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1956-04-18 第24回国会 衆議院 科学技術振興対策特別委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年四月十八日(水曜日)     午後一時四十二分開議  出席委員    委員長 有田 喜一君    理事 長谷川四郎君 理事 南  好雄君    理事 岡  良一君 理事 志村 茂治君       赤澤 正道君    木崎 茂男君       小平 久雄君    須磨彌吉郎君       橋本 龍伍君    粟山  博君       山口 好一君    岡本 隆一君       田中 武夫君    原   茂君  出席政府委員         文部事務官         (大学学術局         長)      稻田 清助君  委員外出席者         参  考  人         (日本学術会議         南極特別委員長         東京大学教授) 茅  誠司君         参  考  人         (南極地域観測         隊長東京大学教         授)      永田  武君         参  考  人         (日木学術会議         国際地球観測年         研究連絡委員長         京都大学教授) 長谷川万吉君     ————————————— 四月十八日  委員稻葉修辞任につき、その補欠として粟山  博君が議長指名委員に選任された。 同日  委員粟山博辞任につき、その補欠として稻葉  修が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  科学技術振興対策に関する件(南極地域観測等  に関する問題)     —————————————
  2. 有田喜一

    有田委員長 これより会議を開きます。  本日は、南極探検等に関する問題について、参考人より意見を聴取いたしたいと存じます。  本日御出席参考人は、日本学術会議南極特別委員長東京大学教授理学博士茅誠司君、南極地域観測隊長東京大学教授理学博士永田武君、日本学術会議州際地球観測年研究連絡委員長京都大学教授理学博士長谷川万吉君であります。  この際参考人各位に一言ごあいさつ申し上げます。本日は、御多用中にもかかわりませず、本委員会のためにわざわざ御出席下さいましてありがとうございました。本特別委員会は、さきの国会に引き続きまして、院議をもって科学技術振興対策の樹立のため設置されたものでありまして、設置以来、原子力関係の諸法案並びに科学技術庁設置法案を審議し、これを議了いたしたのでありまするが、さらに科学技術振興立場より、南極探検の問題につきましても、それぞれのお立場より忌憚ない御意見をお述べいただけば、幸甚に存ずる次第でございます。まず長谷川参考人より御意見開陳をお願いいたし、続いて茅参考人永田参考人の順で、それぞれの御意見の御開陳をお願いいたしました上で、委員よりの質疑があればこれを許したいと存じますから、さよう御了承願います。  それでは、まず長谷川参考人よりお願いいたします。長谷川参考人
  3. 長谷川万吉

    長谷川参考人 南極観測は、今回の国際地球観測年の一環として行われるのでありますが、私は、この国際地球観測年全体に対する責任者といたしまして、そのお話から申し上げたいと思います。  国際地球観測年と申しますのは、英語で言うとインターナショナルジオフィジカル・イヤー、こういう名前になるのでありますが、こういうことをどうして行う必要があるかと申しますと、これは地球を取り巻く自然現象のうち、生物的な現象は別といたしまして、そのほかの現象で非常に大きな現象、つまり地球全体に影響を及ぼすような大きな現象というものは、一ヵ所で観測したのでは、その実態をつかむことができないからして、地球全体にわたって観測年を設けてこれを観測しよう、こういう趣旨でありまして、これは今に始まったことではない。今から二十四年ばかり前に第二回の極年というものがありました。実はそれから五十年前、つまり今から七十五年ばかり前に、第一回目の極年というのがあったのであります。この趣旨は今のジオフィジカル・イヤーと同様なのでありますが、特にここであと南極の話がありますが、自然現象の多くのものは、北極及び南極という極地に特異な状態を示すばかりでなく、その極地における特異な現象が直ちに地球全面現象に非常に大きな影響を及ぼす、申しますならば、扇のかなめのような意味があるのであります。従って、この極をよく測ろうじゃないかというので、第一回、二回とも極年と申しました。ところが、こういう現象は何も極ばかりでなく、世界全体で観測しなければならないという意味で、今回は極年という言葉を避けて、地球物理年ジオフィジカル・イヤーという名前が採用されたのであります。これの主眼とするところは、結局われわれ地球上のいろいろの活動の源でありますところの太陽から発する光、その他の輻射は、地球上の人類生存条件であります。その輻射が、地球が受け入れる際、第一に起る第一義的な自然現象でありまして、申しますならば、自然現象のおおもとと申すべきものであります。非常にわれわれから遠いようにちょっと考えられがちでありますけれども、そうでなくて、これは非常に身近な現象でありまして、この条件というものが少しでも変るということは、もう人類生存条件影響を及ぼすのであります。そういう意味において、われわれの非常に身近な現象であると同時に、自然科学といたしましては、これは自然現象のおおもと研究する大事なことなのであります。今回の地球観測年発議は、実は今から四年ばかり前、一九五二年に、ユネスコの外郭団体であるところの国際学術会議連盟と申しますか、インターナショナル・カウンシル・オブ・サイエンティフィック・ユニオンズ、そういう一つのスペシャル・コミッティにおいて議論が起ったのでありますが、これとほとんど前後して、いろいろの自然現象関係のあるサイエンティフィック・ユニオンズがほとんど同時に発議をしたのであります。そうして日本はその第一回の相談のときに出まして、これに参加を表明したのでありまして、その趣味では諸外国に率先している方であります。その際に、これは学術会議会長出席して参加したのでありますが、そこできまりまして、ICSUの中に特別委員会というものができたのであります。それが今、国際地球観測年事業の中心になっておるわけであります。そこで、日本ではこれに応じまして、学術会議の中に国際地球観測年研究連絡委員会というものができました。これは、実を申しますと、いろいろの研究連絡委員会のまた委員会であって、つまりコミッティでなく、コミッションというべき性格のものでございます。これが単に研究連絡だけでなしに、いろいろ計画立案ということに当ってきたのであります。それで、二十九年の五月に、学術会議におきまして、この国際地球観測年をぜひ実施したいということを政府勧告したのでありますが、これが幸いに受け入れられまして、実施になっておるのであります。実は学術会議立場としては、これを推進するということは、結局科学行政協議会を通ずることになるのでありますが、科学行政協議会は、この問題に関する限り、従来も、地球物理業務に関して、統制あるいは政府に建議するというような重要な任務を持っておる文部省内にある測地学審議会推進をするのに適当であるということを決定いたしまして、今日では測地学審議会が実際においての行政方面に接触して参っておるのであります。  それで、われわれは地球観測年として、日本においてどういう計画を立てるべきかということを議論してきたのでありますが、国内においては、初めは大体七種目でありましたが、後に加わって九種の観測をやることになりました。それは、気象地磁気電離層太陽——太陽つまり表面現象でありますが、それから宇宙線夜光経緯度でありましたが、最近海洋地震それから測地、こういう観測部門がつけ加わって、全部で十項目行うことになっております。これを実施する機関の数は十八機関でありまして、これを実施する実際の場所を全部で四十九ヵ所に分けて、国内では行うことになっておるのであります。このほかに、重要なものが二つあります。それは、前に申し上げましたように、この現象に関する限り、極の方が非常に重要性があるのでありまして、今まで、第一回、第二回の極年においては、おもに北極地方に主力を注いでおりまして、南極についてはほとんどまだ継続した観測というものがない状態でありますからして、今回は特に南極をおもにしょうじやないかということを勧告されておるのであります。地域としては南極地方、それから赤道地方というのは、これはちょっと不思議な現象でありますけれども、今まで観測地点があまりないのであります。これはやればすぐできることかと思いますが、割に陸地が少いために、特に努力しなければ観測がやれない。それで、赤道及び南極ということが非常に強調されてきておるのであります。それで、日本は、初めに赤道地方観測隊を派遣する準備をしたのでありますが、アメリカとの話し合いで、これはアメリカが受け持つということになりまして、おもに南極の方へ力を注ぐということになったわけであります。もう一つロケット観測、これは人間が今まで——今までといっても、四、五年前までですが、人間が実際空の上層をどこまで観測ができたかと申しますと、人間が上ったのは二十二キロぐらいしか上っていません。これは二十二キロでも大した高さではありますが、それから観測気球が三十キロを少し越えておるのでありまして、それ以上の大空の状態というものは、つまり電離層とかオゾン層とか、——電離層は幾階段もありますが、そういったようなところ全部を含めての実際の観測はなくて、われわれはただ理論的に、下の条件から上の方を想像するというような状態でありました。それを、直接ロケット観測するということが始まったのが、今から四、五年前でありまして、現在では、それはおもにアメリカがやっております。ソ連状態はよくわかりませんが、アメリカ、それから英国でもそういうことをやろうとしておる。これが始まりますと、もう上層研究というものはどんな理論を立てても、上層観測を一回やってみて、違っておれば文句が言えないというような状態になります。上層観測は非常に大事なことでありまして、これから先、ロケット観測というものがおもになるということがわかってくるのでありまして、日本でも、そういうことができるならばやりたいという考えであります。これはちょうど東大の生産技術研究所で超音速飛行研究をやっておる。これがほとんどロケット観測そのまま、全く並行した操作技術でありまして、それでわれわれはそういう研究国際地球観測年観測に間に合うようにやってほしいということを希望しておる次第であります。今そういう方向に向って進みつつあるところであります。  今申しました高層気象とか地磁気線電離層太陽宇宙線、こういったものが一体われわれとどう関係するのかというようなことについて、詳しいことをここで申し上げるひまがありませんけれども、たとえば今、現代文化特徴を二つあげろといいますならば、われわれは航空電波通信、こういうことが非常に大きな特徴だと思うのであります。ところが、この電波通信にいたしましても、これは結局電離層を媒介して可能になっておるのでありまして、電離層の方に何らか異変が起る場合には、電波通信は、部分的にあるいは地球の大部分に不可能なような状態を来たす。今日でもまだそういう状態をときどき来たすのであります。今日では、それについてあらかじめ備えるということの必要上、これをあらかじめ予報することになっておりまして、その予報の的中率というものは、大体八〇%近くになっておるのであります。しかし、さらに的確に、しかもいつからいつまでという時間をもっと正確にしようとするためには、電離層研究というものはまだ全くほど遠い状態にあるのでありまして、この際に、地球観測年によって、この電離層研究というものが非常な画期的な進歩を遂げることをわれわれは期待しておる次第であります。なお、航空というようなことにつきましても、たとえば遠距離の航空はだんだん上層を通るようになってきておりますが、あるいはアメリカへ行くのには、ジェット気流に乗っていくということが非常に有利であるということはわかっておりますが、そういうジェット気流のようなものが世界中どういうふうに通っているか、あるいはジェット気流で、ほかの部分航空気流というものは一体どういう動きをしておるのであるか、そういうことは航空関係があるばかりでなく、日本として、あるいは世界中として、今非常に危険な、大仕掛な実験が世界中で行われつつあり、あるいは行われようとするような状態におきまして、世界中の人がこれを知るということは、一日もゆるがせにすることのできない急務であります。こういう問題についても、われわれはこの地球観測年が実際問題とどんなに結びついているかということを申し上げることができると思います。  なお、そのほかのものについて申し上げる時間がありません。私の許された時間は大体これで過ぎたのでありますから、なおあとで御質問にお答えしたいと思います。
  4. 有田喜一

