裁になろうとする人が——おそらくあしたなろうとするらしいのですが、なろうとなさるような方が、少くとも近く小選挙制度採用しよう、おそらくいつかは選挙が行われようというときに、選挙の結果がどうなるかを全然考えたことがございません総裁では、ここにいる与党がたよりなくてしようがないじゃないかと思う。おそらく、そういった答弁は、とぼけた答弁であって、まじめな答弁でないから、そういうことが言えるのだ。おそらく結果を必ず考え選挙というものを考えなければいけない。そういう点から一つお伺いしたいのですが、もし社会党があなたの御期待に反してふえた場合に、そのふえ方が、やはり半分まではいかない、過半数まではいかないという場合に、この次の国会——選挙の終ったあとです。あとでもう一度この選挙制度を中選挙区なり大選挙制度に変えるというようなことが私は予想できると思うのですが、総理は、先日の答弁に、ずっと何回もこれから小選挙区でやっていくと簡単におっしゃったのですが、もしそういった事態が起きても、小選挙区を自後も続けていくということを今確言できますかどうか、お伺いしたいのであります。
  175. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 小選挙区で選挙をして保守党が負けたから、負けたことを理由にして選挙法改正するというような考え方は私持っておりません。
  176. 原茂

    ○原(茂)委員 私の言っているのは、負けたからじゃなくて、もし、あなたの党が、過半数ではあるけれども、社会党も三分の一より多少ふえたという結果になったとき——もっと端的に言いますと、とにかく、小選挙区制を採用しようとする前提に、あなたの党には何か大きな目的があると私ども考えているわけです。憲法改正などの目的はないのだ、こうおっしゃる。しかしながら、それらも含めた選挙制度を変えなければ実行することができない、保守党の考えている目的、事業を遂行しようというために小選挙区制を採用するのだ、こう私ども考えている。世論もそう言っています。従って、もし選挙の結果私どもが三分の一より少しでもふえた場合に、今の勢力よりまたふえた、しかも過半数でなかったという場合には、おそらく、小選挙区ではいけないというので、中選挙区に変えるというようなことが起きるのじゃないだろうか、こういう心配を一応反対党の私どもはするわけです。従って、その点のはっきりした確答をお願いしたい、こういう意味です。
  177. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 そういう考えを持っておりません。
  178. 原茂

    ○原(茂)委員 もう一つ同じことを聞きたいのです。この結果が、逆に、あなたの方の今考えているように、社会党が三分の一以下になったとする。その場合に、おそらく、今の選挙制度のもとに出た今国会ではできなかった大きな何かをあなた方は国会でやろうとなさる、それが通過した場合に、もう必要がないというので、今度はその必要がないから、いわゆる小選挙制度をまた元に戻すとか、大選挙区にするとかいう、選挙制度をいじるということがありはせぬかどうかということを聞きたい。
  179. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 そういうことを考えておりません。
  180. 原茂

    ○原(茂)委員 その点は確言をいただいておけばいいわけですが、おそらく、私ども考えでは、われわれが三分の一以下になって、現在ではやることのできない何かの事業をやってしまうと、そのあとでまた小選挙区を中選挙制度に直すだろうと考えているわけですが、そういうことはしないという総理の確言があったわけです。しかしながら、はっきり言っておきますが、私どももし間違って小選挙区で一度敗れたものがあるとすると、それは、普通のネコと違って、トラを野に放したと同じように、その次に同じ小選挙区でやったら、圧倒的にわれわれが出てくることは、はっきり私どもは言えるのです。そういった場合にも、絶対、そういう気配が見えても、もう一度小選挙区を中選挙その他に、この制度をいじるということをしないと、もう一度はっきり確言をしていただきたい。
  181. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 そういう理由によって選挙法改正をすることは誤まりだと思うのです。
  182. 原茂

    ○原(茂)委員 そうすると、今私が言ったような理由では変えることはない。そうでない理由がもし何かあるのでしょうか。今のように、政局安定に名をかりたり、二大政党育成に名をかりたりというようなことは、ほかの理由があればこの選挙制度を変えることがあると答弁されたと同じことなんです。そういうことになりますね。
  183. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 そういうことはありません。
  184. 原茂

