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1956-04-09 第24回国会 衆議院 外務委員会 第30号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年四月九日(月曜日)     午前十時三十七分開議  出席委員    委員長 前尾繁三郎君    理事 石坂  繁君 理事 北澤 直吉君    理事 須磨彌吉郎君 理事 穗積 七郎君    理事 松本 七郎君       植原悦二郎君    大橋 忠一君       川村善八郎君    菊地 義郎君       田口長治郎君    並木 芳雄君       戸叶 里子君    福田 昌子君       和田 博雄君    岡田 春夫君  出席政府委員         外務政務次官  森下 國雄君         外務省参事官  法眼 晋作君         外務事務官         (条約局長)  下田 武三君         水産庁長官   塩見友之助君  委員外出席者         参  考  人         (大日本水産会         副会長)    藤田  巖君         参  考  人         (北海道漁業公         社社長)    高野 源蔵君         専  門  員 佐藤 敏人君     ――――――――――――― 四月九日  委員江崎真澄君及び園田直君辞任につき、その  補欠として川村善八郎君及び田口長治郎君が議  長の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 四月七日  太平洋地域原水爆実験禁止等に関する請願(  田中利勝君外一名紹介)(第一八二九号)  同(帆足計君外一名紹介)(第一八三〇号)  太平洋地域原水爆実験禁止に関する請願外十  九件(細迫兼光紹介)(第一八三一号)  同(西尾末廣君紹介)(第一八三二号)  同(砂田重政紹介)(第一八三三号)  同外一件(砂田重政君外一名紹介)(第一八五  六号)  同外二件(安平鹿一君紹介)(第一八五七号)  同(細迫兼光紹介)(第一八五八号)  同(砂田重政君外一名紹介)(第一八七五号)  原水爆禁止措置に関する請願中村梅吉君紹  介)(第一八五九号) の審査を本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  日ソ間の漁業問題に関し参考人より意見聴取     ―――――――――――――
  2. 前尾繁三郎

    前尾委員長 これより会議を開きます。  本日は、日ソ間の漁業問題につきまして、参考人各位より御意見を聴取することといたします。本日御出席の方方は大日本水産会会長藤田厳君、及び北海道漁業公社社長高野源蔵君の御両人であります。  議事を始めるに当りまして、参考人各位に一言ごあいさつ申し上げます。本日は、御多忙中のところ、特に当委員会のために御出席下さいまして、まことにありがとうございました。  本日の議事の順序について申し上げますと、まず参考人各位からおのおの御意見を開陳していただき、その後に委員から質疑がある予定であります。御意見の開陳は特に制限する必要もないと思いますが、大体二、三十分程度にとどめていただければ幸いだと思います。念のために申し上げますが、衆議院規則の定めるところによりまして、発言はその都度委員長許可を受けることになっておりますので御了承願います。また発言内容意見を聞こうとする案件の範囲を越えないようにしていただきたいと存じます。なお参考人委員に対しましては質疑をすることができないことになっておりますので、もうすでに御承知のこととは思いますが、あらかじめ御了承おきを願います。  それではこれより参考人の御意見を聴取することといたします。まず藤田厳君より御意見を承わります。
  3. 藤田巖

    藤田参考人 大日本水産会の副会長藤田でございます。本日は当委員会の貴重な御審議の時間を私どものためにおさきいただきましたことを厚く感謝申し上げます。  ロンドン日ソ交渉がちょうど無期限休会に入りましたことと時期を同じくしまして、この三月の二十一日にソ連閣僚会議極東水域におけるサケマス制限に関する措置というものを発表いたしましたのでありますが、ちょうども漁期も切迫しておりまして、一月後にはすでに出ていくというような事態のときに、こういうふうな一方的な制限措置を見まして、漁業者は現在非常に動揺不安を持っておる次第でございます。  この制限描画内容はもうすでに御承知であろうと存じますが、ごく概略を申しますと、いわゆる北太平洋サケマス資源乱獲を防ぐ、そのねらいは、日本沖取り漁業制限にあると考えますが、乱獲を防いで、極東サケマス資源最高の水準で維持保障せられるということを目的にいたしまして、漁業協定が、国の間の協約が成立をするまでの間、暫定的な措置として、公海の上にサケマスのいわゆる調整水城というものを設定をする。その調整水域というのは、大体オホーツク海全部、それからべーリング海の西側の水域でございます。日本北洋漁場のほとんど大部分、主要漁場全部を含み、またオホーツク海全部を含むというような区域になっております。そうしてこの水域内では、五月の十五日から九月の十五日まで四カ月の間、その区域内でサケマスをとるものは、これはソ連機関あるいは市民であると、外国機関あるいは市民であるとを問わず、一様に制限をして、そうしてそのサケマスをとる最高制限高を五十万ツェントネル、これは尾数に換算いたしますと約二千五百万尾でございますが、五十万ツェントネル制限をする。従ってこの区域内でもしもやろうとするものは、すべてソ連漁業省極東監視機関の発給する特別許可を受けなければやれない、こういうふうなことが、この制限措置内容でございます。  この制限措置については、これはまあいろいろの見方がされるわけでありまして、ソ連の真のねらいはどこかということについては、またいろいろの考え方もあると思います。これを純粋に資源保持のための措置というふうに考えましても、われわれといたしまして直ちには納得しがたい幾多の問題点があるというふうに考えておるのでございます。  第一は、公海の上に一つの団か一方的にこういうふうな資源保存のための措置をやっていく、そうしてその措置を自国民のみならず、全体の外国人にも及ぼす、こういう考え方についてでございまして、私どもはこれについては、もちろんわれわれは資源の問題については、これは十分協力をしていかなければならぬと考えます。資源を保存するということは、むしろ北洋漁場を永遠に長く続けてやりたいという日本漁業者念願からいたしまして、当然これは必要とする措置は、われわれも進んで協力をする。それを決して惜しむものではございませんが、しかしながらそういう措置は、あくまでも関係国家間の話し合いによって、円満にこれを解決し、しかも科学的根拠によってこれを立証したようなデータを出し合って、解決をして、そうしてやっていくということが、あくまでも本筋であろうというふうに考えておるわけでございます。  それから第二の点は、極東におけるサケマス漁獲資源が最近非常に枯渇をしてきた。その資源枯渇原因をもっぱら日本沖取り漁業乱獲の責任である、こういうふうにソ連側は見ておるようでございますが、これに対しましても私どもは直ちに承服し得がたいと考えております。  もちろん資源の問題は、長い統計資料をよく研究をし、たくさんの双方の資料を出し合って検討しなければならぬのでございますが、ただ御承知通りソ連は従来こういうふうな基礎的な資料発表をしておりませんので、わかりませんが、私ども資料でまず考えてみますと、大体昔日本漁業者北洋で従事をしておりました長い経験があるのでございまして、その当時のサケマス漁獲高というものは、各種の漁業を通算いたしまして、多いときは二億九千万尾も日本人の漁業者側だけでとっておったのであります。平均にいたしましても約一億五、六千万尾はその当時とっておったのであります。もちろんとれる年ととれない年がございますが、平均をいたしまして一億、五、六千万尾はとっておったのであります。しかもソ連の方はどのくらいとっておるかというと、はっきりしておりませんけれどもソ連側の断片的に出されまする資料から推論をいたしますと、やはり一億尾は下らないものであろうと考えます。そうするとその程度のものはずっと従来とれてきておったと思うのでありまして、このたびソ連側領海内の措置については何ら触れてはおりませんが、公海についての措置について、これを二千五百万尾と制限する合理的根拠については、これはよく話し合いをし、お互い資料を出し合って検討しなければわからないのではないだろうか、こういうふうに私どもは思うのでございます。  それからまた御承知通りサケマスというのは、産卵のために、親魚が川に上って産卵をし、川で卵を産み、その卵が成熟をいたしまして、稚魚になる。あるものはすぐ川を下ります。あるものは淡水で一、二年、長いものは三年も淡水で大きくなって、その稚魚が川を下って、海に入って、その海で大きくなって、それがまた川の方に産卵のために遡上してくる、こういうふうな習性を持っておるのでございます。従ってサケマス繁殖保護を阻害する原因、つまりサケマスの再生産を阻害するところの原因というものは、こういうふうなサケマスの各生活週期についていろいろの原因がある。そういうふうな週期についてのいろいろな原因をよく研究をして、ほんとう原因を確かめて、これに対する合理的な手を打つということが、ほんとう資源保持対策であろうと考えます。これはソ連側学者の方でもすでに発表をいたしておりますが、極東サケマス資源が、いわゆる漁獲力以外の原因でいろいろ悪化をしておるということも伝えられております。たとえば産卵河川の付近において、いろいろ港湾、道路が開設される。あるいはまたダムが建設される。工場ができれば汚水が流れてくる。あるいは森林の伐採があれば川底が荒れる。こういうふうないろいろの原因がございますが、こういうふうな原因のために、サケマスの再生産を保持するための条件が非常に侵されておるということは、ソ連学者も唱えておるところでございます。私どももおそらくそういうふうな原因は、これはソ連に限らず、日本でも同様であり、アメリカ、カナダでも同じような原因があるわけでありますから、そういうふうな原因もあることであろうと思います。もちろん日本沖取り漁業資源量の変動に対して何らの影響も及ぼさないということは、私ども考えません。それは当然何らかの影響のある一つ原因であろうと思いますが、こういうふうにすべての原因をもっぱら日本沖取り漁業のみに課して、沖取り漁業乱獲によって極東サケマス資源が減るのだ、こういうふうな考え方については、私どもは承服し得ないのであります。従ってこういう問題は、いろいろの原因をよくお互い研究し合って、そうして真の原因を確かめて、合理的な対策を立つべきものである、そういうふうなことを私ども考えておる次第でございます。  ソ連制限措置に対する私ども考えとしては、そういうふうなことを思っておるのでございますが、しかしながらこれはいたずらにその非を唱えながら、ただこれを言いっぱなしにしていて話が解決する問題ではございません。従ってやはりこれをそのままにしておく、そうして切迫した漁期を迎えるとどうなるかということは、これは現実の問題として、私どもが当然考えなければならない問題でございます。おそらく現在の日本の国力、国際的な地位から考えまして、もしも政府がこの際、この問題について何らの具体的な事態収拾のための措置を講ぜずして漁期に入るならば、現場においていろいろのトラブルが起る、そして北洋漁業のために悲しい事態がたくさん起る、そして日本北洋漁業に多大の犠牲をしいられることになるというふうなことは、これは当然のことであろうと思うのであります。  私どもは、このたびのソ連制限措置がどういう意図から出ておるかということについては、一つはやはり日ソ国交を急速に妥結の方向にもたらそうというところの政治的な圧力を加えてきている、つまり早くまとまらなければこういうふうなことが起ってきますぞということを言っている、従ってこれはやはり日ソ国交の全局につながる問題であるというふうに考えます。同時に一つは、これはソ連資源維持に対する一つ考え方、やがては来たるべき漁業協定の際の制限措置に対するソ連の最初の意思表示を示しておるのではないかと私は考えております。従ってこの問題を論議する場合には、やはりこの二つの問題についての考え方から出発しなければならぬと思うのであります。  現在日ソ交渉がいろいろ行き詰まっておりますが、われわれといたしましてはこの際日ソ国交の全般から考えて、長く国交が正常化されないままに放置されるということはお互いに不幸であり、また日本側にとって決して漁業のみならず利益ではないと考えるのでございまして、この際すみやかに日ソ交渉を急速に妥結するというふうな方向について、政府一つ最善の考慮を払われたい、かように私どもは思うのでございます。そうしてそういう方向に向ってもしも検討をされたならば、どうか時期を失することなく、――時期を失すればそれはむだ手になるわけでありますからして、どうか時期を失することなく、急速に手を打たれたいということを念願をいたしております。  さらにまた、そうは申しましても、なかなかそう簡単に全体の問題の話し合いがつかないで、漁期が切迫しておりますので、そのままになるというおそれもあるわけでありますから、それはそれといたしまして、漁業の問題について急速に両国政府の間に話し合いをしていただきまして、少くとも本年漁期における、この提案しております措置に対する善後措置と申しますか、事態収拾措置について、一つ万全を期していただきたいと考えておるのであります。そうしてわれわれがすでに準備をして、もはや漁期を迎えんとしております北洋漁業が、既定方針によって安全に操業をされることのできますような措置をお願いいたしたいということ、これが私の申し上げたい点でございます。  以上非常におわかりにくかったと思いますが、御清聴をわずらわしましてありがとうございました。
  4. 前尾繁三郎

