運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1956-03-27 第24回国会 衆議院 公職選挙法改正に関する調査特別委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年三月二十七日(火曜日)     午前十時三十六分開議  出席委員    委員長 小澤佐重喜君    理事 青木  正君 理事 大村 清一君    理事 淵上房太郎君 理事 松澤 雄藏君    理事 山村新治郎君 理事 井堀 繁雄君    理事 島上善五郎君       相川 勝六君    赤城 宗徳君       足立 篤郎君    加藤 高藏君       菅  太郎君    薩摩 雄次君       椎名  隆君    田中 龍夫君       中馬 辰猪君    内藤 友明君       二階堂 進君    福井 順一君       藤枝 泉介君    古川 丈吉君       三田村武夫君    森   清君       山本 利壽君    佐竹 晴記君       鈴木 義男君    滝井 義高君       竹谷源太郎君    中村 高一君       原   茂君    武藤運十郎君       森 三樹二君    山田 長司君       山下 榮二君    川上 貫一君  出席国務大臣         国 務 大 臣 太田 正孝君  出席政府委員         自治政務次官  早川  崇君         自治庁次長   鈴木 俊一君         総理府事務官         (自治庁選挙部         長)      兼子 秀夫君  委員外出席者         法務省参事官  勝尾 鐐三君     ————————————— 三月二十七日  委員薩摩雄次君及び杉浦武雄君辞任につき、そ  の補欠として菅太郎君及び田中龍夫君が議長の  指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  政治資金規正法の一部を改正する法律案中村  高一君外三名提出衆法第二一号)  公職選挙法の一部を改正する法律案内閣提出  第一三九号)  公職選挙法の一部を改正する法律案中村高一  君外四名提出衆法第二二号)     —————————————
  2. 小澤佐重喜

    小澤委員長 これより会議を開きます。  内閣提出公職選挙法の一部を改正する法律案議題として審査を進めます。これより質疑に入ります。質疑通告順によってこれを許します。
  3. 井堀繁雄

    井堀委員 議事進行……。先日の理事会で申し合せをいたしましたきょうの会議議題は、第八回の本委員会においてすでに提案されました社会党政治資金規正法の一部改正に関する法律、さらに、政府提案社会党提案公職選挙法の一部改正案の三つの議案のうち、公職選挙法については社会党提案された議案について、またさきに先議された政治資金規正法の一部改正に関する法律案については、本日与党側があげてこの社会党提案の両案について質疑をするという申し合せであったはずであります。しかるに、本日の公報を拝見いたしますると、この二案の公示が行われていないのみならず、政府提案公示のみがなされておるのであるが、かかる事柄理事会の申し合せを無視した委員長の取扱いであり、許されない行為であると思うのであります。こういうやり方をいたすようでありまするならば、秩序ある委員会審議は困難であると思うのでありまして、こういうやり方については私ども承服しがたい。直ちに理事会を開いてこのてんまつを明らかにされんことを望みます。
  4. 小澤佐重喜

    小澤委員長 この問題については、僕も関係のあることだから、私の考えを言います。この問題は、きのうの理事会におきまして、結局質問者のある議案を取り上げて掲示することに話がきまったように了承しております。(「その通り」「違う」と呼び、その他発言する者あり)聞きなさい。——しかしながら、もし、本日でありましても、社会党提出の二法案質問がありますれば、すぐにここに上程しまして……。(「不公平だ」と呼ぶ者あり)決して不公平な扱いをいたしません。理事会の申し合せの通りをいたしました。
  5. 井堀繁雄

    井堀委員 昨日の理事会では、委員長社会党との話し合いで——その事柄については、昨日の理事会で明らかにされたように、われわれは、政府提案された案件内容については、きわめて内容が重大であるから、これについて十分なる検討を遂げろ必要があると党内において論議されたので、出先の理事といたしましては、少くとも二日間くらいはこの案件について党内意見を調整して、委員の任務を十分果したい、従って、委員会の開会については二日間程度の猶予がしかるべきであろという主張をわれわれはいたしたのであります。これに対して、与党側理事は、あげて、われわれ与党側としてはすでに社会党案に対して質問の用意がある、その質問を封ずるということは穏当ではないじゃないかという主張がありましたので、一理あるとわれわれは存じまして、社会党両案に対する与党側質問を本日はいたすということで、理事会の申し合せをいたしたのであります。かような経過からいたせば、本日は社会党両案について委員長は当然この会議に諮るべきが、先日の理事会の申し合せを尊重する委員長の正しい態度だとわれわれは信ずるのであります。一部の自由党側の諸君のどういう御意向があったかは別といたしまして、理事会の申し合せに従って、本日は社会党両案について審議を進められることが当然だと思うのであって、このことについて理事会意見を十分尊重されるという委員長態度であれば、そうすべきである。これを無視されるということであれば、今後の委員会の秩序を保持する上において困難を生ずると思うので、休憩をされて、十分その点のいきさつを理事会において明らかにされんことを重ねて要求いたします。
  6. 小澤佐重喜

    小澤委員長 井堀君が理事会を開けと言うなら、これには反対はしません。しませんが、今井堀君の仰せになったことと理事会の決定とは、だいぶ開きがあります、私は理事会の……。(「違う」と呼び、その他発言する者多し)私がこの日程一つ申し上げたのは、ことに今発言をしておる井堀君と話がついて、質問のある日程をそのときに掲げましょう、(「違う」と呼ぶ者あり)——君も了承しておった。しかしながら、この問題でむだな議論をしても仕方がありませんから、お話とありますれば、暫時休憩しまして、理事会を開きます。  暫時休憩します。     午前十時四十二分休憩      ————◇—————     午前十一時一分開議
  7. 小澤佐重喜

    小澤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  なお、この際、理事会の申し合せによりまして、先刻議題として宣告いたしました内閣提出公職選挙法の一部を改正する法律案にあわせて、中村高一君外三名提出政治資金規正法の一部を改正する法律案及び中村高一君外四名提出公職選挙法の一部を改正する法律案の二案を一括して議題といたします。質疑を許します。青木正君。
  8. 青木正

    青木委員 私は内閣提出公職選挙法の一部改正案について、若干の質問をいたしたいと思うものであります。今回政府提出いたしました公職選挙法の一部改正案内容につきましては、小選挙区制採用いたしておりますのでもっぱら小選挙区の問題が論議の焦点となっておるようであります。しかしながら、これらの小選挙区制論議内容検討いたしますと、もっぱら区制問題を中、心として議論が行われておるようであります。小選挙区の内容をなすものでありますので、もちろん区割りいかんは大きな問題でありますが、同時に、私どもは、小選挙制度そのものにつきましても、根本的に検討してみる必要があるのではない、かように考えるのであります。と申しますのは、現在論議されておりまする区割り是非論、あるいはまた特定の候補者に有利であるとか不利であるとか、こういう問題は、主として前回の総選挙における得票数を基準として論議をされております。この得票数が次の選挙においてどうなるか、これはおのずから別問題であり、また選挙が行われるそのときの政情等にもよるものでありまして、いわば、冷静に考えれば、区割りそのものを私どもはしかく重要視すべきものではない、かようにも考えるのであります。しかしながら、小選挙制度そのものにつきましては、日本の将来並びに今後の日本の全体の民主政治のあり方につきまして大きな関係がありますので、私どもは、小選挙制度そのものについてまず十分な検討をする必要があると思うのであります。そこで、私は、こうした観点に立って、政府にまず二、三の点をお聞きいたしたいと思うのであります。  御承知のごとく日本におきましては、過去の事例によりますと、明治二十三年以来小選挙区が最初六回行われ、次いで明治三十五中大選挙制度がしかれまして七回行われ、次いで大正八年に再び小選挙区となりまして、そのもとに二回行われ、次いで昭和三年に中選挙区制が行われ、それからさらに戦後昭和二十年に大選挙区が行われ、これはわずか一回でありまして、それから再び中選挙区制に戻って今日まで五回行われたのであります。こういった日本沿革考えてみますと、小選挙区が行われ、大選挙区が行われ、また小選挙区となり、中選挙区となり、大選挙区となり、中選挙区となり、今回また小選挙区制採用いたそうとしておるのであります。過去においてこうしてしばしば選挙区制が変ったということにつきましては、もちろんそれぞれのそのときの事情等にもよることと思うのでありますが、また、別な観点から考えてみますと、こうしてわが国においてしばしば選挙制度が変ったということは、何かわが国国民性と申しますか、政情と申しますか、そういう点において、選挙区制問題について、一つのきまった選挙制度採用することが困難な事情があるのではないか。また、逆にいえば、小選挙制度採用するに当りましてほ、こうした日本の過去の変遷等にかんがみまして、私どもは、果して小選挙制度というものが日本にとって適当であるかどうか、こういう問題について十分検討してみる必要があると思うのであります。まず、こうした点につきまして、政府は、日本の過去の沿革から見て、小選挙制度を今回採用するに当り、これが最も適当であるという判断を下した理由をまず承わっておきたいと思うのであります。
  9. 太田正孝

    太田国務大臣 青木さんにお答え申し上げます。少し齒を痛めておりますので、はっきり言えないところはお許しをいただきたいと思います。  お言葉通り区制は旧憲法時代にもずいぶん変化をして参りました。ただ、選挙制度というものは、そのときの事情によって変化することは、これは当然だろうと思います。私は、こういう意味におきまして、なぜ今回小選挙制度採用したか。申し上げるまでもなく、私どもの見るところにおきましては、政局が不安定であったというこの数年来の事実は、重大なる政治上の事実であると思います。この政局を安定するについてはどうしたらいいかということは、各政治家考えられるところであり、われわれといたしましては、この意味におきまして、政党を主といたしました争い、これによって政策を互いに争っていってきめるという考え方、それをやるには何がいいかといえば、やはり小選挙区ではないかと思う。すなわち、大正八年に小選挙制度をしきました当時におきましては、選挙制度に取り入れられたる政党地位というものは、今日のようではございませんでした。すなわち、各個人が出て立ったのでございまして、従って、今日よくいわれる大正九年のときの、あの小選挙区制に切り変ったと巷の選挙のことを申されますが、その当時においては、個人本位とした、だれもその党から立ち得るというところに、その当時の小選挙制度の本質があったと思います。しかし、今日、私どもは、小選挙制度——区制はもちろん大切でございますが、同時に、政党政策によって互いに相争うという政党本位、たとえば、公認候補者にいたしましても、また政党運動にいたしましても、今回提案いたしました法案におきましては、区割りと並んで重要な地位を占めておるのでございます。かようにいたしまして、現下の時局において最も大切なる政局の安定のために、互いに政策によって争う政党というものを大きな力に置きまして、今回の提案をいたした次第でございます。
  10. 青木正

    青木委員 さらに、この問題に関連しまして、別の角度からもう一度私聞いてみたいと思うのであります。  それは、ただいま太田長官から政府のお考えをお述べになりましたが、一体小選挙制度というものが日本国民性に合うかどうか、こういう問題につきましても、相当の議論があるのであります。選挙制度調査会の第三回の総会でありましたか、吉村正博士がこういうような意味のことを言っております。フランスの書物を読んだところが、イギリスのように政党の健全な常識の発達した国民でないフランスにおきまして、もし小選挙区制採用し、二大政党となったならば、非常に競争が激烈となって、結局フランス二つになるのじゃないか、こういうことをフランスのある本が書いておるということを引用いたしまして、フランスにおきまして小選挙区による二大政党が不適当であるということは、その国民性から出発しておる。日本におきましても同様のことが言い得るのではないかというようなことを、吉村博士委員会で述べておるのであります。この考えがいい悪いは別といたしまして、そうした考え日本国民性に合わないのじゃないかというような議論が一部に行われておることも、事実であります。また、日本沿革でなしに、世界各国の例を見ますると、御承知のごとく、小選挙区を採用いたしておりますのは、世界で約九カ国ほどあるわけでありますが、大選挙区を採用しておる国ははるかに多いのでありまして、三十カ国ほどあるわけであります。そうして大選挙区と小選挙区を併用したような形の国が六万国ある。こういうことから見ますると、世界的に見て、民主政治の発達したイギリスあるいはアメリカ、こういう国は、小選挙区によりまして、二大政党の姿がすっきり出ておりますが、それ以外の国におきましては、必ずしもそうでない。こういう問題とも関連いたし、日本国民性をどう見るかという問題もあるわけでありますが、日本において、果して、小選挙区制採用し、二大政党運営が円満にイギリスのごとくいくものかどうか、こういう問題について大臣の御見解を承わっておきたいと思います。
  11. 太田正孝

    太田国務大臣 区制につきましては、候補者立場からも問題がございましょう。国民立場からも問題がございましょう。また結果から見て死票が多くなるというような問題もございましょうが、最も重要なる問題は、お言葉通り国民性がこの制度とどう結ぶかということでございます。私は、ふつつかでございますが——フランスのごとく理論に非常に打ち込む国民は、どうしても、理詰めでもって、少しの政策の差でもなお相争うというようなことになるのでございます。従って、大選挙区により、また死票を少くするように、比例代表をとるというやり方でございますが、国民性が、たとえば小選挙制度の模範とするイギリスのこと巷は、国民がいろいろな政策上の考えを持っておりましても、これを大体において分けて、最大公約数的に政策を結んでいこう。労働党と今日の保守党のごとくに、いわゆる二大政党によって争う。むろん、その中において、イギリス国会運営等におきましては、個人的の立場もずいぶん認めておりますけれども、大体におきまして労働党考え方保守党考え方二つに分れておるように思います。すなわち二大政党的にいっていると思います。日本におきましても、最初明治の初まりの国会のごとく日清戦争までの日本の歴史を見ると、その当時の政党というものは、分れておりましたが、互いによく争いました。尾崎幸雄氏がよくこのことを言ったのでございますが、今日におきまして、ことに戦争後において、各政党がだんだんといろんな変化をしてました。社会党二つ一つになる。また保守党一つに固まった。こういう現状のもとにおきましては、国民も、その政策的の考え方を最大公約数的に、まずどっちがいいかという判断に向うということを考えますと、イギリスのごとくに小選挙制度に進むのが、国民性をして政治に進ましめる道であろう、こう私は考えるのでございます。
  12. 青木正

