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1956-03-29 第24回国会 衆議院 外務委員会 第24号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年三月二十九日(木曜日)     午前十時十六分開議  出席委員    委員長 前尾繁三郎君    理事 石坂  繁君 理事 北澤 直吉君    理事 高岡 大輔君 理事 山本 利壽君    理事 穗積 七郎君 理事 松本 七郎君       相川 勝六君    伊東 隆治君       大橋 忠一君    菊池 義郎君       須磨吉郎君    並木 芳雄君       福永 一臣君    渡邊 良夫君       田中織之進君    田中 稔男君       戸叶 里子君    福田 昌子君       細迫 兼光君    森島 守人君       和田 博雄君    岡田 春夫君  出席国務大臣         内閣総理大臣  鳩山 一郎君         外 務 大 臣 重光  葵君  出席政府委員         法制局長官   林  修三君         外務政務次官  森下 國雄君         外務省参事官  法眼 晋作君         外務事務官         (欧米局長)  千葉  皓君         外務事務官         (条約局長)  下田 武三君  委員外出席者         専  門  員 佐藤 敏人君     ————————————— 三月二十三日  委員島村一郎君及び長井源辞任につき、その  補欠として園田直君及び江崎真澄君が議長の指  名で委員に選任された。 同月二十七日  委員大橋忠一辞任につき、その補欠として山  村新治郎君が議長指名委員に選任された。 同日  委員山村治郎辞任につき、その補欠として  大橋忠一君が議長指名委員に選任された。 同月二十八日  委員伊東隆治君、須磨吉郎君及び古川丈吉君  辞任につき、その補欠として花村四郎君、戸塚  九一郎君及び中山マサ君が議長指名委員に  選任された。 同日  委員戸塚九一郎君及び花村四郎辞任につき、  その補欠として須磨吉郎君及び伊東隆治君が  議長指名委員に選任された。     ————————————— 三月二十六日  日本国における英連邦戦死者墓地に関する協定  の締結について承認を求めるの件(条約第一三  号) 同月二十八日  防衛目的のためにする特許権及び技術士の知識  の交流を容易にするための日本国政府とアメリ  カ合衆国政府との間の協定及び議定書締結に  ついて承認を求めるの件(条約第一四号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国際情勢等に関する件     —————————————
  2. 前尾繁三郎

    前尾委員長 これより会議を開きます。  国際情勢等に関する件について、鳩山内閣総理大臣及び政府当局質疑を行うことといたします。質疑を許します。北澤直吉君。
  3. 北澤直吉

    北澤委員 私は大体二つの問題につきまして総理大臣にお尋ねしたいと思うのであります。  第一点は日ソ交渉についてでございますが、日ソ交渉につきましては、御承知のように日ソ双方主張が対立いたしまして自然休会になったわけでございます。そこでお伺いしたいのは、昨年自由民主党が結成されます際に、新党の緊急政策として日ソ交渉に関する根本方針が決定せられております。それによりますと、領土問題をも含めて懸案を解決して、そしてこの平和条約締結して、これによって日ソ国交回復する、こういう構想が示されておるのでありますが、政府は今後におきましてもこの既定方針によって、日ソ交渉を進めていくという考えでございますかどうか、その点、念のために伺っておきたいと思います。
  4. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 大体におきましては、従来の方針を変更する意思は持っておりませんけれども、とにかく抑留者はずいぶん長い期間にわたって外地におりましてまことに気の毒でありますし、しかも抑留者については、ポツダム宣言によればソビエト日本返還する義務を持っておるわけでありますから、抑留者返還については特に交渉をしたいと思います。  なお、最近新聞紙の伝うるところによれば、北洋漁業の問題も起っておりますので、ああいうようなことはまことに残念でありますから、北洋漁業などの問題が発展しないように、十分手続をとるべきものだと考えております。
  5. 北澤直吉

    北澤委員 ロンドンにおきまする日ソ交渉自然休会になりましたことは、まことに残念でございますが、ただいま総理お答えになりましたように、長年ソ連に抑留されて、いまだに日本帰還できない同胞がたくさんおるわけであります。私どもは一日も早くこの抑留同胞内地帰還を実現さしたいと考えております。それからまた、ただいまお話のように、北洋におきまする漁業について、ソ連側がある制限的な措置をとるような報道があるのでありますが、これはわが日本生命線ともいうべき水産業に非常に大きな影響がありますので、私ども日ソ国交回復の問題とは切り離して、この抑留同胞帰還の問題と北洋漁業の問題につきましては、至急に適当の方法によってソ連側と話をするなり、あるいは国際的にこの周題を取り上げて話をする必要がある、こういうように思うのであります。現に北洋漁業の問題につきましては、日本ばかりではありませんで、関係国であるカナダ、アメリカあるいはイギリス等におきましても、相当重大な関心を持っておるように新聞には報道されておるのあります。従って、北洋漁業の問題につきましては、日本ソ連だけでなく、そういう関係国も合せて、この問題を至急日本側希望に沿うような解決に持っていくように努力を願いたい。それからまた抑留邦人返還につきましても、日本ソ連だけの問題でなく、国際連合捕虜委員会とか、あるいは国際赤十字等とか、そういうふうな国際的な問題として、この問題を一日も早く解決するように、政府の特段の御努力をお願い申し上げたいのであります。政府は、日ソ国交回復と切り離して、この二つの問題を至急解決する御方針であるかどうか、この点をお伺いしたいと思います。
  6. 重光葵

    重光国務大臣 私からお答えしましょう。お話通り抑留者の問題及び漁業の問題は、日ソ交渉が一時延期になっても、これは進めてやらなければならない問題でありますから、あらゆる方法を尽してやらなければならぬと思います。しかし、それにしても相手方はソ連でございます。今そういう問題についてロンドンにおいても引き続いて話し合いをしております。目下はソ連側の反響と申しますか、回答と申しますかそれを待っておる状況でございます。そのほかにも方法があれば、これをとることに少しも疑存はございません。あらゆる努力をいたしたいと考えております。
  7. 北澤直吉

    北澤委員 先ほど申し上げましたように、この二つ抑留邦人帰還の問題と北洋漁業の問題は、日本にとりましてきわめて重大な問題でありまして、日ソ国交回復に関する交渉が再開されるのを待っておったのでは、日本にとりまして重大な問題でありますので、日ソ交渉がいつ再開されるかは別の問題といたしまして、漁業問題と抑留邦人帰還問題につきましては、政府の方であらゆる方法をお考えになりまして、至急この問題が解決するように御努力をお願いしたいのであります。  以上の要望を申し上げまして私の質問を終ります。
  8. 前尾繁三郎

  9. 森島守人

    森島委員 日ソ交渉が非常に重大な段階に立ち至りましたことは御承知通りであります。この委員会鳩山総理は初めて御出席になったのであります。私は鳩山総理の御所見をこの際伺いたい。重光外務大臣は別の機会に御意見を伺いたい、こう存じておるのであります。  鳩山総理は、無期限中断に至った点について、交渉はなお継続中である、あるいはデッド・ロックに乗り上げたのではないという、形式的な答弁ばかりやっておられるわけでありまして、この中断に至った責任については、痛感しておられるところがないと私は信じておるのであります日ソ交渉は、御承知通り、先回の選挙に臨んだ際の鳩山総理最大公約一つで、しかも参議院におきましては、社会党の羽生議員質問に対して、日ソ交渉が妥結に至らなければ責任をとるのだということをはっきり明言しておるわけであります。私は、総理態度国民を欺瞞して、また従来の吉明を裏切っておる、こう痛感せざるを得ないのであります。なお鳩山総理は、保守合同のために日ソ交渉を犠牲にしないということも、再三この国会において言明に相なったのであります。この言明をも私は裏切っておると思う。鳩山総理としは、日ソ交渉の無期限中断は、マリクが国際連合に出るために一時ロンドンを離れたというのと違って、私は非常に重大な段階に立っておると思うので、この点について総理政治的責任に対する御所見を第一に伺いたいのでございます。
  10. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 政治的の責任というのは、つまり日ソ交渉が不成功に終れば私が政治的の責任をとるということです。それはもう当然なことでありまして、言うべき問題外です。責任をとるということは易々たることでありまして、いつでも責任をとれというような意見が支配的ならば私は責任をとりますが、とにかく日ソ交渉をやり遂げたいという希望を持っておりまして、まだ責任をとるのには早いと考えております。
  11. 森島守人

