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1956-04-04 第24回国会 衆議院 科学技術振興対策特別委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年四月四日(水曜日)     午前十時三十八分開議  出席委員    委員長 有田 喜一君    理事 小笠 公韶君 理事 椎名悦三郎君    理事 長谷川四郎君 理事 岡  良一君    理事 志村 茂治君       加藤 精三君    木崎 茂男君       小平 久雄君    須磨彌吉郎君       岡本 隆一君    田中 武夫君       堂森 芳夫君  出席政府委員         総理府事務官         (原子力局長) 佐々木義武君         経済企画政務次         官       齋藤 憲三君         厚 生 技 官         (公衆衛生局環         境衛生部長)  楠本 正康君         農 林 技 官         (水産庁次長) 岡井 正男君         中央気象台長  和達 清夫君  委員外出席者         原子力委員会委         員       藤岡 由夫君         大蔵事務官         (主計官)   鳩山威一郎君     ――――――――――――― 三月三十日  武山地区原子力研究所設置陳情書  (第四九六号) を本委員会参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  科学技術振興対策に関する件     ―――――――――――――
  2. 有田喜一

    有田委員長 これより会議を開きます。  科学技術振興に関連し、原水爆実験による影響に関して調査を進めたいと思います。  岡委員より発言を求められておりますから、この際これを許します。岡良一君。
  3. 岡良一

    岡委員 原水爆実験による影響調査に関して、本日関係各位に御出席をいただいてありがとうございました。すでに原子力委員会といたしましても、来たるべき中部太平洋におけるアメリカ原水爆実験に対しては、国家的規模において、組織的にその影響調査をいたしたいということを御決定に相なりましたので、その認否についての諸般の事項について、本委員会としても承わりたいと存ずるわけであります。  そこで、まず第一に、今度のこの影響調査というものは、いかなる目的でなされるのであるかということが第一点、これは藤岡原子力委員会委員がこの調査責任者でおられますので、この点を明確にいたしていただきたいと思います。  またこの調査の対象は、空気、海洋、生物等にわたり、また放射能灰分析等、きわめて多岐にわたっていると思いまするので、それぞれ担当の各位より、前回ビキニにおける調査基礎として、またそれをも加えての御所見を願いたいと思います。  なお、藤岡委員からはこの調査組織について、また関係各位からはその調査方法あるいは施設、現在どの程度のものが日本においてはあるのか、さらにどういうようなことが必要と思われるかということを承わりたいと思います。  また藤岡委員より、最後に、これらの調査に必要な予算はどの程度のものであるか、また大蔵省の方が御出席でございまするならば、前回ビキニの例もありまするが、大蔵省としてはこれに対してどのような予算的措置を講ぜられるお気持があるかというふうな点について伺いたい。なおあと、その御報告に基いて、私どもの方からもお尋ねをいたしたいと存ずるわけであります。
  4. 藤岡由夫

    藤岡説明員 ただいまの御質問に対しまして、お答え申し上げます。  第一に、原子力委員会決定いたしました今度の原水爆実験影響について調査をするというのは、どういう目的において行うかということであります。申すまでもなく、わが国原子力利用は、これを平和的目的にのみ使用するという建前に立っておるのであります。原水爆実験は、これは平和的な利用ではないということもいえるのでございますけれども、その実験によって起ります現象調査することは、後に平和的に利用する目的のために大へん参考になることが多いのであります。言うまでもなく、わが国では、国会を初め、原水爆実験はやめるようにということを各国に向って申しておりまして、これをやめていただくことはわが国民の悲願でありますし、決してこれに協力するものではないのであります。しかし、どうしてもやられるという場合に、やはりこれについての調査をしなければならない。それが、まず先に言うべきことであったかと存じます。  そこで、その平和的利用を行います場合の参考になるということを、例を一つ二つ申し上げますならば、平和的利用を行います場合にも、原子炉の周辺には、若干の空気その他の汚染ということが必ず出ております。でありますから、どの程度まで差しつかえないか、どの程度にその汚染度をおさめなければならないかということについては、研究を進めなければなりません。それに対して、今度のように、空気その他のものに汚染を来たすような場合を調査するということは、その方法において、またその結果において、平和的利用の場合に参考になることが大へん多いと思います。また、海の中で汚染がどのように広がっていくか、どのように流れていくかということを調べますことは、将来廃棄物を海に流すというふうな場合にも十分参考になる。そういう意味におきまして、不幸なことではありますけれども、行われます実験機会利用するということは、一つには平和的の利用参考になるということであります。  第二にあげられますことはも、この爆発によって起ります現象は、やはりしっかりと科学的な調査をしておかなければならないというのは、国民生活福祉を守るという見地においてであります。前回には、不幸にして第五福龍丸事件その他が起りまして、いろいろの調査が行われましたが、今度の場合には、アメリカも万全の策を講じているとは思いますけれども、しかしどういうことが起るかということについては、やはり完全な調査が行われていなければならない。そういう意味におきまして、爆発によって起ります結果について、国民福祉を守るという点からも、十分な科学的調査をする必要がある。大体この二つの点がねらいであると考えます。  次に、この調査を行うに当りましての組織についてのお尋ねであります。これは前回には、すでに実験が行われ、第五福龍丸事件が起りました後に調査が始められましたので、その当時厚生省にできておりました原爆影響調査に関します協議会、これが主として責任を持って当りました。この協議会は、広島、長崎の原爆影響あと調査する目的をもって作られておったのでありますけれども、ちょうどこのビキニ事件が起りました後に、その組織をもって調査をするということで当ったわけであります。さらに日本学術会議におきまして放射能影響調査特別委員会という非常に大きな組織ができまして、あらゆる方面学者を動員いたしました。これの研究は、それぞれの所属の官庁大学等において行われますけれども、その結果の連絡をはかり、統合するという意味委員会であります。これがまた活躍をいたしました。今回はすでに原子力委員会ができておりますので、やはり原子力関係のあることは原子力委員会中心になってやるべきであるというので、原子力委員会が行うことをきめたのであります。すでにあります厚生省組織学術会議組織とも十分連絡をいたしまして、厚生省ではもっぱら幹事役をやっていただくことになり、そして各官庁連絡をいたしまして、令官庁関係のある方面と全部連絡をして原子力委員会はこれの世話やきをする、統合する、そういう建前で現在まで進んできております。現在までのところ、各方面でどういう調査をしたいかということについての連絡を大体終りまして、調査船を派遣するのに、どういう船が出し得るかということを昨日ようやく見当をつけました。これらにつきましては、それぞれ所管の方々から御説明があると思います。そういうので、まだ果してできるかどうか、つまり船を出して調査をするということに決定をいたしましても、どういう船が出せるかというふうなことの見通しがつかない問に公けの手続をとるわけにも参らないと考えますので、だたいまのところ、瀬踏みをしてきている状態であります。これで予算、それからその他研究事項が全部見通しがつきましたならば、そこで公けの手続をとるようにいたしたい、そう考えておるのであります。  なお、予算についてのお尋ねもございましたが、まだ正確な数字は申し上げられませんけれども、大体の見当といたしましては、船を二回派遣する。一度は太平洋に関します地球観測年に関連した調査のために出すことになっておりますのを利用いたすことにいたしまして一度は特別に出す。それから、その他その船に要します整備でありますとか、また国内におけるいろいろの研究等、合せて大体三千万円程度であるかと今のところ考えております。それにつきましては、なお正確な数字を得ました後に、しかるべくお願いいたしたい、そう考えております。
  5. 和達清夫

    和達政府委員 中央気象台におきましては、昨年より放射能観測業務というのを開始しております。これは大気中に含まれる放射能及び雨に含まれる放射能を主といたしまして、毎日観測いたしておるのであります。観測個所は、基準観測として五カ所、その他普通の観測として十カ所、合せて全国で十五カ所となっております。そのほか原子爆発が行われますと、大きな気圧振動が起りまして、これが伝わって参ります。その気圧振動観測いたしますために、八カ所で特別に精密な気圧観測を行うようにいたしております。この気圧観測によりまして、もしそういう気圧振動観測されますと、どこの地点でいつ行われたかということがわかるようになっております。  なお、この機会観測開始後の状況をあらまし申し上げますと、昨年の四月及び五月にかなり大きな放射能の価を観測いたしました。これはアメリカのネバダの実験によるものが、こちらへ参ったのであります。その次に大きな放射能観測いたしましたのは、昨年の十一月であります。これはソ連地域における実験のものと思われます。その次に大きな価を観測いたしましたのは、昨今新聞に出ております三月の二十日ごろであります。これにつきましては、外電によりますと、米国及び英国からは、ソ連地域で行われたということが伝えられておりますが、果してこれがソ連によるものか、われわれの観測からは決定できませんけれども、とにかく相当大きな放射能観測いたしております。大体以上であります。
  6. 岡井正男

    岡井政府委員 先年は、ビキニ被害、即海の被害、即漁業被害というような関係もございまして、前回ビキニの場合には、水産庁の船を出して調査いたしました。その場合にも、大学あるいは中央気象台その他関係の方からお力添えいただきまして共同調査をしましたが、主として海流における漁業関係汚染度がどうであるかというような点に主力を注いでやったわけでございます。今回は、いわゆるオール調査とでも言いますか、総合的にすべての御調査をいただくということに相なりますので、私の方もお力添えするという意味で、船などにつきましては、できる限り私の方からも自分の方の関係の船を、場合によれば犠牲を払ってでも出すとか、あるいは適船を探してその方へ振り向けるようにごあっせん申し上げ、また自分の方の科学陣営調査にはせ参ずるようにするとかいうような心づもりで、現在私の方の研究第一課長を常にその方へ協力さしておるわけでございます。ただ、一言この際私の方の意見を申し述べさしていただくならば、この前のビキニ被害調査、その後の被害につきましては、アメリカの方へ要求したにもかかわらず、その放射能性質そのものの分析されたデータをいち早くよこしてもらわなかった。従って、あの際にはすべてが非常に危険なものなりという前提のもとに、百カウントで捨てさすというようなことをしましたために、非常に漁業者が迷惑をした。それで放射能を出すマグロのみならず、極端なことを言いますと、瀬戸内海の魚まで魚価値下りで非常な迷惑をした。その値下り影響は、今なおずっと糸を引いているといったようなことでございますので、来たるべき調査しおきましては、魚についてはストロンチウムその他を含んでいなければもちろんよいのですが、かりに若干危険な要素がありましても、その許容量がどの程度であるかというようなことが早くわかるようにして、国民に魚を食っても心配要りませんという点を証明したい。そうでなければ、今でも漁業者は非常な不安を持ちまして、特にマグロ業者などは、マグロ魚価がまた非常に下ることになると、経営不能になるということで、戦々きょうきょうたるものがあるわけであります。従いまして、今回の調査については、その点の究明ということを総力をあげてやっていただきたい。そうでなければ、日ソの北洋問題があり、さらに南に下って水爆関係があり、こういうことでは、日本漁業界は暗い道をたどらざるを得ず、非常に悲惨なものでございますので、その点を苦慮しつつ、この調査について取り組んでいきたい、かように考えている次第であります。
  7. 岡良一

