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1956-03-07 第24回国会 衆議院 外務委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年三月七日(水曜日)     午前十時三十八分開議  出席委員    委員長 前尾繁三郎君    理事 石坂  繁君 理事 北澤 直吉君    理事 須磨彌吉郎君 理事 福永 一臣君    理事 山本 利壽君 理事 穗積 七郎君    理事 松本 七郎君       大橋 忠一君    菊池 義郎君       園田  直君    高岡 大輔君       並木 芳雄君    福田 篤泰君       渡邊 良夫君    赤松  勇君       田中織之進君    戸叶 里子君       福田 昌子君    細迫 兼光君       森島 守人君    和田 博雄君       岡田 春夫君  出席政府委員         総理府事務官         (調達庁総務部         長)      眞子 傳次君         外務事務官         (大臣官房長) 島津 久大君         外務省参事官  法眼 晋作君         外務事務官         (アジア局長) 中川  融君         外務事務官         (条務局長)  下田 武三君         外務事務官         (国際協力局         長)      河崎 一郎君  委員外出席者         外務事務官         (欧米局第二課         長)      安川  壮君         外務事務官         (移住局長)  矢口 麓藏君         専  門  員 佐藤 敏人君     ――――――――――――― 三月六日  委員大橋武夫君、中垣國男君、平野三郎君及び  三田村武夫辞任につき、その補欠として高岡  大輔君、江崎真澄君、植原悦二郎君及び松田竹  千代君が議長指名委員に選任された。 同月七日  委員池田清志君及び田中稔男辞任につき、そ  の補欠として池田正之輔君及び赤松勇君が議長  の指名委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  外務公務員法の一部を改正する法律案内閣提  出第三五号)  国際情勢等に関する件     ―――――――――――――
  2. 前尾繁三郎

    前尾委員長 これより会議を開きます。  国際情勢等に関する件につきまして緊急質疑があるそうでありますから、これを許します。赤松勇君。
  3. 赤松勇

    赤松委員 私は最近頻発しております密集地域における飛行機事故及びこれに関する補償問題等につきまして、外務当局及び調達庁お尋ねをしたいと思います。この機会に、時間を与えていただきました委員会の皆さんに感謝いたします。  これは階級や政党の問題ではございません。まさに日本人といたしましては、その生命財産保全のためにお互いに考えなければならぬ重大な問題でございまして、さきに小岩事件発生をいたしました。さらに全国各地におきまして、かような事件が頻発しておる。たとえば愛知県における最近の被害状況を見ましても、昨年一月十五日に春日井という所に落ちた。二月二十四日には西春日井郡に落ちた。六月十七日には春日井市に落ちた。九月十日には西春日井郡に落ちた。また最近名古屋市にジェット戦闘機が落ちまして、あるいは補助タンク等が落ちまして、負傷しておる。こういう問題につきまして国際協力局の方では、あるいは日米合同委員会において、またその他の機関におきまして、おそらく数度の話し合いが行われておると思うのでありますが、前に内閣委員会におきましてわが党の西村力弥君は、密集地域における飛行機練習アメリカ航空法によって禁止してある、あるいは厳重な制限が加えられておるということについて質問いたしましたところ、千葉政府委員はこれを肯定しておるわけなのです。そこでその関係は一体どうなっておるか、この際外務省に私はお尋ねをしたいのです。
  4. 安川壮

    安川説明員 お答えいたします。ジェット機の事故につきましては、従来もしばしば日米合同委員会等におきまして、先方に事故防止について万全の措置をとるように、そのつど申し入れております。また米軍側も、こちらからの申し入れを待つまでもなく、事故防止については万全の措置をとっておるということを明言しておりますし、またこれを実行しておるものと信じております。  またいわゆる危険飛行でございますが、地上に特に危険を及ぼすことが明らかでありますところの、たとえば空中爆撃演習、あるいは空中射撃演習のような訓練につきましては、合同委員会を通じて、特に演習場を指定しまして、その指定区域以外ではそのような訓練はできないことになっております。  それからその他の一般訓練につきましては、特に日米間の取りきめとしては、制限ないし禁止措置はとっておりませんけれども、これは米軍自体航空規則によりまして、それぞれみずから規制を行なっております。特に市街地上空における危険飛行というようなものについては、軍自体が厳重な規則を持っておりまして、それにのっとって訓練をやっておるわけであります。市街地上空その他におきます、いわゆる危険飛行禁止につきましては、日本国内法でも規則が制定してあるわけでございますが、米軍米国の本国におけると同様の規則を、日本におきましても適用しまして、それにのっとって危険飛行その他を制限しておるわけでございます。  米軍側説明によりますと、軍の規則はそういう意味では、米国本土における一般民間航空航空安全規則よりも、さらに厳重な規則になっておる、それと同様の規則日本においても適用しておる、ということでございます。  従来事故がありますたびに、その原因その他につきましては、向う調査を要請しておりますが、最近起きました事故につきましては、ただいま御指摘のありました小岩における墜落事故につきましても、直ちに照会いたしましたところが、これは軍側調査した結果、特に操縦士航空安全規則違反したという事実は認められない。ただし墜落のほんとうの原因につきましては、操縦士も死亡しておりますので、操縦士過失によるものか、あるいはその他の原因によるものかは、今のところ明らかになっていないのであります。  それから名古屋に起きました事故につきましては、私の方もまだ具体的な情報に接しておりませんので、事故原因その他につきましては、ただいま申し上げることができないのであります。
  5. 赤松勇

    赤松委員 これはもう今までしばしば起きた事件なのです。そのたびに政府の方では日米合同委員会でよく話し合うということを今まで言って参りました。今も万全の対策などということを言っておりますけれども、どういう万全の対策を立てたのか、はっきりしてもらいたい。あなたの今の答弁中に二、三質問したい点がありますが、まず第一に万全の対策とは何をさすのか、具体的に示してもらいたい。
  6. 安川壮

    安川説明員 ただいま申し上げました特定演習区域を指定したものにつきましては、その演習区域以外では演習を行わないということでありまして、従来起きました事故につきましては、私の知る限りでは、特定演習区域外演習を行なったために、その演習場使用条件違反したために事故が起ったということはないと考えます。  その他の万全の措置と申しますのは、軍の航空安全規則を厳重に守るということでございます。
  7. 赤松勇

    赤松委員 名古屋密集地域ということになっておりますか。あの上空での演習は許されておりますか。
  8. 安川壮

    安川説明員 おそらく市街地密集地域になると思いますが、単なる訓練飛行をやってはいかぬということじゃないのであります。演習地域訓練飛行につきまして、私は具体的なその条文をここには持っておりませんが、たとえば市街地上空で急降下をやるとか、あるいは一定の高度よりも下るということはしてならないということであります。
  9. 赤松勇

    赤松委員 曲技飛行市街地上空では禁止せられておりますかどうですか。
  10. 安川壮

    安川説明員 曲技飛行と申しましても、私は専門家でありませんから、曲技飛行にもいろいろ種類があると思います。どういう種類飛行禁止しておるかどうかはまだ研究しておりません。
  11. 赤松勇

    赤松委員 アメリカ側の方で市街地上空における演習等について、制限もしくはこれを規制しておるという法律を示していただきたい。
  12. 安川壮

    安川説明員 ただいま調達庁の方が空軍規則の抜粋をここに持っておられますが、この中に、たとえば最低安全高度という条項がございます。ちょっと読んでみますと、   航空機は、離陸し、着陸する場合を除き、次の各号に該当する飛行をしてはならない。   a、首都、都市その他人または家屋の密集している地域上空にあっては、当該航空機を中心として半径二千フィートの範囲内の最も高い障害物上端から二千フィート以下の高度。ただし、機関故障のため上記地域以外に不時着する場合を除く。   b、家屋居住船、車両その他飛行障害物上空にあっては、当該障害物上端から五百フィート以下の高度。   c、前二号に規定する地域以外の地上、水上の上空にあっては五百フィート以下の高度。ただし、ヘリコプターはその限りでない。   一三、曲技飛行   操縦者は次の各号に該当する曲技飛行を行なってはならない。   a、人または家屋の密集している地域上空。   b、民間航空の路線または航空交通管制圏内。   c、航空制限区域上空。   d、演習中(往路及び帰路を含む。)を除き、周辺地域の最も高い障害物上端から千五百フィート以下の高度。   e、飛行視程が五マイル以内で雲底の高さが五千フィート以下のとき。   以上であります。
  13. 赤松勇

    赤松委員 名古屋で最近飛行機が落ちましたが、たとえば曲技飛行等いろいろな制限事項があるのですが、それに違反するものであったかどうか。もしそれに違反するものであったということが明白になった場合、外務省はどうするのですか。またその判定はだれがやるのですか。
  14. 安川壮

    安川説明員 名古屋の件につきましては、私も最近に至ってその事実を知りましたので、米軍に対してまだ調査申し入れてはおりませんが、調査向うに要請したいと思っております。違反した場合には、もちろんその違反した操縦士なりについて軍自体措置をとると思います。また違反した事実があれば、こちらとしては同じよような事故が再起しないように注意を喚起するということをするのは当然であります。
  15. 赤松勇

    赤松委員 違反したかどうかということをだれが判定するのかと私は聞いているのだ。
  16. 安川壮

    安川説明員 判定するのは、日本側違反しておるという証拠をあげ得れば、もちろんこちら側から申し入れることもできると思いますが、実際問題として日本側責任者が一々訓練状況を見ているわけではないのでありますから、軍自体がその操縦者を調べる以外には方法はないと思っております。ただしこちら側でも調べる方法があれば、もちろんこちらがその違反を指摘して向う申し入れをするということは当然できるわけであります。
  17. 赤松勇

    赤松委員 その違反であるかないかということをどこで判定するのかということです。
  18. 安川壮

    安川説明員 これは軍自体規則を履行する責任は、軍にあるのでありますから、軍が第一次的に調査するのは当然だと考えております。
  19. 赤松勇

    赤松委員 それでは日本側においては何らそれに対して違反であるかないかということを判定して、それをもって日米合同委員会等において外交折衝する根拠は何もないのですか。
  20. 安川壮

    安川説明員 こちらが調査するだけの手段を持っておれば当然こちらでできるわけであります。できますが、実際問題としてできるかできないかという問題なのです。
  21. 赤松勇

    赤松委員 それが重大なのでお伺いしているのです。全然できないということになりますれば重大です。どうして補償するのですか、補償根拠はどこから生まれてくるのだ。
  22. 安川壮

    安川説明員 償補の問題は別でありまして、空軍規則違反しようがしまいが、事故が起れば補償補償として行われるわけであります。日本側は、規則違反していようがいまいが……(赤松委員「要求する根拠は出てこない」と呼ぶ)出てきます。これは空軍規則違反しておらなくても、たとえば機関故障によって墜落した、あるいは操縦士操縦の誤まりによって起った事故であれば、当然行政協定に基いて補償がなされるわけであります。
  23. 赤松勇

    赤松委員 それではお尋ねいたしますが、日米合同委員会において、小岩の問題にしてもその他の飛行機事故にしても、これを持ち出されて折衝をされた事実があるかどうか。あれば、一体どことどことどこの事件を取り上げておやりになったか、そうしてその結果はどうであったか、お答え願いたい。
  24. 安川壮

    安川説明員 小岩事故につきましては、直ちに向う原因その他について調査合同委員会を通じて申し入れました結果、その説明は、先ほど申し上げましたように、これは軍の規則違反したという事実は認められない、ただし墜落事故そのものは、操縦士も死亡しておりますので、操縦士過失によるものか、飛行機機関その他の故障によるものかは、今のところはっきりしないという答弁でございました。ただし補償補償として別途にこれは調達庁を通じてなされるわけであります。
  25. 赤松勇

    赤松委員 その他の事件……。小岩だけではないのです。日米合同委員会で取り上げたかどうか。
  26. 安川壮

    安川説明員 一々の事故は覚えておりません。しかしそのつど申し入れておりますし、また補償の方は、そのつど個々ケースにつきまして、合同委員会を通じませずに、調達庁が直接成規手続に応じて補償措置をとっているわけであります。
  27. 赤松勇

