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1956-03-08 第24回国会 衆議院 科学技術振興対策特別委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年三月八日(木曜日)     午前十時五十一分開議  出席委員    委員長 有田 喜一君    理事 長谷川四郎君 理事 前田 正男君    理事 南  好雄君 理事 岡  良一君       赤澤 正道君    稻葉  修君       小平 久雄君    須磨彌吉郎君       中曽根康弘君    山口 好一君       岡本 隆一君    佐々木良作君       田中 武夫君    原   茂君       福田 昌子君  出席国務大臣         国 務 大 臣 正力松太郎君  出席政府委員         総理府事務官  佐々木義武君         (原子力局長)         経済企画政務次         官       齋藤 憲三君         外務事務官         (国際協力局         長)      河崎 一郎君  委員外出席者         原子力委員会委         員       藤岡 由夫君     ————————————— 本日の会議に付した案件  日本原子力研究所法案内閣提出第九三号)     —————————————
  2. 有田喜一

    有田委員長 これより会議を開きます。  日本原子力研究所法案議題といたし、質疑を続行いたします。質疑の通告がありますから、これを許します。岡良一君。
  3. 岡良一

    岡委員 どうも委員長の取扱いはまことに僣越千万で、この間は、僕の質問中、時間が来たからやめてくれと言われるし、きょうは、要求しておる政府委員が来ないのに質問をせよと言う。実は正力さん等に御出席願った上で、責任ある政府態度お尋ねしたいと思っておったわけでありますが、お見えになりませんので、その前提としての一応技術的な点だけを、この際お聞かせ願いたいと思います。  第一の問題は、日本原子力研究所敷地の問題であります。せっかく当委員会においても日本原子力研究所法案検討中でありまするので、敷地の問題のごときは、政府としてもやはり明確な態度方針というものが打ち出されてあってしかるべきだと思うのでありまする。肝心の敷地が、どこに建てるやら、今のところまだ五里霧中であるということでは、まことに遺憾千万であるといわなければなりません。そこで敷地選考委員会が設けられまして技術的、科学的な見地から、武山最適の地であるということが答申され、従って、原子力委員会も、武山最適候補地として選ばれたということまでは私ども新聞等で聞いておるのでありまするが、その間の経緯について、これはそのことに鞅掌せられたと思われる佐々木原子力局長から、一つその間の経過を御報告願いたいと思います。
  4. 佐々木義武

    佐々木政府委員 研究所敷地選定に関する経過でございまするが、財団法人原子力研究所の方で当面最も急を要する問題といたしまして、原子力研究所敷地をどこに定めるか、またどういう条件で定めるかという点に関しまして学界の権威者委員に御選任いたしまして、長い間非常に多数の候補地を対象にいたしまして検討を進めました結果、五つグループに問題をまとめ上げまして——それは御承知かと思いますが、単独で、動力実験炉まで含めて一カ所でやる地域といたしましては、武山あるいは水戸近郷の二地点がいいのじゃなかろうか、それから動力原子炉とその他の実験原子炉を分けてやる際には、武山水戸コンビネーション、あるいは岩鼻、これは高崎近郷でございますが、岩鼻水戸コンビネーション、それからこれも高崎近郷にあります観音山と水戸コンビネーション、この五つグループが一番よろしいんじゃなかろうかというふうな結論を出されまして正式に原子力局の方へ研究所の方から答申がございました。そこで、原子力局といたしましても、問題が急を要する問題でございまするので、いろいろ研究所結論を出されました経過あるいは内容等を十分お聞かせいただきまして審議をいたした結果、まず諸般の事情を考慮いたしまして、武山地区候補地としては優秀な候補地ではありまするが、ただ問題は、御承知のように、米軍接収地、しかも永久接収地になっておりまするので、果して向う側がこれを解除するかどうかわからないというふうな話が委員会で出まして、それではまず委員会といたしまして最終決定をする前に、武山返還が可能かどうかを米軍にただしまして、その結果、最終的な決定をするのが最も穏当な考えではなかろうかという結論に達しましたので、調達庁を通じまして——これは法律の規定通りの手順を踏んだわけでございますが、米軍解除可能性を問い合せていただいたわけでございます。その結果、月曜日かと思いますが、私ちょうど休んでおりましたけれども向うから返答が参りました。その条件によりますと、代替地とまでははっきり申しませんが、施設等代替が認められるならば、半分の二十万坪は返す可能性があるというふうなお話がございましたので、その条件に関しまして——条件と申しますのは施設等代替の件でございまするが、これの内容いかんという問題もございましてそれこれ合せながら、あすの原子力委員会でさらに吟味をいたしまして、米軍側に今後どういうふうな折衝をするやという点を御検討いただくという話し合いになっているように承知しております。
  5. 岡良一

    岡委員 それでは、藤岡原子力委員お尋ねをいたしますが、選考委員会が、科学的に、技術的に、いわば放射能によって汚染されたもろもろのそれに基づく障害を回避できるとか、あるいは研究者として交通環境その他すべて武山最適条件である、科学的にも技術的にも最適条件であるということについては、やはり原子力委員会としても、その答申通り最適の地であるということを御承認になっておられるのでありますか。
  6. 藤岡由夫

    藤岡説明員 原子力委員会といたしましては、土地選定委員会の専門の方々が審議されました結果の科学的な結論を十分尊重いたしまして、武山最適であるという判断を尊重し、これがまず実験用原子炉から始めます場合に、そこに置くことが可能であるように最善の努力を払うということになりましてただいま佐々木局長からお答えのありましたような方針に進んだわけでございます。でございますから、これが科学的に見て最もよい候補地でのるという意見を十分に尊重しております。
  7. 岡良一

    岡委員 河崎協力局長お尋ねをいたしますが、米軍が現在接収しておるところの施設あるいは基地等について、日本側に必要が生じその返還を求めるという手続は、調達庁を通じてあらかじめその内意を伺うということが、今、佐々木原子力局長の言われた筋の通った行き方である、こういう話でありますが、そのようなことになっておるのでございますか。
  8. 河崎一郎

    河崎政府委員 正式には、日米合同委員会にかけまして、先方と打ち合せしまして、接収解除の許可を受けるわけであります。その前に、調達庁を通じて、非公式に向う意向をサウンドすることもときたまございますが、正式には先ほど申しますように、日米合同委員会にかけて、初めてきまるわけであります。
  9. 岡良一

    岡委員 調達庁任務は、行政協定に基くわが方の提供すべき施設基地その他について、これに関連をして、あるいはその補償などをも含めて問題を取り扱うものであって、日本側返還をするときに、調達庁を通じて内意を聞かなければならないという筋は、私はないと思うのです。その点いかがなんですか。
  10. 佐々木義武

    佐々木政府委員 はなはだ、恐縮ですが、資料を実は持ってきませんので、御時間をいただけば資料を持って参りますが、私、実はその点、法律的な根拠を調べてみたのでございます。たしか行政協定の二条かと思いますけれども区域及び施設に関して、これの設定あるいは返還に関します問題は、調達庁任務になっておるのでございます。それに基きまして、調達庁の方では、特別施設委員会というものを設けてございます。それはやはり日米合同委員会でありまして、第一次的には、ここで審議をいたしまして、その結果、向う解除方を通知するというふうな手続になっておりまして、コースは調達庁を通ずるのが順序だと思います。もしその折衝でもつれと申しますか、完全に了解に達しなかった場合には、合同委員会にあらためてかけるというふうになっておりまして、合同委員会特別施設委員会とは、おのずから順序があるのであります。これは全部の問題でございませんが、区域あるいは土地の問題に関しましては、そういう順序になっておりまして、合同委員会にかかるのは、第二段というふうな建前になっております。
  11. 岡良一

    岡委員 日本国内における基地接収等についてアメリカ側から申し出があった場合に、その土地接収に伴うもろもろの諸条件について一応のめどを立てるために、調達庁が現地において動かれておることは聞いております。しかし、日本原子力研究所日本設定をするときに、成規手続を経て、土地選定委員会最適土地として武山決定したとすれば、これはもはや調達庁ワク外の問題であって、当然政府はこれを合同委員会に持ち出して、その上で米側との間における成規交渉を始めていくというのが、少くとも私は独立国としてのあり方ではないかと思うのであります。それを内々で、調達庁を通じて向う側意向を打診するということは、私は筋の通った行き方ではないと思いますが、その点重ねて伺いたい。河崎局長、いかがお考えですか。
  12. 河崎一郎

    河崎政府委員 先ほど佐々木局長から御説明がありましたように、最初に調達庁を通じて向う折衝するということは、従来間々あったわけでございます。今度の場合には、最後的には、やはり仰せの通り日米合同委員会にかけて、正式にこちらの意向を表明し、先方接収解除を受けるということに相なっております。
  13. 岡良一

    岡委員 要するに、日本原子力研究所敷地の問題は、ほんとうの筋からいえば、原子力委員会最適敷地として武山を選んだという原子力委員会の勧告は、内閣総理大臣もこれを尊重しなければならない義務があるわけです。だから、原子力委員会とすれば、内閣総理大臣にその決定の趣きを当然伝えて、そこでそれを閣議決定にして、その上で正規議題として日米合同委員会に持ち出す。これが独立国としての日本の正しい行き方ではないかと私は思うのです。そうではないでしょうか。河崎局長、この問題は手なれておられると思いますが、いかがですか。
  14. 河崎一郎

    河崎政府委員 実は、私申しわけをするようで恐縮なんでございますが、ただいまこの仕事の主管は、アメリカ局に移っているのでございます。私の知っている限りでは、アメリカ局では、日米合同委員会になるべく早く政府の方で決定を持ち出してそこで先方了解を得て、この問題を解決したいという意向でございます。
  15. 岡良一

    岡委員 明日原子力委員会が開かれるそうでありまして、この敷地の問題が一つの重大な案件になっているようであります。とにもかくにも、私どもの期待するところと申しますよりも強く要望するところは、この敷地の問題について、日本原子力研究所の発足に当って、いろいろと巷間好ましからざるうわさを伴っているというふうなことも間々聞くだけに、科学的な見地から、技術的な見地から、権威ある人によって構成された選考委員会が太鼓判を押して、これがいいと言って持ち出したものは、当然明確に、原子力委員会としては武山であるという意思を所定されて、その権能に基いて内閣総理大臣に持ち出し、閣議の了承を得た上で、日米合同委員会の方に持ち出すくらいの成規手続を経て、この敷地問題について、堂々たる独立国の面目を失わないようにしていただきたいのであります。最近、新聞紙の報ずるところによると、米側では、代替施設について要求がある。それが可能ならば日本側に譲ってもいいというような話が出ているということであります。その代替施設というのは、一体どういう程度のものであるのか。基地としての広い面積が必要なのか。それとも施設という言葉の通り、何らかそういう施設要求しているのであるか。その辺のところはどういうことになっておりますか。調達庁との話し合いの結果、向う側返事というのはどうですか。
  16. 正力松太郎