    青木委員 さらにもう一つお聞きいたしたいのでありますが、政府は、今回の小選挙区の採用を含む選挙法改正に当りまして、選挙制度調査会答申に基いて行なったわけであります。ところで、去る昭和二十六年八月の選挙制度調査会におきましても、当時牧野現法務大臣が会長でありましたが、その当時も、小選挙区制採用すべし、こういう答申をいたしておるのであります。この答申を受けながら、当時の吉田内閣はこの立法化をいたさなかったのであります。吉田内閣がなぜ小選挙区を採用する公職選挙法改正を行わなかったかという問題につきましては、もとより現内閣の関知すべき問題ではありません。しかしながら、吉田内閣のとき、昭和二十六年にも小選挙区制答申があったにかかわらず、そのときは立法化をはからなかった。ところが、今回は、その答申を受けて、政府は直ちに立法化に乗り出した。吉田内閣当時と比べまして、政府が今回特に小選挙区制採用しようとするに至りました根拠と申しますか、何らか政府の見るところ、それはどこにあるのか、この点につきまして、政府見解を承わりたいと思うのであります。
  13. 太田正孝

    太田国務大臣 吉田内閣のとき、昭和二十六年に、委員会が小選挙制度答申された。お言葉の迫りでございます。これを当時の内閣がなぜそのときに小選挙制度に切りかえなかったかというその実情については、私は申し上げる立場にございません。ただ、その当時と今日と客観的に違っておりまするのは、保守二つ政党一つになったという大きな事実がここにあるのでございます。また、私どもの見たところ、社会党左右両派と称せられたのが一つになった。いわゆる二大政党的姿になったということが、吉田内閣のときと違っておる客観的な事実であると私は思います。
  14. 青木正

    青木委員 大臣は、今、二大政党が確立したから、それで小選挙区制採用すると、こういう御見解をお述べになったのであります。昨日の政府提案説明によりますと、「政局を安定せしめ、国民多数の支持を保つ政党を基盤とする政府が、責任をもって内外にわたる政策を遂行することにあると信じます。しかして政府といたしまして小選挙区制採用こそこの目的を達成する最大の要件であると考えるのであります。」こうお述べになっておるのであります。ところで、ただいま、大臣は、二大政党になったから小選挙区制採用する、かようにお述べになっておるのでありますが、小選挙区制問題につきましては、常に例に引かれるのはイギリスであります。ところが、英国におきましては、小選挙区制採用したから二大政党になったのであるか、あるいはまた二大政党ができたから小選挙区制採用したのであるか、この点につきましてはいろいろ見解があると思うのであります。そこで、日本の現在の段階におきまして、政府考えとしては、二大政党ができたから小選挙区制採用するのだという考えに立つのか、そうでなしに、円満なる二大政党時代を現出するために小選挙区制採用しようとするのか、その点につきまして、政府考えを承わっておきたいと思うのであります。
  15. 太田正孝

    太田国務大臣 お言葉に対して、大体におきまして小選挙制度の方が二大政党を達成するにもよし、また二大政党の発展するのにも、この制度の方がいい、両方意味でございます。おそらく、イギリスにおきましても、同様な問題があったと私は記憶しております。
  16. 青木正

    青木委員 ただ、ここで問題となりますのは、小選挙区制の一番欠点といわれるところは、死票が多いということであります。あるいは不自然な多数党が出るおそれがある、こういうこともいわれておるのであります。そこで、二大政党時代と申しましても、社会党両派が統一して間もなくであり、保守両党も統一して間もなくであり、この機会が果して適当であるかどうか、また、別な見方から言うならば、二大政党がほぼ均衡の姿になったときに、小選挙区制採用して円満なる発展をはかるのがいいのか、こういう問題も考えてみる必要があると思うのであります。さような見地からいたしまして、一部におきましては、二大政党時代を現出するために小選挙区制は適当であるという考えに立ちながらも、両党が統一できたばかりの現在の時期が果して適当であるかどうか、こういうことにつきましても私ども検討する必要があると思うのであります。また、社会党の方々には失礼かもしれませんが、現在の二大政党と申しましても、保守党が約三分の二、社会党が三分の一という姿の時代において小選挙区制採用するのがいいかどうか、もう少し時期を待つのがいいではないかという意見もあるようでありますが、これにつきましては、私どもは、先ほど大臣の答弁にもあるごとく、むしろ、二大政党を作るような積極的な意味において、小選挙区制採用することがいいのだという御見解に立ってのお考えかとも思うのでありますが、その点につきまして政府のお考えを承わりたいと思います。
  17. 太田正孝

    太田国務大臣 最後にお話になったようは意味でございます。すなわち、二大政党ができるためにも、また発展するためにもいいと思います。問題となります死票のことが非常に大きく取り扱われておりますが、これは小選挙区をとるか大選挙区をとるかの分れ目になるのでございます。申し上げるまでもなく、投票数はたくさん取ったが、当選者が少い。いわゆる落選死票でございます。しかしながら、超過死票と申しますか、これは私のつけた名前でございますが、三万票取れば当選するというのに十万票取ったという場合には、七万票が超過投票でございます。この二つの場合を考えてみますと、比例代表制をとっている大選挙区におきましては、最初のような死票が少いのでございます。また今言いました超過投票が出る場合はどうかというと、例にひいてはどうかと思いますが、鳩山総理大臣の東京における投票超過投票でございます。こういうことはむだでもございますし、いわゆる死票と言っていいものと思います。私は比例代表制のもとにおいて死票が少いという事実は認めます。しかし、比例代表になったらどうなるかということを押し詰めてみますと、今日のフランスに見るがごとくに、小党分立という大きな結果を来たすのでございます。こういう意味からして、どういうようにこの制度をあわせていっていいか。西ドイツのようなやり方も研究いたしましたが、結局するところ、一番ねらいとするのは何であるか。死票をなくするように大選挙比例代表によるのがいいか、政局の安定のために二大政党によってやっていくことを目的とするその小選挙区がいいかという問題になるのでございます。また、これを過去の事実から申しましても、大正九年の小選挙制度によるときの落選者死票は、全得票の三割一分であったと記憶いたします。これに対し、現在の中選挙区における昨年行われました選挙における落選死票というものは三割二分でございました。(「条件が違う」と呼ぶ者あり)ただいま条件が違うと言われますが、もちろん条件が違っております。何となれば、大正八年のときは政党を主としたところの公認制度とか運動があることを条件としての小選挙制度ではございませんで、私どもの今日出張しております、政府提案しておりますこの制度においては、政党を主とした小選挙区でございますから、大正八年の例を持ってくることはできませんが、この区制そのものが、死票をいかに持っていくかということよりも、私どもの信ずる政局の安定のために、二大政党によってここに国民政策を訴えてやるというやり方が大切でありますから、比例代表に上る死票という問題より以上に大きな問題ではないか。たとえば、ドイツのごときは、両方を入れておる制度をとっておりますが、その結果どうであるかといえば、やっぱり比例代表による各州の投票の結果が、結局は乱立の弊と申しますか、小党分立と申しますか、今日のドイツ政局に現われているような事実を考えてみますると、両方入れるということがむずかしいのであって、私どもは、一方に政局安定、ここに二大政党による政策の、互いに相争う姿において国民の意思を出すというこのやり方は、比例代表の大選挙区による制度よりもしかるべきものと考えたからでございます。
  18. 青木正

    青木委員 私もその点につきましていろいろ承わりたかったのでありますが、大臣の方から御答弁がありましたので、死票問題はしばらくおきまして、さらに進んで小選挙制度の最大の欠陥と申しますか、欠点の一つとして言われておりますのは、小選挙区によりますと、どういたしましても区域が狭いので、国家的人物と申しますか、そういう人たちの選出が困難となり、ややもすれば県会等におきまして地方につながりの多い方が出やすいというような問題が取り上げられております。また婦人有権者同盟等も問題といたしておりますが、婦人の進出が非常に困難だ、こういうことも言われておるのであります。そこで、これは選挙部長でも鈴木次長でもけっこうでありますが、今回の選挙区割りにおきまして、県会選挙と同じ程度の選挙区あるいはそれより小さいような選挙区というようなところはどの程度ありますか。その点をまず承わりたい。
  19. 太田正孝

    太田国務大臣 小選挙区になりますと大人物が出ない、あるいは婦人の出るのが少くなる、あるいは新進の方々が少くなる、こういうことがよく非難の的になります。しかしながら、政党の発展のもとに、公認候補制度のもとに大人物は断じて私は抜けないと思います。また、りっぱな婦人であって、ほんとうの政策を履行する、その党から出た人でありましたならば、必ずそれを公認候補とすることと思います。言葉をかえて言えば、政党の力による限り、政党そのものがりっぱなものにならなければならぬことは当然でございますが、公認制度というものを強化していく限りにおきましては、かくのごときことはあるべからずと私は考えております。
  20. 青木正

    青木委員 なお、小選挙制度のもう一つの欠点としてあまねく言われておりますのは、小選挙区によりますと選挙運動が激烈となる。そうしてまたいろいろな違反行為が多いてあろうという問題、先般の本会議におきましても、社会党鈴木さんが、安達謙蔵氏の所論を引用いたしまして、小選挙区だと非常に運動が激烈になる、かようなことを申しておるのであります。私もその所論を調査会の速記録で拝見したのでありますが、あの当時の、ことに熊本地方における選挙は有名な激烈なところであったのであります。あの当時の事情と今日とおのずから違う点もあると思うのでありますが、いずれにいたしましても、小選挙区で一対一で競争いたしますと、どうしても競争が激甚にならざるを得ないと思うのであります。こういう点につきまして政府のお考えを承わっておきたいと思います。
  21. 早川崇

    ○早川政府委員 かわってお答えいたします。今の青木委員の御質問大正八年ごろの実情をもとにしておられますが、おのずから有権者も非常に多くなっておる。さらに、小選挙区によって、従来のような官憲の圧迫とかそういうものが除去されます。従って、大正八年の実情がそのままこのたび小選挙区をしいたら弊害が起るということは言えないと、かように考えております。
  22. 青木正

    青木委員 さらに、私は、進みまして、小選挙区制採用するに当りまして、今回政府が定員を三十名ほどふやしまして、四百九十七名にいたしたのであります。そのふやした事情につきましては一応の御説明拝承わったのでありますが、さらに各府県間のつり合いと申しますか、それを見ますと、非常に不合理な点が出てきておるのであります。たとえば、一人区で長崎県の壱岐、対馬は人口が十一万八千、ところが東京の江戸川区は一人区で二十五万四千、その間に十何万の開きがあるのであります。二人区におきましても、石川県の第五区は二人区で二十六万、ところが兵庫の一区は二人区で四十九万、こういうように大きな開きが出ております。また、政府考え方に立って一応配分をいたしまして、青森と佐賀は、たとえば青森は、秋田、山形に比べて人口が多いにかかわらず、議員の割当が少いということで、一名ふやしております。佐賀はまた石川、香川よりも人口が多いにかかわらず、定員が少いというので、一名ふやしておりますが、同様な例が他の町並につきましても散見できるのであります。この問の調整は実際問題としてなかなかむずかしい問題だと私ども考えるのでありますが、これが調整に当りまして、政府はどういう考えでこの調整をしたか。実際問題とすると、なかなか全部各府県同じような割合ということは困難とは思うのでありますが、どういう考え方に立ち、どういう基準によって各府県問の按分をなされ、全体の四百九十七名をおきめになったか、この点について御説明を願いたい。
  23. 早川崇

    ○早川政府委員 御承知のように、現行の選挙区で五回以上も選挙をしておりますので、人口を四百六十七名で除した純粋なる比例による定員配分ということは実情に沿いませんので、少くとも現定員というものはそのままに据え置いて、その上に増加をきめました関係上、今御指摘のように、いろいろ問題が起っておるわけでございます。ただ、このたびの三十名増員の基準は、先ほど申し上げましたように、そういう面からの若干のアンバランス、さらに地形、人口、そういった総合的な観点から、あるところでは十二万、あるところは二十五万というようなアンバランスが生じた。これまたやむを得ないところでございます。ただ、青森と佐賀に関する限りは、すでに御承知のように、人口が多いにもかかわらず、少い県よりも定員が少いということはあまりにも均衡を失しますので、青森、佐賀という、人口が定員一人当り非常に多い区だけはふやしてあるのでございます。なお、その方式で全部比例的にやるといたしますと、さらに八十名近く定員を増加しなければならぬ、こういうことになりますので、この際青森、佐賀等人口のバランスの欠けたところだけふやすことにいたしたのであります。
  24. 山下榮二

    ○山下(榮)委員 ちょっと関連して。今定員増加の問題が質問されているのでありますが、自治庁は、自治法の改正等によりまして、地方議員に対しましては減員の方針をとっておられるのであります。しかるに、今回の衆議院の改正に当りましては増員の方針をとっておられるということは、自治庁自身にとって大きね矛盾ではないかと私は思うのでありますが、なぜこういう矛盾が出て参るのであるか、太田自治庁長官の説明を一つ伺いたいと思うのです。
  25. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 かわって御答弁申し上げます。  ただいま御指摘のように、地方の財政状況が非常に苦しくなっておりまして、全体として地方の行政機構を執行機関、議決機関ともに簡素化していかなければいけない、こういう考え方で、自治法の改正等も自治庁としてはやっているのであります。その点と、今回の衆議院議員の改正案によりまして三十人増員をいたしているのは、矛盾するではないかということは、その点だけを相互に比較なさいますれば、まさにその通りだと思うのでありますが、しかし、今回は、先ほど来大臣から申し上げておりますように、小選挙区制採用という大きな目的から出発いたしておりますので、そういう考え方にこだわらないで、やはり日本の政界全体の安定ということを第一義に考えておりますので、このような案を提案いたしたわけでございます。
  26. 山下榮二

    ○山下(榮)委員 私は、この問題については、いずれ後日質問をいたしたいと思うのでありますが、そういう富み当局の答弁ではなくて、いわゆる政治的な配慮がこれには多く加味されていると思いますので、太田長官の答弁を伺いたいと思っておったのですが、いずれ後日、質問の機会に、本問題については詳しく伺いたいと思うので、きょうはこれで終りたいと思います。
  27. 青木正

    青木委員 小選挙区の区画を郡あるいは市というような行政単位によってやって参りますと、人口のアンバランスを調整することはなかなかむずかしい問題と思うのであります。そこで、御承知のごとくイギリスにおきましては、一九四四年でありますか、バウンダリー・コミッション、選挙区境界委員会を設けまして、そうして毎年調整をいたしまして、ようやく最近において大体バランスがとれつつある、こういわれているのであります。ところで、今回の政府提出案によりますと、第十三条の一におきまして、衆議院議員選挙区審査会、こういうものを設置することにいたしております。この考え方は、あるいはイギリスにおけるバウンダリー・コミッションと同じような考え方に立ったのかとも思われるのでありますが、しかし、この法案内容を拝見いたしますと、これは、行政区画の変更が起った場合に、この選挙区審査会に意見を求めて、政府はこれによってきめる、こういうことになっているのでありまして、行政区画の変更の場合だけこの審査会が働くのであります。そうでなしに、英国の場合におけるごとく、人口の移動があった場合におきましても、この審査会が選挙区の調整をする、こういう考えに立つことが必要ではないかと思いますが、政府のお考えを承わっておきたいと思います。単に行政区画の変更だけでなくて、人口の移動があった場合にも、この審査会がそういう調整の働きをする——調整の働きといいますか、意見をまとめてこれを政府答申する、こういう考え方に立った方がいいのではないかと思いますが、政府のお考えはいかがでありますか。
  28. 早川崇