    有田委員長 それでは、茅参考人に次いでお願いいたしたいと思います。茅参考人
  5. 茅誠司

    茅参考人 ただいま長谷川参考人から、地球観測年というものはどういう意味のものであるかという点について御説明がございました。その際、述べられましたように、地球上のいろいろの現象かなめとなる点は、北極もしくは南極現象であるというお話がございましたが、まことにその通りであり渋して、すべての現象は、南極北極等におきまして非常に著しく現われます。たとえて申しますと、地球磁気でありますが、磁気南極北極は、地球回転軸とは幾分違っておりますが、大体同じところに、近くにあるわけであります。その近辺におきましては、磁気変化等日本あたりにおきます変化よりも非常に大きな変化をする。しかも、その変化の原因が、太陽に現われますところの黒点といったようなものと関連して現われますので、そういう変化をとらえますのには、北極もしくは南極において観測するのが非常に望ましいのであります。地球観測年は、来年の七月から再来年、一九五八年の十二月まで行われることになっておりますが、その期間におきまして、北極はすでに十分いろいろの研究がされておりますので、今回は未知の世界であるところの南極において地球物理学的な観測をしようということが企画されておりまして、先ほどお話にありました国際学術連合ICSUと申しますかインター・ナショナル・カウンシル・オブサイェンティフィック・ユニオンズ、この中に南極観測のために特別の委員会が設けられておって、いろいろと企画されたのであります。現在までに南極地域における地球物理学的な観測協力しようという国は、アルゼンチン、オーストラリア、ベルギー、チリー、イギリス、フランス、ニュージーランド、ノルウェー、ソ連南ア連邦、スペイン、アメリカ、この十二ヵ国でございます。日本といたしましては、最初のうちは、この計画に参画いたしますのは非常に困難である、たとえば砕氷船といったようなものを考えましても、現在の日本におきましては、そのまますぐに使える砕氷船はないというような点から、一部関係者は幾分あきらめておったのであります。けれども、よく考えてみますと、これは日本が戦争後国際的な協力をする第一歩ではないか、地球観測年にはもちろん全体として協力するのでありますけれども、南極全体の気象地磁気電離層、その他地球物理学的な事柄を協力して観測するということは相当の困難が伴っておりますので、これに協力することはまことに意義が深いという点を認めたのであります。できるならば、われわれもぜひこの協力事業に参画したい。考えてみますのに、これからの学術と申しますのは、ただ一つの国の努力のみによって学術が完成されるというようなことは少くなって参りました。たとえて申しますと、原子力等におきましても、一つの国がやったのでは、なかなか進歩が思わしくない。従って、昨年国際連合によって企てられましたようなジュネーブ会議を開きまして、国際協力を進めていく。ヨーロッパ等におきましては、ヨーロッパ中で協力して、その原子力のもとになりますところの原子核の研究所を作って、協力してやっていくという時勢になって参りました。従って、われわれはその第一歩でありますところの南極地域における観測業務をぜひ協力してやっていきたいという念願を持ったのであります。昨年になりまして、九月に、ブラッセルで、国際学術連合会議の中の国際地球観測年特別委員会というものが開かれる予定になっておりましたので、ぜひそのときまでにこの会議日本として何か発言できるようにしたいものだという考え方に立ちまして、学術会議の中にありますところの国際地球観測年研究連絡委員会の中に一つ分科を設けまして、果して可能でありゃいなやということを検討していったのであります。その結果、問題は船という点が非常に大きな問題でありましたけれども、当時の政府の方々の間にいろいろと奔走いたしまして、その間の了解を得るに至りましたので、このブラッセル会議出席いたしました代表に、日本協力の決意を披瀝するようにということを申したのであります。その結果、日本代表から——これはあと永田参考人からそのお話があると思いますが、これをその委員会に提出いたしましたところ、委員会としましては、プリンス・ハラルド・コーストというところで観測してほしいという勧告が来たのであります。この場所は、南極全体の地球物理学的な観測網を広げますのに、十五カ所の地点が選ばれておりましたその中の一つでありまして、まだどこの田もそこに行って観測するということが申し込まれておらなかった所であります。日本から参りますと、ちょうど反対側になりますけれども、そこがあいているからという勧告がありましたので、それを日本に持って帰りまして、日本でも検討しました末、これを受けるということに決議したのであります。そうなりまして、学術会議といたしましては、これを審議会にかけて相談しました結果、この南極地域における観測を実行いたしますのには、学術会議だけの力ではとうていできない、ぜひとも政府においてもっと強力な推進実施機関を置いてやっていただかなければ、できそうもないということになりましたので、科学技術行政協議会を通じて政府勧告いたしました結果、文部省南極地域観測統合推進本部というものを設けることになり、昨年それが設置されまして、木部長文部大臣がなっていただくことになりました。副木部長には学術会議会長並びに内閣の官房副長官並びに関係ある省の事務次官をもってこれに充て、その他の委員は、各省の関係部局の局長をもって充てることにしたのであります。そのようにして進んで参りますと同時に、また一面におきましては、観測の問題、設営の問題、その他の企画を立てる上におきまして、日本学術会議の中に南極特別委員会という名前のものを作りまして、そこで企画をして参りました。私はその委員長をしておるのであります。観測方面は、全部で気象地磁気、極光及び夜光電離層宇宙線地震、地理、地質、海洋、これだけでございます。これらはそれぞれ分科会ができておりまして、それぞれの専門家が集まりまして、どういう観測をするかということについて、目下準備をしております。また設営の面におきましては、寒地——非常に寒い土地における準備をするわけであります。これは山岳家等の経験が必要でありますので、大日本山岳会等におはかりいたしまして、適当な方を副隊長に推薦していただきました。さらに、たとえば飛行機を持っていかなければなりませんので、航空という問題については航空学会、運輸という問題につきましては機械学会建築という問題については建築学会通信につきましてはそれぞれの適当な機関にお願いをいたしまして、専門家に集まっていただいて、今企画しておる最中であります。  そうして本年の十一月に船を出しまして、プリンス・ハラルド・コーストに十二月に到着しまして、できますならば、一月のうちに適当な接岸地点を発見して、そこで観測資材を揚陸して、来年行います木観測に備えるための基地を設定して、そして帰ってくる。予備観測のためにことし船を出す。そうして来年また十一月に船を出しまして、今度は再来年上陸いたしまして、そこへ三十名近くの隊員を一年間残して船は帰って参ります。そして一年たってまた十一月に船を出しまして、それを迎えに行って帰ってくる。そういう企画のもとに準備をいろいろと進めております。船といたしましては、宗谷という耐氷船——砕氷船ではありません、二千二百トン近くの船がございまして、艦齢は十一五年ほどの古いものでありますけれども、これを修理することによって砕氷船にかえることができるという考えのもとに企画いたしまして、目下これを砕氷船に改造中でございます。十月までにはでき上る予定で進行しております。その他ヘリコプターを持っていく問題とか、飛行機を持っていく問題、場合によってはいま一隻船が要るのではないかというような議論も起っておりますが、これはまだ確定された問題ではありません。そういう議論につきましても、これまた実際の問題として検討していく予定になっております。何分にも事業が大きいので、なかなか進まないのでありますが、御承知の通りに、南極地域観測のために政府に向って要求いたしました予算は、四月一日以降でないと使えませんので実際の問題としてまだ準備が思うにまかせないのであります。しかしその責任の地位にある者は、鋭意観測に間に合うように努力しておる最中であります。  それから、一言申し上げたいと思いますのは、見聞その他からのこのことに対する協力の問題でございますが、南極地域における観測につきましては、新聞その他にいろいろと伝えられまして、政府予算のみをもってしてはとうていできそうもないというので、いろいろと寄付金を出したいという希望もあり、すでにある新聞等においては、寄付金の募集をしておるのであります。しかし、この観測事業はどこまでも政府事業でありますので、見聞寄付に持たないで、必要である部分だけは、必ず国家予算をもって行うという原理のもとに企画されております。しかし、国家予算のみをもってしては行い得ないものも多々ございます。いろいろの問題で、準備の段階におきましては、国家予算をもってしてはとうていできないような問題もございますし、またものによりましては、たとえば娯楽設備その他いろいろの点におきましては、民間協力を得べき問題も相当あるのでありまして、そういう点は喜んで民間協力に持ちたい。そうして、その民間からの寄付によって得ました金は、面接に南極観測に使った、南極観測のこういう部分に使ったというような点にぜひ使わしていただきたいものと考えております。そういうような考えに立って、目下民間からの協力を仰ぐことも企画中でありまして、まだでき上っておりませんけれども、いずれ近いうちに発足することと思います。  それから、言葉の問題でございますが、南極探検という言葉新聞等にも使われており、先ほどもそういう言葉が使われておりまして、これは英語で申しますサイエンティフィック・エクスペディションという言葉の訳といたしますと、それでいいかと思いますけれども、やはり探検と申しますと、幾分冒険的なところが含まれ過ぎまして、われわれとしては好ましくない言葉でございます。できれば、正確に、南極地域観測というふうに呼んでいただきたいのでありますが、あまりこれではぴんとこないために、探検という言葉が使われております。その点皆さんにもよく御了解いただきたいと思います。  あと準備設営その他観測等につきましてのこまかい点は、永田参考人から述べることにさせていただきたいと存じます。
  6. 有田喜一