    赤松委員 日米合同委員会でこれが討議されたことはないのですか。ほとんど調達庁の方が米軍と今まで折衝してきたのですか。
  28. 安川壮

    安川説明員 個々事故につきます補償措置は(赤松委員補償じゃないです」と呼ぶ)それは事故が起ったからといって、すべてを合同委員会で取り上げとるいう処置はとっておりません。
  29. 赤松勇

    赤松委員 そうしますと、こういうことになりますね。たとえば東京上空演習をする。その場合故意によるかどうかは別問題といたしまして、飛行機墜落する。それによって損害が与えられる。(「故意ではないだろう」と呼ぶ者あり)故意ということはあるのだよ。ちゃんと外務省の役人は故意という言葉を使っているのだ、内閣委員会において……。その場合、政府の、今の外務当局の御答弁では、米軍との折衝は、ただ補償問題等についてだけ、調達庁米軍折衝しておるのだ、そういう個々事件について、日米合同委員会において今まで取り上げて折衝した事実はない、こういうふうに解してよろしゅうございますか。
  30. 安川壮

    安川説明員 事故防止そのものについては、再三伺うに申し入れておるということを申し上げておるわけであります。
  31. 赤松勇

    赤松委員 その申し入れ根拠はどこなのですか。たとえばそれを調査する手段も何もないのだ、こう先ほど答弁ではおっしゃっておる。一体何の根拠に基いて向う申し入れをされましたか。ただなるべく落ちないように頼む頼むといって、あなたの方で申し入れをされたのですか。冗談じゃない。
  32. 安川壮

    安川説明員 先ほどから再三申し上げておりますように、特定危険飛行については区域を指定してあるのでありまして、従来はこれに違反して、指定した演習地以外で爆撃演習をやるというような事故があれば別でありますが、そういう事故は今までないと私は申しておるのであります。また空軍規則自体につきましては、向う空軍規則がある、それを厳重に順守するといっておりますし、こちらもそれを繰り返して申し入れておるということであります。
  33. 赤松勇

    赤松委員 名古屋上空演習してよろしいという地域に指定されておりますか。もしそれがされていない、あそこでは演習してはいけないのだということになっておる、それが現に演習が行われた、そうして飛行機が落ちておる、そういう事実が明らかになった場合、あなたの先ほどの御答弁で、それを調べる手段も何もないのだということになりますならば、どういう根拠でもって米軍側折衝なさるのですか。実はきやうは私はあなたに答弁を要求したのじゃないのです。私は国際協力局局長の方へ答弁を要求したのです。どうしたのですか。
  34. 前尾繁三郎

    前尾委員長 それは所管がこっちで、国際協力局ではないらしいのですよ。
  35. 安川壮

    安川説明員 所管欧米局でございます。欧米局長はきょうはちようど本会議の方に出席する必要で、本委員会に出席できません。  それから名古屋上空演習区域かどうかということでございますが、もちろん演習区域と申しますのは、爆撃演習とかあるいは空中射撃演習というような、明らかに地上に直接被害を及ぼすような演習については、特定区域を定めておるわけでありまして、名古屋上空はもちろんそのような爆撃演習とか空中射撃演習区域に該当しておらないことも当然でありまして、今回の事故につきましては、私はよく調査しておりませんけれども、おそらく爆撃演習とかそういう演習をやっておったのではないと了解しております。
  36. 赤松勇

    赤松委員 当りまえだ、名古屋上空爆撃演習なんかやられたらたまるものじゃない。一つこの問題につきましては、私あるいは同僚議員から――これは非常に重大な問題でございまして、一党一派の問題ではありません。日本人生命財産に関する重大な問題でございますから、この点につきましては、やはりその演習規制等について、これはアメリカに一方的にまかしておくのじゃなく、やはりわれわれは現在の行政協定の中におきましても、主権が当然われわれにあるのですから、この点についてはアメリカの方にかような事件発生しないように、厳重な規制を加える措置をとることはできると私は思います。この点についてなお後日質問をしたいと思います。  そこで今度は調達庁の方にお尋ねしますが、もう一点だけ念を押しておきましょう。名古屋の今度の事件が、御調査の結果、密集地域上空における飛行機訓練が許されていないにもかかわらず、それを行なつたために市民に不利益を与えたのだということが明確になった場合、外務当局としては具体的にどういう手段をおとりになりますか。
  37. 安川壮

    安川説明員 名古屋の今回の事故が、先ほどから御説明しております航空規則違反した結果起ったかどうかということは、さっそく調査いたしたいと思っております。
  38. 赤松勇

    赤松委員 そうして違反しておるということがわかればどうするのです。
  39. 安川壮

    安川説明員 その操縦士自体処置につきましては……(赤松委員「二人とも死んじゃっておるのだ」と呼ぶ)死んでおりますか。それにつきましては、かりに死んでおらないとしましても、これの処置は、これは軍の規則違反した結果生じたものでありまして、日本法令違反とかいう問題にならない、軍自体において処置すべき問題であります。  それから軍自体につきましては、先ほどから再々申し上げました通り、従来規則違反して起ったというケースはそうたびたびはない、私の承知している限りでは、大部分が操縦者過失なりあるいはエンジンの故障によって起ったものでありまして、そういう規則違反というようなケースは、私の知る限りではまだないのでありますが、もしかりに名古屋における今回の事故規則違反した結果起ったということでありますならば、重ねてアメリカ側注意を喚起しなければならぬと考えております。
  40. 赤松勇

    赤松委員 注意を喚起するというような抽象的な御答弁では満足ができません。けれどもあなた相手に質問しても仕方がないので、この程度にしておきます。  次に調達庁の方に聞きますが、あなたの方にも報告が来ておるわけです。きのう私は調達庁の方からその結果についての報告書をいただきましたけれども、もう被害状況は明白です。これに対しまして調達庁といたしましてはどういう補償をするか、この点につきましてお尋ねをしておきたいと思います。
  41. 眞子傳次

    眞子政府委員 被害事実は、簡単に申し上げておきますが、先月二十七日名古屋市千種区月見坂町二ノ二番地におきまして、ジェット単発練習機墜落いたしまして、人的被害はありませんでしたが、物的被害が二件ございます。伊藤三之助方家屋の一部十三坪を半壊し、庭園上の樹木約七十本、家具その他の物件を小破いたしました。その次に小川伝兵衛方家屋の一部約六坪を半壊し、その他家具類の一部を小破いたしました。  これに対しまして軍側では、小牧空軍基地司令部の正副司令官事故現場に参りまして被害者を見舞っておりますが、私どもの方の担当いたしまする本件補償申請は、御承知のように行政協定十八条に基く米駐留軍に基因する事故損害といたしまして、昭和二十七年六月十九日総理府令第三十二号の規定によって処理されるものでございます。本件は、事故発生後直ちに名古屋調達局の係官が現場に急行しまして被害者をお見舞いすると同時に、補償申請手続を指導いたしまして、目下その伊藤三之助方分については補償申請が出ておりますが、小川伝兵衛方の分についてはなお補償申請の指導中でございます。この手続が完了いたしますれば、私の方ではさっそく早急に軍側折衝いたしまして、なるべく本会計年度内補償いたしたい、こういうつもりで鋭意その調査手続の進行に努めておる次第でございます。
  42. 赤松勇

    赤松委員 総理府令それ自身私非常に不満なので、これはもう当然もっと単独法でもって十分な損害補償をしなければならぬという考えを持っておりますが、これは本委員会とは関係がなく、調達庁所管する事項でございますから、その関係委員会におきましていろいろ検討していきたいと思うのでございますが、こういう点につきましては可及的すみやかに、しかも最大限の損害補償を与えてやっていただきたいということを希望しておきます。  なお重ねて外務省に希望しておきますが、先ほど来の御答弁では全然納得いきません。わが党はむろん安保条約行政協定には反対でございます。しかしかりにこれを認めるといたしましても、現に国内の重要な、東京都の付近におきまして飛行機が落ちる、あるいは三大都市の一つ名古屋において飛行機が落ちる。それに対しましてこれが原因あるいはこれに対する保護手段が全然ないのだというような無責任なことでは、国民の生命財産を守ることはできないのでございます。私は日米合同委員会には大きな期待は持っておりませんけれども、一つこういう点について、日本政府もしっかり腰を入れて、これらの危険な密集地帯上空における訓練等については、これを厳重に規制する法律的な手段を講じて、国土を守っていくというようなことにもっと努力してもらいたい、こう思うわけでございます。  以上をもって私の緊急質問は終りたいと思います。     ―――――――――――――
  43. 前尾繁三郎

    前尾委員長 穂積君。
  44. 穗積七郎

    穗積委員 上程されております条約質問に入ります前に、緊急にちょっと下田条約局長お尋ねしておきますが、この前の三月三日土曜日の本委員会において、アメリカ原水爆実験の通告に対する政府の態度の質問中、あなたがこういうことを言っておられるのです。あのときはちょっと騒がしくて、私も正確に耳にとまらなかったものですから、あと速記録を正確に調べますと、その聞いたことがはっきりしたわけですが、「日本一国でやるなら、ビキニ海外派兵をして、ビキニ実験場を爆砕するよりほか方法がないのであります。」云々として、最後に至って、「これは」――「これは」というのは、ビキニに対する実験中止のための爆砕ですが、「社会党の御反対なさる海外派兵を行わなければできないわけであります。」と言っておられるわけです。これは平素非常に緻密で確実な言葉を使おうと努力される下田さんとしては、はなはだしく不適当な発言であると私は思うのだが、あなたはこれをどうお思いになりますか。不当な発言であればこの際すなおにお取り消しになった方がおためであろうと思いますのでお尋ねいたします。その通りの御答弁であればこれで済みますが、そうでなければ少し続けて質問しなければなりませんので、あっさりと一つお答えを願いたいと思います。
  45. 下田武三

    下田政府委員 先般の私の発言につきましてただいまお言葉がありましたが、あのあとにも御説明申し上げましたように、あの問答は、たしか森島先生が御提起になりました衆議院の決議と参議院の決議との差異、参議院の決議は単に政府が伝達しろということでなくして、関係国に具体的の処置を要求しろということも含んでおるということを申し上げて、その関連において参議院の決議をどう解釈するかという問題になりましたときに申し上げたことであります。それは、参議院の決議は日本が一国で実験をやめさせろ、そういう趣旨ではないと私は解釈いたしておりますということを申し上げましたときに、もし日本一国でやろうとすれば、先ほど御指摘になりましたようなことになるわけでありますが、そんなとっぴなことは決議の趣旨でないであろうという否定的な意味で私が申し上げたところでございます。ただいま取り消す意思はないかということでございますが、私はその理由を承わりたいのでございますが、もし事実に反しておるから取り消すということでございましたら、これは社会党が海外派兵に御反対であることはもう天下周知の事実でございます。そうしてまた海外派兵反対ということと、社会党の名を関連せしめたことはけしからぬとおっしゃるのなら、私も公人として取り消す以上は、やはり納得さしていただく理由を拝聴してからさしていただきたいと思います。
  46. 穗積七郎

    穗積委員 理由は十分ありますが、実は私の質問中に森島委員が関連質問をされて、それから私がさらに両院の決議の趣旨を説明して、それに対して政府がこれを中止せしめるための努力を怠っておること、不十分であることについては、政府の政治的信念を疑わざるを得ぬというふうに私が申しましたのに対して、あなたが今言ったような――特に私が問題にするのはさっきの二ヵ所でございますが、これは私から理由をお聞きにならぬでも、その前後をあなた自身が問答をされておるわけでございますから、あなた自身がその不当な理由を発見されて、かくかくの理由において不当であると思いますから取り消したいと思いますというふうに御反省があってしかるべきでございます。私の要求じゃない、あなたの自発的なる理由、動機によって、お取り消しになった方がよかろうではないかということを私は提案をしておるわけです。だからあなた自身が取り消す理由を発見してここで説明されて、かくかくの理由により取り消しますとおっしゃったらいかがでございますか。不適当とお思いになりませんか。私が不適当と思う理由とあなたの不適当と思う理由と合致しなければ取り消さないというのか、あるいはまたあなたは、これは私の説明する理由以外にあなたの理由を感ぜられておるかしらぬが、不適当でないと思っておられるのか、私の理由を聞くまでは不適当と思わないのかどうか。だから私の言わんとするところは、そういうむだな手数を省いて、あなたがみずから自発的に不適当なりと思われる点を発見されて、かくかくの理由によって不適当だと思いますからこれは取り消します、というふうにおっしゃったらいかがでございますかというのが私の提案ですから、ちょっと誤解のないようにしておいていただきたい。
  47. 下田武三

