運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1956-03-30 第24回国会 衆議院 公職選挙法改正に関する調査特別委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年三月三十日(金曜日)     午前十時四十分開議  出席委員    委員長 小澤佐重喜君    理事 青木  正君 理事 大村 清一君    理事 淵上房太郎君 理事 松澤 雄藏君    理事 山村新治郎君 理事 井堀 繁雄君    理事 島上善五郎君       相川 勝六君    池田 清志君       加藤 高藏君    椎名  隆君       田中 龍夫君    中馬 辰猪君       中村 寅太君    二階堂 進君       福井 順一君    藤枝 泉介君       古川 丈吉君    三田村武夫君       森   清君    山本 利壽君       佐竹 晴記君    鈴木 義男君       竹谷源太郎君    滝井 義高君       中村 高一君    原   茂君       武藤運十郎君    森 三樹二君       山下 榮二君    山田 長司君       川上 貫一君  出席国務大臣         内閣総理大臣  鳩山 一郎君         国 務 大 臣 太田 正孝君  出席政府委員         法 制 局 長 林  修三君         法制局次長   高辻 正巳君         自治政務次官  早川  崇君         自治庁次長   鈴木 俊一君         総理府事務官         (自治庁選挙部         長)      兼子 秀夫君  委員外出席者         総理府事務官         (自治庁選挙部         選挙課長)   皆川 迪夫君         衆議院法制局参         事         (第一部長)  三浦 義男君     ————————————— 三月三十日  委員内藤友明君及び菅太郎君辞任につき、その  補欠として池田清志君及び中村寅太君が議長の  指名で委員に選任された。     ————————————— 三月二十九日  小諸市の選挙区に関する請願(西村彰一君紹  介)(第一七一四号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  公職選挙法の一部を改正する法律案内閣提出  第一三九号)  政治資金規正法の一部を改正する法律案中村  高一君外三名提出衆法第二一号)  公職選挙法の一部を改正する法律案中村高一  君外四名提出衆法第二二号)     —————————————
  2. 小澤佐重喜

    小澤委員長 これより会議を開きます。  前会に引き続き、内閣提出公職選挙法の一部を改正する法律案中村高一君外三名提出政治資金規正法の一部を改正する法律案中村高一君外四名提出公職選挙法の一部を改正する法律案、以上三案を一括議題として質疑を継続いたします。島上善五郎君。
  3. 島上善五郎

    島上委員 私は、政府提案の基礎になっております選挙制度調査会問題について質問を昨日始めましたが、本日もその問題について質問したいと存じております。それには、どうしても総理大臣おいでにならぬと当時の責任者がおりませんので、総理大臣出席委員長にぜひとお願いしておきましたが、きょうは総理大臣おいでになりますか。
  4. 小澤佐重喜

    小澤委員長 きょうはまだはっきりきまっておりませんが、きのう理事会でお話し申しました通り、できるだけ出席するように努力いたしております。しかし、その分だけはとりあえず残していただきまして、その分以外の、総理大臣がいなくてもよろしい部分だけを、まずぜひ続行をお願いしたいと思います。
  5. 島上善五郎

    島上委員 努力しておりますが、まだわからぬでは、あまりに誠意がなさ過ぎると思う。きのうまだわからぬというのなら話はわかりますけれども、きょうの委員会でまだわからぬということでは納得がいかぬ。この問題は、これは総理部分、これは長官部分というように分けにくい部分がある。どうしても関連する事項が非常に多い。そこで、私は、きのう執拗に、ぜひ総理おいでを願いたいということを要求したわけですから、さっそく連絡をして、きょう午前中に来てもらえるかどうかはっきりしてほしかった。それでは、総理おいでにならないのは残念ですが、お見えになったら、総理に関連する事項はさらに重ねて御質問するようになるかもしれませんが、これはあらかじめお断わりしておきます。  選挙制度調査会は、何も昨年初めて設けたものではなくて、その前にも作ってありました。たしか昭和二十六年に答申があったはずです。ところが、昨年あらためて選挙制度調査会を作って、それに政府諮問しております。太田長官はその当時自治庁長官ではなく、川島君が自治庁長官でしたが、この速記録太田長官もお読みになったと思いますので、伺います。この選挙制度調査会一体政府は何を諮問したのか、それが明確を欠いているところがある。何を諮問したのかという点をまず第一に伺いたい。
  6. 太田正孝

    太田国務大臣 ただいまお示し速記録を見ましても、「衆議院議員選挙について先に小選挙区制の採用に関する答申があったが、右に関する選挙区その他選挙制度改正について貴会意見を問う。」こう出ておる。この通りと思います。
  7. 島上善五郎

    島上委員 諮問事項文章は確かにその通りです。ところが、これについて若干疑義があって、中村委員並びに瀧田委員川島長官並びに会長質問して、その質疑応答速記録に載っております。小選挙区制を実施するについての必要な事項答申するように、こういうふうにも解釈されておる。それで、たとえば当時選挙制度調査会委員であった川島さんの答弁を見ますと、「諮問趣意は「選挙区その他選挙制度改正について」ということでありまして、」とあって、小選挙区ということにこだわっているわけではない。これは前に選挙制度調査会から小選挙区の答申があったということを書いているだけで、今度は選挙区その他選挙制度に関する諮問をしております。選挙区と申しますれば、現行選挙区も選挙区だし、大選挙区も選挙区だし、小選挙区も選挙区だということに解釈されるわけですが、この点は諮問文章答弁との間はどうも明確を欠いておる。この川島委員が、十四ページの下段のまん中ほどで、「「選挙区その他選挙制度改正について」ということでありまして、」と答弁しておるこれがほんとうであるかどうか、これを伺いたい。
  8. 太田正孝

    太田国務大臣 この速記録を拝読いたしますと、最初の演説において、鳩山内閣総理大臣は、希望的意味でありましょう、「政局の安定のために小選挙区が必要であるというようにお考えになりましたならば、どうかそういう制度をこしらえて頂きたい」と言われております。そして諮問事項が出まして、ただいま島上委員の申されたる通りの問題が議題となり、鈴木義男委員森委員中村委員の御質問がありまして、川島委員のお答えの中で、「諮問趣意は」といって、一応今まで二十六年以来の経過を申し、「中村さん御承知のとおり単に小選挙制度のみでなしに、一般選挙制度について御審議を願いたいと思う」と言っている。私、これを読みましたときに、初め総理大臣の意向はそういう希望的意味を持っておりましたが、諮問事項意味を解釈して、当時の川島長官は、単に小選挙区のみでなしにということで、そうしてだんだん議論が発展していきまして、あらゆる場合のことが説かれたように存じます。今のは十四ページの下段の四行目のところにある文字でございます。
  9. 島上善五郎

    島上委員 この十四ページの下段川島委員答弁を読んでみましても、どうも前段の方と後段の方が食い違っているようです。川島委員答弁の一番最初を読んでみますと、中村委員質問に答えまして「この諮問の趣旨は「選挙区その他選挙制度改正について」ということでありまして、前に背いてあります「先に小選挙区制の採用に関する答申があったが」ということは、これは先ほども申し上げましたごとく二十六年に当調査会から一応答申がありまして、当時政府はこれを採用しないでそのままじんぜん日を送ったわけでありますからして、その経過を一応申し上げまして、なお諮問の項目はあとに掲げたわけでありますからして、中村さん御承知のとおり単に小選挙制度のみでなしに、一般選挙制度について御審議を願いたいと思うのでありまするが、」こうなっておる。それから、その次の十六ページに、瀧田委員質問して「先ほどから御意見のような御質問のようなことでありましたが、私今回初めて委員になってみて、はっきりしない点を一つ明らかにして頂きたいと思いますが、先ほど総理大臣のごあいさつで小選挙区制がいいと思う、こういう総理大臣の御意見をただここにお述べになって、私たちがその後の意見は自由なのか、それともそれが明確に一つ前提条件となって、与えられた課題というよりもむしろ前に与えられた一つのわくということで、決定というふうになって今後の審議が進められるのか……。」こういう質問に対して、今度は、有馬会長が、「それは先ほどから言われてお分りでしょ。それに拘束せられないというのです。」こう答弁している。つまり、瀧田君は、小選挙区というワクが与えられて、その中で議論をするかどうなのか。こういう鳩山総理大臣のごあいさつから見ると、そういう感じを受けるかどうか。これに対して、有馬会長は、いや、そうではないのだ。そういうことには何ら拘束されない、こう答弁している。これを見ますと、十四ページの川島委員答弁冒頭にありますように、「選挙区その他選挙制度改正について」ということであると、私どもはこういうふうに解釈するわけです。当時、中村委員森委員質疑に立って、直接関係しておりますからよく御存じだと思いますが、私は、この答弁にも前後若干食い違いがあるように感じますし、小選挙区というワクが与えられて、その中で諮問してほしい、こういうものなのか、そうではなしに、選挙区制その他一般選挙制度に関する諮問ということであるのか、この点をもう少し明確にしてほしいわけです。
  10. 太田正孝

    太田国務大臣 ただいま速記録をごらんになった通りに私も感じました。最初諮問事項の中には、「衆議院議員選挙について先に小選挙区制の採用に関する答申があったが、右に関する選挙区その他選挙制度改正について貴会意見を問う。」というのが諮問事項でございます。そこで、これを解釈いたしまして、川島君は、過去のことを言ったという意味を、「経過を一応申し上げまして、」と言ったのであろうと思います。しこうして、その意味は、二十六年八月と申しますと、二十七年、八年、九年と、昨年のことでございますから、三年余りの月日を経ておりますので、これに関するという意味におきまして、もっと範囲を広くして、小選挙制度がいいか悪いか、中がいいか、大がいいか、速記録を拝見しましても、そういうように拡充されまして、いろいろな議論がお出になったことと思います。総じて申しますれば、御解釈につきまして島上委員と同じでございますが、ただ、前置きに、「右に関する」といったことの経過を、川島当時の長官が、「経過を一応申し上げまして」と申した理由であろうと存じます。
  11. 島上善五郎

    島上委員 私が今の問題を伺いましたのは、どうも、この選挙制度調査会は、各界各層代表者あるいは学識経験者を網羅して、国民の世論を正しく反映させて妥当な答申を受ける、それを政府が尊重する、こういうふうに見せかけてはおりますが、事実は、そうではなくて、もう一定政府の期待する方向もきめてしまって、それに当てはめるように、この選挙制度調査会を運んできたというような気がしてならない。そこで今の点を伺ったわけですが、なぜかと申しますと、この選挙制度調査会記録の一番最初委員の顔ぶれが載っておりますが、これを見てもわかりますように、世間的に小選挙区制の論者ではっきりしている人が、三十八名の中で、政府委員をも含めてですが、二十七名ないし八名いる。はっきり申しますと、社会党から出た四名と、労働組合代表と、そのほかには小選挙区に反対議論を持っている者は二名か三名なんです。ほんの申しわけ的にそういう人々を加えて八割も九割も小選挙区の意見を持っている人をもって構成したということ自体が、選挙制一般に対して、中選挙区も大選挙区をも含めて、選挙区制問題を検討してほしいというような諮問であるとすれば、こういうような構成をすること自体からして、もう非常に矛盾であり、無理があり、一定意図を持っておった、こう疑われても仕方がない。この点に対して太田長官はどのようにお考えですか。
  12. 太田正孝

    太田国務大臣 委員会構成は、今お示し通り委員が三十五人と、臨時委員が五人となっておりますが、実際に選ばれたのは臨時委員は三人だけでございます。その三十五人は、国務大臣といたしまして自治庁長官国家公安委員会委員長、法務大臣、これはいわゆる関係大臣と申し上げるのでございましょう。行政機関といたしましては、官房長官一人入っております。それから、国会関係におきまして、当時の自由党二名、民主党二名、当時の社会党——こういう言葉を使っていいかどうか、左派のお方が二人、右派のお方が二人、緑風会一名、九人になっております。学識経験者は二十二名でございまして、学界が五人、団体が入っておりまして、それは経済界が二人、労働団体が二人、地方団体一人、具体的に申しますと、地方の知事の関係代表者を選んでおりますが、それが五人、評論家その他また広い意味というか狭い意味というか、学識経験者が十二人、臨時委員政務次官と、法制局長官と選管の関係において、具体的に申しますと、松崎さんが入っております。こういう意味におきまして、広くこの選挙制度についての人を網羅いたしたのでございます。
  13. 島上善五郎

    島上委員 今御答弁のあったような、そういう形で出したとしましても、この中で圧倒的多数、八割も、小選挙論者が、だれが見ても当初からわかっている人が入っていることは、もう明白です。ですから、私は、どうも初めから政府考える小選挙区制の方向へ持っていく意図を持っておったのではないかという疑いが、どうしても晴れない。というのは、その後の運営について関連があるのです。この速記録を見、さらにきのう配付された小委員会記録を見ましたが、何回かの総会をやりました後、起草委員会を設けた。この起草委員会を設けます前に、総会選挙区制に対する多くの論議をしておりますが、その論議の中では、小選挙区に賛成の者、反対の者とはっきり出ております。そして小委員会を設け、さらに起草委員会を設けましたが、その起草委員会というものは初めから小選挙区の区割り委員会なんです。私は、起草委員会というものをかりに設けるとしましても、そこでは小選挙区の区割り検討すべきであろうし、現行選挙区における人口の移動による人口のアンバランスの点も考究すべきであろうし、また、もし大選挙比例代表制採用するとすればどうすべきであるか、こういうように各般にわたって検討するという運営をすべきものだと思うのです。先ほど冒頭質問したように、選挙区制に対する諮問であるならば、あらゆる選挙区制について検討を加え、起草委員会においてもそういう方面に対して具体的に区割り等について検討すべきものだと思うのです。しかるに、一般論を少しばかりやってから、小委員会起草委員会と直ちに小選挙区制の区割りの問題に入ってしまった。こういう運営からして、一瀉千里に小選挙区の方にぐんぐん引きずっていった。——引きずっていったと言うと語弊があるかもしれませんが、そういう感じが私には深い。こういう点に対して太田長官はどういうようにお考えになりますか。
  14. 太田正孝

    太田国務大臣 今起草委員会に至るまでの経過についての御質問でございました。その経過を簡単に申しますと、総会をどういうふうにやったか、それを小委員会においてどういうように受けたか、どういう結論が出たか、しかる後に起草委員会にどういうように渡したか、この三段を経ていると思うのでございます。  総会は六回開きまして、小委員会に移りましたのは昨年の九月でございます。その小委員会起草委員会との関係はどうなっておるかというと、「選挙制度全般に関して種々検討を加え、昨年十二月二十日、小選挙制採用に関し、「一人一区制として止むを得ざる場合には二人区制を加味するものとする。」との結論を得」ました。それが小委員会結論です。すでにこのときに小選挙制度について一人一区制ということを原則とし、例外として二人区制を設けることができるという決定のもとにその結論を得まして、小選挙区の具体的区割に関して起草委員会起草を委嘱した。速記録にもその通り出ているのでございまして、総会から小委員会、その小委員会決定が小選挙制度における区割り原則まできめて、そこで起草委員会起草を委嘱した、こういう順序になっておるのでございます。
  15. 島上善五郎