    森島委員 私は、すでに責任をとらるべき段階に来たものと思っておりますが、これは私は議論になりますから追及することを避けます。  第二に、日ソ両国双方またはいずれか一方が、領土に関してその主張を変えぬ限り、私は、日ソ交渉は、政府希望しておられるごとく、再開に至ることは断じてないと確信しております。重大な最後的段階に至ったというのはこの意味であります。政府はこの点を無視して、あるいは国際情勢が変化するのだ、あるいは双方が合意すれば開くのだというこれもきわめて形式的な、抽象的な答弁をもって終始してきておられる。私は、この新事態に対する新たなる政策を、政府は何らお持ち合せになっておらぬ、こう存ずるのであります。この点につきましても、おそらく逃げ口上のような御答弁があると思うの、でありまして、私は追及いたしませんが、政府は、第一に、日ソ関係全般に関する認識を欠いておる。松本君もパリで、日本国民は甘い観測をしておったと言っておりますが、甘い観測をしておったのは政府自身である。われわれはそういう甘い観測をしておりません。そこで、松本全権ロンドンに帰りましたときには日ソ双方主張はもう出尽しておる、政府はこの段階に対してとるべき措置を十分考慮していなければならぬ。要するに、日ソ関係全般について認識を誤まっておった。この誤まった認識の上に立って、ソ連に対する政策方針等を樹立せられたところに、鳩山総理としても、重光外務大臣としても、外務当局としても、重大なる手落ちがあったと思う。この点に関する御見解はいかがでございましょうか。
  12. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は、自分意見自分希望によって少しひがめられていたかもしりません。それはあなたのおっしゃる通りに、私の観測が間違っておった点があるかもしれません。けれども、今日におきましても、なお私は日ソ交渉は成立さすべきものだという考えには、変りはないのであります。どうにかして日ソ交渉を成立させたい。両方誤解を解きさえすればでき得べき、ことだと思っております。
  13. 森島守人

    森島委員 総理のおっしゃることは、希望的観測とでも申すのかもしれません。誤解を解けばいいのでありますが、日本側においても新しい政策考えなければならぬ時期にきておると私は信じております。第一に日ソ関係は、日米関係と切り離してこれを考慮することはできません。政府も当初日ソ交渉を始めるに当っては、日米関係をそのままにしておいて交渉が妥結すると考えられたのは、全く甘いと考えております。一例を取って申しますれば、南千」島の返還のごとき問題は、これは決して日米関係をそのままにしておいて解決しないということは、初めからわかり切っておる。もし小笠原沖縄一つでも返してくれるということになりますれば、南千島返還可能性がある、こう私は思うのであります。あなた方の政府としては、日ソ交渉と並行して、日米交渉を始めるお考えがあるのかないのか、この点を伺いたいと思います。
  14. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は森島君のお考えのように、米国沖縄小笠原を返せば、先方が南千島を返すというようには考えておりません。
  15. 森島守人

    森島委員 それならばなおさら南千島ソ連が返さぬということを裏書きすると同じ答弁です。米国沖縄小笠原を返す可能性が今のところない。しかし、もし沖縄小笠原を返す時期に、条件付南千島返還ソ連に求めらるる御意思があるかないか、この点を伺いたいと思います。
  16. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 松本君がとにかく帰朝しなければ、具体的の考えをきめるわけにはいかない状態にあると思っております。
  17. 森島守人

    森島委員 私が予期した通り、おそらくそういうことでお逃げになると思いますが、松本君が帰るまでもなく、帰任したときにそれくらいのことはわかっていなければならぬと私は思う。この点が政治的責任の大きい点であると信じておるのであります。  次に具体的な問題に移りますが、南千島返還という要求は、松本君が当初日本要求条項ソ連に提示しましたときには、その中には包含されておらなかった。それを鳩山さんが、重光さんが渡米中臨時外相を兼摂しておられましたときに、突如として南千島要求するということが追加された。鳩山さんはいかなる根拠に基いて、南千島を追加せられたか、この点を伺いたいと思います。
  18. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 その点については外務大臣から答えてもらいます。
  19. 重光葵

    重光国務大臣 私からお答えいたしましょう。南千島日本といたしましては北海道に接近しておるところであって、そしていまだかつて日本人以外の居住したところではない。のみならず歴史的に見て、日本領土でないと、こう外国から見られたことはないという歴史を持っております。これはもう私は繰り返して申す必要はございません。そこで一体南千島サンフランシスコ条約によって日本は放棄しておるのかどうか。もしくは日本はそう放棄したものと思っていなくても、サンフランシスコ条約に最も重大な関係を持っておる米国は、どういう考え方を持っておるのかということを聞いてみる必要があると思って、政府は聞いてみたのでございます。米国千島というものについては特別の定義をしたことはない、そこで南千島日本自分領土として要求する、こういうことは別に不合理なことではない、ただし国際間に争いが起れば、国際司法裁判所でこれを決定するという方法もある、これがサンフランシスコ条約の決定である、こういう意向を漏らして参ったことは御承知通りであります。さようなわけでありますから、南千島日本要求するのは当然である、こういうふうに日本政府考えておったわけであります。そういう意味のことはずっとこの交渉において日本側主張しておったのであります。そこで松本全権は適当な時期にこれを持ち出したと私は思っております。さような状況でございます。
  20. 森島守人

    森島委員 あとに持ち出したのは……。当然の主張ならまっ先にお出しになるべきことなのです。私はその点については重光外務大臣所見を異にしている。吉田総理サンフランシスコ全権として行かれ、また国政の最高責任者としておられたことは御承知通りであります。その吉田さんが昭和二十六年の十月十八日平和条約を審議しました本院の特別委員会ではっきり言っている。「千島樺太等条約にあります通り日本としては主権及び権原を放棄したのであります。従ってその処分について日本は今日容喙をする権利はないと思います。」こうはっきり言っておられるのです。私は鳩山さんが南千島要求されたという点について、この国権の最高機関たる国会における総理大臣答弁をいかに解釈されておるか。これが鳩山さんが南千島を追加せられた点といかなる関係にあるか、総理の明快なる御所見を求めたい。(「総理大臣総画大臣」と呼ぶ者あり)重光さんならいつでもまた質問する機会がありますから……。
  21. 重光葵

    重光国務大臣 今事実をちょっと申し上げたいのですが、意見総理からお答えがあるだろうと思います。事実だけを私が述べます。  事実は、南千島日本あとから要したということをちょっと言われましたが、これはしかし日本は全部の千島及び南樺太まで要求しておったのであります。これは全部を要求しておったのでありますが、そこで交渉状況でそれではどうもおさまりがつかぬようだからというので、南千島だけに引き下ったのでございます。これが事実でございます。それからサンフランシスコ条約において吉田総理がどういうことを言っておるかという事実を申し上げますと、吉田総理はこう言っております。「日本開闢の当時、千島南部の二島、択捉国後両島日本領であることについては、帝政ロシヤも何らの異議を差しはさまなかったのであります。」と、こういうことを言っております。これは今回日本日ソ交渉において要求したと同じ趣旨であることを私どもは信じます。それでありますから、対外関係においては、終始一貫した日本態度であり、政府態度であると私は考えておるのでございます。
  22. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 ただいまの外務大臣答弁によりまして御了承を願いたいと思います。
  23. 森島守人