    前尾委員長 次に高野源蔵君にお願いいたします。
  5. 高野源蔵

    高野参考人 北海道漁業公社社長高野でございます。非常に御多忙のところ、この問題を取り上げていただきまして審議いただきますことは、まことに感謝にたえないのであります。  ソ連申し入れば、この問題に関する限り、非常に突然の申し入れであるというふうに一般に伝えられておるのでありますが、われわれの考えるところは、必ずしも突然の申し入れとは思っておりません。すでに昨年以来ソ連の各方面の人々から、あらゆる機会日本北洋漁業は非常に乱獲に陥っている、そのために資源枯渇するおそれがあるということを聞かされておったのであります。なお本年の二月十日になりましてから第一回のソ連声明発表された。当時われわれ業界の者といたしましては過去の歴史から考えまして、またソ連の昨年春以来の数度にわたるあらゆる機会声明等を総合いたしまして、必ずやこの二月十日の声明に対しては、何らかの処置を書するであろうということを憂慮したのであります。当時私どもは大日本水産会に提議いたしまして、この問題に対する政府善処方を要望しようではないかという議論も一部にはあったのであります。しかしながら政府当局におきましては、この問題に関する限りは相当の自信を持っておるのであるからして、みだりに軽挙盲動し、ソ連考えに対して乗ぜられるようなことがあってはよろしくない、静粛に事態を見守っておれというようなお話がありましたので、われわれとしては政府を信頼して、今日まで事態を静観しておったのであります。  ところが三月二十一日になりまして再度の声明が発せられました。しかも具体的な禁止の問題を含めたところの声明であります。この間四十日間の時日が経過しておりましたので、われわれとしては政府当局において何らかの万全の処置を論じて下すっておったものと考えておったのであります。ところがこの声明が出されてからいろいろ政府の方に陳情し、運動してみますと、また新聞等において伝えられておりますところのロンドン松本全権に対する訓令等を拝見いたしますと、必ずしもこの四十日間には適正なる処置が講ぜられたとは私ども考えられないのでありまして、まことに遺憾に考える次第でございます。  しかもこれはソ連の一方的な声明であって、公海自由の原則を曲げる声明であるからまことにけしからぬ、これはなるほどわれわれもその通り考えます。距岸十三マイル、十二マイルと申しますか、ソ連にはソ連領海の線もあり、各国にはそれぞれの領海、異なってはおりますけれどもいろいろな領海の線というものがあります。でありますからこの線を越えてみだりに公海禁止の線を引くということには、われわれとしてはまことに納得のいかないものがあります。しかしながら、しからばこれはソ連だけの果して一方的の処置であるか、しかも公海自由の原則は広く世界の公海において守られておるかと申しますならば、遺憾ながら守られておりません。李承晩ラインの問題しかり、あるいは東シナ海の問題にしても、また豪州の大陸だなの問題にしましても、ことごとく公海自由の原則というものがじゅうりんされまして、実力のない日本としては何らこれに対処するところの道を知らず、新聞によって伝えられるところによりますと、ここ一両日前からまた李承晩ラインの問題がやかましくなってきておるようにわれわれとしては伝えられておりまして、非常に心配しておるような次第でございます。  もう一つ合法的にやられました問題であって、しかも公海に完全に線を引いておる問題があります。これは一九五二年に締結されました日米加漁業協定でございます。この日米加漁業協定によりまして、西経百七十五度を基準としまして、それよりアメリカ側の方には入ることができない。特に鮭鱒並びにオヒョウの漁獲が禁じられておるのであります。これはもちろん日米加の三国の政府間の調印によってなされたことでありますから、われわれとしては、当時業界としては、この百七十五度線に反対ではありましたけれども、しかし政府間の取りきめであれば、これまたやむを得なかったのであります。  こういう経路をたどって参りますと、私どもは今回のソ連声明が一方的な声明である、公海自由の原則に反するものであるから、やがて修正せられるであろうというような手放しの楽観は許されないのでありまして、すでに東の船団はこの二十八日に函館を出帆することに相なっております。水産庁の御指示によりまして、本年は全船団一斉に二十八日に出漁することに相なっております。こういう事態において、われわれ業界としては現在まことに混乱しておるような始末に相なっておるのであります。  ソ連は、ただいま藤田さんからお話のありましたように、あのきめられた線の中では二千五百万尾よりとってはいけない、特別許可証によって二千五百万尾だけはとってよろしいけれども、それ以上はとるなというようなお話でありますが、この二千五百万尾という数字につきまして、私ども一応考えてみる必要があるのであります。かつて戦争前にわれわれが現在の北洋海域におきまして漁獲しましたものは、ただいま藤田さんから申し上げましたように、大体二億万尾から二億二千万尾といわれておるのであります。その当時ソ連は大体どのくらいとっておったか、もちろん的確な資料はありませんけれども、われわれの推定ではせいぜい五千万尾見当でなかったかと思います。従って日本ソ連との両国漁獲を合せますと、大体二億五千万尾から二億七千万尾見当ではなかろうかと推察しておるのであります。つい最近になりまして、これもまた的確なものではありませんが、ソ連の発行しております雑誌等を総合してみますと、昨年のソ連漁獲は、大体において、比率が逆転いたしまして、一億五千万尾くらい漁獲しておるように考えられます。しかも日本における昨年の漁獲は、母船式漁業と四十八度以南小型漁業と合せまして、約一億万尾と推定されております。母船式は六千五百万尾、四十八度以南小型船によるものは大体三千万尾、まず一億万尾と推定されます。そういたしますと、ちょうど現在のソ連の一億五千万尾に加えますと、大体二億五千万尾くらいになります。両国漁獲比率戦前と逆転しますが、日本ソ連との漁獲数量は、戦前と今日とほぼ一致しておるように考えられる。でありますから、これによりまして、直ちに資源枯渇したとはわれわれとしては考えられないのであります。もちろんこれには、今藤田さんの言われましたようなソ連の陸地における、あるいは河川の流域におきまするいろいろな関係で、産卵状態が悪化したというようなことも考えられるのでありますが、しかし一方におきまして、戦時中並びに終戦後、日本はほとんどあの海域徳業をやっておりません。十数年間のブランクの時間がありましたので、相当魚族がふえておるものと私どもは推定しておるのでありまして、ただ単にこれによって魚族が一挙に減ったとは考えられないのであります。しかも最大限に――今日の漁獲尾数をあげましたのは、昨年が最高潮であります。ての前の年は船団数も非常に少い。こういう状態でありますから、一年や二年でこの資源枯渇したとは私どもとしては考えられないのであります。しかも資源の問題につきましては、われわれも決して無関心ではありません。北海道を中心といたしまして全国に相当孵化事業をやっておるのであります。現に北海道におきまする孵化の事情は、予算等各位も十分に御承知でありましょうが、昭和二十六年に国より一億円を借りまして、北海道の七カ所の地域に施設をいたしまして孵化事業を行なっておるのであります。しかも年々国から、さらに昨年度は一億三百万円、本年度の予算は一億六百万円と承わっておりますが、これだけの国費を投じていただいて、さらに北海道協力団体の方から毎年二千万円の金を醵出し、少くとも一年間に三億九千万粒の放出をやっておるのであります。でありますから特に北海道におきましてはこの事業を重要視しまして、われわれのやっております北洋漁業に関する団体では、日ソ共同調峯ということを早くから提唱しておるのであります。もちろん国交も回復しませんし、漁業協定もできておりませんので、一挙にそこまで運んでいくことは困難でありましょうが、私ども日本の漁民が北洋資源に対して、決して無責任な態度をとっておるのでないということを御了解願いたいのであります。  なお主としてこの間におきまする経済上の問題について、十分に皆さんの御賢察を願いたい問題があるのであります。すでに新聞その他で御承知ではありましょうけれども母船十九そうを出しまして、まず一そう当り四億ないし五億と考えますと、これに対する投下資本は約九十五億、百億見当であります。独航船五百そう、この建造資金につきましては、新しいのもあり、古いのもありいいろいろありましょうけれども、大体一そうの建造資金が、鉄船あるいは木船を平均しまして二千二亘万円見当と見ますと、この金額が約白十億、固定されます金額がこれによりまして約二百五億円程度に相なっておるのであります。このほかに毎年の流動資金が大体において総括して十九船団で百億見当と見ております。会社によりますとさらに多くを出しておるところもありますから、それより以上の金額に相なるかもしらぬのであります。しかも特に考えを願いたい点は、これだけの設備資金流動資金を投じておりますと同時に、この北洋に参ります五百そうの独航船は、ただ単に紙一枚で水産庁からこの許可をいただいたのではありません。このうち三百十五そうというものは、以東の底びきの権利を放棄して、北洋に転換したものであります。なお残りの百八十五隻というものは、四十八度以南の権利を放棄して、しかもたとえば五十トンの船でありますれば、この五十トンの船に対して七十五トンの権利を放棄して、この権利を獲得しておるのであります。ある一部の新聞に書いておりますように、この百八十五隻の独航船がこの権利をまかないますために、はなはだしい船は一トン当り二十万円以上の金を投じてこの権利を買っておるのであります。従ってこういうものを総合して参りますと、非常に膨大な投資がこの間に行われておるということを御了解願えると思うのであります。もし不幸にしてこの一越が未解決のままに出漁しなければならぬということになりますと、従業員の不安ももちろんのことでありますけれども、万が一それによりまして十分の操業ができないということになりますれば、他府県のことは十分私はわかりませんが、少くとも北海道に関する限りは、漁村における重大なる恐慌を招来するであろうということを私確信を持って申し上げられるのであります。しかも、単にわれわれ母船ばかりでなく、あるいは独航船だけにとどまりません。金融機関はもちろんのこと、これに関連しておるところの産業、あるいは網をこしらえるところの会社であるとか、魚箱を作る会社、または一番重点的に考えられておりますところの外貨獲得を目的としてカン詰の製品が非常に多くできますが、これに使いますところのカン詰の製カン、こういう会社が軒並みこれによって甚大な被害を受けるということを御承知おきを願いたいのであります。われわれとしては、政府において十分なる対策をお持ちになってこの危機を打開して下さるであろうということは今もって確信はしておりますけれども、もし万が一にも不幸にしてわれわれの期待がはずれた場合には、ただいま申し上げたような重大なる危機が到来することも十分に御賢察を願いたいのであります。  なおつけ加えて申し上げます。特にこれは私の会社について申し上げるので恐縮でありますが、北海道漁業公社は全道の漁業協同組合、漁業を基盤とした会社であります。約五十隻の独航船を持っておりますけれども、この疲弊したところの北海道の漁村をこれによって少くとも一応の挽回策はできるであろうという基点に立って、非常に無理をしてこの仕事に着手したのでありますから、不幸にしてこれがまずい結果になりますと、せっかく再建途上にありますところの北海道漁業協同組合並びに北海道の漁民の生活というものは、根底からくつがえされるというまことに悲惨な状態に陥れられるのであります。どうかこういうような点を十分に御賢察下さいまして、一日も早くこの問題の解決をお願いしたいのであります。  なおわれわれ漁業者としてそこまで論及することはどうかと思いますが、一般常識として絶えずれわわれ業界のものが考えております事柄は、少くともこの漁業問題だけ切り離して外交上の折衝ができるとは考えておりません。先ほど申し上げましたような日米加漁業協定も、平和条約ができ上ると同時にこの問題が取り扱われております。一部に言われますように、漁業問題だけ切り離してやられるのも一つの方法であります。われわれ業界人としてはいかなる方法をもってしてもこれが打開されればけっこうでありますが、一番業界のものの心配しておる点は、少くとも日ソ国交が回復せざる以上、この問題が直ちに打開されるということはあり得ないだろうという考えを持っておるのであります。この点に対して非常にわれわれも心配しているのであります。どうぞ外務委員会におきましては十分にこの点を御推察願いたいと思うのであります。はなはだ簡単でありますが、以上申し上げまして終ります。
  6. 前尾繁三郎

    前尾委員長 これにて参考人各位の出御意見の開陳は終りました。  これにより質疑を許します。質疑の通告が参考人に対しても六人ありますので、質疑はなるべく簡潔にお願いいたします。穗積七郎君。
  7. 穗積七郎

    穗積委員 ただいま参考人から貴重な御意見の開陳をいただきまして感謝にたえません。厚くお礼を申し上げます。今お話がありましたように、この問題は日ソ交渉と直接の関係はありませんが、客観的に見ますならば、時期的に見ましても内容から見ましても重要な関係があると思います。しかも、その経済上、または国民生活に及ぼす影響は甚大でございますので、後に政府当局にこの問題に対する御方針や御意見を伺いたいと思いますが、まだ談林大臣もお見えになりませんから、先に参考人に対してのみ簡潔にお尋ねをいたして、政府に対する、質問は留保いたしておきたいと思いますから、委員長におかれましてもさように御了承願いたいと思います。  第一にお尋ねいたしたいのは、乱獲の問題でございますが、今年度十九船団独航船五百隻が決定されました経緯について、藤田会長から御説明いただきたいと思うのです。
  8. 藤田巖

    藤田参考人 本年度の許可方針についてのお尋ねだと思いますので、これはむしろ私がお答えすべき筋合いのものでない、政府の方へどうぞ……。
  9. 穗積七郎

    穗積委員 私がお尋ねしておるのは、そういう意味ではございません。向う側は乱獲をおそれておるということでございますから、十九船団、五百隻が捕獲する予定量といいますか可能量との関係において、十九船団が適切であるかどうか。または、最近の報告によりますと、ソビエト側が昨年度において一億五千万尾に増大しております。そうすると、従来のトータルで見まして、二億五千万尾とするならば、こちら側は一億尾しか捕獲できないわけですね。それ以上捕獲しますと、どちらの原因であるということは別として、乱獲になり、魚族保護の危機点に達するという一応の判断がつくわけでございましょう。そういたしますと、十九船団独航船五百隻といたしましてその捕獲は一億尾をこえる可能性がある。昨年度は、私の記憶では、多分十二船団ございましたか、それが七船団ふえるということになりますと、日本側の今年度における捕獲予定量はふえるわけでございますね。そうすると、魚族が増殖されたという事実がない限りは、かの国わが国のトータルで年々の捕獲量が二億五千万尾といたしますと、向う側が一億五千万尾とり、こちら側が昨年度において約一億尾とっておるといたしますと、もうすでにその捕獲の限界点に丸しておる。今までの御説明によるとそうなるのです。そうすると、こちらが七船団ふやしましてやるとどういう結果になりますか。私は、船団増設のために捕獲予定量が一体どのくらいになりますか、そのことが魚族保護に及ぼす影響はどういうことになりますかということを伺っておるのでございます。船団許可の行政上の手続については、後に水産庁その他農林省の責任者にお尋ねいたしますが、私は、冒頭に申しましたように乱獲との関係においてお尋ねしておるわけでございますから、その点について御説明いただきたい、こういうわけでございます。
  10. 藤田巖

    藤田参考人 先ほど申しましたように、ソ連側がどのくらいとっておるかということは、われわれのほんの想像でありまして、それが果してその通りであるかはわからないのでございます。それで、全体の資源量を果してどの程度に押えることが資源保持上必要であるかということについては、まだ結論が出ておりませんので、これはおそらく、将来日ソ間の関係者が集まって全体の資源量をどのくらいに押えるべきだというような話し合いできまることだと思います。ただ、お話のように昨年は母船式だけで六、十四五百万尾とっております。今年は五船団ふえておりますので、母船式漁業についてはおそらく一億くらいの計画をお持ちのことと考えます。ただこの割合には四十八度以南の船の全体の魚獲高というものは、あるいはこれは去年よりも減るのじゃないだろうかと想像をされます。しかしどちらにしましても、そういうふうな数字であります場合に、先ほど申しましたように従来とっておりますものから考えまして、それが全体の資源量に非常に資源枯渇というふうなことが言われるほどの影響を及ぼすべきものということは私どもとしては考えておりません。しかしこれはソ連の方ともよく話し合いをして、あちらの資料も見せていただき、われわれの気のつかぬところが出てきますれば、そのときいろいろ相談すべき問題であろうと思います。
  11. 穗積七郎

    穗積委員 実はこの問題は、抽象的に公海自由の原則の問題として協議する問題よりは、魚族保護という両国漁業の将来確保のための措置として理解すべき問題であって、その制限が協議の上でなくて一方的に行われた点、またはその事前の共同調査が行われなかった点、または両者が合意の上で資料提供を行わなかったという点等々について問題があります。さらに禁止いたしました水城並びにその数量、これについて問題があると思いますが、公海自由の原則を――李承晩ラインのごとく一方的に百パーセント航行その他漁業禁止するという建前でないということは、これは明瞭だと思うのです。従ってこの問題が起きます以前から、向うは乱獲をおそれることを常に放送し、こちら側の業者の皆さんの話を伺いますと、乱獲は決してしておらぬということを常に強調しておられたのですが、きょう伺いまして実は私はいささか心配になったことは、乱獲にはなっていないということを実証するのに、乱獲だということを実証する資料もないけれども乱獲になっておる心配はない、これから船団を増設してもその心配はないという客観的な、合理的な基礎というものを、日本水産会がまだ手に入れておらぬということを実は知ったのでございます。そこで私は乱獲になるとかならぬとかいうことを、向う側が乱護をおそれて二千五百万尾に押えてきたということに対して、われわれの態度としては魚族保護については、原則については賛成である。そこでその制限数については多いとか少いとかいう問題を、われわれの今までの統計では、二千五百万尾ではこれはあまりに過小に失する不当な制限であると考えるけれども、それでは一体どこまでやったらいいかということについては、わが方もそちらも十分なる資料を持っておらぬはずであるから、共同調査をやり、お互いの持っておる資料を提供して、そうして民主的に話し合い一つどこまでが乱獲にならない限界点である、それ以上を越えるならば乱獲になる危険があるということを、お互い資料調査によって共同の結論として出すべきであって、こちら側が一方的に乱獲した覚えはないとか、乱獲のおそれはないとか、たとえば十九船団、五百隻をふやしても絶対にそういう心配はないのだということでなくて、問題は今までは二億五千万尾とっておった。昨年度一億尾とったから、それに比べればまだ一億五千万尾だかの余裕がある。それだから七船団ふやしても心配はないとこちらは言えるのですけれども、しかし魚族というものは相手方のとっておる数量とのトータルにおいて魚族保護の問題を考えなければならぬから、どれだけとることが権利があるかないかということ、この問題は漁業協定によってできておりません、公海の自由の原則でございますから。言うまでもなくソビエトが従来一億尾とっておったものを一億五千万尾とった、または二億尾とるようになった、これは不当であるとは言えないのです。従ってこの乱獲になっておるかおらぬかということにつきましては、もう少し妥当なる民主的なる態度を日本水産会としてはとり、われわれ政治に関係する者の立場としても、もう少し合理百的な基礎に立って話し合いをすべきだということを、私はきようの参考人お話を伺いながら強く感じたわけでございます。従って公海自由の原則を振り回してみたりあるいはまた乱獲になっていないということを、一方的に自信を持って主張する基礎のないのに、これを主張しても、これはわが方にとっては有利であるように見えますが、私はソビエトの特に戦前のツアー時代の外交は知りませんが、最近の外交を見てみますと、これは松本全権もわれわれと同感でございますが、相手方は非常に合理的であります。従って古い日本の外交官の諸君が帝政時代のソ連外交というものを知っておって、新しい外交を知らないところに一つの悲劇があると私は思うのだが、実は松本さんが帰ってこられて日本に訴えるおもなる理由はそこであったのです。最近のソ連観を改めなければならぬ、最近のソ連外交に対する西ヨーロッパ、中東並びに東南アジア諸国の態度を見直さなければならぬということが、松本さんが帰って日本国民並びに政府要路に訴える中心点でございますから、その通りにわれわれも考える。従ってこの乱獲問題、漁業制限の問題に対して、しかもわれわれが不当なる力によってこれを交渉しようというのではなく、力を持たずしてやる以上は道理によっていく以外はない。たとえば一歩譲ってソビエトが必ずしも合理的外交をやってないと仮定いたしましても、われわれが力を持たずしてやっているときには、われわれの主張する唯一の論拠は客観的な、科学的な合理性でございますから、その点については私は願くはそういう態度で、資料を染めていただくこと、そういう態度でこの問題を提案していただくこと、そういう態度でかの国に当るべきであるということを強く実は感ずるわけでございますが、藤田さん並びに高野さんの御感想をちょっとこの際伺っておきたい。これは重要な問題でございますから。
  12. 藤田巖