    正力国務大臣 この基地の問題については、実はかつて防衛庁が三年前に言うて断わられた例があるので、なかなかむずかしい問題なのであります。それで私ども成規手続をする前に、一応調達庁を通じて内意を聞こうとしたわけであります。ところが、内意として、代替施設をしてくれればいいということがあるので、それでなお、しからば代替施設というものはどういうものであるかということをあした委員会相談してそれを聞こうと思っております。調達庁にはわかっておりません。何しろ二十万坪の土地にある施設でありますから、相当大きなものではないかと心配はいたしますが、いずれにしても、あすの委員会でその方針をきめまして、そうして正式にいたします。
  17. 岡良一

    岡委員 五日に米国側日米合同委員会施設特別委員会代表ハーバード海軍少将から、かわり施設を用意してくれれば、武山基地の半分くらいは返してもよいという幅のある回答がもたらされた、こういうことが新聞には出ておるわけです。そこで問題は、二十万坪あれば実験原子炉を置く研究センター敷地としては十分私は間に合うと思うのですが、いかがですか。
  18. 藤岡由夫

    藤岡説明員 お説の通り、二十万坪でまず実験原子炉を作るのは十分だと考えております。
  19. 岡良一

    岡委員 そこで問題は、かわり施設ということでありますが、まだかわり施設が全然当てがついておらない。だから、原子力委員会で明日結論をつけようと思われても、つくはずがないわけです。問題はかわり施設ですが、これは原子力委員会のかかわる問題なのでしょうか。
  20. 正力松太郎

    正力国務大臣 かわり施設がどういうものかということは、非公式には聞いておるのです。明日委員会相談をするというのが、代替施設が非常に莫大なものだったら実際予算もありませんが、大したものでなくて弁ずれば、何とか方法がないかと思っておるのでありますけれども、こういうことは事重大でありますから、委員会でよく相談をして、そして調達庁を通じてやるつもりでおります。
  21. 岡良一

    岡委員 かわり施設はどういうものであるかということについて、大体のところ内意がわかっておると言われるならば、一つどういう施設なのか、この際御発表願いたい。
  22. 正力松太郎

    正力国務大臣 代替施設はどういうものであるかは、わかっておらないのであります。それで、こっちが聞いておるわけであります。
  23. 岡良一

    岡委員 そうすれば、明日原子力委員会を開かれても、その内容がわからないということになれば、原子力委員会としては、武山は断念をされるのですか。それとも保留になるのですか。
  24. 正力松太郎

    正力国務大臣 もちろん内容がわからなければきめるわけにいきませんから、向う返事を待っておる次第であります。大体の数字がわからないうちにだめだということはございません。代替施設が簡単なものであれば、やりたいと思っております。むろんこれは私個人の意見であります。
  25. 岡良一

    岡委員 一体原子力委員会は、代替施設のところまで考えていかなければならないのですか。原子力委員会任務というものは、日本原子力研究所最適敷地として武山であるというのなら、武山であるという決定をされて、堂々と正規の、対等の立場交渉していく。代替施設についていかなるものであるか、向う要求したものを、日本が必ずしものまなければならないということはちっともないはずです。そのために合同委員会が設けられておる。してみれば、原子力委員会は特異な立場から、最適のものはここなのだという折紙づきのものがあれば、はっきりその意思決定される。代替地域がどういうものであるかというところまで老婆心を働かせる必要は、ごうもないと思う。
  26. 正力松太郎

    正力国務大臣 それは、代替施設が莫大な費用を要することになりますれば、むろん予算が必要でありますから、できるものではないのであります。これは原子力研究所予算というものがありますから、予算内でなくてはいけないのです。
  27. 岡良一

    岡委員 もちろんその通りと思います。ただ私が申しあげることは、だからそこに日米合同委員会仕事があるわけです。ですから、原子力委員会仕事の限界は、原子力委員会としてはこれが最適である、そこで原子力委員会武山日本原子力研究所敷地として要求をするということにご意見をまとめられ、内閣総理大臣の方にその意思を通告される。そこで内閣総理大臣日米合同委員会を開き、どういう代替がいるのかというようなことについて、今度は内閣の責任において決定される。初めからどんな莫大なものを要求するかもしれない、それには国の予算がどれだけかかるかわからないというようなことは、向うが何を要求してきたところで、合同委員会折衝の過程で譲らせ得るものは譲らせるのであり、原子力委員会としては、もちろんいろいろな意味でつながりはありましょうけれども、機関としてはノー・タッチな問題でいい。そこまで踏み切っていただかなくては、私はこの問題は決定しないと思うのです。
  28. 正力松太郎

    正力国務大臣 先ほど申しましたごとく、予算範囲でなければいけない。予算をあまりこすようなことはできませんのです。
  29. 岡良一

    岡委員 武山は、予算をこさない、今度の原子力行政に伴う予算範囲内において最適敷地であるということも聞いているのです。整地費用も要らないとか、その他いろいろな条件から最適敷地であると聞いている。そこで原子力委員会としては、原子力行政上、与えられたる予算ワク内においてこれが最適であるということをも勘案して、これを要求されればいいわけです。そのあとで国会全体として予算の追加が要るか補正が要るか、それはあなた方原子力委員会として知ったことではない。それは当然日米合同委員会において折衝されることであり、最終的には閣議決定がなされる。原子力委員会はどんな大きなものを言うてくるかもしれない、それにはどれだけの金がかかるかもしれないといって、何もそこまで御心配になられることは、正力さんとしても少しふさわしくないと私は思うのです。
  30. 正力松太郎

    正力国務大臣 岡委員お話は、まことに驚いているわけでありまして、われわれはせっかく皆さんの審議を得た予算を持っているのでありますからして、幾ら何でも予算のないことは私できませんです。これはもう当然のことと思っております。
  31. 岡良一

    岡委員 私が申し上げているのは、原子力行政としての予算が三十六億、そのうち十六億の予算外契約というのがあるわけで、そのほかの二十億の中に原子力研究所を設置する予算があるわけです。その予算ワク内においても、武山最適であるということを人は言っている。ですから、原子力委員会に与えられた予算ワク内においても武山最適だ、あるいは土地選定委員会科学者立場からもそう言われているし周辺に及ぼす放射能の汚染を防ぐ意味においても、あらゆる意味から武山最適だと言われているのだから、してみれば、あなた方の与えられた予算ワク内においても最適である。だから代替施設は、政府との話し合いで、その下ごしらえの相談日米合同委員会がやることで、あなた方は何もその話し合いのところまで立ち入って、どんなべらぼうなものを要求されるかもわからないからといって、動力問題なら脱兎のごとく、敷地問題なら処女のごとしでは困る。これはもっとふんどしを締め直して、あくまでも武山だと言って、原子力委員会が突っぱるのが当然だと思う。
  32. 正力松太郎

    正力国務大臣 たびたび申し上げるようでありますけれども、何としても、原子力委員会予算をこえた仕事はできません。大体武山最適地とした理由は、東京に近いということが一つ、また施設があり、金がかからぬ、だから予算内でやるなら楽だというので、しかし武山だって欠点はあります。あれは実はアメリカ演習地になっております。ですから、演習地の近くに原子力研究所を置くということについては、議論もあったのです。しかしそういう悪い欠点があってもやろう——これは将来問題になりはせぬかと恐れております。先ほども申し上げた通り防衛庁が三年前にやってもいけなかった、あれはサンフランシスコ条約敷地はきまっているそうです。だから日本がそういうことを持ち出すのはすでに無理なのであります。ですから、われわれは、アメリカに対する交渉は、あそこをくれということは何もしておりません。
  33. 岡良一

    岡委員 防衛庁が三年前に断わられたが、ところが今度は、内々で向う意向を打診したら、今申し上げますように、五日の日に、向うハーバード海軍少将という日米合同委員会施設特別委員会代表から、かわり施設を用意してくれれば、二十万坪くらいは返そうと言うてきているのですよ。だからもう実現可能性に百歩進んでいるわけです。そこで実現可能性があれば、今度は原子力委員会は、一つあそこでやるのだ、こうおきめいただくことが、原子力委員会仕事なんです。そうでしょう。しかも今委員長がまさしく言われたように、これは、いろいろの整地費用とか、施設費用とか、原子力委員会の与えられた予算ワク内においてやるには一番最適だ、予算的にも最適だ、科学者意見から科学的にも最適だというあらゆる面において条件がいいのです。ですからこれはもう踏み切っていただかなければ因る。予算ワク外だと言われるけれども、あなた方の与えられた予算では、一番最適だと思うのです。
  34. 正力松太郎

    正力国務大臣 たびたび繰り返すようでありますが、何といっても、私は予算を厳守しなければならぬ、予算外ではできません。先ほど申し上げたのですが、あそこを選んだということは、費用がかからぬわけで、それを、代替地のために莫大な費用要求されたら、何もあそこに必ずしもしなければならぬという必要はないわけです。最適地ということは、繰り返すようでありますが、東京に近いということと、整地費も要らない、あまり費用もかからぬということが条件である。しかるに今、代替としてうんと大きな金を要求されたら、決してこれは適地とは言えません。それが最適地でない証拠に、あそこは演習地です。本来は、演習地とか、海軍とか陸軍の施設のわきに、この平和利用のものを置くのはどうかという点もあるくらいです。しかしそんなことがあっても、全体がいいから、あそこは最適地であるから——最適地というけれども、必ずしも最適地ではないのです。ないけれども、ほかの土地からすると条件がいいから、そこであそこにきめたわけです。繰り返し申すようですけれども幾ら代替地に金がかかってもやれというような、そういうむちゃなことをやるような、原子力委員会にはそんな権限はありません。またやっちゃいけません。どうしてもやはり予算範囲内でやらなければいけません。
  35. 岡良一

    岡委員 それはよくわかっているのです。問題は、どれだけ金がかかるかわからないでしょう、それは日米合同委員会で、正規に、武山最適地だということで日本側要求するわけです。そこで、合同委員会で、向う側から代替としてこれをよこせと言ってくるでしょう。そこで日本は、いわば値切らなければなりますまい。値切れるか値切れないか、どういうものを出してくるかわからない。しかしおそらく何を出してきたところで、合同委員会仕事じゃありませんか。だから原子力委員会仕事として、これは最適だということで踏み切っていく、私はそれが正しいと思うのですよ。なぜそこまで考えなければならないのですか。
  36. 正力松太郎