    ○早川政府委員 御承知のように、英国は完全な人口比例でいっておりますので、バウンダリー・コミッションも事務的に物事が運べるというわけであります。このたびの小選挙制度は、歴史的な地形、人口、産業その他を総合いたしまして区画を決定いたしておりますので、この法律に設けられました審査会は、行政区画の変更という面だけを処理することができることといたしまして、町村合併その他少しでも政治的な要素の入る面は、これを総理大臣に参考として具申することができるという程度にとどめたわけでございまして、英国とその間の成立の事情を異にしておりますので、このたびは採用をいたさなかったのでございます。今後これは検討の問題として考えております。
  29. 青木正

    青木委員 なお、この審査会は、この条文によりますと、審査会から改正案提出があったときは、これをそのまま採用するのか、政府はこれを諮問機関として単にその意見を徴するという考え方に立っておるのか、この点もあわせてこの機会に承わっておきたいと思います。
  30. 早川崇

    ○早川政府委員 政府が独自の判断改正案国会提出することになります。参考とする程度であります。
  31. 青木正

    青木委員 その問題に関連いたしまして、これは社会党側からいろいろ問題がある点でありますが、先般の選挙制度調査会答申を受けて、政府は今回の改正案提出いたしたのでありますが、その答申の最後の総会のいきさつにつきまして、いろいろと御承知のごとく議論があるのであります。この調査会の総会の経緯等につきまして、この機会に、政府からその間の事情を御説明おき願いたいと思います。
  32. 太田正孝

    太田国務大臣 選挙制度調査会答申が有効であるか無効であるかということを承わります。しかし、私の信ずるところにおきましては、選挙制度調査会はその会議規則によって運用されておりまして、会長のもとになされましたことは、その会議規則にそむかないものでございますし、過半数によって決定されたものでありますから、有効と信じております。
  33. 青木正

    青木委員 なお、この選挙制度調査会答申を見ますると、小選挙区の採用に当りましては、小選挙区を採用すると同時に、選挙の公正確保に関する事項として、五つの項目をあげておる。つまり、個人本位の現行選挙制度が実情に即しない点にかんがみ、政党中心の選挙に移行せしめるための規定を設ける、あるいは選挙公営を拡充せい、また政治資金規正の合理化をはかる問題、それから選挙違反に対する取締りの強化の問題、それから、改正後の選挙制度のもとにおいて選挙が公明かつ適正に行われるように、国民政治常識の啓発運動を強力に展開せよ、こういう五つの問題を取り上げまして、小選挙区制採用する場合はこの五項目を必ず実行するように、こういうことを答申にうたってあるのでありまして、これに対しまして政府はどの程度調査会のこの答申の趣旨を取り入れたか、この問題を承わっておきたいと思います。
  34. 早川崇

    ○早川政府委員 第一の政党本位選挙という答申に関しましては、この法案においては百パーセント取り入れられておると考えております。第二の選挙公営の拡充という面につきましては、諸外国でもすでに現在の国営、公営制度は非常に進んだ実情にございますので、若干の公営の拡充をした程度にとどめました。第三の政治資金をもっと規正しろという提案でございますが、社会党から出ておりまする改正法案等に見られるのでありますが、この問題は、同時に、税金によって俸給を得ておる公務員の政治献金をどうするかという問題が、前々国会、二、三回の国会を通じまして結論を得ませんで、継続審議になっておるような実情で、流れたような実情もございまして、この際は取り上げなかったのであります。最後の罰則強化に腐しましては、御承知のように、出納責任者と総括事務責任者の罰則が課せられたときには、監督をしておったならば免れるという規定はすでに削除されておりまして、おとりの免責規定があるだけでございまして、そういう意味においては、連座制規定は、ある意味ではいくところまでいっておると見られるわけでございます。そこで、連座制の強化という面については附帯公訴の措置をとりまして、候補者が連座によって失脚する後に選挙人なり候補者が訴訟するという選挙引き延ばしの方法ができ広くするような、相当根本的な改正をいたしたわけでございます。
  35. 青木正

    青木委員 ただいま私が申し上げましたこの第五の関係であります。つまり国民政治常識の啓発運動の問題でありますが、昨年でありましたか、選挙管理委員会の例の常時啓発宣伝の問題がやかましく問題になりまして、たしか、予算措置ができないので、とりあえず交付金から出すような形をとったと思うのであります。政府といたしましては、公職選挙法改正提案の御意思が予算編成当時からおありになったと思うのでありますが、それに関連いたしまして、この選挙制度調査会答申の趣旨もあることであり、選挙管理委員会の常時啓発の問題につきまして、今回の予算について特に何か取り上げたような問題があるかどうか、鈴木次長から伺っておきたい。
  36. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 この答申にございますことは、小選挙区制選挙制度改正いたしました後のことを中心に申しておるごとだと思うのでございますが、今回、政府としましては、先般参議院の本会議におきまして選挙粛正に関する決議がございまして、それに基きまして、政府にも事前運動その他選挙の腐敗行為防止についてよく趣旨を徹底して善処するように、こういう要求があったのでございます。その趣旨に従って、とりあえず、今回の参議院の選挙に関しましては、通常選挙の費用の一部をさきましてこれに充てるようにいたしたいというふうに考えて、目下大蔵省と予算の折衝中でございます。
  37. 青木正

    青木委員 最後に、もう一点承わっておきたいと思うのであります。それは、今回の小選挙区制につきましては、しばしば大臣から御説明がありましたが、個人本位選挙運動ということでなしに、もっぱら政党中心の選挙運動、こういう考え方に立って改正を行なったと申しておるのであります。ところで、御承知のごとくドイツ憲法におきましては、その第三十一条に「政党国民政治的意思の形成に協力する。」こういうことをうたいまして、政党というものを憲法上に明記いたしておるのであります。今回、公職選挙法改正に当りまして、この条文の中にしばしば政党という言葉が出ておるのでありますが、政党中心の選挙運動ということを展開するためには、政党法と申しますか、政党についての何らかの特別の立法をする必要があるのではないか、かように考えるのでありますが、政府は、政党法について御研究になったかどうか、また将来政党法というようなものを提出する御意思があるかどうか、この点承わっておきたい。
  38. 早川崇

    ○早川政府委員 政党法の制定の問題は慎重に検討いたしたのでございますが、これは事憲法の問題と関係をいたす重大問題でございますから、政党法によって盛るべき内容で現在の法律で実施し得る最大限度は、このたびの選挙法改正案において盛り込んで、特に政党法を設けないで、その目的をこの法律によって達し得る限度において盛り込んだ次第でございまして、現在のところは、政党法を制定するつもりはないのであります。
  39. 小澤佐重喜

    小澤委員長 この際暫時休憩をいたします。大体午後一時から再開いたします。     午前十一時五十一分休憩      ————◇—————     午後二時十四分開議
  40. 小澤佐重喜

    小澤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を継続いたします。三田村武夫君。
  41. 三田村武夫

    ○三田村委員 午前の青木委員質疑に続いて、今回提案されました選挙法改正案の主として内容についてお尋ねいたしたいと思います。  その第一は、今度の改正内容で新しく制度化されました候補者公認制度であります。第二は、政党及び政治団体の政治活動に関する規定であります。第三は、いわゆる連帯規定、附帯訴訟の制度が加わっておることであります。主としてこの三点について、簡潔に実体的内容をお尋ねいたしてみたいと思います。  冒頭に一言申し上げ、主として太田長官の御意見を伺いたいのでありますが、選挙制度というものは、民主政治、議会政治を円滑にかつ公正に行うために最も重要なものであることは、言うまでもありません。今日二大政党が出現いたしまして、民主政治、議会政治の円滑な運営というものが、国民あげての待望であり、また大きな期待になっておるのであります。この観点から今回の選挙法改正というものが企図されたものでありますが、今度のいわゆる小選挙区制を含む公職選挙法改正案なるものは、言ってみますと選挙制度の革命ともいうべき内容を持っておるものであります。この革命的な改革に当って、われわれは、歴史の前進に即応して、新しい民主政治確立の方向に持っていかなければならないと思います。それは、ひとり別表、いわゆる選挙区制の問題だけでなくて、法案の実体的規定をなすものについても、非常に重要な関心を払わなければならぬと思います。私がその内容として最初に申し上げました候補者公認制度の問題にいたしましても、元来、これは、政党というものの組織が整備されて、その規律、秩序がある場合には、法内処置をもって候補者の公認制を規律することは変則であります。これは率直にわれわれが反省しなければならぬことでありまして、二大政党になったとはいえ——私は野党たる社会党立場を申し上げる資格は持ちませんので、これは差し控えますが、われわれ自身の党を見ても、まだ党の組織、規律、秩序が整備されておりません。そこに、われわれが、この法案審議するに当って、非常に真剣な考慮を払わなければならぬ点がある。私はまず長官にお尋ねいたしますが、候補者公認制度をこの法の上に書く、制度として立法化するその必要性、これをどういうふうにお考えになっておりますか。もう一つ民主政治、議会政治を行なっております諸外国の例に徹しても、こういう立法的処置で候補者の公認制というものをはっきり打ち出しておる例がありますか、その点についてまずお尋ねしてみたいと思います。
  42. 早川崇

    ○早川政府委員 公認制をあえて法的に設置いたしました理由は、午前大臣が申されましたように、小選挙区は政党政党の争いでありますので、政党の代表者を一名公認するということによって政策本位選挙ができるわけでありまして、ここに二名、三名という候補者が乱立をいたしますると、お互いに相はむ状況になりまして、政策本位の二大政党選挙が行えません。そういう意味で、公認制度を二大政党助長のために設けたのでありまして、諸外国では、候補者の予備選挙というような形におきまして公認候補者を選ぶアメリカの例があるわけでございます。
  43. 三田村武夫

    ○三田村委員 ただいま政務次官のお述べになりました点、私もその通り了承しております。これは選挙制度調査会答申にも書いてありまして、「選挙の公正確保に関する事項」の一に、「個人本位の現行選挙制度が実情に即しない点にかんがみ、政党中心の選挙に移行せしめるため次の規定を設けること。」とあり、その一つに、今政務次官が言われた候補者の公認制というふうなことがはっきりしてある。これは選挙制度調査会答申制度としてここに立法化されたものでありまして、その点私も了承するのでありますが、これは法律に書くことは簡単ですけれども、実際これを選挙の場合に考えますとなかなか厄介であり、困難な問題があるのであります。まず、公認の場合に、この規定によりますと、党本部の総裁または委員長の公認証明書を持つ者とあります。これは立法の場合には当然でありますが、必ずしもなかなか簡単にいかない場合があるのです。実際党組織、党活動の面からいいますと、組織は地方にある、選挙は現場で行われる、公認は党本部できめられるという場合には、従来よくありましたように、本部公認と支部公認が出てくるのです。こういう問題は、法律に書くことは簡単ですが、実際はなかなかめんどうだと思うのです。そういう点について何か具体的に制度上、法制上お考えになったことがありましょうか。
  44. 早川崇

    ○早川政府委員 ただいまの、いかにして一名の公認を決定するかということは、政党内部の民主主義的手続によることでございまして、政党内部の公認候補をきめる規定までは、法律において設けることをしなかったのでございます。民主主義的な政党の内部規程において公認をきめる方法を設定すべきものと考えたからでございます。
  45. 三田村武夫

    ○三田村委員 それは、今御答弁の通り、私もさように了解しております。私も党の組織の方を担当しておる責任者の一人でございますが、こういう立法的措置で候補者公認制度なんかをやらなければならぬということは、恥かしいことだと思っております。党自身が党の規律と秩序によって党の運営選挙に臨むということが、これが政党として正しいことであります。これは、しかし、立法上の問題ではなくて、われわれ自身の党内の問題であります。今政務次官が言われた通りでありますから、この点はあえて多くを申し上げません。  一つ政党または政治団体の公認候補という表現がありますが、とこにいわゆる政治団体、これはあとからも出てくるのでありますが、この政治団体というものは、立法者の意思の中にどういうものが描かれておりますか、まず伺いたい。
  46. 早川崇

    ○早川政府委員 実例を申しますと、たとえば、医者が選挙のために医政連盟という政治団体を作ったり、また日教組が日教組の政治連盟というものを設けたり、いわゆる社会党とか自由民主党とかいうような本来の政党以外の、そういった選挙のための政治活動をやる団体をも含めておるわけでございます。
  47. 三田村武夫

    ○三田村委員 これはもっと具体的に伺いたいのです。それはあとの規定にもあるようでありますが、いわゆる確認団体というような文字が法律には用いられております。どういう形においてこの政治団体というものを御認定になるか。これは現在どのくらいありますか。これはお調べになっておると思いますが……。
  48. 兼子秀夫

    ○兼子政府委員 政党その他の政治団体の問題でありますが、公職選挙法政党その他の団体は、政治資金規正法の第三条の規定を引いておるわけでありまして、政党その他の政治団体ということに公職選挙法は規定してありますが、政治資金規正法の第三条で、「政党とは、政治上の主義若しくは施策を推進し、支持し、若しくはこれに反対し、又は公職の候補者を推薦し、支持し、若しくはこれに反対することを本来の目的とする団体をいう。」第二項に、「この法律において協会その他の団体とは、政党以外の団体で政治上の主義若しくは施策を支持し、若くはこれに反対し、又は公職の候補者を推薦し、支持し、若しくはこれに反対する目的を有するものをいう。」このように政治資金規正法は定義をいたしておるわけであります。公職選挙法の方は、別段政党とその他の団体というものを定義いたしておらないのであります。従いまして、解釈上、われわれといたしましては、政治資金規正法政党と協会その他の団体というものが同じであるというふうに解釈をいたしております。そういたしますと、政党は、本来の政党のほかに、従来ございましたのは、やはり候補者を推薦、支持するということを本来の目的といたしております総評政治連盟、そういうものが法律上は政党の扱いを受けるわけであります。  それで、ただいまお尋ねのその他の団体が幾つくらいあるかという問題でございますが、たとえば、労働組合であるとか、商業組合であるとかが、本来の目的でなく、一時政治上の主義、施策を主張したり反対したりするための組織ということになって、政治上の活動をいたしますとその届出を要する、こういうことになるわけでございまして、現在はいろいろとあるわけであります。大体、現在届出がありますのは、約二千に近い団体が届出に相なっておるようであります。
  49. 三田村武夫

