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1956-02-03 第24回国会 衆議院 外務委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年二月三日(金曜日)     午前十時三十六分開議  出席委員    委員長 前尾繁三郎君    理事 石坂  繁君 理事 北澤 直吉君    理事 須磨彌吉郎君 理事 山本 利壽君    理事 穗積 七郎君 理事 松本 七郎君       大橋 忠一君    菊池 義郎君       草野一郎平君    高岡 大輔君       並木 芳雄君    福田 篤泰君       松田竹千代君    田中織之進君       田中 稔男君    戸叶 里子君       福田 昌子君    細迫 兼光君       森島 守人君    和田 博雄君       岡田 春夫君  出席国務大臣         法 務 大 臣 牧野 良三君         外 務 大 臣 重光  葵君  出席国務大臣         法務事務官         (入国管理局         長)      内田 藤雄君         外務政務次官  森下 國男君         外務事務官         (アジア局長) 中川  融君         外務事務官         (欧米局長) 千葉  皓君         外務事務官         (条約局長)  下田 武三君         外務事務員         (国際協力局         長)      河崎 一郎君         外務事務官         (移住局長)  矢口 麓蔵君  委員外出席者         専  門  員 佐藤 敏人君     ――――――――――――― 昭和三十年十二月二十三日  委員稻村隆一君、高津正道君、西尾末廣君及び  松岡駒吉辞任につき、その補欠として大西正  道君、田中織之進君、田中稔男君及び福田昌子  君が議長指名委員に選任された。 昭和三十一年一月二十七日  委員松木俊一辞任につき、その補欠として  松田竹千代君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 一月二十七日  李ライン問題の解決促進に関する請願白濱仁  吉君紹介)(第一〇七号) 同月三十一日  京都植物園接収解除促進に関する請願田中  伊三次君紹介)(第一三四号) の審査を本委員会に付託された。 同月三十日  季ライン撤廃に関する陳情書  (第九号)  中共との国交回復促進に関する陳情書  (第一〇号)  日、ソ交渉に関する千島及び南樺太返還等に  関する陳情書外一件  (第一一号)  韓国抑留漁船乗組員帰還促進に関する陳情書  (第一二号)  日中漁業協定促進に関する陳情書  (第六九号) を本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国際情勢等に関する件     ―――――――――――――
  2. 前尾繁三郎

    前尾委員長 これより会議を開きます。  国際情勢等に関する件について質疑を許します。なお通告者が多数ありますので、できるだけお一人十分程度にお願いしたいと思いますからどうぞよろしく。戸叶里子君。
  3. 戸叶里子

    戸叶委員 私、日ソ交渉の問題やらいろいろ伺いたいことがありますが、時間が制限されておりますので、きょうは主としてけさ新聞に出ておりましたアメリカビキニ島における原水爆実験に対して外務省から日時場所補償等の問題について申し入れがあったというあの記事についての御質問を申し上げたいと思います。  まず第一に、外務省の方からアメリカ側へこの申し入れをした理由は何か。このビキニ島で近々にそうした実験があるというような情報が入ったからかどうかということを承わりたいと思います。
  4. 重光葵

    重光国務大臣 さようでございます。
  5. 戸叶里子

    戸叶委員 この前のときにはたしか国際水路協定に基いて日本水路部に対して、こういうところで実験をやるからこの辺までは日本漁船に入らないようにというような申し入れがあって、外務省に対しては正式に通告がなかったというふうに伺っておりますが、その通りでございましょううか。
  6. 下田武三

    下田政府委員 本年以前に連絡がございましたのは、まだ地域とか日時とかについての具体的な連絡ではございません。全般的に今界また実験を行うという趣旨であります。今度将来具体的に日時場所等がきまりましたら、御指摘のように昨年と同様国際水路協定に基きまして、各国水路部から公知せしめるという段階になると思いますが、まだそれ以前の段階でございます。
  7. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますと、外務省からの申し入れに対して、アメリカからは水路部を通して答、えてくるわけですか、それとも外務省に対しての返事があって、それからまた水路部に対しての通告があるわけでございしましょうか。
  8. 下田武三

    下田政府委員 水路部の扱う段階はもう政府間のレベルの話が済んでからの事務的の問題でございます。本朝新聞に出ておりますのは、日本政府からアメリカ政府への意思表示でございます。これに対する回答が水路部から来るというようなことはないと思っております。戸叶委員 私はきょうの申し入れに対しまして、まことに不満に思うのでございます。それは先ごろのビキニ島における原水爆実験によって、日本がこうむった被害というものを顧みましても、日本がもしも今重光外務大臣が言われたようにそういうふうな実験が行われるというような情報が入ったならばなぜ直ちにそういうものはやめてほしいというような発言ができなかったか、そういう申し入れができなかったか、こういう点に対して私は非常に不満に思いますけれども、外務大臣はいかにお思いになりますか。
  9. 重光葵

    重光国務大臣 私も原水爆使用はむろんのこと、こういう実験も国際的にやめてもらいたい、こういう考え方を持ち、それを実は政府方針として機会あるごとに申しておるわけでございます。ところが御承知通りに、その原水爆実験はむろんのこと、使用ですら今国際的に禁止ができておらぬという状況でございます。これを国際的に禁止をせしめるということになるのには主として国際連合等国際機関において取り上げてもらい、またその機関において実現するように努力をしなければならぬのであります。しかし今の状況でそういうことが、国際的に禁止がないのでございますから、それを国際法違反をしておるからやめるべきだ、こういうふうに要求をするわけには参りません。しかしながらさような禁止がなくとも、これに対するあらゆる予防処置を講じて他国の利害を十分に考慮するということは、これは当然のことでございます。それを十分に初めから申し入れ予防処置を講ぜしめるということはやらなければならぬのですが、それは各国に対してやり得るのでございますから、それを十分にやっておるわけでございます。
  10. 戸叶里子

    戸叶委員 国際的に禁止がないというお話でございますけれども、一番世界中で原水爆被害を何だびもこうむっておるのは日本でございまして、こういう日本からこそ原水爆実験をやめてほしいという声が出なければならないと思うのです。そういう意味から申しましても、もしも今の外務省問い合せで、ビキニ島でまた行われるというとようなことがあるとするならば、国際的な禁止はないにしても、さっそく要望としてだけでも、今回はここでやることをやめてほしいというようなことが私は言える立場にあると思いますけれども、こういうことをお言いになる立場にはいられないのでしょうか。
  11. 重光葵

    重光国務大臣 それはむろんでございます。それはむろん言っております。われわれとしては、そういうことはやってもらいたくないのだ、しかし国際法上にこれが禁止されておらぬということはこれまた認めざるを得ません。そこで向うがやるということになれば、これは対抗する方法がございません。しかしその要望は十分に申し入れておるわけであります。それだから国際連合品等機会あるごとにその要望日本政府方針として持ち出しておるわけでございます。
  12. 戸叶里子

    戸叶委員 申し入れてあるとおっしゃるのですけれども、きょうの新聞では、場所なりあるいは補償の問題というようなことを申し入れたのであって、これはやめてほしいというような要望はなかったと思います。それではあらためてもしもビキニ島でやるということになったならば、やめてほしいとはっきり要望なさる御意思があるかどうか、この点を承わりたいと思います。
  13. 重光葵

    重光国務大臣 その要望向うとの外交折価で、東京ではアメリカ大使との間に、向う日本大使向うの当局との問で日本意思表示をしておるわけでございます。しかしそれにもかかわらず向うがやるという場合においては、こういうことをしてもらいたい、こういうことをこれは文書でもって申し入れておるわけでございます。
  14. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますと外交折衝で、やらないでほしいということを言われて、第二段階として今度の申し入れをしたというふうに了承するわけでありますが、それでよろしゅうございますか。
  15. 重光葵

    重光国務大臣 大体さよう御承知を願って差しつかえないと思います。
  16. 戸叶里子

    戸叶委員 いつごろやめてほしいという申し入れをなすったのですか。
  17. 重光葵

    重光国務大臣 これは日にちをはっきり記憶いたしておりませんが、この問題が起ってからそういう意思表示をいたしております。つまりそういうことが新聞情報に現われてから、そういうことはほんとうであるか、それはこっちは希望しないところであるということを申しておるわけでございます。
  18. 戸叶里子

    戸叶委員 その要望をしたときに向う側は、それでもなおやるのだということをはっきり言われたかどうか。
  19. 重光葵

    重光国務大臣 現在の国際情勢としてこういう実験はやらなければならぬという向う考え方でございました。
  20. 戸叶里子

    戸叶委員 私はこういうふうな機会がちょうどいい機会ですから、あくまでも日本政府もそれから国民もあげて、今度はあらゆる方法を通してやめてもらうようにしなければ、またどんな被害をこうむるかもわからないと思うのです。従ってもう一度何らかの方法考えられて、そうして実際に実験まで持っていかれないようにしていただきたいということを要望いたします。  それでは角度を変えて伺いますが、なるほどビキニ島はアメリカ信託統治協定に基いておりまして、そうしてこれは戦略地域となっております。から、アメリカが無事的に利用する権利は持っておりますけれども、しかしその使用し得るところはその領土なりその領海だけであって、その付近の公海まで自由にすることはできないと思うのです。従っていわゆる信託統治協定に購いたクローズドエリア以外の地域危険区域であるというような指定をされてきた場合にも、これに対して日本側としては、こういうところは公海の自由を妨げるものではないかということまでおっしゃるべきものだと思いますけれども、この点はどうお考えになるでしょうか。
  21. 重光葵

    重光国務大臣 われわれの考え方も大体そういう考え方に基いて、向うに強くその点を指摘しておるわけでございます。
  22. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますと日本側としては、クローズドエリア以外のいわゆる公海の自由というものははっきり認めてほしい、そこを危険区域とされてもこれには応じられないということをはっきりおっしゃるおつもりであると了承してよろしいわけでございますね。重ねて念のために伺っておきたいのですが。
  23. 重光葵

    重光国務大臣 それは、現在行われております国際法範囲内においてそういう意向を述べて差しつかえないと思っております。
  24. 戸叶里子

    戸叶委員 国際法は私どもはそう解釈しておりますけれども、また一部の人の解釈では、恒久的にそれが公海の自由の妨げとならないならばいいというような解釈をしている人もございます。従って重光外務大「はどちらの方を国際法と理解していらっしゃるか、この点お伺いいたします。
  25. 重光葵

    重光国務大臣 国際法がどういうことであるかということは、これは国際法学者にまかせなければなりません。しかしながらそれはそれにしておいて、そういう疑問のある問題については、われわれはわれわれの考えによって、われわれの利益擁護見地から、自分らの意見を申し出て少しもさしつかえないことだ、こう考えております。
  26. 戸叶里子

    戸叶委員 今の私の質問に対して、はっきり大臣お答えを私は伺えなかったように思うのですけれども、どちらの方を国際法上認められていると解釈なすっているかということを伺っているのですから、その点をはっきりさせていただきたい。
  27. 重光葵

    重光国務大臣 国際法の問題は、国際法権威者のところでこれを決定するよりほかしょうがない。しかしながらわれわれはわれわれの利益になるようにこれを解釈できるものなら解釈して進めていく、こういうように考えております。
  28. 戸叶里子

    戸叶委員 それじゃ具体的にもう少しはっきりさせていただきたいと思います。つまり私が伺いたいことは、信託統治協定に培いてのクローズドエリアというものは、これは仕方がないとしても、その周囲を取り巻く危険区域というもの、すなわち公海の自由の妨げとなるような危険区域というものを勝手に指定するということは、国際法違反である、こう私は考えておりますし、そういうふうに考えて行動した方が、いわゆる重光外務大臣の言われるわれわれの方の有利である、こういうふうに解釈するものでありますが、これと同じ見解を持たれるかどうか御答弁を願います。
  29. 下田武三