    岡委員 今いろいろ短簡な御報告を願ったのでありますが、なおここに「原爆実験影響調査に関する打合せ事項」というのをいただきましたので、この程度のところまでは、一応各省庁局で打ち合せが済んでいることと存じます。そこで藤岡さんにお尋ねいたしたいと存じます。国会として衆参両院あげて水爆実験は禁止してもらいたいという弱い国民の意思を表明いたしたことは、御承知の通りであります。ところが、アメリカ側としては、実験はどうしてもやる、いわゆる自由諸国の防衛のために、水爆の優位を示すことが、今日平和を保持するための最も大切な手段である、こういう観点から、いよいよ四月二十日から強引にやることになりました。私ども国会といたしまして、やめてくれというのに、どうしてもやるというので、そこで原子力委員会がその影響の問題を取り上げて総合的に調査を始めようという。そうなりますと、この調査目的が、平和利用のための参考にする科学的な資料を集めるということだけでは満足できないのです。やはりこの被害あるいは影響調査を最も科学的に、最も精力的に遂行し、その結果得た資料はこれを全人類の前に明らかにする、そのことが原水爆平和利用へというこの原子力委員会の大きな目的にも私はかなうのではないかと思うのであります。同時にまた、このようにして得られた資料というものは、当然原子力基本法にうたわれておる公開の原則によって、おそらくこれを希望する全世界科学者に周知徹底せられねばならないと存じます。このような点について、まだ私どもとしてはいささかもの足らない感じを今の御報告では受けたのであります。一段とこの点についての御決意を承わりたいと思います。
  8. 藤岡由夫

    藤岡説明員 私が先ほど申し上げましたのは、もちろん国会の決議、国民悲願にも言及したつもりでございまして、それにもかかわらず実験が行われるという以上、これはやはり調査をしなければならぬ。私は先ほど二つ理由をあげたのでありますが、一つ平和的利用参考になるということと、一つ国民福祉を守るための基礎資料ということ、これはどちらを先に申したからといって、その方に重点があるというわけではないのであります。ただ、原子力委員会は、平和的利用のことのみを扱うということが建前になっております。ややもすると、なぜ原子力委員会がこれに品を出すかというような意見でございますので、そういう意味において、これを先に申したのであります。もちろん重要な点におきましては、国民福祉を守るという点は大へん重要だと思います。もし厚生省がお話しになれば、その力をおもな理由になさったに違いないと思います。お説の通り、この原水爆実験が行われるという不幸な事態が続きます以上、この調査はしなければならないし、また同時に、お説のように、これは全世界にその結果を報告するばかりでなく、全世界協力して、やはりその影響調査はしなければならない。アメリカもこの実験の後に調査をするということについて、外務省を通じて日本連絡してきておりますし、私どもも情報は公開し、向うもぜひ公開してもらうように要求いたしまして、そうして世界人類のために起る不幸な事態をできるだけ最小限度に食いとめる、そういうふうに努力をしたいと考えております。
  9. 有田喜一

    有田委員長 ちょっと岡君に申し上げますが、厚生省楠本環境衛生部長がお見えになっておりますので、前の話とちょっと前後しますけれども、一応原水爆の今までの経験もありますし、いろいろな影響について、楠木環境衛生部長から話を承わったらいかがでしょうか。
  10. 岡良一

    岡委員 けっこうです。
  11. 有田喜一

  12. 楠本正康

    楠本政府委員 一昨年のビキニ原爆実験の以後いろいろな問題がございまして、私ども調査をいたした経験もございますので、これらの点を中心といたしまして、簡単にお話を申し上げたいと存じます。  私どもの一昨年の経験によりますと、被害の現われます時期が、大体二つの山になって現われているように思われます。一つは、爆発直後、その地方を一帯として、空気等汚染されることによって被害が当然あるわけでございます。これは福龍丸でその例を示しております。次に、これらの汚染物が次第に静められまして、だんだん被害が少くなってくる。一方、第二次放射能等関係もございまして、約半年以後におきますと、魚類その他が再び相当な汚染度を示して参ります。かような経験からいたしまして、今回の実験の結果の調査は、一応実験直後と、さらにその後半年くらいを経過した時期の二つに分けてやるのが適当であろうと考えております。なお、前回実験の結果いろいろ問題を起しましたが、私どもといたしましても、初めてのことでもあり、経験もありませんし、また試験研究成績等もなかったために、かなり厳密に過ぎると思われる程度対策国内に実施をいたしました。しかしその後事態がはっきりするにつれまして、もっと合理的に、重点的に、効率的に行い得る確信を得ておりますので、まず今回は、現地におきましてできるだけの調査をいたしまして、それらの結果、さらに国内影響があると思われましたときには、いつ何どきでも、それに対して徹底的に国内対策を立てることが適当かと考えております。  しからば、この前の一経験から、見通しはどうかということになるわけでございますが、これはこの前と全く同じ規模、同じ性質実験をしてくれますれば、そのまま一昨年の経験が役立つわけでありますが、私どもの考え方では、おそらくこの前と全く同じ性質実験ではなかろうと思っております。そういたしますと、勢い第二次放射能その他の関係も違って参ります。なお、汚染状況等も違ってくる可能性も考えられますので、一応現地における調査を行いまして、その結果を判断するのが国内の安全のためと考えております。なお、今回の調査は、もちろんただいま申しましたように、被害未然防止一つのねらいでありますけれども、もう一つは、やはりこれらの実験に基きまして、将来期待されるであろう原子力平和利用等に伴ういろいろな被害の防除にも十分な成果を得られるものと考えておりますので、私どもとしてはできるだけ厳密な調査をいたしたい、かように考えております。  なお、念のために一昨年の被害状況をごく簡単に申し上げますと、国内におきまして当初問題になりましたのは、マグロの問題でございます。これらは、その後いろいろ調べましたところが、最初のうちは、からだの表面汚染されておる。従って表面を洗い取ることによって、十分危険を防止できることがわかって参りました。それからしばらくたちますと、主として南方地域プランクトン等が選択的にいろいろな放射能を吸収いたしましてそれをえさとする魚が汚染されることがわかって参りました。この場合には、かなりの蓄積を必要といたしますので、先ほど申しましたように、半年以後それが強く現われてくるような結果になるわけであります。この場合といえども前回の場合には、われわれの食用に供せられる筋肉部への沈着はほとんど見られず、主として骨あるいは内臓臓器に限られたのであります。しかもその沈着物ストロンチウムのようなきわめて注意すべきものではなく、むしろ半減期のきわめて短かい、危険性の少い、亜鉛六五であったことが日本学者の手によって明らかにされたわけでありました。これらの点から考えますと、今直ちに各港で水揚げ魚類の検査をする必要はなかろうという判断を打っております。  次に、雨等によりましていろいろ問題が起きておりますが、これらもいろいろ調べてみますると、たとえば野菜牧草等がなるほど汚染をされました。しかしこれとても、野菜について見ますれば、われわれの調理をして食べるという一つの操作によりましてほとんど問題のないことが明らかになりました。また一時牛乳というようなものがだいぶ問題になりましたが、これらは、牛乳の中のカリウムの放射能が強く現われておったことがわかりました。これを差し引きますと、これまた問題にならない程度になったわけであります。その他お茶類であるとか麦であるとか、いろいろなものに問題が提起されましたが、われわれが現在まで調べたところにおきましては、あえてこれを取り上げる必要はないと考えております。また一方雨の汚染によりまして、水道水あるいは井戸水等汚染されるかということにつきましては、現在も引き続き場所を指定して調査をいたしておりますが、かなり放射能を含む雨が降りましても 、まだ井戸水あるいは水道水等汚染される危険は認めておりません。特に実験的にはかなり放射能を含む水も、現在の濾過方法によりまして、相当量除去できることが明らかになっております。従ってわれわれといたしましては、現在各地で相当な雨が降っておりますが、かような場合には、念のために濾過速度をゆるめるということを指示いたしまして、かようなことを各地で行なっております。これはもちろん念のために濾過速度をゆるめておるだけでございます。なお問題になりますのは、大島その他内地にも若干ございます干拓地等天水使用場所でございます。天水使用場所は、雨が降りますと、まことにこれは困った問題でありますが、これも私ども実験では、かなり濾過能力濾過機能が強く発揮されますので、私どもといたしましては、かような場合には、必ず雨水を完全に濾過して飲むように指導をいたしております。一方、降り始めの雨はきわめて強い放射能を持っておりますが、三十分とかあるいは十五分というような時間がたちますと、ほとんど放射能はなくなります。従って、私どもは、かような場合には、降りたての雨を避けて、しかも濾過を念のためにするということを指導いたしております。なお、大島その他かような地帯においては、いまだこれによる被害は一例も出ておりません。これらがこの前の研究のおおむねの成果であります。  一方、その当時、先ほど申しました第一次の爆発直後の被害につきまして、福龍丸以外に、南方を航海する船員たちにいろいろな不安もありました。私どもはこれらの健康診断を実施し、あるいは船体のいろいろな放射能を調べました。なるほど船体には相当の放射能を認める場合もありましたが、現在なお船員その他で、放射能被害を受けたという確証は一例もございません。  なおもう一つ、この前私どもが非常に困りました問題は、現在も同じことでございますが、日本におきましては、いまだこの放射能測定方法について必ずしも統一されておらぬわけでありまして、いろいろな調べ方、いろいろな材料のとり方等によって、それぞれ発表されております。従ってこれらを私どもが統一して考えてみますると、たとえばある地で何万カウントの雨が降ったと申しましても、はかり方を統一することによりまして、かような著しく極端な差等はないもののように思っております。従って、今後われわれはすみやかにこれら測定方法並びに測定基準というようなものを確立して、どこで調べても、比較のできることが必要だと存じております。それから一方必要なことは、国内かなり放射能に対する不安も生まれておるようでありますが、この一つの原因といたしましては、いまだ国民の間に、通念化されました一つの恕限度、つまり許容量、許される範囲というものが確定されないことでありまして、従っていろいろな不安があるわけでございます。もちろんこれらのものはないに越したことはありませんが、ある一定限度以下ならば、あったところで支障ないことは当然でありますので、これらの点をもう少し確定いたしまして国民の間に広くこれを普及することが、この出題に対処する一つの必要なことではないかと考えまして、目下私どもの手元におきまして、これら恕限度の点につきまして鋭意研究を重ねまして、少くとも来たるべき実験までには、これを確定いたしたい所存でおる次第でございます。
  13. 岡良一