    島上委員 私は、当時委員でなくて、あと委員になったのですから、当時の事情については実はこの記録にたよるしかないわけなんです。森委員並びに中村委員から伺えばなおはっきりするわけですが、当初の諮問にありますように、選挙制全般についてということになれば、その選挙区制については異論があるわけです。小選挙区を採用すべしという意見と、現行選挙区でいくべしという意見、その他の意見もある。最後答申の際にも小数意見としてそういうものがあるようですが、そうだとするならば、私は小数意見区刷り等についてもやはりもっと検討すべきものだと思う。この点において、私は、やはり何といっても片手落ちがある、小選挙区制の政府の期待する案を出すために非常に無理しているという感じが深い。さらにもっとひどい無理は、六回の総会を開いて、小委員会起草委員会と移されてから——八月ですから、約半年以上です。半年以上起草委員会並びに小委員会を持たれておるようですが、この記録によりますと、これは当然のことですが、会長はこう言っております。百十八ページの下の方です。「小委員会進行模様によりましては、やはり適当なときに総会中間報告というようなものもしていただく。で、総会と小委員会との連絡をとっておきたいと思います。これだけ小委員会希望を申し述べて、それでは本日この諮問案に対する御意見を承わることにいたします。」これは私も委員会運営としては当然だと思うのです。これだけの大問題をやるのですから、小委員会が、小委員会中間報告をして、総会との間に十分連絡をし、意思の疎通をはかるという運営にするのが当然だと思う。ところが、今回はそういう中間報告を全然しなかった。三月十日に小委員会及び起草委員会に付託されてから初めて総会を開いて、しかもその三月十日の総会でもって一切きめてしまおう、こういうような運営であった。この運営自体に私は非常な無理があると思うが、この点長官はどのようにお考えでございますか。
  16. 太田正孝

    太田国務大臣 お言葉通り「小委員会進行模様によりましては、やはり適当なときに総会中間報告というようなものもしていただく。で、総会と小委員会との連絡をとっておきたいと思います。」と会長自身が言われておるのでございます。運営自体につきましては、会長のもとに、政府とは独立な意味においてやっておるのでございまして、それをどういうようにとは、私の批評する限りではございませんが、事実なかったということは、やはりお言葉のように中間報告すべきものだったと思います。しかし、これは私運営関係ではございませんので……。
  17. 島上善五郎

    島上委員 太田長官運営責任者でないことは私も知っております。ただお考えを聞いているのです。それで中間報告をすべきものであったと御答弁になりましたが、私もそうだと思います。これは本委員会にかかる前の調査会のことでございますが、選挙制度調査会といたしましても、これだけの大問題を答申する以上は十分に慎重を期さなければならぬ、この速記録にもありますが、中村委員の、読売新聞その他では、何か非常に政府が急いで、期日についても制約をしているようにいわれているがどうかというような質問に対して、当時の川島委員は、問題が問題であるだけに十分慎重にやってほしい、期日については特別の注文はありません、こう言っている。これは私も当然だと思う。それなのに、中間報告もしないで、しかも十日の、七カ月ぶりで初めて開いた総会で一挙にきめてしまおうというような運営をする。しかも一挙にきめてしまおうというのに一番熱心であったのは、政府与党から出ている議員の諸君でございます。そして、どういうつもりか、おそらく採決を押し切るつもりだろうと思うのですが、夕方政府側大臣諸公委員がぞろぞろ顔を出して、こういうような無理な運営——私は、この間には、政府圧力と申しますか、与党圧力と申しますか、政府及び与党の非常な無理がこの背後にあったように感じられる。当初は期日については特別の注文はありませんと言っておきながら、十日に諮問して、政府が、十三日か十五日か知りませんが、国会に出す前にどうしても答申させよう、それの期日に合せるために非常に無理をしたという感じが、どうしても私ども当時の委員としてははっきり感じられる。政府はそういう方針でおられたかどうか。
  18. 太田正孝

    太田国務大臣 政府としては圧力を加えたことはございません。
  19. 島上善五郎

    島上委員 政府としては圧力を加えないとおっしゃいますが、とにかく、与党の星島委員、たしか小澤君もお見えになったと思いますが、採決採決だと、こういうことをしきりに言っておる。とにかく、初めて出た委員が、経過を十分に聞くこともできない。それから、御承知のように、蝋山委員は、小選挙区制には賛成であるが、死票が非常に多いので、死票救済について何らかの考慮をしたかという質問をしましたが、考慮が払われていないということが明確になって、それでは私がこの死票を補う具体的な案を提案するといって、その日のうちには間に合わなかったので、ようやく、私どもの努力で、十日の総会採決などという無理をしないで、次の総会を開いて、その翌日の日曜をはさんで翌々日総会で、蝋山委員から今言われた死票救済のきわめて建設的な提案がされた。ところが、翌々日総会では、われわれの質問がいまだ中途である、蝋山委員から新しい提案がされた。そうすると、そばにおったたしか星委員だったと思いますが、蝋山さんの案は非常に建設的な案であるが、どうも出す時期が今ではおそい、こういうようなことを言っておる。こういうことからしてもおかしいと思う。出す時期がおそいということは、政府がかり国会に十五日に出すということを前提としてそのことを考えれば、そういうことにもなるでしょうけれども、そうでないとするならば、十二日に出そうが、十五日に出そうが、出す時期がおそいという言葉が出るはずがない。どうも、私は、圧力をかけないとおっしゃいますけれども政府提案期日に間に合わせるために非常に無理をしたということは、私はおおいがたい事実だと思う。  そこで、最後総会状況ですが、これは太田長官委員として出ておったから伺いますが、あの最後総会の運び方、私どもは、十日の総会もこの記録にあります会長が言った中間報告ないしは第一回の報告総会だ、こう受け取っておる。ところが、十日に取終結論を出そうとして無理をして、さすがにそれはできなかった。十二日に、とうとう、太田長官状況は御承知だと思いますが、押し切ってしまった。あの総会運営は、どう考えても正常な運営だとは思えない。あれで、選挙制度調査会は十分に審議を尽し、正常な運営をして正常な結論を出したもの、こうお考えになるかどうか、この点を伺いたい。
  20. 太田正孝

    太田国務大臣 当日の委員会が混乱をきわめたことは、まことに残念なように私も思っております。しかし、会の運営につきましてたんのうなる有馬会長のもとに規則に基いての運営でございまして、私は有効なる答申であったと存じます。
  21. 島上善五郎

    島上委員 会の運営たんのうなら、あんなにあわてふためいて却下するなどということは言うはずがない。採決の仕方、ここにきのうもらった速記録があるから……。(「ニュースに出ておる」と呼ぶ者あり)ニュースに出ておることはちっとも否定しませんが、蝋山委員から今私が言ったように新たな提案がされておる。それから社会党鈴木委員質問の続行中なんだ。しかも、問題の多い選挙区割りについては何ら質問していなかった。これから選挙区割りについて質問しようとしているときに質問の続行中に何をとまどつたのか、小林武治という委員は、討論打ち切りという動議を出した。質問続行中に一体討論打ち切りという動議がありますか。太田さんあなたもそこにおったはずだ。それは、私は知っているが、選挙制度調査会会長の責任です。それを太田長官はとぼけて、会議運営たんのう有馬会長のやったことであるから間違いない。——何がたんのうですか。質問続行中に討論打ち切り、私はこういうことは議事運営の常識としてはあり得べからざることだと思う。一体、これはたんのうであり、正常な運営だと、長官はお考えですか。
  22. 太田正孝

    太田国務大臣 私は有馬さんについての全般的の意味で申し上げましたので、この委員会の運用には手落ちはなかったと、事実上の最後の判断をいたしたのでございます。
  23. 島上善五郎

    島上委員 私はその最後の判断の今まだ途中のことを聞いておる。私不信任案を出しました。それは当りまえです。質疑続行中に討倫打ち切りなんという、そういうとんちんかんな動議を採用するなんて……。そこで不信任案を出した。これは当りまえです。質疑続行中に質疑打ち切りの動議なら話はわかる。しかしそれとてもなすべきものではない。肝心の選挙区割りにこれから質問しようとしておるときですし、政府は、ちゃんと、期日については無理な注文をつけておりません、問題が問題だけに慎重に審議してほしい、こう言っておるのですから、私は何も太田長官を責める意味じゃありませんけれども、会の運営に責任を持っておる会長としましては、まだ十二日の六時で、十二時までやればまだあと六時間あるし、十三日にも十四日にもやれるから、どうしても十二日の六時までに結論を出して答申しなければならぬという理由はどこにもない。そうだとするならば、肝心な区割り質問にこれからぼつぼつ入ろうとしておるときに、討論打ち切りなんという動議を採用するということは、全く議事運営の常識をはずれておる。無軌道です。常軌を逸しておる。だからこそ、私どもは不信任案を出したんだ。常軌を逸したそういう運営をするから、不信任案を出した。不信任案を出された以上は、なるほど選挙制度調査会運営規則にはない。不信任案を出されたら、有馬会長はどぎまぎしちゃった。ところが、自治庁のその辺におる役人かその手下か知らぬけれども、紙きれを持ってうろうろしておる。規則にないから会長やりなさい、こういう連絡をしたらしい。あわてて、却下します。まるで裁判所みたいだ。これは、どうしても、あと会長並びに関係委員の方にも来てもらって、もう少し聞かなければならぬ問題がありますけれども、こういう運営なんというものはおよそ常識はずれです。(「法案について聞け」と呼ぶ者あり)これが基礎なんです。これに基いておるんですから、この基礎から聞いておかなければわからないじゃないか。こういうような不信任案を突きつけられて、却下します。——そんな運営はどこにありますか。規則には確かにないけれども、この選挙制度調査会には、選挙制度調査会の円滑なる運営をするために、小委員会起草委員会のほかに運営委員会というものがある。この場合は、暫時休憩をして、運営委員会に諮って、この扱いをどうするかという相談をするのが当然なんだ。それをしないで、却下しますと言った。自由民主党の諸君といえども、議事運営の良識を持っている方ならば、こういう運営について、まことにけっこうだなんて言えないと思う。太田長官はこういう運営が正常だと今でもお考えかどうか。私は、太田長官こそ議事運営についてはたんのうの士だ、良識を持っていると思うので、まさかこういう運営を正常な運営だとお思いにならぬと思います。お伺いいたします。
  24. 太田正孝

    太田国務大臣 この委員会運営につきましては、先ほど示しのような選挙制度調査会会議規則がございまして、それによって運営していることは、私が申し上げるまでもないことでございます。しからば、具体的において鈴木委員質問をしようとしたこと、及び蝋山委員につきましては動議であるか意見であるかという二つの見解がありまして、一向速記録ではわかりません。わからないことを私が判断することはできませんが、動議であるか不明であるということと、また動議採決の問題も同時に起ってくるのでございますが、その席におった多くの人たちの中で、小林委員から、特にもうこの辺でという動議が出たのでございます、そうしますと、委員長といたしましては、ここに判断をされまして、どういうように処理していいかという一般委員、多数の委員の傾向を見まして、ここに動議を採決に諮ったことと思います。しこうして、島上委員から当時出された不信任案の問題につきましては、会議規則におきまして、普通の規則と違って、会議規則にないことは委員長これを定むと書いてありますので、おそらく、その意味におきまして、会議規則にないこの問題、普通のわれわれ国会運営等においていたしまする不信任案動議を先決するというような問題と違って、この規則によって、規則に定めなきことは委員長これを定むというその御趣意に基いて処理したことと思います。しかしこれは私の解釈でございます。
  25. 森三樹二

    ○森(三)委員 関連して、ただいまの太田長官の御答弁を開きまして、まことに驚き入ったのであります。議事規則にない事項は、会長これを決するのだから、会長の専断でやってもいいという、議会人として当然考えられないような御発言、太田さんがこういう非民主的な御発言をされたことは、まことに私は遺憾にたえないと思うのであります。これはすなわち鳩山内閣の非民主的な議会運営代表した御発言といわざるを得ないと思う。いやしくも、この規則にない事項につきましても、委員会運営する会長自身の地位を否定されるような重大な不信任案が提出されました以上は、一応みずからその身を退いて、だれか代行者に譲るとか、あるいは、一旦休憩をしまして、議事運営をいかにするかということを相談してなさるのが当然であると思うのです。しかるに、太田さんが、この席上で、その際会長が不信任案を出された場合に、どうこうというような規定がないから、専断してやったことは当然だというような御発言をなさったことは、まことに民主政治家としてとらざる態度だと思うのでございますが、重ねて私は太田さんに対して御答弁をお願いしたいと思うのです。
  26. 太田正孝

    太田国務大臣 私は、ただいまも国会における運営と違うということを申し上げたと同時に、おそらくやったのはそうじゃないかという解釈をあとでつけ加えておいた通りでございます。多分この条項によってやったのではないかという解釈をしたのでございます。
  27. 森三樹二

    ○森(三)委員 あなたは、そういう解釈で言ったではないかというような答弁をされておりますが、最初からあなたはこういう御答弁をなさっているのではないですか。自分はその委員会出席して、当日の委員会運営はまず適当な措置であったと思うというような答弁先ほどされているのではないですか。しからば、あなたは、あの委員会等を通じて何回御出席になったか。しかも、あの当日の委員会には、あなたは朝から御出席になったわけではありませんでした。夕方の採決まぎわにちよこちよこやつて来て、当日は採決に加わったにすぎないじやありませんか。あなたは三月十二日の委員会あるいは三月十日の委員会に、当初から御出席になっておったものではないと思いますが、その点についてあなたはあまりにも無責任な御発言をなさっておられる。あなたが採決に来た瞬間的な舞台を見て、あの運営の方法が妥当であったというような御発言をなさることは、あまりにも委員会を軽視されている。その実態を十分究明なさらない上に立って、あなたは御発言なさっておられる。これについてもう少し反省的な態度をあなたはおとりになることが当然だと思いますが、あなたのこれについての御所見をお伺いしたいと思います。
  28. 太田正孝

    太田国務大臣 私の出席したのは会の終りごろでございますが、その前の運営委員会状況も、そのつど開かれた総会及び小委員会状況も、関係の事務当局から詳しく聞いておりますので、私自身が出なくても、内容につきましては承知しておったのでございます。その直前までの状況も私は聞いておったのでございます。なまけたというよりも、私のからだが許されなくて、出席がおそかったのでございまして、会議運営の内容につきましては、関係の事務当局からよく承わっております。
  29. 森三樹二

    ○森(三)委員 そういう御答弁をされればされるほど、太田さんという方はますます非民主的な方だと思う。かつて、一昨年の六月三日には、衆議院の議長であった堤さんが、廊下でもって会期延長を宣告され、そのとき本会議場におった議員諸君が賛成したというような、そういう詭弁を弄された。そうして重大なるところの会期延長が決定された。今、あなたが、自分は出席しないけれども、そのつど委員会模様あるいは運営委員会模様を自分の部下から詳細に聞いているから、自分としてはその委員会運営は非常に妥当に行われておったのだというような、あなたがその場におってみずから見聞しておったと同一のような意見を申されることは、まことに遺憾にたえない。しかも、あなたは、ほんとうに採決まぎわにおいでになって、それに賛成の挙手をしたにすぎない。そのとき、あなたは、どうして委員会全体の運営が本来の姿でもって正常なルールに基いて運営されたというようなことが断定できますか。しかも、あなたは、立ち会わないで、片手落ちな、つまり自分の部下から単なるそういう報告がなされたことをもって、委員会が正常に運営されておったというような専断的な御見解を表明されること自体太田さんの責任は非常に重大なものと考える。これについて重ねて太田さんの御意見を伺いたいと思います。
  30. 太田正孝