    下田政府委員 大臣お答えになると思いますが、その前に国際法上の問題でございますから、法律上の点を明らかにしたいと思います。   (「大臣々々」と呼ぶ者あり)
  30. 前尾繁三郎

    前尾委員長 下田君の話をちょっと聞いて、それから大臣に御答弁願います。
  31. 下田武三

    下田政府委員 戸叶先生の仰せになるように、信託統治地域まわり領海内に設定されました閉鎖区域、この閉鎖区域決定を違法だとする説はございません。しかし領海外公海に及ぶ範囲にわたって危険区域なるものを設定するということにつきましては、これは違法なりという説がございます。これはしかし現段階では少数説でございます。多数の国際法学者は、それは国際法の現段階では違法だと断定し得ないという説でございます。なぜかと申しますと、危険区域を設定すると申しますが、これは立ち入ってはならぬという意味の、つまり閉鎖区域と同じような意味での立ち入り禁止区域ではないわけであります。危険区域というのは、その範囲内に船なら船が入りますと危険なことがありますよというウォーニングだというふうにとっております。それで何も永久にそこに立ち入ることを禁止するというのではございませんし、ある一定の間は危険ですよというウォ一ニングをされておるわけであります。これは国際法上他にも例のあることでありまして、今日軍艦射程距離は数十キロに及んでおりますが、軍艦が海上におきまして艦隊演習をするという場合には、相当の、数百キロの公海区域危険区域になるわけでありますが、そういう場合はやはり水路部を通じて何月何品どこで艦隊演習をやるということになります。これと同じようなことであります。原爆のような場合には何分にも新しい兵器であって、被害の広範囲に及ぶ可能性があるというので、危険の限度において格段の差異がありますが、それは必ずしも従来の国際法上の解釈に比べて異質のものではない、要するにあまりに科学の進歩に伴う兵器進歩が、国際法進歩よりも先に行き過ぎましたために、現在国際法上はっきりしたクリアカットな説というものがないわけでありまして、結局これは多数説によれば、これをなお違法だと断定し得ないという現状でございます。もちろん日本側としては、政策的見地からはそういうことは非常に困ることでありますから、何もアメリカのみならず、さきに国会の決議に即応しまして国連に対しても原水爆実験禁止措置をとっているのであります。しかしそれにもかかわらず、国際的にも禁止という措置が成り立たないうちは、やはり現在の国際法段階では少数説だけをがんばってとるわけにはいかないのでありまして、結局向うは法律的に立ち入り禁止を要求しているのではないといたしますならば、こちらもそのウォーニングに対処して適切な措置をとるほかはない、そういう問題であると思うのであります。
  32. 重光葵

    重光国務大臣 国際法に関する説明は今のようなわけでございます。それでありますから、国際法考えて、その範囲内においてわが方としてはできるだけ利益を擁護する手段をとりたい、こういう工合考えているわけであります。それですから私の考えはそういうものをやってもらいたくないというのが第一段だと思います。やってもらいたくない、やってもらわなければそれでいいことであります。しかしどうしてもやるということになれば、それに対抗する方法が現段階ではないわけでありますから、それはその次の段階になりますが、向うのやるということに対してあらゆる予防処置をとって参り、そうしてこちらの利益を擁護する、こういうことに進まなければならぬように思います。少数説であっても、非常にこちらが危険を感ずるというようなことは私は言い得ると思いますから、それは言って差しつかえない、こういうふうに考えております。
  33. 戸叶里子

    戸叶委員 もう少しいろいろ伺いたいのですけれども、時間がございませんので打ち切りますが、今の多数の人の意見であっても少数意見を尊重していいのだからというような国際法に対する重光外務大臣のお考えで、私もぜひ、日本にとって有利な立場を擁護するというお考えからいくなら、当然クローズドエリアまわり公海の自由を妨げるような危険区域の設定ということには、反対解釈をとる国際法の方に基いての運動をしていただきたいと思うわけです。そこでどうしても私たち国民の側からすれば、今度は実験してほしくないという要望が強く盛り上ってきておりまして、今国民運動としても原水爆禁止運動が盛んになっておりますが、政府として今やめてほしいと言っても、今までの経緯を伺っておりますと、なかなかやめてもらえないのではないか、こういうふうであるといたしますならば、一つこの原水爆禁止運動というものを大いに盛り上げて、そうして国全体の世論としていくというふうに、これを支持される御意思はないかどうかお伺いいたします。
  34. 重光葵

    重光国務大臣 原水爆実験は御承知通りアメリカだけではございません。ソ連もやります。これに対して日本も重大な関心を持っております。イギリスもどこかでやろうといたしております。さようなことでありますから、これはむろん個々の国に対して日本意思を通じるということは有効な手段でございますが、しかしさような工合で、敵味方ではございませんけれども、ほとんど競争的にやっております。そこでこれをやめさせるのにはどうしても私はやはり国際的に国際連合等の力を功かして、そこに持っていくよりしょうがないと考えます。ところが原水爆実験反対国民運動というお話がありましたが、さような複雑な国際情勢にある場合に、これが一方の政治運動になるようなことがあっては、国際的にせっかく日本の主張を持ち出しても、非常に意味が少くなります。私は政治運動でないことを希望します。ほんとう日本はこういう被害を体験しているのだという有力な何がそこにあるのでありますからそれはいいと思いますが、それがあたかも国際的の政治運動みたいに見られるようになればこれは値打がなくなりますから、その点は注意しなくちゃならないと思います。
  35. 戸叶里子

    戸叶委員 これは政治運動じゃなくて、今原水爆禁止運動をやっておりますのは、米ソ両陣営に向ってやっている運動でございますので、その点誤解のないように申し上げておきたいと思います。
  36. 前尾繁三郎

  37. 森島守人

    森島委員 時間の制限がありますので、私は外交上の根本問題、国際的信用という問題を中心としまして、一月二十六日の鳩山首相新聞記者に対する会見及びいわゆるドムニッキー情報一というものの取扱い方についてお伺いしたい。私は見解相違とかあるいは解釈相違という問題ではなしに、事実に基いた質問をいたしますから、はっきりお答えを願いたい。  日本外交が二元的になっておるということはもう定説でありまして、別に私から説明するまでもない。そこへ河野さんが出てきて三元的になっておる。そのために海外における日本国際的信用を非常に失墜しておるというのが現在の事態だろう、こう思うのであります。一月三十一日の参議院の本会議佐多議員質問に対して、河野さんは、大体こう説明しております。本年の一月十五日、六日ごろと記憶するが、同じ人からソ連終戦宣言を発表すると言っているとの話を聞き、私はこれはめんどうなことになったと感じた。たまたま二十一日、音羽鳩山邸で行革に関する党幹部会があったので、幹部会終了後、幹部の人々に、その事実を伝えた。またその翌日の閣議で、翌日ですから、二十二日です。閣議重光外相にも話し、その後首相にも耳に入れておいた、こういう説明参議院の本会議でやっておられますが、その通りでございますか。重光外務大臣の御意見を承わりたい。
  38. 重光葵

    重光国務大臣 私もその通り承知をいたしております。
  39. 森島守人

    森島委員 そういたしますとつじつまの合わぬことがありますよ。私はこれは秘密会だから内容は知りません。しかし重光さんと河野さんは、三十一日午後四時過ぎに開かれた自民党緊急大会出席された。あなたは二十三百に河野農相から伝達を受けた、こう言っておられますが、この点は河町さんは二十二日と言い、あなたは、二十一日と言っておる。どっちがほんとうなのですか。私は河野農林大臣出席を求めておりますが出席がないのです。この点あなたから明確に御答弁を願いたい。
  40. 重光葵

    重光国務大臣 それは私は日にちのことは、はっきりどちらが正確であるということは調査の上でなければ申されません。一日くらいの記憶違いはございます。こういうことです。それは閣議のあった日です。閣議のあった日の閣議の後でありますから、調べればすぐわかります。
  41. 森島守人

    森島委員 これは河野農林大臣は白々しく二十二日に閣議があったと品っている。二十二日は日曜日で御承知通り大雪が降ったので閣議が開かれておりません。私は新聞記事を持っておりますからここで読み上げますが、その日には「鳩山首相伊豆川奈いらいの下痢がなおりきらないのでこの日はだれにも面会せず、音羽の私邸の、階書斎にひきこもって英文雑誌などをあさり読み。」とか、雪が降ったので「根本官房長官は昼すぎから夫妻同伴映画見物」に行った。これが読売に出ておる記事で、大体閣議がなかったことは新聞が同様に報じております。そうしますと河野さんは二十二日に閣議があった、あなたは二十三日と、言う。二十三日も閣議がありません。私は念のために根本官房長官の秘書に電話をかけてこの点を確かめましたが、二十二日も二十三日も閣議はありません。果して幾日にそういうことをお伝えになったか、あなたはほんとうに聞かれたか、私ははっきり伺いたい。
  42. 重光葵

    重光国務大臣 はっきり聞いたのでございます。それは閣議の後でござい「ます。私は閣議は月曜にあったと思いますよ。閣議は連日あのときに開いておりますから。しかしそれはそういうふうに非常に重要なことならば、私は調べてはっきりしたお返事をします。
  43. 森島守人

    森島委員 私は情報伝達上の非常に重要なことだと思っております。しかも河野さんが白々しくも参議院の本会議において、これはうそ偽わりを言っている。おそらく二十一日に鳩山邸で話があった、あなたに伝えてない。そこで問題になった。そこで国会に対する説明をどうしようかということで、つじつまを合せるために何かお話し合いになったことがあるでしょう。しかしそのつじつまを合せるのが、どこか一点抜けておったというのが私は実態ではないかと思うのであります。もし河野さんがうそをついていたとするならば、参議院でこれは釈明なり陳謝すべき重大問題だと思う。その点を重光さんより伺いたい。
  44. 重光葵

    重光国務大臣 その点は実は私の記憶は、閣議のあった後に閣議室で話をしたのでございます。そういうことで、それは私は二十三日だと思っておりますが、しかしそれは今申す通りに調べて差し上げて少しも差しつかえがございません。
  45. 森島守人

    森島委員 自民党緊急代議士会なら今のように不正確なお話合いで乗り切ることができるでしょう。しかし国会はそれでだまされはしません。二十二日も二十三日も閣議がないということは根本官房長官の秘書官が言っておる。これはほかにも聞きました。これほど確かなことはありません。そうすると三日も四日もずれて話を聞いたとか聞かぬとかいうことは、私はまことに奇々怪々な事実だと思っておる。国会をごまかそうとする、つじつまを合せた説明だとしか受け取れないのです。この点はいかがにお考えになっていますか。
  46. 重光葵

    重光国務大臣 私は決して国会を軽視したわけでも何でもございません。それから自民党での私の説明は今言葉通りには記憶をいたしておりません。これは私は二十三日でなかったかなと、こう思っておりました。それは事実でございます。しかしそれは閣議の後で、問題の要点は何かというと、そういう情報を私は聞いておるか聞いてないかということにあっただろう、こう考えましたから、そういうことでございます。その点について私も記録がございますから、よく調べてお答えすることにしましよう。   [「日にちなんかどうでもいいじゃないか」と呼ぶ者あり〕
  47. 森島守人

