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1956-07-09 第24回国会 衆議院 外務委員会 第58号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年七月九日(月曜日)     午前十時四十八分開議  出席委員    委員長 前尾繁三郎君    理事 石坂  繁君 理事 北澤 直吉君    理事 須磨彌吉郎君 理事 高岡 大輔君    理事 山本 利壽君 理事 穗積 七郎君    理事 松本 七郎君       愛知 揆一君    芦田  均君       伊東 隆治君    植原悦二郎君       大橋 忠一君    重政 誠之君       並木 芳雄君    福田 篤泰君       淵上房太郎君    松岡 松平君       松田竹千代君    松本 俊一君       山本 正一君    大西 正道君       田中 稔男君    戸叶 里子君       福田 昌子君    細迫 兼光君       森島 守人君    岡田 春夫君  出席国務大臣         外 務 大 臣 重光  葵君  委員外出席者         法制局長官   林  修三君         総理府事務官         (南方連絡事務         局長)     石井 通則君         検     事         (民事局長)  村上 朝一君         外務政務次官  森下 國雄君         外務省参事官  法眼 晋作君         外務事務官         (アジア局長) 中川  融君         外務事務官         (条約局長)  下田 武三君         専  門  員 佐藤 敏人君     ――――――――――――― 七月九日  委員池田正之輔君菊池義郎君、福永一臣君及  び渡邊良夫辞任につき、その補欠として重政  誠之君、山本正一君、淵上房太郎君及び松岡松  平君が議長指名委員に選任された。 同 日  委員重政誠之君、淵上房太郎君、松岡松平君及  び山本正一辞任につき、その補欠として池田  正之輔君江崎真澄君、渡邊良夫君及び菊池義  郎君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 六月二十六日  次の委員会開会要求所が提出された。    委員会開会要求書  外務委員会を六月三十日午前十時開会せられた  い。  右衆議院規則第六十七条第二項の規定により左  記連名にて要求します。   昭和三十一年六月二十六日  外務委員長 前尾繁三郎殿       外務委員 穗積 七郎            松本 七郎            大西 正道            田中織之進            田中 稔男            戸叶 里子            福田 昌子            細迫 兼光            森島 守人            和田 博雄     ――――――――――――― 六月二日  国際情勢に関する件  国交回復に関する件  国際経済に関する件  賠償に関する件     ―――――――――――――
  2. 前尾繁三郎

    前尾委員長 これより会議を開きます。  参議院選挙等のために開会がおくれましたが、本日は国際情勢等に関する件、特に沖繩問題について質疑を許します。質疑通告順によりまして、伊東隆治君。
  3. 伊東隆治

    伊東(隆)委員 このたび沖繩に駐留する米軍が新しく土地を接収しようという問題に端を発しまして、沖繩問題なるものが国民的な最も大事な問題としてここに提起せられ、また国会内におきましては、超党派的にこの問題が真剣に取り上げられましたこの際、休会中でありますのにここに外務委員会が開かれ、その最初質問者に私が立ちましたことを私非常に光栄と存ずると同時に、感慨無量に存ずるのであります。と申すのは、私は奄美大鳥選出の者でございまして、八年間、沖繩同胞とともにこの冷厳な占領下において苦しみ抜いてきた者の一人といたしまして、この問題に関しましては特に他の議員におそらくまさるとも劣らない熱意を私は持っておる立場であるのでございます。八年の間わが奄美同胞島民は実に塗炭の苦しみをなめて参りました。どうしてもこの冷厳な軍事占領から脱したいというので、後には七才以上の者または病気でない者はすべて飢餓運動をいたしたのであります。そして一口も早く母国に帰ることを祈念いたし、また占領下住民として行き過ぎない程度の最大反抗運動をやったのであります。そうしてついには九九%八、ほとんど一〇〇%の署名を取りまして、そしてぜひ母国に帰りたいという叫びを叫びました。そしてこれをアメリカの大統領ほか枢要の地位にある者、なおひいては英国、仏国その他の連合国の要路に対し、またニューヨーク・タイムス、あるいはへラルド・トリビューン、ロンドン・タイムスやル・タン、世界言論機関にこれを訴え、世界通信網に二十数万の奄美島民のこの熱烈たる希望を伝えました往時を私は特に回顧いたすのでございます。おそらく沖繩住民におきましてもまたこの奄美島民にまさるとも劣らない、あるいはそれ以上の――現実にあれだけの軍隊が駐屯いたしてわりまする沖繩におきましては、それ以上の苦しみをなめておったであろうことは想像にかたくないのでありまして、私どもその隣の者といたしましては哀心同情も申し上げ、何とかしてこれはできる範囲において、母国に帰るようにいたしたいものだとの気持を強く打っておったのでございます。そこに今度のこの問題が発生したわけでございまして、私は選挙応援のために大島にも帰っておりましたが、郡民は一日も早く東京へ行ってその問題に協力してもらいたい、私の日程は来たる十五日まで各島々を遊説する予定になっておりましたものを、今度のこの委員会にあなたが欠席するようでは、わが奄美群島島民熱意が疑われる、ぜひ一つ予定を繰り上げて行ってもらいたいという、実にそれこそ盛り上る島民の熱烈な希望から、私は本日の委員会に列する機会を得さしていただいたわけでございます。この意味におきましてさっき申しましたように私は非常に光栄に存ずると同町に、また感慨無量である。そこで前置きはこの辺にいたしまして、二、三の点につきまして私は質問をいたしたいと思うのであります。まず私が東京を離れて書新聞を見ておりますと、いかにも外務省か、下熱心なように見受けられる。しかもまた法理論において法務省と外務省との間において意見が違う、論点が違うように見受けられておることは非常に遺憾に思いました。重光外務大臣とは前々からこの問題につきましては、私、御援助申し上げる意味におきまして、この認識を大臣において、正確にしていただきたい意味から体験を持つ私から申し上げておったのでございまして、決して重光外務大臣がこの問題に対して熱意がないとか、ひいては外務省自体熱意がないなどとは、私は思いませんでした。やはり私、外務省出身者といたしましてもよく感ずることは、あまりに理屈、法理論条約論に頭を突っ込み過ぎたその意見だけを抜き取って報道陣営に流すせいか、いかにも外務省が弱腰、不熱心というふうに聞えて参りますことは、私自身非常に残念に思ったのでございます。  そこで第一点として私が伺いたいことは、一体この在外臣民保護権なるものであります。なるほど沖繩は外ではありません、日本の内である。内であるか外であるかは別として、少くとも沖繩人日本人である。その日本人保護する権利なるものは、在外臣民保護権などという熟した、言葉で……(「臣民とは何だ」と呼ぶ者あり)人民であります。そこでこれを外交保護権という言葉で表現してもいいのでありまして、言葉じりをどうこう言うのでなくして、少くとも沖繩人を、沖繩のわが同胞を救うのだというその権利は、私は日本国にあるということを確信するものでございます。今までの権利と申しますか、この点に関しまする外務大臣の御所見を第一に伺いたいと存ずるのであります。
  4. 重光葵

    重光国務大臣 沖繩問題はまことに現下の重要問題と考えております。沖繩問題は今伊東委員の言われました通りに、これは刻下のきわめて重要なる問題として私どもの頭を悩ましている問題でございます。沖繩領土的に見てすでに日本に帰属すべきものであるということは、これはわれわれは疑うところではございません。米国においても滞在主権を認めております。従って沖繩住民日本人であるということは、もしくは日本国籍を持っておるということは今日までの取扱いでそう相なっております。これに対して政府としてあらゆる保護の手を差し伸べるということは、これまた当然のことであります。さような意味合いをもって今日までこの問題に対処しておるのであります。ただ沖繩につきましては御承知通り平和条約においてはっきりした明文があるので、この明文を今日すぐいかんともすることはできません。その明文に従って処置しなければなりません。そこで沖繩における沖繩人取扱いは、わが政府の思う通りにこれが参らないことは明らかで、あります。沖繩統治している実権を持っておるのは平和条約によってアメリカと定められておるのでありますから、そこであくまで沖繩住民要請米国政府をしてこれを聞き、これを実現し得るように日本政府としては処置しなければなりません。さようなことで沖繩住民要望が実現するように全力をあげて政府はやっておるつもりでございます。それについて法律問題にとらわれるとかいうお話でございますが、実はそういう沖繩人保護しなければならぬとわれわれが考えておることが国際法保護権というべきものであるかどうかということは、これは私自身としてはむしろ第二義的に考えております。これは国際法学者のいろいろ言うところにまかして差しつかえないように思う。いずれにしても、権利であるとないとを問わず、このわが同胞要請を実現して同胞に援助をする、これは最大努力を払わなければならぬと考えております。そこで、さようなことに考え方を持って今日まで進んで参っておるわけでございます。  以上をもってお答えといたします。
  5. 伊東隆治

    伊東(隆)委員 沖繩におけるわが同胞保護は、いわゆる国際法上の正しい権利によって、これを保護するしないは別として、少くとも全力をあげて今度の問題に直面いたしたいという外務大臣のお気持は了とするものでございます。これは何と申しましても哀願ではない。また権利などといってやるべきこと、でもないし権能とでもいいますか、とにかくそれをも越えた国民感情として、またそれこそ基本的な人権の擁護として、私はこの際、外務大臣がこの上とも熱意を傾けられて、この問題に尽されんことを切望するものであります。  第二点としてお伺いいたしたいことは、沖繩ステータスの問題でございますが、申すまでもなくこれは信託統治にする目的をもって、それまでの間アメリカ施政権者として、立法司法行政の三権の全部または一部を行使するということになっております。しこうしてアメリカはこのステータスを、日本潜在主権があるのだという言葉でも言っておりますが、アメリカ合衆国はその名のもとにおいて日本から明瞭に分離しておるのであって、これは過般の国会におきまして、芦田均委員と当時の吉田首相との間に質問応答が実にたんねんに繰り返されておるのでございます、やはり何と申しましても、ここにありまする、国連憲章第七十七条のいわゆる分離せられたる地域の中に沖繩も入れざるを得ない、分離せられたる地域と、そのままの地域と、戦前と変らない地域との間の中川的な地域があろうはずがないと言って、芦田さんは吉田首相に強く迫っておるのでございますが、私も同意見であります。これは確かに分離されている。われわれは潜在主権なる美名と申しますか、気休めの言葉でもって、悪く言えばごまかされておる、そのことを芦川さんはちょうど握り飯のない竹の皮だけを握っておるようなものだと評されておりますが、まさにそのようなものであると思うのであります。いずれにしろこの潜在主権なるものがあるということをアメリカにおいて言っておるのでありますから、そういう意味主権があるのに、期限を定めざる土地使用権をここに設定しようということは、私法上の問題ならいざ知らず、アメリカ合衆国という国の権利でもってこれを押収しようとしておることを示すものだと思います。この点は何といっても潜在主権侵害ではないか。これが明瞭に分離せられたるもので、あるならば、当時われわれは承知しなかったのであるから、さっきの議論とは別に、アメリカ自身が言っている潜在主権なるものに対する侵害ではないか、この点に対する外務省の見解を承わりたいと思います。
  6. 重光葵

    重光国務大臣 だいぶ条約論になりましたので、私十分了解しかねている点もありますから、条約局長からお答えいたさせます。
  7. 下田武三

    下田説明員 御質問の要点は、日本が潜在権有している沖繩において、俗に永代借地権といわれておりますが、そういう期限の定めのないような長い同時の権利を設定することは、平和条約の根本的の建前に反するのではないかという点にあるように拝聴いたしました。そこで、新聞等では永代借地権と伝えられておりますけれども、これは日本明治初年から大正にかけてこの解消に苦しみました永代借地権とは全く違うのでございます。原文ではフィー・タイトルと申しておるのでありますが、フィーと申しますのはイギリスで発達しました制度でありまして、つまりイギリスでは国王だけが土地を所有し得る。封建諸侯土地をやったのでありますが、オーナーシップはキングが保持しておって、ただその使用権はそれぞれの封建諸侯に与えた。しかし封建諸侯は、土地を処分する必要を認めた場合に、所有権を国主に握られておったのでは処分できないから、そのオーナーシップを除いた、それ以外の一切の使用権土地に関する権利として売買するという制度が発進したわけでございます。でございますから、これは日本法観念から申しますと、実際的に言いますと土地所有権変りないわけであります。そこでアメリカはアングロサクソンの国でありますから、沖繩におきましてもフィー・タイトルという言葉を使っておりますが、これは常識的に見まして土地所有権変りないと考えていいだろうと考えております。  そこで問題は、沖繩日本に返りますときに、そういう特殊の権利だけがぽつんと残ってじゃまになりはしないかという点だろうと思うのでありますが、その点につきましては、明治年間日本外国人土地法を制定するときに、外国人土地を持たすということはとんでもないことだ、東京でも大阪でも外国人土地がぽつんぽつんとできるじゃないかという疑問が大衆からは出されたのでありますが、現在でも日本国内外国人がたくさん土地を所有しております。しかしそれは、何も外国人個人土地を所有しているから日本領土外国人土地がぽつんぽつんとてきるという問題ございませんで、外国人とえども日本人と同じように、日本法令に従って土地所有権を獲得しておるわけでございます。でございますから、沖繩が返ります場合にはちろん何らかの取りきめが必要となるわけでございすが、一般の私法関係におきましても、外国人沖繩に持っている土地所有権あるいは使用権、そういうものをすべて一括して、日本法のもとにおけるそれぞれの対応した土地に切りかえられてしまう。でございますから、ただいま英米法沖繩に施行されておりますから、英米法に従いましてフィー・タイトルというような言葉を使っておりますが、これは日本に復掃いたします場合には、完全にまた日本法支配下に入ってくるという意味、私ども法律的にはそう心配する必要はないというふうに考えて、おる次第でございます。
  8. 伊東隆治