    太田国務大臣 私は、自分の部下の報告を、手落ちないものと思いまして、また今でも信用しております。会の運営につきましては会長のもとにやっているので、私の委員としての判断は、会議の規則によってやっていると判断いたしたのでございます。部下の言葉を疑うというようなことは私にはできませんです。
  31. 森三樹二

    ○森(三)委員 私は、今関連質問ですから、その問題については、私の番がきてから十分質疑応答をいたしますが、この際一言申し上げておきたいのは、島上君もまたあとで言われると思いますが、速記録の衝に当りました者の名前を一応言っておきたいと思います。三月十二日のこの最後調査会の速記者は、参議院の速記課の長野博明という青年と、それから高柳和代という女性の方と、この二人が速記に当っておった。私は念のためにこれをちゃんと手帳にメモしておいたのでありまして、その当時混乱をして速記者が速記をとることができなかった。そこで、私どもはその速記の状況を見に行ったところが、全然私はこれは聞き取れないから書けなかったと言っている。ところが、その当時自治庁の者が来て、大いに書けと言ってさしずしておった。そこでもって、わが党の中村委員が飛んで行って、けしからぬと言ってこれを差しとめた。ただいまこの速記の内容を見ますと、とにかくいろいろな経過はありますが、最後のところへきて、「有馬会長 賛成多数(拍手、議場騒然)これで答申案は確定いたしました。本日はこれをもって散会いたします。」というようなことが明らかに記載されております。私はこれはあとで問題にして徹底的に究明しなければならぬと思うのでありますが、太田長官はこういうような点もお調べになっておるかどうか、御答弁を願いたいと思います。
  32. 早川崇

    ○早川政府委員 ただいま森委員の、速記者に自治庁の職員が来てこういうふうに書けと言った事実はありません。実はあの速記を破られはしないかという心配で、私の秘書が速記者をむしろそういう不祥の事態が起らぬように見守ったということはありますけれども、これを破られないためにやった、こういうことであります。
  33. 森三樹二

    ○森(三)委員 もう一問。早川政務次官もおったというお話がありましたが、われわれは当時それは何者かわからなかったのです。何者かわからないので、その舞台の場面からいって、警察官でも、私服でも入れたのではなかろうかというような疑いさえ持ったのです。そうして中村君がその青年を追っかけていったような事実があったのでありまして、当時できていない速記がこのようにできたように改ざんされているということは、これは私は重大な問題だと思う。これは後日徹底的に追及することにいたしまして、私は一応これで打ち切って、島上君に質問を続けていただきます。
  34. 島上善五郎

    島上委員 委員長、定足が少し足りないようですが、確かにございますか。定足が足りなければ、私ども、大事な問題ですから、質問することはできません。それと先ほど総理大臣出席を……。
  35. 小澤佐重喜

    小澤委員長 今、あなたの方の理事の方と相談して、一時から三十分だけ……。     〔「定足が足らぬぞ」「休憩々々」と呼び、離籍する者多し〕
  36. 小澤佐重喜

    小澤委員長 十二時で休憩しますから、それまで質問を継続して下さい。
  37. 島上善五郎

    島上委員 先ほど太田長官の御答弁を聞いておりますと、これは、私お断わりしたように、選挙制度調査会運営の責任を直接太田長官に問うているわけではないのです。ただ、規則にないことは会長が何をやつてもいい。——なるほど、規則は昭和二十四年八月二十七日に作られたきわめて簡単な法三章的なもので、雑則に「この規則に規定のない事項は、会長がこれを決する。」こうなっておる。ところで、運営委員会を作るということも、この規則にはないようですが、運営委員会を作るということは、この規則にないような問題を相談して円滑に進めるために、運営委員会というものを作ったんだと思うのです。運営委員会を作った当時の記録をまだよく調べておりませんが、当然そうだと思う。いやしくも、会長が自分の不信任案を出されて、これを不信任をされた当の御本人が却下するなどということは、繰り返すようですが、どう考えても常識はずれです。自民党の諸君といえども、腹の中では私の言うことに共鳴しておると思う。(発言する者あり)それは当然運営委員会に諮るべき問題です。ですから、これは、太田長官がどのようにお答えになっても、第三者が聞けば非常に無理があるということはきわめて明白です。その無理があるということは、この速記録に出てきておる。先ほど皆さんのところへ小冊子を配ったはずでれけれども、この速記録は、先ほど森君が関連質問でなさいましたが、明らかにこれは改ざんです。さっき二名の速記者の名前まであげられましたが、私もその速記の一番最後のところを見ました。どこまで書いてあるかと念を押して聞いたところが、島上委員会長の不信任案を出したところまで書いてあります、そのあとは一切わかりません。(発言する者あり)——とにかく私が不信任案を出した。そうしたら周章ろうばいして、その他の委員諸君が、不信任案に賛成する諸君も反対する諸君もありましたが、多少議場が騒然としました。この速記録はきょう配られる前に自治庁から私どももらったものです。私はまだきょう配られたものを目を通しておりませんから、何とも申し上げられませんけれども、この速記録は一体当日の二人の速記者の速記に基いて作ったものであるか、だれか他の者が聞いてこういうふうにしたものであるか、この根拠を伺いたい。
  38. 兼子秀夫

    ○兼子政府委員 お答えいたします。速記録についてお尋ねでございますが、御承知のごとく、最終日の総会は非常に混乱いたしまして、私どもも果して速記録にどう出ているか心配しておったのでございます。その後、衆議院の地方行政委員会におきまして、中村高議員から、当日の速記録をすみやかに提出しろ、このような御要求がございまして、すぐ調べましたところ、ようやく速記の反訳が終ったばかりでございまして、活版にせずに昨日お手元にお配りいたしましたガリ版の印刷物のような末尾だけを、地方行政委員会の方に御提出いたしたのでございます。その後活版にいたしまして、本日総会速記録ができ上りましたので、お手元にお配りしたような次第であります。従いまして、速記から見ますと、一部不明瞭な点はございますが、最後の小委員長報告通り可決するというような点は出ておるわけであります。一切速記録には手を入れるべきものでないという考えを持っております。私どもも厳重にいたしております。
  39. 島上善五郎

    島上委員 これは、この場所ではそういう答弁で済むかもしれませんが、あとで事実が明瞭になりますから、私はその事実を明瞭にして、もう一ぺんやはりこの問題については質問しなければならぬと思う。というのは、さっき言ったように、二人の速記者に、最後どこまで書いたかということを聞いたら、島上委員会長の不信任案を出したところまでは書いてある。その先は騒然としてわかりません。ちゃんと森委員が二人の速記者の名前まで調べた。そのとき早川君の秘書が——あとでわかったことですが、早川君の秘書が飛んできて、もっと書きなさい、もっと書きなさい、こういうばかげたことを言っておる。それで、君はだれだと言ったら、倉皇として脱兎のごとく逃げ去った。そういう場面があった。そういうふうにしてこれは改ざんされたものです。この改ざんされた事実は後ほど明確になりますから、それはいずれ証人を呼んで明確にしたいと思いますが、それにしましても、改ざんしたものならもう少しちゃんと体裁を整えて改ざんしそうなものですが、この改ざんも、ずいぶんあわてて改ざんしたものと見えまして、まるでなっておらぬ。私は、この速記録は改ざんしたもので不当なものですが、一応これに根拠を置いて伺います。「小林委員」これは参議院の小林武治君ですが、この速記録をそのまま読んでみますと、「こうして聞いておりますと、ほとんどもう討論に入っておりまして(「何を言うか」「討論じゃない、質問だ」その他発言する者多く議場騒然)われわれとしては十分御意見も出たように存ずるのであるのでありまして、(「まだだまだだ」「質問中だぞ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)先ほど蝋山委員から御意見が出たのでありますが、この御意見がもし……ば修正の動議、あるいはこれをまた出すということであれば動議としておはかり願いたい。一向議事も渋滞ばかりしておりまして進行しておらん、かように考えますので、その点を一つ議事進行として申します。」こうなっておる。そうしますと、これをまともに見ますと、一体討論打ち切りの動議を正式に出したとも思えない。また蝋山委員の動議をお諮り願いたいということも言っておる。この発言自体も何だかさっぱり意味がわからぬ。こうして、有馬会長はどう言ったかというと、「ただいまの小林委員の、討論を終結して蝋山委員の修正意見を……(議場騒然聴取不能)賛成お方の挙手を願います。」「〔賛成者挙手〕」、これじゃまるで蝋山委員の修正意見が挙手多数で可決されておる。一体これ何ですか。(「間違いなし」と呼ぶ者あり)間違いない。そのあとは、会長は「挙手多数……」「会長の不信任案は議事規則によるというと……」「会長これを決します。……不信任案は却下する。」そうして「蝋山さんにお尋ねしますがね……」と、こう書いてある。「小林委員 私の動議が出たことをおはかりいただきましたか。」ところが、小林委員の動議には、これによりますと、質疑打ち切りの動議じゃなくて、蝋山委員の修正案をお諮り願いたい、こうなっておる。それを受けて、会長が、「ただいまの小林委員の、討論を終結して蝋山委員の修正意見を……賛成お方の挙手を願います。」こう言った。これを見ますと、蝋山委員の修正意見を議場に諮っておる。挙手多数できまった。これはそういうふうになる。政府は、政府に出された答申案を、この総会最後で有効に可決したものと解釈しておるようですけれども、これから見て、政府答申した答申案が正規に議事として採決されておるかどうか、どこからそういう解釈ができるか、その御解釈を承わりたい。
  40. 太田正孝

    太田国務大臣 私も、この速記録を読みまして感じた点は、先ほど、「蝋山委員の修正意見を……(議場騒然聴取不能)」とあって、「賛成お方の挙手を願います。」「挙手多数」この「修正意見を……」だけで何もなかったならば、この「蝋山委員の修正意見を……」と、こう解釈できるのであります。「(議場騒然聴取不能)」わからない。わからない事実をこうだと推測することも、こうでないと推測することも、私はできないことと思います。しこうして、この答申案の全体を通じての考え方は、最後におきまして取りまとめての小林委員の、動議をどう思うか、また小委員長報告に対する賛否を問われるような動議を提出いたしましたがどうかというのに対しまして、「賛成多数(拍手、議場騒然)」とありますが、聴取不能とはございません。「これで答申案は確定いたしました。」と、こうあって、私はこれを正しいと考えておるのであります。  なお、同僚の政務次官に対しての秘書の問題がございましたが、これは政務次官から一応お話をお聞き願いたいと存じます。
  41. 早川崇

    ○早川政府委員 島上委員から非常に誤まったお話がございましたが、あの当時は、議場が混乱をいたしまして、ややもすれば、速記者の、何といいますか、速記自体が破棄されたりするようなおそれがあったので、秘書が自発的にこれを守った、こういうことでございまして、速記を改ざんしたり、さらに書けと言ったような事実は毛頭ございませんので、この点を明らかにいたしておきます。
  42. 鈴木義男

    鈴木(義)委員 関連質問。ただいま、太田長官が、こういうふうに想像することができるということで、ただいまの採決は正しいというふうに御答弁になったのでありますが、かりにこの速記が不完全なものであるといたしましても、条理上から見て、蝋山委員から一つの修正案を出しておるのであります。それを議題にして採決した形跡がないので、もしそれを文字通り読むならば、蝋山委員の修正意見賛成お方の挙手を願いますで、賛成者挙手、挙手多数だからして修正案は成立したと解釈すべきものと思いますが、議場騒然を理由にしてそういうことはできなかったのだというならば、蝋山委員の修正案は何ら顧みられずして終っておるということになる。その点は明らかに違法なる会議進行でありまして、当日私もその点を強く主張いたしたのでありまするが、これはあくまでも一つ明らかにしていただかなければ、この答申が有効であるか無効であるかということを判断することができないのであります。そこで、その点について、蝋山委員の修正案を無視して可なりというのが太田長官の御見解であるかどうかを承わりたい。
  43. 太田正孝

    太田国務大臣 ただいまの問題につきましては、先ほど私が申し上げました通り蝋山委員の御意見という言葉が小林委員言葉の中にございます。私の申し上げたのは、それが動議であるか不明であること、動議としての文書も今日ないこと、わからないのでございます。私は動議を提出したかどうかということを断定しておりません。それから動議採決のことも不明でございます。何も書いてないのだから甲とも乙とも言えないと申し上げたので、私はこれに対する断定をしたのではございません。さように御答弁申し上げます。
  44. 鈴木義男

    鈴木(義)委員 蝋山委員の大切な発言は聴取不能として書いてないのであります。私はそばにおりましたので聞いたのでありまするが、自分はこれを修正動議として出したい思うのであります、そういうことを申したことが書いてない。とにかくその動機は無視されたということは、速記録の上からも明らかでありまするから、よくその点を明らかにしておいて、後日のために留保しておきます。
  45. 島上善五郎

    島上委員 蝋山委員の修正の動議の取扱いも、今鈴木委員が言われたように、きわめて不当であるのであります。それから、当然小林委員の動議というものが何の動議であるか不明確であるんですから、これを見ましても、小林委員の動議が質疑打ち切りの動議であるのか、討論打ち切りの動議であるのか、蝋山委員の修正動議を諮ってもらいたいという議事進行であるのか、これは一貫しない。わからぬ。そこで、今申しましたように、蝋山委員の修正動議の扱いも不当であるし、当然、ここでは、最後にもし会長が正規に譲与を運営するとしますれば、質疑及び討論打ち切りをちゃんとけじめをつけて、小委員会答申案を議題にいたします。こうしてその答申案について賛否の討論をして、しかる後に採決をする。あれだけの大事な問題を正規に議題にもしない。賛否の討論もしない。こういうことで、一体正常な運営、正常な答申考えられますか。有効、無効の議論ももちろんありますが、私も、少くとも良識あるものならば、これは正常な運営でないということは明白だと思う。議題にし、賛否の討論をしないのですから、正常な運営でないということは明瞭であると思う。これに対する太田長官のお考えを聞きたい。
  46. 太田正孝

    太田国務大臣 小林委員言葉に、「かような事態でありますので」という、当時の状況の判断であろうと思います。「この程度でもって」という、その事態に応ずる言え方を持ちまして、小委員長報告に対する賛否をとられるような動議を提出いたしました。動議の出た以上につきまして、有馬会長が措置をとったことと思います。
  47. 小澤佐重喜

    小澤委員長 この際暫時休憩いたします。午後一時から再開いたします。     午後零時四分休憩      ————◇—————     午後一時十八分開議
  48. 小澤佐重喜

    小澤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を継続いたします。島上善五郎君。
  49. 島上善五郎

    島上委員 鳩山総理大臣には伺いたいことがたくさんございますけれども、本日は総理の都合で三十分だそうでございますから、たくさんあります伺いたい事項の、ほんの一部について、きょうは伺っておきます。  総理大臣は、昨年五月、選挙制度調査会諮問をしております。その第一回の調査会の席上で、ごあいさつをされておりますが、そのほんの一部を引例しますと、「私は選挙法を改正して小選挙区制にするということは非常に必要なことだろうと思っておるのであります。選挙は小選挙区になりますと、とにかく選挙費用も少くなるし、選挙が割合に楽になると思いますので、同時に日本の政局の安定ということも小選挙区制から始まるような気がするのであります。」その他言っておりますが、このようなあいさつをされておりますが、選挙制度調査会に対する諮問は、小選挙区にしてほしい、小選挙区を前提として、それに必要な区割りその他の改正事項諮問されたのであるかどうか。その点を、ごあいさつから判断しますと、そういうように解釈されるのですが、そのように諮問されたのであるかどうか、伺います。
  50. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 衆議院議員選挙につきましては、ききに小選挙区制の採用に関する答申がありましたが、右に関する選挙区その他選挙制度改正について、このたびこしらえました選挙制度調査会諮問しまして、意見を開いた次第でございます。
  51. 島上善五郎