    ○三田村委員 私もそのように承知しております。  そうしますと、今度の案によりまして一選挙区一候補者というものをきめておる。つまり一選挙区一候補者、これは定員一人の場合であります。定員が二名でありますと、一選挙区二人の候補者になるわけであります。それ以上公認してはいけないという規定があるわけでありますが、今政府委員の御説明の通りに解釈いたしますと、公職者の選挙だけを目的にした政治団体の結成、組織もあり得る、可能なんであります。これは幾らでもできるわけであります。名称を変えて届出をすれば、いくらでもできるということになるのであります。一選挙区の公認候補者は新しい公職選挙法によって定員一ぱい、どの政党も定員以上公認することができないという規定になって、公認から漏れる者はどうもしょうがないから、後段に出てくる五十人以上の規定に適合すべき数を集めるか、集めなくても政治活動はできるのであり戻すから、今お話しの、ここに出てくる法律政治団体というものを形成してやる、こういうこともあり得ますね。
  50. 兼子秀夫

    ○兼子政府委員 お尋ねの通り、五十人以上集まって候補者を推薦し支持する団体を作りますれば、政党という扱いに相なるわけでございます。
  51. 三田村武夫

    ○三田村委員 私は政党という問題は別に考えている。政党でない政治団体が、ここに法律用語として出てくる政治団体でありますが、これは必ずしも五十人以上を必要としない。五十人以上の場合は法の特別の保護を受けるだけでありまして、五十人以下でもやれるわけであります。五人でも八人でも十人でも、それはあり得ますね。
  52. 兼子秀夫

    ○兼子政府委員 おっしゃる通り、一定の、二百一条の五に規定する政治活動をする場合だけ五十人以上を要するのでありまして、それ以外の政治活動につきましては、五十人未満でもできるわけでございます。
  53. 三田村武夫

    ○三田村委員 そこで、次いでお尋ねしなければならないのでありますが、衆議院の選挙の場合、これは特別に規定があるのです。政党または政治団体及びその所属員すなわち政党員あるいは会員が、その政党または政治団体が公認候補を持っておる選挙区では、他の候補者を推薦したりまたは支持することができないということになっている。これは、この候補者の公認性というものを制度上ここに法律に書く以上、より効果的にこれを運用する建前から、すなわちこの候補者公認制というものを制度上認めた政策中心、制度中心——選挙個人でやるのじゃない、党でやるのだ、団体でやるのだ、政策中心でやるのだという建前からすれば当然でありますが、これは私は空文になってしまいはしないかという気がする。名前を変えてくれば幾らでもできる。きのうまで自由民主党員、きのうまで社会党——これはないかもしれませんが、別な名前に変えてやる。これはあり得るのであります。これはここで政府当局を相手に議論する問題じゃないかもわかりません。先ほど言われました、党自身の秩序の問題であり、規律の問題でありますから、われわれ自身の問題でありますが、しかし、法案としてわれわれがここで審議する場合は、一応その実体的あり方というものを問題にしておく必要があると思う。この規定が法文にはっきり出てきますが、その関係はどうなりましょうか。
  54. 早川崇

    ○早川政府委員 選挙部長からお答えいたしましょうに、その場合にも、五十名以上の候補者を出し得る政党でなければ、この法律における政党としてのいろいろな特典を選挙においては活用できませんので、やはり公認を法律化しました異議というものは大いに発揚されるわけでございます。党を脱党して、小さい政党ということで立候補することは、これはむろん自由でありますが、ただそれが五十名以下であれば、何ら政党としての特典が与えられぬという不利がございますので、その点で公認を作る意味があるわけでございます。
  55. 三田村武夫

    ○三田村委員 候補者の公認制については、別段制裁も罰則もありません。しかし、私、ずっとこの法案を読んでみて、一つ気にかかることがある。それは、条文が今はっきりわかりませんが、政党または政治団体に所属する者である旨を公けにして選挙運動をするとは、具体的にどういうことか。つまり、公認候補以外の者が公認であるがごとき格好をしてやる場合、選挙運動の形態としてどういう場合が想定されるかということを一応伺っておきたいのです。自由民主党の公認でない者が自由民主党の公認、あるいは社会党の公認でない者が社会党の公認というような名称を使うということは、どういうふうな選挙運動の形態になってくるのか。
  56. 早川崇

    ○早川政府委員 たとえば、私は自由党の公認ではないが、自由党員であるということを、選挙公報なりあるいは演説で言うというような場合、また衆議院議員自由党候補者というようなことを立て看板に書くというようなこと、そういった公けの演説、公けの立て看板、ポスター、文書あるいはラヂオ等におきまして、自由党所属とかそういうことを書くことは禁じておるわけでございますが、そういう公けにしないで、ただ自由党員が選挙しておるということまでは法律において実は禁止をしておりませんので、それは、党で除名するなり、あるいは除名しなくてもその組織が推さないなり、これは政党内部の規律によって処罰すべきものと、この法律ではいたしておるわけでございます。
  57. 三田村武夫

    ○三田村委員 私どこかで罰則が生きてくるような気がするのですが……。二百四十四条の九号を新たに加えておりますね。つまり政党の公認でない者が公認であるがごとく思わせるような行為、それは新たに加わった二百四十四条の九号で罰則が生きてくる、こうなってくるのです。私が今までずっと関連してお尋ねしてきたのは、この候補者の公認制というものは、公認候補一本にしぼるのだ、一本にしぼるために、同一選挙区で定員以上のものを公認してはいけない、それからその所属党員は公認候補以外の者の選挙運動をやってはいけない、公認候補でない者が公認候補であるがごとき表現を用いてはならない、選挙運動をやってはいけないという規定があるのです。このこと自体には制裁も罰則もありませんが、新たに加わった罰則の二百四十四条の九号で、こういう行為に関する規定が生きてくる。これを受けて生きてくるような気がするのですが、立法当局者の御意見はどういうふうになっておりますか。
  58. 早川崇

    ○早川政府委員 先ほど申しましたように、公認されない者が、公けの選挙運動で、自分は自由党員だとかあるいは自由党候補者であるとかいうようなことを公けにして選挙をやった場合には、当然罰則が適用されるわけでございます。
  59. 三田村武夫

    ○三田村委員 そうすると、もう一ぺんおさらいをしておきます。この改正案による公認制というものは、党の最高責任者と申しますか、法律上党の代表者たるべき資格を持つ者、すなわち総裁または委員長の公認証明書を持った者でなければ立候補できない、これが第一であります。第二点は、その候補者は同一選挙区においては定員以内である。一人区なら一人、二人区なら二人以内である。それから、第三点は、その所属党員は——自由民主党なら自由民主党の党員は、その選挙区においては公認候補以外の者のために選挙運動を行なってはならない、こういうことになりますね。第四点といたしまして、それにもかかわらず、あるいは公認候補であるがごとく、あるいはその政党を代表する候補であるがごとき政治運動を行なった場合、こういう場合があれば、罰則の二百四十四条で処罰される、こういうことになってくるのでありますか。
  60. 早川崇

    ○早川政府委員 その通りでございます。ただ、お説の中の、公認候補以外の候補者を、たとえばその党員が選挙運動したという場合には、罰則は適用されません。これは政党内部の除名するとかなんとかの自由にまかしておるわけです。
  61. 三田村武夫

    ○三田村委員 時間の都合がありますから、先に行きます。  政党政治活動について少しばかりお尋ねいたしてみたいと思います。私が冒頭に申しましたように、ほんとうに正しい民主政治を育てるためには、どうしても政策本位政党本位に行くべきが当然だと思いますから、選挙に当りましても、従来のような候補者個人本位選挙運動から、政党中心、政治団体中心の選挙運動に移っていくことは、まことに方向としては正しいことで、歓迎すべきことだと思います。しかしながら、政党選挙活動、政治活動にもおのずから限界があり、また範囲があり、内容があると思う。無制限にこれが行われるのでは、選挙だか何だかわけがわからぬことになってしまうということも懸念されるわけです。そこで、先ほどちょっと公認の場合にも申し上げたのですが、今二大政党といいます。これはわれわれの自由民主党と日本社会党でありますが、この二大政党、自由民主党と社会党を健全な形において発展、進展せしめていくことが、新しい選挙法のねらいであり、方向であり、建前でなければならぬと思うのであります。しかし、政党政治団体が幾らでも次々と出てくるなら、法律上こういうことを書いてみたって、あまり意味がないような気がするのであります。今、政府委員お話によりますと、二千幾つ団体があるとおっしゃる。これは、この法律の規制によって、政治運動ないし選挙運動をなし得る資格を持つ団体が、実は、二大政党でなくて、二千幾つある、こういうことになるんじゃないかと思うのです。そういう点は、われわれが客観的に見て、常識としては二大政党、すなわち自由民主党と日本社会党、こう考えておりますが、法律に書く場合は、今選挙部長の御説明のように、すでに二千幾つの政党または政治団体がある、そういうことになるのでありますか。
  62. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 先ほど来、五十人以上の候補者を有する政党その他の政治団体と、しからざる政治団体との関連についてお話がございましたが、今回のこの政府提案法律におきましては、五十人以上の政党その他の政治団体につきまして、一定の政治活動をすることを選挙運動期間中認めまして、さらに、その政治活動が選挙遺跡に及んでも差しつかえない、こういうふうにいたしたわけでございます。ところが、五十人に達したい政党その他の政治団体につきましては、先ほど来お話のございましたような、選挙界における有力なる政党、従って政界全体の安定に資する政党の育成発展に直接関係のないものにつきましては、そのような特別の地位を与えないで、従来のような建前にしたわけでございまして、そこにおのずから取扱い上の差異を考えておるわけでございます。
  63. 三田村武夫

    ○三田村委員 私たちここで立法をやるのでありますが、法律ができてしまうと一人歩きする。われわれが自分たちの主観でものを考えてみても、できてしまった法律は一人歩きをする。これはいつでもありがちのことであります。そこで、私は今のようなお尋ねを繰り返しておるのでありますが、二大政党、現在ではわれわれの自由民主党と日本社会党であります。しかし、政治の客観というものは常に動いていくものでありまして、もっと別の大きな二大政党が出現し得ないとは言えない。これは歴史であり、政治の客観であります。そこで、五十人以上という一つの制限ですが、従来の選挙法は二十五人であります。選挙制度調査会答申はたしか二十五人だと思っておりますが、何か、五十人以上として、いわゆる新興政党の出現をはばむような気がするのであります。この五十人にするのにはどういうところに尺度を置かれましたか、この点も伺っておきたいと思います。
  64. 早川崇

    ○早川政府委員 二十五人というのも絶対的根拠がないと同じように、五十人というのも絶対的根拠はありませんが、このたび議員定数が非常にふえたことと、先ほど来御議論になっております二大政党をできるだけ助長していく現在におきましては——自由民主党と社会党でありますが、そういう配慮から、二十五人というのは政党としての特典を与えるのにあまりにも小さ過ぎはしないか、こういう判断から、五十名に引き上げたのであります。しかし、だからといって、今後新たに出てくる憲法上保障されました政党が全然政治活動ができないというのではございませんので、選挙法上特典が与えられないしという程度でございますから、憲法上は問題はないと思います。
  65. 三田村武夫

    ○三田村委員 今憲法問題が出ましたから、この問題についてのわれわれの立場を申し上げてみたいのですが、私は憲法違反でも何でもないと思う。これは加入脱退自由でありますから、気に入らなければいい。二十五人が五十人になって、しゃくにさわったから入らないと言えば、それでいいのでありますから、私は憲法上の問題はないと思いますが、私たちも、長い間選挙をやり政治をやり、実際生きた場面で動いてきた経験から考えますと、法律に書けばきれいに書けるけれども、これを実際現場でやる場合にはなかなか簡単にいかぬという気がするのです。これはまたいずれ他の機会に詳しく具体的に実際問題と引き合せてお尋ねしてみたいと思いますが、そういう点を一つ検討願いたいと思う。実際の面についてこれをどういうふうに考えていくか。いろいろ法律上はすっきりいきますが、生きた政治というものを対象にしていく場合にはなかなか困難だ。私自身も今度の選挙法改正については賛成者の一人であります。この二大政党という建前よりも、二大政党という表現を用いる前に、日本政治というものは、もう少し政策中心、政党中心にいかなければいけないということを、私しみじみ考えております。従って、相当困難であっても、私もあえて小選挙区制に賛成するものでありますが、しかしながら、これはただわれわれが今の段階から具体的に必要性をどういうふうに判断するかということについて、もとより見解も違って参りますけれども、とにかく、制度として国会で取り上げる以上、この新しい選挙法の制定によって、選挙界、日本政治社会というものがどういうふうに動いていくかということは、まじめに考えてみたいと思うのであります。そういう立場から私はお尋ねしておるのでありますから、今お尋ねしたことを、きわめて部分的でありますが、私もこれから研究いたしますが、政府当局においても一つ検討を願いたいと思います。  時間の関係もありますから、次に移っていきます。この答申案にあります連座規定の強化ですね。これが今度の提案の中では二百五十一条の三の規定に出てきておるようであります。つまり当選無効の附帯訴訟の規定であります。これは前の衆議院議員選挙法にはありました。今の公職選挙法にはないのですが、前の規定にはあったのです。今度これが新しく二百五十一条の三として加わってきたのですが、その立法趣旨と申しますか、立法目的と申しますか、これは特定の選挙違反事件を扱った場合に、その検察官は当然当選無効の附帯訴訟を起さなくちゃいかぬということが、法律上義務づけられてくるのであります。これは選挙界をきれいにするために必要な規定だと思いますが、これを今度の改正の際おつけになった理由といいますか、趣旨、目的について、当局の御見解をまず伺っておきます。
  66. 早川崇

    ○早川政府委員 選挙制度調査会答申案には、連座規定の強化という問題がございました。その節、候補者が出納責任者と総括主宰者を監督すれば免責されるという規定が前はあったのであります。この点は少し誤解がありますが、すでにこれははずされておるのであります。おとり規定だけが実は免責規定になっておりまして、その点を問題にしようじゃないかと考ましたが、これは、また、反対党がスパイを入れたり、いろいろな点で免責規定は残そう、そこで、そういった出納責任者等が選挙違反にかかって刑が確定した場合に、現行法では当然候補者は当選無効にならないのでありまして、同時に他の候補者なり選挙人が新たに当選無効の訴訟を起さなければいけない。これでは非常に長く訴訟がなりまするので、このたび、並行いたしまして検事が附帯公訴をなし得る、こういうことに改めたのでございまして、連座規定といたしましてはこれが付加されますると、世間でいわれておるように非常に不徹底ではなくて、ほとんど完璧に近い程度の連座規定になるのではないかと、われわれは考えておる次第でございます。
  67. 三田村武夫