    下田政府委員 公人といたしまして事実に反する言明をいたしました場合には、これはちゆちよなく取り消すべきだと信じております。しかし社会党が海外派兵に反対なさっておられることは、これは事実でございます。それからまた海外派兵反対と社会党の名を結びつけられることは御迷惑であろうとは私ども毛頭考えておりません。でありますから私としましては、どうも事実に反するとか、あるいは世間を惑わすとか、そういう特別の御事情がございますなら、もちろん喜んで取り消します。しかし事実に反しないことを取り消せと仰せになりましても、どうも納得いたしかねると思います。
  48. 穗積七郎

    穗積委員 そういうふうに開きなおられるなら、私も余分なことでございますが申し上げなければならぬ。これは三つの点において不当だと私は思う。  第一は「日本一国でやるなら、ビキニ海外派兵をして、ビキニ実験場を爆砕するよりほか方法がないのであります。」と言われていることは、もとよりこれも一つ方法であるかもしらぬが、これ以外に方法がないということをここであなたが認識を持っておられるとするなら、その国会の決議というものを中止のために努力しろという決議を嘲笑されておることなのですよ。もとより与党の諸君も海外派兵しろなんということを考えておるわけはない、これはどう憲法を解釈いたしましてもできないはずです。あなたを指揮しておるところの外務大臣並びに総理大臣でも、これは社会党の人ではありませんが、現憲法下において海外派兵ができる、またはしようと思うというようなことは一切否定されております。国会においても当然なのです。国会は海外派兵をしなければできないような無理な決議をしたのではございません。そうではなくて、方法は他に幾らでもあるのです。実力行使以外の方法というものは幾らでもあるはずだという信念に立って、国会は中止を実現するように努力しろという決議をしておるわけですね。その決議に対してあなたは、できもしないことを言って、こんなつまらぬ決議をするとは何事だ、この決議は、海外派兵しろということならできないはずじゃないかといって、国会の決議を嘲笑されているということは不適当であるということです。これが一点。のみならず平和外交政策をもって臨まれんとする日本の外交が、こういう問題を、国会の決議、国会の意思、動機のいかんを問わず、ビキニの実験を海外派兵の実力行使による以外にとめる方法がないという認識を持つことは、これは世間に対して私は不当な発言だと思う。実力行使をのみ外交の手段とし、実力の威嚇をもって外交をやろうとするということを背景とするものの考え方を、外務省のしかも条約局長たる者がこういうことを堂々と発言されるということについては、国民に対する影響のみならず、外国に対する影響からいたしましてもはなはだしく不当でございます。  次に問題になりますのは、「これは社会党の御反対なさる海外派兵を行わなければできないわけであります。」と言っておるが、海外派兵に反対しておるのは社会党だけではございません。その点が第二点。これは自由民主党並びにあなたを指揮しておるところの与党の諸君に対する侮辱でございますし、侮辱でなければ誤解であります。あなたの考え方では、海外派兵に反対しておるのは社会党だけである、すなわち逆を言えば自民党の諸君は海外派兵に賛成をしておる、またはこれを黙認せんとしておるという、これは裏返しになります。これが不当である理由であります。自民党の諸君もこの発言は不当であるということを認めて、これからあとで取り消しを要求されるでございましょう。これは私は自民党の諸君のために――社会党によって代表されておる日本国民だけではなくて、自民党によって代表されておる日本国民もすべて徴兵制度、海外派兵については反対である意思を持っておられるとわれわれは信じますから、そういう意味においてこの発言は不当であるということ。  それから第三点は、この言葉は社会党に対する潮笑であり、挑戦でございます。事務当局であります条約局長発言といたしましては、あなた方はとめろとめろと言って、社会党の諸君は特にやっきになって言っておるが、それはあなた方は逆に実力行使をしろ、してでもとめろということを言っておられるように見受けられる、それはあなた方の自己矛盾ではありませんかという嘲笑でございます。論理の挑戦でございます。これが不当であるという第三の理由でございます。  明敏なるあなたでありますから、これ以上くどくどと説明する必要はないと思うので、従って以上簡潔に申し上げまして、あなたのすなおなる取り消しの御答弁を要求いたします。もしそれでできなければ、幾らでもこれから展開をいたします。
  49. 下田武三

    下田政府委員 先ほど申し上げたように、取り消すことにつきまして、納得する理由をお示し下されば取り消すことにいささかのちゅうちょもございません。しかし公人といたしまして、筋を通しました上で取り消さしていただきたいと思うのであります。そこでただいま三点の御指摘がございました。なるほどそのような誤解を生んだといたしますとすると、これは重大なことでございます。そこでこの三点とも、私の発言の意図しましたところとおよそはなはだしく違うということを言釈明さしていただいた上で、取り消さしていただきたいと思います。  第一に国会の決議を潮笑したものであるとおっしゃいました。私は官吏といたしまして国会を尊重いたします念においては何人にもおくれをとらないものであるということは、常々私自分で信じております。またそのように行動しなければならないということを日ごろの指針といたしておりまして、私の誠意のあるところは過去何十回にわたるこの委員会の経過におきましてもアプリシエートしていただけると思います。(「アプリシエートしているよ」と呼ぶ者あり)私はこの一点につきましては、国会の決議を無視して、ほかにいろいろな手段があるのに海外派兵しかないじゃないかというようなことは全然申し上げません。たまたまやじがありまして、アメリカをやめさせろやめさせろという声が私の耳に入りましたので、それにつられて、やめさせるなら、海外派兵でもやって、爆撃しなければできないじゃないかということをつい申したわけでありますが、むろん穗積先生の御指摘のように、外務当局としてはそんなことは考えるべきではなくて、もちろん直接交渉もございますし、またその前後にも私自身申し上げておりますように、政府としてはあらゆる機会、あらゆる手段をとらえまして、この実験禁止の実現に努力しておる、また今後も努力を続けるということを申しておるのであります。その私自身の言葉が、このもしやめさせるなら海外派兵しかないのだという断定とはおよそ遠いものであるということは、当日の速記録を御精読下されば、わかっていただけると思うのであります。  第二点の、社会党が反対しておる。社会党だけが反対しておると断定いたしたことはございません。これはもう政府自体理論的の問題を離れまして、現実の問題としては海外派兵の意思は毛頭ないということは、機会さえあれば申しておるのであります。それが政府の一貫した基本方針であると思うのであります。また国民の大多数が海外派兵に反対であるということも、これも世論として明らかなことでございます。むろん憲法上その他の理論の問題として議論されることはありますけれども、実際の問題として、日本政府も国民も、だれ一人として海外派兵をすべきだという考えは持っておらないのであります。それでございますから、社会党だけがひとり海外派兵に反対になっておられるというような断定を私は申し上げた意図は毛頭ございません。  第三点でございますが、社会党に対する嘲笑ではないかという、これもまた私の意図とおよそかけ離れた御批判でございますが、私は、社会党が、自分が反対しておられる海外派兵を行なって、そうして実力で実験をやめさせろということを主張しておられるということをいささかも申したことはございません。そういう意図でないことは申しました私自身がそう信じておるのでございますから、その点は御了承願いたいと思います。また私、社会党に対しましても、特に本委員会で御指導にあずかっております社会党の先生には、日ごろから敬意を抱いておるものでありますから、いつも私どもの御指導に接しております先生方に対しては、誠心誠意御答弁申し上げ、また私の考えの誤まりも正していただいておりますけれども、そういう日ごろの私の言動なりから見ていただきまして、社会党を嘲笑するなんという気持は、私に毛頭ないことだけは一言申させていただきたいと思います。  ただ貴重な委員会の時間をこれ以上おとりする、またただいま穗積先生がおっしゃいましたような誤解を生むという原因になったのが私の言動であるといたしますと、これはまことに私個人といたしまして恐縮にたえないことでございます。従いましてこれ以上本委員会の貴重な時間をとることをやめて、そうしてまたもし穗積先生すらそういうように誤解なさるようなことでございましたら、これは私の本意に隔たることこれより遠いことはないのでございますから、つつしんで私の発言を取り消させていただきますと同時に、このことのために貴重な時間をとらせていただきましたことについて、深くおわびをさせていただきます。
  50. 穗積七郎

    穗積委員 すなおに私どもの不当をただす理由を聞かれて取り消されたことを多といたします。しかしながら先ほど申しましたような意味で、あなたの主観とは違うかもしれないが、少くとも日本の国会の外務委員会発言として、これが速記録に載り、対外的にも明らかになることでございまして、及ぼす影響というものは私は大きいと思う。そこで取り消されましたが、そのことに対する外務省の考え方、あなたの言葉の端に出たその考え方というものは、これはたまたま出たものではないと思いますから、この次の機会に大臣が出席され、また総理が出席いたしましたときに、この問題についての所信をもう一ぺん伺うことを留保いたしまして、きょうはその取り消しの問題、あと責任についてはそのままにいたしておきたい。
  51. 岡田春夫

    ○岡田委員 関連ですが、私も、実はこの委員会においてあのような発言のあったことは、単に社会党に対する問題だけではなく、これは相当重大な問題だと思う。先ほど条約局長からの御答弁の中で、こういう国会の審議に際してアプリシエートしているというような意味のこともあり、また与党側の委員からもアプリシエートしているのだというようなお話がありましたが、これはアプリシエートしているのじゃないという事実を一点だけ私は申し上げなければならない。  ということは、先ほどから海外派兵の問題は社会党も反対だし、政府としても反対だ、こういう意味のことをあなたは言われておるけれども、あなた御承知のように、参議院で与党野党一致して海外派兵については絶対にしないという国会の議決がある。国会ではあくまでも海外派兵はしませんという議決をしておるにもかかわらず、たとえばこのような破壊する例を持ってくる。こういう例を持ってくるということは妥当でないと思う。国会の決議によってこのように決定されていることに対して、こういう例を持ってきて、法律解釈の問題として扱いをされるというようなことは、現実の問題としては私は適当だとは思いません。なぜならば、どういう例を持ってきてもいいのだとするならば、たとえば地球の上の方の高々度のところに衛星を作って、そこから原爆をぶちこわしてしまえばいいのだ、そういうようなでたらめなことを何でも出して、例を出そうとすれば、何でも出せる。やはり現実の問題としてあなたに考えていただかなければならない。その現実の問題ということになると、国会の審議の問題、国会の議決の問題、こういう議決の問題を具体的に賢明なあなたの頭の中で解釈されて、それに基いて一体どのように解釈すべきであるか、こういう答弁でなければならない。単に空想の問題を例にあげて、あるいは国会で議決していることを正反対に運用して、それによってこういう例を答弁に使って切り開いていくというようなやり方については、私は適当だとは思わないのであります。こういう点から考えても、取り消しの仕方について今後十分慎重なる態度で臨んでいただきたいということを特に希望いたしておきます。  第二の点は、これは委員長に。この問題の扱い方でありますが、取り消したというのならば、当然これは速記録から抹消すべきものであると思う。これは委員長としてそのような扱い方をすべきであると私は私えるのだが、この点について委員長はどのようにお考えになっておるか。これは委員会の運営の問題でありますから、委員長からはっきり御答弁を願いたいと思う。
  52. 前尾繁三郎

    前尾委員長 あとで皆さんと御相談して、善処したい。
  53. 岡田春夫

    ○岡田委員 委員長は御相談してと言われるが、今までの例で、本人が取り消したものをほかの人に相談をして、削除しないような場合もあるとか、そういうようなことはあなた自身の権限じゃありませんよ。あなた自身の権限は、本人が取り消した場合に、それを取り消すのがあなたの権限ですよ。取り消さないというような相談をするというならば、おそらく社会党の諸君だってそういう相談に応じないでしょう。そんな相談はしていただく必要はありません。本人が取り消しているのならば、あなた自身の権限においてお取り消しなさい。
  54. 前尾繁三郎