    島上委員 その文書を朗読しただけでは、総理あいさつと違いますが、こういうことで貴重な時間を費しているのはあれですから、納得しませんが、これはこれだけにしておきます。  選挙制度調査会をお作りになったのは、私の判断では、もちろん、各界各層代表者を入れて、そこへ公正な国民の世論を反映させる、国民の世論を尊重する、こういう御趣旨で作られたのであり、諮問されたのである、こういうふうに私一応常識的に判断するのでありますが、そのようなお考えでやられたのであるかどうか。
  52. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 島上君のお話の通りの趣旨で、委員会を設けました。
  53. 島上善五郎

    島上委員 そうであるとするならば、私は、この委員会構成自体に非常に無理があり不当があると思う。これは、しかし、私はあえて答弁を求めませんが、委員会構成は決して公正なものでないということだけを一言申し上げておきます。  それからもう一つは、そのようにして構成された委員会自体運営が、私午前中に質問しましたが、決して民主的に十分に審議を尽した運営と言いがたい。正常な運営でなかったことは明白な事実であります。しかし、それも総理からあえて御答弁は求めません。この正常ならざる運営をして答申された案が政府に出て参ったのですが、政府の今回の案は、この答申案に基礎を置いた、こういう御説明でございますが、答申案に基礎を置いたというよりは、むしろ、はっきり言えば、これは自民党の案である。選挙制度調査会は、単に世間に見せかけに——公平なものを作って国民の世論を尊重するかのごとく見せかけておいて、適当な部分だけ、政府に御都合のよい部分だけ利用して、あとは顧みない、こういう態度がありありと出ております。私は、そこで、一体選挙制度調査会答申に基礎を置いたと言うが、どこに基礎を置いたか、その点を総理大臣に伺いたい。
  54. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は選挙制度調査会の案に基礎を置いたと信じております。
  55. 島上善五郎

    島上委員 それだけの答弁しかできないだろうと思う。そこで私が、今度は私の方から言いますが、もし、しいて基礎を置いたとすれば、議員定数を三十人ふやして四百九十七人にした、これだけです。その他は一切基礎を置いていない。第一、一番大事な選挙区制の問題は、答申案は、小選挙区にするならば一人区にすべきである、全部一人区の区割り答申しておる。しかるに二十区の二人区を設けた。その建前がまずくずされておる。それから、小選挙区制を行えば、買収、供応その他の弊害が起る。少くとも日本の現状においてはそういう事態が起るという心配がある。そこで、連座制強化、政治資金の規正、あっせん収賄罪の立法措置、これはぜひやってほしい、必ず実行してほしい、こういう答申がなされておる。それも一切顧みられていない区割りのごときは、二人区を設けたことも、——私は区割りのこまかいことを総理大臣に伺おうとは思いませんが、区割りのごときは、二人区を設けたところは、明らかに、一人区にすれば、社会党にとられてしまうところと、いわゆる党内調整で、現に小澤君の選挙区であるところで椎名悦三郎君と調整がつかない、そういうところ、その他の選挙区割りである。私はこまかいところはあと長官に伺いますけれども、全く党利党略——公正な新聞の批判を見てもわかりますが、党利党略というよりは、むしろ党利党略以前の私利私欲に貫かれておる、こう公正な新聞が書いておる。一体、どこに、肝心なところに基礎を置かないで、単に四百九十七名にしたことだけ基礎を置いて、これが選挙制度調査会答申を尊重したということになりますか。何ら尊重していない。党の意見を尊重しておる。こういうふうに事実が証明しておると私は思う。鳩山総理大臣はこれをどうお考えになりますか。
  56. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 本会議におきまして自治庁長官から説明がありました通りに、この案は決して党利党略に基礎を置いたものではありません。大体におきまして答申に基礎を置きまして作成せられたということは、本会議太田長官答弁によって私は明瞭だと考えております。
  57. 島上善五郎

    島上委員 それでは、伺いますが、あなたは、総理大臣であると同時に自由民主党の総裁代行委員である。あなたの信頼しておる自由民主党の幹事長が、あなたあるいは太田長官が本会議で説明あるいは答弁された翌日、山口県へ参りまして、新聞記者会見をして、小選挙区問題に触れて、党利党略はやむを得ない、社会党反対もまた党利党略である、こうはっきり言っておる。そうして、公正な新聞記事を見ましても、私は新聞記事を一々引き合いに出す煩にたえませんけれども、どこの新聞記事を見ましても、この区割りについて、また今言った連座制強化その他の点を無視した党利党略であるという批判が公正な第三者から痛烈に浴びせられている。これは一体党利党略でないのか。あなたはそれは党利党略でないとおっしゃるでしょう。しかし、もちろん私も納得しませんが、国民はそんなおざなりの紋切り型の答弁では納得しません。現に幹事長が党利党略やむを得ない、こう言っておるではありませんか。総理大臣から党利党略であるという答弁をここで求めようとは思いませんけれども、どのような答弁をしましょうとも、これは党利党略の私利私欲であるということは明白なる事実であるということを、私は申し上げておく。  そこで、私は次に総理大臣に伺いたいことは……。(「どうかしているよ」「調査会案は絶対的なものじゃないじゃないか」と呼び、その他発言する者あり)やかましい。——そこで私は総理大臣に伺いたいのですが、総理大臣太田長官の御説明を伺っておりますと、小選挙区制は前々から自分たちはそう考えておったのだ、今初めてそういうことを言い出したのではなくて、前々から考えておった、それは自分たちの持論であった、こういうふうに聞えますが、そういうふうにお考えになっておったかどうか、その点を一つ伺いたい。
  58. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 小選挙区は、前々から二大政党になれば当然採用すべき選挙区制であると考えておりました。
  59. 島上善五郎

    島上委員 だいぶ違いますが、またあとで違う点は……。それならば、今度、提案理由に、二大政党制による政局安定と選挙費節減による政界浄化ということを最も大きな理由としてあげておる。それならば、私は伺いたいのですが、それがほんとうであるならば、昭和二十六年にすでに選挙制度調査会から答申がなされておる。それから、例の一昨年の六月三日国会が混乱した当時、五党の申し合せによって自粛三法を作ろうといって、その中で選挙改正が大きく取り上げられた。そのときは、鳩山総理は、例の緒方さんの言葉をかりていえば、出たり入ったりまた出たりしている時分である。そして五党分立の時代、政局がきわめて不安定であった。それから疑獄、汚職事件で政界の腐敗堕落がその極に達しておった。もし、今申しました二つの理由が、表に掲げているだけでなしに、ほんとうの理由であるならば、そのときこそ小選挙区制が最も要求されるときであったはずなんです。その前にすでに小選挙区制の答申があった。しかるに、そのときのいわゆる自粛三法の一つとして選挙法が大幅に改正されたときに、私も小委員として六カ月半議論しましたが、そのときついに保守党の諸君からは小選挙区論なるものは一言も正式議題の際に出されなかった。私はこれはおかしいと思う。(「二大政党でなかったからだ」と呼ぶ者あり)政局が不安定だから、二大政党にするために必要なのだ、こう言っておる。私はこの間にずいぶん大きな矛盾があると思う。このときこそ客観的に見て最も必要なときであったと思うが、総理はどのようにお考えになりますか。
  60. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 二大政党が日本に厳然とできましたのは最近の事実であります。それに基いて小選挙区制を出したのであります。
  61. 井堀繁雄

    ○井堀委員 関連して。ただいまの総理の発言は二大政党対立の現状を重視された発言であると思いますが、また、太田長官は、この法案の説明の際にも、政局安定のための主張をかなりたびたび繰り返されておるわけであります。政局の安定をはかろうとする総理並びに政府のお考え方がこの法案にあるとするならば、ぜひはっきりさしていただかなければならぬことは——最近ようやく二大政党の対立に成功した日本の政界の中で、一方の政党を代表する日本社会党が小選挙区に対しては絶対反対の態度を表明いたしておることは、御案内のことだと思うのです。二大政党の一方の政党が絶対反対を主張しておりまする法案を、国民生活に関係の深い重要な法案がたくさん上程されておりまするこの議会に、しゃにむにこれを押し通そうとするようなことが政局の安定を期するゆえんであるかどうかについて、総理大臣の所信をはっきり伺っておきたい。
  62. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は、二大政党ができれば、その二大政党の間に政策の近似性ができるということは必要だと思うのです。近似性ができればこそ、政局の推移が非常になめらかにいくと思うのです。ところが、現在におきましては、そういうことはちょっと期待できない。政策について、イデオロギーが違っておりまして、近似性がないのです。それですから、そういうような場合の近似性のできるということは望んでおりますけれども、近似性がなければ政策の遂行ができないという結論にはならぬはずであります。
  63. 井堀繁雄

    ○井堀委員 重大な御答弁をいただいたわけでありますが、現在の二大政党は一応自由民主党と社会党の二大政党であることは明白なる事実であって、その二つの政党の一方の政党が少くもこの選挙法については根本的に反対の意思を表明しておることは、申すまでもないことなんです。この状態を無視するがごとき、法案の強引なる通過をはかろうとすることは、政局を安定するゆえんでない。その点に対する総理のお考え方を私はお尋ねしているわけです。もしこの二大政党を是認されるお考え方が総理の基本的な考え方であるならば、相手方の政党の納得を期せられるような態度で臨むことが、政局安定のゆえんである。ことに、政局安定は、ただ単に形式的な両者の政党の野合を言うのでないことは、言うまでもないのです。政局の安定は手段であって、目的は国民生活の安定にあるのです。その国民生活の安定を期するための政策上の問題について、この選挙法との関連をどう割り切っていくかということを答えなければ、私の質問に対する答弁にならぬ。この点に対してもう一度はっきり御答弁を伺いたい。
  64. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は、ただいま申しました通りに、二大政党になりましたならば、二大政党の政策が近似性を持つということは必要だというのです。しかし、常に一方が一方に従うというようなことは考えられません。
  65. 井堀繁雄

    ○井堀委員 私は、何も二大政党が他の政党の属従を前提とするようなばかなことのあるはずはないことは常識で、まさか総理もそういう矛盾したお考えを持っておろうとはみじんも思いません。ただ、私がここでお尋ねしておるのは、現実の姿において二つの政党に一応限定される場合において、他の政党の了解を得るということなくして、どうして政局の安定を期することができますか。その事実に対するあなたのお考え方を、はっきりこの際国民の前にお答えになる義務がある。政局の安定をもしまじめに考えておるならば、それがただ単にこの法案を押し通すための詭弁であるならば別であるが、信念を持ってお答えをいただきたい。  さらに、あなたに先ほどお答えいただいた中で、私は非常に重大だと思いますが、現在の政党のイデオロギーの相違をあなたは口にされました。もちろん、政党の政策を異にすると同時に、イデオロギーの相違があることは、世界の共通の事実であります。選挙法をイデオロギーによって論議すべきものでないことも、言うまでもないのであります。この点に対する総理のお考え方をもう少しはっきりさしていただく必要があると思う。これは国民の前に日本の政治を担任する重要な責任者としての御答弁一つ伺いたい。
  66. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は、ただいまのお話でありますけれども、私の答弁に間違いはないと思っております。
  67. 井堀繁雄

    ○井堀委員 政局の安定を口にされまする者といたしましては、特に前提が二大政党である。この二大政党の一方の政党がまるっきり反対しておるじゃないか。その相手方の納得できるような努力が前提にならなければならぬわけだ。努力と同時に、法案の内容に対する問題にも私はなると思うのでありますが、それは後刻機会があると思います。  ここでお尋ねしておきたいことは、政局の安定を期するための選挙法の改正であるという太田長官の主張と政府意見である。そうだとするならば、今日一方の政党が抜本的な否定をしておる際における強引な提案というものが、政局安定と一体どういう関係が起るかということを、よも御存じないはずはない。この点に対するはっきりした御答弁をあなたはなさる義務がある。このことをはっきりしなければ、言を左右にいたしますならば、本案を提案いたしました政府自身が、政局の安定を口にしながら混乱を招く責任は免れません。そのいずれであるかを明確にされる義務があるはずであります。正直にお答えなさい。
  68. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 小選挙区制を採用すれば、その瞬間に政局は安定するという考え方をしておるわけではないのです。小選挙区制を採用している間に政局の安定というものは生まれてくるということを考えているのであります。
  69. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 関連して。総理大臣は、先ほど、小選挙区制は前から考えていた、二大政党になったので当然やるべきであると考えて、今度の改正案を提出するようになったということを答えられた。次いで、あなたはかようにおっしゃった。二大政党になれば政策の近似性ができるので、そこにおのずから政局の安定を見ることができるとあなたはおっしゃった。それならば、二大政党ができれば政策に近似性ができる。近似性ができるならば、それはなごやかにいくでしょう。しかし、あなたは語を継いでこう言っている。現在においてはイデオロギーが違う、なめらかにいかない。——なめらかにいかない今日の状態においては、まっ正面から衝突いたしております事実を、あなたも否定することができないとおっしゃるでありましょう。それならば、そういう状態下において、そういう二大政党のもとにおいて、今日小選挙区制をやろうということは、いたずらに政局を紛糾せしめ、かえって政局の不安定を来たすではないかという結論が出てくるのであります。総理はいかがでございましょう。
  70. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 ただいまの御質問の間に、二大政党になれば政党の間に近似性ができるということを言ったわけではないのです。できることを希望すると言ったのです。誤解のないようにお願いいたします。
  71. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 あなたは先ほど二大政党になれば政策の近似性ができるとおっしゃった。はっきりおっしゃった。
  72. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 いや、それは言いません。
  73. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 あなたの希望を私どもは聞くのではない。私どもはあなたの希望をここで聞こうというのではない。現実の問題として、二大政党の対立の時代になったときに、それが果して政局の安定を来たすものであるかどうかということを聞きたいのです。そしてその二大政党制を助けるために小選挙区制によることがよろしいというのであったならば、初めてそこには理論が成り立ちます。二大政党になったならばなお政局の紛糾を来たす、こういうような場合において、その二大政党を助成するための小選挙区制をやろうとするならば、政局不安定へ導く以外の何ものでもないということをいわなければならぬ。いわんや、あなたは小選挙区制によって二大政党対立の状態を醸成しようというが、今日すでに二大政党はできております。あなた方は絶対多数を持っておる。これでどうして政局の安定がないのでございましょうか。さらにこれより以上に多くの数をあなたはほしいのですか。多くの数を持って独裁をやる——独裁イコール安定とあなたはお考えになっておるようでありますが、あなたのほんとうの真意をこの際聞いておきたい。
  74. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は独裁などは考えたことはありません。とにかく、諸君もわれわれも、二大政党になったことを喜んでいるのでしょう。ですから、この二大政党を維持することは必要だということには御異論はないと思うのです。二大政党を維持していくにはどういう制度がいいかといえば、小選挙制度がいいのです。小選挙区ならば二大政党を維持することになるのですから、小選挙区というのが基本的の条件になるわけです。
  75. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 小選挙区になればどうして二大政党が育て上げられるというのでありましょうか。小選挙区については、御承知通り、各国の実例に徴しましても、フランスにおいても、あの小選挙区制をしいたときには、小選挙区制になっても、多党制で政局は安定しなかったのです。イギリスにおいても、アメリカにおいても、これは小選挙区をしいたから二大政党になったのではない。二大政党は前からあった。小選挙区をしいた結果でないということは申し上げるまでもない。してみれば、小選挙区制をしいたから二大政党がよりよく成長するのだなどという議論は、根本において間違っている。しこうして、あなたの言う政策の近似性というのは何を言うのですか。あたかもあの英国の労働党と保守党のごとく、その政策が近寄って、いずれへ政権授受をやっても混乱を起さない状態に、労働党と保守党との政策がある程度近寄っていることをいうのでしょう。どちらへ政権授受をやってもあまり混乱を来たさないようになることが、二大政党をもって政局を安定せしめる根底でなければならぬと思います。そうだといたしますならば、今日、あなたのおっしゃるがごとく、日本の政党はイデオロギーが非常に違っていて、その間に非常な扞格がある。この状態においては、あなたの議論をもっていたしますならば、政局の安定を希望することができない。今日の日本の二大政党は、あなたにとっていうならば、これを否定する側に立たなければならぬでしょう。そういうようなイデオロギーの異なった二大政党をあなたが好まないといたしますならば、そういう二大政党をここにさらに育てていくために、小選挙制をもってそういうイデオロギーの異なったところの、政策の近似しない二大政党を、この小選挙区制によって何がゆえに育て上げようとするのか。あなたの議論は根底を失っているではないか。これを伺いたい。
  76. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 ただいまは保守党と社会党との間に非常に懸隔——イデオロギーが違いますけれども、私はこれがいつまでも続くものとは思っておりません。小選挙区をやっている間に、だんだんと近似してくるものと思います。  なお、あなたは小選挙区と二大政党と無関係のようなことをおっしゃいますけれども、中選挙区あるいは大選挙区をとった場合においては、中立党議員というものができまして、第三党第四党ができたということは、日本の憲政史の明示するところであります。
  77. 原茂