    ○原(茂)委員 そういうことも考えていないということですが、要するに、いかなる事情があっても、小選挙制度というものは何回でも今後行なっていくのだ、こういうことになるわけですか。
  185. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 そういうつもりです。
  186. 原茂

    ○原(茂)委員 そうだと確言していただいたわけです。  そこで、一つ総理に参考にお伺いしたいのですが、小選挙区制の実施に関して、調査会の委員中村菊男さんがこういうことを言っているのです。これに対する総理の見解を一つお伺いしたいのです。つまり、小選挙区刊施行によって「不当に拡張した多数党の出現ということが——正当ではありません、不当に拡張した多数党の出現ということが、日本の議会政治の前途にとって、果して好ましい結果をもたらすかということ。すなわち必ずしもそうではない。議会政治の将来にとって憂うべき事実がありとするならば、これは考えなければならない。なぜならば、今日社会党は一千万の得票数を持つ政党でありますし、国会側においても、労働組合の組織もありまして、その勢力は決して低く評価できないと思います。その社会党を、小選挙区制の実施によって国会内においても不当に、正当ではありません、不当に少数派に追い込むということになったならば、一種の社会党の存在する翼賛政治のようなものができはしないか。そうなるというと、少数党は暴力をもってしても、闘うとかあるいは国会外の組織と相呼応して闘うということになります。不当に少数党ができたらあるいは不吉な予感がするというのが、日本政治史の例でありまして、たとえば犬養内閣の場合、」これはきっと桜田門事件だろうと思うのですが、「あるいは原敬内閣の場合にそういう例があったと思います。」こういうことを、中村菊男氏が、特に、小選挙区制施行によって社会党が圧倒的に数が減るということから出てくる社会不安に関して、すでに早くから大きな心配をしているわけですが、この治安その他の関係からのそういう心配を今から総理は全然お考えにならないかどうか、そういう心配が多少でもあるかどうかを一つお答えいただきたい。
  187. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は、そういう点は考えたことはありませんけれども、不当に圧迫せられるものができるということは不祥の事件を招くゆえんでありますから、そういうことのないように志さなくてはならないと思います。
  188. 原茂

    ○原(茂)委員 ところが、現在ですら、今の区画割りというものを、強引に、修正もせずに通そうとなさる態度が、自民党という今の議席の数の上にあぐらをかいて、不当に反対党に圧迫をかけ、現在の反対する世論に対しても大きく圧迫を行いつつこれを通そうとする態度だと、私どもあるいは国民は言っているわけです。現在ですら、現在持っている自民党の数だけでも、もうすでに大きく圧迫を行使しているわけです。そういう段階でもやっているのに、われわれが三分の一以下になって、もっと少くなって、あなた方が圧倒的な数を占めた場合には、この趨勢というものはもっと大きく社会全体にのしかかって圧迫を非常に強くかけていく、こういうことがやはり一応考えられると思うのですが、こういうことは全然ない、そういう心配はしないでよろしいと、今から言えるかどうかをお聞きしているわけです。
  189. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 区画削りについてはずいぶん議論がありますけれども、これはわが党のうちにもずいぶん不平不満がありまして、これは了解をすれば大したものではないと私は考えております。
  190. 原茂

    ○原(茂)委員 時間がもうないそうですから、あと一問もう一度お聞きしておいて、次会に譲りたいと思います。  昨日の委員会だと思いましたが、自治庁長官——この公職選挙法改正法律案は現在まだ満足なものではない。満足なものでない一点というのは、附帯訴訟の別に定める規定というものが出ていないのです。従ってその規定をいつ出すかということが質疑されたわけですが、それを出すのは次の選挙までには間に合せますと長官は答えたのです。そこで、総理にお伺いするのは、次の選挙までにこの公職選挙法改正案を完全なものになさるというのですが、次の選挙というものを今からある時期を想定なさっているかどうかが一つ。  もう一つは、いやしくも選挙法を今の民意に問わずにこの国会で成立せしめるというなら、少くとも、小選挙区が成立したときに、やはり何か大きな政治目的をひっさげて国会解散の挙に出るのが常識でありました。今までもそうでした。従って、そういう時期を、総理の立場から今どうお考えになっているか。これが通ったらすぐやるとか、あるいは、附帯訴訟の規定ができるまでは完全な選挙法改正法律が成立したものとは考えないから、少くともそれが次の国会で成立するまでは解散とか選挙はできないのだ、こうお答えになるか、どちらかをお答え願いたい。
  191. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 選挙の時期については、全く白紙で、何も考えておりません。
  192. 原茂