    藤田参考人 先ほど申しましたようにこの資源の問題というものは、関係国が全部集まってそれぞれの詳細な資料を提供して、科学的見地からまじめにこれを検討して初めてその適切な結論が出るのだと思います。それでわれわれは現在お話通り、率直に申しまして日本側資料しか持っておりません。ソ連側資料発表をいたしませんから、それに対する詳細なる資料を入手することはできません。従って遺憾ながらわれわれは、われわれの持っておるところの資料に従って一応の見解を述べておるわけです。われわれの持っておる資料からいたしますと、ソ連の言うような乱獲の事実はないということは私は言えると思います。ですからもしもそれについての乱獲の事実があるということであれば、それはソ連こそ正確な資料をたくさん出し、それをわれわれに掲示して、われわれが納得するような資料を示してくれてこそ、初めてソ連の主張が合理的の基礎がある、私はこういうふうに考えます。
  13. 穗積七郎

    穗積委員 乱獲問題についてもう一つお尋ねいたしますが、今申しました通り乱獲の限界点をどこで引くかということについては、私はあなたの御意見と全く同じなのです。両方が民主的に資料を提供し、調査を共同に行なって、そこで共同に出すべきものであって、わが国の戦前の捕獲量と現在の捕獲量と比べて乱獲になっておる、なっておらぬということを言うべきではなくて、向うが一方的に言うことも当っていないし、こちら側が一方的に判断することも当らないと思う、こういう結論だと思うのです。そこでついでにお尋ねいたしますが、私は門外漢ですからなんですが、日本が戦争中約十年間捕獲をしていなかったので、魚族はおそらくは増殖されておるだろうという御推算でございましたが、これについては技術的に調査はある程度できているのではないかと私は思うのですが、推測でございますか、その科学的な調査というものは容易なものであるとするならば、すでに今までにどのくらいの増殖になっておるかということの統計はございましょうかどうか。これも一つついでですからお教えを仰いでおきたいと思うのです。
  14. 藤田巖

    藤田参考人 大体サケマスは川へ上る性質を持っておるものでございますから、やはり河川の遡上あるいはそこの増殖、そういうふうな原因というものが非常に大きく資源量影響するわけなのでございます。そういうふうな意味からいたしまして、ソ連側の方に率直に言っていろいろな資料がたくさんあるわけでございます。われわれは沖取りの関係については、これはもちろん資源量に変動を及ぼすものとは思いますが、それが乱獲になるかどうかという点についてはこれは疑問がある、こう申し上げておるのです。ただわれわれには十年間の空白がございます。沖取りはとっていなかった時代があるわけでありますから、その程度においては魚族というものは、ほかの原因が悪化しない限り、つまり産卵河川におけるその他の再生産の条件がさらに悪化しない限りは、当然ふえるべきものだ、こういうふうに一応推定しておるわけであります。
  15. 穗積七郎

    穗積委員 高野さんに一点お尋ねいたしますが、私が今伺いますと、あなたの方は漁業協同組合による、いわば社会主峯的といいますか、民主的といいますか、そういう経営になっておられるようですが、乱獲原因、現在なっていないと仮定いたしましても、将来両国漁業がもう少し資本が増大され、捕獲の方法も科学的になるといたしますというと、乱獲のおそれというものが考えられますから、ある政治的な可能の時期においては、当然共同調査をやり、話し合いをしなければならぬと思うが、日本側乱獲原因になるとおそれられる点について、実は今日の漁業経常の経済的方式といいますか、資本主義的な方式によって、全体を考えずして自己の捕獲の利益のみを考え漁獲の方法、こういうようなものは、かの国は政府が統制しているわけでございますが、こちら側はそうじゃなくて、各会社、各独航船が先陣を争って勝手にやる。だから全体の魚族量なんかは考えない傾きが、これから出てきましょう。競争がひどくなれば、ますますそういろ点が憂えられるということは、われわれ門外漢として一応考えろわけです。そういう点についてはもう少し合理的な、何といいますか漁撈の方式として、もう少し計画性を持った、そしてある意味における反資本主義的な経営方式というものが心要だというようにわれわれ考えるが、その点についてのあなたの御所見をちょっと伺っておきたいと思います。
  16. 高野源蔵

    高野参考人 ただいまのお尋ねでありますが、実は日本母船式漁業の最近の趨勢を見ますと、非常に技術が向上して参りましたのと、漁網等につきまして非常に改善されております。関係上、一船団当り、また一独航船当りの漁獲というものは非常にふえております。でありますから、今御指摘のように、適当な時期になりましたならば、やはり乱獲防止のためには、お互いに共同調査というものを基準にして、何らかの制限を加えるべきが当然じゃないかというふうに、私たちとしては考えております。われわれ業界人としても、最近の漁獲されます魚の大きさあるいは重量等から考えまして、非常に心配な点も一面ではないわけではありません。率直にこれは申し上げます。ただ現在のところ漁業協定が結ばれておりませんので、北洋において鮭鱒をとりますのには、どうしても基地を貸してもらえませんから、母船式でやるより仕方がないということになっております。ただ、今申し上げましたように、母船の性能も非常に大きくなり、りっぱになって参りましたし、漁網その他技術も非常に発達をして参っておりまして、おそらくソ連の技術等は、私十分承知いたしませんが一部流れてきました向うの漁具から推定しますと、いまだにソ連鮭鱒漁獲技術というものは、日本と比べて非常に幼稚なものじゃないかというふうに考えておりますので、やはり適当な時期に相当対策を、これは資源保持の上から講ずるのが妥当であろうというふうに私は考えております。
  17. 松本七郎

    松本(七)委員 今の乱獲の問題でちょっと関連してお伺いたしたいのですが、母船式日本の技術が非常に向上しているという点、以前はノルウェーが世界一だったが、今は日本が世界一だといわれるくらい向上しております。そこでサケは大体の成長期が四年ですか、四年で成長する。ところがソビエトの言い分を聞いてみますと、日本漁獲の中には幼魚が非常に多い。二年くらいでとってしまっている。これは技術が向上したためにそういうことになったか、原因はどこにあるのか知りませんけれども、とにかく幼魚を非常にとっている。その証拠には、大体漁獲高というのは、カン詰の製造高と漁獲高とを比較してみると、成魚をとっているか幼魚をとっているかということは、大体見当がつくというのです。それで漁獲高とカン詰の製造高との比較で計算すると、確かに幼魚を非常にとっているということがわかるというようなこともいわれるのですが、そういう点はいかがでしょう。
  18. 高野源蔵

    高野参考人 今の状態から見まして、幼魚をとっているとは考えられませんし、また事実とっておりません。これは相当綱の目で制限いたしておりますので、幼魚はとっておりませんが、しかしだんだん形が小さぐなっているということは、これは否定できません。
  19. 和田博雄

    ○和田委員 ちょっと関連して一点だけ伺います。それは乱獲の問題ですが、ベニサケについて、これは相当減っているのじゃないですか。その点どうでしょう。
  20. 藤田巖

    藤田参考人 御承知通り、ベニは、ほかのサケマスと違って、べニの上る川というものは、おのずからきまっております。つまり川の上流に湖水があるよう川でなければ上れないのです。それだけにベニは非常に高等なと申しますか、いろいろの自然的な要因に支配されやすい性質を持つ種類のものだと思います。そういうふうな意味合いからいいまして――まあわれわれだけの、資料ではわかりませんけれども、べニのようなものは、これはだんだん減る性質を持っている、よほど注意しない限り減る性質を持っている、こういうことは言えるだろうと思います。
  21. 和田博雄

    ○和田委員 去年のローマ会議でその問題が出まして、やはりベニサケについては、ある程度日本側としても、その減ってくる傾向だけは認めているのじゃないですか。ただ自然条件ということだけじゃなしに……。
  22. 藤田巖

    藤田参考人 これはローマ会議出席いたしました藤永部長から聞いたのでありますから、直接にはわかりませんが、特定の河川についてのべニの川へ上る漁獲高が、減っているという数字を見せられました。それ以外の全体の数字というものは見せられなかった。ですからその会議の席上では、少くともソ連としてはうそを言っているわけじゃないから、その特定の河川については、なるほどそういうふうになっているかもしれない。しかしながら全体的な問題については、今後よく話し合いをしようということで帰ったというふうに聞いております。
  23. 穗積七郎

    穗積委員 次に私のお尋ねしたいのは、これからの対策の問題でございますが、これは地元の北海道の方々も、おそらくは全国機関ある大日本水産会と一緒になって、この問題に対する対策を御協議になっておられると思いますから、その点について藤田さんからまとめてお話をいただくことが適当だと思いますが、先ほどのお話では、今までの出した結論としては、この問題が、今までの交渉の結果から見て、日ソ交渉そのものにも関連があるように思われるので、根本的解決のためには、他の問題にして許すならば早期解決に努力してもらいたい、その時期も、五月から始まる漁期に差しさわりのない、かいのある時期を選んでもらいたい、こういうのが御要望でございましたが、そのほかこの際伺っておきたいのは、今まで寄り寄り御相談になり、御決定になりましたこの問題解決のための御方針といいますか御要望を、その一点だけに上ぼっておられるのでございましょうか。または新聞の伝うるところによると、今では下火になったようですが、日本の水産界代表が民間人としてソビエト政府に交渉してくれるというようなことも、あなた方の間で討議されたようでございますが、こういうことについてはどういうふうにお考えになっておられるか。  さらにこれはまだ直接伺ったことではなく新聞報道でございますが、この問題に対する政府間の話し会いも、東京におる元代表部を通じて返事があったら話し合いを進めてもらいたい、連絡もこれを通じてよこしてもらいたいということですが、今は日本側としては、ロンドンの西大使からマリク全権を通じて、かの国とわが国の政府との連絡をとろうとしておるわけです。向う側がもし東京元代表部を選んでこられた場合には、水産界としてはこれに対してどういうお気持を持っておられるかということが討議されたならば、それも承わりたい。  それから政府に対する要望としては、根本的解決はあなたのおっしゃる通りで私ども同感でございまして、基本的には日ソ交渉そのものを妥結する以外に、両国間の漁業問題の根本解決は不可能であるというふうに考えられます。従って国交回復前に日本の民間と向うの政府との間の交渉または協定は、私は絶望的なものだと判断をいたします。その次に、日本政府と向うの政府とが国交回復はそっちのけにしておいて漁業協定を結ぶということも、困難または不可能であるとわれわれは観測いたしております。従ってさらに残された問題は、あなたの先ほどおっしゃったような基本的な国交回復そのものを早期に妥結する、しからずんば政府間においてのみ話し合いが行われる可能性がある。その場合には本格的な漁業協定を締結する問題ではなくて、本年度の漁業についてソビエト閣僚会議の決定いたしました暫定措置についての話し合いを、日本政府が向うの欲するルートを通じてするということであるならば、多少はこれについてのこちらからの言い分も聞き、向う側からも説明をする可能性があろうと思うのでございますが、それらについて専門家である全国の水産代表の方々がお集まりになって今まで御討議なさり、御相談なさり、あるいはまた観測も立てているだろうと思います。それらについての水産会としてのまとまった御意見があればそれを承わりたいし、まとまった御意見がなければ、副会長の個人としての御意見または御観測でもけっこうでございますし、それができなければ水産会内部におけるいろいろな意見や一部の動きでもけっこうでございますから、この際報告をしていただきたい、これが私のお願いでございます。
  24. 藤田巖

    藤田参考人 ただいま穗積先生からお話のございましたように、必ずしも全部が大水の会議で一致してまとまっておるとも申せませんので、私の意見もあわせてつけ加えて述べさせていただききたいと思います。  民間代表を送るという問題は、私どもといたしましては、やはりこの際は政府間の話し合いでやってもらいたい。それでなければ、これは民間同士が行って話し合いをするというふうなことは、中国の場合とは事情が逢うから見込みがないだろう、こういうふうに考えております。なおしかし今後いろいろな事態が発生するその経過においてそういうことが考えられるかどうか、これは別といたしまして、現在のところはわれわれは政府同士の話上合いで責任を持ってやっていただきたい、こういうふうな態度をきめておるわけであります。  それから窓口につきましては、やはり早急に話し合いをしなければならぬ事情を日本側が持っている。従ってこの際はもしも相手がどこでやろうというならば、その場所のいかんを問わず、それに応じて話をしていただきたいというふうに思っております。たといそれがロンドンであろうが、モスクワであろうがあるいは東京であろうがどこであろうが、このものと話し合いをするということであるならば、問題が切迫しておるからすぐにそれに応じてやってもらいたい、こういうふうに考えております。  それから漁業の協定だけを切り離して、大きな全局の話し合いを全然しないであちらが話に乗ってくるかどうか、この問題でございますが、これは相手としてはおそらく全局にからめて話を持ってくる公算が多いと私は判断いたします。しかしながら今年の漁期における収拾の措置、その点については時期も切迫しておることでありますし、ソ連もこのままで強引に一方的にいろいろトラブルを起す、そういうことまであえてするかどうかということはこれは考えられないのでありまして、われわれとしては今年の漁期における暫定的の措置については、日ソ父渉の全局が今後いろいろ進むのと並行して、漁期までに話し合いの可能性は全然ないわけじゃない、これはあり得る、だからそれをできるだけ導きやすいような政府の態度をきめていただきたい、こういうふうに思っておるわけであります。
  25. 穗積七郎