    ○三田村委員 私は、社会党提案にある免責規定の削除と、より広範囲に及ぶ連座規定、これは立法の趣旨としてはわからなくないのですが、これは、現在の日本選挙界が、先ほどから申しますように、秩序と規律があればいい。しかし秩序と規律が確立されておりませんから、そうすると、いわゆる善意無過失の、善意にして過失なき責任というものが及んでくる。悪意のないものは罰しないのが法律の建前であります。原則であります。善意無過失の法律責任というものが出て参りますから、にわかに私は賛成しがたい。やはり、一つの秩序というものが確立して、しこうしてその後にもう少し連座規定を拡大することは当然あり得ると思いますが、現在の段階においては私は無理だと思う。ただ、しかし、今までのように、当然候補者に及ぶ規定がありながら、ほとんど空文化されてしまっておるところは改めなければいけないので、今度の無効訴訟ですね、附帯訴訟について必要な規定を設けたことは私はけっこうだと思うのですが、これはどういうわけでしょうか。附帯訴訟に必要な規定は別に法律で定めると書いてある。私どもは、ここで法律を作っておるのですから、このように非常に重要な訴訟規定は、法律で書くなら、やはり一緒に書いた方がいいように思うのです。それをなぜここで書いてないか。われわれは、熱心にこの法案審議して、社会党の諸君のお考えとは違うかもしれませんが、できるだけ早くこの法案をあげて、選挙の準備をしたいと思う。この小選挙区の新しい選挙法が通って、これで選挙をやる場合に、連座規定、附帯訴訟に関する法律だけがまだできていないというのでは困るのです。なぜこれを一緒にお出しになっていないのか、どういうわけでこの附帯訴訟に必要な法律は別に定めるということになっておるのか、この点についてお伺いいたしたいことが一点と、それから、どういう案をお持ちになっておるのか、附帯訴訟に関する事務的な訴訟規定、これはむしろ法務当局かもしれませんが、自治庁においても、これは当然お考えになっておると思います。どちらからでもよろしい、お答え願いたいと思います。
  68. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 ただいまお尋ねの附帯訴訟に関する問題でございますが、第一点の、別に法律で定めるというふうにしたのはどういうわけかという点でございます。この点は、御承知のように、旧衆議院議員選挙法時代におきましては、附帯公訴の制度があったわけでございまして、刑事訴訟法の中に附帯公訴に関しまする手続きの規定があったわけでございます。ところが、現在の刑事訴訟法におきましては、そのような規定がないわけであります。そこで、今回新しくこの附帯訴訟の制度を作るということになりますと、性格上民事あるいは刑事訴訟をチャンポンに突き合せましたような、そういう一つの訴訟の体系を作らなければならないわけであります。これは、私どもの方も、また御専門の法務省におきましても、それぞれ訴訟法規に当りまして目下研究をいたしておるわけでございますが、さように一つの訴訟体系を作り上げるということの問題でございますので、今回は間に合わなかったのでありますが、案のでき次第できるだけすみやかに提案をするようにいたしたい、こういう考え方でございます。  それから、その内容について、どういうことを考えておるかという第二点のお尋ねでありますが、その内容につきましても、問題になって参りますことは、審理の方法でございますとかあるいは事案の認定を公訴との関係においてどういうふうに考えておるかとか、公訴で明らかになりました事実を訴訟におきましてもやはり当然用いるという建前をとらなければならないと思いますが、そういうような関係をどうするかとか、あるいは裁判の進行の状況をどうするかとか、あるいは上訴の管轄をどうするとか、あるいは判決の効力は、当然、訴訟としては確定をいたしましても、刑事訴訟の方が明確にならなければ、むろん効力を生じないわけでございますが、そういうような基本的な点について問題があるわけでありまして、それらの点につきましてなお検討を要しますので、今回は同時に提案をするという運びにならなかった次第でございます。
  69. 三田村武夫

    ○三田村委員 御趣旨はよくわかりましたが、せっかく改正選挙法の本法案をここで今審議しておるのでありますから、どうか一つできるだけ早く整備されまして、今国会にお出しを願いたいのであります。今国会にお出しになる御用意ができておりますか、重ねてお尋ねいたします。
  70. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 鋭意検討中でございますが、今国会提案をいたすことは困難かと存じております。
  71. 三田村武夫

    ○三田村委員 せっかく本法を上げても、手続法が上っておりませんと困りますから、どうぞ一つこの点は大いに御努力願いたいと思います。  午前中青木委員からの質疑にもありましたが、この新しい選挙法を実施するその前提として一番重要なことは、選挙制度調査会答申の中にある第五「改正後の選挙制度のもとにおいて選挙が公明且つ適正に執行されるよう国民政治常識の啓発運動を強力に展開せしめるため必要な措置を講ずること。」これが私は一番重要だと思います。先ほど来、候補者公認制度の問題、政党及び政治団体の政治活動ないしは選挙活動の問題、その内容と範囲と制限、この点をお尋ねして参りました。その締めくくりの「公明且つ適正に執行されるよう国民政治常識の啓発」これが必要だと思うのです。しばしば小選挙の問題について話題になるのは、先ほども問題が出ましたが、選挙区が狭くなっていわゆる人物が小さくなるのではないか——われわれ決して大きな人物だと思っておりませんが、小さくなるのじゃやいかという意見があります。これは、人物が小さくなるということよりも、選挙区域が狭くなるということによって選挙運動が全くしやすくなる。つまり日常年中選挙運動が可能である。選挙運動の罰則には時効がありまして、選挙の行われる六カ月前、一年前は選挙違反に問われるという規定がありますが、そうでない場合は、年中戸別訪問をやっておっても選挙違反にはならない。地方の県会員とか組合にもあるのですが、労働組合でも日教組の委員長あたりの人、教育委員とかそういう人が年中講演会をやって歩く。そういうことになりますと、常に選挙のたびごとに国今構成というものはぐるぐるっと変らなければならぬ。まじめに国会政治に専念しておる者は常に足元が危ない、こういうことになりますと、せっかく政党を中心にしていい政治を行うために選挙法改正をわれわれが考えても、逆な結果が出てくることを心配するのであります。現に、小選挙区という問題が出てから、なかなか熱心にすでに選挙運動が始まっている、こういうことになります。そうなりますと、地方のいわゆる小ボス、そういう連中がしょっちゅう選挙運動をやる、代議士諸君はしりがむずむずして東京に落ちつかぬということになると、私はまじめな政治にならないと思う。そういうことになっちゃ困るので、これはわれわれが困るよりも日本政治が困る、日本政治が困るから、一つ社会党の諸君にも御協力願って、大いに国民政治常識の啓蒙運動をやらなければいけない。これは、小選挙区というものは、社会党の諸君は——ここで諸君と議論するのではないのですが、私は社会党の諸君こそ大いに双手をあげて賛成されるべきだと思う。国民という共通の広場に立って、どの党が、どの政策がほんとうに国民の利益になるか、国の利益を推進するかという立場からやるのですから、これは私は政策本位政党本位選挙になれば、今のわが党が数が多くて社会党が少いということによって、そういう優劣はきまらない。政策できまっていくのでありますから、けっこうだと思いますが、そのために、やはりほんとうに政策本位選挙が行われ、政治活動が行われるように、国民を訓練というと悪いのですが、そういうことが必要だと思う。民主政治を十年われわれはやって参りましたが、遺憾ながらまだ地についておりません。政治的な訓練ができていない。少しばかりの利益で動かされたり、そういうことではほんとうの政治にはならない。これは、われわれの立場だけでなくて、社会党立場も同じことだと私は思う。どの政党もそうりっぱに育っていはせぬ。だから、こういう立場から、私は、この際、この小選挙区は二大政党を育てるためには必要だ、あるときには勇敢に、政治上の選挙界における一大革命も必要だと思いますが、そのためには、一つわれわれは大いに準備が要ると思う。これは、何も、今選挙法を上げたって、あした選挙をやるのではないから、まだけっこうだと思いますが、一つ、当局におかれても、ただ事務的にお考えになるだけでなくて、この選挙法をして有終の美を全うせしめる、ほんとうに政党中心、政策本位選挙制度化する、一つの秩序を確立するのだという方向に、私は御努力願いたいと思うのです。そうしませんと、この小選挙区を含む選挙界の一大改革と申しますか、選挙法改正というものは私はほんとうの魂が入らぬと思う。そういう意味において、これは画の痛いところ一つ御苦労ですが、この点は太田長官の御意見を伺っておきたいと思います。
  72. 太田正孝

    太田国務大臣 だんだんとお話を承わりまして、全く同感でございます。小選挙制度に魂を入れるように、答申の中にある第五項の線に沿いまして、精一ぱいに努力するつもりでございます。
  73. 小澤佐重喜

    小澤委員長 山村新治郎君。
  74. 山村新治郎

    ○山村委員 ただいま議題となっておりまする政府提案選挙法改正案、この問題に対しましてすでに同僚の両君から詳しい御質問があったのでございまするが、一般論につきまして一応大臣あるいは政務次官にお尋ねをし、なおまた最も問題になっておりまする別表の問題にも触れまして、御答弁を願いたいと存ずるのであります。  そこで先ほど当委員会が開会されまするときに、社会党の諸君が何か質問でもしてもらいたいというような顔つきで、さっきまではあそこに提案者がおられたのですが、いつの間にかおられなくなったようです。私は二、三点お尋ねをしたいと思いますから、どうぞ御迷惑でもあちらへお運びを願いたいと思います。  この選挙法改正法案国民注視のうちに審議が続けられておりまするが、社会党政府改正案に対しましては絶対反対を表明せられ、また自由民主党といたしましてはこの法案が一刻も早く通過せんことをこいねがっておるものでございますが、両党ともそれぞれ合法的な戦術を展開いたしまして、社会党の内部におきましては、小選挙区案を葬るためには、何でも暴力をふるうこともあえて辞さないということも伝えられております。また委員総辞職の戦術をもってこれに対処せんとするやも伝えられております。そのことの真偽は別といたしましても、社会党が言論以外の手段に訴えても小選挙区制の実現を阻止しょうとしていることは事実であるのであります。これに対しまして、自由民主党も、党の勢力を結集いたしまして、この法案を通過せしめようといたしておるのでございますが、もしそれ勢いの余るままに再び収拾のつかないような乱闘国会を出現したとしたならば、どうなるのでありましょうか。ついに国会国民の信を失って民主政治の崩壊が始まると言っても、過言でないと思うのであります。よろしく、議員たるわれわれは、冷静に、しかも寛容の態度をもってこの審議に当らなければならないと存ずるのであります。  この法律は与、野党の態度見解があまりにも大きな相違を来たしております。従って、この審議をめぐりましていろいろの波乱があることは存じまするが、自由民主党といたしましても冷静に事を処理して、民主主義というものは何でもかんでも多数であれば通していいというような考えは絶対に許されないと思うのであります。与党は、野党が何を言おうと、反対党が一人も出席をしなかろうが、押し切ってしまおうなどという態度は、これはわれわれは絶対にとらないところなのであります。こういうような状態でありまするが、心理が二つに分れておりまする場合におきましては、これは多数決に従わなければならないのは民主政治の原則であるのでございます。ところが、社会党の諸君並びに一部の方々は、ややもすれば、この法案が党利党略の法案であるということを宣伝されておりまするが、社会党それ自身がこの法案では不利であるという理由のもとに反対されるとしたならば、社会党も党利党略のために反対すると言っても、私は言い過ぎではないと思うのであります。こういうような誤解をお互いに国民からされるということは、国会権威の上からも慎しまなければならない次第でございますので、われわれ自由民主党も寛容な態度でもってこれに当るつもりでございまするが、特に太田長官は学者といたしましての純情な方でございます。従って、この法案審議するに当りまして、われわれといたしましては、心がまえを新たにして臨まなければならないと存ずるのでありまするが、まず太田長官は慎重審議態度をもってこれに対されることと存じますし、社会党の諸君また暴力あるいはその他の非合法手段をもって臨まれることはないと存じますが、参考に長官並びに社会党代表の御意見を承わりたい次第でございます。
  75. 太田正孝

    太田国務大臣 お言葉の趣旨傾聴いたしました。誠意をもって当るつもりでございます。
  76. 鈴木義男

    鈴木(義)委員 山村さんから非常に適切な御質問がございましたので、この際社会党立場からお答えを申し上げておきたいと思うのであります。  この暴力に訴えてもというようなことは非常な侮辱でありまして、ぜひお取り消しを願わなければならない。われわれはそういうような考えは持っておらないのであります。しかし、数は決して合理を決しませんから、数をもってこれが合理的であるというようなことを仰せられても、われわれは納得することはできないのであります。何が合理的であるかということは、数が決する問題にあらずして、理性が決する問題であります。常に理性の応援を求めて問題を処理して参りたいと考えておる次第であります。いわんや野党が議会において存在することは非常に大切なことでありまして、イギリスのような国では、御承知のように、野党の党首に対しては総理大臣と同等の待遇を与えておるのであります。そこで、社会党という唯一に近い大政党に対して、その存在価値を認めないような態度をとられることは、民主主義議会政治の否認でありまして、それ自身ファッショであると私どもは認める。しかるに、少し前の晩おそかったからといって、朝出てこないことを見越して、与党だけで集まってある議案を決してしまうなどということは、これは議会政治の否認でありまして、断じてわれわれは承服できないのであります。(「公報に出ている」と呼ぶ者あり)なるほど時間は十時ときめておられたかもしれませんが、議会における委員会運営の慣例は、常に、十時半とか、大体与野党の相当数がそろうまで待つので、それを待たずに、かりに本会議等において定足数がそろわないうちに与党だけでやったということがありましたならば、どうなりますか。これはよほどお考えを願わなければならない。裁判所に持っていって解決してもらうべき問題ではない。三権分立の建前から、議会において自主的に決すべき問題でありまして、それが、多数の暴力をもって——これはわれわれは暴力と言うのであります。ただ、げんこつをふるうだけが暴力ではありません。数をもって理性を無視した行動をとろうとすることは、これは明らかに多数による暴力であるとわれわれは解しておるのでありまして、こういうことに対抗するためには、そのしりを引っ込めない限りは、われわれはあくまでレジスタンスを続けていくほかないのでありまして、ただいま議院運営委員会においてそれをやっておるわけであります。山村委員は、自由民主党はそういうことはしないということを仰せられたのであるが、すでに一つの実例を作っておるのでありまするから、どうかいっときも早くこれを撤回されて、そうして正しい道に戻ってやり直していただくことをお願いいたします。それはちょうど実例が起ったので申し上げるわけでありまするが、まさか、選挙法についても、朝早く野党が出てこないときをねらってやってしまうなどということはなかろうと思いますが、われわれから見れば、この法案そのものが一つのファッショでありクーデターであります。一党専制を招来せんがために、こういう法律をお出しになったのであります。  先ほどから承わっておると、政局安定のために小選挙区案を出した……。(「それはこっちから質問していない」と呼ぶ者あり)いや、それは多数の暴力に関係があるから申し上げるのでありまして、どうか一つよく答弁を聞いて再質問をお願いいたしたいと思います。すなわち、小選挙法案というものは何も急いで出す必要がないと、われわれは思っておるのです。すでに自由民主党は三分の二の勢力を衆議院において占めておられるのであります。ところが、衆議院においてそれだけの勢力を占めておるのに、何の必要があって、政局を安定させるために、これ以上小選挙区にして社会党に打撃を与える必要があるのでありますか。これは私はどう考えても一つのクーデターを行うものとしか解釈することができないのであります。しかも、それぞれの選挙区が——一つ一つの区について御説明申し上げますれば、よく御納得がいくと存ずるのでありますが、これはだれのための選挙区、これはだれのための選挙区というふうに、みなそれぞれ人によって選挙区を作っておるのでありまして、そういうことまでして、すでに三分の二の多数を占めておるのに、この上五分の四の多数とか六分の五の多数をお占めになりたいのでありまするか。むしろ、私どもから言えば、その提案の動機に疑義を持たざるを得ないくらいのものでありまして、われわれ社会党から見れば、大切なことは、むしろその前提になる選挙を公正にやること、正しい選挙が行われるようになれば、選挙区が大きかろうが小さかろうが、公正な世論の反映ができると考えております。そのためにああいう提案をいたした次第でありまして、むしろあれを前提として一つ審議を賜わりたい。それができた後相当期間実施したならば、私どもも小選挙区にあえて反対はせない、賛成をするような心境に変ることがあるかもしれないのでありまして、どうかその点を誤解のないように御了解を願いたいのであります。  幾らでも申し上げたいが、あまり答えが長くなることもどうかと思いますので、再質問を待ってお答え申し上げます。
  77. 山村新治郎