    前尾委員長 それは取り消します。消す場合において、いろいろ関係のところを全部消すか。何かその範囲はいろいろあるのですよ。そういう意味で……。
  55. 和田博雄

    ○和田委員 今あなたは速記録を取り消されると言ったからいいのですが、条約局長の善意は今の説明でわかるのですけれども、速記録を読んでみる、と、客観的には個人の善意は速記録には出てこない。あなたは速記録を調べて、どういう点を消すかあとで相談するというのですが、とにかく消すということにしませんとおさまりがつきません。そういうように一つお取り計らいを願います。
  56. 前尾繁三郎

    前尾委員長 関係者が、あの範囲をどこからどこまで消すかという……。
  57. 岡田春夫

    ○岡田委員 そういう意味についてなら私は了解いたします。
  58. 前尾繁三郎

    前尾委員長 この間もあったのですが、なかなか関係するところを消すのに、範囲がどこまでかというので……。
  59. 岡田春夫

    ○岡田委員 取り消すのを相談するというのなら了解いたします。
  60. 森島守人

    ○森島委員 私過日の委員会で、下田条約局長からこのような重大な御発言がありましたので、さっそくこの問題を取り上げて御質問した。そのときのあなたの答弁は、自分の意見じゃないのだが、参議院がおそらくそういうばかなことまでは要求しているのではなかろうという発言できわめて詭弁的な御答弁があった。そこで私は速記録を調べた上でいずれ問題といたしますということをあなたにはっきり申し上げておいた。速記録を調べてみますと、あなた御自身の発言となっておって、当日あなたが私に答弁なさったような参議院の意向をそんたくするような答弁じゃなかったような気がする。今取り消されるという以上は、あなたの自己の発言としてこういうことを言ったのは悪かったという取り消しをなさったものと思う。参議院云々というふうにはおひっかけになっていないと思うのですが、この点だけはっきりお答え願いたいと思います。
  61. 下田武三

    下田政府委員 私も実はまだ当日の速記録を拝見しておらないのでございまして、はっきりしたことは申し上げられませんが、私発言者自身の記憶といたしましては、参議院の決議の趣旨が問題になりまして、それについて私の解釈を申し上げているときに、やめさせろ、やめさせろという御発言がありましたので、それにつり込まれて、やめさせるとすると、そういうとっぴなことでもしなければできないということを申し上げたのでありまして、そこでとっぴなことをしなければできないというときによく使うロジックでございますが、最も考えられない太陽が落ちてこなければできないじゃないかという、強い否定を使います場合に、あり得ないことをよく引用して、それで強く否定しょうという論理をよく使わしていただくことがございますが、そのときに私あり得ないこととして、先ほど取り消しましたようなロジックを使ったのでありまして私の真意は、私自身の考えを申し上げるというよりも、参議院と衆議院の決議が違っておるかどうかという御質問、並びに参議院の決議はもう一歩進んでおるじゃないかという御指摘に対しての私の考えを申し上げておるときに申し上げたのであります。私の積極的な自分の意思を申し上げる意図では全然なかった次第でございます。
  62. 森島守人

    ○森島委員 私はあなたの御答弁に対して、まだほかに平和的な方法で実現し得る道があるのだということを申し上げた外務省としては世界の世論に強く訴えて、この禁止を実現する努力が足りないと私は信じております。そのほかにも私はメノン代表の言を引用しまして、インドですら国際司法裁判所に提訴するという措置をとっておる。日本もこれらの平和的措置をとって、県止をすみやかに実現するための措置をとれないかということを申し上げた。私はこの上とも外務省としてはでざるだけの措置をとられることを希望いたしまして、私の質問を終ります。
  63. 穗積七郎

    穗積委員 そこで取り消しの問題はそれでよろしゅうございますが、この別の条約解釈について、下田条約局長に私はまず第一に一昨年のビキニ実験の取り扱いについて、国際法上の不満について私は申し上げてあなたのお考え方をもう一ぺん聞いておきたい。これと関連した重要な問題ですから聞いておきたいのです。というのは二点でございます。  アメリカが信託統治と称する諸島を拠点として広範なる公海を独占的に、しかも危険きわまる方法で使って、これが国際法の公海自由の原則に反する、すなわち国際法違反の行為であるというふうに解釈すべきことは、私一人の希望的解釈ではなくて、その後西ヨーロッパを初めとするアメリカの国際法学者においてすら、これは国際法違反であるという判断をしておる学者か九九%まで、そうであるといっていいと思います。このような国際法違反であるということが通説になっておる事態に対して外務省がいまだに一昨年の議論を繰り返して、公海自由の原則に違反しないというような態度をとっている点が一点。  もう一つは、起きました損害に対して、この間は涙金でございました。これは不法行為として認めるかどうかは別でございますが、少くともそれを国際法違反でないとしましても、これはこちら側からいえば損害賠償請求権によって請求をして、そうして正当なる、公平にして客観的なる損害の評価をして、損害賠償を請求すべきであるにかかわらず、その取扱いは、これは損害賠償請求権による請求ではなくて、一方的な向うの涙金、見舞金として取り扱った点でございます。  この二点についてわれわれは非常な不満は持つものであり、国民も今日同時に不満を持っていると思う。そうしてしかもなおかつ、これは過去のことのようですが、こういう態度をもって臨まれるとするならば、このビキニにおきます今度の実験に対して、われわれは正しい、しかも日本の自主的な態度によってこの問題に対処することは私はできないと思うので、特に今日は実害が起きる前のことでございますから、第二の損害賠償請求の権利の存在することについては、これは論じません。そこで問題は公海自由の原則に対する考え方が非常に誤まっておって、そうしてあなたの解釈は全く世界の国際法学界において孤立した意見であって、しかもこれは日本の国民のだれ一人の利益にもならない議論である。一にアメリカの軍部を擁護するためのみの曲解した、誤まった解釈であると私に断定せざるを得ないのでございます。そこでこれに対するあなたの解釈を、この際李承晩の関係あるいにアラフラ海の関係等もありますから、明確に一つ答弁してもらいたいと思うのです。
  64. 下田武三

    下田政府委員 原水爆実験が国際法違反ではないかどうか。特に公海使用の自由に対する重大な制限として国際法違反ではないかという点につきましては、私どもの方はほんとうに純粋の学問的見地からして断定する能力を持たないことを深く申し上げなければならないと思います。ほんとうに世界の学者で違反なりという断定をしておる学者は仰せの通りたくさんございます。また米国自身にもございます。しかし国際法、特に実定国際法が何であるかということの判断は、非常にむずかしい問題であると存じますが、国際司法裁判所なんかで何が法なりやということを断定する場合に、いろいろな基準、文明国における法の一般通念でございますとか、あるいは判例とか、最後に学者の説というものもあげられております。そこで学者の多数が国際法違反なりという説を出す際は、確かにそれは国際法に重要な影響を及ぼすものであると思うのであります。そこで何の問題にも限らず、学者の説というものは何が現実の国際法であるかという観点と、もう一つは立法論としての観点と二つの説があるわけでございます、立法論としては、これはだれでも、私自身もそうでございますが、こういうものは当然国際法上から禁止されるべきものであるということは問題の余地がないと思います。そこで立法論でなくして、現実にそれでは何が法であるかという問題が、ただいま御指摘になった問題であります。そこで私どもは学問的見地というよりも、実際の外交問題を処理しております観点からいいまして、国連その他の国際機関でどう扱われておるかということを、客観的に調べて、結論を出さざるを得ないというごく現実的な立場に置かれておるわけでございます。先般も申し上げましたように、国連の信託統治理事会で取り上げられたというのも、実験が国際法違反なりという見地からでは実はないのでありまして、むろん信託統治理事会の席上、これは国際法違反なりと強く主張した国もございましたけれども、国連の信託統治理事会の決定といたしましては、やはり国際法違反であるとかあるいは国連憲章違反であるとか、あるいは信託統治協定違反であるとかという断定はいたしませんで、結局住民の補償を十分にしろとか、あるいは住民に対する被害防止するために、万全な措置をとらなければいかぬとかという決議に終っておるという国際機関における現実のそういうケースからして、私どもとしてはどうしてもこの問題を見ざるを得ない立場にあるものでございますから、個人としては、特に立法論としては、国際法違反である、禁止すべきであるという信念においては決して人後に落ちないものでございますけれども、現実問題として何が法であるかという問題を議する場合に、すでに法になっておると申し上げることはできないわけであります。
  65. 穗積七郎

    穗積委員 そんなことは間違いであります。公海において原水爆の実験をやってはいけないという国際実定法ができていない、作るべきであります。作るべきであるが、できていない。できていないからこそ、生きております公海自由の原則の国際法というものがここで役立つわけなのです。ないからこそ役立つのです。たとえば公道において花火をあげてはいけないとか、あるいは危険物を使用してはいけないということがある。それはたとい私有の土地においてすらやってはいけないのであるが、そういう危険物の取締りに対してそんなことを一々あげてない。当時、公海自由の原則に予想しなかったところの武器の禁止、こういったものも、その実定法がないから何でもやってもいいのだというような法の解釈というものは、これは法の根本を否認するものだと思う。たとえば公海自由の原則のみならず、毒ガスであるとか、ダムダム弾の使用の禁止はありますが、この国際法を見ましても、それだけは列挙してこれ以外のものは使っていいとは書いていない。予想せざる他の武器が出てくるかもしれないが、これと同等以上の危険を持つものは使用してはいけないという実定法としての効力を持っておるわけです。ダムダム弾と毒ガスだけを禁止した法律が今日生きておるのではなくて、それと同等以上の当時予想できなかった、今後出るかもしれないそれと同等以上の危険なものは、すべてこれを禁止するという規定にもなっておるし、あれは打ち切っておりません。法の精神そのものがそういうことなのです。まして私はこの際におきましては、ダムダム弾または毒ガス、細菌を禁止するという条約をもってこれに当ろうというのではございません。実定法がないからこそ、公道において危険なことをやってはいけない。すなわち私が再々申しますように、そしてあなたも同感されるように、公海自由の原則とは、公海をある一国が独占的に使う自由ということではなくて、すべての国が自由に、安全に使う自由を確保する。これが公海自由の原則であるということはあなたも認めておられるわけです。そういう実定法――原水爆の実験をやってはいかぬという実定法がないからこそ、学説的にいうならば、この公海自由の原則が唯一の有力なる実定法としてわれわれは解釈すべきであって、そういう態度で考えないからこそ、あなたは武力をもっていかなければとまらぬというようなばかばかしいことを発言されるに至るのだ。これを不用意な言葉としてわれわれは聞きのがすわけには参りません。なぜそういうことを言うかというと、公海自由の原則に対するあなた方の信念がないからです。この原水爆実験の国際法上の解釈に対するあなた方の明確なる信念、解釈が統一されておらぬからこういうことになるのです。だから一国の主張や希望によってこのものがまとまるものじゃないから、実力行使をやる以外にないという論に発展するのです。根本はどこにあるかといえば、公海自由の原則の実定法には生きております。これは当然の論理だと思う。これは重ねて申しますが、私一人の論理ではない。一昨年のビキニに対する実験以後、あなたの言う具体的な事実をつかんで、一方ではそういう禁止の国際法を作ろうという立法の努力もありますし、また原水爆の製造、使用一切を禁止しようとする努力もありますが、同時に現存する法律秩序によって現に行われてきた、そしてさらにこれから行われんとしておる実験に対して、この法律をもって対処すべきであるということは私一人の論理ではございません。外務省が唯一のたよりとしておられる横田喜三郎さんですら、今度の発表に対しては明らかに公海自由の原則を侵犯するものであるという断定をされるに至っておる。私の知れる範囲においてはもう一人もありません。もしあなたの方に、これ以外に有力なる世界の学者で、公海自由の原則に対する反対の立論をする者があるならば、ますそれから教えていただきたい。あなた方は謙遜されての言葉だと思うが、みずからそういう解釈に権威を持たしめるだけの協力を自身しておらぬというならば、あなた方が権威ありと思われて立論の根拠を置かれておる学者の一昨年以後の学界における発言を示してもらいたい。その学者の名前と事実と論理を提供してもらいたいと思う。のみならず、重ねて申し上げますが、学界の論理はそういうことになっておる。論理だけではなく、この行為には国民のすべて――自由党を支持する国民ですらこれには反対しておる。すべての国民は、とにかく国民の利益から見て、この原水爆の実験はとめなければならぬと思っておる。その要望の上に立つ政府が、国の利益から見ても、客観的な論理から見ても、この論理を援用すべきであることは当然であると私は思う。私は学界における論理の存在の事実を聞いておる。それにもかかわらず、私をもって言わしめるならば、公海自由の原則に対する学界の解釈は九九%まで私と同様でございます。いわゆるアメリカの水爆実験は国際法違反であるといっておるのであります。  それと同時に第二に質問したいことは、そういう論理をなぜ用いないかという日本外務省の政治的な意図を私はお尋ねしたい。日本の利益にならぬといって、学界の論理もすべてアメリカに対して反対の意見をとり、日本にとって有利な発言を展開しておるときに、アメリカの軍部に対してのみ利益するような論理をここで展開しておられることは、そこに何らかの政治的な意図があって展開しておるのだとわれわれは解釈せざるを得ないので、日本外務省がそういう論理を展開される政治的動機を伺いたい。質問はこの二点でございます。
  66. 下田武三