    森島委員 私は非常に重要だ。外務大臣が果して情報を正確に河野さんから受け取っておったかいなかという点が私は重要問題で、その問題を根拠として外務省内においていかにこれに対処するかという対策が立つべきものだと私は思う。例を引きますと、情報を閣僚があちこちでお集めになることは自由です。これは非常に大事なことだと思う。河野さんも水産関係から情報をお集めになることは、私は非常に外交交渉を進める上に有益な参考資料になると思う。しかしこれを一元的に外務省に集中して、外務省で統一した行動をとる場合において初めて外交上の運営が円滑にいく。私は例を引きますよ。東支鉄道の買収問題が起りました。これは発端は藤原銀次郎さんが北海道におったときに、トロヤノフスキーとの間に出たことを即刻外務省に伝えた、それが発端になっておる。今度のときは取扱い方があまりにずさんと申しますか、疎漏というきらいがあると私は思うのです。  次に、それでは重光さんはこの重要な情報を受け取って、外務省内においていかなる御措置をおとりになったか、この点を承わりたいと思います。
  48. 重光葵

    重光国務大臣 私はその情報を受け取って、もうすぐ決断をしました。そしてそのことを河野農相に話をしました。それは、さようなことが、根拠のあることも根拠のないこともいろいろな方面から来る、私の方にも来る、あるいはソ連から自由放送などによってもそういうような何があるようだ、しかし今日ソ交渉はすべてロンドンでやっておるのであります。ロンドンでソ連側も全権を出して、詳細な討論をやっておるのです。その経路を経てきて初めてソ連側の意向と見ることができるのです。そこで漁業者が持ち出すとか、あるいはまたその他の方面からいろいろ持ち出すとか、それがドムニツキー氏から出ておるかどうかということもト分に確認もできぬわけでもあるし、またドムニツキー氏のステータスは御承知通りであります。これは正式のルートから持ち出されなければ、こちらは考慮する余地がないのであるから、そういう問題を、外務大臣も関係しないで、それ以外の人が取り上げたり、いろいろ話を先についでいくことはよろしくないことである、一切そういうことにかかわりあってもらいたくない、こういうことを話しました。ところが河野農林大臣は、自分もそう思う、全くその通りで、かかわりあってはおらぬ、みんなこれはそういうことを取り上ぐべきじゃないのだ、こういう態度をとっておる、こういうことで、もうこれはその場で私は問題を解決しておいたつもりでございます。
  49. 森島守人

    森島委員 それではそのような重要な情報新聞界に漏れたのは、外務省筋から漏れたのか河野さんが報送したか、これ以外に私はないと思いますが、これはどうお考えになっておりますか。
  50. 重光葵

    重光国務大臣 実は私は、もうその問題はそれで私自身解決してしまいました。そこでその問題は、外務省の下僚には何もそれを検討するとかいうようなことも命じませんでした。外務省から出たものでないということは、私ははっきり申し上げ得るのであります。のみならず、ある新聞にその問題が出ましたから、下僚は非常に驚いて、こういうことかあるのかということを私自身に聞き合せたくらいでございます。
  51. 森島守人

    森島委員 私は前後の状況を総合しまして、どうしても重光さんと河野さんの間でつじつまを合せた説明をしたとしか受け取れぬのです。あなたの性格から言っても、外務省内でこんな問題を——あなたが非常に信頼しておる谷君まで、これは副大臣といわれておるし、門脇次官もおる。これらの方々に御相談になって、松本全権に対して注意の電報を出すなり何なりされることは当然だろうと思うのです。私はあなた限りで決定して下僚に言わなんだということは、どうも納得しかねる節があると思うのですが、これは意地の相違になってしょうがないのですが、しかし私は最後に、こう二元的にも三元的にも外交が行われ、あなたのかなえの軽重というものは、閣内でも閣外でも問われております。あなたは外交専門で、かつての伊藤、陸奥、また桂、小村の時代のように、身を捨てて外交に専念されるか、あるいは閣内で非常に意見の懸隔があるならば、この際進んで辞職されるのが私は至当の筋である、こう確信しておるのでありますが、その辺に対する御決心はいかがですか。
  52. 重光葵

    重光国務大臣 私はこの問題について、今申し上げる通りに、二元的でも三元的でもないと思っております。私は情報は各方面から来るのが適当だと考えております。しかし今あなたの言われるように、これを外務大臣の手でそしゃくしてさばいていくということは当然のことであります。私はこれはきわめて明瞭な筋道によってさばいた、こう思っておるわけであります。
  53. 森島守人

    森島委員 結論だけ申し上げますが私は、情報を集めるのは当然である、しかし政策を決定してこれを実行する上において、外務大臣と総理大臣の間に意見相違がある、そこで二十一日にこの情報を聞いた鳩山さんは、日が軽いものですから知らぬうちに本音を吐いた、というのがこの真相であろうと思うのでございます。私は重ねて、一元的に外交を運営される上に最善の注意を払われんことを御警告申し上げて私の質問を打ち切ります。
  54. 前尾繁三郎

  55. 穗積七郎

    穗積委員 外務大臣にさっきの原水爆問題について関連して一言だけお尋ねして、あと緊急な問題として、外務大臣と法務大臣に中国の教育代表入国問題についてお尋ねいたしたいと思います。どうぞ時間がありませんから簡潔にお答えをいただきたいと思います。  最初にお尋ねするのは、さっきの大臣の御意見報告によりますと、現在原水爆禁止が国際外交的に決定されていないが、国際法解釈から見て、太平洋地域において行うことの法的な根拠について疑わしい、さらに日本に対する実害を考えて、これをやめてもらいたいという申し入れをしたということでございます。それははなはだけっこうなことなんだが、ところがその後第二次の申し入れとして、もしやるのなら時期を事前に通告してもらいたい、この損害が起きたら補償してもらいたいというようなことを言うことは、前のやめてもらいたいという申し入れをむしろ取り消し、やることを歓迎するような印象を持つものとわれわれは思うのだが、日本利益立場から見て、第二次の申し入ればはなはだ不適当であるというふうにわれわれは考えますが、外務大臣は一体どういうお考えでそういうことをおっしゃったのか、その所信をまず伺っておきたいと思います。
  56. 重光葵

    重光国務大臣 私は、やめてもらいたいと言ってもそれはできぬ、こう判断いたしました。それははなはだ腰が弱いじゃないかという御批評はございましょう。しかし今日の国際情勢から見て、原水爆実験をやめてもらいたいという意思表示をしても、結局やめてくれないと思いました。そうであるとするならば、その場合に対処する最善の方法を前もって講ずることが、私は国の利益を擁護するゆえんだ、こう考えました。
  57. 穗積七郎

    穗積委員 先ほどは外務大臣は、やめてもらうことについてまだ放棄してないという意思を明らかにされたと思う。それにもかかわらず、国民利益を代表すべきあなたが対外的な交渉において申し入れておいて、相手はどういう態度をとったのですか、どういうことからそういうことを判定して第二次の申し入れをされることが日本利益になるとお考えになっておやりになったのか。それではさっきの御答弁と話が違うじゃありませんか。やめてもらうということの意思はまだ放棄しておらぬ、あくまで言うつもりだ、またさっき条約局長が言われたように、向うから返事があったら、あらためてやめてもらいたいという意思表示はするつもりだというように私どもは理解した。にもかかわらず今は初めから、やめてもらいたいと言っても、やめてもらうことはできないという判断で通告の問題と補償の問題を申し入れたのだというようなことでは、はなはだ納得いかない。
  58. 重光葵

    重光国務大臣 私は、原水爆実験を国際的にやめてもらいたいという方針は少しも変えないし、また変える必要がないと思っています。しかしアメリカ側にそういう意向を申し述べて、向こうの意見として、国際情勢が今日こうなっておるじゃないか、国際連合において軍縮問題があれほどやかましくなっておるのだけれども、原水爆禁止ということにはみんな反対しておる、そういうような時期に実験をやめることができぬという意思であることがわかれば、次の手段をとることが最善の方法だと私は考えます。しかしながら、今申す通りに、こういう日本の全般的の考え方を改める必要はないと私は思う。だから国際連合でもその他の機会においても、これは維持して主張を繰り返す必要があると思う。それをやっておるわけであります。
  59. 穗積七郎

    穗積委員 まだ実験の時期はきまっていない。だから第一次のやめてもらいたいという申し入れをしておいて本来から言うならば、あなたがアメリカの側に立った外務大臣ではなく、日本国民の側に立った外務大臣であるならば、むしろ民間において昨年からほうはいとして起っております、人道上の、生命と幸福を守りましょう——反米運動をやろうということじゃない、生命と幸福を守ろうということで、アメリカであろうとソ連であろうと原水爆実験をやめてもらいたいというこの国民運動をむしろエンカレッジして、そして相手の出方を待つ、あなた方は腰が弱いからアメリカ申し入れても相手が聞かぬかもしれないが、それをバック・アップするものとして国民運動をさらにエンカレッジして交渉に当るのが、私は政治家としての当然の態度だと思う。それにもかかわらず、いつ申し入れたか知らぬが、あの発表があって、続いてすぐの第二次申し入れとはそんなに期間がなかったと思う。それを続いてやるということは、おやりなさいと言うこととひとしいのですよ。時期を通告してもらいたい、損害が起きたら補償してくれということを申し入れることは、やることを肯定していることなんですよ。そんなばかな申し入れがございましょうか。私ははなはだ不適当な申し入れだと思うが、大臣ほんとうにどうお考えになるか。もっと正直におっしゃい。アメリカ大使館に向って話をするのではなくて、われわれ日本国民の代表に向って、はっきりこっちを向いて返事をしてもらいたい。
  60. 重光葵

    重光国務大臣 今の何は御意見のようでございます。御意見の根本の趣旨については私も同感であります。しかしながら私は、そういう原水爆実験をやることを紡ぎ得なければ、これに対する最善の方法を講ずることが国民意思である、また国民のためにやるべきことだ、こう考えております。それを思い切って、やめてもらいたいやめてもらいたいということをいつまでも繰り返して、それができないということになって、それで泣き寝入りというようなことに私は賛成はできません。あくまでやった場合にはどうするか、とこう言ってやらなければならぬ。それだから意見相違です。
  61. 穗積七郎

    穗積委員 ちょっと外務大臣にお尋ねします。一昨年ビキニ実験が行われました直後、四月一日、衆議院の本会議において原子力兵器の国際管理または被害防止について決議が行われて、自来政府はその決議を尊重しなければならぬことは当然だと思いますが、あなたのそれに対するこのたびの措置はそれと違っておるとお考えになりませんか。  実はあと中国人の入国問題について質問したいから、一括してこの問題は質問して打ち切っておきますが、ここで申し上げておきますが、太平洋地域公海を利用して原水爆実験、危険きわまることをやるのは国際法上違法であると考えておりますから、この問題についてわれわれの考え外務省考え方の真否を明らかにすることは次の機会に譲りますので、その点あなたも条約局長も覚えておいて、もらいたい。  それからお尋ねしますが、あなたは第一次にやめてもらいたいという申し入れをして、第二次に、今度はさきに言った通告補償申し入れをした。そうして昨日外務次官をして一体なぜ第二次の申し入れを発表せしめたのですか。第一次の申し入れの発表をなぜさせなかったか、その政治的な理由はどこにあるか、どういう理由でそういうことをなさったか、これが第二点。  第三点は、危険地域を設定してやった場合、その実験国際法上合法的なものだというふうに解釈したならば、その地域外におった船が被害をこうむった場合の補償の問題は当然でございます。しかしながら、危険地域内に知らずして善意をもって入っておった場合の船に対する損害補償の請求権はどこに根拠をお求めになりますか。実験が合法的である。しかも向うは万全の措置をとって危険区域を設定してやった場合向うに過失はないと判断するでしょう。その危険区域内に知らずして善意の過失をもって入った日本船が被害をこうむったときの損害補償はどう考えておられるか。そのときに、昨年のように相手の包み金で了承するつもりなのか、それに応じなかった場合または額に不足があった場合それを請求する権利があると考えるか、その請求権は一体どこにお求めになるつもりであるか、その三つについて一括してお答え願いたい。
  62. 重光葵

