○岡
委員 私は
日本社会党を代表いたしまして、ただいま
志村君御
提出にかかる修正案並びにその部分を除く
政府原案の
科学技術庁設置法案に対して、心から賛意を表するものであります。
ただ、各位も御存じのごとく、私とも
日本社会党は、
科学技術者を
設置すべきであるという強い希望を持ち、またこれを代案として用意もいたしておったのではありますけれども、しかし何はともあれ、この際、この規模においてでも
発足させるべきが
わが国の現状にかんがみて妥当であり、適切であろうということからいたしまして、賛意を表することにいたしたのであります。そういうことからいたしまして、本日は、
清瀬文部大臣のほかに一万田大蔵大臣、河野
行政管理庁長官等の御出席をわずらわしまして、私どもとしても、
科学技術庁の将来の
発展のために、
政府から責任ある言明を受けたいと思っておったのでありまするが、その方々の御出席を見なかったことは、まことに遺憾であります。そういう点から、その方々に対して言明を得たいと存じており、また強く希望したいと存じておりました諸点を、若干希望の
意見として申し述べまして、賛成の討論にかえたいと存じます。
この
法案が
提案されましてから、
委員と
政府当局との間にねんごろな
検討がかわされたのでありまするけれども、その間、われわれとしてはいまだ納得し得ないものを多々見出したのであります。そこで、わが
日本社会党は、
科学技術庁というものが
日本の新しい
行政組織として
発足をするそのときには、
科学技術の
振興というものはいかなるものでなければならないかというこの根本的な原則の点について、かつて戦争が科学の母であるとか、必要が発明の父であるというふうに言われておった科学の
発展というものが、戦争によって導かれたりまた必要や利益によって導かれるものであってはならない。特に、今日
原子力の平和利用という段階になってみれば、科学は平和の母、むしろ科学は平和の嫡出子としての大きな、人類的な意義を持っておるという観点からいたしまして、
科学技術庁が
設置されて、
日本における
科学技術の総合的な
発展が、
政府の責任において推進をされるということに、満腔の賛意を表したいと思います。しかしながら、これまで私どもが
質疑応答の間においてうかがわれるところは、いまだこの科学に対する
政府の認識と申しまするよりも、
政府みずからが真に科学的でありたい、いわば科学する心としての心構えにたっての
科学技術庁の
設置ないしその運営について、非常に不十分な点を見出すのであります。
先ほど来
文部省との間に指摘をされましたような事実につきましても、現在
大学においての
研究、いわば
科学技術振興の
基礎的
研究とも見るべき
大学研究室の規模あるいはまたその
研究費の問題あるいはまたその分立しておつ姿といい、いまだ総合性が非常に欠けておる。科学というものは、総合性というものを一義的なものとしておるのでありまして、それがいまだに旧時代的なセクショナリズムにわずらわされておるということは、そのこと自体、
日本の国の
科学技術振興の大きな
目的から見て、大いに脱皮しなければならない問題だと思います。現に、たとえば
試験場の問題にいたしましても、やはり
科学技術の総合的な
発展をはかるという
意味からいえば、これまでの
各省庁に所属しておったところの
試験場というものも、
検定部分を除いたものは、やはり
科学技術庁が当然これを統括するという形にいくべきものと信じます。これが依然としてやはり古い
官庁のセクショナリズムにわずらわされてしまって、そのところにまで脱皮し得ないというようなこと、あるいは特許庁との
関係にいたしましても、
日本の
科学技術を
振興させるという
意味からいえば、特許庁というものの存在はまことに化学
技術の
発展と不可分の問題である、ところがこれは独立な外局といたしまして、
通産省の方になっておるということになりますると、現実の問題として、現に各国の特許権の
内容等が、
資料としてどんどん特許庁にもたらされ、一方
科学技術庁の方にも各国のデータがもたらされる、これらをアブストラクトして、相互交換をし、あるいは広報活動の上に乗せて、
日本全体の
科学技術の水準を高める必要のある産業というものは、こうした機構の対立の結果といたしまして、不十分となり、そのことは直ちに
日本の
科学技術水準に対して大きな影響を及ぼし、マイナスの影響をもたらすことは、これはもう常識的に推定し得ることなのである。こういうような点において、今日の
科学技術庁が、もっともっと総合的な
科学技術の
発展をはかる以上は、機構そのものが旧時代的なセクショナリズムを離れた、総合的な
発展をはかるためにふさわしい総合的な機構というものに大きく飛躍し、脱皮をするということが私どもの第一の望条件であります。
それからなお、
科学技術庁について申し上げまするならば、たとえば、現在
科学技術庁においては、将来
発展すればするほど、科
学者がいわば
政府に雇用されて入ってくるわけであります。ところが、これらの科
学者が
政府に雇用された身分の形において入ってきて、彼らが自由に
研究するというときには、現在の