    ○原(茂)委員 関連して。総理の政局安定に関して関連してお伺いしますが、過去の小選挙区に今までいろいろな弊害があるというので、一度で小選挙制度は終っているわけですが、今回のあなた方のお考えで強引にこの小選挙区をもしお通しになったとして、通ったと仮定して、一体、この選挙制度を通じて、将来とも長く何回でもこの選挙制度によっての二大政党の対立育成というものをほんとうに決意せられているのか。一説によりますと、あなた方の幹部の中でも、この小選挙区による選挙というのはせいぜいやっても一回か二回だ、こう言っておりますが、私どもの想像するところでも、今庶幾している憲法改正等が一応終るならば、この小選挙区制を再び中選挙制度に戻そうという気持が今からあるようにもとれるわけですが、はっきりと、過去に照らして、今後もこの小選挙制度によって何回かの選挙を必ずおやりになって、今の近似性のできた二大政党がはっきり確立できるまで、おそらく五回でも十回でもこのままの小選挙区による選挙をやっていく、こういう御決意がほんとうにおありなのかどうか、率直にお答えを願いたい。
  78. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は、ただいまあなたが冒頭に言われました、選挙を一度やって三分の二をとれば憲法を改正して、それで小選挙区をやめるだろうというのが、実際の御質問でしょう。そういうような考えは持っておりません。そのような考えは持っていません。
  79. 原茂

    ○原(茂)委員 もう一度お聞きしますが、考えを持っていないということは、もしこの小選挙区制が通れば、一回、二回、三回でこれをやめるということではなくて、将来とも、ずっと、小選挙区によって二大政党育成の完全にできるまでは、この小選挙制度によってやっていくのだ、こういうお答えと解釈していいのでありますか。
  80. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 現在におきましてはそういうような考え方をしております。小選挙区は日本の二大政党を作り上げるのに必要な制度だと思っております。
  81. 山田長司

    ○山田委員 総理は小選挙区制を実施して政局の安定をすると言っているが、総理考えている政局安定とは一体どういうことであるのか。それから、近似性の問題をあなたは先ほどから何べんも言われていますが、あなた方がとっている政治と同じような形における政治のことを、おそらく総理は近似性と言おうとしているのだと思うのですが、そんなものをわれわれは望んでおらないのです。あなたはそういうような考え方で近似性というものを言われていると思うのですが、一体近似性とはどういうことなのか、もう一ぺん明快にお答え願います。
  82. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 近似性というのは、近く似通ってくるということです。あまり飛び離れて違わないということです。
  83. 山田長司

    ○山田委員 もう一つ、政局安定は……。
  84. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 小選挙区を継続してやっている間は政局の安定というものは継続すると思うのです。
  85. 山田長司

    ○山田委員 総理の言われるような近似性などということは、われわれは承服するわけにはいかないのです。あなたがそんな意味で今度の小選挙区制を実施しようとするならば、あなたの都合のいい形だけにおける近似性だと思う。そういうことは私は断じて承服できません。これはあなたらしい考え方における物の判断であって、そんなあなた方の考えている近似性は、われわれは断じて承服できないのです。これでは、どう考えてみても、あなたの方の考え方によるところの党略にしかすぎないじゃないですか。どうです、その点は。
  86. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は党利党略によって小選挙区制を出したとは思っておりません。
  87. 山田長司

    ○山田委員 先ほどの安定の問題ですが、現在のように二百九十九名の議員がおって、何の法案でも、どんな不信任案が出ても一挙にこれを葬り去ることのできるような多数を持っていながら、何のためにもっと人員をふやそうというような意図の小選挙区制を実施しようとしておるのか、私にはどうしてもわからない。そういう点で総理はもっと明快な答弁をしなければいかぬと思う。大体今どこに不安定なところがあるのだ。
  88. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 二大政党の場合においては小選挙区制が原則だと私は思うのです。二大政党を維持、育成をするためには、小選挙区制にしておいた方がいいと思う。そのためにやるのでありまして、現在の内閣を長く存続させるために、安定性を持ちたいから、選挙法を出すわけじゃないのです。日本の将来を考えまして、二大政党を維持、育成するためには、小選挙区制がいいと思うわけであります。
  89. 山田長司

    ○山田委員 イギリスの例などを見ても、イギリスの保守党が四百何十名の多数をとって、労働党が百五十何名しかとれなかったときがありますが、そのとき、労働党とさらに共産党などの票を入れますると、選挙に負けた野党側の方がはるかに票が多かったという例があるのであります。それで、政府をとっている保守党の方が国民の投票数が少なかったという例があるのですが、そういう一つの例を考えてみても、小選挙区制必ずしもいいとはわれわれは考えないわけです。そういう点で、あなたの言われる安定ということは、どうしても理解ができないのですけれども、もう一ぺんお答え願いたいと思うのです。政局の安定とあなたの言うのは、議員の数を今の状態より多くとろうというふうにしかどうしても考えられないのですけれども、あなたの言われる安定とはどういうことを内容とするものか、もう一ぺんお答え願いたい。
  90. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 先刻申した通りを繰り返すより仕方がありません。二大政党になったことをわれわれは喜んでおるのであります。これを維持育成するために小選挙区制を採用した方がいいと思うのであります。
  91. 小澤佐重喜

    小澤委員長 それでは、鳩山内閣総理大臣に対する質問は、申し合せによりこの程度にいたします。——島上善五郎君。
  92. 島上善五郎

    島上委員 午前中の続きでもう少し聞いておかなければならぬことがある。これは早川次官に特に伺いたいと思う。早川次官の秘書は、書記官ですか、私設秘書ですか、よくわかりませんが、速記者のところへ来て、もし速記が破られるといけないからといって、防衛したということです。私どもが現認したところによれば、もっと先の方まで書け、しまいの方まで書けということを速記者に強要しておった。この速記者に対する強要にしても、あるいは防衛にしましても、いかなる資格をもって、だれの命によってこのような行動をとったのか、これを伺いたい。
  93. 早川崇

    ○早川政府委員 御承知のように、最終の決定をするときには非常に混乱しておりまして、傍聴席に私の秘書がおっただけであります。非常な混乱状態で、たしか、速記者は、御婦人の方、それと男の方だったと思いますが、そういう混乱時に危害が及ぶようなことをおそれてやっただけでありまして、むろん速記者にこう書けとかいう権限は会長すら持たないのでありますから、そういうことをやったところで、どうにもならないことであります。またやろうとは思いません。
  94. 島上善五郎

    島上委員 それでは早川次官がそういう行動を命じたのですか。
  95. 早川崇

    ○早川政府委員 すでにあのときは散会をしておりまして、採決の済んだ混乱時のことでありますので、むろん命じたわけでもありませんし、あの状態は正式な会議が開催中じゃありません。終ったあとでございます。
  96. 島上善五郎

    島上委員 私も速記者のすぐそばにおって、どこまで書いたということを速記者に聞いておる。そのときは何ら速記者のまわりは危険な状態でも何でもない。証人が幾らでもいる。散会したあとですから、きわめて平穏な状態だった。そうして、これは重大なことだから、あなたにも聞いてもらって、速記にも書いてもらって、あとで問題にしますが、ぼくの秘書をなぐっておるのです。ちゃんと証人がおる。まさに暴力の挑発者は君の方の側にある。これは事実があるのです。こういうような行動があるのですが、あなたは多分否定されるでしょう。しかし、ちゃんと証人を連れてきて、あとで事実を明白にしますが、もしこういう事実があったら、あなたはどうされますか。
  97. 早川崇

    ○早川政府委員 そういう事実はないので、むしろ、私の秘書が、中村委員なりもう一人社会党の傍聴の代議士であったと思うのですが、刑事と間違えられたのでありましょうか、逆になぐられかかったのです。それで、私は、むしろ防禦した記憶はございまするが、むろんなぐったことはなく、むしろ被害者でございます。
  98. 島上善五郎

    島上委員 こんなことをいつまでも質問してもしょうがないので、やめますが、もう一つだけこの事実を聞いて、あとでまた証人等を呼んでじっくりやる。そういう意味において、もう一問だけにしておきます。それは、なるほど刑事みたいな顔をしておる、その行動もそうだ、おまけに僕の秘書に暴行を加えた、これは確かな事実なんです。そうして、君はだれだ、何でなぐるのだと言ったら、弱みがあるものですから、脱兎のごとく、廊下に飛び出して、どこかに逃げてしまった、こういう事実があるのです。だれだということを追及されたら、自分のしたことに弱みがあるものですから、逃げ去った、これが事実なんです。こういうことは、たとい早川君の秘書がしたことであっても、許さるべきことではない。総理官邸における選挙制度調査会総会の直後のことですから、散会したあとといえども、これは軽々に見のがさるべき問題ではないと思う。そこで、私は、この問題に対する追及は、もっと事実を明らかにして、証拠を固めて、後日もう一ぺんでも二へんでもやるということを留保しておいて、この事実だけをはっきりと早川次官の耳に入れておきます。  それから、自治庁長官にお伺いをしたいのですが、選挙制度調査会答申案の内容は、これはもう私ども承知知をしておるし、長官承知しておると思う。その中で、私どもも大事だと思っておりますし、この問題は小選挙区制に反対する委員諸君も全会一致できまった点であります。それは連座制の強化、政治資金規正法改正、あっせん収賄罪の立法措置という問題、こういう措置が必要であるということは、小選挙区制になれば、競争が激しくなって、買収、供応等が行われる。これは、過去の大正九年、十三年の事実もこれを立証しておりまするし、選挙制度調査会委員諸君は——自由民主党から出た委員は、この点発言しなかったから、どうお考えになっているか知りませんけれども、他の諸君は、全部、そういう措置が必要である、しかもこれは絶対にしなければ大へんなことになってしまう、こういうふうに考えております。今の鳩山内閣の法務大臣である牧野さんも、こういうことを言っております。一月の十一日に京都の駅頭で記者会見を行いました際に、わが国でも小選挙区制をやり、連座制を強化し、選挙違反には、体刑、罰金刑よりも、公民権を停止するようにしたい、こういうことを言っている。それから、その少しあとですが、たしか新聞は毎日新聞ですが、わが党の河野密君と二人で、小選挙賛成反対の論文を書いております。その中にもこういうことを書いてある。今の日本の状況で小選挙区制をやれば、町会へ来るよりも、地方選挙区回りをやって、香典や花輪を持って行ったり、酒を届けたりする香典議員、花輪議員が出る、それに対してはどうしても連座制を思い切って強化しなければいけない、こういうことを書いておる同じ内閣の閣僚がある。ところが、今度の政府の案には、さっき私が言いましたように、答申案とぴったりしておるのは、四百九十七名にするというこの数の点だけです。選挙区の区割りについても、幾つかは尊重していると、きっと言うでしょう。それはたまたま政府与党に都合が悪くなかったから尊重しただけの話で、この連座制の強化、政治資金の規正、あっせん収賄罪の立法措置、これは絶対にやるべきであるという強い答申を全く無視しておりますが、この無視された理由を伺いたい。
  99. 早川崇

    ○早川政府委員 かわってお答えいたします。  ただいま島上委員から御指摘の点でございますが、単に選挙の定員で調査会案を尊重しただけではむろんないのでございます。特に、調査会答申では、政党本位の選挙をやれということは全面的に取り入れておるわけであります。また、政治資金規正法あるいは連座制の問題は、御承知のように、連座規定は、御手洗委員鈴木義男委員も、この間の本会議なり新聞紙上で論じておりますが、善良なる監督管理をすれば免責規定になっているのだというようなことは、これは昭和二十九年のことでありまして、三十年にはすでにそれは改正されておるのでありまして、そういった点に委員の方御自身にすでに誤解がありまして、連座規定は、出納責任者並びに事務長に関する限りは、そういう免責規定は改正されております。従って、今回は、それ以外の附帯訴訟という、これも非常に重要な連座規定に対する補足的改正でありますので、そういった面において調査会答申はかなり取り入れたということが言えるのではなかろうか。その他二人区の問題でありまするが、調査会案では二人区を否定しておりません。二人区は必要を認めておるわけでありますから、全面的に調査会答申を否定したという御意見は少し誤まりではなかろうか、かように思います。
  100. 鈴木義男

    鈴木(義)委員 関連して。今私の言ったことを引いて説明になりましたから申し上げておきますが、いわゆる注意監督の規定が削除されたということは承知いたしておりまするが、ただし書きというのが残っておりまして、今条文をちょっと探す時間がありませんが、そのただし書きがついておるために免責されるので、それではいけない。それから、訴訟に訴えて、まず出納責任者なり総括主宰者が有罪になって、判決が確定して、それで失格するのはどうかというと、それからまた訴訟を起して、そして失格をする、その訴訟がまた何年かかるかわからない、そういうことではほとんど空文に近いから、それで、われわれの提案では、直ちに出納責任者なり総括主宰者が罪に座して、判決が確定したならば、選挙管理委員会にそのことを通知することによって、失格の効力を発生させよう、こういうところにあるのでありまして、ただし書きを削除するというところに本旨があるのでありますから、誤解のないよう希望いたします。
  101. 早川崇

    ○早川政府委員 ただいま鈴木委員の申されました、当選無効になると同じ効果を表わすために、このたび附帯訴訟という制度を設けようとしておるのであります。なお、出納責任者並びに総括主宰事務責任者の選任、監督の規定をはっきり昭和三十年度においては削除されたことを、もう一度申しておきます。
  102. 島上善五郎