    有田委員長 それでは、最後に永田参考人からお願いいたします。
  7. 永田武

    永田参考人 ただいま茅先生から一般的なお話がございましたので、私は南極地域観測の現在の計画及びただいままで準備が進行しておりますことにつきまして、概略を具体的に申し上げさせていただきたいと存じます。  委員長、少し地図を使いますのでちょっとそっちへ行ってもようございますか。
  8. 有田喜一

    有田委員長 どうぞ。
  9. 永田武

    永田参考人 ただいまお話のございましたように、日本南極地域観測隊が受け持ちます場所は、プリンス・ハラルド海岸付近ということになっております。これはかなり広い範囲でございまして、場所をお示しいたしますが、これが南極の地図でございます。アメリカの空軍で作った地図でございますが、一番信頼できるというわけであります。と申しますことは、実はこの海洋線すらもはっきりわかっておらないのでありまして、違った地図をごらんになりますと、違った海岸線が書いてございます。その中で最も確からしい地図でございます。  それで、南北がわかりにくうございますが、これがアメリカのしっぽでございまして、これがニュージーランド、これがオーストラリア、これがアフリカのしっぽでございます。それで日本の参りますプリンス・ハラルド海洋と申しますのは、ちょうどここにございますが、元来の国際的な要望と申しますのは、ノルウエーがちょうど経度零度、つまりイギリスの方に向いた方向に基地を設けることがきまっておりまして、一昨年参っております。それから豪州がここで数年来やっておりますので、ちょうどこれとこれとの間に設けることが望ましいというのが、国際的な要望でございます。このプリンス・ハラルドと申しますのは、現在のノルウエーの皇太子さんの名前で、生きておられる方でありますが、たまたまその名前をつけております。その名前からおわかりになりますように、ここからここまでは、ちょうどノルウエーが領土権を主張している場所でございます。領土ではないんだそうでございますが、この辺をノルウエーの人たちが船で参ったり、飛行機で飛んだりいたしまして、まだ上陸いたしておりませんが、そういうことで名前をつけております。それでプリンス・ハラルドという名前がございます。遠くからお見えにくいと思うのでありますが、ここに丸が書いてございますが、これは各国の観測隊予定している、あるいはすでに建設している基地でございます。ただいままでに南極大陸付近の島まで加えますと十二カ国ございますが、大陸続きにおりますのは十カ国で、それぞれ観測隊を送ることになっております。ただしアメリカとかロシヤ、つまりソ連といったような大きな国は、幾つもの観測地を持っておりますので、観測地の数はもっとふえて、二十を越しております。ごらんになりますように、この大陸全体につきましては、南極大陸を科学的に開発しようという目的のために、最も都合のいいように配置してあるわけでございます。  概略申し上げますと、これが有名なロス湾でございまして、白瀬中尉が旗を立てたのがここでございますが、この辺はアメリカとニュージランドとの合併隊が参ります。フランス基地がここにございます。ここにアメリカが参りまして、ソ連はここと、ここへ置く予定でございます。ここに豪州が二ヵ所、それから日本がここにございまして、ノルウエーがここにございます。イギリスがここにございまして、アルゼンチンがここにございます。ここにアメリカがございまして、ここにイギリス、アルゼンチン、チリーといったようなものが錯綜いたしております。国際地球観測年の一部といたしまして南極観測をやるのでございますから、観測及び研究と申しますか、南極大陸の科学的開発に最も都合のいいように、純学術的に観測するのでございます。実はこの辺が不当に込み合っておりますのは、御承知のように、ここのところは領土の問題がございまして、アルゼンチンとチリーとイギリスと申しますか、ユナイテッド・キングダムが争っておりますので、場所場所についてこういう問題が入っております。日本は、つまり大体この辺に適当な基地を見つけて、そこに観測所を設けるというこが、昨年のブラッセル国際地球観測年会議の中に置かれました第二回南極会議の決議として出たのでございます。  そこで日本といたしましては、いかなる観測及び研究及び調査をやるかという問題でございますが、ただいまの計画では、その内容は、国際協力でやります内容のほとんど全部を含んでおります。ほとんど全部ですが、ただ一つ抜けておりますことは、アメリカ合衆国は南極でもロケットを上げまして、上層観測をいたしますが、日本はそれはやらない、あるいはできないことがございます。それ以外のものは全部計画をいたしております。と申しますのは、日本は一ヵ所でございまして、広い範囲ではありませんが、比較的重要な点に基地を設けまして、そこで十分な観測をやろうという建前から、計画を立てておるのでございます。  そこで観測をいたします対象でございますが、大まかに申しまして、二つに分けることができます。その一つは、先ほど来、長谷川先生からの国際地球観測年の意義及び目的についてのお話で、南極及び北極が非常に重要な場所である。地球全体にとって重要な場所であるというお話がございました。そういう意味での南極大陸の観測でございます。それは、たとえばわれわれに最も感じやすい気象の問題をとって参りますと、この南極大陸はこれだけの広さ、アメリカ本国の約一・八倍の広さがございます。そこが平均の温度が摂氏マイナス二十五度というくらいの寒いところで、冬はもっと寒くなりまして、マイナス六十度くらいになります。そのところにこれだけの大陸がありまして、ここに非常に冷たい空気がしょっちゅうたまっております。冷たい空気のたまりでございまして、これが外へ吹き出してきまして、いろいろ気象の異変を起すわけであります。北氷洋の方は海でございまして、まわりを大陸で囲んでおりますが、海でございますから、比較的暖かいメキシコ湾流が流れ込みまして、一極のヒーターを持っているようなものでございますが、南極大陸は、いかんせん、そういうものがございませんので、冷えほうだい冷えているというわけでございます。それでありますから、冷たい空気の発生地ということになります。海につきましても同様でございまして、ことにそれだけの広い範囲の氷がかぶさっておりまして、その氷がどんどん流れ出まして、このごろは、新聞その他でごらんになりますように、上から流れ出します氷が折れて外へ出てくるものでありますから、南極洋の氷山というものは、非常に平べったい、長い大きな、厚みの一定のものが出て参ります。そういう意味で、海の方にとりましても、気象の方にとりましても、この南極大陸というものは、冷たい気候の発生地になるわけでございます。その程度のことはわかっているようでございますが、本貫的にこの問題を究明するには、どうしてもここに書きました程度の気象観測所を置きまして、できるところでは海の観測もいたしまして、これだけのことを、つまり精密科学のワクの中で確かめる必要があるわけであります。  それから、もう一つは、先ほど来、電離層という古葉がございましたが、ここに赤線で書いてございますのがオーロラであります。極光が最もよく現われる地帯でございまして、極光帯と申します。これはわかっているじゃないかとおっしゃるかもしれませんが、かなり怪しいのでありまして、ここに書いてありますのは、アメリカの戦時研究で、われわれの仲間を動員いたしまして、捕鯨船その他の資料を集めて、アメリカがこちらの方の作戦のために作った材料から、私がここに書いてみたわけでございます。かなり確かでございますが、その程度であります。ここに最もたくさん極光が現われるわけでございます。と申しますことは、ちょうどこの大空の、先ほどお話のありました電離層その他地上から百キロ、二百キロ、三百キロというところに、一種の放電が起りまして、光が光るわけでございます。それと同時に、そこでもって電離層がおそろしく荒れるわけであります。電離層が荒れますと、大空で、先ほど来しばしば出ました地磁気あるいは宇宙線とかいったものが、大きな変動を起します。これは科学的にいいますと、一連のお話でございまして、われわれいろいろ想像やあるいはある程度の解釈があるわけでございますが、的確にわかっているわけでございません。そこで今度の地球観測年のときに、この最も地球に放電を起すところ、つまり太陽からきたものがここに入ってくるわけでございますが、地球には北と南の二つに窓がありまして、その窓にのみ太陽の放電が入ってきます。それは地球の磁石が大体南北の方に極があるからであります。その極に導かれまして、放電の起るのは南極北極だけであります。その影響日本の方にも、豪州の方にも及ぼしてくるわけでありまして、そのためには、どうしても太陽からそういった放電を起す窓の下へ参りまして、そこの最も適当な観測地点観測機械を配置いたしまして、それが今申しましたオーロラから宇宙線あるいは電離層地磁気といったものを総合的にしかも観測所が一致協力して、同じ態勢のもとにやるということが、地球全体に対する影響を知るのに、最も的確な方法であります。最も的確という意味はつまり精密科学のワクの中でそのことを理解しようというのですが、そのことができるようになりましたのは、最近における原子物理学の発達によりまして、極端に申しますと、今度の国際地球観測年は、今までかなり経験的にやっておりましたことを、原子物理学の応用が学者にできるようになったために、本質的に理解し、本賞的に予報できるようになったので、地球における自然現象を全部基礎的にやり直そうというのが、その基礎に流れている思想であります。この意味で、南極の問題も徹底的に精密科学のワクの中に入れようというわけであります。そういうわけでございますから、各国の観測所は、全部お互いにいかなる観測をし、いかなる機械を使うかということの協定をいたしております。