    岡委員 そこで、藤岡委員に重ねてお尋ねをいたします。御所信を明確に御披瀝願いたいと思いますのは、先ほど申しましたような趣旨で、今回の調査は、これがきわめて被害の乏しいものであれば、これに越したことはない。しかしいずれにいたしましても、今回日本が行わんとする調査は、これは原子力平和利用ということに連なるその目的のためには、あくまでもその資料を公開して、世界の心ある科学者はもとより、すべての人たちにこのような影響があるということを知らしめることによって原子力委員会の本来の平和利用という目的を大きく推進するという、大きな御勇気、御決意、御構想があってしかるべきと私は思うわけであります。こういう御決意がありまするかという点を、あらかじめ承わりたいと思います。
  14. 藤岡由夫

    藤岡説明員 御説の通りのことと考えております。
  15. 岡良一

    岡委員 そこで、今いろいろお話を承わりますと、たとえば許容度の問題にしても、また船を出すにしても、これからの問題にみな残されております。ところが、実験は四月二十日から八月三十一日という目の先にきまっておるわけでありますが、私どもは、この国家的規模において綿密な調査をしようというその組織が、まだ十分固まっていないという懸念を大いに感じておるわけであります。これはぜひとも一つ皆さんの御協力によって、すみやかに調査の体制、必要なる予算等についても十分に早く固めていただきたいと思います。  そこで、今いろいろ御報告がありました点について、二、三私どもしろうとでありまするから、しろうと並みのお尋ねではありまするが、お尋ねをいたしたいと存じます。まず第一に、危険区域が設定されました。一昨年のビキニの場合は、たしか五万余平方マイルでありました。今度は四十二万一千二百五十平方マイルとかいわれております。前回に比べては七、八倍にも近いような広大な地域が危険区域になっております。しかもその期間も、四月、五月、六月、七月、八月と、かなり長期間になっております。先般国会原水爆実験禁止の要望を政府は伝達され、その結果アメリカ国務省からその返事が公文書で参っておるはずでありますが、その内容は、おそらく原子力局長御存じと思いますので、簡単にお漏らし願いたいと思います。
  16. 佐々木義武

    ○佐々木政府委員 これはむしろ外務省から御報告申し上げた方が適当かと思いますが、公式の文書が参っておりまして地域の範囲あるいは期日等を明示してございます。ただその見出しに、実験後の影響を科学的に海洋調査をしたいという計画を持っておりますので、右に関して日本側から何らかの調査希望の事項がありましたならば申し出てもらいたいという話がありまして、こちらの方でも、できますれば、両方の資料がそれぞれ交換なりあるいは話し合いができますれば、なおさら今後の対策と申しますか、福祉上の影響にも非常に好結果を及ぼすのではなかろうかと思いまして先ほど藤岡先生からお話がありました事項等がだんだん固まって参りますれば、そういう方法も考えたいというふうに思っております。
  17. 岡良一

    岡委員 先般アメリカ原子力委員会のストローズ委員長、あるいけアメリカの軍事評論家のハンソン・ボールドウィンあたりのニューヨーク・タイムズに発表しておる所見等を見ますと、今度は前回ビキニよりは小型である、しかし前回は確実なもの三回、未確実一回というふうな回数であったが、ハンソン・ボールドウィンは、少くとも十二回はやるということでありますから、一回の爆発規模は小さくても、回数がはるかに多いということで、この汚染度も相当なものが実は心配されるわけです。こういう規模については、別にアメリカ側として正式に日本から尋ねれば、知らしてくれるというようなことにはならないのでしょうか。
  18. 佐々木義武

    ○佐々木政府委員 正式文書でなく、訳文で恐縮でございますが、それによりますと、来たるべき一連の実験には、一九五四年の一連の実験に使用されたものより概して小規模の兵器が含まれるだろうとストローズ委員長は発表し、今回の最も大規規な実験の放出エネルギーですら、一九五四年の最大の実験よりは実質的に下回ることが予想される、こういうふうな訳文になっております。
  19. 岡良一

    岡委員 それから、先ほど来水産庁あるいは厚生省のお方の御報告を聞きまして、私どもまず感ずることは、いわゆる灰の分析の問題だと思うのです。先ほど来御指摘のように、一昨年は非常にあわてた。しかしジンク六五だったら大したことはない。みんなはストロンチウム九〇だと思ったからあわてたというようなことがあったわけですね。灰の分析は、この調査の基本的な問題だろうと思うのです。これが大したものでない、半減期が二時間か三時間のものならば、棄てておいていい。ストロンチウム九〇なんかだったら、〇・五ミクロン飲んだって危ないのですから、そこを一体どうしてお調べになるつもりでありますか。
  20. 楠本正康

    楠本政府委員 前回は降灰、特に福龍丸の降灰、あるいはマグロ魚体等から収集いたしました材料、あるいは非常に大量に降った雨等からこれを分析いたしまして、微量分析をいたした次第でありますが、今回も当然まず最初に実験直後調査船によって収集されました材料は、いち早く内地に送りまして、微量分析を実施する。あるいは従来もやっておりますように、内地の雨その他につきましても、サンプルが集まり得ますれば、これを直ちに分析いたしたいと思っております。  なお今回は、ここにも書いてあろうかと思いますが、サンプルは南方調査船が集めますほかに、南方を航行いたします漁船あるいはその他の船にもお願いをいたしましてできるだけ広い範囲でサンプルを内地に急送いたしまして、内地のそれぞれの試験研究機関で分析をいたしたい、かように考えております。
  21. 岡良一

    岡委員 前回は、福瀧丸の船体などから十グラムばかり試験管に集めて、東大の放射線教室内でも、分けて辛うじてあれだけのデータを出したわけです。しかし今度はああいうことはほとんど望めないと思う。これは気象台の方から先ほどお話があったが、空気中の放射能灰できわめて微量で、〇・五ミクロン以下と言われておるようなものは、一体科学的の分析の試料に耐え得るだけのものが集められるものでしょうか。
  22. 楠本正康

    楠本政府委員 この前は魚体からも検査ができましたし、また一時愛知県等の一部にごくわずかな放射能灰と申しますか、ちりと申しましょうか、こういうものが多少散布されました。これらを調べましたところが、辛うじて分析が可能でございました。従いまして、今回も南方で集めますサンプルによりまして、当然微量分析ができるのではなかろうかと考えております。
  23. 岡良一

    岡委員 愛知県にたまたま放射能の灰が降ってきた、これは偶然だと思うのです。今度は組織的にサンプルを集めようというのですが、しかし南方だってあれだけ広大な地域で、日本が三つも入るような区域が危険区域となり、そこへ立ち寄れないということになると、サンプルとしての灰が手に入るかどうか疑問だと思う。しかも問題はそのサンプルがどういう科学的な組成を持っておるかどうかということが、この調査の眼目でなければならない。一体それができますか。どうも楠本さんはアメリカ原子力委員会の代弁のようで、きわめて楽観論をお吐きだけれどもアメリカだって自分の国でいいものだったらネバダでやるはずです。それを中部太平洋までやってきて、人さまの迷惑もかえりみずやるということが、やはりわれわれの重大な関心を払わなければならぬところなんですが、一体それでやれますか。
  24. 楠本正康

    楠本政府委員 前回経験からいたしましても、海水あるいは空気中の塵芥その他から、微量分析が十分にできる確信を持っております。また広い地域でもありますので、できるだけ各地からかようなサンプルを集めますために、私どもといたしましては、単にサンプル収集は調査船にたよらず、ただいまも申し上げましたように、漁船あるいは南方を航行する船等にも協力を得ましてできるだけサンプルを多く集めて、これによって常時調べて参りたい、かように考えております。一方国内におきましても、さらに調査研究の態勢を強化いたしまして、これに即応してサンプルを収集し、その微量分析をいたす所存でおります。
  25. 岡良一

    岡委員 前回もああして日本の木村教室や中泉教室があの灰の分析をやって、これを公表したということは、アメリカにとっては大へんな痛手だと思う。ローゼンバーグ夫妻をわずかなことで電気いすに乗せているアメリカにしてみれば、あの灰の分析というものは、これは非常な痛手だったと思う。痛手というよりも、あれが原子力平和利用へという良心に対しても、僕は大きな推進になったと思う。だからこの調査もせっかく国費を投じて総合的にやろうというなら、何よりもこの灰をとらえる。そして灰の分析をはっきり公開する。このことは、われわれ日常の有力な蛋白源としている太平洋魚類汚染というもので、どの程度実害があるかという基礎にも当然なるわけです。だから、この灰の正体をぜひともつかましてもらう。これが僕は今度の調査のポイントだと思うのです。今、楠本さんから非常にのんびりと、何とかなりそうだというお話なんですが、私どもの古い科学の実験経験では、なかなかそう簡単に参らないように思う。どうもこの点が少しまだ行き届いていないと思うのです。それはそうといたしまして、あと田中君から、関連質問があるそうですから……。
  26. 田中武夫