    穗積委員 今までの御観測並びに御意見については、幸いにしてわれわれも同様の観測をいたしております。この問題解決のために足並みの乱れることのないのをわれわれは非常に喜んでおりますが、今後ともどうぞ御努力をお願いしたいのであります。  最後に藤田会長にお願いしたいのは、制限いたしました二千五百万尾でございますが、問題はこの紙に書いた数字にあるのではなくて、現実に二千五百万尾を一体どうやって計算するかという問題、だれがどういう方法でこれを監視計算するかということが問題だと思うのです。そのことについては私どもの知っておる範囲においては、ソビエト閣僚会議の決定の中にはこれは必ずしも明細に含まれておりません。そこで水産会してはこの措置については一体どういうふうに推測しておられるのか。また今おっしゃったように、政府間において話し合いをするならば、今の制限水域の問題と、それから尾数の問題と、さらに監視機構並びに監視方法という三点が重要な問題になろうと思うのです。その場合最も重要な問題点となるのは、この監視の主体はだれがやるか、監視の方法をいかにしてやるかということでございます。それに対して伺いたいことは、第一はどういう堆側をあなたは持っておられるかということ、その次には大日本水産会としてはその監視機構についての御要望があるならば御要望を伺っておきたい。これはわれわれも多少は意見を持っておりますが、その意見をここであなたと交えることは必ずしも適切でないので、後に政府意見を聞きながら意見を申し述べたいと思っておりますが、水産会そのものとしては、一体その監視機構については、どういう方法をお考えになっておられるか、その材料を今から用意していただくことが、政府政府間の交渉を要望される場合の水産会の手落ちなき態度としては私は、必要だろうと思いますので、この際ありましたならば、または差しつかえがないならば、この機会に明らかにしていただきたいと思うのでございます。  それからもう一点、ついででございますからお尋ねいたしたいのは、もし政府がなすところなくしてこのままにして漁期に臨む、あなた方水産業界の方々はこの話し合いがつかなくても、もうここまできた以上は、やむを得ないから予定通り出漁すると言っておられますが、あなた方がとっておられる情報または推測によれば、そのときにソビエト側は一体どういう態度をとるか、李承晩ラインの場合には多少のこけおどしがございまして、砲撃の声明はございましたが、事実上出漁いたしましても砲撃の事実まではなかったのでございます。ところが今度のソビエトの場合においては同様に甘く見てかかっておられますか、またはもっとシビヤーにこの措置の実行についてかの国の態度を観察されておられますか、それについてあなたの、または水産界、または一部の方の御観測がありましたならば、この際参考ために伺っておきたいと思うので、あります。  それから時間の制限がありますから、最後に高野さんに一点だけお尋ねいたします。さっき船団の編成についてお話がありましたが、実は船団の編成は政府がその許可権を持っておるわけでございますが、船田の編成または独航船許可について、名目は何でありましょうとも、社会常識から見て不当なる献金または権利金と称するかもしらぬが、または政治寄金と称するかもしらぬが、そういうものが出ておるということがもっぱら世上に伝わっております。これについては必ずしもどの会社、どの個人がだれに何万円手渡したということは、お互いにわかるはずはないし、本人しか知らぬだろうと思うが、われわれはそういうことが今の状態から見るならば、あり得るのではないかということを実は危惧するのであります。これは業界のためにも日本政界のためにもおそれるのでございますが、高野さんは地元におられてしかも業界関係でございますから、具体的に一つ一つの事実については御存じないと思われますが、また答えられないこともわかっておりますが、そういうことはあり得るというふうにお考えになりますか。あるいはまたそういうことは全然ないという現在の業界または政界の実情だというふうにお考えになりますか。抽象的な感想でもけっこうでございますから、この際参考のために伺っておきたいと思います。以上一括して順次お答えをいただきたいと思います。
  26. 藤田巖

    藤田参考人 これから述べますことは、私個人の意見でございますので、さよう御了承いただきたいと思います。  第一問は、二千五百万尾をどうして計算するかという問題でありますが、これも私ども技術的に果してどういうふうにやってくるのだろうというふうなことがよくわかりません。あるいは鯨のようなことを考えているのじゃないかと思いますが、しかしながらこれもああいうふうな報告機構があって初めてできるのです。毎日の報告がはっきりなっていて初めてできるのですから、そういうことも、なかなかむずかしいのじゃないか、やはりもっとソ連は大ざっぱな考え方をしているのじゃあるまいかというふうに、私は判断をいたします。  それからもし何かできたときに、日本側としてはどういうふうな要望をするかということですが、これは私どもといたしましては、あくまでも公海における漁業制限その他の措置というものは、関係国間の協定によって、話し合いによってやるべきである、そうしてきめられた問題については、それぞれ自国がその国民に対して措置を講ずべきである、つまりそれぞれ自国内の自主的な措置によってこれをやるべきである、かように考えております。  それから三点は、未解決のまま出漁したときに、ソ連がどんな態度をとるか。私どもは、ソ連は大国でございますから、まさか李承晩のようなああいうことはすまいというふうに思います。しかし決して甘く見てはいけないと思います。やはりそれはこのままで行った場合には、ソ連としては面子の問題もあり、勢いの問題もあるから、ある程度のことはやる。しかし李承晩のようなああいうふうな非常識なことはしない、もう少し高級な手を打つであろうと思いますが、それは遺憾ながらどうもわれわれにはわかりません。
  27. 高野源蔵

    高野参考人 ただいまの御質問にお答えしたいと思うのですが、その前に今藤田さんから御答弁があったのですが、つけ加えて申し上げたいと思います。  このままの状態で出漁した場合に、どういう結果になるかという問題、これは非常に重要な問題でありますので、われわれも心配しております。と申しますのは、本年に入ってから、根室海域におきますところのソ連の監視が非常に厳重になりました。かってここ数年来ないような趨勢でありまして、本来であれば、根室地方のカニ漁船等に対する監視は、三月の半ば以降というふうに記憶しておるのでありますが、今年は大体一カ月くらい早く、しかも相当性能のある監視船を出して、監視している。なお触れた漁船に対しては直ちに拿捕するような状態になっておりますので、非常に心配しております。私どもとしてはもちろん李承晩ラインのようには考えませんけれども、そう手放しで楽観することは非常に警戒を要する、こういうふうに考えております。  それから許可をめぐって献金その他の問題というようなお話でございましたが、これは母船関係独航船関係と二つに分かれるのでありますが、若干の風評がないわけではありませんけれども、根拠はわれわれとしては全然つかめません。ただ北海道漁業公社に関する限りは、一文たりともそういう金は使ってないということを申し上げておきます。
  28. 前尾繁三郎

    前尾委員長 岡田君。
  29. 岡田春夫

    ○岡田委員 だいぶ時間がたって参りましたので、なるべく簡単にやりますが、今まで藤田さん、高野さんからのいろいろなお話を伺って参りましても、要するに結論としては、今度のようなソビエトのとった閣僚会議の決議以前に、この問題は昨年から十分予知されておった。これに対して政府は静観しておれというようなことを再三言ってきている、しかも閣僚会議で決定してから四十日もたっているのに、この間においてほとんど措置がとられないで、あと二週間後の今月の末には出港しなければならないというせっぱ詰まった状態にある。その場合に、どうしても出漁しなければならないということになってくると、今も問題になっておるような安全操業の問題が出てくると思うのです。この安全操業の問題につきましては、ただいま藤田さんはあまり御心配がないようなお話であったけれども、私は北海道でありますので、幾らか事情を知っておりますが、そう安心のできる状態であるとは私には考えられない。むしろ高野さんのお話のような危険な状態があるのではないか。李承晩のように、あの気違いじみた鉄砲を撃つとかなんとかというようなことはないでしょうが、拿捕するというようなことは当然覚悟しなければならないと思う。  こういう問題について、きょうは塩見水産庁長官も来ているのだが、今までこのようにしておって、このあと安全操業のために一体どういうようにされるのか。この点だけは、藤田さん、高野さんのいろいろな話を伺う前に、ぜひ水産庁長官に、今までの経緯と今後これを出漁させる場合に、一体どういうようにして生命財産を保障するのか、これに対する水産庁としての見解をはっきりと伺っておきたいと思います。
  30. 塩見友之助

    ○塩見政府委員 北洋漁業の安全操業の問題につきましては、先ほど参考人の方々からお話のありました通りに、手放しで楽観できるという状態ではないと思います。水産庁の方といたしましては、外務省の方とも連携をとりまして、安全操業確保のために、ソ連側と話し合う機会をぜひとも持ちたい、こう考えております。過去においても松本全権を通じまして、何回かこの問題に関する折衝は行わておると外務省の方から承知しております。
  31. 岡田春夫

    ○岡田委員 それじゃ政府委員の方はあとで、伺うとにいたしまして、藤田さんに一、二お伺いをいたして参りたいと思います。先ほどの穗積君の御質問に対するお答えを伺っておると、ことしは沖取りで大体一億尾ぐらいになるであろう、こういうお話だった。ことしと去年と比べるならば、去年は六千四百万尾ぐらいですから、約五割ぐらいのふえ方になっておるわけです。しかも沖取り漁業があのようにふえるからして乱獲になるのではないか、こういう点が問題になってきておるのではないか。いろいろ質問していると長くなりますから、お話をこちらから申し上げますけれども、戦争前の沖取り漁業との較較をすると、戦争前は大体五%ぐらいが沖取りであったと言われておる。そういうような沖取りが比較的少かった場合には、成熟魚だけではなくて、先ほど松本君の言った幼魚とかいろいろな魚を一緒に、いわゆる流し綱でとってしまうわけです。しかも高野君のお話のように、最近のような船の発達した状態になってくると、漁獲法が非常に発達してくるので、どんどんどんどんとってしまう。先ほど高野さんはあ去り具体的な数字で言われなかったけれども、私の聞いている限りでも、ベニザケの場合には、戦争前の平均が一尾六百五十から八百匁ぐらいであったものが、昨年の場合は四百五十から五百匁ぐらいに下っている、こういうことが言われています。このことは何を意味しているかという、成熟魚だけではなくて、幼魚も、あるいは成熟魚にあらざるいろいろなものを一括してとってしまうということから起っているのだし、しかもベニザケの例をあげても、去年の場合には千二百五十万尾とっている。ところが一昨年は三百八十一万尾、大体三倍とっているわけです。こういう点から見ても、どうも日本側の持っておる資料にも、乱獲ではないという科学的な資料は、実はないような気がしてしようがないわけです。先ほど相田委員お話しになった、昨年の五月のローマの国際漁業会議においてもこういう点があるのです。事実はこうなのです。ソビエト側がベニザケの例について一九五一年と五四年を比較している。五一年の場合には四百四十一万尾であったものが、五四年には百五十万尾、三分の一に減っている、こういう点から見ても、日本側が沖取りで乱獲をやっているからではないかということを提言している。あるいはまた孵化場のところを通過するベニザケの量をこの会議の席上でソビエトが報告しておる。それによると、大体計画量の一〇%あるいは二五%ぐらいしか戻ってこない。こういう例を見ても、明らかに日本沖取り漁業乱獲をしているからではないかと言ったことに対して、日本の代表はこれを認めて、十分資料を交換し合ってこれについていろいろ協議をしましょうと言って、そのままになっている事実があるのです。これはローマの会議です。ところがその後何らこれについて協議が行われないで、今日になって突然こういうようなソビエトの発表はきわめてけしからぬというようなことは、むしろ日本側原因があるのではないか。日本側がそういう問題について心配があるならば、高野さんが先ほど言われたように去年から問題になっているならば、こういう問題について交渉をしておらなかったところに問題がある。その問題を根本的に解決するためには、先ほど高野さんが言われたように、沖取りではなくて基地を持って漁業をやるような状態にならなければならない。基地を持って漁業をやるような状態になるためには、何といっても日ソ国交回復がやれなければ、そのような協定が結ばれないことは、藤田さんの御存じの通りなのであります。やっぱりこの際は、はっきり藤田さん自身としても、日ソ国交回復が、早期妥結が行われなければ、この問題は解決できないとお考えにならないでしょうか。それから乱獲の問題についても、むしろ日本側資料としても、乱獲になる危険性の事実が上っていることをお認めになるわけにはいかないのかどうか。この二点について伺っておきたいと思います。
  32. 藤田巖

    藤田参考人 お答えいたします、前に、ちょっと穗積先生に対するお答えと関連してお述べになりましたので、もう一度申し述べますが、私は決して事態を楽観しておりません。決して甘く見ておりません。甘く見てはいけないと思います。そんなことは何も言ってはいないので、このままにあちらが何もしないというふうに手放しで楽観しているということは申し上げておりません。非常に心配しております。しかし、まさか李承晩大統領のようなああいう非常識なことはすまいということを言っているのでありまして、何も楽観しているのではありませんから、誤解のないようにお願いしたい。  それから成熟魚、稚魚を沖取りがとっているかどうかという問題でございますが、御承知通り、沖取りという漁業の性質と申しますか、沖でとる、しかも漁場の関係がずっと接岸する前にとる、こういうふうな状態の漁法でございますから、接岸するまでの時期において若干小型のものその他をとるという場合も起りましょうし、あるいはそれも年によって型が大きかったり小さかったりいたしますから、つまり豊漁の年には小型であるということが言われますから、そういうことも関連して判断しかければなりません。しかし、少くとも言われますことは、今の幼魚、これはとっておりません。網目の制限も今度はありますし、従来も網目は相当制限をしておりますから、幼魚はとっておりません。問題になるのは、その年に川へ上る魚ではあるけれども、まだ回遊中であってあぶらが乗っていない、その時期にとるからあるいは小さいということがあるかもしれません。大体統計的に考えれば、その年にその川へ上る魚をほとんど大部分とっている。お話は、その年に川へ上らない魚をとっているかというふうな意味だと思いますが、それはパーセンテージにいたしましておそらく二%か三%だと思います。ですから、日本が川へも上らない魚を非常にたくさんとっているというようなことは絶対にございませんから、その点は誤解のないようにお願いいたしたい。  それから乱獲の問題が重ねて出ましたが、一体乱獲とは何ぞやという問題からやらなければなりません。一体何を乱獲と言っているのかということから実は考えなければいけないと思うのです。乱獲云々というのは、大体この程度漁獲をしても全体の資源量に変動は生じない、そうしてその程度生産性が維持されるというふうな意味で言っているのですが、そういうことでありますれぱ、われわれは現在のものは乱獲とは考えておりません。日本がとるためにソ連の分け前は減るかもしれません。沖取りがとるためにソ連の側の漁獲高が減るかもしれません。そういうことはおそらくある。むしろソ連はそれを言っているだろうと思います。自分らの沖合でとっているから自分の方へ入る魚が減るということだろうと思う。しかし、それと乱獲とはちょっと違うのでございます。この乱獲の問題は、しろうとがあまり何をすることはかえってこんがらかると思いますから差し控えたいと思います。これは将来科学的な資料を持ち寄って科学者研究すべき問題だというふうに思うわけです。  それから早期妥結の問題でございますが、これは率直に申しますが、私どもは、日ソ国交がいつまでも回復しないでこのままの状態であることは、日本にとっても利益でないと思います。それでは近い将来において日本側に有利な話し合いのできる要素があるかといえば、これも私はないと思います。従って、やはり外交というものはそのときそのときによって、力によって、そのときの事情によってできるだけ早くまとむべきだと考えます。その意味で、この際政府はもう一段と早く日ソが交渉をまとめるための最大限の考慮を払っていただきたい、こういうふうに思うわけです。しかしながら、ここで一言申し上げておきたいと思いますのは、この早期妥結がきまれば漁業問題が無傷にきまるのだ、こういうふうに見ることは非常に甘いと考えます。それはそうでないと思います。それからまた早期妥結ができて交渉ができれば、基地漁業も簡単にできると考えるのは、これまたそこまではいかないと思います。ですからわれわれは結局日本の国力を背景にしての外交をやっておるわけですから、全体の問題についても漁業の問題についても、とにかく非常に苦難な道を歩まなければならぬ、こういうことだけは覚悟しなければならぬと思います。
  33. 岡田春夫

    ○岡田委員 いろいろな点について私の意見も申し上げたいのですけれども、時間がありませんので省略をいたします。乱獲の科学的な根拠の問題につきましても、やはり沖取り漁業の性格から考えて――生産量を越えた場合においては乱獲という話の通りだと思いますが、沖取り漁業の性格からいって、必ずしもそういうように厳密にやれるかどうかという点についても問題があると思うが、しかしこの点はお互い意見ですから省略をさせていただきます。  最後にもう一点。この点はぜひ伺っておきたい点なのです。先ほどソビエト側がこういうような決定を行なったのは国際法上違反である、こういう断定をされた点についてでありますが、私は必ずしもそうは考えられない。その点はどういうわけかというと、これも御存じの通りですが、ローマで国際漁業会議があったときに、キューバから、大体その相手国との話上合いのつけられないような状態における場合、公海上の資源確保のためには、沿岸国が責任を持って資源確保に対するいろいろな措置をとる、こういう提案が行われた。この提案の採決の結果、たしか一票の差でこれは否決になった。ところがその翌月にジュネーヴで国連の国際法委員会が行われました。実はこの国際法委員会では同様の趣旨が採決されておる。この要点だけ読んでみますが、こういうことを言っております。「資源保護の措置に関して利害関係緒国の間にまだ協定のない場合、その沿岸国が資源保護の目的をもって交渉を行なっても相当の期間内に合意に達することができなかったときは、もしその沿岸国が自国の沿岸に隣接する公海資源生産力に特別な利害を持つものであるならば、適当と思われるいかなる保護措置をも講ずることができる。」これが国際法委員会で正式に採決になっております。もしこの国際法委員会の採決が正式になっているものであるとするならば、今度のソビエトがとった措置は、国際法上侵犯しておるものとは必ずしも断定できるものではない。むしろソビエト側は、この国際法委員会の決定に基いてこのような措置をとったということも考えられるわけなのです。そこで私はこれはあとで外務省にもいろいろ聞こうと思っておるのですが、外務省あたりは盛んに国際法上侵犯だ侵犯だと言っておるけれども、とするならば、先ほども高野参考人から話があったように、日本アメリカとカナダの間における漁業協定なんかは、明らかに国際法上一線を画しておるのです。いかに調印があったからとか承認を得られたからといっても、一方的に日本に押しつけられた条約ですから、これこそ国際法上の侵犯であると言わざるを得ない。そういう点からいって(「国会を通っているぞ」と呼ぶ者あり)それはあなたの親分の吉田という悪いやつがやったんだ。   〔「国会を否認するのか」と呼ぶ者あり〕
  34. 前尾繁三郎