    正力国務大臣 たびたび申し上げるようですけれども、何しろ事、重大であります。そういう申し入れが一応来たのですから、これは委員側に特にその状況を話すのが、われわれは当然だと思います。
  37. 岡良一

    岡委員 堂々めぐりのようになりますが、どうでしょうか、私の申し上げるのは、原子力委員会は、最適であるという答申を受けたら、その最適武山日本原子力研究所を作るというまず第一の意思決定をすべきだと言うのです。そこで今度はそれが日米合同委員会に持ち出されるでしょう。日米合同委員会では、向う側からかわり施設としてこれをよこせと言うでしょう。その場合に、そのかわり施設についての希望なり、それに要する費用なりを、今度は担当の合同委員会で、日本政府アメリカ政府とが会議折衝の過程でやっていくことなんです。莫大なものを要求するかどうかはわからないことでしょう。それがどの程度まで日本側要求を入れさせ得るか、これもまだ未知数なんです。しかしそこまで考えて、原子力委員会が足踏みをされるという必要はごうもないことなんであります。
  38. 正力松太郎

    正力国務大臣 決して早踏みはいたしておりません。事、重大だから、委員にみな相談するというだけであります。そうして最適地とおっしゃるが、費用がかからぬということも最適一つ条件です。これはうんと代替地で金をとられれば、最適だと言えません。
  39. 岡良一

    岡委員 あなたはちっとも最適地じゃないと言うが、むろん費用がかかるということは、最適地でないことは当りまえのことなんです。しかしその予算は、何もあなた方の予算から出す必要はないでしょう。そのために、日本側としては施設関係等の費用予算を持っているじゃありませんか。補償の予算も持っているじゃありませんか。何も、原子力の予算の中から出さなければならないことはありません。原子力の予算として規定されているものを、何もそういうところまで予算をさくことはないじゃありませんか。だからそこまで心配する必要はない。人の頭痛を気に病むことはちっともない。米軍が演習しているということも、あまり好もしくないかもしれませんが、しかしそれでもここ一両年すれば去ると言っている。しかしこちらの仕事は未来永劫の仕事ですから、何も今、ここ一両年演習しているからといって、最適敷地をそういうことで回避する必要はない。事、重大だからあす諮るというが、問題が重大なことというのは、正力さんが何だかわけのわからない、雲をつかむような代替施設を非常に重大に考えられているというところに、問題の重大性があるのであって、何も重大ではない。あすの原子力委員会ではっきりと、武山ということに意思決定をされることが私は当然だと思う。これ以上申し上げても平行線になりますから、そこであなたのおっしゃったことで、また冷や水をかけるようで恐縮でありますが、正力国務相らは、かわり土地施設を提供することは困難だし、米軍折衝し、時間を費せば開発がおくれる、こういう御意見を漏らしておられる。これは確かに漏らしておられました。やはりそう思っておられますか。
  40. 正力松太郎

    正力国務大臣 私が、かわり土地要求すると言われると、なかなかめんどうであるということを言ったことは事実であります。しかしそれは、果して土地要求しているかどうかということは、まだはっきりしていないので、これは聞かなくちゃならないということなんです。
  41. 岡良一

    岡委員 また出発点に戻ってしまうんですが、原子力委員会は、そこまで入ってはっきりつかまなければ、そういうことを選定できないのですか。原子力委員会としては、最適だと言われたものを、一応それで決定する。そうして日米合同委員会にかける。その結果、いろいろな障害が出てきたら、その事実に基いて、原子力委員会武山を断念するのはいいでしょう。ただ初めから何だかわけのわからない、代替施設と言うけれども、どれだけ金がかかるやら、施設やら土地やらわからない、しかし将来合同委員会折衝の過程で、当初かなり莫大なものでも、重分減額できるかもしれない。そういう先の問題で、そういう未確定の要素がたくさんある問題を、全く確定的な要素のような考え方で逡巡している。これは私は正力さんにも似合わないことだと思う。
  42. 正力松太郎

    正力国務大臣 今のお話は、何だか私が打ち切ったようなお話でございますが、断じて打ち切っておりませんから、御安心下さい。
  43. 岡良一

    岡委員 それでは、明日の原子力委員会では、はっきりと武山決定をする、原子力委員会はそのような意思決定をさるべきがしかるべきだと思うが、その点について御所信を伺いたい。
  44. 正力松太郎

    正力国務大臣 最適地と言うが、もしも代替地にたくさん金がかかれば、最適地ではありません。そうすればきめるわけにいきません。ただ先ほどからたびたび申しておりますが、最適地と言うが、すべての条件が備わっておるから最適地なんです。その条件が欠ければ、最適地でないのでございます。それを岡田委員は、金なんかどうでもいいという気前のいいようなお話でありますが、私らとしてはできませんから、どうぞ。
  45. 岡良一

    岡委員 小生は岡良一と申しまして、(笑声)岡田春夫というように、春風たいとうとはいかぬで、申しわけございません。(笑声)そこで、問題はそこのところなんです。予算が非常にかかる、かからないということは、今後の折衝に待つことでしょう。ですから、そういうことは今後の折衝にまかしておいて、非常に予算もかかり、いろいろな点で隘路があれば、また今度原子力委員会としては次に方向を変えていく、こういうことなら世間も納得するんですよ。それを最初から、まだ何もわからない、どれだけの施設か地区か、どれだけ金がかかるか、それもわからない、それも値切れば値切れ得るかもしれない、そういうことはあした集まったって、わかるはずはない。だから原子力委員会としては、これを妥当ということで合同委員会折衝にかけていかなければならない。
  46. 正力松太郎

    正力国務大臣 先ほども申しましたように、決して打ち切っておりません。ただ今までの経過を言っただけでありまして、もちろん合同委員会の問題になるでしょう。何だかいかにも疑心暗鬼のようなお話でありますけれども、ほんとうに最適地なら断じてきめます。ただ最適地条件が欠けて最適地でなくなるおそれがあるから、それじゃいかぬというだけであります。どうぞ……。
  47. 岡良一

    岡委員 私は別にちっとも疑心暗鬼じゃないのです。むしろ正力委員長が、アメリカ側の腹に対して疑心暗鬼を持っておられる、こういうことなのです。明日原子力委員会が、この敷地武山にするかいなかということについていかなる決定を下すかということは、日本の心ある国民はひとしく着目しておるのです。しかも日本の原子力法というものが、アメリカと雲泥の差異があることは言うまでもない。平和とか、自主とか、公開とか、自由とか、民主とか、日本の憲法のような非常に理想的な精神を打ち出して、その上に立って原子力行政をやろうとしている。でありますから、ここで原子力委員会が、日本の独立の面目にかけても、まずこう言い切って立ち上っていくという、そういうすっきりした立ち上り方を刮目して待っておるのです。そこをやはり委員長としてはうんと腹づもりに置いて、あしたはそこで踏み切る、ぜひ踏み切らなければいかぬと思うが、どうせられますか。
  48. 正力松太郎

    正力国務大臣 たびたび繰り返すようでありますけれども、私はこれだけは明言します。最適地なら必ずきめます。しかし最適地条件が欠ければ、きめるわけにはいかぬと思います。おそらく明日の委員会でも、向うの情報がはっきりせぬうちは、きめるわけにはいかぬでしょう。それですから、御心配のことはありません。とにかく天下の前でやることですから、堂々とやりますから……。
  49. 岡良一

    岡委員 あしたになれば、向う側代替施設とかいうような条件がわかるとおっしゃるのですか。
  50. 正力松太郎

    正力国務大臣 あしたでわかるかわからぬか、わかりません。だから向うに聞きにやっておるというわけなんです。いずれにしても、合同委員会にかけるようなことにはなるかもしれません。最適地条件なら必ずきめます。しかしその条件を欠けば、きめるわけにはいかぬということを、繰り返し申しておきます。
  51. 岡良一

    岡委員 どうも正力さんは少しずるいと思う。これは私ども意見として、強く要求しておくより仕方がない。問題は、原子力委員会としては、明日の委員会で、とにかくいち早く武山ということに指定する、意思決定をする。(中曽根委員「そんなことできるかい、それは政治的策謀だよ」と呼ぶ)中曽根君から政治的策謀と言われては、私もどうも——私は石川県の生まれです。とにかく汽車で十二時間かかるところです。一向そういうところは御心配なく。問題は、もう一応申し上げますと、とにかくやはり原子力委員会としてはこれを決定する、そうして日米合同委員会に持ち出す。日米合同委員会では、向う側からの代替施設がどういうものかということや、それに伴う費用等も出てきて、そこで初めて折衝が開始されてくる。その結果として、もしこれが日本側としてのめない、あるいは原子力研究所としての発足に非常に時日がかかるというような事情が判明したときには、原子力委員会は、その事実に基いて、今度は第二の方法というものを考える、これが原子力委員会としての当然な道筋だ、私はそう信じておる。だからして、かわりにどれだけ金が要るかわからぬ、それはそのときになって考えればいい問題であって、そういうことで、とにかく処女のごとく逡巡をされるということは、正力国務大臣のためにとらない。だからこのことは、明日はっきり踏み切ってもらいたい。藤岡さんもおられますから、ぜひ踏み切っていただきたい。
  52. 正力松太郎

    正力国務大臣 先ほどたびたび申し上げましたごとく、最適地条件さえそろっておれば、私はきめます。しかしながら、代替物に非常に金が要るということになってくると、最適地条件に欠けますから、きめるわけにいきません。しかしその代替物の金高もきまらないのに、軽率にきめることはいたしません。想像で、これはたくさんかかるだろうということで断わるようなことはいたしません。果して金がかかるかどうか十分調べまして、これではとてもわれわれの予算内でいかぬということがきまれば、断わるより仕方がない。このくらいの金ならやれるということなら喜んでやる。そんなわずかなことで済めば、最適地条件にも合う。そう心配することはないと思いますから、きめますから、御安心下さい。
  53. 岡良一