    ○田中(武)委員 日本アメリカソ連との谷にあるといいますか、アメリカビキニ実験をすれば表日本の方へ、またソ連実験をやれば裏日本の方へ灰が降ってき、放射能の雨が降る、こういうような状態であります。先日の新聞によると、何か五万カウント放射能を含む雨が降ったというようなことをいわれておるのですが、今日までこれらに対する基礎的な調査組織というものがなかったということが、私どもは遺憾だと思うのです。政府としては、むしろこういうような状態について、国民からその被害を隠すような状態にあったのじゃないか、このように思うのであります。そこで、これは原子力局長にもお伺いするのですが、きょうここにもらいました「原爆実験影響調査に関する打合せ事項」というのがありますが、これはどういう人たちが寄ってお作りになったのか伺いたい。
  27. 佐々木義武

    ○佐々木政府委員 これは、先ほど藤岡委員から御説明がありましたように、関係各省並びに学術会議のエキスパートの皆様が数回会合を持ちまして先ほど岡さんから御質問がありましたような目的、あるいは組織、あるいは今後の調査方法、そのあとの処置といったようなもの等に関しまして協議を重ねたのでございます。これは詳しく申しますと、ほとんど各省漏れなく参加しているといってもいいほど広範囲のものでございまするが、その結果いろいろ議論をいたしましてそれぞれの分担区分をきめた方が、こういう広範な問題を進める際に一番実効的でなかろうかということで、この書面にありますような方法を定めまして、そしてこういうことで各省間で話を進めていきたいというふうなことになっているわけであります。
  28. 田中武夫

    ○田中(武)委員 関係の各省間で打ち合せて、こういうようにきめてやるのだという、これはけっこうだと思うのですが、問題は、打ち合せた事項をどのように真剣に進めていくか、具体的に進めていくかということがあると思うのです。先ほど私が申しましたように、今日まで、こういうことに対して、科学的な調査、これをやるところの組織というものがなかったことが、むしろおかしいと思う。きょうの朝日新聞ですが、それには国立の遺伝学研究所の松村という人が、「放射線防御第一、あまりにも無関心な」、こういうようなことで若干の意見を述べているのです。これによりますと、放射能の人体に及ぼす障害は、直接の障害とまた間接の障害があって、間接の障害は遺伝までするというようなことも言っているようです。また先ほど水産庁からのお話で、これはもう言われるまでもなく、こういうような状態が日本漁業界その他に及ぼしたいわゆる経済的な影響も大きいと思うのです。そういうことについて、今日までの調査方法を見ておりますと、たとえば、先ほど岡委員も指摘しておられましたが、厚生省楠本さんは、あまりにも楽観的なことを言っておられる。こういうように思うのです。たとえば、一々検査をする必要はないとか、あるいは水道はそいうものが含まれていない、井戸の水は、それを濾過することによって問題はない、こういうようなことを言われたと思うのですが、今日の国民の常識としては、うっかり水も飲めない、こういうのが常識だと思うのです。この国民の不安をどのようにして除くか、こういうことが大事だと思うのです。そのことについて今まで手抜かりがあったと思う そこでお伺いしたいのですが、この打ち合せ事項によりますと、予算の点につきましては、原子力委員会でその経費の調整及び推進をはかる、こういうように抽象的にうたわれているのです。先ほど藤岡委員のお話では、この予算のことについてもまだ具体的になっていないようなお話であったのですが、それじゃどの程度具体的に考えておられるのか、そういう点についてお伺いしたいと思います。
  29. 藤岡由夫

    藤岡説明員 お答え申し上げます。先に予算のことについてでございますが、ここにもありますし、先ほど楠本政府委員のお答えになったように、放射線に関する測定基準がどうも統一されていない。何万カウントというふうにいわれますが、これは機械によっていろいろ違いますし、むしろミリレントゲン・リッターという形に表現すべきである。いろいろそういうふうな統一をすることのための研究、これを日本学術会議の放射線影響調査特別委員会の方々にお願いをしてしていただくこと。それから空気汚染を調べますこと、従来は雨の放射能研究が多かったのでありますけれども、雨が降らなければ空気中の汚染がわかりませんので、やはり直接空気汚染研究しなければいけない。これはまだ日本といたしましては研究時代でございますが、その確実な調査ができるようになりましたならば、気象台のようなところで現業的に行なっていただきたい。それから科学分析によります外来放射能の元素の決定です。これは先ほど岡議員から非常に御熱心な御指摘のあった問題でございますが、これにぜひ力を入れなければいけない。これらはいずれも文部省関係学者に依頼するつもりでおります。それから食品、食料品等の衛生的の検査、これも厚生省でやります。それから中央気象台は、現業といたしまして、空気、雨水等の汚染調査、これを陸上で観測をしなければいけない。以上はいずれも予算を計上いたしまして、新たに始めなければならない事項と考えております。それから農作物等の汚染調査のような問題は、これはすでに現在行われておりますので、それを気をつけてやればよろしいということに考えます。それからなお最後に大きな問題でありますが、調査船を出します経費であります。これは船の巡航、それからいろいろの機械器具の改装等をいたさなければならない、そういうふうなもの。これの金額につきましては、大体の見積りの申し出はありますけれども、なお厳密に調査をいたしました上でお願いしなければなりませんので、今日のところ差し控えますが、大体三千万円、そういうふうに考えます。
  30. 田中武夫

    ○田中(武)委員 そうしますと、そういう予算原子力委員会の方において撮っておいて操作せられるのですか、それともそれぞれ所管のところが持っておってやれるのですか。
  31. 藤岡由夫

    藤岡説明員 これは、ただいまのところでは、それぞれ関係各省から要求をいたします。そうして原子力委員会といたしましては、これを側面からバック・アップする、そういう考えでおります。
  32. 田中武夫

    ○田中(武)委員 そうすると第九項に書いてある調整推進ということになるわけですね。  もう一つお伺いしたいのですが、先ほど来言われておりますが、われわれといたしましては、そういう実験をしてもらわないのが一番いい。従って禁止に関する署名は一千万をこえておる。また衆参両院においてこれが決議をしたということは、何回も言われておる事実の問題であります。ところが、これを押してやろうというアメリカに対してもっと外交的な力によって話してもらう必要があるのですが、やられた結果について、先ほど来申し上げているように、国民全般がきょうきょうとしておる。うっかり水も飲めない、雨の降るときにうっかり外にも出れないというような心配を除くことが必要だと思う。そのためには、もっとこういう問題に予算をかけ、また力を入れてやってもらわなければならぬと思うのです。たとえば、きょうは文部省の関係の方はおられませんが、今後日本原子力平和利用ということに対してもっと推進していくためには、学校等においても、こういうようなことにもっと知識を与え、また研究する必要があると思うのです。何か理科教育振興法とかいう法律があって、各学校で理科学の実験用に何か器具を買うときに補助金が出る。政令か何かによって何々金というふうにきめてある。たとえば、原子力測定する機械を買い入れるという問題が起きておるのですが、置いたくても、そういうことを研究したくてもできないという学校もある。そういう点も考えてもらいたいと思う。たとえば、ほんとうに国民の不安を除くために、組織的な、科学的な調査をやるということになれば、測定機あたりも一定したものを十分に備えつけなくちゃならないと思うのですが、そういう点については、現在各関係においてはどのようになっておりますか。
  33. 藤岡由夫

    藤岡説明員 お答え申し上げます。測定機は、現在方々のメーカーが作っております。これについての性能規格検定というふうなことをしなければなりませんが、近ごろ工業技術院の標準規格というものがきまりまして、機械等も今後は性能を統一的に規定できることになっております。  それから、先ほどお尋ねになりました放射線の影響に関する基礎的の研究は非常に大幸でありまして原子力平和的利用については、これは並び行わなければならぬと思います。あまりにも無関心であるというおしかりでございますが、私どもといたしましては、無関心でいるつもりはなく、大いに進めなければならぬと存じております。一、二年前から放射線に関する研究所を作らなければならないということが議題に出ております。今度原子力研究が軌道に乗るにつきましては、その放射線に関する研究所を作る。従来文部省では基礎的なことをやりたい、厚生省は応用面をやりたいということになっておったのでありますが、はっきり分けることもむずかしいし、重複する点もありますので、一本にまとめたものを科学技術庁に付置することがよろしいという方針がきまっておりまして、これに関する準備並びに臨床的に非常に必要なことだけ本年度は行う、明年度から研究所を設立するということで、本年は千七百万円の予算でやっております。これについての研究は、原子力平和的利用について同時に進めなければならないと思っております。
  34. 田中武夫

    ○田中(武)委員 関連質問でございますので、これでおきたいと思いますが、最後に希望を述べておきたいと思う。先ほど藤岡委員も申されましたが、今までの調査方法はまちまちであった。これを表現する何カウントというようなことについても、まちまちであったと思う。そのためには、十分な性能のある測定機を十分用意することも必要であると思う。また先ほど来申し上げておるように、厚生省の衛生局においては、あまりにも事を楽観しておられるように思います。こういうことでは、僕は、一般国民の現在のこの問題に対する不安の推移からいけば、あまりにも楽観し過ぎておると思う。従いまして、この問題に、厚生省の衛生局としては真剣に取り組んでいただきたいと思います。
  35. 岡良一

    岡委員 今、田中君からも指摘されたことでもありますが、私どもも同感です。その点は、イギリスでも今年はモンテベロ島でやるし、二回もやる。来年は水爆実験をクリスマス島でやるというようなことをはっきり公式に言明している。シベリヤからもいつ何時、西風に乗ってやってくるかもしれないというような状態であるが、これはまことに私どもとしては好ましくない。日本原子力委員会の悲劇だと思うのです。しかし、それにしてもこの課程というものは、恒久的な組織を持って、少くとも当分これが必要だと思う。ただアメリカが四月二十日から始めるぞというので、単に弥縫的に調査をお義理でやるのではなく、もっと真剣に恒久的な組織を持って、原水爆実験に関する一切の調査をする。特に日本としては、地球上で唯一の被害国でもあり、最大の被害国である。ここに、務めとしても、日本科学者が総動員でこの調査にかかる、そういう恒久的な組織を持つ必要があると私は思う。これは原子力委員会の大きな仕事だと私は思いますが、藤岡委員の御所見をお伺いいたします。
  36. 藤岡由夫