    下田政府委員 第一点の学説を提示しろということでございますが、ただいま資料として持っておりませんので、いろいろな学説をまとめまして、近いうちにお出ししたいと思います。ただ学説はもう先ほど来申しておりますように、今日の多数説は、公海自由の原則の乱用であるということに一致しておると思います。そこで学説がその法の渕源としてどれだけの価値があるかというさっきの問題に結局帰着するわけでございます。  第二点は、――委員長ちょっと速記をとめていただきたいと思います。
  67. 前尾繁三郎

    前尾委員長 速記をとめて……。     〔速記中止〕
  68. 前尾繁三郎

    前尾委員長 速記を始めて……。
  69. 穗積七郎

    穗積委員 そうなりますと問題は政治的論理になるわけですから、今の問題につきましては、私は外務大臣もしくは総理に、その政治的な取扱い方というか考え方についてお尋ねいたします。申し上げておきますが、私どもはアメリカに対しても、他の国に対しましても、公海自由の原則を非常に有力なる法律上の根拠としてあらゆる機会に堂々と、しかも必要以上に内外にわたって公然と訴えるべきであるという政治的判断を持っております。そこであなたが今速記をとめておっしゃった政治的判断というものは、これは誤まっておるということを申し上げたいが、これは後に総理または外務大臣がおいでになったときにあなたも同席をして聞いてもらいたい。そしてあなたの言う政治的判断は間違っておるから蒙を開いていただきたいということを希望として申し上げておきます。  それからもう一つは、これは委員長から委員会に諮ってもらいたいのです。この問題は重要でございますから、日本の国際法学者を参考人として呼んで、この実験が国際法違反であるかどうかという問題を、本委員会におきまして明らかにするようなお取り計らいをこの際要望しておきます。
  70. 大橋忠一

    大橋(忠)委員 私は、日本生命線というものは公海と熱帯にあるということを前から言っておりますが、現に李承晩ラインでも公海自由の原則が問題になっておりました。公海漁業というものが日本の重要なる産業である限り、日本としてはこれを死にもの狂いで擁護する必要があると思います。そこで私は、この公海自由の原則の問題だけは外務省において特に注意されて、特別に学者を専門的に雇われてよほど徹底的に研究されて、そしてそれに基いて死にもの狂いで争わなければいかぬ、こういう考えを持っております。  もう一つビキニの実験の問題も、理論は別としてそれがために魚が汚染されて、漁業国家の日本としては非常な迷惑であります。付近の島々に住んでおる土民の被害もさることながら、漁業で飯を食っておる日本としては大へん迷惑なのです。そこで法律問題でなく実際問題として、今南極の探検を盛んにやっておるのだから、一つ南極のアメリカの勢力範囲で行うとか、またソ連がやりたければ北極方面でやるとか、なるべく他の国に迷惑を及ぼさないところでやるというようなことを、一つ日本の方から提議したらどうか。こう思うのだが、どうでしょうか。
  71. 下田武三

    下田政府委員 第一点につきましては仰せの通りに存じております。全く同感でございまして、公海自由の確立は日本生命線として最善の努力を今後も尽したいと思います。  第二点の実験場所の移転につきましては、これはもう前から米国側にも申し入れております。また今後も機に応じて申し入れることを必要と考えるのであります。極地でやるということはいろいろ実験の設備をしたりなんかする点において、技術的に可能かどうかという点は問題があるかと存じますが、そういうサゼスチョンをすることは私はけっこうなことだと存じます。
  72. 和田博雄

    ○和田委員 穗積君の質問に対しまして、何か公海自由の法理を展開することに政治的に差しさわりがあるということでしたが、一体そういうことがあるのですか。私は今の公海自由の原則なんというものは、一応実定法として存在しておるわけでもないし、ことに国際法なんというものは、やはり大きな国が勝手な解釈をしたがるものですから、そのときにむしろその解釈自体が非常に政治的になりがちなのです。そういうときに、やはり日本としては堂々と日本の立場でその解釈を純理的に展開していくことが一番強いと思うのです。そういう遠慮はちっとも要らないと思うのです。この問題に関する限りは、僕は非常に自主性を持って法理解釈を展開していってちっともかまわないと思う。そこに何かの政治的考慮を払うこと自体が僕はおかしいと思う。そういう点は僕は外務省自身は考える必要はないと思う。そういう点ははっきりした態度を打ち出したらよいと思うし、それからいろいろなことがあっても学説として大体大勢がきまっているときには、やはり法源として大多数の学説というものが一応のウエートを持つということが常識なのですかり、ほかに何もないのですから新しく立法論をやる必要はない。立法論をやればいろいろな議論が出るだろうが、立法論がないときには、これは世界の国際法学者の大体方向を一にした学説か、大きなウエートをを持つということは常識だろうと思う。そういう点でことに外務省という役所は、政治をやっているのではないのですから、ことにそういう法理解釈の点においては、明確な態度を官僚自身としても持してもらわなければ困ると思うのです。今言った公海自由の原則なんというものは、日本がそれを一歩々々譲っていったら日本としてはほかに何もなくなってしまいますよ。何かやったあとからちょっと待ってくれというようなことでその論理が停滞していくのでは、どうもこれは非常に嘆かわしい事態だと思います。そういう点で政治的な遠慮をせずに、ことに外務大臣は遠慮をする必要はないと思う。政治は政治としてこれは僕らがやることなのです。法理解釈自体は、やはり事務当局としてはこういう法理解釈が正しいのだということの信念を堅持してもらわなければ、漁業問題にしても、ほかのいろいろな問題に対しても日本が弱くなってしまうと思う。そういう点はどうですか。何かそういう政治的な考慮を払う必要があるのですか。速記をとめてまであなたは解釈を渋る必要はちっともないと思う。
  73. 下田武三

    下田政府委員 和田先生のお話ごもっともに拝聴しましたが、要するにこういうことだろうと存ずるのであります。  観点が三つあると思うのでございます。一つは政策論と、一つは立法論と、最後に現実に国際法は何だという問題なのでございますが、政策論として、原爆を禁止すべきだという政策につきましては、何人も異存はないと私は思います。  それから第二の立法論として早く禁止すべき立法を樹立すべきだという主張も何人も反対ないと思うのでございます。これは従来の当委員会の御質問でも、その政策論と立法論で意見の食い違ったことはないので、いつも穂積先生などから突っ込まれますのは、最後の現実法が何だという問題で、非常に御質問を浴びておるわけなのであります。  そこで、政府当局として政策論、立法論としてすでに禁止を主張する以上は、現実法の認定の問題としても踏み切って、公海自由に反するのだと言ってしまえばいいではないかというようなお説だったと思うのでございますが、その点につきましてはこういう観点があると思うのでございます。  たとえば李承晩ラインのごときものは、もう今日何人も疑うところのない現実の実定国際法にも違反しておるという見地から、私どもの方でも何らのちゅうちょなくそれを申し上げる。申し上げる以上は国内でもいろいろな問題が起ると思います。ごく一部の強硬論は、相手が国際法違反をやっておるならば、警備艦を出動させて保護出漁したらいいではないかという議論も誘致して参ります。また向うが国際法違反ならば、当然補償を要求すべきじゃないか、もし要求がなかなか到達せられないならば、政府は相手国にかわって立てかえて補償を払うべきではないか、これもしごくもっともな意見であります。そういう要求を満足させなければいかぬというような点も生じて参ります。そこで、外に対しましては政策論ないしは立法論的な主張をしながら、現実国際法の認定としての政府のオーセンティックな解釈を踏み切ってはっきりするということは、やはり内外にいろいろな責任を伴うことなくして申し上げることができないものでございますから、ただいままでのところは非常にちゅうちょしておるわけであります。
  74. 和田博雄

    ○和田委員 私は立法論や政策論をやっているのじゃない。今言ったように現在の法が何であるかということについて、その点は一応公海自由の原則というものははっきりしているわけなのです。しかも今の現実の法が何であるかということを主張することが、結局政策論なり立法論なりを非常に強く押していくことになるということを申し上げておるのです。政策論や立法論でいけば、初めから政策、立法という立場から、将来に向ってこういうことをしたいという希望的な意思が多分に表明されてくるわけです。それについてはみんな意見が一致している。今言ったように、現実の法が何であるかということについて、あなたは多少疑いを持っておられる。疑いを持っておるものはほかにもおるかもしれない。しかし現実論に立つと、公海自由の原則というものについては、少くとも学説なり何なりにしてもほとんどもう一致しているわけです。それを大胆に言うこと自体が、一方においてビキニの実験なり何なりをきめていく場合、政策論の場合に、これが大きな一つの支柱になり、主張になるということもやはり考えてみなければならぬと思うのです。実定国際法を作れといったってなかなか作れない。今のような世界情勢においてはそう簡単に作れるものではない。そうなってくると、今の公認されておるところの実定法というものをとらえて、それを強く主張することによって――今言ったように、実定国際法ができるまでの間はそういうものによって主張する以外に手はないわけです。そのときに、それがほんとうの正しい議論であるというならば、政治的ないろいろな問題は起るかもしれないが、しかし政治をやっている以上は、やはりそういうものはあまり考慮してはいかぬと思う。こんなものは何も悪い責任じゃない。しかもそれは非常に異を立てて無理を言うのではちっともない。大多数の学説――穂積君は九九%と言ったが、僕は何%かよく知らないが、少くとも多数説であることだけは事実であると思うし、またその学説の中に含まれておる意図というものは、それほど政治的なものではないと思う。そうなってくれば、やはり外務省としてはそういう政治的な考慮をおやりにならずに、今の公海自由の原則そのものをやはり一つの法源として学説を取り入れて主張されていいのではないかということを申し上げたのです。あなたの理解の仕方と私の言うところと多少食い違がありましたから、その点だけ申し上げておきます。
  75. 北澤直吉