    前尾委員長 静粛に願います。
  35. 岡田春夫

    ○岡田委員 こういう点から考えても、この国際法委員会の決定を見るならば、ソビエトの措置は国際法侵犯とは言えないと私は考えるのだが、この点はいかがですか。  それから時間があまりありませんから一緒に伺いますが、第二の点は、日本アメリカとカナダとの漁業協定というものについても、この際根本的に再検討する必要があるのじゃないか。先ほど高野さんのお話のように、サケマスとかオヒョウの漁についても日本乱獲だからと言われて押しつけられたのです。そういう点からいって、それ以外のいろいろな理由もあったでしょうけれども、そういうようなことでそちらの方には入れなくなったということでまた問題が起っているわけですから、こういう点についてもこの際再検討をする必要があるのではないか。資源調査についてはこういう点でも関係国と話し合いをする必要があるのではないか、こういう点も考えておりますが、私もいろいろ伺いたいのですけれども時間がございませんから、今の二点について御意見を伺います。
  36. 藤田巖

    藤田参考人 ローマ会議のことをお話がございましたが、ついででございますからちょっと申し上げておきたいのですが、ローマ会議で、両岸国の利益に関係をいたしまして、沿岸国に接続をする公海における資源保護策及びその管理は、その沿岸国にゆだねらるべきであるというような主張が、お話通りキューバ及びメキシコから提案された。それからもう一つ意見はノルウエーが言っている意見でございます。およそこういうふうな資源の育成措置については、あくまでも科学的に検討せられなければならぬ、その場合に沿岸国は、必ずしも科学的な価値判断についてほかの関係国に比して有利であるとは思わない、だから関係のあるものがみな集まって科学的資料を持ち寄って相談すべきである、どちらにしても公海における漁業資源の保存とうものは、関係国の同意なくしてその国民にそれを及ぼすべきものではない、こういうふうな意見がノルウェーから唱えられたのです。結局二つの意見が出まして、そうして採決は、ノルウェーは、かような問題はこのローマ会議の議題の範囲外だ、こういうふうな提案をいたしまして、それについて賛否をとったのです。そうしますと、範囲外だという意見が二十一、それからキューバ及びメキシコに賛成するのが二十、棄権したものが三です。そうして結局ノルウェーの意見が通ったわけです。ですから形はつまり箱囲外だという形で述べられましたが、結局公海における漁業の問題は話し合いによってきめるべきだという万が一票多いわけです。そのときにソ連はどういう態度をとったかと申しますと、ソ連は、アメリカ、カナダ、イギリス、日本及びノルウェー、イタリア、そういう国々と同じように、キューバ及びメキシコの態度に反対の態度をとったのです。そういうふうな態度をとったソ連が、このたびこういうふうに一方的にやってきたという問題については、どういう真意を持っているのかということをわれわれは疑っておるわけなのです。  それからもう一つ、国際法の連合委員会お話が出ましたが、お話通り、ジュネーヴの国際法委員会で、五月二十六日にそういうふうな公海制度についての意見が出ております。その中にお話のようにございますが、それでもやはりちゃんと書いてあるのですね。五条に、「資源保健の措置に関して利害関係諸国の間にまだ協定がない場合、その沿岸国が資源保護の目的をもって交渉を行なっても相当の期間内に合意に達することができなかったときは、もしその沿岸国が自国の沿岸に隣接する公海資源生産力に特別の利害を持つならば、適当と思われるいかなる保護措置をも講ずることができる。」ですからお話のあとのところはその通りでありますけれども、これについての話し合いが行われたか。つまりソ連資源保護の目的をもって交渉されたか、その交渉をして相当期間内に合意に達せられなかったか。そういうことなくしてやっぱり一方的にやるということは、国際法委員会の趣旨でもございません。ですからソ連はこれに忠実な措置をとってきておるとも思いません。  それからもう一点、日本アメリカの問題、これは実は私自身に責任のある問題でございまして、その当時いろいろ交渉はしたが、結局その当時の情勢としてはあれにまとまらなければならなかったのでございまして、決してあれで満足しておるとは思っておりません。非常に不満があるということも、私自信痛感しております。この問題は、条約期間はたしか十年でございますけれども、五年たてばその資源の保存、満限であるかどうかという状態について絶えず考究するようなことになっております。その期限がたしか来年でしたか再来年でしたか来るわけですから、そういうふうな機会に、われわれとしてはよく研究しておいて、それに対する主張を強硬に述べるべきだ、こういうふうに思っております。
  37. 岡田春夫

    ○岡田委員 私の伺ったのは、先ほどの五条の問題ですね、これは話し合いをするということが前提に立っておることはお話通りだと思う。それで先ほど申し上げたように、ローマの国際漁業会議で、ソビエト側の資料に基いて日本側話し合いをしましょう、資料の交換をしましょう、大体そうなっているのに、その後においても日本側としては進んでおらない。そこに問題があるのでははいか。それからもう一つは、何といいましても根本問題は、戦争状態が続いているわけですから、その話し合いをするにしてもなかなか簡単にいかないわけてすね。だから、やはりここで戦争状態の終結というのが重ねて問題になってくるのではないか。こういう点を私は伺いたいと思うし、向うとしてはそういう態度をとってきているだけに、日本がいかなる態度をとるかによって、これが決せられるのてはないか。そういう意味ではもっと強く政府側にも要求をしていただくことが必要なのではないか。こういう点をこの機会に御意見として伺っておきたいという点が一点。  最後にもう一つは、乱獲になる心配がないようになっているならば、こういう制限についても話し合いができるのではないかということを松本全権は答えているわけです。そのためにもあなたの方の会長の平塚さんは、今度の出漁に対しては自主的な制限をやってもいいということまで言っているわけですが、こういう点について何か具体的なお考えがあるならば、この点も最後に伺っておきたいと思います。  これで私終ります。
  38. 藤田巖

    藤田参考人 ローマ会議以後の話し合いが進まない原因日本側にあるというふうに私ども考えません。これば日本側がその話し合いをしなかったとも私は思わないわけです。いろいろの事情でそういう話し合い機会に恵まれなかったということが真相じゃないかと思うのです。それから平塚会長のおっしゃいました措置については、これは大日本水産会その他の公けの委員会では何ら討議されておりません。まだそういうふうなことは何ら検討されていない、こういうことであります。
  39. 前尾繁三郎

    前尾委員長 並木芳雄君。
  40. 並木芳雄

    ○並木委員 先ほどから両参考人の御意見を伺っておりますと、結局北洋漁業制限の問題は、日ソ交渉に圧力を加えることが一つの大きな目標であるということがはっきりしたのであります。私どもも全く同感でございまして、抑留邦人を帰さないということ、人質としておりますが、これなども悲憤憤慨やる方ないのであります。このたびはさらにそれに加えて魚を質にとろうとしておる。そういう意味において全く黙過できないのでございます。先ほど塩見水産庁長官が、今後の安全操業についてさらにソ連話し合いを進めたいと答弁しておりましたが、果してそれができるかどうか非常に心配しております。まして今度の制限においては、今まで、昨年度においても一億尾とっておったのに対して、それを四分の一の二千五百万尾に制限しよう、これなどはだれが常識で考えたってむちゃな数字であって、乱獲々々とさっきから言っておりますけれども、何億までとったら乱獲かということは、科学的に立証されるのでございましょうが、それは別としても、今まで少くとも一億尾、戦前は二億尾以上もとっていたのを、二千五百万尾に制限しようというそのこと自体が、もう常識では考えられないむちゃな申し出であると思っております。ところが、向うがそういう数字を示すと、実際日本が二千五百万尾をこえるかこえないか、それを計算するために、どういう手段に出てくるかわからないと思うのです。あるいは日本の漁船を拿捕して何尾とったか念のために報告しろ、そういうことはまだはっきりしていない。また日本だってそういう報告をする義務もない、公海で魚業するのですから。そうすると勢いそこにトラブルが起るおそれが多分にあるのであって、私は、出ていかれる漁業者のために、安全を期してこの際どうしても護送船団をつける必要がある、こう思っておるのです。やはりここまで用心をしていかなければ、あとからもし不慮の災いが起ったときにどうしますか。これはほんとうに心配なのであって、大日本水産会としてもそのことを当然お考えになっており、また政府に要望をされるべきであると思うのです。あるいはすでに要望されましたかどうか、まずこの点をお伺いします。
  41. 藤田巖

    藤田参考人 私ども日本の現在の国力を知っておりますので、わずかばかりのそういうふうなものがありましても、果してソ連にどういう効果があるものか、かえって逆の効果も心配されますので、やはりまる腰でとにかく出漁はします。
  42. 並木芳雄

    ○並木委員 次にお伺いしたいことは、日ソ交渉を早くまとめてもらうことが大切であるという御意見でしょうけれども、なかなかその力も背景もないし、この交渉は苦しい、こういう気持はたまたま日本政府の苦悩を表現しておるものとも私は拝聴したのであります。実際早くまとめたいとは思っておるのですが、特に領土の問題、南千島の問題でもって今デッド・ロックにぶつかっておることは御承知通りでございます。それで私どもはやはり漁業問題と抑留邦人引き揚げの問題は、日ソ交渉とは別ものである、これはむう交渉とは切り離して、別個に優先的に解決されるべき問題であるという主張に立っておりますが、ソ違側の政策としては、それを両方質にとりつつ交渉を有利に進めていこうという意図が現われておる。そこでつい皆さんとしては、また留守家族としても、苦しさの余り、領土問題なんかどうでもいいじゃないか、そういうものはどうぜ力のない日本としては、解決することは困難なんだからあと回しにして、実力でもできたら、そこで初めて領土問題は解決したらいいだろう、こういろ声が出てくるのも無理からぬ点だと思う。そこで私はこの際念のためお伺いしたいのですが、政府に早期妥結をしろと皆さんがむちうたれるのはけっこうなのです。しかし政府は一生懸命やっておるのですけれども、相手が無理難題を言ってきて、むずかしい場面になってきておる。そこで業界としては、今一番重要問題になっておる領土問題はあと回しにしても、たとい領土問題で日本が譲っても、この漁業問題その他のために早期解決をはかるべしというところまで御意見を持っておられるのかどうか、この際お尋ねをしておきたいと思います。どうぞお二人から……。
  43. 高野源蔵

    高野参考人 少くとも北海道に関する限り、道民の意見としては、領土の問題はあと回しにしても、この漁業問題並びに抑留者の問題は早期解決していただきたいという趣旨なのであります。ということは、経済価値から考えました場合において、領土問題は若干おくれましょうとも、この北洋の問題を解決しないことには、先ほど冒頭において私が申し上げましたように、数百億に達する非常に大きな損害であるから、北海道としましては、道民大会の決議もその通りになっております。領土問題はしばらくあと回しにしても、漁業問題、抑留者問題を早期妥結をしてもらいたいという信念を持っております。
  44. 藤田巖

    藤田参考人 領土問題につきましては、領土問題を最も強く考えている利害関係のあるのは漁業者なのであります。やはり漁業者が、かりにその領土が日本のものになりましたならば、一番経済的に利用する者は漁業者だ、こういうふうなことでそれには関心を持っております。しかしはがら現在の交渉の経緯その他将来のことを考えまして、やはりこの際は領土問題だといあと回しにしても、できるだけ早く日ソ交渉をまとめる線で考えて下さい、こういうことが私ども意見であります。
  45. 並木芳雄

    ○並木委員 私はあと政府委員に質問がありますけれども、あとの質問者がありますから、これで終ります。
  46. 前尾繁三郎

  47. 川村善八郎

    ○川村(善)委員 私は参考人藤田さん並びに高野さんに二、三お伺いいたしたいと思います。  両参考人は、日本は決して乱獲をしておるのではないということを、ある程度まで数字をあげてお話しされております。私も同感でございます。そこで、大体昨年母船式でとったサケマスは六千万尾から七千万尾と私は考えております。それから沿岸鮭鱒、さらに四十八度線以南の流し網漁業、さらに北海道の定置漁業等を合せましても、おそらく一億一千万尾か二千万尾でなかろうか、かように推定をしております。数字は取り上げる人によって若干は違っておりますけれども、せいぜい多く見ても一億二千万尾くらいのものじゃなかろうか。そうしますと、昭和十四年ごろには二億二千万尾、さらにソ連がとっておるものは五千万尾と推定いたしますと、二億七千万尾くらいになっておりまして、その半分以下であるから、乱獲でないということを申し上げることは決して不自然ではないと私に考えております。先ほど高野さんは一億五千万尾くらい日本でとっておるのじゃないかといったようなことを言われたように私は記憶しておりますが、それが間違いであったならば、正確な数字をあげていただけばけっこうでございます。  それからもう一つは、日本乱獲ばかりしておって、何ら繁殖保護をしておらないといっておりますけれども高野さんは、この問題について日本では一億以上の予算を出し、さらに協力団体が毎年二、三千万円金を出しておる。そうして孵化放流しておる。これも私知っております。大体私の聞いた範囲でありますと、四億万尾くらいのサケマス稚魚を放流しておる、こういうことになっております。ところがそのサケ北海道の定置漁業ではほとんどとっておりません。従って独航船なりあるいは四十八度以南サケマス漁業がとっておるということになるのでございますが、少くも四億万尾以上の孵化放流をしておるという場合を考えますと、一割でも四千万尾、二割新魚になってくると八千万尾ということに相なるのでございますが、孵化放流された場合に、一体どの程度に成魚になってくるかどうか。もちろんこれは定置漁業ばかりであると私は申し上げるのでありません。必ず北洋漁獲する場合にとる魚もございましようし、それから現在北海道の定置漁業には網はずれが相当来ておるということを聞いておりますから、結局北海道で放流しましたサケマスもあの公海でとられておるのだと思いますけれども、それらについてもしもっと御意見がございましたならば、承わりたいと存ずるのであります。  それから、弟三点は、国交調整とのからみ合いということを両者とも申されておるのでございますが、私もその通りに解釈しております。ただ問題は、この際私たちは漁民の立場からいってみまする場合には、領土をあと回しにしてもいいというようなことも聞いておりますし、率直に言いまして私漁民でございますから、その通り考えておりますが、択捉、国後の漁業経済の基準と、それから公海におけるサケマス漁業との経済価値の基準というものは、大体どのように見ておるか。との三点をまずお伺いいたしたいと存じます。
  48. 高野源蔵

    高野参考人 今お尋ねのうち、私に関連したものだけを申し上げます。先ほど一億五千万尾と申し上げましたのは、推定でありますが、ソ連で昨年漁獲した数で、日本では母船式によりますものが六千五百万尾、それから四十八度以南が三千万尾で合せて九千五百万尾。それに昨年は北海道におきまする鮭鱒の定置が非常に不成績でありまして、例年から見ますと大体五分の一くらい――的確な数字は持ち合せておりませんが、貫数にいたしまして大体百三十万貫程度、例年より約五分の一である。従いまして全部合せましても大体一億尾くらいではないかというふうに考えております。  それから領土の問題でございますが、これは択捉も国後も森林資源を除きますと大体漁業関係、水産関係資源が豊富でありますけれども、ただこれを今問題になっております北洋鮭鱒と比較して考えた場合には、ほとんど問題にならない数字ではないかと思います。ただしかしわれわれも北海道の漁民の一人として、早くあの島が返ってきて、あそこでまた零細漁民の沿岸の漁獲をやらしてもらうということは念願としておるのでございまして、経済価値からいいましたら比較にならぬほど、現在の建前からいうと少いのだということを申し上げます。
  49. 藤田巖