    藤岡説明員 ただいまの問題は、原子力委員会としては、私その一員といたしまして、まことに同感であります。原子力委員会が発足いたしましたのは、今年の一月でございまして、それ以来、この予算、法律等にもっぱら追われておりましたところ、アメリカの発表があり、最初はこれを原子力委員会が取り上げるべきであるかどうかということについても、いろいろ意見があったのでございます。これは要するに、原子力委員会ができましてまだ間もないものでございますから、何をすべきかということが問題になると思うのでございます。しかしこれは先ほどから申しました理由から申しましても、また日本原子力委員会ができた以上、この原子力委員会が当然取り上げるべき問題であるということに意見が一致いたしまして取り上げたわけでございます。今回は非常に急でございまして、それを取り上げましたのが約一カ月前でございますが、それから鋭意努力いたしまして、ようやくある程度コンクリートな案ができつつあるところでございます。これは非常に突然でございますので、今回は前回に引き続きまして、前回お世話を願った厚生省中心にして、原子力委員会が音頭をとってという建前でおりますけれども、お説の通り今後こういう種類の問題がもし起るとすれば、その調査などに対する恒久的な機関が必要であるということは十分感じております。でございますので、今までで進みましたけれども、今回さらにその間に考えを練りまして、恒久的な制度を作りたいということは、ぜひそういうふうにお願いいたしたい。関係各省、国会のその方面の方々と十分にお話をいたしまして、今後の恒久的対策というものは考えるようにしていきたいと考えております。
  37. 岡良一

    岡委員 なお、先ほど実験の結果起り得る影響についての雨なり空気なり等の測定の規格統一等についていろいろ御所見がありました。私も実はそういう問題がまだまだ日本では不十分なのじゃないかということを痛感しておりましたが、ぜひ御留意を願いたいと思うのです。  いま一つは、これを見ますと、この調査のために出るのは船が一回だけで、二回目はエクア・パックの海洋調査のために派遣する船を利用する。科学的な調査というものの一番必要なことは、この四月二十日以降に行われる原水爆実験の結果、汚染されない以前の状態を把握するということが大切なことだと私は思うのです。これは専門の藤岡先生ですから、科学者としてまずそれがどうしても必要じゃないかと思うのです。こういう点、まだ全然考慮が払われておらないようでありまするが、日もないといえば日もないことでありまするけれども、この点は私は調査としては手ぬかりじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
  38. 藤岡由夫

    藤岡説明員 まことにお恥かしい次第でございますが、お説の通りでございます。ただ私どもが考えましたのは、できれば爆発のあります以前の状態を知りたい。それから直後にそのあたりにくっついておりますもののサンプルの採集し得る時期にやりたい。それから前回経験によりますと、数カ月後に魚に対する汚染のマキシマムがありますので、それもやりたい。いずれもその通り考えたのでございます。ただ実際にその船を動かすということになりますと、各官庁でお持ちの船は、それぞれ一年の運航計画というものがございまして、なかなかすぐ出してくれというわけにも参りません。昨日も船をお持ちの官庁の方皆様にお集まり願いまして、どこかで出していただけないかということを言ったのでございますけれども、あるいはドックに入れなければならない、あるいは北に行かなければならないというような計画で、なかなかちょうどいいというのがないのでございます。それから爆発直後ということになりますと、爆発の時期がいつであるかということも知りたいのであります。これも外務省にお願いしますけれどもアメリカとしていつやるということは、知るわけには参りません。そういうわけで爆発前にはかり、爆発があってすぐに行くというふうな計画を立てましても、船の運航計画というものは何月何日ごろにどこを出るということを相当前に立てなければなりません。また一回参りますよりも、二回、三回と参れば、経費も非常にかかる。そのあたり、私どもも、二同出して、一回はエクア・パックのを利用するというようなことは不本意ではございますけれども、そういう状況に合せましてやはりそういうことでがまんしなければならないというのが心情でございます。
  39. 岡良一

    岡委員 南極の観測年の日本の準備など、これは政府というよりも民間の協力もあって、すでに網走へ行き、乗鞍へ行くというようにして準備おさおさ怠りない。ところがこの重大な観測に船頭多くして船、山へ登るというのか、船が多くしてしかもその船が山へ登るというのか、非常に停滞が感ぜられるのです。私は非常に不熱心だと思うのです。皆さんの御責任というのではなくて、もっと前からわかっておることであり、大いにやるというのであれば、さっとその大勢に応じて出ていけるだけの態勢であっていいと思うのです。  それはそれとしまして、第七京丸というのがこの前、現在指定されておる危険区域外を走っておって船長初めみんな白血球が減少したというようなことで問題になったことがあります。この危険区域というのは、これは楠本さんの御専門でしょうが、一体これでいいのでしょうか。危険区域とは、これ以外のところを船が走っておれば絶対に乗組員は大丈夫という保証を与えることのできる者が一体だれかおるのでしょうか。
  40. 楠本正康

    楠本政府委員 今回はかなり広く危険区域が設定してございます。しかしながら、これも御指摘のように、風向き等から、場合によりますと絶対安全だということは保証し得られないものとは考えます。しかしこれらの点は、今回は南方に出ます船一切につきまして、十分あらかじめ連絡をいたしましてかようなものを未然に防止する措置が必要かと考えております。
  41. 岡良一

    岡委員 第七京丸の被災の実相を三月三十一日の新聞で見ると、現在指定された新危険水域よりもなお西方七百マイルのところを航行して、船長初め二十三人みんな白血球の減少を起している。それだとなると、これは水産庁としても大問題と思うのですが、こういう事実が発表されれば、迂回をして南方の漁場に行こうというよりも、大体行くこと自体が危険だということが、こういうことで出てきておる。こういう点についての顧慮、対策というようなことは、水産庁として何かお考えでしょうか。
  42. 岡井正男

    岡井政府委員 この前の福龍丸事件がありました苦い経験にかんがみまして今回は早目に、アメリカからの情報がわかりました際に、各関係船には確認証を取りつけて、確実に情報を流しております。この前の福龍丸事件の苦い経験に徴しますると、あれは非常に近いところであったからああいう悲惨な結果が出たわけでございまするが、相当な距離を離した場合に、まあ第七京丸の場合、今、岡先生が御指摘になったときも、乗組員が若干不用意であったかと思われる節があるのでございます。これは灰らしいものの影響を受けたと思われる際に、できる限り海水ででもいいから丁寧にからだを洗う。服装などもそのときにとっさに、迅速に、きれいに掃除をするというように手配をしてもらうと、ああいうひどい日にあわないということも、漁師あたりは苦い経験上、勉強しておりますので、そういう点も、われわれとしてはできる限り迂回をすると同時に、そういう場合の注意も十二分に与えて、危険を避けたいと思っております。もっとも相当迂回をいたしまするために、事業上の損失、いわゆる迂回によるロスが相当出ますから、その点は、危険区域が拡大されれば、それに比例して間接損害といいますか、直接損害というか、それは当然起り得るものでございます。それは別個の問題として、私らは強く要求するつもりでおります。
  43. 岡良一

    岡委員 私は損害に関する補償は、なかなか見舞金などでは済まさないと、去年、一昨年から言っている方なんですが、それはまあ別といたしまして、そういう状況等と、第七京丸の連中は数時間裸でおったらしい。ところが灰といったって非常にこまかい灰だから、そんなものがあるとは思わない。ところが吐きけがしたとかいって、自覚症状があって見てもらったら、白血球の減少、放射能症だという。ところが漁師のことだから、向う意気が強いので、どんどんやると思うんですが、よほどこれは厳重な、もっと具体的な指示を与える必要があると思うんですよ。ただ裸にならないくらいじゃ済まないと思うんです。海水で洗うくらいじゃ済まないし、その海水も汚染されているかもしれない。その点、楠本さんあたりの専門になるんですが、具体的に政府としての対策を講ずべきものだと思うんですが、いいかがでしょう。
  44. 楠本正康

    楠本政府委員 まことに御指摘の通りでございまして、こういう点は、逐次南方に参ります船員等にあらかじめよく連絡をしておくことが必要かと存じます。しかし先ほども少しく触れたわけでございますが、福龍丸以外の船では、現在なお確実に放射能症という事例は確定されておりませんので、この点も私ども非常に重大な問題だと思いまして委員会によりまして、あらゆる学者意見を総合して判断を急いだわけでございますが、いまだ確たる結論は得ておらないという状況でございます。ただいま御指摘の第七京丸の乗組員につきましても、目下研究を続けておりますが、いまだこれが確実に放射能症だということは言い得ない状況でございます。
  45. 岡本隆一

    ○岡本委員 一、二点ちょっと関連して質問したいのです。前回ビキニ実験のときでありますが、あの前は、そういうことについての経験がなかったために、今も楠本環境衛生部長が指摘されたように、非常におそれたために、魚なんかどんどん捨ててしまったというような点で、不必要な程度にまで被害が大きかったということは考えられると思うんですね。そこで前回、たとえば漁獲物をどれくらい捨てたかとか、あるいはまた漁場をどのように変更したために損害を受けたかとか、いろいろ有形無形の損害があったろうと思うんです。それの補償が総括的にどの程度あったかということを、およそ累計が出ているだろうと思うんですが、一つそれを聞かしていただきたいと思いいます。それを振り返って批判してみて、ああまでしなくてもよかったというような批判を加えていくと、実際的にはどの程度被害でとどまれたかということも考えていけると思うんです。それから最近新たに行われようとする実験の、日本の経済その他、国民に及ぼす影響というものを、この前の実験と同じとすれば、類推していけると思うんです。だから、そういう点を聞かしていただきたいというのが第一点なんです。  それから、今、楠本環境衛生部長のお話を聞き、あるいはその他の方の御意見を聞いておりますと、一番の先決問題は灰の分析で、そうして半減期の非常に短いものであれば大した影響はないのだということです。そうしますと、早期に灰を手に入れて、あるいは向うから直ちにその報告をくれればもちろんそれにこしたことはないのですが、もしその報告が得られないとすれば、早期に灰を入手して、それの分析をやって、そうして水産物その他に及ぼす影響が相当憂うべきものがあるとか、あるいはそう心配はいらぬのじゃないかというふうなことによって水産業に及ぼすところの影響というものは非常に大きいと思うのです。それを早くキャッチしなければならないと思う。そこでアメリカから、実験をいつごろ行うということの連絡がもらえるものか、もらえないものか、かりにもらえないものと仮定して、むしろこちらから危険水域の中へ、一定の防御装置を備えた船を入れて、その灰を取ってくるということが可能か不可能か。可能であれば、そうして早く灰の分析をやれば、水産業などに及ぼす被害を小さく食いとめることができると思う。そうでなければ、実際に確実にそれを行うということは、私は現在の状態では、空中のものをそんなに簡単に微量、定量をやるということはなかなかできないと思う。だから、そういう観点からいきまして、相当機関たたなければ、その実験によるところの漁業その他に及ぼす影響がわからないということであれば、結局その間、かりにストロンチウムのような半減期の非常に長いものがあったときには、微量でも影響がありますから、そういう点についてわれわれは一番重要な灰の入手ということに、もっと考え方を突っ込んでいっていただいたらどうかと思うのです。それについての御意見を伺いたい。
  46. 楠本正康