    ○北澤委員 関連して、今公海自由の原則の問題が出ましたから、一言お聞き申し上げておきます。先ほど来各委員からも繰り返されましたが、日本側としてどこまでも公海自由の原則を主張するのは当然でありますが、御承知のように、日本の立場とまたそのほかの国の立場とが合わない場合、現にアラフラ海漁業の問題につきましても、日本はああいう大陸だなの漁業の制限は不当である、公海自由の原則に反するということで主張しておるにもかかわらず、向うはそうでないということで、国際司法裁判所に提訴しておる。アラフラ海がどうなるか、今やっておるわけです。そこで、現在の原水爆実験についても、日本の主張が相当根拠があり、しかも先ほど来の話によって世界の学説の相当多数のものがこの説に賛成しておるというならば、これも実定の国際法としてきめる場合は、やはり司法裁判所に提訴して――結局最後のそれをきめるところは司法裁判所が最も適当だと思うのでありまして、この問題についても、ちょうどアラフラ海の問題と同じように、日本が国際司法裁判所に提訴するような方法を講じてみたらどうか、また、そういうことをやり得るかという点を伺いたい。  もう一点は、先ほど原水爆禁止の問題が出たのであります。私はこの原水爆を禁止すること、またその実験を禁止することは全く賛成でございますが、この問題は結局軍縮の問題と関連するものであります。今の世界の軍拡をそのままにしておいて原水爆の禁止ということを言ってもなかなか通らない。従って日本といたしましては、一方においては原水爆の禁止を強く主張するとともに、世界の軍縮をもっと主張して、両々相待って世界の平和ができるようにしなければならぬと思うのであります。ところが日本の主張は、原水爆禁止について非常に強く言っておりますが、軍備拡張の問題についてはあまり強く言っておらぬのが現状じゃないかと思います。その点、日本としては両丸主張すべきではないかと思うのでありますが、この点について伺いたい。
  76. 下田武三

    下田政府委員 ただいまの国際司法裁判所に提訴することを考えてはどうかというお話でございますが、これは私十分検討の価値のある問題だと思うのでございます。これは実はアラフラ海の問題と逆の立場に日本が置かれておるのでございまして、アラフラ海の問題は、豪州側は大陸だなについては沿岸国に管轄権があるという主張でございます。現に、御承知のように国連の国際法委員会等では、だんだん沿岸国に対して大陸だなに対する管轄権を認めていこうという立法の傾向がございます。そこで、国際法の立法の傾向は豪州側に有利なりとして、豪州側はどうも、裁判所にかけるのをなるべくおくらせよう、そのうちには豪州側の主張と同じような立法が、国際法委員会等でできてきはしないかという期待を持って、おくらせているのじゃないかと邪推されるまでに、日本側の提案に対する返答がおくれております。そこで、原水爆の禁止の問題もそうです。国際的の立法論としては、日に日に禁止をすべしという立法論が勢いを増しております。でございますから、これは日本から見ますと、なるべくそういう立法の国際的傾向が日本に有利になる時期を見計らって提訴する方がむしろ得じゃないか、先ほど申しました国連の信託統治理事会等の決定の趣旨から見ますと、まだ裁判所に提訴いたしましても所期の判決が得られないのじゃないかという疑念が多分にあるものでございますから、これはむしろ立法実現にうんと努力しておいて、それが有利になったと見計らわれる時期に、日本がやりますかどこの国がやりますか知りませんが、裁判所に持っていった方が有利じゃないか、早まってやりますと、裁判所は、今の一般的立法論の推移にもかかわらず、現実国際法――ことにへーグの裁判官はオーソドツクスの国際法が頭にしみ込んでおる裁判官がそろっておられますので、なかなか踏み切った判決はできないのではないかということも考えますと、もちろん仰せの通り、この問題は十分検討すべきことでございますが、その時期をよく選ぶ必要があるのではないかという気がいたすのでございます。第二の原水爆の問題は、これは軍縮問題の一環ではないかという点、まさに仰せの通りであると存じます。それで軍縮の声をもっと日本も上げるべきではないかという点ももっともだと思いますが、原水爆につきましては、日本が世界における唯一の被害国であり、また一昨年のビキニ実験でこれまた唯一の最大の被害国であるという特殊の立場から、禁止を叫ぶに有利な地位にございますが、一般の世界の軍縮問題となりますと、いまだ国連の加盟国にもなりませす、従って軍縮委員会等にも出席の機がございませんので、必要とは思いますが、現実問題といたしまして、軍縮について日本の叫びを上げる地歩は、原水爆問題ほど有利でない、好都合でないというふうに存ぜられるのでございます。
  77. 北澤直吉

    ○北澤委員 今の軍縮の問題ですが、これは結局軍縮の問題が片づかなければ、原水爆禁止の問題も片づかぬと思うのです。世界的に見て、現にアメリカとソ連とのいろいろな文書のやりとりを見ておりましても、ソ連が盛んに原水爆禁止の問題を言う。それに対してアメリカの方では、軍縮を実現するために盛んに空中観察をやっておるわけなのです。従って日本としては両方やらなければならぬと思う。片一方だけやると片手落ちである。だからそういう原水爆の禁止が実現するようにするためには、両々相待っていくようにしなければいかぬと思う。一方だけを取り上げて一方を軽くするということでは、結局できないと思う。日本としては大局的な見地から言う場合には、両方やるべしという主張を堂々と持ち出すべきだと思うのです。  それから先ほどの国際司法裁判所に公海自由の問題、原水爆の問題を提訴する問題につきましては、もちろん時期の問題があると思いますが、その点はもちろん時期の問題その他の面もよく考えられて、日本に有利な裁判の判決ができるような、そういう情勢を作り上げてから提訴されるという政府の考えにつきましては、同感でございます。
  78. 福田昌子

    福田(昌)委員 公海自由の原則について条約局長は、それはもう世界の学者も、ビキニの原爆実験などは自由を破壊するもので、私も十分にそうだと思うというような説をお述べになりながら、しかし学界がどのような学説を述べようとも、法の原則にどれだけそれの渕源があるかは疑問であるという御発言がございましたが、この御発言は私は非常に重大だと思うのでございます。世界の学者がどういうような学説を述べておっても、それは法とはいささか別個のものである、法は法であり、学説は学説で、太して影響はないのだというような発言、これは非常に問題だと思うのですが、その真意を伺いたいと思います。
  79. 下田武三

    下田政府委員 御承知のように国際法と国内法との一番大きな差は、国内法においては、何が法なりどういうことは、各国の立法府が可決されましたものが法律となって、六法全書に掲載されてりもう法であるものという範囲は非常に明確なのでございますが、こり国際法の渕源というのが、これまた非常に難物でございまして、従いまして何が法なりやという認識の問題が、実にむずかしい問題であることは御承知の通りでございます。そこで私見を申し上げたのではなくて、国際司法裁判所等が何が法なりやという認識を立てる場合の法の渕源として、文明国における法の一般的信念とか、あるいは裁判所の判例であるとか、最後には学者の説ということも言っておると思うのでありますが、学者の説というもの、は、何が法なりやということの断定を述べる場合と、こういう法を作るべしという立法論を述べる場合と二つございますので、原水爆に関する学者の説というものは、多分に立法論の加わった言説が多いように聞いておるのでございます。従いまして、学者の説をとって直ちにそれが現実の法なりと断定することができないということを技術的見地から申し上げたわけでございます。
  80. 福田昌子

    福田(昌)委員 非常に頭がおよろしい局長さんの御答弁でございますから、きわめて巧妙な御答弁をなさいますが、私どもが伺っております感じからいたしますれば、局長の御答弁は、法というものを、絶えず時の権力によって、実に巧妙に論弁を弄して活用されておるという感じがいたすのでございます。私は条約局長というお立場は、純然たる条約上の解釈を事務的に御発表、御処理なさればおよろしいのではないかと思うのでございまして、よく申し上げれば、あまりにも政治的であり過ぎると思います。政治的であり過ぎるというその意図は、さらにもっと突っ込んで申し上げますれば、結局時の権力にまして右顧左眄しておるということの一言に尽きると思うのであります。結局公海自由の原則というものは、個人的には認めておるということをおっしゃりながら、では原爆実験禁止の問題を国連あるいはまたアメリカに持ち込む相談をするということになると、それは云々という理由を設けられてちゅうちょされる。結局最後に出てきたのは社会党が反対であろうと何であろうと、海外派兵までしなければ片づかないじゃないかという、結局武力にたよって日本の軟弱外交のバツク・アップにしたいという意図しかないというような感じがするのでございますが、こういう条約局長のお考えからいたしますと、私ども今日まで、一昨年のビキニのあの福竜丸の漁夫の被害以来、たびたびこの原爆実験禁止の要請をアメリカ側にもしてもらいたいということをお願いしておるのでございますが、一体外務当局はどれだけ外交的な立場において、この実験禁止に対してアメリカ側にお働きになったか、疑問を持たざるを得ぬという感じがいたします。私はこれについて詳しい御説明をいただきたいと思っておりましたが、アメリカ側にも突っ込んだ交渉はしたのだが、ここでは公表できないという先ほどのお話がございました。外務委員会で公表できないような外交というものは、私はまことに外務委員会を侮辱した御発言と思うのですが、発表して悪ければ、秘密会議にでもして、どういう交渉をなさったかということをじっくり外務委員会に御報告願いたいと思います。その点をまず委員長にお諮り願いたいと思います。
  81. 下田武三

    下田政府委員 結局先ほど答弁を繰り返すほかはないのでございますが、私政治的意図で法律的の判断を左右して申し上げておるつもりは毛頭ないのでございまして、むしろ先ほどの和田先生の仰せのように、当局として言うときには、もう踏み切って言ってもいいのじゃないかというような御説明を伺って、多分に勇躍を感じつつ、なお法律を担当しておる者としての、なかなか踏み切れない現実、技術的な立場に立てこもって御答弁を申し上げなければならないという立場を、自分では非常にこれ以上つらいものはないという感じをしょっちゅうしながら申し上げておるわけでありまして、政治的に自由奔放にものが言えないという点に私の悩みを感じておる次第でございまして、全く技術的な法の認識の問題として、先ほどと同じことを繰り返してお答えしなければなりませんので、これ以上の御説明を差し控えさせていただきたいと思います。  なお私は直接この対米申し入れの衝に当っておりませんが、対米申し入れの件につきましては、従来とも大臣または他の局長からたびたび御説明申し上げておりますので、必要がございましたら、また大臣、欧米局長等の出席いたしました機会に御説明さしていただきたいと思います。
  82. 福田昌子

    福田(昌)委員 私は委員長先ほどお願い申し上げたのでございまして、奥歯にものがはさまったような感じで非常に発言がしにくいという局長の御真意はわからぬでもございませんが、私は局長のお立場においてそれほど警戒なさる必要はないと思うのであります。それにもかかわらず警戒おさおさ怠りない態度でいらっしゃいますが、それであれば、アメリカに交渉なさった程度のことはこの外務委員会で発表願う、そしてそれは局長のお立場を尊重して秘密会にしていただくということをお取り計らい願いたいと思います。私どもは、アメリカ側に向っては堂々と主張されたかもしれない内容さえ知らなくて、いつもまことに抽象的な言葉で外務委員会発言を濁されておるということは遺憾しごくに存じます。どうぞその点をお計らい願いたい。
  83. 前尾繁三郎

    前尾委員長 いずれ理事会に諮って相談します。
  84. 福田昌子

    福田(昌)委員 先ほど局長の御発言によりますと、アラフラ海の問題とこのエニウェトク環礁の原爆実験の問題とはおのずから別個の問題であるから、国際司法裁判所に提訴の時期でないというお話でありましたが、またその方法としては、最後には海外出兵で武力を用いる以外にはないというお話しかなさいませんでした。結局この実験に対してどう処したいというお考えであるのか、これは仕方がないからアメリカのなす通りにこのままでほうっておこうというのであるか、端的に御答弁願いたい。
  85. 下田武三

    下田政府委員 政策の問題として原爆実験禁止を実現すべきである、また立法論としてそのための国際協定を実現すべきであるということは、たびたび申し上げておる通りであります。そこで現実の問題として、この基本的な日本の立場にもかかわらず、なお米国が実験の実施を必要と認めておるという事実は、これはまことに遺憾にたえない事実でございます。しかしながら米国自身が、自己の施政権下にある信託統治領で実験をすることが、現実の国際情勢上、また米国以外の国も実験をやっておるというような事情から、やはり実験をやることがやむを得ないと認めておる以上は、日本としては打つ手というものは、一方には力強く原爆実験禁止の立法の努力を続けるということと、さてそれじゃ今度やる実験に対しては、日本国民に及ぶ被害防止するために万全の措置をとらせるという、二つの立場しかあり得ないと思うのでございます。それが基本的の考えでございます。
  86. 福田昌子