    ○原(茂)委員 そこで、今の附帯訴訟の規定ができないと、この公職選挙法改正というものは完全に成立したものではない、こういうふうに解釈されるわけですか。
  193. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 太田長官の申しましたのは、できるだけ早い機会において作りたいという意味だったそうです。
  194. 原茂

    ○原(茂)委員 それでは総理にお伺いしたい。太田長官のはそうじゃなかったのです。もう少し違ったニュアンスがあったのですが、総理に独自にお伺いしますから、お答え願いたい。連座制の強化というものを前提としてやろうとした調査会案に対して、これを避けて、附帯訴訟の規定を別に設けるときめたわけですから、この附帯訴訟の規定がないと、せっかく答申案ができた調査会の四つの大きな柱のうちの一つが抜けてしまうわけです。従って、この公職選挙法改正という法律案は、附帯訴訟の規定がはっきり国会で成立するまでは、完全なものとして動かさない、使わない、こういうことに解釈してよろしいかどうかと聞いているわけです。
  195. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 法律が非常に複雑なるがためにできなかった、間に合わないという程度で、出さないという意味ではないそうです。
  196. 原茂

    ○原(茂)委員 ですから、間に合わなくて出ないのですから、これが出て成立するまでは公職選挙法が完全なものではないというのですね。そういうことをお聞きしているわけです。従って、実際にこれを生かして使うということも、その附帯訴訟の規定ができるまではできないものというふうに、総理も解釈なさるかどうかと聞いているわけです。
  197. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 選挙の時期ということは少しも考えておりません。法律の方はできるだけ早くするということでしょうけれども……。
  198. 原茂

    ○原(茂)委員 時期というものを考えていないといっても、少くとも、せっかくこれだけのものを作っておいて、何に使うかといえば、選挙に使うのじゃないか。選挙がいつあるかわからないでしょう。総理といえどもわからない。考えていないということは、長くも想像できるし、あすやるということもいえる。期限がないということはそういうことでしょう。従って選挙関係がないということはおかしいのです。これが間に合わない場合には、この改正された選挙法によっては選挙をしないということを、はっきり確言なさいと言っているわけです。
  199. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私はあなたのような解釈をなさるのが正しいと思います。
  200. 原茂

    ○原(茂)委員 私の解釈が正しいとお考えになるわけですね。
  201. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 そうです。
  202. 滝井義高

    ○滝井委員 関連して。もうちょっとはっきり言っておいてもらわなければならぬことがある。と申しますのは、先般の委員会において、次の国会で少くとも今申しました連座制の強化の法律を出すのだ、こういうことをおっしゃっている。次の早い国会だ、こう申しておる。もちろん、その場合には、次の国会という表現のほかに、次の議会の解散までには、こういう表現も用いました。しかし、そういう意味は、終局的には次の国会までだということでございます。そこで、参議院の三月二十八日における森崎隆氏の質問に対して、総理は、この小選挙区制をやるためには、公明選挙の理想を達成するばかりでなくして、二大政党の発展と政局の安定に資するためにやるのだ、こういうことを言っている。そうしますと、二大政党の発展と政局の安定のためには小選挙区がいいのです。同時にまた、一方、少くともそこに公明選挙の理想を達成するとなれば、当然連座制の強化、いわゆる附帯訴訟の問題を同時に立法してこなければならぬことは当然だ。そこで、この附帯訴訟、すなわち連座制の問題と小選挙区制の法案とが一体になって、初めてこの法案というものが完全なものとして動いていく。すなわち、次にあるべき解散というものは、当然、この法案が通れば、その附帯訴訟の法案と一本になってこれが動くのだ。それまでは、この附帯訴訟のつかない、いわば連座制法律がつかないこの区割りの公職選挙法だけではだめだ。こういう意味の質問を原君はやっている。太田長官は、この連座制法律公職選挙法とが一体にならなければ、この法律は動かないのだという御答弁をされた。従って総理もそう考えるか、原君の質問はそういう意味なんです。そう理解して差しつかえありませんか。
  203. 早川崇