たとえて申しますと、地球観測でありますと、各国の観測所は一種の地方の気象台もしくは測候所と申してもいいわけであります。その測候所から中央気象台に情報が集まります。それはソ連アメリカも含めまして、一つの臨時の世界国家みたいになるわけでございまして、一国に集めまして、そうして中央気象台におきまして南極大陸の天気図を作るわけであります。この周辺に、たとえばニュージーランドあるいは豪州あるいは南ア連邦といったようなところの測候所ができております。そしてこれから全部通信が参ります。この国際協力のワクの中で、だれが大将になるかという争いはございました。それはソ連アメリカであります。結局ただいまのところでは、アメリカソ連を言い負かしまして、アメリカ合衆国がその中央気象台を引き受けたのであります。そしてアメリカが中央気象台になってデータを集めまして、各国に逆に天気予報をやるわけであります。同様に、無線通信におきましても一つの中央無線局ができまして、中央、地方全部が無線通信をもってやるわけであります。たとえば一たん事が起ったら、それをどういうふうにやって助けるかというときには、中央部がございまして、たとえば豪州は飛行機が何台あって、それはどれだけの距離があるから助けられるということをやるわけであります。そういう機構で、今度の国際地球観測年におきますときには、そこに送りました各国の観測隊協力一致いたしまして、これが全部済みましたときには、国際協力の結果として、南極大陸についてこういうものを出す、少くも科学的開発につきましては、そういうものをとろうということをやっておるわけであります。各国はすでに、たとえばソ連は御承知のようにことし初めてここに行きましたが、アメリカはすでに二年やっております。豪州も二年やっております。ノルウエーはことしは参りませんでしたが、昨年参っております。ところが、日本はまだ参ったことがないのでありまして、白瀬中尉が行かれたのが唯一の経験でございます。そこで私どもの悩みと申しますか、苦心と申しますのはそこにあるわけでございます。そこで、これに関します情報は、国内はもちろん、国外からもなるべくたくさん集めているわけでございますが、これにかなり広い幅があるのでございます。かなり楽観的な情報と、それから悲観的な情報とございます。私も私の能力の及ぶ限りそういう資料を集めたのでございますが、それもかなり気楽な案と、それからかなりむずかしいという考え方があるわけでございます。そこで先ほど茅先生からお話がございましたように、ことし予備的な観測及び調査に参るわけでありますが、これはまだわれわれの行ったことのない付近で、どこが一体われわれの地区として最も適当であるかということを定めるわけであります。ごらんになりますように、日本の行くプリンス・ハラルド海岸というのは、オーロラの一番多い線の真下にございます。先ほど観測からは最も都合のいい場所でございまして、この辺ならばどこでもよろしいわけでございますが、このときにどこがいいかということを調べねばならない。  そこで私、先ほど目的のうちの一つだけ申し上げましたが、もう一つの目的を言うのを言い忘れましたので、もう一つつけ加えさせていただきます。それは、各国とも気象とか海洋とかあるいは極光、電離層、地理、地質、宇宙線といったような汎地球的な自然現象の非常に重要なかなめ以外に、南極自身、未知の部分が非常に多いのでございます。ここに書いてございます白いのは、雪がかぶさっておるというしるしでございませんので、少し色のついておりますのは飛行機で写真のとれる程度のことはわかっておるが、白いところは実はまだわかっていないというしるしでございます。この辺がわかっておりませんので、まずこの立地条件、たとえば地形の山がどこにあり、火山がどこにあり、地質はどうか、天然資源は何があるか、氷の厚さはどうか、どういう氷河があるかということを調べなければならないのであります。このことは、観測隊が参りますためにも必要でありますが、同時に南極大陸というアメリカの二倍近くもありますような膨大な大陸が、一部を除きまして、現在ほとんど未開発のままに放置されております。これを将来人類がこの狭い地球の中でいかに有効に開発していくかということにつきましても、その基本的な知識が必要であります。そういうことのためには、やはり各国の隊員もそれぞれ地形をはかり、測量して、地図を作る、あるいは地理学者が参りまして、その地形の解析をする、あるいは地質学者が参りまして、必要な鉱物、たとえば岩をとりましてそれの解析をする、あるいは氷河の専門家が参りまして、氷河の性質を調べる、そうしてこれが海に及ぼす影響を調べる、気候に及ぼす影響などを協力一致して調べる必要があるのであります。ところが、立地的にはここに火山がございます。地質いかんによっては地震も起る可能性もありますので、この辺の地質も調べるという必要がございます。そういった場所自身の立地的な条件を調べることも第二の目的でありまして、それもやはり全部結果を公開する、そうして世界全体の一つの中央的組織にする約束をしておりますので、各国がそれぞれできる範囲のところで調査をする。この地図はかなり怪しいものでありますが、かなり的確に南極大陸全体に関する地形あるいは地質あるいは様子がわかるわけであります。これが二番目の目的であります。  そこで今度参りますときには、情報が二つございますから、楽観的に見れば、かなりのことができるようでありますが、悲観的に見れば、かなりむずかいことがあるわけでございます。そこで、私がただいままで考えまして、統合本部その他で御了解願っておりますことは、今年の予備観測隊におきましては、先ほど来申し上げております本来の観測の中の一番目のこと、つまり気象とか極光とか、そういう問題につきましては、船上観測をおもにする。と申しますことは、われわれの乗船宗谷は一種の観測船になるわけであります。その上に電離層観測機があり、宇宙線観測機がある。それで一応十分ではないか、何となれば、とにかく船はここまで行きます。そういう問題に対しては、陸の上に上って、そこに機械を据えるということは、予備観測としては必ずしも必要でないと思います。そこで、われわれが宗谷の上に若干の観測点を設けて、船が一種の観測点を兼ねるということは可能であります。比較的容易に実現できることであります。しかも本来の目的を達するための予備調査といたしましては、この停泊地あるいはこの辺を航海中に観測を続けるならば、南極地域気象なりあるいは極光なりにつきまして、観測データをとり得るのであります。そこでわれわれの努力は何に向けられるかと申しますと、かなり広い幅の中で、本観測のときに最も上陸しやすい場所はどこであるか、そうしてどこに基地を設けることが最も都合がいいのであるかということを定めることであります。それに主力を注ごうじゃないか、それにはやはり地理、地質、氷、あるいは気象といったような人たちが参加しなければなりませんが、そうして基地を見つけることに努力するわけであります。もしうまく参りますと、最も悪い情報と最もいい情報とのまん中くらいが最も可能性があるといたしますと、ここに参りまして——ずっと続きになっております氷のたながございまして、そのたなの端に坂りつきましてから、ほんとうの陸地——岩があります陸地のところまで、大体五十キロくらいのところがまん中くらいであり得るわけであります。そこまでわれわれはできるだけの荷物を運ぶわけでありまして、そこに来年着きましたときに、少くともここに基地があるのだということがわかるだけの基地の建設をできるだけ試みよう、それには本観測に必要なほど大きなものでなくてもよいのでありますが、たとえば十坪か二十坪くらいのところにマストを立てて、日本隊の基地はここであるということをやってみる可能性は、ちょうど最悪と最善の場合の中間くらいにあるわけであります。最悪の場合を考えましても、もしヘリコプターが十分飛び得るならば、その場所にヘリコプターをおろしまして、そして基地を確かめることは少くとも可能であると考えております。  実際、最も工合のいい場合と最も都合の悪い場合の幅がかなり広いのですが、最も工合の悪い場合にも、われわれが国際的な南極地域観測協力して、日本が参加いたしますことは、日本がその方面についてかなり今までの実績が学問の世界にもございまして、高く期待をされているわけでありますから、それに対しましてどういうようなことをし、かっこの世界全体の計画にほんとうに寄与するにはどの程度までやればいいかということは、常にわれわれの考えているところでございます。  しかし、本観測はもちろんここに基地を置きまして、そして先ほど来申し上げました気象以下の項目を一ヵ年間にわたって連続的に観測するわけでございます。その内容は、ただいまかなりりっぱなと申しますか、一つ観測におきましては、アメリカソ連と同等程度の観測内容を持っておるわけでございますが、しかし予備観測その他でもって、多少は、現在の本観測に基く計画を減らすとか、あるいは変更することは起るかもしれません。と申しますのは、日本のわれわれ責任者のだれも現地へは行っていないのでございまして、先日宗谷の松本船長がお帰りになりましたが、松本船長もエンダービー・ランドという、この近くまで、陸地から十三海里のところまで行かれたのでありますが、こちらにはお見えになっておりません。そういう意味で、そこへ行きまして——必ずしも悲観をいたしておりませんが、ことしの予備観測の都合で、本観測に多少の変更はあり得るだろうと思います。しかし日本のこの方面の学問は、すべてとは申しませんが、一部にはかなり誇っていい機械をすでに日本国内観測では使っておりますので、南極でもそれを使おうという計画を立てております。少くとも日本が今まで世界的に認められてきたこの方面のすぐれた機械は、なるべくここで使って、やはり南極でも全体の観測に十分な寄与をしようという計画をいたしております。  大へん概略でございますが、また御意見がございましたらお答えいたします。
  10. 有田喜一