    伊東(隆)委員 イギリス法フィー・タイトルという観念は、ローマ法土地は神のものであるという思想とやはり一致することで、ありましょうが、いずれにいたしましても、国家が私法人の立場において個人所有地を道路その他に接収する場合であっても、個人所有権者承諾を前提としている、また先ほどお示しの明治初年の外人の土地所有権の当時の問題においても、それはやはり所有権者承諾ということが強い条件となっている。しかるにプライス報告なるものを見ておりますと、相手の意思というものをほとんど無視しておるところが、私はやはりその性格が追うと思うのであります。かくのごときことをするそのこと自体に対して――自体と申してはなんですが、そのことによって受ける損害はわが同胞が受けるのであるからして、これに対して政府はやはり保護権に基いて、権利として私は保護する必要がある、かように思いますがその点条約局長からもう一度御説明を願いたい。
  9. 下田武三

    下田説明員 まず最初にお答え申し上げますが、法律的に差しつかえないからといって、そういうことをしてかまわないのだという政治的の結論は導き出ないのであります。先ほど外務大臣から答弁されました通り日本国籍を保有しておる沖繩住民の福祉ということは、日本政府の非常に大きな関心事でありますから、たとい法律的に許容されるといたしましても、それが沖繩住民の好ましいものであるならば、その実現を見合せてもらうようにするということは、これまた当然のことであります。私が法律論を申しましても、法律的にいいことはやってかまわないという意味で申し上げているのではないということをここではっきりさせておきたいと思います。  そこで御指摘の点でございますが、沖繩土地に関する法令を調べてみますと、やはり住民地代その他の条件につきまして、沖繩施政当局意見が合致しない場合には、ちょうど日本やほかの国でやっておりますように、土地強制収用という手続を定めております。そうして土地収用委員会という委員会も作られておりまして、その委員会が公正と考えるところの地代なり何なりの、人件を決定するという仕組になっております。また地代に不服なものは訴願、アッピールする権利も認められております。その点につきましては他の文明国におけると同様に、特別の強権によって土地を取り上げるというようなことは、沖繩法令を調べてみますとないように考えております。しかし繰り返して申しますが、そういう道があるからどんどん土地を収用していいということには決してならないのでありまして、法律として適当であるかどうか、政策として適当であるかどうかということは、全然別問題であるということをもう一回申し上げたいと思います。
  10. 伊東隆治

    伊東(隆)委員 なるほど訴願の道も開かれておりましょうが、そもそも沖繩信託統治にしようという目的は、作戦基地として、いわゆるストラテジック・エリアとしての信託統治であって、信託統治をすることによってその住民保護し、文化高めて独立国にまで持っていこうというような、すなわち第一次大戦後英米がイラクにやったような信託統治と違うことははっきりしている、すなわち沖繩住民はどうであれこうであれ、世界平和の維持という名前か知りませんが、少くともアメリカ合衆国作戦基地としての信託統治が必要だということで、その目的のためにこの規定が設けられたことは御承知通りであります。しかしならそのストラテジック・エリアとしての信託統治をやるのには、まず国連に申し出なければならない。国連に申し出ればこれを安全保障理事会にかける。安全保証理事会の議決は全会一致ある、ヴィトーを認める。そこでソ連のヴィトーははっきりしておる。してみれば沖繩ストラテジック・エリアとしての信託統治地域にならないことは、その国際情勢が続く限りはっきりしておる。その間アメリカ合衆国施政権者としてこれを統治するというのでありますれば、沖繩住民の幸福とか発展とかいうことは初めから無視されたる出発点である。今度のプライス報告を見ましても、すでに一万二千エーカーからの土地を取り上げてしまえば、沖繩の四分の一という耕作地なるものは消えうせてしまう。沖繩八十万の住民は山地に逃げ込んで餓死するよりはかに仕方がないというような情勢にある。こういうような実に冷酷な事実を見ましたときに、私どもふんまんにたえなかった。最初からそういう考えのもとに沖繩もまた奄美大島占領された。それらのことから考えましても、今の訴願の道があるなどという法理論だけでそういう点を慰めておるということは、それこそ政府の態度としてなまぬるいといわれても仕方がないと思う。この点に関する外務大臣の御所見を伺いたい。
  11. 重光葵

    重光国務大臣 今条約局長説明されたのは、条約局長も繰り返し断わっておる通り法理論であります。私はこの問題は非常に重要でかつ大きな問題、つまり重大な問題であるわけでありまして、そこでこれについて、われわれが同胞沖繩住民に対する感情の問題から出ることは当然であります。しかしこの問題を論ずるに当ってはただ感情ばかりでも参りません。   〔「感情ばかりじゃないよ、冗談を言ってはいけないよ」と呼ぶ者あり〕
  12. 前尾繁三郎

    前尾委員長 私語を禁じます。静粛に願います。
  13. 重光葵

    重光国務大臣 そこで条約論も考慮しなければなりません。そこで条約論を考慮するから、また法律はこうなっておるからといって、われわれは感情を去ってそれですべて冷たく解決にこれを持ち込んでいこう、そういうような考え方は毛頭ございません。法律論法律論としていろいろございましょうしそれからまた米国統治をしておるから、それに対する米国としての法規をもっていろいろやっておることについて、また米国統治者としてはいろいろ理由もございましょう。しかしながらわれわれはさようなもの以上に考えて、日本のわれわれの同胞であるという見地から、あくまでこれに対してはその要望を、まあ完全といかなくても最大限に実現し得るように努力しなければ相済まぬと考えております。これはそうしたいと思っておるわけであります。
  14. 伊東隆治

    伊東(隆)委員 ほかにもだんだん質問者がおりますので、最後の一点をお伺いいたしたいと思います。  先ほど来申しますように、信託統治に、至るまでアメリカ施政権者として司法立法行政の全部または一部、オール・オア・エニー、そのエニーは種類を表わすのであるから、そのうちでの行政権だけを抜き取って、これを日本に返したって、この条約の変更について関係条約国がもう一度集まって話をし直すなどという手間もかからないから、現在の条約下において行政権だけをまず返すことがいいのじゃないか、またできるのじゃないか、こういうふうに私は思っております。この点に関します外務大臣の御意向をまずお伺いしたい。
  15. 重光葵

    重光国務大臣 それは沖繩の問題の根本に関する問題だと思います。私が先ほどちょっと申し上げた通り行政権とか何々権を分離してそれだけを返してもらえばいいという考え方で動いているのではないのであります。われわれは沖繩日本領土として主張しているわけであります。またそうでありますから、これは全部返してもらいたいということは、絶えず米国側には要求しているわけであります、しかしながら、それはサンフランシスコ条約ですでにきまっていることを今すぐくつがえてしまう、こういうことの要求ではないのでございます。事態が進行して、もしくは緩和して、沖繩占領が必要でなくなる事態がなるべく早くくるように、日本としても努力をしていって、そういう事態が発生した後においては、なるべく早くそっくり返してもらいたい、こういうことで常に意思表示をし、折衝をしているわけ、あります。しかし今申しました通りサンフランシスコ条約の第三条は厳然と存しているわけであります、これによって日本はようやく平和をかち得たのでございますから、これはあくまで守っていかなければなりません、さような意味行政権だけを返してくれというようなことも、あるいは適当な時期がくるかもしれませんが、しかし今日はまだそういう事態でないということを私は考えます。今申しました通りに、われわれとしては全部の沖繩統治権をも返してもらいたいという建前を持続しているわけでございます。
  16. 伊東隆治

    伊東(隆)委員 もとより沖繩全面復帰ができますれば、これに越したことはありませんが、世界の大勢を見ましても、それはなかなか近い将来にかち得られない。であるからさしあたり玉葱にその中の、まず行政権だけは現行条約のもとにおいても返し得るというふうに思うから、外務省としてそういうふうな交渉をする考えはないかというのが、私の質問の要点でございました。昭和二十七年の暮れに、あのポツダム宣言の原稿を書いたといわれるドゥマン、グルー大使の参事官をしておりましたドゥマンが日本に来ましたときに、私は、ドゥマンとテー・タ・テートでこの問題を話したことがある。そのときに、そういう三つの権利のうちの一部を移譲するということは、これは考えられることだというようなことを言っているほどに、東洋の事態、特に日本人の心理というものをよく知っているアメリカの外交当局のある者は、やはりそういうことに思いをいたしているのでございますから、全面復帰とばかり言って、いたずらに数十年あるいは短かくても十年費すかわりに、こういう現実の問題を一つ取り上げて、外務省が本腰にお話し願えるならば、私はこれは可能な問題だと思うのであります。社会党の諸君と見解を異にする点は、軍事基地の問題でありますが、アメリカ合衆国はわが首都の鼻先の立川の飛行場さえも借用する心臓を持っているのであるから、遠く南溟の諸島に基地を設けるくらいは、これは何も分離してまでやる必要はない。行政協定のもとにおいてやればやれる。何がゆえに分離するかというと、何人も言うことは日本に対する不信からである。いやしくもわれわれは自由国家群の中におって、かくのごとく協力もし相信じているのにかかわらず、依然として日本に対する不正行為を、しかも沖繩八十万の住民の苦難の上にこれを実行しているということは、沖繩の八十万の住民としては、何と考えても忍び得ない。もし日本に対する信頼があるならば、立川の飛行場を借りるがごとく、伊江島の飛行場も沖繩本島に設置してある飛行場も行政協定のもとに借りたならば、私は問題はないと思う。それをやらないのは何ゆえであるか。そういうような関係のもとにおいて私ども沖繩の問題をこんなに、言うことは、まるでトウロウのおのを振う気がいたしますので、死をもって抗議するより仕方がない。奄美の島人、七才以上の住民の九九・八%が飢餓運動をやったというその気持を私は思い起さざるを得ない。それよりほかに仕方がない。かくのごとき悲惨な状況にありますこの沖繩に関しまして、外務当局、外務大臣一つこの際端的に結集されたこの熱烈なる希望の達成のために、一はだお脱ぎ下さることを切にお願いいたしまして、私の質問を終りたいと存じます。
  17. 前尾繁三郎