    藤田参考人 人工孵化いたしましたものでどのくらい帰るかというお話のようですが……。
  50. 川村善八郎

    ○川村(善)委員 帰るものもあろうし、沖でとられるものもあるだろう、この推定はどのくらいかということです。
  51. 藤田巖

    藤田参考人 これはまだはっきりした数字が出ておらないようでありますが、私どもの聞いておりますのは、大体北海道稚魚を人工孵化いたしまして一億尾放流いたしまして、回帰するものが四十六万尾、こういうふうな計算を三善さんとかいわれる方がしておられるということは承知いたしております。しかしこれはなかなかむずかしい問題で、正確なところはわからないだろうと思います。それからそのうちどういうふうに沖取りでとられるかということについては、まだデータもありませんので、正確なことはなかなか言えないのではないかと思います。
  52. 川村善八郎

    ○川村(善)委員 今藤田さんから大体一億尾のうち四十六万尾というような数字をあげられましたが、これは沿岸に来て定置漁業漁獲される数字だと私もそのように聞いておりますが、定置漁業に入る前に相当に流し網なりあるいは母船式漁業独航船にとられるものがあるのではないかということが考えられるということは、藤田さんもおそらくそう考えておられるだろうと思います。それは別としても、公海にあの通りラインを引いて、そうしてしかも二千五百万尾に制限したということについては、両参考人も不当である、私も不当であると考えております。  ところで実際問題として、あのラインの問題を早期解決をつけて、何とか妥協したいということは、おそらく漁業者も、野党の諸君も与党の諸君もお考え願っておると思います。しかしながら国交調整という問題も、漁業調整という問題もなかなか容易でない。私は決して楽観をしておるのじゃございません。今度のラインの問題は相当時間がかりますけれども、ことしの出漁はもう時間がございません。そこで一体あのラインの中で、どの程度にとらしてもらうならば今年の操業が成り立つかというこでございます。私はまあ大体八千万尾くらいあのライン内でとらしたならば、今年の操業は成り立つのじゃないかと思いますが、この点は藤田さんでもよろしゅうございますし、高野さんでもよろしゅうございますから、どの程度にとらしてもらったらいいかということを、どうかお答えを願いたいと思います。
  53. 高野源蔵

    高野参考人 これは非常にめんどうな問題で、なかなか数字的にはっきり割り切って申し上げることはちょっと困難であります。ただ四十八度線以南とのかね合いがありますので、端的に業界の希望するところはどのくらいかといえば、率直に言えば今、川村先生のおっしゃったように、八千万尾くらいとらしてもらえばよろしゅうございます、ということを言うくらいであります。
  54. 藤田巖

    藤田参考人 私は何尾とればいいかということは、これは非常に重要な問題でありますが軽々に何しないで、研究をしてやるべき問題だと思います。私は八千万尾も不服でございます。
  55. 川村善八郎

    ○川村(善)委員 ただいま申し上げたいことは、今問題とはちょっとかけ離れるかもしれませんけれども、一応四十八度線の流し網漁業が、百七十隻というものが独航船に繰り上ったのであります。でありますから私は総体的の漁獲とすれば、去年と大差なければ採算が成り立つのじゃないかという考えを持っておりますが、参考人はどのように考えておるかということが一点と、そのあとに釣漁業が入るということになって許可をしくことになれば、これらの流し綱とのからみ合いが、一体どういうふうになっていくかということの御判断がありましたならば、お聞かせを願いたいのであります。
  56. 高野源蔵

    高野参考人 四十八度以南の船の数は、大体半分くらいになります。せいぜい三十一年度では二千万尾程度ではないか。従って全体を通じまして一億二千万くらいとれば、本年度の母船式漁業と四十八度線の両方の計算がマッチしますので、そこで非常にめんどうな問題がありまして今、私が、八千万尾でいいと言ったところ、藤田さんから八千万尾では不服だ――これはもっともな話なのですが、大体しかし両方総合しますと、八千万尾ないし一億万尾が理想ですけれども、そういうところが最小限の採算点ではないかというふうに考えております。  それからはえなわの問題でございますが、これも非常にめんどうな問題でありますが、おそらくこれが相当許可されることになりましたならば、母船式漁業の方とはあまり影響がないかもしれませんが、しかし船のトン数が大きくなれば別ですが、どうせ海域制限するのでございましょうけれども、四十八度線の方と、場合によっては相当にトラブルができてくるような減少が、出てきはせぬかというようなことを心配しております。
  57. 前尾繁三郎

    前尾委員長 これにて参考人に対する質疑は終りました。  参考人各位には、長時間にわたりましていろいろ有益なる御意見を開陳いしていただきまして、まことにありがとうございました。委員一同にかわりまして委員長より厚く御礼を申し上げます。引き続き政府当局に対する質疑を継続いたします。北澤直吉君。
  58. 北澤直吉

    ○北澤委員 先ほど来両参考人から北洋漁業問題について詳細に伺ったのでありますが、この機会に私は両参考人の陳述に関連して、政府に伺いたいと思います。  先ほど来のだんだんのお話でわかりましたが、この北洋漁業の問題、特に今回の北洋漁業に関するソ連政府制限措置が、日本の経済、また関係漁民に重大な影響があることはよくわかるつもりでありますが、特に今回のソ連側措置は、明らかに国際法違反だと思うのであります。先ほど他の委員お話によりますと、これが国際法違反でないような、ソ連の態度がいかにも合理的であるようなお話があったのでありますが、私どもの見解から申しますれば、これは明らかに国際法違反であると思うのであります。公海のまん中に線を引いて漁業制限するというようなことは、どこから見ても明らかな国際法違反であると思うのであります。こういうことを日本が合理的と認めていくならば、これは四面海に囲まれた日本の将来の発展に、大きな関係があると思うのであります。実はこの間原水爆の実験に関連して、国際法学者に外務委員会においで願って、公海自由の原則について私ども相当詳しく聞いたわけであります。その当時外務委員の方々の質問はすべて、公海自由の原則日本の生命線である、こういうふうに強調されたのでありますが、きょうの参考人に対する質問を聞いておりますと、漁業制限公海自由の原則に反しない、こういうふうなことを言っておられるのであります。これはまことに自家撞着であると思うのであります。原水爆については公海自由の原則を主張し、漁業制限については他国の主張がいかにも合理的であるような主張をされることは、まことに自家撞着であると思うのであります。もし今回ソ連のやったような漁業制限が、国際法違反でないというふうな立場を日本がとりますならば、日本の水産業というものは私は壊滅すると思うのであります。世界のどこの国も、こういう漁業制限をしようという態度をとっておる国はありません。この際におきまして、日本がこれに同調するような態度をとることは、将来の日本の水産業の発展に大きな影響があると思うのでありまして、私ども公海自由の原則というものは日本の生命線であるという立場に立って、原水爆の問題ばかりではありまません、漁業の問題、すべての問題について、日本公海自由の原則を貫徹すべきであると考えておるわけであります。今回のソ連側措置は、明らかに国際法の違反でありまして、これは現に日本ソ連との間に国交があるかないかは関係のない問題であります。ソ連の方では日ソの間は現在は戦争状態であるからこういうことをやってもよろしい、というのはとんでもない。いかに戦時国際法であっても、公海のまん中に線を引いて、よその国の人は魚をとってはならぬというような戦時国際法はございません。現に日本は無条件降伏で降参をしておる。それを戦時状態であるからといって一方的に公海のまん中に綿を引いて、ソ連以外の国民は魚をとってはいかぬというのは、平時国際法からいっても、戦時国際法からいっても、明らかに国際法違反であると思うのであります。  そこでお聞きしたいのでありますが、もちろん日本としましては、なるべく早く日ソ国交を回復して、日ソ交渉をまとめて、これと関連してこの漁業の問題を解決するということは、もちろん私どもは賛成でありますが、どうしても国交回復の交渉がまとまらぬとするならば、これと関連のない現在のソ連の国際法違反の措置に対しましては、これと切り離してなるべくすみやかに解決をはかり、そうして日本の水産業なり、関係漁民の立場が救われるように、なるべく早く交渉を始めるようにしてもらいたいというのが私どもの希望であります。この北洋漁業の問題、特に今回のソ連の一方的な国際法違反の措置を、日ソ交渉と関連をして、日ソ交渉ができなければこの問題も解決できないというようなことは、これはソ連の国際法違反を日本が認めることになるわけでありまして、私どもはこういう議論に対しましては反対であります。でありますので、私ども日ソ国交回復の問題と切り離して、当面の問題であります今回のソ連の一方的な国際法違反にわたる漁業制限措置に対しまして、政府はこれを早急に措置をとるために一体どういう考えを持っておるのか、この点を伺っておきたいと思います。
  59. 法眼晋作

    ○法眼政府委員 お答えいたします。ただいま御指摘の点に対しましては、われわれといたしましては、一方ロンドンにおきまして松本全権がおられます間は松本全権を通じまして、そのあとを西大使を通じまして、ソ連側に対して日本側の立場を強く主張しておるわけであります。同時に、他方この問題に対しましては、日ソ双方があの地域における魚族を一方保存しつつ、他方両国が最大の生産性を持続的に上げ得るということに関する実際的措置をとることにはやぶさかではないという趣旨の申し合せをいたしまして、目下先方の回答を待っているという状況でございます。
  60. 北澤直吉

    ○北澤委員 今回のソ連措置は、ソ連側の言うところによると、魚族資源の保護にある、こういうお話でありますが、これにつきましては、先ほど来の質疑応答によりまして、魚族保護のためにいろいろ制限をするのは、関係国の間に協定がある場合にはそれによってやるのだが、協定がない場合には一方的にはできないというふうなことになっているわけであります。そうしてソ連の言う理由が、漁族資源保護のためにこういう措置をとるというのならば、こういう問題について、日本ソ連との間に話を始めるということについて、ソ連が反対する理由はないと思うのであります。向うの方では、日ソ国交ロンドン交渉に引っかけてこの問題を考えているのでありますが、もしソ連が誠心誠意魚族資源保護のためにこの措置をとるというのならば、関係国との間に話し合いをするということにつきまして、ソ連は何らこれを拒否する理由がないと思うのであります。こういう点につきまして、もしほんとうソ連の意向が漁族資源の保護ということならば、その立場を日本も額面通り受け取るのであります。この意味におきまして、日本協力して相談したいということで、この問題についてソ連の回答を促す、またソ連日ソ国交関係なくこの問題は交渉ができないというのならば、これは明らかにソ連がこの問題を切り札に使って、日ソの交渉に制約を加えるということになると思うのであります。もちろんソ連の真意はわかりませんが、もしほんとうソ連魚族資源の保護という立場であるならば、日本の交渉しようという立場に対して、全然拒絶する理由はないと思うのでありますが、この問題に対して政府考えを伺いたいと思います。
  61. 法眼晋作

    ○法眼政府委員 この点につきましては、まことに御同感でございまして、さような考え方からソ連側に対して話し合いを進めておって、その返答を待っておるいう段階でございます。私は魚族資源の維持、そして両国生産を上げるということは、何人もこれは同意すべき筋のものであると考えておりますので、目下政府は先方の回答を催促しており、またその回答を待っておる、こういうことでございます。   〔「誘導尋問はするな」と呼ぶ者あり〕
  62. 北澤直吉

    ○北澤委員 先ほど来、他の委員から誘導尋問に類する質問がありまして、この北洋漁業の問題は、日ソ国交が回復されなければ解決されぬだろうというふうなことで、だいぶ質疑答があったのでありますが、それに関連して、北洋漁業の問題と千島、日本の領土の問題につきまして、その経済的価値がどうのこうのという話があったのであります。もちろん私どもは、この領土問題についてもそれに関連する経済上の立場につきまして今日重大な関心を持っております。それは領土問題は経済問題ばかりではありません。日本の国防上にも関係しますし、民族感情にも関係します。そういうわけでありまして、この領土問題は単なる経済上の価値からばかり判断すべきでなくて、日本全局の安全保障の問題、あるいは日本の国民感情、民族感精という問題を考えてやるべきでありまして、単なる経済上の価値のみを考えて、領土問題はあと回しでよろしい、北洋漁業の問題の方が経済上の価値が多いから、まず北洋漁業の問題を解決するという議論は、私どもは賛成できないのでありますが、一体政府はこれについてどういう考えを持っておりますか。この点を伺って、私の質問を終ります。
  63. 法眼晋作

    ○法眼政府委員 お答えいたします。この問題につきましては、政府は、領土問題を含む日ソ国交再開の問題はそれは国交再開の問題である、しかしながら緊急の漁業の問題はそれとは別個の問題として今取り扱う措置をとっているわけでありすす。
  64. 前尾繁三郎

    前尾委員長 戸叶里子君。
  65. 戸叶里子

    戸叶委員 私は大臣がお見えになったときにゆっくり伺いたいと思いますが、一、二点だけお伺いしたいことは、先ほどの参考人意見を伺っておりましても、結局国交調整、国交回復を早くしてもらって、そうしていろいろな問題を解決してもらうよりほかないというようなことを言われました。そうしてただいまの北澤委員の誘導尋問で、結局この漁業の問題は別個の形で何とかする、こういうふうにおっしゃいましたが、ただいまの御答弁を伺っておりましても、ソ連の方に申し入れをしても何か返事がこない、こういうふうな御答弁でございましたし、それから先ほどの参考人の御意見といたしましては、国交回復がまず必要だけれども漁期を控えて緊急な事態に直面して事態収拾措置を早急にとってもらいたい、それも民間代表というよりも、むしろ政府間の交渉でやってもらいたい、こういうような御希望を述べられているのでございます。そこで、日はどんどんたっていってしまいますので、漁業の問題は別にするとおっしゃっておりましても、漁期は迫ってくるので、何かの形でこれを解決しなければならないと思います。そこで、水産庁の長官が来ておられますが、長官の方からでも、一日も早くこの日ソ国交を回復するために、今休会になっている会議を再び開いて、早くこの問題を解決するようにということを外務省なりに要望しなければ、これはなかなか解決しないのじゃないかと思いますが、水産庁長官はどういうふうにお考えになるでしょうか。
  66. 塩見友之助

    ○塩見政府委員 ただいま法眼参事官からお答えのございましたように、水産庁の方といたしましは、外務省の方に何らかの形で漁業話し合いのできる機会を作ってもらいたい、こういうことで、現在ロンドンにおいて西大使のところで交渉中でございますので、ただいまそれを行っているという状態でございます。
  67. 戸叶里子

    戸叶委員 どのくらいお待ちになっていらっしゃいますか。
  68. 塩見友之助

    ○塩見政府委員 今交渉中でございますので、その期間その他は、これは当然閣議その他、われわれの段階ではないところできまるものと思っております。
  69. 戸叶里子

    戸叶委員 結局これは大臣にお伺いしなければならないと思いますので、大臣がお見えになったときに伺いたいと思います。  条約局長に一点伺っておきたいと思います。先ほども水産界の方々のお話で、日米加漁業協定日本にとって非常に不合理なものであるということはお認めになっておられたようで、そしてこれは改訂したいというような御希望も持っておられますが、これに対して条約局長はどうお思いになりますか。来年の五年という期限に何らかの方法を考えるというよりも、むしろ来年を待たずに今からでも意思表示をするという必要があると思いますが、条約局長はいかなるお考えですか。
  70. 下田武三