    ○山村委員 社会党からはだいぶ御丁寧な答弁がございました。いろいろな問題をお尋ねいたしたいのですが、まず、長官は、提案理由の説明におきまして、この法案提案いたした一つの理由は、政局を安定せしめるために二大政党を作るということについての念願を持たれておることをお示しになっておるようでございますから、太田長官は二大政党によって議会が運営されることが民主主義議会においては最も理想的な形と考えられておりますか。この一点、簡単でけっこうですが、御答弁を願いたいのです。  なおまた、今のようによけいな答弁をされては困りますが、鈴木さんは、社会党は、二大政党の対立によって議会が運営されるということが、民主主義の議会においては最も理想的であるということを考えられておりまするか、簡単でけっこうですから、どちらもお答え願いたい。
  78. 太田正孝

    太田国務大臣 私は、第一に、山村委員の言われました通りに、二大政党の出現ということ、またこれの発達していくこと、これを念願としております。
  79. 鈴木義男

    鈴木(義)委員 私は、社会党の一員として、二大政党が議会を運営していくように自然になるならば賛成であります。けれども、人為的にこれを作り出すことは危険千万であると思っております。ことに、二大政党と申しまするが、選挙を実際におやりになってみるとわかるのです。私は選挙に相当経験を積んだので、たとえば、あなた方は今自由民主党と社会党だけがある政党と思って選挙対策を立てておられるが、一たびやってごらんなさい。必ず自由民主党の公認に漏れた者が全国におそらく二、三百人、ことによると四、五百人も、できるでありましょう。これが一つの連盟を作って第三の党を作ります。また、社会党の方から申しても、やはり公認に漏れた者はそういうものを作ることがあります。これは火を見るより明らかだと思う。かつて自由党と民主党と対立したときには、一方が公認しなければ他方に入って出てきておったのであります。それでありまするから、あなた方はこれで二大政党を必ず招来できるとお考えになっておるが、私はむしろ分裂を促進するということを心配しておるのであります。ゆえに、そんなに政局安定を目ざしてやっておるというような楽観論は断じてとるべからざるものと、かように考えております。
  80. 山村新治郎

    ○山村委員 太田長官の答弁も大体二大政党が理想であるという答弁でございます。鈴木さんは、実現は不可能であろうが、自然にできるものならばいいというお考えのようであるのであります。  そこで、太田長官にお尋ねしたいのでありまするが、なるほど、二大政党の対立は、議会としては一つの理想の姿であるかもしれないのであります。しかし、その二大政党政策、二大政党政治のあり方につきまして、今の自由民主党と社会党のように、政策面において大きな隔たりのある二大政党の対立というものが、果して国家国民のために仕合せなるところの二大政党のあり方であるかどうか。たとえば、自衛の問題を取り上げてみましても、保守党は、一応、自衛隊は国力にふさわしいものは持つべきであるということを主張いたしております。これに対して、社会党は、合同された今日においても、なおかつ自衛隊などというものは要らないということを主張されるのであります。この防衛の問題ばかりじゃありません。たとえば外交の問題を取り上げてみましても、親米的な態度をとっておりまするところの保守党の外交方針に対しまして、反米的な態度をとっておりまする社会党のあり方というものが、選挙の結果、もしも、一ぺんに世の中が変って、かりに社会党が天下を取ったとした場合において、よもや、公約と反するような、今度は天下を取ったから自得隊を置くなどというような御主張はなさらないだろうと思うのであります。よもや、今まで反米的な言辞をしておられた鈴木さんたちが、急にアメリカにこびを売るようなことはあり得ないと思うのであります。そのことを考えまするときに、日本国会におきまして、日本政治において、現在のように政策がはなはだしく違っておりまする二大政党の対立というものが、国家のためになり国民のためになると自治庁長官はお考えでございましょうか。それとも、社会党がもっと現実的な政治に目ざめて、現実的な政策を掲げることによって、単なる人気取りの政策をやめて、そして政党の責任を痛感して、保守党政策に近寄ってこられるとしたならば、これはまた別でございます。一応この答弁は、鈴木さんはまた長くなるといけませんから、太田長官だけに御答弁願いたいと思います。
  81. 太田正孝

    太田国務大臣 現状における二大政党は、もちろん完全と言えない点がございましょう。すでに二大政党が結成したと言っても、まだ何となく、やわらかみといいますか、なめらかにいっていない点もあるようです。けれども政党なるものは政策によって相対抗しているのでございまして、保守といわれた政党が進歩性存持って政策を立てていく、また自由なあるいは社会主義的考えを持った政党が実現していくという意味におきまして、ちょうどイギリス労働党が社会保障その他においてとったような態度をとり、ともに両党が政策の面におきましてだんだんと練磨し、そうして国民のために社会主義政策をとっていくかあるいは進歩的保守性の政策をとっていくかという、その判断を待つようにするのには、どうしても私は小選挙制度による選挙の方式がよいと思うのでございます。
  82. 原茂

    ○原(茂)委員 今の質問に対してやはり鈴木さんからその答弁を私どもは聞きたいので、一つ御一説明を願います。
  83. 山村新治郎

    ○山村委員 私は決して鈴木さんの答弁を忌避しているのではございません。これから十分に鈴木さんには質問いたしますから、そんなに答弁はあせらないでもけっこうでございます。しばらくお待ち下さい。
  84. 鈴木義男

    鈴木(義)委員 答弁ではありませんが、社会党の答弁を求めないと仰せられながら、社会党はこういうことをやるではないかと言って、社会党をさんざんこきおろして、そうして答弁は要りません。これは民主的でありませんよ。ですから、私はやはりなるたけ質問に答えろチャンスを与えていただきたい。あなたは求めないと言うから、それは答えませんけれども、しかしそれは本来正しい態度ではない。そういうことを言わないで、太田長官にだけ聞いていながら、それは私口を出しませんが、反米的だとか、親米的だとか、自衛隊をなくするということになったら、これは大事な問題ですから、それを言っておいて、言いっぱなしでこちらに答えさせないということは、まことに困ることであります。
  85. 山村新治郎

    ○山村委員 なお今後の質問で十分鈴木さんにお尋ねをいたしますから、どうか一つ妙な宣伝的な長ったらしい答弁だけはやめていただきたい。間もなく本会議も開かれようといたしておりますから、どうかそのおつもりで願いたいのでございます。  先に太田さんにお尋ねいたしますが、この小選挙区制の実行によりまして、選挙の結果がどうなるかということは、神様でなければなかなかわからないのです。しかし、どうしても、その当時の情勢によりまして、一方の政党が圧倒的な勝ちを占めるような結果になることが政局の安定だということしを説明されておるようでございますが、もしそれ、この二大政党のうちの一方の政党だけが、圧倒的な勝利を占めて、多数の議席を得てしまうような結果に相なってしまいますと、そこにいわゆる一党独裁、かつての翼賛政治体制のような形が出現されるおそれがあると思いますが、この点につきましては長官はどういうお考えでございましょうか。
  86. 太田正孝

    太田国務大臣 政党政策判断いたして投票いたしますのは国民でございますので、私が今予見することはできませんが、かようなことに私はなるまい、こう考えております。
  87. 山村新治郎

    ○山村委員 そこで、問題点は両党の政策の問題に相なるのでございますが、先般社会党の諸君と一緒に私どもロンドンへ参りまして、社会党の諸君は労働党へ参り、なおまた保守党のわれわれは保守党へ参りまして、一昨年の選挙においてなぜ保守党が勝って労働党が負けたかということをお互いに尋ね合ったのでございます。そのときに、労働党の領袖の方々が社会党の諸君を通じて答えられたことは、英国においては保守党労働党との政策の相違というものがほとんどなくなっておるために、この国の選挙に負けたのだということを、率直に認められておるのでございます。ところがさっき私が申し上げましたように、現在においてはあまりにもその政策上の開きがあるのでございます。先ほど鈴木さんはイギリスのまねをしなくてはならないということを主張されたのでございますが、一体社会党は現実的な政策の転換をこれからされるのでございましょうか。この点重要な問題ですから、お尋ねいたします。
  88. 鈴木義男

    鈴木(義)委員 非常に大きな問題を提供されまして、短時間にお答えするのは困難でありますが、イギリス保守党労働党との戦いでありますが、これは私は世界にその範を示しておるものと思うのでありまして、あなたが仰せられるほど二つの党の間には開きはないのであります。ほぼ似た投票を待ておるので、ただ小選挙区でありますために、一区々々において幾らか勝つ者があるために、全投票数においてはしかく差がないにもかかわらず、三十人、六十人あるいけ百人の差を生ずるのであります。前々回の選挙などにおいては、労働党の方がよけいとっておりながら、当選した代議士の数は少かった。そこで、労働党保守党とは、日本保守党社会党ほど政策的に開きがないのでありまして、世界において最も進歩した保守党イギリス保守党であります。そうして世界において最も保守的な労働党イギリス労働党である、こう申して差しつかえないと思うのでございますから、そこで政策の開きというものが比較的少い、そのために政権の移動というものもきわめてスムーズにいくのであります。あなた方は、日本社会党一つもっともっと保守的になって、自由民主党の政策を大体踏襲するような党になってほしいとお考えになっておるかもしれませんが、私どもは決してラジカルな政策を持っておるとは考えません。むしろ保守党の方が保守過ぎることを遺憾としておるのでありまして、ぜひ一つ自由民主党の方が百尺竿頭一歩を進めてもっと進歩的な党になっていただきたい。それによって政策のギャップがなくなると信じておるのであります。  また、先ほど、社会党は反米的であるとか、あるいは自衛隊をなくするとかいうようなお言葉がありましたから、ついでにお答えを申し上げておきますが、われわれは、アメリカに対して正しくないことには反対であり、正しいことには賛成をしておるのでありまして、是々非々であって、断じて反米でも親米でもありません。できるだけ中立の態度を持しておるつもりでありまして、ただ、保守党のごとく、何でもかんでも向米一辺倒ということで、アメリカにおたより申し上げて、アメリカが憲法を作れと、言えば作り、改正しろと言えば改正する、こういうような態度はわれわれ社会党はとらないのでありますから、どうか御了承を願いたい。また、自衛隊のごときも憲法の許さざる存在でありますから、私どもはこれを否認するのでありますが、実際に政権をとります場合には、決して失業者を急激に出さないように、臨機の処置をとるだけの実際的手腕は持っておるつもりでありますから、御心配なくお願いをいたしたいのであります。
  89. 山村新治郎

    ○山村委員 この問題はおそらく社会党としては国民の前に正直には言えない問題のようでございますから、いずれあとで政治資金規正法その他の問題に関連いたしましてお尋ねいたします。  そこで、太田長官にお尋ねいたしまするが、世間の一部におきましては、特に社会党の諸君の大多数は、もしこの小選挙法案が通れば、社会党の議員は激減するであろうということを心配されておるようでございます。太田長官はこういうような考えは毛頭持っておらないと思いまするが、もし幾分でもそういう考えをお持ちであったとしたならば、それはとんでもない考え違いであるのでございます。わが党の選挙対策委員長の川島正次郎君が、かつて、読売新聞の一ページに、川島君の大正十三年ごろの選挙の思い出話を載せられておりまするが、当時本多財閥といわれた京成の社長を向うに回して、無名の川島君が三十三歳にして立候補されまして、残念ながら少数の差をもって敗れたのではございますが、世間をあっと言わせたのは事実であるのでございます。従って、私は、なぜ社会党の諸君が、自民党に対しては党利党略のためだと言いながら、自分たちの党利党略のためにこの問題に反対しているかわからないのです。私の見解をもってすれば、何かこの法案というものは社会党育成案のような気がしてならないのであります。(笑声)決して笑いごとじゃないのです。なぜであるかと申しまするならば、社会党が今までのように労働組合一辺倒、階級政党一辺倒である限りにおきましては、なるほど今のような心配があるかもしれないのでございます。しかし、英国の労働党のように、真に国民政党としての立場をとられたならば、土俵はどんな土俵でありましょうとも、その土俵の上において正々堂々と選挙の対決をいたしましたならば、必ず正しい主張と正しい政策をなすところの政党に票が集まるのは、間違いがないと思うのでございます。従って、私自身は、このために英国の労働党が小選挙区案に賛成したごとく、どうして社会党の諸君も、自分たちの遠きおもんぱかりによって、この選挙区案に賛成されないかとの疑問をすら持つものでございまするが、一体、こういうような世の中の、特に社会党の諸君が、このために社会党の議席というものは非常に減るんだというような誤解を持たれておるということに対しまして、太田長官はどういう御見解を持たれておるのでございましょうか。簡単でけっこうですから、太田長官だけに御答弁を願います。
  90. 太田正孝