    森島委員 沿革的なことはお話を聞くまでもなく私は承知いたしております。サンフランシスコ会議において沿革上の理由を明らかにしたといっておられますが、吉田全権は決して法的効力を有する留保の措置をとっていない。ただ自分一人こう思っているのだということを言いっぱなしにしただけなのであります。私はそれでは法的の拘束力は持たないと思うのであります。ただいまのお話のようですと、日本政府が三年か四年の間に国際的な条約効力について、その解釈を二つにするということであれば、決して国際的信用を博するゆえんではないのであります。私はこの点について政府の慎重なる考慮を求めたい。私はソ連南千島を固執しておるのも、この吉田全権の発言に注意しておるからであるというふうに思うのです。その点をさらにどう考えておいでになるか、一つ政府の御見解を伺いたい。
  24. 重光葵

    重光国務大臣 私からその点にお答えいたしたいと思います。私はサンフランシスコ条約を正式に調印するというときに、この南千島の問題を取り上げて、これだけのことを日本を代表して日本考え方を言っておるということは、これは外交上相当なと申しますか、非常な強い意味を持っておると考えます。それを将来調印しない国に対して日本が言うのは当然なことであり、あるいは伏線とも見られるものでございます。それでありますから、それのみを根拠といたしておるわけではございませんが、日本日ソ交渉をやるのについて、領土問題に同じ主張をするということに少しも不思議はない、また条理を尽したことだと私は考えております。この点についてソ連は、これはもう条約ヤルタ協定等において解決済みであるという立場をとっております。この日ソ交渉において、ソ連立場をそのままこちらが承認すという理由は、少しもないと私は考えております。
  25. 森島守人

    森島委員 私は今の御主張は当然なことだと思う。私たちもそういうことを考えています。時間がありませんので私は結論を急ぎますが、私は日本政府の照会に対するアメリカ回答は、非常に示唆の多いものと思います。アメリカ政府日本政府回答しておるように、問題があるといたしますれば、南千島に関しましては、平和条約の二十二条によって、国際司法裁判所にこれを提訴して、さしあたり歯舞色丹日本にもらう、あとの問題も同時に片づけるということで、すみやかに平和条約を御締結になる御意向があるかないか、その点もう一つ最後お答えを願いたいのであります。
  26. 重光葵

    重光国務大臣 今両方主張が対立して、交渉が一時延期になっておる。将来日本がどこまで譲るかとかいうことをこの席で申し上げるわけには参りません。しかしこれは野党の御意見としていろいろの御意見があったということは、十分に検討いたしたいと私は考えます。今言明はできません。
  27. 前尾繁三郎

  28. 穗積七郎

    穗積委員 私に時間がありませんから、簡単に総理にお尋ねいたしますが、今国際司法裁判所、つまり歯舞色丹以外の領土問題の解決について、一つ方法として、ソビエトだけを相手にしてロンドン話し合いをしないで、国際司法裁判所に提訴をして、そしてこの解決の道を求めるというのも一つ方法だと思うのだが、それに対する今の重光外務大臣の非常に問題を回避されたような、今発表はできないというような御意見でございましたが、総理のこの問題に対する御意見を伺っておきたいと思うのです。もうすでに松本全権が帰るまでもなく、これは今までの交渉経過から見まして、何も帰って一々聞かなくても、大体わかっているはずなのですから、あなたにもし、解決意思があるとおっしゃったように、ほんとうにその意思があるとするならば、何か具体的な構想がなければならない。そこで領土問題については一番中心で唯一の問題でございますから、この際率直に答えいただきたいと思うのです。
  29. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 森島が先刻アメリカ回答示唆があるとおっしゃいましたが、私はあるアメリカ人から露骨にそういうようなことも聞きました。それでありますけれども、ただいま外務大臣が言われました通りに、今日本がこういうようなことまで譲る考えがあるのだとか、こういうような条件条約を結びたいのだとかいうようなことを言うべき時期ではないと思います。同時にやはり領土問題等については、日本国論が一致いたしませんと、政府としてはやりがたい問題だと思っております。国論の一致を待ち情勢を待ちまして、松本君が帰ってきてよく打ち合せをしまして、そうして決断をいたしたいという考え方をしております。
  30. 穗積七郎

    穗積委員 それからもう一つお尋ねしておきたいのは、もしソビエト側がこの歯舞色丹以外の領土の問題について、沖繩並びに小笠原返還とのかね合いにおいて、この問題は考慮しようというような態度に出てきた場合には、政府は一体どういうふうにそれに対処されますかお伺いしておきたいと思います。
  31. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私が答えますか。
  32. 穗積七郎

    穗積委員 そうです。
  33. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 現在においてはそういう気配は一つもありません。
  34. 穗積七郎

    穗積委員 あった場合のことを聞いているのです。さらにもう一つは、今までの交渉経過で北の島に対しまして、日本返還をいたしましても、現在の安保条約アメリカからたてにとられて、アメリカ軍事基地をすぐ設定するというような要求があるということになれば、結果としては日本に返したのではなくて、アメリカ軍事基地ソビエト側が提供した結果になるわけですから、これは法律上の問題ではなくて、政治上の重要な問題だと思います。そういう意味で、ある意味では当然とも思われる。すなわちこれらの北の島に対するアメリカ軍事基地を置かないというようなことが話し合いに出たならば、当然日本としてはそういう態度をもって臨むべきだと思うが、これに対する総理のお考えを伺っておきたいと思います。
  35. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 穗積君の言われるように、ソ連沖縄とか小笠原を問題とはしまいと思います。けれどもただいまのような、もしも国後択捉日本に返すならば、すぐそれをアメリカに貸して軍事基地にしてもらっては困るというようなことは、ソ連としては言うかもしれないと思います。そういう場合にはそのときに国論の帰趨に従って私は決断したいと思っております。
  36. 穗積七郎

    穗積委員 もう一つお尋ねしておきたいが、あなたは今まで腹の中では、大体ロンドン会議では歯舞色丹解決したい、その他の問題は永久的に放棄するのではないが、留保して、従ってロンドン会議歯舞色丹で打ち切りたいという意思を持ち続けておられたと思うのです。われわれはそういうことを推測するに十分なる情報を持っておりますが、今でもそういう考えを持っておられるだろうと思う。そうすると、さっきからのお話国論々々ということを言っておられますが、もしそういう御意見があなたの腹の中にあったとするならば、なぜ一体国論南千島問題にひっかけて、しかも不合理なる要求でございますが、こういうものにひっかけて、この交渉を決裂せしめるような世論の方に引っぱっていったのは、政府自身じゃございませんか。そういうことをあなたはお考えになりませんか。昨年八月以来、あなたがずっと持ち続けておられた歯舞色丹の線で解決して、残余の領土問題は、今後の問題に留保しておるという考え方を持っておられるとして、しかもなおかつ行き詰まりになっても、解決の御意思を捨てていないということなら、なぜ昨年の秋以来の国論の指導に、反対の方向にかじをとってこられたか。これは全く党内の事情によるものだとわれわれ推測するのですが、国論に対するあなたのお考え方を伺っておきたい。国論がどういうふうにいくことを希崩しておられるのですか。
  37. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は日ソの戦争状態の終結を確定するということは、非常に必要なことだと考えておりますが、しかしその状態を作るのに、日本としても犠牲を払う範囲には限度があると考えております。やはり国民各人の持つ意思というものの尊重は、立憲政治としては、非常に必要でありますから、松本君が帰りましたならば、ソ連がどういうような考え方かを聞いてみたいと思います。西ドイツも抑留者を帰す場合においても、二度までは失敗をしたのでありますから、ソ連の真意がどこにあるかということを探求するというのは、非常に必要なことだと思っておりますので、にわかに日本意思だけを先に発表するわけには参らないと思っております。
  38. 穗積七郎