    ○早川政府委員 少し誤解があると思いますが、附帯訴訟の規定は、その規定に関する限りは有効に働かない。法律の手続規定ができなければ、ほかの部面は全部両院を通過いたしますと成立するわけであります。そこを誤解のないように願いたい。
  204. 滝井義高

    ○滝井委員 そうすると、あなたの今の御説明は、もちろん公職選挙法というものが通れば成立をします。しかし、これがほんとうに動くためには、二大政党の理想を達成し、政局の安定をもたらし、公明選挙をもたらさなければ、これだけでは不完全だ、こういう御答弁だった。この前太田長官はそう言っておりました。従って、私の質問に関連をして、原君が、最後に、政治資金規正法連座制の問題が同時につかなければこれが動かないのかと言ったら、つかなければ動かないのだ、こういうはっきりした御答弁太田長官からあった。速記録を調べてみたらわかる。だから、その点を今鳩山総理は原君と同じ趣旨だという御答弁があったので、私はそう理解したのですが、どうもはっきりしないところもあったので、大事なことですから、もう一度念を押しておるのです。
  205. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は太田長官答弁は常識的だと思います。
  206. 太田正孝

    太田国務大臣 私のこの前申し上げましたのは、なるべく早く作るという意味におきまして申し上げたのでございまして、前後を通じてさような意味に御了解を願いたいと思います。
  207. 滝井義高

    ○滝井委員 今私の質問した意味に了解します。それに関連して総理にお尋ねしたいことは、もっと具体的に申しますと、政治資金の問題でございます。この政治資金の問題は、やはり連座制の問題と非常に前要な関係を持っております。そこで、政党法ができるまでは見送るのだ、こういう御説明があったのですが、総理の見解はどうでございますか。
  208. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 政治資金に関する規定は、政党法ができなければ手はつけられないという、太田君の説に同意をいたします。
  209. 滝井義高

    ○滝井委員 政党法ができなければ政治資金規正法ができないというのはおかしい。わが党は法案を出しておるわけです。それをお尋ねしておるわけです。
  210. 太田正孝

    太田国務大臣 総理の申されましたのは、政治資金規正法につきまして、いろいろ考えていきますと、この前私が御答弁申し上げました通り、労働組合等の寄付金の関係もございますので、広範にわたることであるから、政党法を作るときに譲りたい、かように申し上げた次第で、総理の言葉の足らなかった点はかような意味と、御了解願いたいと思います。
  211. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 滝井君に発言を許しますが、申し合せの時間があと一分ですから、できるだけ簡略に願います。
  212. 滝井義高

    ○滝井委員 それならば、政党法というのは太田長官いつごろお出しになるのですか。
  213. 太田正孝

    太田国務大臣 政党法は、その組織、成立、運用等非常に広い範囲にわたりますので、今せっかく検討中でございます。
  214. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 島上委員
  215. 島上善五郎