    楠本政府委員 他の問題は水産庁の方からお答えがあるかと存じますが、先ほど来問題になっております灰のサンプルとしての入手は、きわめて重要な問題でございまして、御指摘のように、これによって国内対策等も左右されることになるわけであります。従って私どもとしては、先ほど来申し上げておりますように、できるだけ広い範囲からこれらのサンプルを早急に選びたい、かように申し上げておるわけでございます。  なおサンプルが果して得られるかどうかという問題でございますが、空気中に浮遊しておりますごく微量の塵埃その他につきましては、現在灰取紙というのがアメリカにおいて新たに考案されております。また一方、吸引式に集めることのできる機械も考案されております。従いまして、もちろん今回の調査船はこのような設備を整えて南方に出かけるわけでございます。私としましては、先ほど来お答えを申し上げておりますように、灰の微量分析は確実にできるものと確信いたしております。
  47. 岡井正男

    岡井政府委員 お尋ねの、被害はどのくらいかということでございまするが、若干他の省の関係もございましたが、大部分は水産関係ということです。総額において、二十七億程度に、私の方では一応要求額を査定した結果作りましてアメリカヘぶっつけたわけです。結論的に言いますと、御承知のように、アメリカからは七億二千万円だけをよこしたという結果でございます。二十七億の中には、額の最も大きいものは、一応マグロの魚がほとんど売れなくなって極端な値下りをした、それから当時福龍丸のああいう事件が起って、一週間というものは、全国の遠洋漁業地に該当するような魚市場が非常に混乱状態に相なりまして、買い手もない、送った魚も中間都市から送り戻すというような状態になった。ひどいところになりますと、遠足のかまぼこなども食うては悪いぞというようなデマが飛びまして、いなかのかまぼこ屋がつぶれてしまうというような混乱状態が起りました。それらの実態調査をいたしましたような額、こういうのがマグロ関係で約九億——市場混乱に基く発生直後の一週間以内のやつが約十億というような額ですが、アメリカ側は、ほとんどそれは間接によるものだろう、日本国民は全部捨てたわけではないから、どこかで安いものをお食いになったのでしょうという意味なのでしょうか、ともかくアメリカは金をよこさなかった。福龍丸のあの船、並びにあの漁獲物一切の処理から廃棄したもの、そういうものが二億二千万円、福瀧丸の船員の医療費とか、乗組員の慰謝料とかいうものが両方足して約八千万円、その他事件処理費もありまするし、直接損害であるか間接損害であるかで相当議論になった。いわゆる危険区域を迂回して行くための漁船に及ぼす損害というものが約一億円ほどあったというような関係のものは、向うも一応見たわけです。以上総額二十七億のあらましをお答え申し上げました。
  48. 岡本隆一

    ○岡本委員 もう一つお伺いしたいのは、今度は気象台長にお伺いしたいのです。昨年の四月、五月にネバダで実験をやったというお話でございました。それから八月にソ連地域実験があったのが気象観測に出ているというお話でございました。いずれも陸地でやっていることだろうと思うのですが、ただ観測の結果がどの程度の大きさのものかというふうなことを、一つお伺いしたいのです。ビキニの場合と比較して、どの程度のものかということがわかるのか、わからないのか。そして私それを知りたいというのは、陸地での実験と海の実験とでは、あと被害影響が非常に違うと思うのです。陸地でやりました場合には、その灰はいずれも地上に落ちておりますから、非常に飛散しやすいと思う。だから風の吹くたびにどんどん幾らでもその灰は遠隔地へ運ばれていって、何段飛びといいますか、何段も運ばれていって、相当広い範囲に灰が流れていく。灰は長く生きて放射能を振りまいていく。そういうような実験ソ連にしてもアメリカにしても陸地でやっている。このことは、われわれの原爆被害の人体に及ぼす影響の評価の置きどころというものについてのある程度の考え方の基準になってくる。それで海の上へ落ちますと、そういう微細のものでありますから、やはり水の中に溶ける。溶けるからもうさらに飛散しないわけでありますが、海洋の中でやるのと陸地でやるのとでは、実験の及ぼす影響に非常に違いがあるのに、なおかつアメリカあるいはソ連は陸地でやっておる。そういうような点で、その大きさについてあるいはそれが非常に小さいものだから陸地でやったのではないか、私はこのように考えるのですが、その辺についての結果をお知らせ願いたい。
  49. 和達清夫

    和達政府委員 私どもはただ観測をいたしておりますので、大きいから海でやるとかいうことはよく存じません。ただ観測結果を申しますと、ビキニの場合は、まだ観測組織が十分確立されておりませんので、はっきりあとのと大きさを比較することはできかねますが、東京あたりに一万カウント程度の雨が降っておる。この観測が定期に開始されて以来のネバダの実験でありますが、これはアメリカにおいて行われ、この灰は西側から回ってきております。それで一番多いのが札幌におきまして五千カウントという程度でございます。その後昨年の十一月、ソ連地区で行われたといわれておりますもののために観測されました放射能は、多いところは三万カウントぐらいにもなっております。なお今回三月下旬にわが国観測されましたのはたった一カ所でありますが、室戸において四万六千カウントというのがあります。このように観測された値は、気象の関係、特に雨が降るときの雨の降り方の状態とかいうもので非常に差異を示すものでありまして、簡単にこれをもって日本全体にどういうふうに降ったかということをきめることはむずかしいのでありますが、気象台関係の十五カ所の観測を総合しまして、大体降った灰あるいは雨の中に含まれる放射能の強さというものをお互いに比較することはできる。ただこの日本へ来た放射能というだけでありますと、昨今のもの、あるいは昨年十一月ごろなどは相当に強いかと思われます。しかしそういうものは拡散していきますから、期間が長いとかいうことがありますので、ただ強さだけで、総量ということになりますと、もう少し勘定してみなければわからないと思います。
  50. 岡本隆一

    ○岡本委員 藤岡先生にお伺いしたいのですが、今のお話ですと、ネバダの陸地で相当大きな実験をやっているようでありますが、そうなってくると、相当アメリカ自体に大きな影響がありそうなことを、アメリカ自分の陸地でやっている。ネバダというのは、アメリカの東海岸に近いんじゃないですか。だから風の方向ですぐ大西洋へ行って、そうして回って来たのだろうと思うのですが、風の方向いかんによれば、アメリカ内地へも相当な灰が振りまかれるおそれがあるような実験アメリカでやっているということについて、藤岡先生はどのような観測をなさっていらっしゃいますか、その点をお伺いしたい。  それからもう一つ、気象台長にお伺いしたいのです。私その真偽はわからないのですが、水爆実験が行われたあとで、やはり気象異変が出て、日本に雨が降っているというふうなことが新聞にはちらほら書かれているのです。そういうことは事実予想されるのでしょうか。あるいはこの間の雨にしても、ソ連実験影響じゃないかというようなことが言われておる。現実に広島の原爆のときには雨が降っておりますし、それからまた私は京都で経験しておりますが、大阪で大空襲があったときにもやはり雨が京都に猛烈に降りました。しかも何か空がすっかり色が変って、非常な気象異変がございました。従って水爆実験というものが、大きな広い範囲における気象異変を起すものかどうなのか、それを気象台長に教えていただきたい。
  51. 藤岡由夫

    藤岡説明員 アメリカ国内実験を行なっておるのはどういうふうな考え方であるかということにつきましては、私、自信を持って申し上げることはできないのでございます。ただばく然と考えておりますのでは、アメリカではずいぶん空気汚染、水の汚染等に関する研究をいたしております。それでつまり原爆の大きさが割合に小さくて、砂漠でやってもその被害が生物に影響を及ぼさないと思われる程度のものを向うでやり、砂漠では心配だというのを太平洋水域でやっているというごく常識的なこと以上、私としては何も申し上げる自信はないのでございます。
  52. 和達清夫

    和達政府委員 原爆と気象との関係でありますが、まず広見とか長崎の原爆に対しましては、確かに相当の雨が降っております。あれはその地域におきます熱の作用が大きいので、原爆でなくても、大空襲の場合には常に雨を伴っております。しかしお尋ねは、むしろこういう実験をしますと、広い範囲の気象を変化させるのではないかというようなことであったと思います。これに関しましては、学者によりましては相当に影響があると言う人もありまして、いろいろその論文も出ておりますが、まだ世界の学界におきましてはっきりそれがそうであるという結論にはなっておりません。
  53. 岡本隆一

    ○岡本委員 先ほどお伺いしました中で、水産庁からお答え願いましたが、二十七億の被害があった。その中のいろいろな細目を御説明願いましたが、漁獲物を捨てたとか、あるいは迂回をしたために間接の被害、あるいは直接かもしれませんけれども、そういうものについて、あとから振り返ってみて、こうまでしなくてもよかった、不必要に恐怖を持ち過ぎてやったという点での観察というものについての御返事をいただけなかったように思うのです。それはなかなか判定もむずかしかろうと思うのですが、大まかにいってたとえば直接の被害者に対する補償とかいうようなものはそのままなんでしょうが、その他については、それを今度半分とか三分の一くらいには見積られるだろうという点で、どういう観測をお持ちになっていらっしゃるのでしょうか、それだけもう一つお答え願いたいと思います。
  54. 岡井正男