    福田(昌)委員 私どもは、政府御当局が公海自由の原則に対して、これを尊重するという態度において非常に信念が足りないという感じがいたします。権力によって左右されやすい状態に置かれておることは非常に遺憾に思いますし、それに対して学界の学説がどうあろうと別だというような御見解をとられておることも遺憾でありますが、この際外務委員会としては、そういう対外的な問題とは別個に、公海自由の原則は日本の外交政策上当然厳守しなければならぬ、その上に立っての外交政策でなければならないと思うのでございますが、この外務委員会における決議あるいはまたその決議までいかないならば、その中間における学者の意見を聞く研究会、その研究の上に立っての決議を私は出して決定していただきたいと思います。これに対しての委員長の御配慮をお願いしたいと思います。
  87. 前尾繁三郎

    前尾委員長 一応また相談してみます。
  88. 戸叶里子

    戸叶委員 私最近つくづく考えるのですけれども、過失日本の歴史、二度のあの被害をこうむったことから考えてみましても、また今日日本の国民全部が原水爆実験禁止ということを望んでおる、そしてまた国会でもその決議がなされた、にもかかわらずこれを無視して、これがまた実験されるということになりますと、これは非常に大きな問題であると同時に日本国民のこの願いが、一体どういう形で実現されるのだろうということを非常に悲しまざるを得ないのです。そういう意味から考えましても、今度こそこの原水爆の実験禁止ということがぜひとも実現されなければならないと思うのです。そこで、条約局長としてもそういう点には非常に苦慮されている点は、先ほどからの各委員に対する御答弁でもわかっておりますけれども、しかし私として不満に思いますことは、やはり公海自由の原則をこの際こそ日本からはっきりと認めるというような立場に立っての交渉、それも非公式でなくて、堂々とそれを打ち出して交渉していく、こういうふうにしていただきたいと私は切に望むわけでございます。先ごろ私が重光外務大臣に対する質問でそういう点に触れましたときに、重光外務大臣も、幾たびかの御答弁を繰り返しておられた最後には、公海の自由を認めるというような国際法の解釈をしている学者の説になるべく沿うようにしたいとはっきりお答えになったと私は思うのです。そういう点から考えてみましても、この際こそ条約局長がそういう点を打ち出していただきたい、これを要望いたします。  それから一点お伺いしたいことは、先ごろの原水爆実験によってマーシャル群島の島に住んでいる住民がどんな被害をこうむったか、それに対してどういうふうな措置アメリカで行なったのか、それから今なおどの程度の人が住んでいるのか、こういう点おわかりになりましたら伺いたいと思います。
  89. 中川融

    ○中川(融)政府委員 原爆実験の現実問題の御質問のようでございますので、私からお答え申します。  ます第一点の公海自由の原則、これは先ほど条約局長も申しました通り、当初から日本が非常に強く心に持って折衝しておるところでございます。補償要求、あるいは原爆実験そのものもやめてもらいたい、あるいはどうしてもしなければならぬ場合にも、太平洋地域ではやらぬでもらいたいというような申し入れをいろいろやってきておるのでありますが、それらはいずれも日本の主張する公海自由の原則に支障ありという立場から要求しておることでございます。今後もこの主張はぜひ強く進めていきたい、堅持していきたいと考えておるのであります。  なお現地住民の保護の措置でございますが、これは前回の実験に当りましては、アメリカは万全の措置と信ずるものを行なったわけでございます。しかし実験の結果意外に大きな影響がありましたために、初め万全の措置として考えておりました、たとえば現実に実験をする場所、その周囲におります住民はほかの島へ移しまして、そこには住民が一人もいないというようにいたしまして保護の措置をとったにかかわらず、初め予想しておりました区域外におりました住民がやはり死の灰をかぶりまして、そうして被害を受けたという事実があるのであります。その善後措置につきましては、アメリカ政府としてはこれをアメリカ政府の費用をもって病院に入れまして万全の治療策を講じたということでございます。なおこの現実の状況につきましては、日本の原子学者の方々も、アメリカに行かれました際に、現実にその病院を見たり、あるいはその報告を聞いたりして、いろいろ参考資料を入手しておるのであります。今回におきましてもアメリカとしては万全の措置を講ずるという方針をとっておるのであります。従って住民等につきましても、前回以上に広範囲にわたって予防措置を講じておると考えております。  なお、これは信託統治地域でありますから、アメリカとしては住民の福祉、幸福、安寧につきましては責任を持っておるのであります。その見地から申しましても、アメリカとしては万全の措置を講ずる義務がある次第でございます。
  90. 戸叶里子

    戸叶委員 二点お伺いしたいと思います。被害を受けた住民の数はどのくらいであったかということが一点。  もう一つは、信託統治の地域であるから、アメリカが住民の福祉に十分注意をしておる、こういうふうなことでございました。もしも住民の福祉に十分注意をするのならば、その住民に迷惑をかけないように、つまりそこで実験をされないのが当りまえであると考えますけれども、その点は日本外務省としてはどういうふうにお考えになるか、これをお伺いしたい。それから住民自体の中にも、自分たちの生命関係がある問題であるから、こういうところではしてほしくないという意志表示は当然しているのではないかと思いますが、これはいかがなものでありましょうか、その二点をお伺いいたします。
  91. 中川融

    ○中川(融)政府委員 住民の被害を受けました数につきましては、私も二年前のことでございますので的確には覚えておりませんが、五、六十名じゃなかったかと思います。相当数の多い被害を受けております。  なお、アメリカとしては信託統治地域の住民の福祉について責任を持つわけでありますが、この責任につきましては、国際連合の信託統治理事会に報告をして、そこの監督のようなものを受けるような格好になっておるのであります。従って直接の責任は国際連合に対して負っておるわけでございますが、日本としてこれについてどういう考えを持つかという点につきましては、この地域日本の旧委任統治領でございます。しかしながら正確な意味においての日本領土というわけではなかったのでありまして、現在におきましてはこれはアメリカの保護下にある住民でございますので、一般世界における人類の福祉を願うという意味合いにおきましては、もちろん関心を持っておりますが、それ以上に、特に法律的な意味その他において関心を持つという筋合いにはなっていないわけでございます。  なおこの住民の福祉を考えれば、アメリカがこのような実験をすべきじゃないということは、まことにごもっともな御意見と思うのでありますが、この点につきましては、当の責任をきめる機関であります国際連合におきまして、先ほど条約局長が申しました通り、実験そのものをいけないとは言わないけれども、実験を行うに当っては万全の予防措置を講ずべし、安全の措置を講ずべし、というような結論を出しておるのでありまして、従ってその意味におきましては、信託統治地域において実験すること自体がいけないという結論には、国際連合においてはなっていないと考えております。
  92. 田中織之進

    ○田中(織)委員 先ほど下田条約局長福田さんに対する答弁の中に、今度の四月二十日から始まる実験を、アメリカの方ではいろいろな事情から、われわれ日本国民の、また世界の人々の希望にもかかわらず、これを実行するかもしれない。これはアメリカ側の意思でありますから、私はそういう事態になるかもしれないと考えます。しかしそれだけに、ここで実施されては困る、こういう立場からこの委員会においても熱心に取り上げられておるのだと思う。また先般の衆参両院の決議もこの趣旨を体しておると思う。その意味でこの前の委員会においても、国会の決議の趣旨を体して、外務省として当面この四月二十日からの実験を何とかしてアメリカにとりやめてもらうような一そうの努力をやらなければいけない。四月二十日までまだ一ヵ月余もあるわけでありますから、そのぎりぎりの瞬間まで努力を続けてもらう、あるいはアメリカはやめないかもしれないけれども、それまでの努力の方向というものは、国会の決議に盛られておるのだという点で、千葉欧米局長は、その点については国会の決議の趣旨に沿うて有効適切なる措置を検討して、手を打ちますということを申しているのです。ところが先ほどのあなたの答弁によりますと、また今の中川アジア局長答弁によりましても、これは実験をする場合の予防的な措置の問題であって、被害を最小限度に食いとめるという処置に、問題の重点が移ってきたような答弁に私は受け取れるのです。それと符合するかのごとき記事がけさの読売新聞に載っておる。それは危険区域の縮小と、引き続き二月二十一日のアメリカ側からの回答で何ら触れておらない補償の問題を、重ねて在米大使館を通じて外務省が要求したという読売新聞の新聞報道がなされているのです。ここで私がお伺いしたい点は、この前の委員会でも欧米局長は、国会の意思に従って、実験が開始せられる瞬間に至りますまで、これはやめてもらいたい、何とかしてやめてもらえぬかということを外務省に当ってもらいたいということに対して有効適切な方法を考えて善処は続けるということを約束されておる。ところが今の条約局長なりアジア局長答弁では、どうもそれがどこかに行ってしまったような感じを受けるのです。私は外務省の見解というものは、この問題に関する限りは統一をしてやってもらわなければならぬと思う。欧米局長が言ったように、有効適切な方法外務省としてはまとまっていないかもしれぬが、そういうふうなことをあわせてわれわれは、土曜日には外務大臣、総理大臣にも出ていただいて、政治的な角度から聞くわけですけれども、欧米局長が言った、引き続き有効適切な手を打っための協議、また思想の統一が外務省で現になされているかどうか。それをこの前の委員会欧米局長は約束をした。これは何回も繰り返してやらなければならぬのでありますが、その対米交渉の一つの現われが、たまたまけさの読売新聞で報道せられているように、危険区域の縮小と補償に関する返事をもらいたいという重ねての米国側に対する申し入れになったのかどうか、この二点についてお答えを願いたい。
  93. 中川融

    ○中川(融)政府委員 原爆の実験を中止してもらいたいということにつきましては、外務省の方針は一致しておるのでありまして、この要求を今後も引き続き――もしも先方が原水爆実験が開始されるという時期が、たとえば四月二十日であるならば、その日までは継続してやっていくという方針は変りはないのであります。これは欧米局長の言った通りでございまして、その方に向って今後も引き続き努力をしていくことは当然でございます。それと同時に、日本側が要請をしましても、それを聞かないで実験をするという場合もあり得るということも頭の中に入れて、実際の施策をしていかなければならないのでありまして、その意味においての予防措置あるいは善後措置あるいは補償の問題についての交渉もしないわけにはいかないのでありまして、従って強く実験中止を要請すると同時に、それと並行して二つの交渉が行われるわけであります。先方はすでに方針を声明しておるのでありますから、そういう声明をもしかりにほんとうに行うような場合には、それについてこういう措置は最小限度どうしても必要なことであるという意味合いの申し入れもしておるのであります。やはりそれを両方やっていかなければ政府責任は果されないというふうに考えて、そういう方向で進んでおるのでございます。
  94. 田中織之進

    ○田中(織)委員 この点が、どうも補償の問題が先に出たというところに、アメリカが幾ら中止を要請しても、既定の方針を曲げないのではないか。こういうような水爆実験が行われるものだという前提に立って、一歩引き下った形における交渉になるという点で、われわれは強くそれ以前の問題を国会の決議を背景として外務省がやるべきだという点を強調いたしておるのです。しかしその点は先ほどの速記をやめての条約局長答弁とも関連をいたしますので、私はいずれ土曜日の外務大臣、総理大臣が出席したときに保留をいたしますけれども、やはり補償の問題も、速記をやめた答弁というか、一つの政治的な配慮の問題として、政府自身が責任をとっていかなければならぬというような観点も考えられるから、オープンにそれは出せないのだ、こういう意味に答弁されたように私は受け取ったのでありますが、それは先ほど穗積君も指摘いたしましたように、この前の問題も、そういう意味で、いわゆる補償の請求権に基いての問題ではなくて、涙金として受け取った。そういう形にもやはり問題が残っておるのです。従ってその問題はやはり補償の問題にまで進展するということを考慮されて、たとえば対米交渉の現実にやっておることについても、オープンにはとにかく出せないのだというようなことは、もう実験を開始されることは不可避だ、こういう前提に立っているようにどうしても考えられてなりません。従ってその点は大臣が参りましたときに、どういう政治的な配慮からその点がオープンにできないかという点にも関連いたしまして質問することにして、自余の質問を保留して、私の質問は打ち切っておきます。
  95. 松本七郎