    穗積委員 最後に、実は本日は長い交渉経過を通ってきて、この段階にきておれば、問題のあり場所はすべてわかっておるわけです。従ってきょうは、総理に今後の具体的な方針を伺えるという期待を持ってわれわれは臨んだのですが、はなはだ遺憾な御答弁でございます。そこで時間がありませんから、この際一歩譲って、松本全権が帰って報告を聞かれた後に、あなたのそこで具体的な最後的な腹がきまるだろうと想うが、その時期にもう一度当外務委員会出席していただいて、われわれの質問に率直にお答えいただくことをお約束ができますかどうか。ぜひそういうふうにしていただきたいと思うが、この際あらかじめ伺っておきたいと思います。
  39. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 外交問題は、やはりあまりに公開するということは、不利益が多くて利益がないと思います。それですから、松本君が帰りましても、直ちには決定はできないと思いますけれども、決定の方に一歩前進するものとは思います。そこで鈴木君とか何かやはりお目にかかりまして、外交事情を説明するというような機会を作る方がよろしくはないでしょうか。
  40. 前尾繁三郎

  41. 松本七郎

    松本(七)委員 この期に及んで、松本全権の帰りを待って、そしてソ連考え方を聞くなんて、そういうのんきなことを言っているから、こういうことになる。ソ連がどういう考えであるかは、この長い間の交渉で十分にわかっておられるはずなのです。私どもがここで問題にしたいのは、先ほども森島さんから指摘されたように、総理が選挙以来この日ソ国交回復、そして早期に国交を回復することが、今も言われる戦争状態を終結することにもなるのであって、それがいかに日本の利益になるかということで、総理はこれを打ち出されたのだろうと思う。そこに大きな期待を持って、また今問題になっておる漁業の問題にしろ、あるいは引き揚げ問題にしても、国交回復することが、結局これらの問題を解決する一番近道だということを、国民の多くが期待すればこそ、この総理大臣日ソ国交回復ということに、大きな賛意を表してきたと思う。それが今日足かけ十カ月になってこういう状態になった。これに対して一体この内閣の責任はどうかということが、当面の問題であると思う。私どもは今後のこの内閣総理大臣日ソ交渉に対する考え方が、従来と少しも変らないのか。それともどういう方針でこれを打開する気持があるのか。これは具体的なこまかいことはこの機会にまだ言えないかもしれませんけれども、その根本的な態度をわれわれは知ることによって、責任をもっと追及しなければならなくなるかもしれない。さっき言われるように、多数が責任をとれといわれるならとると言われるのですけれども、私ども日ソ交渉が成立すること、鳩山内閣によって成立することを期待すればこそ、陰に陽にこれを応援して今日まできたわけなのです。今日の段階になっては、これから内閣がどのような方針で臨むかによって、われわれの態度もおのずから変らざるを得ないわけです。従ってそういう意味で首相は、明快な御答弁をお願いしたいと思うのでございますが、外務大臣国際情勢の好転を待ってやる、こう言われる。それから総理もただいま誤解が解ければできると思う。こう言われる。しかしいつまでも誤解が解けるという——あなたの、言葉をかりれば誤解が解けるのを待つ、国際情勢の好転といってもばく然とした話で、いつのことかこれはわかりはしません。これから先一体あなたの言われた早期国交回復という方針をあくまでも堅持されるのか。一体早期というのは、いつごろまでに国交回復をなし遂げようという——この程度でできなければ自分責任をとるというくらいの明確な態度を、私はこの際は御答弁願うべき時期だと思うのですが、この点総理大臣からはっきり御答弁をお願いしたい。
  42. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 ソ連との国交回復は、情勢が変化するのを待つということを言ったのを非常に御不満のようでありますけれども、米ソ戦争というものをみんなが心配して、みんなが望んでいないというのは、明らかなことであります。アメリカソ連自身も、米ソ戦争をやるという気分はお互いに持っていない。お互いに持っていないけれども、やはり水爆や原爆の競争をやっておるのは事実なのです。そこにやはり誤解がある。そういう、解の解消があり得るということを信ずることは、決して不当ではないと私は思う。それですから、そういうようなことになれば、何も小さな島をソ連が取っておるとか、アメリカが取っておるというような必要はなくなりますから、問題は解決すると私ども考えるのは、少しも無理の考え方ではないと思います。
  43. 松本七郎

    松本(七)委員 今の総理の発言は、結局米ソ間の誤解が解ければというふうなことに帰すると思うのです。米ソ間の誤解が解けて国際情勢が好転すればいい。それは当りまえのことです。日ソ交渉を早くまとめて早期妥結をしようということと関連して、どういうふうな意味があるかということが問題なのです。私どもは米ソ間の誤解が解けて国−情勢を好転させるのに、日ソ国交の早期回復が大きに役立つと思っておるのです。その点の考えをはっきり伺っておく必要があると思う。今、日ソ国交回復が実現すれば、米ソ間の対立も緩和され、国際情勢一般の緊張緩和にも役立つという観点に立つならば、やはり今までのような態度でなしに、早期国交回復という新たな方式が、具体的にも私は出てくると思う。具体的な問題を聞いておるのじゃないですか、そういう心がまえがどうかということによって、今後私どもの判断の材料になるので、そういう点を聞いておるわけなのです。
  44. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 松本君の考え方を私も理想といたしております。われわれはどうしても世界戦争を回避するために、世界の平和を維持するために、日本国としてはできるだけのことをしなくてはならないと思っております。そのできるだけの仕事をする一つは、米ソの衝突のないようにするということであります。それはソ連との国交を回復すれば、米ソ間の誤解を解く一助となると思いますので、それで日ソ国交回復をしておきたい。それは米ソの間の戦争を回避する一つの有力なる原因にもなるというように思っているので、どうしてもこの戦争状態終結の事態を引き起したいということを考えたのでありますから、あなたの考えと一脈相通ずるものがあるわけであります。
  45. 松本七郎

    松本(七)委員 それならば、その希望一つ早く実現するように——今までと同じ交渉の仕方で、その御希望が実現すると考えられるのかどうか。もしそうでなければ、もう少し態度を緩和して、早期妥結のために、今までのやり方と少し違ったやり方をされるお気持があるかどうか、この点を一つ伺っておきます。
  46. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は日ソの間の国交をできるだけ早く解決したいというその希望については、初めと同じだけの熱意を持っております。
  47. 前尾繁三郎

    前尾委員長 岡田春夫君。
  48. 岡田春夫

    ○岡田委員 関連ですから、簡単に伺います。今の総理大臣お話を伺っておっても、日ソの問題は何とか解決したいというその熱意に対しては、前も今も変りがない、こういう御意見のように承わりました。しかし最近の総理態度その他を見ていると、当初日ソ国交回復を一枚看板として出されたころの熱意と比べるならば、最近どうもこの日ソ国交回復については熱意がなくなって、どうなってもよいのじゃないかというような感じをわれわれ国民としては受け取れるわけであります。  そこで一点だけ伺いたいのですが、ほんとうにどうしても日ソ国交回復交渉を、総理大臣は、自分の首相在任時代においておやりになりたいと考えておるのならば、逆に、最近の模様を見ろと、日ソ国交回復のこの交渉は、再開されろとしても九月か十月以降でなければならないだろうというようなことが伝えられている。そうすると、総理大臣は、日ソ国交回復交渉解決するまで総理大臣の地位に立って、最後まで努力していく、こういう決意を持って今当っておられるのか。途中で投げてしまって、ほかの内閣のときにやろうというような考えを持っておられるのか。その点をまず伺いたいと思います。
  49. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 できるだけすみやかにやりたい希望を持っております。
  50. 岡田春夫