    有田委員長 以上をもって、参考人よりの御意見の御開陳は一応終了いたしました。  これより質疑に入ります。質疑の通告がありますから、これを許します。岡良一君。
  11. 岡良一

    ○岡委員 学術会議の皆さんが、今も茅会長の仰せのように、積極的に、国際的な科学的な観測協力をしよう、いろいろ困難はあろうとも、積極的にという、その御壮挙にはわれわれも心から敬意を表したいと思うのであります。そういうことでいろいろ率直なる御所信を承わって、私どもとしても可能な限りの御協力を申し上げたいということから、きょうは参考人としての御出席をいただいたわけであります。私ども自身も、何らこれという専門的な意見は持っておりません。ただ日本の科学技術の名誉にかけても、ぜひとも皆さんの壮挙が有終の結果をもたらしていただきたいとひたすら祈念をいたすだけであります。新聞等にいろいろ皆さんの御壮挙についての報道が伝えられておりますので、そういうことに基いての若干の御所信を承わりたいと思います。  そこで、特に永田さんの御説明にちなんででありますが、国際地球観測年については、すでにアメリカのごときは相当大がかりな、しかも冷凍作戦などという名前をつけての準備的な行動、作業を進めておるようであります。これは各国それぞれ思い思いな規模においてやるという了解の上に、この観測は進められることになっておるのでありましようか。
  12. 永田武

    永田参考人 私の了解しております範囲で御返事申し上げます。  南極地域観測につきましては、アメリカも一緒になりまして、先ほど御説明申し上げましたように、協力態勢で、つまりICSU南極委員会の中で相談いたしまして、どういう観測をするかをやっております。ところが観測隊を派遣するということは、各国は思い思いでございます。たとえばアメリカのごときは、率直に申し上げますと、冷凍作戦はむしろ軍の行動であります。それに科学者が併合というか便乗というか、協力というような形で参っておりますから、予算面でも、アメリカ南極観測におきましては、観測費自身は一億ドルを割る程度でございます。ところが実際にそれを動かす船、飛行機といったものは、その予算ではないわけであります。つまり空軍なり海軍なりの平常予算と申すのでございますか、持っております予算で動いております。  もう一度申し上げますと、観測自体は、国際的共同のワクでやるわけでございますが、それに付随する機動と申しますか、これは各国思い思いでございます。
  13. 岡良一

    ○岡委員 実はその点を承わりたかったのであります。アメリカは千九百人ばかりの者をすでに動員をしております。現役の海軍の将官がその総指揮官になっている。二十機近い飛行機、三隻の砕氷船、大型貨物船、タンカーというふうにずいぶん大がかりであります。そこで世界の参加する科学者の協力によって厳密に科学的な観測をするというよりも、アメリカのあの大がかりな態勢を見ると、科学的な観測を越えた、いわば一種の軍事的な意図があるのではないかということを私どもは感ずるわけであります。そういたしますと、皆さんのせっかくの科学的な良心に基いて追求される、そしてまたあらゆる困難を越えての観測への御努力というものが、しかも一方中央気象台的にアメリカの方にすべて情報が集中されるというふうなことで、科学者の良心に基く国際的な協力の姿が、その道を逸脱する危険がありはしないかということを実は憂えておるのであります。この点に関しての率直な御所信は、いかがなものでございますか。
  14. 永田武

    永田参考人 御意見はごもっともだと思います。しかし、その点は関係いたしております各国とも、そういうことはないようであります。つまり国際地球観測年におきます南極地域観測に関しましては、たとえば、その名をもって行われます観測の資料、結果といったようなものは、たとい先ほど私が御説明申し上げましたように、その日その日の気象の材料を整えるために、アメリカが主宰する中央局に送るにいたしましても、その資料はすべてそれに参加した国には全部公開するということをあらかじめ強く約束しておるわけであります。南極委員会におきますいろいろな条項の中の第一は、すべてのそういう政治的あるいは人種的の問題を超越して、純粋に、学術的な目的のためにここに協力して、国際地域観測年における南極地域観測を行うのだということが条項の第一であります。それは各国が承認してやっております。でございますから、われわれが一緒にやることは、必ずしもアメリカに限りませんで、ノルウェー、あるいは豪州、あるいはフランスといったような国がありますが、それはそれぞれかなり小規模なものであります。先ほど説明いたしませんでしたが、日本よりはかなり小規模なものであります。それでもそれらの国はもちろん軍がございますし、たとえば海軍の技術将校などというものは、やはり比較的船にも強い人がおるものでございますから、その観測隊の中に軍人が入っていないという意味ではございません。多くの場合に入っております。しかしそれも、行動につきましては国際観測年における南極地域観測というワクで協力しておることでございまして、この点は科学的な観測事項及びその成果及びそれの利用に関しましては、私は疑っておりません。しかし今、御意見がございましたように、各国がそれと行を一にする。たとえばアメリカソ連もかなり大がかりな船が参るということは実際に起っておりますが、これは私も懸念をすればいろいろな解釈が成り立つかと思うのでございますが、ただいまでは、あれほどかたく約束し、文書を交換したワクの中で観測自体はやらねばならぬし、やるであろうし、守られるであろうという信念を持っております。
  15. 岡良一