    ○島上委員 簡単にお聞きいたします。  総理大臣は、昨年十二月二日の施政方針演説の中で、こういうことを言っておる。「民主政治は断じて力による政治であってはなりません。」「新内閣は絶対多数の上に立ちながらも、少数党の意見を十分聞いて民主政治を守り、どこまでも謙虚な態度で国民の声に耳を傾けまして、国民とともに歩む明朗な政治を行う決意にあふれております。」こういう演説をしている。私は、このお考えは今日もなお変りないと思っておりますが、もしそうだとするならば、政府提案の御説明を聞きましても、革命的といわれるこの大改正に当って、社会党の意見を十分に聞く、こう言っておりますから、十分に聞くというお考えが今日なおあるかどうかということと、もう一つは、謙虚な態度で国民の声に耳を傾ける、こう言っている。今日、この選挙法に対して、少くとも小選挙区に賛成する側においても、政府提案に対してはごうごうたる非難、反対です。これは、鳩山総理も、新聞をお読みになり、ラジオに耳を傾け、あるいは国民の投書等に目を向けるならば、いかに強い非難、反対があるかということは、これは否定できない事実だと思うのです。このまさに四面楚歌のうちともいうべき非難の中にある法律に対して、国民の声に謙虚な気持で耳を傾けるという態度に変りないとするならば、この国民の声に耳を傾けて考え直すという気持があるかどうか。反対の意見に耳を傾けて、政府提案した案に対して考え直す気持があるかどうか。私は当然あるべきものだと思いますが、その点を伺いたい。
  216. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は、謙虚な気持をもって諸君の意見、国民の意見に耳を傾ける気持は、今日も少しも変っておりません。ただ、諸君の側においても、ずいぶん誤解があるだろうと思っております。区制について非常な御反対ですけれども、区制についての反対は、私はそんなに猛烈に反対せられる理由はないのではないかという考え方を持っています。
  217. 島上善五郎

    ○島上委員 私の質問に対して、答弁のピントがはずれている。私が誤解があるかないかは、今後審議をしていけばわかりますが、私どもは誤解はしておりません。国民の声に耳を傾ける。国民は反対しておる。大多数は、圧倒的多数は反対しておる。これは厳然たる事実であって、あなた方が何とおっしゃろうと、与党が何とおっしゃろうと、これは動かしがたい事実なんです。おそらく、この国民の声は、日を追うて、この委員会の審議が進行すればするほど、国民の声は高い非難、反対になって参ると私ども信じておる。こういう事態の中において、国民の声に耳を傾けるということは、単に傾けて聞くだけではなしに、その強い非難、反対が高まっておる現実に徴して考え直すということでなければ、井を傾けたことになりません。考え直すというお気持があるかどうか、それを聞いておる。
  218. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 国民がさようにこの案に反対しておるとは、私は思いません。
  219. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 申し合せの時間も参りましたから、鳩山内閣総理大臣に対する質疑は、本日はこれで打ち切ります。
  220. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 それでは質問を続行いたします。  提案理由中に、小選挙区制のもとにおいては、同一選挙区において同一党派に属する候補者各個人が当選を相競うという欠点がなくなるのであります、とありますが、これは一党内における規律の問題であって、これを選挙法にまで持ってきて規定するということはどうかと思いますが、いかがでございましょうか。
  221. 早川崇

    ○早川政府委員 提案理由説明に、小選挙区の目的の一つに、同じ党の候補者が相争うということを避けたいということがありまして、これは、小選挙区をしきますると、当然そういうことがなくなります。現在の中選挙区ではそういうことがある。それは二大政党の発展、政局安定のために害がある、こういう意味でございます。
  222. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 私が質問をいたしますのは、そういうことは一党内における規律の問題だというのです。すでに今日までいろいろの法案が出ておりますが、今日までいろいろの選挙法改正が行われておる際の質疑応答の中に現われておるところを速記録等によって調査いたしてみたのでありまするが、いかに大選挙区制であっても、事実上すでにもうおのおの自分の一つの選挙区というものを各自が大がい持っておるのだ。そうして、それは、各政党内において、自然と一つの区画というものができておるのだ。これは尊重すべきものであって、それにあまり変更を加えたりなどして、一つのものを削ってこちらへ持ってくるなどということがいけないということは、もうずっと何十年も前の選挙法改正の速記録の中などにも現われております。事実大選挙区の場合におきましても、ある程度、どこはだれの出身地域であって、あそこのあたりが彼の地盤であるといったようなことはおのずから定まっておりまして、一党内において数人の立候補をする者があるといたしまするならば、それらの調整は一政党の間においてこれをなすべきことであり、これを選挙法という法律の力をかりて規制する必要はない。一党内における規律の問題であると私ども考えておるのでありまして、これを特に法制化いたしますることは、一党内における統制力のないことを表明して余りあるものであって、まことに好ましくない。私的なことをこうやって公けの法の力によって規制するというがごときは、穏当を欠くのではないかと思うのでありますが、いかがでございますか。
  223. 早川崇