    ○岡田委員 できるだけすみやかにといっても、あなたの健康上の問題もありますし、また相手国との関係があるだけに、そう簡単に、すみやかにやるとかそういうわけにはいかない場合が多いだろうと思う。そういう場合にあなたの政治的責任をどうするのだということを、さっきからわれわれは伺っている。  そこでもう一点伺いますが、今日の段階になると、簡単な方法ではなかなかこの難局を打開することはできない。特に鳩山総理大臣は、今までは松本全権にまかして問題を解決するようにして参りましたけれども、今日の段階になっては、もはや鳩山総理自身が陣頭に立って問題を解決する以外にはないのではないか、これが鳩山総理の悲願を達成する道ではないか、このように私は考える。そうするならば、ロンドン会議というものを、場所を変更して、東京会談でやるなり、あるいはモスクワ会談でやるなりして、鳩山総理自身がみずから陣頭に立って解決するという熱意まで持って解決をされる、そのようなお考えがあるのかどうか、そこまで熱意を持っておられるのかどうか、この点も伺っておきたいと思います。
  51. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 日本国の利益になろことならば、一身を犠牲にすることは何とも思っておりません。
  52. 岡田春夫

    ○岡田委員 私はもっと具体的に伺っているのです。総理大臣みずからが陣頭に立つ決意があるのか、あるいは総理大臣が陣頭に立つ決意として、モスクワに出ていっても、この問題を解決しようという熱意があるのかどうか。あるいはあなたの健康上どうしても許されないとするならば、東京会談をやってでも解決する熱意があるのかどうか、こういう具体的な点を伺っているのです。
  53. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は日ソ関係を非常に重大視しております。これはぜひ解決しなくてはならない問題だと思っております。それですから、それが達成できるのならば、むろんどこへでも出かけることをちゅうちょするはずはございません。
  54. 岡田春夫

    ○岡田委員 関連ですから、もう一点だけで終りますが、モスクワへ行くこともちゅうちょするわけではない、こういう御決意のほどを伺いました。あるいは東京会談の場合もあり得ると思います。こういう点についても一点伺っておきたいと思いますが、もう一つは、当初北澤委員からの御質問に答えて、漁業問題及び抑留邦人帰還問題について、自分としてはできるだけの努力をしたいと言われる。この努力をするためには、総理大臣も十分御承知だろうと思うが、日本ソビエトとの間の国交回復、すなわち戦争状態を終結しなければならない。この戦争状態を終結するためには、何といっても、今まで松本全権とマリク全権との間で、九項目の問題については話し合いができたのですから、この問題についてだけでも暫定的な協定を取り結んで、懸案の問題である領土の問題は、このあとに残していくというような解決方式をとるならば、先ほどあなたの言われたような漁業問題、抑留邦人の問題はそのまま解決のめどが出てくるのです。そういう九項目について暫定協定をとりあえず結んで、そのあと領土の問題を解決していくという解決方式をとるのが、鳩山総理大臣の悲願を達成する道だと私は考えるのだが、勇敢にこの道をおとりになるお考えがあるかどうか、この点を最後に伺っておきたいと思います。
  55. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 今の御質問に対しましては、松本君が帰朝いたしましてから、よく事情を聞きたいと思っております。その以後にきめたいと思っております。
  56. 前尾繁三郎

    前尾委員長 福田昌子君。
  57. 福田昌子

    ○福田(昌)委員 総理が昨年の二月の総選挙の際に、日ソ交渉早期妥結ということを強く主張されましたのは、非常にけっこうなことだと私ども思っておりますが、その日ソ交渉早期妥結の御意見を発表されるにおきましては、どういう方法でこの早期妥結をはかりたいとお考えになっておられたか、その当時の具体的な方法をこの際御説明願いたいと思います。
  58. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 よく聞えませんでしたが、早期妥結の方法をどうしてやるかということでございますか。これは日ソ交渉をやって、早期妥結をしたいと考えております。
  59. 福田昌子

    ○福田(昌)委員 私の声が聞えなかったらしくて、御答弁が少しずれておりますが、私のお尋ね申し上げたのは、昨年二月の総選挙の当時、日ソ交渉早期妥結の方法としては、どういうことをお考えになっておられたか、その方法を具体的に御説明願いたいと思います。
  60. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 それはソ連交渉を始めたいと考えたのであります。
  61. 福田昌子

    ○福田(昌)委員 その当時の御発表によりますと、国交調整をはかりたいということが主でありまして、懸案の解決をどうするかというようなことは、全然まだ固まっていない状態にあったと思います。それがさっき御説明がありまして、重光外相の渡米を中心にして、南千島領土返還を強く固執されるという問題が起ってきた。その次には十一月十五日の保守合同を契機といたしまして、さらにまた南千島返還要求というものが強く打ち出されて参った。総理自身が昨年二月の総選挙の際に言っておられた、ばく然とした交渉方法というものとはずっと違って、日本側主張だけを一方的通すというような……。   〔「君は日本人か」「何言うか」と呼び、その他発言する者多し〕
  62. 前尾繁三郎

    前尾委員長 静粛に願います。
  63. 福田昌子

    ○福田(昌)委員 これはいかに論弁を弄されようとも、その間の経緯におきまして、総理自身に日ソ交渉に対する具体的方法の定見がなかったということが、はっきり言えると思うのでございます。そこで私たちは、日ソ交渉経過から見まして、保守合同というものは、これに何らかの支障が起るのではなかろうかということを非常に懸念しましたので、保守合同日ソ交渉に何ら影響はないかということを重ねて質問いたしましたが、そのときには、保守合同日ソ交渉に何ら水をさすものじゃない、それを停滞させないのだということを言明されました。それで私どもは、保守合同によって、さらに総理は積極的な日ソ国交回復の早期妥結のために、相当積極的な党内のまとめをやっておられるということを期待しておったのでありますが、聞くところによると、今日でも相変らず党内には、日ソ交渉はむしろ早期解決など反対だという分子が、相当おられるということを聞きます。そういう点がはっきりあるのか、この点の総理の党内における調整に対する努力、どの程度日ソ交渉関係のあるこの問題について努力されたか、伺いたいと思います。
  64. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 日ソの間の国交を正常化するということは、日ソの国交を戦争前の状態に持っていきたいという希望でありますから、戦争前の状態といえば、戦争によって抑留された日本人を帰してもらうとか、戦争によって日本領土で占領されたものを返してもらうというような緒問題が、日ソ交渉の国交を正常化するという範疇の中に入るわけなのです。日ソの国交を正常化したいという大目的は当然なのですけれども、正常化するといえぱ、戦争前の状態に持っていったならば両方が一番仲よくなれるはずですから、それで戦争によって生じた抑留者、戦争によって生じた占領の問題等を解決することに進まなくちゃならぬ。そう進まないで、日ソの間に意見がまだ衝突しておって合意が成立しないのですから、少ししんぼうしてもらわないとちょっと困りますから、やはりしんぼうしていけば、領土の問題でもその他の問題でも、解決はできると私は思っております。
  65. 福田昌子