  18. 穗積七郎

    穗積委員 私はきょう緊急な沖繩問題と、それから時間があった日ソ交渉に関する政府の方針を伺いたいと思いますが、まず緊急性がありますから沖繩問題からお尋ねいたしたいと思います。  お尋ねに入ります前に重光外務大臣並びに鳩山山内閣の与党の方々に遺憾の意を表して要請をしておきたいことがある。この問題が起きましたときに、鳩山総理はこれは土地をかえてやれば問題は解決できるだろうというような、県民並びに国民の民族的な要望を全く無視した、そうい単純なる経済的な問題としてこれを理解、するということ、これは沖繩県人はもとよりのこと、われわれとしてもはなはだ遺憾でございました。さらに当面の衡に当らなければならない外務省は、まるで人ごとのように、そうしてこれを取次さえすればいいというような、レポーターであるような意識をもってこれに当っておられる、さらに選挙対策か何か知れませんが、この問題が起きましたときに、与党内に特別委員会が設けられて、その委員長の野村さんは最初に言を発して何と言われたかというと、沖繩の問題はすでに信託統治に移っているから、日本側でとやかく言うべき筋でないという意見を発表された。さらに外交調査会の責任者である芦田さんは、これまた現地人の嘲笑とふんまんを買っているのですが、昔の日本統治時代には、経済的に非常に低い程度であったのに、沖繩米軍治下に入ってから、生活が非常に改良されて、多くの県民はこれに感謝をしている、文句を言っているのは一部の者にすぎないというような、全く認識不足というか、国民として憤激感ぜざるを得ないような発言をされて、そのためにこのことがこれから問題になります、正しい最低限の生活と人権を守るための要求というものが通らなくなる結果になることをわれわれはおそれる。日本政府並びに外務省は、むしろもうアメリカ側の条件を初めからのむつもりでいるのだ、多数占めている与党の諸君の代表者は、アメリカにむしろ感謝しているのだという空気の中では、この問題は解決する問題ではございません。これはあくまで現地の八十万の県民の主義主張、宗教、性別、年令を超越いたしまして一体となって戦っていくところに、この問題の実現の可能性があるのである。従って八千万本土の同胞が同様に戦わなければならない。与党も野党もございません。共産主義も資本主義も帝国主義も実は超越して、これは日本人としての自覚があるならば戦わなければならないし、その日本人民の生活と人権について責任を持っているべき日本政府が、そういうような態度ではとうてい戦えませんから、最初に御注意申し上げておきます。もしこれが違って報道されたというならば、そのことを明らかにしていただきたいし、これから与党、野党を問わず質問に対する外務大臣のこの委員会における発言というものは、国内はもとよりのこと、対外的に重要なる影響を持っておりますから、そういう御覚悟で一つ御答弁をわずらわしたいと思うのです。  そこでまず第一に私は部門を二つに分けてお尋ねいたしますが、一つは日本側がアメリカに対して具体的に要求される目標と方針、それから第二の部分については、沖繩条約上、国際法上の地位に対して、一体政府はどういう考えを持っておられるか、その二点に分けてお尋ねいたします。  最初の具体的な問題について、お尋ねいたしたいことは、現地人八十万がことごとく一致して要求されておるその内容を見ますと、ことごとく最低限度の人間としての生活を守るための要求にはかならない。そういう四原則、この四原則は御承知通り新規の土地の取り上げに絶対反対すること、さらに一括払いの方式に反対をすること、さらに地代の支払いがはなはだしく不当な低廉なものであるから、これを今までのものを引き上げることも要求しておる。さらに損害補償についての規定を確立して、人間として、民主国として正当なる損害賠償体制を作ってもらいたい、この四つの要望でございますが、これに対して政府並びに外務大臣はどういうお考えを持っておられるのか、これを全面的に支持されるのか、あるいはこれに対しては、アメリカの前には屈してこれを譲らなければならぬと考えておられるのか、どちらであるか、はっきり最初に態度を明らかにしていただきたいと思います。
  19. 重光葵

    重光国務大臣 私は先ほど申した通りに、沖繩住民希望――沖繩住民希望というのは、四原則に出ておる、それはあくまで支持して、そうしてその実現をはかりたい、こう考えております。
  20. 穗積七郎

    穗積委員 特にわれわれが懸念いたしますことは、後に触れますが、外務省か特に法務省を押えて、この際法理論をやることは無益であるという態度でおられる。そして今下田条約局長もそのことに対していささか弁解をされておりますが、実は国民がおそれますことは、そういうことで政治的に目的を貫徹しさえすればいいのだという考え方、交渉の方法、順序についてはこれは一々私は申しませんが、そういうことを言っておる。これは腹の底に、あくまで現地民の要求しておる四原則、日本国民がすべて支持しておる四原則は実際通りがたい、そこで最後は多少の条件、たとえば地代の引き上げ等の経済的条件をややこちらに有利にすることによって、この問題は処理しようというような下心があるのではないかということを一番危惧しておるのですが、今大臣は四原則はそのまま支持したい、ぜひ貫徹したいということを言っておられるわけですから、そういう条件によって満足するというような考えはないと確認してよろしゅうございますね。
  21. 重光葵

    重光国務大臣 非常にひがんですべてを解釈されますが、その点はおひがみにならぬように……。それからまた本腰になっていないとか言うけれども、これは初めから本腰になっておるのであります。一体沖繩の問題については、さかのぼって言うとどうもはなはだなにがありますが、私は沖繩住民は、実際、今回の戦争の最も被害者、犠牲者の一人であると考えております。あくまでこの同胞最大限に支持して救わなければならぬと、こう考えておます。だから私は今申し上げた通りに、その要望はどこまでも支持していきたい、こう考えておるのであります。それ以上には申し上げることの必要はないと思います。
  22. 穗積七郎

    穗積委員 どうぞ今お言葉を忘れないように、一つあくまでも貫徹していただきたい。われわれは党派を超越して支持いたしますから、そのおつもりで決意を新たにしていただきたいと思う。その次にお尋ねいたしたいのは、施政権回復の問題でございます。これはしかもあなたも関係の深いこの外務委員会において実は提案決定をいたしまして、六月二日の衆議院本会議において、与野党含めて異常なる情熱を込めて決議いたしました。しかも外務当局は、適切なる決議をいただいたので、これに対してぜひ実現するように努力いたしたいという発言をしておられるわけですが、この施政権回復の問題に対してこれも遠い将来のことではございません。われわれ社会党といたしましては、完全なる復帰並びに軍事基地の撤廃、安保条約の廃棄、それによる米軍の撤退等も要求いたしておりますが、そういうことではなく、当面の問題として、理想ではなく、当面の問題として、施政権回復の具体的必要さを感じて、与野党を含んでこれを決議したのです。それからすでに一カ月余を経ております。その中間においてプライス勧告というような深刻な問題が出ておるのでございますが その後今日に至るまで、この施政権回復の、与野党を含んでの国民の総意である決議に対して、外務省は一体どういう方法をおとりになったか、どういう交渉をなさったか、それからまた今後どういう交渉をなさるつもりであるか、そのことをぐたいてきに報告していただきたい思うのです。大臣からお願いします。
  23. 重光葵

    重光国務大臣 これも先ほど申した通りでありまして、施政権の回復と言われるのは、全面的に沖繩を返してもらいたい、こういうことでしょう。私は、これは国会意思もそこに存しておる、日本人もそう考えておる、われわれはむろんそれによって動かなければならぬ。そこで、しかしながら戦争が済んで、平和条約の中に沖繩をどうするということははっきりきめてある。それを今すぐ動かす、平和条約を改訂してくれ、こういうことは、私は今日まだ時期尚早だと思う。(穗積委員「弁解はよろしい。院の決議を尊重して、具体的に何をされたか聞いておる。」と呼ぶ)具体的に米国当局に向ってその意思をはっきり申しております。(穗積委員「いつ申されましたか、その日時及び方法、並びにそれに対する向うの態度をこの際報告してもらいたい。」と呼ぶ)そういうことは申し上げるわけには参りませんが……。(「何もしておらぬじゃないか」と呼ぶ者あり)これは、私は言っておるじゃないか。これは国会のなにでありますから、あらゆる機会に言っておる。それは書面を一つ出して、すぐそれに対して返事をもらって、それで解決するという問題ではありません。これは、出先においてもこちらにおいても、必要な場合には書面――議会でこういう決議があったということは言わなければなりません。それからまたこちらの意思は、潜在主権を認められておる以上は、これはなるべく早く日本に返してもらうようにしてもらいたいということを繰り返し繰り返し申しております。この時期が熟することがない、熟さないとは私は申しません。これは熟する時期がくると思う。しかしそれは、言われるように一月や二月の問題ではないと思う。またそういう意味国会で決議された問題でもないと思います。これは熱心に続けていけば必ず時期がくる、こういうように思います。
  24. 穗積七郎

    穗積委員 その問題ついては、実は後に質問する沖繩国際法上の地位なりアメリカの施政権の実施の態度方法について、関連いたしますから、そのときまたお尋ねいたしましょう。  そこで具体的な問題についてもう少しお尋ねいたしたいが、施政権が回復すれば、それで根本問題は解決いたしますが、施政権の回復する前においても、たとえばある程度の期間がかかるとするならば、今日起きておる問題解決、今後の問題解決のためにも必要であると思われますことは、沖繩現地におきまする統治の民主化をはかること、すなわちあそこは、軍政から民政に切りかえると称して、実際にはレムニッツアー司令官が施政官を兼ねてやっており、その下にまるでごまかしのように琉球政府なるものがあって、立法院ができております。しかもその琉球政府の主席等につきましては、これはある時期に公選に付してもよろしいという意思表示すらしておる。これは民主主義の原則からいって当然のことです。さらに実は立法院はあってなきがごときであって、その決議は施政によって一方的に拒否権を発動されれば全く無益な決議になるという実情にある。そこでわれわれはお互いにすでにもう講和条約を締結した間柄でございますから、当然施政権の回復前の暫定的な行政措置といたしましてもこの民主化、主席の公選、立法院に対する拒否権をやめてもらう、この二つのことを実現すべきであるとわれわれは考えますが、外務省はどういうお考えでございますか、これに対する所感を伺っておきたいと思います。
  25. 重光葵

    重光国務大臣 アメリカがいかに施政権を運用するかということについては、これはもう原則としては住民意思を十分尊重しなければならぬ。これは原則だと考えます。そこで今回起きた問題についても住民の意向を十分に尊重してもらいたい、こういうことが要点になってくると思います。そこで住民意思を十分尊重するということに沿わない今日までのなにかあれば、それは私は変えることがいいということをアメリカに言うことは少しも差しつかえないと思います。ただ私は、今それがどういう運用をしておるかということを十分に一つ検討した上でそれはやりたいと考えております。今日まではまだそこでは参っておりません。
  26. 穗積七郎

    穗積委員 このことはすでに外務委員会においても沖繩問題は特に数回にわたって取り上げられて、そして現地の代表を参考人として呼んで意見を聞いた中で、こういう問題は出ているのですよ。しかも日本政府機構の中には南方連絡事務局があるわけで、今さら研究するなんということを言っておられるのは、はなはだ遺憾な至りでございまして、怠慢というか、認識不足というか、どのような実情で沖繩県民が統治されているか、人権がどのように尊重されているか、かようなことを当局の責任者である外務大臣が知らぬなんということは、われわれははなはだ心外あります。しかしながら今そのことを議論いたしましてもしようがないので、ぜひとも現地の代表の諸君からよく実情を聴取され、同事に要望を聴取され、南方連絡事務局――同じ政府機構の間で調査資料も十分あるとわれわれは伺っておるから、速急にこれは立てて交渉に当っていただきたいということを要望いたしておきます。  次に、具体的にお尋ねいたしますが、言論、出版、結社等の自由が必ずしも確保されておりません。そのほか基本的人権に相当するものが侵害されている事実は、われわれの調査または聞き及んでおるところでは、ございますが、この際、今の施政方式について民主化を要望するとともに、これは同事に最小限度として要求すべきであると思うが、それに対してアメリカ側に強く交渉される用意があるかどうか伺っておきたいと思うのです。
  27. 重光葵

    重光国務大臣 先ほどお尋ねのことでございます。主席を公選にしたらどうかとか、立法院の問題、これらは今注意を受けたのでありますが、そういうような希望は一年ほど前からアメリカ側に申し込んで、絶えずこれを促進するように注意はしておるそうでございます。またそういうことになっております。(穗積委員「責任者であるあなたがやらなければだめだ。」と呼ぶ)沖繩の人がやっておる。それは最も有効な方法でやったらいいじゃないかということですから……。「外務省がやっておるのか、どこでやっておるのだ」と呼ぶ者あり)外務省がやっておるのだ。そこで今お話のような点もそういうような方法でもって正当なことは十分に申し入れたい、こう思います。
  28. 穗積七郎

    穗積委員 これから交渉に当られますから、私は具体的にお尋ねしておきたいと思うのでございますが、ゴルフ等の不用地で相当莫大な平面の有効な農耕地になり得るところが使用されております。こういうものをぜひ一つ返すように交渉をせられる用意があるかどうか。さらに今まで接収いたしました土地の中で――新規接収についてはあくまで反対をして、四原則を貫いて努力をするということですが、それとは別に、すでに接収された農耕地で特殊な地域がある、プテイス勧告の中でも正しいもの、たとえば耕地が少くて人口が世界一過剰であるというようなところは特殊事情についての報告はやや当っておると思う。そういう事情は向うでも認めておるわけですから、すでに接収いたしました農耕地を他の遊閑地または公有の原林野等に切りかえることを当然要求して、これは実現すべきだと思うが、それに対して外務省はそういう用意をしておるかどうか。初めて聞くならいい意見だから、それを聞いて交渉されるつもりであるかどうかということをこの際伺っておきたいと思います。
  29. 重光葵

    重光国務大臣 お答えします。そこらの点はもうプライス勧告書の中にも言われておるくらいでありますから、十分に米国側の注意を喚起したいと思います。
  30. 穗積七郎

    穗積委員 次に具体的にお尋ねをしたいのは、現地視察並びに激励のために国会代表の議員団を送りたい。これはもうすでに当委員会でも決議をいたしておりますが、またアメリカにも何様に、議会並びに政府にこの国民の世論を伝えて要請するような措置をとる。これは国会のことですからお尋ねをいたしませんが、お尋ねいたしたいと思うのは、われわれはこの際具体的に国連に訴えて、国連の調査団を現地に派遣することを要請すべきだというふうに思うのです。それについては、国会または民間団体の名前だけではとうてい実現するのには弱いと思いますから、日本政府が強くそのことを要請すべきだと思いますが、それについては賛成ですか。反対ですか。ぜひやっていただきたいと思うが、その希望をつけて外務大臣のお考えを聞いておきたいと思います。
  31. 重光葵