    重光国務大臣 第一点は……。
  63. 穗積七郎

    穗積委員 この決議に縛られている外務大臣があのことをやるのは不適当だとお考えになっていないかというのです。
  64. 重光葵

    重光国務大臣 その決議の趣旨を実行するために今までの手段をとったと私は思っております。  それから第二点は、第一次とか第二次とかいうことは、これは続いておるのです。やめてもらいたい、やめてもらいたいが、しかしやめられないということがわかりましたから、その次に文書でもってはっきりやったのです。だからその文書で、前のは前置きでございますから、それはあえて発表することはないと思っております。全体の交渉経過がこういう工合にしてこうであるということは、今日ここで御説明することによっても発表しておるわけであります。それはそういうことでございます。
  65. 穗積七郎

    穗積委員 あなたはさっき、やるということになったら努力する、対処すると言っているではありませんか。
  66. 重光葵

    重光国務大臣 これは対処します。これは今後も機会があれば……。しかしながら、これは国際問題でありますから、一方的にこっちの思う通りにはなりません。不幸にして一方的に思う通りにはなりません。そこで、こちらの主張は十分明らかにするということが必要でございます。それをやっておるわけでございます。(穗積委員「請求権は」と呼ぶ)それは条約局長から……。
  67. 下田武三

    下田政府委員 第三点に入る前に、時間の節約のために第一点の基本問題について一言申し述べさしていただきたいと思います。日本政府としては、立法論として原水爆実験禁止の成立の一日もすみやかならんことを願っていることは申すまでもないことであります。しかしながら、立法論を幾ら申しましてもそれは現実法にはならないのであります。ですから、立法論としてその主張、原水爆実験をやめようという主張が現実に国際法として実現する前に、ある国が、それにもかかわらず、今国際法禁止していないからやるということを決定いたしました場合、それに対処するにはあくまでも現実の国際法で行く以外にはないのであります。立法論を幾らやりましても、それは現実国際法上にはない。ですから、立法論としてのレベルと現実国際法の点と違うべきでないかと思います。  それから第三点でありますが…・。(「国際法を作るのが先だ」と呼ぶ者あり)それはそうであります。その面においてはあくまでも努力を続けるわけであります。しかし、現実に李承晩ラインのごとき国際法上不法である問題と、片方国際的に不法と断定せざる場合ではおのずから違いがあるのであります。不法と断定し得ない場合が起ったときには、現実国際法で適法であるか不法であるかという判断に基いて対処するほかはないと思います。その立法論のレベルと現実国際法のレベルとを混同いたしますといつも食い違いますから、その点を明らかにしまして、第三点の問題に入りたいと思います。  第三点は、善意で日本漁船危険区域内におって被害をこうむった場合に損害賠償請求をなすかというお問いでございます……。
  68. 穗積七郎

    穗積委員 請求権の法的根拠を外務省はどこに求めておられるかということであります。
  69. 下田武三

    下田政府委員 それはこういうことでございます。先ほど申し上げましたように、危険区域の設定は単なるウォーニングであります。そこへ入ってくると危ないぞというウォ一ニングであります。他国はそれに従う法律上の義務はないわけでございます。しかし日本政府が、日本漁船保護の立場から申しますと、ある国が危ないぞと言っておるのに、それをほったらかしておくわけには参りませんので、当然通知をいたしまして、確かに危険があるということを周知させなければなりません。そして周知させてもなおかつ入っていくという場合には、それはその漁船自身の危険でいくということに相なるわけでございます。しかしながら日本側は先方のウォ一ニングに服する法律上の義務はないのでございます。しかもアメリカ危険区域ウォーニングは出しても、実際に実験をやる場合には飛行機を飛ばすなり何なり、あらゆる手段をもって区域内に外国の船舶がいるかどうかを確かめる措置をとると言っておるのであります。昨年もそうであったのであります。でござ  いますから、結局これは法律上の根本原則、つまり故意、過失がなかったかどうか、向うは十分に飛行機を飛ばして危険があるやなしやの措置をとったかどうかという点が責任の生ずる分れ目になっておると思います。日本側としては、これは法律上の問題ではありませんが、政府として十分危険の存在を漁船に周知さしたかどうかという点も、やはり検討しなければならぬ問題でございます。でございますから、一概に危険区域内に入って被害をこうむったからこれはもう賠償を請求できないのであるとか、あるいは必ずできるのであるという断定はできませんので、個々の状況に基きまして、双方に故意、過失なかりしやいなやという点が問題になってくると思うわけでございます。
  70. 穗積七郎

    穗積委員 私は大臣も局長の答弁もはなはだ不満足です。しかしきょうは先ほど申しましたように時間がありませんからこれは留保いたしまして、次の機会にしたいと思います。  続いて、法務大臣もせっかく来ていただきましたから、両大臣でお打ち合せの上そごのないように一つ御答弁をいただきたいのでありますが、先月の下旬に、日本教員組合の主催で教育研究全国大会を四国において開いた。これにアメリカ、イギリス、中共並びにインドのそれぞれの教育界の代表を招いて、相互に研究をし、視察をさせたいということで招待をした。そのうち・中共の代表だけを入国禁止なさったのです。その理由をまず第一に明らかにしていただきたい。
  71. 牧野良三

    ○牧野国務大臣 私から御答弁をいたします。招待をいたしました中共の四人の方は共産党員、かつ日本の内地に二ヵ月以上滞在の予定で、各地で講演、演説をされるというのでございますから、そのことについて関係各省打ち合せをいたしたのであります。するとゼネストに近い計画がありまして、ことに日教組が闘争方針というものを発表されたときに、中立性を守らなければならない教職主の大会で、さような人をお招きすることは時節柄はなはだ当を得ないであろうということで、御遠慮を願うようにということを申したわけでございます。御了承を願います。
  72. 穗積七郎

    穗積委員 そういう政治活動またはゼネストの扇動のために来るということを、法務省としてほどういう材料をもって確定されましたか、はなはだ不穏当だと思うのです。中共の教育代表の諸君は、ゼネストをアジテートするために来るのではございません。そうしてまた日教組の諸君も教育の研究のためということに限っております。あなた方にとっては共産党の諸君は好ましくないかもしらぬが、もしアメリカの代表で、資本主義または帝国主義の思想を持った者が来ることに対して、ある政府がこれは好ましくないという立場をとった場合、しかも、それが帝国主義宣伝のため——共産主義宣伝のためまたは国内におけるそういうゼネストをアジテートするために来るということではなくて、明らかに教育研究と教育視察ということに限って入って来る以上、あなたは共産党だから入れないというならば、劉寧一氏はれっきとした共産党員であり、経歴も今度入って来る人よりももっと古い人であります。相手は共産国ですから、共産党員なんということは珍しくもない、当りまえである。アメリカの諸君は資本主義、自由主義どころか帝国主義的な考えを持っている人が来るかもしれない。そういう言辞を漏らすかもしれない。そして日本の正しい民主的な労働組合の行為に対してすら、権力に対して反抗することはいかぬというようなことを示唆するかもしれない。そういうようなことを一々言っておったのでは切りがないのであって、ただその入った者がどういう思想を持っておるかとか、どういう団体に属しておるかということじゃなくて、入って後にどういう目的を持ってどういう行動をするか、そうして受け入れ団体はどういう責任を持ってやろうとしておるか、それをはっきり見るべきであってあなたの今の御答弁によると、日教組がこの中共代表を招待したのは、これは日本の共産党の勢力を伸長するため、かつ共産主義思想を宣伝するため、さらに三月のゼネストをアジテートするために、そういう目的をもって招待した。向うもそういうつもりで来るのだ。そうして、それを証明するに足る日程なり計画があるということをあなたは考えていられるのでありましょう。それははなはだ不穏当でございます。どこをもってそういうふうに御判断になるのか、そこを具体的に伺っておきたいのです。
  73. 牧野良三

    ○牧野国務大臣 さような僣越な断定はいたしません。おそれありと認めたるがゆえになるべく遠慮してもらうようにということを申し入れたわけであります。ただいまあなたの御推察なさるような、そんな行き過ぎたことを考えちゃいかぬと私も思います。
  74. 穗積七郎

    穗積委員 あなたのところに入った情報は、おそらくは一部の限られた情報によっていると思う。それを第一確かめる必要がありますが、きょうはいとまがありませんから申し上げません。さきに言いましたように、受ける人も、入った人も、どういう目的をもって、どういう行動をとるか、そういうおそれがないという具体的な確約が得られたら、あなたはお入れになるつもりでございますね。そう理解してよろしゅうございましょうね。
  75. 牧野良三

    ○牧野国務大臣 そういう返事をすると危なくなりますから、こういう返事はなるべく申し上げません。
  76. 穗積七郎

    穗積委員 そんな無責任な、相手をばかにしたような御答弁はやめてもらいたいと思うのだ。私の質問は何もおかしなわなにかけようというのではなくて、非常に正当な質問だと思うのです。ですから、そういうおそれがないということが具体的に証明されたならば、当然そういう措置はとるべからざるものと考えられるが、これは国政一般の問題−今後のこともあるし、他国のこともあるから伺っておくのですが、そういうふうに入国問題は理解すべきだ。一般的に伺っているのです。当然そういう態度で入国問題は処理すべきであると思うが、相手が共産国であり、共産党員であれば、いずれの場合においても禁止するというお考えでございますか、そうではございませんでしょう。そういう一般的な場合を伺っておるわけです。
  77. 牧野良三

    ○牧野国務大臣 原則といたしましてはあなたの御意見を尊重いたします。
  78. 田中織之進

    田中(織)委員 関連して。この問題について法務大臣に伺いますが、実は日教組の方で教育研究会をやるについて、これは中兵だけではない、アメリカなりインドなり四カ国ばかりの代表を招きたいということについて、事前に入国管理川へ連絡をした。そのとき」に入国管理局の方で大体招待をしていいということについての実は示唆をいただいたために、中兵側へ招請状を発しまして代表がすでに香港に来ておったわけです。私の記憶で間違いなければきのうで会議は終了したはずであります。そういう意味でこの問題についてはやはり日教組としても単に中共だけの代表を招くのではないという趣旨のこと、また中共の代表を招くということも入国管理局の方へ事前に連絡をして、ある種の了解のももとでなければ実は招請状を発していないのです。すでに本国を出発して香港まで来ておったこれらの代表の入国の問題を、今法務大臣お話では遠慮してもらうということで、結局会議が終るまで決定をしなかった、こういうことになるわけなのです。それは当然そういうおそれがあるというような判断に基いて入国を認めるとか認めないとかいうことはできないわけです。禁止の処分ができないから、結局ずるいやり方で、遠慮してもらうというような形で、会議の終るまでそれを握っていた。今後は第四次の貿易協定の改訂も行われるわけです。現実には国交は回復していないけれども、経済、文化あらゆる面において日中両国の交流が行われておる。これは日本のためにも非常なプラスであるということは政府当局も認めておられることだと思う。そういう観点から見て、今度のような形でなく、禁止するなら禁止するで、はっきりしたとにかく理由を示すべきが当然で、それをやらずに、ここで尋ねても、それは遠慮してもらっておるだけだ、こういうような態度は私はいけないと思う。   〔委員長退席、須磨委員長代理着席〕 従って一般的な問題として、今後の日本のやはり国際的な友好関係を深める意味で、いずれの国を問わず、日本も独立国なんですから、そういう意味で外国からのお客さんはこちらから招こうが、向うからたずねてこようが、これは私は原則として受け入れるという態度で進まなければならぬと思いますが、この点について入国管理を主管せられる法務大臣並びにこの旅券の査証の責任を持っておる外務大臣から、一般的な外国人の受け入れの問題についての所見をあわせて一つ聞かしていただきたいと思う。
  79. 牧野良三