    ○福田(昌)委員 先ほど総理は、日ソ交渉が長引いておるのは、相互に誤解があるからで、その誤解を解けば妥結できると思うという御答弁がございましたが、昨年の秋松本全権は一応帰国されました。そのとき、ソ連側はどう思っておるというようなソ連側の提案している問題点は、十分御説明があったと思うのです。そのときにすでに歯舞色丹が、ソ連側領土においては譲り得る限度であるということを、松本全権自身が言っておられたのでありますが、そのソ連意向に対して、政府はそれをどういうふうにとっておられたのである。むしろ政府自身がどういう誤解を持っておられたか、その点を伺いたい。
  66. 重光葵

    重光国務大臣 私からお答えいたします。今の松本全権が一時帰朝をいたしましたときに、交渉状況をいろいろ報告をし、またいろいろの機会に説明をしたということは承知をいたしております。しかしそのときに、日本主張を将来いかなる場合においても、どうしても通らぬのであるというようなことの説明はございませんでした。むろん松本全権の説明は十分に考慮に入れたのでございますが、しかし交渉再開の後には、わが方の正当な主張と思っていることは、大体において変える必要がないという考え方で帰任したわけであります。これは事実でございます。それからまた松本全権が、こう言った、ああ言ったと言われますが、政府に対して、今言われたようなことをはっきり申した報告もあるわけではありません。何かいろいろな機会において言ったことを、新聞紙上などに記載された点を指摘されるのではないかと思います。私はそれがうそとは申しませんけれども、正式のものでないように考えます。
  67. 福田昌子

    ○福田(昌)委員 引き揚げや漁業問題をどうにかして解決したいということを申しておられますが、そうおっしゃりながら、先ほどは、ソ連抑留者をいつまでも帰さないということは、それ自体がポツダム宣言に違反した行為だというような御説明がありましたが、ソ連抑留者を帰さないというのは、どの条項に当てはめてポツダム宣言の違反になるのか、その点を総理にお伺いしたい。   〔発言する者多し〕
  68. 前尾繁三郎

    前尾委員長 静粛に願います。
  69. 重光葵

    重光国務大臣 これは条約のことでありますから、私からお答えいたします。ポツダム宣言の第九条にこういうことが書いてあります。「日本国軍隊ハ、完全ニ武装ヲ解除セラレタル後、各自ノ家庭ニ復帰シ、平和的且生産的ノ生活ヲ営ムノ機会ヲ得シメラルベシ」とあります。これは休戦をした後には軍隊を解除して本国に帰す、こういうことを意味しておるものでございますから、それによっておるものでございます。
  70. 福田昌子

    ○福田(昌)委員 そんな説明では了解できません。ポツダム宣言の九項によって、そういうことを材料にして抑留者を帰さないのが違法であるということでありますならば、英国やアメリカやオランダも、全部日本の捕虜を収容してなかなか帰さなかったのではないですか。これもポツダム宣言の違反をやっておったのですか。戦犯というものに対して同じ処置をとっております。ソ連だって戦犯に対しては抑留をやっておりますから……(「ソ連に戦犯があるか」と呼び、その他の発言する者多し)やっておりますから、どういう解釈をとっておられますか。
  71. 重光葵

    重光国務大臣 お答えいたします。戦犯の問題……。   〔発言する考多し〕
  72. 前尾繁三郎

    前尾委員長 静粛に願います。
  73. 重光葵

    重光国務大臣 戦犯の問題等についてお話がございましたが、今の問題は、戦争が済んでから武装解除した者は帰すという趣意のポツダム宣言についてお話したわけであります。その後に平和条約を結んで、たとえばサンフランシスコ条約を結んで、第十一条に戦犯はどうする、こうきめてありますから、サンフランシスコ条約に調印した国に対しては、条約上の戦犯に対する規定がございます。それによってこれらの国々との間の関係は律するわけでございます。ソ連サンフランシスコ条約に調印をいたしておらないのでございます。
  74. 前尾繁三郎

    前尾委員長 戸叶里子君。
  75. 戸叶里子

    戸叶委員 私はハバロフスクに収容せられておる方々の引き揚げの問題について伺いたいと思いますが、それに先だちまして二点だけ確かめておきたいことがございます。  第一点は、今回の長期の休会によりまして、鳩山総理大臣が日ソ国交回復を早期にするという公約に違反したというので、一番ショックを受けましたものは、何と申しましても留守家族の人たちであろうと思います。これらの人たちは、非常な不安とショックを感じておりますけれども、こういう方々に対して、大丈夫である、こういうふうにするのだという、どういう具体的な方策をお示しになられるかを、まず伺いたいと思う。鳩山総理大臣に伺いたいと思います。
  76. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 ハバロフスクに抑留されております遺家族の人から、私もずいぶんしげく手紙を受け取っております。非常に気の毒だと思っておりますので、どうしてもこれは早く引き揚げることができるようにいたしたいと、心を砕いておるわけであります。それには、重光外務大臣からお話のように、条理を尽して抑留者の早期引き揚げを解決すると同時に、全般にわたってソ連との平和条約締結にもいろいろのことを考えねばならぬと思っております。
  77. 戸叶里子

    戸叶委員 鳩山総理大臣の早期妥結のお考えは、今なおはっきり持っていらっしゃるということがわかりました。  それで、ここで問題になりますことは、何と申しましても今度の交渉の一応自然休会に入ったという最大の原因は、領土問題にあったと思います。先ほどから多くの人が繰り返しておられますように、この領土問題は、何と申しましても沖縄小笠原の問題にからんでいると思う。一方的にソ連にだけ領土返還要求するということは、私はこれは不合理なことではないかと思うのでございます。そこで先ほどからの御答弁を伺っておりますと、領土の問題にしても、国論の統一が必要である国論というようなことをいろいろ言われておりますが、たとえば沖縄小笠原の問題にいたしましても、特に小笠原の問題に関しましては、国論はすでに、早く日本のものにすべきであるということに傾いていると思うのでございます。こうういうふうな国論を無視せられて、そして一方的にソ連にのみ要求されるということは、非常に不合理なことであって、この点は大きくやはり、日ソ国交回復と同時に、日米の外交方針というものを変えていかなけばれならないと思いますが、この点はどうお考えになりますか。
  78. 重光葵

    重光国務大臣 それは外交問題に関係しますから、私からお答えいたしましょう。小笠原の問題、それから琉球の問題、これはアメリカ関係でございます。これはアメリカに従来とも、この主権を返してもらいたいということを、ずっと要求しておるわけでございます。ただこれは条約関係がありまして、サンフランシスコ条約で一定の条件のもとに、アメリカはこれの統治権を行なっておる。しかし日本の潜在主権は認めておる。その条件がなくなればこれは返ってくることになっておる。しかしそれはなるたけ早く返ってくるようにしなければいかぬ。国際関係もそういうように好転することを希望する。そういう方面について日本努力をして平和外交を進めておるわけであります。日ソ交渉については、千島の問題は、むろんソ連関係として交渉の爼上に上ります。南樺太しかり、歯舞色丹しかりであります。しかしそれは、ソ連の方で、お前はアメリカの方でこういうことがあるのだ、こういうことをはっきりと言いがかりをつけてくれば交渉になりましょう。しかしそういうことがないのにもかかわらず、こっちから小笠原をとかなんとかいうのは、いかにも向うの宣伝に乗せられているような言論になるようなきらいがございます。私はそういうことは問題が起って後に考えて、少しも差しつかえないことだと考えます。これでお答えといたします。
  79. 戸叶里子