    ○岡委員 この問題は、今皆さんと私どもが議論したところで解決のつく問題でもないわけです。ただ私どもが心からお願いいたしたいことは、たとい他国の陣営がいかなる意図を持って動こうとも、日本観測隊はあくまでも科学者の国際的な協力において、先ほど御指摘になったように、いまだ未知の南極大陸というものが将来人類の福祉なり平和なりに役立つという大きな目的から、どこまでも科学者の良心を集結して、最後まで追及していただきたいということであります。  それから。プリンス・ハラルド・コーストというのは、かつてオーストラリアが領有権を主張したところであるということを聞いておるのでありますが、その点については、お聞きでございませんでしょうか。
  16. 永田武

    永田参考人 現在各国が領有しておりますのは、オーストラリアが領土権を主張いたしましたのはプリンス・ハラルド海岸よりは約十度西でございます。ちょっと地図をお示しいたしますが、豪州が主張しておりますのはここまででございまして、ここから先、ここまでがノルウェーが領土権を主張しております。でございますから、それに近いのでありますが、先ほど御説明申し上げましたように、プリンス・ハラルド海岸から十度西までは、ノルウエーが領土権を主張している場所でございます。
  17. 岡良一

    ○岡委員 そこで、領土権の主張については、先ほど御指摘のように、英国、アルゼンチン、チリー、オーストラリア、ノルウエー等がそれぞれ主張しておるようでありますが、そこで今ノルウエーが領土権を主張しておるプリンス・ハラルド・コーストへ皆さんがお出かけになって、そこで地形、地質等についても十分な御調査をなさるというようなことは、やはりこの領土権の帰趨という問題と関連して、私どももいろいろ案じておるわけなんであります。そういう点について、学術会議の皆さんとしてはどういうお心づもりでお出かけになるのでございますか。
  18. 有田喜一

    有田委員長 速記をとめて下さい。   〔速記中止〕
  19. 有田喜一

    有田委員長 速記を始めて下さい。
  20. 岡良一

    ○岡委員 そういう建前で純粋に科学的な観測をしていただくということはもとよりわれわれの願うところでありますけれども、ただ、すでにある特定の国が領土権を主張しておる、そこでいろいろな苦労をしのんで地形、地質等の観測をやる、その結果というものは、——現在の南極地球観測年への各国の努力、力こぶの入れ方を見ると、いろいろな意味での一種のラッシュの中にあるような感じがするわけなんです。そういうことから、大陸の氷のひさしを貸して、おもやを取られるようなことになりはしないかということで、ただ私どもは取り越し苦労をして申し上げたわけであります。  そこで切実な問題といたしまして、宗谷一隻でいいのか、宗谷のあの船でいいのか、きょうも新聞を拝見いたしますと、宗谷の改装に、五億余の予算がさかれたようであります。一体一隻でいいのか、またその程度の費用を投じての改装で、困難な氷海の航行、砕氷、運航に耐え得るのかどうかという点、いかがなことなのでしょう。
  21. 永田武

    永田参考人 ただいまの御意見は、大へん重要な御意見でございます。実は私ども今、一生懸命調べ、かつ考えている最中の問題でございます。と申しますのは、宗谷の松本船長が、一応先ほどお話しましたエンダービー・ランドまで行ってきまして、お帰りになったわけでありますが、船はやはり船長が目的地まで責任を持って連れて行かれるわけであります。船長の意見というものは、重視しなければならないわけであります。どうもただいまの御意見のように、少くとも随伴船があった方がだいぶ工合がいいのではないかという御意見が出ておりますので、私どもといたしましては、それを目下慎重に、具体的に可能性を検討いたしております。御参考のために申し上げますが、主として話題に出ますのは、米国とかソ連の大部隊でございますが、オーストラリア、ノルウエー、フランスといったような国々は、それぞれ六百トンないし千三百トンの耐氷船でああります。シーラーでありまして、アザラシ取りの船でありますから、砕氷能力がないのでありますが、場所さえよければ、千トン未満の耐氷船でもすでにやっておるところはあるわけでございます。でございますから、一がいにそれでむずかしいとは言えない。少くとも宗谷は砕氷予定能力一メートルでありまして、米国もしくはソ連の大型の砕氷船に比べればかなり小さいわけでありますが、今申し上げましたフランスその他の例をとりますと、場所によりまして、南極大陸だから不可能だということは用ないのでございます。プリンス・ハラルド海岸に対しましては、先ほど来、松本船長の御意見がございました。非常にごもっともで、われわれも今非常にそれを考えておりまして、技術的に、と申しますことは、氷その他の条件につきまして科学的な資料を集めまして、航法その他を考慮いたしまして、検討いたしております。
  22. 岡良一

    ○岡委員 皆さんがせっかく学術的な研究のために身を挺して行かれるのであるから、私どもとすれば、皆さんが十分な実績を得て、世界の科学の上に名声をあげていただきたいことも心からの願いでありまするが、同時に、一人の人でも命を失うべきじゃないと思うのです。そういう意味から申しますると、南極探検のこれまでのいろいろな物語を見まして、また松本船長の御報告等を見ましても、宗谷一隻ではきわめてたよりないのではないか、万一氷に閉じ込められて動きがとれなぐなり、そのうち船が破壊されて沈没したという事例が南極探検には幾多あるわけであります。そういうことを推しはかりまして、各国、ノルウエー、オーストラリアが二年、三年前からすでに出かけて行って、基地を設け、越冬して研究しておる。それに一方プリンス・ハラルド・コースとというところは、ほとんど前人未踏だというのに、初めて出かけて行くにしては、宗谷一隻で行くのは非常に冒険ではなかろうかというここも新聞に伝えられたり、またパンフレットとして出ておる南極探検等の寄稿を読んで、私は危ぶんでおるわけなので、あります。この点は、万々一、間違いがないというものなのでしょうか、重ねてお伺いをしたいと思うのです。
  23. 永田武

    永田参考人 だれもプリンス・ハラルド海岸に上陸したことがないということが、一番お答えがあいまいになる理由でございます。ただいまお話がございましたように、すべての人の生命を第一に考えねばならないということは、私、肝に銘じて、しょっちゅう考えております。それと同時に、先ほど来御意見のありますように、日本が国として送る観測隊が、今まで日本の持ってきた光輝ある地球物理学における業績に照らしまして、りっぱな成果をあげて、国際協力をしなければならないという要請があるわけであります。その二つのことが矛盾するという点を御指摘になったと思うのでございますが、私どもは、今御意見にございましたように、つまり船が、複数で、二隻以上で、行けば、安全度あるいはその他の便宜が飛躍的に増大するとは考えております。それが、では具体的に、技術的に、どうやればどの程度可能であるか、検討を目下技術的に鋭意している最中だというお答えをしたのでございます。これは私の観測隊長としての信念でございますが、先ほど来の二つの問題が相矛盾いたしますときには、少くとも今度の予備観測の際に矛盾しましたときには、生命の安全を第一に考えるつもりでおります。と申しますことは、先ほど御説明いたしましたように、宗谷は観測船だと申し上げました。すなわち、われわれが観測隊員及び相当な科学者を一権に連れて参りますときに、少くとも南極地域に関します観測につきまして、船上でも最小限度の、つまり国際地球観測年観測準備の資料はとれるという準備をしていると申し上げました。それは船長の意見に従わなければなりませんが、万一危険があると考えまして、最初に考えましたように、上陸してそこに基地を設け、あるいは最小限の基地の建物を建てるというようなことが不可能になりましたときには、ことしの予備観測では、ヘリコプターその他で一応予定地をきめるという程度で、つまり観測は船の上でやって帰ってきても、一応本観測のための準備としては、必要最小限度の資料をとることができるということを考えておるわけでございます。今、御意見がございましたように、こういう無人地域観測は、船が多いほど飛躍的に安全度及び便宜度が増すわけでございます。繰り返して申すようでございますけれども、現在、技術的なことをいろいろ検討しておりますので、私といたしましては、生命を第一にしたいということを申し上げたいと思います。
  24. 岡良一

    ○岡委員 永田隊長は隊員すべての生命をお預かりになり、また茅会長も、この席上において南極探検というふうな、いわゆる冒険主義的な響きを持つ言葉は、注意すべきであろうという御意見もありました。いわんや日本の一流の科学者の皆さんが国際的な協力のためのお出ましであるので、科学的にも科学的に、合理的にも合理的に、万全の準備を整えていただきたいと思うのです。そういう意味でわれわれもまた外側からいろいろ御協力申し上げたいという趣旨から、皆さんの御意見を承わっておるわけであります。そこで、南極探検の今年度の予算は七億余ということに相なっておりますが、学術会議としての当初の御計画、それに伴う要求予算というものは、大体幾ばく程度であったのか、それを伺いたい。
  25. 茅誠司