    太田国務大臣 私は二つ政党がともに発展することを望んでおります。しこうして、選挙におきまして、いかなる投票が出るかということは、党利党略に対しましても、国民の目が光っている限り、そういう点についてはその政党を私は支持しないと思います。従って、私といたしましては、このことを心に深く刻みまして、今回の法案を作った次第でございます。
  91. 山村新治郎

    ○山村委員 太田長官から二つ政党が正しく発達することを望まれるという御答弁があったのでございますが、先ほど申しましたように、現在のような政策を掲げておる社会党の姿をそのまま正しく発達されることを望んでおるのですか。それとも、今の社会党がおとなになってくれということを、長官としての高い見地から望まれておるのでございましょうか。この点を一点お答え願いたい。
  92. 太田正孝

    太田国務大臣 先ほどイギリスを例に引いてのお言葉もございましたが、社会状態が違っておりますので、イギリスにおける社会事情から、この政策がいいとか悪い政策という議論国民判断になるごとく日本の現状におきましても、しんしんとして進歩するこの時世におきまして、どっちの政党がいいかということは、やはり国民がきめるのでございまして、私は、かくあるべしということは、われわれの政党からのわれわれの主張はございますが、他の政党をしいるというような考えは持っておりません。
  93. 山村新治郎

    ○山村委員 そこで、太田長官は、二大政党の対立が、これが国会の理想の姿であるという答弁をたびたびされておりまするが、先ほど鈴木さんから御指摘がありましたように、もしそれ、選挙が始まって、保守党候補者の中で公認にならなかった者、あるいは社会党候補者の中でもって公認にならなかった者等は、五十名以上の公認候補者がなければ政党として認めないという規定があるのでございまするからして、全国の公認漏れの候補者に呼びかけをして、第二の保守党、第二の社会党を作るおそれのあることは、社会党鈴木君の言葉に半面の真理があるということを私は実は認めざるを得ないのでございますが、一体、二大政党主張されるところの、二大政党の理想を念願とせられるところの太田長官におきまして、この法案を実施の暁におきまして、第二の保守党、第二の急進党ができ上って、そのためにせっかくできた二大政党の対立という理想がくずれ去るおそれがあるということを私は憂えるのでございますが、長官はこの点についてどういうお考えを持っておられるのでございましょうか。
  94. 太田正孝

    太田国務大臣 私は、現在の政党が、それぞれ二大政党対立の目途に向いまして、現状においては相当改むべきと申しますか、進ますべき問題があると思います。たとえば、その組織につきましても、よく保守党についていわれる婦人の投票ですとか、あるいは青年の投票ですとか、労働者の投票ですとか、こういうような点を考えますと、組織において一段の進歩をしなければならぬと思います。同時に、イギリス候補者選挙におけるごとく、五人の候補者を選ぶ場合に、一人は女の代表者二人は青年の代表者、一人は労働者の代表者、他の二人が普通のものでございまして、それによって選ばれるというような形式が、公認候補者の問題について最も大切だと思うのでございます。従って、私は、現状における二つ政党が、ただそのままでいいとは思いません。むろん党員自身が力を合せまして、りっぱな政党にしようと、甲の政党も乙の政党考えることと思います。その組織において、あるいは公認の方法において、十分練っていくことと思うのでございます。イギリスの先般の選挙におきまして、何ゆえに保守党が労働関係投票を多く取ったかということを考えますと、イギリス保守党の過去における進歩と発展があったことと思うのでございます。
  95. 山村新治郎

    ○山村委員 それでは、少し具体的な問題に入ります。立会演説会の問題を取り上げたいと思うのでございます。たまたま、この法案におきましては、立会演説会が廃止されることに相なっておるのでございますが、なるほど、確かに、立会演説会は、ややもすれば、立会演説会に出る方々も、立会演説会ずれがしたと申しましょうか、サクラをたくさん入れて、盛んに特定の候補者、特定の政党に対するところの作為的な宣伝、並びに作為的な悪宣伝をする傾きのあるのは事実でございます。しかし、二つ政党が対立した今日におきましては、やはり、立会演説会に対する興味というものは、相当選挙民は持っておると思うのであります。その意味から、立会演説会の悪いという点は、そのために交会演説会等において混乱が起ったり、あるいは一方的な悪宣伝をサクラ等によってなされる点にあると思いますが、これらの点をむしろある程度まで罰則を作っても規制をせられて、あるいは今までほどの回数は多くなくても、ある程度までは立会演説会をお互いに残した方が、先ほどの政策問題の論争のごとくに、選挙民にわかってもらえるんじゃないかと思いますが、それは全然立会演説会は必要がないというお考えをお持ちでございましょうか。
  96. 太田正孝

    太田国務大臣 立会演説会につきましては、中選挙区下において相当の効果をおさめたことを認めます。ただし、山村議員の言われます通り、混乱を来たすようなサクラを入れることは、私はいけないと思います。それを改めるということは、中選挙区下における立会演説の問題でございます。小選区になりまして範囲が狭くなりますと、公認候補者数も少いのでありますから、今までの中選挙区における立会演説と、小選挙区における立会演説と、二つ分けてみた場合に、また、現在、イギリスの模範とすべき小選挙区において、立会演説を行なっていない現状も承わりまして、今回の小選挙区におきましては、中選挙区と違いまして、立会演説をとらないことにいたしたのでございます。
  97. 山村新治郎

    ○山村委員 模範的な選挙区におきまして、立会演説会が廃止されておるといたしますと、われわれも考えなくてはならない点もございますが、しかし、実際には、ややもすると、一部の者は、保守党は立会演説会がいやだから逃げたという宣伝をする者があるのであります。私どもは、むしろ、正々堂々と社会党の諸君と立会演説会を開くことによって、選挙民に保守党のあり方をわかってもらうような希望をいたしておるのでございます。これは人によっていろいろな希望があるかもしれませんが、少くとも立会演説会の弊害——ヤジあるいは妨害的な拍手、それらの問題の制約をされましたならば、立会演説会によって生ずる弊害というものは、そんなに心配がないのではないかと思う次第でございます。しかし、この問題は、一応、ただいまの答弁で満足いたすわけではありませんが、了承いたします。  ただ一言、この際自治庁長官としての太田さんにお尋ねしたい点は、小選挙区を実行することによりまして、選挙が激烈になることは間違いがない。たとえば、先ほど、政府御当局は、今までの小選挙区というものは、大正八年時代明治二十二年時代の小選挙区だから、ああいうふうな形になったのであるが、今の小選挙区はそんな心配がないというような意味の御答弁があったやに聞いたのでございますが、今の選挙におきましても、参議院の選挙より衆議院の選挙、衆議院の選挙より県会議員の選挙、県会議員の選挙より市町村会議員の選挙の方が選挙が激烈になることは、現在の事実であるのであります。この点から考えましても、小選挙区が実行されれば、その選挙戦は、今まで予想されている以上に激烈な選挙と相なることと思うのであります。もし、その激烈な選挙と相なりました結果、日本人の感情、日本人の人情といたしまして、ややもすれば、一つの村において、あのグループは何々党の候補者を応援し、あのグループは何々党のどの候補者を応援するというように、せっかく平和な一つの町村が、小選挙区を行うことによって、非常に政党的に激化対立するおそれが多分にあることは、事実ではないかと思うのであります。従って、地方の自治体と中央の政党とのあり方、すなわち、この小選挙区を行なったことによって、一体町村の自治体に対立的な結果を及ぼさないと長官はお考えでございまするか。この問題について、すなわち、中央の政党と自治体との関係、並びに、この選挙区実行の結果において、平和な村がかえって対立した二つの村にまっ二つになるというおそれがあるかないかということについて、御所見を承わりたいと思うのであります。
  98. 太田正孝

    太田国務大臣 私は、今まで、大正九年に大正八年の法律改正によって行なった小選挙区が、相当激烈であったという記憶を持っております。しかし、当時におきまして、個人本位でございましたために、その激烈さも、今日私が今考えておるような政党本位の、政党公認のものによる選挙、また政党自体が選挙運動をするという立場からいたしますと、言論は相当に激しくなるでございましょう。しかし、選挙民諸君のほんとうの考え方が、議論議論、そこにおいて負けた場合に、これに恨みを持つというのは、政治の本態ではないと思います。いわんや、大正八年の選挙のときと方式が違いまして、政党の公認でなければ出られない、こういう建前、しかも政党自体が今までにない強い選挙運動ができるのでございますから、私は、かような実態の立場から見ましても、村が二つに割れるというようなことは、期待もしておりませんし、そうならないと思っております。
  99. 山村新治郎

    ○山村委員 いろいろとまだお尋ねしたい点がございますが、やはりこの際に別表の問題に触れることも重要な問題と存じますので、一応、別表の問題につきまして、質疑を方向転換いたしたいと思うのであります。  まず第一にお尋ねをいたしたい点は、北海道の選挙区でございますが、北海道におきましては、いかなる理由で調査会の案をこう大幅に変えたのでございましょうか。特に北海道の二人区を作った理由は、どういう理由でございますか、お伺いいたしたい。
  100. 早川崇

    ○早川政府委員 調査会案を相当大幅に変えました根本的理由は、現行第一区に属します石狩支庁管内の千歳郡は現行第四区と混合区をなしておりますので、これを混合区を設けない方式にいたしたこと、それによっていろいろな変化が出て参りました。さらに、それに伴いまして、定員が現在の四区において二人増員いたし、十勝地方で一人増員いたす結果になりましたので、そういう関係から大幅な変化が出て参った次第でございます。
  101. 山村新治郎

    ○山村委員 青森県の選挙区におきましては、鶴田町を、五所川原市に関係が深いから、これを一緒にしたということでございますが、一体、この関係の深いという点は、どういう点において関係が深いのでございましょうか。
  102. 兼子秀夫

    ○兼子政府委員 お尋ねの北津軽郡の鶴田町は、五所川原市をはさみまして、北津軽郡が北の部分と南の部分に分れておりますが、鶴田町は五所川原市の南にありまして、鉄道に沿った町でございますが、五所川原市の南側にすぐ接続いたしておりまして、ちょうど鶴田町が五所川原市の方向に北に飛び出しておるというような地勢的な関係がありまして、何と申しましても、五所川原市との関係、地勢的、経済的に深いわけでございます。
  103. 山村新治郎

    ○山村委員 ところで、問題は岩手県でございますが、岩手県は、社会党の諸君が、よく小澤君と椎名君との関係を云々せられて、だいぶ宣伝せられておりますが、一体この岩手県の選挙区をこういうように考えられたことについて、何かそういうような悪宣伝と関係のあるようなことがあるのでございますか。どういう理由で調査会案を変えられたかを御答弁願いたい。
  104. 早川崇

    ○早川政府委員 調査会案と根本的に変りました理由は、釜石市の近辺の区と気仙並びに大船渡市とは、山脈がございまして交通がきわめて不便なのを一区にしておりました。従って、釜石市とはむしろ花巻線の交通連絡の密接な花巻市とつなぐのを一区といたし、従って、この大船渡市と気仙郡地方を一選挙区といたしました関係上、一関並びに水沢市、その方面にしわ寄せが参りました。しかして、人口バランス、地形その他から申しまして、この水沢市並びに一関方面は、一区として分けまするとあまりにも人口バランスがくずれまするので、これを二人区といたしたような次第でございまして、御了承願いたいと思います。
  105. 山村新治郎

    ○山村委員 続いて、新聞によく報ぜられておりますし、なおまた社会党の諸君がよく宣伝される点でございますが、宮城県の選挙区におきまして、たまたま石越村という村を第八区に入れることになったことに対しまして、ややもすればこの石越村に大石君のお父さんのお墓があるのだということを宣伝されておるようでございまするが、まさかそういうような事情のもとにおいてこの選挙区が変えられたとは思いませんが、一つこれについての真相を率直にこの際お示しいただきたい。
  106. 早川崇

    ○早川政府委員 石越村は大石武一代議士の祖先の墳墓の地ではございません。それは石森町の誤まりでございまして、石越村は、御承知のように、栗原郡の若柳町とは、水道の関係その他人口バランスからいっても、一体になる性質の村でございますので、これを栗原郡の第八区に入れることにいたしたのでございまして、その点御了承願いたいと思います。
  107. 山村新治郎

    ○山村委員 ただいまの御答弁において真相がわかったのでございますが、ややもすればそういうような誤解がずいぶん飛んでおるのです。  秋田県で二人区を作られましたが、一体秋田県で二人区を作ったのはどういう理由でございますか。
  108. 兼子秀夫

    ○兼子政府委員 秋田県の第三区を二人区にいたしておりますが、これは第二区が人口の関係で山本郡を割っております。そういたしますと、能代市と山本郡の北部と北秋田郡と大館市、それから鹿角郡で、二つ選挙区を作らなければならなくなるわけでございます。そういたしますと、鹿角郡と大館市だけでは人口が足りませんので、北秋田郡をさらに割って一選挙区を作る。そういたしますと、北秋田郡は地形上さらに人口の上から二つに割らなければならぬ。北秋田郡を割り山本郡を割ったもので一選挙区を作るということは、非常に住民感情に合わない無理な点がございますので、これは二人区といたしたのでございます。
  109. 山村新治郎

    ○山村委員 委員長に伺いますが、本会議の開会時間は何時ですか。
  110. 小澤佐重喜

    小澤委員長 今の予定では四時十五分であります。できるだけ四時十五分で終るように、一つ簡単にお願いいたします。
  111. 山村新治郎

    ○山村委員 四時十五分で別表を終るのは、これから慎重な審議をしようと思っておりまするから、なかなか困難でございますが、社会党鈴木君もおいででございまするから……。それでは別表を続けていきます。  続いて、山形県におきましては、南置賜郡及び東置賜郡を米沢市に合せたのでございます。これは米沢市と関係が最も深いという理由を唱えられておりまするが、米沢市に関係の深い理由はどういう理由でございましょうか。
  112. 兼子秀夫

    ○兼子政府委員 御説明申し上げます。米沢市は、本来、南置賜郡の出でありまして、昔は一体であったわけでございます。なお、東置賜郡に現在入っております川西町は、南置賜郡の方から近くの村を合併して川西町ができておりますので、これを合せまして一選挙区といたしますことが連絡上合理的である、かように判断いたしまして、調査会案を修正いたしたのでございます。
  113. 山村新治郎

    ○山村委員 福島県の問題をお尋ねいたします。福島県におきましては郡山市と田村郡とを一緒にされなかったようでございまするが、この点は一体どういう理由で一緒にされなかったのでございましょうか。
  114. 早川崇