    ○牧野国務大臣 私は田中君にはっきり申し上げます。ずるい態度やごまかしの態度をとったのじゃない。私は事情の許す限りお許しすることがいいと思った。だからいろいろ苦労したのですよ。ところがいろいろの材料を皆さんの方からいただいた。そこで考慮せざるを得なくなったのであります。しこうしてこの点は行政上の措置として残されただけの手は打ったので、法律で義務のあることはあいまいなことはしないで必ずやります。そんな点に決して私はごまかしはいたさぬ。ただはっきり法律の命ずることをやらしてくれない、この間の見本市の場合に私は困った。途中から法務大臣になったが、すると法律に従ってやることをどうしても許さない例の指紋だな。あれは法律だけれども、私は私の責任で、いやならとらせないといって、あなた方の諸君と非常に交渉して、苦労してかど立たないようにした。その前には興安丸でえらく苦しんだ。犯罪人だのに取扱いがむずかしい。私は外国人の犯罪人なんか日本の裁判官をわずらわさないで、早く帰したがよいと思うのですけれども、法律できめたことは、自由裁量ができなくなる。今の入国は行政の本旨に従う自由裁量だから私がやりました。指紋と興安丸とは、自由裁量の方へ持ってこようとして、あなた方と交渉してあれだけ穏便にやった。ところが今度は三度目だから、これは警戒しなければいかぬと思ったのです。私の心中を察して下さい。何とかごまかさないで、必ず私は善後措置に遺憾なきを期したいと思うから、この程度でかんべんしていただきたい。
  80. 須磨彌吉郎

    ○須磨委員長代理 田中稔男君。
  81. 田中稔男

    田中(稔)委員 外務大臣にちょっとお尋ねいたしますが、昨年末だと思いますが、アリソン大使から申し入れがあって、日本国民が盛んに中国やソ連に行って文化交流とか経済交流をやっておる、そしてそれがいろいろな民間協定なり、あるいはコミュニケとなって発表される。一体日本政府は何をしておるかというような抗議が行われたということでありました。私はこの前の国会の予算委員会で、その点について外務大臣質問をいたしましたが、どうも最近政府の態度が急に変って、中国あたりから人が来る場合に、これに対する入国査証の問題が、たとえば今度の全国教研大会の場合でもそうですが、非常に厳重になってきた、こういう一般的な傾向が見られると思う。それでこのことは今後の日本と中国との文化交流、経済交流にとっては非常に重大なことです。それでまず一般的な問題として外務大臣にお尋ねしたいのですが、日本と中国との国交の回復ができない場合にも、両国の文化交流、経済交流は大いにやらなければならぬと思う。そして政府も、ことに首相のごときはたびたびそういうことを言っておられる。それがほんとう考えならば、入国査証の問題のごときも、やはりもっとゆるやかに考えていただかなければならぬと思いますが、事実はそこがますます厳重になってきておる。一体政府は中国との文化交流を今後大いに積極的にやろうとお考えなのか、それとも文化交流はできるだけやらないように、制限しようというお考えなのか、その根本的な原則的な態度を一つ伺いたい。
  82. 重光葵

    重光国務大臣 政府の態度といたしましては、純粋な文化交流、それからまた経済交流——経済交流には国際上の義務の範囲内でということになりますが、その範囲内でこれはやりたいという意向を持っております。少くともそれをとめる意向はございません。しかしながらいやしくも日本の国内に関連して政治的の策動に関係がある、こういうことがわかっておる場合には、これは入国等の問題にすぐ襲いて制限の方に考慮しなければならぬ、こういうふうに考えております。これはずいぶん前からそういう工合方針で進んでおるわけで、必ずしも現内閣だけの問題じゃなかった、こう思います。そこで方針に変りはないということを申し上げるわけです。ただ方針に変りがあったのは相手方だと思っております。中国あたりのやり方が変ってきた、それはどういう変り方をしたかというと、これは私から申し上げるまでもない、最近はこれを称して積み上げ方式と言われておるものがあります。それは文化交流その他の交流の名前によって、そうして個人的の関係をたどって表面上差しつかえのないいろいろなとりきめなどをだんだん積み上げていって、そういう人を日本に帰して、もしくは教育して、そうして日本の世論を作って、政府はどうしても中共を承認しないからというので、その政府を圧迫して、そっちの方へ政策を変更させようというような方式に変ってきた、これはわれわれの情報によりますと、中共それ自身がそう言っております。そういう変った方式になってきたのであります。先方が変っておる。そうなるとこちらも相当警戒を要するということは当然であります。そこで今何も政府方針が特に窮屈になったわけではございませんけれども、先方のやり方の変りが反映した点はないとは私は申し上げません。しかし私は文化の交流とか経済の交流とかいうことが国際的に制限されていない限りにおいて、これは私はいいことだと考えておって、そういう方針によって進めておるわけでございます。以上でお答えをしたと思います。
  83. 田中稔男

    田中(稔)委員 先ほど牧野法相は入国を遠慮してもらった理由として、第一に四名の人が中国の共産党員であるということ、もう一つは日本側のスケジュールがどうも政治的な宣伝の機会を提供する、こういうふうなことになるという、この二点をあげられたと思うのです。まず第一点でありますが、中国は御承知通り共産主義の建設を目標として進んでおる国であります。現在共産主義の段階ではありませんが、だから中国の政治家にしても教育家にしても、要するに国家を指導する立場にある人、これは全部共産党員である。共産党員であるということは、中国において国家の選良という、最も優秀な人材はみな共産党に入っているわけです。だからこれから中国から見える人が——これは国交が回復して大使の交換がありましたら、その大使にしても、それから民間のいろいろな経済関係あるいは文化関係の人が参りましても、これはおそらく全部共産党員だろうと思います。共産党員にあらざる人のごときは、もう言うに足りない下っぱの者だということになるのだが、まずその共産党員だから、中国の人の入国を遠慮してもらうとか、あるいは断わるとかいうことになれば、事実上文化交流も経済交流もできないということになる、まずその点について法務大臣は、中国の人が共産党員なるがゆえに断わるということを、一体ほんとうにお考えになっているかどうか、一つ今後のこともありますからお尋ねしておきたいと思います。
  84. 牧野良三

    ○牧野国務大臣 さような考えはない。ただその共産党員を招待して、学校の先生の会で演説、講演させるというとちょっとおかしいな、そこを思うのです。
  85. 田中稔男

    田中(稔)委員 それはまたいろいろ議論することもありますが、実は今のアメリカソ連だって平和的共存で文化交流、経済交流をやろうと思っている。現にアメリカのジャーナリストや学者がソ連に行っておるのです。また反対ソ連からどんどん来ているのです。だから日本が中国と文化交流、経済交流をするのにそんなことにこだわっておれば何もできない。しかしそれはそれとして次にスケジュールの問題ですが、最初入国管理局の方ではたやすくそれは問題はありませんよという話だったのです。それで内諾を得て、いよいよインヴィテーションを発したというような関係だということをさっき同僚の田中織之進君も申した通りであります。そこまできておるのに、日教組の代表もこれは牧野さんのところには陳情しておる。外務大臣のところにも来ておると思います。その場合にスケジュールのときにこんなふうなスケジュールをしたらよろしいという、こういうお話でもあれば日教組の代表は快く応じたと私は思うのです。たとえば演説会の回数が非常に多い、講演会が多過ぎるから、一つこれは松山の教育研究大会、これは全く研究大会ですから、その会合に出る程度にしてもらいたい。スケジュールについても最初はちゃんと内諾を与えたのだから、親切な気持でお考えいただけば、日教組の代表も何も原案を固執するわけではないので、どんな御相談にも応じるという態度であった。ところが政府はそんなことは一切問題にしないで断わるという態度で、私は牧野さんはもう少しものわかりのいい人だと思っておった、どうも遺憾ですが、その点はどうですか。きょう御答弁を求めても仕方がないが、こういうことが今後起らないように、共産党員であるという資格については少しも問題はない。また今度は文化交流だったのですから、かりに少し御懸念があるならば、スケジュールのごときものについて具体的にお話を願うことで、一つ話し合いでやっていきたいと思うのです。実は政治的宣伝というなら劉寧一、これは広島の原爆大会に来て全国を歩いたのですから、あの方があなたの立場から政治的危険があるならば、もっと政治的に危険だったろう。劉寧一なんて総工会の副主席で中国共産党のばりばりですから、今度の教育代表なんて共産党の人としてはおそらく二流、三流かもわからない。あんな一流の共産党員が来て全国を回って、広島の原爆大会には数万の人が集まった。政治的に重要なら最も重要だ。ところがそれを許しておいて今度許さぬというのは、さっき言ったようにアメリカの圧迫を受けて政府の態度がだんだんと弱くなったのじゃないか、とにかくアメリカに対しては非常に弱いというのが今日の日本外務大臣である。こういう大臣を持っていることは国民の一人として非常に不幸だと思う。外務大臣だけでなく牧野さんもしっかり考えてもらいたいということを要望しておきます。
  86. 牧野良三

    ○牧野国務大臣 実は教育に対してルーズであったから、私はあなた方と一緒になってもう少ししっかりやろうと思っただけで、今後は注意します。そこで事実の点はちょっと違っているようですから政府委員から申し上げます。
  87. 内田藤雄

    ○内田政府委員 事実の経過はだいぶ誤解があるようでございますので、御説明させていただきたいと思います。  われわれのところに日教組の方から御連絡がございましたのは、昨年の十二月二十二日に日教組の大鹿さんという方がわれわれの方の担当課長のところにお見えになったのが最初でございます。その当時私もそういうことを承知いたしまして、そこでただちに大体関係官庁に内容をサウンドしてくれということで、課長に聞いてもらいました。とにかく聞きまして一月七日ごろであったと思いますが高田なほ子先生が日教組の方と私のところへ直接お見えになりました。そのときお話を伺いまして、そのときには私が田村課長にサウンドした結果はどうであったかということを聞きましたところが、今までのところでは大した反対もないようです。こういうふうに報告を受けましたので、私はその頭で御応待を申し上げたという、」とは認めます。しかし、その際申しておきましたのですが、政府に正規のアプリケーションを出していただきたい。そうしてそれに基いて正式に関係官庁の意見を聞きまして、決定いたしますから、こういうことを申し上げたのでございまして、また従来のやり方が常にそうなんでございますが、われわれは担当の局としてその責任を回避いたすつもりは毛頭持っておりません。実際問題といたしまして常に外交関係の考慮、あるいは治安関係の考慮あるいはその問題によりまして、経済関係の官庁、あるいは今度の場合ですと教育の問題でございますので、文部省でございますが、そういう関係官庁の意見を総合調整いたしまして決定いたすのでございまして、私の方だけで単独にこういうことをきめておりません。今回も、もちろんそういう考えではございませんでしたので、関係官庁の意見を聞いた上できめますから、こういうことは申し上げてございます。ただもし、今示唆を与えたというふうに言っておられますが、私の方で示唆を与えたつもりは毛頭ございませんが、当時比較的その反対論がないという報告であったものでございますから、それに基いて応答いたしました私の態度から、この問題についてはそう問題はないのじゃないかというふうに日教祖がお考えになったとしても私はそれを不当だとは申し上げません。しかしそういう状況のもとに経過いたしまして 一月の九日に小林委員長から正式な入国申請が提出されたのでございます。それに基きまして、関係官庁と協議いたしましたところが、漸次反対意見が出て参りました。(「どこからだ」と呼ぶ者あり)どこからとは申し上げかねますが、(「秘密じゃないからいいじゃないか、どこがどういう理由で反対したのか」と呼ぶ者あり)要するに牧野法務大臣も繰り返して申し上げておられますので、事がやはり教育の問題であるということが一つの重点になったと思います。それで教育者の会合に、教育が政府に従属しておるような国の人々が来て、そこでそういう趣旨において、これは扇動いたすかどうかわかりませんが、そういう懸念があるようなことはやめてもらう方がいいのではないか、こういう考えであったと思います。それで月半ばごろに大体反対意見が相当あるということでありましたから、私どもはそのことを日教組にお伝えいたしたつもりでおります。それで正式には二十日ごろに、今回は、これは拒否いたすということを決定いたしまして、そのことも日教組にお伝えいたしました。それですでにわれわれの方にいただいております日教組の御説明書によりましても、去年の十一月二十日に招請状は出ております。従ってわれわれの了解を得てから招請状を出したということは事実に反すると考えます。またただいま申し上げましたように、中間的にも反対意見が相当強いということは御連絡しておるのでございますし、また二十日の日に大体拒否の決定がいたされましたときにも、直ちに御通告いたしております。それで香港に来られた日付は存じませんが、私どもはその間に過去の経験にかんがみまして、既成事実を作られて、それを押しつけられるようなことは困るから、あらかじめ了解を得ないで香港によこすようなことはやめてもらいたいということも申し入れてございます。事実だけを申し上げます。
  88. 須磨彌吉郎