    重光国務大臣 まだこの問題を国連に提訴するという考え方は持っておりません。(穗積委員「これは提訴じゃありませんよ。第三者としての公平な調査を依願するのです。」と呼ぶ)そういうところまで参っておりませんということをお答えします。私は、あくまでもこれは米国との関係において最善を尽していきたい、こういうふうに思っております。
  32. 穗積七郎

    穗積委員 米国が友好親善の態度でもってやっておるならいいけれども、そうではなくて、沖繩のごときは、食っても捨てても焼いても、煮ようが何でも勝手だということで今までやってきたし、今度のプライス勧告もそういうことで貫こうとしておる。そういう態度だからわれわれは言っておるのです。そのほか、情勢を見てでなく、今まで十年間の実績を見てもそうなんです。友好親善の態度ではございませんから、どうしてもやはり国際的な世論に訴える。それが日本のとるべき措置として必要だと思うのです。そこで国連に調査団派遣の申請をすべきだと思うのですが、もう一ぺんお考え直す、またはここで即答ができなければ研究ぐらいはしてみたらどうかと思うのですが、あなたのお考えはどうですか。
  33. 重光葵

    重光国務大臣 私は、米国政府が何もかも沖繩住民を無視してやっておるのだという今お言葉通りには考えておりません。しかしながらかような実際実情を十分調査するということは、これはむろん悪いことではございませんし、第三者が調査するということもいいことでございますから、それを検討することは少しも差しつかえないと思います。
  34. 穗積七郎

    穗積委員 それからさっき人権尊重で具体的に交渉してもらいたいということを、一つ重要な点を忘れましたから、注意を喚起してあなたのお考えを聞いておきたいのだが、沖繩県人並びに日本人との間――向うも日本人ですが、交通通信が必ずしも自由になっていない。これは軍事上の必要があるからという理由によって、ある程度制限をしておるという理由をそこにアメリカ側は発見されるかもしれませんが、今日そういう戦争状態にない、しかも国際情勢は平和に傾きつつある。そういう情勢の中で必要以上に両地域における日本人同士の交通と通信が制限されておることは、基本的人権をあまりに脅かしておると思うので、これはぜひ自由の原則を貫いてもらいたいと思いますが、それはいかがでございましょうか。
  35. 重光葵

    重光国務大臣 私はさように形勢が緩和して、さような制限がなくなることを希望し、またでき得るならばそういうふうにしむけていきたい、こう考えております。
  36. 穗積七郎

    穗積委員 われわれがこの重要な点について、細目については、実は御承知通り、両党の間でこの問題の合同協議会がすでにできて、今までに二回やりました。そこで具体的に党の考え方というものをお互いに話し合って、全力を尽してやろうということでございます。与党がその決意を示されますならば、与党の手によってできておる内閣ですから、論理的にいえば必ず実現するはずでございますが、そういうことで、こまかくはまたその合同協議会を通じ、または次の十二日に予定されておるこの委員会において、現地の諸君の意見を聞きながら具体的に一つ話をしたいと思う。きょうはこの程度にいたします。  次にお尋ねいたしたいのは、沖繩に対する国際法上の問題でございます。それは、第一にお尋ねしたいのは、われわれの考えでは沖繩に施政権を持つアメリカの法的な根拠は、言うまでもなくサンフランシスコ条約三条によるものだと考えておりますが、現在までのやり方、あるいはその内容等をとってみますと、明らかにこれは第三条違反であると私どもは思うのです。それについて外務大臣の御意見を伺いたいのです。このことが実は施政権回復を要求する最も大きな政治的または国際法上の論拠だとわれわれは信じておるのです。そこであなた方の意見を聞きます前に、私ども沖繩の今日の施政が、実は条約三条に違反するものであるという論拠を簡潔に三点を申し上げますから、それをよくお聞きになって、これは大臣から直接お答えをいただきたいと思うのです。  まず第一の理由は、条約三条によりますと、沖繩地区は、国際信託統治に移すことを予定いたしております。それまでの間暫定的にアメリカに施政がゆだねられておるのでありますから、条約三条、締結当時の根本精神は、これは信託統治に移すべきことが当然論理的目標になっておる。ところがアメリカはこれに対して信託統治の手続もしなければ準備もしない。そうして一方的に、アメリカのみが欲するならば百年でも二戸年でも半永久的に、実は向うの言葉でいえば半の字は切りたいでしょう。永久的にと言いたいのでしょうが、世間の聞えが悪いから半永久的に、このまま現状で握っておりたいというようなことは、条約三条締結当時の根本精神をじゅうりんするものでございます。この条約三条はそういう合意に離しておりません。これが第一点です。  第二点は、半永久的に一方的に今の状態を継続してアメリカ沖繩の施政権を握っておりたいという理由は、言うまでもなく軍事的理由によるものでございます。すなわちアジアの平和と安全を保障するために必要である。すなわち必要度は、国際緊張の判断によるわけでございますが、その場合に一方的にアメリカが決定すべき性質のものではなくして、国際緊張の状態を判断して、そうしてどの程度の時期についてどういう方法によってこれを管理、すべきであるかということは、当然締約国である日本並びにその他の各国の合憲によってこれを決定すべきものである。合意によって国際緊張の必要性を判断すべきであると思うのにかかわらず、アメリカが一方的に勝手に、しかも軍部の要望によってこれを継続しようという態度は、少くともこれは条約の基本精神に反するものであるとわれわれは解釈せざるを得ない。これが第二の理由でございます。  第三の理由は、これはもとよりいまだ国際信託統治に移されておりません。移されておりませんが、先ほど申し上げましたように、国際信託統治に移すことを予定し、そのことがアメリカにも義務づけられて、その合意の上で、その暫定期間だけがアメリカの施政にゆだねられておるのでございますから、従ってその暫定的な施政期間における施政の方法につきましては、言うまでもなく国際信託統治目的規定によります精神、並びに世界人権宣言の基本精神は、この場合もその統治のやり方、内容については採用さるべきであるとわれわれは思う。それに照らしてみますと、実は私は一々ここで申し上げませんが、世界人権宣言並びに国際信託統治目的規定をとってみますと、今アメリカ沖繩でやっておることは、全部間違っておるという言葉がそのまま都合よくできておるくらい、実はこの規定に反することをやっておる。すなわち今度の要望にいたしましても、軍事基地撤廃であるとか、あるいは日本への完全復帰というのではなくて、四原則はその施政権を認めた上で、最低限度の人権と生活を擁護する人間として生きるための要望にすぎない。その四原則すら出さなければならぬような、それすら通りがたいというような統治の仕方をしておることは、これは明らかに国際法並びに国連憲章の精神に反するものであるというふうにわれわれは考える。その三点によってこれは明らかにアメリカの現在の統治の方式並びに期間の一方的な宣言については、条約第三条をじゅうりんするものである。これに違反するものである。従ってこのようなやり方で一方的に半永久的な期間アメリカ沖繩統治する権限は、法的にはもうすでに失われておる。第三条の基礎になるべき法律事実はもうくずれ去っておるとわれわれは判断する。そういう判断によって、アメリカの地位そのものが外交保護権の問題とか、あるいは一括払いの問題とか、そういう問題に入る前に、現在の施政の現状あるいはステータスそのものがくずれつつあると思うのでございます。そういう理由によって申し上げるのですが、以上申し上げましたことにつきまして、外務省の信念のあるところを一つお示し願いたい。
  37. 重光葵

    重光国務大臣 御趣旨のあるところをよく伺いました。今これに対しまして私の申し上げたいことは、御意見法律論ではなくして、私はあなたの御意見だと考えます。私はそういう法律論は首肯することができません。信託統治でないところに、信託統治の義務をすべて課するわけにも法律的には参りますまい。それからアメリカが永久にこれを統治するという考え方を持っておるように、これまた言葉が悪ければ何しますけれども、邪推をされるが、言っておるようでございますが、アメリカが繰り返して述べておる、永久占領はやらないのだ、必要がなくなれば返すのだと責任者が声明しておることは、私はこれはまっ正面から信じておる。私はそれは信じておるし、それをそういう工合にしてもらうために、十分にこちらからそれは信じなければ、向うはそれをやる必要がないといわれるようになっちゃ困りますから、あくまでこれはそれを信じて、なるべく早くそういう時期のくることに対して努力しておる次第でございます。  その他のことについてそれではどううふうにして統治すべきかということになりますと、私はやはりお話の点において人権宣言とかいろいろなこと、当然それは考慮しなければならぬことだと思います。これは条約論でなくして、私はそれは当然やるべきことだと思います。それを根拠としていろいろなことを具体的にアメリカ要請して差しつかえない、こう考えておるのでございます。
  38. 穗積七郎

    穗積委員 だからあなたは施政権復帰、四原則貫徹、それを必ずやりたいと思うと口だけでは言っておられるが、強い決意のないことを証明しておる。あなたはプライス勧告をお読みになりましたか。この実際人をばかにしたような勧告をお読みになりましたか。外務省で翻訳したものの三十六ページにちゃんと書いてある。「一九五四年一月七日の一般教書で「われわれは沖繩米軍事基地を無期限に保持するであろう」と述べたアイゼンハウアー大統領のそれである。」これがわれわれの基本方針であると言っておるじゃないですか。今度のプライス勧告の中にそれを書いております。それをリピートして強調しておる。従ってさっき言った一括払いの問題にしても、永代借地権の問題にしても、法律の許す範囲においては永代借地権その他の最大限度の権利を確保しなければならぬということが、このプライス勧告の眼目ですよ。ごまかしてはいけませんよ。大体政府は今まで沖繩、南千島の問題について、問題が起きたときにわれわれがなぜ沖繩を放棄したのだと言うと、沖繩には領土権があるのだ、沖繩県人は日本人だ、心配するな、こういうことを言って、そしてアメリカに対しては条約三条があるから手も出ませんという。そうしてアメリカの今日の現実的な政治的意思、すなわち永代借地権を確保するための無期限の――半永久的ではない。無期限ですよ。無期限の確保をしたいといっておるその声明をむしろ国民にごまかして報告をしてそんな意思はありませんと言う。失礼ながらあなたはどこの大臣ですか。日本人であるなら日本人にもっと正確なる、冷厳なる事実を教えてもらいたい。ちゃんとプライス勧告の中に書いてありますよ。それがこの勧告の中心ですよ。そんなでたらめ言われては困る。だからこそ法律的な根拠が必要だ。そういう一方的な、人権を無視したり信託統治精神を無視したような宣言をしたりやり方をしようとしておりアメリカであるから、われわれはまず政治的に交渉するのはけっこうであるが、あくまで最後のよりどころはわれわれは実力がなくしてやるのだから道理に従わなければならぬ道理とは何かというならば、あくまでも国際法の法理によらなければなりません。法理がわれわれの唯一のたよりである。その背景になすものは世界の世論であります。ですからそれだけのものはごまかしてきて……(「そのうち返すよ」と呼ぶ者あり)何を言っているんですか。そのうちということがどこにあるか。そのうち返すとは何ですか。そんな程度で返るものか。
  39. 重光葵

    重光国務大臣 そんなことを言わないでもいいじゃないか、僕が今度答えるのだから……。ごまかしてという言葉を使うならば僕の方はごまかしてしない。どこかほかの方でごまかしている。プライス報告の訳文を見ても、今三十六ページということを言われたのですが、ここにこう書いてあります。期限を決めてもそれは「米国の駐屯の長さを示すものと解されてはならぬ全部若しくは一部の琉球人同様、われわれも島の占領が必要でないことを望んでいる、」(穗積委員「そんなことはごまかしですよ」と呼ぶ)「しかし、それが必要であること」必要である限りは期限なくして――無期限ということは期限なくしてこれをやる、こういうことだと、こう書いてある。私はごまかしも何もしません。プライス勧告があって問題がやかましくなった後にアリソン大使はどう声明されましたか。それはお忘れになったですか。ついこの間ですよ。(穗積委員「大使じゃない。この問題は国防省が握っておるんですよ。沖繩は軍事優先ですよ」と呼ぶ)ちょっと待って下さい。そのことは議論にならぬ。政府政府の方針として声明をしておる。この声明は、説明を聞けば、ワシントンの政府と協議に協議を重ねた上で出したんだと声明しておる。その声明にははっきりとこう書いてある。われわれは日本潜在主権を認めており、同列島を永久に領有しようとする意図は全く持たないと書いてある。この声明はただ新聞記者にアリソンが座談をしたわけでも何でもないのであります。これはその前に私も十分に真意を確かめて、そしてそういう意向であるということを確かめたから、それならばお出しになってもみんな誤解がなかろう、こういって出したのであります。そうでありますからプライス勧告には、期限をつけてもその期限通り占領を解くということじゃないということから書き出しておる。そこで占領は今は期限はないのである、こういうことになっておる。しかしはっきりと、政府の意向として永久に領有しようという意向は全く持っておらない、こういうのであるから、私はそれをほんとうだとしておるのであって、そう言わざるを得ないのであります。これは事実であります。
  40. 前尾繁三郎