    戸叶委員 この問題については、私ももっといろいろ突っ込んで質問申し上げたいと思うのですが、きょうは時間がございませんので省略いたします。  ただ先ほど重光外務大臣は、ソ連の方がそう言ってこない、日本側だけでそういうことを言う必要がない、こう言われますけれども、だれが考えてみましても、この領土問題がお互いにからみ合っているということは、認められることだと思うのでございます。にもかかわらず、たとえば小笠原へはごく少数のあいのこの系統の人しか復帰できない、こういうようなことは、全く日本がなめられている外交だ、卑屈外交だということを世論が批判しているということもどうかお知りになって、そうしてそういうふうに言われている国論にも、耳を傾けていただきたいということを私はまずお願いをいたします。  そこで鳩山総理大臣に伺いますが、もうすでにお聞きになったと思いますが、ハバロフスクで千名に余る人たちが、十二月十九日から誓願運動に入っております。このことは抑留同胞を肉体的にも、そうしてまた精神的にも精力を消耗させるものでございまして、ついには生命の危険ということも予想されると思います。一日も早く政府が何らかの方法考えなければならないと思いますが、これに対してどういう方法をお考えになっているか、鳩山総理大臣に伺いたいと思います。
  80. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 ちょっと聞えませんでしたが、抑留者を早く帰せということだけでしたか。
  81. 戸叶里子

    戸叶委員 ハバロフスクで千名余りの人たちが、今待遇改善の問題とかそういう問題で請願運動に入っております。ストライキに入っております。そういうふうなことをそのまま放任しておきますと、肉体的な精神的な精力が消耗されて、そうしてその一身上の危険ということも考えられますが、これに対して鳩山氏は、一体どういうようにお考えになっておられますか。
  82. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 それは非常に気の毒なことで、だんだん激しい争闘に入っているようでありまして、心配いたしまして、外務省では適当な措置をとったはずであります。外務大臣に……。
  83. 重光葵

    重光国務大臣 これは非常に最近得た確かな情報でございます。新聞紙上にも報道があって、一般の関心を買っておる問題でございます。そういうようなことから、少しでも早くこの問題を処理しなければならぬということは、もうだれでも異存どころじゃない、ぜひそうやらなければならぬわけであります。ところが抑留者の問題は、第一次的には相手国との話し合いをするということをやらなければなりません。そこで抑留者の問題は、一般問題で意見が合わないのにもかかわらず、松本全権が特にマリク全権にも会って委細を尽してその事情をも述べて、そして早く帰すようにまた尽力をしてもらいたいということを申し入れてきたのでございます。その反響がこういう問題においては必ずあると私は確信したいのでございます。そのほかにどういう手段が残っておるかということもまた考えなければなりません。赤十字社を通じていろいろなことをやる、慰問品をやるということは直接の救済方法でもありますので、慰問品を送るということには全力を尽しております。それが本人の手に入るようにせいぜい労力をいたしております。しかしこの問題はまた大きな問題でありますから、おそらく将来は国際連合等の問題にもなりかねない問題だと思います。またさような方に手段をとるのも一つ方法と思いますが、とりあえず、これは相手国の好意的の了解を得て目的を達するということが、何よりも必要だと思うので、その手段を今とっておるわけであります。
  84. 戸叶里子

    戸叶委員 そういった問題も必要でございますけれども、それと同時に、この間在ソ同胞の留守家族の方々からの陳情文をたしか鳩山首相はお読みになったと思います。それによりますと、ハバロフスクの模様でいろいろ心配をしているが、その請願運動が成功して待遇がよくなることももちろん望みとするけれども、それよりもっと自分たちの望むことは、日ソ交渉を打開して、そして一日も早く全面的に救出してほしいことだ、こういうふうな陳情がたしか鳩山総理大臣のお手元にも届いていると思います。こういうふうな声に対して、鳩山首相はいかにおこたえになるかという点。  時間がありませんのでまとめて御質問いたしたいと思いますが、第二の問題は、ハバロフスクにおられます抑留者の人たちが言われた言葉で、日ソ交渉において妥当な要求を放棄するがごときことは本意とせざるところであり、そのような場合においては時期のくるまでがんばり抜く覚悟があるから、祖国においても正当な要求を貫徹してほしい、こう言っております。私はこうやって歯を食い縛りながら自分たちをささえている人たちを考えましたときに、胸の引き締められるような思いがいたします。そこでここでよく私たちが考えてみなければなりませんことは、戦争という悲劇によって、十年以上国の犠牲となって抑留されていろ人たちは、日本と長い間隔離されている人たちでございます。そのために、日本の戦後の国内の変化というもの、あるいは国内の情勢、外国との関係日本国際的にどういうふうな形に置かれているかという現状、あるいはまた政府の外交のあり方というようなものが、正確に何ら伝えられておらないのでございます。こういうふうにして先方において抑留中にがんばっていいる姿というものは、まことにとうといものでございますけれども、こういう姿だけで問題は解決するものじゃない。政府態度いかんということが、この引き揚げ問題に非常に影響があるのだということを、私は知らせなければならないと思うのです。これに対してどうお思いになりますかということと、そうして、そういうとうとい気持があるからといって、日本はそれに甘んじているべきでなくて、早く日ソ国交回復して、全体が引き揚げてくるようにする必要を痛感されないかどうか、こういった点について、鳩山総理大臣の御所信を承わりたい。
  85. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 もちろんそうです。未帰還の人たちが、自分たちを考え領土問題を解決しないようにしてもらいたいというようなことを言うのは、非常にとうとい希望であります。それであるからといって、甘んじてこの問題を遷延させることができないことは、戸叶さんの言う通りであります。できるだけ領土問題も早く解決しなくてはなりません。未帰還の人たちの帰還について、われわれができるだけの心配をしなくてはならぬということば、当然であります。
  86. 戸叶里子

    戸叶委員 鳩山総理大臣は、私の意見に同意をして下さいましたが、それでは一体どういう方法をとられますか。日ソ交渉を再開されて、早くそういった問題を解決するというふうにお考えになりますか、いかがでございますか。
  87. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 日ソ交渉は、できるだけ早く解決するように努力をしなくてはならないと思っております。
  88. 前尾繁三郎