    島上委員 附帯訴訟の制度を復活したということを、さも選挙制度調査会答申を尊重して連座制を強化したかのように、鼻高々とたった一つのことを誇大に宣伝しておりますけれども、その法律は出していない。別に新たにこれを法律で定めるとあなたは言ったって、いつ定めるのか。今出さなければ今国会に出さないということは明らかなんです。今国会に出すお考えがあるのかどうか。その附帯訴訟の制度を復活するということがほんとうであるならば、区割りを、こんなにこまかく、党内調整と称して、川島君がやせるほど連日連夜やるくらいの熱意があるのに、この法律をどうして一体出さないのか。いつ出されるお考えか、それを伺いたい。
  103. 早川崇

    ○早川政府委員 かわって答弁いたします。  今、御承知のように、現在の民事訴訟法には附帯訴訟に関する規定がございません。新たな規定を設けなければなりませんし、膨大な改正の量に及ぶものでございますから、直ちにこれを提案するということは困難でございます。できるだけ早い次の国会において提案をいたしたいと思います。
  104. 島上善五郎

    島上委員 要するに、これは、国民にさながら連座制強化の一つの方法として附帯訴訟制度を復活をしたかのように見せかけておいて、別にこれを法律をもって定めることに実際はしておる。それをできるだけ早い機会に次の国会に出す。こんなことでは、おそらく次の国会に出るか、その次に出るか出ないか、すこぶる怪しいものだと思う。そこで、私は、せっかく大臣がいるのですから、大臣に伺いますが、大臣に質問をしたことを次官が答弁する、こういう習慣をつけておくと、これから大臣が来なくても次官がやるということになる。われわれは、大臣が来なければ、この重要な質疑はできない。もし大臣が他の委員会へ行くとか、生理的理由があるとかいう際には、委員会を閉じなければならないということをはっきり申し上げておきます。そうでなければ、次官がかわって答弁して、それでいいのだというような考えを持たれたら大へんですから、われわれはそういうことを認めるわけにはいかないということを、はっきり申し上げておきます。  それから、この提案理由を伺っておりますと、人口に基礎を置いて、人口のバランスを尊重しているように言われておりますが、人口のバランスを尊重しているとしますれば、非常に多くの問題があると思うのです。これは選挙制度調査会でのことですが、選挙制度調査会に配付された資料をわれわれが目を通しますと、府県の人口のアンバランスが非常に極端であることを発見した。それを発見して、私ども、表を作って、委員にも配り、総会で追及しましたら、そのうち青森県と佐賀県だけ一名ずつふやし、その他十県ほどある。最もはなはだしい鹿児島県と長野県を比較いたしますと、長野県は二百二万千二百九十二人、鹿児島が二百四万四千百十二人、すなわち鹿児島が二万人多い。それで議員定数は二人少い。長野が十三人で、鹿児島が十一人。こういう例がたくさんある。青森と佐賀だけふやして、その他をふやさないということは、一体根拠はどこにありますか。理論的な根拠を明確にしてもらいたい。
  105. 太田正孝

    太田国務大臣 先ほどの連座制の附帯訴訟法規に関する問題は、次の選挙に間に合うよう必ず出します。  それから、第二の、人口議員のアンバランスの問題は、社会党の方々が委員会に出されたものも拝見いたしました。全体、今度の人口問題を処理するにつきましては、御承知通り、現在の議員の数が減るところを減らさないようにしよう。もともと各府県というものにワクを置いてみますると、大へんないろいろの問題が起って参ります。今島上委員のおっしゃった通りで、いろいろな問題が起って参りますが、その中で一番ひどいのが青森と佐賀でございまして、それ以外に、人口は多いが、議員関係が悪くなっておる、いわゆるアンバランス問題でございます。これらの点を私は多分御説明申し上げたかと思いますが、十幾県に及ぶと思います。これをふやしていくようにだんだんやっていきますと、またその上にアンバランスが起って参りますので、この際は三十人増すだけにとどめまして、議員の数を非常に増すということもこの際考えることはいけないという意味で、公平論々々々を言っていきますと、相当数の人を増さなければなりませんので、かような意味におきまして、佐賀と青森二つだけを取り上げた次第でございます。
  106. 島上善五郎

    島上委員 二つだけを取り上げたのはわかるけれども、理論的な一貫性がちっともないと思う。議員をふやしてはいけない、それで押えたんだというならば、青森、佐賀も押えたらいい。青森と佐賀だけふやしている。青森は、青森が百三十八万二千五百二十三で、秋田の百三十四万、山形の百三十五万より三万ほど多い。三万ほど多くて、定員が一人足らない。ところが、さっき私が言ったように、片方では二万多くて、定員が二人も足らない。こういう極端なアンバランスがある。それから宮城県と栃木県の場合は、宮城は十八万も多い。二万や三万ではない。それで議員は一人足らない。静岡県と新潟県の場合もそうです。十八万多い。それで議員定数が一人足らない。おかしいです。ちっとも一貫性がない。どこに一体理由があるかわからぬ。あまりにもアンバランスがはなはだしいから、十八万も二十万も違うからここを直す、二、三万のところはしんぼうしてもらうということなら話はわかる。十八万も二十万も人口が違うところをそのままにしておいて、佐賀と青森だけ。——これはあと区割りのときに詳しく聞きますが、佐賀と青森はふやした方が自由民主党も都合がいい。そういうところからきている。一貫性が少しもない。理論的な一貫性があったら、私はその理論的な根拠を聞きたい。
  107. 太田正孝

    太田国務大臣 この二県をふやしたのは政府の側ではございませんので、委員会におきましてこの程度で切ろうというのできめられたのでございます。理論的に一貫性云々を申しますれば、あるいは神奈川県の問題のごときは取り上げべき最も大きな問題と思います。その数字の比較を選挙部長に説明いたさせます。
  108. 兼子秀夫

    ○兼子政府委員 これは、ただいま大臣から御説明がありましたように、選挙制度調査会の小委員会議論が出まして、御指摘のように、調査会の方式で参りますと、従来の定員を維持するという原則を立てました関係上、人口と議席数の関係がいわゆるアンバランスを生じて参るのでございます。県で申しますと静岡県、広島県、福島県、茨城県、鹿児島県、長崎県、宮城県、山口県、岐阜県、青森県、佐賀県、このような十一県につきまして、人口の近い府県と比較いたしまして、いわゆるアンバランスを生ずるのでございますが、そのうち、ただいま大臣からお話のありました青森県と佐賀県につきましては、議員一人当りの人口が青森県が十九万七千五百三人でございます。佐賀県が十九万四千七百四十九人でございます。これが議員一人当りの人口が一番高いところでございます。その次に議員一人当りの人口が高いのが、先ほど申し上げました十一県以外の神奈川県が該当いたして参るのでありまして、十九万四千六百三十三人ということになっております。そういたしますと、静岡や長崎等の青森、佐賀を除きました九県に措置いたしますと、あるいは神奈川県にもふやさなければならぬ。あるいは福岡県や大阪にもふやさなければならぬ。次から次に、連鎖反応と申しますか、議員一人当りの人口の面から見ますと不均衡を生じて参るのでございます。そのようなことからいたしまして、選挙制度調査会におきまして、小委員会では、結局、現行定員を維持するということから起る問題であるが、これは青森と佐賀だけの救済にとどめて、それ以上の県には拡張すべきでない。このような結論に到達いたしたのでございます。政府といたしましても、同様な見解を持ちまして、調査会答申通りにいたしたのでございます。
  109. 島上善五郎

    島上委員 政府の都合のいいところだけは選挙制度調査会のものをとって、選挙制度調査会に責任をなすりつける。しかし、政府がそれを採用した以上は、政府自身が妥当であるという確信を持つ。その理由がなければ採用できないはずである。私どもはこの人口の各県アンバランスの片手落ちな措置についてはもちろん納得できない。もう府県からもずいぶん陳情が来ておりますが、アンバランスを是正するならば全部是正すべきである。第一戦後の十年間の人口の自然移動によって人口が少くなった県がたくさんある。少くなった県を、今までの定員が既得権である、そういうようなつもりで、それを減らさないということ自体もおかしい。人口に基礎を置くならば、人口が少くなったら減らしたらよろしい。多くなったらふやしたらよろしい。そういうところからどこにも理論的な一貫性が何もない。三十人に押えなければならぬということも一体どこに理由があるのか。現在の四百六十七名で押えたというならばこれは別ですけれども、それを最初はたしか二十七人か八人かにふやした。これを三十人にした。これはおそらく五百人以下で押えよう、こういう考えであろうと思う。これも五百人に押えなければならぬとか、四百八十人に押えなければならぬということも、僕は別に理論的には一定の根拠はないと思うのです。人口が少くなったところを、今までの数で既得権であるかのように考える、その考えも、どうもわれわれは納得できない。一種の妥協なんです。あるいは政府の御都合かもしれない。そういう点に対して長官のお考えを承わっておきたい。
  110. 太田正孝

    太田国務大臣 人口の取扱いにつきましては、御説のような見方もあるかと思います。しかしながら、今までの定員を減らすことはいけないという建前も、また青森及び佐賀のごとく著しく人口の差のある関係と、すぐ近くのものと比較とか、いろいろな点を考えますと、私は、一ぺんにたくさんふやすという建前なら格別でございますが、議員の数をふやすにつきましては相当謹厳なる態度を持ってすべきだという調査会の意思も考えまして、三十人の増員にとどめた次第でございます。
  111. 滝井義高

    ○滝井委員 関連して。さいぜん、大臣は、今の議員の定員の問題の前に、連座制等の強化法は次の選挙までには必ず出すという御答弁をされました。早川政務次官並びに鈴木次長は、先般、できるだけ早く、次の国会までに出すという御答弁をされたのでございます。次の選挙までに必ず出すということと、次の国会までということとはずいぶん違う。太田長官は一体次の選挙はいつあるとお考えになっておりますか。
  112. 太田正孝

    太田国務大臣 私の言ったた意味もなるべく早くという意味でございまするが、どんなにおくれてもそのときまでにという意味で、次の選挙はいつやるというようなことはなことは私は予定いたしておりません。行わるべき選挙においてこの新制度によってやっていこう、こう考えておるのでございます。
  113. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、次に行われる選挙までに間に合う、こういうことになれば、事態は、参議院の選挙と一諸に、この法案が通れば国会は解散になるという可能性もある。あなた方の方は、憲法改正とこの小選挙区法の成立とを結びつけて、三分の二以上取るということになれば、一回の選挙で手間は省ける、参議院の選挙で三分の二を取り、小選挙区で三分の二を取るならば。これは今度参議院の選挙と一緒に選挙をやることになれば間に合わない、こういう客観的な可能性もあるわけなんです。その可能性というものは必ずしも少くないことはありません。三木武吉さんなんかそういうことを考えているかもしれない。そうなりますと、次の選挙ということになれば、この国会にこれは出してもらわなければならぬことになる。早い機会の国会というと通常国会になる。臨時国会があるかもしれませんが、一応政府が補正予算等を組まないという方針からいけば、常識的には十二月に開かれる通常国会になる。そうしますと、これは、次の選挙という発言をされたからには、その可能性は、参議院の選挙と衆議院の選挙と同時に行われる可能性もあり縛るわけなんだから、当然この国会に出してもらわなければならぬ。この国会までにできないという理論的な根拠はないはずだ。あれだけの膨大な区割りを、あなた方は選挙制度調査会答申してからわずかの間に出してきた。川島さんはやせ細るほどに徹夜作業して出してきておる。いわんや、政治資金規正法や、連座制の強化というようなことができないはずはない。すでに下地はできておる。もう数年前からこれは論議されている。従って、これは、あなたが次の選挙までと言うのならば、そういうように参議院の選挙と衆議院の選挙が同時に行われる可能性もあるということで、この国会に出してもらいたいと思うのですが、どうですか。
  114. 太田正孝

    太田国務大臣 私は、そう早急に解散、選挙というようなことは考えておりません。少くとも政府全体としてかくのごときことは今年中というようなことは考えておりません。また、この法案を作るにつきまして、当の法務大臣が今病気中でございますが、大へんに膨大なものでございまするので、これとよく相談しなければならぬ関係もあります。私は逃げ口上を申し上げるのではございません。また乱暴なる選挙をやっていこうというような気持はございません。おそらく、政府といたしましても、これをもってすぐ参議院選挙と並行してやるなんということは、私の政治常識、政府の常識といたしても考えておらないことを明言いたします。
  115. 滝井義高

    ○滝井委員 あなたはきわめて常識論をおっしゃる。こういう選挙区の区割りそのものがもう常識を越えておる。党利党略と人は言わない。現在はもう私利私欲と言っておる。一国の政治が行われるその基盤というものが、すでに党利党略を越えて私利私欲になるということは、これは明らかに常識を越えておることなんです。常識を越えておるにもかかわらず、自分の方の都合の悪いときには常識論をおっしゃる。そこで、しからば、参議院選挙と衆議院選挙とが同時に行われないということをあなたはおっしゃったが、それは一つ常識論として受け取りますが、しからば、通常国会の前に臨時国会が開かれるとするならば、そのときには御提案ができますか。
  116. 太田正孝

    太田国務大臣 なるべく早く作りたいというのが政府考えでございます。
  117. 原茂

    ○原(茂)委員 関連して。今の問題ですが、そうしますと、この公職選挙法の一部改正法律案というものは、もし本国会で成立した場合にも、この附帯訴訟の規定が成立しないと、この改正法律案は完全には生きてこない、こういうふうに確認してよろしいのですか。
  118. 太田正孝

    太田国務大臣 連座制の規定につきましては、新しく改正したことが生きていくには、その法案がないとできません。
  119. 井堀繁雄

    ○井堀委員 関連して。人口議員定数の関連ですが、人口割で職員定数を定めるということは、一面においては正しいと思うのでありますが、他面選挙運動の点においては非常な不公平を生ずる。元来それ自身が大きな矛盾を持っておるものであると私どもは判断しておるのでありますが、たとえば民意を正しく正比例に政治に表明させようとすれば、人口に正しく按分して議員定数を定めるということは、私は絶対に正しいと思う。ところが、選挙運動を公平に行おうとすれば、地勢の問題とか、交通機関や選挙運動のための運動員の数であるとか、費用の問題とか、時間的な関係とかいうものは、必ずしも人口通りにそういう条件がマッチするとはとうてい考えられないのであります。でありまするから、どちらに比重を多く持たせるかということが問題になってくると思うのです。ここに、一般に言われる党利党略であるとか、あるいはこれは扱う者が公平を失するという問題が出てくるのは余儀ないことであると私は考える。こういう関係が今後起ってくるのでありますから、この議員定数と選挙民を土台にする人口配分の問題はきわめて重大な関係があるので、この点に対する太田長官考え方をこの際詳しく伺っておかないと、こういう問題を論議する場合にとかく問題を起すと思いますので、この根本的問題に対するあなたのお考え方を一つこの際十分吐露していただきたいと思います。
  120. 太田正孝

    太田国務大臣 人口の配分につきまして、お示し通り、ある地域における交通とかいろんな問題がございますが、今回の定員をきめました次第は、長い間人口の増加につれましても動かさなかったという事実も考えまして、これを四百六十七人の定員で割ってやったという意味でございますから、どこの人口がどうなるという関係は、地域的にこの定数割りについては何ら考えるところがなく、ただ、今までの府県の割合をきめていったのにすぎないのでございます。かような立場から申しまして、都会地に非常に集まるという現象も、大きな考うべき問題と思いました。あるいは地方からだんだん減ってくるという事実も考えなければならぬ。しかし、この定員を定めるにつきましては、人口を現在の定員で割るというのが前提原則でございまして、それに、議員の数が、現定員の数よりも今度の配分したものが少くなる場合に補充するということだけで加え、さらに青森と佐賀の問題を加えた。そして三十名増した。こういうのでございまして、単純なる数字的に取扱いにすぎないのでございます。
  121. 井堀繁雄