    前尾委員長 穗積君、あとの質問者がありますから……。
  41. 穗積七郎

    穗積委員 これは重要問題ですから……。あなたはでたらめを言ってはいけない。向うは、日本国民や沖繩県民は日本外務大臣と同じくらい何をしたって文句は言うまいと思って甘くなめてこういうことをやった。ところが世論が反撃したからびっくりして、それをごまかすためにアリソンが勝手なことを言ったにすぎないのであって本筋はそんなところにありはしない。今度の沖繩の管理は国防省がやっておるのですよ。あなたがアリソン大使と寝言みたいな交渉をしたって、そんなことで解決しない。むしろこっちでやられるのはレムニッツァーが握っているのです。その親方は、軍人なんですよ。それをどうなんですか。声明は一体いつだというのです。それよりあとの六日の日にレムニッツァーが、世論が喚起されて本国に行って打ち合せされて帰ったあとの七月六日の午後に沖繩の代表団の諸君と会っておるのじゃないか。そのときにレムニッツァーは何と言っておるのですか。そんなことは一切言っておりません。あくまでプライス勧告通りに実行する方針は変っていないと言っておるじゃありませんか。そんた甘いこと言って国民をごまかそうとしたって、そんなことじゃごまかされたい。そんなものはいつまでも、永久に取るなんとは考えておらぬということを言うことによって、近いうちに返すだろうなんという、そういう反論、反対証明にはなりませんよ。永久に持つつもりがない、取ってしまうのだということを言っておらぬからそのうち返すだろうという倫理の飛躍はわれわれは納得できない。ここに軍事優先であり、無期限であり従って地権に対しては、その他の永代借地権を法の許す最大限度のものをとらなければならぬ言っておる。それで世論が起きてアリソンがびっくりしてらよっと声明したのだろう。ところがそれ以後において本国で打ち合せてきたレムニッツァーと現地の代表諸君が会ったとき、つまり七月六日の午後ですよ。そのときにレムニッツァーは冷厳と言っております。この通りするんだ、いささかも修正しない。ただ一言言っておるのは、新規接収についてはできるだけ少くする。その他のことについては、一活払いにしても、新規接収についてもやめるとも何とも言っておりません。あなたはそんなことでわれわれをごまかそうとしたってごまかされません。あなたがごまかすつもりでなくてほんとうにそう思っておるなら、そんな意識じゃこの問題は解決しませんからね。もっと腹を据えてやってもらいたい。どうですか。
  42. 重光葵

    重光国務大臣 私は今の説明に対して、いかにも……(穗積委員「ごまかしですよ」と呼ぶ)ごまかしとか何とか、そういう言葉を使うのはおかしいじゃないですか。あなたは政府の代表を信ずるのですか、軍人を信ずるのですか。それからレムニッツァーがこの声明を、これは違うのだということを一言も言ってはおりません。それからまたアメリカの大使が政府を代表して言ったことを、それはそうじゃない――これは日本に利益なことですよ。永久に占領するのじゃないということは日本人としては利益なことです。そうしてそれをそうじゃないのだ、そうじゃないのだ、こう言って大声疾呼するということは、何も意味がありませんよ。(笑声)そこで、うそでも何でもない……(穗積委員意味はありますよ」と呼ぶ)意味は全くない。(積積委員「ごまかしの皮をむく必要がありますよ」と呼ぶ)そういうことを言うのは、かえってわれわれの沖繩住民要請最大限度に実現しようという努力にじゃまになっても決して助けにはなりませんよ。それから三十六ページのプライス報告のことを言っておりますが、これは一つ原文と訳文と突き合せてよく御相談しましょう。これは私の言う通りにはっきり書いてある。それはどう言っているかというと、結論としてわれわれが沖繩のベーシス、基地を保持するというのは期限はないと書いてある。しかし期限がないということは、無期限に永久にこれを持っておるという意味じゃない。期限はない。今期限をつけるということじゃないのだ。(穗積委員「おりたければいつまでもおるということですよ」と呼ぶ)それはそうですよ。それはおるという情勢が続けばおるということですよ。しかし決して永久じゃない。いつでも情勢が許すときは返すのだとはっきり言っておるのです。これを信じて何が悪いのですか。かようなことを信じて、それを実現することが、日本の国の利益であり、沖繩住民要請にこたえるゆえんだと考えております。
  43. 穗積七郎

    穗積委員 委員長から時間の催促がありましたが、これは交渉に当られるあなたとしては大事なことです。他にも質問者がありますから簡単に端折って申し上げますが、あなたがこそこそと、いかにも私はあなたの親友ですとしてアリソンと交渉することによってこの問題は解決しませんよ。この中にちゃんと指摘してあるじゃないか。沖繩においては日本本国におけるような民族的な抵抗がないから一番やりやすいのだと言っておる。これが焦点ですよ。(「なめられておる」と呼ぶ者あり)なめられておる。なめるにはちょうどよいからなめておるということです。従って国民的な抵抗なくしてこの問題は解決しません。だからそういうことを言うということは不利益と言うけれども不利益ではない。それ以外に解決する道はないということは、官僚としてなら別だが、政治家としてやっていくというならもっと国民世論を信じてやっていただきたい。注意申し上げておきます。  そこで次にお尋ねいたしますが、外交保護権の問題であります。外交保護権があるとかないとか言いますが、われわれは簡潔に言いますと、潜在領土権はある。しかも人民に対する統治権、対人統治権司法行政立法は一部あるいは全部がアメリカにゆだねられておる。しかしながら外交保護権は委任いたしておりません。それとは別の問題だとわれわれは解釈する。しかも現実的に判断いたしますれば、もし沖繩の品本人に対して――これは日本人で、あることは歴然であり、この領土に対しては日本領土権があると認められておる。その沖繩における日本人アメリカ本国におる日本人よりも――アメリカ本国におる日本人には外交保健権があるのにかかわらず、沖繩人民に対しては外交保護権がないという事実の上におけるアンバランスが起きるということは、法の倫理からいってもあり得ない。現実から判断しても、法理からいってもそうであります。これは必ずわれわれが厳然たる――それをいつ使うか、どういう方法で使うかということは、これは一つ政府の手並みを拝見しましょうが、外交保護権があるということがはっきりしていないで日本の独立外交もへちまもありはしません。われわれの唯一の国際法規による以外にない、世論による以外にはない。だからまず法務省から、きょうは法務大臣に来ていただくことを要請しておったが、出席がなくて、民事局長がかわりに来ておりますから、民事局長が中心になって法務省がこの間発表なさった外交保護権に関するお考えをこの際伺っておきます。しかる後に外務省意見を聞きましょう。
  44. 村上朝一

    ○村上説明員 沖繩住民日本国籍を持っており、アメリカ国籍を持っておらないということは明らかなことと考えるのであります。従いまして沖繩住民がその基本的な自由、人権を得するような処遇を受けておる事実がかりにありといたしまするならば、日本政府米国と交渉することは法律上当然できることである、かように考えております。これをいたしましても米国の内政に対する国際法上違法な干渉にはならない、かように考えております。法務省で申しました外交保護権といわれるものの本質をさように理解しておりますので、先ほど来の外務省の御答弁を伺っておりますと、用語の点においてあるいは若干の差異があるもしれませんが、その趣旨においては全く同一であると理解いたしております。
  45. 穗積七郎

    穗積委員 外務省で、それでよろしゅうございますか。
  46. 下田武三

    下田説明員 ただいま民事局長が申された限りにおきましては、私どもと全く同じ考えでございます。
  47. 穗積七郎

    穗積委員 外交保護権があるということですね。
  48. 下田武三

    下田説明員 外交保護権はどこにありましょうとも、いやしくも日本国籍を保有する日本国民の利益に関する問題でありますから、当然国家は保護する権利があるわけです。それは国自身の利益でもなくても、国民の利益につきましても外交保護権があると考えております。
  49. 穗積七郎

    穗積委員 時間がありませんから、もう一点だけお尋ねいたします。これも法理解釈ですが、実は沖繩問題で問題になっておりますのは御承知通り講和以前の補償責任の問題であります。これは先般参考人を呼んで当委員会で審議いたしましたときの熱烈なる要望でございました。われわれの聞いておるところでは百五十億以上の補償額が未払いになっておる、こういうことでこのことは将来日本の在外財産補償の問題等々と関連して、予算上にも重要なる影響を及ぼすことは明瞭でありますから、この際はっきりしておきたいと思います。講和前のアメリカの与えた損害に対する補償責任はあるとわれわれは解釈する。そこで簡潔に申しますが、アメリカがたてにいたしておりますのは、講和条約十九条です。この免責規定によって沖繩にわける講和以前の補償責任はのがれておる。これをもって援用して参っておりますが、これが間違っておるという理由はおもに二つの点であります。一つは、この十九条は沖繩に効力を及ぼしてない。すなわち終戦以後の憲法を初めとする一切の法律は、遺憾ながらその法域を沖繩に及ぼしておりません。従ってこの講和条約につきましても、批准をいたして効力を発しておりますが、しかしながら法域外の沖繩に対して――沖繩に関する三条は別といたしまして、国民の権利義務に関するこの十九条は、日本の法域外である、沖繩に及ぶはずはないというのが第一点。  もう一つは、占領中といえども、ハーグの陸戦規定に関する条約の四十六条に明記してありますように、戦闘行為の継続中であって、本国が敵国を占領した場合に、その敵国の人民が持っております私有財産は、これ没収すべからずと書いてある。すなわち無償で没収してはならない、取引の合意の上でやらなければならないということが、明記いたしてあります。従って、これから見ましても当然である。しかも、今日沖繩は、終戦後戦闘行為はなくなり、その本国ある日本とは講和条約を締結されておる。そういう状態の中において、しかも名目ながら、沖繩における政治は軍政から民政に移っておる。戦闘行為中であり、軍政中であるその地域にわいても、私有財産は補償なくして没収すべからずということを認め、しかもアメリカ自身、ハーグの規定でやるということを認め、このプライス勧告も講和までの法的根拠はここにあるということを書いておるではありませんか。認めておるではありませんか。そういうことであって、それでなおかつハーグ条約以外の取扱いを受ける。今日はさっき言ったように、戦闘行為はなくなり、本国との関係はそういうことですから、政治的友好の立場から見ましても、これは当然最小限度ハーグの規定以上は尊重されなければならない。そのことはアメリカ自身によっても認められております。プライス勧告の中にも明記いたしております。この二つのことで、私どもは講和条約前の補償責任は免れていないという解釈をいたしておりますが、まず法務省はいかなる考えを持っておられるか。このことにつきましても明快に御答弁をわずらわしておきたいと思います。
  50. 村上朝一

    ○村上説明員 平和条約十九条の解釈の問題につきましては、法務省といたしましては結論を出しておりません。この点につきましては外務省、大蔵省並びに内閣法制局において検討中のように聞いておりますので、外務省または法制局長官からお答えを願った方がいいのではないかと思います。
  51. 穗積七郎

    穗積委員 法制局長官、私見でもけっこうです。
  52. 林修三

    ○林説明員 ただいま民事局長からお答えした通りに、私ども実は政府といたしましてまだ最終的な結論を出しておるわけではございません。従いまして確定的なことをもってお答えするわけに参りませんけれども、一応考え方を申してみたいと思います。  第二点の方でございますが、いわゆるハーグの陸戦法規の問題でございます。これは今穗積委員から仰せられた通りに、アメリカもハーグ陸戦法規によって占領をやるという方針あるいは訓令を出しておるということは事実のようであります。従いまして、ハーグの陸戦法規から申せば、戦闘行為から直接起ったものでなく、占領等に基く物資の調達あるいは土地の使用、これについては補償するというのが建前だと思うわけです。アメリカ自身もそれを認めておると思います。プライス報告にも、そのことが書いてあったように思います。問題は十九条日本及び日本国民がそれを放棄したという問題が、果して沖繩に適用になるかならぬかという問題だと思うのです。これは文字に立脚してお答えする限り、たしかこの前の二十四国会において、条約局長から外務委員会でお答えしたと思いますが、アメリカ側は十九条を援用しておるようであります。一応この文字に即する限り、あの日本国政府あるいは日本国民という言葉から沖繩が抜けるということは、ちょっと言えないのじゃないかという気がいたしております。そういう関係から申しますと、十九条を見ます限り、いわゆる補償を日本政府あるいは日本国民が放棄したということになるのではなかろうかという考えが出て参ります。ただ問題はそれだからといって、直ちにアメリカ政府の責任がなくなるという問題ではないのじゃないか。これはまだ私考えが未熟でございますから、なお検討を要しますが、それをお断わりしておきますけれども平和条約第三条に基きまして、アメリカ沖繩における施政権を持っております。立法権、司法権、行政権を持っております。従いまして住民の福祉を十分に向上し、維持していく責任があると思います。そういう意味におきまして、沖繩住民がその補償なり代価をとり得ないことによる困窮を救うべき責任があるのではないか、こういうふうに考えるべきではなかろうかといり私は今考えをしておりますが、まだこれは確定的な意見ではございませんから、その点御了承願います。
  53. 前尾繁三郎