    ○早川政府委員 御説の趣旨はまことにごもっともでありまするが、今回におきましては、特に公認制というものを設けましたゆえんは、政党本位、二大政党を育てたいという意味でございまして、もしそれが必要ないのならば、それに越したことはないのでありますが、公認制を設けたわけであります。ただし、政党員が立候補いたしましても、政党の名を名乗らなかった場合におきましては、われわれといたしまして特にこれに罰則を付さなかったというのは、今佐竹委員の言われましたように、党の内部規律の問題だからという意味で、罰則を設けなかった次第であります。
  224. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 政党が発達をいたしまするならば、政党政党との関係は、おのずからまたその間に一つの規律ができると同時に、一つの政党の内部においても、決して侵し合ってはならぬという一つの統制はきかなければならぬのです。内部の統制ができないからといって、法律をもって規制し、そのことが他の政党影響するがごとき、そういった事態を呈しますことは、私は、よろしくない。その党その党でおのおの内部における規律をすればそれで足りるのじゃないか、かように思うのであります。  次いで、提案理由説明にこうあります。「選挙はおのずから政党の掲ぐる施策を中心として相争われることとなります。従って、国民としては、選挙権の行使に当って、簡明直截に政党の主張を判断することができるようになり、政策本位に立脚する真の政党政治の発達を促すことになるとともに、公明選挙の理想をも達成することができると信ずる」と、かようにあるのであります。まず第一に承わりたいのは、政策本位の戦いになるとおっしゃいますけれども、区域が狭くなればなるほど、情実因縁の戦いとなりまして、政策などというものはほっちらかして、もう個別に、個人的情実因縁をたよって、その一票をいかに獲得するかに腐心をするようになります。これは、私どもの多年の経験に徴して、私はそうだと考えます。決して選挙区が小さくなったから政策本位の戦いになるとは考えないのでありますが、当局のお考えはいかがでございましょうか。
  225. 早川崇

    ○早川政府委員 お答え申し上げます。  小選挙区になりまして、一対一の黒か白か、憲法改正反対か賛成か、端的に政策本位の選挙運動になりまするので、その面におきましては政策本位になろうかと思います。ただし、御指摘の情実因縁をたよっていくという欠点はございますが、われわれは、選挙民というものの良識を信ずるがゆえに、政策本位という点における長所の面を重点に置きまして、小選挙区を考慮いたした次第であります。
  226. 島上善五郎

    ○島上委員 今の問題に関連してですが、昨年二月の総選挙の得票の事実を見ても、あるいはその前の前の選挙にさかのぼって調べてみましても、一目瞭然たる事実は、社会党の得票はその選挙区全般にわたって大体平均して出ている、保守党の場合はその人の住んでいるところにごそっと固まって出ている、こういう傾向がはっきりしている。このことは、社会党に対する支持票はおおむね政策に対する支持票である、保守党の場合は、その人がそこに長いこと住んでおる、生まれたところである、門地門閥、おやじの墓がある、家がある、要するに一口に言う地盤というやつが大きくものを言う。何といっても、今日の日本の選挙界の実態というものは、保存党の諸君は政策中心ではない。保守党の諸君は政策中心でないということを物語っておると思う。従って、この事実から考えられますことは、選挙区が小さくなればなるほど、そのいわゆる因縁情実その他の地盤というものがものを言って、政策に対する支持というものはかえって薄らぐという危険性がある。政府が本案を提案する理由とは逆の現象を生む。これは今日の選挙界しおける事実に立脚して考えるのではなくて、事実がそういうことを示しておると思う。これをどうお考えになりますか。
  227. 早川崇