    ○須磨委員長代理 菊池義郎君。
  89. 菊池義郎

    ○菊池委員 法務大臣がいらっしゃいますので、ちょっとお伺いいたしますが、韓国の凶悪な者を大村に収容して、これを日本の抑留同胞と交換に釈放するという新聞記事がきょう出ておりますが、これはどういうふうになっておるのでございますか、その真相をお伺いしたいと思います。釈放するのかしないのか、釈放するについては野放しにするのか、あるいは何か制限を加えるのか、そういう点でございます。
  90. 牧野良三

    ○牧野国務大臣 お答え申します。菊池さん、実はその点なんです。野放しなんということはそれはできるものじゃない。そこで問題はここにあるのです。私は外務当局とも打ち合せて、釈放せよと韓国で言われるそうだが、それは韓国人だから釈放せよとおっしゃるのか、日本人だけれども釈放せよとおっしゃるのか、それをまず知らしていただきたい、韓国人だから釈放せよとおっしゃるならば、即時釈放します。従ってお引き取り願いたい。日本人だけれども釈放せよとおっしゃるなら、内政干渉はまっぴらごめん、何でさような干渉をなさるか。ただし法務大臣は、日本人であるということをお認め下さるならば、正義人道の立場から長くあのところには置きません。それの御返事をいただきたいと言っておるのだが、その返事がないのです。だから危なくて……。(笑声)
  91. 菊池義郎

    ○菊池委員 明快な御答弁、わかりました。それから外務大臣にお伺いし、ますが、昨年の暮れにわれわれロンドンに参りまして、西大使に会って日ソ交渉状況についていろいろ承わりましたが、そのときに西駐英大使は、全然日ソ交渉について松本全権から何の話も受けないし、また相談もしたこともないというようなことを言っておりましたが、どうもわれわれにはちょっとそういう点に奇異の感を抱くのであります。なぜせっかく英国におられる大使とよく打ち合せてその交渉に当らないのであるか、単独でやるというのはどういう事情でございましょうか。その点をお伺いしたいと思います。
  92. 重光葵

    重光国務大臣 それは法規上の関係だと思います。日ソ交渉は松木全権が全責任を持ってやっております。西大使は駐英大使でありまして別に大使としての仕事を持っておるわけであります。事実上いろいろ相談をするということがいいことと思います。何となれば西大使ソ連通でありますから、そういう程度は事実やっておるとわれわれは思っております。しかし日ソ交渉は松本全権が全責任を持ってやっておることはその通りでございます。
  93. 菊池義郎

    ○菊池委員 どうも全然話し合いも何もないような口ぶりでありました。その点は何もお伺いする必要もありませんが……。  それから先ほど終戦宣言のことについてだいぶ議論がございましたが、大臣はそれをいかにも重大なことのような口ぶりである。われわれ戦争終結の宣言のごとき、これは全く問題ではないので、むしろ向うをおだててやらした方がいいと思う。何も講和条約に影響のあることでもありませんし、日本としては利益こそあれ損はちっともない、そういうことは全く問題にならぬと思う。これについての外務大臣の御見解をお伺いしたいと思います。
  94. 重光葵

    重光国務大臣 戦争終結ということが交渉の目的であります。ロンドン交渉もその目的を達しようと思って今交渉を進めておるわけでございます。それは平和条約を締結して、その平和条約の中には戦争終結ということがむろんあるわけでございます。さようにしてやっていきたい、こう考えております。
  95. 菊池義郎

    ○菊池委員 戦争終結の宣言は一方的に効果が生ずるものとわれわれは考えておりますが、生じないという見方もあるようでございますが、それによって何かほかに影響するところがございますか。ありますならばちょっと教えていただきたいと思います。
  96. 重光葵

    重光国務大臣 今言われたことは、ソ連側が一方的に戦争終結をやるかどうかということだろうと思いますが……。
  97. 菊池義郎

    ○菊池委員 いや、戦争終結の宣言が効果を生じた場合、その結果何か影響するところがありますか。
  98. 重光葵

    重光国務大臣 ソ連側がやるならば、これはソ連側の一方的のことでございます。だからそれによってソ連側で国内的に法規的変化があれば、それは変化があると思いますが、しかし対外的には影響はございません。政治的の影響はあるかもしれませんけれども、日本側との関係はございません。一方的のことでございます。
  99. 菊池義郎

    ○菊池委員 私たちは、日ソ交渉の妥結を何も急ぐ必要はないと考えております。むしろ向うの方にあせらせて、そしてこっちは待っておればいいくらいに考えておるのです。つまりただいまは原爆、水爆の時代でありますし、また日本と米国とは軍事協定も結んでおるのでありますから、戦争が起ろうなどという考えは毛頭ありません。講和条約が締結されなくても、戦争なんというものは絶対に起らないという見通しをわれわれは持っておるのでございます。従って何も条約を急ぐ必要はない。あくまでもねばってこっちの有利な条件でもって締結した方がいいと考えておるのでありますが、これについて外務大臣はどういうお考えを持っておられますか。
  100. 重光葵

    重光国務大臣 それにつきましての根本の態度でございますが、それは従来の既定の方針によって進んで参ります。こちらの主張がもう出ておるのでありますから、その主張がいれられることによって平和条約ができます。それはなるべく早い方がいいと思います。私は、戦争状態ということはどの国と、でも少しでもなくすことがいいと考えておりますが、それであるから特にこちらの主張を捨てて急ぐということはやっておりません。あくまで主張は主張でやるつもりでおります。
  101. 菊池義郎

    ○菊池委員 それから小笠原島の問題でございますが、最近の情勢について外務省の方に何か情報がございましたらお伺いしたいと思います。アジア局長でけっこうです。
  102. 中川融

    ○中川(融)政府委員 小笠原に旧住民が帰る問題につきましては、日本側から再三再四にわたりまして、ぜひそういうふうにしてもらいたいという要望を発しておることは御承知通りでございます。アメリカ政府部内におきましても、最近そのことについて関係省間で協議をするという手はずになっております。協議の結果につきましてはまだわかっておりませんが、何らか向うでも考えていてくれるということだけは、はっきりしておるのでございます。
  103. 菊池義郎

    ○菊池委員 七千人を一度に帰すのは生活の不安がある。それでそのうちの何百人かを先に帰す。そういったような案を日本の方で出したのでありますが、それに対して向うの反応はどうでありますか。
  104. 中川融

    ○中川(融)政府委員 小笠原の旧住民の方全部に帰っていただきたいのでありますが、先方が今まで申しております反対理由としては、これらの人が帰ってもすぐに生活がむずかしいのではないか、そうなると結局アメリカ当局の負担になる、かようなことが反対の一つになっておりますので、こちら側の第二の案といたしましては、その中の一部分でもよいが、この方々は行けば必ず職がある、それを数字的その他の材料に基きまして証明できる人たちだけを選びまして、一部を帰すことも考えてもらいたいということも申し出ておるのであります。従ってアメリカ側がどの案について考えておるかはわかりませんが、日本側としてもできるだけ実際的な案を提示して先方の考慮を求めておる、こういうのが現在の段階でございます。
  105. 須磨彌吉郎

    ○須磨委員長代理 ちょっとお諮りいたします。法務大臣のおられる問に山本君と福田君からちょっと関連質問をしたいということでありますから、これを許します。山本利壽君。
  106. 山本利壽

    ○山本(利)委員 先ほど大村収容所におる者の釈放のことで御答弁がございましたが、この問題は日本の漁民が李承晩ラインにひっかかって、たくさん向うで抑留されておる、それをなかなか帰さない、だから一つのそれの条件として大村におる韓国人を釈放したら漁民を帰そうといったような情報があったようでありますが、先ほどの御答弁によると、釈放したあとですぐ韓国が受け取るならば釈放するけれども、また内地におるならこれは困るから釈放しない、この意味においては、それでは日本の漁民の韓国に抑留されておる者との取引関係という点については交渉は決裂ということになりますか。その関連においての法務大臣のお考えをちょっと承わりたいと思います。そうして時間を節約しますためにもう一つ伺っておきますが、一体大村収容所におるところの韓国人というものは、あるいは北鮮人もおるかもしれませんが、その犯罪者で単なる密入国者というものは次から次に韓国が受け取っておるのかどうか。それから密入国者でなしに、日本に相当長期間滞在しておって犯罪を犯した者をそこへ収容してある、ただその数がどういう関係にあるか。それからある人々からいえば日本の漁民が抑留されておるということは、これは非常に不合理のことであるから、これをぜひ帰してもらいたいという意味で、場合によってはその数の関係がありますけれども、犯罪人であっても一応外へ出して、それには一人々々に刑事をしばらくつけて監視させるくらいの手数をとっても、それと引きかえに韓国におる日本の漁民を帰してもらいたいという意向もある一部には相当強いけれども、そういうことはとうてい不可能なことであるかどうか。一応釈放してそのままそういう韓国人が罪を犯さないならば、日本の国家、社会としては何ら障害はないはずである。もし重ねて犯罪を犯す場合には、これはもう一度つかまえて放り込んだって一向差しつかえないことであるが、そこらの関係がずいぶんデリケートでありますが、法務省においてはここいらの点をどういうふうに考えておられるか、そうしてまた朝鮮人の犯罪人の中には北鮮系の者はいないのか、もしおった場合には北鮮の方では韓国と違って日本から帰りたいという者は相当受け入れる用意があるということをしばしばわれわれは聞いておる。それだから北鮮に向って大村収容所におる者の中で自分は北鮮に帰りたいのだという者がいれば、その方は帰してもよいと思うのですが、そこいらの数の割合とか、あるかないか、北鮮に向って帰す意思があるかどうかというような点を承わりたい。まだ承わりたいことがありますが、あまり一ぺんに言いますと混雑しますから、一応御答弁を伺います。
  107. 牧野良三