    ○早川政府委員 調査会案では郡山市と田村郡を一選挙区としておりまするが、もともと郡山市は安積郡、安達郡と一体をなしておりまして、むしろ安積郡の出身となっております。従って、田村郡、安達郡東部の町村とで四区を作りまして郡山市は離した、こういうことになっておるわけでございます。
  115. 山村新治郎

    ○山村委員 茨城県の選挙区につきましては、調査会案を全面的に変えた次第であるのであります。特に二人区をわざわざ作っておりますが、新聞で、ややもすれば、工場地帯で革新派が強い地盤だからなどということを言われておりまするが、正々堂々と一人一区でお互いに戦い合うような一人一区制を一体どうしてとらなかったのか。こういうような誤解がどこによって生じておるかという点を御説明願いたい。
  116. 早川崇

    ○早川政府委員 茨城県の日立市のブロックと太田市、高萩方面と一つにいたしました理由は、もともと那珂郡の一部を入れて日立と合せましても、現在の調査会案では二十三万五千人の人口を擁するのであります。他方、那珂郡の一部を入れて久慈郡十五万、合せて八方五千の開きが出て参るわけであります。那珂郡の一部をはぎ取ってもなおそれだけの開きが出てくるというのは、まことに不自然な選挙区でありますから、那珂郡を割るのを元に戻して、日立、高萩全部をあわせまして二人区にするという方がはるかに合理的でございますので、二人区にいたした次第でございます。
  117. 山村新治郎

    ○山村委員 ただいまの御答弁でよくわかりました。  続いて栃木県の選挙区の問題でございまするが、栃木県の首府ともいうべき宇都宮市を、政府案によりますと、わざわざ割って原案を出されておりまするが、一体どういうわけで宇都宮市をわざわざ割って原案を作られたかを御答弁願いたい。
  118. 兼子秀夫

    ○兼子政府委員 宇都宮市は割りまして、調査会案におきましてもそれぞれ一人一区になっておったのでございますが、ただ、調査会案と違いましたのは、調査会案では学区で割っております。この学区は非常に行政府に入り込んでおりまして、一つの町名が数学区にまたがっているというようなところがありますので、とうてい学区を採用できないのでございます。そういう関係で、この調査会案の学区の考え方の趣旨を生かしまして、それで町名を合理的に拾ったわけでございます。
  119. 山村新治郎

    ○山村委員 群馬県という県はさしたる大県でもないのでございまするが、群馬県で二人区が作られております。その理由はどういう理由でございましょうか。
  120. 兼子秀夫

    ○兼子政府委員 群馬県につきましては、調査会案を修正いたしました考え方の根本は伊勢崎を中心とする調査会案の第七区でございますが、そこで伊勢崎をつけておりますところの佐波郡を、第七区と第九区に調査会案は二つに割っておるわけでございます。これは一つの不自然な考え方になっております。それからさらに、勢多郡の東部につきましては、これはやはり山田郡の大間々につけるべき地勢でありますので、それを桐生のブロックにつけるということにいたしますと、人口の関係及び地勢の関係からいきまして、山田郡の南に切られております部分はどうしても太田市につけなければならない。こういうふうな関係からいたしまして、調査会案を修正いたさなければならないということでございます。さらに、太田市のブロックと館林のブロックは、非常に面積の小さいところで、しかも人口が非常に小さいというふうな関係から、二人区といたしたのでございます。
  121. 山村新治郎

    ○山村委員 政府の方針は、郡市をなるべく分けないようにしたということが一つの方針であるように聞いておるのでございますが、たまたま、埼玉県におきましては、同じ秩父郡を、経済上の関係からいって、国鉄沿線地区、荒川流域地区、児玉、秩父道路沿線地区などと分けております。こういうふうに分けろと非常に世間から誤解をされるおそれがありますが、埼玉県でわざわざ秩父郡を分けた理由はどういう理由でございましょうか。なお、埼玉県において二人区をなぜ作ったかという点においても、これまた誤解の一つでございますので、御答弁を願いたい。
  122. 兼子秀夫

    ○兼子政府委員 秩父郡、児玉郡、それから大里郡、熊谷市、深谷市、本庄市の区域で三選挙区作らなければならないわけでございますが、鉄道沿線の関係からいいますと、そこで一つ選挙区ができる。それから、御承知のごとく大里郡と児玉郡、秩父郡の関係は、交通系統が、熊谷から寄居を通って秩父を抜けております秩父線がございます。さらに、児玉郡の方面からは、ちょうど秩父郡の北側の方に来る秩父街道があるのであります。おのずから荒川筋とそれから道路の児玉、秩父街道の路線と二つ地勢が分れておりまして、町村等の関係におきましては、そのような分け方が自然であるというふうに考えて分けたのでございます。  それから、さらに、埼玉県でなぜ二人区を作ったかという問題でございますが、それは、調査会案におきましては、大宮市でちょうど人口が足りますので、一つ選挙区を作るといたしますと、その関連いたします北足立郡の北部、鴻巣市では、人口が足りずに一つ選挙区とならない。やむを得ず、現行選挙区は荒川をもって境としておりますが、その川を越えまして、比企郡の東松山市の東にある吉見と川島の二町村を北足立郡につけまして、一人区としておったのであります。これは、現行選挙区をまたがる——われわれは混合区と申しておりますが、そういう点が無理があるということが一つございます。現行選挙区を尊重いたしますれば、二人区にいたしますればこの混合区を作らずに済む。川島、吉見の人たちは、北足立郡とは選挙のときには関係がございませんので、われわれは、人口の見地から、大宮市から鴻巣市まで入れまして二人区といたしたのでございます。
  123. 山村新治郎

    ○山村委員 私の方の千葉県は、故意か偶然か、たまたま調査会法案とほとんど変りがないのでございます。従って、東京都に調査を進めたいと存じます。  東京都におきましてこれまた二人区が作られておりまするが、これは、何の必要によって、いかなる理由によって作られたのでありましょうか。
  124. 早川崇

    ○早川政府委員 調査会案によりますると、八丈島、三宅島というような島嶼地帯が、海岸に面しておらない旧荏原区についておるのであります。明らかに不合理でございますので、これを品川区につけました。そういたしますと、品川が二十五万という人口になり、荏原がわずかに十六万ということになりますので、この二つ一つにいたしまして二人区を作る、こういうことになった次第でございます。
  125. 山村新治郎

    ○山村委員 本会議の予鈴が鳴ったようでございますので、残余のこの別表につきましては後日質問を続けることといたしまするが、この際に太田長官にお尋ねをいたしたい点は、たまたま、選挙制度調査会の起草小委員長の矢部さんは、毎日新聞に意見を発表せられまして、完全に党略のために利用されたという御発言をなされておるのでございまするが、私は、この御発言は実に重要な問題であると存じます。太田長官は、この調査会案を尊重されることについては尊重されて、そして、この調査会案を十分に尊重された結果、これらの別表を作られたと存じますが、この矢部さんの発言に対しまして、長官はどういう御見解を持たれておりますか、参考に承わりたい次第であります。
  126. 太田正孝

    太田国務大臣 委員会の方々が非常に御勉強なさいまして答申をして下さいましたことにつきましては、厚く感謝いたします。しこうして、今回の四百七十七の区につきまして、われわれは実際を調べました結果、調査会案を二百六十とりまして、二百十七が変ったわけであります。しかし、それとても、ただいま御説明申し上げましたような事情、あるいは地勢ですとか、あるいは人口、経済という客観的情勢から判断いたしまして、これを修正した。一ところ修正しますと他に響くことは当然でございます。また、二人区を一つも設けておりませんでした調査会案に対しまして二人区を設けた理由は、二人区を設けた方がよいという理由、及び、調査会案も、最初におきましては、二人区を設ける場合あるべしということを答申されております。しこうして起草委員はそれを厳格に一人区にいたしたのでござまいすが、先ほど政府委員からも申されました通り、二人区を設けた理由がそこにあります。また、参考的にわれわれが尊重いたしました緑風会案等におきましても、たくさんの二人区ができておることも、御了解願いたいと思います。
  127. 山村新治郎

    ○山村委員 もう時間がないようでございますが、社会党の諸君に、政治資金の問題につきまして一点だけ尋ねたいと思います。  社会党の諸君は、今回の政治資金規正法に関しまして、政府から補助金をもらっておるところの会社からは、政党は一切寄付を受けてはならないという提案をされておりますが、この点一面の真理はございます。しからば、何ゆえそれの会社に従業しておる従業員のビンはねをするところの労働組合の献金をも規正されておらないかという点を、一点お尋ねいたしたい。
  128. 鈴木義男

    鈴木(義)委員 これはまことによい御質問をいただきましたが、労働組合は決して政府から補助金をいただいておる団体ではございません。また、労働者個々人について考えてみますれば、正当な労働に対する報酬を得ておるのであります。そして、自己の地位の向上あるいは生活条件の改善のために、政治にたよるべき点が多々あるのでありますから、ある特定の政党を支持し、あるいは特定の政治家を支持して、個々の労働者が献金をすることは少しも差しつかえない。資本家の団体において資本家が個々人として献金をすることが差しつかえないならば、零細な金を労働者が献金することに何の差しつかえがありましょうか。それで、労働者の献金が集まって、これを一つにまとめて出したからといって、額が多くなるだけでありまして、その性質に変化を来たすはずはないのでありますから、その見地において、断じてこれは政府の補助金あるいは利子の補給等を受けておる法人が寄付する場合とは、同日に論ずることはできないと確信しておる次第であります。
  129. 山村新治郎

    ○山村委員 この点自治庁にもお尋ねをいたしいのでありますが、ただいま、鈴木さんは、個々の労働者が寄付するのだから差しつかえないというような意味の御答弁があったのであります。現実には、私のところなどでも、組合費をピンはねされておって、われわれは心ならずも、社会党へその金が一部分献金されておる、自分の一票は、組合には入っておるけれども保守党に入れておるのだという労働者の方々がたくさんあるのです。この点から考えますときに、日教組のように、強制的に組合費を徴収し、そしてその一部分を特定の政党に献金するということが、果して正しいことであるかどうか。なおまた、聞くところによりますると、イギリスにおきましても、アメリカにおきましても、労働組合の献金につきましてはある程度までの規制がなされておると聞いておりますが、この点につきましての自治庁の見解を承わりたい次第であります。
  130. 早川崇

    ○早川政府委員 これは毎々国会で常に議論になります問題でございます。自治庁といたしましては、たとえば、個人の場合にも、国民の税金によって俸給がまかなわれておる人たち、たとえば教員とか国家公務員とか、そういう人たちからの政治献金というものは、政府から補助金をもらっておる会社から政治献金をさせてはいけないというのであれば、同じくそういう税金によって報酬を得ておる公務員からの政治献金はいけない。もう一つは、英米その他におきましては、会社法人において政治献金を禁止しておると同様に、労働組合費として取った団体からの寄付金は規制いたして、禁止をしておるのでございます。
  131. 山村新治郎

    ○山村委員 私は、労働組合の健全な発達は日本の民主主義のために喜ぶべきものであると考えておりまするが、残念ながら、今の政党と労働組合のあり方というものは、ややもすれば党政が労働組合に隷属している感を与える。すなわち、今政務次官から御答弁がありましたように、同じ国民の税金によって補助金が与えら出ておりまする会社が規制されるといたしましたならば、同じ国民の税金によって月給を取っておりまする公務員からの政治献金も、ある程度まで規制されるべきであるという議論も成り立つはずであります。ところが、社会党が労働組合に隷属している証拠といたしまして、この労働組合の献金について何ら規制をされようということをうたわれないのは、実に私どもといたしましては友党社会党のために惜しみても余りあることでございます。  そこで、鈴木さんにお尋ねいたしたい点は、政党は労働組合に隷属すべきでないと考えまするが、あなたはそれをどういうふろに考えておられるか、同時に、現在の社会党は総評に対して隷属されておらないということを断言される勇気ありやいなやを承わりたいのでございます。
  132. 鈴木義男

    鈴木(義)委員 ある団体がある団体に隷属しているかいなかということは、これは非常にむずかしい問題でありまして、隷属の定義をまずきめてかからなければなりませんが、それをやっているとまた長くなりまするから、後日のことにいたしまして、少くも利害、主張が共通であるならば、同一の行動をとることは、労働組合と政党との間にあり得ることでありまして、あたかも独占資本家と自由民主党との間に同一行動をとるのと同じことであります。ゆえに、それをもって隷属と言うならば、やはり自由民主党も資本家に隷属していると言われても、弁解の言葉がないわけでありまして、私は断じて隷属をいたしているものとは考えておりません。利害を共通にし、主張を共通にいたしまするがゆえに、互いに助け合っている関係にあるものと思うのであります。しこうして、一部には確かに労働組合から献金をもらうこと——もしあなたが仰せらるるように、その意思に反してまで出しているという者があるならば、その証人を連れてこられるならば十分考えますが、われわれはその意思に反してまでも税金のごとくに取ろうという考えはない。またできるだけ自由意思に基いた献金がとうといことでありまして、国家からもらった金といっても、役人が月給をもらった後は、それはその人の自由な財産でありますから、どこに献金をしようと、どういうふうに使おうと、それは差しつかえないことであります。国家からもらっている公務員あるいは労働者がどういう方面に金を使おうとも、それに対してとやこう言うことはできないのでありまして、それを規制しようというのは、先ほど言ったような意味ならば考える余地がありまするけれども、ただそういう概念的な区別では、断じて承服することはできないのであります。
  133. 山村新治郎

    ○山村委員 本会議が始まったようでございますので、一点だけ自治庁にお尋ねをして、私の質問をこの次まで留保いたしまするが、大体、組合費というものは、その内訳におきまして、政党献金をこれだけやるんだということを個々の労働者から御了解を得て徴収しているものではないと思うのであります。(「大会の機関にかけるんだよ」と呼ぶ者あり)大会の機関と申されますが、その中にはいわゆる組合ボスというものが介在をいたしまして、そこで巧みに特定政党のためにその大会をリードするような傾きがあることは事実でございます。すでに、アメリカ並びに英国におきましては、この政党献金の組合費のワクは、同じ労働組合にありながら、一方は保守党であり、一方は社会主義政党であるという現実から、別のワクを作らなければならないという点について、多分法的な規制があるはずでございますが、この点はどうでございましょうか。
  134. 早川崇

    ○早川政府委員 お説の通り規制をしております。
  135. 山村新治郎

    ○山村委員 ではこの次にします。
  136. 小澤佐重喜

    小澤委員長 次会は明後二十九日午前十時より開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後四時三十一分散会