    ○早川政府委員 一がいに一般的には申せないと思いまするが、革新票が普遍的だというのは、一つは組織の関係もございましょう。また保守党議員が固まるといいますが、全体的に合せますると、票は冬郡市において平均するという傾向があるのでございまして、今度の小選挙区の改正に当りましては、もう一つ先ほどの佐竹委員に対する答弁に付加いたしたいのは、政党本位の広範な活動ができることになっております。従って、それは政策争いということになりまするので、小選挙区になったならば政策はだめになるというお考えは、国民が情実よりも政策を選ばないという前提に立ちますればお説の通りでありまするが、われわれは、国民の良識を信じて、小選挙区になりましてもそういうようにならない、むしろ政策本位でいく、かように考えておる次第でございますので、御了解願います。
  228. 島上善五郎

    ○島上委員 私は国民が政策を選ぶように将来ならないとは思っておりません。国民の良識を私は疑ってはおりません。しかし、現在の事実というものは、あとで私は資料を持ってきてちゃんと示してもいいのですが、保守党の諸君の票は、おおむね、今の広い選挙区でも、その人の住んでおる町とか市とか郡とかに集中的である。社会党の票はおおむね平均して出ておる。これはちゃんと資料として事実があります。この事実は否定することができない。私はこれを言っておるのです。将来選挙民は政策を選ぶようにだんだんなっていくでしょう。そしてわれわれもそれを歓迎する。それならば、今度の選挙法で、個人の立会演説をやめたり、政党の立会演説も青年団その他の新聞社の立会演説も一切やめるというが、政党政党が政策中心に争うとするならば、立会演説をますます盛んにして、候補者が少くなったから——立会演説は多数候補者の場合にはやるけれども、少数候補者の場合はやらぬと言っているけれども、何も候補者だけでなくてもよろしい。各党から一名ずつ代表者を出すという方式だって考えられる。そういう政党の立会演説ということも考えられる。青年団や新聞社の立会演説も考えられる。今日国民がどれだけ立会演説を歓迎し希望しておるかは、これは私ども資料を要求しておりますが、立会演説の実施状況の資料が出ますればはっきりする。おかしい。言うことがまるで一貫していない。政策中心にやるならば、政策中心で堂々と国民に訴えなければならぬ。そういう有効な手段をやめるということは矛盾しておると思うのですが、その点どうですか。
  229. 太田正孝

    太田国務大臣 久しく中座いたしまして申しわけございません。ただいまの立会演説の問題は、たびたび私も御答弁申し上げたのでございますが、中選挙区の現状におきまして立会演説の有効なることは幾たびか申し上げた通りでございます。小選挙区になりますると、その地域が大体におきまして四分の一見当にもなりまするし、その個人の演説以外に、今度は政党運動というものは広範囲に認められておりますので、十分有権者各位に政策を申し上げることができ、また、狭い区域でございまするから、有権者各位がもう片一方の意見も聞くことができます。しかも、候補者は、二大政党については、今度の法律のごとくでありましたならば、一人区におきましては一名ずつの争いになりますので、この点は、中選挙区下における立会演説と小選挙区下における場合とは、私は違って考えておることと、よその国の例を申し上げるのはどうかと思いますが、たびたび申し上げた通り、長年やっておるイギリスにおきまして、小選挙区下において立会演説をとっておらないというのも、私どもの参考の材料の一つでございます。
  230. 島上善五郎

    ○島上委員 私はただいまの御答弁では納得しません。この問題はもっと掘り下げて質問したいと思いますが、きょうは関連質問ですから、あとは留保してこれでやめておきます。
  231. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 政策本位になると申しますけれども選挙区がこまかくなればなるほど、どうしても情実と因縁の戦いでなければ勝てません。たとえば、前に翼賛選挙のありましたときに、推薦されました人々は、各小さな区画を割りまして、事実上もう小選挙区制になっている。区画を向うが割り合ってきた。そのときはもう政策や何かは問題ではありません。全く情実因縁、戸別訪問その他直接の利害関係があるいろいろな手段によってのみ、向うさんは選挙をいたしました。私は、あの苦い経験を通じて考えましても、選挙区が小さくなって政策本位になるとは容易に考えられません。少くとも日本の現状においては困難であると考えますが、この点については、いま少しく私どももまた掘り下げてお尋ねをする機会を留保いたしておきたいと考えます。本日は、時間がありませんので、これに関連をいたしまするもう一つの事項をお尋ねいたしまして、終っておきたいと考えます。  それは、最後に、「公明選挙の理想をも達成することができる」、こうあります。小選挙区制にすると、どういうわけで公明選挙になるとお考えでございましょうか。区域が狭くなるので、警察などが徹底的に取締りをする、そしてごく狭い範囲内におけるところの地方の実情をよく知っておる見通しのきく状態のもとにやるので、買収やその他が行われることが困難である、それで公明選挙になるというふうにお考えでありましょうか。私どもといたしましては、選挙区がこまかくなればなるほど、買収供応が猛烈になる、実例がこれを示しておると考えておるのでございますが、いかがでございましょう。
  232. 早川崇