    茅参考人 学術会議で、本年度の予算として考えまして、統合推進本部を通して要求しました額は八億五千万円でございました。それが七億五千万円となりましたが、その中の大部分、五億近くは宗谷の改装に使われるわけであります。残りが設営観測であります。これは、実を申しますと、観測方面も相当範囲が広いものですから、実際のプリンス・ハラルド海岸の実情というものもわかりませんので、各班で相当手広く観測計画を立てたのもありまして、果してそれが行ったときに実施できるかどうか疑問の点もございますので、いろいろそういう点を検討いたしまして、この七億五千万円の予算のワク内で実施計画を今立てておる最中であります。設営の方の問題も相当のところまで実施計画を立てておりますので、どの程度この七億五千万円で実施できるかということも大体わかってきつつありますが、まだ正確なところまでは参りません。これから発注その他の問題がございますので、そういう準備をいたしております。これは今も答弁がございましたように、船の問題も飛行機の問題もヘリコプターの問題も、多ければ多いほど実はいいのでございますが、そこにわれわれとしまして、国民の税からこういう観測を実行する上におきまして、最小限において有効な観測をしたいという希望もございますので、そこに悩みがあるわけでございます。
  26. 岡良一

    ○岡委員 きょう新聞で三十一年度予算の配分方法を見ましたが、それぞれ各省、各大学、各研究所研究観測について御担任のようであります。私ども憂えますことは、申し上げるまでもなく、ああいう形で各省、各大学、各研究所等へ資金が配分されますると、日本のいわば官庁機構の一つは事大主義、一つはセクショナリズムというふうなものから、乏しい資金がいよいよ効率を発揮し得ないというような弊害を、しばしば私どもは体験いたしておるわけであります。そういうことであってみれば、せっかくの七億五千万円も、われわれの期待するような十分な効率を発揮した運用が望めないのではないかということを、実は心配をいたしてもおるわけなのです。そういう点についてのわれわれの懸念については、いかがなものでしょうか。
  27. 永田武

    永田参考人 御注意まことにありがとうございます。ただいまのは、南極観測予算の配分と解釈してよろしゅうございましょうか、地球観測年も含めてでございましょうか、お答えする前にちょっと御質問したいのですが。
  28. 岡良一

    ○岡委員 南極観測であります。
  29. 永田武

    永田参考人 あの観測に従事しておりますものは、実は今まで少くとも十年間観測を非常に強力にやっておる実績がございます。これは日本学術会議一つ——たくさんいろいろないいことがあるでございましょうが、ここに会長もおられますが、私ども研究者といたしまして、幾つかのありがたいことがある中の一つのいいことであります。私ども当打者でございますので、あまり誇りやかに言うのは気恥かしいようでありますが、委員長でありませんので申し上げます。大学とかあるいは郵政省の観測機関とか運輸省の研究機関とかいったようなものが学術会議委員会といたしまして、ここに当事者の技術者及び研究者が集まりまして、ほんとうに日本全体として、どうやればいいんだ、あるいは各省の機能を持っておるものはどうやればいいんだということにつきまして、終戦の翌年以来、十年間いろんな国内の問題でやってきたわけでございます。そういうわけでございますから、ただいま御心配のございましたようなセクショナリズム、もしくは各省に分れましたために、せっかくの予算が、能率が悪くなるということは万々ないと確信いたしております。しかもその上に、今度の予算は、おい、貴様というような仲間で与えられましたワクで相談をいたしまして、しかもそれに、これこれに使うんだというひもがついておりますから、御懸念のことは万々ないと確信いたしております。
  30. 岡良一

    ○岡委員 先般インドのネール首相の公けに言明された言葉として伝えられているところによると、各国が、特に大国が、南極地球観測年の名において、いわゆるウラニウム・ラッシュの線に乗った努力をしておるということをはっきり申しております。南極大陸の観測年についてのインド首相のそういう考え方というものは、学術会議としてはどういうふうに御解釈でございますか。
  31. 茅誠司

    茅参考人 学術会議としての意見をとお聞きになりますと、学術会議会議体でございまして、こういう問題を議題として、学術会議としての考えを出すような態勢にまだ至っておりません。この問題を論議したことはまだないのであります。ただ、私個人といたしまして、学術会議会長ではありますけれども、個人として考えますと、きわめて遺憾なことだと思うのであります。この地球観測年に、まあ言葉が悪いかもしれませんが、名をかりてほかの半桶をするということは、われわれははなはだ残念に思うのであります。しかしながら、よその田がそうするかといって、どうこうするということはできませんので、われわれとしては、あくまでも国際協力という線においてのみ純粋にいきたいと考えております。
  32. 岡良一

    ○岡委員 南極大陸に、たとえば地下資源として相当なエネルギー資源がある、ウラニウムがあるというようなことが伝えられておりますが、南極大陸の経済的な価値というものは、どういう程度までわかっておるのでございましょうか。お調べになった程度で、簡潔に御所見を承われればと存じます。
  33. 永田武

    永田参考人 ウラニウム資源につきましては、私ども聞いたことはございますが、私の存じております限り、はっきりとした科学的な調査による資料というものは存じません。ただ、石炭が若干あるといった種類のこと、あるいはロス海沿岸に若干石炭層があるといった資料はございます。しかし今まで公表されております資料で見ます限り、あそこに確実に資源と申しますか、現在有川な資源が豊富にあるという調査資料は出ていないと思います。ただあれだけ厖大な土地でありますし、しかもかなり山があり、昔からあの寒いところにあったのではなく、つまり数千万年前の地質時代に戻りますと、南極以外の場所にあったのですから、普通から考えますと、普通のそういう厖大な土地、いわゆるアジア大陸とかアフリカ大陸のような厖大な土地にある程度の、平均程度の資源があるだろうというような想像はできるだろうと思います。
  34. 岡良一

    ○岡委員 いろいろ、しろうととしてのことばかりお尋ね申し上げて恐縮でしたが、どうか一つ、せっかく皆さんの御壮挙のためにわれわれとしてもできるだけの御協力を申し上げたい。その意味で、学術会議の方々も、この科学技術振興特別委員会へ積極的に御意見を御披露いただくくらいの意気込みで、私どもとの間の関係を密にしていただきたいと思います。  これをもって、私の質疑を終ります。
  35. 有田喜一