    岡井政府委員 あの当時は、先ほど厚生省の部長からもお答えになった通り、何さまわからないものですから、一番危険なものが含まれているということを前提にしてカウンターも出し、廃棄もさすということ以外に、安心して国民に蛋白給源として提供できなかったような事情にありますので、今、振り返えれば、あの際にそう危険でなかったということがいち早くわかっていれば、遠方から取ってきた魚をあんなに廃棄処分で捨てるという必要もなかったし、また市場混乱もあんなには起らなかっただろう、かように考えますると、少くともあのときに廃棄処分をした八億、市場混乱による九億というようなものは、今度いち早く科学陣営によって科学的メスを入れて、安心できる、そう危険物もないということが早目にわかれば、私の方からは厚生省連絡をとって、漁民並びに消費者に対して早くそれを周知させることによって、ああいうような間接損害は出ずに済むだろう、かように思われることを想定すれば、大体あの額というものは何分の一かに減るものではあるまいか。そのかわりに、一方直接危険があるというので迂回さす分——漁師に少くとも一切直接の危険のないようには十分いたさせますが、その場合の損害については、ごうも減らないと思います。
  55. 岡本隆一

    ○岡本委員 最後に一点だけお願いしておきたいと思います。これから後も何べんこういう実験が行われるかしれない。実験する限り、向うは新しいものをもって実験するのであって、前のときの調査の結果というものは生きてこないと思います。だから、水爆実験を新たにやられるたびに、われわれはそれに対処する道を考えていかなければならぬ。前にあまり影響がなかったから今度も大丈夫だろうということも、やはり大きくは言い切れないと思うのです。だからほんとうに国民が、放射能の多少ある、そうしてまたガイガーに出てくるのを安心して食べられるようにしていただくためには、そうしてまた不必要にどんどん廃棄するというようなもったいないことをしないためには、やはり敏速にして十分な調査というものをやらなければならない。そうしてまた、その敏速にして十分な調査というものが、初めて非常に多量な海の資源を国民経済の上に生かしてくる道であると思うのです。そういうことになって参りますと、今度の予算は八千万円ですが、八千万の予算を倍にしていただいても、三倍にしていただいても、これはちっとももったいないことはないと思うのです。ことに日本は土地には限りがあるのです。しかしながら、漁場にも限りがあるとはいうものの、何としても海は広いですから、やはり水産資源というものはこれは非常にわれわれ日本民族にとって重要なものである。しかもその重要な水産資源が、このように心ない他国の実験によって、われわれがそれを生かすことができないというふうなことでありますと、ほんとうに真剣に、これに対処する道を日本民族としては考えなければならないと思うのです。だからこの調査機関というものも常設的なものにして、そして大きな予算を組んで、いつでも安心して、海の幸をわれわれの食ぜんに供することができるのだという機構を作り上げていただきたいと思うのです。そうでなければ、実験のたびにおびえなければならないし、また捨てなくてもいいものをどんどん捨てて、もったいないことをするということになりますから、その辺を政府特に大蔵当局にお願いいたしまして、関連質問を終らしていただきます。
  56. 岡良一

    岡委員 十分お尋ねしたいことがあったのですが、時間も参りましたから省略して簡潔にお尋ねしたいと思います。  まず、先ほど楠本さんのお話にもあった恕限度、いわゆる許容量の問題、これは原水爆実験影響調査における大事なポイントだと思うのです。かつてわれわれは国際的なスタンダードとして、一週間連続して三百ミリレントゲンとか、二万カウントだとかいろいろ聞かされております。しかしこれとても、厳密に一体恕限度、許容量はどのくらいかということが大事なテーマだと思うのです。これをどういうふうな形で決定をなさるつもりであるかということを伺いたい。
  57. 楠本正康

    楠本政府委員 この点はきわめて重要な問題でありますので、目下厚生省内に委員会がございます。その中に許容量だけを専門的に検討いたします小委員会を設けまして、実は本日もその会合をいたすことになっています。そういたしまして、できるだけすみやかに、今月の二十日ごろまでに最後的な結論を得たい、かように考えております。
  58. 岡良一

    岡委員 それから調査の対象として、最近特に生物学に対する影響としては、遺伝の問題が非常に問題になってきておるのです。この遺伝の問題について、ビキニの患者が退院をいたしまして、今それぞれ家庭生活に戻っておりますが、その後奥さんは妊娠せられておりますか。
  59. 楠本正康

    楠本政府委員 福龍丸の患者のその後につきましては、県当局に絶えず健康管理をいたさせております。現在まで続けておりますが、今までのところは、特に変化は認めておりません。ただはなはだ残念でございますが、ただいまの妊娠関係等につきましては、さっそく調べましてお答えをいたしたい、かように考えます。
  60. 岡良一

    岡委員 御存じの通り放射能が侵すのは一番若い細胞ですから、骨髄細胞とかあるいは生殖細胞、これが一番やられると思うのです。ところが遺伝の問題の先に、突然変異の先に、一体子孫の繁殖ができるのかできないのかということが重大な問題と思うのです。原水爆人類の絶滅だというのは、問題はそこなんです。そういう意味で、これは健康管理という以上、特に放射能の特異性にかんがみても、この問題が一つの大きなキー・ポイントですから、これは福龍丸の患者だけでなく、やはり危険海域に近いところを航行された人たちについても、日本は大量なマグロ漁船を出しているのですから、これらが生きたデータとしてあり得ることなんですが、万一なかろうと思うけれども、この方面にも今度の調査は範囲を広めていただいて、生殖細胞が健全で子孫の繁殖ができるのかどうかという問題は、この際徹底的に究明してもらいたいと思うのです。  それから、藤岡さんがさっき、アメリカから何か共同調査の申し入れがあったというお話でございましたが、それはどういう内容のものでございますか。
  61. 藤岡由夫

    藤岡説明員 共同調査の申し入れではございません。ちょっと読みますと、「米側は今回も実験終了後、その影響の科学的海洋調査を行う計画の趣にて、右に関する日本側の希望につき非公式に照会を寄越したので、日本側としての調査希望事項あらば御回報ありたい。」ということでございます。それでこの点につきまして、原子力委員会並びに各関係の方々がお集まりの上で相談をいたしましたが、アメリカでどういうことを調査しようとしているのか、それを知らせてもらいたい。それと同時に、日本ではこういう調査をする予定である。ただ日本としては、調査の計画がまだはっきりきまりませんが、大体そういうことにしておりますし、そして結果は、もちろん交換し合うということにしております。
  62. 岡良一

    岡委員 一昨年私はビルマ、インド、パキスタンの医師会に呼ばれまして、広島、長崎の原爆症の病理と臨床という講演を求められて回ったことがありますが、実に大きな関心を寄せております。医師会だけじゃなくて一般の聴衆がずいぶん入ってきて、私どものスライドについていろいろ質問もするし、非常な熱意を集めているようです。そこで、一昨年、あのビキニあとでも、コロンボ諸島、特にインド、ビルマ、インドネシア、パキスタン、セイロン等は、太平洋上における原水爆禁止ということを決議して、アイゼンハワー大統領なりソビエトのマレンコフ首相なりに伝達している。非常にこの問題に熱心だと思う。ひとしくこの放射能を受けた太平洋の波に洗われているこういう国々と、原子力委員会としては当然この問題について、共同調査の態勢を進めていくというふうな工夫くらいはあってしかるべきだと私は思う。そういうような点についての御構想はどうでしょうか。
  63. 藤岡由夫

    藤岡説明員 御趣旨はごもっともだと存じますので、十分に考慮いたしたいと存じます。
  64. 岡良一

    岡委員 とにかく平和目的のために発足した原子力委員会一つの陣容として、ぜひとも委員会の正式な議題として、こういう問題を御検討願いたいと思います。  それから気象台長にお伺いいたしますが、先ほどお話の微気圧観測でございますが、あれではかりますと、もし今度あのマーシャル群島で実験が行われると、幾日目ぐらいにそれが日本においてわかるか。そして大体時間的にどの程度の誤差で——相当確実なものがつかめるだろうと思いますが、どの程度の誤差が予想されるのでしょうか。
  65. 和達清夫

    和達政府委員 気圧観測は音と同じでございますから、ほとんどすぐわかります。ただしよほど大きな爆発でないと、日本の微気圧計にはわかりません。
  66. 岡良一

    岡委員 今度のネバダあるいはシベリアであるとおぼしき実験は、感じたわけですね。
  67. 和達清夫

    和達政府委員 十一月には感じましたので、大体その地区がわかりました。この三月には一回も感じませんでした。
  68. 岡良一

    岡委員 私どももごくしろうとの常識しか知らないのですが、何でも今度のアメリカ実験は、相当高空であるといわれているようです。そこで例のジェット・ストリーム、高いところを西偏風というものが流れているわけですが、あれに乗って散乱した放射能を帯びた灰、ちりが地球の上の方をぐるぐる回る。そうすると、今度日本では六月、七月、八月、九月に台風があるが、その台風シーズンに入ると、その上空のジェット・ストリームの中にある粉塵が、いわゆる下降気流で引き下げられてくる。そういうものが今度は低く日本の上空に来て、高いカウンターとしてガイガーに記録されるというような、放射能汚染がそういう気象学的な作用でもって日本に強く現われてくるというようなことを一説に聞くわけであります。そうとすると、これはまことにけしからぬ時期を選んだものだと私は思うのでありますが、これは専門的にはどういうことになりますか。
  69. 和達清夫

    和達政府委員 仰せの通りビキニ付近の空気日本に来る公算は一番大きいわけであります。なお非常に高いところにやられましたものは成層圏でありますから、そこのものは下降気流と申すよりも、自分の重さで落ちてくるのはちりであります。軽いものは半年か一年くらい滞留するわけであります。
  70. 岡良一

    岡委員 そうすれば、ジェット・ストリームで流れてくるのは、下降気流にひっかけられてやってくるということは十分あり得るわけでございますね。
  71. 和達清夫

    和達政府委員 ジェット・ストリームというのは、成層圏と対流間の間くらいが一番強いところであります。ジェット・ストリームに入りますと、早く地球上をびまんいたします。そこへ入ったら、濃いか薄いかということはちょっと申し上げかねます。
  72. 岡良一

    岡委員 鳩山さんがお見えになったので伺いますが、実はきょうもこうして今度のアメリカ原水爆実験について、原子力委員会中心に総合的な影響調査をいたしておるのでございます。それで前回ビキニのときにも、あとからでありますが、予備費から何ほどか支出されたわけでありますが、あれは幾ら支出されましたか。
  73. 鳩山威一郎