    ○下田政府委員 日米加漁業条約は、先ほどの藤田参考人か、実は折衝に当られたことで、非常に奮闘されてあそこまでこぎつけた、当時の情勢におきましては、私はベストの条約だったと思っております。しかし日本側としましては、日本側の主張、希望があるわけでございまして、条約の定めるところによって、再検討の時期が参りましたならば、当然その機会をとらえまして、日本側の要求を提出して、なるべくそれに沿う線に持っていくという努力は、当然いたさなければならないと思います。
  71. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますと、今の日米加漁業条約というものは、日本の立場から見ても、必ずしも合理的ではないということを、はっきり認めていると了解していいわけでしょうか。なぜかと申しますと、今後ソ連との間の漁業協定ということも考えられましたときに、当然またこの日米加漁業協定というようなものも持ち出されないとも限りませんので、この点を一応確かめておきたい。
  72. 下田武三

    ○下田政府委員 日米加漁業協定に対します日本側考え方は、経済的の角度ではございません。経済的の角度から申しますと、現日米加漁業協定のもとで日本側がとり得る魚類というものは、経済的には私は十分のものをとっておると思うのでございます。むしろ主義上の問題であります。東経百七十五度という線を大洋に引きまして、それから日本側にとって一定の魚類についての制限を課す。そういう主義上の問題でございます。しかし将来の日ソ間の漁業協定がどういう線になるかわかりませんが、日本側としてはやはり主義上の問題と経済的の問題とあるわけでございます。そこでソ連側の、先ほどの新聞報道によります点は、主義上と経済的の両面から、日本側としては非常に困るわけでございまして、日ソ漁業交渉が始まりましたならば、やはり両方の角度から、日本側の主張というものはいたさなければならないというように考えております。
  73. 前尾繁三郎

  74. 穗積七郎

    穗積委員 実は最初にちょっと申し上げて、委員長に聞いておいてもらいたいが、本委員会においては、外務大臣が土曜日から病気になりました。やむを得ざる事情でございますが、一方この問題は緊急でございますから、本日参考人を呼んで審議を進めよう、そこで農林大臣の出席をぜひ要求いたしておいたのでございますが、昨日来どこへ行っておるかわからぬ、おそらく平塚へ行ってとまったのだろうということで、先ほどから農林省の秘書官または連絡員を通じて、早急にここに来てもらうように要望している。きょうはホリディではなくて、大臣としては当然執務すべき義務のある月曜日であります。ところがいまだに所在がわからぬというのが実情でありまして、所在がわからぬからいつ出られるかもわからぬ。これでははなはだわれわれとしては不満でありますから、委員長を通じて、一つ農林大臣に警告を発しておいていただきたいと思います。従って両大臣に対する質問は、もしあとできるならば農林大臣にしたいし、できない事実が生じて参りましたならば遺憾の意を表して、次の機会にぜひ私は質問いたしたいと思います。  そこで事務的な問題について、長官または両局長からお答えいいただきたい問題にしぼってお尋ねをいたします。まず第一にお尋ねいたしたいのは、実はこの問題は非常な政治性を持った問題であることは、申すまでもございません。ところが松本全権は、新聞社の座談会によりますと、政府代表ではなくて民間代表、すなわち水産界代表としてやるならば、その方が有効であり、しかもなおかつその交渉の可能性があるということを発表しておられるのでございますが、この真偽は、水曜日に松本全権に出ていただいて、実はお尋ねをするつもりでございますが、もしこのことが真であると仮定いたしますならば、政府は一体どういうふうにお考えになっておられますか。先ほど参考人意見をお聞きになった通り、水産界としては民間代表を送って交渉すべきことが不適当なように思うので、そういうことは考えておらぬということを言っておられますが、その間の判断に食い違いがございます。外務省は一体水産界の意見をおとりになりますか。または松本全権のとられた、民間代表による交渉の方式をもお考えになっておられますか。その点をまず第一にお尋ねいたします。
  75. 法眼晋作

    ○法眼政府委員 お答えいたします。本問題につきましては、先ほど北澤委員の御質問に対してお答えしました通り政府は一方、主義上の問題は主義上の問題、しかしながら実際的解決をはかるということに努力をいたしておるわけでございます。この中にはあらゆる場合が含まれるわけでございまして、たとえば民間人の話し合いあるいはそれがいかなければ政府間の話し合い、両方含むわけでございまして、この問題は相手のあることでございますから、こちらから、これでなければいかぬとか、これがいいということはきめてかかるわけにはいきませんので、さような観点から、可能性を考えてやっておるわけでございまして、御指摘の松本全権の話とまた先ほどここで伺いました参考人お話というものは決して矛盾するものではないと、かように考えておるわけでございます。
  76. 穗積七郎

    穗積委員 私の聞いているのは、こういう場合があり得る、こういう場合があり得るということを抽象的に形式的論理上聞いているのではございません。今日あなた方は情報をとり、こういう両国間の問題を解決しなければならない責任のある執行部の責任者でございます。そこで相手がとって参りました態度とねらい等についてどういう判断をしておられるか、民間交渉の可能性ありという判断をもって、その場合にはそういうこともやってみたいと思っておらるるのか、民間交渉の余地はないと、われわれはもうすでに情勢判断をしておるのですが、外務省は、あるならばやるということでなくて、一体どういう現実判断をしておるかという、情勢判断を聞いているのです。
  77. 法眼晋作

    ○法眼政府委員 お答えいたします。私はこの問題は実際的に解決しなければならぬというわけでありますから、そこで日本側からきめてかかるわけにいかぬ。しかしながら一方実際的の問題のときには、相手の情報を正確にキャッチしなければいかぬということは申すまでもないことでございます。がしかしながら、先方がどう出てくるかということも、これはまだわからぬわけでございます。従いまして、ロンドン交渉におきましては、そういった両方の場合を想定し、そういった意味の提案をしておるわけでございます。さように御承知を願いたいと思います。
  78. 穗積七郎

    穗積委員 それははなはだ不十分でございまして、その問題は私どもは、まだそういう認識に立って日ソ交渉をやっておるから、こういうことになっちまうのだと思うのです。しかしこれはあなたの、しかも松本全権発言発言というよりは情勢判断に対する批判になりますから、あなたとしてはお答えしにくいであろうと思うから、これは留保して、大臣にお尋ねすることにして、前に進みたいと思います。  政府間で交渉をするということを本筋として業界も期待するし、われわれもそれを期待いたしておりますが、その場合においては、先ほど北澤委員からお話がありましたように、公海自由の原則侵犯ということを振り回して交渉すべき問題ではなくして、かの国の態度は、公海の自由を禁止してここで航行漁業禁止したということではなくて、両国漁業の利益のために、魚族保護の立場に立って、漁業制限をしなければならぬのではないかということを提案しておるのであって、原則が違います。従っていたしました制限の、たとえば特に問題になりますのは、捕獲量でございますが、二千五百万尾という制限額が多過ぎるか少な過ぎるかという問題については、これはもちろん討議すべき余地が、私どもは先ほどお話を伺って十分推測がつくのでございます。そういう問題としてわれわれは魚族保護の立場に立って、魚族保護のことであるならば、公海自由の原則とは別に、これは両国漁業の利益のために、そちらから言われなくとも、こちらでも考えておることなんだという共通の立場に立って話を進めるべきであって、魚族保護については、将来の両国の利益のために、当然われわれも十分考えておるという立場で交渉に入るべきだと、私はそういう問題としてこの問題を理解して交渉に当るべきだと、まず第一に原則的に思いますが、所感はいかがでございますか。
  79. 法眼晋作

    ○法眼政府委員 この点は先ほど私が御説明した通りでございまして、主義上の問題は主義上の問題、実際的解決は実際的解決ということで、ただいま穗積委員の御発言のような趣旨をもって交渉しておるわけでございます。
  80. 穗積七郎

    穗積委員 次にお尋ねいたしますが、政府交渉を始めます場合に、向う側から、もし東京の元代表部を通じて話し合いをしてもらいたいという話があったら、外務省はこれをお受けになりますかどうか、お尋ねいたしたいと思います。
  81. 法眼晋作

    ○法眼政府委員 これはそういうことになった場合に、あらためて研究すべき問題でございまして、現在あらかじめ仮定を設けて議論することは避けたいと思うのでございます。
  82. 穗積七郎

    穗積委員 先般の新聞によりますと、与党並びに政府の幹部の間においては、正式な閣議決定であったとは私は理解いたしませんが、たといそういうような提案があったといたしましても、その場合においてはこれを特殊な事例としてそれに応じようという話し合いをされたということが、新聞報道を通じて発表されておるわけでございますが、その事実はございますかどうか。
  83. 法眼晋作

    ○法眼政府委員 御指摘の新聞報道は承知いたしておりますけれども、いかなる意味合いでこの新聞の記事が書かれたかということについては、私はこれを補足するにはなはば苦しんでおる次第でございます。
  84. 穗積七郎

    穗積委員 今のこの問題に対するあなたの御意見は、あなた個人の御意見であるのか、外務省として決定した御意見であるのか、その点を伺っておきます。
  85. 法眼晋作

    ○法眼政府委員 御指摘の新聞の記事は、外務省として決定した意見ではございません。新聞が一定の推測のもとに書いたのだろうというふうに、私は推測いたしておるわけであります。
  86. 穗積七郎

    穗積委員 これは水産界の意見としても、そういう形式にとらわれないで、実質をねらって話し合いを願いたいという要望をお聞きになった通りでございます。われわれもその方が妥当であると考えますから、その点は要望として申し上げておきますから、上司にもお伝えになって、そういう方法をおとりになることを要望しておきます。  次にお尋ねいたしますのは、そういう交渉に当った場合に、一体どういう方針をお持ちになっておられますか。どういうことを交渉の内容として、議題として、しかもその議題に関するこちら側の要求内容はどういうことであるのか。あるいはあなた方の事務当局ですから、お尋ねいたしますが、水産庁と外務省との間においてはすでにそういうような折衝といいますか、連絡協議をお進めになっておられるかどうか、伺っておきます。
  87. 法眼晋作

    ○法眼政府委員 この問題につきましては、私は常に水産庁の長官と話をいたしております。しかしながら、その話し合い内容はどうであるか、あるいは具体的にどう措置をとるかということは、私はここで述べることをしばらく差し控えさしていただきたいと思います。
  88. 穗積七郎

    穗積委員 それでは私も具体的にお尋ねいたします。向うが今度とりました、公海の自由を禁止するという意味ではなくて、魚族保護を目的とする本漁業期における漁業制限措置、それを全面的に撤廃して、お互いに自由補獲を要求されるつもりであるのか。魚族保護の原則は了承されて、その立場に立って、向う側がとった水域または漁獲尾数、こういう制限の具体的な内容について、当不当を論議されるつもりでございますか。そのいずれを交渉に当ってお取りになるつもりであるか、それを伺っておきたいと思います。そのくらいのことは、当然もうこの問題が差し迫っております以上は、両省の間で話し合いが進んでおることは当然でなければならぬと思いますから、伺うのでございます。
  89. 法眼晋作

    ○法眼政府委員 この問題につきましては、ロンドンで目下先方の回答を督促いたしております。その先方の返答を待って、私は実は考えることを申したいと思いますので、その前には一応具体的な問題をここに展開することを、私としては差し控えさしていただきたいと思います。
  90. 穗積七郎

    穗積委員 水産庁長官は、今申しました通り公海自由の制限の問題としてではなくて、魚族保護の立場に立って向うが問題を提案しておるわけでございますから、魚族保護につきましては、かの国が、または他の国が言うまでもなく、わが国の漁業の将来のためにも、当然日本自身が考えなければならぬ点だと私は思う。特にそういう立場に立って、この問題を考えますならば、むしろ外務省よりもあなたが直接の責任者であるというふうにも考えられるわけでございますから、あなた自身としては、その問題についてのお考えがあろうと思うので、この際伺っておきたいと思ういます。
  91. 塩見友之助

    ○塩見政府委員 ただいま法眼参事官からお答えの通り、いろいろの場合を予測して、検討はいたしておりますが、まだそういう点について相談がまとまっているわけでもございませんので、この際は答弁は差し控えさしていただきたいと存じます。
  92. 穗積七郎

    穗積委員 実は賢明なる外務省の方に、釈迦に説法かもわからぬが、申し上げます。返事はいまだないわけです。その返事があるかないかということについては、他にもいろいろな条件がございましょうが、日本側の態度にもよるわけであります。このことについては、平塚さんはさすがに直接の当事者でございますから、多少その問題の所在を察知しておられると思うのですが、日本公海自由の原則を侵すものであるというような観念論を振り回して当る態度の場合と――そうではなく、公海自由の原則を抑圧するという態度でなく、魚族保護の立場に立って、そういうことであるならば、わが方からも当然進んで考えなければならぬ問題だという感度を明らかにすることによって、初めて向うがこの問題を国交回復の問題とは別個に切り離して、この問題の交渉に応ずる可能性が出てくると思う。そういう意味でこの問題は、こちらがどういう態度をとるかということが非常に重要だと思う。話し合いについて、公海自由の原則だから、全面的に閣僚会議の決定を撤廃しろという態度で臨もうという態度をこちらが示すならば、おそらくやるならやってみなさいということで、向うはこの漁期に差し迫りましても返事をよこさぬでしょう。そうでなく、相手方のとった措置が無法な方法ではなくて、制限内容については問題を残しておるけれども、これは魚族保護の立場に立った合理的な提案であるならば、われわれも当然考えておることであるから、その立場に立って話し合いをしよう、そういうつもりで話し合いをするつもりだ、ただし内容については、ソビエト閣僚会議が決定したこの制限内容については、われわれが持っておる今までの資料によっては、合理的なものとして納得するわけにはいかぬという態度を、もし事前に明らかにするかしないかということが、向うがこの問題について交渉に応じようという返事をよこすかよこさぬかに、一つかかっておる重要な条件だと実は考えるわけです。だからこそ、この問題を私は事前に質問しておるのであって、単に観念的に問題をほじくり出して聞いておるのではございません。およそ一切の議論というものは、現実に起きておる事態に対する正確な判断によって、国際法上の、条約上の議論もしなければならぬし、こちらの態度もきめなければならぬ。この態度をきめることが、この問題を解決するための事前の糸口であるとすら考えるので、そのことを聞いておりますから、相手の出方を待ってなどという、そんな甘っちょろい考え方を持っておったのでは、行き詰まることは当然でございます。そういうことをやっておるから、常に向うに先手をとられて、こっちが行き詰まってしまってから、頭をかかえて、何とかしなければならぬということになるのでございますから、法眼参事官、賢明なるあなたのセンスと聡明なる英智をもって、そのくらいのことがわからぬはずはないので、もう一ぺん答弁をわずらわしたいと思うのです。
  93. 法眼晋作

    ○法眼政府委員 お答えいたします。この点につきましては、すでに日ソ交渉における漁業条項の話し合いの際にも、あるいはその後における西大使とソ違側との交渉においても、たとえば魚族保護の具体的措置ということを含めて、日本の意思はわかるはずでございます。何らの疑いがないと思います。
  94. 穗積七郎

    穗積委員 だから私は忠告申し上げておきます。この問題を公海自由の原則の観念論を振り回し、あるいはこの措置を不当なることとして全面的撤廃を要求するような態度を政府が明らかにされるならば、この問題はおそらく解決しないでしょう。向うはそのことに返事をよこさないという見通しをわれわれは立てておる。そうしたときには、おそらくこの切実なる経済問題、生活問題は、政府の手によってますます困難な事態に追い込まれることになる。その責任はあげて日本外務省にあるという結果に至ることを警告申し上げておきます。この問題は今申しました通りに、重要な高度な政治性を持った問題でございますから、幾たびもくどくあなたに一々答弁しろということを求めるのも酷のように思いますから、大臣の出席を待ちますが、今あなたが最後にお答えになった、魚族保護の原則についてはこれを了承しておるということをもって、私は私の申し上げたことをあなたも同感として認識されることを期待いたしまして、私は次に進みます。  そこであなた方がそういうふうにお考えになる。すなわち魚族保護の措置である、魚族保護については、こちら側のむしろ自主的に、積極的に考える用意があるということで、あなた方は問題を把握しようとしておられる。ところが不幸にして、与党の頑迷なる諸君、または政府の閣僚の、問題を認識せざる無知のいたすところによって、そういうことがもし実行できないで、両国政府間における話し合いが妥結しないままで、出漁期に臨んで、日本漁業者の諸君が、背に腹はかえられないということで、予定通り危険を冒してまでも出漁されようとされる場合には、それをあなた方は見ておられますか。あるいはどういう措置をおとりになるおつもりでございますか。これは特に水産庁長官にお尋ねするのが適当かと思いますが、水産庁長官はどう考えておられるか。それによって外務省はどういう判断をされますか、次にお答えをいただきたいと思います。
  95. 塩見友之助