    前尾委員長 穗積君もう時間になりますから……。
  54. 穗積七郎

    穗積委員 もう一点で終ります。今の論理は非常に弱いと思うのです。はなはだ不満足です。しかし委員長が御催促ですから、これは次の機会に譲って、内閣でも一つ研究しておいてもらいたい。それがまとまったら、次の機会に一つお互いに審議をいたしたいと思うから、留保しておきます。  最後に法務省にもう一点お尋ねしたい。一括してお尋ねします。  まず第一は、国際法上の通念から見て、土地接収その他をやります場合には、これは国内法で相互主義で行くべきだ。アメリカの国内法――日本におるアメリカ人の私有財産を接収いたします土地接収等については、日本の国内法による。向うが統治して施政権を握っておるというならば、講和条約後においては、軍政ではなくなっておるのですから、当然この場合においては、アメリカの国内法によってアメリカ人の統治下にある他のアメリカ人または外国人と同様な取扱い沖繩県民が受けるべきであるとわれわれは考えるが、これに対してはいかがであるか。それを一片の軍命令、軍政にゆだね、軍令にゆだねて、その土地収用をやっておる、財産没収をやっておるということは、これははなはだしく国際法上から見ても相互主義に反するように思うが、いかにお考えになっておるかどうか。もう一つは一括払いの問題です。一括払いは土地の事情を聞きますと、契約は結ばない。いやだと言っている。だから契約はできていない。そうしておいてこれはお前たちの代金だからとれと言っている。食うに困っているから、当りまえだから、金だけは地代の名目でとろうといってとらしておいて、とたんにこれは黙示の契約が成立したといって、地代ではない。一括払いのプライスだから、永代借地権アメリカ側に移ったんだと言って取り上げておる。そういう経過をとっておる。それを見ましても、一括払いによる土地の接収というものが、こちらの主観は別といたしまして、客観的に国際通念から見まして、これは永代借地権を取り上げられる結果になりはしないか、こう思うが、こういう論理で今の黙示の契約が成立したかどうか、どういうふうに解釈するかということと関連して、一括払いによる永代借地権の設定は、どういうふうに国際関係から法理的にお考えになっておるか。われわれこの点については重要な関心を持って、アメリカのやり方に対してもその点はなはだしく法をじゅうりんするものであると思っておるのですが、その二点について一括お尋ねしたい。私の質問はこれをもって次に留保いたします。
  55. 林修三

    ○林説明員 ただいまの御質問でございますが、沖繩における施政のやり方につきましては、申すまでもなく平和条約第三条に基きまして、現在アメリカ政府が一切の立法司法行政の権限を行使しております。従ってたとえば軍事上の必要あるいはその他の必要で土地アメリカ政府なり軍が必要とする場合に、いかなるやり方でそれを自分の使用に供するか、その手続等は、実はアメリカ政府なりあるいはアメリカ政府の下部機関が、当該地に適用される法令規定によってやるべきものだと思うのです。もちろんそういう規定は、現在の世界の趨勢から申しまして、民主的なやり方で行わるべきことは当然なことだと思うのでありますが、それ自身におきましては、アメリカにおける国内法に従って行わるべきものであると思うわけであります。その国内法令としては、あるいは軍令があり、布告があり、あるいは立法院の議決した法律があるようであります。そういうことだと思います。  それからもう一つ、一括払いの問題でありますが、これは先ほど条約局長からお答えいたしたと思います。私どもの研究では、あのフィー・タイトルという言葉は、大体日本の今のいわゆる英米法観念でいえば、一つの使用収益権であるかもわかりませんが、これをドイツあるいはフランスの大陸法系統を堅持いたしました日本の現在の法制に当てはめてみれば、大体所有権に近い観念だと思います。従いまして一括払いということは、計算の根拠は年度の何年分ということだろうと思いますが、やはり価格ではなかろうか。しかし向うのフィー・タイトルは価格であっても年払いにしている例もあるようでありますが、そういうものじゃなかろうか、かように考えております。(穗積委員「黙示契約が成立したという解釈が、われわれに不当だと思うが、どうか。」と呼ぶ)これはアメリカ沖繩に適用され国内法令の問月でございます。それは基本的人権の保障を十分にやるような国内法でやるべきであろう、かように考えるわけであります。
  56. 前尾繁三郎

  57. 淵上房太郎

    ○淵上委員 だいぶ時間も過ぎましたし、伊東穗積委員からの御質問で、かなり広範多岐にわたって応答がありましたが、この機会に私はきわめて簡単に外務省にお尋ねしておきたいと思うのであります。沖繩の地位が、あるいは残存主権だとか潜在主権だとかいう言葉で表現されておりますが、大体こういう国際法上の用語はきわめて警戒すべき言葉である、私はかように思っているわけであります。いつ返すのだかわからない。ダレス代表がサンフランシスコ講和会議におきましてそういう声明をしたからといって、これはそのままにしておくわけにはいかぬのである、私はかように思っているわけであります。この際私が政府にお伺いしたい問題は、サンフランシスコ条約第三条を改訂する申し入れをして、アメリカその他の関係国と相談して改訂してもらいたい、この問題であります。先ほど穗積委員が申されたように、信託統治の問題であります。これは信託統治を前提にしての第三条でありますから、信託統治は今日すでにやらぬ、現実にまたやる意思もないのであります。こういう前提でできた第三条であります。この点から申しましても、私は今日すでにこの三条の改訂の必要があるのではないか、かように思うのであります。ことに三十七年の四月二十八日でしたか、平和条約発効以後におきましては、奄美大島はすでに返還しております。オール・アンド・エニー・パワーズといって、全部一切がっさい握ってるという条文になっているけれども、事実としてはすでに奄美大島の返還が実現しておるのであります。全般的の施政権の返還が今すぐ困難であるならば、あるいは戸籍事務だとか教育行政とかあるいは衛生行政というような点につきましては、そういう一部を日本に返還して日本政府の手でやっていくという相談もできないことではないと思うのでありますから、この三条につきましてはさらに検討して、アメリカ並びに関係国にこの改訂を申し入れすべきではないかと思うのでありますが、政府はどういう御所見を持っておられますか。この機会にお答え願いたいと思います。
  58. 重光葵

    重光国務大臣 先ほど申し上げました通りに、諸般の情勢を考えてみて今日サンフランシスコ条約の第三条の改訂を申し込むべき時期だとは考えておりません。今日はまだ時期が到来しておると考えておらないことをお答えいたします。ただ沖繩を返してもらいたいということについて常に希望を表示してその実現をはかるということは適当なことであると考えて、そういうことに努力しておる次第でございます。
  59. 淵上房太郎

    ○淵上委員 努力しておるとおっしゃいますが、さらに御検討の上、私は改訂を考慮すべき時期が来ているのではないかと考えますので御検討いただきたいと思います。  第三に、時間がありませんから結論的に伺いますが、保護権の問題につきまして質疑応答が重ねられましたが、冒頭に外務大臣は、それは第二義的な問題だというようなお話で、これはまことに心外のお考えだと私は思うのであります。第一外務省沖繩現地の実情をもう少し勉強していただきたい。先ほど土地の収用に関して条約局長から収用に関する法令があると言われております。なるほど法令はあります。実際やっているのは強奪であります伊江島のそれがしはこれに反対したために、毛布にくるめられて、飛行機で沖繩本島まで運ばれ、那覇の拘置所にぶち込まれております。あるいは本島内におきましてはたくさん例があるのですが、来月一ぱいしたらそこを買い上げるぞという一片の通告のもとに、その日が来たらもうすでに、ブルドーザーを持ってきてどんどん整地を始めている、これが実情であります。収用の法令はありますけれども、これはほとんど施行されておらぬ。一つそういう実情をよくお調べになって、先ほど来お話が出た通りに私は人権の問題だ、人道問題だという意味におきまして、私どもは広く世界に訴えるべきじゃないかと思うのであります。保護権の問題は法律問題かもしれませんが、そういう問題は超越して、大所高所から人道問題として世界に呼びかけて、そうしてアメリカの軍当局の反省を促すべきだ、私はかように思うのであります。土地につきましてはフィー・タイトルのようなものというお話がある。しかし在日米軍最高責任者はアブソリュート・オーナーシップと同じことだと言っております。絶対の所有だということ言っているじゃありませんか。これはただ品の土で長期租借とか永久借地とかいうことを言うだけであって、私はこれは永久に取り上げられるのだと思うのであります。先ほど条約局長説明の中に、内地の中にも外国人所有の土地がある。沖繩において幾らできても潜在主権があるから、これが返ってきたときにはまた処理ができると言われるが、決してそういうものではないということを私は今のうちから断言しておきます。そういう安易な考えではこれはとうていいかぬのでありますから、もう少し深刻にこの問題を検討していただきたい。これを要望いたしておきます。  第三に、もう一つ御検討願いたい問題でありますが、安保条約の施行区域内に沖繩を入れる、そうして基地が必要であるならば、本土の各地同様に必要な限度に基地を貸すということにして、第一安保条約自体を改訂する必要があるかに私は思うのでありますが、この点に関する外務大臣の御意見を伺っておきたいと思います。
  60. 重光葵

    重光国務大臣 今の最後の点は 情勢の進行するに従って検討を要する問題だと私は考えております。
  61. 前尾繁三郎

  62. 福田昌子

    福田(昌)委員 先ほどの外務大臣の御答弁によりまして、外務大臣沖繩及び及び沖繩住民保護の問題について非常に関心を払われておるということに対しまして、私どもまことに多といたしますが、それほど御心配いただいております外務当局でございますから、沖繩住民の現在の生活水準あるいは労働条件ということにつきましても、十分調査をなされておることと存じます。かような点につきまして、たとえば労働条件がどういうふうになっておるか、沖繩人の子弟の教育状況はどういうところにあるか、沖繩住民の生活水準がいかなる状態であるか、あるいはまた産業復興の状況、こういったことの御説明をいただきたいと存じます。
  63. 石井通則

    ○石井説明員 沖繩の現状につきましては、南方連絡事務局といたしまして、できるだけの範囲絶えず調査をいたしたり、また情報をとったりいたしております。概略のところを申し上げますれば、まず教育関保でございますが、教育関係につきましては、その制度あるいは教科等につきましては、ほとんど日本の本土と同様な制度、教科書その他のものをとっておるようでございます。しかしながら実際問題としまして、日本の本土からその教育行政が離れておりまするので、たとえば施設設備あるいはまた教育の指導力においては、日本の教育の指導力よりは低いのじゃないかと思うのでございます。日本の本土からも一昨年あたりからいろいろ教育の施設、設備等の義捐金を集めて、その内容がだんだん向上されて参り、またアメリカといたしましても、特に従来戦災にあいまして、非常にみじめな校舎であったものをだんだん整備いたして参りましたので、外形上はだんだん整ってきておりますが、まだそういうふうな指導力という面において、日本に比較いたしまして低いように思います。そこでわれわれといたしましては文部省と協力いたしまして、できるだけ沖繩における教育の指導力の向上というような意味から、向うから選抜されました教員を約半年間ずつばかり日本の本土の学校に配置いたしまして、その指導力を向上させるようにいたしております。また日本の本土の大学の先生方を夏季その他適当な時期に現地に派遣いたしまして、現地の教員の指導力、その他教育の向上に努力いたしておるような次第でございます。そのほか現地の高等学校の卒業者の本土の大学の入学等につきましては、あるいは文部省から国費をもってその学生の勉学の学資を援助する、あるいはまたできるだけ私費によるものも、大学に入れるようにあっせんをいたしておるような次第でございます。  なお、経済の問題に関しましては、何分戦争の被害が大きかった関係、その後の土地の接収等の関係、その他いろいろな事情があるかと思うのでありますが、農業その他たとえば黒糖にいたしましてもまだまだ戦前水準まで達していない、あるいはまた漁業方面におきましてもまだ戦前の水準に回復していないというような状況でございます。琉球政府におましては、そういう産業経済の面につきましてはいわゆる五カ年計画というものを立てまして、沖繩の産業経済の改善に努力いたしておるような次第でございます。  それから生活水準という問題につきましては、いろいろ沖繩における諸統計を一応は見ておるのでございますが、ただ日本のいわゆる諸統計ほど詳しい諸統計ができておりませんので、日本本土と比較してこれをどうこうとはっきり申し上げるところまでは至っておりませんが、たとえばエンゲル係数等から見ますと、まだまだその統計に現われた面におきましては、日本本土の水準に達していないようでございます。  なお、労働条件につきましては、いろいろ言われております。これについては、あるいは一般的な生活水準その他いろいろな面から検討しなければならないのでありまするので、日本の労働条件と比較してどうこうということは申し上げかねまするが、一応各種の労働立法といいますか、いわゆる日本の労働三法に類する制度ができております。ただいわゆる軍の工事に従事する者については、それに一般の諸法令が適用になっていないとか、あるいはまた労働基準法に基きまする労災保険制度とかいうものがないとか、おおむね法体系は日本に若干類似してきておりますけれども、まだ十分に日本と同じようなところまで至っていないような状況でございます。  概略でございますが、一応私どもの調べておる程度を申し上げた次第であります。
  64. 福田昌子