    岡委員 私もここで打ち切りたいと思うとまた——問題は金があまりかかり過ぎれば、それは事実の問題としてやれないでしょう。だけれども向うがこれだけ要ると言ったところで、やはりそれを負けさすことはできるでしょう。そうすれば、最終的な決定というものは、日米合同委員会がきめるのでしょうから、日米合同委員会の結果がわからなければ、金がかかるかかからないかもわからないじゃありませんか。だから問題は、日米合同委員会に早く出すことです。それを出されるか出されないかということです。それを出さない限り、問題がはっきりしないのですよ。だから早く出して、代替施設とはいかなるものか、それにはいかなる費用を要するか、それは折衝の過程でどれだけまで減額させ得るか、それによって日本側はたえ得るかどうかという問題は、あとの問題です。まず日米合同委員会へ出さなければ、その問題はきまらない。その前にあなた方が、いわば調達庁を通じての向う内意ということでは、やはり莫大なものを持ってくるかもしれません。これではとてもかなわないから引っ込めよう、それでは話にならぬじゃありませんか。まず合同委員会へ出して折衝させてみて、その結果、ぐんとお安いところで手に入るというところまで持っていく努力をする。かなうか、かなわないかは、そのときに初めて原子力委員会考えなければならない問題として起ってくる。そうではないですか。
  54. 正力松太郎

    正力国務大臣 お話通りです。いずれにしても、はっきり値段がわからないのにきめるようなことはいたしません。そして明日は委員会とよく相談いたします。軽率なことはいたしません。
  55. 岡良一

    岡委員 別に軽率なことをしたというようなことは言っていない。私は大いに軽率にやってもらいたいと思うのです。断固として、武山ということで日米合同委員会で正式にかけていただくということだけはやらないと、原子力委員会としては、その権威において非常に失うところが多い。そこのところは、一つ今晩ゆっくり考えていただいて、断の一字で踏み切っていただきたいということを、私は強く要求いたしておきます。  下田局長か外務次官に出席を願いたいと思っておったのですが、御出席がありませんし、河崎さんがお急ぎのようでありますから、質問順序がまことに行ったり来たりしますが、お見えになる方の御迷惑を察して、私は正力国務大臣に国務大臣としてお尋ねをしたいのですが、御存じのように、私どもは原子力基本法を発足させた。何といったって平和という目的を強くうたっておる。この目的をうたった原子力基本法というものは、私は世界でも類例が至って少いと思う。スイスのような国でも、やはり原子力の軍事利用というものは、法律の中に認めておる。これを画然として断ち切っておるということは、日本の原子力基本法の大きな一つの特色であろうと私は思う。日本としては当然そうあるべきだし、また誇りに思っていいと思う。一方、この間も国会は水爆実験禁止の決議をいたしました。ところがアメリカはやると言う。一方ソ同盟もおそらくやるかもしれない。そうすると、結局日本は東風が吹いても西風が吹いても、原子力による放射能の谷間になってしまうわけです。これは私は実に悲劇だと思う。原子力は平和の目的だ、日本の国会はその法律を議決し、原子力というものはその方向に推進しようとしておる。あなたはその責任者なんだ。ところが一方われわれのこの良識にもかかわらず、東風が吹いても西風が吹いても放射能におびえなければならぬ。これはまことに日本の悲劇だと私は思う。従ってこの際、水爆実験禁止という問題は、当然、当委員会としても重大な関心を持つべきだし、また原子力担当の国務大臣としての正力さんも、重大な関心を持っていただかなければならぬ問題だと私は思う。アメリカはいよいよ水爆実験を強行するという。これに対してあなたの御所信はいかがでしょう。
  56. 正力松太郎

    正力国務大臣 水爆実験について反対の決議はすでに議会でもありましたし、これは日本国民の総意であります。従って私どものように、原子力を平和利用に限っておるものとしては、その趣意に反対であります。
  57. 岡良一

    岡委員 河崎さんは直接御担当ではないかと思いますが、先般外務委員会で、せっかくの国会の決議をどう取り扱われたかという質問に対してのお答えを速記録で見ますと、一応水爆実験はやめてくれという申し入れはした。一方、万一の場合には、その補償について十分注意をしろということもあわせて、いわば二段がまえの申し入れをしておるという御答弁があった。やめてくれなければという仮定の上に立って補償の申し入れをしておる。これでは政府としては、せっかくの国会の決議であり、国民の総意である水爆実験禁止についてこの決意を関係国に打ち出す態度としては非常に手ぬるいと思う。特にこの問題の担当相の正力さんとしては、このような手ぬるいことでは、あなたの気性としては許せないと思っておられると思うのだが、いかがでしょう。
  58. 正力松太郎

    正力国務大臣 お話通りです。しかし、何しろ国会でああいう決議をしておることでありますから、私どもは今のところ国会の趣意に沿っていくほかないと思っております。しかし趣意としては、あなたのお話には全く同感であります。
  59. 岡良一

    岡委員 私が申し上げているのは、国会は非常にはっきりと、衆議院は特にはっきりと、水爆の実験はやめてくれという決議をしておるのです。それを執行すべき行政府としての政府のやり方は、今申しましたように二段がまえで、やめてくれといって、もし無理にやるならば、補償はいかがだということの二段がまえの折衝アメリカ政府としておる。これではせっかくの国会の決議というものが、非常に色があせてくるわけです。もししいてやるならばという前提の上に立って補償の話までするということなら、色があせてくる。こういうことでは、原子力基本法にのっとって今後原子力行政を推進しなければならないという責任を負うておられる原子力担当相の正力国務大臣としては、こういう政府の手ぬるい態度をいかがお考えになるかということなんです。
  60. 正力松太郎

    正力国務大臣 政府の処置について、私は遺憾と思います。御趣旨の点、同感であります。しかしこの方法についてはなかなか重大で、よくまた考慮いたします。
  61. 岡良一

    岡委員 どうも正力さんもだいぶ答弁がお上手になられて、すぐ事、重大だから慎重にといわれる。しかしそういう答え方は古いのですよ。もっとはっきりしたことを言っていただきたいと思う。われわれがあなたに期待するものは、やはりもっと野性味のある御答弁を願いたいのです。これからはイエスかノーかということをはっきり言ってていただきたい、決してあごをつまんだりいたしませんから……・。  この前、ビキニの問題のときには、大へんあわてて右往左往いたしました。日本としても、あの経験にかんがみて、その後放射能に関して障害を予防するという意味における、あるいはそれを測定するという施設、技術などは相当進歩しておる。万一これが実験を強行されたという場合は、日本としては、特にわれわれ原子力行政にタッチする立場から、これは一つのよき資料を提供することにもなるでしょうし、また将来原子力障害防止に関してわれわれが法律を出す立場からも、生きた体験をわれわれは得ることができるわけです。だからもし始まるとするなら、そういう態勢を持たなければならぬと思う。この点についてどういう構想をお持ちなのかという点です。
  62. 正力松太郎

    正力国務大臣 先ほど申しましたごとく、御趣意にはすべて同感であります。その方法については、先ほど申す通り、事、重大だから、よくまた考慮いたします。
  63. 岡良一

    岡委員 別に事、重大でも何でもないのです。ビキニのときに、全国の国立大学で、ガイガー計数管を持っているものはずっとはかった。その後ソ同盟が実験をしたときにも、次々とみなはかった。あるいは雨の中に、あるいはお茶の葉っぱの上に、稲の上にということで、ずっとはかっておるじゃありませんか。マグロもはかっておる、海の潮もはかっておるというふうに、苦い経験で、りっぱな一つの実績を持っておるわけです。りっぱとも言えないかもしれません。しかしそれを今度は集大成したものを、時期をおくらさずに、その態勢ではかっていく。測定もしまた防止する方法も講ずる、そういう意味の非常に貴重な科学的データというものを、われわれはこの際、万一彼らが無理にやるとするならば、そういう態勢をもっていかなければいけない。これは私は原子力の行政を担当するあなたの当然の責任だと思う。事、重大だからと言うが、重大だから私は聞いておるのです。こういう点についての用意がありますか。これはあるいは佐々木原子力局長でもけっこうです。お答えを願います。ばく然たる、重大だから考慮しますじゃない。もう一月あとに来る問題です。
  64. 正力松太郎

    正力国務大臣 岡委員、今の点については、よく考慮をいたします。
  65. 岡良一

    岡委員 私どもの方から、そういう仮定の上に立っての政府の対策を聞くということは、党の立場からはあまり好ましくはないのですが、しかし万一やられるということになれば、そのときになってあわててもしようがない。だからそういう意味の態勢は、やはり固めておかなければいかぬ。それはもちろん原子力局だけでやれる仕事ではないと私は思う。だからそれは各省が連絡をされて、ビキニのときには、各省の担当者でもってビキニの被害に対する対策の協議会ができた。しかしこれはビキニのときだけの問題です。今度けそうじゃなく、今後またあり得るかもしれない——アメリカがやればソ同盟もやるかもしれぬということだから、日本としては、東風が吹いても西風が吹いても、日本を襲うであろう放射能について、科学的な調査、測定並びにその防止の方法等について、禍を転じて福とするという意味において、総合的な一つの科学的資料を組み立てておかなければならぬ。その用意が必要だと思うのです。具体的にいかにすべきかということは、これも明日の原子力委員会で十分——これは藤岡さんにお願いしておきたいが、正規議題として、いち早くこの問題についての構想を一つおまとめ願いたい。これは私は原子力委員会の重大な仕事だと思う。藤岡さんの御見解を聞きたい。
  66. 藤岡由夫

    藤岡説明員 その点は私も非常な関心を持っております。明日、御説の通り原子力委員会相談はいたしますが、ただ私、個人的な見解を申しますならば、前回のビキニの実験のあとでは、各省いろいろ調査が行われましたが、さらに日本学術会議におきまして、放射線影響調査特別委員会というものを作りまして、各省、各方面の学者、みな代表の方々に出ていただきまして、それぞれ手分けをいたしまして、仕事は各省の予算で行われましたけれども、それをまとめるという仕事をしたのであります。その委員会がいまだに続いております。たとえばそういうところに依頼いたしまして、各省、各方面の学者全部集まりましての調査をされるというふうなことを、学術を担当いたしますのは日本学術会議でございますので、依頼をしてやってもらうということも、一つの方法ではないかと思うのでございます。原子力委員会原子力局だけでは、学術的な調査は十分でありませんものですから、そういうふうなことも、一つの私見として考えております。
  67. 岡良一

    岡委員 これは専門の方々がお集まりの原子力委員会でありますので、ぜひとも原子力委員会の責任において、この態勢を整備する、そうしてもしそういうことに不幸にしてなったとしても、禍を転じて福とするくらいの優秀な科学的資料を獲得するという努力を、組織的体系的に、ぜひとも一つおくれなくおやりを願いたい。これは原子力委員会の当然の仕事だと私は思うので、心からお願いいたしておくわけであります。  その次に、この資料を拝見しますと、原子力研究所は、次々と実験原子炉等を入れられるわけであります。ところが、実験原子炉の燃料の濃縮ウランの受け入れについては、協定を見ると、こういうことになっておる。三条によれば、六キロの濃縮ウランをよこそう、しかしこれは燃料として日本国内において使用するものは、六キロを限度としておる。そうすると将来実験原子炉にしても、CP5なりあるいはウォーター・ボイラーなりスイミング・プールなりも入れられるが、濃縮ウラン六キロの限度でもって原子炉の操作が十分やれるものですか。その点に不安を持っておりますが、これは藤岡委員が専門ですからお尋ねいたします。
  68. 藤岡由夫