日本の官僚制度というものは、これらの雇用された科
学者の自由なる
研究、また
研究への意欲というものとはおそろしく衝突をするおそれなしとしないと思います。たとえば公務員法によってこれらの諸君は縛られてしまいます。ところが、公務員法というものは、本来
行政管理を
目的としたものであって、今、
科学技術庁がうたうような
科学技術の総合的
発展という大きな
目的にふさわしい身分に立つ人
たちのための
法律としては、非常に不十分な点が多々あるわけであります。こういう点において、やはり
日本の科
学者を国が雇用する以上、その身分に関する処遇なりその他の保障なりについては、特に
日本の現段階においては、特別な配慮が必要ではなかろうかと思います。こういう点も今後
技術庁の運営の過程において、十分
政府の方で御
検討をいただきたいと思うのであります。
また、
科学技術庁の
予算の問題でありまするが、
予算にいたしましても、
政府の
予算といえは、すぐいわゆる
行政事務の一種の
予算単価的な
考え方で、これを積算の
基礎として、
科学技術の
振興に関する
予算を算定しようとする傾向が、従来しばしばあり得たかのように私どもは思うのであります。このようなことでは、真に
科学技術の
振興を裏づける
予算たり得ないと思うのであります。科学の
研究は、それが
基礎的なものであろうと応用的なものであろうと、それは一年先の計画が立つか立たぬかわからないというような
研究がたくさんある。かと思えば、また十年先でなければ実を結ばないというふうなものもたくさんあるわけです。こういう科学の持っている独自性、特異性に対する理解ある
考え方を持って、
科学技術庁の資金
配分計画はもとより、大蔵省等においても、これらの科学そのものの
研究の特異性というものを十分に認識せられた上における
予算的な顧慮というものを、私どもは心から希望いたしたいのであります。
それから先般、特にきょうお答えを願いたいということでありましたが、お答えがありませんので、この機会に重ねてお願いをいたしたいと思いまするが、今後、
政府の方でも、いよいよ
科学技術の
振興に当られる、その付置機関等がいろいろ新しい発名発見をする、こういう場合の発明発見の取扱いの問題であります。この点はっきりした御
答弁をいただかなかったのでありますが、何と申しましても、
科学技術の発明発見が
政府の管理のもとに行われた以上、それは、やはり全国民のものたらしめるという顧慮が必要であろうと思います。従いまして、現在の
日本の産業規模を顧みた場合に、中小企業が非常に多い。ところが、新しい発明発見、それに伴う資金
設備、
技術を、現在の過多な
日本の中小企業に導入することは思いも寄らないという事態があり得ると思いますが、こういう場合においては、結局、大経営、大資本のみが
政府の機関を利用し、その恩典にあずかることになって、中小企業と大経営というものにおける落差が非常に激しくなってくるということは、中小企業が、国内のみならず、対外的な貿易の面においても占むる大きな比重を
考えました場合に、私どもとしては、とれないことと思うのであります。そういう点につきましても、
政府としては十分な御考慮をいただいて
政府の責任において推進し、
科学技術の
振興、それに基く新しい発明発見は金国民のものとし、特に
日本の過多なる中小企業のために、これらの新しい近代的な
技術というものが導入され、またそれに必要なる
設備なり資金というものに対しての配慮を進めて、
日本のあらゆる産業構造が、
科学技術庁の
設置に基く近代
科学技術の導入の形態を予期し得るような、そういう顧慮をぜひとも私どもは願いたいと思います。
最後に、海外との交流の問題でありますが、いただきました
資料を見ると、まことに乏しい限りであります。
文部省の留学生のごときも、本年度行っている人
たちは、わずかに三十一名が
文部省派遣在外
研究員であります。もちろんそのほかスタッフで行っている人
たちもわずかあります。あるいは私費留学生、
私立大学留学生もある。その他各機関で行っている人
たちもありますけれども、それにしても、主力である
文部省の海外派遣員がたった三十一名であるということは、
文部省だけの問題ではなく、十年の戦争の空白を埋めて、海外からぐんぐん新しい進歩した高度な近代的な料学の
研究なり、結果なり、
技術を導入する努力において、
わが国自体に非常に乏しいということを如実に物語るものと
考えるのであります。そういう点からいたしまして、どうかこの
科学技術庁は、国内における
科学技術の
発展のためにも、海外における
科学技術の高度な進歩、その
機械の導入、また積極的にそれをお作りになるのに必要なる
予算などについても、十分なる配慮をいただいて、
日本の
科学技術の水準というものが、応用面においても
基礎面においても、一日もすみやかに
世界の水準に近づき、これを追い抜くという大きな理想のもとに、この
科学技術庁の将来の運営を、責任を持っておはかりいただきたい。このことを心からお願いを申し上げます。
以上、希望
意見を付しまして、社会党は、この
法律案に賛成をいたす次第であります。