    ○井堀委員 そういたしますと、数字的な扱い方だけであれば、議論はきわめて簡単だと思うのであります。国勢調査による最も新しい人口の把握ができておるわけでありますから、それを定数で割っていけば簡単に出てくるわけであります。多少の端数は四捨五入を行うという工合にすればいいと思うのであります。そういうように正確な数字的な結論を出すことにあなたは御賛成でありますかどうか。
  122. 太田正孝

    太田国務大臣 この定数を定めるのには、初め各府県に一名ずつ配分してさらに人口配分をするという問題もありますが、それよりも、今度とりました調査会結論のごとくに定員数で割っていって、そうして現状との食い違いを直していく、この制度がよいと思ってとった次第でござざいます。
  123. 井堀繁雄

    ○井堀委員 そういたしますと、くどいようでありますが、人口割による議員定数の割り振りについては、でこぼこあるいは矛盾を調整することに対しては、太田長官はこれに応ずる御用意がございますかどうかお伺いいたします。
  124. 太田正孝

    太田国務大臣 私としては、答申案のごとくに三十名以上ふやすという考えはございません。
  125. 井堀繁雄

    ○井堀委員 定員をふやすことを私は何もお尋ねしておるわけではございません。定数を減らすことも考えてよいと思うのでありますが、その定数と人口の均衡で一切の区割りと定数とを算定するというやり方について、正しい数字的答えが出れば、これに応ぜられる御意思があるかどうかを伺っておるのであります。意思があれば、あるとおっしゃっていただけばよろしい。なければ、どういうわけでないかを御説明下さい。
  126. 早川崇

    ○早川政府委員 四百九十七名というものは府県別の定員を言うのでありまして、府県内の定員をいかにまた区割りをするかという問題は、むろん、人口を中心にいたし、地勢、産業、沿革等を総合的に考えまして区割りをいたす、こういうことになったのでございます。
  127. 井堀繁雄

    ○井堀委員 今の御答弁は、言葉じりをとるわけではございませんが、太田長官と次官とは考え方が大へん異なっておるように伺います。太田長官先ほど人口に正比例する方向もとるように御主張されておりましたが、あなたはまた他の条件をこれに加えて行こうとする御意見のようでありますが、どちらが、本心であるか、提案者側の御意見のとりまとまったところをお答えいただきたい。なお太田長官のこれに対する考え方をもう一ぺん聞いて、次官のお考え方を伺います。
  128. 早川崇

    ○早川政府委員 先ほど大臣が言われましたのも、単純な人口比例によって府県の四百九十七名の、三十名増加の定員をききたいという意味ではないのであります。すでにこの四百九十七名の決定に当りましても、現行の定員より減るところは現行定員を確保する。また青森、佐賀のように一人当りの定員が非常に多いところは、理論的にはほかにも及ぶのでありますが、あまり四百九十七名をこえた定員は困りますので、二県だけを一名ずつふやしたというわけでございまして、単純に人口比例で行う、こういう大臣の御意思ではなかったと私は思っております。
  129. 井堀繁雄

    ○井堀委員 次官のお考えは明らかになりましたが、長官のお考えをもう一度はっきり聞かしていただきたい。民意を正しく反映しようとする議会政治の行き方からすれば、人口に正比例するということは私は一つの真理があると思う。この真理をできるだけこの選挙法の改正の際に生かそうとするならば、私は人口に正比例させるという方向がここに生きてくると思う。この点については、先ほど太田長官考え方は私の今申し上げたこととほぼ同じような見解のようでありますから、その上に立ってお尋ねをしようと思いましたところ、今早川次官はそれとは全く別なものをこれに加味させようとしておられるのですが、この点は大事なところでありますから、責任者である太田長官のお考え方をまずはっきりさせておきたいと思います。
  130. 太田正孝

    太田国務大臣 私の先ほど申し上げましたのも、今早川次官の言ったのも、定員の四百九十七名を定めるについてのことでございまして、各区の割合につきましては、政務次官の言われた通り人口のみならず、あるいは交通、経済、行政的沿革等を総合的に勘案していかなければならぬと申し上げたので、同じ考え方でございます。
  131. 井堀繁雄

    ○井堀委員 四百九十七という定員は動かしたくないという考え方は、われわれは一つ考え方として伺えるのでありますが、それを人口にどういうように比例させていくかということと、選挙運動をどういうふうに公平に導くかということとは、非常に重大な問題です。この問題を掘り下げていくためには、提案者側のお考えがはっきりきまっておりませんと、後になってもんちゃくを起しますから、今伺っておるわけです。早川次官の御答弁は、私ちょっとうなずけぬ点がありますが、議論をあえてしようというのではない。ただ、提案者側としては、少くとも今日の国民人口総数に比例する四百九十七名でけっこうでありますが、それをできるだけ正比例的に配分していこうという考え方が土台になっておるのか、あるいはそういうものを最初から問題にしていないというのであるか。この辺は今後いろいろな議論をしていきます際に非常な開きを生じてきまずから、他のいろいろの御意見はあろうと思いますが、まずこの点に対する長官の本案提案の際における根本的な考え方はぜひはっきりしておく必要があると思うので、どうぞあなたのこれに対する信念ともいうべきものを聞かせていただきたい。
  132. 太田正孝

    太田国務大臣 お言葉通り、有権者の関係から見ましても、また選挙運動をなめらかにしていく意味から申しましても、人口というものは重大な要素であると私は思っております。しかし、それだけでなく、区割りの場合におきましても運動の場合におきましても考えねばならぬことは、地勢であるとか、産業であるとか、行政的沿革というものを加味して考えなければならない。人口だけで処理していくということはむずかしい場合があろうかと思うのでございます。
  133. 井堀繁雄

    ○井堀委員 人口については他の条件によって左右されるということが前提のようであります。そこで、私ども選挙法と取り組む場合に、選挙法のねらうところは区割りの問題に具体的に出てきますから、そこで一つ一つ具体的な例をあげてお尋ねすればすぐわかるわけでありますが、しかし、せんだってあなたの御説明になりました区割りについては、ある地区においてはもちろん人口は基礎になりまするが、交通機関あるいは学区、従来の慣行など、いろいろなものが出てきて輻湊してくるわけであります。そうしますと、先にいって議論して参ると、御都合主義の議論が出てきます。自分の不利なことは、その条件に隠れて答弁したり質問したりしてくるということになりますと、公正な議論が行えなくなる。そこへ待ってきて、お尋ねする方も、お答えになる方も、選挙を現に戦い、今後も戦おうとする野心を持っていることは間違いないのであります。神でない限りは自分の野心をこれに盛り込もうとする。それは十分警戒しなければならないことであります。そういう立場の者がこの問題を論議していくわけでありますから、よほど原則的なものについては正確な定規を持っていないと、邪道に陥ることは必至であります。そういう意味で私お尋ねしておるのであります。私ども良心的にこの問題に取り組もうとしている。特に原案をお作りになった長官としては、この問題に対しては、他のいろいろなことにあまりとらわれないで、きっすいなお考えを聞かせていただきたいというのが、私のあなたにお尋ねしている趣旨なんです。この点をどうぞはっきりさせて御答弁をいただきたい。今まで法案をお作りになるためのいろいろな紆余曲折はあろうと思う。そういうものにこだわるようでありますと、最初から問題それ自身が不純なものになると思いますので、その点に対するあなたの良心にこたえて正確なお考えを聞かせていただきたいというのでありますから、どうぞこの点はっきりもう一度御答え願います。
  134. 太田正孝

    太田国務大臣 お言葉にありました良心的にという意味並びによく世間で申される党利党略という意味は、主観性を加えているか、ことに政治家の、その政党の主観性があるかどうかという問題でございますが、調査会の案におきましても、また私が再三申し上げたことも、客観的事実に基きまして、学校の数であるとか、地理的状況、経済的状況等、主観を交えざる意味において区制をやっていかなければならぬということで、その原則のもとに、さらにあるいは離島をどうするとか、いろいろな制約をもちましてこれを作ったわけでございまして、良心的にという意味におきまして、主観性なく、客観性を主としてこういう区割りをすべきものだと考えております。
  135. 井堀繁雄

    ○井堀委員 ごもっともな御答弁で、主観を入れてはならないということは明らかなことであります。そこで、問題は、客観的条件が対象になってくるわけであります。その客観的な条件についてでありますが、それは、根本的には、議員の定数問題と、それにどういう客観的な諸条件をかみ合せるかということになるわけであります。その客観的な条件について、私はここに新たに原則を明らかにする義務が生ずると思うので、その原則について、この際はっきり伺っておきたいと思う。時間は十分かけてけっこうでありますから、これとこれとこれとこれを条件にするということを明らかにされたい。
  136. 太田正孝

    太田国務大臣 大体選挙区の区割りについての原則は七つ掲げておるのでございます。その第一は、選挙区の人口は、離島、山間地域等の特殊な事情のあった場合を除きまして、なるべく当該都道府県の一人当りの平均人口に近からしめるということ、これが人口の点から見ての主力をなす考え方でございます。第二は、選挙区となすべき一団の地域は、地勢、交通、人情、行政沿革等諸般の事情を総合的に考慮して定めることでございます。第三は、飛び地の選挙区は原則として設けないということ、第四は、町村の区域はこれを分割しないということ、第五は、平均人口以下の市及び区の区域は原則としてこれを分割しないこと、第六は、特別の事情のない限り郡の区域は尊重すること、第七は、やむを得ざる場合のほか、現行選挙区の境界にわたる選挙区は設定しない、いわゆる混合区をなるべく避けていこう、こういう意味でございます。
  137. 井堀繁雄

    ○井堀委員 やや明瞭になってきたのでありますが、今七つお示しになりました点でありますけれども、平均人口、特殊の離島や遠隔の地域は、現状からいってやむを得ないと私どもも思います。そこで、第一の平均人口に加えるにあと六つの条件があげられてくるわけであります。その六つの条件が非常に重大なのであります。そこで、この六つの条件でありますが、その六つの条件と選挙費用を一例としてあげれば、選挙費用は、有権者一人当り、すなわち人口に比例して計算がされていると思うのでありますが、一体今あげた六つの関係選挙費用というものを機械的に割り出すことが公平であるかどうか、この問題が一つある。それから時間の制約がこれにあるわけであります。時間は画一的であります。どんな狭い地域でも広い地域でも、人口の密集しているところでもあるいはきわめて稀薄な地域でも、交通機関の非常に発達しているところでもあるいは未開の地でも、同じ時間と応じ費用をもって計算しておるというのが原案のようでありますが、この辺の矛盾はどういう工合にお考えになるか。今あなたのあげられた六つの条件では、この矛盾は随所に出てくると思うのですが、この点に対するあなたの基本的な考え方、この矛盾をどうなさるお考えであるかを伺いたい。
  138. 太田正孝

    太田国務大臣 費用の問題でございますが、重ねて申し上げまする通り、今回の選挙法は全く新しい考え方で政党の運動というものを加味しておりますので、従来とはその点をよほど違えて考えなければならぬと思います。ただ、費用そのものについては、今政府委員から御説明申し上げますが、私の考え方は、今度の選挙費用というものは、二つに分けられて、一方には各候補者の出す選挙費用と、他方には政党そのものの運動に伴う相当広範囲にわたる費用がございますので、今回を、今までの例により、ことに大正八年に行われた小選挙区の例によって考えない方がいいのじゃないか、こう私は思います。
  139. 早川崇

    ○早川政府委員 費用のアンバランスの問題は、御承知のように、今度の選挙法の改正では一人当り七円か六円になっているのでございまして、現在におきましても非常なアンバランスが各選挙区においてあるわけであります。現在よりはかえって費用は一選挙区当り安くなります。またアンバランスも現行法よりはよくなるのではないかと考えておりますが、もちろん正確な比例的な費用割りにはなりません。
  140. 井堀繁雄

    ○井堀委員 早川次官は何か簡単に片づけられたようでありますが、今度の選挙法でも、従前のものでも、選挙費用は罰則規定を最もきびしく適用されなければならぬ部分であります。もちろん、政府も言っておるように、公明選挙選挙粛正が前提になるわけであります。あなた方は小選挙区をお考えのようでありますが、小選挙区の場合には、いずれの区においても、買収に対しては厳罰をもって臨むということを忘れてならぬことは、幾多の事例で明らかであります。でありますから、費用の問題は非常に重大なのであります。それをあなたは簡単に言ってのけられておるが、そういうことでは、どだい問題の根本に対するお考え方に矛盾があると私は心配するわけであります。私はあなた方のあげ足をとるわけではない。そこで、もっと作意的ないろいろな事柄がこれから起ってくると思うのですが、私が先刻も申し上げましたように、この問題に関して、天地神明に誓ってお互いにできるだけ誠意を貫こうという努力がわれわれから忘れられたならば、この委員会はめちゃくちゃになってしまう。だから聞いておる。あなたは費用のことを簡単にそう言っておりますが、買収したとかしないとかいう問題は、この費用の問題からたぐっていく以外にない。みな勝負を争うのですから、どうすれば勝つことができるかといえば、一番やさしい方法で勝利を期するための結果を求めるのが人情の弱さであります。その人情の弱さをこの法律で公正を期しようとするのでありますから、そのものさしが最初から狂っていたのでは何にもならぬ、その点あなたの御答弁はまるっきりなっていないということを私は申し上げざるを得ない、だから、今の太田長官の御答弁の中にも、その矛盾がだんだん積み重なって出てきているじゃありませんか。第一、人口議員の定数の上についても、この六つか七つの条件を加味しなければ結論を出すことが困難だという一つの矛盾を、こういう形の中へ織り込もうとしておる。さらに、その上にかぶせかけて私がお尋ねをしているのは、今までのように大選挙区、中選挙区あるいはこれが小選挙区になりますと、それのきびしさがどんどんどんくるわけです。大選挙区の場合なら比較的均衡がとれてくる、その矛盾というものは比較的数字的に少くなるのですが、これはきびしくなるわけです。こういう関係を、時間があれば一つ一つについてお尋ねをすればいいのでありますが、関連質問でありますから、長い時間をとることは恐縮だと思います。また私の発言の機会があると思いますので、そのときに触れていきまするための御答弁の用意をあなた方にしていただくために、お尋ねしておるのです。ですから、ここで今私の聞こうとすることは、三つばかり大きな矛盾が出てきましたうち、費用の問題を一つ私はとったわけです。費用は一人当り六円か七円の単価をやめたと言っておる。そんな単価はありませんよ。ここら辺に十分あなた方の思いがいたされなければならぬはずなんです。それをもう少し検討しておいて下さい。  それから時間差の問題、これも重大であります。この点、地域の関係でいろいろ出てきますが、一番わかりやすい一例だけをとってお考えをお聞きしたいと思うのです。二人区をここに設けておるということ、一つの法律で二人区と一人区の問題を律しようとすることは、やはり矛盾することなのです。このこと自体が、法自身の不公平、不公正をみずから暴露することになるわけでありますから、ここは今後重大な問題になってくると思います。ただ、人口の上で倍数近いものをもって一人区と二人区をきめておりまするが、もしその算術的な問題だけで今お答えをいただきますと、人口二十万——これはいろいろありますけれども、わかりやすく申しまして、二十万をもって一つの単位と仮定いたしますならば、四十万だから二人区にするということが許されますならば、その二十万と四十万との不公平は、最初から二人区に歩がよくて一人区にははなはだしく不利になるという答弁が算術的にもできます、こういう矛盾が随所に今後起ってくるわけでありますから、具体的な問題に触れる前に、基本的な点について一つ太田長官のお考えをただしておきたい、すなわち、人口でもし比例をしていく場合において、一人区と二人区を作る場合、今言ったように、算術的に二十万と四十万というようなかけ方で、一体妥当な答えを出し得るとあなたはお考えであるか。妥当でないとするなら、そこにどういう調整を加えなければならぬかということに対する原則的なものがあるわけであります。その点を一つ伺っておきたい。
  141. 太田正孝