    有田委員長 粟山博君。
  36. 粟山博

    粟山委員 永田さんが時間の都合で長くおられないそうでございますから簡潔に伺います。同時に委員長に希望をいたしますが、実はこういう重大な、われわれが関心を持たなければならぬ問題の取扱いについて、委員出席も少い。どうか多数出られて、広く大ぜいの人でお聞きして、その目的を達成するために万全を期したいと思いますから、きょうの状況にかんがみて、重ねてできるだけ会合を持つようにしてもらいたいということを委員長に申し上げておきます。  実は、この南極探検と申しますか、茅さんは探検という言葉はおきらいなんで、調査でも何でもよろしいけれども、長谷川博士のお話しになったきわめて興味のある重要な十項目に余る目的を達成するということが、今回の壮挙の範囲である。その大きな任務を負わせられたと申しましょうか、茅さんが大へん御信任になって御推薦になったそうですが、永田さんのようなりっぱな適格者を得たことを、われわれは意を強うするのですけれども、これはなかなか容易じゃないと思うのです。ということは、簡単に申し上げますと、アメリカがあれだけの経験を持ち、今回あれだけの準備をしてすら飛行機が行方不明になった。これは果して事実かどうかわかりませんが、一度そういうような新聞記半を見まして、これは大へんなことだと思いました。そこでどうも南極というものは、いかに金をかけて、いかに設備を完全にして、アップ・ツー・デートの知識、技術、科学の粋を寄せて、そうしてさらに工業技術、人的の訓練、調節というようなあらゆる準備をして行ってみても、なおかつ何かそこにわれわれの想像のできない以外の障害にぶつかりはしないか、何か起りはしないか、そういう想像のできないような気候の変化ということを考えますときに、私は、永田さんが学者としてこの非常に困難な事業をお引き受けになったことに対しては、心から敬意を表します。白瀬君とか野村船長のような人は、私はよくあの人たちを知っておりますが、命がけで行くのだという人だから、はっきりしておる。ところが、こういう大事な人は一人でも殺すわけにいかぬ。けがさせることもできない。そういうような今日のわれわれの常識と希望からいたしますと、どうも何だか金が足りない。金が足りないから、準備も思うようにできない。そうして日は迫ってくるのに、茅さんのおっしゃるように、四月一日からでなければ金が使えないということで、何だか政府が金を出してやるからといって予算を組んだものに対して、その金すらも百パーセントの効率を上げることができないようなことでいるのは、お気の毒だと思うのです。それで、私は、政府が金を出してやるのだというならば、文部省が直接監督官庁であるが、むろん文部省であれ、政府というものは、重大な責任があると思う。これは永田さんにお聞きするのも、文部省の方々に言うのも、的はずれかもしれぬけれども、それでよいのかとお尋ねしたい。何と考えても、この金は足りないのだ、足りないが、しかし茅さん、永田さんのお話を聞くと、今から準備をして、いろいろ訓練やら調練やらをして、物をそろえておるが、設営をして冬越しをして、帰ってくるまでは三年でございます。そうして、今度の仕事は三年越しにやるのだから、会計年度は三年にまたがるので、三回にもらえばいい。そこで、文部省に三回に出すことを御交渉になったかどうか。それで文部省政府として、これを三年なら三年間にさせるにはこれだけの金が要るのだから、それのめんどうを見るというと大げさだが、するのだということで行われるかどうか、これは実に重大な問題です。われわれは、今この席上において、予算を協賛して、そうしてこの金を出すということは、危険があれば、危険の責任を分担しなければならない。そういうような重大なことを考えますと、あなた方の成功はわれわれの成功であり、われわれの誇りである。あなた方の目的の完全なる達成は、われわれが世界に対して誇るべき事績となる。こういうことを考えますときに、政府が金を出してやるのだという以上は、政府が果してどれだけの覚悟をもってやるのかということをお聞きしたいが、まずわれわれが聞くことも大事であるけれども、これの御計画をなさって行かれる方々が十分お見込みを立てて、今のうちから談判をされるのがよろしい、こう私は思います。  それから、朝日新聞は今しきりに金を集めている。けっこうなことだと思います。白瀬探検のときも、各新聞社が協力された間でも、一歩早く口火を切って、非常な協力をされたのは朝日新聞で、鳥居素川先住とか杉村楚人冠さんなどは、学問のない人たちの壮挙を助けるのだから、いろいろ英語の本などを買い集めてきて、翻訳などをして聞かしたり、参考になるようなことをよく話してくれました。それで、ただ白癩たちの一行がもう血気にはやって、その年のうちに行きたいと言う。朝日新聞の方は、まあ今年は季節がおくれたのだから、一年延ばせと言ったけれども、聞かずに出て行って 結局一たんシドニーに帰った。シドニーに帰ってから、日本を出発した時期にシドニーを立ったから、大へん都合よく季節に恵まれた。ことにあの年は案外恵まれたチャンスだったかもしれません。それであの氷原に約二週間以上もおりまして、そうして設営をなして、また船に戻ってくるまでの間に、あの沿岸を視察することができた。これはアメリカですら飛行機が行方不明になるというところですから、幸運だったかもしれません。私は多くを申しませんが、どうか十分な準備をして行っていただきたい。これを私は希望するのです。私の見るところでは、永田隊長さんも安心して行かれる程度の予算ではないと思う。ことに茅さんが、局間の番付を集めると言うことは、大賛成です。これはできるだけ協力して、——われわれは国会でこの予算を協賛するばかりではない、国会外においても協力を申し上げて、あなた方の学術の目的を達するように、——この十項目に上る問題は、長谷川さんの御説明を聞くと、もう実に新しい世界に、われわれが楽しいものに接するような気がする。そういうようなわれわれが生きるために必要なものを知らせてもらって、その恩恵を受けることができるのだということを考えるときに、われわれは川会議員として、当然、内にあっても外にあっても、できるだけの協力をしなければならぬという責任を感ぜざるを得ない。その責任感の上から、私は永田さんに、どうか、立つまでは相当の期間もあるから、十分なる第一次予算、第二次予算というものを見立てて、万遺憾ない予算を立てて、できるだけの準備をしてお立ちになってもらいたいと思う。これは間に合わなかったら、飛行機あとから追っかけて、必要なものを届けてあげてもよろしい。シドニーまで持っていって、ニュージーランドから飛行機で送ってあげてもいい。ことに私どもから考えると、アメリカというものは、大隈湾といい、鯨湾といい、開南湾といい、白瀬がつけた名前そのものをやはりつけておる。この間、向うの学者からあなた方のところに来た手紙の中にも、大隈湾というようなことを書いておるようです。まことに謙虚な気持です。私はアメリカ人はまことにフェア・プレーだと思っておる。それですから、早くからアメリカの地質学協会においては、この白瀬探検の実績を認めておる。ただ英国が、これは文部省の方がそんなことを言ってくれるなと言うかもしれぬけれども、いろいろなめんどうなことを言うてきました。サンフランシスコ条約のときにも、英国の発言によってああなったという状態であります。私はこの十項目についてお伺いしたいけれども、それをやめますが、一言にして尽せば、十分なる用意があってほしい。われわれは安心してあなた方の壮途を送るようなことにして、この壮挙の目的を逃してもらいたい。たくさんありますけれども、きょうはよします。しっかりおやりになってもらいたい。
  37. 有田喜一

    有田委員長 山口好一君。
  38. 山口好一

    ○山口(好)委員 先ほど岡良一君などからいろいろ御質疑がございましたが、今回の壮挙については、日本としても、全国民が大きな期待を時ってこれを観測いたしておる次第であります。私が一点お伺いいたしたいと思いますのは、先ほどのお答えによりますれば、観測、特に気象観測につきましては、各国がそれぞれの基地におきまして観測いたしたものを、中央の基地におりますアメリカの中央気象台に向って毎日報告をし、あるいはその他の観測についても、さらにその中央に集めた報告は各国にまたこれを返して報告する、かくしてお互いに協力して、この壮挙の目的を完全に達成しようということで、非常に協力、連絡がとられるようなお話であります。ただいまのお話とも関連しまして、機動につきましての各国の協力というような点で、何か申し合せがございましょうか。並びに、観測に必要な諸機械などについて、日本として、ないようなものについては、ときによっては有無相通じて、お互いに協力をするというようなところまでの御棚歳ができておりましょうか。その他の点についてこの観測の目的を達成させまするためには、やはりほんとうに冬田が国際的にも協力するというならば、海難救助とか、あるいはその他の器具のお互いの補足、援助をする。こういうような点にまである程度お申し合せができるのではないかと思いますが、さような点についてはいかが相なっておりましょうか、お尋ねをいたしたい。
  39. 永田武

    永田参考人 お答えいたします。ただいまの最後の海難救助につきましては、先ほど私申し述べなかったかもしれませんが、できております。それで、各国はそれぞれがどれだけの救助能力を持っているか、いつからいつまでの期間にどれだけの船を動かせ、どれだけの足を持った航空機を出し得るかというようなことを登録いたしまして、協議をいたします。残念ながら日本は、たとえばお隣を助けることも理論的にはあり得るわけですが、それでその表を早く出せと言われておるのでありますけれども、まだできませんので、日本は出しておりません。催促を食らっております。ただし、六月の中旬にパリで第三回の南極会議がございます。それまでには、日本が参加する以上、どうしても日本が国際的な海難救助に出得る力の現状を報告しなければならぬわけであります。それから、その前にお話がございました資材その他で各国が助け合うという問題でございます。これもできる限り各国が協力しようではないかということでございますが、実際はなかなか面子があるわけでございます。たとえば、比較的小さな——アルゼンチンなどが、これこれやるのに、アメリカにこれこれのものをというととは、割合に頼む方も頼まれる方も気軽にやっておるようであります。日本といたしましても、その道はあるはずだと思います。私詳しくは存じませんが、茅先生は御存じであると思うのでありますが、あると思います。日本ではむしろただいまのところ広報資料その他につきまして、書面でいろいろアメリカの知恵を借りる、あるいはただいま西堀副隊長が豪州に行っておられまして、その相談を受けるということでございますが、実際どうしてもこれがなければ日本観測隊が困るということがあれば、お互いに助け合うという了解のもとに出発はいたします。
  40. 有田喜一

    有田委員長 他に御質疑はありませんか。——他に御質疑がなければ、この際、参考人各位にごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中にもかかわりませず、わざわざ本特別委員会に御出席下さいまして、きわめて有意義なる御意見をお述べいただきましたことは、本委員会の今後の調査の上に資するところ大なるものがあると存ずる次第であります。委員会代表いたしまして、私より厚くお礼を申し上げます。南極地域観測の御成功を心からお祈りいたしまして、お礼のごあいさつといたします。どうもありがとうございました。  本日はこの程度にいたし、次会は公報をもってお知らせいたします。  これにて散会いたします。    午後三時三十七分散会