    藤岡説明員 ただいままでに計画を立てられましたのは、原子力委員会のできます前の原子力利用準備調査会の総合部会において行われたのであります。それによりますと、ウォーター・ボイラー、CP5、それからもう一つスイミング・プール、そのほかに天然ウランを使います重水炉というもの、そこまでの具体的な案を立て、そこまでのところならば、濃縮ウラン六キロで十分であります。まだ余るくらいであります。それ以後の計画になります場合には、六キログラム以上必要とする計画が出てくるかどうか、これはまだ検討しておりません。
  69. 岡良一

    岡委員 そこで、これは河崎局長お尋ねをいたしますが、問題は、今もはっきりしておるように、さしあたりのところは、濃縮ウラン六キロということになっておるのです。日米間の濃縮ウラン受け入れに関する協定では、交換公文に譲られて、了解事項としてあります。他の協定には入っております。第九条としていわゆる動力協定を結び得る可能性というものは入っておる。日本ではこれが落されておる。そこで交換公文を見ると、こういうことが書いてある。この「協力のための」「協定の第三条に掲げる同位元素ウラニウム二三五濃縮したウランの量は日本政府が要請する量をこえないものである旨及び日本政府は、将来において、同政府がもし希望するならば、日本国における原子力からの動力の生産に関する協力のためさらに協定する可能性について」云々と書いてある。第三条においては、ウラニウム二三五を六キロとこう押えてある。しかし動力協定を結ぶならばよけい出してもいいのだ、こういうふうにとれるのですが、そういうふうに解釈していいのでございますか。
  70. 河崎一郎

    河崎政府委員 お答え申し上げます。御解釈の通りでございます。実は、先般アメリカで濃縮ウランの大量放出の発表がございました。それによりまして四十トンをアメリカの内外に放出するということになったのであります。そのうちの二十トンは国内用、残りの二十トンは外国用ということであったのでございますが、それにつきましては、出先の大使館の方で、先方原子力委員会に確かめましたところ、その追加の濃縮ウランの放出を受ける場合にも、先般御承認を得ました日米協定以外に、別途新しく協定を結ぶ必要があるという説明でございました。
  71. 岡良一

    岡委員 確かに御指摘の通り、莫大な量のウランの放出がアメリカの最高当局者によって言明された。これも一月三十一日に私はこの委員会で申し上げたのですが、アメリカの原子力の平和利用に関する専門委員会で、九人が十カ月ばかりいろいろ検討した結果として上下両院に報告をいたしました。その中で、とにかくアメリカ国外において百万キロワットの出力を備え得る原子力発電炉というものを計画する必要があるということをうたっておる。その後いち早くこの大量放出が出た。国の中に半分、国外に半分出そう、その半分の国外に出す濃縮ウランの量は、専門家の意見によると、大体百万キロワットから百五十万キロワットといわれておる。そうしてみれば、平和利用に関する専門委員会の報告は、アイゼンハワーはその通りやったわけです。そうして、外国に百万キロワットの出力を出し得る原子力発電炉を回転し得るに足る原料としての濃縮ウランを出そう、こう言っておるわけです。だから、動力協定を結ばなければ、それでは六キロ以上の濃縮ウランは日本は入手することができない、そういうふうに解釈していいのでございますか。
  72. 河崎一郎

    河崎政府委員 その通りでございます。
  73. 岡良一

    岡委員 こういう例を私は聞いておるのです。たとえば、昨年オンラダが実験原子炉の建設を計画した。ところがアメリカとの話し合いでは、濃縮ウラン原料である燃料についての入手に非常な制約があるということから、英、国と話し合いをした。そうしてベルギーとも話し合いをしたということで、英国から実験原子炉を入れる、原料はベルギーから入れるというふうな話がついたということを聞いた。現在イタリアがやはりアメリカに対して強硬に、濃縮ウランをもっとくれ、これではとてもやれないじゃないか、その保障がないということできびしく言っておる。フランスもやはりそういう嘆きがあるということも聞いておる。私どもは、日本原子力研究所が発足して、いよいよ原料としての濃縮ウランの必要がまさってくるのではないかという場合、アメリカ一辺倒の形において協定を結んでおるこれに制約されると、一番大事な燃料面において、非常に窮屈な事態が起ってきはしないかということを憂うるわけなのであります。この点は、特に専門家として、藤岡委員等は広く各国も回られて、御事情を御承知のことと思いますが、私どもの懸念するところは、単なる杞憂でありましようか。
  74. 藤岡由夫

    藤岡説明員 私は、日本の将来のウランの資源は、できるだけ日本国内において調達できるのが望ましいと思います。従って、まずウランの探鉱を全力をあげてやらなければならないと考えます。不幸にして、日本にどうしても見つからない場合には、外国の資源にたよらなければならないのでありますけれども、できるならば、商業的な問題として取り扱うようになります日の一日も早くくることを祈っております。そうでない場合におきましても、できるだけ各国自由のきく、たとえば国際連合におきます機関のようなものが早くできましてそれを通じて入手ができるのが最も望ましいことだと考えております。それに参ります段階として、ただいまは、日米協定ができておりますが、これにたよるのもやむを得ないと考えます。
  75. 岡良一

    岡委員 国産原子炉で、天然ウラン・重水炉ということで、そこまでいってしまえばいろいろ問題も道が開けると思うのでありますが、国内のウラン資源と申しましても、現在のところは非常に乏しいように伝えられて、私どもは心細く思っておるのです。これは原子力の燃料公社の問題もありましょうから、探鉱の問題は次の法律案でいろいろ審議をすることになっておりますが御努力願いたいと思います。  そこで、この原子力産業会議の問題について委員長にお伺いしたいのですが、アメリカにもこれに似たようなもので、アトミック・インダストリアル・フォーラムというのがあります。これと日本の産業会議の性格とは、どういうようなものでございましょうか。
  76. 正力松太郎

    正力国務大臣 この産業会議アメリカにもありますが、フランスにもあるそうです。アメリカだけじゃございません。アメリカの会社は、百何十でやっております。日本の方は、アメリカよりももっと大きく、七百くらいの会社が今度入るようです。アメリカよりももっと大規模になっております。向うの原子力会議では、情報交換をやりますが、しかし原子力産業会議としての要点は、情報交換もやりますけれども、それよりもやはり研究ですから、これは原子力の研究、利用ということについて力を入れます。従って向うの方でも学者を相当にかかえるようであります。そうして、今まで原子力の研究所を電力会社が持っておるとか、あるいは個人で持っておるというのがありましたが、今度は大ていそれはみな解散をしまして、少くともおもなる点をやめまして、一つになります。一つになって、力強く発足したようなわけでございまして、われわれとしては、これができたことは、民間における輿論というものを知る上において、非常にいいことと思うて喜んでおる次第であります。
  77. 岡良一

    岡委員 あと関連して中曽根さんから質問をされたいということでありますから——私が今お聞きをいたしましたのは、いわゆるアメリカのアトミック・インダストリアル・フォーラムと、日本にできた原子力産業会議の性格が同じものかどうかということをお尋ねしたのです。性格は同じものなんでしょうか。
  78. 正力松太郎

    正力国務大臣 大体アメリカのでも、さっき申しましたフランスのでも、性格は似ておるようであります。ただ日本のは、外国のより少し大じかけになっておると思うわけであります。それだけの違いであります。
  79. 岡良一

    岡委員 ところが、この原子力産業会議の性格とアメリカのアトミック・インダストリアル・フォーラムとの性格はかなり違うと思う。そのいわゆる事業計画等を見ますと、アメリカのものは、仰せのようにとにかく共同で研究をする、共同で資料を交換する、そうして知識と権威ある意見をお互いが交換しながらというような、全く民間の産業人のグループとしての性格が非常に強く出ておる。ところが日本のこの産業会議なるものを見ると、政府との定例連絡会を開く、政府の諮問に対する意見答申をする、あるいは建議をし意見の発表をする、こういうことが事業計画になっておる。これはアメリカのアトミック・インダストリアル・フォーラムの性格と日本の原子力産業会議の性格とは非常に違うと思う。日本のは非常に政治的な性格というものが強い。現にアメリカのフォーラムの定款のようなものを見ましても、政治的な問題、政治的な動きというものは、慎もうということをみずからうたっておる。ところがこれはそうじゃない。はっきりと政府の諮問に答える、あるいは建議をする、意見の発表をやる。してはならないというわけじゃないのですよ。していいか悪いかということは別の問題なんですが、違っておる。大体世界各国並みと言われますけれども、英国では違うではありませんか。英国ではスプリングフィールドなりハーウェルなりコルダーホールなり、みな大きな国営の原子力の研究所を持っている。だから英国の民間企業は、そこへ研究者を出して研究さしておる。今度四つの工業グループ仕事をさせるにしても、技術者の訓練というものは、ほとんど国営の研究所にさしておるじゃありませんか。ところが、出発点としての原子力産業会議の形というものは、日本のいわば財界筋の意見日本原子力行政の中に強く反映されるという性格を持っておるのです。私はそう思うのですが、その点いかがでしょう。
  80. 正力松太郎

    正力国務大臣 私はアメリカとフランスの例を言いました。イギリスのことは言うておりません。イギリスはお話通りです。アメリカとフランスは似ております。そうしてアメリカと大へん違うということをおっしゃいましたが、私は文句の上において違っているけれども、精神においてはそう変らぬものと思っております。アメリカだって、やはり政府に聞かれたら諮問に応ずる、書いてないけれども応ずるものと私は思っております。いずれにしても、組織なんというものは民間の人が自由意思によってやる。私の方はただ、アメリカでもフランスでもこういうことがあるが、君の方でもやったらどうだという私は慫慂しただけです。従って、その他のことは何にも関係しておりません。
  81. 岡良一