    ○塩見政府委員 ただいまは話し合いをとにかく進めろということが、漁業者の安全操業の上から見ても好ましいし、また北洋の問題について将来とも話し合いを進めていくというふうな方向が望ましいと感じておりますので、その方向にせっかく努力中なので、その結果を待ちませんと、ただいまの御質問にはちょっとお答えできるようなことにはなっておりません。
  96. 穗積七郎

    穗積委員 それではその問題は重要でございますから、今のお立場を了承いたしまして、もう少したってから重ねてお尋ねすることにいたしましょう。  最後に水産庁長官にお尋ねいたしたいと思いますが、高度な技術を持った母船式漁獲方法は、関係者の方に伺いますと、魚群が回遊をするルートがあって、そのもとを押えてしまう結果になるので、先ほど岡田委員が指摘したように、成熟したもの以外のものまで押えてしまうような結果になる。そういうことで漁獲量はふえましょうが、そのかわり乱獲になる、魚族保護の立場から見て思わしくない点があろうと思う。そこで一方には定置漁業の方式があろうと思う。これはもとよりいずれかを一方的にとって、いずれかを一方的に捨てるということではなく、並行すべきだと思うが、現在の段階においては、先ほど来話があったように、外交上の、今の未解決の立場から、母船式によらざるを得ないという立場になっているわけですが、そういうことについて魚族保護の立場からも定置漁業の方がいい。さらに問題は、魚族保護の立場のみならず、もう一つはこれに参加して生活を立てている漁業従業員の均霑する数から見ましても、やはり母船式より定置式の方が、失業問題なり生活問題をかかえている現在の日本漁業界の実情からいたしますと、いいようにわれわれは実情を承知しておるわけです。もとより私どもは専門家ではございませんから、専門家である長官に所感を伺うわけでございます。あなたはどういうお考えを持っておるか、現状に照らして率直にお答えをいただきたいと思います。
  97. 塩見友之助

    ○塩見政府委員 その問題については、必ずしも定置網漁業の方が、資源保護上いいとかどうとかという結論にはならないと思います。いずれにせよ資源上溝限というふうな状態になっておりますれば、それは漁獲高なり網目なり漁期なり、いろいろな点について適当な規制をやって、乱獲にならないようなやり方をやるという形であればいいわけでございまして、経済的な問題として、過去においても、河口から二キロなら二キロ離れなければ網を張ってはいかぬとか、そういうふうないろいろの各種規制をやっております。網と網との距離等においても何キロは必要だという形で、漁獲の規制をやっているものもございますので、定置網漁業だから乱獲にならないということも言えません。むしろ産卵場でとるのでありますから、乱獲の可能性は、定置網漁業の方が多いわけです。しかしながら規制の方法は、定置網漁業においても、沖取りの母船式漁業においても……(穗積委員母船式の方が規制がテクニカルに困難じゃありませんか」と呼ぶ)その点については、やり方次第でもってできると信じております。それは漁期の点、網目の点、ことしにおいてもある程度のことはやっておりますが、それは可能であります。
  98. 前尾繁三郎

    前尾委員長 岡田春夫君。
  99. 岡田春夫

    ○岡田委員 いろいろ伺いたいのですが、私もちょっと予定があるので要点だけを伺いたい。まず第一点は水産庁長官に伺いたい。先ほどから穗積委員がいろいろ伺っているように、今日の段階としては、向う側との交渉が行われておらない。そこで四月三十八日には出港すると言っている。もしどうしてもそれまでに話し合いができないで、向うにそれぞれの十九船団が出て行って、それによって損害の起った場合において、この十九船団を編成していくようなことの指示を与えたのは農林省であるからして、日本政府であるからして、その限りにおいて、その損害その他に対しては一切の責任を政府が負うべきであると私は考えるのだ。しかも先ほどの参考人が再三言っているように、きょう初めてこういう問題を知ったのではなくて、去年もこういう注意の勧告があり、しかも昨年の五月には国際漁業会議においてさえ注意の勧告があったのに、この問題についての話し合いができないで出港したとするならば、その損害の補償は一切政府が負うべきであると私は考えるし、また当然その関係業者もさように考えておられると思うが、これについてどのようにお考えになっておりますか。
  100. 塩見友之助

    ○塩見政府委員 この種の問題につきましては、今まで政府が補償をしたという例はございませんが、政府としては、できるだけその損害の起らないように、またそれによって生じました漁民なり漁業者の方々の生活上の苦しい問題であるとかなんとかいう問題に対しては、過去におけるこの種の例等によりまして善処して参る、こういうことでございます。
  101. 岡田春夫

    ○岡田委員 それではそういう程度の今までのような問題としてこの問題を長官は考えておられるわけですか。今まで程度のものだから、今まで程度の損害の補償でいい、今度の問題については話し合いはないけれども、それについて今まで程度の扱いをすればいいんだ、こういうようなお考えで扱っていく、こういうように御答弁になったと解釈してもいいですか。
  102. 塩見友之助

    ○塩見政府委員 今まで類似の例がございますので、そういうふうな例等も勘案して善処していきたいということであります。
  103. 岡田春夫

    ○岡田委員 事務当局ですから、今後の政治問題に関連するようなことは伺いません。しかしあなたの話を聞いていると、きわめて無責任だと思う。今ロンドンにおいて話を上合っている、その結果については外務省に聞いて下さい、外務省でなければわかりませんと言うけれども、しかし日にちは毎日のように進んでいって、四月二十八日はあと三週間たらずだ。この日にちの間にその話し合いができなくて、たとえば二十日になって話し合いをやりましょうと言った場合に、それに対してあなたは、それで話し合いを始めて二十八日までに話し合いをまとめるという自信があるか。どうですか。この点を伺いましょう。
  104. 塩見友之助

    ○塩見政府委員 それらの問題については、話し合いが全部済んでおらなくても、話し合いさえ始まれば安全操業を確保する道はあると私は考えております。
  105. 岡田春夫

    ○岡田委員 この点についても、もっといろいろ事務当局に伺いたいが、大臣に伺うべき問題だと思うので、それは省略いたします。それでもう一点問題になるのは、先ほど私が取り上げましたジュネーヴにおける国際法委員会の問題です。先ほどお聞きのように、国際法委員会の決定によると、話し合いのできなかった場合、現在進めておっても合意に達することができなかった場合において、魚族資源確保のためには沿岸国がそれに対する適当な保護措置をとることができる、このことがすでに決定されていることは、これは外務省としては御存じだろうと思いますが、御存じでありませんか、どうですか。
  106. 下田武三

    ○下田政府委員 ジュネーブの国連国際法委員会で、第八回までやっておりますが、御指摘のような漁業の規制に関する条約案というのができておるのはよく存じております。また非常な関心を持って検討いたしておりますが、これはまだ条約になったわけではございませんので、国連総会に報告するための資料ができたという段階でございます。
  107. 岡田春夫

    ○岡田委員 もちろんこれは国連総会で正式な承認を得なければそれはできないということは私はわかっております。しかし国際法委員会でそのような採決が行われて、採択されているということは事実なんだ。その限りにおいて、この問題が、先ほど藤田参考人からお話があったけれども、確かにソビエト側もこういう形で話し合いをしない前にこういう一方的な措置をとるということはいけないという意味で、アメリカあるいはカナダ、ノルウェーとともに、いわゆるこのキューバの提案に対して反対をした、これは私も知っている。知っているけれども、国際法委員会でそのような方向がきめられて、しかもこの条項の第五条においては、前段において話し合いをするのだ、話し合いをし得なかった場合にはどうするのだということが問題になっているので、話し合いをするということについては、日本側が積極的な態度を示さないのだ。先ほどだって法眼参事官の話を聞いていると、ロンドンの交渉においても資源の問題についてはどうのこうのと言っているが、それじゃどういう交渉をロンドン交渉においてやったのですか。資源の問題の内容について松本全権があの日ソ交渉の最中において交渉したのだというなら、どういう内容を話したのですか。その点を御答弁願いたい。
  108. 法眼晋作

    ○法眼政府委員 先ほど御説明いたしましたように、これは今の問題で話し合いをしようということを提案しているわけでございます。話し合いをこれから始めるわけでございます。その始めましょうということを向うに通告しておる、こういうことでございます。
  109. 岡田春夫

    ○岡田委員 それでは私はお伺いいたしますが、話し合いをすることについて、たとえば最近外務省の態度としては、松本全権の話を総合して、西大使の方から話がなくてドムニッキーの方から連絡がある場合があるかもしらぬ、そういう場合には、ドムニッキーについて外務省としては進んでこの問題に関連しては話し合いをする用意があるということを発表しているのだが、しかもその場合の条件として、ドムニッキーが正式の代表であるということ、それからもう一つ漁業関係に限るという暫定協定をとるならば、話上合いをするという腹があるのだ、こういうように外務省が言っているそうだが、一体そういう事実があるのかどうか。
  110. 法眼晋作

    ○法眼政府委員 この問題につきましては、先ほど積委員の御質問に対してもお答えいたしましたように、その記事は新聞が、何を根拠にしているか知りませんけれども、一定のわれわれのわからぬ根拠に基いて推測しているのでありまして、新聞の報道でございます。御指摘の点は、これは先方の今後の回答を待機しておる、話し合いをしようという回答を待っているわけでございまして、そういう場合には、推測をしてものを言わぬということに、われわれはきめておるわけでございます。
  111. 岡田春夫

    ○岡田委員 私の聞いているのも回答の問題なのです。回答がドムニッキーを通じてきた場合にはどうなるかということです。その場合にはそれではそれは受け取らないのですか。
  112. 法眼晋作

    ○法眼政府委員 これはすべて先方の回答を待って、しかる後に日本側で決定される問題でございまして、先方の回答がある前に、一部の新聞がわからない根拠に基いて書いておるごとき推測はいたさない、こういうことでございます。
  113. 岡田春夫

    ○岡田委員 松本全権が言っているじゃありませんか。ドムニッキーを通じてくるときがあり得ると言っているじゃないか。ドムニッキーを通じてきたときには、一部の推測ではない。現実にそれを受け付けないのか、外務省はどうかということを聞いている。
  114. 法眼晋作

    ○法眼政府委員 これはしばしば同じことをお答え申し上げたわけでありますが、先方の現在日本が催促いたしておりますことに対する回答を受け取ってからの話でございまして……、(岡田委員「回答はどこから来るかということを言っている」と呼ぶ)それは先方の態度でありまして、一定の行き過ぎた観測をここで申し上げることは避けたい、こういうことであります。
  115. 岡田春夫

    ○岡田委員 外務省はこれだから日ソ交渉あるいは漁業問題についても、外務省が最も悪質なる妨害をやっているのだ。これは明らかなんだ。法眼参事官がわざわざ一月にロンドンまで行ったということも、こういうことに関連があるのではないかと私は思うのだ。重光外務大臣がこういう問題についてことさら進めるのではなくて、引き揚げの問題についても漁業の問題についても、先ほどから再三それぞれの関係者の参考人があれほど言っているのに、そういう形式主義、官僚主義をとることによってぶちこわしつつあると私は言わざるを得ない。大体あなた自身が、ドムニッキーから来た場合に、それは回答でないという判断をするのですか。ドムニッキーから来た場合だって、それは松本全権だってドムニッキーから来たら、その回答は受け取って善処すべきであると言っているじゃないか。それなのに今仮定の質問に対してお答えできません……(「ロンドンでよこせばいいじゃないか」と呼ぶ者あり)ロンドンでよこすかよこさないかは先方の問題だ。仮定の御質問に対してはお答えできませんなんて、だんだん吉田茂にあなたも似てきたのだ。そんなに今は偉くもないがさ。何はともあれこういうような意味で、今後においてもあなた自身の熱意を非常に疑わざるを得ない。しかも先ほどから国際法上の問題を聞いても、下田さんの話を聞いておっても、こういうような案ができている。あれを向うがとってきた場合にどうする。その場合にこれは国際法の侵犯であるという断定を下すことの論拠にはならぬと思う。しかも日本の外務省は国際法、公海自由の原則を無視しているのだというならば、なぜあのビキニの場合にはっきり言わない。ビキニの場合にはあいまいに言って、ビキニの爆撃をやるんだったら――あなたはそう言ったじゃないか。日本の軍隊を持っていってぶちこわさなければしょうがないと言っているじゃないか。それほどのことを言っておきながら、今度の場合は、これは国際法でございますなんて言うことは、先ほど自民党の北澤君の言ったように、まさに国際法上の問題、公海自由の原則に対しては、われわれではなくて外務省自身が論理一貫せざる本末転倒の意見を言っているのだ。この事実を見なければいけないと言っている。しかも今度の問題については、資源の確保ということが目標なのであるから、われわれは資源の確保について交渉をしなければならぬと私は思うのであるが、こういう問題について、もっと外務省自身が積極的な熱意を見せてもらいたいということを希望いたしまして、私は質疑を終ります。
  116. 前尾繁三郎

  117. 川村善八郎

    ○川村(善)委員 私は一点だけ伺います。ソ連はなるほどサケマス資源保護、維持の立場からああいう声明になったということは、はっきり表面的にはわかるのでありますが、解釈のしようあるいは見方によっては、国交調整ともからむということも、われわれは想像にかたくないのであります。しかしながら、いずれにいたしましても、漁期を目前に控えて、この問題の早期解決をしなければ安全操業ができないということにだけは、意見が一致しておるのであります。そこで水産庁長官にお伺いしたいことは、平塚代議士は国会議員の立場で言われたか、あるいは大日本水産会会長の立場で言われたのか、あるいは日魯漁業株式会社の社長の立場で言われたかわかりませんけれども、いずれにいたしましても、水産の資源保護維持ということについては話し合わなければならぬ、これは日本でも一歩譲らなければならぬというような意味のことを新聞に書かれておりますが、このことについて水産庁長官は、権威ある平塚大水の会長と話し合ったことがあるかどうか、この点をお伺いいたしたいと思います。
  118. 塩見友之助

    ○塩見政府委員 資源の問題につきましては、日本側の商業的漁獲の数字だけで、問題は断定的なことはできません。ソ連側の方の漁獲高その他の各種の調査研究資料等も拝見いたさなければ結論はつきませんので、その問題についてはやはり話し合い機会において、当然相手側においてもそういうものを出すと思いますが、それによってでないと、今のところはっきりした結論は出せないと存じます。
  119. 川村善八郎

    ○川村(善)委員 水産庁は原局でありますので、もちろん政府の立場においてこれから進められるでありましょうけれども、一応業界意見相当に聴取しておく必要があるのじゃないかと考えるのでありますが、今までそういう立場をとりもしなかったというのならば、今後数日間のうちに、あるいは十数日間のうちにでもけっこうでござまいすが、業界との意見の交換をする意思があるかないか、この点をお伺いいたします。
  120. 塩見友之助

    ○塩見政府委員 必要に応じまして、業界の中でそういう資源問題について各種の検討をやっております人たちの意見は十分聴取しつつあります。
  121. 川村善八郎

    ○川村(善)委員 聴取はしているでございましょうけれども、聴取しているというだけでなく、こう出てきた場合はこうだという腹をきめておく意味におきましても、業界との話し合いを十分つけることがいいのじゃないかという考えを私は持っておりますので、今後そのような方向に長官が進むことを希望いたしまして、私の質問を終ります。
  122. 前尾繁三郎

    前尾委員長 次会は公報をもってお知らせいたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後一時四十一分散会