    前尾委員長 田中稔男君。
  89. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 総理にお伺いいたします。日ソの国交の回復はもちろん実現しなければならない事柄でありますが、日本人の国民感情としては、日本と中国との国交回復をさらに強く要望しておるのであります。経団連の新会長となられました石坂泰三氏のごときも、日ソ国交回復についてはやや消極的な考えを持っておられるにもかかわらず、日本と中国との国交の回復の必要を、非常に強く唱えておられるのであります。そこで、政府としては、日ソ国交回復とともに、日本と中国との国交の回復について、どういうお考えを持っておられますか、総理の御所見をお伺いしたいと思います。
  90. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 田中さんの御質問お答えをいたします。中国と日本と国交を正常化したいということは、当然なことでありますが、国民政府は国連において承認をされておりまして、そして、国民政府日本と親交の間柄にある国であります。それと中共とは相反する、対立しておる国だものでありますから、中共を承認するということは、国民政府承認しておる関係上できないわけです。そこで、仕方がないから、通商を親密にして国交を親密にしていく、そして国際関係を正常化するように、だんだんと一歩々々持っていきたいという考え方をしておるわけなのであります。
  91. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 台湾の国民政府との関係はともかくといたしまして、北京にある中華人民共和国の政府は、その問題には触れないで日本との国交の調整をはかりたいという意向であることは、御承知通りであります。周総理からもそういう提案がたびたび出されておるのであります。そこで、総理もこれはだんだんやっていきたいというお考え、それで一応けっこうでありますが、過般の参議院の予算委員会の席上であったと記憶しておりますが、総理は、もし要請があれば、みずから中国の首脳者と国交の調整問題について、話し合ってもいいというような御発言があったと記憶しております。あらためてお伺いいたしますが、今日もそういう御意向を持っておられるかどうかお尋ねいたします。
  92. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 参議院の予算委員会においての質問は、周恩来氏が面会を申し込んできたときに、会う考えがあるかどうかという御質問でありました。私は、とにかく中共とは国交を親密にしていかなくてはならない国柄であるから、そういうような要求があったときには、あえて辞すことはありませんという返事をいたしました。
  93. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 もう一ぺん言って下さい。あえて辞することはないと言ったのですか。
  94. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 同じ言葉を覚えておりませんが、私の答えは、そのときは状況によってはむろんお目にかかりますというような返事をしたそうです。
  95. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 お目にかかりますという意味ですね。
  96. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は記憶がないのですけれども、そういう腹の中です。
  97. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 その次に、日ソ国交回復についてはアメリカ側がどうも少し反対のようであります。少しどころではない、大いに反対だろうと思います。日本と中国との国交を回復することについて、アメリカ側から何か反対の意思表示というものは従来は行われていなかったかどうか。
  98. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 そういうことはないのです。私はダレス氏に対しまして、日ソ交渉につき、あるいは中共との交渉について、何か御質問があるならばお答えをいたしましょうということを言いましたら、別に質問はないという御返事でした。
  99. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 それではさらに、今後日本と中国の国交の調整を進めるに当って、アメリカ側から何か異議の申し出があっても、政府は断固としてこれを退けてやるという決心があるかどうかお尋ねいたします。
  100. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 アメリカ日本に対する政策については、ずいぶん誤解があるようです。アメリカは、日本を隷属せしめて、アメリカのために日本を働かせようというような気分がある、その気分で日本はあるいは自衛隊の増強をし、あるいは教育までも改正するというような御質問がありますけれどもアメリカはそういうような事実は絶対にないのです。
  101. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 総理は、中国政府の首脳者の方から希望があれば会ってもいいというお考えであります。それからまたそういうことをやるのについて、アメリカ側から何の異論もない、またかりにそういう異論があっても押し切ってやる、こういう御所信であります。いずれもけっこうであります。ところが総理の御健康のこともありますから、あるいは総理が北京においでになることが、健康上の理由でできないというようなこともあるかと思う。そういう場合には鳩山総理と周総理というようなトップ・レベルの会議でなくとも、次善の会談として、たとえば外務大臣同士、あるいは大使級同士、公使級同士、総領事級同士各級のレベルで、国交調整について予備的な会談をすることが私は望ましいし、このことについては総理も御異論はないと思いますが、いかがですか。総理さえ会うというのだから、総理以下のクラスの政府代表が会うということは、別に差しつかえないと思うがどうですか。
  102. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 吉田総理が仮定の質問に対してはお答えをしないということを言いましたが、私もときどきそれを使いたいのです。使うと吉田のまねをするなどと言われますけれども、とにかく仮定の質問になると誤解を生じまして困るものですから、そういうような御質問にはお答えはできません。
  103. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 これは仮定の質問じゃないのですよ。鳩山総理に、たとえば周総理あたりから何か会いたいという……。
  104. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 会いたいと言ってきたら会うかというのですね。そうすると、これはやはり仮定です。そのときの事情があるわけです。
  105. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 向うから外務大臣と会いたい、あるいは大使級の人と会いたいという場合に、これを断わる理由はないのです。どうですか、やはり辞する理由はないのでしょう。
  106. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 何という御質問ですか。
  107. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 もう一ぺん言いますよ。鳩山総理は、周総理等の申し入れがあれば会ってもよろしいというお気持です。アメリカ側の反対があっても押し切ってやる、こうおっしゃるならば、中国の政府から、鳩山総理でなくともよろしいから、重光外相と会いたい、あるいは大使級の人と会いたい、総領事級の人と話をしたいという場合に、これを断わる理由はないわけでしょう。
  108. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 そうです。——私はアメリカが反対をしても、押し切って会いますという返事はしないのです。ただアメリカはそんなことは反対しません、こう考えています。それから重光君に向うの外務大臣が会いたいというような場合に、今日のような事情ならば、これを拒否する理由は少しもないと思います。
  109. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 そこで、アメリカはジュネーヴにおいて、中国とずっと話し合いをしておるわけです。もう何か四十回くらいにわたって、断続的ながらずっと会談を続けておる。アメリカにしてすでにしかり、いわんや一衣帯水の間にある日本は、引き揚げ問題あるいは貿易問題あるいは文化交流の問題、こういうふうな問題がたくさんある。だから私は向うからは日本政府の腹さえわかれば、いろいろな会談の申し入ればあると思う。  ところで、一つ具体的な問題ですが、第三次貿易協定の中には、日本と中国とは通商代表を交換するということが書かれておるのです。しかもこの協定締結されました際に、鳩山総理はこの協定の履行について支持と協力とをお約束になったことは、天下周知の事実です。ところがこの通商代表の交換さえまだ行われていないわけです。今までの御答弁をずっと伺っておりますと、この第三次貿易協定に規定された通商代表の交換のごときは、もう少しも問題はなく実現しなければならないことだと思うのであります。今からでもおそくはないのでありますが、第三次貿易協定に規定された通商代表の交換を実現される御意向はありますかどうですか。
  110. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 事情によりましては、私はできるだけそういうような方向に進みたいと思っております。
  111. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 それは非常に抽象的な答弁で、それでは外務大臣に聞きますが、通商代表の交換ということはきわめて事務的なことですが、今までこれができていないのはどういうわけです。
  112. 重光葵

    重光国務大臣 通商代表が民間の代表として来るならば、これは異論はございません。ただ問題となっておるのは、向うは政府の代表で外交特権を要求するような条件でございます。さようなことは今できないことは御承知通りであります。さようなことが解決をいたしますれば、これはいいと思っております。それはこちらも民間でやる、向うも民間でやる、こういうことで来れば少しも差しつかえないと思います。
  113. 前尾繁三郎

    前尾委員長 もう時間ですから細迫君に行って下さい。細迫兼光君。
  114. 細迫兼光

    細迫委員 私はただ一問だけ鳩山総理大臣に御質問いたします。鳩山さんが憲法の改正に強い希望を打ち出しておられること、自衛隊の増強を打ち出しておられること、これは外交上にも非常に微妙な、しかも悪い影響を及ぼしておると思いますから、その点について一言御質問いたしますが、憲法を改正しなければならぬという非常に強い大きな根拠として主張せられておることは、これは押しつけられた憲法であるからという議論であります。鳩山さんもかつて二十九年の三月自由党の憲法調査会の第一回総会においてこう言っておられる。この憲法が作られるときには政府にも国会にも全く自由はなかった、全く日本国民にも国会にも政府にも自由のないときにこの憲法ができたのであります。だから変えなければいかぬ、改正しなければいかぬ、こう言っておられる。ところが二十一年十一月三日の日本新憲法の公布のときの記念式の勅語には、天皇様はこう言っておられる。「本日、日本国憲法を公布せしめた。この憲法は、帝国憲法を全面的に改正したものであって、国家再建の基礎を人類普遍の原理に求め、自由に表明された国民の総意によって確定されたのである。」勅語はこう言っておるのでありますが、鳩山さんは天皇様はうそつきだとおっしゃるのでございますか。
  115. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私はそんな天皇がうそつきなどという意味において、私の発言をしたのではございません。私はただ事実だけを述べたのであります。
  116. 前尾繁三郎

    前尾委員長 次会は公報をもってお知らせいたします。  本日はこれにて散会したします。    午前十一時五十四分散会