    ○松本(七)委員 下田条約局長の、この前から国際司法裁判所提訴の問題がたびたび議論になるときの御答弁を聞いておると、前々回でしたかのときに、インドが提訴しようとしておることについてのあれで、提訴して、そしてその結果がわが国に不利のような判決になると困るから、こういうことを言われたのです。きょうの御答弁では、やはりわが国に有利な判決がくるように世界の世論がだんだん好転する傾向にあるのだから、しばらく時期を待って、有利なときの方がいいじゃないか、こう言われる。なるべく日本に有利な判決を得たいという気持はよくわかるのですが、しかし今実験が迫ってまたどんな被害があるかもわからぬ、そういう危険が迫っておって、この危険を何とか未然に防ぎたいという気持からすると、何かしらんゆうちょうな感じと、そうしてなるほど判決は有利にしたいけれども、今迫っておる危険を当面防ぎたいということからすると、どうもその点に熱意がないように思える。やはりいよいよ危険が迫っておる人からすれば、それは判決は有利にしたいけれども、その判決があるいは不利になるおそれはあっても、とにかくその提訴すること自体によって、やはり国際の世論を好転させるとか、国際世論に訴えるとかいう一つ手段なのですから、これはあらゆる可能な手段を講じても、この当面の危険を防ごう、こういう努力を政府としては、特に日本政府は、集中的にやるべきだと私は思うのですが、その点の配慮というものはどの程度されておるのでしょうか。
  96. 下田武三

    下田政府委員 ごもっともな仰せでございますが、先般インドのメノンの提唱によりまして、国際司法裁判所にかけるということを、たしか森島委員から御質問がございまして、当時は詳しい情報がございませんでしたが、その後の情報によりますと、インド自身が単独でかけるということでなくて、やはり一昨年行われましたように、信託統治理事会の問題として提起して、信託統治理事会から国際司法裁判所の勧告的意見を求めるということが問題であるようでございます。そうして国際司法裁判所の意見を聞く場合には、どういう角度で問題を提起してかかるかということが、非常に重大な問題になることは御承知の通りでございますが新聞情報によりますと、インドは信託統治領の施政権者が信託統治領の一部をなくしてしまう、原水爆でふつ飛ばしてしまうということは、どだい信託統治協定の目的に反するじゃないか、国連憲章の七十六条の目的に反するじゃないかという、非常に奇抜なおもしろい着想から取り上げようとしておるようでございますが、しかし一昨年の信託統治理事会の決定にかんがみまして、今度のインドの提案が再び本年の夏の信託統治理事会において、百八十度の異なった決定になるかどうかという点につきましては、これは私は非常に見通しが困難である、むしろ疑わしいのではないかと思うのでありますが、私はインドのほんとうのねらいは、こうやってわいわい国連の会議等で問題を出していきますと、実験をやる方の国も、これはもううるさくてたまらぬということで、実験をやろうやろうという気配が気おくれしてはきはしないかというねらいと、それからやはりインドの国際的立場を強く国際的に宣伝的に打ち出そうというねらいがあるように思いまして、その実験禁止の樹立そのものを端的なねらいとしておるよりも、多分そういうねらいがあるような動きであると見ております。  そこで日本といたしましては、信託統治理事会のメンバーでもないのでございますが、先ほど北澤委員の御提起になりましたのも、また先般森島委員の私に対する御質問も、日本としてインドのような措置をとる考えはないかという点にあったと思うのでございます。そこで日本として問題を提起いたしますには、御承知のように国際司法裁判所規程によりまして、何らか具体的の紛争がなくてはなりません、アラフラ海でございますとか、あるいは竹島の問題を提訴しましたときのような具体的の紛争がなくてはなりません。現在はまだその紛争は実在はしないのでございます。将来この補償問題等で、補償金が不満足だといって、補償金額の問題で提訴するということが理論的には考えられるわけでありますが、日本の問題としているのは、金を少したくさんもらおうかとかなんとかという点で、裁判所の決定によって、日本政府自身が得られなかったところのプラスの金を得ようというような目的では実はないのでありまして、やはり問題の根源、すなわち原爆の兵器としての使用及び実験の禁止ということがねらいであるとしますと、日本が提起する場合の問題の提起の仕方がまた非常にむずかしいということに相なると思うのでございます。そこで結局根源をつこうとすればするほど、現実国際法の問題として提起していかなくてはならぬということが必要になっておりますが、その肝心の現実国際法が、へーグにおります御老人の、オーソドックスの国際法を墨守しておられるような裁判官を前にして、現在の国際法が日本の希望するようなふうに裁判官によって解釈され、そうして日本の庶幾するような判決が得られるかどうかという点につきまして、正直に申しまして疑念なきを得ないという見地から、ちゅうちょいたしておるということを申し上げたのでございます。従いまして裁判所提起以外の方法、つまり先般の国会の決議も、関係国だけでなくて、国連事務総長にも申し入れをいたしましたように、日本としてあり得るあらゆるチャンスをとらえて、そちらの方に努力をするということは既定の方針でございます。裁判所の提訴の問題につきましてだけは、いささか疑念なきを得ないのであります。     ―――――――――――――
  97. 前尾繁三郎

    前尾委員長 外務公務員法の一部を改正する法律案及び北澤直吉君外四名提出の本案に対する修正案を一括議題といたします。質疑を許します。田中織之進君。
  98. 田中織之進

    ○田中(織)委員 この修正案を出された北澤君に一点だけお伺いいたします。国会議員がたとい今度の特派大使とか、こういう関係にいたしましても、これは立法府と対立した立場にある行政機関にタッチすることは原則として行われない建前であります。従って今回のように国会議員が、たとえば参議院の堀木君であるとか、衆議院の松田竹千代君のように、それぞれ両院の承諾を得て特派大使として出ている実例が最近二つあるわけであります。私、やはり立法府の国会議員は、行政府のそういうことに直接関連を持つということはやらない方がいいという建前は、あくまで貫かなければならぬのじゃないかと思うのであります。その意味で、今回特に修正の第一点で明確にした点は、この場合においては両議院一致の議決を得なければならないということで、国会議員からこうした特派大使に任命する場合の条件を明確にしてあることは、一つにはそういう原則を貫くという考え方であろうと思うのですが、そういう趣旨であるかどうか、私の理解しているような通りであるかどうかという点が一点。  それからもう一点は、その原則が貫かれるということであれば、これは従来の国家公務員法の準用ということで、やはり現在までにおいても両院一致の議決でやるかどうかという問題が残ってきておるわけでありますけれども、少くとも国会議員がこうした行政府の地位につく場合には、承諾を得るという準用規定で実際的な処置をとってきているのでありますから、今度のように国会議員のうちから任命することができるということで例外的な場合になるわけでありますが、こういうことが明確に出ることは、私がただいま申し上げました国会議員というものは、できるだけ行政機関の地位に関与しないのだという建前から見れば、何か国会議員もそういう面につく例外的な場合を一般的に押し出したような感じを持つのであります。その意味から見て、やはり例外的だから両議院一致の議決で承諾を得た場合でなければいかぬという限定をすることも必要であると思うのであります。従来の準用規定からでもこれはできることだと思うのですが、それをこういうように「前項の外務公務員については、国会議員のうちから、任命することができる。」ということで、例外的な場合を一般的に押し出したような今度の修正と、原案にあるような形の準用の点を、解釈上というか、明確にするというようなことで押していく方法の方がいいのじゃないかとも考えられるのですが、修正案を出される場合にそれらの点をどういうように御考慮になったかということ、この二点を一つ説明願いたいと思います。
  99. 北澤直吉

    ○北澤委員 第一点の国会議員は国権の最高機関である立法府のメンバーであるからして、なるべく行政府の方にタッチさせない方がいいだろう、こういう御意見については全然同感でありまして、現在の国会法もその趣旨でできておるものであります。国会法第三十九条におきまして、国会議員は特別の例外を除いて――内閣総理大臣とか各省の国務大臣、官房長官、官房副長官、政務次官、それから特に法律をもって定められた場合を除いては、中央、地方の公務員の兼任はいかぬ、国会議員というものはごく限られた最小限度の場合を除いては公務員を兼ねてはいかぬ、こういうはっきりした規定があるのであります。ただ三十九条のただし書きにおきまして、同じ公務員であっても、何と申しますか、無定量の勤務義務を負わないような行政各部の委員、たとえば何とか審議会委員とか、こういうふうな委員とか、顧問とか、参与とか、無定量の勤務義務を負わないそういう臨時的な職あるいはそれに準ずるものについては、国会両院の議決があればそれになってもよろしい、こういうただし書きの規定があるのであります。そこで問題は、従来全権委員あるいは政府代表というふうなものを国会議員から任命する場合におきましては、今のただし書きの規定によりまして、委員、顧問、参与及びこれに準ずるもの、こういう解釈で松本国会議員を全権委員に任命する場合におきましても、あるいはただいま御指摘のように堀木参議院議員、それから松田衆議院議員を政府代表として任命する場合におきましても、この三十九条のただし書きの規定によってやってきたわけであります。でありまして、私どももこの全権委員政府代表、特派大使も三十九条ただし書きによって、国会議員から任命することは可能であるということを考えておるのでありますが、ただ問題は、全権委員とか政府代表あるいは特派大使というものは、この外務公務員法によってはっきりと外務公務員である。従って無定量の勤務義務を負わない普通の委員やそれから顧問と違って非常なる権限を持っておる。たとえば全権委員のごときは、陛下の御信任状を持って条約を調印する全権を持っている重大な権限を持った公務員なのであります。従いましてただし書きの規定によって顧問、参与あるいはこれに準ずるもの、こういうふうなもので解釈することは、従来もやっておるのでありますから可能であると思うのでありますが、それについて多少意見の違った考え方を持っている人もあるのであります。そういうわけでありまして、そういう疑念を一掃する、しかも全権委員のような重大な権限を持ったものを国会議員から任命する場合におきましては、一点の疑念もないようにしていかなければならぬ。重大な権限を持っておるものでありますから。そういう意味からこの三十九条のただし書きにようないで、三十九条の第一項の規定によって、別に法律をもって定めた場合におきましては、国会議員から任命できるということにしまして、この修正案を出したわけであります。この外務公務員法でそういう規定をすれば、三十九条の前段の第一項の規定によって、国会議員の中から全権委員それから政府代表、特派大使を任命できる、こういうふうにしたわけであります。それで一点の疑念もないようにしたわけであります。  問題はそういうふうにした場合におきましても、政府側が自由に無制限に、政府の希望する場合においては、いつでも国会議員の中から全権委員なり政府代表あるいは特派大使を任命し得るということになりますと、先ほど御指摘のように国会議員の地位と公務員の地位と、その間のけじめを乱し、行政府と立法府の間に弊害と申しますか、独立的関係を乱すというふうな心配がありますので、これは従来来通り、そのつど両院の議決を求めて、両院が一致してよろしいという場合に限って、国会議員のうちから任命し得る、こういうふうにしたわけでありまして、私どもがこの修正案を出した趣旨も、ただいま田中委員から御指摘になったように、国会議員と行政府の公務員は、厳然と区別しなければいかぬ、ごく例外的な場合に限って認めなければならぬ、こういうふうな趣旨でこの修正案を出したわけであります。そういう意味でありますので、一つ御了解を願いたいと思います。
  100. 田中織之進

    ○田中(織)委員 私の趣旨も十分お考えになった上でのことだというただいまの答弁で、私了解いたします。ただこれは今後政府の方として、ただいま北澤修正案提案者からも強調されましたように、これはやはり国権の最高機関としての国会議員と、一般というか、たとい特別職にしろ公務員との間に、立法府と行政府の混淆ということは、これはあってはならないと思いますので、特にこの法律が制定された場合における、従来もきわめて例外的な場合に限られておるわけでありますから、そういう運用上については政府の方で、やはり国会の権威にも関する問題になって参りますので、その点の運用上の留意を願いたいという希望を述べて、私の質疑を終ります。
  101. 前尾繁三郎

    前尾委員長 他に御質疑はありませんか。――御質疑がなければ、これにて本案並びに修正案に関する質疑は一応終了いたしました。  次会は公報をもってお知らせします。本日はこれにて散会いたします。     午後一時四分散会