    ○鳩山説明員 前回ビキニ水爆実験に伴います予備費支出の関係では二種類ございまして、被害の治療とかその他の関係の経費の実際支出額が約一億三百万円、この系統のものはアメリカに補償を要求しまして、それに見合うようなものでございますが、それ以外のものといたしまして約三千百万円の対策費がございます。合計いたしまして一億三千五百万円程度のものが予備費支出になっております。
  74. 岡良一

    岡委員 今度藤岡さんのお手元でいろいろ計画を立てておられる予算は、原子力関係予算から出そうというわけですか。
  75. 藤岡由夫

    藤岡説明員 さようではございません。原子力関係予算としてすでに計上されております経営的な部分から出し得るものもございます。そうでない場合、たとえば船を出すということになると、それは当然しかるべく御施策をお願いいたさなければならないと思います。
  76. 岡良一

    岡委員 補償の問題は、その当該委員会でいろいろ論議があったことと思いますが、水産庁の次長にお伺いいたします。前回はああして見舞金程度ということで、いろいろ御折衝の結果、当初は七十万ドルというのが二百万ドルまで増額をしたということであった。今年ははっきりと国際法上正当なことをやっておる。国際法上公海において漁獲されることも御自由だが、とにかく危険地域として設定しておるから、その期間その地域内における間接の損害については何ら補償すべき義務はないんだということだから、今年も見舞金という程度になるだろうと思いますが、しかし前回経験で、先ほどお話の二百何十万ドル程度の直接、間接の損害がある。これは絶対くれっこない。今回の損害は、やってみなければわかりませんが、いろいろな面における損害の補償は、政府の方でなさることになるのでしょうか。
  77. 岡井正男

    岡井政府委員 私がお答えするのが適当であるかどうかわかりませんが、ただ水産庁の考えだけにしぼってお答え申し上げますと、予想されるのは、今の危険区域の設定というのが、前回のときよりもはるかに広範囲のものを設定せられております。従って、漁船としては、普通の状態であれば当然直線コースを通っていける漁場へ行けない。しかも危険区域内では操業できないという二つの問題がある。これは相手方がどういうふうな考え方であろうとも、私の方としては、当然漁業者の損害については、原水爆を実施するアメリカに対して話し合いをつけなければいかぬ、かように考えております。
  78. 岡良一

    岡委員 しかし、そういう損害は払わないんだと向うは言い切ってきたじゃないですか。
  79. 佐々木義武

    ○佐々木政府委員 そうじゃないのでありまして、向うから言って参りましたのは、もしも今回の実験の終了後、危険区域の設定及び実験の結果として、日本国または日本国民が実質的な経済損害をこうむったという証拠が公式に提出された場合には、右の証拠に基いて、補償問題に対してさらに考慮を加えるといってきたので、はっきりした証拠があって、それが向うで是認できるものであれば、補償の問題は考えるということになっておるようであります。
  80. 岡良一

    岡委員 いろいろお尋ねしたいこともありますが、時間も参りましたので、この程度で私はやめます。
  81. 有田喜一

    有田委員長 堂森芳夫君。
  82. 堂森芳夫

    堂森委員 時間もおそくなりますから、一点だけ、主として藤岡先生にお伺いいたします。日本原子力委員会ができました目的は、やはり平和利用にあると思うのであります。従って、このたびアメリカ側太平洋上で水爆実験をいたす、それをわれわれが中止できないことは残念でございますが、これもまたやむを得ないと思うのであります。今般多額の興用を使い、欲して、水爆実験のいろいろな影響調査されるわけでありますが、これはやはり今後世界に三たび、四たびそうした実験が行われないようにわれわれから努力していく、こういうことが大きな目的でなければならぬと思うのであります。新聞を見ておりますと、現在すでに世界の二大国であるアメリカあるいはソ連が持っておる原水爆は、人類を絶滅することができるものであるということが新聞にも書いてあります。とにかく、今度厳密に調査をされまして、やはりその結果いろいろ詳細なデータを、いろいろな情報を通じて全世界の人々に知らしめまして、そうして、再びそういうような原水爆の戦争というようなものがあってはならない、こういうふうな大きな起点になるということでなければならぬと思うのであります。ただこういう被害があるというだけ調査してもらっては、これは無意味だと思うのであります。ところが、アメリカ側といろいろ共同して調査をされるということもさっきの御報告ではあったようであります。たとえば、この前のビキニ水爆実験あとに起りました日本側の漁夫の人たちのことをわれわれ想起してみますと、アメリカ側は、日本の死んだ人たちについても、これは必ずしも水爆実験影響ではないのだ、こういう極論をしておったことを新聞紙上で見たことがあります。従って、このたび実験あと原子力委員会中心となっていろいろ調査されましたその結論を、全世界に向ってどのような形で公表されて、全世界の人たちに訴えていかれるか、これは私、重要なことだと思うのでございます。ただ日本国内調査をしてアメリカと御当局と打ち合しておるようなことでは、私は大きな目標からはずれておると思います。具体的に、どういう方法で全世界の人たちに訴えるか。そうしてこういうものを使う戦争を——もちろん戦争はすべきではない、こういうふうな世論を作っていきたい、こういうことが私は望ましい。どういうふうなお考えをお持ちであるか、御答弁をお願いしたい。
  83. 藤岡由夫

    藤岡説明員 第一に御指摘になりました点、原水爆調査をするということは、その被害を明らかにすることによりまして、将来こういうことをやめてもらうように進めていく基礎にしなければならない、世界人類福祉のために、原子力平和的利用のみに利用されるように進めていくその一つの段階でなければならないという御意見は、全く同感でございまして、そのように考えております。  次に、アメリカと協力をして調査をし、場合によると、アメリカの原子爆弾実験を正当づけるふうにも一部の人には見られるかもしれないという意味の御質問だと思いますが、そういう意図は毛頭ございません。アメリカとこの調査について協力をするというのではないのでございまして、アメリカ調査をするから、もし日本調査を希望する項目があるならば言ってほしいということがございましたので、これに対してアメリカではどういうことを調査するつもりであるか、それから日本でもこういう調査をするつもりであるということがきまりましたら、それを伝えるつもりでおります。ただ純粋の科学的な調査という立場からいたしますと、やはりいろいろのデータを通報し合い、話し合いをするということは、効果のあることであると考えます。お説の通り、久保山さんの不幸な死に対して、これは原子灰の影響ではないということを言った人もあるように新聞紙上では見ておりますけれども、あの後に、ちょうど五四年の秋、アメリカから七名の専門の学者が参りまして、日本学術会議の主催で日米放射能会談をいたしました。これによっていろいろ話し合いをしました結果、やはりアメリカも、医学上の問題などについてこちらでよく見ました上で、なるほどと認識をした点も多い。そういうことを言った人があったといたしましても、アメリカの医学界全体としてそういう考えであるというふうには私は考えておりません。科学的の立場から申せば、やはり利用すべきデータを利用し、またお互いの知識を交換し合うということは、調査する以上、正当なことであると思うのであります。  それから最後のお尋ねの、世界に向ってどういうふうに公表するかというお尋ねであります。前回測定調査の結果も、すでに厚生省においていろいろまとめられております。こういうことは、機会あるごとに、日本語ばかりでなく、世界各国にわかるような形でどんどん発表していかなければならないと考えておりますが、さしあたり、国際連合に科学委員会というものがありますので——これは放射線の影響について主として話し合いをします委員会でございまして、日本からは都築博士が代表、その補佐として中泉博士のお二人が目下その第一回の会議に行っておられますので、そういう機会がございますれば、日本調査の結果を世界各国の人に一そうわかるように、できるだけ利用したいと考えます。
  84. 堂森芳夫

    堂森委員 私が藤岡先生に御質問したのは、共同調査をしてはいかぬということを申し上げたわけではないのであります。もちろん、科学的な調査は、一国よりも二国、二国よりも三国というように、多いことがいいことは当然であります。またそのことによって日本側で十分な調査が可能になる場合もございますし、これは当然のことであります。  さっきの最後の問題の、どういう方法世界中の人に知らしめるかという問題は重要でございます。もちろん都築博士、中泉博士というような大家が外国へ行っていろいろ話をするということは必要でございます。また国連機構の科学部でございますか、そういう方面だけではなしに、もっとポピュラーに知らしめることが、われわれ日本人としての一つの義務だと思います。と申しますのは、長崎、広島で初めて原爆が落ち、またビキニ水爆実験被害を受けたのも日本人でございます。従って日本人がいろいろなデータを集め、また自分みずからの責任において調査をし、あるいは被害を受けた調査というものをもっとポピュラーに世界中の人に知らしめるということは、人類に対する当然の義務でもあるし、またわれわれはそうした権利を持っておる、こういうことも言えると思うのであります。さっきおっしゃいましたようなことだけでなしに、もっとポピュラーに知らしめるような方法をぜひお願いしたい。希望を述べまして、時間がございませんから、質問を終ります。
  85. 藤岡由夫

    藤岡説明員 御趣旨まことにごもっともだと思います。御趣旨を体しまして、今後それを実現いたしますように努力いたすつもりであります。
  86. 楠本正康

    楠本政府委員 先ほど岡先生の御質問に対して、ちょっと間違ったことを申し上げましたので、この際あらためてお答え申し上げます。先ほど福龍丸患者のその後の問題につきまして、特に生殖細胞の消長についてお尋ねがあったわけであります。この点につきましては、かねて厚生省といたしましてもきわめて関心を持って調べておったそうでございます。ただ事の性質上、なかなか強制的にも調べられないことでございますので、人数等がきわめて少く、また定期的に調べるようなこともきわめて困難な事情にあります。従って、確たることをここで申し上げるわけには参りませんが、全体の傾向としては、直後あるいは患者のときは著しく減っておったそうでございますが、その調べた範囲におきましては、逐次正常に戻っておるということでございます。
  87. 有田喜一

    有田委員長 他に御発言はございませんか。——他に御発言がなければ、本日はこの程度にいたし、次会は来たる十一日、午前十時より開会いたし、原子力の開発利用に関し、参考人より意見を聴取いたしたいと存じますから、さよう御了承願います。  なお来たる七日、土曜日には、特別の突発的なことがない限り、西ケ原の農業技術研究所へ視察に参りたいと存じますから、さよう御承知下さい。  それでは、本日はこれにて散会いたします。    午後零時五十九分散会