    福田(昌)委員 いろいろ御報告いただきましたが、そういう抽象的なことは私どもも大体存じ上げておるのでございまして、もっと具体的なことを御説明いただきたかったのでございます。たとえば教育問題にいたしましても、どの程度未就学の児童数であって、家庭生活はどういう状態であるかということ、あるいはまた労働賃金の問題が外国の労働者に対してどういう比率であるかというようなことは、当然人権尊重の意味において聞かなければならない問題であったかと思います。そういう点についてのしぼった具体的な人権に関する意味合いから、沖繩の状況を御報告いただきたいと思います。簡潔にお願いいたします。
  65. 石井通則

    ○石井説明員 たとえば教育の問題に関しまして、学童の家庭その他の生活等についての琉球政府等の資料その他はできる範囲で集めておりますし、また賃金等につきましても、琉球政府その他の資料は持っておりますが、たとえば賃金等は、ここに正確に申し上げます資料を持って参っておりませんので的確には申し上げられませんけれども、たとえば沖繩の軍工事に働いておりまする者等は、あるいはもし御希望でございましたら数字的な資料をもって別途御配付するということにいたしたいと思いますが、いかがでございましょうか。
  66. 福田昌子

    福田(昌)委員 沖繩の状況を一番詳しく調査し、そうして保護する立場にある南方連絡事務局長の御答弁といたしまして、私ども全く遺憾にたえません。資料を今からお集めいただいて、その結果がまだわからないというような御報告においては、いかに外務大臣が、先ほどから沖繩の問題のついて非常に熱心に調査しておる、これに保護を加えておるということを強弁なさったといたしましても、現実に個々の問題がかくのごとくずさんであるということにおきましては、外務大臣のお言葉を信用するというわけには参らない気がいたします。私、ただいま資料をお集めになっていただく、統計がはっきり出ておらないという現段階におきましてこれ以上お尋ねいたしましてもむだでございますから、一つ委員長の御判断において、こういう沖繩の状況に対する資料を外務委員会にも御報告していただくようお取り計らいを願いたいと思います。  そこでお伺いさせていただきたいのですが、自民党の有力者の中には、沖繩の現在の住民の生活がアメリカの施政権下に置かれて非常に好転しておるじゃないかという御発言をされた方がございますが、重光外務大臣も、沖繩住民の今日の生活は好転した、アメリカの施政権下に置かれて非常に好転しておるとお考えになっておられるかどうかということをお伺いいたします。
  67. 重光葵

    重光国務大臣 私は沖繩住民米国の施政に対していろいろ不満足を表示しておることをよく承知いたしております。
  68. 福田昌子

    福田(昌)委員 私がお尋ね申し上げますのは、その不満足な意思を表示いたしておりますことはこれは自明のことでございますから、その点ではなくして、住民の生活状況というものがアメリカの施政管轄下に置かれてずっとよくなったと言われた自民党の有力者の御発言に、重光外相も御賛成であるかどうかということをお尋ねいたしたのであります。
  69. 重光葵

    重光国務大臣 これはアメリカ側の統計を見ますと、たとえば学校がふえたとか、いろいろなことがたくさんあるようでございます。そういうことがもしあげられればこれは私は施設だろうと思います。しかしながら、要は沖繩住民がどれだけ満足しておるかどうかということによってこれはきまる問題だと思いますから、私は沖繩住民が満足していない点を満足に導くように努力いたしたいと思っておるわけであります。
  70. 福田昌子

    福田(昌)委員 重ねて恐縮でございますが、沖繩住民アメリカのやり方に満足している、していないということは別角度からの問題といたしまして、沖繩住民の生活がアメリカの施政管轄下に置かれてすぐれて参ったというこの発言に対して、重光外相としてお認めになるかどうかということを簡単に御答弁願いたいと思います。
  71. 重光葵

    重光国務大臣 私はアメリカの報告は――アメリカ沖繩に対する報告を見せられまして、いろいろ向上しておる、生活も向上しておると書いてあります。しかし実際ほんとうかうそかと突き詰められれば、私が一々これを見たわけではありませんから存じません。
  72. 福田昌子

    福田(昌)委員 では重光外務大臣、ただいまの御見解は、アメリカ沖繩住民の生活状況に対する報告は、戦前の日本沖繩県であった当時よりも非常に向上したという報告であるから、そのアメリカの報告からいえば、沖繩住民の生活も向上したということは言えると思う、しかしまだ見てないから実際はわからない、こういう御答弁でございますね。そうでございましたら、日本の国にはまだ沖繩に対する潜在主権もあることだし、また沖繩住民日本人であるから、当然外交保護権の行使においても沖繩住民の生活を守りたい、こういう御意思でございましたから、その重光外相のお立場からいたしまして、沖繩住民の生活水準の実態を視察されるために、重光外務大臣自身沖繩に出向かれる意思があるかどうか、この点をお伺いいたしたいと思います。
  73. 重光葵

    重光国務大臣 まだ私は沖繩に行くということを考えておりません。そういう点はそうでなくてもある程度までの調査は十分できるわけでありますから、そういうことによって目的を達したい、こう考えております。
  74. 福田昌子

    福田(昌)委員 ある程度までの調査はできるというお話でございますが、今すでに南方連絡事務局長の御答弁によりましても、戦後十年たって沖繩の大衆の生活が非常に疲弊しておる、教育の問題におきましても学校に行けない子供は年々増加の一路にある、町の復興におきましても赤線、青線の復興が主でありまして、まことに消費経済的な線香花火的な町のにぎわいであるのを、いかにも産業の復興による基、礎のあるいんしん発展であるかのごとく日本政府は考えておられるということにつきましては、私どもいかに日本政府の御調査というものがずさんであるかということを指摘せざるを得ません。しかも七十五万、八十万の日本人保護という観点からいいまして、外務省の今日までの態度というものは、自民党の方でさえ指摘いたしておりまするほどに、この際大いに御反省をいただきたい点だと思います。沖繩問題に対してあまりにも不熱心であり、あまりにも調査が未熟でございます。こういう意味で積極的な研究調査というものを、おくればせながら当然していただかなければなりません。この点につきましてもっと日本政府として、日本外務大臣としてのお心がまえを、この際決意を新たにしていただきたいと思います。  次にお伺いしたしたいのは 沖繩住民の労働者の労働条件でありますが、聞くところによりますと、その賃金の比重というものは――聞くところによりまする程度でありますから真疑のほどは存じませんが、アメリカ人の十五分の一、フィリピン人の十二分の一というような賃金体系であるということを伺っておりますが、この点政府はお認めになっておられますか。
  75. 石井通則

    ○石井説明員 その統計は、これは沖繩側でいろいろ調べた統計のようでございますが、今数字をちょっと持っておりませんので的確には申し上げられませんけれどもアメリカ人、フィリピン人、それから日本本土から行った者の貸金と一般の沖繩出身の人の貸主とに相当開きがあることは事実であります。
  76. 福田昌子

    福田(昌)委員 どの程度開きがあるのか、その点を南方連絡事務局長のお立場において調査なされていないとは言えないと思います。大体どの程度の比率になっておるか、この点を御明示いただきたいと思います。
  77. 石井通則

    ○石井説明員 先ほども申し上げたように、私どもの方ではできるだけの範囲の資料を集めて持っております、そこでいろいろ数字的なことにわたって不正確なことを申し上げてもいけませんので、別途一つ資料としてお出しいたしたいと思います。
  78. 福田昌子

    福田(昌)委員 沖繩の学生で日本に留学している学生がございますが、そういった学生が沖繩に帰りまして、後に日本の学校に行くために再び日本に出て参りたいということがありましても、学生の思想いかんによりましては、その日本への留学というものを禁止されておるということを聞き及んでおりますが、そういう事例がございましたかどうか。
  79. 石井通則

    ○石井説明員 日本の大学に入っておりまする学生で、夏に帰ってそのあとで再び学校に入ることについて相当制限か加えられたということは開いておりますが、その最終的にどうなりましたかということについては、今はっきり申し上げるところまで至っておりません。  なおつけ加えて申し上げたいことは、私どもの事務所といたしましても、アメリカ側との取りきめによりまして一定の仕事が与えられておるような次第でございます。そこでいわゆる各省のそれぞれの専門的な調査機関というものが、施政権をアメリカにゆだねておりまする関係からそういう機関を持っておりませんので、われわれの調査もいわゆる本土において各省あるいは統計局が調査いたしておりまするような詳しい的確な、どこまでも細部にわたった調査ということは、現在のところ不可能。ございまするので、私の申し上げましたのは、いわゆるできるだけの範囲で調査をいたしたものを御配付いたしたいというふうに考えておる次第でございます。
  80. 福田昌子

    福田(昌)委員 あきれた南方連絡事務局の態度だと思います。私は沖繩の県民が泣くだろうと思う。こういう南方連絡事務局、外務省の態度がわかりましたら――日本人として、日本国民として守ってくれるであろうと期待しておった日本政府外務省の態度がかくのごときであるということを沖繩県民が知りましたら泣くだろうと思います。学生のそういった留学に対する渡航制限があったり、また沖繩におりまする日本人たる沖繩人の労働条件が、アメリカの十五分の一であったり、フィリピン人の十二分の一であったりするようなことを南方連絡事務局も認めながら、これに対して潜在主権がある日本政府として、一言半句今まで何ら交渉もしない、しかもその調査の報告を求められましても、言葉を濁してつまびらかな報告をしないというに至っては、何と情ない南方連絡事務局かと言いたいのであります。また外務省のこういう態度につきましては、私ども日本人としてこの態度を糾弾せざるを得ません。御反省を願います。  そこで重ねてお伺いいたしますが、こういうような労働条件におきましても沖繩住民であるがゆえに非常に賃金の制限を受けておる、学生の留学にいたしましてもこういう非常な自国の制限を受けておりまするが、こういうことは当然日本政府といたしまして外交保護他の行使の上からも、いろいろとアメリカ側と折衝されてしかるべきだと思いますが、こういう点につきましてアメリカ側とこれまで、いつ何時どういう折衝をされたか、この点を御報告いただきたいと思います。
  81. 中川融

    ○中川説明員 外務省といたしましては総理府の南方連絡事務局からいろいろ現地の状況、また日本から渡航し、向うからこちらへ来るということにつきましての各種の不便、あるいはさらに貿易上のことにつきましては通産省からいろいろの不便の点等について常時連絡を受けておるのでありまして、そのことのないように、従いましてアメリカ側に注意を喚起するという措置は従来随時とっておるのであります。たとえば問題になりました向うから内地へ渡ってきます際に証明書の発給がおくれるというような事態等につきましても、現地にアメリカの国務省の係官が駐在しておりますが、そのアメリカの国務省の係官が東京に来ました際等に内容を逐一話しまして善処方を要望しておるのであります。従ってこれは日本としては、外交交渉といいますか、アメリカ側に連絡をとってやっておるのでありますが、現実の事態はなかなか急速には改善を見ない点があるのははなはだ遺憾に思っております。この点につきましては、根本的な行政権の、返還等の問題と並行いたしまして、今後も常時連絡を密にしてこういう状態の改善を実現したいと考えております。
  82. 福田昌子

    福田(昌)委員 今御答弁いただきましたようなことは、外務省としての事務連絡でありまして、何も政治的な外外交折衝ではないと思います。そういうことをやるのは事務屋さんとして当りまえのことでありまして、あえて外務省のお仕事として堂々とお述べになるには当らない範囲のものであります。私がお伺いしておるのは、政治的に外務省として、この沖繩人民に対するこれだけの人権侵害に対して、どれだけアメリカ側の反省を求める交渉をしたか、この点でございます。外務大臣は先ほどからたびたび熱心にやっておるという御答弁をなさっておりますから、少し具体的に、何月何日という問題をどういう角度から取り上げてアメリカ側と交渉したという事例をあげて御説明いただきたいと思います。
  83. 重光葵