    岡委員 問題は、その運営の問題が重大だと思うのです。なるほどアメリカのこのインダストリアル・フォーラムを見ても、頭数は日本が非常に多いと言われますが、やはりアメリカの大企業にして原子力に関心を持つ、施設を持って研究をしておるもの、製品を作っているものはみな入っている。ところがアメリカでは、運営の場合には、これは私から申し上げるまでもなくよく御存じの通りなんです。先ほど申しました原子力の平和利用の影響に関する専門委員会にいたしましても、フォードの社長も入っている、ノース・ウェスタンの社長も入っている。政府正規原子力委員会に任命をした法的の機関として、そうして調査し、あるいは立案させ、諮問をしておる。そうして彼らは勧告をするという形である。ところがこの産業会議なるものは、決して法律に根拠づけられて作られたものではない。しかもこれが勝手に建議ができる、諮問に応ずるというようなことを勝手にきめておる。こういう一つの混乱ですね。ものは初めが大事なんだが、その初めに、日本の財界の要求というものが、一方的に日本原子力行政の上に大きなウェートを持ってくる危険があると私は思う。この点について、ないと言われるならばないと、保証を一つ……。
  82. 正力松太郎

    正力国務大臣 先ほど申し上げましたごとく、アメリカと比較しまして、条文の点においては多少の相違がありますけれども、私は精神においては変らぬものと見ております。そうして、私どもではやはり民間の声を聞きたい。しかし民間によって左右はできません。大衆の声を聞く、財界の声を聞くというわけであります。学術会議にやはり会議があって、これは政府の諮問機関で、これは政府が設けたのであります。ところが民間のものは、政府が設けたものではありません。全く民間の自由意思によって、民間の人が自由に作ったものでありますが、私はこれこそ民間の声を聞くのにかえってよい、こう思っております。
  83. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 関連してちょっとお伺いしたいと思います。日本の原子力政策の根本的な問題でありますが、今まで総理府にありました原子力利用準備調査会共同部会で、いろいろ原子力研究の基本計画をお立てになりました。しかし最近の各国の情勢を見ると、日本の今までの計画というものは、根本的に再検討を要する段階に入ったと私は考えます。それは、単に電力の問題だけではなくて、アイソトープの利用にせよ、あるいは核融合なんかの研究にせよ、広大な分野が開けてきたように思うのであります。従って、この原子力研究所ができ、原子力委員会ができて発足しましたならば、今までの立場にとらわれることなく、もっと根本的な、また広範な構想をもって、日本の原子力政策を再検討する必要があると思うのであります。この点、正力大臣はどのようにお考えですか。
  84. 正力松太郎

    正力国務大臣 ただいまのお話通りであります。実は、原子力は日進月歩であります。準備会で作ったあの五年計画というものは、私に言わせると、もう見当はずれであります。その後、原子力委員会もでき、また研究所もさらに財団法人から特殊法人になる。すべて組織ができましたから、今までの計画を再検討する必要があると思います。これは原子力委員会一つ諮って、私はぜひ再検討したいと思っております。したくてなりません。先ほど申し上げましたが、ほんとうに原子力は日進月歩であります。私はこの間、実は感じましたことは、イギリスの元の労働次官をしておりました人がきまして、イギリスは今年の十月に発電をやる——ただ発電をやるといっても、私はなかなかそろばんがとれぬものと思いましたところが、そろばんはとれるということをはっきり私に言いました。これは日本の学者にしてもいろいろな議論がありますが、原子力発電が十月に出発しますが、そろばんがとれるということを私ははっきり聞いた。どだい日本人はおくれております。さっき岡委員から話がありましたが、私はおくれておるかもしれませんが、もっと日本人の頭を変えなければならぬと思います。原子力発電は十年とか十五年後なんて平気で言っておる、こんな間違った考えでどうしますか。イギリスはすでに今年やります。これはみんなの頭を変えなければならぬという考えを持っておりますから、御趣旨の通り検討をやります。原子力委員日本の権威の人も入れましたし、そして法案もりっぱなものができたし、今ではすべて整ったのですから、すべて再検討いたします。それで、この点は御趣意に沿うことになると思います。
  85. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 再検討するについて一番大事なことは、情報収集をすることだと思います。今までの日本の情報収集の機関あるいは能力というものは、非常な欠陥があると私は思います。今度の予算等におきましても、いろいろ御措置があるようでありますが、それでも足らぬと思います。何しろ日本の場合は、外国の情報を探り、外国の研究の進行状態を探るというのが、原子力政策の七〇%くらいの重要性を今日の段階では持つと私は思うのであります。そういう点で、産業会議というものができて、民間団体においてそういう役目もやるということは非常にけっこうなことだと思っておりますが、政府においてまずそれをやらなければならぬ。そういう点について今までの構想や五カ年計画あるいは今度の予算等を見ると、私ははなはだ行き足りないものがあると思うのであります。情報を収集し、外国の技術を早く見つけるという点について、政府として政策をあらためて再検討してもらわなければならぬと思いますが、その点はいかがでございますか。
  86. 正力松太郎

    正力国務大臣 情報収集につきましては、お話通りであります。実は今度予算をとるについても、少くとも英米仏くらいに専門家のアタッシェを置いて、情報を収集したいと思います。何しろそれが二カ所に縮減されたような状態で、私ども非常に不満です。不満ですが、今までから見ると一歩進めたものであります。しかしなお御趣意に沿うて、情報収集には一そう力を入れたいと思っております。
  87. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 その次の問題は、核融合反応の研究であります。外国のいろいろな文献等を見ましても、あの程度の発表があるということは、かなり進んでおるとわれわれは考えなくちゃならぬと思います。アメリカのストローズにしましても、あるいはインドのパーバにしましても、公けの席でああいう公言をするのでありますから、おそらくずいぶん控え目に言っておることだと思います。アメリカは一九五一年から融合反応を研究しておるということでありますから、もうすでに四、五年たっている。そういう点から見ても、かなり進んでおると見なければならぬと思います。日本の場合は、資源やその他の関係から見て、重水を使うということが一番ストレートであって、能率的で、よく上るだろうと私は思います。そういう点からして、日本原子力研究所においても、核融合反応の研究をもはやスタートしなければならぬ。分裂反応と同時に、融合反応の研究をスタートしなければならぬ。しかしこの原子力研究所についてというものを見ると、そういうブランチもなく、そういう構想もないようであります。われわれが原力子基本法を作ったときに、原子力とはという定義の中に、初め役人が書いてきたのは、分裂という言葉があったのを私は消しまして、原子核変換の過程において生ずるあらゆる種類のエネルギーをいうということに書いた。原子力変換という意味は、分裂と同時に融合も含むということで私は書いたわけであります。そういう点から見ても、研究所の態様とか政策の内容に、融合反応についていささかも積極的努力が見られないことは、はなはだ遺憾であって、少くとも同じにスタートし、機構を整備し、研究方針をきめるべきだと思いますが、そういう点いかがですか。
  88. 藤岡由夫

    藤岡説明員 ただいまのには書いてないというお話でございますが、私、この原子力研究所の研究の責任者と話し合いをいたしまして、お説の通り、核融合反応の研究は将来やるべきであるということを、個人的ではございますが言っております。本年度の事業計画の中では、本年度はまず調査をする段階であります。明年以後において、実際どういう研究をするかということを検討しよう、そういう話し合いをしておりまして、決してこれを無視しているのではないと思います。仰せの通り、核融合反応の研究は、将来非常に重要であると考えております。
  89. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 調査という段階では、まだ浅過ぎると私は思うのです。外国では、もうかなり深さを持った研究をしておるのですから、また日本の学者にはそれにたえ得る人間もおるわけですから、単なる情報を収集するとか調べるという程度のものであってはならないのであって、実の入った研究に入る、すなわち研究方針をきめる、学者の地位を作る、予算も計上する、そして実際に入っていく、こういう段取りをやるべきだと思いますが、いかがですか。
  90. 藤岡由夫

    藤岡説明員 本年はまずすべてのことが書初でございますし、ことに人員にも非常に限りがございますので、今すぐに実験を始めるというのは早い、少し無理ではないかというので、まず本年度は調査ということになっているのだと思います。しかしこれはお説を十分考慮いたしまして、なお検討するようにいたしたいと思います。
  91. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 次に伺いますが、敷地の件であります。今まで社会党の御議論を聞いてみると、武山に非常に固執しておられるようである。また学者の一部も武山をお考えになっておるようであります。私はこれは必ずしも悪いことではないと思う。しかし海岸というものにあまり固執する考えは、私は必ずしもいいとは思わぬ。現に各国の原子力の総合研究所はみな内陸にあって、海岸にあるところは一つもありません。たとえば米国のオークリッジにしても、あるいはアルゴンヌにしても、あるいはブルックヘヴンにしても、あるいはハンフォードの工場にしても、みな内陸にある。大西洋岸、太平洋岸、メキシコ湾岸にある研究所一つもありません。どうぞお調べになって下さい。このことは、総合研究、実験原子炉の段階においては、必ずしも海が必要でないということを意味しておる。英国においてもハーウェルの研究所はロンドンの近くにあります。あるいはフランスのサクレーもそうです。パリから一時間半ばかりのところにある。ノルウェーのキラーにしても、都市の中にある。ソ連のことは知りませんが、藤岡さんの話だとモスコーの近辺にあるということで、これも海岸にはない。従って世界中のどの総合研究所を見ても、海岸にあるというところはない。それは必須条件ではないと思う。こういう具体的実証からしても、海岸というものにあまり固執される必要はないと私は思う。けさある学者の論文を新聞で見ましたけれども原子力研究所のリポートを読んでみますと、こういうことが書いてあります。これは正力さん、よく読んでいただきたいと思いますが、「当初土地選定のためいくつかの条件が掲げられていたが、これを全部満足せしめるということは困難であるばかりでなく、相矛盾するばあいもあるので、最近では、例えばイギリスのハウエル研究所とコールダホール発電所、フランスのサクレー研究所とマルクール発電所のように基礎研究を行う処と、発電試験炉を置く処は、分離せざるを得ないかも知れないという考え方に傾いて来た。大体実験炉程度のものであれば左程広大な敷地でなくとも環境汚染を皆無に近く防止可能であり、水の所要量もそう大きな量ではないという見透しがついた。」こう書いてある。これは研究所でいろいろ御研究になった学者の結論であると思うのでありまして、分離することが一つと、それから環境の汚染も科学技術によって防止が可能であるということ、それから水はそう大量のものは実験炉の場合は要らぬ、こういう結論がこのリポートに出ております。これはやっぱり外国の総合研究所をいろいろ御研究なさった結論であるのであろうとは思う。発電原子炉は、英国では海岸にあります。これはコルダーホールやその他はそうであります。しかしフランスの場合は、ロアール川の渓谷にこれから作ると言っておる。これは内陸であります。あるいは、ソ連の場合はモスクワの近辺だとこれも文献に書いてある。これは必ずしも海岸でない。従って今までの情報というものは、日本にはまだあまり来ておらぬのであって、一般に海岸や水が大量に必要とされるという考えは何か誤解がある、これは研究不十分なのじゃないかと思う。そういう点から見て、正力さんまたは佐々木局長より、二つに分離するというこのことについて、まずあなた方のお考えを承わりたい。
  92. 正力松太郎