    ○牧野国務大臣 お答えをいたします。むずかしい理屈は私は全然言っておりません。必ず李承晩のところで抑留している日本人を帰すためにはどんなことでもいたしたいと思っております。どんな譲歩でもして、私はこっちを釈放して、向うは交換するなら交換する、それはやるつもりです。ただけじめだけはやっておきませんと、帰すでしょう、すぐひっつかまるのです。そして、とっつかまえておいて、またあの交渉を始めるのですね。簡単にひっつかむですね。だからけじめをちゃんとして、そうして外務省とも交渉して、心配のないように、もう九州から山口県の沿岸のお方に不安のないようなことをやりたいと思っております。ただ北鮮の人なんかはきらうのですよ。(山本(利)委員「帰すことをですか」と呼ぶ)いいえ、李承晩が、隣で敵を増すのでしょう、だからいやなんですよ。そこにあそこらの返事をしない微妙なところがあるのですよ。あのずるい態度はいかぬですよ。そこでずるさは認めて、けじめだけつける。そこで昨日現在の報告を申しましょう。不法入国者は千二百十二名、そのうち北鮮へ帰国希望者が五十名ございます。それから受刑者は三百九十一名、北鮮に帰国希望者が二十名あります。この発表を知っているのですね。そして日本では国会議員諸君が私に、すべてこういう人たちは希望するところに帰せ、こうおっしゃるのです。それがあるのですよ。だからこれは希望でしょう。そうするとすぐ七十名が帰るというので、それをこわがっているのですよ。南鮮の人は、李承晩の方は、こんなことをこわがってはいかぬですよ。だから私どもの方は、りっぱな態度で、北鮮に行く人は北鮮にやる、そういうことではっきりしたい。だからそういうことは認めて、李承晩も認めるし、そしてよその国も敵国を利するような態度で日本はやるのじゃないのだということさえはっきりしてくれれば、やろうじゃありませんか。
  108. 山本利壽

    ○山本(利)委員 今のところでちょっと不明瞭なところがあるのですが、法務大臣は北鮮に帰りたい者は北鮮に帰そう、韓国に帰りたい者は韓国に帰そうとおっしゃるが、しかしそれは北鮮なら北鮮に、わずかな数であるけれども、帰すことを李承晩が認めたら帰すとおっしゃるのですか。わが国は独立国であって国内問題がいろいろ複雑であるから李承晩に関係なしに、北鮮に帰りたい者は帰してやるという御決心であるのかどうか。李承晩を納得させてから帰すとおっしゃるのか。そこのところが私にはわからない。
  109. 牧野良三

    ○牧野国務大臣 そんなことは相談するつもりはないです。それはあそこの条件なんかつけないで私のところで決心するが、外交のことは簡単じゃない。そこで外交の円満が、そして日本外交の信義が疑われないという、ちゃんと保障をつけてやりませんと、むずかしい問題を残すといけません。そこで早くそのけじめをつけようとしております。やります。
  110. 山本利壽

    ○山本(利)委員 法務大臣の御決心は心強いと思います。北鮮へ帰りたい者は、国内の人口問題からいってもどんどん帰すべきだということを、私は再三この委員会においても申し上げたのでありますが、今度は関連が外務大臣に移るのですが、それを帰すためには日本におってもらわなくてもいい朝鮮人あるいは韓国人を帰すのには、帰れといっても旅費なんかもないのであるから、日本の方で相当便宜を与えて——船なら船を作り、あるいは借りてもいろいろな点で便宜を与えなければならぬが、その点に対しては三十一年度予算には、外務省は相当の予算をお出しになるべきであったと私は思いますけれども、そういう費目では予算が取ってないように思いますけれども、外務大臣は帰してやりたいが、予算がないからということで今後もその立場をおとりになるでしょうか、何らかのめどがあるものでしょうか。その点が一点ともう一つは、この日韓問題についてはアメリカに協力を求めるということをおっしゃっているが、大体すでにアメリカ側は日韓の間に立って折衝するということの意思表示をしておられるかどうか、そういう点について一つ外務大臣の御答弁をお願いいたします。
  111. 重光葵

    重光国務大臣 日輔の問題につきましては、むろんアメリカも非常に重要な関心を持っております。そうでありますから日本側のとっている態度及び現在の状況は十分向うに通報をいたしております。そうして向う考えてもらっております。  それから北鮮と南鮮は御承知通り敵対関係になっております。だから両方とも、一方は独立国であるとは言えませんけれども、敵対関係にありますから、これが一方を援助して一方を援助しないというふうなことに見られるのははなはだまずいことになります。そこでこれはどこに帰りたいといっても、向う敵味方になっておっても、帰りたいところに帰ることは当然いいことだと思います。しかしそれの帰ることを日本が予算まで取ってやるということになったら、他方とある意味において非常な関係になります。そういうことはできません。それは本人が帰るならば帰ってもいい、今でも帰るルートはあるのですからそれはかまいません。政府がこれを補助するということは非常にこんがらかったことになりますからそれは考えておりません。
  112. 山本利壽

    ○山本(利)委員 もう一点だけ。今の点で予算まで取っては帰されぬと言われますけれども、その理由が南鮮と北鮮とは敵対関係にあるから片方を援助することはできないという話でありましたけれども、この問題をわれわれは外国の問題ではなしに、日本国内の人口の問題及び社会問題のうるさいことを削減するための方法として帰したいというのであるから、だから日本は移民船を仕立てても、日本人でさえも外国に出そうという際であるから、ある程度の費用は見込んででも帰さなければとうてい帰すということにはならぬ。お前ら帰りたければ帰れといっても帰れないから、しかも今は日本人としての待遇をしないから、国内において生活に困って悪いことをするというのも一つの理由でありますから、この点についてはここで外務大臣を追及いたしませんが、今後この点についても一つ御努力を願いたい、かように考えます。  それから韓国における収容所がまことに非人道的なお粗末なものであるということを引き揚げた者から聞きますが、大村収容所は、私も視察して知っておりますが、非常によくいっている。清潔でもあるし、あらゆる点からも十分な待遇であると思いますが、その差があまりにひどいのに、これに対して法務大臣外務大臣を通じてでも向うに抗議をなさったことがあるかどうか。日本人の抑留されている者が帰されるまでの間の待遇というものも考えてやらなければ、向うで次々に病気になって死んでいくものがありますから、この点についての考慮が今日まで払われているかどうか。この点に対して法務大臣の御答弁をお願いいたします。
  113. 重光葵

    重光国務大臣 私の方でやっておりますから……。  それは全くお話通り向うの待遇を改善してもらう、これは非常に重要な点で、強く向うに要求して、若干の改善は見られたということでございます。  それから、それだけで満足するわけにいきません。こちらの方から慰問品などを送らなければならぬ。そういうことを機会あるごとにやって、それは相当効果を上げておるということを申し上げておきたいと思います。
  114. 須磨彌吉郎

    ○須磨委員長代理 福田昌子君。法務大臣は非常にお急ぎのようでございますから、簡単にお願いいたします。
  115. 福田昌子

    福田(昌)委員 きょうは簡単な御質問しかいたしません。花嫁のことについてお伺いいたしたいと思います。  ブラジルヘの移民がだんだん増加しております。ことに花嫁移民も多少増加しておりますが、その花嫁の末路というものが非常に問題になっております。御承知のように花嫁移民はどこへの移民でも相当問題を起したのですが、最近ブラジル行きの花嫁移民は相当被害が大きくなって参っております。昨年三重県から参りました花嫁四人のグループの列をとりますと、四人が三重県出身として参りましたが、そのうち二人はすでにパンパンになっておる。一人が、仕方がなくてまだ結婚生活を続け、一人は気違いになって精神病院に入っているというような状態でございます。そういう哀れな結果をもたらします原因になるものは、結局周旋人の口車に乗せられ、写真や条件にだまされた結婚をしいられたことがらそういう結果が出て参っているのでございます。みめうるわしい青年と思って行ってみたら、だいぶお年寄りのおじいさんであったとか、大農場主と思っていたら日雇い労働者だったとかいうようなことで、その周旋人の申し出た条件と非常に違っておることからそういう不幸が起っておりますが、しかもかの地に参りましてから、そういう不幸に直面したからといって領事館に訴えても、ほとんど問題にしてくれない。日本に帰るには旅費がないということで、ついに困ってパンパンになったり、気が狂って精神病院の御厄介になるというような状態になっております。伝え聞くところによりますと、サンパウロの精神病院では、患者の三分の一は日本人であり、その大部分は花嫁くずれであるということでありますが、こういう状態は、いかに世界に名を売った売春国日本であるといたしましても、南米まで出かけて売春婦がふえて参るということは、これは国辱でしかございません。しかも人権尊重の問題から見ましてもゆゆしい問題だと考えます。従いまして、これに対する外務大臣、法務大臣の御処置と御見解を承わりたいのでございます。
  116. 矢口麓蔵

    ○矢口政府委員 ただいまの御質問、これは移民というカテゴリーに入りますかどうか存じませんが、広義の移民に入りましょう。今日まで私のところにはそういった公報は入っておりません。ただ新聞に出たことは私もよく記憶に残っております。何しろ相当の人数が向うに参ることでございますから、その中には若干のそういった方があるかとも想像されますが、そういう公式の御質問がございましたから、とりあえず現地に電報なり公信等を出してなるべく早く調べまして、この次の機会にはっきり御答弁申し上げることといたしたいと思います。
  117. 牧野良三

    ○牧野国務大臣 福田さんにお答え申し上げます。私はこれを知りまして大へん心配しておりますので、サンパウロの医学博士細江静男君に照会いたしまして、さような事実があるかどうか、あれば善後策をとれ、場合によっては私が行こう、(「えらい元気出したな」と呼ぶ者あり、笑声)南米まで行こうということを言ってやりました。それはどの熱意を持っておりますから、御了承下さい。
  118. 福田昌子

    福田(昌)委員 法務大臣が人権尊重の立場から大へん御熱心であるのは、私ども大へん感謝するところですが、現地の御調査をいただくと同時に、その途中におきまする今日の段階におきまして、相変らず周旋人の口車に乗せられて、日本を出港いたしまする商船には絶えず花嫁が乗せられて南米に向っております。こういう人たちを、前者のわだちを再び踏ませないために、ぜひ予防しなければならないと思うのであります。これには、日本でそういう花嫁を集める周旋人が相当多くおるわけでございますから、ぜひこういうところもよくお取調べいただきまして、そういう周旋人のばっこを許さないように、またそういう周旋人の口車に乗らないように、取締り当局の強化をお願いいたしたいのであります。  それとあわせまして、ただいまの移住局長の御答弁に私ちょっと驚いたのでございます。外務省の最高ポストにある移住局長が、そういう話はまだ伺ったこともないし、知らないというようなことでは、一体外務当局は他の部門におきましてもどういう責任ある仕事をしておられるかどうか、まことに疑問を感ずるのでございます。そのことは結局外務当局が、日本外交陣営の責任者でありながらその責任を全うしてない。これはあらゆる点において軟弱外交のそしりを受けておりますが、こういった外地における日本人の問題についても、外務当局は何らやるべきことをやってないという一つの例になります。事実向うからいろいろ手紙によりまして聞くところによりますと、日本の領事館というものは実に冷淡きわまる態度であって、自分たち日本人自身に対しても何ら保護措置を講じていない、めんどうを見てくれないということをどの手紙も言って参っております。こういうような領事館はむしろ必要がない、役に立たない領事館ならば、置いておく必要がないと思うのであります。こういう意味合いにおきまして、外務大臣はこの現状を調査されました上に、出先機関の事務の内容につきましてももっと御検討いただきまして、こういう日本人の保護に当られることを希望いたします。  それとあわせまして移住局長に、この南米移民の中で花嫁のこの問題を特に調査されましてその統計を資料として御提出いただくようお願いいたします。
  119. 矢口麓蔵