    重光国務大臣 日付を一々あげて申し上げることは、今日付の記憶はございませんのと、それはどうかと思います。そういう問題について、たとえば私自身のなにから言いますれば、私は渡米したときには直接そういう問題も米国政府に申し入れておるのであります。それからまたダレス長官が日本にきたときもこういう点を申し入れておるのであります。しかしこれを申し入れたからすぐそれがそのまま実現するという性質のものではなかろうと思います。申し入れて強くそれを要請しておれば自然にアメリカの施政として出なければならぬ。実はアメリカの施政もいろいろ沖繩住民の満足を買っていないことは先ほど申した通りであります。それにしても、その内容は占領当時の事態よりも相当改善されたということも事実であります。しかしそれはまだ満足を買っておらないのでありますから、その満足のいくように一つ最大限の勢力をしたい、こう繰り返し申し上げておるわけであります。
  84. 福田昌子

    福田(昌)委員 重光外務大臣が渡米されたときとかその他の時期に置きまして多少交渉されたであろうということは、私どもも察知いたします。しかし、その外務大臣の交渉によっても、アメリカはこの土地接収に関する沖繩島民あげての不満に対しまして何らの反省もなく、このたびはさらに膨大な地域の永代借地使用という態度に出て参っておりまして、重光外相のせっかくのアメリカ側に対するこれまでの要請というものは、完全に踏みにじられておるということが、この点を見ましても思えると思うのであります。せっかくの御交渉であったにもかかわらず、外務大臣の意向というものが認められていないというような点に対しまして、外務当局としてはいかようにこれを問題として反省される意思があるかどうか、さらに交渉の方法を変えるおつもりがあるかどうか、この点をお伺いいたしたいと思います。
  85. 重光葵

    重光国務大臣 私は決して、交渉が全部実っておるとは申すわけではございません、すなわち、沖繩住民希望が全部達せられつつあると決して申すわけではございません。また、達せられつつあるという状況を認めないがゆえに交渉を続けて、最も有効に進めていきたい、こう申しているわけでございます。その交渉は今申す通りに、いつ何日の日付で、こうしたから何日の日付で返答してイエスとかノーとかいうべき性質のものではございませんで、私は、現実に琉球人の希望が達成するようになることを念願して、そういう方針で絶えず米国側の説得に努めておるわけでございます。
  86. 福田昌子

    福田(昌)委員 これからも御努力いただくということでございまするが、それは当然のこととして、ありがたいと思います。  そこでお尋ねいたしますが、なまはんかのアメリカ側との折衝の御努力では、アメリカ沖繩の施政権に対するあり方の反省というものは、とても得られないということがいえますが、沖繩土地は本来日本のもので、そこに住んでいるものは日本人でございます。従いまして、その土地の永久借地というような点に対しまして、日本領土を守るという意味からでも、永久借地というものは日本政府としては了承できないことはできないのだということを、外務大臣の御見解においてこの際アメリカ側に申し入れる意思があるかどうか、この点を伺います。
  87. 重光葵

    重光国務大臣 実は、そういうようなことは十分に申し入れておるのであります。永久借地、すなわち永久占領などということはもってのほかのことである――向うの意思表示はこの点についてははっきりしております。永久占領をやるのではない。必要がなくなったらすぐ返すと言っておるのであります。それでありますから、なるべく早く返してもらう時期を実現したい、こういう努力をするわけでございます。
  88. 福田昌子

    福田(昌)委員 外務大臣の御答弁を疑うわけではございませんけれどもアメリカのプライス勧告を見ましても、解釈の仕方によってはどのようにでも解釈されるような文章になっております。そのどのようにでも解釈される文章を、アメリカ側に立って、好意的に日本国民に説得させるような形で外務大臣が説得なさるということは、私どもとしては非常に心外でございます。私ども日本人立場においてこの報告書を判断するのでありまして、外務大臣からそのアメリカ側の説明を求めているのではございません。私がこう申しておりまするのは、こういうプライス勧告にいたしましても、沖繩に対するアメリカの施政権にいたしましても、日本人沖繩人民の意思を非常に無視した態度に出ているからで、土地接収の問題についても、アメリカがどういう意思であろうとも、ことにアメリカ側が永久に借地するのではないというのであればなおのこと、これに追い打ちをかけて、日本政府としては沖繩土地の永久借地ということには絶対に反対であるということを当然なさっていいと思う。ただいまなさったようななさらないような御報告がございましたが、そういう折衝をしておるならば、何月何日にどういう要求をしたという明確な御答弁を要求したいと思います。
  89. 重光葵

    重光国務大臣 私はこの問題について決してアメリカ側の弁護をしたわけでもなし、しようとも思っておりません。しかしながら、事実を曲げるわけにも参りません。アメリカ側で永久に占領する意思がないというのに、あなたは追い打ちをかけたらよかろうと言うが、私もそういう意味で実はその御趣旨には賛成するのであります。菜にもアメリカが永久に占領するのでないといって公式に声明したのを、うそだうそだといってこっちで逃げて回る必要は少しもないと思う。これはまったく永久に占領する意思がなければ早く返してもらいたい、こういうふうに持っていくのは当然だと考えております。私はそういう工合にやっておるのであります。アメリカ側の弁護も菜にもいたしません。だから事実は事実として一つ御議論を願いたいと思います。それならば私はどういう御意見があってもほんとうに謹聴をいたします。
  90. 福田昌子

    福田(昌)委員 あまり時間をかけたくないと思うのですけれども、同じことをおっしゃって抽象的でございますから、つい一つの問題に時間がかかるのでございますが、簡潔に御答弁いただきたいと思います。永久に借地するようなことはアメリカも考えていないし、日本政府もそれは要望しない。しかもアメリカ側と交渉しておるということでありますから、いつ何時、どういう書類をもって、この永久借地ということが日本政府として反対であるという意思表示をされ、交渉されたかその一点をお伺いしているのでありまして、そのことを一言おっしゃっていただけば、こんなに繰り返して質問するには及ばないのであります。
  91. 重光葵

    重光国務大臣 その点は先ほどもとっくに御答弁済みであって、私はそういう日付などを申し上げることはできないと申し上げております。だからどうぞ御質問も繰り返さないで、済んだことは済んだにしてどんどん進まれんことを希望いたします。
  92. 福田昌子

    福田(昌)委員 交渉した日付も言えないし、内容も言えないような交渉というのは、私たちは了承するわけに参りません。これは当委員会における外務大臣の詭弁としか考えられないのでありまして、外務大臣のその発言というものは信憑性がないといわざるを得ません。  そこで、時間もむだでありますからやめますが、フィリピンでさえもフィリピン国内にあるアメリカの基地接収に対して、そういうような領土権の侵害、あるいはまた永久借地というようなことは絶対に許せないということを堂々と表明しております。日本政府にそれだけの熱意独立国民としての積極性がないということは私は非常に遺憾に思います。せめてフィリピンの後塵を拝するくらいのことは、日本外務省としてやってもらいたいということを重ねて要望いたしておきます。  次にお伺いさしていただきたいのは、沖の土地の接収に対しましては、土地収用委員会もあるし、相当法的には保護されて沖繩人民の意思も通っておる。もしそれが通らないときには訴願制度もあるのだからというお話でございましたが、この制度によりまして、 沖繩住民意思がどの程度通っているかということの実態の報告をお願いいたします。
  93. 石井通則

    ○石井説明員 訴願委員会に大部分のものが提起されておりまして、ごく最近までは訴願委員会の議決がなかったようでございますけれども、今回沖繩からの代表団が来られて若干の裁決があったということを聞いたような状況でございます。それも最近のことで、件数としてどのくらいあるかということもまだはっきりいたしていないようでございます。大よそお聞きしましたところによりますと、現在の賃貸料の約三倍程度、あるいはものによっては少いものもある、あるいはまた四倍という程度のものもあるそうでございますが、約三倍程度の裁定があったと聞いております。これも数字的なものをまだ入手いたしてもおりません。
  94. 福田昌子

    福田(昌)委員 時間がありませんし、同じことを繰り返してもむだですからやめますが、鳩山総理大臣沖繩のこの問題に対してアメリカ側と交渉して、沖繩の人たちにどこかかえ地を見つけてやろう、そうするのがいい方法だという御答弁をされております。あきれた御答弁でございますが、外務大臣はこの鳩山首相の御見解をお認めになりますか。
  95. 重光葵

    重光国務大臣 私はそういうような趣旨のことを新聞で読みました。それが果して総理の意向を正確に伝えておるとは聞いておりません。しかしながら総理としは沖繩住民の苦痛を少しでも緩和したい、こういう考え方をもって、いろいろ考えられたことの片りんじゃないかと思います。私はいずれにしよしてもその趣旨、すなわち沖繩住民の福祉をあくまで考慮していきたいという趣旨は賛成でございます。
  96. 福田昌子

    福田(昌)委員 日本外務大臣が鳩山総理の御意思をそのままそっくり代表されるというわけに参らないのは当然でございますが、日本の総理大臣ともあろうものが、日本国民の、しかも八十万の日本国民の生活を守るために、アメリカの側に交渉するということをせずして、どこかかえ地をアメリカ側と折衝して与えたらいいだろういうようなたわけたことを言うということは、私どもとしてはほんとうに情ないような気がいたします。この点はいずれ総理大臣にお伺いすることとしてやめさせていただきます。  重ねてお伺いいたしますが、今までのいろいろな政府側の御答弁、質疑応答によりまして、沖繩に対する政府の調査というものがまことにずさんであり、沖繩住民の人権を守るという意味において、まことに手抜かりであったということは、これは何と強弁されましても認めざるを得ないところだと思います。こういう沖繩住民の生活の実態に対して、実質的な調査がなされていないということは、これは外務大臣の責任でもあります。従って沖繩人たちの生活の状況を知り、そしてただいま問題になっておりまする土地接収に対しましても、日本外務大臣として沖繩まで行って交渉されるのが当然だろうと思いますが、こういう意思があるかないか重ねてお伺いいたします。簡単に御答弁願いたと思います。
  97. 重光葵

    重光国務大臣 簡単にお答えいたします。まだそういう考えを持っておらぬということを先ほど申し上げました。なおつけ加えて申し上げますが、調査の困難なことは御推察にかたからぬと思います。内地と同様ではございませんので、なかなか実施調査に困難である。それでありますから、政府の内部の機関といたしましても、当局といたしましても、その困難を排除して、できるだけの調査をいたしておることは御了解を得るだろうと思います。そこでさらに沖繩からも代表も見えておるわけでありますから、十分に調査を進めたいと思います。
  98. 福田昌子

    福田(昌)委員 何度お聞きいたしましてもほんとうにだらしのない御答弁でありますから、これ以上お尋ねいたしませんが、ただ端的に申し上げまして、沖繩の八十万人民の今日の不幸は、結極平和条約第三条の規定、そこに渕源があるのでございます。従いまして先ほども自民党の議員の方から要請があったようでありましたが、平和条約第三条だけでも日本側がこれに対する改正を求める意思があるかどうかということでございますが、政府当局はこれを認めておられない。その意思がないということでありましたので、非常に私ども遺憾に思いますが、その点はさらに後日の問題といたしまして、アメリカ沖繩にやっております施政権の内容というものは、世界人権宣言にも反する行為が多いのでありますが、このアメリカ施政権者がやっておる沖繩住民に対する行政の内容というものは、世界人権宣言に反しておるとお認めになりますかどうか、この一点だけを御答弁を願います。
  99. 重光葵

    重光国務大臣 それが私ども持っております材料によって、ただちにこれに反しておるということは断言するわけには参りません。
  100. 福田昌子

    福田(昌)委員 世界人権宣言にこれほど明白に違反しておる事実はないのでありますが、それさえまだ調査ができないから何とも言えないということであります。これ以上質問はいたしませんが、どうかもう少し、沖繩人日本人でありますから、日本外務省として沖繩人の生活を守る意味において、真剣に交渉していただきたいと思います。このことを要望して質問を終ります。     ―――――――――――――
  101. 前尾繁三郎

    前尾委員長 この際参考人招致の件についてお諮りいたしますが、ただいま当委員会にて審議いたしております沖繩土地接収問題等に関し、来る十二日、目下在京中の沖繩住民の代表者を参考人として招致し、その意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議はございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  102. 前尾繁三郎

    前尾委員長 御異議がなければさように決定いたします。  なお参考人の人選につきましては理事会に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  103. 前尾繁三郎

    前尾委員長 御異議がなければ、さように決定いたします。  次会は来たる十二日午前十時より開会することといたします。  本日はこれにて解散いたします。    午後一時二十分散会