    正力国務大臣 研究所で調べたところによりますると、一カ所でまとめ得るならば一番よろしい、しかしながら、一カ所でそういう適当な地がなければ、分離してもよいということになっておりますので、それで今までの敷地選定に当っても、一カ所で分離しないで、いいところがあればそこにしよう、そこがなければ分離してもよろしい、こういうことになっておるわけでありますので、いずれにしても、すベての条件を調査した上が、武山が今のところでは一番よいというようなことになっておるわけでありまして、先ほど岡委員最適地々々々と言われたけれども条件が少し怪しいところもあるので、目下これは十分調査しているわけでありまして、決して軽卒なことはいたしません。よく慎重に、そして世論が納得いくようにしてきめるつもりでおります。
  93. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 水の問題で、世の中は一番心配しているようでありますが、かりにウェイストを含んだ水をスクリーンにかけて清洗した場合に、これは危ない、だから海の方がいいというのならば、武山辺にすれば、葉山やあの辺の海岸地帯は全部絶滅してしまうことになり、あの辺でとれるアジやイカは危なくて食えないということになる。海水浴場はだめになり、あるいは葉山の御用邸もだめになる、イカや何かも食えなくなるというので、大問題が起ると思う。これは内陸に置こうがどこに置こうが、ちっともかまわぬ問題である。そういうことを考えますと、海に固執するということはあり得ないと思う。従って、政府としては、一方的な、片寄った決定は下し得ないと私は思います。慎重にやっていただきたいと思う。しかしこの原子力研究所法を早く通してくれというのは、早く実施したいと思うからに違いない。急ぐなら先に土地を、きめるべきであって、少くとも法案が衆議院を通過する前に、場所くらいは見当をつけておかなければ、どれくらいのスケールのものができるのか、具体的にどれくらい金が要り、どういう建物を作ったらいいのか、アメリカからロフトネス博士が来ているようですが、その人に対しても全然未定でありますと言うのでは、設定内容すら規定するわけにはいかぬと思う。それはできるだけすみやかにきめるべきであって、この法案を通過させる前に当然きめるべきである。そういうことと、今までの既住観念にとらわれないで、広い見地から、一番合理的な方法でおきめ願いたい。私は自分の県に候補地があるからといって、自分の県の候補地を必ずして固執するものではありません。しかし、全般的に見て、単に科学的にその場所がいい、悪いというだけの問題ではない。社会経済的条件もあります。おるいは防衛国防上の見地もあります。そういうあらゆる立体的な条件を勘案されて、政府として決定していただきたい。一部の学者は、あばたもえくぼで、美人にほれたように、ほれ込んでおるようでありますが、政府としては、そういう科学的見地は科学的見地としてもちろん尊重するでしょう。しかしそれ以外の総合的見地というものが政府にあるべきであって、その一部の学者の科学的見地に従うならば、原子力委員会も原子力委員長も、原子力局も要らぬはずでありますから、政府としては別な観点から、総合的に至急きめていただくようにお願いいたしたいと思います。これは別に答弁は要りません。私の要望を申し上げておきます。
  94. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 私もちょっと関連をいたしまして、簡単に一、二お伺いをいたしたいと思います。私はこの間の原子力行政についての一般の方針質問の際に申し上げておいたわけでありますが、今もここでお話が出ておりますように、あの当時私どもが、年寄りの冷や水ならいいけれども、私どもの方が冷や水にならなければならぬほど、どうもあせられ過ぎておると感ます。今のお話の用地問題についてみましても、国内の普通の学者の常識なりあるいは一般の人々なりの常識が、どういうところを基準にきめたらいいかという、その根本論さえもまだどうも危なっかしい感じでおる際に、また突っ走りが激し過ぎるような気がして、心配をいたしておる次第であります。今、議題になっております研究所法案の内容につきましては、大体条文としては、私それほど問題な点はなかろうかと思います。従いまして、今言いましたような観点から、やはり一番気になりますのは、事業計画の問題であります。この前の委員会におきまして、正力さんはなるべく突っ走らないように、十分相談をしながら、順序を経てやりますというお話であったわけでありまするが、この原子力研究所の事業計画というここに配られたものを拝見してみますと、それから先ほど岡委員もこの辺を聞いておられたようでありまするが、私にとりまして一番問題なのは、この間の正力さんの説明のように、この事業計画の一番中心に掲げてあるところの当研究所の役割というのを見ますと、はっきりと「平和の目的に限り特に二十年後には現在の二倍に達すると推定されるエネルギーの消費水準に対する石炭、水力等主要エネルギー資源の資源的、経済的行き詰まりを打開するため原子力発電をすみやかに実現して」云々というふうに書いてあるわけであります。同時にその同じ(4)の事業計画の中の最後のもう一つ小さい4と切ってありますところに、動力実験灯については三十三年度の初めに方針をきめて、三十四年度中に建設を行う、そしてこれは一般送電線に連係して運転試験を行うのだ、こういうふうになっておるわけであります。この間来、私が一番心配しておりますのは、電力危機を克服するために、早く原子力発電炉を作らなければならぬというそこを大上段に振りかぶりながら、そこに行く道中のもくろみが、非常に浅い点といいますか、不安な点か私ども一番心配であったわけであります。従いまして、今度のこれを見まして、私、端的に感ずるのは、やはりその間の距離がすっ飛んでおるような感じを受けておるわけであります。特に今度こっちの方の三十一年度の研究部の研究項目というのを見ましても、一番しまいに、動力炉調査については、二行すぽっと書いてあるだけで、何をやるのだか何だかさっぱりはっきりせぬような話であります。それからうわさにちょいちょい聞いてみましても、動力炉関係の調査研究につきましては、人的配置その他につきましても、どこに相談に行っていいのか、あるいはどれくらいな配置になっておるのか、どれくらいな人が行っているのかということも、私ども聞いてみましても、すっきりしかねるような感じでおるわけであります。目的に非常に大きく原子力発電と、ぱっと、しかも三十四、五年と掲げておきながら、その間に、特に動力原子炉についての具体的な調査研究なりあるいは調査研究を進めるための道程なりに対しまして、非常に粗雑なような感を私は深く感じておるわけであります。この辺につきまして、大臣でもどちらでもいいですから、お聞かせ願いたいと思います。
  95. 正力松太郎

    正力国務大臣 ただいまの御注意は、まことにごもっともな御注意でありまして、先ほど中曽根委員からも注意がありました。今度委員会も新たにでき、そうして専門員もできますから、再検討をやるつもりでおります。
  96. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 それでは、この間の話にちょっと問題を——しまいに大きな声を出しましたけれども、ここにも書いてある通りに、二十年後の云々というところに議論がはっきりあったと思いますが、重油発電による電力価格の問題と、原子力発電による電力価格の問題との相当ずれている点は御了解いただいたでしょうね、そうしますと、今のお話と関連しまして、ちょっと心配になりますのは、この表がありますね、この表を見ておって、特に私が強く感じたのですけれども、二番目の計画のCPSが三十二年度の下期完成の予定になっております。これは今私どもがしろうとで聞いておる限りにおきましては、これに二年なり二年半なりかかるという話でありますが、これは特別に一年半でやるという何かあってやられたのですか。
  97. 佐々木義武

    佐々木政府委員 CP5の完成期の問題でございますが、実際の建設にかかりますれば、向うから機材その他が輸入で入って参りまして、それを組み立てるのでありますから、あまり多く時間がかかりません。ただし、発注いたしまして、向うでその設計に従いまして、素材を完成するまでの時期そのものが、計画通り早められるかどうかという点に関しましては、ただいま折衝中でございまして、まだ明確な結論には達しておりません。日本は、御承知のように、米国でやっております性能のものをそのままとってくるというやり方よりは、むしろそれに付加して、少しでも多くの実験をしたいというので、いろいろ設計等に注文を出してございます。たとえば、CP5でありましても、中性子の密度を十の十四乗まで上げたいという気持ちを持っておりますので、既存のCP5でありますと、それまで効率が上らぬわけであります。なるべく一つのものでも効果の大きい実験をしたいというふうな考えを持っておりますので、なるべく早く設計等を完成いたしまして、注文も発し、向うの製作を早めたいと思っております。今のところでは、その過程にあります最中でございまして、果してこの時期までに確実という段階までは、まだ確約できないような状況かと存じております。
  98. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 私の心配するのは、私どもが聞きますと、注文から二年ないし二年半かかっているというのが普通のように聞いておる。そうすると、これはどうも早過ぎる感じがするのです。従って、ここでどうかという感じがいたしますのと、次に聞いておきたいのは、たとえは私どもが予想するように、二年なり二年半延びた場合には、次の天然ウラン・重水型の研究あるいは動力試験炉それ自身も、ずっとそのまま延びる計画でありますか。あるいはずっと、ラップさせるという計画であるか。ラップさせるということであれば、ある部分ではラップしようにもラップし得ないという部分がありまして、特に天然ウラン・重水型の場合には、これは前のCP5の場合の材料実験の結果がずっとここに移ってこなければならぬだろうと思うわけであります。従ってこれはほとんどラップできない。ところが結果をラップさせようと思ったら、おそらく動力試験用の原子炉のけつを押えるということならば可能ではなかろうか。ただしその場合には、ほとんどこの動力用の原子炉自身も、すぽっと一括輸入してくるというようなことならば、けつは押えられるのではないか。その辺は大体どちらを中心にして現在考えておれるか。
  99. 佐々木義武

    佐々木政府委員 各国の例を見ましても、ウオーター・ボイラー型、あるいはCP5という濃縮ウランを使いまして初期の実験をするという段階を経ないで、たとえば先ほど例を申し上げましたベルギーのように初めから数千キロの国産実験炉にかかるというふうな国もございます。ただしその建設をしている最中に、濃縮ウランの問題が起りまして、それではそれも一緒にやりながら、万般の準備を整えようというので、各国とも濃縮ウランを一種の補助的なものとして取り上げるというふうな傾向にもなっておるように見受けられますので、CP5が予定よりおくれたからといって、それでは国産炉がそれにパラレルにおくれるかと申しますと、必ずしもそういうわけには参らないのでありまして、もし天然ウラン・重水型に要する機材あるいは設計等の研究が進みますれば、相並行して建設いたしましても、一向差しつかえないものでございます。この点は、先ほど大臣も申し上げましたように、あるいは中曽根委員からもお話がありましたように、これは今までの一応の考えでありまして、今後CP5の完成期あるいは国内の天然ウランの調査あるいは重水の研究の成果、過程等をにらみ合せまして、十分変更しながら、最もいい案に変えるのが至当じゃなかろうかというふうに考えております。
  100. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 そうすると、この計画の時期的なズレなり、あるいはラップということも含めて、研究と相待って、まだ相当変更していくというふうに了解しておきたいと思います。  ただ最後に一つだけ聞いておきたいのは、今ここで考えておられるこの動力試験用の原子炉というのは、どのくらいのものを考えておられますか。
  101. 佐々木義武