    太田国務大臣 小選挙区制の割り切った考えでは一人区制でございます。しかし、何ゆえに二人区を設けたかという理由は、むしろ割り切ったがために無理な区画ができる場合も考えなければなりませんので、人口のみならず、先ほど申しました客観的情勢といわれる地理的関係、経済的関係等を勘案いたしましてやるのでございまするから、ただ人口だけでもって二人区を設けたとか、そう単純に申し上げることはできないので、二十区設けましたその一々について申し上げる機会におきましては、なぜ一人凶にした方が悪かったかということも御納得願わなければならぬのでございます。私の考え方としては、区制りの原則に基いてやっていきますと、どうもこれよりもほかの方がいい、非常に政治経済上の発展がございます場合には一人区に割り切ることができますけれども、日本の現状におきましては、イギリスに見るような現状の一人区制にいかれないところがございまして、二人区にしたわけでございます。イギリスといえども数年前まではまだそういう制度をとっており、日本でも、大正八年のときの小選挙制度においては、二人区が六十幾つかあったほどでございます。新しい案として作ろうという緑風会にしましても、二人区を設けるに当りましては、非常に心を砕かれまして、人口の問題その他を勘策して作ったことと思うのでございます。
  142. 井堀繁雄

    ○井堀委員 私のお尋ねしておりますのは、どうして二人区を作ったかということではありません。原則を伺っておるのであります。原案の中には二人区が幾つかあるようだ。あなたもお認めのように、小選挙区は一人区をもって原則とする。いな、原則というような、そういうなまやさしいものではない。小選挙区というものは一つしかない。二人区は中選挙区です。これは論理的にもあなたは矛盾を認めるわけです。ただ、それは数字的にいえば、五人より二人は小さい、二人より一人は小さい、そういうことをあなたがお考えになるわけはないと思う。小選挙区を否定することは常識です。ですから、あなたとそういうむだな質問をかわそうとは思いません。今私のお尋ねしてみる点にどうぞ正確にお答えをいただきたいと思うのは、原則を聞いている。今言うように、人口に問題はあるわけです。人口議員定数の関係からして今お尋ねをしておるのでありますから、どうぞ、ほかの道にそれないで、はっきりとしたあなたのお考えを聞かしてもらいたい。今あなたの言質をとってどうするというわけじゃございませんから、一つ警戒しないで御答弁いただきたい。警戒されると、かえって妙なものができる。今までずっと私とあなたの質疑応答の中で明らかになりましたとは、もう一ぺん繰り返しますが、やはり原則としては人口議員定数というものは正比例さすべきものであるということについては、私のお尋ねもあなたのお考えもそう食い違うものでないことも明らかになりました。それはそれでいい。そこで、それを他の条件で制約をする。その条件は何かと言ったら、あなたは七つあげられたわけであります。その七つの第一は、人口に正比例するということでありますから、問題はない。あとの六つのものがそれぞれ具体的に出ております。これはあとでお尋ねをするわけであります。ところが、一番問題になってくるのは、人口と六つのあの条件というものは、そのアンバランスというものをいろいろ変更させる条件なんです。それが二人区まで発展していったんじゃ脱線するわけなんです。だから、それを脱線とお認めにならぬのかどうかという点に対するさっきの御答弁は、原則は一人区、小選挙区といえば一人区だけれども、こういうことを言われたわけです。原則というところで一致をしておるわけです。しかし、原則ということは。この場合においては人口と定数との前提があるわけですから、これを離れて議論をする場合は別ですよ。これは、党の都合で、だれそれさんとだれそれさんとの関係で、これでは工合が悪いから他にしよう、そういう御都合を伺っておるのじゃない。それはおありでしょう、なかなか党内勢力分野はむずかしいですから。しかし、そんなことは今われわれが考慮の中に入れる段階ではない。原則的なものをまず明らかにして、その原則に近づくために、われわれは最大の努力を払う。努力目標はそこに出てくるわけです。その原則が間違ってくると、途方もないことになるということを心配してお尋ねしておるのです。あなたと私との間に原則的な違いがあっては何もならぬ。悪口の言い合いになってしまう。でありますから、その点をお尋ねをしておるのであります。今二人区の例を私がとったことがあまりよくなかったかもしれませんけれども、しかし、現実に今出てきているわけです。これは、実際問題で論議をする場合には、あなたの言いたいこともあるし、私の考え方もあるのです。それは意見の食い違いで国民が審判するでありましょう。しかし、原則の問題をはっきりしたいと思いますから、もう一度お答えを願いたいと思うのは、二人区の場合は数を同じくしてはいけないということはおわかりだと思う。さっき数字を言いましたね。あなたの原案でいけばわかるけれども、原案にここで触れるのは好ましくないから触れない。原則論ですから抽象的でいい。いいですか。二十万なら二十万という人口になると仮定すると、総人口を四百九十七で割るとなんぼになるという数字が出てくるわけですね。そうすると、それの一つの対数が出るから、それの倍が二人区であるというようなお考え方がありますか、ありませんか。その場合の数字の開きはどういうふうにしたらいいかということを——これは一つの結果を聞いておるのじゃありませんよ。原則を聞いておるのです。それに対する一つあなたの、さっきおっしゃった良心に誓って、これは正しいと思うところを聞かしていただきたい。
  143. 太田正孝

    太田国務大臣 私が申し上げるまでもなく、府県別に割り当てたところで区画を作るのでございますから、二十万が四十万になれば必ず倍になるということは、府県の割り当てられたる人口関係から、そのように参らぬ場合があるのでございます。先ほど申しました通り、割り当てられたるその人口を、客観的条件によって、六つの条件によりましてこれを定めていきたい、こういう意味でございます。
  144. 井堀繁雄

    ○井堀委員 あまり長くなることは好ましくないと思いまするが、大事なことですから、もう一度はっきりしていただきたい、あなたがずっと御答弁になっておる間は正しいのでありますが、御相談をなさって御答弁すると、混乱してくるようであります。いや、それを私は妨げるのではありませんよ。どうぞごゆっくり御相談してけっこうですけれども原則について、尋ねしているときには、大臣、あなたの信念を述べるべきです。技術的の点については、それぞれ熟練者が多いのですから、熟練者の意見を求められることは正しいので、原則をお述べになるときに技術屋がくちばしをいれると、その原則が混乱することは、これはいつの場合でも同じ法則です。今あなたが御答弁の中でちょっと人の知恵を入れたと思われる私の感じですが、御答弁は、府県に割り当てる、それを一ぺんも今まで原則の中で言っておられません。それなら、原則の中に、まず第一、定数と人口を府県別に出して、府県に定数を割り当てる、府県に割り当てた定数は幾ら幾らですか、こういうふうにお聞きしなければならなくなる。そこまで私は具体的に触れてないですよ。ですから、その点は、何べんも繰り返しておりますけれども、あなたはおわかりになっていると思うので、あなたのおわかりになっていることをはっきり言っていただけば、それが間違っておったらまたあとで直せばいいじゃないですか、神様じゃないから。この点に対して、太田長官一つあなたの自信のあるところをお答え下さい。
  145. 太田正孝

    太田国務大臣 私は別に相談したわけではないので、ちょっと私は御質問を間違えているのではないかと思って聞いたわけで、決して私はうそをつきません。最後に申し述べました通り、府県へ割り当てた場合において、二十万が四十万になったら二人にするかということではない、こういうことを申し上げたので、別に同僚の人たちから制肘を受けているわけではございませんから、あしからず御了承願います。
  146. 井堀繁雄

    ○井堀委員 しごくけっこうであります。あなたの御意見でどんどん述べていただきたい。それで一つ伺っておきたいと思いまするが、もし府県別に割当をするということになりますと、その府県は御案内のように必ずしも人口に比例していないのです。そうしますと、国会議員ですからね、代議制でありますから、国全体の総点をいかに正しく反映するかということが、最大のわれわれの眼目にしなければならないところであります。一番いいことは、全国の人口に正比例する四百九十でもなんぼでもいいのです。定数を作ったら、その定数を公平に削る。しかし、その間に府県というものを考慮に入れるというならば、それを原則の中に入れなければいけない。そうすると原則一つふえたわけです。府県割りにまずする。府県割りにする場合にも、昔は、何か、知事の任地をきめる場合に、一級県とか二級県とかというような位取りがあったそうであります。また、経済的な条件についても、府県単位にそれぞれの序列がいろいろな条件によって変ってくるわけであります。多く村を持つところもありましょうし、市を多く持つところもありましょう、農業県もあれば、工業県もあるでしょう。文化の高いところ、低いところ、そういうものによっていろいろ違ってくるわけであります。ですから、そういうものが考慮の中に入れられてこなければ、府県の割当というものは出てこなくなる。ですから、そういう原則があるなら、まず、今言われた六つの条件のほかに、府県別があるということを言っていただかなければならぬ。
  147. 太田正孝

    太田国務大臣 府県別の割当は、むしろこれより光の前提条件である、もし入れれば入れてもよろしいのでございますが、わかり切ったというか、前提前提条件です。
  148. 井堀繁雄

    ○井堀委員 今まで何回もお尋ねしたが、そういうことは言われなかった。そうすると、府県の問題についてごく簡単にお尋ねをしておきたいと思います。現在の府県の人口の問題を別にいたしまして、一体、どういう序列で、人員と定数の割合を——これは、一様のものじゃございませんから、順番がつくわけであります。番号だけでもけっこうです。東京が一なら一、埼玉が五なら五、北海道が七なら七ということでけっこうでありますから、その順位だけでもお示しを願いたい。
  149. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 ただいまお尋ねの点は、各府県別に議員定数を配当いたしまして、その配当定数をもって当該府県の人口を知った議員一人当りの各府県別の人口の序列を示せというお尋ねのように承わりましたが、さようでございますか。——それでありますならば、相当たくさんでありますので、別に資料を提出してお答えにかえたいと存じますが、いかがでございましょうか。
  150. 井堀繁雄

    ○井堀委員 けっこうです。何も困らせることが能じゃないのです。序列という言葉が適当だとは思っておりませんけれども、同一でないということだけは答えが出てくると思う。同一でないということは順番が出てくるということなんです。だから、そういう序列をつけて表わす場合もあるし、それから各個の条件をつけて表わすということもある。それを言いなさいと言うんです。それを事務当局に答えていただかなければならないということであれば、私ども考え方を変えるのです。太田さん自身の本案に対する自信のほどがわかるのです。だから、太田さんはこれを提案されるときにもかなり自信に満ちた発言をされておりますから、それをそのまま私は尊敬をしてお尋ねしたわけです。今のところは何も立場を異にしてやっておるのじゃありませんから、お互いに日本の正しい民主政治を育てようとするために努力をしているわけでありますから、そう心配しないで御答弁を願いたい。だから、今私のお尋ねした府県別の順位、序列その他について、今すぐ御答弁ができなければ、資料の形で出していただいてけっこうです。その資料の形は、あと理事会を開いて御相談をしたいと思います。一応私の質問はこの程度にいたしておきます。
  151. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 選挙制度調査会答申という厚い書物を御配付申し上げておりますが、それの一番うしろの方に、今御要求の趣旨になるものがございます。あれを御参考に願えれば、ただいまの御質問にお答えできるかと思います。
  152. 井堀繁雄

    ○井堀委員 今あなたのそういう発言がありましたから、もう一言言っておきたいと思います。私どもが資料を要求しようとするのは、今言った原則の問題に基いて、はっきりしたものをまずつかみたいという立場から求めるのであります。あなた方の技術方面から一応政策的にきめられたものを——あなた方はそこは自由はないわけです。政策を左右する自由は行政官にはないはずです。私が今言っておるのは政策の問題を論じ合っているんで、よけいなところにくちばしをいれるか、かえってあなたの立場を苦しくするだけです。そこで、資料としてもし提出して下さるなら——今言われました資料、あれではいけませんよ。これは非常に重大なんです。なぜかというと、府県別にいろいろな配当をしていくのですからね。その府県別に対する順位というものは、そう事務当局が考えるようなものでできるものではないのです。政策が入ってくるのです。それはなぜかといったら、現在の府県というものの見方がいろいろあるのです。事務当局の考えるように、人口とか、地勢とか、やや固定したものもあるし、文化のように流れておるものもある。議事を能率的にやるためには、こういう問題についても正確にしておかないと非常に問題になります。今のように混乱したままで持ち込んだら、一カ月や二カ月で、朝から晩までぶっ通しで論議してもむだばかりやります。責任が取れない。そういう意味でほんとうのものを出しなさいと、あなた方のためにも言っておるのです。だから、いずれ、資料につきましては、理事会で話し合って、これとこれというふうに差し上げますから、それに対して、できるだけ早く、そうして正確なものを出すように希望いたしまして、私の質問を一応打ち切っておきます。
  153. 島上善五郎

    島上委員 私はまだ選挙制度調査会については質問する事項があります。さっきも私が言いましたように、選挙制度調査会総会最後は、正常な採決ではなかったと私ども考えておる。しかも、その正常な採決でなかったものを正常なりとして賛成したのは、主として政府から出ておる大臣、次官及び与党委員諸君なんです。もし政府及び与党委員諸君を除いて考えるならば、多数はあの採決は正常でないものとして反対しておる。小選挙区に原則的に賛成する諸君といえども、あの採決の仕方は正常なものでないと反対しておる。ところが、政府及び与党の諸君が大いに促進して、ああいう結果になったわけです。私はあれを正常なものと思っておりませんが、促進して賛成した政府及び与党の諸君は、あの決定と称しておるもの、従って答申というものに対しては尊重する責任があると思うのですが、それをどのようにお考えになっておるか。太田長官委員の一人ですから、それを伺っておきたい。
  154. 太田正孝

    太田国務大臣 私は、あの委員会運営会議規則によっており、その議決が多数決であり、正常なるものであり、従って有効なる答申であると思っております。その点につきましては寸分の疑いも抱いておりません。
  155. 島上善五郎

    島上委員 私の言ったことと違う答弁をしておる。そういう答弁をされるなら、私はもう一ぺん言わなくちゃならない。あの運営が正常なものである、そういうことを言うなら、速記録を出して言いますけれども……。(「一ぺんでいいじゃないか」と呼ぶ者あり)正常なものだとか、ぼくの質問したことに対して違う答弁をしておる。よけいなことを言うから、言わなくちゃならなくなってくる。(「見解の相違だ」と呼ぶ者あり)見解の相違ではない。ちゃんと事実がある。蝋山政道委員の修正動議も……。(「本会議が始まったから、やめようじゃないか」と呼ぶ者あり)それじゃ、まだこれはたくさんありますけれども、留保して、きょうはこれだけにしておきます。
  156. 小澤佐重喜

    小澤委員長 この際暫時休憩いたします。     午後三時三十一分休憩      ————◇—————     〔休憩後は開会に至らなかった〕