    ○矢口政府委員 御答弁申し上げます。花嫁移民を周旋する人があるやのお話ですが、不幸にして私たちはそういう周旋業者みたいなものがあることを存じません。今日移住の方法には二色ございまして、一つは政府の下に海外協会連合会というものがございまして、各地方に海外協会というものがございますが、そこで募集しまして送り出す。それには条件がございまして、まず体力の強健であること、その他思想が堅実であること、それからいわゆる浮浪者でない程度の堅実なる生活を悩むに足るところの財産上の力のあること等々ございまして、単独の女性を送り出すことはできない仕組みになっております。おそらくそのカテゴリーにおいて行った人はないと思います。  もう一つの方法は、向うの呼び寄せ等によって行く場合がございます。親戚とか何かが向うに行っておりまして、自分のところの農場で使用するために——これはコロノと普通称しておりますが、そういったものを呼び寄せる場合もあるのであります。おそらくあなたのおっしゃいますところの花嫁移民といいますのは、親戚呼び寄せか、あるいは近親呼び寄せの範疇に入るべき人たちだと思います。これにつきましては直接の交渉をやり、ないしはその中に入って何がしのあっせんをする仲人みたいな人があるかもしれませんが、これはわれわれの目にとまらないところであります。そういう花嫁的な人の統計をとって報告しろというお話でありますが、できるだけ尽力いたしますけれども、どの程度のものが集まるかどうかわかりませんけれども、できるだけの努力はいたしましょう。それから憲法上移住の渡航は認められております。一定の条件を満たした者の渡航を差しとめることは——移民の問題とは別でありますが、できない立場にあることも御了解願いたいと思います。それからこういう事情を知らないことをけしからぬとおっしゃいますけれども、これは新聞報道で出ただけでありまして、公報がまだ来ておらないと申し上げたのであります。ですから先ほど申し上げました通りさっそく現地の大公使館に指令を出しまして、できるだけ早くそういう事実を報告するようにということは先ほど申し上げた通りでございます。
  120. 重光葵

    重光国務大臣 このことで今あなたの持っておられる情報ほんとうであれば、まことにそれは遺憾なことでございます。そういうことのないように努力するということは当然のことでございます。また努力するために領事館などがあるわけであります。だから領事館等の外交機関が役に立たない、これはどういう理論か私にはわかりません。私は皆さん方の十分御趣旨に沿うように努力いたしており、またいたしておるつもりであることを申し上げます。それについてはまた反対情報もずいぶんあるわけでありますし、御了承願いたいと思います。
  121. 須磨彌吉郎

    ○須磨委員長代理 並木芳雄君。
  122. 並木芳雄

    ○並木委員 大臣にお伺いしたいのは、中共との間の貿易あるいは文化の交流で、最近中共の政府が過去二回にわたって日本政府に呼びかけをしたけれども、日本政府からは何もこれに対して反応を示しておらないというようなことが報道されております。もとより中共との間の国交はまだ正常に復しておりませんから、私どもとしてはどういう意味で中共政府がそういう発表をしたのかどうかわかりません。そこでお伺いしたいのですが、今7まで何らかのルートで中共の政府からそういう申し入れ政府に二回にわたってあったのでございますかどうか。それからもし向うほんとうにまじめに熱望するのだとしたら、三回目の今日においては外務大臣としてこれを推し進めていく御計画であるかどうか。最近の米英会談においても、中共貿易というものはやはりたがをゆるめて促進させていかなければならないだろうというようなことを申し合せております。また日本としても貿易は伸ばしていかなければいけないと思うのですが、その点について国民の間でも、日本政府はどうしてそういうものをほったらかしておくのだろうという声も聞えますので、この際明らかにしていただきたいと思います。
  123. 重光葵

    重光国務大臣 米英会談において中共貿易をゆるめたらよかろうというような結論になったというお話がありましたが、そうはなっていないようでございます。反対に中共貿易のコントロールはこれを継続すべきものである。しかしながら新しい状況において、その管理する程度についてときどき、ペリオディカルというのですから、定期的にこれを検討するということはいいだろう、こう書いてあります。でありますから原則としてそういう制限は継続しなければならぬということが、向うの話し合いでできたものと見なければなりません。  それから今中共からそういう呼びかけがあった、最近周恩来首相向うの党大会でございましたか、報告した中にあります。国交の正常化を日本に呼びかけた、これが三度目である、こういうことでございました。これが正規の外交機関のルートで来たことはございません。ただ向う政府の人々がそういうことを公開の席で述べるとか、もしくは声明をするということはあったようでございました。しかしそれに応じてすぐこちらが外交上の手段をとるというのは少し行き過ぎであろうと思っております。特に国交の正常化ということはもう当分はできない、世界の情勢が変化するので、しばらく待たなければとても促進はできないという意思表示は、こちらもたびたびいたしているのでありますから、それが返答になっていると考えております。
  124. 並木芳雄

    ○並木委員 それでは次に日韓会談の問題ですが、先ほど大村収容所との抑留者の交換のお話が出ましたが、あれは日韓会談の再開の第一歩であるというふうに理解してよろしいでしょうかどうか。先般韓国の方から久保田発言の取消し、財産請求権の放棄というようなものを日本が認めるならば、再び会談を開き、通商を開いてもよろしいというような申し出が重ねてありましたけれども、これについては政府としてはどういう態度で臨むおつもりでございますか、一時非常に問題になった李承晩ラインの砲撃警告事件、これもどうやら大きな事故が起らずに済んでよかったと思っているのでありますけれども、それらの点と関連して政府としては今後円滑に日韓会談が再開されるめどを持っておられるかどうか、この辺の事情について言明していただきたいと思います。
  125. 重光葵

    重光国務大臣 日韓の国交を樹立するためにあらゆる努力をしなければならぬということは、何度も繰り返し方針として申し上げている通りであります。不幸にしていまだにまだ実を結びません。そこでこれはどうしても両方のいわば空気をよくすることが先決問題でございます。そこへ持ってきて今砲撃問題などがどんどん起ってきたら、これは大へんなことになります。それに対してはこちらが抗議を申し込む、抗議は抗議として実際的に撃ち合いなどの起らないような態度をとらなければならぬ、忍耐をしてこの事態の収拾に当らなければいかぬ、こう思って処理したことは御承知通りであります。さようにして砲撃問題は、ともかくも今日解決とまではいきませんまでも、これはしのいで参りました。そうして空気はその点において害せられることのないところまで来ております。さらに進んで一番解決を私どもがあせっている問題は、日本の漁夫を帰してもらいたい。これができれば、こちらもあらゆる譲歩をしなければならぬと思っておりますが、今大村収容所の問題については先ほどからのお話通りでございます。そこでまだこの問題は解決をいたしませんが、これらを解決することが、害せられている空気をよくすることになりますから、一つの前進になります。さような方法で実際的に進めていって、そうして今度は大きな問題は日韓の関係の根本問題になります。それには財産権の問題もあります、それからまた李承晩ラインの問題もあります。これらの問題について解決するように進めていきたい、かように思っておるのであります。そういう問題については、日韓の間に、東京の韓国の代表者と連絡をして、十分この糸口はつけつつあるつもりでございますが、まだ交渉を一々具体的に取り上げて先に進むという程度には参っておりません。そこで私が外交演説にも申した通りに、これは米国が最も利害関係を持っておりますから、米国にも十分その解決方法等について考えてもらいたいということで接触をしておるということをつけ加えておきます。
  126. 並木芳雄

    ○並木委員 次にフィリピンとの賠償問題についてお伺いしておきたいと思いますが、最近話が進捗しておる模様でございます。私はフィリピンにも行ったことがございますし、この問題はやはり拙速主義でいいと思うのです。少しは日本側で満足がいかなくても、すみやかに成立さして、そうして友好関係を結び、貿易を促進させる。また沈船の引き揚げなんかももう実施に移っておるのでございますから、そういう点においてお互いに得るところがあった方がいいと思いますので、この際大臣にお伺いしたいのですが、早急成立の運びになっておりますかどうか。そうして一説によれば全権を派遣するというところまでも話が進んでおるやに聞いておりますが、日比賠償解決の段階を御説明願いたい。
  127. 重光葵

    重光国務大臣 私もこの問題はなるべくすみやかに解決したいと考え、また政府もその方針であることは繰り返し申し上げた通りであります。今日まだ交渉が全部妥結をしておりません。交渉を進めております。妥結のすみやかならんことを希望しておるという程度でございます。私は決してこれが重大な故障にぶつかろうとは思っておりませんから、妥結次第御報告いたすことにいたします。
  128. 並木芳雄

    ○並木委員 最後に日ソ交渉について一言質問いたしたいと思います。それは端的に申しますと、私前から大臣にお尋ねしておきたいと思っておったことは、日ソ交渉は、こういう言葉を使うことは適切かどうか知りませんが、拙速主義でいくのか、それとも巧遅主義でいくのか、こういう言葉があるかどうか知りませんけれども、要するに完全を期して、おくれてもいいのか、それとも多少は不満足でもただいまの日比賠償と同じように、これはすみやかに交渉を成立せしむる方がいいのか、そういう点について大臣のはっきりしたお気持を一度聞きたかったのでありますが、もしそれが披瀝されますならば幸いだと思います。そういうお答えを聞いてから、いわゆる例の終結宣言の問題なんかを解決していくと、割に解決の目途ができるのじゃないかと思うのです。いろいろ戦争終結宣の効力——先ほどもちょっとお話が出ましたが、効力などについても説があるようでございます。この戦争終結宣をされてしまうと、現在の占拠しておる領土というものを現状のまま日本が認めるというような説をする者もありますし、また戦争終結宣言が行われれば、あと大使の交換、外交官の交換というものもできるのだというような説をなす学者もありますので、そういう点からいろいろ国民の間にも反響が出ると思います。従いまして私はこの際外務大臣のお考えになっておる戦争終結宣言の効力というものについてはっきりお示しを願いたい。ことに平和条約を結ぼうとして、一方において交渉が進められておる段階において、非公式にもせよ、ああいう問題が起るということはどういうことなのか。戦争終結宣言がなされるということは、平和条約締結の可能性が薄らいできた場合に行われるものなのかどうか。それとも平和条約はそのまま締結される可能性があるにしても、一応その段階としてもこういうことが行われ得るものであるかどうかなどについては、はっきりした概念がなかなかつかめないのであります。この際日ソ交渉の見通しと、それに対して大臣の臨まれる態度、拙速でいくのか巧遅でいくのか、もしなかなか困難のような場合に戦争終結宣言が出されるような場合に対して、政府としてはどういう態度で臨まれるかなどについて、でき得る範囲内でお答え願えればけっこうだと思います。
  129. 重光葵

    重光国務大臣 それらの点についてはもうたびたび私はお答えいたしておるのでありますから、ごく簡潔に申し上げます。  戦争終結宣言が一方的になされる場合はどういうことであるかということは、これは先ほど申し上げた通りでございます。それからわれわれの考えておることは、日ソ交渉はロンドンの両全権の間における交渉によってこれを進めていきたい、こういうことでございます。両全権の交渉は、これまた私は外交演説において明確に申し上げておる通り、平和条約を締結して国交を回復したい戦争を終結したい、こういうことであります。従って戦争終結の問題もロンドンで取り上げられる問題であるのであります。さようにして交渉を進めていきたい。その交渉はなるべくすみやかにこれはわが方の目的を達して終結になることを希望しておる次第でございます。
  130. 須磨彌吉郎

    ○須磨委員長代理 次会は公報をもってお知らせいたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時五十八分散会