    佐々木政府委員 規模、様式等に関しましては、実は当初腹案はあったのでありますが、この規模、様式等を考えるにはまだ早過ぎるという議論が多うございまして、もう少し研究が進んでから——と申しますのは、国内の態勢が、資材とか諸般の準備等とにらみ合せ、あるいは諸外国のただいまとっております建設の成果等とにらみ合せて、その上できめてもおそくないのじゃないかというので、規模、様式は実はきめておりません。外国の例で申し上げましても、佐々木委員承知のように、セットから申しますと、十万キロくらいが最低だ、あるいは十五万キロ以上ないと採算が合わないという見通しを持っているところもございますれば、あるいは実験動力原子炉であれば、何千キロという規模でもスタートしたらいいじゃなかろうかというので、何千キロからスタートする国もございます。従いまして、大体は十五万キロ、あるいは小は数千キロからというふうに非常に幅のあるものでございますので、必ずしもここで何万キロというふうには明確に考えておりません。試みに、当初考えておりました例を申し上げますと、大体三万キロから五万キロ程度——これは発生電力の熱出力じゃなくて、発電としてそのくらいの程度のものを考えてみたらどうだろうかというふうな考え方でおったのでありますけれども、これはさっきから申し上げますように、今後十分検討し直さぬと、まだまだ結論の出ない問題かと思います。
  102. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 関連の質問でありますので、あまりおじゃまいたしましても迷惑ですから、この辺で適当に切り上げますが、今、計画として、一般送電線の中に新しい原子炉のやつをぶち込むのだ、それが三十四年なり五年にできるのだということは、そこに結果だけをすぽっと引いておいて、今言われるように、実験炉自身の大ききもあまりはっきりしないし、そこに至るまでの研究炉関係のやつも何だが伸縮自在みたいな形で、どうもはっきりしない。もしそうであるならば、いっそのこと、思い切って、三十四年に実験用の原子炉、動力用の実験炉をユニット的なかっこうで輸入して、すぽっとやる。今、送電綱に連係させるとか何とかいう、最後はそこまで行ってもいいのだけれども、何だか先になれば先になるほど、一番宣伝されておる原子力発電という部門が、先ほど指摘したように、今のところ、この研究項目でも、何とか研究調査するというくらいの一本しか書いてないし、この事業計画を見ましても、何だか中身がすっきりしない。ところが一般の世論の方は、正力さんの最も適切なる宣伝によって、もう今にでも何だか原子力発電ができるような、そういう感じで動いているし、そのラップは、政治家にとりましてはまことに重要なものなんです。この三年、四年の移り変りは、佐々木局長も知っておるように、もしこれが三万キロであっても五万キロであっても、電気の場合には五カ年計画といって、毎年々々五カ年計画を立てて、当然三年、四年、五年の分も入っていますが、五カ年計画を立てて、その五カ年計画の中で、発電所もどこの地点に何万キロの発電所を、どういう設計でいつまでに完成して、いつから開始するということをきちんとこしらえておるわけでしょう。発電所計画というものは、ほとんど動かないまでに熟したものなんです。それから送電線もそれにくっつけてあって、御承知のように、この間うるさく言ったように、給電上の装置は、これとまた組み合せた格好で、毎年々々調節しつつあるわけです。その辺の問題は別としましても、電源の電力のエネルギー計画というものは、それほど四、五年先までのものが動かしがたいくらいきちんとできておるのに、今にもできようとしているような感じで、この部門だけがぱっと飛び出ていて、そして、聞いてみると、何だか何もないような感じで、私はその辺が非常に不満なんです。この事業計画を推進される過程におきましても、それからたびたび聞くところの大臣の説明によりましても——ですから、もしその辺がはっきりしないものなら、はっきりしないものは、もう少しはっきりするまで、一つぼかすなりする事業計画を立てられる方が、あるいはいいのじゃなかろうかというふうに私は考えるわけであります。そういう感じに、もう少し今のありのままを正直に出すような事業計画に再吟味されるおつもりはありませんか。  それからもう一つ、これは最後ですから聞いておきますけれども、おそらくこれは水かけ論みたいなことになると思いますが、この事業計画の中で、資金について見ますと、御承知のように二年度あたりからはほとんど——ほんとうは来年度あたりからのものは、出資の中の政府出資と民間出資をどういうふうに出すつもりなのかもお伺いしたいのです。その辺は詳しくなくてもいいのですが、それを見ましても、ずっと見ていって、そしてこの民間出資におそらくたより得なくて、政府出資にたよらなければならぬ、政府出資にたよる場合に、大蔵省がどれほど了解しているか、私はこれまでのいろいろな政府の計画に対しまして、いつでもその疑問が生じて、その実証があとから出るから、その疑問が出じておるのであります。  それからもう一つ、民間資金を集めるつもりで作られたのだろうと思いますけれども、条文によると、三十条に非常に詳しく利益処分のやり方、優先株の方法まで書いてあります。けれども今度はこっちの事業計画の表で見ると、——十枚目の予想の損益計算書をごらんになってもおわかりになるように、収入の方の売上高から見ましても、四年目ぐらいに三千万程度入ってくるわけでしょう。だからそれに対して損益勘定が二十六億くらいあるわけですね。そうしてみると、ずっと今度は研究成果が上ると見ましても、利益が出てくる年というものは、よほど先のことになると思うのです。従って、これほどこまかく規定をされ、その利益金の分配を、民間の優先株扱いをされてやれる計画を立てられる。その辺は、何だか計画を立てられる規定の算術はえらい数字ができておるようだけれども、原子力発電がいつからできるかと同じような格好で、まことにばくとしておるような感じであります。これは何か格好を整えなければ計画にならぬから、数字も出したのだろうと思いますけれども、この辺について率直な御意見を承われませんか。つまり事業計画書について、今私どもが言いましたように、もう少し、一般の人々が今にもできるような錯覚を起すものでなく、こういう順当な計画を経て、こうこうしながら進んでいくんだというふうな認識になるような形に事業計画を再建され、あるいは産業会議等を通じても、そういう方針でもう少し打ち出されるお考えはありませんか。
  103. 正力松太郎

    正力国務大臣 ただいまのお話、まことにごもっともな点であります。実は、先ほども中曽根委員に答弁いたしましたごとく、ここに書いてあるのは準備委員会で作ったものであります。今度は委員会もでき、また専門委員なり参与もできますから、そこにおいて再検討をするのであります。なおまた原子力発電の問題についての御注意は、これもありがたく受けますが、実は先刻申し上げましたごとく、今度英国から来たロイド氏が、イギリスはこの十月に原子力発電をする、それは経済的ベースに乗る、こういうことを私に断言いたしました。それでありますから、私は、イギリスと日本は非常に燃料事情が似ておる点があるが、イギリスで経済ベースに乗っても、日本ではどういうものだろうという話もしました。そうしたところが、ロイド氏は、それじゃ一つ日本のデータを集めてイギリスに送れ、イギリスもできるだけそれについて正確な調査をする、こう言うておりますので、私も実は繰り返し、一体原子力発電をするのに経済的ベースに乗るだろうかということをたびたび言いました。それは乗ると確信しておると、こう言うておりますので、私は今後原子力発電については、イギリスの方と十分研究したい。そして彼が言うごとく、経済ベースに乗っておれば、日本も必ずしも遠い将来ではない。正力大臣の宣伝が行き過ぎておるという話でありますが、宣伝が行き過ぎぬようにいたしますから、どうぞ……。
  104. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 今のお話を承わりましたが、私はやはり繰り返しまして、特にこの目論見書の中で、動力用の原子炉部門についての研究、あるいは研究の日程、あるいは研究の方針がまだ非常に粗雑だと思います。そうして、聞くところによっても、私心配しておるのでありまするけれども、おそらく人員配置等におきましても、今、基礎研究が重要だから当然ではありまするが、基礎研究が重要であるときに、応用部門の宣伝が非常に今強く出ておるわけでありますから、それに相応する研究態勢をすみやかに整えられるよう、特に要望申し上げまして、関連の質問を終ります。
  105. 岡良一

    岡委員 私のお尋ねを申し上げる点は、登山でいえば二合目ぐらいのところなんです。土曜日にあらためてお尋ねをいたしたいと思いますが、ただきょうお尋ねをいたしました点につきまして、いささか私ども遺憾に存じまするのは、正力委員長の御答弁いささか明確を欠き、従って責任を伴わないというような表現があるのでございます。私が明後日お尋ねをしたいことは、原子力の行政についての学術会議と産業会議との調整をどうされるか、二つのレールはともすれば別々な道に行こうといたしまするが、これをどうされるかということが一つ。それから、動力協定を前提として、すでにこの資料では、四年目には発電炉の発注をするということが書いてあります。動力協定を前提としての発電炉の発注ということは——動力協定の問題は、すでに新年劈頭、原子力委員会が非常に大きな波紋を投げかけたことは、前回の委員会においても私どもが論議したところでありますので、この点についての原子力委員会としての意図を、明後日委員会があるそうでありますから、はっきりお示しを願いたい。それから正力委員長も言われたのでまことに意を強うするのでありますが、アメリカのみならず、英国等についても、今後原子力の研究開発に学ぼうという態度、その点について、御存じのように、今いわゆる競争的共存というような言葉がありまするが、原子力の分野においては、これがきわめて露骨に出ておると思います。こういう国際情勢の中で、日本原子力行政がどの道を行くべきであるかということ、同時にまた国内において、これが日本の独占資本に対する政府権力のバックアップという形において原子力行政が進められるということは、わが党としてはたえられないことでありますので、この点についての明確な保障を得るため、具体的な事実についてお尋ねをいたしたいと思います。どうか明後日は、委員長を初め、湯川さんあるいは有沢さんもお見えのようでありますから、各原子力委員の方々にも私は御出席を求めたいと思います。  以上であります。
  106. 有田喜一

    有田委員長 本日はこの程度にいたし、次会は、明後日十日、午前十時より開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時五十二分散会