    ○早川政府委員 お答え申し上げます。  佐竹委員の言われましたことは一面の真理もあろうかと思いまするが、同時に、小選挙区になりますると、選挙民が非常に身近に監視ができるのでございます。また、警察その他も、広範囲選挙区と違いまして、一々取締りも徹底する、こういうことも言えるかと思います。さらに、もう一つは、これが非常に重要な問題でありまするが、すべてが政党本位になりまするので、従来の個人本位の選挙運動が非常に弱くなる。従ってそういう面からも工合がよいということになるのではないか。このたびの選挙法改正では、政党中心の二大政党的な改正でございます。その点は誤解のないように願いたいと思います。
  233. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 大正九年五月の選挙をごらんなさい。あれは小選挙区でやりました。小選挙区でやったあと、どうでしょう。流血の惨を見、買収、供応実にこれよりはなはだしきはないという実例を見たのであります。小選挙区制になって特に描き出されたものは、流血の惨であり買収供応の激烈さであったのであります。これはすべての文献に特筆されております。小選挙区制には必ず流血の惨を伴うおそれありと何人も書いておる。買収供応が盛んになるとだれもが論じておるのであります。政党本位になるからというが、それはあなた方は政党本位のお考えでありましょうけれども、立候補者は、個人本位で、おれの区はということになる。こうなりますと、その地方のボスは、もう小選挙区制を見通して早くも選挙運動を始めております。早くもいろいろなお世話をやいておる。香典議員も出ておれば、あるいは犬が生まれたからといってお喜びを言うなどと鈴木さんが言っておりますが、そういった連中が早くも出てきておる。これは小選挙区制につきものとされておると思いまするが、この事実をいかにお考えでございましょうか。
  234. 早川崇

    ○早川政府委員 大正九年の選挙は、御承知のように、不当な官憲の圧迫、また選挙民の数も少かった結果、現在とは比較にならないのでありまするが、もちろんいろいろな弊害もございますけれども、われわれといたしましては、あくまで選挙民の良識を信ずるという立場において、何でも買収によって投票するというように信じないのであります。民主主義は選挙民の良識を信ずるという根本に立ちまするので、多少の弊害よりも、この制度をとることによりまして候補者の監視もでき人物もわかる、また、大正九年と違いまして、非常に政党の公認制度を認めまして選挙法では有利にいたしております。そういう面から弊害は防げるのじゃなかろうか、かような見地に立っておるわけであります。
  235. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 問うに落ちず語るに落つるとはそれであります。あなたのおっしゃる通り、官憲の圧迫はもちろんありました。小選挙区制になったら必ず官憲の圧迫が激しくなります。官憲の圧迫のもとに、時の政権を持っておる者は、警察官擁護のもとに買収が盛んに行われる。しかして野党に対しては徹底的な検挙が始まります。大正九年の選挙はまさにそれです。ゆえに野党はこれに死をもって対抗した、おそるべき事態を、私は想起いたします。私はその程度の答弁では満足いたしません。と同時に、大臣の答弁も得たいし、こういった面について、また総理大臣の御出席も願いまして、もっとゆっくりと掘り下げて御質問をいたしたいと存じます。本日は、あとまだ質問を留保いたしまして、この程度にとどめておきます。
  236. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 次会は明後六日午前十時より開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後四時三十九分散会